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1952-03-28 第13回国会 参議院 大蔵委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十八日(金曜日)    午前十一時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            伊藤 保平君            菊川 孝夫君            木内 四郎君    委員            岡崎 真一君            黒田 英雄君            西川甚五郎君            溝淵 春次君            小宮山常吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            森 八三一君            野溝  勝君            大野 幸一君            下條 恭兵君            波多野 鼎君            菊田 七平君            木村禧八郎君   政府委員    大蔵大臣官房文    書課長     村上  一君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省主税局税    関部長     北島 武雄君    大蔵省理財局長 石田  正君    大蔵省理財局次    長       酒井 俊彦君    大蔵省銀行局長 河野 通一君    大蔵省銀行局総    務課長     福田 久男君    通商産業省通商    化学局長    中村辰五郎君    通商産業省通商    纎維局長    記内 角一君    通商産業省通商    雑貨局長    徳永 久次君   事務局側    常任委員会專門    員       木村常次郎君    常任委員会專門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省主税局税    関部鑑査課長  木谷 忠義君    大蔵省理財局国    庫課長     吉田 信邦君   参考人    引揚者団体全国    連合会理事長  北條 秀一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○租税特別措置法等の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○資産評価法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○通行税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○災害被害者に対する租税減免、徴  牧猶予等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○関税定率法等の一部を改正する法律  案(内閣送付) ○在外公館等借入金の返済の実施に関  する法律案内閣提出、衆議院送  付)(第十二回国会継続在外) ○国庫出納金等端数計算法の一部を改  正する法律案内閣送付) ○当せん金附証票法の一部を改正する  法律案内閣送付)   —————————————
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 第三十一回の大蔵委員会を開催いたします。  租税特別措置法等の一部を改正する法律案資産評価法の一部を改正する法律案通行税法の一部を改正する法律案災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、右四案について質疑を行います。
  3. 小林政夫

    小林政夫君 これはもうすでに質疑済みでありますが、いよいよ採決をするに当つて、もう一回念のために主税局長へ念を押しておきますが、この重要な工業所有権等に対する源泉徴収率低減措置、これは来年の一月一日まで延期するということになつております。その間に各国との間に租税協定を締結して、二重課税にならないような措置を講ずるということでありましたが、万一そういう手はずがうまく行かない場合には、この施行の期日を再延長すべきであると思うのでありますが、そういう措置をとられる含みを持つておられるかどうか。
  4. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その問題につきましては、たびたびお答え申上げました通り、もともとこういう措置は国際的な一般慣例従つてつていることでありまするし、結局それにしましても、業者利害関係におきましては差がないのでございまして、外国政府が課税するか、日本政府が課税するかというのがこの中心問題でございますので、まあ私は大体におきまして、先般申上げました通り行くものと実は現在もなお考えております。で万一行かなかつた場合どうするかというお尋ねでございまするが、そのときにおきましては、勿論その行かなかつた理由等をよく検討いたしまして、その際にどうするかということを改めて検討することは差支えないと思いますが、ただ、今から当然延ばすということまでは申上げにくいかと存じておるような次第でございます。
  5. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この前の委員会でもお尋ねしたのですが、その租税特別措置法の例の従来から行われておりました酒類労務特配についてでありますが、今度これがこの間からまだ明確な主税局長の回答がどうもございませんが、成るべくそういう意見考慮すると言われたのだが、どの程度一体考慮されようとしているかということと、それから具体的に大体二級酒であろうと思うのですが、二級酒か、合成酒が充当されると思うのですが、一般価格によるのと、二級酒の場合には一体どの程度にこの労務加配の場合には金額がなるか、それからどの業種までこれを考慮してもらえるか、大体御見当もついたろうと思いますから、どの法案も今日はもう最後にこの委員会で通るかも知れませんので、一つわかつておつたらお話願いたいと思います。
  6. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今の問題につきましては、まあ結局におきまして、原則としましては私ども鉱工業用のほうはもうやめて然るべき時期ではないかと思つております。これは先般もお答え申上げました通り鉱山の坑内内で働くような、例えば非常に過激な労働をやつおりまして、且つ酒に対する需要が緊急と認められるようなもの、こういうものにつきましては、やはり或る程度残すという方向で現在なお研究いたしております。で具体的にどの程度に、どういう方法にするかということにつきましては、よくこれを現場意見等も聞きました上で決定いたしたい。大体におきましては先般も申上げましたように、特配はやはり農村食糧増産、並びに供出勧奨のための奨励、延いては密造防止等にもなりまするが、そういうものを中心としましてやりたい、そういう考えでございますことを御了承願いたいと思います。それから値段のほうは大分最近接近して参りまして、普通の酒の値段に対しまして、一割五分乃至二割程度低  いものになるようでございます。二級酒の場合でありますと、普通の清酒が五百六十五円と思いますが、それに対しまして配給酒は四百八十五円であります。それから合成酒の二級の場合は、普通の場合が四百五十五円でございますのが、配給酒は三百七十五円、この程度に相成つております。
  7. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今主税局長お話では、どうしても農村食糧増産供出に、延いては密造酒防止というところから特別価格酒配給するけれども、もうあとは鉱山関係だけだというふうなお話でございますが一、鉱山関係は勿論必要だと思いますが、それと同時に、例えば荷役関係港湾荷役とか陸上の荷役関係、それから土木工事連中は、これはどうしても実際問題としてやつぱり作業終つてから酒一杯……今私たちがああいう職業を廻つて見ますると、一日仕事を終つたらそこの詰所特配酒かどういうのか存つじませんが、組合で手に入れた酒だと思いますが、コップで一杯づつ飲んで、そうしてするめを噛つて、そして皆労務者が帰つて行くという風景が未だにどこでも見受けられるのですが、従つて成るべくこういう人たちには、特別のこの人たち向きの、こういう労務者向き配給酒でも設けましてそうして密集している地帶にはこれを流して飲ませる。こういう方法でもとつて一つ鉱山に限るということでなしに、必要に応じてはそういう方面考慮するわけには参りませんですか。大して予算面で影響するものでないと思いますが……。
  8. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その一般地上労務者の場合におきまして拡げるというふうになりますと、又どの線で範囲を切るかというなかなか厄介な問題があるのでございまして、現在は御承知のようにどつちかと申しますと、少い数量を比較的総花的に、現在どつちかと申しますとやつておる。それではやはり効果も十分ございませんので、従つてたちは或る程度集中的と申しますか、本当に必要な方面に限定いたしたい。値段の差も大分近ずきましたし、一般自由販売値段もそう高いわけではございませんので、先ほど私ども申上げましたようなことを中心考えまして、それとのバランスにおいてどうしても必要なもの、こういうものにつきましては勿論よく検討いたしまして、適当な措置をとりたいと考えておりまするが、今直ぐ御指摘のようなところまで拡げるか拡げないかということにつきましては、もう少しく実情を調べた上で決定させて頂きたいと思うのであります。
  9. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 成るほど公定価格と言いますか、の場合には、このように二級酒で八十円の違いでありますけれども、これは普通のいわゆる一杯飲み屋という所に参りますと、又これに水を増したり、或いはいろいろの手が講じられまし、この値段では労務者はやはり飲む場合には得られないのであります。ところが特配酒でありましたならば、そのまま蔵元から持つて来た、酒類販売卸売業者から出て来たやつをそのままの値段で実際に手に入ると思います。ところがよそに参りますと、やはり多少酒には割増が付いているものでありまして、一本について必ず付いて来ますから、五十六円で一合飲むという工合には行かんと思う。一合飲むとすればやはり八十円、九十円ということに当然なるので、そういう点が特配酒にした場合は本当の四十八円、四十九円で一杯飲める。こういうことになるとえらい違いがあるのですが、それはやはり本当の実は酒飲みというのはそういつた自由労働者であるとか、港湾荷役とか、荷役をやつている人たちこそ本当に酒の好きな人が多いので、農村酒飲みというのは、私はずつと農村廻つて、酒は飲みますけれども、本当に好きというのはこういう階級のほうが実際多いのじやないかと思う。そういう人たちは酒がなければ、これはどうしても必需品であつて、必ずどこかに行つて飲む。そうでなくてもこういう連中は失業だとか、そういうものにぶつかりますので、従つてどうしても悪い思想的煽動に乗り易いという結果にもなると思いますので、それを緩和する上においても、政策的にも私はとらるべきだと思うのであります。その点一つつてもらわんと、今度の租税特別措置法は大体において余り反対する理由はないのですが、この点がどうしても我々納得行かない。考慮余地がある。これは予算面においてもう少し考えれば大して金のかかる問題じやないと思うのですが、一体それでは現在今度の改正によりましてどのくらい収入は変るのですか。
  10. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 予算面では、実は鉱工業のほうは原則としてやめるという前提で算盤を立てております。併しながら最近いわゆる酒の売れ行き状況等からいたしまして、私がさつき申上げましたような程度のことを実行いたしましても、酒税の予算に支障はないだろう、そういうことを考えまして少し拡張しようということを申上げておる次第でございまして、その点御了承願いたいと思います。それからなお、なかなか普通の値段では酒が入りにくいのではないかということでございますが、そういうところもたまにはあつたかと思いますが、今年は清酒につきましても大分増産いたしまして、一般に二級酒はもうそろそろ市場に大分出て来ております。合成酒は勿論これは前から相当出ておりまして、飲食店等で消費する場合は別といたしまして、自分が買つて家庭で消費をしよう、或いは寄宿舎等で消費しようという場合におきましては、大体今の菊川さんの御懸念はないかと私は思う。大体五百六十五円という金を出せば私は買えるようになつていると思うのであります。勿論これは公定価格でございまして、配給はいたしておりませんが、酒につきましては、なおやはり公定価格制度にいたしておりますので、大体私は御心配のような懸念はないものと思います。ただ範囲につきましては、最初に申上げましたように、主として非常な激務と申しますか、酒の必要が一番緊要なものにつきまして或る程度不均衡にならないように考慮したい。今御指摘のような階層につきましても、もう少しよく検討した上できめたいと考えておりますことを御了承願いたいと思います。
  11. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それは五百六十五円で酒屋さんで一升買つた場合にはそういうふうに当然公定価格で買われる、販売をされるでしようけれども、これを今私の申上げたような階層は、一升家に買つて来て酒を飲むだけの力はない人があるのです。実際その日の儲けをもらつたら、そのうちから一杯ひつかけてそうして家へ帰つて来る。そういう連中の人のことを申上げたのです。そういう人たちは一杯飲み屋と申しますか、露店商あたりで、街角でやつておるそこいらへ密集しましてそこへ持つて来るのは、大体において今燒酎にいたしましても何にいたしましても、密造酒が持ち込まれているということを聞きますし、あなたのほうの宣伝にしても画に拙いて、農村から密造酒をああいつた街角の一杯屋へ持ち込んで、そこで呑んで目が潰れたところの画を描いて、盛んに密造酒の排撃を宣伝しておられるのでありまして、従つてああいう所に入る密造酒防止する、或いはそういうものの横行を防ぐということになりますると、むしろこういう労務者に対しまし或る極く安い酒を、而も指定いたしまして、切符制度その他の何らかの方法配給方法考えられまして、した場合には密造酒跋巵余地がそれだけでなくなるのではないかと、私はそういうふうに思うのでありましてそうすると、密造を許すよりも、まだこれでやつたほうが、これでも税金が取れるのでありますから、これのほうがむしろ大局的に見て国の収入がそれだけ脅かされる率が少くなる、こういうように私は考えるのですが、その点一つ考慮されまして、例えば芝浦あたりであるとか、ああいつた横浜の埠頭あたりであるとか、その近くの労務者の密集する地帯、それから大駅の仲仕、馬車挽きであるとか、こういうような人たちの密集する詰所あたりへ特例にこの特配酒配給する店を指定して、そこへ流すというような方法が講じられないですか、非常に量は僅かだと思うのですが……。
  12. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) お話のようなことまでいたしますと、やはり相当な量が要るのではないかと思うのですが、現在は一年に二回とか三回とか、一定の時を限りまして、一升ずつとか、或いは五合ずつとかいうのを職場を通じて配給をいたしておるのでございます。その数量も最近はよほど減つて来ておりまして、而も減つて来ているが、非常に広くなつているというのが現状でございます。だからこれは私は、数量は余り減らさないで、成るべく必要な方面に、数量と申しますのは一人当りの数量ですが、流したいというふうに考えておりまして、先ほども申上げましたようにいたしたい。成るほど一升は買えないかも知れませんが、はかり売りをいたしておりまして、一合でも二合でも酒屋に行きますと買えるという状態でございますので、その御心配は余りなかろうと思います。酒場等で飲みますと、これはやはりそこの手数料が加わつたり、或いは飲食税がかかつたりいたしまするので少し高くなる。配給酒につきましては、このような方法でやることは現在認めておりません。従いまして、家庭で一合か二合買つてつて飲むというような場合でございますれば、配給酒との開きが、前は相当開きがあつたのでありますが、現在はよほど少くなつております。確かにそういう点は認められるのでありまして、そういう趣旨対象を嚴密に、本当に必要なものをよく調べまして、対象を限りまして目的を達するようにいたしたい。今御指摘のような業種に具体的に今入れるか入れないかという問題は、もう少し現場実情を調べた上で検討いたしたいと思いますから、確たる御返事をすることは差し控えておきたいと思います。
  13. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それではこの法案通りましてから実施されるに当りましては、必ずしも農村とか鉱山地下産業労務者に嚴格に限定してしまう意味ではなくて、どうしても必要であつて、いろいろ弊害も起るという場合には多少の考慮はする考えであるという、こういうように了解してよろしゆうございますか。酒類種別等は別といたしまして、焼酎とか、その他の酒にするとかいうような種類は別といたしまして、或る程度考慮はするつもりであると、こういうように了解してよろしうございますか。
  14. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 考慮するつもりであるということは、まだ決定いたしておりませんから申上げかねますが、そういう問題はよく検討した上できめるというふうにお答え申上げたいと思うのであります。
  15. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようでありますが、質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  17. 小林政夫

