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1952-07-07 第13回国会 参議院 通商産業委員会 第60号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月七日(月曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     竹中 七郎君    理事      小林 英三君    委員            山本 米治君            加藤 正人君            小林 孝平君            吉田 法晴君            島   清君            境野 清雄君            西田 隆男君            石川 清一君   政府委員    法務府法制意見    第三局長    西村健次郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    通商産業政務次    官       本間 俊一君    資源庁炭政局長 中島 征帆君    資源庁開発鉱害    部鉱害第一課長    兼第二課長   大山  隆君   事務局側    常任委員会専門    員       林  誠一君    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   説明員    農林省農地局管    理部長     谷垣 專一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○臨時石炭鉱害復旧法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 只今より通商産業委員会を開会いたします。臨時石炭鉱害復旧法案を議題といたします。質問をいいたします。
  3. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は、鉱業法審議に際しまして、この法律制定について要望をして参りましたというか、鉱業法の百九條に関連しまして、原状回復主義か、金銭賠償主義かという抽象的な議論でなくて、実際に鉱害原状に、効用という言葉を使われましたけれども回復される具体的な措置を講ぜられることを望み、鉱業法審議中、閣議決定を見て審議会ができたのであります。その後審議会において非常な苦労を頂いた、或いは詳細な調査をして頂いたという、その結果この法律ができました経緯については、敬息を表したいと存ずるのであります。特に西尾課長がこの法律のためと申しますか、遭難、一命を失われるようなことになりましたことについては、深甚の敬意と哀悼の誠を捧げなければならんと思うのでありますが、でき上つて参りました法律は、どうも私ども、この間の事情を知つておりますものとして相当の不満があると申しますか、或いは法案の中にも幾多の矛盾が残つておる。それから鉱害に対するこれは法律でありますので、鉱害の人間的な表現ということになりますと、これは被害者ということになると思うのですが、その被害者のための利益と、それから加害者利益とがこの法案においてアンバランスを来しておるというように考えざるを得ないのであります。そこで結論は、この法案衆議院で修正を受けましたけれども、もう少し明らかにして参りませんというと、この法案について私どもも賛意を表しかねます。そこで質疑をいたし、法案條文について、或いは制度について、運用について、原案以上の筋を通して頂くことを希望するわけであります。  第一に、この法案を作られるに至つたときの精神と、立案に着手されたときの精神と、でき上つたものとの差異でありますが、具体的に申上げて参りませんと質問になりませんから、先ず鉱業法立案結論から関連してお尋ねいたしたいと思います。鉱業法改正草案審議結論であります。手許に芹川さんが書かれたものしかございませんから、それを読上げて参りますけれども鉱害賠償制度について一たびは「原状回復を以てすることを原則としてみた」、これは平田さんの時代に原状回復主義が一応出たということを私ども承知いたしております。ところがその結論によりますと、「炭鉱地帯における鉱害賠償義務者経理内容現況を見ると、これを炭価政策と切離し、一挙に原状回復責任鉱業権者のみに負担させることは妥当ではなく」といふ文句がございます。これは当時炭価も抑えられておるというような実情から、賠償義務の全部を鉱業権者に賦課して、そして原状回復をやらせるということはその当時は困難であつた、こういう意味だと思います。続いて、「まして戰時中、国が強行した生産の結果を考慮するなば別途適切な方策を講じなければならないこと。」というのがございます。これは戰時特別鉱害なつたと思うのでありますが、そのあと、「また今直ちに民法の金銭賠償主義原則に対して特例を認めることはその妥当性に乏しく、このような改正は寧ろ事実の成立俟つて後これを行うのが適当であるとする。」こういう文句がございます。そのあとに、これは「委員会における審議経過」ということが書いてありますけれども、そういう見出しでありますが、「炭鉱おける土地陷落復旧については、国として抜本的措置が必要であること。現に行う商工省農林省、安本、建設省において公共土木事業費による現状回復を強行に推進し、予算的、行政的措置の確立を期すること。」こういう文句と申しますか、結論が出ております。そこで最初の原状回復主義鉱業法上には出さなかつたけれども、それが事実の成立を待つて後これを行う、こういう点をどういう工合考えられておられるのか、これは一昨日石川委員からも、今後の立法政策として問われたところでありますが、この鉱業法立案審議に参加せられました、これは通産省でありますか、どこでありますか、出席されておる中の責任官庁においてお答え願いたい。
  4. 大山隆

    政府委員大山隆君) 鉱業法では、御調の通り金銭賠償主義に現在なつておりまして、鉱業法改正のときに、原状回復ということも出ましたけれども、一応この臨時石炭鉱害復旧法案を作りますときは、現在の鉱業法金銭賠償主義というものにきまつておりまして、その鉱業法成立したばかりであるので、その例外ということになると工合が悪いというので、一応金銭賠償主義範囲を逸脱しないで、その範囲内で何とか原状回復方向に持つて行く、鉱業権者に対しては、どこまでも鉱業法金銭賠償範囲内の賠償金をとり立てまして、足らない分を国庫補助原状回復をやる、こういう形で法律を作つておりまして、この法律によつて金銭賠償主義原状回復主義に改めるという考え方法律制定のときからとつておりません。将来としましては、この前炭政局長からも個人的に御答弁がございましたように、私どもとしても、或いは金銭賠償主義ではなくて、原状回復主義に持つて行かなくてはいけないのではなかろうかというふうに考えております。ただこの法律ではまだそこまで推進めておりません。
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 炭政局長が見えておるようですが、これは或いは石川さんに御質問を願うのが妥当かも知れませんけれども、この前将来の立法政策について考慮し、発言をしたいということでありましたが、今のような御答弁なのか、この際一つ承わりたいと思います。
  6. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) この鉱害賠償制度の根本問題並びに将来に対する考え方の問題でございますが、結論的に申しまして、現在あります特別鉱害復旧法と、今度提出されておりますこの一般鉱害復旧法案と、これに鉱業法及び鉱山保安法を併せまして、現在の鉱業法体系で、日本鉱害問題が完全に且つ円滑に処理されて行くというふうにはこれは申しかねると思います。従つてこの問題の解決のためには、相当な時間と忍耐をかけて、かなり慎重に考慮しなければならん問題が多々あると思うのでありますが、それに対する私の個人的な考え方といたしましては、第一、問題がどこにあるかということを先ず見究めなければならんと思うのでありますが、特別に日本鉱害問題に関する特殊性と申しますのは、ほかの国に比べまして非常に人家が密集しており、且つ田畑にしましても水田が多い、これが非常な鉱害問題を複雑ならしめておる特長であります。こういうふうな非常に悪い條件の下に強られております石炭鉱業というものと、それからそれによつて被害をこうむる地上の各物件というものとの利害関係調整をどうするかという点につきましては、我が国資源状況、或いは一般住居状態、或いは農業経営状況食糧確保の問題、こういうふうな我が国固有のそれぞれの條件に応じたこれらの問題を十分研究いたしまして、それと地下資源採掘というものとの関係を考慮して結論を出さなければならんわけでありますが、そういうふうな特殊性は十分考慮いたしますといたしまして、先ずスタートになりますのは、それではその両方の対立の利害がどこで調整されるか、どこで又対立するか、こういう点であります。その点をはつきりさせるためには、地下採掘行為というものが上にどういうふうな影響を及ぼすかということが明確につかめない限りは、この利害がどういうふうに対立しておるか、或いはどういうふうに調整し得るかという結論も出ないわけでありまして、原因と結果の関係というものを明確につかむということが、これは必要不可欠の前提であります。これは一応理論的には、地下何尺の所で何メーターの高さを掘れば、上にどの程度の陥落ができるということは一般的に言われておりますけれども、それが地層の状態その他いろいろの四国の状況に応じて、どの程度正確に言い現わせるかということにつきましては、まだ日本ではそういうようなデーターが全然ないのであります。一番鉱害問題の深刻なドイツやイギリスにおきましては、先ず測量問題を鉱害対策スタートにいたしまして、地下採掘と地表の変動というものとの因果関係、その計数を精密につかんでおります。従つてどういう條件の下にどういうふうな採掘をすれば、そこには、地上にはこういう弊害が起きるということが出て来ておりまして、従つて石炭採掘というものと、それから、それから起ると予想せられる鉱害というものも、そこで或る程度の数字的な予想がつくわけでありまするが、そういうことをして、初めて鉱害問題に対する正確な設計ができるわけであります。遺憾ながら我が国では、そういうふうな制度がありません。そういうことをやることが議術的に不可能かと申しますと、決してそれほどむずかしいものではないものでありまして、できるわけでありますけれども、ただそういうふうな測量制度というようなものが、かなり長い時間をかけて、相当長期に亘つて、広い範囲で取材をしなければ一定結論的な計数が出て来ないのでありまするが、鉱山測量制度に関しまする日本の歴史というものが殆んどまだ若いというよりも、なきに等しいような現況でありますので、それから先ず立て直して行つて、初めて根本的な鉱害対策というものが緒につくと思うのであります。ですからそういう点をできるだけ早く固めまして、科学的な鉱害問題に対するいろいろな計数をつかむというふうなところへ持つて行かなければならんわけでありますが、それには勿論今すぐここ一、二年でそういうふうな結論が出るわけでもありませんので、その結論を待つて根本的な対策を立てるということでは、これは現在当面しております鉱害をそのまま何年か放擲することになりますので許されない、こういう状況にあるわけであります。そこでこの特別鉱害法にいたしましても、現在のこの鉱害復旧法にいたしましても、これは一応そのスタート説明されております通りに、臨時目前鉱害を片付けるというのが第一の問題でありますが、取りあえずまあ不十分な対策ではありますけれども、できるだけ速かに累積おりしてます鉱害を処理いたしまして、日本鉱山経営というものを常態に戻すということに努力しなければならん。又異常に不安になつております炭鉱地帯の住民の心というものをそこで安定せなければならんということ、こういう御趣旨臨時的なものとして扱われておりますが、こういうことをいたしまして、取りあえず目前鉱害を何らかできるだけ解決方法に導くという努力をしつつ、先ほど申しましたような根本的な問題につきましても準備と研究を進めることに  よつて、その経過において、どのくらい時間がかかるかわかりませんが、その経過において結局鉱害法の問題、保安法の問題、或いは鉱害賠償の問題につきまして、もつと具体的な結論にだんだん近付くことができるのではないかと、こういうふうに考えておるわけであります。従つて現在から地上地下との調整をどの方向に持つて行くべきかという目標は決して立ち得ないのでありまして、何かいま一層計画をするには、結論を導くためには努力はしなければならん。その努力をするためにはこういう問題があるというところまでは私どもも大体感じておりますけれども、それではその結論がどうなるかということは、これはもうその過程においておのずから出て来る。従つて現在鉱業法でとられておる金銭賠償方法が、差当り我々の気持につきましては、必ずしも満足すべきものではありませんけれども、或いはいろいろ根本的な資料等研究した結果におきましては、日本現状としてはやはりこれ以上はでき得ないということに結論がならんとも限りませんし、或いは又目前鉱害が片付いてしまつて鉱業というものが一般的な正常な経営状態に戻るということになると、すべての鉱害が、これは鉱業権者責任で完全に片付き得られるというふうな結論になるかも知れません。又片付くという内容につきましても、すべてこれはもう原状回復主義でやつて行く、それで十分できるのだという結論になるかも知れません。その辺のところは今後根本的なデーターから固めて行くことによつて正確な結論は出る。従つてこれにつきましては、今後かなりの年数をかけて、十分に慎重に考えて、熱心に研究すべきもので、これにつきましては、やはり国としても、その結論を出すためにはできるだけの努力をしなければならん。これが私の鉱害問題に対する大体考え方であります。
  7. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の中島局長お話を聞いておりますと、ドイツその他を見ておいでになつて測量制度と申しますか、採掘鉱害との因果関係が科学的に詳細に証明されておる事実と制度とに眩惑されて、問題の本質は逃げられた形に私ども感じておるのであります。鉱業法制定の際の金銭賠償か、原状回復かという問題は、その鉱業法鉱害賠償條章に、一応金銭賠償とする。併しながら賠償金額については、著しく多額費用を要しないで原状回復をすることができると認めるときは云々と、こういうまあ一応條文なつたけれども、併しながら問題は、今後「事実の成立俟つて後これを行う、」こういう鉱業法立案結論は、今お話の中には全然出ておらんと思う。問題はまあその点でお尋ねしておるわけでありますが、鉱業法立案の際にも、特別鉱害の性格と申しますか、或いは目的も、第一條にございますように、鉱害、特別の鉱害ではありますけれども鉱害を急速且つ計画的に復旧することによつて公共の福祉を確保し、あわせて石炭鉱業云々と書いてあるのでありますが、復旧の事実は、これは争うことはできないと思う。それから今度の臨時石炭鉱害復旧法案にいたしましても、その程度はともかくとして、効用回復という言葉が使われておりますが、金銭で補償する、賠償をするのではなくして、鉱害を或る程度復旧する、その事実はこれも争うことはできないと思うのです。そうすると、鉱業法制定の際の「事実の成立俟つて後これを行う」ということは依然として問題が残るわけであります。因果関係の問題は、それは賠償なり或いは復旧をいたします際の限度なりは、或いは責任範囲できめることにはなろうと思いますけれども金銭という形で出るのか、或いは原状回復するのか、その回復の仕方、或いは負担区分等、或いは国が中心になるのか、或いは鉱業権者中心になるのか、これはあとの態様の問題であつて原状回復するかどうかという原則については、これははつきりしておると思うのです。その点をお尋ねをしておるわけであります。測量制度或いは科学技術の未発達で以て逃げられることは、これは問題の解決、或いは解答にはならんと思います。これは法を作りますときの精神から言いましても、或いは衆議院の議決からいたしましても、これはその点は明らかだと思うのであります。それらの点はどういう方向に持つて行くおつもりでありますか。技術じやなくて、基本的な線で、重ねて一つお答えを願いたい。
  8. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 少し言葉が足らなかつたかも知れませんが、いろいろ申上げましたのは、要するに或る一点をつかまえて言えば、鉱業法の現在の金銭賠償原則鉱害原状回復主義に戻すべきかどうかということの結論を出すにつきましても、やはり相当慎重な研究を要するということを申しておるのでありまして、例えばお話のありました通り特別鉱害法、或いは今度の石炭鉱害復旧法におきまする原状回復というふうなことも、これは鉱業法原則に真正面からぶつからないで、できるだけの原状回復をするということでありまして、実際問題におきましても、一定単価以上の復旧を要する場合には、特別鉱害の場合におきましても、又この法律の場合におきましても、復旧はしないでおくというふうな措置をとられております。従つて原状回復という措置は、例外的に、或いは臨時的に、特別立法でとられておりますけれども、一応の金銭賠償原則というものは、ずつと続けて一つ前提としてとられておる。それをどういうふうに動かすかということについては、やはり先ほど申しましたような点を十分考慮して、でなければ簡単に結論に出せない、こういうふうなことだろうと思います。
  9. 吉田法晴

