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1952-06-26 第13回国会 参議院 内閣委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月二十六日(木曜日)    午前十一時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     河井 彌八君    理事            鈴木 直人君            中川 幸平君            成瀬 幡治君    委員            楠瀬 常猪君            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            上條 愛一君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   国務大臣    国 務 大 臣 木村篤太郎君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    運 輸 大 臣 村上 義一君    建 設 大 臣 野田 卯一君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    長官官房文書課    長       麻生  茂君    調達庁次長   堀井 啓治君    調達庁長官官房    長       辻村 義知君    行政管理政務次    官       山口六郎次君    行政管理庁次長 大野木克彦君    行政管理庁管理    部長      中川  融君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    外務政務次官  石原幹市郎君    外務参事官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君    海上保安庁長官 柳澤 米吉君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   —————————————   本日の会議に付した事件調達庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○保安庁法案内閣提出衆議院送  付) ○海上公安局法案内閣提出衆議院  送付) ○運輸省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○法制局設置法案内閣提出衆議院  送付) ○建設省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより内閣委員会を開会いたします。  これまで各案に亘りまして質疑は大体終了に近付いておりますが、まだ若干残つた点があると考えます。只今外務大臣が出席せられましたから、外務大臣に対する御質疑を願いますが、議題調達庁設置法の一部改正、それか保安庁法案議題といたします。申すまでもありませんが、会期などの関係におきましてできるだけ簡單に御質疑を願いたいと思います。
  3. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 何か大臣が大変お急ぎらしいようでございますから、簡單一つ要点だけお尋ねしたいと思うのです。  実は国連軍駐留と今度の講和條約との関係におきまして、講和條約の前文乃至五條の(b)項、或いは国連憲章の第二條などに関連しましてこの国連軍駐留をどのようにされるのか、或いは今話合いというようなことが一応新聞に過日出たかに聞いておりますが、今どんなふうに話が進んでおるのか承わりたいと思います。私が承わりたい趣旨は、調達庁人員整理されたり、或いは呉調達庁というようなものが廃止されることが政府原案として出ておるのですが、私はこの国連軍との関係が明確にならなければ、若し国連軍が今後もおるというようなことになるならば、私は呉調達庁の廃止というようなことは不可能なことであろう、こう考える。乃至は二千人の整理が、或いはその二千人の中から七百名が警察予備隊のほうの営繕関係に行く、或いは建設省のほうへ約四百名の者が行くんだと言えばそれまでかも知れませんけれども、なおそこに一千名の首切りが出ておるわけであります。ですからそういう観点に立つて私はお尋ねするのでございますから、その趣旨に副つて一つ答弁を願いたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは国連軍駐留は先ず平和條約にもいろいろありまするが、今回の分は吉田アチソン交換公文によつておるのであります。御承知のように吉田アチソン交換公文は、国会の承認も得たものでありますが、その中には国連軍駐留を認めることになつておる。これによつて国連軍駐留できることになるのであります。そこでいろいろとそれに関する問題はありますが、元来この行政協定に基きまする米駐留軍関係におきましても私はしばしば申しておつたのでありますが、これは労務者関係においては直接雇用が当然筋道である、筋道であるけれども、言葉の関係その他がありまして、組合等間接雇用を希望して来ましたので、理論的なことに余りこだわらずに働く者の都合のいいようにするほうがよろしいと考えまして、それならば間接雇用先方に話してみようということで話したのであります。その結果間接雇用になつたのであります。もとより全部ではありません。例えば家におる女中等はこれは別問題でありますが、普通の労働組合関係の人々は間接雇用ということに一応なつたのでありますが、間接雇用をいたしまするには、労務費というようなものがかなり要るのであります。この点もアメリカ側に話をいたしまして、これは現在正確な数は私覚えておりませんが、四千何百円か一人当りアメリカ側費用を出しております。この額は将来調整することがありましようが、少くとも相当程度三、四千円のものは一人当り出すことになります。それがないと、間接雇用といたしまして別に予算を作らなければできないわけであります。幸いにして米駐留軍に関してはそういう費用を出すということになりましたので、間接雇用の方式をでき得る限りとるということにいたしております。併しこれは費用が出ませんならば、別に予算を取ればこれは別問題でありまするけれども、やろうと思つてもできない。そこで国連軍におきましては、今のところ筋道はやはり直接雇用ということはこれはアメリカ駐留軍と同じ建前であります。費用が出るか出ないかという問題によりまして間接雇用ということも理論的の問題は別としましては、便宜上やれないこともないのでありますがこれはとにかく三、四千円の金が要るわけでありまして、この金が若し国連軍のほうで支出困難であるとすれば、これは直接雇用をいたすより仕方がないのであります。日本の御承知のような予算関係からいいますと、これはもうできるだげ節約して税金を少くする方向に向わなければならないのは当然でありまして、労務者のほうの困難もいろいろありますけれども、それはそれ又別の便宜の方法は講ずるといたしまして、少くとも予算面にそういう費用が計上されない限りは、間接雇用というのは困難であろう、こう考えておるわけであります。で、只今も広島、呉地区においていろいろ問題があることは承知をしておりまして、只今のところは特別調達庁から人を派しまして実情も調査し、間に立つていろいろ話合いの助けもいたしております。まだ話合いが成立したというわけには参らないのであります。尤も米駐留軍の問題でも神奈川県の竹山地区におきましては四十八時間働くか、四十時間働くか、或いはその間の四十四時間で我慢するかということについては多少問題があります。これは雇うほうの都合もありまして、こちらだけの関係でもなかなか行きませんが、我々の希望として又先方にもよく話しておりますものは、少くともこの英濠軍にしろ、アメリカ軍にしろ、プリベーリング・ウエージを尊重してもらつて、そのプリベーリング・ウエージだけは拂つてもらいたいというつもりでおりますが、これも先方に金がないということになればなかなか困難な問題かも知れません。併しできるだけそのつもりで努力しようといたしております。  他方特別調達庁人員につきましては、これは特別調達庁というのが元来占領軍に対する協力機関でありまして、占領が終りますれば自然そういう機関機構は縮少されざるを得ないのであります。又これを他の生産的な活動にこの人たちを向けるということはこれは考えなくちやなりませんが、何でもかんでも一遍雇つたものは用があつてもなくても置いておくということは、国民税金においてその俸給を拂う関係上、私はやるべきことでないと思つております。できるだけ職場の転換を行なつて失業のないようにいたすことは当然でありますけれども、要らなくなつたものまで無理に置くというわけにはいかないだろう、こう考えます。
  5. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ちよつと成瀬君に申しますが、諸君にも申しますが、外務大臣には今急に電話がかかつて来てその電話に出なければならんといつておりますから、五分くらいちよつとお待ち願いたいと思います。  ちよつと速記をとめて。   (速記中止
  6. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて。
  7. 松原一彦

    松原一彦君 野田行政長官に伺うのですが、今朝の新聞どの新聞を見ましても自由党国会対策委員会会期を六十日延長してと書いあるところもありますし、もつと少いところもありますが、参議院で議決せないもの若しくは議決しても政府の気に入らないものは衆議院において三分の二の多数を以てこれを修正するといつたようなふうな記事がどの新聞にも見られるのでありますが、そういうような御決議をなさつたのであるかどうかを公式に一つお答えを願いたい。
  8. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私はそのどういう決議をしたか、それには直接触れておりませんので、私から責任を以て申上げるということは困難かと思います。私の聞いております、私が聞きましたところではこういう趣旨のようであります。即ち国会審議期間が短かいがために、政府の提出いたしました重要法案審議未了に終るという虞のある場合には、それの必要とする審議期間を延ばしても、会期を延ばしてもその審議期間を作り出すという考えを持つているのだ、こういうことであります。これは新聞にはどう伝わつているか知りませんが、そういう趣旨考え方を持つているということを私は聞いております。
  9. 松原一彦

    松原一彦君 先刻私的にもそのことは伺つたのでありますけれどもが、実はこの内閣委員会行政機構改革に対して二十数案件を抱えて五月の八日から審議に入つて、すでに衆議院で可決して正式に廻されましてから後の審議も五月二十八日から始まつているのであります。随分長い間私どもはこれを念を入れて審議をいたしているつもりでありますが、それにもかかわらず若しこれを修正でもして政府意思に背くようなものが出れば、それは衆議院において元の通り原案のように再修正するということをお考えになつているものであるとするならば、私は非常に遺憾に思うのであります。私ども二院制度というものの立場から見ましても、このように一党専制的な数によつて参議院の院議で決定したものをば変更することをあらかじめ予定しておかれになるようなことであつて見るというと、我々の折角のこの審議が徒労に帰するのであります。又民主主義の政治というものは私はそういうものではないと思う。各種各様意見が出ますが、これをばとりまとめて一つ法律にまで作上げる立法府には責任があるのであります。勿論法としましては衆議院は三分の二の多数を以て参議院の決定したことを覆すこともできますけれどもが、私はそういうことをばあらかじめ予定して、如何にも威嚇するごとき態度をおとりになることにつきましては、與党である自由党国会対策委員長がこれを公言せられることに対しましては、政府も同様の御責任があるだろうと思う。若しそういうことであるならば、私どもはこの審議に対してもよほど考えを変えなくちやならんと思う。或いはもう一遍今回の行政機構改革に対する案などはお引取りになつて再考願つてもよくはないかと思うくらいに私は考えているのであります。今日批評は差しはさみませんけれどもが、実は私ども先般来どうもこの法案審議しても、行政簡素化という面も出て来なければ、剰員の淘汰もなし、又国民負担の軽減もない。人員においては勿論三千五百六十六人の減となつております。費用においても約六億七、八千円万円の減にはなりますけれどもが、これは全体から見れば誠に微々たるものでありまして、行政簡素化とは決して見られないのであります。できる限り私どもは現在の時局並びに国民負担の大きいこと、官僚陣営が徒らに厖大になるごと等から見まして、真に簡素化の実を挙げたいとこう思うて努力いたしておるつもりでありますが、本法案に対して行政長官は一歩も讓らんといつたようなお考えでありましようか。或いは参議院意思をも入れて若干の修正ならば、或る程度においては認めるといつたような考えをお持ちなんでありましようか、あらかじめ伺つておきたいのであります。
  10. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 只今の御質問は、私は原案提出者といたしましてでき得る限り原案を生かすように行つて頂きたいということを切望する以外に方法はないと思います。私自身といたしましては……。  それから先ほど申されました国会対策委員長の声明で云々ということでありましたが、私はその点ははつきりしておらないと思います。そういうことをはつきり言われたかどうか知りませんですが、新聞に出た記事の元の趣旨は、先ほど申しましたように審議期間がなくて議案が不成立になるという虞れがあるなれば、審議期間を延ばしても十分審議して頂きたい。こういう趣旨と私これは直接本人から聞いております。でありますからそういう趣旨におとりを願いたいのでありまして、只今おつしやつたようなことは私は聞きませんでした。
  11. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 只今外務大臣の御答弁のうちに調達庁の縮小のことに関しての御意見がございましたのですが、これは私は意見が違うのでございますけれども、そういうことは後仕末の問題であるので、これは一つ外務大臣との関係で私は申上げなくて、ほかの行政官庁関係との問題だと思いますからやめますが、この労務者雇用関係のことにつきまして間接雇用と申しますか、間接調達にして頂かなければ、実際問題としまして労務者にも非常に大きいいろんな問題起りまして非常に難儀でございますから、これはどうしても私は間接雇用にして頂くように、今も努力しておるように承わつて大変結構だと思いますが、今後これは努力して頂きたいと思います。そこでお伺いしたいのは、大体その国連軍駐留米軍駐留と同じケースにおいて解決するように大体努力されておると思いますが、現在それがまだ締結されていないのでございますが、どこに問題点があるのか、それについてどのくらいの見通しか。ということは片一方には九十日という点もございましようし、いろんな点もあるかと存じますが、若し経過においてここの点は発表してもいいとかいうようなことがございましら、ここが今問題になつているのだという点を一つ明らかにして頂きたいとと思います。  それからもう一点は呉関係におきまして非常にその国連軍との間における治安関係が非常に不安であつて、例えば強盗問題であるとか、或いは暴行事件であるとか、強姦事件であるとかいうようなことが相当数あるやに新聞に出ております。或いはそういうようなことはあなたのほうのお手許にも私は報告がなされておると思います。これは一つ治安関係の問題であるから職権が違うとはおつしやるかも知れませんども、併し私は外務大臣としてもごの問題については何らかの対策というものは当然講ぜられる、それが私は外務省の任務であると思いますから、これに対してどういうような対策を立てておられるか。或いはこれに対してどういうようなことをやつておられるのかというこの二点を伺いたいと思います。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国連軍との協定は、先方におきましては大体あそこに参加しておりますものは軍隊ということもなく、例えば病院船を出しておるような国もありまするが、十四カ国あるのであります。それらの国々の間と相談をいたしまして、それから日本側に話を持つて来るということで、先方において遅延いたしておるという状況であります。併しもう下話といいますか、いろいろ研究すべき問題がありますので、話合い、向うの成案ができるできないは別として、個々の問題について、例えば税金の問題であるとか、或いは公共施設使用の問題であるとか、いろいろの問題については個々の事項として話合い下話としてしております。ずつと続けております。そこで今お話の九十日という問題でありますが、これは占領軍あと片付けをして撤退する間の期日でありまして、これは国連軍の滞在とは別問題でありますから、九十日という期間国連軍には適用しないのであります。国連軍に対しましては日本平和條効力発生の日から吉田アチソン交換公文によりまして国連軍駐留を認めておるのでありますから、従いまして講和発効の日から国連軍駐留が行われておると御了解願いたいのであります。  で、それではどういうふうにして協定がないのにその間を規律するかと申しますと、これは大体におきましては国際法及び国際慣習できまつておるのでありまして、根本の趣旨は、例えば特権を與えるという原則がきまつております。又今度細くしますると、軍隊の直接の使用関係する品物、例えば弾薬であるとか武器であるとか、少くともそういうものにには税金をかけないということも、これはもう国際的にきまつております。では食物はどうかというようなことになりますと、多少ここにはつきりしない点があるわけであります。又例えば裁判管轄権にしましても、軍隊使用する兵舎等の中で行われましたその軍隊所属員の犯罪についてはその軍隊裁判管轄権がある、或いは外へ出た場合でも軍隊として行動したときには、例えば人を轢いたというようなことに関する裁判権はその軍隊にあるということは、これは国際法はつきりきまつておるものであります。ただ個人として外へ出た場合にその裁判管轄権がどちらにあるのかというような問題になりますと、或る場合にはその国にあると規定しておるのもあり、或いは或る場合にはその軍隊にあると規定しておるのもあつてそういう点がはつきりしておらない点であります。そこで只今のところは国際法及び国際慣習によりましてすべてを律する。そうしてそれで以てはつきりしていない問題について何らか事件が起つた場合には、その個々の問題について当時国同士日本相手国との間で相談して、そして適当な処置を講ずる。これは決して満足すべき状況ではありませんけれども、併しそう毎日々々いろいろな事件が起るということでもありませんので、差当りそうやつておりまして、そうして協定を早く作つて、そういうはつきりしない部分もはつきりいたそう、こう考えております。なお、これは国連軍側立場でありますが、これは大体におきまして朝鮮の事変において戰闘をいたしておるのでありますけれども朝鮮平和維持ということは取りもなおさず日本安全保障になるのであつて、若し万一、仮に国連軍が敗退して釜山までが共産陣営支配下に立つということになれば、日本治安も又従つて紊れるのであつて日本治安維持のためにもこれは働いておるのであります。そこで朝鮮において命を犠牲にして戰闘をいたしている軍隊は、アメリカ軍もあれば英濠軍もその他の国連軍もある。これは皆平等の立場で平等の関係において共同作戦をいたしております。その人たち日本へ帰つて来た場合に、アメリカのかたは特別の取扱い、その他の国連軍は差別的に扱われるということでは、とても士気の維持もできないし、軍隊として働くことも困難である。従つて原則としてはアメリカ軍集と同じように日本においては取扱つてもらいたいというのが先方のまあ原則的な考えであります。これにつきまして、我々のほうにも多少の意見はあるのでありまして、その問題について、主としてどうしても可なり相互の理解を深め、日本の国情にも適するような話合いをいたさなければならんと思つておりますが、まあ主としてこういう原則的な考え方をどういうふうに見るかという点が問題でありまして、このほうが片付けばあと個々の問題の処理は協定にいたしましても、そうむずかしくなくできる、こう考えております。
  13. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 呉の治安関係の問題、御答弁がなかつたのですが、これは又あと一つ答弁願います。私は国連軍アメリカ駐留軍とは実は嚴然たる区別がなければいけないと思いますので、あなたは今多少なる意見があるとおつしやいますが、私はその意見というものが非常に重大なものだと思います。実際国連軍はあなたが御指摘になるように朝鮮問題で来ておると思います。駐留軍は少なくとも講和條約或いは安保條約に基くところのもので全然別個のものだと思います。従つて私は先ほど同じケースで解釈する方針かと言つたのは、私は違つたものでやられるという実は答えを期待しておつたのであります。ですからあなたはそれについて多少なる意見があるとおつしやつたが、この点について私は一つもう一度そごのところを御明確に大臣の御見解が承わりたい、こう思うのであります。
  14. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今言い落しましたが、呉地区において大小いろいろありますけれども日本法律から見て違法であるというような行為と思われるものは一月から五月一ぱいまでの五カ月で約二百二十件ばかりであると私は記憶しております、正確でないかも知れませんが……。尤もごの多くのものは、例えばこれは朝鮮戰線で非常に苦労して来た人が日本へ来て、それでまあ気持が非常に楽になる、多少アルコールも入つてなつたというような問題で、そうそのむずかしい点でもないかも知れませんが、とにかくそういうふうにたくさんあるのであります。これにつきましては、英濠軍当局にも無論この状況は通報してありますし、先方もよく承知しております。先方首脳者も非常に心配をしておりまして、要するに国連軍日本におるとしても、日本国民の心からなるサポートがなければ、やはり居心地が悪いのではないか、そういう点で兵隊等が心ならずもそう深く考えないでいろいろのことをやつて却つて感情がおかしくなるということは非常に困ると言つて非常に心配しております。我々のほうもそういう問題については隔意なく意見を述べて先方の善処を求めておるのであります一まあだんだんよくなると思いますが、先方も決してこれを放置しておるわけじやないのであります。大変心配されておるのであります。  それからその今のあとの問題でありますが、これはちよつと私も素人でありまして、余り法律的には頭ができておりませんが、ちよつと考えますと、私どもアメリカ軍隊日本が頼んでここへ来てもらつておるのだ、国連軍のほうは朝鮮で働いておるのを日本にまあ置いてやつておるのだ、従つてそこに区別があるじやないか、こう当然私ども考えるのでありますが、学者意見を徴しますと、必ずしもそうでないのでありまして、頼んで置いた軍隊であろうと、頼まずに来た軍隊であろうと、いやしくも一国の中に外国の軍隊駐留するという事実から見れば、動機如何は別としても、そういう駐留するという事実から見れば、その間に法的の特権の差はないというのが相当有力なる学者意見のようであります。が私ども素人のせいか、どうもまだその学説には余り心からそうかというふうにもまだ納得の行かない点もありまするけれども学説としてはそういう議論が法理的には成立つということでありますが、いずれにしましてもそういう点で今後十分意見交換をいたしまして、要するにこれは国連に対する我々から言えば協力先方から言えば日本協力を求めて日本における国連軍駐留を愉快な、そしてむしろ関係国日本との親善関係を増進するようなほうに持つて行くのが筋合いでありまして、双方においてこれは話合いをし、譲るべきことは譲り合  つて円満に解決すべきものと考えておるのであります。
  15. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは議論をすればと申しますか、そんなことを言つたらきりのない話でありますが、これは勿論でございますが、実は私の聞いておるのは、あなたが法律家であるか、素人であるか、学者であるか、そんなことは問題でない、或いは学説があるかないか、そのことがいいか悪いかという問題ではない。私は政府の態度、少くとも外務大臣の態度としてどういう見解をとつておるかということを明らかにして頂きたい。そのことを私はお願いし、答弁を求めます。
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 外務大臣といえども、これは法理的の問題なら、やはり法律専門家の意見を十分に徴しまして、そうして自分の納得するようなところに自分の見解を落ちつけなければならないものであります。法律的に数個の意見があればその中で自分の適当と思うものをとらなければなりません。併しこういう点につきまして私は今申しましたのはできるだけ法律的な意見を私心を入れずに取入れまして、そして自分のはつきりした意見を更にきめなければなりませんが、それには又相手国考えも十分に聽取しまして、先方に如何なる理由があるか、又先方の言うことに我々は納得するべき十分なる理由があるかどうか、これも十分聞いてみなければならん。それでなくして一方的に自分だけはこう考えると言つて方針をただきめて、それで一歩も讓らんというような態度では私は少くともならないと考えております。そういうふうに各方面の意見を今聽取しておるところであります。
  17. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 ちよつと委員長関連質問ですがね。
  18. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 関連ですか、それではどうぞ。
  19. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今連合軍といいますかね、主として英濠軍でしようが、連合軍が日本駐留するという問題を、まあ外務大臣は何だか国連協力というようなことから一つの道義的な、或いは政治的な意味でこれを理解しておられるような説明であつたのですが、英濠軍駐留の問題については又いろいろ意見があると思いますが、これは後にいたしまして、調達庁調達庁は連合軍いわゆる英濠軍の役務或いは物品などの調達についても関與いたしますか、これを一つ先に。
  20. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと誤解のないように申上げますが、私成瀬委員の質問に答えたのは、道義的とかいろいろの平和條関係の理由もありましようけれども、直接には吉田アチソン交換公文で、国連軍駐留は現実に認めておる。これは交換公文の国会の承認を得ておりますからそれによつて駐留は行われている、こういう答弁をいたしました。それから調達庁は法理的には或いは行政組織法から言えば国連軍のいろいろの調達に対しては今のところ関與すべき立場にないのであります。併し従来の関係がありまするし、又英濠軍も一部には実際これは占領軍であつたものが後片付けをするという仕事もある。国連軍としての仕事もありまするし、後片付けとしての仕事もある。或る意味では手伝つております。現に人を東京からも派遣いたしまして労務の問題については斡旋を今のところはいたしております。
  21. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 後片付けの仕事は、手伝うのは、これは私どもの理解しておる労務の問題、これは直ぐに理解できます。後片付けの仕事でなくてなお関與する場合があるのです、やつておりますか、事実……。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは関與する建前にはなつておりませんけれども、従来の関係もありますからここ当分は手伝いをするというので、主としてこれは労務関係であります。斡旋等をついでにやつているという状況であります。
  23. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それはどういう法律に基いてやるのですか。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは法律的にはすべきごとでないのであります。
  25. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうでしよう。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 併し現地でもつて調達庁の人間が働いております。その後片付け等の問題でそこで労務の問題がありますから、今までの関係上口をきいてやつたりなんか手伝うということを事実やつております。
  27. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そこで後片付けの問題は別なんです。それは問題にしませんが、それ以外の仕事で調達庁が關與するなら、何か日本法律がなければ関與できないと思うのですね。そこで調達庁設置法などを見ておりますと、これは條約に基いて日本駐留する外国軍隊の調達に関與する、こういうことになつておりますね、はつきり……。そこで先ほどから議論になつている吉田・アチソン交換文書と申しますか、これが仮に條約であるという見解にたてば、この調達庁が後片付け以外の仕事についても関與することは可能であるかのごとくまあ理解できるのですけれどもね。吉田・アチソン交換文書なるものが條約であるかどうかこれ又一つの問題です。そこで先ほどから大分議論になつている連合国軍が日本駐留する法的な根拠といつたようなものは、吉田・アチソン交換文書以外にないのですか。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) あの交換公文だけです。
  29. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 あの文換公文だけ…。あれは外務大臣のほうでは條約と理解されますか。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 無論広義の條約と思つております。
  31. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そしてこれは先ほどから何度も言つておられますが、国会の承認を経たということをしきりに言つておられますが、この前行政協定を取扱つた場合に、我々の立場では行政協定も広義の條約であるから国会の議決を経なければならんという立場を強く出している。ところが政府のほうでは国会の承認を求める必要なしということでつつぱねて来られたわけでありますが、今吉田・アチソン書簡なるものは、これは條約であるということと而も国会の承認を経ておるということを特に力説されますから、この辺の非常に政府立場において矛盾があるのではないかと感じますがどうなのですか。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは條約であるというのは、まあ広義の條約であるというのは、普通條約というものは條約と書いてあります。或いは協定と書いてあります。これは交換公文になつている。従つて交換公文であつて條約と書いてありません。併し中には国と国との約束が入つているわけです。従つて我々は国会の承認を得るものとして国会平和條約と同時に提出した。行政協定のほうはまあいつもの議論でありますが、第三條で行政協定作つてよろしいということになつておるから、あれがなければ行政協定国会に提出すべきである。従つて今度の国連軍との協定ができますれば、これは第三條のような委任規定といいますか、そういうものはございませんから、やはり国会の承認を得るべきものとこう考えております。
  33. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 最後に念を押しておきますが、連合国軍の後片付けの仕事はこれは別問題として、それ以外の物品並びに労務の調達について調達庁が關與してよろしいという法的根拠がないというふうに理解してよろしいのですか。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 調達庁側には今指摘されたように規定がありまして、できる建前になつております。なつておりますが、協定ができてこの仕事は調達庁がやるんだということがはつきりきまらなければ、英濠軍との間に法的関係ができていない。従つてその協定ができるまでは日本側ではやつてもよろしい。併し英濠軍との間の法的関係は成立していない。ですから事実上の行為を向うが認めれば、それは実際上有効になる。
  35. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 事実上の行為を我々が認めるかどうかが一つ問題、だと思う、……国会がですね。調達庁が法的な根拠があれば別ですけれども、ない仕事をやるということは、我々がこれを認めるかどうかが我々の問題だと私は思う。
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 調達庁としては條約できまつた外国軍の駐屯については仕事をすることになつておりますから、国内法的には私は調達庁はそういう権限を與えられておると考えます。
  37. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうすると調達庁設置法の第七條の第十六項ですか、これなどははつきり「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定第十八條に基く請求の処理に関すること。」その他ずつと出ておりますが、すべてこれは日米安全保障條約並びにそれに基く行政協定、これに関連する仕事を調達庁はやるということになつてつて英濠軍といつたようなものは仮に吉田・アチソン書簡なるものが條約的な効果を持つにしても、調達庁英濠軍の仕事に積極的に関與する法的根拠は私はないように思いますがね。
  38. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 議事進行について…。この問題はこの間調達庁の説明のとき私はあらかじめ聞いておるのですが、説明は逆の答弁をしておられますので、政府で一応お調べになつて午後にでも答えてもらわないとその場でということはちよつと工合が悪いのじやないかと思うのです。
  39. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も少し出過ぎて……。これは私の所管事項じやないのです。答弁が間違つておるかも知れません。これは所管大臣からはつきりした答弁をしたいと思います。今のは取消さして頂きます。
  40. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 実は私も少し外れたことを思つておりますから、この国連軍との……。これは外務委員会の問題かも知れませんから私もこれはやめます。併しこの調達庁の問題については、一つ外務大臣も私は無関係じやないと思いますから、特調とよく打合せをして、私は政府の一本な御説明を伺いたいと思います。
  41. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 僕の質問に対して答弁岡崎外務大臣取消しましたのですが、これは取消すなら取消でいいのですが、問題はそれで解決したわけじやないのですから、質問は留保したことにしておきます。
  42. 松原一彦

