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1952-03-28 第13回国会 参議院 文部委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十八日(金曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅原 眞隆君    理事            加納 金助君            高田なほ子君            相馬 助治君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            木村 守江君            黒川 武雄君            白波瀬米吉君            高橋 道男君            堀越 儀郎君            荒木正三郎君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    田中 義男君   説明員    文部省初等中等   教育局庶務課長  内藤誉三郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員会設置の件 ○小委員選任の件 ○新たに入学する兒童に対する教科用  図書給與に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これより文部委員会を開きます。  義務教育国庫負担の問題につきまして先般来委員のかたがたから発言もありましたので、本日の理事会に諮りましたところ、小委員会を設けることになりましたので、別に御異議もなければ小委員会を設けることにいたしたいと存じますが、如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは小委員の数につきましては、各会派一名ずつにいたしたいと思いますが、如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ではさよう決定いたしました。  只今から本日の議題として最初に新たに入学する……。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 その前に小委員会名前をきめて頂きたいと思います。
  6. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではその小委員会名前は、教育費国庫負担に関する小委員会というので如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではさように決定いたします。   —————————————
  8. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 本日の議題は、最初に新たに入学する児童に対する教科用図書給與に関する法律案について総括質問を行いますので、御質疑のおありのかたから御質疑を願います。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 審議に必要な一つ附帶資料としましてこれは出ておるのかどうかわかりませんがお願いしたい。昨年の実施状況、これをお聞きしましてやはり今年度のことを我々は検討する必要がある。この点もうすでに準備されていると思いますがございますか。
  10. 田中義男

    政府委員田中義男君) 昨年は一応当初人数におきまして百八十万六千四百、それに対しまする予算は一億五千八百六十六万八千円でありまして、そしてこの二月に精算拂いを漸く済ませました。その結果につきまして今まとめつつあるのでございますが、何しろ一万以上も市町村等がございますので、まだ的確な統計その他の結果を只今申上げるほどまとまつておりませんのでございます。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 大体併し全部の精算まではこれは無理かも知れませんけれども配布状況とか、教科書の種類とか、都道府県にどういうふうに配つたかとか、それからその配つたときに遅れたとか、間に合わなかつたことがあつたかとか、それからその実施によつて大体どういうような効果が出たかとか、欠陷があつたかとか、そういうことはとにかく文部省が御調査になつておられることだと思います。当然私は親切なやり方とすれば、この法案を出すときにそういう資料を付けて出される、こういうことでないと、ちよつと工合が惡いと思います。この法案だけぽつと出て来て、そうしてこれは関連がないかというと去年と関連がある。我々はそういう観点に立つて審議するのでなければ、法案だけ抽象的に審議しても意味ない。そういうことは具体的にどうなんですか。それとも本年度計画で、例えば予算は通つたんですが、この予算案では殆んど分科会までやれなかつたので、これについては余りやれなかつた従つてどういうふうに実施するのか、案があるのが、そういうものがあつたらつ、一々ここで問答をしなくても、資料を頂けば一目瞭然に非常に審議を促進することができると思うのですが、こういう準備はできておるんですか。
  12. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  13. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。それでは大臣が御出席になりましたから総括質問のおありのかたは御質疑を願います。
  14. 高田なほ子

    高田なほ子君 基本的な問題を一つ大臣に伺いますが、今度提出されました教科用図書給與に関する法律目的が、児童国民としての自覚を深めることに資するとともにその前途を祝うために無償給與する、こういうふうに目的が書かれございますが、前年度やはりこれと同じような、新たに入学する児童に対する教科用図書給與に関する法律案目的とは非常に目的が違つて来ておる。つまり前は義務教育無償、つまり憲法精神に副つて国家子供教育のために教科用図書無償給與するというこういう精神の下に出発され、而もその出発に際しましては私どもとしては来年度再来年度も次次と計画盛つたものが出されなければならないということを強く主張し、又それに副うような確約があつたはずでございます。ところがそういういきさつにもかかわらず全く今度のは根本的にその行き方を異にしているのでございますが、この点について方針が前と非常に変つたという点について大臣のお考えを一応ここでお知らせ願いたいと思うのでございます。
  15. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 昨年のときは今おつしやいましたよう義務教育無償原理ということに副うという点が重要な点でございましたが、同時に私はそれと並んでやはり子供前途を祝うという意味もあるということは当時私は述べたつもりでございます。けれども主要な点は義務教育無償原理ということに則つて、だんだんにこれを先までやれるというつもりでおつたんです。大蔵大臣も当時はこれを先までやれるようなお考えように私は察しておつたんです。でそういう二つ目的を以て出発しておつたんですが、併し今になりまするというと、なかなか教科書をこれから毎年やるということはこれはできないということに事情変つて来たものですから、そういう点もないわけではございませんが、義務教育無償原理と言いながら、一年生にただ二科目だけの本を出すというのでは、まるで何と申しましようか、羊頭を掲げて狗肉を売るというようなことになるからそういう点は暫く引込めて、昨年も二次的に付けておいたそちらの目的を主にしてやろう、子供前途を祝うということを主にしてやろう、そういうことになつて来たわけです。
  16. 高田なほ子

    高田なほ子君 成るほど去年、新たに入学する児童に対する教科用図書給與に関する法律案を御説明になつたときには、その御説明の中でこの前途を祝うというよう気持も勿論それはあつたかも知れませんけれども、全くそれは根本的なお考えが違つて来たのをこういうふうにすり変えて来たよう考えられるんです。私はもともと子供たち国家の費用によつて、いささかなりとも、こういうよい方向に向うということについて賛意を表さないというのではなく、非常に喜ぶのでありますけれども政府の失政を反省せられることは結構でございますけれども、それを目的を全然違う方向にすり変えて行かれるということに対しましては、私は非常に遺憾の意を持つものでございます。特にこの大臣の御説明の中にありましたが、兒童国家公共心涵養を図るために、新入学兒童に対して云々というふうな、非常に恩恵的な或いは思想を統制するよう方向に御説明がされておるのでございますけれども、こういうことによつて児童国家公共心涵養というものは、これはできるのですか。
  17. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 高田さんもだんだんこの国会長くおられておると、いろいろそういう見方変つて来て、私どもは依然として教師なんで、ものをすり変えるとか、嘘を言うとかそういうことをやつているつもりはないのでございます。現に岩間さんは御存じだと思いますが、岩間さんが去年私に対してこればかりのことをやつたつて仕方がないではないかと言つたときに、決してそうではないのだ、これによつて子供公共心というものを養うということは、たとえ書物は少くとも意味のあることだということを私は岩間さんに答弁申上げたことを記憶いたしておるのであつて、決して目的をすり変えるとか、何とかそういう策略的なことを私はやつておるつもりはございませんから、そういう点はどうぞ御了承頂きたい。昨年のやり方に欠陥のあつたことは、地方と国と両方でやつたというところに非常に欠陷があつたと思いますので、今年は改めて国だけでやりたいと、こういうふうにいたしたのでございます。
  18. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は国会に長くおつて大変に見方意地が惡くなつたというような個人的な御批判でございますけれども、(笑声)これは大変に大臣認識不足だと思う。私は国会におつて、より教育を守るために熱意を示して来たつもりである。従つて見方が或いは大臣から御覧になれば意地が惡いよう御覧になれるかも知れませんが、私はやはり吉田政府としても、憲法を守る建前において義務教育兒童に対する無償配給という線はこれは当然継続されて行かなければならないものだと、こう考えておる。それで去年実施しましたところが、いろいろ欠陷が出たために、子供前途を祝うという方向行つたと言われますけれども、むしろそうではなくして、折角よい方向吉田政府としても憲法精神を守つて進められたのでありますから、やはりこの前途を祝うというような、何かどうも割り切れない名目でこういう法案が出されるということは非常におかしいのではないか。これは飽くまでも義務教育無償という憲法精神をここに生かして、できないものは逐次できるようにさせて行くということが私は文部大臣としての実に大事なことではないか。できないからといつて義務教育無償原理をここで外されて行つたのは私は非常にそれが疑問なんです。特に今義務教育国庫負担法から、これは寡少でありますが、そういつたものさえもが用意されて、而も文部省それ自体がその線に強く教育財政を確立しようとする努力をされているにかかわらず、これだけがぽつんと切り離されて、子供前途を祝うというようなことは、何かおかしいと思うのですが、一貫性がないと思うのですが、大臣はどうお考えになられますか。
  19. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は只今申上げた通りで、自分では一貫性を持つているつもりでございます。
  20. 相馬助治

    相馬助治君 昨年教科用図書給與に関する法律案が出た時に、一番大きな欠点として委員会において大体まとまつた意見として表明されたものは、今ちよつと大臣も触れられましたが、地方自治体財政負担をかける。即ち法的な義務拘束によつて地方の自治体では金を出さざるを得ない。こういうことは極めて迷惑である。こういうふうにいう地方自治体の言い分も誠にその通りである。こういう意味でそこに問題が焦点となつて現われていたと思うのです。私は当時教科用図書給與そのものに反対ではないけれども一体文部省はこういうことに力を注ぐよりも、もつと広汎に義務教育費国庫負担にするのだという努力をやるべきであつて、こういうふうな問題に金を使うということにはどうも賛成いたしかねる。ただお祝いとして子供にやるのだというような軽い気持ならば、これは問題は別だというよう意味のことを自分でも当時言つたように記憶いたしておりますが、今度その意味においては別個に全額国庫負担というふうな方面のものを考える。それから又お祝い程度のものをやるというふうに、こういうふうになつたのではないかというふうに推定されますが、今の日本の国家財政の形から言えば、やはり高田さんが触られているように、私はこういう法律案作つて、これに金を使うということにはどうも根本的には賛成いたしかねるのですが、大蔵省側予算折衝上においてどんな経過を経て来ておるか。即ち私が聞きたいことは、教科書は全部無償で各学年共義務教育費を国が負担するという意味合いにおいてやりたいのだが、予算関係上それができないから、こういうふうになつたという趣旨のものであるか、それとも全然問題を別にして、こういうふうに考えられて来たのか。その予算獲得上から見た今までの経緯を大臣から承わりたいと思うのです。  それから今突如としてこういう資料が配付されましたが、私はこれは常識的に言えば、この法律案と同時に頂いておきたかつたのです。そしてこれを見ておきたかつたのですが、併し今これを検討する余裕を持ちませんので、これについても一つ連関して重要な点があつたならば聞かせておいて頂きたいと思います。
  21. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私自身は昨年も御説明をいたしましたように、この教科書子供にやるというのには二つ意味を持つておる。一つは、教科書無償原理ということですけれども、多面において今の社会一つ欠点は、人間が、自分というものが社会の一員であるということの自覚が乏しいと思うのです。そういう意味で、子供前途を祝うと同時に、この子供ただの個人ではなくて、ただ親の私有物みたいなものではなくて、公共性を持つたものだということを、子供にも親にも自覚させるということが私は非常によいことだと思つておるのですけれども、そういう趣意は去年からすでにこの中に含んでおります。できることならば教科書令部ただでやるということができれば、それに越すことはございませんから、教科書無償原理ということも主張して参つたのですけれども、今年直ちに教科書を年々廻して行くということはできないよう事情になつて来ましたので、只今も申しますよう羊頭を掲げて狗肉を売るということではいけないから、むしろそのほうは省いて、あとの第二の点だけについてこれを法律を作つたわけでございます。その配付したものについては局長から御説明いたさせます。
  22. 田中義男