    小林政夫君 大体、今回とられようとしている特別措置については賛成をいたします。ただ質疑の過程において申述べましたごとく、重要な工業所有権等に対する源泉徴収利率の軽減の基礎については政府当局においても実情考慮して、二十八年一月一日までその徴収適用期日を延期することとされておるのであります。これを延期する必要がある現状の打開、即ち外国工業所有権保持者等日本業者との契約更新、或いは当該国との間における我が国との租税協定等取運びの推移等考えて、折角延期するという措置を講じられた趣旨が生きるように将来においても考えられるように、これを一つだけ附加えまして、原案に賛成いたします。
  18. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は先ほどから質問をいたしましたように、やはり小さい問題のようでありまするけれども、今何と言いましても、民心を安定する、特に余りに恵まれない階層と申しますか、肉体労働をやつて、その日の日傭い労働をやつているというような人たちには、やはり成るべく安く慰安が得られるようにする。その一つ方法として今日まで酒類特配特別価格酒配給が行われておつたのでありますが、今度臨時物資需給調整法の廃止に伴つて、多少その範囲を狭められるようになつたのでありますけれども、実情に応じましては、やはりそれをどうしてもせなければならんというような場合も起つて来るだろうと思います。又特に重点的に労務者強行作業を要請しなければならん事態も起つて来るだろうと思いますから、そういうふうな場合には必要に応じまして、或る程度従前制度を残すようしてもらわなければならん。今も主税局長が検討をするというお話でございますが、我々は又その必要な具体的な場合が起きた場合には、強硬に大蔵当局に対して要求する。従つてその要求を受付けられるように常に保有量を持つてつてもらいたいというような條件を附しまして、この法案賛成をいたします。
  19. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより四案の採決に入ります。最初租税特別措置法等の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のかたは御挙手を願います。    〔賛成者挙手
  21. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定しました。  なお、諸般手続前例により委員長に御一任願います。それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     菊田 七平  下條恭兵     菊川 孝夫  黒田 英雄     野溝  勝  岡崎 真一     小宮山常吉  田村 文吉     伊藤 保平  西川甚五郎     大矢半次郎  大野 幸一     小林 政夫   —————————————
  22. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に、資産評価法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手
  23. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般手続きは前例により委員長に御一任願います。それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     菊田 七平  下條 恭兵     菊川 孝夫  黒田 英雄     野溝  勝  岡崎 真一     小宮山常吉  田村 文吉     伊藤 保平  西川甚五郎     大矢半次郎  大野 幸一     小林政夫   —————————————
  24. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に、通行税法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手
  25. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般手続前例により委員長に御一任願います。それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     菊田 七平  下條 恭兵     菊川 孝夫  黒田 英雄     野溝  勝  岡崎 真一     小宮山常吉  田村 文吉     伊藤 保平  西川甚五郎     大矢半次郎  大野幸一     小林政夫   —————————————
  26. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手
  27. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般手続前例により委員長に御一任願います。それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     菊田 七平  下條 恭兵     菊川 孝夫  黒田 英雄     野溝  勝  岡崎 真一     小宮山常吉  田村 文吉     伊藤 保平  西川甚五郎     大矢半次郎  大野 幸一     小林 政夫   —————————————
  28. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案予備審査)、右について質疑を行います。なお、お見えになつているかたは、平田主税局長北島税関部長記内通商繊維局長中村通商化学局長のこの四氏が来ております。
  29. 小林政夫

    小林政夫君 昨日、課長のかたに聞いたのでありますが、改めて伺いますが、建染染料の中で輸入しなければならないものと、国産でやれるもの、又現在生産計画も立ち、近き将来において国産ができるという国内事情であり、国内メーカーによつて大体最近において国内商品として出される、そうして使い得るという状態にあるものと、是非輸入に仰がなければならんものとの区別はつきりつくような、税関でそれをはつきり区別、見分ける方法はないかどうかということの質問に対しては、相当困難であるという答弁でありました。が、それはまあ一応今そういうふうに現在において考えれば、手数かかかるし困難だということなんでしようが、これは専門家意見を聞いてもそうなんですが、どうしても関税を分け、輸入品に対しては或る程度のこういう関税をかける、そうして国内でできない、又造る意思のない、或いは造る意思はあるが、当分市場に出廻らないというものについては減税の措置を講ずるというふうな、同じ建染染料でそういう二種の税率を用いることについてやらなければならんというふうに考えて何とかそれを税関において然るべく区分けをする方法考えられないものかどうか。やる意思になつてどうやつてやろうかと、そうきまつたとして、何とか見分ける方法考えるなれば、考えが出るのではないかというふうにも考えるのであります。私も先般工場を見廻つたときに、簡単にこういうものが建染染料でありますということで、試験管で布を染めて色分けをする、もうはつきり、ほんの一分か二分間くらいでこれがカーキーか或いはブラウンということはすぐ出る、成るほど。パウダーを見たんではわからないで、染めて見れば簡單にわかる、そういう実験施設等もあるようでありますから、やろうと思えばやれるのではないかという気もするのですが、やる気になつそういうことがどうしてもできないかどうか、念のためにお聞きします。
  30. 北島武雄

    政府委員北島武雄君) 昨日も技術のほうの専門家の木谷鑑査課長から御説明申上げたと思いますが、建染染料であるかどうかということは、検査鑑定いたしますれば、これはわかるわけであります。現在日本で果してそれが生産されているものかどうかという点につきますと、やはりこれは技術的には非常に困難であるということでございます。まあ一々染料につきましては、少量の輸入も大分多うございますから、一瓶ごとに見本を取るということにつきましては、商品の価値を損傷する慮れも多分にございますし、それから又果して日本でできるかどうかということの分析のために相当手数がかかりまして、通関手続が遅延することも考えられます。それから又日本でできるものとできないものというすれすれのものもやはりあるわけでございます。これらを混合いたしまして輸入いたしました場合に、果してどの程度が免税されるべきものであり、どの程度が課税されるべきものであるかという区別は、これは実際問題として非常に困難であると思います。果してそういうことをやりましたほうがよろしいかどうかという点につきましては、これはやはり相当慎重に考慮しなければならない問題ではないかと考えるのであります。
  31. 小林政夫

    小林政夫君 同じその建染染料のカーキーならカーキーについて、これは国産品か或いは輸入品かというようなことは、勿論区別はつけにくいと思いますが、はつきりカーキーとか、ブラウンとか、ヴアイオレットというようなものについては、勿論これはヴアイオレツトならヴアイオレツトの中で国産か、歳入品か、外国製品かというようなことを区別することは勿論国難だと思います。そこで繊維局長にお尋ねしますが、そういつたことでなしに、只今取あえず色等において分けこのカーキーは大分国内でできるということでありますから、カーキーについてはこれは輸入するということは許さないという建前で、原則としてはもう全部国産を使う、それだけの能力はあるのだから使わせるということで、まあそこを話合いを、話合いというか、カーキーは国産にするという話合いをはつきりつけ、色によつて分けるということはできないのですか。赤なら赤は免税だとか、或いは税率を減らす、そうすれば色分けをするということは、私の見たところは簡單に短時間でわかりますが、その点どうですか。
  32. 木谷忠義

    説明員(木谷忠義君) 只今の御質問でございますが、色につきましては非常にむずかしい点がございます。と申しますのは、色は三原色から成り立つわけです。極く簡單に言いますと、三原色だけ、三つの色だけがあれば、その配合によつて各色は全部出るわけであります。赤と仮にまあ黄色としますと、その色の間には連続してずつと色があるわけです。その色のどれを免税するとか、そのどれを高くするということをやりますと、色ははつきりした区別がない。赤から黄色までがずつと連続して行つておるわけですから、そこのところのどこへ線を入れるかということは非常にむつかしいことであります。それで染料の名前がたくさんあるのです。約百種類ほどある。その百種類ほどあるというのは、結局は三原色だけで配合して使わないで、直ちに坐るようにいろいろ混ぜてある。簡單に言えばそういうふうになるわけです。それが色の数をたくさんにして置くほうが使うほうには便利なんです。従いまして、輸入するときはいろいろなものが註文によつて出て来ることもあり得るわけです。それでどれとどれと指定しましたとき、その隣の色が来ましたときには、そこの間にはつきりした区別があれば、これは非常に見易いのですが、その間はずつと連続しておりますから、むずかしい。これは普通に見た見方です。單に色を以て赤をどうするとか、青をどうするということでは判別の限界点が非常にむずかしい。もう一つは、科学的に申しますと、染料にはそれぞれ名前がついております。カーキーの何々、何の何々という名前がついておる。その名前というのは、いわゆる分子の化学構造から来た名前なんでございます。その化学構造を一々税関で調べるということになりますと、これは非常にむずかしい実験が要るわけです。それで日常の分析作業をやつております分析の仕事としては、税関の分析ですね。仕事としてこれはちよつとむずかしいことではないか、研究的にやればできないこともないと思いますけれども、その辺が非常になお十分研究を要する点じやないかと思います。
  33. 小林政夫

    小林政夫君 非常にシリアスに考えればその通りかも知れませんが、これは局長クラスで考えてもらつて……毎回問題になつておるので、勿論国内産業擁護の意味において関税をかけて擁護するということが筋だと思うのですが、一面織物の輸出ということについても、外貨獲得の面から相当考えなければならんし、その免税ということについても暫定的な意味において考えて、そうして従つてそう嚴密にやらなくてもまあ大体インボイスにおいて記載された点を信頼をし、どうもおかしいというものについてはつきり見分ける措置をとり、そして大体において今の大きな色分け程度のことでやれないものかどうか、非常に厳密に、シリアスに考えれば、これは相当問題だけれども、大ざつぱな、一つ政治的な線を引くというようなことでできないものであるかどうか。
  34. 木谷忠義

    説明員(木谷忠義君) 只今の点でございますが、この課税するかどうかという点になりますと、これはやはり物的な証拠を挙げて、こういうものがあるからこれは関税を取るのだということで以て行かないことには、納税するほうも納得せないわけです。それで例えば訴願になり、最終的には裁判所まで行くことになるのです。そのときやはり税関として、どういう根拠に基いて課税したかという、その根拠をやはり出すためには、こういう色と思われたからということではやはり課税できないのであります。やはりこういうものがあつたからということが、ここに物的なものが出て来なければ税関では困る。そこがやはりはつきりしたものが得られないと、税関の課税上やはり支障があるのではないか、こう考えております。
  35. 小林政夫

    小林政夫君 だからそういつたこれはどうもおかしいと思うものについては物的証拠を出してもらえばいいので、普通は今の試験管等でちよつと試験してみればわかる面もあるわけですから、そのことで判別がつく範囲の区分をしてやれはしないか。どうもすれすれで混合なんかしておれば、お説の通りいろいろ色も似通つた色を出せるでしようが、そういう脱税のためにいろいろ細工をしてやつて行くということも考えられるけれども、まあどんどん一つ日本のメーカーで早く作つてもらえば、こういう困難な鑑定事務も解消するわけですけれども、鑑定事務がやりにくいという以上に、非常に毎年年中行事みたいにメーカーと本省側とが争うということも甚だ面白くないし、そこに政治的な線を無理をしても引くということを一つ局長の間で考えられんかというのです。
  36. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この問題は実は私ども昨年の関税率をきめる際  におきましても、お話のような議論もありまして、実は仮に非常にいろいろな角度から検討さしてみたわけでございまして、そしてその結果といたしましては、先ほどからお話がありますように、非常な手数をかけ、非常にむずかしいことをしてやれば、物理的に不可能ということは私もないと思いますが、併しもともと染料は、これは御承知の通り非常に少量で而も値段が相当張るもので、やれ実験する装置が何だとか、ひねくり廻している間に毀損するような場合も出て来ましようし、それから又延いては引取りが遅れる、それによつてつて取引の円滑を阻害するというような結果にもなりまするので、そういう方向でこの問題を解決するのはどうもやはり私どもとしては不適当ではないか。それも確かに一つ考えられる方向ではございまするが、どうもその方法は私どもとしましては、とりがたいということに、実はたびたび検討いたしました結果相成つておる次第でございまして、まあ政治的ということでございましたが、今この問題をそういう角度で解決するというのは、どうも少しやはり如何であろうかと考えておる次第でございます。この問題はやはり染料といたしましては、又議論の分れるところは五%でございます。染料業者、メーカーのほうは二五%にしてもらいたいと言う。反対に使用者側はゼロを希望するが、少くとも一五%にしてもらいたい、こういう意見でございまして、その五%ぐらいの、私どもの提案しているのは二〇%でございますが、そうでございますれば、そういうようなことをしてまでもやるいわゆる実益があるかどうかということを考えますと、そういう見地からいたしましても、そのような、非常に繁雑なトラブルの起りやすい方法をとりますのは、どうもとるべき措置ではないではないか、かように考えております。五%でございますると、メーカーのほうにはこれは相当なやはり採算に乗つて来ると思うのでございますが、織物製品のほうにはそれが非常に分散されまして影響度が物によりましては、或る物は勿論あると思いますが、全体的に見ますと、的軽微な場合が多い。例外は勿論あり得ると思いますけれども、そういうことを考えますと、私どもやはり原案でいいのじやないかということを考えておる次第でございまして、なかなか議論の盡きないところでございますけれども、昨年の参議院でこういうふうにきまつた事情もございますので、成るべく一つそれでお願いしたいと思います。
  37. 小林政夫

    小林政夫君 繊維局長どうですか。
  38. 記内角一

    政府委員(記内角一君) 私ども通産省としましては、昨年も原案といたしまして、一五%ということで原案を提出いたしたのでございますが、修正になりまして二〇%、併し暫定的に一カ年ということに相成つた次第でございます。その後におきまして、例えば昨年の春から夏にかけての輸出キャンセルの問題その他にから見まして、南方諸地域といろいろ折衝いたしましたが、こちらから輸出しました繊維品の堅牢度が非常に悪い、染色が悪いというふうな事柄の苦情も非常に多くなつております。又御承知の通りインド方面は堅牢なものでなければ輸入を禁止しておるというような、インドのようないわゆる繊維の後進国においてもそういう措置をとつておるというような関係もありますので、繊維局としては、今後の輸出品については少くとも不堅牢な染色はこれ禁止しなければならん、すべての堅牢度の染色に持つて参りたいということで、目下のところでは六月一日以降は不堅牢なものの積出しを禁止するという態勢でそれぞれ準備を進めて参つております。関係業者方面もこれで行かなければ日本の経済はだんだん衰微する一方だということで、全面的に納得をしておるような事情に相成つております。この一カ年間にこういうふうな重大な変更も来しておりまするので、通産省としましては、やはり昨年提案しました通り、一五%という程度にお願いをいたしたいというふうに考えておつたわけであります。ただこの染料の勿論国内で生産されまする建染染料は品種も非常に少いわけでありまするので、若干の煩瑣な点を除けば、大体大部分の染料は課税せんでもいいじやないかというふうなことも考えられますので、そういう面から取扱つて頂ければ技術的には取扱い得る、区別し得る面もありはしないかというふうにも考えられるわけであります。ただ現実の扱いとしましては、何分にも税関当体で扱つて参りますので、非常に技術的な面がありますので、私どもからは強くこれを主張するわけにも参らないという立場にあるわけであります。繊維局、化学局であれこれという意味でなくて、通産省全体としましては、そういう意味も加味しまして、昨年と同様一五%に原案として進んで参りたいというふうに考えておつた次第でございます。大蔵省の方面ではやはり昨年の改正された経緯なども考えられまして、原案としてはやはり昨年修正決定になりました現在の法律をそのまま援用するという立場をとつておられるようでございます。通産省としましては、昨年政府から提案しました原案、即ち建染の一五%ということにお願いできれば結構かと思つておるわけでございます。
  39. 小林政夫

