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中田吉雄君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、
集団示威運動等の
秩序保持に関する
法律案に断固
反対するものであります。これから長時間に亘りまして
反対の理由友開陳いたしまして、皆さんに御迷惑をかける点を御了承願いたいと思うわけであります。(「
議事進行」と呼ぶ者あり)私はこの
法案は、現在の国際的な二つの対立の世界の真
つただ中におきまして、戦争か平和か、経済的な窮乏か、生活同上か、こういう重大な段階に八千万国民が直面しておるわけであります。そこでこれをどういうふうに解決して行くかということは非常に大切な問題であるわけでありますが、これに対しまして、アメリカのと
つておる政策は、前にも申しましたように、一九四五年までトルーマン大統領がと
つておりましたソヴイエトとアメリカとは平和的に共存できるという態勢を一九四九年に解きまして、トルーマン政策を発表したわけであります。それは米ソは両立できない、力で以てソヴイエトを片付けるコンテイソメント・ポリシーという政策を決定しまして、それに基きまして一九四九年の四月四日に北大西洋同盟条約を作りまして、ヨーロッパに鉄の一環を嵌めておるわけであります。次にアジアにおきましては、過般結ばれました講和条約、安全保障条約、行政協定、更に安全保障条約第三条に基くところの刑事特別法を初めといたします十三の特別立法、こういうものによりまして、アメリカの中ソ両国に対する世界的な大きな包囲陣が完成したわけであります。そういう際におきまして、この
法案の持つ現段階におきまする意義、この
立場が押し進められますならば、武装の平和で曾
つて平和が保たれたためしがない、第一次大戦、第二次大戦におきまして、武装の喜平和はやがて戦争への道であ
つたことは明らかであります。私
どもかような運命を迫るのではないかというようなことをアメリカの善意にかかわらず非常に心配いたしておるわけであります。そこで国民といたしましては、戦争よりも平和を、窮乏よりも生活安定、福祉を求める澎湃たる国民的な世論が起ることは火を見るよりも明らかであります。そこでこのような澎湃たる運動は七年の長きに亘りまして、四つの島、八千万の同胞があたかも格子のない牢獄に閉込められたような悲しい運命を絶ち切らんとするところの大きな世論が捲き起ることは明らかであります。そこでこのような運動に対しましては、民族的な強力な運動に対しまして、それを破壊活動防止
法案というような名によりまして、或いは集団デモ取締りというようなものによりまして、これを抑えますれば、戦争への道に歩むことは明らかであります。大正十三年に破壊活動防止法の前身であるところの治安維持法ができ、更に昭和三年に治安維持法に死刑を加えるということになりました。更に斎藤長官が警察に職を受けましたときに、国家総動員法というものができて、我が国が運命への道をまつしぐらに歩んだわけであります。私はこの
法案はやはり何と言
つてもどのような善意にもかかわらず、そういう運命をまつしぐらに歩むところの
法案である、こういうような観点から私は強く
反対せざるを得ないわけであります。我々は単にこの憲法第十一条、二十一条、九十八条、こういうような言論、集会、結社等の自由の制限或いは基本的人権の束縛或いはこれらの条章の逐条的な審議だけでなしに、この
法案が包蔵するところの国際的な、経済的な、外交的な大きな体系の上に立
つての歴史的な観点から私はこれを
考えることが必要であると思うのであります。曾
つて我が国は共産党の激しい脅威というようなことに名を籍りまして防共協定を結びまして、
東京、ローマ、ベルリンの世界政策を、枢軸政策を進めたわけでありますが、現在
東京、ワシントン、ベルリンの道がとられようといたしますが、この道は曾
つて我が国が歩んで来た道であります。我々はこのような政策を断固排撃することが最も大切であるという観点に立
つて深く皆様に迷惑することを心では忸怩たるものを感じながら、激しい決意を以て特に訴えざるを得ないわけであります。私はそういう観点から、第一に基本的に
反対するものであります。第一点の
反対はそこにあるわけであります。先般二十六日に日米合同