    政府委員田中義男君) 只今御配布申上げました資料につきましては、手遅いからお届けできませんでしたことをお詫び申上げます。内容について概要申上げますと、先ず学校の数でございますが、これは小学校、盲学校聾学校等につきまして……。
  23. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちよつと議事進行について。私は大臣にお聞きしたいと思うのですが、大臣は時間の関係がありますから、その説明あとで伺われませんか。
  24. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) そうですね。そういうことにいたします。
  25. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この法律案の一番私は重要なところは、先ほどからも触れられましたように、義務教育無償の推進の一環としての教科書給與ということに、政府のその対策に対する終止符を打つて、ここに恒久的な立法をしたというところに私は非常に重大な意義があると、こういうふうに私は考えます。その角度からお伺いをするわけでありますが、確かに昨年法律第四十九号を審議する場合に、先ほど大臣から繰返されたようなお言葉が確かにございました。その法律四十九号の第一條には「義務教育無償理想のより広範囲な実現への試みとして、」取りあえずこれをやるのだ、こういうような暫定的な二十六年度限りの立法であるが、このたびの法案は第一條に「国が毎年度新たに」云々と、こういうふうに法律目的を明記して教科書給與に関しては恒久的にこれで行くのだ、こういうふうに趣旨伺つて私は重大な意義を感じたのが、先ほどから大臣のお言葉から義務教育無償一環としての教科書給與というものはやめられたのだ。昨年までは、二年、三年と続けて行きたいと思つたが、どうも当分は国の財政からできないので、又二年、三年というようなものは全く考えることはやめたのだ、こういうふうに私はお言葉を承わつたわけでございますが、そうなんでございましようか。
  26. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 他方において義務教育国庫負担というようなことを今考えて行きますから、今暫く先になればどうか知らないが、今年、明年度予算というようなことでは、今はその教科書無償原理という建前からだんだん延ばして行くということができなくなつた、こういうことでございます。それならばこれを皆放棄してしまつたらいいかというとそうじやなくて、私が昨年から述べているよう趣意でこれをやるというようなことがよいのだ、而も地方負担をかけないで国だけでやることがよいことだ、そういう考えからこの法案立法したのであります。
  27. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 昨年度審議の過程においても問題になりましたし、先ほど局長の御報告にもありましたように、未だに昨年の実施状態調査がまとまつていないという、こういう実情から見ましても、昨年の法律第四十九号を実際に運営しました場合に、非常に困難な点があつたということは認められると思います。で予算の面からも、更には技術の面からも、この法案教科書給與するというその一点に関して進歩しているということはこれはもう率直に認めます。ただこの目的というところについては、意見になりますから討論のときに譲りますが、かなり私は問題があるよう考えます。相当の転換がなされている。そこで大臣只今申されましたように、義務教育国庫負担考えておればこの一、二年云々という言葉からも私は質問申上げたいのですが、大臣憲法第二十六條に言う義務教育無償、これを生かし具現して行くために、教育政策というものをどういうふうにお考えになつていらつしやいましようかということ、こういうことによつてこの憲法の第二十六條を具現して行くべく自分努力しているという大臣の御見解を承わりたい。なぜそういうことを承わるかと申しますと、この昨年のこの教科書提案があつたときには大臣のお言葉の中からは、非常に憲法第二十六條の義務教育無償を推進して行くその一つの足がかりとして、突破口として自分はやるのだというようなことを主にして述べられたわけなんですが、この提案の本日の言葉から言いますと、その線が薄くなつて義務教育無償一環であるという性格が非常に簿らいで、第一條の一行に書いてある点が非常にクローズ・アツプして来ているわけなんで、そしで私は先ほどお伺いしましたように、二十六條のこの精神を具現して行くために天野文相としては、どういう点を考えられているかということをお伺いしたい。
  28. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私のこの法案に対する気持というのは決して変つてはおりませんので、実は岩間さんから、少しばかりのことをやつたつてつまみ食いではないかというその言葉まで私は覚えておりますが、決してそうじやなくて、少くともこれによつて若い者の前途を祝い、公共的精神を養うのだ、今の社会に非常に欠けているものは公共的精神なんだということを力説したことは、私のよく覚えておることでございます。同時にこれは元来考えられたときに義務教育無償原理ということから考えられて来たのでありますからして、そういう線も私は決してこれを蔑ろにするという気持はなかつたのですけれども、むしろただ一年生だけにやるというような場合には、後の点に私は力点を置いてこれを述べたことは、若し当時の速記録でも御覧になればおわかり下さるごとと思う。少しでも私の考え方をずらしたわけでも何でもない。ただこれに対して矢嶋さんから義務教育無償原理にどう近ずこうかということなんですが、これはできるだけどういうことにおいても、ただ私の理想が実現しないのですけれども、給食ということを通じてでも、又貧乏なものには学用品をやるとか、できれば教科書等もやるとか、月謝のないことは勿論ですが、そういうようなどういう小さいことでも少しでもできることはやつて、そういうことによつて義務教育無償原理に近ずごう、これは併し理想であつて、全部をやつてしまうということはなかなかこれは私はできないけれども、そういうふうに近ずこうという考え方でございます。
  29. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣のお気持私はよくわかるのでございますが、それでありましたら、私はどうもこの第一條目的を昨年の法律第四十九号の目的と別に私は変える必要はなかつたのじやないかと思います。やはり昨年のように第一條義務教育無償理想をより広汎に云々、こういう表現でよかつたと思うのですが、そこを殊更変えられた点はどこにあるのかお伺いいたしたい。
  30. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) あれは、只今も申したように、それを置いておごうかという論も文部省内にあつたけれども、昨年でさえもこればかりやつて、何が無償原理に副うのだというような非難を非常に受けたから、只今申すように、あんまり立派なあれを掲げて、それに副わんというようなことは、自分がものを質実にやろうというやり方から言うと、少し大き過ぎはしないかということで創つたのです。初めは文部省内でもそれをやろうということは事務当局内にあつたのですが、私はむしろこの際はそういう謙遜な建前行つたほうがいいという考え方で削たのであります。
  31. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは僕は誤まれる謙遜であると思うわけですがね。昨年度半額補助という立場から、地方行政委員会としても地方財政立場から非常に質疑が集中されたわけですが、そそれが本年度全額になつているということは、先ほど私が申上げましたように、予算という面から、又実際実施するという技術の面から非常に進歩だと思う。昨年でさえ書かれたならば、今年書かれて大臣は、二年、三年と延びなかつたけれども諸君の要望の通りにかくのごとく全額にしたというように、ここで誇らしげになされてむしろいいのじやないかとさえ思うのに、変な謙遜をなさつて、こういうふうにされたということは、ちよつと理解に苦しむのですが……。もう一点お伺いいたしたいと思うのですが、これと、第一條をこう書かれたということと、それと私は関連ずけて、懸念される点は、あの予算書初等中等教育局のほうの「教科用図書編修及び改訂等に必要な経費」というところに、昨年一千二百七十万ばかりの予算に対して、本年度は約六百万多くなりまして、千八百万円の予算を組まれた。その予算書説明の中に、後段に、特に本年度は小、中の社会、算数、高等学校職業課程用教科書の一部を新編修云々というよう予算書に書かれてある。これがいわゆる大臣の曾つて発言された槙準教科書予算であるわけですれ。その標準教科書云々については曾つて大臣言葉もございましたが、そういう文部省で約六百万円からの予算を多くして、そういうものを、教科書一つ作る。それから教師並びに国民一般がやつぱり曾つて文部省というものを、非常にまあ権威があるわけなんですが、有難たがつて文部省言葉なり或いは文部省の出した教科書というものは、金科玉條的に受けるという段階に、昨年の法律と今年の法律をこういうふうに変えまして、兒童国民としての人格を深めることとする、その前途を祝う云々と、こういうふうに表わされていることと私は関連ずけて考えるときに、よほど注意しないと統制的な、或いは超国家主義的な動きへの私は一駒となりはしないか、こういうことを懸念するのでございますが、大臣には恐らくそういうおつもりは毛頭ないと私はその点信じますけれども、そういう点で法律の第一條目的を非常に謙遜されて変更されたということは、誤まれる謙遜であつて、これは当然昨年のよう表現になさるべきであつた、こう考えるわけでございます。先ほど私申上げました予算との関連性について大臣説明を承わりたいと思います。
  32. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) その教科書無償原理ということを除いたことは只今申したよう趣意でございます。これからだんだん二年、三年とやつて行けるという当てで去年はもつていましたのに、今年はできなくなつた、にもかかわらずこれが僅かに一年、二年の本を出してこれを教科書無償原理だということは、何か私らの気持ではちよつとぴつたりしないものがあるかという点で省いたということは只今申した通りであります。それから教科書編集の方針については、この前申しましたから繰返して申すことを避けます。
  33. 木村守江

    ○木村守江君 ちよつと、只今矢嶋君の質問に関連して、私も矢嶋君と同じような感じをさつきから持つていたのですが、やはりこの法律案目的、これは非常に大臣が譲遜された、そしてこのくらいの金では義務教育無償という精神を現わすことはできないというようなお話でありましたが、やはりこの法律の主眼点は、やはり憲法に謳つてある義務教育無償という線を、その責務を果して、そうして教育技術的、法文的な而も教育の効果を現わしたのが、この文章じやないかと考える点から、例えば少額であつてそれは義務教育無償という線には余りに大げさだと言われるかも知れませんが、やはりその線を、その憲法の義務を果しておるのだというところが根本の精神じやないかと思うのですが、もう一応……。
  34. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これは私は実際に子供を愛して、子供を本当に教育している人たちとこのことについて話合つたことがあります。そういう人たちは、私が子供を親の私有物でなくして、本当に子供社会公共の中の一員だという考えを、子供にも親にも持たせたいという、そういう意味子供前途を祝するために出すことに対して、本当に子供を愛しておる教育者たちは非常にいい、是非出してもらいたい、こういうことだつたのです。ですから皆さんのように国務のことを頭に置かれておれば、只今ような御発言は御尤もと思いますけれどもただ余りに少額のものをそう掲げることはどうかと思つて、私が省いたということはその通りでございます。別に目的をずらそうとか何とかいう考えは毛頭あるわけではございません。
  35. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私もこの問題に関連して疑問を持つておる。昨年度教科書給與については、義務教育無償理想を実現する目的を持つて、そういう立場から教科書給與がなされた。今年はそうでなしに国民としての自覚を深め、共に前途を祝うために教科書給與される。ところが大臣説明を聞いておると、別に考えが変つたわけではない、こういう説明なんです。ところが第一條目的はすつかり違うわけなんです。義務教育無償立場から教科書の給付ということが行われておらない、はつきりここに国民としての自覚前途を祝うために給與する、すつかり目的が違うわけなんです。大臣はそれは個人的に考えは変えておらないとお話になつても、この法律は明らかに私は目的が違うと思いますが、そういう意味から私はこの問題はもう少し明快に説明をして頂かないと、十分な理解ができないわけなんです。大体大臣説明を伺うと、義務教育無償立場から教科書給與するということは財政的に実現する見通しがない。そこでこれをはずすに至つた、こういう御説明がありました。そうするとここで私は考えが変つた、こういうふうに説明して頂かないと、考えは変らないのだ、こういうことであれば、どうも理解しがたいのであります。その点どうなんでありましようか。
  36. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 昨年私が説明したところによれば、そういう二つの点を持つていた、併し実現できないからして、第一の点はここで省いた、その限りにおいては変つたわけであります。変つたものを皆さんに出して御承認を得たいというわけであります。
  37. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうするとなぜ義務教育無償理想が実現できない事情になつたのか、去年はそういう見通しはあつたのだが、今年になつてそういう見通しを全く持つことができない事情になつたという、その事情を一応私は御説明を願いたいと思います。というのはこの問題は私は簡單な問題じやないと思います。憲法義務教育無償立場から、その実現のために努力よう、こういう大きな考えから出ておつたわけなんです。これを放棄せざるを得ない事情になつた、その事情というものは、十分説明して頂かないと納得できがたい。
  38. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 他にいろいろの必要があるということから、ここに教科書を全部これから義務教育教科書を全部無償にしてしまうということは、これは非常な金額を要することで到底できないと考えようになつたのです。或いはこの義務教育国庫負担法などによつて、将来そういう点に又見通しができることがあるかも知れませんけれども、差当つては今年の予算ではそれはできないから、その点を省いたわけであります。勿論併しそれだけの金額でも今矢嶋さんの言われるように、義務教育無償の原則に対する第一歩だといつても差支えないのですけれども、私はそれにしても余りに金額が少ないということと、見通しが足らないということで省いたわけであります。
  39. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の質問に大臣はお答えを願いたいと思います。昨年は義務教育無償理想の下に発足しておるわけなんです。それを今年は放棄されておるわけなんです。それにはいろいろな事情があるという御説明であつたのですが、詳しいことは要りませんけれども、なぜ義務教育無償理想を実現するという方針を放棄しなければならなくなつたかという事情を、大きな問題について御説明願いたいわけなんです。
  40. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは平和に関する費用とか、国として或いは賠償であるとか、いろいろここ費用が要るのです。それは去年でも見通しがないかというとそれはあるとも言えますけれども、当時大蔵大臣はこれはやれるだろうというお考えであるから私はそれに従つて来たのですが、今年は将来これをずつと教科書無償にしてしまうということは非常に困難だということであるから、それでこういう形にしたわけでございます。
  41. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうするとこの問題は主として財政的な理由によつて、昨年度の方針を堅持して行くことが困難になつた、而もその財政の理由というものは、いわゆる防衛費等のために起つて来ておるのだ、こういう説明であつた、そういう説明を私は十分初めから聞いていれば、何も質問するわけはなかつたのです。  その次に第一條の「兒童国民としての自覚を深める」ということが第一條で謳つてあります。これは教科書給與する大きな目的一つだろうと思います。もう一つは「その前途を祝う」私はこの前途を祝うということは非常に私結構なことだと思います。こういう温かい心持というものは非常に欲しいものだと思いますが、ここに「兒童国民としての自覚を深める」という点については若干疑念を持つておるわけなんです。俗な言葉で申しますと、物をくれてやつて、そうしてそれに対して何か国民自覚を喚起するのだ、こういうことが果してあり得るのかどうか疑問に思うわけなんです。又こういう考え方が正しいのかどうか。私は教育費というものは、それは国家も負担しているし、地方自治体負担している。又子供の親も負担しているわけです。教育というものは何も親だけの負担で行われているものでないと思う。学校の校舎を建てるにしたつて、教職員を雇うにしたつてこれは別に親が負担しているわけじやない。それはやはり国家社会の共同責任として、教育というものは私は推進されていると思うのですがね。ただ教科書だけをやつてそれによつて国民自覚を深めるのだ、更にこういう物をくれてやつてそういうことを期待するといいますか、そういうものを強要する、強要するという言葉は私はどうも面白くありませんが、そういうものをとにかく望むとこういう考え方ですね、どうも私には納得が行かないのですがね。その点もう少し御説明して頂きたいと思います。
  42. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はものをすなおに考えれば、何もそんなにむずかしい問題じやないと思うのです。ものを非常に私から言わせればですよ。強いて言うとそういう理窟も立つて来るかも知れませんが、ここに子供が入学する、そのときに成るほど考えてみれば義務教育というのは国の費用でやつていることですけれども、改めて入学を祝して、あなたがた本当によい子供になつてくれろという意味で、子供お祝いを出すということは私はやはりよいことではないか。それでは子供のすべてを親がやつておるのだから子供の誕生日にお前に一つ何か贈ろうなんということはばかばかしいことだ、そしてお前にしつかりした人になつてくれと親が言つてもそんなことはつまらん、子供は親にみんなかかつているのじやないか、改めて親が子供に贈物なんておかしいじやないかと言いますが、私はやはり子供が卒業して今度わきの学校に入つたから、入学競いに親が何かやるということはいいことじやないか。決してそれをやつて親の恩を着せようとかいうのではないのであつて、私はもつとものを何と言いますか。すなおにお考え頂きたい。自分らはそういう考えでやつているわけではない。
  43. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は文部大臣の今の言葉は腑に落ちないのですよ。私に対してすなおにものを考えろ、こういうことなんですね、これは私は了承しがたい、この言葉は……。それからその問題はまあ別にここに更に発展さす考えはありませんけれども、私は注意してもらいたいと考えます。私はそういうふうにすなおにものを考えてもらいたいということであれば、すなおにこの第一條を書いたら……。私もさつき言つたような入学兒童お祝いとしてやる、これはいいことだと私は言つている、そういうつもりなら、しつかり勉強して下さい、こう言うなら、そういうふうに書けば私はすなおごそれで十分結構だと思う。私が問題にしているのは、児童国民自覚を深めるという大きな目的がここに書いてある。それは丁度物をくれてやつて、お前は国民自覚を持てと強要しているような感じを私は受ける。そういう疑いを持つ。従つてこの点はどうも理解しにくい、こう言つているわけです。それは入学する子供教科書をやり、そう、してしつかり勉強しなさい、いい子になつて下さい、こういうことは私は決して惡いとは言わん。又その通りであつていいと思う。併しここに書いてある国民自覚を深めることができるのかどうかですね、物をくれてやつて……。そういうことを期待するという考え方それ自身が十分理解できないと私はこう言つているのです。その点について私は説明をして頂きたいと思う。
  44. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は自分はそういう気持でやつているわけでございます。表現がまずければ表現が惡いのであつて自分気持はそういう気持なんです。
  45. 岩間正男

