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1952-06-17 第13回国会 参議院 地方行政委員会 第54号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)    午前十一時十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事            堀  末治君            中田 吉雄君    委員            岩沢 忠恭君            石村 幸作君            高橋進太郎君            宮田 重文君            館  哲二君            若木 勝藏君            原  虎一君            林屋亀次郎君   国務大臣    国 務 大 臣 岡野 清豪君   政府委員    地方自治政務次    官       藤野 繁雄君    地方自治庁次長 鈴木 俊一君    地方自治庁行政    課長      長野 士郎君    地方自治庁財政    課長      奧野 誠亮君    地方自治庁公務    員課長     佐久間 彊君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君    常任委員会専門    員       武井 群嗣君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○地方公営金茶法案内閣提出、衆議  院送付) ○地方自治法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今より委員会を開きます。  本日は地方公営企業法案につきまして先日来の質疑の継続をいたします。本日は質疑が盡きましたならば討論採決に入りたいと存じます。御質疑のおありのかたはお願いいたします。
  3. 若木勝藏

    若木勝藏君 第二條について伺いたいのでありますが、水道事業は五十人、或いは軌道事業が百人、こういういわゆる人数によつて事業を限定しているように見えるのでありますが、そのことについて一つ政府委員の御説明を願いたい。  それからもう一つ水道事業という中に下水道が入つているかどうか、その点も伺いたいと思います。
  4. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 第二條地方公営企業種類を書きましてその下に人員を書いてあるわけでございますが、これはこの法律適用を受けまするものは相当の大規模企業経営体でありませんと、経営が非常に複雑でございまするので、むずかしいというところから、先ず水道については五十人、軌道自動車運送地方鉄道については百人、電気、ガスについては三十人という基準を掲げまして、これ以上のものについては当然に地方公営企業適用するが、それ以外のものにつきましては、第二項によりまして條例適用したいという場合には適用することができるということにいたしたのであります。なぜさような大規模のものだけに限定いたしたかと申しますると、独立企業経営いたしまする管理者を置きまして、その管理者相当の自主的な権限を與え、独立性を與えまして企業経営させるということは、やはり相当規模のものでなければならないと思うのであります。更にこの会計経理の問題でございますが、これにつきましては一般の官庁の予算会計方式と全く異なりまして、いわゆる発生主義方式に基いて経営を記録いたさなければなりませんし、減価償却その他従来の方式と異なつた考え方経営しなければなりませんので、相当のこれは專門的な知識経験を持つている者が運営いたしませんと困難であります。さような職員を用意いたしておりまするのは、やはり主としては大都市公営企業でございまして、そういう大都市にだけ限定するということも原案の立案におきましては考えたこともあるのでございますが、それも如何かということで大体ここに書いてありまする基準は、人口十万程度の地方公共団体において経営しておりまするものを一つ基準として考えまして、かような数を設けたのであります。併しこれ以下の所でもこの法律適用し得るだけの実体を備えておるところがあれば、これは條例でやつてよろしい、併し法律上当然に適用するの即ち強制適用にするのはかような大規模のものだけに限定しよう、こういう考え方であります。  殊に労働関係につきましては、別個に地方公営企業労働関係法を立案いたしまして、このほうでは人員制限を設けず定めておりまするので、地方公営企業に従事いたしまする公務員利益保護という見地から申しますれば、そちらのほうで従事員の如何にかかわらず新らしい一つ労働関係方式が定められておりまするので、こちらの公営企業本法のほうにおきましては、独立組織を設ける、或いは複雑なる会計経理制度をとることが可能であるような範囲のものにやはり限定するということが必要であろうと思うのであります。  それから第二点のお尋ねの下水道でありますが、下水道につきましては、ここには水道事業の中には入らないのであります。水道事業と申せば水道條例によりましていわゆる上水道意味するということでございます。下水道に関しましては、今日の段階におきましては、やはりこれを築造いたしまするためには一時に非常に多額の経費を要するわけでございまして、独立採算という見地からは下水道事業経営することは今日の段階ではまだ困難であります。併しながら特殊の地方団体におきましては、水道事業下水道事業共同一つ特別会計でしておるものもあるわけでありまして、さようなところはこの第二項の規定の活用によりまして一体としてこの法律適用するということが可能であるわけでございますから、一律に下水道事業にも適用するという方式をとらなかつたわけであります。
  5. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうしますと、今の御答弁によつて下水道事業関係は第二項を適用して、その公共団体実情によつてはこれと併せてやつて行くといくということに了解して差支えないのでありますか。
  6. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) その通りでございます。
  7. 若木勝藏

    若木勝藏君 それでは次に第三條のほうの関係で伺いたいのでありますが、「企業経済性発揮するとともに、その本来の目的である公共福祉増進するように運営されなければならない。」こうなつておるのでありますが、これは公共福祉のために経済性発揮するということになるのか、或いは経済性公共福祉増進するということを同等に見ているのであるか、どちらに重点があるかこの点を伺いたいと思います。
  8. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) これは今までの地方公営企業につきましては、企業のいわゆる経済性従つて組織なり運営方式なりを合理化するという点につきましては、いささか努力が欠けておつたわけでございまして、もつぱらその公共団体経営をいたしまするので、公共性基本にしてできておりまする各種の会計制度或いは公務員関係にいたしましても、さような公共福祉に奉仕する公務員という見地からの規定が、地方公営企業に対しても全面的に適用になつてつたわけであります。この地方公営企業法案におきましては、さような地方公共団体の本来の目的である公共福祉という点もこれは当然のこととして勿論前視しなければならんわけでございますが、従来閑却されておりました企業経済性発揮するという点を特に取上げて規定をいたしているわけでございます。併しながら地方公営企業といたしましては、本来的には公共福祉増進ということのために地方公共団体があるのでございまするから、この目的をはずれては企業経済性というものはあり得ないのであります。それでかような公共福祉という一方の大原則を考えつつ企業経済性発揮するという点を強調したわけであります。
  9. 若木勝藏

    若木勝藏君 その次は第二章の管理者の設置のところで伺いたいのでありますが、地方公共団体一般会計のほうには監査委員というものがあつて監査委員制度があるのでありますが、この企業経営についてはそういう点はどういうふうになつておりますか。
  10. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 監査委員権限につきましては、御指摘のように企業能率性といいますか、効率性というものを監査するというようなことは、最も重要な監査委員の職責として考えておるのであります。今回の地方自治法改正案におきましても、さような能率的な見地から監査をする、従来ともすれば会計経理という面からのみの監査が中心であつたのでございますが、効率性能率性と、いま少し広い見地からの事業経営合理化という面も監査対象になることを今回明記いたしておるのであります。さような監査委員監査権限地方公営企業にも当然に及ぶわけでございまして、それによつて企業合理性経済性というものも十分に批判の対象になり水準を高めることができるというふうに考えるわけであります。
  11. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうしますと、その地方公企業監査委員というものはどういうふうにして設置されるか、どこかその規定にあるのですか。
  12. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) これは地方自治法監査委員組織権限その他が規定されておるわけでございますが、その地方自治法本法によりまして、地方公営企業地方公共団体経営する企業でございまするから、当然に監査委員権限が及ぶということになるわけであります。監査委員の選任の方法は地方自治法の中に百九十五條でありますが、都府県にあつては四人、市町村にあつては二人というのが原則でありまして、これを長が議会同意を得て半数は議員の中から、半数学識経験者の中から選ぶということになつておるわけであります。
  13. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうすると一般会計監査委員がこの企業体監査委員に当る、こういうことに触るわけですね。
  14. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) その通りでございます。
  15. 若木勝藏

    若木勝藏君 それでは第八條管理者地位及び権限関係して来るかと思うのでありますが、この地方公営企業法案におきましては、労組交渉して労働協約を結ぶことができるように関係法規の中にあるようでありますが、その労組交渉相手が誰になるのか、公共団体の長になるのか、管理者になるのか、その点を伺いたいと思います。
  16. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この労働協約相手方でございます、これはその協約内容種類によつてつて来るわけであります。この点衆議院修正におきましては、第九條の第十三号としまして、「その権限範囲内において労働協約を結ぶこと。」ということを修正して附加えられたわけでございます。この修正でも明確でございまするように、その権限範囲内において労働協約を結ぶということでありまして、管理者としましては、予算上或いは資金上可能なる限度におきまして給與の引上というようなことに関しまして、組合労働協約締結することができるのであります。又いわゆる彈力條項というのがありまして、当初予算において予定をいたしましたよりも以上の事業量事業収入がありまして、例えば電車の乗客が予定よりも一割か二割余計入つた、そうしますと収入がふえたのに応じて、経費の面でも一割乃至二割これに応じつて支出できるということになつているわけでございますが、さような彈力條項限度内においては給與の引上等についての労働協約を結ぶことができるわけであります。併しながらさような彈力條項限度をこえた場合、或いは全然彈力條項相当する事実がない場合におきましては、予算上、資金上の限度をこえました協約ということになりますると、これは地方公共団体の長がこの締結相手になるというふうに解決いたしておるのであります。政府といたしましてはさような意味から、協約内容によつて長なり或いは管理者労働協約相手方になるという解釈でこの案を出したわけでございますが、衆議院修正はその解釈を特に管理者のほうについて、その権限範囲内に労働協約を結ぶというふうに明確にいたしまして、反面それ以外の問題については長が協約相手方になるということを明らかにしたわけでございまして、政府としてもこの修正については同意をいたしておる次第でございます。
  17. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうしますと管理者交渉相手にもなるし、又長が交渉相手にもなる。長が交渉相手になるという場合は、今一例を申されましたが、そのほかに何かありますか。
  18. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 今予算の関連のことで申上げましたが、例えば條例に抵触するような労働協約ということに相成りますると、條例発案権を持つておりますのは長でございまするので、従つて長との間において協約を結ぶということになるわけでございます。
  19. 若木勝藏

