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1952-05-16 第13回国会 参議院 外務委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十六日(金曜日)    午後二時十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     有馬 英二君    理事            徳川 頼貞君            野田 俊作君            曾祢  益君    委員            平林 太一君            伊達源一郎君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            大隈 信幸君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    調達庁管理部長 長岡 伊八君    外務政務次官  石原幹市郎君    外務参事官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国際植物防疫條約締結について承  認を求めるの件(内閣送付) ○千九百二十三年十一月三日にジユ  ネーヴで署名された税関手続簡易  化に関する国際條約及び署名議定書  の締結について承認を求めるの件  (内閣送付) ○外国領事官に交付する認可状の認  証に関する法律案内閣送付) ○中華民国との平和條約の締結につい  て承認を求めるの件(内閣送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (日韓会談に関する件)  (駐留軍土地接収に関する件) ○国際連合への加盟について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 曾禰益

    理事曾祢益君) それではこれから委員会を開会いたします  先ず国際植物防疫條約締結について承認を求めるの件、予備審査でありまするが、政府委員から提案理由説明を求めます。
  3. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 只今議題となりました国際植物防疫條約につきまして、提案理由を御説明いたします。  この條約は、我が国が昨年の末に加盟いたしました国際連合食糧農業機関の提唱によつて作成されたものでありまして、昨年十二月六日にローマで関係各国が署名して成立したものであります。現在まで三十国が署名いたしております。この條約は、三署名政府批准書の寄託と同時に効力を発生することとなつておるのでありますが、すでにこの條約は本年四月三日にセイロン、スペイン及びチリの間で効力を発生いたしております。  この條約は、植物病害虫防除国際的協力によつて促進することを目的とするものであります。そのために国際取引に関連する植物及び植物生産物に対する防疫事業の強化、それから統一された植物検疫証明書様式の採用、植物病害虫発生状況に関する情報の交換等の実現を図るものであります。  我が国は、この條約に加入して植物病害虫防除に関して国際的に協力することは、甚だ有意義であると認めまして、昨年十二月六日にこの條約に署名いたしました。  以上の事情を諒察せられまして、慎重御審議上速かにこの條約の締結について御承認あらんことを希望いたす次第であります。   —————————————
  4. 曾禰益

    理事曾祢益君) 次に千九百二十三年十一月三日にジユネーヴで署名された税関手続簡易化に関する国際條約及び署名議定書締結について承認を求めるの件、これも予備審査でございまするが、議題に供します。
  5. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 只今議題となりました千九百二十三年十一月三日にジユネーヴで署名された税関手続簡易化に関する国際條約及び署名議定書につきまして、提案理由を御説明いたします。  この国際條約及び署名議定書は、一九二三年(大正十二年)十一月三日にジユネーヴで署名されたものでありまして、その加盟国は三十六カ国に上つております。この條約及び署名議定書は、税関手続簡易化を図ることが通商の衡平な待遇を実現する重要な手段であることに鑑み、税関手続簡易化及び衡平な適用並びに関税率及び関税規則の公表について国際的に協力することを目的として作成されたものであります。  この條約は先に述べましたように加盟国も多く、すでに公私の貿易及び通商において国際的に承認された公正な慣行となつております。我が国は一九二四年(大正十三年)三月十七日にこの條約に署名いたしまして、その後歴代の内閣は、しばしばこの條約の批准方奏請したのでありますが、その都度内閣更迭等事情によりましてその奏請は返れいされて、遂に今日まで批准されるに至らなかつたのであります。  我が国は昨年九月八日にサン・フランシスコにおいて、この條約及び署名議定書に加入することを宣言しておりますから、これに一日も早く加入することは、我が国国際信用を高めるゆえんであると考えるものであります。よつてこの條約及び署名議定書への加入について御承認を求める次第であります。  以上の事情を諒察せられまして、慎重御審議の上本件につきましても速かに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
  6. 曾禰益

    理事曾祢益君) 次に外国領事官に交付する認可状認証に関する法律案、これも予備審査でありますが、議題にいたします。
  7. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 只今議題となりました外国領事官に交付する認可状認証に関する法律案提案理由及びその内容を御説明いたします。  去る四月二十八日に日本国との平知條約が効力を発生いたしましたことはすでに御承知の通りでありますが、この平和條約の効力発生に伴いまして、現在までに我が国と二十四カ国との間に外交関係が回復いたし、相互に大公使等外交使節を交換いたすこととなりましたのみならず、これらの国から在外国民保護通商航海上の利益保護増進に従事いたします領事官我が国に派遣されて来ることも当然のことであります。  この領事官の派遣につきましては、各領事官が本国の元首政府から委任状を持つて参りまして、これを我が国政府に提出し、我が国政府からこの領事官認可状又は証認状を交付することによつて正式に我が国における領事官としての地位を獲得するというのが国際慣例となつているのでありますが、相手国元首委任状を提出した領事官に交付する認可状に対しましては、天皇認証を得ることが適当と存ぜられるのであります。このため政府はここに、外国領事官に交付する認可状認証に関する法律案提案いたす次第であります。  この法律は僅か一カ條ばかりの法律でございます。内容は簡単なものでございまするが、先に御審議頂きました外務公務員法、この法律におきましては、この日本大使及び公使委任状及び領事官委任状には天皇認証を要する旨を定めたのであります。で、これは外務公務員についての規定でありましたので、外国領事官認可状については定めることができなかつたのであります。そこで今回ここに外国領事官に交付いたします認可状認証について立法措置を講ずることといたしたのであります。  以上が、この法律案内容であります。何とぞ愼重御審議上速かに御採択あらんことを御願いいたす次第であります。   —————————————
  8. 曾禰益

    理事曾祢益君) お諮りいたします。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  9. 曾禰益

    理事曾祢益君) 速記を始めて。外務大臣から中華民国との平和條約の締結について承認を求むるの件の提案理由説明を求めます。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今議題となりました日本国中華民国との間の平和條約につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和二十六年十二月二十四日に吉田内閣総理大臣アメリカ合衆国のジヨン・フオスター・ダレス大使に送つた書簡にも述べられております通り政府は、究極において日本の隣邦である中国との間に全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することが望ましいと考えて来たのであります。併しながら他面、中国は、一九四三年十一月二十三日のカイロ宣言及び先に我が国が受諾した一九四五年七月二十六日のポツダム宣言当事国であるにもかかわらず、種々事情により過日効力を生じましたサン・フランシスコ平和條約の当事国となるに至らなかつたのであります。これがため例えば、同條約の規定によつて我が国権利を放棄した台湾及び澎湖諸島との関係におきましても、これを現に支配する中華民国との間の平和関係が回復されるに至らず、双方の間に種々の不都合を生じておるのであります。  よつて政府は、先に、法律的に可能となり次第、中国国民政府が希望するならば、これとの間に、サン・フランシスコ平和條約に示された諸原則従つて両国政府の間に正常な関係を再開する條約を締結する用意があるという意図を前述の吉田ダレス書簡において明らかにし、更に、本年二月二十六日に、中華民国政府戦争状態を終了し、正常関係を再開するための條約を締結するため、台北に全権委員を派遣することとしたのであります。この結果本年四月二十八日ここに提案された日本国中華民国との間の平和條約が署名される運びとなりました。  なおこの條約交渉を通じまして特に考慮拂つた二、三点について御説明をいたします。  第一は、今般の交渉全般を通じまして吉田ダレス書簡の線を堅持したことであります。第二は、サン・フランシスコ條約というお手本があつたので、中国側は成るたけこれに近いものにしようとしてサン・フランシスコ條約の二十七條に倣い全文二十二條の提案をして来たのでありますが、我がほうでは両国現実事態に即応する條約にしたいという希望があつたので、当初全文で六條くらいで改めることを提案いたしたのでありますが、結局両者の立場を折衷いたしまして十四條に落着いたのであります。その過程において條約の組立に一工夫を加え、両国に直接関係のあることについて個々の規定を設けたほかに、サン・フランシスコ條約の精神に則つて解決すべき問題が出て来た場合は同條約の関係條文によつてこれを解決するという趣旨條文を設けましたので、條約の建前はほぼサン・フランシスコ條約と同じ結果となり、中国側も満足いたしました。この間中国側は将来の発展をも考慮して條約中に理想的のものを盛りたいと主張したので、我がほうの現実に印する行き方との間に調整を要し、これに相当の時間を要したわけであります。  第三に、サン・フランシスコ條約と特に異なる点は、各條項規定條文が双務的となつている点であり、又賠償、戦犯問題の取扱について我が国に有利になつており、日華両国間の特殊な親近関係に顧みてサン・フランシスコ條約以上に和解と信頼の精神に徹底いたしておることであります。第四に、條約を現実事態に即応せしむるために條約の適用範囲についての了解が成立し、この條約の條項が、中華民国に関しては、中華民国政府支配下に現にあり、又は今後入るべきすべての領域に適用があるということになつておるのであります。要するにこの條約の締結は、我が国中華民国との間の戦争状態を終了し、正常関係を再開せしめるものでありまして、その一般的な内容は現下の国際情勢に照らして適切なものであると信じます。  何とぞ愼重御審議上速かに御承認を與えられんことを切に希望いたします。   —————————————
  11. 曾禰益

