○
参考人(
羽仁路之君)
只今御指名の羽仁でございますが、本日は大変暑いところを
通産委員の皆様がたが
金属鉱業の問題をお取上げ下さいまして、これが
対策について御検討願いますことは、誠に感謝に堪えないところでございます。
我が国の
非鉄金属の
鉱物資源は代表的なものは金、銀、銅、鉛、亜鉛でございます。そのほかに硫黄、
硫化鉱或いはタングステン、モリブデン、水銀、一通りあらゆる種類の
金属鉱物を日本に埋蔵しておるわけであります。
只今銅におきましては少くも東洋では第一位であります。
硫化鉱とか硫黄につきましては、世界的な
生産国であるのであります。月の
生産額は約百億円程度であります。
従業員は約十万人、本邦の
基礎産業の一つとして相当の仕事をいたしておるわけでございます。これらの
金属鉱業は戦争中は
強行増産によりまして、又金とか錫とか硫黄とかいうものは途中で
設備転換というような運命に会いまして、終戦後は
政府から特別の施策を受けなか
つたのでありまするが、
経営者は誠にこの間非常に苦悩をいたしたのであります。幸いに二十五年
朝鮮動乱の勃発を契機といたしまして、世界的な軍拡によりまして、
非鉄金属も
不足物資として爾来強調を続けて参つたであります。尤もこれは或る種類の物は
相当程度低落をいたしたのであります。爾来業界といたしましてもこの機会に
是非企業の
合理化に努力いたしたい、こういうことで
目下努力をいたしておるような次第であります。
我が国土は敗戦によりまして非常に狭小にな
つたのでありまするが、従来は朝鮮とか或いは満州とかいうほうの
地下資源の
開発に努めた時代もあるのでありますが、極く小さな国土に押込められたのでありまするが、幸いにしてかなりまだ多くの
地下資源に恵まれておるのであります。このうちで大体国内産で国内の需要を賄い得まするものは亜鉛・
硫化鉱、
硫黄等であります。今後の
施策如何によりましては自給可能になるというものは、銅、
マンガンというような種類のものであります。併しこのような自給できるという
マンガン、
硫化鉱にいたしましても、かなり無計画な輸入がありまするために市場の混乱によりまして、
国内鉱業は相当に圧迫せられておる実情であります。
独立国家として
自立態勢を確立いたしまするためには
国内地下資源を極力愛用することとしまして、海外からの
金属鉱産物の輸入をできるだけ少くする。そうして
国内地下資源の増産によりまして、
国内産業を発展せしめるということと、
外貨資金の節約を図ることを以て今後の
経済政策の一環として頂きたいと存ずるのであります。終戦以来六年
余り日本は
占領下にありましたので、独自の
政策ということは困難であつたろうと思うのでありますが、今回
独立国として再出発いたしたのでありまするから、この際確固たる一つの
鉱業政策を樹立して頂きたいということを要望いたす次第であります。
金属鉱産物はあらゆる
産業の
原料資材でありまするが、その関係上
各国ともに
鉱山業につきましては種々な助長、奨励の策を続けておるのでございます。
資源の豊富を誇ります
アメリカの
地下資源開発に対しまする強力な
政策は国会図書館の編集になる米国の
鉱業政策制度の
調査報告によつてもその一面は知り得るのであります。然るにこの
金属は国際的な商品でありまするがために、
国際市場においてこれらの諸国と競争をいたさなければならんのであります。
我が国鉱山業が
国際競争に伍して立ち行くためには、是非これらの
先進国の
鉱業政策制度の長を取入れて、
我が国の
鉱業政策を確立して頂きたいと存ずるのであります。業界として
只今要望事項はお手許に差上げました
金属鉱業対策要望書の二頁に大体列挙いたしておるのでございますが、第一はこの
産金業の
助成の問題でございまするが、御承知のように金は国家が
強制買上げを続けて
参つたのであります。然るに金の値段は四百一円に釘付けされまして、爾来物価及び労銀が上りましたのにもかかわらず、常にこの四百一円に押えられて
参つたのであります。従いまして、現在
金鉱業者は一グラムについて五割以上のマイナスを背負い込んでいる。国家の施策によりまして
業者として五割以上の欠損をするというような状態にあるわけであります。従いまして、先般
政府の
買上げまする金、
加工用の金を
自由価格で販売さしてもらうというような点につきまして当
委員会にも御尽力を願いまして先ほど御報告のありました通りに、
生産量の約四〇%を
加工用として一グラム五百四円という
産金業者の
手取りが認められることにな
つたのでありまするが、
生産量の六〇%はやはり依然として四百一円で