委員会におきまして、日本に対じまして六百有余の基地が設定されたわけであります。私は参
議院の宿舎に宿泊いたしておるものでありますが、朝インクの香りも高い新聞を読むことを楽んでおるわけでありますが、我が国が針で突かれたように、このように基地が設定され、而も三百有余が永久基地として設定されたことを思いまして、朝の食事もうまくなく、極めて憂欝な日を感ぜざるを得なか
つたわけであります。私は破壊活動防止法或いはこのような集団示威取締
法案というものによ
つて、我が国が真に独立したい、生活安定をしたいという国民の要求が、このような
法案でどうしても抑えざるを得ない、これでは日本の真の独立と平和とは
確保されない。破壊活動防止法、集団示威取締法というようなものは、こういう運動を抑えるものでありまして、我が国の平和的な前進的な民族的の正しい解放を抑圧するものであるという観点に立ちまして、私はこの第二番目の理由から
反対せざるを得ないわけであります。我々が暴力を否定いたしまして、民主主義的な平和革命を念願いたしますためには、言論、集会、結社の自由というものは基本的な条件にな
つておるわけでありまして、然るにもかかわらず、この
法案はそういう我々の正しい内心の欲求を表現することができない、こういうことになりましては、私は日本民族が長きに亘りまして反独立的な状態に置かれざるを得ない、この第二番目の理由から
反対するものであります。御承知のように、一つの民族が他国の支配に入りました際に、それが解放されるためには殆んど血を見ずに解放された例はありません。インドは長きに亘りましてイギリスの支配下にありまして、二百年に亘る闘争の過程を通じまして、血を以てインドは独立いたしております。更にインドネシア、フイリピン、パキスタン、エジプト、エジプトは一九三六年にイギリスと駐兵協定を結びました。これは日本の安全保障に匹敵するものであります。スエズ運河の要衝にあるお前の国は弱いから、おれの国が保護してやるとい
つて、長きに亘
つてイギリスの支配下にあるわけであります。我々は安全保障条約を結ぶ際に、エジプトの、歴史を顧みることが必要であります。サンフランシスコの講和
会議においてエジプトの代表は、日米講和条約に対しては、第五条、第六条の駐兵条項があるから、これに対して
反対である。エジプトは一九三六年にこの協定を結んで現在悲しい体験を持
つておる。日本がエジプトの二の舞を踏まないということを誰が保証できるか、エジプトはこの講和条約の第五条を保留いたしまして、対日講和条約に賛成したわけであります。こういう点から見まして、更に現在日本に対して大きな力を持
つています。アメリカはイギリスの植民地でありました。アメリカはイギリスと独立戦争をいたしまして、血を流して独立したわけであります。私たちは六百有余の基地が設定され、これを平和的な手段で、我が賞の固く念じていますところの平和的な手段で完全な独立国になるためには、どうしても言論と集会と結社の自由が保障されることが絶対不可欠な条件であるわけであります。このような
法案が通りまして施行されますならば、正しい国民の内心の欲求は発露されず、それが内訂し、やがて政府が心配されるところの破壊的な活動が起ることは歴史に徴しまして明らかであります。私たちは固く平和革命を信じますが故に、そういう
立場をとらざるを得ないわけであります。平和革命を強く主張いたします観点からいたしまして、このような点については断固
反対せざるを得ない。却
つて我が国に爆発的な民族感情が起りまして、そして却
つてアメリカの善意にそむく結果になる。我々といたしましては、十分日本の自主性を確立いたしまして、対等なる
立場においてアメリカと長きに亘る友好関係を保つ必要がある。そういう関係からいたしまして、血の革命を断固否定いたします
立場からいたしましても、どうしても言論、集会、結社、デモンストレーシヨンの自由が保障されるということが必要であるわけであります。私は昭和二十二年から昭和二十四年まで鳥取県
会議長をいたしていまして、その際に総司令部から保安条例を作ることを強く要請されました。併し私はセンシング隊長に対しまして、鳥取県の治安に対しては責任を持つから、このような
法案はわしが県会におる間は断固上程しないという
立場をと
