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1952-06-17 第13回国会 参議院 通商産業委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)    午後二時二十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     竹中 七郎君    理事            結城 安次君            栗山 良夫君    委員            重宗 雄三君            中川 以良君            山本 米治君            加藤 正人君            小松 正雄君            島   清君            境野 清雄君            西田 隆男君            石川 清一君   政府委員    通商産業省通商    機械局長    佐枝 新一君   事務局側    常任委員会專門    員       山本友太郎君    常任委員会專門    員       小田橋貞壽君   参考人    成蹊大学教授  佐藤  功君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○航空機製造法案内閣送付)   —————————————
  2. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 只今より通商産業委員会を開会いたします。  先ず航空機製造法案を議題といたします。本法案に対しては、先の当委員会におきまして、憲法解釈論との関連において十分に審議するため、参考人招致動議が採決されました。委員長といたしましては、動議提出者の意向をできるだけ取入れまして、適当なる参考人を御出席を煩わすべく百方努力をいたしましたつもりでございまするが、何分にも交渉に時間的余裕がありませんので、鵜飼東大教授田上一橋大学教授金森国会図書館長等の御出席が得られず、お願い申上げました諸先生の中で無理に御都合つけて頂きました成蹊大学佐藤教授お一人となりました。折角問題として取上げまする以上は、できるだけ斯界の権威者多数に御参集をお願いいたし、大いに問題を論じて頂きたかつたのでありますが、参考人先生の御都合もあり、又国会会期関係もあり、予定通り参りませんでしたことを真に遺憾に存ずるのであります。御出席佐藤教授並びに動議提出者たる栗山委員に対して申訳なく存ずる次第でございます。右の事情でありますので、その点悪しからず御了承願いたいと存じます。委員長といたしましては、本法案審議状況を睨み合せ、他の参考人の御出席については適宜の処置をとりたいと思つております。  さてこれから佐藤参考人に御意見の御開陳をお願いするのでございますが、念のために本件の経過を簡單に申上げておきたいと存じます。  当委員会におきましては、航空機製造法案審議中、一委員より本法案憲法第九條との関係を質問したのに対しまして、本法案立案者であります通産当局即ち高橋通商産業大臣は、口答をもちまして左のごとき見解を明らかにしたのであります。即ち憲法第九條第二項は、第一項の国権の発動たる戰争等の放棄を確保するための規定であるから、政府陸海空軍等戰力保持することを禁止しているものである。従つて民間企業は、注文に応じて武器製造すること及び製造にかかる武器使用者に引渡すまでの期間保持すること自体は、第九條第二項で規定する範囲外の問題であるというのであります。質問者はこれだけの答弁では納得せず、法務総裁その他の意見を順次聽取する予定でございますが、その前に憲法学を專攻されておられる学識者のこれに対する御意見を伺いたいというのが本日の趣旨なんでございます。  そこで問題を要約して、先ず次の三点について参考人の御意見をお尋ねいたしたいと存ずるのでございます。  第一は、憲法第九條第二項により保持を禁止せられておる戰力範囲如何。  第二といたしまして、航空機その他社会通念兵器又は兵器に利用し得るものを国が保有し又は製造することは戰力保持にならないかどうか。  第三といたしましては、右の場合直接国ではなくとも、即ち民間における製造に対し許可などの公認処置をとることは国として戰力保持にならないかどうか。  以上の三点を中心とせられまして御意見を御開陳願いたいと思うのであります。
  3. 佐藤功