    吉田法晴君 因果関係或いは責任範囲というものは、それは問題が残るとしても、こうして特別鉱害なり、或いは一般鉱害なりで、原状の或る程度回復をして来た。そのことを今後どうするつもりか。原状回復制度について、鉱業法原則自身について、一応原則金銭賠償ではあるけれども、「著しく多額費用を要しない」場合には、原状回復をすることができると、この原則を考慮する意向があるかどうかという、この点をお尋ねをしておるわけでありますが、端的にその結論だけを一つ説明願いたい。
  10. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) それは勿論鉱害法に書いてありますような前提で以て、原状回復のできる場合には、原状回復をさせるのが適当であると考えております。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 多少押問答的になりますが、御答弁現行鉱業法を動かないものとしてお考えになつておる。ところが鉱業法立案の際にもその点は非常に問題になつたのだし、そうしてそれを特別鉱害なり、或いは今度の法案で事実上解決したわけなんです。或いは解決しようとしておるわけであります。そこでその基本原則の点について、これを考慮する意思があるのかどうか、今の御答弁では、現行鉱業法以上には出ない、こういう御答弁のような感じがするのであります。その点をもう少し明らかにして頂きたいと思います。
  12. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 少し私に理解しがたいような点もございますが、一応申上げますと、将来の立法論といたしましては、金銭賠償原則原状回復主義に直すかどうかという点については、今直ちに結論は出しがたい。又現在の鉱業法の下においても、或る程度現状回復制度もございますが、そういう現行鉱業法前提とした原状回復主義というものを全然否定するものではない。これが二つのポイントでございます。それからその間に、特別鉱害乃至はこの一般鉱害法律原状回復を或る程度行なつておりますが、これも見方でありますけれども現行鉱業法原則の上に立つて、それを崩さないでできる範囲原状回復行つておるということを言えるのであります。従つてこの二つ特別法に基く原状回復主義を仮に容認するといたしましても、それはやはり現行鉱業法にもとるものではない、こういうふうな考え方でございます。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど読上げました鉱業法立案と申しますか、改正草案審議結論であります問題の点、金銭賠償原状回復主義か、それはこの鉱業法では片付かないと申しますか、一応現行鉱業法程度にしたけれども、このような改正はむしろ事実の成立を待つてのちこれを行うのが妥当であるとする、こういう明文が謳つてあります。それをどうするか。これは一応鉱業法立案の際の結論的な約束だと思うのです。それについては、特別鉱害或いは今度の一般鉱害臨時石炭鉱害復旧制度を確立して、これを約束された事実の成立を待つてのち、これを行うという改正問題はどういうおつもりでおられるのか、この点をお尋ねするのであります。
  14. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 事実の成立ということは、その場合においてどういうふうな意味を持つておるか。或いは正確でないかも知れませんが、実際その鉱業法を施行いたしました慣行を見て、それが原状回復が大部分であれば、やはりその趣旨解決すべきだと、こういう趣旨であろうかと思いますが、この特別鉱害並びに一般鉱害の両法律で行なつておりまする原状回復というものは、これは国乃至は国に準ずる機関が中に介在いたしまして、この場合には国家においてそれにプラスをして原状回復をしておるわけでありまして、鉱業権者が單独で最終的な原状回復を強いられておるわけでも何でもないのでありまして、従つてこの法律によつて原状回復という事実がかなり出て参りましても、これは鉱業権者がすべて原状回復主義を引受けるのだという事実は強いて成立したというふうに考えるわけに参らないのであります。
  15. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は、今の御答弁の中にあります御心配のような鉱業権者が全部引つかぶるだ、そういうふうなことを言つておるのではございません。それには原状回復にいたしましても、或いは金銭賠償にしても、その責任を果すべき責任限度と言うか、或いは原状回復をすると言うと、その負担の割合という問題になると思います。それには或いは測量制度なり、掛術的な因果関係のはつきりしたのちに出て来る問題じやないか。併しながら原状回復金銭賠償かという問題は、これは原則なり或いは建前の問題であると思います。それについて鉱業法立案する際にいろいろ問題になつたが一応こうしておく、そうして改正は事実の成立を待つてのちこれを行うのが適当である、こういうことになつておる。その後特別鉱害一般鉱害という制度ができた。それとこの事実の成立を待つてのちこれを行うと、こういう約束と申しますか、そのときの結論からするならば、こういう限度はとにかくとしまして、原状回復制度ができたということは、この結論がやはり事実の成立だと私は或程度考えるのであります。それをどう考えられるか、それとこれとの関連において事実の成立を待つてのちこれを行うということがどういうように今解釈されておるか、中島局長は、この臨時石炭鉱害復旧制度は、これは現行鉱業法の枠内でできておるのだと、こういう御説明ですけれども、それではこの特別鉱害一般鉱害制度もできない前に、鉱業法審議する際に、こういう結論が出たことは、これはこの気持も、或る意図も違つてつたと思うのであります。この鉱業法ができたのちに、できたのちと言つては何ですが、鉱業法関連をして、時期的にも関運して特別鉱害ができた。それから一般鉱害復旧或る程度復旧制度ができたわけであります。その石炭鉱害特別鉱害の前から問題になつたこの問題を’この特別鉱害なり一般鉱害制度ができたのちにおいて、この趣旨と申しますか、或いは精神をどういう工合に取扱われるか、或いはどういう工合に取扱おうとされておるのか、この点をお伺いをしておるわけであります。
  16. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) この御質問の御趣旨にはつきり副うかどうかわかりませんが、気持の上で申しまして、現在の段階におきまして、やはり原状回復をできるだけやつたほうがいい、その方向に持つて行くべきだという考えにつきましては、私も全然異存はないのであります。ただそれでは鉱業法成立以後の事実の推移というもの、それから鉱業法のときの決議等考えまして、当時法律でとられております金銭賠償原則というものを全然裏返しにし得るかどうかということにつきましては、気持の上では仮にするということに一致いたしましても、それはこういうことにいたしますと、今度の、それは先の問題だというお話でありますけれども鉱業権者負担の問題もありますし、又どの程度費用までかけて原状回復を容認するか、およそ原状回復を百パーセント推進するのだということであれば、非常な無駄な国費を費して、元通りな形を復旧するということも起りましようし、それにはやはり限度があると思うのでありますけれども、こういうふうな限度をどこで抑えるかという、いわゆる逆な例外を或る程度考えませんと、そういうふうな新らしい原則に乗替わるということは危険だろうと思うわけであります。そういうふうな点を、相当研究の上で、見究めた上でないと、現実の金銭賠償原則がいいか悪いかは別にいたしましても、單に現在原状回復がかなり行われておるという事実だけで、お話のような原状回復主義に移行するということはいささかまだ尚早であるのじやないか、こういうふうなことを私は考えるのであります。
  17. 吉田法晴

