運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-03-06 第13回国会 参議院 地方行政委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月六日(木曜日)    午前十一時十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事            中田 吉雄君    委員            岩沢 忠恭君            石村 幸作君            北村 一男君            高橋進太郎君            岡本 愛祐君            館  哲二君   政府委員    全国選挙管理委    員会委員長   牧野 良三君    全国選挙管理委    員会事務局長  吉岡 恵一君    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君    常任委員会専門    員       武井 群嗣君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○地方行政の改革に関する調査の件  (選挙法改正に関する件)   —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではこれより委員会を開会いたします。現在過半数に達しておりますから、予定通り審議を開始いたします。  本日は過般選挙制度調査会において一応の衆議院議員選挙法案の試案を得ておられまして、すでにお手許に配付してございまするが、それにつきまして大体の概略を御説明願いたいと思います。
  3. 牧野良三

    政府委員牧野良三君) 大体のお話を申上げます。御承知の昨年の春行われました地方自治体の選挙に対しまして、選挙そのものはよほど進歩改善されたといつて世評はよかつたのでありますが、選挙運動大変不評でございました。こんな選挙をやつてはならないという声が起きまして、そこで輿論の上からも、国会の方面からも、是非とも選挙法を直さなきやならないという声があつたことは御承知通りであります。そこで先ず取りあえず選挙運動に関する選挙法改正をしようということから進んだわけでありましたが、同時に内閣におきまして選挙制度そのものを見直そうじやないかということから、選挙制度調査委員会ができまして、その委員会は従来とは違つて、できるだけその道の專門家を少数集めて、そうして極めて短時日の間に成案を得るようにしようということになりました。これはまあ大変結構なことであります。従つて委員会も任期を初めから定めておこうということで、一年ということで早速委員会が発足をいたしたわけであります。私がその委員会の会長に選ばれまして調査を始めました。すると、ここで御注意を請いたいと思いますことは、一部分の改正では目的を達しない。全体の選挙法そのものをやり直さなければならないという議論が高まつて参りました。それは憲法が新たになつて天皇主権より国民主権へ移つた従つて、これまでのような單独取締中心規定から、選挙を如何に行うべきかという方向に向き直さなければならないと同時に、選挙運動につきましても、その観点から新たな出発をする必要があるということになると同時に、従来の選挙法違反処罰、これが一貫した趣旨方針を欠き、そこに学問的な体系が整つていない。でありますから、これも実際と学問上の見地と両方から見合わせて、新らしい規定をする必要があろうということになりまして、選挙法をむしろ全部新たな立場で作り上げる。それには折角各選挙を一まとめにして公職選挙法というものができているけれども、衆議院議員選挙法というものを独立してこしらえて、そうしてそれを御覧願つた上で、参議院議員選挙法並びにその他の選挙に関する選挙法というものに建前を変えて行つたならばどうかという意見が出ました。そこで取りあえず衆議院議員選挙法をこしらえる。それには衆議院の総選挙というものは、ともかくも昭和二十八年の一月二十二日が満期になるから、遠からずあるのだから、それに対して遺憾なきを期しよう。こういうことになつたわけであります。  そこで新らしい選挙法をこしらえました。先ず第一に、この新選挙法委員会が特別に心を留めましたものは、第一条乃至第四条に、選挙に関する基本的観念を定めたことでございます。