    小林政夫君 私も実は昨年参議院ではこの関税政府提案よりも上げたのであります。そこでそういう責任上国税調査でメーカーのほうの事情も調べ、又最近の今記内政府委員の言われたような情勢等を考えて、相当愼重に考えなければならないということで考えているわけですが、今記内政府委員も私の言うような国内品と輸入品との区別は法理をすれば行くのじやないかという気持を持つているということであります。そうして又その区別はつきにくいつきにくいということで、いわば余まり根拠のない妥協的な一五%或いは二〇%というような税率で行けば、恐らくメーカーのほうでも一五%では不服だ、コンシューマーのほうは勿論輸入品は零であつて欲しいということで、止むを得ず一五%の線で妥協をするということ、願わくばもう低いほどいいわけですから、零が一番いいわけですけれども、そこでどちらにも不徹底な措置だ。そういうふうな不徹底さでやるよりは、少々手数がかかる、或いは脱税があつても、むしろ国内メーカーのほうで積極的にこの増産態勢を作つて、全部スレンは国内で作るのだ、又将来の染料の趨勢から言つてもそうあるべきでありますが、国内で作れば大幅に関税で保護するぞという態勢を一方において示して、そうしてこれを関税のほうにその尻を持つて来ずに、実力で以てその供給を増加して行く方法でこの問題を解決するという意味において、国内でできるものは相当大幅の二五%でもいいと思うし、その税をかける。そうして輸入品はこれは零にするという建前で行つて、一日も早く国内品ができることを 望むというふうに行くべきじやないか。多少そこに脱税或いは税関検査等において問題が残るかも知れませんが、併しその余り悪質な脱税者等が考えられる場合においては、抜打ち的に視察をするという途も考えていいでしようし、そういうことで以て大蔵当局のほうはやつて……、どうも私は両方とも不徹底な又中途半端な税率で以て、而かも毎年この騒動を繰返すということも煩に堪えないので、そういう方法がどうしてとれないかと思うのですがね、平田さんのほうで少々そういう点、手数に目をつぶつてそういうふうな考えになれませんか。
  40. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その問題は先ほど申上げました通り、実は昨年この関税率をきめます際も問題にいたしまして、そうして相当愼重に各般の事情を考慮した上、私が先ほど申上げましたような結論に到達しておるわけでございまして、私はやはり若干の税のために非常な手数をかけて、却つて実際の取引にいろいろな迷惑を及ぼすというようなことはとるべき策ではないのであつて、然らば税関は大目に見て適当にやつたらいいのではないかというお話もあるかと思いますが、なかなかそうもやはり行かないと思います。と申しますのは、割合にこれは染料といたしましては数量は少いのでございますが、個々的に相当なまとまつた額になるのでございまして、そういうものを適当にやるというわけにはこれは行かない性質のものではないかと考える次第でございます。それで関税政策として我々は考えるのでございますが、こういうものが実りは保護関税として一番適当なものではないか。と申しますのは先ほども申しましたように、或いは五%の差でありましても、染料のメーカーには相当の影響を及ぼす、ところがそれがおいおい使われて、最終商品としてさばかれる場合においては、それは非常に広く分散されまして、最終消費者の価格におきましては一%そこらの差になつて参りまして、そのために私は染料の税の関係で織物の売行が悪くなるかどうかということになりますと、私は大局的に考えましそれほどの問題ではない場合が大部分ではないか。勿論僅かの場合に問題になる場合も全然なきにしも非ずと思いますが……と思いまするし、私どもいろいろ関税政策を考えまして、保護する場合を考えておりまするが、そういう見地から考えますると、こういう染料はやはり最も適格性を持つたものではないか、で将来全然できる見込みがないということならば又考えるでございましようけれども、時間をかければ全部ではないにしてもできる種目がたんだん拡がつて行くということでありますれば、私は余り細かい今小林さんのお話のようにむずかしいことをしないで、やはり大体の大勢を睨んで御決定になつたらよろしいであろう。かように私は考えておる次第であります。
  41. 野溝勝

    野溝勝君 先に平田主税局長に聞きますが、先般質疑中に遺憾ながら退席されましたので、その関連の質問でございます、多分お耳に入つておるとは思いますが、この関税定率法中の殊に新聞用紙の点につきまして、あなたの退席中に通産当局と質疑を交したのですが、そのうちで特に明らかになつたのは昨年緊急必要の新聞用紙を輸入するということで、一年間に限りまして輸入するものに対しては免税をするということを承認したわけでございます。ところが輸入した新聞用紙が六千五百トン、約一千三百万ポンド、価格にして六億三千万円、輸入中の九割だそうでありまりすが、それが新聞用紙として使いものにならない不良紙であつたという始末だそうであります。かようなことはこれは本院を意識的に侮辱したということにはならんでしようが、結果においては全く本委員会即ち立法府を無視したというふうに私は見ております。むしろこういう事態が起つたならば、私は政府といたしましては、通産当局は大蔵省と直ちに打合せをし、又常時この常任委員会というものはあるのでございますから、議会には……。そこで一応その情勢に対して政府は立法府のこの大蔵委員会なり或いは理事会なりでさようなことを折衝乃至は経過を報告し、その善処を期すべきものであると思います。さような点については何も平田局長のみの責任ではない、通産当局にも責任があるのでありまするが、いずれにいたしましても、この法案に責任を持つておる諸君はかような処置をしなければならん。この点が先ず一点。それから民間から日本の原料なり、或いは輸出品なりを出す、輸出する場合は不良品なりがあるような場合はこれはキヤンセルとなるところが、輸入に対しましてはキャンセルをしたということも聞いていないし、又その後これをどういうふうに当局は処理しようとしておるのか、特にこの六億三千万円もする厖大な国の資金、財源を議会で可決した新聞紙に使えないようなものを国庫の財源からこれを処理するということにつきましては、これは趣旨と内容と違うわけでございますから、こういう点につきましては、どう今後処理しようという考えを持つているのか、この点を一つお聞きしたいと思います。なおほかにお聞きしたいこともありますが、いずれこの問題の御答弁によりまして、継続して質問したいと思います。
  42. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 新聞用紙につきましては、昨年免税措置をやりまして、輸入したわけでございますが、その輸入されたものが今お話通りどうも普通の日本の新聞用紙としては使いものにならんようなものが大分入つて参りまして、新聞社のほうも非常に困つていると申しますか、手違いを来たして困つている事情を私どももよく聞いております。これはまあ主として私は貿易上のまだ不慣れの点と申しますか、そういうことにつきましお互いに契約の際にはつきりしなかつた点が大分あつたかと考えられるように聞いておりまして、誠に私どもとしましても、免税の趣旨からついたしましては、遺憾と思う次第でございますが、併しこれにつきましては、なおやはりそれぞれの方面におきまして善後措置を目下とられておるように聞いておりますし、又今後におきましては、そういう過ちは二度と恐らくないのではないか、又すべきさものではないというふうに考えている次第でございます。責任云々の御追及がございましたが、これはそれぞれのやはり関係の業界におきまして、勿論政府も適当な手を施すべきだと思いまするが、万全を期して行くべきものではないかと私どもとしましては考えている次第でございます。今年それではもう一遍新聞用紙の免税を継続する理由でございますが、これは先般もお話があつたと思いますが、私どもやはり相当本年度も新聞用紙は入れる必要がある、入れる必要があるかどうか、これの問題たろうと思いますが、相当入れる必要がある、又入れるということが社会的見地から言つてやはり望ましいことであるかどうか、これが問題たと思いますが、そういうことがやはり今のいろんな経緯から行きますと、とにかく承認されている。国際割当物資会議にも日本から注文を出しているという実情でございますので、これはやはりそのことを考慮に入れざるを得ない。それから今度入つて来るものが日本一般の新聞紙よりも或る程度低いもので向うが売り付けて来る、こういう事情でありましたならば、これは私はやはり成る程度つて来ましても、関税をかけるということもこれはやはり理窟が通るかと思いますが、最近の事情を聞きますと、どうも必ずしもそうではない、やはり大部分頼んで入れるという関係上値段日本国内の新聞用紙に比べてそう低くないという事情があるように聞いております。そういうことだといたしますれば、これはやはりもう一年くらい免税期間を延長いたしまして、スムースにしたほうがいいのじやないかというのが私どもの基本な考え方でございまして、今申上げましたような事情に将来変つて参りますれば、これは当然原則に復帰すべきものと考えますが、どうもやはり国内で増産されまして、第一に入れる必要のないように一刻も早くしまして、免税の必要のないというような方向に行きますのが一番望ましいことだと思いますが、現在はまだそこまで至つていないというのが実情ではなかろうかという意味におきまして、この免税に賛成いたしまして、実は提案いたしておる次第でございますことを御了承願いたいと思います。
  43. 野溝勝

    野溝勝君 先日の委員会で私は何故に反対するかということにつきまして、いろいろの材料を、資料を示してそれに対する反対の理由を申上げたのでございますが、その際特にこの法案の処理に当つておられます。平田局長がおられなかつたので甚だ遺憾でございましたが、この点は一ついずれも速記録に載つておりますから、十分検討願いたいと思います。  更に私は今お答えになりました点で改めて質問をするのでありますが、この第一の新聞用紙として使い得ない用紙の損害は六億三千万円、これは誠に申訳ない、これに対する善後措置は業界と共にやるということなんでございますが、一体善後措置をどういうふうにやるのですか。又それに対する通産省と大蔵省との今日までの処理方針に対するお打合せの内容等に対してお聞かせ願いたいと思います。  更に、本年度も輸入した根拠につきましてお話がありましたが、これにつきましては非常に反対もあるのでございます。確かに大新聞社におきましては、これを賛成し、特に強く大蔵当局へ一番先に要請したそうでございますから、この点は池田大蔵大臣がよく承知だと思うのでありますが、そういう経緯は別として、とにかく大新聞社が必要だ、併し地方新聞は挙つてこれを反対している。その点につきまして、私は先般代表的な地方新聞の反対理由  の代表的な一、二を取上げたのでありますが、この際折角平田局長がその間  の事情に暗いようでございますから、明確にしておくために、委員長の了解を得て北日本新聞の社説を速記録に載せることの御了解を願いたいと思います。
  44. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) どうぞ。
  45. 野溝勝

    野溝勝君 では委員長の御了解を御  まして、速記録に載せることになりましたから、十分この点は御検討願いたいと思います。
  46. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつとお待ち下さい。やはり皆さんにお諮りしなければいけないそうでありますから……。野溝委員の新聞を速記録に載せることについて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ない  と認めます。
  48. 野溝勝

