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参考人(齋藤邦雄君) 私は町村
議会を
代表いたしまして、すでに皆さんから縷々
参考意見の御
発言がありましたので、些か重複する嫌いがありますが、御参考までに私の感じておりますること、又信じておりますることの一二の点を申上げたいと思います。
先ず私は大体におきまして
結論的には、
只今までの
府県議長会の
代表から町村会の
代表の四君の言われましたことと大同小異的に同
意見であるということを明確にいたしておきたいと思います。
ただ順序といたしましてこれも御参考にお聞き取りを願いたいということは、私は
地方自治委員に席を置かして頂いておりまする
関係上、曾て
地方自治法の
改正の原案を
自治庁の当局からお示しを受けたことはあります。併しその前に遡
つて考えますると昨年の九月か十月頃と
考えまするが、一、二の新聞に
政府は
地方自治法の一部を
改正をする案を
考えて、近くその
改正案を
国会に提出するのだということが新聞に載
つたのであります。これは私は
自治庁のできたことが、今回の
改正案に対する御説明にもあります
通り、戰時中の行きかたの上におきまして、いろいろいわゆる
民主政治の
実現のために足らざるところもありましたでしようし、又
民主主義ということを誤解いたした点もありまして、いわゆる行き過ぎの点もあるというような観点からいたしまして、いつの日にかは根本的のこれは
改正をいたして、
日本に即したような、すつきりした
地方自治の百年の大計を図るところの
改正をするということは、これは当然なことでありますから、その
改正をするということ自体に対しては別にかれこれ申上げるわけではありませんが、先ずその手続きと申しますか、
只今ほかのかたからも
お話がありました
通りに、かような
改正案をお作りになる際に当りまして、ほかの法案は別といたしましても、
地方自治に関することにつきましては、戰後の
一つの行き方といたしまして、
地方自治というものは従来のように
中央に依存をせないように、
地方自治体みずから
一つ自主自立自営をやるべきだと、こういうようなことは
中央も
地方もどなたも異議がなくして、今まであらゆる会合におきましても、あらゆる機会において国民に向
つて、
地方自治はいわゆる
地方分権である、
地方の
自主性を確立して、これが再建
日本の基礎になるべきものだということを戰後七カ年の間は言うて来たのであります。それでありますから、
法律の
改正に当りましては、そういうことに対して少くとも
反対現象の起らないように改善をして頂くということに対しては、私はもとよりこれは何らの異議や
意見を挿むべきものではないということは常に感じております。然るに今回の
改正案は、さようなことには反しまして、皆さんから
お話のありました
通りに、改善と申上げたいけれ
ども、私の見るところによれば却
つて改惡になる虞れがある。それは
法律の條文については遺憾はないかも知れませんけれ
ども、その結果として、今特に
地方の
自治体が
地方の自主自立を
一つ強くやろうというところの意欲と申しますか、
地方自治確立というところの意欲を、先ほど
お話のありましたように折角芽が出かかつたものを摘んでしまうというようなことに持
つて行くということは、これは由々しき問題だと
考えます。それ故に私は、昨年の九月か十月の頃に一、二の新聞に出ましたときに、直ちに族行先から帰
つて参りまして、
自治庁をお訪ねして、この新聞に出たような
改正案をお出しになるお
考えであるかどうか、それによ
つて我々のほうにおきましても、十分にこれは
検討をせなければならんということを伺いましたときに、当局は、そういうような
政府の一方的の
考えによ
つて改正案を出すということはいたしませんと、これは新聞がいわゆる
一つの六感でお書きに
なつたことであろうと
言つて一笑に附された。私は
政府の一方的のお
考えによ
つてお出しになるということは、
地方自治法の
改正に関する限りは
是非とも避けて頂きたい、そうして
地方の
団体側の
意見も十分に取入れてもらいたいということをかねて
考えておりましたので、
是非そういうことに
一つ願いたいということをくれぐれもお頼みしておつたわけであります。そういうことが二回ばかりあつたわけでありますが、さてそれに対しまして
政府のほうにおかれましては、いや
地方自治委員会を開いてあなたがた
地方自治委員に対してこの法案の内容についてお諮りを申上げ了承を得たのではないかというような或いはお答えがあるかも知れませんが、それは一応形式的にはさような