つて、いささかの治安の不安もありませんでした。私はそういうような不安があるといたしますならば、住民がそのような立法を
地方自治法に基いて成すことこそ、住民みずからの手によ
つて治安を
確保するために絶対必要であるという確信に立つものであります。
更に私は斎藤長官は、昭和十三年頃に警察に職を奉じたと申されましたが、私はその当時あなたの属しておられました警察から非常なひどい目に会
つた体験があるわけであります。あなたは日本を亡ぼしたところの全体系の一環としての車を廻されていたわけであります。私が
京都の大学の研究室から日支事変が勃発いたしました際に郷里に帰りましたが、数千の同胞が北支に動員されたわけであります。その際に、鳥取県におきまして、大規模な徴兵忌避
事件が起
つたわけであります。或る者は断食をし、或る者は指を切
つて、徴兵忌避
事件が起
つたわけであります。それに対しまして、それぞれの刑罰が与えられたわけでありますが、某有力新聞がこれをどういうふうに見るかという私に対して新聞紙に掲載を頼まれましたので、国法の命ずるところによ
つてそのようなものがそれぞれ処罰されることは、これは適法であろう、併しながらそのようなことだけではこの問題は解決しない、なぜ彼らがそうせざるを得なか
つたかという背景に遡
つての対策を樹立せん限りは、日本の運命も近き将来に重大な段階に達するであろうという予告をいたしましたために、数万の新聞紙は没収され、私は憲兵、特高のためにひどくいじめられたわけであります。それはあなたの属しておられた特高であるわけであります。その際に、私はこれこそ真の愛国者であ
つて、決して私は日本を亡ぼすようなことを言う者ではないとい
つて、憲兵、特高と対決いたしまして、一カ月有余に亘
つて困難な生活をいたしましたが、私はこの
法案が拡張
解釈と濫用なしには法の立法の目的に副わないものである、そういう点からどのように言われようとも、この
法案というものの本質はそのような過去の轍を踏むものであるという観点から
反対せざるを得ないわけであります。
更に私はこの
法案が五月一日のメーデーに鑑みまして、急遽立法されたところの数種の治安立法と一連の関係にあるものであるということであります。ああいう
事件が起りました際には、必ずその性格からいたしまして行き過ぎの
法案が数多く作られるということは明らかであります。そういう意味から行きまして、もう少し冷却期間をおきまして、プールいたしまして、そうして冷静にな
つてからこのような
事件の発生する原因、なぜ日本におるところの朝鮮人の各位がこのような行動を起すか、或いは日本の運命を担うところの、将来を担うところの若い世代の学生諸君がなぜこのような問題を起すかという根本に遡
つての対策を立てられることが最も必要である。そういう点から五月一日のメーデーに急遽として追い打ちを食わせたような軽率な態度で立法されている点であります。少くともこのような基本的な人権に対して重大な抑制をいたします
法案に対しましては、英米独仏、特に日本と同じ
立場にある西ドイツその他の事例に鑑み、国際的な比較研究をし、或いは日本の治安立法の辿
つた道というようなものを十分考慮されまして、万全の措置をなされて拡張
解釈の虞れが絶対にないという確信に立
つてやられることが必要なわけであります。そういう点から我々としましては
反対せざるを得ないわけであります。
次に、私は講和条約が結ばれましたならば、
吉田総理の歴史的な役割も終
つたわけであります。何と言
つても情勢変化に鑑みまして、極く最低限の昭和二十七年度の立法措置をなされまして、直ちに信を国民に問うて、国民と共に諸立法をされるということが必要なわけであります。そういう点からいたしまして、こういう立法をされることは、却
つて私は吉田内閣にマイナスになる。誰が今日の、吉田さんを想像いたしたでありましよう。サンフランシスコの講和条約のときには、飛ぶ鳥も落される、行く所可ならざるはなし、そのような吉田さんでありました。世論調査によりますると五〇%、か
つてないところの圧倒的な支持を受けられた吉田さんです。併しながら今日においては日一日といたしまして吉田さんに対する信頼が気の毒なほど低下いたしまして、現在は三〇%、そういうことにな
つているわけであります。そういう点から鑑みましても、吉田さんとされては破壊活動防止法、或いはこのような