    野溝勝君 私はこの際申上げたいと思います。先般の委員会におきましても申しました通り、間接的には大衆に影響する法律案でございますが、現在問題になつておる点だけを見ますると、これは資本家と資本家との問題でございます。併し以上のような事実を我々がこれを承知したときに、これは国民に大きな影響のあるものでありまして、私はかような悪影響を国民に與えておいて、それを頬被りをして又一年間延ばす法案を出すというようなことにつきましては、断じて反対するものであります。私はこれは社会党とか或いは改進党とか、緑風会とか、自由党とかいう問題ではないのであります。この点は立法機関に籍を置いているも者として承知できないと確信いたしております。それから特に今予算においても相当問題になつた、昨日一応予算は上つたのでございますが、併しこの予算が通過するまでには、相当の論議があつたことは、政府特に主税局長も御了承のことと思います。全く今国民は、政府は案外軽く見ておりますが、この税金のために非常に苦しんでおるのでございまして、政府は国民所得が五兆何千億あるとか言つている。本当に五兆何千億あるか、それは評価の仕方でございますから、或いは十兆にも評価の仕方ではなるかも知れない。それはともかくとして、全く納税は一般国民としては飽和点に達しておる。併し飽和点に達しておる一方、ぼろい儲けをして何割も儲けておる会社もある。だから例えば製紙会社が莫大な儲けをしておるというなら、これは別の角度で捕捉したらいいと思う。私はこういうものは所得税に対する百分の五十五だとか、或いは限界線をおく必要はないと思う。乃至は法人税をかけてもよいと思う。そういう方面はそれは捕捉の仕方があるのでございます。例えば、新聞社にもそれそそれの利益もある。だからこれはもうその方面で捕捉をすればよいのでございますが、併し日本の民族産業なり、民族資本を圧迫し、外国の資本を歓迎するような買弁政策というものには対すべきであると思います。特に大蔵当局におきましては、ドルの獲得に全力を挙げておるじやありませんか。昨日来も申したのですが、エキスポータブル説を盛んに振り撒きまして、大いにドル獲得を慫慂されておるのでございますが、その点を建前として、国是として、政策として努力をするならば、私はこの新聞の用紙の問題などは九月になればどこどうか需給のバランスがとれるという状態にある。一面国内においてはドル資金が欠乏して、経済上の不安定を来たしておる今日現段階におきまして、あえてこのドルを出すような政策なり、方針に対しましては、愼重に私は検討しなければならん。二万二千トンならいいわ、IMCのほうから安く来るからいいわ、安く来るか来ないかもうわけがわからない。来るだんべえ、だろう診断でしよう。その診断が昨年も誤つてこういう迷惑をかけておるではありませんか。これはむしろ通産当局にも言いたいことなんです。でありますから、こういう点から見ても、私は国内におけるところの業者が九月になればどこどうか需給のあれがとれるということを明確に打出しておりますし、先般通産省の雑貨局長もこれを承認しておるわけです。こういう点から見て、何が故に私は一年延期をして国民の財政上の苦しい際に、日本のドルを放出するまであえてしなければならんか、こういう点なんです。八頁建、二十何頁建が絶対必要なのかどうなのか。たとえ必要にいたしましても、日本の経済との間においてどちらが一体利益をするのか、しないのかという点も、行政当局は考えてもらわなければならんと思うのであります。更に国民生活が苦しいという現実につきましては、最近新聞紙上におきましても我々の非常な心配を起しておる問題が非常に族生しております。特に大蔵当局におきましては相当心配されておると思うのでありますが、税務署の襲撃事件でございます。事の真相はまだ明らかにされておりませんからわかりません。今日まで大蔵委員当においてこの問題が一回も論議されておらんということを聞いたのですが、私はかような税務署の襲撃事件が数々起つておるということは、いろいろの理由もあると思います。併し人民、国民に及ぼす影響というものは、私は善意に解釈しておる人はかりではないと思います。これは成る非合法と言いましようか、或る団体の策動によるものであるというふうに解釈ばかりはしておりませんし、又さようでばかりあるとは私は考えません。併し一番国民に直接体当りをしておりまする行政の末端者としましては、私は気の毒だと思います。どこに一体かような事態を起す原因があるのかということを考えますならば、これは私は政府並びに自由党の財政施策というものが当を得なんだという点に対する、国民的非難もあることを私は承知してもらいたいと思う。こういう点から見てもですよ、私はこれは僅かの金だけでいいわというようなわけでこれを見逃すわけには行きませんので、この点をもこれは関連的な問題にはなりますが、お聞きしておきたいと思うのでございます。私はあとは建染染料の問題で質疑を交したいと思いますので、以上の点だけを一つ平田局長から承わつておいて、次に私の意見を出したいと、かように思つています。
  49. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 大分大きな問題も入つておりまし私が全部を答弁する資格があるかどうかは問題でございますが、お尋ねの中の項目につきましてお答えいたしたいと存ずる次第であります。いろいろ問題があるようでございましたが、まあ新聞紙の免税に関連した問題といたしまし先ほどお話のように、この製紙業が或る程度儲かつているから関税をまけるのだ、まあ私はそういう考えは、これはやはりとるべきでないということは今お話通りだと存じます。で問題は、然らば外国から入つて来る紙が非常に安く入つて来まして、それによつて日本の製紙業が相当重大な影響を受けるかどうか、まあ重大な影響を受けるとなりますと、これはやはり私は成る程度関税で保護するという必要が出て来るのでございまして、まあそういう事態に現在あるかどうかという問題だろうと思いますが、まあその点に関しましては、大体最近のこの情勢を聞いて見ますと、そう安い値段で入つて来ることは、むしろ望んでもできないような事情にあるように聞いております。それは或いは今後情勢が変つて参りまして、むしろ日本に新聞用紙等の出先込みに来るような事態にならんとも限らんと思いますが、まあそういうときになりますと、これは成るほどやはりお話通り考え方を変えるべきで、こういう臨時措置を一刻も早くやめなければならないのではないかというふうにまあ考えております。  それからもう一つは、全体といたしまして、貴重な外貨を使うじやないか、これはこの点は私、全く我々としましては賛成でございます。成るべくこれはやはり国内で自給できるものは自給いたしましそれによつて必要な供給を図つて行くのが本筋ではないかと、まあ大体は私どもも御尤もな議論だと思いまするが、ただ、問題は新聞につきましましてそれが紙を入れることがいいか悪いか、入れる必要があるかどうかという問題でございますが、まあこの点に関しましては、現に必要ありと認めまして国際の物資の割当会議にも話を持ち出しておりますというような事情にもございますので、私どもはやはり事情を現在のところ尊重いたしまし、関税政策を考えざるを得ない。で、これは勿論当然外貨の話がつきましたら割当てるという前提でできておりまし、まあそういうふうな趣旨からいたしまして、関税政策としましても歩調を合せて然るべきものではないか。併しこれは私も重ねて申上げますが、一刻も早く国内で増産ができまし、それによつて新聞紙の十分輸入の必要がなくなるような事態になることを望みます点におきましては、あえて野溝委員に劣るものではないことを重ねて申上げておきたいと思います。  それからなおその拙いろいろ最近の内国税の課税の問題につきまして非常に有意義な御注意を受けたわけでございまし、私どももそういう点につきましては非常に平素から苦心を払つておるものでございまするが、この点につきましては野溝さんもよく御承知の通り、私どもはやはりできる限り国民負担の軽減、なかんずく所得税を中心としました税の軽減ということには非常に努めておりますことはこれも御承知のことかと思います。所得税の負担につきましてはいろいろ議論がございましたが、これはもう繰返すまでもなく、ここ二、三年市町村民税を入れましても相当下つていることは、これもお認め下さると思いまするが、そういう点がやはり根本的な問題であるということはこれは確かに考えられるのでございます。ただ最近の事態を考えますと、そういうことだけではなくて、それに何かもう少し違つた角度から入りましたいろいろな事件が起きているようにも聞いております。この真相はもう少しはつきりしないと私ども的確には申上げにくいと思いまするが、新聞紙等の伝えるところ、或いは諸般の情勢等を聞いて見ますと、どうもただそれだけで出ているのではない節もあるようで、これは結局やはり御指摘通り国政全般の問題、或いはそういうものに対しまして政府全体として如何に対処するかという問題でございまして、どうもそういう問題になりますと、私ここでお答えする資格を持ち合わしていないことを遺憾に存じます。御了承願いたいと思います。  先ほどの新聞の輸入に関しまするいろいろな問題に関しましては、幸いにしまして通産省からさつき局長が見えておりますので、あの善後措置等につきまして、通産省のほうから更にお話願うようにいたしたいと思います。
  50. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) 只今おお尋ねがございました六千五百トンばかり輸入しました新聞用紙が、国内に使えないようなものが輸入された、それの善後措置をどう考えているかというお尋ねでございますが、御承知のように本件の輸入は政府輸入であつたわけではございません。新聞屋の注文に基きまして、貿易商社三社ばかりが外国の売手との間に契約をいたしまして輸入したというような経路を辿つておるようなわけでございます。而うしてその顛末を私ども聞いておりますところによりますと、單純な刑事事件と申しますか、契約違反だけの問題でなしに、いわば一種の詐欺事件と申しますか、計画的に不良品、日本がまあ新聞用紙が不足で慌てて買いたがつているというそこに売手がつけ込んだというようなことも、よくよく調べてみますとあるような模様でございます。そういう状況に相成つておりまするので、今私どもその問題につきましては、直接の当事者としては関係の損害を蒙りました輸入商、その輸入商に発注しておりました新聞社が紛争の当事者になるわけでございますが、その両当事者が契約上の問題として十分その権利の追求をやることを政府として援助するというのが、目下の差当りの問題としての態度であろうと考えておるわけであります。その立場に立つちまして、單純に両当事者の民間だけの問題としてやりますのみならず、必要に応じまして政府としても声援を與えたいというようなことから、若干の紛争解決の手伝いをしたいと考えております。方法といたしましては、業者が相手側に対しまして権利の主張をやりますのみならず、背後の契約者であります新聞社から、アメリカの新聞界にも輿論の喚起という形におきましてアッピールもしてもらいますのみならず、政府としましては外務省から在外公館を通じまし在外公館からアメリカの関係政府当局にその問題の善処方を申入れてもおりまするし、又司令部に対しましてもその問題を持込みまし、援助方を懇請しておるというような状況でございます。それから先ほどちよつと触れました刑事事件としての疑いも濃厚だというようなことでございますので、それにつきましても、アメリカ本国におきましての法的な訴追の手続というものも当事者から進めているというふうに承知いたしておるわけであります。  以上が契約違反或いはそれに関連する訴欺と言いますかの始末に対する当事者のとらんとしておる方向、及びそれに対して政府が援助しておる、しようとしている方向の手続の概要でございますが、もう一つ残された問題は、この紛争の対象物でありまする輸入紙の始末の問題があるわけでございます。これは紛争の対象物でございますので、紛争の解決の成行きを見て態度を決定することが妥当と考えるわけであります。抽象的な問題としまして、私どもとして考えておりますことは、そのうち一部は新聞用紙に使えるわけでございまして、その限りにおきましては当初の輸入の目的に副つたものでありますから大した問題もございませんが、新聞紙として使えないものが相当部分を占めておりますわけでございます。これはいわば予測せずと言いますか、計画して輸入されたものではございません。そういう関係に相成るわけでございますが、それがさなきだに最近の国内の紙業界というものがいわば峠を越して、而も低落の状況を辿つておるというような際でありますので、紙業界に非常なショックを與えておるというのが現状でございます。従いまして、問題の発端は予測せずして起つたことでございますが、その数量も相当の数量でございまして、それらの処置如何によりましては、国内の市況、延いては国内の製紙業界に不当な圧迫を加えるということになる慮れがありますので、私どもとしてその不安を少しでもなくするという方向において問題を考えなければならん。極めて簡單な方法と言いますか、若しできますならば、原則的な考えとしましては、国内市場に影響を與えないようにというシステムを考えまして、その紙が再輸出でもされるということになりますれば、一番好都合だというふうに私どもは考えておるわけであります。これは抽象的な考え方でございますが、何分目下のところ紛争の対象になつておりますので、次の処分の問題に入る段階ではございませんけれども、従いまして具体的な処理方針というものはきめる段階ではございませんが、抽象的な問題としまして、その始末の如何によつて国内に重大な影響を與える虞れありということを懸念し、そうならないようにすることが我々の責任であるというふうに考えておりますことを申上げておきます。
  51. 野溝勝

    野溝勝君 本法案理事会の決定によりまするというと、成るべく午前中で上げたいというのでございますが、どうも私が発言を許されたのは十二時五分前でございますので……まあ質疑だけだそうでありますから、質疑にしても午前中だというのでありますが、五分前に許されたことでございますから、今少し関連してお許し願いたいと思います。これはまだ予備審査でございますから、いずれ本審査の際に、未熟の点はその際に譲りたいと思います。ただこの一点だけ私は意見を申し加えておいて、本審査の際には特にこの点に対する回答を願いたいと思います。主税局長が言われましたごとく、財政と税務署襲撃の件は大きな政策上の問題になりますので、大蔵大臣との間における質疑を交すことに譲りたいと思います。  それから今雑貨局長の御答弁で大体がわかつたのでございますが、この紛争の経緯と睨み合せてそれを処理したいと、こういう御意見でございます。これも私は了解いたしました。そこでこれに対する経緯につきましては、本委員会に内容が明らかになり次第報告を願いたいと思います。これだけ申しておきまして、私は次の質疑に移りたいと思います。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと野溝さん、それに関連して簡單に……只今の問題について質問したいのですが、時間がありませんから、この問題についてもう一度質疑できる機会を與えて頂きたい。それだけです。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  53. 野溝勝

    野溝勝君 建染染料について一つお聞きしたいと思います。この関税税率等の一部改正の中に建染染料が又一年間延期になるようでありますが、一体この染料なども日本におきましては、この第二次世界戦争前に非常に発展をして来たのですが、世界戦争になるとかような染料工場は火薬工場に転換をしたのですが、それがために非常な沈滯をしてしまつた。ところがその後この歴史を見ると、政府におきまして、特に通産省においては重点産業にこれを取上げたわけです、重点産業に取上げた意図というものはどこにあつたのかというこの点が一つ。それから日本における染料事情というものが今大体二十種類ということになつておるようでありますが、配合すると四十種類の色を出すことが大体できる。ところが政府当局の答弁を聞きますると、染色業者からどうも日本の原料は比較的低級であるということを申されておるわけです。そこで片方のほうにおきましては、原料生産者のほうにおきましては、完全と行かなんでも大体それで間に合う。染色業者のほうはどうもそれ  では弱るということを言つておられる。併し一体この染色原料を使う分野というものは実際我々には明確になつておらないのです。色の基礎種類というものは三種類あると先ほど言われたが、私も子供の時分からそういうことを聞いておる、それが二十種類更に四十種類ということになり、百種類もなければならんのは一体どういうわけで必要なのか、私にはわからない、先ずその点から聞きたい。特に外国の染料種類百種類を相手にしなければならんようなそんな日本には重要な産業があるんですか。そういうことを一つ聞きたい。それを先ずお聞きして、そうして私の質疑を続けて行きたいと思うのです。
  54. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 野溝委員の二つの質問のうちの第一の点につきまして御答弁申上げます。終戦後染料工業の再建ということにつきまして、政府が御指摘のような対策を閣議決定を以ちまして実施に移しましたことは、終戦後におきます繊維工業の再開、特に輸出というような観点と対応いたしまして、染料工業の再建ということを大きく取上げたのでございます。第三点につきましては、繊維局長一のほうから御答弁申上げます。
  55. 記内角一

    政府委員(記内角一君)  染料の大部分は繊維の染色用に使われております。御承知の通り生活様式がだんだん複雑になつて参りますと、いろいろ色合の変つた柄物が尊ばれるということになりまして、その柄の変化に応じていろいろな色が要求されるということになつておるわけでありますが、それが内地のものだけであれば問題は少いのであります。これは大部分が輸出に向けられるわけであります。輸出物になつて参りますと、輸出の相手国からいろいろ色合の注文が出て参るのであります。過去におきましては、いろいろ専門家の調べたところによりますると、大体色合としまして八百種類くらいあつたわけであります。余り複雑なのでは、これは却つてその一々の注文に応じても却つてこちらも思わしくありませんので、これを相当整理いたしまして、現在大阪の工業奨励館というところで色の見本帖を作つておりますが、これで大体二つおきに、即ち三種類の同じような色を一つにまとめて一つの色にするという恰好で整理いたしました数だけでも約三百近い数字になつております。従いまして勿論非常によく使う色と余り使わない色といろいろありますけれども、とにかく輸出の中心が、繊維の大部分は輸出に向けられまするし、今後とも染色物を出さばなければならんという点になりまするというと、いろいろ色合の変つた非常に変化の多い染料も多分に出して行かなければならんというところにこの問題のむずかしさがあるのじやないかと考えておるわけであります。
  56. 野溝勝

    野溝勝君 打切りでないようでございますから、もうあと一点だけ……。政府では織物の染色種類が非常に多くなつた。だから日本の染料だけではどうも間に合わんというふうに考えておるらしいのですが、一体物を売るためにいろいろと目先を変えなければならんから、商売としてはさようなことに熱中するでしよう。併し要は何としてもやつぱり経済なんです。それから日本国内だけでそんなに注文があつてもどうしようもならんじやないですか。そこで輸出を一生懸命に皆さんやられておる。ところが輸出の状態がわからん通産省の中堅役人の諸君でもあるまい、局長さんがたは……。一体はけ口がないじやないですか。今どんなデザインを作つて見たところで、前に八百種類あつたか千種類あつたか、そんな一体架空な、或る特定な業者のそういう魅力と言いますか、魅力を感じちやそうして思いつきぐらいの案を立てられたんじや困る。それからあれですか、アメリカあたりではそういうたくさんの染色種類があるからそれを入れるということだけれども、日本の経済といたしましては何するところがないじやありませんか。どういう考えで一体そういうことを考えておられるのか私にはわからない。よそに出すために貿易上その原料が必要で確保して、よそに出すために必要だというのなら私はわかります。併しそういう意味が多分に含まれておるのですか。又含まれておるとしたならばどういう方面に原料を染色したものが出て行くのですか。その数量並びに出て行く地域等について一つお話願いたい。
  57. 記内角一

