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1952-06-18 第13回国会 参議院 内閣委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十八日(水曜日)    午前十一時三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     河井 彌八君    理事            鈴木 直人君            中川 幸平君            成瀬 幡治君    委員            草葉 隆圓君            楠瀬 常猪君            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            上條 愛一君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    郵 政 大 臣    電気通信大臣  佐藤 榮作君    建 設 大 臣 野田 卯一君    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    内閣官房長官 剱木 亨弘君    総理府事務官    (内閣総理大臣    官房審議室事務    代理)     増子 正宏君    警察予備隊本部    長官      増原 恵吉君    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    長官官房文書課    長       麻生  茂君    警察予備隊本部    人事局長長官    官房長     加藤 陽三君    警察予備隊本部    人事局人事課長 間狩 信義君    警察予備隊本部    経理局長    窪谷 直光君    電波監理長官  長谷 慎一君    調達庁長官   根道 広吉君    調達庁長官官房    長       辻村 義知君    調達庁管理部長 長岡 伊八君    行政管理政務次    官       山口六郎次君    行政管理庁次長 大野木克彦君    行政管理庁管理    部長      中川  融君    行政管理庁監察    部長      柳下 昌男君    外務政務次官  石原幹市郎君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    海上保安庁長官 柳沢 米吉君    海上保安庁次長 三田 一也君    海上保安庁総務    部長      西田 豊彦君    電気通信大臣官    房審議室長   大泉 周蔵君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○農林省設置法等の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○郵政省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○郵政省設置法の一部改正に伴う関係  法令の整理に関する法律案内閣提  出・衆議院送付) ○連合委員会に関する件 ○調達庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○保安庁法案内閣提出衆議院送  付) ○海上公安局法案内閣提出衆議院  送付) ○南方連絡事務局設置法案内閣提出  衆議院送付)   —————————————
  2. 中川幸平

    理事中川幸平君) それでは只今から内閣委員会を開会いたします。農林省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引続いて質疑を続行いたしたいと思います。
  3. 三好始

    三好始君 農林省外局であつた林野庁食糧庁内局伴つて実際上仕事そのものには変化がないようでありますけれども、事務運営して行く上に、外局内局とではいろいろな変化が起つて来るだろうと思うのです。それで国家行政組織法上の問題としてその点をちよつとお尋ねしたいのでありますが、国家行政組織法上、外局内局はどう違うかという点を調べてみますというと、先ず第十条でありますが、国家行政組織法第十条によりますと、「各大臣、各委員会委員長及び各庁の長官は、その機関事務を統括し、職員服務について、これを統督する。」この規定から言いますというと、外局の庁の長官内局と違いまして、国家行政組織法上、或る程度独立性を以てその機関事務を統括し、職員服務についてそれを統督することになつておるのでありますが、内局化したために、厖大な人員を擁しておる外局職員服務についての統督などについて不便を来さないかどうか、この点をちよつとお伺いいたしたいと思います。
  4. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) お話国家行政組織法の十条によりまして、外局長官が或る程度独立的に行動できるということになつております。従いましてお話のように例えば営林局にしますれば、各営林局仕事、即ち或る程度事業的な仕事をやりますので、臨機迅速にやるという必要がありまして、そういつたことを簡単に片付けるために、或る程度普通の局長ならば、一々人事などにつきましても次官大臣の決裁を仰ぐ、或る程度重要人事につきましては、勿論本省仕事相当密接な関係がありますから了解を得るということはありますが、権限上は外局長官として相当巾の広い権限を与えておるのであります。そういう点は内局になりますと或る程度事務が複雑になるように見える部分も出て来るかも知れません。この点は止むを得ないのじやないかと、こういうふうに考えております。
  5. 三好始

    三好始君 次に国家行政組織法上出て来ている外局の長の権限の問題は、第十二条に一つ出ております。国家行政組織り法第十二条第二項によりますと、「各外局の長は、その機関所掌事務について、それぞれ主任の各大臣に対し、案をそなえて、前項の命令を発することを求めることができる。」、これは規定そのものを見ましても、各大臣に案を備えて命令を発することを求めることができるという程度でありますから、内局の場合も或いは実際上相違がないような気もするのですが、これは現実運営上は多少違つたものがあるのですか、或いは外局の場合も、内局の場合も現状において余り相違がないのでしようか、その点ちよつと現在の状況を承わりたい。
  6. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 外局の長としましては法律で一定の定めがある場合には特別の命令を発することができるとか或いは公示を必要とする事項については告示を発することができる、そういうふうな特別な権限があるのであります。内局の長になりますれば、これは皆大臣名でやるということになるだろうと思います。その外局の長が特別の告示なら告示を出すというような場合は、例えば営林局仕事について見ますれば、どこの部分林野の払い下げをするとかというようなものを一々大臣名告示する必要もないから、外局の長がやるというような必要から出て来ていると思います。従いまして……。
  7. 三好始

    三好始君 十二条のは実は省令なんです。省令の問題なんです。
  8. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 二項の問題……、やはりそういうふうな具体的な例になると、どういうふうになりますか、省令では余りしばしば用いておりませんが、告示などの場合にはそういうことがしばしばあるのであります。権限どしましてはそういうふうに独立権限がありますので、相当普通の内局とは違う行動ができることになつているのであります。
  9. 三好始

    三好始君 国家行政組織法第十二条の問題は実は各大臣省令についての権限規定なんでありますが、各大臣省令を出すという権限を行使する場合、第二項によりますと各外局の長は主任大臣に対して案を備えて省令を発することを求めることができる、まあこういう規定だと思うのであります。ところが簡単に考えますと内局の長にいたしましても、    〔理事中川幸平君退席、委員長着席〕 案を備えて各大臣命令を発することを求めることができるという点においては同じではなかろうか、何のために各外局の長がこういう命令を発することを求めることができるという点を規定したのか、実際上多少の相違現実にあるのかないのか、この点をちよつと伺つておきたいと思います。
  10. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私一応の見解を述べたいのでありますが、外局というものは、本省と或る程度独立性を持つているものであります。従つて大臣指揮監督ということは直接できないことになつております。長官任命するとかいうことはできますけれども、直接仕事指揮監督するということははつきり出ておらないわけであります。そこで仮に外局仕事について省令を発するというような場合には、大臣がみずから勝手に省令を出せないわけであります。これは外局のほうからそういう省令を出して下さいということを言つて来なければ大臣としては出せない、内局であれば大臣が出せと言えば、大臣権限でありますから出せるのであります。こういうところにも相違があるというふうに考えます。
  11. 三好始

    三好始君 十二条の点は今の野田長官の御説明通りだとするとはつきりわかりました。  次の十三条にやはり外局内局の長の相違が出て来るのでありますが、十三条によりますと、「各外局の長は、別に法律で定めるところにより、政令及び前条第一項に規定する命令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。」、こういうことになつておりますが、この十三条を根拠にして農林省外局である林野庁或いは食糧庁が現在までに発した規則或いは特別の命令という例があるのかないのか、そのことをちよつと承わりたいのであります。
  12. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 現在までのところは十三条の規定に基く規則を出した例はありませんです。
  13. 三好始

    三好始君 国家行政組織法に出て来ている点で十四条に関係する部分でありますが、十四条によりますと、「各大臣及び各外局の長は、その機関所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。」、こういう規定が第一項に出ているのでありますが、これを根拠として外局の長が告示を発するということはこれは従来相当あつたと認めていいのですか。
  14. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) これも現在までのところはやつておりません。
  15. 三好始

    三好始君 そういたしますと、第十三条、第十四条に関係する部分については、一応一般的に外局の長の権限として予想される事項であつたけれども、現実には農林省食糧庁林野庁等についてはこういう国家行政組織法上の規定が実行される必要がなかつたと、こういうことなんですか。
  16. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 告示は出したことはありませんが、訓令とか通達という恰好ではしばしば出しております。
  17. 三好始

    三好始君 国家行政組織法上の外局の長と内局の長でどういうふうに違うかという問題が今回の機構改革の一つの問題と思つてお尋ねしたわけでありますが、大体わかりました。
  18. 竹下豐次

    竹下豐次君 関連しまして、先ほどの野田長官の御説明のうちに、農林大臣農林省関係外局の長に対しては指揮命令権はないという御説明でありましたが、それはどの条文でそういうことになるのでしようか。任命するだけであつて指揮命令権はないという御説明であつたのですが、その点がちよつと了解しかねるのですが。
  19. 中川融

    政府委員中川融君) 大臣只今指揮命令権が或いはないようなことを言われたか、とすれば、それは従前旧制度だおきます外局におきましては、各官制におきましてその外局の長はその主任大臣指揮監督の下にということが必ず書いてあるのが通例であつたのであります。併し現在の国家行政組織法におきましては外局ということをいろいろ権限規定いたしました条文の中に、大臣指揮監督を受けるということを明文を以て書いていないのであります。それから現実の各外局設置法を見ましても、主任大臣指揮監督を受けるということを書いた例は非常に少い。これが果して大臣の実質的な指揮監督を受けることがないという趣旨であるかどうかは、これは法律解釈上いろいろ問題があると思いますが、この法文書き方等を見ますと、旧制度国家行政組織法におきます外局制度との間に、法文書き方に差違が見えると思われるのであります。併し勿論各大臣は、主任大臣でありますから、その担当事務については主任大臣としての権限は持つておりますから、その意味において勿論外局事務についての監督というようなことはこれは当然やり得ると思いますけれども、法文の体裁上はそこに違いが出ておるということを申上げたような次第でございます。
  20. 竹下豐次

    竹下豐次君 私は今までこういうふうに理解しておつたのです。任命はもとよりされます。それから指揮監督権限も持つておられるんだ、内局局長に比べてただ任される仕事の範囲が広いのだということであつて、今日までの実際の運営からしても、大事な問題は長官次官にも或る程度相談をされ、大臣にはもとより御相談になつて、その許しを得て仕事を進めて行かれるのだ、こういうふうに私は理解しておつたのでありますが、先ほどの野田さんの御説明では全く独立して、長官は何でもやれるんだ、やつても差支えないんだというふうに聞こえましたので、ちよつとお伺いしたのであります。
  21. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 今の点は中川君の補追説明でおわかりになつたと思いますが、内局に対する指揮監督というような程度指揮監督ではない。勿論包括的な概括的なものはありますけれども、いろいろな点を検討いたしまして、内局に対する指揮監督というような監督ではない……。
  22. 竹下豐次

    竹下豐次君 結局程度が違うというふうに理解して置いてよろしうございますか。
  23. 中川融

    政府委員中川融君) 主任大臣外局の長に対します指揮と申しますか、どの程度のことができるかということが国家行政組織法では明示されて、はつきりは指揮監督の内容としては書いてございませんが、今三好委員からいろいろ御指摘になりましたように、外局権限として規定してあるどころが若干条文に出ております。又主任大臣権限として書いてあるところが若干国家行政組織法に出ておるのであります。それを総合いたして見ますと、主任大臣外局の長に対してなし得ることということが、例えば先ほど出ました省令を作る場合に外局の長が主任大臣に申出なければいけない。それから任命権主任大臣にある。それから法律政令を作る場合は、これは必ず各大臣権限になつております。起案と申しますか、それを内閣総理大臣に申出て閣議に仰ぐことが主任大臣権限になつておりますので、外局事務について若しも政令とか法律を要する場合には、これは当然主任大臣を通じなければなりません。さようなことは主任大臣外局の長に対して当然なし得るということとして規定してあるのでありますが、それ以外のことにつきましてはむしろ外局の長は独立していろいろな規則を制定したり、自分の部下を指揮監督したり事務を統轄したりするというような規定があるのでありますから、どうも外局の長は相当独立権限を持つているというふうに解釈せざるを得ないと思うのであります。併しながら個々の実体法につきましては外局所掌事務につきましても主任大臣がそれぞれ認可をするとか許可をするとかいうことを規定したのが相当ございますので、実体法におきましては又おのずから主任大臣権限がそれぞれ規定されておりますが、行政組織として見ますと、只今国家行政組織法では内局等とは余ほど違つた独立的な権限を持つたものである、こういうふうに考えられるのであります。
  24. 竹下豐次

    竹下豐次君 この食糧庁なり林野庁内局に引直すという案につきまして、部内の人たち或いは部外の人などでも反対の意向を持つている人が相当に多いのであります、というのは今まで長官が自由にやつてつた仕事内局局長になつてしまうというと非常に縮小される。それから又延いて今まで通りの活溌なる活動ができなくなりやしないかという心配をしているのでありますが、そこで内局局長に引直されるにしても、従来長官がなし得た程度のことをなし得る途があるならばただ名前が違うだけのことです。ところがほかの局長との振合いでそこにどの局長に対しては権限を広く与える、どの局長に対しては狭くしなければならないというような形をとるのもちよつと妙なことじやないか、こういう疑問が起るのですが、何かそういう局長によつて違うというような例などはありませんですか。
  25. 中川融

    政府委員中川融君) 今の御質問の点でありますが、内局の長はどの程度権限を持つであろうかということは、これは法律その他の規定のしよう、或いは内部委任仕方等によりまして、相当権限は持たし得るのじやないか、こういうように考えます。現に国家公務員法によりますれば任命権本省におきましては大臣が持つているのが原則でございますが、高級の職員に対しては任命権委任できるという規定がございます。従つて人事任命権内局の長に委任しようと思えば委任できる途が開かれております。それから例えば今回提案いたしております行政管理庁設置法の一部を改正する法律案におきましては統計基準部長というものは内局でございますが、これの長に統計基準統計報告等の調整の事務につきましては大巾に権限委任することができる規定法律上書いてあります。若しもそのような例が今後殖えますれば相当内局の長にも権限法律上も委任できるということになろうと思います。又事実問題といたしまして、内部的に権限委任するということは本省におきましても現在相当広く行われておるところでございますが、内部委任でありますればこれは現在でも法律を要せずして相当委任ができるというようになつております。又反対外局でありましても必ずしもこの国家行政組織法規定してありますような本来の形でなくて、内局と同じような実は運営をしておるところも相当あるのでございます。例えば今問題になりましたように林野庁等におきましてその自分権限としての規則を制定しないというようなことが丁度それに当るのでありますが、内局外局ということによりまして権限委任等においてそんなに支障を来すというようなことはないのではないか、こういうように考えております。
  26. 竹下豐次

    竹下豐次君 外局長官の持つておられる権限を或る程度に縮小したり、現在内局局長の持つておる権限を拡大したりすることはできる。それからちよつとはつきりしなかつたのは同じ内局局長で甲の局長委任権限が少いけれども、乙の局長権限を広くするというようなことができますか、どうなんですか。理窟としてはできるのだろうと思いますが、実際の運用として……。
  27. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) それは今度の法律に出ておるものといたしましては行政管理庁の中で部があります。これは部長ですけれども、統計基準部長というものは法律におきましても相当委任権限明定しまして、というのは仕事の性質によりまして相当権限を委譲さして、そうしてやらしたほうがいいという場合があり得るわけであります。そういう場合には法律行政管理庁の場合は明定をいたそうとしておるわけでありますが、こうやる場合、それから事実上、中に内部規定としてやる場合、こういう場合を多少生じ得ると思います。
  28. 竹下豐次

    竹下豐次君 それは生じ得るとすれば、今の林野庁だけの問題に制限してお尋ねしたいと思いますが、林野庁長官の現在持つておる仕事を、やはり従来通り内局局長としてもやり得るようなふうにしてやつてもいいというようなお考えでもありますか。
  29. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) それは内部規定によつて十分御趣旨のようなことが実現できると思います。
  30. 竹下豐次

