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1952-01-31 第13回国会 参議院 通商産業委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年一月三十一日(木曜日)    午後一時四十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     竹中 七郎君    理事            古池 信三君            結城 安次君            栗山 良夫君    委員            中川 以良君            加藤 正人君            山川 良一君            小林 孝平君            小松 正雄君            島   清君            境野 清雄君            西田 隆男君   国務大臣    通商産業大臣  高橋龍太郎君   政府委員    通商産業政務次    官       本間 俊一君    通商産業省通商    繊維局長    記内 角一君   事務局側    常任委員会專門    員       山本友太郎君    常任委員会專門    員       小田橋貞壽君   説明員    大蔵省理財局総    務課長     宮川新一郎君    資源庁鉱山局長 松田 道夫君   参考人    日本鉱業協会専    務理事     園原  巌君    全日本金属鉱山    労働組合連合会    調査部長    石橋  巌君    福井県地方織維    産業労働組合連    合会事務局長  中島 優治君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員選任の件 ○ポツダム宣言受諾に伴い発する命  令に関する件に基く通商産業省関係  諸命令措置に関する法律案(内閣  送付) ○派遣議員報告通商及び産業一般に関する調査の件  (産金対策に関する件)  (貴金属管理に関する件)  (国際通貨基金加入に関する件)  (最近の繊維事情に関する件) ○小委員長選任の件   —————————————
  2. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 只今より委員会を開きます。  前回の委員会中小企業に関する小委員会並びに競輪に関する小委員会を設置することに決定されました。その人選等につきましては、委員長に御一任になりましたので、只今より両委員会委員の御指名をいたしたいと存じます。  中小企業に関する小委員    松本  昇君  古池 信三君    入交 太藏君  小松 正雄君    小林 孝平君  加藤 正人君    高瀬荘太郎君  境野 清雄君  競輪に関する小委員    結城 安次君  中川 以良君   大野木秀次郎君  田方  進君    栗山 良夫君  島   清君    山内 卓郎君  境野 清雄君  なほ小委員長は、各小委員会において互選する建前となつておりますが、できるだけ早く小委員会が発足することができるよういたしたいと思います。本日ここで適当な方法で決定して頂きたいと思うのでございますが、一度懇談に移りまして御決定願いたいと思います。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  3. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) それでは速記を始めて、  次に提案なつておりまするところのポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く通商産業省関係命令措置に関する法律案予備審査議題といたします。先ず提案者から提案趣旨説明をお願いいたします。
  4. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) 提案理由を御説明いたします。政府は、平和條約に伴うポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く諸命令の整理につきましてかねてより研究して参つたのでありますが、通商産業省関係命令につきましても鋭意検討を加えた結果、今般結論を得るに至りましたので、ここに、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く通商産業省関係命令措置に関する法律案として国会に提出し、御審議を仰がんとする次第であります。  法案内容につきましては、御審議の際逐次御説明申上げますが、以下その概要を申し述べますと、この法案は、第一條乃至第三條においては、命令改正につきまして、第四條においては命令及び命令規定存続につきまして、第五條においてな命令廃止につきまして、又第六條乃至第九條においては、廃止した命令に関する経過措置につきまして規定しております。  第一に、存続する命令改正について申し述べますと、第一條乃至第三條において、連合国人又はドイツ人工業所有権関係の三政令に関して「連合国最高司令官の指示に従い」等の文字を削除しようとするものであります。  第二に、命令及び命令規定存続について申し述べますと、第四條において、第一條から第三條までに規定しております工業所有権関係の三政令と第四條各号に列記してあります七つの命令のそれぞれの規定の効力を日本国との平和條約発後も存続させようとするものであります。各号に列記してあります命令の效定のうち、重要産業団体令廃止する等の勅命附則第三項及び第四項は、統制会の清算についての経過規定であり、その他の命令規定は、罰則に関する経過規定であります。  第三に、命令廃止について申し述べますと、第五條に掲げられております命令のうち連合国人特許発明等実施状況調査に関する勅令重要物資在庫緊急調査令工鉱業関係会社事業報告書に関する件、生ゴム、二ツケル地金錫地金又はアンチモニー地金調査報告に関する件及び鉛の調査報告に関する件の五件は、いずれもそれぞれの事項に関して一定期日までに報告書を提出させようとする限時法でございまして、その提出期限もすでに経過しておりますので廃止いたしたいと存じます。  次に、絹織物及び絹メリヤス生地検査及び蒐荷に関する件は、絹織物及び絹メリヤス生地について検査義務を課し、検査を受けたものを一定の者に譲渡することを命じるものでありますが、現在においてはこのような義務を課すことも命令を発動することも全然必要ありませんので廃止いたしたいと存じます。  次に、化学肥料緊急増産に関する件は、終戦直後極端に逼迫した窒素肥料の緊急増産を図るための措置を強力に行うことを内容とするものでございますが、現在においては、もはやこのような形による増産施策を行う必要もありませんので廃止いたしたいと存じます。  次に、パイプ類臨時措置規則は、進駐軍用パイプ類の確保を図ろうとするものでございますが、現在では、このような措置をとることは必要でありませんので廃止したいと存じます。  次に、特定標章使用禁止に関する政令は、連合軍中央購買局標章であるCPO又はこれに類似する標章使用禁止したものでございますが、平和條発効後は、このような措置は不必要でございますので廃止いたしたいと存じます。  次に、財閥標章使用禁止等に関する政令は、財閥標章について、政令施行の際現に登録を受けている者に対し抹消の義務を課し、新規の登録を行わず、使用禁止すること等を定めたものでありますが、財閥の解体はすでに終了し、又現在その復活の虞れもありませんので廃止いたしたいと存じます。  第四に、廃止する命令に関する経過規定について申し述べますと、まず第六條は、特定標章使用禁止等に関する政令廃止に伴う経過規定でありまして、この法律施行前に誤つて登録された特定標章と同一又は類似の商標無効審判についてこの法律施行後も従前の例によろうとするものでございます。  次に、第七條は、財閥標章使用禁止等に関する政令廃止に伴う経過規定でありまして、その趣旨は第六條と同様この法律施行前誤つて登録された財閥商標無効審判についてこの法律施行後も従前の例によろうとするものでございます。  第八條は、例文でございましてこの法律施行前に第五條各号に掲げられている命令に違反してされた行為に対する罰則の適用についてこの法律施行後も従前の例によろうとするものでございます。  第九條は、第六條から第八條までに規定しております経過措置のほかに何らかの経過措置が必要となりましたときは、これを政令で定め得ることにしようとするものでございます。  以上がこの法律案提案理由及びその概要でございます。何とぞ十分御審議の上御承認下さるようお願いする次第でございます。
  5. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 本件に関する審議は、他の案件の審議と睨み合せ適当な時期に行うことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないようでございますから、さよう取計らいます。   —————————————
  7. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 次に派遣議員報告議題といたします。本件に関しましては、結城、島両議員と私と伊豆産金関係のところへ参つたのでございますが、私から御報告申上げますが、山本專門員に朗読して頂きます。
  8. 山本友太郎

    專門員山本友太郎君) 委員長に代つて報告書を朗読いたします。  私どもは一月十八、十九、二十日の三日間に亘りまして、伊豆地方における産金事情視察して参りましたので、その概要を御報告いたします。視察箇所は、中外鉱業株式会社持越精錬所、同社の清越鉱山並びに土肥鉱業株式会社土肥鉱山の三箇所でございました。両会社の沿革、最近の業務概要等につきましては、資料として只今お手許に回覧いたしますのでここでは省略さして頂きますが、中外鉱業のほうは金銀のほかに銅・鉛・亜鉛・マンガン・硫黄等採掘並びに精錬を他の事業所でやつておりまして、又土肥鉱業のほうは、金銀鉱採掘事業の中心となつております。従つて前者はいわゆる兼業会社、後者はいわゆる専業会社とも見るべきでありましようが、産金の上からいたしますと、現在我が国の代表的な金山なつておるのであります。かような意味合いから申しまして、今回の我々の視察目的が非常な苦境に陷つている金山実態調査にあつたので、必ずしも理想的な視察箇所であつたかどうかは疑問でありまするが、かような代表的な金山においても、いわゆる高品位鉱石抜掘りによりまして辛うじて経営が維持されておること、そこに問題があるのでございます。調査資料によりますと、金は鉱石トン当り四・九グラム、昭和二十四年頃には六グラム前後の品位採算がとれていましたものが、現在では十五グラム以上でなければやつていけない状態にあるとのことでございます。従つてたくさんの鉱種を稼行いたしておりまして企業の危險分散を行い得るような大きな企業か、そうでなければ、非常に品位の高い鉱石を持つている金山でなければやつて行けないというような結論なつておるようでございます。  精錬所における昭和二十六年度下期の精錬操業実績について見ますると、原鉱品位十四・七グラムになつております。土肥鉱山の場合におきましても大体同じような実績であろうと思われます。が如何に清越鉱山や或いは土肥鉱山がもともと粗鉱品位の高い鉱山であるからと申しましても、かような高品位鉱のみを抜掘りいたしては、山の命数は推して知るべしでございます。更に一企業立場を離れまして、国家的見地から地下資源活用立場から見ますと、坑内に残されましたところの低品位鉱石は永久に日の目を見ることなく、そのまま国家経済の大きな損失となつておる現状でございます。  事態をここに至らしめました理由にはいろいろあると思いまするが、何と  言つても大きな理由の一つは価格政策にあるようでございます。金の政府買上価格は、御承知のように昭和二十四年七月、グラム当り四百一円に決定されまして、そのまま現在に至つておるのでございます。その間一般物価の値上りは七〇%以上にも達しておるのでございますが、金の買上価格はそのまま釘付けなつておるのでございます。政府買上価格引上げ国際的関  係もありまして、即時実施困難とあらば、他にこれに代るべき産金対策が講ぜられねばならなかつたはずでございます。成るほど政府昭和二十五年二月に金鉱業復興対策に関する件を閣議決定いたしましたが、併しその後の経過を見ますと、閣議決定の各対策項目は殆んど空文化いたしまして、僅かに探鉱奨励金昭和二十五年度予算におきまして一千四百万円、二十六年度六千万円、二十七年度においては八千万円が今まさに計上されようとしておるに過ぎないのでございます。現地事情を聴取いたしますと、坑道一メートルにつきまして約一万五千円必要とすると申しております。探鉱奨励金は一メートル当り三千円見当で、大体五分  の一程度補助ということになつておるようでございます。半額補助か、少くとも三分の一の補助を目標といたしました探鉱奨励費実態は現在におきましてかような状況なつておるのでいざいます。   現地におきます印象といたしまして特に残りましたものは、清越土肥鉱山を通じまして、坑内湧水が非常に多いということでございました。清越鉱山におきましては一分間三十立方  メートルということでありましたが、この数字だけでは、ちよつと現地を御覧にならない皆さんには御想像できないと思いますので、特に附加えて申上げますが、同鉱山におきましては、この坑内湧水を利用いたしまして自家発電の計画を進めておるということでございました。土肥は御承知のように温泉地帶にあります関係上、坑内深部におきます温度は高いところで攝氏四十五度、そこから出る温水は土肥の町に導入されまして、いわゆる土肥温泉の源泉となつておるのでございます。かような惡コンデーシヨン下におきまして、坑内作業が行われておるわけでございますが、坑内夫賃金は他の鉱山に比較いたしまして、特に優遇されておるのでもございません。金山従業員の待遇が、企業採算現状から見て止むを得ない結果とはいいながら、低いところに押えられておるということは、土肥鉱山経営首脳部現地において我々の前においてはつきり認めておるところでありまして、なお会社株主配当は、中外鉱業資本金只今一億円に対しまして三割、土肥鉱業資本金三千万円に対しまして二割五分配当しておるということでございました。   話がやや脇道にそれたかと存じますが、元に返つて結論を申上げますと、金山現状は一日もこれを放置することを許さん事態にあるようでございます。懸案の国際通貨基金加入問題もいよいよ解決さるべく目睫の間に迫つておる今日、可及的速かに産金対策を再検討する必要があろうかと存じます。産金対策鉱業政策の一環として、限られた、そうして又狭い視野に立つて論ぜらるべきではなく、それは飽くまで我が総同的な産業経済政策の広い見地に立つて考究さるべきであり、同時に又相当長期に亘る見通しの下におて立案検討されねばならないと存じます。かような安定した基盤の上に立つて初めて産金政策の確立があるのでございまして、かような安定した基盤の上に立つ産金政策にして初めて本格的な意味における産金政策と称せられると思われるのでございます。この視察報告を終らんとするに当りまして、今回の我々の視察に際して終始御協力を願つた全日本金属鉱山労働組合連合会委執行委員石橋中村両君並びに中外鉱業株式会社土肥鉱業株式会社両社会関係者に対しまして心から謝意を表したいと存じます。以上。   —————————————
  9. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 次に通商及び産業一般に関する調査議題といたし  ます。只今報告いたしました件に関連してですが、先ず産業対策の件、貴金属管理の件及び国際通貨基金加入の件を一括して問題といたします。実は先ほどの派遣議員報告本件は表裏一体をなすものであります。報告産金対策の再検討を強く要請して結論といたしております。現段階において如何なる産金対策をとるべきかという問題は、今後の研究によつて考究して速かに解決せねばなりません。本日は特に参考人といたしまして園原石橋の御両名の御出席を煩わし、業界の立場から忌憚のないところをお聞かせ願い、これに対して政府側から現在研究されつつある諸対策内容について御説明を頂きたいと存じます。問題が国際問題に関連してデリケートな点もあろうかと存じますが、必要な場合には秘密会にいたしましてもできるだけ具体的に問題を闡明したいと存じます。では先ず参考人のかたから御意見の開陳をお願いいたします。園原君。
  10. 園原巌