    理事曾祢益君) 次に日韓協定に関し外務大臣から説明を聴取したいと思います。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日韓会談につきましては今まで種々新聞等にも断片的には報道されております。我々も成るべく早い機会に国会の外務委員会には報告をいたしたいと思つておりましたが、交渉中の間は、先方との関係もありますので、これを遠慮しておつたのであります。で、漸く最近に至つて報告のできる状況なつたと考えましたので、ここに御報告をいたす次第であります。  そこでこの経緯について申しますと、我々は従来の関係もありますので、韓国との国交関係はできるだけ早く調整をいたしたいと考えておりまして、丁度韓国側請求もありましたから、すでに昨年の十月から交渉を開始して、我が国に在留する朝鮮人約六十万人の国籍とその処遇問題及び日韓間の懸案となつていた船舶の問題について協議を重ねておつたのであります。で、在留朝鮮人大韓民国国籍を有すべきことにつきましては、すでに大韓民国国籍法に定められておりまするし、今回の交渉においても韓国側がこれを終始主張しております。又更に従来も現に韓国側日本の法令を遵守しない一部の朝鮮人日本に置いておくのは日韓関係上面白くないという趣旨からこれを引取ることにして、すでにこの種の朝鮮人を七回に亘りまして韓国側に引渡しした事実があるのであります。我が方は韓国側法律を尊重しまして、かかる事実及び韓国側主張考慮して、この点においても韓国側協力を惜しまないつもりでおります。又国籍の切替えに際しましては、財産権その他の関係において在留朝鮮人が特に困惑するような事態にならないよう我が政府においても特別の考慮を拂うことに大体了解が成立いたしました。併し細目の点につきましてはなお若干の問題がありましたので、結局他の問題、即ち非常に時間のかかりました船舶問題と一緒に、本年の日韓会談のときまで、この両問題も持越されて討議が継続されたのであります。そこで本年二月の十五日から開始されました日韓会談におきましては、財産及び請求権処理の問題、漁業の問題、それから国交基本を確立する條約の問題等議題の中心となりました。これに勿論先ほど申しました国籍の問題とかいうような点が入つて参ります。そこで財産請求権の問題につきましては、サン・フランシスコ平和條約第四條の(a)項によりますると、両国間で特別取極をして解決することになつておりまするが、他方同じ第四條の(b)項によりますと、我が国朝鮮において我が国及び国民が持つていた財産に対して米軍政府がとつた処分効力承認することになつておるのであります。この処分効力承認するという承認意味が如何に解釈するかということが問題であります。尤も国有財産につきましては問題は比較的簡単でありますが、私有財産につきましては特に日韓双方見解が大きく食い違つてつて話がまとまらないのであります。韓国側日本朝鮮領有を不法であつたと言いまして、かかる不法な領有の上に蓄積された日本財産はことごとく非合法的性質を帯びたものである、こういう理由を背景にしまして、朝鮮に進駐したアメリカ軍政府の命令第三十三号、いわゆるヴエステイング・デイタリーというものによりまして、これらの日本財産がことごとく米国軍政府帰属せしめられて、その後米韓協定、即ち米国韓国政府との間の財産及び財政に関する一九四八年の取極の第五條によつて、これらの帰属財産が更に韓国側に移転されたと主張して、かくして一切韓国のものとせられたことを日本平和條約の第四條の(b)項によつて承認したのであるから、もはや日本はこれらの財産に対して何らの権利も持たないと断定しまして、又平和條約に何と定められていようとも韓国はむしろ連合国並み日本に対して一種の賠償のごときものを要求し得るという見解さえ表明したのであります。これに対しまして我が方は韓国側のこのような主張国際法上も歴史的にも問題にならないのだということを説明いたしまして、現にサン・フランシスコ條約においても日本朝鮮にある財産処理につきましては前記のようにこの平和條約第四條の(a)項に明文規定があることを指摘しまして、又更に問題となつ平和條約第四條の(b)項において日本財産処分効力承認するという意味も、その條文及び一般国際法の原理、通則に従つて解釈さるべきものである。例えばへーグの陸戦法規の第四十六條にも敵地私有財産不可侵原則が掲げられているので、我々は朝鮮アメリカ軍政府国際法上適法に日本財産を管理し処分したのだと解釈している、従つて米軍政府占領軍としての資格におきまして日本私有財産について敵産管理的処分を行なつた場合でも、その財産に対する元の所有権は消滅しない。例えば売却処分を行なつた場合においても、その売却処分は認めるけれども、売却代金に対しては元の所有権者請求権を持つのは当然である。又米韓協定によつて処分日本財産及び売掛代金等韓国政府に移転されたということにつきましても、元来韓国交戦国でも占領軍でもないのでありまするから、占領軍の持つていた権利を委譲されたと言つても変なものでありまして、結局移転された財産を管理する責任を與えられたのであると解するほかにないと我々は主張したのであります。交渉の方法におきましても、又現在でも韓国側からは請求権の問題をめぐりまして、日本が何か不当な要求をしているような報告を故意に流しているようでありますが、本問題の解決サン・フランシスコ平和條約の明文によつて日韓両国間の特別取極によつて解決するということになつておるのでありますから、我がほうにおいては宣伝のためにする報道等には拘泥せずに、今後とも韓国側の誤解を解くことに努力して、建前は飽くまでも建前として崩すわけには行かないのでありますが、十分に議を盡して、実際的にして且つ双方に満足の行けるような解決には持つて行きたいものであると考えておるのであります。  漁業の問題につきましては、サン・フランシスコ條約によりまして韓国との間においても公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業保存発展等規定する協定締結することになつておりますが、本年一月日韓会談の開始の直前に当りまして、韓国政府李承晩大統領の宣言なるものを突然発表いたしまして、韓国我が国との間の公海において韓国の欲するところに従つて国家主権を行使することを宣言しました。更に日韓会談におきましても公海一定水域において漁業管轄権を有するものであるということを主張したのであります。これに対して我がほうは、魚族の保存のために科学的調査を行なつて必要な共同措置をとることにはやぶさかでないけれども、国際的に認められていないような漁業管轄権というような主張は絶対にこれは承服することができないということを強く表明したのであります。かくして双方見解に大きな隔たりがありますので、容易に妥結し得ない状態にあるのであります。  それから国交基本を樹立する條約の問題は、朝鮮独立に伴いまして日韓両国が対等の主権国として善隣友好関係を結ぶことがその主眼であります。  この問題の協議におきましても、韓国側はあたかも自分が戦勝国として我が国との間に平和條約を締結するがごとき態度を持しておりまして、例えば韓国日本独立承認するとか、曾つて日韓併合條約は無効であるとかいうような主張をした経緯もあつたのであります。で、韓国側がこういうような態度でありましたので、この交渉相当に骨が折れましたが、先方もだんだんに日本側の意向を了解いたしまして、サン・フランシスコ條約の精神従つて両国間の基本関係を規律する條約案については、殆んど合意が成立いたしました。    〔理事曾祢益君退席、委員長着席〕  以上のような次第で、各問題について交渉が行われたうちで、請求権の問題につきましては、三月末に至りまして話がこじれてしまいまして韓国側は、請求権問題については話がまとまらなければ、基本関係の條約も、国籍処遇協定等締結することも無意味であるといたしまして、殆んど妥結していたこれらの問題も一切御破算であると言明するに至つた始末であります。これに対して我がほうは、話のつくものから漸次話をつけて行くということが双方利益である、そういう点を説きまして、すでに殆んど妥結いたしておりました基本関係條約及び国籍処遇協定案に署名し、又船舶の問題につきましても、船舶帰属の議論から離れて、韓国海運発展を援助するという趣旨で若干の船舶を提供することにするから、これで折合をつけて話をしたらどうかという提案をいたしました。又どうしても早急には話のつきそうもない二つの問題、即ち請求権の問題と、漁業の問題につきましては、更に議を盡す意味で、常設共同委員会のごときものを設置して審議を継続したらどうかという提案をいたしたのであります。然るに韓国側は、この提案が我がほうに何か下心があつてしたものと誤解したらしくて、遂にこれに応じなかつたのであります。それでもなお我がほうは盡すべき手を盡すという趣旨から、請求権問題について新たな構想で従来の経緯に拘束されない立場で、具体的な細目の審議を進めることを更に提案しました。又常設共同委員会を設置した場合の運営、基準などについても、具体的な提案を行なつたのであります。  日韓両国交渉は右に申しましたような経緯を辿つて今日に至つておりまして、而も最近甚だ残念に思いますことは、韓国側から種々事実に相違する宣伝も行われまして、交渉を円満に進めることが困難な状況になつておるのであります。こうして交渉がまとまらないことによりまして、在留朝鮮人の諸君にとつても、不便や不利が生じて来ておると思われますので、我々といたしましては、一日も速かに韓国側が従来の態度を再考しまして、相共に携えて交渉の妥結に寄與して、両国国交調整協力するように望んでやまない次第であります。  以上簡単でありまするが。会談の経過を御報告いたしました。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 議事進行について……。岡崎大臣お忙しいようですから、ほかの議事をやる前に岡崎大臣質問をさして頂きたいと思うのですが……。
  14. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは岡崎外務大臣一般質問をいたします。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 日韓協定について質問をさして頂きたいと思います。  只今岡崎外務大臣から相当詳細に亘つて日韓協定経緯説明されたのでありまするが、先ず財産権並び請求権のことについてもう少し伺いたいと思うのですが、只今の御説明の中には、請求権の問題の、こじれたことについての御説明がありましたが、その他の私権の享有について、例えば日本に残るであろうところの韓国人が、土地所有とか、或いは鉱業——マイニング、これらの問題についてどの程度の内国民的待遇を受けるか、これらの問題についてはどういうふうに話が進んでおつたか、この点を先ず伺いたいと思います。
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは請求権というよりもむしろ国籍及び処遇の問題というふうになると思いますが、その処遇のほうに一つかかわるわけであります。これは原則としては何と申しますか、レシプロシテイで行くのが当然でありますから、韓国側で認める程度の内国民待遇日本でも認めてやる、こういう原則で進むわけであります。ただ今まで日本人でありましたのが急に日本人でなくなつた。それで日本人でなければ享有できないような特殊の権利を持つてつた人たちが急に失うということになると、困難でありますから、原則原則であるけれども、国内に、例えば九月二日以前から滞在しておつた人々に対しては過渡的にはどうしてもこれは便法を講じなければならんわけである。それはいろいろの問題自身につきまして、例えば鉱山という問題もありましよう、金融業という問題もありましよう、或いは弁護士とか、いろいろな問題がありましようが、その種類によつて便法期間もおのずから違うと思いますが、先ず常識的に見て、特別の困難がない……意思を持つておられるかどうかということは、これは要するに原則としては何と言いますか、レシプロシテイ期一間でそれを……処分しまして、それを普通の外国人としての待遇になつても困らないような期間を認めるというのが大体の趣旨でありますけれども、これは具体的にはそれぞれの事態によつて考慮しなければならんと思います。併し、困らないような考慮をいたそうということで進んで来ております。もつと非常に細かいことでありましたら、係の者がおりますから詳細に御説明いたします。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 その問題は大体原則としては相互主義で、日本人韓国に残る人にも同様な内国民待遇を與えるときには、こちらに残る韓国人についても同様な待遇を與えるということであるが、実際問題としては少くとも過渡的には元の朝鮮人に対して便法を講じて行こう、こういう御趣旨だと思います。それは一応は結構でありまするが、続けて質問を許して頂きたいのですが、請求権の問題について今外務大臣のお話を聞いておりますると、国有財産のほうは比較的問題が簡単であると言われましたが、それはどうして私有財産に比較してこちらが簡單であるのか。
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはいろいろ法律的の問題もありますから私の答えが必ずしも正確でないような場合もありましようから、あとでよく調べてお答えする場合がありますが、極く概括的に申しますれば、ヘーグの、例えば只今申しました戦時法規の規定によりますると、占領軍としては、陸戦法規の四十六條ですか、要するに占領軍が占領地における財産につきましては私有財産不可侵という原則が設けられておる。国有財産のほうはこれは別になつておる。従つて今の問題はアメリカ軍政府がいわゆるヴエステイング・デクリーズというものを出して処分したその処分効力は認めるのでありますから、陸戦法規等の規定私有財産権まで取上げるということはできないのでありますという根拠からいろいろまあ議論が発展するわけであります。そしてそれには国有財産は入つておりませんから、そこで比較的簡単というのは妙ですが、言い方が悪かつたと思いますが、国有財産のほうはどうも止むを得んのじやないかと、こう思われるのであります。問題は私有財産に主として残る……。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 私も専門家ではないのですが、只今言われた理窟では私はこの問題を処理すべきではないのではないか、つまり国有財産についても動産を占領軍処分するというようなことはこれは当然認められていいと思うのですが、今度の場合は実は陸戦法規にカバーできない、もつと大きな、要するに一つの国から新たな国が分離する場合の公的財産の継承の問題としてこれは国際法的にいろいろ例があると思う。で、その場合に勿論政治的の影響もありましようが、併し根本的に言つて朝鮮国が日本に対していわゆる戦勝国的な態度をとるべきことでないことはこれはもう外務大臣も言われた通りなんでありまするから、従つて原則としては独立を認めるということは勿論その領土権を承認するということでございましようし、領土権承認そのものには有償的な場合もあるでございましようし、無償の場合もありましようが、領土権でない日本国有財産というものが当然に無償で新たな独立国のほうに行くというような原則は私は決して確立していない。少くとも対等な善隣友好国としてこれから進んで行く以上は、国有公有財産であるから当然に私有財産とは違つて無償でも仕方がないというようなことは私はおかしいと思います。これは飽くまで当然の請求権がある。そうしてそれは或いは逆に韓国側としての日本に対する請求権もほかにもございましようから、それは国と国とのその双方請求権を如何に制限するかという問題であつて権利そのものについては当然にこれは有償で譲るということに私はなるのじやないか。こういうふうに考えておるのですが、そういう考え方ではなくやつておられるかどうか、この点をもう一点伺いたいと思います。
  20. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この朝鮮の場合に領土の分離というのか、それとも今まで独立していた、前に独立していた国が独立を失つていた、それを又独立を回復したと、こういう解釈であるかについては多少問題があると思います。が、大体の例えば日本におる朝鮮人日本国籍を失う、全部失うというような点から言うと、まあ独立を回復したと、こう解されるように常識ではなつておりますが、それは別といたしまして、例えば領土の分離の場合には、お説の通り国有財産というか、国有の少くとも不動産はこれは主として例から言えば、通例新らしい国家にそのまま行くということになつておるのですが、それも交渉によつてきめられる問題であります。で、第四條に、御承知のようにこの平和條約にも「この條の(b)の規定を留保して、日本国及びその国民財産で」とこうありまして、日本国財産も特別な取極の主題とするということになつておるのでありますから、原則的にはお説の通りであります。ただ比較的問題が複雑か簡単かという議論になりますとヴエステイング・オーダーが出て来ますから私有財産というのは特に日本側から言えば主張の強い根拠があり得るというだけのことで、趣旨はお説の通りだと思います。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 まあ、私有財産といわゆるカテゴリーが違うということはお説の通りである。でありまするが、国有財産のほうもこれは当然に通例に従つてまあ新たに、私たちから見れば、分離した国とも見るし、或いはそうでなくて、独立の、過去の独立国が再び返つて来たという見方もありましようが、いずれにしても、不動産が国有不動産、公有不動産が韓国に引渡されるべきごとについては、これは問題ないのですが、それはやはり有償の原則で行くべきじやないかと私は考えておるわけです。  次に、この私有財産のことでありまするが、この点はこの委員会におきましても、只今私のみならず多くの委員が非常に心配されて、サン・フランシスコ條約の審議に当つたわけです。で、(b)項が最後のドラフトに入つて来たときに非常に我々はそれを心配していろいろ政府のお考えを質したのですが、そのときの考えは、確かに現在とも同様であつて占領軍の命令を法の秩序として、いわば有効と認めてそれを法的に秩序を引つくり返さないという意味にしか過ぎない。従つて当然に日本請求権を持つておるべきものについては請求権があるのだ、こういう御解釈であつたわけです。それは誠にその通りであるけれども、ああいうようなあいまいな(b)項を認めれば、必ずや先ず韓国の気持から見れば、これは請求権日本が放棄したということを言うのではないか、それで大丈夫なのか、ということを相当詳しく質問したのですが、大丈夫であるというようなお考えでおられた。ところが現実に蓋を開けて見たら、我々が心配した通りである。韓国側主張というものは、これは決して通常の国際法の観念から言つて正当化されるべきものではございませんけれども、少くともそういつたような一種の手掛りを與えるようなこの(b)項そのものを主張したときに、もつとその点をなぜ明確にしておかなかつたのか。これは確かに政府としては非常な失態ではないかと私たちは考えるのです。そこでそのときには一体サン・フランシスコ條約の主催国であるアメリカ、イギリス等と、これらの点について十分な話合いがついていたのか、いないのか。その点を先ずお伺いいたします。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は、実はその当時直接これに当つておりませんでしたので、御答弁は調べてから、留保して、あとでお答えしたいと思います。ただこれだけのことは言えると思います。日本のほうで法理論と言いますか、ヴエステイング・デクリーというものがどれだけの効果を持つておるもので、へーグの陸戦法規と比べてどういうふうになるものであるかという、いわゆる今の日本主張を法理論的に明らかにしたものを先方に出して、これを十分に納得、同意させようという努力はいたしておつたようであります。ただアメリカ側でこれは受取つてよく研究をしたようでありまして、又非公式には係官では賛成の意を表した人もあるようでありますけれども、これはアメリカ政府として全面的に賛意を表したかどうかというと、それははつきりしないままに来たようでありまして、併しその点についていろいろ努力した点は事実であります。あとの点は調べてみないとお答えできない。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 それではその点は重要なことでありまするから、ただ努力をされたというのでなくて、はつきりとどの程度了解ができたとか、或いはただ努力程度であるか、はつきりあとで御答弁願いたいと思います。これは当時の官房長官の岡崎君といえどもやはりこれについては十分に責任がおありだろうと私は考えるのですが、確かにかような点に疎漏があつたと私は考えるのです。そこでこの間このことについて新聞報道がありました、アメリカの国務省筋で韓国側主張即ち日本には請求権もないんだといつたような見解であるということが新聞報道で来ておりましたが、あれに関する真相は一体どうなるのであるか、これを伺いたいと思います。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々もあの新聞報道を見ましてすぐにアメリカ側に訓令を出しまして事実を問合せ取調べさせたのであります。どうもそれがあんまりはつきりしないのですが、国務省筋ではそういうことはないんだという説明を初めはしておつたようでありますが、その後何だか少しあいまいなようにも見られる報道が又来ております。そうして更に日本立場をよく説明するような電報を打ちましてこの点について先方の意向を確かめつつあります。本日もそういう電報が来ておるようであります。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 それは非常に不幸な事態だと思うので、これは先ほどの質問の第一点にも関連するのですが、そういう状況であればあるほど留保された点については明確な日米間との話合いがついていなかつたということを表明するものだと思いますが、それはそれとして、これは非常にアメリカに何でもおんぶして日韓間の話合いの橋渡し的なことをやつてもらうというようなお考えではないと思いますし、又そうであつてはならないと思うのですが、ただ條約のいわゆる主宰国としてのアメリカに対して、これらの日本側主張というものをはつきり認めさせるような努力はやはり私はこれに限つては必要ではないかと考えております。そこでいずれにしてもアメリカが、国務省がはつきり韓国側主張を認めたということの事実もないんですか。逆にその点はどうなんですか。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも今のところ余りはつきりしておりませんが、アメリカ側でも日本側にもいろいろ言われ、韓国側からも言われるものですから四條の(b)項の解釈、アメリカの起草国とし或いは主宰国としての(b)項の解釈を明らかにしようしておるんじやないかと思います。恐らくアメリカとしては日本の肩を持つとか、或いは韓国の肩を持つとか、そういう日韓両国交渉内容について介入するようなことはしないのじやないかと思います。又我々としてはそれは介入すべきものでないと考えております。が、アメリカとしてはどういう解釈をしておるかということは、これはまあ主宰国として問われればせざるを得ない場合もあると思いますが、まあそんなことじやないかと思いますけれども、まだその点明確でないので今のところは新聞の報道だけが入つておるので、オフイシヤルな報道としてはかなり前にアメリカ側としては別にこれにタツチするつもりはないということを聞いておるのでありますが、又新聞報道が来ましたから何かそこに又考えが変つたのじやないかと思つて取調べておるわけです。が、いずれにしましてもこれは日韓の間の話合いであつて、解釈は別として、日韓交渉の間に米国側が介入するというようなことはないものと了解しております。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 その点はまあ返す返すも第四條(b)から流れ出ることであつて非常に遺憾だと思うのですが、経緯の如何にかかわらず筋道の通つたことは飽くまで堂々とこれを説得に当つてくれることを望みたいと思います。  次にもう一つ伺いたいのですが、これは国籍の問題ですが、過日外国人登録法及び入国管理令の改正法律案委員会におきまする政府の意向では、先ほどの外務大臣の御説明にも触れられた点でありますけれども、韓国側としては、元の朝鮮人日本におつた諸君の国籍については、韓国の法令がすでに全部勿論韓国人として取扱つておるのであるし、従つて若しこのたび発効いたしました法律によつて強制送還をした場合に韓国側から引取らないというような故障は起るはずがない。私たちはそれにもかかわらず実際問題として開戦前から日本におつた諸君を、いわゆる北鮮系というような諸君を今韓国に送ることは人道的に適当ではないのではないかという考えを強く持つておりましたけれども、それは、それとは別に政府は飽くで韓国側からそんなものは引取れないというようなことは起らないということをはつきりと見通しとして断言されておつた。然るに新聞報道によりますると、このたびこの法律効力を発生した以後に送還された韓国人と言いますか、旧朝鮮人と言いますか、という中で、いわゆる密航等によつて当然向う側が受取るべきものは別として、終戦前から日本におつた韓国人の送還は、日韓間の話合いができていないからこれを引取らないと言つて、送還したけれども送還できずに空しく日本に帰つて来たという報道がありましたが、この報道は事実であるかどうかお伺いいたします。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは事案であります。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 政府は先ほど私が申上げましたように、そういうことはないとはつきりと言つておられたと思いますが、それは事実でありますか。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは今の、はつきり言つたかどうかは私も知りませんけれども、言つてもちつともおかしくない。つまりはつきり言つても少しもおかしくないことだと思います。
  31. 曾禰益