    竹下豐次君 まあ理論としてはできるわけですが、おやりになる御意思がありますかどうですか、その点を……。
  31. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) これは私は農林大臣からお答えするのがいいと思いますが、国務大臣としては行政の最も能率的な円滑な運用を期すべき責任があると思うのです。従つてこの林野局長に今度なるわけですけれども、局長でできるものを強いて上まで持つて行くというようなやり方をするには及ばないのじやないか、当然事務能率を上げるということからそういうことが行われるべきたと、こう考えております。
  32. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 この長野前橋営林局移転に伴う予算的措置という資料が頂いてあるのですが、それぞれ約一億五千万円程度の経費を要するものと見込まれると、こうありますが、土地購入費とか、或いは庁舎等新築、新営費とか、こういうもうちよつと内訳はわからんでしようか。
  33. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 大体の内訳を申上げます。長野のやつは庁舎関係が約一億円余り、それから宿舎移転関係が、移転その他新築もあります。四千万円余り。それから敷地購入、これはまだはつきりしておりませんが、若し地元のほうで特別な考慮を払つて頂くとすればもつと減るかも知れませんけれども、一応考えておるのは九百万円程度、それから調度運搬等が三百万円、こういうふうになつております。  それから前橋から福島に行く関係でありますが、これは庁舎関係が約七千万円足らずです。それから宿舎関係が七千万円余り、それから敷地がこれも長野と同様であります。はつきりまだいたしませんが八百万円程度、それか調度その他の運搬が五百万円程度、こういうふうなことになつております。
  34. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 今のことですが、同じことですが、今の点はそうするとこのガリ版で貰つたのは違いますね。
  35. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 概数で出しておりますから……。
  36. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 概数であつても、あなた両方で大体三億も要るのに……。
  37. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 両方とも一億五千万円。
  38. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 ええそうですけれどもね、概数ですか。
  39. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) それでも一億五千ちよつと……、長野のほうがちよつと余計になると思いますが……。
  40. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 おかしな話だな。予算のほうはしつかりしておられないと……。私は今度の行政機構のうちで、この或る省を或る官庁をやめる、縮小するという問題は、これはいろいろわかる点があります。ところが移転というのは、結局はいろいろ筋を通される人も横這いであつて、すでにある設備は使わないで、新たに設備を設けられるということになつて、この国庫の予算、殊に現状において国民に非常な負担を課せられるような場合において、これは別に考えてみなきやいかんのじやないか、こう思うのです。で、推計によつてこうしようというようなお話は、私は理論としてはわかるのですけれども、僅かのところをこう設備がすでにあつて、それを三億ですね、三億ちよつと超えるかも知れませんが、その予算を二十億の予備費のうちでお使いになるということは、私は財政上どうか、仮に経済調査庁あたりがこういう点を調査した場合に、いわゆるこの際どうしても急ぐかどうかという問題においては、私は然らば、財政のほうの大切な点を言わなくちやならんじやないか。ただ一般論としてこういう横這い移転する問題は今度は余りつておらんのです。これがあるから、私両方土地に縁故、縁りがあるというわけじやありませんけれども、それだけに公平に申上げるのでありますが、その間にはまだ人の意見、家族の意見、学校とかその他の点がいろいろと国として負担以外の金も又取らにやならんと思います。こういう点において我々はこの問題はどうかと再考をお願いしなければいかんのじやないか、こういうふうに考える次第であります。
  41. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 余り金額の推計が荒いと、こういう……。
  42. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 いや、推計が荒いということはもうやめます。
  43. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ことが一点でありますが、これは実は設計とか何とかいうのは、この法律を出すまでにきまつておりません。  それから今の土地の問題も、地元相当負担してくれるという問題もありますので、はつきりいたしておりません。従いましてこの設置法の附則で、営林局の分だけは七月一日までにはとてもできない。来年の三月までにやるのだというので、大体予備費から出すということの了解が大蔵省のほうから出まして、今出ております。これの具体的な奴はもつと設計等はつきりしまして、やるということにしたいと思います。  それから今の局の管轄の問題でありますが、これは営林局移転それ自体が、地元に、去られる地元と、行く地元といろいろ利害関係が錯綜するのはお話通りであります。この前申上げましたように、御料林が国有林に編入された早々の際、或いは又終戦直後のいろいろな設備の不自由な時代に、無理して置いておつたところを、だんだん落着いて来ましたので適当のところに持つて行く、殊に福島などは奥只見の奥地林の開発をするというような問題が電源開発に絡んで出て来ておりますが、移転をするとこういうふうなものでありますので、これは縦横から検討しまして、農林省としましてはどうしてもやらなければいけない、こういうふうに考えております。
  44. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 元来野田大臣その他各大臣とも、今ここに数千言、数万言を費して言つていうつしやることは行政の簡素化、結局定員の減、費用を減ずる、国庫の負担を軽くし、日本の国民の負担も軽くして、経済を建てなおす点にあるのだ、こういうことでありまして、それから言いましても、こういうものは別個な問題で、そうしてこれを考えなければいかん、私はこれを理論的に或る時期においておやりになろうということについては又十分検討をしたいと思うのでありますが、この際国庫の負担を軽くしようというような目標の下に行政機構事務の簡素化、これは今年度は軽くならなくても今後においては軽くする、次年度以降において軽くする、国民の負担を少うし、経済の建直しその他に資するという点からいつておるのでありますが、それが全然別個な目的で以てこれは出ておると思うのでございます。なぜかと言いますと、これによつて国庫の負担が軽くなるというわけじやない。これは根本的な別な意味において、機構の完備をするという意味から行政機構の完備とか何とかいう点から出て来るのじやないか。それならば私は農林行政その他について、殊に山林行政について、私をして言わしめるならば、本当は企業部門と行政部門とを分けなければならん、このときに考えてもいい問題だと私は思うのであります。ところが突然この別種なものがここに介在しておるものですから、私どもは地元から頼まれて、地元に全然関係のない男が財政上その他をやつた経験が若干あるというので、その点をあなたに僅かといえどもこういう別な性質のものが入るということについて、私はその理由がどこにあるのか、こうお尋ねする次第です。
  45. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 営林局仕事国有林の管理でありまして、これは国有林の植林、それから伐採、それからそれらの木材を売る、こういう仕事でありまして、固有の農林行政とはちよつと変つておるのでございます。いわば企業であります。今の前橋営林局の管轄は群馬、福島、栃木、新潟の一部と、こうなつておりますが、今まではあの福島の奥地林が殆んど手がつかなかつたのであります。併し今度はいよいよあそこを手を着けなければ国内の事情から言つてできない。そうしますと、これを前橋の所在の営林局でやつたのではとても不便であるというので、福島のほうに今度は青森営林局の管轄であつた宮城と福島を一緒にして福島の管轄にすると、こういうのであります。従いましてこういうことをやることによりまして国有林の収入を相当増して行こうと、こういう狙いであります。単に一般の行政機関の設置と違いまして、国有林仕事は大体今相当木材の値段がいい等の関係もありまして、収入のほうが支出よりもいいのでありまして、更に奥地林の開発という見地から是非福島にやらなければならないと、こういうのです。若しこれをやらなければ今の前橋のほうから福島のほうの森林の仕事等に行くのには泊つて行く、こういうような関係でとてもやり切れない、こういうのであります。
  46. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 私はあなたの今おつしやつたことはわかつております。今の国有林の経営が、これはさつき言つたように企業的部門なり或いは行政部門がこれが林野庁仕事になつております。国有林のほうは、企業的部門というものはそれは公社的の性格を持つておるものですから、お分けになる、根本的に解決をおしになる時期がいずれ来るのじやないか。その際に営林省とか何とかというものの問題をすべきであつて、今度の行政機構の改革に便乗しておられると私は思うのです。便乗でなければこの種のものは出て来んですよ、そう思うのであります。それでもつと抜本的なことは企業的部門等を併せ考える。そして内局問題も考える。そしてこれを考えるとおつしやる。あとは財政上の負担問題だけが残るわけです。併しそうでなしに、極く僅かなものだけをここにお出ししておいでになる、大本は落ちておる。これは私は今度の行政機構の改革に便乗された最もいい例だと思うのです。私はその点についてもう少し根本的にお考えになつて、そのときにおやりになつたらいいじやないか、こういうことを申上げる。これが反対する意見です。これは意見として申上げておきます。  第二は、この種のものを国家財政がこういうような詰まつた只今において各省がどんどんお出しになるというと、財政は建直しができるどころか厖大になつてしようがなくなる。そこで根本の問題がきまるまでお待ちになつて、今度の機構改革というものは行政手続の簡素化、定員の減少それから経費の減少、こういうところの範囲にとどめて行くべきじやないですか、こういうふうに思う。これは私の意見ですけれども、この二点で以てどちらの地元にも関係なく最も公平にその点を反対をしておる。これは便乗的な最もいい例と、こういうように申上げたい。これは意見であります。
  47. 竹下豐次

    竹下豐次君 只今栗栖委員から反対の御意見がありまして、便乗云々という栗栖さんの御意見ちよつと私の意見は違いますが、お許し願います。私は行政機構の今度の改革の案を見ますると、成るほど今栗栖委員の言われるようにこの問題はちよつとほかの問題とは種類の違つたことだというふうに思います。併しそれが仮に便乗という言葉が当るかどうか知らないけれども、種類の違つたものが計画されても、その事柄自体がいいならば、便乗であろうが何であろうが私はいいと思います。ただ問題は、これを移管されることが国家の利益としてどれだけあるかということがよくわかりさえすれば、私はこの前橋がどうとかいうような具体的の問題はあとにしまして、方針としては移転をするということもちつとも差支えない、かように思います。ただ遺憾ながら、私自身としましては、前橋をやめて福島に移管するということのためにどれだけ具体的な利益があるのかという御説明をこの間からちよちよいされておりますが、まだ頭によく納得できませんので、成るべくその点細かく御説明下さいますれば、政府のお気持はよく納得することも或いはできるのではないか。長野の問題も同様であります。長野に私は元おつたことがありますので多少見当がついておりますけれども、前橋のほうはよくわかりません。皆その点は御説明願いたいと思います。この問題は随分長い間、元から問題になつておつた問題で、この際便乗かも知れないが、やろうというお気持になつたのではないかと想像するわけであります。
  48. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 只今栗栖委員お話でありますが、林野庁仕事は、これはお話のように民有林の仕事国有林仕事と二つに分つておりまして、恐らく私は営林局仕事は公社みたいにしたほうがいいと、こういうお話だろうと思います。この問題はいろいろ検討されおりますので、そう簡単に民有林と国有林とを離してやるという決心は農林省でもまだつかないのであります。国有林と民有林と入り乱れておりまして、例えば砂防工事にいたしましても、治山治水の見地からいたしましても、それを別にしたらいいかどうかということにはそう結論が簡単に出そうにないのであります。ところが、第二点の営林局移転のほうは、森林蓄積を早急に開発するという見地からどこに営林局を置いたらいいのかというので営林局移転が考えられて、これは全く企業的な見地からやられておるので、お話のように元の営林局の経営を更に企業主義を徹底するようにやつた場合に一緒に考えたらいいじやないかというお話もありますけれども、その前提が我々のところではまた行きません。従いまして、直ぐ開発しなければいかん地帯に便利なように営林局移転したいというのが我々の趣旨であります。これを数字的に申上げるともつとはつきりするのでありますが、只今手許に福島の国有林の蓄積等の材料が県別になつておりませんのではつきりいたしませんが、仮に管轄全体を旧のものと変更後のものというものを比べてみますと、官行造林の面積は前橋営林局の管轄では百万町歩が福島の場合にはこれを宮城と福島と一緒にすることによつて五十八万町歩、ところが標準伐採量は前橋の場合は四百五十一万石のうち二百八十九万石が新らしく作られる福島の管轄区域内の標準伐採量になるのであります。このうち大部分が福島県から生産されるものとお考えになつても間違いないのであります。こういうふうに考えられます。
  49. 竹下豐次

    竹下豐次君 今栗栖さんは反対なんですが、私はお尋ねしておるわけなんです。材料をもう少し具体的に、今日でなくても結構でございますから、できるならば説明書にも数字を並べて、移つた場合はどうなる、どれだけくらいの利益が上る、先程三億要る、こういうことになりますね。三億要つてもうんと儲かるのだということになつたら私急いでやつて貰うことのほうがいいのかもしれないと思うのです。その点はあとで結構ですから、一つ資料を提供して頂きたい。
  50. 栗栖赳夫

    栗栖赳夫君 資料のところに私ちよつと附加えて…。それは私共の郷関係におきまして申しますと、前橋まで出て来たり或いは福島に行くのか。各地の営林署の署長か代理が置かれてあつて、一般地元民にはその下の下部機構があるわけです。実用がないのじやないか、そのくらい辛抱してもこの際三億円というものは大きい金額じやないかということを私言うのですから、それを覆えされるような数字が出ればこれはもう別です。そういうことを手段して頂きたい、こういう意味ですから……。
  51. 中川幸平

    中川幸平君 営林局の所管替の施行期日が来年の四月一日ということを言われたが、法律にのせないでそういう約束だというのですか、法律に載せていますか。
  52. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 附則の第二項に「昭和二十八年三月三十一日までの期間内において政令で定める期日」ということになつておりますので、最後は二十八年三月三十一日ということになつております。
  53. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 実は栗栖委員或いは竹下委員の質疑で大体尽きたと思いますが私は一点承わりたい。これはこの前の野田長官にお願いした資料の問題でも七億プラスになるからという問題の資料を、私は出ていないと思いますから、その資料は一つ早急にお出し願いたいと思います。
  54. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 出したと思いますが、できているのです。今の成瀬委員からの話ですが、私申しました七億円というのは、平年度七億円ということを初めから申上げてあります、というのは、平年化されたときは七億円というわけで、一番初めの年は退職金を出すとかいろいろな点がありまして、計算がいろいろまちまちになる、場合によつては赤字になる場合がある。平年度これだけになるというわけですから、この建物の問題なんか計算に入つておりませんから、その点……。
  55. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 その点了承します。先程栗栖委員の話にもありましたように、例えば受入態勢なども非常にむずかしい問題があると思うのですよ前の長野のときに比較しまして。今度の附則の第二項によりますと、「二十八年三月三十一日までの期間内において政令で定める期日までは、」と、こういうのであつて、あなたのほうで適当に来年とか適当な日にちにやられると思いますが最大限度ここまで、大体これで目算立つのですか。大体長野の場合を考えてみまして成算がある、例えば土地などの問題については折衝されておるわけですか、どんな……。
  56. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 土地などの問題は地元でできるだけ負担して貰うというので、長野の場合は多少土地自身の選定についていろいろな勢力があつたようでありますが、それも落付きまして、あとはもう土地の評価だけ、評価というよりは地元で無償で出してくれるそうだ、それじや頼もうか、こういうふうな関係になつております。福島でも今場所的には問題ありませんので、あとはこれから設計して具体的に金額をきめる段取りをつける、こういうふうな段取りになつております。
  57. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはまあ前橋の今度の移転伴つて自分たちがどうなるかというようなことについて心配された人たちが自主的に調査された資料によりますと、少くとも止むなくて退職しなければならんものが八十何人あるんじやないかというようなこともあるわけなんですね。そういうものにとつて私はやはり住宅を買つてやられるには、竹下さんが言われるように、どんどん買つて行かれない点がございますので、これはやはり竹下委員説明資料を貰いまして、私もこの点については改めて御質問したいと思います。
  58. 上條愛一

    ○上條愛一君 木曾福島から長野移転の場合のやつも併せて資料をお願いしたいと思います。
  59. 三好始

    三好始君 現行の農林省設置法によりますと営林局、営林署は林野庁の地方支分部局になつております。それから食糧事務所は食糧庁の地方支分部局になつております。林業試験場は林野庁の附属機関、食糧研究所或いは食糧管理講習所は食糧庁の附属機関、こういうことになつておるはずでありますが、今回の改正案によりますと、それは農林省の地方支分部局なり農林省の附属機関ということに変るのだと思いますが、それでいいですか。
  60. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) その通りであります。
  61. 三好始

    三好始君 そういたしますと例えば営林局を例にとつて申しますと、林野庁の地方支分部局であつたときには、先ほど国家行政組織法との関係外局としての林野庁長官権限の問題をお尋ねした際に出て来ましたように、或る程度独立性を持つておりますから、営林局に関する判こは林野庁長官で止まつてそれ以上に及ぶ必要はないという問題が多いと思うのです。ところが、農林省外局ということになりますと、改正案による林野局の長の判こもとらなければいけないし、それ以上場合によると官房長なり大臣の判こが勿論必要だというようなことになつて来ると、却つて事務は現在の機構よりは簡素化でなくして、逆に判こを沢山捺さなければならないという複雑化する面が考えられるのですが、実際そういうことになるんじやないでしようか。
  62. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) これは先ほど申しましたように国務大臣といたしましては今回の行政機構改革を期といたしましてできるだけ行政事務を簡素化能率化して行こうという精神に徹しておるわけであります。その線において事務は処理されるのであります。今まで林野局長官で事は片附いておつた程度のものであつたのであります。その程度のものについて大臣がみずから決裁する必要があるかどうかという点については、内容によつては誰が判断して……、或いはこれは自分で判断する、或いはこれは次官なり、或いは局長なり、或いは長官なりというように然るべく区別して今の精神によつてやる、こういうふうに考えております。
  63. 三好始

    三好始君 これは判を捺すという事務は一例として申上げたに過ぎないのでありますが、こういう国家行政組織法上の各機構の簡素化の関係なり、その他法的の根拠の上から言つて外局内局とではやはり手数が複雑化するという事態が起り得るのじやないかと思うのです。若しそれを政府の方針として簡素化することができるのだということであれば、勿論現在のまま置いておつても簡素化の方法は幾らも考えられるわけですし、事務の実情が変らないとすれば、どうして法律的に、少くとも複雑化するような方法をとらなければならなかつたのかわからなくなつて来るのであります。
  64. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 法律的には必ずしも複雑化するというふうには考えておらないのでありまして、むしろ責任の系統を明らかにして行く、そうして強力に能率を挙げて行きたい、こういう趣旨であります。
  65. 三好始