    松原一彦君 私は野田長官に質問中に打切られましたが、念のためにもう少し続けたいと思います。よろしうございますか。
  43. 河井彌八

    委員長河井彌八君) よろしうございます。
  44. 松原一彦

    松原一彦君 外務大臣にお尋ねするのですけれども、一口伺つておきたいのは、重大なる法案審議を時間切れによつて打切られることは遺憾であるから、そういう点を考慮して六十日間延期しても、これは強硬に法案の成立を図るという意思であると、かように私は承わつたのでありますが、この行政機構の整備に関する私どもの担当しておる法案にもさようなお考えをお持ちなんでしようか。或いはこの法案は別でございましようか。若しこの法案審議が遅れれば更に国会を延長して、そうして成立に対してどこまでも御努力になるという御意思でしようか。その点を伺つておかなければ、今後の審議の上に我々の考えがきまらないのであります。念のおめに伺います。
  45. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私初めから断つておるように、私の関與したことではないので、国会対策委員会でやつたことではないかと思うのです。
  46. 松原一彦

    松原一彦君 政府の肚を伺うのです。
  47. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 政府ではこの問題に直接相談があつたわけではございません。閣議でこの問題が問題になつたこともないのです。私は念のために新聞に出ているという話がありましたので、国会対策委員長に何か相談されたそうだが、どういうことですかという趣旨を聞いたわけです。そのことだけを御紹介したわけです。私自身或いは政府がこれに関與しておるわけではない、その点を誤解のないように願います。
  48. 松原一彦

    松原一彦君 それから重ねて伺つて終りにいたしたいと思うのでありますが、実は私ども保安庁法案などに対しましてはまだ非常に疑義がある。現に今日伺うのはその一つでありますが、それで一生懸命私ども審議には盡しておるつもりです。そうして予定も組んででき得る限りこの期間内にこれを終了したいというので、委員長の御意もあつていろいろ御相談申上げておるのでありますが、若しこれが遅れるといつたような場合には、この法案につきましても政府はどこまでも成立を図るために更に国会の延長をお図りになる御意思がありますかどうか、承わつておきませんと少し困ることがある。
  49. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) そうすると、私も一つはつきりしておきたいのですが、今のは国会対策委員長がどう言つたかということは論外にして頂きたいのです。これは人のことでございますから、政府の気持はどうかと、こういうことでございますが、議会は延長するかどうかということはまだ何にも政府としては論議をいたしておらないわけであります。ただ政府としてはできるだけ重要法案をこの会期で通したいという程度のことだけは政府意思としてはつきりしていると思います。通して頂きたいという考えを持つておるのでありますということだけはつきり申上げておきます。
  50. 松原一彦

    松原一彦君 それはもう伺わなくても当然のことと思うのでありますけれども政府と一体である與党がああいうような意思表示をせられたところを見ますというと、私どもには更に四回目の延長があるということを予想せしめるのであります。三回の延長すらもあんな紛糾を来したのでありますが、四回の延長がどういうことになるか知りませんけれども、これを強硬にお延ばしになるということならば、実は私どももつと念を入れて審議いたしたい。少し急いでおるのです。もつと念を入れて、了解するところまですべての問題に互つて行きたいのであります。政府は今のところでは国会を延長するという御意思はお持ちにならんと心得てよろしうございますか。
  51. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) その辺のところはま、た閣議でもはつきりしておりませんし、閣僚間においてもはつきりしたことは話合つたことはないのであります。でありますから政府意思はどうだということは私としても今申上げかねる状態であります。ただ先ほど申上げましたように重要法案を是非通したい、通して頂きたいと、こういう願いを持つておる、そういう考えを持つておるということ、だけ、これははつきりしております。
  52. 松原一彦

    松原一彦君 如何にも参議院審議を威嚇するがごとき與党のああいう表現は、私は今後政府の側においてもお慎みを願いたい。全く我々は威嚇せられておるようであります。我々は怠慢の覚えはない。真剣に慎重に審議をいたしておるのであります。我々は国民に対する責任がありますからやつております。今後さような威嚇的なことはどうぞ一つ與党の側とも御相談の上でおよしを願いたいということだけ申上げておきます。  外務大臣にお尋ね申上げたいのでありますが、私は武器貸與の問題に対しまして先般来御通告申上げておるのでありますが、私どもにはもう新聞以外には資料がございませんので新聞によつてお尋ね申上げますが、去る十八日付の朝日新聞によりますと、「米下院軍事委員会は十七日、日本にフリゲート艦十八隻、小型上陸用舟艇五十隻を貸興する法案を可決、これを下院本会議に送付した」とあつて、更に「米下院軍事委員会でエンライト大佐は海軍省を代表してつぎのように証言した」ということが載つております。これが米国の武器貸與法によつてどういうふうになつたのでありましようか。下院でもすでにこれを可決してこちらに通告して参つておるのでございましようか。その成行を伺いたいのです。
  53. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) こちらにはまだ何にも通告を受けておりません。私は記憶がはつきりいたしておりませんが、まだ法案としては成立していないのじやないかと思つております。
  54. 松原一彦

    松原一彦君 その武器貸與という、武器と言つてもここでは軍艦でありますが、この軍艦の貸與に関しましてはかように書いてあります。「日本は東京付近の海軍基地に現在ある米海軍のフリゲート艦十隻の貸與方を要請してきたが米海軍省は日本がより多くの艦艇を必要とする場合を考慮して八隻余分に貸與するこことした」、かようにございますが、この要請したのはどなたが御要請になつたのでしようか、その責任者はどなたでしようか。
  55. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは恐らく海上保安庁の所管でありまするから、話合いをしたとすれば、海上保安庁の関係者が話合いたしたかも知れませんが、いずれにしても私的な下話という程度で、仮にあつたとしても程度だろうと思います。と申しますのは、まだ閣議にも提出されておりませんし、又海上保安庁担当の大臣からもそういう話は聞いておりません。
  56. 松原一彦

    松原一彦君 それは実に驚き入つたお答えでございまして、いやしくも外国の軍艦を借りるというのに外務大臣が御承知でなく閣議も知らん、海上保安庁が私的にアメリカと取引をして一体いいものでございましようか。外務大臣としては一体どういうお考えなのでしようか。
  57. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは正式の場合、話がまとまる前には、無論閣議にも提出されましよう。そうして閣議で決定をいたすのでありますが、併しその前にいろいろ意見交換等をいたすことは、これは関係省としてやつても一向差支えないことだと私は考えております。
  58. 松原一彦

    松原一彦君 下話なら幾らしてもよろしいということでありますが、下話ではなくして現にアメリカの武器を借りておるその数量等についても伺いたいのでありますが、それは昨日石原外務政務次官も、さつきおみえのようでしたが、昨晩の夕刊によりまするというと、外務政務次官は「艦船の貸與は現在のところ、海上保安庁と米軍との私法上の契約にしようということで話合つておる。」としまするというと、将来これは閣議では御承知でない私法上の貸借ということになるのでありましようか。これを伺います。
  59. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは昨日夕刊に出ましたので、それは何か有償であるというような論議があつたように記憶しておりますが、政務次官に聞きましたところが、何かこれは誤解のようでありまして、何もそういうようなことにきまつたことは全然ないようでありまして、従つて今私の申したことが正確でありまして、要するにまだ具体的の話ではないのであります。
  60. 松原一彦

    松原一彦君 併しこれは誰かにいい加減にお話になつたのではなくして、衆議院外務委員会で山本利壽氏の質問に対するお答えでありますから、多分速記に載つていることだと思うのであります。若し有償になるのであろうということでありますと、これはその有償に対する予算は一体どこから出るのでしようか。先般大橋国務大臣に伺つたところによりますると多分無償であろうということであつたのであります。それはエンライト大佐が海軍省を代表した話というものの中に、「これら費用日本は支拂う必要はない。」と、こう書いてあります。一方に外務省筋からは有償であろうということになる。その時分にも私は伺つたのでありますが、一体大変な費用のかかる、改装費用だけでも一千八百五十万ドルを要すると書いてあります。さように非常な巨額な改装費並びに減価もありましよう、損壊する場合におけるこれの弁償といつたようなこともなくてはならんでありましようが、こういうような大きな価格のもの、而も危険なものを日本が借受けることが私的に行われるということに私は非常な疑いを持つのであります。一体今後これは続くことと思いますが、外務大臣も御承知なく私的に海上保安庁等がこういうものをば借受けて一体その予算はどこから出すのでしよか。更に又そういうふうな外国との間の貸借関係につきましては、財政法等によつて法的根拠がなくちやならんと思うのでありますが、その法的根拠はどこにお取りになるおつもりでありましようか。
  61. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ほど申した通り、政務次官は何かの誤解であつたと思います。従つて衆議院答弁しましても速記録を調べて間違いであれば政務次官は取消すであろうと思います。或いは訂正するであろうと思います。従いましてその夕刊に出たことは速記録を調べた上適当な訂正等を行うものと御了承願います。
  62. 松原一彦

    松原一彦君 了承いたします。併し私どもそればかりではどうにも腑に落ちないのでありまして、アメリカの武器貸與法によりまするというと、日本のような自衛軍隊を持たないところには貸されないはずだと私は心得ている。然るに貸されないから貸さないのなら話がわかりますが、貸されないから何か私的に誰かとの取引をやつているといつたようなふうの感じがしてならないのであります。現に警察予備隊の借受けている短銃、機関銃、バズーカ砲等もこれは私的な取引だというふうにこの間御説明があつたのでありますが、そういうことは外務大臣は一体全くお知りにならないのでしようかどうなんでしようか。
  63. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 警察予備隊の武器等は占領中に貸與を受けたのでありますが、これは貸與というよりも、むしろ米軍が管理している武器を必要に応じ使用するということであつて、今までのところは管理の責任アメリカ側にある。それを一時使用するということであつたと了解しております。これは併し結局一時の便法でありまして、将来は何らかの形で貸與すべき場合には、借受ける場合には借受けるようにちやんとした話をいたす必要があるであろうと考えております。
  64. 松原一彦

    松原一彦君 いやしくも独立したる国の警察隊、告若くは今回生れますところの国防軍的存在である保安隊等が今後治安維持のために持つ武器がさようなあいまいなものであるということは私は許されんと思うのです。いやしくも国防の第一線に立つ者がさようなまあ得体の知れんという言葉はおかしうございますけれどもが、大部分はどう借りたのかわからんというようなことでは、我々も頗る不安でありますし、武器なんというものに対しましては、なかなか国内ではむずかしい取締りの下にあるのでありますが、一体外務大臣は将来これに対しましてはどういう契約をおやりになる御予定でありましようか。内閣も必ずそれに対しましては、一定の御所見があつてのことと思うのでありますが、それを伺いたいのであります。
  65. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは予備隊なら予備隊の担当大臣、或いは海上保安庁の担当大臣意見をよく聞きまして間違いのないような方法を講ずるつもりでおります。
  66. 松原一彦

    松原一彦君 併しその間違いのないような方法をとります場合の交渉の当事者は、やはり外務大臣ではないのでしようか。この点如何でしようか。
  67. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはそのときの話合いの工合によりまして、正式に外務大臣という場合もありましようし、所官庁間の話合いということもあり得るのでありまして、まだそういう具体的なところまで行つていないと私は了解しております。いずれそういう点ははつきりいたすだろうと考えております。
  68. 松原一彦

    松原一彦君 重ねて伺いますが、日本の現在の平和憲法の下において外務大臣が外国から軍艦を借りるといつたようなことができ得るものでございますか、これを伺います。
  69. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私は軍艦と、前には軍艦かも知れません。軍艦の一部かも知れませんが、海上保安庁が仮に借受けるという場合には、海上保安庁の目的に合うように無論改装いたされるものと考えます。従いまして海上保安庁の法律に許される範囲の程度の船を持つことになるものと私は了解いたしております。
  70. 松原一彦

    松原一彦君 これは先般も出た問題でありますけれどもが、今度のフリゲート艦というものは、千五百トンであつて三インチ半の砲が二門据わつており、そのほかの小さいものも据わつているのであります。私は軍艦だと思う。これを如何に改装したところで、軍艦でないはずはない。現に海軍省の保管しているところのものであつて、海軍省が武器として、軍艦としてこれは貸しているのだと思うのであります。私はこの点におきましては、それは悪いとかいいとかいうのじやなく、今の日本に必要であるとかないとかいうのは別ですから、日本の現行憲法下において、公式に一体借受ける何か基本的な法律があるのか、よりどころがあるのかを伺つているんです。
  71. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもう軍艦の定義となると、何といいますか、なかなかむずかしいと思います。昔ならば例えば木の船でも軍艦だつた場合がありましようし、この頃は例えば飛行機が飛ばなければ軍艦たる資格がないとか、いろいろ議論がありましよう。併し海上保安庁が借受ける場合には、前身が何であろうとも、海上保安庁の任務に必要なものとしての装備をいたしたものを借受けるのであつて、それは差支えないと思います。現に大砲を持つているとおつしやいますが、海上保安庁の船にも或る程度の武装はいたしている。これは海上等の関係もありますので、必要の範囲の武装はいたしているものと私は了解しております。
  72. 松原一彦

    松原一彦君 これはまあ程度の問題でありまして、どこまでが軍艦であり、どこまでが軍艦でないかは、いわゆる平地と山と、裾野がどこまでかという、山であるか平地であるかわからないのでありますが、戰力であることには私は間違いない。たとえ小さくてもこれは戰力であります。戰力を保持することのできないということは、政府はたびたび日本憲法下においては許されていないということは言明しておられる。かような戰力であるものをたとえ小さくても、或る新聞には六十八隻の海軍の艦廷を持てば日本は東洋でも一番確かな海軍を持つことになるとまでも書いてあります。客観的に言えば私はそれが本当だと思う。必要のあるなしということよりも、私はやはり法のよりどころをお尋ねしているのであつて、それは軍艦でないかも知れませんけれどもが、軍艦でないものとしてこれを日本の側が受入れることに対しまして、外務大臣、何かその法の上の正当性をお認めでしようか。
  73. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は戰力ということについては意見を異にいたしておりまして、予備隊においても或る程度の武装をいたしております。併しこれも国内治安維持のためでありまして、憲法に言う戰力ではないと政府は固く信じております。海上保安庁につきましても、或る程度の武装をした船は現在もあるのであります。で、この船が足りませんので、建造する計画もあるように聞いておりますが、併し急ぐ場合であり、早くそういう船を必要とするために、まあこれは話合いができるかできないかは別といたしまして、アメリカなりどこかから、かかる必要の範囲の船を借りるということにつきましても、これは私は差支えないものと考えております。買つても差支えない、借りても差支えない、こう思つております。
  74. 松原一彦

    松原一彦君 れじや外務大臣に伺いますが、吉田首相はあなたも御了解になつている通りに、国防力の漸増ということを約束しておいでになる。国防力の漸増というものの実現がこれではないのでしようか、如何ですか。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは見る人によりますけれども、あれは約束しているというふうにおとりになつてもまあ同じようなことかも知れませんが、條約の上では期待するということになつております。米国が期待をいたしているのであります。で、やるかやらないか、できるかできないか、これは別問題と私は考えております。
  76. 松原一彦

    松原一彦君 期待することをばこちらが承認しての相互間のこれは約束であります。期待は背かないようにすることが道義であると思いますが、それにしましても期待に対しまして、警察予備隊がすでに保安隊となつて海陸共に警備の力を漸増しつつある。殊に日本の計画は今年度はフリゲート艦十隻ということであつたと私は思う。これは大橋国務大臣も言つておられますが、然るにアメリカの側ではまだ要るであろうからというので八隻を添えて貸してくれている。誠に好意とは思われますけれども、私はその日本の国防計画といつたようなものが、如何にも他動的に作られているような感じがしてならん。独立国の国防計画を独立国がやることについては私は当然だと思います。それにしましても今ここでこの先方から発表したる言葉から言いましても、日本かより多くの艦艇を必要とする場合を考慮して、八隻分を余分に貸與することにしたといつたようなことに対しましては、これはあなたの直接の御責任ではありますまいけれどもが、私は国防力漸増に対する先方のこれは期待から来たものだろうと思うのです。そういう意味におきまして私は国防力となれば、当然これは戰力、戦力でない国防力というものはあり得ないと思う。こういうことに対しましても私は憲法上非常に疑義がある。この点を明らかにしなければ、どうしてもこの保安庁法案というものの審議が進まないのであります。さような意味において私はお尋ねしておるのでありますが、これが漸増せられるということになりますというと、外務大臣外務大臣としての御責任からも、今後の武器の取引については私は相当のお考えがあるだろうと思う。どういう態度を以て今後の武器の取引に御関與になるかを、この際はつきり伺つておきたいと思うのです。
  77. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 松原委員は国防力ということを言われましたが、そのアメリカの人が何と言つたかはこれは別問題であります。政府としての考えは、これは海上保安庁の規定されている範囲内で必要とするものを借りるのでありますが、その話合いはまだ具体的に行つておりませんと私は了解しておりまするし、又何隻か殖やすということも私はまだそういうことは聞いておりません。将来に向つての方針と申しますのは、これは担当の責任大臣意見もよく聞きまして、誤りのないようにいたすよりほかはないと私は考えております。
  78. 松原一彦