    政府委員(記内角一君) 御承知の通り日本の輸出の半分は繊維でございます。そのうちの半分は染色品が出ておるのであります。従いましてこのためにはどうしたつて染料はいるわけでありますが、その染料が残念ながら高級のものは日本ではできない。それでどうしても輸出するためには、輸出しなくてもいいというなら結構なんですが、輸出しなければならないといたしますと、足りない染料は入れて行かなければならんというところに悩みがあるわけであります。我々といたしましても、内地でできる染料まで、内地でできるのであれば何も無税にする、或いは関税を安くする必要はないかとも存ずるわけでありますが、残念ながら高級の染料は内地じやまだ十分できておらないということで、この関税の引下げをお願いをしているような次第でございます。今輸出は出ないとおつしやつておりますが、昔ほど出なくなつておる、又出なくなりつつあるようにも思われますけれども、それだけになお更輸出は出して行かなければ、食糧の輸入もできない、又いわゆる国民生活を安定するためのいろいろな原料の輸入もできないということになります。これは是非とも輸出は継続してやつて行かなければならんというふうに考えておる次第であります。
  58. 野溝勝

    野溝勝君 これで一つ打切りましよう。どうもね、資料を見なければ質疑の継続はできないから、そこで今繊維局長はですね、輸出の大宗が繊維だ、大いにドル地域やポンド地域に輸出するという考えだから結構ですが、然らばその所要数量を明らかにされておらないし、この際資料を御提出願つて、それから質問を続けたいと思います。
  59. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 今野溝委員からの御希望の資料をお願いいたします。  では質疑もまだ残つておりますから、今日はこの法案に対しては質疑はこの程度にして休憩をいたします。午後二時に再開いたします。    午後一時二十七分休憩    —————・—————    午後二時三十二分開会
  60. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 午前に続き大蔵委員会を開会いたします。  在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案を議題といたします。引揚者団体全国連合会理事長北條秀一君より意見を聴取いたします。意見をお述べになる時間は約二十分ぐらいということをお含みの上でお願いたします。
  61. 北條秀一

    参考人(北條秀一君) それではお許しを得まして公館借入金返済に関する件につきまして意見を述べさせて頂きます。大蔵委員会の非常に貴重な時間を割いて頂きまして、特に参考人としてこの問題についての私の見解を述べろということでありますので、簡潔に要点を申上げまして、言葉の足りない点はどうか御賢察願いたいと存ずるのであります。  私は全国の引揚者団体の理事長をしておりまして又この公館借入金の問題につきましては、全国からすでに私宛に四万人に近い人たちが本件の解決についての一切の交渉を任せるというふうな委任状を頂いておるのでありまして、従つてこの公館借入金の問題は、私どもが引揚げまして後満六年間になんなんとする今日まだ未解決であるということにつきまして、私どもはどうしても早急に本件が解決されますように、而も私どものお願い申上げたいのは、急いで解決する、勿論急いで解決して頂きたいのでありますが、ただ急ぐだけでなしに、正しく而も実際に引揚げて参りまして以来惨但たる苦労をしておりますこれら引揚者の諸君の利益になりますように本件を解決さしたいと、こう考えておるのであります。そこで私は本日意見を申上げますに際しまして二つに区分して申上げたいのであります。第一は借入金の性質というものと、第二はこの公館借入金を私どもが種々解決するために運動いたしたのでありますが、その運動のうちの特に皆さんに本日聞いて頂きたいという特殊な部分と、及び衆議院から参議院に回付されました、今回修正されました公館借入金返済に関する法律案についての利害関係者の気持、これを第二に申上げて、第三に、さてそれでは具体的にどういう私どもが要求を持つておるか、従つて参議院にどういう点を陳情申上げるか、この三つの点について申上げようと考えるのであります。  第一の借入金の性質でありますが、これは戰後処理問題の中の人命に関する問題でありまして、国家の道義的責任上から言いまして最も重要な大きな問題であるということであります。御承知のように昭和二十年の八月十四日に日本政府はポツダム宣言受諾に際しまして、天皇の地位の保障と海外にありました軍人軍属の安全保障、この二つの件につきまして連合国に申入れをいたしたのでありますが、四百余万に亘ります在外一般邦人の安全保障については何らの申入れをいたしていないのであります。終戰後外地にありました四百余万の同胞は、戰争が終りますと直ちに恐るべき混乱と恐怖の中に陥れられたのであります。この混乱の中にありまして四百余万の同胞が命を全うするために最も重要な、強いて言えば命を守るために唯一の方法はお金でありました。命あつての物種ということをよく言うのでありますが、当時の在外同胞の状態は命と物種とこれ二つが全く不可分のものでありました。従らてこの公館借入金と申しますのは、その命と不可分の物種を借りよう、即ち金を借りて在外同胞の救済をし、そうして更に又後に起ります在外同胞の本国引揚の費用に充てようという金でありまして、その事情を申上げただけでも、この金の性質がおわかり願えると存ずるのであります。従つて命と不可分のお金を借入れるということは並大抵ならん困難なことであります。各人にとりましても全く混乱の中で、先に生きて行く自信がありません。そこでどうしても金を持つていなくちやならん。その金をより困つた人を救うために出してくれというわけでありますから、並大抵のことではこの金は出て来ないのでありますが、当時私は満州奉天におりまして、一般邦人の救済をいたします救済所長をいたしておつたのでありますが、私は先頭に立つてこの金の借入れに努力をいたしました。戒嚴令下におきまして、而も夜分になりますと非常にたくさんの強盗が出る。全く人命の保障がない。そういう中におきまして私は夜を徹し人を尋ねて、これに懇請をし或いは強制をし、ときによりますと脅迫をしてまでも金を渡して頂くというふうな、非常手段をとらなければなかなか金を出して頂くことができなかつたというふうな事情でありました。そうして集めたこの金でありますが、さてその金によりまして私どもは何をしたかということは、すでに申上げたのでありますが、外地にありますところの公館の館員各位及び一般避難同胞諸君の生活を守るためにこの金を費やしたのでありますが、その後に私どもは連合国によつて強制的に本国に引揚げろという命令に接したのであります。従つて引揚げて参りましたのは三百四十万でありますが、この三百四十万を無事に日本に引揚げさせるために、この借入れましたところの金を引揚費用に使つたのであります。で、即ち現地におります間の同胞、或いは今日申します国家公務員諸君の生活を守るために、或いは又後にはその引揚のために使いました金であります。ところがこの借入金は引揚に際して一千円以上は持ち帰れなかつたと、その持ち帰れない金の大部分を借入れたのじやないかというふうなことを私は日本に帰つてからちよいくいくと聞くのであります。でこういう非難を聞くごとに、聞くたびに私は実に内心慨歎すると共に、その当らぬゆえんを説いて来たのであります。でこういう非難を聞きますと、如何にも私どもが余計なことをやつて、そうして無理をして金を集めて、外地におつたところの同胞を日本に引揚げさした。当時日本は物凄い食糧難でありましてその食糧難の最中に余計な人口を日本に持ち込んだのじやないかというようなふうに、私はひがみかも知れませんが、というふうに受取れて、誠に心中慨歎に堪えないのであります。御承知のように昭和三十年の八月の十四日に、いや、十五日にポツダム宣言を受諾いたしまして後、時の政府は九月の二日の日に降服文書に調印いたしました月の五日に連合軍最高司令官から外地及び外国との一切の通信を禁ずるというふうに、通信が禁止されておるのであります。そういうふうに私は聞いておりますが、その通信禁止命令を受けた後、九月の七日に、時の政府の外務大臣でありますところの吉田茂氏の名において外地の公館に訓令が発せられまして、公館員及び一般日本人の救済のために金が要るだろう、従つてその金は公館において借りろ、借りた金は政府において後に責任を以てこれを善処するという訓令が参つたのでありますが、従つて私どもが現地で借りました金は、この訓令はずつと後に参つたのでありますけれども、その訓令が出ました後、私どもはいろいろと出る前後から金を借りたのでありますが、いよいよ引揚の命令が出まして、そうして一千円の金しか持ち帰れなかつたという点はずつと後になつての問題であります。ここでよく皆さんの御了解を得ておきたいのは、日本政府から訓令が来て、そうして金を借りろという事実はすでに九月の七日に起きておりまして、一千円しか持ち帰れなかつたという事実は今申しましたように後に起きた問題であります。こういう点から考えましても、先ほど申しましたような一千円しか持ち帰れなかつたというふうなことによつ如何にも余計なことをしたというふうなことを言われるということは全く心外に堪えないのであります。  もう一つ又別な点から申しますと、若しこの金がなかつたらどうなつたかということでありますが、恐らくこの金がありませんでしたならば、現地におりましたところの多数の同胞は本国の土を踏むことができなかつたと私は考えます。或いはその際に連合国から私ども日本人を救うために金を貸して頂くというふうなことが起きたかと思うのでありますけれども、そうなれば当然連合国としてはこの金を終戰処理費として日本政府に要求することは当然のことでありましよう。従つてこの借入金の問題につきましては、当初から日本政府におきましては、これは政府の行政費であるというふうにして行政費として確認されております事情は、先刻皆さんが御承知になつておるところと思うのであります。  第二の点でありますが、本件の経過について特殊な部分だけをこれから申上げたいと存じます。昭和二十三年の六月でありますが、GHQの経済科学局長のマーケット氏から我々の代表の一人であります高碕達之助氏に正式な回答が参りまして、この件は十分に考える、そうして日本政府においても最高司令部においても十分に検討する。検討して十分に考慮して善処する。併し一件々々について十分慎重に検討をすべきであろうというふうなマーカツト局長からの書面が参つたのであますが、それより前に私どもは、二十一年以来GHQとの間に折衝を重ねておりました。ところが二十三年の八月に元関東州、大連の市長をしておりました別宮秀夫氏は、本件がなかなか解決いたしませんので、遂に世をはかなんで彼は責任を負うて自殺をいたしたのであります。私は早速別宮氏の自殺した電報を受取りまして、これに基いてGHQとの折衝に入りました。口頭の折衝ではいけないと思いまして、文書を以てGHQに対し本件の解決促進について申入れたのであります。その申入れました文書は参議院の渉外課に残つておりますが、当時私が申入れました点はこういうふうに元大連市長の別宮君が引責して自殺するというふうな状態なつたのだが、こういうことは若しも本件が解決が遅延されれば今後何件か起るかも知れない。私自身も多くの同胞から責められておるので責任上自殺しなければならないかも知れない。若しそういうふうな事態になつた場合には、結局この問題が解決しないのはGHQの責任だというところまで私は極論した文書を出しましそうしてその年の十二月になりましてGHQから了承したという通告が参議院に参つたのであります。勿論この間に日本政府におきましてもGHQとの間に折衝を続けておられたと思うのであります。幸いにして二十四年の五月に今回の法律案に先行いたしました、例の審査会法が成立いたしたようなわけであります。特は私はこの点を申上げますのは、こういうふうにしてそれぞれの責任者が死を賭してまでも日本に引揚後本件の速かなる解決に努力をいたし、又日夜苦慮いたしておるのであります。従つて若しこの問題が二十三年の春に、夏に、秋に解決しておりましたならば、恐らく別宮秀夫君を殺さずに済んだでありましよう。そういうわけでありますので、今日出て参りましたこの法律案が早急に成立するということは何人におきましても望むところであります。但し法律案が、今回の修正案が成立するということでなしに、本件が速かに解決するということを私どもは望んでおるのであります。引揚後六年間を経過いたしまして今日まで本件が解決しないために多数の人たちが、多数の同僚が怨みを呑んで死んで参りました。而も又現在でも死線をさまようておるところの多くの老人或いは友人たちがおるのであります。併しながら私は今回の提出されました法律案、殊に衆議院において修正されたんでありますが、この修正されて提出されました法律案というものに対し私どもはどういう心境にあるかといいますと、この法律案を見まして私どもは、まあ言葉は汚いかも知れませんが、お情の投げ銭や放り銭では困ると、そういうものはむしろ頂かないほうがいいんだというふうに私どもの心境はなつておるのであります。昔からよく民間に、借金の催促に参りますと、まるい金がほしいのか長い金がほしいのかといつて、やくざに借金の催促を追払われたということを聞くのでありますが、私どもの心境からいいますと、現在はそういうふうなこの法律案によつて印象を持つておるのであります。でありますから我々は何といつたつて外地において永年働いておつた人間でありますが、そういうことならば、渇しても盜泉の水を呑まない、むしろ頂かないほうがいいと、でありますから若しこの法律案が拙速を尊んで、明日の百円よりも今日の一円だということで解決しようというふうなことになりました場合には、我々の同僚の中の多くは、政府が返済金をやろうといたしましても受取らないというふうな事態が発生するのではないかと私は考えております。殊にこの公館借入金は、訓令を発したのが当時の外務大臣吉田茂氏であり、又確認書を発給いたしたのが現在の外務大臣の吉田茂氏の名前であり、而して今回の法律案によつてこれを解決しようとするのが吉田茂さんの内閣であります。こういうことになりますと、我々のような心境にある者は、むしろこの金を払うといつても受取らないで、この吉田茂さんの出した在外公館借入書を末代までもこれを保存いたしまして、国家がこういうふうな不信義なことをしたんだと、無理押しにこういうふうな不信義なことを我々に押付けたのだと、どうしてもこれではいかんと、これを是正しなくちやならないというふうな心境になつて来るのであります。  どうか私はお願いいたしたいのは、そういうふうな引揚者の心境を明察して頂きましこの際みんなが喜んで返済を受けるというふうな解決をして頂きたいのであります。而もみんなが喜んで返済を受けるというふうな解決方法は、決して非常な無理をしろと、無理をしなくちやならんということでばありませんし、又決して不可能なことではないというふうに私どもは強く申上げたいのであります。  第三でありますが、返済法案についてであります。返済法案につきましていろいろと申上げたいのでありますが、特にそのうちに一人五万円で打切るというふうな問題がありますが、この問題はいろいろと皆さんに考えて頂きたいと思うのでありますが、私どもはこの五万円を直ちに右から左に現金で払つて頂きたいというふうなことも申しておるわけではないのであります。従つている いろいろな解決方法があろうかと考えるのでありますが、特に本日申上げたいのは、先ほど私どもの心境として申上げました、今回の法律案によつて私どもの受ける印象は、どうもこれがお情の投げ銭、放り銭の類いであるというふうに私どもは受取るのでありますが、どうかその点を直して頂きたい。どういう点かといいますと、それは第一は法律案の別表にありますところの換算率の問題であります。第二が法律によりますところの百三十の点であつて、第三が修正案によりますところの一口五百円未満のものは五百円を支払う、この三点であります。第一の問題でありますが、この換算レートにつきましては同じ日本の銀行券、即ち朝鮮では向うの一円五十銭が今の日本銀行券の一円で返すというふうなことはどういうところからこういうことが出て来るか、更に朝鮮におきまするところの朝鮮銀行券及び満洲の中央銀行券、これは当時の事情いずれから推して見ましても、これは飽くまでも日清、日鮮一対一でなければならないというふうに私は考えております。又北支、中支の問題でありますが、当時政府が定めておりました送金レートというものがあります。従つて北支に関しましても或いつは中支に関しましても、又南支に潤しましてもこの政府の定めておりました送金レートによつて、これらの換算率を決定すべきものであるというふうに私どもはお願いいたしたいのであります。要するところこれは金の貸借りでありますから、借りた当時の要するに條件によつてこれを解決すべきものでありまして、借りた貸したが、その後の事情が違つた、従つてその違つた事情によつて借りた金を換算して行くということになつて来ますと、恐らく国内におきますところのこういつた国と民間、或いは民間同士におけるところの貸借関係というものは全く根抵からぶちこわれてしまう。更に法律案によりますところの百三十でありますが、百は百三十にして返すということであります。これは一体何のために三十、即ち三割というものをくつ附けたのか、政府は利息のようなものだということを言われておるようでありますが、私どもといたしましてはこれはどうも理解できないのであります。成るほど三割余計に金を附けて頂くことは有難いのでありますけれども、先ほど申上げましたように、これはどうもお情の投げ銭或いは放り銭の類いである。こういうことは筋の通らないことであります。私どもといたしましては百は百三十にして返すということは全く意味のないことであります。これは百は百として返す、三割をくつ附けるということはやめるべきだというふうに主張いたしたいのであります。更に第三点の修正案によります五百円を支払う、五百円以下は五百円に繰上げて支払うということでありますが、これは先ほど申上げました貸借りでありますから、五十円借りたものを五百円返すということは筋の通らんことであります。結局これらのことを考えて見ますと、どうも言葉を重ねてくどいようでありますが、依然としてお情けの投げ銭、放り銭の類いであるというふうに私には感じられるのであります。以上の三点を特に私は申上げたいのでありますが、この三点が中心でありますが、この三点によつて今回の政府考えておられます返済に要するところの予算というものを考えた場合にどういうふうになるか。これはそれぞれ関係当局にお聞き願い、或いは関係当局に資料の提出を求めて頂いて、本委員会において御検討頂ければ直ちにわかることでありますが、私はここで申上げたいのは、私の申上げます修正点を修正して頂きまして、結果として差がないということをはつきり申上げることができると存ずるのであります。  以上三つの点を申上げたのでありますが、最後に私は私の考えを申上げまして皆様の御賢察を仰ぎたいのであります。この法律案が昨年の八月の十三日に第十一国会に提出されました。その後第十二回国会で衆議院の審議未了になり、更に又今回の第十三国会に継続して上程されたのでありますが、遂に今日まで八カ月近い日子を費やしておるのであります。なぜ八カ月も費やしたかということは、要するところ私どもの主張が相当に真剣に考慮されておつたということを裏書きするものであろうと私は考えておるのでありますが、最後にそれだけの長い間かかつて愼重に検討されました問題が、三月の末になつて衆議院を通過いたしました修正案は、昨年の暮の修正案と何ら異らないのでありますということになりますと、結局これはこのまま通つて行きますと、今頃どうせ通すならば去年の暮に、或いは去年の十一月の末に通したらよかつたんじやないかというふうなことになるのでありますが、私どもといたしましては、殊に利害関係者であります側から申しますと、本件は三月三十一日が、……前の法律によりましてどうしても三月三十一日に解決しなければならんということでありますけれども、私どもの心境から言いますと、とにかくこの法律案を正しいものに解決して頂きたい。私どもの十分に納得の行き、喜んで政府の返済金を受取れるというふうなところにして頂くためには、何も三月三十一日に限つたことはありません。会期もまだあることでありますので、どうか本大蔵委員会においてこれを正しく修正をして頂きたいということをお願い申上げるのであります。余計なことを言うようでありますが、昨日も本委員会で聞いておりますと、菊川委員から最近の国家の道義の廃頽について憂えておられたのでありますが、国は言うまでもなく道義の中心であります。道義の中心でありますところの国家がみずから借りた金を無法なこれを法律によつて処理するというふうなことは、何としても私ども受取り得ないところであります。私はここに在外公館がとりました一つの例を皆さんに申上げて、特に御理解に資して頂きたいと存ずるのであります。  それは漢口の総領事の中野勝次郎氏が本件に関して出しました借用証であります。その借用証を申上げますと、これはこういうふうに書かれております。    借 入 証  一、金儲備券  元也   但右は終戰に因る新事態発生に際し国庫より支出さるべき在漢口日本総領事館経費未達の為め、之に充当するものなり  右金額左記條件により借用候也   昭和二十年十一月  日           中野勝次郎         殿     記  一、無利息  二、返済期返済方法及儲備券対日本円との換算率は当館並に貴殿引揚後政府の決定に一任す             以上  こういう中野勝次郎総領事から借用証文が漢口の在外同胞諸君に出されて借入金がなされたのであります。これは一つの例を申上げたのでありますが、これによりましても、これほどまでに明瞭に借入れられたところの借入金を、今日においてそれはどうだこうだというふうなことで今回の法律案のような処置をされるということでは果して我々は今後政府の行いますことに対して信頼を持つて行けるかどうか、断じて私どもは信頼を持つて行けない。殊に今新らしく独立すると同時に多くの在外公館が設置されて、公館員が出て行くわけでありますが、恐らく将来我々は再び日本人が海外に出て行くようになると思うのでありますが、この在外公館借入金の問題をかかる不始末をしたままでおきますと、将来において我々は在外公館員に対して全く信頼を持つことができない。政府に対して信頼をおくことができないという感を深くし、遺憾の意を表せざるを得ないのであります。而も当時の在外公館員諸君が日本に帰つて来て何をしたか。これらの諸君は日本に帰つたら必ずこれらの問題を早急に解決すると言いながら、これらの人たちはそれぞれ官途について悠々と国家の仕事をしておる。こういう姿を引揚者の諸君が見るたびに、彼らの胸中に、何だ、俺たちにさんざんなひどい目に遭わしておいて、あとは何もないじやないか、けしからんじやないかという感情がおきて来るのは当然なんであります。  どうかこの公館借入金の問題は、以上申上げました点で十分に私の言いたいことは盡し得ないのでありますが、御賢察を願いまして、重ねて申上げますが、道義の中心としての国家、道義の中心としての政府が、借りましたこの金を正しく公正に引揚者のために解決して頂けますことを重ねてお願い申上げまして、私の意見の開陳を終らして頂きます。
  62. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 北條君に対して御質疑を……。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今経過について、我々よく知りませんでしたが、経過はよくわかつたのですが、そこでお伺いいたしたいんですが、先ほどお話ですと、北條さんの言われる、案を仮に採用するといたしましても、財政的には大して変らないと、こういうお話でしたが、この衆議院から送つて来た修正案を見ますと、五万円を超えるときは五万円にしてあと切つてしまう。ところが全額払いとなると五万円以上があるわけでして、そういうところから財政的に変らない、大体八億五千万円ぐらい、それはどういうわけで殖えないか。その点ちよつと御説明願いたいと思います。
  64. 北條秀一