    三好始君 私は少くとも外局の附属機関なり、地方支分部局に関する限り、法律的には段階が殖えて行くということは否定できないと思うのです。
  66. 竹下豐次

    竹下豐次君 今の三好委員に関連しまして、私がお尋ねしたことと大体同じ気持だと思いますが、先ほどの長官のお答えによりまするというと、同じ内局局長の間でも、甲の局長に対する委任事項と、乙の局長に対する大臣委任事項と範囲が違つて行くということもあり得るのだ、それは当然であります。それで今度の、例えば林野庁の問題にしても、内局にした場合に、ほかの局長よりも広い権限を持たせることができ得る。併しそれが農林大臣仕事である、そこまではわかるのですが、ところが外局をこの際内局に引直そうという問題は、農林省関係だけのことでありませんで、ほかのところにもあるわけであります。そこで例えば現在の農林大臣は、今の林野庁長官の持つている権限をそのままに移して、そして今三好さんが心配されるような手続が複雑になるような心配がないように、言換ればはんこがたくさん重ならないでもいいように、簡単になさるかも知れない。通産省では通産大臣の気持は違つて、中小企業庁を引直して置いて、そうしてそれだけの委任権限を与えないということになつたら、内閣という高い立場から見るというとちぐはぐで妙なことになりはしないか、こう思うのです。だから若し今引直すと仮定して、内局に……、そうして今よりも事務を複雑にならしめないということをお考えになつているならば、やはり強い権限を、ほかの局長に比べて引直される、局長に与える。そうしてそれは各省とも同じ調子で行かなければならないということにしないと筋道が通らないのじやないか。そういう意味で私から申上げますような、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  67. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私は農林大臣というものは、農林だけという意味じやなしに、国務大臣として今回の行政整理の精神並びに今後に処する政府の考えとして只今通り申上げたので、農林省だから農林大臣と申上げたのですが、これは各省、各大臣とも同じ気持で行くべきものと思います。又そう考えて答えたのであります。
  68. 竹下豐次

    竹下豐次君 そうすると、できるか、できないかの問題を越えて、理窟の問題でなくして、実際こういう不便をなからしめるような処置をとるということを内閣の御方針だと承わつてよろしうございますか。
  69. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) さようでございます。
  70. 三好始

    三好始君 私は今の問題、先ほどの質疑で明らかになりましたから、ちよつと申上げておきたいのでありますが、そういう局長権限を委譲することを法的に現わしたのが外局なんです。私はそう思つています。これ以上は申しません。
  71. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 諸君にお諮りします。農林省関係は本日はこの程度にとどめておきまして、郵政省関係に入りたいと思いますが、如何ですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  73. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) それでは郵政省設置法の一部を改正する法律案及び郵政省設置法の一部改正に伴う関係法令の整理に関する法律案を議題にいたします。
  74. 中川幸平

    中川幸平君 私は郵政省設置法の一部を改正する法律案は、大体質疑は進んでおりますけれども、電通委員長のほうから、電信電話公社法案の審議の関係もあるから、成るべく一つ早く御審議を願いたいということを再三申しているので、大体今日で質疑を打切る程度にまでやつてもらつて、明日は一つ採決に入るように御処置を願いたいと思います。
  75. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 電気通信監理官の権限のことについてお伺いするわけですが、結局予算関係の調整権などというものは大臣にあると思いますが、この調整をやられる場合に、大臣の下でいろいろな各省の省議というようなものを開いてやられる意向なのか、大体この電気通信監理官と大臣との間において事を運んで行かれようとされるのか、運営のことについてちよつとお尋ねします。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、郵政省は事業官庁が主体でございます。従つて今回設置されます電信電話公社なり、或いは国際電信電話会社の監督に関する事項は他の所管事項とは戚然と分け得るのであります。従いまして大臣が監理官を直接に使いまして、最後的な意見を決定して参りたい、かように考えております。
  77. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 監理官とあなたの間においてやられるものですから、一般の各省のほうには入つておらないと了承していいわけですか。
  78. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 他の郵務局であるとか、資材局長であるとか、かようなものは関与しない、かように御了解を願いたいのであります。
  79. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 了承しました。次に電波監理委員会のことでお尋ねしたいのですが、何かこの委員会が今度審議会になるわけですが、その場合に審判的機能云々というようなことを言われたのですが、私若干よくわからないのですが、これを読んでみると、聴聞とか、或いは訴えの提起とかいうようなことがあつて、どうも審判的機能があるように私は思いますが、実際審判的機能はないのですか。
  80. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 只今御指摘のように、第一審的機能と申しますか、審判的機能も持つておるのであります。そこで審判的機能のある委員会は存置するという建前にいたしておりますが、今までの実績と申しますか、その取扱等から見ますると、誠に稀なケースなんであります。稀なケースでも、一年に一回でもあるようなら、それは常任委員会制度を設けろというようなことは確かに立派な議論かと思いまするが、実際上の問題から見ますると、殆んどそういう事態が起らない。さように考えますると、法によりまして特別な権能を附与することになれば常任委員会でなくてもこれが処理できる、かように考えましたので、今回常任委員会制度をとらないで審議会の制度にいたしたわけであります。
  81. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、大臣の御答弁によりますと、ケースが非常にめずらしい、ないのだ、ですから審判的機能であるけれども、こちらに入れたのだ、或いは第一審的権限を持つておる、ところがこれに入れたのだと、こうおつしやるわけですが、管理長官どうでございますか。審判的機能のようなものは大体においてと、こうおつしやるのですが、やはりこれを残しておくということは、私はこの前この委員会が作られたときの理由、理由というものはやはり政党政治に左右されないような、一つ公平にやらなくちやならないというような見解の下にこれが設置されたと思うのですが、その点になりますと、前に設置されたときと、これを今廃止されるのとおよそ私は意見の食い違いがあるやに思われる。その点についての一つ御見解を承わりたいと思います。
  82. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私は今までの運営の実績に鑑みまして、只今郵政大臣から説明されたような形式を以て十分目的を達することができるものと、こういうふうに考えております。
  83. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 やれるのだということなら、それは理論にもならないし、やられるおかたのほうのことですから、我々のほうがどうも心配だということになれば、これは意見が分れて来ますから……、そういう御答弁ならそれは又いいと思います。その次に、普通審議会になつておりましても、行政的な機関の内容を少し持つておるように思うわけですがね。ただこれは電波監理委員会の下にやはり足はあるわけでしようし……。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 足と申しますか、手と申しますか、その事務局的なものをお話になるのかと思いますが、今回は審議会にいたしますので、在来の電波監理委員会と電波監理庁のような関係はないのでございます。又仕事の性格も只今申上げますように審判的な事例が非常に稀でありますので、常態といたしましては、諮問的な機能が主体になるわけであります。従いまして、これが特別な手足を必要としないということに相成るのでございます。
  85. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 もう一点。この前たしか政党の人が何人とかいう委員に若干の制限があつたやに承知するわけですが、今度はそういうものを外されたということは、そんな心配はないのだ、今言つたようにケースが非常にないのだから、そんな心配はないのだというような意味合で外されたのですか。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 理論の問題よりも、御指摘の通り実際運用の問題から参つております。そこで只今審議会が審判的な決をいたしますとすれば、これには大臣も拘束を受けるわけであります。政党大臣といえども、この審議会の決には拘束をされるということに相成るのでありまして、只今御指摘になりました審議会の委員の性格云々という問題については、私どもその必要がないのじやないか。この行政自身がうまく行かないといたしますれば、審議会の委員の選任等において政府が責任ありと考えられますれば、国会の皆様方からの追及、批判を頂くのじやないか、かように考えておりますので、その点では明確のようにも思います。ただ在来の委員会は、これは独立のものでありますので、その意味合におきまして、独立的な立場であるためにいろいろの制限を付けて参つたのではないか、かように考えております。
  87. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあこれ以上申上げると意見にもなりますから、私は今申しましたように、若干この審判的機能というようなものに対して、ここになくされる理由というものと、設置された理由との間にやはり私は釈然とせないものがございますということだけを申上げておきます。
  88. 中川幸平

    中川幸平君 只今成瀬君から、電波監理委員会の廃止には不満足のような質問がありましたけれども、又電通委員の一委員からも、かような非常に民主的な委員会を官僚式に変えるようなことを言うておられる。私こういうふうに解釈いたしますが、大臣にお尋ねいたします。これまでの電波監理委員会事務局を強化して電波監理局に直す。而して電波監理審議会をこしらえて、その審議会に諮問して、それを尊重して電波監理行政を行うということで、非常に改悪でなくて改善であるというように解釈をいたしまするが、私の考えの通りでありますか、お伺いいたします。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 只今の御意見でございますが、御意見通りの考え方で本案を提案いたしているのであります。御承知のように只今行政組織の形体から考えますると、私どもも政党の出でありまするが、やはり民主主義政治のあり方といたしましては、政府が責任を持つという形が当然ではないか。殊に電波行政というものは御承知のごとく誠に重大な国策でございます。この重大なる国策遂行という点になりますれば、政府自身がみずからの責任においてその国策を遂行するということが望ましいのではないかと思うのであります。又責任の所在も非常に明確になつて参るのでありますので、かような意味合におきまして、その責任の所在を明確にし、而も事務処理の方法といたしまして、多数制による会議制がよろしいという場合もありまするが、或いは独任制で処理することが簡明でもあるというような議論もあるわけでありますので、政府といたしましては、むしろ独任制によつてその責任の所在を明確にする、かようにすることが事務の処理も一層明確になり、簡素化されるのではないか、かような考えを持つておるのであります。多分中川さんの御意見もさような点にあるのではないかと思うのでありますが、全然同趣旨で私ども本案を提案いたしておるような次第でございます。
  90. 中川幸平

    中川幸平君 先だつて連合委員会でも、民主的に電波監理をするための委員会をこしらえたものを、これを内閣に移すということは非常に民主主義に反するという説を私聞きまして非常に憤慨いたしたのであります。と申しますことは、総理大臣は我々国会において選任したものである、当然内閣の責任において行政を行うべきである。併しながら一党一派に偏することのなきように審議会の意見を尊重してやれば、それで正しい民主政治が行い得るものであるということで、私ども今回のこれは非常にはつきりしておると思つておりますし、成瀬委員は不満足なような質問でありましたから、あえて御質問いたしたような次第であります。
  91. 三好始

    三好始君 休憩して一時半から再開したらどうかと思います。
  92. 中川幸平

    中川幸平君 先ほどお願いしたことを一つお諮りを願つて、郵政省関係はそういうような関係で大体質疑の打切りをお願いできますか。
  93. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) ちよつと速記をとめて……。    〔速記中止〕
  94. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 速記を始めて……。それでは本日は郵政省設置法ほか一件の委員会はこの程度にとどめます。一時半から再開いたします。休憩いたします。    午後零時二十四分休憩    —————・—————    午後二時一分開会
  95. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 休憩前に引続いて内閣委員会を開会いたします。  諸君にお諮することがあります。通商産業委員長、厚生委員長及び法務委員長に面会をいたしまして、連合委員会の開催について考慮を求めましたところが、この三つの委員会委員長から、もう内閣委員会との連合は打切つてよろしいということであります。従いまして、これを打切ろうと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) ではさように決します。   —————————————
  97. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 調達庁設置法の一部を改正する法律案につきまして御質疑がありますれば、この際御発言を請います。そして大体二時二十分ぐらいから保安庁法案ほか一件の審議に移りたいと思いまするから、あらかじめ御了承願つておきます。
  98. 楠見義男

    ○楠見義男君 調達庁関係につきましては、大体今まであらゆる角度から質疑が続けられたのでありまするし、又これからお伺いすることも、今まで質疑されたことの範囲を出ないと思うのでありますが、ただ一点だけ私は念のためにお伺いしておきたいのであります。それは次長の問題であります。このことは今申上げたように、今まで再再論議されたことでありますが、なお十分に納得するところまで至つておりませんので、もう一度重ねてお伺いいたします。その点は、調達庁については講和発効前と後において、その仕事の性格、質と申しますか、量と申しますか、先ず量の点においては相当縮小され、従つて今回も相当の人員の整理が行われておるのでありますが、併し一面質の面から見ると、これは調達庁の長官或いは政府委員のかたからしばしばお話になりましたように、従来は進駐軍の下請機関としての任務を持つてつたのであるけれども、今後は日本の国民と申しますか、そのほうの代弁者として、或いは被害者の代表者的な立場から、むしろ従来の向うさん側の下請機関から、逆に向うさんに対する対抗、対立的な立場で日本の業界、或いは国民の利益を擁護する立場になつておる、こういうような趣旨の御答弁があり、又御説明があつたのであります。事業の内容を伺つておりますと、正にその通りだと思うのであります。そこで従来は庁に次長があり、又各部にそれぞれの次長があつたのでありますが、このことは次長制度につきましては、これもかねて申上げたように、私どもはできるだけ次長というようなものはやめたい。併しそのやめることによつて国民の利害に大きな影響を持つものであるとすれば、これはその立場から、存置すべきものは是非存置しなければならない、こういうふうに思うのであります。そこで仕事の質が変り、而も国民の利害を代弁する、代表する立場になつて参りますと、事渉外関係であればあるだけに、一層従来必要としておつた従来の次長制度も、説明を承わりますと、渉外関係において必要があつたように述べられておるのでありますが、今後は今申上げたような観点からすれば、一層次長制度は必要でなければならないのではないかと思うのであります。勿論庁の次長の場合もそうでありますが、私は特に庁の次長よりも、労働関係のように一番シリアスな問題が起りやすいこの部面において次長というものが必要であると思うのでありますが、ということは、労働者の数におきましても殆んど変更がない、二十一万余の労働者を調達庁がお抱えになつて雇用主の立場になり、そうして駐留軍が使用主の立場になる。こういうように使用主と雇用主、そして又雇用される労働者、更にその数においては従来と変化がないということになれば、一層この問題は従来に比較してその重要の度が軽減されたとは思えない、にもかかわらず、今回これを整理しよう、こういうことに一抹の危惧なきを得ないのでありますが、この点についてもう一度重ねて甚だ恐縮でありますけれども、それでやつて行けるのかどうか、率直にお答えを頂きたいと思うのであります。
  99. 根道広吉

    政府委員根道広吉君) 只今のお尋ねに対しましては、大体先の委員会におきまして、次長というものはあるに越したことはないというような御返事を申上げたのであります。勿論ないと、只今のところでは仕事の上で相当時間的に窮まであろうとは思います。併しながら、やり方をいろいろ変えて参りまして、例えば部長なり、課長なり、それぞれみずから一段上つた心持を以て職務に精励する、又自分としてもいろいろな問題について、努めて上に上らずに済むように仕事をまとめてやつて行くという心がけを以てすれば、これはやつてやれんことではなかろう、こう思うのであります。又現在私は長官をいたしております。非常に荷が重うございます。併しながら私自身のやり方といたしましては、できるだけこれは仕事が上に上つて来ないように、常に部長などに対しましては、自分長官のつもりで仕事をやれということをよく言うております。その覚悟を徹底せしめますれば、私はやつて行けるのではないか、こう考えます。勿論人でありますので、その能力如何によりまして非常に手に余るような事態が起らんとは、これは断言できる筋のものではございませんから、その点御了承願いたいと思います。
  100. 楠見義男

    ○楠見義男君 これ以上は議論になりますからやめます。
  101. 三好始

    三好始君 先般の委員会野田長官から直接調達方式についての見解が述べられたのでありますが、その際に直接調達方式は日本の講和条約発効に伴う独立意識に一つの根拠があるかのような説明がなされました。私は間接調達方式から直接調達方式への変化にはいろいろな理由が考えられるとは思うのでありますけれども、独立意識に根拠を求めることはちよつと腑に落ちない点がありますので、一応この点についての長官の御見解を承わつておきたいのでありますが、一応考えられますことは、直接調達方式になりますというと、駐留分担金の予算としての計上を通じて費用が負担されておるものが、日本政府は調達については何も具体的には関係しなくなつて来るということが、果して独立意識という点から言つてそう理解せられ得るものかどうか。又物資調達に伴つて考えられるいろいろ日本経済への影響の問題にいたしましても、直接調達方式でありますというと、原則的には或いは了解ができる点が多いと思いますけれども、具体的にはやはり日本政府が政策的な意図なり、政策的な調整を加えるということができなくなつて来るのじやなかろうか。そういうことになる。直接調達方式が講和発効に伴う独立意識ということで説明せられるようなものであろうか、ちよつと野田長官説明に疑問を感じたのでありますが、先般の委員会で答弁を頂く時間がなかつたので、この際野田長官から直接に承わりたかつた問題でありますが、今お見えにならんようでありますから、調達庁の長官の御見解をちよつと承わつておきたいのであります。
  102. 根道広吉