会議を開き、私もここにおられる白鳥町村会長も列席をいたしまして、お伺いはいたしました。併しながら、これは僅か一時間か二時間の
自治委員会の
会議の席上においてかような
地方自治法の広汎に亙るところの
改正案をお出しになりましたところで、これに対して賛否の
意見を直ちに明快に言うほどの時間的余裕を與えないというところに私はこれは頗る遺憾な点があると
考え、そのときの当局の御
発言の中には、急いで、これは所要の
改正である、根本的の
改正ではない、根本的の
改正はやがて
地方制度調査会を作りまして、
国会の皆さんの
代表及び
政府の各省の職員、それから
地方団体の
代表の諸君及び学識経験のいわゆる各界を網羅したかたがたをメンバーとしての
地方制度調査会を作
つて、やがて根本の
改正案を作
つて地方自治の百年の大計を図るということにいたしたいというような御
発言がありましたので、私はこれは誠に結構なるお
考えである、
是非それを
一つ先にや
つて頂いて、そうして
中央地方の関連において
地方自治の将来の育成強化のためにも
一つ改正すべきところは
改正をしなければならんと思いますから、さようなふうにや
つて頂きたいということを私は繰返し
委員会の席上においても申上げておるような次第でございます。それ故に私は、今回の
自治法の
改正の先ず原則としては、今日特に参議院の皆さんに御明察を願いたいことは、
地方制度調査会を
最初に
一つ作
つて頂くということに対して
是非御考慮を願いたい。それによ
つて一つこの今回
改正をすべき案を初めといたしまして、その他いろいろな根本に亙る問題を十分に時間をかけて、そうして遺憾のないような
改正案を
中央地方において協力して作
つて、これを
一つ国会の審議にかけて頂きたいと、かように
考えるのであります。当時
自治庁のお
考えにいたしましても、
国会において
修正をされることは止むを得ないのであるからというような御
発言も聞いたのでありまして、さような経過に
なつておりますので、先ず第一の原則としては、
是非私のほうといたしましては、現行の
改正案に対しましては、
地方制度調査会を先に作
つて頂いて、然る後にや
つてもらいたい、それまでに現行の
自治法の枠内においてそれぞれ
地方が自発的にやるべきことをや
つて行くことがいいのじやないかということを先ず第一点として申上げたいと思うのでございます。
併し、今まで申上げたことは、これは法案が提出されんとする前のいわゆる直前のことでありまして、すでに矢は弦を離れて
国会の審議にお移りに
なつた以上は、これに対しては、我々といたしまして
地方団体の一員としてこの
改正案の内容について賛否の
意見を言わねばなりません。さようなことが今日の
参考人としてお招きを受けたことでありますので、私
どもはやはり他の
参考人の
団体のかたがたと同様に、我々も事
地方の、特に町村
議会の
立場におきましては、この
改正案の内容のいずれの点が是であるか非であるか、こういうことに対して
検討をすべく
会議を数回に亙
つて開き、私のほうの議長会の
機関に諮
つて意見の取りまとめをいたしました。そのことは先日皆さんのお手許のほうにも書面で差上げてあると私は
承知いたしておりますが、要するに、それによりましたならば、先ほど申しました
通りに、
地方自治法の一部
改正案は、先ず
地方制度調査会を作
つて頂いて、然る後に具体的の問題について
検討をしてもらいたいということが原則であります。併し、すでに
国会の爼上に上つた以上は、私のほうの特に
関係の問題について
一つ二つを取上げて
意見を述べたいと思います。
その第一は、
地方議会の
議員の
定数の問題でございます。これは
府県の
立場、市の
立場と私のほうの町村の
立場とは、
意見は同じでも内容は若干違うかと思いますが、私のほうの町村の
議会は、皆さんの御案内の
通り、一番
最高でも三十人の
議員しかありません。その他はそれから以下順次
段階ができておるような
状態であります。これは必ずしもこれが適正妥当な数であるということはなかなかむずかしいのでありますが、併し私
どもの現在の見方、
考え方から行きましたならば、町村によ
つては少し多過ぎるというような感じを持
つておる町村も一部にはありますが、大体においてこれは私は現在の数はそれほど多いものであるという
考えは持
つておりません。故にこの
程度では暫くの間は、この
地方自治確立の途上でありますからして先ず余りその数の問題についてはこの
程度ではよくはないかというような
考えを一応持
つております。併し町村個々につきまして