    参考人佐藤功君) 只今委員長から問題を整理をしてお聞かせ願つたのでございますが、大体の要点はよく承知いたしたわけでございます。ただ栗山委員高橋通産大臣との質疑応答の詳細は存じておりませんので、或いは以下私が申上げる点がピントが外れておる点があるかも存じません。そういう点につきましては、どうかあとで御質問頂きましたときにお答えを申上げたいと思います。  そこで問題は只今委員長からお話があつた通りでございますが、この直接の中心の問題は、航空機製造法に関しまして、今もお話がございましたが、航空機その他社会通念兵器又は兵器に利用し得るものを国が保有したり、又は製造することは戰力保持にならないかということが中心だろうと存じます。そこで航空機製造法を見てみますと、これは改めて申上げるまでもなく、航空機製造或いは修理、そういうことを国が認めまして、そうしてそれに対して通産大臣が一定の監督をする、届出を受けましたり等々の監督をする権限を持つことを定めた法律であるわけであります。そうしてそういう法律目的は、この法案提案理由にある通りで、生産技術の向上を図つたり、これらの性能を確保する、併せて航空機工業の健全な発達に資するためにそういう監督権限を持つということをきめたわけでございます。そこでこの限りにおきましては、私はそれは憲法九條の戰力の問題にはならない、つまり第九條とは直接の関係はないと思うのであります。ただそれがこの九條の問題になりますのはどういう場合であるかということを考えて見ますと、軍用機という言葉を使わせて頂きますが、軍用機が生産されるようになつた場合、それからそうなりますると、通産大臣軍用機をそういうふうに製造することをそれを公に認めるということになるわけでありますが、そういう場合にこの憲法九條の問題になつて来ると思うわけです。そういう問題にならない限りは、憲法九條とは何の関係もないというふうに思います。そこで一般的にその航空機戰力なりやという問題になるわけであります。つまり今申しましたように、軍用機製造されるようになる、そのときには問題になるわけでありますが、一般に航空機というものが戰力であるかどうかということが先ず考えられるわけであります。これは今まで随分御承知のように論ぜられた問題で、戰力とは何ぞやということが予備隊なり保安隊なりの関係で大いに論ぜられていることは御承知通りで、繰返す必要はないと存じます。結論的に申上げますと、私は九條の戰力というものはいわゆる潜在的戰力をも含むものであるというふうに考えております。従つて政府特に木村法務総裁などが言つておられますように、潜在的戰力は含まないのだという、そういう今までの政府側説明には私は反対でございます。それでそういう点は又あとで詳しくお話申上げてもいいのでございますが、要するに九條がその他の戰力といわれるものをも保持を認めないということにいたしましたのは、やはりよくいわれておりますように、ヒツトラーが民間航空機などを大いに増強して、そうしてベルサイユ條約を破棄すると同時に、それが空軍になつたというようなことをも予防しようという趣旨規定をされておるのだと思うのでありまして、そういう意味で、戰力に転換し得るものは、それは戦力であるというふうにまあ私は考えておるわけでございます。併しながらそのことから、直ちに民間航空機や或いは民間航空の飛行場といつたようなものが直ちに戰力であるかどうかということになりますと、それは直ちには言えないと思うので、要するにそういうようなものが憲法が予防しようとしておる危險限度まで達したときに初めてそれが違憲であるという問題が生じて来るというふうに思うわけでございます。そこでこの航空機製造法は、これは例えば例の木星号の経験などから見まして、大いに監督をしていなければならんというようなことが考えられたのだろうと想像いたしますが、そういう民間航空機製造監督をする必要があるというわけでできたわけでありますから、従つてそれは飽くまで民間航空機を対象にしておるわけでありますから、だからこの法律が直ちに私は九條違反になるとは考えないわけでございます。ただ今申しました憲法が予防しようとしておるその危險限度というものがどんなときに現われて来るだろうかということを考えて見ますと、先ほど申しましたように、民間工場軍用機を作る、現に作る、或いはそれを通産大臣が知つていながらそれを許可をする、つまり禁止をしない、或いは通産大臣が明白にその軍用機を作ることをこの法律によつて命ずるというような場合になりますと、それらの行為違憲となると思うのであります。それでいろいろなことを申上げるようでございますが、ただその場合にも又問題はあると思うので、つまり軍用機の量でありますとか、或いはその軍用機がどのような目的のために作られるかという、そういう製造目的の問題が又そこに出て来ると思うのであります。つまり簡單に申しますと、例えば現在警察官ピストルを持つておるピストルは確かに兵器であります。併しながらその警察官ピストルを持たせるためにピストルを作らせるということは、それは直ちに憲法違反とは言い得ない。その理由は、そのピストルを何のために持たせるかということになつて来るわけで、それは現在の警察なり或いは警察予備隊というものが、それが憲法に反する、憲法に言う戰力ではない、つまり憲法違反ではない。そのものに用いられるための兵器を作るということでありますから、それは憲法違反ではないということになるわけでございます。従いまして結局この航空機にせよ、兵器にいたしましても、それがどのような機関或いは組織によつてどのような目的に用いられるかということと関係させてでなければ、一概にそれを作ることが憲法違反であるとか、違反でないとか言うことをきめることはできないと思うのでございます。そこでこの航空機の場合を考えて見ますと、例えば仮にいわゆる軍用機と申しますか、それが仮に作られても、それが現在の例えば海上保安庁というようなものが沿岸を、近海を警備をする、そのための例えば警察用というようなもののためにその飛行機を作るということならば、それは私は直ちに九條違反とはならないと思います。ただ若しも現在の海上保安庁或いは警察予備隊というものがもつと明瞭に軍隊化すると、私は、現在審議されておる保安庁法によります保安隊とか警察除とかいうもの、これには御異論があろうかと思いますが、私はそれが憲法に反する戰力であるというふうに考えております。その点も又あとで御説明申上げてもよろしいのでございますが、保安隊或いは警備隊ということになれば、私はそれは憲法に反するものであるというように考えております。でありますから、そういう保安隊警備隊が用いるために多量にその目的に応ずるような軍用機製造するということになれば、その製造行為違憲であり、又それを通産大臣が禁止しないとするならば、その通産大臣行為違憲であるというふうに思うわけでございます。結局如何なるものがそれを使うかという組織或いは機関というようなものと一体として考えなければこの問題は成立たないと思うのであります。でありますから、現在のこの法律建前は、勿論軍用機を作るという建前でもない、そうして海上保安庁が使用する軍用機を作るという建前でもないでありましようが、仮に海上保安庁がそういうものを使うということになりましても、その限りでは私は憲法に反するとは思わないのであります。ただそれが保安隊であるとか警備隊であるとか、そういうものが使うようになつた場合には、それは憲法に反するというふうに考えるわけでございます。それでなお通産大臣お答えになりました中で、九條二項は国が戰力保持することを禁止しておるものであるから、従つて民間企業注文に応じて武器製造すること及び製造にかかる武器需要者に引渡すまでの期間所持すること自体は、九條二項で規定する範囲外の問題だというお答えがあつたようでありますが、これは私は今まで申上げたことを前提といたしまして、この点はその通りであろうと思うのであります。つまり注文者が誰であるか、そうしてその注文がどういうものに用いるために注文をするのであるかということに問題はかかつて来るというふうに思うわけでございます。  一応それだけ申上げまして、若しお尋ねでもございましたら、なお敷衍さして頂きたいと思います。
  4. 栗山良夫

