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1952-04-03 第13回国会 参議院 文部委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月三日(木曜日)    午前十時三十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅原 眞隆君    理事            加納 金助君            高田なほ子君            相馬 助治君            木内キヤウ君    委員            木村 守江君            高橋 道男君            堀越 儀郎君            棚橋 小虎君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部大臣官房総    務課長     相良 惟一君    文部省社会教育    局長      寺中 作雄君    文部省管理局長 近藤 直人君   事務局側    常任委員会專門    員       石丸 敬次君    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君   説明員    文部省管理局著    作権課長    柴田小三郎君    文部事務官    (文部省管理局   著作権課勤務)  法貴 三郎君    文部省適格審査    室長      石沢 貞義君    文部事務官    (文部省大臣官   房宗務課勤務)  荻野  勉君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○連合国及び連合国民著作権特例  に関する法律案内閣提出) ○教職員の除去、就職禁止等に関する  政令を廃止する法律案内閣送付) ○ポツダム宣言の受諾に伴い発する命  令に関する件に基く文部省関係諸命  令の措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○参考人の出頭に関する件 ○教育及び文化に関する一般調査の件  (講和祝典歌に関する件)  (学問の自由と大学の自治に関する  件)   —————————————
  2. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これより文部委員会を開きます。  最初連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案議題といたします。最初総括質問をお願いいたします。
  3. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は国際慣例というものを知らないのですが、国際慣例上から眺めた場合に、この法律案均衡のとれたものですか、どうですか、その点国際慣例的な立場から御説明を承わりたいと思います。
  4. 近藤直人

    政府委員近藤直人君) この著作権特例に関する法律でございますが、かような規定イタリーとの平和條約の際にも大体同じ趣旨規定がございますので、大体均衡がとれておると考えております。
  5. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 極く近い例としてはイタリーの場合があるだろうと思うのですが、書面によつて資料として出して頂きたいと思います。
  6. 近藤直人

    政府委員近藤直人君) 承知しました。
  7. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次にお伺いいたしたい点は、第二條定義の所で連合軍規定をしておりますが、そうして更に第六條において連合国及び連合国民以外の者の著作権について一つの制約をなしておるわけですけれども、現在中華民国というのは語弊があるかも知れないが、要するに台湾政権單独講和を結びつつあるわけですが、あれが締結された場合に中国との関係はどうなるのですか。
  8. 近藤直人

    政府委員近藤直人君) 中国とは別個な協定が必要であります。この第二條連合国定義の中には含まれておりません。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 まあそういう御答弁があるだろうと思いましたが、平和條約の第二十五條において連合国定義がございますので、中国は別個にやられるのですね、その点ははつきりしました。それから次にお伺いいたしたい点は、これは連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案となつておりますが、日本人曾つて連合国に対して著作権を持つてつたような場合はどういう法律保護されるのでございますか、どうなつておりますか。
  10. 近藤直人

    政府委員近藤直人君) 只今のような場合におきましては、平和條約の十四條によりまして、「連合国は、日本の商標並びに文学的及び美術的著作権各国一般的事情が許す限り日本国に有利に取り扱うことに同意する。」という規定がございまして、これで行くのだろうと思います。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで私が伺つておるわけなんですが、できるだけとか、或いは有利にというような表現をされておりますけれども、この法案で問題になるのは、戰時中に生じた著作権とか、或いは著作権などの存続期間に関する特例、殊に翻訳あたりは更に六カ月を延長するというように規定されているわけですね。そういう規定が、日本人が持つているところの著作権についても、全く対等立場でやられなければ、これは平和條約が両国の対等立場で、和解信頼の基本線によつて結ばれたという基本に私は牴触して来るかと思う。従つてその点を果して責任持てるのかどうか、明確な答弁を要求いたしたいと思います。
  12. 法貴三郎

    説明員法貴三郎君) 説明員として申上げますけれども、その点につきましては、今度の立法平和條約に基く立法であるということでございますのと、それから今御質問になりました点は、日本人としては外国側取扱に対して権利として主張するということはできないと思いますが、連合国側日本のために、日本著作権をできるだけ尊重するということは、平和條約に書き入れている以上は、そういう取扱をしてもらえるものと期待する、平和條約に基く立法であるという点において、結局こつちがこれだけの保護法律上与えるのだから、向うも法律上与えたらどうかということは言えない、こういうふうな状態であろうと思います。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 和解信頼で双方の義務を以て締結された平和條約に伴つて我が国ではこういう関連する国内法律の整備をやろうとしているわけですね、当然連合国においても、平和條約締結の基本的な考え方からいつて連合国側におけるところの国内法律我が国と同様にこういう審議がなされておつて私は然るべきだ、それとのやはり均衡において我々はこういう問題を審議しなければならないと思うが、それはどうなるのですか。と申しますのは、平和條発効の日においてこれを発効させるという平和條約第十四條に基いて、我々は急いでこういう法律をこしらえている。ところが我が国ではできたが、その後において連合国立法されて、それが非常に不均衡になるというような事態が起らないということを保証できるかどうか、そういう立場から……。
  14. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) この只今提案しました法律は、第十五條の(C)によつて日本国及び日本国民が負つた義務規定したのでございまして、日本国及び日本国民著作権連合国でどうなつておる、どう取扱われるかということは、第十四條の今御説明申上げたそれによつて連合国出方を見てからにしなければならないのではないかと思います。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 だから連合国はどういう出方をしているかということを伺つているのです。
  16. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) その点につきましては、今のところまだ不明でございます。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点はそれでわかりました。ではちよつと具体的なことをお伺いいたしますが、翻訳権存続期間に関する特例として、特に六カ月加算した、というようなのはこれはやはり国際慣例上こういうものがあるのか、どういう意味で六カ月を加算したのか、承わりたい。
  18. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) こういうふう平和條約は初めてでございまして、国際慣例上あつたことは私は知りませんです。ただ六カ月を翻訳権だけについてなぜ延長したのかということについては、私どもの解釈としましては、著作権法の第七條に、著作権者原著作物を発行して十年以内にその翻訳物を発行しないときは、その著作権者翻訳権は消滅する、併しこの十年以内に著作権者がその保護を受けんとする国語翻訳物を発行したときは、その国語への翻訳権は消滅、ない、こういうふうになつております。それで日本語への翻訳権を消滅させないためには、著作物発行後十年以内に日本語の訳を出さなければならないことになりますが、平和條約にこのように翻訳権のみ特に六カ月を延長しておるのは、日本語への翻訳権を消滅させたくない、或いは連合国或いは連合国民著作権者のために猶予の期間と申しますか、そういうようなものだけを特に六カ月を考慮したのじやないか、こう解釈しております。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これで私は質問を一応打切りますが、先ほど要望しましたイタリーの場合の資料ですね。それから連合国のこれに対する動き、そういうものを、外務省から手に入るだけのものを入れて、資料として頂きたいと思うのであります。それだけ要望して一応質問を打切ります。
  20. 法貴三郎

    説明員法貴三郎君) 日本側連合国及び連合国民著作権平和條約の規定する通り期間を延長する、それ故に戰争期間を連合国側日本著作権に対しても延長すべきであるということは言えないと思うのであります。これは到底、戰争の結果生じた條約に基く立法としては、そういうことは言えないと思うのであります。各外国において日本著作権をできるだけ保護するということは、ノルマルな状態における権利内容連合国においてできるだけ保護するということを規定しているわけであります。その状態がどういう状態であるかということを、今外務省に照会いたしましても、直ちに返事が入手できるというふうには期待できないのでございまして、ただちよつと参考になりますのは第一次世界大戰のときに、やはり連合国側ドイツの間に著作権に関する條項がございまして、規定上は相当ドイツ著作権に不利な規定になつているのでございますが、第一次大戰後の條約の実施は、連合国側が條約の規定通りやらない、ドイツ著作権を実際上は通常のやり方保護したというふうな実例がございますので、今度の場合も、各外国日本著作権保護してくれるということは、そういう前例から言つても、大体期待できるのではないか、こういうふうに思います。
  21. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 只今あなたさんは、第一次世界大戰のドイツの場合を例に挙げられて御説明になりましたが、今度の平和條約の基本的な立場から、これは問題にならないと思うのであります。それを先ず申上げておきたい。それと、そういう前例は私頂きたくございません。それからもう一つは、連合国及び連合国民著作権戰争期間中の分を延ばされているわけですね。それに対しましてあなたさまのさつきのお話では、連合国において日本人著作権戰争期間中同様に延ばすということは不可能なことだ、こういうように説明されましたがそれはどういうわけでございますか。でなければ、対等でない、これは当然だと思いますが、どういうわけで、日本人外国にある著作権戰争期間中延ばされないのか、どういうわけですか。
  22. 法貴三郎

    説明員法貴三郎君) これは恐縮でございますが、私個人意見でございますが、個人意見が許されるか、ちよつと特にお願いをしまして、私個人意見として申上げたいのであります。やはり戰争に負けた結果といたしまして、そういうことは日本側からは、平和條約という形で連合国日本に対する政策が決定になつた以上は、その内容を越えて日本側からそういう了解を取付けるということは事実上できないだろうと思います。
  23. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと注意しますが、あなたの個人意見は今必要ありません。あなたは政府を代表されて説明しておられるのですから……。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 随分大したものだね、卑屈になり過ぎておると思います。
  25. 高橋道男

    高橋道男君 只今矢嶋委員のことに関連もございますが、たしか著作権のことに関しまして、ベルヌ條約というものがあると思いますが、それは平和條約の議定書などによつて、條約発効後直ちに元の状態に復活してその條約が有効になるというように解しておりますが、その点は如何でしようか。
  26. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 日本ベルヌ著作権條約との関係は、今の御質問通り平和條約に規定している通り復活するものと考えております。
  27. 高橋道男

    高橋道男君 それならばあの條約は対等立場で、又対等の権限を保有していると思いますので、條約発効後の状態においては対等立場において無論折衝ができるように私は考えておるのでありますが、それはその通りなんでありますね。
  28. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) ベルヌ條約に関係した点ではそういうふうなことが言えると思いますが、但し平和條約十五條の(C)によつて日本国期間延長をつけられた点は、疑問があると思います。ベルヌ條約加盟の諸国に対しても疑問を持つております。
  29. 高橋道男

    高橋道男君 私が念を押したいと思うのは、條約発効後は対等立場である。只今矢嶋委員質問されりたのは戰争中における日本人或いは日本国著作権がこれと同等になるかどうかという点であつたと私は思うのですが、その点については平和條約において、我々としては連合国好意を期待することはできると思う。又是非そうあつて欲しいと思うけれども、我々の立場としてそれを強硬に押して主張するという権利がないと、こういうふうに言えるのでございますか。つまり戰時中日本人或いは日本国著作権についての保護状態が、直ちに現在においては不明だと、こういう解釈ですね。
  30. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 只今の御質問については、やはり平和條約第十五條規定しておる連合国側日本著作権をできるだけ好意的に取扱う、この好意を期待するより今のところ止むを得ないではないかと思います。
  31. 高橋道男