    曾祢益君 はつきり言つてもおかしくないと言われるけれども、はつきり言うことはおかしくないかも知れませんが、言つたことが事実によつて覆えされておるということはおかしいじやないですか。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは曾祢君の言われるように非常におかしいのであります。だから曾祢君の言われた通り先方は、日本におる朝鮮人は全部大韓民国国籍を持つべきものだということを、ずつと主張しておつたのです。従つてこちらが、なんかかんか言うならおかしくないのですが、その日本におる朝鮮人を、何かこの理由をはつきりしませんが、送還して今までは受取つてつて、これはたしか七回受取つたと思いますが、八回目に受取らないというのはおかしいのです。それで今その理由などは実はまだ取調べが全部済んでおりませんから、はつきりわかりません。どうも私も非常に矛盾した考えだと思つております。先方主張からいえば、日本政府がこの日本におる朝鮮人を送還した場合には、先方は送還の理由がおかしければ、これは別ですが、ちやんとした理由のある者を送還すれば、これは全部受取るべきものだと考えておつた。併しながら韓国とのいろいろの話合いにおきましては、随分この矛盾したことも、先方言つておるのはこの問題に限りません、それでいろいろ今後とも事情を確かめまして、その理由のないところをよく説明して、一時それはそういうことになりましたけれども、更に先方と話合いをして、当然受取るべきものは受取つてもらうということにしたいと思つております。
  33. 曾禰益

