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1952-02-15 第13回国会 参議院 水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十五日(金曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木下 辰雄君    理事            松浦 清一君    委員            千田  正君            青山 正一君            秋山俊一郎君            藤野 繁雄君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    水産庁漁政部漁   業調整第二課長  高橋清三郎君   証人    三重真珠養殖   漁業協同組合長  堀口三郎君    真和真珠株式会    社社長     所神根礼三君    東京真珠協同組    合理事     三輪 豊照君    養  殖  業 大久保忠礼君    三重県浜島町漁    業協同組合長  山崎 英二君    長崎県長与村漁    業協同組合長  松野  伝君    三重県知事   青木  理君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○真珠養殖事業法案衆議院送付)  (第十二回国会継続)  (右法案に関し証人証言あり)   —————————————
  2. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今から水産委員会を開会いたします。  真珠養殖事業法案議題に供します。本法律案は前第十二国会末期提案されまして、本第十三国会継続審議に相成つた法案であります。提案者石原圓吉君ほか十五名でありまして、提案理由として説明されましたその要旨を簡単に申上げます。我が国真珠は重要なる輸出品でありまして、その改良発達図つて真に宝石としての価値を十分に高め、そうして海外輸出を増進いたしたい、現在真珠輸出は年間約十五億円に達しておりますが、その品質改良して真に宝石たる価値を高めまして輸出の増進を図つたならば、近く百億円までは輸出できようというような考えでおる、そのためにこの法律案を出して、そうして母貝増産を図り、検査を厳重にいたして、又研究所を作つてそうして品質改良をする、それから金融を十分斡旋してその事業の振興を図りたいという事項が、この真珠養殖事業法案提出した理由であるというような説明でありました。で、只今参議院におきましては予備審査をいたしておりますが、この法律案が重要な法案であるに鑑みまして、昨年の末期委員が四名現地に参りまして、つぶさに事情を調査し、又関係者からいろいろと意見を聞きまして、法案審議の参考にいたしたのであります。併し特に皆さんの御出席を願いまして、十分この法案に対する内容その他について御証言を願いたいというために本日証人の喚問をいたした次第であります。  それでは証人宣誓に入りますが、その前に一言証人のかたに御注意を申上げます。若しこの証言に虚偽の陳述をなされたというような場合は、議院に於ける証人宣誓及び証言等に関する法律第六条によりまして、三カ月以上十年以下の懲役に処する罰則があります。又正当の理由なくして宣誓若しくは証言を拒んだときは同法第七条によりまして、一年以下の禁錮又は一万円以下の罰金に処せられることになつておりますから、この点十分に御注意をお願いいたしたいと思います。但し民事訴訟法第二百八十条(第三号の場合を除く)及び第二百八十一条(第一項第一号及び第三号の場合を除く)の規定に該当する場合に限り、宣誓又は証言若しくは書類の提出を拒むことができます。念のために先ず民事訴訟法第二百八十条の該当部分を朗読いたします。  第二百八十条 証言ヵ証人ハ左ニ掲クル者ノ刑事上ノ訴追又ハ処罰招ク虞アル事項ニ関スルトキハ証人ハ証言拒ムコトヲ得証言カ此等ノ者ノ恥辱ニ帰スヘキ事項ニ関スルトキ亦同シ   一 証人配偶者、四親等内ノ血族若ハ三親等内ノ姻族又ハ証人ト此等親族関係アリタル者   二 証人ノ後見人又ハ証人ノ後見ヲ受クル者  次に民事訴訟法第二百八十一条の該当部分を朗読いたします。  第三百八十一条 左ノ場合ニ於テハ証人ハ証言拒ムコトヲ得ニ医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教又ハ祷祀ノ職ニル者ハ此等職ニリタル者カ職務知リタル事実ニシテ黙秘スヘキモノニ付訊問受クルトキ前項規定ハ証人カ黙秘ノ義務ヲ免セラレタル場合ニハ之ヲ適用セス  以上であります。  それでは証人宣誓を求めますから、全員起立を願います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣 誓 書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 堀口三郎    宣 誓 書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 所神根礼三    宣 誓 書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 三輪 豊照    宣 誓 書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 大久保忠礼    宣 誓 書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 山崎 英二    宣 誓 書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 松野  伝    宣 誓 書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 青木  理
  3. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 宣誓を終えましたら御着席願います。ちよつと御注意いたします。証人のかたは発言しようとするときは、その都度委員長の許可を受けた後氏名名乗つてから発言を願います。証言内容は、真珠養殖事業法案全般及び各条項並びにこれに関連する事項について証人が有しておられる意見をその理由を付して、又賛成反対かを明らかにして述べて頂きたいのであります。初めに各自約十五分間の証言を行い、更に全部の証人証言終つた後、各委員から御質問を願いますからそれに答えて頂きたいのであります。それではこれから証言をお願いいたします。堀口三郎君。
  4. 堀口初三郎

    証人堀口三郎君) 私は三重県志津郡和具町で三十年近く真珠養殖事業に経営している堀口三郎でございます。現在真珠養殖漁業協同組合長をやつているものでありますが、今般お呼び出しになりまして真珠養殖事業法案に対し意見を述べよとのことですが、私は結論から申しますと、この法案に対して全幅的に賛成するものであります。その理由としましては、この法案真珠価格維持するために作られたものでありまして、運営のよろしきを得れば誰一人反対する人はないと思うのであります。真珠価格につきまして、戦前におきましては業者が三百五、六十名ありまして、そうしてお互い真珠を安く売り合いの競争をやつた時期がありまして、そのときには非常に業者も苦しい経験を嘗めたもので、私もその一人なんであります。私の考えといたしましては、こうした生活の必需品じやない商品は、どうしても国家保護育成によつて価格維持し、又増産を図らなければいかんと思うのでありまして、殊にこの真珠養殖仕事我が国の独自の産業でありまして、特に政府におかれましても力を入れて頂きたいと思うのでありますので、将来英国のダイヤモンドのような立派な産業にして頂きたいと思うのであります。それにはどうしてもこの今度の真珠養殖事業法案を制定して基礎を作り、生産面計画生産をやり、又一方販売のほうにおきましてもお互いに安く売合いの競争をしないような方策を立てて、そうして価格維持をせねばいかんと思うのであります。そうするならばこういう仕事は、輸出が百億円に達することは決してむずかしいことじやないと思うのであります。輸出のほうも戦前生産の七割までは殆んどヨーロッパに輸出されておりましたのでありますが、現在は生産の七割までが殆んどアメリカに輸出されていますので、将来このヨーロツパの市場とかインドの市場輸出することが自由になつたならば相当大量の真珠輸出されるものと、我々は期待しておるものであります。以上述べました理由で、私は是非ともこの仕事は、生産販売自由競争じやなく、計画を立てて調節を図つて国家としての方針を定めて頂きたいと思うのであります。若しこの事業法案議会において否決されるようなことがありましたらば、この仕事戦前のような非常に業者お互いに安く売り合いの競争をやつて真珠業界の前途というものは誠に憂うべき時が来ることは火を見るよりも明らかであると確信いたしますので、その点を非常に憂えるものであります。  なおこの機会真珠養殖事業法案に関しまして、私のほうの真珠養殖漁業協同組合が数回理事会を開きまして協議した経過を御報告申上げたいと思います。真珠養殖漁業協同組合は、昭和二十五年十一月に従来の真珠養殖協会を改組いたしまして真珠養殖業者の団体として設立せられましたもので、組合員の総数は三百七十七名を有しておりまして、県下の養殖業者の殆んど全部を包含しておりますのでありますが、最近このほかに新らしく業者が三、四百名できまして、まだこの人たち組合員にこれから加入しようという状態にあるのであります。この私のほうの組合地区を十五に分けておりまして一地区から一名乃至六名の理事が選出せられておりまして、理事の数が四十五名、監事が五名で、理事会はあたかも総代会議とも言うべきもので、組合重要事項は大部分理事会で以て処理している次第であります。この真珠養殖事業法案国会に上程せられるに当つて、私のほうの組合といたしましては昭和二十五年十一月十四日大安旅館におきまして理事会を開きまして、当時私は副組合長でありまして、私から、中央部において、真珠輸出産業として是非真珠養殖事業法の制定をして保護育成せねばならんとの意向があり、それがため水産常任委員会諮問機関として業者側から東京、神戸、三重の三地区から五名ずつ真珠養殖事業法促進委員を選出することになつたからという説明をいたしまして、出席理事全員で選考しまして五名の真珠養殖事業法促進委員を選出したのであります。その委員氏名は、西岡光一夫山本清松南平左衛門小林万作と私であります。右のように、真珠養殖事業法促進委員会ができましてからは、その真珠養殖事業法促進委員会を中心としまして事あるごとに理事会に諮つて参りましたので、その経過の主なるもの二、三を理事会の例として申上げます。理事会は、養殖業者代表的意見を可及的に上達する措置をいろいろ協議して講じて来たものであります。二十六年の八月十七日に法案の大綱が決定して来ましたので、東京におきまして会議を開きまして、そのとき三重県から真珠事業法促進委員五名の外に、この法案に対して意見のある有志のかたにもそれぞれ御出席を願いまして、山本岩市氏、所神根礼三氏に出席を願いまして、その会議では結局異議なく決定したのであります。それから昭和二十七年一月八日に新旧理事合同理事会を開きまして、同法案を再検討しましたのですが、そのとき同法案はこの機会是非成立せしめるように促進するということを申合せましたのであります。それから二十七年の一月十日過ぎに業者のうちにこの法案反対する人たちがありまして、反対調印をとつて廻り、組合員数の最も多い布施田地区で約七十名の業者がそれに反対調印をしましたので、同地区真珠事業法促進委員布施田に参りまして、同法案に対していろいろ説明をいたしましたところ、業者は、同法案業界多年の基礎を固める重要なものだから促進するようということを申合せまして、反対調印を取消すことを申合せましたのであります。それから昭和二十七年二月十一日に、熱海で入札会のとき、真珠業保護懇談会を開きまして、東京、関西、三重の各地区生産確保輸出の主なる業者も殆んど出席し、意見を交換いたしましたが、満場異議なく事業法促進を図ることに可決されましたのであります。理事会の主なるその都度の模様、又促進委員会模様などは今申上げました通りでありますが、業者のうち法案反対者調印をとりに行くと、業者は皆法案のことがよくわからんために簡単に調印するということで、先ほども申述べました通り布施田のごとく促進委員行つて、よく法案重要性説明すれば、又早速取消すというのが実情であります。併し先ほどから申述べました通り業者の主だつた人たち、即ち理事とか監事かたがたは、理事会を開いてもいつも殆んど賛成なのでありまして、これは法案議員提出関係上、水産常任委員のほうで立案されましたので、我々業者諮問に答えた次第で、法文は最近まで祕密にされておりましたので、一般業者に徹底しない点と、法文が非常にむずかしくて読んでもなかなか業者にわかりにくい点が多いためであると私らは思つております。組合として協議した経過は大略今申述べた通りであります。  私は、最後に申述べたいことは、多数漁民のため、又真珠養殖業者のため、国家のため一日も早くこの法案国家を通過することを切望するものであります。長い間御清聴下さいまして有難うございました。何かこれに対して御質問がありましたら御遠慮なくおつしやつて頂きます。私の証言はこれで終ります。
  5. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次に所神根礼三君。
  6. 所神根礼三

    証人所神根礼三君) 所神根礼三、発言させて頂きます。本日は私のごときものをここにお招き頂きまして私の意見を聞いて下さることに対して私としては感謝の意を表する次第であります。  参議院水産委員会におかれましては、我々真珠養殖業者の重大問題である真珠養殖事業法案に対し御熱心に御検討下され、昨年十二月には生産地三重県に御出張、御調査下さるほか、なお又本日の証言の機を与えられたことには我々業者といたしまして感謝の意を表する次第であります。時間の都合で早速本論に入らせて頂きます。  この法案に対して、業者の大多数の反対の意を表明して、私は調印をとりました。いろいろ今堀口さんか言われましたけれども、私から詳しく説明させて頂きますが、昨年十二月参議院調査団現地に来られた際、或る旅館において賛成業者かたがたは、反対業者意見を差控えて下さいといつて、我々反対業者賛成を求められたために、この法案は完備していないが、これは単なる一つの方便駆引きに使用されるごとく考えられるのであります。反対者の我々に対して余り正直に考え過ぎる、このようにも申されました。どういう意味でさようなことを申されたかわかりかねますが、法案の不備なることは賛成者みずから認めております。何が故に不備な法案の可決を急ぐのでしようかということが我我反対者にはわからないのであります。本法案駆引き方便として玩弄物扱いにすることはちよつとおかしいように考えられるのであります。いやしくも日本法律として提案されるならば、完備した法案提案されるのが当然だと考えるのであります。これではこの法案の蔭に何かしら疑わしい不明朗なものが潜んでいるような気さえするのであります。業者の納得しかねる、誰から見てもすぐ小首を傾けるような法律は不必要と信じて疑いません。殊に甚だしきは第十一条のごときは憲法を侵害するとさえ考えられ、国民に与えた自由を認めていられないように私は思うのであります。この法案全般を評しまして、専制政治時代に行われた強力な統制法規考えられるのであります。何が故に、自由経済時代において統制経済へ逆行するか、時代錯誤も甚だしいではありませんか。机上の計画増産拍車をかけ、粗悪品を増し、資材と労力を浪費する害こそあつて、益なしと私は断言いたすのであります。真珠養殖事業自主性を保持するために、官僚統制真珠業界を破滅に導くと私は信じます。地域的に申しましても、三重県の一部分長崎県、業者数から申しましても旧業者で三百人、千人そこそこのかたがたでありまして、特殊産業業者に私は任すべきではないかと考えるのであります。賛成論者生産制限を主張しながら政府資金の斡旋で増産拍車をかけ、なお母貝増産助成金……、如何なる角度から検討しましても増産拍車をかけていることは事実であります。この母貝増産助成金に対しては反対の意を表するのではありませんが、二十六年度の真珠生産高は、大体、統計を見てみますと、約八百貫乃至一千貫と見られます。戦前の三分の一に相当すると存じます。而も二十六年の十月頃の価格と現在の価格と比較すると、三、四割の値下りを示しております。そうしてまだ下がるような見通しに思われます今日、一層増産させ、滞貨させて価格維持ができるでしようか。現在の主たる国際マーケットである米国の購買力は減退しつつあります。賛成論者はこれに対してダイヤモンド政策を云々されるが、主として真珠を扱う顧客はユダヤ系のかたであります。戦勝国経済界を動かす彼らの財力と商策魔力魔力といつては何でありますけれども、無限の力のことを魔力と私は申上げます。これと我々真珠業者との比較は、原子兵器と竹槍のごときものと私は考えるのであります。賛成論者はこれに対応すべき政府資金何十億の夢を見ていられるように考えますが、併し日本政府にはそれだけの大き場な財源の余裕ができるでしようか。必要欠くべからざる予算でさえ削減されている現今無理なことだと私は思います。とにもかくにも業者自体の大部分がいやがる法案を、無理に実施せんとするお気持は不思議というもなお余りあります。この点につき巷間いろいろな憶測が行れておりますけれども、これはここで申上げる筋合いのものではありませんから御遠慮させて頂きます。何とぞ先に提出いたしました請願書及び大久保忠礼氏より提出された反対意見書をとくと御吟味下されたいのであります。そうして最後に申上げたいことは、これに類した補助激励政策で失敗した例は、殷鑑遠からず遠洋漁船にあります。政府は戦後に遠洋漁船に莫大な金融をしたのであります。巨額の資金業者は借りまして返済すらしておりませんが、借りたものはもらつたごとくに考えるかたもある。政府は手こずつておるように私には考えられるのです。この法案内容をつぶさに検討しますと、いろいろ選挙に対しての野心、政治家の好餌となるような憂いが多分にあるように私には思われます。又泡沫事業家の暗躍する舞台となりはしないかと憂えるのであります。先ほど非常に堀口組合長の何を私も聞いていましたけれども、堀口さんは理事会なんかのことを云々されましたけれども、理事会でこの真珠養殖事業法案のことに対して本議題に一度もしてもらつたことはございません。そして又理事の中に、現在の理事は四十人くらいでありますけれども、半分くらいは反対に署名し、なお又反対の意思あつても、これはいろいろ事業のことや個人的な商売のことなんかで、反対反対でも調印はしないと言つています者、いろいろ地区々々を拾つて見ますと反対者のほうが多いのであります。なお私は組合運営の仕方が、業者の総意がそうであるのに、まして理事においてそういう反対意見があるのに、これが我々業者全員賛成しておると言われることが、どうしても私は想像がつかないのであります。恐らく協同組合理事であられるかたが調印済みであれば、議会でも又委員かたがたにも本心を打明けるのが私は組合長の勤めでないかと考えておりす。いろいろ時間の都合上、大久保さんにも少し時間がかかると思うので、これでやめさして頂きます。
  7. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次に三輪豊照君にお願いいたします。
  8. 三輪豊照