    松原一彦君 これはもう外務大臣にこれから上のことをお尋ねしましても、これは御所管が違いますから申上げませんが、最近に出ますところのものにはいろいろそういうようなものが多いのです。例えば八隻のフリゲート艦に対しましては二千名以上の乗組員の必要があるからして、二千名の増員募集が海上警備隊において行われ、その予算的措置もしなければならんというようなことも出ております。これは大橋さんは本年度にさような計画はないということを固く否認せられておりますが、私は必ずそうなるであろうと思われる節がある。又今度の保安隊におきましても、昨年大、中、少佐までは幹部として旧軍人を採用したけれども、今回はアメリカ側の希望によつて大佐級、つまり部隊長を十人だけ更に採用することになつたという記事も最近現われて参つておる。こういうことを見まするというと、如何にも日本の国防計画若しくは治安維持方法が独自の、日本の独立国としての立場から考えられないで、常に他から動かされておるというような感じがしてならないのであります。顯著なるこれが事実であるとしまするというと、国民は非常に不安を感ずる。国防力を増大することが不安であるかないかは別問題としましても、国会も知らない、国民も知らない、外務大臣も御関與にならないうちに、規定以上の武器がどしどし入つて来る。乗組員が足らん、あわてて予算を増加して乘組員の訓練を始めるといつたようなことは、どう考えてもこれは独立国の態度ではない。私どもはかような不安を持ちますがために、今回の保安庁の審議に対しても実は念を入れておるのであります。かようなことを申上げますというと意見になりますけれどもが、私が外務大臣、つまり日米関係においても一番重大なる立場にお立ちになつて、かような方面に御関與にならないはずはない外務大臣に対してその責任上の御所見を伺つたのでありますが、外務大臣の今までのお答えでは私は殆んど要領を得ません。いずれ改めて機会を得て更に質問をいたしたいと思います。
  79. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 松原委員の御質問に関連するわけでありますが、最初に石原さんがお見えになつておるようですが、実は昨日あなたが衆議院において答弁されたことがいろいろ新聞に出てここで問題になつたわけですが、そのお述べになつたことが間違つておるのかどうか。或いは新聞が間違えたのか、その点だけ一つ明らかにお願いしたいと思います。
  80. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 昨日衆議院の外務委員会におきまして艦船の問題が出たのでありますが、私その当時若干考え違いをいたしておりまして、ただこの問題は只今まで話合いが行われておるようである。それで私が申上げましたことは、話合いが行われておるようである、その形は何と言いまするか、一種の私法上の契約のような形になるのではないだろうか、重ねて更に質問がございまして、これは無償か有償か、こういう質問がございましたので、恐らく有償ではないかと、こういうことを申上げたのでありますが、それがちよつとほかの問題と私が外務当局で調べたことが混線しておりましてこういうことになつたのでありますが、先ほど大臣からいろいろ申上げられましたことが正しいことであります。衆議院において更に質問があれば私はさように直したいと考えております。
  81. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 石原政務次官にもう一点お尋ねいたしますが、これはあなたが調べたということは報告を受けておられるのか。あなたが積極的にお調べになつたことなんですか。
  82. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 昨日衆議院においてこういう話が出るかも知れないというようなことがございましたので、係を通じて電話で調べたのでありますが、その回答がそういうことであつた。而もそれはその回答が若干問題を取違えておりまして、そういう答弁要旨が出て来たのであります。これはいろいろ誤解からこういう答弁なつたということを重ねて申上げておきます。
  83. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 この問題については、私ども非常に疑点があるのですけれども、何か上條委員のほうからもあるからというようなことを聞きましたからやめます。  次に松原委員のことに関連して外務大臣にお尋ねしますが、政府は国防力の漸増ということについて條約は期待しでおる。そうしてそれを我々は承認した。政府はこの国防力の漸増ということについて努力するのか、やらないのか、そこを一つ明瞭にして頂きたいと思います。これは国際的の信義の問題だと私は思いますから、一つ明確に御答弁を願いたい。
  84. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 無論この條約に書いてあるくらいですからやるのであります。やるのでありますが、現在は経済上その他の関係があつてなかなかできない。そこでいつやるかということは書いてないのであります。いろいろの事情が許すときにはやわますけれども、それはいつになるのか、まだ将来のことですが、やるという決心はいたしております。
  85. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたはその決心云々ということですが、そういう約束をされたこと、又憲法の解釈と又根本から見て事面倒になるわけですが、どうも私はこういうような点に非常に誤謬というか、疑惑をもつようなものが出て来るのじやないかと思いますが、もう少し、今やらないのだ、併し将来はやるのだという点でありますが、将来若しおやりになるならば、憲法は少くとも私は改正をしなければならないと思いますが、その点についてはどういうようにお考えになりますか。
  86. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは将来のことでありまして、どういうふうにやるかにつきまして国民の意向も無論確かめなければなりません。国民の大多数が憲法を改正してやると言えば、やらざるを得ないでありましようが、大多数が憲法を改正しなくて、その憲法の許す範囲でやると言えば、その範囲でやることになりましよう。これは一に将来の問題であります。
  87. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは議論になりますから……。あなたは国民云々とおつしやるが、私は政府の態度と申しますか、そういうものを聞いておるわけですが、この点はやめまして、次に外敵の侵入を防ぐために戰うというようなことを盛んに……、まあこの保安庁の問題につきまして、大橋さんも、それから吉田総理大臣答弁にもありましたですが、少くとも現下の情勢下におきまして、外敵が侵入して来た、そして防ぐために戦うということの是非は別といたしまして、私は現状下におきましては、少くとも駐留軍との共同行動をとらなければならないようなことになると思います。その場合にこの改正されますところの保安庁の指揮命令系統と申しますか、駐留軍との関係におけるその指揮命令系統についてはどうなるのかという点を一つ御説明願いたいと思います。
  88. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私の所管ではないと思いますが、指揮命令系統は無論日本側にあるのであります。ただ駐留軍と密接な連絡をとる必要がある場合には、無論これはとらなければならない。そこで行政協定にも万一の場合には両国政府間によく協議をするということが書いてあります。どういうことになるかはそのときどきの場合にもよります。そのときの事情にもよりまするから、今こうなるのだというふうには申上げられないと思います。
  89. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうしたらこれは合同委員会がございますですね。大体そこにおいて種々協議されて、そして結論が出されると、こういうふうに解釈してよろしうございますか。
  90. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは当時、外務委員会でありますから、御承知ないかも知れませんが、非常に詳細に研究されまして、速記録に載つております。合同委員会は主として施設及び区域の問題その他両国間のいろいろの協定を要する問題についての協定をいたしておりまして、万一非常事態が起つたような場合の話合いは、それは当該両国政府間でやるというふうに行政協定で書いてあります。
  91. 上條愛一

    ○上條愛一君 時間がありませんので、簡單に関連質問を申上げたいのですが、最初に海上保安庁の政府委員にお尋ねいたしますが、千五百トン級の十隻、二百五十トン級の五十隻の船のうち、只今横須賀に受取つておられる船の数は幾隻ありますか。
  92. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 現在まだ何らの具体的の取極めができておりません。受取つておる船舶はございません。ただ我々のほうといたしましては、貸與されるだろうと思われる船舶が横須賀の軍港に、大きい船舶、大体二隻、それから小さい船舶が二隻繋いである。これを基本にいたしまして訓練を始めておりますが、この訓練の間々にこれを実地に見せて行くというわけでございます。
  93. 上條愛一

    ○上條愛一君 この前海上保安庁の設置法が出ましたときに、我々は保安庁の設置の問題がすでに新聞紙上等にありましたので、若し保安庁という機構の設置が提出されるならば、海上保安隊の問題もこの保安庁の性格等と睨み合せて考慮したいということを我々主張いたしましたときに、政府当局の主張いたしましたことは、なぜ海上警備隊の設置を急ぐかというと、すでに千五百トン級十隻、二百五十トン級五十隻を借入れるということが既定しておるのみならず、すでに船が到着するだからして、これは七月一日以後の保安庁の設置法とは時間的に待てない。だから早急にこれは、海上警備隊の問題は決定してもらわなければならんということを極力主張されたのでありますが、まだ船は一隻も届いておらんという現状でありますか。
  94. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 先ほどお話申上げた通り、現在大型船二隻、小さい船が二隻、これを我々のほうで横須賀にありますものを使用さしておるという程度であります。受取るのはまだ正式には受取つておりません。
  95. 上條愛一

    ○上條愛一君 そうすると、それは仮に借りておるという状態ですか。
  96. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) まだときどき使わしてもらつておるという程度、現在早急に借入れんでも、何とか使用できるような方法をとりたいと考えております。
  97. 上條愛一

    ○上條愛一君 それでは、前国会における我々が承わつた政府当局の言明とは、甚だしく食い違つておると我々は考えるので、我々はそういうことでなしに、この前の国会において海上保安庁の設置法が出ましたときに、そのようなあいまいなことではなかつた。すでに千五百トン級十隻と、二百五十トン級五十隻は、もはや確定しておる。借りることが確定しておつて、すでにもう到着しつつある。だからして、この海上警備隊の問題は焦眉の急であるという説明に基いて、我々は海上保安庁の設置法を承認したわけであります。  それはまあそれといたしまして、私の次に承わりたい点は、すでに二隻ずつ使用されておるのに、何らこれに対する貸與の契約なしにやられておるかどうかということを承わります。
  98. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 第一の先般申上げました海上保安庁法一部改正のときに申上げました計画が、逐次遅れて来ておるということはたしかであります。当時において、船舶が相当早くこちらに到着する予定であつたのです。併しこれはどういう事情か知りませんですが、こちらの法律の施行その他のことと見合せたのかも知れませんが、大体そういうことに合うようにやつて来ております。なお乘員の募集その他を御承知通り今回やりまして近く入つて来るわけでありますが、これを陸上においてなお訓練するというような状態になつております。従いまして船舶が来て、契約ができますれば、逐次乘り得るような態勢になつております。従いまして先般の法を我々通して頂きました直後募集いたしまして、これを訓練して乗せるという態勢を努めておるわけであります。なお現在まだ契約してないかというお話でございますが、現在まだ契約はしておりません。
  99. 上條愛一

    ○上條愛一君 次に承わりたいのは、すでにこの前の海上保安庁の設置の場合に、千五百トン級十隻と、二百五十トン級五十隻は、もう明瞭に借受けるということが決定しておる。而もその船は到着しつつある。だから海上保安庁の設置法を急いでもらいたいということが、政府当局の言明であつた、それが今日まだ届いておらんということは、アメリカの事情によつて届いておらんのか、こちらがまだ準備できないということで、日本政府の方面からの要請に基いて届いておらんのか、その辺の事情を承わりたい。
  100. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) この問題に関しましては、我々のほうの当局といたしましては、船舶の問題につきましては、先般予算の御審議を頂きましたときに、大体千五百トン級十隻、二百五十トンから三百トン級が五十隻、これは大体向うの了解を得られたと考えまして、予算審議において確定して頂いたのであります。これに伴いまして、直ちにこれに対する乘員の準備、それから受取方の手配をしなくちやならないということでアメリカ側と折衝をしており、こちら側の法案通過と共に直ちに募集をいたしまして、第一期約三千というものを募集しておるわけであります。御承知通り予算審議のときにおきましても、予算面におきまして人間の募集の数にいたしましても、各月毎に割つておるわけであります。この計画で年度一ぱいで六十隻が全部手に入るという予定を以て組んでおるわけであります。この予定に従つて向う側と打合せしまして、人員が募集できたときにはこちらにそういう船舶が入るような手配をしておるわけであります。
  101. 上條愛一

    ○上條愛一君 もう一点承わりたいのは、すでに十隻と五十隻を借入れるということを決定したと言つたのか、政府の閣議その他においてこの点が決定せられた上で向うとのそのような取極めをいたしたのか、その点を承わりたい。
  102. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 私といたしましては担当大臣の運輸大臣に申上げました。運輸大臣の許可を受けましてそういう交渉をしておるわけであります。
  103. 上條愛一

    ○上條愛一君 運輸大臣がおらんので承わりにくいのですが運輸大臣がそのような許可を與えたのか。これは無論日本政府の閣議の決定を経たものと考えてよろしうございますか。
  104. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) これは私からはつきり確認をするわけには参りませんが、予算面におきましてすでに千五百トン級十隻、二百五十トン級五十隻という問題は大体そのあれで載つております。従いまして大蔵大臣等とは十分にお話の上決定したものと考えております。
  105. 上條愛一

    ○上條愛一君 外務大臣に承わりたいのですが、今の政府当局の御答弁によると、すでに十隻と五十隻は日本政府において借入れるものとして決定されておると私どもは信じておりますが、これは閣議その他において正式に決定せられた上であるかどうか承わりたい。
  106. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私も閣議の記録を調べてみないとはつきりわかりませんが併し閣議においてそういう話がありまして、とにかく借受けるという方針で進むことははつきり了承されております。併しこういうものはいずれにしても話合いをいたしてどういう形式でどういうふうに借入れるかというような具体的な問題はまだきまつてないと思いますが、とにかくそういう話は閣議でも十分聞いております。
  107. 上條愛一

    ○上條愛一君 すでに運輸大臣がこれを許可したということは、すでに閣議の決定を見ておる。閣議の決定を見て十隻と五十隻の船を借入れるということを日本政府がきめておる以上、而もその船が二隻ずつ届いて使用しておるにかかわらず、これに対する契約がないということは我々はあり得ないと思うのですが、これは正式に日本政府アメリカ政府とのこの船の貸與についての契約は来だないとおつしやるのかどうか、その点を承わりたい。
  108. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はまだないと了解しております。
  109. 上條愛一

    ○上條愛一君 そういたしますると、すでに二隻ずつ日本において横須賀において使つておられる。使つておられる場合に、これは沈没しないとは誰も保しがたいのですが、万一そのような場合にはどういうお考えであるか。
  110. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 先ほど私が申上げたことに多少誤解があるかも知れないと思いますが、現在来ておりまして、アメリカ側の船舶となつておる、何等借りる手続はまだ完了しておらない、従つて訓練上必要な場合に、向こうの船舶を見せて頂くという程度でやつておるわけであります。従つて責任はまだ米海軍にあるということになつております。従つて事故が起きたり何かある場合の責任等は、現在我々のほうには何等ないわけであります。従いまして現在の状況では我々といたしましてはできるだけ早く正式決定ができます前に、我々が使用できるような手続だけでも早くしたいというふうに考えておるわけであります。
  111. 上條愛一

    ○上條愛一君 これ以上は私は議論になりまするので申上げませんが、前国会において海上保安庁の設置法が議題になりましたときにおける政府答弁と今日の答弁と甚だ食い違つておることは我々遺憾です。と申しますのは、我々は前国会においてはすでに契約済みであつて十隻と五十隻は借りることに決定してそれが今日到着しつつある。だからしてこれは待てないのだ、時期が待てないのだと、こう言明されたのは、私どもはすでに前国会のときにおいて十隻と五十隻の船を借入れるという契約は日本政府アメリカ政府との間において取り行われた上に、而も船は今到着しつつある。そういう焦眉の急に迫られたということで我々は海上保安庁の設置を承認しておる。我々はそのときに、海上保安庁の問題はさることながら、すでに次の段階として保安庁設置の問題をしばしば新聞紙上等において宣伝せられておる。そういう意図があるならば我々は保安庁の性格を知つた上で海上保安庁の問題を討議したいということを極力主張いたしたにかかわらす、政府は私の今申上げたような理由によつて海上保安庁の設置法を急がれたわけです。この点は前国会において政府当局が言明されたことと今日の実情において非常な違いがあるということは私は甚だ遺憾であるということを申上げて、私の質問を終ります。
  112. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 大分時間が過ぎましたから……。(「休憩」と呼ぶ者あり)それともやりますか。
  113. 三好始

    ○三好始君 大臣出られますか。
  114. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 三好君にお答えします。外務委員会に午後は出ることになつておるということであります。都合がつき次第に出席してもらいましよう。
  115. 三好始

