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政府委員(
三橋則雄君) 第一点は、
人事院から新しい
恩給制度が勧告せられる場合におきまして、
人事院は
軍人恩給の
復元に関することも
考慮に入れて勧告されるかどうかというようなお尋ねではないかと思うのでありますが、これは私まだ何も聞いておりませんが、私の意見を申上げますならば
軍人の
恩給が
復元を仮にされるということになりますれば
恩給制度の運営を、まあゆすぶるといいますか左右するものは
文官の
恩給制度如何というよりも、
軍人恩給制度如何ということであ
つて、これが大きく取上げられるのではないかというような気がするのです。併し、
軍人恩給の
取扱い如何によ
つて私はこの問題はいろいろ変
つて来るのではないかと思いますし、恐らく
人事院もその点を
考慮して勧告してくれるのではないかと想像しておるのですが、まだそれははつきりいたしておりません。
それから第二の点でございますが、これにつきましては少しく御
説明申上げなければならないと思います。それで少しくくどくどしいようなことを申上げて恐縮ですが御
説明申しますが、御
承知の
通り法律の
規定によりまして
退職当時の
俸給を
基礎といたしまして、
恩給金額を計算いたしております。従来
公務員の
俸給の
支給水準が
引上げられました際におきましては、
引上げられる前に
退職した
年金恩給受給者の
恩給年額は
増額改定いたしております。その
増額改定はどういうふうにして
増額改定したかと申しますると、この
俸給支給水準が
引上げられまする前の
俸給制度の中の
俸給の
金額、これが仮に申しますならば、一千円、二千円、三千円、四千円、五千円、八千円と、こういうふうにな
つておるといたします。それが新しいこの
俸給制度の中におきましては、一万円、二万円、三万円、四万円、五万円、八万円と、こう
なつたといたします。そうしますれば、
俸給支給水準の
引上げの前後におけるこの
二つの
俸給制度の中の
俸給金額を彼此対応させまして、そうしてこの今の例で申しますならば、一千円は一万円に、二千円は二万円、三千円は三万円、四千円は四万円、八千円は八万円、こういうように対応するものと想定いたしまして、そうしてこの
給与支給水準の
引上げ前の一千円の
俸給で
恩給の
金額が計算されているものに対しましては一万円で、二千円で計算されたものは二万円で、こういうふうにこの新らしい
対応俸給金額によ
つて恩給金額を計算し直しておるわけであります。これは
給与ベースの
引上げがありました場合において新らしい
俸給制度、古い
俸給制度の
相互間におけるところの
俸給金額そのものの移り変りによる
貨幣価値の
変動、それだけを
恩給の面で
調整するという
趣旨に基いて来ているわけです。
従つてそういう
趣旨でいたしておりまするからして、この新旧両
俸給制度の中におきまするところの、
俸給金額の
価値の
変動によるところの
恩給金額の
調整は、これはできておるものと考えられます。これについてはいろいろの見方が人によ
つてありますが、
調整につきましてはそう大きな狂いはなかろうとこう考えております。併しそれにもかかわらず、今仰せになりますごとくにいろいろと不
均衡とかいろいろやかまし言われおりまして、これはどういうところから出て来ておるか、これが問題にな
つて来ております。それはどういうところから起
つて来ておるかと申しますると、
俸給の
引上げられまするのは、これは
俸給のきめ方といいましようか、まあきめ方と
一言簡單に言
つておきましよう。
俸給のきめ方が変
つた場合、それから
給与待遇が改善された場合、
俸給のきめ方以外に
給与改善が行われた、こういうような場合に或る
特定の
公務員だけが
俸給が上る場合がいろいろあるわけです。それをもう少し詳しく申上げますと、前段で申上げました
俸給のきめ方が変
つた結果、或る
特定の
公務員の
俸給が多くなる。これはどういう場合であるかと申しますると、
戦争前におきましては今日ほどにこの
在職年数とか
学歴というものは
俸給をきめる上においてやかましく考えられていなか