    曾祢益君 只今二度ばかり言われました、七回ばかり引渡した事実があるというのは、この密入国等のかどによつて、いわゆる日本にずつと長く住んでいた朝鮮人でなくて、前から来ていた人をあの法律ができる前に送還したと、そのときに向うが、韓国側が受取つた、こういう意味ですか。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私ちよつと法令をここに持つておりませんが、一つは不法入国、一つは登録等の手続の誤りということで、二つあるのであります。その両方共にそのときどきによつて無論数は違いますけれども、両方のカテゴリーが今まで受取られておつたのです。今度はそのうちの不法入国のほうだけ受取つて、登録法の手続等は悪かつたとかいうような種類のものは、受取らなかつたのであります。これは七回ともたしか両方とも受取つてつたと思います。
  35. 曾禰益

    曾祢益君 私の伺いたい点はまあ不法入国に限らないでしようが、登録法の違反か何か知りませんけれども実質的に前からおつた朝鮮人は送還したことはないのだと、不法入国等によつておるものだけを送還しておつたと、だから今度登録法と出入国管理令によつて、初めて前からおつた朝鮮人の、いわゆる法に基くところの退去、処分を要すべきものを、今度初めて送るのだと、こういうふうに、この点も政府説明をはつきりしていたと思います。それがそうじやなくて、前からおつた韓国人もやつていたというのだと、この前政府の答弁と私は基本的に食い違うのじやないか、あとから調べてでもいいのですけれども……。
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いやよくわかつております。ちよつと説明員から……。
  37. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) 従来から七回に亘つて送還しておりましたのは、先ほどやはり外務大臣からお答えになりました通り、不法入国者と、入国後における登録法違反の者だけでございます。今度返しました者も、従来からと同じ例でございまして、こういうものが溜まつてつたのであります。それを今度返したのでありまして、出入国管理令二十四條に規定しております。その他の理由によるものではないのであります。従来と同じ理由による者が溜まつてつた、四百人か溜まつておりまして、それを今度越えそうといたしたのであります。
  38. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、前も、九月二日以前、終戦前からおつた人間ではなくて、或いはおつたけれども、一遍任意に退去して、又不法入国して来たというようなカテゴリーの人だけをやつた。二十四條によつて前から平穏無事におつたと思われるのが、まあ二十四條のかどで送られたというのか、今度もそうじやなく、前からの七回というやつも、そういう前からおつた朝鮮人じやないということなんですか。
  39. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りであります。
  40. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、これは誠におかしなことになるのですが、岡崎大臣のように、韓国がおかしいというだけじや済まないと思うのですが、政府のお話だと、もう問題なく引取るべき者まで、今度は日韓交渉の停頓というか、一時的にもせよ決裂状態のようなために受取らなくなつた、そうすると、いわんや前からいた朝鮮人なんかは到底受取ることはない、こういう事態が起つて政府委員によつて説明されたことと、とんでもない違つた事態が起つたということになるのではないですか。
  41. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今度の韓国側のやり方が、何らか誤解に基くか、或いは非常な不合理な考え方から、一時的にやられたものと私は了解しています。原則的に言えば韓国側自身が、これはまあ日韓両国民の関係を悪くしないために、前からいた朝鮮人でも、不法な行為をして、日本国民から蜜蜂されるような者は送還してもらいたいと、喜んで……喜んでというか、先方から積極的に送還してもらいたい、そうすれば受取るから、という主張をずつとしておつたのであります。今度に限つて何だかその理由はまだはつきりしませんが、何か非常に簡単なことで、理由は何か言えないが、ただ上司からの命令だからとか何とかというようなことで、受取を拒絶されて戻つて来たようなわけですから、この問題は、今後よく一応韓国側と話合つて理由も質すし、又それが誤解であればこれも正す。私は今度のは、何らかの一時的の現象であつて原則的には、未だに私は韓国側の希望は、これは李承晩大統領の希望でもあるといつて伝えられておるので、変らないものと考えております。
  42. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますと、当分の間実際問題として、この韓国人の送還ということは、不法入国をしたいという者だけは受取るけれども、それ以外の者は、第二十四條で行くやつは受取れない、こういう事態が今起つておるわけですね。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 現在はそうですけれども、これは当分の間ということもないかも知れません、話してみなければわかりませんが、要するに一時的のことじやないかと思います。
  44. 曾禰益

    曾祢益君 この問題以外について質問してよろしうございますか。
  45. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 今のと関連しますか。
  46. 曾禰益

    曾祢益君 いや、この日韓については、私はもうこれで結構ですが、議題になつておりまする国連加入問題について岡崎大臣質問してよろしうございますか。
  47. 平林太一

    ○平林太一君 関連して、只今曾祢君より日韓の疑惑に対する質問がありました。従つてこれは日華條約を、只今政府は日華條約に対しては承認するものである、それから日韓の條約に対しては経過の報告を今お話なされたのでありますが、私は特にこの二つの條約に対する性格というものに対して政府のこの考え方を伺つておきたいと思います。昨年サン・フランシスコ会議におきまして、條約第二條によりまして、(a)項におきまして朝鮮に対しましては、日本朝鮮独立承認して、済州島、巨文島、及び鬱陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する、これは朝鮮であります。それから第二條におきましては、(b)項におきまして、日本国は台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する、これはまあ今度の日華條約の対象の台湾でありますが、まあ政府のいわゆる、殊に私は今度の岡崎外交の進むべき方向といたしまして、これは明らかに質しておきたい、というのは、私のほうはいわゆる国民外交である、国民の意思を象徴する立場におきまして、こういうことを申さざるを得ないのでありますが、特にサン・フランシスコにおきましての條約に対する関係各国の性格とはこれは違う、朝鮮におきましては我が領土といたしまして、明治四十年乃至四十一年頃と記憶いたしますが、当時の初代の曾祢朝鮮総督以来今日まで、終戦以来昨年まで、如何に朝鮮のために、我が国がいわゆる孜々営々としてこの朝鮮民族のために図ること如何に大であつたかということは、第一にこれは考えられます。又台湾におきましてもそういう意味が考えられるので、又事実もその通りであります。それでありますからそれにこのたびこの日華條約の場合は、いわゆる中華民国とこの條約を締結するというのでありますが、而もこの台湾の場合は、実質上の戦争が終つた後に、この台湾に対して、我が領土であつたその台湾に対して、新たなる中華民国政権がこれにできたのである、そういう特殊の事情であります。そうして平和條約におきましては、これを放棄したということ、朝鮮に対しては只今申上げたような次第であります。それでありますから、この日華條約或いは日韓條約共に、いやしくも我が国が拘束を受けるような、いわゆる戦争によつて一つの処罰を受けるような、そういう性格のものではこれは私はないと思う。国民の私の意思から申しますれば、只今外務大臣としての岡崎君の御説明によりますと、中華條約に対してはサン・フランシスコより以上、信頼と友好の講和であつたと、こうおつしやつておられます。併し相手方のあることでありますからなかなかこういうことはむずかしいことでありまして、取結びをいたしました当局といたしましては、誠にさようなことをお考えになられることも、一応私は了承いたすのでありまするが、併しこれらの條約というものは、一応締結いたしますれば、今後数年間どの程度これか続くか、続けば、その間依然としてその拘束を受ける部分だけは、長くそれが続かなければならないということを考えるにつきましても、極めて私はこれを慎重に考えなければならないのでありますが、例えば、日華條約の第四條におきましても、一九四一年十二月九日前に、日本国中国の間で締結されたすべての條約、協約及び協定は戦争の結果として無効となつたことが承認される、我が日本の実情で申しますれに、これはこの両條約のみでない、平和條約におきましても、この無効となるというときになつて、初めて我が日本というものが支障なく我が国力の限度内においてこの発展ができるのである。この條約の続く限りは、何としても條約から受けておるところの拘束なり制限なりというものから、我が国民は働いても、働いてもいつになつても楽ができないという面が、非常に憂慮されるのであります。併しそういうことを思うにつきましても、この両国の條約については、極めて私から申しますれば、いわゆる平和の見地に立つて、戦争によつてそうして戦争の結果から受ける処罰を、何かそこに意図して、そうして條約を締結されるということに、私は両国の場合はないと思うのであります。なぜならばその領土、台湾の場合は台湾、朝鮮の場合は朝鮮を、すでにそれらの先方国の領有に帰せしめたのでありますから、私から申しますれば、これはおつりを取つてもなお余りあるものである、かようにすら両国民の人々は考えてもらわなければこれは困るのであります。それを他の平和條約と同様に、日本が戰争の結果から受けるところの一つの処罰なり、或いはそういう拘束を受けるというようなことからして、これが取扱われるということは非常に残念である。そこでこの中華民国に対する、いわゆる日華條約に対しましては、私はこれを、内容を見るにつけ、或いは議定書を見るにつけましても、或いは同意された議事録、こういうものを見ましても、実は甚だ腑に落ちない点がある。そうして甚だ私は不満である。表面に現われましたものといたしましては、或いはこの程度であると、政府はまあそういうことで成功だとおつしやるのでありましようが、実質上におきましては、この性格を持つておる條約の内容に対しましては、私は非常に不満穴、あつたということを、この際申上げるのでありまするが、その性格に対する岡崎君の外務大臣としての御見解を、先ず第一に承わつておきます。  それから第二には、日華條約におきまして、そういう私は性格から以ていたしますれば、我がほうからすでに先方に参りまして、この條約に当つたのでありまするから、一度サン・フランシスコにおいて、吉田総理大臣が欣然受諾すると称して、あの條約を受諾されたと同様に、これはいわゆる中華民国当事者は、我がほうが先方に渡れば、欣然御受諾申すと、こういうことでこれはできるはずである。私はそういう性格にこれを見るのであります。然るにもかかわらず、非常にその会議が停頓いたしまして、そうして漸くにして講和條約が発効の日であるいわゆるワシントンにおいて寄託式の行われた目に、辛じてこれが取極められた、その間にはしばしば停頓したということであつたのでありまするが、その停頓いたしたところの理由及び先方主張しておつたことと、我がほうと食い違いがあつた点は、主なるものはどういうものが挙げられておるか、これを第二に伺いたいと思います。
  48. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ちよつと平林君に御注意申上げますが、まだ只今日韓協定質問だけでありまして、日華條約のことについてはまだ質問に入つておりません。
  49. 平林太一

    ○平林太一君 併しこれは両方とも関連総合しておりますから、やはり委員長、そうなにでなくて、審議の非常な構想と言いますか、進め方としてそういうふうに一つ御了承願いたいと思います。  それから第三でありますが、第三はこれは一応まあ、同意された議事録でありますが、同意された議事録の中に第二にありますが、中華民国代表が発言いたしております、『私は一九三一年九月十八日のいわゆる「奉天事件」の結果として中国に設立された「満州国」及び「汪精衞政権」のような協力政権の日本国における財産権利又は利益は、両当事国間の同意によりこの條約及びサン・フランシスコ條約の規定に従い、中華民国に移管されうるものであると了解する。その通りであるか』これに対しましては我が方の代表は「その通りである。」と言つております。それから第三が、中華民国から発言いたしております、「私は、サン・フランシスコ條約第十四條(a)2(II)(ii)の規定は一九三一年九月十八日以降中華民国の同意なしに設置され、且つ曽つて中国における日本国政府の外交上又は領事上の機関であると称せられたものが使用した不動産、家具及び備品並びにこの機関の職員が使用した個人の家具、備品及び他の私有財産について除外例を及ぼすものと解釈してはならないと了解する。その通りであるか。」日本国代表「その通りである。」と言つております。この二つに対しまして中華民国代表の発言されておりまするこの内容につきまして、これを詳細具体的に岡崎外務大臣より御説明をいたされんことをこの際要請いたすものであります。
  50. 曾禰益

