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説明員(高橋俊英君) 国民貯蓄
債券法に関しまして大体條を逐いまして御
説明申上げたいと思います。
この貯蓄
債雰は初めて発行するわけではありませんで、今までに大きく分けまして三回発行した
経験がございます。日露戦争当時、関東大震災における復興貯蓄
債券、それから支那事変以後太平洋戰争における貯蓄
債券、まあ大きく分けて三回発行の
経験があるわけであります。今回発行いたす
趣旨といたしましては、
資本蓄積、大きく申上げれば、まあ
資本蓄積を幾分なりとも高めたい。勿論一方に郵便貯金とか簡易保險とか
政府の行いますいろいろな
資金吸収の方途がございまするが、そのほかにまあ従来の
経験もありますので、こういう
種類の特別な
債券を発行することによ
つてそれだけ余分に
資金の吸収ができれば結構であると、こういう
趣旨に出るわけでございます。勿論嚴密に申しますときには、こういうものを発行することによ
つて、その分だけが純粋に、ネツトにプラスに
なつたかどうかという点は非常に判定はしにくいことでございまするが、やはりいろいろ形の違
つた方法をやればそれだけの効果はまあ期待できるのじやないか、こういう
趣旨に出るわけでございます。又一方でこの貸金に対する需要の間におきましては、特に
政府の
資金を主として行いまするところの電源開発等には見返
資金の新たな蓄積もございませんし、又
一般会計からの支出ということもそう大きくは期待できない現状でございますので、こういうものを出してそれによる
資金をそちらのほうに廻すと、こういうことが
資金の需給
関係からも必要に
なつて参
つたわけでございます。これが
債券の発行の主なる
目的でございます。
この
債券につきまして今回は発行の
限度を定めておりますことと、それから
方法といたしまして実質的には
政府の
資金になるという点は従来と何ら変りはありませんが、従来はいずれの場合も
日本勧業銀行をして発行せしめましてそれを当時の
預金部に預入させるという
方法をと
つておりましたが、今回のは
政府の直接発行でございます。すでに
勧業銀行というものも特別
銀行ではございませんし特にこれを選んで発行させなければならんという理由もございませんので今回は直接に
政府が発行を行うことといたしました。又その
限度でございまするが、ここに書いてあります非常に面倒な書き方でございまするが、その
意味は要するに一年間の純増の残高の総額が百億円を超えない範囲でやるということにいたしております。非常に消極的なような印象を與えるものでございまするが、一面におきましてこの
債券の持つ
特徴その他から考えまして、こういう
債券を余りに多額に発行することは結局は他のいろいろな
資金源との競合を来たします。
資金の横流れというふうなことに
なつて
意味がない場合がある。戰争中のような非常に積極的な貯蓄の傾向がある場合にはかような消極的な態度は好ましくないかも知れませんが、今の段階で申しますると、まあ
資金コストも余り安くなりませんし、そういうものを多額に発行して、一方で郵便貯金や何かがくわれてしまうということでは全体として
資金のコストが高くなるだけで余り
意味がない。そういう
意味からして百億円という純増の範囲内でやりたいというふうに考えておるわけでございます。
で、この
資金は本来
政府が直接発行するものであります以上、これは一種の国債であることは申すまでもないのでございまするが、これを普通の国債のように扱いますといろいろ不便もございます。そこでこれは国債ではあるけれども通常の国債とは全く違
つた扱いをすることに
なつておりまして、この売上金は
資金運用部資金とする。現在の
規定によりますると
資金運用部資金というのは、預託された金を
中心といたしまして
資金運用部自身の余裕金や積立金等から成
つておるわけでございますが、そのほかにこの発行による收入金を
資金運用部資金とする。こういう
意味は
一般会計の歳入ということにしない、或いは普通の予算に計上せられるところの歳入金とはしない、歳入歳出外現金として扱うという
意味でございます。これを
資金運用部資金として把握いたします
関係上、これを
償還いたします場合には、最初の売上金に相当するものは
資金運用部資金から払出しますし、又発行価格と
償還価格との差額、つまりいわば利子に相当するものは
資金運用部特別会計の負担とする。
資金運用部特別会計の歳出となるわけでございます。いわば元本に相当するものは
資金として歳入歳出外現金として払出され、利子に相当するものは
資金運用部別会計の歳出とする、ちよつとややこしいのでございますが、そういうことに
なつております。勿論これを発行いたします場合の経費も
償還の場合の経費も
資金運用部特別会計の歳出となるわけでございます。この
