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1952-03-13 第13回国会 参議院 文部委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十三日(木曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅原 眞隆君    理事            加納 金助君            高田なほ子君    委員            木村 守江君            黒川 武雄君            白波瀬米吉君            高良 とみ君            高橋 道男君            堀越 儀郎君            荒木正三郎君            棚橋 小虎君            相馬 助治君            鈴木 強平君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    法務検務局長 岡原 昌男君    文部省大学学術    局長      稲田 清助君   事務局側    常任委員会專門    員       石丸 敬次君    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君   参考人    東京大学学長  矢内原忠雄君    警 視 総 監 田中 榮一君   —————————————   本日の会議に付した事件教育及び文化に関する一般調査の件  (学問の自由と大学自治に関する  件) ○本委員会の運営に関する件   —————————————
  2. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 只今より文部委員会を開会いたします。  本日は学問の自由と大学自治についてと題しまして、矢内原東大学長田中警視総監参考人として、又政府側より文部大臣並びに法務総裁の御出席を煩わした次第であります。去る三月四日本件に関連いたしまして、法務文部連合委員会を開き、主として先般のいわゆる東大事件に関しまして事の真相を明らかにいたそうとしたわけでありますが、その際は時間の制約などもあり、学問の自由と大学自治について基本的な問題について十分に触れることができませんでしたので、本日改めてこの東大事件を契機として問題となりました学問の自由と大学自治につきまして、主として教育的、学問的の立場から更に深く検討いたしたいと存じ、委員会を開いた次第でございます。  なお前後いたしまして失礼とは思いますが、参考人としておいで願つた矢内原さんと田中さんに一言申上げたいと存じます。先日の連合委員会におきまして、甚だ長時間に亘りまして、委員長始め各委員質問に対しお答えを頂きましたことをここに厚くお礼を申上げます。同時に本日再度御出席を煩わしましたことは恐縮に存じますが、先ほど述べましたような次第でございますから、この点よろしく御了承をお願いいたします。  では、これから参考人かたがたから先ず御意見を伺いたいと存じます。なお、参考人の御意見の陳述が終りましてから、参考人かたがた並びに法務総裁文部大臣に各委員から御質問頂きたいと存じます。では、先ず矢内原さんに学問の自由と大学自治の本質について、又それに関連して問題の次官通牒について御意見をお伺いしたいと思います。
  3. 相馬助治

    相馬助治君 議事進行について……、参考人のかたのお話委員長求めておりますが、参考人をお呼びしましたときに、学長並びに総監よりいろいろな質問を受ける前に総括的なお話をしたいという御希望によつてさよう取計つておるのですか。それとも委員会自体としておいで願つたので、総括的な御意見を先ず承わりたいと、こういうのですか。どつちですか。
  4. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これは昨日ちよつと理事会を開きまして、一応これを承わりたいというようなふうに話したので、こういうふうに取扱つたのでございます。
  5. 相馬助治

    相馬助治君 私は問題の所在点はこの前の委員会でほぼ明らかであろうと思うのです。むしろその後に法務委員会等の様子や何かを見て、私どもとしては総括的なお話を聞く前に質問したいことがたくさんあるわけなんです。それでまあ議事進行の上でそういうふうに私は発言したのですが、委員長において理事会でそうきまつておるのでしたら、それじやきまつた通りにおやり願いたいと思います。
  6. 岩間正男

    岩間正男君 それに関連して、ただ要点を盡して簡單にやつて頂きまして、それでまだ質問でいろいろ明らかにしなければならんことが多いと思うのですけれども、その点簡單一つおやり頂いたらどうかと思いますそういうことでできるのだつたら、そういう点をお含みの上でやつて頂いたら……。
  7. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) わかりました。矢内原さんどうぞ。
  8. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) 極く簡單に申上げます。  学問の自由ということはなぜ必要であるかと言えば、学問真理研究するものだ、真理研究するについては或る例えば政治的勢力とか、宗教的勢力とかによつて左右されてはならない、真理真理として研究し、又これを主張するということが学問の使命であります。で、世界における学問歴史を見ましても、この学問の自由を守つて来るということが学問発達のためにどれほど大切なことであつたか、又そのために幾多の学問の自由を擁護するための鬪いがなされたかということは歴史に明らかなところであります。それで大学学問研究し、又教授するところであるのです。それ故にこの学問の自由を尊重するという建前から、大学自治が尊重せられて来たわけであります。そういうわけでありまして、大学は政治的な権力その他の権力から自由であることが必要だ、これが大学自治原則でございます。  次に大学教育という部面について申上げますが、大学研究教育最高学府であるわけでありまして、その教育という面については三つのことを申上げたいのでありますが、一つ学問教育するということは單に專門的な技術を教授するということだけでなくて、学問研究する精神というものを学生に教え込むということが必要である。これを私ども学問的精神と申しておりますが、常に学問研究が自由であつて学問は自由の中においてのみ成長するということを前提としますから、教育においても学生の自由の気風を涵養するということがやはり非常に重要なことになるのであります。  第二には、この教育方法としていわゆる権力を以て学生に命令すると、こういうふうな教育方法は非常に旧式な方法であつて学生自治、自発的の訓練というものを重視しなければならないことは近代教育の大原則でございます。  それから第三には、日本でも終戰以来六年半の間民主化ということが日本教育の大方針として鼓吹されて参りましたので、現代の学生はいろいろ時代の苦悶を自分の身に体験しておるのみならず、デモクラシーの、民主主義化の空気の中に成長し教育されて来たものでございますから、その点も特に考慮に入れて学生を指導しなければならない、こういう考えでおるわけであります。そういうわけで大学性格から考えて、学問研究し、又教育する府である建前から、大学自治を尊重しなければならない。これは国のために、日本の国の進歩発達のために、どうしても必要な政策であると考えます。  さて問題の次官通牒は、昭和二十五年の七月にできたものでありまして、その当時できました東京都公安條例の適用についての除外例を認めたものであります。大学自治を尊重する建前から除外例を認めたものでありますが、実は大学自治建前は、次官通牒を以て初めて発生したわけではなくて、それ以前からの長年の慣行としてできて来たものでありまして、東京大学について見ましても、所管の警察署との間に長い間の了解として、大学自治を尊重する、警察権大学の中に入つて来る際には、大学がこれを要請するなり、或いは大学了解を得るなり、そういうことが長い間の慣行として成立しておりまして、事なく大学側警察側との協力の下に行われたのであります。それが次官通牒によつて成文化された、具体化されたものと我々は考えておるのであります。それで今回の事件に際して、いろいろ国会の委員会などにおいて承わつたところによりますと、大学自治を尊重するという原則と、特高警察的なやり方をしないという、そういうことを警察当局側から伺つたのでありまして、それは我々の最も大事と思う点を承認して下すつたことと解しておるのであります。ただそれを実行に現わして行くということが、あとの問題となるのであります。  申落しましたが、大学自治は、人事権自治ということが一つであつて、もう一つの点は、警察権その他の行政権の介入という点であります。言うまでもなく大学も国法の中にあるわけでありまして、決して治外法権ではございませんので、警察権の及ぶ場合もあるし、又大学からお願いをして警察権の出動を要請する場合もありますが、すべてそういうことは大学という特殊の性格を御理解下すつた上で、警察当局大学当局とのよき了解の上になされなければならない、こう信じておるわけであります。
  9. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 次に田中さんには、学問の自由と大学自治ということに対するあなたの御見解、又それに関連して、次官通牒に対する御意見をお伺いいたしたいと思います。
  10. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私から実は前回文部法務委員会合同委員会の席上におきましても、私は冒頭に申上げましたごとくに、私も大学矢内原学長と同じように、学問の自由、大学自治ということにつきましては、当然これは尊重すべきものであるという見解を持つておるのであります。ただ同じ自由にいたしましても、全部が全部何をやつてもいいという自由ではないと思うのでありまして、これはやはり今の矢内原学長の御発言のごとくに、やはり大学といえども法の範囲内において、憲法の認むる自由、而もその憲法の認むる自由ということは、憲法に言うところのいわゆる公共の福祉に反しない限りにおいての自由というものがこの基本的人権章條によつて認められておるものと、かように考えております。  そこで今回の問題が発生いたしまして、警察学問の自由を侵害し、大学自治を侵害するというように世上に宣伝されておるのでありますが、私どもの気持としましては、絶対に学問の自由を今まで侵害したことはないと考えております。  それから又大学自治につきましても、私は警察権を行使することによつて大学自治を事実上侵害したことはなかろうと私は信じておるのであります。この学問の自由とか、大学自治というような問題は、警察権行使とは私は別個のものであると考えております。勿論警察はかかる問題に何ら関與する必要は全然ないのでございます。併しながら先ほど学長の御発言の中にありましたごとくに、大学といえども絶対に治外法権ではないということでございます。例えば大学構内におきまして不穏なビラ、或いは政令三百二十五号違反ビラが撒かれている、現に撒かれている、そのような場合において、これを警察が全然もう手放しで、大学構内であるから警察はもう手も付けられないのだというような状況で、これを放任しても差支えないものであるかどうか。これは警察立場から申しますると、大学構内といえども、自由に人の通行し得る場所でありますから、これらの不穏なビラ等が撒かれているという事実を視察する、又若し撒かれておつたならば、これに対して適宜の措置を講ずるということは、これは私は警察権として当然の措置ではなかろうかと考えております。ただ問題は、これをやる上において、学校側とどういうように了解を付けてやるかということが問題でありまして、これをやること自体が直ちに学問の自由を侵害したとか、或いは大学自治を傷つけたというようなことは、私はないんじやないかと、かように考えているわけであります。まあ警察側としましても、十分にこの学問の自由とか、大学自治ということにつきましては、我々は当初から何回も申上げております通り、十分にこれは尊重している。尊重しているからこそ、次官通牒によつて、成るべく警察的な許可とかそういつたものは、すべて大学総長に御一任申上げたい、かような趣旨で、実はかような取りきめをいたしているような次第でございます。  それから次官通達でございまするが、これにつきましては、先般文部法務委員会の席上において私から御説明申上げましたごとくに、次官通達の第三号に、学校構内における集会集団行進進団示威運動等取締りについては、当該学校長が阻止することを建前とし、要請があつた場合、警察がこれに協力すること、ということになつております。この解釈は、学校内におきまして無届集会が行われる、或いは校長の許さざる集団示威運動、或いは集団行進等が行われておつて学校がこれを何回も警告を発して制止する。併しなかなか学校の力を以てしては到底これを鎭圧、抑制することができないと、止むを得ず学校長から警察に実力行使によつてかかる無届、無許可集団行進集会等をやめてもらいたい、中止してもらいたいというような要請があつたときに、警察側から然るべき人数を出して学校構内において取締りをいたす、かように我々は実は解釈をいたしておるのであります。そこでこれができましてから、かような解釈の下に現実学校長要請によつて出動いたした場合も数回ございます。併しながらこれは、今申上げましたのは学校構内におけるいわゆる事実上治安が乱れるという程度のものでありまして、例えばビラを撒くのを一応視察するとか、或いは取締るというようなことは、私どもはこの條項の中には含まれていないと解釈しておるのであります。例えば最近もこうした問題が起つている際にもかかわりませず、毎日ビラが撒かれております。そのビラはここに持つておりまするが、こうしたビラが、現実にこうした問題が起つている際にかかわらず学校構内において撒かれておるということであります。で、このビラというのは御承知のように何もこれからビラを撒くからというような恰好で撒くのではないのでありまして、ビラを撒くというのは隠密の間に、或いは適当な所にこつそりと置いておいて風の力によつてそれをばら撒かすとか、或いはそつと下に落すとか、或いは適当な所に置くとか、或いは暗い所において、映画館等暗い所において天井に向つて放り上げるとか、こういうようないろいろな隠密の間にこういうビラを撒くということが行われておるのであります。これを一々何月何日にどこへ行くからということを一々学校了解を求めて取締をするということは、実際問題としてこれは不可能なことなのであります。かような点から我々は今のこうしたビラ取締であるとか、そうした点は学校長了解がなくとも、必要によつては随時随所にこうしたことを視察するということが必要であるのであります。この程度のものが入つたからといつて私はあえて学問の自由を侵害するとか、或いは大学自治がこれによつて破壊されるということは恐らく私はないのじやないかと思うのであります。勿論取締りした結果については、その都度現在こういう所にこういうビラが撒かれておりましたということを学校当局に一々連絡をしておるのであります。そうして今後こういうことがないように一つ注意を願いたいと思うと、又そういう場合におきましても、できるだけこの事前の連絡のないときには必ず事後連絡学校当局に申上げまして、学校の御注意を喚起しておるというようなことでありまして、従来もこの程度のことが行われておるのでありまして、私はこの程度のことが行われることによつて、やれ学問の自由が侵害されるとか、大学自治が壊されるとかいうことは少し考え方が仰々しいのじやないかというようにも実は考えられるのでありまして、本質的に何か学問のことにつきまして警察がかれこれ言うというならばともかくも、警察官が教室に行つて、中に入り込んで教授講義内容をメモするとか、そういうことは絶対にやつてないのであります。又学生大会構内に開かれましても、警察官はただ掲示によつて学生大会が開かれているという程度のことを知る程度でありまして、それ以上警察としても知る必要はありませんので、又中にも入りません。掲示板によつて今どういうものが行われているかということぐらいは、これは当然私は知つてつて差支えないのじやないか。これは警察官でなくてもあらゆる者があの中を通るのですから、その程度のことは誰でも知るわけであります。そうしたことで一々学問の自由が壊されるとか、或いは大学自治が破壊されたとかいうことは僕は少しおかしいのじやないかというふうに実は考えているのでありますが、ただ次官通牒につきましては、いろいろ文句の点につきましても、いろいろ両者の見解において相違がございまするので、この点につきましては、いま少し文部当局とも学校側がよく折衝いたしまして将来再びこうした不祥事が起きないように、これを防止することに警察も、大学も、文部当局も協力せねばならないと、かように私は考えている次第であります。
  11. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これから委員のかたの御質疑を願いますが、質疑は通告の順序に従いまして、矢嶋君。
  12. 高良とみ

