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1952-06-13 第13回国会 参議院 外務委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十三日(金曜日)    午後二時十分開会  出席者は左の通り。    委員長     有馬 英二君    理事            徳川 頼貞君            野田 俊作君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            伊達源一郎君            岡田 宗司君            金子 洋文君            大山 郁夫君            兼岩 傳一君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    外務政務次官  石原幹市郎君    外務参事官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君    外務省アジア局    長       倭島 英二君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○インドとの平和条約締結について  承認を求めるの件(内閣送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (日英外交問題等に関する件) ○中華民国との平和条約締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 曾禰益

    理事曾祢益君) それでは外務委員会を開会いたします。  初めてインドとの平和条約締結について承認を求むるの件、予備審査でありまするが、これを議題にいたしまするが、本日は外務大臣からの提案理由の御説明を伺うにとどめたいと思います。そうして中華民国との平和条約締結について承認を求むるの件、この質疑に移りたいと思いまするが、そのように運びましてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 曾禰益

    理事曾祢益君) それではそのように運びます。岡崎外務大臣
  4. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今議題となりましたインドとの間の平和条約につきまして提案理由を御説明いたします。  インドはいろいろの理由によりましてサンフランンスコ平和条約当事国とならなかつたのでありますが、本年四月二十八日、インド政府目印間戦争状態終結の告示を発出いたしました。又同日附の両国間の交換公文によりまして、爾後両国間の外交領事関係が開かれることとなつた次第であります。併しながら戦争に伴う諸問題を解決して、且つ将来久しきに亘る両国の平和と友好関係基礎を確立するための条約締結することが必要と考えられたのであります。かかる平和条約締結につきましては、すでに昨年十二月以来交渉を進めて参つたのでありますが、漸く最近に至り議がまとまり、六月九日東京において目印平和条約の調印が行われるに至つた次第であります。  本条約国際連合憲章の原則に基いて両国共通の福祉の増進及び国際の平和と安全の維持のため友好的に協力する希望を明らかにした上、両国間の恒久的平和友好関係を定めると共に、今次戦争の後始末に関することを規定いたしております。この条約領土安全保障等政治条項を含まない一方、インドがその賠償請求権を放棄し、在印日本資産の返還を約しており、この点サンフランシスコ条約に比較して我が国にとり極めて有利になつておりまして、その一般的内容現下国際情勢に照して適切であるのみならず、目印聞の恒久的な平和友好関係を確立する基礎となるものと信じております。このような条約でありますので国会の会期ももはや間近に迫つて来ておる現在で、殊に外務委員会はいろいろの案件が多数かけられておりますので、この上かかる平和条約を付議いたしまして審議を願うことは甚だ恐縮なのでありまするけれども、条約内容我我の理想とするような立派なものであり、又インドアジアにおける非常に有力なる地位を占めて、いる国でもありますので、この際でき得るならば是非本国会今川期中にこの平和条約に対する承認を得たいと考えまして、あえて提案いたした次第であります。  何とぞ右の事情を御考慮の上、慎重に御審議上速かに御承認を与えられんことを切望いたしておきます。
  5. 曾禰益

    理事曾祢益君) それでは先はど御了解を得ましたように、本日は目印平和条約については外務大臣提案理由説明を聞くにとどめます。
  6. 曾禰益

    理事曾祢益君) 引続き中華民国との平和条約締結について承認を求むるの件を議題といたします。御質疑のかたは。議事進行ですか。
  7. 平林太一

    平林太一君 ちよつと日程日華条約審議に入る前に先立ちまして、極めて簡単に緊急のことについて大臣お尋ねいたしたいと思うのでありますが、発言をお許し願います。
  8. 曾禰益

    理事曾祢益君) どうぞ、平林君。
  9. 平林太一

    平林太一君 アレキサンダー国防相ロイド国務相が一昨々日東京に参られまして、本日は朝鮮に行かれるような日程に聞き及んでおるのでありますが、この際外務大臣お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、殊に今回はこのロイド国務相が参られておるということにつきまして日英国交の上に非常な私は期待と注目を以てこれの動静に対しまして注目いたしておる次第であります。これに対しまして勿論両相を併せ得まして岡崎外務大臣はこの機会におきまして日英国交に関する何らかの話合いなり懇談なりをいたされたりや否や、この点について一応お尋ねをいたしないと思います。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アレキサンダー国防相及びロイド国務大臣並びにスコツト外務次官補、共に私は一昨日も面会いたしました。昨日も夕食を共にしていろいろ懇談いたしまたが、一般的にこれらの人々日本の現在の実情をよく知りたいとと考えておられるようでありまして、いろいろ説明はいたしましたが、この話はすべてその程度で、特に具体的に内容に入つてお話をしたという、ことではないのであります。又先方もそういう希望を持つて来られたようではないようでありますが、現地に来られて日本実情を見て、その理解なり認識なりを深められたという点においては多大の効果があつたろうと考えております。
  11. 平林太一

    平林太一君 私の伺つたことに対して只今大臣より御答弁ありましたのでありますが、お尋ねをいたしまする、意図いたしておりますることは、日英国交というものはこれは非常に重大視して    〔理事曾祢益君退席、理事徳川頼貞委員長席に着く〕 何らかの具体的な行為が取り進めらるべきものであると考えるものであります。今回この両大臣が来られたということにつきましては、私は非常に現下米ソ両国間、殊に朝鮮事変に対しまして非常な大きな使命が、そこに大きな意図、目的が潜在しておるものと思うと、こういうことを私は考えるのでありますからお尋ねいたすのでありますが、丁度そういうことを私も簡単に申上げるのでありますが、一昨年朝鮮におきましてマツカーサー元帥が当時非常な強固な態度を以ちまして朝鮮事変の解決に臨んだ際に、いち早く憂慮いたしましたのが英国態度であります。そこでいわゆるアトリー、トルーマン英米巨頭会談が直ちに行われた。そしてそのとき両巨頭会談の結果コミニユケとして発表いたしておりますものに、第一、朝鮮問題はこれをできるだけ平和裡に解決する。第二は、中共に若し少しでも妥協の動きがあるならば両国は協力して戦争防止に協力する。三は、米国は単独では絶対に中共戦争はしない。必ず事前に国連議題に供する。こういうものを発表いたしておるのでありますが、時はたつて今日に及んでおりますが、今回両大臣が親しく日本に参り、日本事情を今大臣承知通り御覧になられて、それから朝鮮に行かれて、更に帰途ワシントンに立寄られる、それから帰国後更に米国当事者がロンドンを訪問するというようなことが一応日程として伝えられておるようでありまするが、私はこういうことに対しましても今日この朝鮮事変実情に対しまして誠に思い当る節々が多々あるのでありまするが、そういう事態考えるにつきましても、将来我が日本の平和、それから極東の平和というものが日米安全保障条約にのみ依存することによることであつてはならない。どうしてもこれは我が国が、大きく東洋における平和というものに対しましては独立後の我が日本といたしましては、いわゆる東洋における英国のような立場日本がとつて、そうして国連の大憲章に副うところの平和というものを維持するところの使命を非常に担わされておると、そういうことを思うのでありまするが、そういう点につきましても将来日英両国関係というものがこの際急速に我が国外交といたしまして考えなければならないことである。かように思うのでありますが、時たまたま我がほうからさように求めずしてこの両大臣が来られたのでありますが、こういうような見解の下に日英両国の将来に対する国交曾つて日英同盟というものが締結されまして、非常に、我が国が当時極めて妥当な我が国家の方向としての外交というものが当時取り結ばれたのでありますが、私はそういう見地からこの際外務大臣のこれに対しまするところの一言御所見を承わつておきたいと思います。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も日英の間の国交はできるだけ親善友好であるべきことと考えまして、今後ともそういう筋で努力をいたすつもりでおります。
  13. 平林太一

    平林太一君 只今大臣から極めて何かぶつきらぼうの、地方の卑俗で申しますれば御答弁がありましたが、どうも私はもう少し大臣といたしましては日英国交に関しまする、殊に新大臣岡崎君といたしましてはこの際何らかのこれに対しましてはもう少し一つ経論抱負というものがおありにならなければならない。又これがないという亡とでは私は今お話通り日英のことは非常に大切だとおつしやるのでありまするから、それがないということになりますれば非常に私はこれは遺憾とせざるを得ないのであります。そういう見解に立ちましてもう一応大臣のこれに対しまする、日英国交に対しまする将来及び今後の見通し等に対しまする具体的な一つ構想経綸を承わつておきたい、かように思うのであります。
  14. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はこういうものは初めから大いに、第一に何をする、第二に何をするというふうな計画を作つてやるべきものでないと思います。原則的にできるだけ友好関係を樹立するという方針で、いろいろ具体的な事項が出て来た場合にそれをその趣旨で処理して、その結果として成るほどここに日英の間には日本政府としてはこういうような意味親善関係を樹立する方針でやつておるんだということは具体的にわかるのでありまして、まだできてもしないことをまあ大言壮語といつては語弊があるかも知れませんが、こちらだけで非常に大いに抱負経綸を示すということは、これは私は適切な方法でないと思います。原則的にそういうことであるということはこれはお認めを願いまして、あとはできるだけそれに副うような具体的措置をその都度情勢の許す範囲においてとつて行く、こういうことで、その具体的措置についていろいろ御批判を将来仰ぐことがあると思いますが、そういう意味一つ了解を願いたいと思います。
  15. 平林太一

    平林太一君 只今非常に誠実なる岡崎外務大臣が、大言壮語は非常にいたしたくないとおつしやるのでありますが、むしろ私どもから申しますれば、岡崎外務大臣の人となり、それから御性格からいたしまして、もう少し大言壮語的に日本外交というものをお進めになられるように要望いたすものであります。今そういうお話がありましたから私のほうから一つ具体的にお尋ねをいたすのでありますが、アレキサンダー国防相、殊にスコツト外務次官補ロイド国務相に随伴して来られておるというお話を承わつたのでありますが、国連軍としてのいわゆる英濠軍英国軍隊国連軍といたしまして今日の講和後の我が日本駐留する、或いは駐留と申しますか、現に呉における占領軍として、国連軍として駐屯いたしておりますが、こういうようなことに対しましては先日来本委員会の非常に重大な問題となつておりましたが、今回は英国当事者であるこの両大臣が来られておるのでありましてこの点につきましても何らのお話が、触れなかつたのかどうか、又お触れになつておりまするならばどういうふうな程度お話を取り交わされたのであるか、この点一つつておきたいと思います。
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは英濠軍と申しますか、英濠軍というのは間違いかも知れませんが、コンモンウエルス軍隊、これは国連軍の一部として行動しておりますので、日本政府との話合い国連軍司令官を通じてなされておるのであります。従つて今度来られた人々国連軍司令官との間にいろいろコンモンウエルス軍隊に対する待遇等に関する意見を述べられることは無論あるかも知れません、ないかも知れませんが、日本政府は直接は国連軍司令官でやつておる。従つてこういう問題は今度の話合いには何ら具体的に出ておらないのであります。先ほども申しだ通り、具体的の話は一つも今回は出ておらないような次第であります。
  17. 平林太一