    参考人園原巌君) 私は産金業者を代表しまして国内産金業者現状を申上げまして、その要望をお伝えし、国会において適切な施策をお願いしたいと存ずるのであります。  日本は昔からの産金国であります。マルコポーロは日本産金の大なるに憧れて東洋旅行を思い立つたと言われるのであります。平泉の金色堂は往時の産金業の盛大さを如実に物語つておるのであります。最近におきましても産金奨励施策の活溌であつた昭和十五年には、国内産金量は年間二十六トンに達したのであります。然るに現状はどうでありましようか、年産僅かに五トン余に過ぎず、全国各地金山は毎月多大の赤字経営をしつつ漸くその命脈をつないでおるというような現状なのであります。一昨年二月閣議におきまして、近い将来における国家産金重要性を考慮して金生産力を復興するという御方針を決定して以来、金鉱石運賃割引実施金鉱石探鉱奨励金の交付などいろいろの政策が行われて参りました。我々産金業者もこの国策に順応いたしまして、巨額の資金を投下して休眠鉱山を再開し、青化精錬浮遊選鉱設備を増設いたしたりしまして、産金量増加図つたのであります。併しながら何分にも金銀採掘製錬のためのコストが、貨幣価値の下落に応じて大いに昂騰しておりますが、金の価格アメリカ公学相場を基準にしまして国内相場が定められておりますために、而もそのアメリカ公定相場は過去十八年間一トロイオンス三十五ドルに据置かれたままでおりますので、金はその製造原価公定価格の二倍以上に達する結果となつておりまして、金山赤字経営は全くここに胚胎しておるのであります。金は外国への支拂手段としまして必要不可欠のものでありますために、嚴重な国家管理を受けておりまして、生産した金は全部国家強制買上げをされておるのであります。いわば専売制度が布かれておるのであります。然るにその買上価格コストの二分の一にも及ばないという現状にあるのでありまして誠に不合理極まるものであると思うのであります。我々としましては金が若し本当に国家が必要とするものであるならば、その生産コストを十分賄う程度価格政府に集中して頂きたい、又は奨励金を交付されることを深く希望するのであります。若しも国家が金を必要としないということであるならば、強制買上げを中止しまして自由に販売を認めて頂くことを大いに希望するのであります。  以上は我々の業者の切実な要望でありますが、併し国家現状国際関係からしまして、かような要望が今直ちに実現されるということは毛頭考えないのであります。現在は国際通貨基金制度に加入する、国際通貨基金に加入するという大事な時期でありますので、暫く政府の御施策を信頼申上げまして、我々の要望のうち、国際通貨基金においても承認され、産金各国現状におきましても、すでに実施されておられる程度施策を、我が国において速かに実施されんことを陳情申上げているのであります。  なおこの機会に我々の所信の一端を申上げますれば、日本講和條発効によりまして久方振りで独立国家として発足する前途に待ち構えているものは、自立経済達成への難関でございます。そして我が国経済自立を図るには、我々八千万の国民が人たるに値いする程度生活水準を維持しつつ、国際收支均衡をとることが必要であると思うのであります。国際收支均衡を維持するためには、輸出の振興、原料輸入低廉良質貿易外受取勘定積極的増收を図ることなどが大切であると思うのでありまするが、貿易の不振、対外支拂増加などでどうしても国際收支逆調なときの最後の保障としまして、やはり或る程度の金を保有することが日本経済自立途上の絶対に必要なことであると確信するのであります。我々は、我々産金業者は近い将来において我々の使命がいよいよ重要性を加えることを確信して疑わないのであります。この使命を達成するためには、現在におきましては、金属鉱業の他の部門の黒字を割感し、割きまして金山を温存するということに努力を傾けているのであります。国会におかれましても、政府におかれましても、我々の期待するような産金奨励策が近い将来に実現されんことを御要望申上げる次第であります。
  11. 竹中七郎

