運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-05-27 第13回国会 参議院 外務委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十七日(火曜日)    午後一時三十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     有馬 英二君    理事            徳川 頼貞君            野田 俊作君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            伊達源一郎君            金子 洋文君            大隈 信幸君            大山 郁夫君            兼岩 傳一君   政府委員    外務政務次官  石原幹市郎君    外務参事官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君    外務省アジア局    長       倭島 英二君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   説明員    外務省国際協長    力局第一課   須山 達夫君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○中華民国との平和條約の締結につい  て承認を求めるの件(内閣送付) ○国際連合への加盟について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは本日の外務委員会を開会いたします。  中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。先ず政府説明を求めます。
  3. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 御審議頂きまする日本国中華民国との間の平和條約について御説明を申上げたいと思います。すでにお手許にこの條約の説明書を差上げておりますので、御覧頂いておるかと思いますが、全般的に大体の御説明を申上げようかと思います。  先ず先般本條約を提案いたしました際に、その提案理由説明いたしました際に、大臣から一応申上げたわけでありますが、先ず全般的にこの條約の何と申しますか、政府交渉いたしましたときの基本的な考え方を二、三申上げておきたいと思います。そうすれば逐條的にあとで御説明をする際の、何らかの御参考になるかと思うのであります。  第一にこの條約の交渉に当りまして基本的な問題として考えられましたのは、今般の條約はサン・フフンシスコ條約の原則に基いてやろうということになりまして、而もその原則に基いて二国間の條約を締結する。従つてその二国間でございますから、二国間に関係のある事項規定をするというのが建前でございまして、サン・フランシスコ條約の中には多数の国家が入つておりまので、いろいろな規定が盛られているわけでありますが、このたびの中華民国との間では、我が国中華民国との間の直接の関係のある事項に成るべく限りたいというのが、我々の交渉一つ考え方であつたわけであります。ただ中国のほうではできるだけ、あのサン・フフンシスコ條約のときに招請せられなかつた、参加しなかつたということを大変残念に思つたらしくて、なるたけサン・フランシスコ條約に近いものを結びたいというのが中国側希望であり考え方でございます。従つて中国側最初に提案しました第一回の草案においては、サン・フランシスコ條約の全体の二十七條あるうちから、どう見ても我が国との間に関係がないという数ヵ條を落しまして、二十二ヵ條ぐらいの草案をこさえております。我々のほうはこれに対して極く簡單な、二国に直接関係ある條約を考えておつたのでありますが、結局いろいろ交渉の結果、最後に調印されましたように、十四ヵ條にするということに落ちついたわけであります。  それから第二に、交渉の際に考えられた問題は、中国がいろいろな、皆様も御存じのような経緯を経まして、現在中華民国政府台湾にあるという特別な状況現実状況がございますが、我が国といたしましては、できるだけ現実状況というものに即応した條約を作りたいという重なる紙の上のペーパー・アレインジメントというような條約はできるだけ避けたいという方針を持つてつたのでありますが、中国側のほうでは現在の困難なる状況のみではなくして、いろいろまだ将来の発展、従来の経緯というものを考えたそういうことを取入れた條約にしたいという希望が強かつたわけであります。従つて最後にできました條約は、そういう双方の国の考えをいろいろ話し合つて盛つたわけであります。それからこの條約交渉に当りまして、あとで各條について又御説明を申上げますが、先ほど申上げましたように、サン・フランシスコ條約の方針、基本的な考え方に従うと申しましても、我がほうとしましては、できるだけこれを相互的に平等の立場締結する條約にしたいというのが、我々の方針でございまして、サン・フランシスコ條約においては、片務的な書き方になつているところも、この日華條約におきましては、相互的、或いは平等の立場でこれをきめるという建前に大部分つております。大体以上のような考え方が條約全体を通じましての、特に我がほうの方針であつたわけであります。  さてこれから條約の案文について大体御説明申上げたいと思います。條約の前文につきましては、大体御覧になりますように、善隣関係、緊密な協力ということと、戰争状態の結果生じた諸問題の解決という三つ事柄相互に考慮しまして、この條約を締結することになつたのだということで、この点については特に問題がないかと存じます。  それから全権の任命権者の問題につきまして、日本国政府ということと、中華民国大統領ということになつておりますが、これは御承知の通り我が国においても、憲法によつてその任命権者がきまつておりまするし、中国憲法によりますれば、又中国憲法では大統領ということになつておりますので、日本関係では政府中華民国関係では大統領ということになつたわけであります。  第一條に移りますが、第一條もこれは戰争状態を終了するという規定でございます。特にこの関係で御説明を附加いたしますれば、中華民国我が国に対して宣戰を布告いたしましたのは、一九四一年十二月九日ということでこざりいまして、この布告せられた戰争状態を、この條約の成立によつて終了せしめるという趣旨規定でございます。  第二條は、これはサン・フランシスコ條約の二條規定せられたもののうち、中華民国関係の深い條項が記載せられておるわけであります。従つてここにもはつきりサンフランシスコ條約の「第二條に基き」ということを書きまして台湾澎湖島新南群島西沙群島というものに対する権利権原請求権を放棄したという事実をここにそういうことがサン・フランシスコ條約に規定せられておる、そうなつておるという事実をここに書いたもけであります。  第三條は、これは台湾並び澎湖島に関する財産と、請求権関係をどう取扱うかという規定でございまして、結局我が国と、中華民国政府との間の特別取極めの主題として、今後交渉をしてこれをきめるという趣旨規定でございます。  その次の第四條は、中華民国が、我が国に対して宣戦を布告いたしまする前に、日本中国との間で締結せられましたすべての條約、協約協定は戦争の結果として無効となつたという事実をここに記載したわけであります。ここに申しまする中国というのは、これは中華民国のみならずそれ以前の清国との関係の條約、協定協約等を含むという趣旨でございます。  次の第五條は、これ又サン・フランシスコ條約に規定せられておりまする事実をここに書いたわけでありまして、中国関係した特殊の権利権原利益を放棄しておるという事実をここに記載して、すでにサン・フランシスコ條約できまつていることをここに又載せたわけであります。  次の第六條は、二つ部分に分かれておりますが、第一項の点で両国相互関係において国際連合憲章二條原則を指針とすることを約束した。それから次の第二項は、国際連合憲章原則従つて協力するということであるが、特に経済の分野において協力をするという趣旨のものであります。  それから第七條、第八條、第九條、この三ヵ條におきましては、将来この関係の條約或いは協定締結することに努力をするという條文になつております。第七條は、通商関係の條約或いは協定を速かに締結するように努力をしよう、これは双方がそういうふうに合意するということであります。  それから八條は、民間航空について更に協定を速かに締結するように努力しよう。  それから第九條は、漁業の関係について條約或いは協定を速かに締結することに努力しよう。この三箇條とも今後の努力をしようということをお互いに約したわけであります。  第十條は、これは台湾並び澎湖島住民或いはそこに前住民であつた人日本に来たり或いはほかの国に行つている場合もございますが、その人たちの主として便宜のために設けられた條文でございまして、便宜と申しますと、例えば現在の法律上の建前では台湾並び澎湖島というものの最終的な領土帰属はつきりしておらないわけでありまして、而も台湾並び澎湖島サン・フランシスコ條約が発効いたしますと、我が国から離れてしまう、離れてしまうについて、而も従来台湾籍民と言われておつた人たち日本国籍を失う、而も失つたあとその国籍はつきりしないままであつては甚だ不便でありまして、旅行するとき等にどこの旅券を持つて来れば我が国に入るときに認めるというような問題を生じますので、この十條においては台湾並び澎湖島住民或いは以前にそこの住民であつた者或いはその子孫というものは中華民国国籍を有するものとみなす。中華民国国民に含まれているものとみなす、みなすという規定であります。  それからちよつと十一條を飛ばしまして十二條、十一條あとで申しますが、十二條は、これは若しもこの條約の解決の際に紛争が生じたような場合には、平和的手段によつて解決しようということであり、十三條は批准の関係。十四條はどういう言葉を使うかという條文であります。  それで今まで御説明申上げました各條は大体まあ中華民国我が国との間に直接こういう規定を設けておくべきだとか、設けておいたほうが便利であるとかいう規定でございますが、十一條はこれと多少趣きを異にいたしまして「この條約及びこれを補足する文書に別段の定がある場合を除く外、日本国中華民国との間に戰争状態存在の結果として生じた問題は、サン・フランシスコ條約の相当規定従つて解決するものとする。」という規定でございます。この條約文或いは議定書交換公文その他の附属文書で定めた別段の定があるものはそれに全部よる、このほかに現在考えて見て直接関係はないと思われる或いは関係があつても、もうときたま何かそういうケースもあり得るというようなものも考え得るので、そういう事柄が起つた際にはそれを処理するのはサン・フランシスコ條約の相当規定によつてこれを処理しようということであります。従つてこの十一條とほかの條文と大体ひつくるめて中国側希望のように大体サン・フランシスコ條約にほぼ近いものにしたいという希望に近付いたわけでありまして、かかる規定を置くことになつたわけであります。  大体それで簡單でございますけれども、この條約の本文のほうの御説明に代えたいと存じます。  次は、議定書でございますが、議定書二つ部分からなつております。第一は、今御説明申上げました十一條について更に次のような了解をするということが三つ書いてございます。それから第三の部分通商関係でございます。  第一の第十一條適用についての了解というものの第一点は、サン・フランシスコ條相当規定によつて解決するということになつておりますが、十一條はそういう建前になつておりますが、そのサン・フランシスコ條約にいろいろ期間が出て来る場合がございます。その期間が出て来る場合にはその期間の始まるときでありますが、その始まるときにおける了解事項でございます。その期間中華民国領域のいずれの部分に関してもこの條約がこれらの部分に対して適用可能となつたときから直ちに開始する。まだ適用可能でない地域があるという建前であります。  それから第二項の点は、サン・フランシスコ條約第十四條の賠償に関する賠償條項が何にも書いてないと、第十一條規定によつて将来適用されることになるわけでありますが、その適用の問題につきまして「第十四條(a)1に基き日本国が提供すべき役務利益を自発的に放棄する。」ということを書いたわけであります。つまりサン・フランシスコ條約第十四條には(a)あと(b)二つございますが、その(a)の1のところにいわゆる役務賠償のことが書いてございます。その役務賠償というものは、中華民国日本国民に対する寛厚と善意の表徴としてこれを自発的に放棄するということをここに書いたわけであります。従つてここにこういう規定がございますと、十四條の適用ということが起きましても、十四條の適用からサン・フランシスコ條約の……、ちよつと間違えました、こういうふうな規定がございますと、この條約の第十一條規定適用ということで、サン・フランシスコ條約の第十四條が引かれるような状態が生じましても、役務賠償ということは起らないということをここに明確にしたわけであります。  第三項の点は、サン・フランシスコ條約の十一條、これは戰犯関係條項でございますが、この戰犯関係とそれから十八條、これは戰前の債権債務の問題でありますが、その二つサン・フランシスコ條約の條項は、日華両国関係においては実施しない。つまり條約の第十一條の実施から除外するということを明らかにしたわけであります。  次に通商航海のところに移りますが、先ほども御説明申上げましたように通商航海につきましては、この日華條約の第七條で将来速かに本格的な條約を締結するということになつておりますが、差当つて両国間の協定を設けようということになりまして而もそれはこの部分に明らかに、末項に明らかになつておりますように、一年間を限つて通商関係についての規定を置いたわけであります。これは従つて暫定的な規定である、而もこの規定の中にはサン・フフンシスコ條約の建前では、国民産品及び船舶というものについて最恵国待遇というものと、或いは場合によつては内国民待遇ということを規定しておるのでありますが、この際日華間り條約、而もそれか一年間の暫定的な取極においては内国民待遇という問題を外しまして、最恵国待遇ということだけについてここに規定を設けたわけであります。これくらいで差当りつてつて、間もなく本格的なものに移りたいという考えから、この程度の規定なつたわけであります。その中で(a)の(1)は大体ここに書いてあるところで明瞭だと思います。貨物の輸出入に対して、又はこれに関連する関税、課金、制限その他の規制に関して最恵国待遇を與えることを相互約束をする。  それから(a)あの(11)のほうは海運、航海及び輸入貨物に関する最恵国待遇関係規定しておるわけであります。  それから(b)の点につきましては、最恵国待遇を與えるということを約束をしたわけでありますが、最恵国待遇を與える結果、内国民待遇を結局許與することになり、その内国民待遇を許與する結果を生ずる際に、いずれの国よりも、他の国よりも余計多く待遇を與える、許與するという結果にならんように相互に大体平等な関係、内国民待遇を許與するようにしようというのがこの(b)の規定でございます。  それから(c)の規定は、これも別に大して説明を要しないと思いますが、政府商企業の国外における売買は、商業的考慮だけでやる、ほかの政治的な考慮等によつて操作しようという規定であります。  それから(d)はこの取極の適用に当つて船舶の籍はどう考えるか、又産品はどういうふうに考えるかという規定でございます。  それから(d)の(11)の点は差別、その差別待遇を絶対しない建前になつておるのが普通の條約の建前でありますが、特にこのような場合、例えば内水航行だとか、沿岸貿易だとか、或いは為替の安定のために国がとる措置というようなことについては、差別待遇をとり得るということを明らかにしたわけであります。  議定書はそれくらいにいたしまして次に交換公文に移りたいと思います。交換公文三つございまして、第一号、第二号、何も何号という号がついておりませんが、もう一つ第三番目に交換公文がございます。  第一号の交換公文は、これは多少この條約に特有と申しますか、特別なものかと思います。最初に御説明申上げましたように日本政府建前といたしましてはこの條約はできるだけ現実の事態に即するようにしたいという方針でございまして、その趣旨から、この條約が適用せられる範囲と申しますか、適用せられる関係について双方了解をしておきたいというのがこの第一号の交換公文趣旨でございます。即ち「この條約の條項が、中華民国に関しては、中華民国政府支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域適用がある」ということについて双方政府了解をするという趣旨交換公文であります。  それから第二号の交換公文は、これは民間航空関係でございますが、これについて、民間航空についても先ほど御説明を申上げましたように條約文の第八條の中で将来速かに本格的な航空関係協定をするということを約束をしておりますが、その協定締結されるまでの間は、サン・フランシスコ條約の関係規定適用される。この点は中国側方現在持つております航空関係の乗入れ等の権益を差当り認めるという趣旨の書簡であります。  それから三番日の交換公文は、これは従来我が国の漁船がマッカーサー・ラインを突破したとか、それに触れたということで中華民国政府で抑留をしました船が二十九隻ほどございましたが、その二十九隻の処分の問題は、戰争中に起きた請求権の問題とは切離して、それとは別途に両国交渉をして解決をしようということになりまして、その趣旨でここに交換公文を取交したわけであります。従つてこの二十九隻の拿捕されている船については、今後交渉をして解決をするということになるわけであります。  御参考までに更に同意された議事録というものがお手許に配付されておりますが、これは以上申述べました條約の本文議定書或いは交換公文いずれの中においても触れなかつた、触れた問題もありますが、更にこの議事録の中において双方の国の了解はつきりしておこうじやないかという問題が四つございましたので、それで特に同意された議事録というものを作つたわけであります。議事録の第一は、先ほど御説明申上げました交換公文第一のこの條約の適用範囲書き方のところに中華民国政府支配下に現にあり、又今後入るすべての領域にこの條約の條項適用があると書いてございますが、その「現にあり、又は今後入るすべての領域」という表現の「又は」という問題について、中国側がこういう解釈をしたいという希望がありましたので、その通り解釈になつて異存がないということをはつきりしたわけであります。  それからこの議事録の第二点は、これも中華民国代表がその了解した、自分が了解をするところと日本了解するところと同一であるかどうかという質問をしたのに対して、同一であると言つたのでありますが、その事柄はそこに書いてあります通り、従来満洲国とか江精衛政権等日本に持つてつた財産権利利益というものについて、サン・フランシスコ條約か或いはこの日華條約の規定従つて双方が同意した際に処理をするというふうに考えるがどうかということで、その通りであるという返事をしたのであります。  第三の点は、これはちよつとこみ入つておりますが、先ほどちよつと御説明申上げましたように、この日華條約の第十一條というところによつてサン・フランシスコ條約の第十四條というものが適用される関係が生ずる。その適用される関係の中で、役務賠償というものは積極的に捨てるということを書いてありますが、今度はもう一つ十四條の(a)の2のところに、在外の資産はこれを関係国が取るということになつておる。併しその中で外交機関関係財産はこれは取らないで免除するという書き方になつております。ところがこの中華民国関係につきましては、その外交関係財産にいたしても、中華民国の同意なしに設置された外交上又は領事上の機関財産というものは、これは免除しないというふにしたい。多少持つて廻つた言い方でありますが、それは取上げるというふうな了解にしたい、その通りであるか、日本側はその通りであるとこれに同意したわけであります。  それから議事録最後の点は、これも今引用しましたサン・フランシスコ條約第十四條の解釈についてでありますが、多少疑義もないではないということもありましたので、双方の間ではつきりしておこうということになりまして、第十四條の賠償に関する規定の(a)というところでは、役務賠償とそれから在外財産の問題と二つあるので、それで中華民国役務賠償を放棄したということであるから、十四條というものの適用で残るのは在外中国にある財産だけであるという了解でありますが、そういうふうに了解してよろしいかというので、我が国のほうからその了解について念を押しまして、中国のほうでそうであるというふうに合意したわけであります。  以上で條約の本文と、それから議定書交換公文、更に参考として今御説明申上げました議事録が結ばれてこれで本條約の関係文書は全部であります。一応御説明申上げます。   —————————————
  4. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは次に国際連合への加盟について承認を求めるの件を議題といたします。前回に引続いて質疑を行います。
  5. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと速記をとめて懇談会の形態でお願いしたいのですが……。
  6. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 速記をとめて。    〔速記中止
  7. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 速記を始めて。
  8. 大山郁夫

