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1952-06-02 第13回国会 参議院 内閣・地方行政連合委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月二日(月曜日)    午前十一時十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。   内閣委員    委員長     河井 彌八君    理事            中川 幸平君            鈴木 直人君            成瀬 幡治君    委員            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            上條 愛一君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   地方行政委員    委員長     西郷吉之助君    理事      中田 吉雄君    委員            岩沢 忠恭君            石村 幸作君            高橋進太郎君            岡本 愛祐君            館  哲二君            若木 勝藏君            原  虎一君            吉川末次郎君            岩男 仁藏君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    長官官房文書課    長       麻生  茂君    警察予備隊本部    警務部長    山田  誠君    警察予備隊本部    装備局長    中村  卓君    警察予備隊本部    経理局長    窪谷 直光君    行政管理庁次長 大野木克彦君    海上保安庁長官 柳澤 米吉君    海上保安庁次長 三田 一也君   事務局側    常任委員会專門    員       杉田正三郎君    常任委員会專門    員       藤田 友作君    常任委員会專門    員       福永與一郎君    常任委員会專門    員       武井 群嗣君   —————————————保安庁法案内閣提出衆議院送  付) ○海上公安局法案内閣提出衆議院  送付)   —————————————
  2. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより内閣委員地方行政委員委員連合委員会を開会いたします。  保安庁法案及び海上公安局法案議題といたします。先ず以て政府から提案理由の御説明を請います。
  3. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今議題と相成りました保安庁法案提案趣旨とその大要について御説明申上げます。  御承知のように、警察予備隊は、昭和二十五年八月に国家地方警察及び自治体警察警察力を補い、治安維持上特別の必要がある場合において行動することを任務として設置せられ、又海上警備隊は、先般施行せられました海上保安庁法の一部改正法によつて海上における人命財産保護又は治安維持のため緊急の必要かある場合において、海上で必要な行動をするための機関として発足し、いずれも各関係機関協力して治安維持及び生命財産保護に当つて参つております。  然るところ今般政府におきましては、平和條約の効力が発生した今日、我が国自主自立態勢に即応して、現在の国力にふさわしい簡素且つ能率的で、民主主義原則に立脚する行政機構を樹立するため行政機構改革を実施することと相成りましたので、その基本的構想に基きまして、現在の警察予備隊海上警備隊及びこれと密接な関係のある海上保安庁機構で水路、燈台等運輸省に属さぜる部分を除いたものとを統合して、これが一体的運営を図り、以て今後いよいよ重要性を加えることが予想される治安の確保に万全を期することといたさんがために、新たに保安庁を設置することとした次第であります。  次に、保安庁法案要点についてその概略を申述べます。  保安庁は、我が国の平和と秩序維持し、人命及び財産保護するため特別の必要がある場合において行動する部隊管理し、運営し、及びこれに関する事務を行い、併せて海上における警備救難事務を行うことを任務とするものであります。このうち海上における警備救難事務を行うのは、保安庁に置かれる海上公安局でありまして、これは、従前海上保安庁警備救難部を中心として設置されるもので、常時海上において、その任務を行うこととなるのであります。  これについては、その任務組織権限等から考えまして、別に海上公安局法を以て、これらの事項規定することを適当と認め、本法案と併せて海上公安局法案を提出いたして御審議を願うことにいたしております。  保安庁管理し、運営するところの我が国の平和と秩序維持し、人命及び財産保護するため特別の必要がある場合において行動する部隊は、主として陸上において行動することを任務とする保安隊部隊及び主として海上において行動することを任務とする警備隊部隊であります。  本法案におきましては、保安隊従前警察予備隊の、警備隊従前海上警備隊任務を引き継ぐものといたしまして、その任務目的等につきまして規定するほか、今日までの経験等に鑑みて、これらの任務目的遂行上その規定の十分でなかつたと思われる点を整備し、且つ明確にして、その本来の任務を一層能率的に達成できるよう必要な措置を講じますと共に、保安隊及び警備隊管理運営等について、民主主義原則に基き、政治が完全に手配し得るよう、部局組織権限等について必要な規定を設け、又内閣総理大臣保安隊又は警備隊出動を命じたときは、国会承認を求めることとする等、特に意を用いております。その他保安庁職員身分取扱等についても、以上の趣旨従つて保安庁任務特殊性を勘案の上、職員がよくその職責遂行できるよう必要な規定を設けた次第であります。  本法案は、他の行政機構改革と同時に、来る七月一日から施行することといたしております。但し、警察予備隊については、現在の隊員の大多数の任用期間が、本年の十月十四日までに満了いたしますので、それまでの間は、警察予備隊を存続せしめることとして、この法律の適用との関係において必要な調整規定を設けております。  以上を以て保安庁法概要の御説明を終ります。法案内容については、政府委員より御説明いたします。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申します。  次に海上公安局法案につきまして、御説明を申上げます。  我が国は、四面環海の国でありますから、海上におきまして人命及び財産の安全を保護いたし、又法令違反防止その他治安を確保いたしますことの必要でありますことは、申上げるまでもないところでございます。この目的を達成いたしまするために、保安庁海上公安局が設置されますることは、先に保安庁法案につきまして申上げた通りでございます。海上公安局法案は、海上公安局所掌事務並びに海上公安官権限等につきまして規定いたすことを目的とするものであります。  海上公安局は、海上におきまする法令違反防止、海難、天災事変などの際の人命及び財産保護海上におきまする犯罪捜査犯人逮捕等事務を掌る機関であります。  海上公安局の長は、保安庁長官の任命にかかり、その指揮監督を受けることになりまするが、海上公安局職員任免等人事に関する事項は、海上公安局の長が行うことになつております。  海上公安局には、職員訓練機関として海上公安学校海上公安学校海上公安訓練所を置き、又、海上公安局の長の諮問に応じて海上公安に関する重要事項調査審議に当るための海上公安審議会を置くことといたしました。  地方機関といたしましては、地方海上公安局地方海上公安部港長事務所その他の事務所を置くことといたしました。  又、海上公安局事務遂行いたしまするための職員といたしまして、海上公安官及び海上公安官補を置き、その階級について定めることといたしました。  海上公安官は、船舶への立入検査、船内にある犯罪容疑者に対する質問犯罪捜査のため止むを得ない場合におきまする停船船舶回航等命令などの権限を有することといたしました。  又、海上公安官及び海上公安官補は、司法警察職員といたしまするほか、職務に必要な武器を所持し得ることといたしました。  なお、海上公安局船舶は、職務遂行のために最小限度必要な武器装備することができることとして、犯罪容疑船に対する停船信号等のため止むを得ない場合に使用できることといたしました。  最後に、海上公安局職員を單位といたしまする国家公務員共済組合総理府に設けることといたしたのであります。  以上申述べましたところが海上公安局法案提案理由概要でありまするが、何とぞ愼重御審議の上、速かに御可決せられんことをお願い申上げる次第でございます。
  4. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 次に両案の内容につきまして政府委員から説明を求めます。
  5. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 議事進行について……。政府委員から御説明願いますに当りまして、このたびの海上保安庁法案と、従来の海上保安庁乃至警察予備隊令との間におきまして、職務権限等について違つておる点を詳細に御説明つておきたいと思います。
  6. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 只今の御質問職務権限の比較、相違点等につきましては、欄を設けまして比較した表を差上げたいと存じております。それでは保安庁法案提案趣言及その要点については、只今国務大臣より説明がありましたので、以下私からは本法案内容について、順を追つて説明申上げたいと存じます。  本法案は、第一章総則、第二章組織、第三章職員、第四章行動及び権限、第五章雑則、第六章罰則の六章と附則より成つており、本文九十三條、附則二十一項であります。  第一章は総則で、この法律目的保安庁任務権限及び定員並びに長官次長等について規定しております。  先ず保安庁は、総理府の外局として設置されるのでありまして、わが国の平和と秩序維持し、人命及び財産保護するため特別の必要がある場合において行動する保安隊及び警備隊部隊管理し、運営し、及びこれに関する事務を行い、あわせて海上における警備救難事務を行うことを任務とするものであることは、先ほど国務大臣より説明のあつた通りであります。ここで保安隊と申しますのは、次に出て参ります保安庁長官次長長官官房及び各局、第一幕僚監部並びに第一幕僚長監督を受ける部隊その他の機関を包括する観念であり、警備隊と申しますのは、保安庁長官次長長官官房及び各局、第二幕僚監部並びに第二幕僚長監督を受ける部隊その他の機関を包括する観念であります。  次に長官及び次長については、他の類似の機関における大体同様の規定を置いております。ただ、長官には、国務大臣をもつて充てることとしており、又部隊等に対する指揮監督の統一をはかり、これが執行を能率的ならしめるために、第一幕僚長又は第二幕僚長監督を受ける部隊その他の機関に対する長官指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとしております。  次に保安庁職員の定数は、海上公安局に勤務する職員を除いて十一万九千九百四十七人でありまして、うち十一万人が保安官、七千五百九十人が警備官で、その残りの二千三百五十七人が次に述べます長官官房及び各局附属機関部隊等において勤務するその他の職員であります。  第二章は、組織に関する規定であります。保安庁には、内部部局として長官官房保安人事経理及び装備の四局並びに第一及び第二の各幕僚監部が置かれる外、附属機関部隊その他の機関並びに海上公安局が置かれるのであります。  先ず、内部部局について申しますと、長官官房及び各局は、保安隊及び警備隊に関する方針策定及びその一般的監督について長官を補佐することを主たる任務とする機関であり、第一及び第二の各幕僚監部は、それぞれ保安隊又は警備隊隊務に関し專門的助言を行い、且つ、部隊等に対する長官命令執行に関する事務を行う機関であります。このように各幕僚監部は、部隊等に対して長官命令執行する機関でありますが、保安隊及び警備隊方針策定及び一般的監督に関しては、すべて長官は、長官官房及び各局の補佐を受けてその職務を行うものとしたのであります。そこで先ほど国務大臣説明のありました趣旨に従いまして、長官次長をはじめ、長官官房及び各局職員のうち課長以上の職員は、三等保安士以上の保安官若しくは三等警備士以上の警備官の経歴のない者のうちから任用するものとしております。政府原案におきましては、旧正規陸海軍将校でない者のうちから任用するとの制限をも置いていたのでありまするが、この点は衆議院で削除された次第でございます。これと同時に他面、長官官房及び各局に、保安隊及び警備隊隊務の実情を反映せさると共に長官官房及び各局幕僚監部部隊等との緊密な連絡を保持するために、幕僚監部又は部隊に所属する保安官又は警備官長官官房及び各局に勤務させる途を設けております。  幕僚監部は、前述のごとく保安隊担当の第一幕僚監部警備隊担当の第二幕僚監部があります。幕僚監部の長は、幕僚長でありまして、これはそれぞれ保安官又は警備官を以て充て、保安隊又は警備隊隊務に関し、最高の專門的助言者として長官を補佐するものといたしております。保安隊及び警備隊指揮権は、すべて專ら長官に属するのでありまして、幕僚長は、部隊等に対してただ長官命令執行するものであります。又幕僚長は、幕僚監部の長として、長官指揮監督を受けてそれぞれの幕僚監部事務を掌理し、保安隊又は警備隊隊務及び所部の職員服務監督するものといたしております。なお、幕僚監部には、部及び課を置き、幕僚副長その他の所要職員を置くこと等について必要な規定を設けております。  次に保安庁附属機関として(イ)保安隊及び警備隊管理運営に関する基本的な調査研究をすると共にその幹部職員を訓練する保安研修所、(ロ)将来幹部保安官又は幹部警備官となるべき者を訓練する保安学校、並びに(ハ)保安隊及び警備隊装備品等について技術的研究を行う技術研究所を置くこととして、これに必要な規定を設けました。  次に保安庁に、前述のごとく保安隊及び警備隊部隊を置くほか、第一幕僚長又は第二幕僚長監督を受ける訓練施設その他の所要機関を置くこととし、この部隊組織及び編成並びにこれらの機関組織及び所掌事務は、政令で定めることといたしております。、前述いたしました保安庁任務のうち、海上における警備救難に関する事務を担当する機関として海上公安局を置きます。この組織所掌事務権限等については、先ほど国務大臣より説明があつた如く海上公安局法をもつて規定することとせられておるのであります。  第三章は、海上公安局に勤務する職員を除いた保安庁職員についての任免分限懲戒保障及び服務に関する規定であります。この職員給與に関しては、別に提案いたされます保安庁職員給與法案に委ねております。  この保安庁職員は、その任務特殊性からいたしまして、現在の警察予備隊及び海上警備隊職員と同じく、これを国家公務員法上の特別職といたしましたほか、職員身分取扱についてはおおむね現在の警察予備隊及び海上警備隊職員身分取扱にならうことを建前として規定しております。  先ず、保安官及び警備官階級は、現在の制度をそのまま踏襲して、保安官については二等保査以上保安監まで十四階級警備官については三等警査以上警備監まで十五階級を設けました。また職員服制任免等についてもおおむね現在の制度にならつて規定いたしました。ただ、保安官のうち保査長一等保査及び二等保査は、二年を期間として任用されることとなつておりますので、後に述べます内閣総理大臣命令により出動を命ぜられている場合その他二年の任用期間が経過したことに因りこれらの者が退職することが、保安隊任務遂行上に重大な支障を及ぼすと認めるときは、長官は、六月以内の期間限つて二年の任用期間を延長することができるという特別の規定を設けました。  職員分限懲戒及び保障についても、おおむね現在の警察予備隊及び海上警備隊の例にならつて規定したのでありますが、ただ、停年制については、海上警備隊の例にならい、警備官のみならず保安官についてもこれを設けることといたしました。  又保安学校の学生は、一般職員とはその身分取扱を異にする必要を認めますので、その分限及び懲戒について特例を規定しております。  次に職員服務につきましてもおおむね、現在の警察予備隊及び海上警備隊のこれに関する規定にならつて規定いたしました。ただ、保安庁職員職務特殊性に鑑みまして、その団体的規律を保持し、その職務を全うせしめる見地から、勤務態勢服務遂行義務指定場所に居住する義務等を明確に規定することといたしました。そうしてこれらの服務に関する規定に関連して、第六章において、上司職務上の命令に対し多数共同して反抗した者、後に述べます長官出動待機命令を受けた者で職務場所を離れ又はこれにつかないで一定の期間を過ぎたもの、正当な権限がなくて又は上司職務上の命令違反して部隊を指揮した者、争議行為怠業行為をした者等に対する罰則規定いたしました。なお、後述いたします内閣総理大臣命令による保安隊又は警備隊出動の場合は、事態最も重大で、まさに職員がその職責を盡し、使命を全うすべきときでありますので、この場合においては、上述しましたような行為をした者に対する刑を加重し又はその所罰の範囲を拡げる等の措置を講じております。  第四章は、保安隊及び警備隊行動及び権限に関する規定であります。  先ず、保安隊及び警備隊行動すべき場合についてでありますが、これには、内閣総理大臣命令による出動都道府県知事要請に基く出動海上における警備行動及び災害に際しての救援のための派遣の場合を規定しております。  内閣総理大臣命令による出動は、非常事態に際して治安維持のため特別の必要があると認める場合に行われるものであります。