運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-07-09 第13回国会 参議院 通商産業委員会 第62号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月九日(水曜日)    午前一時二十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     竹中 七郎君    理事            小林 英三君            結城 安次君    委員            中川 以良君            山本 米治君            加藤 正人君            吉田 法晴君            境野 清雄君            西田 隆男君            石川 清一君   政府委員    法務府法制意見    第三局長    西村健次郎君    通商産業政務次    官       本間 俊一君    資源庁炭政局長 中島 征帆君    資源庁開発鉱害    部第一課長兼第    二課長     大山  隆君   事務局側    常任委員会専門    員       林  誠一君    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   法制局側    法 制 局 長 奧野 健一君   説明員    農林省農地局管    理部長     谷垣 專一君 ○臨時石炭鉱害復旧法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) これより通商産業委員会を開会いたします。  臨時石炭鉱害復旧法案を議題といたします。質問を継続して頂きます。
  3. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは前回に引続きまして、明らかにならなかつた問題の点で一応お尋ねをして参りたいと思いますが、それは今後の立法政策上の問題ですが、この法律を作るために、或いは作るに当つて衆参両院意思に基いて審議会が作られた。国内の調査が二回に亘つて行われますと共に、中島炭政局長その他関係者も我々の意を体してドイツイギリスその他外国立法例或いは鉱害復旧の実態について調査をせられたようであります。その報告書を拝見いたしますと、結論につきましていろいろ十二項目に亘つて中島さん自身が書いております。それには、例えば現状回復主義を第一としているようである、或いは我が国鉱害問題が一時代も二時代も遅れて、過去の鉱害が放りつぱなしになつておる、こういう結論を出しておられるようであります。ドイツイギリス事例も挙げられておりますが、ドイツイギリス事例が、衆議院のこの法案審議の際に野党委員から言われたように原状回復だけ一本でするというように私も報告書を読んで、了解はいたしませんけれども、併しながら原状回復主義第一義になつておるという点は中島さんも認められておる。そしてこれは鉱害問題についての今後の動向というものについても調査団としての意向を表明されたことは間違いないと思うのであります。そういたしますと、この二、三日前に中島さんがここで今後の立法政策について御答弁なり、或いは表現されましたものと違うように思うのでありますが、今後のこの問題について報告書、或いは過去の経験から考えられましてどういう工合考えられておりますか。或いは調査団報告というものは、これは個人的な立場に立つておる意見がある、こういう御趣旨であるかとも考えられる節もございまするけれども、併し一応国費使つて調査団としてお出でになつた以上、これは政府の一仕事としておいでなつたということも明らかだと思うのです。その報告書も単なる個人的の意見とも考えられませんし、なお重ねて一つ答弁をお願いしたいと思います。
  4. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 海外の鉱害調査報告と、先日私が申上げました今後の立法問題に対する考え方というものは全然矛盾していないと私は思つておりますが、要するにいずれにいたしましても原状復旧というやり方というものが最も被害者にとつては望ましいことであり、又できれば国としてもそういうふうに持つて行くのが適当だと思うのでありますが、ただそれをそう単純に結論し得ないのは、特に現状を見ました場合に、日本石炭鉱業そのものの実力と申しますか、或いは更に突込んでは日本の炭層或いは炭鉱状況というものがそこまで耐え得るような状態にないということが一つの問題であります。殊に地上物権というものの中で水田が非常に重いということはほかの国に比べまして地下条件を別にいたしましても鉱害復旧対策というものが非常に困難であるという問題もあるわけでありますので、従つて炭鉱自体負担の問題、これは炭鉱負担と申しましても、結局は国民の全体の消費者負担になるわけであります。そういうふうな問題と、それから地上物権処理に関しまする技術的な問題、こういうものがありますので、そういう点を十分勘案いたしまして、果してどの程度まで原状復旧主義がとれるかどうかということを検討しなければならん。これがこの前私が申上げました趣旨でありまして、調査団報告書結論といたしましても、原状復旧主義は必ずとるべきだという、一〇〇%とるべきだという結論は恐らく出ていないと思いますが、ただそういうふうに持つて行くのが望ましいというふうな意味のことを書いてあると思いますが、併し問題はいろいろあると思う。従つていろいろなものを考慮して最終的に最も適当な方策を立てるべきだということになるのであります。単純な原状回復主義を今すぐにとれるということには只今すぐに結論は出ないと思います。そのためにこの前申しましたような、いろいろなほかの条件を合せてきめまして、それで種々の資料なり、或いはデーターなりを取揃えた上で慎重な結論を出すべきだ。その場合にできれば原状回復主義をとるような方向に持つて行くべきであろう。これは私の個人的な気持でありますが、そういう意味を以て検討する。併しこの国の資源状態というものに限度がありますから、非常に炭鉱賦存状態がよければこれは如何ようでも炭鉱負担として処理できますけれども日本の経済が国際競争に堪えるということのために、やはり石炭のコストというものも考えなければならん。そういう面におきましては、そこに限度があると思いますので、そういうふうな結論が出ますかどうかは、やはり今後その鉱害復旧の実際と、それからそれに併行いたしました諸般の研究との結果によりまして判断する、こういうふうに考えております。
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 日本の場合は石炭鉱業の能力が原状回復主義鉱業責任においてなすところまで来ておらん、こういうまあ理由が今述べられました。一番大きな理由であるかと思います。この前のときには技術関係測量制度等を一番強く言つておられたと思うのであります。報告書には日本支払賠償費は一・五、六%であり、西ドイツにおいては約二%であつて日本支払賠償費は決して小さな数字ではないがドイツに比べるとまだ低いのである。これはいわゆるドイツの場合とそれから日本実情との違いがあると思うのでございます。或いは炭田の上に山がある、これは日本の場合にも北海道その他の場合と似ていることは中島さんの報告書に御指摘の通りであります。ドイツの場合のルール炭田、或いはイギリスのドンキヤスターそういうものを中島さん自身が挙げておられますが、そういう或いは低地帯或いは地上に工場その他人口、家屋等が櫛比しております場合とはおのずから鉱害問題の深刻さと申しますか、或いは賠償費石炭生産費の中におけるパーセンテージがおのずから違つて来ることは当然だと思うのであります。その場合に日本水田炭田の上に相当たくさんあります場合に、これは日本の独特のものだと思うのであります。それとそれから今後新らしく開発されて参ります炭田考えますと、地上のマイニングじやないインダストリイの工業、或いは家屋等の問題は今後ますます大きくなつて参ると思うのであります。そういう事情の違い、それから近似点等考え合せた上でこの鉱害問題をどういう工合に片付けるか、これが調査目的だつたろうと思うのであります。そうしてその日本実情から考えて見て、我が国金銭賠償原則はこれに劣るということが結論の中に書いてあつて、そうして原状回復主義第一義としているようだ。結論として原状回復主義第一義とすべきとは書いてございません。併しながら我が国金銭賠償原則がこれに劣るという点は明らかにこれは中島さんの調査団意向報告しておると思うのであります。或いは過去に生じた厖大鉱害地を如何に復旧するかに悩まされている我が国現状は、鉱害技術的対策についてすでに一時代も二時代も遅れておる状態だ。この点から考えまして、この報告書で見ますというと、原状回復という問題を我が国においても考えなければならんという意図が或いは結論が入つていることはこれは間違いないと思います。それを今度の臨時石炭鉱害復旧法案でどういう工合に活かすか、それからその不完全性については政務次官その他これは中島さんもお認めになると思うのでありますが、認めた上でそれでは今後どうするか、これがこの間問題になつたところだと思うのであります。それを測量制度が発達していないからとか、それから今の鉄業負担力云々というお話もございますけれども、その点についても報告書の中には中島さんすでに触れられておるところであります。そういう形をそれだけを理由にして今後の政策について逃げられることは、少くとも調査団報告書から見ますならば、私は無責任だと思う。真面目に真剣にお考えになつておるところを一つ明らかにしておいて頂きたいと思います。
  6. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) その報告にもあります通りに、一番現在の鉱害賠償問題で痛感されますのは、二百三十億と言われております厖大鉱害が現在残つておる。これが非常な問題でありまして、そのために現地におきましてはいろいろなトラブルも起り、或いは鉱業権者負担力というものもなかなか困難になつて来るわけであります。それを片付けまして普通の正常な鉱業経営状態に若しなれば、そのときにおきましては鉱山といたしましても十分のこれからの鉱害に対しまして賠償もできるということになろうと思いますが、現在の状況ではそういうふうな関係からいたしましても、恐らく、は十分鉱害賠償が行われているということは言えないところが相当あると思うのです。従つて理想的な鉱害賠償制度というものを作りますには、先ず今の一種の病症であります累積した鉱害を片付ける、そこで初めて新らしい鉱害賠償制度へ移行するのが適当でありまして、又そのとき初めてその問題が起きるのでありまして、とりあえずそれを片付けなければならない。片付けるには相当年月がかかりますが、その間におきまして並行して測量制度なりその他の研究も併せていたしました上で、その経過中に将来の鉱害賠償方式というものを十分に検討するということで差支えない、今早急に結論を出しましても的確なものが出るかどうかわかりません。又現在こういうようなことで一応当面の鉱害問題が処理されて行くということになりますれば、それで一応問題は片付けられるわけでございます。少くとも累積したものが片付けられる頃におきまして本当の理想的な制度考える、これで十分間に合うのじやないかと思います。調査団報告原状復旧主義を示唆しておるような結論がありながら、私が何かそれを逃げておるようなお話でありますけれども、決して調査団報告といたしましてもそういうふうな方向が望ましいとか、或いはいろいろなことを申しておりますが、結局理想的な鉱害対策というものはこれは原状回復が一番よろしいということを言つている。日本現状、或いは理想的な鉱害賠償制度というものについてはどういうふうにやるべきかということは、いろいろな制度と合せて十分検討の上で結論を出さなければならんという趣旨のことを、調査団報告を書きましたときにも、又現在におきましても全然変つていないわけであります。
  7. 吉田法晴

