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1952-05-14 第13回国会 参議院 大蔵委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十四日(水曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            菊川 孝夫君            木内 四郎君    委員            岡崎 真一君            黒田 英雄君            西川甚五郎君            溝淵 春次君            小林 政夫君            小宮山常吉君            森 八三一君            大野 幸一君            下條 恭兵君            波多野 鼎君            菊田 七平君            油井賢太郎君            木村禧八郎君   政府委員    大蔵省銀行局長 河野 通一君    大蔵省銀行局銀    行課長     大月  高君    大蔵省主計局次    長       東条 猛猪君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省管財局国   有財産第一課長  木村 三男君    大蔵省銀行局特    殊金融課長   有吉  正君    厚生省国立公園    部管理課長   甲賀 春一君    国民金融公庫総    裁       櫛田 光男君   参考人    日本銀行総裁  一萬田尚登君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国有財産法第十三条の規定に基き、  国会議決を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○国民金融公庫法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○貸付信託法案内閣提出)   —————————————
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) では第五十回の大蔵委員会を開会いたします。  国有財産法第十三条の規定に基き、国会議決を求めるの件、これについて簡単な説明を一つして頂きたいと思います。
  3. 木村三男

    説明員木村三男君) 本件内容は、現在千代田グランドと呼ばれております皇居外苑の一角大蔵省の現在普通財産になつておりますものを、公共福祉用財産として厚生省所管換えをするというものでありますが、この経過並びに理由を申上げますと、現在の千代田グランドは、昭和二十二年の四月、皇室から物納財産として大蔵省に収納されたものであります。その大部分面積で申しますと、二十九万五千八百四十三坪というのは、すでに二十四年の四月に公共福祉用財産としてすでに厚生省所管換えになつております。その残りましたのが千代田グランドでありまして、面積は四千五百四十八坪余りであります。つまり大部分公共福祉用財産として厚生省所管に置かれておりますが、その一角は元建物跡地でありまして、法制局などが入つたことがございます。そういう関係で将来の予想に備えまして、大蔵省のほうに存置しておいたのであります。ところが最近に至りまして国のほうで建物等に使う目当てもございませんし、普通財産のままにいたしておきますというと、結局普通財産趣旨からして、収益財産として他に転売する、或いは又他に貸付けるということを表示しておくようなものでございますから、これは国有財産管理上面白くない。そういう関係で、周り一帯と同様に厚生省のほうにこの際移管するのが適当ではないかと考えられるのであります。これにつきまして多々考えなければならん点があるのでありますが、この千代田グランドは現在千代田区が一時使用の承認を得ておりまして現在グランドとして使用しております。これは国有財産法貸付ではございません。一時使用というような行政上の許可のような形になつておりますが、これは従来からのいきさつもありまして、いつまでもこのままにしておくということを固めたくないということで、事実空けて置くのももつたいない、区のほうでも使いたいということでありましたので、暫定的に使用を認めていた、そういう関係もありますが、只今厚生省のほうに所管換えをするということは、それが即ちグランド使用がいけないからすぐ追い出すというような関係ではございませんで、厚生省のほうでもやはりこれは国の事業として周り一帯と総合的な観点から公共福祉に役立つように計画したい、それにつきましては委員会のようなものを作りまして、関係地元意見を十分参酌いたしまして将来の事業計画を図りたい、こういうように考えておりますので、目下のところ物議をかもすようなことはないという確信を得ております。以上が大体本件内容でございます。
  4. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この公共福祉用財産というのは、一体どういうものなんですか。
  5. 木村三男

    説明員木村三男君) 国が直接公共の用に役立たせる、使わせるという意思決定をした財産でございます。こういうことでございます。
  6. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると公共福祉用財産というのは、全体としてそういうことになつているのですね、皇居広場は。
  7. 木村三男

    説明員木村三男君) 公共福祉用財産建前からして広く公共の用に供させる、但し管理主体厚生省ということになつておりますので、厚生省のほうで管理関係規定やら運用やらやるということになつております。
  8. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや今お話しているのは、皇居広場というのは、あれはその公共福祉用財産になつているわけですね、全体として。
  9. 木村三男

    説明員木村三男君) 千代田グランドを除いて現在すべて公共福祉用財産になつております。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あそこは予備隊とか警察官の訓練場ではないわけですね、それでああいうことは公共福祉に関連するのですか。
  11. 木村三男

    説明員木村三男君) 特定人特定目的だけで使わせるというようなことは、公共福祉用財産趣旨に反すると思います。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはそうですね。メーデーのとき、あの使用について厚生省は禁止したのですが、総評からこれを提訴して、東京地方裁判所でこの使用を禁止することは不当であるという判決が下つたのです。あれに対しては厚生省の人に聞かなければならんと思うのですけれども、この公共福祉用財産管理している立場としてはどうなんですか。
  13. 木村三男

    説明員木村三男君) 公共福祉用財産につきましては、大蔵省所管公共福祉用財産というものはございませんで、広場、緑地、公園、こういうものは厚生省所管ということになりまして、同じ国有財産所管が各省各庁の長にあるということで、当該所管の省が管理するということになつております。
  14. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 関連して……、国家で持つている国有財産ですね、例えば土地やなんかを国の機関が使うということは、何か一々届出かなんかして使うのですか。それとも自由に使つていいということになつているのですか。具体的に言うと、まあ今言つた国有財産広場警察が使うとか、消防が使うとか、そういつたようなことですな。国家消防が使うとか、国家警察が使うとか、それはどういうふうになりますか。
  15. 木村三男

    説明員木村三男君) 公共福祉用財産は、先ほども申上げましたように、大体において繩張りを強いないというのが原則でありまして、広く公共の用に供する建前であります。従つて逆に誰が使つたからいけない、誰が使うからいけない、反対のほうから禁止的に考えるのとは立場がちよつと違つて参ります。
  16. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 いや、私の言うのは国家機関がそういうところを使うときは、一々断らなくて使つても差支えないかどうか、具体的にお伺いします。
  17. 木村三男

    説明員木村三男君) 管理規則をよく承知しておりませんけれども、例えばああいう広場でありますから、一般人が自由に入つて行くことは格別支障がないのでありますから、通行もできますし、立止まることもできます。又警察関係消防関係、これが使うということもその用途、目的を妨げない限度ならば差支えない。つまりそのために著しく公共福祉用財産としての本質を妨げるような使い方をするということになれば、趣旨に反すると解釈しなければならんと思います。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 厚生省のほうからも御説明を聞かなければならないのですが、まあその点についてはあとで厚生省のほうから伺うとしますと、現在この千代田グランドとして一応公共福祉的に利用されておるわけですが、只今お話ですと、普通財産公共福祉用財産写ることによつてごたごたが起るようなことはない、現状にすぐ変更が起るようなことはないというお話ですが、それは今後のいろいろな協議などによつてそうなると思うのですが、それならなぜ、その現状変更がないなら、普通財産公共福祉用財産にこの際変えなければならないのか、どうしてもそれを変えなければならない理由ですね、現状のままではどうしていけないのか。結局いわゆる千代田グランドではなくして、ほかに何か計画があると、こういうのではないかと思うのですが、その点どうなんですか。
  19. 木村三男

    説明員木村三男君) 簡単に私ども立場を申しますというと、国有財産管理の常道に還したい、つまりあそこの場所普通財産として大蔵省管理しておるということは、収益財産として何とか処分したい、或いは有利に貸付けたい、こういうふうな財産として持つておることでありますから、国自体としてはそれは好ましくない、従つて使うにしましても公共福祉用財産として公共利益になるように行政財産として使いたいということになりますというと、例えば運動関係にしましても、或いは他のレクリエーシヨンにしましても、そういうことは厚生省のほうが専門家であるし、所管でもありますので、そういつた専門的な省の公共福祉用財産としまして、例えばグランドとして当分の間使わせるにしましても、厚生省のほうの知識経験を生かしたほうがより合理的であると考えたからであります。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのことは今直ちに起つた問題ではないと思うのですね、前からそういう問題は起つておると思う。今度の国会に、この際こういう法律案を出される理由ですね、今のお話は現在出さなければならんというものではない、もつと前にそういう御趣旨なら出すべきであつたかも知れない、ところがこの国会にこれを出されるようになつたという趣旨はどこにあるか、他にやはり何かそうしなければならない都合の悪い事由があるのではないか、こういうふうに思うのですか……。
  21. 木村三男

    説明員木村三男君) 今回特に外部的な事情その他でどうしても待てないということではなくて、とにかく将来の目安、つまりほかに売るとか、或いは国の建物を建てるとかいうような計画がないということがもつと早くきまれば、その機会にやるべきであつたのであります。最近におきましていろいろ行政機構の改革その他によりまして、当分官庁のほうの用地に必要とするような事態も起るまい、それならば元々早くそういう始末をつけるのが当然でありましたが、それができなかつたということならば、でき得る最近の機会にやりたいというのが私ども考えであります。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長、これについては私は厚生省に聞きたいと思います。
  23. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今までも何でしよう、使用料を取つて国で貸しておるわけなんでしよう。さつきあなたのお話では貸与するか、売渡すかというようなことがあつたのですが、現在貸与しておるとすれば別に所管換えしなくても差支えないように思われるんだが、その点はどうですか。
  24. 木村三男