    証人三輪豊照君) 私は三輪豊照であります。現在東京真珠協同組合常任理事でありまして、二十年以前より、伊勢におきまして養殖真珠事業を営んでおるものであります。本日は真珠養殖事業法の賛否につきまして、不肖がお呼出しを頂きましたことは身に余る光栄と存じまして、浅学菲才をも顧みずお答えを申上げますから、どうぞ不明の点はお問い質しを頂きたいと存ずる次第であります。  先ず順序といたしまして、真珠事業法案に対しまして賛成いたしまするところを総括的に申述べさして頂きたいと存じます。我が国養殖真珠は、元来世界第一の天然真珠の主要なる生産地であるペルシヤ湾真珠を第一といたしまして、これに次ぐ地位を得ていたのでありましたが、第二次の世界大戦が勃発いたしました時分から、ペルシヤ湾のバーレン島附近にて行われましたすさまじい石油開発事業のために海の底質が変化いたしましたことや、石油事業に地元民の労力が集中されましたことなどの事情のために、二千年の歴史を誇るペルシヤ真珠は急激な減産を来たしまして、只今では全滅に近い状態に陥りましたので、第二次の大戦終つた頃には我々の知らん間に、我が国世界第一の真珠生産国となつてしまつたのであります。元来我が国特産品として世界に誇つたものは生糸であつたのでありますが、現実に我が養殖真珠こそは突如としてこれに列ぶ世界一の特産品としてその地位をかち得たのであります。この事実を私どもは改めて認識を深めなければならないものと存ずる次第であります。幸いに今回真珠事業法案なるものが提案されまして、真珠輸出による外貨獲得について万遺憾なきを期せられんとするところのこの法案に、我々大多数の業者は欣然として双手を挙げて心から賛成するものであります。現在我が国輸出産業種類ごとに大別いたしまするならば、先ず繊維、鉄鋼、機械、農水産物化学製品及び生糸動植物製品等と区分をされますが、これの大部分は万一世界的経済の不況に遭遇いたしました場合を考えますと、いずれも特種産業ではなく一度販売価格競争やダンピングに遭遇した場合には、一たまりもなくこれに敗北をせねばならんと考えられるのであります。併しこの中で生糸、茶、真珠だけが、辛うじて一応無競争品とは言えないかもわかりませんが……、それでも生糸はすでに化学繊維の前に年々往年の隆盛もなく、又茶はセイロン茶等の進出の影響によつて甚だしく輸出額の低調を来たしておる次第であります。ひとり我が養殖真珠だけが世界における独自産業なるがために、文字通り全く独占的な独り舞台の位置を保ちつつ、而も年々その輸出額を増大しつつあることは、日本人の誇りにおいても、又意気込みにおいても、如何にしてもこれを育成して行かねばならないものと結論することは蓋し当然のことであろうと存じます。この輸出はいわゆる飢餓輸出では絶対にありません。幾ら増産いたしましても決して食糧の生産面を阻害することもありません。又生産に伴うて人命や健康等を犠牲にすることもありません。而も原材料を輸入による面が極めて微少なので、これによつて、取得いたしましたるところの外貨の純度はおよそ九九%といつた実に比類のない素晴らしい成果が挙りますので、外貨を取得する上におきましては極めて割のいい輸出品なのであります。  前述のように養殖真珠は極めて有利な輸出品でありますることは今更述ぶるまでもなく、すでに二十二年の昔、即ち一九三一年に我が国真珠は将来世界市場指導性獲得を目指して、故阪谷芳郎男爵によつて国産真珠専売法をときの所管大臣提案したのでありましたが、時期尚早理由で採択に至らなかつた事実があるのであります。事実当時はペルシヤ湾天然真珠には我が日本真珠は圧倒され続けておりました時分でありましたがために、確かに時期尚早ではありましたが、現在は前に申述べたごとく、天然真珠枯渇養殖真珠の発明以来四十年の歴史によつて養殖真珠の真価が漸く認められて参りました今日においては、日本地位が自動的に世界一の真珠生産国になつた、この事実の前には先賢の狙いが漸く実現するときに至つたと深く信じて疑わないものであります。  さて我が養殖真珠保護政策を施しまして、輸出を助長し得たといたしまして、世界の需要がこの真珠をどこまで吸収し得られるかの問題について考えて見ましよう。世界の婦人のうち首飾りを欲する層の中で、購買の可能性のある階級を調べて見ますると、世界女性の人口十二億のうち二十分の一に当る六千万人と推算いたしまして考えますと、年間需要可能の最低量は千人に一人と見て、約六十万本を年間輸出可能の第一目標に置き、一本を平均二万円とすればネックレスのみでも年間に百二十億内外の輸出を目標として企図することができるのであります。然らば増産によるその価格の下落ということは何人といえども常識的に見て当然のことと考えられますが、事、真珠に関しては他の品物と異なり、特殊事情があることを一言申述べてみたいと存じます。丁度昭和五、六年頃より欧州の経済界の不況に従いまして、逐年価格は下落の一途を辿つたのでありました。これが大きな原因は、母貝一個当りの原玉挿入は従来一個乃至二個であつたものを、相場下落の対策として技術の研究向上を図り、幸か不幸か一個の母貝に対し五個乃至十二個の多数の原玉挿入に成功した。その結果は、増産に一層の拍車をかけたのであります。一方輸出先におきましては、相場の下落に伴い、加うるに無秩序なる販売政策により恐怖心を抱かしめて、大半の顧客は、注文の取消しと同時に仕入れ止めの非報に、我が業者は遭遇したのであります。ところが養殖業者といたしましては、金繰りの関係上、手持真珠の換金に迫られまして、委託販売の止むなき事情に立至り、その結果は、輸入商人の翻弄する成行き値段によるコンサインメント販売を承諾するの止むなき状態に陥りましたため、遂に昭和十二、三年頃の真珠業界における一大恐慌を見たのであります。これが曾つて経験せざる、日華事変勃発前後の真珠価格の下落の一大原因となつたのであります。右申述べましたような下落の実情で、我々業者のみの力においては、対外輸出品に対する対策には一たまりもなく転落するは当然の帰結であります。本事業法成立に基き、団家が指導的立場におかれて、業者がこれに協力し、輸出の調整を図り、これと並行的に資金の斡旋をし、世界の需要供給を睨み合しますならば、この相場の反動は未然に防止し得ることを確信してやまない次第であります。  さて前述のごとく、我々真珠業者生産の第一目標は年間約六十万本と結論されるのでありますが、口借しくも現在の生産段階では、高品位の生産ができませんで、大部分は低品位にして、目方にして一本平均三匁五分、価格にして一本平均十四ドル、即ち五千円という、極めて真珠にあるまじき低き単価の輸出額を示しているのであります。昨年の輸出高は、通常輸出額十五億六千万円と、進駐軍みやげ物買入機関たるCPOの買入額三億七千万円の別途輸出額を合計して約二十億円でありますが、世界市場は常に現在生産品質よりも遥かに高級な品質にして太いサイズを求めているのであります。然れどもこれは国家保護政策なくしては、到底世界が求むる品位のものを生産することの困難なる理由があるのであります。それは養殖年数で見ますと、最小限度一年から最大四年半の養殖期間を要するものでありますが、大体においてサイズの小さいものは養殖期間が短く、大きくなるに従つて養殖期間が延びるのであります。然るに大玉を養殖する真珠の大型母貝生産は実に少く、従つてその大部分は小型の母貝によつて小型真珠が養殖されておる現状であります。大型母貝を得るためには、母貝保護政策のよろしきを得なければ……、到底養殖に用いらるるまで育成することは、母貝の供給者又は真珠業者の貧弱なる経済状態においては全く不可能なことであります。更に又、母貝保護政策よろしきを得て、大型真珠の養殖に着手し得たとしても、三年半乃至四年半の長期に亘る養殖期間に要する資金の調達なくしては、到底大玉の出現は不可能であります。結論しまするに、外国が求めてやまない大型真珠は、如何にしても国家保護政策がなくしては到底出現は不可能なのであります。元来真珠価格の原則は、半径の自乗に正比例するとまで言われておるのでありまするが故に、真珠による外貨獲得の極意は絶対に大玉の生産にあることは異論のないところであります。幸い国策よろしきを得て高品位の真珠生産なし、その販売価格世界市場に向つて正しく調整して行く方策が確立しました暁には、真珠価格は安定するが故に、順次単価が高騰して行くことは当然であります。即ち、昨年千ドルで売つたと同じものが今年は六百ドルに販売価格が下るような無秩序な売り方をすることは、宝石販売法としては絶対に禁じなければならないのでありまするが、現在我が国養殖真珠販売方法を見ますると、誠に前述のごとき憂うるべき状態にあるのであります。宝石を所有する理由には、財宝的価値維持されておることに重要なる意義を有しておるのでありまするが故に、一連の経済政策が確立して、価格が安定すれば、直ちに飛躍的に販路が拡張されるであろうことは、世界宝石商人のひとしぐ唱え、且つ財宝を蓄えんとする需要階級の求めるところであるという特殊性に御刮目あらんことを願うのであります。かくのごとく販売並びに宣伝の方法よろしきを得れば、或いは流行を創造し、或いは需要階級の真珠に対する審美眼を高からしむるなどによつて、優秀品の所有慾をそそる等により、高級品の販売に成功いたしますれば、現在よりも遥かに高価なる品物を売り込むことは、装飾品という品物の性質上易々たるものであると信じます。のみならず、宝石販売政策はかくあるべきであることは、英国のダイヤモンド販売政策を見ても明らかに理解されるところであろうと存じます。  以上の計画によつて果して世界市場がこれらの計画量を価格の低落がなくして受入れらるるか否かの問題については、我々は永年に亘つて研究して来たものでありまするが、世界真珠の需要量は意外に厖大なものでありまして、次の事実によつて御認識を得たいのであります。それは昭和二十五年に我が閉鎖機関が約千貫に上る真珠を公入札によつて放出いたしました際は、短期間に約千貫の真珠世界市場に向けられたのでありまして、この放出量が如何ように世界真珠市場価格に影響するかは、実に将来の販売計画を定むる上に重大なるテスト・ケースとして注目されていたのでありましたが、実に短期間に放出した大数量にもかかわらず、真珠価格はいささかも下向くことなく、ますます上向の一途を辿つてつたのであります。この事実は、ペルシヤ真珠のなき現在、世界独歩の産業たる強さを発揮して、前述の計画に対して確実性を与える貴重なる裏付を与えたものであります。  前述の事実によりまして、我が国にとつては極めて経済的に安定いたしましたところの重要なる輸出品であることの御認識を得たことと存じますが、これに対しまして何らの施策もない現在の状態が続くものといたしますれば、万一甚だしい輸出の不況に際会いたしました場合を仮定いたしましようか、その場合は恐らく濫売と濫造と、かてて加えて金融の逼迫から、業者は養殖途上の玉の早揚げ等によつて品質輸出を招来し、宝玉的な品質維持は到底望み得ず、遂には雑貨品扱いに転落することは避け得られない運命にあると存ずるのであります。かような状態に陥りますれば、ひとたび名声を失墜した我が日本真珠価値は、再び誇りある昔日の宝玉として世界に君臨する地位を挽回することは至難となつてしまい、誠に憂慮すべきこととなるものと思うのであります。我々はこの真珠事業法案が仮に施行せられましたといたしますれば、差当りは国家の施策に順応するために或る程度の制約と苦しみのあることは当然でありまして、個人としての経営の見地からいたしますれば、少しの痛みもないとは決して考えられませぬが、外貨獲得が唯一無二の国策であると考えまするならば、如何ような個人的の犠牲もあえて堪え忍んで、国家百年の大計の確立を希うためにあらゆる情熱を傾けて真摯な熱意を以てこの真珠事業法案の通過を期待するものであります。  このたび議員提出真珠養殖事業法案を拝見いたしますると、大体次の五項目になると思います。一、調節生産、二、金融の斡旋、三、母貝の育成、四、検査制度を設けること、五、国立研究所を造ること、以上五項目のことを行うことが、法の骨子となつておりますが、これはいずれの項目においても真珠業の発展と国富の増進を図る絶対的必要条件であつて業界人として実に衷心から賛成意見を持つものであります。賛成とか不賛成とか唱える点はこの五項目のうち、調節生産と、金融の斡旋と、母貝の育成という点のみの三点に重点があるものと思います。第一の調節生産に関しましては現在専業的養殖業者は四百名に達せず、農村漁村の不況に喘ぐ折柄、新漁業法の実施により、新聞紙上等に書き立てて、輸出のホープなどの言葉に眩惑され、養殖真珠業に転業しようとする希望者が相当多数に上り、三重県下のみにおいても七百名ほどの出願者があると聞いておりますが、大多数の者は仮に事業をなすといたしましても、資金並びに技術的などの点を総合判断いたしまして、一年揚げの小玉の生産に殺到いたしますることは想像に余りあるものがあります。現在小玉の過剰を憂いておりまするこの際、なおも小玉の増産における拍車をかけますることは、小玉市価の暴落が避け得られない運命にありまして、これがため大玉、中玉もその影響を受けて市価低落は免かれないものと憂慮されるのであります。かように見て参りまするときは、国策的にも真珠業界全般から見まして、今回施行せられんとする真珠事業法に基く調節生産が絶対的に必要であると確信いたされます。第二、金融の斡旋に関しては養殖真珠は、その製品の六、七割まで首飾用ネツクレスに利用いたしますので、普通のネツクレスは両端に小さな玉を使用して、中央になるに従つて中正、大玉を使用するのであります。小さな玉は一年乃至二年で真珠玉に完成するのでありますが、中玉、大玉に至りましては三年から五年の間作業をいたしまして、海中に養殖して置かなければならないものであります。
  9. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 三輪さん、質問の場合に又お答え願いまして、大分時間が超過いたしましたから大体で一つ打切つて頂きたいと思います。
  10. 三輪豊照

    証人三輪豊照君) もう少しです。従つて長期の資金が必要で業者の現在の資本状態では到底賄い切れないのでありますから、これ以上輸出の増進を図るには長期資金の融資を仰がねば目的の達成は期せられないのであります。特に最近の世界の需要を見まするときには、指輪用玉だとか耳飾用玉だとかは、いずれも大玉、中玉のみでありまして、ネツクレス等においても中玉以上を利用した太連のネツクレスの需要がますます旺盛で、従つて中玉、大玉の非常なる品不足を訴えておる現状であります。これを見まするときにも長期資金の必要がいよいよ高まりつつある現状であります。これを考えますときにおいても、資金の斡旋はこの法案の最も重要なる項目の一つであります。第三、母貝の育成……。
  11. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) その辺で一つ適当に……、あと質問の場合に、大分超過しましたから。
  12. 三輪豊照

    証人三輪豊照君) それでは母貝の育成のことでちよつと申上げまして……。誠に大変時間を頂きまして有難うございました。以上申述べましたような次第で、業界人といたしましても又国民の一員といたしましても、かくのごとき法案反対する理由を見出し得ないわけであります。従つて本案を即刻実施せられ、講和成立ともならばより以上深く研究せられて、まだ改良される点は多々あるようにも考えられますので、諸公の高遇なる御識見と御達見によつて将来完全にして理想的なる法案にされんことを切に希望してやまないものであります。誠に長時間に亘ります御聴聞を頂きまして大変有難うございました。
  13. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今の御発言は十分間時間が超過いたしました。成るべく時間通り一つお願いいたします。次に大久保忠礼君。
  14. 大久保忠礼