    吉田法晴君 この問題は極めてシリアスな問題だと思うのですが、それを日本鉱業或いは鉱害という問題とまじめにとつくみ、そして外国事例も参酌して、堆積しておる鉱害問題を解決するだけでなくして、将来起つて来る鉱害については根本的にどう対処するか。この態度をこれは被害者とか加害者とかでなしに、政府としてはお考えになるべきだと思うのです。その観点からこれは調査おいでなつたのでもありましようし、調査報告書の中に出ておる鉱業法上或いは賠償法上の問題だけでなく、鉱害賠償権というそれ自身だけでなく、ドイツ民法原則もございます、日本民法の七百九条の問題を今ここで御意見を承わろうとは思いませんけれども鉱業法審議の際にも原状回復か或いは金銭賠償の適用が争われた。そしてそのときに一応金銭賠償主義にはよるけれども特別鉱害については考えなければならん、一般鉱害についても事実の成立を待つて解決しなければならん。私は臨時石炭鉱害復旧法案というのはその法案が幾ら不完全なものであつても、或いは原則が歪められて、どこにこの一貫した原則があるのかわからんといたしましても、一応今の中島さんの答弁を以てしても、過去の堆積した鉱害を片付ける鉱業回復ということがあろうとも、原状回復を或る程度実現するものであるということは、これは間違いないと思うのです。そうするとこの法律作つて、そうして鉱業法を制定の際に問題になつ原則をこれから解決をして行くのだ。原則原則、それからそれを可能ならしめる方法はどうだということからおのずから二段になつて参ると思いますけれども、まじめに考えておられる問題だと思うし、又考えなければならん問題だと思うのでありますが、これらの点について中島さんばかりでなくて政務次官もおられますが、調査団報告にしても中島さんの個人のものではございませんし、それから今までの経緯にしても政府としてそれは当つて来られたわけです。政務次官から一つ答弁をお願いしたいと思います。
  8. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 只今の御質問でございますが、将来の鉱業法原則としてどいうふうな賠償形態が理想的であるかというその将来の問題を考えます場合には、法律上の問題もあり、技術上の問題もあり、経済的な問題もあるわけであります。例えば一つ法律的な問題をとりましても、その地上の利益というものと、それから地下資源採掘というものとのこの利害の関係というものをどういうふうに調整するかということにつきましては、これは法律問題といたしましても、決して各国の例を見ましてもまだ片付いていないわけであります。日本鉱業法もこれはまあ一つ考え方をとつておりますが、ドイツイギリスにおきましても現在一つ制度はありますけれども、やはり問題があつて十分これはまだ将来に研究しなければならん問題が残つておるということをいずれも関係者言つておりますし、決して現実法律関係というものが理想的な状態ではないということは認めておるわけであります。それは非常に根本的なむずかしい問題でありますので、これにつきましてはやはり研究すれば幾らでも考え方がある。だから簡単に理想的な結論は出せない。又同様に技術的な問題にいたしましても、鉱害を避けるための防止方法につきましても、今後採掘技術の発達によりまして相当の成績を挙げ得ると思いますが、現在とられておる程度技術につきましても、日本炭鉱経営にとつてはとられないこともございます。これは技術的に申しましても、或いは経済的にもそういう制度はとり得ない、そういう制度は採用できないという面もございまして、これは現在の鉱害をだんだん片付けることによつて炭鉱としてもそういつた方面に力を用いる余力も出て来ましようし、又できる範囲内において鉱山保安法を十分に運営いたしまして、或る程度防止ができるかと思います。又地上被害復旧技術につきましても、これにつきましては例えば農地につきましては収穫の問題、又新らしい農地調整との関連の問題、そういつた問題をいろいろ考えまして、どういうふうな復旧をどういう場合にするべきかという結論を出すべきでありまして、そういう根本的な問題を一応伏せたまま取りあえず鉱害処理しようというのが現在の特別鉱害法であり、又ここに提案されております鉱害復旧法案なのであります。従つて永久的な鉱害賠償原則鉱業法で確立しますためには、やはりそういつた点を十分検討いたしまして日本技術をできるだけ向上し、鉱害防止のために採用できるものは全部採用する、又法律的にもいろいろ権利関係の問題につきまして議論のあるところは十分尽しましてそれで最終的な結論を出すということにしなければなりませんので、そういうことに対します準備は今からすぐ始めなければならん、現実に私どもそういうことを考えております。又測量制度につきましてもこれは測量ということは、結局地上地下との物理的な因果関係を復活させる。これが鉱害問題のスタートでありますが、そういうことをしなければなりません。そういうスタートは、そういう点では全然と申しましようか、十分でない。こういうものをはつきりつかみますためには、やはり何年か相当年月をかけなければ出て来ないわけであります。それらにつきましても早速制度考える。そういうことをいろいろ併行いたして研究を続けるうちに、或る時期においてはそこではつきりした結論が出て来るだろうと思う。その時期において初めてこの鉱業法上の賠償原則というものを十分検討いたしまして理想的な形を作るというのが必要でありまして、決して私どもはこの程度臨時措置法で以て鉱害賠償を片付けてしまうという意思でもありませんし、又鉱業法上の今とられております賠償原則が最も理想的或いは適当なものであるとも考えておりません。併しどのようにやるべきかということは、これは原状復旧が望ましいという気持がありましても、今のような各種の状況を鑑みまして、どの程度やれるかということにつきましてはやはり十分の準備を持つてやらなければなりません。又それに対する努力につきましては無論私はいたすつもりでございます。
  9. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) お答えを申上げたいと思います。只今中島炭政局長から御説明お答えを申上げました通りに私も考えておるわけでありまして、御審議を願つておりまする法案は、勿論調査をいたしました調査団報告十分基礎にいたしまして、でき上つているわけでございますが、前にも申上げました通り只今局長から御説明いたしましたように、日本一般災害復旧状況、それから石炭業者負担、貧弱な国の財政、こういう点をも勘案いたしまして、各省と連絡をして、この程度でいいと話合いがまとまつたわけでございます。従いましてこの臨時立法によりまして、鉱害の問題が抜本的にすべて解決せられる、こういうふうなことには私ども考えておらないわけでありまして、いろいろの実際上の未解決の問題なり、又穴のありますることも承知をいたして提案をいたしておるわけでございます。従いまして、只今申上げたような関係だけを抽出せられまして、調査報告書を書きました責任を回避しているのじやないかという御批判は、何と申しますか、少し苛酷に過ぎるのじやないかというふうに考えております。
  10. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 吉田君に申上げます。奥野法制局長西村法制意見局第三局長が御出席になつておりますから、その点参考までに一つ申上げます。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連しまして一、二お尋ねしておきたいと思うのでありますが、この調査に行かれました意図は、調査報告書にも書いてございますが、この臨時石炭鉱害復旧法案を立案せられるときの趣旨或いは当時の衆、参両院意見というものを背景にしてお出しになつたということもこれは了承いたします。それは報告書の中に出ておりますけれども、国が主体になつて鉱害復旧をやる、こういうところを探したけれどもそれはなかつた、こういう意味のことが書いてございます。法案ができるときの意図が、調査目的の背後にあつたこともこれは了承するのです。そして今の御答弁を承わつておりますと、相当国費使つて調査して来られた。その調査の結果が私は決して不まじめなものだとは思いません。併しその成果をその後どれだけ法案に反映されたかというと、私は余り反映されてもおらんと思うが、なお今後それでは鉱害問題についての施策を立てて行くについて、まじめに取入られているかというと、今の御答弁を以ては私は不十分だと思うのであります。あれだけの国費使つて、その成果というものは今後の立法施策の上に十分これは活かさるべく責任をお持ちになつていると私は信じております。その可能な方法については、これはいろいろ問題があるだろうと思います。併し施策を立てなければならん、或いは法体系を完備しなければならん責任は否定するわけに参らんと思う。それは意見でありますが、そこで一つお尋ねいたしたいのは、行くときの趣旨から言つて、国が中心になつてやるというのは見られなかつたが、鉱害原状回復が第一になつているということは見た。こういうことでありますが、これはこの法律の解釈に当つても、今後の立法施策についても関連して来る問題でありますが、この鉱害の問題、或いは鉱害関係報告書にもありますようなドイツ、その他のように私法的な関係として全部処理すべきであるか、或いは言い換えますと、鉱業権者なら鉱業権者が、責任を以て解決すべきであると考えておられるのか、或いは国が中心になつてやるべきであると考えておられるのか。この臨時石炭鉱害復旧法案を最初作りました際には、言われるように累積した鉱害問題であるし、或いは鉱業法審議の際のように、戦後における、或いは戦前戦後を通じているかも知れませんが、炭価の抑制という問題もあつて、国が責任を持つてやらなければならん、或いはその中心は国でなければならないのじやないか。構想は大体臨時石炭鉱害復旧法の建前のような精神が基礎になつておつたものと思いますけれども、そういうような考え方と、それから見て来られたドイツイギリスの例、それから日本現状考え併せて、この法律の中でそれがどういう工合に貫かれているのか。或いは今後の点については、その点についてどういうような態度で臨まれるのか、その点を承わつておきたい。