    説明員木村三男君) 実はこの話合が大体正式な文書を取交していないままに、ずつと黙認するというような形で財務局のほうで最近まで来ておるという事情があるのであります。そこでこれをいわゆる民法上の貸付契約賃貸借契約ということにはできないが、行政処分として他に例もあります。一時使用という形に放任いたしまして、遡つてその間の使用料名目使用料ということよりも弁償金という名目になつておりますが、今年の三月に現在使つておる場所を区切りまして、そうして調定いたして納付を受けております。これはいわゆる普通財産一般に行われる貸付けというものではなくて大体国の財産は有償でなければ使用収益させるということができないという性質に合わせたのでございます。
  25. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) これは質疑はまだ厚生省政府委員も呼ぶことになつておるんですが、午後ゆつくりやつて頂きたいと思います。  それではこれより一万田日銀総裁から金融問題についての御意見を聴取することにいたしたいと思います。  本日は御多忙の処本委員会に御出店下さいまして有難うございました。お願いいたします。当委員会におきましては、信用金庫法施行法案国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案設備輸出為替損失補償法案等、単に国内金融のみならず国際金融に関連する多数の重要なる法案審議中であります。独立後の我が国といたしましては、従来と異なり自主的な立場から、又国際的な視野から慎重審議しなければならないと存じます。つきましてはこの際内外金融に明るい総裁の御意見を承わり、法案審議参考に供したいと存じ御出席を煩わした次第でございます。先ず総裁から御意見の御開陳を願い、次に各委員からの御質疑をお願いいたしたいと思います。
  26. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それでは極く簡単に今後の金融政策というようなことについて述べてみたいと思います。  私の考えでは、無論講和が発効した後におきましても、金融政策に特に大きな変化があるというようには考えておりません。特にこの講和発効後におきまして、この国際金融機構或いは国際通貨基金にも入り、今後ますます円貨為替レート円貨対外価値の維持というものは極めて必要なので、これは飽くまでむしろ強化して行く、こういう方向に進めなくてはならない今日、この世界経済情勢、例えば日本におきましても、よく言われておりますところの不況、この見通しというものも、当面の金融政策には無論関連が深いのでありますが、私はやはりこの世界的な不況というものにつきましては、大体においてこの軍備拡張と国際的な情勢現実との間の、この喰い違いから起つておる。基調としては世界軍拡が急速に必要がなくなるというようなことは、私は絶対にないと思つております。今日世界平和を維持する上におきまして、どうしても力というものが必要である。或る一定の限界までは必ず軍拡は進んで行く。世界経済を動かして行く基調としては軍拡じやないか、ただこういう場合に、アメリカ経済力というものは非常に強いものですから、国際情勢、例えば朝鮮事変直後における国際情勢から非常な軍拡ということをやつておる、これを裏付ける生産力拡充というものを非常に強化しておることは御承知通りであります。アメリカというような国では、こういうふうな生産力拡充をやると、日本なんかとは違つて、殆んど機械的に実現できる。ところが世界現実情勢というものは非常に紆余曲折を経て、非常に緊迫しておる。どうしても近く戦争があるかのような情勢が出るかと思うと、そうじやない、平和が続く、こういうような情勢。そうしてみると、生産力拡充はあるが、やはりアメリカにしても、実際の政治という面からは、そうすぐ軍備拡充に物を買入れるということを差控えるということになるわけであります。そうして来ると、物は殖えるが買入れが減る。いわゆる買入れの繰延べが行われております。軍事費でも思うようには使われない。これで行けば、アメリカはそれに対応して統制を外して、物の面におきましても、金融の面におきましても統制を外して行く。が併し、軍備拡張はそれではやらないどころではない。予算面を見ましても御承知通りであります。私は軍備拡張というものはやはり進められておるというふうに考える。そうしてみると、今日の情勢というものは本質的に、いわゆる不況、これは自由経済における景気現象から来る不況であるということは非常に間違つておるというふうに考えております。そういう意味からもそう基本的に金融政策変更する理由は今日発現をしておりません。なお今後日本経済の行き方としては、一方において東南アジヤ開発というものはどうしても取上げる。これはひとり経済の問題ばかりでなくして、日本東亜に孤立しない、東亜の民族とこそ手を握らなくてはならない、そうして日本がやはり経済的には先進国であり、大きな工業力を持つておる、東南アジヤ諸国と手を握るという意味において、又バツクとして経済的な提携をする。同時にこれが日本の市場でなくてはならん。こういうふうに今後東南アジヤによつて日本経済が培われて行くというふうに持つて行かなくてはならん。そういうことをやる場合において、他方においてどうしても日本の力だけではいけない。これには日米経済力裏付がなければならん。私はそういうふうな意味において金融政策をとつて、同時に金融政策において今後一番私が重点をおいていることは、こういうふうな国際情勢でいろいろありますが、やはり経済本質といたしまして、日本の場合におきましては正常な貿易が伸びるということであります。ここにどうしても基本を置かなければならん。これにはいい物を比較的安い生産費作つて、私は海外に安く売るということは望んでいない。日本みたいな貧乏な国は高く売るがよろしい。ただ生産費は安くする。そこにはじめて利益があり、利潤というものがある。それが資本蓄積になつて日本経済を養う、或いは人口を養う、こういうことに相成る。できるだけ生産費を安くする。それには今日の日本経済設備の状況でどうしても貿易を進めて行かなければならんとすれば、いい機械を入れ、いい技術を入れ、同時に又全般的に合理化合理化と言えば如何にも或る特定事業についてその経営或いは技術設備について近代化をする、国際水準に持つて行くというふうにばかり取るのでありますが、合理化という場合は、更に広い範囲を考えなくてはならん。それは例えて言えば、電源の開発、電気を安くしてすべての事業に提供ができるということは、これは生産費を安くする大きなモメントです。船は、船賃が安くなりまして、新造船については経営に幾多の困難を伴なつて、まして今後の国際情勢変化考えると、船というものもなかなか困難はあるのでありますが、併しそれにもかかわらず日本のこういう国柄であり、或る程度船舶を持つ、従つてこの船舶も又優秀船でなくちやならんということも申すまでもない。それから今後日本が特に機械工業というものが相当の重要さを占める。輸出にしても、機械工業というようなものに、或る程度重点的な方法を、徐々ではありますが、講じて行く。又いい機械日本にできるということは、すべての産業をうるおす。そういう意味によつては、又その素材になる鉄というもの、製鉄業というものについては、日本におきましてはいろいろな悪い状態があります。製鉄業について多くの検討を必要とするのでありまするが、併し私はやはり独立国である以上、産業の基礎を成す製鉄業というものが成立つようにしなくてはならん。こういう方法を私は考えておるのであります。製鉄についての合理化、これも進めて行かなければならん。こういうふうに全般的に合理的な処置をとる。事業自体にしても合理化をして行く。従つてそういう方面へ対する金融は当面の問題としては一番緊切な問題で、これは結局長期資金を如何に調達して、如何に潤沢に調達するかということに問題がある。更に又今は食糧増産であります。私は食糧増産ということについて如何にも国が今まで怠つておる、なんて言うと叱られるですが、もう少しやはり具体的なものをもつて食糧増産をすべきだ、こう思つておる。今日では一層私は急を感ずるのであります。アメリカの国にお頼みをして日本の国を守つてもらわなければならんだけ仮りに国際情勢が緊迫しておるといたしまして、四面海に囲まれておる日本が、食糧を外国に非常に大きな部分を仰ぐということは、政策として一貫していない。それほど国際情勢が緊迫しているなら、先ず国内の治安の上からはできるだけ食糧自給度を高める。これは当然私は取らなくてはならん処置であろうと思う。これはやればいくらでもできる。今日専門家意見を聞いても、食糧の二割程度増産が不可能であると言う人は殆んどないように私は聞いておる。それはやりさえすればできる。いわゆる農業政策といいますか、又長期資金の供給、こういうことが大きな問題に相成る。私自身としては農業に対する金融については、今後格段の努力を払うということが必要である。こういう面にも問題があると思う。こういうふうに筋を大体……。今後金融の下にも特に考えて行かなければならないと思う。従つてこういうふうな長期資金でありますが、これは所要する長期資金について、いろいろと施策を速やかにして、その一つの現われが皆様方のところに、大蔵省のほうから御審議を願つておる長期金融、どういう名前になつておるか存じませんが、長期信用に関する法律案が出ておると思いますが、これなども無論必要である。大体日本金融機関は終戦直後におきまして、すべてをアメリカの指令で取り壊しまして、これは強く反対をしたのでありますが、受入れられなかつたのでありまして、すべてを商業銀行に直してしまつた。そうしてその商業銀行デパート式、よろずの金融をするということになつた、こういう行き方は適当でない。私はやはり特にこの戦争によつて荒廃に帰している、この荒廃に帰している国を再興するためには、どうしても再興に関するプランというものがこの貧乏国にはなくちやならん。そのプランに基いて、やはり経済プランに基いて金融をする場合にそれぞれ専門的な分野を持つことは特に必要である。戦前においても日本はやはり商業銀行長期金融機関というものは截然と区別した。為替銀行も持つた。そうしてそれぞれの分野においてそれぞれの違つた性質を持つ資金を持つて働いておつた。こういう構想はどうしても必要である。それで今度そういうふうに長期金融長期資金を必要としますときに、長期金融機関ができるということは非常にこれはいいことである。これによつていわゆる或る程度技術的にオーバーローンというような意味合のことも解消する。無論オーバーローンの解決というものは、基本におきまして資金蓄積ということが大事であることは、これは言うまでもありません。いろいろな法案があつてオーバーローンというものは技術的のみによつて解決することは絶対にできない。これは一に国民が働いて貯蓄をする。その貯蓄が増加しない限りにおいてはオーバーローンの解消は言うべくしてできないと思います。まあそういう基本があります。が併し技術的に、長期長期金融機関を持つ、従つてその長期金融機関長期の性格を持つ資金を扱う。そうしてこれを長期貸付けて行く。そうして商業銀行は短期の、或いは中期の主として運転資金商業銀行長期金融をしないというので、その基準は極めて軽いいわゆる運転資金の形においてやつて行く。或いはこれは内外亘つて運転資金為替も営んでよろしい、こういうふうなことで、そうすると預金の増加と共にオーバーローンも自然に解消して来る、こういうようなことになる。金融機関長期資金を調達するのは主としてやはり債券発行による。無論この債券発行については政府資金の援助を必要といたしましよう。同時に民間の金融機関に引受けてもらう。そうして銀行預金が殖えて、而もその殖えた預金自分自身長期資金を持つ、長期金融機関の発行する債券というものを持つ、そうすると銀行資本構成がどうなるかというと、これは一面においては預金が増大する、それに見合つて貸出有価証券が均衡をとつて行く。従来は貸出し一本であつたから、如何にも貸出しが預金に対して厖大のように見えたというような形があつたと思う。今度長期金融機関が発行するその債券を持つ、右価証券を持つ、自分長期貸出しをしない、貸出しは多く運転資金である、こういうふうな形に銀行構成がなる。そうしてそれらの銀行の有力なものが為替銀行を営み、主として対外的信用の的になる。そうして来れば海外に対する日本金融界に対する信用が高まつて来るというふうになるのでありまして、私は長期金融機関に関する法律が早く通過することを希望するのでありまして、又この法律に基いて長期金融機関自体を早く整備をして行く、整えて行くという段階に入つて行かなければならないということになる、こういうふうに思つております。そうするとやはり長期金融機関というものが必要である。  それからこの長期金融機関について皆様に御考慮願いたいことは、今日日本経済はいわゆる底が浅いというような言葉で表現がされております。無論これにはいろいろな理由がありまして、又いろいろな方面からこれを説明することができるのであります。一つは特に資金関係において重大なことは、今日日本の企業、それぞれ事業を営んでいる会社が自己資本を持たんということ、自己資本がないのであります。すべてを借入金に依存している。これが一番日本経済のウイークなところである。何をするにも借入金、自分の金でない。何かそこで損失があり、経済の変動があつてがたがたすると、これに抵抗する力がない。従つて金融々々ということになる。これは同時に金利の問題がある、金利の負担が重いという問題が生ずる、これは前は自己資金があつた、これは自分の金で利子が附かない、借入金があつても平均すれば、資金全体のほうから見れば金利の負担が軽いのでそれほどでもないが、自己資金がないと今日金利というものが重く感じられる、これはやはり解消しなければならない、これは一体何故かというと、これは結局私の考えではやはり税制の問題に相成る、利潤を上げてもそれは税に取られてしまう、そういう行き方では自己資金は甚だできない、で何とかこういうものは解消しなければ、例えば私が具体的に痛切に考えることは、例えば船を造る、こういう場合に船というものは、今度の戦争に国の御用に徴発された、これは全部沈められた、そういう関係も頭に置いて頂きたい。で、新造船を、例えばタンカーを一艘作るにしても相当かかる、本来ならば船を沈めないで持つてつたならば償却対象になるけれども、そういう関係で船を沈められて、而も国家的な原因で沈められて持たないので償却するものがない、税金に皆取られてしまつた。そういうのは私の考えでは、そういうような理由で償却対象もなくなつたような場合は、新船を造るための積立金というような、新造船資金というものは、利益金から積立てるような場合には何か税法上の措置をする、その金で新造船にかけて行く、そうすると日本の船は安くできる、のみならずそうすれは借入金に頼ることもない、それで結局今後の海運を国際的競争にまで持つて行けるということになる。こういういろいろ税の問題は私は専門家でもありませんし、又税の問題については私はいろいろと申分があるのでありますが、併しこれはやはり考えなければならない。要するに資本蓄積ということと税というものは、余ほど相関的である、私の考えでは、これほど破壊を受けた国が再興を図る場合に、今生きておる人間の働きばかりでこれをやつて行こうということに大きな矛盾があると思う。言い換えればこれは現金に替える、みんなの所得から税金という形で現金を取上げて、その現金ですべての費用を償つて行こうという行き方になる。インフレが進行しておる場合にこれをとめる手段としてそういう方法をとるのは、これは正しい。これは私は非常によろしい。従つて例えば昭和二十四年度の予算の編成において極めて税が高くて、且つ超均衡の予算を組んだということは極めて適切であると思う。これは進行するインフレをとめなくてはならん。とめないと経済が崩壊する。何としてもとめるというその際におきましてこういう施策を取ることは正しい。ドツジさんの方針は極めて適切だ、そういうことは誰も考えておつたのでありますが、当時力の関係でああいうところから言わん限りは実行ができなかつたというに過ぎない、これは正しい。併しそれだからと言つて、これは金科玉条であつても、私はドツジ・ラインというものはいろいろ時々の新聞に出ておるが、私はドツジ・ラインというものは何も財政だけのことを言つておるのではないと思う。ドツジ・ラインの企図しておるところは、要するに貧乏の国がこういう事情から立上るためには、国民全体がねじ鉢巻で一つ働いて下さい、汗水たらして働いて、そうしてできるだけ節約をして下さい、そこに利潤というものが構成される。これによつて一つ復興を図る、ねじ鉢巻で働き節約をする、これがドツジ・ラインです。これに関する限りにおいて、私は恐らく日本としては時間的に言うても殆んど永久に拳拳服膺して行ける、行かなくてはならんプリンシプルであると思つておりますが、併し単に財政だけが超均衡、ドツジ・ラインでなく、これは貿易、国民生活までやはり一つ有機的に管理をする。ですからあとにローガンという人が来て、日本貿易政策についても示唆した。ローガンさんも来ましたし、シヤウプさんも来た。みんなこれは当時の処方箋を書いたお医者さんです。これは一貫している。貿易、国民生活の安定、みんなこれは含めているのである。従つてドツジ・ラインについてかれこれ議論する場合に、超均衡予算だけを取上げてこれをドツジ・ラインだ、ドツジ・ラインの変更だというのは私は見識が狭いと思う。ただ税ばかり取つて、そうして超均衡、それだけで問題が解決すると思つておると間違うので、この税の問題は、私は国民貯蓄といいますか、資本蓄積状況とよく睨み合せて適切な操作をしてよろしい。例えば若しも国民が、税が重いから困る、又そういうことでは経済活動も困るとなれば、財界にも個人においても貯蓄ができるように、資金蓄積ができるようにし、又国民が進んでそれをするというようにする。そこで貯蓄がぐつと出て来れば、さあ税は取る、現金で取る、今の人ばかりにすべて負担をかけてやつて行くというような方向をとらなくても、私は行く途が発見できるのではないか、こういうふうな考え方もある。これはやはり今後は金融政策に影響がある。私どもとしてはそれで成るべく資本蓄積が民間に多くできるような、そういう政策金融界は希望するのであります。余ほどそこに私は裕りのある、相当よい政策がとられる……。インフレを防ぐことはその強さによつていろいろとやはりそれに対する対策が違つてよろしい。非常に進行する場合はタツクスという形の、一番強い線で行くのがよろしい。併しインフレがそれほどでなくて、懸念をされん場合において、インフレが起らない方法であれば、必ずしもタツクスでなくても途がある。そのほうがむしろ合理的でもある。こういうふうな考えをしておるのであります。これは併し、私自身金融的にそういうふうに見るわけです。それでこういうふうな長期資金といろいろの関係がある。それで合理化のための措置はいろいろ考えを持つております。これは当面の金融措置になるのでありますが、外貨もどういうふうに使つてもらうかを考えている。それでドル、ポンド、ポンドについては特に金利を利用する人で四分というふうなこと、ドルについては六分というような金利であつて合理化のために必要とする技術機械、この輸入については三年、長ければ三年、一応一年にしておりまするが、必要があり妥当と思えば三年まで延ばすというような関係、こういう方面にも合理化のためにできるだけの措置をとつておるわけです。それから資金蓄積状況も、今日ではいわゆる無記名預金という、名が悪いが、税金を払わないように思われるが、そうじやないので、これは五割というような、これは高過ぎると私は思うのですが、五割の税金を払つておる。一円の利子がつけば五十銭は税金である。ただ源泉課税で、総合されないというだけです。こういうことで税務署との関係のトラブルがないということが預金者の好むところです。もう恐らく私の考えでは八百億くらい、これを始めてから幾らも経たないのでありますが、八百億くらいになつておると思う、こういうことになる。実際箪笥預金で入つたのはこの三割から四割というところと思つております。それにしても従来箪笥の中に眠つてつた資金が、仮に八百億で四割とすると三言億、三割にしても二百五十億というような関係、今後恐らくこれはむろん千億を突破しましよう。私は本当に箪笥預金が千億出るようにしたいというような意気込みでおるのだが、そうもならんかも知れない。そうするとこういう資金が出てくれば大体長期に運用し得る資金です、箪笥に入れて使わずにおいてもよかつたというような資金ですから……。そうするとここに五百億出て来るとすれば、造船資金も勿論賄えるし、電源開発資金もこれだけはプラスになる。従いまいて今後においても資金蓄積ができるというふうな方向に向けて行く。これにやはり通貨の価値が安定しないといけない。物価が上るというような政策をとつてつて貯蓄の増大を図るということは到底望むべくもないのであります。従いましてやはり金融政策として、物価が上がらないように、合理化によつて下げて行く、同時に増産をやらして行く。そこにやはり日本のむずかしさがある。増産はしなくちやならない。そうでないと人口が養えない。如何に不利な条件の下で貿易をしなくちやならんにしても、日本としては生産を小さくしていわゆる経済規模を小さくするというような方向ではいかないと私は思つておる。これでは人口が養えないということで行き当つてしまう。どうしても生産の規模の拡大を図つて行かなければならん。而もむずかしい国際競争を乗り切つてどうしても合理化せんことには、どうしても駄目だと思う。それで何でも余り操短、例えば綿糸、繊維にしても余り操短々々というのは、私は考え過ぎると思う。売れない物を無茶に作つておるが、売れるような物をたくさん作つて付こうという方向に行くことが私は必要だと思う。単にそのときの状況で、例えば綿糸が下るからこれの生産をぐつと下げるというような、すぐそれだけでもいかん。無論売れない物は仕方がないから、数量的な生産の調整は一時必要でありまするが、できるだけ国際情勢の許す限りにおいて、販路の見出し得る限りにおいて生産規模を維持して行くということを基本考え金融政策をとる場合においてもそういう考え方でやつておるのであります。そういうところで……。御質問がありますればどうぞ……。
  27. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 総裁に対すりる御質問をお願いいたします。
  28. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 日銀総裁はお忙しい中を御出席下さつて金融を中心としていろいろ蘊蓄を傾けられて、非常に重要な参考なつたと思うのでありますが、先ほどお話もありました、戦争中と戦争後における金融政策には基本的には変りはないのだという御意見でありましたが、そのいわゆる戦争中と更に戦後、日本の敗戦後の状況と、それから講和成立批准後の金融基本政策については変りがないという前提的なお話でありましたが、この長期信用銀行プランといい、その後のお話を承わりますると、やはりいわゆる終戦直後の状況がすべて商業銀行に切り替えられたために、現実に即しない状態が出て来たので、長期信用銀行等の新らしい機構をここに打ち立てなければならんというようなことになつたということになりますと、やはり終戦後の講和条約締結までと、独立国家になつたあとの日本が、独自の進路を取つて行く場合における金融政策との間には、そこに基本的なやはり違いがあるのじやないのでしようか、同じだというこめ観念ですか。
  29. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 金融政策には変りはないので、ただその出し方ですね、今までの例えば長期資金が必要な場合、長期資金は今までも出ておつたのでありますが、それをいろいろな制約があつたために一つの商業銀行が出しておつた。商業的な……。ただこれを色分けをしてわけて、今度長期銀行が専門の機関として出て来て、そこから長期資金は出す。支出す場合にはどういうものに出すかという、そういう機構については変りがない、そういうことであります。ただちよつと革の懐中から……懐中で言うとそこからお金は出るのだが、それが革の懐中から出すか、布で作つた懐中から出すか、布の懐中が革の懐中に変つたというふうにお考えになるとよくおわかりになるのじやないですか。それは別に金融政策基本というようなものじやないのです。金融機構としては変つてはいないのです。金融機構としては……。
  30. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 決して基本政策においては変りはない。機構においての変りだという御意見でありますが、まあほかのかたの御意見もありましようから、その点はその程度にいたしまして、この日銀総裁としてお考えになつて、現在の日本国内金融状態は円滑に行われておるとお考えになつておられるのでございましようか。
  31. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) まあ私は円滑に行われておると思つております。無論これはなかなか金融だけの面ですべてを解決するというものじやないのですから、不自由さは無論あります。が併し、今日のやはり問題は、大きくは世界のやはり経済の動きから来ておる。世界的にやはり物が……、要するに今日世界経済を動かしておるのは、アメリカがどれほど買うかということに、まあ極く端的に言えばかかるわけであります。アメリカが買入れを差控えて来れば、これはもうどこの国も駄目だ。だから例えば日本の特需というものが減つて御覧なさい、日本経済に如何なる影響を及ぼすか。それはどつちかというとアメリカの買入れが延ばされるとか、鈍つて来ておるところに問題はある。まあ私らの考えたところ、本当にこの世界の運命を今アメリカが握つておるわけでありますから、それだけの責任があるのだから、アメリカはどしどし買うべしだという、まあ私は考えを持つておりますがね。併しまあアメリカ自身国内情勢考えると、そうも又行きがたい政治情勢もありましよう。併しここは一体アメリカというこれほどの重要な国際的発言権を持ち、その運命を担つている国が、アメリカの殻のうちに閉じこもるというようなことがあれば、これは問題にならん。これはどうしてもアメリカがどんどん買つて行く。まあアメリカ経済的にずつと或る意味において後退をする。そうしてこの生産力が国際的に均衡を除々に復して行くような……、それにアメリカがヘルプして行くというような政策アメリカが推し進めないと駄目だ。だからそういうふうないろいろな形で今動いている。特に今日のこの日本の状況はまあ端境期みたようなものです。ちようど米が、新米が出て来るのと、古い米が中間に、まあ八月頃はよく米が足らん足らんなんかいうような状況に日本がおる。それが終戦から占領治下六年にある。これがもう今終つた。終つたが、独立後のいろいろな施策を見るとまだ始めていない。恐らくそういうものが具体的に行われて来るのは恐らく十月とか十一月とか、秋以後になるのじやありませんでしようか。やはりここちよつとまあ端境期にもなる。まあ今後の情勢を見ると、日本の場合は特にそういう場合において、まあ賠償というようなことが起つて来るでありましようし、それから私よく知りませんけれども、新聞をよく見るとデイフエンスというものがどういう規模で、どういうスピードで、しようとするのであるか、或いはするのかせんのか、賠償というものは一体どういうふうにやるか、電源の開発なんか、ああやつて一つの会社を作ることですつたもんだしておつても電気はちつとも来はしない。これもやらなくちやならん。一体それはどういうふうに具体化して来るのか、いろいろ問題が山積しておる。皆未解決です。こういうときはやはりどうしても日本経済は若干後退しますし、空白なところがある。だから成るべく早くそういうことを具現するということが必要じやないか、だからそういうことがはつきりせんときは……、すべての政策の、特に金融政策はですね、金融がリードするわけじやない、経済政策基本というものがあつて、そしてそれに基いて金融をして行くわけですから、そういうふうな大きな変化がある。例えば東南アジアと協力機関、或いは東南アジアの開発ということは何らこれはやつていない。日米経済協力も恐らく今後はやるでありましようが、そういうふうにすべてを見渡して、やはりここには国としての大きな経済政策というものが確立される。農業でも、私は食糧増産が非常に必要なことを言つたが、それならば食糧増産に如何なる具体的な施策が立つておるかというと、これもつまびらかにしない。これには基本的なものが立つていないし、特に金融の面において当面のもので行く以外に、今のところは仕方がない。こういうように基本的な経済政策、例えばデイフエンスの問題が取上げられると、これは大きく経済に影響を与える。それで一体どういう規模、額において日本経済政策の立て方を、計画というものをやるか、それを立てなくちやいけない。するとその線に沿つた金融政策というものをやる。そういうものは一応あるかも知れませんが、余り私はつまびらかにしない。
  32. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 そこでこれはもう一、二点だけちよつと教えておいて頂きたいのですが、日銀の総裁として特に御考慮願いたいと思い、御意見を承わりたいと思うことは、最近この金融本質が大企業中心になつてつて、それがために中小企業の金融というものは誠に困難な状態になつておるということを聞くのであります。私自身は自由党の議員で、こうまるつ切り反対のことを質問するかのごとく聞えるかもわかりませんが、ざつくばらんに申上げて、大企業に対する金融中心で、中小企業に対する金融、特に銀行に準ずる無尽とか信用組合というものの力が弱いために、なお一層中小企業というものは金融の面で塗炭の苦みをしておる。大企業にその金を廻しておるからそうなつておるのじやないかという感じがありますが、一方又大企業の例えば造船、製鉄等に関する金融状態を見てみますると、例えば十億要る金に対しては五億とか六億を融資して、後は大企業の自己資金でする。而もその設備しなければならんのは、国家の急ぐ要請であるということのために、一つの企画を完成するのに、国から十億要るのに半分なり六割の融資は受けるけれども、四割は自己資金でしなければならんというために、その大会社は自分の出入りの中小のいわゆる下請けの仕事をしている人に対する支払いを停止する。それがために大会社に出入りする中小企業の人たちが金融に困つて、結局高利貸に走つて行くというようなことで、結局いわゆる金融政策が徹底しない。一つの国家機構としてやるときには全額をやるか、やらなければ自己資金でやるという、どちらかが出ないために起る犠牲を中小企業家が皆受けておるのじやないか。そのために中小企業は非常に困難になつておるのじやないかということをよく聞くのでありますが、その点に対する総裁の御意見と、それからこれはまあ、こういうことをお聞きしていいかどうかわかりませんが、この機会にざつくばらんにお聞きしておきたいと思うのですが、銀行が金を貸出す場合に、例えば百万円貸すときには三十万くらいの預金を是非してくれという、そういうようなことで借りた百万円に対しては利息を払つて、三十万の預金も無論利子は附きますけれども、はや借りたとき、すでにその金を完全に払うべき態勢になつていないというようなことをする銀行もあるということも聞きますが、そういつたようなことについて、一つ総裁の御意見を承わりたいと思います。
  33. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 中小企業の金融は、これは非常にむずかしい問題で、できるだけ私たちも力を入れておるわけです。まあ、今の具体的な御質問の、大企業は中小企業に払いが悪くないか。これは最近……一時そういう声が強くて、よく大企業に話しまして、そうして払うように又金を貸す場合もそういうようなふうな中小企業に対する支払いのリストを作りまして、そうして貸すときにもそういう中小企業が直接取れるように振替えておる、こういうことも一時やつてつたのです。そうして大体そういう声も少なくなつたのですが、最近そういう状況を私も耳にします。それで銀行にお願いをして、銀行から金を貸す場合に、大企業によくその辺を話してそういうことのないように……。これはずつと私よくなつて行くだろうというふうに思つております。これは結局銀行の自己資金、例えば船のほうに自己資金を出せるかというような問題ではありません。もう少し違つた角度になると思いますが、船を造る場合に自己資金というふうにしておりますけれども、例えば今度の造船の単価をとつても、見返資金のほうがだんだん減るのは当然です。見返資金からトン当り六万円、そうすると民間から八万円出して上げるというと十四万円、大体船価は十四万円と押えておつたものですから、成るべくそういうふうに下げてもらうが、そうすると十五万五千円くらいかかるという話ですが、自己資金一万五千円、こういうふうに出している。成るべき自己資金がある人は出してもらおう。船価も成るべく合理化をやつて安くしてもらおうというのです。而もその一万五千円を船会社に出さなくちや船を造らんというわけじやなくて、実績から見ると、自己資金以外のものは銀行から借入ということをして、結局九万五千円をトン当り出すという肚で行つているような状況です。ですからそういうふうに、自己資金が足らないからどうという問題では決してありません。それでしたね、御質問は……、もう一つありますか。
  34. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 それが基本です。もう一点。それで、こういうことがあるかどうかわかりませんか、預金のやり……。(笑声)
  35. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 今のそういうことになつてはならないと、そういうことをしないように言つているのですが……。(笑声)
  36. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 それからもう一つです。先般大阪の繊維関係が、ストックによつて非常に繊維業者が大恐慌を来したのですが、どうにか落ち着いた恰好を見せておりまして、適切なる結末のつくことを私も大阪人の一人として希うのでありますが、大局から見まして、その繊維関係の解決のために、限られた幾つかの業者を救済するため銀行が金を操作したために、その地区における中小企業者の金融逼迫を告げるようなことにならんように、一つ総裁の特別なる御配慮を願いたい。
  37. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) その後大阪の中小企業者のことは心配も何もない。もう疾うに済みました。もう御心配は要りません。(笑声)それから、そのためにあとの金融が逼迫するようなことは絶対にありません。それは前に金が出ている、その始末なんで、その整理によつて新しい金が要るわけじやない。むしろ延ばして上げようというのですから、金は要らんのです。そこまで固まりましたから、あとの商売はしやすくなつて運転資金もよくなる、こういうことが言えます。(笑声)
  38. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 ちよつと総裁意見は極めて甘いお考えだと思うのですが、大阪の経済界は決して今総裁の言われるように金融関係は楽じやないと思う。それに、その影響を受けた大業者はどうにか結末はついたか知れませんが、それに牽連しての大阪の金融界なり中小企業界の金融なんというものは、それは日銀総裁として上から御覧になつてるような、そんな楽な金融では断じてない。やはりそれは非常に困難な状態で、中小企業者及び市民のあらゆる階級の人達は相当苦労していると思いますから、特に庶民銀行なり、それから又無尽とか信用組合が銀行という看板を掛けて、まあ銀行になりましたが、実力は従来の銀行に比べて、よいところもありましようし、そうでないところもありましようが、できる限り金融が普遍的に、大阪のみならず全国でもそうでありますが、一つ銀行を通じてやるやつと、従来の無尽、信用組合等を通じてやる庶民金融の点に、一つなお一層総裁の御配慮を願いたいと思います。私の質問をこれで打切ります。
  39. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私は時間が余りないと思いますから、大きな問題だけ二点だけお伺いしたいのですが、最近イギリスにおいては、ポンドの下落を防ぐため、ドルの蓄積というものは十七億以下にしないというふうな方針で、極力努力しておるようです。併しこれも世界の大勢から言つて、いつドルの蓄積が減つてポンドの切下げを行わなくてはならないとも測られないのです。そういう際において、日本においても円の切下げを図る必要があると私は思うのですが、これについて日銀総裁の御意見と、それからその対策を今から御検討になつておられるかどうかという点が第一点。第二の点は、日本経済界は金融のいわゆる引締め、或いは緩和というようなことによつて大体操作されておるような状況になつております。併しこれに対しまして、やはり外資の導入ということに相当これから重きを置かなくてはならんと思うのです。外資導入に関する法律なんかも出ておりますけれども、今までの実績は極めて微々たるものです。この外資導入を積極的に行う必要があると思うのですが、総裁といたしましてどんなふうな方針を以て臨んでおられるかどうか、この二点だけを伺いたい。
  40. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 今のお話の一点は、ポンドの将来ということであろうと思います。これは私にはわかりません。恐らくイギリスの大蔵大臣のバトラーさんもわからないのじやないかと思つております。併しこれを一つの見解として大きく考える場合は、今日の国際情勢からして、自由国家はすべて協力態勢でなくてはならない。これは私の希望であるかも知れません。意見というよりも希望である。第一に軍については、ユナイテツド・フオーセスというものをアイゼンハウアーが率いる。よその国のために自分の主張もあえて犠牲にしようとしておる。政治面においては、国連という形でユナイテツドしようとしておる。それであるのに、そのバツク・ボーンになる経済が、これが協力態勢にならずして、世界の平和が如何にして維持ができるでしようか。そういう私は大きな見解を持つ場合に、アメリカ世界に向つて、少くとも自由国家の群に対して何をなすべきかということは、私は極めて明瞭であると思います。そういうような見地に立つて、一応やはりポンドの将来というようなものも考えて行く必要がある。何も私は慌てる必要はない。まして円についてかれこれ言うべきことは何もありません。何も御心配は要りません。どうぞ貯蓄をして下されば結構です。  それから外資導入は、これは外資導入、外資導入と言いますが、何も金を借りに行くことではない。基は日本にある。資本日本に流れて来るように日本を持つて行かずして、資本が来るということは絶対にありません。ですから特に講和後の日本が一体どうなるか。どういう施策を、経済は如何にあるか、国際情勢はどういう工合に、国際収支は如何にあるか、そういうことについて確乎たる方針を示すことが、外資導入の先決ですね。そういうことさえつけば当然私は……。
  41. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと皆さんにお願いいたしますが、総裁は十二時から御用がおありになるというようなお話ですから、成るべく委員の皆さんに質問を一通りつて頂きたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  42. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 簡単に……。外資導入の件について、法律を大蔵委員会審議されることになつて来るけれども、幾らでも入れるような法律にしたいというのが、我々の念願になつておるのです、我々というか私は……。その点について総裁としては、いわゆる外資が流れるような、流れいいような法律にすることについては、どういうふうにお考えですか。
  43. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは結構です。併し私はでき得べくんば外資を取得する方法としては、成るべく日本の物を買つてもらう、買つてくれる。そうすると日本経済もそこに発展拡大を見る。併し物によりますよ。そういう方法がいいのじやないかと思つております。そうするとこれは利子を払わんで済む。そうして外貨は入つて来る。日本経済は培われる。それだから市場を先に見出すような方法で外貨が取得できる。外貨を先にして、あとで市場を探すという行き方は、なかなか困難に逢着する。先に物を買つてもらうような話合いができれば一番いい。日本の物を買つて使つてくれる話合いができれば一番いい。無論外資は結構です。併し外資というものは、アメリカから金を借りて日本で三百六十円で仕切つて、円資金を使おう。アメリカから金を借りて来て、その金を三百六十円で使おうというような考え方は甘過ぎます。外資導入ということは、それによつて物を入れる輸入の決済代金ということが中心ですね。そうするとこれはもう要するに、金融というものが財界を支配する。それが大きな問題になる。例えば十五億ドルというものがアメリカから来る、その金は三百六十円で仕切つて勝手に使われれば、それはどういうことになるか、そういうことじやいけない、物が来ない。外国の金というものは、外国の物を買うのに外国の金が必要だから、外国から物を入れる、それに払う外貨がないから入れようというのが基本です。非常に日本では資本蓄積が少いから、日本銀行から新しい追加信用を出すのに外貨を入れよう、それは円資金に換えるのは、それはいいと思います。日本銀行の追加信用が増加する限度において、単なる輸入代金の決済じやなくて、単に資金を借りる。それは日本銀行が追加信用を出すのもインフレになる、金びらを出すから……。併し外国から借りられれば、それで外国から物を買うと、それだけプラスになつて残るから、日本銀行が追加信用を出せばいい。日本銀行から相当な資金が出ておりますから、或る程度そういうような形に外資を導入すればいいということを言うておるのでありますけれども、もう日本銀行が将来国内的な金融が賄えるような状況になつたときに、外資導入、外資導入というて、単にドルを借りて来て三百六十円で使う、そういうようなことは……。
  44. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 先ほどのお話を承わつておりまして一点お聞きしておきたいのは、東南アジア開発の問題に触れられましたが、それと外資導入の問題、特に私は思うのに、日本が今十億ドルの外貨を持つておる。それから日銀では金が百トンですか、百十何トンですか、一億何千万ドルになつておりますが、こういうものを一方に持つておりながら、他方において外資導入、外資導入とやかましく言つておる。こういうところに何か割切れないものを感じるのです。東南アジア開発ということを総裁は特に力強く言つておられましたが、千億ドル、これを以て東南アジア開発ということに振り当てて行くというような構想として、どのような構想をお持ちなのか、それを一つ承わつておきたいと思います。
  45. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 東南アジアの開発というような構想になつて来ると、これは国策でありまして、これは恐らく安定本部があるのですから、安定本部の長官から御説明でもお願いしないと、ただ金融ばかりでどうということもできない。同時に国際関係でありますから、外務大臣も……。
  46. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 併し今日参考人としてお聞きしたいのは、我々も国策を決定するのに参与するのですから、日銀総裁としてどういうような考えを持つておられるかわかれば、我々国政審議参考になる。
  47. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) これはむずかしい問題があるようであります。東南アジア開発ということは、同時に少し長い目で見ると、日本の市場を狭くする。いわゆる言い換えれば、東南アジアの開発ということは、同時にこれらのマーケツトの自給度、それらの国の自給自足度を高めるわけです。例えば繊維について、インド、アメリカは非常にいい輸出市場であつたが、今ではむしろ向うが外国に輸出するだけに進歩している。いろいろ開発とかそういうようなむずかしい問題ですが、それかといつて、単に日本が向うの原料の関係のものを開拓して、日本がそれを利用して、それで日本で製品にして又輸出しようというのでは、今日の東南アジア諸国の民族意識からすれば、なかなか私は我慢ができないようになるのじやないか、単なる原料国に自分たちをするのじやまつぴらたというような気分が相当強いのじやないかと思つておるのですが、併しこれはどうしてもギブ・アンド・テークでやらなければならない。それに時間的には相当長い期間を要する、急速にそうは行かないと思う。それで日本の所要する原料の開発に先ず手を着ける。そうして向うの原料を買いますには先ず港を持つ、港湾についても力を尽す、倉庫を造る、更に港から山に行く間の大きな道を造つて行くというようなほうもこれはやる。で、向うの経済力を推し進める、或いは文化的な方向にも向く要素が十分ある、そういうところからやつて、同時に日本はそれによつて原料を近いところから入れる。こういうふうなところから先ず始めて行くべきじやなかろうかと私は思つておりますが、具体的にどこから、どこからというようなことは私は今具体的にここで申上げる用意は持つておりません。
  48. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今の南方方面の開発に対して外貨貸付制度で、機械なんか輸出するのにあの制度を活用してはおりますが、あの事業に対して外貨の貸付制度をやるということは、これはどうなんですか。
  49. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) ただ従来外貨外貨と言つてもそうたくさんあるわけじやありませんので、例えば今ドルについては恐らく六億ドル以上ありましよう。併し四億ドルだけは運転資金に廻しております。昔なら各為替銀行運転資金として持つてつた、今の制度では外為委員会になつておる。一つにまとまつておりますけれども、これほどの貿易金融するためには四億ドルぐらいなドルは要る、それからそのほかにおいていろいろと又講和発効後においてもドルの使用を必要とするものが相当あるだろうと私は思います。それらのものがあるので、そうたくさん今ぽんぽんやれるほどあるわけじやないのです。十億ドルというと皆使えるように人は誤解をしますが、それほどない。それでこの国際情勢変化、或いは特需の動き、まあ私は当分外貨についてこれは殖えるという見方をしております。日米経済協力関係から殖えるという見方はしております。が併し、どういう変化をするか、日本経済は非常に弱いのです。そうドルがイージーに今後入るとも思えない、それは今日溜つておるドルが何の原因で溜つたかということをつまびらかにしますと、正常の取引によつてドルが殖えたというものは極めて少い。ですからそうイージーに考えずに、ちよつとした動きにどうも日本は慌て過ぎてものを過大に考える。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に二つばかりお伺いしたいのですが、先ほど資本蓄積とか、或いは長期資金の調達の問題ですが、まあ私は講和後の日本経済自立を考える場合に、一応外資導入ということが構想の中に入つていたと思うのですが、それが予想通りに行かなかつた。そこで国内資本蓄積を当初予想したよりも相当強く強行しなければならない、外資を予定した場合よりも。そういうことから最近特にいろいろな法案が出て来ておるのです。殊にまあ貸付信託、長期信用銀行とかいろいろな面で非常に長期資金蓄積又その流し方も問題になつて来る。そこで今度はその影響なんですが、これが他の方面の金融へ相当影響して来るのじやないか。例えば電源開発の場合、一応外資導入を予定した場合と、予定しない場合とで非常に金融の仕方が違つて来ておるので、重点産業以外の方面への金融をどうしても抑制して行かなければならんという方向が相当出て来るのじやないかと思うのです。そういう点についで、日銀総裁がどうお考えになつて、どの程度に抑制しなければならんものか、或いはそのために又いろいろの影響が出て来ると思うのですが、どうも外資を予定した場合よりも相当強く国内資本蓄積の問題を採上げないと、電源開発なんかも予定通り行かないのじやないか、こう思いますので、その影響。  それからもう一つは貿易の問題ですが、どうしても正常なる貿易を拡大して日本経済を拡大生産に持つて行かなければならんというのは、総裁の言われる通りだと思うのです。その場合に現実総裁のお考えと大分反対的に、例えば特需は別ですが、アメリカに対する輸出なんかは最近まぐろの関税を上げるとか、にしんの関税を上げるとか、或いは陶磁器の関税を上げるとか、どうも正常な輸出アメリカに対してできない。それからイギリスのほう、ポンド地域に対する貿易も、どうも二十七年度もそう余り芳しくないような発表であります。そうしますと、正常貿易によつて日本はどこに行くか、どこへ拡大して行くか、どうも私は中共貿易、これはまあ非常に無理かも知れませんが、どうしてもそつちのほうに行かないとノーマルな貿易の拡大による日本貿易はできないのじやないか、どうも特需のほうばかりに行くということは好ましくないし、どうしても中共の貿易を私は取上げないと問題は解決して行かないのじやないかと思うのですが、この二点について御意見を伺いたいのです。
  51. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) そういう点は、長期資金の問題ですが、現実の状況からすれば主として資金上の問題ですが、それからすれば、インフレーシヨンはいかんということは、これは絶対の掟ですが、その枠内で考えればどうしても重点的な行き方、これはまあ止むを得ない。それからやはり依然として不急不要のものは設備に関しては抑制する、それで大体において特に終戦以来相当拡大をされて、事業によつてはむしろオーバー・インベストの形もとつておる。それで私は今それらのものに対する抑制を続けて行つてもいいという考えで、そしてできるだけ電源とか船舶、まあ船舶もこれはもう相当考慮してもいい段階に来たんじやないかと思うのですが、国際的な船舶の状況から見ても、まあ併し或る程度今のところを殖やしてもよかろうというくらいのところにあるのですが、それから戦後の合理化のしわ寄せがある。その他の産業についても合理化に関する限りにおいてはできるだけ面倒をみようという、こういうふうな筋で今行つておるのですが、これは今後資本蓄積がどういうふうになるか、同時に財政がどういうふうに運用されて行くか、財政資金の運用というものも考える、これはなにさま大きいのですから……。それから税制の問題もこれに関連しましよう。資本蓄積を非常に考慮して、そしてそれを且つ緊急的に開発をして行く長期資金というものがないとすれば、これは何としても一つアメリカの援助、いわゆる外資導入という形で行つたつていいんじやないか、こういうふうにまあ考えております。それだからこれはまだまだ資金の質的な面の考慮は、自主的にやつて行くにしてもどうしても必要です。従つて物の面についてやはり或る程度考える必要もあるのじやないか、統制をする必要は私はない、そう考えておりますけれども、やはり計画はなくてはいかん、計画の下に、一定の計画は、貧乏国ですから貧乏国が立上ろうとしているんですから無計画で勝手気儘なことを、民主主義の名の下に勝手気儘でやるというのではロスが多い、めちやくちやなロスが多い、あとで又整理をして行かなければならない。ですからそれの計画に副うように、それが実現されるようにこれは準備すべきである。そういうふうにやつてもらいたい、そういうふうな私は考え方をしております。  もう一つは中共ですね。これはなかなか私としては、どこがどうと言うわけではありません、中共というわけでもありませんが、どうも国によつては政治ということが中心のようです。その政治上の目的を達成するために経済をまあ方便にする。いわゆる政治と経済の分離というものが不可能な国が少くない。だから政治問題が解決せんと経済的に如何にそれが望ましくてもなかなかどうもならん。こういうふうなことは言い得るのじやないかと思つておるのですが、そういうところで一つ……。(笑声)
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実は僕はその近代設備設備近代化によつてコストを下げる下げると言つていますが、それはどの程度の効果があるのか非常に疑問に思つているのです。と言いますのは、高い物を買つてですよ、原材料を、アメリカの高いものを買つて、そして安く出す。その場合コストを設備近代化によつて下げるのと、安いところから原材料を買つてコストを下げるのと、どの程度それが違うか、非常に僅かなものじやないかと思うのですが、その点について。
  53. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) これは一概に言えませんですがね。それはアメリカから、或いはアメリカに限りませんが、外国から技術やいい機械を持つて来れば、それは十分コストの下るものもありますよ。十分償われているものもありますよ。併し例えば今問題になる鉄なら鉄というものをとつてみますと、運賃もよほど下りました、今は運賃も十ドル前後でしよう。一時の十七ドル二十ドルというようなときに比べると、よほど運賃が下つて、それでよほどコストを下げていますけれども、鉄なんかで言うと、中共から原鉱や粘結炭、これは遠路を運んで持つて来るのですから、運賃のコストが高いことはきまつている。鉄の値段を下げるのは合理化々々々というよりも、船賃を何とかすれば一番手つ取り早い、こういうふうな話です。私はそれにくみしない。そういう船賃を安くするとかせんとかいうような問題は、そのときの国の政策でどうでもできる、やろうと思えば明日からできる、それはわかつている、そんなことは何も私だけが努力をして声を大きくする必要はないので、仮に些少でもあればいい技術なりいい機械を入れ、設備をよくして、そして国際的に十分競争に堪え得るようなことにすることは一朝一夕にできるものではない。或いはそれはどうしてもやらなければならん、例えば運賃のことを考える場合においても、そういう合理化を抑えておいて、何でもかでも運賃を補給してやろうというわけには行かない。ですからどうしても例えば些少でも私は全産業について国際水準に持つて行く努力は、これは経営者として当然やる筋ではないか、それをやらんのが無責任で、何でも政府やいろいろなところに頭を下げてお願いして行こうというのは、実になつていないということになる、というまあ考え方です。
  54. 小林政夫