この場合においては、内閣総理大臣は、出動を命じた日から二十日以内に国会承認を求めることを要し、若し国会が閉会中であるか又は衆議院が解散されているときは、その後最初に召集された国会において速かに、その承認を求めなければならないこととしております。そして不承認の議決があつた場合はもとより、出動の必要がなくなつた場合には、速かに出動した保安隊又は警備隊に対して撤收を命じなければならないことといたしております。  なお、これと関連して警備隊にこの出動命令があつた場合において特別の必要があると認めるときは、長官は、海上公安局の全部又は一部を警備隊統制下に入れることができること、及び事態が緊迫し、この出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、長官は、内閣総理大臣承認を得て、保安隊又は警備隊の全部又は一部に対して出動待機命令を発することができることを規定しております。  都道府県知事要請に基く出動は、都道府県知事治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合において、当該都道府県会安委員会と協議の上、内閣総理大臣要請し、内閣総理大臣もまた事態やむを得ないと認めて、部隊出動を命じた場合に行われるものであります。この場合におきましては都道府県知事は、事態收まつた後速かに当該都道府県の議会に報告しなければならないものといたしております。また、都道府県知事から撤收要請があつた場合は勿論、出動の必要がなくなつたと認める場合には、内閣総理大臣は、速かに部隊撤收を命じなければならないこととなつております。  海上における警備行動は、現在の海上保安庁法中の海上警備隊に関する規定にならつて規定されたもので、海上における人命若しくは財産保護又は治安維持のため緊急の必要がある場合に、長官警備隊部隊海上において必要な行動をとることを命じたときに行われるものであります。ただ、長官は、この命令を発するには、内閣総理大臣承認を得なければならないものといたしております。  災害に際しての救援のための派遣は、天災、地変その他の災害に際して人命又は財産保護のため必要がある場合に、都道府県知事その他の者の要請に基き、或いは特別の事情のあるときはこの要請をまたないで、長官又はその指定する者が救援のため部隊派遣を命じた場合に行われるものであります。以上いずれの場合にも、部隊行動に際して、その関係ある都道府県知事市町村長警察機関その他の国又は地方公共団体機関と相互に密接に連絡し及び協力するものとしてこれを明白に規定いたしました。  以上述べました各行動の場合において、保安隊及び警備隊がその本来の任務を最も有効適切に遂行するため必要な権限武器使用等について規定したのが、第六十八條から第七十五條までの規定であります。  内閣総理大臣命令により出動した場合には、保安官又は警備官は、その職務執行については、警察官又は海上公安官と同じく警察官等職務執行法又は海上公安局法海上公安官現場附近の人又は船舶に対する協力請求船舶への立入船舶停止命令等職権に関する規定によることにいたしております。また現在の警察予備隊警察官及び海上警備官と同様この場合には現行犯人の外、被疑者緊急逮捕ができることといたしております。保安官及び警備官は、この出動を命ぜられた場合には、これらの規定によつて任務遂行するのでありますが、ただこの場合の武器使用については、警察官等職務執行法規定による外、(一)職務上警護する人、施設又は物件が暴行又は侵害を受け又は受けようとする明白な危險があり、武器使用するほか他にこれを排除する適当な手段がない場合、及び(二)多衆集合して暴行若しくは脅迫をし又は暴行若しくは脅迫をしようとする明白な危險があり、武器使用するほか、他にこれを鎮圧し又は防止する適当な手段がないと認める相当の理由がある場合において武器使用を認めることといたしております。尤もこの場合においても、武器使用は、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で許されるにとどまることとしております。  なお、武器使用については、一般正当防衛又は緊急避難に該当する場合を除き、当該部隊指揮官命令によらなければならないものとし、正当の理由なく武器使用した者に対しては、第六章において罰則規定しております。  都道府県知事要請に基く出動の場合における保安官又は警備官職務執行についても、前同様警察官等職務執行法又は海上公安局法海上公安官現場附近の人又は船舶に対する協力請求船舶への立入船舶停止命令等職権に関する規定によるのでありますがこの場合、現行犯人のほか被疑者緊急逮捕ができることも前同様であります。ただ武器使用については警察官等職務執行法規定範囲にとどめて認めることといたしております。  海上における警備行動の場合の警備官職務執行については、海上公安局法海上公安官現場附近の人又は船舶に対する協力請求船舶への立入船舶停止命令等職権に関する規定並びに警察官等職務執行法第七條の武器使用に関する規定によるものであります。なおこの場合においても前同様現行犯人のほか、被疑者緊急逮捕権限をも認めております。  災害派遣時の権限としては、ただ海上においてのみ、三等警備士補以上の警備官職務執行について海上公安局法第十一條の規定を準用して現場附近にある人又は船舶に対し必要な協力を求めることかできることとしております。  以上は保安隊又は警備隊出動の場合における権限でありますが、このほか保安官又は警備官については、次のような権限を認めることとしております。  その一は、保安官又は警備官保安隊又は警備隊武器庫、彈薬庫又は火薬庫を警備するに当り、人又は武器庫等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器使用することができることとしたことであります。但し、正当防衛又は緊急避難に該当する場合を除き、人に危害を與えてはならないものと規定しております。  その二は、保安官又は警備官のうちで部内の秩序維持に專従する者は、現在の警察予備隊又は海上警備隊について認められていると同様、保安官及び警備官等に関する犯罪、保安庁使用する船舶、庁舎、営舎その他の施設内における犯罪、保安庁の所有し又は使用する物件に対する犯罪について司法警察職員として職務を行うことができるものとしたことであります。  第五章は雑則であります。本章中には募集事務都道府県知事及び市町村長に対する一部委任等に関すること、保安庁の礼式及び表彰に関すること、現在海上保安庁の航路啓開所で行なつております機雷その他の爆発性の危險物の除去及び処理を警備隊が行うこと、保安隊の訓練目的に適合する場合において国又は地方公共団体の土木工事を引き受け得ること、警備隊と水路官署及び航路標識官署との関係に関すること、保安庁使用する船舶、航空機の標識に関すること等についての必要な規定が置かれております。  以上述べましたところのほか、本章中にはなお他の関係法律の適用除外及び特例について規定を置いております。即ち保安隊及び警備隊の現状及びその任務特殊性に鑑みまして、現在の警察予備隊又は海上警備隊についてと同様、労働組合法、船員法、船舶安全法、船舶職員法、電波法等の適用を除外することとしたほか、銃砲刀劍類等所持取締令、火薬類取締法及び航空法について必要な除外及び特例の規定を設けることとしておるのであります。  第六章についてはそれぞれ関係のところで概略を述べましたので、最後に附則について御説明申し上げます。  この法律は、昭和二十七年七月一日から施行するのでありますが、既に国務大臣から御説明がありましたように、警察予備隊は、本年十月十五日に廃止することとしております。従つて保安庁は、七月一日から発足いたしますが、この法律保安隊及び保安官に係る部分は、原則として十月十五日から施行することといたし、それまでの間は、警察予備隊保安庁機関として置き、保安庁長官が同時に警察予備隊の長として、次長長官官房及び各局並びに第一幕僚監部の補佐を受けてこの事務を行うこととし、この趣旨を以ちまして警察予備隊令の改正その他の必要な規定を設けております。  次にはこの法律の施行に伴う職員身分取扱についてでありますが、警察予備隊及び海上警備隊職員は、それぞれ原則としてこの法律施行の日において保安庁の相当の職員になるものとし、ただ、本年十月十五日以後においてなお警察予備隊警察官としての任用期間の残つております者については、保安官なつた後においてもその任用條件、身分及び服務並びにこれらの者に対する罰則の適用についてはその間、なお従前警察予備隊警察官に関する規定の例によるものといたしております。  その他本年七月一日以後十月十四日までの間において警察予備隊の警査長以下の警察官に採用され又はこれに再任用される者の任用期間並びに本法の施行に伴い必要となる地方自治法等の一部改正の規定を置いております。  以上をもちまして本法案内容の概略について御説明を終ります。
  7. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 次に、海上保安庁次長三田一也君。
  8. 三田一也

    政府委員(三田一也君) 海上公安局法案要点につきまして、御説明申上げます。  海上公安局法案は、現行海上保安庁法内容におきまして変つておりますのは、今度、保安庁内に設置されますために現在あります水路部、燈台部、海事検査部この三部が運輸省のほうに移されますだけでありまして、あとは機構としては現在の海上保安庁と同一のものであります。  それから次に海上公安局所掌事務につきましては、大要申しますと、海上における法令違反防止、海難、天災事変等の際の人命及び財産保護、次には港則法の施行、それから海上の航路障害物等の除去でありまして、このうち機雷その他爆発物に関係するものは警備隊所掌事務となつております。次に海上における犯罪の捜査及び犯人又は被疑者の逮捕、その他船舶交通の安全の確保及び海上における公共の秩序維持、これは海上公安局所掌事務となつております。  次に海上公安局は東京都に置くことになつておりまして、その内部組織等につきましては、総理府令で定められることになつております。  海上公安局の長は保安庁長官が任命することになつております。海上公安局の長は保安庁長官指揮監督を受けますが、海上における法令違反防止事務については、それぞれの主管大臣の指揮監督を受けることになつております。海上公安局には現在の海上保安庁における教育機関と大要同じような、海上公安学校海上公安学校及び海上公安訓練所を置くことになつております。  なお海上公安局海上公安審議会を置くことになつております。これは現在の海上保安審議会と全く同一の目的によるものであります。  海上公安局地方機関といたしまして地方海上公安局地方海上公安部港長事務所その他の機関を置くようになつております。  海上公安局海上公安官及び海上公安官補を置きまして、その階級法律によつて定めることになつております。これは現行の海上保安官と少しく変つておるところがございますが、大体において保安庁警備官と比較して、海上警備官と大体同じ建前の階級となつております。海上公安局職員任免は、海上公安局の長が行うことになつております。海上公安官はおおむね次に申述べますような行政警察権を與えられることになつております。そのうちの一つは、船舶への立ち入り検査、船内にある犯罪容疑者に対する質問、第二は犯罪捜査のために止むを得ない場合における停船、回航、乖下船の制限、積荷の揚げ降しの制限、命令、それから海上公安官及び海上公安官補職務に必要な武器を所持することができるようになつております。  又海上公安局船舶は、必要最小限度の武装をすることができるようになつております。  海上公安官及び海上公安官補は、武器使用については、警察官等職務執行法等によつて処理されております。  総理府海上公安局職員を單位とする国家公務員共済組合を設けることにしてあります。  その他は附則でありまして、経過規定等がつけられております以上。
  9. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより両案につきまして質疑に入ります。先ず通告によりまして御発言を請います。
  10. 三好始

    ○三好始君 議事進行について……。保安庁法案は極めて重要な法律案であると思いますので、我々は審議に責任を盡したいと思つておるのであります。つきましてはこの際、政府に二つの要求をいたしておきたいのであります。一つは、本法律案の審議に当りましては、單に個々の條章の具体的な審議を進めるだけでなくして、保安隊警備隊の法的な性格、殊に憲法第九條との関連等に当りましても、根本的に検討しなければいけない問題がありますので、そういう基本的な問題を審議する際には、担当の大橋国務大臣だけでなく、総理大臣並びに法務総裁の委員会への出席を要求したいのが一つであります。  もう一つはこの法律案を見まするというと、具体的な問題が総理府令或いは政令に委任されているものが相当多いのであります。これらの案文を拝見しないというと具体的な審議ができないというものが多いので、この際資料を要求しておきたいのであります。差当つて必要な資料として先ず保安隊並びに予備隊の編成予定表をお願いいたしたいと思うのであります。これにつきましては、法律案によりますというと、例えば第十八條の幕僚監部の内部組織に関する総理府令が出ることになつておりますがこの案文又は要綱、更に第二十四條の部隊の編成に関する政令の案文又は要綱、第二十五條の訓練施設その他の所要機関に関する政令の案文或いは要綱、第二十二條の職員の採用方法及び手続に関する総理府令の案文又は要綱、次に第三十七條の條件附任用に関する総理府令の案文或いは要綱、それから最後に現在の予備隊乃至海上警備隊並びに保安庁法案が成立した場合の保安隊並びに警備隊装備に関する資料、差当つて一応必要と認められるこれらの資料をお出し頂きたいと思うのであります。
  11. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 三好君にお答えいたします。総理大臣と法務総裁の出席は開会に先立つて要求をいたしておきましたところが、お二人とも本日は差支えがあるということであります。ただ法制意見長官は出席するということになつております。まだお見えがないようでありますが、もう見えるだろうと考えます。その他の点につきましてはこれは政府から資料提出を願います。
  12. 三好始

    ○三好始君 総理大臣並びに法務総裁は若し本日差支えがあつて出られないというのだつたら、次の機会には是非出られるように委員長のほうから手配せられるようにお願いいたしたいと思います。
  13. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 三好君にお答えいたします。その点は承知いたしました。
  14. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 今日初めて国務大臣説明を承わり、政府委員説明を聞いたのでありまして、これをよく検討して質問をいたしたいと思うのでございますが、只今三好君が御要求になりました資料は質問に、審議に非常に大切なものでありまして、この次の連合委員会は土曜日にお願いができるということでありますから、その土曜日の前にお出しを願いたいと思います。水曜日ぐらいに出して頂いて、その検討をして、土曜日に質問いたしたい、こういうふうにいたしたいと思います。  今日時間がまだあるようでございますから、先ほど私が政府委員説明をせられる前に要求しておいた、海上公安局のほうは現在の制度職務権限と比較してお話がありましたが、保安庁のほうは明確を欠いておりますので、こういう対照表はもらつてはおりますが、この保安庁法案によつてできるところの保安庁乃至保安官目的職務権限、その他について違つているところだけを詳しく説明しておいて頂きたい。
  15. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 大体職務権限等につきましても、先ほど大臣からお話がありました通り、現在の予備隊の職員に対する職務権限を大部分においては踏襲いたしております。ただ先ほど御説明申上げましたように、例えば任期の問題につきましては、二年の約束で採用された者につきましても、二年が経つてやめられては非常に困る場合が起つたり、或いは出動中であるような場合、そういうようなときにはこれを六ヵ月延長することができるというような、従来にない規定を設けた例が一つ違つております。  それから従来この予備隊の警察官に対する懲戒の問題でありますが、この点につきましても現在は懲戒処分があるのみで、罰則は設けてないのでございます。併しながら予備隊の出動というような理由が考えられまするときに、その出動という事態が迫つて従前のように任意に辞表を出してやめるというようなことがありましたのでは、折角予備隊を設けました趣旨を沒却することになり、従前は辞表を出せばそれを受付けないということもできます。併しながら本人が辞表を出して怠けておれば何ともいたし方がないのでありまして、結局そういう場合には懲戒免官ということでやめさせるよりほかはないのであります。むしろそうされることを本人は希望するというような恰好にまでなるわけでございます。それでは甚だ不都合でありますので、今度は出動命令が出たり、或いは出動の待機命令が出たような場合に怠る、やめたいような恰好を示すというような者に対しましては、先ほど御説明申上げましたように、罰則規定でこれを処分して行くというふうにいたしまして、隊員がいざという場合に本当に御奉公できるようにというような意味で改正が加えられております。或いは又現在の警察予備隊警察官出動しました場合に、その職務権限につきましては、警察官等職務執行法というものの規定によることになつておりますが、これらにつきましても明確でない点がございますので、今回はそれらを少し明確にするというような点についても特別の考慮が払つてございます。  大体大きな点は、以上が現在の七月一日からできまする保安隊職員との職務権限の違いでございまして、詳細につきましては更に資料を提出いたしまする際に、もう少し段を分けて詳しく表にしたものをお目にかけたいと、かように存じております。
