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1952-04-25 第13回国会 参議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十五日(金曜日)    午後一時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     有馬 英二君    理事            徳川 頼貞君            野田 俊作君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            伊達源一郎君            中山 福藏君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            大隈 信幸君            兼岩 傳一君   国務大臣    国 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    外務政務次官  石原幹市郎君    外務事務官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君    入国管理庁長官 鈴木  一君    入国管理庁審判    調査部長    鈴木 政勝君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○ポツダム宣言受諾に伴い発する命  令に関する件に基く外務省関係諸命  令の措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○外国人登録法案内閣提出衆議院  送付) ○小委員会設置の件   —————————————
  2. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは只今から外務委員会を開会いたします。  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案並びに外国人登録法案議題といたします。御質疑のおありのかたは順次御質疑をお願いいたします。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 岡崎国務大臣にお伺いしたいのでございますが、この法律案二條の六項の中に「別に法律で定めるところにより」云々という句がございます。この六項を昨日審議しておりました際に、この別に法律で定める云々ということの前提として、現在行われておる日韓会談の結果の何らかの條約取極め、或いは台湾政府との交渉によつて平和の取極め前提になるということがわかつたわけであります。そこでこの法律を制定するに当りましてその前提たるものが明らかになつておらなければならないと思いますので、現在日韓会談或いは台湾との條約の中において日本在留する朝鮮人或いは中国人の地位に関してどういうふうな話合いが行われておるか、その話合いは大体両国政府間で了解に達したのかどうか。又達していないとすれば日本側考え方はどうであるか、向う側考え方はどうであるか、相違点があればそれらの相違点というものについて岡崎国務大臣のほうからお伺いしたいと思いますが、とにかく先ず日韓会談なり、或いは台湾政府との間の今日行われております交渉の経過なりについてお伺いしたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日韓会談台湾国民政府との話合いもそうでありますが、日韓会談においては特に記録に残しまして、この会談内容については両国全権が用意して発表するもの以外は発表をしないことにするという約束になつております。現にそれで朝鮮側首席代表が或る種の発表をしたというので、大変両国間に問題となつて現在いるくらいでありまして、この交渉自体内容について申上げることは差控えたいと思いますが、ただ今議題となつておりますこの第二條六項等について日韓会談との話合いの関連を申上げますと、勿論この第六項というのは殆んど例外なく朝鮮国民又は中国国民台湾澎湖島等日本が主権を放棄したところの国民に関連するものであります。従つて別法律で定めるというその法律はこの朝鮮との間、若しくは台湾との間の話合いの結果によらなければ結局できないわけであります。そこでその話合い状況でありますが、台湾国民政府側からはこういう処遇の問題については特に、例えば従来の既特権といいますか、例えば鉱山に関係しておるとか、金融業関係しておるとか、普通日本国内では外国人認めないような職業に関係しておる人々の従来の日本国民としての仕事がそのままなんと言いますか、そのまま外国人と同様に今後取扱われちや困るから、十分そこは考慮してくれというこういう程度のことしか台湾との間には話合いがありません。朝鮮側としてはいろいろ問題がありまして、全体国籍をどうするか。御承知のように朝鮮全部が一つ政府の下にありませんので、その全部の人々に対する問題がどうしても政府の現在統治しておりまする区域に限られておるものですから、そこにどうしても問題が生ずるわけであります。それからこの強制送還といいますか、こういう問題についてもいろいろ話合があつたわけであります。ところが不幸にしてほかのいろいろの問題が朝鮮との間にありまして、例えばこの基本的な一般平和條約にも比すべき朝鮮との間の国交を開くという基本的な條約、それから朝鮮人国籍をどうするかというような問題とか、或いは船舶で朝鮮に籍を置いていた船をどうするかというような問題、いろいろの問題があるわけであります。マツカーサー・ライン、李承晩ラインと称せられる漁業の問題もありまするし、又平和條約に規定がありまする朝鮮における日本国民の財産をどういうふうな話合いでまとめるかというようないろいろ問題がありましたが、不幸にしてその話合いができないうちに朝鮮首席代表は、これはアメリカの大使でありまするから止むを得ないのかも知れませんが、アメリカへ帰任してしまつたのであります。そこでなかなか根本的な話合いができませんし、今金公使というかたが代理で、代理ということはありません。そのあと後任として交渉は続けておりまするが、なかなかいろいろ問題が複雑しておりまして、今までの交渉交渉として、ここで一区切りして又新らしい観点からすべての問題について交渉を再開、将来再開しなければならないのじやないか。要するに今までのところはこれで区切りが付いてしまつて話合いが付かないままに先方全権が帰任してしまつたというような状況になつておりまして、又再び交渉を始めなければならないかと思うような状況になつております。これは甚だ残念で、我々としては講和條約発効までに何とか話合いをまとめたいと思いまして、いろいろ努力をいたしたのでありますが、先ほど申したような先方全権の外部に対する発表等の問題もありまして、少しこじれましてちよつと話合いが停頓してしまつたのであります。で我々としては今も引続き話合いはいたしておりまするが、できるだけ早く本格的にもう一遍話合いをいたしたい、又その話合いの中には全権との話合いのみならず專門的に分科委員会を設けて、分科委員会でいろいろ專門の細かいことも話合つてもう一遍やりたいとこう希望はいたしております。併しそういう状況でありまして、只今今まで二カ月に亘る交渉の成果というものはちよつと申上げるような結果にならなくなつてまつた。そこでもう一度話合うときまで一つお待ちを願わなければならん、こういう状況であります。併しここに第六項にありまするように別に法律で定めるということはこういう話合いがついたあとでやるのでございますから、それまでは引続き在留資格認める、こういうことにいたしておるような次第であります。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 日韓会談が今のところ行詰りというか、決裂というか、とにかくそういうような状態にある、こういうようなことでありますが、その在日朝鮮人処遇の問題について今まで日韓会談において話されたことはやはりすべて御破算になりつて、今後新たに再開される場合に改めてその話をやり直すことになるのですか。それともその問題については成る程度話合いがついて両方意見が一致したものがあるのかどうか。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは朝鮮側でどういうふうに考えますか、これは新らしく話合いをいたすときにわかるのでありますが、今岡田君の言われたようにこれはむしろ行詰りであつて御破算ということでは私どもはないと思つております。ですから今度話合いを進めましても今まで十分研究して、そうこういう問題について根本的に意見相違はあるわけはないのですから、今までの話合い両方了解したような点は相当部分生きるのじやないかと思いますけれども、これは先方でどう考えられますか、ちよつとここで確言をするわけにはいかない。併し相当程度生きるであろうということはこれは常識的に考えられます。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題について日韓会談内容については向う側との約束もあるので話ができない、こういうお話ですけれども日本政府の立場として在日朝鮮人並び在日中国人の今後の位置というものに対してはつきりしたお考え方を持つておられるだろうと思う。これは外国人と申しましても、少くとも昭和二十年九月二日以前におきましては、日本国籍のうちにあつた者です。その人たちは、普通の外国人と違うわけであります。従つて登録の場合につきましても、或いは又在留資格等につきましても、今後も違うべきが当然であり、又そうすることが今後やはり朝鮮なり或いは中国との関係をよくして行くことにもなると思うのですが、その点について岡崎国務大臣の御方針をここで具体的に明確にお伺いしたい。