    政府委員根道広吉君) 野田大臣の言われましたことを御説明申上げることは甚だ困難でございます。直接調達、間接調達と申しまして、行政協定の成立前後を通じまして、いろいろ論ぜられて参つたのであります。調達庁を預かつておりまする経験といたしまして、私どもといたしましては、直接調達にいろいろな弊害を生ずる虞れがあるということは政府にも進言して参つたのであります。又米軍側に対しましても非公式に私の意見も何回か披瀝してあるのであります。併しながら国と国との交渉の結果、行政協定が現在の形において成立いたしておるのでありまして、勿論その際には間接調達のいいところ、悪いところ、直接調達の懸念せられる問題その他の点、併せて御考究相成つて日米双方の意思合致してここに協定ができたのであります。現在の段階におきましては、調達庁は今後直接調達に関して起りまするところの紛議等の実際上の処理、日米間にお互いにわだかまりのないように処理する実務を扱う役目を負わされて参つたのであります。この問題は今後どのように現実の問題として発生いたしまするかは、まだ見込以上の何ものもありません。私といたしましては懸念せられるような紛議、紛争というようなものが、できるだけ少なく起り、そのために調達庁として手を焼くような問題がないことを希望しているわけであります。先般の委員会におきましても、私この点に言及したのでありまするか、何分にも今直ちにその害というものが現われるものではありません。今のところまだ予想に過ぎません。暫らくここの推移を見守りまして、起りまする問題をできれば事前に、或いは止むを得ざればその後において、これが是正を図りたいと考えております。なお野田大臣より、独立意識に燃えて直接調達というようなお話があつたということでございますが、私記憶いたしておりまするところでは、日本、いやしくも一国の機関が相手の国の購買を助けるために自分の国の役人を使つてまでやるのはどうかと思うような意見の一部にあつたことを承知しております。恐らくそういうことに関して論ぜられましたるところを、野田大臣が言われたのじやないかと思いまするが、この点私としてよくわかりかねますので、お許しを願いたいと思います。
  103. 上條愛一

    ○上條愛一君 調達庁においては、五千百七十三人のうち、三千百八十二人になつて、約二千人の人員が整理せられるのであります。この人員整理をせられる人々に対しましては、どのように善処せられる御方針でありますか、一遍承わつておきたいと思います。
  104. 根道広吉

    政府委員根道広吉君) 只今、今国会に提案されておりまする他の省庁関係のほうに、新たに増員される面もあるかと考えております。その方面に対しまして、できるだけ最大限度の収容を願います。又諸官庁のほうにおきまして、自然減をする人員に対しましては、それを新たに雇用することをせず、調達庁は勿論であります。こういう調達庁のようなところで起りまするところの失職者に対して、これを優先的に採用するという方途を講ずるということをお願いしているわけでありまして、勿論今回の出血は調達庁において一番多いのであります。私といたしましては、是非調達庁のほうを優先的に、そういうところに採用するということをお願いいたしているわけであります。又すでに政府部内において、これを十分了承されていることと思つております。併しながら何分にも二千に近いものであります、そう早急にうまく片附くとは参りません、それでいろいろ心痛いたしております。又そういうことに関しまして、各方面の御助力を得なければなりません。御援助、御鞭撻も頂かなければならんのであります。この辺よろしく今後とも御援助を賜わりたい、こういうふうにお願い申しておきます。
  105. 上條愛一

    ○上條愛一君 今長官お話で大体の方針はわかるのですけれども、二千人整理せられる人にとつては、そういう方針だけでは困ると思うので、その方針を具体化して、どこに幾らというようなお見通しが付いておるかどうかということを承わりたいと思います。
  106. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 約二千名整理いたしますものを今後どう捌いて行くかという問題でございますが、只今長官から申上げましたように、できるだけ他の官庁で増員になる方面、又今後欠員が生じたようなところに優先的に採用願いたいと考えまして、その趣旨で閣議了解等もお願いいたしておる次第でございますが、なお的確にどこでどれだけ採用願うかということにつきましては、はつきりした見通しは残念ながらございません次第であります。併しながら今回の定員法が成立いたしました暁に、一番多く増員になりますのは建設省或いは警察予備隊等でございますので、主としてその方面に採用方をお願いいたしておる次第であります。我々の希望的観測から申しますと、六、七百名はそのほうにお願いいたしたいものだというふうに、或いは場合によつたらお願いできるのじやないかというふうに考えておるのでございますが、只今のところ見通しといたしましては、大体その程度でございます。
  107. 上條愛一

    ○上條愛一君 これは整理せられる従業員にとつては重大な問題だと思いますが、ただ莫然たる御方針だけは御決定のようでありますが、具体的の案がないのは甚だ遺憾ですが、ただもう一点お伺いいたしておきたい問題は、この調達庁の人員整理の問題については、なお来年の三月三十一日まで、余裕を見込まれておると思いますが、若し他に転職なり適当な就職の途のない場合には、この人々に対しては来年の三月の末日までは現職にとどまつてやり得る御方針でありますか、その辺のことを承わりたいと思います。
  108. 根道広吉

    政府委員根道広吉君) 大体におきまして、只今官房長が言いましたように、まあ六、七百名は割合に早い時期において片附くのではないかという希望を持つております。従いまして、その程度の数が割合に早期に片附きますれば、その余のものについては順次これを片附けて行く、残つたものは三月三十一日までおられるという処置が取り得るものと予想しております。
  109. 上條愛一

    ○上條愛一君 これは意見になりまするが、それでは若し三月三十一日までに片附かない人々に対しましては、十分責任を持つて就職なり離職後の生活問題を御考慮願うことをお願い申上げておきます。
  110. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 上條委員の質問に関連するわけですが、まあ整理された人が、あなたがおつしやるのは大体建設省というふうにちよつと聞いたのですが、この前の大臣の意向では、建設省乃至予備隊の受入れとして、大体八百名くらい予定されておるというふうに承わつております。今五、六百名というようなことを承わるわけですが、その際に建設省に私は定員があると思う、予備隊にも定員があると思う、そうすると、その受入れる人たちはどういう形で受入れられて行くのですか。
  111. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 増員になる向きではそれぞれ級別の定員がございまして、又職種により、技術者或いは事務系統の関係もありますので、それらの事情を勘案いたしまして、整理いたします者の適格者をできるだけその方面にそれぞれの定員に合わして採用して頂けるようにいたしたい、このように考えております。
  112. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は片一方にやはり定員法による定員で縛ばれておる、欠員がない限りにおいては入れないと思う、定員法の修正がない限りにおいては、受入れると、こうおつしやつておるのだけれども、できない相談じやないか、若しそういうことになると、片一方ではどういう形になるのか、そこがどうも私たちは了解できないから、そこをお尋ねするわけです。
  113. 辻村義知

    政府委員(辻村義知君) 只今国会において御審議を願つておると考えます。が、定員法が若し改正案が成立いたしました暁には、相当の増員が期待されますので、そうした条件付きの実はお話しを申上げたのでありまして、そうした増員が不可能になります場合は、おのずから事情が異なつて参りますので、そういう場合には我々の調達庁の整理だけか、この定員関係として成立いたします場合には、この整理人員の始末ということは非常に困難な問題になるかと思います。
  114. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 諸君にお諮りいたします。調達庁法案の審議はこの程度にとどめておきまして、保安庁法案及び海上公安局法案を議題にいたそうと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。さように決します。   —————————————
  116. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) この両案を議題といたします。吉田総理大臣が御出席になりました。つきましては、通告順に従いまして御発言を願いたいと存じます。波多野君。
  117. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 吉田総理に、先ず今度の行政機構の改革案につきまして、政府がどのような方針でこの改革を進めて行くかという点についての御説明を願いたいと思います。と申しますのは、我々が新聞紙上で拝見いたしておりますと、この一月からたびたび行政機構の改革についての案なるものが発表され、発表されるたびごとに変つて参りました。この新聞発表されたものが事実であるかどうかは知りませんけれども、そういうふうに最初からの方針がだんだん変つて来て、最後に国会に提出されました機構改正案というものは非常に微温的なと申しますか、極く僅かな名称の改正にとどまるような案になつてつております。そこで当初吉田総理がどういう方針でこの行政改革をやろうとお考えになつておつたか、又現在お考えになつておるかということを一つ承わつて置きたいと思うのであります。
  118. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。行政機構改革案について多少考えが或いは進歩したと言いますか、退歩したと言うか、変つたことはあるだろうと思います。併し帰するところは行政の簡素化、従つて行政の能率を上げるということ、更に得べくんば要員を減らして、そうして財政の余裕を図るというこの趣意で計画いたしたのでありますが、併しその間にいろいろな希望も述べられ、又政府として考えるところもありましたろうから、原案がどうであつたかは、私は今のところはつきり覚えておりませんが、多少の変化か進歩か退歩があつただろうと思いますが、方針は決して違つておらないつもりであります。
  119. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 恐らく退歩があつたと私どもは思つておりますが、いずれにしましても行政の簡素化ということを狙いとしておると、まあ総理は今言つておられます。そこで行政の簡素化という点について一、二お伺いしたいのでありますが、今回の政府案によりますと、例えば行政委員会を廃止する、或いは又それを内局に取込んで行くというようなことや、それから外局であつたものを内局に入れる、或いは又部長というものを廃止する代りに、たくさんの局次長だとか、或いは又監というような新らしい職名のものを作る、而も監にしましても、部長にしましても、どうも責任の地位にあるとは考えられないような、そういう妙な役人がたくさんできて来るというようなことで、行政の簡素化と言われる趣旨にはどうも合わんように思いますが、どういう点が簡素化になつているかということを一つお伺いしたいのであります。
  120. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 御意見によると、このたびの改正案はむしろ複雑化したんで、簡素化にならないんじやないかという御質問でありますが、政府としてはそうは考えないのであります。従来例えば委員会等についても随分たくさんあり、その委員が或いは閣僚と同じくらいな俸給をとるとか、或いは又これはアメリカの制度によつたことでありましようが、いろいろな委員会ができる。アメリカのごときは大きな国でありますからして、委員会も或いは国情に適しておるかも知れませんが、日本の場合においては余り多くの委員会があるので、それが単に行政の、何と申しますか、監督とかというようなものではなくて、むしろ行政に入り込んで、而も余り経験のない人たち委員になつて行政を複雑化しておる点もあると思います。そこで行政何とか委員会というものは成るべく少くする、得べくんば全廃もしたいと考えて見たのでありますが、これも民主化の線に副わんというような反対論もある。それでは或るものは残すことにするが、併しながら全く行政的の性質を帯びたものは成るべく減らして行きたい。政府として、私としては相当に簡素化されたつもりでおります。若し複雑化したところがありましたならば十分御検討願いたいと思います。
  121. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうも簡素化の趣旨に副わんとも私は思つておりますので、今目下検討中でありますが、行政委員会の問題につきまして、一つ総理の今お言葉の中にありましたように、日本に限らず、どこの国でも官僚機構というものが非常に強大な権力を持つて来るということによつて国民が迷惑をこうむるという場合が非常に多いので、又特に近代国家になりますと、国家の仕事がだんだん殖えて来て専門的な知識を要するということから、この官吏の組織というものはだんだん大きくなるのが、これは自然の勢いなんであります。それにしても、そういう官僚機構が大きな権力の主体として人民に臨むというようなことは民主主義の考え方からいつてよろしくない、好ましくないというので、そういう莫大なる国家機関の一部を幾らか官僚機構から独立させた一種の行政委員会というようなものでカバーして行く、そうしていわゆる官僚独善の弊に陥らないようにして行くというのがどこの国でも最近行われている傾向だろうと思います。そこで総理がまあでき得べくんば行政委員会みたいなものは全部やめてしまおうとお考えになつたのは少し行き過ぎであつて、多少修正されて若干のものは残そうという原案になりましたけれども、なお私は官僚の権力、集結体としての官僚の組織の強大化というものが人民に与える圧力、これが大きくなり過ぎることをチエツクする意味において、もう少し政府のほうではお考え願いたいものだと思いますが、重ねて総理の行政委員会に関するお考えをお伺いして置きたいと思います。
  122. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 波多野君から御覧になると、官僚はすべて独善であつて、そうして徒らに人間ばかり殖やすことを考えておるとお考えになりましようが、又我々のほうから申すと、民主化の名において人間ばかり余計になる、手続は複雑になる、或いは民主主義の名において利権の獲得競争などが行われるというような部面も私としては目につくのであります。裏表がありますからして、いろいろな方面から見ればいろいろに考えられましようが、波多野君のお考えも一つのお考えでありましよう。同時に私どもの考えも一つの考えであり、その両方の間の調和のとれたものがいい案になるのではないかと思います。併しなお御意見は考えます。
  123. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 この内閣委員会における政府側の答弁によりますと、今度の改革案は行政機構改革のスタートを切るだけである、本格的な機構改革はこの次に出すのだということを頻りに答弁いたしておりますが、なぜそういう答弁が出て来たかというと、今度の政府案なるものが非常に不徹底な、中途半端な、却つて改悪になるような面が非常に多いという委員諸君からの質問に対しまして、いや、これは今度のは出発点だけだ、この次にもつといいのを出しますということを頻りに答弁せざるを得ないようなうになつているのです。総理のお考えにおいても、今理想的な機構改革案を、いつの機会か知りませんけれども準備を命ぜられておいでになりますかどうですか、お伺いいたしたいと思います。
  124. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 行政機構はとかく複雑になりやすいものであり、何かというと局課員を殖やしたくなる、これが官僚の通有性といえば通有性でありましよう。そこで丁度家の掃除が春期、秋期に二回も三回もいたさなければならんと同じように、時がたてば自然埃も溜り塵も溜る。時々清潔法を施すということは当然なことであろう思います。若し今後ますます本格的というかどうか知りませんが、時に応じ又必要に応じて行政改革はいたして完全なものにいたしたいと考えております。
  125. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 しよつちゆう機構をいじられますと役人のほうが腰が落着かないで、その仕事に対する熱心さを失うというようなことがある。それでやるのなら徹底的なことをやつて、暫らく大掃除をしないでいいような大掃除をやるということのほうがいいじやないかという意見委員会を通じてたびたび述べられております。そういう点も御注意のために申上げておきますが、もう一つ最後に、時間がありませんから、お聞きしておきたいのは、今度の行政機構の改革の中心になるのは、治安関係制度を確立するために保安庁並びに公安審査局等を新設する、これに関連してほかの各省、各庁の改革をやるということにあるのじやないかと思われるのですが、吉田総理にお伺いしたいのは、眼目は保安庁、公安審査局その他治安関係の官庁を新設するにあるのだという私の見方が間違つておるかどうか、御答弁を願いたいと思います。
  126. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 眼目は必ずしも保安庁のみにあるわけではなくて、改正各機構がことごとく眼目なのであります。更に保安庁を設けるために行政機構改革を企てたわけではなくて、改正の一方面として保安庁を必要に応じて新設するというつもりであります。
  127. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 提案されました改革案に関する法律案は三十一ございます。各法律案とも非常に厖大なものでありまして、まだ当委員会においては質疑も終了しないような段階であります。これは総理も御承知の通りと思いますが、そこで一体政府の、勿論全部通ることを希望すると言われるには違いないと思いますが、その辺に多少の軽重があるのじやないかと思いますが、如何でしよう。
  128. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは、この点は重点であり、この点はいい加減に出したというような気持は毛頭ないのでありますから、ことごとく十分に御審議願いたいと思います。
  129. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 では私は終ります。
  130. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) では次の通告者三好君に御発言を求めます。
  131. 三好始

    三好始君 現在本委員会で審議しております保安庁法案はいろいろな意味で極めて重大な法律案であると思いますので、本日総理が出席せられておりますので、私は保安庁法案に関する基本的な諸問題に関して直接総理の御見解を承わりたいのであります。警察予備隊の性格が憲法第九条第二項の戦力と関連いたしまして今まで相当問題になつたわけであります。国会内部におきましても、又広く国民の間においても、現在十分な了解ができておるとは首相みずからも考えておらないと思うのであります。今回保安庁法案が提出されまして、更に警察予備隊以上に保安隊或いは警備隊の性格が問題になつておるわけでありますが、国家の自衛を担当するこのような重要な機関につきましては、十分に国民の納得の下に国民の心からの協力を得て作らなければならないと思いますので、以下お尋ねする数点について納得の行く御説明を頂ければ幸いだと思つている次第であります。  先ず最初にお伺いしたいのは、保安庁法案提出の理由に関するものであります。その第一点といたしまして、警察予備隊令は朝鮮動乱勃発後の昭和二十五年八月にポツダム政令としてできたものでありますが、今回の保安庁法案は、昨年秋サン・フランシスコで締結されました日米安全保障条約にも示されておるところの日本の自衛力漸増計画の一環として提出されたものと了解しておるのでありますが、そういうふうに了解してよろしいかどうか、先ず伺つておきたいのであります。
  132. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 警察予備隊は、御承知の通り朝鮮事変勃発と共に日本における治安維持の必要上急設いたしたものであります。故に二ヵ年の期限で以て創設をいたしたのであります。これを以て永久と初めから考えておるのではないので、独立と共に日本の治安体系といいますか設備を十分にするというために、このたびの何といいますか、治安隊と申しますか、保安隊というものを設けるに至つたのであります。性質はと言えば、同じものであります。その国の治安を維持するためにこしらえたのであります。
  133. 三好始

