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1952-07-12 第13回国会 参議院 内閣委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月十二日(土曜日)    午後二時四十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     河井 彌八君    理事            中川 幸平君            成瀬 幡治君    委員            岡田 信次君            郡  祐一君            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            江田 三郎君            上條 愛一君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    人事局長長官    官房長     加藤 陽三君    警察予備隊本部    長官官房文書課    長       麻生  茂君    行政管理庁次長 大野木克彦君    行政管理庁管理    部長      中川  融君    海上保安庁次長 三田 一也君    海上保安庁総務    部長      西田 豊彦君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   法制局側    法 制 局 長 奧野 健一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○保安庁法案内閣提出・衆議院送  付) ○海上公安局法案内閣提出・衆議院  送付)   —————————————
  2. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより内閣委員会を開会いたします。  保安庁法案を議題といたします。昨日アメリカのフリゲート艦の借受につきまして政府の御説明がありましたのでありますが、なお政府からその点について説明をせられる趣きでありますから、大橋国務大臣から御説明願います。
  3. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 米国よりの船舶借受につきましての政府閥係者からの当委員会におきまする御説明がいろいろな意味にとれるので、統一的見解についてしつかりした考え方説明するようにという御注意を委員長から頂いております。殊に昨日の委員会におきまして、法制意見長官からも御説明を申上げたのでございますが、その答弁は十分に意を尽しておらなかつた点もございまするので、かれこれ勘案いたしまして、政府といたしましては、この取扱いについての政府の基本的な考えを御説明いたしたいと存じます。なおこの要旨につきましては別に明確にいたしまするため、印刷物を以て資料として御配付申上げてあると存じます。  海上警備隊使用船舶につきましては、政府は当初から米国政府よりの借受希望いたしまして、閣議において協議をいたしました上、海上保安庁をしてアメリカ極東海軍と下交渉をなさしめておつたのでございまするが、ほぼ借入れができる見通しが付くに至りましたので、外務省を通じまして米国政府に申入をいたした次第でございます。かような関係もありまして、今回米国国会におきまして、米国大統領にこの問題に関して権限を与える法案が成立するようになつたことと思うのでございます。勿論この借受の実施につきましては、日米両国政府合意が必要でございまして、合意すべき事項内容につきましての先方意向は未だ明らかでございませんが、内容が重大な権利義務に関する事項を包含いたすということになりますならば、勿論憲法上の条約として所定手続を経べきことは当然のことであると考えておる次第でございます。
  4. 松原一彦

    松原一彦君 三好君がこれにつきましては精細に何か調査をして、その上で御質問申すような用意を持つておるのですが、只今止むを得ないことで席を外したようでありますから、三好君の質問はどうぞあとに保留しておいて頂きます。  私から少し伺いたいのでありますが、誠に明確なお答えを得まして満足いたします。こうあるべきだろうと思います。一つこの際附加えてお聞きいたしたいのは、借入要求の種目、数量等只今まで現われておる通りのものでございますか、なおこのほかにもあるのでしようか。明年度に要求するといつたようなものも、すでにおわかりになつておるのでしようか、この点をお示し頂きたいと思うのでありますが。
  5. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今先方申入れてありまする借受希望船舶種類及び数最につきましては、しばしば当委員会において御説明申上げましたるごとく、千五百トン型十隻、二百五十トン型五十隻、都合六十隻のみでございまして、この以上の船舶につきましては、何ら下交渉もいたしてお事実はございません。即ち当方としても計画もございませんし、又事務当局を通じて極東海軍と、いわゆる昨日私から申上げました打診をもいたす段階に至つておらないのでございます。こいうことでございます。
  6. 松原一彦

    松原一彦君 了承いたしました。その他の武器飛行機等貸借関係に関する御準備或いは下交渉等、すでに入手せられたものもあるようでありますが、その辺もこれと同様に心得ていいのでございますか。
  7. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は海上警備隊使用船舶につきましては、海上保安庁から極東海軍連絡をして、様子を調べるという手続をとつておるわけでございまして、警察予備隊において使用いたしまする兵器につきましては、私が直接警察予備隊本部の職員の協力を得まして在日米軍司令部に直接接触いたしまして交渉をいたすという手続をいたしておるわけでございます。このうち海上の分につきましては、先ほど申上げたごとくでございます。陸上の分につきましては、すでに借受を了しておりまする兵器種類数量につきましては、先般書類を以て或いは秘密会において申上げた通りでございます。そのほかの種類のものにつきましては、現在借受けておりまするもののほかに、幾分口径の大きな迫撃砲或いは野砲というようなものについて借受け得る見込がありや否やを只今向うと接触して打診をいたしておる段階でございます。航空機につきましては、警察予備隊においても偵察或いは連絡用航空機使用いたしたいという希望を持ち、又海上警備隊におきましても、そういう希望を持つておるのでございますが、いずれもなお先方貸付をしてくれる可能性があるかどうかということを、なお打診をいたしておる段階にとどまつておる次第でございます。
  8. 松原一彦

    松原一彦君 私は昨日も申上げましたように、一つの自衛的な面における国内治安の維持、この積極策として御苦心なさることについては私は諒とするものであります。何もこれに小言があるわけではございませんが、ただこれが一つ計画的なものであつて国民の知らんうちに既成の事実ができ上つてしまうということに対する私は懸念を持つものです。そういう意味から、昔の陸海軍国民の知らんうちに兵器等においても秘密部分があつたというようなことが今後はないと私は信じ、確信しておるのです。それでガラス張りの中でのすべての民主的な行動の上に、かようなものも国民総納得の上で備え付けて欲しいという希望から、私は先般来いろいろ申上げておるのでありまして、これはやはり一つ計画の中の部分的現われだと思いますが、只今お話の中で口径の大きな迫撃砲野砲、大きな野砲等に対しても打診中だとあります。何かこういうことに対する御計画が、一つの限度を持つた御計画が、或いは将来もつと伸びるべき御計画が今おありになつてのことであるかどうか、この点念のためにもう一度お伺いしておきます。
  9. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先般警察予備隊の現在の編成並びに将来の編成計画について申上げた次第でございますが、このうち普通科連隊におきましては、小銃、機関銃等を主たる兵器といたしておるのでございます。なおそのほかに若干のバズーカ又は迫撃砲等を装備する必要があると考えておる次第でございます。次に特科連隊編成計画を申上げた次第でございますが、特科連隊は各管区隊について一個連隊ずつ、現在都合四個連隊あるわけでございます。この各連隊は主として火砲を以て装備するということを当初から編成上の計画として持つておるのでございますが、その装備すべき火砲につきまして、如何なる火砲が適当であり、又その入手の可能性ありや否や、これにつきまして研究をし、米軍から借受希望しておりまするので、借受についての可能性打診いたしておるという次第でございます。
  10. 波多野鼎

    波多野鼎君 政府の今の軍艦借受についての統一的な解釈ですが、これを見ておりますと、「内容が重大な権利義務に関する事項を包含することとなれば」というふうに条件付けておりますが、現にアメリカ国会……これは通つたかどうか知りませんけれども、出ている法案では、重大な権利義務に関する事項を包含しておることは明らかであると私は思うのです。特に「本件船舶日本政府にひきわたす以前に大統領貸与の時と」、実質上という文字がこの翻訳では落つこちております。実質上同様な条件において右の船舶返還すべき条項を含む、この条項は必ず含まなきやならないということがはつきりしておりますから、貸与の時と実質同一条件において返すということ、即ち日本人の権利義務に関する事項を包含していることは明らかじやないかと思います。それにもかかわらず、政府において、包含することとなつたならばというように濁しておるのはどういうことですか、これは……。
  11. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この問題につきましては、先般秘密会におきまして、現在の下交渉の経過を申上げたことがございます。これは特に秘密会でなければ申上げることのできない性質のものではないと思つておりますので、改めて申上げますると、このことについての日米間の協定事項の原案として只今先方から提示せられておりまするものにつきましては、この関係返還乃至使用についての対価というような場合の条項があるわけでございまして、これにつきまして当方といたしましては多少変つた考えを持つておりまするので、その旨を申入れまして再考をお願いいたしてあるわけでございます。で、その点についての先方意向が未だ明らかでございませんので、従つて特に重大な権利義務に関する事項を包含するということはまだ確定的にきまつておらんと、こういうふうにまあ考えたわけでございまして、この点について最後的な取極が行われ、その結果日本政府米国政府に対して義務を負うということが明らかになりますなら、当然それは重大な権利義務に関する事柄として憲法所定条約に該当すべきものと考えておるわけでございます。ただ時間的に確定いたしておりませんので、特に確定的な見解を披瀝することを避けたいという以外に別に意味はございません。
  12. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると、このヴインソン案は、これは通つておりませんか。アメリカ国会はどうなんですか。
  13. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 新聞情報によりますると、すでに国会を通過し、大統領署名を了したというふうに聞いております。併しながらその法案の最後的な内容につきましては、なお当方で入手するに至つておりません。
  14. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると、政府のほうではこういうことを今の交渉段階期待しておるというふうに理解していいのですか。即ちヴインソン案では、貸与のときと実質同一条件右船舶返還すべき条項を含む取極めということを大統領に委任したわけなんですが、大統領はこういう条項を含まない協定日本と結ぶかも知れん、そうなればいいという期待を持つて交渉しておるというふうに理解していいですか。
  15. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 別にはつきりそうまで考えておるわけではございませんが、何分まだヴインソン案そのものアメリカ国内における手続でございまして、こちらに公式に或いは非公式に先方から表明された先方意向というものを受けておりませんので、従つてそういう意向がまだ形式的に今明らかになつておらんということを前提として、この文章を書いたわけでございます。
  16. 波多野鼎

    波多野鼎君 併し国会できまつて大統領がもう署名もしたものの内容が変るということはちよつと期待できないのじやないでしようか、それでもなお期待できますか。
  17. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 恐らくこの法案に基いて当然申入れがあることと考えておる次第でございます。
  18. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうしますと、これは多少日本政府のいろいろな希望を叶えてもらえるかも知れんという非常に頼りない期待なんですが、淡い期待を持つておるということだけは、この政府答弁によつて推測されますが、恐らくそういう淡い期待も裏切られると思う。そういたしますと、まあ条約は勿論条約として国会議決を経なきやあならん、そういう手続をとられると思いますが、大体いつ頃になるような見通しなんですか。
  19. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まだ明確な見通しを申上げるような具体的な話合に入つておりません。時期につきましては……。
  20. 波多野鼎

    波多野鼎君 保安庁法案で人員を幾らか殖やした。これはすでに何度もここで問題になつておるように、軍艦を六十隻ですか、借りる前提で殖やしたわけなんです。而もその借りる条件について、まだいつそれがアメリカ政府との間で折合いが付くかどうか未定だなんということでは、保安庁法案というものの実体、内容がおかしくなつて来るんじやないでしようか。
  21. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは保安庁法案でなくて、先般も御審議をお願いいたしました海上保安庁法の一部改正法律案、これにおいて海上警備隊新設並び借受ける船舶の要員の新定員を入れた今回の法案は、ただそのでき上つておりまする海上警備隊警察予備隊管理についての行政機構を変更するだけでございます。で、これにつきましては、すでに船舶の一部は日本へ運ばれまして、そうして日本政府貸付ける準備のために只今ドツクへ入つておるというような実情でございます。で、たびたび申上げております通り当方希望いたしておりまする借受条件につきましては、事務的に或る程度下交渉をいたしておりまするので、恐らくその線によつて貸付が行われるのではないかと、こう想像いたしておりまするから、全然いつできるか未定であるということではないわけでございまして、借受が行われ得ることはほぼ確実という見通しに立つておるわけでございます。
  22. 波多野鼎

    波多野鼎君 それも年度内ということは予想しておられるでしよう。
  23. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) もつと早く今年中、ここ二、三ヵ月のうちに相当な部分借受けられると思います。当初の話合等を総合いたしまして、予定の時期を考えて見ますると、これらの船舶は逐次引渡されると思いますが、最後に引渡される部分といえども、暦年の今年中に行われるのではないかと、こう見通しを付けております。
  24. 波多野鼎

    波多野鼎君 逐次でしようけれども、条約ができなければ借入にならんでしよう。恐らく今のアメリカ国会の議を経、大統領の襲名を得たようなヴイソン案がある限り、条約という形式を踏まなければ借入れることができないでしよう。そこで条約の締結時期については、大体見通しとしてはどんなものかということを開いておるわけなんです。
  25. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これははつきりした見通しを申上げるわけには参りませんが、併し私どもの期待として申上げますなら、ここ一、二ヵ月中にこの取極めが完了するものと予想いたしておる次第であります。
  26. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると、条約の成文を議決のために国会に提出されるのは一、二ヵ月の間と理解していいですか、大体そういう見通しだというふうに……。
  27. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 条約ができれば当然そういう運びになると思います。
  28. 波多野鼎