    参考人(北條秀一君) 只今木村先生から御質問があつた点でありますが、五万円で打切るという点につきまして申上げますが、五万円以上のものは一体どれだけあるかといいますと、全体の中で約二千件ちよつとであります。従いましてそれは二千二百件ぐらいあると思いますが、二千二百件といたしましても全体の金額からいいますと、これは相当官のほうから御説明さして頂いたほうが遥かに的確だと思いますが、私のほうは差控えたいと思いますが、大して大きな金額にならないのであります。それからもう一つ申上げました、先ほどの衆議院の修正案によりますと、例をとつて申しますと、満洲の百円をこれを今のレートで計算いたしますとどうなるかというと、百六十分の百になるわけですね。百六十分の百になります。それに百三十をかけるわけですね。でありますからそれは八一・二五%ということになると思います。八一・二五%、従つて一八・七五%ということになります。それだけ殖えるということになります。一八・七五%、これは全体の借入金のうちで満洲が一番大口でありまして、大体九億程度になると思いますが、そうしますと、それに一八七五%を掛けますと、僅かに二億足らずということになつて来ると存ずるのであります。朝鮮の場合は一億足らずでありますが、これは百五十分の百掛ける百三十でありますから、これは八十何%かになりまして、増加するのが一二、三%ということであります。でありますから、衆議院の作りました五百円未満は全部五百円にする。そうしますとそれだけ殖えて参りますが、そういうものをあれこれやつて参りますと、昨年の暮に私は衆議院の委員会において証言に立つたのでありますが、そのときも多くて三割ということを申したのでありますが、今申しましたように二割というものしか殖えて来ないというふうに考えるのであります。
  65. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 北條さんにちよつとお尋ねしますが、仮に在外公館のほうで借入をされず、持つて帰られるとした場合に、在外公館のほうに借入をされず持つて帰られる金額、当時こちらに持つて帰つたとせられました場合には、どういうふうに持つて帰ることができたものであるか、持つて帰つたらどういうふうに通用したものであるか、この点を第一点お伺いしたいと存じます。  もう一つは強制的に、いやだというやつでも無理に持つているやつは全部出せということにせられたのか、自由に持つて帰られるのにかかわらず、公館のほうは強制的に取上げるというふうな恰好でやつて参つたものであるか、この点を一つ聞かして頂きたい。
  66. 北條秀一

    参考人(北條秀一君) 千円の金は先ほど申しましたように、いよいよ引揚げが開始される、引揚げろという連合国から命令が私どもに来ましたそのときに、本国に持込む金は如何なる通貨であつても千円を超えてはならない。ですから朝鮮銀券も千円、満銀券も千円、それからアメリカのドルの場合はたしか六十六ドルであつたと思います。そういうふうにすべての金を換算して、当時の日本円千円以上は絶対に持込ませないということでありまして、中には千円以上のものを持込んだ人があるかも知れませんが、これは全部非合法でありまして、従つて私どもその千円持込んだ分については全く存じません。  それから公館が強制したかということでありますが、先ほど私の申しましたのは、公館以外に、私は満洲の実情を申上げたのでありますが、満洲では公館がありませんので、公館に代るべき奉天日本人居留民会というものを作りまして、その居留民会でやつたのでありますが、ところが先ほど言いましたように、金と命というものが全く掛替えのない二者不可分のものでありますから、金がないと命が危いということになります。そこでたとえ一円の金でも離そうとしないのであります。その金を出してもらうためには容易ならん苦労をして、だから時には脅迫をし、時には強制して出しなさい、出さなかつたら承知しないぞという手段まで講じて召上げたということを申上げたのであります。他の上海、南京、漢品等の公館におきましてはそういうふうな強硬手段をとられなかつたようでありますけれども、併しながら必ず政府において責任を負うからこの金を出してもらいたいということで集めたのであります。
  67. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうするとこれは仮説になるかも知れませんけれども、この在外公館の借入という処置が仮になされなかつたとした場合には、千円より内地へ帰るときには持つて帰れなかつた、こういうことになるわけですか。
  68. 北條秀一

    参考人(北條秀一君) そうです。
  69. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうするとあとどういうふうに結局借入れられたか、残りを持つておられる人も相当あつたと思いますが、そのあとのやつは、借入れのほうへ提供せられた人は提供せられたのだが、あとの場合はどういうふうに……捨てて来るのですか、そういう場合には。
  70. 北條秀一

    参考人(北條秀一君) 私どもが現地からいよいよ引揚けを命令されまして、何月何日に出発しろという命令が参りました。そういたしますと、そのときに港に行くまでの費用を若干考えまして、港を出るときに千円しか持てないということになりますから、それ以上の金はどうするかという問題です。それまでに私どもは幾ら金があつても、各地の公館或いは居留民会においては足りない事情にありました。でありますから、足りないのでありますから、鵜の目鷹の目になつて金のありそうなところから金を出してもらう、そのために強制手段までもとつたわけであります。そうしてやつたのでありますが、最後に港に行きまして、若しあなたたちに千円以上の残つている金があつたら是非あとの同胞を救うために金を残してくれということを懇請いたしまして、船に乗る直前までこの金を借入れる措置を講じておつたのであります。そういうふうにいたしまして、いわば各地から引揚げて来る同胞から、最後の千円だけは残すけれども、あとは全部置いておけというふうにして命令的にこの金を残してもらつた、こういう事情にあります。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど北條さんが司令部と折衝されて、司令部からそれでは払うことについて承認したというお話でしたが、そのときには何ら証言とか何とかいうことはなかつたのですか。
  72. 北條秀一

    参考人(北條秀一君) そのとき私が出しましたのは、司令部が心配しておりましたのは、金を払うとインフレになるということであります。私が当時申しましたのは、総額は見積つても二、三十億のものなので、二十三年でありますからインフレにならない。而も帰つて来た連中は金は三千円、五千円の金しかなくて困つておるから、それで商売をするのだから、インフレになる心配はない。ところがそれでもなお且つ司令部は心配をしておりましたので、そこで私はこの金は、私の方法としては、これを御承知の国民金融公庫に一時預ける。二カ年間預ける。そうして預けて、片一方は政府からの借入証を出す。借入証を担保にして、必要な人は国民金融公庫から金を借りなさい。それで不必要な人は預けておきなさい。こういう方法をとるという文章にはなつておるのであります。そうしますとそれでよろしいというのが来たのであります。その後政府の見解と私の見解とは多少違つたものですから、それで先の審査会法のようになつたものでありますけれども、私のところに来ましたところのGHQのいわゆるOKは、原文の通りでよろしいといつて十二月十三日に参りました。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その金額についてどうこうというようなことは別にないわけですか。
  74. 北條秀一

    参考人(北條秀一君) それは全然ありませんでした。
  75. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 参考人北條君に対する質疑はこれを以て打切ります。  次に政府委員に対する質疑を行います。石田理財局長が見えております。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の北條さんのお話によつて経過は大体わかつたのですが、政府のほうはなぜ終戦後において公館が借入れた金をこういうふうに、五万円というふうに制限して返すような法律案を出されたのか、換算率あたりについてもあとでお伺いしたいのですが、全部返すという措置をとらないのか、その理由をお伺いしたいのです。
  77. 石田正