買上げられるのであります。従いまして、
産金業者の一
グラム当りの
手取り価格は四百四十二円でございます。資料としてお手許に添付いたしたものによ
つて御覧になつて頂きたいと思うのでありますが、七グラム含有の金鉱は
グラム当り生産費が六百七十九円に相成るのであります。従いまして、一グラム四百一円で
買上げられますると、なお二百三十七円の赤字になるわけであります。従来は銅、鉛、
亜鉛等の
兼営者はこれらの部門の収益によりましてこの赤字をカバーしてとにかく
金鉱業を維持して
参つたのでありまするが、
非鉄金属部門に反動が
参つたのでありまして、これらの
金鉱山というものは好むと好まざるとにかかわらず、だんだんと
企業廃止の面に近付いて参るのであります。従いまして
産金業者といたしましてはこの際
政府において金というものは必要である。或いは必要でないのか。必要でないのならばこれは自由に売らして頂きたい。若し金がなお必要なら
我が国金鉱業の立つて行けるような
対策を講じて頂きたいのであります。そのためには赤字補填して頂きたいのでありますが、
国際通貨基金参加の関係上工合が悪ければ
探鉱奨励金の方法をとつて頂きたいのであります。これだけでは不十分でありますので、
加工用金の
販売価格の引上げとその数量の増加、
金鉱業の
固定資産税の免除も併せて実施して頂きたいと思うのであります。第二番目は
鉱山道路の是正と
鉱山地帯鉄道新線開通促進という問題でありますが、これは現に
鉱山道路の問題は現に
公共事業費より補助実施されつつありますが、
金属鉱山の場合は立地的に
専用道路とか
町村道に該当するものが多いのでありまして、
現行制度ではその対象とならないので、本年の
企業合理化促進法が実施せられまして折角道路の整備を取上げておりますので、林道のように
鉱山道路につきましても
産業補助施設として
特別枠を設けて
専用道路も
助成の対象として頂きたいのであります。それから
鉱山蹄帯はここに一応鉄道の
予定線を列記いたしましてこの鉄道の問題を特に
促進をいたしたいと思うのであります。
第三番目には新
鉱床の
探査促進という問題でありますが、
我が国の
鉱業法では未掘
採鉱物は国有にされ、又
国内埋蔵資源は国富とも言えますので、この点からも新
鉱床の探査は
地質調査と共に本来国がなすべき
事業であるとも言えます。
アメリカではかなり厖大な
予算で国が直接
鉱床探査を実施いたしますと共に、企業に対して
探鉱費の五〇乃至九〇%も融資して新
鉱床の
開発に努めております。
我が国におきましても国が積極的に
探査事業を実施することは望ましいことでありますが、直ちに実施は困難と存じますので、差当つつては
民間企業に新
鉱床の探査を委託実施するよう希望いたします。
第四番目は
中小鉱山の問題でありますが、これは御承知のように大
鉱山は一朝にしてでき上るものでもないのでありまして
中小鉱山の育成というものはやはり
鉱業政策としても特に取上げて頂きたいと思うのでありますが、然るに不幸にして
鉱山というものの実態は
金融機関にはなかなかわかりにくいのであります。特に
市中銀行ではなかなか小
鉱山に対して融資というようなことは取上げられないのであります。従いましてこの
要望書に掲げまするような問題を特に
政府として考、えて頂きたいと思うのであります。
中小鉱山の
資金面ということにつきましては製錬
業者は或る程度はその鉱物を
買上げましてそれに融資する、或いは将来のここから出て来るものに対しても融資するという方法はとつておるのであります。併し
一般の業界の不況に対しまして、売れない物を一々買う、なかなか製錬
業者がそれをしよい込んでやるということも、相当の責任を負つてこの問題に対しては努力をいたさなければならんのでありまするが、
一般の
中小企業と同様に、この
中小鉱山に対しても融資する施策に対して深甚な御考慮を願いたいと思うのであります。
第五は、民間の
鉱業技術研究の
奨励助長という問題でありますが、これは業界といたしましても、みずからこの問題ば手を付けてやるべきでありまして各大
鉱業会社はそれぞれ会社に
鉱業研究機関を設けまして、相当大規模な技術の
改善進歩に努力はいたしておるのでありますが、現に
政府の相当の
保護政策、
助成を受けておるのであります。更に躍進をいたしまするために、今後一層の
奨励研究の方法を講じて頂きたいと思うのであります。
第六番目は、
租税負担の軽減という問題がございます。この問題は
ひとり鉱業だけの問題ではございませんが、
アメリカでは
企業保護の立場から、
鉱業に対して税制上いろいろな
