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1952-06-03 第13回国会 参議院 厚生委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月三日(火曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員の異動 五月十六日委員草葉隆圓君及び中山壽 彦君辞任につき、その補欠として石原 幹市郎君及び加納金助君を議長おい て指名した。 五月十九日委員加納金助君及び石原幹 市郎辞任につき、その補欠として中 山壽彦君及び草葉隆圓君を議長おい て指名した。 五月二十八日委員草葉隆圓辞任につ き、その補欠として田方進君を議長おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅津 錦一君    理事            長島 銀藏君            井上なつゑ君            深川タマヱ君    委員            大谷 瑩潤君            小杉 繁安君            中山 壽彦君            藤森 眞治君            常岡 一郎君            河崎 ナツ君            山下 義信君   国務大臣    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君   政府委員    厚生省兒童局長 高田 正巳君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員補欠選任の件 ○小委員長の指名の件 ○小委員長報告看護婦学校専任教員養成所設立に関  する請願(第三〇号) ○結核予防法による医療補助費増額の  請願(第六七号) ○新潟県の結核病床増設等に関する請  願(第一三〇号)(第一八七号)  (第五二〇号)(第五五八号)(第  五七二号)(第五七八号)(第五九  七号)(第六〇一号)(第六三一  号)(第六五七号)(第六五八号)  (第六五九号)(第六六八号)(第  六八三号)(第六九六号)(第七〇  三号)(第七一五号)(第七一七  号)(第八二八号)(第九三八号)  (第九六五号) ○宮崎延岡保健所新築費国庫補助増  額に関する請願(第一五三号) ○結核対策確立に関する請願(第二一  六号) ○結核予防法による補助費増額請願  (第二一七号)(第二二三号)(第  三一〇号) ○国立療養所給食費増額に関する請願  (第二二二号)(第三六五号) ○国立三豊療養所病床増加等に関する  請願(第三八四号) ○福岡県に国立療養所設置請願(第  四七五号) ○福岡県下の伝染病院隔離病舎整備  拡充に関する請願(第四七七号) ○日本住血吸虫病撲滅対策に関する請  願(第四七八号) ○あん摩師はり師ゆう師および柔道  整復師試験制度廃止反対等に関する  請願(第四八〇号)(第四八一号)  (第五七一号)(第七三八号) ○あん摩はりきゆう試験制度廃止反対  等に関する請願(第五二三号)(第  五二四号)(第五三六号)(第五七  七号)(第七五七号)(第八六七  号)(第九四七号) ○北海道の結核病床増額等に関する請  願(第六四二号)(第六四三号)  (第六五二号)(第七〇一号)(第  七三五号)(第七六二号)(第八三  四号) ○国立福知山病院医療施設整備に関  する請願(第八五一号) ○宮崎岩ヶ崎百日ぜき予防接種禍  に関する請願(第八五八号) ○日本医療団解散に伴う清算剰余金還  元配付の陳情(第三〇号)(第二二  五号)(第四二一号) ○あん摩はりきゆう試験制度廃止反対  等に関する陳情(第七二号)(第二  一〇号)(第三三一号)(第二八九  号) ○戰病結核患者終身保障制度確立に  関する陳情(第一九四号) ○新潟県の結核病床増設等に関する陳  情(第二九八号) ○あん摩師はりきゆう師および柔道整  復師試験制度廃止反対等に関する陳  情(第三六四号) ○療術師法制定反対に関する陳情(第  四〇三号) ○児童福祉法の一部を改正する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) これから委員会を開きます。  保険経済引揚問題及び遺族援護、癩、医療に関する各小委員中山壽彦君補欠としてそれぞれ中山壽彦君を指名いたします。なお、保険経済に関する小委員長従前通り中山壽彦君を指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) さよう決定いたします。
  4. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 次に医療小委員長からの報告をお願いしたいと思います。
  5. 藤森眞治

    藤森眞治君 医療に関する小委員会におきますところの請願陳情の審査の経過並びに結果について御報告申上げます。  四月二十四日の小委員会で審査いたしましたものは、請願九十四件、陳情十七件でありまして、慎重審議の結果、請願第三十号看護婦学校専任教員養成所設立に関する請願外五十三件、陳情十一件は、議院の会議に付して内閣に送付を要すべきものと決定いたしました。  請願第三十五号国立姫路病院存置に関する請願外四十四件は国立病院地方移管問題、インターン制度に関するものでありまして当小委員会におきまして現在研究中でありますので、一応保留することといたしました。又陳構第百八十号新医術許可に関する陳情は、内容医療行政上不適当と認めましたので不採択と決定いたした次第であります。  以上御報告いたします。
  6. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 小委員長報告通り承認することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) さよう決定いたします。   —————————————
  8. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 厚生大臣は目下閣僚会議をやつておられるそうですが、間もなくお見えになると思います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  9. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 速記を始めて。それでは兒童福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。提案理由説明はすでに終ておりますので、直ちに質疑に入りたいと思います。  私から高田局長にお尋ねしますが、犯罪行為又は不良行為に深い関係を有する物を所持しておる者が多い現状となつておりますが、提案理由説明なんですがどんな種類の物が多いでしようか、一応そうした兇器或いは危険物、そういうようなものはどういう物であるか、ちよつとお尋ねしたいと思います。
  10. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 実例を挙げて御説明を申上げたいと思います。食品の類でございますとか或いは被服類、靴、鞄、化粧品、書籍、文房具、運動具、玩具、証券類、貴金属、それから刄物、それからひかりもの、これは金属製品、さような物とか或いは現金であります。大体実例はさような物に全部亘つております。非常に広汎な種類に亘つております。
  11. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 対象が今おつしやつたような種類の物であるといたしますと、多くの場合盗まれたというのは、どこの何という人が盗んだかということはわからない場合が多うございますのに、この二ページでその子供に返還してもらいたい人は一年以内に申出ろといつて見たとて申出ようがございませんね。公告するときにその子供の名前を掲げて見たとて、その子供が盗んだのかどうかわかりませんから、こんなことはむしろ警察のほうへ申出るようにして、普通の窃盗罪と同様に扱つたらどうなんでしよう。被害者警察へ届出るし、盗んだ子供は金に替えてもどちらでもいいんですから、警察のほうへ届出て、相談所にこんな問題を取扱わせずに、警察に取扱わせたらどうなんですか。
  12. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 相談所で取扱いまする子供の持つておりまする物は、やはり相談所のほうで処理をなさるほうが妥当な扱いであると存じます。ただ今のように実際問題として非常に届出るといつてもなかなか届出る者がないじやないかということは実際問題といたしましてお説のような場合が多いことは私も想像することができるのでありますが、警察でかようなものを取扱わせるのは法律建前といたしましては不適当でないかと思います。現実の問題といたしましては、警察相談所というものは非常に連絡が密接でございまするので、警察に届出てあつて、その警察の線からかような被害者がわかつて来るということは、現実の問題としてあろうかと存じます。
  13. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 私から一つ……危険物ですか、特に七首、ピストル、そういうような物を持つておるような場合がございますか、或いはそういう物を持つてつて兇暴性のある子供があると思うのですが、そういう物を隠し持つて、そうして相談所でそういう物を使用するというんですか、乱暴沙汰に及んだというような例はございませんか。
  14. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ピストルはまだ私聞いておりませんけれども匕首実例があると思います。それを振り廻して相談所の中で被害を及ぼしたという例は聞いておりません。と申しまするのは現実の問題といたしましては、この法律規定をいたしたいと存じておりまするように、現実措置といたしましては相談所のほうで預つておるということをいたしております。ただそれが財産権に亘ることでございまするので、法律的な根拠を持たせたいというのがこの改正案趣旨でございます。
  15. 藤森眞治

    藤森眞治君 それではお伺いいたしますが、三十三條の二のずつと終りのほうですが、「児童相談所長は、一時保護を解除するときは」云々で、「児童福祉のため不適当であると認めるときは、これをその保護者に交付することができる。」、この保護者ですが、保護者が果していつでもわかるでありましようか。殊にこういうふうな児童には保護者のおらん場合が相当あるんじやないかと思われますが、そういう場合には保護者に交付することができるかということです。若しできないとすれば、これはどういうふうな処置をおとりになるか、お伺いいたします。
  16. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 多くの場合には施設にその措置をいたすというような場合が非常にたくさんございます。例えば不良少年でありますれば教護院措置する、さような場合にはその施設長保護者に当るわけでございます。それからこれを例えば里親に預けますとか、保護受託にいたしますとかいうような場合に、里親とか保護受託者保護者になるわけでございます。それで大体そういうふうな場合で両親とか何とかいうような保護者が非常にわかりにくいということは御指摘のような場合が多いと思いますが、両親以外のさような者をも含めました意味での保護者はわかる場合も相当あると思うのでございます。それでそういうふうな者のありまするときには、その保護者に交付することができるという途をこの法律で開いて頂きたい、こういう考えでございます。
  17. 藤森眞治

    藤森眞治君 私の伺うつておるのは、何か保護者の見つからない者があるんじやないか、いろいろ尋ねて見ても何もしてもどうも保護者がわからない、そういう場合にはどうするか、それでそういうよくよく見つからないとなつた場合に交付すべき物件をどう処理するかということです。保護者が必ず見つかるとは言い得ないんじやないかと思いますがね。
  18. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 子供を出しまする場合には、今の施設に容れませんような場合で、而も両親のわからないというような場合には、必ずただ追つ放すということでなしに、引取先というものを大抵きめるのであります。ですからさような場合にそれを保護者と見て交付することができるという途を開かして頂きたい、かような意味でございます。
  19. 藤森眞治