これはこの選挙法の全く独自な特徴でございまして、日本には選挙に関して古来特別な沿革を持つていない。主としてヨーロツパの制度を輸入したものである。そこで選挙そのものに関する基本的な観念国民に植付けられていない。であるから、先ず第一には選挙とは如何なるものであるかということをはつきり法律に明らかにして、そうして国民にこれを徹底せしめる。第二には選挙権とは如何なるものであるか、その本質を明らかにする。第三には候補者というものはどういうものであるべきか、その要件を明らかにする。第四に、選挙運動というものに対して誤解がありはしないか、選挙運動とはどういうものであらなければならないか、このことを法律規定の上に明らかにして、各方面から国民にこれを徹底せしめる。と同時に、今までの選挙というものにおきましては、選挙権というものはお上から授かつたものであるという考えを持つて来た。而して、その選挙権国家のために行使するのであるということから、選挙権行使に対しては官憲が厳重な監督取締をするということは当然なことであるという建前で、選挙法規並びにその取扱が進められて来ました。ところが、新憲法におきましては、選挙権というものは、憲法の十五条において、国民に固有した基本的な権利である、決して、天皇から若しくはその他の権力機関から授けられたるものではないという観念が明らかにされた。従つて選挙権国家のために行使するのだというような特別の制約を国民に与えるものではなく、国民自分のために行使するのだ、自分の好きな人を選挙するのだ、自分の好きな政治のためにこれを行使するのだという観念である、そこでいやしくも国民の固有な基本権国民が自己のために行使するというならば、官憲監督取締をすることを中心とするというようなことは僭越なことである。どこまでも国民選挙権行使するに当つては、不便のないように、不都合のないように、あらゆる方面から協力して遺憾なきを期する、それには選挙に関係する公務員があらゆる方面からサービスに努めるということが選挙法の本当の建前ではないか、そうして親切を旨として、国民をして政治基本である選挙権行使というものを愉快に楽しいものにして、且つ常に希望を持つものたらしめなきやいかん、こういうことに意見が一致したのであります。そこで第五条に選挙管理委員会とはどういうものであるかということを規定すべきだということになりまして、第一条より第五条に総則といたしましてこの基本的な規定をいたしたのでございます。そうして、この基本的な規定から流れ出るものが即ち選挙に関する各種の法規である。そうしてそれを受けて、違反は如何に処置するかという罰則規定になる。こういう建前選挙法の新らしい構成をいたしたのでございます。そこで新選挙法の内部につきまして、個別的にどういうふうに規定を進めて行つたかということにつきましては、更に局長より順序を逐うて大体の御説明をいたしたいと存じます。
  4. 吉岡恵一

    政府委員吉岡恵一君) 私どものほうで考えました衆議院議員選挙法案要綱、これは大体は選挙制度調査会答申に基いて、それを法文に書いたらまあこういうことになるだろうということで書いたものであります。総括的の事項は、今委員長から御説明があつた通りであります。  次には選挙区及び定員に関する事柄であります。これは調査会答申が小選挙制度でありますので、それに基きまして立案をいたしております。ただ別表は用意はいたしておりますが、これは発表はいたしませんでした。定員は四百六十六人の現行通り。そうして選挙区の分け方は、二段構えにいたしまして、先ず府県へ分けるのに、純粋な人口比例で参りますと、大都市のあります府県相当増加をいたし、小さな府県相当定員が減少をいたしますので、それを調整する意味から、各都道府県に先ず一人を平等に配当いたしまして、その残りの四百二十名を人口に比例して配当する考え方をとりました。そうして、その分け方は原則として郡市区区域によるという考え方でありますが実際に当つて見ますと、必ずしも郡市の区域に厳格にはよれない場所が出て来るように考えられます。  次は選挙人名簿でありますが、これは従来いわゆる簿冊式と申しますか、とじた帳簿に一頁に何人もの選挙人の名前を書く様式になつておりましたが、これを改正いたしまして、ルーズリーフ式と申しますか、一枚の紙に一人の選挙人のいろいろな事柄を書くという式に改めまして、それを併用できるような考え方にして、従来の簿冊式選挙人名簿は二年据置制という考え方を採用したのであります。  