    高良とみ君 議事進行に当りまして、一言只今の証人の御発言に対して確めておきたいことがあるのであります。それはこの前に文部法務との合同審査のときに我々が伺つたことは、真実に基いて良心に従つて証言して頂いたと思つて伺つたのでありますが、その後仄聞するところによりますると、法務委員会におきまして、それらの証言をお取り消しになつたかたがあるやに承知いたすのであります。そうしますと、今日おつしやつておられることがどれだけ真実であるか、我々はどれだけの信頼度が置けるかわからないのでありまして、果して法務委員会において証言をお取消しになつた点がありまするならば、あの際に了承いたしました証書に対して、訂正の申入れを本文部委員会に対してなさることを私は希望するものであります。(「異議なし」と呼ぶ者あり)それなくしては、我々はどれだけ本当のことを言つているのか、或いは全然又その次の瞬間にお取消しになるかわからないという感じがするのでありまして、特に警視総監におかれましては、あの際あれだけ議員真実であるかということを確かめたのに対して、少しの僞りもないとおつしやつたのでありますが、法務委員会において言われたことは取消しであつたのであるか、或いはあのときに我々文部委員が伺つたことが本当であるのか、今日言われることが僞りない真実か、その点を御説明願いたい、御証明願いたい。若し取消すところがありましたならば、なお審理の進行中であるのでありますから、我々はあえて僞証罪に問うものではありません。そういう非文化的なやり方をしようと思つて伺つているのではないのでありますから、我々伺つておりますのは、国民のために伺つているのでありますから、嘘を言う警察であるのか、真つ赤な嘘を言う警察であるのか。或いは本当のことを述べようと努めておられる民主的な警察であるのか。その点を明らかにして頂きたいのであります。(「異議なし」「その通り」と呼ぶ者あり)
  13. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私は参議院法務委員会にはこれで二回目でありまして、なお第一回合同委員会がありましてから二回目であります。私はその後六日の日に衆議院法務委員会がありまして、その際にこういうことを申上げたのであります。野口富士署長から、ポポロ劇場に三人の警察官が入つたのは、娯楽の目的で入つたということをその参議院法務委員会発言したことについて、その後野口富士署長が三人の警察官について心証を確認したところが、必ずしもそうでないと、やはりポポロ劇団というものについていささか疑いを持つてつたので、やはり或る程度職務上これは当然観たほうがよかろう、かような心証で入つたのだということを私のほうに申出て来ましたので、衆議院法務委員会におきましても、野口氏は前回さようなことを言つておりましたので、警視総監を通じて訂正をして欲しいということを野口署長から私に申出があつたのであります。そこで私は果してこれが正規のものであるかどうかわからないが、野口署長からかような申出がありましたから、私の口を通じて、この席上でその点の訂正をさして頂きますということを私が申述べたのでありまして、私としましてはあえてその前言を取消したとか、そういうことは、新聞ではそういうふうに報道されたように思いますが、衆議院法務委員会には私が代つて冨士署長の今の言を訂正さして頂いたのであります。
  14. 高良とみ

    高良とみ君 只今お話は我々のところでは少しも筋が通らないのであります。衆議院でおつしやつたことは参議院には通じません。又参議院法務委員会で言われたことは法務委員におつしやつたのでありまして、我々はここは今日はもうお間違いなく願いたいのでありますが、これは文部委員会であります。そうしてあの際の合同委員会に我々は正当な議員として出席したのでありまして、そのときの証言真実として一〇〇%信ぜなければならない立場にあるのであります。でありますから、若し署長がそういう努力を衆議院かほかでなさいましたならば、我々は一応本委員会に対しまして、あなたの御職務を果されることをあえてお勧め申上げるわけであります。更に附加えて申しますならば、あのときもポポロ劇場出席のほかに、警察手帳に書いたということに対する真偽の疑点が出たようであります。或いは本調査に対しまして、東大内のパトロールの報道等はやはり警視総監承知の上でしておられるのであるかどうかということを伺つたときに対しても、自分は知らぬ存ぜぬという御証言があつたのでありまして、この点はどう考えておられるのかを本委員会に対してはつきりと御証言願いたいのであります。
  15. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 今私が申上げましたのは、文部委員会でなくして三日の日でありましたか、野口署長衆議院法務委員会娯楽のために入つたということを申述べた、それを六日の日にあとでその点を訂正して欲しいということを衆議院法務委員会に私の口を通じて訂正したわけでありまして、私もこれはこの会合が文部委員会であるということは十分了承しております。その次のポポロ劇団については、その当時私は全然……そのポポロ劇団があつて三日の日に……、あれは二日の日でありましたか、取締行つたということは私は当時は存じておりません。これは事実でございます。全然当時私は申したというこはありません。
  16. 高良とみ

    高良とみ君 只今の、そういう末端に流れないで、本委員会に対して署長としては、取消される点があるのですか、ないのですか。先ず伺いたい。
  17. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 署長としてでございますか。
  18. 高良とみ

    高良とみ君 警視総監として。
  19. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私はあの当時良心に従つて述べるだけのことは述べたはずでございます。私は冒頭に述べました通り、私が最初に一般的なことを述べろというお話でありましたから、あの当時自分良心従つて真実を述べたわけでございます。
  20. 高良とみ

    高良とみ君 その点は警視庁として東大構内をパトロールし、或いは教授思想調査等をしておるということに対しては、一切知らぬ、存ぜぬという話であつたのでありまするが、果して本事件警視総監の全然知らないことが本富士署長の命令或いは末端の数巡査の自由意思によつてされたものだと我々は聞いておるのでありますが、それに間違いはありませんか。
  21. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 結果的には私は警視庁責任者でありますから、当然これは知らないとは言えません。併しながらその個々の警察活動につきましては、一々警察署長がどういうことをしておるかということにつきましては、一般的ないろいろなことにつきましては私は承わつておりますが、どういう者がどういうことをしておるかということにつきましては、私としてはその当時知り得ないのでありますから。
  22. 高良とみ

    高良とみ君 本問題について或いは末端の人がどこでどこを歩いたか、そんなことまでは警視総監は御存じのあろうはずはない、ですから警察手帳の何ページにどんなことが書いてあるか、そんなことを我々は言うのではありませんが、先ほどお話の中にありました東大の本問題に対しては、警視庁として手を入れるべき、即ち次官通牒の範囲を逸脱しても、要するに末端ビラまき等に対しては東大と協力しないで、独自の立場で以て調査しつつあるということに対しては、警視総監はこれは自分のほうで了承しておることであるという点において訂正なさることが一点もおありにならないか、今日おつしやつたことを、その点をはつきり伺いたいのであります。
  23. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私はあの当時も申上げたと思うのでありまするが、現在の情勢下におきまして、学校構内といえども治外法権にはならない、従つて警察としましては、必要な最小限度の警備活動は当然これはやらなくてはならん、かようなことを申上げたのであります。従つてこの警備活動とビラ取締というのは……。(「議事進行」「議事進行」と呼ぶ者あり)
  24. 岩間正男

    岩間正男君 今の高良君の質問に関連して一、二点だけ伺います。(「議事進行」と呼ぶ者あり)議事進行だ、これに関連して……。それは第一に、警察手帳でいろいろ調査したようなことは警視庁に報告されておるのかどうか、こういうことについてお聞きしたのでありまするが、このときこれはそういうことはないというようなことをあなたはお答えになつたのです。その後野口署長証言によつては、やはりこれは上司に報告しておるのだ、こう言われておるのですが、この食い違いはこれはどうなんですか。  第二にお伺いしたいのは、警察手帳の問題でありますが、この警察手帳というのは、個人的なプライベートなものかどうかということについて私はお伺いしたわけです。ところがそれは公式な非常に重要なもの、ところがあなたはこれに対してちやんと答えておるのです。ここにあるのです。ちやんとあります。私は速記録を持つて来ておる、読みますか。
  25. 田中榮一

    参考人田中榮一君) どうぞ、
  26. 岩間正男

    岩間正男君 「ちよつとお答えいたしますが、警察手帳というものは、これはお説のように官給品であります。従つてこの警察手帳の内容を記載するということにつきましては、これは一々監督者が指示をいたしておりません。これは職務に直接又は間接に何かメモしておかなければならんというような場合に、この警察手帳が利用されるわけでありまして、その内容が、それが必ず全部公務に直接関係があるものでもないと思うのであります。何といいますか、間接に関係があるとか、とにかく一応メモとしてこれを控えておく、こういうのであります。」こういうふうに申されておる。併しその後聞きますというと、非常にこれは重要な、單にこういうような今あなたのお答えになつた程度のものには……非常にこれは公務として重要なものである、こういうことがこれは明らかになつたと思うのです。こういう食い違いはこれはどうなるのでありますか。私の指摘したのは一、二の例であります。こういう点をあとでなおいろいろ私は指摘してお伺いしたいことがありますけれども、この前の、例えば私の質問に関する範囲内では、そういう点が正に食い違つておる、これはどういうふうにあなたは説明されるのですか。
  27. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 警察手帳の内容が当時私はどう言つたか知りませんが、報告してあるかどうか、これは事実知らないから知らんでお答えしたわけであります。それから警察手帳性格につきましては、今お読み頂いたようなことと今でも同じ考えを持つておるわけです。警察手帳というものはこれは官給品でありまして、そうしてこれは性格から申しますれば公的のものでございます。そうしてその中に記述することにつきましては限定はいたしておりませんが、併し職務に直接又は間接に関係があり、又その警察官が必要であろうと思うような事項をその都度メモとして、いわゆる備忘録としてそこに記入して置くものであります。従つていやしくもそれが職務に関係のないような事柄は、全然関係のないような事柄は恐らく書いてない、又書くべからざるものである。かように考えております。  それから……。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行……。質問あとでいたしますが、高良君のほうから議事進行に関して発言があつたわけでございますが、御尤もな発言だと思うのです。本日質疑を続けて行けばはつきりして来る問題でございますが、只今質疑を続けるに先だつて高良君の議事進行に関する点をはつきりしておくということが私は非常に適切だと思うのであります。その要点というものは、田中参考人衆議院法務委員会云々ということを言われておりますが、三月四日の参議院における文部法務連合委員会で承わりました、それは警視総監警視総監の直属部下であるところの野口富士署長から承わつたのであります。それ以外我々は公の席上では何も承わつていないわけなんであります。あの時に参考人とその部下から承わつたそのことを正しいものと前提して我々は出発していいかどうか。伝えられるところによりますというと、また我々のこの文書函には三月六日以後の速記録は入つていないからわからないが、伝えられるところによりますと、或いは三警察官が入つたのは観劇のためではなくして命令によつてつたとか、或いは警察手帳にあつたところの教授の身元調査云々の走り書、それも何ら命令したものではなくして、これは單に警察官が自発的にメモしたものであるというようなことも例に挙げればそうでありますし、更に岩間君が今挙げられたのも例でありますが、我々はそういうことを承わつたままになつておるわけであります。そういうことを前提として我々は進んで行つていいのかどうか、その後いろいろ伝えられておるのでありまするが、若しもここに前言に訂正さるべき点があるならば、それをはつきり参考人から承わつて今日の質疑応答をし、更に審議をして行くと最も能率的であり、正しい結論が得られるから、それを先ず発言を求めたいというのが高良君の議事進行に関する発言だと思うわけであります。従つてその点に対しまして、警視総監もその後部下であるところの本富士署の野口署長とも会われたようでございますから、いわゆる真相、真実というものが私ははつきりとわかつておるだろうと思います。それを責任を以て先ず発言願いたいというのが高良君の議事進行に関する動議でございますので、これは誠に私適切だと思うのであります。あと質問を展開して参りますけれども、その点をはつきりここで御言明を願いたい、こう思うわけです。
  29. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 田中さんにお願いしますが、只今高良君、それから岩間君、矢島君から発言されましたことに関しまして、明確に一つお答え下さい。
  30. 田中榮一

    参考人田中榮一君) その後野口署長法務委員会に再び出られまして、前言で思い違いがあつたこと、それから間違つたことにつきましては訂正をしておるはずであります。
  31. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その内容その要点……。
  32. 田中榮一

    参考人田中榮一君) その内容は今覚えておりませんから、これは野口君が発言したことについて訂正したと思うので、私はその際について発言をしなかつたと思いますが、速記を見なければわかりませんが、どういう点でございましようか。観劇したのは單に観劇をしただけで、観劇をしたいために入つたのだということを訂正したと思います。  それからもう一つ、私も覚えておりませんが教授の身許調査警察官が独自の考えでやつたのだろうということは、そうじやない、命令してやつたのだというふうに訂正したと、かように考えております。
  33. 高良とみ