    政府委員(石田正君) この問題は非常に長い問題でございまして、いろいろと事情が複雑になつておると思うのでありますが、一番初めにこの問題が起りましたのは、先ほども北條さんからお話がありましたように、現地に対して訓令が行つたというところに端を発しておると思うのであります。その当時の事情というものは、敗戰直後のことでございまして、率直に申しまして将来日本の政治経済その他のものがどういうふうに動くかということは、誠に予測しがたいところの状況であつたろうかと思うのであります。でその後いろいろ進駐軍の進駐等の問題もございまして、大分日本人が一般的に申しまして終戰直後考えておつたとはいろいろな面において異つた部面が生じて来たかと思うのであります。これは財産権に関しまするところの一つの処理の問題でございまするが、この面に直接関連するということがあると、或いは申上げると語弊があるかと思うのでございまするけれども、皆様も御承知のようにいろいろ戦時補償打切りの問題であるとか、或いは金融機関の再建整備とかというふうな、いろいろと戰時中乃至は終戦直後においては想定し得なかつたような問題がその後現実の問題としていろいろ起つて来たということは事実であろうかと思うのであります。この公館の借入金の法律案はどうであろうかというような御議論、又その借りられた事情につきましても非常に複雑でございます。でありますが、非常にむずかしい問題があればこそ延び延びになつて来たと、こういうことも言えるかと思うのであります。この返済に関する法律案が出されましたのは、御承知の通りにこの前の臨時国会でございます。その時分、そのときの情勢から申しますると、いろいろ国といたしまして確定的な債権についてもなかなか払い得ないというような問題がいろいろ起つて来ておるわけでございます。で、この問題につきましては先ほど菊川委員からも御質問があつたのでありまするが、外地におけるところの一つの経済関係なのでありまして、或る意味におきましては在外財産、国民の外国において持つておつたところの財産に似ておるというような部面もあろうかと思います。そういう点につきまして、国家といたしましてこの在外財産を失つたというようなことは、何もこの在外財産を個々に持つておられるかたの責任でも何でもないということを考えまするならば、国として何らかの措置を講ずるということができ得ればしたいというところではないかと思うのであります。それにつきましていろいろとまだ政府といたしましても考慮いたしておるのでありますが、現在のところどう処置するかということにつきまして目途がつかない、かような状況に相成つておるわけであります。それじやそれが片付かないからといつて、この公館借入金を片付けないでおいてよろしいかということに相成るのでありますが、これは先ほどから北條さんからもいろいろお話がございましたように、特殊のものでいろいろな事情がございまするので、これは一般在外財産並みということをせずに扱うのがいいであろうというようなことで、すでに二回に亘りまして法律が通つておる、こういう事情になつておるかと思うのであります。  なおこの金額につきましては五万円というところで切つたという、この五万円という金額がいいか悪いかということについていろいろと御議論もあることかと初めから考えておつたわけでありまするけれども、併し何らかの意味において制限せざるを得ないというような工合に考えましたし、又金額といたしましては五万円というのが大体大づかみにいつて適当なのではなかろうか、こういう意味におきまして五万円という限度を設定いたしました次第でございます。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではお伺いしますが、只今の御説明ですと均衡上……例えば戰時補償打切りがあつた、それから再建整備等の問題、又在外財産の処理も、従つて補償をすることについてもまあ財政上困難もある。それではなぜこれをお認になるか、こういう法律を出されたか、特にこれを区別して出されたか。
  79. 石田正

    政府委員(石田正君) これは均衡の問題ということになりますると、先ほどもちよつと申したのでございますが、戦後におきましていろいろと補償打切り等のこともいたしました。併しこれは全部の問題をそろえて並べて、調べてこうしようというのではないのでありまして、それぞれの違つたいろいろな性質がございまするから、画一的に行なつておらないということは御承知の通りであろうかと思います。それからこの問題につきまして、なぜこういうことをするかということにつきましては、先ほど北條さんからお話がありましたように、とにかく政府といたしましては何とかしてこれを処置したいというような気持があつたればこそ発令もあつたのであろう、こういうふうに考えまするし、それから又これによりまして非常に困難をされたであろうかたがたが助かつたという部面もございまするし、それから又そのためにとにかくお帰りになつたというかたもあるであろう、そういうふうな効果もあつたことはこれは疑いない。そういう特別な性質のものであろうかというふうに考えましてやつておつたという次第であります。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 何か非常に明確を欠くのですが、私は非常に困窮されている方を救済しなきやならんということについてはもう誰でもが同じ考えと思うのです。それは社会保障的に救済すべきである。この問題については大体戰時補償とか、ああいうものと同じように考えるのは僕はおかしいと思うのです。必ずしも同じと言われませんでしたけれども、均衡上、まあ戰時補償の打切りが問題になつたのは、当時我我は随分あれは論じたのです。あれは戰時中の東條内閣のときの国会で、そうして殆んど軍閥によつて、もう殆んど発言できないように、独裁的に支配されておるような国会で、戰前のフアツシヨ的な国会できめられた補償案であるから、そういうものに基いてこの民主国会になつた場合そういうものも補償するということは間違いである。むしろああいう間違つた戰争を起した、あの当時の東條軍閥によつて支配された国会で承認したそういう法律に基く軍事補償は間違いである。これが一つのやはり根拠であつたのです。ところがこれは終戰後の内閣の吉田さんが訓令を発して、そうして国が債務を負つたのです。性質が違うと思うのです。私はそういう戰時補償の打切りの問題とこれとは私は違うと思う。その点が一つと、もう一つはこれは在外財産の一部と見るべきだと言いますけれども、これはもう私も戰災者であります。家を燒かれました。併し外国の、在外財産を持つておる人もこれも失つた、こういうことにすれば均衡は取れますが、併し国に対してこれは貸してあるのでありますから、債権なんですから、而も終戰後の政府においてそういう債権債務の関係が生じたのですから、それは私区別して考えるべきだと思うのですよ。ですから戰時補償とこれを睨み合せて考えるのは私はおかしい、それは論理が成立たないと思うのです。ですからお話を聞いていますと、何だかよくその辻褄が合わないのです。それからなぜ特別にこの法律案を出したかと、こういう質問に対してはですね、救済的に出されたようなお話でもあるし、又何か便宜的に、はつきりした根拠というのがどうもよくわからないのです。私は根拠ははつきりあると思うのです。そういう終戰後の政府の借入金である、従つてこれは在外財産というものと違うと思う。單なる在外財産というものと……。在外財産のうちで政府に貸した、その後においては一千円しか持つて来られないから、本当ならばそれは置いて来るべきものであつたからこれを補償しないということは、それは別問題です。国家の信義の問題で、私は戰争前の国会においてはこれは私は賛成できない、本当に民主的なあれが反映しておらない。終戰直後においては今度はもう敗戰して事態が変つたのでありますから、私は問題は別だと思う。而も終戰後においては占領下であります。占領下でありますから勝手にはできないはずです。この制限は勿論あります。そこでやはり司令部の意向というものはこれは反映することは止むを得ない、遺憾ながら止むを得ないです。ところが北條さんの御意見では、司令部においては別に金額について幾らしか払つちやいけないということを言わなかつた。当時これはインフレの要因になつてはいけないというので心配していたようですけれども、その対策を北條さんが示すことによつてこれは論証された。そうしますとどうしてこれを全額払わないかという理由がわからない。而もこれによつて財政上負担が著しく多くなるというのなら又別問題です。これは今度は財政上の見地から考えなければならん、どうも政府はこういうことを非常にちびるわけです。実に小さいところでちびつて、そうして大きなあれには、防衛分担金とか、そういうもののほうに向けている。国立病院なんかでも、これはまあ石田さんの考えじやありませんけれども、九十九カ所のうち六十カ所も地方に委譲し、財源を節約して防衛費に向けようとしている。社会保障費なんか殆んどありやしないわけなんです。こういうように考え方からして間違つていると思うのです。石田さんにそんなことを言つても、事務当局ですから当らないかも知れないが、やはりこの問題はそういう意味で便宜的に考えられないで、救済なら救済、はつきり社会保障的に救済するならはつきり困らないように、引揚者だけじやないのです。まだ戰争犠牲者は幾らでいるのですから、旧軍人遺家族だけではないのです。西ドイツのように徹底的に国が支出してこれを救済する。ですからこの問題はいろいろ論議があると思いますけれども、はつきり問題点が私はわかつて来たと思うのです。ですからなぜ私は政府が全額払わないか、今の御説明を聞いてもこれははつきりした根拠がどうもわからないのです。戰時補償の打切りとこの問題とは私は違うと思うのですよ。この点もつとはつきりした根拠を伺いたいのです。
  81. 石田正

    政府委員(石田正君) 戰時補償の打切りとこれは全く同じ性質のものであるというふうな工合におとり願いますとしますれば、私の説明が惡かつたのであります。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうは言いませんでしたがね。
  83. 石田正

    政府委員(石田正君) 私の申上げましたのは、この問題の起つた発端のときと、その後における日本の経済、財政というものが非常に変貌しておりますということを申上げた次第でございます。ただこの問題につきましては……、それから又国の確定債務であろう、なぜこれをちびるのか、こういう御議論が一つあつたかと思うのであります。この点につきましては、これは非常措置としてとられたのでございまして、予算があつたわけでもございませんし、それからして又当時の議会に対しまして予算外国庫負担契約をいたしましてやつたというようなものでもないわけであります。文章といたしましても、在外同胞のかたがお引揚げになるについては、公館としてはどうしても万全の措置を講ずることが必要である。それについてはその経費も相当多額に上るであろう、できるだけそれらのものについては、その一部のものにつきましては実情に応じて成るべくこれを斡旋してもらうというようなふうに、引受けてもらうということも考えてもらいたいのだけれども、併し結局相当大きな部分というものは国庫で負担するというふうなことになるのではないだろうかというふうな工合の訓令なのでありまして、いろいろな点から申しまして、当時の事情、それからして又法律的な性格というふうなものにつきましても、非常に漠然としてスタートせざるを得なかつた、かように考えておるものでありまして、決して戰時補償がこうであるから、そうなつたというふうなものではないわけでございます。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 幸いに吉田総理が訓令をまあ発して、それ以来ずつと同じ責任である吉田さんが政権を今でもまだ担当しているのですから、その責任を果すのに非常に丁度都合のいい状態にあるのです。若しこれが内閣が変つておれは、又別の理由を述べて、別の理由によつて、もう内閣が変つたのだから知らん、こういうことも言えるかも知れませんが、これは石田さんの言われるように国の債務なんですから、吉田さんが訓令を出したならはこの責任があるわけです。それで吉田さんが内閣を担当しているのですからこの責任をはつきり果されるのが本当である。そうでないと何か騙したような感じがするのです。どうも騙した感じがするのです。それも著しい大きな金額というならば、これは又我々も考えなければならないと思うのです、財政経済上、又均衡上……、ところが十億に充たないのです。それで本当にこれがもうどうしてもぎりぎりで財源がない、どこを搾つても財源がないと言うならこれは止むを得ません。ところが大蔵大臣が百億や三百億又自然増収があると言うのです。三百億ですね。財源がないわけじやないのです。私はこれをこの通りつても、これは均衡、不均衡の問題は起らんと思うのです。説明できると思うのです。終戰後でありますし……。ですからやはりこれは今事情が変つたと言いますけれども、それだけの説明では私はつかないのじやないかと思うのです。ただ戰前と戰後でしたからそういうことが言えると思う。而も戰後ですから、やはり司令部というものが相当大きな……インフレを起す、司令部が反対していると言うなら、これは我々としても占領下にある以上、我々の主張は飽くまでも訴えるとしても、どうしてもいけないと言われればこれは情けない話ですが、占領下どうもしようがない。併し司令部がいいと言つている。なぜこの責任を果さないか。もう私は如何なる面かり見てもこれは全額払わなければ不合理だと思うのです。私は最初はどうも戰時補償の問題と関連して考えておつたのです。ところが只今までよくお話を聞きますと、終戰後に生じた事情でありますので、これは非常に私は還うと思うのです。これまで引揚委員会或いは又衆議院においてどういう審議かなされて来たか知りませんが、そうしてこれを過日衆議院で通過させましたについては、どういう合理的根拠に基いてこれを通過さして来たのか、私は事情をつまびらかにいたしませんが、どうも私今の御説明では納得できないのですね。納得できないままうやむやにこれを通すというわけには我々行かないのです。どうしても気に入らなくても、仮に事情がはつきりすれば我々は了承します、合理的であるなら……。如何なる点から見ましても私はこれは不合理だと、こういう不合理のものを通すわけに行かん。但し換算率その他については又いろいろ意見があると思うのです。併し全額をこの政府が終戰後に負つた債務についてこれを返すという原則については一点の疑う余地はないのじやないですか。これは非常に僕は政治的な道義の問題にもなると思うのです。併し政治的道義ばかりでなく、国の威信というものについて、重なる経済事情が変つたということだけで国の威信をそんなに簡單に傷つけていいものか、そういう問題と関連して来ると思うのです、この点一つどういうふうにお考えになるか。
  85. 石田正

    政府委員(石田正君) 非常に木村委員は事態を割切つて考えになつておりまして、これは終戰後の政府の債務である、よつて全額支払うべしという御趣旨に盡きるのではないか、而も財政上の負担は大したことはないのだ、こういうことではないかと思うのであります。而して私たちこの処理に当りまして、現実のこの借入金が行われました具体的なる事情、それからして借入の態様等につきまして、ああいうふうな終戰後の混乱でございまするので、非常に様々なる態様があるわけでございます。例えて申しますると、先ほど北條先生からお話があつたのでありますが、非常にはつきりと証文になつておりますものもございます。併し又ところによりましては借入の形はとつておりまするけれども、返済の問題につきましては、これは在外財産の政府の処置に準じてやるというふうな文言のついておるものもあるのでございます。それから又そういう証書というような形もとらずに、紙の端に金額だけ書きまして、そうして何と申しますか、判なりサインがあるようなものもあるのでありまして、非常に何といいますか、法律的に、又現実の問題としまして突きとめて参りますにつきましては、非常にむずかしいと申しますよりも、殆んど至難であるというふうな面が多いわけでございます。で結局そういうふうな点を考えましてそうしてそれぞれの事情に適応いたしまして、それに適応したところの措置を講ずるということもなかなかむずかしい問題になつておるわけであります。大体のところできめます以外には措置はないのではないか、かように考えてまあおるわけでございます。そういうわけでございまするので、非常に割り切れないという点もあろうかと思いますが、事柄事体が非常に突き詰めがたいところも多いのである。従つて大局的に措置をするというような工合になつておるわけであります。
  86. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 議事進行について。こうやつて議論しておりましても、私は大きな政治上の問題だと思うので、事務当局は大体事情はわかつたと思いますが、質疑しておりましても、何だかのれんに腕押し見たいなもので、確定的なあれは出て来ないと思うので、大蔵大臣や総理が丁度おられるから、総理にちよつと来てもらつて、一体国の方針はどうするんだ、この国の方針の基礎になる考え方は何であるかということだけはそちらから聞いて、その上で細かい問題は考えたらどうかと思いますが、何だかこれは非常に割切れないのですよ。奥歯に物が挟つたような説明しか聞けないので、それは勿論混乱時であつたからいろいろ不備な、法律上の形式が整わないような過失も相当あつたろうというようなことは想像されますけれども、それはもうそういう混乱時であつたが故に止むを得ない。併しそういう問題を政治的にどう措置する腹であるかということだけは一応確めた上でこれは議論したほうがいいのではないか、こう思うのですが……。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうふうにお取計らい願いたいと思います。
  88. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 如何ですか、今波多野委員から総理か大蔵大臣に来て頂いて、そうしてよく国の方針についての大局を聞いた上で質疑をいたしたいというふうな御意見がありましたが、如何ですか。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 では私は質問をそのときに譲ります。
  90. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  91. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは速記を始めて。国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案を議題といたしまして、政府委員より説明を願います。
  92. 吉田信邦

