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1952-05-15 第13回国会 参議院 大蔵委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十五日(木曜日)    午前十時五十九分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            伊藤 保平君            菊川 孝夫君            木内 四郎君    委員            岡崎 真一君            黒田 英雄君            西川甚五郎君            溝淵 春次君            小宮山常吉君            田村 文吉君            野溝  勝君            菊田 七平君            油井賢太郎君   衆議院議員            佐久間 徹君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君   政府委員    大蔵政務次官  西村 直己君    大蔵省主税局税    関部長     北島 武雄君    大蔵省銀行局長 河野 通一君    大蔵省銀行局銀    行課長     大月  高君   事務局側    常任委員会專門    員       木村常次郎君    常任委員会專門    員       小田 正義君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件国際通貨基金及び国際復興開発銀行  への加盟に伴う措置に関する法律案  (内閣送付) ○緊要物資輸入基金特別会計法の一部  を改正する法律案内閣送付) ○外国為替資金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣送付) ○地方自治法第百五十六條第四項の規  定に基き、税関出張所及び監視署  の設置に関し承認を求めるの件(内  閣送付) ○接收貴金属等数量等報告に関す  る法律案内閣送付) ○関税法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○信用金庫法施行法の一部を改正する  法律案衆議院提出) ○国有財産特別措置法案内閣提出、  衆議院送付) ○貸付信託法案内閣提出)   ―――――――――――――
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 第五十一回大蔵委員会を開会いたします。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案、(予備審査緊要物資輸入基金特別会計法の一部を改正する法律案、(予備審査外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案、(予備審査地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関出張所及び監視署設置に関し承認を求めるの件、接收貴金属等数量等報告に関する法律案、(予備審査)右五法案について提案説明を聽扱いたします。
  3. 西村直己

    政府委員西村直己君) 只今議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案三つ法律案並びに地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関出張所及び監視署設置に関し承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明申上げます。  先ず第一に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案につきましての提案理由であります。  今回我が国国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定加盟することといたし、これがため国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定加盟につき承認を求める件を別途国会提出中でありますが、加盟伴つて我が国基金協定及び銀行協定規定によつて出資拂込その他各種義務を負うこととなるのであります。これらの義務を履行いたしますためには国内法的な措置を必要とするものでありますので、このためこの法律案提出いたした次第であります。  次にその内容概略を申上げます。先ず、基金及び銀行に対する出資額はそれぞれ二億五千万ドルでありまして、現行のレートで換算いたしますと、それぞれ九百億円となりますので、政府はこの金額範囲内で基金及び銀行に対して出資し得ることを規定いたしました。この金額は現在直ちにその全額の支出を要するものではなく、負担の最高限を示したものであります。  次に、基金に対する出資は金及び本邦通貨で、銀行に対する出資は金又は合衆国通貨その他の外国通貨及び本邦通貨で行い得ることと定めております。即ち基金への出資は二つの部分に分れ、割当額一億五千万ドルの二五%に当る部分は金で加入前に出資することを要しますが、残額七五%に当る額は、本邦通貨加入支拂うことになるのであります。又銀行に対する出資は、三つ部分に分れ、第一に、総額二億五千万ドルの二%に当る部分は金又は合衆国ドルで、第二に、総額の一八%に当る部分本邦通貨で、いずれも加入前に拂込むことを要しますが、総額の八〇%に当る額、即ち出資額総計の大部分は、将来銀行から拂込請求があつたときに金、合衆国ドル、その他の外国通貨のいずれかで支拂うこととなるのであります。次に出資を行うに当りましては、我が国の財政の現状に鑑みまして、日本銀行の所有する金地金をその帳簿価格で買上げ、これを基金出資する金の一部に充てることが、適当と認められますので、これに関し必要な事項規定いたしました。次に、基金協定及び銀行協定によりますと、本邦通貨たる円で拂込む額については、必ずしも現金で全額出資する必要はなく、その大部分は、政府又は中央銀行の発行する一定証券を以て円貨の拂込に代えることができますので、我が国も、この協定規定により、その拂込むべき本邦通貨の大部分国債の交付によつて代えることとし、この出資のために基金及び銀行に交付する国債発行等に関して必要な事項規定したのであります。なおこの国債は、基金又は銀行から要求のあり次第、直ちに現金支拂われるべきものであることを要請されておりますので、政府基金又は銀行からこの国債について償還請求があつた場合には、直ちに償還を行うことにすると共に、償還財源に不足がある等のため、償還ができない場合を考慮して、政府はその償還できない金額に相当する国債の買取りを日本銀行に対して命ずることができることといたしたのであります。以上申しましたほか、基金との取引及び協定規定による寄託所として日本銀行指定すること等について、所要事項規定しているのであります。  以上が国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案内容でございます。  次に、緊要物資輸入基金特別会計法の一部を改正する法律案でございますが、従来、緊要物資輸入基金は、特殊需要に応ずるため、政府において緊急に取得することを必要とする物資輸入運用することになつているのでありますが、今回その運用する物資範囲を改めるためこの法律案提出いたした次第であります。即ち、政府が取得することの緊要な物資で、以下に申しますようなものの輸入に対してこの基金運用することといたそうとするものであります。  その一つは、国際的取極に基いて日本国に割当てられた物資でありまして、これは国際原料割当会議によつて加盟国に亜鉛、硫黄、タングステン、マンガン等を割当てるのでありますが、これらの貴重物資については、輸入後の使途につき規制する必要がありますので、緊要物資輸入基金運用によりこれを政府において取得することといたしたいのであります。  次に、外国における輸出統制物資等で、政府以外の者による輸入が困難なもの、又は政府による輸入を有利とするものでありまして、例えば外国において政府相手でなければ輸出をしないもの、又は民間において輸入をするときは、競争のため輸入価格をつり上げる虞れのあるもの等でありますが、これらの物資についても本基金運用により取得することといたしたいのであります。  次に、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案であります。  現在、外国為替資金は、対外支拂手段及び外貨債権並びに対外支拂の決済土必要な金、銀地金売買等運用することになつているのでありますが、最近の外国為替等保有高の増加に鑑み、同資金を有利確実な外貨証券にも運用し得ることとすることが適当と認められますので、外国為替資金特別会計法所要改正を加えるためこの法律案提出いたした次第であります。  このほか、今国会で目下御審議を願つております貴金属管理法の一部を改正する法律により、銀の統制額がなくなりますのに伴いまして、外国為替資金に属する銀地金については、大蔵大臣指定する価額によつて評価することといたしているのであります。  第四番目の法律案であります。接收貴金属等数量等報告に関する法律案提案理由であります。  終戰後連合国占領軍は、本邦内において政府及び日本銀行等公的機関を初め、旧軍需会社等の保有していた金、銀、白金等貴金属及びダイヤモンドを占領軍自体の手で直接接收し、管理して来たのでありますが、平和條約の発効と同時に、これら貴金属等政府に引渡し、その処理は政府に任せられたのであります。政府といたしましては、これらの引渡しを受けた貴金属等を、その接收を受けた旧所有者等に対しまして、返還その他の措置を講ずる必要があるのでありますが、何分にも接收に関しましては、政府は全く関與いたさなかつたため、現状においては接收を受けた者の住所、氏名及び接收された貴金属等種類数量その他が不明でありまして、これらの事項を明確にすることが先ず必要であります。そこでこれらの事項を調査確認するため、接收を受けた者から必要な報告を徴することといたし、この法律案提出いたした次第であります。  以下その内容を申上げますと、本邦内において貴金属等を占有していてこれを連合国占領軍接收された者又はその相続人等は、昭和二十七年九月三十日までにその接收された貴金属等種類数量その他接收の事実を示す事項を、所要証明書類を添えて、大蔵大臣報告しなければならないこととしているのであります。なお、その報告に当つて、不当の利益を得るがため虚偽報告をすることを防止するため、虚偽報告をした者に対する罰則を設けることといたしました。  最後に、一件御承認を求める案件であります。  即ち只今議題となりました地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関出張所及び監視署設置に関し承認を求める件につきまして、その提出理由を御説明申上げます。  最近における外国貿易の趨勢、密貿易動向及び北緯二十九度以北の島嶼の我が国行政権下への復帰等に鑑みまして、税関行政の円滑な遂行及び密貿易監視取締の完全を期するため、津久見税関支署佐伯監視ほか一監視署出張所に改めますと共に、神戸税関飾磨監視署ほか二監視署を新たに設置することといたしたく、ここに国会の御承認をお願いいたした次第であります。  次にその内容概略を申し上げますと、先ず、津久見税関支署管内佐伯港は、港湾設備が整備された天然の良港で、又背域産業も最近とみに隆盛を来たしており、その上二月十日に発せられた安全宣言を契機としてセメント、木材等輸出が増加して税関業務も急増する傾向にありますので、現在の佐伯監視署出張所に昇格いたしたいのであります。又、釜石税関支署管内大船渡港は、気候的にも地理的にも惠まれている上、背後に豊富な地下資源を有し、化学工業立地條件に惠まれており、工業貿易港として発展しつつありますので、現在の大船渡監視署出張所に昇格いたしたのであります。次に阪神地区密輸動向及び地理的條件を考慮いたしまして、姫路市飾磨区に監視署を新設いたしたいのであります。又津久見税関支署管内佐賀ノ関港は、地理的にも重要な地に位置し日本鉱業佐賀ノ関製錬所の門戸をなしているため、不開港出入特許を得て出入いたします外国貿易船も次第に増加しており、その上一方、この地と琉球及び南西諸島方面との間に非鉄金属類密輸が相当活溌に行われておりますので、この地に監視署を新設いたしたいのであります。  更にこのたび我が国行政権下に復帰いたしました鹿兒島県大島郡十島村のうち、いわゆる下七島は、中ノ島主要中継地として、従来から我が国奄美大島琉球方面との間の密貿易主要中継地となつております上、近くこの島を経由する鹿児島那覇間の定期航路も予定されておりますので、密貿易取締税関行政の円滑を期するため、中ノ島監視署を新設いたしましたのであります。  以上のように二十張所及び三監視署設置いたします半面、行政機構簡素化趣旨に鑑み、現在見るべき貿易実績もなく、密貿易事件も僅少と思われますところの門司税関六連出張所神戸税関真浦監視署及び湊監視署を廃止し、又青森税関支署大湊出張所監視署に改めることとしたのであります。  以上、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案ほか三法律案地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関出張所及び監視署設置に関し承認を求むるの件についての提案理由及び内容概略でございます。御審議上速かに御賛成あらんことをお願い申上げます。   ―――――――――――――
  4. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に、関税法の一部を改正する法律案についての内容説明を求めます。
  5. 北島武雄

