○
説明員(伊藤茂君)
漁船損害補償法案は、
只今衆議院の法制局で大略法案ができ上りまして、今條文の整理中でござい
ます。
只今お手許に出しました法案要綱につきまして、概略内容を御
説明申上げ
ます。
第一「目的」、「この法律は、
漁船につき、事故に因
つて生ずることがある損害を填補することにより、その復旧を容易にし、も
つて、
漁業経営の安定及び
漁業生産力の向上に資することを目的とする。」目的につきましては大体そういうことを挙げており
ます。第二に「制度の内容」、「一、制度の内容の骨子」、「(1)現行
漁船保險制度を
漁船損害補償制度に改める。」「(2)現行のように、
政府が再保險をする
漁船保險事業を行う
漁船保險組合の外に、保險事業の合理化等の事業を行う
漁船保險中央会を設ける。」「(3)保險をするための事務費の一部を国庫の負担とするとともに、小型
漁船につき、義務加入制を設けて保險料の一部を国庫の負担とする。」制度の内容の二といたしまして「
漁船保險組合」、「(1)目的、
漁船保險組合は、
漁船の所有者をも
つて組織し、組合員の所有する保險の目的たる
漁船(漁具を含む。)につき、相互保險たる損害保險事業を行うことを目的とする。」これは今と同じであり
ます。「(2)
組織、
漁船保險組合を、地域組合と業態組合の二種とする。」
只今あり
ます漁船保險組合は大体性格が大してはつきりしておりませんでしたが、今度ははつきりいたしまして、「地域組合は、原則として
漁業協同組合の組合員たるべき資格を有する者をも
つて組合員とし、
北海道その他特別の事由があるものを除いては、都府県の区域とする。」「業態組合は、
漁業の種類の一種又は数種を限り、その
漁業に使用する
漁船を保險の目的とし、その
漁船の所有者をも
つて組合員とする。」国家の補助は主としてこの地域組合に注ぐために性格をはつきり分けたのであり
ます。「(3)保險事業、保險の種類を、普通保險及び特殊保險とする。」普通保險というのは、普通の保險であり
ますが、特殊保險は戰争の保險であり
ます。主として拿捕を対象とするものであり
ます。「但し、その内容は、
漁業協同組合の定款の定による義務加入に関するものを除いては、概ね現行
漁船保險組合の保險と同様のものとする。」この「
漁業協同組合の定款の定による義務加入」というのは、その次の項目にござい
ますが、これは実はこの法案の非常な山でございまして、義務加入ということにつきましては、いろいろの論議が盡されまして、これはここに一応「定款の定による」云々とな
つており
ますが、別途差上げました一枚刷りの紙がございまして、第三十三條というのがそれに
なつたのでござい
ます。これは「定款の定」ということとちよつと違いまして、第三十三條だけをちよつと申上げ
ますと、「
漁業協同組合の地区内に住所を有し、且つ、政令で定める
漁船を所有する組合の組合員たる資格を有する者(以下本條において「
特定漁船の所有者」という。)」こうあり
ますが、これは
特定漁船というのは大体政令で定め
ますけれども、二十トン未満の動力船、一トン以上の動力船の範囲を目的としており
ます。その三分の二以上が保險に入ることを決議し、或いは同意をしたときは、
あとの残りの三分の一未満の者が必ず
漁船を普通保險に付けなければならないということをきめたのでござい
ます。この地区内には
協同組合員もいれば、そうでない者もおり
ますけれども、これを一括して保險に付するということにしたわけでござい
ます。この決議又は同意があ
つたときは、当該市町村長は、その旨及び前項の規定により普通保險に付すべき者の氏名を公示しなければならないというようなことで、こういう手続によりまして決議或いは同意をした者があ
つた場合には、これが初めて補助の対象になるということでござい
ます。大体そういう観念にまとまりました。
第三の「
漁業協同組合の定款の定による義務加入」というのは内容がそう変りまして、(1)も従
つて三十三條の内容になりました。(2)は「義務加入から除外することができる
漁船、左の一に該当する場合には、義務加入から除外することができるものとする。」「A無動力
漁船」「Bその他特別の事由がある
漁船」これは主として不稼働
漁船等を
意味するわけでござい