    ○小林政夫君 当面の金融情勢ですが、日銀券は収縮をして日銀の貸出も減つておるということについて総裁の見解はどういうところですか。それともう時間がありませんが、いろいろ聞きたいのですが、ポイントだけお聞きします。長期信用銀行を作ることが必要であるという、その中味ですね、興銀であるとかいろいろある、それから地方銀行でも兼営でやりたいというような、総裁として言いにくいかも知れませんが具体的な長期信用銀行となるべき銀行のあり方について、今世上で、新聞紙上でもいろいろ出ておる問題についてお話承われる範囲においてお聞きしたい。  それから外為委員会を廃止する、そして外為の事務を大蔵省と日銀に分けて行くということが一応内閣としてその線に副うた行政機構の改革がなされるということですが、それについて総裁の御意見はどうであるか。又いろいろ長期信用銀行法等もこれからこの委員会審議される。残された問題は為替銀行の整備の問題、政府金融機関として或いは日銀政策委員会のあり方という問題も将来検討しなければならん問題であり、従つて金利調整審議会のあり方というような問題については、日本金融制度として考えなければならん問題、それで為替金融機構のあり方についてどういうお考えを持つているか、とりあえずその点をお伺いしたい。
  55. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 当面の金融政策ですか、当面の金融政策は先ほども申上げました通り、別に変るところはありません。金融状態も変るところがない。だから今までお話したようなところから御推察が願えると思うのですが、今合理化、いわゆる企業の合理化、広い意味合理化ですね、例えば電源の開発……。
  56. 小林政夫