    政府委員北島武雄君) 関税法の一部を改正する法律案につきましてその内容を御説明申上げます。  平和條約の締結に伴いまして、平和條約の宣言のところに、日本はできるだけ速かな機会において各種国際條約及び協定加入し又は参加承認を申請することとなつておりますが、そのうちで税関手続簡易化に関する国際條約、貨物原産地虚偽表示防止に関する協定及び国際民間航空條約には税関手続に関する事項規定されておりますので、これらの條約及び協定規定並びに精神に鑑みまして、現在の関税法に挿入することを必要とする事項を挿入いたしますと共に、なお現在の法律中これらの規定精神に鑑みまして改廃を要する事項をこの際改年をしようというのがこの法律案趣旨でございます。  先ず税関手続簡易化に関する国擦條約関係につきまして、第一点といたしまして関税担保種類を現在金銭国債、それから税関長が確実と認める社債ということになつておりますが、このほかに新たに保証人保証を附加えた点であります。税関手続簡易化に関する国際條約の第十六條の附属書の第六項には、関税保証としては正当に担保された証書又は現金支拂のいずれの形式であつてもこれを認めることが要請されておりますので、我が国の実情も考慮いたしまして担保範囲保証人保証まで拡げたという内容でございます。現在関税法及び関税定率法には諸所関税担保を要する場合が規定されております。例えば関税法の第三十四條におきましていわめる輸入免許前の引取という制度がございますが、これは輸入いたしました際に、品目の分類或いは税率の適用などにつきましていろいろ疑義があるという場合に、その疑義がきまるまで通関をさせないということは、これは又取引を阻害いたしますので、担保を提供させまして輸入免許前の引取ということを認めております。又関税法の三十九條におきまして、いわゆる術語で、外国貨物保税運送という制度がございます。これは外国貨物開港又は陸路によりまして、開港から保税地域の間又は税関官署所在地、その相互間に保税のまま運送するということでございますが、この場合も担保を提供させることができることになつております。それから関税定率法第八條におきましては、輸入の日から一年以内に再び輸出されるものにつきまして、一定條件の下に免税ができる、この場合にも担保を提供させることができることになつております。なお定率法の第九條におきましても、将来輸出することを條件とし、又は或る物品を製造することを條件として、一時的に輸入税を免除する場合、この場合にも担保を提供させることができる。それから保税倉庫法におきましても、保税倉庫から他の保税倉庫へまだ輸入手続の済んでいない貨物を運般することを認めております。その場合にも担保を提供させることができるというような規定になつております。これらの場合におきましていずれも現在は担保範囲が非常に狹い、金銭とそれから税関長が確実と認める社債、これだけしかありませんので、保証人保証まで拡張いたしたという点であります。  それから第二点は、臨港地帶保税地域に関する規定を明確にいたしまして、これらの地域に対しましては、関税行政最小必要限度の規制を必要といたしますが、それと共にその中における貨物の取扱についてはできるだけ自由にして、貿易の伸展に寄與するという趣旨改正がございます。現在の保税地域規定は極めて簡單で、且つ内容はつきりなつておりません。現在は「本法ニ於テ保税地域ト称スルハ税関構内保税倉庫税関仮置場、税関長カ外国貨物蔵置シ得ヘキ場所トシテ指定ハ特許シタル場所」、こういうふうに極めて簡單に書いてありまして、この内容である税関構内というのはどんなものであるか、或いは指定又は特許したる場所というのはどんなものであつて、その法的効果はどんなふうなものであるかということについては、殆んど規定がないのであります。で、專ら従来の行政慣例によりまして行われておつたのであります。今回の税関手続簡易化に関する国際條約におきましては、その條約の十四條の附属書におきまして、保税施設の完備及びそれら保税施設の倉敷料の合理的な率の採用等が要請されておりますので、この際不明確であつた保税地域規定を明確化いたしまして、税関並びに事業者等に安心して一定標準によつてやれるようにしよう、こういう趣旨でございます。  それから次に輸出入申告に際しまして虚偽申告、それから虚偽証明虚偽添付書類提出につきましては、現地五万円以下の罰金に処することになつておりまして、行為者のほか責任者をも罰するということになつておりますが、この條約の精神におきましては、各国は税関手続又は規則の軽微な違反に対しましては、苛酷な罰を科することをできるだけ避けることが望ましいとされておりますので、この際軽微な違反に対しての罰則を削除するというのが趣旨でございます。  それから次に、貨物原産地虚偽表示防止に関する協定でございますが、この協定におきましては、貨物原産地について虚偽表示をせられておるところの貨物と申しますと、極くわかりやすく申しますと、アメリカでできたものでないのに、メイド・イン・ユー・エス・エイというふうに書いてある。こういう品物に対しては、税関輸入の際に差押えろという規定がございます。この規定に鑑みまして、関税法中に、若しこういうような原産地について虚偽表示をせられた貨物が入りました場合におきましては、税関では先ず輸入免許を與えませんで、輸入申告者に対して一定期間指定しまして原産地虚偽表示抹殺するか、訂正するか、或いは又積み戻しをするようにということを一応先ず指示いたします。そうしてその期間内に抹殺訂正又は積み戻しせられなかつた貨物は、それから直ちに税関保管ということをいたしまして、強制保管いたしまして、それから更に四カ月たつてなお抹殺訂正、積み戻しなどの行為がせられない場合においては、これは税関公売等措置に出るという規定を置いてございます。  それから次に国際民間航空條関係でございますが、この條約の第十條には、国際航空機税関検査等を受けるために、税関空港に着陸しなければならないということ、それから又これから出発しなければならんということが規定されておりまして、更に航空機の旅客、乗組員貨物税関法規等に従わなければならないということ、それからその他この條約に基いて設定される航空機に対する税関手続に関する国際的な標準等従つて税関手続国際的統一化を図るべきことなどが規定されておりますので、これらの規定に鑑みまして、関税法の中に航空機に関する規定を織り込んだわけであります。現在関税法を御覧になりますと、航空機については何ら規定がないわけでございます。どういうふうにして運用されておつたかと申しますと、実は大正十年に制定されました航空法という法律がございまして、その航空法の中で、航空機については関税法の中の船舶に関する規定準用するという規定がございまして、その簡單準用規定によりまして、すべて船舶と同様な規定に従わしておつたわけであります。ところが昭和二十五年にこの航空法が廃止せられまして、それと同時に国内航空運送事業会というのができまして、この国内航空運送事業会におきましては、航空法は廃止するが、その中で航空機に対して関税法における艦船に対する規定準用するという規定はそのまま適用する、依然として継続するということになつております。で、そういう簡單規定によつて今まで運営されておつたのですが、今度航空法も別途制定されますし、只今のような趣旨に鑑みまして、この際関税法航空機関係規定はつきりとするというような趣旨でございます。  それからなおちよつと一言附加えたいのでございますが、今回の関税法改正は、いずれも今後これらの條約に日本参加又は加入の要請をいたします場合には、この程度改正がどうしても必要ということになるわけでありますが、これらの條約に加入しなければこれらの改正は必要ないかということになりますと、実はこれらの問題は依然として、従来からの懸案事項であつたものが大体でございます。従いましてこれらの條約に加入しないにしても、まあこの程度改正は必要であると我々が考えておつたものてあります。例えば関税担保範囲を拡張するに際しましても、最近のような金詰りの状況を見ますと、金銭とか国債社債だけを担保にするのは酷でありまして、業者におきましても確実な保証人保証ならいいじやないかというような要望も大分ございますので、かねがね担保範囲も拡張すべきであると、考えておつたのであります。それから又保税地域規定も現在非常にあいまいでありますので、この数年来何とかもう少し明確にしたらいいじやないかという気持を持つておりました。それからなお軽微な違反に対して苛酷な罰をかけないということも、理論としては我々賛成であります。それでこの際こういう改正をやはりしたほうがいいというふうに考えております。それから原産地虚偽表示防止につきましては、これは仮に條約に入らなくても、若しアメリカでできたものでもないのにメイド・イン・ユー・エス・エイというようなマークを付けて、そうして日本の内地の消費者を迷わしておることは、これは困るのでありまして、我々としては先ず必要な規定だと考えております。なお航空機関係規定の挿入につきましては、只今申上げたような趣旨で、單なる準用規定でなくて、関税法に詳細に織り込むことをかねがね必要としておつたわけであります。  以上簡單でございますが、内容を御説明いたしまして、なお御質問によりましていろいろお答え申上げたいと思います。
  6. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 質疑はおありになりませんか。……それではこの法案質疑は次に讓ります。   ―――――――――――――
  7. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは信用金庫法施行法の一部を改正する法律案、右について提案理由説明を聽取いたします。
  8. 佐久間徹

    衆議院議員佐久間徹君) 只今議題となりました信用金庫法施行法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  御承知の通り昨年六月信用金庫法を制定いたしまして、協同組織による中小金融機関として信用金庫制度を創設いたしました際、同時に信用金庫法施行法を制定いたしまして、同法施行の日から一年内において、既存信用協同組合のうち適格なものにつきましては、免許を受けて信用金庫に転換できることとすると共に、既存信用協同組合であつて信用金庫となるものにつきましては、同法施行の日から二年間を限り、信用金庫法第五條において規定する出資金最低限度を緩和することといたしたのであります。  この規定によりまして、各既存信用協同組合は、それぞれ転換の手続を進めて参つたのでありまして、昨年十月以降逐次信用金庫事業免許が與えられ、四月二十八日現在におきまして、すでに免許を受けましたものは内免許を含めまして四百十となつているのであります。然るところ組織変更のための期間は先に申述べました通り一年間となつておりますので、来たる六月十五日となりますれば未だ組織変更するに至つていない信用協同組合は、経過措置としての簡易手続による転換ができない結果とならざるを得ないのであります。  又一方最近における金融状勢に鑑みますとき、中小金融の專門機関である信用金庫の活動を活溌化することの必要性がますます痛感せられるに至つているのでありますので、今回信用金庫法施行法の一部を改正いたしまして組織変更のための期間を更に一年間延長いたすと共に、組織変更に際しては出資金最低限度を緩和する経過規定も同様一年間延長することといたし、既存信用協同組合のうち適格なものが信用金庫となることに便宜を図り、以て中小金融の円滑化に資したいと存ずるものであります。  以上の趣旨によりまして、この法律案提出いたしました次第であります。何とぞ御審議上速かに御賛成あらんことをお願いいたします。
  9. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) この法案についての質疑を行います。
  10. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 切替の期間を一年間ずつ延長しようという提案理由の御趣旨のように承わつたのでございますし、又そうでございますが、適格なものが、今日まで信用協同組合信用金庫に組織変更ができなかつた理由は、どこにそういう理由があつたのでございますか。
  11. 佐久間徹

    衆議院議員佐久間徹君) お答えいたします。只今御質問の、今までのうちにこの適格、まあ適格の資格に欠けるところがある……まあ一つの線を引きまして、その線に入りましたものを先ず優先的に金庫にする、こういうようなわけでございましたので、信用協同組合全部当初から金庫にするということがどうかと思いましたのでございまして、その間にいろいろ検査等を施行いたしまして、できるだけその最初引きました線に到達するものを優先的に金庫にいたしまして、その間に信用協同組合側といたしましては、できるだけ努力いたしましてその線に持つて行こう、こういう努力をされておるように存じております。そういうわけでございまして、まだその線に到達しないものが多少ございます。できるならば親心を以ちまして、既存信用協同組合を少しでも多く金庫に持つて行きたい、こういうように考えておるのでありまして、期間を従いまして延長いたしまして、その間に組合の努力に待つて、金庫法の精神に従いましてできるだけこのほうに作り上げよう、こういうまあ考えで延長をお願いしておるような次第でございます。
  12. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  13. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて下さい。それでは細かい点に触れて研究する必要がありますので、この法案は、今日はこの程度にして、次に国有財産特別措置法案について質疑を行います。速記をとめて。    〔速記中止〕
  14. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて。それでは午前の委員会はこれで休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩    ―――――・―――――    午後一時二十四分開会
  15. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは午前に引続き委員会を開会いたします。  貸付信託法案質疑を行います。
  16. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 條文について二、三お尋ねしたいのですが、その一つは、第二條に「信託契約により受入れた金銭を、主として貸付又は手形割引の方法により、合同して運用する金銭信託であつて」というふうになつておりまして、「主として」ということになつておるのですが、十三條を見ると、「受託者は、貸付信託の信託財産を、貸付及び手形の割引の方法以外の方法により運用してはならない。」ということは、それ以外の方法はいかんということになつておるのですが、「主として」ということになるというと、何か他の方法によつて運用することもあるようにも見えるのであつて、十三條から見るというと「主として」という言葉は意味をなさないように思うのですが、それは勿論余裕金は十三條にもありますが、預金するなり何なりして、遊ばしておくことのないほうがいいことは当然であるし、又最初に受入れた金銭運用する、いろいろ預金にするとまうようなことは当然いいことと思うのですが、「主として」ということを特に法文に用いられた趣旨はどういう趣旨ですか。
  17. 大月高

    政府委員(大月高君) 今黒田委員から御質問がございました通り、第十三條を「主として」ということで表現いたしたのでございまして、この第十三擦の本文は、貸付及び手形の割引だけに嚴重に限定いたしております。ただ但書がございまして、余裕金と信託契約の取扱期間中における信託財産、これだけについてはこの限りでないというふうに外してございますので、適当な預金にするなりコールに出すなり、その間運用できるので、嚴重に「貸付又は手形割引の方法により、」と言い放しますと、そういうような場合について違法であるかどうかというような問題を生ずる虞れがありますので、その点は第十三條の運用の余地があるという意味において「主として」という形容詞を入れたわけであります。
  18. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 そうすると「主としては」は削つたほうがいいのじやないふと思うのですが、こんな主としてという文字を書いて、如何にも何かはかにもあるようで、何か作文でも作るなら、主としてと言つてもかまわないのですが、法文となれば、むしろ不要であつて、而も誤解を招く文字だと私は思うのですが……。
  19. 大月高