    岩間正男君 只今荒木君からも出た問題お伺いしたいと思います。大体文相は憲法二十六條の義務教育無償の規定という精神をどういうふうにお読みになつているか。私たちはこれは当然果すべき国家の任務、子供もこれはむしろ受取るちやんとそういう権利を持つている、こういうふうに考える。ところがこの前の、昨年度教科書の出し方は、あれは義務教育の、大体今簡單にやるとしましても当面したものを計算したら七百分の一になつている。これは文部省資料で私は計算した。いろいろなものをやりたい、教科書とか、交通費とか、それからゴム靴、そういうものまで考えて七百分の一、七百分の一のものをやつて、そうしてこれで以て今言つたような大きな国民としての自覚を深める、こういうような大きな目的を謳つておるということは、これこそ私は羊頭を掲げで狗肉を売るものになると思う。大臣に先ずお伺いしたいのは、二十六條をどう解釈されておるかという問題です。この解釈の点は私は非常に重要だと思う。何だか今のお話だというと、すなお論まで行つたのであります。而も断じてこれはすなおとか何とかいうのは、成るほど文部省はすなおに聞いてもらつたほうが都合がいいかも知れないけれども、国策上、憲法精神から見ると、とんでもないすなおでないことを大臣説明されている、先ずそれからお伺いしたい。
  46. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 二十六條は、ただ法律の上からいえば授業料だけに規定してありますけれども、私はその精神は授業料だけでなしに、やはり給食のこととか、学校の用品とかいうことも、できればだんだん伸して行くほうが精神ではないかと思います。法律上の規定は、私の記憶しているところでは授業料のことだけです。
  47. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  48. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。
  49. 岩間正男

    岩間正男君 授業料だけですか、二十六條の解釈は……。これは大変な解釈の相違じやないか。
  50. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 教育基本法です。
  51. 岩間正男

    岩間正男君 私は憲法の二十六條をお聞きしている。
  52. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 憲法精神は今私が言つた通りです。それならば、先ほどから言つている通り憲法ならば、いろいろなことをすべてやるのが理想でございます。
  53. 岩間正男

    岩間正男君 私は憲法のこの精神がどうなるかということが、これはほかの荒木君や矢嶋君、高田君から質問されている点に関連して非常に重要だと思うのです。そういう点から考えますと、私はやはりこれは当然国家がその義務を負うのだ。そうして当然それは義務を負つて果すべき任務を持つているのだ。子供は受ける権利があるのだ。こういうふうに感じましたのでありますが、この点の解釈は如何でありますか。
  54. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それで結構でございます。
  55. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと非常に私はおかしくなると思うのです。何かこれはこれだけのものをなにして、而も大きな目的を出す。而もこういうものが突如として出た。この問題は非常に今の時局を考えまして、何か国民としての自覚を深めるというのですが、一体八歳くらいの、まだ実際は六歳です。日本の今度の暦法の改正によりまして六歳の子供が、こういうふうな教科書をもらつたということで国民としての自覚を深める、尤もその資料とする、資するというのですから、大きなものを期待していないとは考えるのでありますけれども、こういう大きな目的に沿うことができるのでしようか。それだけの能力があると考えるのですか。これは児童心理学的にお考えになりまして、文部大臣はどうお考えつておりますか、これは非常に重要な問題です。やはりこういう小さい時代からこういうよう一つの意識、観念というものを、いわば惡い言い方をしますと強要するような、強制するような形になる、こういうことはどうい、ものでしようか、児童心理学的にお答え願いたい。
  56. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はこういうことによつて資するというのですから、そういうふうな役に立つと同時に、親も子供ただ自分私有物ではなくして公共の員だということを考えることが自然にそれに資するということになると思うのです。
  57. 岩間正男

    岩間正男君 まあ資するということでありますけれども、まあ私も先はど申したのですが、そういうような大きな期待は無論望みませんけれども、実際法案に謳つているのは余りにもうこれはここに……。  それじやお聞きしますが、二年生の子供国民自覚を深めることにならないのですか。(笑声)昨年のこれはお約束では当然来年もお前たちはこれはもらえるのだ、三年になれば三年で又もらえる、六年までもらえるとこういうことでありますけれども、今年からこれは二年生はがたんともらえないのでありますが、こういう子供たちには国民自覚を深めることになりますかどうかお聞きしたいと思うのであります。
  58. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 去年の法案は一年だけにすると言つておるので、二年、三年は必ずやるということは言つておりません。一年に資すると書けば、二年には資せないというような論理は私は非常に論理が間違つていると思うのです。
  59. 岩間正男

    岩間正男君 それはこうなりますと、そうおつしやつていますけれども、毎年出すのだということはこの法案には成るほど謳つていないけれども大臣説明された重要な骨子だつたのですから、これは一つの政策として出されたものであります。その政策が変更された、そうしてそれが破綻から来まして二年の生徒はもらえない。そうすればこの子供たちに対しては非常に私は国民の自党を深める反対な、国家というものはこれは何だ、憲法にはちやんと義務教育無償が語つてありながら、情勢が変つて今度は出せないということになつた。これは天野文部大臣に期待しておつた子供たちは非常に大きな失望を受けた。こういう点から何かこの国の政策の変更ということが兒童心理に対して大きな影響を與えるということについては、文相はこれは子供の心理まで立入つて一つ考えになりましたかどうか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  60. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 昨年の説明でも、必ず来年はやるのだという説明は私はしておらないと思つております。一年だけであれは出した法律でございます。
  61. 岩間正男

    岩間正男君 それはそうでございましよう天野文相も政治家ですから必ずやるのだというようなことは、これはお述べにならないと思いますけれども、併しそれを努力して、そうしてそれを、その道を開くのだということはかねがね文相が言つておられまして、又そういうふうに地方の親や子供考えておつたとそういうふうに思うのであります。  まあこの点はそれに措きまして、その次にお聞きしたいのですが、結局この予算の問題で池田蔵相はこれはできるだろう、ずつと先までできるだろうというような去年お話だつたが、今年は変えられた、できなくなつたということでこういうような措置をとられたのでありまして、大体このことは義務教育全部やるというと、どれくらい要るというような見通しでありますか、全体の額……。
  62. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 局長からお答えいたさせます。
  63. 田中義男

    政府委員田中義男君) 全教科に亘りまして而も義務教育を一年から六年までを全部これを国庫で負担をすることになりますというと、六カ年を全科目について公立だけいたしまして約六十七億でございます。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 全額ですね。
  65. 田中義男