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今岡田君のお話のようなまあ似たようなことかも知れませんが、理窟を言いますと、日本から離れました朝鮮なり台湾なり人々に対して、いつまでも特殊の扱いをするということは建前上私は間違つておると思うのです。それで結局これは建前から言えば、外国人として他の外国人と同様の取扱いをするという建前であるべきだと思うのです。ただ今お話のようにずつと日本人としてここにおられた人々であつて突然まあこういうふうに変つたのでありますから、過渡的の方法としては、これは三年でありますか、六年でありますか、とにかく或る相当必要な年限の間は過渡的な方法として便法を講ずる、そうして、それがずつとすべて済んでしまえば、これはもう堂々たる他の外国人と同じ外国人として行動するのが当り前だろうと思います。そこで過渡的の方法としては、一方においては日本において日本人としてずつと暮らしておつた人々でありますから、その点でも特殊の考え方をいたさなければならない。又朝鮮を例にとれば、朝鮮国内においても、現在政府が全都の朝鮮の地域を支配しているという状況では現実にないのでありますから、そういう点も考え便法を講じなければならない、こう思つております。又その便法の中には具体的と申しても、原則だけしか私どもは言えませんが、例えば強制退去というのがよく問題になりますが、その中に貧困者だとか、癩患者だとかいろいろな種類の人もありますが、これらも、今まで日本人としておつた人々に対してはこれはやはり特殊の考え方をいたし、特殊の取扱いをすべきであろうこう考えております。建前外国人でありますけれども、過渡的な便法としては相当年数の間は特殊の取扱いをすべきである、これは当然であろうと思つて、そのつもりで取扱いについてはいろいろ研究をいたしております。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 強制退去の問題が今岡崎国務大臣のほうから問題が出たのでありますが、これが相当国内におる朝鮮人或いは華僑の諸君に無用なる不安を與えておる面が多いのです。その点が問題になりまして、例えば滋賀において騒擾みたいなものが起つた。こういうようなこともあるので、やはりこういう点は明らかにしてそういう不安の起ることを除去して行くということが必要ではないかとこう思うのでありますが、今までそういう措置についてなかなか徹底するような方法がとられておらなかつたように思う。今度の法律が制定されます場合にそれらの点が一層明らかにされる必要があるとこうまあ考えておるのでありますが、この出されました外国人登録法ともう一つのこの長い名前の法律案のほうにおきまして、なおそれらの人々処遇に関して明らかならざる点があるように思うのです。今までの点について、今までなぜそういう点はもつと明らかにする方法をとらなかつたのか。それからこの法律においてもう少しそれを明らかにする法律等方法をとらなかつたのか、その点が問題になるので、政府として今そういうことをより一層具体的に明らかにする措置を講ずるつもりがあるか、それをお伺いしたい。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは各国との條約におきましても、この最惠国待遇というような條項がありますので、法律自体に、例えば朝鮮人に対してはこういう特殊の取扱いをするとかということを書くことは非常に困難であります。又私ども建前から言うと朝鮮人台湾人いずれもこれからは外国人でありまするから、法律の中でそういう区別をすることは適当でないと思つております。併しながら先ほど申したようなわけで、原則的に言えば政府としてはこの故意に且つ悪質に法を紊すような行為をする者は、これは我々は嚴重に処置するつもりでありますが、それ以外の善良な人々で過失で以て法を犯した、或いは單に貧困であるとか、或いは癩病であるとか、そういう單にそれだけの理由で退去をさせるというようなことは毛頭考えておりません。従つて要するにこの悪質な、法を紊すことを故意にやろうとすることさえしなければ、今までの善良なる在留民は依然として平穏裡に、且つ日本政府の十分なる保護を受けて国内在留し得る、これだけのことは私は断言できます。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、この永住の問題ですが、この二十年九月二日以前から日本に引続き日本在留するこれらの人々永住権をお認めになるおつもりかどうか。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) もう一遍はつきり……。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 つまり曾つて日本国民であつた人々に対して永住権をお認めになるつもりかどうか。
  14. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これらはやはり日韓会談等一つの題目になつておりますが、この話合いがきまりますと、そういうことがはつきりわかるわけであります。併し終戰前から国内に居住しておる人々に対しては、永住資格を與えるつもりで我々は考えております。尤も今申したように話合いがつかない間は、ただ引続き在留資格認めるということにはなりますが、話合いができますればそこで永住資格認めるようなことにいたそうと考えております。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に強制退去が問題ですが、二十四條の強制退去について善良なる人々強制退去を行わない、併し故意日本法律を紊すというようなものは嚴重に処置すると、先ほどこういうお話であつたのですが、この出入国管理令の二十四條の強制送還等の問題は、これは法務委員会との合同審査の場合にも特に伊藤修氏からいろいろ質問が出たのですが、裁判によらずして行政的措置だけで以てやられるということに非常に問題があるのでありますが、特に拘束收容の問題につきましては、これは非常に一般の刑法、或いは刑事訴訟法等の場合と違つておるのでありますが、こういう点につきまして一体国務大臣行政権によつて裁判によらずしてこういうことをやることが適当である、妥当であると、そういうふうにお考えですか。
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この法律制定に当りましては我々は各国の例も随分丁寧に調べて見ましてその研究の結果であります。それで強制退去ということは、各国とも何と申しますか、刑罰と見ておりませんので、こういう行政上の措置でよろしいと思います。思いますが、この運用につきましてはとかく弊害も起り勝ちだろうと思いますので、かなり何年か経つてちやんと慣習のようなものが確立されるまでは特に注意しなければならん、こう考えておりまして、これにつきましても内部でいろいろ規定考えております。出先職員が無理をしないように、こういう問題については内容的に申せば一々本庁許可を得て内部規定を定めようとも考えております。できるだけ愼重に又間違いのないように、数年間やつてみて、そうしてもう大丈夫ということになれば別でありますが、初めのうちは極く愼重にやろう、こういうつもりでおります。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 この出入国管理法令の四十一條に問題があるのでありますが、只今岡崎国務大臣のお答えですと、内規を設けて、そして間違いのないように愼重にやると、こういうことでありますが、この「收容令書によつて收容することができる期間は、三十日以内とする。但し、主任審査官はやむを得ない事由があると認めるときは、三十日を限り延長することができる。」こうなつております。少くとも人身の拘束を六十日やることが行政官の任意の計いでできる、これは重大な問題であろうと思うのでありますが、若し内規を設けて、こういう点に愼重にやるということならば、この点についてどういう具体的な内規による措置をおとりになりますか、お伺いしたいと思います。
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私よりも出入国管理庁長官のほうがいいと思いますのでこちらから一つ……。
  19. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) この問題は法務外務連合委員会のときにも非常に詳細に御論議がございまして、その際に法制局長官から十分な御答弁があつたと存じますが、端的に申しますと外国立法令の中にはもうすぐに強制退去という、行政命令一つ強制退去するという扱いをしておる国もあるのであります。我が国におきましてはそのすぐ強制退去させてしまう、一つ行政命令ですぐ出してしまう、好ましくない者はすぐ出してしまうというのでは、いささか民主的な扱いとは言えない。その扱い愼重にいたしまして十分論議を盡した上で、本人意見も十分聞くし証人のも聞くし、三段階に亘りまして異議の申立をし得る過程をとつて、そうして愼重審議の上にいよいよ強制退去をきめなければならんという制度をとつておりますので、それらの三段階の鄭重な手続をいたしますためには身柄拘束します期間が三十日では足りない、六十日になることもあるという規定でございまして、誰でも六十日間身柄拘束しておくという意味ではないのでございます。一般刑事手続のほうになりますれば、こういう裁判の最初から最終までを計算に入れますれば、遥かに六十日以上も拘束されるということは刑事訴訟法にも規定があるわけでございまして、そういう例から比べますれば、この期間というものはむしろ短縮しておるということができるのでございます。その三段階に亘りまして收容した上でいろいろ調べをいたしますわけでございますが、証人を喚びますとか、或いは地元に照会を発していろいろ証拠を集めるとか、そういうようなためには一月で済むということはなかなかむずかしい場合があるわけでございます。極く普通の場合といたしましては、もう本人がいわゆる密入国をしたと自分もそれを認めるということで、それじやもう退去するより仕方がないということになりますれば、これはもう一日でもそれは身柄拘束ということはなしに強制退去のほうになつてしまうのでございます。今お尋ねのようなことはむしろほかの外国立法例から見ますれば鄭重にしたためにこういうことになつている、行政官の單なる心証によつて強制退去を決定する国もあるわけでありますが、それらに比べますれば鄭重に、むしろその外国人の人権を尊重する意味でこういう規定になつているというふうに御解釈を願いたいと思うのであります。
  20. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ちよつと御注意申上げますが、岡崎国務大臣はここに御出席の時間が限られておりますから、先に岡崎国務大臣に御質問をお願いいたしまして……。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は、今内規という問題が岡崎国務大臣から話されたんで、その運用内規というものを……、愼重にやるための内規というものについてどういう方法をとるか。例えば四十一條についてどういうような方法をとるかということをお伺いしたいんです。今の入国管理庁長官答弁はこの間の答弁と同じで、そういうふうに御解釈願いたいと言つても、私のほうでは納得できないものがあるんです。これはまあ後廻しにいたしまして、一体岡崎国務大臣の言われた内規というものは、どういう程度にこういう問題を取扱おうとするのか、これは岡崎国務大臣からお答えを願つたらいいと思います。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私の申しているのは、つまり出先職員が、例えば警備官であるとかいろいろの人がありますが、重要の問題については出先で権限を與えられておつても、内規で一応本庁了解なり許可なりを得て実行するようにということを定めたいと思つております。まあ出先限りでやらせないということにしたいと思う。
  23. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 議事進行について……、私は大体この出入国管理令については七点お尋ねしたいと思つていたんです、そのうち一、二点は便宜上在外公館のときに岡崎国務大臣に質したので私はこれから質したいと思うのは五点なんです。但しその中で是非大臣答弁を得たいと思うものはだんだん整理して成るべく少くして、少くとも二点はあると思うのですが、その二点をこれからお尋ねして行きたいんですが、ほかの委員諸君のお考えもありましようし、私が余り時間を費していいのかどうか。又岡崎国務大臣は精々精勤されるように先ほど言明もありましたし、又次の委員会に延ばしても私はいいし、そういう点で私は自分の思う通り質疑を展開して行つてよろしいでしようか、委員長ちよつとお尋ねしてから質疑に入りたいと思います。