    藤森眞治君 そうしまするとその兒童については相談所があるが、教護院なら教護院に容れるということを決定しました場合に、教護院責任者として、それを保護者とみなして交付するということですか。
  20. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今の御意見  の通りでございます。
  21. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 物品の問題が出ておりますが、これまでこうした事例の問題で事件を起したのにどういう事例がございますか、それを教えて頂きたいと思います。
  22. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 関連してお話申上げますが、私はときどき国会通勤の途中有楽町あたり戰災孤児を拾いまして、暫く世話をして適当な所へ養子にやるんですけれども、その子供たち関係した事件がございますが、台湾から引揚げて来た子供ですけれども、父親が戰死いたしましたので、その将校マントだけを唯一の形見に持つて東京へ帰つて来て保護者に預けられていた。出て来たのを私が拾つたのですけれども、後にその子供はどうしてもその将校マントを取返そうと随分熱心に申しますので、私のところで掛合つて見ましたけれども、何だか干して置きましたのが紛失したというのでございます。やはり子供のしつけの上からも必要だから、丁度その子供が長崎のほうへ自動車の運転手になるために引取つてくれます所へ参ります仕度金でそこから金に換えてもらつて来ましだ。僅かな金でございましたけれども、その将校マントを金に換えてその子供に持たしてやつたことがございますが、そのときに事件といえばちよつと裁判所へ相談したことがございましたが、そういう事件があつたから、政府のかたがこれは御答弁なさるのだと思いますけれども、私にそういう事件がございましたから御参考までに……。
  23. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 何か事件があつたかという御質問で……。
  24. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 こういう法律が出されるには何かそうしたいろいろな問題があつてのことだろうと思いますので、どういうような事例の問題がありましたか、ちよつとお伺いいたします。
  25. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) これは事件があつたということよりは、例えば、金にいたしますとそれを児童相談所長が預つております。それから物品にいたしましても今の匕首のような物、いろいろな物を預つておりますが、さような物が別にそれで問題が起つたわけではむしろございませんので、その処置をどうしたらいいかというその処置に困るわけです。厳格に申しますと、これは財産でございますから、さような物を児童相談所長が有権的に処理することのできるような法律的な根拠を與えて頂きたいというのが、この規定を出しました趣旨でございます。さようなことでございまして、非常に何か事件が起つて困るからという意味でこの改正をお願いしたのじやございませんのです。併しながらこのような財産に関することでございますので、それを適当に処理をいたしましては、これは法律的に申しますれば非常に重大な欠陥になるわけでございます。さようなことを適当に円滞に処理をさして頂くような法律的な根拠を與えて頂きたい、こういう意味合い規定でこぎいます。  それから今の将校マントのお話でございますが、どなたがそれを取上げて返さなかつたか、私伺いませんでしたか……
  26. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 それは私の質問じやなくて、政府のかたに御参考までに申上げたのでございますけれども、やはり児童預所がどうしても将校マントを紛失したと言つて返さなかつたのですけれども子供のしつけ上困りましたので、とうとう私たちが掛合いまして、幾らかの金を出して、やはりその物は子供に返させました。そういうことがございました。
  27. 藤森眞治

    藤森眞治君 保護者に交付するということの御見解は今承わりましたのですが、私はそれよりも、例えば今のヒ首を持つておるというような場合に、あらかじめ相談所長がこれを保管しておることなんですが、これをどこかに処置して、教護院なら教護院へ送るという場合に、その相手先にやるよりも、むしろ相談所長保護者に代つてずつと保管しておるというほうが何か形においても自然のようであり、運営の上からついつて都合がいいんじやないかと思います。これは議論になるかも知れませんけれども、お考えは如何ですか。
  28. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 確かに御意見御尤ものようなところもあると思います。従いましてどちらにしてもいいというような、相談所長がずつと預り置くということにしても、或いは例えば教護院なら教護院長が預り置くということにしても、法律のきめ方でどちらでもできるわけでございまするが、私ども考えましたのは、その物の所有権が仮に子供にあるという場合でございまするが、子供の行先の施設の長が保管をいたしたほうがむしろ妥当なのではないか、そういう考え方の下にかようなきめ方をいたした次第でございます。
  29. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 児童相隣所で、子供が人様から借りていたか或いは盗んだかいたした品物で、本人に返そうにも子供が忘れたりいたしまして返しにくいとき、やはり返還請求権を有する者に対して公告をお出しになるのでしようけれども、一年以内に申出がなかつた場合に、その品物なりその金をどういうところに納めてどういうふうにお使いなさるのですか。
  30. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) そのことを明らかにいたしたのがこの案の趣旨でございます。申出がないときはこの当該児童相談所を設置した都道府県にその財産は帰属するということに相成るわけでございます。
  31. 山下義信

    山下義信君 厚生大臣質疑してよろしうございますか……、このたび兒童福祉法の一部を改正する法律案内容といたしましては数点ございまして、極めて簡單なようでございまするけれども、殊にこの第二十四條第一項第四号の次にお加えなさらんといたしまする、四の二並びに四の三の二号でございますが、殊に四の二といたして新たに挿入されようとされまする改正点は、すべての兒童に対しまして、夜間における兒童のいわゆる街頭労働禁止しようとする目的改正点でございます。四の三は、十五歳未満の児童に対しましては、夜間であろうと晝間であろうと、いわゆる風俗営業取締法関係のそういう場所に立入りを禁止しよう、こういう目的改正点でございます。これは簡單に見ますると簡單なようにも思われるのでございまするが、併し私どもといたしましては、この簡單に表面見えておりまする今回のこの改正点のうちに盛つておりまする児童福祉関係の問題といたしましては、実に重大な問題を含んでおると本員は考えるのでございます。今日まで数次、児童福祉法制定以来しばしば改正をいたしたのでございますが、けだし今回の改正は従来曾つてない重大な意義児童福祉の上に持つておるものであると私は痛感をいたしておるのであります。従いまして今回の児童福祉法の本改正案につきましては、政府の御所見、御方針、或いは私ども国会がこれを如何に審議するかということのそのあり方は、以て我が国の兒童福祉の様相を示すとでも言うほどの重大な意義を持つものであると本員は痛感いたしておるのでございます。従いまして本案が本院に先議として提出せられまして、今日まで特に委員長にお願いし、委員会にお願いいたしまして、若干の研究期間を置いて頂いたのでございますが、そのゆえんは、只今申上げまするように事重大であると思考いたしましたからでございます。殊に私はこの年少児童の、たとえそれの街頭労働禁止なり、それが児童福祉目的であるといたしましても、いやしくも個人の労働権の幾らかでも抑制に相成るということになりますれば、憲法の労働権の上から見ましても相当に重大と考えなければならんと存じまして、その点の専門家意見等も仰いでおつたのでございますが、労働権に牴触いたすかどうかという点につきましては疑義が薄らぎましたので、その点の疑問は若干は氷釈いたしたのでございまするが、さような意味を以ちまして事重大に考えまするので、ここに今次改正の持ちまする意義につきましての、政府兒童福祉政策としての、大体の御方針厚生大臣からお示し置きを願いたいと存じまして御出席を願い質疑をいたすわけでございます。  実はこの兒童福祉の問題を国会が重大に取上げられますことを私どもは従来から念願いたしておるのでございまして、ややもいたしますると、この種の問題が軽視されることは実に慨嘆に堪えず存じておりまして、曾つて委員会におきましては、特に吉田総理にお願いして御出席を願つたこともあつたのであります。総理兒童問題を決して忽せにしていない証拠に御出席を下すつて質疑応答をいたしたこともございます。そういう意味合いで、今回の改正がいと簡単なようでございますが、本員といたしましても、政府といたしましても、私どもこの問題を深刻に考えまして、それを改正点に盛つております点、且つ又影響いたしまするそれらの問題を愼重に審議いたしたい、こういう考えで御所見を伺いたいと思うのでございます。  第一点といたしましては、丁度都合のいいことには、又都合の悪い面もあるのでありますが、大臣兼任でいうつしやる点が大変都合も悪いのでありますが、たとえ兼任でありましようとも、この兼任厚生大臣として伺い、都合のいい点はたまたま労働大臣を兼ねておいでになる、そこで本日の審議にはその兼任都合のいい点を誠に多といたすので、御答弁を期待いたすのでありますが、今次の改正案につきまして、只今のいわゆる児童街頭労働禁止の問題は、率直に申上げまして私はこのまま受取つて見ますると、これが果して兒童福祉政策であるか、或いはこれはむしろ年少児童労働、何と申しますか、労働政策であるか、これをこのまま福祉政策の現われとして受取るよりは、それは広汎に申しますれば年少児童労働政策も又広汎な福阯政策とでも言い得られますが、私どもといたしましてはどうも労働政策で取扱うべきような性格のものがすぼつとごこに来ておる。どうも福祉的な性格がこのままでは薄いようにも思う。言い換えれば労働基準法の中にあるべきような性格の姿のように考えられるのであります。労基法におきましては、年少児童のために幾多の保護規定を設けることになつておりますが、大臣本案提出につきまして御裁可になるのに十分その辺を御研究下さつたと思うのでありますが、労基法の中の規定のごときものがそのままここに来ておるということの考え方におきまして、狙いとするところがどこが違うのか、性格労基法のほうでとらざるところをここに持つて来たように見えるのであります。そこで私は大臣に伺いたいと思いますることは、いわゆる労働政策としての年少児童労働保護政策とはどういうところが性格上変つておるかという点を私は伺いたい。又この改正案そのもので言いますれば、どこに兒童福祉という性格がこの禁止規定の中に含まれておるのであるかという点を、つまり労基法の狙おうとするところで若し児童福祉法の中に持込むとするならば、この年少兒童労働禁止のこの規定が、どこを狙つて兒童福祉という結果をもたらすかという点を私は労基法関係との睨み合せにおきまして、こういう禁止規定を持つて来ることが労働政策でなくして兒童福祉政策となるゆえんを、私は丁度両大臣を兼ねておられますのがいい幸いでございますので、その性格の異るところをここで一応根本的にはつきけしておく必要がある、こう考えますので、先ずこの点を伺いたいと思います。
  32. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 御尤もな御質問でございましてこの今回改正をいたしまする一番重要な点は、御指摘のごとく第三十四條の二と三の事項でございます。これは一方労働権の問題もございますが、この改正趣旨は、年少者の深夜の労働というものを保護しよう、深夜の勤めから救つて行きたいというのが第一点であり、第二点は風俗営業のような所に年少者を出入りさせることは青少年の教育上非常に面白くないからそれから保護しようという二点でございます。で、第一点は深夜の作業から、業務から保護する点は労働法にもございまして、多少時間の差はございますが、労働法ではたしか午後四時から午前五時まででありましたか、これは国際労働條約におきつましても深夜業禁止といたしまして婦人及び年少者労働から救つておるわけであります。ここのこの三つの点はいずれも年少者保護しようという点でございましてその保護という点から見れば労働基準法年少者保護することと勿論根本的に差があるわけでばございません。年少者福祉は先ずそういう保護の面及び積極的に福祉を図る面を併せましてこの年少者福祉法というものができておるわけでありますが、これは労働法でも立法できるんじやないかという御意見は御尤もでもございますが、御承知の、ことく労働法の基本は使用関係を前提にいたしまして、雇用主と雇用される者との間における雇用條件というものを保護するという建前になつております。で、深夜及び街頭物品販売等も、往々見受けられるところ本当の親もございましよう、或いは又そうでない者が、年少者を如何にも親のような恰好をして使つておる場合もあろうかと思いますが、若し身内の者が自分の子供を使う場合は、労働保護法としてはちよつと保護の対象になりにくいのでございます。併しまあその親が自分の可愛い子供を深夜も作業させるということは普通は考えられんことで、ございまして勢いこれは生活に因つたあげぐ止むを得ずそういう手を使うのだろうと思いますが、併しそうだからといつてこれを放つて置きまして深夜に年の小さい子供があの街頭に立つて物を売る、或いはカフエーその他のような思わしからざる場所に行つていろいろ錫覧るということは、私どもから見ましても如何にも気の毒であり、放つて置けないというところから今回この立案をしたような事情でございます。
  33. 山下義信