    高橋道男君 そうすると、戰争中権利についてはどうなるかわからないということは、そのままにおきさまして、若しあいまいであるならば、そのあいまいであるものは條約発効後はベルヌ條約によつて改めて対等立場で交渉ができるというように考えていいわけですね。
  32. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) そのように考えます。
  33. 高橋道男

    高橋道男君 もう一点別のことでお伺いしたいのがございますが、平和條約の十五條(C)の(i)におきまして、「公にされ及び公にされなかつた連合国及びその国民著作物」ということがありますが、これを具体例を以て御説明を頂きたいと思うのですが……。
  34. 法貴三郎

    説明員法貴三郎君) この問題は公にするということについて、アメリカ著作権法及びイギリスの著作権法には定義を入れておりまして、相当大量にコツピーを製造いたしまして一般に提供するという場合に、これを公とするという意味に解するという定義條項がございますが、日本著作権法にはそういう定義條項がございませんで、公にすると公にしないとにかかわらず、日本では創作の事実によつて著作権が発生するのでございます。この條約は、アメリカのように、そういうふうな定義を持つている、それから持つていないというふうなことが、各国著作権法内容が違います。こういう條約であるにかかわらず、今度の立法におきましては、日本著作権法との関係においては、單に著作権と書くことによつて公にするものも公にしないものも両方とも包まれるという解釈の下に、このたびの案ができているわけでございます。
  35. 高橋道男

    高橋道男君 そうしますと、公にされなかつた著作物というものは、日本国内法においては著作権を認められないものをこの特例法律によつてのみはそれも認めなくちやならんということになるわけですね。
  36. 法貴三郎

    説明員法貴三郎君) 今ちよつとアメリカの例を出してしまいましたが、アメリカではアメリカ著作権法は、公にざれた著作物に関する法律でございますが、別に判例によつて保護される法体系がございまして、発行されないものは著作権法以外の法制のシステムによつてやはり保護されるのでございまして、そういう点においては日本状態と同様な状態でございます。
  37. 相馬助治

    相馬助治君 局長にお尋ねします。同僚の矢嶋高橋委員の質疑で一応明らかになつたようですが、重要な問題なので重ねて聞いておきたいのですが、只今議題に供されている法律を制定するということの意味はわかります。これは当然の仕事でありましよう。そこで今度は日本人外国に持つている著作権についてはこちらからとやかく言う筋のものではなくて、好意に期待するのであるという説明も、今の段階においては事実の問題として了解されなくはありません。併しこういう権利に関する問題を先方様の好意に期待するとしても、ただ漫然として手を束ねて好意に期待するなどという手は、政府としてはこれはとるべき途でないことも又おのずから明らかだと思うのです。そこで現実の問題として、本法の成立を機として、文部当局においては外務省その他と連繋の上、積極的に日本人外国にある著作権をやはり有利に確保するの方途が必要であろうと思うのです。相手があることですから、相手が聞くか聞かんかはそれは勿論問題はあるのでありますが、そういうことにかかわらず、積極的にこれを機会にやはり手を打つべきだと私は思うのです。先ほど法貴さんの説明によると、それは外務省に行つて見てもわからないだろうというけれども、そういうわからないだろうということでなくて、私はそれだけの手を政府がこの際打つべきであろうと、こう考えるのですが、それらに対してはどういうふうに文部省当局として考えておるかどうか、これが第一点です。それから第二点は、連合国側関連ある人々著作権日本国内において確保するということは、その人たちだけの問題でなくて、関連するところはやはり日本著作権をいろいろ取扱つている人人、官庁を意味しておりません、これは著作権組合のようなものを私は意味しておるのですが、そういうものの利益或いは権利と抵触する面が具体的な問題として出て来るだろうと思うのです。従つて本法制定に当つて文部当局はこれらの人々の意思を十二分に参酌したかどうか、参酌したとするならば、それはどういう方法でされたか、この二点について局長より明らかにされたいと思います。
  38. 近藤直人

    政府委員近藤直人君) 只今の御質問に対してお答えいたします。第一点の戰争期間中におけるところの日本人著作権連合国に対してどういうような扱いを受けるか、不利な扱いを受けちや困るじやないかという御趣旨だろうと思うのでございますが、誠に御尤もな御意見でありまして、我々といたしましては、この法律ができました後、平和條約の先ほど申上げました十四條の線に沿いまして、勿論外務省ともお話をいたし、有利な協定に参りますように今後努力いたしたいと思つております。  それから第二点でございますが、これまでこの法律を作るに至りました経緯でございますが、勿論民間の学識経験者の意向を十分取入れまして、只今提案いたしました法律を作つた次第でございます。
  39. 岩間正男

    岩間正男君 今までの諸君の質問大分問題点が或る点は明らかになつたと思うのですが、それでこの法案講和発効伴つて上げるというふうに一応文部省側では言つて来たわけですが、我々の義務だけを負う面が非常に多くて、それと関連して同時に我々審議して明らかにするという点が不明確な限りは、この法案というやつは我々だけで責任を負う義務もないと思うのです。もう一つ著作権組合とかそういう人たち意見があるのに、これは聞かれていない。当委員会としてそういう責任を負つて、而もこつちが先議でございましよう。こつちが先議なのに、一日なんという間に上げることは、私はできないと思う。それほど国際的な関連を持つものですからね。そういう点で先ず私は委員長に動議として提出したい点は、どうでしようか、これについて著作権組合のそういう関係者参考人なり何なりで呼んで、その意見を十分に聞く。もう一つは、外務省がどういう態度でいるのか、これを通しておけばこれに従つて外務省のほうでどうかする、こういうようなことでは、いつでも我々は片務的な義務だけを負わされる。そうして全くおかしいやり方です。そうじやなくて、少くとも和解信頼とに基いておる條約の、而も具体的な実施の面としてこういうものが問題になつて来る限りは、これは国会としてもそういうような形だけで一方的に私は行くことはできない、こういうふうに思います。この点慎重にやはり取り運びを願いたいと思います。これはすぐに提案されて大急ぎで上げるという性質の法案でないと思う。如何です。
  40. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  41. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。
  42. 岩間正男

    岩間正男君 簡單にお伺いしたいのでありますが、それはほかでもありませんが、今朝ほどの新聞によりますと、朝日新聞に、今度講和祝典歌というものが文部省によつて作られて、そうしてこれが歌われる、こういうような段階になつて、何か原作者の歌が発表されておる。私はここで一つお聞きしたいと思いますことは、この原作を見ますというと、これはまあ文部省でどういうふうに、これは決定されたかどうかまだわかりませんが、これもお聞きしたいのでありますが、非常に古代調だと思うのです。この中で恐らくこの斎藤茂吉原作と言われます歌が、一体果してこの意味を解する人が日表の普通の国語の常識を以て何人いるかという問題です。例えばここに例として、恐らくこの歌だと思いますが、「ひむがしに茜(あかね)かがよひ」ということがわかり得るか、「祖先(とほつおや)」、祖先のことを「とほつおや」と言つておる。「生(あ)れし国土(くにつち)あらた代に今こそ映ゆれ見はるかす小野(をぬ)」というふうに、わざわざ万葉時代の古語を用いておる。小野のことを「をぬ」と言つて、「小野(をぬ)も木原(きはら)も香(か)ごもりて幸(さきは)ふごとしもろともに祝(ほ)がざらめやも」、こういう実に荘嚴調なのでありますね、それから「あたらしき朝明(あさあけ)にして峯々のとほきそきへに」、恐らく「そきへに」というふうな言葉を一体理解できる日本人が百人のうち一人あるかどうかという問題であります。これはやはり古典の教養を持たなければやり得ない。「雲はるか常若(とこわか)の国むらぎもの心さやけく澄みとほる光こそ見めとことはに和(のど)にあゆまむ」、こういうことであります。それで歌詞の問題とこれにからむやはり一つの復古的な、歌詞だけの問題じやなく、これによつて当然構成されて来るところの観念、思想、そういうものは非常にやはり何か古代回想的なそういうものに連なつて来る。ここが非常に私はやはり問題になるので、これが日本の現代の新らしい誕生をするのだということで一応文部省は制定されているのでありますが、そういう時代の感覚、新らしい時代世界に伍して行こうという日本のこういう方向とこれは合致するものであるかどうかということが一つ、それから果してこれが国民のそういう時代感情、そういうものにぴつたりして、そうして国民が本当にこういうものを心から自分のものとして歌い得るものであるかどうか、どういうふうに大臣はそういう点をお考えになつておるか、こういう点は斎藤茂吉氏に頼まれて、こう言つて来た、こういうことで大臣としてはこれはやはりこういう原作についてどういうお考えを持つておられるかわかりませんけれども、私はこれは個人がこういうような歌を作り、そうして作曲家をしてまあどつかのレコード会社でやる、こういうことは差支えないと思うのですが、文部省がこれをいやしくも一つ祝典歌として、これは強制はしないけれども、こういう歌ができたといつて、まあ学校とか教育委員会に廻す、こういうようなことにふさわしい歌であるかどうかということは、内容的にやはり非常に問題であると思う。日本国語教育政策の問題から考えても、この問題はやはり問題になるところじやないか、こういう点について大臣の見解を一応お伺いしたい、こういうふうに思う。
  43. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) とにかく斎藤氏は今のこういう芸術のこの方面では第一人者としてすべての人が仰ぐような人だと思うのです。そういう人に頼むことがよいと思つたのです。内容については御議論もあることかと思いますが、併し私はそういう趣旨からこれを頼んだのです。それで何も人に強いるわけでも何でもないのです。
  44. 岩間正男