    若木勝藏君 大体そういうふうなことで了承いたしました。
  20. 中田吉雄

    中田吉雄君 連合委員会に欠席しましたので重複するかと思うのですが、次長のほうから頂きました資料を見ましても、世界各国公営企業を持つているようですが、その公営企業労働関係諸法との関係がはつきりしていないようですが、諸外国でもやはり只今立法されているように公営企業に関する労働特別立法によつて律しているのですか。そういう事情がわかりましたら一つお述べ願いたい
  21. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 公営企業に従事いたしておりまする職員労働関係でありますが、それにつきましては一般労働組合或いは労働関係調整法といいますか、さような一般の労務者と同じような建前をとつている所もあると思いまするが、例えば非常に有名なアメリカTVA従業者につきましての労働協約関係は、アメリカでは非常に模範的なものといわれているようでございますが、これはやはり労働協約締結権を認め、その苦情等については苦情処理共同会議において調整をしておるわけであります。今回の地方公営企業労働関係法におきましては、大体さような点に類似しているように私ども考えるのであります。今までは一般行政職に従事いたしまする地方公務員勤務條件に関する原則基本といたしまして、それを地方公営企業職員にも適用するかしないかに非常に問題があり、結局地方公務員法の補則では取りあえず従前のままにいたしておつたわけでございまするが、今回の労働関係法において労働協約締結権を認めたわけであります。ただ罷業関係が、罷業権という点において制限は受けておりまするけれども、これはTVAのような独立法人格を持つたものと違いまして、やはり地方公共団体直営企業でありまするので、そういう点においての罷業禁止というものはあることはやむを得ないことではないかというふうに考えておるわけでございます。
  22. 中田吉雄

    中田吉雄君 どうも今の御説明でははつきりしないのですが、イギリスなどはどうですか。やはり特別の立法によつて律しているのですか。大体日本のような労働組合法一般適用をしているのですか。そういう関係はどうですか。
  23. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) イギリス事情は詳細には承知いたしておりませんが、私ども聞いておりますところでは特別な立法はない、一般立法がそのまま適用になつている。ただ細部の点につきましては、公務員につきましてはそれぞれ公務員の各種類ごとの全国的の連合組織地方団体連合組織との問の一種の協定によりまして、お互いに折合つた讓合つた線双方ともそれを守つて行くというようなことで、現在地方公務員法細部規定が設けられておりますような勤務條件に関することは、大体双方話合できめた協定で律せられているというふうに聞いております。
  24. 中田吉雄

    中田吉雄君 私この点非常に問題で、公共性ということによつてその従事者がやはり特別な労働立法によつて不当に勤労者の持つ基本権制約されるということは非常に重大だと思いますが、この点は今回間に合いませんので申上げませんが、私やはり大体労働関係諸法適用すれば間に合うと思うのですが、その点は私見にわたりますから抜きまして、二十三條について特別利息を付けられます立法上の趣旨をお伺いいたしたいと思います。
  25. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 地方公営企業経営につきましては、考え方によればドイツなりオーストリーのような方式のごとく公私共同経営形態即ち地方団体資本の半額なり一部なりを出資いたしまして、更に民間資本をそれに加えて、そういう形で地方公営企業経営するとかいうような形もあるわけでありますし、更に進んでは今の国の場合の公社組織或いは公団組織と同じように全額地方公共団体出資というような方式で、その公団なり公社をして経営に当らしめるということも考えられないわけではないのであります。そういうふうに一般民間資本の参加を求める方式、或いは地方団体資本でありまするけれども、民間資本の間に伍して十分企業的に経営できるような企業経営組織というものも考えられるわけでございますが、この地方公営企業法案におきましてはさような方式をとりませんで、地方公共団体直営する方式、普遍的なる直営方式規定しておるわけでありまして、地方公共団体の本質から申しまするならば、地方公共団体自体がやはりさような住民福祉になるようなサービスを提供するというようなことは本来の性質であるわけでございまするから、若しもさような企業経営地方公共団体の現行の組織なり制度なりが不適当である、経済性企業性の点において不十分な点があるということであるならば、その点を改善いたしまして、地方公共団体直営組織経常方式におきましても十分合理的な企業運営のできるようにすべきであるというのが、地方公共企業法案考え方であるわけでございます。そういうふうに地方公営企業地方公共団体が直接経営するという方式をとつておりまするけれども、併しながら起債という方式に限らないで、民間株式投資と同じような性格資本地方公営企業経営に吸収して行くということを考えてもいいのではないか、そういうふうに考えて参りますと、大体株式と同じような方式の、即ち償還について期限を定めない無期永遠公債と申しまするか、永久公債と申しまするか、さような姿のものを一つ考えていいのじやないか。この点は昭和の初頭から東京市政調査会等におきましても、かような永久公債方式地方公共団体企業経営方式の中にとり入れられて然るべきであろうというような考え方があり、さような一つの試案なども出ておつたわけでございまして、今回の案におきましてはさようなものをとり入れたわけであります。要するにかようなものが一般起債市場において、或いは株式市場において如何ような地位を與えられますか、これはもつぱら今後の経済界の動きによつてきまると思うのでございますが、併し今申し上げましたような趣旨でこのような制度を考えた次第でございます。
  26. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますとこれは償還期限を定めない永久債のような性格を持たせることに対する報償のようなものですか、或いは民間資本を導入するというような両方含まれているのですか。その関係について。
  27. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) これは民間株式に対する配当というような意味で、一般地方債よりは若干有利な形、さりとて一般株式よりは若干緩和された形、まあその辺が実際どのような利息になりますかわかりませんけれども、そういうような考え方でございます。
  28. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういうようなことが、公営企業拂下げたりいろんな関係で民営に移されて行くというような各府県でそういう例はありませんか。公営企業で非常に採算性がいいとかいうような関係で、一応公共団体が多大の出資をしておいて、そういうようなことの魅惑といいますか、誘惑の材料なんかにはなりませんか。
  29. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 地方公営企業を例えば民間に委託経営する、或いは民間会社讓渡するということは、方式として考えられないことはないわけでございますが、むしろ地方公共団体としては経営成績のいいものはこれを手放したがらないわけでございまして、赤字経営のようなそういうものについてそういうことがむしろ考えられると思うのでございまするが、実際の実例は殆んど聞いてないのであります。併し又同時に地方自治法上はさような地方公営企業独占的性質を有する地方公営企業を讓り渡す場合には、住民投票を必要とするとか、或いは議会の議決でも特別に多数決、四分の三以上の多数決を要するというようないろいろ制約がございまするので、さような制度面からも委託経常讓渡というようなことは相当困難になつておるわけであります。
  30. 中田吉雄

    中田吉雄君 もう一つ第三十七條の職階制なんですが、公営企業の一番の大きな欠点は、まあお役所仕事といいますか、公共性の枠内における能率化というような制約のためですか、非常に民間会社民間企業に比べて能率が上らないというのがまあ一般の声ですが、だんだん世の中が進むに従つて公営企業のようなものがふえる関係にあると思うのですが、この職階制というものは企業が官僚化しまして能率増進といいますかそういうことの大きな障害になるものにはなりませんか。給與その他の第三十八條或いは人事院の勧告等に基いて作るいろいろな内部な職階制調整で十分防げると思われますか。非常に民間企業よりかロスが多い、採算が合わないというようなことがいわれるのですが、とにかく職階制との関係についてお伺いいたします。
  31. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この職階制といいますか、アメリカに主として発煙したいわゆる近代的な人事行政管理方式でございますが、これは御承知つのようにアメリカのいわば非常に機械的な企業経営人事管理方式として、職員の採用なり或いは職員管理なりについて採用され、まあさような面におきまして一番よくあてはまるものであろうと思うのであります。それをいわゆるスポイル・システムの排除というような方向において、国家公務員人事管理の中に或いは地方公務員人事管理の中に導入されて来たわでけございますが、併しながらその近代的な人事管理生れ故郷であるかような企業経営の面においてこそ職階制というようなものが一番よく妥当するのではないかというふうにむしろ考えておるわけでございまして、これによつて能率発揮を害するというようなことはないのではないか。むしろかような科学的管理方式を巧みに採用することによつてこそ企業能率が上るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  32. 中田吉雄

