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1952-07-07 第13回国会 参議院 内閣委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月七日(月曜日)    午後二時四分開会   —————————————   委員の異動 七月四日委員草葉隆圓君辞任につき、 その補欠として郡祐一君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     河井 彌八君    理事            鈴木 直人君            中川 幸平君            成瀬 幡治君    委員            楠見 義男君            竹下 豐次君            上條 愛一君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    人事局長長官    官房長     加藤 陽三君    警察予備隊本部    長官官房文書課    長       麻生  茂君    行政管理庁管理    部長      中川  融君    海上保安庁長官 柳澤 米吉君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   —————————————保安庁法案内閣提出、衆議院送  付) ○海上公安局法案内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより内閣委員会を開会いたします。  保安庁法案海上公安局法案を議題といたします。前回に続きまして質疑を行います。
  3. 三好始

    三好始君 保安庁法案に関しては逐條的なお尋ねをしたい点が相当残つておるわけであります。今までに私が質疑いたしました総論的な問題の中で、大橋国務大臣木村法務総裁との間で食違いがあるのではないかと感じられる問題が一点ありますので、その点を先ずお伺いいたしてみたいと思うのであります。それは憲法第九條の戦力意義に関する問題でありますが、今まで大橋国務大臣からお答えなつ憲法第九條の戦力意義は、客観的な近代戦遂行能力に達したものだけを戦力と称するのではなくして、主として外敵に対抗する意図を以て設けたものであれば、これは憲法第九條にいう戦力であつて、そういうものを設けることは形式論としては憲法違反である、こういうお答えがあつたのであります。速記録では六月六日と六月七日の速記録にそれが繰返して極めて明瞭な表現で出ておるわけであります。率直に申しますというと、私は大橋国務大臣がそういうお考えの上に立たれておることは極めて当然でもあるし、又良心的でもある、こういうふうに思つて一応了としておつたのであります。ところがその後暫くたつて木村法務総裁が当委員会に出た際に、木村法務総裁の所信を質しましたところ、木村法務総裁見解では、そういう考え方もあり得ると思いますけれども自分としては近代戦遂行能力という客観説立場だけをとつておる、こういうようなお答えがあつたのであります。この間に多少の相違が感じられるので、改めて木村法務総裁外敵に対抗することを主として意図して設けておつても、近代戦遂行能力に達しなければ、憲法第九條にいう戦力とは自分解釈しておらないという、そういう立場に対して、大橋国務大臣違つたことを申されておるわけですから、その相違を我々としてどういうふうに理解したらいいのか、その点の御説明を頂きたいと思うのであります。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法解釈の問題につきましては、法務総裁主管大臣でございまするから、法務総裁と私と異なつた御解釈があるといたしますならば、私は法務総裁解釈に従うべきものと考えるわけでございます。この点につきましては、三好委員から私にも御質問がございましたし、その後法務総裁にも御質問があつたということでございまして、法務総裁からもその話を伺つておるのでございますが、私の申上げました解釈は、殊更に分析して考えて行けば、そういう解釈も成り立ち得るであろうということを申上げたつもりであるのであります。現実の問題といたしまして、この憲法解釈考えて参りますると、憲法というものは単なる抽象的な理論を掲げたものにあらずして、日本国憲法でありまするが故に、日本国というものを取巻く相実の條件というものを考え解釈すべきものであると思うのでございます。そう考えて参りまするというと、理論的には、又仮定的なことといたしましては、客観的に戦争遂行手段と認むべき程度に達しておらないものについて、主観的にこれを戦力、即ち外国に対する戦争主眼として設けたものであるというふうに考える場合もあり得るわけでございますが、併し現実事態といたしましては、戦争というものについての近代的な観念というものがあるわけである。又そのために必要な実力程度というものにつきましては、おのずから客観的な標準があるわけでございまして、この客観的な標準に達せざるものを日本国或いは政府といたしまして、これが日本対外防備のために十分である、又そのためにこれは設けたものであるというふうな考えを持つということは、現実の問題としては想像できないところでございます。従いまして、この点については、私と法務総裁お答えとが或いは一応理窟の上においては違つた結果にお聞きとりになつておるかも知れませんが、それは私として強いて仮定的な前提の下にお答えをいたした程度でございまして、現実においてこれが双方食い違うということは、私としても想像できないところなのであります。
  5. 三好始