    大山郁夫君 それではどこから始めていいかわからんけれども、やはりその国連憲章の第七條ですね、それに関することはかなり日本立場から重大な関係があるのじやないか。殊に国連加入の可否を決定する上において非常に重大な関係があるのじやないかというふうに考えられるので、私はまだ條文をすつかり精読していないので、とんちんかんの質問をするのではないかということを多少恐れるのですが、併しこの第一條の平和に対する脅威平和破壊及び侵略行為に関する行動、あそこで安全保障理事会が平和に対する脅威とか、平和の破壊又は侵略行為存在を次定する、こういうふうになつてそれからいよいよどこかの国が侵略するというふうな決定をしたときには、或る場合には軍事行動をとる、決定する、軍事行動をとるということを決定するということがあとから出て来るというふうに思つていますが、軍事行動をとるということを決定するというと、各国に、加盟国にいろいろ要求をするということになつて来るので、又この兵力とか、それから何とか便益とか、そのほかのものを提供せしめるというような非常に重大な結果を含むようなことになつて来るので、それで侵略というのは一体どういうふうに考えておるのか。国際間に侵略に対する定義考えられておるか、又日本政府はどういうふうに考えておられるかということ、その侵略定義を尋ねてみたい。というのは、この一昨年の、国連安全保障理事会においてソ連の代表のマリクが、たしか、あの朝鮮の問題はこれは内乱の問題で国際間の問題じやない、一つの国に二つのセクションがあつて南北相争つておるので、つまり民族統一ということを中心にして争つてつたのだが、併しこの侵略という二とは国際間の問題で一つ国家が他の国家に襲撃を加える、そういうときに侵略の問題が生ずる、即ち一つ国家が他の国家を襲うということは侵略であります。併し朝鮮の場合にはそういうことがないというような説明をしておつたので、この説明はかなり私に受入れらるように思うし、又国際間に受入れられているということをマリクが言つたと思うのです。一九三三年の国際連盟においてソ逋が説明をして、大体実質的にその説明を受入れられたというような、こういう演説をしておつたように思うのです。私は病中に読んだので読み違いしているかも知れないけれども、だけれどもマリクは確かにそういう説明をしておつたのです。その説明は非常に尤もらしいと思う。それで国際連合が、安全保障理事会侵略があると決定するときには、その結果が非常に重大だから、従つてその国際連合において侵略というものにどういう定義がとられておるか、どういうふうに考えられておるか、又日本政府がどういう定義を受入れられておるかということが、これが大変重大な問題となつて来ると思うので、先ずその点から政府の意見をお伺いしたのであります。どういう定義をとつておるか、立場をとつておるかということさえ、それを伺えば私の意思は達せられると思うのです。
  9. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 只今のお尋ねでありまするが、この侵略ということの定義というようなものは、これは別にないかと思うのでありますが、ただその事態が起りました際の各般の情勢を総合判断いたしまして、その都度安全保障理事会といいまするか、この国連の組織において判断を下している、こういうことになるのではないかと思うのでありまして、なお若干技術的のことにもなりますので、そのほうの專門の須山説明員から補足させることにいたします。
  10. 大山郁夫