    平林太一君 そうしますというと、この英国軍隊の、日本独立後の、講和後の今日においての国連軍としそのいわゆる駐留に対しまして、呉等に対しまして先般来から種々この本委員会におきましても地元におきまする関係者、又従来の使用しておりました施設でありますとか地域等に対しましても種々検討が、又審議の対象になつたのでありますが、この英国部隊に対しまして国連軍といたしまして英国軍隊駐留いたしておるのでありまするから、日本政府がこれに対しまして只今お話のようでありまするというと、国連との間になされるわけであつて英国自体に対しましては何らの折衝するところの権限なり、それだけの資格がないと、こういうふうに見てよろしいのでありますか。
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは先方話合いの結果英濠軍に関するものは英濠、或いはギリシヤに関するものはギリシヤというふうに、向うがそういうふうに分けて日本政府と話をするということになれば、日本政府は喜んでこれらの国と話合いをします。只今のところは国連軍司令官朝鮮に行動を起しておる十四カ国ほどの国々の代表となつて日本政府と話をするという建前になつておりますので、只今のところは国連司令官話合いをしておる、こういうことになつております。
  19. 平林太一

    平林太一君 そうしますと、非常に私は何か講和後のいわゆる国連軍駐留ということに対しまして日本政府自主性というものが非常に薄弱であると考えられるのでありますが、無論国連軍といたしまして駐屯いたすのでありますから国連軍の総司令官との関係によつて生ずるということでありますが、その国連軍司令官に対しましては我が国がいわゆる国連に対して過般も加入を申請の手続をいたしておるというようなことでありますのでありますが、非常にこれは講和後のいわゆる切替えをするという今日におきましては、私は非常に寂莫を感ぜざるを得ないのでありますが、殊に英国濠軍隊につきましては、殊に英国が主となつて占領軍の当時におきましても別個の立場におきまして呉におきまして駐留をいたしておつたのでありますから、これは今回のような場合には日本政府から何らかの、英国当事者でありまする両大臣が来られたのでありますから、何らかの要請なり、意思の疏通というものは図るべき筋合いのものではなかつたかと思うのでありますが、そういうことは全然これはおありにならなかつたのであるかどうか、非常にその点を私は腑に落ちないものがあるのでありますが、この点をもう少し一つ詳細に御説明を、今後のことに対しまして非常に私はこれは大切なことだと思いますから詳細なるお話を承わりたい、かように思います。
  20. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは何にもむずかしいことじやないのでありまして、要するに国連軍のほうで、英濠話合いの結果、国連軍司令官がそれじや代表して話合いをしようと言うから国連軍司令官と話をしておる。先方が別々に話をしようと言えば別々に話をする。こちらから何もお前でなければいかん、あつちはいかんと言つて指定して特別なものと話合いをしなければならんという理窟も私は発見できないのであります。又今度来られた両大臣等は私はその任務は知りませんけれども、恐らく国連軍の問題を話しに来られたのじやないと思います。従つて恐らく両大臣にとつてもそれは任務外のことだろうと思います。我々のほうも只今国連軍の内部で、今のところは、将来は別でありますが、今のところは最高司令官であるクラーク大将のところで話をまとめてするというので、それと話をしておるのでありますから、特に両大臣が来られたからといつて、例えば任務も別に持つていないようなかたにその問題を話をする必要も認めない。こういうわけであります。
  21. 平林太一

    平林太一君 今お話を承わりましたのでありますが、独立後におきまして国連軍司令官外務大臣英濠軍関係、諸般の事柄に対しましてお話合いをなされた、今日までいわゆる講和発効後におきましてなされた経路がおありになるかどうか、その点一つ承わつておきたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 話合いをいたしております。
  23. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 日華条約についての御質疑がございましたらどうか……。
  24. 金子洋文

    金子洋文君 議事進行について。今日は総理大臣がお見えになつていないですが、次の機会に必ず出席するのかどうか、それを確めたいのですが、それによつて質問の仕方があると思います。
  25. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) お答えいたしますが、今日は何でも労働委員会のほうへ総理出席して、どうしても労働委員会を今日上げなければならないという関係で、どうしてもこつちへ出られない、こういうことでございます。従つて来週、できれば月曜日に是非出てもらうように今交渉中でございます。
  26. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと関連して……。今の問題です。総理がおいでになることを明確に委員長が引受けて下さるなら岡崎大臣に対する質疑のその部分のところは省略したいと思うのです。従つて金子委員からの問題を明確に来週この日華条約の問題についての基本的な政府態度について総理が御出席になるということをはつきりと予定してよろしいですね。念を押しておきたいと思います。
  27. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) お答えいたします。官房長官のほうに是非来週の月曜に出てもらうように今交渉中でございます。
  28. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 実現して下さい。
  29. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) できるだけ努力いたします。
  30. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 従つて今日の質疑は、大臣に対する質疑は、総理が出て下さるものということを想定、前提して質疑をするというふうにしたいと思います。それからついでに大臣は今日の渉外その他の事務がおありかも知れんと思いますが、どうなんですか、その点は……。どのくらいの時間をとれるかということ、他の委員のあれもございましようから。
  31. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 大臣は四時まではお差支えないそうでございます。
  32. 金子洋文

    金子洋文君 それでは二、三の点について岡崎外務大臣にお答え願いたいと思いますが、カイロ宣言及びポツダム宣言発表当時の中国は、現在台湾に亡命しておる国民政府代表しておつたと思うのでありますが、中国を落ちのびて台湾に亡命しておる現在の国民政府は果してその中国代表するものかどうかということがさまざまの点で疑問があるわけなんです。吉田書簡によると、国民政府国際連合において中国代表して議席を持つておると、それから発言権投票権を持つておると、若干の領域に対して施政権能を行使していて、国際連合加盟の大部分の国と外交関係を維持しておることを挙げて国民政府代表として見ている。この理由根抵をなすところの施政権能を行使している若干の領域というのは言うまでもなく台湾であると思いますが、台湾が果して中国と言えるかどうか甚だ疑問なわけなんです。カイロ官言ポツダム官言によつてやがては中国領土に加えられると思いますが、現在は中国領土ではない。強いて言うと台湾人台湾であろうと、かように考えられるわけである。御承知のように、一七八三年中国によつて侵寇されて、される前の台湾独立しておつたこともあるし、日本の帰属であつた場合もございます。そういう事情から現在七百万内外の島民は、台湾日本領土でもなく中国領土でもない、従つて台湾人日本人でもなければ中国人でもない、台湾人である。こういう考え方から二月十八日を独立記念日として独立運動を続けている現状にある。この問題に対して蒋政権に対して現在駐ソ米大使であるジヨン・ケナン氏が蒋介石政権を維持するアメリカの政策を非難して、かように言つておる。これは非常に聞くべき言葉であろうと思います。米国自身の力と他からの力によつて、その国の人たちの信頼をはつきりと失つた政権を支えようと努めておることほど馬鹿げた宿命的な誤まり、今日の世界における諸問題を混乱させることになるものを考え出せない。この条約を結ぶことはケナン氏の言つているように、日本も同じ馬鹿げた誤まりを犯すのではないか、そういうことが心配されるわけです。従いまして国連において議席を持つており、投票権はあるにしても、もはや国民政府というものは、領土を持たない亡命政権であり、幻の政権に等しい実態であるのではないか、かようにまあ考えられるのでありますが、政府見解をお聞きしたいと思います。
  33. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今金子委員ケナン氏の言葉というものをお引きになりましたが、中国に対する見解はいろいろの人がいろいろの意見を出しておつてアメリカ政府の正式の意見というものは、又アメリカ政府当局から正式に発表されておる。それは今お引きなつ言葉とは大分違うようであります。どれが正しいかということは私は批判する立場にもないのでありますが、要するにいろいろの意見があるのでありまして、従つてイギリス政府中共政府承認する、アメリカ政府中華民国政府承認しているというような事態が起つておるのであります。従つてあなたのおつしやるように、今の言葉のように、これは馬鹿げたことであると一概に断定はできないのであります。人おのおの意見が異なるのであります。そこでカイロ宣言をお引きになりましたが、カイロ宣言には明らかにこれらの島々は中華民国に入るのだということが書いてございます。そこで中華民国というのは何だという議論になると思いますが、これは当時ははつきりしておりました。というのは、当時は中華民国国民政府がいわゆる中華民国領土を全部支配しておつたのでありますから明らかであります。併しながら今でもそうあいまいなものじやないのであつて中華民国と申しますか、中国と言いますか、とにかく昔から歴史的にある領土は満州なり中国本土なりといろいろ言われています。或いは天山南路天山北路とかいろいろ言われています。大体中国がずつと昔なら泰国という名前であつたし、或いは後には中華民国という名前であつたが、こういう領土があるということはわかつているわけです。それに台湾澎湖島が帰属するものであるということはカイロ宣言はつきりしております。カイロ宣言を出した大国が考えを変えれば別でありますが、その宣言通り意見とすれば、この台湾澎湖島等は、日本が主権を放棄し、この領土に入るものである。正式にはまだ手続はしてないにしても、入るものであることはきまつておるのす。そこで問題はこの領土に対して二つの政府があつて相争つておる。或るときは一方の政府が非常に勢力が強かつた場合もある、或る場合には他方の勢力が非常に強い場合もありましよう。併し相争つている事実があるのでありまして、この両方の政府に対して、列国が一方の政府がこれを承認すべきものであると見るし、又他の国はこつちの政府認むべきである、こうやつておるのでありまして、これに対してどちらが正しいということは、これはいろいろの人の意見の相違になりまして、幾ら理窟を言つたところで、これはなかなか判定はできないのであります。又そのときどきによつて消長もあり得ることもあると思います。我我考えは、こういう場合におきまして中華民国国民政府と今度条約を結んだのでありますが、現実の事態がすでに二つの政府が争つておるのでありますから、そこで適用範囲について一定の規定を設けましてこの中華民国政府の支配の及ぶところがこの条約の適用範囲である、こういうふうにいたしたのでありまして、あなたの言われるようにこれを非常にはつきりどつちかに片付けようといたしましても、現実の事態が片付いておらないのでありまするから、どうもこれは止むを得ない。できるだけ現実の事態に即応するようにして、これらの地域を支配しておる、この政府が支配しておる地域との間にだけでも速かに平和を確立したい、こういう意味条約を作つたわけであります。
  34. 金子洋文