    政府委員田中義男君) はい。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 これは二年までやりますと、二年生ですから大体倍くらいの五億程度でございますか、これは一応折衝されたでございましようか。蔵相とはこういう点で本年度二年までやるという点ですね、これは予算の編成過程において約七億になりますね、七億から七億五千万くらいになるわけですね、一年生で三億六千万ですが、これの大体二倍と見ますと大体八億程度、これは折衝されたでしようか。
  67. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 折衝したけれどもそれがよく行かなくて、二年まで半額でやるよりも、むしろ一年を全額でやつたほうがかえつて技術的にいいのではないかといつて一年だけにしたわけであります。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 各委員の質問によつて大臣考えられておる点は明確になつたと思いますが私ここで重ねてお伺いいたしたい点は、曾つて大臣に対して今度の予算関連しての戰力対策について即ち憲法第九條に関しての問題をお伺いいたしたときに、大臣自分の所管事項でないと言つて答弁して頂けなかつたわけでございます。この予算委員会審議におきましても、憲法第九條との関連性においては随分と論じられたわけでありますが、憲法第九條とそれから憲法第二十六條の義務教育無償というものはこれは全く表現こそ異なれ内容的に一つものであつて文化国家、平和国家の再建を指向する我が国としては、当然迫るべき途と私は考えるわけであります。そこで質問に入るわけでありますが、先般国立学校の設置法の一部改正におきまして、私大臣に御質問申上げたときに、大臣自分は自由党内閣に入つている者であるから、自由党の意向に従うのは当然である、それが非常に、その次の言葉が意外に感じたわけでありますが、害がなければ自分はこれに従う、害があるものは断じて受け付けない、こういう御発言であつたのであります。私は害があれば排除する、害がなければ従つて行く、それでは少し消極過ぎるのではないか、こういうような私は感じを持つておるわけです。それで更にこの法案がここに出て来たわけでありますが、如何にこれを説明ようとも義務教育無償只今局長のお話によりますと、約六十七億を小学校で要するようでありますが、この六十七億というものも見ようによつては大きい金であるし、更に或いは見方によつては我が国の今の予算規模から言つたら小さな数字とも言えると思いますが、憲法二十六條の精神を活かして行くという立場からは、如何説明ようともこの法案が退却する意味においての或る終止符を打つたものであるということは、先ほどの私の質問でも申上げた通り間違いないと私は考えるわけであります。そこで大臣にお伺いいたしたい点は、これもやつぱり自由党の意向できまつたものでこれは別に害がないと、こういうふうにお考えになつたのですか。そういうことにおいて大臣はこれを呑まれて提案されているのか私はそれをお聞きいたします。
  69. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私が申したのは、自分は自由党内閣の一員として自由党の政策としてきまつたことはそれに従つて行くのが当然だとこう言つたのであります。けれどもそれがどうしても自分の了承できんことであるならそれは従うことができない、こういうことを申したので、極めて当り前のことと私は信じております。これは私の独自の考えでやつたことであつて、自由党と相談したことではございません。
  70. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この程度では了承できないので、大臣がしようとされておる、大臣が席を置かれておる内閣、與党であるところの自由党にこの程度では了承できないと言つて強硬に対処されたというようなことはないのでありますか。大臣はこれだけでそういう交渉を持つことなく、平和條約、安保條約発効後において我が国のこの財政状態からいつて、ここらあたりでいたし方ないという立場から、昨年の目的の第一條を変えられた、大きな転換をせざるを得なかつたことを大臣はお一人でもつておきめになつて、別にそれに不満で、自由党に対して強力なる政策の転換に交渉なり努力されたことはないのですか。少し悲し過ぎると思うのです。
  71. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 余り立ち入つたことを御質問のように思うのですが、私どもはこれは何も大した転換とも何とも思つていないのです。現に文部省で初め書いたのは、義務教育無償原理を促進しという言辞があつたのですけれども、それをなぜ除いたかということは、先ほど申した通りなんです。それは私どもは勿論賛成なことなんですけれども、去年も岩間さんの、これはつまみ食いだという批判を受けたぐらいなんですから、又今年こればかりのことではなおそういう批判を受ける虜れがあるかと思つて、そういうことでこれを除いたということは先ほど申した通りです。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 長くなりますからこれで終りますけれども大臣さすが近頃お上手になつて岩間君の発言を盛んに運用されおるようですが、やはり私はさつき荒木君の言われたよう変つていないというのはおかしいと思うのですけれどもね。最初の案に義務教育無償理想の実現に云々という言葉があつたなら、そういうふうに語つておいたほうが、次の段階に進んで行くのに非常に閣内においても大臣が主張されて行くのに都合がいいのじやないか。そういう転換した形でこの第一條の恒久的な終止符を打つた一項になつておると思うのですけれどもね。そういうようにお考えになりませんか。これで終りたいと思いますが……。
  73. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) そこはどうも私の政治感覚が足らないのでしよう。私はどうも何にもこういうことが、そうえらく問題になると実は思わなかつたのです。それなら事務当局の書いた通り書いておけばよかつたのです。が、私は先はども申した通り、こればかりの金で何を大きいこと言うかと言われるのがつらいから、それで創つたのです。
  74. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは大臣に対する総括質問は他にございませんか。……なければ一つ局長に対しての総括質問をお願いいたします。ないようですから逐條審議に入ることにしてもらいたいと思います。
  75. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは僕は、やつぱり第一條を修正したほうがいいと思うのです。だからちよつと懇談会を開いて下さい。
  76. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは速記を止めて。    〔速記中止
  77. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。  それでは午後一時半まで休憩いたします。    午後零時十分休憩    —————・—————    午後二時二十七分開会
  78. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 引続いて文部委員会を再開します。初めに一つ私から大臣にお尋ねしたいと思いますが、午前中の大臣及び政府説明委員の話を総合的に聞いて私はかように理解をしておるのですが、その理解が当つておるかどうか一つ御返答願いたい。教科書無償給與ということはこれは非常な大切な原則であつて、これは今回出る義務教育費国庫負担というような大きな構想の下に文部省が働いておるので、その点の上にはこの無償給與の線と力強く取入れよう従つて考え変つておるのじやないが、これはそれに連る一環法律であるから暫くこの上に隠してあるけれども、除いてあるけれども、その無償の原則を無視し、若しくは変更してやつておるのじやないというようなふうに理解をして差支えないかどうか。一つお示し願いたい。
  79. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私ども趣意は今委員長のおつしやつた通りでございます。
  80. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは午前中に引続いてお伺いいたしますが、只今委員長の発言に対しまして、大臣、その通りでございますという御答弁でございますが、教育費国庫負担法律はいつ提案される予定でございますか。
  81. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これははつきりいつということは言えませんけれども、今国会には是非実現したいという考えでございます。
  82. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではその点はそこでとどめまして、大臣にお伺いいたしたい点は、先ほど委員長から昨年の法律第四十九号の法律案提案趣旨変つていないということを大臣只今再確認されたわけです。と同時に午前中の質疑におきましては、昨年法律第四十九号が国会を通過した当時の、同僚岩間君の討論の言葉を引用されて、考え変つていないのだが、まあこの程度で義務教育無償という言葉を使うのはおこがましいので遠慮したのだと、こういうふうに答弁されておりますが、私がここでお伺いしたい点は、昨年法律第四十九号を提案した当時の大臣提案理由と、本年度この法案提案したときの大臣提案理由、これを掲げたときの気持に相違はないかどうかということを改めてお伺いいたした
  83. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 別に相違はありません。
  84. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではお伺いいたしますが、私は昨年の提案理由と、本年度のこの法案提案理由には相当食い違いができていると思います。で、具体的に挙げなければおわかりにならないかと思いますので挙げますが、昨年の大臣提案理由では、義務教育国民負担なしに行われるよう義務教育無償とするという理由が、憲法の第二十六條の第二項ではつきりされているということを先ず大きく謳いまして、そして次に我々といたしましては、常にこの理由のより広範囲な実現に努めるべき責務を負つているわけであります。現在は御承知のように国立及び公立学校義務教育につきましては、授業料を徴收しないことになつているのでありますが、義務教育無償とは、これを越えて更に拡大されなければならないことは言うまでもありません。この意味で明年度におきましては、義務教育無償の範囲を拡大する一つの試みとして云々と、こういうよう提案理由に、義務教育無償一環としてやるのだということをはつきり謳われている。そうしてずつと最後のほうに行きまして、公共心涵養という見地からいたしましても、も、ですよ、極めて有意義なことと考えるのであります。こういうふうに昨年の法律第四十九号の提案理由というものは、主従関係がはつきりいたしておるわけであります。ところが変つていないという大臣のこのたびの法律案提案理由を拜見いたしますというと、教育費は負担を軽くするとか、或いは憲法二十六條の二項に言う義務教育無償とか、そういう言葉は全く陰を潜めまして、そしてこういうことを書かれてあります。本年度から特にですよ、特に兒童国家公共心涵養を図るために、新入学児童に対して国語及び算数の教科用図書給與する制度は確立されたのであります。こういうふうに書かれてある。昨年の提案……、本年度でありますが、この四十九号の提案理由と全く矛盾することをこの提案理由には書かれている。而もこれの下に今度の法案提案して而もこれを恒久的制度として存続するために提案したのだと、こういうふうに提案理由にも書かれているわけですか、これを通して考えますときに、大臣変つていないと言われますけれども、私はその点どうしても了承できないのですが、こういう速記をお聞きになつてどういうふうにお感じになられますか、まあ一応それを承わりたい。
  85. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 今年は去年と事情変つて来ていることですし、片方において義務教育国庫負担法というような大きな問題を控えて、そちらにおいて義務教育無償原理というようなことは、これは勿論憲法による教育の根本原理なんですから、そういうことに努力すると同時に、この教科書子供にやるということも勿論義務教育無償原理に基いていることでありますが、午前も申したように、それを表に出すにしては余りに貧弱だという虞れもありますから、それで昨年も申した第二の点をここへ出して来たわけであります。エンフアサイズするところに幾らかの相違はあつても、矛盾ということはその間全然ないと私は理解いたしております。
  86. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 予盾しないと大臣は言われます。この点明確にしなくちやならんと思うのですが、この法律第四十九号の提案理由を今度は全くこれは取違えた書き方をしております。本年度から特別の児童国家公共心涵養を図るためにこういうことをやつたと書かれておる。ところが法律四十九号の提案理由の当時を見ますと、さつき私が申した通りに書いてあるんですね、だからこの四十九号を提案した当時と、その法律四十九号の今の解釈は大臣は非常にその変えて解釈しているわけですね、それはどういうわけでありますかというわけです。その変えた解釈の下に、新らしくここに法律案を第一條目的で出されて来ておる。これはです、私は変つて来ていると言わざるを得ないと思うのですがね。どうも了解できない。
  87. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 今言いましたように、この片方に国庫負担法というのを出しておりますから、それで今度のこの提案は去年も持つていた二つの理由の中の一つをここに主として掲げましたから、それでこの法律は新らしく出すという趣意を書いたのであつて、その趣意憲法に言う義務教育無償原理に基くことは当然であつて、私は勿論矛盾ということは決してない。ただ強調するところが他の事情のために違つておる、こう考えております。
  88. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣は遠慮ということを申されますけれども、午前中私が大臣にお伺いしたときに義務教育は、或いは貧困児童への学資の補助とか、具体的な育英会の拡充とか、給食の問題、教科書の問題、こういうもので総合的に義務教育無償の線を推進して行きたい、こういう方策を持つておられるという御答弁があつたわけですが、昨年と変つていないとすれば、矛盾しないとすれば、この法案も僅か四億足らずの金ではありますけれども、やはり義務教育無償一環に間違いなければ、殊更に私は第一條目的を変える必要はない。そういうほうはむしろ遠慮すべき……遠慮するということは当らないと思いますが……。そうでなくてはつきりと本年度出された法律案も第四十九号の第一條目的ように、義務教育無償云々というように私は書かれて然るべきである。書かれないのを見ると、何かそこに基本的な考え方が変られているのではないかというように感じられてならないわけですが、これをそういうふうに訂正される意思はございませんか、大臣気持がそうだとすれば……。
  89. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は義務教育無償原理にこれが基いているということはこれでも明らかではないか、とにかく無償で以て一年生のをやるのですから、他方において義務教育国庫負担というようなことをやつているのですから、このままでもそういうふうにして了解して頂けるのではないかと思つております。
  90. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私が今お伺いしたい焦点は、大臣が御遠慮したという点がどうしても納得できないのでお伺いしているわけです。と申しますのは、昨年は公立の小学校だけだつたのですよ。それを今度そのときの提案理由に、それでは足りないからもう少しこれを拡大しなければならないということを提案理由に大臣は述べられている。本年度はそれを国立から私立へと拡大した、これはまさしく昨年大臣提案理由にあるのを私は実現されたと思うのです。それを遠慮して第一條目的をこういうふうに書き変えられたということはどうも辻棲が合わないと思うのですが……。
  91. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は他方において義務教育国庫負担法等によつてはつきりとそういう線が出て来るから、必ずしもここにそれを謳わなくてもいいのではないか、これを謳うということも勿論今おつしやる通りちつとも差支えないことだが、何かやはり金額も小さいし、それにそういうことを掲げることがどうかというそういう顧慮からそれを省いたのです。併し他にそういうことを述べることがないならとにかく、他に義務教育国庫負担法というものを提出しておりますから、それでよいと自分考えたのであつて、少しもその間矛盾とかそういう点はないと私は考えております。
  92. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 吉田総理はまあ基本的な態度として仮定の問題については論じもしなければ考慮もされないというような態度を常に堅持されておるのですが、天野文部大臣、ここに法律案提案されるについて義務教育負担法という仮定の下にその目的を掲げたということを明言されたのですが、それを裏返しますと、大臣は異常の決意を持つてこの教育費国庫負担法を国会に提出するところの決意と用意があるものと私は答弁から了承するのですが、間違いございませんか。
  93. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 是非この国会に実現したいと考えております。
  94. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一点、ちよつと小さくなりますが、お伺いする点は、昨年は公共だけでありました。併しながら特殊教育であるところの盲聾については、一般のと切離して国語、算数以外にその他の教科書まで具体的に殆んどの教科書無償で扱われて行くという御説明があつたわけでございますがこのたびはそういう区別をなくして、盲聾学校に対しても同様に算数と国語だけとこういうふうに変られたのは何か理由があるのでございますか、それを承わりたいと思います。
  95. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは局長から答えて頂きましよう
  96. 田中義男