    ○小林政夫君 いや政策というよりは、日銀券は収縮をして、日銀の貸出も減つておる、而も市場では金融の……。
  57. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) まあ日本銀行の状況は大体経済活動に順応しておる。私としては毎日出る日本銀行券が最も適当と考える。悪るければ直すのですけれども、一番適当と私は思つております。これは併しいろいろと意見はありましようけれども、適当でないという人もある。私としては適当と堅く信じておる。
  58. 小林政夫

    ○小林政夫君 いや日銀の銀行券が減り、貸出も減つておるにもかかわらず、一般的には資金は足らないという声が大きいのですね。
  59. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それはそうじやありません。それは又実情と非常に違います。資金が足りないということですが、金融機関には手持がある、言い換えれは物の動きがない、従つて商売が停頓をする、そうすると金は借りることがないということで、比較的今の実情は資金の問題である、それは特殊なものはありますが、非常に経常が困難に陥つているというような人、これは別個です。そうして今日の経済の状況、国際的なことからもそれは来ておる。全体の物の動きが停頓しているということにある。例えば銀行資金が多いから日本銀行の貸出が減る。若しも銀行資金がないなら日本銀行の貸出が殖える、前のように借りに来なければ。併し経済活動が渋つておる、借りる人もない、同時に預金が殖える。物が安くなる傾向をとりつつあるから、買う人は自粛して個へとしても控える、もう少し安くなつてからというので……。そうすると銀行預金が大分殖える、こういう形です。こういうふうに非常にいろいろ条件が錯綜はしておりますけれども、今の状況はそういう状況です。
  60. 小林政夫

    ○小林政夫君 まあそれで大体……。まだ長期金融の問題が……。
  61. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 長期金融機関は、これは今度の法律が国会を通過すれば興銀さんは長期金融でやつておるし、勧銀さんは昔から商業銀行でないので、そうした場合に今開発銀行輸出銀行もありますが、更に新しい一つ長期金融機関を必要とするや否やという問題は起りましよう、起つてもこれは興銀のようなものを作る。
  62. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 総裁には大分時間が経過して相済みませんが、皆さんがまだ聞きたいということがたくさんあるらしいのです。もう一度来て頂きたいという声もあるので、これは又お気毒ですが……。
  63. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 今日で一つ御勘弁下さい。
  64. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) そうしますと、あと十分くらいで一つ、無理を申上げるようですけれども、切り上げたいと思いますからそのつもりで……。じやあお願いいたします。
  65. 小林政夫

    ○小林政夫君 為替金融です。
  66. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) これはやはり私の考えでは、今度政府のお考えになつている行き方がこれは為替の正道に還ることで、正道に還ることは結構なことだと思つております。
  67. 木内四郎

    ○木内四郎君 ちよつと簡単に伺いますが、さつきのお話で税負担が非常に重くて、貯蓄を阻害していることがあるということに関連して、この敗戦国の今日この再建をするのは今の者だけの負担でやらなくてもいいじやないかというような御意見がありましたのは、言葉を換えれば、或る意味から言えば、何ですか公債支弁によつて国民の貯蓄ができればそれを吸収して、今日公債支弁によつて政府支出のほうを賄つてもいいという御意見ですか。
  68. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) まあその貯蓄できた場合に、例えばものにもよりましようけれども、公債支弁によることがいいかどうか、それは言わんほうがいいかも知れませんが、そういうことも考える余地は起るじやないかということです。
  69. 小林政夫

    ○小林政夫君 その考えです。先ほどの現在の当面の金融情勢の分析ですがね。それの今お話なつ総裁考えからそういう考えが生まれるのじやないかと思つて聞いて見たのですが。
  70. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 当面のですか。
  71. 小林政夫

    ○小林政夫君 当面の日銀券は収縮し、貸出は減つている、いわゆるまあそういう状態で資本蓄積が……。
  72. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) まあ併しこれは結局先ほど言いましたように端境期で、今後十月以降になつて来ると今御審議、御通過になつたあの八千億ですか、あのうち講和の費用は二千億というようなものが十月頃から実際具体的に市場に出廻つて来る。又賠償も出て来たり、デイフエンスという問題もありましよう。なかなかそんなに、今ちようど端境期で、米が値段がちよつと上つたからと言つて、それで又ちよつと米が不自由だからといつて、年中そうであるように思われてもまずいんですよ。なかなかそういうふうに焦らずに、十月頃になつて、或いは来年になつて、もう少し考えて見直すということですね。
  73. 小林政夫

    ○小林政夫君 それだつたら、将来の国民に負担させる方法もあるということは、当面直接のタツクスで取るよりは、別の方法考えられるということは、一般的な方法としての話ですか。
  74. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それはまあ国民の蓄積状況と、これは大きな問題がある。国民の心構えとか、或いは又社会情勢の安定が期せられるかどうか。まあ大きな問題を考えんと、小手先でいろいろ考えると失敗します。そういうことはイージーに実現ができると思つてもまずいのです。が併し、ほかの条件が整えば、そういうことも考える余地が起りはせんか。仮に貯蓄もせんでおいて、税を負けろ負けろというようなことは、これは問題にならん。貯蓄をすれば、税を負けろ負けろという人があれば、貯蓄をすれば考える途が開けるということだけは言い得るという問題で、そういう問題は簡単に直ぐそういうものに飛び付くというような行き方は、今なかなかいけませんな。
  75. 木内四郎

    ○木内四郎君 ちよつと関連しているのですけれども、さつきのお話で税金が重いから貯蓄は殖えない。確かにそうだと思うのですが、そうすれば或る程度公債支弁によつて、そういうものに対して多少税の負担を軽くするというようなことをすることにしたならば……。
  76. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) これはどうも僕は大蔵大臣でないから、余り金融とちよつと……、それは又公債が発行されたのちにどういうふうに消化させて行くかと相談が持ち込まれるならば相談に乗りますけれども、公債を発行するかしないか、これは大蔵大臣の問題で、これは御免蒙りたい。
  77. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 まあ総裁国際情勢によつて大きく影響されるという、これはもう止むを得ないことだと思うのですが。そこで今総裁お話によりますと、アメリカ軍拡、それに伴う日米経済協力ということについて大分大きく感ぜざるを得ないと思うのですが、そうした場合にこれが朝鮮のあの休戦会談なんかで、これの動きの如何によつては大分これは又より以上変つて来るだろうと思うのですが、従つてそういうように対処するような、まあ角度を拡げたような、或いは重点々々というような質的統制で、この方面が儲かりそうだと言つて設備近代化し、どんどんそれをやつておいたところが、今度はあべこべにそういう面が遊休施設になるような嫌いがあるというようなことはないのですか。その点まあ一つお伺いしたいと思うのです。従つて余り重点々々で質的統制が強過ぎることもどうかというふうに私は考えるのですが、この点を第一点にお伺いしたいと思う。まだ余計聞きたいことがあるのですが、その次に金融機関が、これはまあ具体的なことは抜きにしまして、金融機関が企業をどちらかというと支配するというような、今の一般の輿論がそうなつて来て、総裁は法王だというふうに言われるのですから、一つの輿論が示していることはあると思うのですが、本当は金融というものは企業に従属するものじやないかというような、私はまあそのほうがいいじやないかと思うのですけれども金融の操作によつては相当企業が収縮せざるを得ないような状態になつて来るのです。これは平常ならば私たち今後これは永続きさせるほうに持つてつたほうがいいというふうに思うが、どうお考えになつているか、特にこれは総裁金融の総元締と言つても差支えないのですが、やはりノーマルな状態に一日も早く還して、むしろ銀行のほうから企業のほうへ、健全な企業のほうへは設備改善の融資をしてやろうというように出て来るくらいな、一時は借りてくれと言つて相当来たときもあるのですが、今じや預金をしてもらうために行くときには、預金のときには非常に金融機関がサービスするのですが、貸出しということになつて来るとえらい高飛車になつて来る。これは極端な例を申上げますと、僕らも労働組合におりまして、かなりな資金を持つていたために預けてくれというようなときには、猛烈な競争があつて、それを利用して貸出を受けるときには極めて顔が利くのでありますが、そうでない場合にはもう高飛車になる。これは一般に伝えられているところ、又風潮として一時は社用族というようなものが横行したわけなんです。どうも社用族の横行もその対象は銀行貸付係がその対象になつているということなんです。公然の祕密として言われておつたのです。こういうところに乱費するというようなところになつて来たのでは、折角の資本蓄積もおもしろくない。積極的に金融が企業を支配するような思想があるような気がしてならないのでありますが、これは正常な状態ではないが、この点総裁はどういうふうにリードして行かれるかという点……。
  78. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 設備資金、こういうものに重点的になつて行くということを御心配になつているが、これは無駄ができんような、ためになるような、何でも彼でもやるのじやないんで、日本の今後の正常な貿易が振展するようにというような意味合のものについて、或いは又今後の国際増勢並びにマーケットの状態からそう伸びるということはない、こういうものは差控える。そうして日本産業構造としては若干ずつ機械、重化学工業の方向に持つて行くような設備の改善を図つて行く、こういうふうにやつて行くので、今後日本経済として、国際情勢下においてあるべき姿になるようにというふうな設備の改善を図つて行くのです。出来上つたときには非常にいいもので無駄がない。何でもかんでも重点重点というふうにやるわけのものではない。例えば電力なんかでも国民が皆安い電力を使えるように、これは実際あとで無駄がない。それからこれは難と卵がどつちが先かという問題になるんで、意見になるかもしれませんが、私はまあ金融が企業に従属するというにしても、なかなかこれは日本の今日では無条件では行かない。これはそう簡単には行かない。どつちも従属関係はない。それぞれの立場で行けばよろしい。一方が一方に従属するということはない。ただ今日金融面が強く出ておるのは、先ほど申しましたように企業が力がない。仮に個人の場合を考えて御覧なさい。自分が金をお持ちになつて、飯を食うことも子供を学校にやることも、病院に行くことも、人の世話にならずに自分の力でやつて行けば、それは強い。併し飯を食うことも、子供が学校に行くということも、皆金を借りてやるとすれば、これはどうしても貸してくれんといえば餓え死にですよ、仕方がありません。ですからそれは企業の自己資金が殖えるような政策をとつて行く。そういうように自己資金を殖やすように持つて行く。だから昔の企業を見れば、昔の紡績は財源問題で銀行からびた一文借りておりません。皆預金々々で微動もしません。併し今のようにすべてを借入金に仰がなければならないような状態にある場合に、別に金融機関が威張つているわけではない、金融機関は奉仕です。これは十分な金ではない。預金という形で国民が皆で汗水たらして働いて、而も高い税金を払つて、そして節約してくれて、預けてくれた金であるので、これは国民資金です。国家資金です。これを資本化するのが金融機関の任務です。これは社会的に奉仕しなければならん。それはその気持でおります。ただ併しやはりそれだけの気持で皆でそう行くと望ましいのですけれども、なかなかうまく行かん。人間の不完全、弱さというもののため、又いろいろと皆さんの御指導、お叱りを受けることも起つて来る。非常になげかわしいのですけれども、そういう人が幾人でもあればお詑びをする。まあ実情としてなかなか皆神様というわけに行かんものですから……。
  79. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それに関連して、そういう場合に法的にこれは先ほど総裁も言われたように、銀行自分の金でないのですから、まあ仮に一銀行に国民が皆でその銀行に攻撃を加えようということになれば、一つの銀行に……、併しそんなことはやりつこないが、併しそういう状態だから、これは公共機関だという誇りは私は持たなければならん。サービスをしなければならないと思うのですが、それが人間の弱点で、ややもするとどうも強くなつたときには、例えば物資の不足のときには、物資の統制をやつている官僚は威張り出す。ところが金がなくなつて、金だ金だということになれば、金融機関が威張り出すということを抑えるには、或る程度これを調整しなければならない。それを法的に調整、法律を以て調整をやるという方法が好ましいことであるかどうかこの点。
  80. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 行かんでしよう。そういうところまで行かれればやはり今日の問題、例えば仮に悪いやつがいるからといつて取締まろうとすれば、あなた達は弾圧はいかんと言われる。(笑声)それと同じこつちやないですか。
  81. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ではその程度で終ります。  日銀総裁はお忙しい処を長時間に亘りまして金融現状及び将来の金融について御識見をお述べ頂きまして、今後の委員会の運営のために非常に参考になりました。この点どうも有難うございました。  それでは午前の委員会はこれを以て休憩いたします。    午後零時三十四分休憩    —————・—————    午後二時十二分開会
  82. 大矢半次郎

    ○理事(大矢半次郎君) 午前に引続きまして、会議を開きます。  国有財産法第十三条の規定に基き、国会議決を求めるの件、右につき質疑を続行いたします。  厚生省から国立公園部管理課長が見えております。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この法案に関連してちよつとお尋ねしたいと思いますが、御承知のように、この前メーデーのときに皇居広場使用について総評が提訴しまして、東京地方裁判所ですか、あそこで皇居広場使用について厚生省がこれを禁止することは妥当でない、こういうまあ判決が下つたわけですが、これに対して厚生省側としてはどういうお考えなんですか。今後のこともあるので、あの判決に対してどういうお考えなんですか、その点一つ。
  84. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) 判決がありました日に控訴いたしまして、依然使用させないということで目下高等裁判所に控訴中でございます。    〔理事大矢半次郎君退席、委員長着席〕
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 依然としてまあ使用を禁止する、メーデー祭については。そういう方針に変りないというのですね。そうなんですか。
  86. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) ……。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 言葉で言つて下さい。速記録に残らない。
  88. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) 依然として変りございません。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ああそうですか。先ほど公共福祉用財産というものはどういうものか、その意味について伺つたんですが、ただ警察官があそこで訓練したり何かする場合、それがまあ今度公衆の通行を止めたり、或いは公衆があそこで何かまあ散歩するような場合、それを妨げたり、そういうようなことがある場合は、これはどうなんですか、厚生省としてはその趣旨に副わないと考えられませんのですか。
  90. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) 一般の利用を妨げるような場合は許可しないことにいたしております。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あそこの消防の出初式とか、それからしよつちゆう訓練をやつていますね、警察官の訓練、ああいうことは公共福祉に合致するのですか、あそこでやるということは。それだけ一般の人の利用が制限されると思うのですが。
  92. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) 消防の出初式の場合も、私ども管理の方針として小区域に限つて結局一部分だけ、而も短時間、時間を制限いたしまして、前後消防の出初式の場合一時間半と記憶しておりますが、その間だけを結局許しております。警察の場合も同様で、皇居前の沿路の一部だけを短時間ということで許可しております。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは今裁判になつておりますから、後は議論になりますから、これ以上質問してもお答えしにくいと思いますから、止めますが、ただ労働祭というのは、メーデーなどは、もう国際的な祝典であつて、これに対して使用を許可しないというのは、私はもう非常識極まる。そういうことが、それが全部じやなかつたでしようが、メーデーにおける実はああいう惨事を起した一つの有力なる原因になつておると思うのであります。こういう点について、厚生省の非常に国際的な知識水準の低さから来る制限について、我々は別の機会に又批判もし、質問もしなければならんと思います。この点についてはその程度にいたしまして、実はですね、千代田グランドを今度は普通財産から公共福祉用財産にこれを切替える件について、千代田区会議長等から陳情が参つておるので、私たちこの実情、現地に行つていろいろ調べたわけでありませんから、この陳情はこの通りであるかどうかわかりませんが、一応陳情を見ますとですね、これまで千代田区があそこの敷地を借りて、そうして非常に公共福祉に貢献しておる、秋季運動会とか、或いはいろいろなレクリエーシヨンの場所として区民ばかりでなく、一般都民に対しても広く利用されておる。そこで若しこれがですね、公共福祉用財産に編入された場合、現状変更があつて、取上げられて或いは又すぐそこに官庁の敷地ができるとか、そういうことを非常に心配されて陳情が来ておる。従つて灸共福祉財産に編入した後において、そういう危惧がないかどうか、厚生省は運用についてどう考えるか、この点お伺いしておきたい。
  94. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) 公共福祉用財産になつて厚生省所管に移つた以後の運営でございますが、これは現在グランドとして非常に利用者が多いので、地元の要望などを考えて、各方面の権威者からなる委員会のようなものに相談して、如何ように運営するかを決定したいと思いますが、現在のところまだ予算もきまつておりませんので、早急にあれを造園化するというようなことまでは行つておりません。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、予算がきまれば造園化するわけですか。
  96. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) これは現在千代田グランドの敷地以外の皇居外苑については、前に旧皇室苑地運営審議会の答申がありましてその線に沿うて今は維持管理しておるのでございます。その方針と大体合致したところで維持管理するということであれば、今のグランドをだんだん昔の姿に返えすと申しますか、和田倉門を復旧したり、橋を直したり、或いは苑地に副うような施設を設けることになろうかと思います。この点千代田区の要望等もありますので、その際十分検討して見たいと思いますが、今まだはつきりした、どうなるということは決定いたしておりません。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、千代田区長のほうの大蔵委員殿と来ておるのですが、大蔵委員にこの陳情書が来ておるのですが、こういう要望なんですね、大体三つですけれども、これは公共福祉用財産に編入されても公共福祉の精神にかなう施設として、従来通りこの運動場を存置してもらいたいということが一つ。第二は、この管理です、管理は引続き地元公共団体たる千代田区に委任されたい。それから若しそれが困難な場合には現在通り普通財産として貸してもらいたい、こういう三つの要望なんですが、今の御答弁を聞きますと、この要望はどうも容れられないような御答弁なんですが、そう解釈してよろしいのですか。結局厚生省の方針と合致した場合であつて、一応方針は今お話を聞くときまつておるようですね。和田倉門を中心にしてだんだん造園化して行く。そうすると、結局これは取払われるのじやないですか。現在すぐじやなくても、将来はそういうことになるのじやないですか。
  98. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) 最初の公共福祉用財産なつた場合も千代田区に維持管理させるかということでございますが、これはやはり厚生省の責任において皇居外苑区一帯として維持管理して行くということになると思います。なおあの外苑の特徴から言つて、今差当つてはわかりませんが、将来はやはり造園化されると、かように考えております。
  99. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 これはもう一点だけお尋ねしておきますが、その場合に今後起り得る問題だと思うのですが、行政協定に基く施設並びに区域というのに、あれは大体今の宮城前広場というのは全然向うから要求もなし、今後これには入る見込はないかどうか、これが一つと、仮に臨時にそういう要求があつた場合には、どういう規定処置するか、この二点だけ……。
  100. 木村三男