  12. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 外国の場合におきまして、鉱害問題がすべて私法的に片附けられる、これは一つの事実であります。むしろ鉱害の問題につきましては、従つて問題は技術的な問題が多いのであります。如何にこれを防ぎ又これを如何に復旧するかというむしろ技術的な問題が鉱害問題の中心でありまして、法律問題は従つて将来の立法問題でありましても割合に少い、こういう実情であるのであります。日本の場合にはそれが違うということが、現実には一つは、累積した鉱害があるということと、それからいろいろな地形その他の条件が違う。この二つの条件問題からいろいろな複雑な問題が出て来るのでありますが、そういう外国実情のために恐らく外国においても鉱害処理については、国が相当の経済的な或いは法律的に乗り出して手を貸しているのではないかというふうな予想を持つて参りましたところが、全然そういうことがない。そういうお手本があれば、早速日本にも規範を作りますときに参考になると思つておりましたが、遺憾ながら全然なかつた。そのときの結論といたしましては、従つて日本においてもそういう方法はもうやるべきでないということになつて、そういうふうに完全に私法関係に委かしてしまうというためには、現実鉱業権者被害者関係が完全でない。特に現在累積しているものをお附けなければ鉱業経営そのものが正常な姿に戻らないので、それを放つておいて全部鉱業権者だけの責任で片附けるのは不可能だというそういう結論からいたしまして、この法律にありますように、国費補助というものを引出しているわけであります。将来につきましては、やはり制度上当然に永久にこういうふうな補助制度というものを継続すべきかどうかということにつきましては、これは十分先ども申しましたような点を研究いたしまして、どうしても日本産業基礎的条件からして、鉱害をすべて経済的に片附けさせるということは不適当だと、こういう結論が出ました場合にはやはりその結論からいたしまして、それに対して国が或る程度の援助をするということも考えられるわけでありまして、それが今どうなるかというにとは、現在の段階として単純に結論を出すべきじやない。十分先ども申上げましたような点も考えまして結論を出すべきだ、どうしてもこれは鉱業権者被害者関係だけではいけないということであれば、そこで初めてこういう制度法律化するということも出て来ると思うのであります。それから問題は多少違つて参りますけれども、どういうふうな点がこの法律の中に活かされているかというお話でございますが、今般的にはそういう気持で作られているということと、それから一つの例といたしましては、この事業団という構想が出ておりますが、これはこの法律の性格上極めて範囲の狭い、弾力性の少いものになつておりますけれども、将来鉱害の恒久的な対策を考えます場合にはこういつたような法人を十分に活用するようなことを考えたらどうか。こういうふうな公共組合的なものがルール地方にありまして、非常に成績を納めておりますけれども、それに倣つて日本にも適合したような組織を作りまして、鉱害問題をできるだけ自治的に片附けるという方向に持つて行く、それでそれを作る場合に必要であれば勿論国から援助しても差支えないでありましようし、関係者だけの経費で以て十分鉱害の対策は講じられるということになりますので、将来そういうふうなものに発展させる含みを以て事業団というものをここで作つているわけであります。勿論ほかの理由もございますけれども、仮にこの法律が十年後におきまして廃止になるような場合におきましては、この事業団というものを単に解散してしまわないで、やはりそういうふうなものに発展的に解消させる。そこでまあ一つの新らしいステツプとして協同社会的な機構というものに近附けるということもできるんじやないか。そういう考え方を以てこの事業団というものを作つているわけであります。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 この法律の中にドイツのように私法的な関係を貫いて行くか、或いは国の責任というものを置いて行くか、これはあとで法制局にお尋ねする問題かと思いますが、今の中島さんの御答弁では事業団を、これはルールですか、ゲゼルシヤフトのようなものにするというか、協同組合といつたような言葉を使われたように思うのでありまして、そうすると鉱業権者責任原状回復をする、そういう性質のものとして事業団の性格を考え、或いは十年たつた先において将来のことを考えてそういうものとして考えるかのような御答弁があつたと思うんですが、こんは重大な問題だと思うんです。それからドイツイギリスの場合に私法的な、純私法的な関係として取扱われている。ドイツの場合には民法原則論からして大体そうだと思うんですが、イギリスの場合の家屋に対する、少額家屋ですか、家屋の場合の復旧について国が半額補助する、こういう制度のごときはこれは純然たる私法関係でもなかろう、或いは私人に代つて国家管理や国営管理が行なわれている。そういうことで私人に代つて国が鉱業会社との責任を果す。こういう考えに理解せられているのか、或いはそうでないかもわかりませんが、少額家屋に対する半額補助というのは、これはイギリスの現在の住宅政策とも私は関連して来ると思う。必ずしも純然私法関係のみではないと思うんです。日本の場合に炭鉱国管、それからあとで臨時石炭鉱害復旧法案に出ている考え方というものは、今と違つて相当国家的な要素或いはその当時では統制ということがありましたけれども、もつと公共性、国家の責任というものも私はこの中に入つていたと思う。そこでこの法案についても言われたように、私法上の関係として鉱業法百九条による鉱業権者賠償責任中心になつて臨時石炭鉱害復旧法案ができているのか、それとも特別鉱害の場合のように、国がその主体と申しますか、責任中心になるような精神が基本的になつて作られているのか、これは或いは七十五条のあとの責任の問題に関連して参りますが、どういうように考えておられますのか。
  14. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) イギリスの小住宅の問題はこれは一つの例外でありますが、大体イギリスではすべて鉱害問題は鉱業権者とそれから地上権者との賃貸契約、或いはいわゆるリースと言われているものの関係ですべて片附けられている。併し実際に小住宅の賠償責任を放棄していることがありまして、そのために相当の家屋が被害を受けても直してもらえない、自分で直す資力もないというケースが相当にあつたと思うのであります。それに対する一つの社会政策的な労働党内閣の方策としましてこういう特別法を作りましてやつているわけであります。全般的にはすべてこれはまあめドイツよりも一層徹底的に個人々々の契約の内容によつて賠償をすべて片附けるということになつております。従つて国管になりましてからのイギリス石炭の一部局は、従来鉱業権者とそれから地上の権利者との間にどういうふうな契約が交わされておつたかというその契約の整備に非常な手間を費やしているわけであります。それから今度の法律の問題でありますが、これは日本の場合におきましてもやはり鉱業法の規定を基本として鉱業権者被害者との問題では処理できないという趣旨で特別立法もいたし、又それに対して相当国の勧奨も出しているわけでありますが、併し基本はやはり私法的な関係であるというところからスタートいたしております。ただそれを国家的な見地から全般的に復旧させるという鉱業法原則を臨時的に裏返すような方策をとり、それを推進するためにいろいろな監督も補助もいたすわけであります。従つてそういう意味におきましては単に私法的な関係をここで或る程度修正はいたしております。どちらにウエイトをおかれているかということは甚だむずかしい問題で、どうとも申上げにくいのでありますけれども、初めのスタートはもう鉱業権者被害者との間の問題から出て、それに対してそれを処理するために国が相当出て参りまして援助をする、こういうふうな原則でこの法律案が作られております。
  15. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうするとこの法律の場合には鉱業法百九条によつて鉱業権者賠償責任を負う。或いは又この金額の多額にならない場合は原状回復の請求ができる、こういう百十一条の、何と申しますか、条件はついているけれども鉱業権者責任中心になつている、こういう御説明のようでありますが、そこで問題になりますのは、例えば七十五条によつて復旧をした後の責任、それを誰が負うか、衆議院の修正案によつて特別の場合には国が助成をすることができる、こういう書き方がしてありますけれども、この特別助成の性格が何であるか、或いはその責任のよつて来るところは何であるか、この点が今の鉱害責任、或いはこの鉱害による効用回復の責任者は大体誰であるのか、こういう問題とまあ関連をして来るわけであります。この間の御答弁にも効用回復をしたあとの責任は国が持つのだ、全的責任を国が持つのだ、こういう御説明でありました。ところが今のお話のように鉱業権者責任を持つと、鉱業法百九条が基本になるのだ、従つて納付金もその鉱業法上の責任従つて納めるのだ、或いはこれは言われませんでしたけれども、家屋の復旧についてのこの法の制度、建前、或いは公共事業の補助金の返還等についても大体その原則は貫かれておると思うのであります。そうすると効用回復をやつたあとの責任について国が全的責任を負うというのはどこから出て来るのですか。
  16. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 工事完了いたしまして、一定の段階を経たあとにおきましては鉱害は消滅するということになつておりまして、従つて勿論その場合におきましては、擬制でありますが、少くとも鉱害賠償の問題は出て来ないという建前になつておるわけであります。ただ事実問題といたしまして、七十八条にあるようなケースにおきましては、過去において鉱害地であつたがために、余計の損害をこうむるということも想像されますので、新らしくこの条項が入つたと思うのでありますが、本来から言えばこういう例も見通した上での打切賠償をなすべきだと思うのであります。こういうのは一応通常の年度におきましては予想されないような被害でありますので、十分は見られない。併し一方鉱害賠償問題というものはもうそこで消滅しておりますので、それに対しまして全然無関心であるということは被害者に対して酷であるという趣旨から、第七十八条が入れられたわけでありますが、この場合にはむしろ国が出します特別の助成というものは、賠償でなくして助成という言葉を使つてあります通りに、全然法律上の責任はないけれども政府政策としてそういうものに対して或る程度負担をするものと、こういう趣旨であります。法律の問題としては一応片付いておりますけれども、別途こういうふうな措置を以て考えるということになるのでありまして、賠償責任の消滅というものとこの場合とは全然矛盾しないと思います。従つてこの場合の責任は飽くまで国でありますけれども、国であることはこの前申上げた通りでありますけれども、そのために国が賠償責任を引継ぐというような考え方はとらないでもいいのではないか……。
  17. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると七十八条に基く「特別の助成を行うことができる。」という言葉が書いてありますが、これは法律的にどういう金ですか。
  18. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 法律的には、補助金と似たような性質のものだと思います。
  19. 吉田法晴