    政府委員田中義男君) 特別な理由はございません。
  97. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 他の部面は割愛されたようなのですが、どういう理由でその点を下げたのですか。昨年の提案理由の説明では盲聾学校というものは特殊教育で、非常に気の毒な人で、数は僅かであるからこの予算にも大した影響を及ぼすことでないから区別しまして、実際の運用面では殆んど全教科書無償で與えるのだというこういう御説明を承わつてどもは成るほど御尤もだと、こういうふうに賛意を表したわけであります。昨年そういう御説明があつて、本年度それを落されてあるのは、特別の理由がないというのは、どうも理解できないのですが、重ねて御答弁を願います。
  98. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 今年は全額見るという点でございまして、公私立を全部含んだ全額を見るということでありまして、すべて同じように扱うべきだという議論がありましたので、一応去年よりは冊数が少くなつたことは事実であります。
  99. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それじや二点お伺いしますが、教科用図書給與に対しては、当初文部省は九億一千万円の概算要求をして、まあ今度最終的には三億六千四百万円に落着いたわけですが、その差異がどのくらいであるか。一体全額の補助、冊数を減らすと言いますが、昨年皆さんがたの特殊学校に対する教科書給與のあの方針から言えば、これは他の面が全額補助になつて予算的には大したものじやないと思いますが、どの程度予算の差異があるのか。どうも落した理由が昨年の説明等想起した場合に、どうもピンと来ないのですが……。
  100. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 金額の上では確かにお話のように非常な額に上つておるわけではございませんでしようが、ただ方針としてすべての子供に国語、算数を入学競いという意味でやるならば、それに差等をつけるべきではないという強い意見もありましたので、一応全部のものに同様な取扱をしたわけであります。
  101. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこにはつきりと出て来るでしよう。昨年と今年と変つているとかいないとか言つても、今のあなたの説明がすぐ出て来るでしようお祝いという言葉が出て来るでしよう。それは昨年の、昨年と言つても本年ですが、四十九号の目的と第一條目的とははつきり違つて来ておると思う。それを今あなた丁度証明するがごとくお競いの形……、昨年の提案ではこれは義務教育無償一環である、全部を一遍に義務教育無償ということはできない。ところが特殊学校は非常に気の毒であり、数も少いから、せめてこれだけでも一歩でも先に推進さしたい、こういう気持で普通学校と特殊学校を区別して余計持つて行つた。それで今日の説明では、どうしてそれを元に返して同じようにしてあるかということについては、お祝い意味である、こういうことになつてはつきりと第一條目的というものは変つて来ておると思うのです。それを、変つて来ておるが、別途のほうで云々というふうに御説明があれば私も了承できるのですが、どこまでも変つていない、こういうように御説明になられると、私どうもピンと来ないから重ねてお伺いしておるわけなんです。
  102. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) この点は、今度国立学校と私立学校も含めましたし、それから全額にいたしました点が昨年とは変つております。只今大臣から御説明申しましたように、義務教育費国庫負担法のほうでこの無償理想の実現に努力したい、かよう考えておりますので、その点を御了承願いたいと思います。
  103. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は国立に私立が加わつておるのが変つたとか、そういうことをお聞きしておるわけではありませんが、そのほうはもう追及いたしません。それではここで一つお伺いいたしますが、義務教育費国庫負担法が出るのでこういうふうにしてある、目的をここに書替える、こういうのですから、それじや義務教育費国庫負担法が成立しない場合にはどういうことを予想されておるのか、この法律案を出されるに当つて一つの仮定の下に、予想の下に出されておるわけですね、そういう法律が成立するということも考えられるのでそれには懸命に努力するということは大臣が決意を表明されたようでございました。それではそれが成立しない、そういう場合も共に予想されなくちやならんと思うのですが、その場合にはどうするのでありますか。
  104. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) こういうのです。今度出ましたのにも、義務教育無償原理ということが根底にあるということは、これは明らかなことでございますが、併し繰返して述べたような理由でそれをば表面に出さないで、それをエンフアサイズと申しますか、そういう点は去年述べた第二の点を表に出しておる。そういう点が違つておるけれども義務教育無償原理というものを我々が何も軽視しておるわけでもなんでもないので、そういうことは義務教育費国庫負担法によつてもそういう点については努力をする考えである、こういうのでございます。
  105. 高田なほ子

    高田なほ子君 義務教育費国庫負担法の中で教科書無償給與は、実現させるというような内藤さんからのお話もあるし、大臣もそういつたような御自信を述べておられるようでありますが、先ほど荒木委員からの質問に対して、当初の義務教育無償の線、それを守る精神は何ら変つておらないけれども、非常に金額が少いから万止むを得ず、附帶的な目的を従来の目的にして出してあるのだ、然らばなぜそういうしふうにしなければならなかつたのか、その原因を質されたときに、文相は、明確に平和條約発効に関する諸費並びに賠償費、いわゆる再軍備のための費用が非常に殖えて来るためにこういう線が出し得なかつたという理由を明確にされたわけであります。そういたしますと、この理由は、私は非常に重大な理由であると思うし、今後も更にこういつた方面に関する費用が増額されるという見通しのときに、如何に文相並びに担当の内藤課長が、義務教育費国庫負担法の中において、昭和二十六年度に出されました学童に対する教科書無償給與の線を如何に固持しようとしても、予算的にはこれはでき得ないのではないかという疑問を持つわけであります。そういたしますと、今度出ますこの教科用図書給與法律案というのは、これは暫定法案ではない、一つの恒久法案になるわけであります。そういたしますと予算の面から言つても、義務教育費国庫負担法の中に教科書無償給與ということができなくなるとすれば、ほぼ恒久的にこの子供の入学を祝うというものになつて来ると思う。おかしなことになるのじやないですか。
  106. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これは問題の焦点は、今度出した法案義務教育無償原理という原則をまるで考えておらないのではないかという、そこにあるのじやございませんか、問題の焦点が……。それに対して私はそれはあるのだけれども、併し他にもそういうことを考えることもあるから、ここに表面には出さないけれども背後にはそれは横たわつていることだ、こういう問題の回答をしているのでございましよう高田さんのお出しになつたのは、これは別の問題になると思う。それと関連はするけれども、先ず第一に御了承頂きたいことは、問題はこの法案ですが、この法案義務教育無償という原理は根底に持つているけれども、併し金額等も少いし、金額が余り少いので、そういう点を表面には出さないが根底には持つている、こういうことで御了承頂きたいと思います。
  107. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちよつとよくないのですが、どうもこれはやはり先ほど委員長が明確にされたテーマですね、やはり義務教育費国庫負担法とからんで、私は明確にされたと思うのです。これを別個に切離したのじやないと思うのです。大臣はこれを別個に切離したはうが御都合がいいからそうおつしやるのかも知れませんけれども、私がどうしても心配に堪えないということは、若し仮にこれが百歩下つて恒久法になつた場合に、お祝いをすると、子供前途を祝うということが非常に主にとられて参りますと、教育そのものは、国家の義務においてやるという、あの憲法二十六條の精神が非常にぼかされて来るということを私は心配しておる。これは非常に繰返して申上げておるようでありますけれども、決してお祝いをするというようなやや恩恵的な傾向を持つ精神ではなくして、飽くまでもやはり義務教育の国家の保障という線だけは堅持しなければならない。併し今財源的にどうしてもこれはできないから義務教育費国庫負担法の中においてそれは実現するとして、止むを得ずお祝いをするのだという程度で今置くのだというのですけれども、これは恒久的なものですから、恒久的なものが、義務教育費国庫負担法の中で保障されないときに、永久にこういう精神で貫かれて行くということに対する非常な危惧を私は持つている。そういう危惧を大臣はお持ちになつておらないのですか。
  108. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) どうも私の説明が不十分なんでしようか。私は今出しておるこの法案は專ら子供公共心を養うことに基いて子供前途を祝福するということが主になつておるけれども、併し背後には勿論義務教育無償原理というものがあつて、それと矛盾することは一つもないんだ。他方において、又私たちは、義務教育費国庫負担法というものによつてますます義務教育無償原理を促進して行きたい、こういう努力を他方においては考えておるというので、私自身は何もそこに矛盾とか、そういうことはないと思つております。
  109. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 高田委員のお聞きしている点は、私聞こうとしておるところとは同じだろうと思うのですが、どうもその点にはまらないんですがね。と申しますのは、確かに義務教育無償というものは基本に原理はある。そしてその上に云々という大臣の感情、気持というのはわかるのです。わかるんですが、やはり大臣提案理由になつたこの活字、それから法律案の第一條になつているところの活字が問題なんでございましてね、その点でお伺いしますが、昭和二十六年度実施されておる法律第四十九号ですね、これは憲法第二十六條の後段第二項、それから教基本法のね、第三條「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」この国及び地方公共団体は、やはり義務教育について責任を持たにやならないという、この精神からね、ああいうのが出て来ていると私は思うんですがね。大体教育関係法律というのは憲法から教育基本法を経て、それからずつとあらゆる教育関係法律が出て来ていると思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)で、その点でこの二十六年度実施されておる法律第四十九号の出所というのが、憲法教育基本法から考えた場合にはつきりするんですが、今度の法案を見ますとね、この下には、大臣は、憲法第二十六條の後段のなには、嚴としてと言われますけれども、はつきりは活字には現われていないわけですね。そして更に、自己の 国民としての自覚を深めるとか、或いは前途を祝うというのはね、教育基本法のどこに該当するんだろうかということを感じますとね、何かこの法律は、今提案された法律は、大臣のプライベートの、何か入学者に対するお祝いといつたような感じがしてならないわけなんです。そこをどういうふうにお考えになりますか。
  110. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 自分趣意はですね、ほぼ説明いたしたように思うんですが、教育基本法について、もともと子供を本当によい子供教育ようという趣意のものだと思うんです。そういう趣意に則つて子供の前漁を祝福するということも私はよいのではないか。子供を励まして行くというのでよいのではないか、けれども勿論そのたびにこれを無償で配付したためにですね、義務教育無償原理というものに副うておるということは事実だと思うんです。そういう二つ意味といいましようか、根底に義務教育無償原理を持つて而も子供の入学を祝して行くということは、これは何も矛盾ではないと私は考えております。
  111. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちよつと連関してお伺いしますが、義務教育原理というのはどこまでもあるということを大臣は主張されますが、そうなりますと、早急に行がないからという言葉大臣から午前中発言されておりますけれども、そうなりますというと、生活保護法の適用を受けておる生徒、兒童諸君に全部の教科書ですね、そういうものを給與するというようなことは、この法律を立案する場合にお考えになつたことはございませんか。
  112. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 生活保護法の適用を受けております者は、御承知の通り生活保護法の教育扶助のほうで全額認めることになつております。
  113. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 全部なつておらんのでしよう
  114. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 今後保護法の適用を受ける限りにおいては全部です。ですから約二十一億ほど生活保護法の中に組入れられております。
  115. 木村守江

    ○木村守江君 私は午前中において矢嶋君と同じような非常な疑点を持つたのですが、よく考えて見ますと、教育に関するあらゆる法律は、これは教育基本法に則らない教育に関する法律案はないと思うのです。又教育基本法そのものもこれは憲法則つて作られたものであつて、これは教育は、教育に関するすべての法律憲法教育基本法との精神則つて行われるものだというよう考え方からいたしますと、必ずしもこの教育憲法教育基本法との下に行われる教育に関する法律が、憲法の謳つたような、教育基本法の誰つたよう精神言葉としては現わさなければならないのだというよう考え方は、或いは間違つているんじやないか、少くとも間違つていなくとも、重複するよう考え方ではないか、そういうようなところに盛られていないよう言葉をここで盛つたのがこの第一條じやないかというよう考えを持たれる。私は飽くまでもこれはこの一條精神憲法の第二十六條並びに教育基本法の精神則つてこの法律を施行するという点からいつて、これは義務教育無償という精神の上に立つた法律だと解釈すべきじやないかと思います。
  116. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 大臣ちよつと私はお尋ねしたい。先ほどから私がお尋ねした点においてお話になつておると思う。ただ先ほどからの問答の間にはつきりしにくい点があつたと思いますのは、若しもそういうふうに先ほど私が理解したようにお示しになつておると思いますが、それであれば提案理由の上に、ここであなたがあれを御敷衍なされまして、もとよりこれは言うまでもなく教育基本法の精神則つておるものであるということを敷衍をいたしまして、その意図を御敷衍下さつたら非常にはつきりするかと思うんです。先ほどの問題でここの提案理由に御一致があつた点、その、教科書無償配給の精神則つておるということは言うまでもないのであるということを、この提案理由の上に一つあなたが御敷衍なさる意思があるかないか。
  117. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) そういう意思は十分ございます。
  118. 岩間正男