    高良とみ君 警視総監は、あなたと本富士署長及びその管下の数警察官との関連があるから、職域における関連を申上げるのでありまして、あなたが一個人としてここに出ておられて、本富士署長とも下部の警察官とも何ら関係のないかたならば、この点はあなたは辞職をなすつたならばそれは言えると思うのでありますが、その職域におられるから今日はここにおいで願つたのであります。若しそうでなかつたら本富士署長から関係の警察官全部お呼びしなければならないわけであります。今までのところあなたの御認識が、自分は何ら関係のない人間だというようなことでありますが、二、三の例を挙げますならば、例えば今御指摘になつたような、本富士署長は学内の。パトロールは全然命令していない。或いは観劇、ポポロ劇に行つたのも、あの人たちは芸術を愛好するが故に、娯楽のために行つたというふうにどこまでも言い張りなすつたのであります。それから途中で立つて本富士署に電話で以て状況報告したことに対しても、そんなことは知らぬ存ぜぬで逃げた、或いは警察官に至つては手帳に書いた覚えもない、全然書いた覚えもない、知らないというようなことを証言なさることは、警視庁それ自身及び日本の司法警察官に対して嘆かわしいことであると思うのでありまして、その点をあなたが良心に誓つて、この国会において国民の前にこれはどういうことであつたかということを御発言にならないと、あなたの部下は嘘八百を言うが、あなたは全然関係がないということでありますならば、警視総監という肩書を先ずのけてから言つて頂きたいと思うのでありますが、その点を追及しておるのであります。今日はあなたは一個人として自分のことだけを言うならば、これは一つの個人であります。警視総監ではないということであります。警視総監ならば部下の責任に対して明らかにあなたの御認識が要ると思うのでありますが、その点で我々はここで何を言われておるのかわからん、嘘八百を言われるのだ。嘘を言う警察であるならば何ぞ民が従いましようやということなんであります。私は只今矢内原さんから真理の採発だと言われましたが、少くとも嘘を言わない一国家公務員であつて欲しいと思うのであります。如何でございましようか。
  34. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと田中さんに申しまげすが、先ほどあなたが衆議院法務委員会で本富士署長から言われた、あなたが本冨士署長に代つて訂正になつた事件、あなたはそれが衆議院法務委員会であつたのであつて、とおつしやいましたが、先ほどからの委員発言の中にもありましたが、それと同様のことを本富士署長がこの法務文部連合委員会発言をせられております。だからそれをあなたが本富士署長から訂正を要求された点を、この際これは法務文部連合委員会に出ておつた委員でありますから、この前でもやはり一応御訂正になつて置くほうが議事の進行上穏当であろうかと、こう考えるのでちよつと。
  35. 相馬助治

    相馬助治君 発言の前に重大なことを一つ。これは私は劈頭に議事進行ということで発言したことは、高良委員が今突いている問題なんであります。高良委員が今申していることについて警視総監から明答がない限りにおいては、本委員会を続けて行く必要もなければ、又結論も出ないと思うのであります。というのは、御承知のように今委員長が申したとについて、これは警視総監が答弁なさるでしよう、そのことの点はいいのです。第二の問題は肝腎なところになつて来ると、知らぬ存ぜぬでは、我々としてはこの委員会の筋道から言えば、法務文部連合委員会における証言を聞いておる。その後は公的には何ものも承知していない。従つてあれを基準として大学自治を如何に守るかという結論を今生もうとする際に、その後においての個人としての心境の変化等を我々尋ねているのではなくて、事実が前の連合委員会に相違している点があつたならば、全般的に陳謝しろと私は総監に言うのではなくて、真実真実としてそり後変つたことをここで先ず冒頭に陳述してもらう、それによつてのみこの本日の結論が出るのであつて、肝心なところは聞いていないというに至つては本富士署長出席を求めなくちやならならない。警察側の関係者としては本日警視総監お一人が出ておる、そういう意味一甘いを以て、成るほど具体的な枝葉末節なことは知らぬ存ぜぬでもよろしいか、肝心なことは知らぬ存ぜぬでは駄目であるということが一点と、その後変化しておることを真実真実として尤ず全部、兎の糞のようにぽつんぽつんでなくて、全部系統的におつしやつて頂く。若し今言えないというならば、大内原総長には参考人としてお呼びしのに甚だ御迷惑でございますが、休憩する以外には手がない、そうして総括的にその後の変化の状況というものを聞かせられるということが前提でなれば本委員会は審議は一切無駄であるから、どうか高良委員が言つていることについて委員長は責任を持つて田中警視総監の陳述を求めて下さい。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  36. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 一つお諮りいたしますが、ちよつと休憩いたしまして、そうしてこれを適当に処理をすることに御異議ございませんか。
  37. 高良とみ

    高良とみ君 休憩の必要がわからない。
  38. 岩間正男

    岩間正男君 あるかないか聞いて見て、まあ不十分であればもう少し辻褄を合せてもらうと、先ずお聞きしなければわからない、まだお答えがない。
  39. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 本富士署長訂正した点は私も確認いたします。訂正したことを確認いたします。(「それを言つて下さい」、「内容を何も聞いていない」と呼ぶ者あり)ポポロ劇場に入場したのは単なる観劇のためであるということは、これは一応観劇のためもあつたでありましようが、やはり職務上の必要からやつたものと考えると、こういう訂正であつたのであります。
  40. 高良とみ

    高良とみ君 それだけですか。
  41. 田中榮一

    参考人田中榮一君) それから署員が身元調査をしたのは、これは警察官が独自の考えでやつたのだという証言に対して、自分が命令した、こういうふうに訂正しております。それだけ覚えておるのですが……。
  42. 高良とみ

    高良とみ君 只今警視総監の言われたような不誠意な証言では我々は警視庁側の方針及びその真実をつかむことに困難なのであります。その点で警視総監がここに今日出られるについては十分部下とも協議の上、如何に国会の別に真実を披瀝して、そうして国民の則に自分たちのしておる努力、公務員ごしての公務を説明するという誠意がめつてよかつたと思うのでありますか、僅かに一、二を言われて、そのほかの誠意がないとなれば、我々はあなたがたからお話を聞く意義を認めないものでありまして、誠に遺憾ながら今日はこれ以上伺つても意味ないと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  43. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これは一応休憩いたしまして、一応話合いをいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 休憩いたします。    午前十一時三十四分休憩    —————・—————    午前十一時五十七分開会
  45. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 委員会を再開いたします。  質疑通告の順序に基きまして、最初に矢嶋君に御質疑を願います。
  46. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 矢内原参考人にお伺いいたします。  ともかくも我が国の最高学府東大学長である矢内原先生が、研究を犠牲にして数日間に亘つて衆参両院へこういう問題のためにおいでになるということについては、誠にこれは遺憾なことでございまして(「その通り」と呼ぶ者あり)東大学生諸君も(「そういうことを犯すからだよ」「そんなことを言うな」と呼ぶ者あり)従来の問題と違つて、このたびは大学学生側とが全く渾然一体、一本となつてこの問題の処理に努力されておりますが、学生諸君の内部に、自分らの学長をああいうふうに連日両院へおいで願うということは、例えば無届集会を若干やつたとか、或いは好ましくない、或いは政令違反の慮れあるがごときビラを仲間の一部が撒いたことに若干の原因があるとすれば自分らの学長に対して申訳ない、今度の警察の行為に対してその非は非として、ともかく我々の大学におけるところの盛んなるべき学生活動の自主的向上のために学生自身一応反省、再出発しなければならないというような兆があるかどうか、又大学当局としてそういうような指導の考えを持つておられるかどうかということを私は先ずお伺いいたしたいと思うのでございます。
  47. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) 只今学年、試験の行われている最中でありまして、そのために一般学生の動きは比較的不活発でありますが、併し今御質問になつたような反省はすでに或る学部の学生自治会などには非常に濃厚に現われております。大学自治大学自体が守らなければならんという認識は、大学当局は勿論でありますが、学生もこのことを契機として持ちつつあるように思いまして、大学当局は勿論でありますが、学生もこのことを契機として持ちつつあるように思うのでありまして、又大学当局もすでにそのことは学生の代表並びに職員の代表には申し渡してある。
  48. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 承わりまして非常に心強く又うれしく存ずる次第でございます。  次にお伺いいたしたい点は一部には、あたかも大学当局学生取締り大学自治の無能力者であるかのごとく針小棒大に主張されるかたがございます。更には大学は赤の温床であり、極端な場合には社会不安、秩序を紊乱するところの温床であるというようなことを言つている人もありますし、先般の本院における証人の発言の中にもこれに近い証言をしたかたがあつたと私は記憶いたしますが、これらに対して参考人はどういうふうにお考えになるかという点と、更に先般の法務文部合同委員会参考人から、管理権の行使によつて無届集会をやるとか、ともかく校則に反した者は処分しているというような御発言がございましたが、大学の管理権の行使によつて大学自治と秩序を守るためにどの程度今まで処分されたか、その点を承わりたいと思います。
  49. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) 処分件数のほうから先に申上げますが、学内秩序違反のかどで以て処分せられた学生昭和二十四年度において二十名であります。昭和二十五年度において四十一名であります。昭和二十六年度において一名であります。そしてその処分をした学生に対しては、各学部の学部長それから指導教官等がその後も絶えず接触を保ちまして、その後の状況をよく見ております。学生も次第に学内秩序の重んずべきことをよく了解しましてそういう者に対しては処分の解除をいたします。処分の解除をしますときには、処分をするときもそうでありますが、処分の解除をするときにも非常に愼重な手続きをとります。その結果処分解除数は昭和二十四年度に十六名、二十五年度に九名、二十六年度に十七名でありまして、つまり最近一カ年の間に処分を解除された学生数は十七名、新たに処分した者が一名、これが最近の状況でありしまして、学生指導は最近一年間に非常によい結果をみているのであります。そのとき今度の事件が突発したのでありましてこれは私どもが非常に遺憾に思つていることであります。学生管理の組織については詳細はくどくどしくなりますから申上げませんが、学生を管理するのは各学部の学部長の責任であります。そして各学部には教授会がありまして、又教授会の小委員会として学生委員会というのが各学部にできております。こういう組織で学部ごとに学生の面倒をみております、又管理しておるのであります。でありますから、学生を処分するとか或いは処分学生を解除するとか、或いは再入学を認めるとかというときには、各学部の学生委員会が愼重に働いて、教授会でよく審議をしてそうして全学の協議会に提案をいたしまして協議会で決定する、こういう手続になつております。又本部には総長直属で厚生部という事務組織がありまして、そこに厚生部長、厚生課長、学生課長とおりまして、これは各学部とよく連絡をしてその管理をいたしております。その厚生部の学生課長の指揮の下に三十八名の巡視がおりまして校内を巡回しており、又門番をしているわけであります。それで学内にはいろいろの公に認められた学生団体がございます。これらの学生団体が何かの集合をするとか等々のことをするときに、学校できめた規則がございましてその規則に則つてこれを許可するということになつておりますので、公認団体でも学校の認めない行動或いは学校の禁止している行動を侵した場合には、よく調査して事態の重きものは懲戒処分にしておるわけであります。それから非公認、学校で認めておらない団体の学内における活動、これは勿論許さない建前になつておりますが、事実において極めて少数の違反行為が起ることがありまして、これは先ほど申したような管理機構即ち学内の巡視の警戒によつて多くは発見いたしまして解散を命じている。又その責任者に本学の学生がおれば事態の重きに従つて処分する。例えば昭和二十六年度に一名の退学学生を出しましたが、これは都学連という団体がありまして、学生の団体でありますが、東大の団体でありませんで、東大学生は入つておりますけれども、それの集会が禁止を犯して行われた件において処分せられたものであります。それで、東大がこの治安の盲点になる云々ということは私どもの知る限りにおいて、又信ずるところによりますれば、国の治安を脅かすというふうな大きな隠謀が、東京大学校内において行われた、そういうことはないと確信しております。又、大学の当局者の管理能力についてかれこれの御批評もありましたが、私は率直に申しまして、東京大学ほど学生の管理にいてよい組織と又熱心をもつて努力をしている大学はそう多くはないであろうと思われます。で、若干の違反行為が起りますことは事実でありますが、それを以て大学当局の管理の機構が悪いとか或いは熱心が足りないとか言われることは、私どもは努力の足りないことは一生懸命又更に努力いたしますけれども、完全無欠であるとは申しませんけれども、そうひどく悪い状態であるとは思いません。  まあ一例を申しますると、あの警察手帳の件でございますが、警察手帳が紛失しました、とられたのちに、あの手帳は果して戻つて来るだろうかということについては、多くの人がもうああなれば手帳は戻らないと言われた、そういう御意見もたくさんあつたようでございます。然るに結局日にちはかかつたけれども手帳は帰つて来たということは、東京大学の当局者も学生もこの件については真劍に考えて、学部長会議を何度も開き、学生委員会を何度も開き、又夜遅くまで努力をした結果であります。こういうことは私からかれこれ申上げるのは控えておきたかつたのでありますが、若しも翌日にあの福井駿平という学生の逮捕ということがなかつたならば手帳がもつと早く帰つたのであろうと私は思つております。あのことによつて学生に非常な刺戟を與えまして若干手帳の帰るのがごたごたしたと思います。  なお申落しましたが、中央には厚生部という事務組織のほかに全学的な学生委員会という機構がございます。
  50. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 彼ら学生諸君の育つた複雑な時代環境並びに現在の国際的国内的複雑なる社会情勢、政治情勢下における学生諸君の指導というものは極めて私は困難な問題だと考えます。そういう状況下に東京大学御当局が今承わつたような線で御努力なさつている点については、私は敬意を表すると共に、その御努力を多とするものでございます。  次にお伺いいたしたい点は、自治学問の自由という点でございますが、その点について次官通達というのは、まあ私の見解を以てするならば実にこれはうまくできている、こう考えるわけでございますけれども、まあこれらについて具体的なことは後ほど警視総監質疑を交したいと思いまするが、ここで是非お伺いいたしたい点は、先ほど、まあこれは警視総監田中参考人矢内原参考人と討論をお願いするのではございませんで、ただ矢内原参考人の御意見を伺いたいと思いますが、と申しますのは、この通達の第三項の「当該学校長措置することを建前とし、要請があつた場合」云々という言葉につきまして、田中参考人集会を禁止してもそれをどうしても敢行したという場合、実力行使のときだけをこれは意味しているように解釈されてそれ以外の場合は私服であろうと制服であろうと警官が学園内に入ることはこれはとめていないんだというように解釈しているという意味の御発言があつたわけでございますが、私お伺いいたしたい点は、憲法第十九條の思想及び良心の自由、それから第二十三條の学問の自由と、これらを確保する意味におきましての、先ほど矢内原参考人からお話になりました意見につきましては私は全幅的に同感でございますが、先ほど田中参考人から申されましたような意味で、警官が学園内に入ると、まあ講義室に入るとか、我いは教授を尾行するとかいう点についてはこれはこの前承わりましたし、論外だと思うのですが、大学にしても或いは中学校、高等学校あたりにしましても、警官がちよつちよつと学園内に入つて、果して先ほど申しました憲法の線というのが保持できるのかどうか。まあ私の所見は、ともかく警察学校の信頼と協調の下に学園は学園で責任を以て処理して、そうして警察側連絡をとりまあそこに学生の犯罪が起つたならば学生の、やさしく言えば担任の先生といいますが、保導部長と申しますか、そういうかたで説諭し更に場合によれば逮捕してそうしてその教育者の手を通じて警察のほうへ取次ぐというような形でなければ、私は自由という立場から考えても、教育という立場から考えても好ましくないんじやないか。で、警官が直接来て教授をそつちのけにして、教育者を前において、そうして直接手を下す、それで果して学問の自由とか思想の自由というものが確保できるかということについて私は疑点なきを得ないのでございます。この点に関しまするところの参考人の御意見が一点。  それからもう一点は東大内におけるところのパトロールを大学当局は許されているというようなことを私新聞でちよつと拝見したのでありますが、それは事実なのかどうなのか。そのパトロールを若し許可したとするならば、その許可警察権の学園内の行使と自治並びに学問の自由の確保というものはどういうふうな関連性にお考えになつていらつしやるかという点を承わりたい。
  51. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) 第一の点、次官通牒の第三條、これはどういう場合にそういう事態が起るかと言えば、非常に大きな事件が起つた、誰が見てもこれは大変だと思うような場合だと思うのです。例えば学内で非常に非合法的な大きなデモが起つたとか、騒擾が起りそうだとか、学校でどうしてもとまらないから警察官にお出でを願うと、こういう場合は、私の考えではむしろそういう場合にこそ緊急止むを得ない状態と判断して警察が進んで来るということも若し認められるとするならば、そういう場合のほうがまだ恕し得る点が多いと思うのですが、先ほど伺いました警視総監お話は、私の理解したところによりますと、それ以外の日常、平生の場合に警察官が校内にお入りになつて偵察なさる、これは非常に有害であろうと思うのです。前の法務文部連合委員会の席上において本富士署長が、学内に私服の警察官を入れるのは警備上の必要だということをしきりに言われましたが、何の警備かという議員からの御質問に対してただ警備、警戒ということを言われたのですが、警備、警戒というふうな漠然たることで、平生中でビラがまかれるかも知らんというので警官がお入りになつていれば、これは大学自治を犯す一番大きな事柄だと思うのです。それでまあ、学内の様子を常時警察官が中に入つて偵察しておられるということは、これは教官も学生も非常に気持悪く思う。なぜ気持悪く思うかと申しますと、思想調査とか等々いろいろスパイせられるということは落着いて勉強も教育もできない。ですから、平時のそのような偵察こそ最も大学としては困るんで、そういうことは大学学長にお任せ願いたい、これがあの次官通牒の基礎になつておる精神だと思うのです。次官通牒はこれこれの場合を明確にして、こういう場合には大学のほうから要請しておいでを願うということをきめたので、その基礎にはもつと一般的な大学自治の尊重ということがある。これは平時における大学内の管理は大学にお任せ願うと、それが今矢嶋議員の御質問のように、教育上一番いいことだ。研究及び教育の実を挙げるのに最適の方法であつて警察官に常に監督せられながら研究し、或いは教育することは、その実が挙らない、こう考えるのであります。  それからパトロールの問題をついでに申上げます。制服警官のパトロールが東大構内において行われておりますので、これをいつから行われたかということを調べましたところが、昭和二十五年から行われておるという話でありまして、行われたときに大学警察側とに何か了解事項があつたかということを調べましたところが、格別その了解事項もなくて、一般のパトロール制が行われたときに自然に行われたものである。大学の中には病院もございますし、それから盗難事故なども多いので、制服警官のパトロールを黙認せられたというか、事実として行われて来ているのでございますが、今度の事件が起りましたのでこの点は警察側とよく話をし合いまして、制服警官のパトロールの区域とか、その方法とかについては話合をしたいと考えております。
  52. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 他に質問なさるかたもございましようから、もう一点お伺いして矢内原参考人に対する質問を打切りたいと思いますが、それは先ず第一点は、我々はこの次官通達の問題に関しまして、更に今度のいわゆる東大事件につきましては、天野文部大臣を正式に十分招致して意見を承わつたということはないのでございますが、まあいずれ後日天野文部大臣にお伺いすればわかると思うのでございますが、天野大臣のこれに対する見解というものは、新聞等によりますと時間の経過に伴つてかなり相違があるように私は新聞で拜見いたしております。で、参考にまあ私は承わつておきたいのでございますが、参考人は天野文部大臣に報告もし又懇談もされたように新聞で拜見しているのでございますが、天野文部大臣は、次官通達の問題とか或いはこの東大事件の問題に関連して、矢内原参考人とどういう意見の交換をされ、意思表示をされたかという点が一点。  それから次にお伺いいたしたい点は、学問の自由という立場からお伺いいたしたいのでございますが、それは、曾て参考人の前任者であるところの南原学長が平和條約並びに安保條約に反対であるというような講演を大学生の諸君になさつた、こういうことが新聞に報道されたことに対しまして、或る指導的立場におられるところ一の部のかたが非難した、学長がああいう意見を発表されるということは不埓な学長であり、けしからんというような意見で、有識者が非難しただけに私は問題があると思うのでありますが、参考人は現在東大学長の権威ある職におられるわけでございますが、ああいう外交問題、或いは政治問題、それを大学内の自分学生に対して所見を発表されることに対して、或いは政治的なこれに制約が加わるというような事柄が、学問の自由を維持して行くという立場から、どういうふうにお考えになられるかという点を本日学問の自由というものが主要議題になつておりますので、この際参考人から承わりたいと思います。
  53. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) 天野文相とは今度の事件が起りましてから二度会見いたしました。それから文書で以ても報告を提出してあります。私の考えは次官通牒の線はどうしても守つて頂かなければならない。それからそれ以外に何か補足するとか何とかという必要が若しあれば、大学自治の範囲を狭めないように、むしろ拡大するというか、大学自治の限界を何かの形で喰い込まれないように是非とも守つて頂きたいということを申しました。私個人の考えでは次官通牒を確認するというのでそれ以外の立法措置とか、ということは必要なかろうと私は思うのですけれども、つまり次官通牒の線を確認して頂けば、あと大学自治の根本原則に基いて適宜話合つて行けるじやないかと私は思うのですが、その私の一般的見解に対しては、文部大臣は全面的に賛成をして下さいましたのですが、併し、これは私から申上げるよりも……。
  54. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 結構です。
  55. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) それは私の伺つた印象でございまして、それから第二点は、政治問題について東京大学としての見解をまとめて発表するという、そういうことは今までもありませんでしたしなすべきことでないと思うのです。けれども学長なり教授なりが、何かの問題について学問的な立場からこれを論ぜられるということは差支えないことだと思います。
  56. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 田中参考人にはあと質問いたします。
  57. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 次に相馬君。
  58. 相馬助治