    吉田法晴君 補助金を出すときには、補助金を出す理由があるから補助金を出すのでしよう。出す理由はないけれども、天災で損害を受けたから見舞金を出すと、こういう性質の見舞金的な性質ですか。
  20. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 簡単に言えばやはりそれに近いものだと思います。ただその実質的な理由としましては、賠償問題は消滅したとうふうなことになつた、このときにおいて打切、補償費等を支払つてあると思いますが、その打切補償の出し方が、将来こういうふうな不時の災害というものを十分見越してなかつた場合に対しては、そこで法律上は全然鉱害は消滅したことになりますけれども、それでは気の毒だからというので、こういうふうな補助或いは助成制度を設けたのでありまして、言わば見舞金と称しても差支えないかと思います。
  21. 吉田法晴

    吉田法晴君 見舞金ということで、法律上の責任或いは義務がないということになりますと、金額にいたしましてもこれはまあ知れているのであります。農林大臣の定めるところによるということになりますけれども、今のような性格で、或いはそういう意図で出したということになると、「農林大臣の定める」という点も甚だあいまいになつて来るのです。或いは例えばこれも予算折衝の問題にあとはなるかと思いますけれども、そういうことで大蔵大臣から十分の金が出るかどうかという点も、これは疑問になつて参りますが、その点は農林省はどういう工合にお考えになりますか。
  22. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 「農林大臣の定める金額の範囲内」と書いてありますのは、災害が生じました場合に、通常の農地とそれから従来鉱害があつて、工事が完了してやつている農地との間に差が出て参る場合があるわけであります。そういうものの技術的な認定を農林大臣のほうでいたしまして金額をきめる、こういうことに相成ろうかと思います。農林大臣といたしましては金額をどういうふうにきめるかという判定をいたすわけであります。あとそれがどの程度国庫から出されるかということにつきましては、そのときの折衝如何の問題でありまして、これは或いは通産大臣のほうからお答えをして頂くのが適当じやないかと思います。
  23. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 先ほど見舞金ということを申上げましたが、これは法律上の性格をお尋ねになりますとそういうことになるのでありますが、併しこれは鉱害問題が、この賠償問題が消滅したものとみなされたからまあそういうことになるのでありまして、ただ実質的にはやはり鉱害一つ被害としてそういうふうな損害が残るわけであります。従つてこの見舞金と称するものは、やはり鉱害に基く損害というものを、「農林大臣の定める金額」というこれで算定いたしまして、そこで出すわけであります。従つて実質的に或いは計算的にはやはり損害賠償金に相当するようなものを出すべきものだ、又そういうふうな趣旨で予算等についても折衝するつもりであります。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の御答弁は極めて重大だと思うのでありますが、そこで先般来法制局に御質問を申上げて参つたのであります。今の御答弁によると、鉱害のやはり被害或いは鉱害に基く損害だというお話だ。そうするとこういうようなわけですから、実際にはこういう或いは平時以上の出水がある或いは降雨があるといつたような場合には損害が残る可能性がある。この間からそれを申上げている。それを今言われたわけです。それに七十五条で以て鉱害はないものとみなすと、法律上の賠償責任ばかりじやなくて、鉱害の事実も否定するという条文の姿をとつたのじやないかと思います。それは七十五条の法律上の擬制としても無理じやないか、こういうことを申上げて参つたのであります。これは昨日、一昨日の議論に遡りますけれども、どういう工合考えておられますか、これはどちらからでもかまいませんが、答弁願いたいと思います。
  25. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 昨日も吉田委員から七十五条或いは七十八条の二項でございますか、「鉱害は、消滅したものとみなす。」という書き方はおかしいじやないかというお話でございますが、そうするとまあ私、失踪宣告の場合の例を申上げたのでありますが、御納得行かないようであります。そのほかにもう一つこれと似たような例を挙げれば、民法の八百八十六条でございますが、どなたも御存じの「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」この場合に胎児は生れていないのであります。おなかの中にいる。これはやはり生れたものとしてみる。まあこれは余談でありますが、こういう例もある。ただ私、実は立法の技術として一体おかしいじやないかという御指摘があろうかと思います。この点につきまして少し審議のときにおいて問題となつた点を多少思い出しました点を申上げますと、吉田さんの言われるようにもつとはつきりするためには、当該鉱害にかかわる損害賠償金は消滅する、こうやればはつきりする、こう思うのであります。その場合にその限度において、例えば特別鉱害のごとくにするかということはこれは立法論になるわけであります。損害賠償の義務の、もう少しはつきり言えば全部が消滅するとやればこれははつつきりする。ところがそういたしますと、これはまあ法令の技術上の問題でございますが、その損害賠償義務というのは新らしい鉱業法の損害賠償義務もあるし、旧鉱業法のものも謳わなくちやいけないということで、まあそこは多少条文上煩わしくなるということが一つと、もう一つはこういう問題があろうかと思います。と言いますのは、損害賠償の義務が消滅するというふうに考えると、例えばここに年々賠償をしている土地につきまして、年々賠償義務のうちまだ未履行のものがあるとすると、過去において賠償すべきもの、年々賠償すべきものであつて未履行のものがあります場合に、それまでなくなつてしまうのじやないかというのようなことが審議の際において議論になりました。この際においては鉱害がその時点において消滅するということをはつきりしたほうがいいのじやないか、こういうことで御了承願えると思います。もう一つ今の鉱害の問題に関連しまして、結局問題は効用回復の認定如何、或いは効用回復がされていない場合、差額をどう算定するかという問題、従つてそれが衆議院で修正されました七十八条と関連して一つの問題になるのじやないか。例えば効用回復といいましても、日本のごとく或いは常時毎年台風の通路に当つているような所につきましては、その台風によつて出水があり冠水を受けるということはもう常時予想されるというような場合には、無論効用回復の点で少し問題になる点があるのじやないか、こういうことも言えるのじやないか、こう思います。
  26. 吉田法晴