    政府委員(大月高君) 第二條は定義でございまして、それの具体的な運用なり、具体的な手続は、この法律によるべきものであります。従いましてここに「主として」と書きましても、書かないでおきましても、第十三條によつて具体的な財産の運用は行われるわけでございます。従いましてこの第十三條による運用を「主として」と考えるか、或いは「主として」という形容詞をとつて考えるかということになりますと、最も正確に申しますれば、やはり「主として」という形容詞がついておるほうが正確であつて、それを外して嚴重に、貸付又は手形割引の方法に限定してしまうと、却つて逆の誤解を起すのじやないかというのが、この「主として」という意味であります。
  20. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 どうも今の御説明だけでは、「主として」は削つたほうがいいのじやないかと思うのですが、それはまあ……。次にお伺いしたいのは、十四條の第四項であるのですが、これは十四條につきまして「元本に損失を生じた場合にこれを補てんする契約をしたときは、その補てんに充てるため、当該貸付信託の收益の計算の時期ことに、その收益のうちから特別留保金を積み立て、当該貸付信託の信託財産に留保しなければならない。」とあるのですが、これはいいと思うのですが、その第四項で、「前項の規定に基く政令で定める限度をこえることとなつたときは、そのこえる金額を、当該貸付信託に係る信託約款の変更により元本補てんの契約を解約したときは、特別留保金の金額を、それぞれ、信託報酬として取得しなければならない。」というので、これは信託会社が信託報酬として全部取つてしまう、補填をしなくて済んだら、それは信託報酬にしてしまうということになると思うのですが、これは私の解釈が多少違うかも知れませんが、そうならば、初めの特別留保金を積立てたのは、收益のうちから約定の信託報酬を差引いて得た收益ですから、それは本当は受益者に帰属すべきものであろうと思うのです。それを補填に充てるために特別に留保しているのですから、その留保が必要がなくなつたときにはそれは受益者に当然行くものではないかと思うのですが、これはどういう意味ですか。
  21. 大月高

    政府委員(大月高君) この第十四條を立てました趣旨は、結局貸倒準備金と同じような趣旨でございまして、現に元本に損失を生じた場合に、補慎する契約をいたしますと、仮に貸倒れがこの関係で生じました場合には、固有勘定で以てこの補填をしなければならないわけでございます。そういたしますと、この信託会社といたしましては、突然大きな損失をこうむる、こういうことになるわけでございますので、そういう準備に充てるために特別留保金を留保する。そういたしますと、本来の性質といたしましては、実質的な信託報酬のうちから積立てるべきものであると考えるわけであります。貸倒準備金にいたしましても、現に一般の銀行がその期の利益として計上されますもののうちから貸倒準備金として積立てをいたしまして、その分について税法上損金とみなすということにして将来の変動に備えているわけでございまして、それと同じ意味におきまして、この特別留保金は分配を平等にするというような受益者の面から見た考えではなくして、この制度の受託者として動いております信託会社の不時の用に備えるという意味を持つているわけでございます。従いまして実質的には信託報酬の中から積立てると観念すべきものでございますので、これを取り崩しました場合には当然信託会社に帰属する、こういうふうに考えているわけでございます。
  22. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 ちよつとよくわからんのですが、この特別留保金というのは收益のうちから積立てる、これはまあ間違いないわけですが、初めから元本補慎の契約をしておらなければこれは当然受益者に行くべきものなんでしようと思うのです。ところが契約をしているから、これは一応元本補填をするような必要が生じたときの危險のために今の貸倒準備金みたいに積立てて置く。であるが、それが要らなくなつたときに解約を、これはまあ四項は「補てんの契約を解約したときは、」となつていますが、仮に解約をしないで、ずつと補填の契約は最後まで続いておる、併しながら元本にはそういう補慎をするような必要は生じなかつたというようなときには、これは法案には書いてないようですが、これもやはりこの四項によつて、信託報酬として取つてしまうという意味であろうと思うのですが、どうもそれは受益者に一旦やるのが当然であつて、信託会社は信託報酬は契約によつてきめたものを取つておればそれでいいので、そうして実績主義で儲かつたものは受益者に配付してやるということが正当じやないかと思うのですが、どうですか。
  23. 河野通一

    政府委員(河野通一君) 先ほど言い残しました説明に附加えて申上げます。これは一種の保險みたいなものと御了解頂きたいと思います。黒田さんも保險会社をやつておられるので御承知の通りであつて、仮に元本補慎の契約をしたために、或る程度のものを特別預金として積んだ。五十万円なら五十万円積んだ。ところが実際損は百万円だつたという場合は、やはり自分の体を食つて埋めなければならんわけです、信託会社としては。そういう意味において、一方ではその留保金で十分カバーできるかできないかわからんわけです。できない場合もあり得るわけです。一方では一種の保險ですから、損失が実際出て来なければ、出て来ないものは保險と同じようにお考えになつて、やはり会社の固有財産に帰属するというふうに考えるのが筋じやないか。保險事故が起らなかつたからというので皆契約者に返すということになるのじやなくして、やはりその保險料で十分損失を賄えなかつたら別のほうで拂わなければならん。この点は同じようにお考えになつて頂いて結構と、かように思います。
  24. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 お考えは大体わかつた。それでは元本補填の契約を四項は解約した場合を書いてあるのですが、解約をしないでずつとやつている場合においてはどうなるのですか。信託契約終了の場合においてどこの條文によつて処理されるのですか。
  25. 大月高

    政府委員(大月高君) この特別留保金は、先ほど御説明申上げましたように、損失の補慎契約をしておる限りにおいて、固有勘定で損失をこうむる虞れがある、それに対する留保金の意味でございます。従いましてこの契約がすつかりなくなるとか或いは補填契約がなくなるといたしますと、損失が起きましても、これは完全に受益者にそのまま行つてしまう。そういたしますと、この固有勘定自体に対する影響はなくなるわけでございます。そういう意味におきまして、その制度の本質といたしましてこの特別留保金というものは、契約がなくなつてしまう、全部終了いたしますれば、当然なくなるわけでございまして、そのなくなり方は、信託報酬として信託会社に帰属する、こういうように考えておるわけでございます。
  26. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 ちよつとそのところがよくわからんですが、信託契約が終了した場合に、特別留保金があれば、それは信託会社が留保したのだから、信託会社のものだというふうに解釈せられるわけですか。保險料とかいうようなことはこの法文には書いてないのだから、とにかく留保しておるのは、私は受益者のために留保しておるのかと思うのですが、信託会社のために留保しておつたのであつて、当然信託会社のものになるという解釈なんですか。
  27. 大月高

    政府委員(大月高君) この特別留保金が仮に受益者に対する配当金を平均さす、そういうような意味で留保してあつたのなら、まさに受益者のものでございまして、留保金を崩せば最終的に受益者に帰属すべきものだと存じます。ただそういう考をとりますと、それは損失補慎をすると否とにかかわらず、そういう制度になるわけでございまして、この第十四條におきまして、損失補慎契約をしておる場合に限つて、こういう特別留保金を積みまして、この契約のない場合にはこの制度を全然適用しない。そういう意味からいたしますと、これは信託会社の固有財産の側の損失をならす制度である、そういうようにお考え願いたいと思います。
  28. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 それなら「当該貸付信託の信託財産に留保しなければならない。」という言葉はどうも少しおかしいように思うのですが。
  29. 大月高

    政府委員(大月高君) このどちらに計上するかといううことは、便宜の問題でございまして、これは特別留保金である限度におきましては、收益の中から積立てるというわけであつて、受益者に帰属しておるものでも直接信託会社に帰属しておるものでもないわけでございます。で、これは特に信託財産に留保するというように書きましたゆえんは、税法上の取扱を簡便にする意味でございまして、仮にこれを本来の固有勘定に積立てるといたしますと、どうしても税法上の面におきまして收益に入るわけでございますから、これについて免税をするとか、貸倒準備金と同様に取扱うか、そういうふうな税法上の措置をとる必要があるわけであります。これを信託財産として留保しておきますれば、まあ收益なり元本の配当する以前においては、税法上の対象にならないということは解釈上当然なりますので、そういう技術的の便宜におきまして、信託財産に留保する、こういう表現を使つたわけであります。
  30. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 そのことはわかりましたが、当然貸付信託の信託財産に留保したものとなれば、その元本補填の契約を解約したときは、四項によつてはつきりしますが、解約をしないで信託契約が終了した場合においては、信託財産としてその期間まで残つているわけですから、やはり四項のようななにで、それは留保財産だけは、これは信託会社の信託報酬になるのだという、この何か規定がないと、信託財産の今後処分の場合において非常に法文上不備があるのじやないかと思うのですが。
  31. 大月高

    政府委員(大月高君) これは第十四條の一項によりまして、「元本に損失を生じた場合にこれを補てんする契約をしたときは、その補てんに充てるため、」という、この特別留保金の制度をそこで明示いたしたわけでございます。で、なぜ特別留保金を積立てるかということになりますと、今申上げましたように、補てん契約をした場合に限つて積立ててある。それは今のように固有財産の損失をならすためのものである、こういうことでございますので、そういう制度の性質上当然信託財産に帰属するものとして特別の規定をおかなかつたわけでございます。
  32. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 どうもその点は少しよくわからんように思うのですが、まあ第三項の「特別留保金の限度及び積立の方法は、政令で定める。」とありますが、これはどういうふうに定めるのですか。
  33. 大月高

    政府委員(大月高君) 先ほど申上げましたように、この特別留保金自体が、一般の銀行について考えられております貸倒準備金の制度とほぼ精神を同じくいたしますので、その率及び方法等につきましては、貸倒準備金の制度に準じて主税局とよく相談いたしまして、均衡を失しない程度に定めたい、こういうように考えております。
  34. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 この第七條に「信託会社は、貸付信託に係る信託契約を締結しようとするときは、左の事項を公告しなければならない。」、この公告の義務規定化せられておりますが、この中に、今の元本補填の契約をするというような場合には、元本の補慎の契約があるのだということは公告をする必要があるのじやないですか。
  35. 大月高

    政府委員(大月高君) 第七條の公告は、結局誰がどういう目的でいつからいつまでのものもを募集いたしまして、いついつ收益の計算をするか、いつ元本を償還するかという、いわば形式的の要件だけを、具体的な要素の確認できるだけの最小限度を並べたわけでございまして、別に第三條によりまして、この信託契約のもとになる信託約款は、大蔵大臣承認を受けるわけでございます。それでそれに則りまして信託契約を締結するわけでございますから、具体的にこの受益証券を買う人といたしましては、その詳細な條件を見まして、そこで買う。従いましてこの元本補填の契約をしたかどうかということは、公告としては要件といたさなかつたわけでございます。
  36. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 併しこれはなかなか申込む者には重要な事項のように思いますけれども、それはどつちでも大したことはないと思うのですが、それからさつきの十四條ですが、特別留保金の問題をもう少し……、これの運用というものはこの十四條の一項によつて当該貸付信託の信託財産に保留しておるのですから、やはり貸付信託の運用方法によつて運用しなければならんのですか。これは運用しなくてもいいとか、或いは勝手に運用していいということになるのですか。やはり十三條の適用を受けるものですか。
  37. 大月高

    政府委員(大月高君) これはやはり当該貸付信託の信託財産でありますので、第十三條の規定によりまして運用される必要があるわけでございます。これは特別留保金という計算上の数字でございますので、具体的なものとしては何かの恰好になつておらなくちやならんのでございます。それは第十三條の形式による貸付又は手形割引の方法によるわけでございます。
  38. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 もう一つ、この十三條によりまして、貸付及び手形の割引の方法で以て運用する場合に、担保をとつて貸付けるか、無担保で貸付けるかというようなことは、これは信託会社の自由でいいわけなんですか。勿論善良なる管理者の注意を以てやらなくちやならんことは信託法によつてきまつておるわけですが、担信をとるかとらんかは勝手にやつていいという御趣旨ですか。
  39. 大月高

    政府委員(大月高君) 只今の黒田委員のお話の通りでございまして、信託会社といたしましては、善良なる管理者の注意を以て人の財産を運用する義務があるわけでございますので、それについて、一般の金融界において常識となつております貸付の原則によつてやる。そういたしますれば、当然長期の貸付になつて参りますれば、これを担保をとつて貸すということが原則になろうかと存ずるわけでございまして、これは特に法律上明定してないのであります。
  40. 田村文吉

    ○田村文吉君 前に御説明があつたのかも知りませんが、第三條の信託の目的ですね、一にあるこれは具体的に言いますと、どういうことをお書きになるのでございますか。
  41. 大月高

    政府委員(大月高君) ここで考えております目的は、一般の金銭信託の場合におきますと、こういう項目で書かれますことは、金銭運用による利殖というように抽象的に書かれるわけでございますが、これはこの法律の第一條に目的が掲げられておりますように、資源の開発その他緊要な産業に対する融資ということが謳つてございますので、單なる金銭利殖ということでなくして何々産業、何々業に対する融資による利殖と、こういうふうに書くことになると存じます。具体的に電力であるとか、海運業であるとか、造船業であるとか、そういうように表現されるものと考えております。
  42. 田村文吉

    ○田村文吉君 そこで一体どの程度まで……信託の目的というものは、大体この法律に明らかに目的がなつているんだから、それをわざわざここに書く必要があるなら、そこに具体的に或る程度の問題を、どういう特殊の電気会社のものをやるとかいうところまで突つ込んでお書きになるのか、そうでなくて電気事業の投資のためにやるのだという程度におとどめになるのか。その辺がちよつとはつきりしないのですが……。
  43. 大月高