    岩間正男君 只今の問題は法案を提出して都合が惡くなつたからそれを変える、これは国会を冒涜するものですよ。政府がこの提案理由を変えるという、助け舟を出すというような、そういうようなことは、これは見識に関します。私は絶対反対。せいぜいこれだけのものを提案して来る。提案理由を変える。今度はこういうことをやる。そういうもので私は救われるものではない。私はお聞きしますけれども、これは先ず確かめておきたい一点です。第一この点ははつきりするでしようね。とにかく法案によつてこれは論じなくちやならないということは先ほど大臣が言われました。私は飽くまでそうだと思います。そして木村君の何か説明を聞きますと、考え直して最初非常に純真で率直でよかつたと思いますが、どうも惡く考え直したようだ、そこで大体今のよう前途を祝う、国民自覚を深めるためにこういう形で出すということは、私はそれは義務教育無償精神から言うと随分食い違いがある。この点はやはりはつきりしておいてもらいたい。で、この点は大臣はもう一回、これは矢嶋君から同じようなことを申されたのでありますけれども、この点を一つ。もう一つは実際こういうところに落ちて行つたの財政的な問題でしよう、実際問題としてですね。ところでどう思つていられるかどうかわからんけれども法案化できるか、法案の裏付であるところの予算化ができるか、このことのためにはつきりここに落ちて行く、この点はもう一度、先ほどからの御答弁で私はほぼ明らかだと思いますけれども、なお念のために伺つておきます。先ず第一点はどういう意味ですか。
  119. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは義務教育無償原理の原則を守つておるので、その証拠として昨年度そういう二つの意図がそこに盛られても誰もそれを矛盾していると言われた人がないので明らかだと思います。第二の点はそうですね、これは非常に計画が小さいから、それで先ほどから申しておるように、原則はそうなんですけれども、それをここに出すことは何となく大きく言い過ぎるというような非難があつては困るから、それで出さなかつたこういうことです。
  120. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも疑義が解けないのですが、それじやお伺いいたしますが、その無償精神はこれは変らないと、これは明確にされたと思うのですが、要は財源的な問題が主になつてこういうふうに表現の方法が変つて来た、そうですね。そうすると、これは内藤さんに私はとくと事務的な点でありますからお答え願いたいのですが、そうすると義務教育国庫負担法の中で、この学童の教科書無償給與に対する経過、並びにその予算措置は果してとれるかどうか、それを先ず私が伺いたい。どうなんですか。
  121. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) この法案につきましては、いずれ詳細に御説明する機会があると思いますが、只今のところでは教員の給與費と学校の維持運営費と建物の建築費の減価償却費、こういうものを算定基準の中で明らかにした。で、教科書とか学用品、給食等の問題は学校の維持運営費の中に入り得る性質のものである。従つて現在PTAの寄附金を解消する程度に努めますが、将来これを必ず枠を拡げるようにいたしたい。その枠を拡げ、或いはPTAの寄附金を解消する程度ですと、大体百億ございますので、これは給與に対して三五%程度保障いたしますとPTAの寄附金を解消できると、かよう考えておりますが、更に教科書、学用品、給食費等を殖やしますと百数十億に上りますが、一挙には参りかねると思いますが、徐々に実現できるのではなかろうか。例えば給食の場合でも、今食糧管理特別会計のほうに二十五億行つておりますが、そういうものをこちらのほうに移して来る、そうしてその実現に努力したいと、かようにまあお考えておるのであります。ですから給與費に対する維持費の割合を考慮して行く、国と地方で見て行くというような構想を持つておるのであります。
  122. 高田なほ子

    高田なほ子君 大変に明るい結構な見通しでありますが、この維持運営費の中で三五%のこの予算を取つて学童に教科書無償を実現させて行く、そういうのであれば、なお更そういう明るい見通しが目の先にぶら下つているのに、なぜこんな前途を祝うなんというようなことを固守しなければならないか、どうしても私はわからない。而もこのほうにおいては恒久的なものでしよう。そんな見通しが、三五%というような見通し、而も維持運営費の中にそういうことが計画されておるというのであれば、なぜこれを暫定法案としなかつたか。そんな見通しがあるならこれははつきり前途を祝うためという名前でも何でもいいのですから、それは暫定法案であるならば、私らは又考えようもある。そういう精神に副つての暫定法案ならば……名目というようなものについては第二義的に考える。これは明らかに恒久法案です。そこらの一体矛盾を私はとても自分で解明できない。あなたは解明できますか。
  123. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) この問題は、この法案の立て方は全部市町村長の証明に基いて、教育委員会の証明に基いて全額国が支拂をする。いわゆる買上げの立場をとつておるのであります。ところが義務教育の実際の運営は、これは職員の給與にいたしましてもその他の運営は教育委員会地方でしておるという筋の違いがある。ですから、この法案の中で今後やるよりはむしろ義務教育費国庫負担法の中でやつたほうが実現に便利ではないかと考えておるのであります。
  124. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも私ははつきりしないのですが、二十六年度のこの暫定法案を決定いたします際にも、義務教育教科書無償精神則つて年次計画を立てて新たにその恒久的な立法措置を考えて行くというような御答弁もあつたし、それに附随して教科書も勿論だが、学用品もという実に詳細な数字を挙げて我々を安心させたものなんです。私たちはそういう立派な計画があるのならばというので希望條件を附してこれを通したのですが、今になつて来ると、やはりこの再軍備のために追いまくられてその精神は挫折せざるを得ない。そうして新たにこういう恒久法案を出して来たのですけれども、若しそういうものを恒久的に出すものなら、その精神をはつきり謳つて出すべきものであつて、私たちにそういう点を指摘されて、今仮に提案理由の中に入れてそれで納得できるという筋合いのものじやないのですけれども、もう私はこれは割切れません。どうしても割切れない。
  125. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長にお伺いしますが、この法案を作るに当つては、どういうようなことで審議会を構成されましたか。
  126. 田中義男

    政府委員田中義男君) 審議会とおつしやいますと、こういうことでございます。まあ大体法案をですね。文部省で用意いたします場合には、それぞれ関係官の十分な調査審議をいたしまして、そして一応の成案を得て、それを更に省議等にかけ確定案にいたします。その上にですね、なお例えばこれなんかは教科書関係がございますから、教科書方面の人たちにもいろいろ御相談をいたしまして、そして遺憾のない案を得るよう努力いたしたわけでございます。
  127. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 昨年の大臣提案理由によると、関係各庁の職員及び学識経験者を以て組織する審議会において義務教育振興の見地からその制度の実施の結果を検討し、その改善の方策について研究いたしたいと考えております。こう書いてあるから私はその確たる審議会というものを構成されて、学識経験者の意向をも聞かれてそうしてやられたと、こう思つたのですが、そうじやなかつたのですね。
  128. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それはまだ委員会ができておらないものですからしてそこまでに行つておりませんが、現在のこの法案は、私は昨年承認された線を行つておるものと思つておりますから、これでよいというふうに考えたのです。
  129. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 まだ委員会ができてない云々ということを申されますけれども、この提案理由を見ますというと、昭和二十六年度実施した法律第四十九号を昭和二十七年度以下どうするかということについて職員と有識者で審議会を設けてやるのだというように書いてありますけれども……。
  130. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) この点につきましては関係各省と教科書会社のかたがたや、或いは金融界のかたがた、いろんな観点から懇談会を開きましてどういう方法がいいかという点を愼重に審議したわけであります。そこで従来のような方法で行きますと地方負担分が非常に問題であり、更に金融の操作がつかないというような点から、こういうような法令に改めたのであります。ですから審議会という正式の名称は持ちませんでしたが、十つ分各方面の意見を聞き、懇談会等を開きまして作つたのであります。
  131. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 只今の答弁私不審に思うのですが、只今のあなたさまの御答弁によりますと、教科書会社とか、或いは各省関係とか、そういうような金融関係とか、如何にも配給する場合の技術的な面とか、或いは需給関係の調整とかというよう立場の人だけで構成されておられていわゆる学識経験ある、今問題になつておる第一條目的、こういうものを如何にすべきかというような代表が入つておるような御発言がなかつたのですが、入つていなかつたのですか。やはり評論家とか、或いは教育学者とか、第一條目的如何にすべきかというよう立場について意見を吐かれるような学識経験者、そういう方をまあ審議会に入れて、協議されて、第一條というものを作られたのではないのですね。
  132. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) この前のときに審議された点は、むしろ技術的な面が多かつたと思うのでありますが、そういう意味地方教育委員会の人の意見も聞いて、今後どういうふうにしたらいいか、殊にこの前に反対があつたのは、地方行政委員会からの強い反対があつた、それから大蔵省からの意見もありましたが、こういう制度ならば、これが円滑に運用できる、かよう考えたわけであります。
  133. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どこか話がピントが外れておると思うのです。今朝以来問題になつているのは、第一條目的変つておるというところに問題があるのです。金の支拂が惡いとか、いろいろ連絡がとれないという立場から審議会が持たれたかどうかということは、この際問題にならない。
  134. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 今おつしやることは御尤もですが、審議会はまだできておりませんけれども、今朝相馬さんにもお話したように……。
  135. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 審議会というのはどれですか。
  136. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 中央教育審議会です。そういうよう審議会はできておりませんけれども、併し私は個別的にいろいろな人の意見を聞いてこの目的は立てて来ておるのです。
  137. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは昨年、法律四十九号を提案するときに、提案理由に書かれましたところの審議会はお設けにならなかつたわけですね。はつきりしましたよ。設けなかつたのですな。
  138. 田中義男

    政府委員田中義男君) 昨年直ちに中央審議会ができるという確たる予想ではなかつたのでございまして、たまたまその後の経過において中央審議会を作るということになりまして、大体それらに諮ることが最も適当な処置でございますが、そういうふうなものがまだできておらないと、こういう意味なんです。
  139. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 だからこういう約束した審議会は作らなくて、やらなかつたということになるのですね。答弁はいいです。
  140. 相馬助治

    相馬助治君 さつきの内藤課長の答弁と関連してちよつと伺いたいのですが、教科書とか、学用品、給食とかいうのは、今度の義務教育費国庫負担法の先に行つて考えるというのですか。当分はまあ百億程度のPTAの経費か何とか賄うという点を織込む。その点はどうなんですか。
  141. 田中義男

    政府委員田中義男君) その点はすでに私どもで用意いたしております国庫負担法におきまして、直ちにできるように処置したいと思つて計画いたしておるのであります。
  142. 相馬助治

    相馬助治君 そうするとこの法案との関係はどうなるのですか。それができた場合ですね。負担法ができた場合に、この法案との関係はどうなるのですか。
  143. 田中義男

    政府委員田中義男君) 負担法ができましても、この法案はこの法案として、そのまま残すつもりでおります。(「それは違うじやないか」「おかしい」と呼ぶ者あり)
  144. 相馬助治