    金子洋文君 私は一方にはつきり片付けなさいとは考えていないのです。問題は国民政府が果して中国代表しておるかどうか。この点をまあお尋ねしているわけなんですが、これを決定するにはですね、吉田書簡の示しておる条件もまあ大事でありますが、もう一つ蒋介石政権の実体権がどういうものであるか。それから台湾における施政実情というものはどういうふうなものが行われておるのか、それに対して台湾の島民がどういう考え、どういう動向を示しておるか、この三つの条件を無視することは私はできないと思う。特にその台湾島民の考え方、動き方、そのことが非常に大きな問題だと思うのです。ところで蒋介石政権の実体はどうかというと、これは蒋介石一門の軍閥と少数の財閥の結ばれた、いわば独裁政権、非常に非民主的な政権であると我々は考えている。台湾に亡命したその後の施政実情はどうかというと、無策、無方針で貧官と汚吏が跋扈している、島民の膏血は搾られている。その結果昭和二十二年二月二十八日ですか、暴動が起つて三万五千人の死亡者を出している。それ以来島民はこの二月二十八日を独立記念日として独立運動を続けている現状にあります。ところで今台湾ではこういう言葉がはやつておるわけです。犬去り豚来たりという言葉が流行しているわけです。どういう意味かというと、犬は日本、豚は国民政府、犬はうるさいけれども保守に役立つ、併し豚は自分だけ貧り食つて自分だけ肥つている、一向役に立たない、こういう歌がはやつているわけです。かような蒋介石政権の実体、施政実情、島民の動向から見て、国民政府が果して中国代表者として、これと条約を結ぶということは日本にとつて百害あつて一利なし、こういうふうに僕は考えるわけです。そういう点から見てどういうものでしようが。
  35. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 非常にいろいろの点を断定的にお話になりましたが、私は必ずしも今の御意見に賛成できないと思つております。で、第一に亡命政権というようなお言葉でありましたが、私はそれは少し甚だ失礼ですが、言い方が乱暴じやないかと思つております。というのは、中華民国政府は行くべからざるところに行つておるのじやなくして、御承知のように一九四五年、つまり昭和二十年に日本が降伏いたしました後の降伏文書の第一号というのを御覧になれば、台湾にある日本軍は国民政府軍隊、即ち蒋介石氏の軍隊に降伏すべしという指令が出ておりまして、そこで蒋介石氏の軍隊台湾に参り、降伏を受領してそのまま台湾の統治を続けて来ておるのであります。第二にいずれ今までおらなかつた中国本土軍隊台湾に乗り込んで行つて、多少事情も違いましようし、今まで日本が支配しておりましたのを今度別の手で支配するのでありますから、どうしてもそこに軋轢もあり、又思わぬ失策も出て来るわけでありましよう。そこで終戦後一、二ヵ年というものはお互いになかなかうまく行かないで、今おつしやつたような事態も起つたようでありますが、その後双方の考え方がだんだん理解を深めて来たと思つておりまして、今ではここにおる倭島局長も二回も最近台北に行つておりまして実情も調べて来たようでありますが、国民の一般の生活はなかなか豊かでありまするし、台湾の国内は非常に平穏であります。人心は落ちついておるのであります。勿論日本でもそうでありますが、いずこの国におきましても極く一部の少数の人々は時の政府に反対する人も無論ありましようし、又これを以てこれを倒すべきだという主張をいたして、暴力を以ても倒すべきだという主張もあるわけでありまして、これはひとり台湾に限らないと思いますが、そういう種類のものも無論あると思います。併し一般的に御覧になれば、今は政治の形態はなかなかよく行つており、国民の生活は安定しておると言つて差支えないんじやないかと考えております。
  36. 金子洋文

    金子洋文君 私一人質問しますと他の委員に御迷惑でしようからただもう一つ、もう一点だけ外務大臣に伺いたいと思います。  六月四日の本会議においてアジア貿易の促進に関する栗山良夫君の緊急質問に対して中共との貿易につきまして現在国際連合がこれを侵略国とみなし、対中共戦略物資禁輸決議を行なつておるので、従つて現に世界の自由諸国が中共向けの禁輸を実施している今日、伝えられるような平和攻勢に乗ぜられて自由国家群の足並みを乱すべきでない云々と答えておりますが、現在各界が通じて非常に要望しておる中共貿易の再開というものは、平和攻勢に乗じられているとはいささか趣きを私は異にしていると思う。例えば米国の軍備拡張の緩慢状態、ポンド地域への輸出抑制措置、英連邦諸国を初めとする各国の輸入制限、紡績繊維等の世界的飽和状態、或いは過剰生産が続いて、世界貿易の縮小傾向が表面化している。まだいろいろあろうと思いますが、中共貿易の再開の声というものはそういう内外の必要から迫られているのではないか、かようにまあ考えられる。大臣は同じ答えの中で我が国の禁輸品目と他の国の禁輸品目との間に若干の食い違いがありますので、その点を調整することは考えられる、かように申しております。そこでその点でお尋ねしたいのでありますが、現在日本が行なつておる輸出貿易管理令、あれを改訂してバトル法の範囲まで調整しようとするのか。一九五二年十二月国連総会の決議できめられたパリリスト、これがまあ即ち西欧英独が実施している制約だと思います。これをこれまで広めてなさるおつもりでいられるのか。それらの点を一つお聞きしたい。
  37. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ず私が申したいのは、対中国貿易というと成るほど非常に魅力があることは事実であります。戦前にはこれだけの量があつたというようなことをしばしば言われるのであります。これをよく研究して見ますると、第一に戦前若しくは戦争中におきましては、中国全体に対してはいわゆる治外法権的の特権を持つておる、又日本の商社とか紡績会社とかいろいろと会社がその特権に伴つて設立されておりまして、非常に大きな足掛りがあつた。殊に満洲におきましては事実上殆んど日本側の意向によつて無理にでも輸出も輸入もできたという状況であります。そうして満洲における投資の厖大なことは私ども申すまでもないところであります。こういうような大きな投資、非常に大きな投資を持つており、その利息だけでも相当に上るべきものであり、それに対して更に特権なり権力なりを持つており、おまけに西欧諸国から当時の国際情勢で大部分閉め出されておりまして、勢い無理にも中国の貿易に主力を集中しなければならんという状況であります。それに対して中国政府の力というものは比較的薄弱でありましたからして日本政府の意思がかなり強く遂行できたわけであります。こういうような結果に基いて行われた貿易が今行われるとは私は到底考えられないのでありまして、権力もなければ特権もない、又資本投下その他の便益もない、そうして相手の政府は非常に強力であり、又日本に対しても決して好感を持つておらないということはラジオ等の放送からわかるのであります。而も相手国の政府は現在非常に強度の計画経済を行なつておりましてすべてのものを統制しておる。そうして物々交換的な貿易でなければ認めていないのであります。こういうような非常ないろいろな条件を考えて見ますると到底戦前のようなことを考えておつたらこれは夢に等しい、私はこう思うのであります。ありますが、只今国民に貿易をやらせずしてお前の考えておることは夢のような話だといつたところでなかなか納得の行かないこともこれはわかるのであります。やらして見て駄目じやないかというならこれは納得が行きましよう。併しそうでないのですからこれはなかなかむずかしいことでありますが、現に実際の値段を調べて見ましても、これはほんの一部でありますが、例えば粘結炭にしましても、開らんの粘結炭にしましてもアメリカから輸入する粘結炭と開らんから輸入する粘結炭の引合いを見ますると、これは他の業者から聞いた話でありますが、この粘結炭のカロリーをも計算に入れますると開らん炭のほうが割高につく、あれだけ船賃を余計払つてアメリカの石炭のほうが割安につく、又塩につきましても同様のわけでエジプトから入れる塩のほうが中国からの引合いにしておる塩の値段よりも割安につくというような事実もある。これはつまりいろいろの生産費の嵩み高が違うからだろうと思います。こういういろいろの理由がありまするから私はそんなに魅力のある商売はできないと思つておるのであります。現にイギリスの商社なども随分努力をし、外交関係も再開し、商社にも随分金を注ぎ込んで、そうして銀行も香港上海銀行等の強固な基礎があつて、そうして官民一致で中共貿易をやろうと考えておりましても先般のような総引揚のような事態が起つておるのであります。なかなかこれはそうたやすくただ貿易を開けばどんどんできるという性質のものとは私は考えておらないのでありますが、他方におきまして今御質問のどの程度凸凹を調製するかという点は、私の申したように、若し日本の輸出制限品目がほかの国よりも厳しいならばむしろほかの国を日本の足並みに揃えるように持つて行きたいというくらいの気持ではおるのでありますが、若しそれができないならば、原則は民主主義国家の足並みを揃えるということでありますから、どの程度ということでなく、我々としては朝鮮における事態の一日も早く収まることを希望いたしまして、そのためには国連の決議に従つて中共等に対する軍事力の増強ということのないようにする必要がある。その意味国連の決議に従つて禁輸を行なつておるのでありますが、従つてこの戦力増強にならないようにするためにはむしろやる以上は厳重のほうがいい。このくらいに考えておるのでありますが、若し然らずんば最小限度民主主義国家の足並みを揃えるほうに向けて行くという点でありますからどこまでこれを緩和するというようなことは今のところ私は考えておらないのでありまして、若し各国と話合つて凸凹を調整する必要が出て来れば最小限度に調整いたそう、こういうつもりでおるのであります。要するに私どもは地理的な関係からいつてほかの国よりも以上に日本の安全は朝鮮の平和に非常な関連を持つという観点からほかの国に率先して我々は朝鮮事態の早く収まることを望むのでありまして、そのためには輸出禁止というようなことも日本にとつても犠牲ではありましようけれども、これは甘んじていたすべきものだと考えておるわけであります。そういう観点から見まして我々はよその国に先立つて輸出制限の緩和をやるということを言うべきでなくして、むしろよその国を導いて輸出制限措置に同調せしむるようにするのが考え方の第一である。そうしてその同調のやり方は他国を強化させるという趣旨もありましようし、日本と他国との間の凸凹を多少なりとも調整するということもあろうかと思いますが、その標準をどこまで緩和するというようなことは只今のところ特に具体的に考えてはおらないのであります。