    吉田法晴君 中島局長に、もう一度鉱業法立案の当時の事情と、それから気持に帰つて頂きたいのでありますが、この原則問題と関連しまして、先ほど読み上げましたように、委員会審議経過としてこういうことが書いてございます。炭坑における土地陷落復旧については、国として抜本的措置が必要であること、これは復旧ということでありまして、金銭を拂つてそれで済ませるということではございません。復旧については国として抜本的措置が必要である。現に今、商工省農林省、安本、建設省において、公共土木事業費による原状回復を強硬に推進し、予算的行政的措置の確立を期する、こういうことが書いてございます。これは原則問題と離れて、実際に国が中心になつて原状回復を強硬に推進し、それには予算的行政的措置の確立を期するのだ、こういうことなんです。なお私が申上げるまでもございませんけれども、この臨時石炭鉱害復旧法案を作りますときの精神、それから衆議院の議決も大体同じ趣旨だと思うのです。そうしますと、今の原則論を一応離れて、この最初意図されたところのもの、或いは約束されたもの、それはどういう工合にお考えになりますか。私どもは、できました法律と、この鉱業法立案の際の、或いはこの法律を作ります前の衆参両院の意思というものと、でき上つた法律との間には相当の距離がある。或いは鉱業権者に一切の責任があるかのごとき建前をとられたことについては、本質的な法の建前の転換になると思うのです。これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  18. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 国として抜本的な措置考えるという、抜本的な措置ということは、お話の点よりも、むしろもう少し広い意味じやないかと思うのでありますが、これは必ずしも原状回復だけではなくて、地上地下とのいわゆる調整を十分考えて、或る場合には採掘を禁止するということによつて鉱害を防止するということもありましようし、場合によつては、原状回復ということもありましようし、又場合によつて金銭賠償で以て済ますというような、いろいろな形があるわけでございますが、それがすべての根本的な原則乃至考え方というものからがつちり出て来るというふうなのが抜本的な制度だと思うのです。そういう制度をはつきり作るためには、先ほど申しましたような、いろいろな研究が要るというわけでありまして、これが必ずしも原状回復オンリーということでもないのであります。それから予算的措置はできるだけやれということでありましたが、これは我々も賛成でありますけれども、遺憾ながら微力にして、両法案共に十分な予算的措置が伴つておりませんが、この場合に問題になりますのは、もともと鉱害というものは、鉱業権者が引き起こしたものであり、これはすべて鉱業権者鉱業経営の枠内で、経済的に片付けられるべきものだというのが財政当局の考え方であります。そうではなくて、日本の産業の現状、或いは資源の賦存状態からいつて、全部をこれに、鉱業権者に負わせ、更に一般消費者に転嫁するということが適当であるのか、それともそれに対して特殊な国の事情を考えまして、国家的にこれを或る程度援助してやるということがいいのかどうかという点につきましては、十分の根本的に操作するだけの材料が整つておらん。従つてその点がうやむやのままに鉱業法ができ、その後の制度もできておるというのが現状でありまして、当時の決議の趣旨というものが完全に生かされておるとは勿論申されませんが、又完全に結論を出して、このような制度がとられるということも申上げられないのでありまして、要するにまだいろいろ不確定な、前提的に箇める問題が多いために、こういうふうな程度で一応はとどまざるを得なかつたというのが現状でございます。
  19. 吉田法晴

    吉田法晴君 やつぱり依然として手許にある臨時石炭鉱害復旧法案精神を基礎にして議論をせられておりますが、先ほど読み上げました文書にいわれるような、鉱業権者責任範囲内といつたようなこと、或いはそれから原状回復か、金銭賠償かと、こういう議論ではなくて、土地陷落復旧についてはと書いてあるのであります。抜本的措置というのは、復旧とは関連せずに、金銭賠償を含め、或いはその責任範囲がどうだこうだという問題は抜きにして、土地陷落復旧について、国として抜本的措置が必要である。次の文章はそれを受けて、そうして商工省農林省、安本、建設省において公共土木事業による原状回復を強硬に推進し、そうしてその次に予算的行政的措置の確立を期するということになつておりますから、これは国が中心になつて公共土木事業費による原状回復を強硬に推進する。それが今問題になつておる法律立案の際の参議院或いは衆議院の意思でもあつた。今読み上げました鉱業法立案の際の結論であるとするならば、鉱業法立案関係官庁と申しますが、審議会におけるその陷落の復旧、或いはそれを国がするんだ、原状回復をするんだ、そのために予算的行政的措置を確立すると、こういうことは、これは少なくとも意図については争う余地はないと思うのです。大蔵省の意向もちよつと今述べられましたけれども、大蔵省は、成るほど大部分において鉱害賠償責任鉱業権者にあるんだ、それを国が肩替りするということについては、納得しがたいような議論もあることは私は承知しております。併しながら、それはこの鉱業法立案結論、或いは衆参両院の決定、或いはそれに基く閣議決定、政府の方針として、石炭鉱害復旧法案の基本的な精神は、政府で閣議決定を見ているのです。それをやる省の或る人がそういう意向を持つてつても、これは公認される解釈でもなかろうと私は思うのです。そのことは、この法案関連する予算的な措置にも出ておりますけれども、この今読み上げました鉱業法立案の際の結論、或いは衆参両院の当時の意向、それから閣議決定、こういうものから考えてみて、今のような御議論は私はできないと思うのです。その精神と、それから現行法で問題になつておる臨時石炭鉱害復旧法案との食違いはどうされるのですか。
  20. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 困がこれに対しで相当の予算的補助をするということは、これは決議の趣旨といたしましても、その場合に鉱業権者は全然これに対して無責任でよろしいということは勿論含まれておらんと思うのです。従つて今度の法律におきましては、鉱業権者責任に属する限りの賠償額は押えさせまして、それ以外の部分で、而も復旧に心要な程度の経費は国で補助するというふうな建前でできておるわけであります。その程度如何につきましてはいろいろ議論があるわけでありますが、根本的な考え方につきましては、大体決議案の趣旨のようなものがこの法律でとられておるのではないかと考えます。
  21. 吉田法晴

    吉田法晴君 負担区分の問題で、鉱業権者に全部持たせろということは当時の精神にもなかつた。或いは国が補助をするということは、当時の法律の中にも出てなかつた。それは了承をいたしますが、併しながら鉱業法立案の際の結論、それから衆参両院の意向、或いは決議、或いは閣議の決定、これは国が中心になつてやるんだ、而も復旧をやるんだ、或いは原状回復を強硬に推進するんだ、これは争う余地のないところであります。ところが今度の法律によりますというと、その立案精神が変つてしまつて鉱業権者責任を本来鉱害賠償については持つんだ、その限度内において負担金を出せばよろしい、その責任を事業団が肩替りをしてやるんだ、国は補助だけをするんだ、こういう精神になつておることはこれは間違いないと思う。そうすると、参衆の決議なり、或いは閣議決定精神と、でき上つた法律というものとの間には、大きな原則の相違ができておるということは、これは争えないんじやないかと思う。その点をお尋ねをしておるわけであります。
  22. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) この場合に、国が正面に出ていることは殆んどないのでありますけれども、併し法律を作り、事業団を作り、その事業団の設立と運営につきましては、十分国が責任も持ち、又監督もいたすわけであります。而もその復旧基本計画というものは、国家的な見地から事業団が作るべき性質のものであり、それはそれぞれの主務官庁で十分検討して認可されるということになつております。従つて事業団は国の仕事を代行しておるような形であります。ですから私は、直接正面には出ておりませんでも、事業団の行う仕事に関する限りは、国が責任を持つておる。或いは監督しておるということに解釈してよろしいと思います。
  23. 吉田法晴

    吉田法晴君 事業団は国の仕事だというお話でありますが、説明によりますと、事業団は法人だ、機能法人だという説明でありますけれども、機能法人というものの本質は何でありましようか。国の機関でありましようか。それとも本質的には民法上の公益法人の部類に入るのでありましようか。
  24. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) これは法制意見局のほうから御説明があるかも知れませんが、国の機関とは言えないと思います。法律の性格的にはやはり民法上の法人的なものになるかと思いますが、併し実質的にいろいろな監督規定もあり、理事長は任命制にもなつておるし、その他の一般の点につきまして、関係主務官庁というものは終始これに重大な関心を持つておりますから、従つてこの事業団の実際の事務運営というものは、極めて国家的な性格のものである。又国家的な目的以外を狙うということは、これは事業団にとつてはあり得ないということにもなつておりますから、国の代行機関とまでは言えないにしても、そういうふうな性格を持つて仕事をする機関だ、実質的には国がやるべきことを事業団にやらしたということを單純に言つても差支えない程度のものじやないかと思います。
  25. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじや一つ法制意見局に伺います。  法人の性格と、それから今の国との関係……。
  26. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) この事業団はどういう性格のものであるか。これはどういう法人であるかと申しますと、まあ一口に言えば機能法人だ、機能法人とは何だというような議論も出ますけれども、要するにこの事業団は民法の法人でもございません。この法律に基いて作られた特別の法人であつて、法人と申しますのもいろいろありまして、まあ要するに簡單に申上げれば、個人以外におきまして、社会的な一つの独立の機能を営むものとして能力が與えられ、その存在を認められ、法律的な取扱いを與えられることができるものは法人と認めなきやならないかと、まあこれは法人論につきましては、いろいろ昔からむずかしい議論もございまして、まあそういう意味で、この法人は一種独特の法人である。強いて名付けますれば、最初に申上げましたように機能法人だというふうに言えるかと思います。  なお、この法人の、事業団の行いますいろいろな仕事につきまては、それ自体は国家の権力に基く行為ではありませんけれども、この法律に基く、いわば準国家的な公権的な行為であるというふうに見てよかろうかと思つております。
  27. 吉田法晴