    相馬助治君 関連して……今の局長の言明はちよつと意外なのですが、私は劈頭に大臣に質問したのは、いろいろ問題はあろうけれども、昨年度、いわゆる昭和二十六年度に入学する兒童に対する教科用図書給與に関する法律案が出たときに、羊頭を掲げて狗肉を売るものであると言つて我々がきめつけたわけです。そこで大臣は何とか羊の肉を用意しようとしたけれども、どうしても狗の肉しかできなかつた。それで今度狗頭狗肉というのがこの法案であろうと私は考えておる。これは止むを得ないための法案であろうと思う。そこでですね。趣旨から言えば義務教育無償の原則というものは変更していない、こういうふうに文部省はおつしやつておるのですが、その精神はよくわかるのです。これは法律建前からこの委員会に出た者はわかるが、これを突然改められたものは、やはりお祝いでこの本をもらつたのだと納得する以外に途のないこともこれは止むを得ないと思うので、そういう意味合いから言えだ、にわかにこの一條が納得できないというところに委員諸君の意見があることもこれも又私は理の当然だと思うのであります。そこで私は差当りですね、これは高田さんから恒久的な立法云々と言つて使われておるけれども、国の費用を取るのであるから、勿論暫定的でなくて、恒久的な法律作つて置いて、これに見合うものができたならば早急にやめるという文部省趣旨である、こういうように私はさつきから聞いていたのですが、今の局長の言明はそれと反しておるので、これは大臣にこの点を明確にして頂きたいと思う点が第一点です。それから第二点は、こういう法律を作らざるを得なかつた事情は、先にも申しましたように私は国家財政の規模の面から止むを得ずここになつてしまつたというのが文部大臣としての、そういう言葉がなかつたけれども、まあ考え方であろうと、こういうふうに考えておるわけです。そこでですね、今度は問題はこの法律案そのものに対する、この法律案そのものはお祝いのためであるから、これでいいとされておるのか、極めてこれは不満であるけれども、こういう財政上の折衝の結果、予算がこれしか取れ得なかつたので、だからこうなつたのだというふうな御説明があれば、又別途了解する面がないでもないと思うのです。従つてその辺について率直なる御意見をお聞かせ願つて、だからさつき私は予算を取る苦心談でもいいから何でも聞かしてくれと言つたのは、ここで、それを聞かせて頂いて、そうして現実の問題としてこの法案考えて行きたいと思うので、この二点を一つ明らかにして欲しいと思うのです。
  145. 田中義男

    政府委員田中義男君) 私只今申しましたことに少し補足いたしまして申上げますが、このまま置くと申しましたのは、先ほどもいろいろ御意見がございましたように、一気に来年度は全教科書無償配給をするだけの獲得が予算の上でできますかどうか、これは相当困難じやないかと思います。そこでともかく歩一歩全教科書にまで行かなきやなりませんが、そういうふうな本当に私ども考えていたような程度にまで実現をいたしても、なおこれはこのままというようなそんな意味ではございません。従いまして当面来年度或いは次年度くらい考えまして、それで直ちにこれをよすというようになすかどうか、私はその点について先ほど申しましたようなことを申上げたのであります。
  146. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) むしろ義務教育無償原理則つて、この教科書などが全部無償で出せるということは、これは非常な望ましいことであつて、初めこれをきめたときには逐年そういうようにやつて行きたいと思つたのですが、併し事実それができないようになつて来ておる。それで、併し今年二年までやつて半額よりも、むしろ一年で全額のほうがいいというところに落ちたわけであります。だからこれも無償原理だと言つて矢嶋さんのおつしやるように差支えないのですけれども、それを言わなかつたというのは、何も他意があるわけじやなくして、只今相馬さんも言われたように、昨年相馬さんからきめつけられたかと思いますが、そういうためにこれはこうしたのであつて原理に何も変りないのだということでございます。それから今年お祝いといいますか、公共心ということも私はそう軽く考えておりません。これも私は非常に必要なことだと思つております。
  147. 岩間正男

    岩間正男君 さつきの田中局長の御答弁は何だかよくわからないのです。翻訳して見ますとこういうことですか。大体原則的には今度の負担法の中には、教科書や、学用品や、給食のことも原則的に語つておる。併し取り得るか取り得ないか見込がないので、そこで一方ではこういうよう法案も同時に用意して置くのだ、こういうよう意味ですか、大体結論的に翻訳して見ると。どうですか。どうも我々の頭が惡いのか、よくわからないのでありますが、この点お聞きしたい。
  148. 田中義男

    政府委員田中義男君) いえ、そういう天秤に掛けておるというつもりじやございません。来年度できたら直ちにこれをよすかというふうに伺いましたので、そういうふうなつもりは、来年度予算如何にかかわらず、直ちに幾分でも実現すればこれをやめてしまうか、こういうふうには考えませんと申したのであります。
  149. 岩間正男

    岩間正男君 天秤を掛けてないといつて、実際掛けているのです、これは……。こういう法案が出ていて、そうして一方で負担法で取るとこう言つても、こういう法案が出ておるのだ。これは邪魔にならないのですか。実際現実にこういう判断は……。あなたたちにはちよつと無理かも知れないが、政治的判断で……。併しどうなんです、一体。逆にこれはどうも国庫負担法というのは見込がない。吉田総理も私の質問に対して、どうもそういうことをはつきり考えておるようには見られません。今無理じやないかと答弁している。さつき矢嶋君も言われたように、地方自治庁の岡野国務相も、これは平衡交付金法の一部改正によつてやりたい、はつきりそう言つておる。そういう実情から見まして、文部省がこれはこの問題を大きく、無論大臣としては相当決意されておられることをお聞きしておるのでありますが、そういうふうに説明してもどうなんですか、それは。見通しがないのじやないか。だからして、もう仕方がないから教科書のほうはこういう恰好で行こう、こういうふうにも逆にとればとれないこともない。又こういう恰好になつて来ることによつて、非常に私は基本的に負担法というものの妨害になつて来ると思う、今の観念から言うと。こういう点の判断は大臣はどういうふうにお持ちですか。私はやはり政治的な判断をしないと、こういうふうに負担法というような基本的な問題と関連して来ますと、これは今までのよう文部大臣の態度ではこれはどうも実現いたしません。
  150. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私ども国庫負担法は二十八年度から実施するようにしようと思うのですが、それを一時に何もかも、今内藤事務官から言つたように全部挿入するということは非常にむずかしいでしようただそういう平衡交付金の中から義務教育費を取出して、そうして自主性をここに持たして行くというそういうことから一歩一歩進めて行くという考えでございます。だからこういうものを必要としないものができればいつでもやりますけれども、直ちに全部自分らが理想通り行くわけがないからそれはそのときにこの法律案を出したいけれども、そういう義務教育費考え方ですね、そういうものを先ず確立しようというわけです。
  151. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、高田君のさつき言われましたようなことが恒久法として提案されたのはおかしい。やつぱりこれはできるだけ、一歩々々やるにしても、できるだけ早くその目的を実現するというのが本質でなければならない。負担法が……。文部省としては、できるだけ早く実現したいかのよう事情が予測できますけれども、これは勿論構想はお持ちであろうと思う。そういうことを考えて見ると恒久法として出されるということは非常に妨害になりませんか。今まで、例えば今度のような、標準單価のように、どうしてもこの教科書の分だけ調う、こういうことになると非常に妨害になりませんか。私は妨害になると思う。現実的にこういう法案があるということは、例えば一年限り、去年のよう法律第四十九号のような性格ならば、文部省の熱意はわかるけれども、片方で恒久法としておいて、一方ではこういうものを要求している。こういう形で天秤に掛けていないと言われているが、まさに天秤に掛けている、変な恰好である。政治的に言えば非常にまずい政治的判断だと思うがどうなんですか、この点は……。
  152. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私ども国庫負担法において目指していることは、今内藤課長の言われたような、そういう細かいことまで一時にやれということはこれはむずかしいことで、そうじやない、標準義務教育費を確保して、そうしてそういうものからやつて行こうというのですから……併しこれはこういうふうにして恒久法として出しても、而もそのものに変るものができれ、ばそれでやることはよいのではないかと考えております。
  153. 岩間正男

    岩間正男君 その先は議論になりますから……。
  154. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは大臣に対する総括質問はなければ逐條の審議に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではこれから逐條の審議に入ります。  第一條に対して質疑があるかたは御質疑を願います。  なければ第二條に対して質疑のおありのかたは御質疑を願います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それじや第三條は……。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 第四條に対する御質疑を願います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 第五條に対する御質疑を願います。  なければ第六條に対する御質疑を願います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) なければ第七條に対する御質疑を願います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 第八條に対する御質疑はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは附則に対する御質疑を願います。  他に御発言は……。
  162. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほど私お伺いしたときに答弁なかつたのでございまするが、文部省は当初大蔵省に対しては九億一千万円の概算要求をして、予算に上つたのは三億六千万円ばかりのわけですが、当初はどういうことを計画されておつたのですか。昨年十一月頃の委員会ではこういうふうに承わつておる、それを一応承わりたい。
  163. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 当初は小学校の一年、二年の全教科について全額国が持つ、こういう方針でございました。
  164. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その場合には昨年の提案された第四十九号の何ですな、やはり義務教育無償、昨年大臣が一年を二年、二年を三年と次第々々に延ばして行きたいという趣旨で進んでおつたわけですね。
  165. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) さようでございます。
  166. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうですね。それが二年を切つて一年だけになつて、そしてこういうふうに目的変つて来た理由ですね。その過程におけるところの大蔵当局との折衝の要点について言つてもらいたい。
  167. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) この点は大蔵省は半額国庫補助の線を讓らないのです。私のほう、文部省といたしましては、半額補助では地方負担の問題と、金融の問題が処置つかない、こういう点で若しこれを強行されるならば、私のほうは返上するという態度に出たわけであります。そこで大蔵省の当局ではそれでは国語か算数どつちか一冊だけしようということで話がございましたが、それにも私どもは応じないので、最後に国語、算数二冊一年生に国庫支出を通じて全部やる、かようにきまつたのであります。
  168. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは全額と半額は考え方でいかんというわけですか。予算の面からいけないというわけですか。どちらに重点があつたのですか。
  169. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 建前として教育費を国が全部持つということが先ず第一大蔵当局としては賛成しかねる。義務教育はやはり地方がやるのが主体であるという点に一つ問題があつたのです。そこでこの制度を延ばして行くとなりますと、従来の半額補助建前で行かなければならない。併し大蔵当局は二年以上に延ばすことは絶対に承認しないという基本態度を持つてつたようであります。法律も昭和二十六年度の暫定立法でございましたので、その辺のところが私どもが非常に苦心したところでございます。
  170. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 基本的に大蔵側は、教科書全額負担ということは納得できないと言つた大蔵省が、一年生だけになれば全額負担を了承したのはどういうわけですか。筋が通らない、お祝いだからいいという……。
  171. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) まあ一年生たけにとどめるならば全額国が支沸しても額が非常に伸びないということがあつたものですから……。
  172. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 額でなく考え方が、教育地方公共団体が責任を以てやるべきもので、国が教科書全額やるということは考えがいけないというので、大蔵がこれを拒否したという御説明があつたから私はそういうことを承わつているわけなんであります。もう一回本当のことを言つて頂戴。(笑声)
  173. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) これは当局としては予算上の額の問題を実はお考えになつたのですが、今申しましたような理論的な問題は次に讓つたわけであります。
  174. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点もう追究しません。もう一点ですが、先ほどから論議が交わされましたが、大臣が何と言われようと昨年の法律というのは、ともかく父兄の教育費を少しでも軽くするという考えが重点になつて出したわけですね。ところが今年のようになりますと、それよりも児童国民としての自覚を深めるというのか、お祝いだ、お祝いですよといつて国民自覚を深めるこころにあることは活字がはつきり示しておりますね。そこで私は額だけから言えば次の質問は出て来ないのですけれども、併しながらやはり義務教育無償というものは原理変つていないというから、当然質問が出て来るわけですが、昨年と今年と一貫して文部省としてはやはり義務教育無償原理から、負担を軽減して行くという立場からの一貫としての法律案作つているとあらば、教育負担を軽くするについてはいろいろの方法があると思いますが、その中でやはり直接的にはどなたも必ず持たなくちやならないところの教科書ですね、これがやはりでき得べくんば無償、次善の策としては安くいいものが入るということが、やはり政策として目標に立てられなくちやならないのですね、それで簡單でよろしうございますから文部省教科書の政策をこの際骨子でいいから承わつておきたい。  それからもう一つは、第一條を読んで、それに関連して重大な質問になつて来るのですが、お祝いですよ、おめでたいですよといつて出して、児童国民自覚を深める。こういうことが目的になつておりますと、先ほどちよつと大臣にお伺いして大臣から答弁して頂けなかつたのですが、田中局長の所管の初等中等教育局のあの予算の中に教科用図書の編集及び改訂等に必要な経費というところに、昨年より約六百万円多くして、そうして予算書説明には力強く特に本年度は中小、社会、算数、高等、職業用教科書の一部を編集するために云々ということを、新らしく予算書に活字となつて現わされておるわけですね。そこでさつき申上げた教科書政策の一般的なもの、いわゆる標準教科書といわれているもののこの予算でございますが、これを責任の局長からどういうふうにお考えになつているのか、若しもこの教科書を統一するような形になれば、その統一した教科書国民自覚を高める意味において差上げるということになりますと、終戰後教育の転換を図つた当時、或いは憲法、或いは教育基本法、それから、或いは学校教育法、社会教育法をこしらえて行つた当時の感覚から言うならば相当私は出て来ていると考えるが故に、又懸念されるが故にここではつきりと田中局長の責任ある答弁を頂きたい。
  175. 田中義男