    大山郁夫君 これを聞かないと、これは非常に重大なことじやないか、根本的に重大な問題じやないかと思うのです。この説明を是非聞きたいと思うのです。
  11. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) 侵略定義につきましては、只今御質問の中でお述べになりましたように、非常に議論が多い問題であります。で、国際連合といたしましては、この非常にむずかしい問題を、只今までのところどの機関においても解決済みまでには行つておりません。それでありますから、先ほど政務次官から述べられましたように、安全保障理事会が、現に或る行為を目指して、どれが侵略行為であるかということをみずから決定するわけで、その場合の準則というものはできていないわけでございます。
  12. 大山郁夫

    大山郁夫君 それじや同じような事態があつても、つまり安全保障理事会の頭次第で、それが侵略なつたり、侵略にならなかつたりするような場合も考えられるのですか。そのときの風次第で或る行為が侵略なつたり、侵略にならなかつたりするというような御説明のようにも思うのでありますが、そういうあやふやなものでしようか。
  13. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) 平和に対する脅威にいたしましても、平和の破壊にいたしましても、侵略行為ということにいたしましても、安全保障理事会の決定がそういうふうになれば、そういうふうになるのでありまして、安全保障理事会には御承知の通り五大国一致の原則がありまして、それが手続の問題以外の場合には適用があるわけでありまして、一国でも、五大国のうちの一つが、これは平和に対する脅威でない、或いは平和の破壊でない、又は侵略行為存在がないと認める場合には、そういう決議は成立しないというのが普通の場合のことであります。
  14. 大山郁夫

    大山郁夫君 認める………。
  15. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) いや認められないわけであります。一つの、五大国のうちの一つがそう見ない場合には、そう見られないということになるわけでございます。
  16. 大山郁夫

    大山郁夫君 そうすると、ちよつとこの安全保障理事会で多分六月の二十五日か、八日か、デートを忘れましたが、ああいう決議をするときには、勿論その五大国のうちの中国からの代表は出なかつた。勿論国民政府代表はおつたけれども、併し国民政府だけで、たしか中国政府というものは出ていないと思うのでありますが、勿論中国国際連合に列席いたしていなかつたからかも知れないけれども、その原因から、ソ連側の代表があのときいなかつたと思うのでありますが、つまり五大国のうち二大国が抜けている、それで決議して、それで侵略だというレッテルが貼られたように私は記憶しているのですが、あの場合には五大国が揃つて意見が合致しなければ、その決議は成り立たないというのだが、あの場合には成立ち得るということを認めるわけなんでしようか。その点をはつきりと一つ……。
  17. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは中国側としましては、例の国民政府代表がこの会議にたしか出ておつたわけでございまして、それからああいう事態の処理は緊急に判断をいたしまして対処しなきやならない、こういうことでたしか、まあソ連はいなかつたようでありまするが、緊急事態として開会をして決定して行つたものと考えるのであります。
  18. 大山郁夫

    大山郁夫君 緊急事態にそういうことができるという條文の基礎はどこにあるのでしようか。国連にそれはないと思うのです。勿論私は国連憲章を実は皆読んでしまつておるわけではないから、或いは私の思い過ごしかも知れませんが……。
  19. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) ああいう事態が起りました際に、これに対する措置というものは遷延、ぐずぐずしておつては、これは効果が挙らないということから、急速にそれに対する対処策を講じなければならんわけでございますから、そのときたしかソ連のほうは出席がなかつたわけであります。ないけれども、飽くまで待つというわけにも行かないということで、急速に決定し、ああいう措置が始められたのである、かように私は考えております。
  20. 大山郁夫

    大山郁夫君 それは確かにそういうふうに了解しておりますが、併しその條文の基礎がどこにあるかということなのです。  それから又ソ連が出席しなかつたというのは、中国政府が、中国の人民が認めた政府がそこへおらないから、すべてのことは無効だと、こういう理由でソ連が出席していなかつたので、ただ勝手に出席していなかつたのとわけが違うのでありますが、そういう場合にも、いなかつたけれども、緊急事態と認めて、或る決議……その決議が有効になるというような、そういうようなことの條文の基礎がどこにあるのか、これを聞きたいのです。確かに五大国の意見が一致するということは、やはり国連の憲章を決定するに非常に重大な條項と見られたのです。それでソ連のほうからも主張したが、併しソ連のほうが主張しただけではなく、アメリカでもたしかソ連に主張したと思うのでありまして、アメリカはその條文が入らなかつた国際連合加盟しない。アメリカの声明というものはそれを條件として、そうして国連憲章を認めるというふうになつて、ヤルタの会議においても、かなりルーズベルトとスターリンなんかの両者が主張しておつたと私は了解をしておるのです。五ヵ国の意見が一致してはじめてその決議が有効になるということは……。だから非常に決議が重大なんだが、それほど重大となつておる決議というものを覆すほどの根拠がどこにあるかということ、その問題が聞きたいのです。
  21. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) いずれにしても当時の安全保障理事会に、ソ連側の出席がなかつたのであります。出席がなかつたという、任意に出席がなかつたという結果に基いて理事会が開かれ、ああいう措置が行われた、こういうことになつております。
  22. 大山郁夫