    証人大久保忠礼君) 証人大久保忠礼と申します。私は本法案が関西真珠協同組合の役員会議で問題になりました初めから、その目的は結構であつても実行が困難な法律だ、或いは実行の不可能な法律を幾ら出してもそれは効果がない。むしろ逆効果を来たして、その法律が却つて害を及ぼす、国家にも損害をかける、不利である、業者の将来にも非常な不幸を見るというような点から反対をいたしておりました。ところが、今回お呼出しにあずかりまして、忌憚なく私の意見を述べさして頂くことができましたことを深くお礼申上、げます。  只今三輪証人の御発言は誠に真珠状態、性質などを詳しく述べられましたが、併し本法案に対して果してそれが理想通り実行ができるかどうかという点が甚だ説明がまだ不十分であるように思うわけであります。ただ理想的な案を述べられたように思われます。私もこの第一条に定めてある目的というものが三つありますが、これに対して別に異議はございません。ただ法案の条文を検討いたしましたときに、その二条以下がことごとくどうも実行が困難であつた、弊害があるという点で本法案反対するのでありまして、私は決して感情的に反対するとか、反対せんがために反対するとか、或いは独善的な偏見で申述べるとかいうのではありません。四十余年間真珠養殖業、現在も養殖業者として働いておりますが、その経験、経過して来た状態から考えまして、たびたび真珠下落の難局に立至つて、或いはその時代において、統制時代には統制法規もやすやす政府のお考えによつて行われる時代にあつたものですから、統制論者として始終先端において動いていましたのですが、そういう実地の経験、或いはこの商品というものが動く経済的常道という点から見まして、宝玉だとかいろいろ御説明もありましたけれども、やはり真珠も商品として動くのであつて業界の従来経験して参りました動きというものを骨にして、この法案が果して実行ができればいいが、これでは実行が全然できない、逆効果を来たすという点で反対するものであります。従つて業者中にも多数の反対者があるように見受けておりますし、先ず私は関西真珠協同組合の役員として先日も役員会に臨みましたが、役員会の大多数は反対意見を持つておりました。そうして先月の二十九日の役員会では、通過すれば今のうちに加工業者への融資三億円とかの請願書を出しておかんと、あとから言うてもその融資を受けるわけにはいかないからという問題で議したときに、法案そのものに反対なのに今から請願書を出す必要はない、法案が万一出たらそれから先でも遅しとせず、とにかく法案の通過というものは反対であるというような意見から、その請願書を、東京三重はどうであつた知らんが、関西真珠協同組合の役員会では反対しました。そして、いつそ地域的な業者を集めて総会を開く余裕があれば多数の意見を聞くのもいいが、それを集めて聞く余裕がないから、先ず役員会だけで、そういうふうにきめました。ところが又、僅か一週間たつかたたずの本月五日に、一日に東京でやつたその報告の会をするからというので役員会を開きました。その報告会の結果は、東京で皆さん御相談になつたことと思いますが、前には三億円の融資請願を出そうという問題であつたのが、今度は十億円の請願を出すということで協議せられたのでありますが、殆んど……そのときに集つてつた中でお二人それに賛成の御意見はありましたが、あと多数は歯牙にもかけず、笑つたくらいのことで、問題になりませんでした。それは結局、法案というものの危険性或いは不必要、反対、そういう意見があるので、有力な関西の業者もその席上にてははつきり反対であるということを言明せられましたし、又或る有力なかたは、この法律が公布されても二年か三年実施を見合わしておいてもろうて、世間の状態業界状態を見た上で実施してもらうならば至極結構だというような、先ず法律即時公布の反対意見が出たようなことで、大多数は皆古い経験を持つたかたらが反対するのである。どうかこの反対者業界に多数あるという点を皆様の御賢察をお願いいたしたいと思うのであります。それと真珠に関するいろいう性質とか、そういうものについては述べたいことはたくさんございますが、時間もございませんので、私は具体的にこの法案そのものについていささか反対意見を述べたいと思います。  その法案では先ず第五条の計画生産金融、これらが骨子であると思います。これを除いては殆んどこの法案について何ら論ずるところもありませんように思われますが、そうしますると、この計画生産というものが、果して国家が多額の経費を使つて役人を置いて、そうして監督するのか指図するのか知りませんが、それが理想通りに実行ができるかどうかという点は非常に疑わしいのじやないか、私はできないと断言するのです。そして万一融資をするにしましても、その融資というものは公平に融資するのであるか、或る一部の考に対してするのであるか、果して融資というものに適当な担保があるのであるか、どうも政府の金なら使わにや損だというような、而もそれが何億というような大きな金を、多いほどいいというような考えがあれば、一体誰が使うという、この融資の方法についても随分むずかしい。そして、必ず増産の結果、真珠価格は下落するということは、これはもう太鼓判を捺しても明らかなことで、私はそういう増産による下落ということには五、六回遭遇しました。そうして最初は私的組合をこしらえて、販売の一つ便益を図つて、相場の維持をしようと思つてやり出したこともあり、それでも夢に実効がないものですから、農林省の公認組合にして相当な罰則まで設けてやりましたが、これも少しも目的を達することができなかつた。それから農林省の統制では到底効果がない。そのときは通産省でなく商工省でしたが、いろいろ商工省のほう一渡りをつけて、工業組合ならば非常に固い統制がとれるだろうと言うたこともありまして、わざわざ小川商工大臣でございましたが、御賛成を得まして、商工省令まで出して頂いて、重要工業品と認めて、そうして工業組合組織にもかかつたのでありますが、どうしても業者の話がまとまらないで、これもできません。そうして余り増産しまして、その限度を超えて増産しますと必ずこれは商品の動きの常道として暴落するのであります。暴落すれば真珠は売れなくなるというのが、ほかの商品と違つた、ほかの商品は或る程度下落すれば又売行きもできるし、他と競争もできるという点もありますが、真珠は安くなれば非常に売行きが悪くなる、そうしてその売行きが悪くなれば注文も来ないし、つい止むを得ず投売りというものができる。この濫造濫売……市価暴落の原因を作るものは、業者中のやはり無理をした者か、或いは借金をたくさんした者から原因するのであつて、各業者共に一つも融資は要らんというのではない、それぞれ資本というものは事業に伴う大事なものであるから、資本はあらゆる手段を講じて作りましようけれども、まじめに自分の分に相応した、そうして担保を入れて融資を受けて、生産に一生懸命努力してこそ、いいものができる。とにかく計画生産というような考えを以て、それをただ机上の空論で計画しましても、業者それぞれ自分の海の質とか、或いは自分の持つておる母貝の大小、資金、資材、技術、そういう点を勘案して、最も入念に、最も注意深く最善の努力をして、最善の方法で業者はやつておりますので、別に法律によつてこれに干渉する必要はない。殊に時代自由経済時代であつて、昔の最多数、三百五十八名の時代でさえも、法律の固いものがあつてさえもうまく統制がとれなかつたのに、今千人にも近い業者があり、今後ますますその業者は殖えようとしておるときに、これを完全に統制しようなどということは甚だ時代錯誤でもあり、誤まつた見方であると私は思うので、是非この法律計画生産或いは融資というようなことは実行ができないものだということを御了解をして頂きたいと思うのでありまして、殊に賛成論者の希望しておる輸出を百億に達せしめるというようなことは、これはただ空想に過ぎない。こんなものは論ずるに足りない。私は長年扱つて、ヨーロツパ方面を初め世界各国の真珠の売高というものは、どうも飽和点があるのではなかろうか。そんなものはありはしませんけれども、一方に売れば一方の流行は幾らか萎靡して来るというふうに、世界ダイヤモンドが丁度一定生産量で価格を保つておるようなものであつて、ただ融資しさえすれば、完全にいい玉を大量に増産しても値か下らんというものではありません。殊に真珠は、今戦後のストックが非常に少かつたので俄かに売れ出して来たものでありますから、幸運にも市価の暴騰を来たして、例えば昨年閉鎖機関の多額な真珠市場に流出しましても、消化されたという言葉も出ましたが、これは丁度注文、需要があつたときに出たから消化されたのであつて、それは日本にストックが少く、注文に応じ切れないという好況時代に流出されたから消化したのであつて、この事業は、今のところ非常に養殖業は利益のある事業であるところから業者が殖えた点でもおわかりと思います。又業者母貝を争うて買いました結果、母貝の値段というものは戦前に比較いたしまして五千倍も、或いはものによつては一万倍からの暴騰の、大変高価な母貝養殖業者は買つてまでもやつたのでありまして、それがためにここ二、三年前からは母貝地から母貝を買うだけでは足りないし、高いし、めいめい稚貝の繁殖というものを図り、それぞれ育成して、たくさんの今は養殖業者の手持の母貝というものも、稚貝というものもありますから、本年のごときはこのまま放つておいても五割、或いは恐らく二倍に達すると私は思うのですが、この増産というものは年々増産するので、このまま捨ておいも増産し過ぎて困るほど増産すると私は思つておる。あえて法律によつて、それも甚だ不完全な法律の下にたくさんな国家の経費を使い、或いは官吏の指図を受けながら、これは統制的に規制しようといつても、それは決してできないのであります。で、むしろ捨しておいて自然の増産を待つほうがいいと思います。従つて業者中に、若し価格が余りに増産した結果暴落する場合がありましても、それは自由経済の常道で、やはり引合わんものはやめる、或いは甚だしいものは借金に苦しんで倒産するものもできましようが、これは止むを得んと思います。自由経済時代には……、それで初めてだんだんとその認識を深め、各自が注意するようになるのであつて、安易に資金政府から出る、或いはこう思うようなことがあつては非常に遺憾だと思います。従つて母貝地への助成金なども私は必要もないし、真珠が下るとか上るとかいうようなことは、ほかの商品とは違つて、下るときには急転直下大暴落をするのであります。半値になつた、又半値になつたというふうに、二度目の半値はつまり四分の一に下つたわけなんです。そういうような暴落をするのであつて、そのときに当つて融資を受けておるような無理をした業者真珠は、どうしても業界に大害を及ぼす、投ずるというようなことはやはり小さい業者はやりません。それは必ず大きな業者の無理をしておる業者から起るので、弊害が伴うのであります。で、私はこの融資、計画生産、今のところ、この法文を見渡して実行のできるものはないし、又それを無理に実行しようとしても不公平であり、決して公平には行われないし、業界には害がある、益はないと思います。研究所も余りその効果は認めません。私はまだたくさんこう書いたものは持つておりますが、今時間がなんというので、又質問に応じてお答えもいたしますけれども、母貝助成金を与えて母貝を助成するなどは必要もないし、真珠法案というものは養殖業を規制すればいいので、若し輸出検査などを是非やらなければいかんというならば、やはり真珠輸出業者も加えておるならばいいが、その対象の中に真珠輸出業者は加えもせずに、真珠輸出検査の義務のあるがごとき法規は、法規としては不完全であろうと思います。まだたくさん書いては来ましたが、到底これは申上げる時間がございませんけれども……。
  15. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 質問の場合にお答え願いますから……。
  16. 大久保忠礼

    証人大久保忠礼君) どうかこの法案反対者が多数あるのでありますから、まあ民主的にもどうか排撃して頂きたいと要望いたします。又質問でもございますれば……。
  17. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次に山崎英二君。
  18. 山崎英二