  24. 有馬英二

    委員長有馬英二君) この問題以外に今日公報に載せておきましたのは行政協定に関する問題が是非岡崎国務大臣から御答弁を願いたいというような御希望がありましたので、こちらのほうが先に質問が終りましたならば、全体の質問が終らない先に一応そつちの行政協定のほうで岡崎大臣の御答弁もやはり願いたい、かように考えておる次第ですから、時間が少し詰まるかも知れないと思いますが、できるだけ岡崎国務大臣にも長くいて頂くことにいたしますが、成るべく一つ……。
  25. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 お尋ねいたしますが、大臣は何時までおられますか。
  26. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 二時四十分までおられるというお話でございましたけれども、これを始めますのに、大分時間がずれましたので只今までにまだ約四十分も経つておらないのであります。そういたしますると是非岡崎大臣にもう少し後に延ばして頂くことにいたしまして先ずおよそ……。
  27. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どちらがいいですか、私はうんと減らして五点、そのうちの二項目だけを大臣にお尋ねしたいんですが……。
  28. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 何分ぐらいかかりますか。
  29. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 やつてみないとわかりません。それともあちらをお始めになりますか。行政協定に関するほかの委員の御意向もありましようし、僕が余り自分の思う通りしたんではまずいと思うんですが……。
  30. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 先ほどちよつと曾祢君が手をお上げになりましたから先に曾祢君にお願いいたしましようか。
  31. 平林太一

    平林太一君 議事進行について……、大分岡崎国務相のここにおられる時間について只今心配されておるようでありますが、これは一つ大臣も御自分の御都合のみに固執せずに十分に一つ、これは重大な問題ですから大体時間を制約するというようなことはなさらんで、これ以上重大なことは私はないと思いますので、そうして真に委員質疑を時間を十分にかけてお聞取りになる、そうして遺憾のないこれに対しまする返答をするということを私はむしろ與党委員といたしまして国務大臣たる岡崎君に申上げる次第であります。そういうお気持で、時間があとがつかえているということで、早く引上げるというようなことはなさらないように、これが大体いつも常套手段なので甚だ遺憾に堪えません。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは国家の重大問題でありますからそのために一つ御参考に申上げたい。金子君はこういうことを言つておる。明治三十一年の古い話でありますが、当時伊藤公が、三十一年の第三次伊藤内閣のときでありましたが、十二月の国会に臨んで、たまたま衆議院におきまして……、(笑声)これは特に速記録にとどめておきたいと思いますが、衆議院におきましては丁度今日の我が内閣のような状況でありまして、当時公が政友会を創立いたしまして、その政友会に合体いたしましたものが、当時の自由党以下三党がこれに合体いたしまして絶対多数であります。ところが貴族院におきましてはどうしても……、当年の貴族院の予算委員会に当りまして、当時伊藤総理は朝の十時から夕方の五時までこの委員会中ずつとぶつ通しで列席して、そうして議員の質疑極めて鄭重に当られたということが当時の文献に残つております。而もその際にたまたま貴族院におきまして非常に予算が難航した、その際に伊藤公はこういうことを言つております。「我輩の不徳は如何とも責めるが宜しい、博文の不徳は如何様にお責めになつても私はあやまるが、出征軍隊の被服や糧秣費を否決すると云う事丈は考慮して貰いたい。」この予算の中に軍人の被服や糧秣費があつたのであります。併し当時の貴族院はこれを承認しないので非常に難航したという事実があります。それに続いて「博文が七重の膝を八重に折つても頼むから、この予算だけは通して呉れ」七重の膝を八重に折り……、当年の伊藤博文がこう言つております。私は今日吉田内閣総理大臣が外務大臣といたしましてこの席に出席することをしばしば要求いたしておりますが、本日も実現をしていない。若し往年の伊藤博文と今日の吉田茂とが政治家としての比重においてはどつちが重いか、どつちが軽いか、(笑声)私はこれは国家を思う至誠からこれを申上げるのであります。昔から世俗に提燈と釣鐘という言葉があります。この場合におきまして私はこの議論をするという必要がない、その提燈と釣鐘という釣合いから伊藤公が釣鐘であつて吉田茂が提燈である、(笑声)而もこれだけの差がある。釣鐘である伊藤公は国会に対してこの至誠、この忠誠をいたしたのであります。而もどうしても予算がむずかしいということで、当時京都におりました山県公に長文の電報を打つて、そうして山県公に急遽東京に参集を求めて而もなお且つ足らずして当時遂に明治天皇におすがりして、そうしてこの予算を通したということであります。私は今日講和発効を前にいたしまして、吉田外務大臣がこの席に一度も出席しないということは往年のこういうことを見まして実に感慨が深いのであります。若し講和後におきまして我が国の政府と国会とがこの態勢がぴつたり整うにあらざれば、この重大なる講和後の難局に処するところの我が国の今後の方向に対しまして、実に深憂に堪えないのであります。どうか私は岡崎国務大臣におきましては、決して私はこれを私心を以て申しているのではない。私がこういうことを言うことは私個人といたしましては自由党員として甚だ残念であります。併し自由党員として自由党のことを申すのは、自由党が大いに国家の今日の事態にできるだけ貢献をせられたいという至誠からこれは申上げざるを得ない。どうがして腰を落ちつけましてかような問題に対しましては、一つ本日は岡崎国務大臣も本委員会が終るまで十分にお答え願いたい。これは往年の伊藤公を思えば何でもありません。(笑声)でありますから、どうかそういうふうにして頂きたい。委員長におかれましてもどうぞ岡崎国務大臣が今日だけはどうかここにおとどまり頂きまして、そうしてこの重大なる二つの案がもはや連合委員会をも通過いたしているのでありますから、本日は委員の各位も十分徹宵してもその必要がありますれば続けて、二十八日の講和発効まで日が迫つておりますから、これを仕上げて頂くことを私はこの際切に願う。これは大分兼岩君も非常な御意見を持つておられるのでありますが、十分に一つお質しになつて、どうかきめるときはおきめ下さるお気持ちで、今日中におきめ下さるという方向で一切の私心を去つてつて頂きたいということを、議事進行といたしまして、委員長に申上げておきたいと思います。
  32. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 了承いたしました。
  33. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は時間を引き延ばそうという考えは毛頭ございません。むしろ私がこれから質すことによつてほかの委員のかたの順序を私が先にやつて御迷惑をおかけすることを心配しているのです。その点で委員長がかまわん、やれということならば一つ私から始めたいと思います。  私の先ず第一に大臣に質したい点は、今回の法律の出し方が私は独立日本としての出し方ではないという点を先ず突きたのいであります。即ち今問題になつておりますこの管理令は占領政策に基く措置として出されましたポツダム政令なのであります。従つて国会の審議を一度も経ていないのであります。而も大変な分量、大変むずかしい複雑な法律、その一條といえども我々は国会議員として従来審議しないで、それを法律と同様の効果を持つて来たものであります。ところが近く講和が発効して日本が独立国になる。こういうふうに吉田総理大臣以下自由党ばおつしやつておりますが、独立国になるならば私は当然これは廃止すべきものでなくて消滅する。これは自明の理であります。ポツダム政令は皆消滅であります。従つて私はこのようなアジアの諸民族に影響の多い、法律の面だけに現われて来ている以外に、これから日本の進んで行くアジアとの親善提携、善隣友好という点において至大な関係のある法律案がそんなポツダム政令のままで一部修正などという形で、私は出されたというところに私はこの政府のアジアに対する民族の善隣友好と口だけでは吉田総理或いはそれの命を受けている岡崎国務大臣は善隣友好、善隣友好ということを言われるが、若し善隣友好ということを本当にあなたがまじめに考えるのであれば、本当に政府が真劍にそのような主張をしておるならば、なぜこのサンフランシスコ條約、講和條約発効のこの機会に全然白紙になつて、法の修正などという欺瞞的な形で出さないで、どうして新らしい法律にして出されなかつたか、先ずこの点を私はお尋ねしたい。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 平和條約もそうでありますが、その他にも平和條約成立を見越しまして、独立した場合に必要な法令を、その以前に作つておつた場合もしばしばあるのでありまして、この入国管理令もその一つの例であります。これは平和條約発効をあらかじめ考えまして作つたものであります。従つて昨年の十一月ですか、これを公布したようなわけであります。で、従いまして、今でもこの管理令なるものは内容的には、そうたくさん改めるところがないので、ここにあるように改正をして出したわけであります。これはどこの国を特定して対象にしているのではなくして、すべての外国人に対する法令であります。従つて差別待遇等は一切いたさないという建前で来ております。ただ先ほど申したように、特殊の関係に従来あつた人々に対しては、便宜上過渡的にはこれはよく見て特殊の扱いをしなければいけない、こう思つております。それ以外には差別的の待遇等を毫も考えておりません。どの国に対しても平等に取扱うという意味法律であります。
  35. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私のお尋ねしているのは内容の問題、内容関係して参りますが、内容の問題というよりはむしろこの全外国人関係し、特にアジアの諸民族に関係し、特に台湾及び朝鮮諸君は長い間日本国民として扱われ、徴用され、そうして日本人と一緒に、日本人の大衆と共に苦んで来た。そういう特殊性を無論持つている。そういうもろもろの内容を勿論前提としての質問なんでありますが、私の質問しているのは、国会において一條といえども審議されないで、ポツダム政令として出されたところのこの政令、管理令をなぜ法の改正というような、我々の感覚から言えば極めて欺瞞的と申したいのでありますが、そういう欺瞞的というか、言葉をもつと他の適当な言葉で言うならば、便宜的という言葉にしてもよいが、日本がいやしくもあなたの言われるように平和條約によつて独立すると、来る二十八日から独立するというならば、それに備えての法律ならば、憲法四十一條「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」という建前から言つても、当然こんな改正などという形でなくして、全部の法律を新らしく国会で審議してくれという形で出してくることこそがあなたがたが言つている占領の消滅、日本の独立という、このあなたがたの主張にふさわしい、それを裏付けるような国会に対する態度ではないか。然るに今度修正という形で出されて来たのはどういうわけでありますか、これなんです。