法案を立法されることが、私は吉田さんのためにプラスにはならない、そういう点からこういう問題は、治安というようなものは国民との協力なしには絶対立法できないものであると私は確信するものであります。そういう点からいたしまして、私はやはりこれは総選挙に問うて立法するのが責任ある政治家のとらるべき
立場である。むしろこういうことをやりますことは、吉田さんに対する攻撃目標がなくなりまして、我々としては選挙のスローガンがなくなるくらいであるわけであります。
次に私はこの
法案が具体的に持
つています性格であります。(「もう大丈夫だよ」「水呑んで」「やれやれ時間まで」「ゆつくりやれ」「最後まで頑張れよ」と呼ぶ者あり)この法律は極めて巧妙に組まれている点であります。この法律は目的といたしまして、「この法律は、集団示威運動、集団行進又は屋外集会が公衆の生命、身体、自由又は財産に対して直接の危険を及ぼすことなく行われるようにすることを目的とする。」と、こういうふうにな
つていまして、各地にありますところの保安条例の許可制度よりかも非常に緩いようにな
つているわけでありますが、ところがこの
法案というものは、第一条にはそういうふうに謳われていますが、第二条の届出、第三条の届出の手続、更に第四条からの届出の受理、更に第五条からの補正命令等、第六条からの遵守命令等、更に第七条からの命令の送達、更に第八条からの警察職員の権限、こういうようなことによ
つて、事実上どのようにでも禁止的なことができるようにな
つて、迂回的な許可制度、迂回的な禁止制度であるということを私たちは思わずにはいられないわけであります。これは実に緻密に
計画されていまして、部分的な
修正ではどうにもならないように、実際はこれは許可制度よりかも遥かに、届出さえすればできるようにな
つていますが、どうにでもできるようにな
つている点が非常に巧妙ではありますが、現在の警察官の動向からいたしましても、拡張
解釈、濫用等がなされる虞れが極めて大であるというふうに私は
考えまして、以上のような日本の置かれました国際的な背景、国内的な事情、或いは治安維持法、或いは明治の保安条例、そういうものが辿
つたようないろいろな観点からいたしまして、私はこの
法案は日本の運命に対しまして重大な影響を及ぼすものであるというふうに
考えまして、私は
反対するものであります。特にアメリカのと
つておられます政策は、そういうふうな観点からいたしまして、アメリカの対日政策を推進されるために強力な内閣を作
つておられる。そしてそれに一切の権限を集中いたしまして、中央集権の途を辿
つて、そこに命令いたしますれば、ボタン一つ押せばすべて下に通ずるようにな
つているというような仕組が巧妙にとられている点からいたしましても、私はこの
法案に対して断固
反対するものであります。いろいろ
議事妨害のようなふうにとられまして、二年有余に亘りまして非常に厚意を受けています皆さんに対しましては心苦しいわけでありますが、私は現在の瞬間というものは、そういうような日本が重大な
立場にある、特に私は平和か戦争かということが一番大切な問題であると思うわけでありますが、こういう
法案が通
つて、国民の自由なる意思が発表できませんようになりますると、往年の過ちを犯すことは明らかであります。私が先般入手いたしました(「もうたくさんだ」と呼ぶ者あり)本によりましても、トルーマンは近く戦争は起る、第三次世界大戦が起ると、こういうことを言
つています。更に近く日本に来ますヘクテラー海軍作戦
部長も、一九六〇年までには米ソ戦争が起るとアメリカの指揮者が言
つておられるわけであります。そういう際に、私はこの間に挾まれた、而も革命的な兵器である原爆、水素爆弾等がある際において、どのような運命に八千万国民が直面するであろうかということを
考えますると、力の限りを尽しまして皆さんに訴えまして、今日に及んだことを深くお許しを願いたいと思うわけであります。
以上数点を挙げまして、日本社会党が
反対する理由を申述べた次第であります。いろいろ
委員長並びに各位に対しまして御迷惑をかけたと思い。ますが、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)何とぞ御了承のほど
お願いいたす次第であります。