    曾祢益君 ちよつと議事進行について……これはまあ正式に委員会にお諮り願つてなかつたわけですが、先ほど平林委員の御発言中に委員長が言われましたように、大体常識的にそういうふうに行つたほうがいいのじやないかと思うのは、何しろ日華條約についてはこれは本当に各委員共に、私もそうでありまするが、逐條審議的に非常に勉強して行かなきやならないと思つておるので、本日それに関する御答弁を願つてそれにずつと続けて入つて行くのならば、又それもいいかも知れませんが、今日は各会派の人も来ておらないようですし、出ておられない会派のかたもありますし、やはり前にありました国連問題等質問は、これはお諮り願つて岡崎大臣に御答弁を願うことにして、日韓條約の一般的なこと以外は次の機会に廻して頂きたい。
  51. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 曾祢委員からの御発言もありましたのでありますが、国際連合への加盟について先ず質疑を行いまして、それから中華民国平和條約との質疑に入りたい。併しこの二つのものが関通性があれば、この二つを一括して質疑に入るのもいいかと思いましたが、これは皆さんにお諮りをいたしまして決定したいと考えておつたようなわけであります。只今日韓協定について曾祢委員から御質問がありましたので、平林委員はそれに関連してというような御発言でありましたから、そのように私は了解していたのでありましたが、日華並びに日韓と関連しているからというようなお話でありましたから、そのことだけにとどめて頂きたいと私は考えております。
  52. 平林太一

    ○平林太一君 大体了承しました。その部分の性格ですな、日韓條約に対するこの冒頭に申上げました性格……答弁されるほうでは両方一緒にされたほうが時間の省略上いいと思いますが、非常に改つてそういうふうな委員長の話でありますからそれで了承いたしたいと思います。そのように一つ御答弁をどうぞ承わりたいと思います。
  53. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今の御質問どうも性格というのはよく私にはわからないのですが、これはいずれもサン・フランシスコ平和條約の趣旨に基きまして行なつた條約交渉、成立しないのもあり、成立したのもありますが、いずれも平和條約の趣旨に則つて行なつたのでありますが、連合国とは立場を異にしますから、おのずからその内容について又表現について異なることがあるのはこれは当然であります。併し趣旨においてはサン・フランシスコ條約の精神に則つて行なつたのであります。
  54. 平林太一

    ○平林太一君 今お話がありましたが、趣旨に則つてやりますことはこれはもはや何ら疑問の余地はないのでありますが、そういうことは、趣旨ということは一つのやはり形式的なことであります。この日韓條約に対しまする根本的ないわゆる性格をどういうふうに見るかということは、只今大臣からお話のありました通り、連合国との事情とは違う、そこであります。連合国との事情とは違うから、具体的の條約に当つてはそういう違つた考え方を以て行くべきである。従つてそういう考え方を以て行くべきであることによつてこの條約の内容というものが違う。であるからその出発に当りまして、その構想というものが、非常に私は我がほうといたしましては捉われない自由な立場において、そうしていわゆる両国間の今までの関係というものも非常に主張のうちに取入れて行くべきである。それをやらないというといわゆる全く魂を拔かれてしまつたような、單に外交が事務的にこれを進めるということになる結果が、将来非常に我がほうとして怛怩たるものを残すと同時に、又善隣そのものとの関係であるこれらの点に対しまして、却つて両国の間に歯の根に物を挟んだような結果が永遠に残るということを私はここで憂えますので、そういうことを伺つているのでありますからその点改めて一つ外務大臣からそれに対する御見解を、これは悪ければ悪い、こういうことが違つておれば違つているのだということでこれはよろしいのでありますから、ちよつと何か関連質問で御制約を受けておりますから、これ以上私は申上げることを避けますが、いずれも日華條約に対する事柄、これは私はまあ関連しているからこの際承わるのが妥当だと思いましたが、曾祢君から御発言がありまして非常にお急ぎになつておりますから、それで私のほうから留保いたすのでありまして、併しこの答弁は外務大臣におきましては、いわゆるこれが委員長の運営によりまして済みまして後に、それを答弁するということをこの際保留しておくようにいたしたいと思います。併しそれがいかぬということでありますれば、同じことを又改めてこの次の機会に言わなければならんのでありますから、この点委員長と大臣の間に然るべくお打合せを願いたいと思います。
  55. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それでは只今の機会に簡単に御答弁いたします。これはいずれもサン・フランシスコ條約に示された原則に基いて交渉をいたしているのでありますが、その間におきましては全く日本としては自由な立場におきまして何ら拘束をされずに交渉を行なつていることはこれは当然でもあり、又事実でもあります。今度の條約の交渉というのはやはり強いて言えばそういう性格のものと考えております。
  56. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 議事進行について。先刻曾祢委員から御発言があつたのですが、岡崎外務大臣から日華條約と日韓交渉についてのお話があつて、それについて曾祢委員から御質問があつたのですが、今の段階ではこの二のつことについて質問するのですか、この二つのものよりも国際連合のことがすでに日程に上つておりますので国際連合のことを今先に質問するのか、どういうことになつているのですか、ちよつと委員長のお考えを伺いたいと思います。
  57. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 御説明申上げます。まだ国際連合と、それから中華民国平和條約の質問に入つておらないのであります。その前に只今岡崎外務大臣からいろいろ説明を聞きましたから、曾祢委員から特に日韓協定に関して質問をしたいというお話でありましたからそれを許したようなわけでありますが、この国際連合とそれから中華民国平和條約とに入ります前に、一般質問と申しましようか、ちよつとほかに質問が加藤委員から、駐留軍土地接収、買上げに関する件について岡崎国務大臣質問したいという申出がありましたからそれを許可いたしまして次に国際連合のほうへ入りたいと思うわけであります。加藤委員
  58. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 駐留軍土地接収の問題につきまして、その買上げ価格の中に地上権がどういうふうに取扱われておりますかという問題について御質問申上げたいと思います。問題は昭和二十年に羽田飛行場の用地として接収されましたのですが、そのときに大田区の羽田鈴木町の地主伊藤松太郎ほか七十数名でございましたが、この接収に対しまして昭和二十七年の三月になりましてこれが買上げと決定になつて、その代金が支拂われたことがございますが、その詳細な地主の氏名、坪数、買収価格、これを承わりたいのでございます。尤も今外務大臣はお時間もお急ぎと存じますので、これはあとから書面を以て速記に残すように御回答を伺いたいのでございます。で、問題はこの土地が、当時地主が自分で利用していたものもございましたが、多くは三代か四代の長きに亘つて借地人が地上権を設定いたしまして賃借利用していたわけでございます。昭和二十年五月の爆撃によりまして家屋が焼失いたしましたので、借地人の或る者は羽田本町に避難し、或る者は現居住地に家屋を建てて、接収当時はそこに住んでいた者もございました。そして罹災避難者に対しましては罹災証明書、居生者には立退証明書を大田区役所から発行をされているのであります。右のように賃借居住者に対しましては、接収当時において当然これは地上権があつたものだと存じますが、買収価格の中に地上権は如何なる割合で評価されておりますか、この点を伺いたいのでございます。で、この土地が接収されました当時の居住者の中には、四十八時間以内に立退くように強制されましたために、立退者は実際家屋の取毀ちをいたしまして、その家屋が余り急いで壊しましたために、実際に薪炭用くらいにしか役に立たないようなことになつてしまいまして芸も補償価格一坪当り僅かに四百円見当しか拂われなかつたのであります。居住者はその当時におきましても非常に困却をいたしたのでございます。この点はまあ別といたしまして、取りあえずこの地主に先般支拂われましたこの価格の中に、政府は地上権をどのように計算して補償なさいましたか、この地上権の補償、この問題について御回答をお願いしたいのでございます。
  59. 長岡伊八

    政府委員(長岡伊八君) お答え申上げます。羽田の接収地につきましては、只今質問ございました通り、先般買上げましてございますが、これは羽田の接収地全部ではございません、その一部でございまして、四万九千四百六十八坪余を買収いたしました、只今の御質問のこの土地の上に存している地上権その他について如何ような評価をしたかという御質問でございますが、この土地につきましては、実は登記簿その他を調べまして特調のほうにおきまして仔細に検討いたしましたところが、只今申上げました買上げました土地については、そういう権利が存在いたしておりません。なお地主ともいろいろ打合せましたところが、地主におきましても、このたび買上げました土地については、そういう権利のないことを保証いたしております。若しこれに対しまして何らか権利主張をする者が出て参りましたときには地主において全都解決するという誓約書も入れております。従いましてこのたびの買上げ値段の中には地上権に対する金額は入つておりません。更地として買上げている次第であります。
  60. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 登記簿その他をお調べになりましたところが地上権がその登記簿の面に設定されておらなかつたから、この買上げ価格の中には政府において地上権を勘定の中に入れなかつたという只今の御答弁でございますが、事実において三代も四代も長きに亘りましてここに居住をしておりました戸数というものは相当多いものがあるのでございます。こういう事典がそこに嚴として存在しております場合には、これはこういうような混雑の場合にたとえ地主と借地人との間に何か書面を交しているようなことがございましても、或いはそれが焼失するというようなこともあり得るのでございます。又三代も四代も前から賃借権、地上権を設定しておりました場合には、その当時一々これを登記簿の面にまで、必ずしもそこに認証するというようなことは手間を省いたというようなこともあり得ると思います。併し今までの慣習上三代も四代も賃借をしておつたという事実は、これは否定することができないものでございますから、こういうふうな場合にも、政府は接收なさるときに、こういうような事実を全く無視して地主だけに……、この地上権は全く無視して接收をきめておしまいになる、こういうようなことをなさつたと、こういうふうに了解いたしてよろしうございましようか。
  61. 長岡伊八

    政府委員(長岡伊八君) 只今申上げました通り、このたび買上げました土地の上には対抗要件を備えております権利はないと断定いたしたのでございますが、只今申上げます通り、羽田の土地につきましてはまだたくさん残つているので、或いはこの残つている部分につきましては、そういう権利があるかと存ずるのであります。勿論買上げますときには、これらの権利をよく調べまして、権利者に迷惑のかからないようにこれは相当注意をしてやつたつもりでございます。今後も所有者の権利、その上に持つております地上権者なり、賃借権者なりの権利を決して無視するという考えはございません。
  62. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 只今の御答弁によりますと、今まで買上げられました土地の上には地上権はなかつたと御断定なさつたそうでございますが、事実そこにたくさんの賃借人が三代、四代の長きに亘つて地上権を設定したと思つて賃借いたしておつたことは事実でございますが、これを、その事実をお調べになつたことがございますでしようか。
  63. 長岡伊八