    山下義信君 今大臣のおつしやいましたように、保護をするという点におきましては、全く児童福祉労基法もその精神におきましては同一でございますが、おつしやるように労基法におきましては、これを雇用條件としてお扱いになつている、従つて使用者に対してもこういう取締規定を置いているんだ、こちらのほうはこれは福祉という考え方で行くのである、こういうことであります。私もそうでなくては児童福祉法の中に入れるゆえんがないのでありまして、その点を伺つたのであります。それを言い換えますると、これを労基法で言うならば、雇用條件でございますから、その條件を十分にいたしまするために、いわゆる單なる取締規定でもその條件の維持ができる、目的は達するのであります。従つて労基法はその條件に反したる者を、或いはその條件に反することを禁止してこれが取締の規定になつておる。且又労基法の上から申しまするならば、その取締の規定がありましても、その兒童は何ら痛痒を感じない、年少者は痛痒を感じないのみならず、その取締そのものによつて保護をされておりましてそうして收入の確保というものが、保障というものがあるのであります。併しながら福祉ということになりますると、取締という、單なる労基法と同じような法律形態を持つておりまする取締というだけでは、これは何らの保護規定にならん。一方の労基法の上におきましてはその年少兒童それ自体はすでに一定の賃金の保障というものがある、收入というものがある、確定した雇用関係の上に立つての取締であり、こちらのほうはこの取締をしたというだけでは児童福祉の上にプラスにならんのでありまして、生活の保障がこの取締られることによつて、こういう禁止せられることによつてこの児童の生活の上に福祉が増進されなければ、生活ということは、心身の健やかなる育成でありますが、内容は、その生活の保障が、禁止せられることによつて具体的にプラスされる面がなくては、福祉という性格にはならんと私は存ずるのであります。單なる取締ということでは福祉の本質にはならんと私は考えるのでありますが、これらの取締の、こういう禁止によりまして児童の生活の上に如何なる福祉が増進されるか、如何なる生活の保障が加えられて行くのかという点につきまして、福祉の増進の模様、即ちこの禁止規定によりまして兒童の生活の上にどれだけの福祉が増益せられるかという点をお示しを願いたいのであります。
  34. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 御尤もな御質問でございまして、ただ制限をするだけで兒童は救われないのでありまして、児童といえども好んで深夜に仕事をするはずがないわけでありまするから、一方それに対する生活の保障と申しまするか、本当の福祉の手段が講ぜられなければならんことは御尤もでございます。従いまして勿論気の毒な家庭につきましては生活保護法の適用は考えなければなりませんし、又生活保護法の適用だけで事足るわけじやございませんで、そういう青少年に対するまじめな職業の補導ということが私必要であろうかと思います。で実は労働省のほうでも安定局においてやつておりまする補導所、相当全国にございますが、この補導所に收容しておりまする者は過半やはり青少年でございまして、これはまだ十分とは私考えておりませんが、今後この補導の施設を拡充をいたしまして、これらのこの青少年にまじめな生業を授けて行くということが大事であろうかと思います。ただこの法律で直ちにこれだけですぐ右から左というふうに行きますれば結構でございまするが、なかなかそう行かない点は私遺憾に思いまするが、両々相待つて行かなければ、御指摘のごとく禁止しただけで生活はできないという点は相当考えなければならないと存じております。
  35. 山下義信

    山下義信君 私は、この禁止規定だけでは児童福祉に余りプラスにはならん、それは一応考え方として、深夜業の禁止によつて心身への弊害、或いは環境から来るところの悪い影響を阻止し得られるようなことが考えられまするけれども、併しながらそれも生活ができた上でのことでありまして、その生存の保障なくして枝葉のことが是正せられたからと言いましても、いわゆる角を矯めようとして牛を殺すと同じく、児童福祉を増進しようと思つて児童の生存権を脅かすに至りましては、果して福祉になるかならんか多大の疑問があるわけでございます。今大臣が尤もだ、やはり生活保障的な裏付けがなくては、單なる取締だけで福祉目的ができるものでない、或いは生活保護法の適用であるとか或いは職業補導であるとかいう点に十分力を盡さねばならんということをおつしやつたのは私同感でありましてまさに何と申しますか、この問題の盲点と言いますか、中心点を大臣みずから御指摘に相成つたことは多といたすのでありますが、そういうことの裏付けが果して御用意がなされてありますかどうか、これはここで国会審議いたしますると即日施行するということに相成つております。詳しいことは又兒章局長に伺いますが、今日現にこういうことに該当いたしておりまする児童、それらの保護者と言いますか、関係の人たちを法の対象として取締つて行く、すぐやめて行く、明日からその生存が脅かされて行くということに対する諸般の対策の準備というものが政府にはできておるのであるかどうか、これも伺つて置きたいと思うのであります。
  36. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 御尤もでございますが、実はこの法律で直ぐ右から左に手当をしてできるというところまでは行つておりません。併しながらだんだん日本の国力も回復して参りまして、一時のような非常な混乱の時期は一応まあ切抜けたというような状況で、一時の混乱時代には相当生活の異変がございまして、もと裕福に生活されておつた者も生活の途が杜絶する、従つてその可愛いい子供街頭に立たせなければならんという状況がほうぼうに見受けられたのでございますが、その後だんだんと回復に従いまして今日ではその数も減つておるように見受けるのであります。従いましてこの禁止をいたしまして、それに該当して直ちに生活に困るという者の数は私そう多くはないのではないか、従いましてこの法律施行に際しましては、勿論各末端に通牒を発しまして、それによつて生活の脅威を感ずる者につきましては勿論生活保護法が現存しておるわけでありまするから、それによつて遺憾なきを期するつもりでございます。と同時に先ほど申しましたように、ただ生活保護法で消極的に保護するというだけでなしに、青少年にまじめな職業を授けて行くという点も併せて行きたい。今日補導施設は相当全国にございます。そうしてその補導施設方針も、主として青少—年を容れるべくやらしておるわけでございまするから、受入れとしてはないわけではないわけでございまするから、今後末端におきまして連絡を密にしてでき得る限り遺憾なきを期したい、かように存じております。
  37. 山下義信

    山下義信君 私は大臣の大体の所見と軌を一にしておるのであります。戰後この種の現象が非常に我々の目を藪うわしむるものがありましたのが、近時よほど減少いたしておるということも同感であります。従つて本法の対象であろうと思われるものは意外に少いのではないかとは考えられるのであります。殊にその間に問題となると思われる者は少いのではないかと考えられる。これらも政府から出ております資料或いはその他のデータ等につきまして、局長と資料の点は研究して見たいと思うのでありますが、従来最も必要の多かりし時代にこの種の立法措置がなされずして、現に自他共に認めておりまするような事態の過程を辿りつつある今日の段階になりましてこういう法の中に特に禁止規定を入れる必要のありますりるのはどういうわけであるか。これは他の、福祉法中の本條の他の條項によりましても十分この種の取締は私はできるのではないか、取締という面におきましては又労基法におきまして雇用関係があればやれるのであります。今日になりまして法律がなければできんという事態というものは、どういうところにあるか、これも明確にいたしておかなければならん、こう思うのであります。  もう一つ私は質問の疑義を申上げますと、こういう仕事こそ、これは取締的な仕事でなくして、これは私は他の機会に兒童局長にも言つたのでありますが、これこそ兒童福祉のケース・ワークとして社会事業的にこの種の対象を救い上げるというか、指導して行くというか、補導して行くというか、処理するというか、善処するというか、極めて恰好の兒童福祉事業の仕事でありまして、これを法律によつて禁止することによつて目的が達せられるということは、私はその考え方がどうかと思う。今ともかくも漸次減少しておる、対象者が少くなつておると私はそう思う。これは一々に個別的に片が付けられるのではないか、こう考えられるのでありますが、今日に至つてこの種の禁止規定を必要とする理由を私は明確にいたしておきたいと思うのでお示しを願いたいと思います。
  38. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 御尤もでありまて、終戦直後のごたごたの際に非常に多く見受けられ、又非常に気の毒な事情があつたのでありますが、その当時に立法がなされなかつたことは甚だ遺憾でございます。その当時はいろいろな方面においていろいろな混雑の状況でございましたので御了解を頂けると思うのでありますが、今日漸く落着いて、その数も非常に減少して参りましたが、なお若干かような状況が残つております。これはお話のごとく、法律で解決する問題ではございませんで、最後はやはり人の温かいカによつて解決をして頂かなければならない問題ではございますが、往々こういう問題というものはどこの方面にもありがちなことで、とかく易きにつくきらいがございます。こういうふうなことで生活ができるということになりますと、まあ親で子供の可愛くない者はないのでありまするけれども、勢いつい易きに流れやすい。又中には親でない、もらい子とか何とかいうような関係や、或いは人の子供を預つて、それを子供を道具に使つて生活をしておるという者も私はあり得るのじやないか、これはまあ戰前にもあつたことでございまして、これを放置いたしますというと、これがなれなれしくなりましていつまでも続く、それから一方この福祉関係をして頂いておりまするかたがたは熱心に補導をしておるのでありまするが、こういう規定がございますというと、とかくいろいろなところに摩擦が起りまして、何だ、それはおれたちが自由にやるものを、何でやかましいことを言うのだというようなこともありがちに聞いておるわけであります。従いましてやはりこの種の立法は一応法律としても整えて置き、なおその裏付けとして只今御指摘になりましたような兒童福祉のかたがたにお骨折りをして頂かなくちやならぬのじやないか、かように存じております。
  39. 山下義信