    栗山良夫君 前段のほうのことは又あとで質問するといたしまして、一番最後に述べられました、いわゆる注文者或いは使用目的によつて戰力であるかないか、憲法違反であるかないかということが生まれて来ると、解釈が生まれて来る、こういうお話でありましたが、そういたしますると、最近我が国において外国兵器修理しておる工場が相当あるわけでございますね。こういうものは日本国憲法に照らしてどういうことになりますか。その工場監督等は、すべて講和條発効後は我が国自主性において行われておることになつておるのであります。こういうものは今のあなたの御解釈ですとどういうことになりますか。
  5. 佐藤功

    参考人佐藤功君) 例えば朝鮮事変で、占領中の場合でございますと、アメリカが朝鮮で使用する兵器修理日本工場にやらせるというようなことは勿論あつたわけなんですけれども、その場合はそれは事実行為みたいなものでありまして、そうして今お話がありました日本国自主性を持つていないわけで、従つてそれは憲法の問題にはならないというふうに私は考えていたわけです。それでそれが講和発効後どういう恰好になつておるのか、私は実はよく承知しておらないのでございますが、新聞などで見ますと、米軍発注をする、注文をするということが行われておるようでございます。そうしてそれが例えば米軍発注をして、そうしてそれを作つて、そうして米軍に引渡す、そうするとその米軍から今度は警察予備隊のほうにそれが貸與されるというような恰好が、すべてではないのかよく存じませんが、とられておるようです。そうなりますと、私はそれはむしろ伺いたいわけなんですけれども、そういうのは一体何の権限と申しますか、どういう法律的な説明ができるのか、私はよく実はわからないのでございますが、それが今お示し憲法違反になるかということになりますと、それはやはり私が先ほど申しました、一遍米軍から注文をされて作つた、それを米軍警察予備隊に貸與するという場合に、その兵器というものが警察予備隊目的に丁度合うような程度兵器であるならば、それは一応憲法違反すると言えないのじやないか。ただその場合に、それが誰が見ても軍隊でなければ使えないような、つまり警察予備隊にはふさわしくないような兵器、そういうような恰好警察予備隊が持つということになれば、それは警察予備隊そのものが私は戰力になつて九條に反する。従つてその行為そのもの違憲になるというように言えるのじやないか、そう考えております。
  6. 栗山良夫

    栗山良夫君 その場合、只今外国兵器修理等注文警察予備隊向けのものもあるだろうと思いますが、ところが外国駐屯軍そのもの兵器を扱つているものもある。そういう場合はどうなのか、この場合はあなたが言われる通り、明らかにこれは軍隊装備を直すわけでありますから兵器であることは間違いないのですが、それに対してどういうふうに……。
  7. 佐藤功