    吉田法晴君 西村さんとの議論はやめます。胎児の相続能力といつたような問題、これは失踪の場合と同じことだと思うのですが、これは胎児が腹の中に入つておるという事実に基いて、生まれてはおらんけれども相続問題について胎児を法律関係の中に入れたほうがいいかどうか、こういう観点から八百八十六条というものが出ておるのであつて、今お尋ねしておるのは、先ほど炭政局長答弁せられましたように、七十八条による洪水等不測の天災に際し云々ということで問題が起るが、そのときのあれはそれは鉱害被害だ、鉱害に基く損害だということを認められた。そういう事実をそれをなお法上否定することができるかできんか、許されるか、こういう議論をしておるわけであります。そこで西村さんはこれはまあ法制局として政府の作つた法律は飽くまで正しいのだ、どんなことをやつておられてもとにかく正しいのだ、こういう政府の弁護士の立場でおいでになりますので、奥野法制局長おいでを願つたわけでありますが、結論のほうから……、今中島さんの答弁では結論が先に出てしまつたのですけれども一つその点について御意見を承わりたい。  もう一遍奥野さんのために繰返して御説明をして質疑をいたしますが、鉱害が起つておりますのを効用を回復いたします。で、その効用の回復というのは五尺下つておるのをもう一度五尺上げるというのでなくて、田圃であるならば田圃が作つれるようになる、これは一応七俵できておつたものは七俵できるようにするのが効用回復だ。七俵を五俵でいいということではない、七俵できておつた田圃が七俵できるようにするために、五尺下つておるものを三尺上げることもありましよう。或いは堤防なり或いは畦その他を造つて、ポンプ排水によつて昔と違つた形ではあるけれども、小さい田圃をたくさん作つて耕作をするということもございましよう。それで七俵できるようになればそれでよろしい、こういう建前なんであります。そこで一番問題になりますのは、そういうポンプ・アツプの施設をやつて、田圃ができるようにする。こういう状態にしておいた場合に、水が出る、その水も、これは昨日お話が出ましたけれども、その田圃だけでなくて、周囲の排水関係等もございます。そこで七十八条に書いてあるような、或いは今西村局長が言われるような大暴風雨があつて冠水をするというだけでなくて、少し余計に出るとこれは冠水をするというようなことはほかの原因からも出て参ります。そうしてそれが中島さんの言われるように稲ができなかつた。それは本質はやはり鉱害から来ておる損害だ、被害だという場合が考えられると思います。これは特別鉱害のその後の実態からしてもそうであります。これは特別鉱害に比べて法文の建前がはつきりしておりませんから、そういう場合が余計予想される。或いは今後予算が減つて参りますというと、そういう危険性は更に多くなるのではないかと思うのですが、そういう場合に残る鉱害も七十五条で鉱害がないものとみなすというふうに、こういう事実関係を否定することができるかどうかという点を質問申上げて参つたのであります。  それから途中で恐れ入りますがちよつと速記をとめて下さい。
  27. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  28. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 速記を始めて。
  29. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) お答えいたします。この七十五条は鉱害が消滅したものとみなすと書いておりますけれども、先ほど西村局長が言われましたように、鉱害による損害賠償請求権が消滅したものとみなすというような趣旨考えます。まあ法律を以てすれば事実をないものというふうに擬制をするということも必ずしもやらないことはないと思いますが、それは当、不当の問題で、合理性があれば事実といえども逆に擬制を以てないものとみなすことも法律を以てすればできようと思います。そうしてこういうふうに打切り……、恐らくこれは労働災害補償法とか或いは労働基準法等の打切り補償といつたようなものと大体同じような趣旨のものではないか。結局いろいろ復旧もし、なお足らざるところは損害も払い、それからなお損害があれば申出ろというふにいろいろ手を尽して、大体合理的な手を尽してしまつた場合に、もうそこで損害賠償債権は消滅したものとみなすというふうにやることはまあいろいろの例もあります。例えば法人とか会社の清算のような場合には、或る一定の時期で打切らなければならん場合もありますと同じように、或いは又相続の関係でも同じような問題がありますが、いろいろ催告をしても言つて来ないというような場合に、債権を打切つたり何かする場合がある。或いは又先ほど言つたように、打切り補償という制度も合理性がある範囲において認めて然るべきではないかと思います。そういう意味でこの七十五条は恐らくここで一応損害賠償債権というものはこれによつて打切られるという趣旨かと考えます。そうなると、お尋ねのように衆議院で修正されました七十八条でありますか、尤もこれは必ずしもその鉱害によつてそういうふうになつたのであるがどうかということまでは七十八条では明確ではないように思いますが、すでに一応損害賠償債権がないという建前をとつた以上は、七十八条として仮に因果関係があるものであつたと仮定いたしましても、損害賠償というような形ではなく、特別の助成といつたようなことで、而も国が補償金のようなものを出すということで、その間の、まあ若しそういう漏れたものがあればこれを助けて行こうといつたような趣旨の規定であるかと考えますが、でありますから結局損害賠償のないものと一応みなすという、言い換えれば損害の消滅したものと擬制をするということが正当であるかどうかというような問題に帰着すると思うのでありますが、この建前では一応損害賠償がなくなつて、ただ特別の場合に補助を与えることがあるという、この建前といたしましては、法律上は矛盾はないというふうに考えます。  それからその損害賠償の打切りということは、今言いましたように、相当の手を尽した後においてはそういうものを打切るといことも、憲法その他から言つても財産権の侵害というようなことにはならない、妥当なものではないかというふうに考えます。
  30. 吉田法晴

    吉田法晴君 奥野法制局長の前段の御説明は了承いたしました。あとの当、不当という問題が残ると思うのでありますが、なお鉱害がないものとみなすという規定の仕方は、仕方はとにかくとして、その意味鉱害賠償責任がないものとみなすと、こういう法意であろうという解釈も了承いたしますが、同じような規定の仕方は特別鉱害の場合もある。なお附加えますが、私が従来申して参りましたことに、特別鉱害を臨時鉱害という名前で呼んだことがあるそうでありますが、その点は訂正いたします。特別鉱害復旧法案の中にも同じような規定がありましてその場合にはこういうまずい表現ではないのであります。或いは今挙げられました労働基準法と労災保険法の場合にも表現の仕方は、賠償責任特別鉱害法なり或いは労災保険法によつて支払われた限度においてという言葉がまあ使つてあるわけであります。法文の書き方としてはやはりこういう鉱害はないものとみなすといつたような書き方はまずいといいますか、立法技術的に余り正確な表現ではないということは言い得るのじやないかと思いますが、その点については如何ですか。
  31. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 只今お示しのような特別鉱害復旧臨時措置法十二条等の「その限度において云々」という場合は、その限度以外の部分はなお残るといのことになるのでありますが、この七十五条の書き方によりますと、すべて損害賠償債権というものが消滅するということになろうがと……、解釈上はそうなると思います。若しこの場合、復旧された限度において賠償の義務が免れるということになれば、なお残るものがあれば損害賠償の義務が残るということになりますが、そうではなく、こういつたような損害賠償責任が全部消滅するといつたような書き方にいたしますと、賠償責任は全部なくなるととうふうに解釈せざるを得ないと思います。そうして特別鉱害のようにするか、このようにするかということは、結局立法政策の問題でありまして、特別鉱害臨時措置法の場合におきましては、一応復旧工事をやつてそれだけでもうとめて、この法案のように、更に不十分な部分について損害を賠償するといつたようなものはない場合でありますから、復旧の工事の限度においてだけ損害賠償責任が免れて、それでも不十分な部分があれば、損害賠償責任が残るという立法の建前、そういう趣旨で書かれたものであるにかかわらず、本法の七十五条では復旧と同時に、復旧で足りない部分はなお損害賠償をして、そうしていろいろな手を尽して、そのときに全部損害賠償責任をなくするという建前で、結局その建前といいますか、立法の政策といいますか、その点が違つておるので、全部消滅せしめる意味であるならばこういうふうに書くことによつてはつきりしますし、一部残すつもりであれば臨時鉱害復旧特別措置法のような書き方にすれば、復旧工事によつて救われない賠償が残るということになるのではないかと思います。
  32. 吉田法晴