  12. 石橋巌

    参考人石橋巌君) 私は金属鉱山労働組合の代表といたしまして、産金対策についての御要望を申上げたいと思います。  金山労働者は、一部の銅、鉛、亜鉛等好況を背景とする金属からの危險分散のでき得ない多くの金山労働者というものは二十五年の四月以降、今日まで一年半に亘りまして賃金値上げができ得なかつたのであります。その後昨年十二月に至りまして僅か三百円以内の賃金値上げを獲得いたしましたけれども、一昨年の朝鮮動乱以降の物価高と劣惡経営條件の下に現在呻吟を続けておるのであります。殊に金山は珪酔質の鉱山が非常に多いために、御存じのような鉱山特有珪肺病というものに罹りまして、これが一生不治の病いである、そういつた病気にも罹り、特に経営難から来るところの対策の不備によつて非常な苦しい労働を要求されておるのであります。  賃金の問題について具体的に申上げますると、鉱業労働者現金收入が二十五年の四月に、八千三百六十三円であつたものが、その後漸増いたしまして一万一千六十九円になつております。而もこれを二十五年の四月に比較いたしますと、三二%の増收を確保しておるわけでございますけれども、金山労働者はその間びた一銭も値上げをされておらないのであります。従いまして私たち組合におきましてはこれらの問題を極めて重視いたしまして、大会において金山対策の積極的な運動を展開することになつたのであります。幸い昨年の十一月の二十八日に参議院におかれまして私たちの請願が採択され、更に一月の十八日以降三日間に亘りまして竹中委員長を初め、伊豆地方を実地に調査されましたことについては深く感謝をいたすところであります。このようにして世論が湧いて来たことについては、私たち組合員一同衷心より感謝いたしております。  併しなぜこのように金山が戦後最大の危機に直面しているかということは大きな問題でございまするので、その点について一言申上げますると、一般物価昭和九年乃至十一年に指数が一〇〇であつたものが二十四年に二〇三になつております。金は僅かにその間一一一・六、昭和九年乃至十一年の物価撥ね上りと、金の撥ね上りとの間に非常に大きなギヤツプができたわけであります。而も二十四年の四月の対米公定価格相場は一ドル三百六十円に決定されましたときに、金の買上げ価格も当時米国相場三十五ドルに見合う一グラム四百一円に引上げらるべきであるというふうに私たちは考えたのでありますけれども、これが四月を過ぎて七月になつて三百八十五円に、銀は七千三百八十八円に引上げられたのであります。金の三十五ドルに見合う四百一円、銀七千八百三十四円と、アメリカ相場に近付けられたのは二十五年の三月一日でありまして、丁度丸一年の間、金価格はお預けを喰つてつたということが言えるのであります。その後銀については国際市場関係で九千七百円に引上げられましたけれども、一昨年の六月の朝鮮動乱以降、物価の暴騰と金価格釘付けというものよつて金鉱山を一層混乱に陷れておるわけでございます。このことについて外国の例と比較いたしますと、南阿において六・二グラム、アメリカでは八・五グラム、ローデシヤで四・九グラムの金を一トンの鉱石中に含有しておりますれば採算がとれると言われておりまするけれども、日本では先ほど来いろいろお話がございましたように、十五グラムの金を含有しておらなければ採算がとれないという状態でございます。更に株式への配当をよそ並みにおつき合をするということを考えるときに、二十グラムの含金を必要とするという状態であります。戰前四乃至五グラムで十分に産金業者が引合つた金山が、このような状態に逢着いたしたために、黄金時代の昭和十五年に五百三の金山が稼行されておりましたけれども、今日は五十数鉱山金山が生残つておるに過ぎないのであります。その産出量も当時二十六トン出ておりましたのが、今日は五、五トンと非常に顛落をしこおるわけであります。而もこうして僅かはかり生残つた金山でさえ、その鉱山が保有しておる鉱石を全部掘ることができずに、非常に金の含有率の高い局部的な抜掘をせなければ、経営を持続することができないというような状態が続いております。而もこのような状態が更に続くとすれば、二、三年後には恐らく全国の鉱山が全部閉鎖を余儀なくされるのではないかということが見通されるわけでございます。このようにして国家の資源を地下に埋没してしまうという危機を私たちは未然に防止したいと思うのであります。  政府は現在探鉱奨励金を昨年六千万円出しましたけれども、その効果について申上げまするならば、現在各山には金一グラム当り五乃至八円の援助をしておるというふうなことになるわけでありますが、これは各鉱山の探鉱の実績の僅か一〇%程度のものであつて、到底満足な探鉱奨励の実を挙げ得ないというふうに確信をいたします。賠償の問題、国際通貨基金加盟問題などの理由から、終戦以来金はいろいろの意味で圧迫をこうむつて虐げられた産業でありましたために、今日国際通貨基金においてさえも先に南阿の美術品などの加工金十万オンスに限り自由販売を認められた頃から、各国はこれに追随し、遂に昨年の九月二十八日に至つて今まで堅持して来たところの新産金の私的退蔵禁止の努力を放棄しておるほどであります。米国が三十五ドルの金価格を堅持する努力をすることについては、同一量の金でより多く米国内部の物資を外国に出さなければならないという理由から起ることでございますけれども、日本にかような障害は考えられないのでありまして、ここに日本らしい産金政策というものを要望したいと思います。従つてたちは先に請願で申上げました通り国際通貨基金で認められておるところの加工用金、銀の価格の統制を即時撤廃して頂きたい。同時に金、銀の使用制限を撤廃して頂きたい。なお価格統制の撤廃だけでは、戦時中の金山整備によつて非常に大きな痛手をこうむつた金山は、そういう中から到底抜け切れませんので、探鉱奨励金一億五千万円程度、設備資金二億円を二十七年度の国家予算に計上して頂きたい。すでに聞くところによりますと、八千万円の探鉱奨励金というふうなものがだんだん決定版に近くなつておるというお話を聞いておりますけれども、先ほど来申上げました通り、それぐらいの探鉱奨励金では、到底金山を窮地から救い上げることはでき得まいと存ずるのであります。更に金山はそのような劣惡経営條件の下にありますので、金融機関からの融資その他についても非常に困つておりまするので、政府が適宜斡旋をして頂きたい、このようなことを要望したいと思います。  以上申上げましたが、講和を目前に控えまして、国際間の最終決済手段としての金が果す役割につきまして、その問題を重視されまして、金対策について御善処を要望したいと思います。なお、これは業界内部の問題とは存じますけれども、金山未曽有の危機に対処するため、銅、鉛、亜鉛等を有する精錬所側からの金山に珪酸鉱代を支拂うように当局が適当な措置をしてくれるように併せてお願いをしたいと思います。
  13. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 参考人の御意見開陳は一応終りました。次に政府側からこれら対策につきまして御説明を願いたいと存じます。先ず通産省より。
  14. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) 只今お話がございましたような、大体金の生産原価が平均をいたしまして五百四、五十円に相成るわけでございます。そこで政府といたしましては、税法上の特典を考えましたり、輸送上の特典を考えまして、更にお話にありましたような探鉱奨励金を出しておるのでございますが、引合わない状態なつておりますことは、私どもといたしましても、十分認識をいたしておるのでございます。お話の中にもありましたように、国際通貨基金への加入の問題等もございまして、直ちに御要望のような自由販売の方向へ持つて行くことは困難かと思うのでございますが、できるだけそのような方向に持つて参りたいということで、関係各省との間に只今協議を進めておるような状況でございます。
  15. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 次に大蔵省の理財局総務課長宮川新一郎君にお願  いいたしたいと思います。
  16. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 産金業界の苦境の打開につきましては、かねてから要望もございまして、大蔵当局といたしましても、誠意を以て検討を進めておる次第でございます。本件の打開につきましては、最も端的なやり方は価格の改訂にあると思うのでありますが、このことは我が国の為替政策或いは物価政策から申しまして、今日の段階においては到底実行が不可能な対策でございます。従いましてこれに代る方法といたしまして、産金量のうち加工用金といたしまして国内に消費されます量の範囲内におきまして自由取引を認めることにつきまして只今研究中でございます。申上げるまでもなく、この自由取引につきましても、国内の需要者に対する影響、特に輸出用の美術工芸品等のコスト騰貴に伴うところの輸出に対する影響、或いは歯科用に使われておりますところの金の価格高騰によるところの国民衛生上に與える影響、それに伴うところの財政負担等をも睨み合さなければなりませんので、これらの点につきまして関係各省と協議を進めておりまして、なんらかの打開策を見出すようにいたしたいと折角検討中でございます。  先ほど通産政務次官からのお話もございましたように、この問題は單に国内的な影響のみならず、只今加入が問題になつております国際通貨基金当局に対する反響等も十分睨み合わせて行なわねばなりませんので、そういう点も合わせ考えつつ慎重に研究をいたしている次第でございます。
  17. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 議員諸君のほうから御質問ありませんか。説明員と申しますか、そのほうは理財局の総務課長只今の宮川さん、それから管理課長の横山さん、そのほか鉱山局長が出席されておりますから皆さんから御質問を願いたいと思います。
  18. 山川良一

    ○山川良一君 今の理財局からの御説明でありますが、まあいろいろ金を市中に放出した場合の影響の御説明がありましたんですがね。大した大きな問題じやないように思いますが、そういう問題が相当むずかしくなれば、まあ鉱山のほうは主として金を專門にやつている死活問題だと思いますが、それは金山がやつて行かれなくなつても仕方がないというふうにお考えになつておりますか。金山は活かすという方向に今の問題は研究して考慮する、つまり金を活かすほうに主眼をおいて研究をなさつていますか、その点を一つ。
  19. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 只今の御質問にお答えいたします。そこまではつきりつめで考えておりませんが、私どもの考え方といたしましては、できるだけ国内消費者に対する影響も考えるけれども、金山を活かす方向で考えて行きたい、こういうふうな気持でおります。
  20. 栗山良夫

    栗山良夫君 その活かす方向で考える度合はどの程度なんですか。
  21. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 只今この問題は大蔵省のみならず、通産省の通商政策方面、それから又厚生省方面とも十分協議いたさなければなりませんので、その度合の点についてはどの辺のところまでというふうにはつきり申上げかねます。
  22. 栗山良夫

    栗山良夫君 いや、山川委員の質問された点は、この問題を解決するのに僕は一番根本になるところだと思うんですね。従つて先ほど大蔵省の説明の中でも価格改訂は困難である。従つて金山を救う途として一部加工金に対して自由販売を認めて、何とか山の採算の立つように考慮したいと、こういう二つの点が挙げられたのですけれども、私はまだ一つ抜けていると思うんです。本当に国が産金政策を重要視するならばですね。只今のお話を伺つておりますると、これはがんじがらめに一応金山を国の政策としておることになる。従つてそういう状況にありますから、もう一つ国家として考えなければならんことは、産金に対する補助金という問題が、助成金という問題があるだろうと思うんです。その問題を一言も触れられないということは産金に対する政府の熱意の度合を私は示していると思うんですね。だからそういう意味で私は度合ということをお聞きしたわけなんです。
  23. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 産金政策といたしましては、国際収支上の決済手段ということも考えまして、金の増産の必要性は大蔵省としても痛感いたしておる次第であります。  お話の出ました補助金につきましてこれは私の所管ではありませんので、責任のある答弁は勿論いたしかねるわけでありますが、大蔵省としても財政の許す限りの補助金を組んでいるものと私は心得ております。  そのほかに自由取引につきましてもそういう輸出工芸品に與える影響であるとか、或いは歯科用の歯医者の使う金の価額昂騰等の影響も考えなければならんけれども、それを克服しても自由取引を認めさせるように持つて行きたい、かような気持で進んでおるわけであります。
  24. 西田隆男

    ○西田隆男君 今通産省と大蔵省の御意見を聞いていると、産金対策は何も実行に移せる段階に至つていないというふうに私にはとれるのですが、先ず第一にお尋ねしたいことは、二十七年度の予算の中に産金対策の援助費か、或いは何というか、助成金を大体幾ら見込んでおられるかそれを一つ。
  25. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) 探鉱奨励費として八千万円二十七年度の予算に組んでおります。
  26. 西田隆男

    ○西田隆男君 八千万円ですね。今参考人が言われたように一グラム当り七、八円くらいにしかならない、そういうことですが、その通りであるとすれば、本間君が言われたように四百一円の買上げに対して五百何十円かかるというカバーは到底できないということにしかならないのですが、それ以上殖やす意思はありませんか。
  27. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) 二十七年度の予算は只今国会の御審議を願つておるような関係もありまして、探鉱奨励費の増額は困難であろうと思います。
  28. 西田隆男

    ○西田隆男君 大蔵省に尋ねますが、今自由販売にさせてやりたいという御意見があるようですが、日本国内で生産される産金は五トン五と言いましたが、その程度で生産価額をカバーできるほどの量を自由販売にさしたとすれば、大蔵省は大体どれくらいの量を自由販売にされるお考えをお持ちであるか。
  29. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 産金量の一部を自由取引を認めましても、それを以ちまして單に金だけをやつておる、いわゆる金專門の鉱山採算を完全にカバーするだけに至らないだろうと思います。併しながら取りあえずとり得る最小程度と申しますか、この自由取引を認めることによりまして幾分でもカバーできる量といたしましては、只今一応事務的に考えておりますのは、産金量七トン程度でございますが、今日通貨準備等、或いは国際決済準備等の観点からリザーブするものを除きまして国内に向けられておりまする大体二トン半程度を対象にしておる、かような考えで研究を進めております。
  30. 西田隆男

    ○西田隆男君 時期はいつ頃に自由販売にさしてやろうと思つておられますか。
  31. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) この点につきましては貴金属管理法の一部改正を必要といたしまして、国会の御審議を願わなければなりません。それからもう一つ見合いになつておりますところの通貨基金加入問題もこの三月頃が目途ではないかと考えております。その辺のところを見合いまして、おおむね実行に移すとすれば、四月頃になるのではないか、かような見通しを持つております。
  32. 西田隆男

    ○西田隆男君 本間君にお尋ねしますが、通産省では法案提出の準備はなされつつあるのですか、まだ準備はできておりませんか。
  33. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) この法律は大蔵省所管になつておりまして私のほうで現在研究しております。
  34. 西田隆男