    中田吉雄君 アメリカフォードシステムといいますか、ああいうコンヴエイヤー・システムといいますか、極めて流れ作業のような近代化したものでしたならば、そういう只今説明のようなことが非常に合理的に適用できるのではないかと思うのですが、私はやはり日本のようなまだそういう高度な発展をしない段階においては、個人的な才能といいますかそういうものが本当にやはり登用されて、十分に手腕を振えるような形がないと、職階制に縛られて動脈硬化のようなことになつて、やはりお役所仕事能率が上らんというようなことになる慮れがあるのじやないかと思うのですが、第三十八條なんかを見ますると、「企業職員給與は、その職務責任に応ずるものでなければならない。」というようなことで十分救済できるかも知れませんが、まあ私はそういうことが非常に公営企業能率という両題に関連すると思うのですが、その点どうですか。
  33. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 御指摘のようにフォードシステムといいますか、さような最も機械化されたものに一番職階なり或いは職階制給與というものがぴたつとあてはまると思うのでございますが、併しアメリカのその後の発展の上におきましては、地方公務員なり国家公務員につきましてもかような方式というものが採用されておるわけでございまして、ただ職階制内容につきましては、日本の今日までの発展段階実情に応じた調整は必要であろうと思いまするが、かようなものの考え方、要するに同一職務責任に対して同一給與を與えるというような立場から、職務の現状を科学的に分析いたしまして、それに応ずる給與体系を確立するという考え方、これはやはりかような企業経営の上において十分に活用し得るものであり、これを活用することによつて能率発揮が可能である、こういうように考えるのでございます。
  34. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点で先ほど例えばテネシー・ヴアレーの問題を言われましたが、ああいうふうな原子力管理委員長をやつていましたリリエンソウル、ああいう人を本当にやはり登用するようなことができるのですか。こういう職階制でもやはりできるようなモデル・ケースになつていますか。いずれ次長から通達されるモデルを示されると思うのですが、そういう点どういうことになつておりますか。
  35. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この点管理者職階制を実施するという建前になつております。原案を管理者だけではなくて、もつと広い意味で、即ち管理者だけの考えでなく、地方公共団体として職階制が実施できる、或いは地方公営企業として職階制を実施する、こういう考え方衆議院修正をされたわけでございますが、この職階制を如何ように定めるかということは、できるだけ各企業々々の実情に合致するように、又企業管理をいたしまする関係機関全体の考え方において、最も合理的であると認められる職階制を実施することがいいと思うのであります。別にかような姿のものでなければならんというようなそういう拘束的なものを地方自治庁として示す考えはございませんが、併し一般的な標準的なものは示したいと考えておるのであります。併しこれは各企業々々によりましてこの職階方式も細かく申すと違うと思うのでありますが、併しだんだんこれは研究を重ね経験を重ねて行つて、全体の力で改善をして行くほかはないと思うのであります。
  36. 中田吉雄

    中田吉雄君 もう一点。その点なんでありますが、この法律の施行期日は公布の日から起算して六ヵ月以内とあるわけなんですが、やはり何らかのモデルをお示しになることを思うのですが、そういう際に何としても現場で働く人が希望を持つて十分働けるような職階制であることが必要だと思うのですが、何かそういうところの労働組合の代表者の意見でも聞かれるような御用意がありますか。その点一点だけ。
  37. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この職階制を必ず実施しなければなら安いということでなく、実施することができると、こういうゆとりを設けておるわけでございまして、御指摘のように本法施行後六ヵ月以内に必ずやるというものでもないわけであります。併しこの職階内容が成る程度労働協約話合のうちにおいても固まつて来る面があろうと思いまするし、又技術的見地から氏洲の同種企業管理方式というようなものを研究いたしましたり、或いは同種類企業経営をしておりまする地方公共団体相互間の比較研究というようなことで逐次合理的になるように進むということのほかはないと考えたわけでございます。
  38. 若木勝藏

    若木勝藏君 もう一点聞き洩した点があります。第三十八條の第三項、衆議院修正でありますが、「給與額決定の基準は、」というところがあるのを「給與額決定の」まで削除することになりますか。そうしてこの給與額決定というのは労働協約のほうに移管する、こういうような修正でありますか。この点一つお伺いしたいと思います。
  39. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) これは原案の「給與額決定の基準」といたしました趣旨も、実は地方公務員法の二十四條で一般職員給與については全部この條例で詳細の点まできめるようになつておるわけでありますが、企業職員につきましては団体交渉によりまして細目を決定させることが適当であるわけでありますので、地方公務員法第二十四條のように給與條例で定めるというような表現をとりませんで、給與種類給與額を決定する際に、その前提となるいろいろな基準、それだけをきめましてあとの細目は全部団体交渉に委ねる、こういう趣旨であつたのでございますが、併しこの「給與額決定」という字句が、個々のどういうものには何級何号の給與を給するという決定そのものの基準というような、言い換えますと俸給表のようなものまでこれで意味するようにとれるという御意見でございまして、そういうことでございますると、原案の趣旨給與表までも條例できめさせる趣旨ではございませんので、給與表を決定いたしますそのもう一つ前の前提となる原則的な基準があるわけでありますので、「給與額決定の」こういうことがあるならば、むしろ「給與額決定の」などという誤解を招く字句を削つて、ただ大まかに基準といつたほうが適当であろう、こういうような御意見で御修正になつたのでございます。
  40. 原虎一

    ○原虎一君 先ほど若木委員から質問がありました団体協約を結び得る責任者、第八條によれば、管理者はその権限内においてやつて行く、それ以外のものは長が協約を結ぶ責任者にならなければならんということになりますが、その長が団体協約を結ばなければならないとこういうが條文で明確になつておるのはどこでしようか。
  41. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) これは衆議院の第九條の修正によりまして、九條の十三号に、即ち一番しまいの号の前の所に一号加えまして、「その権限範囲内において労働協約を結ぶこと。」というのを入れたわけであります。そこで九條は管理者がやります仕事を列挙しておるわけでございますが、八條におきまして「管理者は、左に掲げる事項を除く外、地方公営企業の業務を執行し、当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表する。」、こう書いてありまするので、八條の一項の一号から四号までにありまするところは、これは管理者権限に入らない。九條の十三号とも関連して入らないということになるわけでございます。そこで予算を調製する、例えば予算上可能な限度を超えた労働協約ということになりますると、これは予算の発言権がありまする長が労働協約相手方になる。又八條の第二号で條例で定めてある給與種類なり基準なりを変えるような性格労働協約というものであるならば、これも議案の提出権は長にございまするので、長が労働協約相手方になる、こういうことで八條、九條を通じてさようなことになると思うのであります。
  42. 原虎一

    ○原虎一君 私の伺つておるのは、団体協約を結ぶ場合、労働協約を結ぶ場合における管理者のないところは、当然長が責任者でありますが、管理者のあるところは、長は当然協約を結ぶ義務者にならなければならんという條文はりどこにもないわけですね。今のあなたの言う八條と九條との関連においてそう考える。そうなるというのであつて、長が団体協約労働協約を結ぶのを拒否したときに、拒否できないということはどの條文になりますか。
  43. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 拒否という意味でございますが、協定をしようとする、協約をしようとする内容について賛成をしがたいという場合には、これは管理者でありましても、長でありましても、協約を結ぶわけには行かんのでありますが、その内容について賛成をしておるという場合に、その協約内容が先ほど来申上げまするように、管理者権限範囲内に属する事項、即ち予算で申せば予算上可能であるとか、或いは彈力條項範囲内に入る程度のベース・アツプの問題ということでありまするならば、これは管理者がその相手方になりまするし、又長はそれを超えたものについて、管理者権限に属しないものについては、一般的に地方公共団体の執行機関でございまするから、そういう意味からも長に協約締結権があると思いまするし、殊に先ほど来申上げました八條、九條の関係からいたしまして、その点は明らかであると思うのであります。
  44. 原虎一

    ○原虎一君 この点は非常に問題じやないかと思うです。管理者団体協約を結ぶ範囲をきめて、労働協約というものは管理者職員との間に結ばれる、併し管理者があるところにおいては、管理者権限以外のものは長が結ばなきやならんという條文がない場合において、それに応ずるところの長に責任はないじやないですか。これは非常に私は今の御説明では明確を欠く虞れがある。殊に衆議院が第九條第十三号を明確に管理者権限だけのものでやるということにしたとは言え、それならば逆にしておるのであるならば、労働協約は、管理者のあるところは管理者職員とでやるのであつて、長とはしないという解釈もできるのじやないですか。その長とはしないということが言えない修女はどこにもないじやないですか。この点はその解釈が両方にできるのでは将来問題が起きやしないか。
  45. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この地方公共団体地方公営企業経営権というものは、若し管理者を置かず、要するに地方公営企業というような方式をとらない限りは、全部長の執行権限に属するのであります。そういう長の執行権限の中で、特に管理者権限として八條、九條に抜き出して書いてあるわけであります。この抜き出された事項以外のものは、地方自治法一般原則から申ましても、執行機関の責任者である長の権限に当然に属するわけであります。殊にその点衆議院のほうで「その権限範囲内において労働協約を結ぶこと。」、これが管理者権限、こういうことになりますると、労働協約については、それ以外の労働協約を結ぶということは、これは当然本則に帰つて長権限だということになるわけであります。
  46. 原虎一

    ○原虎一君 それで大体明確になりましたが、もう一つはこの前質問いたしました第二條二項の「地方公共団体は、政令で定める基準に従い、條例で定めるところにより、地方公共団体経営する地方公営企業以外の企業に、この法律規定の全部又は一部を適用することができる。」とありまして、この「政令で定める基準に従い」という、その政令の何か腹案がありますればお示し願いたいとお願いしておいたのです。  それからもう一つは、二項においては第一項にあります指定された事業に従事する従業員の数より少いから、これを公共企業体にするということはできないように考えられますが、数が少くても地方公共団体の思意によつてできるようにしたら何らかの弊害があるか、その点をもう一度お伺いしたいのであります。
  47. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 最初の二條の二項につきまして、「政令で定める基準」というその政令が何かというお尋ねがこの前あつたわけでございますが、只今考えておりますところでは、この前次長からお答え申上げましたように、地方公営企業以外の企業につきましてこの法律規定の全部又は一部を地方団体條例適用することができることになつておりますが、この全部又は一部というものにつきまして政令で基準を定めることにしておるのであります。大体そういうふうに考えております。と申しますのは、この中の財務なり組織なりの或る特定の條項だけを抜いて適用するというようなことにいたしますと、全体としてうまく廻りませんので、ここの今考えております政令の要綱では、例えば総則と組織の章、財務の章及び附則に関する規定適用する、一部の場合にはそういうふうに適用して行く。或いは組織は別にいたしまして、総則と財務と附則に関する規定適用して行く。こういうふうな二つのタイプを考えておるわけであります。  それからもう一つは、政令でこのような基準を定めますのは、公営企業以外の企業法律の全部又は一部を適用すると申しましても、どのような範囲適用するかということにつきまして要らざる誤解を生ずる虞れがないようにいたしますために、一応のスタンダードをきめたい、このような考え方であります。
  48. 原虎一