考えましたときには、例えば私の町なら町において、現在二十二人でございますが、私の町は
人口一万内外でありまするからして、今度の
改正案に比較いたしてみましたならば十九人になるのでありますが、さて二十二人から十九人といういわゆるその三人を減らしましたところで、これが果して
政府の御説明にあります
通り、三人減らしたために、そのためにその町の
行政、
議会の
運営が極めて
改正前よりも能率化し、而も
議会の
経費が極めて少くなる、そうして能率化になる、或いは簡素化になるということには、これは
常識の御判断を持
つて頂けばわかりますが、ならない。これを
日本全国をトータルをとりまして、そうして町村の
議員の十七万何がしというものから二万幾らというものを減らすのだという
考えから行きましたならば、これは或いは減らさんよりは減らすことのほうがいいことになりますけれ
ども、町村はやはり、県も市も同様でありましようけれ
ども、個々の町村の
行政がうまく行くか行かんかというところに町村の
行政は私は持
つて行くべきものだ、かような観点からいたしましたならば、わずか二人や三人の
議員を減らしたところでどれほどの
経費の
節減になりましよう。私は平素
議会人として、私は当局をやつたこともあります。両方の
立場を今冷静に
考えたときに、現在の
地方自治法の明文化におきましては、執行
機関と議決
機関とがタイアツプいたしまして、協力してや
つて行く、これが町村の完全なる
自治の形成の第一歩だと思うのであります。それ故に、すでにそういうことを念願として
考えておるのでありまして、もとよりそのためには
行政の今日叫ばれておりまする簡素化、或いはそれによるところの能率化、こうしてあらゆる、
議会を初めとして、その他いろいろな
経費の
節減ということに対しては、私もその
意見に対しては決して人後に落ちるものではありません。併し、おのずから物には大小の違いがあります。殊に私
どものような町村の
立場から主として申上げまするならば、この
程度の
改正を以てしたところで、決して能率化にはならないのじやないか、却
つて三人減らすということによるところのいわゆる刺激のほうが多いのであります。我々のごときものがこういう観点から甚だ僣越な言葉を使うようでありますけれ
ども、これが一番いいことだと
言つて改正案に仮に賛成をいたしましたところで、多くの諸君はそういうようなことに対して私はどれだけの関心を持
つておるかということを疑わざるを得ないのであります。それよりも私は、私
どもの
立場から行きましたならば、もつと根本は、この
日本の再建の基盤であるところの
地方自治の育成強化については、
議員お互いの素質を向上する、そうして
議会の
運営を完全にして、執行
機関が違算のないように、その土地の
実情に即したような
地方自治の
運営をする、国の基盤としての
全国一万の町村が一日も早く完全な域に達するように持
つて行
つてもらいたいということを念願をする余りに、私
どものほうといたしましては、昨年の十一月以来とにかくこの
自治意識の高揚と申しますか、
自治精神の高揚運動をやることが一番大切だと、それには我々
議会の
議員がとにかく
立場の上から行きましても第一線にお
つて、生時の
代表である以上は、
住民政治の達成とか、或いはそういう面においてみずから
一つ範を垂れてそういうようにしなければならんということで、私はそういうことを皆さんにお諮りして、皆さんの同意を得て、今
全国的に我々町
村議会議員としては
自治意識の高揚運動を展開いたしております。これは極めて地味なやり方をいたしておりますが、先ず狙うところは、我々は
議員の
定数を縮減するとか、そんなふうな形式の問題ではなくて、問題は出て来る
議員が如何にして立派な
住民の
代表であるかということを選ばなければならんのであります。それから又
政府の御説明にあります
通り、少数になれば精鋭主義になるというような一部のお
考えもありますが、或いはそういうこともありましよう。併しながら、公選というもの、
選挙というものの
制度がある以上は、必ずしもそのような理想には参りません。私はいろいろなる角度の人が出て来て、それでいろいろ今まで
自治体なら
自治体に対して経験を持つた人も出て来ましようが、全然の無経験者も出て来る。こういう人たちが一緒に手を取り合
つて、
地方自治の育成強化のために、
自治意識の高揚のために
一つ勉強をするということのほうが、
議員の
定数を減らすとう問題よりも私は先決だと
考える。これを我々は
一つみずからこの渦中の人としてやらねばならん。この点は