    岩間正男君 それは茂吉は短歌の一つの長老ということで通つております。私はやはり今申しました内容を、作つたその内容ですね、そのものが今私の申しました国語教育立場、或いは国民感情を本当に具体的にふさわしく表現しているかどうか、それから実際こういうものができたにしても、本当に意味をわかつて歌うかどうか、今までの日本のいろいろ式歌なんかを見ますと、小学校時代から意味がわからないで、そうして歌つて来た、何のことかわからないけれども、とにかく教えられてそういうふうにおおむ返しにやつている、こういうことはいやしくも新らしい新仮名づかいとか、新らしい時代の漢字制限をやりまして国語を現代とマツチさせようとの方策をとつている文部省としては、こういう一つの新らしい門出だということで文部省がやるときに、こういう復古調を再び採用する、而も相当な復古調であります。こういうようなことが一体いいのかどうか、ここです、問題は。ここに矛盾がないとおつしやるのですか。ただ茂吉氏に頼んだから、それでできたのでそれが一番いいと思つている、そんなことじやないと思う。我々はやはりこの作品に対する一つの今の文部政策国語政策、こういう観点からこれに対して当然批判というものを持たなければならぬ。而も我々としては今、日本の当面している現代の新らしくこれから生きて行かなければならないところの日本の門出に当つて、こういうような復古調というものが果してふさわしいかどうか、その批判ですね。これが茂吉が作ろうが誰が作ろうが、そんなことは問題でない。我々はこれをプライベートにやられるのなら何も問題ない。ただ文部省がそういう肝いりで制定され、而もそれが参考にしろ流され、歌う所は歌つてくれ、こういうことになるのですが、文部省がそういうふうにして流しますと、努力して歌う。わからなくても教えるということが、全部ではないにしても起りかねない。こういうことによつて国語政策とか、そういうところに混乱とか、そういうものが起り得る。こういう点を問題にしているのでありまして、だから今の御答弁では非常にプライベートだと思うのでありますが、私は政策面として併せてお聞きしているのですが、如何ですか。
  45. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はこれをやつたら、国語政策が妨げられるとか、或いはこれによつて復古調が起るとか、そういうことは考えません。
  46. 岩間正男

    岩間正男君 それは天野個人として考えるか考えないかという問題じやなく、現実の上においてどういうような働きを持つか、そういうことを検討されたのでありましようか。これはどうでありましようか、ここが問題なんでする
  47. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はこれを受取つたばかりでありますが、これで何も差支ないと考えております。あなたの申されることはあなたの見解でありますし、私の申すことは私の見解であります。意見の違いであります。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 これは十分御検討を頂きたいと思いますが、そういう捨鉢みたいなことをおつしやらないで、十分御検討になつたらいいと思う。私は今三、四点かの問題を挙げまして各党から検討してもらいたいと思う。とにかくこういうものを我々が見ましても、こういうものは新らしい時代へ発足するものとしてふさわしいとは考えられない。こういう万葉時代の懐古調、こういうものを以て新らしい時代の門出にできるかどうか、国語のほうでは、実際これは解釈しなければわからん。新聞自身括弧の中に入れて解釈しております。それで解釈しなければわからん、こういうようなぴたつと来ない、直截に来ないような、こういうような歌詞で以てこういう奉祝歌というものを今後やられると、だんだん昔に戻つて行く、万葉時代に戻る、こういうことで以て一体日本の、少くとも代表的な国家の行事なんかのときに歌う歌としてふさわしいかどうか、これは大臣の主観とか何とかいう問題ではありません。日本一つの文化と、それから今後のこういう動きの上においてやはり問題にしなければならんから私は問題にしている。御検討願いたいと思いますが、どうでありますか、検討の余地なしとおつしやるのですか。
  49. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 御意見よく承わつておきます。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 私も岩間さんの今日の緊急質問は、今朝新聞を見まして、実は非常に驚いて機会がありましたら大臣にも伺いたいと思つていたところですけれども、ここに文部省のはなし言葉の表現というのが出ておるのですけれどもやはりデモクラシイのこれからの市民として欠くことのできないのはパブリツク・スピーキングの能力云々ということが書いてあるのですけれども、どうも斎藤茂吉さんの歌そのものとしては、誠に品格のある歌とは思うのですけれども、どうもこれを各学校あたりの子供に歌わせるということについては、私今の感覚の人から見たときにはこれはどうかと思つているのですけれども、これはどういう方法で以てこれを学校の子供たちに歌わせるというような方向をとつて行かれるのですか、大変私も疑問があるのですけれども、その点を一つ伺いたいと思いますか……。国民奉祝歌なんという以上は、子供たちも当然これを歌うということになつて行くでしようけれども、どういう御見解であつたのでしようか、その点、伺つておきたいと思います。
  51. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 大臣に代つてお答えいたしますが、昨日発表いたしましたこの独立記念式典の際に用いる祝歌は、その目的はこの式典の際に、この式典を生彩あらしめるために適当な合唱団によつてつてもらうという目的のために作つたものであります。同時に政府における式典に歌うものであるという意味でそれを知らせるということだけでいたしたいと思いますが、これを国民全般に全部歌わせるという趣旨を以て作つたという趣旨のものではないわけでございます。
  52. 高田なほ子

    高田なほ子君 何のためにそれじや教育委員会のほうへこういつたような歌が行くのですか。そういつた式場でただどういうんですか、これは一つの儀礼として歌う意味なのか。国民奉祝歌というからには、單なる儀礼というふうには考えられないのですが、何のために教育委員会あたりにこういつたようなわけのわからないような歌を一体送つてやるのですか。私にはどうもわからないのですがね。
  53. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) これは国民奉祝歌というよりも、式典に用いる歌という目的で作られるものでありまして、これを知らせるということは政府において行うのであるが、地方においてもそれぞれの方式を以てその地方に適した方法でいろいろ祝いの催しが行われることと思いますので、その際の参考にこれをまあ合唱に用いるなり或いはその他の方法で、歌いたいと思う人は歌うなり、ともかくこういうものがあるんだということを知らせる程度でございます。
  54. 岩間正男

    岩間正男君 じやお聞きしますが、文部省としては奉祝歌として非常にいいものだというお考えですか。ああいうものを国民に歌わせるんですからね、つまり一つの例えば短歌をやつておる者とか、そういう歌をやつている者がこういう歌を楽しんでいる分にはかまわない。併しこれは国民大衆の、八千五百万の大衆が、とにかく大部分の人がこれに対してやはり心をわかつて意味がわかつて、そうして本当にふさわしいと、こういうふうにお考えになりますか。こういつた歌は日本人のうち何人理解しておりますか。意味がわからないで歌つておる、今までのおおむみたいな歌い方が問題だと思う。そういうものをふさわしいとお考えになるのですか。
  55. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) これをふさわしいかふさわしくないかというような批判は、別に政府としてはいたしておるのではないのでありまして、政府として政府の式典に歌つてもらう歌を作つてもらうには、その作詞者としましては現在芸術院会員であり、又短歌会の長老である斎藤茂吉氏が最も適任であるという判断の下に、斎藤茂吉氏にすべてをお任せしてお願いをしたわけでございます。そういう意味斎藤氏のお作りになつたものを、これを式典に用いようというだけでございます。
  56. 岩間正男

    岩間正男君 茂吉氏を選んだというのはこれはどういうわけか、これもわからんわけですが、実際そこまで問題にすればなるわけだ。この歌の「とほつおや」とかこういつたものは、全くそのかみの万葉時代の神国から日本が国を肇めるという、こういう時代に何かまつわつておる、紀元節だとかああいうものと非常に相通じておる。同時に斎藤茂吉氏をそういう評価をされたけれども、これは高千穂の歌は御承知のように戰争中の作詞者の経歴を持つておるんです。私はそこまで指摘せざるを得ない。高千穂の峰の歌とか、戰争中何百首の短歌を作つて大層戰争に貢献されたことはこれは明らかな事実です。こういう経歴から離れて、私は現在の新らしい感覚の中に立つてそうして短歌を大衆の中の問題として、日本国民の本当の下からの気持を代表する詩人として歌をやられておるなら私は文句を言わない。茂吉氏が芸術院会員だろうが、短歌の長老だろうが、そんなことは問題ではない。ここにできた歌が日本国民のそういう気持にぴつたりするか。そうして日本国民としても、歌にふさわしい一つの自覚を持つておるかどうかということが問題なんです。我々はこういう権威者とか、そういう実体を冒すことはできない。いわゆる茂吉氏をくさすとかそういう意味ではない。併しここに現われた作詞そのものについて問題にしなければならない。これが茂吉氏から離れまして、日本のやはり奉祝歌として一つの独自の存在を持ち始めるところに私は問題があると思う。何も個人的な作者の問題ではない、この作品を私は問題にしておる。一体この歌の芸風はどういう芸風になるかという、これは手中局長天野大臣も御承知の通り高千穂の歌か何かのこれは芸風ですよ。この中の「とほつおや」とかいう回想に持つてつて、あの時代のつまり何と言いますか、戰争中の皇室中心主義に持つてつて、軍国主義と結び付いたこういう芸風が抜け切れないで新たな形で出て来ておる、ここが問題だ。新たな問題で、もつと思想的な問題ですけれども、これはどういうふうに考えられておりますか。
  57. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は、これが一般におわかりにくいとかそういう論は、岩間さんの言われることに確かに傾聽すべきものがあると思う。ただ思想的系譜だとかそういうことは私は何もない、そういうことは何も問題にせんでいいと私は思つております。ただ一般の人にわかりにくいということが確かにあります。併しどういう歌を作つたつてみんなが満足することはないので、必ず議論は出るのだから、私はその見解の違いだと思う。やはり日本の国に生まれたのですから、こういう茂吉氏の作品のようなものを国民が味わうということだつていいことじやないですか。これを全部朝から晩までこういうものばかり読ますというのじやないのですから、たまにこういう日本の古いものを読む、そういうことを言うならば日本の和歌なども古い、そうして万葉調のようなものなどはみんな日本の思想的によくない、極端に言えば。何もたまたまの機会にこういうようないわば国語としては非常な調子の高いものを味わつたつていいのじやないですか。岩間さん、そうやかましく言わないでも一つのあれとして見ればいいのだ、僕はあなたがわからんと言われることは、私は確かにそういう点があると思います。併しわかる歌を作れば又平俗だという批判もあり、いろいろあるので、これを毎日々々教科書としてやろうと言うのでも何でもない、たまたまこういうものをやろうというのだから、どうぞ諸君、御了承を願いたい。
  58. 岩間正男