    吉田法晴君 機能法人のいわゆるまあ法人の中の地位ですが、それは或る意味においては、国も地方公共団体もこれは法人であります。そういう国の直接的公権力を任務とする法人、これを機能法人と言うのならば、それは私も納得をいたします。ところがそれは民法上の法人じやなくて、この法律によつて設立せられる法人、その点もこれはわかります。今の御答辯の中に、公権的な任務を持つものと、公権的な任務を持つかどうかということに事実はなると思う。或いは公益、公共という観念をいたしますならば、公共的な任務というものが公権的な任務であるならば……まあ公益、公共と両方分けるかどうかわかりませんが、公益法人みたいな、これは公共性と申しますか、公共性がこの公権に関係します。公共性があるなら、そうでない、例えば福祉事業なら福祉事業をやる、或いは宗教はこれは国の事業じやありませんけれども、福祉事業なら福祉事業は国の仕事でないかどうか、これは或る意味においては福祉国家という点から言いますならば、国の事業ということもできましよう。それを今の場合公益法人でやつておるその仕事と、この石炭鉱害復旧という仕事との間にどれだけの違いがあるのか。今お話の公権的な仕事であると言うならば納得いたしますが、私そうじやないのじやないか、特に法の建前から言いますると、鉱害はこれは鉱業権者責任を負うべきであつて、大蔵省の中での意見を引いて、今中島炭政局長がお述べになりましたけれども、そういう考えの上に立つて、そうして事業団の経費の大半を負担金によつて賄うということであるならば、これは本来の性質からいたしまして、鉱業権者のやる責任を事業団が代つてやる、こういう性格になることはこれは明かじやないかと思う。そうすると、それは復旧それ自身の性質が国の仕事だ、それが今まで国の仕事と言われて来たから国の仕事とこう言つているので、或いはそこに公共性があると、こういう説明です。それならば、例えば福祉事業なら福祉事業も国の仕事だということができると思う。その仕事の性質、それから性質から言つて、公益法人なら公益法人の仕事とどれだけの違いがあるか。それから特に先ほど申しました鉱害責任をどこに置くか、それは先ほど読み上げました鉱業法立案の際なら、それは国の仕事なんだ、国が中心にやるのだ、そうして鉱業権者にも一部負担させるのだ、或いはその能力の範囲内で出させる。それならばその言われるような公共的な仕事だろうと思う。その意味において鉱害復旧というものの責任の所在がどこにあるのか、或いは経費の問題もこれは関連して相当性格決定の材料になる。これだけの点から考えまして、私はどうも事業団が公共の事業、特に公権的な任務をするのだと、こういうふうには解釈しがたいのでありますが、重ねて一つ局長の御意見を伺いたい。
  28. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 先ほどの私の言葉が少し足りなかつたと思います。又今吉田委員の御質問も相当いろいろな点も含んでおりますので、或いはその質問趣旨と合わないこともあると思いますけれども、答えさしてもらいます。私が先ほど公権的な任務というふうな言葉を申したと思いますが、その意味は事業団、この事業団は公権力の行使そのものをする法人という意味に申上げたのではないのであります。ただその仕事がいわば国家的な事業である。従いまして例えばこの納付金の徴収につきまして、市町村税の例によつて強制徴収の規定があるという面を見ますと、これは単なる一つの法人が普通の與えられた活動をする、ただ野放にして行くと申しますか、多少公共的と申しますか、いずれにしましても一般の法人が活動する場合と相当違つた面があるのじやないか。然らばどうして、例えば鉱害賠償義務と申しますのは、鉱業権者の個人的な義務であるにかかわらず、それを代行する事業団の仕事が公権的なものを持つに至るかという点が一つの御疑問の点だろうと思うのです私は、これは多少私の解釈が間違つているかも知れませんけれども、先ほどから縷々いろいろ吉田委員中島局長との間に御問答がありました鉱害賠償の根本問題に触れて来るのじやないか、現在の鉱業法の製定の際におきまして、いろいろ金銭賠償か、原状回復主義かという点が非常に問題になりました。これは政府が原案の審議をする際におきましても、率直に申上げまして、非常に長い期間真劍に議論されたところであります。結論として出ましたところは、これは御承知の通り金銭賠償義務を建前としておりまするが、ただ旧鉱業法と違いまして、非常にそこに一歩前進しましたのは、著るしく多額費用を要しないで原状回復をすることができるときには、被害者原状回復を請求することができる請求権を認めたということ、いわゆる法律上、この場合においては、著るしく多額費用を要しない場合には、原状回復主義がいわゆる加害者のほうに課せられている。こういうことになつております。これは一つの余談と申しますか、今議論申上げていることとちよつと外れますけれども、いずれにしましても、何と申しますか、金銭賠償義務と原状回復という問題について先ほどのような附帶決議と申しますか、そういう議論が非常に深刻にされた。それに対して政府が拔本的な対策を講ずべきだということは、そのときありましたことと承知しております。併し性らく通産当局或いは政府当局がこの今度の法律を出しました意味は、要するにこの問題に対して最終的な回答をまだ出すには至らない。それには一つ技術的なさつきのまあ因果関係というものをはつきり—しなければならない。と申しますのは、例えば原状回復をやるにしましても、或いはその場合のやり方として、政府が、国家がこの原状回復に或る程度介入するという必要も出て来る。出て来た場合に、どの範囲までは鉱業権者責任とするかというような点等の技術的な問題等もそこに相当あるのではないか。従いましてこの法律案自体が最終的にその鉱業法のとき問題になつた点につきまして結論を與えておるというわけではなかろうと、私はそういうふうに解釈しております。併し一方実際問題としまして、片一方において被害者原状回復の要望は非常に強い。片一方加害者のほうにしてみれば、今のような金銭賠償というようなことも非常につらい。場合によつてはつらいし、或いはまあいろいろそこにトラブルが絶えないというような点に鑑みまして、結局この法律のとりました建前は、法律的に申しますれば、加害者たる鉱業権者については、鉱業法限度を見つつ、いわば金銭賠償限度としつつ、そこに国家が入つて被害者の要求を満足させるために原状回復をする、いわゆる効用回復というものが現実の意味原状回復と違う意味もありましようけれども、社会的の効用回復としてはそれで満足できる、こういう制度がこの法案のとられた態度じやないかと、こういうふうに私は考えます。
  29. 本間俊一

    政府委員(本間俊一君) ちよつとお答えを申上げておきたいと思うのでありますが、吉田さんのお話は、私ども実はよくわかるわけでごいます。御指摘になりましたように、抜本的な対策をとり、或いは又公共事業費で国家が強力に中心になつて進めるという御趣旨の決議をされましたことは、私ども承知いたしておりますわけであります。ところが率直に申上げまして、普通の農業災害におきましても、或いは土木の災害におきましてもそうでありますが、自然発生的な天災によりまして、非常な農業、土木の被害がありましても、御承知であろうと思いますが、すべて国が原状回復まで行くという線には只今のところ行つておらんわけであります。そこでお気持は私どもも実は同じ気持を持つているわけでございますが、たまたまこの鉱害の場合は、御承知のように鉱業法関係がございまして、金銭賠償主義がとられているわけでありまして、従つてその鉱業法金銭賠償のほうはそのまま受継ぎまして、足らないというと語弊があるかも知れませんが、そのほかに国の費用も出しまして、そうしてできるだけ経済的な効用のありまするところを復旧して参りたい。こういう、何と申しますか、実際と妥協いたしているわけであります。従いまして御指摘のありましたように、御指摘の趣旨からは相当に逕庭があることを私ども是認いたしているわけでございます。従いまして、只今申上げたような趣旨で立法いたしておりまするので、私どもはただ御指摘のありました趣旨と全く反しているとは考えておらない。その沿うておりまする度合も或いは見方によりましては違うかと思いますが、相当逕庭のあることは承知をいたしまして、是認をいたしているわけであります。従いまして、そういう建前でこの法律立案しているということをどうか御了承賜わりまして、御質問をお進め願うようにお願いいたしたいと思う次第であります。
  30. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ちよつとこの際、吉田君にちよつとお待ち願いまして、小林君から先般から請求が出まして、大蔵省に対する質問が残つているので、これを時間の関係上設さして頂きます。約五分から十分であります。
  31. 小林孝平

    小林孝平君 本法による農地及び農業用施設の復旧費の予算についてお尋ねいしたますが、この問題については、先般農林委員委員外発言として、一つお尋ねしたのでございまするけれども、なおお答えに不十分な点があり、不明確な点があるので、もう一度お尋ねいたすのでありますが、この予算は、結局鉱害が石炭掘採の結果必然的に生ずるものもありますし、又その予算の額は、鉱業権者の納付金の額によつて左右されるわけでありますから、当然通産省が新規の項目として予算を組みまして、そうして実際に使う実施の際には農林省に移管して、そうして使つてもらう、こういうことにしたほうがいいのではないか。これは非常に事務的な問題のようでありますけれども、結局この予算が十分にとられなければ、この法案によつて書いてある事柄は実施されないのでありまするから、この予算については、是非今申上げたように、通産省で新規の項目としてこれを計上して取られるというふうにしなければならぬと思うのですが、大蔵省のお考はどうですか。
  32. 河野一之

    政府委員(河野一之君) お答え申上げます。一応御尤もなお考えでございますが、この鉱害に対する国の補助というものは、従来の鉱業法の建前を変更するのでなしに、公共事業と申しますか、そういつた災害復旧という別の見地から補助が出る、こういうことで実はできているわけであります。従いまして害災の原因によりまして、これを所管の省を変えて予算を計上するというわけには、現在の財政法及び会計法の建前からすると工合が悪いのじやないか。つまりその事業を執行する官庁が予算を要求し、且つこれを実行する、こういうのが財政法、会計法の建前になつておるわけであります。併しこれを鉱害という見地から、総合的に通産省において調整せられ、実際上においてそのような、ここで調整せられて、そうして各省に計上すべき、或いは要求すべき額を幾らにする、或いはその配分をどうする、こういうふうなことの実際上の動きはとれていいと思うのでありますが、予算自体の動きは、そういうふうに通産省に計上して、それを配分するというようなことは現在の予算の建前からしては必要ないのじやないか、こう思う次第でございます。
  33. 小林孝平