減税制度が設けられておるのであります。例えば
基準量以上の
増産分に対しては免税するとか、或いは
開発費、
採鉱費のほうを
経費支弁を認めているようであります。然るに
我が国では反対に例えば保安のために
鉱山に多くのダムを現在作つておるわけであります。例えばこれほ炭鉱で申しまする
ボタ山と同一のものであります。これに鉱水とか或いは細かな廃滓が出まするので、これを防止いたしまする保安上の見地から極めて莫大な経費をかけて、ここに出て来る滓を貯める設備をいたすわけであります。これは
鉱山業者から言えば捨てておいてもいいということも言えるのではないか、保安のために相当莫大な経費々これに投じておるわけであります。従いまして私
どものほうから言いまするならば、これは本当の津の処理の仕事でありまして、これを
償却資産として
固定資産税をかけられるというようなことは是非ともやめて頂きたい。これらの
廃滓処理施設構築物の設備、こういうものに対する経費というものは
法人税法上、
所得税法上損金として認めるというような要望をいたしておるものであります。これは別途に我々としても努力をいたすわけであります。一応業界の希望としてお聞き取りを願いたいのであります。
更に第七は、
鉱業資本の蓄積という、こういう問題でありますが、
鉱業は地下に埋蔵されておる
資源を
開発して
鉱産物を
生産及び販売する
事業でありますが、稼行の対象でありまする
埋蔵資源は有限で、
減耗性を持つておるのでありまするから、採掘に際しまして鉱量というものは逐次減少し、遂にはなくなるのであります。従いまして、この
事業はこの
減少部分に対しまする適当な
補充手段が講じられなければ、
恒久性を失いまして持続できなくなる、この点で他の
一般産業とは著しく異なる特性を持つておるのであります。かような
鉱業に固有な特性は
鉱業の
損益計算並びに資本の維持につきましても、他の
一般の
産業とは異なる特殊な考慮を必要とするものと思うのであります。若しも他の
産業と同様にこれが処理をされますと、
鉱業に特有な
埋蔵資源の減耗は無視せられまして
資源の喪失した
事業継続の困難を必然的に惹起しまして
鉱業を極めて不安定な状態に置くことになるのであります。
鉱業の資本が維持されて
事業を継続いたしますためには、採掘によりまして減耗する
埋蔵資源の全価値がコストとして回収されなければならないのであります。又特に
我が国の
金属鉱山におきまして顕著に見られるのでありますが、その
生産力を維持するためには、採掘によつて減耗した
資源の価値に応じた
資源が、新たに採鉱とか
開発とか、或いは買収によつて可及的、並行的に補填されなければならないのでありまして、少くとも
鉱山業経営が継続を一前提とする場つ合には、減耗する
埋蔵資源と関連いたしまして新
鉱床の発見、
開発乃至は買収に要する再投資の
必要性が当然に考慮されなければならないのであります。海外の
先進国におきましては、これらの
鉱業の特性を考慮いたしまして
損益計算並びに資本の維持上、
一般諸
産業とは異
つた措置を採用しております。北米では一九一三年に
歳入法が制定されまして以来、
埋蔵資源の
減耗控除額が損金として認められました。これは現在までにいろいろの改正が行われまた結果、
販売鉱物の
山元総価値を基準といたしまして正石油及び
ガス井戸に対しては二七、五%、
硫黄鉱床については二三%、
金属鉱山には一五%、炭鉱には一〇%、
螢石ボーキサイト、
鱗状黒鉛、硅石、
緑柱石、長石、雲母、滑石、燐鉱、
天然アスフアルト、
加里等には一五%の
一定率が
減耗控除率として適用され、課税上損金として控除される額は
営業純益の五〇%か、それよりも
少い額を持つております。新
鉱床の
発見開発はだんだん困難なつて参るのであります。その費用は漸増する傾向にありますので、これに要する資金は加速度的に増加しつつあります。
鉱業の健全なる発達のためには
是非減耗控除制度が必要と考えまして、業界としても一昨年来研究を続けて参つておりまするので、近くその成案を得るということになつておるのであります。従いまして、今後
鉱業に関する
減耗控除制度というものを
地下産業共同の立場におきまして、改めて案を出しまして、当局にもお願いするという考えでございます。
以上
要望書の内容を中心にして説明したのでありますが、参院の御当局におきましても、日本の
金属鉱業の実態を御考慮下さいまして、いろいろと御指導によりまして、この際
我が国の確固たる
金属鉱業政策の確立されますよう、偏えに念願をして止まないのであります。以上であります。