    ○三好始君 私は質疑したい問題があるのですが、留保させて頂きたいと思います。
  116. 河井彌八

    委員長河井彌八君) とにかく三時まで休憩します。    午後一時二十九分休憩    —————・—————    午後三時四十三分開会
  117. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 休憩前に引続いて内閣委員会を開会いたします。議題は休憩前と同じものであります。即ち保安庁法案海上公安局法案、及び調達庁設置法の一部を改正する法律案、これを議題といたしましてなお質疑を続行いたします。
  118. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 さつきの調達庁の問題で質問いたしますが、連合軍のうち英濠軍日本駐留についての法的根拠、そういうものがいろいろ問題がありますが、調達庁のほうで英濠軍日本駐留についてはいろいろ又問題があるのですけれども差当り調達庁設置法案を審議する今の場合ですから、これに関連して質問いたしますが、午前中の外務大臣の御答弁によると、英濠軍の呉その他における調達については、日本調達庁は彼らの残務整理に関してのみ関與しておる、その他の点については関與しておるかどうか、甚だあいまいな御答弁をしておられました。調達庁のほうからこの点について一つはつきり答弁をこの際お願いしたい。
  119. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 英濠軍の調達に関して調達庁関係しておるかどうかというお尋ねでございますが、只今お話のように占領中に連合国軍のために調達をいたしました事務の残務が今なお相当残つておりますので、英濠軍関係いたしましてもこれからの残務がなお相当あると存じます。英濠軍の新しい調達につきましては、設置法の建前といたしましては、條約に基いて駐留する外国軍隊のための調達を日本政府が引受けることになります場合に限つて調達庁がこれを所掌することに相成りますので、只今のところでは英濠軍のために調達をする根拠がないわけでございますから、権限としては、あり得ないわけでございます。  事実上調達に協力しておるかどうかという問題につきましては、実は只今のところまとまつた調査をいたしておりませんので、はつきりしたことを実は御返事いたしかねる次第でございますが、従来占領期間中におきましていわゆる特需につきましては、調達庁はこれに対しては関係する建前にはなつていなかつたのでございますが、事実上業者の選定或いは積算等に協力を要請いたされますと、これを拒否することが実際上困難であり、或いは或る程度協力するのが常識的でありますような場合には事実上協力いたしておりました事例がございますので、今なおそういう事例が絶無であるということは実は申上げかねますわけでございますが、これに関しましてまとまつた調査ができておりませんので、はつきりしたことは申上げかねる実情でございます。
  120. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 役務の問題はどうですか。
  121. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) サービスにつきましても従来は只今申上げましたようなことが事実上ありましたが、現在の実情につきましてはやはりはつきりとしたことがわかつておりません。
  122. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうも甚だ不明確な答弁ですね、つかまえどころがなくて我々どう判断していいかわからない。それじや至急電報でも打つて調べて返事して下さい。でなかつた審議のしようがありません。  それから條約に基いて駐留する外国軍隊に物及び役務の調達をやるという機関調達庁だと、これは第三條に規定しておる通りなんですが、ところが先ほど午前中の話では、外務大臣答弁では、吉田・アチソン交換文書というものは広い意味の條約である、この條約に基いて英濠車は日本駐留する、なんといいますか資格を持つておるのだというふうな答弁をしておりましたが、この点は二度念を押して聞きましたところ、やはり書簡というものは條約だということをはつきり答弁いたしておりました。そういたしますと、調達庁設置法改正案の第三條の「條約に基いて日本国に駐留する外国軍隊」というものの中には英濠軍も含まれるのではないか、そういう政府の解釈をとれば含まれるのじやないかと思われるのですが、どうですか。
  123. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 英濠軍調達庁設置法第三條にいう「條約に基いて日本国に駐留する外国軍隊」に含まれるかどうかということにつきましては、外務大臣の御答弁通りと存じます。ただそういう「條約に基いて駐留する外国軍隊」の調達を調達庁が担当するかどうかということは、実は別個の問題でございまして、そういう正当に駐留する外国軍隊の調達でありましても、その調達を日本政府が担当するということになりました場合に初めて調達庁の所掌事務になつて来るかと、かように考えております。
  124. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 役務の問題については間接調達という方針がアメリカ駐留軍の間にはきまつておる。そこでこれも外務大臣答弁の中にあつたことだが、アメリカ駐留軍英濠軍と差別的に扱うわけにも行くまい、大体同じように扱つて行くというような方針である。してみますと、アメリカ駐留軍に対しては役務は間接調達で、日本政府が中に入つて調達するという方式なんだから、英濠軍に対してもやはりそういう方式を適用するのが当然ではないか、政府の解釈からいえば。これはどうですか。
  125. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 米国駐留軍の役務関係の調達もやはり米国軍が直接調達いたしておりまして、間接調達だということには只今つていないのであります。
  126. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それは違うんですよ。調達庁は一体何をやつているんですか、何度でもこの委員会では役務については間接調達ということは言つておるのです。午前中のあれでも、外務大臣答弁でもその点はつきり言つておるのですよ。
  127. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 私は或いは役務と仰せになりました言葉を取違えたのかと思いますが、労務の調達という意味でございますと、お話の通りこれは間接調達をしておるのであります。
  128. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それはこういうことなんだ。つまり個人の家に雇つておる女中とか下男とかそういうものではないのだ、労働組合なんか作つておる進駐軍労働組合、そういうものはこれは間接調達でしよう。そうだとすると英濠軍のそういう労務についても間接調達の方式をとるのが、差別待遇しないという建前から言えば、そういう解釈から行けば当然じやないかと思うのですが、どうですか。
  129. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 只今お話のような大前提があります場合には、お話の通りこれも間接調達になる筋合ではないかと思います。
  130. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それだから今度の調達庁設置法の一部改正法律案と、以前からある設置法とのあれが食い違うところがたくさん出て来るのですよ。今度の改正法では安全保障條約に基く軍隊、つまりアメリカ駐留軍、これを目当にしてこの改正法律案を出しておる。英濠軍というのはこの観念の中には入つていない、恐らくこの改正法律案の中には。ところが基本の法律のほうは英濠軍も入るような規定なんです。英濠軍も含めて解釈するような規定になつておる。そこに非常に大きな食い違いが出来ておる。そこをどう思いますか、今度の改正法律案は、日米安全保障條約及び行政協定に基くアメリカ駐留軍に対する物及び役務の調達、こういうことをはつきり語つて来ておる。ところが母法は、今のように條約をそんなふうに広く解釈すれば、條約に基いて日本駐留する外国軍隊として英濠軍も含まれる。そうして英濠軍アメリカ駐留軍とは差別待遇してはならない、国連に対する協力の建前からいつて差別待遇をするわけに行かんという政府の方針であれば、これは英濠軍に対する調達も含まれる。その食い違いができてしまつておる、そうは思わんのですか。
  131. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 今回の調達庁設置法の改正につきまして政府部内で検討いたしましたときにおきましては、なお今お話の英濠軍国連軍関係の調達がどうなるかということのみならず、米国駐留軍に対する調達もどうなるかということは実は十分に確定いたしておりません時期でございましたので、お話の点実に非常にはつきり使い分けを区別して考えまして、文字を使つたような事情ではなかつたのでございまして、大体その当時の調達分量というものを予定いたしまして、それが講和條約発効後も続くような場合にはどうするかというくらいのところで実は切つておいた次第であります。
  132. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今度の改正法律案は提案理由にもあるように、日本が独立したと、そうして日本には米国の軍隊駐留する、占領軍というものはなくなつてしまう、残るのは米国の駐留軍が残る、従つて事務も減るだろうし、だから調達庁は小さくしたつてかまわんという考え方で出ておるわけですね。対象とするところは日米安全保障條約によるのでアメリカ駐留軍だけなんだが、事実英濠軍が残つておる、これをよう日本政府は始末しないのです。はつきり七月二十八日ですか、になれば当然英濠軍というものは撤退しなければならない。私の考えでいえば撤退しないで残れるというのは、外務大臣答弁によると、吉田・アチソン書簡によつて残るという解釈なんです。この解釈に対しては我々異議があるのです。けれどもそれは別として政府の解釈をとりながら質問しておる。そうすると設置法の第三條の條約に基く云々というものの中に事実上残つておる英濠軍も含まれるのですね。ところが今度の改正案ではそんなものは考えに入れないで、行政協定によるアメリカ軍だけを考えに入れて改正法律案を作つておる。だからもう食違いがちやんと出て来てしまつておるのです。だからこれはやはり直さなければだめだというのです。政府のほうとしてはもつと事態をよく考えて案を作り直さなければならんと思うのですが、どうですか。
  133. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 先ほど私申上げました説明がちよつと不完全でありましたことと思いますが、実は申上げました趣旨機構の問題として申上げた次第でざいまして、人員的にはお話のように約二千名削減するという前提で定員法の改正を御審議つておりますのは、駐留軍、米国軍であると英濠軍であるとにかかわらず、この改正法を検討いたしました際には大部分の調達は直接調達になるだろう、併し或る程度のものは行政協定趣旨からいつて間接調達になるものもあるのではないかというようなふうに予想いたされましたので、第三條の第一号が残つた次第でございまして、従いましてちよつとデリケートではございまするけれども機構の問題と定員の問題とは別にお考えを頂きたいと、かように存ずる次でであります。
  134. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そういうことはできないのです。機構の問題と定員の問題を別に考えることはいかんので、行政機関というものはそもそもどういう仕事をするか、何を相手にどういう分量の仕事をするのかということがきまらなければ機構もきまらないし定員もきまりはせんと思う。そういうものをあいまいに残しておいて定員だけは減らしますといつたようなことはできないと私たちは考えておるのです。それと今言つたようなどういう仕事をするかはつきりわからない。これは英濠軍に何をするということもはつきりしない。而も英濠軍は居坐つておる。追い出すことができない。そんなことではこの機構改革では駄目だと思うのです。
  135. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 私の説明が足りませんのではつきりしなかつたようでございます。今定員と機構と別個に御検討相成りたいと申上げましたのは、別々に御検討願いたいと申上げましたのではございませんで、勿論関連があります問題で、総合的にお考えを願わなければならんのでございますが、先ほど御説明申上げましたように、第三條第一号が残りましたのは、外国の駐留軍に対する調達は、大部分軍の直接調達になりそうだけれども行政協定の建前からいつて、多少は間接調達のものも残りそうだというような時期に検討いたしましたので、こういう文章になりましたのでございます。その後時日の経過によりまして、大体今日では諸般の関係はつきりいたして参つたわけでございますが、そういたしまして、結論的に申しまして、調達庁が新たに今後担当いたします仕事は、労務の調達と、それから不動産の調達、或いは解除不動産の処理、又駐留軍の直接調達によりまして生じました紛議の調停に関する事務、いわゆる駐留軍の不法行為に基く損害賠償というような事務が主たる業務になるわけでございます。従いまして、労務、不動産以外の調達に関しては、殆んど何も調達庁の所掌として残るものはございませんので、第三條第一号は結果的に申しますと、只今の労務と不動産の調達のための條文というように結果的になると考えております。
  136. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そういうことはそれでいいのですが、この改正案を出すとき、どういう仕事をやるかわからない、併しその後になつてだんだんわかつて来たという点が一つと、それから英濠軍というものは帰るだらうと思つていたところ帰らない、帰らないようにしたんだ、政府のほうでそういう考え方を持つておる。この二つの点で原案を出されたときと非常に違つておるのですね。だから原案をもう一遍出し直したらどうですか。
  137. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 事情が違つたと申しますか、だんだん事実がはつきりして参つた次第でございますが、併しそのきまつた事項を処理いたします実際の処理とこの條文と照し合せまして不合理だと言えば言えます点は、第三條第一号にございます「建造物及び設備の営繕並びに物、」それから役務のうちの労務以外の役務という点が現実に只今ございませんわけでありますから、現実にないことを語うことが或いは適当ではないかと存じます。併し全然ないかということになりますと、実は御承知のように行政協定趣旨でもございますので、今後全然ないということは言い切れませんので、こうした表現にしておいて頂きましたほうが、今後我々の所掌事務を処理いたします上において便利ではないかと、かように考える次第でございます。
  138. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 何だかごたごたしてわけがわからなくなつて来るのです。第三條第一号の「條約に基いて」云々というのは英濠軍も入るのでしよう。「條約に基いて日本国に駐留する外国軍隊」というのは英濠軍も入るのでしよう。
  139. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 先ほどの外務大臣のお話でありますと入るという結論になると思いますが、併しそういたしました場合でも現実の調達は労務以外はやつておりませんので、そのために非常に事務分量が我々の予想と違つて来たということはないと思います。
  140. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それは英濠軍は入るとしますよ。それで今度の改正法律案の中の第五條、総務部、不動産部、労務部これらの仕事の内容を見て御覧なさい、英濠軍が入るということは書いてないですよ。これは日米行政協定による米国駐留軍のものしかない、その仕事しかやらん。
  141. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 只今の御指摘の点はお話の通りでございます。
  142. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうでしよう。だから僕の言いたいのは、英濠軍も入ると言いながら、今度作る総務部、不動産部、労務部、これらは英濠軍に対する仕事はやらないのだ。
  143. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 先ほどの私の記憶ですと、先ほど外務大臣が言われたのは、アチソン書簡、あれが條約と言えるかと言つたら、広義の條約と言えるだろう、こういうことを言われた程度ではなかつたかと思いますが、どうなんですか。
  144. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それは吉田・アチソン交換文書、これは條約だと、だから国会審議を求めたと、こう言つたのです。それならなぜ、行政協定も広義の條約なんだから国会審議を求めなかつたかと言つたら、あれは日米安全保障條約第三條によるものだから求めなかつた、これは明確ですよ。今朝の外務大臣答弁では、第三條第一号による條約も、吉田・アチソン交換文書もこれは條約です、だから国会審議を求めたんだ、だから入るのですよ、英濠軍も。ところがこれには書いてない。
  145. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 條約に基いて入り得るか、実際そのものをやるかどうかということは別途のあれできまるということを言つておるのです。その点はどうなんです。
  146. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 僕に質問しても困るのですが、(笑声)こういうことなんだ。それで外務大臣はできれば連合軍側と日米間の行政協定のようなものを早く作りたいと言つていたのです。そういう準備を進めておりますということを答えておつたのです。それは間違いないのです。
  147. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) それができるまでは、これも調達庁は取扱わない、こういう解釈のように僕は調達庁の解釈を聞いたのですが。
  148. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 実際扱つておる。それだからおかしいと言うのです。それが事実問題で実際は扱つておられるのです。それだから私が、残務処理で少くなつたというので、それに対してそうではないぞということを私は申上げた、私はもう関連してこれだけ。
  149. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 この問題は午前中の外務大臣との質疑応答においても実に不明確極まるのですよ。そこで政府側の答弁を統一して出てもらいたいということを要求しておる。そこでもう一度、もうこれ以上問いませんから調達庁のかたも行政長官外務大臣もみんな一遍統一的にやつて下さい。そうしてこれはもう私本当に言いたいのだが、今度の改正法律案は英濠軍というものがおることは決して予想しておりません、予想しないでこれを作つておる。ところが現実に英濠軍がおる。そうしてこれに対する国連軍のあれからいつて米軍に対すると同じサービスをするのが当然なりというのが政府の方針らしいのです。それならこの改正法律案の中にやはり英濠軍というものを予想した規定を置かなければ駄目だ、置かなければ違法のことを調達庁はやることになる。そういう点を含んでもう一度考え直して頂きたいということです。
  150. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  151. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて下さい。
  152. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 丁度今朝意見長官もおいでになつたと思うのですが、意味が各大臣がまちまちだつた関係者がまちまちであつて長く審議がかかるということはよくないと思いますので、私はまとめてちよつとお尋ねしたいと思います。  武器貸與の問題ですが、これは有償か無償かわからない。こういうお話ですが、仮に無償であるといたしましたらば使用貸借じやないかと思うのですが如何でございましようか。
  153. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) さようでございます。
  154. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうすると使用貸借であれば契約でございますね。
  155. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) その通りでございます。
  156. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうするとどことどこの契約かということを考えてみると、いろいろ私的とか事実上というお話がありましたが、尋ねられるほうもおつしやるほうも気持は私はわかつておりますが、その予備交渉は別として、これはやはりアメリカ日本の国際の契約、約束ではないかと思いますが、如何でしようか。
  157. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 午前中お話に出ました今後船を借りる場合の問題ということを頭において考えますと、これが正式の一つの契約ということになりますれば、国と国との約束ということになります。
  158. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そういたしますと、どこの所管かもわからんということでございましたけれども、外務省設置法の三條の四号に「條約その他の国際約束の締結」というものがあります。これは外務大臣の所管でなければならんと思いますが、如何でございますか。
  159. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) その点は私簡單に国と国との約束と申上げましたけれども、これが私法上の契約として本質的には考えられなければならないものであろうと思います。そうしますと例えば農林省あたりの在外事務所の敷地を借りるために、農林省という国の役所が向うの敷地の持主と貸借の契約をする、こういうものと私は本質的に同じことだと思います。従いまして外務省の設置法から直ちにその権限が出て来る問題ではないので、勿論これは條約の形でやつては不可能かと言えばこれは不可能ではないと思います。條約の形になれば今のお話のようになりますけれども、私法上の契約でありますから、條約による約束ではなく、今申しました例えば農林省の出先の役所の土地を借りるという問題と共通の問題と思つておりますから、そのおのおのの所管というものは別にきめ得るものであるというふうに考えておるわけであります。
  160. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 今の問題がそこで二つに割れるわけですが、金額が非常に大きくて国家の負担その他の点において国と国との関係になる場合が多かろうかと思うわけでございますが、この問題はあとで第二としてお尋ねします。そうすると施設の問題例えば日本が公使館を設けるために敷地を外国で借りる、こういうような問題と同じに考えますと、これはこの海上公安局法案の九條の武器の装備という言葉の中に入りますか、どこの権限と認めておられまか。
  161. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 今お言葉にありましたその武器の装備に入るものと、要するに保安庁の権限に一応入ると思います。
  162. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 それは今度の出ている法案じや九條じやないかと思いますが、
  163. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) ちつとそれは違うのですが。
  164. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 武器の装備というのに。
  165. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 保安庁法案の六條の四号であります。「船舶、航空機、食糧、需品等を調達すること。」これに入ると思います。
  166. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そういたしまするとここで私的契約とこれを解すべきか、国際間の約束と解すべきかという問題は我々憲法の問題として考えなければいかんと思いますが、ここで大体非常な大きな金額でありますが、大体使用貸借、つまり有償の場合は勿論ですが、無償の場合でも使用貸借としますと返還の義務とか或いは損害賠償の義務とか、注意、保管の義務、こういうものを負うわけでありますからむしろ債務を負うわけであります。そこで憲法の八十五條の「国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」こういう條文があるわけでありますが、これは單に損害が起きたときとか或いは金銭的支出が必要であつた場合に予算を計上して、国会の承認を得ればいいという問題じやないと思うのでありますが、八十五條の関係を国際約束のときは勿論でありますが、私的約束としてこれが八十五條の点を除け得るかどうかというような点について御意見承わりたいと思います。
  167. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 御尤もなお尋ねであると思います。この完全な無償貸借であるという関係に問題を限定いたしまして、この八十五條との問題を照して見ますと、私ども考えておりますところでは、この八十五條というものは申すまでもございませんが、財政の章の中に入つております、又その八十五條の最初のところには「国費を支出し、」というような言葉から始まつております関係上、現実に金銭的の負担をまあ独自に伴うというようなものを憲法は予想しておると思います。憲法の御審議の際にもここに御質問がありまして、この八十五條に債務という言葉があるが、これは如何にも広いというふうに見えるけれども、これは無論金銭上の負担となるものを言うのですね、という当時憲法を審議する際にお尋ねがございまして、その通りであるという答えをしております。従いましてその総粹の無償貸借という面においては、私は理窟の問題としては、八十五條の予想している問題ではないだろうと思うわけであります。ただそれに伴いまして、今のお話に出ましたように、では若しもそれを壞した場合には損害賠償の問題が起るだろう、或いは原状回復の問題も考えられると思います。こういうことはいわば何と申しますか、そういうことから来る法定債務的のもので、これも民法の一般原則から来るものでございしよう。それをここにあらかじめ予想されるからといつて、債務とは憲法は考えていないのじやないかというふうに一応考えております。従いまして今までのこれは外国との関係はよく存じませんが、憲法ができましたあと国が公会堂を一時使用された、これは有償無償もございますが、有償の場合は勿論財政法の問題になりますが、特にそういう損害を生じ得べきことを理由として国会の御承認を求めたことはないわけであります。
  168. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 私は大体憲法ということは、申すまでもなしに字句だけの末にとらわれないで、法の精神から考えて行かなければいかんと思います。いやしくも何千億とかいうような、或いは何千万ドルというようなこういう大きな負担を国が背負うわけでありますから、この字句の末じやない、この憲法自体から申しましても、当然この契約を結ぶときには、国会の承認を得なければいかんものだと私は解したい、これは意見にもなりますが、いやしくも基本の国家の法律でありますから、民法とか商法を解釈することとは違うわけであります。大きな負担日本予算がすつ飛んでしまうような予算のものを必要とするような約束をするということは、單なる字句その他から……、長官が字句その他から意見を述べておられるという意味じやありませんけれども、国の存亡にもかかわることでありますから承認を求むべきものである、こう解釈したいと思いますが、これは私の意見にもなりますので、その点はこのままにしておきたいと思います。  今申しましたように今朝からの質問を聞きますと、政府の御意見が、この部局を預つておられるかたによつていろいろ意見が違つておるようでございましたけれども、今長官の大体御意見によりまして、この法の権限その他が、或いは契約は国と国との約束になるのだ、私的約束になるのだ、それは政治的に見てどちらがいいのか、こういうような問題のありかがはつきりしたと思いますので、私は質問をこれで終えたいと思います。
  169. 三好始

    ○三好始君 法制意見長官は、憲法八十五條の問題で、無償であれば必ずしもこれに該当しないというような立場をとられておるようでありますけれども、これに対して十分な根拠をもつて異論があり得るということは、今栗栖氏の申した通りであると思います。  ところで仮に無償であるということで全然法の拘束を受けないかどうかということで、財政法十條との関係をどういうふうにお考えになつているか承わりたいのであります。財政法第十條によりますと、「国の特定の事務のために要する費用について、国以外の者にその全部又は一部を負担させるには、法律に基かなければならない。」という規定をしてありますが、これとの関係はどういうふうにお考えになつておりますか。
  170. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは国が国以外の者に対して国の或る種の事務のための費用の全部又は一部を負担させる場合のことを言つておりますので、先刻来の問題とはちよつと違うように考えるのでございます。
  171. 三好始

    ○三好始君 武器貸與の問題は、仮にアメリカから無償で借りるという場合、政府の説明によれば、国内治安維持という国のために必要な武器の装備なりの費用について、日本の国以外のアメリカという他の者に費用を全部負担してもらう、こういうことは。
  172. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 十條の趣旨は国内の立法で、「法律に基かなければならない」というのは、国内の国民にしか法律の拘束力はございませんですから、そういう点から申しましても、日本の国権の及ばないものを十條は言つておらないわけであります。
  173. 三好始

    ○三好始君 政府の方針としてきめておるかどうかわかりませんが、佐藤長官は私法上の契約ということで説明せられておるわけでありますが、そういう場合にも全然十條は適用を受けないという御見解なんでしようか。
  174. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 只今御指摘の十條とは全然関係はないことだと考えております。
  175. 三好始

    ○三好始君 それでは会計法第十一條のような場合はどういうことになりますか。「契約等は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。」これも国内関係だけですか。
  176. 林修三

    政府委員(林修三君) 従来は「契約等」と言つておりましたが、現行法では「負担行為」というふうに書いてございます。これはやはり前の法律で契約等と言い現在の改正法で負担行為と言つておりますのも、当然に国費の支出を伴うものを予定しております。国費の支出を伴うものにつきまして法令又は予算の定めるところによつてやれということでございます。併し法令の全然ないものについては、全然ないものというのは、例えば民法の普通の契約をする場合は無論民法上の原則がございます、或いは商法の原則そういうものがございます、そういうものを含めた法令という意味だろうと思います。
  177. 三好始

    ○三好始君 支出の負担が伴うものであれば十一條の拘束を受けるというふうに解釈していいですか。
  178. 林修三

    政府委員(林修三君) 支出負担行為というのは御承知のように政府負担を将来において伴う行為でございます。契約もございますしいろいろその他の行為もございます。これについては法令又は予算で定めるところに従う、この法令という意味は個々のそういう契約をしてもよろしいという方法のみでなく、例えば民法のやつは非常に包括的な法令も入つているのではなかろうか……。
  179. 三好始

    ○三好始君 武器を仮に無償で貸與される場合に、全然支出が伴わないかというとそういうわけには行かない。例えば艦艇を借りた場合にその運航のための費用まで全部向うが負担してくれるというわけでもないだうと思いますが、そういうことになつて来るとやはり支出を伴う契約、こういうことにもなつて来ると思うのですが、その点はどうですか。
  180. 林修三

    政府委員(林修三君) その船の運航費でありますとか或いはそういうものは船を借りた結果に基くところの費用でございまして、それは契約自体に基く費用ではないわけであります。そういう使用貸借であるという点においては支出の負担を伴わない、契約自身が支出の負担を伴わないということは間違いないのではないか。そういうものを借りた結果においてそれを運航するために或いは別の費用が要るかもわかりません。それはそれとして支出負担行為をする、乘組員の費用を拂うなり、船舶の石炭費とか、或いは油の費用とかそういうような問題は別の問題であろうと思うのですが、契約それ自身の支出負担行為ということではなかろうと思うのです。
  181. 三好始

    ○三好始君 修理費にいたしても、運航費にしましても貸與協定なり貸與契約に伴う支出負担であることについては変りないわけでありまして、法律行為全体として見れば支出があるということはこれはもう明らかな事実だと思うのであります。そういう場合に十一條から考えて「法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。」という解釈は当然になされ得ると思うのですが、この点を長官からはつきり承わりたいと思います。
  182. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは申すまでもありません。借物の船でございましようと、日本独自に持つておる日本の所有に属する船でございましようと、これはもう石炭がなければ動かんし、人が乘つておりませんことには役に立ちませんのでございますから、その面における費用の問題は、これは一般の予算の問題としてこちらで御審議を頂くというふうに考えております。
  183. 三好始

    ○三好始君 財政法第三十四條によりまして、「各省各庁の長は、第三十一條第一項の規定により配賦された予算に基いて」大蔵大臣の定める機関に従い支出事務職員及び契約事務職員ごとに、支出の所要額及び国の支出の原因となるべき契約その他の行為の所要額を定め、支拂又は契約等の計画に関する書類を作製して、これを大蔵大臣送付し、その承認を経なければならない。こういう規定がありますが、これに基いての手続はなされておりますか。
  184. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど申上げましたように支出負担行為であります場合、例えば油を買う費用でありますとか、乘組員の給與でありますとかそういうものについては、それは支出負担行為として支出負担行為の計画なり支拂の計画につきまして四半期ごとに大蔵大臣の承認を得る、これは今はつきり覚えておりませんが、会計法は多少この点は変つておりますが、従来の会計法でありますと、そういう四半期ごとの計画が要るわけであります。それはいわゆる先ほど申しましたように現実の支出負担行為といたします場合或いは支拂計画を建てます場合の支出負担行為の場合、支拂計画の場合にあとで事後承認を得るわけであります。無償貸與を受ける契約自体は先ほど申しましたように支出負担行為とは考えられませんから、それについては勿論こういう計画は要らないものだと考えております。
  185. 三好始

    ○三好始君 結局大蔵大臣に対する必要な経費なり支出についての財政法上或いは会計法上必要な手続は、すでに確実にとられておると了解していいですか。
  186. 林修三

    政府委員(林修三君) それは海上保安庁のほうでどうやつておられますか私は存じませんけれども、これは大体支出負担行為の計画なり支拂の計画は四半期ごとに大蔵大臣の承認を得るわけでありまして、次の四半期の前に包括的に計画をとるわけであります。今までそういう現実に支拂が第一四半期になければまだとつておられんでございましようし、七月以後そういう計画があれば、或いは現在大蔵大臣の承認をおとりになる手続をやつておられることであろうと存じます。
  187. 三好始