    ○原虎一君 第二のほうの質問ですがね、私のお尋ねしたのは、第二條一項で示しております事業は、例えば水道事業は五十人以上でなければなりません。併しそれは地方自治団体が三十人でも適用するというような場合に、これはできないのであるかどうかということをお尋ねしておるわけであります。
  49. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 只今の五十人ではなくして三十人の場合には、これは勿論二項によりまして、條例で全部の規定適用するということを地方団体できめますれば当然に適用になるわけであります。一部を適用する場合のことが政令でどのような基準で、一部というのはどのようなものが適用になるのかという点を考えておるわけであります。
  50. 原虎一

    ○原虎一君 そういたしますと、第二條一項は、これは事業に従事する従業員の数によつて、この表以上の従業員が従事する事業には強制的にここの適用を受けなきやならん。その人数以下の事業は、地方公共団体が政令に定めるところによつてやれば任意にできるということになるわけですか。
  51. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 大体お話の通りでございます。と申しますのは全部の場合には政令で定める基準というものは、現在のところじや全部の適用については基準をまだ考えておりませんので、それにつきましては政令にかかわりなく條例で定めれば適用になるのであります。
  52. 原虎一

    ○原虎一君 そうです、簡單に地方公共団体條例で定めるとすればやれるということになるわけですね。
  53. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) その通りでございます。
  54. 原虎一

    ○原虎一君 もう一つ伺いますが、人数を、例えば軌道事業を百人とありますのを、これを七十人以上というふうに定める場合、要するに従業員の人数をこの数に定めたという考えの基準基本はどこにあるわけでありますか。
  55. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) この点につきましては、先ほど次長でほかの委員のかたの御質問に対しまして、お話を申上げたいと思うのでございますが、現在この二條の一項に掲げられております基準によりますならば、大体人口十万と先ほど申上げたと思いますが、七、八万程度、それ以上の地方団体が行つておりますところの企業に当然適用になる予定と考えております。で例えば従業員で申しますと、全体で六万七千くらいおるのでありますが、その中でとの法律が当然適用になりますものが、五万四千くらいのものはこの法律の施行と共に同時に適用になる、そういう適用の幅でございます。と申しますのは、相当規模が大きな企業につきましてこの地方公営企業法が当然全部適用になるようにいたしておるのでございますが、これは先ほど御説明がありましたように、企業によりまして組織なり企業会計方式なり、減価償却でありますとか、貸借対照表でありますとか、損益計算でありますとかいうような企業会計方式を取入れますにつきましては相当な熟練なり経験を要するわけでございますので、差当つて直ちに適用になりますものはこの程度の規模企業であり、且つその程度の規模地方団体であることが適当であるというように考えたわけであります。それ以下の企業或いはそれ以外の企業につきましても、先ほどお話し申上げましたごとく、第二項によりまして地方団体條例で定めますれば当然適用されて参るわけであります。
  56. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) その他に御質疑ございませんか。……それでは御質疑は盡きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないものと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正意見等がございましたならば討論中にその発言を願います。
  58. 若木勝藏

    若木勝藏君 討論、採決に入る前に私ちよつとと今考えたのですが、議事について疑義があるのです。それはこの法案で最も重要な企業職員の身分取扱については、この法律に特別の定のあるものを除くほか地方公営企業労働関係法の定めるところによる、こうなつておる。ところが現在においては地方公営企業労働関係法がまだ成立しておらないのです。でそれが如何ように修正されるかも知れないし、或いは成立しないかも知れない。そういうことはその内容の如何によつてこの法案全体に又関連して来る向きがあるのじやないかと思う。そういうことを今考えたのでありますが、これは法的に見ましてそういうことを抜きにして、一体この法案の採決を先にやることができるものかどうか、これに対して疑問を持つておるのであります。如何ようなものですか。
  59. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) その御意見はよく私もわかりますが、ただこの法案の関連の労働関係法は私のほうでなく、御承知の労働委員会にかかつておりますので、その点は必ずしも向うが通らなければこの採決ができないというふうな法的なあれはないと思うのでありますが、ただ向うの内容が変化するかも知れないということは十分考えております。
  60. 若木勝藏

    若木勝藏君 その点私はその疑義が法的に、或いは慣例などによつてはつきりするのであれば、それで異議はないのありますが、ただ私そういう疑問を持つたのでありますが、皆様がたのお考えもあると思いますが……。
  61. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 只今のことは私もよくわかりませんですが、原さんなんかどうお考えになるか、御意見をよく承わりたいと思いますが、この点は地方公営企業労働関係法労働委員会で審議しておりまするから、向うの内容が変化するということはあり得ると思いまするが、そのためにこちらのほうがこの法案をいじらなくちやならんというようなことはないのではないかと私は思つておりますので、それでこれを先に採決してもいいのではないかと思います。その点につきまして皆様がたの、各位の御意見を一つ
  62. 中田吉雄

    中田吉雄君 委員長の申されたことも御尤もですが、ただ衆議院の審議の経過を見ますると、やはり公営企業労働関係のほうが通つてからやはりこれをやつているのです。尤もこちらではあの法律が更によくなることはあつても悪るくなるような修正はまあないということはわかりますが、或いはひよつとすると私の言つたようにあれが通つて、又もう一遍これを修正しなければならんことが起るかも知れんということはあるのじやないかと思いますが、私なんかとしてもまあ余りこれには異議がないのですが、ただ併し上つたことにしてもまえばどうかという問題なんで、労働関係法が過つて、その規定のためにわざわざもう一遍修正せねば、必然的にやらねばならんということに……。
  63. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今の点ですね、若木さんの御意見も私よくわかりますが、ただ労働関係法はあの関係法のほかに二つあるのでございまして、なかなか重要法案と思いますから、本会議で採決が出るのはなかなか遅いだろうと思います。それで法的に考えますと、こちらの本会議が通らないと最終決定はないわけでございますから、そうしますとやはりいろんなこちらのほうの議事の運営のことから考えましても、それとやはり非常に見合つておりますと、こつちの委員会の採決というものは非常にむずかしくなつて参りますし、そういう点もよくわかることはわかりますけれども、こちらは別にやつてもそう何か重大なる支障は出て来ないのじやないかと大体考えております。若しそういう点で別段強くそれで主張なさるかたがなければ、まあこの程度で一つ上げて頂きたいと思います。
  64. 若木勝藏

    若木勝藏君 この取扱に対して委員長さんのほうで然るべき一つの手続なりあれを以つて処せられるのであれば私は疑義はないです。
  65. 原虎一

    ○原虎一君 これは衆議院修正でなければ、要するに原案でありますれば差支えないと思うのですけれども、衆議院修正はちよつと私ども疑義があるわけでございます。衆議院の場合においては労働法を先に労働委員会が通して、そのあとでこの公営企業法が審議してきめられたわけでございますが、こちらは逆になりますから、形式の問題でありますけれども、ちよつと疑義があるのです。ですから議事部等の意見をちよつと聽取されたほうが過ちがなくてよろしいと思います。
  66. 中田吉雄

    中田吉雄君 ただもう一遍やつておいて、あちらのほうが変ることがあつて、そのために又もう一遍やるようなことはどうかという技術的な問題だけなんです。
  67. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  68. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは速記を始めて下さい。
  69. 若木勝藏

    若木勝藏君 簡單に申上げます。この地方公営企業はこれはどちらかというと、地方行政の事務というふうなことよりも、民間企業に接近しておるのである。即ち労調法に示されてあるところの公益事業と大差のないものである。従つて企業職員の身分の取扱は、現業としてこれは取扱うのが本体であろうと思う。ところがこれを一部を除いて地方公務員法適用が大幅に認められるかどうか、こんな点に対しては私は非常に納得の行かないところがあるのであります。ところが衆議院修正で、労働協約管理者の事務のほうになつたり、或いは給與額決定というふうな方面が又細部に亘つて労働協約のほうに移管されておると、こういうふうな修正が認められておりますので、私は暫定的な立場に立つてこの衆議院の送付案に賛成するものであります。以上です。
  70. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 他に御発言もなければ討論は終局したものと認めまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。地方公営企業法案について採決いたします。念のためにお断りいたしまするが、この衆議院送付案は修正議決案でございます。地方公営企業法案について衆議院送付案の通り可決することに賛成の諸君の挙手をお願いいたします。    〔総員挙手〕
  72. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 全会一致と認めます。よつて法案衆議院送付通り修正議決することに決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によりましてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりまするが、これは委員長において本法案内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認を願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないものと認めます。  なお本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書につきまして多数意見者の署名を附することになつておりますから、本法案を可とせられるかたは順次御署名を願います。  多数意見者署名     堀  末治  中田 吉雄     石村 幸作  高橋進太郎     岩沢 忠恭  宮田 重文     若木 勝藏  原  虎一    館 哲二  林屋亀次郎
  74. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御署名漏れはございませんか。御署名漏れはないと認めます。  それでは午前中はこれにて休憩いたします。    午後零時二十分休憩    —————・—————    午後二時四十分開会
  75. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今より委員会を開会いたします。  地方自治法の一部改正案につきまして、先般の質疑のときにおいでになりませんかたがまだおられますから、政府原案の五十六頁まで、一條からその間を全部御質疑をお願いいたします。
  76. 中田吉雄