    吉田法晴君 限度の問題はあとで言いますが、損害賠償責任が消滅したものとみなすという規定の仕方と、鉱害が消滅したものとみなす、こういう表現の仕方において、少くとも鉱害が消滅したものとみなすと、こういう書き方は、立法技術としてはまずいということは、或いは不正確だということは言えるのじやないかと思いますが、どうですか。
  33. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) まあ御議論の通りだと思いますが、先ほど西村君が言いましたように、そういうふうに書くと、いろいろな関係があつて書きにくいのだと、まあほかの損害賠償債権もなくなるように考えられる虞れがあるということで、その農地及び農業用施設について、而も復旧工事の行われたその鉱害に関するものの賠償責任を消滅せしめるという意味でこういうふうに書いたのだということでありますが、まあ端的に何らかそういう関係に関する損害賠償債権が責任がないというふうにはつきり書けば、なお明瞭であろうかと思います。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点了承いたしました。それから今の限度の問題、それから当否の問題ですが、これは立法政策と関連しますけれども、問題になるわけであります。そこで先ほど中島炭政局長答弁せられましたような、七十八条の場合には洪水等不測の天災があつて云々、その場合の損害であることは間違いないと思いますが、「特別の被害」ということが書かれておりますが、その被害の性質が何であるか。中島局長が先ほど答弁されたように、それは鉱害被害である、或いは鉱害に基く損害である、こういうことになりますと、鉱害がやはり残る。それに加わるものは、天災その他の洪水、その他不測の天災ということがあるにしてもその本質が鉱害被害として残るという場合に、前に一時金を支払つておるとしても、これは建前はとにかくとして、その当否というか、或いは先ほど仰せられました限度の範囲内に入るかどうかという問題が出て来るわけであります。実際問題として、ほかの原因が加わつても残つたというならば、その鉱害について責任は誰が負うかはとにかくとして、問題がやはり残るのじやないですか。この点はどうですか。
  35. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 衆議院の修正の七十八条というのは、私はよくわかりませんが、これは鉱害なのかどうかという鉱害との因果関係の点もやや明白ではありませんし、この建前では一応損害賠償債権は、そのものに関する限りにおいてはないということになつておるので、助成ということにしたのだと思います。若しこれを鉱害のまだ一部分が残つておるのだというふうに解釈するということになれば、或いはこの七十五条の所に、或いはこういつた場合の但書、こういう場合は別であるとか、或いはそういたしましても、今後は賠償責任者というものが事業団とか或いは鉱業権者ではなく国ということになると、そこの書き方も非常にむずかしいことになるのではなかろうか。或いはまあ一応打切つたが、別な因果関係を持つておるような場合の損害賠償趣旨であるとしても、それはもう損害賠償ということではなく、国の補助という形において賠償と切り離して、その実をこれによつて挙げるという建前で、建前としては必ずしも矛盾しておるものではないと考えます。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると実際問題として、七十八条に挙げたような洪水等不測の天災があつて農地に特別の被害が起つた、そうした場合にその被害について被害の補償を求める、七十八条によればこれは国ということになりましようから、国を相手にその被害の補償を求めるということになると思います。それを例えば訴訟なら訴訟でやつたといたします。お話通りに七十五条があるから鉱害というものはもうないものとみなす、そうするとその場合に一応法文の建前からしますならば、その被害についての補償或いは賠償の請求権はないということになるのではないか。或いは特別の助成というのであるならば、或いはそれが見舞というようなことであるならば、これは請求権の対象にならんのじやないか。或いは法律上の権利義務という関係がなくて、国の恩だというならば、国から食えるだけのものをもらうならばそれで満足して行かなければならん、それが少い多いということについては争えないのじやないか。こういう感じがするのでありますがそうすると先ほど中島さんの御答弁からするその被害の本質は何であるか、こういうことを論議をいたす余地もないし、それから非常に困難になるのではないかと考えられるのですが、その点はどういうふうに考えられるのですか。
  37. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) お説のようにこういう建前でありますと、これは損害賠償債権として国に対して請求をすることができると考えられないのでありまして、この場合は国が特別の助成を行うことができる、国のほうで助成をすることができるだけでありまして、当然の損害賠償債権の請求として被害者から国に対して請求権がないのではないかと思います。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると前に戻りまして、当否の問題になりましけれども、これは修正は衆議院でなされましたけれども政府がこれからこの法律を施行して行くわけですが、中島炭政局長の先ほどの御説明によると、鉱害被害であろうと、或いは鉱害に基く被害であろうと、その全的責任は国が負うのだ、こういう説明をしておられるけれども、併し今のような法文の建前から言えば、それは損害賠償の請求の対象にならん、国がくれる涙金でも少くてもそれは泣寝入りしなければならん、こういうことになるとすれば七十五条或いは七十八条を加えたとしてもそれは妥当であるとは考えられないと思うのですが、奥野法制局長如何ですか。
  39. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) これはむしろ法制の問題じやなくて、立法政策の問題でありますから。
  40. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の吉田君の質問に関連して伺いたいのですが、吉田君のいろいろ議論せられておる七十五条、七十八条の関係は余りはつきりしていない。  従つて中島さんにお伺いしたいのは、あなたは吉田君の質問に対して鉱害が残つておるというように答弁をされておる。私はそういう答弁から考えると、七十八条の本当の意味は、条文は衆議院で修正されて来たのですが、「国は、農地が、その復旧工事の完了後において」こう書いてあるのですが、本当の意味は、国は農地が効用回復の限度復旧工事の完了の後においてというような意味合にとるようなつもりでこういう条文が書かれておるのか、そういう意味で書かれてなければ、中島さんの言われる鉱害は残つておる、だから鉱害はやはり補償する気持で見舞金を出すのだ、助成金を出すのだ、こういうことは成り立たんと思いますが、その点はどういうように解釈されておりますか。
  41. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 鉱害法律的にはすでに七十五条によつて消滅しておりますが、この消滅をさせる政策論といたしましては、法律関係をできるだけ早く解決するという趣旨で、どこかで線を引かなければならんためにこういうような制度とつたわけであります。そこではつきり法律関係は終末を告げておりましけれども、なお実際問題として土地の上げ方が少いために、不時の災害の場合において、やはり従来鉱害地であつたがために、ほかの土地に比べて多い損害を受けるという場合において、これを全然無視しないという、今度は別の見地からこういうような七十八条が入つて来たわけでありますので、従つて法律的に言うと鉱害補償ではない、ただ実際上はそこで片附けられておる鉱害というものが、やはりそこに関連した損害が出て来た場合に、或る程度国がこれに対して助成をするというわけでありますので、法律上は一応両方の矛盾はないと思います。
  42. 西田隆男

    ○西田隆男君 法律上の矛盾があるかないかということを聞いておるのじやなくて、七十八条の置かれた条文の実体はどういうことを基礎にして書かれておるかということを聞いておる。あなたが吉田君に言つておりましたが、調査報告の中に、原状回復は望ましいのだ、が併し実情から原状回復は困難な場合は効用回復の限度において農地復旧工事をされるのだ、従つて吉田君が言つておつたように、ちよつと水が余計出た、それでも被害を受けるというような被害程度は、これは打切りの金額のうちに当然含まれると思う。ですからその懸念はないと思う。従つてここに書いてあるような特別な場合は、鉱害が原因になつておつた土地の被害が余計に被害を受けることが考えられる、その場合に対処する条文がここに書いてあると思う。従つてこの条文をこの条文のまま解釈すると、奥野さんの言われたように非常に弱い。それでは臨時鉱害のこの法律案の中に書く条文にはふさわしくない。従つてこの条文の置かれた意味合というものは非常に重大な要素になつて来る。  そこで中島さんは吉田君の質問に対して、被害が残つておるのだ、実際問題として残つておるのだという答弁をされておる。そこでこれはこの条文をつくられる前から当然考えなければならんことは、効用回復の限度農地復旧をした場合においては、特別の事態があつた場合は必ず災害をこうむるということは予見される。従つて七十五条で鉱害は消滅したものとみなしてあつても、ここでは効用回復の限度復旧だつた場合の特別な場合における大きな被害をこうむつた場合は、当然国がこれを何とか便法をとつてやらねばならんという考え方がこの七十八条ではないのか。そうであれば、まだ後段に問題があるのですが、そうであれば後段の「農林大臣の定める金額の範囲内において特別の助成を行うことができる。」というような弱い表現では意味をなさなくなつて来る。こういう意味で私尋ねておるのですから、そうであるかないかということを答えてもらえばいいのです。
  43. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) その点は精神的にはお話のような趣旨であります。
  44. 西田隆男