    ○三好始君 この点について海上保安庁並びに警察予備隊当局から実情を承わりたいと思います。
  188. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) その点ははつきり大蔵大臣の承認を受けてすでに支拂をしております。
  189. 三好始

    ○三好始君 予備隊のほうもお願いいたします。
  190. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 同様でございます。
  191. 三好始

    ○三好始君 佐藤長官の御意見によりますと、艦艇の貸與を受けたり或いは警察予備隊が銃砲等の貸與を受ける場合、私法上の契約として憲法八十五條からいつても、或いは財政法、会計法上の規定からいつても、国会の承認は必ずしも必要がない、こういう立場のように承わつておるのでありますが、そう了解してよろしいですか。
  192. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 憲法の法律解釈の理論上の問題といたしましては、先ほど栗栖委員にお答えしました通り考えております。
  193. 三好始

    ○三好始君 そういうことになりますと、政府だけの交渉によつて重装備された陸海軍が知らん間に成立している、法律的にはこういうことがあり得るわけです。
  194. 佐藤達夫

    ○府政委員(佐藤達夫君) 法律的にはそういうことかも存じませんけれども、要するに国会政府を常に監視しておられるわけでございまして、国政調査権もお持ちになつておりまするし、その他かような委員会等いろいろな機会において政府の説明をお聞きになつておられるわけでございますから、十分その御監督の下に行われるということを考えるわけであります。
  195. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 私は長官とたいがい意見が一致するのですが、こんな大きな財政負担を必要とするものを單独でどんどんやられて、あと事後相談的に財政の尻を埋め合わすということについては、私は憲法の精神上八十五條のこういう解釈は工合が惡いと思います。  併しもう一つ議論をするわけじやないのですが、私的契約の場合に、結局これは余り専門的になりますが、例の法令によつて面倒な問題が起つて来ると思います。そこで私は運輸大臣なり海上保安庁の長官にお尋ねしたいことは、よくアメリカなどとのこういうこの種の契約は、日本法律が余り詳しくはない、或いはその履行の点が非常に面倒だというようなことで、実はアメリカ法によるというような準拠法を契約の中にきめてかかることがしばしばあるのです。それは外務省設置法の国際約束の場合はそんな問題は起りませんけれども、今の私的約束の場合には起つて来ると思うのです。そういうような場合に若しこのアメリカ法によるのであるということになさると又重大なる問題が起きて来ると思いますが、そういうようなことは万々が一にもないと確信してよろしうございますか。大臣及び長官にお答えを願いたいと思います。
  196. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) この点につきましては我々は、契約が私的になるか公的になるかまだこれからの問題で、若し私的になりました場合におきましても国内法等に準拠してやるというつもりでおるわけであります。
  197. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 大臣も同様と解釈してよろしうございますか。
  198. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) すでにお聞き及びだと存じますが、この点については外務省においていろいろ協議を進められております。その協議の結果どういうことになりますか今後決定せられると思うのであります。勿論海上保安庁の職員も関與して進めておると思いまするが今お聞きの通りでありまして、そういう今御指摘のような米国法によるというようなことには万々ならんと思います。
  199. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 ちよつと今朝の外務大臣と運輸大臣みたいに食違いがあるのでございますが、これは私は今の最後の大臣のお言葉であれば安心いたします。
  200. 三好始

    ○三好始君 今の問題は相当重要な問題だと思うのです。外務大臣は最初松原委員質疑に対しては、知らん、全然関知しないという答弁をしておいて、それから今度は上條委員質疑に対しては確かに閣議で話が出たということに変つて来まして、今運輸大臣答弁によりますとむしろ外務省のほうが中心になつて話が進められていると、何を信用していいかさつぱりわからないのでありまして、これは外務大臣にも出て頂いて問題を明らかにしなければいけないと思います。
  201. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) ちよつと私誤解をいたしておりまして、この誤解というよりむしろ詳しく知らなかつたと申上げるほうが適当だと思うのでありますが、今実際は海上保安庁の関係当局がその交渉をしておるという話であります。
  202. 松原一彦

    松原一彦君 これは容易ならんことです。というのは海上保安庁の長官は運輸大臣の許可を得てやつたとこういうお答えなんです。許可せられたのは運輸大臣である、外務大臣は知らん、関係なし、ただ閣議の席で話が出たように思う、こういうことなんです。運輸大臣がそれをお許しになつたのは一体どういう権限ですか。
  203. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 今閣議というお話がありましたが、これは私の就任前に最初の話は運輸大臣、大蔵大臣外務大臣との間に協議がありましたように聞いております。そして正式に閣議にかかつたの予算閣議において正式にかかつたのであると私は考えております。その就任前のことはしかとはわかりませんが、閣議に正式に私の就任前にかかつたとは聞いておりません。で就任後引続いて予算閣議で正式にかかつた。で予算閣議におきましては先刻もお話が出ておりましたが、消耗品であるとか或いはその乘組員でありますとか、これは六千三十八人でありましてこの人件費、こういつたものが予算として計上されて閣議に承認を求めたということであります。で海上保安庁において只今話をしている、これはもとより根本方針は運輸大臣として承知いたしておるわけであります。
  204. 松原一彦

    松原一彦君 私はもうこの質問はしないつもりでおつたのですけれどもが、この日本の武装というと言葉が過ぎるかも知れませんが、武器の借受という問題は、日本治安の上からも将来の国防の上からも実に重大な問題だと思うのです。でありますから国民も納得し国会も十二分に知つた上で行われたいということの私は希望を持つているものであります。  それで先般来しきりにお尋ねしているのでありますが、只今のところでは大型二艘、小型二艘が横須賀に着いておつて、これを海上保安庁で以て今使つておると、その海上保安庁が使つておるのは海上保安庁の私的交渉であるから、海上保安庁の権限で以て借受けることになる根拠は私はないと思う。そこでお尋ねの結果によりますというと、運輸大臣の許しを得てのこれは行動である、こういうことなんです。そこで只今のところでは先方では軍事委員会によつて先議せられております。その武器つまり船舶は日本のほうで借受けるいる関係からすると、あなたが御許可をなさつて借受けておられるということになつている。これは大変重大な問題でありまして、なおあとから続々とやつて参る、そうして而も日本の要請十隻に対して十八隻が来るという、これは千五百トンの型の三インチ砲三門も附いている軍艦である。運輸大臣がさようなことに対して責任をおとりになることができるかどうかを私は伺いたい。
  205. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) まだ船舶を借受けておるということはないのでありまして、これは一つ誤解のないようにお願いをいたしたい。今新たに乘組員養成のために六千三十名ほどの中の三千名を募集いたしまして、横須賀において海上保安庁において教養をいたしておるのであります。まだ船舶は一隻も借受けてはおらないのであります。ただ教養のために時に全く一時的に検分するというようなことは、海上保安庁において交渉をして船内を見るとかいうようなことを先方の承諾を受けてやつているというに過ぎないのでありまして、何らまだ使用している、借受けているということはないのであります。その点一つ御了承願います。
  206. 松原一彦

    松原一彦君 併し通信によれば日本の要請によつてこれがやはり向うで手続を経つつある過程にあるように思われます。そうすると誰が要請せられたのでしようか、海上保安庁から要請せられたのでしようか。
  207. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 前刻申述べました通り海上保安庁のほうでも、つまり運輸大臣から関係閣僚とも協議し勿論閣議において承認を得まして、そうして借受ける交渉を進めておる、こういうことなのであります。まだ借受けては……
  208. 松原一彦

    松原一彦君 責任者はそうすると運輸大臣ですね。
  209. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) そういうことでございます。
  210. 松原一彦

    松原一彦君 将来の契約の仕方等に関しては外務大臣が今研究してくれているという御返答ですか。
  211. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) こういう国際間と申しますかとにかく米国のほうから借りるという問題でありまするが故に、こういう問題に最も深い知識を持つている外務省の当局者に意見を聞き、或いは参與をしてもらつて交渉が進んでおるというのが現状であります。
  212. 松原一彦

    松原一彦君 外務大臣もお見えになりましたが、あなたのおるすでございますけれどもが、運輸大臣はあなたは午前中に知らない、自分は関與しておらないということでございましたけれどもが、運輸大臣はそういう交渉一切は外務大臣が研究してくれているという御返答であります。非常に大きな喰い違いがある。私は何も難詰する意味で申しているのではないのであります。日本のこの国防というものにだんだん高度の力を持たせて行かなければならないような、今日お約束になつているものと思う。その実現の仕方は私共には何も分らないうちに取計られつつあるというところに、我々立法の府にいる者は国民に対しても責を負わなければならんものがあるように思う。ところが政府にお聞きすると皆喰い違う、誰が発注したものやら、その責任は誰が負うものやらそれもピストル何丁じやないです、何万丁であり、バズーカ砲であり、機関銃であり、大きな戰力を持つもので、戰力もそれでは我々の知らぬうちに装備を持つた軍艦まで借りて来ることもできるのじやないかというところまで参つているのであります。これは私は政府のほうでこういう方面の一つ統一したる、はつきりした御答弁を頂かなければ、どうしてもこの保安庁法案審議は進まないと思う。外務大臣は今朝おつしやつたことと今の食い違いをどういうふうに一体お考えになりますか、お答えを願いたい。
  213. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は食い違つてはおらんと思います。今朝も申しました通り、閣議の了承は得ている、借りることについては。それについての具体的の交渉は運輸大臣が主管大臣として進めている。で、今運輸大臣は外務省の当局の意見も聞いてやつている。これはそのいろいろの手続とかその話合とか英語の書き方とかいろいろありましよううから、外務省の者が手伝うことは当然でありましようけれども、それが具体的にならなければ、外務大臣としてこういう協定にしたらいいとかこういう恰好にすべきであるとかいう意見は、具体的になる前に述べるのじやなくして、運輸大臣がそれまでの交渉の責任には当つておられるのであります。知識を借りることは、これは運輸大臣のみならず、農林省で交渉する場合にも外務省の知識を借りる場合もありますし、その他の場合もあるのであります。これらも常にやつておることであります。
  214. 松原一彦

    松原一彦君 そういうようなことじやないのです。運輸大臣のお答えは、将来こういう軍艦武器等を借りる場合において、この交渉をどうするか、それからその責任をどこでとるか、国際間における関係をどうつけるかといつたようなことは、外務大臣が研究してくれているとおつしやる。だからして外務大臣が主体となつてこれは御研究になつているのが当然のことだと私は思う。ところが午前のお答えでは、自分は関與しない、それから次には閣議で聞いたことがあるように思うといつたようなお答えであつた。それはどうも私はそういうふうにはつきりしないことでは困ると思うのです。これはこういう機会にはつきりさしておいて頂いて、今度できます保安庁がそういうような、如何にも言葉はきたないけれどもが闇取引とかいつたようなことでないように、いやしくも国の治安を守り国防を全うしようというこのスタートなんですから、ここで法律関係も憲法との関係も明らかにして、そうしてその部隊の人々も気持よく日の丸の旗の下で働かれるように我々は認めてあげるようにしなければならん義務があると思うのです。その意味で私は先般来重ねてお尋ね申しているのですが、どうも私どもにはこの皆様方のお答えには相当に無理があり、そうして又アメリカとの取引の上においても、何だか一方から見ると従属国扱いにせられるような不満もあり、どうしてこういう問題が公式に取扱わないのかという、私どもには誠に腑に落ちぬものもあるのであります。この武器の貸與がなぜかようにはつきりせないのか。どうして、国と国との間に平等の独立国と今なつている、たとえこちらは国力が弱くとも平等の独立国の立場になつている、この協定の上で互いに助け合うことになつているときに、どうしてはつきりせられないのか、はつきりせられない理由がどこにあるかをお答え願いたい。
  215. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ず先ほどの閣議の問題でありますが、私もすべての閣議の決定を記憶しているわけではありませんので、あれから帰つて調べましたら確かに閣議で了承しておりましたから今そう申しました、先ほどは記憶がたしかでないからであつたと思うけれども、念のために調べてみますと。  それからこういう問題につきましては、これは日本だけの都合ではないので、アメリカ側にもいろいろ法律的の関係があるわけであります。従つて今までいろいろやつておりますのを調べますと、行政官庁間の話合で或る物を貸したり借りたりした場合もあります。国と国との間の話合で協定を結んで貸した借りたという場合もあります。併しその現実の問題につきましては、まだ運輸大臣のほうで話合を進めておつて、どういう形式にするかということの話合が運輸大臣先方の間でもまだきまつておりませんから、従つてきまらないのです。運輸大臣がこういう意見であるということになれば、恐らく当然外務大臣にも御相談があつて、これによつて今度は国際関係なり日本の国内法なりで適当な措置を講ずるのは当然であります。私の了解するところでは、ここに運輸大臣と私がおるのですからわかりますが、外務大臣がこれを運輸大臣の側に交渉いたしておるとか、交渉の形式を運輸大臣の側で研究しておるというまだ段階ではないのであります。外務省の専門家の意見は聞いておられるかも知れません。けれども具体的になりますれば、当然私は相談を受けて適当に意見を述べるというところに来ると思いますが、今はそこまでの段階に来ておらんのであります。そう御了解願います。
  216. 松原一彦

    松原一彦君 いや、運輸大臣の問題ではありません。日本アメリカとの問題です。運輸大臣が商船を一艘借受ける、貨物船を一艘借受けるという問題ではない、国防計画です。それは日本の存在の上に重大な影響を持つ国防計画なんです。これは何と申しましても事実はそれに違いないのです。而もそれは武器です。その取引が運輸大臣の名によつて行われるといつたようなことも私は不思議に堪えないのでありますが、併しヴアンデンバーグの決議によれば、日本のような警察隊だけしか持つておらん国には武器は貸されないのが本当ではないのですか。
  217. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いろいろおつしやいますが、運輸大臣只今海上保安庁関係を担当しておる大臣であります。丁度警察予備隊関係を担当しておるのが大橋大臣であるのと同じで、こういう主管大臣で交渉せられて、その上で閣議なり、或いはその前に外務大臣意見を聞く、これは私は当然の手続だと考えております。  それからヴアンデンバーグ決議案はおつしやる通りであります。併し今回の武器貸與は、武器と申しますか、予備隊のほうの武器とか、或いは海上保安庁の船の問題がこれはありましようが、これはヴアンデンバーグ決議案でなければアメリカは貸せないというのでもないと思うので、その間の法律のいろいろの関係アメリカ側でも研究しているのでありまして、それでどうなるか結論が出て来る。向うの意見もわかりますしそれに対するこちらの意見はつきりわかります。こういう順序になるわけであります。
  218. 松原一彦

    松原一彦君 警察予備隊を保安隊若しくは海上警備隊としなければならない理由もそこにあるのではないですか、
  219. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは国内的には私の主管じやありませんけれども、これは要するに便宜の問題でありまして、こういう海の上及び陸の上において治安を十分に維持し且つ訓練をするということにつきましては、一つの役所で両方やらないほうがよろしいという考えからこうなつたものと了解しております。別段アメリカ側の要請とかなんとかいうものは全然ないのです。
  220. 松原一彦

    松原一彦君 いや、私はもうこれから上は質疑いたしませんが、今度は大橋国務大臣によつてお答えを頂きますが、私どもの憂うるものは、こういう国防関係等におきましては、どうか国民をして安心さして、公明正大に行われるような措置をとられたいということを希望する。私はお邪魔しようというのではない。国会も皆これを知り、安心して堂々と行動のできるようにしたいが、今の憲法の下において又日本の態勢の上からみてこれができないときに、無理をあなたがたがやつておいでになるものと私は認める。併しこれは私の意見でありますから、これだけにとどめておきます。
  221. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 ちよつ十と二つ最後に。三大臣もおいでになりますしほかに意見長官もおられますので、私一つ法制的にお尋ねして最後のくくりをつけたいと思うのですが、それは国際約束ということになれば、憲法八十五條の規定に関連を持つわけでありますが、私的約束ということに契約がなつた場合には、私は憲法の精神からそうじやないと思いますけれども、仮にもそういう政府の約束があるということになれば、これは予算だけで、つまり過年度予算と同じように今後も、一年度じやない二十八年度も二十九年度ももつと続くだろうと思う。そうすれば日本政府も無償の場合であつても運用の面においてはこの日本政府負担を増し、負担にかかわることが非常に多いと思いますので、丁度昔の予算外国庫の負担となるべき契約を締結するの件ということで、政府補償など将来への負担をやつてもらつたと同じような意味において、海上保安庁がこういう私的約束をなさるにしても相当大きな金額で、これは何千万ドルとか日本予算にすれば大変大きな予算になることでありますので、そういう場合には限度を限つてその限度内においてはいいけれども限度以上をこえるような場合には国会の承認を得るとか、あらかじめ国会の承認を得ておくとか、こういうような設置法の中に條文を入れておかないと、私は国庫が、如何に大蔵大臣が本当の健全財政をとろうとしてもとれんようなことにもなり得ると思うのです。そういう意味合で私はそういう考え方があるということを申上げたいのでありますが、これはこれから考究することでございますが、そういうような設置法の中に修正を入れた場合においては当然それに従わなければならない。国会に承認を求める、国会に報告をするとか、こういうことにしなければならんことと思うのでありますが、念のため長官の御意見を承わつておきます。
  222. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私の先ほど来申上げておりますのは、無償貸借の場合を考えておりましたので、素朴に申上げますれば、借りたものを数年後にそのまま返すだけで何もお金の問題は全然伴わない、必然的には伴わないというつもりで申上げたのであります。でありますから、その点に関します限りにおいては、今のお言葉に出ておりましたような御懸念というものは全然あり得ないと思います。勿論これを有償といたしまして返すときに幾らお金を積んで返すというような約束がついておりますれば、現在財政法にも、今のお言葉にありましたように予算外国庫負担契約をする国庫債務負担行為というものは財政法にございます。従いましてそういう有償の場合でありますれば、年度をこえる場合においては国会の御承認を願わなければならない。これは財政法の建前でありますが、併し今までの設例は、そうではない場合を申上げている。又お尋ねのようでありましたからその趣旨でお答え申上げました。
  223. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 併し借りたものをそのまま返して済めばよろしうございますが、併しこれは今の建前として海上警備その他の保安のためにお使いになると思つております。それすれば沈むこともありましようしいろいろな損傷を受けることもあろうと思います。そのままそつくり返して済むものじやないと私は思います。そこでそのまま返して済む場合においてはこれは問題がありません。併しそうするつもりでも済まんような虞れのあるような場合には、国家に大きな財政上の影響を與えますから、一ドルが三百六十円というような相場では大変大きなものになりますから何かの措置を講ずる必要が私はあると思うのすが、これは私の意見にもなりますので、一応述べて、今日のところの質問を打切りたいと思います。
  224. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと速記をとめて下さいませんか。
  225. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  226. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて下さい。
  227. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それでは、この間新聞に出ておりましたが、今の軍艦の有償無償の問題ですね。何かよく覚えておりませんが、五年間借りてあと日本が買取るというような形式の話が進められているということを聞きましたが、その点どうなんですか。五年後には日本がそれを買取るという責任を負うということを聞きますが、これは誰が答弁するか、運輸大臣……。
  228. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 今のそういう話合は今のところは何ら出ておりません。
  229. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そういたしますと、今までの交渉の経過においては無償で借りつ放しですか。
  230. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) まだ結論が出ておりませんから明確なことは申上げかねまするが、こちらの希望としては、無償で借りるということにあるのであります。多分それが容れられるという期待を持つております。
  231. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 アメリカの何でしたか、委員会の電報を読んでおりますと、向うじや只で貸しつ放しということじやなく、一定の期間の間は貸してやるが、それからは日本が買取れというようなことが、向うで論議されておるようですが、そういう方針で向うはきまつたのじやないかと思いますが、そういう点どうですか。
  232. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) お話でありますけれども、まだ先方からもそういつたような意思表示は出て来ないのであります。
  233. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 意見長官にちよつと聞いておきたいのですが、これは仮定ですが、仮に軍艦を今度借りるに当つて、二年間は無償で貸す、その後には日本がこれを買取るべしというような借り方をしなければならんような場合には、これは予算上非常に大きな問題ですから、一種の国庫債務負担に類するものと私は思うが、だから先ほど栗栖さんが言われたように、保安庁のどこかに、そういう借り方をする場合には国会の承認をあらかじめ得るべしといつたようなことをきめる必要があるのじやないですか、その場合には。
  234. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは今出ました問題で、実はちつとも頭に考えて来なかつたのでありますが、先ほど来お答えしたところの筋道とはこれは違う筋道考えなければならんことであろうということだけを申上げておきます。
  235. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうすると意見長官は、若しそういうような條件で借りなければならん場合には、政府が勝手にただ国会に諮らずに勝手に借りて、あとでこれだけ買入代金を拂わなければならんといつてあとで持つて来ることはいけない、一種の予算ですから、あらかじめ国会の承認を得ておかなければならんというふうな意見だと了解してよろしうございますか。
  236. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) ここで即座に政府意見なりとして私が堂々たるお答えをする勇気と申しますか自信はございませんけれども、大体まあお話を聞いておりますと、そういう方向で考えざるを得ないのじやないかという気持を持つております。
  237. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それじや明日までに一つ考えて来て、明日堂々たる意見を述べられることを希望しておきます。
  238. 三好始

    ○三好始君 ちつと外務大臣にお伺いしたいのですが、政務次官が衆議院の外務委員会で私的な契約の形にするとかいうような表現を使つて、それを間違いだつたというようなことを述べられておるのですが、外務大臣の見解としては、日米国家間の協定という形で私的なものではなくして処理して行きたいという御見解なんですか、その点をちよつと伺つておきたい。
  239. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはいろいろの形式がありまして、各国でやつておるのもそういうような形でやつておるのがありまするし、又そうでなくして国家間の協定のような形でやつておるのもあります。これにつきましてい運輸大臣のほうでだんだん具体的に話がまとまつて来ますれば、それをどういう形にしたらよろしいかということについては私も十分研究して意見を述べたいと思つております。今のところまだ具体的に形ができておりませんので、ちよつとどういうふうにしていいか、又日本側だけの関係でもありません、これはアメリカ面にいろいろの法律的な関係もあると思いますから、両方比べまして適当なところに落ち着けたいと、こう思つております。
  240. 三好始