    相馬助治君 今まで法務文部連合委員会、それから本日の委員会等等で明らかになつたことは、大学自治は飽くまで守らなくちやならない、併し又警察のいわゆる治安確保という面から見ても、單に大学一つの治安確保上の死角になつてはならんということも、それは伴つて考えられることだと私は考えるのです。今回の事件について、警視総監も本日訂正された面でお認めになつておりまするように、警察のとつた手続においても手落ちの点があつた、こういうことが言い得ると思うのです。併し今度は警察がそういう手落ちがあつたということだけが強調され、追求されるということによつて大学の中において学長の善意のお気持にもかかわらず、何と申しても、学生諸君は若くありまするので、これを契機としてやはりふみ外した行為が今後起きるのではないかということについて世の識者は憂えている面が相当多いと思う。これに関しては今矢嶋委員質問に答えて、矢内原学長が自信のほどを示されて、教育者としての立場からは極めて結構だと存じまするが、私はそれについて重ねて具体的な点について伺つておきたいと思いますることは、先ほどの警視総監お話の中に、その後も余り好ましくない内容のビラが散布されているという事実が報告せられております。従つて、本問題を契機として、どういう学長としては学生に対して指導を強化されて行くおつもりであるかどうかということを一点お伺いしておきたい。  と同時に、警察手帳の問題につきまして先般新聞に報告されたところによりますと、警察手帳の内容をパンフレツトにしてこれを外に配つていると、こういうことを聞きました。これはいろいろの今までの関係上、一方では学生が逮捕されているというような面から、学生諸君が何か法的な論争になつた場合の重要なる参考資料として写真をとつたという先日の参考人の陳述と我々は了解していたのですけれども、これがパンフレツトになつて他に出て行くということになると、問題は又別に新たなものを含んでいると思うのです。そこで法的に警察手帳を盗んだということは何ら違反でないという結論だそうでございますが、総長としては本問題に関して道義的にどういうふうにお考えになつておられるか。この二点についてこの際伺つておきたいと思います。
  59. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) ビラの問題は毎日のようにとおつしやるけれども毎日出ているわけではないのです。ビラは先ほども申したように、東大自身の巡視が巡回しておりますので、警察側がお集めになるよりたくさん我々のほうが集めているのです。その内容もよくわかつております。でこの間も入学試験がございまして受験生に対してビラを配ると言うので配つてはいけないと言いまして一つはとめたんですが一つは配つちやつたんです。それは行つてすぐ抑えて来ました。それでこのビラまきを全部なくするということは、それはなかなかむずかしいのですが、(「どういう内容のものですか」と呼ぶ者あり)それは政令三百二十五号違反ビラではございません。大学自治を守らなければならんというようなビラでありましたが、措置としては、先ほども申したように、今教職員に対しても、学生に対しても、それぞれの組織を通じて非公認団体のビラとか、或いは学内で認めない場合のビラの散布とかは大学自治を守る上において困る点があるから、よく注意をして大学当局に協力をするようにということを言渡してそれを励行するつもりでおります。  それから第二の点のパンフレツトの問題ですね、これは私としては前に連合委員会のときに申上げましたように、好ましくない事柄でありますのでやめてもらいたいと考えておりますが。
  60. 相馬助治

    相馬助治君 只今警察手帳の内容をパンフレツトにして外へ出すことはやめてもらいたいというお話ですが、私はそのことについてもつと突込んでお聞きしたいのです。そういう事実を総長としてはお知りであると思うのです。でお知りであるとするならば、やはりこれがやめてもらいたいと思うという証言の上で足取りのようになりますが、むしろ進んでこの問題については大学としての立場をはつきりさせて処置する、これはどう取扱うかということをはつきりさせておいたほうが、大学自身の自治を主張するためにも、みずからのほうで工合の惡いことはちやんとしておくという建前から必要じやないかと思うのですが、重ねて一つその辺についてお尋ねしたいと思います。
  61. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) 手帳の内容を公開するということが若しも犯罪行為であるならば、これは勿論それはいけません。ところが犯罪行為でなく、今はもう世間に拡がりまして中央公論の紙上にも掲載されているのであります。それで皆知つてしまつたことなんです。それで秘密でなくなつたわけであります。社会の公有の財産みたいになつてしまつたわけです。これを学生がどういうつもりで売つているか私はまだ仔細にその事情は知りませんけれども、福井君という学生は逮捕になつておりましてあれは起訴されておりまして、何か救援会ですか、只今ですね、学生が作りました、でその金でも要るのじやないかと思うのです。それでやつているのじやないかと。それは想像ですけれども取調べたわけではありません。それでなおこれは取調べまして学内秩序に反するということであるならば、それは処置いたします。
  62. 相馬助治

    相馬助治君 この点については私は総長の見解とやや異にする自分意見は持つておりますが、今日は時間を詰めて参考意見を聞いているのですから、その御証言を御証言として受取つて私の質問は以上です。
  63. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつとお諮りいたします。これを以て……
  64. 岩間正男