    山下義信君 私はこの法律によつてどうしても一応禁止する必要があるとおつしやいますれば、必ずしもそれを否定するものではございません。併しながら数次繰返しまするように、私は政府兒童福祉政策ということ、即ちそれはこういう禁止規定の裏に持つ、こういう裏付けの施策というものを一つ是非これは求めなくちやならぬ、お願いしなくちやならぬ。それをやるという御意思を明確にして頂きたいというので実はくどい質疑を繰返しでおるのであります。と申しますのは、私ども寡聞にして深くは存じませんが、例えばアメリカあたりの兒童街頭労働禁止法等を見ましても、相当幅のある彈力のあるものを連邦政府としても或いは各州の法律としても皆持つておるのであります。こういうふうに今次改正しようとされるこれらの無制限な、幅のない、彈力のない禁止規定というものは、アメリカですらもないように本員は承知しております。間違つておれば御指摘を願いまするが、而して児童街頭労働等の禁止ということの兒童保護をいたしまする上におきまして、アメリカのごとき生活程度の豊かな国と我が国のごとき生活難のおびただしい社会情勢の国柄と、その問題性の持つておりまする本質と申しますか、社会性というものは比較になりません。向うのごときは、一人の児童が靴磨きをしておるということになりますと大変な問題でありましよう。この兒童をどうするか、この不幸な児童をどうするか、その社会地域が挙げてその児童のために奔走これ努むるでありましよう。日本のごとき生活難の、一家総動員して星をいただきタベに月を踏んで働かなくちやならんようなこの社会情勢のさなかにおきましては、こういうこの種の禁止をいたしますにつきましても、もとより兒童保護福祉のためではございまするけれども、この社会情勢に即応いたしますような幅のある、彈力のある、而して裏付のあるそういう福祉政策をもたらされてこそ所期の目的が達し得るのではないかと私は考えるのであります。若しこれが労働政策ならば幅はございません。併しがら福祉の面におきましては、種々なる先ほど大臣がおつしやつたように、單純なる事態でなくして、この種の持つておりまする問題の中にある複雑性から考えて、一応の取締ではいかないので、兒童福祉に委ねるというその点から言いましても、相当の幅と彈力とを持たなくちやならん。アメリカにおきましても年少児童街頭労働には、或いは事情によつては許可制をとり、或いは記章を佩用させ、或いは一定の区域を配達するところの新聞配達はこれは認めるというようなことが或る州では認め、いろいろ彈力を持つておる。然るに今次我が国におい兒童福祉の上にこの兒童街頭労働禁止しようということは非常に進歩的な措置に見えておるのでありますが、併しながら只今申上げましたような福祉の匂いが非常に少くて、このいろいろな社会情勢と睨み合せてのそれらの対象者の中にひそんでおる複雑なるケースと言いますか、兒童と言いますか、それに即応し得るような幅と彈力性のない軍純なるこの禁止規定では、私はどうであろうかと考えるのでありまして、従いましてこの禁止と必然的に伴いまする裏付けを是非要望いたさなくちやならん。そこで私は本法を実施して行く上におきましてどういう心がまえを政府は持たれ、又その実施に完璧を期して頂けるかどうか、言い換えますると、先ほど大臣もお触れになりましたが、兒童を酷使しておるというような何物かが背後におつてというようなそういう場合、それから兒童みずからが生活のために起ち上つておる姿、それから親子ともともが生存のために働いておるというようなあり方、さまさばあると私は思う。そういうふうな例えばさほど児童福祉の上に弊害がないと思われるような場合と十分背後関係等を吟味いたしますと、面白くない、これは当然福祉の上に措置しなければならぬというような場合とある。そういうような複雑なる事情等に対しまして本法の適用が如何に思考されておるか、如何に考慮されておるのであるか、今後の運営におきまして果して完璧が期し得られる御見込があるかどうか、そういう点の政府の御方針はどういう御方針かということを伺いたいと思います。
  40. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 御尤もでございまして、その兒童がこういう業務に従事する内面的な事情につきましては、御指摘のごとくいろいろあろうと思います。私どもがここで最も力を注いで保護をしなければならぬ点は、御指摘のうちのいわゆる兒童を酷使する面から救い出すことでなければならぬと思います。従いましてこの運用につきましても、ただ処剤をするのだというだけでなしに、お話のごとく如何にして兒童をそういうところから救い出すかということでなければならぬと思います。その際にまあ親が子供を酷使するということはよくよくの場合でなければないでございましようが、人の子供を預つて、或いは人の子供を使つて自分の生活の糧にするというのも私はあり得ると思いまするので、そういうものにつきましては、これは嚴重なる態度を以て臨まなければならぬと思います。そうでないものはやはり兒童福祉のかたがたの手によつてそういうところから他の生活の糧の道を補導して頂くということでなければ、本当の意味の私は保護はできないのではないか。この点につきましては法の運用の面、適用の面につきまして十分気をつけて行くつもりでございます。
  41. 山下義信

    山下義信君 私も大臣のその所見と全く軌を一にして、多といたします。そういうお考えでありまするならば本員の杞憂は全く杞憂に終りまして、私といたしましても満足するのでありますが、本法を実施する上におきまして福祉関係者が十分に努力をいたしまして、万全の態勢を整えて、そうして只今我々が、又政府指摘せられるようなこの不埒なる、児童の背後にあつて酷使するこの形態のものは、そういう種類のものは十分取締るけれども、そうでない、誠に何と申しますか、気の毒なる家庭におきまして、生活の上でこういう状態に置かれてある兒童禁止すると同時に福祉関係者が力を盡してそれらの職業補導、或いは生活保障の上に十分の手を盡さなければならんという、こういう御所見に対しましては全く同感であります。これはそういう態勢を整えて頂かなければなりません。これは私は恐らく問題のあり場所といたしましては農村にはないだろうと思う。若し農村にありますならば、親子ともとも暁に出でて田圃に車を引きましていろいろ農業に従事いたしますることが見受けられましようが、主としてこれは都会地でありましよう。而も大都会が主でございましよう。先ほど申上げましたように対象者も少なうございましよう。これはこの問題になりまする地域、或いはその対象等が十分把握できるといたしますならば、即ち我が国の児童行政、児童福祉組織がこの問題にどれだけの力を示すかということは、何と言いますか、絶好のテストである。今日児童相談所があり或いは児童福祉司があり、或いは兒童委員がある等々の、この児童福祉法の持つております威力も、それらの組織機関がどれだけ動いておるか、該当兒童街頭労働禁止すると同時に、一面には気の毒なるそれらの児童福祉、職業並びに生活の面に、何と言いますか、福祉関係者がこれらのケースに向つてどれだけの力を示すかということは、私は我が国の児童福祉の本当の力試しとしてやらなければならんことであると思うのであります。併もそれらに対しまする準備と言いますか、相当の計画がおありになると思うのでありまするが、若しそういうお考えがあるかないかということだけを一つもう一度承わつて置きたいと思います。
  42. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) これは法の          一施行に当りましては十分関係当局者に示達をいたしまするし、協議もいたしまするし、お話のごとく児童福祉関係のかたがたに特に一つお骨折りを願いたいと思います。なお官憲等におきましても、先ほど申しましたように、酷使する者につきまして嚴重なる手を伸べるように、そうして徒らに気の毒な者をただ法の杓子定規によつて取締ると言いますか、処分するというか、そういうことのないように十分気を付けて行くつもりでございます。
  43. 山下義信

    山下義信君 私は大臣のその根本的な御方針をお示し下さつたのでございますから、あとは事務当局がその御方針を体して適宜計画すると思います。又それを信頼いたしますが、その点につきましてはあとで事務当局に私ども意見も申上げて、いろいろ御意見も聞きたいと思うのであります。要は私は児童福祉をただ單にすべからず、或いはこういうふうな禁止規定等を以てこの福祉が得られるのだというような安易な考え方には反対たするのでございまして、而して兒童でありましても基本人権の尊重はしなくてはなりません。名は成るほど深夜業の禁止によりまして、或いは眼を覆わしむるような戸外労働禁止によりまして一応ぺ—バー・プランとしては、デスク・プランとしては、観念としてはそれで兒童福祉が進められたように見えておつても、実益、実体は何らない、むしろそれらの薄幸なる兒童から收入を奪い、職業を奪い、労働基準法によつて工場から閉め出され、又街の中のそういう自由営業の立場からは禁止せられる、それらの收入を失うた、生存の途を失うた児童や、その不幸なる、薄幸なる家庭は何を以てこれから生きて行くか、この兒童嗣祉のためにそうしたことが却つて大なるその家庭の悲劇となり、禍いとなり、生計の途を失うた親子が相抱いてこの社会に生存の望みを断つがごとき事態が一つでも起きましたならば、かかる規定を以て福祉がなし得られると考えた当局の責任は私は重大であると思わなければなりません。それで靴磨きをとめるもよろしい、花売りをとめるもよろしい、新聞配達、牛乳配達がこのことによつてできなくなることもよろしいが、その奪われたる收入を何によつてカバーするか、若しそれが生活保護法だけではそれが直ぐにいろいろな原則によつて適用ができなければ、あらゆる方面から救援の手がそれに伸びて行かなければならん、総動員して行かなければならんと私は考える。でありまするからこれを單なるこういう規定によつて福祉目的が達し得られる、能事終れりとした事務的な考えでなしに、我が国の兒童福祉の持つておる力を総動員して、この法によつて取締る必要のないところまで善導の準備ができなくちやならんということを私は言うのであります。幸いに大臣も同意見であるとおつしやつて下さつたのでありますので、今後の厚生当局が該当児童街頭労働禁止という、我が国の一般の事業場以外のこの児童福祉の面、この面においての手が下されるという、私は或る意味おいて我が国の児童福祉の上における画期的な一つの試みと言いますか、施策と考えるのでありまするから、従来ただちよちよぼと兒童福祉法の一部改正といつて、ただ細かいことを下部機関のところへ指示して、そうして済んだというようなあり方、考え方でなしに、重大なる責任をお持ち下さつて御善処願いたい。  それには私は児童福祉関係者、殊に厚生当局としては強力な指導能力がなくてはなりませんし、関係機関も動かなくちやならん、又それらに対しましてはかなり予算の裏付けが要る。一文もなしでは動かれん。児童福祉司を動かすにしても、それらを招集して会議をするにしても、激励鞭撻するにいたしましても、いろいろこれに関連しての多少の費用が要るでしよう。これは一文なしでここで何か書いたら済む、何かガリ版刷を下僚に伝えたらそれで済むというものでない。これはこれを契機として兒童福祉の上に相当な話を入れて行かなければならん。児童福祉行政を強力にして行かなければならん。従つてこれは機会あるごとにこれらに関連してのいわゆる福祉の裏付け、延いては国としても努力すべき予算の裏付けというものがなくては私はいかんのではないかと思う。従つて労働大臣兼任して頂いておられるこの間にこの改正がなされる、これを契機に近く仮に補正予算等の機会がありまするならば、落ちのないように、これは何十億が要るわけでございません。何百億が要るわけではございません。この法を、今回の福福祉措置を遺漏なく実施してさような不幸な兒童が一層不幸にならなくて、より幸福になりますために相当の若し予算ということが必要がありますならば、その獲得に向つて十分御努力下され、事務当局は必要な予算を計上するという覚悟がなければどうも私は心許ないように思うのであります。その点につきましての厚生大臣としての御信念を明かにしておいて頂きたいと思います。
  44. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 本法の施行に伴いまして若し予算上どうしても必要だという点がございますれば、私といたしましても十分努力をいたすつもりでございます。
  45. 山下義信

    山下義信君 先ほどの御答弁の中にありました生活保護法の適用について一段の考慮を、生活保護法の適用等についても十分考えなくちやならんということでありますが、これは免童局の所管でございます。生活保護法は社会局の所管でございます。行政の上から申しますと、児童局の考えではこうもしたいああもしたいと言いましても、生活保護法との間が円滑に行かなければ、兒童福祉法自体にはこの生活保護法の面の何らの含め手も持つておりません。その両君間の関係の調整につきましては大臣はどういうお考えを持つておられますか、これも落ちのないようにお示し置きを願いたいと思います。
  46. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) とかく役所というものは、私も役人生活をして参りましたが、御指摘のごとく、所管が違いますと、自分の窓口だけを見たがるものでございますが、その点は私就任以来やかましく言つておりまして大臣は一人なんで、その所管事項については、仮に局や課が分れておつても一本でやる、国民の側から見れば、役所が違つておろうが違つていまいが、やはり必要な事項は一つなんだからということをやかましく言つておりまして、この点は今後といえども十分連絡を密にいたしまして遺憾なきを期したいと思つております。
  47. 山下義信