  16. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 なおお尋ねしたいのですが、これも三好君の御質問に関連いたしておりますが、海上公安局法案のほうは、例えば附表で地方海上公安局をどこどこに置くというようなものでも皆明らかになつておるのです。ところがこの保安庁のほうは地方の基地と申しますか、そういう点も明らかになつていないのです。何も秘密のものでないでしようから、それは政令できめるのか総理府令できめるのかわかりませんが、そういうものも明らかにしてもらつて検討したいと、こう思うのであります。非常にこの保安庁法案のほうは海上公安局法案に比較するとわかりにくいのであります。その点をこの次の審議の数日前に明らかにしておいてもらいたい。
  17. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 政府は承知したと申しております。
  18. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 議事進行について……、ちよつと実は提案理由説明を私今日頂いたのですが、只今三好、岡本委員からいろいろ資料について、審査に対する資料についての御要請があつたのですが、只今大橋大臣並びに政府委員のかたから説明つを受けますと、非常に重大な問題で、私これを読んだとき以上に非常に重要な問題、特に警察予備隊でございましたら国内だけにおるわけでありますが、海上におきまして、日本海なんかですと、中ソ両国との接触というようなこともあつて、非常にこれは重要な武器使用その他があると思いますので、内閣委員におかれては非常にたくさんの議案が山積しておりまして、議事の、この法案の審査の手順をすでに作つておられるのですが、今日と土曜日だけではとてもこれはやれんのじやないか、何とか一つ今日は提案理由説明をお聞きして打切つて、一つの皆さんの御了承を得れば何とか議事進行に妨げにならんような方法で、二回くらいでも今後開けるようなことにして頂けんものか。まあこれは皆さんの御都合もあるわけなんですが、非常にまあ大きな問題を含んでいると思いますので、如何なものでしようか。
  19. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 中田君にお答えいたします。本案の審議は非常に慎重にいたすべきものだと考えます。併し一方には期日も極めて迫まつておりまするので、できるだけ勉強いたしたいと考えております。従いまして今日と土曜日という二日だけにとどめるということでなしに、もう少し必要があれはそれに応じて連名委員会を開会したいと、かように考えております。併し本日はこれで委員会をやめてしまうことなしに、質疑のあるかたもありましようから、ずつと続行するつもりであります。それだけを申上げておきます。
  20. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それは結構ですが、一つ地方行政の委員長とお打合せ頂いて、事情が許しましたら連合委員会を今日と土曜日だけでなしに、やはり何とか途中でも結構ですから、開けるように一つ御考慮をお願いしておきたいと思います。それで私は結構です。
  21. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 重ねて申上げます。お話の通りにいたします。実は本日のことも地方行政委員長とはお打合せをいたしてあります。あとはどうぞお任せを願います。
  22. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 今の議事進行について……。この保安庁法案のことについてですが、まあその他の連合委員会についても連合委員会をやる場合に、例えば内閣委員会の人たちはまあ全然やらない。そうしてほかの人たちの言うことを聞いておる。ところが他の委員のはまあ本質的な方面をずんずるお聞きになるような場合に、内閣委員会としても実は本質的な問題について併行的に聞いて行きたいような気もするのですが、内閣委員会としては他の委員会の委員のかたがたの質問されるのを一、三回聞いておられて、それを以て内閣委員自体の審査として、あとの残りを内閣委員会だけで審議するというような方法に、いつも連合委員会のときにはなるように思われるのですが、我々はそういうのはいいわけなんですけれども、いつも連合委員会を開きますと、本質的なものは他の委員がまあ聞いておられるというようなことになるのですが、これはまあ止むを得ないと思いますけれども、そんな感じがいたしますので……。
  23. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 鈴木君にお答えいたします。委員長といたしましては、やはり内閣委員会の審議が中心となるべきものであると、かように考えます。(「異議なし」と呼ぶ者あり、笑声)従いましてその取扱いは場合によりましてはいつでも連合を申込まれました他の委員の中心といいますか、そういうふうにならない場合がありまするから、どこまでもその意見は尊重しますが、併し内閣委員において責任を持つて決すべき事柄でありますから、そういうような運営をしたいと、かように考えます。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  24. 河井彌八

    委員長河井彌八君) では速記を始めて下さい。  それでは午後一時まで休憩いたします。    午後零時五分休憩    —————・—————    午後一時五十二分開会
  25. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより引続いて連合委員会を開会いたします。保安庁法案外一件につきまして質疑を続行いたします。
  26. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 それでは大橋国務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。この保安庁法案は、これは非常な重大な法案と存じます。法務総裁が戰力ということを定義されまして近代戰を遂行するに足る実力云々というようなことで御説明になつておるのでありますが、戰力は要するにその組織装備と、それから規模の大小、それらによつて戰力であるかないかが判断をされると思うのであります。然るにこの保安庁法案では、規模が非常に大きなことになり、組織は元の軍隊と殆んど同様であります。装備も今日の新聞にも出ておりますように、軍艦が五十隻もやつて来る、六十隻入手するというようなことになつて参りまして、これは戰力でないとしても、戰力に非常に近くなつて参つたのであります。国民の大多数は政府が戰力になりつつあるものを戰力でない、ないと、こう言つて、又は戰力であるものを戰力でないとして頬かぶりをしておるのだというふうに見つつあるのでありまして、私どもといたしましても、まだ戰力でないと答えられましても、戰力に近付いて来たというふうに感ずるのでありますが、大橋国務大臣はこの問題に対してどういうふうにお考えになつているか、それからお尋ねしたいと思います。
  27. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 戰力については、憲法上おのずから解釈があるわけでございまするが、政府といたしましては、警察予備隊にいたしましても、又海上警備隊にいたしましても現憲法の範囲内において国内治安のためにこれを組織する。こういう意図を以て進んで参つておるわけでございます。無論装備は着々と充実いたしつつあるのでございまして、或る種の装備は無論今日の戰争において使用される程度の武器を備えておるということは、これは僞らざる事実でございます。併しながら今日警察予備隊なり或いは海上警備隊において、差当つて装備すると予想せられておりますところの装備が完全に充足七られましたる場合におきましても、これを以て外国と戰争をなし得るかということになりますると、到底それだけの力はないりのでございまして、さような意味におきまして近代戰を遂行するだけの十分な戰力とこれを認める段階には達し得ないと存ずるわけでございます。殊に政府といたしましては警察予備隊海上警備隊任務といたしましては、飽くまでも国内の秩序維持するということを主眼といたしておるわけでございまして、たびたび申上げておりまするごとく、警察予備隊を海外に派遣するというようなことは毛頭考えておらないのでございまして、飽くまでも国内の治安を確保するためにのみこれを使用すべきものであめる。こういう考えを持つておるわけでございまして、かたがた憲法上職力というべきものではないと、かように確信をいたしておる次第でございます。
  28. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 政府としてはさように御答弁なさるであろうことは初めから予期しておつたことでありますが、とにかく戦力に一歩々々、否、数歩ずつ近付いておるということは、政府といえども認識をなさらなければならないと思います。要するに私どもまだ戰力には立至つてないと、こういう見地をとるものからいたしましても、戰力に近付けるためには、やはり近付けていいかどうかということを全国民の総意に問わなければならないと考えておるのでありまして、一歩々々、又数歩大巾に近付きながら、まだ戰力でない、戰力でないと言つておることは、私は国民を欺くものである、こういうふうに信ずるのでありまして、そういう戰力を作上げるべきかどうかということは、国民の総意に問われよということをこの間予算委員会におきまして総理大臣に申したのであります。私はここに保安庁法案審議するに当りまして、再びこの問題を強く申上げたい。総理がお出でになつたらこの問題を又蒸し返して申上げることにいたします。大橋国務大臣に申上げるのはこの程度にいたして置きます。  次に、只今保安庁任務として保安庁は国内の治安維持だけであると、こういうふうな御答弁でありました。併しその任務も第四條では必ずしも国内の治安だけでないという気がするのであります。国内の治安にも関係して参りますが、そうでないじやないかという気がするのであります。それは警察予備隊令の第二條では、「警察予備隊は、治安維持のため特別の必要がある場合において、内閣総理大臣の命を受け行動するものとする。」こういうふうにあります。而も第二項に「警察予備隊の活動は、警察の任務範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本国憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない。」とあるのであります。ところがこの保安庁法の第四條におきまする保安庁任務という條章には、「保安庁は、わが国の平和と秩序維持し、人命及び財産保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊管理し、運営し、及びこれに関する事務を行い、あわせて海上における警備救難事務を行うことを任務とする。」とあるのでありまして、一つには治安維持のためだけでなくて、我が国の平和と秩序維持するため……、少し広いように思うのであります。尤もこれは警察予備隊目的の場合には、我が国の平和と秩序維持しという言葉を使つておりますが、任務のところではそういうふうに、治安維持のためというふうに限定してあるのであります。それからもう一つはこの警察予備隊におきましては、国家地方警察及び自治体警察警察力を補うためと、こういうふうにしてあるのでありまして、こちらの今度の保安庁法案の第四條ではそういう予備的のものではないのであります。まして警察予備隊令にあるがごとき警察の任務範囲に限られるべきものであつてというようなこともありません。だから任務は非常に重くなつた、広くなつた。こういうふうに考えるのでありますが、その点如何ですか、御答弁を願いたい。
  29. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 第一の御質問は従来の任務といたしまして治安維持のため特別の必要がある場合に行動する、これが今回は平和と秩序維持し、人命財産保護するため特別の必要がある場合、こういうふうに改まつた点において任務が拡張せられたのではないかという点でございます。この点につきましては、私どもは警察の任務というものは国内の平和と秩序維持し、人命財産保護するというのが警察の任務である、こういうふうに理解をいたしておるわけでございまして、かような字句それ自体が直されたということは、実質上任務が拡張せられたというふうなつもりで書いたわけではございません。全く従来の警察予備隊に課せられたる目的任務というものをそのまま引続き保安庁において担任すると、こういう趣旨で書いた次第でございます。  第二に、警察力を補うためという点が除かれておる点についての御質問でございまするが、従来は目的において国家地方警察並びに自治体警察警察力の不足を補う目的である、こういうふうに書いてありましたが、今回の保安庁法におきましては、如何なる場合において如何なる手続を以て行動するかということを具体的に定めることといたした次第でございます。即ち第六十一條以下におきまして、総理大臣の命令によつて出動する場合又は都道府県知事要請によつて出動する場合、或いは災害の場合に救助のために派遣する場合、海上における警備行動として出動をする、これらの個々の場合におきまして、詳細に出動の手続を規定いたしたわけでございます。従いまして如何なる場合に如何なる條件に基いて出動するかということは、おのずから六十一條以下において具体的に制限をせられておりまするので、目的説明いたしまして、警察力を補うためであるというような抽象的な字句を以て行動を制限する必要を認めなかつたのでございまして、飽くまでもかような出動をなす趣旨警察力の不足を補うためのものであるという点につきましては従来通り観念をいたしております。ただ表現といたしましてむしろそうして抽象的な字句よりも具体的な出動の場合及び手続を規定することがより適切である、かように考えてかような表現を用いた次第でございます。それから従来の警察予備隊令におきまして警察予備隊の活動は警察の任務に限らるべきものであるということを書いてございますが、これはもとより当然の事柄でございまして、如何なる国家機関といえども憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉に亘る等、その権能を濫用するということは許されないことでございます。従いまして今回特にこの字句を用いることは経験上必要がなかろう、こういう理由で創つただけでございまして、この点も又従来の根本的な目的並びに使命を拡張しようという趣旨ではございませんことを御了承願いたいと存じます。
  30. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 警察予備隊令における警察予備隊は、警察の任務範囲内に限らるべき任務を持つておるのでありまして、即ち警察の一部であると見られるのでありますが、この保安庁のほうは警察云々のことはどこにも見えてない、従いまして警察の一部でなくして警察以外において、大橋国務大臣の言葉を以てすれば專ら国内の治安維持すべきものである、こういうふうにとられるのでありますが、この点はどうですか。
  31. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 如何なる場合においてこれらの部隊行動するかということは、六十一條以下に規定をいたしておるわけでございまして、これらの規定警察予備隊の場合と同様に、いずれも警察を補うという場合に出動をする、これを具体的に示したものでございます。そうして又警察予備隊出動をいたしました場合に国内において如何なる権限を行使するかという点につきましても、第六十八條以下に詳細なる規定をいたしておるのでございまして、これらの規定をその通り遵守いたしまするならば、その結果はおのずから警察予備隊の活動というものが警察の範囲内に限られ、又いやしくも憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉に亘るべきでないということは武器使用行使、警察、保安隊或いは警備隊職員権限等において具体的詳細に規定をいたしてあるわけでございます。
  32. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 端的に伺いますが、それでは保安庁というものは広い意味における警察機関であるかどうか、その点をお答え頂きたいと思います。