    ○西田隆男君 そこで今度奥野さんに私聞きたいのですが、今中島さんと質疑応答したように、七十八条の条文を、中島さんの言われるようなことであると、「国は、農地が、その効用回復の限度復旧工事の完了後において」というような字句を前段に使うことが立法技術上可能かどうか、これを一つ伺いたい。これと七十五条との矛盾がありはせんかという問題も併せて承りたい。
  45. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 七十五条におきまして、復旧云々或いは復旧及び損害賠償両方の限度において賠償の義務を免れるというふうに書くことは法律上は勿論可能であると思います。そう書けば、それ以外の部分についての損害は必ずしも消滅しない。他の時効とかいろいろなことで消滅することはあるかも知れませんが、残るというふうに、この限度において賠償の義務を免れるというふうに書けば、それ以外の部分は残るというふうになります。その部分は一体賠償の義務が誰にあるのかということもよほど考えなければ、そうなると事業団にあるのか或いは鉱業権者にあるのかといつたような問題、その他の点もよほど考慮を要する第二の問題が出て来るのじやないかと思います。
  46. 西田隆男

    ○西田隆男君 今お尋ねしていますのは、七十五条の条文を今のように変えろというのではなくて、七十五条の条文をこのままでおいて、七十八条に鉱害は一応七十五条で消滅をしてしまつておるけれども、この消滅したやつは効用回復の限度で消滅したのだ、従つて鉱業権者或いは事業団には七十五条によつて鉱害の消滅したということにしておいて、特別な場合だから、その特別の場合被害の起るのは効用回復の限度農地復旧工事をしたやつだけ残る、従つてこれは国が責任を持つのだ、農林大臣の定める云々というのと結びつけて考えると、こういう表現をした七十五条との間に矛盾が起るのか、七十五条ではそういう表現をしておつても七十八条でこういう表現をして差支えないのか、立法技術上の問題としてどうかということを聞いておる。七十五条の条文を変えろという意味じやありません。
  47. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) それは七十八条に国家が、本当に不完全なために、そうした損害を補償するという義務附けられるような規定を設けることは可能であろうと思います。
  48. 西田隆男

    ○西田隆男君 中島さんにお尋ねしますが、今の七十八条の条文の問題ですが、実際問題としては効用回復の限度において復旧された場合においてのみ七十八条は適用されることになる。後段の「農林大臣の定める金額の範囲内において特別の助成を行うことができる。」というこの文句を、もう少しはつきり国で負担をするというような意味合に表現をして七十八条の条文を作つておくことのほうが中島炭政局長のお考えになつておることが最もスムースに行われる方法ではないかと私思うのですが、どうお考えになりますか。
  49. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 我々としてはそういうふうにはつきり出たほうがやり易くなります。
  50. 西田隆男

    ○西田隆男君 農林省の管理部長ですか見えておるようですが、農林省のほうは今の七十八条の条文の問題についてどういうふうにお考えになりますか。
  51. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 農林省のほうとしましては、工事のやり方をいたします場合に、通常の工事における例えばそこで三十年来降つている量その他をどう見るかというような技術的な検討をいたすわけでありまして、それに対応する対策を立てる。盛土の場合も同様なわけであります。現在の技術考えられることを前提といたしまして、工事の実施計画に対してそれが行われておるかどうかという許可をいたしてやつて参るわけでありますが、ここで謳つておりますように、不測の、予知しないというようなことが起きて来ることは、これも又絶対にないということは言えないわけであります。従いまして、そのような場合にどういうようなやり方をとるか、これは立法論になるかと思いますが、若しも国がその必要な見舞金と申しまするか、そういう金を渡すというために必要であるとするならば、七十八条の書き方がはつきり書いてあることのほうがそういう金額を出すのに出し易い、こういうことは言えると思います。
  52. 吉田法晴

    吉田法晴君 七十八条の表現の問題、衆議院修正案のようなこういう書き方では七十五条との関係で特別の助成が見舞金的なものであり、中島局長の言われる国が助成金を支出するような条文にはなりえないと、こういう結論が出ましたので、この点私了承いたしますが、なお七十八条で「国は、」と書いてある。国は特別の助成を行うことができると書いてありますが、その国というのは実際に何であるのか。例えばほかの表現を以てするならば通産大臣というのか、それとも事業団というのか、その辺ははつきりいたしませんが、実際の特別の助成をするときのもう少し具体的な姿をお述べ願いたい。
  53. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) これは、実はまだどういうふうな過程でやるかというようなことは十分相談をしておりませんが、従つて予算も農林省の予算になるのか或いは通産省の予算になるのか、出す場合にはどちらが出すのかという点がはつきりいたしておりません。ただ請求は勿論ほかの予算と同じように通産省でまとめて事実上の請求はいたしますが、形式的にどこにつきますかは別といたしまして、それで出すときにはやはり農林大臣が金額を定めるので、農林省のほうから出すのが適当ではないかと思いますけれども、併し通産大臣のほうから出してもよろしいし、又場合によつては事業団に委託してもよろしい。その点はもう少し部内で打合をいたしまして、実はまたそこまで行つておりません。
  54. 吉田法晴

    吉田法晴君 助成金がどういう性格であるかということも法文上は明らかでございません。鉱害が残るとして、その残された鉱害については国が全責任を負うのだこういう趣旨だけは炭政局長に伺つたのでありますが、そうすると条文の書き方も問題になりますが、実際に今のようなどこが相手になるのか、単に見舞金で予算の範囲内で下げ渡しで文句がいえないということならばとにかく、鉱害の性質をもつておりそうして国がその責任を負うのだということになりますならば、これは被害者のほうからいいますならば、それを請求する手続或いは途というものが残されなければならんと思います。そうすると具体的な手続をし得るためにももつと明らかになつておらなければ、中島さんの意図というのも実際にはこれは実現いたしません。或いは軌道に乗りません。それらの点についてどういうつもりでありますか、或いはそれらの問題を政令に書かれるというのか、或いは具体的措置について一つお述べ願いたいと思います。
  55. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 形式的には実際の出し方につきましては、農林省令と通産省令の共同省令によつてきめると思いますが、予算のとり方の問題でございますけれども、こういうふうな不測の災害というものが果してどの程度であるか、又起きた場合にはどの程度の助成金が必要であるかということは非常に算定しにくい問題でありまして、一応の想定をして予算を組むことはできますけれども、これは要らない場合は非常に結構でありますが不足する場合もあるかと思います。下足するためにその範囲内でこれを押えてしまうということは事の性質上やはり適当ではありませんので、やはりその場合にもう少し予算をふやさなければならんということになりますので、非常にとり方がむずかしいわけでありますが、大蔵事務当局のほうと一応話合いをいたしましたときには、やはりそういうふうな、非常に不確定な予算でありますので、結局予備金から出すということになるだろうと申しております。一応我々の立場としては、仮に水害があつた場合には過去の実績から見ましてこの程度であるだろう、その場合に損害はこのくらいになるだろうというふうな見当をつけまして要求いたしますけれども、最後的にそれがどういうふうな形で予算面に織込まれて来るかということにつきましては、実はまだ大蔵省の十分な話合をいたしておりませんのでまだ確信がないのであります。そういう点はほかのことと併せまして法律の確定以後速かに関係者のほうと打合せいたしまして、省令なり何なりで十分はつきりさせたいと思います。
  56. 吉田法晴

    吉田法晴君  それではそのはつきりする仕方を、例えば農林省令、通産省令というものの中にはつきりして行きたいという御意図ですね。
  57. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) さようでございます。
  58. 吉田法晴