    三好始君 現実的に或いは結果として、今日の警察予備隊、或いは保安庁法案によつて設けられようとする警備隊予備隊憲法違反であるかどうかということについて、政府の間に意見食い違いがあることは常識考えられないのでありまして、これは大橋国務大臣木村法務総裁も、違憲でないということにおいては意見が一致しておる。これは当然なことだと思うのであります。問題はなぜ違憲でないかという根拠について、そこまで遡つて意見が一致しておらないというと困ると思うのでありますが、その違憲であるかないかということを判定する根拠としての憲法第九條の解釈について重大な食い違いがあるように感じたので、御質問いたしたのでありますが、憲法第九條の問題は、決して仮定の問題とか、抽象的な問題として、憲法第九條に言う戦力はどういう意義のものであるかということを研究するのは無意味である、こういうふうに私たちは考えないのでありまして、現実憲法第九條との関連で、従来予算委員会においても、又本会議においても、或いは国会以外の他の場所においても、現実問題の基礎になる憲法理論が大いに論ぜられて来たおけであります。これは単に仮定の問題とか、抽象的な理論だからということで片付けることのできない重要な問題だと思うのであります。その戦力の定義で、私は速記録を読んでもいいのでありますが、大橋国務大臣は極めて理論的には当然な、良心的な立場をとられておるということで、私は大橋国務大臣がとられておる憲法理論そのものは了解しておつたのであります。例えて申しますと、六月七日に内閣地方行政連合委員会が開かれた際に、私は前日の内閣委員会質疑応答を整理して、大橋国務大臣にこういうお尋ねをいたしました。「これは従来政府説明して参りました近代戦を有効適切になし得る編成装備を持つたものが戦力である、こういう考え方、いわば戦力相対性客観性の主張の上に、新たに外敵に対抗する意図が主として考えられているものであれはそれは第九條によつて禁止されている戦力である、こういう主観性がそこへ加えられた、こういうふうに考えられるのでありますが、それでよろしうございますか。」こう言て私が念を押したお尋ねをしましたところ、大橋国務大臣は、「私の昨日申上げたところは、大体そういう趣旨でございます。」こうはつきりお答えになつております。そこで同じようなことにはなりますけれども、別な表現をして更に私は確認を求めたのであります。即ち「政府のそういう考え方は、近代戦を有効適切に遂行し得る能力に達しなくとも、外敵に対抗することを主として意図して設けられたものであればそれは戦力である、こういう考え方になると思うのですが、それでよろしうございますか。」こう申しましたところ、大橋国務大臣はこういうふうにお答えになられました。「実際問題といたしまして、これは大体同一に帰着すると存じますが、強いて理論上分けて申上げれば、大体只今おつしやつたような事柄で差支えなかろうと存じます。」こういう質疑応答の内容が速記録に残つておるわけでありますが、私はこういうお答えがあつたことを大橋国務大臣の率直な真意として了解しておつたのでありますが、それが木村法務総裁質疑によつて木村法務総裁は必ずしもこういう考え方をとつておらないということが出て参りましたので、只今そのことの食い違いを質したわけであります。これについて若し木村法務総裁立場政府の責任ある立場として私が了解するとすれば、今読上げました質疑応答を通じて明らかになつ大橋国務大臣の御答弁は一応お取消しになれば、私としても了解できるのでありますが、これはこれとして生きておる、そうして木村法務総裁答弁答弁として、政府の責任ある答弁だということになるというと、食い違いが依然として解けないということになるのです。私は質疑の段階ですから、ここで議論いたしておるのではありませんから、政府の統一した見解はこれだということが明らかになりさえすれば、それ以上追及する意思は毛頭持つておりません。そういう点で今申上げた点を御考慮の上で、もう一度納得の行く御説明を承わりたいと思うのであります。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御質問の御趣意は、客観的に戦争遂行手段たる程度に達しなくとも、主観的に戦争遂行のためのものであると考えることによつて戦力というものが成り立つかどうかという点が、御質問の中心であろうと思うわけでございまして、これに対して私は根本的な考えといたしましては、いやしくも今日の政府といたしまして、客観的に戦争遂行手段たるに十分でないところのものについて、これをいわゆる国防軍である、軍隊であるということを考えるということは、常識上あり得ざることであるということを考えておるわけであります。このことを前提にしてお答えをいたしたわけでございます。従いまして、そういうことは私から率直に申上げますると、客観的に戦争遂行手段たる程度に達しない実力について、それを外国侵略に対して戦闘行為を通じて防衛するためのものであるということを主眼として、そういう軍隊的組織を持つということはあり得ざることでございます。従つて私の見解から申上げまするというと、御質問は実際問題として成り立たないと申上げても過言ではないかと思うのでございますが、併しながら強いて理論的にこれを分析して参りまするならば、御趣旨のように、そういう場合にはそれを戦力であると解釈しても一向差支えなかろう、こう思つたわけであります。これは飽くまでも理論上、仮定上の問題でございまして、実際上において御質問のごとき仮定憲法運用の上においてあり得ないということを前提考えお答えしたつもりであつたわけであります。従いまして、私の考えといたしましては、この問題を如何にお答えいたしましても、実際上あり得ざるという制約の下にお答えしたのでございまするから、たとえ矛盾がありましたところで、実際問題として、それは学者の研究の上からはいろいろな点があるまするが、実際政治の運用といたしましては、大して問題とするに足りなかろうというふうに考えておつたわけでございます。併しながら強いてそのことが私と法務総裁の間で食い違つておることをどちらか一方にしろということに相成りまするならば、憲法解釈につきましては、一応法務総裁の権限と相成つておるのでございますから、これと矛盾をいたしましたお答えがあつたといたしまするならば、その限りにおいて私としては法務総裁お答えを以て政府答え考えて頂きたいと存じます。
  7. 三好始