    三好始君 只今の点についてもう少しはつきりさせておきたいと思うのでありますが、政府は自衛力漸増計画という言葉を従来しばしばお使いになつておつたと思うのでありますが、その自衛力漸増計画の一環としての意味を今回の保安庁法案は持つている、私たちはこういうふうに一応了解いたしておるわけでありますが、それでいいのでございましようか。
  134. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 国の独立を維持することは、或いは治安を維持することは、その国が独立した後における国の責務でありまして、独立した国家としては治安維持のために相当の施設を持たなければならん。漸増といいますけれども、これは日米安全保障条約の中に、日本が戦力を持たず、又兵備を持たないで、而して外界の事情、危険な事情が生じた場合に、これに対しては共同防衛の方法で一国の独立を守り、安全を守るという趣意で安全保障条約ができておるのでありますが、日本としては、今日そういう軍備を持とうと思つても力がこれを許さないのであります。又軍備を、再軍備をいたすまでには相当の、その前においてなすべきことがたくさんある。例えば従来は、敗戦に導いた責任はひとり軍部に負わしめて、そして軍部なるものがすべての責任を背負い、又この敗戦に至つたことは全く軍部の責任であるがごとく取扱い、又軍部に対してすべての責任を負わせるというような形で、或いは家族の扶助料もとつてしまうとか、或いは年金も中止するとかいうようなことで、軍人がすべての責任を負う、敗戦の責任を負う責任者のごとく取扱われて、再び軍備は持たない、軍備は持たせないというような気持で、この気持が取去られない限りは、日本が再軍備をいたしたところが、国民の間から盛り上つて国を守るという精神が起らない限りは、再軍備を仮にいたしたところが、力が、経済力が、これを軍備を持たしむるだけの力ができたところが精神が入らないということもあります。再軍備というものは、甚だ軽々に論ずべきものではないのであります。とにかく今日の状態において日本の力としても、経済力としても、差当りこれだけの兵力と言いますか、警察力、治安を保つだけの設備をするというために、過日の予算において十一万の要員だけ、人員は集めようということにいたしたのであります。将来に対してどうするか。これは将来の国の経済力の増加にもよりましようし、又海外の事情、内外の事情に即応してこれに対して適当な処置をする。若し十一万を減らすことができるならば漸減もいたしたいと思うのであります。漸増というゆえんは、アメリカ側としては成るべく日本における駐留軍は早く撤退したい、必要に応じて置いたけれども、併しながらその必要が去れば成るべく減らしたい。駐留軍が去つた後においての状態はどうするか、これは将来のことであります。或る全体の計画があつて、そして漸増計画を今日持つておるわけではないのでありますが、アメリカ軍は漸減いたしたい、漸減した場合に国の安全をどうして守るか。その場合には自然日本みずからの力によつて国を守るというようなことになることも想像されるのであるために、漸増という言葉は用いられておりますが、然らば全体の漸増計画があるかと言えば、それはないのであります。本年度に処するだけの計画を立てて、そうして協賛を仰いだわけであります。
  135. 三好始

    三好始君 それでは次に移りますが、警察予備隊令はその第一条に、国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うため警察予備隊を設けるということを明記いたしております。更に第三条では、警察予備隊の活動は、警察の任務の範囲に限らるべきものである、こういう表現も規定いたしておるのでありまして、いわゆる警察予備隊の警察性が明らかにされております。ところが今回の保安庁法案では保安隊、警備隊の警察性を積極的には何ら規定しておらないのであります。それだけではなくして、非常に注目すべき規定がたくさん見受けられます。一つ二つを例として申しますというと、法律案によりますというと、いわゆるシヴイリアン・コントロールの原則を確立しようとせられておる規定があります。これを一例から申しますというと、保安隊、警備隊の実態がシヴイリアン・コントロールを必要とするがごとき実態になつておるのではなかろうかということを想像せしめるものがあるのであります。又六十一条には、総理大臣命令による出動の規定をいたしておるのでありますが、この場合の条件といたしましても、非常事態という抽象的な言葉を使つておりますので、非常に解釈の上に弾力性があるわけであります。客観的には予備隊令と保安庁法案の間には相当相違が感じられるのであります。予備隊、海上警備隊を統合して今回の保安庁機構による保安隊、警備隊とするような今回の改革の趣旨は、こういう客観的な相違から考えて、一体どこにその意図するところがあるのだろうかということを国民は注目しておると思うのでありますが、この点についての御説明を頂きたいと思うのであります。
  136. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 保安隊の性質は今申した通りでありますが、条文等について詳細な説明は主管大臣からいたさせます。
  137. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 総理の答弁を補充して申上げます。現行警察予備隊令におきましては、警察の任務に限られるべきであるとか、或いは又普通警察、即ち自治体或いは国家地方警察力の不足を補うために行動するのであるという趣旨が書いてありまするが、単に抽象的にさような方針を掲げてあるだけでございまするので、具体的に言えば、如何なる場合に如何なる権限に基いて行動するかということを一層的確に規定することが適当であると存じまして、今回の法案においては、さような抽象的な規定の代りに、第四章におきまして、行動及び権限に関して極めて具体的な規定を設けた次第でございまして、この点は、従来の趣旨を一層明確ならしめるためにかような立法が適切であると、こう考えたからでございます。
  138. 三好始

    三好始君 只今の大橋国務大臣の御説明は、先般承わつた通りでありますけれども、これは当時も私申上げたかと思うのですが、六十一条以下に具体的に規定した規定の内容は、非常事態という言葉で、只今私が例にとりましたように、非常に解釈の弾力性があるわけでありまして、保安隊、警備隊は警察でないという説明もできれば、又警察予備隊とちつとも変つておらないのだという説明をしようと思えばできる。政府はそう思つて説明せられておると存ずるのでありますが、そういうとにかく弾力性のある規定になつておる。これは先般参考人として意見を述べてもらいました京都大学の大石教授が指摘しておりましたように、客観的には性格の相違はつきり出ておるということが、恐らく法に通じておるものの常識ではないかと思うのであります。併しこの点は、本日は総理に対する質疑が中心でありますので、後ほど大橋国務大臣なり木村法務総裁に細かい点に亘つてお尋ねいたすことにして、次に移ります。私たちが客観的に理解し得るところでは、単純に日本の国内治安維持のための警察力の補充に任ずるのだと、こういう警察予備隊の存在であつては、アメリカのヴアンデンバーグ決議の精神から申しましても、武器貸与を正式に受けることができない。そこで政府といたしては、憲法に抵触しないように配慮をしながら、而もアメリカからは武器の貸与その他の援助を受けられるようにすることが、自衛力を実際に効果的に実現して行くゆえんでありますから、今回の保安庁法案を提出してこれを実現することによつて只今申したような事情に応ずるようにしたい、こういうところに本来の意図があるのではなかろうか。一応これは客観的に理解し得る考え方だと思うのでありますが、これについて総理はイエスかノーかお答え頂きたいと思うのであります。
  139. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 保安隊の機構は、ヴアンデンバーグの法律ですか、とは何らの関係がございません。日本の事情で必要に応じて立案いたしたものであつて、ヴアンデンバーグの法律関係はないのであります。
  140. 三好始

    三好始君 ヴアンデンバーグ決議を例にとつて私が申上げたのは、ヴアンデンバーグ決議の内容によりますというと、アメリカはその軍隊を他国の警察力の充実のためなどには使わない。延いては武器を他国の警察力の充実のために貸与したりしはしないという精神を含んでいるようであります。そういう決議を今申したのでありますが、この点多少私のお尋ねした点とお答えとの間に食い違いがあるように思うのでありますが、重ねてそういう趣旨の決議に考慮を置いて保安庁法案を実現することが、アメリカの武器貸与なり保安隊、警備隊に対する援助を円滑に実現することができる、こういうところに意図があつたと認められるのでありますが、その点についてのお答えを頂きたいと思うのです。
  141. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この警察予備隊の必要といたしまする装備につきまして、現在駐留軍から借り受けておりまするが、これはいわゆるアメリカの武器貸与法による貸与でもなければ、又先ほど総理から申上げましたるごとく、ヴアンデンバーグの決議等と関係のないことでございまして、これは専らアメリカの駐留軍の好意によりまして、その保管している武器を保安隊のために借りている、そうしたことでございまして、いわゆる武器貸与法とは関係ないと了解をいたしております。
  142. 三好始

    三好始君 只今の御答弁では、予備隊の受けておる武器貸与は、ヴアンデンバーグの決議にも、武器貸与法とも無関係だというような御説明でありましたが、これは事実は恐らく逆でないかと思うのでありまして、恐らく大橋国務大臣もその間の事情は御存じでないかと思うのであります。即ち現在予備隊の顧問将校の個人的な責任において武器が貸与せられておるというような変則的な行き方をとらざるを得ないのは、やはりヴアンデンバーグ決議の精神がアメリカにおいて行われておるからなのでありまして、この点については、恐らくよく御存じでないかと私は思うのであります。問題は、そうしたら同じような性質の問題でありますから、次に移りますが、昨日の夕刊によりまするというと、アメリカ下院のウイルソン軍事委員長が、今回日本に対して五カ年間の期限でフリゲトト艦十八隻、上陸用舟艇五十隻を貸与する法律案を提出した、こういうことが報ぜられております。これは日本の自衛力漸増計画に協力しようとするアメリカ側の態度を示したものと私たちは認めるのでありますが、而もこれはアメリカにおいて、先ほど来由しておりますように、ヴアンデンバーグ決議の精神が生きている以上、その範囲内の政策として行われていると考えざるを得ないのであります。即ち日本国内の単純な治安維持とアメリカは考えないで、日本の外敵防衛を目指しておる部隊に対して武器を貸与するのだ、こういう精神の上に立つておると認められるのでありますが、この点についての政府の見解を承わつておきたいのであります。
  143. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 昨日の新聞にありまする船舶の貸与についての法律案が下院に出たということは、新聞記事では承知をいたしておりまするが、併しそれ以外に政府といたしましては何ら米国の関係機関、又駐留軍等から、詳細な情報を受けておりませんので、どういう事情でどういう手続が進行しておるかということについての説明は、只今申上げる段階に至つておりません。
  144. 三好始

    三好始君 私はこの問題についての細かい手続の問題をお尋ねしようとしているのではないのでありますが、併しこれは具体的な問題として後ほど更にお尋ねすることにして、今度は直接総理からお答え頂きたい問題があります。それは平和条約、安全保障条約及び行政協定によつて日本が負つておるところの責任を果すために、将来保安庁法に規定されておる保安隊、警備隊の海外出動があり得るかどうか、こういうことについて首相の直接の御答弁を頂きたいと思うのであります。
  145. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) それはしばしば私が国会で言明いたしておる通り、海外に出動せしめる考えは今日のところ持つておりません。
  146. 三好始

    三好始君 私は、この問題は警察予備隊令の段階と、保安庁法の段階とでは、客観的な法の上からは違つたものがあり得ると思つてお尋ねしたのでありますが、首相に海外出動はないというお答えを頂いたわけであります。ところで、海外に出動しないということは、政府の政策の問題としてお考えになつておることでありますか、それとも法的な可能性の問題なんでしようか。つまり法的に海外出動はできないからしないということなんですか、政府の施策としてしないということなんでしようか。
  147. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは若し集団的攻撃があるというような場合には、これは安全保障条約の範囲に入るのであつて只今の保安隊の構成の上から、こういつた意味では海外出動ということは全然考えておらないのみならず、政策としても、或いは又希望といたしても政府の意思としては全然ないのであります。
  148. 三好始

    三好始君 私は保安庁法案の客観的な解釈からは、それが明確には出ておらないと思つてお尋ねいたしたわけでありますが、更にこれは具体的には大橋国務大臣と後ほど質疑応答を交さなければいけないかと思いますが、残つておる問題がまだ相当ありますから次に移ります。  予算委員会でしばしば憲法第九条に関連して、予備隊が戦力なりや否やということが問題になりました。これも今回の保安庁法では、新たな段階として考えてみなければいけない性質のものであると同時に、予算委員会で審議せられた際には十分に明らかにされておらない問題がありますので、これを総理から承わりたいのであります。憲法第九条によれば、日本が陸軍だけ、或いは陸海軍だけ設けても、それは第九条で、保持しないと規定している戦力として憲法上許されない、こういうふうに私は了解しているのでありますが、この点についての首相のお考えを先ず承わつておきたいのであります。
  149. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは予算委員会においてもしばしば申上げましたが、政府としては再軍備はいたさないのでありますから、従つて戦力は持たないはずであります。私は保安隊の持つ力は戦力と解しません。
  150. 三好始

    三好始君 只今の私の質問の趣旨を或いは誤解されたのではないかと思うのでありますが、私お尋ねしている趣旨は、政府は戦力に対して近代戦を有効適切に遂行し得る編成、装備を持つた実力都隊が戦力なんである、こういう定義を下しておられるのであります。ところが陸軍だけを持つ、或いは陸海軍だけを持つということは、今日の進歩した近代戦の前提の上に立ちますというと、近代戦遂行能力ということは考えられないわけであります。そういう近代戦遂行能力でないけれども、陸軍を持つということは、やはり憲法では許されておらないのだというふうに私了解をするのだが、それが果して政府の考えとは違うのかどうか、それをお聞きいたしているわけであります。
  151. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 代つてお答え申上げます。御質問の通り陸軍だけ、或いは海軍だけこしらえましても、これは軍であります限り戦力であるというのが政府の解釈でございます。
  152. 三好始

    三好始君 只今の大橋国務大臣の御答弁ではつきりして来たのでありますが、陸軍だけを持つてもいけないというのが政府の解釈である。ところが陸軍だけという場合には、近代戦遂行能力というふうに考えることは恐らく誰が考えてもできないだろうと思うのであります。今日の原爆或いはジエツト機が戦術的に使用される近代戦を考えれば、陸軍だけを近代戦遂行能力ということはできないだろうと思うのであります。そういう陸軍だけを持つことが憲法で許されておらないということは、陸軍という場合には、外敵に対抗することを予想し、意図しているものだから憲法では許されないのだ、恐らくこういうことでないかと思うのでありますが、この点について政府の見解をはつきりさせて頂きたいと思うのであります。
  153. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) いやしくも陸軍と申しまする以上は、それが軍として編成され、軍にふさわしい力を持つているわけでございまして、これは当然戦力でありますから憲法上許されない、こういうのが私どもの考えでございます。
  154. 三好始

    三好始君 そういたしますと、陸軍だけを設けてもこれは近代戦遂行能力と認められるからいけない、こういうことなんですか。或いは外敵に対抗するという意図がはつきりしているからいけないというどちらですか。
  155. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 近代戦を遂行するべき手段である、こういう点においてこれはいけない、こう考えるのが政府の考え方であります。
  156. 三好始

    三好始君 陸軍と名前がついているけれども、その実体は客観的に非常に微弱な編成、装備しか備えておらない、こういう場合には近代戦に達しないものとして憲法に許されることですか。
  157. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 近代戦を遂行する程度に達しない陸軍というのはどういう意味でございますか、未発達の状態における陸軍というようなものが或いはそれに当るかも知れませんが、要するにそれが陸軍であります以上は戦力としていけない、これが政府の考えであります。
  158. 三好始

    三好始君 只今のお答えは、恐らく客観的には腑に落ちないお答えだと思うのでありますが、時間が長くなりますから次へ移ります。憲法第九条第二項後段に「国の交戦権は、これを認めない。」というふうにはつきり規定しているわけでありますが、この中には、自衛のための交戦も当然含まれていると考えるべきだと思うのでありますが、首相のお考えを承わりたいのであります。
  159. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これはしばしばお答えをいたしている問題でありますが、多くの戦争は自衛の目的をもつて戦われるという、自衛の名において戦われた戦争が多いのでありますから、国の自衛力と言いますか、自衛力のあることは、独立した以上はどこの国も、誰も否定はいたしますまいが、併しそれを以て戦力、交戦権、若しくは国際的紛争解決の手段に用いるということは、憲法が自衛の名においても放棄いたしておると私は解釈いたしておるのであります。
  160. 三好始