    説明員木村三男君) 行政協定に基いて駐留軍のために提供する施設というものは、合同委員会のほうできめるということになつておりまして、向うの希望、それからこちらの意見というものが検討される機会があるのであります。そこで目下のところどうなつておるかと申しますと、まだ全国的にきまつておりませんし、いろいろ情報などによりましても、目下のところ皇居外苑を使用させるというような計画はないように思つております。この点一つ……。それから合同委員会のほうにおきまして、やはり関係各省のいろいろな行政上の問題でもありますので、十分に意見を申述べる機会はございます。
  101. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで、あすこは何かそういうふうには使用させたくないという方針ですか。その施設、区域に指定をさせたくないという方針か。要求があればやつてもいいという方針かどうか、それをお聞きしたい。
  102. 木村三男

    説明員木村三男君) 直接今回の所管替えという問題が、その問題と繋がる問題じやございません。それから又別個の問題なんでありますが、私ども考えとしましては、やはり余つておるような建物でありましたならば、或いは又普通財産としてどこへでも処分できるような財産でありましたならば、なかなか抵抗がしにくいけれども、こういうふうに特別に公共の用に供する財産として、一般国民が自由に使用しているという所でありますから、向うからの要求に対しても、あと廻しにしてもらいたい、できればやめてもらいたいというような足がかりを作る方針になるかと思います。
  103. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 一点伺いたいのですが、今でも使用料は財務局が取つておるらしいのですけれども厚生省所管が移つても、あのままならば使用料は取つて行くということになるのですか。
  104. 木村三男

    説明員木村三男君) 国有財産管理処分の原則として特別な法令の規定がないというと無償ということができませんので、それに相当する対価というような意味で頂いたのであります。そこで厚生省所管替えになりましても、やはり国有財産を使うという意味におきましては、有償原則が適用される。併しこれはおのずから普通財産の場合と違いますから、地元としていろいろ厚生省事業に対して協力的な意味において、或いは下請けをするような意味におきましてやります関係になりますというと、やはり使用料のきめ方などにつきましても、おのずから変つて来るというふうに考えます。
  105. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 それから先ほど話の、あれをどういうふうに使うというようなことで委員会を設けてあると言いますが、その委員会構成はどういうふうなメンバーですか。
  106. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) まだ具体的にこの名前はきまつておりませんが、造園家、或いは一般学識経験者、それからその他の権威者も大体予定しております。人はまだきまつておりません。
  107. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 何人くらい……。
  108. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) 人数も考えておりません。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと伺いますが、さつきの駐留軍に安全保障条約に基いてね、行政協定に基いて国有財産を無償で使用させる、駐留軍には無償で使用させるのですね、あれは普通財産じやないのですか。
  110. 木村三男

    説明員木村三男君) 普通財産が原則でありますが、特に場合によつてはまだ普通財産に組替えてないようなものもありますが、それは極めて例外かと思いますが、そういう問題が起りますと、普通財産のほうに組替えまして、法律の規定によりまして無償で使用させるということになります。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 駐留軍には無償で貸して、それでこういう公共福祉に非常に貢献するこういう千代田グランド、これは七十八万円ですか、これを取る。こういうのはまあ行政協定があるからそれは止むを得ないかも知らんけれども、随分どうも我々割切れないのですが、そういう措置は国内ではできないのですか。
  112. 木村三男

    説明員木村三男君) 財政法の第九条で規定がございまして、国の財産は適当な対価がなければ使用させたり或いは処分をしたりすることはできない、こう書いてありますが、国有財産法の中にも或いは旧軍用財産貸付又は譲渡の特例に関する法律などがございまして、無償で貸し得る場合が個別個別にきまるわけです。それに該当しないものは有償原則によるわけであります。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、それは特別な何か規定を設ければいいわけですね。
  114. 木村三男

    説明員木村三男君) 特別な規定ができれば勿論無償ということになるわけです。なお申上げますと、千代田グランドの場合は区のほうでも使用料を徴収いたしております。それでこれが果してペイするがどうかこれはわかりませんが、そういうふうに経済的に動かしておるということもお考え願いたいと思います。
  115. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 ついでに伺つておきますが、皇居前の広場に昼休みなどに会社員なんかがバレーボールをしたり運動したりやつていたというようなこと、最近あれは禁止したのですか。
  116. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) ボール投げその他の球戯は禁止いたしております。
  117. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 禁止した……、それはあの辺は御承知のように官庁官衙街で、昼休みくらい多少運動でもする場所があるのが適当かと我々は思つているのですが、なぜあれを禁止しなくちやならないのですか。
  118. 甲賀春一

    説明員(甲賀春一君) やはり皇居外苑は利用者を見ますと、全国的な利用者が非常に多いのでございまして、遠く海外からの観光客その他を含めて相当な人が見えます。その際野球をやつておりますと非常に危険な場合がございます。それから戦時中相当荒れておるましたが、だんだん芝を植え替えまして、現在もなおその手入れを継続中でございます。芝の張つている区域に入るようなことになつては維持管理上思わしくないと考えましてとめてございます。
  119. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようですが、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べ願います。
  121. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私は原則として千代田グランド公共福祉用財産に編入することには賛成でありまして、ああいうふうにのけて置いたら払下げをしなければならん。あの一角をほかの用に払下げをすることになると大変だと思いますので、速かに公共財産に編入して置いて、払下げその他が起きんようにするということは誠に賛成であります。ところが先ほどから木村君がこの公共財産の運用問題について厚生省当局に質疑をしておられましたが、将来いわゆる毎年五月一日になると、一回ずつある問題でありますが、こういう際くらいには公共財産を一日くらい閉鎖して、たくさんの人のために、二十万も集まるのですから、この人たちのために提供するというような雅量を持つて、そのために芝生が荒されるというようなことは単なる口実だと思いますので、あれは明らかに政治的な意図を含んだ使用拒否だと思いますので、今後のその公共福祉財産の運用につきましてはいろいろ意見がございますが、これはその問題とは切離して、速かにああいう一角をほかの政治的な意図であそこを財閥なんかのビルデイング用に払下げるということになつては大変だと思いますので、編人するという行き方については賛成しますので、本法案に賛成するものであります。
  122. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私も本案には賛成いたしますが、現在まであの辺は官衙官庁街の密集地帯で運動場もないというような状態にあるにもかかわらず、千代田グランドあたりは非常に有効に活用されております。それが今回公共福祉用財産というふうに変つたために、今までと利用状態が変更されることになるということは余り好ましくないと思いますので、そういう点に十分留意されまして、厚生省においても今までの都民に愛されるグランドということも十分念頭に入れまして、管理されんことを希望して賛成いたします。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの法案反対いたします。と申しますのは、現在実質的には公共福祉用として非常に利用されて、非常に多くの人がこれによつてレクリエーシヨンなり運動なりをやる場合に貢献しているのです。それにもかかわらず今度は公共福祉用財産普通財産が編入されると、それは今の厚生省の御答弁でもこれは行く行くはこれが変更になるというお話です。現状を尊重してそういうふうに利用させるという言明がないのですから、私はこの法案反対いたします。
  124. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようですが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決をいたします。国有財産法第十三条の規定に基き、国会議決を求めるの件を原案通り異議ないものと決議することに賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  126. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 多数であります。よつて本案は原案通り異議ないものと決議することに決定いたしました。  なお、諸般の手続は前例により委員長に御一任願います。  それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名    大矢半次郎   菊川 孝夫    木内 四郎   岡崎 真一    黒田 英雄   溝淵 春次    小林 政夫   小宮山常吉    森 八三一  大野 幸一    下條 恭兵   油井賢太郎    菊田 七平
  127. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に国民金融公庫法の一部を改正する法律案について質疑を継続いたします。
  128. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 先ず公庫の総裁に一つお伺いするのでありますが、これは政府提案になつておるわけで、当然総裁のほうにも協議をされたと思いますが、役員並びに職員の大多数がこういうふうな改正には賛成しておるものかどうか、その点、賛成と申しますか、こういうものの改正を希望し、或いは賛成意見というか、総裁として特にこういう改正がいいというふうにお考えかどうか。今まで公務員としてやつて来た、それを今回改正することになつたのですが、その理由はここに載つておりますが、先ず総裁として賛成であるかどうか。これのほうがいいかどうか。こういう点と、職員全般としてどういう意向であるかということは大体総裁意見を聞いておられると思いますので、この点をお伺いいたします。
  129. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) お尋ねの点につきましてお答え申上げます。今回の改正案につきましては、私のみならず、役職員全部がかねてから待望いたしておつたわけでございまして、今まで何回となく各方面にお願いした問題でもございまして、今回漸くその運びになりつつあることを私ども職員全部が喜んでおるような次第でございます。
  130. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次いで政府説明員のかたにお伺いしますが、附則の第四項で、恩給法の一部改正によつて国民金融公庫」というのを削ることになります。従いましてこの恩給法の適用を今日まで受けておる職員のうちには、すでに受給資格に、いわゆる受給年限に達しておる者もあると思うのでありますが、というのは継続して大蔵省に勤めておつて金融公庫に入つてつた従つて年金の受給資格に達しておる人もありますし、又一時恩給をもらうことになつておると思いますが、この際年金を受ける者についてはこれで打切つて恩給の年金を附けるようにする。それから年金の年限に達していない者には一時恩給で以て打切つてしまう、こういう方針をおとりになるのですか、どうですか、この点を……。
  131. 有吉正

    説明員(有吉正君) 只今の御質問の附則の第四項におきまして、恩給法の一部を改正するという点につきまして御説明いたしますと、恩給法の第二十条におきまして、恩給法の適用を受けますところの文官の定義を掲げておる次第であります。その第二項第七号におきまして、国民金融公庫の役員及び職員につきましては、別に法律を以て定める場合におきまして初めて恩給法が適用されるということに相成つておるわけでございます。現在のところ別に法律を以て公庫の役職員に恩給法を適用するということをきめてございませんので、現在公庫の職員につきましては、恩給法の適用がございません。従いまして今回の改正におきましては、恩給法中におきまして、従来公務員であつたということからかように文官の中におきまして別に法律を以て恩給の途を開くということを講じて参つたわけでございますが、今回この法律案におきましては、国民金融公庫の役職員を公務員の枠からはずということに相成りますと、この恩給法の中におきますところの適用の問題ということが初めから問題にならなくなるということにおきまして、恩給法の一部を改正した、かような次第でございます。
  132. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に労働組合法の適用についてでありますが、今日までは国家公務員法の国家公務員とするということになつておるので、労働組合を結成することはできなかつた従つて団体交渉権その他もないわけです。ところが本法の適用によりまして当然労働組合法は適用されるものである、こういうふうに解釈してよろしうございますか。ただこの附則五項でちよつと公務員法の一部だけが適用されることになつておりますが、併しこれはただ秘密漏洩の問題だけでありますから、当然労働組合法の適用については問題ないと思いますが……。
  133. 有吉正

    説明員(有吉正君) 御意見通りでございます。
  134. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その際に一つ問題になるのは、この総裁の団体交渉の当事者となる資格要件ということになるわけでありますが、これは非常にデリケートになつて来ると思うのですが、総裁か単独の権限で以て、殆んどもう大蔵大臣その他の制約を受けることなしに今後は団体交渉の当事者になり得るかどうか、その点を一つ。
  135. 有吉正

    説明員(有吉正君) 国民金融公庫につきましては、法律上大蔵大臣の監督ということに相成つております。その監督の態様と申しますものは、具体的に定まつて参ると考えるわけであります。現在のところ業務上におきますところの監督ということを主体として考えるわけでございます。内部の身分関係等につきましては、総裁の権限の問題だと、かように考えるわけであります。
  136. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 第三番目にお尋ねしたいのはこの附則第五項ですが、この法律を折角改正する際でありますから、わざわざこの公務員法の第百条第一項及び第百九条第十二号の規定を適用する、これはいわゆる秘密についての条項だと思うのでありますが、従つてこういうのはこの国民金融公庫法の中にわざわざ公務員法を適応するのだというようなふうにしなくとも、このまま条文を別途新たに設けてもいいと思うのですが、これはわざわざ複雑にするようで、こんな公務員法のこの条項だけわざわざ適応するとしなくとも、これは国民金融公庫法の中で職員はこういうことは守らなければならないということを私は法律できめることはないと思いますが、この点を一つ。法律の形式上の問題ですが、なぜこういうふうにされたのか。
  137. 有吉正

    説明員(有吉正君) 只今の御質問でございますが、附則第五項に掲げております祕密厳守の義務と申しますのは、経過規定でございまして、この法律の施行前に、公庫の役職員は職務上知ることのできた秘密厳守の義務というものは、経過的に第百条・第一項及び第百九条第十二号の規定を適用するということにいたしたわけでございます。
  138. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、これはまあ経過規定ということでわかりました。その後の問題はどこかに適用条文があるのですか、その後の秘密は漏洩してもいいということになるわけですか、その点について……。
  139. 有吉正

    説明員(有吉正君) その後の問題につきましては、規定してあるところはございません。
  140. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、今までは秘密を前のもので知つてつても漏洩してはいかん。ところがいよいよこの法律が適用になつて、翌日から自由にやれるというのは、余りちよつとこれはえらい屁理屈を言うわけではないけれども、わざわざ附則五項の規定を設けるという趣旨は立法上から言つておかしくなつて来るのじやないか、公庫の職員は国家公務員法の枠をはずすのであるけれども、秘密保持については特にこれは零細な需要者と言いますか、そういう人たちからあるのであつて、秘密漏洩ということは私は大事だと思います。信用の問題にもかかわるので、これは前に知つたのは勿論ですけれども、あとから知つたものはいいというあなたの答弁はおかしいと思いますが、どうですかこれは。
  141. 有吉正

    説明員(有吉正君) 今日までこの現在の法律におきましては、国民金融公庫の職員が公務員としての待遇を与えられておつた。従いまして国家公務員法の適用がそのままあつたわけであります。国家公務員法の規定の精神から申しますと、公務員といたしましては、特に秘密の厳重な保持ということが強く課せられておつた。従いまして秘密漏洩につきましては罰則を以てこれを制するということにいたしてあつたわけでございまして、国民金融公庫の役職員が公務員である以上、かような厳重な秘密漏洩をしてはならないという禁止規定を受けるのは当然でございます。この結果に基いた罰則の規定も併せて適用せられる、かように相成つておるわけでございます。国民金融公庫の役職員が国家公務員の当時より知り得た秘密というものは、公務員法の適用がなくなつた後におきましても、やはり公務員として知り得た秘密でございますので、そのまま禁止規定と罰則を置いた、かようなことでございまして、お話のように公務員の枠を外されましても、秘密漏洩をしないという義務ということは、これはなお道義的に、又内部の問題といたしまして当然あとに残つて来る問題でございますが、公務員法との関連におきましては、それが関係がなくなつて来るということに相成るわけでございます。
  142. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 一応理窟はわかりました。やはり法律的にあなたの言われるのは正しいと思います。そこでこれは総裁にお伺いするのでありますが、やはり秘密漏洩ということは、国民金融公庫性質上私は必要だと思いますか、将来職員の服務規程とか、或いは労働協約等によつてそういうものを設けられるときに、その後に知り得た秘密を漏洩してはいかんということを規定されるのかどうか、一つその点を伺いたいと思います。
  143. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) おつしやる通りでありまして、服務規程なり内部の規則におきまして、私ども国家公務員でなくなりました暁におきましても、そのときに職務上知り得ました秘密等につきましては、これを漏洩しないというふうに厳重にやつて行きたいと、かように存じております。
  144. 小林政夫

    ○小林政夫君 今の菊川十委員の御質問に対しては、今度第十七条の改正規定で「刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。」ということで十分やれるんじやないですか。
  145. 有吉正

    説明員(有吉正君) 只今の御質問でございますが、公務員法からの適用を外されましても、刑法その他の罰則の適用、つまり収賄罪等に主要な罰則につきまして、公務に従事する職員とみなされまして、これが適用があるわけであります。公務員としての秘密保持の義務が刑法上に規定してある場合におきましては、当然国家公務員としてその適用を受けるわけでございます。
  146. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今の関連ですけれども、この「刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」、「刑法その他の罰則」と、こういうわけですけれども、これは一体どういうものを指しておられるのですか。
  147. 有吉正

    説明員(有吉正君) 主として刑法を指しております。
  148. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、主として収賄罪とか何の場合で、刑法の中に公務員が秘密漏洩してはならんというような罰則があるのですか。
  149. 有吉正

    説明員(有吉正君) ございません。若しもそういうことが規定されるとすれば、そのまま公務員として適用されるということを申上げただけに過ぎません。
  150. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 最後にもう一点、この附則の六項でありますが、「役員及び職員その他同公庫に使用される者に対する給与及び旅費並びにその者の職務上の災害に対する補償については、なお従前の例による。」と、私はこの点については、若干公務員として待遇を受けて、それぞれ公務員法の保護も受け、且つ又恩給法の適用も受けるというふうであつたならば、ベース改訂もやはり人事院の勧告によつてやらなければならんと思うのですが、公庫に使用されるようになつたときには、公庫の職員が皆一致しましてその成績を挙げるようにして、そうして成績が上つた場合には、先ほどもお尋ねいたしたところの労働組合法の適用は受けるということになるのでありますから、そうすれば当然給与問題、それから退職金の問題等の労働条件については、これは団体交渉をやると思うのでありますが、その場合この六項の附則があるということになると、それは総裁として赤字が出たりして、どうも工合が悪いときは応じられないであろうが、職員を激励して、そうして回収もよくする。そして資金の運用をうまくやつて成績を挙げたときには、当然賞与その他のことも考えなければならん。それからこの仕事は非常にまあちよつとデリケートと言いますか、地方の小さいところからも利用者はたくさんある、この間も国民金融公庫の利用状態を資料として頂きましても、非常に細かいのを集めたり、又はその信用調査に行つたりしなければならん。従つてそこで成績を挙げたような場合には、或る程度それに酬いるというようにして、どんどん成績を挙げるようにしなければならんと思うのですが、ここに使用される者に対する給与、旅費、その他は従前の例によるということになりますと、一体給与の改訂等も公務員、あの人事院の……、だからしてその前に生じた事由ということになりますと、今までのやつはそのまま適用される、従つてこの際にはもう私はこういう経過規定は必要じやないというふうに思うのですが、この点についてお伺いいたしたい。
  151. 有吉正

    説明員(有吉正君) 附則第六項は経過規定でございまして、「この法律施行前に生じた事由」というのは極く稀な、稀と言いますか、極く事例としては些細なものでございます。ただ念のために法律技術上ここに規定したに過ぎないのであります。本来この法律が施行になりました後におきますところの給与その他につきましては、予算の範囲内におきまして、内部規定その他心よつて職務内容に応じて、責任に応じたところの給与並びに旅費等の支給がなし得るものと、かように御了承願いたいと思います。
  152. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますると、新たに旅費規程だとか、或いは給与規程、或いは又労働組合を結成して、団体交渉をやるということによつて、新たな給与並びに旅費の支給方法が設けられるまでは、そういうことができるまでは従前の通りにやると、こういうことですが、今直ちに何らかの改正の用意をしておられるのか。これが通過したら用意して行かれるのか。この点について総裁にお聞きしたい。
  153. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) おつしやいます通りに、この法律が通りましたならば、新たなる給与体系、或いは給与規則でありますとか、旅費規則でありますとか、そういうものを内部で作りまして、組合とも相談をいたして決定をいたすわけでございます。それまでの間は暫定的に現在のまま、或いは何らかの暫定措置を講ぜざるを得ないと思います。全体としては予算上の制約がございますから、その範囲内におきまして、できるだけ早く新らしい給与規則なり旅費規則なりを作りたい、かように存じております。相当私どものほう、又職員側におきましても、用意は進めておるのでございますが、通りました即日にこれがでまるかどうかは疑問でございます。ただ選れまして旅費規則なり或いは給与規則なりができましても、その場合にはこの法律が通りました施行の日に遡つて実行できるようにいたしたいと、少くともそれだけのことはやりたいと存じております。
  154. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その点につきまして、大蔵省のほうにちよつとお伺いしますが、大蔵大臣の金融公庫に対する監督権が、そういつた給与、旅費規則の制定の場合に、やはり承認を求めるとか何とかいうのが出ておるのでございますか、その点について……。
  155. 有吉正