  33. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察というものを如何なる意味に理解をするか。これは法律案におきましてもおのずから一定の解釈があると存ずるのでございますが、普通は警察というのは国内の社会秩序維持するために或いは社会の危害を予防し、鎮圧するために国民に対しまして権利又は自由を制限する行為が警察行為ということに相成つており、これらの禁止制限を実行するための実力行使が即ち警察力であると、こういうふうに観念されると思うのでございます。従いましてかように観念いたして参りますると、保安隊或いは警備隊というものは国内治安維持するための禁止制限、これはもとより他の法令により、他の行政機関によつて禁止制限は命ぜられるのでございますが、これを実力を以て強制する機関であるという意味においては広い意味の警察機関であると存ずるのでございます。但しさような広い意味の警察機関といたしましては、現行法上はいろいろな機関があると存じます。先ず第一に各省大臣というものは法令によりまして公益に支障のありまする事柄について禁止制限をする場合がありまするが、そういう意味におきましては、各省大臣もそれぞれ一定限度において警察権限を持つておりまするから警察機関であると言えると思います。併しながら特に各省大臣によつて保有されておらないところの一般権限につきまして、国内の警察権を行使するといたしましては、今日国家地方警察並びに自治体警察というものがあるわけでございまして、これらの国家地方警察並びに自治体警察は他の法令をその管轄区域内において遵守せしめ、その違反者に対しては遵守を強制する、或いは又犯罪を検挙する、こうしたことのみを目的として組織されておるわけでございます。これらは狭義の警察機関であると存じますが、これらの狭義の警察機関につきましては、すでに警察法において国家地方警察並びに自治警察というものが設けられ、これらはいずれも地方自治の観念によつて自治的に運営されるという精神を生かしまするために、公安委員制度の下に運用されるということに相成つております。併しながらこれらの警察力のみを以ていたしましては、今日我が国内の秩序と平和の維持ということが十分であるとは認められない。これを補うものといたしまして、現在の警察予備隊或いは海上警備隊ができておるわけでございまして、これらは同じく警察機関ではありまするが、一般警察力を補うものといたしまして特別な組織を持ち、特に顯著なる点といたしましては、内閣総理大臣の指揮命令によりまして動くという点において一般の警察とは違つておるわけでございます。併しながらそれが国内において働く力というものは飽くまでも警察の目的に出るものではありまするから、警察機関の一つであるということはさような意味において言い得ると存ずるのでございます。  なおとの点を国家の目的という点から考えて参りまするというと、従来国家学、或いは国法学におきましては国家の基本的な目的ということを申しておられるようでございます。この治安目的を達するためにはいろいろな機関があろうと存じまするが、曾つては主たるものは軍隊と警察であると、こういうふうに考えられておつたと思います。只今憲法上軍隊というものを禁ぜられておりまするからして、今日かような目的に使われるもの、即ち治安目的に用いるところの国家の実力行使の機関といたしましてはこれを警察であると観念すべきものではないかと存じまするが、かような線におきましてもこの保安庁というものは一つの警察機関であるということは言い得るものと存じます。
  34. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 たしか警察予備隊令の一部改正法律案の審議のときに、治安維持ということは国家の事務であるか、又自治体の事務として、東京都では、二十三区では自治体の事務となつているかという質問をいたしましたときに、大橋国務大臣個人の御意見として、国家の事務とか、自治体の事務とか言わないで、国家の意思によつてその一部を自治体に委した事務というようなあいまいなお答えがあつたのであります。で、個人的御意見では困るので、政府の公権的な意見を願いたい、又の機会にお述べ願いたいということを留保しておいたのですが、その点につきまして治安維持は国家の事務であるか、自治体の事務であるか、それをまあ東京都を例にしてお答えを願いたいと存じます。
  35. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その点は法令の解釈に亘りますものでございまするし、且つ関係機関が多うございましたので、法務総裁におきまして答弁を統一して頂きまするように手続中でございまして、いずれ法務府から統一的解釈を下しまして、閣議で相談した上でお答えをするという運びになつているわけでございます。御了承願います。
  36. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そこでそれでは又法務総裁のおいでになつたときに御答弁願うことにいたしまして、第四條の保安庁任務は国内の治安の警察事務のみならず、不幸にして外国の軍隊が日本に侵入を開始して来たときに、それに対して第一に率先してこれをかなわないまでも防ぐべき任務がこの保安庁任務になつている。即ち一番初めに国内の治安維持ということよりも広いのじやないかと言つたのはそういう意味でありますが、その点はどうお考えでありますか。
  37. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 国外からの不法侵略に対しまして国土を維持いたしまするということは、これは当然我が国の平和と治安維持する上から言つて必要な事柄と存じますので、当然保安庁任務に入るものと心得ております。
  38. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 まあそれを国内治安維持というか、外敵侵入を防ぐ任務というか、私は国内治安維持のみならず、保安庁任務として外敵侵入を防ぐ任務というものがこの法案によつて加わつて来るのだ、こういうふうに思うのですが、それは国内の治安維持にとどまらない。それは近代戰を遂行するに足らないと、こういうふうにみておられるのだから、負けるにきまつておるかも知らんが、とにかく他の日本を助けてくれる国の軍隊が助けに来てくれるまでの間は抵抗するという任務が加わつておる。その点は如何ですか。
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は私は警察予備隊においてすでにさような任務があつたと、かように理解をいたしておりまするので、この度の法規によつて新たに加わつたということでなく、やはり従来の警察予備隊任務なり使命をそのまま引き継いでおる、こうい問うふうに考えておるわけでございま旧す。而してこの警察予備隊がさような任務を持つてつたかどうかという点は、この目的といたしまして、第一條に我が国の平和と秩序維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で、警察力の不足を補、)。こういう表現の中には、警察力に不足いたしておりまする実力を警察予備隊が備え、その実力の行使によりまして国内法上当然一つの犯罪と考えられまするような、そうして又犯罪と同様の結果を生じまするところの国内治安に有害な諸事象に対しては実力行動を以てこれを阻止する。即ち外敵の侵略に対しましても、実力行動を以て阻止するということが本来の任務の中に当然入るべきものであると、こう考えておつたわけでございます。
  40. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 私はそれは少し……、大いに無理な御解釈であろうと思うのでありまして、任務のところには、この我が国の平和と秩序維持して行くことが以前の警察予備隊令には書いてない。確かに治安維持のためと書いてあるのであります。それから而も第一條に「わが国の平和と秩序維持し、」とは書いてありますが、それは「限度内で、」に続くのでありまして、「国家地方警察及び自治体警察警察力を補うため」ということが明らかに書いてあるので、この警察予備隊令では少くとも外敵侵略までは考えていない。併しこの保安庁法では、この第四條で明らかにこれは外敵侵入まで考えておられるのだというふうに思うのでありまして、これも意見が分れますが、私はそういうふうに解釈をいたさざるを得ないのであります。  次に進みますが、指揮命令系統がどうなるか。内閣総理大臣保安庁長官幕僚長、その関係がいろいろの文句が使つてありますが、非常にあいまいである。はつきり重要な点でありますからこれを御説明願いたいのでありまして、保安庁長官は、内閣総理大臣の指揮を受けてそして庁務について統督をする。統督というのはどういう意味か。それから第一幕僚長、第二幕僚長に対する……、長官指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行う。そういうことも甚だあいまいであります。又幕僚長のほうは「最高の専門的助言者として長官を補佐する。」というようなことも書いてあります。そこらが非常にあいまいであります。これをはつきりどういうふうな指揮命令系統になるか、又どういうふうなお互い  の権限、責任になるか、それを御説明願いたい。
  41. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 保安庁総理府の外局でございまするから、当然内閣総理大臣指揮監督を受け、その管轄下に入ることは当然でございます。従いまして保安庁長官内閣総理大臣の部下といたしまして、内閣総理大臣指揮監督を受けるわけでございます。而して庁務につきましては、これを庁務を統括し且つ職員任免及び服務を統督いたすのでございますが、この統督という言葉は、国家行政組織法において用いられておる統督という言葉をそのまま受けたものでございます。而してこの保安庁長律の直接の役所というものは保安庁でございまするが、保安庁の中には内部部局幕僚監部というものができ上つしおるわけでございます。而してこの内部部局及び幕僚監部というものは保安隊並びに警備隊の各部隊指揮監督し、これを管理することが任務となつておるわけでございます。従いましてこの保安隊の各部隊指揮監督管理するということが保安庁という役所の全体の仕事であり、保安庁長官の直接の仕事になつておるわけでございます。あとの各内部部局並びに幕僚監部というものは、  これはその仕事をいたしまするに当つて職務の分担を示す内部構造を規定いたしてあるわけでございまして、この内部構造といたしましては、各部隊に対する全体の指揮監督権は、当然長官たる保安庁長官権限に相成つておりますが、これを各部隊に下達いたしまするに当りましては、幕僚長を通じて下達するということが規定されておるわけでございます。即ち部隊の統帥についての統帥権というものは、当然保安庁長官が行使するわけでございまするが、その行使の方法としては、みずから直接にその名を以て部隊に下達するにあらずして、必ず幕僚長を通じて下達するという形をとる。而してこの下達されるいろいろな命令のうちには、保安庁において決定いたしましたる政策に関するもの或いは重要なる方針に関する事項があると存じます。これらは内部部局が参画しなければ決定できないのでございまして、その決定についての補佐権というものは、内部部局にあるわけでございます。そうして幕僚監部というものは、この内部部局の助、言、監督によつて保安庁長官の決定いたしました方針の大綱を実施するところの面において保安庁長官を補佐する、こういう考えでございます。つまり大綱的なものは内部部局が担当し、実施面的なものは幕僚監部が補佐機関として当たる、こういう考えでございます。而して特に隊務に関しまする専門的な事柄につきましては、これらの幕僚監部の長でありまする幕僚長が最高の助言者として、専門的立場からの最高の助言者として長官を補佐して行く。無論専門的立場から幕僚長が助言をいたしましたる事項でありましても、政策に亘るもの或いは方針の大綱に亘る事柄については、その採否については、当然内部部局が助言、勧告を長官のためにいたし、その決定に当つて内部部局が補佐することは当然であると思います。そういう機構に相成つております。
  42. 三好始

    ○三好始君 ちよつと議事進行について……。先ほど大橋国務大臣は、統帥権は保安庁長官が持つておるが、それを行使するときには幕僚長を通じて行う、こういう意味の御説明があつたかと思うのであります。私は統帥権というような昔使われておつた言葉をこういう法律案の審議に際して使う場合には、相当確信を持つて使われておるのだろうとは思いまするけれども、自信のある厳格な意味でお使いになることを今後においても希望いたしたいのであります。大橋国務大臣は、前の法務総裁として、こういう法律用語、或いは法律的なものの考え方には緻密な考え方をしておるから聞違いはないと思うのでありますが、私は統帥権は保安庁長官が持つておるが、それを行使するときには幕僚長を通じて行うという御説明は相当重大な内容を含んでおると思うのであります。後ほど私の質疑する際に深く掘下げてお尋ねいたしたいと思いますが、用語は自信のある正確な用語としてお使いになつたものと了承いたすのでありますが、特に念のためにこの点について今後も御留意されることを希望いたしておくのであります。
  43. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私の申上げましたのは、統帥権は保安庁長官において行使をする建前になつておるが、その行使に当つて幕僚長を通じて行うことが法律規定であると、こう申上げたわけでございます。もとより統帥権というようなものを予備隊並びに海上警備隊について考えまする場合には、これは当然国家の権能であり、従いまして行政府の首長たる内閣総理大臣がその権能の最上の主体となるべきものである。その行使は保安庁長官が行使するという建前になつておるが、行使に当つて幕僚長を通じて行う、こういうふうに申上げたつもりでございます。
  44. 三好始

    ○三好始君 私は質問の時間がありませんから、質問はいたしません。とにかく、統帥権どいうような表現については厳密な意味でお使いになられたいということを希望しておくだけであります。
  45. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 幕僚長とか、それから幕僚機関、十八條に「幕僚監部」とか、「幕僚機関」という字句があるのですが、その幕僚というのはどういう意味ですか。幕僚機関……。
  46. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 幕僚というのはスタツフというのが英語でございまするが、つまり補助機関でありまして、そうしてその助言、勧告によつてこれらの保安庁権限が行使される、こういう意味でございます。
  47. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 只今説明のようでありますと、統帥権の行使は保安庁長官内閣総理大臣指揮監督を受けてやる。併しそれを行使するに当つては必ず幕僚長を通じて行うと、こういう意味ですね。
  48. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) さようでございます。
  49. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そういたしますとこの幕僚長の地位はよくわかるようでありながら、非常にそこに権力が集中する虞れがありはしないか。それに必ず幕僚長を通じて行われなければならないのでありますが、而もそこに幕僚長は最高の専門的助言者とこうなつておりますが、そこで権力が集中をして元の軍に起つたような幕僚に絶大なる権力が集まるというような虞れがありはしないか、その虞れはない用意はどういうふうにしてあるか、それを承わりたいと思います。
  50. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 誠に御尤もな御質問であると存じます。幕僚長にこの部隊活動についての長官の指揮命令権の行使、又保安隊なり或いは警備隊の隊員に対しまする保安庁長官命令の下達に当つては、必ずこの幕僚長を通ずる。のみならず専門的な最高の助言者たる地位を與える。こういうことによりましてこの幕僚長権限が集中するということは確かに軍夫でございます。而してかような必要のありますることはこの部隊というものが厳格なる規律の下に一糸乱れず結束いたしまして、保安庁長官命令が迅速に徹底的に厳守励行される。そのためにはかような一元的な統帥機関というものがあつて、これからすべての命令が下達されて行く、その系統を追うて下達される。こういう機構にいたしますることが能率的な行動ということを可能ならしめる上から言つて必要であるとこう考えておるわけでございます。もとよりかような実力行使の機関が能率的に活動することは是非とも考えなければなりませんけれども、同時にそうした機関があつて権力を集中するという場合において、その権力が不当に濫用されることによつて民主政治の秩序というものを害し、或いは民主政治の根本を危うするということも懸念されるのでございまして、これに対しましてはおのずから他の方法によつてさようなことのないようにが心がけなければならないと存じたのでございます。そこでかようなことのないようにいたしまする方法といたしまして、幕僚長は独立の官庁といたしてございません。これは飽くまでも保安庁長官の補佐機関の一つである、独立の長官たる地位を與えてないわけでございます。而してこの補佐機関であり、命令下達機関であるところの幕僚長に対しまする長官指揮監督に当りましては、特に相当厖大なる内部部局というものを別に設けまして、これが長官指揮監督についての補佐を行うということにいたしてあるわけでございます。これは即ち次長並びに次長の下にありまする官房、並びに内部部局、これらがそうした仕事を担当いたすわけでございます。  なおこの幕僚長というものは一般の公務員と異なりまして特別職であり、特に自分の保障ということをいたしてないのでございます。従いまして、完全なる保安庁長官の下に人事があるということによりまして、この幕僚長政府の統制に服しないということのないような措置を講じてあるわけでございます。これらの制度の運用によりまして、御心配のような事態は十分避け得るものと考えております。而して又内部部局を真に幕僚監部に対しまして独立的な立場から長官を補佐し得るようなことのできるようにしたいという考えを以ちまして、保安或いは警備官の幹部の経歴のある者はこの内部部局の局長或いは課長以上の職に着くことは法律上制限せられている、こういうことにも相成つているわけでございます。