    大山郁夫君 任意に出席がなかつたと解することは、私としてはできないのではないかと思うのです。ソ連にも相当の理由があつたので、それに対する糾明も何もしていなかつたように思う。  それからもう一つ。勿論まあ速いことになりますが、たしかあのときは南鮮、或いは韓国、韓国のほうの代表者が呼ばれて自分たちの立場をステートメントした。それがあつたと思いますが、北鮮のほうではすつかり委員会として委員を任命してそうしていつでもできるように用意しておつて、自分たちの言うことも聞いてくれというふうに言つていたが、そのほうのことを国連のほうで聞かなかつたという、安保理事会のほうで聞かなかつたというように私は記憶しておるのでありますが、かなりあのときは非常に片手落ちな、お粗末千万な審議をして、決議をしたように考えておりますが、併し又そういうようなことは非常に各人の判断の問題になるから、そういう点を議論していたらきりがないと思うのでありますが、ただその條文があるかないか。條文の基礎があるかないかということはすぐ確められることなので、その條文の基礎があるかないか、それは一言にしてお答えができると思うのであります。それを聞きたいのです。ただその場合に、そういうように考えたからそういうことにしてしまつて、そうして決議したというだけでは、少し説明が足りないのじやないか。條文の基礎がどこにもあるか、これを聞きたい。
  23. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) これは当時の議事記録は何ら秘密になつておるわけではないのでありまして、世界のどの人もやろうと思えば、国連の本部なり何なりに行きまして議事録を見ることができるのであります。その議事録を我々も調べて見ておるわけでありますけれども、先ず第一に、五大国の一つが欠けておつたからその場合には決定ができないのではないか、欠けておつてもできるという條文を出せという御質問でありますが、これに対しましては、そのような議論をせずに直ちに理事会は決定をしたということを我々は知つておるだけでありまして、それ以上の、そのときの決定が合法であつたかなかつたかという議論は、後の理事会においてソ連代表がその合法性を争つたときに問題となつたわけであります。そうしていろいろ議論はなされまして、それも又皆新聞等で周知の事実でありますけれども、結局におきましてはこの時期における安全保障理事会行動を報告して総会に出さなければならない、これは又憲章の規定に基くものでありますけれども、その報告を採択いたします安全保障理事会は、これは秘密会でありましたが、結局あとの公表によりますと、この場合にはソ連代表もおりましたけれども、拒否権を用いずにそのままその報告は総会に……、ソ連はその場合には棄権をいたしまして、その報告はそのまま総会に提出されております。
  24. 大山郁夫

    大山郁夫君 それでソ連の代表のマリクがあの点を争つたことは勿論私も知つております。だが丁度あのときは私は死にそうな病気で、新聞も読んだり読まなかつたりして、あとのことは知らないのですが、併し争つたときに対してソ連以外の国から殊にアメリカ、イギリス、フランスのほうから何かそれに対する反対論を言つたに違いないと思うのでありますが、或いは言わなかつたのか、言つたとすればどういうことを言つたのか、その点を伺いたいのです。それさえ伺えば大体この問題は解決が付くのじやないか。勿論この侵略に対しては国際連盟時代においてもかなり論ぜられたので、きまつた意見がないうちに、或いは幾らかあるように記憶しております。過去の漠然たる記憶だから、はつきりと言うことはできませんが、相当に国際連盟においてもアグレツシヨンということに対するいろいろな論争があつたと思う。それから又一ヵ国が欠けていたときに決議をして無効だというようなことはこれはもう国連のあの手続法のうちにかなり大切な問題になつておるのじやないか。いわゆるサブスタンティヴ・マターとプロシデュラル・マターという二つつて、サブスタンテイヴ・マターのほうは必ず五大国が出席して行わなければならない。プロシデュラル・マターのほうは欠けていてもかまわないというように当時問題が論争せられておつたように、もう三年か五年かの前のことでありますが、甚だ記憶が漠然としておりますけれども、そういうことがあつたと思うのでありますが、この侵略という問題は、勿論誰が聞いても、いわゆるプロシデユラル・マターのほうでなくて、サプスタンテイブ・マターのほうに限つておるので、そうしてわざわざそのためにそういう規定があつたのだから、それを無視するについてはよほどの根拠がなければならないので、マリクの争つたのは私は尤もだと、こういうふうに読んでおりました。併しそれに対して何か反対論が出たのに違いないので、あのときは新聞を読んだり読まなかつたりしていたので、私はよく知らないので、それでお尋ねするので、どういう反対論が、それを覆えすほどの反対論はどういう基礎の上になされたかということをお尋ねしたいと思うのであります。
  25. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) それではその点を私のほうも記憶によつてお答えいたすわけでありますが、大体私の感じでは、二つの大きな議論がなされておるように思いました。その一つは、手続事項でない事項いわゆる実質的な事項について五大国の一つが棄権をしながらその決定が成立している例がそれまでにたくさん相当にあつた。表決の二十七條を読みますと、「常任理事国の同意投票を含む七理事国の賛成投票」がなければならんわけでありますけれども、すでに棄権の場合にもそういうような決定が成立する例ができておる。だから出て来ない場合にもそれと同じように考えられるという議論が一つであります。  それからもう一つは、憲章の二十八條に、安全保障理事会は継続して任務を行うことができるように組織するとあります。「継続して任務を行いうるように組織する。」、「シヤル・ビー・ソウ・オーガナイズド・アズ・ツー・ビー・エイブル・ツー・ファンクション・コンテイニュアスリイ」という言葉が使つてあります。組織していなければならないという意味が含まれておるわけでありますが、で「このために、安全保障理事会の各理事国は、この機構の所在地に常に代表者を置かなければならない。」、こういうふうに規定してありまして、安全保障理事会というのはこのように重要な役割を負つているのであるから、その理事国が必ず出て来れるようになつておらなければいけないということは、この二十八條規定してある。それにもかかわらず出て来なかつたというのは、出て来なかつた人がどうも工合が悪いのだというふうな駁論がなされておるというふうに私は記憶しております。
  26. 大山郁夫

    大山郁夫君 それで記憶から勿論言つて下さつて非常に有意義だつたと思うのでありますが、併しただ記憶というのでなしに、この点ははつきりして頂きたい。侵略ということは非常に重大な意味を帶びておると思います。殊にちよつと常識から言つて侵略ということは一つ国家と他の国家との間に行われることじやないかと思うのでありますが、同じ国の中において二つのセクションが争つておるということに侵略の問題が起るかということが一つ、それからもう一つは、先に手出しをしたほうが侵略だというようなことが言われる。それで北鮮のほうが先に手出したというのでありますが、又北鮮側の説明を聞いたりなんかしてみると、そうではなくて、あの李承晩の下において一つの軍隊ができた。アメリカが訓練して、非常に強い軍隊で、もう鎧袖一触で北鮮が参つてしまうというような考えで李承晩があの三十八度線をぐつと一齊に一面に越して、そうして先に手出ししたのであつて、それに対して抵抗して、あれが戰乱のもとだというのが、これは北鮮の立場だと思うのであります。北鮮がそういうような主張をしておつたように私は記憶しております。そうすると、やはり両方の意見が違つておるというと、東洋人の考えでは片言訴えを聞かずというようなことが滲みわたつておるので、私たちはやはりあのときに北鮮の代表者も呼んで、両方の場合からケースを成立さしてそうして最後に判断を下すのが、これは当然だと思うのでありますが、それをやらないで、片方だけの言うことを聞いてそうしてすつかり問題の答えをきめてしまつたというのは、かなり手続に大きな欠陷がある。常識から考えて、殆んど我々の理解を超越したようなやり方だというふうに考えるのでありますが、その点に対して政府はどういうふうにお考えでしようか。
  27. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) 只今の点につましては、少し事実の御記憶が違つておる点もあるかと存じます。それは北鮮のほうが李承晩のほうから先に手を出して来たのだということを申したかも知れませんけれども、国連のほうの安全保障理事会の決定は、先ず六月二十五日に行われたのでありますけれども、その日の決定は、この三十九條に基く侵略というものをまだ決定したわけではないのでありまして、その日には速やかに軍事行動を終止することを要求したわけであります。その次にはこれはどちらに対してということは言つてはおりません。ちよつと失礼しました。先ず第一にその日におきましては平和の破壊であるということは先ず第一に決定いたしております。そうしてその次に軍事行動を直ちに停止すること、それから北鮮に対しては直ちにその軍隊を三十八度線以内に引込めるようにということを要求いたしております。そうしてその決議のあとで、以前から国連総会の決議によつてできておりまして朝鮮に派遣されておりました朝鮮委員会、これは加盟国代表からできておる委員会でありますが、その委員会は朝鮮においていろいろな国際連合から任された任務を持つておりましたが、その中に監視して報告する任務があつたわけであります。その朝鮮委員会からの報告が来たので、六月二十七日の理事会は、その報告に基いて決議をいたしまして、その決議の中で、南鮮を助けて武力攻撃を撃退するために必要な援助を與えるようにということを国連加盟国に勧告したわけでありまして、最初の決議の場合には南鮮の説明は開いておらなかつたと記憶いたします。で二十五日はそうじやなくて、二十七日は、最も決定の主たる動機になつたのは、北鮮が二十五日の決議の要求に従つて軍事行動をやめなかつたということと、そのようなことが朝鮮委員会から、自分の国連機関である朝鮮委員会から報告があつたということを基礎にいたしておるというふうに了解いたしております。
  28. 大山郁夫