    政府委員(大月高君) これは特定の会社ということは嚴に限定しない、先ほどのお話のように電力業或いは造船業と、そういうように限定いたしたいと考えております。
  44. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 一点伺いたいのですが、若しこの貸付を受けている会社が事業の失敗によつて元本も何も返すどころの騒ぎじやないような赤字が出てしまつたという場合に、これは元本の補填ということは優先的にやるのですか。それから又事にもう最悪の場合、破産などという場合には、他の如何なる債権にも優先してこれは返してやるというふうな解釈になるのですか。
  45. 大月高

    政府委員(大月高君) この制度といたしまして、元本の補慎をする場合と、しない場合とあることは今のお話の通りでございますが、元本の補填契約をいたしておらない場合におきましては、若し貸倒ができますれば、その危險は全部受益者に帰属するわけでございます。で、元本補慎の契約をいたしております場合には、仮に破産というようなことがございますれば、この補填契約に基きまして、直ちに契約に基いて拂う、従いましてその危險は会社に帰属するわけでございまして、その元本補填の契約をいたしておるかいたしておらないかによつて性格が違うわけでございます。ただ現実の問題といたしましては、仮にそういう破産するような会社に融資するということは、まあ万々ないと思いますが、それは万一あるかも知れない。併しそれに対しまして善良なる管理者の注意の義務に基きまして十分なる担保を取るとか、或いはその他保証を付けるとか、そういうことによつて万遺憾ないように処置して行く、これが又一つの信託の本質であると思います。
  46. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私の言うのはそうではないのです。この契約以外の事由によつて信託会社そのものが、つまり事業の整理をしなくてはならない、或いは破産してしまつた、そういつたような場合における優先処置がとられるのかどうか。
  47. 大月高

    政府委員(大月高君) 信託会社自体が仮にまあ破産いたします、こういうような場合になりますれば、これはやはり一つの私企業でございますので、一般の破産法の原理によつて処理されるより仕方がない。そういたしますと、この補填契約自体は一つの保証債務でございますので、やはり一般の破産債権として処理される。特別な優先権はないと考えております。
  48. 田村文吉

    ○田村文吉君 そうすると勧業債券とか興業債券とか過去において発行されたものと実質的に違う点を一つ列挙して頂けませんか。
  49. 大月高

    政府委員(大月高君) これはいわゆる信託でございますので、社債の性質を持つております金融債とは、要するに信託であるか社債であるかという点において違うわけでございます。その根本は、若し貸倒れ、これに基きます貸倒でもできました場合には、社債でございますと全会社の財産を以てこれを拂つて行く、それに対しまして信託の関係では、その個々の貸付とリンクいたしまして、その貸付の期限に応じて分配して行く、その点が本質的に違うところだと考えます。それから具体的に当事者の側から申しますと、この貸付信託では、融資の対象が或る意味で限定されております。先ほどのお尋ねのいわゆる信託の目的というものが限定されておりますのに対しまして例えば金融債でございますれば、それによつて得た資金は、銀行の自発的な意思によつて適当に融資される。それから第三の点は、社債或いは金融債におきましては、あらかじめ約定された利殖がございますので、その定つた金額を拂う。この貸付信託におきましては、実績配当主義をとつておりますので、そこに金額の変動がある、これだけの違いがあるわけであります。
  50. 田村文吉

    ○田村文吉君 それでさつき御質問があつたようですが、損した場合には、信託した人が損を分担する。併し利益があつた場合には別にそれには均霑しないというわけです。剰余金の分配にあずからんというような点は、この剰余金という意味は、利益という意味じやないのですか、その点がはつきりしないのです。
  51. 大月高

    政府委員(大月高君) 信託の制度といたしましては、この信託財産を運用いたしまして收益を挙げますその收益の中から、約定の信託報酬を信託会社が差引きまして、その残りは一切受益者に分配するというのが信託の制度でございますので、勿論非常に有利に運用されましたならば、その配当は非常に高い、それがその運用がうまく行かなければ配当は少い、こういうことになるわけでございまして、いい場合も悪い場合もそのまま反映するというのが信託の制度でございます。
  52. 田村文吉

    ○田村文吉君 そうすると、すでに企業をやつていられるならば、企業利益というものが挙るのですが、全然社債、そういうものと性質が違つて、企業の利益の配当を受ける信託なんだという、こういうことになりますと、新規に電気を開発するというような目的には資金が廻らないという感じがちよつとするんですが、そういうことはないですか。
  53. 大月高

    政府委員(大月高君) この制度によりまして貸付けを受けます会社の側からいたしますれば、それは貸付を受けることになるわけでございます。そういたしますと、その場合には貸付契約におきまして利子率の約定もございましようから、それは産業の側から考えますと、普通の金を借りるのとちつとも違わないわけでございまして、電力の開発、造船その他如何なる産業でもこの金は廻し得る建前になるわけであります。
  54. 田村文吉

    ○田村文吉君 要するに、やはり金貸業ですね。金貸の企業ですね。そういうことになるわけですから、余り変らないわけじやないかと思うのでちよつと伺つたんですが、大体わかりました。
  55. 野溝勝

    ○野溝勝君 私はよくわからんのですが、信託は前に相当あつたので、それがどういう関係か知らんが、今度は信託をやめて銀行ということに改められたんですが、又貸付信託法というものが出て来たんですが、これはここで言う信託と前にあつた信託と、信託という内容が違うのですかね。
  56. 大月高

    政府委員(大月高君) これは先日御説明申上げましたのは、現在の信託会社は全部信託銀行という恰好になつておりまして、本来企業の性格といたしましては銀行でございます。それが信託業務を兼営するという恰好になつておるわけでございまして、従来から引続きやはり信託業務は実行いたしておるわけでございます。それに対しましてこの貸付信託法は、その信託の一つの新らしい形式としてこの制度を立てようというわけでございますので、信託の制度を一度壊して又新たに別の恰好で起したという意味ではなくして、前から続いております信託制度に新らしい形の制度を加える、こういうように御了解願いたいと存じます。
  57. 野溝勝

    ○野溝勝君 何だかさつぱりわからんが、そんな必要はあるのかね。前の貸付信託帳行でこれを兼ねてやることができるものを、別個にこういうものを作つて、新らしい何か格付けでもあるようなことを言われるが、一体どういうところが新らしいのですか。又どういうことを、この貸付信託法でも作らなければいわゆる貸付企業はうまく行かないのですか。
  58. 大月高

    政府委員(大月高君) この制度の一つの狙いは、信託の制度に有価証券コールを入れたことでございまして、従来の信託制度におきましては、受益者は証書を持つておるだけでございます。それに対しましてここの制度におきます受益者は、受益権が有価証券に化体される、有価証劵の恰好になつておる、そういう意味におきまして一般に流通し得る、それだけ消化が容易でございまして、金がたくさん集まる、こういうことになるわけでございます。なおこの制度といたしまして、その受益証劵を無記名とすることによりまして、ほかの無記名と同様の税法上の特権を與えることによりまして、なお一般の資金吸收の一助にいたしたい。この制度がなくてもほかにいろいろ手はあるわけでございますが、この新らしい制度を一つ加えることによりまして資金蓄積の新らしい手段としてなお一つ加えたいという意味でございます。
  59. 野溝勝

    ○野溝勝君 ますます私はわからなくなつて来たんだが、先ほど政府委員の御答弁によりますると、前の信託銀行でも業務をなすことができるのに、有価証券コールの点が違うんだという点が高く評価されておるようでありますが、併し有価証券コールという点だけで、かような貸付信託法というものを作らなきやならんのですか。もう少し大きな狙いがあるのですか。それならそれではつきり言つてもらいたいと思う。例えば末尾においてあなたの言われたように、資金の蓄積に重点を置いておるというなら私は頷ける。例えば無記名で、そのほうで資金回收をやるという点に重点があるいうようなことならよくわかるのですが、ただ有価証券コール政策というだけで考えられるというと、私はこんな法律案は必要ないと、こう思つております。その点のウエイトはどういうふうにお考えになつておりますか。
  60. 大月高

    政府委員(大月高君) 有価証券の恰好によりまして資金蓄積に一層の便益を與えたいということでございまして、目的は飽くまで資金蓄積にあるわけでございます。
  61. 岡崎真一

    ○岡崎真一君 あとでちよつと大臣に伺いたいところがあるのですが、いませんから……、この受益証券は信託だけが扱うのですか。それとも委託者がほかに扱わすというような……先ほど野溝さんに対してのお話からいつても、窓口を拡げて広く資金を集めるというような趣旨からいつてもそういう点について何かお考えがありますか。つまり証券業者あたりに扱わす、そういうような考え方ですね。
  62. 大月高

    政府委員(大月高君) 只今考えておりますところでは、信託銀行の窓口を通じまして取りあえず消化させたいと考えております。ただ法律的に申しますと、これは有価証券でございまして、証券取引法によつて取引所においても売買できますし、一般の証券業者も扱い得るものでございます。将来どんどん消化ができる。従つてその窓口ももつと一層多いほうがいい、こういうようになりますれば、又証券業者にも頼んで消化してもらう、こういうことがあり得ると思うのでございますが、差当りは取りあえず信託銀行の窓口を通じて満化いたしたいという方針であります。
  63. 田村文吉

    ○田村文吉君 大体どのくらいの利息といいますか、利益の返還といいますかを見込んでいられるのですか。
  64. 大月高

    政府委員(大月高君) 大体におきまして一般の金銭信託及び一般に合同運用金銭信託といつておりますもの、それより若干利廻りがよくなる程度かと考えておりますが、具体的に申しますと、現在の合同運用金銭信託におきまして、年六分でございます。二年で七分、五年で九分ということになつておりますが、この制度によりますと一年で大体七分一、二厘から五年で九分一、二厘のところ、そういうところにおきまして、実績によりまして配当するというふうに一応の計算を立てております。
  65. 田村文吉

    ○田村文吉君 この制度は英米でやつておる制度なんでございますか。
  66. 大月高

    政府委員(大月高君) 日本の信託の制度は、大体発達の径路からいたしまして英米の恰好と相当に違つております。英米では御存じのように普通の財産の信託ということから始まりまして、金銭の信託ということは非常に少いわけでございます。そうしてございます場合でも、主として合同ではなくして個々の運用を図つておる、これが本来信託の制度として発達して来た形でございます。ところが日本におきましてはそういう財産もそうたくさんない。而も最初発達いたしましたときに、合同運用金銭信託というものが主流をなしまして、それが実質的には預金と同じような性格を持つておるものでございますので、英米の信託というものとはそもそもの発足の当初から恰好が変つておるわけでございます。最近アメリカあたりの事例を見てみますと、日本でやつておりますような合同運用金銭信託というような恰好が次第に出て来ておるように思うのでございますが、そういう意味から行きまして、逆に申せば日本式の恰好に英米のほうが向いて来ておる、こういうことでございます。ただこの受益権を有価証券に表現する、有価証券の恰好にするということは今度初めて我が国で考えたわけでございまして、英米でも今そういうことを考えておるとは聞いておりません。
  67. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 もう一度、さつきの件について腑に落ちない点があるのですが、元本を補慎しない場合に、融資先が整理でもした場合には、当然損失というものは委託者にかかるという説なんですね。それである以上は、委託者が、つまり責任を持つておることに解釈できるのですね。そうなるのですか。融資先に対する信用の責任というものは委託者にあるということになるのですか。
  68. 大月高

    政府委員(大月高君) 信託の考えからいたしますと、或る人が財産を持つている、それを運用したい、併し自分ではそれをどこがいいか、或いはどこが安全であるかというようなことについて十分な知識とか経験とかに乏しい、そういうような場合に、或る特定の信頼し得る人を発見いたしまして、その人に財産を管理してもらう、而もそれを運用するというのがそもそもの信託のできた恰好でございます。従いましてただ委託者の財産を現に持つておる人の立場からいたしますと、自由に運用してくれというようなことは比較的稀なものでございまして、この持つておる金は例えば証券に投資して欲しいとか、或いはこれは何かの貸付に廻して利殖して欲しいとか、そういういろいろ指図権を持つておるわけでございます。この貸付信託の制度におきましても、この法制の目的に従いまして、緊要な産業に対する融資というのが目的になつておりますので、この証券を持つております委託者は、その信託約款の條項に基きまして、そういうことを承知して信託会社に運用を任す、こういう趣旨でございますので、最終的の選択権は勿論委託者にございますが、個々的の融資の決定を信託会社に信頼して任しておる、そういう意味でございます。従いまして信託会社の立場からいたしますと、その管理し、運用することに対する報酬と言えば、手数料といたしまして信託報酬を一定の歩合で取る、それが信託会社の仕事でございます。その結果は、融資先に損失が起きるというようなことになりますと、その最終的な結果はやはり受益者のほうに帰つて来る。結局委託者といたしましては、どの信託会社を選び、誰に信託するかというところに勝負の魅力があるわけでございまして、大蔵省としてはその委託を受けた会社が変なことをしないようにということを見ておるわけでございます。
  69. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そうすると委託者が自分の責任においてどこへ貸すかということを信託会社に任した場合ですね、その任された信託会社が潰れてしまうようなことがあつた場合でも、信託会社に対する責任も委託者が負うということは二重責任になりはしないですか。つまり貸出先を信頼してここに貸すならこの投資をしようということになつておるから、その信託会社自身が潰れた場合に、優先的に元本を返してもらつてもいいということにはならないですか。
  70. 大月高