    波多野鼎君 もう一つそれに関連して、恐らくアメリカ議会で通過したヴインソン案が重大な修正を受けるということは私はもう今後ないと思うので、結局原状を回復して返還するという義務日本は同時に負うわけなんです。そういたしますと、原状回復ということの内容がどういうことであるか、これはまあいろいろ広汎な問題を含んでおると思いますが、少くともこういう一点だけは疑いないと思うのです。即ち或る一定の出費をして返す場合に、修繕を加えて返すということだけは疑いないと思う。どの程度修繕か、沈没した場合には新らしい軍艦を作らなければなりません。それはわかりませんが、とにかく一定の出資が必要であるということはわかる。そうすると、今度借入れる場合に、そのときに国庫債務負担行為をやることになる。将来起るかも知れん債務について国会議決を求めなければならんということになるので、条約を締結する、或いは又条約国会の議に付すると同時に国庫債務負担行為についての議決を求めるという手続もとられると思いますが、どうですか。
  29. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お示しのような条件が取極められることになれば、当然そういう運びにしなければならんと存じております。
  30. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると、まあ我々は大体一、二ヵ月以内にアメリカ側との条約の問題が国会の議に付せられると同時に、国庫債務負担行為についての議決を求めることを政府から求めに来るというふうに一応理解して間違いないですか。
  31. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 条約ができるとすれば、当然国会の議に付せられると思いますし、又これによりまして予算を必要とする場合には、予算については当然議決をしなければなりません。予算外支出につきまして、具体的な内容が明らかになりますならば、これもやはり国会に御審議を願うことになると思います。
  32. 波多野鼎

    波多野鼎君 予算外支出なんかないのであつて、今の国庫債務負担行為は広い意味予算なんです。恐らくそれでしよう。まあそう理解しておきます。
  33. 三好始

    三好始君 本日頂いた米国船舶借受についてという文書に基いて、先ず二、三お尋ねいたしたいと思うのでありますが、これは途中から波多野委員との間の質問応答を聞いておりまして、政府は艦艇の貸与について条約として所定手続をとるということを助言されているようであつて、而もそれは条件が付いているように承わつてつたのであります。質疑応答の間から、そういう何と言いますか、一つのはつきりした、条約として承認を求めるのだということでなくして、この文書で言えば「合意すべき事項内容についての先方意向は未だ明かでないが、内容が重大な権利義務に関する事項を包含することとなれば」、こういう条件付で、そういう場合は条約として承認を求めるのだ。だから承認を求めないこともあるかもわからん、こういう含みを以てお話をされておつたと思うが、その点如何ですか。
  34. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは読んで字のごとく、さような書き方になつております。
  35. 三好始

    三好始君 そういたしますと、内容が重大な権利義務に関する事項を包含するということになれば、条約としての所定手続をとるということでありますが、「内容が重大な権利義務に関する」という範囲は、どういう程度のものと了解してよろしうございますか。
  36. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 国際法上の権利義務に関するものは当然条約として所定手続を必要とすると存じます。国家間の行為には、このほかに私法的な契約というものの性質を持つたものもありますし、併しその内容が重大であります場合においては、先方との話合いの上でこれを条約として取扱うということは当然予想できることでございまして、その二つの意味において寛大な権利義務に関する事項を包含するということにいたしたのでございます。
  37. 三好始

    三好始君 今の御説明、こういうふうに理解していいのですか。私法上の契約に相当するような内容合意であつても、その関係が重大な権利義務に関する場合には条約としての手続をとるのが正当な方法である。又私法上の契約考えられないような性質合意であれば、これも当然に条約としての手続をとるべきであるというふうな御意向と承わつていいですか。
  38. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そういう意味でございます。
  39. 三好始

    三好始君 この米国船舶借受についでの法律関係権利義務関係であるかどうか、こういうことについて考えてみますというと、これはただ政府期待しているように無償貸与でありましても、貸与関係権利義務関係でないとは言えないと思うのであります。日本協定内容従つて定められた期間貸与物件使用する、いわば契約に基く権利を生ずるわけであります。又期限到来以後はそれを返還するという義務を生じます。又合意内容は今後定まるものでありますから確定いたしておりませんけれども、恐らく破損滅失によつて生じた状態を、貸与を受けたときと同じような状態に回復して返還しなければいけないという形の義務を恐らく伴つて来るのではないか、こういふうにも考えられます。更に政治的な立場から考えますというと、仮に無償貸与であるかどうかわかりませんけれども、仮に無償貸与ということになつたといたしましても、それによつて日本は何らの義務を負わないというわけではないのでありまして、先ほど来申した各種の権利義務関係以外にいろいろな形で有形、無形の義務乃至責任を負うことが予想されるのであります。政府無償貸与であれば、これは権利義務関係はないのだ、こういうふうにお考えになつておるとすれば、それは正当な考え方ではないと私は思うのでありますが、この点についての政府考え方をはつきり承わつて置きたのであります。
  40. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 昨日法制意見長官からは、行政上の必要とする物件の購入、借受というものは必ずしも公法的な場合ばかりでなく、私法的な場合もあり得ることを御説明申上げたわけでございます。かような私法的な関係において物を調達いたしまする場合には、相手がたとえ外国の政府でありましても、これは予算の面において拘束されることは、これは当然にございますが、その契約自体条約としなければならんものではないと思うのでございます。ただこのことは契約をいたす場合の当事者双方考え方というものがやはり基礎になるわけでございまして、先方もこちらも、これを公法的な条約として取扱おうという意思が表示されれば、これは当然条約として取扱うべきものと考えております。この点についての先方意向もまだ明らかになつておりませんし、又返還義務についてもウインソン案等において多少予想はできますが、併し確定的に先方意向を承知いたしておりません現在の時期においては、かような仮定的な表現が許される答えとして適当である。こういう政府としては考えでおる次第であります。
  41. 三好始

    三好始君 条約の定義の問題にもなつて来るわけでありますが、たとえ私法的な金銭とか、物件貸借などを内容とするような場合であつても、これは条約である、こういう考え方国際法学の上では一般的な考え方でないかと思うのであります。学説によつては、金銭とか、或いは物件貸借のごとき事項に関する合意は、これは条約でない、こういう学説もありますけれども、これは一般的に承認されておる学説ではないと思うのであります。国家間の権利義務を伴う合意は、すべて広義の条約であるというふうに考えてるのが一般の考え方でないかと思つております。ですから条約はいろいろな種類はありましても、条約ということには違いはない、或いは政治的な内容を含んだ条約もあれば、行政的事務に属するような内容を含んだ条約もある、或いは継続的に効果を有する条約もあれば、一回限りの行為によつて効果が終了する、こういうような条約もある、或いは片務的な条約もあれば、双務的な条約もあり、法規的な条約もあれば、契約的な条約もある、批准を要する条約もあれば、批准を要しない条約もある、こういつたように、条約のいろいろな種類なり区別がありましても、条約であることには違いはないと思います。ですから権利義務を伴う国際合意であれば、日本国憲法の建前から言えば、第七十三条によつて当然に国会承認を求むべきものである、手続をとるべきものである、これを私法的な契約に属するものだから、国会承認を求める必要なしという立場をとられるとすれば、非常な間違いでないかと私は思うのであります。又船舶貸与関係或いは予備隊武器貸与関係が果して私法上の関係であるかどうかについては、私大きな疑問を持つております。政府は成るべくならば、私法上の関係として行政的に、国会とは直接の関係なく片付けたいというような気持を持たれておるのかもわかりませんが、私はそれを私法上の契約として政府限りでならば決定できるような性質のものと認めることはできません。武器であるとか、或いは艦艇のごときは私人間において起り得るような合意とは……、艦艇の貸与のごときものは私人間に起るような合意ではないわけであります。又国民に何らの影響を及ぼさないところの単純な財産の授受でもありません。財政負担の可能性も勿論考えられますし、それ以外の国家としての自衛力の形成に関するものであります。国民に直接間接に、経済的にも、政治的にも重大な影響の及ぶ問題でありますので、単純な私法上の契約として片付けようとすることは非常に私は間違いであると思うのであります。殊に武力を憲法上放棄した日本の国の現実に武力を形成するような外国との契約政府は結ぼうとすることでありますから、私は私法上の契約というふうな考え方をして片付けようとすることは間違つておる、こういうふうに思うのでありますが、この点についてのお考えを承わりたいと、思います。
  42. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 三好委員の最初に仰せられましたことは、国家間の契約はすべて条約である、こういう断定をせられたわけでございます。この断定に私は必ずしも反対をいたすわけではございませんが、その場合の契約というものは、すべて条約である、この条約ということの定義如何の問題になるのではないかと存じます。個人間の契約と区別をいたしまして、特に国家間の契約条約である、すべて条約であるということを前提にいたしまするならば、この艦艇の貸与或いは武器貸与ということは、国家間の契約でございますから、これは条約であることは申すまでもないのでございます。要は憲法のいわゆる条約という文字を如何に解すべきかということの問題であろうと存ずるのでございます。その考え方といたしましては、政府といたしましては、国際法上の権利義務に関する事柄はこれは当然条約としなければならない、司法上の内容を持つものについては、必らずしもそれが条約として取扱われなければならんというものではない、併し当事者双方意向によつてこれを条約として処理することも勿論あり得ることであります。そして具体的の問題といたしましては、この船舶なり、武器なりの問題を政府条約として取扱うかどうかということの点に相成ると存ずるのでございますが、このことにつきましては、これが財政上に重大な影響があるか、又国の自衛の要素として非常に大切であるというふうな理由を挙げられまして、これは当然条約として処理すべきものではないかという御意向を最後にお述べになつたのでございますが、この三好委員の御意見は政府といたしても十分に傾聴いたしまして、将来善処いたしたいと存じます。
  43. 三好始

    三好始君 私はアメリカ側では日米間の貸与協定実質上にも条約として考えておると思うのであります。勿論条約は形式的には条約という言葉を使わないで、協定という言葉を使つたり、或いは協約という言葉を使つたり、時によると規約であるとか、取極であるとか、議定書であるとか、いろいろな言葉を使いますけれども、それらが実質的には条約として考えられておることは、これはもう疑いのないところでありますけれども、今度のアメリカの艦艇貸与法の内容を見ますというと、終りのほうに、本件船舶日本政府に引渡す以前に大統領貸与のときと同一条件において返還すべき条項を含む本件船舶に関する協定日本政府と締結するを要する、こういう表現をいたしておるのでありまするが、協約の締結を前提にし、予想いたしておるわけであります。ここに言つておる協定というのは、アメリカとしては恐らく実質上の条約として考えておるものと言えるのであります。つまり日本憲法七十三条の表現で言えば、事前の承認を与えておる、アメリカが締結すべき実質上の条約であるところの日米間の貸与協定について、事前の承認を与えたのがこのヴインソン氏提出の貸与法である、こういうように考えるべきでないかと思うのであります。つまりアメリカとしては実質上の条約前提にして国内法的な手続を完了しておる、御承知のようにアメリカは歴史的に条約の締結の形式が比較的行政権によつて行われやすいような形をとつて来ております。日本では戦前の旧憲法時代は条約制定は大権事項でありましたから別といたしまして、新憲法では必ずしもアメリカが歴史的には一応確立しておるような行政権による条約締結を大幅に認めてはおらないと考えなければいけません。ところでそのアメリカでさえ国内法的な手続を完了して、協定に対して事前の承認を与えるという形で問題をすつきり扱つておる、これに対して日本の場合に、若し単に物件貸与に関する私法的な性質のものだから国会承認を求める必要はないだろう、或いは無償貸与で今直ちに漠大な財政負担を伴うものでないから承認を求める必要はないだろう、こういうようなことで処理せられるとすれば、日米両国間のこの問題に対する法的な取扱い方の上にも非常に均衡を失することにもなります。又アメリカ条約に対する態度と、日本国憲法条約に対する態度の硬軟の点から申しましても非常に不当な結果を生ずるだろうと思うのでありまして、私は政府は善処するという言葉を使われておりますので、それを了承いたしたいと思うのであります。今申した点を十分お考えになりまして、政府だけでこうした問題を知らぬ間に片付けてしまうというような結果にならないように強く希望いたすものであります。
  44. 上條愛一