  38. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 朝鮮動乱が一刻も早く解決を希望する点においては私も政府と同じ考えでありますが、そういう観点からしますと、貿易問題よりも国民政府条約を結ぶことのほうが遥かに朝鮮問題を解決するにむずかしくする逆の考えを私は持つております。併し先ほど申したように、ほかの同僚議員の質問の関係もあるでしようから、これはこの次まで保留しておきます。そうして私の質問を終ります。
  39. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) ほかに御質疑ございませんか。
  40. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕は来週総理がおいでになるそうだから最も決定的な二、三の問題は留保いたしまして極く重要だと思われる二、三の点について質問をしたいと思います。問題はこの条約を結んで日本が如何なる経済的繁栄、経済的利益を受けるであろうかという問題と、もう一つはこの条約締結によつて日本の国民が如何なる政治的影響を受けるであろうかという問題、二つになると思いますが、先ず私は政治の問題についてお尋ねしたいのであります。その政治の第一の問題は最も法律的な、実務的な御回答を得たいと思うのでありますが、第一に日本国と中華民国の間の平和条約だというふうに案件を出しておられますが、中華民国というものは我々の解釈によつてはあり得ないではないか、こういうふうに考えるのであります。第一が領土、第三が人民の問題、第三が政権独立した政権独立した主権の問題、領土、人民、政権のこの三つの角度から見て中華民国というものはあり得ないじやないか、こういうふうに考えるのであります。従つてこれと条約締結するということは極めて無法且つ不法なことであるという結論になつて来るのでありますが、先ずそのうちの第一の領土について私はお尋ねしたいのでありますが、この条文を拝見いたしますと台湾及び澎湖島というふうに謳つておられますが、台湾及び澎湖島平和条約第二条によりまして日本が放棄したというだけの話で、これが蒋介石政権に帰属するということは何ら如何なる国際的法規においても、又世界各国の合意等々においても行われていないのでありますから、この領土ですね、政府の言われる中華民国の一体領土というものはあり得ないではないか。これに対して一つ先ず御教授願いたいのであります。
  41. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつとお断りいたしておきますが、総理大臣をこの委員会出席を求められるかどうかということはこれは委員会官房長官なり総理大臣とのお話でありますから私は別に関係ありませんが、今一、三の点は保留されるというお話でありますが、私が外務大臣であります限りはこの委員会議題となつておりまする諸案件につきましては一切責任を持つてお答えいたします。そこで今の問題でありますが、中華民国政府中華民国領域として中国大陸その他附属島嶼等を持つておるという主張をいたしております。我々も一方においては中共政府がこれらの実際の政府であるという主張をいたしておる国も無論ありまするが、中華民国政府が依然として中国代表政府であるとしておる国もあるのであります。そこで先ほど金子委員にお答えしましたように、先方の主張は我々もよく了承しておりまするが、この条約におきましては実際の事態考えなければなりませんからそれはそれとして適用の範囲は現に支配しておる地域、こういうことにいたしておるのであります。
  42. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私が二、三保留いたしますと申しましたのは、外務大臣としての岡崎君の十分な説明を聞いた上で国政全体の問題として総理に質そうというそういう意味で決定的な点を保留したのでありますから私は外務大臣に関する限りできるだけ今日全部尽せるかどうかはともかくとして、できるだけ外務大臣としては完全な質問をいたしたいと考えておりますので、外務大臣も又明確に外務大臣としてお答えを願いたい存じます。  そこで領土の問題でありますが、台湾及び澎湖島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したという、而もこの平和条約なるものは世界の半分しか認めていないので我々は片ちんばでこれは効果なきものとは考えますが、併し吉田政府としてはこれは効果あるものという立場をとつておられるからそれを仮に認めるといたしまして質問を続けるのでありますが、認めたといたしましても権利、権原及び請求権を日本側が放棄したというだけの話で、日本として何ら蒋介石が台湾及び澎湖島を領有すべきものだというようなことを承認すべき何らの国際法的、国際協定的根拠がないではないか、あるというならば一つその点の御説明が願いたいというわけなんです。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはちよつと政府という関係を頭から離して、昔から言われておる宗と言つたり、唐と言つたり秦と言つたりずつと来ておりますが、その国は一体どの領土を持つてつたかということをお考えになると、これは時によつて変遷はありますが、大体において今申した通り満洲、中国本土と言われる所及びその辺境の地帯、蒙古であるとか、内蒙古、外蒙古或いは天山南路とか天山北路とか、まあいろいろありましよう。が、その辺の所を領有しておつたものがいわゆるチヤイナと言つて表現されておつた地域であります。それに対してカイロ宣言は、その中国台湾澎湖島を返す、こういうことにいたしており、日本はこれを了承したわけでありますから、上に立つ政府は別として、領土台湾澎湖島は正式にはまだ決定をいたしておらんとしても、実際的には中国に属すべき領土であるということは、これは常識上認められると思いまするし、その時中国を支配しておりました国民政府軍隊日本台湾における軍隊の降伏を受領したことは先ほど申したり通りであります。そこでその領土に対して自分がこれを支配すべき政府だといつて主張しておる政府が二つあるわけであります。双方共に全般の領土に対して支配権を主張して、自分がこれを代表する政府である、こう言つておるわけでありますが、その政府の支配の大小は時によつて異なるのであります。そこで我々は今その主張をしておる一方の政府条約交渉をして調印したわけでありましてこの政府中華民国或いは中国の全領域を支配するということを主張しておる政府であります。そこでその政府条約を結んだのでありますが、同時にこの現実の事態を我々は直視しなければなりませんから、適用範囲というものを作りまして、その政府が現に支配している地域に対してこの条約は適用があると、こういうふうにして現実の事態と合うようにいたしたわけであります。
  44. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私はこれから人民と主権の問題は分析して、これとこんがらがらないように問題を明確にするために、領土だけに限定して外務大臣見解を質して行くのでありますが、今問題がこんがらかるので私はあえてカイロ宣言を持ち出さないで、平和条約第二条だけで日本国の政府外務大臣の所見を質しておつたのでありますが、あなたはカイロ宣言を持ち出して来られて中国に帰属するというふうに言われますと、ここでそうなれば問題は非常に明確で、我々の主張と全く一致するのでありますが、あなたはカイロ宣言によつて中国に帰属しておるということを今承認されましたけれども、それは何だか従来の所論と多少変つていやせんかというように感ずるのですが、間違いないのですか。
  45. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 従来も私は、法律上の手続はできていない、従つて最終的な帰属は決定しておらんけれども、カイロ宣言等によつて、我々はこれが中国に行くものであるということは、ポツダム宣言受諾のときから了承しておるということは繰返し申しておるのであります。
  46. 曾禰益