    政府委員(大月高君) 今の問題は二つの面がございまして、信託の運用として、例えば某々会社に貸しておる。その貸出先の会社が悪くなりまして貸付金が取れなくなつたという場合には、直接委託者であり、受益者である個人のほうにそのまま反映するわけでございます。若し仮にその貸出先の某々合本社が非常に健全であつて、その貸付金も完全に返つて来る、こういう場合に、そういう状態の下におきまして、仮に信託会社が破産する、こういうようなことになりますと、信託の法理から申しますれば、その最初の預つた財産は信託財産でございまして、破産いたしました信託会社の財産は固有財産ということになつて、完全に別経理ということになつております。従つて信託会社の破産の効力は全然信託会社には及ばない。従いまして一〇〇%委託者なり、受益者はその收益を取れる、こういうことでございます。ただもう一段、信託会社が仮に保証契約をしておる、こういうような場合は様子が若干変つて来るわけでございまして、その場合には、貸付先に対する融資が仮に焦付くというような場合には、今度は信託会社がそれの保証をする責任を持つておるわけでございます。で、受益者といたしましては一〇〇%もらえる。ただ信託会社がその上に破産でも仮にするといたしますと、その保証契約を十分実行し得ない。その結果受益者も何らかの損失をこうむるという二段構えになつて損失をこうむるわけであります。
  71. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今のことちよつとまだはつきり呑み込めないのですが、元本補慎の場合は、貸出先が例えば整理になつた場合でも、それは成るほど委託者が責任を負うということはないかも知れない。元本補慎でない契約の場合には、貸出先が健全な場合であつたならば、優先的に元本は返してもらえる、こういう解釈でいいのですか。
  72. 大月高

    政府委員(大月高君) その通りでございます。
  73. 田村文吉

    ○田村文吉君 そういう場合に会計が混乱する慮れはありませんですか。某信託会社が内容が悪くなつて来た。その場合において実は某会社に貸付けるとしますね。信託会社も貸しておるわけなんですが、そのほかにその会社自体がほかの自分の手持金を貸しておるかも知れん、そういう場合も起つて来るので、そういう場合に一体はつきりとしたそういう信託財団としての明瞭なあれができますか。
  74. 大月高

    政府委員(大月高君) そういう監督をいたしますために信託業法が特にこしらえてございまして、検査をし、或いは報告を取り、あらゆる監督の手段を講じておるわけであります。で、大蔵省といたしましても、銀行局の中に検査部がございまして、必ず年に一回とか、二年に一回とか現地に臨みまして一切の帳簿書類を検査いたしまして、そういう不正なことが行われないように厳重に監督いたしておるわけでございます。その監督の諸法規が信託業法になつたわけであります。
  75. 田村文吉

    ○田村文吉君 それからもう一つ、そういう場合に破産でもしましたということが起つて来て、信託財産の運用に対して責任者がないとか、或いは完全に運用できないというような場合が起つて来はせんかという心配があるのですが、そういう場合には今の検査官が何か適当な方法を考えるか、或いは信託した一つの集団的のものの会合でそういうものを運用する方法を考えるとかいう方法があるのですか。
  76. 大月高

    政府委員(大月高君) 現在の法制におきましては、例えば監督官庁において業務の管理をするとか、そういうような法制はございません。併し大体のこういう銀行とか、或いは信託銀行に対する行政指導の方針と申しますのは、そういう破産というような状態に陷らないように、要するに予防制度をやつておる、こういうのが行政府でございまして、現に信託業法が実行になりましたのが大正十一年でございますが、それからすでに三十年以上もたつておりますけれども、一つの信託会社の破産もないわけでございます。それから銀行につきましても昭和二年に現在の銀行法ができましてから二十五年たつておりますが、一行の破産もございませんし、預金者に迷惑をかけた事例はない。そういう意味におきまして、破産の場合にどうするかというよりも、むしろそういう事態が起きないように努力をするというのが行政の指導方針になつております。従いましてこういう制度を立てましても、万一御心配かけるような事態は全然ないものと確信いたしております。
  77. 田村文吉

    ○田村文吉君 是非そうあらねばならんと期待いたしますが、今度の大きな変革というものは、あなたがたが御期待なさるような、昭和二年の大恐慌とか、或いは大正十二年と昭和二年のモラトリアム、あんなこと以上の事件が起らんとは誰しも保証できんのでして、そういう場合に、問題がちつと総括論みたいなお話になりましたが、そうでないこの問題自体として、そういう問題が起つた場合には、一体信託財団の仲間が皆で寄合つて運用ができるようになつておるのかどうかということをお伺いしたい。
  78. 大月高

    政府委員(大月高君) これは一般の委託者なり、受益者の保護という観点から考えられる問題でございますが、具体的に法制的に申上げますと、監督官庁で管理するというようなことはございませんが、現実の問題といたしますれば、これは株式会社でございますので、株主がいろいろなことを考えて善処するだろうと思いますし、行政的にはそういうふしだらが起きないように善処いたしたい。それから場合によりましては、委託者のかたの中から代表者で、而も知識経験のあるかたを推戴されまして、そこの重役として入れて万全の運用を期する、そういう事態もあり得るかと思いますが、それらはいずれも法制的問題ではなくして、具体的な問題として考えるべきことかと思います。
  79. 田村文吉

    ○田村文吉君 もう一つ伺いたいのは、投資者としましては、一体重要産業であるとか重要産業でないとかという議論ではなくて、自分の資産が如何に安全に運用されるかという点にあるのですね。そこで政府はそういう重要産業というものを意図しておるのであるとおつしやつても、実際の投資家自体の心構えは違うのです。安全に運用してさえもらえればいい、こういうことなんだろうと私は思うのですね。そこで全く縁のないものをどうしてお繋ぎになるか、大蔵省で大蔵大臣が許可されるときに重要産業というものの定義、そういうものは一体どういう目安で以て今後許可される御方針になつているか、例えば今おつしやつた電気とか造船業、これだけに限つていられるのか、或いはその他どういう点までお考えになつていらつしやるのか、無論料理屋やそういうものにまでお考えになつてはいまいが、そうかと言つて重点産業と称するもの自体にかなり疑いがあり、投資家自体としては、一体そういうところまでは考えていないという点の矛盾ですね、そういうような関係はどうですか。
  80. 大月高