    ○西田隆男君 研究中ですか。
  35. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) さようでございます。
  36. 西田隆男

    ○西田隆男君 そうすると今国会中に出されますか。
  37. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 出す方針になつておりますが、まだ率直に申しまして大蔵当局は最終的な審議まで行つておりませんので、理財局限りのまだ研究にとどまつておるのでありまして、提案する方針で進んでおりますけれども……。
  38. 西田隆男

    ○西田隆男君 四月頃から自由販売さしてやりたいということならば、早急に出されないと、法律案審議はできません。
  39. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 審議は間に合うというつもりで……。
  40. 西田隆男

    ○西田隆男君 間に合うように出すつもりですか。
  41. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 方針が決定しますれば、間に合うように出すつもりでおります。
  42. 西田隆男

    ○西田隆男君 本間君にお尋ねしますが、大蔵省のほうは大分積極的な御意見もあるようですが、通産省では八千万以上の探鉱補助金は出せないというようなことでは困ると思うのですが、この予算の中に、金が日本の国に必要不可欠なものであり、これを助成して行かなければならん、そういう根本的方針があるならば、予算に取るように通産省にお話になつたらどうですか。
  43. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) 二十七年度の予算につきましては、先ほど申上げたような状況なつておりますので、只今大蔵省の総務課長からも御説明があつたのですが、加工用金の自由販売という線を、一つできるだけ早く実現したい。こういうことで折角大蔵省と折衝いたしておるような次第でございます。
  44. 西田隆男

    ○西田隆男君 政府委員はそのくらいでいいのですが、鉱業協会専務理事にお尋ねしますが、今大蔵省の答弁や通産省の答弁のようなことが若し四月から実行したとすれば、どうにかあなたのほうは本年度中は仕事がやつて行かれるというお見通しですか。
  45. 園原巌

    参考人園原巌君) 我々がお願いしましたのは、先ほども説明申上げたように、今の国際情勢、国内情勢からしまして、政府当局もこれならばできるだろうという途をお願いしたのであつて、それだけで金山が収支償つて思い切つて増産ができるということは、先ほど申上げたようにもう期待できませんで、やはり根本的な対策としてはコストを償う程度買上価格をきめて頂きたい。価格又はその差額を奨励金というような形でやつて頂かんと、金山はやはり救われない。それで今の状態が多少緩和されるに過ぎないというふうに考えております。
  46. 西田隆男

    ○西田隆男君 重ねて聞きますが、今の大蔵省の言われるように二トン何がしを自申販売にするということによつて買上げが四百一円、生産費が五百五十円といつておりましたが、その程度の生産費価格は、二トン何がし……価格の問題もあるでしようが、或る程度価格の想定はつくと思いますが、それでもやはり非常にかけ離れた生産費との差がつきますか。
  47. 園原巌

    参考人園原巌君) 我々の予定しておりますのは、自由販売にした場合に、一グラムあたり六百円見当ならば行けるという見込でございます。それで産金量五トン幾ら、五トンといたしまして半分ですか、自由販売を許されるといたしますと、半量は四百一円、半量が六百円、平均しまして一グラムあたり五百円ということになります。これではコストは償わない、ただ現在よりは多少よくなるということであります。
  48. 西田隆男

    ○西田隆男君 本間君に一つお願いがあるのですが、今の産金業者の御意見が本当なことであるとなるならば、あとは差額は僅がグラムあたり五十円になる。一つ大蔵省と折衝されて、何とかカバーできるような御努力をして頂きたい。でないと金が出ないということになる。
  49. 結城安次

    結城安次君 只今園原さんのお話で闇六百円ということは、これはどこから出た基礎ですか。
  50. 園原巌

    参考人園原巌君) 業界の大体観測でありまして、現在の闇価格が自由販売になると、むしろ少し上るのではないかというような考え方を持つておりまして、現在よりは上つた価格が先ず六百円見当に抑えられるのではないかというような腰だめ的な予想に過ぎないのです。
  51. 結城安次

    結城安次君 私はもう一遍園原さんにお伺いしたいのですが、何だか私どもの聞いた限りにおいては、現在産額の半額くらいを勝手に売らしてくれ……、犬も闇価格が動くという前提ですが、勝手に売らしてくれれば、引合うのだというようなこともちよつと聞いたような気がしますが、これは誤りですか。
  52. 園原巌

    参考人園原巌君) 勝手に売らしてくれというお願いはどの方面にも申上げたことはございません。政府の必要によりまして指図配給と申しますか、或る程度フリー・クーポン制で行かなければならんという御方針がきまれば、それでも止むを得ないと思います。ただ問題は、どこどこへ幾らの価格で何グラム売るべしという、その現在の配給制度に、ただ値段が多少変るというような窮屈な配給制度では、我々の希望はいよいよ達成されないことになりますのですが、いわゆるフリー・クーポン制のようなものでありまするならば、値段は我々の期待するところへ落ちつくものだろうと思つております。
  53. 結城安次

    結城安次君 そうすると私の誤解かも知れませんが、業界の要望は、やはり政府の買上値段は、もう一つの価格というものは政府の指定した価格で、指定された人に売るという意味なのですか。
  54. 園原巌

    参考人園原巌君) つまり自由販売をお願いしておるのであります。自由販売、価格も自由にして頂きたい。但しその受配給者につきましては、政府の都合によりまして、その配給を受ける枠でございますか、数量を政府が指定されることは、これは或いは政府の都合によつてはあり得ることだと思つております。成るべく自由にして頂きたいが、それは或る程度の制限は止むを得ないという程度に考えております。
  55. 結城安次

    結城安次君 自由価格というものを、私は勝手に甲の鉱山と乙の鉱山と違つてもかまわないというように了解したのですが、自由価格というのは、やはり或る価格を、政府から指定された値で売るというような意味ですか。どうも私のちよつと前に聞いたことでは、自由にさしてくれというのは、自分勝手の値段で売れる。それで大体今の闇値は毎日動くのでしようが、この自由価格は毎日動くのでしようが、その自由価格で売らしてくれれば、どうやら引合うのだというように聞いたのですが、これは間違いなんですな。
  56. 園原巌

    参考人園原巌君) 価格は自由にしてさして欲しい。併し配給統制というのですか、その方面は或る程度どういう形かで残るのは今の段階では止むを得ないこともあり得るのじやないかというような予想をしておりますが、政府でその価格を指示されるということでありますれば、現在とそう変らないのでありまして、そのために金山が如少とも現在の窮状が緩和されるということにはならんように思います。
  57. 結城安次

    結城安次君 もう一つ、今園原さんからお話を伺つておるのですが、どうも並行線のようになるので、これ以上伺いません。で大蔵省に伺いますが、国際基金ですか、あなた二十トン半を取ると言つたのか、二トン半を自由にするというのですか、どちらですか。
  58. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 二トン半を自由に……自由という言葉は、ニユーアンスがあるわけでありまして、いわゆる四百一円でない価格で取引を認めるものにしたい。
  59. 結城安次

    結城安次君 それが二トン半ですか。
  60. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) さようでございます。
  61. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は金を自由販売するようになりましても、恐らく奢侈部面へ自由に流れるようなことは今の段階ではあり得ないのじやないか。やはり衛生、その他必要部面に流されるのが大部分だろうと想像されるのですが、そういう場合に国のほうで当然金山の健全経営を保持するために、採算のとれる価格まで引上げなければならないものが、いろいろな事情引上げられないでおる。そのために自由販売にして、一部のそういう非常に金を必要とする消費者に不当な価格で売り付けて、そうして金山採算を保持するというようなことは私はやるべきことではないと思うのですね。それは根本的におかしいと思う。そういう考えでありますから、従つて根本的な問題としては探鉱の補助金というようなことでなくして、産金量に対して、量に比例して私は国が一定の助成金を拂うのが原則でなければならない。そういう方針が最も正しいのじやないかと思うのです。ただ只今の御説明では四月からもすでにやるように計画をしておるというお話でありますが、どうもまだ細かく質問をしておりませんから、失礼になるかも知れませんが、私どもとしては金山が健全経営ができる、擴大生産ができるという一つの前提の下において、国が今の買入値段を抑えておるとするならば、どの程度の金が不足するのか、その不足する金の計算というものを一応立てて頂いて、それを私どもに示して頂きたい。もう一つは業者のほうから今言われましたけれども、一部の金を自由販売にして、そうして経営に若干プラスになるようにするとするならば、それをどれとどれと自由販売にするなは、どの程度経営の健全化に役立つことができるか。この辺のこともこれは政府が監督しておるわけですから政府側として、業者のほうではなくして、政府側としての計算資料をこの委員会に出して頂きたい。そういう工合に私は思います。
  62. 島清

    ○島清君 どうも政務次官のお話を伺つておりましても、それから大蔵省の説明員のお話を聞いておりましても、探鉱奨励補助金として八千万円しか出さない、これを出してもコストを割るのだ、これは認めておられる。そういたしますならば、私たちここに非常に根本問題についてお伺いしなければならないと思うのです。それは一体今の政府は今の日本の国において金を必要としておると認められておるのかどうか、金は要らないと思つておられるのかどうか。我々の知るところによりますと、戦前は確かに金は百二、三十トン保有しておつたはずが、只今これは未発表になつておりますが、その十分の一の保有量もないと思つております。併し生産量はこの通りである。私たちの考え方によりますと、国際通貨基金に入りますと、当然に金を必要といたしますし、更に独立を獲得いたしますと、金はますます必要になつて来ると思いますが、併しながら大蔵省の一部には金は何も日本国内から掘出さなくてもよろしいのだ、貿易を振興して更に外貨を獲得すれば、それでよろしいのだというような考え方のものが一部にはおるようでございますが、一体政府産金を必要としておると認めておられるかどうか。その必要性を認めて政策を立てておられるかどうか。これはちよつと大臣が見えておられないのでお気の毒かも知れませんが、若し御答弁できますればお聞きしたいと思います。
  63. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) 金が今後必要になるという考えの下に政府のほうでは施策を立てたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  64. 島清