それから選挙期日でありますが、これは三十日というのを、衆議院議員選挙につきましては参議院議員全国区のような問題もありませんので、二十五日に、五日間縮めてもいいのじやないかということで、選挙運動期間が少くとも二十五日になるような考え方を採用しております。  それから投票に関する事柄でありますが、これは新たにいわゆるプリンテツド・バロツト、つまり記号式投票を採用してやろう、投票の有効無効その他について相当問題がありますので、記号式投票方法を採用するのがいいのじやないか、これは印刷能力等に関係する事柄でありますが、大体でき得るのではないか、ただ立候補届出締切期日等について多少工夫が要るかと思いますが、そういう点に考慮を廻らせば記号式投票方法を採用できると考えて、そういう方式を採用しております。その結果いろいろなところに従来の制度を変える場合が出て参りました。この記号式投票方法を採用しました際に一番問題になりますのは、その印刷順序でありますが、これは原則としてくじで、若し余裕があれば循環式、ローテーシヨンと申しますか、一定枚数ごと順序を変えて行くという印刷方式とつたらどうか、こういう考え方をいたしております。ただこの記号式投票方法を採用しましても、どうしても例外的には不在者投票であるとか或いは盲人の投票というようなものについては自書式を認める必要があると考えられますので、そういうものも例外的にはどうしても入つて来る。それから昨年の地方選挙で問題になりました不在者投票でありますが、これは制限するのは残念でありますが、やはり弊害に鑑みまして、いわゆる病人在宅投票というものをやめて、指定した病院で不在者投票管理者があつてする投票だけは認めて、病人在宅投票は認めないようにしたらどうかということを考えております。  それから立候補届出期間でありますが、これは先ほど申しましたように、記号式投票方法を採用する関係で、現在は十日前とありますのを二十日前までに、十日間締切期日を繰上げたらどうか。  それから供託制度でありますが、これはいろいろ議論があつたのでありますが、調査会では結局現行の二倍ということになりまして、公営納付金も二倍にする、つまり両方合せて現在五万円であるのを十万円にするということにいたしております。  それから兼職禁止の職にある者が当選した場合には、現在の制度ではいろいろ問題が起きておりますので、これを法律的にはつきりさせるために、届出を出せば当然兼職禁止の職は退いたものと見るという考え方をいたしております。  それから補欠選挙が一人でも行える、欠員が一人でありましても行えるようにしております。これは小選挙制度を採用した結果当然の事柄であります。  それから次には選挙運動でありますが、選挙運動で特に注意を要します事柄は、選挙運動員というものを法定して制限をしてはどうか、昔あつた制度でありますが、あのように法律では一応三十人、異動があつた場合でも通じて五十人ということで選挙運動員法定をいたしまして、それ以外の者は選挙運動が限定された範囲において認められる、こういうことで選挙運動費用の節減を図ろうとしているのであります。それと同時に、労務者についても選挙運動のため労務を提供する者も制限しようという考えを採用しております。それから選挙制度調査会答申には選挙運動員の中の主任者と申しましようか、選挙事務長という者のほか出納責任者、現在ございます出納責任者制度を併用するような考えでやつてつたのでありますが、よく研究いたしました結果、やはりこれは一本のほうがいいということで、選挙事務長が現在の出納責任者のやるような仕事をやることにして法律作つております。それから選挙運動員制度を設けますと、どうしても第三者運動というものが問題になりますが、その範囲はあとで申上げますが、選挙運動用通常はがき若しくは無封書状による推薦状演説個々面接、或いは電話を利用してする選挙運動を認めるということで、第三者運動はこの範囲に限ろう、範囲相当広いわけでありますが、そういう考え方をとつております。戸別訪問禁止ということであります。  それから選挙運動のために使用する自動車、現在は一台でありますが、これを殖やしたらどうか。これは調査会においては一台を今まで使つているような使い方をし、一台は連絡用に使つたらどうかというお話がありましたが、結局二台ということに調査会も落着いた次第であります。  