    三好始君 只今の首相のお考えは十分に了解できました。ところで政府は従来しばしば外敵が侵入して来た場合には、国内治安維持の見地から国の総力を挙げてこれに当るのは当然である、こういう説明をせられておるのであります。この場合に「国の交戦権は、これを認めない。」という憲法の規定との関係がどういうふうに説明されるでしようか。この点をちよつと首相からお聞きしたいのであります。
  161. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 国の安全を守るために安全保障条約ができておるのであつて、保安隊のごときは日本の治安を維持するという必要上設けられるのであつて、憲法とは毛頭関係はないものと存じます。
  162. 三好始

    三好始君 そういたしますと、保安隊、警備隊は外敵が侵入して来てもこれには対抗しない、こういうことなんでしようか。
  163. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは日本に外国軍が侵入して来て日本の治安を乱す、その場合には日本の治安の維持のため警察隊は使います。
  164. 三好始

    三好始君 只今のお答えは外敵に対して対抗はするけれども、それは日本の治安維持のために行動するのだと、こういう御答弁だと了解いたしました。日本の国内治安維持のための行動だということになりますというと、侵入した外敵に対してどういう日本の国内法規を適用しようとせられるのか。これは大橋国務大臣でも結構ですから、お答え頂きたいと思います。
  165. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国内治安維持のための国の行動というものは、すべて国内法の規律するところでございまして、無論国内法によつて措置する以外にはないわけでございます。
  166. 三好始

    三好始君 国内法の規律するところであるということは、政府のお立場として先ほど承わつたわけでございますが、それをどういう国内法を適用しようとせられるのか。日本国内法としての刑法に規定しておる殺人罪であるとか、騒擾罪であるとか、こういう規定を適用しようとしておるのか、どういう法を適用しようとしておるというように、具体的なお考えを承わりたいのであります。
  167. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊或いは保安隊の活動は、警察予備隊令、或いは保安庁法による行動でございまして、或る治安潰乱の活動は、これは国内法上犯罪となろうと思いますが、これを阻止するために必要な実力を行使するということがその活動になるわけでございます。
  168. 三好始

    三好始君 具体的に外敵に対して適用される国内法はまだ準備せられておらないようでありますから、これは後ほど立案されたものを拝見いたしたいと思います。  次に政府は警察予備隊を設け、今回の保安庁法によつて保安隊、警備隊を設けられようとしておる意図がどこにあるかということは、すでに従来の本会議、委員会の速記録に極めて明瞭に現われておるのであります。私は首相が明らかにせられた点だけの一、二に指摘いたしたいのでありますが、例えば昭和二十五年七月十八日の参議院本会議の答弁におきまして、これは警察予備隊創設の理由を聞かれたことに対する答弁であつたのでありますが、「このたび警察力増強ということになりましたのは、朝鮮問題等に鑑みましても、いつ共産軍が日本の国土を侵すとか、治安を乱す、或いは又人心にどういう企らみをするかわからないというような不安がありますので、この不時の事変に備うるために警察力を増強いたすことにしたのであります。」、こういう答弁をせられております。又予算委員会におきましてはしばしばこれと同趣旨の答弁をされておる一つを申しますというと、「第九条は、国策遂行、いわゆる国際的何と申しますか国策遂行の機関として兵力を用いないということだけの話で、併しながら、国の自衛をすることは、拒んでおるのではないのであります。」、こういう答弁をせられておるのであります。これは大橋国務大臣、木村法務総裁、佐藤法制意見長官皆一貫しておる政府の立場なんでありますが、ここに明らかにされておる考え方は、外敵が侵入して来た場合には、これに対して抵抗することは当然な許された行動である、こういうお考えのようでありまして、これが果して憲法第九条第二項に抵触しないかどうかは大いに問題があるのでありまして、私たちは客観的には、恐らく憲法第九条の精神から言つて許されないことだろうと考えておるのであります。こういう外敵に対抗することが憲法上差支えないと政府はお考えになつて、こういうお答えが出たものと思うのでありますが、この点イエスかノーかどちらかで結構ですから、お答え頂きたいと思います。
  169. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 外敵が国内治安を乱した場合に保安隊が活動するということは、これは保安隊本来の任務でありまする国内治安の確保ということのための活動でございまして、このことは決して国の交戦権を否認するという憲法第九条の規定と矛盾するものではない。専ら国内治安確保のための問題である。これが政府の考えでございます。
  170. 三好始

    三好始君 この問題は時間の関係がありますから打切りまして、最後に首相に所信を質したいのでありますが、政府は国民の間に事実上の再軍備ではないかというような少くとも疑惑が相当あるような事実をお進めになつておるわけでありますが、こういう重大な問題を決定することは、占領下の、四年前の総選挙で当選した多数党の勢力を頼みとして強行するような性質の問題ではなくして、議会政治、民主政治のルールから申しましても、国民の審判を待つて正当なる手続を踏んで行うべきものと私は確信するのでありますが、首相の見解を明らかにせられたいのであります。
  171. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 私は再軍備はしないということはしばしば言明いたしておるのであつて、再軍備をしないという名に隠れてその実再軍備をしておるという国民の疑惑があるとするならば、これは疑惑を持つた国民のほうが悪い、誤解である、こう私は考えるのであります。又その誤解に基いて政府が変なことをいたしておれば、総選挙において自然その国民の疑惑が投票の上に現われると考える。終局の批判は国民がすることと思います。
  172. 三好始

    三好始君 私は終局の批判は国民がするという結論は同感でありますけれども、その批判の機会を作るべきである、こういう考え方に対してのお答えを頂きたいと思います。
  173. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは総選挙の場合において、総選挙をいたす場合において最終の批判が与えられるものと考えます。
  174. 三好始

    三好始君 私はこういう問題が国民の間に重要問題として起つて、いわば国論が分裂状態にあることを考えますというと、一日も早く国民に問うべき問題である、こう思うのでありますが、首相の見解を重ねて明らかにせられたいと思います。
  175. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは私がしばしば申しております通り、解散はいたしません。
  176. 三好始

    三好始君 私は政府が現在のような態度をとられることは、国際的に或いは疑惑を招くことになりはしないかを恐れるものであります。現にそういう兆候はいろいろな点に見受けられるのでありまして、例えばこれはかなり知られておる記事でありますが、ジヨセフ・フロム氏がこういうことを述べられた。私これを読んで非常に考えさせられたのであります。即ち「ワシントンでもロンドンでもモスクワでもはつきりわかつているものを、政治的方便のため、若しくはアメリカに再軍備費の負担をもう少し多く払わせようとして、東京では否定されているのだろう。(中略)日本が再軍備におずおず踏み出しているとき、なお戦争放棄の条項が修正されないでいる事実は、将来の立憲政治にとり脅威である。(中略)再軍備の問題で憲法をごまかせるとなれば、日本の民主制度の保持にとつて同じように肝要な他の問題についても、容易にごまかせるのである」、このことは日本人が言つておるのではなくして、海外から来ておる特派員がこういうことを指摘いたしておるのでありまして、国際的に非常に憂慮せられるような事態が起りはしないかを恐れるものでありますが、国際的な悪影響について政府は全然問題にする必要なしとの態度をおとりになつておるわけでありますか。
  177. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 私は何の懸念も持つておりません。事ごとに自主自主と言われておりながら、じき外国の新聞が何と言つたとか、外国の新聞記者がこう言つたとかいつて、それを金科玉条にせられることが、私は甚だ自主性を欠いておるのではないかと思つて残念に思つております。
  178. 三好始

    三好始君 時間がありませんから、最後に一言だけ首相の所信を質したいのであります。私は政府が現在までにとられておるような態度を続けられることは、単に吉田内閣は信を天下に失うということにとどまるならば非常に結構なことだと思うのでありますが、国家人心の将来に禍根を残すことがありはしないかを恐れるものであります。むしろ現在並びに後世の国民は、首相がこの際憲法上の手続をとつて、是非を国民に問うという態度に出られることの英断を示されることを唱えるに違いない、こういうふうに考えるのであります。これについての首相のお考えを最後に明らかにして頂きたいと思います。
  179. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 御意見として承わつておきます。
  180. 楠見義男

    ○楠見義男君 時間がないようでありますから私は端的に一つだけ総理にお伺いしたいと思うのであります。それは今般の行政機構の問題につきましては、いろいろ不十分の点、或いは問題の点があることについては、本日目頭波多野委員からお述べになつ通りであります。この点について率直に申しますと、総理は、恐らく担当閣僚その他の閣僚から今回は相当大きな機構改革が案として立てられたように或いは御報告になつておるかと思うのでありますが、率直に申しまして、私は今回の行政機構改革は、事務官的感覚においては機構改革とは言えるけれども、併し政治的な感覚或いは国民的感覚から言えば、体をなさんというと非常に言い過ぎでありますけれども、余り大した機構改革でないと思うのであります。これは極めて平俗なことを例にとつて申しますと、例えば印刷局が内閣印刷局から大蔵省の外局の印刷庁になり、或いは今回大蔵省の附属機関の印刷局になる。而も予算或いは人員について殆んど変更がない。こういうことは私は事務官的感覚から言えば非常に機構改革としては大きな改革だとは言えるかもわかりませんが、それ以外のより高い感覚から見れば、私は大した問題じやないと思うのです。併しこの点について、総理は十分に国会でも検討頂きたいというお話でありまするし、私どもも十分に検討したいと思つておりますが、その機構改革の中でも特に、よしあしは別にして、重要視することは、委員会制度の問題、それから保安庁の問題、それから電信電話公社の問題、これは私は批判は別にして機構改革だと思つております。ところがその重要視されている三つの中の保安庁の問題については、只今三好委員から御質問のあつた通りでありますが、私は時間がありませんから極く簡単に申しますが、従来の警察予備隊或いは海上保安庁の問題は、それぞれ担当大臣も従来とその性格、任務においては殆んど変りないということを言つておられる。然らば変りのないものを、而もその任務及び性格において海と陸で、一方は警察予備隊の、国家警察或いは地方警察の補助部隊である、一方は海難救助を主たる目的としているものである、こういうことになつて参りますと、何もこの際保安庁というものにまとめて、而も旧陸海軍省のように第一幕僚監部、第二幕僚監部、その幕僚監部を通じなければ仕事ができないような、旧陸海軍国時代に戻るようないかめしい組織編成にして、そして先ほども総理がお述べになつたように、国民が疑惑を抱いておれば国民が悪いとおつしやるけれども、そういう疑惑を抱かせるようなものに持つて行く、この必要はないのじやないか、こういうことを思うのでありますが、時間がありませんから、この点だけについて端的にお伺いしたい。
  181. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) この機構の問題について、いろいろな観点から御覧になつて、いろいろな欠点があるとか或いは不足があるとお考えになることがあるでありましようが、併し政府としては、一応保安庁というものでまとめて行つて、そうして統制というのもおかしな話でありますが、首尾一貫した体制で行きたいという必要を感じまして、ああいう保安庁を今度設けるわけであります。この設置の理由については、主管大臣から私の申した趣意を敷衍してすでに説明があつたろうと思いますが、政府の考えるところは、それ以外に何もないのであります。
  182. 松原一彦

    ○松原一彦君 首相の時間はもうございませんか。
  183. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 外国人との約束がおありになるのでもう退出されます。  委員諸君に申上げますが、なお引続いて両案の内容について御質疑を願います。
  184. 松原一彦

    ○松原一彦君 先般御要求申して置きましたが、第十六条第六項の衆議院修正に関するその趣旨について、衆議院側から来て頂くということでありましたが、この手続は如何なつていましようか。
  185. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) それは向うに言つてありますが……。
  186. 松原一彦

    ○松原一彦君 それは今日に来てもらうと大変都合がいいのですが。
  187. 楠見義男

    ○楠見義男君 三好委員から法務総裁の出席を求められているそうでありますから、法務総裁かお見えになるまで私質問をさせて頂きたいと思います。私は前回に引続いて各条についてその内容に関して御説明を煩わしたいと思うのでありますが、前回は第十七条までお尋ねいたしましたが、本日は第十八条以下についてお伺いいたしたいと思います。最初に第十九条の第四項でありますが、第一幕僚長第二幕僚長は、それぞれその所管の保安隊或いは警備隊の隊務に関し、最高の専門的助言者として長官を補佐する、こういう項が入つておるのでありますが、この項が設けられた理由について御説明を煩わしたいと思うのであります。お伺いしたい趣旨は、この最高の専門的助言なくしては保安庁長官はそれぞれの隊務に喙を容れることができぬ意味であるかどうか、こういう趣旨であります。
  188. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この専門的助言者ということの専門的という意味は、隊務は、大体これは実力部隊でありまして、その行動に直接携わるものは保安官或いは警備官でございます。その保安官又は警備官としての専門的立場から長官を補佐するというのが、この専門的助言者ということの専門的という意味でございます。而してその最高のという意味は、そういう立場のものは十一万人、或いは警備隊六千人の中にたくさんおるわけでございまして、その中の、階級の上からいつて或いは古参或いは最上の階級のものが常に幕僚長に任命されるとは限らないが、併しながら専門家としての、助言者としての立場においては、常にその者が保安官或いは警備官の助言者としての最高の職責を担うという意味で最高のということを用いたわけでございます。而してここに掲げてありまする補佐するという意味は、これは飽くまでも補佐機関でございまするからして、長官は、この補佐機関の補佐にその行動が制約されることはあり得ないのでございまして、従つて補佐なくして行動する場合は無論あるわけでございます。隊務に関して指揮監督するという場合においても、幕僚長乃至補佐は必要な要件ではございません。
  189. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に、第二十二条についてお伺いしますが、この第一幕僚監部及び第二幕僚監部の間の相互連絡の問題でありますが、この条が設けられた意味についてお伺いしたいのであります。お伺いする趣旨は、この規定はどういう場合を予想しておるのかということであります。又本来こういうような必要がある場合には、上級官と申しましようか、この保安庁の長官官房或いは各局において当然相互の連絡事務については明記すべきではないか、こういうふうな疑問がありますので、従つてその意味からお尋ねするわけであります。
  190. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 第二十二条は、法的には必ずしも必要な規定とは考えておりません。ただ従来この第一、第二の幕僚部の所属の組織というものは、一つは総理府の警察予備隊に属しておるもの、一つは運輸省の海上保安庁に属しておつたという沿革から見まして、かような規定を設けておくことが実際上連絡をとる上から言つて適切ではないかと考えました。いわゆる訓示的規定に過ぎないわけでございます。
  191. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に、第二十五条についてお伺いしますが、訓練施設その他の所要機関でありますが、こういうようなものは、第一幕僚長或いは第二幕僚長の監督を受ける機関とせずして、直接保安庁の附属機関となぜしないのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  192. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 保安庁の附属機関のうちには二通りに分けてございまして、保安隊、警備隊双方に共通の事項を処理いたしまする附属機関は、これは保安庁の長官の直接の監督を受けるものといたしまして、保安隊、警備隊のおのおのについての事務を処理するものにつきましては、それぞれ第一幕僚長又は第二幕僚長の監督を受ける訓練施設、こういうことにいたしたのでございまして、もとより保安庁の附属機関である点においては双方とも変りないのでございまして、これは保安庁長官指揮監督を排除するという意味ではございませんので、直接に第一幕僚長、又は第二の幕僚長の監督下に立つということだけを明らかにいたしたわけでございます。
  193. 楠見義男