    ○三好始君 午前中外務大臣の御答弁によりますと、アメリカの艦艇貸與法のことについては、何にも通知を受取つておらない、こういうようなことを申されておるのでありますが、これはアメリカ側から通知を受取つておらないという意味で申されたのだろうと私は了解いたしたのでありますが、日本の大使館なりその他在外公館から何にも連絡かないのかどうか。アメリカ下院の軍事委員会で艦艇貸與法が提案になつてこれが可決されたということは新聞報道で伝わつているようでありますが、そういう状況について大使館その他の公館から何にも連絡がないのですか。或いは外務省当局としてこのことに関して報告を求めたことがないのですか。
  241. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これにつきましては法案がかかつたとかという話は無論聞いております。聞いておりますが、それはただ日常始終話合うときの情報みたいなものでありまして、公式に、例えば公文を持つて来たとか、そういうような関係は全然まだございません。
  242. 三好始

    ○三好始君 こういう重大な問題についてアメリカの大使館のほうからも何にも報告がないし、こちらからも報告を求めないということであれば、一体在外公館というのは何をするために設けるのかわけがわからなくなつて来る。私は当然に何らかの連絡がすでにあつたものと今まで考えておつたのですが、そういう点についての公式の内容に亘つての報告がないということであれば、外務関係の事務の運営の仕方に非常に疑問を持つて来るという考えがするのですが、今まででもこういうことでよかつたのですか。
  243. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いや、私のお答えしましたのは、米国政府から連絡があつたか、通知があつたかというから、それはまだないというのでありまして、在外公館つまりワシントンの大使館等からは法案が出てその内容がごうであるというような電報は来ております。併しそれは大体まだそう詳しく聞いておりませんから新聞に出たような種類のものでありますけれども、来ておることは来ておるのであります。併しこれはただ情報として来ているのであります。まだ決定に至つてないと私は了解しております。
  244. 三好始

    ○三好始君 新聞には相当詳細に報道されているのですが、アメリカにある大使館から来ている情報なり報告というのは新聞に出ているものと同じ内容のものであると了解していいのですか。
  245. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大体同じ内容のものであります。恐らくアメリカの大使館は法案を送つて来ましたり、例えばそれに関するいろいろの新聞の報道の切抜きをつけて、そうしてまあそれに関する知つている限りの情報というか、そういうものをつけて送つて来るのであります。日本新聞に出ておりますのはそういうものを向うで見まして電報にして来ているのですから、大体内容は同一のものであります。
  246. 上條愛一

    ○上條愛一君 外務大臣にお尋ねいたしますが、アメリカから借入れる軍艦の問題について、閣議で問題になつた点はどういう内容の点が問題になつたかお話を願いたいのです。
  247. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私の記憶しておりますのは、運輸大臣の提議で、運輸大臣のほうで海上のいろいろの警備の関係上、或いは水難救助の関係上船が足りない、そこでいろいろそのときに計画としての案を提示されたようでありまして、例えば今持つている船の甲板をもつと丈夫にしてそとに必要な装備をする、これには何カ月かかり或いは新しい船を作れば何カ月かかつて幾らかかるというようないろいろな研究がありまして、それに関連して米国側から船を貸與してもらえば非常に早くこういうほうの整備が完了する、で、でき得る限りそういう方向で話を進めてみたい。差当り考えるのは、十隻の比較的大型の船をそれから五十隻の比較的小型の船と、こういう交渉をいたしたい、こういう趣旨と記憶しております。
  248. 上條愛一

    ○上條愛一君 これは私はいずれ後に内閣委員会の議事録を調べてお尋ねいたしたいと思いますが、前国会において海上警備隊の問題が起りましたときに、大橋国務大臣は明らかに、千五百トン級十隻と二百五十トン級五十隻はアメリカ政府から貸與の承認を得て近いうちに、それも最近のうちに、その船が日本に到達する、それであるからして海上保安庁設置法案というものは速かに決定を願いたいという答弁でありました。今村上大臣のお話を聞くと、これからアメリカに対して借入の交渉をするというようなお話でありましたがそう了解して差支えありませんですか。
  249. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 最初閣議での話は、私の就任前のことはしかと存じませんが、予算閣議において大体方向がまとまりまして、予算に計上して閣議に計上したのであります。全部船舶はアメリカから無償で借入れられる見通しがあるからそういうことにしたということで、ただ人員、乘組員及び燃料等の手配を予算に計上した次第であります。で、閣議で承認を受けますと併行してその後話を進めて参つたのであります。今から始めるというのではないのであります。今日までに若干の話合は進みつつある次第であります。
  250. 上條愛一

    ○上條愛一君 なお、もう一度念を押しておきたいと思うのは、大橋国務大臣が十隻と五十隻の具体案を出して内閣委員会で説明せられたについては、正式の決定は見ないといたしましても内交渉によつてアメリカ政府において十隻、五十隻ということは承認を得たものと私どもは信じて、大橋国務大臣が前国会において内閣委員会で言明されたことを信じているわけなのですが、村上運輸大臣の話によりますと、この問題は内交渉の程度においても、アメリカの承認を得たのであるかどうかということをお尋ねいたしておきます。
  251. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 今実際に話をしておりまするのは、日本にいる極東海軍とであります。一番当初はその極東海軍の一、二人たちとの話でありました。或いは内交渉と言い得るかと思うのであります。その場合に、殆んど話が大体こちらの希望を入れられていたという点を、恐らく大橋大臣は申されたのだと思うのであります。まだその後これを法的に移するいうことについては今進行中であるということを御了承願いたいと思います。
  252. 上條愛一

    ○上條愛一君 いずれ速記録を見た上でなお御質問する必要があれば御質問をいたします。
  253. 三好始

    ○三好始君 外務大臣ちよつとお伺いしたいのですが、先般この内閣委員会で大橋国務大臣は、艦艇その他の武器の貸與協定が文書でとり結ばれるときには、これは会議の、或いは実質上の條約として憲法に基いて国会の承認を得るべきものと自分は思うという、こういう答弁をせられておるのですが、外務大臣はこの点どういうふうに考えておりますか
  254. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 話合はまだ具体的にまとまつておりませんから、その内容について具体的に見ないと言えませんけれども、先ほども申しました通り、国と国との協定のような形でこれが行われている場合もありまするし、そうでなくして行政官庁間の話合で行われるという場合もあるのであります。これは事の大小はいろいろありましようけれども、外国行政官庁日本行政官庁が話合でいろいろの約束をし、又いろいろの取極めをし、貸借を行うということは、これは決してないことではない。尤も今度の問題はそんな簡単なものではなくして重要なものだという内容の差はある。併し形式的にいえば、今申したようなどちらのやり方もあり得ると考えております。これは具体的に話合の模様を見て結果を見てみないと私にははつきり申上げられないと思います。
  255. 三好始

    ○三好始君 それでは将来の問題は別として、現在の警察予備隊等が貸與を受けている武器の関係をどういうふうに処理して行くかの問題でありますが、占領下であればともかくすでに講和條約が発効して独立した今日の段階では、やはり国家間の協定なのか或いは予備隊当局とアメリカの軍当局との協定か、いずれにしても貸與の法律関係を明らかにしなければならない、こう思うのでありますが、この点を今どういう状態に置かれているかということが政府当局からははつきり説明を伺つたことがないのであります。聞きましてもはつきりしておらないような御答弁なんでありますが、これは一応はやはり国家間の問題として明らかにしなければいけないのではないかと思いますが如何ですか。
  256. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これもやはり船の問題と同じことでありまして、どういう形式にするかということは将来の問題と思います。実はこういうような切換えの問題がありますので、一つ平和條約に九十日という期間がありまして、その間に法律関係も調整しいろいろの事態の変化に合うように措置を講ずる、こういう意味もあれに入つているのであります。恐らく私の聞いているところでは、只今関係当局でそういう問題についてしきりに研究を進めていると了解しております。
  257. 三好始

    ○三好始君 只今九十日という言葉が出ましたが、これは占領軍の撤退ということ以外にこうした武器の貸與の問題についても九十日の範囲内で解決しようという見解の下に政府は今この問題の処理を進められているのですか。こういうふうに了解していいのですか。
  258. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この問題を特に言つたわけじやありませんが、九十日というのはただ撤退をする期間というのではなくして、いろいろなその間に例えば蓄積物、貯蔵物を処理しなければならんということもありましようし、或いは或る施設のこわれているのを直して返さなければならんという問題もありましようし、その間に法律関係を調整するという問題もありましよう。いろいろな関係でこういう期間が設けられているのでありまして、必ずしも私は九十日間にそういうことをはつきりさせるかどうかということについては、主管官庁である予備隊当局の意見を聞かなければわかりませんけれども一つはそういう問題も入つて九十日という規定があるのだということを申上げたのであります。
  259. 三好始

    ○三好始君 保安庁法案と関連して海上公安局法案が出されておりますが、海上公安局は保安庁に所属した一つの役所でありますが、その保安庁に所属している海上公安局というのは国家行政組織法上どういう根拠を以て設けられているのか伺いたい。
  260. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) それは保安庁の附属機関であります。
  261. 三好始

    ○三好始君 国家行政組織法によりますと、外局の庁にも或いは委員会にも附属機関を設け得ることにはなつておりますが、この種の局を附属機関として設けるのは、国家行政組織法は許容しておらないと私はこういうふうに思うのでありますが、その点行政管理庁長官としての見解を明らかにして頂きたいと思うのであります。
  262. 中川融

    政府委員中川融君) 私から代つてお答え申上げますが、第八條にはいろいろな機関を置くことが書いてありまして、審議会、協議会、試験所、研究所、文教施設、医療施設その他の機関を置くことができる。今度設けようといたしまする海上公安局或いは現に設けられております警察予備隊、かようなものはその他の機関というところで置くことになつておるわけであります。
  263. 三好始

    ○三好始君 第八十條は今中川さんが申されたようにたしかにその他の機関を置くことができるという表現はしております。併しその他の機関というのは今まで他の場合における政府考えかた、例えば陸海空軍その他の戰力、こういう場合のその他という考えから言いましても、前に挙げたものを例示して、それをうけた表現であるような見解をとつておるんでありますが、その他という言葉は何に続いておるかと申しますと、「審議会又は協議会」として括弧して「(諮問的又は調査的なもの等第三條に規定する委員会以外のものを云う。)」、これは第三條に規定している委員会とは性格が違つて、全く諮問的或いは調査的な軽い意味の審議会、協議会を指しているわけであります。それに次いで「及び試験所、研究所、文教施設、医療施設」こういうものと並べて海上公安局というような相当厖大な機構がその他に入れられているということになりますと、国家行政組織法第八條で設け得るところの附属機関は、殆んど何でも設けられるとこういうことになりはしないですか。余り擴張解釈にすぎるという感じがするのですが、この点如何ですか。
  264. 中川融

    政府委員中川融君) 今お話になりました通り、八條機関で例えば警察予備隊ということになりますとか、或いは海上公安局というような問題になりますとか、いろいろここに例示的に挙つております審議会、協議会等と比べますと、非常に性格の違つたものを置くことができるということに解釈いたします結果として、御指摘のように考えようによりましては何でも置けるというようなふうな感じを與えることはその通りですけれども、国家行政組織法の法律を通じまして行政機関の種類というものを非常に限定いたしております。そうしてその種類といたしましては従来旧制度の下におきましてよりも非常に或る意味で厳格に規定しております結果、どうしてもそれらの規定の中に入りきらないものがいろいろ出て来るのは止むを得ないところではないかと考えます。現に法務府に置かれております検察庁のごときものも、これは何であるかということになりますと非常に解釈上苦しむのでありまして、結局我々といたしましては検察庁もこの八條機関であるというふうに解釈いたさざるを得ないということになつております。同様に現行法の問題といたしましては、警察予備隊のごときものも第八條機関としてできておるのであります。元来でありますならば、今回の海上公安局のようなものはむしろ外局の措置のほうが或いは適当でないかとも思われるのでありますが、国家行政組織法におきましては、御承知のように外局には更に外局を置くということが許されておらないのであります。これはこの八條のその他の機関ということを或る程度広く解釈することによりまして、むしろ国家行政組織法自体を体系として生かして行くゆえんではないかというふうに考えているわけでございます。
  265. 三好始

    ○三好始君 そういたしますと、事実上国家行政組織法の体系が崩れて行くことを認める、こういうことになりはしないかと思うのであります。むしろそういうことであれば、国家行政組織法は必ずしも絶対のものでないのですから、国家行政組織法自体を再検討するなりして筋を通す必要がありはしないか。余り擴張解釈をして国家行政組織法の根本的な建前を事実において他の個々法律で崩してしまうというようなことは、恐らく問題があるのではないか。だから今御説明の通り受取るといたしましても、附属機関としての海上公安局に更に附属機関としての海上公安大学なり海上公安学校、海上公安訓練所と、こういうようなものが置かれるということにもなるので、非常に屋上屋を重ねるということが、無理なこういう附属機関の擴張解釈から超つて来るのではないかと思うのですが、この点もう少しはつきりしたことを説明して頂きたいと思います。
  266. 中川融

    政府委員中川融君) 御承知のよううに、我々といたしても、八條のその他の機関というものは、どんなものでも入れていいような意味には考えておらないのでありまして、尤もこれはでき得るだけその性格は限定いたしたいというふうに考えております。御承知のように、現在警察予備隊或いは今度の保安庁の附属機関として置かれます保安隊というようなものは、一つの隊というような組織、かようなものでございます。或る意味におきまして今回設けます海上公安局もこういう意味におきましては似かよつたものである、というふうに考えております。それからその他の八條の機関としておきますものはできるだけ行政事務的なものを余り行わないようなものというふうに大体考えております。今回の行政機構改革の案におきましても或いは人員とか大きさという点におきましては相当な大きものでありましても、現実といたしまして行政事務的な色彩の比載的薄いものをこの機関ということにしております。行政組織法全体としての体系は崩さないように心がけでいる次第であります。
  267. 三好始

    ○三好始君 運輸大臣にお伺いしたいのですが、海上公安局はむしろ運輸行政に関連する一環として運輸省の外局におくという機想があり得るのじやないかと思う。むしろこの軍隊的な性格を持つた保安庁の附属機関にするよりはそのほうが筋が通りはしないか。こういう見解が成立ち得ると思いますが運輸大臣のお考え一つ承りたいと思います。
  268. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 御意見として今拜聽いたしたのでありますが、航海の安全という業務と警備救難という業務に二大別できることは御承知通りであります。航海の安全という問題から申しますると、今お説の通りだと思うのであります。今回現在の海上保安庁におきましては全く航海の安全と警備救難というものに二大別できる職務を行つているのであります。ただお説のような考えかたもありまして、この航海の安全という業務の中から燈台、標識の管理維持、又水路部の仕事、これらを運輸省にとどめまして、他を新たにできます保安庁に移して海上公安局ということに相成つた次第であります。もともと現在の海上保安庁におきましても警備救難の仕事につきましては勿論海難の救済というような仕事はお説の通りだと思いまするが、併し一面におきまして漁船の保護或いは密猟の取締というような農林省関係の業務もありますし、又密入国の取締というような外務省系統の仕事もあります。更に密貿易の取締というような大蔵省系統の仕事もあるのであります。それぞれ関係大臣の名において公布されております法令に準拠して作業をやつておるような次第でありまして、この米国式のコースト・ガードの建前をとつたゆえんは、実はパトロールの設備、つまり船舶を幾通りにも持たんければならんのを一括して処理するという便宜主義と申しまするか、節約主義と申しまするか、設備の点から来ておる次第でありまして、そういう観点から今日新たなる海上公安局の仕事のうちにも多分運輸省で所管すべき仕事もあるのでありまして、お説のような点も多分にあるのでありまするが、今申述べましたごとく他の各省にも関係のものがあるのであります。ただ便宜上保安庁に移すことが便宜であるという見地から新保安庁の外局として処理するということに相成つた次第であります。
  269. 上條愛一

    ○上條愛一君 部分的なことですが、運輸大臣にお尋ねいたしますが、運輸省の海運局の問題でありますが、我々無論行政機構簡素化には賛成でありましてその実現を希望いたしておるのでありますが、海運局のごとき機構は、独立後において日本の海運業がますます発展をいたして参ると思いますし、それから四面海である日本といたしましては、この海運局の所轄する仕事というものはますます重要を加えると考えられるわけであります。現在は御承知通り五部を置いているわけでありますが、今度行政組織法の部を廃止するという趣旨に則つて部を廃されている。我々はこのうちで海運調整部というものは残しておいてもらいたいという希望を持つておるのであります。殊に今度海上保安庁が若し保安庁の設置と共に廃止されるということになりますれば、海運局としては海難防止の仕事も附加されて来るのではないかと思います。又今度の機構改革で公共船員職業安定所は廃止せられまして、これが説明によりますると地方海運局にそれぞれ分属されるということのようであります。そういうことを総合してみますると、海運局は次長も置かず部も廃止してこれら広範に亘る海運の業務の仕事を海運局で果して完遂されるのであろうかどうか、ということを我々は非常に疑問に思うのでありますが、この点について大臣のお考えを承りたいと思います。
  270. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) お説の通り日本の立地條件から見まして、又日本の財政の収支から見まして海運が盛んでなくちやならん、又海運の従つて仕事が非常に広範であるということはお説の通りであります。特に過般の戰争によりまして日本の海運は殆んど絶滅状態に相成りまして、今そういう関係もありまして特に海運関係の仕事は力を注がんければならん現状にあるのであります。今海運関係の仕事は運輸省におきましては海運局とそうして船舶局と船員局と三つに分れて広い意味の海運行政を処理しているような次第であります。この三つの局に海運局の仕事が分れておりまするが故に現在調整部というものを設けまして、併しその所属は海運局にあるのでありますが、三つの局の調整を図るという使命を持たして実はやつているのであります。これを一般の今回の行政機構改革の基本方針の一つとしまして部を廃止するということに相成りましたが故に、今後これらの仕事は事務次官が直接に処理して行かんければならんということに相成るのであります。そういう意味で今後最善を盡してその必要にこたえたいと考えている次第であります。
  271. 上條愛一

    ○上條愛一君 これは大臣も御承知通り海運局は十の地方海運局も持つておられるわけであります。大臣としては今度の機構改革によつていずれ部を廃止するということになれば、課の編成替えもしなければならないだろうと思うておりますが、我々はその課の編成替えがどういうふうになるかということもまだ承知しておりませんので、これは極めて抽象的の御質問になると思いますが、海運行政機構改革のままで無論大臣としては完遂するという御自信であろうと思いますが、我々は少しこういう機構改革によつて、こういう将来重要な仕事であり、殊にこれは仕事が擴大されて行きつつあるということが明白な海運局が、部も廃し次長も置かずに実際にこの運営が完遂されるかどうかということについては疑問が多いのでございまするので、こういう点については大臣において十分なる御考慮を願いたいと思います。我々もよくなお事務当局からでも、機構改革ののちにおける海運局の機構について若し詳細に御説明を承る機会ができれば、それに従つて機構改革の問題も十分な検討を加えたいと、こう考えておるのでありまして、質問と同時に希望を申上げておきます。
  272. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 前刻御指摘にもありましたのですが、現在の海上保安庁の仕事の中から船舶の検査でありますとか、或いは船員の試験であるとかいうようなこれも航海安全の部類に属するものでありますが、これらがそれぞれ今回の船舶局又船員局に移るのでありまして、自然お話の地方海運局内にそういつたような仕事が又加わつて来るということもあります。とにかく現在の使命は極めて重大であるということを痛感いたしておるのであります。適当な課制を設けて、併しながら大体において現在の課制度が適切であると考えておるのでありまするが、最善を盡して国民の御期待に副いたいと考えているような次第であります。
  273. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 佐藤意見長官から先刻波多野君の御質疑に対しまして答弁を留保せられたのがあります。今その説明をしようということを求められましたから佐藤長官の発言を願います。
  274. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 先ほどのお尋ねに対しましてお答えを留保いたしておりましたが、その点についてお答えを申上げたいと思います。  先ほどの御設例は、船を借りてその返すときに必ず日本が買取るということを借りる際に約束をした場合に、その約束はどういう手続でやるかというように承わつてつたのですが、それはこの財政法で申しますと、国庫債務負担行為としてそういう場合にあらかじめはつきりその契約に出ております場合には、国会の議決を要するというふうに、財政法の適用上さようなことになると考えるわけであります。
  275. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 例えば今年八月に契約を結ぶ、その契約の内容は三年間は無償で貸興する、三年後にそのときの時価か何か一定の価格で日本が買取るという契約を今年の八月に日本はしますね。その場合に今年の八月に国会の議決を経なきやならんですな。
  276. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) その契約を結ぶことについて議決を要することになります。
  277. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 議決を、いや、契約を結ぶときに議決を要するのでしようね。
  278. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 結ぶについて。
  279. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それじや結構です。
  280. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 普通そういうときにコンヂシヨナルに契約を結ぶ場合が相当あります。
  281. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 まあいい條件付きの場合もあるかも知らんが、財政法の解釈としては佐藤長官の答弁通りと了承しておきます。
  282. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はちよつと速記をとめて頂きたいのですがね。
  283. 河井彌八

    委員長河井彌八君) じや速記をとめて下さい。    〔速記中止
  284. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて下さい。  それでは七時半まで休憩いたします。    午後六時六分休憩    —————・—————    午後八時九分開会
  285. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 休憩前に引続いて内閣委員会を開会いたします。  議題は先刻議題に供しましたうちで保安庁法案及び海上公安局法案議題といたします。法務総裁が御出席でありまするから法務総裁に対して御質疑のあるかたは御発言を願います。
  286. 三好始