それから選挙運動のために用いるポスターのほかに今度は立看板一定の規格で認めたらどうかということを考えております。その数は立札、看板及び提灯は通じて五十箇を超えることはできないということにいたしております。こういうことは候補者が従来やることになつておりますが、これを候補者推薦し或いは支持する政党その他の政治団体のみにとどめてはどうか。又放送でありますが、民間放送が開始をされましたので、それに関する規定を設け、ここでは候補者放送をする放送だけを認めまして、第三者候補者のためにする選挙運動放送民間放送を使用してすることは認めないという考え方をいたしております。これは改正案の問題でありませんが、今行われております東京の六区の選挙では、東京放送がやはり民間放送として候補者放送を受付けて行く予定でやつているようであります。どの程度に受付けるかまだきめておりませんが、時間は余りいい時間はとつていないのでありますが、或る程度利用しております。  次は演説でありますが、公共の施設を使用して演説会を開催することは、或る程度限定をされておりまして、第三者立会演説会を利用するようなことはできなかつたのが、今度はできるように改めてはどうか、こういうことを考えております。それから街頭における連呼行為禁止をする。  次は新聞でありますが、新聞選挙に関する記事についてはいろいろ問題がありますが、結局人気投票というようなものを禁止しようということに落着きました。  次は選挙公営でありますが、この中で従来認められております無料はがき、いわゆる無料はがきよりもう少し内容を充実する意味無料書状を差出すことができるようにする。それから公報を現在五百字でありますのを一千字に殖やしてはどうか。  それから次は選挙運動費用でありますが、選挙運動費用制限額は従来政令で規定しておりました。これを法律に明らかに規定してはどうか。一応弾きましたのでは、現行二円であるのを十円くらいに基準を上げてはどうか、これで計算をいたしますと、衆議院議員選挙で大体平均が一選挙区について一人の候補者について大体九万人くらいの数になりますので、それに十円を掛けますと結局九十万円くらいが平均になる、このほかに事務費用計算外になりますので、実際の選挙費用というものは百二、三十万円くらいに抑えてはどうかという考え方であります。  それから選挙運動のための支出の問題であります。これはいろいろ問題がありますが、選挙運動のための支出原則としてあらかじめ選挙事務長の文書による承諾を要するもの以外は、選挙事務長でなければ出せないと、こういう考え方を貫いております。ただこの例外といたしまして第三者演説による選挙運動のために要する交通費等支出事前承諾を要しないということにしております。それから選挙事務長等選挙運動自体に対しまする実費弁償でありますが、これが従来は大体解釈でいろいろ取締等が行われておりましたのをはつきりさして、選挙運動員に対しては交通費宿泊費弁当料実費弁償をすることができるそれから労務者に対して報酬を払うことができるということをはつきりいたしました。報酬の額は基準選挙管理委員会で示すようにしてはどうかということを考えておりますそれから選挙運動費用は、従来は選挙管理委員会届出ておつたのであります。これを厳格に守らせ又相当内容についても審査をいたしますために、選挙運動費用審査のための委員会作つてはどうかということを考えております。これは各都道府県ごとに作るという考えでありまして、人数は十人以内で、任命は全国選挙管理委員会で任命することになりますが、実際は都道府県選挙管理委員会推薦をさして、それについて任命することになると思います。  それから選挙争訟でありますが、これについてはいろいろ問題がありますが、今度は当選訴訟選挙訴訟行つたり、来たりできるようにしたらどうか、これは訴訟起し方が間違つておるために却けられるようなことがないように、行つたり来たりできるような、多少自由な訴えの変更を認めるようにしたらどうかということを考えております。  次は罰則でありますが、罰則につきましては相当現在の罰則を整備いたしまして、大体三通りに分けてはどうか、一つは自然犯的な犯罪に対する罰則、それからもう一つ法定犯的な犯罪に対する罰則、それを重いのと軽いのに分けまして、大体現在の罰則を三通りぐらいに分けてはどうか、それから特にその中でも軽いものにつきましては過料の制裁だけに止まるようなものを少し認めるような考え方をとつて相当整備をいたしております。  