    ○島清君 政府産金が必要である、金を相当量保有しておかなければならないという考えの下に施策を立てておられるとおつしやいますが、自由党の政府は、ここで私は政府攻撃をするわけじやありませんが、一つの例といたしまして、なんでもかんでも自由に、外ずしたいというような政策を推進して来られて、ここに政府御自身が八千万円の探鉱奨励金を出しても、生産コストに追つつかない、カバーできないということを委員会で言明されながら、而も金を必要とするのだという御答弁については、何かそこに政策の一致しないものを私たちは感ずるのですが、これは一体どういうわけなんですか。説明を願いたい。
  65. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) 先ほども御説明申上げましたように、国際的な性格を非常に多く持つおるものでございますから、そのほうで必要な分は、大蔵省の当局からも御説明がありましたように、価格の改訂はなかなか困難である。そこで加工用に廻りますものをできるだけ一つ自由な、公正な取引にいたしたい。仮に今業者のほうからも御説明があつたようでございますが、六百円になりますかどうなりますか、はつきりいたしませんが、自由取引にいたしましてその価格が不当に高いというようなふうには、私どもは考えておらないのでございまして、いろいろな国際的な環境から価格改訂は困難なものでございますから、その分はいたし方ありませんが、民需に廻ります加工用の金は、そのときの経済的な情勢に応じて自由に取引をさしたい、こういうふうに私どもは考えておるのでございます。
  66. 島清

    ○島清君 もう少しお聞きしたいこともあるのでございますけれども、これは後日境野委員が本会議で質問されることになつておりますので、私も又当然に委員会で取扱うには問題が余りにも大き過ぎると思います。そこで私は後日の境野委員の本会議の御健闘に期待いたしまして、これ以上私は政府の根本的な政策についてはお聞きいたしませんが、もう一点だけ明らかにして頂きたいことは、大蔵省の理財局の説明員の話を聞いておりますと、大体国際通貨基金への参加というものは、三月頃であろう、そこで加工金に対する自由販売ということが、多分四月頃に実現するであろう。そういう見通しの下に今法案提出の作業をしておるのだというお話でございましたが、これに対しましては、非常になんか奥歯に物のはさまつたような表現の仕方をしておられましたが、これに対しましては、省議くらいは決定しておるかどうか、この点をこの際ちよつと伺いたい。
  67. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ちつよつと待て……折角の機会でございますから、只今島君からの御質問にもありました通りに、国際通貨基金の加入に関する最近の状況につきまして、宮川説明員からもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  68. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) それでは委員長からのお言葉によりまして申上げます。  国際通貨基金に対しましては、昨年九月十八日我が方より加入の要請をいたしまして、その後日本の加入條件を審議いたしますために、基金の内部におきまして特別の委員会が作られまして、主として割当額並びに金及びドルによつて拂い込むべき額につきまして審議を重ねられて来ておりましたが、最近在外事務所よりの連絡によりますと、その委員会としての結論がおおむね出たようでございます。これは割当額は二億五千万ドル、金及びドルによる拂込額が六千二百五十万ドルというように伝えられております。割当額につきましては、我がほうの希望いたしておりますのは、三億ドルを下らざるところ、それから金及びドルによる拂込額につきましては、四千五百万ドル見当を希望いたしておりましたので、只今結論に達しておるように伝えられておりまするところの委員会の数字は、いずれも我が方にとりまして不満でございまするので、なお在外事務所を通じまして割当額の増額並びに金及びドルによる拂込額の減少方につきまして折衝を続けておる状況であります。  なお、先ほど島委員からの御質問に対しましてお答えいたします。省議として決定いたしておりません。法案提出についてどの程度の準備ができておるかという御質問に対しまして御答えいたしますが……。
  69. 島清

    ○島清君 いや、三月頃通貨基金に参加できる、四月頃に当然外せるだろう、加工金に対してはそういう作業をしておるとこう答弁しておられたのですが、それについては省議が決定しておるかどうか。
  70. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 決定いたしてございません。
  71. 島清

    ○島清君 しておるのですか。
  72. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) しておりません。先ほど御説明申上げましたように事務当局として産金業者を活かす線で方向をきめて行きたい、そういう関係法律案をいろいろ練つておる、まだ省議までは決定いたしておらん、かようなわけであります。
  73. 古池信三

    古池信三君 この産金関係金山を活かすようにして行くということについては、結構なことだと思うのでありますが、一面金の需要の面から考えて見ますると、先ほどもちよつとお話がありましたように、美術工芸品或いは輸出用の雑貨類において相当金を使つておるのです。これは大企業というよりもむしろ中小企業者が多いだろうと思うのです。そこで今までの金の価格が今後仮に、今お話が出たように五割も上るということになりますると、直ちにこれが生産の原価に影響して来る。後承知のように輸出品の価格というものは漸次コストの引下を要求されておる折から、却つてコストが高くなるようなことになつて、非常に輸出産業の上に少からぬ影響を與えるのじやないかと思うのであります。こういう面につきまして将来日本が輸出を以て大いに国を立てて行こう、更に又中小企業を育成して行こうという立場から見ましても、何らかの手を打つかどうかしなければいかんと思うのでありますが、これらに対しまして通産省としてどういうようなことをお考えになつておるか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  74. 本間俊一

    政府委員本間俊一君) お答えをいたします。輸出関係に相当な影響があるであろうということは考えておるのでありまするけれども、金山のほうの事情が先ほど来問題になつておりますような関係なつておりまするので、取りあえずと言つては本当は恐縮でございますが、鉱山側のほうの事情が非常に苦境になつておりまするので、そのほうを只今のところは先ほど申上げたような線で一つ処理をいたしまして、輸出関係の問題は又別に考慮いたしたい、こういうつもりでいたしておるような次第でございます。
  75. 古池信三

    古池信三君 金山のほうをいろいろ配慮されるということは、これは当初申しましたように非常に結構なことだと思うのでありまするが、やはりこれと同時に並行して、輸出産業に対する影響をどうして行くかという問題も、適当な策を立てて実行されて行かないと片手落になる心配がある、こう考えるのであります。是非この点は早急に一つ適当な策を立てられんことをお願いしたいと思います。
  76. 境野清雄

    境野清雄君 私から二、三点質問したいのですが、大体今金の価格引上げというような鉱山側からお話があつたのでありますけれども、これは大体産金額の半額を上げてもらつて六百円、その生産の半分を上げてというのは、今大蔵省のお話で三分の一の二トン半、もうこのことですでに六百円という一応予定したものはくずれて来るのじやないかと思いますが、それが六百円になるということを前提にして先ほどの政府の八千万円というものを、鉱山側は一億五千万円要求しておるようですが、一億五千万円要求するということは今の金の価格を、半数を自由に放任してもらつて、六百円になつたという前提の下で一億五千万円要するものか、或いは現状のままで一億五千万円要るものか、その点御説明願いたいと思います。
  77. 園原巌

    参考人園原巌君) 一億五千万円を業者から鉱山局に要求申上げた、これは必ずしも現在の金山コストがこれで賄えるということではございません。つまり今後の新鉱床の開発のための探鉱、それに国家として補助を願いたいというお願いをした、その数字が集つたものが一億五千万円というふうに考えられるのであります。それで勿論その探鉱坑道の中には、現在の産金量とは無関係に、もつぱら将来の増産のための準備という方向に考えられたものが集計されて一億五千万円、それで我々がお願いしておりまするコストを保障する価格とか、それから産金奨励金とかいうのは、一グラム当り幾ら幾らを奨励して頂きたいというお願いの形で出るのじやないかと思うのであります。
  78. 境野清雄

    境野清雄君 そうすると一応奨励金の問題と金の価格は、今そちらからお話のあつたものとは無関係というふうに解釈してよろしうございますな。
  79. 石橋巌

    参考人石橋巌君) 只今御質問の点については、私たちは先ほど協会のほうから御説明がありました通り、政府施策についてにわかに探鉱奨励金を三億なり四億なり要求するということは不可能事であるというようなことも十分考え合せまして作り上げましたのが一億五千万円であります。従いまして先ほど御説明申上げました通り、現在の探鉱奨励金は、金山におけるところの探鉱の実績の一〇%ぐらいに当つております。従つて奨励の実を挙げるのに一〇%がいいか二〇%がいいかということについてはいろいろ議論のあるところと思いますけれども、一応二〇%程度政府が奨励すればもつと効果が挙るだろうということで出した数字でございます。それで価格の問題については六百円になつても三分の一、半分はずれても五百円でございまして、現在グラム当り六百円でないとペイしないという問題からは、当然この探鉱奨励金と或いは価格の問題と直接的に結びつけて考えるほどの問題でもないというふうに思つております。
  80. 境野清雄

    境野清雄君 今の金の価格引上げに関連しまして、鉱山側のほうとしては、銀のほうの価格の統制を廃止又は国際価格政府が買上げすれば、それによつて価格を幾分でもカバーできるというような議論もあるようですが、それに対して銀の価格統制を廃止なり或いはこれを国際価格政府が買上げるということに関しては、政府自体はどういう考えですか。
  81. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 銀につきましては、只今貴金属管理法を改正いたしまして、国会の御承認を得ますならば、統制を解除いたしまして、政府が買上げないということにいたしたいと考えております。
  82. 境野清雄

    境野清雄君 先ほど奨励金のほうの問題はありましたけれども、設備費の補助のほうは一つも触れておらないようでしたが、設備費の補助鉱山側は二億要求しておるようですが、それに対しては政府のほうはどういうお考えですか。
  83. 松田道夫

    説明員(松田道夫君) この前ここでお話し申上げたときに、通産省側の予算要求の金額如何という問題がありましたので、そのときに御説明申上げましたが、先ほどの探鉱奨励金一億五千万円と精錬所の助成金二億円を最後まで大蔵省にお願いする、しつかりしろというお話を承わつて参りまして、最後まで大蔵省へ実はお願いいたしましたが、私どもの力が足りませんのか、財政のトータルの振合いの関係か、大蔵省から示されました案は、先ほどの探鉱奨励金八千万円ということに落着いたのが今までの実情であります。
  84. 境野清雄

    境野清雄君 そうしますと、総計三億五千万円の要求が今の産金政策上必要だというものに対して八千万円だけが認められとたいう結果になるわけですな。  次にもう一つ鉱山側に質問したいのですが、先ほど何か融資斡旋というような問題がありましたが、現在開発銀行なり或いは見返り資金なりによる融資はどの程度の融資を受けておるのか、又開発銀行なり見返り資金に対してどこまでの融資斡旋をすれば、それによつて運行が完全に行くのか、その点の数字がわかりましたらちよつとお知らせ願いたいと思います。
  85. 石橋巌

    参考人石橋巌君) 只今の問題について私のほうでも手許に数字がございませんので明らかでございませんが、とにかく金山としては非常に経営が困難で、株式に対する配当も容易でございません関係上、銀行等から金を借りるということを業界みずからするという能力を持つておらない。従つて政府等の力によつて融資の斡旋をして頂きたいという率直な希望であります。
  86. 境野清雄