    中田吉雄君 自治法に入ります前にお尋ねいたしますが、参議院で修正いたしました地方税法の一部改正を衆議院に送付しているのですが、あれはどういうふうになりつつあるのでしようか、いろいろな浮説が伝えられているのですけども、若し委員長のほうでおわかりでしたらお伺いいたしたいと思います。
  77. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 只今の問題は、こつちの採決後に衆議院における、参議院の修正点についてのいろいろなことを聞きましたので、たびたび向うへも、これは共同修正案で全会一致のものであるから、これを呑んでもらいたいということを再三言つておりまするか、まだはつきり向うが呑むまでに至らないで、予算委員会で何か財源等について研究しているというようなことを聞いておりまするが、まだはつきりいたしておりません。なおこの問題については岡野国務大臣から何か御説明下さいますか。衆議院の態度ですね。
  78. 岡野清豪

    ○国務大臣(岡野清豪君) 私から、これは政府としてじやございませんが、党としましていろいろ研究しているのを申上げますが、御承知の通りに、あれは我々政府原案として出しましたものに対して、衆議院修正、その修正は二種類に分れまして、一つは財源措置のできていない入場税、遊興飲食税と、それからあとの非課税の問題、これは国鉄と專売公社なんかに課税しまして、そしてバランスが合つた修正ができておつたのでございます。それでそのほうは財源に影響いたしませんからやつてもいいということになつてつた修正案でございました。こちらへ参りまして御修正になつたのは、その非課税の方面の財源が外されてしまつたものでございますから、その点において財源措置をしなければならない。こういうので、そしてその財源措置を如何にするかということに、地財委といたしましても研究をいたしておりまするし、又党としましてもそれを研究しまして、そして私の考えといたしましては、できるだけ、できるだけじやございません。参議院は全会一致で御修正になつておるのでございますから、この御趣旨を尊重いたしたい。尊重をいたしましてあの法案が早く結末が付くようにという方面に私は努力をしている次第であります。併し只今のところでは一応は予算委員会で財源措置を検討するということで、予算委員会委員の連中が勉強しているわけでございます。
  79. 中田吉雄

    中田吉雄君 岡野大臣の御答弁を聞きまして、政府当局とされての苦衷にもかかわらず、参議院の立場を了として頂くのを大変感謝に堪えないのですが、どうも巷間の浮説では、私の聞きました相当信ずべき筋の何によりますと、こちらの法案をどんどん督促して可決させておいて、大体そういうふうにしておいて、一応参議院から送付されたものを否決して両院協議会に持つて行く、そういう作戰があるということを、同じ人でなしにかなり数多くの人から聞くのですが、我々としましても二院制度の立場から、衆議院がどのようにされましても、それに対してとやかく言うべき筋ではないというふうに思うのですが、併しあの修正案が成立しますまでには、衆議院の立場も十分尊重し、そして委員長その他のかたが事前に御了解も得たようなものですから、こちらの法案をずるずると通さしておいて、戰略的に不利な段階に置いておいて、法的に衆議院が優位であるのを、更にそういうふうに持込まれるという虞れはないものでしようか、委員長にお伺いするのですが。
  80. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 私も中田さんの言われる通りに、非常に急かれておりますので、それで地方税法の場合でも非常にこつちは時間を短縮して早く、徴税の関係もあるからというので上げたのですが、非常に衆議院の態度が、私は殊に與党も入つてのこちらの共同修正案でもあり、今言われたように向うの地方行政委員会の小委員長に事前に連絡しまして、御承知のごとく向うの希望点を一応復活して、そして最終決定をしたのですから、ああいうふうな態度をとられたことに私も委員長として遺憾に思いましたので、国務大臣その他にも再三御説明したのですが、どうもやつぱり向うの納得の行くところまで行かないで今日に至つておりますので、今中田委員が言われたように、私はああいうふうな衆議院の態度でありますると、参議院の各委員会とも同じ気持で以て法案を早く上げても、衆議院の態度がああいうふうなことではペテンにかかつたという気持を持つのではないか。持たれてもやむを得ないと私も思いますので、殊にこの委員には重要法案がたくさんかかつてつて、今後相当努力を要すると思う際に、ああいうようなことをして頂くのは、委員長としても非常に遺憾に思いますので、再三参議院の総意に基く共同修正案を尊重してもらいたい、而も向うの衆議院に事前に了解を得ているのだ。それでほかは呑めるが、湯屋と理容業のあの点は長年研究した結果だから生かしてもらいたい、そうすればよろしいということでしたから、皆さんがたにお諮りしましてあれを無理に復活した。そういうようなこともございまするから、私は今後の参議院の法案の審議の運営の上から言つても、あの態度を早く改めて、そうしてやはり全会一致のものは御尊重をして頂きたいと、かように思つておりますので、この点につきましては委員会でこの問題を取上げられましたから、委員長としまして岡野国務大臣に、その点は政府にも重ねて御注意願い、委員会の希望もお述べを願いたい、さように思います。
  81. 岡野清豪

    ○国務大臣(岡野清豪君) 只今中田さんのお説に対しては私は少し異論がある。参議院で急かして一生懸命上げておるのを、そうするとそれを向うがひつくり返すという作戰が裏にあるとか何とかということは、どうも私自身として甚だ心外千万なんでございます。と申しますのは、御承知の通りに我々といたしましては、財源措置がなくつて改正されてはとてもやり切れんのです。やり切れませんけれども、併し参議院の全会一致の御決議というものを尊重いたしまして、これはいろいろあれに対してもう一遍修正をしてもらいたいというようなことを衆議院側にあつたのを全部抑えまして、政府並びに地財委までも私ども抑えまして、そうしてどうぞ一つ参議院のおつしやる通りにして下さい、併し財源措置がないことは私としても困りますし、地財委は勿論困るし、地方公共団体はなお更困ることですから、それだけは何とかできるだけしてもらいたいというので、手間取つておるのでございまして、私はその意味におきまして只今のお言葉に対しては甚だ失礼でございますけれども、そういうような不誠意な態度は、党としても、政府としてもとつておりません。十分参議院を尊重いたしまして、できんことまでやらせつつあるというこの苦衷をお察し願いたいと存じます。
  82. 中田吉雄

    中田吉雄君 私の聞きましたところによると、すでに衆議院の自由党の幹部のほうから参議院のそれぞれの有力者に対して、あれを否決して両院協議会に持つて行くが、一つその際は悪しからずというような交渉があつたやにもすでに仄聞しているのですが、委員長、そういうことはなかつたのでしようか。
  83. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 私に関する限り、そういうことは聞いておりません。私のほうも理事会に常に諮つております通り、誠心誠意を以て法案に当つておりますので、そういうような風評があつたことは私は全然聞いておりません。
  84. 岡野清豪

    ○国務大臣(岡野清豪君) 只今の点に付け足しておきます。自由党の対策委員会におきましても私の説を容れておりますし、それから総務会においても申出て来ればそれを容れることになつておりますし、同時に私は、今予算委員会で研究中でありますから、その予算委員に対しても働きかけておりますので、私が先ほど申しましたような方向に是非突進したいというような方向になつておりますから、そういうような策動が出て来ようはずはないと私は考えております。
  85. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今の中田さんの御提案になりましたことは、この点は私は委員長として単独で再三今まで向うに言つておりますけれども、よければこの委員会の理事諸君と相共に、もう一度こちらの希望を申出てもよろしいと思いますけれども…、
  86. 中田吉雄

    中田吉雄君 この問題でもう一言。私はやはり二院制度双方が独自の立場でやるべきで、かれこれ言うべき筋ではないと思いますし、岡野大臣、西郷委員長の御努力を了としまして、これでその点では発言をやめますが、まあ併と双方が戦略的にということは言いませんが、まあ議事を促進するにはその辺の妙味は発揮しても私はいいのじやないかという点を一言して打切ります。
  87. 若木勝藏

    若木勝藏君 今私さつきすつかり聞きかねたのですが、逐條審議の何頁……。
  88. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) この間中田さんや若木さんが来られない前に、原案の五十六頁まで済ましましたので、最初一條から丁度「第十章中第二百四十大條の前に次の一條を加える」という、そこまでを全部その間を御質疑を願いたいと思います。この間若木さんは第七十條まで来られましたかね、たしかその程度だと思います。
  89. 若木勝藏

    若木勝藏君 途中少し飛ぶことになりますが、私七十八頁の第二百八十一條の問題についてちよつと政府に伺いたいと思うのでありますが、これはまあ幾たびかの公聴会或いは参考人の意見を聞く機会におきまして問題になつた点でありまするが、それが一部衆議院で以て修正になつた、そういうことによつて更に昨日ここでそれぞれの学識、経験のある人の参考意見を聞いたのでありまするが、ここで非常にいろいろな御意見を伺いまして非常に問題になる点は、すでにこの昭和二十二年ですか、二十二年におきまして特別区というふうなものを一応地方の公共団体と認めて、そしてその特別区の長は公選によつて定まつたものである。それを今回特別区の性格を変更いたしまして、そして区の長を任命制度に切替えると、こういう原案に対して非常に問題が昨日来あつたようでありまするが、そこで私の伺いたいのは、確かにこれは性格を変更するということになれば、これは大問題であると思うのであります。いわゆる憲法の九十五條というふうなものが、当然こういう重要な問題に対しては適用されなければならない。改めてこれをやろうとするのではなくして、すでにそういう地方公共団体であるということを認定したものをこれを変えるのでありますからして、この点につきましては、改めてやるよりも非常な重要性が、重要な問題があるかと思うのであります。それをいろいろな、昨日も話がありましたが、一部分の事務の変更によつて、直ちにこれを性格を変更するというようなふうに持つて行かなければならないというところの政府のお考えを伺いたい。この点大臣から伺いたいと思います。
  90. 岡野清豪