次は選挙運動費用法定制限額を超過した場合、現行法では犯罪にならない、処罰を受けないのです。それを昔のような考え方処罰を受けるようにして、検察当局選挙運動費用の超過についても動けるようなことを考えてはどうか、こういうことを考えまして、選挙事務長がこういう犯罪処罰をされた場合はその当選は当然に無効とするという考え方を採つております。  それから次はいわゆる連坐でありますが、連坐相当拡張いたしまして、現在は選挙運動を事実上総括主宰したものが買収犯に処せられた場合に、当選人当選が無効になつております。これを拡張いたしまして、選挙運動員買収犯罪についても連坐させられたらどうか。その当選無効の手続公訴に附帯して当選無効の訴訟が提起できるようにしまして、当選無効の場合は勿論そういう訴訟手続は要りませんが、そうでない判断を要する当選無効については、公訴附帯訴訟を認めてはどうかという考え方をとつております。  それから公民権停止の問題でありますが、これは従来は選挙権被選挙権停止する場合に、特免という制度があつたのです。これは相当特免をしてしまつて、実際、選挙犯罪の結果、刑に処せられても公民権停止が実質的にない場合が相当多かつた。これを選挙権被選挙権と区別をいたしまして、被選挙権だけは或る期間停止を受けるようにしてはどうかという考え方をとつております。そうして同時に、被選挙権停止を受けた者は、その期間選挙運動ができないようにするという考え方をとつております。  この法律案の大体の内容は以上であります。特に問題になる大きなところだけを申上げたので、若し詳細なことについて御質疑があれば、御質疑によつてお答えいたします。
  5. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 只今までの説明に対して御質疑がありましたら、これからお願いいたします。なお只今選挙に関連いたしまして、齋藤国警長官も見えております。
  6. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 選挙について特に私から申上げる点はないと考えております。ただ衆議院議員選挙が近く行われるであろうということで、事前運動相当激しいのではないか、これについて何か打つべき手はないかという声が相当つておりますことは事実であります。私のほう、取締り面におきましても、選挙事前運動法律禁止をせられたものにつきましては、十分な監視と、更に違反する者は取締りをいたさなければならないのであります。何分にも立候補意思第三者として十分立証しますることが極めて困難であります。従来は殆んど正式に立候補届をいたしまして後に、過去に遡つて事前運動取締りといたしまして、当時立候補意思が十分あつたという推測から取締りをいたしておつたのであります。今日の現状におきましても立候補意思が十分立証できるものにつきましては取締りをいたしつつあるのでありまするが、これが非常に困難でありますために、従つて立候補意思立候補によつてはつきり証拠付けられるということになりましてからやりましたのでは、選挙時効の六カ月というのに引つかかつてやれない部分が多くなつて来るというので、私のほうといたしましてはこの取締りについては非常に苦慮しておるというような現状でございます。
  7. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 牧野委員長に伺いますが、今選挙事前運動につきましては齋藤国警長官の御意見のあつた通り、非常にその点が漠としておりまして、取締らんとしても今の話のようになかなかその根拠なり限界はつきりいたしませんために非常に工合が惡いと思うのでありまするが、この選挙制度調査会においては事前運動についてはそういうふうな点について何か意見はないのですか。
  8. 牧野良三