    岩間正男君 文相がわかりにくいということを認められたことは一つの進歩だと思うのですが、これは文相のそういう進歩という意味じやありません、議論の進歩だ。やつぱり内容の問題について、こういうものもこれはたまにはいいのじやないか、こうおつしやるのですが、併し新らしい時代の歌のあり方という問題になりますから、これは多く触れませんけれども、できるだけ大衆が広汎に理解し、そうして率直にその歌声を通じて歌声を挙げるときにそれが我々の感情として一緒に出る、こういうところに私は大衆の、少くともそれが国家の式典なんかに歌う歌だつたら欲しい。ところがこういう歌を通じて一体歌つているとどうなんですか。実際意味がわからないで、ただこうやつて何とかみたいに歌う、ここらを私は問題にするのです。だからさつきむずかしいというお話のように、これはなかなか百人のうち一人しか歌の意味がわからないと思う。これが一体本当の大衆的な一つの盛り上りの中で歌われる歌としてふさわしいかどうか、この問題ですね。そうして又もつとつき詰めて言えば、この歌の内容の問題になつて来るわけです。こういう点が問題になると思う。新らしい時代の歌のあり方が問題なんです。今までの紀元節の歌を復活させてあれでいいとおつしやるなら議論の余地はないんです。私はそれじやいけないんじやないか。新らしい時代が来ておるんだ、今門途をしようとしている、そういう形で歌われる、それは物凄く、「雲にそびゆる高千穂の」という時代に戻つて来る、一つの転落なんです。前進だと考えられますか。言葉は通ぜんでも果して新らしい近代の感覚として、その後に起つた日本のいろいろの問題について本当につかんでいるか。言葉はわからないが非常にいいという御批評もあるかと思います。それは個人の主観の問題ですからそれは申上げません。
  59. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私質問申上げないつもりでございましたが、大臣答弁に対しまして私は質問せざるを得ない立場に追い込まれたのですけれども、大臣は高い調子の歌もたまたまいいではないかというお言葉でございますが、そのたまたまというのは、新日本の新らしい発足をなす平和條約の式典となれば、その意義は私は極めて重大だと思うのです。而も強制しなくても、文部省の手によつてこれを出されるとになりますと、私は一つのモデル・ケースになると思う。そういう意味におきまして、影響性と指導性というものは我々の想像する以上に私は大きいと思うのです。そういう観点からやはりこの問題は考えなくちやならんのじやないか、確かに私たち小さい頃、陛下からお言葉を賜わりまして意味がわからなかつた。その言葉の意味を我々は理解するために、早速一週間或いは二週間を費して先生がたから講義を受けたものでございます。而もそれが大概時事的に取扱われて、入学試験の問題に出たとかいうようなことを考え、又歌にしましても意味がわかりませんで、何かの行事のときに国家的な歌が制定されますと、直ちにその説明を相当時間かけて教授を受けて、そうして歌つてつた、こういうことは戰後非常に批判されて、御承知の通わ陛下の我々に賜わりますお言葉も非常に口語体でやさしくなりまして、一般国民でありましたら、人に指導はできなくとも、少くとも新聞に発表されたそれを見ますと、大体陛下のお気持がわかるというような形になつてつております。更に奉祝歌と一般の歌とは違うかも知れませんが、今の国民大衆にうけられておる歌というものは、文学的な立場から言うと調子が低いのかも知れません。併しどの歌も歌曲はうまくできておりますが、歌詞は非常に簡單です。例として適当かどうかわかりませんが、非常にうけておるところの三つの鐘にしても、向う三軒両隣りにしても、これは適当な例ではございませんけれども、非常に歌詞は簡單でございます。歌曲も非常に国民感情にぴつたりして、現在の大衆諸君から愛唱される。これは私は戰前並びに戰時中の歌のあり方と戰後は大転換しておるものである、こういうふうに思つております。この奉祝歌を平和條発効に当つて……、私も今朝の新聞を見て、私自身国語專門ではありません。岩間君のような分析はできませんけれども、とにかく何のことかわからなかつた。わけのわからないこういう歌を初めて文部省の手で出されるのが時宜に適しておるのかどうか、こういうことは私としてもどうしても賛意を表することができないわけです。  更にお伺いいたしたい点は、こういう新しい時代を画するに当つて、強制しなくても、一つ歌を歌つて、そうして新らしい日本の門出を国民つて祝おう、その意気を以て、新日本の再建に邁進しようという、こういう一つのきつかけにするためにお互いの歌を歌うということは結構だと思いますが、それならば私は文部省として公募さるべきつではなかつたかと思います。それが本当の国民から燃え上る歌で、国民がみんな歌えるところの本当に国民こぞつての祝祭日に、歌う奉祝歌となるのじやないか。それをともかく斯界の長老とは言え、斎藤先生を指名して、而も寺中局長の言葉を以てするならば、一切任したのでありますれば、斎藤先生から書かれた歌詞には一言も文部省としては喙を寄れなかつたと思います。そこに歌人としての斎藤先生の個性というか、趣味というものが非常に多く出ておる。そういう歌詞を新らしい時代を画する奉祝歌として今出されることは果して適当かどうか。さつきから非常に大臣は強く出られたようでありますけれども、私は本心は、大臣にしても局長さんにしても本心は、お願いしたけれども、出て来た歌詞というものはこれは余りに、これはというので私はびつくりされておるのが本心じやないかと思うのでございますが、公募されなかつたことと、今後何か善処される御意思はないか、承わりたいと思うのです。大臣の御回答を得たいと思います。
  60. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 御意見としてよく承わつておきます。
  61. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 公募の問題は……。
  62. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 公募にはいろいろの論があります。公募しますと極く平凡な歌ができる。だから何かいい歌を作るには、或る人に頼んだほうがいいという論が非常に強いのです。
  63. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣にお伺いいたしますが、只今答弁の中で非常に私大きく考えさせられておる問題は、式典の問題なんです。これは民間でも冠婚葬祭ということは一つの式典として考えられておりますし、時代の流れに沿つてその式典は合理的に簡素化されて行きつつあると思う。今度の講和発効に際する国民式典も又やはりそういつたような時代の流れに沿つて簡素化され合理化されて行かなければならないと思うのです。ところが先ほど寺中局長の話では、斎藤茂吉さんのわけのわからん歌を、これを式典の一つの何ですか、荘重を増す意味ではないでしようが、そういう意味があると思うのですが、わけのわからん歌を式典に一つ入れるというようなことは、その式典を簡素化、合理化させる方向とは非常に違つて来るのではないだろうか。ずつと戰時中もありますけれども、式典といえば何かわけのわからないものを持つて来ると荘重な感じを与えるというような誠に神がかり的な考え方から、特に式の日なんかには校長さんなんかでも言葉を非常に、わからない言葉をわざと使つたものなんです。一つ笑い話があるのですが、入学、私の次男が一年に入りましたときの入学式に、天皇陛下のお言葉をいろいろ出して、こういう御趣旨を奉戴して云々ということを言われた。そのときに家の息子が家へ帰つて来て、お趣旨を奉戴するというのは何だ、ライオンに繃帶するのかという質問を受けて、私はあいた口が塞らないような思いをしたのですが、そういつたような馬鹿げた過去の姿に戻りつつあるということ、而も式典がそういつたような考えの中に進められて行くことについては非常に私は疑義を持つのです。式典の合理化、簡素化、そうしてその式典を通して日本の民主化への線を高めて行くということは、やはり文部省あたりの相当にお考えにならなければならない点じやないか、こういうふうに考えておりますが、これに対する大臣の御意見を伺いたいと思います。
  64. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はわからないわからないとおつしやつたのですが、わかりにくいということは確かにそうで、先ほど申したように、もつと平明であつたほうがいいかも知れませんけれども、これはよく説明をし解釈をすれば人に理解できないものではないのです。わからないと言つても、わからないということが幾ら解釈してもわからんようなものじやないのです。それで又先ほども申したように、毎日やるわけではない。その式典にやつて日本語の美しさというものを国民が感じるのも私はよいのではないか。先ほどの公募というお話もありましたが、公募も勿論惡いとは言いませんが、公募にも公募の難点もあるのだから、私はこれでよいと思つております。   —————————————
  65. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 法案の審査に進みたいと思いますが、御異議ございませんか。それで先ほど岩間君の参考人を呼んでもらいたいという動議が出ておるのですけれども、どういたしましようか。
  66. 堀越儀郎

    ○堀越儀郎君 速記をとめて下さい。
  67. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記をとめて。    〔速記中止
  68. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。
  69. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 本日議案は三件ここに上程されておるのでございますが、簡單に大臣質問申上げたいと思います。  先ず連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案、これにつきましては先ほど局長と質疑応答を行いました。これはイタリーの例もございますので、国際的な慣例という立場から資料を頂いて、更にはこの法律案平和條約第十五條に基いて出されておるのでございますが、平和條約は和解信頼対等という基本線において締結されたものでありますので、我が国国民並びに我が国外国に持つ著作権との関連もございますので、そういう点につきまして、もう少し資料を出して欲しいということを要望したのでございますが、この点につきましては、対等という立場から、今後も大臣に御善処願いたいという点を要望して、この点に対する質問は先ほど局長に対していたしましたのでやりません。  質問申上げたいのはポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く文部省関係諸命令の措置に関する法律案、これは二点お伺いいたします。それはこの法律案は一條から四條までありますが、残すのが二つで、あとは廃止するのでございますが、この廃止に関するようなこういう法律は、別に出さなくても、私は平和條約の発効と同時に自然廃止という効力が発生するのではないか、改めてこういうような法律案を出さなくてもいいのではないかと考えるのですが、それが一点と、それから、この法律案の重要な分と申しますのは、何と言つても第一條の第一号の学校施設の確保に関する政令、これたと思います。これについて大臣にお伺いいたしたいのは、最近又この接收施設の問題が起つておるようでございますが、そういう具体的なことを質問するのではございません。お伺いいたしたいのは、準備作業班、これに文部省関係からも人を入れたい、入れるべく努力するというような発言が曾つてあり、又岡崎国務相もそういう見解をちよつとこの委員会で洩らされたのでございますが、一昨日の新聞を拜見いたしますと、文部省関係のかたは準備作業班に入つていないようでございます。そのせいか、都内の教育施設の問題が更に起つておるようでございますが、この準備作業班に文部省関係の人も入つて頂くという問題はどうなつているのか。これは私は必要ではないかと思いますので、それをお伺いいたします。これが二点、それから次にお伺いいたしたいのは、教職員の除去、就職禁止等に関する政令を廃止する法律案でございますが、これにつきまして二点お伺いいたします。その一点は、今後政令六十二号を廃止されますので、教職員の適格條件というものは、学校教育法の第九條、これだけにとめるものと考えますが、相違ないかどうか。それからもう一点は、平和條発効と同時に、この政令六十二号が廃止になつて、全面的に恩給その他の利益を受ける権利又は資格が喪失された人のは、復活するわけでございますが、大臣のお考えとしては、この六十二号の廃止によつて、今まで恩給その他の利益を受ける権利及び資格を失つてつた人が、そういう権利とか資格が復活する、そのことで事足れりと考えられておられるのか。と申しますのは追放されておつた人が積極的に教育界に復活されることを大臣は期待されるのか。それともこういう権利が喪失されておつたのが、平和條約の発効によつてそういう権利、資格が復活する、それだけでまあそういうかたがたは満足して頂いて、教育界の復活はやはり遠慮したほうがいいというようなお考えでいらつしやるのかどうか。それをお伺いいたしたいと思います。
  70. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) その最後の点を私お答え申上げます。私はそれは個人的なことだと思うのです。或るかたは復活されることが望ましいでしようし、人によれば或いは望ましくないという人もいるかも知れないが、それは学校長或いは任命権者の良識によつてきめればよいと思う、そういう考えでございます。その他のことは事務関係のことですから、事務当局からお答えいたします。
  71. 近藤直人