    政府委員(大月高君) この制度の一つの狙いは、やはりいわば今の段階における緊要産業と結び付けることにおきまして投資家の関心の強い産業に金を流す、そのために償還を容易にするという狙いを一つ持つておるわけでございまして、そのほか純粋の資金蓄積という面にあるわけでございますが、そういう狙いがあるわけでございまして、具体的に緊要な産業といたしましてはどの範囲かということは、そのときどきの情勢によつて変るべきものだと存じておりますが、現在のところ開発銀行で緊要産業というものの一つのリストを持つておりますので、その範囲のところで考えて行きたいというのが今の考えであります。
  81. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 大蔵大臣にこの間から出席を求めておつたのですが、今日お見えになりましたので、私は貸付信託の問題と、それからもう一つはこの間のメーデー当日の宮城前広場における騒擾事件に絡みまして、税務署が今年になつてから特にほうぼうで襲撃を受けておる。これもやはり一貫した関津性を持つておると思いますので、これが対策その他について、この二点についてお伺いしたいと思います。  先ず順序といたしまして、この間から用意しておりました税務署の襲撃について若干御質問いたします。第一は、税務署が現在相当襲撃されるというのは、新聞にも出まするし、又新聞に出なくても小さいいやがらせであるとかいうのがあると私は聞いておるのでありますが、中でも今年の三月でしたか広島の国税局管内に起りました海田市であるとか、可部、あそこらの税務署の襲撃事件の際には相当税務職員もいろいろ危害を受けたというようなことも、新聞にも載つておりまするし、又現地へ我々が参りました際にも聞いて参つたわけでありますが、これにつきまして大蔵大臣としてこれは特にこの際注意しなければならんのは、今の国際情勢から考えまして、日本が両勢力の接触点になつているということは、これは争われない事実だと思います。従いまして、一方アメリカのほうではここで共産主義の侵入を防ごうとするし、又ソヴイエトのほうは何と言つて日本から、アメリカがここに勢力を扶植することはこれは何としても堪えられないところであろうから、できる限りこれは追い返して、そうして日本におれなくするようにしたい、こういう戦術をとつて、これは地下において相当猛烈な暗闘が繰返されていることは、これは誰でも情勢判断しなければならないと思うのでありますが、その一つの方法としまして、先ず日本の行政機構、治安機構等を麻痺させる、そうしてそういう條件を作り出して行くという戦略も戦術の上に出て来ておるだろうと思うので、そこで狙われるのは先ず警察官、警察官が安い月給で、そうして大衆からは馬鹿にされると、殊に子供なんかからでも、よく警察官と大衆と衝突した場合に、朝鮮人等は子供を先に立てて行くのであります。従つて、そうなつて来ると警察官はもう馬鹿らしくなつて来るので、どうしても横を向くと、こういうことになつて来る。又、そういうふうに向かせよう、その間隙に乗じて共産主義の思想を吹き込もうと、まさかの場合には、これはあなたがたの狙つておる、即ち木村法務総裁の言つておる暴徒を捕まえるどころか、時の権力者に梶棒を向けて来るということに仕向けると、これが狙いだと思うのであります。それから又税務署に向つては徴税機構を麻痺させてしまうと、毎日々々襲撃を受けるかも知れない。或いはほうぼうにちよつと行くといやがらせをする、実際には危害を加えないかも知れないけれども……。そういたしますと、安い月給で而も他人にはいやがられる、どうせそんなことならばお座なりに済ましておけと、こういうふうな気風を起させることが一つと、もう一つは、たくさんの人間を、今税金が高い、税金には国民が皆苦しんでおりますから、税金が高いからこれをまけさせようじやないかというような大衆煽動をやりますると、どうしたつて集まる。その連中の先に立つてつて、事と次第によつては税務署襲撃事件等に煽動すると、こういうふうに狙つて来るのではないかと私は思うのでありますが、そこでこれに対して大蔵省としてどういう対策を大蔵大臣立てておるか。  それからもう一つ、特審局等を通じまして、これはどういう戦略戦術に出て来ておるかということについてあなたのほうに情報も入つておると思うのでありますが、その入つておる範囲の、例えば吉河特審局長あたりは新聞にも堂々と発表されておつたのであるが、自由党の総務会その他において、すでに軍事教練をやつておるとか、武器の製造の用意をしておるとかいうようなことまで堂々と宣言しておられるのですが、当然今後税務署に向つてもそういう行動が執拗に繰返されるのではないか。而も大蔵大臣としては、そういう構報を得て対策を立てておかなければならないと思うのでありますが、第一点は、差当り今日まであつた事件の中で主なる、先ほど申上げました広島国税局管内に起つた事件の被害の一番大きかつたものについての対策、どの程度のものがやられたか、それから情報等においてどういう戦略に出て来ておるか、それからこれが対策についてどういう対策を考えておられるか、この三点についてお伺いしたいと思います。
  82. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 税務署に対しまして、火焔ビンその他危害を與える行為は、昨年の暮頃から始まりまして、この一二月かなり熾烈を極めておつたのであります。二月末現在で大体三十件くらいございました。三月になりましても相当にございまして、これはまあ全国的でございまするが、その都度適切な措置をとつております。書類その他が焼けたのは余りございません。殆んど未然に防いでおるのであります。こういう際でありますので、宿直を殖やすとか、或いは附近との連絡をとるとか、又警察関係にお願いして警備の助けをしてもらうとか、いろいろな方法をとり、又その危害を與えんとした場合における税務職員の適宜な措置につきましては、適当な方法で表彰するとか、とにかく被害を最小限度にとどめるように努力いたしているのであります。お話の通り税務署庁舎に加える危害ならばまだ全体的に相当防ぎいいのでありまするが、所によりましては、課長、主任の自宅を訪問して強制面会をするとか、或いは尾籠な話でございますが、汚物を投げつけるとかというふうなことも聞いておりますので、先ほど申上げましたように税務署職員で自衛態勢を整えると共に、警察方面とも連絡して被害のないようにいたしているのであります。而してその原因を調べますると、お話のような点もあるようでございまするが、主として事件の大部分というものは所得税関係でなしに、酒造税関係、密造関係が多いのであります。広島の問題につきましてもそうでございます。従いまして密造関係になりまするといわゆる朝鮮人が多い、こういうので、こういう危害を與えんとした場合の違反というものは酒造税関係が多いようであるのであります。それに一部の過激分子が入つておる、こういうことになつているのであります。  それから特審局その他の方面との連絡につきましては、私と法務総裁が連絡をいたしておりまするが、こういう現地の問題でございますので、各国税局長を東京に集めまして、関係方面、関係方面とは国内のことでございますが、特審局或いは国警その他の警察方面とも各国税局長が現在において協議するのみならず、東京で開かれた会議におきましても、関係各省の人といろいろ協議をいたしているような状況であります。最近は少し下火になつているようでございますが、そういうような措置をとりまして、先ず税務職員が自衛の態勢を整えて行くこと、関係方面の協力を求めること、こういうことで進んでいる次第であります。
  83. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その点についてまあ今大蔵大臣説明なつたような自衛の態勢という話ですが、この点につきまして税務署の職員が私のところへまあ陳情に参りまして、一つには税務署には衛視であるとか具体的な点に入りますが、大蔵大臣が特に税務系統の出身でよくおわかりだと思うのですが、衛視であるとか或いは守衛であるとかいう制度制度化する必要があるのじやないかというような意見を持つて来ているんですが、これについては具体的に進めているかどうか、それから又相当予算的な措置を講じて、例えば折角集めた調査書類等に若しも火がついて……火がついてしまつてからでは仕方がないので、申告書も焼いてしまつて、それをもう一遍出させるといつてもできつこないから、従つてこういつた書類を安全に保管して少々の火災でも被害をこうむらないようにする処置を、これは予算的な処置も相当必要だと思いますが、応急措置としてそういう措置を講ずる必要があると思うが、これに対する処置ができているかどうか。もう一つはやつぱり何と言つてもこの間の富士銀行のギヤング事件のときも一応あのペルが用意してあつたが、税務署と警察は、大抵税務署の所在地には警察署がある、大体原則として税務署と警察は一緒の町にあるようになつているが、これが非常ペルの連絡等に、まあ具体的な例を言うとそういうようなことについても進んでいるかどうか、ただ自衛態勢だ自衛態勢だと言つて漠然たるお話ですが、これが進んでいるかどうかということと、そういうことをするかしないかということについて伺います。
  84. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そういう事件があるから特別の職員を置いてどうこうするという制度は私は只今のところ設ける気持はございません。ただ各職場方々を守るという職員全体の協力によつて進めて行きたいと思います。それから書類の保管等につきましては、これは従来から相当の注意を拂つているのであります。土地台帳その他を置いておりまする昔の倉庫もございます。実は昨日もちよつと関東信越国税局に参りましてその話が出まして、書類の保管の場所等も局長自身から私は聞いたのであります。非常に注意いたして書類の保管はいたしております。私の聞いたところでは東京の東部の税務署で火焔ビンのために数千冊余りの法人調査簿が焼かれた、これもそのとき適宜の処置をとりまして、その程度でとどまりすぐ補充をいたしたような次第であります。できるだけ自衛態勢を強化いたしてやつているのであります。特に新たに人を雇つてどうこうするという考えは今のところ持つておりません。なお警察関係との連絡等につきましては、私は国税庁長官並びに国税局長或いは各税務署長で適当な方法をとつていると思いますが、私が警察との連絡ベルをうけろとか何かというところまで、大蔵大臣は個々にまだ研究いたしておりませんが、そういうところは現地の国税局長並びに税務署長で適当な処置をとつていると考えます。
  85. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次にこれはまあ税務職員のほうからも強い要望があつたのでありますが、不寝番、あなたは自衛態勢と言うのですが、その自衛態勢で残させられると、大きい税務署だとどうにか自衛態勢でその人も満つるが、小さい税務署等においては非常に人員の関係上、まあ仕事が過重になつて翌日の仕事に差支えを来たすというところから、どうしてももう少しこれは恒久的な対策を講じてもらいたいという要望が強いわけでありますが、その点あなたのところで適宜にやつていると言われるならば、これに対しては当然超過勤務手当、或いは宿直料は支拂われていると思いますが、そういうものも殆んど支給をされずにやらされるというふうな不満もある。そういうところから先ほど申上げましたように、こういう徴税機構を麻痺させるというやり方が一つのやはり戦略、戰術的に私は考えておると思うのでありますが、で、従つて今のところまあ情報等も大した心配する必要はないと言つている大蔵大臣の話だが、これは大分深刻化しているということは、この間のメーデー事件等に鑑みましても、そういう情報が仮につかみ得ないとしても、あの当日にいたしましても、大体素人考えにいたしましてもあの日は何かどこかであるだろう、あの当日を狙わないというはずはない、特に宮城前広場は問題になつてつたのだから狙うだろう、大体あの辺が危険地帯だというのは想像がつくと思うのでありますが、従つて税務署等に対する襲撃、徴税機構の麻痺、或いは今の税金が高いからしてこれに対する不満が強い、従つてこれを狙おうというような指導がなされているというようなことが、あなたのところにまだ調査その他について全然入つていないのですか。ただ密造関係だけでそういう問題があるだけだというふうでよろしいのですか。
  86. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そういう情報について責任の地位にある私が、こういうことがある、ああいうことがあるということは申上げないほうがいいと思うのであります。そうして税務署を主体として言つておられますが、一部過激分子のやることは税務署のみではない、いろいろな点を知つておりますが、ここでは申上げられません。税務署としての御質問ならば只今申上げた状態でございます。自衛の態勢も整え、その道のかたとも連絡して万全を期するように努力しておるのであります。
  87. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に、それじやその自衛態勢に当るような職員の待遇についてでありますが、それには相当の定められたるところの手当その他はちやんと用意して手当ができているかどうか、この点について……。
  88. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) どこの税務署がどういうような支拂方をしているか存じませんが、内規によつて処置しておると思います。
  89. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に今度は大臣の説明の一番初めに言われました不穏分子の行動について建物のみでなくて、家庭、或いは通勤の途上等に対する被害についてもやかましく税務職員のほうからも言つて来ておるのですが、こういう保護処置についてもあなたのほうでお考えになつておるのですか、その点を。
  90. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) こういう問題は、私はあなたの御質問に合うように返事がしかねるのでございます。具体的問題として国税庁長官その他からお聞き下さつたほうが却つて審議の都合にいいと思います。一、二の例を聞いておりますが、どういう手当をして、どういうふうにして出しておるとか、どういう事実があつた、どういう事実に対してどういうことをしておるかということは、国税長官が責任を持つてつておりますので、今お答えした以上のことば御答弁できないのです。要すれば国税庁長官に詳細をお聞きして頂きたいと思います。
  91. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それじやこの点の詳細については国税庁長官に聞くといたしまして、そういう処置をどうしてもしなければならんようになつて来ておる段階においては、或る程度大蔵大臣としては処置の予算的な裏付と申しますか、そういうことについては手配を、若しも国税庁或いは各税務署から国税庁長官に要請があり、それがまとめてなされるときには、或る程度の考慮はしなければならんということにお考えになつておるかどうか。
  92. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) その程度のものは国税庁長官のほうで予算のやりくりでできると思います。又いろいろなやりくりができないときに、大蔵大臣に流用承認を受ける場合においては、主計局長ができるだけのことはやつております。今の予算の流用その他につきましては、防衛態勢の夜勤手当等はどうするこうするということまで大蔵大臣は実なタツチしていません。こういう実情でありますから、先ほど申上げましたように、その衝に当つておる職員にお聞き願いたいと思います。
  93. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 これの衝に当つておる責任者のほうに、たびたびそういう要求をしても容れられないので、そこに不満があると思う。一応重大な問題であるから、殊にほうぼうにこういう事件が起きて不安を醸しておるから、特別の処置は或る程度政治的に考えてもらいたいという、ほうぼうに廻つたときに税務関係の職員の要求があるから、これは考慮されているかどうか、従つて国税庁関係でできる場合においてはいいが、予算の関係でできないというふうに蹴られている。そういう不満を残しておいてはいけないから処置する必要があるということをお聞きしておるわけです。
  94. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私はまだこういう要望があつて、こういう不満があるということを国税庁その他から聞いておりません。
  95. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますと、そういうことが、そういう事態が、ほうぼうに起きているからして、これは何とかやはり相当な処置をしなければならんということぐらいはお考えになつておるのでしようね。
  96. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほど申上げるように何とか処置をいたしております。
  97. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その具体的な点につきましては、それじや国税庁長官に聞くといたしまして、例えばこの間の大阪府におきましての密造部落の際のごときは、これは新聞に出ましたが、実にほうぼうに與える影響は私は大きいと思うのでありますが、今後の密造……酒造税関係は、特にこういう事件が多いというのですが、これは断固としてやはり既定方針通りつて行くのか、それとも廻つて見ますと、予想より存外そういう事実がありながら後難を恐れて強い者勝ちになつておるという面も多々あるように見受けるのですが、そうすると非常にまじめになつて納める者は詰らぬ、こういう考えを皆が持ち出して参りますと、これは将来の徴税並びに納税意欲についても大きく影響すると思いますが、方針は如何ですか。
  98. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 密造関係につきましては、断固として処置いたしております。予算関係につきましても、特に密造につきましては本年度は予算を殖やしておる状況であります。
  99. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 じや、あとの具体的の問題については国税庁長官の出席を要求することにいたします。  次に貸付信託法の第一條の目的についてお伺いしたいと思うのですが、「資源の開発その他緊要な産業に対する長期資金の円滑な供給」となつておるのですが、この緊要な産業というのは……一体緊要な産業というのは時によつてつて来ると思いますが、大蔵大臣の認定によつてこの緊要産業というものはそのときどきに変えられる見込であるか。というのは、申請いたしましても、緊要産業として指定されるところとされないところは大きく影響して来ると思いますが、なかんずくこれは銀行局長から今後の運営についての方針としては、開発銀行指定しているところの枠内が大体緊要産業であると言うのだが、その中で一番緊要産業として最近当然問題になるであろう、今の政府の方針からなるであろうと考えられるのは、軍需産業だと思いますが、これは警察予備隊の増強、海上保安隊の増強と比べまして軍需産業だと思いますが、将来軍需産業も指定される見込であるかどうか。
  100. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そのときどきの様子によつて変るのでありまして、軍需産業を入れるか入れんかという問題につきましては、やはり原則に従つて考えて行かなきやならん。お話の軍需産業と言つても、その定義がかなりむずかしいのでありまして、お話のように、日本開発銀行の融資基準というものを一応閣議決定して指導の方針にいたしておりまするが、そういうものを基準にしてやつて行きたいと考えております。
  101. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうしますと、この法律をここで定めるときに一応こういう産業というふうに例示するか、或いは日本開発銀行はそういうふうに定めてあるが、日本開発銀行がやつておるものをそのままここでその通りにするというのも私はおかしいと思うのだが、誰が、これを緊要産業だということを認めるかということになりますと、もうこれは大蔵大臣に……、この債託約款の申請をした場合に大蔵大臣のほうで認めることになるわけでありますが、これは相当広範囲に解釈されるのだが、先ほど御答弁された通りの開発銀行の大体今の運用通り、その程度に限定してまあ狹く解釈してやつて行くつもりか、これは広く解釈して行くつもりか、その点を一つ。
  102. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この狹いとか広いというようなことは程度問題でございまして、そうして片一方、そういう緊要産業の定義をいたしましても金の問題とも関連して、金の量の……、だから一概にどうこうということは私はむずかしいのじやないかと考えております。
  103. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると特に今必要になつて来たような緊要産業には、開発銀行のほうでは指定していないかも知れんけれども、例えば繊維会社等は必要があるということを盛んに多く言われた当時があつたのですが、これは別にこの繊維会社のやつは設備資金じやなしに、これは運転資金で在庫の手当等の資金だろうと思うのでありますが、そういうようなものも緊要産業として、やはりこれは繊維産業を保護するという意味から行きましても、この緊要な産業にもそういう事件が起きた場合には、緊要産業として申請がありました場合には広範囲に解釈して認可を與える方針であるかどうか。
  104. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 第一條の「資源の開発その他緊要な産業に対する長期資金の円滑な供給」のうちに繊維関係の運転資金は私は入らんと思います。
  105. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは運転資金は入らんのであつて、長期資金という解釈はこれはすべて設備資金と、こういうわけでございますか。
  106. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大体、そういうことに考えて行くのが適当と思います。
  107. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 大体はそうであるかも知れないが、原則は飽くまでもそれを守つて行くのですか、大体はそういうことであつて、相当幅を持たして行くかどうか、その点を聞いておるのです。
  108. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 幅を持つ持たんのその幅の問題ですが、只今お答えしたようなところで大体銀行もわかると思います。
  109. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それは運営の衝に当るあなたはわかつているかも知れないが、この文章を読んだだけでは僕らのほうではわからんからお聞きしておるのであつて従つて幅の点でございますが、窮屈に解釈して行くような方針であるか、それとも相当ゆとりを持たした解釈でやつて行くのかと、こういう点をお聞きしておるのです。
  110. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) その幅の問題は、資金量とそのとぎの金融情勢によつてきめられるべき問題だと思います。
  111. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それは資金量と金融情勢も必要であろうが、それより以上に刻々に変化するところの経済情勢、これは私は必要だと思うのでありますが、例えば朝鮮動乱の解決如何によつてはこの緊要の各産業の度合というものは相当私は変つて来ると思うのです。そういう点等は、ただ開発銀行の扱つているところの範囲内だというふうに限定し……、もう最近ではすぐ電源開発だ、次は石炭だといつて、資源の開発等も直ちに電源開発、電源開発という、又勿論これは必要なことはわかつておりますけれども、その他今のお話では資金の幅、そういうことを特に言われておるのですが、余りに限定しますると、その指定された産業のほうはいいかも知れないけれども、指定外の産業のほうでは非常に困るであろうし、又この貸付信託の妙味というものは、或るべく広く運用するほうが妙味があるし、資本蓄積だつて、一つのものばかりに集まつてしまうよりは、広くやはり平均して廻つて行くほうがいいと思うのですが、この点について……。
  112. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) あなたは開発銀行の指導方針の閣議決定が広いとお考えになつているのですか、非常に狹いとお考えになつているのですか。
  113. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私は狹いと考えております。
  114. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 狹いとお考えになるからそういう議論が出るのだろうと思います。今開発銀行資金量からいつてあの方針にどれにも応ずるというと、それはもう何千億円という数になる。非常に広くきめて、ゆとりのつくようにすると、狹いとあれをお考えになるから問題が起るのだと思います。相当広範囲にやつておるのです。あれを一つ御覧下されば狹いどころか、非常に広いので、こういう方面を要求通り出し始めたら何千億あつても足りない、こういうような事情です。だから広くなにをきめておきまして、そうしてその間からそのときどきの様子によつて金融量でやつて行く、その建前が狹いか広いか、そこをおきめにならないといつまで経つても議論が盡きません。
  115. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで僕はもつと広く解釈してもいいと思うのですが、実際問題として広くきめてあるというけれども、さあ廻るときにはこれがなかなか広く廻らない。従つて跛行状態になる、それが問題だと思うが、一般回転が……。もうこれで打切りますが、それでは、緊要産業は将来は軍需産業等にも適用される、情勢の変化によつて適用されるものである、こういうふうに解釈してよろしいのでございますね。
  116. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 第一は今開発銀行の指導方針が非常に広いので、問題はこの指導方針が広いにかかわらず、金が少いから問題になる、だから金の問題できまる問題であつて、そこをはつきりして頂きたいと思います。第二は緊要産業のうちに軍需産業が入るかという問題ですが、軍需産業というのはどういうことをおつしやるのか。鉄鋼、石炭或いは電気その他も見ようによつては入るのであります。そのときどきによつて只今日本の置かれた経済の状況からいつて、資源の開発その他緊要な産業に対する長期資金ということになれば、恐らくおのずからきめ得られると思います。
  117. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 一番軍需産業という場合に……、それはもうすべてを、いわゆる国家総動員をする時代すらあつたのですから、今の国家の事態においてはそれは全部が軍需産業であるかも知れない。併し差当り問題になるのは艦船の製造、或いは航空機の製造、それから直接的な警察予備隊、海上保安隊等において使う戎器、兵器等の製造に当るのは私はどうしても当面今の政府としてはそういう方面へ主として……、主としてと言つては語弊があるが、そういう方面も当然対象になるかどうかということを申上げておるのです。
  118. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 警察予備隊のほうの事情は、例えば兵舎をこしらえるとか、自動車をこしらえるとか、或いは電気通信機関のほうの仕事が大部分であります。私は今のところから申しますると電気の開発施設、自動車製造施設の分が、緊要産業に対する長期資金にどの程度の問題になつているかということになりますると、発電とか石炭とか鉄鋼の部類までまだ行つていないと思います。然るところ電気の発電、石炭或いは鉄鋼等に対しまして十分に資金量があつた場合に、この次に自動車の製造に長期資金を出すかどうかということが問題になつて来るだろうと思うのであります。併しこれはまだ金が余り多くないけれども、鉄鋼のほうには今もう金は要らん。水力発電も大体問題がないということになつて来ると、自動車の製造とか、電気、鉄鋼以外の製造というほうに考慮が行く場合もあります。そのときにはこれは緊要な産業ということになる。それだからそのときどきによつて何故に緊要かということは、緊要の中でも度合があるものですから適当に考慮して金を使わせて行くのがいいと思います。
  119. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そのうちで一番、若しも再開するとしたならば設備資金もたくさん要るであろうと思うのは、航空機産業だと思うのですがね。これは航空機産業については開発銀行のほうにも僕は含まれておらないと解釈するのだが、こいつはどうですか。今度の緊要産業として、航空機は例えば軍用機のみを指すばかりじやないのですが、特に民間航空なんか、これは占領を解かれたのですから当然許される。許されるどころじやない、自由にやつてもよいと思うのですが、この航空機産業等についての将来の考え方はどういうように考えておりますか。
  120. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今のところそういうような申請も余りないようです。そうして片一方のほうでいわゆる重点産業、特に電気その他の要請が多いものですから、飛行機の製透についての長期資金というものは開発銀行にまだ多分なかつたと思う。併し情勢によつてそういうことになつて来れば、これは開発銀行の指導方針にそれを附加えることにやぶさかでありません。
  121. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  122. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて。
  123. 田村文吉