    山下義信君 大臣の御方針の下に、それが如何に連絡されて行くかということは、事務当局との質疑応答で私は確にいたしておきたいと思います。  最後にこの機会に伺つておきたいと思いますのは、従来自他ともに心配して参りました平衡交付金の問題でございますが、義務教育費関係につきましてはああいう有様でございます。兒童福祉措置関係につきましてはかくのごとき事態があつたのであります。これは吉武厚生大臣といたしまして心配ておることでございますが、これは何とか解決をいたさなければならんことでありまして、この機会に平衡交付金の問題につきまして御解決が願われるでしようかどうでしようか。又閣議へ一つ持ち出して御決定おきが願われるでしようかどうでしようか。義務教育費関係がああいうふうなことにつなりますれば、平衡交付金は総崩れは言うまでもない。それではもうこの際まるで戰国のごとくなつて、切り取りになり、取らなければ損だ、それを指をくわえて見ておるほうはこれはひどいことに相成ると思うのでありますが、これらの点に対しまして、本国会ももはや余日は少いのでございますが、この点を一つ大臣としての御信念を明確にしておいて頂いて、これは厚生省の御方針としてどうなさるのか、一兒童局長の希望として……そういうふうな局部的な考えであつてはならん。厚生省の方針と申しますか、その点を明確にしておいて頂きまして、そうしてこれを国会にお示しを願いたい。我々は従来この問題につきましては数次或いは政務次官或いは当時の厚生大臣からいろいろ聞くのでござまけれど、もう今日はとやかく申しませんけれども、ことごとく何と申しますか、嘘になつてしまつておるので、一定の厚生省の方針というものを御確立おき願われますかどうでありますかという点を、私はこの重大なる児童福祉法改正をなさろうとするこの機会に、平衡交付金の問題を私どもにお示し置きを願いたいと考えるのであります。
  48. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 兒童福祉に関する平衡交付金問題は、昨年来御指摘を頂いておるところでございまして厚生省としてはいつも申上げておるごとく、早い機会に解決をするつもりでございます。昨年暮の予算編成のときにも閣議で、私は当時厚生大臣ではございませんでしたが、橋本君の際にもこの問題が取上げられまして、あのとき解決しなかつたのは、義務教育費との関係もあるから一緒にということで延びた事情も聞いておりますが、生活保護法がすでにそうなつておりますし、又義務教育費も準備しておるという事情に鑑みまして、この兒童福祉だけが依然として元のままであるということは許さるべきではございませんから、次の予算編成期におきましては必らず実現するつもりでございます。
  49. 山下義信

    山下義信君 大臣に対する私の大体の質問を終りました。なお残余の分につきましては事務当局との質疑に保留いたしておきます。
  50. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 終戰後すでに六年十ヵ月かになりますので、当時十一歳の子供でございましてももうすでに十七、八歳になつております。児童相談所ですか、あそこにおりますのはやはり小さい子供でありまして、相当年が大きくなりますと、ああいう所におるのをいやがつて町に出て来ておりますようでございますけれども、終戰直後の戰災孤児の概算は大体兒童局のほうでおわかりになるであろうと思いますが、あのときのその子供たちがどういうところに落着いたのでありますか、大体統計がおありであろうと思いますが、参考までにお聞かせ願いたい。
  51. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 正確な数字を今覚えておりませんが、私の頭に残つております数字を参考までに申上げまして、正確な調査がございますれば又後ほど何らかの方法で申上げます。二十三年のこれは二月一日現在の調査しか実はございませんですが、戰災孤兒が二方八千、引揚孤児が一万一千、それからこれは一般の孤児ということになつておりますが八万一千、捨子だとか迷子だとかいうのが二千で、十二万二千という数字になつております。私の大体の記憶によりますと、この約十二万の孤兒、いわゆる孤兒以外の者も実は含んでおるのでありますが、その八割ちよつとくらいは親類縁者でありますとか、そういうふうなところ、或いはおじさんおばさんの家だとか、そういうところでずつと面倒を見て頂いておる状況でございます。それから二割近い者が私ども関係の、そういう人のいない本当に困つた気の毒な子供さんたちであります。施設でお世話いたしております。それから今御指摘のように、相当もう大きくなりましたので、その数字はどのくらいになりますか、一万ぐらいにはもう達しただろうと思いますが、そのくらいの者はそれぞれすでに自活の途を得て、或いは奉公をいたしておりますとか或いは就職をいたしておりますとか、そういうふうに自分でやつております。大体こういうふうになつておるように私は記憶いたしております。甚だ雑駁な話で申訳ございませんが……。
  52. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 それから一万ぐらいの成年になつ子供たちはそれぞれ自活の途を開いていらつしやるとおつしやいましたが、幸いにいたしまして職業補導所の手を通したり或いは自分で職安の手を通してそれぞれ商工業の方面に雇われております子供は仕合せでございますけれども、私の推測では相当大勢の人間が、年が大きくなつて浮浪人の仲間に入つておるのじやないかしらんと想像がつくのでございます。海外移民の話もございますけれども、農業の職業補導もございませんので、ちよつとこういう方面には向きにくいと思いますが、先だつて実は新聞紙上に蟻の会が広告を出しまして、一ヵ月一貫目の新聞紙を出してくれる会員を募集いたしておりましたので、私一番に申込みましたら、何だか先例がないから来てくれと言うので、そこの様子を見に参りました。ところがそこの長の人から随分詳しくいろいろ説明も聞かされまして、私感じたんですけれども、どこへ持つて行つたらよいのか考え最中だつたので、丁度よい機会ですから申上げますけれども、バタ屋のことですけれども、今東京で勤めておりつますあのバタ屋、四千人くらいおるそうですけれども、あれは一ヵ月か二ヵ月ぐらいでやめる人が非常に多い。この頃は朝鮮の動乱に伴います特需景気で幾らかよかつたのですけれども、大体永続きがしないらしいのでございます。というのは、非常に收入が少いためなんでございましようか、そこでその所長が言います話によりますと、日本の家庭は非常に廃品が多過ぎるそうでございます。忙しいためでもございましようけれども、外のごみ棄ての箱にたくさん土と一緒に入れられますので、あのときにちよつと心掛けて、縄とか金物とか紙屑とかああいう物を別の籠に入れてもらうだけで、ただ金をもらうのじやない、それだけしてくれれば、東京都内でも大体四千人の人間が、国家の国営事業にでもして廃品の回収のお世話をして結党定職にありつけるそうですけれども、この世話が行届かないために、この四千人が丁度刑務所に入ります人々のプールになつておるそうであります。先だつて恩赦で監獄から出て参りました人たちがこの中に大勢おりますけれども、こういうふうに温い保護の手が加えられませんために、またたく間に元の巣へ帰る状態なのでございまして、このことを頼まれましてどうも婦人団体に折衝いたしましてこういうことをしてもらいますのも、なかなか啓蒙してこういうことをいたしますのも骨が折れますので、それこそ国家の事業で一般の婦人にでもちよつと学校とか或いは県庁あたりの生活課なんかでも動員しましてお説教でもして頂きまして、ごみ箱の横に別に籠でも置いて或いは家庭内に保管いたしまして、バタ屋で国営事業に参画いたしておる人は札を持つて参りますから、それが来ましたらその籠の品物を出してやるというふうにしましたら、監獄に行かないで家族揃つて生活のできる口があるそうでございます。職業をすべての国民に與えるということが政治の基礎でなければならないと思いますのに、今日は日本の政治が逆立ちいたしておりまして、財政に余裕があつたら職業を與えるというのであつて、職業がなくて仕方がなくて悪いことをした人たちを監獄に入れる途だけが開かれているのでは、これは政治じやないと思いますので、失業救済の途が現実おいて余りないのだから、まあ大した案じやございませんけれども、頼まれましたので、私の手に少々余りますので、只今何かの若し方法がございましたら、こういうよい機会ですからお耳に入れておきますから、お考えを願いたいと思います。
  53. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 兒童福祉の問題ではございませんけれども、たまたま……。
  54. 山下義信

    山下義信君 それじや委員長兒童福祉関係で午後御続行願つて兒童局長への質疑を済まして、明日私はこの法案の審議の上にこの深夜業街頭労働のために兒童がどれだけ不良化しておるかという実態について警視庁当局の出席を求めてもらいたい。それから年少労働者の保護労働行政の実情について労働省の基準局長或いは婦人少年局長の出席を求めたいと思います。それから生活保護との連絡について社会局長の出席を明日求めて頂きたい。それからこれらの対象兒童の大半は不就学兒童であるということでありますが、教育関係者は学校との間の関係をどうするかということについて文部省の責任局長の出席を求めて頂きたい。それでこの問題についてどれだけの事前審議をしたかということについて中央児童審議会長、それから中央社会福祉協議会の児童関係責任者、この二者の出席を求めて頂きたい。委員会がお許しになりますれば明朝これだけ済まして、私どもとして審議を早く進めたいと存じますから、そういうふうに取計いを願いたいと思います。要求いたしておきます。
  55. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 承知いたしました。本法案に関しての御質疑はほかにございますか。
  56. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 厚生大臣ちよつとほかのことで緊急質問しとうございます。それで折角お出ましを頂いておりますので、厚生大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、昨日の夕刊か或いは今朝ほどの朝刊に載つておりましたのでございますが、過般のメーデーに東京都立の板橋の病院の看護婦が出て参りまして騒擾に加つた、それで検挙されたということが載つておるのでありますが、あのことにつきまして幸い労働と厚生をお兼ねになつていらつしやいますから真相がおわかりでございましたら伺いたいと思います。一つお願いします。
  57. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 私はまだその詳細を存じておりませんから、調べまして適当な機会にお答えを申上げます。
  58. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) それでは休憩をいたします。    午後零時七分休憩   —————————————    午後一時四十五分開会
  59. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 休憩前に引続きまして当委員会を再開いたします。
  60. 山下義信

    山下義信君 兒童局長に対する質疑のお許しを願いたいと思います。  この法案の審議関係の資料として配付せられてあるこの中にいろいろな統計等が添えられてあるのでありますが、今日までこの種該当兒童の実態につきまして厚生省がどれだけの調査をし、又その実情をどれだけ正確に把握しておられますか、その点について御説明を願いたいと思います。
  61. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) まとまりましたものはこの資料に附けてありますわけですが、そのほかにも厚生省直接といたしまして人を派しまして大阪の状況を調査をいたしました。或いは又私ども自分たちも出まして東京の或る部分の深夜、翌朝の事情等をも調査をいたしました。さようなことをやつております。それで大体資料に表等が附いておりますので御了解頂けると思うのでございますが、私どもこれらの調査によりまして大体の結論的なものをかような工合に考えておるのでございますが、これらの街頭労働に従事しておりまする子供たちは、両親又は片親を持つておる者が非常に多い、大体親がないというのではなく、親があるのが多いのであります。それから比較的家族の多い者が多い、それでなお生活保護法を受けておる家庭は比較的少いというふうな結論が出ております。なお労働時間は一日七時間以上に及ぶ者が非常に多く、睡眠時間も極めて少く、延いては学校の欠席日数も相当多くなつておるように思います。それでこの点で先ず十時以後の街頭労働は、兒童の身体的な影響というふうな観点から見ましても、就学の奨励ということから考えましても不適当ではないかというふうな気持がいたすのでございます。なお子供の発見された場所は街頭も勿論でございますが、入つておる所といたしましてはキヤバレー、カフエーというような所が非常に多うございまして、それらはいずれもその雰囲気が兒童に極めて有害であるように思うのであります。なおこの兒童一人当りの純益高は、これはいろいろそこの表で御覧頂きたいと思うのでございまするが、先般私自身の調査をいたしました新宿の状況におきましては、その十時までの労働を抑えましそも多くが千円ぐらいに及んでおりまして従つて一ヵ月の純益は七、八千円ぐらいはあるのじやないだろうかと推定されるのでございます。さよういたしますると、仮に十時で切りましたといたしましても、十五、六歳の者が非常に多いわけでございますが、これだけの年齢の兒童に、而も学校に通つておる児童にこれ以上の收益を要求すること自体がむしろ無理なんじやないか。十時以後の労働に伴う兒童への悪影響とこれとを比較いたしまして、又労働基準法の深夜労働禁止規定とも照らし合せまして、まあ十時以後翌朝三時までの労働は抑えてもいいのじやないだろうか、かような結論を一応私どもといたしましては出している次第でございます。
  62. 山下義信