    ○三好始君 お疲れのようでありますから坐つたままで御答弁願います。  現在審議中の保安庁法案は技術的にもいろいろ問題があるわけでありますが、何と申しましても根本的な問題は警察予備隊で、問題になりました憲法九條との関係でございます。保安隊、警備隊になりますというと、一層明瞭な形で問題になる。こういうところに最も根本的な問題があると私たち考えておるわけであります。そういう点で法務総裁の御意見を伺いたいと思う次第であります。
  287. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。保安隊は御承知通り警察予備隊の変態とでも申しましようか、名は変つておるのでありまするけれども、実質において我々は変つていないと心得ておるのであります。御承知通り今度の保安庁法によりましてもその定義付けをやつておるのであります。要するに国家の保安、秩序を維持するために設けられたものであります。根本的の性格においては警察予備隊と全然異なつておる訳合いのものではございません。ただ実質において幾分か隊員を増しておる、装備の点においても多少前と異つておることは御承知通りであります。我々はこの憲法第九條の関係において、いわゆるこれは未だ戦力に相当すべきものではないと、かように考えております。憲法問題は起らないと、こう解釈しておるのであります。
  288. 三好始

    ○三好始君 問題は、警察予備隊でも問題になつたように、果して予備隊にしましても、今度の保安隊、警備隊にしましても、これは憲法第九條第二項にいう「その他の戰力」に該当するかしないか、こういうことなんでありますが、これについてすでにもう世間に知れ渡つつておるように、内閣としましては、従来いわば客観説とでも言いますか、近代戰を有効適切に遂行し得る編成装備を持つたものが戰力である、こう定義をとられておると了解いたしておるわけでありますが、私たちはそういう客観的な定義だけでは説明し切れないものが考えられるのではなかろうか、たとえ政府考えておられましたような客観的な戰力という定義に当てはまらないような微弱な武力にいたしましても、外国から侵略を受けた場合にこれに抵抗するのだ、或いは中立侵犯なり国際紛争の強制的処理を受けた場合に、これに対して自衛のための実力行動をとるのだ、こういう意図の下に設けられた武力であれば、これは政府が定義している近代戰遂行能力に達しなくても、第九條にいう戰力じやなかろうか、こういう考え方を実はとつてつたわけなんであります。先般内閣委員会で大橋国務大臣に質問しましたところ、結論的にはこれを認めたのであります。純粋な客観説をとられておつたのに対して、いわば主観的に外敵に対抗する意図があればこれも憲法九條にいう戰力として許されないのだということを認めました。これを速記録で一応念のために申上げておくほうが問題がはつきりするかと思います。一応関係部分だけを読んでみたいと思います。この速記録は印刷ができておらないので、速記課で写して来たままを申上げるのですが、大橋国務大臣が、私の先ほど来申したような趣旨に対してこういう答弁をせられたのであります。「御質問にお答えをいたすには、私どもは戰力という問題をもう一段掘下げる必要があると思います。例えば今日仮に日本が戰争を遂行する、併しそれは自衛の戰争である、こういうふうなために近代戰を遂行し得るだけの程度に達しない部隊を持つたと、そういう場合に、これは憲法違反であるかないか、こういう御質問だろうと存じますが、そういう意図のために持つた場合においては、これも又憲法違反であると、こう言わざるを得ないと存じます。例えば警察予備隊を、戰争をするということのために組織をして行くということになりますれば、その組織の過程において、初めは何もないところからだんだんまあ武器が殖えて来る、そうすると近代戰争遂行の程度まで装備が擴充されて来ると、こういうことになり、いつから憲法違反の状態が生じたかと、こういうことになりますると、それはやはり戰争の意図を以てそうした組織を作り上げるということになれば、そのときから憲法違反の状態が生じると、こういうのが先ず自然であろうと思いまするので、その場合における政府の意図というものも、やはり戰力を判定する一つの重要な資料として十分に検討してみる必要があるだろうと存じます。」こういう答弁をされております。それについて更にもつとはつきりした形で、「近代戰争遂行という程度にならなくとも、日本政府自身が、或いは日本国みずからが戰争を遂行するということを頭に置いてそうしたものを作れば、やはりこれは憲法に違反すると、こう考えることが自然だろうと思います。」、こういう表現をせられておりますが、それは更に質疑応答が進むにつれていろいろな形で同じことを更に明確な表現をされて、いわば意図を持てば戰力だという主観説を認められたのでありますが、これは木村法務総裁が今まで申されて来た客観説を修正する、或いは客観説に主観説を加えるという結果になつたと思うのですが、外敵に対抗する意図がはつきりしておれば、やはり憲法九條にいうところの戰力として許されないのだという考え方に対して、木村法務総裁のお考えを承わりたい。
  289. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。大橋君はまさにその通りに言つたものと考えます、速記録にあるのだから……。併し大橋君の言わんとするところは、恐らく保安隊ですね、これはさつき私が申上げたように、国内の保安並びに秩序維持のために作られたものであつて、戰争目的のために作られたものではないのだから、従つてこれは憲法第九條の戰力に該当しないものだという、その導き方で私は言つたものと、こう推察するのであります。私はやはりこれはどうしてもそういう議論もありましようが、客観的に近代戰遂行の能力があるかどうかということで判断するのが妥当でないかと、こう考えております。
  290. 三好始

    ○三好始君 今読みました速記録だけから判断しましても、一応大橋国務大臣は、警察予備隊なり保安隊の目的を離れて、第九條そのものの解釈論として主観説を認めたという結果になると思うのでありますが、木村法務総裁はそういう主観説の入り込んで来る余地は全然ないのだ、客観説だけが正当な立場なんだというお考えなんでしようか、その点……。
  291. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それで私が客観説をとるのでありまするが、現実の保安隊の問題とすれば、主観説をとつても、客観説をとつても、どの部分から言つても、これは戰力に該当しないのだ、こういう結論になるのじやないかと、かように考えております。
  292. 三好始

    ○三好始君 私は一応憲法九條の問題を解釈論として明らかにして、それから警察予備隊、保安隊が性格的に言つて九條との関係はどうなるか、こういうふうに考えてみたいと思いますが、九條の問題の解釈論としての立場から、主観説は全然考慮の余地がないとおつしやるのですか。それとも主観説も考え得るというふうにお認めになるのですか。
  293. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういう議論も一応は成立つだろうと考えておりまするが、私はこれはどこまでも客観説をとつて行く考えであります、こう考えておるのであります。
  294. 三好始

    ○三好始君 そういたしますと、率直に申しますというと、政府部内で必ずしも意見が統一されておらないということになりはしないでしようか。
  295. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法論としては或いはそういう議論になるかわかりませんが、保安隊が憲法九條に違反するかどうかという点においては結論は私は同じであろう、こう考えております。
  296. 三好始

    ○三好始君 私は保安隊が憲法上どうであるか、この問題は第二段の問題として考えて行きたいと思うのですが、一応先ず前提としての憲法の解釈を明確にする、こういう必要を感じて今お尋ねをいたしておるわけなんでありますが、憲法第九條の解釈がもとになつて問題が起つておるわけでありますから、一応解釈自体を明らかにするという立場でお尋ねをするのですが、この点について大橋国務大臣が一応肯定した主観説に対して若し法務総裁が違つた立場をとられておるとすると、警察予備隊なり保安隊、警備隊の性格の最も根本に触れる問題について何だか閣内で意見が必ずしも統一いたしておらないという印象を受けるのでありますが、その点如何ですか。
  297. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 閣内で意見を異にするというところまでは参りませんが、私はこの具体的の問題として取扱う場合にどうあるべきかということで閣内の意見を統一することが必要であろうと、こう考えておりますが、純粋の憲法論といたしましては、私はやはり客観説を維持しておるわけであります。
  298. 三好始

    ○三好始君 それでは次の問題に入りますが、憲法第九條第二項後段に「国の交戰権は、これを認めない。」こういう表現をしておるわけでありますが、政府はしばしば外敵が侵入して来た場合には、これに対して予備隊であろうが保安隊であろうが、又一般の警察予備隊であろうが、抵抗するのは当然だというような説明をされておると思うのであります。これは常識的には自衛戰争だと思うのだが、どうかという質問に対して大橋国務大臣は、戰争ではないということを言われております。恐らくこの点については木村法務総裁も同じような立場を従来説明されて来たと思うのでありますが、自衛戰争と予備隊なり保安隊のとる自衛行動とは、どういうところに違いがあるのでしようか。
  299. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは御承知通り国際法上のいわゆる戰争と見るかどうかという問題でありまして、外敵が不意に宣戰を布告せずして、或いは宣戰布告した場合もありまするが、突然侵入して来た場合においては、これは自衛権の発動として、日本国民であればこれは何人といえども恐らくこれに対して防禦的行動に出ずるということは当然であろうと考えております。従いましてその場合には普通の警察であろうと、或いは警察予備隊であろうと、今度改称されまする保安隊であろうと防禦の任に当るということは当然でありまして、ただこの場合にはいわゆる正式の国際法上認められた戰争じやありませんから、憲法第九條末項の交戰権、これから出るいろいろの権利義務というものは法律上発生せる筋合いでない、こう解釈しております。
  300. 三好始

    ○三好始君 これは法律専門の立場にある法務総裁にお尋ねするほうが適当だと思つて、大橋国務大臣に対する質疑を或る程度でとどめて置いた問題なんですが、そういう場合に、外国軍隊日本の国内に入つて来て、警察予備隊なり保安隊がこれと実際上の実力による衝突をする、日本の部隊が抵抗手段に出るという場合に起つて来る法律関係は、私たちの常識から判断しますというと、国際法上の問題である、まあこういうふうに考えて、従つてこれは宣戦布告したにせよしないにせよ、やはり国際法上の一つの広義の戰争というふうに考えなければいけないのじやないか、だから適用される法規もこういう場合には国際法も秩序破壞の状態に適用されるものとしてのまあ戰時国際法がそこに考え得られるのじやなかろうか、こういう見解を述べたのに対して、大橋国務大臣は、日本の国内治安確保の問題として国内法規が適用になるのだ、こういう見解を述べられた。法務総裁はやはり外敵侵入によつて起るところの法律関係は国内法規の適用を受ける問題なんだとお考えなんでしようか。
  301. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その場合には要するに国際法上発生すべき、或いは捕虜取扱い問題とか或いは捕獲審検の問題とかという問題は起らないであろうと我々は解釈いたしております。
  302. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) その前提問題を私簡單に申上げますが、この自衛行動という広い言葉でございますけれども、御承知通りに、この戰時国際法と平時国際法とかございます。平時国際法の面におきましても自衛行動というものがあります。それからそれに伴つて復仇行為とか警察行為とかということは、それは平時国際法の本に出ております。自衛行動の中で平時国際法で賄われる部面と戰時国際法において賄われる戰争の部面と二つあるわけであります。従いまして通常想定されます問題は、むしろ戰力を持たないわけですから、通常の場合におきましては平時国際法にいうところの自衛行動ということが或いは今の場合に当てはまることがあるであろうと思います。
  303. 三好始

    ○三好始君 そういたしますと、日本警察予備隊なり、今度できる予定の保安隊の隊員が侵入軍に捕えられたような場合が起つて来る。法律関係は、これは国際法上の捕虜とは全然別の立場に立つということですか。
  304. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは学説はいろいろございます。国際法の問題でございますからいろいろな学説がございまして、一致したものはございません。或る学説によりますと、平時国際法上における自衛行動の場合にやはり一種の実力行動がお互いに起るわけですから、戰時国際法の準用があるということを言つておる人もありますし、又他面そういうこととは別に離れて、いわゆる一般の国内法の場合における正当防衛とか緊急避難という原則がございます。そういう原則でそれが国際的に働いて律せられるであろうというような考え方がいろいろあるのでございます。憲法の御審議の際の金森さんの答弁では、むしろ正当防衛というような原理がそこに働くであろうということをお答えいたしております。
  305. 三好始

    ○三好始君 日本の部隊が侵入軍を捕えた場合に捕虜の待遇を與えるのですか、それとも国内法によつて、例えば騒擾罪とか、殺人罪とか、その他の一般刑法を適用するのですか。
  306. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 通常まあ暴力を以て入つて参りまして、そうして暴動を起すというような面は、これはあるわけであります。その面から言えば、今の治安維持の面からいたしまして、国内法においてそういうことが行われるという、日本の刑法の適用になる範囲内においてそういうことが行われれば、或いはそのほうの処罰なり制裁の規定が働くということのほうが普通の場合で通常であろう、普通であろうというふうに考えられるわけであります。
  307. 三好始

    ○三好始君 若し侵入して来た国家が宣戰布告をした場合には、国際法上の交戰状態が起ると考えられますが、その場合には日本の地位はどうなりますか。
  308. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) どうも又実にむずかしい問題でございまして、仮定の問題として考えられます。併し例えば普通の警察しか持つていないアイスランドというような国は、御承知通りに兵隊を持つておらんわけでありますが、そういう国に或る国が宣戰布告をした場合に、一体どういうようになるだろうかというような問題とこれは同じような問題でございまして、ちよつとそこまではつきり今まで学者で論じた人もありませんし、又我々としても現実問題としてそういうことをちよつと想像できませんものですから、深く考えたことはございませんが、これは非常にむずかしい問題であろうと考えます。
  309. 三好始

    ○三好始君 只今の問題には直接のお答えがなかつたのでありますが、仮に憲法第九條による戦力が、近代戰を遂行するに足る編成装備を持つたものとして、相当大規模な重装備を施した部隊も、近代戰遂行能力に達しないものと政府は判断して、現行憲法のままで部隊を保持しておる。これは客観的に、或いは外国から見れば相当充実した実質上の軍隊なんだという考え方を持つて来るということも恐らくあり得ることだと思うのです。そういう場合に、日本も将来国際紛争の当事国にならんという保証は全然できないわけでありまして、宣戰布告をされるということが仮定の問題としてあり得ないというふうには言えないケースだと思うのでありまして、私はこの問題に対して明確なお答えがないというのは、実は少し政府の理論的な立場として満足できないような感じがするのです。  それともう一つの、戰力に返つてお尋ねしたいのですが、これは佐藤長官からお答えを頂いても結構です。政府がとつておる解釈は、繰返して申しますように、近代戰を遂行するに足る能力が憲法第九條第二項にいう戰力だと、こういうわけですが、第二項は勿論第一項を受けて設けられた規定であります。ところが第一項で放棄されておるというのは、決して戰争だけを放棄しておるというのではない、国権の発動たる戰争と武力による威嚇、それから武力の行使、三つの行為を挙げて放棄しておるわけであります。戰争以外の武力による威嚇或いは武力の行使、戰争に至らない武力の行使、こういう場合はそう大規模な部隊を動かすということでなくともあり得ることでありまして、そういう武力による威嚇或いは武力の行使に使い得る程度の実力部隊であれば、これは必ずしも近代戰遂行能力というふうに大きく規定さるべきものでなくして、小さいものでも可能なのではないか。だから近代戰遂行能力だけが第二項で放棄されておるというような解釈は、余りに解釈の仕方としては不自然なのではないか、こういう感じがするのですが、これに対するお答えを承わりたい。
  310. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 申すまでもございませんが、九條の第一項の今の御引用の所には、国際紛争の解決の手段としては武力を云々ということが挙つておるわけです。従いましてやはり国際紛争を武力によつて解決するということは禁止している、これは明瞭なことであります。そこで武力と戰力という結局問題になりますけれども、これは見方によつては戰力と武力との文字を使い分けしておるから、武力のほうが戰力よりも小さいものでもいいのだということに或いは見ることも可能かとも思います。併し私はいずれにせよ、武力という言葉は常識的な言葉であろうとは思いますけれども、本体は何かということになりますというと、結局この第二項で保持を禁止しておる、即ち戰力でございます。従いまして戰力の保持を禁止しておる、併しながら武力の保持を禁止するということは、甚だ形式論で恐縮でございますけれども、ないわけでございます。従いましてそういうところから総合いたしますと、やはり第一項の場合はむしろ戰力の全部或いは一部の具体的な現われを表わしたものであると見るべきじやないかというふうにに考えております。
  311. 三好始

    ○三好始君 私は政府の戰力の定義の仕方が非常に科学的な説明をしながら、実は憲法の規定を離れた抽象的な戰力の定義をやつておる。こんな感じがして仕方がない。憲法全体の精神からは一つもそういう解釈が生れる余地がない、こういうふうにに私は思うのです。仮に近代戰遂行能力という、実力の限界を非常に大きくここに置いた場合、日本の近辺の弱小国に対しては十分な脅威となり得るようなものが、政府の定義ではまだ近代戰に達していないのだということで、現行憲法のまま保持される、こういうことが起りはしないですか。
  312. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは結局数学的に表わし得る事柄ではありませんものですから、いろいろな御議論が出て来るわけであります。併しながらこの憲法に書いてあります戰力というものを今日の目で見る場合には、今日の日本の置かれておる環境の下において、今日の武器の発達というようなものを頭に入れて、そうして判断しなければならんということから申しまして、政府の今までお答え申上げてありますようなことが一応正しい定義付けになるのじやないかというふうに考えておるわけであります。
  313. 三好始

    ○三好始君 成るほど今日の第一流の武力を持つた国に比べれば、戰力の限界は非常に大きなものになるかもわかりませんが、現在伝えられておるアメリカから賞與される艦艇フリゲート艦十八隻、上陸用舟艇五十隻で、新聞に東洋一の艦隊の出現だという言葉を使つて表現しておる。これは実際問題として、憲法で日本がみずから放棄し禁止した戰力は、強大国に対して考えられるような場合は余り問題にならないのであります。弱小国に対する脅威となり得るような戰力がむしろ憲法で本当に問題になるのではないか、こういうことから言いますと、私は政府のとつておる非常に弾力性の強い、どこまで重装備したら戰力になるのか、限界がさつぱりわからんような解釈の余地のある立場というものは、憲法の精神を曲げるものではなかろうか、こんな感じがするのです。
  314. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 御尤もなようにも拜承できますけれども、今日の我々の置かれておる世界の情勢といいますか、そういう点から関連いたしまして、この戰力を先ほど触れましたように判断するということになりますと、これはちよつと卑怯なようなことに考えられますけれども、例えば東大の法学協会の先生方が著わしております「日本国憲法の註解」というのがございますけれども、その中にもやはり今日の世界が極く数えるほどの強国によつて割拠されておるというような今日の情勢においては、この憲法にいう戰力の基準も相当高度のものであろうということを学者も言つておるわけであります。そういう点が一つ考えられなければならんということと、もう一つの点は、国内の治安維持しなければならんということは、憲法の十三條でありましたか、国民幸福追求の権利は、国家が全力を振つて行使しなければならないという憲法上の要請があるわけであります。従いまして大きな内乱、暴動というようなものが起りましても、それを鎮圧するだけの力というものが国家として備える義務が一方憲法から流れて来ておるわけであります。従いましてその間を考え合せますと、結局只今の御質問に対してはおのずからそこに一定の基準というものが出て来るだろうというふうに私ども考えておるわけであります。
  315. 三好始

    ○三好始君 私は先ほど例に引かれた書物を十分に検討しておりませんが、「陸海空軍その他の戰力」といつた場合の、「その他の戰力」に該当するものとして例えば警察隊なるものが問題になる場合、純然たる国内治安維持のために設けられた警察隊が憲法九條にいう戰力なりや否やという判定の問題になつて来ますと、内乱を予想したりいろいろ新しい事態を予想して、殊に正規の軍備を持つておらん日本として、相当の国内治安確保のための充実した警察力を持たなければならない。戰前軍隊があつた当時の警察を頭に置いて考えるわけには行かないということは考えられるのですが、そういう外敵を予想しない、国内治安維持のための実力部隊の戰力なりや否やという判定の場合、その限界がかなり擴大されて来たということは認めるのです。併しながら外敵を予想することが明白な場合には、むしろ装備の程度、定員の程度とは無関係に憲法では禁止しておるものだと、こう考えるのが自然じやなかろうか、これは自然だという言葉は、大橋国務大臣が使つた言葉なんですが、自然じやなかろうかと思うのです。そこではつきりした形でお尋ねしたいのですが、仮に現在の警察予備隊と余り隔たりのない実力の部隊、或いはこれから多少充実はするけれども、到底政府が戰力という定義を下しておるというようなところまでは行かないという状態の部隊に、自由党と違つた立場で、自衛軍という名前を附ける、或いは陸軍、海軍という名前を附けるという場合に、実体は同じであつて、軍と名前が附いたらこれは憲法違反なんですか、或いは客観的に戰力に達しないものとして、憲法違反でないという立場をおとりになるのですか。
  316. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 結局この「その他の戰力」とございますからして、名称の如何を問わず、例えば義勇団と言つても義勇隊と言つても、その実質の力が近代戰争を有効適切に遂行し得るだけの力を持つておるということになれば、明らかにそれは憲法の禁止しておるところであるというふうに考えます。
  317. 三好始

    ○三好始君 只今私がお尋ねしましたのは、実質的に近代戰を遂行する力に達しない部隊に陸軍とか海軍とかという名称を持つた部隊が出現した場合に、これは憲法上どうなるかということをお尋ねしたのです。
  318. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 形式論理一点張りで申しますと、本当は一個中隊くらいにしか当らんものを陸軍と名附けましたところで話にならんものですから、私は名称に余りこだわることは如何かと思います。形式論から申しますと、併し大体陸軍と銘打ち、或いは空軍と銘打つようなものになりますれば、これはおのずから常識論としてはこれは近代戰争を遂行する能力あるものというようなものがそうなるのだろうと私は思います。併しこれは常識論でございまして、お得意の形式論で申しますならば、どんな小さなものでも陸軍ということになつたら惡いのかということになつて、名称だけに捉われてそれを判断するのと同じだろうかという気持を持つわけであります。
  319. 三好始

    ○三好始君 一個中隊という例の引き方は少しおかしいと思うのですが、十一万とか十八万とかというような実力部隊に陸軍という名称を附することは必ずしも不自然ではないと思うのです。そういう場合に、実体は政府が仮に警察予備隊なり保安隊なりという名称を附けて持つておるものと変らないけれども、軍という名前が附いたという場合に、実体は同じであつて名称が違う場合に、憲法上の立場は変つて来るか変らないかということなんです。
  320. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは只今申しましたように、実体は明らかに陸海空軍に匹敵するような戰力に違いない規格に達しておる。併しながら名前がたまたま先ほど引きましたように義勇隊とか何とかいうような名前になつておると言つたからといつて、名前がそれだからといつて憲法のお許しを得ておるのかというと、決してそうではありません。憲法に違反するというものにそれはなりましようということをはつきり申上げたところであります。
  321. 三好始