    境野清雄君 その点わかりましたら現在の融資状態と、それから希望融資額というものをお知らせ願いたいと思います。
  87. 松田道夫

    説明員(松田道夫君) 二十六年度開発銀行から融資をお願いした分が八千万円、これは山の名前を申上げますと千歳鉱山でございますが、それから中外鉱業三千五百万円、これが開発銀行から融資されております。
  88. 境野清雄

    境野清雄君 見返資金はないですか。
  89. 松田道夫

    説明員(松田道夫君) ございません。
  90. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) では金山の問題はこの程度にいたします。   —————————————
  91. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 次に最近の繊維事情に関する件を議題といたします。
  92. 島清

    ○島清君 ちよつと議事の進行について発言をお許し頂きたいと思いますが、ここの資料の中にも入つておるようでございますが、福井あたりの機業の状態が新聞などに報道されておりまする通り倒産、破産、夜逃げ等が相次ぎまして、惨但たる有様だということを私たちは伝え聞いて知つてつたのでありまするが、その実情を労働組合の諸君がその危機乗切りのために起ち上りまして、事情を陳情したいということで大挙お見えになつたようでございまするが、この資料の中に入つておりまする中小企業の請願でございまするが、これを審議、まあ請願陳情という形で私たちのほうに廻つて参りますると、遠くない間のうちに私たちがそれを審議する機会があろうかと思いまするけれども、併しながら事態は急を告げておりまするので、ひとり福井の問題ではなくして、北村一男議員などのお話を聞きますると、新潟あたりも非常に惨但たる有様だということを聞かされておるのであります。この際関係者の諸君の事情説明を聴取されまして、そうして只今の御予定の日程にお入りになつたらどうかと私はかような動議を提出したいと思いますが…。
  93. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) それでは島君の御動議によりまして、福井からおいでになつておりまする福井県地方繊維産業労働組合連合会事務局長中島優治氏を参考人として発言を許すことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないものと認めます。それでは中島君に発言を許します。
  95. 中島優治

    参考人(中島優治君) 只今委員長から御紹介頂きました福井県地方繊維産業労働組合連合会の事務局長中島でございます。  本日私ども陳情団の者が各方面に陳情に上りまして、私ども現下非常に不況のために我々生活そのものの危機が参つております、そのことを陳情いたしまして、何とか政府当局においてもこの点を一刻も早く善処して頂きたいと、かように考えて陳情に上つておるものでございます。そこで私本日のこの機会に私どもが、労働組合の者がこの陳情、請願書に書いてございますような業界そのものが取扱つておりますその問題について、真劍に労働者大会を開催いたしましてまでもこの問題を取上げ、ここに参つたという点についての事情につきまして皆様の御了解を得、御協力をお願いしたい、かように考えておるものでございます。  御承知のように福井県はその主産業が繊維産業でございます。而もその繊維産業の殆んどが絹、人絹業者でございまして、全国のこの種の織機台数約二十万台と言われておりまするが、そのうちの五万三千台は福井県にあります。その殆んどが絹、人絹関係だということになつております。そこでそれに従事しております労働者実態はどうであろうかと申しますというと、これは昨年の十月、十一月分の賃金企業の規模別に調査をして見まして、約一万名の調査を行いました。その結果によりますというと、最低一カ月賃金が千二百円、平均が三千四百六十二円というような誠に信じがたいような数字を示しております。而もその労働時間は十二時間というところの、平均十二時間でございます。平均十二時間というところの、これ又基準法云々というような問題よりも非常に遠い夢のような数字を示しておるような状態でございます。そして又これが十二月になりますというと、先ほど申上げました数字は名目賃金でございますが、十二月に実質手取り賃金を調べてみましたところが、最低月五百円でございます。平均二千七百円というような数字を示して参りました。現在官公吏の賃金ベースが一万円以上をまあ上廻つておるような状態であり、又繊維産業労働者の全国賃金も五千七百円平均というような形を示しております。この事態におきまして、只今申上げましたような形で私どもの生活はなされておるような状態でございます。而も十一月から十二月に入つて上昇いたしまするならば、昇給いたしまするならばいいのですが、だんだんと下つて来ておるような状態でございます。このだんだん下つて来ておる、だんだん惡化して来ておるという状態を失業保險からの給付額から見ましても、その実証を得ることができると思うわけでございます。六月におきまして三万八千名、失業保險の給付額は一日平均一人が百四十二円をまあ示しておりましたが、昨年の十二月になりますというと四万五千名に増加いたしまして、その給付額は一日一人平均百十円に低上いたしました。これを見ましても、この賃金状態が下つて来ておるということが証明されるわけでございます。そこで現在福井県の各市町村或いは都市部におきまして、特殊飲食店とか或いは又旅館その他接客婦あたりの身許を調査して見ますというと、最近にその業につきました者の前職はすべてどこどこの機屋におつたというようなことを言つておるような状態でございます。私が工場を以前に廻りまして、労働運動をやつておりましたそのときに顔見知りの人たちが、この間まで工場におつたと思うような人たちが、あちらのうどん屋或いはこちらのカフエーというような所に働いておるような状態であります。又子供を抱えた未亡人たちが而も今申しましたようなそういう職業についていなければ死んでしまうというような状態に追い込まれて来ておるというのが、今日の我々北陸の中小企業繊維産業に従事しておりまする労働者実態でございます。このことはこれはひとり我々労働者の問題だけではなくして、国家的に見ましても大きな社会問題であろうかと存じます。私ども労働組合といたしましては、従来の労働運動の観点から見てみまするならば、我々はこういう生活ができるのであるから、経営者に対しまして賃金の要求をし、手当の要求をいたしまするのが、従来の労働運動の簡單なことかと存じまするけれども、それをなしまするには余りにも経営者自体が薄弱でございますということは、皆様自身御承知の通りでございます。ない袖は振られないというような実態が福井県の弱小機業の実態でございます。昨年の十二月現在で国警のほうで調べて頂いた数字によりまするというと、借金の抵当になつておる工場と、賃金の未拂をやつております職工を残しまして夜逃げその他によりますところの行方不明になつ経営者が四十二名にも上つております。こういうような実態で、私どもはもはや経営者と労働者の問題ではないということに着眼いたしました。健全な労働組合のあり方というものは、このときにおいて労使の問題じやなくして、我々労使一体になつてこの問題のそのもとに対して解決に努力することが我々の使命なんだ、こういうようなことに着眼いたしまして、今年の一月二十七日、福井県の福井市におきまして同種産業の労働者蹶起大会を開催いたしまして、この請願書に書いておりますような問題を決議いたしまして陳情に参つたような次第でございます。私どもこの陳情に書いてございますような問題につきましてはズブの素人でございまして、專門の皆様の前で私どもがこの問題を申上げることは誠に僭越でございます。ただ今申上げましたように私どもは、私どもがなぜこの問題を取上げて、この問題のためにわざわざここに参つたかという点の我々の気持をお汲み取り願いたいと、かように考えるわけでございます。  そこでこの請願の内容に入りまするところの簡單に状態を御説明申上げます。私どもが従事しております、俗に言う機屋の状態でございますが、その機屋のその最も重要なことは、その機屋が使つております糸の値段が安定していることであろうかと思います。然るにその原糸の価格というものは非常に短い期間に上つたり下つたり、どれが本当の糸の値段であるやらさつぱりわからないという状態を続けて参りました。その原糸の価格の推移は本文に書いてございますので一つ御検討願いたいと思います。こういうような状態でありまするならば、如何に経営者が経営の合理化をいたしましても、如何に私ども労働者が真劍に労働を提供いたしましても、決して経営の自主的運営ということもできませんし、又その採算も合わないような状態でございます。従つて私どもは健全な経営の樹立ということを願うがばかりに私ども苦しんで参りました。原糸の価格の安定というものについて当局におきましては何か一つ適宜な措置を講じて頂きたい、かように一番の一項目に書いてあるようなわけでございます。  そこで二番の問題といたしましては、なぜこういうような値段が上つたり下つたりしたか、或いは又非常に上つたかというような点を考えてみまして、これを正常な立場に復帰いたします一つの方法を二番の項目に書いて見たわけでございます。原糸が化繊六社の作られます原糸と、現在その下にぶら下つております全国二十万台のこの織機の数から行きまして、約五万台が過剩であるという点も書いてございまするが、少い糸をたくさんの者が使う、こういうようなことから自然に糸の値段が釣上つて来ておる、こういうようなことであります。そこでこの計画消費立法ということにつきましては、この糸の惡質な一つの、ブローカー的な問屋の廃止ということもこの中に意味が含まれておりますし、又一つの原糸会社と、良心的な商社と良心的な機屋との三者の一元化をここで何とかして頂かなければ、やはり如何なる方法を講じられても今までのようなことで、糸の値段は釣上つて行くのじやないかというような点を考えて二番の問題に書いてあるようなわけでございます。  それから三項に至りましては、その一つの方法といたしまして、中小企業協同組合を強化いたしまして、この協同組合を中心として、小さな弱小機業を救つて頂きたいというようなことでございます。福井県の機屋さんの数は約二千工場ございます。そのうち二十人以下というのが四九%ございます。それから五十人以下というのがすでに九〇%になつております。そういうような実態でございます。誠に小さい者が無数にたくさんあるというような実態でありますので、これに対しまして一番、二番の問題を是正して行きますには、やはり中小企業協同組合を作らせて、而もその協同組合を中心とした経営をやらせなければこの再建はできないというようなことは、これは火を見るよりも朗らかでございます。併しながら現在の協同組合法に至りましては非常に薄弱な実態と存じます。そこでこの中小企業協同組合をもう少し條文よりも、実際の施策を行います、融資或いはその他の方法を行います場合におきまして、協同組合というものを重点的に、もう少し重点的にお考えになるような方法を講じてもらいたいと同時に、現在各業界において言われておりますところの協同組合法の改正或いは事業者団体法の改正につきましても、この点を十分一つ御勘考の上、一つ立法その他の処置を講じて頂くようにお願いしたいと、こういうことが三項に述べてあるようなわけでございます。   それから四番といたしましては、生産資金の枠のこれは擴大についてということで、現在私ども小さな機屋の者が生産資金を借り受けておりますけれども、それはただ單にたくさん貸しているというようなことを言われるかたもあるわけでございますが、我々中小企業家にしてみますというと、それはただ單に今までの穴埋めを少ししたのだということに過ぎません。今後の生産資金になつておらないというのが実情でございますので、この際私どもは余りにも傷が大き過ぎるわけでありますが、生産資金をもう少し実際本当に生産資金になるような金を貸してもらわなければならないというようなことも我々はここにお願いするような次第でございます。  その次に五番目の問題でございますが、これは従来の業者はこの問題については言つておりません。併しながら今回私どもの労働者大会におきまして初めてこの問題を提案し、この問題を決定したような次第であつて、特に注目されるべき問題ではなかろうかと思うわけでございます。従来今の四番で申上げましたような生産資金の融資というものは、その機業家に、その経営者に対しまして物件担保その他によつて貸付が市中銀行或いは中金等からなされておつたわけでございますけれども、その場合に現在の福井県或いは北陸、この各機業家におきましてはその担保の能力というものが限度に来ておるというのが実態かと存じます。一番の項で申上げましたように、糸の値上りその他によりまして、この原糸価格の変動によるところの損害を受けた額というものは、すでに機業家の企業根源を殆んど壊滅しておるというような状態まで大きな傷を負つております。機業家にしてみますれば、今生産資金を借受ける場合におきまするところの担保能力を持つておらないというのが現状でございます。そこでそのままに放置しておきまするならば、これはもはや倒産或いは労働者の失業、餓死ということに相成りまするので、私どもそこに働いておりまする民主的健全な労働組合のあり方といたしましては、今ここでもう少し生産資金を與えれば完全にこの会社は立上るのだがというようなことがはつきりわかつておりましても、担保能力がないばかりに倒産しなければならない、私どもは餓死しなければならないというような状態にある工場も無数にあるのでございます。そこでその場合に銀行におきましては担保能力がないからこれは貸せないというのも当然でございますが、その場合に一番担保能力を増しますのが、何を言いましてもそこに従事しておりますところの熱意を持つた労働者の団結以外には信用の価値のあるものはないかと存じます。そこで私ども労働組合が健全な労働組合であるということを、この所管官庁において認められた場合におきましては、その労働組合の団結保証によつて、信用保証によつて生産資金をその機業家にお貸し願いたい。かようなことを五番目の問題で提起しているような次第でございます。この問題につきましては国家的にはまだなされておりませんけれども、地方的に見まして、北陸の新潟県におきましてもこの問題がなされているような実態でございます。新潟県の例を見ますというと、県費を一千万円新潟信用組合に預託しまして、丁度このような賃金の未拂いその他あるような所に対しまして、労働組合のある所に限つて、而もその労働組合が健全な労働組合であるということを労政事務所において認定いたしました場合において、その裏付けを以て無担保で信用融資をしたようなことが去年も今年もありました。そのときの結果をよく検討して見ますというと、物件担保で機業家に貸した金は焦げついておつたけれども、その労働組合の信用保証で融資したものは一円も、一銭一厘も焦げついておらないというような実情であるようなわけであります。従つて私どもはこの地方的に二、三取上げられているこの処置を国家的にお考え願つて、国の一つの施策としてこの問題をお取上げ頂きたいということを私どもは特にお願いしたいのであります。  その次に六番目の問題といたしましては、これは私どもやはり絹、人絹、特に化繊は、その従来の市場がポンド地域でございます。そこでポンド地域に対する輸出制限というものが法的には何らないではないかというように言われておりますけれども、その貿易の資金枠、その他ポンドの裏付けのドルというような問題のことから、非常に自然発生的に輸出が制限されるというようなことを聞いております、我々はそういう問題は、一つの大きな国際政治の下におけるところの国策として大きな問題であろうとは思いますけれども、そういう大きな問題からいたしましても、私どもの現在従事しておる化繊関係の機屋、弱小機業家或いはその労働者が直接それで苦しんでおりますので、その点を十分御検討を願つて、このポンド、ドルの問題或いはこのポンド地域に対する輸出の問題も御検討を願いたい。かように考えて六番目の問題をここに御提案申上げてお願いをしておるような次第でございます。  大体本文に対しまするところの内容につきましては御説明申上げておりませんけれども、その点は先ほど申上げましたように、私どもはズブの素人で、皆様方はいずれも御專門のかたがたでございますので、省略させて頂いたわけでございまして、本日ここで我々がこういうことをやるに至つたという点の私どもの気持を皆様にお訴えいたしまして、よろしく御了解と御協力、及び私どものこの陳情に対しまするところの何らかの処置をおとり下されんことを切にお願いいたす次第でございます。
  96. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 只今の陳情に対しまして委員のかたがたから御質問がございましたならば……。
  97. 島清