    説明員(吉田信邦君) 国庫出納金等端数計算法は、制定いたしました時分にはまだいろいろと細かい問題については従来の例によるということで来て参つたのでございますが、だんだん価格も安定して参りまして、まあ現在として残つております従来の計算のうちでまだ整理できるものは極力この端数計算法の適用を受けさせたいというような趣旨から、一つは地方税に関しまして地方税の延滞金等の計算につきましてこの端数計算法の適用を受けさせるということにいたしまして、同時に国債の利子につきまして従来は端数計算法を適用せずに、まあ一銭、二銭まで計算しておりましたが、今回改正して端数計算法を適用して、一円未満のものは一円にしてお払いする、一円を超える金額で端数の附くものは四捨五入してお払いするというふうに改正いたしたいという趣旨でございます。で国債に関しましては従来少額の国債がたくさんございまして、そのために端数計算法を適用いたしますとそれぞれ利害が異る場合が非常に多かつたように思われますが、その後少額国債の買上等も非常に進捗いたしまして、現在少額国債の残つているのは約二億円程度のものでございます。同時にこれらの残つておる少額国債も一応全部買上げるという方針でありますので、今後は余り問題はないかと存じます。従つて利子につきましても端数計算を適用して事務の簡素化を図りたい、実際申しますと、この端数がつきますと非常に経費もかかりまして、今まで経費という面で困つたのでございますが、そういつた国債も減りました関係上、今回改正して端数計算を適用いたしたいというふうにいたしたわけでございます。
  93. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 別に御発言もないようでありますが、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御発言もないようでありますが、討論は終結したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決を行います。国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手
  96. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。なお諸般手続前例により委員長に御一任願います。それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     菊川 孝夫  西川甚五郎     森 八二一 岡崎 真一     小林 政夫  伊藤 保平     大矢 半次郎  黒田 英雄     波多野 鼎  下條 恭兵   —————————————
  97. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは当せん金附証票法の一部を改正する法律案、これを議題といたします。これに対する説明を願います。
  98. 福田久男

    政府委員(福田久男君) 御説明申上げます。この法律案改正の要旨につきましては、先般提案理由で政務次官から御説明申上げた通りであります。逐條に簡單に各條の改正趣旨を申上げます。  第三條の改正規定は二つの点がございまして、第一点は、この宝くじの発行によつて使用いたします資金の使途、言い換えれば発売の目的について改正したことを、発売の限度について規定いたした二点であります。発売の目的につきましては、従来は財政需要一般の用途に充当し得ることになつておつたのでありますが、宝くじそのものの制度の運用に当りましても、逐次将来においてはこれを縮小するという意図の下に、一般的な財源として考えないで、特に社会福祉の増進のために要する費用の財源に当てる場合に限つて発行を認めるというふうに、制限的にそれを発売の目的において限定いたした点が一つでございます。もう一つは、宝くじの予算上の経理を、あとで申上げますが、両建式であつたものを純収入式に改めた点と関連いたすのでありますが、例えて申しますと、売出した総額を収入に立てまして、当せん賞金とか或いは発売のいろんな費用を、経費を歳出に立てた、両建で経理いたしておつたのでありますつが、それは本当の財政の姿を現わすものではないという意味合いから、差引いたしまして純収入となるべきもののみを歳入に掲げることに改めることにいたしたのでございます。それと関連いたしまして、両建でありますれば、発売の最高限度は歳入予算を見れば、そこで歳入予算において限定されておつたのでありますが、差引になりましたので、発売額を法律上明らかに規定をしたい。で三十五億円というものを限度といたしたのでございます。三十五億円につきましては、従来例えば昭和二十四年度のごときは四十億円にも上つたのでありますが、成るべく自粛するという気持も加味いたしまして、三十五億円というふうに、金額を四十億円よりも少くいたしたのであります。第四條は関連する修正でございますが、地方くじにつきまして、経理を両建から純計に改めたことと関連した修正でございます。第六條のほうは今まで委託をいたしておりました発売のうち、売捌きのみの部分と証票の印刷その他を区分してやつておつたのでありますが、銀行へは売捌き事務のみを委託しておつたのを、一括委託し得るようにしたいということで、第六條を改正いたしたいということでございます。それから第七條は関連した修正でございまして、第十四條、第十五條とも、今山上げましたような趣旨に合いますように所要の修正を加えたいというものでございます。第十六條は、つまり発売いたしました総額から必要な当せん金の支払その他の経費を引いた残りを納付すればよろしい、従来は両建でありましたので、売上げ額全額を納付し、他方において所要の費用を歳出で立てるというのを、差引計算することに伴う改正でございます。  以下ややわかりにくい規定がございますけれども、趣旨といたしましては以上申上げたような要旨でございます。
  99. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 質疑を行います。
  100. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 ちよつと聞いておきたいのですが、今次の財政法では総計主義を立てておりますね。それをまあ純計主義に改めるということなんだが、ちよつと方針が、財政法の方針と変つて来ますね。
  101. 福田久男

    政府委員(福田久男君) 形式的に申上げますと、お話のように総計主義と申しますか、両建で行くのを統計にするのは、一般の場合に対する例外と思います。従いましてまあ特に法律上そういう趣旨のこういつた規定をいたしたいというわけでありますが、ただ宝くじの場合には、それを実質的に申しますと、例えば当りくじの賞金の経費などが、本来の財政活動の支出とは性質を異にするもので、実体的に申しますと、差引の差額が本来の国庫収入と見るべきものではなかろうか、そういう実体に着眼いたしまして今回の措置をとりたいというふうに考えた次第であります。一般の行政費というものとは、例えば宝くじの賞金の支払代金というものとは実質的に性質が非常に違うものではないかという趣旨でございます。
  102. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 これはちよつと問題だと思いますのは、例えば民間の銀行あたりに委託する場合でも、売捌きだけを委託するのじやなくて、印刷も併せて委託するということになる、今こういう説明だと思いますが、そうなると、歳出面についての国会の審議権というものは、そういう点は非常にあいまいなものになつて来ると思いますが、そういうことはないですか。
  103. 福田久男

    政府委員(福田久男君) お話のように、今の御質問に対してお答えするためには、現状を御説明いたしたほうがよくわかるかと思いますが、現在政府くじの発行に当りましては、法律の建前上、売捌き関係は銀行へ委託をいたしておりまして、それに対して委託手数料を払つておつた、証券の印刷その他につきましては東京弘業という会社がございまして、東京弘業株式会社に対して委託をいたしておるわけであります。分けていたしておりますが、今回は両者を指銀行へ委託するということにいたしたいと存じます。その際経理につきましては、それらの例えば銀行の本来の経理と区分してこれを行わしめる、それぞれおのおの適正な、又真正な証憑書類によつてその費用の明細を明らかに、経理を明らかにさしておりました。若し残りますればそれを国庫へ納付することにいたしております。従いまして今回の改正に当りましても、何條でありましたか、たしか十六條あたりだつたと思いますが、実際に要りました費用と、予定されました経費とをあとで清算いたしまして、残りますれば国へ返す、返すと申しますか、納付するという制度をとつております。委託するに当りましても、大体の見積りを取りまして、嚴密にそれを検討してやつているのでございます。而も発行額に対して定の割合、大きな観点からして、一定の率によりまして最高限を押え、なお且つその内容につきましては、個別に検討をして押えて参つているのであります。
  104. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうもよくわからないのは、折角財政法で純計主義ではいけない、総計主義、両方を予算面はつきり出して来ることによつて、国会の審議が十分できる、そういうことを保障するためにあの財政法を総計主義に改めたのである。これはまあ非常に進歩だと私は実は思つているのです。ところが細かい問題ですけれども、こういう点から財政法のその原理をこわして行こう、こういうことはどうも少しおかしいという気がするのですよ。特に印刷までも銀行に括してやらしちまつて、而もその印刷費などについての政府の監督が非常に関接になつて行く。直接政府が印刷してそいつを渡すのでなしに、銀行に印刷までやらしてその経費を国が負担する。その監督は従つて間接な監督になつて行くといつたようなことは、何だかどうもまずいような気がするが、なぜこういうことをやらなきやならつんか、理由はどういうところにあるのですか。
  105. 福田久男

    政府委員(福田久男君) ただ只今現状について御説明申上げた通りであります。例えば印刷等につきましては東京弘業という会社に対して委託をしている。又賞金の支払、売捌きについては銀行に委託している、二本に分けておりますのでありますが、おのおのその費用の最高限につきましては、例えば東京弘業の関係、経費の関係で申しますと、第六條第二項の一号にあります、「当せん金附証票の売さばき及び当せん金品の支払又は交付に対する一定の手数料」、この定の手数料というものは、売捌き手数料が大体九%、それからその他支払のための手数料が〇・五%、九・五%を最高限度として押えまして、その範囲内で適正な審査をして監督をいたしているのでありますし、又その第二号にあります「定の経費」、これは証票の作成、その他の費用、ポスター等の宣伝の費用でありますが、それらにつきましては発売額の六・五%を限度として押えまして、その範囲内で宣伝の計画その他を監督をいたしているのでございます。従いまして大きな観点からは、そういつた総額に対する規制によつてこれを処理し、又その内容につきましては、個別に証票の印刷費用、その他を十分検討いたしまして措置いたしているのでございます。又現状から見まして、東京弘業に対する委託と銀行に対する委託と、二本に委託が分れておりますけれども、それを併せて一本にいたしましても、両者に委託したものが一つの銀行に対して委託するという結果になるのみであつて現状に対して実質的には大きな変更にはならないと存じます。で若し政府みずから証票の例えば印刷から検収、一々その番号などを調べるわけであります。落ちた番号はないか、重複した番号はないかというようなことを政府みずからやるとなりますと、相当の人手も要しますし、又行政官庁として、そういうことまで直接やることが適当であるかどうかということもまあ問題であろうと存じます。そこでまあ実際は、二つの法人に対して区分して委託しているのを、一つの法人に対してまとめて委託をするということになるのみで、実質的には非常な変化ということではないように思うのであります。又理論的に申しましても、形式的には財政法に対する一つの特例になるわけでございますけれども、例えば徴税費とか、それらのものとは性格を異にいたしまして、当せん賞金の支払のごときは、本来の狹い意味の財政的な支出というものとはおのずから実質的に性質を異にするという意味合いにおいて、今申しましたような特例を考えたいというふうに存じている次第でございます。
  106. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや、僕が聞きたいとは、財政法のあの原則をこわしてまでこういうことをやらなきやならん積極的な理由はどこにあるかということです。例えば人員整理の問題と関連しておりますか、この間の人員整理の問題と……。なぜこの点をやらなけつればならんのか、積極的な理由があるか、ちつともわからない。
  107. 福田久男

    政府委員(福田久男君) 一つは財政の真の姿を現わすためには却つて両建のほうよりも純計のほうが、一般会計の姿を現わすということになるのではなかろうかというのが一つでありまして、もう一つは今申しましたように、二つに分けて処理し、又両建によつて処理するために、事務が却つて複雑になりますので、こういうように改めたほうが、事務簡素化に大いに貢献するというふうな利益があると思います。
  108. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 財政の姿を現わすということは両建のほうがいいのです。そのほうがはつきりします。ただ宝くじなんというものが、一つ政府の仕事として儲かる仕事である、本来の行政事務に入らない仕事である、これは当然の話でありますけれども、そういう宝くじを認めておる以上は、これは財政法の原則従つて両建に出してくれるほうが、国会の審議権は行届くのです。そうでないと、経費の面でよくわからない。政府のほうは監督すると言つておりますけれども、国会は監督できない。だからこういうように改めなければならん積極的な理由はどこにあるか。あなたの言われた一つ理由は成り立たん。財政の姿をはつきりするということ、それは理由にならん、却つて混迷に陷れるものであります。
  109. 福田久男

    政府委員(福田久男君) 財政面におきましては、今回御提案申上げました改正におきましては、歳入予算として一定の額が計上されますし、他方又発行する金額につきましても、その歳入予算との関連において、どういう経費の発行額を予定し、どういう費用が出ることによつて、差引の歳入がこういつた金額になるかということで、そのよつて来たる諸般の資料を十分御説明り申上げるわけでございまして、御審議と頂くことができるのではながろうかというふうにも思いますが、又先ほども申上げましたように、一般の行政費と異なる性格のものが、一般会計の歳出予算としてあることが、却つて先ほど申上げたような    〔委員長退席、理事大矢半次郎委員長席に着く〕 本当の行政費と申しますか、財政費というものを現わすことを阻害する要因になるのではないかというふうに考えられるのでございます。
  110. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや、どうもこれは説明にならないです。却つて昏迷いたします。国会は宝くじ発行について必要な経費については審議することができなくなります。差引これだけ上りましたということだけ国会に報告して審議を求めることになるのであり、丁度徴税費のほうは押付けちやつて租税収入がこれだけありましたということだけ予算に載せることと同じことで、却つて国会の審議権を狹隘にして行くことになります。
  111. 小林政夫

    小林政夫君 第三條の改正は、今説明された、内容の使途を明らかにするということと、発行限度の三十五億ということのほかに、原案だと、国会で議決した範囲内においてということになつております。国会の議決ということはどうなるのですか、今後どうしようかというのですか。
  112. 福田久男

    政府委員(福田久男君) 三條におきましては、改正前は、政府はその国会の「議決された金額の範囲内において」という意味は、予算において歳入予算として收入金全部が、つまり発行額全部が上げられますので、その予算の議決の中に含まれたものとして議決された金額というふうに理解いたしているのでありますが、今回は法律によつてその金額を明定する。若しこれを縮小するならば、この金額を又改正するということにいたしたいという趣旨でございます。例えば地方くじの場合はその都度その金額を、各地方公共団体によつて事情も違いますので、それらの地方議会が議決するということにいたしております。
  113. 小林政夫

    小林政夫君 この「発売することができる。」でしよう。だからこれだけ毎年度三十五億円の金額の範囲内において発売することができることなんだから、この三十五億円以内だつたら随時やるということで三十五億と、若しその金額が殖やすということであれば法律改正を要するが、その範囲内だつたら別にほかに議決を要さないというふうに解されるのですね、それはどうなんですか。
  114. 福田久男

    政府委員(福田久男君) 毎会計年度その限度をきめておりますので、毎会計年度においてその範囲内であれば発行できるということでございますから……。
  115. 小林政夫

    小林政夫君 それで純計を歳入予算に計上する、こういうことですね。
  116. 福田久男

    政府委員(福田久男君) はい。
  117. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) ちよつとお諮りいたします。大蔵大臣の出席を要求しておりますが、その連絡がとりにくいようでありますからして、今日の質疑はこの程度で終りたいと思いますが、如何でございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 御異議ございませんならば、それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後四時二十四分散会