    政府委員田中義男君) 教科書に関しましては成るべくいいものを安く、或いはできるなら無償で配付するようにいたしたい。そうして制度そのものの上から申しまして、現在まで御承知のように一応検定を主とし、それを育てる、その建前におきまして、なお一部国定も残つていることは御承知の通りでございます。併し教科書そのものの或いは定価なり、或いは検定、その他いろいろな内容の問題等につきましても、御承知のようにいろいろな問題がございますので、文部省といたしましても教科書制度そのものに広汎な検討を只今加えまして、そうして当初申しましたようないいものを安く、こういうような標準で検討中でございます。
  176. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 具体的な対策一つもないじやないですか。
  177. 田中義男

    政府委員田中義男君) なお予算書に現われている標準教科書のお話でございますが、これは当時の資料等を見ましても、国定教科書作つて出すという意図じやありませんで、教科書製造の上に参考となる資料を提供する、こういうことが国内でも謳われておつたわけであります。先般伝えられましたよう意味におきましてはいろいろ更に検討を要する点も無論ございますし、予算の使用等につきましては只今申しましたように、いい教科書を極力安く出るような方途にこれを使用したいと、かよう考えておりまして、国定を以て而もそれができたものをここにできましたような線で流して行くというような意図は決してございません。
  178. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 教科書関係予算というのは、予算書を見ると三千万くらいあるのです。全部あなたのところと調査普及局あたりを集めますと……、相当これは社会でも問題になつているのですが、今お伺いすると今検討中というお言葉ですが、いつ頃検討中の結論は出る予定でございますか。
  179. 田中義男

    政府委員田中義男君) いつ頃と只今的確なことは申上げかねますけれども、省内におきましてすでに細かい点に至るまでおおよその用意をいたしまして皆さんと相談をするところにまで参つております。
  180. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここに提案された法案内容に盛られている三億六千万円ばかりのこのお祝い給與教科書の問題よりも、私はそちらのほうが問題なので、義務教育の振興という角度から言つたらより重大な問題だと思うのです。従つて文部省の各局には三千万円近くの予算教科書編集なり発行に関して組んでいるわけです。だから平素も御努力つていると思いますが、更に馬力をかけましてその検討中というのを早く結論に到達されるように今後も努力願いたいという要望を申上げます。
  181. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 他に御質疑はありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 本案に対する御質疑は終了したと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは御異議ないと認めます。  それでは討論採決に入りたいと思いますが、如何で、ございましようか。
  184. 高田なほ子

    高田なほ子君 議事進行について……、質疑の中でいろいろな点が明らかになりまして、私どもとしてはやはりこれに対して考えをまとめる時間的な余裕を持ちたいと思います。そこでいささか休憩を宜して頂いて懇談の形にして頂きたい。
  185. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 只今の御動議に御賛成ですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは暫時休憩いたします。    午後三時四十五分休憩    —————・—————    午後四時三十四分開会
  187. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これより文部委員会を再開いたします。これより討論に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  189. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は只今上程されております本法案に條件附で、遺憾な点もありますが、賛成の意を表明するものでございます。  その第一点に申上げたい点は、今朝ほど審議過程において大臣質疑をいたしましたが、昭和二十六年度実施されたところの法律第四十九号の提案のときに大臣提案理由として述べられたものと、本法案提案に当つて提案理由には、昨年の提案理由に違うところの解釈の下に本法案提案されておる。これは大臣に指摘したところでありますが、遺憾千万に存じます。昨年の大臣提案理由を拜見いたしますというと、憲法二十六條の第二項によつて義務教育無償というものを推進するという立場から法律第四十九号を提案するのだ、而も法律第四十九号は公立学校兒童を相手としておるのであるが、これは憲法義務教育精神からして更に国立、私立にも拡大して行くべきものである。その一つの足がかりとして法律四十九号を提案し、国民義務教育負担の軽減を図るのであるということを最も重点的な提案理由として述べられておるのでございます。然るにその提案理由を本法案提案に当つて引用して曰く、本年度から特に児童国家公共心涵養を図るために、新入学兒童に対して国語及び算数の教科用図書給與するように昭和二十六年度から法律四十九号でやりました。こういうように掲げられておるのであります。この点は昨年法律第四十九号の法案提案したときの提案理由からして非常に転換を意識して、或いは意識しないでやられたのかも知れませんが、非常に遺憾千万に存ずる次第であります。で、提案理由並びにこの質疑応答の段階においてわかつた点は、昨年度法律第四十九号というものは先ほど申上げましたように、憲法二十六條第二項に基いて義務教育の推進と国民義務教育負担の軽減という立場から提案されたものが、而もそれを政府当局は各庁の職員並びに学識経験者を以て、組織する審議会において義務教育の振興の見地から更に恒久的な立法をする用意があるという下に実施しておきながら、本法案におきましては全く転換いたしまして児童国民としての自覚を深め前途を祝福するという、こういうような形において第一條目的が記載されておるという点につきましては、同じ教科書給與するのでありますが、憲法二十六條の具現の方向に進むという立場から私は後退しておるという点は遺憾とするところであります。併しながら文部大臣質疑の過程において義務教育無償原理というものは決して揺いでおるのではないということを確言され、更に義務教育無償の推進という立場からは自分は異常な決意を以て義務教育費国庫負担法の制定のために今国会において国会にこの法案提案し、その通過に全力を盡す覚悟であると大臣が言明されたその点を諒といたし、大臣がその点について確約の通り今後善処されんことを強く要望するものでございます。ただこの法案についていい点を申上げますならば、昨年度国と地方公共団体が折半しておつたのを、従つて非常にその運営実施技術面において支障があつたのがこのたび全額国庫負担になつたという点は実施面においては非常に都合がよろしきものになり、更に国立、私立へとこれを拡げた点は私はこれを称讃するにやぶさかでございません。ただ審議の過程に申上げましたように、昨年度義務教育無償と、それから特殊教育の特殊性という立場から、盲聾学校の生徒諸君には、国語、算数のみならず、他の教科書無償給與していたのが、本法案において削除された点は、特殊教育の特殊性と、この気の毒な人への義務教育無償を推進する立場から、私は遺憾の意を表明するものでございます。要するに、この法案は、予算の大蔵当局との交渉過程においてもはつきりいたしておりますように、当時九億一千万円を概算要求したその際は、昨年の法律四十九号の制定の趣旨則つて、一年生、二年生と逐次に教科書給與を拡大して行くという立場から要求したのが、途中からこれが転換しまして、一年生だけに限定され、而も本法の第一條に書かれてある目的ようになつたということは、大臣審議の過程に答弁いたしましたように、平和條約並びに安保條約の発効に伴うところの国家予算の厖大なる支出増というものがこういう事態を招来し、当初大臣がきめられたところの小学校の六年、更には中学校の三年まで教科書無償にしてやりたいといつた、あの天野文相の構想というものは、いわゆる再軍備のためにここに挫折せざるを得なかつたということは、今後の我が国の方向を示唆するものであり、新憲法を抱いて文化国家の建設を指向しておる我々としては誠に遺憾千万な事柄でありまして、この点につきましては、政府に、今後新憲法を守り、文化国家の再建という我が国の指向する方向と相違しないところの強力なる、全般的文教政策を確立するよう、強く要望しまして、若干遺憾の点を表明した通りに、不満な点もございますけれども賛成の意を表明する次第でございます。
  190. 相馬助治

    相馬助治君 私は、只今議題となつておりまする新たに入学する児童に対する教科用図書給與に関する法律案につきまして社会党の第二控室を代表して賛成の意思を開陳するものでございます。この法律案は、昨年、即ち第十国会において成立いたしましたこの種のいわゆる教科用図書給與に関する法律趣旨を根本に盛つて法案が作られたものであると私どもは了解していたのでありまするが、質疑の過程において、文部当局の言明は、その問題に対して明確なるものが、ございませんでしたことを私は極めて遺憾とするものでありまするが、最終的には、この義務教育に対しては、当然国費を以てその費用を支弁すべきものであるという精神と、教科書無償で配給しなければならないという原則は飽くまでも変更せられないものであるという文部大臣の言明並びに内藤課長の話の中に、近く予定されるところの義務教育費国庫負担法律案においては、当然として、教科用図書給與の費用というものも見込む考えがあるという積極的な意見というものを十分に私どもはこの際聞き及んだという点から、その点に関しまして、今後文部省の十分なる努力を期待するものでございます。そういう意味合いからいたしますれば、第十国会において成立した法律が、地方財政の面に惡影響を與え、即ち法的な義務付けによつて地方自治体がみずからの意思によらずして財政支出をしなければならないというところの問題を解決して、全額これを国費によつて賄うということにしたことは一応の進歩であるとしてその功を認めないわけには参りません。但し、この法律案が、先に私が触れたよう意味合いにおいて、即ち教科書無償配給という昨年度示された文部省考え一環としてなされるのでなければ、質疑のときに岩間委員がこの点に触れましたように、本法律案の存在そのものが義務教育費国庫負担法の成立の過度において邪魔になるというようなことも予想せられますので、これらの点につきましては、その取扱について十分今後とも文部省は留意されて欲しいと思うのでります。いろいろの点についてもつと言いたいこともございまするけれども、私どもは、文部省のいろいろ今後努力すると述べた点を信頼いたしまして、甚だ不満の点もあるのでありまするが、本法案に対して賛成の意思を表明するのでございます。
  191. 高橋道男

    ○高橋道男君 私も本法案に賛成をするものでございます。憲法における義務教育費無償ということは、私どもの熱願するところでございまするが、我が国の現段階においては、これに耐えるだけの力が、実力が備つていないことを甚だ遺憾に存ずるのでございます。その見地からいたしますれば、この法律案も、勿論義務教育の全部の国庫負担を規定したものではないのであつて、まさに九牛の一毛に過ぎないのでありまするが、これを昭和二十六年度の暫定措置の法律に比べますれば、今同僚議員から述べられたように、第一には、入学児童に対する教科書が、昨年度は半額を国庫負担にし、他の半分を公共団体の負担にしておつたのでありまするが、これが全部国庫負担ということになつたにつきましては、私は、第一條において、義務教育費国庫負担の文句が明示されていないにもかかわらず、実際的にはむしろその歩を一歩進めたことにもなるということができまするし、そういう第一條における義務教育費国庫負担の文字がないといたしましても、これは憲法の條章から出ているものであつて、少しも義務教育費無償の原則から外れておるものではないし、先ほど申しましたような理由によつて、更に一歩を進めておるものだということに私は解したいのでございます。更に二十六年度におきましては、公共団体の経営する学校兒童ということで限られておつたのでありまするが、今回はこれが国立学校及び私立学校にも拡げられたことにつきまして、殊に私は昨年私立学校児童が除かれていることにつきまして、甚だしく不満を申述べた一人といたしまして、当局が今回の法案にこれを盛られた善意と好意に対して敬意と謝意とを表するものでございます。如上の論によりまして、私は本法案に賛成し、四時に、更にこれを一つの段階として憲法の認めるところの義務教育費無償の完遂に向つてどうか努力せられんことを要望するのでございます。
  192. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 他に御発言はございませんか。御意見も盡きたようでありますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。新たに入学する兒童に対する教科用図書給與に関する法律案議題といたします。本案を可決することに賛成のかたの御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  194. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 全会一致でございます。よつて新たに入学する兒童に対する教科用図書給與に関する法律案は全会一致を以て可決することに決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならんことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとしまして御承認を願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  195. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。  それから本院規則第七十二條によりまして委員長が議院に提出する報告書につき多数意見者の署名を附することになつておりまするから、本案を可決することに賛成されたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     加納 金助  高田なほ子     川村 松助  木村 守江     黒川 武雄  白波瀬米吉     堀越 儀郎  高橋道男     荒木正三郎  相馬 助治     木内キヤウ  矢嶋 三義     岩間 正男
  196. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 本日はこれにて散会し、今日の予定でございました東大事件につきましては次回に讓りたいと思いますが、如何でございますか。  御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではさよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会