    山下義信君 私はこれは無遠慮に申上げますと、これだけの重大な問題に手を着けるということに対しましては、調査が私としては不十分じやないかと思うのであります。これは調査が困難なことはよく承知しておりまするが、殊に私の指摘しておきたいと思いますことは、厚生省自体のしつかりした信頼のできるような調査がない、それで他の労働省の調査とか或いは取締官憲、官庁方面の報告とかいうものも参考になるけれども、それは又権威ある報告でもありましようけれども、私どもが欲しいのは、厚生省の眼で見た、厚生省の手によつてみずから作られた完全な調査というものが欲しいのです。何と言うてもそれが基礎です。いろいろ今従来の調査によつて二、三の具体的な点も説明されましたけれども、実は資料が私どもは不備だと思う。いろいろなものも調べましたけれども、従来日本においての兒童街頭労働の問題が実際はあなたがたによつて研究されておつたと思いますけれども、浮浪見という意味おいては大きく取上げられてあつても、この街頭労働の一つの問題として大きく取上げられて、クロース・アップされて論ぜられたことがないというように私は思う。で調査がこれは実際は不十分です。これは厚生省で私は今からでも遅くないと思う。先ほど厚生大臣にも十分註文しておきましたが、しつかりした一つデータを以て私どもにもお示しを願いたい。何といつても確実なる調査資料が基礎で、その上に具体策が立てられて行かなければならんと思うのでありまして、これは一つ完全なものがあればお示しを願いたいけれども、まあ実際は不完全ではないかと思うのです。これは一つ今回の改正を機として本当に我が国の街頭労働兒童が、それは一人残らずというわけに行きますまいけれども、先ず大体何人くらいやつておるか、何人くらいそういう兒童があるか、それからそれについてのいろいろなまなましい最近のものの実態を集められて、今この一部をお示しになりましたようなあらゆる角度から、殊に生活の面やら或いは不良化の影響の面やら、或いは身体的な悪影響がどうあるか、福祉の面で憂慮せらるべきことを厚生省自体の手によつて調査分析せられた貴重な完全な資料を至急私は兒童行政組織を通じておやりになつたら如何かと思います。あるのでありましたらお願いします。又或いはこれ以上は、ここに我々に示された資料以外には、或いはその他厚生省から出されました文献類以外には、もう何遍調査してみてもこの程度だとおつしやるのでしたらば、無理は申上げませんが、そういうことに対しての一つ御努力か御計画かがありましようか、如何でしようか。
  63. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 調査が不十分ではないかという御指摘でございます。私どもも決して十分に調査をいたしたと言い切るだけの自信がございません。なお厚生省自体がやつたということに関連をいたしましては、このお手許に差上げてありまする資料を作りました後におきまして、先ほどちよつと触れましたが、厚生省と東京都と警視庁と社会福祉事務所の関係者が合同でやりました三月二十七日の調査がございます。これは相当詳細なもので、又私どもも自分で見聞をいたしましたことでございますので、或る程度の自信を持つておるのでありまするが、ただ遺憾なことに当夜天候の状況が悪うございまして、対象の兒童がいつもの三分の一くらいしか出ておらなかつた、こういうことでこの点遺憾でございましたので、お手許に差上げなかつたようなわけでございます。この資料といたしまして差上げましたように、今まで各都市等で調査をいたしておりまするが、これがいずれも時期を別にして散発的な調査でありまするので、只今御指摘もありましたし、過当な機会に相当全国的に亘る一定時期の調査をいたしてみたい、かように私只今考えております。
  64. 山下義信

    山下義信君 是非一つ御実行願いたい。でそういう必要な予算等も厚生大臣に午前に註文しておきましたわけでありますから、これは是非一つ願いたいと思います。我が国の兒童街頭労働をどう処理して行くかということは、私はこれは世界的にやがて報告せらるべきほどの重要な問題と思いますから、しつかり御調査を願いたい。例えば今局長は午後十時以後を禁止するので、午後九時五十九分まではやつてもいいのだ、大した影響がないように言われるのでありますが、私は問題を午後十時に切らないのです。そういう考え方もよろしうございます。それは一面或る憐憫の情を寄せられて、九時五十九分まではやつてもいいのだから、強いて收入等にも妨害にならんだろうという考え方も御同情的でいいのでありますが、午後十時というところに線を引いて私は問題を論ずべきでなく、これらの街頭労働禁止するというそれ自体の本質の問題なんです。願わくは晝でもないほうがいいのであります。夕方でもそれらの薄倖な兒童街頭労働というがごときはなさしめんということが、これが福祉の問題なのであります。十時以後をとめるのであつて九時五十九分までは差支えない、福祉上にも何らの悪影響がないというこの時間を切つて考え方は、一応ではありましようけれども、私どもはこの兒童街頭労働自体を問題として福祉の面からこれを一つ考えなければならんというのが今回の改正考え方である。ただ深夜業のみという、時間的に考えるのみでは私はまあ十分でないと思う。理想から言えばそうなんです。それの裏付けが、あらゆる社会保障制度や福祉措置の裏付けが十分にできて、晝でも彼らが街頭に出なくてもいい、屋内のいろいろな兒童にふさわしい仕事に余暇があるならば従事しておる状態こそ望ましいのでありまするが、ともかくもこの御調査の上で、今御指摘になりましたように、他の資料等を見まするというと、收入状況等が、この点の資料がどこかにありましたが、兒童の收入状況がずつと出ておる、まあ平均をとると、今おつしやつたように六、七千円か八千円前後という数字が出ておる、兒童のか弱い手で一ヵ月八千円もの收入を上げているということはなかなかこれは重大である。それが午後十時以後とめたらどうなるか、又午後十時以後とめることによつて如何なるこの仕事の種類がストツプされるか、一番影響を受けるのは何であるか、靴磨きが影響を受けるか、花売娘が影響を受けるか、牛乳配達が影響を受けるか、納豆売りか、物の運搬か、何の積類の仕事の兒童が影響身受けて、どれだけ收入に影響を来たすのか、又その收入の影響を来すことによつてその兒童の家庭がどういう変化を来すであろうかという調査がどつかに出ていますか。それが一つ二つでもよろしい、三つ四つでもよろしい、それが何かどの兒童に、どの種類の仕事をしておる兒童にはこの本法の改正によつてどれだけの影響を受けるか、その兒童の家庭がどうなるか、そうするとどういう手を差伸べてやらなければならんかという見通しのきくようなつ調査が一つ二つでもあるでしようか、どうでしようか、恐らくそれはないのだろうと思う、若しあればお示しを願いたい。そこまで或る何か、少つくとも一つのモデル・ケースといいますか、サンプル・ケースといいますか、靴磨きについてはこうだ、花売娘についてはこうだ、甚だしいのはこうだ、これらの対象兒童の九三%までは極貧家庭だ、今局長は生活保護法にかかつておらん者が多いと言われたが、生活保護法にかかつておれば私は安心するのです。生活保護法にかかつておらん者が非常に大部分であるがために憂慮するので、いわゆるボーダーラインなるが故に憂慮するのでありまして、そういう何か一つその辺の、何といいますか、見通しというようなものについては、まあ当局を私は信頼しますから、むずかしいことを聞こうとは思いませんけれども、見通しが何かございましようかどうか、いずれ御指示なさるのでありましようから、そういうことについての御調査が願われますかどうか、一つ承わりたい。
  65. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 十時で切るとどういう種類街頭労働に影響するかということの御質問でございましたが、これは新聞配達、納豆売りというような者は殆んどかかわりありません。それから靴磨きにも大した影響はございません。一番影響がありますのは花売娘のようなものでございます、主として……。而もキヤバレー、料理屋というような所に入りまして醉客を相手に商売をいたしておるような者が一番影響をいたします。かように考えております。  それから收入の問題でございますが、先ほど私が結論的にちよつと申しましたことは、午後十時で切つて見ると幾らぐらい稼ぎがあるか、十時以後幾ら稼ぎがあるかということを分けて調査をいたしまして、それを概観的に眺めたのが先ほどの結論でございます。これは勿論時と場所によつて違いますけれども、私ども新宿に参りましたときの調査では、それを一々調べましたところが、十時までですでに月收相当額に上るものが多い、従つてそれ以後、そこで切りましても、まあこのくらいの年頃に期待する收入としては十分なんじやないかというような印象を持つたのであります。  それから保護法にかかつておる者はどのくらいかということは、それぞれ調査の場合におきましてはその人数も出ておりますが、ただその保護法にかかつておる者が一体どの程度の状況であるか、それからボーダーラインとして、保護法にかかつていない者がどの程度の生活状況であるかというふうなことにつきましての詳細なる調査はいたしておりません。概括的に、私ども調査に当りましてなお資料等を見ましての印象におきましては、先ほどもちよつと大臣が話しておられましたが、街頭労働をいたしたり或いは浮浪いたしたりするような子供は終戰当時から比べますると非常に数は少くなつたわけであります。併し当時の多くの子供はよく御承知のように、浮浪をしておる者が非常に多かつたのでございます。その身なり等も非常に極端に悪いような状態でございました。ところがだんだんとさような者につきましてはそれぞれのまあ措置もいたしましたし、又いろいろ社会状態も改善をいたされましたようなこともあると思いますが、今日街頭で見かけます兒童というものは、当時のものとは実態が変りまして、例えば花売娘にいたしましても相当な身なりをして、リボンを差しそれぞれ身なり等から推察いたしますれば当時の街頭におつた兒童とは若干形態が変つて来ておるように思うのであります。これは勿論商売の何と申しますか、人に接して物を売つたりなんかすることでございますし、殊に花などを売るのでございますから、その商売をやるというために無理をして身なりをよくしておるということも勿論あるかと思いますが、とにかく身なりは相当きれいになつて来ております。従いまして終戰当時と比べますれば、全体の街頭におる兒童は数の上からは少くなりましたけれども、併しその質が非常に変つて来ておるのじやないか、まあこういうふうに私どもは調査に行つて概括的に感じておる次第でございます。
  66. 山下義信