    参考人佐藤功君) それはその兵器米軍兵器であるわけでございますから、日本軍の、日本軍と申しますか、日本が使用する兵器ではないわけですから、米軍兵器になるわけですから、それを作るということは九條の問題にはならないのじやないかと思います。それはつまり米軍日本にいること自体憲法違反だという論を立てるなら別でございますけれども、私は米軍そのものが、米軍日本にいること自体戰力日本保持するということにはならないから、それは九條の問題にはならんというふうに考えておりますから、米軍兵器を作るということならば問題にはならないのじやないかと思います。
  8. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこで問題になりますのは、潜在戰力解釈になると思うのですが、潜在戰力というものは、作られたところの兵器なり、或いは兵器に類するものも勿論潜在戰力でありましよう。すぐ軍用に転換させ得るようなものは……。ところがそのほかに我々が知つておる限りにおいては、潜在戰力というものは製造設備そのもの潜在戰力と、こういうふうに一応理解をしておるわけなんですね。従つて成るほど外国注文によつて兵器作つて、それが行政協定の約束によりまして修理をしていると、こういう場合にはあなたのおつしやるように憲法外であるという説も成立つかも知れませんが、国内にはそういう潜在戰力工場設備軍用の諸装備製造し得るような設備を持つということ、そのことは私はやはり潜在戰力概念の中に入るのじやないかと、こういう工合に考えるのですが、如何ですか。
  9. 佐藤功

    参考人佐藤功君) そういう御議論が起り得ることは私も承知をいたしております。それで御承知のように、終戰直後ぐらいに、兵器航空機等生産制限に関する件という、これは例のポツダム命令として省令が出たわけでございますから、それが私は憲法の九條の平和主義と申しますか、それの一つの現われであつたのであります。九條は本来そういうものとしてできたものであろうというふうに考えておるわけです。でありますから、それとその現在のような状態を考えてみますと、比較して、比べて見ますと、それは非常に九條が本来作られたときの考え方からすれば非常な隔りがあるということは、勿論認めるわけでございます。それで只今示しの、そういう兵器製造の能力があるところの工場施設が、それが潜在的戦力であると、従つてそれを認めるということは九條に反するということなんでございますが、若しも日本駐留軍というようなものがいないという純粋な恰好を考えてみれば、そういうものが認められないということは、これは当然だろうと思うのです。併しそこに日本安保條約等に基きまして駐留軍というものを認めておる。そういう特殊な事情があるわけでございますから、だから今の御議論を進めて申しますと、安保條そのもの憲法に反するというところまで行かないと徹底しないのではないかというふうに考えますが如何でございますか。
  10. 栗山良夫

    栗山良夫君 その外国軍隊日本に駐屯しておりましても一向私は差支えないと思うのです。行政協定では、ただその用いるところの裝備日本で作る必要はないので、外国から持つて来、外国注文すればいい。だから日本国憲法による戰力潜在戦力を含めた戰力という概念がそういう行政協定という影響によつて歪められても差支えないのかどうか。憲法というものはそういう程度のものであるかどうか。そこのところが一番私は問題になると思うのです。その点が私は明白に是非ともならないとなぜいけないかと申しますと、通産省から恐らくこの次には兵器製造法という名前のものが出るかも知れません。これは新聞は報道しております。航空機は、この法案には勿論航空機と書いておりますが、説明では民間機と一応言つている。今度は名前兵器製造法ということになると、これは問題は非常に重要になつて来る、従つてこの点はやはり生産された品物というよりは、生産する設備、プラントのほうが問題になると思う。これが全国に非常にたくさんできて、品物は作らなくても、できるということになれば、立ちどころにして裝備なんというものはすぐできるわけなんです。その設備というものを私はどういう工合憲法学者であられる佐藤さんは御解釈しておられるか、ここで一番お聞きしたいことなんです。
  11. 佐藤功

    参考人佐藤功君) おつしやることはよくわかつておるのでございますが、今のお話兵器工場が、兵器製造法というものが仮にできたといたしましても、その兵器というのが先ほどもちよつと申しました通りピストルの類などを作る工場であるとすれば、私はそれは……、而もそれが警察官作つたということだとすれば私は問題にならないと思います。ですからそれがやれタンクを作るの、或いは原子爆彈を作るのというようなことになれば、それは問題になる。併しそれは先ほども申しましたように、そういう工場施設だとか、生産されたものだとかを切離して考えられないのでありまして、それがどのような機関が、どのような組織がそれを使うのかということと一体をなしてないと考えられないと思います。ですからそういう場合になれば、それは恐らく軍隊というようなものができておる、或いはもうそれができることが明瞭であつて、そのためにそういう工場というようなものも作るということになるわけなんだろうと思います。そうなるとそれがそういう一体をなしたものとして、そこに憲法で禁止している戰力というものができて来るので、その結果として違憲になるというふうに考えるのでございますがね。
  12. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすると、もう一つ問題を掘下げまして、佐藤さんは、いわゆる憲法で言うところの自衛権ですね、自衛権がある。その自衛権に対して二色の解釈が含まれておるわけです。日本国憲法においては、自衛権にはいわゆる戰力伴つていいという説と、自衛権には戰力はないと、無裝備自衛権である、この二つの説があることは御承知通りだろうと思うのですが、あなたはどちらを大体とつておるのですか。
  13. 佐藤功