    曾祢益君 ちよつと関連して。この点非常に重要なんで、外務大臣に改めて御質問するのも必要もないくらい断定的に言われたのですが、この前私がちよつと伺つたのですが、カイロ宣言には中華民国、リパブリツク・オブ・チヤイナに帰属せらるべしと書いてある。これはチヤイナと書いてない。リパブリツク・オブ・チヤイナというのは中華民国と訳されるべきだと思う。従つてカイロ宣言の解釈としては、中国、国の異同の問題はありましようが、一応はリパブリツク・オブ・チヤイナに台湾が帰属するということに解釈されるのではないかと思う。そこでそれにもかかわらず、今外務大臣が二度も言われたように、日本政府の公式な見解としてはリパブリツク・オブ・チヤイナでなくて、チヤイナ、中国に属すると、こういう見解であるのかどうか。それに関連してもう一つ、これは私はつきりは覚えていないのですが、サンフフンシスコ会議の前のソ連とアメリカとの応酬の際に、たしかアメリカ政府或いは少くともダレス氏の声明か発言の中に、カイロ宣言アメリカが反しているなんというようなソ連の言いがかりはなつちよらん、何となれば台湾に関してはリパブリツク・オア・チヤイナに返すとなつているのであつて、リパブリツク・オブ・チヤイナというのは、これは恐らく兼岩君が考えていられる中国じやなくて、逆にアメリカとしては国民政府中華民国国民政府側のリパブリツク・オブ・チヤイナだとはつきり断定したがごとき言い方だつたと思う。そういたしますると、その解釈は正しいか正しくないか別といたしましても、仮にアメリカの解釈がそうであるといたしましても、これは何ら本質的にアメリカの解釈がどうであるから日本の解釈がどうでなければならんという理窟にはなりませんが、従来ややもすればアメリカの解釈をそのままとつておられたことがたびたびある政府としては、この点に関してははつきりとその解釈と違うのだと、カイロ宣言の言うところは中国だ、中国という意味は恐らく兼岩君が考えておられるかと思われる中華人民共和国という意味じやないけれども、いわゆる広い意味のチヤイナだというのが政府の御見解だと、こういうふうに承わつていいのですか。    〔理事徳川頼貞君退席、委員長席着席〕
  47. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは非常に今ごたごたしておりまして、リパブリツク・オブ・チヤイナといいますか、中華民国というのがもとの何といいますか、適用範囲と今の適用範囲と違うので、非常に混乱しますが、このカイロ宣言等を見ましても、日本の国が中国人より盗取した一切の地域を中華民国が回復することにある、こう言つておるのでありまして、成るほど回復する相手は中華民国であり、この中華民国は何であるかという議論はあると思います。併しそのもとは要するに中国人から盗取したと書いてある。中国人というのはこれは政府の如何にかかわらず、一定したものであろうと思うのであります。そこから盗取したというのでありますから、政府に返すという、返すの相手方については問題があろうと思いますけれども差当りは要するに取つた所に返すのだということであり、その中国人が一体どの政府を自分の政府として立てるかという問題は、これは中国人の決定する別の問題になろうかと思うのであります。ダレスさんの意見は、まあ私もよく研究してみなきやわかりませんが、私どもは常識的に言いますと、要するに普通の常識的に言う中国なり、清国なり何なりのそこの国に返すものだ、こういう意味に私はとつております。
  48. 曾禰益

    曾祢益君 じやもう一遍確認しておきたい。それでやめます。そうすると、やはり政府のお考えは、そのカイロ宣言意味から判断して言えば、まあ中国人から取つたのだから、中国に返さるべきだという見解に立つておられる。これは私も全然その趣旨はカイロ宣言の趣旨から言つて同感であつて、それがほかの所に行くようなことはあり得ないのです。その場合に、仮りアメリカ見解が、その受取人は現在も続いておるところの中華民国国民政府であるという見解であつたとしても、それに必ずしも囚われない、それは日本政府としては中国の主人が誰であるかは別として、中国に返すのであると、必ずしも現在の中華民国国民政府に返すという意味ではない、こう承わつてよろしうございますか。
  49. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は今この条約の相手方である中華民国国民政府に対して何かお前のほうには返さないのだというような印象を与える発言をいたしたくないと思います。殊にアメリカは依然として中華民国国民政府カイロ宣言当時の中華民国をやはり代表しておる政府だととつて承認しておりますから、今言われたように中華民国に返すというのは何かおかしいのだという議論になるのだろうと思います。ただ私は今申したようにこれは広い領土中国という所に行くべきものである、これだけで一つ御勘弁を願いたいと思います。中華民国政府に行くんじやないとか行くんであるとかいうことは、この際はむしろはつきり申上げることを差控えたほうがいいのじやないかと思います。
  50. 曾禰益

    曾祢益君 必ずしも外務大臣からそういう余り外交的でない言質を取ろうなんかとしておるのじやなくて、むしろ私の言つておるのはもう少し広い意味だということをおわかり願えるのじやないかと思うのです。つまり国民政府とも断定していないのだ、その点はアメリカとも違うのだ、現にあなたの御発言のみならず、条約に見ても、あなたは恐らくこれで中華民国国民政府にやつたとは書いてないはずだとおつしやるだろうと思う。これはサンフランシスコで日本がこれらの地域を放棄するということを約束したという事実を承認すると言つているので、中華民国国民政府にやりきりと書いてない。あなたは条約論としてははつきりおつしやつておると思う。これはお認めにならなければならん。又私の言つておることも、然らば中華民国国民が将来受取人たることを絶対にないというようなことも言つておるわけじやないのです。誰が受取人であるかは日本政府はその点はぼかしておるので、一応中国が受取る資格がある国民なんである。そういう中国という所に返るべきだ、そうしてそのときに受取る代表者であるという政府というものについてはここでは限定しない、その点でアメリカとも違うのだ、こういうふうに伺つて差支ないのでしようね。
  51. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そのアメリカと違うかどうかというアメリカ見解なるものがはつきりしないのであります。従つてそこのところははつきり申上げるわけにいかんと思いますが、要するに現在の中華民国政府は、先ほど申したように、中国全体を支配する政府であるというふうに主張しておるのであります。その主張は主張として、これは中共政府も同じような主張をしておる。で、相争つておるのであります。問題は将来どういうふうにきまるか、これはまあ別問題といたしまして、ただ事実カイロ宣言とかによりまして、漠然とはしておりますが、いわゆる清国であり中華民国であり中国であつたその所に帰るのだというふうに私は了解しております。
  52. 曾禰益