    証人山崎英二君) 先生がたには先ず現地に来られまして賢島荘母貝協同組合四十数箇村、翌日当浜島にお越しを願いまして、この法案と関連あるか、又はその他の生産という面についての御視察か、その程度は知りませんけれども、関わるるがままに来られた先生に私どもお答えさせて頂きました事柄につきまして……遠方までお越し下さいましたことを厚くこの席で御礼申上げます。  特に遡つて記憶を呼び起しますと、木下委員長の司会の下にすでに公布されました漁業法の委員会の公聴会を傍聴させて頂きましたことであります。そのときに真珠業者の代表といたしまして堀口三郎氏が指名されておりましたところが、御病気のために代りまして片山さんが御出席されて陳述したことを私記憶しておりますむそのときに、この法案が一応通過いたしましても真珠養殖に限つては別個に何かの法律を設けておきたいという言葉があつたように記憶しております。それに端を発しましてこの真珠事業法案というものの要綱というものが先ず三重県に参りまして、当時新聞に拝見いたしまして、我が県の長官青木さんもここに見られますが、真珠養殖事業法という名前はその当時はございませんけれども、かような法律によりまして三重県に真珠研究所ができるということを新聞で発表されまして、ははあ、如何にもこういうものが将来できて来るのだなということを私承知いたしました。以来これに関しまして衆議院のかたがたにおきましても種々現地母見地といたしまして、先ず中心地であるところの英虞湾の漁業協同組合組合長、その他幹部を三重県漁連に招致いたしまして、かような構想の下にということがありましたときに、その当時、これは浅野長光さんの案ですが、それには、母貝地というものの考え方は抹殺されておりまして、真珠養殖業者が一貫的作業である関係上、母貝地も自分らの掌中に収めるがごとき要綱案を拝見いたしました。そこでここに列席しております英虞湾の各協同組合長は一丸となつて、先ずこの法案のようにやられた場合には、母貝地として手も足ももぎられたようなものだ、何のために今日まで営々として祖先がこの母貝地として立つて来た事柄において、このようなことは子孫に対して……漁村の荒廃にかかわる、このときに我々は奮起して、そうしてこの要綱を改むべし、かように進言したのであります。先般この事柄につきましても、皆さん始め、堀口さん、そうしたかたがたと衆議院の委員室におきまして懇談的にお話を申したことも記憶しております。そのときに、この法案に対して、母貝地漁業協同組合は、反対をしておるのでなかろうか、かような御質問を受けたのであります。それは皆さん甚だ御迷惑でございます。なぜならばと申しますと、その反対の声はみずからの業者かたがた反対しておる。わかりました、私の失言でございました、率直に取消をされました。母貝地といたしまして、先ずかような法案ができる、できんにかかわらず、生産をして行くということは、これは漁業協同組合の使命でございます。先ほど大先輩の大久保忠礼さんが申されましたが、このかたにいたしましても、明治、大正時代から浜島の貝を十銭、十五銭という時代から取引を願つたかたであります。又堀口さんにいたしましても、三輪さんも、ここに御列席の業者かたがたは、浜島及び英虞湾、神明浦、立神等の母貝を以て、御木本さんはともかくでございますが、今日までの大を成して来たということは、いわゆる業者協同組合母貝生産地とは魚と水という、この業者の立場が一体でなければならん、又業者のかたにもお金を儲けて頂かなければ真珠貝の値打もない。買つて頂かん場合には、まあ食べられはいたしますが、毒素を持つていて、腹にあたるというような関係上、どうしても真珠貝——阿古屋貝というものの使命は……天然真珠、この大自然の、地球ができてから、先ず英虞湾にいたしましても、大村湾にいたしましても、その発生はたくさんあつたと思います。それを、大久保さんなり、又先代の見瀬さん、又森本さんというような、そうしたかたがたからこの真珠というものの研究が始められまして、真円真珠の真価がここに出て来た。時代がすでに移りまして、これを外国に売るという時代になつて国家産業ということに相成つて来たということは、私申上げるまでもないと思います。かようにいたしまして、今回の漁業法のあり方を静かに……私どもは苦い経験を持つて来たのであります。でありますら、この事業法というものができ上りましても、その運用、これによりまして、如何なる波乱を起すかというようなことも或いは想像できます。たか併し、物をこしらえるときには、相当研究をする、考慮を払うということは、これは結構でございますが、併し、こうした事柄におきまして、私どもはこの宣誓にもありますように、良心に従つて意見を述べてみたいと思う。決して協同組合協同組合の立場で、自己勝手な意見であるというのじやなくて、先輩又は自己の体験から申上げさしてもらうのでございますが、いわゆる漁業法なるもののこの行き方におきまして、三重県では相当てんやわんやをしておるということは諸先生方もよく御記憶を願いたいと思います。更にこの席上を借りまして、それは三重県なら三重県の行政上のことであるから、こうおつしやられればそうでございますが、先ず長官の腹の中にもよくく入れて頂きたい、かように思うのでございます。御通知を頂きました発言内容の事柄につきまして、「真珠養殖事業法案全般及び各条項並びにこれに関連する事項について有せられる賛否の意見並びにその理由」ということであります。これを私どもは大別いたしまして、先ず二つに分けてみたいと思うのでございます。全般及び各条項について、そのうち特に全般については、かねがね陳情してある通り賛成の意を表します。その理由は、法案の目的、第一条には、国民経済の発展に寄与するとありますが、この事業日本が持つ特殊産業であるために、漁村経済に及ぼすところ至大であるからであります。各条項について、若しこの意見によりまして、いろいろと衆議院のかたがたと取捨御決定を願うならば幸甚と思いますが、先ずこうした内容において問われておる関係上お答えさせて頂ぎます。これは内部規制の事務的に過ぎない、法は一つの目安であつて、法のみにこだわると、すぐ裏を考えるということは、その事例はいずれにも多々ある例でございます。要は漁業者と言わず、業者と言わず、この場合の業者真珠養殖業者を申上げます。真珠の玉のごとく、純真にして純美であつてほしいのであります。次に、各条項を改めるといたしました場合の私の希望は、先ず第五条の、只今大久保さんも申されました計画によりまして、農林大臣にその所定の書類を提出する、こういうふうに相成りまして、更に農林大臣がこれに勧告を与える場合、この勧告を与える場合のみに限つて資金を斡旋する、これが非常に私ども理解に苦しむ点でございます。先ず第二条におきまして、この法律において養殖事業とはこれこれ、養殖事業者とはこれこれ、かように明定してある関係上、一に母貝生産地漁業協同組合はいわゆる事業者であるというように解釈するのでございます。その場合、昭和二十七年度の母貝地の生産計画は、先ず一万貫乃至二万貫は浜島町でできる、英虞湾においては一万五千貫でぎる、神明浦においては三千貫から五千貫というものができる、この計画は必ず出さなければならない。こういうふうになつておりますが、その場合、業者との貝の配分その他の関係で助言なり勧告を大臣がする。かような場合に、それでは浜島町は計画に二万何ぼ出たけれども、もう五千貫何とか増殖の方法はないか、それに邁進せよというようなことがあるならば、遮二無二にせねばならない。けれども、畑に大根や胡瓜を作るようなわけにも行きません。適当な改良と適当な漁場がない限りはそれは無理でございます。だが併し、不可能を可能とするということには、先ず天然資源、大自然に変りのない限りは、或る程度は満たされると思いますが、これには自己の意見も混りますが、先ず浜島といたしましても国家に対して要求したい点が多々あるのでございます。その勧告を受けたものに限つて資金を斡旋するという事柄は、これは全般を指しての資金の斡旋というような行き方にお考えを改めてもらいたい。こういうふうに考えておるものでございます。  次に第六条の「農林大臣は、左の各号の一に掲げる事業を営む者を組合員とする漁業協同組合」、こういうふうにあります。御承知のように現在の漁業法では真珠貝というものは共同漁業権に相成ります。而して稚貝採苗その他は、ここにも高橋第二課長もおられますが当時申上げましたように、三重県においてはこの採苗施設、投石施設をひび建養殖ということにおいて一応漁業権の免許を、目下受付けさして頂きまして、申請中でございます。そのうちに先ず第一優先順位はかようにする、組合員を持つ漁業協同組合が管理権を持つて行う場合は第一優先順位ということになつております。我が浜島は、これを漁業協同組合の自営ということに一応いたしましたが、他に競願が、ございません関係上、先ずこの浜島が長官から頂くと思います。こうなつた場合に、そこにこれは法の、先ほども申しましたように一つの目安であるから、扱いにおいてこうということに勿論将来なると思いますけれども、先ず条文の中に「事業を営む者を組合員とする漁業協同組合又はその漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会に対し、予算の範囲内において、必要な助成を行うことができる」と、かようなあいまいな文字を使わずして、助成するものである、こういうふうにはつきり申して頂きたいのでございます。  第七条の条文は標準価格の公表でございます。これが先般大蔵専門員のかたがたが、これは事務当局でございましたが、我が浜島に来られましたとき、又法制局のかたがたが見えられたときも、ここに参列の英虞湾関係業者協同組合かたがたと一問一答、よくこの法案内容につきまして話も聞かさして頂きました。そのときの母貝価格公表ということは、一応これは昔の統制経済的な行き方でなかろうか、そうなると、これによつて何十%かの漁業協同組合維持経営し、そうして漁村の繁栄をこれに求めておるこの真珠貝に対しまして、公表価格を作るということも一応どういうものであるかといつた時に、確定的には申上げられませんけれども、ここがいわゆる法の解釈による取扱と思います。それは或る一定の最低線をきめるのである、こういうふうに申されました。最低線となりますと、算盤高い業者かたがたも最低線であるから、今後は浜島の入札会があつても四千円か三千円と仮にいたしまして公表されたとぎには、それを上廻ることはない。どうしても大玉を使う、又は中玉を使うといつた場合に、英虞湾の貝でなければいけない、それを求めるところは浜島以外にないといつた時には、入札方法によりまして最近御承知のような効果を生んでおります。これは業者も痛い話でございます。痛い話でございますが、自分の商売になる以上、これだけの価格を犠牲に払つて真珠玉を作るということが言い得られると私は思うのであります。この場合、農林大臣が公表するといつた場合に、次の審議会というものができるそうでございますから、その審議会意見を聴くと同時に、母貝協同組合意見を重要視して頂く、かように希望するものでございます。  それから罰則の点でございますが、これは岡さんも先だつて賢島に来られましたときに、いろいろ協同組合として考える点がございませんかと言われましたのですけれども、何が何やらさつぱり私どもはつきり申上げる材料もござい喜んので、いろいろ考えましたところ、先ず検査制度に対する罰則というものは、これは一応このままで私はいいと思いますが、先ずその他の報告義務、そうしたものに対しまするこの罰則は、その事業者に対して助成及び資金の斡旋を停止するという程度に御緩和を願いたいと思うのでございます。  それから附則の施行期日でございますが、諸先生方の御審議によりましてこれが御通過を見るときには、二十七年四月一日からこれを施行するということになつておりますが、一これは即日施行というふうにお改めを願いたいと希望するものでございます。  時間がございませんから簡単に申上げますが、大久保さんは先ほど業者は二年や三年の玉を作る貝が手持ちである……如何にもそうでございます。現在ひび建養殖なり、又は籠活等によりまして稚貝をつけて手持ちにしておりますが、これが現在の漁業法におきましては、真珠養殖ということは、いわゆる玉を作る業者ということになりまするので、採苗施設から成員、母貝に育つまでの協同組合である、かようになつている関係上この仕事がだんだんと業者自体が、若し籠活なり稚貝採苗なり、そうしたことをやつたということになれば、直ちに何かの発動があると思います。又漁業組合も、虎視眈眈として業者かたがたがさようなことをやるのじやなかろうかと、目を八角にしてこれから見廻ろうと思うのであります。さような時期でございますから、現在持つているものは一年、二年は使用できますが、そういうふうに漁業組合母貝育成ということに待たなければ、どこから貝が出る。現在ここに松野さんもおられますが、大村湾その他の方面からも相当英虞湾の貝が入つて来ております。傍聴におられるところの中井宗五郎さんが先ず英虞湾によその五色貝なり、そうした貝を持つて来たときに、これが学問的に三重県水産試験場において相当御研究を願つた場合に、荒廃等につきましては、英虞湾において貝が皆無の時期が来るのではなかろうか、従つて玉の値打、出来上りというものに非常にひびが来る。こういうことを申上げ、水産試験場の御研究に待つて見たいというようなお話もございました。御承知のように本年英虞湾におきましても、五ヶ所湾におきましても、小指の爪ぐらいの稚貝、これはどういう方法に使うかということは私もよく知つておりますが、先ず大きな玉を作る、数珠玉を作つて行くというときには、来春手術する場合に手持品がなければいけない。であるからこれだけの小さい貝は、大体目方にいたしましては僅かでございますけれども、一貫匁といたしますと何百個、何万個というものが、相当な数において取引されている。こうした場合にこの取引先が、誰が持つて行くかというと、口汚なく言えば業者が持つて行くというよりほかに途がないのであります。こういう場合に漁村経済がこの真珠事業法の第一条の目的に果して達するかどうかということは、私どもは静かに考えるときに、これは港湾全般として大久保さんはこれは個人としての意見もございましようけれども、そうした事態が来るというときには母貝地にそれだけの助成をして頂く、併しこの助成を安易に受入れるものでございません。相当人件費なり、資財というものが数多くかかるのであります。そうしてこれらの稚貝採苗というものにつきましては、粟粒ぐらいの間から顕微鏡で見まして、粟粒ほどのものから爪ぐらいになり、爪ぐらいから二銭銅貨ぐらいの大きさになり、これを一々分析して、これは私どもは素人でございますけれども、業者かたがたはよく見ております。そうした手数のかかることはなかなか容易なことでございません。これらに対して国家は、又県は協同組合に対して力を、若し国家なり県がそれだけの補助助成がなかつた場合には、母貝地の言いなりの値にやつて頂けますかということを御誓約願います。さようなことにおいて、若し国家なり、県が助成なり、又資金の斡旋ということをされる場合においては、いろいろ制約を受けますから、なかなかこれはむずかしいと思います。そこで高橋第二課長さんとも先だつてつたときに、先ず投石事業ということは、ここでは言い憚かりますが、国家がやつてみる、よろしうございます。それは結構でございますが、又国家といつた場合に浜島なら浜島に投石事業をやるといつたときに、浜島の漁業者を使わずにどこの人を使うのか、その資金の斡旋なり、水産庁といたしましてそれだけの予算を以て施行するといつた場合におきましては、三重県を信用してやつて頂きたいと思うのでございます。又質問のときにお答え申上げたいと思います。以上であります。
  19. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次に松野伝君  にお願いします。
  20. 松野伝

    証人松野伝君) 最初に証言上の立場を申上げておきたいと思います。ここに掲げてあります通りに、この証人の中にただ一人長崎県の代表として入れさせて頂いたわけでありますが、私は一漁業組合長として母貝生産業の立場に立つておると共に、又半面養殖業という立場にも立つております。又母貝生産者とそれから養殖業者とは、これは不離一体の立場でありますので、本法案のあり方というものも私は一連の立場において証言を申述べてみたいと思うのであります。具体的なことは前の証言におきまして縷々御説明になつたわけでございますが、私はこの法案をどう見るかというこの法案の見方について、いささか抽象的になるかも知れませんが申上げてみたいと思います。  ダイヤモンド真珠は、これは申上げるまでもなく世界的な二つの宝石でありまして、世界中の誰しもが憧れの的の品物であります。曾つてアメリカ人が長崎に終戦後来ました当時、或る婦人に長崎県の業者真珠のネツクレスを一つ進物としたわけであります。そうしたときに、その婦人はどうしたかと申しますと、ものも言わないで涙をぽたぽた落しながら小躍りして喜んだということを、先だつて事実として私は聞いたわけであります。事、真珠に関する限り如何にこれが宝石として高い価値を持つておるかということがそれ一事でわかるのであります。又ダイヤモンドに対する我々の観念も、それにほぼ似たものがあると思います。このダイヤモンドのことにつきまして、私は曾つてイギリスがダイヤモンド政策をとりました時分のことを若い時分に勉強をして、未だに記憶しておるのでありますが、第一番目に、非常に自由貿易主義の英国が、この原鉱採掘の制限を加えるとか、或いは濫掘、濫売を抑制するとか、そうして自衛力の維持のためにあえて経済的援助をするとか、更に我々が以て参考にすべきことは、このダイヤモンドの市価維持のために非常に価格的な政策を講じて、その価値の保存に努力しておるという面であります。これは勿論、現在のダイヤモンド政策におきましては、自主的な立場においてやつておるということでありますが、我が国のこの真珠政策におきましては、今日まだそういう自主統制の立場をとるまでに我が国の経済は行つていない。全くこれは高度の自主統制でありまして、又一つの経済的安全の保障でもある。そうして更に、これを詮じ詰めれば、これは計画生産であるということなのであります。それが故に今日までダイヤモンドというものは、少しも市価を落していない。これに対して東洋の我が国の唯一の宝石であるところの真珠の政策はどうであろうか。全くダイヤモンド真珠は対蹠的であり、対比的であると私は思うのであります。イギリスにおけるダイヤモンド政策に対比して真珠の立場はどうか、真珠生産業者の心掛けはどうか、或いは計画生産をやつておるか、或いは国家乃至自治団体の施策があるかと申しますと、今日全くこれは自由放任の状態に置かれておる。勿論これは自由経済下でありますので、それは当り前なのでありますが、母貝生産計画にしても、個々ばらばら、玉の生産計画もその通り、又貸金面はまさに弱肉強食の状態に置かれておる。これではとても国家が、国家の立場として要求するところの十五億の外貨獲得、それを百億に伸ばすということは望むべくもないと思います。こういうように今日の状態におきましては、まさに悲惨な状態に追いやられはしないかという危惧の時期に到達しまして、我々は今や反省の時期に達したのであります。この法案が出ましたのは、つまりこれは反省の結果でありまして、真珠というものに対する国民の大いなるところの反省の結果、我々の選良がこれをまさに編み出さんという非常な苦衷の最中であるかと思うのであります。現在大村湾におきましては、英虞湾その他のように過去において十分増産を見ていないわけでありますけれども、今日の状態から申しますと、まさに過去において英虞湾が煩悶して来ました過程をとりつつあるのでありまして、私たちは投石なり或いは採苗施設なりというものをやりまして、母貝増産を図り、それと同時に大いに養殖業者にも仕事を拡張して頂いて一路増産の傾向に進みつつあるのであります。  私はこの法案を眺めまして、一々この箇条につきましての議論は、今ここで申上げる準備を持ちませんが、併し最前三重県のほうから出ました御意見の中に、私は少し不思議な点を発見したわけであります。それは昭和十三年の七月に非常な不況に陥りまして、市価が暴落した際に、三重県から陳情書が出ているのであります。約十七カ町村、或いは組合長、町村長のかたがたが陳情書を提出されているのを読みまして、うたた感慨無量のものがあるわけであります。その中に、こういうことが調つてあるのに気付いたのであります。非常に不況だから要するに国家として援助してくれ、こういう筋合いでありますが、「官辺、学界に加工並びに養殖技術を指導するに足る新研究なく、徒らに当業者の経験的施術に放任せること。養殖業者の急増せる結果、漁場面積に比して養殖貝数の過多を来たし、為に栄養不良に陥りたること。濫造濫売の自殺的行為あること。資金難のため市価維持の自衛力の欠けること。」、こういうような具体的条項を挙げまして、当局に対して陳情されているのであります。これが昭和十三年の七月に陳情されております。この昭和十三年の状態はあたかも今日にふさわしい状態じやないか、私はあえて断言したいのであります。こういう過去においてこれほど苦痛を嘗められた三重県におかれまして、再び漁民或いは養殖業者が苦しむようなことをしたくない。この法案は丁度昭和十三年七月の三重県の苦しみを約十数年たつた今日はつきりと裏付けをする事実ではないか、私はこう信ずるものであります。  本法案の通過に対しまして私たち長崎県の母貝生産者並びに養殖業者は、一日も早くこの法案の決定、通過を見ることを懇願いたしているものであります。私急遽上京いたしまして、この法案が審議されつつあるということは聞いておりましたが、その内容に至りまして十分検討しておりませんが、ただ私が眼を通した場合に、今申上げましたように、全く大乗的な立場において本法案が通過することを希望するものであります。米或いはその他の食糧の統制は、不足するが故に統制をされるのであります。本法案は、不足するのではなしに、殖えて立派になるような一つの統制なのであります。自由経済下におけるところの統制といつたような単純な統制ではなしに、向上のための、国家の大目的のための、そして又お互い生産者を究極において助けて頂くところの法案でありたいものだ、こう信ずるものであります。以上。
  21. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次に青木理君。
  22. 青木理