    ○上條愛一君 私のお伺いしたいのは、或いはこの前の秘密会で御説明になつておるかどうか知りませんけれども、この今の米国船舶借受についてというこの政府答弁の中に、閣議において協議の上と、こういうふうに書いてありまするが、この閣議で協議した場合に、ただ単にどういう船舶を幾隻貸してくれという程度の協議であつたのか、借りるについては、どのような日本として借りる条件は、このような条件であるという希望先方申入れたかどうかということ、その点についてお伺いしたい。
  45. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは船舶種類数量、又或る程度借入れの条件についての要望について協議をいたしたのでございます。
  46. 上條愛一

    ○上條愛一君 ちよつとわかりませんが、その希望条件は附さなかつたのですか、借入れについての……。
  47. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そのときは特に運輸大臣から、その点を確かに説明があつたかどうか、その点については私は正確に記憶をいたしておりませんが、当然使用の対価について日本側が負担をするというようなことはない、つまり通常な使用による損耗については、これは対価の支払いを要しないということが当然前提になつて、この協議が行われたような記憶をいたしております。併しそういうことについて明確に運輸大臣から御説明があつたかどうかについては記憶いたしておりません。我々この話を相談する際の気持といたしましては、そうした気持を恐らくどなたも閣僚はお持ちであつたことと存じます。
  48. 上條愛一

    ○上條愛一君 これは私の意見になりまするが、このような船舶借入れる場合において、日本政府としてもただ何隻貸してくれというようなことであつて、貸してもらうについては、これこれの条件で貸してもらいたいということを、これは申入れるのが当然ではないかと思うのです。又アメリカにいたしましても、このような船舶を貸してくれということを申入れられた場合に、それでは貸す場合にはどういう希望日本が貸してくれという意味かというようなことを確めずして、アメリカの議会においてこのような決定を見るはずはない、これは我々常識的に考えてそう考えるのですが、果して閣議においてこれを協議した場合において、単に何隻貸してくれ、何の船を何隻貸してくれという程度申入れをしたのか、貸してもらうについては、大体において日本希望としては、こういう条件の下に貸してもらいたいという申入れをしたのか、その点について若し御説明が願えるならば御説明を願いたい、なければないで差支えありません。
  49. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 今まで米国から武器使用につきましての使用自体の、通常の使用に対する対価ということは問題になつたことはございませんので、船舶についても誰も同様に考えておつたわけでございまして、通常の使用についての対価ということは初めから考えのうちに入つていなかつた、当然それは免除されるという前提の下に話をいたしておつたわけであります。この閣議で相談をいたしました際は、海上警備隊の創設について準備を進めたい、それについては使用船舶は国内において調達することは不可能であるから、米国海軍から借りるような下交渉をしてみたいという運輸大臣のお話がございまして、閣議においてはその下交渉を運輸大臣に一任をするという趣旨の了解が与えられたわけでございます。これに基きまして、運輸大臣がその責任において適当と認める条件によつて海上保安庁当局をして米極東海軍当局と下交渉をさせた、その結果お話が相当進んで参りましたので、外務省を通じて先方申入れたというわけでございます。この申入れ内容につきましては、所要の船舶を貸してもらいたいという趣旨を申入れただけでございまして、それについての条件等については、すでに海上保安庁極東海軍の間で下交渉が進行いたしておりまするから、当然この申入れは、その下交渉において相談をされておる、借受条件というものを前提にしてこれを推進するという意味申入れであつたわけでございます。
  50. 上條愛一

    ○上條愛一君 閣議の決定のことは今大橋国務大臣の御答弁でわかりましたが、保安庁をしてアメリカ極東海軍と下交渉をなさしめたということでありますが、それならばその下交渉のうちに、今大橋国務大臣お話では条件も大体下交渉のうちに申入れをして交渉をしたというふうに解釈してよろしうございますか。
  51. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そういう趣旨で申上げました。
  52. 上條愛一

    ○上條愛一君 それでは下交渉のときに申入れ条件というものは御説明願えますか、願えませんでしようか。という意味は、私の申上げる意味は……。
  53. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先般秘密会において申上げたような条件であります。
  54. 上條愛一

    ○上條愛一君 それならば又秘密会のことはあとで……。私が申上げるのは、アメリカ国会においてきめられたこの条件というものが、下交渉全然なくして、一方的にきめられたものであるとは我々想像が付きませんので、この問題はやはり交渉のうちに日本意向というものが向うへ伝えられて、その意向に基いて決定された、こういうふうに考えまするので、今承わつたわけなんですが、秘密会において御説明があつたとすれば、これは又あとで承わります。
  55. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まあ政府のその借受の場合に、閣議で協議してそうして見通しが付いた。だからこそ私は海上保安庁のあの人員を殖やす設置法案が、改正法ができたと、こういうふうに実は了承しておつたわけです。併しここにおいていろいろとあなたも答弁されたり、或いは岡崎外務大臣の答弁、又運輸大臣の答弁、この三者が実は食い違つてしまつておる。そこでこういうふうに一本に出て来たということになれば、これは私は正しい姿だと思いますが、私はその食い違つておるということは知らんで、食い違つたというよりも、むしろ意識的に何か隠して通して行こうといつたようなふうに、これは誤解かも知れませんけれども、実際とれると思うのです。と申上げますことは、例えば安全保障協定に基いて向うのほうから、直接に日本が貸してくれというよりも、向うが貸してやるというようなところが現われておるのじやないかというふうに想像ができるのです。ということは、このあなたがたの、十隻だとあなたはおつしやるが、向うは十八隻だと、この船舶の問題について、こういうような点から私たちはもう少し国民の前に、安全保障協定に基いて、実際日本がやはり軍隊が漸増をするという方向を、何か秘密裡に協定されておるなら、それをはつきりされたらどうですか。何かそういうことでないと言いながら、何か向うのほうからきめられて、それを受けておるという感じしか私は受取れないのですが、そういうものについて、もう少しざつくばらんに言うというわけには行かないのですか。
  56. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私の申上げておりまするのは、終始ざつくばらんに申上げたつもりでございまして、事実を特に隠して申上げておる点もございませんし、又曲げて申上げておる点もございません。この交渉のいきさつについては、ここに書いておりますような次第で、千五百トン級十隻、二百五十トン級五十隻、これを借入れたいということを申入れたのであります。これに対して弁償のほうについては、上陸用舟艇については、当方の要請した五十隻と合致いたしておりますが、警備艦につきましては十八隻となつております。八隻だけ食い違いがあるわけでございますが、当方としては当方申入れの十隻が認められておるのでございますから、この下に取極を進めるということは可能だと考えております。ただそれ以上に十八隻ということになりますと、これは当方としては残余の八隻分については只今借りる用意はございません、又計画もございません。併し当初の六十隻というのは、大体向うの貸付け得る数量について打診いたしました結果、その程度くらい借りられるというので、当方から六十隻という隻数の申入れをいたしたわけであります。それを或いは先方において調査したところが、十八隻貸付け得るということが明らかになつたかも知れませんが、併しその残りの八隻については当方としては今直ちに借りる用意もない、併し今後海上警備隊において更に増強の計画を立てるということになりましたならば、この八隻は向うにおいては特別な法的手続を用いずして、こちらに貸してくれる用意があるわけでございますから、この点は比較的こちらが借りるということになれば、簡単に行くだろうということは言えます。併し先ほど申上げたる通り、十八隻借りるという用意はございません。これには乗組員とか、或いは陸上の繋であるとか、いろいろな用意をいたしませんと、ただ向うが貸してくれるといつたら直ぐ貸りるというわけにも参りません。只今そういう計画はないわけであります。
  57. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 先ほど波多野委員質問に対していつ頃云々ということで、まあ六十隻の中で四隻来ておるということはたびたび聞いておるのですが、実際来たのではなくて、あれは初めから横須賀にあつたから、それをそのまま借りて、現に借りておるというのですか、使わせてもらつておる、こういうふうに説明を聞いたのですが、千五百トン二隻、二百五十トン二隻というのは、あれは向うから来たのですか。
  58. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まあ如何なる時期に来たか、いずれ来たものには違いないのですが、この話が出たのちに来たか、或いはその前から来たか、その辺については私どもよく承知いたしておりません。併し今一部が来ておることは事実でございまするし、又その後も米本国から送られて来るという話は聞いております。ですから逐次来るものもあるだろうと思います。
  59. 三好始

    三好始君 一、二落ちておりましたので、お尋ねいたしたいのでありますが、日米間に締結さるべき協定内容ヴインソン案においても、又政府が本日提出して参りました書面においても未定だということが現われております。即ちアメリカヴインソン案においては、右船舶返還すべき条項を含む協定ということになつております。これは協定一つ内容として含まなければいけないというだけでありまして、これ以外の内容が如何なるものであるかということは、大統領にいわば授権されておるわけでありまして、はつきり申しますというと、有償なりや無償なりやということも明確ではありません。従つて政府から提出した書面でも、合意すべき事項内容についての先方意向は未だ明らかでない、こういうことになつておるわけです。形式上は確かにそうだろうと思うのです。或いは無償貸与についての話合いが相当進んでおるのかもわかりませんが、今のところはそれははつきりしておらない、こういうことになるだろうと思うのであります。そうしますというと、これを明らかにすることが警備隊を発足させる上に非常に重要な問題になつて来るのではなかろうか、こういうことにならざるを得ないと思うのであります。ところでこの内容が明らかになるところの協定の締結はいつになるのであるか、こういうことについて波多野委員の質疑に対して、一、二ヵ月以内に締結されるようになると思うというようなお答えが先ほどありました。私はアメリカの国内手続はすでに完了し、大統領署名も終つておるのでありまして、又貸与を受けるところの艦艇も現にこちらに存在する。若し協定内容日米双方に大きな食い違いがない以上、私は一、二ヵ月を要するほどの問題ではないように思うのであります。もつと短期間の間に、極く最近の問にでもこの協定は成立する可能性考えられるのでありますが、一、二ヵ月と言われた根拠なり、これに対して私はもつと短期間にやれるのではないかと思つておる考え方に対して、もう少し御説明を頂きたいと思うのであります。
  60. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 当方から最終的に申入れました条件についての先方意向はまだ明らかにされておりません。従つてこの意向がいつ明らかにされるか、これは或いはすでにヴインソン法案が成立いたしましたので、比較的早期にこちらへ借りられるということも予想できるわけでございますが、それがこちらの考えと合致しますれば直ちに協定取極を成立せしめることができると思いますが、併しその際になお多少の食い違いがあるといたしますると、これについての双方の調整のための時間等も必要になるわけでございます。かれこれ予想をいたしまして、最大限度一、二ヵ月という期間を申上げた次第であります。
  61. 三好始

    三好始君 私はこれは協定内容についての日米双方の話合いが始められて長引くようなことであれば、双方に相当食い違いがあるということを示すものであつて、そういう場合には問題はかなり重大だと思うのであります。今まで相当予備的に話合いが進んでおるだろうと存じますので、恐らくそう協定締結に紛糾を来たすようなことはないという見通しの上に政府は立つておられると思うのでありますけれども、これが長引くようだつたら相当結果は政府の予想に反するようなことも起りかねないのではなかろうか、こういうふうに思うのであります。一、二ヵ月という期間は協定締結のために話合いを始めてから要する期間と考えるべきものか、或いはそうではなくして、話合いを始めるように交渉すること自体にも相当の日数を要するという見込みの下にこの一、二ヵ月という期間を考えたのか、その辺も問題になつて来るわけでありますが、協定締結についての話合いを始める時期はいつ頃の予定なんでしようか。
  62. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 当方としては成るべく速かに取極を了したいと思うのでございますが、何分先方都合もございまするので、それらを考え合せまして、一、二ヵ月と申上げた次第であります。
  63. 三好始