    説明員(有吉正君) この法律が施行になりました後におきましては、先ほど公庫の総裁から御答弁がございました通り、予算の枠というものに一応縛られますが、その範囲内におきまして、公庫のほうにおきまして給与規程というものを作るということに相成るわけでございます。給与規程そのものにつきましては、大蔵大臣の承認という形はございません。
  156. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますと、予算的な制約のみで、あとの運用は任される、こういうことになつておるわけですか。
  157. 有吉正

    説明員(有吉正君) その通りでございます。ただ一般的な監督はございます。
  158. 小林政夫

    ○小林政夫君 どうも先ほどの菊川君の質問に対する答弁ですが、刑法その他の罰則の適用という、刑法とその他の罰則の適用ということがあるのですから、刑法の場合においてはそういうことであるかも知れませんが、その他の罰則ということによつて公務に従事する職員として受ける罰則の適用、例えば公務員法百九条第十二号というようなものについての適用は受けるのじやないですか。
  159. 有吉正

    説明員(有吉正君) 刑法その他の罰則と申しましても、その他の罰則というところには現在のところその他の罰則というものはございません。刑法だけでございます。その後に、今後におきましてなおその他の罰則がございますと、その際直ちにこの規定が発動ずるというのでございまして、国家公務員法の口の罰則が直ちに刑法その他の罰則と同様であるということには相成らんと思います。
  160. 小林政夫

    ○小林政夫君 罰則は、例えば百九条だと一年以下の懲役又は三万円以下の罰金という罰則ですね。これは国家公務員に対する適用なんだけれども、そうすると、どうもこの今までのものは法制的措置から言つて常識的に考えては、これは念のために附則の第五項というものは今までのものについては十分取締るということであつて、今までのそういつた罪も罪にし得るということであつて、今後も当然そういうことも含まれるということでなくては意味をなさんと思うのですが、どうですか。
  161. 有吉正

    説明員(有吉正君) 今までのところ先ほど申しました通り国民金融公庫の役職員が国家公務員であるということでございますので、当然国家公務員法の適用を受ける、従いまして公務員法上に規定しておるところの秘密漏洩の禁止の義務を受けるということに相成るわけでございます。国家公務員としての適用がなくなつた後におきましては、当然国家公務員法の適用は受けませんし、その罰則の適用も受けない、一般の金融機関の役職員と同様に扱われるということに、その限りにおきましては扱われるというということになるわけでございます。あとは道義的な問題乃至は内部の規律の問題と、かように考えるわけでございます。
  162. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 お尋ねしたい点は、今度一般公務員の枠からはずされまして、国民金融公庫は結局予算による制約以外何もなくなるという場合、この国民金融公庫独立採算制をとることがあるかどうかということをお尋ねしたい。
  163. 有吉正

    説明員(有吉正君) 独立採算制という言葉にもいろいろありますが、現在の国民金融公庫におきましても、おつしやいます意味独立採算制ということになる規定はなかろうかと思います。別段公務員の枠を外されるということによつてその点は影響ないと思います。ただそれが予算的な関係で予算の枠を云々ということになりますと、なお国民金融公庫に注入される財政資金というものの枠、それを運用するところの問題ということはやはり財政上に影響いたしますので、その限りにおきましては財政上、予算上の制約というものが必要であろうと、かように考えるわけでございます。
  164. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私はこのことを申しますのは、この金庫の性格上どうしても採算が独立採算制をとるようなことになると、一般の金融機関と同じようなことになつて国民公庫本来の使命を失つてしまうわけです。この前公庫法の一部改正したときだつたと思いますが、油井委員から庶民金庫の時代の古い貸出の回収の問題についての質問があつて、当時総裁から、この古い借主も不明のような古い債券の取立に際しては特別な考慮を払つておるという御答弁があつたのであります。ところが我々地方へ行つて見ますと、今でもそれは強制的に取立てるとは言わないが、実際には町なり村なりで代理返済しないとあとの借出がうまく行かんでしようということで、甚だ意地の悪い督促の仕方をしておる。次を借りたければ代理返済をしろというので、代理返済をされておるという実状を聞いておるのであります。今後独立採算制の方法をとつて行きますと、だんだん面倒くさい貸出や零細なものは手数がかかると思いますので、私はそういう本来の使命を失うような営業方針がとられる虞れがあると、こういう考えからお尋ねしておるわけであります。総裁から一つ。
  165. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) 本法律に第一条以下に書いてありまする国民金融公庫の使命というものはよく存じておるつもりでございます。又これを全職員に徹底させまして、どこまでもお客様がたのよい相談相手としての使命を徹底的にこの上とも果して行きたい。ただ何と申しますか、力が足りないこともありまして、不行届きの点が往々あることは常々顧みまして恥しく思うのであります。今後ともそういうふうにやりたいと思うのであります。仮に独立採算制と認められるようなことがありましても、さような虞れは万ないというふうに私は確信して申上げてよろしいかと存じております。ただ過去の庶民金庫時代等の債券の取立、殊に引揚者関係の更生資金等につきましても、相当延滞があるわけでございますが、その点についてはこういうことはいたしております。何さま現在大変に資金の需要が旺盛でございます。でありまするから、できるだけ新規資金政府から頂戴いたしますほかに、何と申しますか、今まで貸付けましたものを、合理的に回収ができまして、それを更に新しく多数の人に運転させうすることができますれば、この上もないことでありますので、まあそういつた程度におきましても、お払いのできるかたにはお払して頂けるような措置を講じておりますが、一般の普通貸付のほうにつきましては、かねがね申上げます通り、大変に回収の状況がよろしいと申しますか、非常によく運転しております。更生資金については大分滞つておるものがありますが、それぞれの実状に応じて御相談をしながら頂戴いたしておる実状でございます。どうぞその辺よくお酌み取りを願いたいと思います。
  166. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私はさつき菊川君から質問がありましたように、今後待遇改善の要求なんかが出たとき、この通り赤字が出るからそのために待遇改善ができないということを総裁が言うようなことになるというと、結局あぶなつかしい成るかべく当てにならんところは貸せないというような現象が起きて来る虞れがあると思うから、私はこの際念のために速記録の上にはつきりしておきたいと思うのであります。  私はついでだから一点お尋ねいたしますが、先般この委員会を通しますときには、大体銀行局でも百十何億になるから、二七年度は相当の何ができるということを答弁しておられたのでありますが、我々は資金が非常に不足だと思うということで、補正予算を編成する際に公庫の出資を必ず殖やすということを条件にして賛成したわけであります。ところが今総裁からも非常に資金が不足だということを言われましたが、現在運転資金でも新規の取引はやらんと言つてつているという実情があるのであります。これはこの法案とは関係ないことでありますが、ついでだからお聞きするのでありますが、そういうことを聞いております。それでは新規の取引をやらんということになれば、国民金融公庫が零細金融をやるということを余く無視した普通金融機関と何らつ変つたところがないことになつてしまうのですが、そういう事情総裁は御存じないのかどうか、この際一つ伺いたいと思います。
  167. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) 新規の取引をいたさないということは私存じておりません。と申しますのは、私どもに参りまするお客さんの大部分が初めてのおかたであります。そのかたがたの御相談に応じまして申上げるのでありますから、殆んど大部分が新規の貸出なんでございますが、恐らくそれは更生資金関係でないかと思います。と申しますのは、一般の小口利用普通資金貸付でございませんで、更生資金、引揚者等を中心といたしまする貸付でございますが、この点につきましては本年度の予算におきまして、新規資金の交付がございません。政府から新らしい貸付を願うわけに行きませんでした。従いまして本年度約四億六千万余の予算を組んでおります。これは全部更生資金の回収金を以て賄うことになつております。ところが現在その回収金のほうは再貸付と申しますか、厚生省との間の業務方法書の関係におきまして、主として従来お取引を願つてつた更生資金をおり使い下つたかたがたが更に又使われるというような場合に、これを使うという方面に中心が行つておりますので、そういつたところから今のようなお話が出たのじやないかと思いますが、一般的には新規取引というのが原則でありますから、御了承願いたいと思います。
  168. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 これはこの法案に直接関係はないから、私あとお尋ねするのはやめておきますけれども、なかなか私どもこの前も私は金庫の窓口が足りないということを指摘しておきましたが、手不足であるということも指摘しておいたのであります。現実私の申上げましたのは、そう言つて断わられたということが新潟県にあつたから私今ここでついでに申上げておるわけです。どうか一つそういうことは今後総裁のここで御答弁される通りに末端が動くように、そしてこの前総裁からも、銀行局の当局からも御説明があつたように、速かにスムーズに運営ができるように一つ希望しておきます。
  169. 小林政夫

    ○小林政夫君 先ほどの何ですが、どうも私は納得ができないのであります。併しこの法案は今のままで通してもよろしうございますが、併し十七条の改正規定のような書き方はほかにも例があるのです。従つて我々の解釈は国家公務員は外すけれども、ということは給与であるとか、或いは旅費とが、その他人事院規則によるうるさい人事手続の問題等をフリーにして、民間人と同じようにやつて行こう、併し職務については公務員と寸毫も変りない罰則を以て臨む、こういう趣旨だと今まですべてのこれと同様の規定と了解しておつたわけであります。今の説明員説明だとそうでないということになりますので、これは適当の機会にこの見解をはつきりさしたいと思います。
  170. 大野幸一

    ○大野幸一君 関連して、こういうところを明らかにしておくのは、私は参議院の専門的立場から必要だろうと思うのです。私も小林委員の質問中発見したのでありますが、この改正法の十七条中「国家公務員とする。」と、この言葉は十七条の最後にある言葉であります。公庫の役員及び職員、職員の定義があるのでありまして、括弧を閉じてあります。で、職員は「国家公務員とする。」ところが国家公務員でなくなるのであるから、それで刑法その他の罰則規定の適用については公務員並みに取扱う、この整理をしただけで、本質はやはり小林委員の言われる通りにすべての刑法規定、罰則規定の上から見ると、国家公務員としての所遇をする、こういうふうに解釈してこそこの改正の意味があるのであります。そういうことでありますから、今の説明者はこの提案を本当にされるときの気持がそういうことであつたか、或いは他の人がこの法律案の作成に従事されたか知らんが、これをこういうふうに解釈してのみこれは意味がある。それをあいまいに解釈して行くということは私はできないと思う。特に我々法律家としてここに加わつている者として、今溝口委員等とも相談の結果、こういうふうな解釈しかない、どうですか。
  171. 有吉正

    説明員(有吉正君) 先ほどから申述べております通り、従来は第十七条におきまして「国家公務員とする。」とございますので、国家公務員法上国家公務員法は国家公務員に適用されるという解釈から、国家公務員法の罰則は国家公務員であるところの国民金融公庫の役職員に適用され、国家公務員法の適用が除外された後におきましては、刑法の罰則その他と申しますものは、現在のところございませんが、できました暁におきます場合に、直ちにその規定を発動させるために「刑法その他の罰則」と掲げまして、その適用につきましては「法令により公務に従事する職員とみなす。」としたわけであります。先ほど小林委員にお答えいたしました通り規定といたしまして、我我としては従来からかように解釈いたしておる次第であります。
  172. 小林政夫

    ○小林政夫君 どうも今の説明では納得しませんから、これは一つ説明員はそのほうの専門家ではないので、一応この見解を明らかにするために法制局その他においていずれ人選をして、はつきりこの解釈を一定したいと思います。
  173. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今回のこの改正で国家公務員を外されますが、退職手当のことについては触れてないのですが、退職手当もやはり国家公務員として今までは規定があつたはずです。それをどういうわけで今回この附則か何かにお入れにならなかつたのですかという点をお尋ねいたします。
  174. 有吉正

    説明員(有吉正君) 退職手当の点につきましては、国家公務員の退職手当の法律によつておるわけでございますので、この改正の法律案につきましても、その点につきまして触れてございません。従いまして、退職手当は従来通り国家公務員の退職手当の法律によることに相成るわけでございます。その点につきましては、なお今後の研究に待ちたいと、かように考えておりますが、現在のところ予算上の措置その他によりまして、従来通り取扱うということにしたわけでございます。
  175. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 これはやはり当然退職手当も普通一般並みと別にするのが当然のあり方だと思うのですが、総裁はどういうふうなお考えを持つておられるのですか。
  176. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) でき得ますれば、退職手当につきましても、輸出銀行、或いは開発銀行等と同じようにして頂きたいと希望いたしております。現在国家公務員等に対する退職手当の臨時措置に関する法律が毎年一年限りでだんだんと延長されて来ております。近い機会に全面的に御改正になるというお企てがあるように聞いておりますので、その節に何とかしてこれを省くようにして頂く、かように希望いたしておる次第であります。
  177. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 その点はわかりましたが、次にこの改正で以て、総裁のいわゆるお考えなり、力なりというものに又相当待つところがあると思うのです。その際やはり各地の国民金融公庫の状態を勘案いたしまして、人員の配置とか増員というようなものも十分検討されて然るべきだと思うのですが、そういうこともお考えになつておられるかどうか。
  178. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) 人員の適正配置につきましては、かねがね心をくだいておるのでございます。今後ともできる限り善処いたしたいと思つております。ただ予算上の制約がありまして、御承知のように昨年の今頃から比べますと、全国的に申込の件数が倍以上になつておりまする関係上、人手の増加がこれに伴いません。そこに悩みがございまして、誠に日夜苦慮いたしおるような状態でございます。御説のようにできる限り適正な配置をいたして行きたいと努力いたすつもりでおります。
  179. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 先ほどの小林委員の御質問の点は、私はこういうふうに解釈するのが本当ではなかろうかと思うのですが如何ですか。この第十七条の改正によつてこの改正法施行後の処罰はこれでできるが、そのままにしておくというと、この改正で施行前のものをどうするかという問題が残つておるので、それでこのあとの附則の規定を必要とする。改正前のもやはり改正せられたあとも、その前に知つた秘密を漏せばやはり罰せられる、そういうので両方とも必要だ、こういう、ふうに解釈するのが本当じやないですか。
  180. 有吉正

    説明員(有吉正君) 附則第五項にございますところの規定は法律施行前に聞き及んだところの秘密を漏してはならない、それを漏した場合におきましては、改正後におきましても罰則の適用がされる、かように解釈するわけでございます。第十七条の「刑法その他の罰則の適用」と申しますのは、収賄罪と刑法に規定してありますところの罰則の規定である、かように解釈いたしておる次第であります。
  181. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私はそうでなくて、やはり秘密を漏す罪も第十七条の今回の改正規定によつて処罰される、こういう解釈をすべきじやなかろうかと思う、そう解釈するのですが、如何ですか。
  182. 大野幸一

    ○大野幸一君 それはですね、この法律ばかりじやなくして、今同僚議員から注意されたのですが、独立した別の銀行法、十七条にあるのもそれと同じ意味でしよう。
  183. 有吉正

    説明員(有吉正君) その通りです。
  184. 大野幸一

    ○大野幸君 同じ趣旨つたら、少くとも罰則の適用については公務員と同じに取扱うという意味でしよう、どういう意味ですか。公務に従事する職員とみなすのですから、法律上規制されておるのですから、ほかの法律にあるのと同じじやないですか、ほかの銀行法にあるのと同じじやないですか、そうするとあなたの議論は出て来ないのです。
  185. 小林政夫

    ○小林政夫君 議事進行について。これは私も前に指摘したように、どうも大野委員から指摘されたように相当同じ規定が他の機関にあるわけです。そこで説明員と今やるとしても同じことになるので、一つ今日は先例に則つて一応これは通して、改めてこの問題について先ほど言つたように法制局その他参考となる人を呼んで、そのときには有吉君も出席さして十分検討をしたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 小林委員説明のように一つお願いします。
  187. 森八三一

    ○森八三一君 一点だけお伺いしたいと思うのですが、最近の一般庶民大衆、中小企業者は非常に金詰りで困つておるという実情はしばしば国会でも各委員から御発出苗があり、更にそういうことが国民金融公庫に対しまして非常に大きな期待を関係者が持つておるゆえんであり、それが具体的に金庫に資金の申込みが非常に多くなつておるという事実に現われておる、こう思うのでございます。そこでその希望に一歩でも二歩でも近寄つて行くということが好ましいと思います。ところが、これはしばしばおつしやいますように、資金量が如何にも少いので、心は焦つてつても実際の行動はそれに伴わんので非常に残念と思うというお話、非常にこれは御尤もと思います。そこで、好ましい姿としては、財政資金等、更に政府の出資が多くなりますことが一番好ましいと思うのでございますが、これも全体のやり繰りから考えまして、そんなことの考えがないといたしますれば、公庫自身が何とか資金を調達するという途を考えることも  一つの方法ではないかと思うのでございます。といつて、そのことが他の一般金融機関と業務上競合するというようなことになりましたのでは、これ又好ましい姿ではありませんので、そういう関係は十分考慮しなけりやならん、そういうことを考えつつ公庫の資金量を造成しようとする場合に、曾つてこの公庫の前身であつた恩給金庫の持つておりましたような機能をこの公庫に加えますることが、他の一般の金融機関と業務上の競合もさして起きませんと思いまするし、資金量を殖やすことには幾分でも役立つのではないかという気がいたすのでございますが、そういう点について御研究がありますのかどうか。そういうことについて総裁として、今後そういう場合があれば、公庫の機能を拡充してそういう点まで及ぼすことについてどういう御意見をお持ちになるか、その点を一つお伺いしたいと思うのです。
  188. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) お答え申上げます。恩給金庫の前例というのは如何なことでございますか、はつきりいたしませんが、私、或いはお取引先からそのお取引の限度内において預金を預かるというふうなことでございましたのでしようか。
  189. 森八三一

    ○森八三一君 受恩給者が政府から受くべき恩給を、恩給金庫が代つて政府から受領いたしまして、それを本人の預金に組入れておく。受恩給者の全部が必ずしも直ちにそれを生活資金に必要といたしませんので、その当時の状況を数字的に私承知いたしませんが、恩給金庫には相当の財源ができておつたはずと思うのです。そういうものが今後公庫に、若し事業拡充して殖えて来るとすれば、非常に困つておる庶民大衆に対する貸出しが一歩でも前進するのではないかと、こう考えるためにそういう御質問を申上げたわけです。
  190. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) わかりましてございます。結局、特定のかたがたから或る程度預金を頂くということに相成るわけでありますが、恩給関係の代理事業と申しますか、そういうことは今認められておりません。従いまして、一般的に特定のかたから預金をとるということになるのでありますが、そういたしますというと、どういたしましても普通の金融機関と勢いその分野において競合することになつて参りますという虞れがありますので、私自身といたしましては、できる限りまあ政府の御出資、或いは預金部からの借入れといつたふうなところで私ども資金を賄いましたほうが、全体の預金体系と申しますか、その上から見てすつきりいたすのではないかと思います。もともと私どもの仕事が普通の金融機関では融通することのできないようなかたがたに対して比較的小口の長期事業資金を供給するというのが役目でございますので、又片方の預金受入れといつたような件につきましては、他の受入機関と競争的な立場になるということはできるだけ差控えたほうが無用の混乱を防ぐことになつてよろしいのではないかと考えておるわけですが……。
  191. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 ちよつと総裁に伺いたいのですが、今度国、家公務員の枠を外されまして、従つて待遇は改善になると思いますが、ただ予算の制約を受けるという関係ですね、二十七年度は実際どんなふうになるお見込みなんですか。
  192. 櫛田光男