    政府委員近藤直人君) 初めの第一の御質問は、このポツ勅の関係で、廃止の規定は特にここに挙げる必要はないのじやないかという御質問だと思いますが、この点につきましては、これは経過規定との関係もありましてやはりここで法律の廃止の規定が必要でございますので、政令を廃止する規定が必要でございますので、挙げたのでございます。  それから予備作業班に文部省委員として参加しないのはどういうわけかという御質問でございますが、この点につきましては、前回申上げたと思うのでございます。勿論外務省のほうに事情をお話したのでございますが、定員等の関係もありまして事実上緊密なる連絡をするということで、一応了解いたしました。なお必要がありますれば、私が参りまして臨時に参加いたしまして、御相談申上げるということも可能であるということに了解いたしております。それがために被接收校舎の解除の問題が支障を来たすということは、これはないと信じております。それからあとの点につきましては担当者から申上げます。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 担当者じやない、これは基本的な問題ですよ。事務的な質問じやないんですよ。
  73. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) 適格審査の問題でございますが、この政令が廃止になりますれば、今までにやりましたような適格審査の制度はなくなるわけでございます。
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはわかつております。
  75. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) それで、まあこのあとは就職することが自由となるわけでございます。それでお話のように適格條項は学校当局のほうでやり、私のほうでは何ら関係はないのでございます。
  76. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私のほうでは関係ない……。
  77. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) 適格審査はなくなるのでございますから。
  78. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それを言つておるんじやないんですよ。これは大臣に私は伺いたかつたのですが、大臣でなければ局長が当然答弁されなくちやならんと思うのでありますが、政令六十二号がなくなれば、適格審査は中央、地方を通じてなくなるのは当然でございます。そうなりますると、結局教職員の適格條件ですね、裏返せば欠格條件、そういうものは、学校教育法の九條のみになると私は考えますので、これは念のためにそうなのかということを伺つておるわけでございまして、これは適格審査委員会関係事項ではございません。それが一点。それからもう一点は予備作業班の問題でございますが、これは文部大臣から直接に御答弁願いたい。これにつきましては、先般の委員会で、司令部が当初埼玉に移転されるように伝えられておつたのが、都内にお残りになるということが発表されて、その当時私は大臣に、どういう事情で埼玉が都内になつたのか、都内になれば教育施設が返還されなくなつたり、或いは新らしく接收されるような危険がありはしないかということを御質問申上げたところ、その当時大臣は、自分の所管事項でないからと言つて私の質問を蹴とばされたわけでございます。それからその当時から作業班の問題が起りまして、作業班は重大だから是非文部関係のかたがお一人お入りにならなければ問題が起るのじやないかということもお互いから警告され、努力されるという御答弁文部省側からあつたわけなんです。果せるかな、先般高田委員から具体的に質問されましたけれども、新らしく接收される危険にさらされている都内の教育施設というものも出て来たわけなんです。今後のことも考えますと、局長は非常に責任を持つて十分やれるというような力強い答弁だけはされておりますけれども、私は文部省としては強硬にこの作業班に文部省関係者を入れるべく折衝して実現さるべきだと考えますが、過去において大臣がそういう点において努力されたかどうか。今後更に努力される御決意があられるかどうか。これを私は大臣から是非承わりたい。その二点と、もう一つは、さつき平和條約の発効と同時に云々ということをお伺いいたしましたのは、平和條約が発効すればとにかく第二條以下というものはこれは自動的に効力がなくなるから、私はあえて、十五日までに講和條約が発効するから、十五日までに是非とも法案を上げなければならないという性質のものではないのではないかと考えますので、そういう角度からお伺いしておる。この三点、重ねて御答弁願いたい。
  79. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 適格條項は、今お尋ねの通り、学校教育法の九條のみになるわけでございます。  それから今の作業班に加わるということは、岡崎さんもいつでも入つてもらいたい、こういうふうに言つてつたのです。私も入つていいと思つております。けれども定員等の関係があるから、事実上はやるけれども、形式上は入つていないというだけのことでございます。それからそういう新らしく接收されるというようなことはどういうことで起るか、いつでも私に相談がつあるということに、若し予備隊などの場合ならあるということに大橋さんとも話がしてあるのです。その他のことでもなおほかの方法を通じても、私はもつと促進することを実はやつておるようなことで、その点は自分らができるだけのことはしておるということを御了承頂きたいと思つております。  法律の施行規則の問題は、一つ局長から……。
  80. 近藤直人

    政府委員近藤直人君) お答えいたします。平和條約に規定がございますので、必ずしも條約の発効前にやる必要はないと思いますけれども、併しながらできますならばその前に上げたいと思つております。
  81. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) このほかに大臣に対する御質疑はありませんか。それではこれで休憩いたします。    午後零時五分休憩    —————・—————    午後二時二分開会
  82. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではこれから文部委員会を再開いたします。  それでは先ほどの著作権法案に関しましては参考人を喚ぶことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではさよう取計らいます。そうしてその資料を求め、それから参考人に聞く必要があるので、この法案はこの次に審査に入ることにいたします。(「異議なし」と呼ぶ者あり)   —————————————
  84. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは教職員の除去、就職禁止等に関する政令を廃止する法律案議題といたします。  これに対する一般質問のあるかたは御質疑を願います。
  85. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 お尋ねいたします。ここに只今問題となりました法律案が提出されておりますが、それはこの教職員の除去、就職禁止等に関する政令の施行に関する規則、この別表の第一に十二項に亘つて該当事項が掲示されておるわけですが、例えばその別表第一の第一項を見ましても、「講義、講演、論文、著述等言論その他の行動によつて、」或いは「侵略主義若しくは好戰的国家主義を鼓吹し、又はその宣伝に積極的に協力した者」或いは「民族的優越感を鼓吹する目的で、神道思想を宣伝した者、」或いは自由主義者を「迫害又は排斥した者」とか、それは例でございますが、そういう基準があつて、それによつて今までいわゆる教職員の除去、就職禁止というものが行われていたわけですが、このたびこれを廃止する法律案がここに提出されるということは、もう少し具体的に言うならば、侵略主義とか或いは好戰的国家主義とか、そういうものを積極的に鼓吹するというようなことは、もうこの段階になつては別に制約しなくてもよろしいと、こういう角度でこの法律案は提出されていると、こういうふうに法律案の精神的なものを酌み取つてよろしいのかどうか、その点お伺いいたします。
  86. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) この点につきましては、占領下においてポツダム宣言を元としてやりましたところの制度は廃止したほうが適当じやないかということで、廃止することになつたのでございます。
  87. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 占領下にポ宣言に基いて出されたこういう政令が廃止されるのが適当ではないかというので提案されたと、まあそれだけのことは了解しますが、もう少し内容的に私は承つておるわけなんです。それは或いは軍国主義とか或いは極端な国家主義とかいうものを、そういう考えを持ち或いはそれを実践に移した人、そういう人を公職或いは教職から追放して来たわけですね。この段階になつてはそういうものは必要ないというお考えなのか。それとも軍国主義とか極端な国家主義者というものは、飽くまでも公職にもあつてはならないし、教職にもあつてはならないという考えの下に、この廃止法律案というものは出ているのかどうか、そこをお尋ねいたしたい。
  88. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) ポツダム宣言によつてやらされたこの制度は、占領軍が撤退するということでポツダム宣言條項は達成せられたものと解釈しておるのでございます。従いましてポツダム宣言に基きましてやらされましたこの制度は、やめるのが妥当でないかという工合に考えたわけでございます。
  89. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういう考えで、この法律案を出されちやお話にならんですよ。私は駄目押しをしておるわけです。私がお伺いしておることは、今後の我が国において、今までこの規定されておつたような軍国主義とか超国家主義というものは、これは排除して行くのか、それともそういうものは排除しないというような立場で出されておるのかということを承わつておるのです。私の見解を以てするならばです、とにかく占領下にポツダム政令というようなことで、いろいろな法律或いは施行細則で縛られておつたことは、独立して対等立場に立つた我が国として、その誇りから許されない、そこで平和條約の発効と同時に、この政令関係のものを全部廃止する。けれども我が国の新憲法を守つて行く立場から、今後のこの教職員の就職に関しましても、今までこういうような細則でずつと謳われておつた極端な国家主義或いは軍国主義、こういうものを鼓吹し或いはそういう考え方を持つておる人は、飽くまでも排除しなければならないという私は基本的な考えというものは、嚴としてあるんであつて、そういう点は独立後にこういう政令がなくても自主的にその点は徹底的に、更に積極的にやつて行くのだという考えが前提にしつかりあつて、そうしてこれは私は、こういう政令の廃止というものは提案されたものと、又そうでなければならないと、こういう私は見解を持つておるのでございますが、その点如何なものでございますか、はつきり……。
  90. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) その点につきまして、どういう人を採用するか、そういう極端な人を採用しない、軍国主義者というようなものを採用しない、そういうことの決定は任命権者並びに採用権者のかたにお任せしたいというのでございます。
  91. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは任せるにしましても、法律案を出す以上はその法律案の狙つているその趣旨というものは、精神というものははつきりしていなければ、実際文部省の人事課或いは地方の教育委員会で実際人事行政をやる場合に、私は戸惑いを起すと思うのです。ですから私はここではつきり伺つておることは、今後といえども教育界において軍国主義者とか或いは極端な国家主義者とか或いは自由主義者を迫害するような、そういう思想を持ち、更にこういう行動をしたような人物、こういうようなものを教職に就かせるのか、そういうものは自主的に飽くまでも排除して行くという方針なのかと、そこを承わつておるわけです。
  92. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) その点について自主的と申しますというと、まあ教育委員会つた教育委員会で或いは……。
  93. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いや、あなたの考えを承わつておるのです。
  94. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) そういうふうな任命権者において自主的にやるということで、文部省としてはその点には関与しないということでございます。
  95. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部省としては関与しない……ちよつと速記をとめて下さい。
  96. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記をとめて。    〔速記中止
  97. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。
  98. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点はあとで総務課長から承わることにいたしまして、あなた様に承わりたい点は、適格審査委員会で一応教職から除去したかたで、本日までその追放解除された人数と、それからその追放解除された人で教職に再び就かれたかた、それがどのくらいあるか数字を承わりたい。
  99. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) 現在まで審査した数は約百二十万でございます。それでそのうち不適格者となりました者が約七千人でございます。現在まで不適格の判定を解除された者が六千五百ばかりでございまして、只今つておりますのが六百七十名余りでございます。
  100. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 復職した人は……。
  101. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) 復職した人は今ちよつとわかりませんでございます。
  102. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 復職した人の数はあとでお知らせ願いたいと思います。それからこの平和條発効と同時にこの政令六十二号が全面的に廃止された場合に、現在残つておる六百七十名という人は、恩給その他の利益を受ける権利並びに資格は回復されるわけですが、その場合に追放されてから長い人は六年有余たつておるわけですが、恩給権が復活する場合のベースというものはどういうふうに取扱われるのか。それから事務的な面でございますが、中央並びに地方の適格審査委員会というのは残務整理もありましようが、いつ頃廃止されるのか、その二点。
  103. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) 恩給のことにつきましては、この法律が施行されたときに恩給を受ける権利ができて来るわけでございます。その場合にベース・アツプされた額で支給されることになると思います。
  104. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 現行ベースにスライドされるわけですね。
  105. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) さようでございます。それで適格審査、県にあります又大学にございます適格審査委員会もなくなるわけでありますが、残務整理として約三カ月くらいを予定しております。
  106. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 恩給権を回復する人のベースはスライドされると言いますが、その予算化、その方面はどうなつておられるか。それから三カ月後の、残務整理された場合の、地方は少いと思いますが、若干おりますけれども、それと中央の職員の身分ですね、こういうものはどういうふうに考慮されますか。
  107. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) その点につきましてあとの人の問題でございますが、府県には私のほうでは人を今まで差上げていないのでございます。それで整理の問題はできないと思います。本省のほうは、私の部屋でございますが、今十六人おりますのでございます。これも文部省の中で消化できると思います。それから予算につきましては非常に額が少いだろうと思いますので、これは恩給局のほうで十分賄えるものと思つております。
  108. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 交渉してあるのですね。
  109. 石沢貞義