    ○田村文吉君 大蔵大臣に伺いたいのですが、大体一年間どのくらいの金額を予定しておられますか、この法案で……。
  124. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これはなかなか一方で貯蓄債券も出ますし、それから今の無記名貯金で相当吸収もいたしておりますが、余り期待はできませんが、私は今の貯蓄の増強その他から申しまして、相当に今度は……ほんの見込ですが、百億、まあ六、七十億、その程度まで行かせたいものだと思います。何分にもこれは御承知の通り、信託銀行というのは少のうございますし、それから支店も一銀行で百とか百五十とか持つておるのじやございませんで、大概支店が十か十四、五くらいのものでございますから、無記名貯金なんか伸びたようには伸びないと思います。
  125. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今の質問に関連するのですが、今大臣のおつしやつた七十億というのは、新規にこれは国民のいわゆる箪笥預金から出て行くものと解釈されますか。それとも大部分は無記名定期なり何なりの預金の横流れというふうに解釈していいですか。
  126. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そこで百億といつたのを七十億にしたという意味であつて、私の貸付信託の増加というのは、振替りの分は当てにしてはいけない。ネツトのもので考えているのであります。
  127. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 併し、大臣は目的として振替りの分は当てにすべからずというお話、私も同感であります。実質的には振替りのほうが大部分であつて、振替られた金融機関というものが資金源の枯渇を来たすという心配はないものですか。
  128. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 資金源の枯渇というのでなくて、全部振替つたと同じことなんです。資金源は同じなんです。長期になつただけいい。どの程度振替るかという問題は厄介な問題です。これは無記名預金のほうでも振替りが五、六割、或いは六割五分というような説もあるのでございまして、貸付信託につきましても大体その程度のものじやないかと思います。
  129. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 その際金融機関に対して特別な補充的措置は……やはり相当人気がよくて、貸付信託が案外伸びたという場合、貸付先はおのずから変つて来ると思うのです、その際補充的に金融の措置を講ずるということも当然考えられることですが、そういうふうなときにはそういつたような方策をおとりになるお考えはあるのですか。
  130. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは信託銀行の経営者のとるべき、経営者の心構えでやつて行くべき問題で、大蔵大臣がこうせい、ああせいということは今からお約束するわけには行きません。
  131. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私の言うのは、信託銀行の内部的関係でなしに、信託銀行外の金融機関から相当横流れがあつた際、そういう際において、いわゆる資金源が減少したために金繰りが容易でなくなつたというような事態が起つた場合は、どういうふうにお考えになるかどうか。これは或いは信託の約款を許可する場合において、大蔵省側において適当な措置を講じられるのですか。
  132. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今申上げましたように、六、七十億くらいのネツトの増だろうと、こう言つておるわけです。銀行預金なんかというものは、今一年に数千億殖える。これが数千億殖える前提に比して、貸付信託六、七十億ネツトの増になる場合にどういうふうな措置をとるかということは、さほど問題じやないと思うのです。普通銀行の、いわゆる無記名とか或いは定期預金は大変移動するというふうな場合におきましては、これは興業銀行或いは勧業銀行の金融債の引受のときにも、そういうことに応じての指導をいたします。そのときになつて十分措置ができることだと思つております。御心配の点は万々起るまいと思います。
  133. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 では今問題になつている電源開発あたりの資金にこれを大きく振向けるのであるというふうに期待するまでのことはないのですね。
  134. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) まああの手、この手でやらなければいかんので、先ほども触れましたように、貯蓄債券で六十億の見込み、これは主として電源開発、来年度からは見返資金のほうも少し窮屈になつて来ますから、いろいろな手で電源開発とか或いは造船その他重点産業にやつて行く。これも貯蓄増強、資本蓄積の一つの方法でございまして、その一連のあれでございます。
  135. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 もう一点だけですが、実は昨日も政府委員に聞いて見たのですが、釈然とできないのですが、この源泉課税が百分の二十、一本やりになつていますね。これは無記名定期と同じようにやはり百分の五十という、いわゆる選択課税があつてもいいのじやないかと思うのですが、この点が百分の二十、一本にされたというのはどういうふうなお考えなんですか。
  136. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは御承知の通りに投資信託がございます。あれと同じように、株式の投資信託と同じ率においておるのであります。投資信託と無記名定期預金の課税の率との調整をどうするかという問題は別個の問題と考えております。
  137. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私が懸念しますのは、これはやはり或る程度箪笥預金の引出にも役立つと思うのですけれども、そういつたような趣旨のようにも聞いておりますが、若しその際百分の二十、一本で総合課税も及ぼすということになれば、末端の税務署あたりでは、その百分の二十の源泉課税を総合にする場合に、この資金はどこからできたかというふうに追究して行くことが相当多いのじやないかと思うのです。そういつたような懸念は、大臣としては考えられないのですか。若しそうだとすれば、やはり百分の五十の源泉課税も併せて付けておいたほうが、資金の獲得というほうにウエイトをおくのならよろしいのじやないか、こう思うのですが……。
  138. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話の点はこうだと思います。先ずこれから議論して行つたらいいと思いますが、この投資証券のほうの分は、御承知の通りに源泉課税をいたします。第一次の配当所得としての源泉課税をする。それから個人のほうに投資証券の配当がありますと、個人のほうは建前は総合課税の建前になつておる。併し無記名定期預金は総合課税をしないから、普通の預金の二割に対して五割の源泉選択課税としてあり、総合課税の代りに三割が入つておるわけです。片一方は総合課税をする建前でありますので、この率がこういうふうに二割になつておる。そこで貸付信託というものをどういうふうに見るかという場合において、これは投資証券と同じ低率で考えよう、それで行つておるわけです。建前としては、貸付信託のほうは源泉課税を受けて、そうして又総合課税を受けるわけになります。総合課税を受ける建前になる。総合課税を受ける建前になりますから、今度は貸付信託の配当の場合におきましてやはり二割をとることになると思います。その分は総合課税をして税金を納める場合に、前に納めた貸付信託の受益証券に対しての二割課税分は差引こう、こういうことになる。
  139. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 ただ金銭信託の場合に、無記名式は五〇%で総合課税なしという点があつたものですから、これとの調整上両方置かれたほうが更によいのじやないかと、こう考えておつたのです。
  140. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そこでこの貸付信託につきましても無記名ということがある、そのときにはやはり無記名預金と同じように五〇%受けることもできることになつておるのであります。
  141. 大月高