    山下義信君 まあとにかくしつかり調査してもらつて、確実なものの上に一つ今後もずつとこれは継続して対策を講じてもらわなければならんことでありますから……、実態につきましては今後の御調査に期待するということにしておきましよう。労働省の調査の資料は古いのですからこれは当てにならぬことでございますが、それによつて見ましてもですね、つまりこの改正案に上りますと、本條文によつて取締をしなければならんというような好ましからざる背後関係というものは割合に少い、これはまあ古い調査ですからわからんが、一、二年前のことですから、最近のはどうなつておるかわからんが、この兒童自体が家庭の家計の中心になり或いは又親や親戚等の親族関係でその仕事をやつておるような者が多いということになれば、又いろいろ法の運用上に工夫があるでありましよう。背後関係兒童を酷使するという状況が多いということになりますれば、又対策の狙いが違つて来るというようなことでありますから、実態をよく見て行かなければならんと思うのです。それで、私は運用の点について折角速記があるのですから、立法趣旨も明確にし、あとで参考になるような質問応答をして行かなければならんと思うのですが、運用の場合におきまして、実際に子供が自分で自発的にやつておる。まあ親がある、親がそれを黙認しておつたならばいけないでしよう、とめなければならんでしよう。これはしちやならんぞと言わなければならん。してはならんと言つたときに、子供が、いや僕はするんだ、家の生活状態を見ていると僕がやらざるを得ない、お父さんが幾らとめても僕はやる、こう言つて子供が聞かない。聞かないでやつておるという状態もあるでしよう。それで、或いは親子の間に全然意思が疏通しないでやつておる者もあるでしよう。まあ保護者と言いますか……、で本法のこの運用の上におきまして取締の対象になりまする者とこの兒童との関係というものが、まあいろいろなケースがあるでしよう。一番問題になるのは、家庭でおつかさんと言いますか、或いは兒童が自分が独立してやつていると言いますか、そういうような、家庭のある兒童がやつている場合の二、三のケースをお示しになつて、そういうときにはそれがこの禁止の法に触れる、これは罰則があるのでしよう。五千円の罰金ですか幾らでありましたか、あるでしよう。それらの運用についての点が非常に気遣われまするので、親が処罰を受けると言つても困りますし、子供はまあ処罰の対象にならん、親が処罰されるということになると困るのです。そういう場合には、よく事前にこれは注意もして置かなければなりませんが、あとでその点は触れまして、当局のお考えを聞いてみますが、そういう場合の運用におきましての当局の御心配はどういう点にまで御配慮されまするか、一つその点を御説明願いたいと思います。
  67. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) むずかしい御質問でございまするが、或いは御質問のお答えになるかどうか知りませんけれども法律建前といたしましては、親が承知をいたしておればこの罰則は適用されるということになつております。親といたしましては承知をいたしておれば、親の何と申しますか、親権と申しまするか、監督権と申しまするか、さような意味合いから承知をいたしておる場合にはとめなければならない。従つて不作為によるかような場合におきましてもこの罰則は発動し得る建前になつております。併しながら実際の適用といたしましては、その子供の、例えば先ほどお話のありましたような具体的な例によりまして、子供の年齢によりましても事情は違うわけでございます。なお又さような親が、親の家の状態がどうであるか、極端な例を挙げますれば、親が左うちわで生活をしておるというふうな場合、或いはそうでなく、本当に病気か何かをいたしておりまして、子供の稼ぎだけによつて生活が維持されておるというふうな場合、これはいろいろと具体的な事情によつて違うことと思うのであります。従いまして午前中大臣がお答えになりましたように、この規定の運用におきましては、狙つておるところは兒童福祉でございます。罰則を適用いたすことが目的ではございません。その趣旨に従つて運用をいたさなければならない。と同時に、反たとえ法律的には罰則に触れるような事態におきましても、罰則を適用するだけでなく、事情によりまして、兒童福祉司とか或いは兒童委員とか、或いは社会福祉主事とかいうようなもののケース・ワークと申しますか、そういうふうなものによつて、その罰則に触れるような状態を解決してやるという積極面の活動に待たなければなりませんことは、山下先生の午前中にお話の通りであると私は思います。
  68. 山下義信

    山下義信君 これは私もよくわからんのでありますが、今おつしやつたように両親が承知していると、親が承知していると親が処罰される。アメリカでは親が承知している場合は許すのですね、逆に許すのじやないでしようか。例えば加州のの街頭兒童の取締法では、兒童の親が兒童を使うというような場合には除外例とされる場合がある。これは働かしても、親ですから十分いわゆる親の愛情の裏付けがあつて心配ない意味でもあるのでしよう。本法の場合におきましては、今局長の御説明のように、親がおりますというと親の責任がそれにかかつて来ることであります。運用の上におきまして非常にこれは一つ御注意を皆さん願わなければならん点になつて来ると思うのであります。  もう一つは、兒童が独立して、私が先ほど申上げましたように、独立してやる場合は、これは何ら本法の規定は及ばないことになりますが、それに間違いございませんか。
  69. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 外国の立法例のことは何どもも余り勉強しておりませんので、完全な資料を持合せておりませんのですが、私ども研究いたしました範囲内では、主としてこれは英米でございますが、親がかような兒童の心身に著しく有害な仕事を強制した場合には、他人と同様にやはり親がさようなことをやらした場合には罰することになつておるように思います。親だけは例外であるという規定は私どもの承知しておる限りではないように存じております。ただ今のアメリカの加州の法令も相当詳細なものでなく、概括的なものは手許にあるわけでございますが、ヵリフオルニヤの今の規定は私ども手許にございませんので、或いはヵリフオルニヤにおきましてはさようなことが行われておるのかもわかりません。これは私ども調査をいたしておりませんので、お答を申上げかねます。  それから子供が独立してやつておる場合にはいいのかという御質問でございますが、これは子供が真に独立をいたしてさようなことをやつておりまする場合には子供は罰せられません。それはさような法律の解釈になつております。
  70. 山下義信

    山下義信君 これは実際におきましては誰が取締ることになりますか。この違反のある場合は、これは法律に違反するのでありますから、警察官もやれるのでありましようが、まあ取締的な司法的ということは別としまして、これをどういうふうにこの兒童福祉関係者はこれを注意して行くことになりましようか。実際としてはこういう規定を作りますと、兒童福祉法に違反したといつて片つ端から警察官が告発して行くような形になつて行きましようか、実際の運用がどうなつて行きましようか、その辺を一つお示しを願いたいと思います。
  71. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 兒童福祉関係機関であります兒童福祉司とか或いは社会福祉主事でありまするとか、兒童委員でありまするとか、さようなものが先ず第一段階といたしまして、これらの事態があるかないかということについての、何と申しますか、違背と申しますか、さようなことに当るわけでございます。若しさような場合に該当した事例があるといたしますれば、いろいろとケースワーク等で片がつかないということになりまして、而も情状よろしくないということになりまして、この罰則の発動をいたします場合には司法関係になりますので、警察のほうに参るということになるのではないかと考えます。かような筋が一応の筋でございまするが、罰則でございまするので、どの法律の町則につきましても警察官といたしましては発動できるわけでございます。警察官の目に触れてこれをこの罰則にひつかけて取上げようと思えば、兒童福祉機関を通じないでも勿論取上げられるわけでございます。従いましてさような場合も出て来ると私は存じます。  これは蛇足でございますが、今日の警察は御承知のように補導係というような、少年係というよろなものを設けてやつておるよろでございまして、その扱い方の傾向は、一々事件にするというよりも、それをその事態を補導によつて解消して行こうという動きを非常に強く示しておりますから、さような点もこの際併せ考えて、実際の運用の姿を推察できるかと思うのであります。なお警察関係と私ども関係は、従来も非常に密接にやつておりますけれども、この問題につきましては特に連絡協調、密接を期すべく努力をいたしたいと考えております。
  72. 山下義信

    山下義信君 密接にやつて頂くのは結構でございますが、私はそういう警察関係の取締の上におきまして不備なるが故に兒童福祉法の処罰規定があれば便利で、それを活用してもらうということは、これは本当を言えば望ましくないのです。兒童福祉法にこういうふうに規定してあるから、警察当局がそれによつていろいろな場合に検挙して取締つてもらえるというので、向うさんの便利のために兒童福祉法が作つてつたのでは困る。この密接な連絡も結構でありますが、どうしても兒童福祉関係者がこの間に活躍をしてもらわなければならんのでありまして、例えば今これをやめますと、やめますといろいろ影響がありますことになるわけで、殊にこの十五歳以下の禁止規定の場合におきましてはなお更これは痛切なのであります。そういうことになりますと非常に困る、この家庭が困る、收入の途がなくなり忽ち影響するので困る。こういうような場合に、やるというと処罰される。どうしましようかと言つてよく相談に行く、それはどこへ相談に行きますか。又そういう家庭の場合には、兒童福祉関係者としては誰が心配し、斡旋しますか、その点を一つきめておきましよう、承わりたい。
  73. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) さような場合には兒童福祉司がその相談にあずかる、或いは社会福祉事務所に参つて相談いたしても社会ふく祉事務所でもその相談を受付けます。窓口といたしましては兒童相談所でも受付けます。併しかような問題の処理のそれは窓口でありまして、どこへ相談に行つたらよいかという場合の、民衆のほうから見ました窓口でありますが、これを扱いまする中心の機関は、恐らく事が相当面倒になつて来ると思いますので、兒童福祉司が相談に当ることになると思います。
  74. 山下義信

    山下義信君 兒童福祉司がこれを扱いまして、その児童福祉司はこれをどういうふうに処理をいたすことが予想されますでしようか。これはいろいろ兒童相談所に御厄介になることになりましようか、社会福祉事務所のほうへ掛合うてやるということになりましようか、それから兒童福祉司からの先は、そのルートはどういうふうになつて行くのでございましようか、これは私は不明なので承わつておくのです。実際の動きを……。
  75. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) いろいろ場合があると思いますけれども、主としてその子供自体の性向がどうだこうだという場合は少いと思います。家庭の経済問題が解決すべき問題として多かろうと思います。さような意味合いにおきまして社会福祉事務所に連絡をいたしまして、生活保護法の発動を是なりと認めてそちらのほうに連絡をいたしまするとか、或いは義務教育を終つておりまするような子供の場合でありますれば、直ぐ就職というような問題が起きて来ると思います。只今は中等学校の卒業生の就職率は労働省の資料によりますると八三%か何かで、非常にいいようでございます。向うのほうでは相当相談があれば受けられるという話であります。従つて義務教育を終つておるような者で、適当な就職を見付けてやるというような問題でありますれば、職業安定関係になるかと思います。又午前中に大臣からお聞きになりましたように、適当な補導、職業の補導をする必要があるということになりますれば、職業補導所のほうに連絡斡旋をいたすというようなことになるかと思うのでございます。いろいろその場合によりまして行先は違うと思つておりまするが、相談所に参る場合は比較的少いのではないかと私は予想いたします。
  76. 山下義信