    説明員(石沢貞義君) 交渉してございます。
  110. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総務課長がお見えになりましたから、伺いたいと思いますが、政令六十二号の廃止ということが、本法案が国会を通過することによつて平和條発効の日に効力を発して実施されるように提案されておるわけでございますが、この法律案の精神は、教職員の就職禁止を謳つたこの細目ですね、例えば軍国主義者、若しくは極端な国家主義者或いは自由主義者を迫害したような人は教職に就くことができないというような、こういう條項というものは、今後も飽くまでも堅持して行くというようなお考えの下に廃止されておるのか、それとも平和條発効と同時に、今まで軍国主義者とか、或いは極端な国家主義者というものを排除して来た、そういう考え方というものは一切この際白紙に返すというような精神の下に本廃止法案が提案されておるのか、この点伺いたいと思います。
  111. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) お答えいたします。今もなお教職者の中に全然軍国主義者であるとか、或いは極端な国家主義者が皆無になつたということは私ども考えておりません。併しながらこういう制度、即ちそういうような教職に就くことが好ましくない、そういう人たちが教職に就かないようにするためには、このような就職禁止と申しますか、就職制限の措置をもはや必要としない、即ちその代りにおのおのそういう人たちを採用しなければいい、即ち任命権者の良識に待つてでき得ることではなかろうか、こういうふうに考えて、かような制度を一切取り払うということにしたわけでございます。
  112. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 明確化するためにはつきり伺いますが、軍国主義者とか、或いは超国家主義者というようなものは、独立後の日本においても、教職員にあるべきでないという、その点は変らない、こういうふうに了承して差支えないわけですか。
  113. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) さようでございます。ただそういう人たちを教職に就くことを阻止することは、こういうような制度でなく、任命権者が注意をすれば、そのような好ましくない事態は生じない、そういう確信を持ち得るわけでございます。
  114. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでよくわかりました。そこで話を進めて伺いますが、公職に関する就職禁止の勅令、それから教職員の場合の政令六十二号、こういうものが平和條発効と同時に全部白紙に戻されるということになりますと、今課長から答弁された趣旨というものは、なかなか私は徹底しかねるのではないか、こういうように私は考えます。時代の流れに流されて、すべてが白紙になつたのだというような考え方で、むしろ曾つての超国家主義者とか軍国主義者を英雄視するような傾向というものは出て来ないとも限らないと思う。そういう意味において、私は我が国の民主化、それには教育の民主化ということが基盤になると思いますが、それによる民主国家の建設というような立場から、私はこういう政令六十二号を廃止する法律案が出た場合に、その趣旨を都道府県教育委員会あたりに十分徹底せしめるところの手段が講ぜらるべきだと思うのですが、そういうことを考えておられるかどうか。どういう方法で実施されようとしておられるかどうか、お伺いいたします。
  115. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 矢嶋先生の御意見御尤もでございまして、私どもも若しこのような制度が今回廃止されるならば、この適格審査の趣旨であるところの、好ましくない人たちが教職に就くことを除去しようという、そういう根本精神が没却されることを私は恐れております。そういうことがないように、こういう制度が廃止されても極端な国家主義者とか或いは軍国主義者は断じて教職に就かしむべきではないということを、何らかの方法で徹底さして行くという考えであります。
  116. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それと逆に、占領政策に反対したとか、或いはちよつと批判をしたというような形で除去されておるかたがあるわけであります。こういうかたは、この法案通過と同時に復職が、私は全く対等に可能であるべきだと思うんですが、それはどうでございましようか。
  117. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 現在約六百七十名の未解除者が残つておりますが、その中に、それから現在までに解除いたしました部分の中に、いわゆる占領政策違反という、そういう條項に違反した人が入つておりますが、これらの人々については、すべて講和條約発効と同時に就職制限を取払いたいと考えております。
  118. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほど大臣総括質問のときにお伺いしたのですが、終戰後は、この政令六十二号という嚴格な基準によつて、教職員の適格條件というものが審査されておつたわけですが、これがなくなりますれば、大臣もさつきお認めになつたのですが、学校教育法の第九條に調うところの、そういう教職員についての欠格條件、それのみが残るだけで他には一切ない、こういうように大臣答弁された品わけですが、これは学校教育法の第九條、これを更に敷衍拡大されるような、この立法の用意があるやにも聞いたのでございますが、大臣の今朝の答弁、これはそういうものは必要はないというように了承したのですが、そういうように了承してよろしうございますか。
  119. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 私どもも研究いたしましたけれども、その結論といたしましては、現在の学校教育法にいうところの適格條項の拡張、或いはそれを修正するというような考えを現在は全然持つておりませんことを申上げたいと思います。
  120. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一点お伺いいたしますが、先ほどあなたのところの職員は十六人いる、中央の適格審査委員会が廃止されると同時に文部省に吸收される見込だということを承わりましたが、若しこういう人が退職されるような場合、これは先国会で通過した定員法に基く職員の給与の取扱、ああいうものを適用されないかどうか、それが一点と、それから地方の適格審査委員会には定員を与えていないと話されましたが、事実は專任に一人二人いると思うのですが、こういう方面の退任される人への取扱といいますか、思いやりというのですか、そういうものをどういうふうにお考えになつていらつしやいますか。
  121. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 最初の点につきましては、昨年各省の行政整理の計画を立てました際に、公職適格審査事務も縮小される。現在のように事務を全然廃止するということは当時まだ考えておりませんで、事務の縮小は予期されておりましたので、その半数を六月三十日まで、即ち行政整理が終了する期間までに落す、それ以降は省内での配置転換をする、こういうふうにきめております。現在のところまだ事務が、委員会も残つておりますし、それから六月三十日までにはまだ残務整理もあるわけでございます。それでありますから退職人員というふうに見込んでおりません。その半数は別といたしまして、残つております人たちについては、行政整理の対象とは考えておりません。でありますから、普通よりも多く退職金をもらうということはあり得ないというふうに考えております。第二の点につきましては、これは石沢室長からお答えしたと思いますが、大体適格審査の仕事は、地方では大体地方課であるとか、庶務課等で他の市立学校等の事務と一緒にやつておりますので、この仕事が廃止されたからすぐ行政整理その他の問題は起つて来ないと考えております。
  122. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に伺いたいと思いますが、公職追放解除に伴う法律の廃止とか、或いは教職員の除去に関する政令の廃止、こういうものが平和條約の発効と同時に現われて来るわけですが、私は戰争責任というものですね、これは当時一億総繊悔ということを言われましたけれども、それは勿論軽重はあるかも知れないですが、戰争責任というものは現に私はあると考えるのです。我が国平和條約の発効によつて独立した機会に、独立後においてもそういう制約があるということは、民族としても、又個人としても、まあプライドが許さないからそれは解除するだけであつて、私は公職であろうが……、特に教職においては私は戰争責任というものは何人かにはあるし、それは嚴としてやはり自主的にあらしめるべきだ、それが私は新憲法を守り、又日本の新らしい平和的な民主国家の建設ということにおいては欠くべからざるものだと思うのです。平和條発効と同時に、そういうものは一切ないのだ、戰争責任というものは誰もないのだ、あれはやつぱり当然だつたのだというように私は若しも考え国民があつた場合は、これは再び軍国主義というものも大した時日を要せずに再興して来ると思う。それでは私は太平洋戰争の禍いを転じて福となすということは絶対にあり得ないと思うのですが、そういう基本的な考えというものがはつきりと提案者のほうにも出ており、又そういう趣旨というものも、国民全般に私は徹底さしておかなければ、今後の日本の動向上私は非常に心配されるわけなんですが、これは政府提案にかかつているのでございますけれども、一体政府としてはどういうふうにお考えになつているか、その点承わつて私の質問を打切りたいと思いますが……。
  123. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 若し教職者の中に戰争責任を負うべきものがあると仮定いたしまして、それらの人々は勿論再び教職に関係すべきでないと思います。そういうためにはこういうような特別な制度を作らないでも、制度を存続しなくても任命権者の良識で以てそういう好ましくない人が教職に就くことを阻止することができると私は考えております。
  124. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 戰争責任というものを、あなたはどう考えているか。近頃は戰争責任者がないように、というふうに考えている国民が多いのですよ、それをどう考えていらつしやるか。こういう法律を出される以上、一つ考え方があると思うので、それを承わりたい。
  125. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 矢島先生のおつしやる戰争責任者という対象が私にははつきりいたしませんけれども、この適格審査の制度の対象でありましたところの、極端な国家主義者であるとか軍国主義者というものは、或いはその戰争責任者であつたということになるかもわかりません。そういう人たちには就職を勿論阻止すべきだと思います。それには今後こういうような制度でなくても、任命権者の良識を以て行動するならば、そういう戰争責任者が教職に関係することを阻止することができると私は考えております。
  126. 岩間正男