    参考人佐藤功君) 今のお話は恐らくあれでございましよう。戰力と仰せになりましたけれども、自衛のためになら例の軍隊が持てるという芦田さんの説や、学界で申せば佐々木先生の説、それをおつしやつていらつしやるんだろうと存じますが、私はそれには反対でございます。普通の自衛のためにも軍隊を持てない、それから戰力というのも、先ほど申しましたような意味戰力という言葉を使いますと、自衛のための戰力も持てない。つまり自衛のためであると、侵略のためであると、軍隊というものは持てない、戰力といううものも持てない、そつちの解釈をとるわけでございます。
  14. 栗山良夫

    栗山良夫君 その芦田氏の説は、自衛権というものにはこれは本能的に、国際通念、その通念から言つて軍隊というものを持ち得る権利があるんだ、従つて日本国憲法はこれは間違つているから憲法を改むべしというのが芦田氏の議論なんですね。ですから今の日本国憲法では、自衛権はあるが軍隊は持てない、だから憲法を改めなきやいかん。これが芦田さんの意見ですね。従つて芦田さんのほうははつきりしておりまして、現在の予備隊もあれは軍隊だ。だからそういうごま化しをやつてはいかんというのが芦田氏の説。それから吉田首相のほうは、いや、あの程度のものは日本国憲法が言うところの戰力ではない、こういうふうに否定しておるわけですね。ここに大きな隔りがあるわけです。だからこういうような兵器製造というようなことになつても、その問題を解決しないとなかなかうまく筋道が通らないと思うのですね。
  15. 佐藤功

    参考人佐藤功君) いや、その点は先ほどもちよつと申上げたつもりなんでございますが、私はこの現在の警察予備隊というものはこれはまあ、まあと申すと如何にも法律的でございませんが、非常に疑問はございますけれども、憲法に反するとまでは言わなくてもいいのではないかと思つております。ただ今保安庁法で出ております保安隊警備隊ということになりますと、私はそれはその限界を超えるものであつて憲法違反になると考えておるわけでございます。それで芦田さんなども今お示しのような御意見だろうと私も思いますけれども、併し非常に限られた警察隊警察官というようなものまでも認めることが憲法違反とはおつしやつておられないたろうと思いますから、現在の予備隊についてその点数が甘いか辛いかの違いだろうと思います。
  16. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから最後に、そういう工合におつしやると、仮に航空機或いは軍用機等造つても、使用目的が一定の限界内にあればそれは憲法違反にならないと、こういうまあお話であつたわけですね。そういう工合に理解をするといたしまして、今日日本国政府は一方でそういう解釈でまあ私は恐らくこれはやつているのだろうと思いますが、そういうものを出して来る。そうすると同時に例えば中国などへの輸出品については、バトル法でははつきりと禁止品目というものがきめてございます。これはAクラス、Bクラスできめておるわけでございますが、併しそれ以外に非常に大きな枠を設けて、これは貿易管理令がありますが、これを設けまして、紡織機或いはその他の雑貨品に至るまでこれをとめておるわけですね。まあ中央に対しての戰力に当るという、その点は私は非常に日本の国内のものの考え方は矛盾しておると思うのですけれども、どうでございましようかね。こういう民間機と言いましても、ちよつと適用を変えますと軍用機になるわけですね。生産手段を変えて……。そういうものでも戰力でないと言つておるわけです。片一方では日本の貿易が非常に困つておるときも、雑貨品の問題でも相手国の戰力の培養になるからいかんときめております。殆んどその限界というものが非常に私は矛盾しておると思うのですけれども。
  17. 佐藤功

    参考人佐藤功君) 今の点は私全然素人でございまして、わからないのでございますがその輸出の問題は……。併し今御示しになりました点だけ見ますと、素人的に考えても随分おかしいとは思いますが。
  18. 栗山良夫