つたように思うのであります。
職階制が布かれましてからというものは、
俸給をきめますのに、
在職年或いは
学歴というものが戦前以上にやかましく重く見られております。
従つて同じく
俸給をもら
つてお
つた者であるにかかわらず、その
制度の切換えられた後、即ち新
制度が布かれた後におきましては
在職年がただ長いということだけによ
つて或いは大学を出ているということだけで、ほかに大した腕がないにかかわらず、今まで同じ
金額をもら
つてお
つた同僚を引離して
俸給が
増額されているようなことにな
つて来たのであります。そこでそういうような
俸給のきめ方が変えられた後に、その
恩恵に浴した人とその前に
退職して
恩恵に浴していない人を比較いたしますと、相対的には
恩恵に浴した人のほうが
恩恵に浴しなか
つた人よりも
俸給が割がいいということになる。
従つて俸給が割がいいだけそれだけその人は
恩給の割がよくな
つて来ておるということが言えるわけです。
それから又私はその他の
給与待遇の
改善云々と申上げましたが、それはこの
終戦の後におきまして、例えば
警察監獄職員、或いは
教育職員につきましては、従来の
待遇が非常に改善されております。
戦争前におきましては、御
承知の
通りに
警察監獄職員にいたしましても、
教育職員にいたしましても、
一般の
行政官吏よりも
待遇がよくないと言われてお
つたのが定評であ
つたのであります。ところが、それが
終戦後の今日におきまして、殊に
職階制の布かれるあの前後におきまして改善されまして、そうして
一般の
官吏にも勝るとも劣らないような
待遇改善が行われて来ておるのであります。
従つて、その
職域に職を奉じておる人は、最近は従前その
職域にお
つた人に比較いたしまして
俸給が
割合によくな
つておるということが言えるわけであります。そこでそういう
待遇改善の
恩恵に浴しておる人は
俸給がよい、
従つて割合に
恩給もよくな
つておるというのが
実情であります。
そこで申上げますが、今のような或る特殊の
職域におけるところの
待遇改善、或いは
俸給のきめ方が変
つたことによ
つて、或る
特定の
人たちが
俸給がよくなる、これらのことは彼此錯綜し重なり合
つている。今申上げます
俸給のきめ方の点においても
恩恵に浴しておる。それから又
職域の
待遇改善によ
つての
恩恵にも浴しておる。かくダブ
つて恩恵に浴した人につきましては、それらの
恩恵に浴しない人に比較しますれば、その
俸給の差、又
恩給の差というものがますます大きくな
つて来ておるのが
実情であるのであります。問題は
公務員全体ではなくして、或る
特定の
人たちだけを
対象といたしまして
恩給の
増額をするかということであ
つて、これをどうするかという問題がここにあるわけなんです。この問題を解決しない限りにおきましては、今叫ばれておるような、又いろいろ言われておりますような、大きな
恩給金額の不
均衡があるといわれておる、その言葉がいいか
惡いかは別といたしましてそういわれております、それを是正せよといわれる、その
要望に副うことは私はできないのではないかと思
つております。
そこで根本的にこういうことが問題にな
つて来るわけです。といいますのは
恩給受給者の中で、
恩給受給者と同様な
在職者が
待遇を改善されたということを
理由として、すでに
退職してしま
つたそれらの者までも、いいかえれば特に
恩給受給者の中からその
人たちだけを取上げて
恩給をよくしてやるような
措置をとることが、許されるかどうかということが問題とな
つて来るわけであります。私はそういうような特別な
取扱をそういう
人たちに限
つてすることが、
恩給受給者の中で、そういう
人たちに限
つて特別の
取扱をすることがよいということにつきまして、まだ
結論を得ていないのであります。それはどうしてそういう
結論を得ていないかと申しますると、
恩給法の
規定によ
つて、
退職の当時一定の
恩給金額をもら
つた者につきましては、特別の事由のない限りにおきましては私は同じように
取扱を受けるべきものであると思うのです。それでありまするから同じように全部ほかの者も
恩給の