    三好始君 これはアメリカ側から申出がなくともこちらから協定締結についての提議をするおつもりですか、或いは先方から提議があつて初めて話合いに応ずるということになるのでしようか。
  64. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今交渉の経過は先ほど申上げましたるごとく、下交渉段階にあり、これについて先方の提示せられました条項についての当方意向先方申入れをし、その回答を待つておるという状態でございまするから、こちらといたしましては、右の点についての先方のその後の相談の結果の回答を催促をする、或いは先方から回答があるまで待つておるという段階になつております。
  65. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 警察予備隊のほうで使つております先ほど話されましたところの、例えば野砲であるとか、航空機、こういうものについてのやはり貸与の問題をこのケースと同じような形で申入れられておるのかどうか。
  66. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察予備隊の現在借りておりまする武器につきましては、たびたび申上げましたるごとく、正式に日本側が米国から借りるという形になつておりません。米国駐留軍が日本において保管をいたしておりまする武器を事実上使用さしてもらつておるという関係になつておるわけでございまして、この関係につきましては、先方においてこのやり方を変えたいという話がございまして、それでやはり日本側の中央機関に引渡す。その際に引渡しについての将来の条件について申入れがございました。で、これにつきましても、当方といたしましてはその条項の一、二の部分につきまして多少違つた考えがございましたので、その点を指摘して再考を求めてあるわけでございます。これについての向うからの回答はまだ受取つておらんわけであります。で、米国船舶とこの予備隊の借りておりまする武器の間には、或いは先方として多少扱いを同一にすべきか、或いは別個にすべきか、その辺がまだきまつておらんのじやないかと思つております。というのは、船舶についてはすでにヴインソン案という法案が提案され、通過しております。予備隊の借りる武器についてはまだそうした措置はなされておりません。これはなお米国側において米国自身の都合からどういう扱いにすべきか研究中の段階であるようであります。
  67. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 日本から……、私はやはりこういうようなことは閣議で協議して、海上警備隊ができたのだから、一つ武器も欲しいじやないか、何とかしてくれないかと言つて、私はアメリカへ申込まれて、米軍に申込まれて、そうして向うから借りておるというふうに解釈したいのですが、そうじやなくて、要求がなくてやられたということになると、私はどうも先方の好意によつて借りて来たことになつていると思うのですが、そこのところを私はお尋ねしたい。向うが好意で以てお前のほうへこれは貸してやると、こういつたのか、日本政府が貸してくれといつたのか、こういつたところによつて今のような形で……、形は前から聞いておりますからわかりますが、そこのところはどうなつておりますか。
  68. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは今後のあり方といたしましては、当然海も陸も同じような式で行くべきだと思つております。少くとも日本間においては同様の方式で行くべきだと思つております。ただ現在の警察予備隊は、御承知の通り占領中、占領軍最高司令官の命令によつてできたものでございまして、多少日本側の考案によつてできた海上警備隊と、この問題についての扱いが違つております。併し将来は飽くまでも同じ歩調で進めて行くべきものと、かように考えております。
  69. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 念を押すようで申訳ないのですが、命令によつてできたとおつしやるのですが、武器はだから向うから貸してやると、こういう好意で借りられたかどうかということをはつきり私はそこのところの御答弁せられることを要求する。
  70. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察予備隊武器は占領中に占領軍の好意で借りましたものを引続いて保有いたしておるという関係になつております。これに反しまして、海上警備隊のほうは独立後の措置として、独立後のことを前提として違つた手続でこちらから申入れをしたと、それに対して向うが貸してくれたと、こういう形になつております。
  71. 三好始

    三好始君 今問題になつた最後の点について、私今までお尋ねしたことがありますので、申上げるのを遠慮しておつたのでありますが、今の質疑応答を通じてはつきり確かめておきたいという気持が起りましたので、お尋ねいたすわけでありますが、占領中の警察予備隊は、アメリカ側から申しますというと、純然たる平時の状態における他国とは違うわけであります。バンデンバーグ決議の精神から申しましても、他国に対して単なるその岡の治安維持のために要求せられた武器貸与のごときは許されない。こういう原則がそのまま適用できないような状態だと考えられます。ところが講和条約が発効した以後の日本に対して、警察予備隊に対して武器を貸すことはバンデンバーグ決議の精神から言つて非常に疑問になつて来る。独立国としての日本国内治安の維持のために、アメリカとしては武器貸与が公けにはできない。ここに警察予備隊の性格を変えなければいけない一つの必然性と申しますか、要求が起つて来たのではなかろうか。これが今回の保安庁法案の提出ではないか。私はこういうふうに考えたのでありますが、政府は勿論予備隊と保安隊は性格に総意なしという説明をされておるのでありますが、これはむしろ相違ありというのが正しい解釈ではないかと思いますが、講和条約発効に伴つてアメリカとしては日本に対して警察予備隊の警察補充的な性格をなくして、少くとも解釈の仕方によつては、これは実質上の軍隊であるという説明をするように要求せざるを得ない。そうしないというと、予備隊貸与しておる武器も取上げなければいけない。こういうような問題が生じたのではないでしようか。
  72. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) アメリカにおいて、そういう事情が生じたということは承知いたしておりません。
  73. 三好始

    三好始君 これは見解の相違ですから、これ以上重ねてお尋ねいたしませんが、この際アメリカの、いわゆる艦艇貸与法が大統領署名によつてアメリカ国内法の手続として完了いたして確定いたしたわけでありますが、この内容を基礎にして、奥野法制局長に、日本側としての国内的な手続は如何にあるべきかという点についての御見解をお尋ねいたしたいと思うのであります。先ほど来の質疑応答をお聞きになつて、大体委員側の考えておることと、政府考えていることの要領がおわかりになつておると思うのでありますが、重ねて私の見解を申しますというと、アメリカとしては、この法律を成立させることによつて日米間の艦艇貸与に関する実質上の条約としての協定締結に事前の承認を与えるという手続をとつたものと考えるのでありますが、これに対して現実に貸与が行われるに当つて日本側としての日本国内における政府手続は如何にあるべきかということについての御見解を承わりたいと思います。
  74. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) アメリカにおいてヴインソン法によつて大統領にこういう協定日本と締結する権限を与えまして、これに基いてアメリカとしてはどういうふうに出されますか。いわゆる条約を結ばれるのか、或いはこの授権に基いて行政的なエキユゼリテイヴ・アグリーメントというようなことでこちらのほうに向つて来るのか、その点は明らかでありませんが、日本側としては、先ほど政府から提出されております米国船舶借受けについてという書面にありますように、その内容が我が国にとつて重要な権利関係を含むものである内容を締結する場合でありますれば、条約、若し協定という言葉を使いましても、実質条約として国会承認を得るというふうな手続をとるのが穏当ではないかと思います。
  75. 三好始

    三好始君 只今の奥野法制局長の述べられた御意見のうち、二つの点について更にお尋ねいたしたいのでありますが、一つアメリカの場合には、いわゆる行政府の締結するところの行政協定という形式の下に実質上の条約が締結されるに至つております。これはアメリカの古い歴史に由来するところでありまして、アメリカ大統領が締結しておる協定がいわゆる行政協定的な形をとつておるから、それは実質上の条約でない、こういうことは言えないと思うのであります。いわゆる行政協定というような形で異質上の条約アメリカとして締結するような一つの慣習が成立しておる、こういうように私は考えておるのでありますが、この点如何ですか。
  76. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) お説の通りでございます。
  77. 三好始

    三好始君 もう一つお尋ねいたしたいのでありますが、政府の提出した書面にあるように、内容が重大な権利義務に関する協定である場合には条約として手続をとるべきてあろう、こういうような御見解のようでありますが、若しそういう協定内容をなすところの有償か無償かという一番恐らく大きい問題について、これが無償であるというような内容なつた場合、条約としての手続をとる必要なしとお考えでしようか、或いはたとえ無償であつても、その他の条件等全体として考え合せて、又艦艇とか、或いは武器とか、こういうふうにその性質上完全な財産に属しないようなものを貸借する場合には、この点についての考慮を払わなければいけない、殊に憲法第九条との関係なんかもありましも、慎重な取扱いをすべきである、これが一応の私の考え方なんでありますが、内容が重大な権利義務に関する事項というのは、法制局長としてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  78. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) たとえ内容が無償でありましても、非常な大量の艦艇というようなことで、これに対する原状回復等の費用というようなものも莫大であるとか、或いはその借受についての国内的な受入態勢等において重大な権利義務関係を生ずるとか、或いに又政治的に非常に重大なる問題を含むというような内容のものでありますれば、たとえ無償の貸与というようなことであつても、私は条約の形をとることが適当ではないかと思います。
  79. 三好始

    三好始君 この点に関して法制局長と私同感でありますが、その貸与を受けるところの艦艇の数量は一応ヴインソン法においては確定いたしておるわけであります。即ちフリゲート艦十八隻以下、上陸用舟艇五十隻、こういうふうに数量が一応確定いたしておるわけでありますが、この数量は今法制局長が申された大量というような概念から申しまして、どういうことになるんでしようか。もう一つ、この借受した艦艇が日本国家に対する関係でどういうことになるかと申しますと、現在の海上警備隊、保安庁法によつてこの名前が変り、改組されるところの警備隊の現実の編成を左右するところのものであります。これが借りられないということになりますというと、これを借りることを前提にしてできておるところの海上警備隊或いは改組されようとしておるところの警備隊は、恐らく成立が不可能になる。こういう意味を持つておると思うのであります。そういう意味を持つたフリゲート艦十八隻以下、上陸用舟艇五十隻という数量は、只今法制局長の申された数量の概念から申しまして、重大なるという表現を使うべき数量であるかどうか。
  80. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 私は抽象的にまあ法律論として申上げたので、具体的の問題はそれに該当するがどうか、ちよつとお答えいたし兼ねます。
  81. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちよつと……。これは特別調達庁方面の関係のことで、定員の移動のことについてちよつと質問させて頂けませんか。何か特調問題を解決する意味において……。
  82. 楠見義男

    ○楠見義男君 一点だけ……。この問題で先ほど来お話を承わつておりまして、特に大橋国務大臣波多野君との御質疑で、このヴインソン案の、実質上借りたときの同一条件で返すというこの条項は、当然政府米国船舶借受についてという御答弁の中の内容が、重大な権利義務に関するこの事項に該当するものということを前提として、このヴインソン案におけるこの条項が緩和されるかどうかという希望的の問題等についての御質疑があつたように思うのでありますが、従つて私は政府としては、このインサプスタンシアリ・ザ・セームコンデイシヨン・ホニン・ローンドという言葉は、いわゆる外国船舶借受についての答弁の中の内容が重大な権利義務に関する事項というものに該当するものと了解をして質疑応答を承わつてつたのでありますが、このように了解していいかどうか、この一点だけお伺いしておきます。
  83. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ヴインソン案自体は大統領に対する授権行為でございますので、この条項によつて米国政府から日本政府に対して如何なる条件申入れられるかということを直ちにきめるわけには行かないと思うのでございます。そこで日本側といたしましては、ヴインソン案それ自体によつてどうこうということを決すべきでなく、具体的な向うの申入れ内容によつて重大なりや否やを判定すべきものと考えております。
  84. 楠見義男

    ○楠見義男君 そこで波多野君からもいろいろ御意見が述べられておりましたが、私も大体同じような感じを持つたのですが、それはヴインソン案でこういうような条項を含んだアグリーメントを日本政府とやることの権限を授与する、こういうふうにはつきりとヴインソン案においては確定されておるんですか。常識上アメリカ国の大統領日本政府条約を結ぶ場合には、少なくともほかの条項は自由裁量でありましようが、この条項だけは向うからの申出に入つて来るのではないか、そこでそういうことを前提として今お伺いするわけでありますが、そういたしました場合に、今大橋国務大臣は具体的に申出られる条件によつて決定をするというような趣旨の答弁でございましたが、仮にこの条項が……、私はこの条項は入つて来ると思うが、常識上この条項が入つて来た場合は、それは重大な権利義務に関する事項と解釈せられるかどうか、先ほどの質疑では、当然これは解釈されるというように理解されたのでありますが。
  85. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私の考えでは、この条項極めて抽象的でございまして、これが具体的の場合において、如何なる条項として書下ろされて申出があるか、なお見通しを付けかねるふしもあるわけであります。例えば原則はここに書いてございますが、この原則を適用する場合において、不可抗力による亡失についても、なお返還義務があるかないか、或いはその場合においては返還義務が免除されるか、或いは代りの品を返す、或いは金銭を以て賠償する、まあそういつたようにいろいろここに書いてあります抽象的な原則を条約として具体的に協定する場合、或いは取極として具体的にきめます場合にも、なおいろいろな方式があろうと存じます。そういう方式全体を勘案いたしまして、条約とすべきかどうかということをきめるべきものと思うのでございます。それからもう一つ考え合せなければなりません点は、先方がこれを条約としてきめたいということになりますならば、当方では余り重大でない内容であると認めた場合においても、やはり先方意向従つて条約として処理するということもあり得るわけでございます。いろいろなおヴインソン案法案を拝見しただけでは、見当が付きかねる要素も多多あるわけでございますので、そこで答弁内容といたしましては、仮定的な言い現わし方をいたすことが適当であると考えたわけでございます。併しながらこの問題につきましては、いろいろ当委員会においても傾聴すべき御意見が述べられた次第でございますので、政府といたしましては、これらの御意向を十分考慮に入れまして、具体的な場合に善処いたす考えを持つておりますということを附加いたしておきます。
  86. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ちよつと上條君に伺いますが、海上公安局法案について御質疑がありますか。
  87. 上條愛一