    証人青木理君) 私は過去四年有半三重県知事としまして、真珠の殆んど大部分を県内で生産をする、その三重県の知事をやつておりまする関係上、真珠の問題については相当大きな関心を持つて今日まで参つております。従つて真珠養殖事業法案提出されるに至りました今日までにおいて、相当関係をいたしておりますので、その経過を御報告申上げ、同時にこの法案についての私の意見を簡単に申上げたいと思います。  真珠重要性、これはもう今更申すまでもありません。実は一昨年ヨーロツパからアメリカを二月ほど旅行いたして参り、その旅行中、特に真珠の問題につきましては、特別の関心を持つて見て参つたのであります。で、結局のところ、真珠というものがアメリカは言うまでもなく、世界各国において、特に婦人の憧がれと申しますか、執着の的になつておる、その程度も非常に高いものだということを直接体験をして参つた。もつと真珠生産真珠販売について国家的の見地から考えなければならんということをつくづく感じたのであります。同時に、真珠輸出真珠世界的な地位維持するという上から言つて、何が最も大事な問題であるかということを、結論を申上げますというと、価格の安定ということの一言に尽きると思うのであります。これは各地における真珠販売者、そういうふうな関係者の人々から私が旅行中にたびたび陳情を受けまして、日本として是非この価格の安定のためにもう少し努力して欲しい、それが結局真珠の将来を約束する唯一の途だということをたびたび聞かされたのであります。たまたま真珠業に関係せられる業者かたがたの中にも、この真珠価格の安定ということについて非常な関心を持たれるかたがたが非常に多いのであります。そういうかたがたと相談をしながら、いろいろと含まで努力をいたして参つたのであります。一方、私の県は今申上げたように真珠の主たる生産地でありますので、終戦後今日までの間、進駐軍は勿論、海外からの旅行者の真珠養殖場の見学の観光客というものは極めて多数に上つております。御木本の調査によりますというと、恐らく一年に五千人を下らないというようなことであります。こういうふうな人々の便宜を図るために、英虞湾の一角賢島に真珠を対象とする観光客を対象として賢島志摩観光ホテルというものを約一億円の経費を以て県において作りましたことは、或いは御存じかと思いますが、こういうふうな大きな仕事をやりましたのも結局は三重県における真珠業の如何に重大であるかということの証拠の一つであろうと思うのであります。  当時私どもがこの真珠界における二つの問題、一つは価格安定の問題、それから真珠生産地の中心地である英虞湾において研究所を設けたというふうな意図の下に、いろいろと御相談を業者のかたといたして参つたのでありますが、その一つの現われがこの真珠事業法案となつてつたのであります。真珠事業法案内容につきましては、私自身知事といたしましては全然関与をいたしておりません。これは水産委員会において立案されたのでありまして、この内容につきましては、真珠業者全般の意向をそのまま採入れてあるものと、私は今日までの手続上そういうふうに察しておるのであります。この真珠事業法案内容についていろいろと先ほどからも論議を伺つておるのでありますが、真珠事業法案を今日まで進めて参つたその経過から見まして、この法案真珠業者の大部分の希望なり意向なりを反映しておるものと、私はこう考えております。又一応現在の段階におきしては、先ずいろいろと議論はあろうと思いまするが、大局的に見まして、この程度のものが先ず最良のものではないかというふうに私は考えております。  先ほどからもいろいろ議論がありますが、特に私として感じますことは、今後生産を殖やして行つたならば価格維持ができない。これは暴落するのは当り前だという意見に対して、私は自分の考えを述べたいのでありますが、この価格維持ができないという最も大きな理由は何かと申しますというと、真珠生産というものが、ほかの産業と違いまして特殊な形態をなしておる。即ち稚貝から母貝にしてそれから真珠の養殖というこの全生産過程というものは、少くとも五年以上を要する特殊な生産過程を持つ。従つてこの間における資金というものは相当多額に上つている。非常に経済界の好況な時代、又真珠価格の上昇過程においては、こういうふうなことも或る程度救済し得るのであります。常にこういうような長い生産過程においては相当の資金を、この産業国家的な産業である以上、国家的に面倒を見るのは私は当然なことではないかと思うのであります。私、実は自分の家の業として製糸をやつております。で、真珠生産というものが生糸生産と誠によく似通つていると思うのであります。ところが生糸に対しましては、国家的に大いに保護育成の方途を講じておる。然るにこの重要産業である真珠に対して、今日まで国家は殆んど放置の状態であつた。何らかの方途を講じて真珠生産に対する保護育成の途を講ずべきであるというふうに考えるのでありまするが、その最も有力なる途は結局現在の段階におきましては、資金の問題であります。資金と申しましても、私としては二種類あると思うのでありまして、その一つの面は生産過程における資金の斡旋、第二には価格を安定させるための安定資金というものを政府において考えて頂く。先般の国会におきまして糸価安定資金として三十億の予算が通過した。真珠におきましてもこれと同じく真珠価格安定資金というものを政府において是非考慮して頂きたい。そこまで行つて初めて真珠事業法案というものが成立して来ると思うのであります。このことは真珠産業……、この法案の問題の直接の監督官庁である農林省、農林大臣の廣川さんも私に対して全く同感の意を表された。これは結局価格安定資金を創設するところまで行かなければならん、自分も全く同感だ、そういうふうに今後努力しようということを約束されておるのであります。これは今すぐそれを望むことは困難と思いますが、そこまで一つやつて頂きたい。若しそこまでやつて頂けるならば、この真珠事業法案に対するいろいろな意見も私は解消して行く可能性が非常に強いのじやないかということを考えます。  実はこの法案を作りますまでの過程におきまして、ほかの法案ちよつと違つた点は、この法案を立案通過させるために、業者から一億円という大きな金が政府に対して寄贈されておるのであります。その一億円の金は一体どこから出て来たかという問題でありますが、戦争中に統制会社ができまして、合同真珠株式会社というのができた。これはたしか百万円であつたか二百万円かの小さな会社であつた。それが今日まで経過をいたしました結果、一株五十円の株が、生産の結果、恐らく四万円以上の金が業者の手に入ることになつたのであります。そこで私は業者のかたに対して真珠業百年の計画考えるならば、一つ自分たちの手に入る四万円以上の清算金のうち一部を一つ業者自身の手によつて積立て、そうしてこの金を基礎として皆さんがた真珠業界の将来の発展のために何らかの役立てをするようにしたらどうかということを私が強く要望をいたしました。そうして私の知る範囲における代表的なかたがたにお集りを願つて私から懇請をいたしましたところが、業者かたがたは満場一致を以てこの希望に賛同の意を表された。その後業者かたがたの自主的な働きによりましてこの一億円の金を集めることに成功し、そうしてこれを政府に寄附するという手続きをすでに終えておられるのであります。私は業者かたがたの将来に対する備えのために、こういうふうな熱意のあることを非常に感謝をいたしているのでありまするが、このことは取りもなおさず業者かたがたの大部分がみずからの手によつて、みずからの仕事の将来を確保し、又発展させるために如何に一致協力をしておられるかということがわかるのであります。先ほどもどなたからかお話がありましたが、この一億円の金が将来のこの真珠業界の発展のために、私は大きな原動力となることと信ずるのでありますが、折角の今日までの業者かたがたのこの努力を水泡に帰せないように、是非ともこの法案の通過を私といたしましても希望をいたす次第であります。いろいろと御意見もありますが、私の今日まで知事という立場において折衝して参りました段階においては、この法案の通過に対して大部分は喜んで迎えておられるものと私は信じます。又一部において御意見もあろうと思いますが、大局的な見地から真珠業界の将来を眺めるならば、小異は捨てて、先ずこの法案の通過が望ましいということを私は確信をいたしております。  以上申上げまして、余は御質問に応じてお答えをいたします。
  23. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これで証人証言は全部終了いたしました。証人に対する各委員からの御質問は午後に譲りまして、午後は一時四十分から再開いたします。ひと先ず休憩いたします。    午後零時五十二分休憩    —————・—————    午後二時開会
  24. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 午前中に引続いて委員会を開会いたします。  証人に対して御質問がありましたら、お願いいたします。
  25. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 堀口証人にお尋ねいたしたいと思います。この日本真珠戦前においては七〇%がヨーロツパに輸出されておつた。戦後においては、その七〇%はアメリカに向けられておるということを先ほどお述べになられたようでしたが、戦前一番真珠世界中に出廻つたという、いわゆるペルシヤ湾真珠が相当出ておつた時代と、そうして日本養殖真珠というものを合せた、いわゆる世界市場における真珠生産というものは、当時どれくらいあつたものかということが、若しおわかりであるならば、それを伺いたいと思います。それから、現在の真珠日本生産量はたしか一千貫程度生産されるということを伺つておりますが、現在の真珠価格は、いわゆるまあ世界市場における価格というものと、世界市場といつたらいいか、日本輸出する価格といつたらいいかも知れませんが、その価格と、そうして戦前において一番真珠がよく出ておつた時分価格との釣合いはどうなつておるか。勿論貨幣価値の差はありますが、それを調整して考えた場合に、現在の価格と当時の価格とどういうふうな差があるかということがおわかりであつたらお話し願いたいと思います。
  26. 堀口初三郎

    証人堀口三郎君) 今秋山先生から御質問がありました、お答えいたします。戦前は、世界の流行の中心がパリでありましたために、日本養殖真珠の殆んどいいものはフランスへ輸出されていましたのでありまして、日本真珠の約七割ぐらいはヨーロッパに出ておりまして、その当時は、アメリカはイミテーシヨンが非常に多く売れていました。元来戦前はアメリカはイミテーシヨンばかりを主に使つておりましたのでございます。そうしてアメリカの御婦人の装身具というものは大抵ヨーロツパへ旅行して、フランスで、パリで主に買つたものであります。それでそういう関係で、戦前はヨーロツパへ約七割程度出ておりましたが、戦後、御承知の通り、欧州がああいう経済状態になりましたものですから、アメリカへ非常にこの真珠が、進駐軍の兵隊さんが御木本さんあたりへよく行つて、そうして日本養殖真珠がアメリカに宣伝されまして、イミテーシヨンの代りにどんどん日本養殖真珠輸出されるようになつたのであります。そうして、現在は日本真珠生産の約七割はアメリカに輸出されておる状態であります。そうして、戦前日本真珠の一等たくさん生産されたときは、年大体三千貫ぐらい生産されたものであります。現在は、今去年から今年にかけて採取期でありますが、大体真珠は十一月から十二月にかけて採取するのですが、一等遅いところで一月に採取するのでありますが、一年間に千貫ぐらい採取しておるのであります。そうして戦前真珠の相場は、一等売れにくいときは、厘珠が匁六十銭、一円というような状態であり、中珠、大珠も大抵一円から一円二、三十銭、そういうような状態でありましたのが、戦後物価指数も変りましたが、一匁が大体厘珠が千円くらいに売れる。中珠、大珠が千五百円から二千円、成績の如何にもよりますけれども、これは大体浜揚げといつて、陸揚げしたそのままの相場なんでございます。印度洋のペルシヤ湾真珠というものは、大体に天然の真珠でして、日本養殖真珠と違いまして、装身具価値は余り大してありません。何といつても、世界真珠として装身具価値を一等認められているのは、日本養殖真珠であります。それは量がたくさんあることと、そうして割合天然真珠に比較して値段が安いというために、世界の各国に非常に重宝がられておるのであります。一等今までよく売れたのは、フランス、インドにたくさん小さい珠がよく売れたものであります。
  27. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 当時ペルシヤで生産されていた生産量は、およそどれくらいということはわかりませんですか。
  28. 堀口初三郎

    証人堀口三郎君) ペルシヤで生産された天然真珠の量というのは、私存じませんでございます。
  29. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 大久保さんにお尋ねいたしたいのであります。この法案に盛られております資金の問題でありますが、先ほどいろいろお述べになりました中に、資金を注ぎ込んで増産させるということは、価格を下落せしめることになるというお話でありましたが、それともう一つは、そういう法案があつても、その可能性はないじやないか、資金の斡旋をするという可能性は全般的にはないので、特に一部の人だけの金融措置になるのではないかといつたようなことをお述べになつたように思いますが、これは可能性がないからこの法案はつまらないという意味でありますか。それとも又、可能性があつても、資金の斡旋をする政府にしてもらつて増産を図るということは困るのだという御意見でありますか、その点を一つお尋ねいたします。  それから、従来価格が非常に下落した例がある、それは増産によつたものであるということをお述べになつたように思いますが、これは真珠がたくさんできた、今お聞きしますと、三千貫ほど日本はできたというのでありますが、私はペルシャでできます真珠がどんなものであるかということをよく存じませんけれども、恐らく日本養殖真珠のような完全に近いようなものがたくさんできる、天然真珠であるならば、そうたくさんできるのじやないだろうと想像しておるわけであります。ところで、日本養殖真珠生産に、その価格が非常に違う、差が出て来るということは、増産程度にもよると思いますが、これは増産をされたためであるが、或いは当時粗悪品が非常に余計出たというために下つたものであるか、粗悪品でなしに、生産が殖えたために下つたというようなお見込でありますか。この点をお尋ねいたしたいと思います。  それからもう一つ、前に戻りまして、この資金の問題が一部の人のためにのみ利用されて、一般にはこれは廻らないのじやないか、零細な人たちには資金の斡旋ができないのじやないか。従つて一部の人に、業者に偏するようでは何にもならないというお話でありますが、若しこれが何らかの方法によつて、例えば協同組合等がその資金の斡旋を受けて、組合員のそれを必要な者に公平に供給するとなつた場合でも、やつぱり融資は必要ないと、こういうふうな御意見でありましようか、この点をお伺いいたします。  それからもう一点はこの計画生活とまあ言つておりますが、必ずしも日本真珠をどれだけ作るといつたようながつちりしたものでなく、とにかく証つてみにや、果してこの天然条件の中にも非常に左右されるものでありますから、やつてみないと生産確保はわかりませんけれども、現在のいろいろ話を聞きますと、まあ主として輸出されるものはネックレスである。このネツクレスを作るためには大珠がどうしても相当なければ、小さい珠は幾らでもあるが、大珠が少いためにいいネツクレスができない。こういうことで大きな珠を作るためには資金を供給させねばならん。そうしないと現段階では資金難によつて成るべく早く資金を回転しないために大きな珠を作るということが非常に困難であるから、そういつたような大きな珠を作り、大きな珠を作らせるには一つの計画を立てて、それに要する資金を供給するといつたようなのがこの法案の狙いでありますが、そういうような計画生産ということができないことである、そういうことは不可能であるといつたような御意見のように伺いましたが、それはどう円いうわけでそれができないだろうかということを先ずお尋ねいたしたいと思います。
  30. 大久保忠礼