    大山郁夫君 それでつまりあの国連委員会といいますか、あのコミッションは、あれはどういうふうな構成だつたか、かなり不公平なものであつたように私は記憶しておるのでありますが、その構成はどういうものであつて、又その国連委員会というのがどういうようなソースからいろいろなインフオーメーシヨンを得たかということですね、そういうこともいろいろこの問題を解決するに重大なデーターじやないかと思う。そういう点についてちよつとはつきりさせた御答弁を願いたいと思うのですね。これはもう議論じやなくて、事実なんですから……。
  29. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) そのときの朝鮮委員会のメンバーにつきましては、手許にどの国がおつたかということは資料がございませんので、只今すぐというわけには参りません。
  30. 大山郁夫

    大山郁夫君 この次のときにでもちよつと伺いたいと思います。  それからまだちよつと私質問を整理していないんだが、それで国連がいよいよ或る国が侵略者だというふうに決定した場合に、加盟国に対していろいろな要求をする。これは第四十三條じやなかつたかと思いますが、国際平和及び安全の維持に貢献せんがため、国連のすべての加盟国は、安全保障理事会の要求に基き、且つ特別協定従つて国際平和及び安全の維持のため必要な武装軍隊、援助及び通過権を含む便益を利用させることは約束する。こういうふうに、安全保障理事会のほうから要求があつた場合に、特別の協定従つて、要求せられるままに武装軍隊だとか、援助及び通過権を含む便益を利用させることを約束する、こういうふうになつておるのでありますが、これは、国連は全部一遍に要求する場合もあれば、又このうちの一つずつ、即ち或る場合においては武装軍隊、或る場合においては武装軍隊は要求しないけれども、そのほかの援助とかそれから便益とかいうふうに一つ一つのものを分けて、そうして全部一遍に要求するのじやなくて或る場合においては一つだけ、或る場合においては全部というように、そういうふうな取極めになつているのでしようか。一つずつ分けて考えることができるか、みんな一つの総括的に考えなければならんのか。私の言うこと意味わかりましたかどうか知らないが……。
  31. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 国連憲章四十三條の特別協定というのは、これは実はまだできていないのであります。だからこの特別協定に基いて発動するという事態には現在のところでは国連の組織はまだなつておりません。
  32. 大山郁夫

    大山郁夫君 そうすると、仮に全部一遍に提供することを要求された場合には、例えば甘木がそういう要求を受けた場合には、武装軍隊を供給しなければならないということになつて来ると、今の日本憲法に確かに牴触することになるわけですね。憲法第九條と両立しないわけになるわけだが、そういうときにはどうなるんですか。
  33. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 先ほど申上げましたように、この四十三條の特別協定はまだできておりませんから、そういう問題はないと思いまするし、それから又日本は御承知のごとく現在の憲法によりまして軍備は全然持つていないのでありまするから、只今仮定的の御質問をなさいましたような事態は起らないと思います。
  34. 大山郁夫

    大山郁夫君 仮定的と言われるけれども、起り得ることなんで、その用意はして置かなければならない。そんなことは考えないで国際連合へ飛び込んでしまつて、そうしていよいよそういう事態になつて武装軍隊を要求されるというようなことがあつたり、それからその他の便益を提供しろというような要求があつたときに、そのとき間に合わないようなことになるんだし、又事実加入するという段になつて来ると、又国際連合のほうからこういう問題を日本に向つて起すと思うのです。その時の答案をこちらは用意しておかなければならん。そういう意味から、一体これはどういうようなことを意味しておるのかということを究明しておかなくちやならん。それで私は、政府はどういう解釈をとつておいでになるかということをお尋ねしたいのです。
  35. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この四十三條の協定がまだないということは、先ほど申上げた通りでありまするが、仮にこの協定が或る国を中心として結ばれるようなことになりましても、日本がそれに入つてなければ、何もこれに基いて発動するということはあり得ないわけでありまして、日本は先ほども申上げましたように現在の憲法下におきましては軍備というものは持つてないのでありまするから、直接兵力を貸すとかどうとかというような特別協定に、仮に国連に加入いたしまして後においても、参加のあり得ようはずがない、こう只今のところでは考えております。
  36. 大山郁夫

    大山郁夫君 勿論その入つていないのだから、入らないときめてしまつては問題は起らないけれども、これから入ろうというようなふうに考えを向けて行けば問題になると思う。確かに問題になるはずなんですが、日本が問題にしなくても、こちらから加入さしてくれと言つて行けば、向うのほうから、お前のほうに武装軍隊があるか、それで国連のほうから要求するものに、要求に応じて、要求されたものを提供する力があるかということは、当然向うのほうから問題にすべきなんです。加入ということを考える以上は…。この問題は非常に重大だからあらかじめ考えておかなければならないので、その時になつてまごついてしまうというようなことがあつてはならないと、こう思うのであります。それでやはり、もつとはつきりお答えを得ておきたい。  それからもう一つ、私が尋ねたいのは、やはりいよいよ加入すつということになつて来ると、そういう要求にも応ずるような準備をしておかなくちやならないということになつて来ると、当然再軍備ということが問題になつて来る。今は警察予備隊は軍隊でないというふうに説明があつたように思うのでありまするが、だからもつと警察予備隊よりも装備のはつきりしてある軍隊を揃えておきたいと、こういうふうになつて来ると、又憲法の改正が問題になりやしないか。再軍備のために憲法を改正するということになつて来ると、国民は非常に反対するが、国連へ加するのだから再軍備をする、こういう意味を持つておる再軍備だから、憲法改正も相当に理由があるというようなところへ問題が行きやしないか、こういう気分が私はあるのです。やはりだからこの点ははつきりと政府のお答えを承わつておきたい、こう思うのであります。
  37. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この問題は今までもたびたび論議が大分繰返されておるのでございますが、日本はたびたび言つておりますように、軍備がないということは、これは御承知の通りであります。軍備を持つてないという前提の下に、国連加盟を申請しておるのでありまして、現在までのところ軍備のない国で現に加盟国もあり、その後加盟を認められた国もある、こういう事情を了承の下において加入の申請をしておるのでありまして、ただこの特別協定において、兵力その他を貸すということの協定には入り得ないのでありまするが、入つた以上はいろいろあらゆる援助と申しまするか、援助の関係には立たねばなりませんので、それは便益の供給とか、そういう日本憲法下において、許されておる範囲内の協力、援助、こういうことは勿論して行かなければならん、こういうふうに私は了解しておるのであります。
  38. 大山郁夫

