○
説明員(
永野正二君) 本年の
北洋におきまする
母船式鮭鱒漁業の
計画につきまして、
水産庁といたしまして、一月の末に
方針を立てまして、本年の漁場が、一方ここの
間仮調印になりました
日米加漁業条約案の点から考えて、又他面ソ連の動向がなかなか明らかでないというような点から考えまして、国際的にいろいろと慎重に考慮しなければならない点がございますので、成るべく手堅く
関係諸国を刺戟しないようにというような
計画を立てる必要があるかと思いまして、大体
独航船の数は五十以内、
母船の数は三隻以内ということで全体のスケールを
水産庁としてきめたわけでございます。そこで当時いろいろと
水産庁に出願が
参つてお
つたのでございますが、一応これを全部白紙に返しまして、この
独航船の
出漁について、
北海道及び内地の過去に
北洋漁業に縁故の深い
太平洋方面は千葉県
以北、
日本海方面は石川県
以北という十一県、この十一県の
かたがたの業者としても御
協議を願うと共に、又この
北海道及び十一県の県庁と私
ども連絡をとりまして、どういうふうにしてこの
独航船をきめて参るかということについて御相談をいたして参
つたわけであります。で、この五十
ぱいの割当の基準につきましては、いろいろな
立場からいろいろな議論が行われたのでございまして、私
どもといたしましても、これをきめるにつきましては非常に実は困難をいたしたのでございます。お手許に
数字で概要が差上げてございますが、結局私
どもが最終的に到達いたしました結論は過去における
母船式
漁業の
出漁の
実績というものを
一つの要素とし、それからもう
一つの側に現在の各県の今度の
北洋漁業に出られる
適格船の勢力というものを一方の要素に置いて、この二つの要素を組合せることによりまして、大体道
府県別の
割当の基準にして置こう、併しながらこの
数字は勿論はしたもございますし、この全体の五十ぱいの基準のみによりまして機械的に割振るわけにも参らないわけであります。そこで
一つ問題が出ましたのは、これは業者の間のいろいろな業者間の話合でも出たわけでございますが、
北海道庁といたしましても出た話でございますが、要するに
北海道の漁場というものが、
北洋漁業が閉されてお
つた間、内地の
漁業者に
相当貢献をしておる、又恐らく本年以降におきましても、東北方面の
底曳漁業その他の
漁業が
北海道の漁場に入り合うという必要があるのではないか、従いまして、こういう事実も
隻数の
割当の調整の要素として取り入れる必要があるのではないか、こういう議論があ
つたのでございました。私
どもも
北海道と内地のこの
底曳漁業者の
関係を、将来に亘りまして平和に且つ均衡のとれた状態におきますためには、こういう考慮も必要ではないかと思
つたわけでございます。それから先ほど御指摘のように、我々の考えましたような標準で参りますと、例えば
秋田県は
昭和十年から十八年までの間、
秋田県の
漁業者の単独の名前では
母船式
漁業の
独航船として参
つた実績はないのでございます。又
適格船の線として引きました五十トン乃至七十トン級のデイーゼル船の以東の
底曳の
許可を持
つておる船というものも
秋田県を根拠としてはないのでございます。これは裏日本方面に通有の現象でございますが、あの方面には
底曳の漁場としてこういう大型の船を入れるだけの漁場がございませんので、各裏日本方面の県の以東の
底曳の
許可として、こういう大型船があるのは非常に少くな
つているのでございます。ところが我々も最初はこういう見地に立ちまして、
秋田県は今度の
独航船は
割当てないという考え方も一時は持
つてお
つたのでございます。その後県庁から私
どものほうに水産
課長以下おいでになりまして、いろいろ
実情を調べましたところ、
秋田県としては過去において
独航船を共同経営とかいうような隠れた形で出している事実がある。それから県としての過去における
北洋漁業に対する依存度と申しますか、
秋田県の
関係者が
北洋漁業に非常に依存をしてお
つたという事実があるということを主張されたのでございます。そこで我々のほうもいろいろその点を
調査いたしたのでございますが、過去における
北洋漁業は勿論この
母船式鮭鱒漁業もありますし、或いは北千島根拠の流し網
漁業、或いは北千島に立てます建網の鮭鱒
漁業というようないろいろの形があ
つたのでありますが、これらのあらゆる
漁業に通じての各
北海道府県別の
北洋漁業に対する依存度というものは、これは私
ども早急の間でもございますし、又これは
相当時間をかけましても、こういうものを
数字で正確に反映することはなかなか困難なことでございますが、私
どもが急いで収集しました
資料の中に、少なくともこういう
数字ははつきりしたのでございます。過去におきまする
北洋漁業の最も大きなウエイトを占めましたカムチヤツカ方面の漁場に対する
漁業従事者が、この
北海道附近からどういう割合で出てお
つたかという
数字を調べて見ますと、
北海道が四四・四%にな
つております。それからその次が
秋田県でございまして二〇・四%にな
つております。その次が青森県でございまして、一九・九%にな
つております。それ以外の県はいずれも多いところで六%、少ないところでは零点何パーセントというような
数字にな
つているのでございまして、大体
北海道、
秋田、青森というのが、こういう方面に非常に依存をしてお
つたという
数字が明らかに出て参るのでございます。それからもう
一つの考慮といたしまして、
秋田県におきまして、過去におけるこういう
北洋漁業への依存度、
北洋を知
つておるという人が大勢おられる
関係で、県としても非常にこの
計画について強い熱意を持
つておられまして、県庁で
責任を以て指導して、本年の
北洋漁業へ出かける
適格船を選んで、是非
独航船の
割当を一ぱいでもいいから受けたいという強い御希望の開陳があ
つたのでございます。これに対して私
どもは当時出席いたしました
北海道及び関東北、北陸の水産
課長の御
意見も聞いたのでございますが、いずれも過去における
北洋漁業についての
数字を、ただこういう
許可の名義が一ぱいもなか
つたということで、
秋田県だけを除外するのは酷でないかということがほかの県の
課長から、これは五、六県あ
つたと思いますが、そういう御
意見も出たのでございます。従いまして我々としては、一応こういう形式的な
数字からは
秋田県は零にな
つておるということで
割当てまいというような
お話も最初はいたしたのでございますが、こういうふうにいろいろ
調査が進み、県の
計画を十分伺
つております間に、どうしてもこれはやはり
秋田だけを全然今回の
北洋の
出漁から除外するということは非常に酷な結果になるというようなことを恐れまして、この問題は将来の
北洋漁業に対しての問題は別といたしまして、本年は第一年であります
関係で、各県から非常に
出漁の熱意が盛り上
つておる際、
秋田県だけを除外するということは
ちよつと如何かと思いまして、最終的に
只今お手許に差上げましたような各道
府県別の
割当の
数字を、案を作りまして、決裁を得ましてこういうふうに決定した次第でございます。