    ○島清君 別に今説明者のかたにお聞きしなくても政府のほうに聞いてもいいでしようね。
  98. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) どうぞ。
  99. 島清

    ○島清君 これは今更その労働組合の諸君の説明を聞かなくても、すでに新聞等によつて報道されておりますし、更に私たちは新聞等で見たことよりも問題の真相が非常に深刻であるという感を深くしたのでございまするが、それに対しまして何か繊維局長、通産省においてはそれの対策の具体的なものを持つておられるかどうかということを先ずお聞きしたいと思います。
  100. 記内角一

    政府委員(記内角一君) この問題は非常にむずかしい問題を含まれておるのでございまして、今陳情の方面は、主として産地としての、機業地の問題として取上げましたが、実はこの産地がここまで行詰りますまでに、いわゆる集散地であります、殊に輸出を中心とする関西方面が特に問題が深刻なのであります。御承知の通り昨年十一年頃から福井の西野産業を初めとして各地の商社の倒産が現われております。その原因を尋ねてみますと、昨年の丁度今頃盛んにいわゆる世界的な軍需気がまえから資材の不足、そこで緊急に物資を輸入しなければならないというふうな気がまえが澎湃として起つて参りまして、政府においても又輸入資金が非常に大巾に増大した。又今まで輸入については割当制というようなことが行われておりましたが、これを自由承認制に切替えたというようなことで、輸入自身も非常に自由になつた、その機会にまあ世界的な需要の旺盛という空気とも絡みまして、非常に輸入の買付けが盛んに行われた。御承知のいわゆる新興三品と言われる皮とかゴム油脂というようなものが相当大巾に輸入せられまして、同時に販売面におきまして單に日本ばかりの問題ではなくて、世界的な需要から繊維関係の問題を見ても世界的な非常な需要が出て参りまして、その関係で輸出契約も続々でき上り、自然価格も高騰するということで、ここに陳情書にもありましたように、人絹については六万円をオーバーするというようなことで、基準価格を設けたというような状況でございますが、幸か不幸か、去年の春マリク声明が出、朝鮮事変が解決しそうだという気運になつてから、にわかに世界的な需要の減退を来たし、それに伴つて価格の低落を来たした。繊維関係においても繊維プロパーの問題につきましても、そのために輸出商社が非常に大きな打撃をこうむりましたが、そのためにこの夏には例の輸出キャンセル問題が起きたわけであります。で、この繊維につきましては、貿易会社にしわ寄せをいたしまして、貿易会社に対する融資という形で一応の解決を見たわけでございますが、商社は、繊維商社と言いましても、各方面に手を出しておりまして、いわゆる新興三品と言われるその繊維以外の輸入の方面が値下りが来ると同時に、今までに国内業者に売り繋いでおつたものがキャンセルされて、従つてここにこういう商品が非常なデッド・ストックになつて参り、自然これらの値下り損、或いはストックの増大による資金の梗塞というものが、全部おいくつてつたものが、とうとう十一月頃からこれが表面化し始めたというのが今までの趨勢でございますが、従いましてこの問題は單に機業地である機屋の方面の問題だけでなく、その後にありまする、それに関連いたしまする商社の金融という方面が解決いたしませんというと十分な解決策にはならないのであります。只今お伺いいたしますというと、繊維産業の労働者の諸君の賃金の多寡、或いはその安排状況という方面においても相当深刻な問題があるようでありますが、ここで一応の金融をつけたといたしましても、今度はその生産いたしました商品をどう捌いて行くかというとが、又その荷を受ける商社側が力がなくなつて来ておるということから、又大きな問題が生じて来るわけであります。これらは單に機業地ばかりの問題を見ておつたのでは解決いたしません。そういう集散地における商社側の問題も併せて考えて行かなければならない。そうこういたしますと、これは相当大量の資金を、又すつかり赤字になつて信品用を失墜し、又担保力も、事業家と違つて物的担保も十分に持つておらない、あとは暖簾というものを持つておるだけに過ぎない商社に対してどういう方法で金融するかということが非常にむずかしい問題になつて来るわけであります。今折角関係方面とその方法について協議を続けておるような実情でございます。
  101. 境野清雄