    岩間正男君 私少し都合が悪いので……。田中証人にお伺いしたいのでありますが、先ず第一に警視庁として、警官に対して憲法二十三條の学問の自由を守る、こういうことについてどういうふうに趣旨を徹底さす、又どのように具体的にこれは措置をされているのか、私は憲法を守るのは、当然日本警察官の任務だ、何といいましても、一番根本の法典でありますから(「共産党は守つているかな」と呼ぶ者あり)違憲的な行為は許されないと思う。先ず第一は、警官として考えなければならんことは、憲法條項についてどのように、殊に公務員としてもこれを守り拔くかという努力がなされなければならない、その点について警視庁はどういうような具体的措置をとつておられますか、先以てそれをお伺いいたしたい。
  65. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 警察官に対する憲法の趣旨の徹底でありまするが、これは勿論警察官といえども十分その点は(「もう少し大きい声でおつしやつて下さい、聞えません」と呼ぶ者あり)了解しておりまして、国民の一人として又警察官として憲法の條章につきましては十分研究もし、又学校においてもこれを教養し、又本人自身としましても、これらの点について十分に理解し、又これを実踐しているものと私は信じているわけであります。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 どうも少し頼りないのですが、信じているということをお聞きしているのでなくして、日本警視庁として、東京の警視庁としまして殊に警視総監は一番責任者です、法を守る立場から具体的にどのように、これを警察官に守るように、日常の行動の中で、殊に国民と接触する一番重要な面ですから、この点どのように徹底する措置を具体的にとつていらつしやるか、それを聞いているのであります。警察官が守つておるかどうかというような抽象的なことをお聞きしているのじやありません。その点具体的にどういう方法をとつておられるか。
  67. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私は今お答えしましたのは、警察官として憲法ということは、これはもう国の根本法規でありまするし、憲法の條章の点につきましては、十分にこれは学校教育その他又警察学校におきまして、或いは実務の点におきまして十分これは教養いたしております。それから又そのほか平素における職務執行の場合におきましても、十分にその個人の基本的の権利を尊重し、又民衆との処遇の上におきましても、懇切丁寧にこれを行うべき旨を機会あるごとに私どもは指導いたしております。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 殊に日本のこの最高学府である東大、これを一つ自分の管轄下に持つている本富士署に対しましては、特に何か留意されておりますか。こういう点で学問の自由と直接対決するところにあるわけですね、この点何か特別な措置をとつておられますか。
  69. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 従来この本富士署というところは、御承知のようにこの管轄の中の相当部分が大学構内を占めておりまして、又ここによつて起る犯罪等も相当ありまするし、又従来東大という一つの特殊な国家の最高教育機関もあることでありますので、これらに対しましては、勿論署長に対しましても十分な取扱の上において過誤なきよう私からも署長任命の際にも十分に注意をいたしております。又署長もそのつもりで大学に対する考え方につきましては、先ほど申しました学園の自治並びに学問の自由ということにつきましては、十分にその点を了解せしめた上で職務の執行をさしているのであります。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 私はそういう点についてお伺いしたいのですが時間の関係から伺わないのでありまして、あとでまあ二、三。  第二に教育基本法というものがございますね。この精神というものは、これはどういうところが一番重要な問題だと田中警視総監はお考えになつていらつしやいますか。この根本精神というものはどういうものか。
  71. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 教育基本法は、私は十分にまだ研究は……不行届で或いは私の説明が不十分であつた一つお許しを願いたいと思いますが、教育基本法の精神と申しまするのは、要するに将来の国家を担う第二の国民に対して、いわゆる真理を十分に教えこむ、それと同時にその学校を通じてその学生に対して将来立派な国民たる、いわゆる人格的の素養を與えるというのが教育基本法の精神であろうと思うのであります。それがためには飽くまで教育というものは絶対に中立であつて、如何なる主義、主張にもとらわれず、飽くまで公正なる教育を施し、従つて学校というものは政治に巻き込まれてはいかん、飽くまでこれは教育中心主義で行くべきものが、教育基本法の根本的な精神であろう、かように私は理解いたしておるのであります。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 殊に本富士署の職員なんかには、この教育基本法というようなものについて、特にそういうような趣旨を徹底するような措置をとつておられますか、簡單一つ
  73. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 勿論教育基本法を箇條的に私は署長が一々これを指導することはなかろうかと思いますが、少くとも教育基本法に書いてある基本精神程度は十分に都下に私は徹底しておるものと確信をいたしております。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 この基本法の中で今をでの日本学問の自由の歴史的なあり方から考えまして、つまり率直に申しますと、戰争前の学問の自由がふみにじられた、ああいうものから関連しまして不当な権力の抑圧、そういうものの前に影響されない、こういう点が非常に大きな一つ精神になると思います。あなたが今おつしやられた点のほかに、こういう点はどうなんですか。
  75. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 勿論教育につきましては、これはいかなる政治の力も又いかなる権力もこれに対しては侵害できない。これはもう御承知のように憲法によつて教育の自由というものは尊重され、保障されておりますので、従来といえどもどもとしましてはこの教育の自由ということから教育の内容につきまして警察側から何ら干渉し、拘束した事実は絶対にないと考えております。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 その後これが十分徹底されているのかどうかという点では「具体的に例を申上げてお聞きしたいのですが時間がありませんからやめますけれども、大体今のような精神が徹底されていると考えるということですが、尾行とか身許調査、こういうことで学の自由が守られると総監はお考えになつていられるかどうか。警察手帳に現われたようなことが行われて、学の自由というものが果して守られるか、どうお考えになりますか。
  77. 田中榮一

    参考人田中榮一君) この尾行とか張込みとか身許調査というようなものは、これは従来の警察におきまして必要がある場合においてはこれを実施いたしております。これは或いはそのときどきの場合によりまするが、犯罪の捜査のため或いは犯罪予防のため、そのほか行政警察上必要な場合におきまして或いは身許調査を実施する場合もございます。又犯罪の予防、撲滅、そのほか必要な場合におきまして特に尾行、張込み等を行うこともございます。併しこれらの場合におきましていつもその者に対する個人の自由を侵害したり、或いは本人に脅威を起させたり、或いは本人の名誉を毀損するというようなことは絶対にいたしていないのでありまして、いわゆる本人には全然知られないようにかような方法を従来やつているのであります。従つてお話のそれをやつたからといいまして、必ずしも学問の自由を侵害した、学園の自治を侵害したというようなことは私はなかろうかと思います。
  78. 岩間正男

    岩間正男君 只今私は非常に重要なことをお聞きしたと思うのでありますけれども、私がお聞きしたいことに端的にお答え願いたい。私は尾行とか身許調査で学の自由が守られるかどうか、殊に犯罪の起つた場合とか何とかというようなことを挙げられましたが、例えば大学教授八人か何人か身許調査や思想調査をやられたことが手帳に現われているのでありますが、ああいうことをどういう法的根拠でなされたか、その法的根拠を挙げて下さい。これはあなたが最も詳しいと思うのでありまして、憲法並びに警察法、そういうところを一つ、(「治安維持法だ」と呼ぶ者あり)治安維持法ということを自由党の委員が偶然に言うているのですが、治安維持法があるそうですが、どうぞ今の法的根拠を挙げて下さい。
  79. 田中榮一

    参考人田中榮一君) これは警察といたしまして、いろいろ行政警察上から必要の場合でございますし、又警備上から必要な場合もございまするし、又いろいその他の理由から身許調査というものは従来もやつております。又例えば或る官庁から身許調査を依頼される場合もございまするし、そういうような場合におきまして、警察といたしましてはいわゆる民主警察といいますか、このサービス面からいいましても当然それらのことをやつているということを申上げます。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 私は法的根拠について伺つているのでありまして、そういうような何だかあなたたちの個人的な判断、或いは拡張解釈ですか、そういうようなことでなされるということは非常に重要だ。そういう判定をするのはどこが主体かという問題が起つて来る。このことは私は触れてないですけれども、法的根拠はどこにあるか。(「警察として必要なんだ」と呼ぶ者あり)そんな必要があるか。警察として必要があるということは、日本国民として憲法によつて規定されている範囲内で必要かどうかということが決定する。それは国民が決定すべき性格のものじやないか。警察官が、公務の執行官がそういうことを独断で断定するということは言語道断である。これは釈迦に説法だと思います。そういう点から法的根拠について伺つている。これは人権の問題としまして聞捨てにならない問題でありますが、尾行や身許調査も今までやつていたという話でありますが、併し今度の具体的に申しますと大学教授とか学生とか、そういう場合の身許調査というのはこれはどうなんですか。先ほどの矢内原総長の御証言によりますと、そういうことによつて学の自由というものは非常にこれは抑圧される、こういう御証言があつたのでありますが、あなたはどういうふうにお考えになつているか。先ず法的根拠についてお伺いします。  それから具体的にそういうことをやつてあなたたちはそういうふうに自己判断でやつておられますが、非常にこれは私たち考えましても、絶えずどこからかじろじろ見ていられる、そういうふうになればこれは非常に心理的に大きな影響を持つものです。こういう点と、二点についてお伺いします。
  81. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 警察としましては、先ほど申しましたごとく行政警察の必要上、又犯罪防止、その他の必要上から一般的な事項としまして従来慣習として身許調査を実施しております。この程度の身許調査というものは、これはひとり警察のみならずいかなる職域におきましても身許調査は私はやつていると思うのであります。本人にわからずに、適当な憲法の範囲におきまして、絶対に個人の自由を侵害せず、名誉を毀損せず脅威を與えないという方法で身許調査をするということは、これは別に、従来の慣習としてやつているのであります。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 慣習としてやつておられる。これは従来の慣習というと、これは或いは戰争前の特高警察の慣習としてやつているのですか。こういうことは非常に重要な問題だと思う。それから法的根拠はそうするとお答えになることはできなかつたわけですね。法的根拠を挙げて頂きたかつたのにお答えがない。(「必要に応じてやるんだよ」と呼ぶ者あり)必要に応じてというのは何だ。委員長少し注意して下さい。  そこで昨日のこれは田中警察総監の御証言によりますと、新聞で見たのでありますから明らかではないのでありますが、ここでなおお聞きしたいのですが、教授の身辺調査は渉外関係の命令でやつているというようなことを、これは昨日衆議院法務委員会ですか、(「自由党総務会だ」と呼ぶ者あり)自由党総務会ですか、お答えになつたようですが、これはどうでございますか。
  83. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 渉外関係でやつた点もあると思います。渉外関係によりいろいろな依頼もございます。それによつてつたこともあると思います。
  84. 岩間正男

    岩間正男君 そういうようなことは、これはどういつた意味ですか。日本警察に対して渉外関係からそういう調査の依頼があつたと、そこで特にお聞きしたいのですが、そうすると、渉外関係ということをたてにして何でもこれはやつていい、日本の秘密警察が、警察国家が非常に世界の問題になつて、これの復活について警戒を払われている。又この渉外関係と言いますが、日本の秘密警察、特高警察これを完全に廃止してしまう、こういう根源を断つということ、これがGHQの日本管理の根本方策の一つである。これは嚴とした事実です。どういう所からそういう尾行をしろ、身許調査をしろということを命じたのですか。渉外関係から頼んだのですか、これは聞捨てにならない言葉である。あなたたちはそういう渉外関係から頼んでやつて何でもそこに根拠を設ければ天降りができるなどとというような、まさかそうではないと思いますけれども、若しそういうような考えで証言されたとすれば私は重大問題だと思う。これは日本の管理政策違反である、そういう点かは言えば。これはどうですか、この点をはつきりお聞きしたい。
  85. 田中榮一

    参考人田中榮一君) この尾行、張込等は勿論この渉外関係ではないのでありまして、身許調査の分につきましては、渉外関係筋の依頼によつてつた分もあるとかように答えたのであります。
  86. 木村守江

    ○木村守江君 議事進行について。先ほど委員長岩間君の質問に対して初めは委員長意見としては矢内原学長質問してもらいたいと言つて矢内原学長に対する質問を許したはずです。ところが特別に極めて簡單だからという岩間君の申出によりましてあの発言を許されたと思うのです。で、もう大体において極めて短い時間は経過していると思いますのでこの辺で休憩をお願いいたします。
  87. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではこれで休憩することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではこれにて休憩いたし、午後一時三十分に再開いたします。  なお二人の参考人のかた、天野文部大臣と、木村法務総裁がこの時間にお見えになりますので……。    午後零時五十八分休憩    —————・—————    午後二時一分開会
  89. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではこれから委員会を再開いたします。最初に岩間君。
  90. 岩間正男

    岩間正男君 それでは午前中に引続きましてお伺いしたいのですが、先ほどの渉外関係からいろいろな命令でやつておる。こういうお話でありまして身元調査を頼まれた、こういうようなことでありますが、そうしますと尾行をやるとか、思想のことまで、こういうふうなことまで頼まれたのでありますかどうですか、その点お伺いしたい。
  91. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 尾行とか張込みと申しますのは、これは警察法の第一條に犯罪の捜査及び被疑者の逮捕、そのほかに行政警察上、或いは許可認可の場合、そのほかいろいろな單独法規があるわけであります。これらの法規の執行に当りまして警察取締上その他行政警察上、必要な場合におきまして身元調査をするわけでありまして張込みとか、尾行とかそういうことは全然ほかから命令を受けておりません。
  92. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと張込みとか、思想調査だとかそういうことは警察官が独断でやつておるわけですね。そうでございますか。
  93. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 警察職務執行上必要ある場合におきましては、行なつておるわけであります。
  94. 岩間正男

    岩間正男君 先ほども法律根拠は示されなかつたのでありますが、もう一つ東京都の公安委員会あたりでこういうことは指示されているのですか、これは警察官の單独……、何ですか公安委員会から指示されて当然やらなくちやならない……、重大問題だと思います。なぜかと申しますと、先ほど申しましたように日本の連合国軍の管理政策の中で、最も廃棄しなければならない條項の中の一つの重要な問題、特高警察、秘密警察、そういうものを根絶する、新たに設けられた公安委員会としては、こういうふうな警察官の行動については、非常に大きな関心を持つのは、当然私は職掌柄なさねばならない、或る意味では最大の任務だと思うのでありますが、従いまして当然東京都の公安委員会あたりから、そういう指示があつたのでありますか。それともどこからか別な指示があつたかということが一点。もう一点は具体的にお聞きしたいのですが、何か警察手帳の中にあります八人の教授でありますが、何か犯行の事実でもあつたのでございますか、先ほどのあなたのお話では、犯行のある場合にはそれに対して張込みとか、そういうこともでき得ると言いますが、それは私はわかりません。八人の教授は具体的にそういう事実があつたのでありましようか、それは学問の自由と切離すことができない今後の問題だと思うのであります。
  95. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 今の尾行とか張込みとか、そうしたものは別に公安委員会から指名とか命令とかそういうことはございません。これは今私が申上げましたごとくに、警察職務執行の場合に必要である場合においては、さような方法をとる場合があるのであります。従つて公安委員会から特別に命令、指名された、そういつたことは全然ございません。  それから教授の身上調査につきましては、勿論これらの教授かたがたは学識経験者であり人格も崇高なかたであり、何ら犯罪なるものは全然ございません。この点ははつきり申上げておきます。
  96. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、これは第一の点につきましては公安委員会がこれは指示した事実はない、このことは確認しておきたいと思うのであります。これは又我々としましては、公安委員会にもこういう点を明らかにして頂きたい、これは今後の問題だと思いますが……。それから第二のこれらの教授八人のかたは学識経験が非常に豊かなかただ、人格も勝れたかただ、併し私は東大には学識経験、人格の勝れたかたがたくさんいらつしやる、特にこの八人を選ばれた根拠はどうですか。何ですけれども矢内原学長以下たくさんのそういう優秀なかたがおられる、そういうかたについて、特に八人の人を選んでそうしてそこにこういうような警察手帳の内容のようなことが行われなければならなかつた原因というものは了解に苦しむ。あなたのお話のようなことでしたら全部の教授に対してなされるということになるのじやないかと思います。
  97. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 勿論これらのほかの教授かたがたもいずれもこれは学識経験者であり、立派な人格の持主であり、我々の尊敬するところでありますが、ただこれらのかたにつきましては、必要がないから調べなかつただろうと私は思います。調査の必要がなかつたら調べなかつたと考えております。
  98. 岩間正男