    ○上條愛一君 一点だけ……。   —————————————
  88. 河井彌八

    委員長河井彌八君) では海上公安局法案を議題といたします。
  89. 上條愛一

    ○上條愛一君 大橋国務大臣にちよつとお尋ねしたいのですが、それは保安庁の機構の中で、海上警備隊のみならず、海上警備救難事業に従事しておりまするものを、海上公安局として併せてこれを保安庁に包含しておるわけであります。ところが陸上においては、警察予備隊だけが保安庁に加わつて国家地方警察、自治体警察というものはそのままになつて保安庁に入つておらない。そこで私のお尋ねしたいのは、陸上における国家地方警察並びに自治体警察に相当するところの海上の日常の警備救難業務に携わつておるものも、海上公安局として保安庁に包括したという理由は、どういう理由からこのような機構にしたかということをお尋ねしたいのであります。
  90. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この点は誠に御尤もな御質問でございまして、お説の通り陸上関係海上関係において多少機構の取扱い方が違つております。この違つておりまする理由についての御質問であるわけでございますが、これは端的に申上げまするというと、海上の特殊性について考慮をめぐらした結果であるということになるわけでございます。と申しまするのは、御承知の通り海上は非常に海岸線が長い、この間におきましては、行動上船舶というものが必須の要件になつており、又同時に通信機関というものが相互の連絡の上から言つて非常に重大な役をいたすわけでございます。かような通信関係並びに船舶ということが、海上における場合に特別な条件を作ることになるわけでございまして、例えば海難の救助をいたしまする場合におきまして、海上公安局所属の船舶が救難に赴いた、併しながらその力が不十分であるという場合におきましては、当然海上警備隊の応援を頼まなければならなくなるわけでございます。従いましてこの際におきましては、船舶というものが非常に長い海岸線に点々と配置せられておる、海上警備隊は又非常に局限された基地を中心として配置されておるというような関係から、緊密なる連絡協力ということを保持いたしまする上から申しまして、一元的にこれを管理することが適当である、こういうふうに考えたわけでございます。もとより陸上におきましても、この点は同様に言い得るのでございまするが、併し海上においてはより一層その必要性が強いということが言い得ると思うのでございます。それからもう一つ考えなければなりませんことは、一般警察の範囲に属すると思われるところの機関、それと警察予備隊との比較をいたして見まするというと、一つは公安委員会というものによつて民主的に管理されるということが、この警察組織の根本原理と相成つておるわけでございます。然るに警察予備隊においては、政府直属機構として一元的に統制管理されておるという機構でございまするので、この間の協力を密接にする必要があると申しましても、かような管理機関の本質的な差異からいたしまして、この両者を合一して同一機関に管理させるということにいたすということは、警察の民主化なり、或いは警察予備隊の一元的能率的管理という、どちらかを犠牲にしなければならなくなるという致命的な問題があるわけでございます。従いまして陸上におきましては、この両者はできるだけ緊密な協力を保つということに十分留意をして運用するという考えの下に、両者を一つの機関に属せしめるということをいたさなかつたわけでございます。ところが海上におきましては、緊密なる協力ということが陸上以上に必要である。かてて加えまして、現在の機構を考えて見まするというと、警備、救難に関する現在の海上保安庁の機構というものも、これは政府の直属官庁ということに相成つておりまして、警察のごとく公安委員会制度というようなものではございません。又海上警備隊も同様でございますから、これを同一の機関に管理させるということからして、陸上におけるがごとき本質的な意味を持つところの行政委員会制度というものを否認するということにはならないわけでございまして、これを一元化するについて、この点で楽な気持で処理することができるわけでございます。この点が第一の点でございます。  それから第二の点といたしましてのこれは、積極的な一元的管理を適当とするという理由でございまするが、何分海上におけるこれらの行動というものは船舶によらなければならんのでございますが、御承知の通り現在の我が国といたしましては、海岸線が非常に長いにもかかわりませず、これらの目的に使用し得る船舶の数というものは非常に限られているのでございます。それで限られた船舶をできるだけ能率的、有効に運用するということには、どうしてもこれを一元的に管理するということにしなくてはならいわけでございます。この点からも両者を一元的に組織するということが適当であると認めた次第でございます。以上二つの理由から陸上、海上の差異が生じた次第でございます。
  91. 上條愛一

    ○上條愛一君 今大橋国務大臣の理由を承わつたのでありますが、そのうちで二つの点についてなお疑点があるわけであります。一つは、若し日本海上の治安というものが船舶を中心にして一元的にこれを統轄することが必要であるということでありますれば、水路部とか燈台部とかいうようなものは、これは運輸省に残しておりますのですが、これも海上の警備救難、治安についてはやはり一元的の機構にすべきが当然であるにかかわらず、これらは運輸省に残して、ただ警備救難の業務だけを海上公安局として保安庁に包含したという点が一点理解ができないのであります。それからいま一つは、海上においての警備救難その他保安につきましては、普通の海運業に従事しておりまする船舶、船員というようなものはすべて運輸省に現在属しているわけであります。そしてこれは海運局その他が九つの地区に分置されておりまして、これらと密接な関連をもつてはじめて海上における警備救難、或いは治安の万全を期し得られると考えるわけであります。然るに海上公安局だけを保安庁に属せしめて、運輸省の他の機関とは全然別個にするということが妥当であるかどうかという点に一つの疑点があります。それからいま一つの疑点は、成るほど陸上における自治体警察はこれは公安委員会その他に属しましてやつておりますが、一体予備隊というものは国家地方警察と自治体警察の補助的の組織として生れたものでありまするが故に、単に国家地方警察或いは自治体警察というものは公安委員会というような組織であつて国家の直接なる機構でないという理由を以て海上と陸上と分けることは無理があるのではないか。当然予備隊というものはこれは独立した一つの総理大臣のあれによつて出動はいたしまするけれども、その目的というものはやはり国家地方警察と自治体警察の補助的の任務を持つているものでありますからして、海上において海上保安局を保安庁に属せしめるならば、当然陸上においてもそのような処置をすることが当然ではないか、こう考えるのであります。  この二点についてなお納得のできないものがあると考えますか、この点について……。
  92. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 今回の保安庁法案におきまして水路、燈台等の関係船舶は運輸省に残していることは事実でございます。併しながら水路、燈台等に関する船舶というものは、もともと特殊の行動目的を持つているものでございまして、これらが一般警備救難に使用されるということは従来からも殆んどないわけでございます。特に緊密に相互が協力する必要のある部分は、警察救難関係の船と海上警備隊の船でやる。そこでこれだけは一諸にするほうがよろしいと、こう考えたわけでございます。それから陸上、海上によつてつている理由は、先ほど申上げた通りでございまして、別に附加えることはないと存じます。
  93. 上條愛一

    ○上條愛一君 水路部、燈台部の船の問題ではないのです。水路の仕事、燈台の仕事というものは、これは海上の警備救難、保安については切り離すことのできない関連を持つている仕事である。従つてこれだけは残して、そして他の船だけは保安庁に持つて行くというようなことは、これは海上の少くとも事情から申しますれば、非常な不合理のことである、こういうふうに我々は考えるので、その点に非常な矛盾があるのではない、こういうふうに考えるのです。水路関係や燈台関係に船が使われているということではないのであります。
  94. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この保安庁法におきまして特に警備救難関係部分を保安庁の所管にいたしているということは、これは船の関係からでございます。それ以外に理由はございません。無論水路、燈台の仕事と水難救済、警備、これらの仕事が密接な関係があるということは否定いたすわけではございません。併しながら密接な関係、それだけで同一の機関が所掌しなければならんということにはならんのでございまして、それはそれぞれ適当な機関が管理しながら、その間に密接な連絡をつける方法は幾らもあると思うのでございます。ただ船に至りましては、何分船の数が乏しいのでございまして、相互に融通し合つて使用しなければならない。又海上の行動でございまするからして、通信その他の関係を利用いたしまして、できるだけ緊密な共同行動がとれるようにするということが必要であります。こういう見地から保安庁に一元的に管理するということにいたしたわけでございます。従つて双方の仕事の性質上密接な関係があるという点からこの機構をこしらえたのではなくして、それらの仕事のための行動が常に一元的に管理されることが、それらの行動を進めて行く上から言つて必要である、こういう見地から行動及びその行動の基礎となるところの船舶、こういう見地からこの機構を考案いたした次第なのでございます。
  95. 上條愛一

    ○上條愛一君 私はこの海上保安行政の企画立案というものは運輸省においてなされ、ただ実施面を保安庁に持つて行こう、こういうことなんです。このようなことで、海上の警備救難というものが完全に行くものではないと思います。従つて若し保安庁というようなものを作ることの可否については我々又別な意見を持つておるのであります。若し保安庁というようなものを作る必要があるとするならば、これは海上警備隊警察予備隊とを包含するということが、これが当然であつて、この警備救難の仕事をやつている運輸省に属している海上公安局というようなものにして、これまで包含するということについては、これをやるということになれば、海上においてこの警備救難が非常な支障を来たすということは、これは明白であつて、このような無理な機構改革というものはすべきではない。これは意見になりますからこれ以上申上げませんけれども、私はそう考えておるのであります。この点については、いま少しく、保安庁機構を樹立するについては深甚な御考慮を願わないというと、将来の海上における警備救難の上に非常な支障を来たして来るのではないかと考えて申上げたわけであります。
  96. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この点についての政府見解は、先ほど来申上げましたるごとく、その実際上の警備救難のための行動ということの必要から申したわけでございまして、これは船舶の数が十分でない今日の状況から、双方、船舶の行動というものが基礎になるところの二つの機関を一元的に管理して参るということが差当り便宜な方法であるという、実際上の便宜という、実際的な見地から出た一つの案でございます。これは理論上の問題というよりは、そうした実際上の必要性という見地に基いて立案をいたしたものであるということを重ねて附加えておきたいと存じます。
  97. 上條愛一

    ○上條愛一君 私はその点については決して理論だけで申上げているのではない。実際面において、このような無理な、保安を目的とした保安庁に海上公安局を入れてしまつて、運輸省と分離するということになりますれば、これは多数の船舶は運輸省において取扱つておる。そうして警備救難の仕事というものは、これは運輸省の仕事と切つても切れない関連を持つておるものであるのに、運輸省と全然別個の保安庁の機構にこれらを持つて来るということになれば、今後の平素の警備救難の仕事については非常な支障を来たす。大体保安庁の仕事というものは、一朝有事の際を中心にして考えられておらるるところのものであつて、このような機構に警備救難の実際やつている現在の海上保安というようなものまで包括せらるるということになれば、必ずやこれは実際の運営の面においても非常な支障を来たすと考えるが故に、このような意見を申上げておるわけでありまして、これ以上は議論になりまするからこの辺で打切ります。
  98. 楠見義男

    ○楠見義男君 その問題で私今まで理解しておつたところと、只今大橋国務大臣と上條委員との間の質疑応答で、私の今まで理解しておつたところが或いは違つてつたのじやないかと思いますので、その点確かめるために、これはむしろ海上保安庁のかたに伺つたほうがいいと思うのですが、それは私は只今まで理解しておつたのは、海上警備隊というものは現在海上保安庁の警備救難業務、海上救難業務についての特別のものが起つたりした、そういうような場合に、それを援護する、援護というか臨時応急の助太刀として設けられる、こういうことで、従つて平常は大湊とか或いは横須賀とか舞鶴とか、そういうところにおつて、いざというときに出る、こういうふうに考え、理解しておつたのですが、従来のそういう性格は今後といえども変りない、こういうことで、この点についてもいろいろ別の意見を我々述べたことがあるのですが、実際上の問題としては、この海上警備隊の船というものはそうしよつちう、普通のパトロール船と違つて基地に屯ろしておるのだ、こういうふうに理解しておつたのですが、そうじやないでしようか。
  99. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 只今おつしやつた通りでございます。
  100. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうしますと、今の大橋国務大臣の実際上の点が、その関係が実ははつきりしなくなつたのですが、それは常時海上警備隊の船もパトロールしておる。海上公安局の船もパトロールしておる。そこで一体的にこれを運営するという場合には、この必要性は相当評価されていいと思うのでありますが、そうじやなしに、一方のほうはパトロールしておるが、一方のほうは基地にある。そうすると丁度陸上の警察予備隊のごとく、いざという場合に国警なり、或いは自警の要請に応じて援助して行くというようなことと同じ状況でやつて行けば、それで実際上の問題は解決するのじやないか、と同時に又それが実情に即するのじやないか、こういうふうに思うのですが、そういう疑念を上條さんもお持ちになつていると思うのですが、その点はどうなんでしようか。
  101. 三田一也