    ○楠見義男君 次は第三十条の二項及び三項でありますが、これは、恐らくこの階級は従来の階級制度をそのまま踏襲されておるかとも思うのでありますが、従つてこの点について今更御質問するのも如何かと思いますけれども、私どもはなぜこういうふうに多くの階級を設けなければならないのか。特に一般官庁では、例えば昔の勅任官から奏任官、判任官、雇員に至るまで、事務官という、或いは技官という制度で補職制度で行われておるのでありますが、従つてこういうものについてもこういうようなことじやなしに、例えば隊組織で、小隊長、中隊長、大隊長、連隊長というような補職制度だけでもいいのじやないかというようなこと、或いは又一方陸では……陸と海で違つて、一方は保査については二階級、警査については三階級、どうしてこういうふうな区別をしなければならないのか。この点先ほど申上げたように、今更質問するのもどうかと思いますけれども、お伺いしておきたいと思います。
  194. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) お答えいたします。階級がこういうふうに分れておりまするのは、保安隊にしましても警備隊にしましても、特殊の部隊組織を持つておるのでありまして、只今申しましたように、大隊長、中隊長、小隊長、連隊長いろいろな組織を持つておりまする関係上、この隊組織と階級との睨み合せなどを考え併せましてこういう体系になつたのであります。それから小隊長、中隊長、大隊長など補職でいいのではないかという御意見であります。或る部隊についてはよろしうございますけれども、補給廠とか、病院とか、そういうところでは必ずしも補職では、一本では当らない場合が数限りなくあるわけであります。海につきましては一階級多いと申しますのは、船に乗込みまする関係上、陸のほうよりは比較的年の若い階級を置くに相当するだけの年若い年少な者を入れて補なつて行くということが必要なわけでありますので、その階級の分だけは一つ殖えておるわけでございます。
  195. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に、第三十三条について伺いますが、第三十三条の勤務期間の延長の問題でありますが、これは保査長或いは保査が任期満了によつて当然その職を去るということについて、特別に必要な場合にこういう規定の必要性もよくわかるのでありますが、これは本来契約による雇用と言いますか、こういうことだろうと思うのであります。従つてそれを一方的に延長する場合に、先般も江口次長でありましたか、或いは大橋大臣からでありましたか、本条設置の理由については御説明になり、大体了承いたしたのでありますが、例えば、その際にもお述べになつたように、非常事態出動中における場合、或いは待機命令が発せられた場合、こういう場合はその理由があると思うのでありますが、ここに書いてあるのは、前段のその非常事態の出動命令の場合だけであつて、そのほか、「その他」以降になりますと、その点が例えば待機命令が発せられておる場合だけに限るのか、或いはそれ以外の場合に限るのか、非常に不明確なのでありますが、この点についてもう少し御説明を敷衍して頂きたいと思います。
  196. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この条文といたしましては、御指摘のように、六十一条の規定により出動を命ぜられている場合、その他保安庁の任務遂行に重大な支障を及ぼすと認める場合と、こう抽象的に書いてありまして、疑問があるようでございまするが、政府といたしましては、この条文において重大な支障を及ぼすと認める場合は、待機命令の出た場合以外には全く考えておりません。
  197. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に、第三十四条についてお伺いしますが、非常に細かいことのようでありまするけれども、現在の警察予備隊につきましては、警察予備隊施行令第六条において、採用の場合は競争が原則で、選考が従になつているのでありますが、ところが本条においてはその主従の順序を逆にしているのでありますが、この点はどういう理由でそういうふうになつているのか、一応その事情だけを御説明を煩わしたいと思います。
  198. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) お答えいたします。競争試験のほうが二次的に現われているのではないかという御質問のようであります。確かにそういう点はございますが、先ほども御指摘になりましたように、非常に階級が多いのでございまして、その階級を一段上げることに競争試験を実施して行くということは非常に繁雑でございます。従いまして勤務実績のほうに重点を置きまして、例えば保査級から士補級に上るような場合、或いは士補級からそれ以上の幹部に上るような場合、そういう一グループごとの段階で上るような場合には競争試験をいたしまするが、それ以外は大体勤務実績に根拠をおいて昇任させて行くほうが便宜である、かように考えた次第でございます。
  199. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に第三十五条の第四号についてお伺いいたしますが「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者」この点でありますが、実は同様の規定が海上保安庁法にもありまして、これは大橋国務大臣、或いは警察予備隊関係のかたにはお尋ねはいたさなかつたので、海上保安庁のかたにお伺いいたしましたけれども、私はその際に、政府は共産党を破壊団体のごとく従来はしばしば公の席でも言つておられる。ところが治安をば主とするこの保安隊或いは予備隊において、この適格条項として書いてある四号の中に、日本共産党を含むのか含まないのか、該当するのか該当しないのか、こういうことをお尋ねしましたところ、そうしますと、海上保安庁のほうでは、日本共産党は該当しない。こういうような御答弁が先般の海上保安庁法の改正の際にあつたのでありますが、その考え方は現在もさようであるかどうか、これをお伺いいたしたいのであります。
  200. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) かような条文はひとり海上保安庁法ばかりではなく、公務員法等にもあるのでありまするが、政府といたしましては、これらの法令全般を通じまして、法律条項の解釈といたしましては、共産党は現在の段階においては該当しない。こういう取扱方式をいたしております。
  201. 楠見義男

    ○楠見義男君 次は第四十一条でありますが、或いは御配付を頂いた書類の中にあるかもわかりませんが、ちよつと見当りませんのでお伺いいたしますが、停年はどういうふうにお考えになつているのか。若し書類を頂いておれば、おつしやつて頂けば、後で探しますから……。
  202. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) これは各階級ことに停年を設けて行きたいと存じておりまするが、いろいろ目下研究中でございますけれども、最高級の幹部のほうにつきましては、昔の陸海軍などと違いまして、多少年齢を若くして行つてはどうかと考えております。只今事務的の案として持つておりまするものは、保安監或いは警備監につきましては六十歳くらい、それから保安監補、警備監補等につきましては五十五歳、或いは一等保安正、一等警備正などにつきましては五十歳というふうに、大体五年程度の差をつけて参りまして、一番下の階級の職員につきましては三十五年くらいを停年ということに考えて行つてはどうかと、目下数字など年齢の数を確定いたしたいと思つて研究中でございます。
  203. 楠見義男

    ○楠見義男君 それから次は第四十四条関係で、これは細かいことでありますから次長からお答え頂きたいのでありますが、四十四条の三項で「学生が前二項の規定により退校された場合には、当然退職するものとする。」私はこの規定からして、保安大学の学生というのは、例えば保安監、或いは警備監という一つの官名を持つてつて、その官名を持つておる人が、職名を持つておる人が、学生になつておる。従つて学生が退校になつた場合には、そういう不心得な人間でありますから、当然保安監なら保安監、或いは警備監も退職する、こういうような理解を条文から読んでしておつたのでありますが、先般の委員会における説明では、学生とそれから保安監、警備監というようなものとは全然別個のもののような御説明がありましたから、その御説明によつて多少疑問を生じて参つたのでありまするが、この辺はどうなんでしようか。
  204. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 階級は持つておりませんが、一種の職員であることは三十三条の四項にございまするが、これもやはり定員外ではありまするけれども、職員の一種に数えておりまするので、退校を命ぜられれば、その職員としての身分を失う。階級は持つておりませんけれども、その職員としての身分を失うという意味におきまして、こういう条項を置いた次第であります。
  205. 楠見義男

    ○楠見義男君 次は四十六条であります。これは多少意見に亘ることになつて恐縮なんですが、この公正審査会の組織とか、或いは内容は、大体現在の警察予備隊の場合におけると同様のような御説明があつたのでありますが、そこで意見に亘ると申しますのは、先ほどの委員会でお述べになつ趣旨はよくわかりますけれども、併し又一面から言えば、長官が、自分が審査の対象になるのでありますが、ということは、自分の職務に対して不服を申出た場合には審査会にかける、こういうことになるので、自分が審査の対象となるのに、自分任命する委員のうち三人は、これは現在の規定でありますが、うち三人は本部の課長以上、他は総監部の二等警察正以上というように、いわば直属の、直系卑属のような人がその審査官になるということは、結局名前は公正審査会ですけれども、公正に審査されないのじやないか。丁度現在の人事院の公正審査会のように、一般行政官庁から離れたところであれば、それは公正に審査できるのでありますが、お述べになるように、部外者ではなかなか専門的にはわからない。従つて部内のものがやることが適当だという、その御説明趣旨はよくわかるのでありますが、一面審査という観点から言えば、今申したように自分が審査の対象になるのに、自分の直系卑属が構成している。これでは公正を期し得ないのじやないかという意見に亘つて恐縮でございますが、そう思うのでありますが、その点はどういうふうにお考えになつておりましようか。
  206. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この点についての御質問は一応御尤ものように思いますが、この公正審査会は職務上は長官より独立いたしまして、一つの会議機関として与えられた任務を処理して行くわけでございまして、その点において長官がなした処分についての不服の申立であるという理由によつてその審査の上で出す判定というものに手心が加えられるというべき性質のものではない、全く独立の審査委員会であるというのがこの規定趣旨でございます。従いまして、この規定趣旨従つて運用するように万全を期することはもとよりでありまして、ややもすれば御指摘のような誤りたる運用が起りやすい点でありますが、政府といたしましても特に注意をしながら運用しなければならんとこう考えております。併し何分にも部隊の勤務というものは非常に一般の公務員とは違いました特殊の態様をなしている部分が多いものでございますから、自然審査の責に当るべき職員も保安庁の部内から出さざるを得ない状況であるのでこういうことにいたした次第であります。
  207. 楠見義男

    ○楠見義男君 委員長、私はまだ多少ありますけれども関連質問程度で、その時間で結構ですから……。
  208. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 楠見君に申上げますが、実は南方連絡事務局、それをやろうと思いましたところが、外務大臣がほかの委員会に行つているので、従つてまだ時間がございますが……。では休憩にしますか……。ちよつと速記をとめて……。    〔速記中止〕
  209. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 速記を始めて…。
  210. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじや一つだけ。六十一条ですね。六十一条で「出動を命じた日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。但し、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、」云々という規定があるのですが、こういうような重要な事態について勿論両院の事後の承認を求めることも必要でありましようが、同時に又現在の憲法五十四条の緊急集会ですね、衆議院解散の場合には参議院の緊急集会によつて承認を求める、この憲法五十四条の緊急集会のことをお考えにならなかつたのかどうか。若しお考えにならなかつたとすればその理由を伺わさして頂きたい。
  211. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この点は深く考究したわけでもございません。かような場合の一例として他の法律にこうした規定がありましたのでそれに倣つたわけでございます。その法律は地方公共団体に関する調停か何かの規定でそうした規定がございましたのでそれに従つて作つたわけでございます。
  212. 楠見義男

    ○楠見義男君 それではその立法例をあとで……。
  213. 三好始

    三好始君 繋ぎに、具体的な条文について一、二お伺いしたいと思います。第三十七条に、条件附任用の規定がありますが、条件附任用が必要な理由を先に伺つておきたいと思うのであります。
  214. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 条件附任用は現在の公務員制度において一般に採用せられているところでございまして、一般公務員についても条件附任用制度というものを設けております。従いまして保安隊、或いは警備隊の職員についても特に例外的に考える必要はないと存じまして、従つて一般の例によつて条件附任用を採用したわけでございます。
  215. 三好始

    三好始君 私は一般の場合の条件附任用の法律関係について余り聞いたことがなかつたのでこの際お尋ねをするわけでございますが、六カ月間の期間を勤務してその間に良好な成績であれば正式の任用になる、こういうわけでございますが、この六カ月という期間をつけての条件附任用は民法のいわば解除条件ということと法律関係は同じようなことになるのでしようか。
  216. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは私も専門的に余り研究いたしておりませんが、只今申上げました公務員法五十九条にやはり「一般職に属するすべての官職に対する職員の採用又は昇任は、すべて条件附のものとし、その職員が、その官職において六月を下らない期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。」こういうことになつております。従いまして一般的な法律常識としてこれを解釈いたしますると、この六ヵ月間においては採用、或いは承認されましたその者の地位に伴うところの地位の保障が未だ発生していない、でこれが発生していないという点は停止条件であると思います。つまり身分の保障については停止的な効果を持つておることで、そうしてその間職務を良好な成績で遂行したときには自動的に正式のものとなるのでありますが、その間取消されるということはあり得るわけでありまして、取消された場合にはその新らしい地位全体が消滅するのでありますから、そういう意味においては解除条件的な効果があると思います。ものによつて停止的な部分と、解除的な部分と効果には二通りあると存じます。
  217. 三好始

    三好始君 良好な成績で職務を遂行したときに正式なものになるということでありますが、一般の場合にもこういう表現を使つておるわけですから保安庁関係に特有のものではないとも言えるのでありますが、良好な成績という判定は具体的にどういうふうに下すことになつておるのでしようか。
  218. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは良好の成績を以て勤務の六ヵ月の試みの期間を満了したということを認定して初めて正式のものとなるという規定になつておりますが一実際の取扱といたしましては六カ月間に取消が自動的に正式なものとなる、こういうわけでございます。従いまして特に良好な成績で六カ月を終了するということは要件にあらずして、取消されるような大なる失態がなくしてその期間を経過すれば、月動的にその地位が保障される、これが現在の実際上の慣行であると存じております。予備隊においても同様に処理いたしたいと存じております。
  219. 三好始

    三好始君 私は必ずしも順序を追つてお尋ねするわけではありませんが、六十一条の命令、出動の規定であります。これは保安隊、警備隊が出動する場合の条件を規定しておる非常に重要な箇条だと思うのでありますが、先ほどもちよつと問題にしましたように、非常事態に際して出動するという非常事態は、どういう範囲を非常事態と考えておるのか。これは解釈の仕方によつては非常に弾力性があるだけに、範囲は限界がないということになるのですが、今お考えになつておる範囲はどの程度のことを予想されておるのですか。
  220. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 六十一条に掲げてありまする非常事態は単なる天災地変とか、そういうものを含んでおるのではなく、無論天災地変の場合を絶対に排斥する意味ではございませんが、国内治安の確保の上におきまして、自治体警察或いは国家地方警察の警察力を以ては処理しがたいということが判定される、そういう事態を非常事態と、こう考えておる次第でございます。
  221. 三好始

    三好始君 そういたしますと、たびたび私が使つた言葉でありますが、外敵が侵入して来た場合にも勿論非常事態として命令出動が考えられる、こういうわけですか。
  222. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そのために当然治安の維持ということが普通警察力を以て期待できないという状態が予想されますので、そういう場合は無論非常事態の一場合と考えて然るべきだと存じます。
  223. 三好始

    三好始君 保安隊、又は警備隊が全部出動するというような場合は全国的な内乱であるとか、或いは先ほど出ましたような外敵侵入の場合であるとか、こういう場合が専ら予想されるわけでありますが、全部出動を予想している政府の予想はどういう場合ですか。
  224. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 保安隊の、十一万の部隊のうちどの程度の部隊を出動させるかということは、全く事態によるわけでございまして、警察力を以て収拾し得ない事態を保安隊の実力によつて収拾する、その際において保安隊のどれだけの部隊を出動させることがその事態収拾に必要であるかという観点から決定されるべきものである、こう考えております。
  225. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  226. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 速記を始めて下さい。  諸君にお諮りいたします。保安庁法案ほか一案の審議はこの程度にとどめておきまして、南方連絡事務局設置法案の審議に入りたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。さように決します。南方連絡事務局設置法案を議題といたします。
  228. 竹下豐次

    竹下豐次君 私この前の委員会の際に質問いたしまして、答弁を留保されておりましたが、その準備がもうできているだろうと思つておりますから、御説明願いたいと思います。
  229. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この前の内閣委員会におきまして、栗栖委員竹下委員から御質問があつたようでございまして、栗栖さんの御質問は、たしか南西、南方諸島の領土の帰属及びその住民の国籍問題について、条約締結後における対米交渉の経過はどうなつておるかというような御質問であつたと思うのであります。  この南西、南方諸島は御案内のように平和条約第二条によりまして、日本がすべての権利、権原及び請求権を放棄しました地域とは異なつておりまして、その領有権は日本にあり、日本国の領土の一部分であることには変りはないのでございまして、従いまして主権は日本にあり、又島民の国籍も日本国籍という観念を持つておるのでありまして、その国籍とか領土の問題について対米交渉を行なつたことはないのでございます。  それから信託統治の問題につきまして、只今までのところまだ先方から何らの提案も行われていない、こういうことでございます。  それから竹下委員の御質問はたしか南西諸島における現地住民の政治、経済文化等の諸問題に関する要望はどうなつておるか。こういう御質問であつたかと思いますが、これは御案内のごとく沖繩、奄美大島両島民は、一日も早く日本に復帰したいという非常に熱願に燃えているようでございまして、今年の四月一日から発足いたしました新政府の下においても、議会その他でやはり一日も早く日本に復帰したいというような議決もいたしておるような次第でございまして、それからアメリカ関係の人々のいろいろの声明、メツセージ等を見ましても、軍事目的に支障のない限り日本との旅行、通信、通商上のすべての不必要な制限を除く、こういうこともしばしば声明されておるのであります。それで現実の問題といたしましては、出入国管理令の改正等によりまして、向うから日本に来るのはもう全然今自由になつております。それから船の航海関係などの問題についても、よほど制限が取除かれたものと思つております。国旗の掲揚などについてもプライベイトに掲揚するという場合は、これは一向差支えないということになつております。  それから物資の交易関係でありまするが、これは先方がドル払になつておる関係上、その支払関係はそういうことになつておりますが、互いに関税の障壁があるとかというようなことは一切なくなつております。それから恩給法であるとか、或いは遺族援護法、こういう属人主義と言いますか、対人関係法律は、法としては施行になつていることは勿論であります。その金の受取と言いますかそういう事務につきまして、若干まだ先方といろいろ協議し直さなければならん点があるのであります。そういう点の折衝が一部残つているようであります。日本側として措置できますことはどんどんやつておりますし、先方の了解を得なければやれないようなことにつきましては、その了解を得るように努めて一刻も早く島民の要望に副いたいというふうに努力をしておるのであります。
  230. 竹下豐次