    政府委員牧野良三君) この事前運動のことについてはいろいろの意見を交換いたしましたが、私はこの点について特別な考えを持つております。イギリスに参りましてイギリス事前運動の状況を質したのでありますが、以前には相当事前運動がありまして、判決の上で選挙法違反のいろいろなケースを見せておりますが、選挙区を培養するということと選挙運動をするということとの限界をどこに置くかというのが、御承知通りイギリス選挙違反判例における学問的な方面と実際の方面とにおける非常に面倒な問題でございます。ところがグラツドストーンが政権を得ましてから、選挙界を粛正しなければならないということから選挙法違反と認めたときには連坐によつて候補者に及ぶということをいたして以来、国民のほうから声が挙つて違反がなくなつたということは、これは日本でよほど注意すべき大事な事項だと思います。もう一つ委員長、私はこの際御参考までに申上げたい、私はね、イギリスの総選挙を見て来て本当に私は恥じ入つたんです。私は選挙法とは約四十年取つ組んで来ておりまして、自分はその道のエキスパートのような自負心を持つております。そして殊に御承知通り選挙法違反は実際上にも取扱つておりました。ところがイギリスへ行きまして国警刑事部長に同行を乞うて、そうして先ず第一にロンドンの警視庁へ乗込みました、選挙後、どうか選挙法違反の取調べに立会わしてくれと、そうして場合によつては公判にも立会いたいと、そうしてもう当分イギリスに滞在してもいいという意思を表白して二度出かけたのでありまするが、選挙法違反がない。が、武藤刑事部長はないだけでは承知なりませんといつて、更に独自でスコツトランド・ヤードに二日間詰切つて、そうしてあらゆる方面からつついて見ると全然ない。するとこのことが明らかになりますと、一緒に参りました衆議院議員団のほうの諸君と会合して、どうだという話をしますと、牧野さん、これはイギリス人にして初めて違反がないのだ、イギリス人の教養と訓練の然らしむるところと思うから、あなたは日本に帰られても余り手放しでほらを吹かんでおいて下さい。ということであつたのです。そうだ、私もそう思う。こんな全然選挙法違反がないなんということを思うならば、武藤君なんかを強いて来てもらうということもなかつたかも知れんが、私はそこに重点を置いて、同感であるから私もこの点を余りものを言うまいと言つて、私は一行と別れてドイツに行きました。ドイツは大変よく歓待をしてくれまして、あらゆることに対して打明けた説明をし、又その協力が欲しいというくらいであります。そうして私は、あなたの先ず第一に調べたいのは何だ、それは東西ドイツ統合問題、第二はこの間あなたがたが行なつ選挙の結果における選挙違反の状況……、ないのでございますね、ドイツも。ところが州の選挙にはあるかも知れないというので、特にバイエルンを選びましてミユンヘンへ行つて、州の選挙の後の状況を調べた。ここも大変に熱心に材料をくれて説明してくれたが、選挙違反がない。今度はイタリーに行けばああいう大変な所ですから選挙違反があるだろう。ここで一ついいおみやげがあるぞといつて、ローマに乗り込んだが、ないのだ、又困つたな。そこでフランスは御承知通り選挙をやつて、そうして私が行きました二月前に地方選挙をやつておりましたから、ここに材料があると……ああいう政変の頻繁な所であるのみならず、乱暴な選挙法改正をやつて、思い切つて共産党に締出しを食わせようというのでありますから、行きました。ここにもない。そこでアメリカを調べて、そうして日本に帰つてから、どうだと言つたら……一行も又すぐ日本に帰るはずが、飛行機がとれないために二、三週間滞在しなくちやならなくなつて、私のあとから各国を廻りました。で、やはり違反状況を聞いて歩いた。ヨーロツパもありませんなと、これを言つていいか……、大変、この衆議院議員団の連中は確信を持つて、もう選挙運動というものは根本から改めなければならん……じやない、選挙そのものを改めなければならんというふうになつて来た、これはいいことでありますが、即ち選挙法違反というものは日本の特産物だという確信を得たのであります。そこでエキスパートを以て任じた私が非常に恥じ入りましたのは、日本選挙というものは、これは選挙じやない。甚だ失礼な言葉でありますが、これは当選というものの取引、もう少し適切に言うならばこれは賭博である。その賭博も、許された範囲においてやるならば一種の取引として認めてもよろしいが、なしてはならない権力の干渉をし、なしてはならない暴力を用い、使つてはならない金を、而も秘密に使つてこれの取引をするということは、私はこれは詐欺賭博の行為だ、こういうふうに断じて来たのであります。委員会として余り言い過ぎる言葉を使うかも知れませんが、私は法律的立場として日本選挙というものは選挙じやない、これは詐欺賭博であると極言してよろしい、こう思うのであります。