債券の殆んど大
部分と申上げてもよろしいのですが、私どもといたしましては、いわゆる庶民
金融機関の御協力も得るつもりではありますが、大
部分郵便官署で売りさばくということにいたしておりますので、その郵便官署が取扱
つた貯蓄
債券の手数料は
資金運用部特別会計から郵政
事業特別会計に繰入れるという形で以て支払うということにいたしております。
次に発行の
條件でございますが、これは無記名の
債券でございます。額面
金額はその
目的が主として零細な
資金の吸収ということでありますので額面において一万円以下、従いまして
売出価額は一万よりもよほど下廻ることになります。実行上は大体
売出価額で千円のものを
中心としたいというふうに考えております。それだけでは不十分な場合には、
売出価額において五千円くらいのものまでは考えてよろしいが、
種類をあまり多くいたしませんでせいぜい二
種類以内というふうに考えております。この
債券の狙いは多少とも
長期に安定した
資金を獲得したいということでございますので、
償還期限は五年ということに一応いたしておりますが、現在のいろいろな
債券或いは
社債等の例を見ましても五年というのが最も長いのでありまして、これよりも長くするということは現状ではまあ実情に即しない。実際はそういう五年の間金を本当に寝かしておくというだけの落着きがあるとは考えられません。そのためにそのあとのほうで別に買上の
規定を作
つたわけでございまするが、最終
償還期限は五年ということにしたわけであります。この
債券は割引の
方法で
売出しますし、場合によ
つて或いは
割増金を付することができることに
なつておりまするが、実際は
割増金を付けて最初はやらないというふうな構想であります。併し
法律の上では一応かようなゆとりをつけて頂いたほうが便利である、かような
意味でこの
規定といたしましては
割増金の
規定をつけております。
そういう
條件の今度は詳しい問題でございますが、これは政令で定めることに
なつております。今のところの考えといたしましては、これが五年の期限のものであるということを考慮に入れまして、大体額面
金額は千四百円、それを十円で
売出すというふうな考えをいたしておりますので、これによ
つて計算いたしますと六分九厘四毛程度の利廻りになるわけであります。最終まで持
つておればそれだけの利廻りにたるわけでございますが、途中でこれを売却いたします際にはそれよりもよほど下廻るというふうにいたすつもりでおります。この金利の利廻りの点につきましては、
一般の金利水準というものを十分考慮に入れましてそれとの権衡を失しないようにするわけであります。只今申上げた程度のものでございますれば、例えば興業
債券の割引もの、或いは商工
債券の割引ものと比べますれば期限は五年であ
つて、
民間のそういう類似した
債券の場合には一面で貯蓄
債券よりも少し利廻りがいいという状態でございますからして、七分を下廻る程度であればさほど高いとも言えませんし又一概に低いとも言えない、大体その程度であれば何とか売りさばくことができるのではないだろうかというふうに考えております。併しそれよりも下廻ると売りさばくことが非常に困難であることは認めます。
それから問題の買上はここにただ買上ができるという
規定があるのでございますが、これは一定期間経過後におきましては所持人の請求に応じて買上ができる、この
制度は実はアメリカにおける貯蓄
債券の例をまねたとい
つてもよろしいのでございまして、アメリカの或る
一つの貯蓄
債券の例では二カ月間据置きましてその間は買上げいたしませんが、そのほかはいずれも
政府に対して売却できるということに
なつております。つまりそういうことによ
つて零細段階が五年間必ずその
資金を据置かなければならんというような不便を除く。それが結局或る程度この
債券の売りさばきを容易ならしめることになる。而もその
條件はだんだんに
條件がよく
なつて来て最終まで持
つておれば最もいい
條件になる。途中で
政府に買上げを請求すれば利廻りは大分下
つて来るというふうな
方法を講じまして、できるだけこれを長く所持人が保有するようにいたしたいと考えております。
次は取扱
機関といたしましては先ほど触れましたが、主としてはこれは郵便官署で売りさばくつもりでおりまして、予算の上で申しますと、実際はこの
売出総額が、今年度は一部若し買上げをするような場合でも手取り六十億円という計画をいたしておりますから、その六十億のうち、予算上はこの手数料を
計算いたします場合には九割五分は郵便局でございます、あとの五分だけを庶民
金融機関で扱
つて頂く、こういうことにしております。実際のところ郵便局以外の相互
銀行、
信用金庫或いは
証券業者、こういう
機関のかたがたがどの程度売りさばきを
希望されるかということがよくつかめません。そこで大事をとりまして郵便官署の分を非常に多く見たわけであります。どんなことがあ