    竹下豐次君 成るべく早く日本に復帰したいという希望のあるということは承知しておりましたですが、それまでの間においてこれこれのことをしてもらいたいのだという希望がいろいろあるだろう、未解決の部分相当あるのだろうと思つておるのですが、今の次官の御説明によると幾らもなさそうで、解決すべきものは大体解決したのだというようなふうの御説明にも受取られたのですが、その点如何でしようか。まだ大分希望が達せられないで解決を急いでおるというような点が大分あるのじやないですか。
  231. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 先ほど主なる問題について申上げたのでありまするが、奄美大島日本復帰に関する日本政府への要望事項、こういうものを拾つて見ますると、まだいろいろな問題がたくさんございまするが、今まで双方の努力によりましてだんだん解決されて来た問題を先ほど例示的に挙げたのでございまして、又教育の問題におきましてもいろいろ問題が残つております。
  232. 竹下豐次

    竹下豐次君 残つておりますなら、みんなお話なさらないでもようございますから、主だつたものだけでも未解決の分を承わりたいと思います。
  233. 剱木亨弘

    政府委員(剱木亨弘君) 只今の点申上げたいと思います。まだ未解決の、今度南方連絡事務局を設置いたしますと、差当り解決しなければならん問題につきまして申上げます。その一つは恩給の支払でございます。恩給はずつと支払ができておりませんが、恩給権利者がおりますのでこれに対して恩給の支払事務が早速問題になつて参ります。それから今まで元政府職員でありましてその政府職員に対しまして俸給が未払になつておるものがございますし、それから退職金の未払になつておるものがございます。これを調査いたしましてやらなければなりません。それから未復員者及び未帰還者に対する給与の支給が未解決に残つております。その次にこの遺族等の援護に関しまするものがこれも又解決しなければなりません。この金銭的な問題は大体主なものは四つでございますが、なお日本といたしましては復員業務でございますとか、それから遺骨の処理でございますとか、そういう問題が差当り残つております。
  234. 竹下豐次

    竹下豐次君 取引の問題等につきましては今自由にできるわけでありますか。
  235. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 向うからこちらに来る人の関係については先ほど申上げましたように自由に入れるようになりました。こちらから向うに参りますのはまだたしか全然自由にはなつておらないと思いますが、取引関係は先ほども申しましたように向うがドル関係になつておりますので、ドル払になりまする関係上一応制約は受けておりまするが、関税を設けて互いに税金をとるとか、そういうことは一切なくなつているように聞いております。
  236. 松原一彦

    ○松原一彦君 石原次官にお聞きしたいのですが、先般ちよつとお話もあつたようですが、小笠原の住民が非常に帰島を願つておるのですが、今残つておるのは白系の原住民だけでまだ一人も復帰しないりじやないかと思うのですが、その状態を一つお話して頂きたいのです。人数、所在、今後の見通し等について承わりたいのです。
  237. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 小笠原島民の向うへの復帰につつきましてはこれはもう非常な熱烈なる願いでございまして、只今お話のありましたように一応向うに帰りましたのはたしか百三十五名か何かの欧米糸の子孫と申しますか、の人たちであります。併しこれは宗教関係と言いますか、横浜のキリスト教教会あたりを通じて政府の関係でなしに向うに復帰が許されたようであります。その他の島民につきましては、これは今までもたびたび口頭又は文書を以ちまして総司令部時代にも願い出ておつたようでありまするが、どういうわけで帰れないかというようなことにつきましても何らの説明もなく未だに認められていない。今回アメリカ大使館ができましてマーフイー大使等を通じましても引続きいろいろのお願いをしておるのであります偽が、未だに結論に達しておりません。それから新木大使がアメリカに行かれるにつきましても、これは新木大使の一つのお願いする問題として小笠原島民の復帰ということも掲げておりまするが、我々も帰れない理由がよくわからないのでありまするけれども、国務省と国防省、いろいろの立場等によりまして未だ完全な解決を見ていないのではないかと思つております。引続き政府といたしましても努力をし、今後も続けて行きたいということを申上げておきたいと思います。
  238. 松原一彦

    ○松原一彦君 その政府の御苦心はわかりますが、ソ連に対する不平は向うに抑留して日本に帰さないことである。それと丁度裏腹で、小笠原に長く居ついて開墾をして暮しておつた人間が日本に帰えされて逆の現象を起しておる。日本民族は日本の憲法において人種等いろいろ差別は設けられていないにもかかわらず白系の者だけ帰島を許され、そうして従来の日本国民としていた者は帰島を許されず財産もそのままに残つておる、こういうことになりますとどうも我々には合点がいかないのであります。未帰還者に対しましては家族の留守手当とかいろいろなこともありますが、これは日本内地をさすらつておるというような形であつて、必ずしも定住はしておらん、救済の手を伸べなければならない者もあるやに聞いておるのでありますが、一体今日帰還をああして朝に夕に熱望しておる小笠原島民というものが何人ぐらいおつて、今どういう状態にあるかのお調べがありましたら伺いたいのです。
  239. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 大体七千名ぐらいおるようでございまして、東京中心に千葉、神奈川、静岡、こういう所におるようでありまして、全部とは言えませんが、大多数の人が余りいい暮しをしていないのではないかと、かように思つています。それで我々といたしましてもどうして復帰が認められないのか、松原委員も合点が行かないとおつしやいましたが、我々といたしましてもちよつと合点が行きかねておるのであります。今後とも努力を続けたいと思つております。
  240. 松原一彦

    ○松原一彦君 これはソ連における未帰還者と同じ意味において私は非常に遺憾に堪えないのであります。土地をと取上げておつて而もそれに対する補償はしていない。転々として七、八年間というものはさすらいの旅を続けておるといつたような状態で生活の基礎がない、又落着いて内地におろうともしない。やはり故郷忘じがたしで朝に夕に小笠原に帰りたいのであります。この人たちに対しては政府において援助の手でも伸べられておるのであろうか。何かあるでしようか。援助の手でも伸べられておるといつた事実が……。
  241. 竹下豐次

    竹下豐次君 今のに関連して何か私政府では言いにくい点があるのではないかと思いますが、都合では速記をとめて秘密話でも承わることができたらいいかと思いますが、どうでしようか。
  242. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 速記をとめる必要がないということですが……。
  243. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 先ほどから申上げましたように、この復帰の認められないのは、もう我々もこういうことをここで言つていいか悪いかわかりませんが、合点が行きかねるのでありまして、帰化人と言いますか、欧米系の百三十五名はもうすでに早く帰国を許されておる。その後帰されないということについて、文字通り我々も納得しかねるのでありまして何らそこに速記をとめて申上げるような何ものもここにはございません。
  244. 竹下豐次

    竹下豐次君 私日本の政府としては、こういう理由があるから承知してくれということを申出ておるはずだと思う。それについては向がちよつとそれは困るということを、何らかの理由を挙げてそれを拒絶しておられるのだろうと思うのです。それがちよつと速記があつては工合が悪いというような部面がありはしないかと思いましたので、速記をとめてでも聞かせて頂きたい、こういうことを申しておるのでありまして、ただわからないという、話がなくてわからないはずはないと私は思うのです。何かあるはずだと思いますが。
  245. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これはまだこちらから何回も申入れておることに対しまして、正式に向うから、こういう理由でいけないとか何とかいう文書の回答もないのです。今ないのです。それでこれは一方国務省の系統の立場、それから小笠原関係はたしかハワイに本部があつた極東海軍司令部と言いますか、海軍の関係の系統でありまて、そういうことからいろいろはつきりしたものが急に出なかつたのじやないかと思うのでありまするが、何にもないのです。だからもう申上げることがないと、誠に残念なことですが……。
  246. 松原一彦

    ○松原一彦君 それはその石原政務次官にも私一つ詰問したいのだが、鉄のカーテンの向うならば談判もできんということもありますけれども、朝に晩に顔を会わせておられるアメリカ大使館のかたがたに事を分けてお話になれば、ソ連の狸穴のようなものではなかろうと思う。何か打てば響くものがありそうな、殊に人道主義を標榜し、日本と行政協定まで結んでおるアメリカが余りに理不尽だと私は不満を持つのです。これは手当も何もせずに七千人以上の人間をさすらわせておる。彼らはもう首がちぎれるほど待ち切つておるのです。それをソ連に向つて話をするというのはむずかしいけれども、米国大使館に話をするのはそうむずかしいはずはないから、一つ思い切つて強談判でも一つやつて頂いて理由を明らかにして御報告を頂きたいものだと思います。
  247. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは小笠原島民のいろいろ促進連盟と言いますか、団体等もたくさんありまして、それらの民間団体においても直接いろいろ動きをしております。米大使館等にも陳情書を出したりいろいろやつておりまするが、これは御意見もございまするので、更に協力と言えば語弊があるかも知れませんが、熱意を以て一段と米国大使館を通じて折衝するように努力いたしたいと思います。
  248. 松原一彦

    ○松原一彦君 願います。
  249. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 その七千人の浮浪して、さすらつておる人たちに対して、政府のほうでは、今聞いておると何ら手を尽していないというような話ですが、やはり政府のほうでは、こういう人たちに対する援護の手を伸べながら、とにかく日本内地におつたのじや定着できないのだから、早く小笠原に帰してもらいたいというふうに言つて行かないと、非常に進まんのじやないか。ただ放つて置けば内地で生活できるじやないかと彼らは言うかも知れない。そういう点はどうなつておるのですか。
  250. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは一般国民と同じような意味での保護は受けておるのでありまして、まあ生活保護法とかはあるわけでありまするが、併し誠に気の毒な特殊な事由によつて帰れないのでありますから、これは御意見のごとく、やはりこれがいま少しくまだ長びく、前途もわからんということであれば、何らか特別の措置を厚生省あたりと研究いたしまして、講じなければならない問題ではないかとも考えております。
  251. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そういうことは我々知らずにおつたのですけれども、話を聞いて見ると実にけしからんですよ。で、そういうことについては政府のほうで、それこそ特別の法律案でも出して、特別の援護の手を伸べるようにしたらどうです。かわいそうですよ、それは……。黙つて見ておるのはおかしいですよ。政府は怠慢だと思う。(「賛成」と呼ぶ者あり)何か法律案を次回の国会にでも出す気があるのですか。外務省のほうで特別の法律案でも出す用意をしているかどうか、それを聞きたいのです。
  252. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) もう帰れるか帰れるかというような気持でおりましたので、外務省として特別の法律案等を考えて準備したいというようなことは今のところ何ら考えておりませんでした。併しいろいろ御意見でありまするので、余り長びくようであれば厚生省当局と十分打合せをいたしたいと思います。
  253. 松原一彦

    ○松原一彦君 もう日もありませんけれども、若し延会になつてここで一息つくときが来ましたならば、あれは立派な組織を持つておりますから、総代の二、三人でも呼んで、一つ一応実情を聞こうじやありませんか。これはもう長い間苦しみ抜いておるのですから、一つ一遍来てもらつて、懇談的にでも私は聞きたいと思うが、一つ専門員のほうでもお取計らい願いたいのです。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  254. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) もう御質疑はありませんか。……それでは質疑は尽きたものと認めて御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) それでは質疑は終了したものと認めます。  次に討論に入ります。
  256. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 私はこの原案に賛成するのでありますが、ただこれは技術的な問題でありまするけれども、修正をいたしたいと思うのであります。それは附則の第三項の定員法の問題でございますが、ここに提案されておりまするところの内容は、御承知の通りこの機構が新らしくできるために、二十七名が殖えることになるのでございます。併しながらそのうちの六名は外務省からこちらのほうに移すこととなりまして、新らしく殖えるのは二十一人ということになりまして、そうしてここに定員法の数字が掲げられておるわけでございます。ところがこの基礎となつておりまするところの本府の千八百十二人という数字は現在衆議院にも出ておりまして、参議院のこの委員会において審議中の行政機関職員定員法の一部を改正する法律案があるのでありますが、この原案に千八百十二人となつておるのでありますけれども、実際の現状はどうなつておるかと申しますと、千七百六十九人なのであります。これが現在審議中の各省設置法通りまするというと、この現在提案されている定員法の千八百十二人ということになりまして、そうしてそれを基礎として、二十七人殖えるという数字に、この南方連絡事務設置法における定員がなつております。こういうような関係から非常に数字的に錯綜いたしておるのでありまして、この際この部分を一応除いておきまして、七月一日から実施されるのでありますから、この国会中に別の行政機関職員定員法の一部を改正する法律案のときに、全部を整理したあとに、そこで修正したほうがよかろう、こういうふうに考えまして、この附則の第三項を一応この際に削除いたしておきたい、こういう技術的な関係から修正案をここに提案するのであります。  修正案は南方連絡事務局設置法案の一部を次のように修正する。  附則第三項を削り、第四項を第三項とする。  こういうのでありますが、その内容は只今申上げた通りでございまするので、皆さんの御賛成を得たいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  257. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は只今提案になつております南方連絡事務局設置法案につきましては、只今鈴木委員から御提案になりました修正意見を含めて、全体を賛成いたします。
  258. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 他に御発言がありませんと認めまして、採決をいたします。只今鈴木君の発議されました修正案を含めまして、南方連絡事務局設置法案を可とする諸君の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  259. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 全会一致であります。よつて本案は可決すべきものと議決せられました。つきましては賛成西諸君の御署名を願います。   多数意見者署名   中川 幸平   鈴木 直人   成瀬 幡治   桶瀬 常猪   草葉 隆圓   横尾  龍   波多野 鼎   竹下 豐次   楠見 義男   三好  始   松原 一彦   栗栖 赳夫   上條 愛一
  260. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) なお委員長の報告は、委員長に御一任願いまして、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  262. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 ちよつと政務次官にお、聞きしておきたいのですが、簡単な時間でいいのですが、事柄は簡単じやないと思います。短かい時間でちよつと要領だけ申上げます。昨日の夕刊を見まして驚いたのでありますが、それは貿易業者の集まりで、マーフイー大使が演説をされたという記事が出ておる。その記事の内容として出ておつたことについて、驚くと共に多少の疑惑を持つたのです。それはこういう点なのですよ。ソ連地区と日本との貿易問題について、大使が発言しておられます。その大使の発言の内容については、私自身は大した異論はないのでありますが、この問題は御承知のように現在我が国内における一つの政治問題とさえなつておる問題であります。その問題についてああいう公開の席上で、一方の議論に加担し、他方の議論に反対するというような、そういう演説をされたということが、一体どういう意味を持つものか。従来の独立国間の国際外交間のエチケツトと申しますか、そういう面から見て何も不思議なことではないのか、或いは多少不思議なことであるのか。そういう点についての外務省の御見解を先ず伺いたい。ああいうことは当り前のことなのかどうか。
  263. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) どうもこれは私からお答えするのはちよつとむずかしい問題なのでありますが、併しこれは只今中共貿易の問題であるとか、ああいうことが非常に日本の業界、まあ大きく言えば朝野を挙げていろいろ論議されておりまするので、マーフイー大使はそういう問題を中心に、自分としての所見を述べられたものと思うのでありまして、私は外交の専門家でございませんので、従来の観念からそういうものがどう批判されるべきかということにつきましては、よく存じませんが、只今当面の経済問題について、一応自分の所信を披瀝されたということではないかと思います。
  264. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今政務次官の答弁を聞いて、非常に私は遺憾に思うのです。ああいう新聞記事を見て、何ら不思議な感じを起さなかつたということは、私はおかしいと思うのです。ああいうことが独立国間の外交関係として、これをやつて行つた上において、当り前なことかどうかくらいの疑問は起すべきなのです。いつまでも占領されているという自覚を持つてつたのでは駄目なのです。衆議院のほうで腰抜け外交とか何とか言うけれども、私はそんな言葉は使いたくないのだが、もう少し注意してもらいたい。ピントが……政治的な感覚を働かしてもらいたい。そうでなかつたら日本の外交はよく行きませんですよ。特にあの問題については、国会内でも非常に大きな動きもあり、朝野を挙げて重大な問題となつている。その問題についてですよ、一方の見解を支持し、一方の見解を非難するというような発言が国際慣例上正当なことなのかどうか、ということを私は非常に疑問に思うので、次の機会に外務省の見解を一つ明らかにしてもらいたい。そうしてどういう態度を外務省においてとるかということについての一つ御弁解を願いたい。
  265. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) それでは本日はこの程度において散会しようと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  266. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。  では内閣委員会はこれを以て本日は散会いたします。    午後四時四十九分散会