即ち当選するには手品と同じように種と仕掛けを持つてかからねばならん、そうして手練手管を使わなければならん、これで初めて当選確実になる、こんなことをやつちやいかん。私は、私の余生をどうかしてこの選挙というものを、日本で正しく行うことに捧げたいという考えを持つたことをこの委員会で私は告白したい。そこで私はそいつができるか。私はできるという確信を持つております。どういうわけかと申しますと、皆さんのお力によつて、僅かで……過去三十年間の日本選挙干渉というものを全部ボイコツトすることができた。それからここ二十年間において皆さんの力で、私は日本選挙界から暴力というものを完全にボイコツトしたと思います。もう私どもが選挙に出ました頃は、親分が出まして、一杯飲んで、そうして脅迫して歩く、それがもう天下に横行して、その後ろへ政府がついておるのであります。でありますから、ときの権力を背景としますればどんなこともできた。ところが完全に国民の力でこれを選挙界から排除したという歴史を持つておる以上は、完全に私は金銭を排除することができる、この確信は帰納的に私は持ち得る。殊にこんな乱暴な金を使うのは戦後のことであります。この戦後においてはむしろ金を使わせるような傾向を私は選挙法上作られていたということに深い注意を請いたいのであります。そこで先ず第一に、選挙には金を使つちやならんということを目標にこれは行く、只今衆議院では各党、各派の人がみんなその心持になつてくれました。これはまあ、とても大きい収穫でありまして、衆議院の議員団の諸君が、イギリスを初めとして各国の選挙の状況を見に行つてくれたということは、近来にない私は大きい収穫だつたと思うのであります。而して只今局長より御説明申上げました、選挙運動に関することには相当寛大であるという、あんなことまで許す必要はないのじやないかというのです。というのはイギリスで、委員長、驚いたことは選挙運動というものはございません。で、初めはこんなことじや見に来た甲斐がないと思うほどに選挙運動というものが少い。ところが演説会場へ行きますと大変に盛んなものであります。演説会は……。そこで又演説のやり方がいいのですね、会場における状況は、如何にも政治を議し、選挙のことを論ずるというその空気が、どの演説会場にも満ちております。そうしてどこへ行きましても満員でございます。そうして婦人の数のほうが紳士よりも多い。これで成るほど男女同権も政治の民主化も徹底するのだ。こうするにはどうしたらいいかというと、極めて、たやすいことだと思います。もう選挙というものの演説というものは内容中心として行かなければならない、日本のようにどこまでもビラをたくさん後に並べて、そうしてもう大きな声を挙げて人の惡口ばかういうのは演説じやないということを教えて行かなきやならない。それは何かというと、ほかの運動をもうしない、すれば金がかかるということになれば、これはおのずから演説会に集中するですね。だからそのほかの運動はしちやならんということよりも、一定の金額以上のものを使つちやならないということに重点をおきますと、ほかのことをやれば必ず金がかかつて、それで立証できるですね。紙代から、人夫賃から、何からでありますから、演説会と、それから政党及び政党の幹部が出しますところの印刷物、これらが重要な働きをなすということになるというと、自然に結論的に、私は国民を教育するということになる。まあ選挙運動として眼についたものは、各党各派の領袖の著書、パンフレツト、それをシヨーウインドーへずつと積上げていて、これを安い値段で市民に売る。羨ましい風景だなあと思つて見て参りました。こういうことになりますと、党がこれは金を出すのでありますから、候補者費用にはなりません。そうして皆さんは買つて行くのでありますから、従つて多く売れますると、それが党費になるということになりまして、非常にいいと思います。そこで帰つて来まして、私は第一条乃至第五条というものはピシヤリと金的を射ている。これだ、これを徹底させるのだ、新選挙法の草案の第一条—第五条というものを徹底させる。これにはもう衆議院、参議院その他新聞、雑誌、挙げてこの趣旨を国民に徹底せしめて、そうして金を使つた候補者はもうそのままで当選が無効になる。又偶然、金額でありますが、只今局長から、先ず九十万円から自動車賃を入れて百二、三十万円と申しました。これが、イギリスの現在の選挙運動費の法定額にほぼ似ております。向うは小選挙区でありまするからそれで十分です。