    三好始君 大橋国務大臣木村法務総裁との関係で非常に謙遜された、遠慮勝ちお話をされたように思うのでありますが、これは決して仮定の問題とか、或いは抽象的な理論的な問題ではなくして、現実警察予備隊違憲であるかどうか、或いは警備隊保安隊違憲であるかどうかという問題に直接関係する問題であります。そういう意味では決して学問的な興味のみを引く問題ではないと私は思うのであります。そこで今の問題から二つお尋ねをしなければいけなくなつて来るのでありますが、一つは、世界各国で軍と称するものを全然保有しておらない国は日本のほかには殆んどありません。その場合に如何なる小国が持つておる軍隊も、客観的に見て政府が定義せられておるところの近代戦遂行能力としての戦力なりや否やという問題であります。もう一つの問題は、客観的に近代戦遂行能力に達しないものであれば、たとえ形式上軍と名をつけても、それは憲法違反ではないかどうかという、こういう問題が出て来るのであります。この二つの問題についてのお考え方をお聞きいたしたいと思うのであります。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その国はそれぞれ自国について予想される侵略ということを想像し、それに対しまして抵抗的な手段としてそれぞれの軍備考えておると思うのでございまして、それはやはりその国としては予想され、その国について具体的に予想されろ近代的戦争についての防衛能力ということを主眼としてやつておることと思うのであります。勿論或る強大国に隣しておりまするところの弱小国である、人口においても領土においても非常に差があるという場合においては、これは国力上如何にしても軍備というほどの有効な手段を持ち得ない場合もあろうと思うのでございます。併しその国としては一応それで軍備というものを持つておるものだろうと思つておるわけでございます。それから近代戦遂行能力に達しておるか、達しておらないかということに関連して来るのでありますが、およそ軍備として或る国が持つている以上は、その規模大小はとにかくといたしまして、その国としては一応これは、戦力として持つており、又その国にとつてはそれ自体が戦力であると考えることが適当であろうと思うのでございます。我が国といたしましては、かようなものを持つことは憲法において明らかに禁止をせられておると存じます。
  9. 波多野鼎

    波多野鼎君 ちよつと連関して、こういう問題があつたのですけれども予算委員会で今の問題が論議された場合に、それぞれの国について歴史的又は地理的ないろいろな條件考えなければ、戦力であるということはきめられないという木村法務総裁お話があつた。そこで私が同じ問題に関連してサンフランシスコ会議ソ連代表が、日本にはこれだけの軍備を持たせろというあの平和條約に関する修正案を出した。今はつきり覚えておりませんけれども、陸軍二十万とか三十万、それから海軍艦艇何十万トンとか、飛行機五百台とか何とかという数字が出ております。そういうものを日本軍備として持たせることに修正すべきだということをソ連側が言うた。そこでその問題を、ソ連が言つておるような程度のものは、近代戦を有効適切に遂行する力であるかどうかということを、木村法務総裁に聞いたのですが、答えがない、そのままに予算委員会は終つておるのですよ。そこであなたはどう思われるのですか。その場合にその程度のものは近代戦を有効適切に遂行する力には達しないことと私も思う。併しそれだからといつて、これを日本憲法による兵力でないというわけには行くまいと思うのですがね。それはどうなんですか、あなたの見解については……。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ソ連講和條約に対する修正案におきましては、軍隊に属する人員の数は書いてあります。併しながらそれについて如何なる装備をするかということについては聞いておらないように思つております。無論十五万なり三十万の数がありましても、その装備というものが国内治安維持に必要な限度において行われておる、或いは近代戦争を遂行するに足りる装備を持つかどうか、この装備の問題というものがかなりこれらをきめるについては関係して来るのではないかと思うのでありまして、およそ国の大小に応じまして軍隊に属する人員の数というもの、従つて一つ組織としての軍隊規模というものは、その国に応じていろいろあろうと思うのであります。それならば小国は自然小規模軍隊しか持てない、大国は大規模軍隊を持てるわけでありまして、近代戦争というものを遂行する場合においては、今日集団安全保障ということが考えの基になつておりますが、小国は小規模軍隊大国は大規模軍隊、お互いにこれを協力させて一つ世界的な戦争が遂行されるということに将来はなると思う。単に兵員の数のみによつて戦力であるかないかということは必ずしもきめられない、こういうふうに思うわけであります。
  11. 波多野鼎

    波多野鼎君 いや、ソ連代表修正案にはちやんと出ておるのですよ。装備の問題も重戦車幾らということまで、今覚えておりませんが、これは見れば直ぐわかる、出ておる。それはそれとして、今あなたがおつしやるように、近代戦争を遂行するという方法として国連機構というものが前面に押し出されておる。従つて一つの国で自国を防衛するだけの戦力というものを持つておる国は殆んどないと思う、現在の世界において……。併し一つの国で外敵を防衛するに有効な力を持つていなくても、それでもそれは戦力だと私は思つている。いざ外敵侵入があつた場合には国連集団安全保障でこれを防衛できる。その国連集団安全保障というものはその国家がそれぞれの人口なり領土に応じて国連という一つ集団安全保障機構の中でコントリビユーシヨンをやるわけで、そのコントリビユーシヨンはその国から言えば戦力でないところの独自なものを以てやるわけで、外敵の場合には国連の一構成によつて外敵を防ぐという構想に進んでおりますから、そこで日本考えて見ますると、今度何らかの方法において国連集団安全保障に入ると思いますが、要約すれば今の日米安全保障條約、そうして今度できる保安隊と言いますか、これは恐らく米国軍と協力することによつて外敵侵入を防ぐという役割を演ずるに違いない。そうでなかつたらこれを作る必要はない。そうとすれば国連の一構成分子としてこの保安隊なり警備隊なりができるとすれば、それは日本なりコントリビユーシヨンをやつているわけでありまして、同時に又外敵侵入に対してはこれを防衛するために一臂の力をかすという考え方は必ずできている。おらないということはおかしい。できているに違いない。だから憲法第九條の問題と関連し、ここに九條違反の問題が起きやせんかということを国民は全部憂えているのであります。殊に政府のほうでいろいろああでもないこうでもないということを言つてごまかしておられると、却つてよくないと私どもは思うのであります。事実はもう国連の一構成分子としての戦力日本なり戦力だということに国民は皆了解しつつあると思うし、外国新聞雑誌なんかを見ていると、皆アーミー、ネーヴイーという言葉を使つておりますね。御承知通り世界は皆思つている、国民思つている。そう思つていないのは議会だけであり、国会だけに戦力ということをああでもないこうでもないということを何回も繰返し、もういい加減政府のほうでもこれはこうだとはつきり言つたほうがすつきりすると思いますが、どうでしようか。そこらの政府見解はどうなのですか。
  12. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法解釈の問題餐ございまするから、法務総裁からお答え申上げたところにようて政府見解とお受取りを願うほうが適当と存じまするが、只今波多野委員からの重ねての御質問でございまするが、これは政府といたしましては、保安隊或いは警備隊というものは飽くまでも国内治安のためのものでございまするから、これは憲法上の戦力とは考えておらないことは明白なる事実であります。この点はすつきり申上げても同じことであります。
  13. 波多野鼎