    栗山良夫君 まあ非常にわかりやすく話して頂きましたので、大体私は理解をいたしました。要するに日本国憲法ができた当時の学者の非常にラデイカルな解釈がこの頃だんだん崩れて来ておることだけは、私は書物を通じて認めざるを得ない点がありますね。それは佐藤さんを申しておるのじやありません。ほかの学者には当時随分ラデイカルな理論を立てられたかたが今日非常に変つた点もあります。これは又機会があれば又それぞれの学者についていろいろ尋ねる場合もありましよう。どういう工合にそれが変つて行つたか、それは意見というものは自由であろうけれども、どうして変つて来たかということを尋ねる機会があると思いますが、要するにもう一点伺いたいのは、或る一つの品物を作りまして、それの供給先、或いは製造の量等によつて、或るときは戰力となり、成るときは戰力でないという解釈が出る。更にその生産手段もそういうことになるということでございますと、これは結局すると時代の大勢に流されて行つて、この前ヒツトラーが要するに最後にはもう欧洲の大陸軍を創設した。いわゆるベルサイユ條約が嚴としてあるにもかかわらず、網を潜つてあすこまで延ばして行きましたね。ああいう恰好にやはり宿命的にならざるを得ないというわけです。僕らは諦めざるを得ないわけですね。
  19. 佐藤功

    参考人佐藤功君) 今のあの初めにおつしやいました、憲法の学者なりいろいろな学説なりの点お話になりましたが、今の戰力として民間航空機或いは民間の飛行場なども、これからは保持することができないのだというようなことを非常にはつきり言われましたのは、美濃部先生の著書にはそう書いてございます。ただあの美濃部先生の本は非常にまあ簡單な本でございますので、それをもつと詳しくお書きになつたらどういうことになつたかとまあ私は考えるわけですが、書かれている限りでは、非常にはつきりそう書いてございました。それからほかのいろいろな憲法の本には、丁度今ここでお話になつておりますような細かい問題は触れておりませんでございますね。で比較的詳しく触れたのがあの例の法学協会でたくさんの人が書きましたコンメンダールがございます。あれに或る程度触れてございますが、併しあすこでも、丁度私が申上げましたように、どこまで行つたら潜在戰力となつて禁止せられることになるのか、そのどこまで行つたらという、そこの限界はなかなか抽象的にはきめられない。それは具体的な場合にならないときめることはできないというようなことが書いてありまして、それでそれがまさに具体的な問題、その具体的な問題が例えばこの問題なんかとして出て来ておるのだろうと思うのでございます。だから今のお話を反駁するわけではございませんけれども、こういう学説が変つたとか、説が変つたとかいうことは割合にはないのではないか。これは私たけではございませんで、一般にそういうふうに私は見ておるのでございます。つまりこういう問題は考えられていなかつたのですね。  それからあとのほうでおつしやいました、結局この政治の情勢なり何かに引きずられて行つてしまうのではないかということをお話になりましたわけでございますが、それは私は御議論があろうかと思いますけれども、保安隊或いは警備隊という今の保安庁法ということになれば、私はそれは憲法違反である。だからそのためには憲法改正というステツプをとらなければならないというふうに思つています。ですから、そうずるずるとどつかまで行つてしまうというようなことには勿論してはならないというふうに私も考えておるわけでございます。
  20. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体よく佐藤さんのお考えをお聞きすることができましたので、私としても或る程度の最近の考え方がわかつたわけであります。要するに政府は、一方では保安隊警備隊というものまで発展させたいということは、これは否定すべきでもない事実て、恐らく私はこういうものが将来そういうものの供給する裝備の給付源になるであろうということは、これは想像にかたくないのであります。そういう点はやはり法務総裁なり、通産大臣なり、そういう人に私ははつきり確かめておくことも必要であろう。憲法改正は保安隊でも必要ないと政府言つておるのでありますが、そうして而もそれにこれを供給するということになれば、これはやはり違憲論を唱えざるを得ないということになると私は思うのであります。大体問題が明確になりましたので、この辺で質問は打切りますが、念のために委員長にお願いしておきますが、更に二、三のかたがたに、機会がありましたら是非とも一つ公述を願いたい、これを強くお願いしておきます。
  21. 島清