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 修正というのは要するに修正の必要のあるところを修正するのでありまして、その他の点についても無論今までも御議論がありますが、御審議を願つて一向差支えないわけであります。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちよつと関連して今のその点なんですが、ここに二つの法律案が出ている。ポツダム政令では出入国管理令ですが、それと外国人登録令こういうのがある。外国人登録令のほうは外国人登録法案として法律案の形で出ている。ところが出入国管理令のほうはポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案として出ておる。なぜ出入国管理令をやはり外国人登録法案と同じように法案として新たに議会に審議をさして法律にするようにしなかつたかということである。その点はどうして片方はちやんとした登録法案、外国人登録法案というものにして出して、片方はそうしなかつたのか、出入国管理法としなかつたか、法案として提出しなかつたのか、そういうことです。
  38. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 管理長官からお答えいたします。
  39. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 外国人登録令、これは現在でも部分的には生きておりますが、外国人登録令というのが占領治下におきまして、昭和二十二年でございましたができまして、外国人の管理をする唯一の法令であつたのであります。この、外国人登録令の中には二つのことが規定してありまして、一つは総司令官の許可なしに誰も日本国には出入できないという規定でございます。もう一つ外国人国内で登録をしなければいかん、この二つの規定があつたのであります。今回の昨年十一月一日から施行になつております出入国管理令は、その二つのうちの登録でない面、いわゆる総司令官の許可なしに誰も日本国に出入りができないというそつちの面を具体的に国際慣例に従いまして整備をしたのが出入国管理令でございます。それから外国人登録令の中の登録に関する規定、それを今度法律にいたしましたのが只今御審議願つております外国人登録法でございます。従つて外国人登録令というものは、イクオール外国人登録法ではないのでございまして、大きな部面が出入国管理令のほうに移つております。従いまして外国人登録法というものは、これは登録だけを規定いたしました法令でありまして、特に詳しくいたしました関係で、これを外国人登録令として存続しておくわけには参らなかつたので、これを登録法といたしておる次第でございます。出入国管理令のほうはやがて平和も成るであろう、独立国になるであろうという前提で国際慣例によつた民主的な国の管理ということですでに十一月一日から施行しております関係で、これは改めて出入国管理法とする必要はございませんので、そのままこれに法律の効果を與えるという手続をいたしたのでございまして、別に他意があるわけではないのでございます。こういうふうにポツダム政令をそのままこれに法律的効果を與えるという法制はポツダム政令の中にもたくさん例がございますので、その例にならつて制定をお願いしたわけでございます。
  40. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも何の御返答だか、ちつとも私には了解できません。片方はちやんとした法律で出ておる、片方出入国管理というのは外国人登録と同じようにやはり重要性を持つものである、而もこのほうは入国警備官とか、何とかいうほどの細かい規定から、人の收容の問題から、とにかく人身を拘束するようなものまで含んでおるのをどうして法律案として出さなかつたか。端的に言えばこれも内容的に見ても、法律案として出すべきものである。單にこの令を直すところの法律案で出すだけでは足りないものである。それをお聞きしている。なぜこれを外国人登録法案と同じように、法案の形で出入国管理法案というものをお出しにならなかつたか。そうでなければこの出入国管理令のなかに規定してあることは全然議会で以て審議して行かないで終つてしまうことにもなる、そういうことでしよう。だからこれは法律案として出すべきが適当でなかつたか、こういうことをお伺いしているので、これは法律案として出さないほうがいいのだというならば、その法律案として出さないほうがいいという積極的な挙証を願いたい。
  41. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 只今申上げましたのでございますが、こういうふうに考えて頂いて差支えないのであります。この管理令がこのままこの議会にこれを法律として認めるかどうかということで提案になつているというふうにお考えになつて頂きたいと思います。
  42. 岡田宗司

    岡田宗司君 提案になつていないじやないですか、管理令は。
  43. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) これは只今のこの第四條を御覧になりますと、第四條には「第一條及び前條に規定する命令は、この法律施行後も法律としての効力を有するものとする。」ということでございまして、この中にいわゆる管理令が入つているのでございまして管理令を具体的に御討議を願つて差支えないのであります。その意味で本連合委員会におきましても御討議願つていることと思います。
  44. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは面白いことだと思う。そうすると四條だけ審議してこれはよろしいということになつたら、こつちの一條々々は全然議会で審議しないでそのまま法律になると、こういうことになるのですか。そう解釈していいのですか。
  45. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 只今申上げましたように管理令の全文が御審議の対象になつているのでございます。
  46. 岡田宗司

    岡田宗司君 全文が審議の対象であつて、この四條によつてこれが全部法律になるというのなら、これはあらかじめちやんと法律案の形式で出すのが妥当じやないですか。
  47. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) これは立法技術の問題でございまして、こういう例はポツダム政令にはたくさんございまして、ほかの省におきましてもそういうことで御審議を国会に願つているのがたくさんあります。
  48. 岡田宗司

    岡田宗司君 ほかにたくさんあるからこれでいいというお考えがおかしいと思う。それならほかにはちやんと法律案に直して出しているのもたくさんあるのです。どつちがいいんですか。
  49. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) これは立法技術の問題でございまして、一番便宜な方法で出すということでお願いをしているわけでありまして、どちらがいいというわけにも参らないと思います。
  50. 岡田宗司

    岡田宗司君 便宜な方法でということはあなたがたのほうの便宜な方法だけなんです。このような重要なものは法律案として、議会で十分な審議を受けて、法律として出るほうが妥当なんです。それを便宜だからなんと言つてこの四條で通ればそれで以てこれがみんな法律になるのだと、だからそれでいいのだ、そういうお考えで軽々にこういうような法律案を出されるということが私どもにはおかしい。これのほうがいいというならば、このほうがいいのだと、このほうが正しいのだということを御説明願わなければ、私は納得できない。
  51. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 先ほど第一回に申上げたのでありますが、むしろ逆に登録法を何故登録令で出さなかつたのかというふうにお考え頂きますとわかると思います。
  52. 岡田宗司

    岡田宗司君 馬鹿なことを言いなさい。法律で出るほうがいいから何故法律で出さないのかと聞いておる。
  53. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 法と申しますのは、先ほど申しましたように、どうしてもこれは全面的の改正を要するというので、法を出しましたのですが、管理令のほうは全面的改正をしない、そのままで法律にして頂いて差支えない。従つてこのままで法律として御審議を願うのでございます。
  54. 平林太一

    平林太一君 私はそれに関連いたしまして、殊にこれは根本的な問題を、本質を究めて、それからこの條項に対する見解を明らかにしなければならないので申上げるのでありますが、結論から申しますればこれは第二條の六項に掲げてありますが、この特別の法律を今後においてこれを作る意思を以て「別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間、引続き在留資格を有することなく本邦に在留する」と、この「別に法律で定めるところ」、これに対しまして今日政府はどういう用意をお持ちになつていられるか、岡崎国務相からこれを承わりたいのであります。私の仄聞するところによりますれば、日韓会談に相並行いたしまして、特別の措置が、特に日韓の間に行われておる。そこで例えばここに審議いたしております法律に対しまして、別な措置ができる、それを私ども非常にこれは期待いたしておるのであります。そこでこの外国人、この度の管理令の処置及び登録の方法というものは、この講和が発効せない間、いわゆる我々は過去六年有半の間、実は外国人も内国人もなかつたのでありまして、我が国土におきましては、これがいわゆる今日までの姿であつたのであります。それが昭和二十年の八月十五日を契機として変つて来たのです。ところが我らの国土はどこまでも我らの国土で変りはないはずであります。ところがそういう現実の事実によつてこういう法律の発生を見ることなくして、そうして我らの国土において外国人を管理するすべもなかつた。又登録の方法等も極めてそういうことに対する処置がなかつたというのでありますから、我らの国土がそういう締めくくりがないそれからそういうきめ手がないのでありまするから、自然これは我が国土の、我が民族以外の外国人の勢力のほうが、これは盛んに跳梁跋扈いたしておつたというのが、今日までの事実であります。併し今日我が国は我が民族多年六年有半のこの耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで、そうしてひたすら再建の近に邁進して参りましたこの事実が、今日世界の平和に貰献するところの独立国家として、まあ来る二十八日を予想されるのであります。