ます。「(3)保險金額、なおここに
一つ制限が政令で加えられ
ますが、保險金額といたしまして、「義務加入に該当する
漁船についての保險金額は、保險価額の
一定割合以上とする。」即ち船価の或る
程度以上を必ず入らなければならない。一応
只今考えており
ますのは、
特定漁船につきましては五〇%、それ以外の小型動力船、或いは無動力船については二五%以上を目標とするつもりでござい
ます。これは政令できめ
ます。「(4)保險料の徴収、
漁業協同組合は、義務加入の
漁船及び任意加入
漁船中特別の加入等のあつ旋た係る
漁船についての保險料を収集し、加入者に代
つて漁船保險組合に拂込むものとする。」これに対しまして「(5)事務費交付金、義務加入の取扱をする
漁業協同組合の事務費として、
漁船保險組合は、当該
漁業協同組合に、左の
漁船についての拂込純保險料の百分の十
程度の交付金をする。「A義務加入の
漁船」「B任意加入の
漁船中特別の加入等のあつ旋をした
漁船」
四、「
政府の再保險事業」、「(1)再保險
関係、
政府の再保險については、概ね現行
漁船再保險と同様とする。」「(2)再保險の経理、
漁船再保險特別会計に、左の勘定を設けて経理する。」「A普通保險勘定」「B特殊保險勘定」「C業務勘定」。五といたしまして、「
漁船保險中央会」「(1)
組織」「A
漁船、保險組合は、
漁船保險事業の健全な発達を図ることを目的として
全国を区域とする
漁船保險中央会を設立することができるものとする。」これは法律で一個ときめまして、衆議院では一個ときめたようであり
ます。「B事業を行うための経費は、会員たる組合に対する賦課金で賄う。」「(2)事業、
漁船保險中央会は、左の事業を行うものとする。」「A保險料率の計算及びこれに関連する事項の
調査及び指導」「B
漁船の事故の予防及び防止に関する
調査及び指導」「C
漁船保險組合の委託による保險引受
漁船の審査及び付保
漁船についての損害の
調査」「D
漁船保險の普及宣伝」「E
漁船保險
団体の職員の指導並びにその福利厚生」「Fその他
漁船保險事業の健全な発達についての
調査及び指導」「G以上の事業に附帯する事業」「(3)
漁船保險中央会は、
漁船損害補償に関する重要事項につき、
農林大臣の諮問に答申し、又は、行政庁に建議することができるものとるす。」
「第三国庫負担、左の経費は、国庫がこれを負担する。」「(一)事務費国庫負担」「(1)
政府の再保險その他
漁船保險に関する事務費の全額、これは今まで附加再保險料で賄
つておりましたが、これは全額国庫負担になり
ます。それから「(2)
漁船保險組合の事務費の一部補助金」、これは
特定漁船以下の小さい
漁船、二十トン未満の
漁船から上る附加保險料の大体三分の一、事務費の三分の一を国で補助いたし
ます。大型
漁船についてはこの補助はございません。「(3)
漁船保險組合が、義務加入等をする
漁業協同組合に対する事務費交付金の一部」、これは先ほどの保險組合が義務加入等の斡旋をした
漁業協同組合に保險料の百分の十を交付金として出す、こう書いてありましたが、それは全額国庫負担になりませんで、三%
程度国庫負担で、
あと七%は
漁船保險組合が
自分の附加保險料からこれを追加することになるわけであり
ます。
第二としまして、「保險料国庫負担、国庫は、義務加入の
漁船及び義務加入以外の
漁船で特別の加入等のあつ旋に係る
一定の
漁船についての純保險料の百分の五十に該当する額」を国庫負担をすると書いてあり
ますが、実際は「特別の加入等のあつ旋に係る」ということは、国庫負担がなか
つたと思い
ます。これは間
違つてお
つたと思い
ますが、義務加入の
漁船に対する保險料の百分の五十だけを国庫負担するわけであり
ます。
「第四その他」となり
ますと、これは法人格或いは非課税、或いは
経過措置ということであり
ますが、
経過措置は大体現行
漁船保險組合は新
漁船保險組合に対して
権利義務を継承してもら
つて、そのまま肩替りするように
経過措置がとられるわけでありまして、これにつきましてはこの本法のほかに
漁船損害補償法施行法というのが別に出まして、新制度に移り替わる
方法をきめるようであり
ます。
以上大体ですが、私の
説明を終り
ます。