    政府委員(大月高君) 補足いたします。これは有価証券であるという意味におきまして、無記名の公社債と同様に二〇%の源泉課税がございまして、それに申告課税があるわけでありますが、併しその申告の段階におきまして無記名であるという点において、無記名預金と同じように現実の問題があるわけであります。それから金銭信託であるという点におきまして、これは一般の源泉選択制度も併せてとり得るわけであります。
  142. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 では昨日までのお話は変つたのですか。それで別表というものは、これは政府から提出されたと思うのですが、そういうふうに足らなかつたと解釈していいですか。
  143. 大月高

    政府委員(大月高君) 私表を正式に見ておりませんが、若しそれだけしか書いていないといたしますれば、これは両方やり得るわけであります。
  144. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 了解しました。
  145. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 最後に大臣、僕はちよつと素人素人考えに、直観的に考えるのは、あの手この手というふうにいろいろ新手を、例えば無記名定期、投資信託、続いてこの貸付信託というように考えられて、箪笥預金、できるだけ遊金を有利に活用しようという方針については、今のあなたの財政経済政策から言つたならば、当然これはそうなければならんと思うのですが、そこでちよつと直観的に考えるのは、銀行には無記名、今度は次に証券会社には投資信託、それで今度は相当信託会社は大分押されて来た、そうしてここで息抜きに今度は貸付信託、そうするとあと残つたのは保険会社、金融関係ではこれについて何かあの手この手の中の一つをお考えになつておるかどうか。これはやはりバランスの問題があると思うのですが……。
  146. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 保険会社のほうにつきましては、もうすでに手を打つております。例えば保険金を受取つた場合の相続税の問題とか或いは今まで二千円の分を、所得の控除二千円を多分四千円にしたと思いますが、そういうふうな手を前から打つております。まだいい手があれば一つお教えを願います。考えまして適当と思うのはやつて見ます。
  147. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 よい手というのじやないですがね、郵便年金というやつは一時勤労階級には魅力があつたわけですが、六十歳になつたら郵便局から年金をもらえる、ところが保険会社にそういう年金制度というものはないわけですが、そういう点を考えられておるかどうか。それからそういう面につきましては、税金を成るべく安くして特に所得税の際に、そういう掛金をした者には、生命保険の源泉徴收の所得税をうんと安くして、年金制度を奨励するという方法は私は考えられ、又当然考えられなければならんのじやないか。農民にいたしましても、中小商工業者にいたしましても、そういつた連中が年をとつてからのために、何らか若いうちにそれを奨励するために、税金のほうで考慮をして、年金制度というようなことは考えられるのじやないか、こう思うのですが、こういう点はお考えになつておりますかどうか。
  148. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 郵便年金制度も御承知の通りでありますが、余り伸びません。それから民間保険会社が養老保険なんかをやつておることは聞いております。御承知の通り民間の保険は余り伸びないのです。簡易保険は相当伸びます。これはやはり経費の関係で、従つて料率が少し高い、こういうわけで今の生命保険は戦前の日本の状態から比べますと誠にお恥かしいような状態で、これは伸ばして行かなければいかんというので、先ほど来申上げましたように、所得税か相続税で、いろいろ措置をとつておりまして、何と申しましても生命保険を合理化して料率を安くするということに、特段の努力を拂わなければならないと思います。昔は生命保険の連中の持つておる資産というものは相当のものであります。この頃は生命保険よりも却つて損害保険のほうが伸びて行く。こういうような状況でございまして郵便年金或いは生命保険、或いは養老保険は余り伸びませんが、やはり長期資金獲得の上からは是非必要なことでありますから、今までもいろいろな手を考えておりますし、今後もその点において長期資金獲得のためにいろいろな措置を講じたいと思つております。
  149. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 これは別に対抗的に言うのではないのですが、簡易保険の限度を八万円に今度なりますが、それでなお今あなたも伸びないと言つておるが、生命保険はどこの国にもあるわけですが、簡易保険のほうは今まで五万円であつたのを八万円にするということになると、これは伸びないのがなお伸びなくなるということになつて、一番金融の中で、まあ三つのほうは何らかのあの手、この手を與えたが、ただ税金のほうだけは措置しておるというのだが、税金だけでは、これなんかでも、税金を多少考慮することによつて集まるというよりも、新らしい方法で大きく宣伝する、これでむしろ吸收ができるのじやないかと思うのですが、その点税金のほうはそういう税金が、保険会社で、私のほうの税金が安くなりませんという宣伝は余りやつていないように思いますが、どうですか。
  150. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 簡易保険の八万円の問題でも、民間の保険会社のことも相当考慮せられてああいうふうにきまつたと思うのですが、お話の通り生命保険の伸び方は遅々としております。こういう民間事業はその事に当る業者が特段の努力を拂う、こう思うのですが、何と申しましても、一番戦後の金融機関再建整備法で痛めつけられたのは保険会社です。保険会社が立つておるのは、今やつておるのは建物の値上りというのでやつて行ける。保険事業者自体としては今のように勧誘員その他の経費が相当かさんでおる。そうして銀行とは違つていろいろな紙とか何とかたくさん要る。それから又簡易保険とは違つて一々診察をするとか何とかいろいろな不安定状態のときにおける一番の痛手をこうむるのは生命保険、これはいつの世でも、どこの国でもそうです。これが安定して参りますと、だんだんやはり生命保険が伸びて来ると思います。これは特殊の業種の経過的の状態であると考えておりますので、我々としてもできるだけの努力をいたしておりまするが、業界のほうでも特設の勢力を拂うように奨励をしておるわけであります。
  151. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと皆さんにお願いしますが、大臣は連合委員会のほうにもおいで下さるそうですから、大分時間も経過しましたから、成るべく貸付信託専門に御質問を願いたい。
  152. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 貸付信託に関連しておると思う。それではもう一つだけにしておきますが、実はそういう大臣の話だと、信託会社というのもこういう長期資金というのはインフレの進んでおるときには、これはもう預けておいて五年間も信託しておいて、ころつと情勢が変つてくると、信託会社なんかもさびれて、一時信託会社ができた当時に銀行では脅威を感じたという時代も、三井信託が初めて乗り出して来た当時には相当この銀行との摩擦もやかましかつたが、今日では問題にされんようになつて来ておる、それに息吹を加えようとしてあなたのカンフル注射を與えたのだろうが、もう余り大した期待はできないにしても、併しこれは確かに信託に新たにこれによつて一つのチャンスを與えて、そうして信託というものについての興味も沸いて来るだろう。こういうふうには考えられますが、その際に成るべくあの手この手というのでありますが、当然これは保険会社あたりからも今度はあの手この手が與えられていないから保険会社等からこういう要請があると思うのですが、将来こういう金融機関に新手のいろいろまあいい方法があればどんどん新らしい方針で以てでき得る限り、まあ今までの古い殻に余り囚われることなくて、新らしい方法で、こういう資金を集めて、そして資本家の蓄積に資すると、これがまあ一貫した大蔵大臣としての方針であつて、いろいろの方法は考えてもおられるし、又先ほども言われたように、いい方法があつたら答申もしていいということで、議員立法ということも考えられると思いますが、こういうものは或るべく多くしたほうがいいと、こういうふうなお考えでありますか。この点について……。
  153. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 多いとか少いという問題でなく、いいことならどんどんやつたほうがいい、こういうことなんです。
  154. 岡崎真一

    ○岡崎真一君 一度伺いたいと思つておりましたのですが、大臣が丁度お見えになりましたので、実はこの貸付信託に関連しまして、信託銀行、この頃は信託銀行という名前になりましたが、もともとは信託会社で、信託会社という性格が多いと思うのですが、いろんなものを見ておりますと、金銭信託的な信託会社の働きが一番多くて、信託プロパーの仕事というものは薄いように思いまするが、それでまあ、この貸付信託といつたようなものは、特別長期資金とか何とかという問題になつて来ますと、この定義にもありますように、実は金銭信託的な傾向が非常に多くて、信託会社の仕事というものが、だんだん金銭託といつたようなものに重点を置いて来るならば、銀行と殆んど変らないというような気持がするのですが、折角信託会社というものが日本にあるわけなんですが、先ほど政府委員のかたから、日本の信託会社というものは、発足した英米の組織と少し考え方が違うのだと、それから又、現在逆に日本のような考え方のほうへ、英米側のほうが近付いて来るというお説もあつて日本のいろんな情勢から判断しまして尤もだと思うところがあるのですけれども、大蔵省として、今後信託業務、信託会社がある以上、信託というものに対してどういうふうに育成して行かれる方針であるか、或いはまあこういうものはこのまま放つて置いてしまうのだということか。こういつたことについてお考えを一つ伺いたいと思います。
  155. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話の点はわかるのでございますが、大体日本で信託業を施行いたしましたのは大正十一年だつたと思います。その当時、本来の信託をやるということでスタートしたのでありまするが、日本の財産分布の状況から申しまして、本来の信託業務だけではなかなか立ち行かん、で本来の信託業務から出発いたしましたが、いわゆる金銭信託のようなものもありまして、昔であつてもこの本来の信託業務と金銭信託業務がとんどん程度であつたのであります。然るところ、敗戦後になりまして、もう富の再分配が行われて、信託会社という特別の知識を持つた人に財産を信託して管理運用してもらうほどの金持がなくなつちやつた。で信託会社というものが、今後邪道ではありまするが、あのときの状態から言つて、昔の金銭信託を主とするような、銀行になつてしまつた。本末顛倒というわけです。併し日本の経済界がだんだん安定し、伸びて行きますと、又本来の信託業務に帰つてもらう。併し昔でも本来の信託業務だけでは立つて行かれなかつたのでございますから、今本来の信託業務に帰つてもらうということは困難でございます。前から言つておりますが、いろいろな方法で信託銀行を伸ばして、そうして本来の信託業務も徐々に発展し得るような方向に持つて行きたい。この貸付信託ということを考えますのもやはりその考え方の一端と御了承願いたいと思います。
  156. 岡崎真一

    ○岡崎真一君 今のお話に私も実は関連してでありますが、まあ事情がそういうのでございますから止むを得ないと思いますが、信託業という業がある以上、それにまあ時がめぐつて来れば助成をするような育成方法をおとりになるということを、これはまあ希望するということ。それから実はちよつとこれは違うのですが、又大臣においでを願うのも大変だと思うものですから……、最近、ここに長期信用銀行法案というのが出ておりますが、これはそのときにお聞きしてもいいのですが、又お出まし願うのも大変だと思うので、今のことにやや関連があると思うのですが、実は近頃長期資金というものはあの手この手ということで、これは私は尤もだと思いますが、それについて実は従来から日本には長期金融というものを主体にしました興業銀行であるとか、勧業銀行とかいつたものがあつたんですが、それがアメリカさんが来て、商業銀行的な性格に変つたということで、どうしても日本現状から、設備資金をとるということで、こういうことをお考えになるのは尤もだと思いますが、新らしいこういうものを作らなくとも、従来からありますようなものを、改正をしましたのを更に元に戻してやるということのほうが経験とかいろいろな点から言つても、新らしいものは勿論これは基礎も強固であろうと思いますけれども、そういうものを利用してやつたほうがいいんじやなかろうかという、これはまあ私の懐古趣味かも知れませんけれども、こんな点から関連して、最近開発銀行とかいろいろなことが出ておりますが、これは従来の日本の考え方と少し違う構想でありますから、これは尤もだと思いますが、長期銀行ということになりますと、従来の観念そのものでもどうかと思うのでありますが、こういうものが出たということについて、長期資金金融を扱う機関についての大臣のお考えなりをお漏らし願つておきたいと思いますが……。
  157. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話の通り、終戦前の日本銀行制度を、今そのままそれを復活したらどうか、即ち興業銀行、勧業銀行、北海道拓殖銀行、こういうのであります、そういう考え方も私は一つあると思います。従つて日本興業銀行につきましては、そのまま長期金融銀行になり得る。勧銀というものは、まあ卑近な言葉で言えば一定の車軸を履いておる。これを昔の長期不動産金融に立ち帰るかというと、なかなかむずかしい。私は勧銀の意向も聞いたのでありまするが、もう長期銀行に立ち帰ることは好まない。こういうふうなこともありますので、勧業銀行が今の興業銀行並みに帰るということは困難だと思います。併しいずれにいしましても長期金融機関というものが相当の経験を持ち、相当の資金を持たなければならんことでございますので、新たな設立につきましては、やはり既存銀行とよく打合せをし、又今までの既存銀行に倣つてよほど注意深くやつて行かなければならんと思います。
  158. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 本日の委員会はこれを以て散会いたします。    午後三時三十分散会