金額が上げられるならば私はいいと思いますが、併し或る特殊の
人たちだけを、その後の
在職者が
待遇を改善されてよく
なつたということによ
つて、その
人たちの
恩給額を
引上げてやるということは、要するに
退職の際の
在職中の条件をその人だけに限り変えてやるような結果になりやしないかと思います。そういうことをしますればその波及するところが大きく、いろいろ各
方面に波及して来ることになりやしないのか。
従つてこれにつきましては慎重に考えて行かなければならん。こう私は考えておりまするが故に、まだそういう
要望に副うような
結論を得ていないのであります。ただ先ほども申上げましたように、この
給与ベースの引上に伴いまする
恩給金額の
増額につきましては、新らしい
俸給制度と古い
俸給制度の
相互の中におきまするところの
俸給金額の
対応俸給をきめてや
つておるわけであります。これにつきましては、私
たちは、その
制度が作られますとき、
法律が
制定されまするときにおきまして十分にいろいろ研究してや
つております。が、併しその点につきましては私は
委員会でも申しておりますが、若干直すべき点が若しも出て来た場合には直しましよう、ということは、これは言
つておるところなんです。併しそれを直したぐらいでは、
一般に今不
均衡と叫ばれておる、いろいろ言われておりますようなそういう声に応ずることは私はできないと思います。
それからこの問題につきましては
人事院におきまして実は取上げたのであります。これは御
承知の
通り昭和二十五年の暮にマイヤースが参りまして新しい
恩給制度の勧告をいたしまして、その際にマイヤースのところにおいていろいろ調べました結果によ
つて、
昭和二十三年前の
恩給受給者につきましてはもう少し
恩給を
増額してやるようにということを言
つております。而もそのマイヤースの意見におきましては、
退職当時の
恩給が同じ人につきましては同じような
取扱をしております。これは私は間違
つてはいないと思うのです。ただその
恩給を
増額する方法につきまして一率に何倍と
増額してや
つたらどうかということを言
つておるのであります。ところでその
通りにいたしますればどういうことになりますかといえば、私にいたしましても非常に
恩給の
金額が殖えます。又小学校の先生なんかに例をとりましても人によ
つては、総理大臣以上の
恩給を
支給されなければならないような結果になるのでありまして、この方法が少し当を得ていなか
つたことにつきましては、
人事院そのものもこれは認めておるのです。ところで
人事院はそのマイヤースの勧告もあ
つたことでそれで少しこれを是正しようと、こういうようなことで実は研究を進めております。研究を進めまして昨年の八月に私のところにおいては、実は新しい
制度の勧告をするときにはこれをとり上げたい、こういうようなことを言
つて来ておるのです。それは結構だ、新しい
制度と睨み合せまして何かそこにおいて
善後措置の手を打たれるのは私
たちにおいても研究しておるがなかなかよい
結論が得られないところであるから、や
つて頂ければ結構である、そう私は言
つております。それで今日まで来てお
つたのであります。ところで昨年の暮に実は
人事院のほうから、一応今までや
つたが今度は
恩給局でや
つてもらいたいというようなことで話があり、一応の案の構想についての
説明を昨年の十二月に聞いたのであります。併しそのまま私はその案を呑むわけにはいかない、いろいろ
検討をしなければならない、而も私のところに出された統計の
資料につきましてもいろいろと
検討を加えなければいけないところもありまして、又それからこの
国会には昨年の十二月に持出された話であ
つて大蔵省と予算についてもまだ折衝されていないものでありましたから間に合わない。この話に対しましてはこの
国会の問題としてはとり上げることもできないような
実情でありましたから、今後いろいろ
相互に
検討しようということで別れたままにな
つておる
実情であります。そういうような
実情でございまして、今先ほど申上げましたようにこれには非常にむずかしい問題があるということを
一つ御
承知おき願いたいと思います。