    岩間正男君 その必要というのは何ですか、その必要を伺いたい。
  99. 木村守江

    ○木村守江君 警察としての立場上……。
  100. 岩間正男

    岩間正男君 警察としての立場上、そんな勝手な判断は許されない、なぜかというとこれは憲法において一つのそういうようなことは禁止されておるし、日本の特高警察の廃止後においてはそういうことは絶対にされない、個人の自由というものはこれは侵されないことになつておるはずです。従いましてそういう侵犯事項までなさねばならない、こういうことはどういうことなんですか。
  101. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私は身元調査憲法上禁止されておるということは、ちよつと肯定できないのであります。いろいろ行政上必要な場合におきましては、先ほど申述べましたごとくに本人の身元調査、而もその方法につきましては、憲法上許されたる範囲において、当然これは現在も行われておりまするし、これが私は憲法違反であるとは考えていないのであります。又なぜこれだけの教授調査したかということは、私としましては今渉外的の関係もあり、必要によつてこれだけのもを調査したというほかにお答えできんだろうと思います。
  102. 岩間正男

    岩間正男君 それは意見の違いでありますから、私は議論をしない考えでありますが、あなたの御意見には肯定できない。そういう勝手な解釈警察官がやつておられるとすれば、特高警察の復帰は期して待つべきものがあるのであります。この点は私は了解できないでありますが、そうしますると、八人のかたは渉外局のほうから特に名を指されて来た、こういうわけなんですか。そうしてこれと関連して伺いたいのでありますが、これはどういうことになるのですか、先ほど日本の管理政策の中で一番大きな問題として特高警察、秘密警察の根絶ということで大方針で臨まれて、こういう立場にあるとき、それを渉外局が頼んで来たということは、これはどういうことですか、それで而もあなたのお話では大学の人格、学識優れた教授と言われておる。八人のかたはそれにもかかわらず特にそういう人たちを選んでやつて来た。これははつきり何でございますか、渉外局から名を指して頼んで来たということでございますか。
  103. 田中榮一

    参考人田中榮一君) この席上ではどこから依頼されたか、又どの名前をどういうふうに依頼されたかということは、私はここではつきりお答えを差控えたいと思います。ただ今お話の中にかかることが特高警察であるというような御見解でございますが、この点につきましても、ちよつと私から一つ申述べてみたいと思うのでありますが、御承知のように特高警察というものは、一つの犯罪そのものを許すべからざるものとしてこれを取締るとか、或いは国民の思想を一つの思想に統一するとか、そうした場合においてのみこれを確保するために特高警察があつたと私は考えておるのであります。現在の憲法下におきまして特定の思想を持つことがいけないとか、或いは一つの思想に統一するというようなことは現在の憲法下においてはこれは認められていないことであります。如何なる思想を持とうが、又如何なる思想を表現しようが、これは憲法に認められた基本的人権であると思うのであります。従つてかかる状態下におきまして思想を対象とした取締りというものはないわけであります。従つて思想を対象とした取締りがないならば、その思想を対象とする取締りを根拠とする特高警察というものはあり得べからざるものであります。従つて今かような身元調査をしたからといつて、直ちにそれが特高警察であるようなお感じは、これは私とあなたとは若干見解を異にしておると思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  104. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 簡單にして頂きたいと思います。
  105. 岩間正男

    岩間正男君 時間切れでございますからやめますが、この点につきましてはここでいろいろ詳細に盡したいのでありますが、その限りでございませんから私は余り述べませんが、ただ今のお話でありますというと、現実はどうかというと、そういう思想的な調査がないなどということは、現実に起つておる事態を見てそんなことはないなどということは、非常に私は強弁に過ぎない、この事実を私は指摘したい。  それからもう一つ最後に伺いたいことは、昨日木村法務総裁は、学生が叛逆したりものに反抗する、そうして現状が不満であつて、新らしい時代に対処して一つの要求を持つ、当然そこに現状の不満な、それから又憲法が根本からひつくり返されるようになつておる現状の矛盾におきまして、当然こういう状態は平和憲法を教わつた学生としては我慢できない。殊に大学構内警察予備隊のビラが貼られる、そうして平和運動が彈圧される、そうして平和を飽くまで守ろうとする努力が、全部それが一方的な判断によつて、政令三百二十五号とか何とかそういうことが決定される。これは我慢ができない。従いまして当然それに対して反抗する、この反抗こそ青年の本質である。これによつて青年は進歩するんだというようなことを、これはそういうような趣旨のことを木村法務総裁参議院で述べておる。従いまして大学の見方というものはそういうような内容の見方でなしに、これを今後警察官大学自治を考える場合に、形式的に杓子定規で以てこういうことを扱つて行つたら、大変な私は失敗を繰返すことになると思います。木村法務総裁が言われたそういう趣旨にも合致しないと思いますが、こういう点は警視総監はどうお考えになりますか。最後にこの一点だけ伺いまして私の質問を終ります。
  106. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私はその木村法務総裁に対する質問並びに総裁の答弁の内容等はしかと了承していないのでありまするが、我々といたしましても現在の若い学生の何と申しまするか、権力に対してややもすれば反抗せんとする一つの気持、それが正しい正義感から来ているというようなものに対しましては、我々はこうした若い者の気持というものは十分にこれは理解し、又これを正しい方向に導くように、これは学校御当局が当然指導せねばならないと考えております。ただ若い者のこのややもすれば反撥するというその気持を利用して、或る一部の仮に勢力がこれを利用して、学内の秩序と平和を乱すようなことがあつたならば、これこそ私は教育基本法に認めておるところのいわゆる学の独立ということは当然できないのではないかということを憂慮いたしておる次第であります。
  107. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 次に荒木君。極く簡單一つお願いいたします。
  108. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 前後二回に続いてお話を聞いたわけでありますが、その内容から伺いまして学問の自由、延いては学園の自治という問題の根本的な考え方に警視総監も、それから学長のほうも見解に大して相違がないと思います。ただ実際問題としてそれではこれをどうして守つて行くかという、実際の問題になると両者の間にかなり意見の相違があると思います。従つてこれを解決して置かないと、問題は今後に残るというふうに私は思うのであります。そういう立場から若干警視総監にお伺いしたいのですが、問題になると思われる点は五つ六つあるように思うのです。現在行なつている学内のパトロール、これについては余り大きな意見の違いはないように私は聞いておりますが、その次に現在警察が行なつている、常時学内の内偵をする、ふだんに警察官が学内の内偵をする、これは非常に問題があるように私思うのです。それから取る教授或いは学生に対して尾行をしたり或いは身元調査をしたりする、これも私は非常に問題があるというふうに思うのです。こういうことをして果して学園の自治がこれで守れるかどうかというところにかなり疑問があるように私は思うのです。そこで身元調査の問題については先ほどから岩間君からもいろいろ御質問があつたようですが、警視総監の説明では行政警察の上から、或いは犯罪防止の上から身元調査をしているんだと、こういう話でありましたが、それだけでは身元調査をする必要を我々は十分に理解することができないわけなんです。東大教授の或るかたがたの身元調査をする、これは犯罪防止の上からするんだということだけでは、どうも納得が行かないのであります。その教授の人たちの行動が、或いは言動がどうしても危險である。犯罪防止上その人の身元を調査して十分平素から監視しなければならない、こういう理由をもう少し具体的に挙げられないと、私どもこういう観点からだけでこういうことをやられるということになると理解ができないし、又こういうことがやはり学問の自由を非常に阻害する原因になるというふうに私は考えておるんです。そういう点からこの身元調査という問題にはもう少し具体的な説明をして頂かないと困ると思います。
  109. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 身元調査と申しますることは、これは非常に何か深い意図のあるようにも一応窺えるのでありますが、現在ではいろいろの意味において身元調査というものは、やはり警察としましては便宜上やつてあげているといいますか、そういうようなことでやつております。例えば或る官庁から身元調査警察へ依頼される、或いは学校から依頼される場合もありましようし、或いは又渉外関係で依頼される場合もありましようし、ときには又必要な場合においては、犯罪の有無等があつたかどうか、或いはそういつたことにつきまして個人の会社等からこの点はどうであつたの一つ内容をお調べ願いたいというような身元調査も毎日相当たくさん参つております。従つて今のこの教授の身元調査というのも、私はそう深く、特にこの教授が思想が危險であつたとか、或いは本人の平素有する学説がどうであつたとか、そういうような問題では全然ないと思つております。
  110. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は会社から依頼を受けて身元調査をするとか、或いはその他の機関から身元調査をする、そういう問題を言つているわけではない。今度の東大事件に関係して、東大教授の、何人か私はよく知りませんけれども、その人たちが身元調査をされているということは、簡單に黙過することが私は到底できない気持です。特定の教授に対して身元調査をするというからには、それ相当な理由が私はなくてはならないと思うのです。その理由が明らかにされないでこういうことが行なわれるということは、非常な不安を與えると私は思うのです。私はこういう種類の調査教授だけでなしに、他の方面にも行なわれていることを知つております。例えば労働組合の指導者に対する身元調査というふうなことも現実に行なわれております。これがはつきりした理由がわからないところから、かなりの不安を與えていることも事実なんです。特に私は東大教授というふうな身分にあるかたの調査をするということには、よほどはつきりした理由がなければならんのじやないかというふうに私は考えるのです。そういう点から言つて、大した理由はないのだということは、私はこれはやはり総監が学問の自由は守つて行きたい、学園の自治は尊重して行きたいという考え方と矛盾して行くのじやないかというふうに私は思うのです。この問題について今日の新聞にも出ておりましたが、警視総監は自由党の総務会において、教授の身辺調査は渉外関係の命令でやつているというふうに御説明があつたようです。そういうふうに新聞には出ているわけなんですが、これはそういうふうな筋から行なわれたということであれば、又私はそういう事実があれば、それは又別の問題として考えます。併しそうでなしに、警察の考えによつてこの人たちの身元調査をしたのだということになれば、私ははつきりした理由がそこにない限り教授の地位にあるかたをそう何でもないのに、あれの身元調査をしようか、これの身元調査をしようかということにはならないのじやないかというふうに思うのですが、その点もう少し明確にして頂きたいと思います。
  111. 田中榮一

