○兼
岩傳一君 実はこの
反対討論をするためには本当は二、三点お尋ねしないと非常に不十分な点があり
ますが、これは他の機会に譲りまして、私は
日本共産党を代表して
反対の見解を展開したいのであり
ますが、先ほど申しましたように、不幸にして私は
質疑の機会をなくいたしましたので、と申しましても無論長い時間はとりませんが、やや詳細に何故に我々はこの
条約に
反対するかというポイントを
説明申上げて、他の
政党特に社会党の両派の各位の御批判を私は仰ぎたい、こう考えましたので、特に我が党の
衆議院における
質疑並びに
討論の不十分さを十分に補いまして、私はそれをもつと正確な形にして原稿を用意して持
つて参
つており
ますので、私はこれより
反対の
討論としてこれを申述べて以て御批判を仰ぎたいのであり
ます。どうか願くば
賛成討論において私の申上げる欠陥を社会党両派においてお突き願えれば非常に私は幸甚である、こういうことを前置きしたいのであり
ます。
インド政府は九月四日開催されましたサン・フランシスコ
会議に参加しなかつた。そうして八月二十三日附の
インド政府から合衆国
政府あての
書簡の中に書かれている
インド政府の条件は三つござい
ます。その
一つは
日本の領域に完全な
主権を回復させなければならない。
従つて琉球諸島と小笠原諸島は
日本へ帰属させなければいけないということを言
つている。非常にいいことを言
つている。第二に
占領軍は
日本に引続き駐屯し得ることを示唆するような
条約の
規定は、
主権国家となつたとき防衛上の権利として行使さるべきであ
つて、即ち
占領軍支配の継続と
占領軍支配の防衛取極めは強制的な圧力にな
つておるという、これを指摘している。第三に台湾は中国へ返還しなければならない。千島諸島及び南樺太のソヴイエト帰属は認めなければならない。即ちカイロ宣言、ヤルタ協定の
国際的な諸
条約は遵守しなければならない、こういうことを八月二十三日附の
書簡において申しておるのであり
ます。この条件は
インドの
国民の大衆の意思を非常に完全とは申せませんけれども、大体これを表現しておる。そうして何の権限もないのに
アメリカぴ横車を押して
作つた草案に対してこれを認めないという形をとりました。サン・フランシスコ
会議は
アメリカのお手盛りの
会議で何ら各国代表者間の討議もない、歴史上過去に例を見ないと同時に将来の批判の的になるととろの人形芝居であつた。そうして
インドはこういう条件の下に
提案されたサン・フランシスコ
条約をあたかも認めないというふうに思わせるような
書簡を発表いたしまして、
日本の朝野に非常な好感を以て迎えられ、両社会党とも特に左派の社会党にとりましてはこれを高く評価されたということは私もう十分同感し得る点であり
ます。
然るに今回締約しようとしておられるこの目印
条約、これは第一に私が申述ぺましたような幻想を根抵から裏切るところの
条約であるということを証明しており
ます。以下その点を私が指摘いたしましよう。ネール
政府は今回先ほどの
書簡において我々に幻想を与えました
日本の民主化と非軍事化、
アメリカ占領軍の全面的撤退と
日本の完全な
主権の回復、この
原則に基くポヅダム宣言、全面講和を要求しておる、そうしてこれがアジア平和唯一の道であるというこういうゼスチユアをネール
政府は今まで示して参りましたけれども、今度の目印
条約によ
つてこれらが完全にゼスチユアに過ぎなかつたということを証明したものであり
ます。なぜならばこの
条約の
締結はサン・フランシスコ
条約を基礎とし、これを合理化しこれを正当化するという形において
締結されておることであり
ます。
従つて不参加の声明として
書簡に示したところの諸問題を
実質上放棄いたしまして、不幸な
日本の状態をそのままにしてそうしてアジアの平和を見出すところの行動に対して積極的にこれを裏切る行動に出たというその具体的な現れがこの
条約であるからであり
ます。
インドのネール
政府の行動は口でどういういいことを申しましようとも、今回の目印
条約の
締結によ
つて、はつきりと
書簡において彼らが表明していました
インド人民大衆の意思は全くそれがごまかしであつたことを証明いたしました。私はこの点において
賛成討論をされるときに社会党の特に左派の御批判を受けたいのであり
ますが、戦争と平和の間に第三の道があるか、そういう錯覚を与えるということが果して
日本国民に幸福な、
日本国民を正しく指導すべき民主的な
政党の任務として果して正しいかどうか。今回の目印
条約の
締結は、明らかにアジアの平和のために戦
つている平和勢力が
一つにまとまるところのアジア全人民の平和的な結集力を弱めるものでこそあれ、決して強めるものではない。
併しそれでは
インド政府は現に中華人民共和国を
承認して、中国の正統
政府として蒋介石政権を認めていない。これは非常に進歩的な態度である。正当であると同時に進歩的である。又アジア・アラブの民族運動に関しましては
アメリカ、イギリスの帝国
主義政策と明らかに一線を画し、そうして国連でそのような線に副
つて活動しておられるというこの点、これを私どもは決して否認するものでない。これを正当に評価しこれに敬意を払うものであるが、これはネール
政府そのものが進歩的であるということでなくて、
インドの四億の人民の偉大なる民主的の圧力を無視してはネール
政府が保持できないからやむを得ずこういう形をと
つておるものであると、私たちは政治的に判断せざるを得ない。それは尤もそれの
反対的な例証がここにあるからであり
ます。つまりネール
政府の中立的な
独立的な或る点においては進歩的なゼスチユアをし、或る限られたる条件においては
現実的に進歩的な行動さえもと
つておられ
ますこの対外政策が、最もそれらが破綻を示すのは朝鮮問題に関しての
インドのと
つておる態度であり
ます。ネール
政府は国連において、朝鮮での
アメリカの侵略に対する制裁
措置を含むすべての問題に関して米英の側に立
つたのであり
ます。ネール
政府は朝鮮の人民を殺しておるところの現在の朝鮮戦争に野戦病院を派遣し、これによ
つて人道
主義であるという、こういう顔をいたしており
ます。朝鮮の都市や村落に対する無
制限爆撃を非難していないどころか、野戦病院を派遣し人道
主義の名においてこれを援助しておる。ここにネール
政府の中立政策がいわゆる中立政策であ
つて平和と戦争を両天秤にかけているところの欺瞞政策であるという点を、丁度曾
つての清盛か衣の下から鎧を出しておるかのごとく完全に露呈している。これが第一の証拠であり
ます。あとで十分
一つ御反駁が頂きたいのであり
ます。
第二に暴露いたしており
まするのは、ヴイエトナム人民を相手として戦争をしているフランス帝国
主義の軍隊に輸送手段を提供しておることであり
ます。
政府はマライにおいてイギリス
帝国主義者を直接に援助しまして……