    政府委員(長岡伊八君) 先ほども申上げました通りに、権利者のあるなしということを調べたのでございますが、今お話のような権利が果して第三者に対抗し得る権利であるかどうかということを調べました次第でございますが、一応それがそういう権利の存在がないという見通しをつけまして、更に所有者と契約いたしまして、そういう問題が起るならば、いわゆる只今お話のようなことが事実上あつたけれども、対抗要件を備えていないといつたようなことで問題を起しますときには、地主が一切これを解決する、こういう誓約書を取りまして、これは買収いたしました次第でございます。
  64. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 現在ここに三代も四代も長く土地をお借りして住んでおつた者があつて、その借りておりました者が罹災証明書或いは立退証明書を大田区役所から発行されているということにつきましては、お調べになりましたでしようか。
  65. 長岡伊八

    政府委員(長岡伊八君) これは個々のケースにつきまして、どれにどういうことをこの席上で答弁申上げかねるのでありますが、御質問の要旨はこういうことになるのではないかと考えるのであります。実はこの羽田の土地の以外におきましても、終戦直後進駐軍が入つて参りまして土地を接収いたしました。その上に住んでおつた人、家を建てかけておつた人というものもございます。この権利が接收ということによつて消えたかどうか。対抗要件が消えたのかどうかという問題が残つております。それでこの問題につきましては、借地権者のほうの借地借家法による権利の確保もできなかつたという事態が発生いたしましたために、これを権利を生き返らせろという御要求がございまして、先般実は法務委員会その他でも論議された問題でございます。こういうお気の毒なかたのあることは、この羽田におきましては、只今申上げます通り具体的にどなたがどうということは申上げられませんけれども、お気の毒なかたがあるということは承知いたしております。この問題につきましては、今後駐留軍土地を提供いたします場合の法律案が、先日参議院並びに衆議院を通過いたしまして、この審議の際にかような権利関係の問題も併せて立法したらという話がございまして、随分研究いたしたのでございます。これは政府部内におきましてもいろいろ議論があつて、遂に立法の措置に至つておりません。従いまして只今質問の御要旨は、この問題に触れて来るのだと思つております。が、この羽田の土地の買収の場合には、さような権利の対抗、現在の法律上対抗要件を備えておる権利があるかどうかということを調べるよりほかに方法がございませんので、先ほど申上げました通りの措置をとつて買收いたしました。
  66. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この羽田の土地の場合には、そこに長い間住んでいらつしやつたかたは、地主だけが買上げの支拂を受けまして、当然あつたと思つた数代に亘つて住んでいた地上権というものを、全く無償で喪失するということは、これは地上権を持つていたかたの権利というものが全く無視された形であることは事実だと思います。それでそういうことが地上権を持つていたかたに何ら相談をしませんで、地主と政府だけで、地主側だけが納得できるような方法でおきめになつたということは、ちよつと今までの地上権というものの慣習から考えまして納得のできないことだと思うものでございますから、ここに住んでおられましたかたがたは、現に立退証明書や罹災証明書をちやんと持つて、ここに数代住んでいらつしやつたということの証明は明らかになつておることでございますから、この今私が問題にしております問題は、過去の問題だからこれはそのままにして、これから後の立法についてお考えになるのでなくて、済んでしまつた特にこの羽田の問題について、もう一度これを御研究なさるという御意思はございませんでしようか。
  67. 長岡伊八

    政府委員(長岡伊八君) さような権利があると主張されます、まあ何代も住んでおられましたという事実がございまして、これが果して現在の法律上第三者に譲りましたときに対抗し得るものであるかどうかということは、これは最後は裁判所の認定を待たなければわからん問題だと思います。若し政府のやりました措置が法律上間違つておる、権利侵害という問題になりますならば、現在の法律に照らしましてそういう結論が出まするならば、これは政府として責任を負わなければならない。併しそういう問題、事実問題といたしましてはそういう問題が起きまするので、地主に新地を売却いたしましたが、これは現在のそういうかたが地主に御交渉に相成りまするならば、権利として存在しており、そういう関係がありますものであれば、地主において考慮解決する義務を政府に対して負つておる次第でありまして、これは当事者間において或いは話合いがつくものではないか、かように考えております。
  68. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは政府と地主との御交渉におきまして、万一地主が地上権を持つておる者に対して、交渉の結果持つておるということが明らかになつたならば、地主は買上げ価格の中から賃借者に対して賃借権と認められるものを拂う、こういう御了解の下に買上げられたのでございますね。
  69. 長岡伊八

    政府委員(長岡伊八君) 誓約書にもそういう問題は一切書いてあります。政府に対しても御迷惑をかけませんという誓約書を提出しております。
  70. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは参考のためにその誓約書の写しを拝見いたしたいと思いますが、見せて頂けましようか。
  71. 長岡伊八

    政府委員(長岡伊八君) かしこまりました。提出いたします。
  72. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 有難うございました。済みました。   —————————————
  73. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは国際連合への加盟について承認を求めるの件について質問に入ろうと存じます。質疑のおありのかたは質疑を許します。
  74. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 私は国際連合加入の問題について極く根本的な問題を一、二伺いたいと思います。国際連合に加入するということになると、安保理事会の勧告によつて総会で認められなければならないということになつております。この安保理事会が承認するということは、ソ連の拒否権がある間はむずかしいと思いますが、拒否されるということは大体覚悟の上で申込まれることと思いますが、それがどうであるかということと、安保理事会の勧告なしに国際連合にどういうふうな形で加入し得るか。又は加入し得ないでもダレス氏が言つたように、イタリアの例のように国際連合利益は受けることができるというようなことは、どういう方式で、どういう状態でそれができるのか、その点を最初に伺つておきたい。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは安保理事会でどうなるかやつて見ないとわからないのでありまして、我々としては拒否される理由なしと考えられますから、むしろ拒否すれば向うが悪いのだということで、加盟は躊躇なく申込みたいと考えております。安保理事会以外の方法で国際連合加盟することは、今のところできないと思います。イタリア等はオブザーバーを派遣しております。これは国際連合の事務総長の承諾があれば派遣され得るものと了解しております。イタリアのみならず、ほかにも数カ国派遣しておりまして、このオブザーバーは或いは大使の資格を持つた人が行つておるものもありますし、又普通の大使館の館員が行つておるものもあります。将来我々のほうも今からそんな拒否されることを予想していろいろ計画するわけには参りませんが、場合によつたらそういうことも考慮すべきものであろうと思います。
  76. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 拒否されて正式に加入することができないと仮定すると申しましても、私どもはその拒否は今までのイタリアの状態を見ても、殆んど必然的じやないかと思つておるのですが、そのオブザーバーを出して国際連合利益を得るということはどういうふうにできることがあるか。又その場合における義務負担というようなことはどういうことになつておるか、その点……。
  77. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) オブザーバーは、国際連合のいろいろの会合に無論オブザーバーとしては出られるわけであります。又各種の文書等を送つて来られるのであります。又無論ニユーヨークにおりますれば各国の代表ともいろいろ話合いをしますから、事実上の利益は非常にあると思いますが、それ以外には、例えば会議の投票権は、つまり正式に議席はないけれども、列席して会議の模様を聴取したり、又各種の議案とか議事録とか、そういうものをもらい受けるということようなことは種々あると思います。それから又実際上の利益、つまり各国側と直接交渉いたしましたり、話合いをいたしますから……。それから義務負担というようなものは特にないと考えております。
  78. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 オブザーバーの場合でも……。
  79. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) はあ。
  80. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 私それだけで……。
  81. 曾禰益

    曾祢益君 この国際連合への加盟について承認を求めるというふうになつておるわけなんですが、これは併し国際連合に加入するということ自身は、憲法七十三條の問題じやなくて、要するに国際連合国の憲章を受諾すると言いますか、これに伴う條約上の権利義務を受諾するということが、いわゆる加入について承認を求めるということの実体的の意味ではないかと思うのですが、そういうふうに解釈すると、何故に国際連合に加入することについて今日国会の求認を求めておられるのか。と申しますのは、非常に変なことを申すようですが、こういう一般的な多数国間の條約に加入する一つの例のわけでありますけれども、こういうような場合には、他の場合には常にそうだつたと思うのですが、政府において、日本の加入ということには條件が客観的に整つておる。従つて日本が加入の意思を持つて交渉すれば加入ができると、こういう場合に、従来は少くとも政府はこういう多数国條約への加入について一種の條約締結前の承認ということをやつておられたと思うのです。その場合と比較して見ると、今度の場合は只今外務大臣は言われておりますが、これは主観的に或いは希望的に日本の加入は受入れらるべきだと言つてみても、客観情勢から言えば明らかに、現国際状況においては日本の加入が認められそうもないというほうがむしろ正しい見方であろうと思う、甚だ遺憾でありまするが……。そういう場合に何故に国連加入に関するいわゆる事前承認ということを国会に求められるか、それはどういう理由なのか。即ち講和條約によりて日本が国連に加入する意思があるということをはつきり言つておるわけであります。我々も日本も国連に加入すべきだ、するために努力しなければならん、この点については全然異議はないわけなんです。でありまするが、かかる状態においてまだ客観情勢が整つていないのに、国連加入に関する国会の議決を先きにとるということは、外に対する外交上の立場に資するというような意味があるかとも思うのですが、そういう御意思であるのかどうか。それからいま一つこれに関連して、我々が国会においていわばこの国際連合憲章というものには異存なしといたしましても、日本が加入する場合にいろいろな附帯的な條件が出た場合には一体どうするのか。そういうことが全然予想されないのかどうか。或いは予想されるかも知れない。例えば日本のまあいわゆる軍備を持つと言いますか、或いは戦力的な国連に対する寄與ということが仮に加入の條件になつた場合には、そういうものは一体どうして……国会にあらかじめ承認をとつたからと言つてそれで済むという問題でないことはこれはもう明らかである。して見るとこれは勿論予定はできません。予断はできませんし、そういうことのなからんことを希望するのではあるけれども、まだ日本の国連加入の條件なり、話合いが整つてないときに、どうも現在の国連憲章だけの権利義務について、その解釈についてもかなり問題が起るのではないかというような場合に、いわゆる余り條件の整わざるのに、白紙委任的な承認を求めることが一体適当であるかどうか。それらの点については政府はどういうふうにお考えなのか、これを先ず伺いたいと思います。
  82. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国連加入については別に交渉すべき條件というようなものはないと思います。今まで各国の例を見ましても、拒否権で抑えられた国がたくさんありますが、これはやり方が悪いといえば別ですが、特に交渉すべきものがないので、まつすぐに加入を求めて拒否されたのだと考えております。我々の今度の加入は、別に外交上の懸引とかいう有利、不利ということを特に考えるのではない。單に単純に加盟を申込むことを承認を求めるというのは、それは拒否権で加入できない場合もありましようけれども、すぽつと加入できる場合もあるかも知れない。加入してしまつたあとで国会の承認を求めるというのは、これはむしろ間違いであつて、そういう場合を考えてぽかつと加入できる場合もあり得るのでありますから、理論上はそこであらかじめ国会の承認を求めておかなければ、国連憲章に基く種々の義務を負うことになるのでありますから、そこであらかじめ求めておいて拒否される場合もあるし、拒否されない場合もあり得る。そうなるとどうしても理論上は国会の承認が先に必要である、こう考えておるのであります。それかつ国連加入についての別の條件というようなものを出されるか出されないか、これは日本の場合については将来のことですからわからないといえばわかりませんが、例えば軍備がないという問題を一つ仮に挙げて見ますると、御承知のようにパナマであるとか コスタリカであるとか軍備のない国が国連の現加盟国として加盟しておるのであります。又アイスランドは、加盟前に軍備のないことを明らかに述べて、その上で加盟を認められておりますから、特にその点で支障があるとは理論上は考えません。尤もそれらの国と日本とは、立場が違うという実際上の問題はありましようけれども、そうして今までも特に條件を附せられて加盟を認められたというような国はないように思つておりますから、その点も私は別に條件はないと思いますけれども、あれば又それは條件を国会に提出して承認を求めざるを得ないということになると思います。
  83. 曾禰益