    参考人田中榮一君) この教授の身元調査につきましては、渉外関係の照会によりまして実施したわけであります。従つて如何なる理由でやつたか、私どもは存じません。C荒木正三郎君 渉外関係から身元調査の照会によつてつたということが明らかになれば、私はこれは又別個の問題として質疑したいと思います。これは警視総監に対してでなしに、むしろ政府当局に対してどういう関係になつているのかという点を明らかにしたいと思いますので、これ以上警視総監に対してこの問題について質問することは私はやめます。  次にこれは学長と、総監との意見の食い違いの重要な点は、総監はやはり常時学内の内偵をするということは必要だと、こういう見解であつた学長は、これは学園の自治を侵害するので非常に困る。こういう問題でありますが、これはこの前にも述べたのですが、治安維持に名をかりて学園の自治が干犯される、こういう例を私は幾多知つておるわけです。そういうことを考えるときに、やはりこれは学園の自治に大きな不安を與えるというふうに私も考えておるわけです。で、これは学園内の自治については、やはり学校当局を信頼してそれに委させる、そうして大体次官通牒で示されたようなところで今後やつて行く、こういうことがいいのではないかというふうに思うのですが。この点は総監としてのお考えはどうでしようか。
  112. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私もそういうことが非常に望ましいと考えております。併しながら現実の状態は、かくのごとく今いろいろ学内の治安の取締ということがいろいろこうやつて委員会で皆様方が非常に御心配になつておるにかかわりませず、やはり学内においてはいろいろな不穏なビラ等が撒かれておりまして、この点は警察といたしましても、このまま黙視することのできないような状態にあるのであります。従つて我々は勿論学園の自治を尊重するということを言つておるのでありまするから、学校当局とも十分なる連絡をつけて、そうして学内の治安維持のために相共に協力いたしたいと考えております。併しすべてがこの学校了解の下に、すべてが学長の承認がなければ、取締ができないというような非常に拘束された状態におきましては、とても今のところ職務執行が不可能なわけです。現在でもやはり毎日のようにビラがまかれておりまして、勿論このビラの中には法規違反のビラもないと思いますが、併しやはり中には非常に政令三百二十五号違反のもの等が相当撒かれる虞れがあるのであります。現在でも三月七日にも現に撒かれております。それから三月八日にも撒かれております。九日、十日とそれだけ連続して撒かれております。そのビラはどういうビラが撒かれておるかと申しますると、私はこのビラが法規違反であるかどうか、それは今ここで申上げられないのでありますか、ここにございます「人民の大学、号外」こういつたビラが今でも多数撒かれておるわけでございます。これは果して法規違反をしておるかどうかこれは私はここで見解は申述べたくないと思います。こうしたことが常に行われておるという事実だけは一つ御認識願いたいと思います。
  113. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この余りよくないビラが学園内に撒かれておるということで、やはり警察官を学園内に入れて内偵をする、これだけでは私はどうも理解しがたいのです。これを学校当局が黙認をして、いわゆる不穏なビラが撒布されても、学校当局が黙認をして放置してある。或いは奨励するとか、こういう事態であれば私はそれは又別だと思います。併し先ほどから学長からいろいろ話があつたように、学園の規則に従つて、そうして学園内の管理はできるだけ忠実にやつているのだ、こういうお話がありまして、こういう不穏なビラは学園内だけに撒かれるのではなく、世間でも一杯配られます。世間に配られる場合は、警察当局がその問題についての処理をせられるわけであります。学園内においてはやはり学校当局がそういう問題について努力しておられる。その努力のあとも私ども十分窺うことができるわけです。だからそういうビラが撒かれたからといつて学校のいわゆる管理が悪いというので、直ちに警察を入れるということには、私はならないのじやないかと思います。それではそういう名前でどんどん警察が学園に入れば、これは学園の自治というものは私は根本的に崩れてしまうと思う。それは如何に充実した警察でも、日本国中に不穏なビラは一枚も撒かれないということはないと思うのです。それは幾ら一生懸命にやつて頂いても、日本国中には至るところにこういうことが起るのです。それと学園内にもときどき起る。これはやはり学校側に責任を以てそういう問題を処理してもらう。こういう方向に行つてこそ学園の自治というものは私は守られて行くんじやないかというふうに思います。これは多少私の見解を述べたということになつて恐縮に思うのですが、そういう点から、私はやはり結局はこの次官通牒というものは、先ず私ども納得できるようなものだというふうに考える。これをやはり基にして、この問題が双方に了解されて、そうして今後余り問題を起さないようにしてもらいたいというのが私の気持なんです。そういう点で十分御配慮を願いたいと思います。私はこれで質問を打切ります。
  114. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちよつと警視総監にお尋ねをいたしますが、先ほどからいろいろ論議されたのでありますが、日中警視総監はこの学内における思想調査が行われているということは、今命令によつてやられたのだというふうにお答えになりましたが、その結論として、この程度のことをやつて自治侵害というような仰々しいことを言うのはどうかというような御発言であつたのですが、この程度ということはどの程度を指して言つておられるのですか。具体的に言えば、特定の教授の名前が挙げられ、その教授の思想調査などが行われるなどというようなことは、これは大したことではないというふうにとられておりますけれども、それはどういうふうにおとりになつていらつしやるのでしようか。
  115. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 先ほど申述べましたごとくに、この身元調査をする場合におきましては、勿論個人の自由を侵害しないように、又本人の名誉の毀損にならないように、それから又本人が非常なこれによつて憎しみを起すとか、そういうことのないように、さような極めて平和的な方法によつて身元調査というものはなされるのでありまして、従つて本人について一々これを調査する、そういうようなことは絶対にやつていないのであります。従来身元調査というのは極めて平和的な、又法の許される範囲内においてのみ身元調査というものをいたしておるわけでありまして、私はこれによつて教授のいわゆる学問の自由を侵害したとか、或いはこれによつて学園の自治を害したとか、そういうようなことをこれによつては私は認められない、かような意味において申上げたのであります。
  116. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちよつと納得の行かない点がございますが、そういたしますと平和的な方法で、本人の名誉を傷つけないような程度で、本人も何も知らないような程度で身元調査をやるなら、現在までもそういう方法でやつてつたのだから、そういうことをやるのならば、別にこの学園の自治を侵害しておらない、こういうふうにお考えになつておるようですが、それでよろしいのでしようか。私はそういうふうに了解するのですが、非常にここが問題の点なんです。
  117. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 警察独自の立場といたしましては、一々教授の身元調査をする必要はなかろうと思います。従来もやつておりません。これ以外にはやつておりません。
  118. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうしますと、教授の身元調査をやるという場合は今度が特例である、今日までもそういうことは全然やられておらないし、今後もそういうことをやるつもりはないのだ、但し渉外部からの特定の命令があつた場合にはこの限りではない、こういうふうに了承して差支えございませんでしようか。
  119. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私の知つている範囲ではこれ以外にはやつたことはなかろうと私は考えております。これは私の知つている範囲です。又今後はどうするかということでありまするが、今後につきましては、私はこの点につきましてやらないということも言えませんし、やるということも言えませんし、これは今後の情勢によつて、そのときどきによつて広くこれを判断せねばならないものだと考えております。
  120. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は大変に先廻りして恐り入りますけれども、こういう事態が起つて来たということは、やはり日本のこの大学自治にとつては非常に重要な問題だと思うのであります。そこでやるともやらないとも言えないというようなお話でございますが、若し仮にやるとするならば、現在の法律ではどういう一体根拠に基いてそういうことがやれるのか、その一つ法的な根拠を明確にお示しを願いたいと思うのでございます。
  121. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 先ほど岩間委員に対してお答えしたと同様に、この身元調査そのものの法的根拠というのはないのでありまするが、或いは警察法の規定から、或いは又そのほかの警察官職務執行法の規定の上から、或いはそのほかのいろいろの犯罪防止、そのほか行政警察の規則がございます。そういうような規則の上から、必要があると認めた場合におきましては、先ほど申述べましたような極めて平和的な方法によつて身元調査を実施いたしております。
  122. 高田なほ子

    高田なほ子君 その法の精神でありますが、これはこの前の委員会でも岩間委員が指摘されておるのでありますが、ややともすれば昨今はこの警官の職権濫用ということが大きな社会問題として挙げられておるのであります。大石代議士が何にもしないのに棍棒で擲られたというような話は、その最たる私は一つの例だと思います。これとそれとは別問題にいたしましても、警察の活動が、少くとも日本のこの国の憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉に亘る等、その職能を濫用することは断じてならない。これはまあ警察法の示す通りでございますから、これは如何なる平和的な方法でありましようとも、特定にこの犯罪といつたような特殊のものに関係しない以上は、思想の調査というものはこれはあり得るはずはない、又あつてはならないのだ。而も学園の自由を守る立場においては、そういうことはもう断じてあつてはならないのだとまあ私は考えておるのでありますが、一般的なことは別問題といたしまして、この教授の身元調査というようなことについては、あなたは私の見解と違つておるかどうかということですね。そこらをもう一度お伺いしたい。
  123. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 勿論この身元調査でありますから必要のないものをやることはないと思います。今後も必要があればこれはやらなくちやなりませんが、身元調査というようなものは成るべくこれはむしろ警察事務の上から行きましてもやらんほうがよかろうと考えております。ただ必要がある場合においては当然やらねばならんものだと私は考えております。この点につきましては少し意見が私どもと違うようでありますけれども、必要があればこれはやらなくちやならないと思います。
  124. 高田なほ子

    高田なほ子君 第二点にお伺いしたいことは、学生の取扱についてであります。これはいろいろ新聞の報道などによりますと、どうも学生の取扱いにさながら不逞の輩を取扱うような所業が警官のほうに私はあつたと思うのであります。例えば学生の代表が本富士署の署長に会いに行つた、而も厚生部長、どなたかと会いに行つたというような場合にもすぐと武装警官が動員されて威圧するというようなやり方ですね。これはどうも私どもとしては納得が行かないので、それは学生であろうが、誰であろうが、非常に暴力行為に出たというような、又そういう危險があるという場合には武装警官の出動ということもあり得るかも知れませんが、学生の行動そのものに対しては、治安の任に当る者ももう少し学生としての信頼を持つた取扱いをすべきではないかと思いますけれども、そういうことについての御見解を一応伺つておきたいと思います。
  125. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 学生と我々が接触する場合におきましては、やはり学生は若い激しい気質を持つていますから、成るべく納得の行くように又相互に理解ある態度で以てお互いに交渉することが一番私は最適であろうと考えております。ただこれは双方が極めて平和的な状態においてのみかようなことができるのでありまして、先般の東大事件の発生したような直後におきましては、学生側におきましても非常に興奮しておりまして、ややともすれば常軌を逸するような恐れもございましたし、又警察側におきましても若干少し興奮しておつたということも、これも否みがたい事実であります。かような場合におきまして双方がお互いに猜疑心を以てお互いに腹の探り合いをするとか、或いは何をするかわからんというような状態の下に相対峙いたしましたので、警察側としましても万々一を恐れて武装警察官の待機を命じたものと考えております。従つて警察側としましては、学生を見て、すぐそれに対して直ちに敵対行動に出るような非常な激しい態度をとつたということはないのでありまして、この点はただ当時の情勢からして勢いさようなことになつたのではないかと考えております。今後私ども学生に相対する場合こおきましてま、今私の申上げたような、お互いに一つ理解のある態度で話合つてみたい、かように考えております。
  126. 高田なほ子

    高田なほ子君 次に不穏という問題でありますが、この不穏ということの限界は非常にむずかしいと思うのでございます。先ほども岩間委員から御指摘があつたと思いますが、教育基本法にはすでに御承知だと思いますが、「われらは、さきに、日本憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。」と明確にこの基本法の制定の精神が挙げられている。ここにはやはり世界の平和というように、はつきりと平和というものを守つて行くというようなことが、お互いの責任において守つて行くということがあるのでございますが、最近不穏な事態、不穏な事態とよく警官側で挙げられるものに平和運動が挙げられておるようでありますが、平和運動に対しては全般が非常に不穏なものであるというような、非常に間違つた認識を持つておられるように思いますが、この点について、つまり平和運動というものについての認識、更にそれが不穏なものであるという断定を下さなければならない根拠、そういうものについて伺いたいと思います。
  127. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 最近平和擁護運動、若しくは平和運動というものが相当広く全国的に行われております。従つてどもは平和運動そのものに対しましては何らこれを不穏であるとか、或いは取締らなければならんとか、そういう見解は毛頭持つておりません。ただ中に一部非常な過激な考え方を持つておる極く一部のものがこれに潜入いたしまして、そして平和運動の美名の下に一部非常な不穏な、人心を動乱させる、或いは又社会公共の安寧秩序を紊すような企てをなさんとするような恐れがある場合においてのみ、我々はこの平和運動というものにつきまして相当注意もし、これの取締りもせねばならんと思います。併しながらそうでない平和擁護運動につきましては、我々は全然そういつたものに対しましては何ら関知する必要はなかろうと考えております。
  128. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういたしますと平和運動には二種類あると、そういうふうにお考えになつていらつしやいますか。つまり一部のものの、あなたが言われる治安を乱すような平和運動もあるし、そうでない平和運動は抑える必要はないと言いますけれども、今まで学生運動という中に平和運動というものが大きく浮かび上つて来たわけです。これは当然だと思うのです。つまり学生がわだつみのこえの映画なんかも見て、当然やはり純真な意味での平和運動が行われるということは当然のことであろうと私は考えております。それが一連の繋がりの下に抑えられて来たような傾向を私は幾多聞いているのでありますが、これについての明確な識別ということはどういうふうなことをなさつておられるのでしよう、又今後なさろうとしておりますか。
  129. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 平和運動は、これは私が先ほど申述べましたごとくに、あえて警察として関知する問題ではございません。ただこの平和運動のうちに潜り込んで、これを利用していろいろ煽動をしたりなんかする虞れのある場合においてのみ、警察といたしましてこれに対こして十分なる注意をする。現在学生が行なつている平和運動であるとか、或いは再軍備反対運動であるとか、そうしたものに対しては警察においては何ら取締りをいたしておりません。ただこの点が若干誤解をされておりますので……。先般澁谷の駅頭におきまして学生の再軍備反対の演説会が開催されようとしましたときに、これは警察当局におきまして集会を不許可にいたしたのであります。この点につきましてはその再軍備反対運動そのものをいかんと言つたのではなくして、手続上につきまして警察からいろいろこうしてもらいたいという手続を幾ら言つても、これを学生が履行してくれない。止むを得ずあれはその手続上の不備の点から不許可にいたしたのであります。従つてその後惠比壽におきましてやはり東大の教養学部の学生が行わんとする、いわゆる再軍備反対の演説会はこの恵比壽駅頭において、正式の手続を経てやつたものですから、惠比壽駅頭においてこれを行わしたのであります。従つて我々としては学生の行わんとしておりますそうした平和運動でありますか、そうしたものについては我々は何ら関與する必要はないと考えております。
  130. 木村守江

    ○木村守江君 時間が切迫しておりますので、極めて簡單質問をいたしたいと思います。先ず警視総監にお伺いしたいのですが、私は学園の自治というようなことからちよつと離れまして、警察制度の改革された大きな理由は、それは今までの日本警察というものは民間から離れておつた、非常に民間と相離反したような警察であつたために、どうしてもこれは日本警察行政というものは国民の上に立つた警察でなければいけないというところから、自治警察制度が布かれたのたろうと考えますが、現在の警察のいわゆる行動というのはこの線に向つて進んでおられますかどうか。極めて漠然とした質問でございますが、御感想を率直にお述べ頂きたいと思います。
  131. 田中榮一