    波多野鼎君 もう一つ聞いておきます。  国内治安と言われますけれども、御承知のように北鮮金日成首席日本における北鮮系在日朝鮮人は落下傘で降下したと同じ意味を持つているということを今年の正月はつきり言つておりますが、その後の動きを見ておりますと、北鮮系の人がどのくらい治安の撹乱に活動しているかということは政府のほうで我々よりもよく知つている。そうなりますと、客観的にすでにもう外敵がいるというふうに見られるのじやないか、現在……。その外敵治安を乱しでいる。従来の戦争のような形のものは私どもは起らないと思う。いわゆる間接侵略が先ずあり、間接侵略ということは、言葉に現われているところを見てもわかるように、すでに間接的には外敵が来ているということなんであります。日本人であろうと外敵の一部になつているかも知れない。つまり外国意思に左右される力なら、日本人であろうと外敵だと私は思う。だとすると、その外敵によつて撹乱されている治安維持ということは、つまり外敵に当るということなんであります。治安維持ということと即ち外敵防衛ということとは同じことで、別のことだいうなら古い観念であります。若し別だと考えるなら、治安治安外敵外敵、画然と区別できるものだというようなことを考えているとすれば、それは現在のいわゆる二大陣営の対立から来る冷い戦争、熱い戦争、これの実態をつかまない暴論だと私は思う。どうですか。治安維持は即ち外敵に当つている、外敵に当らないでは治安が防衛できないというのが現在の実態じやないですか、そうであるとやはり憲法九條の問題にかかる。治安維持だと言われるけれども、同時に外敵防衛なんであります。外敵防衛なしに治安維持は絶対にないと私は思うが、どうですか。
  14. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 国内治安維持ということは、これは一つの法的な考えでございまして、国内における国家権力によりまして、国内に起つた事態実力を以て収拾して行くという考え方であると思うのでございます。勿論今日外敵侵略は直接侵略間接侵略というものがあり、間接侵略に対しても直接侵略に対しても治安維持ということは考え得るわけでございますが、併しながら今日一部の外国系の人人が反政府的な乱暴をいたしている。これに対して警察が当つている。これは考え方によつて外敵に当つているのだということも言えるかも知れませんが、併しこの外敵という言葉を更に分析して考えて見ますると、外敵というものには二つあると思うのでございます。今までの考えから申しますと、外敵というものは外国軍事的攻撃即ち外国不法侵略ということであります。これは必ず外国軍隊というものの力によつて不法な侵入をして来た。これに対して今日新しく起りました現象は、一部の外国系の人、或いは外国の示唆、又は煽動によるところの国民の一部が国内治安を撹乱するということであります。これはいわば外国軍隊による侵略と、そうして通常国内存在するところの、従つて日本の国権に服従すべき法的立場にありますが、そういうものの手を通じての反抗的な活動、こういう二通りのものがある。こう思うのであります。軍隊による軍隊であるところの外敵侵入と、然らざる日本の法律に従うべきものの、又日本としては当然法制上から存在を認めているところの、そういう存在によるところの反抗、こういう二つがあると思うのであります。従いまして、かように外敵というものが二通りありまする以上は、外敵に当るという意味においては或いは一つ考えられるかも知れませんが、併しその外敵に当るという手段方法に至りましては、この相手が二通りに違つておるのに応じまして、方法としても二通りあり得る。一つは、即ち国内治安維持という見地から、国の警察権の発動として実力を以てこれを処置するという考え方であります。一つ外国軍隊侵入という一つの国際法上の事態とこれを考えましで、国際法的の手段たる戦争に訴えてこれを撃退するという、この二つ外敵に当る方法を区別することができるかと思うのでございます。  前の警察的措置、即ち純然たる国内治安維持という立場からこれを処置する場合には、これに当るところの実力組織は飽くまでも警察的なものであるわけであり、後の場合においてはこれは軍隊であろうと、こういうように考えられると思うのでございまして、憲法はこの後の場合を禁止しておるというのが政府考え方でございます。
  15. 三好始