    曾祢益君 軍備を持たないことについての、これが必ずしも先例からいつても、理窟からいつて加盟を拒否される理由にはならないだろうという見通しを持つておられるようですから、私たちもそれを希望し、従つてこの憲章以外の重大な特別な権利義務を持つというようなことはないだろう。従つて憲章を受諾することについて、あらかじめ承認を求めておこう、ただこれだけの意味だというお話でしたが、成るほど我々も加入ということが起つてからあとで、つまり條約を締結したあとで国会の承認を求めるということは好ましくないという点は同感でございまするが、ただ今日然らば加入に関する相当な予備的な交渉なり、或いは手なりを打つて、そうしてこれなら加入ができる、又更にそういつたような附帶的條件なんかの問題が起らないという見通しがついてから国会に提案しても必ずしも遅くはないのではないか。にもかかわらず、ただ加入の申込をする、そうすれば存外ぽかんと加入ができてしまうかも知れない、そういうことも理論的にあり得るからというだけで、あらかじめ今から加入に関する承認をとつておくというのは、どうもこれはやはり何といつてもほかの多数国條約の場合と違つて、これは異例だろうと思うのですが、政府としては実際加入問題について、例えば拒否権のことを別にすれば、安保理事会の多数は確実にとれるというようなことについて、どの程度の自信を持つておられるのか。それから拒否権が行使された場合には、ただそれは止むを得ないというので、加入の意思だけを出しておいて、それでいわゆる拱手傍観しておるだけなのか、それとももつと積極的に加入に関するあらゆる可能性を研究し、探研し、試みるというお考えであるかどうか。なおそれに関連しまして、この点は理論的にはすでに御研究済みだと思いますけれども、いわゆる安保理事会のなんと言いましたか、勧告とありましたか、勧告なしにはこれはもう加入ということが憲章の修正を経なければできない、こういう解釈が正しいと思うけれども、勧告を基礎にしてやるということは、必ずしも拒否権が振われたから総会で取上げられることが絶対にできないというわけでもないのじやないだろうか。そうして見れば、安保理事会でいよいよ拒否権が適用された場合でも勧告はとにかく出る、勧告が出れば総会でこれを取上げて決定してもらうというような新しい憲章の解釈なり、運用なり、こういうようなものまでお考えになつておられるかどうか、それらの点についてのお考えを伺いたいと思います。
  84. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは平和條約の調印国である四十数ケ国につきましては、日本の国連加入を支持しておる国は、全部に一々当つたわけではありませんけれども、大体予想される、その特に主要なる国々においては積極的に支持する意向も示しております。それから私理窟だけ言うと言われるかも知れませんが、サン・フランシスコ平和條約に対しては、御承知のようにソ連が修正提案をいたしておりますが、ソ連としてはまあどういう意味かはわかりませんが、この前文の国連加入に関する部分につきましては、別に積極的に反対の意思表示はしておらないのであります。これは無論全部のことはわかりません。そこでいろいろこの加入を認めない国は今までもたくさんありました。これらの国々もそれに特に緊密なる関係のある諸国と連携して、何らか他の方法で加入ができないかというような途は検討しておるわけであります。我々もそういう点については何といいますか、勉強をして検討しておりますけれども、今加入の承認を求める議案を出しておるこの際、加入されなかつたときはこうするのだということを余りここで論議するのはどうかと考えておるわけでございます。とにかく平和條約の中でも国連加入の意思を表明しておるのでありまするから、日本としては條約を誠実に履行するという建前からいつても、とにかく加入は速かにいたしたい、こう考えて提案しておるわけであります。
  85. 曾禰益

    曾祢益君 まあ拒否権が振われるというような不当にして不合理な事態が起らないことを希望するのは、これはもう何人も同様でありまするし、従つて私が余りに先のことを申上げて、拒否権が行われてもいわゆる総会でやるというようなことを先に申上げたのは、随分先走つた話なんですが、逆に事実上、今の模様で行くならば、成るほどソ連が日本の国連加入という問題をサン・フランシスコの会議の対案においては頭から拒否しない態度はとつてつたけれども、その提案そのものは拒否された今日、はつきり日本がいわゆる西欧陣営側に立つてしまつて安保條約ができた今日、ソ連が拒否権を振わない、或いは少くとも反対に廻らないということを期待するほどまあ人がいいばかりの外交をやつておられると思わないので、そうして見ると、そういうことを予想して、例えば現に国際連合の総会あたりにおいてもそういう気運がありますように、これはアメリカは反対しておるようでございますけれども、併し両方とも、ソ連圏国と自由世界のほうの候補者一括上程、一括承認というような考えについては政府はどういうふうにお考えになるか、その点を伺いたい。
  86. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これについてはなかなか今直ちに政府の意見を表明するということも困難であります。いろいろデリケートな関係もありまするし、併しそういうような方法もまあ一つの方法として考えられるわけであります。又その前に提案されたように、例えば総会の加入問題などという点は、兵力行使とかその他の点とは違うのだから、拒否権の発動以外の点においては、総会の多数なり、三分の二なりで決定したらいいじやないかという議論もある。これはいろいろ前途曲折があると思います。我々としては併しいろいろの点で日本側立場をよく理解せしむるためにも、日本が先ず加入の意思表示をはつきりいたして、又仮に万一それがはかどらない場合にも、オブザーバーを出すとかいうような方法もとりまして、できるだけ関係各国と接触を密にした上でなければ、いろいろのそういう考え方も日本側にとつては十分に行われがたい点もあると思いますので、そういうお話のような点もいろいろ考えないではないのでありますが、先ず加入の申入をするのが先決問題であろうと思つておるような次第であります。
  87. 曾禰益

    曾祢益君 これは私の申上げたようなことはもう極めて常識的なあれで、別に特別な考慮でも何でもないのでありまするから、外務当局では当然考えられておると思います。それから又例えばアメリカが現状においては、朝鮮動乱が継続しておる間、少くとも両方のソ連圏の候補者、自由陣営の候補者一括上程、一括承認ということに反対のような意思に新聞報道なんか伝えておりますので、なかなか政府のあれはこうだということを言うのもデリケートな点もあるということもわからないではございません。が併し、私は加入の意思を表明することについて異存を述べておるわけじやなくて、ただ国会に今承認をあいまい模糊たる時に出すことについてはやや見解を異にしておるのですが、それは別として、いやしくも加入の意思を表明する場合には、今言われたように、事実上の困難ということはわかり切つておるのですから、駄目な場合にはオブザーバーというように簡単に考えないで、やはり基本的な問題として、これは憲章の運用においてこういう問題こそは総会の三分の二、多数決で行こうというような積極的な堂々たる議論を展開することが一つではないか。いま一つは、国によつて違いましようが、いわゆるアジアアラブ・ブロツクだとか或いは南米のいわゆる小国等に対しては、やはり個別的にも、とにかく両方で拒否権を振い合う、と言つては語弊があつて、拒否権を振つたのはソ連側でしようが、実際上は自由世界側はソ連圏の衛星国の加入に事実上反対して来たことも、これも事実なんです。そういうことは適当でないのじやないかというようなふうな手を打つて行く必要があるのじやないか。かようにして相当な客観情勢を作つて行く積極的な外交の手を打つて、大体の見通しと共に国連加入の承認ということを議会にお出しになるほうが順序ではないか。意思を表示することには一向差支えない。條約に加入するという前に承認を求めるというほうが私は順序としては正しいのだと思いますが、如何でしようか。
  88. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもう御説明するまでもなく、問題は世界の大多数の国のことでなくして、ソ連なり或いはこれに同調する少数の国でありますから、まあ早く簡單に言えば、ソ連の拒否権ということになる。若し交渉する必要ありとすればソ連に対して加入の交渉をする以外には、世界の輿論を喚起するという方法は別としまして、実際的の方法はないわけです。これは私は事実誠に困難なことではないか、こう考えております。
  89. 曾禰益