国会の皆さんにも
是非とも
一つ御考慮に入れて頂きたい。私は昨日も衆議院におきましてやはり
参考意見としてさような
意味のことを申上げましたが、これは我々として
地方議会の育成強化のために皆さんの絶大な
一つ御配慮を煩わしたいと
考えておるのであります。そういう
意味から行きまして、
議会の
議員の
定数を減らすということは、私
どものほうといたしましては、若し減らす必要があるならば、これを自主自立という
建前から行きまして、その町村が自発的に減らすように、我々は
会議の席上におきましても、
府県の各
代表者を通じて、町村において
是非とも
一つ、現行の
自治法の枠内において減らすことができるのでありますからして、この大
改正ができるまでは、この枠内において
一つ自発的に
議員の
定数の減少などは取上げてや
つてもらいたい、こういうことを
言つております。それが
議員定数に対する私のこの
改正案に対する
反対意見の
一つであります。
第二は、
会議の回数の問題でありますが、これも昨日も衆議院の
会議におきまして、後に御質問が出ましたが、それは
全国一万の町村の中でありますから、
定例会六回というのは多過ぎるというような
意見を持
つておる町村もそれはあります。ありますが、併し又半面には、
定例会六回だけでなくして、先ほど
千葉県の
議会の議長さんの
お話や、その他皆さんの
お話にもありました
通り、
定例会だけでなくして、
臨時会を開いても
重要案件の議決をするような町村が相当あります。これらを
考えましたときに、私は
会議の回数というものは相当数持たねばならんと思います。
ただ定例会として六回という釘付けをすることが妥当であるかないかというところが今日議論の中心でありますけれ
ども、これは私は皆さんのお説にありました
通り、今日は執行
機関と議決
機関との二つの、つまり両建の
制度で行
つておる。
地方議会としては、
是非とも或る
程度の
定例会議を開きまして、それによ
つて住民の意思が反映をするということに持
つて行くことが一番妥当だと
考えております。若しそれが
通常会一回になり、
あとは臨時必要によ
つてという今度の
改正案のようになりますというと、これは一応そういうことでも事足りるように
考えますが、さような場合には当局のほうにおきまして
專決処分をするような事柄が多くなりはしないか、その結果としては
議会のほうは事後の報告を受けてこれを承認するような形になるようなことになりはしないかということも、これは私は懸念の
一つとして
考えます。例えば、
議案がなくて
会議を開くということは、これは開くべきものではありませんでしようが、町村のごときは、例えば
議案がなくても、こういう話を聞いた、ああいう話を聞いたということだけでも、これは町村
行政の育成の上におきましては私は必要なことだと思う。單に
会議にかけるべき
議案がないから
定例会を開くのはやめたとか何とかいうようなことを言われますが、それは法理論はそれに違いないのでありますけれ
ども、町村の
行政のごときはこういうようなことに対しても
一つの考慮を拂わなければならんと私は常に
考えております。それ故に、そういう観点からいたしまして、例えば
改正をするにいたしましても、通常年一回ということは私は
反対であります。
只今年に六回ということも、或いは多いと言えば多いかも知れませんが、少くとも年に四回ぐらいは開いてもらうということを私は
主張をいたしたいと思います。そうして
あとは臨時必要によ
つて臨時会を開くということで行くべきものだというふうに
考えております。大体そういうようなことを私は
考えておりますので、今日の
参考人として申上げますることは、ほかはすべて皆さんの仰つしやられましたことと大体において同様でありますから、さように御了承を願いたいと思います。そこで私
どものほうの県におきましても、県政と町村政との繋がりにおいて、去る二十日の日に十三人の
委員を以て
地方制度調査会を作りまして、私も
議員代表として御通知を頂き、来る二十七日に第一回の会合を開いて、いわゆる県政と町村政との繋がりにおけるところの静岡県の
地方制度の審
議会ができ上りまして、これより活溌にやろうということに
なつております。こういうような現状下にありますので、私は
中央におきましても、又
地方の各
府県におきましても、かようなことにいたしまして、
中央地方を通じての私は将来のすつきりした
地方自治の基盤を作るように、
是非とも
一つ国会の皆さんの絶大なる御配慮を得たいと
考えて、本日の
地方自治法に対する
意見の一端を申上げた次第でございます。