    大山郁夫君 今の御説明一つはわかりました。即ち今日本は軍隊を持つておらないという前提で加盟を向うへ申請しておるというお話であつたのでありますが、そうすると結局日本に或る特例を認めさせる、即ちこの国連が、或る国を侵略したと認め、武力制裁を加えるということを決議したときに、日本だけはその武力制裁に参加する義務から解除せられる、こういう條件で国連へ入ることができるかという、そこへ問題が行きやしないかと思います。その点はどらですか。例えば国際連合のほうへはスイスは入つていない。というのは永世中立国だという理由で……、それじや永世中立ならこの義務が、つまり武装制裁に参加する義務が履行できないという建前に立つて、スイスというのは、国連へ入つていないと思うのであります。日本の場合は、若し武装を持つておらないで、日本の軍隊を持つておらないで、それでも入ろうというならば、スイスさえ得ておらない特例を、日本に認めさせようという建前から入つて行こうという意味でありましようか。
  39. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) スイスが入つてないことは、只今お話になりました通りでありまして、中立という観念は、この国連の思想とは必ずしも相容れない、こういうことになるのであります。それで日本は、先ほども申上げましたように、みずから武力を持つてこういう制裁行動に参加するということは、これは先ほどから申上げておるように、軍備がないから勿論これはできないことでありますが、併しその他の、いわゆる援助、通過に対していろいろの便益を供するとか或いは又施設を使わすとか、その他の協力、援助ということは、これは当然でき得る。国連に加入いたしました以上はでき得るわけであります。加入しなくてもすでに平和條約によりまして、国連憲章の精神に副うて、日本行動するということを謳つておるのであります。そういう面で協力援助が当然でき得ると私は確信をしております。
  40. 大山郁夫

    大山郁夫君 それではその兵力とかその他の援助とか便益ということを別々に考えるとこういうことができるのでございますね。一つのまとまつたものとして、全体として考えるのじやなくて、一つ一つが全体をなしておる、兵力は兵力として全体をなしておる、援助は援助として全体をなしておる、便益は便益として全体をなしておるものだというふうに、この三つ一つ一つ全体をなしておる、こういうふうに考えておるわけですか。
  41. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 四十三條の特別協定というものは、やはり国によりましていろいろのここに書かれてありますような、全部の援助、出動するという約束をする国もありましよう。又そのときの国情によりまして、兵力のない国も現にあるのであります。そういう国は兵力を出すという特別坂極をすることはこれはもう当然できない、そういう国はその他の援助、或いは便益を供する取極をする、こういうふうになるのじやないかと考えております。
  42. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 只今の大山先生の問題にしておられる点は、これは根本的な加盟に当つての重要な点で、はつきりしておかなければならない点だと私も思う。今までたびたび政府のほうで、この点についての見解を表明しておられる、これはそれとして私はわかるのでありまするが、これは今問題になつておる三十九條だけでなく、もつと前のこの第二條の大原則のところの、一般的の原則に基くところの関係においても問題になるので、非常に大事な点だと思うのですが、殊に日本政府の見解として、ここの先ほどの大山先生のお説のごとく、兵力とか援助とか便益とかというものを、それぞれ個別的に考え得るかどうかという点、これを若し総括的であるならば、その義務を日本は果し得ないと考える。どうしても個別的に分割してなし得ることでなくちやならんと思うのだが、それにしてもそういうふうに解釈することが国連においての一つの有権的の解釈に合致するというような根拠はどこにあるか。何かそういう点について私の推測では、この例えば平和條約の中に、すでに日本国連加盟の意思あることを宣言しておつて、連合国はこれを歓迎するということを言つておる。そして日本には現在軍備がないということは承知しておるから、あの平和條約に加盟した国に関する限りは、その辺の解釈で同様な解釈が推定されるのでありますが、あとのほうの、或いは平和條約に入つていない国の意思というものは、これははつきりしないのであります。例えば国連の事務当局あたりの憲章についての有権的な解釈でそういうふうになつておるというような、何か根拠がありますか。
  43. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) 憲章の解釈問題は、これは国際司法裁判所の勧告的意見を聞くのが通常でありまして、事務局の有権的解釈というようなものは、私聞いておらないのであります。ただ問題になつておりまする四十三條の特別協定というものは、これは先ほど説明されました通り、ソ連或いはイギリス、或いはアメリカもまだ特別協定というものは結んでおらないわけであります。
  44. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その点わかつておるのです。そういう問題じやない。
  45. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) 例えば国際連合に初めから加盟しておりますパナマとかコスタリカ、この両国は軍備を有しない国であります。それから後に加盟いたしましたアイスランドも又明白に軍備を持つておらないということを述べて加盟を認められておるような前例があるわけでございます。そういうことからして、それから又この四十三條の中に、その三項におきまして、特別協定というものは「署名国によつて各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。」ということが書いてありますので、当然に憲法の制約を受けるということは、四十三條の第三項のほうから意味がとれるわけであります。従つて初めから軍備のない国がおるということと、後に軍備のない国が入つて来たということ、それからこの四十三條の三項の憲法の制約を受けるという三つの点からして、軍備を有することが決して加盟の條件になつているとは考えておらない次第であります。
  46. 大山郁夫

    大山郁夫君 それではちよつと私の考え……、非常に言いにくいのですが、スイスの場合においては、スイスは永世中立の立場をとつておるからという理由で国連加盟しておらないし、加盟が許されておらないということになつておるわけでありますが、日本の場合は現在勿論憲法で軍隊を持つておらないということが一つと、もう一つは、これはポツダム宣言及び降伏文書で、日本は四つの国に対して、ともかく中立ということではないけれども、無條件降伏したというので、それからこの問題は変つていないと私は思うのでありますが、そうするとやはり中立という言葉は使えないにしても、事実上中立、どの国とも戰わないということを約束しておるようになつておるのではないか、降伏文書はつきり言つておる。ポツダム宣言のときは、あれが出されるときには三ヵ国だけで、後にソ連か来たので四つであるが、降伏文書では明らかに相手が四つになつておる。そうしてその四つの国に無條件降伏しておる、その文句が今そのまま、別に取消されておらないと思います。その点でスイスと同じ立場にあるのじやないか。それと竜講和條約或いは安保條約においてアメリカと軍事同盟を結んだような調子になつてつて、相手が侵略国として問題になる点があつて、相手があつて軍事同盟というものが結ばれたのだから、あのポツダム宣言によつて日本が持つてつたような中立的地位というものは全然なくなつてしまつた、そういう解釈なのでしようか。若しあの降伏文書に示してあるように、四つの国と戰さをしないというのならば、中立という文句は使つていないけれども、スイスと同じような中立の地位を保つて行くのじやないかと思う。そうすると、スイスも入れないのならば、日本も入れない、こういうことになつて来はしないか。それとも降伏文書で四つの国と戰わないという、無條件降伏というものは、講和條約によつて無効になつたのか、どつちの解釈をとるべきものかということをお尋ねしたいと思つております。
  47. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 日本はみずから戰争をするということは、これはあり得ないと思うのでありますが、併し世界平和維持のためにできておりまする国連には協力をして行きたい。こういうことでございまして、スイスは永世中立と言いますから、永世中立で、いわゆる国連がいろいろな行動をとる際にも、その立場上援助協力はできないということになりますから、当然加入を認められない、こういうことになつたと思うのであります。日本は別に永世中立と宣言しておるわけでもないのでありまして、みずから日本が、今お述べになりましたような国々と積極的に戰争をするなどということは、これはあり得ないと思いますが、国連協力するということは、これは何ら私は不思議はない、かように解釈したします。
  48. 大山郁夫

    大山郁夫君 永世中立ということを宣言はしておらないけれども、ポツダム宣言は、ともかく日本を民主化すると同時に、非軍事化するということを言つてしまつたので、非軍事化ということを認める以上は、もう戰争はしないという、あの時宣誓したのと同じ意味を持つておるのじやないか、こう思うのであります。中立という言葉が当らなくても、中立と似たような地位を日本が持つてつた。その解釈は、私は明らかにとれると思うのであります。併し講和條約及び安全保障條約によつて、もうそういうようなものは、日本は取消しも何もしやしないけれども、あの降伏文書によつて示したその日本の地位というものはすつかり消滅したのか、そういう解釈政府はとつておられるのか、これを聞きたい。
  49. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 御質問のお答えにちよつと距たるかどうかわかりませんが、ポツダム宣言というものはこの平和條約によりましてとつてつたと言いまするか、平和條約を結んで、それが発効したことによりまして、我々はポツダム宣言というものはもう、條約に代つておる。こういうふうに考えるのでありまして、その平和條約において日本国連に加入をしたい、又国連協力をすることを精神とするということを掲げておるのでございまして、お尋ねの趣旨に当つたかどうかわかりませんが、そういう建前から日本の只今のいろいろな措置がとられておるわけでございます。
  50. 大山郁夫