    ○島清君 私は只今栗山議員と佐藤さんとの質疑応答の中で、ちよつと疑問を起しましたのでお聞きしたいと思いますが、私は、自衛権を否定して、それから丸裸でいてよろしい、こういう考え方は持つておりません。政治的にはそういう考え方は持つておりませんが、今佐藤さんのお答えの中に、軍用機製造はこれが予備隊とか保安隊に使われるときには憲法上の問題になつて来る。併し日本に駐留をしておる外国軍隊がこれを注文をして、これによつて作つたりする場合には、又問題は別だろうと、こういうように御解釈のようでございましたが、ところが憲法の九條の制定の当時の情勢から言いますと、私は日本では世界人類のために武器製造してはいかんのではないか、私はこういつたような趣旨の下に制定をされたのではないかと思われる。その思われる趣旨は、こういうことを書いておるのです。「日本國民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求し、國權の發動たる戰爭と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」、若し日本だけの戰力保持してはいけないということの意味であつたとするならば、こんな長たらしい文句は私は要らないと思うのです、本当にそうならば、日本国民は国際紛争を解決する手段としては、陸海空その他の戰力はこれを保持しないというだけで足りると思うのです。ここに日本の国内的な戰力保持を禁止する前に、今二項が問題になつておりますが、その前に国際紛争のためにはこういうものを作らない。むしろ日本国内の戰力保持を第二項に謳い、むしろ人類の平和のためには第一項に、九條のいわゆる本文に謳つておるわけです。それからいたしまするならば、諸外国のたとえ委託であろうと、輸出品であろうと、即ちその軍需のために使われるものの一切の製造を、私は戰力保持というものを止めるほうがいいじやないか、私はこう解釈する。そこで佐藤さんは目的の如何によつて云々とおつしやいましたが、これがなかなかデリケートな問題でございまして、例えばなたというものは、薪を割るには適当でございまするが、併しながら往々にいたしまして、それが殺害の兇器に転化したりする場合があり得る。そこでこの憲法の制定当初から、日本にアメリカを中心にする総司令部の占領軍が戰争の放棄を要請したか、乃至は幣原さんがこれをマツカーサーに要請をして作らしたかは私は知りませんが、その当時のこの憲法制定の本当の真義からいたしまするならば、人類を殺害するような一切の戰力というものを日本国内においてはこれを作らないのだ。人類の平和のために貢献したいというふうに解釈したい。そういたしまするならば、これは輸出用たると委託品であろうと何であろうと、日本国内においては、そういう戰力らしいものについては一切許さんというふうに解釈したほうが、憲法の九條の解釈上からいたしまするならば、非常に学問的な明快な解釈のように思われるのですが、その点をちよつと御説明を願いたい。
  22. 佐藤功

    参考人佐藤功君) 今いろいろとお話になりました点は、もう私も賛成なのです。そういう気持を私も実は持つておるわけでございます。今いろいろ仰せになりましたが、この九條が少くとも作られた……、これは御承知だろうと思いますが、日本の新憲法ができますまでの経過を非常に正確に、而もオフイシヤルに書いた総司令部が出しました報告書がございますのですが、あれを見ましても、この九條がマツカーサー元帥自身が筆をとつて書いた、それが基になつたと、でまあその場合に幣原さんがその前にマツカーサーにお話があつたのかどうか、そういうことがまあ興味のある点なんでございますが、そういうことは抜きにいたしまして、そのマツカーサー元帥のみずから筆をとつてできたものが、その始まりであるということは御承知のことだと思います。それでその際にマツカーサー元帥がどういう考えを持つていたかと言いますと、これはあの草案要綱が発表されました一月ほどあとに、四月五日に、第一回の対日理事会の会合がありましたときに、マツカーサー元帥が有名な演説をしておるわけです。そうして九條の精神というようなものをそこで述べた演説がございます。それを見ましても、これは丁度今お話になりましたようなわけで、日本だけがこれをやつて意味がないんだ、世界の各国がそれをしなければ意味がないのだというような、そしてそれが将来の世界の平和の唯一の途であるというようなことを言つておるわけであります。それから去年解任されて米本国へ帰りましてから、例の上院の委員会で証言をしたときにも、或る委員が元帥に対して、あなたは世界の平和というものを最後的に確保するきめ手になるような方法は一体何であると元帥はお考えになるかというような質問をしたときに、マツカーサー元帥は、それは日本憲法だとして、日本憲法の九條のことを引合いに出しまして、日本のこの憲法九條のとつている途しかない、それがただ一つのきめ手であるというようなことを答えておるわけです。だから少くともこの本当の起草者であると考えていいマツカーサー元帥の考え方といたしましては、そういう理想を言つておるわけで、而もそれが今言いましたように、凡そ一切の戰争というものから日本が絶縁すると言いますか、縁を切る、そしてそこに新らしい途が開かれるのだというような、そういう気持があつたのだろうと思うわけであります。ですからそういうふうに考えますと、そもそもこの講和條約なり、安保條約なりで、日本が世界の片方の陣営にのみ自分の生存と安全を依頼する、そうしてそれによつて他の一方の陣営からの侵略に対処する、そういう安保條約なり講和條約なりの考え方そのものが私は九條の考え方と反して来ているのだというふうに思うのです。憲法でも前文で御承知のように、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と書いてございまして、決して平和を愛する自由国家群の公正と信義に信頼してとは書いてないわけです。だからすべての国家の公正と信義に信頼するというのが憲法の考え方で、そこで戰争放棄と、それから軍備を持たないという九條の規定ができて来ておるのだろうと思うのです。ところがそれが今では世界のうちの片方の陣営の公正と信義に信頼するというような恰好でなければ日本の生存と安全は保持できないというような考え方になつて来ておるわけでございますから、そこで今お示しのような、これが作られたときの考え方とは非常に性格が変つて来ておるということは、私も認めるのです。そうしてそれは率直に申しますと、私は残念なことであるというふうに考えております。それで今現に問題になつておりますこのような問題もそこから出て来る問題でございまして、九條の作られたときの考え方からすれば、こんな問題はもう出て来つこないわけであります。ただそれが出て来たということはそういうことになるわけです。そう申しますと、如何にも憲法の九條の考え方をルーズに考えて、結局こうずるずると情勢に委ねてしまうというような解釈じやないかというふうにお思いになるか知りませんけれども、私はそれはですから先ほども申しましたように、ここまで行つたら限界であるという、その限界というものはやはりはつきりさせなければならんと思つております。その限界というのが私はこの再軍備、そして保安庁法案というようなことになる、私はそれは限界なんで、そこまで行くことはできない、そこまでもずるずると認めるというわけではないのでございます。ですから今仰せになりました点は、私も多くの部分非常に同感でございます。
  23. 島清