    曾祢益君 アメリカ政府がどうかということは私も断定しておらないのですが、若しアメリカ政府中華民国国民政府のみに帰属するのだという解釈をとつておるとすれば、それとは違うのだなということを伺つておるわけなんですが、それはまあ御答弁を得たようなものですから、それでいいです。どうぞ、失礼しました。
  53. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 関連して。この間から降伏文書というものが、原則としてといいますか、例の捕虜送還それから戦闘行為停止以外の分については効力を喪失したものだと、こういう見解を外務省の公式の見解として言われたのですが、この今のカイロ宣言というのが、日本から見て法律的に意味のあるのは、ただ独立カイロ宣言カイロ宣言としてではなくて、降伏文書の一つ内容をなしておるからこそ法律的に意味があつたわけですが、そうすれば外務省でとられた降伏文書に対する法律的な見解からすると、もうカイロ宣言というような言葉は全然日本としてはそういうことは認めないことになつておるものだと思うが、今カイロ宣言のことを持ち出されるのはどういうわけですか。非常に矛盾しているように思う。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はポツダム宣言と降伏文書と両方を述べたつもりでおつたのであります。御承知のように降伏文書にはカイロ宣言は引用してありませんし、又日本軍の捕虜の送還等についても、降伏文書には規定しておらないのであります。これはポツダム宣言にあるのであります。
  55. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今おつしやつたのは少し精密を欠くと思うのです。それは降伏文書にポツダム宣言というものが一つの内をなしておつて、そうして更に又ポツダム宣言の一つ内容カイロ宣言がなしておるから、ここに法律的な繋がりがずつと来ておる。今おつしやつたのちよつと理解し得ない。明瞭だと思う。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと今のお話はつきり私しませんが、降伏文書には要するにカイロ宣言云々という、ポツダム宣言にはカイロ宣言をリフアーしたところはないのであります。それから日本の捕虜送還の問題も入れてないのであります。直接に日本の降伏に関する事項だけが入れてあるわけであります。
  57. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうでなくて降伏文書でポツダム宣言が一つ内容になつておるわけなんですよ。そうして又更に今度ポツダム宣言の一つ内容カイロ宣言がなつておるから、それだからして結局カイロ宣言というものは降伏文書の法律的な一つ内容をなしておるのです。
  58. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その点は私も同感であります。ただ私の言うのは降伏文書の中ではポツダム宣言はリフアーしてありますけれども、直接にカイロ宣言とか捕虜送還ということはこの降伏文書の項目の中には入つておらない、こういうことを申したのであります。私どもは、ですからポツダム宣言と降伏文書と、これはちよつと正確を欠くかも知れませんが、降伏文書の実際の内容は、例えば降伏しろとか或いは日本の抑留しておる捕虜を返せとか、こういうようなものが実際の内容に載つておりますから、そこでポツダム宣言も無論降伏文書には含まれておりますけれども、降伏文書とポツダム宣言とこういうふうにわかりやすく言つたわけであります。
  59. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 要するに法律的には現在降伏文書の内容をなしておるのであつて、ポツダム宣言もカイロ宣言もですね。併しこの間ポツダム宣言の性質について言われたときは、その内容を私が今言うようた意味合いにおいて育つておられたものだと私は了解しておつた。そうでないとすれば、非常に今度根本にかえつておかしなことになつてしまうと思うのですよ。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この前申したときは、正確でないかも知れんが、むしろはつきりするためにポツダム宣言と降伏文書と、こういうふうに言つたのでありますが、無論今おつしやるように降伏文書の中にはポツダム宣言も含まれており、そうしてポツダム宣言にはカイロ宣言を引用してあるのでありますから、カイロ、ポツダム降伏文書、そうして降伏文書の中にこれが皆一括して含まれておるというのは、これは法律的の正確な解釈でありまして、若し私がポツダム宣言と降伏文書とこう言つたとすれば、これはむしろ俗称といいますかわかりやすく言つたと御了解願いたいと思います。
  61. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今降伏文書について前に言われたような見解をとりながら、今改めてここでカイロ宣言と取上げられたのはおかしいのじやないかというのです。
  62. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは正確にはその通りです、併し降伏文書の中のポツダム宣言の中の、更にカイロ宣言をわかりやすい意味でそれを引き抜いてカイロ宣言とこう申しただけでありまして、一括すれば降伏文書と、こう言つて無論ちつとも差支ない、むしろ正当なものでありましよう。
  63. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕に返して下さい。今日岡崎大臣は……まだあるのですか。
  64. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 私はちよつとほかの角度から同じ問題ですけれども、伺うのですが、あの講和の七原則のとき及びその次のドラフトのときでしたか、台湾澎湖島の問題及びその他の問題と一緒にして七ヵ国で協議する、一年たつて決しないときは国際連合の総会において決するということが言われておつて、ダレス氏なんか最初来たときにはその考えであつたと思われます。それがその七ヵ国の協定でやるという方式が改められて、今はただ日本としては放棄するということだけになつたのでありますが、その間の事情がどういうことであつたか。それがこの問題を決する一つのキーになると思います。  それからもう一つお尋ねしたいのは、イギリスが承認しておる中共講和会議に招請されなかつた蒋介石政権もインヴアイトされなかつたとかいう間の事情も、こういう論議に非常に必要なことだと思いますので、それをちよつと承わりたいと思います。
  65. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一の御質問につきましては、そういう考え方もあつたのではないかと推測されまするけれども、公式には非常にはつきりはいたしておらないのでありますが、そういう考えがあつたとしましても、ソ連の代表等ともダレスさんは何回か会つたということであります。恐らくそういう方式での解決は困難であるという結論に達したものじやないかと思います。併しその間の細かい事情先方も、アメリカ側もイギリス側も言つておりませんし、我々も聞いておらないのでありますが、恐らくそういうことじやないかと想像されるのであります。  第二の点は、やはりこれは非常に常識的に見まして、中華民国といいますか、中国といいますか、これの代表政府をサンフランシスコに呼ぼうというときに、或る国は中共政府代表者と認めており、他の国は中華民国政府代表者と認めておつて、二つの違つた政府をおのおの別に認めておるのでありまするから、これを二つの政府を呼ぶわけにも行かず、そうかといつて片方の政府を呼ぶわけにも行かないというわけで、これは将来中国の国民がきめるまで待つより仕方がないということになつたのじやないかと私は考えております。
  66. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 私は問題を本元へお返しします。
  67. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今日は外務大臣がいつもと違つて気のせいか非常に頭脳明哲で、質問に対する回答が非常にはつきりしているので、領土の問題について今言われたことを簡潔に僕が復調いたしますと、日本はポツダム宣言を受諾しておる、そうしてそれは台湾及び澎湖島の帰属についてのカイロ宣言を再確認しておるんだ、従つて中華民国という言葉内容をどう理解するかはともかくとして、台湾及び澎湖島の帰属が中華民国に、中国に、中華民国即ち略して中国に帰属するのだということを大臣承認されたのでしようね。
  68. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ほどから申しますように、最終的の決定はまだ行われておりません。これは連合国で行うことになつておりますから。併し我々はカイロ宣言といつては、先ほどのお話がありますからやめますが、要するに降伏文書によりましてカイロ宣言承認しておりまするから、中華民国台湾澎湖島が行くということについては日本に関しては承認をいたしておるわけであります。
  69. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 中華民国というふうにここで訂正されますが、中国に帰属と先ほどは承認されたように思いますが。なぜならば、中華民国ということになると非常に議論がもう一遍むし返されることになつて、一九四九年十月以前のあの統一政権カイロ宣言は指しておるのだ云々ということになると、非常に又こんがらがつて来ますから、あとでこれは政権のときに触れれば触れることにして、一応領土としては、あなたの言われるカイロ宣言によつて中国に帰属するのだという、あなたの中国という言葉ですね、これはどういう内容であると我々は理解してよろしいんですか。
  70. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この点は甚だ頭脳不明哲で恐縮でありますが、カイロ宣言中華民国と書いてありますから、私は中華民国に行くものたと、こう言つておるのであります。(「おかしいな」「さつきはそうじやない」と呼ぶ者あり)
  71. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 言葉内容を表すのでありまして、そうしてその内容は歴史的に変化するのでありますから、無論私はあれですが、あなたの中華民国と書いてあるから中華民国と自分は復調したのだと、こういうふうに理解すればいいわけですりか。
  72. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りであります。
  73. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それじやまあ進めましよう。この問題はあとでもう一遍出て参りますから、これは主権のときの質問にもう一度触れることにして、然らばいわゆる中華民国、そこで今台湾領土台湾にありますあなたの呼んでおられる中華民国ですね、これはカイロ宣言の呼ぶ中華民国とも歴史的に段階を異にしており、その性格を異にしておりますが、名称だけは同じ中華民国であり、その主権者が蒋介石だという点だけについては同一の形態を持つておりますが、今案件になつておりますこの中華民国の支配しております台湾澎湖島蒋介石政権、まぎらわしいから今後蒋介石政権と呼びますが、この蒋介石政権に帰属しておるということはどういう何を前提にして承認されておられますか。
  74. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ほどから申しましたように、どの政府に帰属しているということは最終的の決定がなければ言えないのであります。ただ……。
  75. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると、領土はつきりしない……蒋介石政権領土というものは、あなたの理解によればはつきりしていないわけですね。
  76. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は蒋介石政権といいませんからまぎらわしいでありましようが、中華民国政府と御了解願いたいのですが、中華民国政府は、いわゆる中国であるか清国であるか、まあそれは別として、満洲、中国本土その他を含めたいわゆる中国全般に対しての代表する政府であるという主張を持つておられる……。
  77. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 という何を持つておるのですか。
  78. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 主張を持つておられる。
  79. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 蒋介石氏はですか。
  80. 岡崎勝男

  81. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 まぎらわしければ今後私は蒋介石中華民国と呼んであなたとやつてみましよう。(笑声)言葉をきめておかんと質問がこんがらがりますから。台湾及び澎湖島が蒋介石中華民国に帰属するという事実の認定、この認定がなければそういうものと条約を結ぶというのは非常におかしいのですから、当然それは領土というはつきりした観念を持つておられると思いますが、台湾澎湖島が蒋介石中華民国領土であるという決定は何によつて政府は認定しておられますか、さような承認をしておられますか、その根拠。
  82. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ほどから申しますように、日本政府としてはカイロ宣言通り考えておりますが、最終的の帰属の決定は法律的にはまだできておらないのであります。
  83. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 誰がいたしますか、それは。
  84. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 連合国がいたします。
  85. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 いついたしますか。
  86. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは連合国に聞かなければわかりません。
  87. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これはこれから先になると論争になりますから、この点はそれじや保留いたしましよう。この点は保留して、今度国民の問題に進みましよう。つまり領土については、あなたの言つておられることは領土については、他日連合国が決定するまではきまらんのだ、従つて蒋介石中華民国にとつて台湾及び澎湖島がそれに帰属するや否やは全く将来連合国がきめるまでは未定である。こういう答弁をされたわけですよ。それでいいですね。
  88. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつてはつきり伺いませんでしたからもう一遍……。
  89. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 台湾及び澎湖島が蒋介石中華民国に所属するや否やは、将来連合国が決定すべきものである、従つて日本政府は、台湾及び澎湖島の帰属については明確な観念は持つていない、こういうことですね。
  90. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日本政府としては、先ほど申したように非常に概念的ではありますが、中国という民衆の、或る一定の地域があるわけであります。それは昔清国と言つた場合もあり、唐と言つた場合もあり、中華民国と言つた場合もあり、いろいろでありますが、そういう領土があるわけであります。それに台湾澎湖島が帰属するということは、これは日本政府として了承しておるのであります。その支配する政府が、二つが争つておるということは、これは認めなければならん。
  91. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 向うが頭がよくなられるに従つて、こちらが頭が悪くなりまして、あなたの言われることが非常にわかりにくくなりましたが、私の質問は、政府が提案しておられる平和条約を取結ぶ相手方は一国家である、国家であるならば三つの要素として領土と国民と主権が問題である。その第一として領土が問題である。一番わかりやすい、一番具体的な問題から入つて、この領土は、あなたが提案しておられる中華民国領土は、どこでございますかということを聞いておるのです。
  92. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 中華民国政府は満洲、中国本土、すべてをその領土として主張しておられるのであります。
  93. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どなたがですか。
  94. 岡崎勝男