  51. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 この第十條の今内部部局とおつしやつたその内部部局が「保安隊及び警備隊に関する各般の方針及び基本的な実施計画の作成について長官の行う第一幕僚長又は第二幕僚長に対する指示、」云々と、こうありますが、そういうところにも用意がしてあるのかどうか。基本的な実施計画の作成について指示する、その原案は各部局でやる、こういう意味ですか。
  52. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 基本的な事につきましてもいういろいろあろうと存じます。併しながら各般の方針並びに基本的な実施計画の作成ということは、これは終局的に各局任務になつているわけでございまして、専門的な事項については無論幕僚長が最高の助言者として助言いたしまするが、併しその助言に基いて、各般の方針及び基本的な実施計画が作成されまする場合におきましては、この内部部局が直接の補助機関として長官を補佐する。こういう考え方でございます。
  53. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そうでありますと、何か官房や各局長というようなほうが却つて幕僚、スタツフみたいな気がするのですが、何か幕僚長と、こう言うと、これは現実の作戰とか何とかということに対する補助者と、こういう意味でしようか。そこらが何かわかり切らない。今こういうことを考えると、局長や官房長のほうがスタツフみたいな気がする。
  54. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 予備隊の運営、管理に当りましてはいろいろな仕事が考えられるわけでございます。即ち平常業務といたしましては、隊員を採用する、これを訓練する、又これに対する装備、それから隊員の任免その他の人事、こういつたいろいろの仕事がございます。これらの事柄のほかに、只今申上げましたような事柄は、警察予備隊、即ち保安隊警備隊というものを一つの組織として作上げる、又それを維持して行くための必要な事柄であります。これらも勿論幕僚監部の援助がなければ計画が立たない事柄が多問いのでありまするが、そうした事柄につついては内部部局において直接に立案いたしまする場合もあれば、又内部部局において幕僚監部に命じて立案させてそれを検討するという場合もあります。或いは又幕僚監部が進んで立案して内部部局にそれを持ち込むという場合もございます。その場合において基本的な方針及び基本的な実施計画というような問題につきましては内部部局が補助者としては第一次的な責任を持つ、こういうのが第十條の規定なのでございます。それから部隊行動、軍隊ならばいわゆる作戰計画という問題でございます。これは非常に専門的なものになりまするからして、当然こうした事柄につきましては幕僚監部といういうものが計画を立てて長官に助言をするということに相成りまするが、併しながらこうした出動の計画或いは出動の場合のいろいろな作戰の計画、こういうものか実施する場合においても、必ず部隊一般的な政策或いは一 般的な方針というものに触れる面があり得るわけでございまして、そういう面に関しまする限りは内部部局が飽くまで長官の補佐機関として助言をする、こういう立場に立つわけでございます。従いまして先ほど私は統帥という言葉を申上げまして三好委員から御注意を頂きましたが、この機構におきましては曾つての旧憲法時代における意味の統帥という実体はありますが、法的な意味はないわけでございます。即ち軍令、軍政を分けて、軍令について特に統帥権の独立というようなことを旧憲法時代には憲法解釈として申しておりましたが、そういう意味の統帥というものは全然ないわけでございまして、機構の面から申しますならば、昔の軍政、軍令というものの区別は全然ないわけであります。すべて事柄によりまして内部局長及び幕僚監部がそれぞれの助言者として長官を補佐して行く。そうして軍令機関、軍政機関というものが分離しておらずにこれが一体となつて一元的に部隊の統制を図つて行く、こういう機構でございます。
  55. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 いろいろその点についてもお尋ねしたいことがありますが、次に移りたいと思います。  この海上公安局には法律自体で、その事務を分掌させるために、地方海上公安局とか、地方海上公安部港長事務所を置くということがはつきり書いてあるのですが、保安庁法案のほうには、第二十四條に、「保安庁に、保安隊及び警備隊部隊を置く。」「前項の部隊組織及び編成は、政令で定める。」、こういうふうに政令に委任してありまして、この重大な地方の機関、又附表によつてその置かれる場所まですでにきめてありますが、それが保安庁法案では政令に委任してしまつた、これはどういう理由でありましようか。平仄が合わないと思うのです。
  56. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 誠に御尤もな御質問であると存じますが、この海上公安局というものは平常から行政面におきまして固有の権限範囲というものを持つているわけでございます。即ち海上公安局法第一條に掲げてありまする事柄につきましては、これは海上公安局の固有の権限となつており、そうしてこの範囲においては排他的に権限を行使することに相成つているわけでございます。従いましてこれは国の行政機構の上から一つの独立した分野を持つところの行政機関でありまするから、そういう行政機関が如何なる組織を持ち、如何なる配置をつされるかということは国民として当然承知して頂くということが必要でありまして、その件について国の代表者は誰であるかということを含んでいるわけでございます。勿論海上警備隊或いは警察予備隊、即ち保安隊警備隊につきましても、固有の権限というものは当然あるわけでございまするが、併しその権限たるや平常は警察がやつておることでございまして、警察の力の不足いたしました場合に、臨機に不足した地方へ部隊派遣されて行くというような式になつておるわけでございます。従いまして部隊の編成なり部隊の所在地というものは、何ら権限関係のない事柄でございまするので、これは法律にはつきりしておくことが、海上公安局の各関係機関ほど切実な要請はないとこう考えておるわけでございます。勿論さような点はさような点といたしましても、現実にこれが編成なり組織なりというものを固定いたしましてそうして法律で或る程度具体的に規定しておくということが可能ならば、これは何も可能なものをわざわざ政令に譲る必要はないと思つておるのでございますが、実は現在の実情を申上げますると、部隊の編成というものも大体或る程度の考えはできておりまして、これはいずれ資料として近く提出いたしたいと存じておりまするが、併しアメリカから装備を借りておるというような状況でございまして、この装備の状況によりましてはその都度編成についても或る程度の修正を加える場合もあり得るわけでございまして、実は一昨年来今日までいろいろ編成組織というものも、その時々の実情に応じて編成をいたしております。従いまして今日の段階においてこれを法律ではつきりしてしまうということが、必ずしもこの警備隊或いは保安隊管理の上から言つて適当であるかどうか疑問に思つておるわけでございまして、この際は一応政令において規定をいたして参りたい、何分新らしい機構でもありまするし、装備をもらう予定についてもこちらの予定通りつて来るとも限りません。いろいろそういつた未定の要素がございまするために、成る程度情勢に応じて修正できるような形で定めたい、かように存じた次第でございます。
  57. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 保安庁地方機関、これは国民の権利義務にそれほど大きな関係はないというお話でありますが、大きな関係があると思うのです。それは営舎の問題、それから演習場の問題もありますし、その他いろいろの関係が出て来るのでありまして、私は海上公安局地方機関と同様にやはり法律で定めるほうが適当であると、こういうに思うのであります。次に進みまして、附属機関保安研修所保安学校技術研究所、この三つだけ挙げてあるのですが、この保安学校をとりましても、こういう教育機関はひとり保安学校にとどまらないで、もつと下級な訓練機関、養成機関というものがあるはずであります。そういうものをなぜ挙げなかつたのか。或いはそれはこの三節の「部隊その他の機関」であつて、その他の機関の中に入つておるというお考えかも知れませんが、一体この保安隊警備隊の訓練その他教育ということは、どういうふうな組織でおやりになるか、一番上級がこの保安学校で、これが附属機関となつております。御説明願いたいと思います。
  58. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 保安隊についての教育施設についての御質問でございまするが、保安庁関係の教育施設殊に保安隊並びに警備隊の教育機関につきましては、大体二種類に分けることができるわけでございます。それはこの保安隊なり警備隊なりがそれぞれ保持するところの教育施設というものと、それから保安隊警備隊が共同に維持して行くところの教育施設、こういう二通りに区別をいたすことができます。保安庁法におきましては、保安隊警備隊が共同に維持するようなそうした施設につきましては、第二十三條の附属機関として挙げたわけでございます。従いましてこの二十三條の機関というのは、これは保安庁長官に直属し、内部部局の管轄下に属する附属機関でございます。このうちに教育機関は二つでございます。保安研修所並びに保安学校でございます。このうち保安学校から申上げますると、保安学校というのは、これは保安庁職員と申しますか、保安庁の学生と申しますか、未だ保安官又は警備官として制服職員に任命されていない学主を教育する機関でございます。この機関といたしましては、曾つては陸軍士官学校或いは海軍兵学校、こういうようなものがあつたわけでございます。保安庁におきましては、警備隊保安隊の双方の幹部要員に対する教育はできるだけこれをを一元的に行うことが政策上必要であろと、かような考えの下にこの両者を統合いたしまして保安学校を作つたわけでございます。従いましてこれは保安庁長官直属の教育つ施設として無論教官、職員等には保安官或いは警備官使用いたしまするが、併しその管理については幕僚監部の管轄下でなく、内部部局の管轄下に維持して参りたい、こういう考えでございます。その次の保安研修所というのは、これは保安庁の将来幹部職員となるべき者、或いは保安隊或いは警備隊の幕僚或いは高級指揮官となるべき人を養成する特別の研修機関でございます。(「陸海軍大学に当るものだね」と呼ぶ者あり)昔の考え方で申しますると、総力戰研究所或いは陸軍大学、海軍大学、こういつたものを統合したようなものであると言えるかも知れません。これはひとり制服職員の幹部要員ばかりでなく、文官と申しますか、制服外の職員として将来保安庁の幹部となるべき要員をも併せて教育をいたしたい、こういうふうに考えております。従いましてこの研修所というのは、これは再教育機関でございます。それからこの二つが保安庁直属の機関でございますが、その他の種類といたしましては警備隊保安隊それぞれにその職員の養成の機関を持つております。これらの機関はいずれもすでに保安官或いは警備官として任用されました者を教育するということになつているのでございます。これは士補の訓練をするものから又幹部の訓練をする機関、又再教育の機関、こういうふうに  いろいろに分れているわけでございまするが、現在どの程度の教育施設があるかということにつきましては政府委員から申上げることのお許しを願いたいと思います。
  59. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 現在予備隊として開校されております学校は五つほどございます。その一つは久里浜にございます総隊学校であります。これは幹部の養成及び幕僚勤務要員の教育を目的としております。その二つは、やはり千葉県の習志野に設立いたしました特科学校でございます。これは小口径の火器、或いは中口径の火器の幹部及び士補に対しそれらの点についての基本教育を施す学校であります。その三は、茨城の勝田に設置いたした施設学校でございます。これは幹部及び士補等に対し施設業務に必要な技能を修得させることにしております。次に、最近開校いたしましたのが二つございます。一つは普通科幹部及び士補の養成及び基本教育を目的とした総隊普通科学校でございます。これは久留米に置いてございます。それから武器科の幹部及び士補の基本教育を目的とした武器学校を立川にそれぞれ設立いたしております。将来そのほかに、現在学校と申さずに講習的な内容を持ちましたコースの学校式のものを持つておりますが、それからももう少しはつきりしたものにして施設も充実して行きたい、かように考えております。その中身は多分通信学校、或いは衛星学校、或いは補給学校とか輸送学校学校と申しますか、講習会と言つてもよろしうございますが、それが二十五條に規定されております「訓練施設その他の所要機関」に該当するのであります。
  60. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 保安学校というのは何人ぐらい常時入れるのですか。それから保安研修所というのはどのくらいの人数を常時教育するのですか。これは何カ月ぐらいですか。
  61. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は保安学校は今作るという方針はきめましてどういうふうに、これをやるかということにつきましては細目を研究いたしているのでございます。大体の考え方といたしまして高等学校を卒業いたしました者を競争試験の上入校を許しまして教育期間を四年間ぐらいにいたしたい。このうち一年程度を予科的な仕事にいたしましてそうしてあとの三年ぐらいを第一部第二部ぐらいに分けてみたい。これは即ち保安隊の幹部要員の教育を専門とする部、警備隊の幹部要員の教育を専門とする部とこの二部に分けて参りたいと思つております。校長は保安官或いは警備官でない者を任用いたして参りたいと思いますが、併し部長としましては保安官或いは警備官を以て当てるようにいたしたい。この科目といたしましては、従来の陸海軍の教育というものの弊害などを十分に研究いたしました上で、或る程度普通の常識を涵養するような、そうした面を相当力を入れて参りたい。無論専門的な事項につきましても遺憾なきを期して参りたいと存じております。收容力というものはまだ校舎の施設等もきまつておりませんので、はつきりした百度を立てるところまで至つておりませんが、併し何分にも将来の幹部というものは原則としてこの大学校を卒業したものから任用するようにいたして参りたいと、こういうふうに考えておりますから、毎年数百名を入れるというふうにしなければなるまいと思つております。併しその数等はなお研究中でございまして、はつきりしたお答えを申上げかねるのでこぎいます。
  62. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 民間で言われておるところでは、今の警察予備隊を将来だんだん拡充して行かなければならん、それにはどうしても幹部の養成が必要であるから、この保安学校において世時非常な多くの学生を養成して、いつでも拡張ができるようにするのだというようなことが言われておるのであります。つまり十二万近くの予備隊員並びに警備隊員に対しまして、常時どのくらいの数を大学で養成するか、それをお聞きしておるのであります。数百名ということはないだろうと思いますが、如何ですか。
  63. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 大体今のところでは三百乃至五百ぐらいになるのではないかと思つております。毎年入れます分が……。但しこれは幹部の将来の消耗率と申しますか、やめて件く率とか或いは停年制の問題とか、いろいろ先のことを考えながら勘案しみければなりませんので、一定の人数を毎年同じように採用するのだというふうな計算はなかなか出にくいのでございまして、今申上げました見当で行けば、大体将来の幹部が賄えるのではないかと、かように考えております。
  64. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そうすると四百名として四年間ですから、千六百名程度が常時いる。こういうことになるわけですね。
  65. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 四年目にはそうなろうかと思います。
  66. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 ついでに保安研修所のほうをもう少し詳しく御説明願いたい。
  67. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 保安学校につきましては大体構想をまとめつつあるのでございますが、保安研修所につきましては、こういうものが必至であるということ、たけを考えまして、この法案にも盛込んであるのであります。ここに收容いたしまする員数の点、例えば保安官或いは警備官が何名、その他の職員を何名ぐらい入れるようにしたらいいか、或いは訓練期間を半年がいいか、十カ月がいいか、一年がいいかというような点は、今後もう少し研究した上で固めて参りたいと、かように存じております。
  68. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 それではついでに、地方部隊が駐屯する場所を政令できめられている、その概要を御説明つて心きたい。或いは又その総嫁本部、そういう組織、管区本部、方面管区本部、それはどういうふうになるのか、それを説明して頂きたい。