    ○島清君 私の申上げるのは、ここまでが再軍備の限度である、自衛限度であるとか、これから先は再軍備だからしてはいけない、こういう意味でお尋ねを申上げたのでなくして、むしろ憲法の條文を解釈いたしまするときには、日本の国内における戰力というものは第二項に一行にしか書かれていない、更にその本文の第一項のほうが人類に寄與する、世界平和に寄與する、そういう意味日本戰力を持たないんだ、こういうふうに解釈をして参りまするならば、地球のどこかの隅つこでも、戰争のために使われるような武器は、戰力は、これを保持してはいけないと、固くこれをとめておるのが憲法九條の趣旨ではないか、そういうふうな解釈をすることによつて憲法の九條の解釈というものが徹底されるのじやないか、そういう解釈からいたしまするならば、或る一国の、又は或る一群の委記を受けて日本国内でそれをやることも憲法違反になるのではないか。こういうふうな意味のお尋ねだつたんです。お答えにならなかつた部分で御同感があれば結構でございまするが……。
  24. 佐藤功

    参考人佐藤功君) 私が少し横道にそれていろいろなこと申上げたために、ポイントが外れてしまつたようで恐縮でございます。それで私も実は今お尋ねを受けましたような点をお答えするつもりで話し出したのですが、途中で少しピントがぼけてしまつたわけでございます。ですから私は九條が作られたときの考え方というのは、まさに今お話になりましたように、凡そあらゆる武器というようなものとはもう縁を切るというくらいのそういう考え方だつたんだろうと思います。それを先ほどマツカーサー元帥のお話などをして申上げたつもりでございます。それでただそういう私も、九條の作られたときの考え方はまさにそうだつたと思うのでございますが、併しながらそう思つてしまえば、それは今お話になりましたように非常にすつきりするということは確かでございます。そうだとすれば、もうすべてのことが憲法違反するといつてもいいくらい……、それはつまり日本駐留軍がいるということも憲法違反でございますし、それから仮に駐留軍のために武器を作るということも憲法違反でございますし、先ほども申しましたように、凡そ安保條約の考え方そのものも私は憲法違反になるだろうと思います。そう言つてしまえば非常に見事に割切れると私は思うのでございますが、併し果してそこまで言つてしまうのが、ただ一つのつまり憲法解釈であるのだろうかということを考えるわけでございまして、そう申しますと、それが非常に妥協的な解釈だというふうにお叱りを受けるかも知れませんけれども、併しながらやはり妥協と申しますと、言葉が悪いのですけれども、できるだけ憲法というもりで以て説明をするような余地があると考えられる場合には、それを説明するという努力も試みられていいのではないか。ただそれが最後までずるずるになるのではいけない、その限度というものはやはり私はあると思うのでございます。そういうつもりでお答えをしたわけでございます。
  25. 島清

    ○島清君 有難うございました。もう少しお聞きしたいこともありますが、まあこの程度で終ります。
  26. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ちよつと速記をとめて下さい。    午後三時四十分速記中止    —————・—————    午後三時五十二分速記開始
  27. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 速記を始めて。先般御懇談中におきまして、アジア貿易促進決議案に対しましては、いろいろ御意見がおありになるようでございますので、各会派にお帰りになりまして、明後日の委員会までに御態度を決定して頂きたい、かように考えますが、それで御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないものと認めまして、明後日までにこれが態度を御決定願いたいと思います。  本日はこの程度で散会いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないと認めて、散会いたします。    午後三時五十三分散会