    小林孝平君 予算の建前ではそうかも知れませんけれども、結局これだけの事業をやるのに予算が十分取れなければできない。ところがこれを農林省にやらせるのでは、私はやはり直接鉱害によつて生ずる関係上、農林省でも、そう言つてはちよつと語弊がありますけれども、予算の要求に際してもそう熱心にやるというわけには行かんと思うのですが、これはやはり直接鉱害に伴つて起きるのですから、その事情がよくわかるから、それは当然通産省が責任を以て要求するということにしなければ、実際問題として、今河野主計局長のおつしやるようなことにはなるかも知れませんけれども、実際問題としては予算が十分取れないということになるのではないか、こう思いますので、何とかその便法を講じてやるわけには参うんかとこう思つております。
  34. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 予算を要求する場合におきまして、通産省にまとめて、各省にまとめて渡すということはなかなか困難だということは、実際はどうもわかりませんが、そういうふうに予算を組むという理由にはちよつとなりかねるのでありまして、或いは御心配のような事情があるかも知れませんが、これは実際問題として、通産省が中心となつて各省の間を調整し、又援助せられるという方向でやられるべきものではないかと思うのであります。過去におきましてもそういつたような例は幾らもあるのでありまして、殊に以前は、公共事業費というようなものが内容がきまらないで、一応経済安定本部に計上されておつて、各省に実際に配分せられたようなこともあつれのでありますけれども、現在ではこれは各省に内容がきまつて渡されておるというような実情になつておるのでありまして、予算が提出になるまでに鉱害復旧事業の内容がまだ確定しないというようなことは適当でないし、又あり得べからざることでございますので、予算を編成するまでにおいていろいろ通産省において御努力になればいいのではなかろうか。予算編成後、これを通産省に配分するということになりますと、どうも財政法、会計法の建前の問題になつて来やしないかと、こう思うわけであります。
  35. 小林孝平

    小林孝平君 現在のところ非常に困難でありましよよけれども、今後これを、そういう実情でありますから、更に研究される意思があるのか。これで絶対もうその問題は駄目だ、こういうお考えなのか、もう少し考えてみようというお考えなのか、それを一つ
  36. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 御趣旨の点は十分検討して参りたいと思うのでありますが、なかなかこういつた建前としてそういつた結論を出すことは困難ではないかというふうに個人的には思つておる次第であります。
  37. 吉田法晴

    吉田法晴君 折角来られたときですから、関連してお尋ねいたしたいのですが、この法律をごしらえましても、予算がどうなつておるのか、予算がどうなるかということが一番心配な点です。で、問題は、先ほど論争しておりました、この仕事を国がやるのか、或いは国がどこまで責任を持つか、こういう問題と関連して、予算の点も額なりその他きまつて参ると思うのです。河野主計局長のこれは個人的な意見かも知れませんけれども、先ほど中島炭政局長が言われたように、鉱害賠償は本来鉱業権者がその責任を負うべきじやないか、こういう考え方が大蔵省の相当の御意見ではないかといつた感じを私のほうも持つておるわけであります。その点については、鉱業法立案の際にも、復旧ということ、或いは公共土木事業費原状回復を強硬に推進するのだ、こういう結論も出ており、それから問題の石炭鉱害復旧法案の立案の前にも閣議決定を見ておることでありまして、その点は、これは大蔵大臣も閣議決定に参加せられて御了承になつておるところだと思うのでありますが、法律ができつつあるけれども、予算的な措置は講じてない、それじやいつおやりになるか、補正予算でちやんとお組みになるのか、その辺もう少し具体的に、誠意を以て一つ答弁を願いたいと思います。
  38. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 補正予算の問題でございますか。
  39. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは昭和二十七年度予算にどれだけ組んであるのか、それから補正予算にどういう工合にお組みになりますか、こういうことをお尋ねしておるのであります。
  40. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 特別鉱害復旧分は、本予算のときにあれはたしか高率補助になつておる関係で入つておりました。ただこの普通鉱害、今回法律として提出せられた分について入つているか入つていないか、この問題でありますが、入つてなければ補正予算の機会にでも出したらどうかという御意見かと思うのでありますが、これはたびたび私も申上げましたように、国がこの事業に対して助成するという建前は、公共事業、或いは河川の災害、道路の災害といつたようなものに対して復旧を助成するという建前でやるのでありまして、従いまして農林省或いは建設省等にそれぞれの災害復旧の予算が実は計上に相成つておるのであります。その分をこの鉱害復旧のために重点的にお使いになるということは、法律上も予算上も何ら差支えないことであり、又そうであることを念願いたすのであります。ただそれで十分であるかどうかということにつきましては、これは勿論検討の余地があるのであります。今後補正予算をどうかというようなお話もあつたかと思うのでありますが、この点につきましては、何ら内閣からこの問題についての御命令を受けておりませんので、私といたしましてとやかく申上げる段階にないということをお答え申上げます。
  41. 吉田法晴

    吉田法晴君 公共事業の補助ということで各省でおやりになることは勝手だと思うのです。ところが先ほど河野さん自身お話になりましたように、それぞれ各省の公共事業なら公共事業の分というものは、これはさまつて配賦される。そうするとその中から農林省は農地の復旧についてお出しになるのは御勝手だといつても、事実上これはすでに計画なり予定なりありまして、困難と申すよりもむしろ不可能だと思います。それから補正の問題については、何も承わつておりません、こういうお話でありますが、これは或いは主計局長としてはそうかも知れませんけれども、政府としてこの法律を出され、或いは法律を作る場合にも、閣議決定で方針はきまつておるわけでありますから、政府から話がない云々ということでは責任は免れられないと思います。もつと誠意のある御答弁一つお願いしたいと思います。
  42. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 本年度の予算を組みます際に、組みましたあとにおきまして、普通鉱害復旧という問題が起つて来たという点につきましては、或いは各省としてはそういうような配当をもうすでにできなくなつておるというような問題も或いはあるかと思います。併しこの法律を施行して、急速にやるという建前からするならば、その規定の中から、こういつた方面に重点的に出されるということは、何ら私は差支えないということを申上げたわけであります。今後予算が出される場合において、通産省がこの法律の建前に従つて全般的な調整をして、各省の間の取りまとめをやられることについて、事実上おやりになるについもこれ又我々として差支えないだろうと申上げておるわけであります。今後の補正予算その他の問題につきましては、私は事務当局でありますので、どういうことになつております。か、存じない次第であります。
  43. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 吉田君に申上げますが、農林省農地局管理部長谷垣さんが来ておられます。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君 都合の悪いときは事務当局事務当局と逃げられるようですが、河野さんが單なる事務当局であるかどうか、今日恐らく政府委員として出ておられると思うのでありますが、それじやとにかく私どもここで納得して、はいさようですかと引下るわけには参らない。或いは農林省、通産省も出ておられますから、意見を聞き、実情を聞いた上で、後の御意思と申しますか、後の御決意を承わることもないかも知れませんが、すでに御承知のように、来年度予算でさえもすでに編成に着手されておるというか、或いは各省で取りまとめられかけておるということで、補正予算或いは来年度予算、これはどういう形になりましようか、その辺の見通しについては、この鉱害復旧の問題全体については、何らの関知せざるところということはないと思う。これは農林省或いは通産省の意見、実情を聞いた後でなければあなたとしてはやつぱりお話ができないのですか。
  45. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 補正予算の点は、先ほど私が申上げました通りでありますが、明年度予算につきましては、財政法の規定によりまして、八月末日までに当該の要求書を大蔵省に提出することになつております。従いまして各省において現に部内において作業していることは事実であろうと思います。そういう段階におきまして、通産省が全体の鉱害復旧の見地から、そういつた検討をなされる場合においては、十分御意見を拝聽いたしたいと思うのであります。
  46. 吉田法晴

    吉田法晴君 拝聽いたしたいと、先ほど小林君の質問に対しては、考慮したいということのようでありましたが、結論できるかできないか、ちつとでもできない。こういう御答弁で、ただ拝聽するだけでは問題になりません、もつと中味を承わりたいと思います。それではまあ一番大きいところで、農林省の今までの折衝の経過と、それから今後の見通しを承わつたあとで、河野さんに一つ御意見を承わりたいと思います。
  47. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 私は拝聽と申上げたというのは、少し意味がなんでありますが、この予算を別々に、予算を通産省に一本に組むということはなかなか、いろいろ問題があろうと思うのでありますが、通産省の御意見を聞いて、予算を作成する上において、十分その意見を取入れてやるべきであると、こういうことをまあ申上げたわけであります。そういつた事情でありまするので、只今のところいろいろ内部的に御計画をお持ちのようでありますが、まだ具体的にと申すと何でありますが、今後のこの予算の取扱いについて、十分なるお話関係当局の間において進められる今の段階におきましては至つておらない次第であります。
  48. 西田隆男

    ○西田隆男君 今河野主計局長の御答弁を承わつておると、誠に心細い感がするのですが、中島さんにお聞きしますが、二十七年度の予算を編成される場合に、主務官庁として、一般と害の問題について、関係各省との間に予算計上の問題について連絡を取られたことがあるのかないのか、あるとするならば、どの程度の通産省の考え方を各省とお話合いになつたか、これを一つ答弁願いたい。
  49. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 今年度の普通予算の折衝の場合におきまして、一般鉱害復旧費を予想いたしまして、各省合せまして十億八千万円ほどの補助金を大蔵省に要求いたしました。ところが当時はまだ法案そのものがまとまつておりませんし、その成り行きといたしましても予測を許しません状況でありましたので、大蔵省当局としてはこの特別の費用につきましては、一応これをその儘にしておきまして、現在の公共事業費の中で全額賄えという趣旨で、追加的な十億いくらというものにつきましては計上されていなかつたわけです。その後この法案の進行に伴いまして、最近におきましては補正の機会があれば、或る程度のものは本年度のものとしてやつて行きたいということを、数字的には約二億くらいの金額になりますが、その程度のものを事務的に一応連絡してあるという状況で、今度の補正予算のときの本式の交渉は、法律成立以後又補正の機会のありましたときに、改めてこの数字を中心といたしまして、各省連絡をとつて交渉する、こういうことになるわけであります。
  50. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の二十七年の十億八千万円の各省の関係予算、これは通産省から大蔵省に交渉された金額ですか。それとも通産省と各省との間にお話合いができて、各省から大蔵省に要求した数字ですか。これをもう一遍伺います。
  51. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 当時は鉱害復旧法内容がきまつておりませんので、各省で一応予想いたしまして、例えば土木についてはこの程度、農地に関してはこの程度、各省それぞれの計画見通しがあつたわけであります。それを一応出すことにいたしまして、その数字をまとめたものを、私のほうでは、先ほど申上げたように、側面援助の意味で、別のルートで大蔵省に申し進め、又各省は各省としてそれぞれの立場より予算を請求して行く、こういうわけです。
  52. 西田隆男

    ○西田隆男君 農林省の農地局長が見えておるそうですが……。
  53. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 管理部長です。
  54. 西田隆男

    ○西田隆男君 管理部長でわかるかどうかわからないのですが、中島君のお話を聞くと、農林省と通産省と一応話合いして、各省からもこの問題で大蔵省に予算を御要求になつておるわけですか、御答弁願います。
  55. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 特別鉱害につきましては、これははつきりしておりますので、私共のほうから要求しております。それから一般鉱害の問題につきましては、具体的に大蔵省に要求したかどうかということは、今私ここではつきりいたしておりません。ただ部内におきまして、一般鉱害について予算を要求すべきであるが、数字はどのくらいの程度がいいかという議論が行われたことは事実であります。
  56. 西田隆男