    政府委員(三田一也君) その点はいろいろ実際の面と抽象的な面とあると思うのでありますが、平生同一機構内にありましてやつておりますと、制度とか或いは実際に今度海上で行動する場合の連絡が非常にとりやすいという点はあります。又一方違つた機構におりますというと、いわゆる繋がりが密接に行かなくなる虞れがありますから、実際海上で行動する場合に、細かい点が海上でも非常に重大な結果になることが常態でありますので、そういう不便が起り得ると考えます。
  102. 楠見義男

    ○楠見義男君 私の意見になりますけれども、それじや一体的のものというけれども、一方は受けろ、或るものははねろ、そういうふうなわけで、その機構で動く。一方はそれと離れた海上公安局という外局的なものでやつて行くのだから、平常はその指揮者が一人で、それによつて共通的に動くということは私はないのじやないかと思うのですが、これは意見ですから別に答弁は要りません。
  103. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 補足して申上げたいと存じますが、一つは常時的な仕事を持ち、一つは必要な際に応援をする、こういう役割で別々の目的を持つわけでございますが、併し実際いろいろな警察の応援などの例を見まするというと、如何なる場合には応援を求めるべきであるか、如何なる場合には応援に行くべきかということもなかなか両方で一致しない場合がございます。一方ではこういう場合には当然応援を求めて来そうなものだと思われる場合にかかわらず、少くとも応援は求めない。警察においてもそれがために却つて治安を混乱させたというような実例もあるわけでございます。併しながら陸上警察の場合におきましては、建前が行政委員会を中心とした民主警察の運営ということになつておりますので、さような場合は特例といたしまして、そのために常置の機構を改めるということは不可能でございますが、もともと海上の機構はどちらも単独性の行政官庁に属しているのでございまして、構造の原理は一つでございます。従つてこれを一元化することによつて陸上警察におけるがごとき本質的な欠陥を示すというはないわけでございます。それで便宜に従つてこれを管理するがよかろう。その便宜の上から申しますと、応援を要請するほうと応援をするほうとが、できるだけ平常から同一機関に属しまして、相互に連絡提携し、場合によつては共同作業の訓練なども随時行うということにいたしておきますことがいいのじやないか、これが両方とも船がたくさんあるということになりますれば、そういう必要性も少くなるわけでございますが、何分限られた船でできるだけ能率的にやつて行くということのためには、平常からそうした点を特に緊密に管理することが必要であろう、この点を政府としては考えまして、かような方式を考案いたした次第でございます。
  104. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この保安庁法案の取扱い方ですが、実際これに給与法がついているわけで、人事委員会との関係がございますから、私はそうした意味で、若干あとに残る、こう思うのです。実は調達庁の人事関係について質問しようとしたのですが、それでいいですか、そういう考えで……。
  105. 河井彌八

    委員長河井彌八君) どうぞ。
  106. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 調達庁で実は千百九十一名首を切られて、警察予備隊の営繕関係のほうで九百名新規採用されるわけです。そこでその調達庁関係の営繕関係におつた人をこちらへとられるのか、それは全然新規採用されるのか、その辺を一つ説明願いたいと思います。
  107. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 調達庁は、今回独立に従いまして調達事務が非常に減少いたしました。殊に営繕関係、建設関係の仕事が簡易化したので、行政整理としてそれだけの定員を落す、と同時に警察予備隊は今年度において増員をいたしております。そのほか前年度来いろいろ必要な建設工事をやつて来てはおりますが、併しながらだんだん装備も新らしくなりますのでその関係でいろいろ施設もしなければなりませんし、又学校を作るとかいろいろ建設の仕事が多くなつております。そこでこちらのほうでは建設関係の人が必要であるということでとることになつております。併しながらこれは急に人を集めましてもなかなかいい人を得がたいのでございますし、殊に多数の人々で、官庁としての営繕機構でございまするから、熟練者でないとすぐに間に合わないという面がございまして、丁度そういう時機に一方調達庁のほうで定員の整理がございましたが、警察予備隊といたしましてはできるだけこれを採用いたすという方針を立てております。事務的にはすでに警察予備隊本部と調達庁の次長とが実際の人のやりとりについては、事務的に協議をいたしております。即ち堀井調達庁次長とそれから警察予備隊本部の加藤人事局長及び山田工務局長が種々密接な連絡をとりまして、この人のやりとりの問題を決定いたしたいというので只今相談中でございます。恐らくこの調達庁で整理される人の大部分がこちらへ廻つて来ることになる、こう思います。
  108. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今の大橋国務大臣答弁の点は了といたしまして、これはこうした首切りは成るべくせぬようにして頂きたい。その点において今努力中ですか、どうですか。これは行政管理庁も了解ですね……。
  109. 松原一彦

    松原一彦君 大橋国務大臣にお伺いしますが、私もこの海上公安局というものには、上條氏が質問した通りの疑問を持つて今日まで参つておるのですが、この海上公安局の仕事は当然水路、燈台等に密接な関係を持つものであつて、一般の船舶積荷或いは航海等における常時の保護、それから天災等における危険、海難に備えるためのものであると、これが燈台の施設、水路の問題等に関連して今までやつてつておると信じておつたのであります。然るに今回はその常時には動かない、非常時には動くという、その保安庁の中に入つて、そうしてこれが同じ機構の中で動かされるということになつて、運輸省と縁が切れてしまうということについては、私ども不安を持つのです。これは上條氏と全く同感でありますが、一体今度新たにできる警備隊というものは船を共通に使うと、海上公安局の動かしておる船と今度の警備隊というものの船とは同じものを使うというのでございますか、これはどうなんですか、どうもちよつとわからない点があるのですが……。
  110. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 只今のところは使用する船は違うように思います。
  111. 松原一彦

    松原一彦君 全く違う……。
  112. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 所属する船が違うということでございます。
  113. 松原一彦

    松原一彦君 今度貸与を受けるフリゲート艦十隻及び上陸用舟艇五十隻というものはどちらに属するのですか。
  114. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 只今海上保安庁の所属船舶となつて一緒になつておるわけでございます。両方とも一緒でございます、只今状態は……。
  115. 松原一彦

    松原一彦君 只今のところ一緒と言われるのは、只今の何が一緒なのですか。
  116. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 只今海上保安庁としては、借りる船も海上保安庁船舶でございますし、現在使つておるのもそうでありますから、分れて行くということになつておりません。若し保安庁に、警備隊と海上公安局と分れる場合には、船舶がそれぞれ分れて行くということになります。
  117. 松原一彦

    松原一彦君 そうすると、私どもの了解しておるところでは、船舶を借りるということは、運輸大臣が下交渉の任務に当つて海上公安監、即ち運輸省で今動かしておる多方面に使うものだと信じておつたのでありますが、それが今度警備隊と新たにできる海上公安局の分割せられた任務、そこに分配せられる今回の船の工合はどうなのですか。
  118. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私からお答えを申上げます。現在、海上保安庁法によりますると、海上保安庁の内部部局と申しますか、海上保安庁プロパーに警備救難部というものがございます。この警備救難部が海上保安庁の大部分船舶管理いたしておるわけでございます、勿論このほかに水路部、燈台部がございまして、水路測量、それから燈台監視、巡視の特別の任務の船はそれぞれこの特別の部に属しておりますが、大部分の船は警備救難部に属しておるわけでございます。ところで米国政府から借受ける船舶につきましては、警備救難という広義の任務ではございまするが、特にこれは予備隊的な使用をいたしたいと、こういう考えを以ちまして、この新たに借受ける船舶を以て海上保安庁の中に海上警備隊を組織いたしたい、こういう考えを持つておるわけでございまして、この考えに基いて先般海上保安庁法の一部を改正する法律案を提案いたし、当委員会において御審議を願つたわけでございます。従つてその現行の制度におきましては、米国から借受ける船舶はすべて海上警備隊に配属する、こういうつもりでございます。その海上警備隊が保安庁法においては警備隊になるのでございまして、警備救難部が新らしい海上公安局になるわけでございます。船舶の配属関係につきましては、現在と同様でございまするから、将来は米国貸与船舶海上警備隊を作り、海上公安局には現在警備救難部に属しておる船舶が引継がれる、こういうことになります。
  119. 松原一彦

    松原一彦君 そうしますと警備救難部が今回海上公安局となるが、そこには今度の借入れた船というものは全然関係がない、こういうことになるのでございましようか。
  120. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) さようでございます。
  121. 松原一彦

    松原一彦君 この現在の警備救難部が持つておる救難用の船舶というものは、只今どのくらいあるのでしようか。どういう種類がどのくらいあるのでしようか。
  122. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 只今警備救難部として使つております巡視船は、巡視船と申しますのは、一番大きいのが七百トン、それから一番小さいのが九十トンぐらい、その範囲内に属しますのが九十三隻、それからあと港内艇と称しますモーター・ポート程度のもの、これが二百十隻ございます。
  123. 松原一彦

    松原一彦君 それは今後増強せずとも当分このままやつて行けるお見込でしようか。
  124. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 只今の所有の隻数では非常に不足しておりまして、まだこれから量も質も共に増加させなければ平常業務に不足をすると思つております。
  125. 松原一彦

    松原一彦君 どうも私どもの観念がこんがらがつてよくわからないのですが、今大橋国務大臣お話なつた船を、共通船舶関係上相互共通するといつたようなふうに私はとれたのですけれどもが、そういう意味から警備救難部、即ち海上公安局をも併せなければならないという御説明のように承わつておりますが、今後海上警備隊の船と警備救難部の船とは彼此融通してお使いになるという意味でございますか。この点はどうでしようか。
  126. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今のところでは警備救難部の船舶もそれから海上警備隊船舶もどちらも不足の状態でございまするので、それぞれ自分の船舶を自分の使命のために使うのにと一ぱいという状況でございます。従いまして彼此融通というものは考えられません。併し将来海上警備隊船舶が拡充し、そうしてこれが不要に属するというようなものが仮にできて来たとすれば、その場合にそれを融通するということはこれは十分にあり得ることと思います。併しここ数年の間にそういう状態になろうとは考えられません。
  127. 松原一彦

    松原一彦君 そこで上條氏の質問せられた要点に戻つて来るのでありますが、船を彼此融通するというようなことであるならば、これは同一管理の下に属せなければならんのですが、船も別個のものであり、警備救難という常時の任務に服するところのもの、而もこれは国家警察、自治体警察と同じ動きをしておるものであつて、而もふだん航海しておる船舶、或いはそれに対するところのいろいろな違反行動等の取締に任じておるものを、わざわざこれをば切離して、今の運輸省から切離して、保安庁のほうに所属せしめなければならない理由はどうも私は考えられない。やはりこれは一般の陸上の警察と同じように、これが主体となつてふだんの活動をしておる、非常の場合においてはこれをも一括して保安庁の指揮下に置くということなら話はわかるが、ふだんはこれは運輸省の下における日常の海上の保安に任じ、そうしてこれが手の足らないときに警備隊のほうで出動するというのが本体じやないか。そうでなければ、ただ船という関係だけでは、私は彼此融通でない限り意味がないと思うのですが、この点に対してはどうなんですか。
  128. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この海上公安局、即ち今日の警備救難部の仕事というもののために十分なる船舶があります場合においては、特に海上警備隊から応援をしてもらわなければならんという場合は、非常に稀になると思うのでございます。そういう場合が非常に稀でありまするならば、平素から同一管理の下に属して密接な関係を保つておくという必要性も比較的少くなると思うのでございますが、併し現在の状態におきましては、海上公安局の船舶自体極めて不十分でありますので、いろいろな場合において海上警備隊の応援を求めなければならんということがしばしばあることであります。従つてこの間の連絡をできるだけ密接にするということが必要である、そのために同一管理に属せしめる、これが政府考え方でございます。
  129. 松原一彦