    三好始君 今の大橋国務大臣答弁二つ意味は、非常に重要なお答えつたと思います。一つは過去において大橋国務大臣答弁せられておることを完全に覆えしたという意味であります。もう一つは、現在の警察予備隊或いは保安庁法に規定されておる保安隊警備隊違憲であるという断定を下し得るのではないかと思われる根拠を申されたという二つ意味において、非常に重要だと思うのであります。その前のほうは、今まで大橋国務大臣は、如何なる原因で国内治安が乱されても、これに対してとるところの措置は違憲でないという見解を示されて来ました。国内治安が乱される原因を三つ挙げられまして、その如何なる場合にも同じだということを申されて来ました。この三つのうちの一つに、直接外国軍隊侵入によつで惹き起される国内治安の撹乱も数えられておつたのであります。ところが、今の答弁では、外国軍隊侵入することによつて起る問題は国際法上の問題であつて、これに対抗するところの実力組織軍隊であるということを言われました。これは今まで述べられておつたことと非常に変つて来たと思うのです。変つて来たというのは、今日述べられたのが恐らく本当のことを述べられたのじやないか。これは本当に良心的な、正直なお答えであつたと、こう私は感ずるのです。もう一つの問題は、若し外敵に対抗する部隊が軍隊であり、そういう部隊を持つのが憲法違反だということになりますというと、今日の警察予備隊憲法違反である。或いは保安隊警備隊も勿論憲法違反であるということになりやしないだろうか。どうしてかと申しますと、政府国内治安維持は、外国軍隊侵入して起る場合でも警察を以て守るところの国内治安の問題だという立場をとつて来ておつたのですからして、外国軍隊侵入ということを予想した国会における答弁が随所に出ておるのであります。  第一、警察予備隊が創設される当時、まだ予備隊令が出されておらない昭和二十五年七月十九日の参議院本会議で、吉田首相がどういうことを言つているかと言いますと、これは緑風会の奥むめお議員の質疑に対する予備隊創設の理由を説明した吉田首相の答弁なんですが、「この度警察力増強ということになりましたのは、朝鮮問題等に鑑みましても、いつ共産軍が日本の国土を侵すとか治安を乱す、或いは又人心にどういう企らみをするかわからないというような不安がありますので、この不時の事変に備うるために警察力を増強いたすことにしたのであります。」こういうことをはつきり言つております。理由として揚げたいろいろの説明の第一番に、いつ共産軍が日本の国土を侵すかわからないから警察力を増強するのだ。外敵対抗の意図はつきり現われている。又それ以外の機会にもこれに類するもの或いはこれを更にはつきり裏付けするような答弁は、挙げよと言われたならば幾らでも挙げることができるくらいたくさん速記録にも現われている。こういう問題と、今波多野委員質疑に対する大橋国務大臣答弁とを総合すると、結局予備隊なり保安隊警備隊は、外敵対抗の意図はつきりしているし、そういう意味において憲法違反ではないか、こういうことになつて来るし、私は本日の冒頭にお尋ねした問題に立帰つて言うと、再び大橋国務大臣考え方は六月六日、七日の考え方に逆戻りしたわけでありまして、はつきり申しますというと、予備隊なり保安隊違憲であるという一つ根拠が明確になつたような感じがしてならないのです。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私の只今お答え申上げましたことは、波多野委員の御質問に必要な限りにおいてお答えをいたしたのであります。(笑声)それ以上に拡張をせられて解釈せられることは私としては迷惑と存ずるのであります。従いまして、三好委員お尋ねは、私の波多野委員に対するお答えの中で外国軍隊侵入に対抗する方法としては、国際法上戦争という方法があり、そしてそれを行うのは軍隊であり、かような軍隊憲法上禁止せられているということを申上げましたが、これは外国軍隊侵入に対する我が国の自衛のための方法として考え得られる手段の中の一つと申上げたのでありまして、外国軍隊に対する抵抗がすべてそうであるというふうにこれを断定されるとすれば、確かに御説のような結論になるのでございますが、そうではなくして、外国軍隊侵入がありました場合においては、我が国といたしましては、これに対して憲法の條章を離れて自由な立場から考、えまするというと、二つ方法があり得ると思うのでございます。その一つは即ち国内治安の確保という面からこれを警察的な措置によつて処理するということも一つ方法であります。これがために使われる手段は飽くまでも警察力である。その他の方法といたしましては、軍隊を動員して、国際法上の戦争に訴えて、いわゆる自衛戦争という形でこれを撃退するということも想像できる。その場合には当然軍隊が必要になるのでありますが、その軍隊を持つこと及びさような自衛戦争を行うことは憲法の違反である、こう思うのでございます。従いまして、外国軍隊に対する一切の実力的措置が軍隊であり、憲法違反の自衛戦争であろという考え方は私としてはとつておらないところでございます。
  17. 三好始

    三好始君 外国軍隊に対する実力行動が或る場合には自衛戦争であり、或る場合には国内治安維持になるという考え方のようですが、その区別はどこにあるのですか。どういう標準によつてそういう区別をつけることができるのですか。
  18. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それは国家が如何なる方法によつてやるかということは、これは国の意思によつてきまることであります。防衛のすべての行為というものは国の意思に基くものであります。戦争手段を選ぶか或いは平和的な警察措置を選ぶかということは、国の意思によつてきまるものと考えております。
  19. 三好始