  95. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 だから僕は、どなたが何を言つておるのか聞いておるのではなくて、吉田政府外務大臣は、この案件を提出しておられるところの中華民国という言葉の概念、この言葉内容は、一九四九年十月以前の統一政権を指すのではない、併し蒋介石が首班におるところの、台湾に現在おるところの政府平和条約を、日本国のごとく、領土と国民と政権を持つたところの日本国と取結ぶ相手の国の領土がどこであるという認識の下に、平和条約の相手方とじて交渉をしておられるのですか。領土の問題なんです。
  96. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 中華民国の主張によりまして、これは中国全体を領土としております。ただこの条約適用の範囲としては別に規定があるわけであります。
  97. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると、あなたはダレス宛の吉田書簡から非常に逸脱したことになりまして、ダレス宛の吉田書簡によれば、二つの政権があるのだ、併し現在問題がいろいろあろうが、事実上台湾澎湖島は支配しておるのだから、善隣友好という意味で、大きなほうの中国本土はまだいろいろな問題で未解決だが、この小さいほうも、大小が余りに桁違いですが、まあ桁違いにしろ、とにかくダレス宛吉田書簡の、事実上支配しておると、私は多分そういう観念に立つて一層発展した御説明があると考えておりましたが、今日は非常にカイロ宣言を確認されるところまでは明確でしたけれども、それから先が一度にわからなくなつてしまつたのですが、あなたの取結ぼうとされる民国、相手方の主張通り承認されるのですか。それじやお尋ねいたしますが、相手方がその主張することを承認した上で、この条約はあなたがたが取結んで今国会に提出しておられると理解してよろしいですか。
  98. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは適用範囲のところを御覧願いたいと思います。
  99. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 適用範囲といいますと第何条でございますか。
  100. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 交換公文の第一に書いてあります。
  101. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと頁を言つて下さい。何頁のどこですか。どこを読むと僕の質問がはつきりわかるのですか。
  102. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 交換公文の二頁目です。
  103. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この六行目から七行目に、「支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域」というものは、満洲、中国本土、歴史上の清、漢、明の時代からの全中国領域を指すという先ほどからの御説明のように受取りましたが、このことは吉田政府承認して結ばれたわけですね。今後入るべき区域の内容です。
  104. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今後入るべき区域がどこであるかということは全然指定しておりません。支配下に今後入る所はそれは入ると、こういうだけのことです。
  105. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると現に支配下にあるところの、つまり台湾及び澎湖島のみならず、今後この蒋介石国民政権が拡張して行くところのすべての領域まで、この条約は拡大されて行くのだと、こういうことですか。
  106. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 支配下に入る地域はすべてこの条約は適用があります。
  107. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それの根拠はどこにあるかということを聞いておるのです。何を根拠にして台湾及び澎湖島、及び今後入るすべての領域を以てこの中華民国領土なりと認定されたのか、その根拠が拝聴したいのです。
  108. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 別に領土なりということはここに書いてありません。この条約の条項が適用がある、こう書いてあります。
  109. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕は領土のない国家というものは考えられないから、領土を聞いておるのです。この国家の、あなたの提案しておられる中華民国領土です。
  110. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ほど申したように、中華民国側は中国全部を領土として主張しておられます。
  111. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それから日本政府は……。
  112. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日本政府は、その中で条約に適用のあるのは支配下にある所だけ、こう言つております。
  113. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 領土としてそれを承認されるわけですね。
  114. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 領土として承認するしないは、この条約には直接関係はないのでありまして、要するにこの条約の適用の範囲を定めておるのであります。
  115. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういうのは詭弁です。平和条約締結すべき場合には、こちらが一個の完全な国家であると同時に、相手方も一個の完全な国家でなければ平和条約は結ばれませんよ。そうあなたのようなことを言われたんじや……、私どもこの質問をしておるのは、中華民国なんていうものは幽霊のようなものであつて、ないのだと、あなたはあると言つて無理にこうして押付けて来られる、こういう条約をここで……。そこで領土がないじやないか、こういう質問をしなければならんように我々は追い詰められておるのです。この点だけを明快にして下さい。次の国民の問題に進みたいのです。だから日本政府は、領土として台湾澎湖島並びに今後入る領域領土として承認するのだと、その根拠はこれこれである、この点明らかにして下さいよ。
  116. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは条約に適用の範囲を定めておるのであつて条約領土がどこであり、何であるかということは定めておらないのでありますから、条約の適用範囲としてお考え願いたい。
  117. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これ以上押し問答してもしようがないから、あなたの回答によれば、領土がないと断定して次に進まざるを得ないので、この点はあとで異議があるなら一つ御教示を得ることにしましよう。  第二に、国民がないのではないかということが私は言いたいのです。ところがそれにはちやんと条文に、十条に、この国民のことが書いてあるのですよ。「中華民国の国民には」と書いてある、「台湾及び澎湖島のすべての住民及び」云々と、こう書いてあるのです。そこで先ずお尋ねしたいのは、この五行の文章の主語がわからないのですよ。文法上から言えば主語、それから私が政治的な質問としては、いわゆる中華民国の国民ということの主体がわからないのですよ、この文章を何度読んでみても……。三行目に「含むものとみなす。」というのは、何かがこうである、国民はこれこれである、これにこれを含む、こういうふうにこの文章は理解しなければならない。ところがその主体がわからないのです。この第十条の最初の三行の主体を一つ明らかにして頂きたい。
  118. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 台湾及び澎湖島のすべての住民及び以前にそこの住民であつた者並びにそれらの子孫で、台湾及び膨湖島において中華民国が現に施行し、又は今後施行する法令によつて中国の国籍を有するもの、これを含むということになつておりまして、主体はその前にある、「中華民国国民には、」と、こういうことになつております。
  119. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 「には」というのは、このセンテンス、文法から言つて主語にならないのじやないですか。主体にならないのじやないですか。中華民国の国民には、これこれと及びこれこれを含む、これこれに加うるにこれこれを含むという文章の真の主人公ですね、つまりこれを強いて僕が読み替えると、こうならわかりますよ、中華民国には、目下人民民主主義国家として支配されておる五億の民、これはやがて武力で取返すのだけれども、それに加うるに台湾及び澎湖島の住民、こうすればあなたの説明と大体平仄が合うのですね。大臣でなくてもいいですよ、この文章のよくわかつたかたですね。英語のほうの原文でもいいですよ。
  120. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 今御質問の点は、これは従来台湾籍民というふうに、日本の領有下にありましたときには台湾出身のかた、つまり台湾籍民と言われるかたがたでありますが、その人たちの便宜のために設けられた趣旨の規定でございまして、領土関係が先ほどいろいろございましたが、最終的の決定がないので、従つて従来台湾籍民と言われておつた人たちの国籍の問題ということも、最終的にはまだきまつておらない。従つて少くとも日本中華民国との関係条約において、その国籍を決定する地位にありませんので、併しそのまま放つておくのも便宜上困るということで、台湾籍民と言われておつた人たちの便宜のために、その人たちはそこに書いてあります。「中華民国の国民」というのをここで定義しておるわけではございませんので、従来台湾籍民と言つたかたがたの国籍について、この条約の適用上「中華民国の国民」というものに含まれるものとみなすという合意をしたわけであります。この規定は先ほどからも申上げておりますように、主として従来の台湾籍民と言われた人たちの便宜のために設けられた規定であります。
  121. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると、この文章には中華民国の国民を規定していない。規定すべきものは、将来連合国がやがていつか大臣の答弁のように領土を決定してくれる、それによつて国民もきまつて来るので、今は未決定である、だから未決定なものが主体であるのですか、これはこういうふうに書けばはつきりしたのではないですか、台湾及び澎湖島のすべての住民に加うるに今後中華民国の本国についても、これを奪還するにおいて除々にそれを差加えて行くのだと、こうなら一応先ほどの領土の、大臣説明と平仄が合うのです。ただそれを逆さまにして書いてぼかしておられるだけで相違もなければ、突込むもの、差加えるものがはつきりして、差加えられるところの本体がこの文章でははつきりしていないじやないですか。
  122. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 今御審議を願つております中華民国との平和条約においては、中華民国領土はどこであるとか、中華民国の国民はどれであるとかということをきめる目的で、これは交渉がせられたのではございませんで、その領土の問題並びに領土の帰属だとか、或いは中華民国の国民ばこういうものであるというような合意は、この中には書いてございません。先ほどから申上げますように、十条の規定は、中華民国の国民はどういうものだとということを規定することが趣旨ではなく、従来台湾籍民ということを言われたかたがたの便宜のために、例えばその便宜と申しますのは、日本にその人たちが来る際に、どこの旅券を持つて来るかというような問題が起きます。そういう際にこういう中華民国の旅券を持つて来れば日本の入国を許すというようなことが主たる便宜の問題でありまして、そういう便宜のために設けられた条文でございます。
  123. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 大臣お尋ねいたしますが、今あなたの部下が説明されたのは、もつと文章の実質的な答弁を受けるつもりだつたのですが、そうすると、今の説明その他十条を読んだところから、この条約には、平和条約を結ばれるあなたの対象であるところの中華民国の国民は規定されていない、文章で規定されていなければ、文章でなくても一つ説明願いたいですね。
  124. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 平和条約に対して兼岩君のいろいろのお説はお説として伺いますが、条約の中に領土はこれであるとか、或いは国民というのはこれであるとかという定義をしておる条約は少ない、ないのが普通でありまして、従つてこういう問題についてこういうものを作るというのは目的じやないのであつて、又兼岩君の言われるように差加えたり、差引いたりするために、この十条の規定を設けておるのではなくして、要するに台湾澎湖島を元の住所として日本におるような人人は、平和条約発効と同時に日本の国籍を失い、而も何らの規定がなく、よその国の国籍も取れないからして、そこでこの十条を設けて中国の国籍を有するものを中華民国の国民の中に含める、こう定めておるだけでありますから、将来大陸の一部なり何なりを仮に支配したといたしましても、そこの支配下にある国民はもう初めから中華民国の国民であることは問題ないのでありますから、その点は差加えるも差引くも何もないのであります。
  125. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 条文では書いてないという、あなたの説明によれば……、書いてないだけで結構ですが、相手方の蒋介石中華民国の国民はどこというふうに理解しておられるのですか。
  126. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だから、そこは別に条約できめていないので、合意したわけでないと、こういうふうに申しておるのであります。そしてなお説明すれば、中華民国政府中国全部を領土とし、国民を支配しておるという主張をせられておる。
  127. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 承認されるのですか。
  128. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) でありますから、その主張と現実の事態を調整するための適用の範囲の交換公文を作つた。こういうわけです。
  129. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 だからそういう主張を承認したればこそ、こういう融通性のある表現をしたと、こういうふうに理解してよいわけですか。
  130. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ですから先ほど言つたように、この条約はそういう主張を承認したり、しなかつたりするために作つておる条約ではないのですからして、その点は触れていないのです。
  131. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 触れていない、従つてこの領土が極めて未決定であると同様に国民も全く未決定である、この中華民国なるものは、はつきりとした国民も持つていないのだというふうに理解して、第三の政権の質問に進みたいと思います。私どもが見るところ台湾政権は本当に独立した政治権力ではないのじやないか、こういう点なんです。先ほど金子委員亡命政権だと言われましたが、これは非常に過重評価でありまして、余りにこれを重く見過ぎておるのではないか、たまたま別の意味で軽く見るのだと言つて、あなたはこれをなじられたようですが、私は金子委員は重く見過ぎておられる、そもそも亡命政権とい我々が観念を持つのは、本国において人民の支持があるのだ、国民大衆が熱烈にこれを支持しておるにもかかわらず、他国の侵略によつて一時的に他の国家に保護を求めて移動する、従つてこの亡命政権と呼び得るからには、この政権に対して強力な支持が、本国の国民、人民大衆の中にあるということが前提されてこそ亡命政権なのでございます。然るに蒋政権亡命政権ではなくて、一中国の御上なりとカイロ宣言によつてきめられております或る局地の、或る島の端におられますが、その限りにおいては一軍閥、地方軍閥というふうに見えるのでありますが、更にその地方軍閥的性格は非常にうらぶれたもので、いわば斜陽的な性格を持つておる、つまり何ら亡命政権に値しないという意味は、何ら台湾の国民から支持されない、これは金子委員が先ほど言われましたから繰返しませんが、台湾島民から支持されないのみか、中国本土の四億七千五百万、五億の中国人から支持されていない、そうしてアメリカの第七艦隊によつて保護され、かのショカイセキ政権の使う軍事予算の三分の二までがアメリカの軍事援助によつて支持されておる、即ち下から見れば国民大衆の支持がないし、軍事力の面から見れば、アメリカのお抱えの……、アメリカ自身の第七艦隊の保護を受けて一日一日を辛うじて送つておるところの政権である。従つて非常にうらぶれた、地方軍閥と呼ぶことさえ……、これはせいぜい呼び得べくんばその程度に呼ぶものであつて、何ら独立した、領土と国民を持つところの独立した政治権力ではないと、こういうふうに私は言わなければならんと思いますが、僕の主張を反駁して頂きたいのであります。僕の考え方が非常に問建つておる、これは独立した政権である、即ち領土においても国民においても、政権においても、全く一個の完全な国家である、この完全な国家と平和条約を初めて締結するのだという、説明の第三項として一つ独立した政権であるということを、あなたに説明して頂きたいのであります。
  132. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 兼岩君は共産党の立場から非常に毒舌を振われるようでありますが、私は委員会としてはそういう言葉は余りお用いになるべきではないと考えております。たた二つの政府が先ほどから申すように争つており、ときに無論消長はありましようけれども争つておるという事実は、これは当然あるのであります。或るときは中共軍が狭い地域に押込められたこともありまするし、又今のように国民政府側が押込められた場合もあるわけでありますが、争つておるのは過去も現在も同じであります。従つて若し兼岩君の言われるように、中華民国国民政府領土と国民がないというならば、中共政府にも領土と国民がないと言わざるを得ないのであります。何となれば、これはお互いに争つておるのでありますから、そうして現在の支配地域については、それぞれ消長がある、こう言わざるを得ないのであります。又兼岩君は亡命政権の定義を、外国から侵略されて追出されたが、国民の支持がある政権、こういうふうに定義をされましたが、過去におきましては、孫文が清国政府に対して革命の旗を挙げまして、そうして清国政府から数回に亘つて圧迫されて逃げたときに、やはり亡命政権という字を使つてつたと私は記憶しております。従つて必ずしも兼岩君の定義のようには使われていないと思います。そこで今の問題でありますが、中華民国政府は、私は国際連合にも堂々と発言権を持つて行動しておるのであり、その意見はしばしば他国の意見と異つても、何ら制肘を受けずに発言をしておりまして、現に実力も十分かね備えておるのでありまして、この政府条約を結ぶことについては別に何ら不思議なことはないと確信しております。
  133. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 見解の差として質問を余りこれに停滞しないで、まだたくさん質問をしなければならんのですから、その点は私の見解とあなたの見解の差だと一応規定して、あとは歴史が証明して行く、果してあなたの言われるように孫文と蒋介石が同じ歴史的な背景を持つものか、全く唐様で書いた三代目で似て非なるものかは歴史が証明するとして、議論ではこれは片付かないけれども、あなたの今言われたところを前提としてそれじや質問を進めますと……。
  134. 有馬英二