    証人大久保忠礼君) 大久保でございます。只今秋山先生からのお尋ねにお答えいたします。私が増産をすれば真珠は下落するということを大鼓判を捺したようなものだとまで申上げましたのは、以前からしばしばそういう事態に遭遇して統制時代に相当統制ということについて苦心もし、奔走して官庁などに渡りをつけて御尽力をお願いしたのでありますけれども、僅か最高三百五十人の業者時代でさえもこの統制というものがうまく行われなかつた。現在千人にもなつており、又今後ますます業者は殖える一方であるという見通しがついておる今日、而も経営に対しては自由経済時代という今日においてこれを統制することは非常に困難であつて、そうして現在のままでおきましても或いは本年などはもはや昨年の五割乃至二倍に達するのじやなかろうか。五割以上の増産は確実ですから、それは一つは戦後非常に真珠が恵まれてストツクの少ないところへ注文が殺到したというために、先刻堀口さんからも言われたように、まず千倍乃至五百倍という、貨幣価値の下落に釣合わないところの暴騰を演じたために、真珠業者は非常に恵まれて、まあ利益を得たのでありますが、その利益がある事業であるという反面が業者の増加というものを招来しているので、そしてますます増加をする趨勢にあるとしましたならば、これはどうしても現在の状態に放任してさえも増産するのであり、将来価格の下落というものは非常に警戒せんならんにもかかわらず、なおこの上に輸出百億というような空想に駆られて増産をさせるような、増産拍車をかけるような仕事はするに及ばない。又増産したならばもう必ず下落する、その下落する場合に真珠の特異性というものは、ほかの商品ならば或る程度下落すれば売れなんだものは売れて来ますが、真珠は下落すると、向うの仕入れる商人たちも非常に不安を感じて、それは仕入れなくなる。或いは流行も相当上流で流行しておつたものがだんだん安いために下層の婦人に賞揚されるが、上等の人はもう捨てて顧みなくなるというような傾向がどうしても必然的に現われて来るので、それがますます下落に拍車をかけるわけなんで、私は現状に処してこの市場の推移に委して、そうして暫らく二年、三年の経過を見てから必要のある場合に必要な善良な法律、適当な法律、実行のできる法律を皆さん立法の府にある方々にお願いするのに対して別に異存はありませんけれども、今日急いで、而もこの法案を眺めましたときに、どうも実行の不可能な、このまま無理に押して増産しようとしたならばむしろ弊害もあり、逆効果を来す、そうしてまじめに事業をしている業者までもその余波を受けて損失を招きい不幸に陥るということを恐れるのでありまして、つまり第一条の目的は結構だが、それを達成するためにこの法案というものが少しも効果を挙げない、むしろ逆効果を来す。そうして又実行もできないのである。こういうために私は下落ということを非常に恐れるのであります。それと各業者は自分の事業のことでありますから、自分の資力、自分の技術、その点を勘案しまして、最も入念に慎重に事業というものを経営しておりますが、側から干渉するに及ばない。そうして大珠或いは小珠の調整なども、市場が大珠を作るほうが利益であれば、皆進んで大珠をやりますし、又小珠が利益であれば、小珠をやるので、ちつともその点は憂慮する点はないと思います。私も以前は大珠屋の大久保で、ずいぶん大珠ばかりというてもいいくらい大珠をやつておりました。品種も余り遜色のないものを出しておりましたが、とてもたくさん余つて、そうして根を作るのに始終大珠は余り勝ちであつたので、今日はストックの状況や売れ行きの工合で、又戦後相当膨脹した業者母貝の大きさなどの関係上、資力も関係ありますが、大珠が少かつたようなので、大珠は非常に俄かに昨年は暴騰した形はありますが、やはり大珠を作つたほうが利益である。そうしてそれは今だからして需要の多いものであるということがわかれば指図せん、干渉せんでも大珠は皆やりますので、余り干渉し、その結果が公平に行渡らないというような計画生産は実行が伴なわないで終るという私は考えを持つております。  それから金融というものが一部人に利用せられるいうことは、これは金融は無担保ではできないと思います。それでやはり担保という問題が起つて、来ますが、この担保については養殖貝の筏の保険制度を確立して、その保険を政府が保証したならば担保になるという御意見などもあるようでありますが、非常にこれはむずかしいことで、保険料率も高いし、業者は非常な不利を見、たとえ金融は金利が安くても、そういうような点で非常な高率な保険料も払わなければならんというので、保険制度は実行が困難だと思います。又協同組合等で融資を受けてその組合員に貸すと言いますけれども、協同組合というものは一つの独立した法人であつて協同組合の資力というものは、誠に出資金というものは貧弱なものでありまして、然らば協同組合全員が連帯責任の下に多額の何億というような金を果して借り得るや否や、私は恐らくこれは協同組合への融資ということも実行ができんのだろうと思います。従つて公平に一般の業者に行渡るという意味の融資はできん、こう思いますので、それが審議会委員の審議にかかるとかいろいろな点でむしろ弊害も起り、或いはその多額な融資を受けたものはどうしても事業に無理が出ますので、市価下落の場合にはそれをやはり急いで売らなければ借金が返せないというようなことが必らずあるので、これは何の業にでも同じことなので、決して小さい業者が市価を動かし害を及ぼすようなことはないので、大きな業者が大きなダンピングをやつたり、処分をしたりという点で起つて来るのであるから、よほどこの金融はむずかしいものだとこう私は思います。私は本来の意見としましては、もう真珠業者に対する金融真珠を担保にしなければ貸したらいかん。そして真珠担保であれば、評価委員というものが評価した真珠の六割なり、七割なり、そのときに応じて貸すということは、審議委員も要らなければ何も……、評価委員だけを設けておけばできることであり、最も堅実な金融であり、借りた人も必ずそれを返さなければ、自己の非常な損失になるのであるから、不要な金融は求めもせず、又返済という点についても非常にスムースに行われる、そうして業界を害するようなことはなかろう。さもない、ただ政府の御出資とか、御斡旋によつて多額の融資をされることは非常に危険であるという意見を持つております。  で、今申上げた保険制度或いは協同組合への金融というものが、実際には完全に行われないという点を申上げたんでありますが、その次にお尋ねの計画生産、これは先にちよつと申上げたように、業者は、大体この真珠業というものは、その性質が家族工業的の性質を帯びているものだと、それは農業だとか、養蚕業などと誠に似通うた点があるのでありますが、自分の事業というものは、最も入念にいい品を出そうと努めておるということは、これは事業を経営するものの当然なことであつて、投売りをするとか粗製濫造をするというようなことを言われますけれども、それは自分の事業の成績から考えましても、決して好んでおるものではありません。真珠が暴落した場合などに、売れないから金は要るし、それを売らなければならんというときに生ずるのでありますから、無理な経営をしたものがする。まじめに忠実にその事業をしておるものは、決してそういう工合に投売りなどはいたしません。又小さい業者が小さい区域で一生懸命やつておる成績は、私が長年経験した実際の問題としましても、比較的大量生産者よりも成績はよろしいのです。大量生産者は金も欲しがるし大量生産をやつて大儲けをしようという計画でかかりますけれども、とかくこれは失敗するので、まあ無理な借金をしてやるに及ばない。政府に依存したり、何かそこに大きな融資というものを設けられて、それに依存したりして計画を立てることは、下落の因を作るものであつて、却つてまじめに事業をして小さく、今日千人以上のものが経営して国家産業として働らいておる人々までにもその弊害が波及して、非常な不幸な目に遭わさなければならんということは、法律上それが救え得れば結構です。私はこの目的に対して異議を言うのではない、第一条の目的は結構であるけれども、どうかそれに副うような、実効の伴うような善法をここ二、三年の経過によつて作られたならば、それはいいでしよう。そのときにおいて又批判をして大賛成論考になるかも知れませんが、現在あの法案というものではそれが絶対できない。ああいうものを今作れば、もう害があつて益は、ない。而もそれは農林省の官吏を増員したり、又不要な手数をかけたり、いろいろな点において不利な点ばかりである。現法案は必要ない。こういう結論になりますので、どうかその点を御賢察の上で法案通過を阻止して頂きたいと思います。
  31. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ほかにございませんか。
  32. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 下落の原因は、粗悪品の意味ではないということを……。
  33. 大久保忠礼

    証人大久保忠礼君) 下落の原因は、粗悪品というよりも増産にあるのです。そうして粗悪品粗悪品と言いますが、今日みな技術も大よそ一定しておりますし、粗悪品というものは大量生産者の大量散品のほうが率が多いのです。そうしてまじめに一生懸命経営しておるものからは、そう粗悪品は出ません。そうして私は増産が最も警戒すべきことであつて、積極的に人為的にそれの増産拍車をかけるようなことは要らないことである。現状でも、増産はむしろあの統制時代、つまり統制を我々が非常に叫んだ下落のときは、その生産世界の需要と睨み合せて真珠が多過ぎたのであります。多過ぎて下落したようなことを、丁度この法案によつて融資をし、生産計画だとか、或いは百億に達せしむるための増産だとかいうことは、丁度その時代へ向つて進行するような形になるので、粗悪品というものはそう今市場にも出ませんし、又買手のほうでも余り買いません。インドあたりでは随分粗悪なものが出て、それは装身具以外なものにも使われたこともありますし、大量にインドは粗悪品を消化するところで捨てたものではありませんけれども、養殖業者は決して好んで粗悪品を出す者は一人もありません。みな優良な真珠を、優良な真珠をと心がけて、熱心に生産に献身しておるのでありますから、粗悪品の下落ということはそう心配にならんでも、増産を恐れるということで下落を抑えて頂きたいと思います。
  34. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 重ねてお尋ねしておきますが、今の計画生産は非常に困難だ、できないというようなお話でありますが、勿論増産ということが限度を越えれば物は下落するにきまつておりますが、この真珠は前にも申されましたように、絶対必需品ではない、奢侈品であります。従つてこれがなければ生活は困るというものではない。従つて購売力に余裕がなければ、力がなければ、このものは売れないのです。今日先ほどもお話になりましたように、戦前七〇%がヨーロッパに売れておつたものが、戦後においてアメリカにこれが移つたということも、その経済力の移り方と考えればよい。アメリカが戦時中非常に大きな金儲けをしたといいますか、富んで来て、世界の金がアメリカへ集まつたと言つてもいいくらいになりました。と同時にヨーロツパは戦争のために非常に疲弊して、購買力が非常な低下を来したということから、ヨーロッパに向つてつたものが向かないで、アメリカへそれが向いた。そうしますと一面から言いますと、この戦争によつて真珠というものはアメリカに新販路を求めたと言つてもよいのじやないかと思います。現在ヨーロッパの状態は、戦後の経営未だ完成せずに、その購売力のごときものも昔日のようには参りませんが、漸次回復しつつあると思われますので、曾つてヨーロッパだけを対象としておつたものが、一方ではそのヨーロツパに行つてつたものがアメリカに売れた。そうすると今度はヨーロッパというものが漸次回復すれば、又戦前状態に回復する日もあるのじやないか。そうしますと、当時増産されて下落したものは、今後においては数量ではその響きはまだないのじやないかというふうな気もします。これは数量的にはつきりお尋ねもできませんが、要するに天然真珠、あの天然真珠というものは殆んど蔭をひそめた。そうして日本真珠がこれに代つたとするならば、この点においてもまだ日本生産量に余裕ができたのじやないかというふうな感じもするわけであります。そこで先ほども大きな珠が今日非常にいい。一時は大きな珠が困つたといつたようなお話であつたのでありますが、又生産者としてもまじめにいい品物を作ろうとして努力しておることは、これは当然であります。如何なる仕事でもそういうふうに皆まじめな人は考えておられますが、ただそこにそういう精神は持つておる。是非立派なものを作りたいと思うけれども、資金の面で行詰つて来て、どうもこれはそこまで持ちこたえられない。或いはもつと早く回転するような小さい珠を作つて、早く資金を回転せんと、事業に蹉跌を来すからというような、いわゆる資金面から来るところの圧迫によつて、私は粗悪品と申しましたが、例えば薄まきの品物を出す。もう一年置けばいいものを、年足らずのものを出すために、非常に価格が落ちて来る。そういうものが外国へ出て行つた場合に、どうも日本真珠は非常に品質が低下したというようなことから、一般の価格に影響して来るような憂いはないか。そういうようなことを防ぐために、資金を供給して立派なものを作らして世界に売るというようなことにすることが可能ではないかと思うのであります。これは勿論この法律ができたからといつて一から十まで漏れなくさつと定規を当てたように行くものではないと思います。これは如何なる仕事でもないと思いますが、そういつたような面に対して資金を供給するということが、価格の暴落を防ぐ一つの手段ではないかと私は考えるのであります。今のヨーロツパの購買力の回復に伴う日本真珠生産というものと、そしてもう一つは資金を供給することによつて結果的には価格の暴落を食いとめ得ないといつたようなことについての大久保さんの御意見をもう一度承わりたい。
  35. 大久保忠礼

    証人大久保忠礼君) 御尤もな御質問だと思います。その点につきましては私がたびたびたびり返しましたように、業者は自分の事業として海なり、技術なりと睨み合せて最善の計画生産をしておりますので、そうしてここに資金というものが不足のために薄まきをむくというお話も、それは御尤もな御心配でありますけれども、大珠をやれば三年、四年の後でなければむけないものが、厘珠をやれば二年でむける。つまり翌年の暮にはむける。それを市場へ出すことができるというようことは、自分が計画してそれを選ぶのであつて、若しここに法案による融資ができるから、薄まきをむこうというときに、薄まきはむくなといつて融資をして下さるということがありますというと、とかくその融資に依存して、借金目当に仕事をするということは、これは必ず起ると思います。この借金目当に、或いはよく政府に依存ということを言いますが、政府資金に依存してやるということが業界を毒するもので、必ずその結果はよくありません。とにかく不必要な増産がそこに現われて来るのであると思います。だからして現在の状態をそのまま推移さしましても、この現在の価格というものは、昔の物価及び為替レートの考えからいいましても、まだ値は非常に高いものである。であるから二割、三割下つても決して他の物価に比較してそう下つたものとはいえません。それが下つたつたで心配して政府が金を貸したりするというと、それは真珠の養殖というものは下れば買取つてもらえる、或いは安定資金が借りられる、或いは生産計画によつて真珠をむかないでも金の融通がつくというような考えを持ちまして、増産は恐るべきものでありますばかりでなく、まあ業者の数もますます殖え、又養殖事業というものは英虞湾が第一、大村湾が第二でありますけれども、高知県とか、愛媛県、佐賀県、大分県、大分県なんかは従来漁場はなかつたのですが、近頃ちよちよくでき出しましたが、又山口県でも鹿児島県でも幾らでも……、熊本県の天草方面でもたくさん狙つておるものがあるようでありますが、今後ますます殖える形になる。それが融資というものを一つの目安に増産し、或いは困つたときには金が借りられるということになりますというと、幾ら政府が市価を安定さそうと努力せられましても、幾ら多額の融資をしましても、それは到底持ち切れるものではない。そういう点は私は生糸に三十億も融資して価格が回復したとぎと決して同一に論じられないと思いますし、いよいよ引合わない程度に下落したならば、自然淘汰の法則で、それは業者の倒産するのもありましようし、業界から去つて行くものもありましようけれども、そこに初めて篩い落されてまじめな珠を出すものが残るという形も現われて来て、又価格が回復するということもあるのです。従来も下つたばかりではない、或る程度増産の結果下落したとはいうものの、その後売れ行きが出て価格の回復した例も……、やはり下落が五回あれば、又高騰したのも五、六回という形はそれは繰返すもので、これはほかの商品と別に変りはありませんけれども、生糸のようなものはストック、滞貨というものを一時買取るとか、しまうとかいうことによつて、すぐに翌日から価格が暴騰する品ですけれども、真珠はそういうことをすると、ますます一方に増産者が殖えて来るというだけで、何にも価格は急には回復するものでない。それから又ほかの商品界では、若しその市価が、昨年からの糸ヘンのいろいろの変動があつて、相当金融難等の今日問題が起つておりますが、こういうものは二割、三割下げるというと手形は出ているし、一遍に打撃を受けて来ますけれども、真珠の値下りというものは、従来の経験から見ますというと、半値になる、そうして業者は平気でこしらえている。又半値になる。なかなか下落率が非常にほかの商品よりは大きいのである。下落すればするほど売行きも悪くなるという特異性があるから、下落ということはできるだけ警戒しなければならんわけであります。そうして私は増産拍車をかけるような融資というものが危険である。こう申上げたのであります。で粗悪品のことは先刻申したように皆業者は決して好んで粗悪品を出しませんし、販路のこともありますので、むしろ真珠は金でもかけて宣伝をやればこんな法案は要らない。海外の宣伝費用でもうんと出して頂いて、そうして販路を拡張するという点に力を注いで……この法案にはちつとも、業者のほうの犠牲だけでそういう点が余りありませんが、販路が拡張すれば比較的増産しても売れる。丁度秋山先生からヨーロツパ、アメリカのお話があつたように、又真珠も販路が拡張するに従つて売行きが増すが、それは現存の業者の作業数によつてさえも増産するのだから、増産よりももう一つ以上に販路が拡張してくれさえすれば、現在の値はもう一つ高くならなければならんわけであります。現在の値が高うなる、母貝の値も高いけれども、買つて業者がやるというような時代は非常に結構な時代でありますが、私は販路拡張には力を注がなければいかんが、生産の増加というものは積極的にやるべきものでない、こう考えているわけであります。丁度昭和十四年にも農林省からいろいろどうしたらこの値の下落を食いとめられるかということについて協議を受けまして、そうしてここの堀口君や大月君と私と三人は生産制限論者でございました。そうして生産制限に関するいろいろの協議の結果、生産制限を骨子とするところの統制法規が組立てられて、そのときは四千五百万乃至五千万全国の作業数があつたのを二千万に食いとめてやろうということで法律になりました。それがまあ幾分か利いたのですけれども、日華事変の戦争中でもあり、昭和十六年には為替管理ですつかり輸出がとまつて逆境に陥つたのでありますが、とにかく生産制限こそ値を維持する途であるけれども、生産を制限し得ない自由競争時代になお増産拍車をかけるということは必要がないと思います。
  36. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 証人にお願いしますが、質問者への答えは成るべく要領よく簡明に率直にお願いいたします。
  37. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 青木証人にお尋ねいたします。丁度真珠研究所の設置のために、業者のほうから一億円の寄附が申出られておるということでありましたが、この寄附につきまして、お話を承わりますと証人も御相談を受けたと申しますか、お話があつたという、その際に業界からこの一億円を寄附する場合に、何らか養殖事業といいますか、区画漁業の免許の条件が何かお話に出たことがありますかありませんか。その点をお伺いいたします。
  38. 青木理

    証人青木理君) 業者からの寄附の問題は、先ほど申上げた通りであります。この寄附の問題について両三度真珠交換会の行われた機会、その機会を利用して業者の代表のかたがたと話をいたしました。その当時この区画漁業権について業者からのいろいろの希望が述べられた。御承知のように今年の三月から新らしい漁業法によつて切替えが行われるので、その切替えの行われる際において、こういうふうにあつて欲しいというようないろいろな希望が述べられたことは事実であります。成るべくその希望に副うようにいたしましようという答えをいたしました。
  39. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 その幾多希望が出られたようでありますが、区画漁業の免許に当つての何か希望がなかつたのですか。
  40. 青木理

    証人青木理君) 具体的にどうという約束はいたしておりません。一口に申せば、この区画漁業権の新らしい免許については、成るべく従来の業者を優先的に扱つて欲しいというような意味の希望がありました。それは尤もなことであると存じまして、成るべくそういう希望に副うようにいたしましようという答えをいたしました。
  41. 千田正