でありますから当然この処置をいたすにあらざれば、我が国は依然として旧態依然としたいわゆる非独立国家ということであるのであります。独立国家になるというこれはけじめである。でありますから私は全法案に対しまして、当然明らかに独立国家としての形態、内容を整える当然の事柄として、恐らく私は世界のいずれの国といたしましても、莞爾としてこれを許すであろう。又我がほうから当然そういうことをそういうふうにすることが、我が国家として当然の事柄でありまして、極めて私は常識的の事柄であると思うのであります。でありますのでこのことは海外の諸国におきましても、むしろこれ以上私は嚴に過ぎるとも緩に過ぎるようなことがないように、この法案に盛られておりまするところのこの内容というものは、極めてこの独立国家といたしましては、現況、現状の態度を示してこの法案が作られ、この法案の精神の中にこれは脈々として漲つておるということを、私はこれをここでそういうふうに断定せざるを得ないのであります。但しこのことに対しまして、特に日韓の関係或いは日台の関係或いは日華の関係これに対しましては、今日までの我が国家とそれからの関係の人間の間においてはこれ又理論を超越いたしまして、いわゆる同民族として、東洋の同民族としての苦楽を共にして来たところがあるのでありますから、従いましてそういうことをこの中に置きまして二條の第六項において示しておるのでありますから、その点岡崎国務相におかれては、どうか一つ今後この第六項の特別の法律によつて、これこれの処置をいたして、これら日韓の関係、日台の関係、或いは日華の関係に対して、こういうことをするんだということをお示しになり、又それ以外の国に対しましては、これは当然のことであり、又先方の空気も我に対してこういう方法で臨んでおるので、これらのことをしまして、心配になりますことは、常識上の運用によりましていたすことによつて十分だろうと思います。如何に法文を出しましても、これを運用するということは無限のものであり、又無限大のものである。字句の通りにこれを運用するということは人間の技としてこれはできないことであります。非常な複雑多岐に亘りますものでありますから、従いましてこれは多年仁政、親愛の精神を以てこれに当ることによりまして、国際間に対して法律の適用は、我が国が独立国家としてその義務を履行し、それから制限も行過ぎのないようにすべきものであると思うのであります。そうして二十四條におきまして特にこの退去に対しまする処置をとるというような場合に対しまして、すでに二條の第六項によりまして、そういうことを示してありまして、又新たなる法律を作るということによりましてこれは解消されると思うのであります。いやしくも国内にあつて国家の治安を紊し、国家の共同の生活を脅かす者に対しましては、豈それ外国人と内国人との差を論ずべきものでない。内国人におきましても国内におきましてそういう処置を……。
  55. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ちよつと平林君に御注意申上げますが、先ほどの御質問とだんだん関連がないように思いますから、おやめを願います。
  56. 平林太一

    平林太一君 それでありますからこの際、一つそういうことでありますから、そういう心配はないと思うのでありますから、この際第二條第六項に対しまする特別なる法律を作るということを、国務相から一つ答弁を煩したいと思います。
  57. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは趣旨は永住の資格をどういうふうに與えるかということで、この法律の目的は、永住資格を主として規定するつもりでおります。併し日韓会談等がまだでき上つておりませんから、日本だけで勝手にきめるわけにも行かないと思います。日緯会談で話がきまりましたら、これによつてその法律を作る、それまでは引続き在留資格認めておこうと、こういうことが第六項の趣旨であります。さよう御承知を願います。
  58. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私が先ほどお尋ねしていることに対して、大臣は余り明確に答えられないで、助け舟に出られた長官の説明はこれは長いことにおいては非常に長々とした説明であつたけれども、要するにこういうことになつておるということで、何らの説明になつていない。そこで、私はちよつと角度を変えて、大臣にもうちよつと答えられるようにして上げる必要があると思うのですが、大臣にお尋ねします。この出入国管理令は昨年のあなたの言われたように十月四日に公布、施行になつておりますが、この管理令の出る経緯を調査してみますと、政府がサンフランシスコで條約の調印後、ポツダム政令はどういうふうに処理してたらいいかということを政府は非常に考えて政令諮問委員会などで政府が検討しておられた結果でありますが、我々が聞いておるところによれば、この管理令は八月頃にすでに次官会議で出すということを決定しておられた。ところがそれが延びて十月に延びた。こういうのに相当深刻な事情があつたというふうに聞いておりますが、大臣はどういうふうに理解しておられますか。
  59. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私は自分で直接あずかつたのではありませんが、この管理令につきましては八月頃じやなくてもつと前から研究をずつと進めて来て、何遍か草案を改めたのであります。そうしてその前には実はこの出入国管理を一体どこでやるか、外務省でやるか、厚生省でやるか、法務府でやるかというような問題もありまして、いろいろ議論をずつと続けて来たのであります。始つたのは去年でなく一昨年、一昨年も大分前の話であります。たしか一昨年の五月頃にはもうその話があつたと思います。そしてずつと来まして、その間に又講和後の事態に対処するという意味から、途中から又今度は各国の例を集めましてそのときはまだ在外事務所もなかつたものもありましたので、なかつたものはアメリカ側にも依頼して、或いはあちこちの例を求めたりして、稿を改めること何遍かに及んで、その間には司令部側でも專門の人をわざわざアメリカからよこしてくれまして、その意見も聞いたと思つております。で、それやこれやして結局できたのが九月頃でしたか、そして十月に公布になつた。かなり長い間かかつたのであります。
  60. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 イギリスの横槍が……イギリスからいろんな注意があつてこれが相当に練られたという事情は大臣は御承知ですか。
  61. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは私は聞いておりませんが、そんなことはないと信じております。
  62. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私どもの聞いているところによりますと、実はこのような苛酷な管理令の出し方をやると、アジア及び東南アジアにおいて将来手広く実業、貿易をやつて行こうとするイギリスが、これでは日本のやり方が余りにひどいというので、イギリスの横槍が出て、八月次官会議で決定しながらも、実際に公布されたのは十月であつたというふうに私は聞いております。これは私なかなか重要な点であり、将来日本の外交政策として私は大きな問題になり、各同僚議員のかたにお考え願わなきやならんことだと思いますが、そこで又質問のほうへ立返りますが、我々の一番心配するのは日本は今アジアの孤兒になつておる。ただアメリカの虎の威を借る狐のように威張つてみても私は問題はそれほど簡單なものではない。やはりアジアの友好親善を言葉だけでなしに本当に実行して行かなければならん。だとすれば、このよなアジアの善隣友好に重要な関係のある管理令、登録法のような問題は当然愼重な態度として、ポ政令を廃止してはつきりと新らしい段階に照応する法律案として出て来ることがこの愼重な外交的な対策から言つても正しいし、憲法四十一條から言つても当然国会に対する政府の私は義務だと思うのですが、重ねてお尋ねしますが、そういう愼重な態度をおとりにならないでこのようなこちらに管理令が出ておる。そして二三枚の紙切れの形でこの措置に関する法律、そうして先ほど長官の説明にあつたのは四條の一行余りで全部の法律の効果を持つのだというようなことを書いたことでこれを国会に提案して来られたことは、これはイギリスの心配を待つまでもなくして、明らかに全世界に対して、特にアジアの諸民族に対して日本は相変らず独立などと言うけれども、占領の継続だという印象を私は当然深めると、独立ならば全部消滅させて新らしき国会の審議に附してこそ独立であり、善隣友好だと考えますが、あなたは外交方針で善隣友好と言われておりますが、そういう言葉を裏付けるだけの愼重な態度でないじやないかと思う。併しながらこれはあえてそれには何かそこに深い考えがあるだろう、その点一つ大臣から御説明願いたい。
  63. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ず初めの御質問ですが、私は当時官房長官をしておりまして、直接これには関係がなかつたので、或いは聞き損いがあつたかと思いまして係りの者に確めたところ、英国側から何ら申出で等があつた事実が全然ないということを係官のほうから言つておりますから、この点は私の考えが間違なかつたと思いますので改めてさよう申します。  それからアジアの孤児とか孤兒でないとかいう議論は、これはまあ一般論ですから特にここで申しませんが、私は別にアジアの孤兒だとは思つておりません。この法律案は今入国管理長官からお話ありましたように、あらかじめ独立後に備えて作つたものをポツダム政令として出したのであります。そこでそうたくさんいじるところはないと考えましたので、一部の改正をいたすと同時にこの四條で命令を全部法律とする、この改正案のところは別でありますが、という條項を入れましてこの出入国管理令全体を審議の対象として国会に提案しておるのであります。
  64. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうするとポ政令として出されたときは、出されたところの政令それ自身がもう独立後を予想していたとこういう御説明ですか。
  65. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りであります。
  66. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 従つて占領の継続だという印象がないとこういう御説明ですか。
  67. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りであります。
  68. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは驚くべき御説明ですが、これは一つあとで問題にすることにして、もう一つの問題に入ります。それはこの法令の第一條の目的なんですが、この管理令の第一條によれば、当然平和條約発効の日が基準になつてそれから入る人と出る人とが問題になるというふうに理解しなきやならんと思いますが、ところが内容をずつと検討いたしますと、以前から長く日本に住んでいた全を問題にし、その強制退去にまで及ぶということになつておるのでありますが、この本政令の目的であるところのこの第一條と、二條以下の内容とが矛盾しておるという点はどういうふうに考えておられるでしようか。