    松原一彦君 私はそんなに理窟張つて申すのじやないのであります。そんなしかつめらしい理窟で言うのではなくして、船も彼此融通するのじやない、又ふだんに警備隊のほうから出動する機会も少いと大橋国務大臣も言つておいでになる、丁度陸上における今日の警察予備隊のごとく。実は私など寡聞にして警察予備隊というものをまだ見たことがないのですよ、どこにあるのかまだ一遍もお目にかかつたことがないのです。これは非常時に備えたものであつて、常時の地方の治安は国家警察、自治体警察がやつてくれておる。これにやつてもらつておる。非常の場合にこの予備隊が出動するのだと思つております。船がどうしても足らんからして、互いに彼此融通し合うというのならば話はわかりますが、これが截然として別でありとするならば、どう運輸省のほうに置いておいて、常時警備救難のために船舶を応援する任務に従事せしめておく現在の機構が私は一番いいのじやないか、何もわざわざ持つて行かねばならない必要はないのじやないか、水路の警戒、燈台の施設のある所等を常に巡視するものと同じように、船舶の運営に従事しておる運輸省がこれを持つておることが私は当然必要なものだろうと考えなければならない。持つて行かなければならない理由はどうしてもないように思いますが、併し勿論非常時においては、国家地方警察、自治体警察とも、恐らくこれは保安庁の大きな指揮下に動かされるときがあるだろうと思います。同様に今度の海上公安局も非常時においては同一指揮下に動かしてよろしいが、常時は離しておいたほうがいいのじやございませんか。如何でございましよう。
  130. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この警備救難関係船舶が十分にあつて、本当の非常時というような場合以外には、警備隊の応援を得ないで済むということならば、これはお説の通りだと存ずるのでございます。ところが実際現在警備救難部で持つております船舶というものは、先ほど次長から御説明申上げましたるごとく、最大七百トンでございます。太平洋上における暴風雨に際しての水難というようなことを考えまするというと、その場合に直ちに千五百トン級の警備隊の所属船舶の応援を得なければならんというような実情にあるわけでございまして、この点は現在の陸上の面以上に、海上においては警備救難関係船舶というものは警備隊所属船舶の応援を得、これと共同動作をするということが多いのでございます。従いまして水路或いは燈台関係の仕事について水路部、燈台部関係船舶と共同で行動する機会よりは、むしろ警備隊所属船舶と一緒に行動する機会のほうが多いわけでございまするから、理論上どちらと密接かというような問題は別問題といたしまして、実際上どちらと一緒に行動する場合が多いかという実際面に相成りまするというと、水路部、燈台部関係船舶とよりは、やはり警備隊所属船舶と共同動作をする場合が多い、これが実情であるわけでございます。この実情から考えまして、できるだけ共同動作の際の双方の協力関係を円滑にいたしたい、又その際の共同動作というものをできるだけ能率的にいたしたい、それには平素から同一管理の下に置き、協力して訓練をし、そうした必要の場合に備えて置くことが実際上便利であり、必要である、こう考えたのでございます。
  131. 松原一彦

    松原一彦君 これは率直な素人考えなんですけれども、むしろ今度の海上公安局ですね、その常時に廻るほうの海上公安局を拡大して、それが今日の警備隊のふだんの任務になるのが本当じやないでしようか。これが昔の海軍のようなものであるとするならば、海上警備隊が昔の海軍のようなものであるとして、若干大きな船を入れるとしましても、これは先般私は大橋国務大臣に伺つたのですが、軍艦旗を掲げていない限り、漁船拿捕などに対しては、これはもう用をなさない、何にも抵抗する能力もない警察船なんです。今度お作りになる警備隊というのも、これは警察隊なんです。警察隊というものの能力は国際公法上これは何にも価値のないものです。これは国内治安の維持にしか過ぎない。若し国内治安の維持、つまり沿海を国内としての治安の維持に従事せしめて、ふだんに海の上で以て訓練するというものならば、むしろ海上公安局を拡大して同じ階級の将校的なものがずつと備わり、同じ船に乗つて海上治安を維持するのですから、海上警備隊などという海軍らしいようなものでない、むしろこちらの警察隊の充実したものをフルに活動せしめれば、私はそれのほうが訓練にもなるし、海上の安全も期せられるのではないか、僅か三千か五千のものが、どこかの港湾にぴしやつと固定しておつて、これは動かんのかと思つたらば、今のお話によると常時動いて助けるのだというお話海上公安局ではとても間に合わないから始終動いて訓練もするし、警備にも任ずるというお話であります。恐らく今後私は近海におけるこの漁船の拿捕などに備えて、こういう船が出て廻らなければならん機会が多かろう。それならばわざわざ警備隊というものと海上公安局というものと二つに分ける必要はどうも素人考えから言うとない。海上公安局のほうを拡大して、これが海上の治安に任じ、ふだんの訓練をやるというふうに考えることのほうが自然じやないでしようか。若し海軍を創設するならこれは別であります。海軍を創設して軍艦旗を掲げてやるならば、これは漁船の拿捕などにも十分抵抗ができます。取返すこともできますけれども、どうしても警察船でやる以上は取返すことはできません。その辺をぐるぐる廻つて威力を示すと、先般あなたがたがおつしやつたその程度にしか過ぎないであろう。それならばもう警備隊というものと、それから一方に警察船隊である海上公安局の組織とをば一つにするわけには参りませんか。如何ですか。
  132. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在海上保安庁においては一つになつておりますけれども、併し政府といたしましてはいろいろ研究の結果、これは新たに提案いたしました機構にすることが実際上便利であると、こう考えたわけでございます。御意見としては承わつておきます。    〔委員長退席、理事中川幸平君委員長席に着く〕
  133. 松原一彦

    松原一彦君 その次に、大橋国務大臣に、私はこの質疑以来たびたび申上げておる、三好君もさつきから申しておるように、本来の憲法下における限界は警察予備隊なんだが、警察で押せば私ども何にも小言はないと思うのです。わざわざ憲法に引つかかる、どうしても許されない再軍備というようなものに引つかかる虞れのあることを、わざわざ皆さんが寄つてたかつておやりになることは、首相の主張にも背いおる。首相にもたびたびお見にかかつて私はお話申し、首相は再軍備はせぬということをかねて申されておる。わざわざ引離して海上警察隊のほかに何か海軍の卵みたいなものをこしらえて変にちらちらさせることは、私はよろしくないと思う。それはいけないことなんです。私はまあちよつとこれは言葉が過ぎるようですけれども、私九州にも行つて来たんですが、教員などが、学校の教員組合等が再軍備反対の署名をさせておるというので非難を受けておるのです。ところが教育者が今立つておるスタンダードは、基礎は教育基本法というものがあつて、この教育者の憲法の下に動いておる、教育基本法は絶対平和の立場に立つている。これを精神として保持しなければならんという基本に立つている憲法の下に教育基本法があり、基本によつて教育を行なつておるこの教育者たちは、いやが応でも再軍備を言うことはならない。それは憲法に背き、教育基本法によつて平和一本の教育をやらなければならん任務に立つておる。それが、目の前にちらちらこういうふうなものをちらつかせられるというと実は困るのです。やりきれないのです。勢い街頭に立つて再軍備反対の署名までしなければならんことになるのであります。非常に苦しむのであります。それで私は折角極く少数の船と極く少数の人員を以て海上の治安に任ずるならば、極めて素人考えであるけれどもが、別に警備隊なんというようなものを作つてわざわざセクシヨンを分けなくて、一つにして海上警備にふだんの力をばフルに動かすほうが双方のためによくはないか。日本のためにも、貧乏な日本のために私はよくないかと思います。忌憚なき率直な意見なんですが、国務大臣、如何なお考えでしようか。
  134. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 松原委員の御意見も十分傾聴すべき一つの御意見であると存じます。併しながら政府といたしましては多少見解を異にいたしておるのでございまして、一般の警備救難事務と、それから海上警備隊の事務は本質的には同じものでございまするが、その船舶の装備又行動すべき場合等多少異なるものがあるわけでございまして、これらの行動すべき場合、或いは装備が異るに従いまして、その編成なり訓練というものはそれにふさわしい形をとることが適当であると思うのであります。こういうふうに考えて参りました場合に、海上警備隊海上公安局はそれぞれ組織、編成を異ならしめるということが必要であると認めたわけでございます。但しこの両者の間における緊密なる協力関係は、飽くまでも維持する必要があると認めましたので、同一所管に属せしめるということが併せて必要だ、こういう考えでございます。
  135. 松原一彦

    松原一彦君 これはこの前から私と国務大臣との間にたびたび繰返しておることですから、如何にも愚かな質問でありますので打切りますが、警察予備隊の性格の少しも変らないのが今回の保安隊であるはずなんです。それをわざわざ陸上においては軍隊のごときものの形にし、海上においては海軍のような形にするところに、私は如何にも現内閣のかたがたの何かとらわれておるものがありはしないかということに対する不満を持つているわけであります。それはいかんというのです。それは法の上からも許されないし、国民感情の上からも許されない。限度を越えておるということをまあたびたび申したが、これは私の意見でございますけれどもが、私の意見は私なりに間違つておらんと思います。これによつて切抜けるほかに、日本の現在の憲法下においては立つ瀬がないという私は信念を持つて、決してあなたがたがおやりになることに反対しようというわけじやない。堂々と大手を振つておやりなさるその大事な、今日のような変態的な時局の下における御苦心はお察し申すけれども、それにはやるべきやり方がある限度があつて、海軍を創設するならば、それははつきり憲法を変えて、微力なりとも海軍として軍艦旗を掲げて行動するがよいと、私はかように思う。但し私はそれには賛成するのじやない。そういうふうにおやりになつたほうがはつきりして、任務が果せるということを私は申して参つております。この意見は今日といえども変りありません。従つてまあこれから先は申上げません。あとは討論になりますからこれで打切ります。
  136. 上條愛一

    ○上條愛一君 私の最後に申上げたい点は、大橋国務大臣の申されるように、海上警備救難部と海上警備隊と全く別なものでありまして、海上警備隊は借りるところの六十隻の船を以て佐世保或いは横須賀、旧軍港に平素訓練だけをしておつて、十勝沖のような一朝有事の際に出動するというのが、これが海上警備隊の建前であります。私はそのときに若し真に海上警備隊というものが、海上の治安、警備救難の仕事を目的とするならば、これは今ある九つの警備救難の港にこの借受ける六十隻を配属して、治安、警備救難の仕事に当るのが当然じやないかという主張をいたしたのであります。これは別問題として、とにかく海上警備隊というものができたわけであります。そこで海上警備隊は由来警備救難部の補助的の仕事としてできたのでありまするから、これは密接なる関連を持つことは当然のことであります。ただ私の恐れるのは、海上警備隊というのは、我々から申しまするば、これは戦力に一歩前進する機構であると考えるのであります。ところが今度はこの機構へ警備救難の仕事に当るべきものを海上公安局として一歩戦力のほうへこの組織をも持つて行こうというのが今回の保安庁の機構であると我々は考えるのであります。そこで私の申上げたい点は、真に平素における日本の治安、警備救難の仕事を完全にやるということであれば、これは何を目的とするかというと、今運輸省に属している船舶の警備救難であります。これらのものを以てするというならば、この運輸省と切離しては海上の警備救難というものは完全に行われないわけであります。    〔理事中川幸平君退席、委員長着席〕  例えば船が遭難したという場合には、単に警備救難部の船だけではいけないのであります。そこを通るところの普通の船舶のやはり力を借りて、協力を待つて初めてこの海難の救済というものができる。その場合に横須賀や佐世保におる遠くの海上警備隊の船の出動を待つては間に合いやしません。例えば密輸船を発見したといたしましても、これらを警戒するためにそんな横須賀や佐世保や舞鶴にあるような遠い海上警備隊の船の出動を待つようなことではならんのであります。そこで海上警備ということは、これは運輸省の船舶を中心にしてやるべきものであるから、一般の船舶は運輸省が掌握しておつて、船員も船舶もすべて運輸省に所属しているのに、その警備救難に当るところのこの海上公安局というものを海上警備隊と同じ組織に持つてつて陸上の保安庁にくつつけて、そうして一歩戦力的の組織にしてしまつて、果して日常の海上の警備救難ができるかという問題であります。そこに問題がある。大橋国務大臣は、単に海上公安局の船と海上警備隊の船と密接なる連絡をとらせるために組織を一にするとおつしやるけれども、そのことは当然のことである。海上警備隊というのは海上の警備救難部の補助的の任務として作られている以上は、密接な関係をとるということは当然なことであります。若し真に日本国家の現在において海上の保安、警備救難ということを主としてお考えになるならば、むしろ保安庁というものなどを作らずに、海上警備隊と警備救難部の仕事を一緒にして今松原さんの言うようにするのが当然だと思う。ただ恐れるところは、政府のやり方を見ていると、警備救難部の仕事を拡充すればそれで足りるのに、わざわざ海上警備隊というものを作つて戦力であるような、貸りた船を旧軍港において平素は訓練だけをしておつて一朝有事、これは一年にあるか二年目にあるかわからんような一朝有事のときのみ出動する。こういうようなものを作つたのが我々はすでに反対である。ところが今回はその上に平素の警備救難部の仕事を海上公安局というものを作つて海上警備隊と一緒にして、そしてこれを陸上の警察予備隊と一緒にして保安庁を作るということは、平素パトロールして海上の警備救難の任に当らなければならないこの船までも、これを一歩戦力、軍備のほうに持つて行こうという傾向を強めるのに私どもは反対しているわけでありまして、この点は十分考慮の余地があると我々は考えるのであります。
  137. 楠見義男