    ○国務大臣(岡野清豪君) これはちよつと事務当局から詳しく申上げます。
  91. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 特別区の区長の公選の問題でございますが、これは沿革的に申しますと、地方自治法が制定されましたときに初めて特別区の区長公選の制度ができたのではないのであります。要するに憲法の施行と、で地方自治法の施行とは同日であつたのございますけれども、その一つ前の即ち昭和二十一年の九月二十七日から施行されました東京都制の改正法律、終戦後の第一回の地方制度の改正の際に、すでに特別区の区長というものは公選制をとつたのであります。従つてそれを地方自治法は踏襲したわけでございまして、特に地方自治法と憲法の九十三條の規定というものと結付けて、直ちに特別区の区長を公選にする、こういうことではなかつたのであります。一足お先に特別区の区百長というものは、民主化と言いますか、或いはさような選挙を尊重するというような考え方から、昭和二十一年の九月からすでにさような制度ができておつたのであります。ただ選挙が実際に行われましたのは、それよりも遅れておつたのでありまするが、制度上はさようになつてつたわけであります。そういうわけでございまして地方自治法の施行の際の政府の提案理由といたしましては、従来の東京都制の区よりも更に強い自治性を持たせ、市に関する規定を特別区に適用するというようなことをいたして、市と特別区というものとが殆んど同格であるような扱いをいたしたのでありまするけれども、併し同時に法律なり政令で特別の定めをするものを除くというふうになつておるわけでございまして、特別区の性格に合致しないものは、市に関する規定でもこれを適用しない。こういう例外を書いておつたわけでございまするし、又都の條例で以て特別区について必要な規定を設けることができるということになつておるわけでございまして。この條文の説明の際には都と特別区というものは、飽くまでも一体的な行政の処理を図らなければならんというところから、都にかような條例による一つの統一的処理の権能を與えておるのであるということを説明をいたしたように考えておるのであります。従いましてこの特別区の性格の問題でございますが、さような地方自治法の建前をとつたのでありまするけれども、その後の各種の特別法におきましては、特別区の個々を一つの市と同じように見るという立法例よりも、やはり基本的な重要な特別法においては、三十三区、要するに特別区の区域全体を一つの市と見る、こういう見方で立法されたものが多かつたのでございまして、従つてこれらの現行法制を通じて見ますると、特別区の区長の公選がきめられました二十一年の九月以後、だんだんと一体的なな処理の傾向の立法が強まつて来ておる。それに今回の政府法律案におきましては、市に関する事務というもの臓現行法上は、都と特別区がいわば同格の立場において相互に処理することができるようになつておるのでありまするけれども、それを特に限定列挙いたしましたものは区に参りまするが、それ以外のものは都が一般の市の仕事をやつて行く、かようにいたしまして、実質的に制度上都と特別区との関係を転換をしておるわけであります。さような点からいたしまして、今回の特別区の区長の公選の問題は、公選を政府のように知事の選任制或いは衆議院のように議会の選任制にいたしましても、その点は憲法との関係において支障がないといういうふうに考えておるのであります。
  92. 若木勝藏

    若木勝藏君 今のいわゆる地方自治の発展とか育成とか助成とかというふうな立物から考ええますれば、むしろ特別区のようなものは、普通の市と同じような方向に取扱つて行かなければならないのじやないか、日本が民主主義国家を建設して行くというふうな建前からですな。ところがそれを逆はいわゆる行政区のような方面に取扱つて行かなければならないとすれば、相当の私は実質的な理由がなければならないと思うのです。今の御答弁では大体そういうふうなものは、東京都といたしましても、東京都自身を中心にしたような方向に、法令の特別法を短めつつあるのだというふうな、法令の整備というような方面のお話がありましたけれども、私の聞かんとするところは東京都の行政上どうしてもこういうふうな特別区を行政区のようなほうに扱つて行かなければならないという、その何か工夫な理由があるのか、これを伺つておるのです。
  93. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この大都市の行政を如何ように処理することが一番合理的であるかということは、これは現行地方自治法上は、特別市なり都制なりという二つの大都市制度が定められておるのでございますが、これはやはり一般の市町村、農村等の自治制度と違いまして、大都市の自治制度というものはやはり大都市はいわゆる一つの植民地であるというような説までもあるくらいでございまして、大体各地方から集つて来た者が集合しておる一つの国内の植民地のような、さようなものであるという極端な論をする人まであるのであります。そういうことが性格の一端を反映していると思うのでございますけれども、やはり各部分部分において、東京の例で申しまするならば、千代田区とか杉並区とかいうようなその部分々々において一つの貫徹した自治体としての意識というものはない、やはり東京全体の区域においてこそ初めて一つの自治体としての意識があり、單に意識があるというだけでなく、やはり東京都全体としての都市経営を如何ようにして行くか、汚物処理にいたしましても、千代田区は隣りの区に持つて行くというだけでは片が付かんわけでございまして、やはり東京都の区域からそれを外に持つて行く。海中に捨てるとか、或いは郊外の農村に持つて行くとかいうような、そういう意味の処理をしなければ事が解決しないわけであります。都市計画にいたしましても、区だけで都市計画ができるものではないのであります。全体の区域を通じて、一体的な都市計画を考えて行かなければならない。道路にいたしましても、区ごとに幅員が違うというようなことは考えられないのでありまして、やはり全体としての問題として考えて行かなければならない。これはやはり單に独立して存しまする一般の地方の市と、大都市の区というものとは違うわけでありまして、名前も特別区と、名前がすでに示しまするごとく、大都市を構成する一つの部分的な団体というのが、この特別区の性格であるわけであります。大都市でありまする以上は、全体の区域を通じた統一的な行政処理が飽くまでも必要であると考えるのであります。現行地方制度で、自治法の中で都制にいたしましても特別市制にいたしましても、それらの点においては如何にして大都市の行政を一体的に処理するかという一方の原則を忘れないで規定をしているわけであります。かようなことはひとり日本だけの問題ではなく大都市行政の一つの傾向といたしまして、さような方向がとられておるというふうにも考えられるのでありまして、そういう見地から今回都と特別区との関係を、従来よりももつと密接に一体的処理が可能であるようにいたしたわけです。区長の選任方式を変更いたしたのもその一つの方法であるわけでありますし、事務の配分を明確にいたしましたことも、或いは事務処理についての都知事の一つの指揮監督権を規定いたしましたことも、いずれもさような行政の一本的な処理というところに出発をしておるわけであります。
  94. 若木勝藏

    若木勝藏君 我々が考えておるいわゆる住民の立場から考えれば、政府考え方は今の御答弁では全く逆な立場をとつておるように考えるのでありまして、その点は甚だどうも我々の考えと遺憾ながら所見を異にするところがあるように思うのであります。  次にやはりこれに関連いたしまして、昨日非常に問題になつた点について伺いたいと思うのでありまするが、衆議院修正案におきまして、先ず特別市の区のようないわゆる本当に行政区或いは助産区のようなものに対しては、その長を現行法通り公選にして、それから却つて基礎的な公共団体性格を帶びておるところの特別区の区長をまあ任命のような形に切替えると、こういうふうなことに対してはどういうふうなお考えを持つているか、その点承わりたいと思います。
  95. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この特別市の区長が現行制度上公選になつておるのでございますが、これにつきましては特別市の区は都の区と違いまして、これは行政区でございまするので、勿論何ら異論の存するところなくこれを任命区長にするということは可能であるわけでありまするが、これが特に現行法上かようなことになつておりまするのは、いろいろ沿革的には関係方面との折衝その他のいきさつがございまして、かようなことになつておるように聞いておるのでございます。衆議院でこれを修正をいたして、区長の公選制を政府は廃止することになつてつたのでございます。それを修正いたしまして公選制度を存置するということにいたしたのでありますが、これは私ども聞いておりまするところでは、特別市の制度については今回は何ら触れないことにするという考えから出たようでございまして、殊にこの特別市に関する法律について衆議院のほうには六つの案が出ておるのでございますが、そのうち特別市に関する地方自治法の一部改正法律案の中で、特別市の区長の公選を廃止するということが一方のほうの案に入つておるのであります。その部分を取入れまして、特別市の区長の公選を廃止するという改正をすることは、如何にも特別市に関する賛成、反対両方の案の中の」方の案の一つの部分を取入れたような形にもなるので、この部分には触れないでおこう、こういうような意図に出発せられたように聞いておるのであります。従つて都の特別区の区長の選任の方式と、特別市の行政区の区長の選任の方式とはかような形になりますと、ややバランスがとれないようでございますが、併し衆議院の御意図はさようなことで、特別市については今回は根本的な点では触れない、こういうお考え方のように聞いたのであります。
  96. 若木勝藏

    若木勝藏君 これは実際この問題について政府はどこまでも法的な立場から論議をして来たのに対しまして、衆議院がこういうような修正をするということに対しては、恐らく政百府としては満足し得ないものがあるだろうと思うのでありますが、それに対する私は見解を聞いたのでありまして、このようであつたという事情を聞いておるのではないのであります。その点をもう一遍お伺いいたしたいと思います。
  97. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 今申上げましたような事情につきましては、政府もさように特別市の問題は、あげて後に譲るということも一つ考え方であると、かように考えましてその修正案には同意を表した次第であります。
  98. 若木勝藏