    ○三好始君 私はそれと逆な形を聞いておるのです。実質は近代戰争を遂行する能力に達しないものに軍という名前を附けた場合にどうなるかと聞いておるのです。
  322. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは先ほど触れました一個中隊をお笑いになりましたけれども、これは本当に理窟として考えますとむずかしいことで、竹槍のみを持つておるものに対して陸軍という名前を附けた場合も、これはいろいろ考えられるわけです。そこのところはどうも理窟で行きますと名前に拘泥するということは如何かという気がしてなりません。それはやはり実体を加味して考えて頂かなければならないと思います。
  323. 三好始

    ○三好始君 今のお答えは、結局たとえ軍と名前が附いても近代戰争を遂行する能力に達しない場合は憲法第九條第二項に言う戰力としては問題にならない、こういうように受取つたのですが、それで差支えないですか。
  324. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 形式論としてはそうなると思います。
  325. 三好始

    ○三好始君 そこまではつきりすると更に戰力の問題でお尋ねする必要もないと思いますから、一応法務総裁の時間の関係もありますから、今日はこれで打切ります。
  326. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も法務総裁は大変お疲れのようですから一点だけお尋ねしたいと思います。  と申しますのは、今までの共産革命をずつと繙いてみまして、私は鎌や鍬の革命ではないと思います。やはりそこには、暴力革命には必ず武力というものが附き物だと思います。そうしますとまあ今度警察予備隊が保安隊として名前は……、十一万が十八万に若干殖えて来るだろうと思いますが、今そのうちの一万というようなものが固まつて武力蜂起をしたというようなことが考えられると思います。例えばそれは二・二六におけるごとく、或いは五・一五におけるそういうことを考えられると思います。私は逆にそういう面も非常に危惧しておるものでございます。そういうものに対して法務総裁はどういうようなふうに考えておられますか。それに対してはどういうような万全な措置をとつておられるかという点をお伺いしたいと思います。
  327. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は誠に適切な御質問であると思います。これについては十分考慮を拂うべき必要があるのじやないか。要は通常の言葉で言えばいわゆるバツク・ボーンを入れる、これについては、私はその統率の任に当られるいわゆる統率者、現在も立派な人がやつておられる。林敬三君などという人は本当に心魂を傾けてやつておられる。そういう立派な統率者をしてこれらの指導の任に当らせることと、もう一つは、これは今度の保安隊で最も総理が重点を置くことを要望しておるのでありまするが、いわゆる教育、これに重点を置いて、しつかりした考え方を持たせなければいかんのじやないかと考えております。それにつきましては政府のほうでも相当考慮を拂つております。どうか各位におかせられましてもそれらの点について将来御意見がありましたら十分に私は申出て頂きたいと、こう考えております。
  328. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も実際飼犬に手を噛まれるといいますか、実際思わない所に思わない結果が出て来ると思います。それを私は一番心配する一人であります。そこで私は今までの警察予備隊の訓練とか、これは大橋国務総裁のほうが私は本当だと思いますけれども、情操教育というか、いわゆる教育といいましても、大体承わりますると、今まで訓練が主のように承わつておるわけです。いろいろな訓練と申しますか、一日の日課の時間などを承わりますと……、そうした面についてまあ警察予備隊のほうもあなたが知つておられるならば伺いたいと思いますが、警官についても同じようなことが言える、そういうようなことについて今実情としてやつておいでになるのか、その点が承わりたいと思います。
  329. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 実は私は現在の教育の仕方について自分でこれは関與しておりませんから、はつきり申上げますと実際のことは承わつておりません。併し総理初めこれは非常に心配しております。それで今申されましたように、ただ普通のいわゆる訓練だけではなくて、精神的な或いは情操教育、そういう面について十分な考慮を拂わなくちやいかん。差当りの問題として学校において立派な教官がほしい。教官と申しましても、普通の訓練ではなしに、いわゆる人間としての教育、これのあり方が必要だからその面において立派な指導者を物色しなければならぬということで折角考慮中であるようであります。近く保安庁が発足いたしますると、それについて最も重点を置いて、そうしてここでいわゆる幹部教育した者を、これを部隊で教育の任に当らせるということで、着々その準備に取りかかつておるような次第であります。
  330. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私はなぜそういうことを疑問に思うかと申しますと、久里浜におけるところの幹部養成の人たちに教科書の問題を申しましたら、それは向うの顧問将校のような人が来てやつておると、従つて使われておる教科書はすべて英語であるというようなもので、提出はできないという話だつた。そこで今あなたの御答弁によりますと、非常に情操教育というような点について力を注いでおられると言われますが、私は実情はそれとは違つて遥かに別なことを実はやつておるのじやないかと思います。と申しますことは、例えば兵器の取扱いであるとか、部隊の近代戰におけるところの指揮の仕方であるとか、そういうようなことに私はあると思うのです。これでは私は大変なことになつてしまうという点を非常に危惧しておるから、まあそういう点について非常に心配をして、私は、あなたも今申されたような意見でですね、一つ閣内において努力して頂きたいという点を要望申上げます。
  331. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 誠に御適切な、我々も実は心配しておるのです。そこでこれまでは主としてアメリカの指導者が来て、それの下に訓練をしておつた実情であつたそうであります。併し今後におきましては、絶対にこの日本人の手によつてしつかりした教育を施さなければならんということに相成りまして、恐らく近くそういう方面で全面的にあなたの今御説明になつたような方針で行くことと私は確信を持つております。十分今後注意をして行くように私は総理にもお話いたしまして、参考のために申上げます。誠にいい私は御注意だと承わります。
  332. 三好始

    ○三好始君 先ほど佐藤法制意見長官から最後に確認されました点を法務総裁から直接確認して頂いておくのが適当だろうと思いますが、法務総裁の御意見として承わりたいのですが、即ち形式論としてであるがという前提の上に立つておられましたが、軍と名附けられた実力部隊を持つておる、それが近代戰を遂行するに足る能力に達しない限りは憲法上の問題は起らない、こういう考え方法務総裁お聞きになつてつて、そのままお認めにねつたような印象を受けたのでありますが、そう了解して差支えありませんでしようか。
  333. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 形式論としてはまさにその通りであろうと私は考えております。
  334. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それではまだ若干質疑が残つておるかも知れませんが、大体の質疑はこの辺で終了したものと認めてよろしうございますか。
  335. 三好始

    ○三好始君 どういう意味でしよう。
  336. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 各案についてですね、大体如何でしようかということです。
  337. 三好始

    ○三好始君 保安庁については実は法文の問題、大橋国務大臣にお尋ねしなければいけない問題が相当残つておりますから、大橋国務大臣の出席せられた際に質疑をさして頂きたいと思います。保安庁以外は大体私のほうは差支えありません。
  338. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 丁度長官がおいでになりますから、法制局にちよつとお尋ねしておきます。よろしうございますか。
  339. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 議題は法制局に行つておりませんが、御自由に願います。
  340. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 法制局の中をですね、意見部と第一部、第二部と、こういうようにしたほうがよろしうございますか、或いは第一部、第二部、第三部としたほうがよろしうございますか、いずれがいいでしよう。
  341. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは法務庁から法務府になりますときに一応その点非常に研究したものでありまして、両論あつたんです。私のところで今高辻局長これは意見のほうを専門にやつてつたのです。それを意見専門というのを置かないで、皆平等に法律の立案審査に当る局でおのおのその意見のほうの、解釈うのほの仕事もやつたらどうか、どちらがいいだろうとさんざん議論しました。私はそのときの考えとしては、どうも立案審査に当つた者が解釈に当りますと、自分で立案審査をしておる法律の多少弱点に当るような質問が出たときの態度が一体公平に行くものだろうか、どうだろうかということが一つ念頭にありました。意見部というものは独立さしたほうがいいだろうということで、今そういうふうになつておりますが、そこで今度改革当りましても、従来の状況から見て正しかつたのではないかという気持を持つております  それからもう一つは、国会のほうへ、まあ国会が御承知通り殆んど一年中開かれております。立案審査のほうの仕事は、法案が遅れる遅れるというお叱りはありますけれども、実は国会が始まりましても、この立案審査の解釈というものは、やはりお台所のほうに残つてやらなければならん仕事がたくさんあるのです。従いまして自分の立案審査した案件についての御質疑がありますければ、その局長は役所の業務を棄てこちらに伺いますけれども只今の戰力問題であるとか、その他の憲法問題等につきましては、そういう人をごこに引つこぬいて、政府委員としてお答えさせる余裕は実はないのでございます。そういうときは意見局長という者がおりますと、意見局長は立案審査のほうはやつておりませんが、普段そういうことばかりやつておりますから、その点のやり繰りはつく、ですからむしろ法律の上に意見部という名前を出したほうがいいじやないか、これは一部、二部、三部にしておいて頂いて事務分掌をきめることは勿論当然でございますけれども、そういうようなことは結果においては同じでありますけれども、そういう形式からむしろはつきりしたほうがいいということで、意見部というものを挙げたわけであります。
  342. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 それからもう一つ伺いたいのですが、昔も次長という者があつたのですが、ここでは成るべく次長は認めないで簡素にやつて行こうということですけれども、法制局の今後のあり方、その他を見ますと、次長が必要なのかどうか、一つ腹蔵のないところの御意見を伺います。
  343. 楠見義男

    ○楠見義男君 それに関連して、栗栖さんは昔も次長があつたんだけれどもというのですが、そうでなしに、私結論を聞きたいのです。昔は次長がなかつたんだからという点を註釈を加えまして御返答を頂きたい。
  344. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 楠見さん昔を御承知だからどうもお答えがしにくいのでありますが、これは次長は昔あつてなくなつたのではありませんので、昔なくてあとにできたわけです。ここにお考え願うところがあると思うのであります。この今私は、実は法務総裁が法制局長官だと考えております。私は次長考えてやつておるわけであります。法制意見長官などではだめだということで、是非法務総裁に出て来いとほうぼうで言われますけれども、普通の局長が出て参りますより私が出て参つたほうが先ず通りがいいように多年の経験で私考えております。そういう点がございまして、要するに今までの形式から申しますと、そうして頂いたほうが有難いのではないかというふうなことであります。
  345. 楠見義男

    ○楠見義男君 という意味はどういう意味ですか、法制局長は依然として法制局長として今度できるわけですね。だから仮に佐藤さんなら佐藤さんが法制局長としてお残りになる場合は、やはり法制局長としての権限は依然として認めるわけです。ただ次長という者が要らないのじやないかということが問題点なんです。昔のことですと、まあえらい方が、大体三長官の一人として法制局長がおられて、その下には次長という者がなくて、部長制度が運営されておつたというその昔の状態に戻るんだから、一方では法律が非常に多い、こういう最近の何はあるのですが、併しこれはだんだん議員立法が多くなつて来る、従つてそのために国会の両院における法制局というものが充実しておる。それから占領から独立への切換えで経過的な法律が多いけれども、その法律も漸次やはり昔の平常の状態に戻るだろうし、又方法としては議員立法が多くなつて来るということになると、大体昔と同じような次長のない状態に戻つても大した支障はないじやないか、これはあればあるに越したことはないけれども、この委員会としてはできるだけ次長というようなものは今回の機構改革においては成るべく認めたくないと、こういう趣旨ですから、その点をもう少し明らかにして頂きたい。
  346. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 御尤もなような点も伺われますけれども、結局今のお言葉にもありましたように、国会関係という方面の仕事は、これは御承知の、私は法制局に初めて入りました、昭和七年でありましたか、そのときはたしか三十七件ぐらいの法律しかなかつた。非常に昔は国会に御厄介になることが少なかつた。最近における政府案の激増は御承知通りで申上げるまでもございません。そこで先ほど来触れましたように、政府委員としての仕事ということを相当これは頭に置きまして人員考えなければならんということが一つあるわけでございます。議員立法が勿論殖えて行くことは望ましいことでもございますし、又その方向を辿つておるわけでありますけれども、御承知のように、行政機構改革に関連しても問題になりましたように、法律が一体多過ぎるじやないかというような面で、むしろ今まで積り積つた法律の塵を整理して行かながければならん仕事は大変な仕事だと私は考えております。殊に占領中にできた法律は翻訳で読めやしないじやないかというお叱りもしよつちゆう受けて、心苦しく思つてつた、そういう形の面から直さなければならん面が相当ありはしないかということから考えますれば、国会答弁という我々の仕事は相当に負担が多いというように考えるわけでございます。
  347. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 あなたが次長のおつもりでやつていらつしやるのですね。それは謙遜されたお言葉ですけれども、それは併し法務総裁のほうは法律がわからないから、むしろ次長がおいでになる必要があるでしようけれども、あなたのようなわかつた長官があり、その次におなりになる人でも、その次の人でもしつかりした人がおなりになればいいのです。ちよつと場合が逆なことじやないかというような気がするのですが、ただ問題は、その理由よりも、仕事の量ということを考えてみて、長官の下に三部長があつて、それだけで足りないのかどうかという問題だけだろうと思います。ただ昔と比較するというと大分仕事の量が殖えておる。殊に戰争の後は大変殖えましたが、これからは今までのように法案が多くはなかろうと思うのでございます。併し又この後殖えて行くかもわかりません。将来だんだん殖えて行くという場合があるということは、それはあとのことでわからない。現在の状態はこうだ、私はむしろ落着いて、減つて行くんじやないかというような見通しをつけておるわけですが、そうすればこの際は次長はなくても間に合うだろう、しつかりした三部長をおつけになりますれば大体、全体がやはりできるだけ人を節約して行こうという時代でもありますので、それでこういう次長は抜かしたらどうだろう、法制局だけの問題でなくして、全体を通じてそんな意見がこの間に出ておるわけなんです。
  348. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 先ほど触れました昭和七年における三十七の法案をやつた当時におきましても、法律、勅令でございます。当時の法律、勅令の立案審査のために法制局に当時三部あつて、金森さんとか樋貝さんとかというのは部長で、ああいうえらい人が三人おつて、三つの部でやつてつた。あのときですらも、その点から申しますと、法制意見の仕事、法律の解釈のほうの仕事というのは当時ありませんで、法律はつきり出て参りましたのが、法務庁ができましてからそれが殖えたわけです。その仕事が殖えた。従いましてそれを差引いて、あと残り二部というものが、昔三十七ぐらいの法律案を三部でやつた、その三部が今度二部になつたというふうにお考えつて結構なんです。従いましてその点から申しますと、仮に次長の問題を別にして考えますと、四部頂いて、とにかく長官のほかに責任者を四人頂きたいということが実は根本なんです。その仕事の分量等から申しまして、そこで四人の責任者を頂きたいのですが、やはり先ほど述べましたようなことから、長官の代理者という者を相当やはり名前を別にしたものにして置くことが、今までの経験から言つて適当であろうということで、実はそのうちの四人必要な中の一人を次長にして頂いて、そうしてその次長にむしろ局長の一人分の仕事を併せてやつてもらいたい、こういうような考え方から実は出ておるのでございまして、これは仕事の分量のほうから申しまして、是非さようなことにお願いしないことには職責が盡せないというふうに考えております。
  349. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 先ほど憲法の第九條の問題でいろいろ論議されたわけですがね、そうでなくて、ひつくるめて、日本憲無の制定当時、今の解釈じやない、制定当時というものは、例えば外敵が侵入して来ても、それに対して戰うというような、そうした私はすべての交戰権というものを私は否定した建前においてあの当時やはり作られたものだ、あの当時そういうように解釈しておるのです。これはどうでございましよう。
  350. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) その点は私当時ずつと議会に金森さんのお供をしてすべての質疑応答をお聞きしておるのでございますけれども、この第一項は、今の侵略戰争を禁止しておる。従つて第一項からは自衛権というものは決して放棄されておらない。従つて自衛戰争もできるような形になつておる。ところが二項に参りまして、今の戰力及び交戰権を否定しておりますからして、結局自衛権はあつても自衛の戰争の形ができない。自衛戰争ができないというような筋で、事実上自衛戰争ができないというような筋で当時お答えしておつたわけです。従いまして今の外敵侵入した場合について云々ということはおつしやる通り出ておりません。その具体的な御質疑も出ておりませんけれども、正面の説明としてはそういう筋の御説明を申上げておられるわけであります。
  351. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 実は私も制定当時はそういう解釈だつた。併しいろいろなものが変つて来るということも私は認めますけれども、併しこのことが変つて来るということは、私はやはり憲法の基本的なものが変つて来たという、例えば改造の今月号に憲法の変質というような、変貌ではなくて、変質というような言葉で表現されておりましたが、実は私はやはり変質したのだというふうの見方のほうが私は正しいと思う。そういう、これは私はほかのことならいざ知らずですよ。とにかく憲法でいろいろなところが変つたのですけれども、これは私は一番大きなやはり変り方だと思う。こういうものが時勢が変つたからと言つて、あえて時勢に便乗したようなことをやつて行くということは私はやはり面白くない。若しそうだとするならば、私は正々堂々として憲法の改正なら改正という方向に私は行くべきだと思う。それを何か言葉の上においてかれこれとしてごまかして行くということですね、ごまかすというと表現が惡いかも知れませんけれども、やはり私はごまかしだと思うのですよ。ですから私はやはり今の憲法はそういう建前から言つて、若し憲法を改正して云々というなら、これは私は議論は別だと思う。そうでない限りにおいてはやはりこの問題については、どうしても私は自衛のための交戰権というものは如何なる場合でも私は否定されたものだと思う。それを今度のように、外敵の侵入と戰うという使命が保安隊にはあるのだということをやつて来るというのは、私は何と言うのですか、少し時局便乗の解釈のように実は思うのです。これは私の意見なんですけれども、これをあなたと討論をどうこうというわけじやないけれども
  352. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 結局いずれの場合においても戰力は否定しておるし、自衛のためといえども九條の二項は戰力を否定し、且つ交戰権を否定しておるということだけは万々御認識を頂きたいと思います。それは我々確信しております。それからもう一つ裏から申しますと、当時の憲法の制定の御審議の際に、では国内で非常な大きな内乱とか暴動が起つた場合にどうするのだという質問が二度ばかり出ておる。これはもう警察力で抑えて行くよりほかありませんと言つて、当時から内乱、暴動に対する措置はどうするか、警察力で抑えるということをお答えしておるのでありますから、その趣旨からこの法案は私は外れてはいないというふうに考えております。
  353. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それなら私は了承しました。それからもう一点お尋ねしたいのは、建設省設置法の一部を改正する法律の中に実は測量審議会というものがございまして、私は法到的な意見だけお聞きしたいのです。実はそれが昭和二十七年の三月三十一日で廃止ということになつておるのです。それをただ二十七年を二十八年に改める、こういうことだけでやつてつて、私は法律の手続上こういうことがいいか惡いかということについての一つ意見を承わりたいと思うのです。
  354. 林修三

    政府委員(林修三君) ちよつと今私ここに條文を持つておりませんので、多少うろ覚えでございますが、建設省設置法は私は見ておりますので、大体のことは覚えておりますが、おつしやる通り測量審議会につきまして建設省設置法には昭和二十七年三月三十一日まで置くというようなことになつておりましたのを、今度は二十八年三月三十一日までに延ばしております。これは勿論期限が切れて一応なくなつたものを延ばすということは、おつしやる通り確かにおかしいわけでございますが、ただお考え願えませんことにはいけませんと思いますことは、その測量審議会というものは実は測量法という別の法律がございまして、これで測量審議会ということをはつきり定めておるわけであります。建設省設置法のほうは一応何と申しますか、俗な言葉で展覧会のようにそれを列べてあるほうの実は條文でございます。それで実は法律の問題までなるわけでございますが、当然測量審議会を二十七年の三月三十一日まで置くという趣旨を規定いたしました当時において測量法のほうも当然に直すべきであつたと思うのですが、どうもそのほうの改正がその当時行われませんでございました。その関係でやはり元の測量審議会は当然残つておると見ざるを得ないわけでございます。今度いろいろの事情で更に一年間この測量審議会を置くということになりましたのですが、その機会に今度はそういう点をはつきりさせまして、建設省設置法の附則で測量法も改正いたしまして、来年からは測量審議会も廃止するということをはつきりいたしました。そういう手当をいたしたわけでございまして、そういう意味で御了承願いたいと思います。
  355. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私はあとに問題が残らなければいいと思います。併しこれよりかも何か手続上あとで、こういうことが前にあつたのだからこうだということになつてしまつては大変だから、何かいい方法がないか。若しこれを直そうとしましていい方法があれば何かやつて頂きたい。併し何ともしようがないというならこれよりほかしようがない。その辺どんなものでしよう。
  356. 林修三

    政府委員(林修三君) それは建設省設置法の二十七年三月三十一日を二十八年三月三十一日に直しまして、一旦なくなりましたものをそこだけ復活したというだけで、測量法のほうで期限が置いてなかつた従つて今年の三月三十一日を過ぎましても当然には廃止にならなかつた。その点多少測量法とそれを引用いたしました建設省設置法ちよつと矛盾があつたかと思いますが、もともとどちらかといえば測量法のほうで審議会は残つておる。今度その点を合せまして、審議会を来年の三月三十一日に測量法のほうでそれを引つ張つた建設省設置法のほうではここではつきり打切ることといたしましたので、技術的には現行の法律を元にいたしまして、立法技術的にはこれ以外には方法がないのではないかと考えております。
  357. 楠見義男

    ○楠見義男君 さつき質疑を打切るという御発言がありましたが、私はそれについてあえて反対というのではなしに、むしろ賛成のほうなんですが、ただいろいろ整理をして行く場合に、日附の点で一分か二分くらいで簡單質疑をしたいような場合も出て来ると思いますが……。
  358. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 楠見君にお答え申上げますが、さつき申しましたのは余り簡單明瞭過ぎたかも知れません。ですが、もう時もだんだん迫つて参りましたから、できるだけ早く各案について審査を進めたいと思います。それでその場合にはできるだけそれぞれ結論を得て行きたいと思います。その場合に、これはかねて一番初めからお話合いがあつたと思いまするが、その際必要な点について若干の質疑をするということをやりますというお申合せであつたと思いまするから、私は少し簡單過ぎたのでありますが、そういう意味を附けまして取扱いたいと思います。速記をとめて下さい。    〔速記中止
  359. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 速記を始めて。それでは委員会はこれで散会いたします。    午後九時十九分散会