    ○楠見義男君 私一点だけ明らかにしておいて行政管理庁にお伺いするのですが、海上公安局というものは保安庁の外局だと思うのですが、それでいいのですか。
  138. 大野木克彦

    政府委員大野木克彦君) これは性格的には外局的なものでありますけれども、保安庁自体がそういうふうに外局でありますので、やはり法律上の性格としては保安庁の附属機関、補助機関になると考えております。
  139. 楠見義男

    ○楠見義男君 附属機関と解釈すればいいのですね。
  140. 大野木克彦

    政府委員大野木克彦君) はあ。
  141. 楠見義男

    ○楠見義男君 附属機関、そうすると外局といいますか、行政機関どの区別はどう違いますか。ということは、この附属機関である海上公安局が行政機関、即ち外局のような権限を持つているようなことがないかどうか。若しあるとすればそれは削らなければいけませんから、修正において……。
  142. 大野木克彦

    政府委員大野木克彦君) 従来の警察予備隊も総理府の附属機関でありまして、それと同じような性格を持ち得ると御解釈願いたいと思います。
  143. 波多野鼎

    波多野鼎君 大橋さんちよつとお尋ねしますが、海上公安官というのができるわけですが、この海上公安官というのは、保安庁法案の第三条に言う「部隊その他の機関」というものに当るか、どうですか。海上公安官ですね。
  144. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 政府委員から答弁申上げます。
  145. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 第三条に書いてございます「部隊その他の機関」とありますのは、その上に「第一幕僚長又は第二幕僚長の監督を受ける」ということが書いてありますので、その系統の機関というふうな趣旨に考えているのであります。海上公安局は、保安庁法の第二十七条に書いてございますように、組織、所掌、事務、権限等については、海上公安局法で作られるということになつております。この三条の「機関」には入らないのでございます。
  146. 波多野鼎

    波多野鼎君 第三条の「機関」にはこの公安官というのは入らないのですね。そういたしますと海上公安官というのは、特に必要がある場合において行動する。今度できる警備隊と共同作業するということはないのですか。
  147. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 海上公安官のほうの仕事は、海上公安局のほうに所掌事務が書いてございまして、この海上公安局法の規定によりまして行動しているわけでありまして、それと警備隊のほうの行動は、第六十一条以下に、或いは総理大臣の命令によつて出動しますとか、或いは内閣総理大臣の許可を受けて承認を得て長官が命じて必要な行動をとらせるという第六十五条の規定でございます。こういう規定で警備隊のほうは行動しておるわけでございまして、で、共同に働くという場合も考えられ得ると思います。それからなお第六十二条に行きますというと、内閣総理大臣が保安隊、警備隊に出動を命じました場合におきまして、特別の必要があると認めるときには海上公安局の全部又は一部を警備隊の統制下に入れるという規定がございますので、この場合には完全に同じ指揮下に入るということになるわけでございます。
  148. 波多野鼎

    波多野鼎君 そういたしますと、この陸上における警察、自治体警察、国家警察が保安隊と共同動作をとるという場合もあると同じように、海上公安官も警備隊と同じ動作をとるということがあり得るとすると訓練などはどういうふうにやるのですか。警備隊は例のフリゲート艦などを借りて訓練をやつておるそうですが、又やることになるそうですが、この保安官のほうはそういう訓練はやらんでもいいのですか。
  149. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 警備隊のほうと、巡視船を使う警備救難部のほうとの船の使い方が多少違いますのと、それから船の大きさも違います。それから予想される任務の大きさと申しますか、スケールと申しますか、そういうところが違うと考えられますので、訓練は違つて来ると思います。で、警備隊のほうは訓練の時間が非常に多くなつております。それから巡視船のほうは業務をやりながら毎日のように合間に訓練をやる。業務のほうが主でありまして、訓練はできるだけ従的にやるということになつております。
  150. 波多野鼎

    波多野鼎君 私の言つているのはそうじやなくて、平常の場合はそれでいいのですが、非常の場合に総理大臣が海上公安官ですか、これを全部指揮下に置いて公安官と警備隊と共同動作をとらせるのだという規定があるという説明を聞きましたから、それに関連して聞くのだが、そういう共同動作をとるについては、海上のことですから、フリゲート艦あたりの行動と、それからこの警備救難部といいますか、これが持つている船との共同行動がとれるような訓練があるべきじやないかと思うのでお伺いするのです。そうでなかつたら、総理大臣が両者を総括して、一括してやるわけに行かんと思うのです。
  151. 三田一也

    政府委員(三田一也君) それは想像されますから、各個には、基礎的な訓練は別々にやつておりますが、そういう総合的な訓練もやることはあると思つております。又必要であると思つております。
  152. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると、何だかさつきから話があるように、海上公安官というものは、あの警備隊の附属機関のような恰好にだんだんとなつて行きますね。例えば警備隊というものは、非常の場合に動くやつと、それに附随した行動をこれもとらなければならんので、そういう訓練もやつておかなければならんということになつて来ると、だんだんこれは警備隊の附属機関、警備隊の補助機関のような恰好になつてしまつて、先ほどから委員諸君が言つておられる海難救助のほうを中心にして、警備隊がそれの補助機関であるべきだという考え方と丁度正反対の考え方になりますね。そういう機構なんですね。
  153. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これはその訓練はいろいろやるわけでございます。逆に海上警備隊が公安局のほうからの要請に基いて、本来公安局でできるだけ担当すべき水難救助のほうについて、公安局に協力すという訓練もあるわけです。この場合においては、逆に警備隊が公安局の附属機関であるようなことにもなるわけであります。性質といたしましては、附属機関というのは飽くまで保安庁の附属機関だというのでありまして、警備隊の附属機関ではないわけであります。
  154. 波多野鼎

    波多野鼎君 いやそれはどちらもお互い様だという議論も成り立つと思うけれども、先ほどから話を聞いておると、公安官のほうは小さな船を少ししか持つていない、それから警備隊のほうは大きな船を持つてやるということになつて来れば、それは警備隊が主になる。どうしたつてお互い様と言いながら、どちらが主力になるのだということになれば、そつちが主力になることになるのだと思うのですね。これもまあ私は議論はやりたくないのだけれども、海上公安局というものの海難救助という使命を、むしろ第二義的なものにせられつつある。そうして国家予算の配分の上からいつても、結局警備隊のほうに多くの予算が配付されて、公安局のほうには少い予算しか行かないといつたようなことになる危険性がもうすでに法案それ自体の中に見えておるように思うものだから、はつきりさしておきたいと思つて質問したので置がね。これはまあ希望として述べて置くが、先ほどから委員諸君が言われるように、海軍の卵を作るリツトル・ネーヴイーなんという言葉はしよちうアメリカは使つておる。ベビー・ネーヴイーだとかリツトル・ネーヴイーだとか、しよつちう使つているのですが、まあそういうふうに言われないように、よほど注意してやつてもらいたいと思うのですね。これはまあ私の希望なんです。  それからもう一つだけ聞きたいのは、調達庁の問題、聞いてもいいですか、委員長
  155. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ええ、よろしうございます。それはまあ便宜上入れてやりましよう。
  156. 楠見義男

    ○楠見義男君 委員長、私ちよつと……。行政組織法をくぐつているのなら、くぐつているという事実だけ伺えばいいのですが、その点でお伺いしたいのですが、私は、大橋国務大臣はなかなか法律のほうにお詳しいからお伺いするのですが、海上公安局ですね、これは保安庁の附属機関だということになつておるのだが、保安庁の附属機関というのは二十三条にはつきり書いてあるのですね、保安庁法の二十三条に。そこでこの二十三条の附属機関という所には書かずに、まあ別個にしているところに一つのもぐりのあれがあるのですが、まあそれはそれとして、附属機関にした場合に、例えば海上公安局法の第三条の二項のごとく、他の行政機関の附属機関に対して、その主管大臣でない別の大臣が指揮命令をするというようなことは、行政組織上できましようか。これは外局ならそれを管理する大臣及び他の大臣が、その外局に対して指揮命令するということは、今までの行政観念からいつても御承知の通りあり得ることなんですね。ところが一の行政機関の附属機関、例えば法務省なら法務省の附属機関に対して、通産大臣とか或いは農林大臣がそれを指揮命令するということが従来の行政観念上考えられましようか。
  157. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは従来事実上そういう例はなかつたということは言えると思いますけれども、そういう観念は従来法的に排斥されておつたというわけではないのでありまして、たまたま従来は必要がなかつたからそういうものは設けられなかつた。この場合におきましては、現在の海上保安庁関係におきまして外局、この保安庁というものは、仮に保安省というようなものとして考えられれば、当然この海上公安局なるものは保安省の附属機関にあらずして、附属機関の外局としてでき上るべきものではなかろうかと思うのでございます。ただあいにくのことに、保安省でなくて保安庁ということになり、総理府の外局となつておりますからして、総理府の外局に更に外局を設けるということは如何かと存じまして、これは総理府の附属機関といたしたわけでございます。
  158. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はこういう行政機構国家行政組織法上は認められておらないこと、例えば只今お述べになりまた中にも、関係各省大臣が指揮命令するのは保安庁長官に対してやる。又保安庁長官を通じてやる場合は、これはいいと思います。ところが海上公安局の長に対して各省大臣が直接指揮命令するという、こういう規定だものだから、これはおかしいじやないかということなんですが、これは飽くまで国家行政組織法においてこういう新らしい機構が認められたということをはつきりしておけば私はいいと思つておりますから、これ以上は結構です。
  159. 三好始

    三好始君 今のに関連して大橋さんにお聞きしたいのですが、国家行政組織法の第八条の附属機関というのは、外局とどう違うかという問題なんですが、国家行政組織法の予想しておるのは、第八条の附属機関というのは、独立した権限を行使する機関でないと、こう考えておると思うのですが、その点如何ですか。
  160. 大野木克彦

    政府委員大野木克彦君) この八条の機関でございますが、これは八条に書いてございますように、「各行政機関には、前条の内部部局の外、法律の定める所掌事務の範囲内で、特に必要がある場合においては、法律の定めるところにより、審議会又は協議会及び試験所、研究所、文教施設、医療施設その他の機関を置くことができる。」という、その他の機関に属するものでございますが、併しこれはただこれだけを規定しておるだけでございまして、その権限等につきましては別に規定がないのでございます。それで外局との違いをどこに求めるかという点につきましては、かなり問題があると存ずるのでありますが、例えば検疫所とか、検査所とかいうものがやはり附属機関になつており、又従来、先ほど申上げましたように、警察予備隊のようなものも総理府の機関といたしておりますので、外局と附属機関との違いは、その所掌事務が行政行為と申しますか、まあ権力的の行為をするかどうかということではなくて、むしろその権限で、主管の大臣に対して或る程度の独立性を持つておるかどうかというような点に求むべきものじやないかというふうに考えております。それで他の大臣の指揮を受ける例といたしましては、附属機関ではないのでございますけれども、税関のようなものもございまして、内部部局ではおかしいのでございますけれども、まあ附属機関として多少離れておりますので差支えないのじやないかというふうに考えております。
  161. 三好始

    三好始君 今の大野木次長の御説明では、国家行政組織法第八条のその他の附属機関を非常に拡張して解釈し得るような立場をとられておると思うのですが、これは恐らく国家行政組織法が全く予想しておらない解釈の仕方であろう。それはその通りだろうと思うのであります。だから海上公安局は、国家行政組織法第八条の附属機関というのは随分無理な解釈で、率直に言えば、これは国家行政組織法の例外であるというのが穏当な解釈だろうと思うのですが如何ですか。
  162. 大野木克彦

    政府委員大野木克彦君) この点はどうも御議論のあるところだろうと思いますが、現在の組織法で以て解釈いたしますと、只今申上げましたようなことになるのじやないかというふうに考えております。警察予備隊なんかにつきましても同様だと思います。
  163. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 諸君にお諮りいたします。保安庁法案海上公安局法案を主といたしまして、先刻から十分な御質疑があつたと認めます。そこで本委員会に付託されておりまする各案の質疑は、大体終了したものと認めまして、只今から暫らく休憩をいたしまして、七時頃から昨日に引続きまして、この懇談会の要綱というものを差上げてありますが、そのうちで留保された件を主として検討したいと思いますが如何ですか。
  164. 楠見義男

    ○楠見義男君 異議ありませんけれども、七時よりも六時半にして下さい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  165. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それではさように決します。六時半まで休憩いたします。    午後五時四十五分休憩    —————・—————    午後七時七分開会
  166. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 休憩前に引続いて委員会を開きます。  只今より懇談会に入ります。    午後七時八分懇談会に移る    —————・—————    午後八時三十二分懇談会を終る
  167. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これで懇談会を閉じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時三十三分散会