    委員長(有馬英二君) ちよつと兼岩君に発言中ですけれども、大臣は四時に退席するということを申されたのだそうです。
  135. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ええ、そう聞いてます。
  136. 有馬英二

    委員長(有馬英二君) 只今大臣からそういう申出があつたのですが、大臣がいなければ質問をおやめになりますか、或いは大臣が退席されても質問を続行されますか。
  137. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕は今大臣から、政治的な問題と経済的な問題に分けて、政治的な質問の第一段階を漸く終えたところで、第二段階にこれから入つて行きたいのですが、大臣でないと……。政府委員に聞いてみても答えられないのじやないかと思うのですがね。
  138. 有馬英二

    委員長(有馬英二君) それでは次回に譲りまして、今日ば日印条約の逐条説明をしたいという申出がございますが。
  139. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうですか、どうぞ……。
  140. 有馬英二

    委員長(有馬英二君) 如何でしようか皆さん。大臣がいなければ質問しないというお考えであれば、その説明を聞きまして、そうしてこの会を閉じることにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 有馬英二

    委員長(有馬英二君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  142. 有馬英二

    委員長(有馬英二君) それでは大臣が退席されるそうですから、日印条約の逐条説明をさせます。只今から倭島アジア局長から詳細な説明を聞くことにいたします。
  143. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) インドとの平和条約についての逐条説明を申上げたいと存じます。先ほど提案理由説明をせられた際に言及せられたところでございますけれども、逐条説明に入るに先立ちまして、二、三このインドとの条約の特徴ともいうべきところを先に御説明申上げまして逐条に入りたいと存じます。  今度のインドとの条約の特徴とも申すべき第一の点は、インド我が国との間においては戦争状態がすでに終了しておる、それは御存じの通りインドがそういう布告を出しまして我が国に通告をし、我が国はこれを受諾いたしまして、去る四月の二十八日に戦争状態が終了しておるという関係にございます。従つてサンフランシスコ条約だとか、日華条約等におきましては、その第一条において戦争状態の終了ということを明記しておりますけれども、このたびのインドとの条約におきましては、戦争状態は終了したという建前から出発した条約でございまして、その点がこの条約一つの特徴かと存じます。第二番目にこの條約の特徴とも申しますか、と思われるのは、当初インドとの交渉の経過におきましては、インド側においては、この条約戦争状態は終了はしたが、戦争状態が存在したことから起つて来たいろんな問題の跡始末がある、従つて平和条約という恰好のものを作るときには、その内容戦争の跡始末を規定するということでいいじやないかという意見があつたわけであります。併しながら我が国のほうの見解といたしましては、戦争の跡始末だけではなくて、両国間の平和並びに今後の友好関係はつきりさしておきたいということを主張いたしまして、その点が結局この條約に入つて来たわけでございます。で、その戦争の跡始末だけではないという点が二ヵ所に現われております。一つは、前文の弟二項のところでございまして、国際連合憲章の原則に基いて、両国が共通の福祉或いは平和、安全の維持ということについて協力をする希望を持つておるということを明記しましたのが一つと、それから第一条におきまして、両国の間に、堅固な且つ永久の平和及び友好関係が存在するということを規定いたしております。従つて今申上げました二点と、後の條文とは少しその性質が異なつております。二條以下十一條までの間において規定をせられておりますところは、大体において戦争の跡始末という関係になつております。それから第三の特徴と申しますか、それは大体において桑港條約の枠内において両国の平和條約を結ばれたわけでありますけれども、サンフランシスコ條約に比較をいたしまして、更にインドとの間においては友好的な精神が相当強くこの條約を通じて現われております。その点はそれは各條を御説明するときに言及いたしますが、例えば賠償の問題、インドにおる財産を返還してくれるというような問題、或いは紛争解決のやり方というような問題、又そのほかの問題にしましても、互恵平等というような精神から相互主義になつておるような点がございます。それから第四番目のこの條約の特徴と申しますか、そういう点は、この條約の締結に関しまして、両国政府交渉はつきり始めましたのは昨年末からでございますが、諸般の経緯を経まして、最近になつて妥結する傾向になつて来た、でその際において、できれば我が国のほうの希望としましても、今国会の会期中にでもできることならば調印、更にこれを我が国国会において承認を得て、批准交換というところまで成るべく行きたいという希望を持つておりまして、インド側のほうとしても大体意見が合つておるのだから、それでは一つ早くやることにしようということに同意をいたしまして、急いで締結せられることになつた経緯がございます。そういうような関係から、この條約の末文のところにその関係が出ておりますけれども、この交渉は英文で大体進めて参りましたので、英文のほうはできておつた、併し日本文並びにインド語による成文が間に合わなかつた関係がございました。併しながら早く双方で固めてしまおうじやないかという双方の合意によりまして、英文だけで調印をしておる條約も国家間等の関係では多数ございますが、差当り英文に調印をするということにいたしまして、今お手許にございます日本文はその英文の校訂訳と言いますか、訳文の恰好になつております。併しながら日本文による本文とインド語による本文は、一ヵ月以内に双方で交換をいたしまして、そしてそれを成文とするということに合意がきまつたわけであります。これもこの條約の交渉経過並びに両国の気持がそういうふうに向きましたので、急いでそういうふうな取極になつたという点でございます。大体以上のような四つの点が、特にこの條約を通じまして、あらかじめ申述べておきたいと思つた点でございます。  さて前文から御説明を申上げますが、前文には大した問題はございません。ただその二項のところにおきまして、先も言及いたしましたが、国際連合憲章の原則に基いて双方が協力をするという希望を持つておりますので、この点を特にはつきり明記したわけであります。  それから第一条、第一条は先ほどこれも御説明をいたしましたように、この条約、つまり戦争状態が済みましたあと、戦争の跡始末だけではなくて、両国間に堅固且つ永久の平和並びに友好関係が存在するということを両国においてはつきりここに合意したことを明記しようということになつて、この第一条が置かれることになつたわけであります。第二条以下は先ほど申しましたようなことでございますが、その第二条は、これは通商関係に関する条項でございます。その第二条の(a)というところに、将来本格的な通商、航海条約締結しようという趣旨を明らかにしまして、そのために交渉を開始することに同意をするということを明記しておるわけであります。それから第二条の(b)、これはその本格的な通商、航海条約ができるまでにおいて、何らか暫定的な規定を設けたい、これは大体そういうような趣旨のものがサンフランンスコ条約の十二条にも規定せられておりまするし、それから日華条約の議定書の後半にも同様の取極をしておりますが、インドとの関係においても大体サンフランシスコ条約の例にならいまして、インド政府日本国との間の戦争状態を終結する告示を発した日、つまり去る四月二十八日でございますが、その日から四年間、以下のような取極で通商をやつて行こうということに合意したわけであります。その(b)の(1)の点は、航空交通に関してでありますが、その航空交通について、これもサンフランシスコ条約にも規定がございます。独立の条文になつておりますが、ここではインドとの間に相互に最恵国待遇を与えるようにしようというような規定になつておる。結局こういうような書き方をいたしますと、若しも間もなくインドとの間に、四年以内において航空協定、航空交通に関する協定ができますれば、それによる、若しもそれができなければ最恵国待遇を相互に与えるということになるわけであります。それから第二条の(b)の(2)のところでございますが、これは締約国は相互に最恵国待遇を与えようということを規定した部分であります。この文章は比較的どうも読みにくいかと存じますが、要するにこの中で、この前半のところで、大体六つの事項について最恵国待遇を相互に与えるということを規定しておるわけであります。その日本文も割合読みにくいので、それじや六つとはどこで切るのかということを今ちよつと申上げてみたいと思いますが、第一は「関税及びすべての種類の課徴金」、これが第一の項目でございます。それから第二の項目が、「貨物の輸入及び輸出に関連する制限その他の規制」、これが第二の項目であります。それから第三の項目が「輸入若しくは輸出のための支払手段の国際的移転に課せられる制限その他の規制」というのが第三の項目でございます。第四が「関税及び課徴金の徴収の方法」というのが第四の項目、第五の項目が「輸入及び輸出に関連するすべての規則及び方式」、第六がその次の「通関に際して課せられる課徴金」、そういう六つの事柄について相互に最恵国待遇を与えるということを規定しておるわけであります。その後半のところは、これは念のためにそれを繰返して申しただけのことであります。それから次の三項、(b)(3)のところは、これは内国民待遇を与える。その与え方は「インドが内国民待遇を日本国に与える限度において、内国民待遇をインドにも与える。」ということを書いております。実はインドが現在内国民待遇を外国に与えておりますところは殆んどない。我々が現在承知しておりますのは、ネパール一国、小さなネパールという国がインドの北にございますが、ネパール国だけは内国民待遇を与えておるということのようであります。そのほかにはインドは現在外国に内国民待遇を与えておらんということでありますし、又今後も果して内国民待遇を与えるかどうか、殊に我が国に与えるかどうかはこれははつきりいたしません。が、とにかくインドが内国民待遇を日本に与えるということになれば、その限度において日本も与えるという一種の念のための規定のようなわけであります。その次の項でございますが、それは、以上の最恵国待遇並びに内国民待遇というものを規定をしておる主としてこの(b)項の適用について例外を書いておるわけであります。その例外の第一は「通商条約に通常規定されている例外に基くもの、」、これはその最恵国待遇、内国民待遇の例外と考える。次の例外は「対外的財政状態若しくは国際収支を保護する必要に基くもの」、これは諸般の為替関係から生ずる措置であります。第三番目が「重大な安全上の利益を維持する必要に基くもの」、而もそれは「ほしいままな又は不合理な方法で適用されない」、そういう重大な安全上の利益を維持するための必要な措置というものも例外に考えるということが明記されておるわけであります。次のところは「また、前記の(2)のいかなる規定も、千九百四十七年八月十五日前から存在し、又はインドが隣接国に与えている特恵又は利益には適用しないものとする。」、この「千九百四十七年八月十五日」というのは、インドが自治領になつた時でありますが、その以前からいわゆるコンモンウエルス・カントリーの間にある特恵又はインドが隣接国に与えておる利益というものはこれは適用しないと書いてあります。この件につきましては、その前段にあります「通商条約に通常規定されている例外に基くもの、」ということを特にここに抜き出して書いたわけであります。インドはエジプトだとか、オーストラリアだとか、スペインだとか、スウエーデンだとか、そういう国々の間との貿易協定においても、こういう特恵関係或いは利益について除外をするということを書いておりますが、特に大体これを特記しなくても「通商条約に通常規定されている例外に基くもの、」というところに入るという解釈でございますけれども、念のためにここに列挙をするということに合意をしたわけであります。なお、先ほど申上げました例外規定の三つの枠については、サンフランシスコ条約の十二条にもそれと同様の規定がございまして、十二条の(b)でございますが、大体同様の規定がございます。従つてこれもこういう例外規定を設けるということは、大体サンフランシスコ条約には傚つたものであり、その範囲で行なつたものであります。それからCはただあとにある五条の関係を留保して書いてあるだけであります。  次に三条に移りますが、三条はこれはサンフランシスコ条約の九条に対応する規定でございまして、若しもインド希望するならば、漁業の関係についてその制限或いは保存、発展ということについて協定をしようという両国の意思を書いたわけであります。漁業の関係につきましては、インドでは現在そういうような協定をしなければならんということを感じておらんようでありますけれども、念のためにこういうことを置こうではないかということで、これも一種の念のための規定でございます。  次に第四条に移りますが、この四条とそれから一つ飛びました第六条、これは特にこのたびいろいろ交渉をしました中で双方で大いに考えた点であります。従来我々の承知しておりますところでは、インド我が国に対して賠償はとらないというようなことを新聞等もインドの責任者のかたがたが発表しておりましたが、この交渉に当つても第六条の(a)に書いてありますように、最近インドは賠償はとらんというような意向は相当はつきりしておりまして、併しながらこのインドにある日本の財産をどうするかということについては必ずしもはつきりしておらなかつたわけでありますけれども、これは交渉の結果、主として我が国のほうの希望なり主張というものが容れられまして、そこの第四条にありますように、インドにあります日本国又はその国民の財産並びに利益を現状において区返還し、回復するということにインドが合意をしてくれたわけであります。特にこの点についてはネール首相が配慮をされたということも聞いております。  第五条は、これは日本にありますインドの財産或いは利益を返還するという規定でございますが、実は戦時中日本にございましたインドの……、戦時中我が国インドはその戦時中の大部分において敵国扱いをしておりません、又敵国人扱いをしておらなかつたのであります。従つていろいろな戦時措置を受けておらなかつたわけでありますけれども、英米その他の銀行等化預けておつたインド人の預金その他英米関係なんかと混入して戦時措置を受けたものが若干ある趣きでありますが、大体この返還するという第五条の適用を受けるインドの財産というものは極く少い範囲のものでございます。併しながら少いにしろ、とにかくインド関係の財産は日本側で返すということを日本側で約束をしたわけでありまして、更にそれが損害若しくは損傷を受けている場合には、我が国は連合国財産補償法というものの条件よりも不利でない条件で補償するということを約束したわけであります。この約束の結果、やはり恐らく今国会で、従来ございまする連合国財産補償法を何らか修正をして頂きまして、インドにも適用があるようにしてもらうということになると考えております。  第六条は、これはサンフランシスコ条約で申しますれば、十四条の賠償に関する規定に対応するものでありますが、この規定においてインドはサンフランシスコ条約とは違つて日本に対するすべての請求権を放棄するということをその第一項に申述べております。なお先に御説明しました第四条で、インドにある日本の財産をすべて返すということになりておるわけでありまして、更にこの第六条の(b)においてその他の請求権を放棄しておりますので、十四条の関係は、サンフランシスコ条約の十四条の関係は、我が国に大変有利なふうに解決ができる建前になつたわけであります。  それから次の第七条は、これは戦時中日本の裁判所が行なつた裁判判決で再審しなければならんというようなものがある際には、再審ができるような必要な措置をとることを日本が同意をしたということでございます。これも実は先ほど申上げましたように、インド人は敵国人扱いにされておりませんので、こういうような再審をしなければならんというような必要は、我々の承知しておる限り殆んどない模様でございますが、併しながら念のためにこれを置こうということで、サンフランシスコ条約の十七条というものに倣いまして、ここに規定をすることになつたわけであります。  第八条の規定は、サンフランシスコ条約の十八条に殆んど生き写しのような恰好でできた規定でございまして、戦争状態の存在ということのために、戦前の債権債務というものが影響を及ぼさないということを相互に書いたわけであります。それから外債の関係も、これも大体桑港条約通り。それから(C)のところはサンフランシスコ条約の規定よりは更にこれを双務的な書き方に改めているわけであります。  それから第九条は、これもサンフランシスコ条約十九条の規定と殆んどそのままで、ただサンフランシスコ条約関係から落ちておりますのは、ドイツの関係が落ちているだけで、殆んどそのまま書いてあり、戦争から生じた日本の請求権というものを日本が放棄するということであります。  それから第十条は、この条約について何らか紛争が起きた際にはどういうふうに解決するかということでございます。サンフランシスコ条約の二十二条では、司法裁判所に持つて行くような規定になつておりますけれども、インドとの関係においては、この十条の規定の通りに、できるだけ双方の協議によつて解決しよう、併しながら六ヵ月以上もかかつてまだ何ともならんというときには、更に相談の結果考える方法によつて、仲裁によつて片付けようということで、これも友好の精神から出たわけであります。  それから十一条批准の規定であります。それから末文のところは、最初に御説明申上げましたように、このたびの条約を成るべく本国会会期中に取運びたいという当方の意向にインドも賛成しまして、こういうような便法をとることにしたわけであります。  なお以上御説明いたしました十一条のほかに、ここでは交換公文一つ附いております。その交換公文は、先に御説明をいたしました第二条の末段のところに書きましたインドコンモンウエルス・カントリーに対して与えている特恵並びに利益というものを二条のところで書いておりますが、将来そういうようなものを又設けるかも知らん。而もそれを第三国に及ぼす際には、日本にもそれを及ぼすことにするという了解の下に、将来もそういうようなことが起るならば日本はこれを認めるという規定であります。なお申添えますが、この将来と申しましても、この通商関係についての取極は、先ほども申上げましたように、四年間が限度でありまして、而もそれは四年を待たずして、できるだけ早く双方が本格的の通商条約締結したいという希望を持つておりますので、恐らく四年を出でずして本格的のものができる。そうすれば第二条並びに交換公文関係は、更に本格的な通商条約の中で再検討されて取入れられるということになるわけでございます。  以上を以て、簡単でございますが、逐条の説明に代えます。
  144. 有馬英二

    委員長(有馬英二君) それではこれを以て散会といたします。    午後四時四十八分散会