    ○西田隆男君 農林省のほうでよくわからんと言つておりますが、後刻農林大臣を呼んでありますから、それは僕は質問しましよう。そうしますと河野さんのさつきの御答弁とは多少違うじやありませんか。であるから、大蔵省で、これは十億八千万円というものが、二十七年度の一般鉱害が通つた場合には心要だという話は当然お受けになつておるというふうに私は考えるのですが、
  57. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 二十七年度の予算の編成の実情を申上げませんと、ちよつと問題がはつきりいたさないのですが、二十七年度の予算につきましては、経済安定本部が各省の予算を総合調整して、大蔵省に持つて来るという建前になつておるわけでございます。即ち総額が各省の要求で三千億以上に上りまして、それを経済安定本部においていろいろ御調整になつて、それから大蔵省に持つて来られる。恐らくおつしやる意味は、その中に十億程度のものは入つておるんじやないかと私は思います。併しこれが具体的な問題になりました場合におきまして、予算査定の問題になりました場合におきまして、災害を幾らにするか、殊に耕地の災害復旧をどうするか、道路をどうするかというような点から、予算を、閣議におきましてもそれでは農耕地の復旧にどれだけにするかという、こういう建前で実は予算がきまつておるのであります。従いましてその中におきまして、特別鉱害は勿論でありますが、普通鉱害の問題について、或いはその後における事情によつて十分その中において優先的に考慮するという問題につきましては、実は現在の段階においては、各省に委してあるわけであります。今後予算を編成する場合におきましてどうするかということは、これは又別の議論に相成るのでありますが、現在までのところはそういうことになつておりますので、西田さんのおつしやるような、そういつたような御議論も生ずるのではないか、こう思います。
  58. 西田隆男

    ○西田隆男君 私があなたにお聞きしておるのは、あなたは全く聞いたことがない、あなたは全く関知しないんだということを小林君との間のお話であつたものですから、今のお話であると、聞いておらんということであるから、安本でどうするかということはこれはテクニックの問題であるから、あなたが聞いておるかどうか、各省の関係から、一応予算としてこういうことをやつてもらいたいという話を耳にしておられるであろうということを私は判断したから、そういうことを聞いておる。
  59. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 二十七年度の本予算を組みますときはお伺いしておりません。
  60. 西田隆男

    ○西田隆男君 中島さんにお伺いしますが、今主計局長は何も聞いていないということですが、あなたはどこに話されたのですか。
  61. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 実は私も当時は留守をしておりましたので、直接主計局長に申出たことはございません。恐らく課長乃至は事務官でこの各省のやつを取まとめまして、主計官のほうに話をして、その話が局長まで届いていなかつたんじやないかと想像いたします。
  62. 西田隆男

    ○西田隆男君 この一般鉱害法律案を作る前には、新鉱業法が議題となつてつたときに、関係各省の大臣もお見えになつたし、且つ大蔵省からは河野さんの右の腕とも言われている主計局次長が見えられておる。そして話をされて、関係五省で十分連絡をとつて、この一般鉱害復旧臨時措置法というものを作られたはずなんです。それにもかかわらず、大事な裏付けになる予算措置の問題について、大蔵省との間に連絡が一つもとれてないということは、我々としては考えられないのですね。(「その通り」と呼ぶ者あり)若しそうであるとするならば、主務官庁である通産省の責任は重大なものである。中島君はドイツ行つておられたから知らないと、こう言われるかも知れませんけれども、通産省は中島君だけではないのです。政務次官もおられる。資源庁長官もおられる。次長もおられるし、ほかに係官もたくさんおられるから、こういう重大な問題が何かわからんというような状態に現在まで来ておるということはけしからんことだと思う。中島君はいなかつたから知らんと逃げ口上では済まされん。ですからもう一遍通産省はこういう事情でできなかつたという、その事情があるならその事情を御説明願いたい。
  63. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 只今お話ございました十億八千万が、閣議で復活要求されておるということを只今聞いております。
  64. 西田隆男

    ○西田隆男君 閣議で話に出たということであるならば、主計局長は御承知でないかと思うが、大蔵大臣は御承知と思うが、大蔵大臣からは何ら主計局長お話はなかつたのですか。
  65. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 私もその当時の事情はよく存じませんが、閣議で或いは通産大臣からそういつたことを御要求になつたのかも存じませんが、とにかく公共事業については、経済安定本部の枠と申しますか、総額についての問題でありまして、その場合には、私の想像を申上げてはなんでありますが、その中ではできないのではないから、やつたらどうかというお話であつたのじやないかと思います。これがどうだという直接のお話は大蔵大臣から私は伺つておりません。
  66. 西田隆男

    ○西田隆男君 まあその問題は、あなたは閣僚でないから追及しても仕方がないと思うのですが、今後の問題について、河野主計局長の話を聞いて、私は非常に心細く感じたのですが、知つておられる知つておられないということは別として、今ここで論議されて御承知になつたことは聞違いないと思うのですが、二十七年度の予算が考慮されているから、この法律が通つた場合は、各省の中から一般鉱害の金を、復旧の金を各省から出してくれればよいということでお話があつたのですが、各省が出すか出さんかということは今後の折衝の問題であろうと思いますけれども、今は今として、そういう状態になつて公共事業費というものが潤沢にあり余るほど取られていれば、各省は喜んで出して来る。そうでないと各省としては出しにくい、これは主計局長もそう判断されると思うのです。そう判断されたならば、少くとも最も近い機会において、通産省は一本で、予算を組む組まんは別問題として、各省の金は公共事業費の中から、一般鉱害法律が通つたならば、これの費用として喜んで出せるような状態に大蔵省としては置くお考えを持つておられるのかおられないのか、それを一つ承わりたい。
  67. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 今後の補正予算の問題でありましようが、今後補正予算を出すか出さないか、これは私のあずかり知らんところでありますが、そういつた場合において、豈これのみならず、その他すべての問題について十分再検討しなければならん必要はあるであろうと考えております。
  68. 西田隆男

    ○西田隆男君 そういう抽象的な一般的な御答弁でなくて、もう少し、この問題は一般鉱害臨時措置法に関する部分に極限される論議になつておるのですから、そういうお感じて一つ答弁願いたい。例えば実例を申しますと、農林省に公共事業費の予算が三百億ほどあると、こう仮定しますね。それは要求される場合は、三百億要求されるか、四百億要求されるか、これはわかりません。その中に一般鉱害復旧の予算が農林省負担として仮に五億入つておるという場合には、大蔵省としては、今の河野さんのお話によると、一般的に限られた公共事業費は出されないということで、四百億出せと要求されたものを三百二十億に削つてしまつたという状態にならないとも限らない。これが一般的な予算の考え方だろうと思うのですが、そういう際、特に河野主計局長も今日来ておられるのだから……、これは決して生やさしい法律じやありません。だからして農林省から五億要求して、このものとして要求されたものを五億だけ確保してほかのものを削る、削る場合は、そういうふうな考え方で予算の編成をしてもらわないと、一般鉱害復旧ということが、法律はできたが有名無実でできないというような、全然できないということはないのだろうが、この法案に示されておるように、十ヵ年でできるということは殆んど見込みはないというふうに私は考えられる。だからそういうふうな感覚で今後予算の査定の場合にはやつてもらいたいのと、それとこれほど一般鉱害が新鉱業法審議されるときから問題になつてつたにもかかわらず、現在まで予算ができていないということは認に遺憾な話でありますが、この前に企業合理化促進法が議員立法でできた。これは大蔵省は反対らしかつたが、併し議員立法で、予算措置が二十七年度十何億八千何百万円か、ちやんと本予算に組んである、これは実に怪しからん。何も予算に組んだのが悪いということじやあません。議員立法であつても通るかどうかわからない。而も企業合理化促進法に十億数千万円が二十七年度の一般予算に組んである。それにもかかわらず、うちは政府機関で、関係五省のものが集まり、次長か課長か知りませんが、とにかく五省が連絡をとつて、五省納得してできておる。而も政府提案で出ておる。これに対して予算の問題については、大蔵省のほうでは何ら関心を持つておらないというようなことは、私たちにはどうしても常識的な判断ができない。従つて河野さんに責任を持たせるわけではないけれども、今日見えておるから、そういうふうな感覚で、今後一つ予算の編成に当つては便宜を取計らつてもらいたい。あなたでやりましようという答弁はできないと思うが、そうやつてもらいたい。でなければこの法律を作つて意味をなさん。私はこう考える。若し河野さんに別な御意見があつたら別の御意見を伺いたい。なかつたらもう御返事は要りません。
  69. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 御趣旨の点はいろいろ御尤もな点もありまするが、将来のことはいざ知らず、現在の段階において、この一般鉱害の分について、補正予算を組むということをお約束するわけに参らんかと思つてあります。
  70. 西田隆男

    ○西田隆男君 農林省のほうにもう一遍お伺いしたいのですが、今までのお話を聞いておると、私はこの一般鉱害が通つた場合の復旧の金額の問題は、なかなかやりにくいと思います。農林省としては、若しこの法律が通つて、金が要る段階に来た場合に、現在の公共事業費の中から農林省として負担されるものと予定される金額をお出しになる心構えがあるのかないのか、それを一つお伺いしたい。
  71. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) これは少し基本論になるかも知れませんが、農林省といたしましては、この予算をどこの省で要求するかということが一つ問題になるかと思います。と申しますのは、これは元来が鉱害復旧の仕事でありまして、鉱害復旧の仕事であるという建前、或いは又納付金その他の徴収、或いは算定等の問題、或いは又鉱業権を許可いたします場合、或いは採掘方法をいろいろと認可いたしますような場合、つまり石炭を掘れば必ず土地の陷落が起きるという因果関係があるわけでありますが、そういうような立場から考えてみまするというと、これは通常の天然災害と同様に、農林省が予算を要求することは筋が少し違つておる。又その非常に喫緊な状況から申しても、通産省で御要求になることが筋が通つておるのではないか、かように実は考えておるわけであります。勿論農林省のほうとしましては、農地の復旧ということ自体についての問題、或いは又それに対する関心、又それに対する技術、そういうものにつきましては、これは責任を負わなくちやならんということも、これもよくわかります。従いましていろいろその間に問題はあろうかと思います。特別鉱害のこと自体からすでに問題があるのでありますが特別鉱害に比べれば、今度の鉱害は全鉱害に亘りまして、鉱害の限定をいたしておりません。單に現在累積しておるだけの鉱害ではないのでありまして、これから進行して行く鉱害自体に対しても、問題があるわけであります。従いまして農林省といたしましては、そういう問題すべてについて、それの復旧工事の予算要求の責任農林省が持つことは、いささか筋道も違つておるのではないか、かように考えております。従いましてこれはこの法律案を作ります経過にそれが非常に重要な問題と相成りまして、私たちのほうからは、通産省のほうに対しまして、そういう意思表示をいたし、関係各省で議論をいたして、よく打合せをしようということに相成つております。ただ今御指摘になつておりますような、それならば、復旧工事の実際の査定その他が、どのように行くかということについて通産省のほうから農林省のほうに御意見の御照会がありましたような場合に、それについて十分に御協力を申上げるということは、これは決してやぶさかではないのでありまして、むしろ私たちのほうといたしましても、そういう問題について、進んでいろいろなデーターを差上げて行く、かようなことにいたすべき筋合いかと考えております。そういうようなことで、数字その他の問題につきましては、これは通産省のほうでもお調べの数字もあるように思います。又私たちのほうでも調べておる数字があると思いますが、直接に大蔵省に対して、どれどれの予算を要求するということについては、農林省としては、現在考えていないわけであります。
  72. 西田隆男