  69. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 大体先般御制定を願いました警察予備隊令改正法律案によりまして十一万人の増強をいたすことに相成つたのでございますが、この十一万人といたしましては現在の保安庁法が施行になりまするというと、現在の総隊総監部というのは当然第一幕僚部として保安庁自体に吸收されて解消いたします。併しながら現在総隊総監部の直属部隊というものがございます。この直属部隊には二通りございまして、総隊総監部のいろいろな事務に従事する者を集めまして一つの部隊となつておりますが、これはそのまま保安庁の中に吸收され、保安庁直属の附属部隊として残つて行くと存じます。そのほかには地方機関とそのほかのものは全部所属部隊に相成るわけでございますが、所属部隊といたしましては大体現在では二通りに分けることができます。一つは総隊総監部の直属部隊及び直轄学校でございます。先ほど申上げました学校はいずれも総隊総監部の直轄学校、現在五校、なお数校計画中のものがございます。これらの学校保安庁の第一幕僚長の管轄下の直轄学校ということに相成るわけでございます。それからそのほかに直属の部隊というものがございます。直属部隊といたしましては通信部隊、補給部隊、こういつたものがございます。これは補給所或いは通信所というようなものを維持管理する部隊でございます。これらも第一幕僚長の管轄下の直属の機関として残るわけでございます。そのほかは地方機関に相成るわけでございますが、地方機関といたしましては現在はございませんが、十一万の増員に伴いまして近く北海道に方面総監部というものを設けたい、こう考えております。これは札幌に総監部を置くようにいたしたいと存じます。で、その直属部隊ができるわけでございますが、総監部直属部隊は主として北海道にできることに相成ります。この北海道におきまする方面総監部は北海道方面の予備隊の事務を担当するということに相成りまして、その令下に現在ありまする第二管区総監部というものが所属いたすことに相成るのでございます。この第二管区総監部所属の部隊は現在北海道及び東北の北部三県に所在いたしております。これらは後に印刷によつて差上げたいと存じます。それから東北の南三県から関東及び中部これを所轄いたしまするものとして第一管区総監部、これは東京に総監部を置いておるのでございます。それから第三管区総監部は兵庫県の伊丹に総監部を置いておりまするが、これが大体近畿、山口県を除きました中国及び四国に所属部隊を配しております。山口県及び九州につきましては福岡県の福岡に第四管区総監部というものを置いております。これらの所属部隊は非常に多数に相成りまするので印刷をして差上げたいと存じます。
  70. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 警備隊のほうはどういうふうになりますか。この第二幕僚部のほう……。
  71. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 警備隊のほうは現在は東京に総監部を置いております。そのほか地方監部といたしましては横須賀に一カ所、そのほか将来におきましては近く舞鶴、佐世保等に置きたいというふうに考えております。基地その他の施設関係でまだきまつておりませんのですが、なお呉、及び大湊という所がございます。以上が大体今後にできまするであろうところの地方監部でございます。
  72. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 それではそれを表で詳しく出して頂きまして、なお念のために聞いておきますが保安学校というのは一校ですか。どこに置きますか。
  73. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 保安学校は今計画いたしておりますが、これは校にいたしたいと思います。そうしてそこで警備隊保安隊双方の幹部候補生でございますから、これは同じ一校で教育する、こういうふうにいたしたいと存じております。場所といたしましてはできるだけ東京附近にいたしたいと思つております。建物等できるだけ既設のものを利用したいと思つておりますので、今折角探しておる次第でございます。
  74. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 保安研修所はこれは東京ですか。それからもう一つ技術研究所、これも東京ですか。
  75. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) どちらも東京のつもりでおります。
  76. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 では次に移りまして、ずうつと飛んで六十七條について質問をいたしたい。これは「部隊行動する場合には、当該部隊及びその行動する区域に関係ある都道府県知事市町村長警察機関その他の国又は地方公共団体機関は、相互に緊密に連絡し、及び協力するものとする。」こうありますが海上公安局法の第十條を対比してみますと、そのほうでは第三項に「第一項の規定により派遣された職員は、その派遣を求めた行政庁の指揮に受けなければならない。」そういうふうに指揮者がちやんときめてあるのです。この六十七條の場合にこの主体は部隊が主体であるから部隊のそこの隊長といいますか、それが指揮官になるのか、中心はそれが皆中心になつてそうして指揮連絡をするのであるか。どういうふうになつていますか。
  77. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 部隊につきましては部隊内の規定によりましておのずから指揮官というものが定まつております。従いまして部隊はその定められた指揮官、これは最上級者は当然幕僚長になるわけでございます。この指揮官からの系統を持つた指揮に従わずして行動するということはあり得ない建前に相成つておるのでございます。併しながらこれらの保安隊行動というものが他の機関と非常に関係がございまするので、指揮官が指揮をいたすに当つて、将来の行動の予定について地方機関と相互に情報を交換し或いは協議をするということは、これは当然あるべきことと考えられますので、そのことを六十七條で互いに連絡し協力すると、こういうことで規定をいたしたわけでございます。従いまして指揮系統がどうなるかというような点は全然触れておりませんし、警察予備隊の指揮系統というものは飽くまでも保安庁法規定する指揮系統が如何なる場合においても維持される、と同時にこの保安隊の指揮官が他の関係機関を指揮するということは如何なる場合においてもあり得ない、こう考えております。
  78. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そういたしますとこの協力を求められた機関は独自の判断において口分で協力して行く、こういうふうになりますか。
  79. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その通りでございます。
  80. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 六十一條に帰りますが、「内閣総理大臣は、非常事態に際して、治安維持のため特に必要があると認める場合には、保安隊又は警備隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」こうあるのですが、これは非常の事態ということが一つの條件、治安維持のため必要であるということが一つの條件、特に必要があるということが一つの條件、こういうふうに見られるのであります。そこで非常事態というのは誰がどうしてきめるのか、これと警察法の国家非常事態の宣言とどういう関係になりますか。
  81. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 用語といたしましては警察法の非常事態も六十一條の非常事態も同じ意味であると存じますが、六十一條に規定いたしましたる趣旨保安隊或いは警備隊非常事態でなければ出動しない、そうしてその非常事態において治安維持のためにでなければ出動しない。而して非常事態に際して治安維持のためであると言つても、普通警察が処理し得るような事態であつたならば出動をしない。非常事態であり、治安維持ということが普通の警察力によつて処理できないという場合において、特に保安隊警備隊出動しなければならん場合、そういう場合においてのみ内閣総理大臣出動を命ずるという趣旨を明らかにいたしたわけでございます。従いまして非常事態でありましても警察法の規定によつて処理できる程度でありまするならば、そして又それが処理できるという見通しがありまするならば、内閣総理大臣出動を命ずることはないわけでございます。放置しておいては警察力だけではどういう重大なことになるかもわからない、これはどうしても保安隊を応援に出さなければならんというそういう場合にだけこの出動をするという趣旨に考えてかような規定を設けた次第でございます。
  82. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そういたしますと、この六十一條は警察法の第七章の国家非常事態の特別措置とは違うのだ、それも含んでいるかも知れんが、それと違つて総理大臣が軍に非常事態と認めたとき、こういう意味ですか。
  83. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そういうわけでございます。従いまして普通非常事態と誰も認めまする場合でも、非常事態であつても、普通警察が努力すれば処置できるという場合には、警察法の非常事態宣言もない場合があろうと思います。又公安委員会において宣言を助言し内閣総理大臣が宣言するという場合もあると思います。多くの場合においてはそうした処置のあとに保安隊出動が命ぜられるということが事態の発展の段階から言えば当然であろうとは思いますが、併し非常事態宣言を行なつたところで、到底この事態警察力だけでは処理できないだろうという見通しがあらかじめついておりまする場合においては、非常事態宣言がなくして内閣総理大臣出動命令を出すということも当然考えられることでありまして、それは事態に応じて内閣総理大臣が適切に判断をいたす、こういう建前になつております。
  84. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 非常事態宣言のときは、自治体警察であろうと又それに協力する各種の機関は皆総理大臣の管轄下に入るのでありますが、この六十一條はそういう場合のほかに総理大臣が非常事態と、こう認めた場合、それでまあ治安維持のため特に必要であるという場合に限るということで、それではそういう場合には協力団体は総理大臣の指揮下にも入らない。又従つて保安隊の指揮下にも入らない、こういうふうつに認めていいのか、もう一度その点念をおして置きたい。
  85. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その通りでございます。
  86. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 五十七條の私企業からの隔離の問題であります。二項に「職員は、その離職後二年間は、営利を目的とする会社その他の団体の地位で、離職前五年以内に従事していた職務と密接な関係のあるもので総理府令で定めるものについてはならない。但し、総理府令で定める基準に従う長官の許可を受けた場合には、この限りではない。」こういうふうに規定してあるのであります。これは職員全員を通ずる問題であろうと思うのでありまするが、それと五十八條の「職員は、報酬を受けて、第五十五條第二項に規定する国家機関及び地方公共団体機関の職並びに前條第一項の地位以外の職又は地位につき、あるいは営利企業以外の事業を行う場合には、」云々と、こういうことが書いてあります。これは非常に適当でありますが、少し酷ではないかということにも見えるのですがその点を御説明願います。
  87. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 只今の御質問に酷ではないかという御意見が出たのでありますが、多少そういう考え方もできないではないと存ずるのでありまするが、併し一般の国家公務についてこういう規定がありまするのを、保安庁職員だけに適用しないという又積極的な理由も甚だ探しにくかつたのでございまして、国家公務員にこういう同じような規定がありますので、これを予備隊の職員にも適用しようという考えを固めました上で、この條文を入れて御審議を願つておる次第でございます。
  88. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 国家公務員は長く勤めることが根本です。これは二年間というようなことなんです。私もこれか制限できれば非常に結構だと思うが、何だか二年間勤めておつて、五年間をやつちやいかんというようなことは非常に酷のように思います。
  89. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 只今二年間というお話がありましたが、二年間の契約で任用期間をきめられて入つて参ります者につきましては、大体警査長以下がその大部分でございまして、その離職前五年以内に従事していた職務と密接な関係があるような地位に恐らくついたことはないだろうと考えられます。私が只今申しましたのは大体幹部職員についてこういう事態が発生するのであろうから、一般国家公務員と同じような規定をここに盛り込んだということを申上げた次第であります。
  90. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 それではついでに、続けて質問をやれという地方行政のかたのお話ですから続けてやることにいたします。大体保安庁法案のほうはそれくらいにしておきまして、いろいろまだあります、細かい問題についてお尋ねしたいことがいろいろありますが、内閣委員会で又やつて頂き、又別に機会があつたら又繰返すことにいたしまして、今度は海上公安局法案のほうでお尋ねしたいと思います。  先ず第一條の第一号に、「海上」と書きまして「別に法律で定める港の区域を含む。」こうあります。どういうふうな港になるのか。で、これは自治体警察、又は国家地方警察との関係はどうなのか、あとにもこの問題が出て来て、その職権を奪うというものではないという規定もありますが、その関係を御説明願いたいと思います。
  91. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 第一の「別に法律で定める港の区域を含む。」というようになつておりますが、この港というのは港域法で定められました港について、その港を含む、こういう意味でございます。
  92. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そういたしますと、その港を管轄しておる自治体警察又は国家地方警察、それは十八條の規定によつて警察官又は警察吏員が海上において、犯罪の予防、鎭圧及び捜査並びに犯人又は被疑者の逮捕の権限を行使することを排除するものと解釈してはならない。」この規定かあるのてす、そういたしますと、この海上並びに港湾におきまして自治体警察は今まで協力してといいますか、海上保安隊協力して犯罪の捜査、検挙をいたしておつたのですが、国家地方警察のほうは今までできなかつた。それを今度は国家警察のほうもやつていいということになりますか。
  93. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 今までは海上におきましての取締り等は海上保安庁で殆んどやつてつたのでございますが、事実上公共団体におきまするところの自治体警察におきましては、大体港域法で定められた港の範囲、或いはその附近におきまして協定によりまして犯罪の捜査その他をやつてつたのでございます。今回の十八條によりまして、この法文によりますると、国家警察においても沿岸範囲には出で得るということになるわけです。併しながら実際問題といたしまして自治警察におきましては、すでに船舶施設その他を水上警察の一部として持つておる。併しながら国家地方警察においてはそういう設備が未だない、従つて大体におきまして海上におきますものはその施設のありまする海上保安庁において大体行うのではないかというふうに考えておりますが、財政が許し、そのほうが便利だということになりますれば、或る程度そういうように行くということは考えております。
  94. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 従来その点いろいろ質問して来たのですが、これまでは国家地方警察のほうは海上に対して管轄がありながら実際行動ができないように制限されておつた。併しもう総司令部もいないし、この法律によつて十八條の規定もあるんだから財政力が許せばそれでは国家地方警察のほうも海上公安局のほうと協力して海上のほうをどんどん警備する、そういうことにして行つていいのですね。
