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政府委員(三橋則雄君) 先般の私の御
説明が或いは不十分で、いろいろと誤解を生じたかと思いますが、改めて御
説明を申上げます。軍人軍属に、又遺族に従来給されておりました恩給と言いますると、いろいろございまして、普通恩給、増加恩給傷病年金、扶助料、一時恩給、一時扶助料、傷病賜金、こういうような各種の種類があ
つたのでございます。これをこういうふうな各種類のものをひつくるめまして、
恩給法におきましては恩給と称しておるわけでございますが、これら各種の恩給の中におきまして、傷病者に給せられておりました恩給につきましては、
恩給法の特例によりまして従来と変
つた姿によ
つて給せられることになり、そのほかの恩給につきましては、
恩給法の特例によ
つて廃止せられてしま
つたものであると、こういうふうに
考えておるわけであります。それならどうして廃止というふうに解するかということが問題になるわけであります。この廃止ということを
はつきり現わしますために
恩給法の特例の第一條におきまして「軍人若ハ準軍人——又ハ此等ノ者ノ遺族タルニ因ル左ノ各号二掲グル恩給ハ之ヲ給セズ」とこういうふうに
はつきりと「給セズ」とこういうふうな表現をいたしたのでございます。そして第一條に、普通恩給その他の廃止されるべき恩給を列挙したのでございます。次に「給セズ」という言葉がそれならば恩給を與えないという表現になるかということが問題にになるかと思います。
恩給法におきまする用語の使い方といたしまして、恩給権を與える場合におきましては、
恩給法の中におきまして、「恩給ヲ給ス」という言葉を使
つております。それから恩給を與えない場合におきましては、「恩給ヲ給セズ」という言葉を使
つておるのであります。その
恩給法の中の用語に従いまして、特例の第一條の場合にも「給セズ」という言葉を使
つたのでございます。かような次第でございまするから恩給を「給セズ」とこう書いておる第一條は恩給を廃止してしま
つた趣旨である。こういうように私は
考えているのであります。それから先般の御
質疑の際に停止という言葉がございまして、恩給を停止したのではないかというお尋ねがあ
つたのでございまするが、恩給の停止という言葉も
恩給法では使
つております。
恩給法で恩給の停止と言いまする場合につきましては恩給権につきまして二つの場合を
考えてこれを解釈しなければいけないと思うのでありますが恩給権と私たちが言いまする場合は、恩給を受けるところの基本権を言う場合もありまするし、それからこの基本権に基きまして郵便局に行き恩給の支払いを求める場合の恩給請求権を言う場合もあるのであります。この後者の場合におきましては支分権とか、或いは支分的恩給権と私たちは呼んでおります、
恩給法におきまして恩給停止と申しまする場合には、基本的な恩給権そのものを与えておいて、そうして郵便局で、平たく申しまするならば郵便局における恩給の支払いをとめる場合を恩給停止と、こう申しておるのであります。そうして軍人軍属のかたがたの普通恩給をとめましたが、これは基本的な恩給権そのものは与えてお
つて、ただ單に恩給を郵便局で支払わない、こういうことでございますならば、これは確かに恩給停止なのでございます。その場合におきましては恩給を給せずという表現は使わないで恩給を停止するというふうに表現を変えておるべきであると、かように
考えるのでございます。この第一條に「恩給ヲ給セズ」と書いてございますのは、これは恩給を廃止してしま
つたことでございます。それではどうしてこれを廃止したかということになるのでございますか、これは終戦の直後に総司令部からきついヂイレクテイヴを受けまして、恩給を廃止してしまえと、こういうような指図を受けましたので、その当時
政府といたしましては、でき得る限り総司令部に懇請いたしまして、これに対しまする緩和方を求めたのでありますが、どうしても許されないために、止むなく指令に応じた措置をと
つた次第であります。
それから次に根源云々の問題でございますが、それは私の言葉が不十分でございまして、大変御迷惑をかけたと思いますが、軍人も軍属も
恩給法上の公務員であることはこれは間違いないのでございます。又
恩給法上の公務員としての取扱は現在も受けております。それは軍人、軍属に関する
規定を
恩給法の中から削除はいたしましたけれども、削除をいたしました際に、なお従前の
通り取扱をするという
規定を置いておりますることからいたしましても、軍人、軍属は
恩給法上の公務員であることもこれは間違いないのであります。
恩給法の劈頭に、「公務員及其ノ遺族ハ本法ノ定ムル所二依リ恩給ヲ受クルノ権利ヲ有ス」と、こういうように書いてあるのでございまして、この第一條には私は軍人、軍属及びその遺族もすべて入
つておるものと、こう
考えております。そういう点から
考えまして、私は根源そのものが残
つている、こういうように
考えておるのでございますが、ただ「本法ノ定ムル所二依リ」と、こう書いてありまするところからいたしまして、
恩給法におきましては軍人、軍属その遺族には恩給を給するということにな
つておるにかかわらず、この特例のほうで以て制限されて、そうして遺族その他には恩給が行かないようなことにな
つて来ておる。こういうようなことでございまして、その一番元にな
つておるところの「本法ノ定ムル所二依リ恩給ヲ受クルノ権利ヲ有ス」、そのことだけは私は依然として残されておる、こういうように
考えて飾るのであります。