    説明員(櫛田光男君) 二十七年度におきましては、予算上の給与基準が大体一万二千五百円見当でございます。現給与が一万一千五百円ほどでございます。その間若干の余裕がありますに加えまして、一億三千万ほどの予備金を持つております。で、この予備金を待遇改善のために如何ほど取りますことができますかどうかということを、これから大蔵当局等とお話合いをするわけでございます。それによりまして相当程度の待遇改善は是非とも果さして頂きたいと、私は希望いたしておるわけでございます。
  193. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようですが、質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  194. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  195. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私はこの改正案に賛成いたします。  大体この国家公務員の枠から国民金融公庫の職員を外すということは、我我参議院におきましてもすでに三年間に亘つて主張したところでありましたが、今回漸くこれが実現できるということは我々としても本望の次第であります。併しながら、この改正案について退職手当の問題に触れておらなかつたというのは、当然退職手当も諸般の状況からいたしまして、他の公務員と異つて恩給もないのでありますから、改正すべきであるとこういうふうに考えておりますが、将来成るべく早い機会において、政府においてもよく検討されて、この退職手当の改正についても実現されるように努力されたいということを附言して、賛成いたすものであります。
  196. 大野幸一

    ○大野幸一君 私も本案に対して賛成の意見を表するものであります。  従来金融事業に携つておる各種の職員が国家公務員の枠内で縛られて、その拘束を受けて来たことから今回開放されるということは、我々も従来主張したことで、賛成いたします。ただこの公庫の性質上、これは零細民を救済しなければならないという立場から割出されてすべての業務が行われて来た。特に理事者に対しても、あながち独立採算制で利益本位と違うということを従事職員に対しましてもこれを認識してもらつて、一般国民に当る場合の心掛けとせられんことを希望としまして、賛成の意見を表する次第であります。
  197. 小林政夫

    ○小林政夫君 私も本改正案に賛成をいたします。ただ質疑応答の際にも述べたように、第十七条の改正規定の解釈については、政府説明員説明では納得をいたしませんので、速かに他の諸機関の従事職員にも関係する問題でありますので、この参議院としての見解を明らかにする意味において政府説明には不満足であり、その解釈を明らかにするということを条件にして賛成をいたします。
  198. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私も賛成いたしますが、只今小林さんから発言のありました点につきましては、実は私はむしろ政府説明で満足するものでありまして、そうなければならん。公務員を外された以上は、徒らに罰則じやなしに内部的に労働協約、或いは内部としての規定があるだろう、職員の処罰規定等があるので、それで結構だと思う。それでまあ当然一番重いのは懲戒免職とかいうような規定になるのだろうと私は思います。まあその程度にせんと、余り懲役まで科する必要はない。併し贈収賄については当然それは適用されるのでありますが、その程度なれば私はいいと思いますので、私は政府の答弁で満足するという解釈の上に立つて賛成いたします。
  199. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。国民金融公庫法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手をお願いいたします。    〔賛成者挙手〕
  201. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続は前例によつて委員長に御一任願います。それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名    大矢半次郎  菊川 孝夫    木内 四郎  岡崎 真一    黒田 英雄  溝淵 春次    小林 政夫  小宮山常吉    森 八三一  大野 幸一    油井賢太郎  木村禧八郎    菊田 七平   —————————————
  202. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  203. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて。それでは貸付信託法案について質疑を行います。
  204. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ず第一にお伺いしたいのは、この投資信託と貸付信託との区別がよくわからないのですが、御承知のように投資信託制度を設けるという、これはむしろ信託会社がこれはやるのが至当じやないかというような説もあつたわけなんです。これは証券業者がこれをやることになつておるのですが、実質的にどこが違うのか、実質的にこの法律がそんなものではないというそこのところを……。
  205. 大月高

    政府委員(大月高君) いわゆる投資信託と言つております証券投資信託と、ここで提案申上げております貸付信託の大体の違うところを御説明申上げますと、一つは、証券投資信託のほうは信託関係であることは同一でございますけれども、その運用の対象が有価証券であるか或いは貸付であるかという点が根本的な違いでございます。従つて法律の名称といたしましてもこれは貸付信託でありまして、あちらの法律が証券投資信託となつておるゆえんでございます。ただ委託者及び受託者の関係におきましては、証券投資信託は証券会社が委託者でございまして、同じく受託者は信託会社でございますが、その受益権は原始的には証券会社に帰属するわけでございまして、その帰属する受益権を分割して一般大衆に分けるというのが証券投資信託ですが、貸付信託は、委託者はこの受益証券を持つておりますものが委託者でございまして、受託者は信託会社で、そして受益者はこの証券の又所持者でございます。そういう意味におきまして委託者と受益者とが一緒になつておるということが一つの根本的な違いでございます。その二つの違いからいたしまして、結果におきましては、証券投資信託のほうは運用対象が有価証券、特に株式である意味におきまして元本の価格の変動が大きい。それに対して貸付信託のほうは元本は一定いたしておるわけでありまして、その収益の分配の額がその運用の方法如何によつて異る。その点が違つておるわけであります。
  206. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ、信託会社の金銭による金銭信託の場合、これはまあ合同運用をやるわけですが、それと実質的にどう違うのですか。
  207. 大月高

    政府委員(大月高君) 現在ございます合同運用の金銭信託は、金銭信託一本で信託会社が運用いたしておるわけでございまして、それを一般委託者に、委託者兼受益者、或いは受益者の別個の場合もございますが、受益者に分配する仕組になつております。うりの貸付信託におきましては、やはり単数でなく複数の人の信託財産が合同して運用されるという点は同一でございますが、その一つのグループというものが、この一つの信託約款を基準として形成される。で、一つの信託約款に基いて募集されたこの貸付信託は一つのグループとして運用される。ほかのグループ及びほかの信託財産と全然別個である。その点が違つておるわけであります。
  208. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この金銭による金銭信託、合同運用のやつは、合同運用の対象ですね、これは証券とか貸付とかいろいろあると思うのですが、それと、それから投資信託の場合の運用とはどう違いますか。
  209. 大月高

    政府委員(大月高君) 投資信託の場合は、運用の対象が有価証券に限定されておる点が特色です。貸付信託は有価証券の運用をすることは原則としてできないわけでございまして、主として貸付又は手形割引の方法によつて運用する、これは条文で申上げますと第十二条と第十三条でございます。で、ほかの方法によつて運用してはならないのが原則でございまして、ただ一時の余裕金が生じました場合には適宜コールに出すなり、一般の預金として運用する。又は国債その他の有価証券に運用する、ここが違います。
  210. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、私はいわゆる金銭信託のほうと貸付信託のほうとの運用の違いを質問したのでありますが……。
  211. 大月高

    政府委員(大月高君) 一般の金融信託におきましては、運用は自由でございまして、有価証券を買つても、貸付に廻しても、いわゆる一般に財産の運用形態と言われておりますものは一般に認められておるわけでございます。この貸付信託は貸付と手形の割引に限定されておる、その点が違つております。
  212. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この提案理由によりますと、「信託財産が予定せられた緊要産業に運用されることを確保するため」と、こう書いておりますが、これは何か運用が限定されておるわけなんですか。
  213. 大月高

    政府委員(大月高君) この第三条によりますと、この貸付信託を始めようといたします場合には、大蔵大臣の承認を受ける必要があることになつています。その場合の記載事項を第二項に掲げてあるわけでございますが、その中の信託の目的というところでどの産業、どの方面に運用するということを具体的に書くわけでございまして、同じ貸付と申しましても、この信託約款において限定されるわけでございます。石炭であるとか或いは電力であるとか、或いは鉄鋼であるとか、そういうふうなことを信託約款に書きまして、その範囲において運用する、こういうふうになつております。
  214. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなると、その運用においては一種の資金統制的な傾向が出ているのですが、その点はどうなんですか。
  215. 大月高

    政府委員(大月高君) どの程度までこの貸付政府が関与するかということに関係すると思いますが、この信託の目的におきましては特定のA会社とか、B会社とかというふうにきめるわけではございませんので、一般的に業種で以てきめたい。そういたしますと、その範囲で運用対象を信託会社のほうで見付けるわけでございます。勿論資金統制という言葉が適当であるかどうかわかりませんが、この申請の中に、仮に料理屋に貸付けるのだというようなことは書いてございましても、それはまあ認めない、そういう意味におきましては、或る意味においては資金の流れというものを規正することになるかもわかりませんが、それは或る意味におきましてはこの受益証券を買う人が納得して買うわけでありまして、決して政府が集つた金をこちらに流せという意味において指定するものじやありません。お互いに鉄鋼に金を流したいという人が、この受益証券を買う、又石炭に金を廻したらいいのだという自発的な希望を持つておる人が受益証券を買う、それがいやならば買う必要はない、こういうことでありまして、その点は資金統制というところまでは行かないのじやなかろうかと思います。
  216. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと今の説明でわかるので、非常に特殊な、資金の投資先と睨み合した受益証券の何というか、販売というのですか、そういうものを売出すわけですね。投資信託と非常に違つて、そういう形でこれはなんですか相当成功すると思われますか。
  217. 大月高

    政府委員(大月高君) 証券投資信託におきましてもやはり証券ということではございますが、証券取引委員会で指定いたしまして、現在は多分百二十種ばかりになつてつたと思いますが、その範囲内で選択する必要があるわけでございまして、ただその証券投資信託の場合には、別に業種を標準として定められておるわけではございませんので、この貸付信託と性質は違うと思うのでありますけれども、併しこの貸付信託の場合におきましては一般の国民が、この募集をいたします当時に最も関心を持ち、そこに金が流れるのがいいのじやなかろうかと思つておる業種を選びまして募集をすれば、それだけ心理的な効果も多いにあろう、又逆に産業の面から申しますればそういう緊要産業に重点的に金が流れ得ると、こういうことで双方の便益があろうかと考えております。
  218. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やはり一番魅力というのですか、それは丁度投資信託みたいに、又無記名定期預金制度みたいに、税金が軽くなる、無税じやないでしようが、そこに狙いがあるわけなんですか。
  219. 大月高

    政府委員(大月高君) この二月に実施いたしました銀行関係の無記名定期預金、これは無記名が一つの魅力であると思います。それから今提案申しております国民貯蓄債券も無記名ということになつておりまして、これも信託関係有価証券にするということが一つの狙いで、これによつていわば流通性を附与することによつて消化を助ける、そのほかこの証券を原則として無記名にすることによりまして、脱法上或る意味の優遇を与えるということも、やはり同じ思想から出ておるのであります。
  220. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 続々と国民貯蓄債券の発行、それから無記名定期預金みたいなもの、それから今度の貸付信託というようなものも出ておりますが、それは資本蓄積としてあの手この手でいろいろ考えられることも必要じやないというのではないのですけれども資金蓄積の源泉というのは大体きまつているのですよ。それで従つて仮にここに集つたとしても、それは大体において預金が引出されてそつちに行つたのでは効果がないので、積極的に新規の蓄積になればいいのですけれども、ただ税金逃れにそういうふうに蓄積されて行くのでは一方から他に移るだけであるというどうも感じがするのです。これによつて積極的に新しく資金蓄積される、こういうふうには私には思われないのですが、その点はどうなつておるのですか。
  221. 大月高

    政府委員(大月高君) この議論は無記名定期預金に関しても御意見のあるところだろうと思いますが、無記名定期預金を実施いたしましてから現在まで約五百億程度つております。これの分析によりますと、その半額程度は一般の預金量の振替ではなかろうかと言われておるわけでございますが、後の半分についてはやはりどこからか出て来た資金であろうと推定されておるわけであります。従いまして或る程度の歩留りがあるということはよく言われております。箪笥預金が外に出て来たということが一応推定される利益があるのではなかろうか、それからもう一つは振替と申しましても一般の普通預金が定期預金になり六カ月なり一年なりの定期預金になるという意味で、資金が短期のものから比較的固定した長期のものに質の変化を遂げた、その点において利益があろうかと考えるわけでありますが、この貸付信託のほかにも先ほど申上げました証券投資信託或いは貯蓄債券、無記名定期預金、こういうものが入つておりますので、こういう金融機関を通じて流れて来ますと、やはり信託業者にこういう制度を認めることによつてほかの資金を回収したものと歩つ調が漸く合うので、こういう手段によらなければ逆に信託会社として自己資金をよそに持つて行かれる元になるのではなかろうか、こういうバランスの問題が一つあるわけでございます。こういう意味におきましてやはり資本蓄積の手段といたしまして全体の機関が同じような強さを持つて、それぞれの投資者の嗜好に応じた蓄積手段があるということはいいのではなかろうか、この貸付信託も短期の金を長期にするという意味におきまして、原則として二年以上ということにいたしております。形式的には一年のものを、一年間を限つて出せるようになつております。原則は二年以上ということになつておりまして、そういう意味からも量を若干でも殖やすという以外に、資金の質を長期化したい、こういう二つの狙いを持つておるわけであります。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは外資法とも関係あるのですが、外資法におきましては元本の送金を許す場合、据置期間は株式において三カ年になつておりますが、この場合には二カ年になつておる。その点はどうしてそう違うのですか。
  223. 大月高

    政府委員(大月高君) これは外資法の中にやはり送金を許される或は対外支払手段によつて取得のできる財産の対象といたしまして、やはり証券投資信託、受益証券が入つておるのでありまして、これは別に法律的の制限はございませんけれども、やはり二年以上ということになつておるわけであります。それでこの制度が証券投資信託とほぼ歩調を合せるという意味におきまして、やはりこの貸付信託もこの外資法の対象に入れる、こういうわけであります。
  224. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点は外資法の委員会のときになぜ投資信託と株式と区別をしたのか、その理由は又聞くとして、最後に伺いたいのですが、この信託制度ですが、信託会社の制度、これは本来信託制度というものはいわゆる固有業務ですな。固有業務というものを、これを発展させるのが、それが正しいのじやないかと思うのですが、だんだんこれが金融機関と同じようなふうに、殊に金銭信託については銀行と殆んど変らないと、こういうようなことになつて来ておりますね。又今度貸付信託をやりますと、これが又銀行と証券業者との合いの子みたいなのが出て来るわけですね。この信託制度というものについて将来金融制度上今後いろいろな制度を考えて行くのですが、どういう地位に置くか、その点一つ最後に伺つておきたいと思います。
  225. 大月高

    政府委員(大月高君) 先般黒田委員からもその問題に対する御質問がございまして、相当数字を挙げまして御説明申上げましたのでございますが、最近信託会社の地位というものは銀行に比べまして非常に落ちて来ておりまして、現実におきましても今の信託会社の形態は、信託銀行と申しますか本来の銀行、それが信託業務を兼営しておる恰好になつております。而もその信託として受けております資産は一般の銀行預金に比べましてウエイトが非常に少いわけでございまして、現在一般の定期預金と金銭信託を比較いたしましても八%程度にしかなつておらない。従いましてそれでは銀行だけでいいので、信託の必要はないかと申しますと、これはもう戦争中から終戦後にかけまして我が国の国民所得が減つて、過去の財産蓄積が減つた一つの現われだろうと考えます。我が国の国力が次第に回復いたしまして相当の資産を持つこともできる、こういうことになればやはり本来信用する人に預けて、それの利殖を図つて行くという制度も当然残さるべきものだと考えるわけでございます。アメリカの制度におきましても大体において銀行業務を主にいたしておりますけれども、信託という制度も、いわゆる財務の総合的なサーヴイス機関としてやはり一つの分野を持つておるわけでございまして、昔のように信託の業務は大きなウエイトは持つておりませんが、やはりそれなりに特殊の投資形態として残しておく。今のお尋ねのように、丁度証券の業務と銀行の業務との中間的な形態におきまして総合的な財務の相談乃至サービスということに発展をさせたい、こういうふうに考えておるのであります。
  226. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは御説明はわかるのです。併し本来の信託の制度の固有のものはあるのです。例えば遺言信託とか何とか、そういうものはちつとも発達しないのです。実際から見るともう何も信託会社でなくても、銀行にやらしても或いは証券会社にやらしてもちつとも私は実情に弊害はないと思うのです。むしろ本来の元の信託会社の信託というものに力を入れて行くべきものだのに銀行がやるべきこと、或いは証券会社のやるべきことをやつておるので、ちつともこれはプラスになつておらない。ただ信託会社ができたからその経営を続けるために経営者としてはやつて行かなければならんかも知れないが、もつとそういう本来の、元の信託のほうに力を入れるように指導すべきじやないかと思うのです。そういう点から信託制度というものに対する大蔵省なり何なりの考え方が私ははつきりしていないのじやないか。ところが銀行のやることと証券会社のやることと実質においてはちつとも変りはしないのです。そこのところを私はもつと……。私は信託経営者もそこのところは怠つておると思うのですが、銀行と同じようなことをやつて、ただ儲ければいいという本来の、元の信託という制度ですね、イギリスでもフランスでもアメリカでも、そういうものとまるで、日本のは違つておると思うのです。その点をもつと私は指導すべきじやないかと思うのです。
  227. 大月高

    政府委員(大月高君) 今のお考えは誠に御尤もでございまして、信託本来の業務を開拓させるように指導すべきが当然だと思います。ただ残念ながら現在の段階におきまして信託財産となるべき財産がだんだんウエイトを失つて来ておる。将来次第に又殖えると存ずるのでありますが、現在のところでは非常にウエイトが小さい、然らば将来信託という仕事も分散してしまつたほうがいいのか、或いは従来やつております、言わば信託の専門家分野は小さいながらも任して行つたらいいのかと申しますと、やはり大正十一年にできましてからもうすでに二、三十年もやつて来ておるわけであります。ほかの金融機関にはやはり信託という経験がございませんので、やはりそういう固有の機能なり知識経験を活かして行きたい、ただそれでは信託だけの仕事をやらしていいかと申しますと、やはり収益の面におきまして残念ながらそれだけでは喰つて行けないというのが現状でございます。これが再建整備の後昭和二十三年にこれを信託銀行といたしまして銀行の仕事も併せてやらしておるゆえんでございまして、これは私らといたしましては決して好ましい形態ではない。併し少くとも収益源としてやつて行ける程度の補助的な業務としては銀行業務を考えておいてやつてもいいのではないか。決して証券業務と銀行との真似をしておるから別に独自性がないとも言えないのじやないかと考えます。
  228. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 証券投資信託におきましては証券会社を大いに利用して大衆の資金を集めるようにしておりますが、今回はこの貸付信託につきましてはそういうことをなさらないのはどういうわけですか。
  229. 大月高