    ○西田隆男君 もう質問しても駄目でしようから、委員長で、安定長官と大蔵大臣と建設大臣、農林大臣、通商大臣、この五人の閣僚をこの委員会に呼んでもらいたい。午後でいいです。五人の閣僚に一つ、もう少し突つこんで方針を聞きましよう。今の状態では、方針が何らきまつてないということじや、この法律審議ができない。これは一人々々が揃つて来てもらいたい、閣議と同じように……。ここで閣議を開かせる。でないと、こんなことではこの法律審議できない。この法律が通つた裏付けの金の問題が各省まちまちの意見だということでは、この法律審議しても何にもならぬ。
  73. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 速記をとめて下さい。   (速記中止〕
  74. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 速記を始めて下さい。只今西田委員から、建設、安本、農林、通産、大蔵の五大臣を呼ぶことの動議が出ましたが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ではさよういたしまして、午前はこの程度で休憩いたしまして、午後は一時半から再開いたします。    午後零時三十二分休憩    —————・—————    午後二時四十四分開会
  76. 小林英三

    ○理事(小林英三君) 休憩前に引続きまして、通産委員会を再開いたします。臨時石炭鉱害復旧法案を議題に供します。質問を願います。
  77. 石川清一

    石川清一君 通産省にお尋ねいたしますが、この鉱害の原形復旧は、現在のところ目前の被害を、現在目に見えておる被害を処理するという臨時的なものだとお聞きしましたが、大体十年くらいを予定されておるこの事業団が、現在私の聞くところでは、二百三、四十億もの損害があると聞いておりますが、その何割くらい処理解決ができるのですか、お伺いいたします。
  78. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 二百三十億の中で、十年間の間に全然まだ安定しないというものがございますが、そういうのについては工事をやりましても無駄になりますので、安定しない部分を除きまして、十年間の間に安定する部分だけ復旧する、こういうことでやりますと、大体およそこれの半分ぐらいが復旧できる、その半分を復旧するために、およそ十年という期限を切つてみた、こういう考え方でございます。
  79. 石川清一

    石川清一君 この事業団の経費は、主として鉱業権者の、いわゆる加害者の納付金で賄うようになつておりますが、納付金というものが、現在のところ最高どのくらい一年見込まれるのですか。
  80. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 当初年度といたしまして、具体的な例について申上げますというと、本年度、これは事業団ができまして、実際工事を始めますまでに、若干準備期間も要りますから、およそ本年度は、通常年度の四分の一程度の工事をやる、こういう前提をとりまして、工事費全体を三億三千九百万円と予定しております。それに対しまして補助額が一億九千百万円、従つてその差額の一億四千万円程度が当初年度、つまり四カ月分に相当する鉱業権者の納付金だと、こういうことになるわけであります。
  81. 石川清一

    石川清一君 事業計画に従つて復旧する場合に、総体的に、普遍的に復旧をするのですか。それとも重点的に一年ごとに個所を完成と言いますか、完全に復旧して行くという、こういう形をとるのですか。どういう形で復旧計画を立てるのか。
  82. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) これは、復旧基本計画を作るときの、そのときの成り行きによるわけでありますが、実質的には各事業ごとの、例えば農地でありますと農林省、土木関係でありますと建設省というものが、それぞれ鉱害に関する復旧事業に関しましても一つの方針があるわけでありまして、その方針に則るような計画を作る、こういうことになるわけであります。それを具体的に申上げますというと、これはそのときの事情々々によつていろいろな考え方が起り得ると思いますが、関係する市町村の数も相当な数に上りますし、現在の数にいたしましても、九州だけで四県、山口まで入れますと五県ということになりますので、單に理論的に、この地区の鉱害が一番程度が激しい、従つて先ずこれを復旧して、その次にその次の程度のところに移るべきものだというようなことが果してやれるかどうか、或る程度はこれは各地方にばら撒きまして、全体的に少しずつ復旧して行く。勿論少しずつと言いましても、工事期間そのものを延ばすということではなくて、工事を小分けにいたしまして、どの地区でも或る程度工事が行われるというふうにすべきだという考え方も出て来ると思いますが、そういう二つ考え方を適当に調整いたしました復旧計画ができると思います。その調整するときの一つの目安というものは、やはり各主務官庁で持つております公共事業費の優先順位その他によつて行われるということになつております。
  83. 石川清一

    石川清一君 大体復旧計画は小分けにするということは、実際問題として私も妥当かと存じますが、事業は小割りにすればするほど、やはり事業の精密といいますか、完全といいますか、そういうものが深くなつて行きまして、最後に納付が少なかつて場合、いわゆる予定だけなかつた場合、相当部分がこの法律では工事が施行できない、こういうような結果が起きると思いますが、そういう懸念はございませんか。
  84. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 納付金は、この工事費と無関係に、減収額に対応した一つの計算方法で算定して賦課するわけでありますが、これが完全に取られましても、実際の工事の費用はそれより増減することもあると思いますし、その他のことも考慮いたしまして、或る程度の赤字補慎と申しますか、準備金と申しますか、そういうふうな趣旨において或る程度の金額をそのうちから控除いたしまして、将来に備えるということも一応考えられると思います。それから実際のやり方につきましては、これは納付金を納めた場合に初めてこの工事にかかるというふうな手段を構ずることになると思います。これは復旧基本計画には載りましても、その鉱業権者が当然負担すべき納付金を納めない場合には、その工事の着手というものは先に延ばすということになりまして、従つてその点につきましては、被害者はそれだけ鉱業権者の行為によつて非常な迷惑を蒙むるわけであります。併し事業団としては、鉱業権者の非常な悪い意思によつて不当の損害を蒙むることのないように、一応そういう手段を講じながら、且つ併せてこの納付金の徴收に関しましては、国税滞納処分の手続を併せ並行いたしまして、十分これを徴収するようにする。こういうふうなまあ三つの補償的な方法を以て最終的に事業団が赤字で収拾に困るという事態が起らないようにするということになつております。
  85. 石川清一

    石川清一君 今の問題を少し突きつめてみたいと思いますが、それでは鉱業所有権者は、一定の納付金を全納すれば大体それで免責されるというような形になると思います。その場合に被害者が家庭その他の事情で、転業しなければいかんようになつた場合、そこを去らなければいかんようになつた場合、いわゆるその当然受ける権利というようなものはやはり讓り渡すなり、或いは貸與するなり、或る程度その農地を農耕しておるときだけの所得というものが起きて来るのでありますが、そういう点についてお考えになつておりますか。
  86. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 御質問の御趣旨ははつきりつかめないかも知れませんが、工事をいたしますために、乃至一時場所を去らなければならん。従つて移転費も要れば、耕作もできないということのために起きます損害は、勿論これは鉱業権者のほうで負担すべき筋合のものでございます。又別の事情で以てその土地を去つて、ほかの人に讓るという場合においては、これは復旧基本計画に載りました復旧事業というものは、その土地を復旧するということでありますので、所有者乃至経営者が変りましても、基本計画通り復旧計画はなされるわけであります。従つてその土地が耕作者が変つたために、そのまま原状回復をしないで放擲するということにはならないのであります。
  87. 石川清一

    石川清一君 そうしますと、鉱業法では金銭賠償はこれは恐らく対人賠償だと思います。ところが復旧計画では、何と言いすか、土地を対象にしておるので、それが十年なら十年間における時間的なズレ、そういうものから起るトラブルというものは予想しませんか。
  88. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 所有権者乃至は経営者の変更の場合におきましては、これはそういうふうな被害を受けた土地、或いは復旧さるべき土地というもの権利をどういうふうに讓渡するかという、讓渡者と讓受人との間の問題でありまして、この法律の施行に関しましては、一応工事をする、その工事の費用には鉱業権者乃至は補助金で以て賄うということで、工事の完成については、それは一応関係しないわけであります。それでは賠償責任関係はどうなるかと申しますと、当初の賠償請求権者、つまり農民である場合にはその耕作者ということになりますが、鉱業権者はその耕作者に対して賠償義務を持つておるわけでありまして、これは工事が完成すればその義務は免れる、こういうことになるわけであります。ところがその場合の耕作者がAからBに変つたという場合におきまして、Bの耕作者がどういうふうな権利を讓り受けたかということについて、その間の事情は変つて来るかと思います。仮に全然前の鉱害というものと関係なしにその土地を讓り受けておる場合には、やはりその対価の点が問題になりますが、その土地に対する復旧請求権と申しますか、まだ復旧工事が完成していない場合におきます問題のあつた場合における請求権は、新らしい耕作者なり所有者が持つておる。その場合はその土地の主になり、その事業団なりに対して請求する、こういうことになつております。但しその場合におきまして、請求権は相変らず前の所有者が持つておるという場合におきましては、新らしい所有者は請求することはできませんから、従つてその場合にはそういうふうな讓渡をなされる場合におきましては、讓受価格というものはおのずからそこで異なつて来て、請求権を伴わない場合におきましては、当然安く讓り受けることができる、こういうふうな法律関係になるんじやないかと思います。
  89. 石川清一

    石川清一君 そうしますというと、復旧事業団ができまして、その計画がはつきり出た上で鉱業権者から納付金が出たという場合には、完全に復旧するという一つの義務が生じ、復旧してもらうという権利が被害者の中ではつきり出て来る、こういうことはこの法律で立証しておりますか。
  90. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) この法律の中では、鉱業権者が納付金を納付いたしましても、工事が完了し、その他一時補償等の手続が完了するまでは、鉱業権者と事業団と双方が責任を持つておるという建前になつております。但しまだ事業団が正当な手順で以て事業を遂行しておる間は、鉱業権者には請求できないということで、鉱業権者に対する請求権は停止されておりますが、それ以外の点につきましては、やはり鉱業法の法上の権利義務というものがそこにあるわけであります。この法律に直接規定してありませんけれども鉱業法上によつて当然に鉱業権者と、それから被害者との賠償関係の権利義務は存続するわけでございます。
  91. 石川清一