    大山郁夫君 それではその日本の講和條約によつて、ポツダム宣言の効力というものはすつかり消えてしまつたどいうお考えなのですね。甘木は別に何もそういうことは宣言しないけれども、講和條約を締結した、それでもうポツダム宣言の効力というものはすつかりなくなつてしまつたという解釈をとつておられる。それについてちよつと附け加えておきたいのは、確か降伏文書では四ヵ国を向うに廻して、そうして四ヵ国に対して日本は宣誓したのだが、あの講和條約というものはそのうちの二つの国は認めていないので、五分々々というわけにも行かない、四つのうちの二つの国は認めて、二つの国は認めていないというような、こういうような関係になつていやしないか。それにもかかわらず講和條約を日本は結んでしまつたので、そうしてあの二つの国、私は中国とそれからソ連のことを意味しておるのでありますが、中国台湾政府のことを言つておるのじやなくて、中国人民政府のことを言つておるのでありますが、二つ政府が認めなかつたのを、勝手に日本がそういう国と相談をしないで、もうポツダム宣言の効力は消えてしまつたというような解釈をとつて妥当なのでありましようか。政府はそれを妥当だと思つていらつしやるのか、これを聞きたい。
  51. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) ポツダム宣言はその目的を達しましてこれが終結をして平和條約に我々は代つたものとこういうふうに考えております。それから二つの国、二つの国とおつしやいまするが、二つの国をまあ中心といたします世界中の四十八ヵ国でありまするが、殆んど大多数の国とこの平和條約が調印されているわけでございまして、世界的に日本立場が、平和條約を中心とする立場が認められておると、我々はかように解釈をして行きたいと思います。
  52. 大山郁夫

    大山郁夫君 併しポツダム宣言に関する限りは、日本の相手は確か四つの国だというふうに考えております。勿論その講和條約のほうは又話は別問題になつて来るけれども、その講和條約のほうは多数の国がそれに参加しておる。それだから日本二つの国に対して何も相談しないでポツダム宣言というものは効力を失つたのだというふうに言つていいものでありましようか。
  53. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) ソ連はこの平和條約の会議には出て来たのでありまするが、この條約にまあ、調印しなかつたのでありますから、大体そういう関係に相成つたのでありまして、この会議にはやはり出て来て、而もそのときソ連といたしましてはいろいろの修正案というか、代案を出したことは御承知の通りであります。その中におきましても、日本がこの国連加盟をしたいという部分につきましては何らの反対の意思表示をしておらないという点につきましては、まあ、ソ連の考え方を一応推測し得る材料になるのじやないかと、我々かように考えるのであります。先ほど申上げましたように、世界中の国々が日本立場承認しており、しつつあるというこの現実の事態に基いて日本の諸般の措置をとり、行動をするということは当然のことではないかと思うのであます。
  54. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 只今大山委員の御質問に対して政府側から、降伏文書というものは平和條約によつてつて代られたという御解釈の御発表、これはこの委員会で最初のことだと私は思うのであります。私の知つておる限りこの参議院の中では初めてであつたように思うのですが、これは非常に重大なことだと思うので、それだけに政府側ではいろいろと各般のことを御研究の上の結論だと私は推測するのですが、而もその意味は、取つてつたというもののその範囲は、一切の関係において、つまりソ連等も含む関係においてという意味だと解釈する。そうすると、一方においてソ連との関係においてはまだ戰争関係が終了していないと、こう言つていい。恐らく休戰関係にあるというふうなくらいに言えるだろう、休戰関係にあるということの根拠はどこにあるかというと、いわゆる降伏文書というものの公式的の性質を、あれは一種の休戰條約的な性質を、持つておるということが根拠になつておるのだろうと思う。その休戰條約的な性質を持つたものがなくなつてしまつたというならば、一体日ソ関係というものはどういう国際法規の関係にあるものと解釈しておるのか、その点の御意見を伺いたい。
  55. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) ポツダム宣言がその目的を達しまして大体平和條約の形に変つたものであるということは、これは衆議院等においてもすでに何回かこういう趣旨のことは前の條約局長その他からも出ておると思うのでございまして……。
  56. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ポツダム宣言というより降伏文書ということを私は言つているのであります。
  57. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) そういう点は我々素人ですから、一つ正確に直して頂きたいと思います。そこで一応日本といたしましては、ソ連を含んだ関係においてさような状態であるというふうに日本立場においてはこれは考えるわけであります。併し相手のソ連としてどういう感じを持つておるか、考え方を持つておるかということは、これはここで我々から申上げられるところではないのであります。そこで今後のソ連との関係についてでありまするが、これはまあ非常に重大なる問題でありまするので、私からこういうことを申上げるより、これは大臣からその間の御関係は正確な関連をお聞き取り願いたいと思います。
  58. 大山郁夫

    大山郁夫君 又蒸返すのでありますが、先ほどこの講和條約を締結したことによつてポツダム宣言の目的が達せられたとおつしやつたと思うのですが、これはどういうことでしようか。ポツダム宣言の目的というものは分ければたくさんに分けられるでしようが、一番大きいのが日本を民主化するということと、非軍事化するということだが、講和條約によつてつて再軍備の問題なんを生ずるようなことになつてしまつて、非軍事化の目的というものは達せられたどころか逆になつてしまつたように思うのですが、それに対する政府のお考えはどうでしようか。
  59. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) それはまあポツダム宣言と申上げましたのは、降伏文書とも言いますけれども、日本は降伏をしたのでありまするが、それが先般やはり平和條約が締結されまして、関係国といわゆる日本が独立を回復して平和の関係に相成つたのであります。降伏ということ並びにそれに基きましたことは一応、一応といいまするか、当然これは平和條約に代つて日本平和條約を基準といたしまして、これからの日本に対する或いは日本としての措置がされると、こういうふうに解釈しており、そう解釈せざれば平和條約等の意義、目的、目標もないと、かように考えております。
  60. 大山郁夫

    大山郁夫君 ちよつとさつきのお答えと私の予期していたお答えと違うと思うのですが、降伏した目的が達せられたとおつしやつたのですが、けれども私の言つたの日本のあのときの降伏なんで、降伏一般ではなくて、あのときの日本の降伏というものはポツダム宣言を受諾して降伏するということをたしか書いてあつたのだから、だからやはりポツダム宣言の問題になつて来る。だからポツダム宣言の目的は講和條約を締結せられたことによつて達せられたと、こう言うと、あのポツダム宣言の目的というものは、先ず日本を民主化するということ、非軍事化するということが主になつでいたのだと思うのですが、その目的が達せられたという、こういう論理的な帰結になつて来ると、こう思うのでありますが、併し私の考えでは、民主化も勿論そうだが、今破防法が問題になつているようじや日本の民主化ということは、これこそ私はお茶番以上の喜劇で問題にならぬと思いますが、併し非軍事化のほうもそうなんで、安保條約というもので日本は軍事同盟のようなものを結んだ結果になつてしまつたので、日本の土地はアジア大陸政府の基地になり、日本国民はアジア大陸政府の下手人となるようなところにまで来ており、再軍備と結びついているので、非軍事化の目的が達せられたどころではなくて、非軍事化の目的を覆えされてしまつた、全然反対の目的が達せられているというふうに私たちはとらなければならんと思いますが、政府はさつきポツダム宣言の目的が到達せられたとおつしやつたのですが、どう解釈しているのかこれをお伺いいたしたい。
  61. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) つまり降伏文書にありまする大体の條項は、その目的を達せられたとこういう考えの下につまり相手国との間に今回の平和條約が締結されるに至つたのでありまして、日本の民主化も一応できた、勿論今後も民主化を続けて行かなければならんことは勿論のことでありますが、民主化はできたと、それからあの降伏文書にありまする日本の非軍事化も一応達成したと、こういう認定の下に、前提の下に今回の平和條約が締結されるに至つたと我々は解釈をしているのであります。
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の御質問並びに答弁に関連してですね。どうも伺つておりますと、ポツダム宣言とそれから降伏文書というものも、なんですか、こんがらがつておるような感じがしますし、この問題は非常に重要なことであるので、改めてそれを外務大臣から明確な一つ答弁をして頂きたいと思います。それで私は、日本がこの拘束を受けたのは降伏文書考えております。勿論内容的にはポツダム宣言を引用されておりますが、そこで政府考えは、先ほどの杉原委員の発言にも関係あるのですが、政府考えは降伏文書については平和條約ができたから、平和條約が効力を発生した国であつて、而も降伏文書の相手方の国、これは四ヵ国に限らないわけです。いわゆるポツダム宣言の四ヵ国に限らないのであります。これらの国との関係においてはすでに降伏文書は使命を達成した。講和條約が正式の條約としてこれに変つた、こういう解釈をとつておられるのかどうか、これが第一点。すでにその場合でも降伏文書関係国であつた例えばソヴイエトであるとか、まだその国との間に講和條約ができない国との関係においては、ポツダム宣言に直接行くのじやなくて、降伏文書によるところの休戰の状態というものはこれは続いているものだと私たちは解釈しているのです。その点はそうじやなくて、この点も又その国が平和條約に参加しようがしまいが、他の平和的な解決が、個別講和ができなくても、それでも降伏文書がなくなつてしまつたと認められるかどうか。この点は非常に重要ですから、勿論大山委員のポツダム宣言の内容的な問題に関する政府の御答弁があると思いますが、法律的な点については改めて正式に御回答を賜わりたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  63. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いやむしろ今曾祢君の言われたその点、私も質問した点だつたのだから、その点が明確にならんと、その点の決心をしないで、さつきの結論的なものが出るはずがない。そこが一番大事なところなんだから、これは單なる法律問題でなく、非常に政策的に重大な問題だ。それと引離してただ結論のところを言われても我々は非常に意味が薄い、是非その点をはつきりと一つ……。
  64. 大山郁夫