    山下義信君 一応今ではそうなんでしようと私も思つております。やはりそうなんでしよう。ですから兒童相談所性格が今のような状態でありますから、こういう一般の福祉に関する事柄につきましては、比較的縁が薄いことになる。そうすると兒童福祉司というものの扱うケースとしては、そういう場合を扱うのが、本分と言いますか、大体兒童福祉司というものは、兒童福祉の問題で高度のものを、重要度のものを扱うということにもなつておるのでありましようか、こういうものを扱うということになる、その辺に筋が少し通りかねるところがあるようでありますが、そうして兒童福祉司は社会福祉事務所に関係が厚いか兒童相談所関係が厚いかということになると、兒童相談所のほうに関係が厚い、これも兒童相談所兒童福祉司との関係をはつきりさせて置かなければならん。あとでこれ又伺うかもわかりませんが、そこで私思うのに、こういう重大な問題が、これは兒童福祉おいては相当重要度の高いケース、こういうものが、こういう問題の処理が社会福祉事務所に渡されたというのでは、その途端に何もそれで兒童福祉に縁が切れたとは私は言わん、言わんけれども、それから先は生活保護法のほうで処理してくれるといつたような、それから先は兒童福祉畑ではなくして、少くとも縁は薄くなつて、ほかの面で面倒を見てもらうのだ、そこまでだ、見つけて連れて行くまでの話だということになるというと、これらの処理おい兒童福祉関係者が活躍する部面が非常に薄くなる。これはできるだけ一方にこういう処罰規定禁止規定を設けた以上、午前中から論議されておりますように、お互いが心配しておりますように、この裏付けとして十分兒童福祉の手が伸びるということになると、恐らく社会福祉事務所が兒童福祉関係も扱うのでありますから、決して冷淡になるとは思わんが、我が田に水を引いて言うならば、兒童幅礼関係者で、これらが落ちつくまで、事後処理まで、その兒童自体の家庭の上においてまでも十分この社会福祉事務所とも連絡し、生活保護関係とも連絡して見届けるところまで児童福祉の線内において心配してやりたい、こう思うのです。こう思うから伺つておるのです。こう思うから実際の扱い方においてその安心し得られるところまで一つ面倒を見てやるということにおいてその辺の十分なる御研究と実務の扱い方に御配慮が願われるかどうかということを聞いて置きたいと思うのです。
  77. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私の先ほどの答弁に言葉が足りませんで誤解を招いたかと思いますが、社会福祉……生活自体が貧乏だからというので生活保護法が発動になるから社会福祉事務所に連絡する、或いは職業関係、補導関係ということになりましたが、それらはいずれも連絡でありまして、ケース・ワーカーといたしましては兒童福祉司がそのケースを手がけるわけでございますから、それがどうなつたか、それから一体そのためにそのあとうまく行つているかどうかというケースの全体的な責任者といたしましては兒童福祉関係の者がやるわけでございます。従いましてその意味でかような問題は、片一方には罰則を控えておりますし、それからいろいろ事柄を処理するのが相当長期に亘る、処理といたしましては相当長期に亘つてこのケースを手がけなければならんという性格のものであろうと思いますので、その意味で私はこの問題は社会福祉司のケースでなく、ケースの扱いの責任者としては兒童福祉司のケースであろうと思うのでこぎいます。
  78. 山下義信

    山下義信君 これは私は兒童福祉司の一段の活動を期待せなければならん、兒童福祉司の今月までの努力には敬意を表しますが、一段と活気を帶びてやつてもらいたい。この兒童福祉司の制度が従来一部にいろいろ論議せられておりますが、関係者の一段の奮起といいますか、この兒童福祉司の制度の全面的の刷新を願わなければならん、これについて何か当局にお考えがあれば承わりだいと思います。それでこれは活動しやすいようにせなければならん。有機的な活動といいますか、いわゆるフィールド・ワーカーと言われておりますが、一つの兒童福祉綱の中においての兒童福祉司の活動し得るような兒童福祉措置が、施策が一貫し得られるような立場におかないと、これは何といいますか、非常に力がなくなつて来る、ように私は憂慮に堪えん。最近の兒童福祉司の活動状況も、期待に副い得られるような状態にありますかどうかというようなことも心配に堪えんのでありますが、兒童福祉司の活動というような面につきましての当局の何かお考えがありますかどうか承わりたいと思います。
  79. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 兒童福祉司はいろいろ論議を受けておるようなものの中にあるかも知れませんけれども、全体的に見まするならば、今山下先生のお話のように大いに努力をいたしまして相当な成績を挙げておるというように私は考えております。ただこれを今だけで満足することなく、もう少し訓練をいたす必要は勿論ございまするので、これにつきましては二十七年度の予算にもこれの現任訓練の費用が若干ではございましたが計上されておると記憶しております。かような費用を使いまして、この資質の向上、現任訓練ということには今後一層努力をいたしたいと考えております。大体そういうふうな状況でありまするので、一つ私ども非常に遺憾に存じておりますることは、兒童福祉司の定員というものが、昨年度平衡交付金の中に算定をいたしまして地方に示したのでありまするが、その際に相当数の増員をいたすことについてそういう措置をいたしたのでありますが、御承知のように社会福祉主事を非常に多く府県で増員をしなければなりませんので、而もあれはああいう政治問題になつたりいたしまして、そのほうの圧迫を受けまして、予定ほど増員が現実に進んでおらないという点がございます。この点は非常に遺憾でございまするので、私ども一応社会福祉事務所のほうが一段落をした今日でありまするので、府県にこの充員について格段の努力を願つておるような次第でございます。順次増員されて行くものと存じます。  それからもう一つ兒童福祉司の働き、非常に一貫性を持つた活動をいたしまするために、これは今府県の職員でございまして、そうして相談所に机を置いてもいいし又社会福祉事務所に机を置いてもいい、その本来の仕事は一定の地区を担当したフィールドのケース・ワーカーという立場をとつておるのでありますが、或る一定の地区を担当したフィールドのケース・ワーカーであるという本質に変りはございませんのですが、できますならば身分の点ももう少しはつきりしたり一貫性のあるようなものにしたらどうであろうかというふうなことを私ども内々考えておるのでございます。それらのことにつきましては、或いは適当な機会に何らか法律的な措置もお願いをする時期があるかも知れないと今考えておる、のであります。これは研究中でございます。
  80. 山下義信

    山下義信君 いま一つ、私は、これは御相談でありますが、これは行政当局としてはこの改正法律案が成立しましたら即日施行となつているのです。これは一つこの兒童相談所の一時保護における物件の処分については、これは即日施行でよろしうございますが、こういうこの処罰規定のありますような、而もいろいろ複雑な、対象者がいろいろな場合になつてつて、而も生活が逼迫して手から口へとすぐなつておるような世帶や、いろいろ対象者の禁止規定や取締規定が即日施行じやどうかと思う、親切がない、どうかと思うような気がするので相談するのでありますが、これはどうして周知徹底せしめますか。その方法は、これは県の兒童課長を集め、民生部長を集め、兒童相談所を集め、いろいろなあなたがたの下部機構のこれは事務関係者にはよろしうございます。わかりもします、理解もあります。学問もあり行政官ですからわかります。一般の大衆に、一般の国民に知らせねばならん。こういうことにするのだ、兒童福祉の上から今度はこういう措置をするのだということを、この法の対象者は言うに及ばず、一般の国民にも知らせなければならん、周知させなければならん。私どもは常に兒童福祉を強化することは、ただ單にその場だけの人だけでなく、国民の協力がなくちやならん、国民が児童福祉ということに非常な関心を持たなければならん。私は殊に強調したいのは婦人です。本当に婦人の、世の母性たち、母性はこれに興味と熱意を持たなければならん。更にこれは無論政治運動は結構でありますが、こういう福祉運動に必死に取組む風潮が我が国の婦人に彌漫して来ることを期待せざるを得ない。そういう国民の協力があつて初めて兒童福祉も行われ得る。国民に知らせねばならん。今日の兒童福祉の上におきまする盲点の一つは、兒童福祉関係の適当なボランテアがない、このボランテア活動の殆んど欠除しておることです。兒童福祉関係の国民協力の基盤がない。でありまするから兒童福祉が弱体である。如何に兒童憲章を語うても、これを国民運動に移す国民の協力、それを国民に推進するボランテアのないことなんです。いつでも児童福祉関係者を集めると、化石のごとくなつ兒童福祉営業者が一体となつて出て来る、職業的な立場の業者が、叩けども打てども積極的な熱意に欠けておる。私はこれは言が過ぎるかも知れませんけれども、本当の熱意のあるフレッシュな熱意のありまするボランテア、ボランテア活動が兒童福祉の面においては欠けておるのである。これは国民に知らして協力を求めなければならん。どうして知らせるか、或る程度の期間が必要じやないかと私は思う。それでこういう罰則を伴う禁止規定の、而も兒童福祉の上において画期的なことを一つやる、そうして我が国の街頭労働をしておる兒童福祉の手を差伸べるには、相当の周知期間が要る。その間に準備態勢を整えなければならん。私はこの改正條項のこの二点に限つては実施を明年の一月一日からにでも延ばして、ここ五、六ヵ月の間準備と周知と、そうして兒童福祉関係者がその対策をしつかり把握してやるだけの準備期間が要るのじやないかと思うのでありますが、若し当局にすでにその準備ができておるということでございますれば、即日施行でもいい。その辺が非常に気遣われるのでありますが、そういうことに対しましての当局の御用意はどうなつておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  81. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御尤もな御質問でこぎいます。私どもといたしましても、これを即日施行ということにつきましては、かようなものを直ちに罰則を発動するというようなことは全然考えておりません。これは十分にその趣旨を徹底させてから発動すべき罰則であると考えておりましてその点は運用の面におきましてさようなことでやつて行きたいと考えておりましたのですが、施行期日を延ばしたらどうかという御意見でございますが、私施行期日を適当な時まで延ばすことにつきましては特別な反対の気持も持つておりません。ただ感じといたしましては、明年の一月一日ということは、少しこれは別に大した根拠もありませんけれども、もう少し手前の時期において施行いたせばいいのじやないだろうかという気持を持つております。なお兒童福祉関係のボランテアのお話が出ましたが、これはボランテァといたしまして、民生委員と二枚の看板を持つておられる兒童委員がおられるわけであります。非常に熱心にやつて頂いておるかたも勿論たくさんございますけれども、ことによりますると余り十分な兒童委員としての御活動を頂いてない向きも必ずしもなきにしもあらずのように考えます。兒童委員の問題につきましては、今御指摘兒童福祉に関するボランテア活動をしてもらう人というような広い意味におきまして私どもといたしましても今後の兒童福祉の行政の中で重要なる問題として研究をいたさなければならない、かように存じておる次第であります。
  82. 山下義信

    山下義信君 一応私はこの程度にとめまして、又必要なときに質問をさせて頂きます。
  83. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) ほかに御質問ございませんようでしたら、本日はこれを以て散会したいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 散会いたします。    午後二時四十六分散会