    三好始君 国が持つところの実力部隊による処置につ、いては客観説をとり、外敵が入つて来た場合の処置については主観説をとる、非常に矛盾した政府の態度に我々としてちよつと了解に苦しむのであります。客観的に自衛戦争国内治安維持のための警察行動とを区別する標準は、政府としてはどういうふうにお考えになつているのでしようか。
  20. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 戦争ということに相成りますと、たとえ自衛のための戦争でも自国の領域或いは敵国の領土並びに公海、これらはすべて戦場として選ぶ権利があるわけでございますが、国内治安維持警察措置といたしましては、その実力的措置のとられる地理的な限界は、先ず第一に飽くまでも自国領土、領水に限らるべきものと考えます。これは最も顕著なる客観的な差異だと存じます。
  21. 三好始

    三好始君 国内における行動については、それでは客観的に区別する標準はないということになるのですか。それとも国内における行動においても客観的な区別は付け得るというのですか。
  22. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 国内におきましては、軍隊を出動せしめる場合においては、おおむねこれは戦争の、開戦の意思あるものと推定できると存じますし、警察力を行使する場合においては開戦の意思なきものと、こう考えるわけでございます。
  23. 三好始

    三好始君 日本においては実質はともかくとして、形式上の軍隊がないわけでありますが、形式上の軍隊を持たない以上は日本に関する限り戦争はないというお答えなんでありますが、これは本当の意味お答えにはならんとないから日本のとる行動は警察行動だ、こういうことに終るような御説明では国民を納得させることも、或いは外国に対して納得を与えることも到底できるものではない、これははつきりしておると思うのであります。ほかの委員から更にお尋ねがあるかと思いますから、もう一点だけ私家の問題に移つて、あとの細かい問題は留保してお音たいと思うのでありますが、政府日本だけで近代戦遂行能力に達しなければ、憲法に禁じておるところの戦力を持つたということにはならない、こういう立場をとつて来られているように記憶いたしておるのでありますが、それで間違いありませんか。
  24. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今の御質問の中で、日本だけでという点についての意味を伺いたいと思います。
  25. 三好始

    三好始君 日本一国で、外国と協力しなくとも日本一国で近代戦遂行能力に関する実力部隊を持つまでは憲法に禁じておる戦力でないから差支えない、こういう立場をとつて来られているように私記憶いたしておるのでありますが……。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その通りでございます。
  27. 三好始

    三好始君 先ほど大橋国務大臣は、将来の戦争集団安全保障の原則に従つて一国だけが他国と戦争するということではなくして、集団的に戦争が行われるということを認められたと思うのであります。波多野委員質疑に対してそういう言葉が使われました。私これは将来の戦争形式を正しく把握さ戦を遂行できる国というのは恐らくそうあるものではないと思います。そういう意味においては現在の殆んどの国は政府が定義するような近代戦遂行能力を持つておらない。共同しなければ近代戦争ができないという状態が殆んどの国に通ずる状態だと思うのであります。そういうことになりますと、日本がアメリカその他の自由主義諸国と共同して外敵に当り得る力を持つていることは、これは間違いのない確かな事実でありますが、併しそれでも一国だけで独立して近代戦争をやれないのだから、その程度のものを持つたところで憲法違反ではない、こういう立場をとりますというと、どこまで武力を備えたら憲法に違反するのか際限がなくなつて来ると思います。而も吉田総理大臣は三月十日の予算委員会でどういうことを答えているかと申しますと、いわゆる自衛戦力を持つて憲法違反でないという三月六日の発言を訂正した後で、緑風会の岡本委員に対して答えて、時期が来れば戦力を持つということを述べて、更に成るべく早くということも了承いたしますと答えております。そうするというと、政府意図しておるところの戦力を持つ、而も成るべく早く持つというその戦力は今の大橋国務大臣説明からしましても、又今まで各委員会なり会議答弁して来た政府の態度からしましても、日本一国だけで近代戦が遂行できるような強大な武力を持つことを意味することになります。而もそれを成るべく早くということになりますと、我我は非常に政府考え方がわからなくもなるし、又不安にもなつて来るのであります。日本一国だけで近代戦を遂行できるような能力を成るべく早く持つという意図はどういうふうに我々として理解したらいいのでしようか。
  28. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 近代戦争遂行能力ということになると、なかなか一国だけでこれを持つということは容易ならんことでありまして、当分予想できないことでございます。この戦力ということの解釈について近代戦争云々ということを政府としてお答えをいたしておりまするのは、厳密に申しますると、近代戦争を遂行するに足る十分なる有効な手段、こういう意味でございます。能力というより手段、こういうふうに私は理解をいたしておるわけでございます。手段なりますというと、いろいろな手段が集まりまして、総合せられて始めて全体の能力というものができ上るわけであります。併し手段はその能力というものの全体を組織するいろいろな部分になりましようから、そこで何も一国で遂行する能力という程度に達しなくても、一国として戦争手段を持つということならば、それは軍備である、こういうふうに言い得ると思うのでございます。
  29. 三好始

    三好始君 先ほどの大橋国務大臣お答えの中に、世界各国で形式上の軍備を持つておらない国は殆んどないことを前提にして、微弱な軍備であつてもその国として国を守るに一応必要なものとして備えておるものであつて軍備には違いないというようなことを申されたと記憶いたしておるのであります。ところが憲法で禁じている戦力が近代戦争遂行能力でなくして、近代戦をなし得る手段を指しておる、こういう今のお話でありますが、世界各国のうち弱小国軍備なるものは手段という面から見た場合に、近代戦を遂行し得る手段としての武力を、一応形式上の軍備を持つている国はどの国も持つている、こういうふうに政府はお考えなんでしようか。それとも近代戦を遂行する手段を持つている国というのは極めて限られた僅かの国しか持つていない、こういうふうに理解されているか。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は前のほうであると考えます。
  31. 三好始