    ○千田正君 青木証人にお伺いいたしたいと思うのでありますが、本法案に関連しまして計画生産が行われるとするならば、今後も漁場増加或いは免許という点についても相当関連して来ると思います。それで県の方針としましては、仮にこの法案が通過した場合においてはどういうふうにやられるかという点についてお伺いいたします。
  42. 青木理

    証人青木理君) 先ほどから計画生産の問題が論議されておりますが、計画生産という問題は非常にむずかしい問題でありまして、さてでは具体的にどうして計画生産をやつて行くか。又計画生産そのものがどの程度まで計画的に企画さるべきものかというような点については問題が残つておる。まあ私の考えでは、恐らくこのことは資金運用の面から、この計画生産が或る程度規制されて行くというところが結論でないかと思うのです。併しながら現在におきまする真珠生産は、戦前生産の三分の一以下というふうな状況であります。漸次海外における市場も回復して来る状況でありますが、少くも戦前までの生産はこれは一応の目標となつても然るべきものだと思います。併しここで増産と申しましてもなかなかこういう特殊な仕事というものは一朝一夕には増産できるものではございません。母貝にいたしましても、少くも三年ぐらい経ちませんというと役に立たないのであります。よほど計画的にやりませんと、言うべくしてなかなか実の上らないものであります。そこで本年三月に区画漁業権が切換えられますが、従来の建前と多少変つて参りまして、単にこの数字だけで結論は出て参りませんが、御参考に申上げますというと、従来の漁業件数は、三重県におきましては、百二十六件で、新らしく計画しておりますものは三百九十件ほどになつております。又旧漁業者と新漁業者の比率にいたしましても、従来は二百四十名、それが今度は五百名近くということに相成るような一応の現在計画をやつておりますが、これは漁業調整委員会にもかけます関係上、まだそう決定的なものではございません。一応の私どもとして計画しておる数字であります。尤もこの数字で見ますると、非常に殖えておるような結果になりますが、事実は従来はこの区画漁業権の対象が漁業会単位になつておりまして、そういうふうな関係で今度はもう少し区画漁業を細かく立地に適した区画漁業権を設定して参ることになりますので、そういうふうなことでこの件数なり就業者の数が殖えて来るということになるのであります。これだけで直ちに従来の倍に計画するかというと、そうでもないのであります。とにかく一応の目標としましては戦前における数字までは持つて行くべきだというふうな考え方で、ほかのいろいろの複雑な条件とも睨み合せながら今後数年間の計画を立てて行きたい、こういうふうに考えております。
  43. 千田正

    ○千田正君 そうしますというと、反対論者のうちには、増産されるというとどうしても将来国際マーケット関係その他において或いは価格維持ができない、むしろ下落するような方向に行くほうが多いというふうに反対論者が言うておりますが、今の知事さんのお話によるというと、これからの免許に対しては一応の計画はあるが、その線に副うて調整しながら今度の漁業制度改革に則つて許可して行こうという方針のように承わつて、さようで差支えないわけですね。
  44. 青木理

    証人青木理君) 大体お話の通りでありますが、只今も申上げましたように、そう急激な生産の増加ということは事実上望み得ない実情だと思います。仕事の性質上……。それからそれを救済するためにこういうふうな法案が必要なのでありまして、この法案によつて国家的に資金の面倒を見て頂く、又一歩進んでは、先ほども申したように、安定資金といつたような制度もやつて頂けるというふうな希望を持つておるのでありまするが、これはこの法案を作成されました経過を拝承いたしますと、只今日本の置かれておる政治的な立場から言いますと、この法案そのものが必ずしも完全無欠なものではないけれども、一応この程度にしておいて、そうしていずれ然るべき時期において更にこの法案作成の精神を強化して行くというふうな時期を狙いたい、こういうふうに考えておるのであります。
  45. 千田正

    ○千田正君 もう一、二点伺いたいと思いますが、養殖業者母貝を育成しておるということに対して地元の漁業協同組合反対しておるという点を、先般の御地視察の際に承わつて参りましたが、この点につきましては、県の方針といたしましては母貝生産は地元の漁業組合にのみ限るという方法によつて許可して行かれる方針でございますか。それとも従来のままの姿で放置しておかれようとするお考えでございますか。この点につきまして、この法案が通過するようになりますると、当然母貝生産業者に対する助成その他に実際的な問題が起きて参りまするので、その点の知事さんとしてのお考えを承わつておきたいと思います。
  46. 青木理

    証人青木理君) 現在私が見ておりますところでは、母貝養殖業者といいますか、言い換えれば一般の漁民と養殖業者との間にそう深刻な対立なり摩擦があるとは見ておりません。この養殖業者母貝の養殖関係は、丁度生糸生産に対しての製糸業者と養蚕家との関係と極めてよく似ているように私は考えます。勿論そういうふうな意味におきまして一般の漁業者に対して母貝養殖の優先的な地位を与えて行きたいと思いますが、養殖業者に対してもこれを許すかどうかということにつきまして、ちよつと今、はつきりとしたことを申上げる知識を持つておりません。実地によりまして調査次第に直ぐ報告したいと思います。
  47. 千田正

    ○千田正君 これはここに丁度山崎証人も見えておられますが、先般浜島町に参りました際には、非常に浜島の漁業協同組合人たちにとつては将来のいわゆる漁民の死命を制する問題であるから、是非この問題を確立してもらいたいという要望が強かつたのであります。今の知事さんのお話によると、必ずしも全県そういうふうな状況ではない、或いはそういう摩擦の起らないような方法において将来調整をしながらこの問題を解決して行こうという御意思のように承わつておりますがそういうふうに順調にうまく行きそうですか。
  48. 青木理

    証人青木理君) 最近、三月に切替をいたします関係で、いろいろと私のほうへも陳情なり意見なり参つておりまするが、私としてはこの問題についてそう苦労をいたしておりません。順調に行くものと思つております。
  49. 青山正一

    ○青山正一君 堀口証人それから青木証人、それからお二人に対する質問に関連いたしますから、水産庁に、この三者にお尋ねいたしたいと思います。本法案に対する反対意見は相当強いようにも見受けられますし、又寄附申出者の中にも脱落者も出るようにも想像できるのでありますが、堀口証人は予定通り一億円の寄附ができ得ると考えられますかどうか。それは堀口証人に承りたいと思います。  又青木証人は殊にこの問題について斡旋の労をとつておられるようでありますが、仮に本法案が成立した場合一億円の寄附に責任が持てると考えられるかどうか。その点について承わりたいと思います。  又この機会に、関連しておりますから水産庁にお尋ねいたしたいと思いますが水産庁は一億円の寄附を前提としてすでに予算も取られておるようでありますが、この寄附に狂いが生ずることになれば、当然予算上支障を生ずると思うが、一億円の寄附の見通しについてどう考えられるか。  この三点について、これは非常に重要な問題でありますから、私のほうではつきりと心にとめおきたいと思いますから、以上三者に対して御質問申上げたいのであります。
  50. 堀口初三郎

    証人堀口三郎君) 只今寄附の問題につして御質問かありましたのでお答えいたします。昭和二十六年四月に真珠研究所の設立寄附として日本養殖真珠株式会社の株式を、大体これは閉鎖機関になつておりますので、配当金の配当後の権利を半分国家へ譲渡、寄附するということで、その当時数名の人を除き殆んど大多数の人の賛成を得ましたのでありますが、丁度そのときに農林水産のかたもお出でになりましたのですが、これは一億円の寄附というのは閉鎖機関の株を半分寄附するということで、法人税込みの寄附ということなんでございます。その当時これは国家とか都道府県に寄附する場合は免税になると、こういうお話でしたのですが、その後いろいろ大蔵省のほうに伺いをたてて見ますと、なかなか免税という点はむずかしいと、こういうことなんでございまして、併しこの寄附は大体に旧合同真珠株式会社の株主が主として寄附することになつております。それで閉鎖機関が私の知つておる範囲を見ますと、この三月で閉鎖機関がなくなる、こういうことなんで、この点初めから国家に寄附する金が法人税約六割を取られておるのです。法人税、国税と地方税を混ぜまして……そういうものが免除されるかどうかという点は我々のほうでもはつきりわかりません。そういうことなんでして、この点が閉鎖機関のほうではつきりして来ないと最初から税込みの寄附と、まあ株券を半分寄附すると、第一回、第二回のあの配当を受けた残りの株を半分寄附するということで、これは株主全員賛成でありませんので、株主の中に反対者もありますが、これは賛成のかたは一応委任状を出しておるはずなんでございます、そういうことなんでございます。
  51. 青木理

    証人青木理君) この寄附行為につきましては、御質問通り私も斡旋をいたし、或る意味におきましては業者のかたにたしかお願いをしておる筋合でございますが、その寄附行為の具体的な結果につきましては、私自身全然関知しておりません。業者かたがたが自主的にその寄附を集められて、そうしてその後における手続は多分水産庁等と直接お話合いになつておると思います。その他におけるいろいろ免税等の問題につきましては、大蔵省であるとか、その他関係当局との話合いが済んでおるものと私は了承しております。
  52. 高橋清三郎

    説明員高橋清三郎君) 結論を先に申上げますが、水産庁としましては一億円の寄附金は確保できるものと考えております。実際を申上げますと、一億円が全部が寄附の形ではございませんので、内容その他複雑な要素がございまするが、これはその筋の関係との折衝その他によつて生じて来ます関係上、でき得ますれば改めて審議のときに詳細を申上げたいと存じます。結果だけを申上げます。  それからなお参考に申上げまするが、万一不測の事態がございまして、一億の寄附に欠損が生じた場合でも、前に確定しております一億の歳出予算につきましては、支出さして頂くことに事務的に大蔵省と了解を得ております。
  53. 青山正一

    ○青山正一君 第五条の第三項ですね、つまり資金の斡旋です。この資金の斡旋につきまして、私先ほどいろいろな面からお聞きしたわけでありますが、衆議院の鈴木先生なり、或いは石原先生が大蔵省なり、安本なり、或いは農林省と話合いの下に大体三億円くらいの資金を確保するというようなふうなことで相当折衝して、何か内諾を得たというようなふうにお聞きしているわけなんですが、水産庁としてこの問題について相当努力しておられますか、どうですか。その点についてお聞きしたい。
  54. 高橋清三郎

    説明員高橋清三郎君) 勿論この問題は衆議院の水産常任委員会の起案に基く関連の事項でございますが、水産庁としましては側面から事務的に御助力申上げているつもりでございます。
  55. 千田正

    ○千田正君 今の青山委員質問について一つ高橋課長に承わりたいのですが、今のあなたのお答えによるというと、寄附金の一億円が集る、集らないにかかわらず、水産庁としては予算を確保できるという建前の下に行つている、こういうわけですね。
  56. 高橋清三郎

    説明員高橋清三郎君) さようです。
  57. 千田正

    ○千田正君 そこで我々法案の審議に当りましてまあ多少の疑義を生ずるのは、又この法案を出された衆議院のほうのかたがたは非常に大乗的な目標に向つて進んでいるのでありますが、ややもするというと寄附金を使うために法律を作るような感なきにしも非ずであります。その点に我々は非常に疑点を生じているわけであります。寄附金が集らなかつた場合においてはこの法案は無意味ではないかという点も考えられる。そこで寄附金が集る、集らないにかかわらず、将来の真珠のいわゆる国際価格維持し、且つ又真珠業者の生活の安定を確保するための法案であるというのが、これは衆議院側の提案者提案理由説明でありますけれども、実際水産庁のとつておられる立場というものは、寄附金が集つた場合においてこの法案が生きるのだという考えであるとするならば、参議院の水産常任委員会はあくまでこの問題については追及しなければならん。そこで私は課長に、あなたはそう言い切つたけれども、果して水産庁長官並びに農林大臣はこの問題に対して、若しも寄附金が集らなくても完全に大蔵省からこの予算を支出するということをはつきり言明できるかどうかという点です。その点を今あなたが言明されたけれども……。その点につきましては水産庁長官並びに農林大臣に質問したいと思いますが、あなた自身もそれに間違いないと改めてこれを確言することができるとするならば確言して頂きたい。
  58. 高橋清三郎

    説明員高橋清三郎君) 私先ほど申上げましたのは、一億円全部を、全額の寄附金が集らなくても出して頂くという意味で申上げたのではなしに、多少の歳入欠陥がありましても一億円につきましては予算を使うことにしてもらうように事務的な了解を得ている、このように申上げたつもりでございます。
  59. 千田正

    ○千田正君 そこに私は疑義があるから聞いているのであつて、一文もいわゆる寄附金が集らなくてもこの法案の目標から言えば真剣に日本真珠業者の、いわゆる業というものを助け、なお且つ又国際価格維持するためには、水産庁は寄附が集る、集らないにかかわらず当然一億円という予算をもらわなくちやならないと思うのでありますか、そこにこれらのいわゆる、我我がこれは欠陥じやないかと思う点は寄附金が集らなかつたらこの法律を出してもしようがないじやないかという空気でおられるとするならば、我々はこの法案の審議については更に慎重を期さなければならんからあえてお伺いしたのであります。ところが今のお答えによるというと、多少の或いは寄附が不足するかも知れん。不足した場合においてはその不足分をどうかして国家の支出を補填してまでもこれをやつて行こうというのが水産庁の意向だとするならば、実に根本において法の精神の施行の面において食い違いの点があると思うので、参議院の水産委員会としては慎重に審議したい、かように考えておりますので、今あなたのおつしやつた寄附というと、一億円全額寄附がもらわれなくて、多少のそこに不足が生じた場合でも、これは大蔵省と話合いにおいて出してもらうのだというのであつて、全然寄附が集らなかつたときでもやるという意思はないのでありますか。その点を更に私は伺いたい。
  60. 高橋清三郎

    説明員高橋清三郎君) 只今の寄附の問題につきましては、これは研究所との関連の事項のみでありまして、水産庁としましては、少くとも一億円の寄附のあるなしにかかわらず、事業法というものは必要なものというふうに考えております。
  61. 青山正一

    ○青山正一君 山崎証人にお伺いしたいと思いますが、あなた自身この法案を御覧なすつて、まだ御不満なところがおありですかどうですか。そういう点について若しこういうふうに直して頂きたいとか、こういうところが欠けておるとかいう点があつたら一つお話願いたい。
  62. 山崎英二

    証人山崎英二君) 先刻も申上げましたように、賢島におきましてお越しになりました諸先生から、まだこの法案内容は地元漁村としては徹底しておらんような感もある、事実そうでございます。そのときに申上げましたようにいろいろ水産新聞とか、又は真珠新聞というようなもので一応漁村としては見さしてもらつておる、かように申上げましたので、先般衆議院水産常任委員会でこれを見せて頂きましたときに、くにへ帰つて参考にしたいのだからと申しましたけれども、まだ法案としてなつておらんいう以上はこれは門外不出だ、君ら見て行くならよろしいというようなこそ、いろいろ謄写版刷り等によりましていろいろ拝見させて頂いた。それによつて正直なところを申せば、真珠生産ということについての助成ということが一応この法案に出たというだけで、私どもは安易な心持を持つておるのでございます。但しこの法案の全文について私どもはこれだけの知識もございませんけれども、漁村の私どもが浅学ながらもよりより会合する際に、この点はどんなのか、この点はどんなのかというふうに考えておりましたが、一応衆議院の諸先生がたから議員提出で、参議院の審議ということに現在なつておるのに、私たちがこれからこの法案の修正を願うということは余りにも当を得ないのではないかというふうに考えておりまするが、折角青山先生のお尋ねに答えますことにおきまして、先刻も申上げましたように、まあ法文というのでなくて、気持を各条項々々について申上げて、それが法文化に改められるというのでしたれば、又法制局なり皆さんの手許で適当な方法において漁村の姿もこれに織り込んだ法文にして頂いて、この事業法の一日も早く通過されるようにお願いしたい、こういうふうな気持を申上げたのでありまして、私の申上げましたことは、多分速記には出ておると思いますけれども、その字句的な又言葉の現わし方におきまして、一字一字が違いましても、これはなかなか解釈が広うございますので、さような意味におきまして私どもの気持が若し何かの現われにおいてこの法案が改正される、字句が改正されるという約束ができましたのでしたら、又何かの機会に、研究してみたいと思いますけれども、時日がございませんですから、この法案の一部分、そうした面におきまして、先ず先ほど五、六ヵ条申上げましたが、あの程度の何かの研究を願いたいという希望を申上げたいと思います。
  63. 千田正