で、日本ではこれが中選挙区でありますから、余ほど困難だろうと思いますから、もう少しこれは殖やさなきやならない。と同時に、選挙というものには余り選挙区が大きくちやいけないのだけれども、選挙区の小さいことを嫌つて大きいことを望むのは何かというと、これはやはり賭博的な関係があるのでございます。というのは、当りくじの多いのに皆は入つて来る。だから百万円の当りくじ一つよりも、十万円でいいから当りくじを十本欲しいという心持になるのは、当てるということを目標に富くじを買う人の心持だと思います。従つて又、これを五万円を二十本にしてくれよという希望の出て来るのも、これも当然であります。私は、どこまでも、日本人は知らないうちに選挙というものに関してはスペキユレーテイヴなエレメントをできるだけ豊富潤沢にするという心持が、もう徹底し過ぎている。でありますから、お許しを乞うて……、牧野の言うような、これは詐欺賭博である。もつと品の惡い言葉が許されるならば、インチキ賭博だということを国民に徹底的に教える。と同時に今度の事前運動はこれを私は皆さんにやつて頂きたい、金を使つて……。それは皆さん、賭博の、手品の種なんだ、魔術なんだ、その魔法に魔術にかかつちやならないぞ、何となれば、選挙とは、ということにして、私は民主化運動に転化して行くほうが、事前運動を……、私どもや、国会の諸君が一緒になつて、ジヤーナリズム、ジヤーナリストの方面とがつちり手を握つてそうしてこの機会に日本というものは革新しなきやいかんという一大運動を起して、それは事前運動をその中に入れてしまう。そうすると自分だけの、選挙運動に似たる事前運動はもう恥ずかしくてできなくなる、こう思うのであります。従つて、そういうことを目標とする事前運動である、ならば、どんどん奨励してやらせるということへ追い込んで行きましたならば、事前運動の浄化、美化、合理化ということが結論的にできるのじやないか、こんなに思うわけであります。御参考までに……。
  9. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 他に御質疑ございませんか。
  10. 石村幸作

    ○石村幸作君 牧野委員長お話のうちで、ヨーロツパ方面の大分例があつたが、アメリカに滞在されたと思いますが、アメリカの状態はどんなふうですか。
  11. 牧野良三

    政府委員牧野良三君) アメリカでは選挙が過ぎておりまして、私は大統領の予備行為を見て歩いたのでありますが、アメリカの方面は、やることが大げさで金をかけております。従つて日本の大げさなことの真似は、ここから私は出ていると思いますが、但し買収並びに買収類似の行為は絶対にないのであります。これで彼らは賭博的要素を持つていないということを確信を得て来たのであります。でありますから、立派にあれは選挙であります。ただ人を寄せるのにアトラクシヨンに非常に金を使つている。そこのところがヨーロツパの選挙と違うのであります。
  12. 石村幸作

    ○石村幸作君 今の、金は非常に使うと、こういうことを前聞いておりましたが、その金を莫大に使つたことが選挙違反にならないか。その点が、つまり金を上手に使うというか、事実法律に触れないか、その点はどうでしようか。
  13. 牧野良三

    政府委員牧野良三君) その点は、この局長がアメリカの選挙を親しく見て来ておりますからお答えいたします。
  14. 吉岡恵一

    政府委員吉岡恵一君) 今のお話は、選挙運動費用制限額というものは一応あるのです。併しながら、いわゆる第三者運動といいますか、第三者が団体を組織して運動するのは、これに又制限額があるのであります。ただその制限額は非常に高いものですから、それに触れるようなものはまあ殆んどない。ただ下院に選挙運動費用審査する委員会がある。これで問題にすることはあるのです。あれは一九五〇年の選挙の時も、タフトが非常に沢山金を使つたというので、或る民主党の議員だつたか何だか知りませんが、この先生が委員会に持ち出そうとしたところが、委員長が取上げなかつたという問題があつて、やはり輿論に訴えて、選挙運動費を使つたことに対しても制裁を加えるということもあります。
  15. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 他に御発言はございませんか。では、今日はこれで散会いたします。    午後零時十三分散会