    三好始君 弱小国形式上軍隊を持つている、そういう場合の軍隊にしても近代戦を遂行するところの手段は持つている、こういうわけなんですか。
  32. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そういう趣旨でございます。
  33. 三好始

    三好始君 そういたしますと、今後近い機会に持とうとしているところの保安隊警備隊の持つている武力手段というのは現在の弱小国の持つている手段に比べて遥かに及ばない、いわゆる戦力に達しないものだ、こういうふうに政府考えているわけですか。
  34. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これを日本国内治安のための必要に応じまして、その程度において装備するものでございますから、我が国の防衛ということを主眼にしてやるものではないのでありまして、自然これはその程度には達しないと、こう考えます。
  35. 三好始

    三好始君 アメリカから貸与を受けることになつて、アメリカの議会が通過せしめたところの現在までの貸与関係だけを以てしても、東洋においては一番強力な艦隊の出現だということが新聞には伝えられております。更にこれ以上に駆逐艦の貸与についても交渉が進められておるようなことも新聞は伝えている。こういうことで少くとも艦艇に関する限りこういう諸国は貧弱なせいもあるかもわかりませんが、警備隊の持とうとしているところの手段は相当東洋の他国に比べて強力なものであつて政府戦力を持つていると理解している。他国よりはもつと手段としては勝れている、こういうふうになつて来るのであります。この間の事情は我々としてどういうふうに理解したらいいんですか。
  36. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 政府がアメリカから貸与を得たいと存じております船舶は千五百トン級十隻、二百五十トン級五十隻というのでございます。これ以外に駆逐艦について目下交渉をいたしているという事実は全然ございません。で今申上げました六十隻の船舶の貸与の申入に対しまして、伝えられるところによりますると、米国議会はこの六十隻の艦艇を貸与するという法案を審議せられているということでございます。併しこれらはいずれも極めて小型な警戒用の船舶でございまして、これを以て海上における戦闘行為主眼とする海軍というがごときものではこれはございません。従つて新聞紙において、東洋における最強の艦隊であるという記事は私も見ておりますが、如何なる意味でそういうことを言われたか、私には全然その意を解するに苦しんでいる次第でございます。
  37. 三好始

    三好始君 恐らく新聞が東洋一の艦隊だと書いたのは、東洋の諸国で現在持つている海軍の武力、それよりは今度警備隊が持つところの艦艇のほうが強力だということで書いたんだろうと思うんです。そういう手段のほうで、東洋諸国の持つている海軍の手段よりは警備隊の持つ手段が強力だということになりますと、さつき大橋国務大臣の言われた弱小国が持つている武力といえどもそれは近代戦遂行に必要な手段としての実体を備えているのだという説明の間に矛盾があると感じられて、説明がちよつとつかない、こういう感じがしたのでお尋ねいたしたのであります。その点で東洋諸国の艦隊よりは警備隊の艦艇のほうが強力だ、そういう事実が若し確かな事実だといたしますというと、政府の下している戦力の定義も、或いはその実際上の外国との比較の問題にしましても、我々さつぱりわけがわからなくなつて来る。世界で一、二の強国しか持つておらないような非常な強力な手段を持たなければ、政府としては近代戦遂行能力でないと言い張るような気持もいたします。その間に全く客観説をとられているところの政府考え方を客観的に把握することが全然できない。政府の主観的な意図でこれは近代戦遂行能力に達しないのだから違憲でないのだという説明でいつまで行つても逃げられるような、そんな状態になりそうな気持がするのであります。一応総論的な問題で、大橋国務大臣或いは木村法務総裁との間に食い違いがあると思つてお尋ねした問題はこれで終つておきます。
  38. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は装備のことについてお尋ねしたいと思いますが、政府が要請しているとか何とかいうことは別個といたしまして、まあ船舶の問題で申しますならば、千五百トン級十隻、二百五十トン級五十隻ということを言つておられるのであります。又新聞の報ずるところによりますと、只今三好委員が指摘せられたように、駆逐艦をアメリカが貸してやるとかいうことがアメリカの国会に上程されているということを聞いて、こう何か政府のやつておられることが、これはまあ邪推といえばそういうことになるかも知れませんけれども、アメリ効との間において何かの黙契とかいうようなものか、秘密裡に何とかいうものを手交されて、だんだんとふくらんで行くような気がするんですが、これは船舶ばかりじやなくて、例えばタンクはどのくらい入れるとか、大砲はどうするのだというような装備の問題についての一応の私は構想が承わりたい。一度資料を頂いたのでございますが、あれ以上、例えば今駆逐艦が問題になつておりますが、日本政府としては、今のあなたたちはそういつた場合にはこれを断つて行くのか、向うが貸してやると言つても断るのか、どうするのか、その構想を一つ承わりたいと存じます。若し構想がこれ以上ないというならば、一つそうしたアメリカが貸すというものに対して断るかどうかということを一つ態度を承わりたい。    〔委員長退席、理事中川幸平君委員長席に着く〕
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 海上の部隊につきましては、先ほど申上げました以外の船舶について全然話はございません。それから陸上の部隊につきましては、先般差上げました以上の話は具体的にはございません。その後の問題といたしまして、将来そういう申入が先方からあつた場合に断るかどうかという問題でございまするが、これは装備のことでございまするから、国内治安と十分睨み合せまして、必要なものならば借りることにいたしましようし、必要でないということならば断るということになるわけでございます。
  40. 波多野鼎