つても五%ぐらいであればこれは
金融機関にも売りさばいて頂くことができるのではないかと考えております。この売りさばきの場合には相互
銀行や
信用金庫その他政令で定める
金融機関につきましては売りさばきのほうはお願いするのでございまするが、買上をしたり
償還をしたりするというような事務はそれらの
民間の
機関では行いませんで專ら郵便官署でやる。これはいろいろ
償還や買上に伴うところの
資金の交付
関係、或いはその手数料その他の
関係を考慮いたしまして売りさばきの場合にはできるだけ広範囲にいろいろな
機関を利用したいのでございまするが、
償還はそう一時に売りさばきの場合ほど
短期間に行うとは考えられませんし、郵便官署は全国に一万四十以上もございますのでこれで一向不便はないと考えております。
それから貯蓄
債券収入金の
運用は
目的の際に申上げましたように、これは電源開発その他の資源の開発と
なつておりますが、当時実を申上げますと電源開発公社の構想がまだはつきりきま
つた段階にありませんので、ここに資源の開発というふうに直してございまするが最初は電源の開発とまあ書いてあ
つた、これは資源の開発というふうにして一応電源開発以外のものも含むように書いてありますが、実際上はこの程度の発行手取額でありますならば、恐らく当分の間全額を電源開発に使うことに
なつて他のほうに廻るだけの余裕はないと思いまするが、まあ電源開発のほうが一段落してなお且つ
資金の需要が下
つている、こういう国家
資金を導入する必要があります場合に、この貯蓄
債券発行を継続して行く。そういう場合には他の緊要な産業施設の建設を図るためにも
運用がで、きるというふうに余裕を持
つている必要があるのでございますので、多少電源開発以外のほうにも巾広く
規定してございます。勿論これは
資金運用部資金法の
規定によ
つて運用するのでありまして、その理由は、一応全体をプールされておりまするからして特にこれだけについて特別勘定を設けてどうこうするという
意味ではございません、
目的がそういうふうに扱われておればよろしいということでございます。
それからその次は細かい
規定に
なつて参りまするが、第
八條は、
大蔵大臣は貯蓄
債券の
償還金、
割増金に支払うに必要な
資金、貯蓄
債券の買上に必要な
資金を郵政大臣の指定する出納官吏に交付することができる、これは非常に技術的な
規定でございます。
この次に消滅時効はそれほど特別な例ではございませんが、
償還年月は
償還金については十年、
割増金については五年ということに
なつております。先ほど申しましたように
割増金を直ちにつける考えはございませんが、つけた場合には
割増金に対しては所得税を課さないことにしております。
なお十
一條におきましては、この
債券は一種の国債ではあるけれどもかように
資金運用部資金としてこれを
運用いたしまする
関係上、
一般の国債に関する
法律は適用しないほうがよろしいことになりますので、
関係の
法律をここに挙げましてそれを適用しない、ただ国債整理基金特別会計法の適用に関する限りは国債でないものとみなすという
規定をいたしております。つまりこれを発行
償還いたします場合には、普通の国債でありますれば国債整理基金特別会計に一ぺん入れましてそこから歳出としてもう一ぺん支払うということに
なつておりますので、これは前にありましたように、元本は
資金運用部資金から払出し、利子に相当するところの
金額は
資金運用部特別会計から支出するということに
なつておりまして全然普通の国債の取扱とは違
つております。なおこの
関係法律うちで国債に関する
法律等の障害から起
つて来る結果といたしましては、紛失した場合に通常の国債のような救済の
規定を除外することに
なつております。これは無記名でありまして、額面千四百円或いは
売出価額千円というような非常に小額なもので枚数から申しましても相当な枚数になります。それらにつきましてその無記名
債券を紛失した場合において、一々これを普通の
債券のような扱いをいたしまして救済をするということになりますると、丁度通貨をなくした者に対してこれを無効にするというようなことは流通を阻害するということとになりますので、まあ通貨とは違いますけれども無記名の小額のものであ
つて紛失の場合にも救済の
規定はないわけでございます。丁度通貨をなくした場合と同じことになるわけであります。
それから十
二條は日本
銀行に事務の三都を扱わせることができるという根拠
規定でありまして、この
規定があれば当然日本
銀行がその事務の一部をやるということになるわけであります。
次の
附則の点は、
関係の大蔵省設置法を改正いたしましてとにかくその権限をただ加えただけであります。つまり特に内容に関するようなものはございません。
以上で
簡單でございますが御
説明を終ります。