    政府委員(大月高君) 今の制度といたしましては結局現在の信託と接触いたしております投資者層、それを自力で以て逐次開拓さして行くほうがいいのじやなかろうか、勿論店舗の数は非常に少いわけでございますが、それでも全国でやはり相当の数に上つておりましてみずからの機関を持つておるわけであります。そういう意味におきまして、自力で以てこの証券を買却し消化して行くのに支障はなかろうと予定いたしております。金額も大体年間六十億程度でございますので十分消化には堪え得るであろうと考えております。
  230. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私はこういう長期資金が非常に不足な折からできるだけ動員して一般大衆の資金を集めるのがいいと思う。然るに証券投資信託についてだけ証券会社はあのように利用しておる。そしてこの貸付信託については従来の信託会社の窓口だけ利用して、お客さん本位にやるというのは、どうも無記名証券を使用するという趣旨から言つて、全然その目的が違うのじやないかと疑うのであります。どうですか。
  231. 大月高

    政府委員(大月高君) 今の証券会社との関係でございますが、勿論この貸付信託に基く受益証券は有価証券になつております。法律的に申しますと証券市場で売買することも可能なわけでございまして、これは証券取引法によつて当然その取引の対象になるわけでございます。従つて若し信託会社が希望いたしましてそれを使うということになりますれば、法律的には可能なわけでございますが、取りあえず全体の資金量から見まして、証券会社を使つて大々的に売り捌くほうがいいのか、或いは差当り自己の店舗で以て売り捌くほうがいいのか、これはそもそもの発足でございますから、どちらがいいかはつきりしないのではなかろうかと思うわけでございまして、現在のところみずからの手足を使つてつても、今予定いたしておる程度のものは、これは十分消化できるであろう、そういう意味から現在の計画としては特に証券会社を使うということは考えられておらないわけでございますが、特に使うつもりがないという意味でもございません。
  232. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 どうも説明を伺つていても、証券投資信託については証券会社を利用する。それから貸付信託については法制の建前として利用しない、信託会社で利用しようとすれば可能性もあるけれども、大体は利用しないというその区分、両者の差別はなぜつけなければならないかというのは、どうもまだ呑め込めないのですが。
  233. 大月高

    政府委員(大月高君) これは具体的に、この受益証券を売り捌くという面ではなくして、証券投資信託と貸付信託との違つておりますところは、ただ融資の対象なり銘柄の選択権なり、それが証券会社にあるのか信託会社にあるのかというのが本質的な問題ではなかろうかと思うわけでございます。証券投資信託によりますと、証券会社が委託者になるわけでありまして、大衆を代表してどの株を買うかということを指図するわけでありますが、信託会社としては何らのそこに自己の選択権が行使されておらない、従つてこれは証券会社をして証券投資の知識を万全に発揮せしめるというところに要点があるかと思います。そうしてそれを売り捌きますのは、証券業者としてみずから売り捌くわけでございますが、それはこの委託者になつておりますものは、いわば四大証券でございまして、若しその手足或いは機関という点から言いますと、数は非常に少いわけでございます。貸付信託の場合におきましては、証券業者の貸付先の選択権は信託会社にあるわけでございまして、信託会社が全責任を負つて受託者としてこの資産を運用する、従つてみずから顧客に対しても、その信託会社自体の信用によつてこれを消化せしめて行くというほうが先ず大事であつて、ほかの機関使つて消化するほうがいいということになりますれば、初めてほかの証券業者も使うということでいいのではなかろうかと考えております。
  234. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 次に、先ほどから木村委員もおつしやつたこういう信託預金の合同運用の場合、この場合には別に投資先を限定されておらない、貸付には有価証券より非常に範囲が広く、従つて運用が非常に楽で収益も多くなるだろう、然るに今度の貸付信託は貸付先を限定しておるということで窮窟になつておる関係上、どうも普通の合同運用の信託預金よりは利廻りは悪くなるじやなかろうか、従つてこれをカバーする何かの措置がなければ発達して行かないのではなかろうかと思いますが、この点如何でしようか。
  235. 大月高

    政府委員(大月高君) 一般の合同運用の金銭信託におきましては、それぞれ期限も非常に短期なものから長期のもの、小さいものから大きいもの、それから引出される期間も違うということで、或いは投資につきましては相当の余裕金なりマージンが出るわけだと思います。この貸付信託におきましては一定の募集期間を定めまして、その期間に五億なら五億、十億なら十億という標準をきめまして同じ長さの資金を集めるわけでございますから、融資につきましても一括いたしまして計画的に運用し得るわけでございます。そういう意味におきまして余裕金的な存在がそうないであろう、而もそれは最初募集いたしますときから長期であるわけでございまして、長期に運用する意味において相当金利も有利になる、そういう要素から遊金が少いという意味で、長期貸付でもあるし、そういう意味からいたしまして相当有利に運営ができると考えておるわけであります。
  236. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 今二年の信託預金、三年の信託預金は、そのレートはどの程度になつておりまして、そうして今度の貸付信託の予定利廻りは大体どの程度でありますか。
  237. 大月高

    政府委員(大月高君) 現在の金銭信託の利率は、一年物は六分でございます。それから二年物は七分でございます。五年物は九分ということになつております。これが現在臨時金利調整法できまつております。これが金銭信託の金利でございます。これに対しまして貸付信託は実績配当でございますので、こういうようにはつきり予定の配当率を定めるということは不可能でございますが、大体現在計算いたして予定いたしておるところでは、一年物で七分三厘程度は出るんじやなかろうか、それから最高の五年物になりますと九分一厘二毛少しは出るであろうが、若干現在の合同運用の金銭信託よりも上廻るであろうということを予想として持つております。
  238. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この貸付信託証券の販売は証券取引法に違反しないですか。
  239. 大月高

    政府委員(大月高君) これは有価証券とすることに証券取引委員会と話がついておりまして、勿論この法律によりまして有価証券でございまして、これは証券取引法で指定しなければ正式に証券業者が買売ができない。従いましてこれは証券取引法の第二章の第三条でそういう有価証券とするという指定をいたしまして、それを又発行いたします場合には、有価証券は証券取引委員会に届出その他の手続がございますので、そういう手続をなさず、一般の取引の対象とはするけれども、発行のときの手続は簡略化する、こういう手続をとる予定でございます。
  240. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうするとなお私は問題が起つて来ると思いますが、それはこの貸付信託証券は一種の社債みたいなものになるんです。それは特定の会社のではありませんが、或る特定の業種の社債みたいなものです。そうするとこれは第六条ですか、その売渡の目的でそういう証券を取得する場合、例えば銀行或いは信託会社が売渡の目的でそういうものを引受けたり何かすることができない、すると証券業務になるのであつて、それは前の証券取引法の改正において問題になつた点で、証券業というものの地位を引上ける意味銀行或いは信託会社、金融機関が業として売渡の目的でそういうものを引受けたり何かしてはいかん、こういう規定があるわけです。これは私は長期信用銀行債券について同様のことが起つて来ると思いますが、その点は牴触しないのですか。
  241. 大月高

    政府委員(大月高君) ここで証券取引法で申しております売渡は、定義にもございますように不特定多数の人に対しまして均一の条件で売渡す行為でございます。ここの貸付信託法に基きます受益証券の発行の時期は、これは証券信託会社が発行いたしましたときには、もうすでに発売或いは発行になつておるわけでございまして、個々に売出すという観念とは違うわけでございます。ましてこの有価証券のいわゆるアンダーライテイングという観念には勿論入らないわけでございまして、一般に成立いたしました社債なりその他の有価証券が証券業者の手を通じて売り捌かれて行くということは、この証券取引法の観念から行きまして差支えないのではなかろうかと考えております。
  242. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは証券業者の手を通じて行けば問題はないのです。じかに信託会社がそれを不特定多数人にこれを均一条件で売つたら、これは信託会社が証券業を営むことになる、こういうことになりはしませんか。
  243. 大月高

    政府委員(大月高君) 現在もそれと同様の問題があるわけでございますが、例えば興業銀行なり、勧業銀行がみずからの社債を発行いたしております。でこの社債を発行いたしますときに、これは売出発行の場合と募集の場合とございますけれども、必ずしも証券業者の手を通じておるわけではないのでございまして、みずから売つておるわけでございます。でこの場合にはやはり証券取引法に規定がございまして、今の金融債の場合におきましては、特別の法律により法人の発行する債券として正当に認められておるわけであります。従つてそれと同様の手続きをとりまして、証券取引法違反にならないように措置するように、証券取引委員会と了解済みでございまして、この法律が施行になりますると同時に、その規則も出すことになつております。
  244. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはもうそうならないようにするということは、そういう手続をとればそうかも知れませんけれども、精神が反しておると思うのですけれども、前のシンジケートなんかのやり方は、証券取引法の改正のときにこれはもうできなくなつたのですね。それで本来の精神から言うと、前に禁じたことをやることになるので、それに今度は手続を改正してできるようにするというんですけれども、それは改正すればできます。特例を設ければできます。けれどもそもそも精神が反しておると私は思うのです。これは長期信用銀行債券についても私は問題にすべきだと思うのですが、それとちつとも違わないですよ。証券業者がついておる場合は、信託会社自身がこれを売出すことになれば、これはもう長期信用債券よりも更にもつとはつきりしておるのです。
  245. 大月高

    政府委員(大月高君) 今の木村委員のお尋ねは、証券取引法六十五条との関係かと存ずるのでございますが、この証券取引法六十五条の関係は、要するに銀行その他の金融機関が証券業者と同じいわゆる証券業務に従事してはならないという根本原則を立てておるわけでございます。現在問題になつております例えば貸付信託の受益証券と申しますと、これは信託会社の立場から申しますと、みずから発行する社債に類するわけでありまして、それでは例えば電力会社がございまして、電力会社が社債を発行する。その場合に証券業者を通じて発行しなくちやいかんかどうか、こういう問題になるわけであります。これは現在の慣行及び法律の解釈では、例えば銀行が総額引受をやるというようなことも認められておるわけでございまして、必ずしも証券業者でなければ発行の行為に関与することはできないかどうかということについては、発行できるということになつております。若し信託会社がこのここで発行されます受益証券を特に売買するということになりますと、そこで証券業をやるということになると思いますけれども自分で発行いたします有価証券をただ発行するということだけでこの六十五条に触れることはないと解釈いたしております。
  246. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはその金融機関が総額引受はできるんですが、引受けた後にこれを個々に販売すれば抵触するわけでしよう。そういう問題が起るというのです。それと同様の問題が……。
  247. 大月高

    政府委員(大月高君) それは仮に金融機関がほかの会社の社債を引受けまして、それを売出すということになりますと触れるかと思うのでございますが、この場合の受益証券は自己の受益証券でございますので、自己の受益証券を売出すということについては何らの制限もないし、この六十五条の禁じておるところではないというように解釈いたしております。この証券業は、要するにほかの会社の発行いたしておりますいろいろな有価証券を売買をし、或いは発行のお手伝いをする、そういう証券業に金融幾関が関与してはならない、こういう趣旨規定かと解釈いたしております。
  248. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは法律的にはそうでありますが、実質的には特定の会社ではなく、或る産業に投資するための社債を発行するようなものであつて、ですから私はそういう精神においてはそういう問題が起り得る、これは議論になりますから私はこの程度にして置きます。
  249. 小林政夫

    ○小林政夫君 最後に一点、私は明日から二日ほどおりませんが、大蔵大臣が菊川委員の要請で見えるということで、そのときに言おうと思つてつたのでありますが、金融制度懇談会においても一番問題になつた点は、他の金融機関と摩擦を起さないかということであります。念のために、私は勿論本法案に賛成でありますが、賛成討論ができないので、この際はつきり言つて置きますが、同種の銀行預金或いは金融債等の利廻りと、この貸付信託の利廻りは、それは特に実績配当であるということ、ここに不安があるので、大蔵当局の行政指導の面において、他の金融機関と摩擦を起さないように、十分注意してやられんことを希望しますが、そういう意思があるかどうかということです。
  250. 大月高

    政府委員(大月高君) この貸付信託は実績配当でございまして、厳格な意味で申しますところの金利ではないわけでございます。そうして法律的には、臨時金利調整法によつて規正さるべきものではないわけでございますが、併し経済的に投資者の側から見ますれば、やはりその配当が高いか低いかということに十分注意をし、特にその点に関心を持つて買うか買わないかということをきめるわけでございますので、一般の金利体系を乱さないように十分この点は慎重に考慮してもらいたいと考えております。
  251. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 昨日資料を頂きまして、これを見てみますと、一時信託会社ができまして、これは大正十一年とあなたが言われましたが、三井の米山さんですか、三井、三菱、安田をこしらえた当時は、むしろこれは銀行を圧迫するんじやないかといつて銀行のほうから相当やかましかつた。ところがこの実績を見ましても、今日ではまさに凋落の一途を辿りつつあるということはこの表でもわかる。銀行兼営の所は別といたしまして、曾つての三井或いは安田信託等ではなやかに、一時は銀行と太刀打して、実に銀行のほうは脅威を感じてやかましかつた。これは僕の若い時代でよく知つておりますが、米山さんは時代の脚光を浴びたのであります。今は四大証券に投資信託をやらしておりますが、これは大蔵省に泣きついて、大体新奇を狙つたというふうに我々は直感的に考える。又率直なところを申上げますと、事実そういう動きがあつたと思います。ところがこの貸付信託というものにつきましては、折角お考えなつたけれども、この貸付信託というものにつきましては大した私は魅力がないと思うのです。それよりもむしろ有価証券なんか相当運用しておるのでありますつが、投資信託をこれはもう認めてやるというように、この参考資料をもらつてつくづく感じたのでありますが、四大証券にはしなくても、これは証券のほうのものも許すというようなお考え方も一つにはあると思いますが、その点はどうですか。
  252. 大月高

    政府委員(大月高君) 勿論信託会社の地位が昔ほどでないということは、この数字にも明らかなところでございまして、何らか信託本来の業務におきまして、そういう態勢を盛り返す手段があれば非常に結構だと思うのであります。ただこの投資信託を信託会社にやらすほうがいいかどうかという問題につきまして、現在も形式的に申しますれば、受託者としてやつておるわけでございます。受託者として手数料を取つておるわけでございまして、本来の信託会社の業務としてはまさにその通りの仕事でございます。委託者が証券会社となつておるわけでございますから、証券会社の指図の通りに運用して、その財産を保管しておるという信託の業務をやつております。然らば現在の投資信託のように、みずから信託会社が投資有価証券を選択をして、どの株を買つてどこへ運用するというところまで信託会社に委しておくほうが現在の制度よりもいいかどうか、或いは証券業者と並んで信託会社にもそういう選択権を持たすということがいいかどうかということになりますと、やはり現実の機能として、或いは証券業界に対する接触の程度、そういう点から言いますれば、まだこれは非常に結構だというところへは行かないのじやないかと考えておるわけでございます。勿論証券業者のほうでもそういうことは希望しないと言われるとは思いますけれども、別にそういう意味を離れましても、今直ちに証券だけを運用する、信託を信託会社が受託いたしまして、それを自己の責任で、つまり証券業務にほぼ類似するような業務まで足を突つ込むことがよいかどうか、特に最近銀行業務を兼ねておるわけでございますし、やはり或る意味においては堅実な姿を以て発展して行く、非常に徐々ではあると思いますけれども、堅実な方向に伸ばすことが適当ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  253. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一点、この信託会社の、この資料をもらつたのですが、商号はすでに三井、三菱という名前を信託だけはとり出した。こういうことを聞いて、新聞にも載つてつたのでありますが、今もらつた資料は、これはちよつと違うと思うのですが、この点はどうでございますか。
  254. 大月高

    政府委員(大月高君) 例の財閥の商号の禁止の法律及びこれに関する政令は、五月七日に政令が公布になりまして、同日施行になつております。それですでに商号をどう使うかということについては、禁止は解けておるわけでございます。それで現在どの信託会社がもとの商号に復帰したいかということは、今内々意見を聞いておるわけでございますが、今度の決算期におきます株主総会で何らかの意思表示をして、商号の関係でございますから、大蔵大臣においてこれを認可すれば効力を発生する、こういうことでございまして、まだ現在は信託、銀行の商号は従前のままでございます。
  255. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その場合に、三井信託というのはどれですか。今の朝日が三井ですか、いや、いいです。三井とか三菱、安田という名前に帰る大分空気らしいのです。信託会社としては……。まあその看板を利用するということは、曾つての三井財閥形成の方向へずつと進みつつあるのじやないか。実際問題として、資本金なんか示してもらいましたが、事実そういう方向へ進みつつあるのじやないですか。独禁法がそのままありながら……。
  256. 大月高

    政府委員(大月高君) もとの三井信託と申しておりましたのは、現在の東京信託でございます。それから三菱信託と申しておりましたのが現在の朝日でございます。それから住友が今の富士信託でございます。それからもとの安田信託は現在中央といつております。それだけが昔の財閥の関係でございます。
  257. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 鴻池は……。
  258. 大月高

    政府委員(大月高君) それはございません。それで大体その四つの信託会社はもとの商号に復帰したいという希望を持つておるようでございます。ただ現在の状況を申上げますと、御承知のように昭和二十一年から二十三年にかけまして再建整備をやりまして、その資本金を全部一割に切捨てられてしまつたわけでございます。その後現在御覧になりますような資本金までにどんどん増資をいたしまして、その増資の関係におきましては、旧財閥の関係は全然入つておりません。従つて名称はどうありましても、現在の株主構成は非常に多数であつて、而も一般の人が持つておる。こういう恰好でございます。それから融資先等におきましても、別に旧財閥の関係、その本来の姿、本来の財閥に対する貸金その他が特に多いというわけではございませんので、これは銀行検査の結果等から見ましても殆んど一般化してしまつておる。昔の特色はないものと考えております。その名称を、復活する希望につきましては、或いは昔の看板のほうがいいのだという意味かと存ずるわけ正でございますが、特にその名称によりまして、昔の財閥の恰好が復活するのであるというふうには必ずしも断定できないと思います。
  259. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一つ名称の問題ですが、別に小さい問題で、何も商号の禁止の法律は解けてしまつたからいいようなものですが、併しまああのえらい八月十五日のことを思い返すときに、特に三井、三菱というようなもの、これを一つの魅力にして資金を集めようというようなことは、私は考えるべき問題だと思うのです。三井、三菱ということについての、あの当時の本当の気持というものは、極めて私は冷厳な批判と反省がなされなければならぬと思うのです。ところがそれをもう一遍今度は看板にして、それで大衆を釣ろうというようなこと、而も大蔵省も結構だというふうな態度で以て臨まれると、まあ何も法律が解けたのですから自由だと言つてしまえばそうでありますが、少くともあの与えた印象というものはいいものではないのです。これは南方諸地域に与えた印象もよくないと思うが、あなたのほうの指導方針としては、そういうことは構わん、自由主義だ、こういう御指導をされるつもりでございますか。
  260. 大月高

    政府委員(大月高君) もとの財閥の商号に復帰するにつきまして銀行局の当局として考えることは、昔の商号をほかの銀行なり信託会社が使つて、却つて一般の観念の混淆を来さないようにということが一つ、それから今度復活することによりまして、ほかの銀行なり信託会社とのやはり商号上の混淆を来さないということ、その二つの点を考えておるわけでございまして、特に財閥復活の傾向を示すものであるかどうかということに関しましては、先ほど御説明申上げましたように、実態にはそういうことはございませんので、営業政策としてそちらのほうを使うほうがいいかどうかということは、専らそれを使いたいという信託会社のいわば営業政策の問題として考えておるわけでございます。
  261. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 まあそういう方針であつたら何をかいわんやです。
  262. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 今日の委員会はこれで散会いたします。    午後四時二十九分散会