    波多野鼎君 駆逐艦を貸そうということは、これは現実らしいですが、これは断りますか、現在の心境で……。
  41. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 駆逐艦を貸そうという話は、私は全然聞いておりませんので、今申上げました原則に従いまして、現実にそういう申入れがありました場合に、国内治安の必要から見て借りるかどうかということをきめるべきだと考えております。
  42. 波多野鼎

    波多野鼎君 現状においては借りる気はないですか、現状において……。
  43. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まだ先方から何も申して参りませんので、借りるつもりはございません。
  44. 三好始

    三好始君 ちよつと成瀬委員質問に関連して資料の問題で……先般内閣委員会には警察予備隊、海上警備隊の現在の装備の一覧表が資料として出されたのでありますけれども、これは主として性能の一覧表であつて、数量については触れておりませんが、どういう武器がどれだけの数量あるという資料はお出し頂けますか、或いはこれは秘密事項で出せない性質のものですか。
  45. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先般来申上げましたるごとく、現在使用いたしておりまする武器につきましては、なお完全なるアメリカ軍の管理に属しておるわけでございまして、それを必要な際に事実上使用いたしておるという関係になつております。この使用関係については、今先方と話合いまして、そうしてはつきり日本政府の中央の責任ある機関が一括して借り受ける、そうして予備隊にこれを配付するという形に切替えたいと存じておるのでございますが、それについてはなお先方としての国内的な手続等もあるものとみえまして、まだ具体的な相談がまとまるに至つておりません。従つて、米軍の武器でございまするので、数量について公式に日本側から申上げるということは目下むずかしいと存じます。併しなお、秘密会その他適当な御処置が頂けまするならば、我々が洩れ聞いている限りを情報として申上げることは或いはできるかと存じます。
  46. 波多野鼎

    波多野鼎君 その点に関連して、横須賀で二隻ずつ使つておる……、使つておるとは言わんが、ときどき見学に行つておるというような答弁をしておりましたですが、我々国会議員が見学に行くことに政府は斡旋しますか。
  47. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は船舶につきましては、これは武器等と又アメリカの国内法上の取扱いが違つておるようでございまして、例えば日本等においても船舶というものは一般の鉄砲や大砲などよりも重視しておりますので、これをアメリカ政府として外国に貸与するということについては、やはり法的根拠が要るものとみえるのでございます。その法的根拠についての措置として、只今米国の国会で問題となつた法案が出ておるのではないかと想像いたしておるのであります。従いまして、只今のところはなお米国海軍が管理をいたしておりまする船舶に事実上ときどき乗せてもらつておるというような取扱になつておるのでございます。従つて政府としてこれをお見せするというわけには参りませんが、併し時機をみまして、米国海軍の同意があれば、無論政府といたしましてはできるだけ速かな機会に実際御覧頂くように御斡旋することは辞するものではございません。
  48. 波多野鼎

    波多野鼎君 ちよつともう一つだけ、そこで委員長にお願いがあるのですが、こんな議論を終結させるためにも、一応横須賀にある日本軍がときどき……、日本軍じやない日本警備隊が乗せてもらつておるというその軍艦及び上陸用舟艇ですか、千五百トンと二百五十トンの、これを一つ委員会で見学するように取計らつて頂きたい。百聞一見に如かずで、一遍見てくれば大抵見当つくのです。一つそのようにお取計らい願いたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  49. 中川幸平

    ○理事(中川幸平君) いいですね。
  50. 三好始

    三好始君 只今大橋国務大臣のほうから、貸与を受けておる使用武器については、まだ貸与関係がはつきりしていないから資料として出すわけに行かないけれども、秘密会であれば一応の御説明が頂けるようなお話がありました。これは秘密会でも止むを得ないと思いますから、一応現在の装備の実情について我々はありのままを知るということが必要だろうと思いますから、秘密会が必要であれば、後ほどそういう機会を作つて頂いて、一応装備の内容についての説明を聞けるように取計らつて頂きたいと思います。  それからもう一つこれと関連する問題になるのですが、アメリカの下院が日本に対する艦艇貸与法案を可決した際に、相当議論が行われたような報道があるのでありますが、    〔理事中川幸平君退席、委員長着席〕  これについて政府のほうでどういう議論が行われたのか。恐らく外交機関も復活しておることですから、その状態は連絡がすでにあつておることだと思いますので、その内容も政府のほうからお聞かせ頂きたいと思います。
  51. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ちよつと諸君に申上げます。今議場で定足数が足りないらしいのでございます。で私は質疑のあるかただけは残つて頂こうと思いましたが、議長から議場に来いということでありますから、暫らく休憩いたします。
  52. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今の御質問にだけお答えいたしておきます。米国の法律審議の模様につきましては、何らまだ情報を受取つておりません。私どもも新聞で見た程度でございます。まだこちらの極東会議のほうにも詳しい知らせはないようでございます。
  53. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それでは丁度質疑応答の半ばでありますが、およそ三十分間休憩いたします。    午後三時十八分休憩    〔休憩後開会に至らず〕