    石川清一君 その場合に、被害者復旧請求権というものが消滅されることが予想されるのですが、ここの七十五條のこれだけでよろしいですか。それともこれには不備な点があるとお思いになりませんか。
  92. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 七十五條で消滅するというふうに明瞭に書いてあります場合というものは、簡単に申しますと、復旧工事が完了いたしまして、地方が十分元々通り回復したと認められる場合、こういう場合に消滅させるというのが本旨であります。ただ工事のやり方如何によりましては、地方が十分回復できない場合がございますので、その場合には回復するまでの補償金なり、或いは永久に回復しない分につきましての一時補償金を支拂いまして、回復しない不足部分についての填補をいたしました場合に初めて消滅するということになりますので、従つて一応このあとの場合におきましても、回復しない部分につきましての計算上の損害につきまして、完全に賠償いたしますので、この場合におきましては賠償請求権を消滅させても差支えない。従つてこの七十五條の規定というものは、別段に不備がなくて合理的なものだと考えます。
  93. 石川清一

    石川清一君 少し前のほうに戻りますが、一応大きな区域を立てて、事業団の復旧区域をきめておきますが、その中で鉱業権の採掘権の消滅する人ができるとか、或いは租鉱権の消滅が起きて、当初計画のときと、鉱業権者に大きな移動が生じたというような場合は予想されますか、されませんか。
  94. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) これは常に予想されるわけでありまして、鉱業権の消滅或いは租鉱権の讓渡の場合におきましては、いずれもの承継人がやはり賠償責任も継承するという原則がございます。但し消滅の場合、その他鉱業権者の破産等の場合におきましても、鉱業権者が全然行方不明であり、或いは完全に支拂能力のないという場合におきましては全然鉱業権者から納付金等を取ることが事実上不可能であります。そういう場合におきましては、地元の公共団体からその負担金をとりまして復旧工事をやる、こういうふうなやり方になつております。
  95. 石川清一

    石川清一君 政府はそういうような場合に備え、或いは現在採掘中の所で事業計画も立つていないもの、そういうものも含めて当然政府の責任において予算的措置をとらなきやならん。こういうようなことはこの法案を作るときにおえになりましたか、どうですか。
  96. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 只今のような鉱業権者の不明なり、支拂能力の欠除というような場合に対処しまして、国と地方公共団体とで協力して鉱業権者負担すべき部分を分け合うというような趣旨で、大体予算請求等の場合につきましても、請求をいたしておるわけであります。
  97. 石川清一

    石川清一君 七十一條では、市町村は、事業団の申請によつては納付金或いは賦課金の徴収をし、滞納処分をすると、こういうふうに出て、はつきり公共団体の機能力が生かされるようになつておりますが、先ほどもお話がありましたように、民法上の機能的な法人とこれとが一緒になりまして、完全に滞納処分を整理するというようなことができるとお考えになりますか、その点については疑問を持たれますか。
  98. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) これは完全に遂行できるということを言うべきであろうかと思いますが、実際問題として必ずしもそう行かん場合も当然あると思います。それにつきましては、やはり先ほど申しました準備金等の措置によつてカバーするということを考えなければなりません。ですからただ初めからこういう措置をとりましても、徴収できない部分が残るであろうということは予定するわけには参りません。やはり我々といたしましては、完全に徴収をするという建前の下に進めたいと思つております。
  99. 石川清一

    石川清一君 現在のような、何といいますか、情勢の中では、国税庁の第一番という国税ですら容易に取れない。ところが鉱業権者或いは事業団にしても、自分の非常に困難な徴収を委任をするといいますか、委任をするかたが多く現われて来ると思います。そうしますと、最も大事なものを一番弱い自治体におつかぶせて、そうして結局は工事のスムースな進捗がない。工事が澁滞を来たすというようなことの責任が、挙げて市町村の納付金或いは賦課金の徴收の能力によつて行くような傾向があつて、結局はそこの加害者の住んでおる公共団体が最後的に跡始末をするということになつて、しまいに何もしてもらえない。而も持つて行く所がない。こういうように思うのですが、どうですか。
  100. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 事業団は自分でこういうふうな手続をとらないまでも、支出義務者に対しまして納付金の請求或いは徴収をすることができるわけであります。又当然それをしなければならんと思います。その努力を十分いたしまして、大体目標通りの納付金を納められるということに持つて行くわけでありまするが、ただそれ一点張りでは強制力がないという意味で、かなり不備なことになりますので、そういう意味におきまして、先ず徴税の滞納処分の手段をとる、これにはやはり今そういう実務に慣れております、又その最も適当である地方に頼むわけでありますが、併しそれもお話のように、いろいろな事務の関係等で、十分できない場合もありますので、七十一條の二項にございますように、三カ月以内にその処分が行われない場合におきましては、通産大臣の認可を受けて、事業団自体がこういうような手続によつて処分をするということも考えられるわけであります。
  101. 小林英三

    ○理事(小林英三君) ちよつと石川さんに申上げますが、只今本会議が再開されまして、電源開発促進法案がかかつておりますので、議長から、この法案については、委員会を差しとめる通知をしておるのであります。あなたの御質問がそう長くなければ継続したいと思いますが、余り長いようでしたら、委員会を閉じたいと思いますか……。
  102. 石川清一

    石川清一君 ちよつと速記をとめて下さい。
  103. 小林英三

    ○理事(小林英三君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  104. 小林英三

    ○理事(小林英三君) 速記を始めて。
  105. 石川清一

    石川清一君 今の場合、最後的になりまして、二割或いは三割の納付金がなかつた。七割しか実際の納付金がなかつた。事が六割しかできなかつた。こういうようなことも予想されるのですが、その場合に通産省は、或いは農林省は、大体始めに計画したような形に全部の事業団の区域を完全復旧をする責任がこの法文の中で現われておりますか。足りない部分を国が、まあ通産省でも農林省でもいいのですが、何かの名目で同じような形で復旧するということがこの法律の中で現われておりますか。
  106. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 先ほど申しましたように、要するに支拂能力のない場合、或いは鉱業権者不明によつて、全然徴収ができない場合におきましては、国と市町村とで負担いたしまして復旧するという規定があるわけであります。この場合におきましても、納付しないという事実が、今のように本当の支拂能力がないのであるか、或いは鉱業権者がどこかに行つてしまつてわからないという場合におきましては、今のような点においては措置ができると思います。それ以外の場合におきましては、やはりそこに鉱業権者もおり、又能力を持つておるわけでありますから、強制的な手段を講じましても徴収をするということによつて、大体計画道りのものを遂行できるということになつております。
  107. 石川清一

    石川清一君 最後的なものはわかりましたが十カ年計画と聞いておる中に一応ボタを入れその上に土を置いた。而もその土が強度の酸性土壌か、その他非常に無機質の土地であつて復旧したものの生産高は三分の一か或いは四分の一にしか達しない。而も三年で打切られるという、これには満足できない。こういうようなあとに残つておる事業計画の中に入つておる人がこれを拒否することができませんか。
  108. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 只今の設例におきまして、例えば或る工事をして、その結果百パーセント効用回復するというふうな予定で始めましたところが、実際やつてみると、二割か三割はどうしても回復しない。こういうような場合におきましは、工事が完了いたしましたときに、農林の関係の専門家が、大体この工事乃至はこの現状において、どの程度回復したかということを認定するわけであります。その場合には、いろいろな事情を考慮いたしまして、例えばこれは一割だけは回復しない。その一割が回復するまでには五年間を要するということであれば、その一割は五年間補償をするわけであります。又その一割というものが永久に続くということになれば、又その永久分に相当する額を一時金に換算いたしまして支拂う、こういうふうにいたしまして、不足部分につきましては金銭賠償ということで片附けるわけであります。ただそういうふうな認定をいたしますのが工事完了の時でありますから、それ以後実際に工作いたしまして、果してどうなつたかということの実績をとりますと、当時の認定と変つて来ることもございますので、特に三年間という期間につきましては、被害者は実際当時予定されておつたような効用回復されてなかつたというようなときにおきましては、更に再調査を請求いたしまして、いま一度そこで認定をして行く。その場合に、若し前の賠償が不足であれば、実際追加して行くということになつております。従つて三年間という期間は、実際実績を見るのは、三年間というものを見れば、その先何年間というものの予想がつく、それがあと何年で回復するか、或いはどの程度の減収が永久に続くかということは、一年、二年、三年という三回の収獲を挙げたのちにおいては、これは専門家が見れば相当確実な予想がつくということで、三年間に一応その再検討をするという規定を置いたわけであります。
  109. 石川清一

    石川清一君 その場合には、十ヵ年を一応予定されておりますが、年権別に一年々々に検定するのですか。それとも最後的に検定するのですか。農林省の検定を受けるというのは、いわゆる被害者と事業団が同意の上で検定を受けるのですか。その場合にどういう形で検定を受けるのですか。
  110. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 検査をしますのは、工事が完了しましたときにすると思います。従つて毎年工事が完了するたびに方々の検査を行います。それから三年以内において被害者から再検査の請求があつた場合には又やることになります。検査のやりかたにつきましては、これは農林省からお答えになつた方がいいと思いますが、勿論農林関係の専門家と、それから関係者、と申しますのは勿論被害者も入るわけでありますが、そういうものが立会いまして、どの程度回復状況であるかということを検査するわけであります。
  111. 石川清一

    石川清一君 工事の中途において、予想以上に費用がかかつたというような場合には、工事を中止するというようなこともあり得るのですか。
  112. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) そういう場合はあり得ないと思います。
  113. 石川清一

    石川清一君 あり得ない。一応計画を立てましたら、それはもう十カ年は、一応事業団の計画だけはどこまでもその計画に基いて実施する。従つて被害者の意見は、一応予定した計画の終つた上でなければ取上げられないと、こういうことになりますか。
  114. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 今申しましたのは、工事の中途において経費が上つたために中止することはないと申上げたのであります。復旧基本計画そのものは、これは毎年々々その年度のものを作るわけであります。基本計画を作りまして、実際の工事にかかる場合には、更にその前に実施計画があり、それから実際着手するという段階があるわけであります。実際着手する場合には、実施計画につきましても、基本計画につきましても、変更ということはあり得るわけであります。
  115. 石川清一

    石川清一君 それでは、私も今思いついたのですが、討論をやるなら、説明も聞いていなければ困ると思いますので、ここで中止して頂けませんか。
  116. 小林英三

    ○理事(小林英三君) それでは本日はこれにて散会いたします。    午後三時十八分散会