    境野清雄君 今の繊維局長さんのお話は一応私は尤もだと解釈するのでありますけれど、大体今の絹、人絹の繊維の現状は今お話のあつた通りでありますが、これは今の問題の問屋側、いわゆる集散地の問屋側の商社の解決をしてから、その後に今の繊維産業の生産地を解決するということは、私は全く納得でき得ないんでありまして、そういうことであつては今の各全国の機業地というもの、特に絹、人絹の機業地は殆んど死んでしまうのではないか。これは両立して私は繊維局としても解決の方途に乗出して頂きませんと…日本の経済の底が浅いというのは、一番浅いところは商業部門の金融が、殆んど資本金に不足している者が大きな業界を背負つてつているというのが今日の状態でありまして、これは問屋を解決しなくちやならん。これはひとり福井だけではないのでありまして、たまたま福井が大量生産をやつているから、福井が陳情するような大きな問題になつておるのでありますけれども、それは先染の産地にいたしましても、小さい業者は相当この問題はもう明日も待てないような状態なつておるのが、全国の機業地の実態である。特にこの問聞くところによると福島県の川俣あたりでは一千台の織機に対して大体一カ月一億円の生産があり、それが集散地の問屋が行詰りましたので、それに対して県自体が二千万円の補償をいたしまして、その二千万円の補償によつて大体川俣の機業地を一応救おうというような対策を講じておるので、私はこれを今全国の繊維産業の絹、人絹の土地は、何とかして危機を突破しなくちやならんということを私も折角研究しているのでありますけれども、そういうような点に対して一県がそういうような施策を施すなり一何なりいたしまして、打開策に狂奔しておる実態政府自体もつかんで頂いて、是非政府が県から出資するというようなことを一つお奨め願いたい。でき得れば政府自体が再保險でもしてやつたらどうか。中小企業問題では御承知のように信用保証協会というものがこの前の国会で五〇%は政府が再保一証するというふうなことをやりましたので、この中小企業産業の危機打開に対しても県が相当の力を入れまして、一最低限五〇%ぐらいは政府が保証するというようなことによつてこの問題を解決してもらいたい。今繊維局長さんのお話では、大体尚屋との関連性が非常にあるというようなお話でありましたけれども、ここに出ております人絹糸の価格安定策並びに原糸の生産、消費方立法についてというような問題がありまして、この問題を早く解決しませんと、問屋問題が解決しましても、或いはこの一番おしまいの六にありまするポンド地域に対する輸出の制限の撤廃がありましても、私はもう糸価の安定はでき得ないのではないか、こういうように思うのでありまして、ここに詳細な数字はありますが、この数字は幾らか私から見ますと違つておるよ、うでありますけれども、原糸自体としては、人絹糸は約一億二千万ポンドぐらい、それから絹糸としましては輸出絹織物用として三万俵、内需七万俵計十万俵、スフは極く少量切りないのでありまして、そういうような問題、総体を勘案しましても、運転の可能台数は私は十五万台ぐらいではないか、そうしますと今日十九万六千乃至八千台でありますと、四万乃至六万台というものはいつもアンバランスになつておる。アンバランスになつておるにもかかわらず、化繊会社は僅かに大社で、横の連繋が直ぐ取れますから、ポンド地域ならポンド地域というものの輸出が始め出そうということになれば、化繊会社は直ちに横の連絡を取りまして、人絹の価格というものは暴騰する。そうして織機を持つております機屋のほうはアンバランスのしわがそこへ寄せられまして、いつも高い物を買つてしまわなければならんというふうなことで、長期の輸出もでき得ない、こういうような形で、これは勿論私的独占禁止法とか事業者団体法に抵触する面が相当出て来ると思うのでありますけれども、何としてもこのアンバランスを解消しないことには、私は今の資力の少い絹、人絹織物という問題は解決できないのじやないか。ひとり金の問題ばかりでなく、そういう問題を解決しない場合には、いつまで行きましても人絹糸の価格の安定或いは生糸の価格の安定はなかなかできないのじやないか。そういうようなことから行きましても、こういうような問題に関して何か一つ強力な手を繊維局として打つて頂きまして、そうしてこの人絹糸の価格の安定というものを先ず第一に取上げて頂かないことには、今の全国の繊維業界、特に絹人絹業界というようなものは同じような形体を辿つて行きまして、輸出が旺盛になつても、いつもしわ寄せが中小企業に来て、問題は解決しないのじやないか、こんなふうに思いまして、これは私の考えておる問題でありますけれども、実際問題として今六社の化繊会社は二百何軒の特約店を持つておる。こういうような形体で行きまして、そうしてそのものが協同組合自体に直接糸を渡さない組織になつておる。こういうような形になつておりますと、今の暴騰、暴落、こういうものを避けられないのじやないか、強力な協同組合自体に対して人絹糸は配給でき得るように、そういうようなことになれば、いわゆる事業者団体法や何かありましても、自発的にこの協同組合自体で生産調節ができるのじやないか。自分の傘下にある五十台の織機を持つておる者に、糸はどこにでも行つて勝手に買つて来い、併しあなたのところは三十台しか動かさないでくれと言うことはできないのでありまして、それは糸の裏付けがあつて初めて生産調節ができるという大きな点に一つ繊維局としては目を向けて頂きまして、今の問屋側の形体を直すなり或いは問屋の経済力を充実させて頂いて、問屋の機能を十分に発揮させて頂くということは結構ですけれども、そのあとで中小企業の絹、人絹の機業家を救うというような方策では、私は到底間に合わないのじやないか、こういうふうに思うので、一つ両方を併行してお考え願いたい。特に機業地はもう行詰つておるのでありまして、問屋のほうはまだ行詰つておるといいながら、何とか生きておりますけれども、中小企業の絹人絹産地というものは、本当に先ほどの労働組合のかたからのお話の通り、全く行詰つておるのじやないか、我々の通産委員会としても、これは私は真先に取上げてもらつて何とか解決方法をやらなくちやならないというふうに考えておりますけれども、政府自体におきましても是非、問屋を先にやるというようなことでなく、これらに対する生産調節、或いはやがて下半期には期待でき得るオープン・アカウントなり、スターリング・ブロツクなりに対しての輸出が旺盛になるということが目先にありますならば、なお更機業地を殺さないように格段の一つ御研究を願いまして、早急にそういうような問題を繊維局としても御解決願うように一つお願いしたいと思います。
  102. 記内角一

    政府委員(記内角一君) 勿論我々といたしましても、機業地のほうをあとにするという考え方は持つておりませんで、今申上げたように、機業地だけの手を打つたのでは問題は解決しないのでありまして、従つて根本の問題でありまする商者の問題と並行してこれは考えて行かなければならんというふうに考えております。そのためには、例えば商工中金に対しまする商工債券の預金部引受を増額するとか、或いはそれができなければ政府資金の預託をするとかというような方法によつて中金方面或いはその他、例えば従来予定されておりました政府の預託が、現在なお中小企業方面として四十五億たしか残つておるはずでありますが、これの引揚げが二月、三月に引続いて行われる予定になつておりますが、これらをそのまま差当り据え置くというふうなことも目下折衝いたしておるような次第でございます。  なお価格の安定の問題につきましてはこういうふうな際にかかわりませず、この暮の十二月の生産高を見ますと、單に化繊に限りませんで、綿紡績においても戦後の最高の生産を挙げておるというふうな状態であります。こういうことが続きますというと、勿論長い眼で見れば結構でありますけれども、当面の値下りの傾向の強い際におきましては、ますます値下りに拍車をかけるような結果にもなるわけでありまして、これは当然その生産自体についても十分検討をしてもらわなければならんというふうに考えておるわけであります。ただこの点は單にそういうふうな糸の面におけるメーカーの点ばかりではなくして、業者の側においてもやはり同じように考えて行かなければならんのではないか。例えば今日問題になつております福井或いは石川方面におきましても、昨年の暮の十二月の生産は戦後最高のやはり生産高を挙げておる、織物として最高の生産高を挙げておるという実情でございます。片一方においては換金処分のための投売が盛んに行われておると言いながら、片一方においては最高の生産を挙げておる。勿論この間におきまして資金繰りの関係上止むを得ない措置に出た面もあろうかと思うのでありますけれども、こういう面も業者自身においても十分考えて頂かなければならんのじやないかというふうにも考えておるわけであります。勿論そのためには組合法の改正の問題もございますけれども、單に組合法を改正しただけでは解決しないのでありまして、やはり業者自身の心がまえの問題も多分にあろうかと存ずるわけであります。幸い輸出の方面は、綿と言わず化繊と言わず、相当最近進捗して参つております。そのためでありますか、今申上げたように非常な生産を挙げておるにかかわらず、而も資金繰りが、金詰りが非常に深刻であると言われておりまするにもかかわらず、ストツクというものを、現在いわゆる市中在庫というものを余り見受けないのであります。現在ありますのは大部分普通のランニング・ストックと思われるものなのであります。これは我々非常に不思議にも思つておるのでありまするけれども、いずれにいたしましても、こういうストックが現在どこにも見当らないということは、我々として非常な強味であろうかと思うのであります。従いまして、あと金融の問題を何とか解決すれば、必ずしも悲観するには及ばないというふうに確信いたしておりますので、目下その方面に努力を続けておるような実情でございます。
  103. 境野清雄

    境野清雄君 今のお話で、生産が非常に殖えておる、これは私も生産が殖えておること自体が日本経済の面で喜ばしい結果ではないと思つておるのでありますけれども、ただ生産が殖えておることは、これは国の今の経済が自転車経済と言いますか、ペタルを踏んでいなければ倒れてしまうということは、機業地がもう全部が言つておるのでありまして、そういうところから止むを得ず七所借りをしても生産しておらなければならんというような、この中心問題を政府が押えて頂かないと、生産ができておる、それで在庫がない、ランニング・ストック程度だというけれども、その間の中小企業家としてのこの経済のやりくりというものは非常に苦難の道を歩んでおる。一カ月たてばたつだけ、増産すればするだけ赤字を作つておるのでありまして、これは勿論日本経済のためにも喜ばしい現状ではないが、そういうような実態に追い込まれておる中小繊維産業というものの実態を把握して頂きまして、ただ、今やつておるから大丈夫だろう、或いは相当倒産が出ましても、まだまだそれが負担しておれるのだというような点で、幾分でも甘く考えておられることは、私は非常に感度が違うのじやないかと思いますので、そういう点をよく御勘案願つて、至急にその方策を何とか立てて頂きたい。今の商工中金のお話や何かを承わりまして、確かにこれは今の返す金を棚上げしてもらいませんと、商工中金あたりは息をついてしまうのではないか、少くとも日銀の中小別枠の十三億というものを二月、三月に返さなければならん、それから農林中金から借りておる五億二千万円ばかりを返さなければならん、ルース台風の二億四千万円を返さなければならん、商工中金だけでも二月、三月で逆に金が要るのに、二十億六千万円も返さなければならんというようなことで、折角十二月の末日に二百十二億の貸出の残まで行きまして、商工中金としては相当な成果を挙げておる現状から見ましても、重大な問題と考えられます。本年末は三百億の残高がなければ商工中金の金融は完全にでき得ないのではないかというように思つておるのに、目先引揚げ問題があるので、こういうような問題に対しては一つ繊維局としても是非通産省総体を通じて中小企業に対する政府貸金の引揚げを四月以降に延ばしてくれるように格段の努力をして頂きたく、聞くところによると、四月以降の新年度予算で三十億くらいの金は商工中金に出してもよいというような大蔵大臣の意向のようなので、四月以降出されましても、四月以降は、目先金が要らんような状態が来るので、むしろ幾分でもこの二月、三月の危機に使つてもらうほうがいいのではないかと思いますので、その点を十二分に御勘案願つて、側面的に是非大蔵省を突ついてもらいまして、何とかこの中小繊維産業の危機の打開策について真劍に一つ取組んで頂きたい。私どもこの委員会といたしましても、委員の皆さんにもお願いして、私どもは大きくこの問題を取上げなくてはならないと思つておるのでございまして、又後日にでもゆつくり質問をしたいと思うのでありますけれども、これはどちらにしましても、もう明日に迫つた問題でありますので、この打開策については格段のお力添えを願いたいと思います。
  104. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  105. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) それでは速記を始めて下さい。引続きまして、只今の問題につきましては繊維局におかされまして極力御努力願いたいと、こういうことにいたしまして終りたいと思います。
  106. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 次に中小企業に関する小委員会並びに競輪に関する小委員会委員長只今御選定願いましたところ、中小企業に関する小委員長といたしまして自由党の松本昇君、競輪に関する小委員長といたしまして緑風会の結城安次君にお願いすることに決定いたしました。なお明日午後一時より委員会を開催いたしまして、貿易及び為替に関する諸問題を検討いたしたいと存じます。さよう決定いたします。  では本日はこの程度で散会いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないと認めます。  これにて散会いたします。    午後四時三分散会