    参考人田中榮一君) お答えいたします。
  132. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 要点のみを一つ……。
  133. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 御承知のようにこの警察制度は昭和二十三年三月七日から新らしい民主警察制度に切換えられたのでであります。従いまして現在従事しております全国十二万五千の警察官は、精神的にも昔の警察と違つたいわゆる国民の警察である、社会公共に対する奉仕者であるというような根本的心がまえを以ちまして、現在いろいろな警察行動を実施いたしております。ただ現在この我々のやつておりまする警察の中に二つの面があると思うのであります。一つはいわゆる国民に対する奉仕的な、サービス的な行政警察と申しますか、それからいま一つはいわゆる国家の治安を維持するところのいわゆる治安維持のための警察、この二つのものが現在あるのであります。現在警視庁のこの新らしい制度によりまして、自治警察として、民主警察として発足をいたしておるのでありますが、六百五十万の都民を擁する警察の行き方は、いわゆる都民に対するサービス、行政警察という面、これは一般の泥棒を捕えたり、それから、窃盗を捕えたりそうしたものをやります。
  134. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 簡單一つお願いいたします。
  135. 田中榮一

    参考人田中榮一君) それから更に大衆的な、思想的背景を持つた大衆的の犯罪をこれを検挙するとか、こうした面はやはり私は治安的な、治安維持のための一つの大きな警察であるとと、かように考えております。この二つを兼ね備えて、現在この民主警察精神を十分に体得して、現在警察職務を執行しておると、かように思います。
  136. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 次に讓つてくれませんか、警察の問題は要点を一つ……。
  137. 木村守江

    ○木村守江君 只今の御答弁でよくわかりました。私は現在国民と警察との感情というものはややもすればこの今度の大学の学内において起つたように、もう何か互いに相向うというような恰好が現在もなお残つておるのではないか、こういうような恰好を打払つて、そして国民の中に打解けた警察行政が私は新らしい警察制度じやないかと思うのですが……。
  138. 田中榮一

    参考人田中榮一君) お説の通りだと思うのです。やはり警察も国民の中に解け込んで、いわゆる国民の心として警察官職務を執行しなければならないと、かように考えております。
  139. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 高良君。
  140. 木村守江

    ○木村守江君 いや、私は今始つたばかりですよ、何ですかそれは……。それは前の人から整理しましたか、そういう横暴ができますか。
  141. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) あなたは問題から離れましたからね。問題の要点をやつて頂きたいということを注意しておるのです。
  142. 木村守江

    ○木村守江君 只今警視総監が答えられましたが、然らばその自治警察精神本当に活かすのに、少しこれは行過ぎたような恰好があると、いわゆる昔の警察制度であつたときと同じような状態が今度の大学の学園内にもあつたんじやないかというようなことを考えざるを得ないのですが、その点反省すべき点はありませんか。
  143. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 今の御意見に対しましては、警察といたしましても必ずしもこれは万全であつたとは毛頭考えておりません。従つて将来我々としましても十分反省いたしまして遺憾なきを期したいと、かように考えております。
  144. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 高良さん。
  145. 木村守江

    ○木村守江君 私は次に矢内原学長に御質問申上げますが、私はいろいろな細かい点を御質問したいと考えていましたが、時間の関係上これを許されませんので、極めて結論から申上げますが、私はこの前の学長の速記録を詳細に読んでみましたところが、学長の申さるることは、学長の気持ちは私はよくわかります。学長大学学長として生徒を可愛がる、生徒を庇う点はよくわかりますが、私はどう考えても今回の東大事件というものはやはり学生として少し行き過ぎた行動であつたということを率直に認めざるを得ないと考えるのですが、如何でしようか。
  146. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) その点については何度も申上げたのですが、(「その通り」と呼ぶ者あり)警察手帳を取上げたということは、そのことがここに至つた背景については十分学生の気持ちを察することができますが、併し行為そのものはよくないということは何度も繰返して申上げました。
  147. 木村守江

    ○木村守江君 それから先ほど、非常に学長として私寒心に堪えないのですが、相馬君の質問に関連してですがね、学生警察手帳のパンフレツトをやつたのは犯罪であるならばいけないだろう、但し犯罪であろうが犯罪でなかろうが人の警察手帳を取つてそれをパンフレツトにして配布する、これは中央公論にも出たのだから差支えないだろう、そうしてその上これは福井何某の援護資金としてこれを配布しているんだというようなことを言つておられますことは、私は明かにこんなことをやつてもよいのだということを黙認しておるということになりやあしないかと思うのですが、その点如何でございますか。
  148. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) 援護資金云々ということは私の想像を申したのでありまして、これは誤解を招きますから取消さして頂きます。  それからそれは面白くない行為であるということは何度も繰返して申した通りであります。
  149. 木村守江

    ○木村守江君 それはよくわかりますが、この前もこの問題につきまして大学教授の中には法律学者がいる、法律学者の研究の下に犯罪行為でないというからこれを出さしたというようなことを申されております。私はこれは犯罪行為であるかないかは別問題としまして、あなたは教育家としての立場から人の秘密にしておくものを、而も公的に秘密にしておくものを犯罪でないからと言つて公開さしていいというようなことは、教育的見地からどうでしようね。
  150. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) だから何度も申したように面白くないという考えを申したわけです。
  151. 木村守江

    ○木村守江君 それでは結局そういうふうなことを繰返しておりましては、あなたがた自身としてはこの学内のいわゆる治安を保つて行くことができないということに結論付けられますか、そう考えてよろしうございますか。
  152. 矢内原忠雄

    参考人矢内原忠雄君) これはいいついでであるから申さして頂きますが、そういうことがあつたり、或いはビラが何度も撒かれるということについて大学の管理能力を云々なさいますが、一つの点は、世間にもビラはいろいろ撒かれていて、それを全部根絶できないからといつてども警察当局が怠慢であるとか、無能であるとは考えません。  それからもう一つの点は、学内においてこれこれのことがあるから、お話にあつたようなことがあるから、だから平素警察権を入れる、そういう口実というか、理由となさいますならば、これは單に次官の通牒の精神に反して大学自治を根柢から脅かすものであるだけでなくて、却つて学内の秩序が悪くなつて、若しもビラを云々のために警察が常時お入りになるとするならば、ますますビラがたくさん起る危險があります。これは大学当局者にお任せ願つて処置すべきであると考えます。
  153. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 時間が参りましたので、これを以て参考人のかたに対する御質疑は(「委員長異議あり」と呼ぶ者あり)終ります。参考人のお二人が退席されますに際しまして、委員会を代表いたしまして委員長から御挨拶いたします。  本日は公務御多端にもかかわらず、本委員会要請に対して、枉げて御出席を頂き、委員各位の質問に対して熱心にお答え頂きまして、誠に有難う存じます。深く御礼を申上げます。
  154. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは、参考人はこれで御退場になるのでしようが、私は委員長質問申上げたい。(笑声)それは、いやこれは大事ですよ。本日の文部委員会冒頭に当つて質問時間の割振りもすることなく、先ず矢内原参考人が多忙であるから、先ず矢内原参考人質問を展開して、田中参考人に対する質問は保留した。そうして保留しているうちに、岩間君の個人的な理由で、田中参考人質問を展開した。私は、矢内原参考人は、午後は恐らくこの委員会から解放してあげるのだろうと思つていたところが、今まで矢内原参考人におつてもらつて頂いて、只今木村委員から質問があつたように、そういうように全くこの委員会の運営というものは、終始一貫していない。(「その通り」と呼ぶ者あり)更に又、本日の委員会冒頭において、田中参考人、並びに警察側の公述内容の真実性について疑問があるから、我々はこの委員会の続行はできないからと言つて、休憩までする大騒ぎをした。ところが、田中参考人に対するところの、前回におけるところの公述に対しての関連した質問というものは、殆んど展開されていない。こういうところが、私は本文部委員会の運営に当つて、私は一貫性を欠いておる点を非常に遺憾に思います。で、私はそれらに関連して、この際恐らく最後になるであろう田中参考人に是非とも聞きたいことがあつたのでございますけれども、まあ先ほどのお話がありましたから、ともかく委員長の職権によつてこの公述人の陳述を打切つたわけでございますが、これに対する委員長としての所見を承わりたい。
  155. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) お答えいたします。私の運営に対する矢嶋君の批判は御自由に願います。私はこの問題に関して、矢嶋さんはおいでになりませなんだが、この時間からして、三十分前から来てここで待つておいでになつたかたがたが一時間しか、一時間でお帰りになるのを、午後二時にはどうしてもお帰りになるのを三時までお延し頂いて一時間残る。質問者の通告が七人ある。そこの中で済んだのは二人ある。併しまだ残つておる。矢嶋さんと相馬さんは残つておる。それで、これだけをやるがためにどうして運営したらいいかということを皆にお諮りした。この問題を出して、七人のかたの御質問の要点を挙げてもらつて、総括的にお答え願うか、若しくは時間を制限して発言を願うか、若しくは今日やれるだけやつて、それからあとのことは理事会に諮るかということを相談したところが、第一番初めの案には、とても行かんだろう、こういうことで、この通り続行しよう、時間のあるだけをやる、併し三時になつたら必ずお帰りになるからということを何遍も御了解つて、こういう運営をした次第であります。
  156. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その委員長発言は、委員長発言として一応私は聞いておきます。併し、今承わりますというと、両参考人は午後二時云々という話でございますが、それは朝からわかつていたのか……。
  157. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) わかつていなかつたのです。
  158. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 わかつていたのか、わかつていなかつたのか……。
  159. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 三時に延ばしたのです、頼んで……もうちよつと早く、午前中に、午前で済んでお帰りになるところを午後にお願いをして……。
  160. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それならば、参考人が本委員会におる時間というものがわかつておるならば、それによつて時間の割振りをするなり、何なり、もう少し私はうまい運営があると思う。
  161. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それを相談したのです。どうするかという相談をして、時間の割振は行わないことになつて、こうなつた。これはつまり私の運営に対する御批判は別といたしまして、私は相当に諮られるだけ諮つて、この時間を最も有効に使うように努力をしたということだけを申上げます。これに対する批判は別であります。
  162. 高田なほ子

    高田なほ子君 確かに委員長は諮られたわけでありますが、それで時間の割振ということもこれは一つお出しになつたのですが、時間を割振してみると、一人の議員に対して約六分か七分ぐらいきりの質問しかないわけです。六分や七分の質問では到底要を盡せないというようなことで、時間の割振に対して反対をしたのは私であります。勿論私もまだまだ質問の要点はたくさん残つておるのですが、これは切つたので、これは相馬さんも矢嶋さんもこれは質問を残されておるし、又問題の解決点に到達するまでには、私はまだ間があると思うのであります。まだまだ問題は残つておると思うのであります。それでこれは次回というようなことに、早急に理事会でも開きまして、次回の対策をとられて、残された質問を十分に盡され、よい結論が得られるように、委員長のほうにおいてお取計いを願えたならば非常に結構であろうと、こういうふうに考えます。
  163. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 今の高田委員発言に関しまして、あと理事会を開いて御相談をいたします。  なお、本問題につきましては、天野文部大臣がお見えになりました。これは三時三十分にお帰りにならねばならない予定になつております。その間で御質問願いたい。なお木村法務総裁は、(「議事進行について」と呼ぶ者あり)渉外関係のために御出席ができないことになりましたので、法務総裁に対する質疑は一応保留して、この次に讓りたいと存じております。
  164. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について……。本問題に関する天野文部大臣の本委員会の本格的な出席というのは、これは初めてだと思います。現在すでに三時七分、今おいでになつて三十分に退席される、そういうようなことでは、到底本問題は文部大臣を相手に審議はできないと思う。従つて本日はこれで散会して、天野文部大臣と木村法務総裁が、これは教育の問題としては極めて重要な問題であつて法務委員会法務委員会としてのその重大性があるだろうが、文部委員会としてもこれは極めて重大な問題であるだけに、天野文部大臣と木村法務総裁お揃いの上で、たつぷり時間をかけて御審議願いたい。
  165. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) お諮りいたします。これは次回に……。
  166. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は文部大臣が三時半に退席しなければならんというはつきり理由を聞かして頂かないと困ると思います。私どもは二十分ぐらいで文部大臣に対する質疑は終るとも思いません。従つてこれは先ほど矢嶋君から話があつたように、初めての質疑ですよ、だから相当問題は重要性を帶びておりますので、大臣も、もう少し出席されて、事情がどうして許さないならば、私は矢嶋君の御意見に賛成しますけれども……。
  167. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これは私からお答えしますが、そのどういう理由ということまでは、私は聞いておりません。聞いておりませんが三十分で帰りたいということを先ほどから了解を求めて来ておりましたので、そういう公務のある大臣の要求に対して私は然るべきだろうかということを考えてお諮りしたのであります。それで今、三十分ではなかなか話ができない。それから又、法務総裁も又突然おいでになれないことになつたので、だから一応お諮りして、これだけの短い時間で困難であれば、明日は文部大臣に出て来て頂けるということを今聞きましたから、明日一つこの次、次回にお延ばし下さるかどうか一つお諮りいたします。
  168. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 先ほど法務総裁、それから文部大臣も一時半に見える……。
  169. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) そのときは一時半に見えるということを言うておつたのです。
  170. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 併しまあそういうふうにならなかつたのです。三時になつてから見えて三十分しかおらない。併し公務ということをお話になりますけれども、公務ということであれば、(「その通り」と呼ぶ者あり)この文部委員会質疑応答というものは、私は決して公務上軽く見ることはできない……。
  171. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 公務上軽く見られたということを言つておるのではない、公務に間違いありませんが、大臣がそういうことを要求された場合に、私のとつた態度が、そういう公務の場合もおありになるのだから……(「聞かなかつた」と呼ぶ者あり)そういう内容を聞かなかつたが、先ず三十分で今日は切つてもらつて頂く、こういうことを一つお諮りしたわけです。そこでそれができないということであればこの次の機会に一つ、次の会は一つ理事会で諮つて一つ次に……。今日はどうしますか、大臣に短い時間であるからまあ質問できないと、こういうことならばお帰り願うか、若しくは時間までして頂くということをお諮りいたします。(「散会」と呼ぶ者あり)散会をすることに異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは今日は散会をいたします。    午後三時十一分散会