    岩間正男君 大体矢嶋君の質問で尽きていると思うのでありますが、やはり最後に質問された点が非常に重要な問題だと思う。そこで私は一二点伺いたいのですが、大体今度のいわば追放解除、こういうことによつて、こういう人たちが今日本の置かれているこの情勢、言うまでもなくこれはジヤーナリズムなんかでは逆行だということを言われ、そうして軍国主義的なものが非常に復活しております。これは蔽うことのできない事実です。こういう態勢の中で、やはり軍国主義復活の一つの要素になるのじやないか。併しそういうものを抑える方法ですね、これについては文部省は今言つたような任命権者だけにこれは任してできる、こういうふうに考えていられるのですか。任命権者にこれは任して、十分にそういう精神を徹底することができる。これに対する保証が私は弱いと思う。そういうことだけではこれが再び軍国主義の母体になる可能性を持つのではないか、こういう点に対する措置としては、文部省はこれだけで十分できるというふうに考えておられるか、この点伺いたい。
  127. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 岩間先生のおつしやるように、再び軍国主義者であるとか、或いは極端な国家主義者が教育関係しない、そういう保証をするために現在のような制度を存続させることも、文部省は十分に研究いたしました。併しながら結論といたしましては、そういう制度を設けることと、それからそういう制度を廃止しまして、今後任命権者の良識に待つというような、そういうこととの間の、一つの利害得失を十分研究いたしました結果、やはり従来のような占領政策に基くところの教職適格審査制度というものはこれを全廃する、そうして、あとは任命権者の良識に待つのがいいのではなかろうか、そういう結論に到達したらばこそ、今度こういう法案を提出するゆえんでございます。
  128. 岩間正男

    岩間正男君 この点は議論になりますから、そこのところはもういろいろ意見を述べ合うことはやめるわけですが、併し文部省の今までの行政の中で、この欠格者を事務的に取扱う、形式的な方法で以てきめられた基準で、やつて行くということであつたんですか、どうですか。併しこういうような欠格者を新たに採用することができるという條件ができたんでありますが、そういうときに、今までとにかく追放されたというのは、それだけはつきりした理由があつたわけですが、そういうものに対する一つの何といいますか、これは大きくいえば文部省政策の中で、これをその後のいろいろな当人の変化というものについてこれを調べるとか、そういうようなことはなされたことはないわけですね、全然それはないわけですね、ただ形式的には一応追放されて……。そうしてそれについて、それの傾向とか、それからその後の行動というものについての調査というものはないわけですね。それから今度は、今度の平和條約の発効伴つて総括的に全部解除する、こういう形で、そこに積極的にそういうような人たちのその後の動向、そういう動き、そういうものについては何ら積極的に文部省としてはそういうものを調査するとか、或いはそれに対してとにかく意を用いて、文部省のほうから積極的にやるという、そういう政策はなかつたわけですね。
  129. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 相当多数の、現在までの制度によつて不適格者を出したわけですが、それらの不適格者につきましては、現在まで、先ほど申しました通り六百七十名だけを残して、大体すべて解除の措置をとつたわけでございます。で、解除の措置というのは、御承知でございましようけれども、文部省に設けられておりまする中央教職員適格審査会で審査したわけですが、その際やはり追放後の動向というようなことにつきましても、文部省としては再審査の資料として調査した事実はございます。
  130. 岩間正男

    岩間正男君 この六百七十人というのは、どういう内訳になつておるんですか、六百七十人の内容はわかりますか。
  131. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 六百七十人の内訳を申上げますと、そのうちの四百八十名というのはいわゆる職業軍人でございます、残余の百九十名、これは戰争犯罪人が十四名、占領政策違反というのが十六名、それから残余の百六十名と申しますのが団体等規正令によつて解散されました団体の役員が百六十名、こういうことになつております。
  132. 岩間正男

    岩間正男君 その百六十人のうちにはどういう役員がありますか、その解散された団体の役員といわれますが、具体的にお伺いしたい。
  133. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 例えば旧朝連、そういう旧朝連なんかが入つております。
  134. 岩間正男

    岩間正男君 旧朝連の日本の先生ですね。
  135. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 朝鮮人の先生もあつたと記憶いたしております。
  136. 岩間正男

    岩間正男君 入つておるんですか、朝鮮人も。それからあとは全部旧朝連ですか。
  137. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) この団体等規正令の條項に該当いたしました団体というのは朝連だけでございます。
  138. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、この旧朝連というような人たちは団体等規正令の適用を受けたという関係で、これだけは特に残されるわけですか、これはどうなんです。それについてはその後の動向なりを調査されて、そうしてできるだけ、こういうものは解除されるならば私は同時に解除するのが至当だと思う、そうでしよう。一方では今までの過程の中で追放された人たちについてはいろいろ審査をされて、その過程で動向を調べた、こういうことですけれども、解放されたそのときの役員とか何とかで、追放になつたそういう人たちの動向についても、これは同時に調べておるのであるか、そうしてこれについては、どういうような具体的な方法で以て今度の解除に向うのか、このことをお伺いしたい。
  139. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 現在若しこの法律通りまして、施行されるまでの間は依然として再審査制度が存続するわけでございますので、その期間中にできるだけ解除の措置を講じたいと考えております。これはやはり関係方面の了解を求めなければなりませんので、目下関係方面と折衝中でございます。
  140. 岩間正男

    岩間正男君 こういうところだけ遅くなつたのはどういう理由なんですか。私は同時的にこれは少くともやるべきじやないかと思うのです。まあこの解散に該当した問題については内容的にはこれは議論しません、議論すれば長くなる……、少くとも同時的に、こういうことは政府のほうで努力してやらなければ非常におかしいと思う。もう一つは占領政策違反というのですが、この占領政策違反というのが十六人残つております。これは占領政策違反の問題も、恐らくこれはいろいろな問題で今度は不問に付せられることになるだろうと思います。そうしますと、こういうものについてはこれはどういうふうにされるのであるかこの二点。
  141. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 解除の措置を講じますのは、先ほど申しました通り関係方面の了承を得なければなりませんので、私どもといたしましてはすべて同時に解除の措置を講じたいと思いまして、すべての材料を関係方面に提出しておりましたが、先方の了解を得ましたものから順次解除の措置を講じたわけでございます。さような関係からまだ残つておりますが、これらにつきましても従来と同じ措置が講ぜられるように折角努力中でございます。
  142. 岩間正男

    岩間正男君 今は考慮中で努力をしておられる、こういうわけですな、これは向うで考慮中で、そうしてこれについて努力をしておる……。
  143. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) その通りでございます。文部省といたしましては、できるだけ一人も未解除者が残らないように講和條約発効までにそういう努力を継続して行きたいと思います。
  144. 岩間正男

    岩間正男君 見通しはどうですか。
  145. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 現在までのところはまだはつきりいたしておりません。できるだけ努力しております。
  146. 相馬助治

    相馬助治君 公職適格審査委員会を通つたものでも教職員適格審査会を通らなかつたものがあつたことは御承知の通りであります。これはやはり私は今度の解除についても与える影響が大分違つて来ると思うのです。で、この法令に連関して一点伺つておきたい点は、公職適格審査委員会の判定によつて追放されていたものが、解除されて今度は何か役職に就く場合に、例を以ていたしますれば当参議院の專門員にこのかたが就任するについても、委員会において一旦追放されたかたであるという立場から、我々は慎重に議論し、そうしてその追放された当時の役職というものを勘案し、妥当でないかたに対しては我々はこれは否認して参つたわけです。又選挙に立つ場合には一般の大衆がその人を審査する、解除されておるけれども議員として妥当であるか妥当でないかということを、やはり大衆の決定によつて、いわゆる投票という手段によつてその人を審判すると思うのです。ところが、教職員の除去、就職禁止等に関する政令が廃止されまして、一人も残らず再び教職に就き得るように相成るということは、その関係ある人々のためには私は非常に喜びに堪えませんけれども、同時にそれらの人が著書その他によつて非常に戰争を煽り、日本の誤まれる軍閥当時の考え方の幇間をしたような者が依然として自分の偏見を改めることなく、ただ時間的経過を辿つて今日に至り、突如として自由の身となり、そうして一任命権者によつて任命されて、再び或いは大学教授等の職に就くということになりますれば、法律的にはいささかも差支えないかも知れませんけれども、私は新日本建設という段階からは事は極めて重大ではないかと思うのです。で、その一つの具体的な実例を挙げますると、私は三日ほど前に或る大学の教授に会いました。ところが、その人の話によると追放されていた人で、極めて考えの偏狭な人が先般解除になつて、今度突如として主任教授として返り咲いておる。で、私たちには何が何だかわかりません。こういうことを若い学徒である教授が言つていたわけなんです。私はここでその名前は申上げませんが、必要とあらば文部省個人として申上げてもよろしいのです。そういうふうにいたしますると、私はこの法律案に連関するのですが、一体文部省はそれらに対して今後どういう指導をされ、どういう又道義的な意味において国会の責任を果されんとするのであるか、それらの用意があらばこの際承わつておきたいと思います。
  147. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) こういうような一般的な就職制限の制度が廃止されますと、先ほどから繰返し申しまするように、任命権者の責任というのが従来より非常に重くなつて来ると思います。私どもといたしましては、文部省といたしましては、できるだけの方法を講じまして、このような制度がなくなつたその結果、困つた事態が生じるというようなことのないように、できるだけの措置、例えば先ほど矢嶋先生にお答えいたしましたような、今後この制度廃止の趣旨、それから今後任命権者のとるべき方途、その他については十分徹底さして行きたいと考えております。
  148. 相馬助治

    相馬助治君 妥当にして適切な方法途を考えておられるというお話を聞いて、当然であろうと思いますが、先ほど矢嶋委員質問に対して、具体的なことを説明されたのでしたら、あとで速記を見て私も承知いたしますが、具体的なことに触れていないのでありますると、私はやはり文部省責任が非常にこれは重大だと思うのです。いわゆるもうあの人は教職に就ける資格があるのだということは、これは消極的な意味において資格が生じたと思うのです。いわゆる就職をするための支障が取除かれたに過ぎないと思うのです。そこで今度は具体的にその人を採用いたしまする場合においては、文部省といたしましても特別な尺度があるはずであろうと私は思うのです。従つて、もう少し具体的な問題について更に、矢嶋委員質問に答えていなかつたならば、突つ込んでお聞きたいと思うのです。
  149. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 先ほど矢嶋先生に任命権者に注意を促すというようなことも一つの方法であろうということをお答えしたのでありますが、このような制度がなくなつても、この條項規定し、おりますところの一つの基準と申しますか、極端な国家主義者、軍国主義者の就職は望ましくない、そういう趣旨は、今後もその精神は残つて行くのだということを任命権者に徹底させたいと、こういうふうに考えております。
  150. 高橋道男