  95. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) お話の通りでございまするが、実際問題といたしまして日本の財政を考えまするときに、海上におきまする警備の力、警察力というようなものにつきまして、二分或いは三分いたしまして、経費のかかる船舶その他を持つというこには相当不経済ではないかというふうに考える。従いましてそういう事態がどんどん進行して行くかどうかということに疑問がある。併し一面例えば非常に海のすぐそばで、沿岸に近いところでいろいろな問題が起きたというときに、国家警察等が出られないということも非常に不便ではないかというとことで、今までの不便を除去する意味におきましてこういうふうにいたしたわけでございます。従いまして御趣旨のようなことは、どんどんなつて行くかという問題につきましては、現在の財政状態を勘案いたしまして、便宜にそういうふうにしたのでございまして、実際問題としてそういうことが起るかという問題につきましては、なおいろいろ議論のあることとかように考えております。
  96. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 第一條の八号に書いております「前各号に掲げるものの外、海上における公共の秩序維持」というのにはどんな例がありますか。主なものを挙げておいて頂きたい。
  97. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 第八号につきまして、「海上における公共の秩序維持」というようなことでございますが、これは例といたしましては漁民の紛争というようなことがございました場合、或いは船舶のうちに不穏の状況が発生して急を要するというような場合に、これに必要な警告を発したりすることであります。
  98. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 この元のまあマツカーサー・ラインがなくなつて、そうしてその方面にどんどん出漁をしてくそうすると中共とかソウイエトの近くでまあいろいろ紛争が起る。そういうときには勿論これに当るのであろうと思いますが、無線電信があればすぐこれは驅けつけて行くということになりますか。
  99. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 今までの例から申しますと、大体漁船の拿捕という問題でございます。こういう問題につきましては監視船がおりますところで拿捕された例は殆んどない。従いまして監視船が若し出ておれば、その区域内において拿捕されるということは先ずないのではないかというふうに考えております。従つて我々のほうといたしましては、現在の状況から判断いたしまして、できるだけ監視船を出しまして、漁船の行動その他を保護する上において見るということが最も大切なことではないかというふうに考えている次第であります。
  100. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そういうところで紛争が起れば、まあ監視船がおれば起らんと言つても、起るときもあるだろうと思います。又そういう見えないところに相当近くにおつて、そうして無線電信ですぐ助けに来てくれというので駆けつけたというときに、不法、だと思えばこれは大砲を打つことになるだろうと思いますが、その動きはどういうふうになりますか。
  101. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 現在のところ私たちが考えておりまするのは、先ほど申上げました通り監視船がおりますところで拿捕事件が起きたことがございませんから、大体監視船が海上におりますれば、そういう事件は先ず現在のところ起らないのじやないかと考えております。併しお説の通りにそういう事態が或いは起るかも知れないということを予想されないこともございません。そういう場合が起りました場合にも我々のほうといたしましては、その監視船がすぐ駈けつけて行きまして、そうしてその状況がどういう状況であるか、こちらが不法を侵しているのかということをはつきり認識する、と同時に向うに対しまして紛争を起さないような処置をできるだけとるということで解決したいとかように考えております。
  102. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 なかなかむずかしい……。まあそのくらいにいたしておきましよう。  それから第十二條でこれはもとからの規定ですが、お尋ねしておきたいのです。今までどうなつておりましたか、立ち入りですが、法令違反防止し、又人命若しくは財産保護するために必要があるときには船舶に立ち入り、積荷なんかの物件を検査をする、又質問することができるということが書いてありますが、前にもあつたと思いますが、そういうときにその船が拒んだらどうなるかということを海上保安庁法案審議のときに尋ねたことがあるのです。その後はこれはどうなつておりますか。つまり拒まれた、その立ち入りは困ると言つて向うが拒んだときにどうなりますか。
  103. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 実際に現行犯その他の場合にはこれは実行できると思いますが、そうでない場合に犯罪等に関係のない場合に、拒まれるとこれは処置なしというふうに考えております。
  104. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 この前のときにそれはいけるのだというお話で、それはいけないのだというので憲法論をしたのでありますが、今そういうふうにいけないのだ、こういうふうに認識して頂いておればそれでいいと思います。これはいいのだという解釈だと又議論をしなければならないと思うのです。まあ大体そういうことで質問を終ります。
  105. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 次は若木君に御質問を願います。
  106. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 前に海上保安庁法案の一部改正並びに警察予備隊法律に関する場合に私は質問したのでありまするが、その際には海上保安庁の方面からいわゆる保安庁のほうに警備隊として移管された場合に、海上保安庁にあつた場合と性格が違うか違わないか、こういうことの質問に対しまして村上運輸大臣は変る、或るものはプラスされるというふうな答弁に対しまして、大橋国務相は性格は変らない、こういうふうな食い違いがあつたのでありまするが、    〔委員長退席、内閣委員理事中川幸平君委員長席に着く〕 今回いよいよ保安庁法案が出て参りまして、この法案を見ますというとその点について私ははつきりしたものが見られるのであります。先ず第四條の保安庁任務のところになるのでありまするが、警察法におきましてはこれは警察の責務を決定しておると同時に、活動の限界を示してある、御承知の通り憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉に亘る等権能を濫用することをしてはならない。こういうふうにして限界を示してある。それから更に警察予備隊令について考えて見まするに、これは明らかに国家地方警察並びに自治体警察警察力を補うためにあるものであるということを明示しておるのです。同時にこの任務といたしましては警察の範囲に限る、これも警察法と等しくその点ははつきりしておるのであります。ところが今回のこの保安庁法案を見ますというと、第四條の任務のところでは何らそういう方面に触れておらない、そうして特別必要の場合においてするところの行動を、部隊行動管理する云々とこういうふうに出ておるのであります。そういう点からこれは明らかに性格が警察予備隊あたりと違つたものでないか。こういうことを私ははつきり見ておるのでありますが、その点について伺いたいと思います。
  107. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その点につきましては本日最初に岡本委員から同様の御質問を頂いた次第でございますが、警察予備隊令におきまして警察の範囲内に限る、個人の権利又は自由を不当に制限してはならないという規定があつたのを今回は除いております。この点は確かにそうであります。併しこれを除きました趣旨警察予備隊の根本的な性格をこのたび拡張しようという趣旨で除いたわけではないのでございまして、警察予備隊令におきましては権能の濫用の制限ということについて抽象的な規定をいたしておりまするが、併しこのことたるや国民の権利に非常に重大なる関係のあります事柄でありまするから、立法といたしましてはむしろより具体的詳細にどれだけの権限が行使できるかということをはつきり規定するほうが適当であるとこういうふうに考えた次第なのであります。従いまして保安庁法におきましては特に第六十八條以下に隊員の権限に関する詳細なる規定を置きまして権限の濫用の起らないような措置を講じました結果、警察予備隊令関係の條文は排除しても差支えない、むしろこのほうが法規としては完全であるこう考えてかようにいたしたわけでございます。  それから警察力の不足を補うためのものであるということが警察予備隊令の第一條に書かれてあるのでございまするが、この点につきましても單に抽象的に警察力の不足を補うのであるということを規定するのみでは十分でないので、むしろ如何なる場合に如何なる手続によつて出動するか、そうしてその場合において如何なる権限を行使するかということをはつきり規定したほうが適当であろう。    〔委員長代理中川幸平君退席、委員長着席〕 即ち第四章第一節には行動に関する規定、第二節には権限に関する規定、こういうものを掲げまして、出動する場合の内容を具体的に規定いたしますると共にその際の手続を規定する、又先ほど申しました通り出動の際における権限を具体的詳細に規定する。こういう方法によつて本来の性格を法的に明らかならしめたい。こういう趣旨でやつたわけでございます。従いまして立案者の考え方といたしましては、警察予備隊に新たなる使命を附加するということではなくして、むしろこれを具体的詳細にすることによつて本来の目的使命を一層明確ならしめたいとこういう意図に出でた次第でございます。
  108. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 誠にこの行動の部面において示したほうがいいというふうな巧みなる御答弁をされております。併しその第四條の基本的なところにおきまして、それをはつきり入れるのが一体立法の建前じやないか、あと行動云云というふうないわゆる末節の方面におきまして書かれておるからしてこの問題は解決しておると、こういうふうに私は考えられないと思うのであります。何故に一体警察法においても、或いは予備隊令においてもああいうふうに明確に表わして、なお更に行動面についても巨細なく亘つておるのに、この保安庁法案においてはそれを示さなかつたのか。この点について私は今の御答弁についてはまだはつきりしなかつたが、この一点をもう一遍お伺いしたいと思います。
  109. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 第四章第一節及び第二節全体を検討いたしまするならば、従来の性格がより一層はつきりする、又立法としてはこのほうが適切であろうと、こう考えた次第であります。
  110. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうしますというと今の御答弁では、これは警察予備隊、そういうものと何ら変りないもので、ある、この点を主張されるわけでありますか、この点を伺います。
  111. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 根本の任務目的は全く警察予備隊のものをそのまま引継いでおる、こう考えております。
  112. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そういたしますと、先ほど岡本委員に御答弁になりました、いわゆる出動の場合でありまするが、非常事態においてこれは更に首相の考え方によつて、判定によつて出動する場合がある、こういうことを附加されて来ることがありますと、これは従来の警察予備隊、そういうものとは著るしく変つて来るのではないか、こう考えるのでありますが、この点について……。
  113. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察予備隊におきましても、内閣総理大臣が特に必要ありと認めました場合に出動するという規定をいたしておるわけでございます。その出動いたす場合については、今回は非常事態に際して治安維持のため特に必要があると認める場合には出動を命ずる。この点は従来の「治安維持のため特別の必要がある場合において、内閣総理大臣の命を受け行動する」という場合と表現は同様でございます。そうしてその場合の権限といたしまして、警察予備隊の活動ば警察の任務に限られる、権限の濫用はいけないという趣旨が書いてございまするが、この点は今回は特に第六十八條以下多数の規定を設けまして具体的詳細に規定をいたしておる、こういう次第でございます。
  114. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そこで私は最後にこの問題について伺いたいのは、又警察予備隊は軍隊であるかどうかということは随分論議されて両論になつておるのでありますけれども、警察予備隊の場合は国家警察並びに自治体警察警察力を補うというふうな点がまだありまするけれども、今度の保安隊の場合においては、全くそういう基本的な重要なことが謳われておらない。そういう点から考まて、いよいよこれはいわゆる軍隊的な性格がはつきり出て来たのであります。言い換えれば憲法の九條の「その他の戰力」ということに該当することがいよいよはつきりして来たのじやないかと思うのでありますが、その点如何ように考えておられますか。
  115. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 従来から警察予備隊我が国の平和と秩序維持し、公共の福祉を保障するに必要な限度内で、警察力を補う。こういうふうに規定をいたしてあるわけであります。今回もこの保安庁任務といたしまして我が国の平和と秩序維持し、人命財産保護するために特別な必要ある場合において行動する部隊管理する。こういうふうに規定をいたしてございまするから、この点は何ら従来のものが拡張せられたわけではないわけであります。強いて仔細に分析いたしてみまするというと、或いは第四條と従来の第一條とを比べまするというと、警察力の不足を補うためにということが第一條に従来は書いてある。これが今回は書いてないわけでありますが、従いまして警察力が不足して、おらんのにもかかわらず出動する場合があるということが言つて言えないこともございませんが、併しその出動る場合は、特に先ほど申上げましたるごとく、第四章に如何なる場合に如何なる手続で出動するかということを明らかにいたしてありまするから、その出動する場合を見れば、これはおのずから警察力不足の場合に、それを補うために出動する場合に限られるということがおのずと判然いたすと考えられる。こういうように考えておるわけでございまして、私どもの意図といたしましては予備隊に何かプラスしようというふうな意図は毛頭ないわけであります。
  116. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そういうふうな意図であるならば何故に第四條においてそういう点を明らかにしないかというのです。私はそこで明らかにしない末節の方面で行動の方面でこうだということにやりますと、根本が食い違つておるのたからして、これはあなたがおつしやるような立場で警察力の不足を補うというような立場でなしになし得る可能性が出て来るのでありますが、いわゆる軍隊的に扱われるという可能性が大きくなつて来る、そういうふうに思うのであります。何故に一体そういうふうな意図があるならその点を基本において明らかにせられなかつたか、この点を伺いたいと思います。
  117. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは考え方の問題になると存じますが、第四條いうものは基本的な性格を説明する條項でございます。この基本的な性格を明する場合に、基本的な性格として如何に規定をいたしましたところで、その基本的な性格が具体的な行動なり或いは権限において如何に現われて来るかということは、これはむしろ行動なり権限なりを具体的に明確に規定するほうが法的な扱いとしては適切であると考えます。具体的な行動なり権限なりが明確に規定されました場合において、それはその機構というものが如何たる性格のものであるかということにかかわりなく、それだけの権限は、或いはそれだけの行動はなし得るもの、又なすべきものというふうに考えるわけでありまして、法的な扱いといたしましては疑わしい規定を避け、明確に法律上の疑問をなくすという点において、私はむしろ、末節と言われますが、行動なり権限なりを具体的に明確にするほうがより適切な方法であり、法律規定としてはより親切な規定と存ずるのであります。勿論この場合におきましても、末節のほうをはつきりすると同時に根本もはつきりして行くということにいたしますれば、これは至れり盡せりでありまして申し分のない規定であるということになりましようが、私どもは行動権限を明確にすれば、根本の規定においてはこの程度で足ると、こう考えた次第でございます。
  118. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 なかなか答弁が上手でありまして、まあ問題はその辺にしておきまするが、次に、私は第六十一條の命令による出動の場合についてお伺いいたしたいと存ずるのでありますが、先ほどこれはやはり重要な條項であろうと思いますが、岡本委員質問があつたのでありますが、総理のどうしてもこれは出動しなければならないというふうな判定によつて出動するのだ、こういうふうな御答弁がありましたけれども、私はまだ抽象的で、はつきりわからない。具体的に言つたらば、どういう場合にそういう判定が下されて行くのであるか。これをお聞きしたいと思います。
