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政府委員(
横田正俊君) 先日今回の
改正法の
提案理由を説明いたしまして、これに附加いたしまして、今回の
改正案を
提案するに至る
経過を極めて簡単に申上げたのでございまして、その点をもう一度申上げますと、大体今回
独占禁止法の
改正案を出すことが困難であ
つた理由はおわかり願えるかと思いますので、もう一度繰返して申上げたいと存じます。
御
承知のように
独占禁止法は二十二年にできまして、その後間もなく外資の導入或いは証券の
消化等の
理由を以ちまして、むしろ
日本側からも勿論でございましたが、
占領軍側といたしましても、これが少しきつ過ぎる、緩める必要があるということを察知されまして、ここに間もなく或る
程度の幅のある
改正が行われましたのでございます。例えば
年役の
兼任でございますとか、或いは
株式の
保有の問題でございますとか、或いは
国際契約につきましては、一々厳格に
公正取引委員会の
認可を必要としておりました等の点を緩和いたしまして、かなり
一般の希望に副うような線に緩んで参
つたのであります。これと並行いたしまして、
事業者団体法ができまして、これにつきましては、
独禁法が緩むと同時に
事業者団体法という極めてきつい
法律ができましたもので、これに対しては制定後間もなく直ちに
改正の問題が起りまして、これが結局現在までずつと続いて来ているわけでございます。
独禁法につきましては、
関係方面におきましても、あの
程度の
改正をすれば、先ずそれでよいという
態度を持しておりました結果、こちらといたしましても、
余り独占禁止法そのものに更に
改正を加えるということについては、うちうちはいろいろ
検討はしておりましたが、強い形で
向うへ交渉するというようなことはなくして過ぎて参
つたわけであります。ところが
団体法につきましては、或る
程度の
了解を得られそうでありながら、種々の
事情からいたしましてそれが得られず、そのまま過ぎておりました。ところが昨年の春になりまして、御
承知のように
リツジウエイ声明が出まして、これらの新らしい
法律について再
検討をすることが許されるというような事態に至りましたので、御
承知のごとく
政府におきましては、直ちに
政令諮問委員会を設けまして、これに
独占禁止法と
事業者団体法その他
諸般の法令の
改正問題について
諮問をいたしたわけでございます。この
政令諮問委員会で直ちに両法を取上げまして、
独占禁止法につきましても、かなり大幅の
改正をすることを
決定いたしました。これは具体的に申しますと、
事業者の
共同行為を可能にいたしまするために、第四條と第六條に相当の
改正を加えて、
国家経済上必要のある場合は
政府の
認可を以て
協定を適法化するということを認めるという
改正、その他主要なる
部分に亘りまして、例えば
株式の
保有の点、或いは
重役兼任の点、その他数点に亘りまして、かなりの
改正を加えるということを
政府に
答申をいたした次第でございます。
政府におきましては、この
政令諮問委員会の
答申を
検討しまして、これよりはやや後退はいたしておりまするが、大体この
委員会の線に
沿つた要項を七月の二十日の閣議で
決定をいたしまして、これを一応
事務当局を通じまして
関係法面のほうに出したのでございます。この
独禁法の四條と六條の
改正につきましては非常に
関係方面では
愼重な
態度をとりまして、かくのごとき
事業者の
協定を適法化する必要の実際上の有無ということをもつと説明しろということで、その点を強く
要求して参りまして、安本を中心といたしまして、
政府におきましても、そのいろいろな、
日本においてはその必要のある具体的の
事情を書面にしたためまして出しましたが、いずれも
向うの完全なる
了解を得るに至らなか
つたようでございます。そうしておりますうちにだんだん
関係方面のほうの
意向がこちらにわか
つて参りまして、到底その四條や六條に手を付けるような大幅な
改正は先ず困難であるということが察知せられましたので、
政府はその四條、六條の
改正を断念いたしまして、十一月の十五日に、その点を除きましたその他の
部分につきまして、
独禁法の
改正案、それから
団体法につきましては、実は
お話を落してしまいましたが、
政令諮問委員会ではこれは廃止するか、或いは適当なるものは