    ○千田正君 三輪証人と所神根証人に伺つておきたいと思うのでありますが、この十一条ですね、「農林大臣は、必要があると認めるときは、真珠養殖事業者から第四条の規定による計画の実施その他必要な事項に関し報告を求め、又はその職員に、真珠養殖事業者  の事務所、事業所その他の場所に立ち入り、真珠若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」これは最初に三輪証人に承わりたいのですが、金融を申し受ける、いわゆる希望をする人たちばかりではなく、いやしくも真珠の養殖をやる人たちが全部こうしたいわゆる計画生産の一環として、こうした方法で行かなければ、本当の真珠の養殖ができない。こういう観点から、この十一条はこれで差支えないとお思いになりますか。或いは金を借りる人たち、或いは金融を受ける人たちがこういう検査を受けてもよろしいし、報告をしなければならない義務を引受けなければならないというふうに考えられますか、その点を三輪証人に承わりたいと思います。
  64. 三輪豊照

    証人三輪豊照君) 只今の千田委員殿のお尋ねに対しまして、これは私の考えを申上げて見たいと思います。計画生産を立てます上においては、他の業者の作業種類、数等を調べます上において必要であろうと存ぜられます。尤も計画生産に基いて融資を受けてそうして仕事をしておる者は、これは受けべきが当然であると考えます。その他のかたがたは誠に御迷惑かも存じませんが、国の国策に順応されるならば甘んじて受けて頂くよりやむを得ないのじやないかと、こう考えられます。
  65. 千田正

    ○千田正君 そこで所神根証人に伺いますが、午前のあなたの証言のうちに、この第十一条、只今私がこの案文を読みましたが、これはいわゆる金融の措置を受けない者がこういうような法の適用を受けるということは、現在の民主主義のいわゆる時代においては干渉も甚だしい。この点は非常に我々としてはいわゆる自由の国民の権利を侵害する虞れがあるから、この点は特に反対したい、こういう意向でありますが、これを特に修正する或いは金融の措置を依頼し、或いは金融を要望した者だけがこの条項を適用されるのだというふうに修正する場合もあり得ると思いますし、或いはこの案は通過する場合もあるだろうと思いますが、仮にあなたの反対理由の重点がここにあるとするならば、それに修正を加えられた場合においては、この法案の通過に対しては、必ずしも反対じやないというふうにあなたは考えておられますか。それとも飽くまでこれは法案全部に対しての疑義があるから反対しよう、こういうふうに考えられますか。その点を承わつておきたいと思います。
  66. 所神根礼三

    証人所神根礼三君) 法律としてこういうふうに条項がある以上は、今千田さんが言われたように金融の斡旋を受けなくても、この法の適用は受けると私は解釈しておりました。併し昨年の十二月に参議院の委員かたがたが御調査に私どものほうにお越し下さつたときに、秋山先生でしたかと思うのですけれども、これは適用は受けないと言われたのを覚えておりますが、金融の斡旋を受けたかたがたにだけこの適用は受ける、併し私どもの考えるのには三輪さんも言われたごとく、これを法律として布いた以上は金融を受けなくてもこの適用は受ける、受けなければならんと解釈しております。併し反対するゆえんはそこなんであります。なぜに資金の斡旋を受けないかたが工場へ立入られたり、帳簿をひつくり返されたり、又計画生産が机上のごとく養殖事業というものは終るものではありません。生貝であります。生物を扱つてつて、場合によつては貝の大きさが大きくならない場合もありますが、そこにいろいろデリケートなむずかしい問題がある。真珠養殖事業というものは机上で論ずるより、一度現地行つて御調査下さつたら、そこにむずかしい難点があつて、どうしても十一条のごときは私は憲法侵害と心得るのであります。そうしてここで改正できるものであれば、この条項を必ず金融の斡旋を受けたものに限り十一条の条項の適用を受ける、私らはそういうふうに反対業者として意見を申上げたいのであります。その点立法府のかたぐにはつきりした御返事を聞きたいのですが、これは如何でしようか。
  67. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) あなたは証人委員質問に対してお答えになればいいんです。
  68. 所神根礼三

    証人所神根礼三君) 非常に私らは一番業者として不満もあり、反対する中心なんであります。私も国民として一旦法律が布かれた以上は、資金の斡旋を受けようと、結局この計画生産とか工場の立入とか、これに対して非常に不満もあり、これは私らは憲法の侵害である。自由というものは認められないものであろうと考えるのであります。
  69. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 千田委員質問は、若し金融を受けた人のみ適用を受けたならば賛成反対かという御質問つたと思います。
  70. 所神根礼三

    証人所神根礼三君) それは金融の斡旋を受けた者に限りということだけに訂正できるなら、この十一条に対して反対しません。
  71. 千田正

    ○千田正君 これは三輪証人に伺つたほうがいいと思いますが、三輪証人大久保証人に伺いますが、この検査所を設置した場合において、品質の検査によつてランクがきめられると思いますが、輸出に可能でないところの真珠は、仮に検査所において不合格、いわゆる不合格品はどういうふうに措置されるのが適当であるかという点につきまして、先ず三輪証人からあなたの御意見を承わりたいと存じます。次に三輪証人終つたならば大久保証人から承わりたいと思います。
  72. 三輪豊照

    証人三輪豊照君) 只今の検査に関する不合格品の処置ということにつきましては、御質問のごとく非常に真珠の検査というものは至難な問題であるということだけは自覚をしておりますが、最近科学が進んで参りました関係上、非常にいい機械が発明されましたに聞き及んでおります。それは光沢、色が直ちに片方に現われて来るということが最近ありますそうで、それを御利用なさる御意向があるやに承わつておりますので、そうなりますと我々の危惧しておりました検査問題というものは、とにかく安らかに完全なものができると信じます。なおその不合格品ということにつきましては、この真珠品質の高下はその国策の次第によりまして現在でも非常に粗悪品で、或いはアメリカには向かないというものもインドには向くのでありまして、又非常に品物のいいものはインドには向かない、こういうような各国さまざまな趣味嗜好がありまするから、その国に対してはこういう粗悪品を送つてはいけないとか、こういう国はこういう悪いものを送つてもいいとかというようなことによつて御処置になることだと想像しております。又時代によりましてはそのときの国策に順応するように、或いは廃棄、焼捨てというようなことも必要になる時期が来るかも存じません。折角こしらえたものを、それをむやみに廃棄するということも考えものでありましようが、それは検査所ができましても、この法律が定まりましてからこの方針がきまるものだと存じます。一応検査員に対して不合格と申しまする……私はこれを考えますと、非常に連一連を組みました場合に、真中の珠が非常にいい、端の珠が非常に悪いとか、或いは珠をたくさん持つていなかつたならば、連というものは組めませんので、珠が少い家が組んだ連は国策上こういうものを、つまり悪いものといいものとが交互に使つてある場合と、或いは色が甚だしく相違しておりましてネックレスの状態をなさなくて、輸出した外国において恥をかくような統一のとれていないものを不合格品となさるんじやないかとも考えますが、そういう意味におきまして不合格品といえどもそのときの時世の流れによつて相当変動があるものと信じております。
  73. 大久保忠礼

    証人大久保忠礼君) 御質問にお答えいたします。この真珠輸出検査ということは、私は必ずしも反対ではありませんけれども、この法案によつて真珠輸出業者を対象とせずに真珠輸出検査をするということは、これは非常に実行がむずかしいことじやなかろうか、乱れがちになるのじやなかろうか、法案の構成上無理と思いますので、輸出検査をするならば、むしろ通産省の貿易局とか、ちやんと輸出に関する官庁もあることだからして、それらが行なうのが正当だと、こう私は解釈しておりますが、今御質問の不合格品の処分ということにつきましては、やはり三輪証人のお答えになつたように、アメリカへ向かなくてもインドへ向くものもあるから、インド輸出品として検査を受けたら合格するという場合に、この品物が若しもインドへ出て又インドからアメリカへ出た場合においてどうなるかということも考えなければならんので、徹底的に検査の効果を現わさしむるのには、やはり或る限度のもの以下は廃棄するということを一方に考えなければ、これは実行しても結局世界的な商品であるだけに効果はなかろうと、こう思います。本来私の考えでは、この検査料によつて不合格品は一応買取つて、そうしてもう思い切つて焼捨てるのが一番効果があるのじやなかろうか。不良品がインドで売れるからといつても、それは僅かな金が欲しさに世界へ不合格品を流すよりは、むしろ品質改良、向上という必要上、泣いて馬謖を斬るという意味でこれは処分してしまつたほうがいいと、私は自分の意見として思います。ただこの法案で検査をしようというならば、その対象たる真珠輸出業者を規制しなければ実行はむずかしいと思います。輸出検査につきましては輸出組合もありまして、私も以前輸出協会があつた時代には役員をしておりましたが、持つて来る人はきつちり持つて来ますし、又持つて来ん人は中にだんだんあるが、これもなかなか強制的にやることは非常に困難なので、輸出するのには必ず税関を通過せなければならんのですから、税関を通過して代金を受取る必要のあるものは必ず持つて来なければならんのでありますから、そういう工合にこれはこの所管庁がこの法文の下にやるということは、これは法案の構成上私は賛成できないと思つております。
  74. 千田正

    ○千田正君 三輪証人に続いて伺いたいのですが、今の両証人からのお答えで大体わかりましたが、廃棄するという場合には、法案に盛らずに、単に法文化しなくても廃棄はできると思いますか、その点を聞いておきたいと思います。
  75. 三輪豊照

    証人三輪豊照君) 法案によらずして人の所有物を廃棄することは不可能じやないかと思います。併し業者とするならば自発的に廃棄すべきが当然かも知れませんが、それはこれからきまりまするこの業法のあり方如何と考えます。
  76. 千田正

    ○千田正君 続いて質問しますが、そうした場合においてその損害は飽くまで養殖業者が背負わなければならないと思いますか、それともその補償の方法を何かによつて考えて欲しいというふうに考えられますか。その点をお聞きしたいと思います。なぜかと言うと、これは天然、いわゆる自然を相手にしての養殖である限りにおいては、画一的なものは私はできないと思います。これはやる場合においては、潮流の関係、或いは気候の関係によつて不合格品が相当たくさん出るかも知れない。そういうときの場合の損失はお互いが、自分が犠牲になつてやる覚悟でなければできないと思いますが、この点についてあなたがたの御意見を承わりたいと思います。
  77. 三輪豊照

    証人三輪豊照君) 大変いいお尋ねを頂きまして業者といたしましては喜ばしい次第で、そういうようなことで皆さんが先ほどから言われております法案がまだ不備だ、こう申されている点が十二分にわかるのじやないかと思います。そういう細いところまでをこれから皆様方の御検討によつて、そうしてだんだんと改良されて行つて初めて完全なる法案になるのだと思いますが、私の考えているところを申上げますならば、検査料を多少高く業者から取つておきまして、それでその廃棄品を、評価人を拵えまして評価をいたしまして、それは荷主に戻さないで廃棄をいたしまして賠償するとかというような方法が、或いはでき上るならば大変結構だと存じます。只今、即刻に考えました問題でまだそのいいか悪いかということは……、そういうようなことをいたしましたならばいいのじやないか、こう考える次第であります。
  78. 千田正

    ○千田正君 同じ質問大久保証人に伺いたいと思いますが、その点について御意見をお答えして頂きたい。例えば廃棄した場合において、その損害は当然養殖業者がそういうものを負うべき問題であるかということと、どうしたらばいわゆる犠牲を少くしてやつて行けるかという点です。恐らく相当粗悪品が出て来る、増産が相当行われるとすれば、私は粗悪品が相当出て来ると思います。場合によつては新らしい養殖業者は相当経験も少いから予期に反したようなものが出て来るかも知れない。そうした場合における価格維持、その他の点についても十分我々は考慮しなければならないから、今の検品査の場合の不合格品が出た場合に廃棄しなければならない場合においてその損害は誰が一体背負うのか、こういう点についてのあなたの御意見を承わりたいと思います。
  79. 大久保忠礼

    証人大久保忠礼君) 私はこの不合格品をただ単に廃棄するということでは、折角こしらえたものを廃棄するということはむずかしいことである。或いは廃棄を承諾し得なかつたならば取り上げることもむずかしいと思いますが、買上げることにすれば、業界品質向上の精神から行きましても別に異議はないことだと思いますから、検査料等の収入を予算としてその程度の範囲内において廃棄というよりは買上げるほうがよかろうとこう思います。例えばこの点で品質改良、向上の結果が得られるから相当賠償を政府はしてやつてもいいという、又法案実施の暁にそういう考えが出ましたら幾分それを助成金といいますか、補助して頂く点も出て来ることと思いますけれども、余り政府にそういう支出、御損害をかけずに業者間において自粛的にこれは買取らせることにすれば実行ができるとこう思う次第であります。
  80. 青山正一

    ○青山正一君 先ほどの千田先生の御質問に関連いたしまして、青木さんからお伺いしたいと思います。漁業法の成立の際に真珠の漁業権は個人と協同組合と同列な立場というわけなんですが、その参議院の委員会としてこれは非常に真珠の漁業権をめぐつて不満だつたのですが、GHQのOKを受けられなかつたまま、非常に協同組合も不利のままこの法律が通つたのですが、そこでこの機会三重県の今度の免許の更新は、先ほど千田さんがしつつこくお聞きなさつたのですが、私もお聞きしたいと思いますが、組合を優先的に扱うか扱わないか、その辺を三重県の知事さんにお聞きしたいと思います。
  81. 青木理

    証人青木理君) 私先ほどからお答え申上げておりますように、この法案の成立によつて利益を受けるのは加工業者と申しますか、真珠養殖業者のみでなくて、この法案の成立が直ちに漁民に対する大きな福音でもあると思う。あたかも車の両輪のような関係になると思います。従つてこの点につきましては私としては今後零細なる漁民の立場を擁護して行くというふうな方針をとつて参りたいと考えておる次第であります。
  82. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ほかにございませんか。
  83. 千田正

    ○千田正君 反対を主張される証人のお二方に伺つておきたいと思うのでありますが、どうも一から十まで飽くまで反対するという、反対のための反対じやなく、こういうところに我々としての要望があつて、ここに欠点があるのだから我々の要望としては直してもらいたいという御意見がおありですか。それとも全然この法案は初めから終りまで我々は反対しなければならんという立場で反対をされているのであるか。若し前者の場合であつたならば、どの条項のどういうところが我々不満だからこうしてほしいという建設的な、いわゆる反対論者のうちの建設的な御意見があるとするならば、それを大体承わつておきたいと思いますので、所神根証人並びに大久保証人からその点を伺つておきたいと思います。
  84. 所神根礼三

    証人所神根礼三君) この法案に対して私は最初からいろいろ議院の委員会のかたに今日も反対を表明しましたが、我々業者のあらかたがこの法案に対して尚早論と考えておるのであります。であるが故にここ一、ニヵ年この推移を見まして、それから通すのであるならば……、この十一条なんか極端なんですけれども、修正の形では案としては持つておりますけれども、ここ一、二年は我々反対者は保留して頂きたいという意見を持つているのであります。我々養殖業者の総意がこの法案をどうしても完全無欠なものにして通さなければならぬというときまで待つて頂きたいというのが我々の意見であります。
  85. 大久保忠礼

    証人大久保忠礼君) 私はこの法案反対いたしますのは、法案の目的に反対するのではなくして、その定められたる条項を検討しました結果、実行が困難であり、その効果は甚だ信じがたき、むしろこの法案をまともに実施していたならば、業界に逆効果を来たすという十分確信を持つて反対いたしますので、この法案は目的はよろしいが、法案そのものの条項には絶対反対であります。こう申しておりますので、若しここ二、三年の業界の推移を見まして、必要ある場合に、必要で而も実行の伴う善法をお出し下さるならば、非常に喜んで賛成いたします。歓迎いたします。そうして現在の法案では不必要である。現状に処して不必要であるという意見を持つておりますので、これを今にわかにどの点を改良して、どの点をどうしたならば賛成であるということを申上げるよりも、一番いい方法は、ここ二、三年法案の通過を阻止しまして、業界の推移に応じて、業界の状況に応じたところの善法を布いて頂きたい。そうしてこの重要産業は飽くまで保護をしたいとは思います。そういう考えで今所神根証人も申されたように、一言で申上げれば、今日定めることは尚早であるという結論になります。
  86. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 御質問はございませんか。証人に対しての委員からの質問はこれを以て終了いたしました。  証人諸君に申上げます。遠路御上京下さいまして、適切なる御証言並びに委員質問に対していとも詳細なる御答弁を下さいまして、長時間どうも有難うございました。  本日はこれを以て閉会いたします。    午後三時四十三分散会