  119. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この第六十一條の趣旨は、治安の面におきまして、普通警察の手にあわない事態に処するために出動を命ずるということを表現いたしたいと思いまして、こうした表現をいたしたわけでございます。そこで具体的にということになりますると、普通警察力で処理できないような事態を具体的に列挙するということになるわけでございますが、例えば内乱、暴動等の勢が激しくて、その地方におきまする警察力の全部を挙げて動員してもこれが処理できない、そういうことが明らかに判定される。或いはそういう事態であるということが十分な根拠を持つて認められる。そういう場合に出動するというのがこの六十一條の規定であります。従いまして場合といたしましては、内乱とか、騒擾とか、或いは外部からの不法なる侵略とか、そういう事態が六十一條の具体的な例に当ると考えております。
  120. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 次にこの六十一條の国会承認の件について私は伺いたいと思うのでありますが、「出動を命じた日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。」こういうふうになつておるのでありますが、これは併し、すでにもう出動してしまつておる。この事実りのいわゆる事後承認ということになるのですか、この点を伺いたいと思います。
  121. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 承認の議決のあつた日までのことにつきましては、事後の承認でございます。併しながら将来に対しましては事前の承認ということになるわけでございます。若し承認すべからざるものと議決せられましたならば、内閣総理大臣は直ちに出動を停止しなければならない、こういうことに相成つております。
  122. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 不承認の議決ということは、そうしますというと事後のことについてのことになりますか、事前に遡るというようなことはありませんか、その点を伺いたい。
  123. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 不承認の議決がありますれば、事前に遡るということになるかも知れませんが、併し実際上は出動いたし、又それによつて引起つた事態に対しましては、これはもう事実問題でございまするから、議決を以て取消すということは不可能であると考えております。従いましてつ事後に対してのみ効力を有するものと考えられる次第でございます。
  124. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうしますと、いわゆるすでに出動したということに対して不承認の議決がなされた場合に、この総理大臣の責任問題はどういうふうになりますか、この点を伺いたい。
  125. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは一般に議会の事後承認を要する事項について……事後承認の定めるところによります。
  126. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私の伺つておるのは、事後承認でなしに、この出動したということに対して遡つて承認であると、こういうふうな議決が行われた場合には、総理大臣は如何なる責任をとりますか、こういうことなんです。
  127. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それは責任の一般原則による以外にないと思います。特に保安庁法によつてその責任を規定をいたしておりません。ただ保安庁法規定いたしております事柄は、不承認の議決のあつた場合においては、速やかに将来に亘つて撤収をいたす、こういう責任が内閣総理大臣につ生ずる。このことだけがこの法規の規定いたしてあるところでございます。
  128. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 これに関連して来るのでありますが、第六十四條の、都道府県知事は、治安維持上重大な事態につき止むを得ない必要があると認める場合には、内閣総理大臣に対してその保安隊警備隊出動要請することができると、こういうふうになつておるのであります。総理大臣がとにかく出動を命ずる場合と、それから都道府県からの要請という場合とは、これは実際にどういうふうになるのでしようかな。その別々にやはりこういうことが行われることになるのでありましようか。例えば都に起つたとか、或いは千葉県に起つたというような場合でも、要請にかかわらず、内閣総理大臣出動を命ずると、こういうふうなことになるのですか。その辺の関係はどうなんでございましようか。
  129. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 第六十四條の出動要請は、都道府県知事権限に属せしめてありますので、これが当然出動要請いたしましたる県知事の管轄する都道府県の区域に最密に限らるべきものと考えております。従いまして、千葉県知事の要請に対しては、千葉県に出動をいたす場合においてのみ六十四條の規定が適用されるわけでありますので、若し千葉県に起つた事態を契機といたしまして、隣の府県、即ち東京都においても出動をしなければならん。その場合に東京都知事は出動要請をしない。而も総理大臣は出動すべきものと判断をいたしますならば、それは第六十一條によつて、東京都に対しては出動をする、こういうふうに考えております。
  130. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 この都道府県知事要請の場合には、特別に国会承認を求めるというようなことがありませんのですか。これはどうしてこういうふうになるのですか。その点を……。
  131. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察法におきましては、自治体警察の区域について自治体警察事態を処理できないと考えました場合において、都道府県知事国家地方警察に応援を要請する権限を與えられておるわけでございます。従つてこの根拠と相成つておりまする点は、都道府県知事というものは、直接法規上の権限はなくとも、その性格から見まして、その区域内における治安維持ということについて十分な関心を持ち、又事態を十分に判断し得る立場である。こういう立場にあるものという考えに基いて警察法の規定ができておると思うのでございます。で、従いまして都道府県の区域内の事柄につきまして、都道府県知事に一応の判断の機会を與え、そうしてその判断に基いて警察予備隊、或いは保安隊出動せしめるということが適当であると考えたわけでございます。で、かような地方的な事態につきましては、地方的機関の責任において一応出動要請をさせる。そうしてこれに対しては、地方議会の監督の下に置くということが適当であると考えまして、第六十四條では、都道府県知事はこの旨を都道府県議会に報告するという規定を設けた次第でございます。
  132. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 その際に国会においてはとにかく承認を求めると、内閣総理大臣の命によつて出動をした場合に……。併し都道府県の場合には、今御答弁のあつたように、報告にとどまつて、これの承認を求めるということにしなかつたのはどういうわけですか。
  133. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは警察法の二十條の二におきまして、自治体警察の区域に国家地方警察の応援を都道府県知事が求めまする場合においても、こういう手続に相成つておるわけでございます。従いまして一般警察力の不足を知事が認識して、そうして保安隊警備隊出動要請する場合においても同様の手続を以て十分であろう。こう考えましたので、全く警察法の先例を踏襲した以外に意味はございません。
  134. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 大分遅くなりましたから、もう一つだけ伺つておきます。それは携帯するところの、或いは備えるところの武器の限界について、六十八條に示されておりますが、それを伺いたいと思うのであります。「その任務遂行に必要な武器を保有することができる。」この限界であります。
  135. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 限界は極めて抽象的でございまして、規定上は、任務遂行に必要な武器と、こうなつておるわけであります。任務といたしましては、先ほども申上げましたごとく、騒擾、内乱、暴動、或いは外敵の不法侵略、そうした場合に実力を以て国内の秩序維持回復する、これが任務となつておりまするので、その任務に必要な武器を所持するというふうに考えておるのでございます。併しながら現実の問題といたしましては、しばしば申上げましたるごとく、現在は小銃、ピストル、それから機関銃、ロケツト発射装置、迫撃砲、こうしたものを持つておるのでございまして、なお今後小口径の火砲等を備えたいというふうには考えておりまするが、何分今日の方針が、すべての武器は当分のうち米国の貸與に仰ぎたいというふうな方針をとつておりまするので、将来の点につきましてはなお先方と十分に協議の上、必要な範囲で備えるようにいたして参りたい、こう思つております。
  136. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 最後に七十八條の募集事務の委任について伺いたいのでありますが、これは事務の依頼でありますか。或いはいわゆる下手をすると、徴兵制が布かれるように考えられるのでありますが、どういう点になりますか、その点を伺いたいと思います。
  137. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは單なる事務の依頼でございまして、予備隊の隊員の募集をいたしまするには、一般の応募者に募集をいたしておるということを周知徹底させ、そうして応募者から申込をとらなければなりません。これがためにいろいろ政府といたしましても、ポスターなどを印刷して、普及徹底を図るような措置をとつております。従いましてこうした仕事を頼んだり、又或いは役場に願書の用紙を備付けて、志願者にこれを渡し、記入した願書の受付事務をお願いしたい、こういう程度でございまして、この点はすでに警察予備隊令の一部改正法律案に同様の規定が設けられまして、これに基く政令においてその点が明らかと相成つております。
  138. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 今の御答弁で、單なる事務の依頼ということになりますと、内閣総理大臣指揮監督を受けるというようないかめしいところの言葉も必要ないと思いますが、実際にはそれ以上に亘るのではないかと思うのですが、実際のところを伺いたいと思います。
  139. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この内閣総理大臣指揮監督というのは、確かにお説のようにいかめしいので恐縮しておるのでございまして、実はそれほど指揮監督しなければならないような重大な仕事を頼むわけではなく、今申しましたように、管内にポスターを貼つて頂きましたり、或いは願書の受付をしてもらうという程度でございまして、指揮監督というほどの実質のある仕事ではございません。ただなぜ指揮監督という字句があるかと申しますと、地方自治法によりまして、自治体の長に国の事務を委任いたしましたときは、当然に内閣総現大臣が指揮監督をするというのが建前になつております。そのことを念のため明らかにしただけでございます。
  140. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 もう一つ伺つて終りにいたしたいと思います。海上治安というふうなことになりますと、海上として、非常に漠として現わしておるのでありますが、これは非常に私は場合によつては、あの通り海は広いのでありますから、いろいろな場合が出て来るだろうと思います。実際においてこの海上というふうなものの規定する範囲というふうなものを、どういうふうにお考えになつておりますか。
  141. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 海上と申しますと、御承知の通りに領海及び公海というふうになつております。それと沿岸におきましては港というものがございます。従いましてこれらのものを普通ひつくるめて海上というふうに考えておる次第でございます。
  142. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 三好始君。
  143. 三好始

    ○三好始君 私は実は保安庁法案の個個の條章に入るまでの基本的な問題、特に保安隊並びに警備隊の法的性格に関連する質問事項が約三十項目ありまして、この問題を明らかにするだけで、多分まる一日ぐらいかかるだろうと思つておるのでありますが、もう時間が相当たつておりますから、本日は質問をいたさないで、次回に延ばして頂きたいと思うのであります。
  144. 河井彌八

    委員長河井彌八君) それでは諸君に伺いますが、他に御質疑がありますれば、この際御発言願いたいと思います。
  145. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私も数時間に亘つて質問したいと思うのですが、大変遅くなつたのですが、どうでしよう、この次……。
  146. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 ほかの委員のかたも質問があるのですけれども、今日はまだ説明書を見たばかりだから、次回までに調べたいと思いまするので、今日はこの程度で……。
  147. 三好始

    ○三好始君 ちよつと私政府側に希望を申上げておきますが、私は抜打ち的な質問をして答弁に困るようなことはさしたくないと思います。あらかじめ質問事項を印刷して、先ほど政府側にお渡ししておきました。十分に研究されて、自信のある御答弁をされるようにお願いしたいと思います。
  148. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 先に岡本、若木両委員、その他いろいろ御質問になつて、調査資料を要求されておるのですが、間に合うように一つお願いたいします。
  149. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 木曜日までに……。
  150. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 もう一つ殊にお願いをしておくのは、海上保安庁装備施設の現況並びに二十七年度における拡充計画に関する資料というのがありますが、その二の、米国から貸與を受ける武器種類、数量、金額等についてはまだ不明でありますとなつておりますが、恐らくアメリカの国民の各位が高い税金を払われて、それでできた武器がどうなつておるか、数がわからんようなことで私は貸與されておるとは思わないわけであります。そこでアメリカの武器貸與法、並びにはつきりとそんなものがわからんというようなことは政府とされてもないと思いますので一体どの武器がどれだけあつて、その製造年月日、金額というようなものを一つはつきりと、これはやはり基本的な重要な問題でありますので、一つ是非お願いしたいと思うわけであります。若しこれが出ませんとすれば、こういう問題を不問に付してずるずると、末節と言いませんが、そうして通りますと、日本の将来にとつても必ずしも暗影なしとしないわけでありますので、一つ是非契約の内容その他について一つはつきり、あとに問題を残さないようにするほうが大切だと思うわけであります。例えばアメリカが第二次大戦におきましてソヴイエトに武器を貸興しておる。それが最近米ソの対立が激しくなつて、ソヴイエトはただでもらつたように思つたのに、それを全部金額に見積つて返せというようなことになつたりいたしまして国際的な紛争も招いていますので、一つこの点はつきりと我々が十分情勢を判断するに足るような資料をお願いしたいと思います。
  151. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 最後に申上げ。この委員会はまだ継続しなければならんと考えております。その時期は追つてお知らせをいたします。委員諸君にお願いいたしますのは、広汎な法律案でありまするし、関係するところが極めて重大でありまするから、願わくは御質問は成るたけ重複を避けてそうして精細にお願いしたいと思います。その結果は内閣委員会の審議に支障を生ずる場合があるかも知れんと考えまするから、そういう場合には委員長内閣委員会に諮りまして適宜処置したいと考えております。そういう意味を御了承願つておきます。本日はこれで散会しようと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 御異議ないと認めます。それでは本日は散会いたします。    午後四時二十二分散会