  69. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は別に矛盾しているとは思いません。
  70. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 よく読んで見て下さい。矛盾していますよ。
  71. 有馬英二

    委員長有馬英二君) なおちよつと委員長から申上げますが、岡崎国務大臣が御都合で先方へ聞き合したところが、一時間延すということだそうでありまして、大体三時半頃までは延ばし得るそうでありますから、そのつもりで一つ……。
  72. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どうですか大臣、第一條のこの政令は本邦に入国し、本邦から出国する、即ち講和発効の、この法律の発効するその日を基準として入る人と出る人が問題であるということが第一條なんですが、これで以つて既往に勝手に遡つて強制退去までやらかして行くということはこの政令の目的そのものを阻害すると、この第一條の基本的な目的という項目と内容が全く矛盾撞着すると言わなければならんのですが、この点は如何ですか。
  73. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いやこれは私の考えでは講和発効のときにこれは又法律として効力を発生いたしますが、その前から法令としてはあるのでありまして、又この入国し若しくは出国するということにつきましては、前から入つておる人をこの中に入れても一向差支えない、こう考えております。
  74. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは法律の説明にならんと思うのですね。幸いメモが来たようだからよく読み直して、落ちついてもつと了解できるような答弁をして下さい。だつて一條を読んでごらんなさい。そういうふうに勝手に答弁されては困りますね。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも兼岩君のおつしやることがよくわかりません。がどうも私ども考えではおかしくないように思うのですが、もう少しはつきり指摘して頂きたいと思います。
  76. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この管理令の第一條に、目的というところによりますと、「この政令は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理について規定することを目的とする。」本邦に入国しですよ、本邦から出国すると、こういう法律が効果を発生するのです、このサンフランシスコ條約の発効と同時に。だからこの第一條はこの字句の規定しておる通り、この法律発効の日以降において入国し出国する人には問題であるというふうに読まなければならないのに、それをどういうふうに読めば、既往に遡り、六十年も住んでおる人に遡るという根拠が第一條から出て出ますか。大臣でなくてもいいですよ、次官でも結構ですし……。
  77. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) まあ一応私からお答えしてみておきます。これはこの本邦に入り又は出る人の出入国を公正に管理して行こうというのが、まあ出入国管理令の目的でありまして、同時にやはり、おる人につきましても不法に入国した者は出てもらわなければならんとか、或いはこの二十四條にいわゆる列記しておりまするような、おつてもらつては困る人は帰つてもらわなければならんということは、出入国管理行政のこれは一般の国際慣例ですが、諸国の立法例であると思うのであります。それから朝鮮人につきましては講和発効と同時に、これから外国人になるのでありますから、外国人なつた後の取扱いをここに規定をしておる、規定して行くと、こういうことであるのであります。
  78. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それならばそのように書かなければいかんので、第一條を読んでどこからそういうことが出て参りますか。本邦に入国し又は出国するすべての人の出入国の公正な管理について規定する法律だと言つておいて、八十年も住んでおる人、いや六十年も住んである人に勝手に適用するということがどこから、第一條のどこから出ますか。
  79. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 現在この出入国管理令は昨年十一月一日から外国人に対して適用になつておりまして、現在では朝鮮台湾の人には適用になつていないのであります、現在は……。現在は朝鮮台湾の人にはこの管理令は適用になつておりません。それでは何が適用になつておるかと申しますと、外国人登録令というのがございまして、それが現在は適用されておる。それで平和條約発効と同時に朝鮮台湾の人が外国人になりますから、そのときからこの管理令が適用になるということになるわけであります。
  80. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 だからそれは説明になつていないでしよう。第一條、かような法の一條で明確に目的を掲げておきながら、その内容が著しくあとへ行くと、拡大されてしまうわけでしよう。全く第一條規定から逸脱した内容になつてしまうでしよう。その関係はどういうふうに説明されますか。これを直すつもりですか。
  81. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この入国と出国という字句がありますと、その間には当然滯在或いは在留というものが入つて来ると思うのです。入国及び出国ということについては、まあ在留の條件ということが当然入つて参りますということでございます。
  82. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これは先ほどの大臣が第一の質問に対して、妙な答弁をされたけれども、あれは我々から言わしむれば、ポツダム政令という形で、既成事実を作つておいてどんどん強制退去その他やつておいて、そうしてそれをあたかももう当然なことという感覚を與えておいて、国会へ而も修正という形で出して来られておる。この第一の質問に対する政府答弁が非常に我々に対して何ら説明し得なかつたと同じで、この第一條の目的を、羊頭狗肉と言いますか、この一條にこういうことを掲げておいて、内容が全くひどいということは、全く第一の私の質問と同じだから、その内容に入つて大臣自身の説明を求めるために、この第一條がこれは全く羊頭狗肉である、かようなものを掲げて、二條以下に行くということは許されないということを指摘するにとどめまして、この内容の最もひどい二十四條との関連で大臣に、答弁を求めるのでありますが、この二十四條の強制退去内容は、もうすでに連合委員会で非常に明かにされましたから、私はその点をもう一回詳細にやろうとは考えておりませんが、それを要約する意味で整理しますと、この二十四條の八と二で癩病の関係と精神病の関係、これは自分の国には置かんがその他の国に追つ拂えばいいという、極めて我々としては許しがたい民族利巳主義的な考え方であつて、先般日本に天然痘がはやつたときに、これはアメリカ兵が朝鮮から持つて来たという事実があるということと考え合せて見ましても、今日は人の身、明日は我が身という関係で私は許しがたいことだと思うのです。それからホという條項貧困者に至つては、私はここで大臣にお尋ねしたいのだが、戦争中に朝鮮から三十有余万の労働者を強制的に連れて来られておるが、この人たちに対して、吉田内閣になつてからでいいが、この人たちに対して、終戰及び終戰後吉田内閣はどういう就職の斡旋をされたか、この強制的に三十有余万の朝鮮から連れて来られた人に、生業資金は一体どういうふうに貸されたか、住宅の斡旋はどういうふうにされたか、税金はどういうふうに面倒を見られたか、ちよつと大臣からお答え願いたい。どういう政策をとられたか、この三十有余万の強制的に連れて来た人の就職、生業資金、住宅、税金、この四項目だけでいいから簡單に答えてもらいたい。
  83. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 政府としては一般国民と同様にできるだけ、これに対しても面倒をみる方針で職業安定所その他において失業しておる人には面倒を見まして、又その他の人々に対してもできるだけの面倒を見る方針でやつております。
  84. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それから生業資金、住宅、税金は如何ですか。
  85. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これも国内において平等に取扱つております。
  86. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 住宅は如何ですか。曾つて朝鮮のそういう三十万の強制労働者に対して住宅の面倒を見られた例がありますか。
  87. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはそれぞれの機関がありまして、それによつて成規の手続によつて適当に処置をして来ていると信じております。
  88. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 都で建てられた住宅やアパートに入つておりますか。朝鮮のこの強制労働者の人は、そういう点調査されたことありますか。
  89. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 都でやるアパートは地方自治体の管理でありますから、地方自治体で適当にやると考えております。
  90. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 大臣はああいう妙な答弁をしておられますけれども、労働者の生業資金も住宅も税金も一つも吉田政府は面倒を本気になつて見ておりません。だから貧乏を理由にして退去させよう、こういうふうの規定がこの法なんですが、これらの諸君は貧乏以外にどういう方法があるかということを、一つあれば大臣から格別のいい智惠を出して頂きたい。この三十万の人たちに貧乏以外の途があるか、あなた方の政府の治下において貧乏以外の方法があつたかどうか、そういう点はどう考えておられるでしようか。
  91. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これらの人々の中には金持の人もあれば金のない人もあることは日本国民と同様であります。現にこれは例で恐縮でありますが、外務省におきましては一手に引受けている床屋さんは朝鮮の人であります。日本人の床屋さんは結局競争に負けて朝鮮の人が、外務省においては全部引受けてやつております。(笑声)