独占禁止法の中に取入れるというような
趣旨の
答申でございましたが、
政府は廃止することは適当でなく、
団体法に適度の修正を加えるという線で参りまして、その線は大体今回
提案になりましたものとほぼ似ております。そういうものが十一月の十五日に、先ほど申しました
独占禁止法の
改正案と、それから只今申しました
団体法の
改正案とが
向うに出されたのであります。これが
関係方面ではガバメント・セクシヨン、
リーガル・セクシヨン、それから勿論主管の係でございます
畳SS、それに
向うの
外交部が加わりまして相当
愼重に
検討したようでございますが、十一月の二十八日になりまして、全面的にこれは認めがたいという回答がございました。我々といたしましては、
独占禁止法の
改正案の中にも、又殊に
事業者団体法につきましては、大体今までの我々の
折衝の
経過から見ましても、相当
向うが認めてくれていい
部分があるように
考えられましたのに、全面的にこれを否定して参りましたにつきましては、非常に不可思議な感じを持
つたのでございますが、それから約十日程経ち決して、実は何らかのインフオーメイシヨンがあるであろうと思
つて持
つてお
つたところが一向何らの話がございませんので、こちらから出向きまして、
ESSの
当該の係の人と話をいたしましたところが、結局
独占禁止法については殆んどもう
改正の
余地はない、全然これに手を触れてはならんとは言わない、まだ
改正を認めてもいい
余地はあるけれども、大体
独占禁止法については、これは
改正は認めがたい。それから
団体法につきましては、だんだん話をして参りますと、大体我々の
考え方と非常に近いものが感ぜられましたのでございます。で、これは
公取のものが参りまして、
向うのそういう
意向を聞いて参
つたのでございまして、早速
内閣のほうにもその
趣旨を伝えまして、そこで
内閣は今申しました
向うの認める範囲内において案を出そうか、或いは
講和発効を目の前に控えておりますので、それを待
つてもつと完全なものを
提案するということで、いろいろ
考えられたようでありますが、結局
講和発効前に
改正案を出すことは見合せようということに一応なりまして、その
趣旨は
関係方面のほうに伝えたのでございます。ところが
関係方面としましては、やはり或る
程度の
改正は一応や
つてもらいたいというような気持があるらしく見えまして、
かたがた殊に
事業者団体法につきましては、
規定が非常に厳格にできておりますので、この
適用を
担当しております我々といたしましても、できるだけ早く適当な線に緩和をするということを望ましく感じておりましたので、その後いろいろ
内閣のほうとも
折衝いたしまして、結局
事業者団体法の
改正を、早急に
関係方面と具体的な
折衝をしながら、
改正を先ず
事業者団体法について
行なつたらどうかということになりまして、その後鋭意
関係方面の
関係官と
折衝をいたしました結果、まとまりましたのが実は今回
提案いたすようになりましたこの
改正案なのでございます。なお
独禁法につきましても、その後も引続きこれを行おうかと思いましたのでございますが、この点は先ほどから申しましたように、やや困難な
事情もございますし、なお
関係方面の
担当官もこの面に触れますことについては非常に好まないような様子も見えまするし、なお緩めるにしても、今度は手続的にむしろ
独占禁止法を強化する、例えば現在は
公正取引委員会だけがこの
法律を取扱
つておりますので、例えば罰則にいたしましても、
公正取引委員会が告発をしなければ、
検事局でこれを取上げて裁判に持
つて行くことができないことに
なつておりますのを改めて、
検事局が独自の立場から
独占禁止法なり、
事業者団体法の
違反を
裁判所に起訴できるというふうにするとか、或いは
公正取引委員会が発動しない場合でも、民間の、例えば
独禁法の
違反によ
つて被害を受けておる
個々の会社が直接
裁判所に訴え出て、この
独占禁止法の救済を仰ぎ得るような
措置を講ずると、そういうような面を
独占禁止法改正の形で入れて来るというようなけはいも見えましたので、この際そういう空気のところへ
改正案の話を持
つて参りましても、全然妙なことになるわけでございますので、それらの
諸般の
事情を
考えました上、実は
団体法につきましては……。この際
独占禁止法につきましては、この際
改正案を出すということを差控えた次第でございます。