    曾祢益君 くどいようですが、それは勿論ソ連に対する直接の交渉もありましようし、併し又間接の交渉もあるわけであつて、いわゆる両世界の間に立つような世界のグループもあるわけなんでありますから、必ずしもソ連に対する直接交渉が現状において困難だ、だから望みがないのじやなく、拒否権を振わないような一般的な條件をクリエイトして行くということは、若し日本がそれに賛成ならば、そういう努力は決して不可能ではない。終局的に、ソ連がそれでも拒否権を振うという肚であるならば、これはどうもいたし方ないことになるわけですが、私はさように考えるわけです。これはこれ以上答弁を望みませんから、私の質問はこれで打切ります。
  90. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ほかに御発言ありませんか。岡田君どうですか。
  91. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今国連加入問題についていろいろ曾祢さんからの御質問があつたのでございますが、私も二、三お伺いしたいと思います。勿論国連加入について、私どもも日本側から申入れることについて異議を唱えるものではありませんが、併しイタリアの例を見てもわかりますように、困難である。二つの世界がああいうふうになつておる以上、国連の下で困難な事情にあるということは考えられるわけです。又国連の規約が、憲章が変るということもなかなか実際にはできないことである。そうすると、申込んだはいいが、いつまでも中ぶらりんになつておる、こういう事態が続いて行くわけでありますが、その際にまあ一方平和條約によつて国連に対してあらゆる援助を與える義務を負わされて行く、こういうことになつておりますが、その場合に一体国連側は日本に対してどういう何と言いますか、ことを望んで来るであろう、それをどういうふうに政府は考えられておりますか。
  92. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはまあこつちからこれだけやるからお前のほうもこれだけ出せというような問題でもないのであります。国連という世界的の機構が世界の平和維持に努力しているときは、加盟加盟いずれにしましてもその趣旨に賛成する国がこれに協力するというのは当然と私は考えております。が、実際上は仮に非加盟国であつて朝鮮の例をとつてもおわかりになりますように、平和の維持が乱されるという場合には国連軍の出動する場合も当然あるのであります。又国連としては世界の平和を維持する義務がありまするから、この点では日本も国連に対する一種の保護言つては妙ですが、国連側の平和維持のための努力の対象となり得ることもあるのでありますが、そういう損得とか取引という問題でなくして、私どもは少くとも国連憲章の趣旨によつて世界平和維持に幾分でも貢献いたしたいという考えから、国連に加入しよう、又国連に加入していない場合でもでき得る限りの範囲ではこれに協力しよう、こう考えておるわけです。
  93. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 国連がああいう闘争の舞台でなくて、大体一つになつて行動している場合においてはあなたの考え方も私はこれは妥当であろうと、こう考えております。併し事実上国連のああいう闘争の舞台、そして闘争の舞台になつておると同時にまあ国連に加入しておる国々のうちでアメリカ側に属するものが大多数でありますが、それがまあ朝鮮に出動をして形式的には、これは勿論国連の総会によつてああいうふうな決定ができておつたのでありますから、形式的には勿論国連の行動であります。その国連の行動に、平和條約であらゆる一切の義務を負うことによつて日本が直接対立しておらなかつた他方との、他の陣営との間の関係がそれによつて悪化して行く、却つて悪化するような状態が醸し出される、こういうことになつて来ますと、これは私は非常にむずかしい問題が生じて来ると思う。吉田さんは必ずしも共産主義世界の国々といつまでも敵対関係をやつて行くのだというようにお考えになつておらないようにも思いますが、今のような状態で行けば、事実上そういうことにならざるを得ない。これは却つて国連によつて我々が世界の平和を維持し、日本も又この世界の平和の一部として日本周辺の平和を願うのに逆な結果が来たされやしないか、こういうふうにまあ考えるのですが、政府はその点について今日国連に対してあらゆる援助を與える義務を負わされておるのですが、この義務の結果他方との関係が悪化する虞れがないとお考えになりますか、或いはあつても仕方がないと、こうお考えになつておりますか、その点はつきりお伺いいたしたい。
  94. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもう議論になりますから仕方がありませんけれども、又こう言うとあなたの御意見がそうだというふうにとられては困るのですが、あなたのことは別にいたしまして、とかく日本の国内においても、いわゆる共産陣営の人たちは、あなたのおつしやるような議論をもう少し強く言われまして日本国民に対しても、国連協力というようなことをすれば、何か非常に日本に対して不安を起す心配があるということで、国民に非常に躊躇をさせるような宣伝をいたしておるのです。併しながら私はまあ端的に言えば、今言われたようになつても仕方がないというかも知れませんけれども、私はその正しいところを踏んで行けば、これに対して、仮にそれによつて相手の誤解を招くか、或いは関係が悪化するというようなことが仮にありましても、正しいことをやつて行くのが当然の国としてはやり方であつて、こういう点については、特に国民を無論守るためには愼重にやらなければなりませんが、徒らに臆病になるべきではない。又そういう点で臆病になることが却つて世界平和維持の目的に反するような結果も起ると考えております。併し私は国連に加入したからといつて、これはその国連自体が闘争の場面だとおつしやる、成ほどそういう面もあります。併し同時にこういう世界的機構で、あらゆる議論をそこで盡して、そうして世界の輿論の帰趨がおのずから固まるという部面もこれは見逃すべからざる大きな国連の働きであります。必ずしも常に闘争の部面だけではないと私は考えております。それによつて国連への加入、若しくは国連に対する協力ということは、これは強く日本としても将来ともやるべきだと考えております。これをやらなければ国連は強くならない、強くならなければ世界の平和維持も困難になつて来る、こう私は考えております。
  95. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 只今のお話を伺つておりますというと、国連に対してあらゆる援助をする義務を負う、その義務を遂行するために他方と悪くなつてもまあ仕方がない、そういう場合も起るであろう、こういうふうに伺えるのですが、これは非常に我々にとりましては問題があろうかと思います。御承知のようにいわゆる西欧陣営、自由主義陣営に属している国におきまして、例えばイギリスのごとく朝鮮に出兵をしておる或いはそのほかいろいろな関係朝鮮における国連軍に援助を與える国々におきましても、なおそれぞれの国の立場としてソ連との間の関係の打開に腐心しておる。決して悪くなつても仕方がない、こういう態度でいるわけではない。これは最近のフランスの外相の意見が新聞に出ておりましたが、これあたりもそういうふうなことを明らかにしておる。日本の今日置かれている立場から、まあアメリカに対しまして安保條約によつて大きな義務を負わされておるわけであります。なおそれでも日本として争つて、そしてみずから片方に飛び込んで、そうして相手方との関係を悪化させないで行くという努力は続けなければならないのじやないか。悪くなつても仕方がないというようなことは、日本の今後の外交にとりまして全く危険なことではないかと思うのですが、さような点についてもう一度どういふうにお考えになるか、お伺いしたいのであります。
  96. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国連というものは、私の考えでは例えば侵略行為でもあれば、これを阻止する場合には兵力も用いるという場合もありますけれども、侵略も何もしない普通の国に対しては何にも措置をするわけではないのでありますから、国連に協力するということが何ら他国に対して悪い関係を起すとは考えられないのであります。併し若しあなたのおつしやるように、それが悪い関係を起すとすれば、それは相手方が間違つている。その誤解を解く努力は当然いたすべきでありましようけれども、相手が間違つている場合を予想しまして、それで国連加入という正しい方向に行くことを躊躇する理由はない、こう私は思つているのであります。
  97. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私の質問に対するどうも御答弁としてはいささか的外れだと思います。私は国連に対してあらゆる援助をする義務を負う、その義務を日本が遂行する、そのうちには今日起つている朝鮮事変について国連軍側に日本が今後積極的援助を與えた場合に起るその向うとの関係の悪化、そういうものをあなたはそのままに放置してだんだん悪化して行つてもいい、仕方がない、そういうふうにお考えになるのか。それともそういう点について、例えばイギリスのごとく朝鮮に出兵をしている国でさえ、今日ソ連との間に何らかの関係調整をやろうと努力している、そういう方法をとられるのか、その点です。
  98. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) イギリスはソ連との間には前から国交を開始しておつた、友好関係にあるのであります。そこへ持つて来て朝鮮事変が起つたら敢然として出兵している。又ソ連とアメリカの間に立つて調停みたいな立場に立ちたいと言つていると伝えられるインドにおいても、朝鮮事変に対しては積極的に人を出して援助をいたしている。我々が援助をいたしても別にこれが両国間の関係を特に悪化させるとは考えておらないのであります。国文が開けておれば又いろいろ話合いの途もありましようけれども、今のところは国交が開けておらない。要するにソ連がサン・フランシスコ條約に調印しておらないのでありますから、今のところ特にこの点について外交的の処理は直接にはむずかしいことであろうと思います。併し今申したように友交関係にあつて始終交渉のある国でも、朝鮮事変に対しては敢然として出兵しているのはこれは事実であります。
  99. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今の御答弁によりますと、友好関係にある国であつても敢然として出兵をしているのは事実である、それは確かであります。そのために一度イギリスとソ連の間も御承知の通り非常に悪くなつた。フランスとの関係も悪くなつた。要するに北大西洋同盟條約に入つている国との間は非常に悪い。併しそれを何とかして打開しようとする努力が続けられている。成るほど日本は、今月向うがサン・フランシスコ條約に調印しなかつた。今後は外交関係はどうなるかという過程に立つている。我々のほうから少くとも隣の国なんであります。而も世界における重要な、いい悪いは別として、重要な国家であります。これとの間に日本のほうでもやはり何か関係を打開して行く努力をすべきではないか、こういうふうに考えるのですが、我々はただ国連に対してあらゆる援助をする義務を負わされて、そうしてそのために事実朝鮮問題からだんだん中、ソとの関係が悪化して行くということは非常にまずいのじやないか。それに対して何とかそれを片方をチエツクする方法をあなたとして講ずる意思がないか、それをお伺いしたいのです。
  100. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも考え方が大分違うようですが、私どもは平和條約で国連に対する義務を負わされているというようなことはむしろ反対で、欣然としてそういう義務を受諾するという気持でいるのです。何もむやみに重いものを負わされているとは決して思つておりません。それからソ連側とのいろいろな関係は、成るほどこれは全般的に言えば国交調整ということは結構であります。結構でありますが、この国交調整の一番大きな差当りの問題は、例の抑留者の帰還とか、抑留されている漁夫、漁船の返還とか或いは歯舞、色丹の処理とか、進んでは日本を仮想敵国として見ている中ソ同盟條約の調整とか、こういうものが先決問題であつて、これを放りつぱなして国交調整の途はないと考えております。
  101. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日、ソの国交調整にはいろいろの問題が挙げられましたけれども、あれを向う側で以て自発的に解決しない限りは途はない、これじやいつまでたつても自発的に向うでも解決しようとは思わないでしよう。これはやはり両国間のことですから、やはりそういう問題があるということを前提として、私は何か国交調整の途を打開して、その過程においてそういう問題の解決を図るべきじやないか、こういうふうに考えるのですが、やはりなんですか、そういう問題が先に向うによつて自発的にすつかり解決されてからでなければ、ソ連と国交調整する意思はない、そういうふうにおつしやつているのでありますか。
  102. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大概従来の例を見ますと、懸案の解決が先で、懸案が解決できたところでお互いに満足する気持で以て国交調整が行われる。国交調整を先にやつて懸案が残つているのじや、これは実際の国交調整にはならないと考えます。
  103. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうも私にはよくわからないのですが、今代表部を日本に残して置く置かんの問題も問題になつている。そうして代表部を日本に置かんというようなことになつて来てしまつて、さてそれからそれじやあなたの挙げられたような問題をどういうふうにして解決して行くのか、解決のプロセスが即ち国交調整ではないか。あなたの言うように向う側が全部すぽつと解決して、それじや日本の言うことは皆聞いてやろう、それじや国交調整をこれからやるのだというのじやなくて、そういう問題を解決しつつ調整して行くということじやないのですか。代表部を追拂つてしまつて、そうしてさあお前のほうで以てみんなおれのほうの要求通りに聞けという態度をおとりになるのですか。
  104. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まあそういういろいろ国際間の交渉というものは、そう右から左にようかんを切つたようにはなりませんから、いろいろその間にはやり方もありましようし、そう端的にこうであろうか、ああであろうかとおつしやつてもなかなか御返答はできません。我々もできるだけいろいろの方法で努力をするのは当然であります。併しながら原則的にはこの遺家族の気持を考えましても、こういう問題は速かに解決すべきものであり、これを放つてあいまいにしてはなかなか国交調整ということは困難であることはこれはもう私は事実だと思います。
  105. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうも考え方が平行線のようですからもうこれでやめますけれども、とにかくようかんのように、ようかんをすぽつとという考え方を先に述べられたのはあなたのほうで、私のほうは懸案を解決しつつ調整するのでなければ実際の調整はできんじやないかと、こう申上げたので、ようかんの問題はどうもあなたのほうが持ち出されたように思う。これで私はやめます。
  106. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは本日の会議はこれを以て散会いたします。    午後四時五十分散会