  92. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 非常に適切な例を挙げて……、(笑声)皆さすが大臣の説明だといつて感心しています。(笑声)さて先へ進みましよう。例えば一年をこえる懲役若しくは禁錮、こういう軽い犯罪者をどうして強制送還するのか、これはオ、ワ、カのほうを調べてみますと、入国審査官という一介の官吏が四十五條できめる、四十九條では異議があつたとしても同じ長官が裁決してしまう。こういうものは日本国の憲法によつて処理すればよい。それから労働者が労働に従事する、これらの朝鮮人或いは台湾その他の諸君がストライキ、デモに参加すれば圧迫をされて、そうしてやがて追つ拂われる理由になる、それからヨを調べましても、外務大臣が認定して法務総裁と協議する、これは一人の人間の生殺與奪というのですか、死ぬか生きるか、そういうむずかしいことを一外務大臣が、あなたは将来の外務大臣で、間もなくその権限を持たれるそうですが、曾つての天皇さえ持たなかつたような権限を與えられる。それからずつとその他調べて参りますと三十一條で臨検、捜索押收の無限の権限を持つ、それから二十七條をみますと入国警備官が思つたということで、丁度あなたが思つたということでパスポートを拒絶したようなことと瓜二つである。思つたという具体的の何ら科学的な、外国では日本の閣僚諸君の国会の問答を聞いておると、精神鑑定を要するというのが定説だそうですが、その他先ほども大変いい答弁があつたのです。これは二十七條、それから三十一條こういうような私は二十四條に集中的に現われておるこの非人道的なアジア民族に対する侮蔑、外国人アメリカの武力を借りてこういう乱暴なことをやるということが……、これからが大臣のあなたの答弁を求めるのですが、あなたはこの前新らしい外交方針として自分は国連憲章に従う、それから善隣友好でやるのだ、そうして平和條約に従うの三つだと言われましたが、これは次の機会に詳細に御見解を伺いたいのだが、この平和條約の劈頭に世界人権宣言を尊重するということが出ておりますが、従つてあなたはこの世界人権宣言を非常に尊重される外交方針政策をお持ちのはずなんですが、その二條によると民族的差別はしない、何人も皮膚の色、性別、言語、宗教なり、若しくは意見相違、そういう社会的門閥、地位、そういうものの差別はしない、皮膚の色の差別はしないということが出ておりますが、この二十四條はあなたは果してあなたの尊重すると言われる人権宣言二條の民族的差別はしないということに違反しないと考えておられますかどうでしようか。
  93. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この二十四條のみならずこの法律は全部がアジア民族のみならずアメリカ人でもエチオピア人でもアイスランド人でも適用されるのであります。どこにも民族的差別をしておるところはありません。
  94. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私はあとで如何に差別しておられるかということは質問の第五に予定して詳細にあなたが如何にこの二十四條のみならず全條文を通してこの朝鮮人台湾人の長くおられる諸君に如何に苛酷の内容を持つておるかということを証明します。今日は時間の関係もありますから私はあなたが民族的差別はしていないと言われるというならば、これを一つしておるということを次の機会に証明しますから、それまで一つ次の機会までもう一度この点は御回答願うことにしますが、次に人権宣言の第九條に「何人も、ほしいままに逮捕され、拘禁され、又は追放されることはない」と言つておりますが、今ちよつと読みました二十七條、三十一條だけから言つて朝鮮人台湾人及び大陸の諸君がほしいままに逮捕され拘禁され強制送還されるじやありませんか、これが第九條に違反しないと考えておられますか。
  95. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは法律によつて行うのでありまして、ほしいままにするのではありません。又こういうような規定日本のみならず諸外国にもあるのでありまして、どこもそれが人権宣言等に反するとは考えておらないようであります。
  96. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう驚くべき曾つての天皇以上の権限を外務大臣に與えておるような法律があるそうですから、これはあと一つ委員長にお願いしますが、どこの国にあるのか一つ出して頂くようにお願いしたいと思います。どなたにお願いしたらいいですか、長官ですか、ちよつとどなたが出して下さるか明らかにして下さい。
  97. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) お配りしてあります。
  98. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 だからあとでどこの国とどこの国に私の指摘した点があるかということを一つ説明願います。それからその次に世界人権宣言の第七條によりますと「すべての人は、法の前において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。」とありますが、大臣はこの條文が法の前に平等で、如何なる差別もない、平等な保護を受ける権利がある。先ほど生業資金はどうか、就職の斡旋はどうかと尋ねたが、生業資金も住宅斡旋も一つもしていない、日本人より非常な差別を受けて貧困のどん底に押込めておりますが、そういうことがあなたは世界人権宣言の第七條に牴触しないと考えておりますか。
  99. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今までのところは我々はできるだけの努力をいたしておりましたが、講和條約が発効いたしますと、日本人以外の人々、つまり外国人日本人の区別は非常にはつきりして来ます。いずれの国におきましても内国民待遇とか、最惠国待遇とかありまして、内国民については特殊の取扱、特殊の便益がある。例えば外国人には鉱業権は許さないが、内国民にはこれを許す。こういう権利義務、つまりその代り内国民は国会に選出できる。政治に関與できる。外国人はできないというようないろいろな権利、義務は内国民と外国民では違うのは、これは当然でありまして、この第七條ですか、今御指摘になつたのも、外国人も内国人も一緒くたにしろという趣旨でないことは明らかであります。
  100. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 一緒くたにしろというのでなくて、公平に平等に扱えというのが世界人権宣言であるが、それを承認せられるかどうかということです。
  101. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 外国人に対しては平等に取扱います。公平に平等に取扱います。
  102. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 最後に一つだけ尋ねて私の質疑を終りたいと思いますが、あなたはこの強制送還というものをされた人たちに、どういう運命を與えているかということについて私は十分知つておられるとは思うけれども、併し私はもう一つの具体的なここに事実を持つておるので、それをお尋ねして、一応大臣に対する質疑は今日は終えたいと思うのですが、これは長官の答弁を求めたいと思うのですが、昨年一月三十日頃に出入国管理庁の決定として金宝聖という人物……。
  103. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ちよつと兼岩君に申上げますが、もう時間が非常に差迫つておりますから、長官に対する質問であつたらあとでお願いいたします。
  104. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それでは私は非常に重要な強制送還というものは、如何に死刑の宣告であるかという事実を以てそうして質して置いて、大臣意見をと思いましたけれども、これは他の同僚に悪いと思いますから次に讓ります。それでは私は一応これで……。
  105. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それではどなたかほかのかたの御質問を願います。
  106. 曾禰益

    ○曾祢益君 時間がないので非常に結論的に大臣の御意見を伺いたいのですが、先ほど外国人として、新たに今度外国人になる旧朝鮮人、それから台湾人にだけ特別な取扱いをするということは、やはり講和條約等にも規定されているような最惠国待遇の問題を起すという話がありましたが、併しこれは実際問題とすると最恵国待遇の問題にはならない。何となれば日本から分離する特殊な国民のことなんですから、従つて第一政府から提案された第二條ですか、その6においてすら特別の待遇をここに規定しているわけなんですから、そこで政府としてはこれらの諸君に、元来ならば日本国民であつたので、今後も日本国民として残るならば従来の永住権認めて行こうというのが、私はそのほうが理窟が通つている。併し諸般の関係から外国人としても特別に永住的な地位を認めよう、これは我々としては親心でもあるし、又これらの諸君の従来日本人としての絆を考えての措置として、これは当然に最恵国の待遇の問題にならない。従つてその精神をどこまで活かすかということについて、政府としては一応法律の定むるところによつてでなければ確定しない。実は條約、協定等ができなければ、やはり相互の待遇の問題もありましようし、ここで確定的に永住権ということを規定するのを多少躊躇するという気持は、これはわかる。併しそれ自身がやはり政府は或る種の永住をさせるつもりである。あとで申上げるような例外的の送還の問題は別としまして、いわゆる善良なる諸君永住認めて行こうという気持であるということははつきり言つておられる。併しそれが法令上はつきり出ておらない、これが一つの我々国民的な側から言えば心配の種なんです。そこで政府はその点を先ほどあなたが言われたような最恵国待遇の問題だからもつとはつきり書けないというのはこれは理窟にならない。故に如何なる方法を以てこの永住権の点を原則としてもう少し明らかにすることができないか、これは私はその気持があるならば法制上の技術もあるのだろうと思うが、まずできるんじやないか、この点についてもう一遍大臣の御意見を伺いたいと思います。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと誤解があるようですけれども、先ほど最惠国というようなことを言いましたのはこの問題じやなくして一般的の話なんです。そこでこの永住権の問題につきましては、今曾祢君お話のように実はこれは誤解もありますからむずかしいとは思います。併し本来の日本人朝鮮には永くずつと住んでおつた、営業もしておつた。そこで我々のみが朝鮮人に対して永住権認めるが、向うは認めないということであるかどうか、それは今までのいきさつがありますけれども、向うもなかなか困難な点はあると思います。併し時がたてばその点も解決するんじやないかと思つておりますが、そういうような趣旨のこともありまして、話合いが最後まで決定的についておらない。併しここに第六項に書いてある「別に法律で定める」ということは、これは永住権認める、その永住権認めるが、その條件等をどうするか、例えば国籍証明書というものもありましようし、在留証明書というものもありましよう。又そういうものがない人もありましよう。というのは台湾その他の方面の人は朝鮮の人とは又少し違いまして、いろいろ従来の資料だけで定めなければならんものもあります。そういうような條件がいろいろありますので、これらは話合いで、それでこういう書類があればいいとするか、或いは別のこういう正確な日本における政府の代表機関から証明書をもらわなければならないとかというような手続の問題もありますので、ここでは詳細には書けないのでありますが、この「法律で定める」ということは、要するに永住許可の條件を定めるのであつて永住許可をやろうという意思は日本側でははつきりしておるのであります。ただ我々の希望では、こちらでもやるから向うでもできるならそういう同じような待遇をしてもらいたい、こういう希望は持つております。