    若木勝藏君 次にこれの昨日来非常に問題になつた点でありまするが、この特別区の区長を結局任命制度に切替えて、区議会の議員をそのままに公選の形にしておくということはおかしいじやないか、こういうふうな議論があつたのでありまするが、私も全くおかしいように思うのであります。この点について政府はどういうふうにお考えになりますか。
  99. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 都の区を特別市の区と同じように行政区にすることも、これは一つの都市政策或いは都市自治経営方式といたしましては十、分理由のあることでございまするし、又その方面の理論的な研究団体でありまする東京市政調査会等におきましては、つとに行政区説をとつて公表しておるわけであります。そういう意味で行政区にいたし、特別区の区議会を廃止するということも確かに理論的には成立つ案であると考えるのでございますが、政府といたしましては、特別区の古くからの沿革と伝統というものを考えますると、これは曾つて行政区であつたという時代がないのでありまして、今日までの沿革に徴しまして、単に理論的な見地のみから事を考えて特別区の議会を廃止するということは、余りにも理論的潔癖性に囚われ過ぎて、実際の都市経営実情に副わないのではないか。殊に東京の場合においてはさようなことが強く言えるように思われるのであります。さような見地から特別区の議会につきましては、これを廃止することは適当でないというふうに考えたのであります。これは戦争中昭和十八年に初めて東京都制ができましたときにおきまして、あのような状況の下において作られた非常に統制的色彩の濃い自治制度の際におきましてさえも、区には議会というものの存置を認めておつたわけでございまして、このような点からいたしましても、特別区の議会を廃止するということは、やはり行過ぎであるというふうに考えたわけでございます。
  100. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 何か御質疑ございませんか。
  101. 若木勝藏

    若木勝藏君 何頁にあるか、私今はつきりしないのでありますけれども、重要な項目でありますからこの点伺いたいと思うのでありますが、それは地方議会の定員を減らすというふうなこと、或いは回数を非常に縮減するというふうなことは、これは非常に私はいわゆる地方の行政というふうなものの規模を縮減するように考えられるのであります。今回の政府考え方を、各方面の法律、それから今提案されましたところの法律案によつて考えて見ますると、非常にそういうふうな傾向が強い。まあ警察法の改正にいたしましても、或いはデモ取締法にいたしましても、或いは地方財政委員会を廃止しようという、いわゆる自治庁設置法案にいたしましても、先ほど聞いたところのこのいわゆる区長の任命制度、こういうふうにどうも一貫してそういうふうな政府のいわゆる中央集権的に一手にこれを収めて行こう、こういう傾向が非常に強いように思うのでありまするが、今回のいわゆる地方議会の定員を減らすとか、或いは回数を縮減するというふうなことは、実際においてどういう理由に基いて考えられておるか、この点を伺いたいと思うのであります。
  102. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 議員数の縮減並びに議会の開催方法の変更の二点についてのお尋ねでございますが、先ずなぜ議会の議員数を、減らすという案を提案をいたしたかという点でございます。この点は御承知のように神戸委員会即ち地方行政調査委員会議の勧告におきましては、大体二分の一乃至三分の一程度の議員の減員を勧告いたしております。これは地方の自治行政の合理化或いは簡素化というような見地から、事務の再配分に関連をいたしまして、かような少い議員数で自治運営をすることが適当であるという見地に立たれたものであるわけであります。又他に政府のこれは法律上の機関ではございませんが、政令諮問委員会等におきましても、二分の一くらいに議員数を減らしたらどうかというような勧告があつたのであります。政府といたしましては、かような現行議員数を三分の一なり三分の一に一挙に縮減するという考え方は、アメリカ等の議員数の現状から考えまするならば、一つ考え方であろうと思いまするけれども、やはりこれはさような急激なる変革は適当でない、又議員数が余りに少くなりまするということは、住民のあらゆる要素、あらゆる意見を反映する上においては、必ずしも適当でないというようなことも考えられまして、大体現行法の一割乃至二割くらいの縮減にとどめたらどうかというふうに考えたのであります。と申しまするのは、大体終戰直前の議員数というものに対して終戦直後その程度の議員数を増加いたしておるのであります。国会については、参議院のほうは従来の貴族院と比較したしまして百五十人も議員を減じ、衆議院は同じ数を維持しておられるのにかかわらず、地方議会につきましては、都道府県につきましても、市町村につきましても、今申上げた程度の議員の増員をいたしておるのでございまして、これを国力の落ちました今日におきまして、従来の難度に戻すということは、決して無理なことではないというような考え方から、一、二割程度を縮減するという、こういう案に同意したのでございます。而もこれは地方団体に自主的に議員数を決定せしめるような案にしておるわけでございまして、従来のように法律で議員数を決定して縛つてしまう、こういうような方式でなく、自主的に決定できるようにしておるわけでございまして、かような点から見て現行法よりは、より地方公共団体の自主性を増しておるというふうにも考えられるわけであります。これを衆議院におきましては、そういうような議員数の縮減は適当でないという見地から、現行の法定数をそのまま残しておきまして、ただ都道府県については、條例で現在の議員数を減少することができる、こういう規定だけを入れて議員数の縮減の途を開いたわけでございます。政府といたしましては、考え方の根本においては、この修正と興なるところはございませんので、これに同意をしたわけでございます。  それから議会開催の方法でありまするが、これは現行法におきましては、定例会、臨時会という開催方式をとつておるのでございますが、政府案はこれを通常会、臨時会という開催方式に変えようということであります。議会は現在の定例会制度におきましても、三月又は三月に開かれまするいわゆる通常予算を議する定例会というのは特に長期であります。都道府県ならば三十日前後でありまするし、五大都市等では二十日前後、一般の市町村でも通常の議会よりも長い、一週間なり十日なりが普通であります。ところがそれ以外の臨時案件を議する定例会というものは、一日なり二日なり数日で終るというのが通例であります。ですから同じ定例会と呼んでおりましても、実質が違うわけであります。これは国会においては通常会、臨時会という建前で開かれておりまするし、古い地方制度でもさような建前になつてつたわけでございまして、これはやはり議会の一番重要な使命は、一年の全体の計画を定める通常予算を議するというのが沿革的に申しましても、やはり一番重要な議会と考えられるわけでありまして、それを通常会として特に二月、三月に毎年開く。そして一定の期間をきめておく。それ以外の議会は臨時会、こういうような建前にしたのが原案であつたのであります。臨時会につきましては、いろいろ制限がございまして、なかなか実際開かれる機会が少いというようなことがありましたので、その点を自由に緩和いたしまして、臨時会を容易に招集できるようにいたしたのであります。さような通常会、臨時会方式については、衆議院におきましてやはり現行の定例会、臨時会方式のほうがよろしいというような見地から御修正になりまして、現在定例会が毎年六回以上開かれなければならないとなつておりますのを、毎年四回というふうにされたわけであります。定例会の性格を先ほど説明申上げましたような通常会と然らざる臨時会というふうに分ける政府案は、一つの方法であると考えておるのでございますけれども、併し現在の定例会、臨時会という方式が絶対に不適当であるというふうにも考えないわけでございまして、政府といたしましては、現行の建前を更に継続をして行つて、併しながら定例会の回数を実情に即して四回にするという衆議院の案に、さような意味同意をしたわけであります。
  103. 若木勝藏

    若木勝藏君 今の御答弁で政府の意図がわかりましたけれども、結局は御答弁にあつたように、政府としては今の国力の落ちた現在においては、やはり地方の議会或いは地方行政の規模というものを縮小して行つたほうがよいと、こういうふうな考え方に立たれたように聞きとつたのでありますが、ここに非常な政府考え方の誤まりがあつたのではないか、この問題に関しましては、結局地方の市町村或いは都道府県、挙げてこれは政府の原案に対して反対しておる。非常な政府の地方行政に対するところの見通しが誤まりを持つてつた。こういうようなことが反省されなければならんと思うのであります。その点につきまして先ず衆議院においてもその点を考え、そうして修正案を出されたのでありまするけれども、我々といたしましては、やはり修正案以上に、現行法通りに行くべきが至当であると、こういうふうに考えるのであります。これに関連いたしましてやはりこの地方行政の規模の縮小というふうなことになるのでありましよう。結局都道府県におけるところの部局というふうなものについて、これを政府から言わせれば、行政の簡素化というような方面から必ずこうでなければならないという立案が出て来たのではないかと思いますけれども、それに対する政府のお考えを承わりたい。
  104. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 部局の問題につきましても現在この必置部と任意設置部というような方式で、必ず置かなければならない部として六つの部を法定いたし、更に任意的に置き得る部として六種類の部を規定いたしておるのであります。かような方式に対して法律には標準の部局を規定をいたしまして、各都道府県において如何なる部局を置くかということは、それぞれ條例でこれを定めるという、かような自主的な建前にこれを切替えておるわけであります。かようにいたしましたのは、御指摘のごとく行政簡素化という一つ考え方に出発するわけであります。これは政府といたしましては、先ほど申上げました地方議会、地方の中心の機関の一つであるところの地方議会みずからが範を示してもらつて、行政の簡素化になつてもらう、又執行部局におきましてもさような見地で、できるだけこれを簡素化してもらう、又委員会等におきましても、委員の数等を若干減少いたしまして、支障のない限り全体の地方自治運営の仕組を合理性を失わない限度において、又民主化の原則に反しない限度において、できるだけ圧縮された簡素な形で而も能率的な方式に持つて行く、かような見地で立案をいたしたわけであります。併しながらこれは政府が独自に立案をしたと申しまするよりも、その根本には地方行政調査委員会議の勧告があるのであります。御指摘の部局の問題につきましても、神戸委員会の勧告においては、道府県の部局は四部乃至六部というふうに法定をするように勧告をいたしております。これはやはり現状から考えまして、余りにも急激なを変革であるというような考え方からいたしまして、人口の段階を区分いたしまして一番人口の少い百万未満の府県では四部、百万以上二百五十万未満の府県では六部、三百五十万以上の府県では七部、道は八部、郷は八局、こういうふうに段階を設けまして、神戸委員会の案よりは緩和したものを標準の部局として法定をしたのであります。これにつきましても、衆議院では二百五十万以上の府県については、更に建築部を一つ加えて八部にいたしました。道も八部に対して建築部を加えまして九部にいたしました。東京には更に港湾局、主税局というのを加えまして、全体で十局に修正をされたのであります。政府は行政の簡素化の線に沿つておりまする原案について、若干の緩和の修正を加えられたわけでありますが、根本の方針には影響を来たしませんのでこれ同意をいたした次第であります。
  105. 若木勝藏