    大山郁夫君 それからこの問題は終結しておらないのだけれども、先ほど来のお話通り大臣の答弁に廻すということにして、問題を転換いたしまして、今度のなにの国連協力ということが、頻りにそういう言葉を繰返されましたが、一体国連との協力ということはどういうような内容を持つているものかということを承わりたい。殊に私の場合強調したいのは、最近非常につまり新中国との、普通中共貿易という言葉で言い現わされておりまするが、この新中国との貿易ということが非常に重大な問題となつて来ている。ところが日本中国との貿易なしには将来の経済というものは成立つて行かないと私たちは考えている。勿論吉田総理はそんなことはない、中国との貿易なしに繁栄していると私の質問に対して言われたこともある。最近は岡崎外相も言われました。あの中共貿易に対しては冷淡でおられるようでありますから、立場も違うのだけれども、だから立場の相違までも今、云々しようというのじやないけれども、一体日本はあの朝鮮動乱が起つてからこのかた、非常にアメリカの注文に応じてつまり中国への輸出ということを非常に制限したのですね、普通の連合国が制限している以上に……。あのパリーの協定、一九四九年十二月のあのパリーにおける協定によつてなお又ソ連圏内、或いは中国への輸出を制限していると思うのでありますが、日本の輸出品目というものは非常に多かつたように思う。そうして非常に大変な程度に制限をしている。そういうようなことは皆その国連協力の内容になつているものであるか。それから又例の特需の注文を受けて日本の産業が動員された。これもやはり国連協力の内容のうちに入つているか。これらが私の聞こうとしている大きな点になるのですけれども、とにかくその内容を一々具体的に言う前に、一体国連との協力というものはどういうふうな意味で、どういう内容を持つているものかという一般論から先に聞きたいと思います。そういう説明をお願いします。
  65. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 極く大ざつぱに言いますならば、世界の平和と安全を維持する、これに協力して行くということ、それから経済或いは又社会福祉の増進のために、国際機構を通じて協力をして行く。それからその他更にまあ国連の決議、或いは国連の勧告というものに応じまして、その趣旨に副うて行動して行く、まあ抽象的、大ざつぱに申上げたならば、そういうことになります。
  66. 大山郁夫

    大山郁夫君 それで、議論は限つて質問だけにしますが、あの日本中国への禁輸と国連との関係ですが、国連が勿論支持しているのに違いないが、それとの関係を承わりたい。それから又日本以外の他の連合国の勢力下にある諸国は、たしかパリー・リストとか何とかいう文書によつてきめているので、日本が輸出禁止をされているものも、かなりたくさんの種目を輸出していると思うのでありますが、勿論あのパリー・リストとかいうのはこれは国連の総会できめられたものだから、それと国連との関係はつきりしている。日本中国への輸出禁止、エンバーゴーというのとこれはどういう関係にあるか。それともう一つはバトル法と国際連合との関係はどういうことになつているか、この点をお伺いしたい。それは実は知らないことなんで教えてもらいたいと思うのです。
  67. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 中共に対しまするいろいろの戰略物資になるような物等の禁輸措置は、これはやはり国連協力一つであろうと思います。それからバトル法と国連協力ということはこれは直接の関係はないと思います。これは御承知のように、アメリカから援助を受けておる国がアメリカと争つていると申しまするか、そういう国にいろいろ戰略物資になるような物を出した際にはその援助を断ち切ると、こういう建前になつておる。これは直接の関連はないと思います。それから何かパリー、リストといいまするか、これは私も詳しいことはよく知りませんが、それはあれできめられておるものと日本との間が広いものもあり、狭いものもあり、必ずしも一致しないと思うのでありまするが、抽象的に書いてある関係等で具体的の適用にいろいろの相違というか、開きが出て来ると、こういうことではないかと思います。
  68. 大山郁夫

    大山郁夫君 バトル法と直接の関係がないとおつしやいましたが、勿論国連の今主導権を握つておるのはアメリカで、そして又バトル法はアメリカの議会が通過せしめたものだから、そういう意味で関係は勿論あると思うのでありますが、日本の場合、日本に命ぜられた禁輸というものを国際連合はどういうふうにサポートしているか。勿論サポートしていることはわかつているのだけれども、どういうふうないろいろな決議とかがあつたか、又決議というものがなかつたかというような、そう事実問題としてちよつと少し御説明を願いたい。
  69. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 中共貿易について我が国が受けておりまする国際的制約と申しますのは、これは国際連合が一九五一年五月十八日の総会で行いました中共及び北鮮向け戰略物資の輸出禁止に関する決議、これに基いて日本がいろいろの勧告を受けておるわけであります。これであろうと思います。
  70. 大山郁夫

    大山郁夫君 それはともかく国連というものは勿論あの禁輸を支持しておるというわけになるわけですね、日本に課せられたエンバーゴー、これを国連は支持しておる、まあ反対しておらないということはこれは明らかだが、併し……。
  71. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは先ほど申しましたように一九五一年五月十八日の総会でこういう決議があり、その決議に基いて事務総長から当時総司令部を通じまして日本政府に伝達されたものでありまして、日本政府はこの決議の趣旨に賛成をいたしましてやつておる、こういうことであります。
  72. 大山郁夫

    大山郁夫君 いやわかりました。まだ質問を確かに頭の中に持つていたのですが、今ちよつと失念しましたので、この次のときになお質問を許して頂きたいと思います。
  73. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一つ質問をいたしたいと思います。一昨年の十一月の国連の平和のための統合決議についても、これは私が言うまでもなく、非常に重大な決議で、実質的にはこの国連憲章の修正にもなり、今後の国際紛争が現実に起つた場合に集団的な軍事行動が如何なる方法で起るかというと、実質にこれに国連憲章にいろいろ書いてあるけれども、殆んどそれによるのではなくして、恐らく一昨年の十一月の平和のための統合決議に基く行動だろうと推察される。それだけにこの決議は非常に重要なものだと思う。私の聞きたい点は、日本国連加盟した場合に、その効果が今の私の言つた決議を受諾したと同一関係日本が立つわけですか。
  74. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) 只今お触れになりました平和のための統合決議を日本国連に加入することによつて受諾したと同一関係に立つことになるかという御質問でありますが、これは国連の決議の効果というものはどの加盟国に対しても等しいものでありまして、それは安全保障理事会の例えば四十一條、四十二條のような場合には拘束力を持ち、それから三十九條の前段の場合には勧告であり、総会の決議の多くはやはり勧告であります。従つてこの決議を受諾したと同じような効果を生ずるというようなことは、そういう御質問は私よく意味がわからないのでありまして、日本が将来加盟いたしました後にどのような立場に立つかということでありますれば、ほかの加盟国と同様に、総会の勧告をその時々に評価して、自分がそれに従うことができ、且つ自分がそうやつたらいいと認めるものは、そのように行動すればいいのでありまして、総会の決議から直ちに独制行動をとらなければならない義務を発生するものではないと考えております。
  75. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今お答えの点よくわかるのですが、私の尋ねんとした点は、表現が非常にむつかしいからなんですか、あれの本質は勧告だと私は解釈しておる。それだからその勧告としてのあれに基く強制行動をとるということも、これは又具体的な事件が起つた場合のことと思う。併しあの決議というものは、まだ具体的な事件が発生していない場合にとるべき方途についての一つの決議なんです。それに対する関係についてはほかの加盟国同一の地位に日本が立つて来るわけですか。
  76. 須山達夫

    説明員(須山達夫君) お説の通り同一関係に立つわけでございます。
  77. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  78. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 速記を始めて下さい。  本日は閉会に御異議ないようでありますから、本日はこれを以て閉会といたします。    午後三時五十一分散会