    吉田法晴君 なおもう一つ。これは先ほど西田さんが質疑して明らかにされたところでありますが、七十五条、それから七十八条、このままでは、先ほど奥野法制局長がいわれるような解釈で行きますと、炭政局長のいわれるような意図を法上に現わすとするならば、七十八条をもう少し表現の上において修正しなければならない、こういう工合に炭政局長お思いになりませんか。
  59. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) これは政府側といたしましてはそういうふうな修正をしてはつきり義務ずけるということは、やはり部内で大蔵省と十分打合せをして了解をつけてからでなければ出せないものでございますので、我々通産、農林難局としてはできるだけ法律でそういうことをはつきりさせたいという希望は持つています。国会の修正の場合にどういうような手続になるかわかりませんが、我々の希望としてはできるだけそういうようにしたいと思つております。
  60. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでその点は明らかになりましたが、農林省側といたしましても農林大臣の定める範囲内でということでありますので、その農林大臣の定める金額はこれは農林省令ということになると思うのであります。その助成の性格については先ほど炭政局長がその性格を明らかにされましたが、従来のこの「特別の助成」という文句を衆議院で修正になつて参りました場合に、農林省としてはどう考えでおられるかということが今明らかになつた、その助成金の性質が先ほど一応見舞金の性質だと言われましたけれども、効用回復の限度内の解決のあとに残る問題については、鉱害との因果関係もあり単なる見舞金ではない、残る或いは不測の天災によつて起る問題についてその賠償を国が全責任を持つと、こういう性格が規定されたわけでございますが、その場合の農林大臣の定める金額というのは損害についてずつと下廻つた投げやりの見舞金でなくて、その損害を全部補填するような金額としてこの農林省令を作られるつもりであるのかどうか、その点一つ承わつておきたいと思います
  61. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) この条文は実は衆議院で修正といいますか附加えられました修正の条文なんでありまして、まだ農林省部内といたしましても十分な研究を遂げておりません。ただ事の道理上どういう態度で金額をきめるかということになりますれば、普通の何ら鉱害を受けなかつたそれと同等に近い地形を持ち、その他の条件が同じ農地と、そうしてここに問題になつておる鉱害を受けまして復旧工事をいたしましたあとの農地というものと比較考慮いたしまして、そしてその損害がその間に差があるというような場合にその差を大体の目途としてやつて行くということは、これは事の道理上、筋道の上からいつてそういうことになろうと思います。ただこういう場合に非常に問題になりますのは恐らくここに謳つておりますように「こう水等の不測の天災」であります。でこれは恐らくこういう場合には工事を完了いたしましたような農地のみがそういう天災を受けるのではなくて、一般的にその地方一帯が恐らく天災を受けておる場合が多かろうと思います。従いましていわゆる天然災害と人工による災害というものが競合している状態が大多数の場合であろうかと思います。その際にそれがどの程度両方の間に差があつたかどうかというような認定は、これは非常に困難であります。従いまして初め申上げましたようなその差を考えるのが一応筋道だとは申しますが、その差たるものが実際問題としては非常にぼやけた形にならざるを得ないだろうと、ものの考え方としてはそういう考え方で行かざるを得ないだろうと思います。  それから「特別の助成」云々のお話がありましたが、これを見舞金と見るか、それとも今言つた形で見るかということは疑問がありますけれども、従来農地関係で災害を受けました場合においては、見舞金というようなものを国がそういうものに対して出すという形は非常に珍らしい例でありましで私たち今まで余り例を見ておりません。従いましてこれは政府部内でこういうような金が認められるかどうかということについては、恐らく非常に困難な問題がありまして、十分相談をいたさなければならない点だろうと思います。
  62. 西田隆男

    ○西田隆男君 今農林省から説明があつたのですが、この七十八条の条文を解釈するには二つの場合が考えられると思います。条文に表現してあるように非常に大きな災害があつた場合が一つ、それからもう一つの場合は中島君が答えられたように、実際上の鉱害が残つているという考え方から行けば、ほかの一般農地には極めて僅少な被害であつても、効用回復限度においてしか復旧されていない農地においては、相当尽大な被害を受ける場合が想像される。そういう場合の二つを考えてこの条文を解釈して特別な見舞金を払つてもらわなければならないと思います。非常に大きい災害だけを想定されているのでありますが、鉱害が残つているということであれば大きな災害だけでなしに、ちよつとした五俵とれる所でポンプ排水をしようとしても河川が氾濫してできない、そのために植付苗は枯れてしまつたというような場合も、これはやはり災害の一つに数え得べきものと私は思います。そういう観点から考えてもらわないとこの条文の趣旨が徹底しないと思います。
  63. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) それは運用の問題になろうかと思いますが、これは七十五条でも謳つてありますように、鉱害と申しますか、効用回復限度と申しますか、効用回復の限度復旧工事の或る一定を認定いたしまして、そのあと予想されるものは大体においてそれにふさわしい補償金を与えているわけであります。その上にこういう災害が起きて来るということになりますから、工事が行われていて、その差がすぐさまにこれによる見舞金と申しますか或いは七十八条でいつております金額にそのまますぐなるとは考えられない。従いまして、運用の場合の問題になるかと思いますけれども、些少な問題に関しましては、多くの場合大体従来賄われているものであろうと想像いたします。併し、これは実際の場合の問題として、運用の場合を考えて行くべき問題であろうと思います。
  64. 西田隆男

    ○西田隆男君 勿論運用の場合に考えなければならない問題でしようが、些少の場合、仮に五俵できておつた、できることを建前にして効用限度を回復した、併し農地関係からちよつとした出水があつて被害を受けるというような場合は、打切り補償の中に加味されて当然補償が行われる。併し法上の想定されたもののほかに、農地は大した被害はなかつたけれども、五俵が三俵或いは二俵しかとれなかつたというような程度被害は常時受けるものとは考えられないが、ただ農地には変化がなくとも、効用回復の限度如何によつては受けることが考えられる。そういう場合も特別の助成金というものを一応考えてもらわないと、農民のほうでは恐らくそういう点が非常に心配になるから、今騒いでおるだろうと思いますが、運用の面ではありますけれども、そういう点を十分含んで七十八条を解釈し運用してもらうように十分書き替えなければならないと私はそう思いますが、農林省としてはそれに対してどういう御意見をお持ちですか。
  65. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) そのお金を支払う所がどこになるかということにつきましては、先ほど通産当局のほうからお答えがありましたように、まだ十分なお話合ができていないのであります。この条文で書いてありますのは、農林大臣がそういうような被害その他を算定いたして、それに対してどういうようなことになりますか、米価にかけるか、何をかけるか知りませんが金額をきめるわけであります。でこの条文で、農林大臣が、今言われておりますのは、そういうような判定と金額をきめて行くということだけが、農林大臣の権限になつております。で、そのあとそうしたきめました金額の範囲内における見舞金と申しますか、そういうものがどういう形で支払われて行くが、或いはこれは政府部内の問題ではありますが、どういうところからそれが運用されて行くかということは、これは今ここでは決定いたしておらないので、政府部内でこれは考えなければならない。農林省といたしましては、そういうような判定の場合に農民の十分なる意思を反映してきめて行くということはこれは当然そうしなければならないと思います。
  66. 西田隆男

    ○西田隆男君 具体的な問題としてはいろいろ複雑困難だろうと思うのです。この条文に今表現いたしているような大水害或いは大被害というようなときは、殊に農作物が殆んどとれないという場合が予想される。そういう場合は一般耕地であろうと効用回復限度復旧した耕地であろうと、今までは政府の一定金額でやつておつた程度でありましよう。この条文による災害の場合には、全収穫量を補償して元通り復旧する金をやらなければならん、そういうように解釈するのですが、一般農地の回復の金が仮に一反歩十万円かかる、効用回復の限度でやつた場合は十五万円かかるという場合に、五万円だけやるという考え方ですか、十五万円やるという考え方ですか。
  67. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 今御指摘になるような場合は、これは非常に大きな災害の場合であろうかと思います。これはそういう場合に、例えばポンプ座が流れたとか或いは排水路が決壊するとか、こういつたような通常の災害、いわゆる天然の災害の場合におきましては、それに対して国が復旧工事のために通常の土地改良よりも若干高率の補助をいたしておりますが、併しその全部を国が持つという形にはなつておりません。この七十八条のケースの場合におきましては、通常の恐らく災害復旧原則が当てはめられておつて、その通常の災害復旧原則以外の損害があつた場合において、この見舞金が出るのではなかろうかと考えております。
  68. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 時間も遅くなりましたので今から二時まで休憩いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) それでは二時まで休憩いたします。    午後一時十八分休憩    —————・—————    午後三時五十分開会
  70. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) それでは休憩前に引続きまして会議を開きます。これより懇談会に移りたいと思います。    午後三時五十一分懇談会に入る    —————・—————    午後四時三十五分懇談会終る
  71. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) それでは速記を始めて下さい。本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十六分散会