    高橋道男君 形式的なことで一言……。この廃止される政令、これはやつぱりポツダム政令の一つで、それであるならばポツダム宣言の受諾に伴い発する命令云々の法律案のうちに加えられなかつたのは何か理由があるのですか。
  151. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 非常にはつきりした理由はございませんが、このポツダム政令等の廃止に関する法律案を立案いたしました際は、このような現在の適格審査制度を全廃するという、そこまではまだ至つておりませんでした。いろいろな具体策を考究中でございましたので、当時といたしましてはポツダム政令廃止等の法律案の中に入れる考えはなかつたわけでございます。それだけの理由でございます
  152. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 総括質問について他に御発言はございませんか。……御発言がなければ、これの各條項について御質疑のあるかたは御発言を願います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  153. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。次にポツダム宣言の受託に伴い発する命令に関する件に基く文部省関係諸命令の措置に関する法律案議題といたします。  これに対して総括質問のあるかたは御発言願います。
  154. 高橋道男

    高橋道男君 逐條で一点だけ……。本法案大臣の御説明によりますると、第一條の第一号ですね、それに関連してこの旧宗教法人令による宗教法人が存続している関係上、これを存続するのだという御説明でありますが、その宗教法人令はたしか今年の十二月二日でなくなると思うのです。効力がなくなると思うのでありますが、この第一條第一号の存続効力を有する期間もそれで終るのでございましようか。その点だけお伺いしておきます。
  155. 荻野勉

    説明員(荻野勉君) お答え申上げます。只今お話のありましたこの十二月二日で以て宗教法人令による宗教法人はなくなるというふうなお話のように承わつたわけでございますが、そのようなことはないのでございます。と申しますのは、宗教法人法におきまして、宗教法人令を廃止いたしておりますが、その宗教法人令による宗教法人は、それが宗教法人法による新らしい宗教法人に切替えられるまで、又は新らしい法律による宗教法人として認証の申請を期限内にしなかつた場合、或いは認証の申請をしたが、認証されないことが確定した場合、このような場合、それまでは旧宗教法人令による宗教法人が当然あるわけであります。それまでは存続するわけでありまして、で、只今お話の十二月二日というのは旧宗教法人が、即ち宗教法人令による宗教法人が、所轄庁に対して新らしい法律に基いて認証の申請をし、新らしい宗教法人と切替えの申請の期限、そのように御了解を願いたいと思います。
  156. 高橋道男

    高橋道男君 私の言い方が余り如何にも期限を固執し過ぎ土ので、そういうお答えになつたと思うのですがいずれにしても宗教法人はなくなるわけですね。その場合を実はお尋ねをしたのです。
  157. 荻野勉

    説明員(荻野勉君) お答えいたします。宗教法人令は宗教法人法の施行と同時に廃止されております。併しながらやはり同じ法律におきまして、旧宗教法人は新らしい宗教法人になるまでは存続する、その旧宗教法人が存続している間は宗教法人令というのが適用になつているというふうな規定になつておるのであります。従つて旧宗教法人として存続している間は、宗教法人令というものの存続があるのでありまして、従つて今回のような措置は神社の場合にとられる必要が生じて来たのであります。
  158. 高橋道男

    高橋道男君 念を押してもう一度お尋ねをしておきたいのは、神社などがその所有する宝物について登録しておる場合は、宗教法人令の規定による宝物と見なす、これはわかるのですけれども、宗教法人法によつて手続をして引継ぎはできまするが、この宝物などの登記については一応効力がなくなるような現在の宗教法人法であるということが言われますので、宗教法人令が適用されなくなつた場合には、つまり宗教法人法だけが生きているという場合にはその宝物などの登記の効力もなくなるのじやないか。こういうことを考えるのです。その場合には宗教法人令の効力がなくなつた場合には、同時にこの法案による第一條第二号の効力もなくなるのじやないかということをお尋ねしているのであります。
  159. 荻野勉

    説明員(荻野勉君) お答えいたします。旧宗教法人が一つも存在しなくなるというふうな事態になりますと、それは大体宗教法人法施行三カ年後が最大限というふうに一応予想できるのでありますが、その場合にはもはや……現在神社も宗教法人会による宗教法人として存続しているわけでありますが、その必要もなくなるわけです。ですから、このような今回の存続の措置も、その場合には必要がなくなりまして、これは廃止せられていいものであります。
  160. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 他に御発言はございませんか。(「なし」と呼ぶ者あり)本法案に対する御質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  162. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は本法案に賛否の意を表明いたします。平和條発効を期して本案が提案されたことは、誠に時宜に適したものと賛意を表明するわけでございます。ただ、第一條の第一号の学校施設確保に関する政令、これは今後も残されるわけでございますが、この点につきましては、先般我が参議院の本会議におきまして学校施設の確保の決議案が可決されているわけでございますが、その決議案の趣旨政府は十分体して、第一條第一号の学校施設の確保に関する政令の趣旨を十分徹底せしめるよう強く要望いたします。その具体的な当面の問題といたしましては、合同委員会を前にいたしましての予備作業班の作業には、午前中も質疑をいたしましたが、文部省として重大関心を持つて積極的に参与をいたすことによつて、この第一條の精神を十二分に遂げ、本院の決議案の趣旨を十分実現されるよう格段の努力をいたすことを強く要望して、賛成の意を表します。
  163. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 他に御発言はございませんか。……御意見は尽きたようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く文部省関係諸命令の措置に関する法律案を問題といたします。本案を可決することに賛成のかたの御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  165. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 全会一致でございます。よつてポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く文部省関係諸命令の措置に関する法律案は全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することにしまして、御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。  それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することになつておりますから、本法案を可決することに賛成なされたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     加納 金助  相馬 助治     高田なほ子  堀越 儀郎     木村 守江  棚橋 小虎     高橋 道男  岩間 正男     矢嶋 三義
  167. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  168. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて下さい。この学問の自由と学園の自治に関する問題につきましては、先ほどお手許に廻した文案で集約することにして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。  それでは私から、先ほど懇談の時に朗読しましたが、委員会で改めて朗読いたします。   今次の東大事件に関連して、本委員会は学問の自由と大学の自治について数次にわたり、関係者意見及び証言を聽取し、審議を重ねた結果、茲に左の諸点を明確にし、もつて関係当局に対し、今後、十分なる善処を要望するものである。  一 思想の自由、及び学問の自由は、憲法第十九條、及び第二十三條によつて保障される、国民の基本的権利であり、文化国家の基礎條件であることは、言をまたない所であるが、現下、わが国の状勢においては、其の重要性を政府当局に対して特に指摘しなければならない。  二 従つて、警察権をもつてする、思想の取締、特高警察の復活に類するような行動は、嚴重に排除されねばならない。  三 大学は、真理の究明、学問の研究を其の最高職分とするものであつて、大学の自治は、大学の生命ともいうべき、この学問研究の自由を達成させるために存するものであるから、其の法的根拠は、学問の自由と同じく、憲法第二十三條にもとめうるものであると共に、この大学自治は、既に一般に承認され、かつ、確立された社会的伝統であるといわねばならない。  四 もちろん、大学の自治も、治法権的な特権を意味するものではない。しかし、警察が、いわゆる治安維持の名において、学内において、一般的に警察権を行使しうるとするならば、大学の自治、ひいては学問の自由を全く否認することと異るところがない。  五 昭和二十五年七月二十五日附、「次官通達」は、警察権に対する、この大学自治のいわば最小限の要求を示すものであつて、今後も、両者の限界線に関する適切、かつ妥当な基準であることを確認する。  六 ただし、この「通達」の運営に際しては、今次東大事件に類する不祥事を繰返さないために、学校当局と警察当局とは、平常、十分な意思の疏通と、緊密な協力関係を確立しておく必要があり、また、所轄警察署の、責任者及び担当係官の選任に当つては、警察当局は、その適格性を慎重に考慮すべきものである。  七 大学が、自己に認められた、学園の自治を擁護するためには、学校当局のみならず全教官も関心と責任とをもつて、学生の教授と指導に任じ、学生もまたこれに応え、相協力して、秩序を維持し学問研究に相応わしい平和な環境を確立することによつて、大学自身、その自治能力を証明しなければならない。  そうして、これは文部大臣及び法務総裁にこれを送りまして、強く要望をして、その回答を求めることにして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) さように取計らいます。
  171. 相馬助治

    相馬助治君 この際私は、当委員会の專門員室に次の作業をやつて欲しいと思うのです。というのは、この問題に関して参考人として、委員長が本院にお喚びしたかたがたに、委員長名を以て只今決定された意見書を全部参考として送つてつたらいいと思います。
  172. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 今の相馬さんの御動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) さように取計らいます。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  174. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて下さい。
  175. 岩間正男

    岩間正男君 附則の第二項ですね。「他の法令に別段の定のある場合を除く外、」とありまして、そのあとの「この法律施行の日において公私の恩給、年金その他の手当又は利益を受ける権利又は資格を取得する。」こういうことなのでありますが、「他の法令に別段の定のある場合」というのは、先ほどの六百七十人に対しては、団体等規正令とか、政令第三百二十五号とか、こういうものが問題になるわけですね。後軍人の追放解除、いろいろな制限、こういう法令が同時に、発止されるのじやないですか。今のところ殆んどその見通しがはつきりしておるのじやないのですか。そうすれば当然これは今の六百七十人についてもこういう権利は取得される、こういうふうに解釈していいですか。
  176. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) ここで「他の法令に別段の定のある場合」という他の法令とは、これは軍人、軍属の恩給を停止いたしました昭和二十一年勅令第六十八号、そのことを言つております。
  177. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、当然この六百七十人については、これはどういうことになりますか、この原理は。
  178. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 六百七十人につきましては、若しそれが、このポツダム政令が廃止されるまでに解除になれば、当然これは適格審査のほうの元の規定で恩給受給権を回復いたしますし、若しこのポツダム政令が廃止されたあとに未解決のままで残るというものが仮にあつたといたしましても、そういたしますと附則第二項において、「この法律施行の日において公私の恩給、年金その他の手当又は利益を受ける権利又は資格を取得する。」と、こういうことになりますので、どちらにいたしましたところで、恩給受給権は回復するというのであります。
  179. 岩間正男

    岩間正男君 回復するというのですね。わかりました。
  180. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは文部委員会を散会いたします。    午後三時二十六分散会