    若木勝藏君 この問題も実際におきまして、私の聞き及んだ事柄からしまして、地方の部局というようなものに対する政府考え方は、非常に地方の実情に合わなかつ。た今回衆議院で以て、道府県におけるところの二百五十万以上の府県に対しましては建築部を置いた、こういうふうなことは非常に私は全く政府のいわゆる考え方の欠陷を指摘して実態に即したところの修正であると思うのでありますが、こういうところにもただ單に行政の簡素化であるとか何とかいう立場からのみ、いわゆるきまり文句でやつて行くということについては、相当今後においても政府として考えなければならない。こういうふうに思うのであります。  次にお伺いしたいところは、都道府県におけるところの事務が別表で似てずつと載つておるのでありまするが、これは何と申しますか、固有事務と言いますか、或いは委任事務と言いますか、そういうような方面を区別されて挙げられておるものと思うのでありますが、これについて先般地方行政の一部を改正する法行で、その点を、地方におけるところ事務を明らかにしたようでありまするが、あれとはどういうふうな関連を持つておるか、それを伺いたいのであります。
  106. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) ちよつと只今お尋ねの地方行政に関する法律というのは何でございましようか。
  107. 若木勝藏

    若木勝藏君 地方財政法の一部改正でございます。
  108. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この地方自治法の改正法律案の別表に規定をいたしましたものは、いわゆる必要事務と申しますか、都道府県なり市なり或いは町村なりが処理しなければならない事務というものを列挙したのであります。なおそのほかに都道府県知事でありまするとか、或いは市町村長でありますとか、各種の委員会でありますとかが、いわゆる委任を受けて処理しなければならない事務、強制的な機関委任の事務というようなものを列挙したわけでございます。かような事務は地方財政法の関係におきましては、国、都道府県、市町村というような地方公共団本自体の事務並びに地方公共団体の機関が処理いたしまするところの事務、こういうものの経費は、当該地方公共団体が負担するというのを地方財政法のまあ大序則にしておるわけでございまして、それに対する例外といたしまして四項目並べておるわけでございます。例えば災害に関する経費でありますとか、或いは特に奨励補助的な性質を有する経費でありますとかというようなものは特に列記いたしまして、これは国がその全部又は一部を負担をすると、こういうふうに規定をしておるわけであります。さように特に地方財政法の中に列記されておりまする国が全部又は一部負担する事務以外のものは、都道府県なり市町村がやりますものも、又その機関がやりますものも、全部当該地方団体の負担とする。その負担を平衡交付金によつて足らんところは調整をして行く。こういうのが地方財政法の改正案の建前であります。この地方自治法におきましては、現在の都道府県が処理いたしまする事務の中で、いわゆる必要事務、強制事務と言いますか、任意的に処理できない、必ず処理しなければならない事務、或いは処理の仕方が強制されておる事務、そういうものを列下したわけでございます。そのほかのものがいわば本当に自主性のある事務でございまして、これはいわば国から、委任をされたような形の事務であるのであります。それを明確にいたしまして、将来できるだけこの種の事務を縮減をして行く、又この種の事務の処理方法を法律なり或いはそれに基ぐ政令等によつて拘束するということをできるだけ少くして行こうということを狙つておるわけでございます。これは先ほど来申上げました地方行政調査委員会議の勧告におきましても、事務の配分につきまして勧告をいたしておりまして、国の委任する事務と、機関委任の事務と、そうでない事務との間の分界を田らかにいたしますると共に、国が処理する事務と地方団体が処理する事務とを明確にするように勧告をしておるわけでございます。本来ならば各都道府県、市町村、国との間に公正な事務申分を行うべきでございますが、それが今直ちに行いがたいので、一応現状の配分を掲げたのでございますが、将来これをできるだけ是正して適当な配分にして行こうという考え方であります。
  109. 若木勝藏

    若木勝藏君 将来整理するというふうなお話でありますが、これはその手続なり或いは計画なりについてはどういうふうになつておりますか。
  110. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) この事務の配分につきましては、地方制度調査会設置法案を今国会に政府提案をいたしておりまするが、ここにおきましてやはり全体の見地から如何に地方の行政事務を配分するか、又国との関係において調整を加えるかということを検討して頂き、その結論に従つて逐次処理をして参りたいというふうに考えております。
  111. 若木勝藏

    若木勝藏君 私の質問は大体こういうふうな点であります。
  112. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 他に御発言ございませんか。
  113. 館哲二

    ○館哲二君 二百八十一條の三の衆議院修正案について政府の見解をお尋ねしたいのですが、この衆議院修正案では「特別区の議会が都知事の同意を得てこれを選任する」という文句になつております。この手続はどうなるのですか。
  114. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) これは特別区の議会が選任権を持つような修正であるわけでございまして、ただ特別区の議会が選任する場合には都知事の同意を必要とする、こういうことになつておるわけであります。そこでこの修正からいたしますると、先ず特別区が候補者を定めまして、その候補者を定めるに当りましては、選挙でありますとか、いわめる推薦決定というような方式或いは議決というような方式があると思いますが、さような方法によつて特別区の議会で区長とする候補者をきめまして、そのきめた候補者について、これは一人でも数人でもいいと思いまするが、その候補者について区長に任命をすることについての同意を都知事に求められるということになる思うのであります。都知事は一人言つて来た場合にはそれに同意を與える、或いは数人言つて来た場合にはそのうちの一人に同意を與えるということになりますれば、その同意を得た者を改めて区議会が議決によつて区長に選任する、こういう区議会にいたしましては二段の手続を必要とすることになると思うのであります。
  115. 館哲二

    ○館哲二君 この選挙につきましては、間接選挙と見なければならんと思うのでありますが、従来とも間接選挙というものの弊害というものは非常に大きいと思うのです。全体の自治の精神から言えば、昨日もお話があつたように直接選挙で行つたほうが理想だと思うのですが、今度は或る意味から言つて間接選挙になつたということは、過去の経験から言つて甚だ面白くない選挙の方法だと思うのでありますが、これにつきまして昨日も中田委員からもお話があつたようでありまするが、政府のほうとしてはどういうお考えでありますか。
  116. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 自治体の首長を選びます方法として直接選挙によるか、間接選挙によるかということは一利一害であると思います。アメリカにおきましても両方の方式が共に行われておるわけでありまするが、まあ直接選挙のほうが強い首長を得られるというのが、一般の行政学者の意見としては通つておるようであります。そういう意味では直接選挙が一つの行き方でございますが、従つて東京の場合におきましては、いわゆる一つの首長の地位を持つておるこの都知事の選任について、さような意味で直接選挙ということは一つ方式であろうと思います。特別区の場合にその区長を公選にするごとと、この一つの間接選挙と申しますか、議会が選任の主体になるということとの利害得失でございますが、直接選挙にはよき面も無論あるでございましようが、即ちその地位議会から独立して強いという点においては、確かにさような長所はございますけれども、半面実際の終戦後のかような制度の運用を見ますると、やはり議会との間に必要以上にいろいろ摩擦が起きているという面もなくはないと思うのであります。この政府原案の知事が特別区の議会同意を得て選任するというのと、特別区の議会が知事の同意を得て選ぶというのでは余り根本的に違うという結果にはならんのではないかというふうに考えるのであります。と申しますのは、知事が先ず候補者を出して議会同意を得るか、或いは議会が候補者を出して知事の同意を得るか、いわゆるイニシアチブに違いますけれども、いずれの場合でも一方の意思では決定できないのでありまして、必ず相手方同意を得ることが効力の発生要件でございまするから、そういう意味ではやはり一方の慈恵というものは調整をされて、知事と議会との間の意思が一致したもののみが区長になるという結果になると思うのであります。そういう意味で又議会の間接選挙ということになりますると、議会に区長がいわゆる首根つこを握られると言いますか、そういうようないわゆる弱い地位を持つということになりまするが、同時にそれが知事とも結付いておりますので、そういう意味では単なる間接選挙の場合に考えられまするような弊害は、相当の程度において防ぐことができるのではないかというふうに考えるわけであります。
  117. 館哲二

    ○館哲二君 そうすると政府は原案をお出しになつたのだが、衆議院修正案でも大体差支えないという御意向なんですか。
  118. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) 形から申しますと、全く逆転をしたように見えまするが、併しいずれにしても都と区の両方の意思が合致したもののみが区長になるという選任方法でございまするので、その点においては変りがないわけであります。そういう意味で現在の方式よりも、このほうが都区一体の行政処理には裨益するところが多いであろうというふうに考えるわけであります。
  119. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ほかに御質疑ございませんか。
  120. 若木勝藏

    若木勝藏君 議事進行について。まだ中田君も質問したいというようなあれがありますけれども、今日はこの程度にいたしまして、この消防法改正の提案理由を聞いて、大体もう各委員も疲れているからして……。
  121. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今御承知のように消防法の一部改正と、消防組織法の一部改正、それと小さいほうでは地方制度調査会設置法案、これがありますので、これらはこの地方自治法が済めば直ちに提案理由の説明を聞いて質疑に入りたいと思いまするが、今日は提案者に連絡してございませんので、今日はちよつとむずかしいと思いますから大体御質疑がなければ今日はこの程度にいたしたいと思います。  それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後三時四十五分散会