  108. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう一点それに関連してはつきりして置きたいんですが、そうすると政府の気持はやはり相互主義に一応立つて行きたい。併しそれを必ずしも條件にしないで、そうして韓国側がどう出ても永住権はこの法律で與えてしまう。併しその個々の條件については勿論韓国だけの問題でありません。台湾のほうの問題もありますので、とにかく気持としてはレシプロシテイで行かなくてもいいというそういう肚であるかどうか伺いたい。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私から説明するまでもなく曾祢料等はよくおわかりと思いますが、気持としてはレシプロシテイで行きたいと思つております。併しながら片方は日本人が現在おるとしても非常に少数であります。大部分の人はこれは強制送還でありますが、内地へ送還されております。今いないのであります。そこで新たに行くという問題になるし、こちらでは日本にずつと引続いておるんですから、その間の違いはあると思います。ですからそれをどういうふうに調整するか、調整の方法はあると思いますが、将来長きに亘つてこちらには永住権はないが、向うだけは永住権があるというふうにはいたしたくない。ただその過渡的の便法としてはここにもありますが、その他もいろいろの点で在留朝鮮人若しくは台湾人に対しては過渡的には相当程度便法を講じなければ無理であろう、こう考えておりますから、今直ちに全然同條件なレシプロシテイにならなくても、これはいたし方がない、こう考えます。
  110. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると相互主義というものを絶対の條件にするかどうかについてはゆとりをとつて考える、差し当りの現実の事態には引続きそれを認めて行く、併しその永住権とまでするかどうかについては、まだ永住権というものは考えない。やはりそこに相手国政府との交渉段階一つ置いておきたい、こういう気持だということですか。
  111. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大体そういう気持ですが、併しそれにしましても現在日本におり、而も平穏無事に永くおるという人自体を、外国人なつたから故に永住権は全然日韓交渉ができなければ認められないのだというのでは余りに苛酷じやないかと思いますので、気持としてはこちら側は永住権認める気持は十分あります。向うも是非何と申しますか、レスポンドしてくれて、今直ぐでなくてもいいが将来そういう途を開いてもらいたい、こういう気持であります。
  112. 曾禰益

    ○曾祢益君 お気持はよくわかりましたし、私も原則としては当然にレシプロシテイで行くべきだと思うのです。併し現実の事態を考えると、利害関係者の気持を考えると、そこまで言つておられるならこういう書き方をしないでも、一応永住権を與えるというふうに言つたらなお更きれいじやないか、そういうこれは政策論になりますが、それはかなり大きな心理的影響があると思います。この法律規定従つて行くということは、要するに相手国との交渉によつても、これまでは差当り永住権じやなくて、一応の不安定な暫定的の居住の資格を認めることに過ぎないということに搾つておられる点に、事実腹がそうであるならば、私はその腹に賛成です。一応向うにはレシプロシテイを要求すべくこれは当然であるけれども、現実の事態を考えれば、やはりこつちとしてはこの人たち永住権を與えて行く、善良な人に。それならそういうふうに書いたらいいじやないですか、そういうお考えはないか。もう一歩脱皮したらどうですかということを伺つているわけです。或いは法令の形で以て、他の方法でお考えであるならば、訓令なり発表なり、どういうお考えがあるかお伺いしたい。
  113. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の御質問私にはなかなか答えられないのですが、というのは、これは法律的にはこういうふうに書くのが適当であるという專門家の意見によつて書いたと私は了解しております。併し考え方は、要するに永住権の條件を設定するのだ、従つて永住権を與えるようになるまでは引続きただ在留しているのだと、こういうことになると思います。
  114. 曾禰益

    ○曾祢益君 余りその点は政策論になりますから……、もう一つ重要点の例の二十四條の問題ですが、それがこれに関連して来ることは御承知の通りであつて、まあ理論から言えば、一応永住の資格を認められる人でも場合によつて、特に不良な者はこれは一定の條件においては退去を命ずるという主権国としての私は権利を確立することは何ら反対がない。ただ実際問題とすると非常に大量におるということ、それから先ほど兼岩委員が言われたように特殊な、特に朝鮮人の場合に多いのですが、非常に気の毒な條件にあるいわゆる貧困者が多い、この事実。更にこれは大臣も直接言われたこともその趣旨だろうと思うのですが、いわゆる二つの政府に分れている、こういうような條件ですね。従つて一応は退去を命ずる権能を持つておかなければならない。日本の主権回復の立場にあるけれども、それをそのまま置きつ放しにできると書いて置くだけでは、じや現実に退去を命ぜられた場合にはどうだという心配をするのは、これは利害関係者として当然なんです。そこであなたの気持も、いわゆる永くおられた朝鮮人或いは台湾人諸君については、貧困を理由として強制送還するということは毛頭考えていないという気持であろう、それは先ほどはつきり伺つたと思うのですが、それといま一つは、現に例えば朝鮮で動乱が起つておる。その場合のことを考えて、あの国連といわゆる朝鮮、中共側との停戰の話合いにあるように、北鮮兵であるけれどもいわゆる南鮮に寝返つた者をそのまま捕虜として帰したらどういうことが起るか、人道問題が起るということは御承知の通りなんです。それと同じような事例を日本考えなければならない。従つてそれらのいわゆる受取る側の條件というものも考え、それから永い間のその気の毒な状態から来た貧困事実は考えて、だた二十四條そのままで放つておくというのは、これは政府としてもそれはお考えじやない。従つてあなたがたはここにもう少しそれを……一等いいことは、我々はそれを六項等において暫くの間そういうことはしないのだという停止條件を附けるということはどうか。そこまであなたがたはお考えにならなければ、例えば政令を出す或いは訓令を出すというような、もう少しこの点をはつきりする方法ほお考えになつていないかどうか、この点をお伺いいたします。
  115. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の曾祢君お話は誠にその通りでありますが、私どもの原則的な考えは、これは日本法律をまあ普通にただ知らずして犯して、或いは何かの過失で犯したというのは別としまして、もう初めから考えて惡辣な方法で、又悪質なやり方で日本の根本的な法律を紊そうという人がありとすれば、これはもう日本に置くことは私はできないと思う。併しそれ以外の者は先ほど申したような趣旨でありまして、この法律運用に当つてはただそれを、例えば朝鮮の事態は今南北に分れておるから取りあえずこうするのだとか、或いは朝鮮には癩の病院がないから取りあえず向うには送らないのだということは、これは相手国の内情を書くことになりまして、非常に法律としては妙なことになりますから、過渡的な便法としては今申したようなことをずつと書くことになります。この法律と同時に、例えばこの委員会における速記録法律の実際の運用関係があるかと思います。ここで速記に載りますればやはりそれが趣旨となつて行くのでありますが、又事実今の御趣旨のようなこともありますから、内規なり訓令なりにしてその点は出入国管理庁の職員の下部にまで徹底するような方法を講ずるつもりであります。
  116. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後にちよつと……。それで私も悪質なる者の退去を命ずる当然の主権を確立すべきだと思う。又それは状況に応じて人道に外れない限りは断行して差支えない。ただあなたの言つておられる点は、成るほど末端の公務員の行き過ぎが得てしてある。そこでその程度では殊に人数の多いことでもありますので、その周知徹底にはただ内規、訓令、或いは政令も必要でありましよう。やはりベストなものは、法律と共に作られる省令が同時に発効するというようなことも考えられる。それを我々の見地から、立法側の見地から言えば、法律の中でなお明らかにするテクニツクがむずかしいということはわかります。我々もむずかしいと思いますが、そういうこともこれは少し政府も真劍に考えられて、これを打開して、速かに独立前にこの問題を片付けるのがベストじやないか、その点について我々の考えもだんだん熟して来ると思いますけれども政府でも一つもう一遍考えて頂きたい。これは希望です。
  117. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ちよつとお諮りいたします。今重大なる法案のため本会議が開かれております。採決するのだそうでありますから、ひと先ずここで休憩に入りまして、本会議が済みますともう一遍再開いたしますから、全員ことごとく御出席を願います。    午後三時三十九分休憩    —————・—————    午後四時二十二分開会
  118. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは休憩前に引続き委員会を開きます。皆さんにお諮りいたします。明日小委員会を設けまして更に審議を続けるということに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 異議ないものと認めます。それでは委員の選定についてその方法について御提案を願います。    〔「委員長一任」と呼ぶ者あり〕
  120. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは委員長一任ということにいたしまして、私から小委員を次のことく指名いたします。  曾祢益君、團伊能君  中山福藏君、岡田宗司君  大隈信幸君、大山郁夫君  兼岩傳一君。  そこで小委員長ですが、小委員長は小委員会で互選願うということにいたします。私もそれに参加いたします。  それでは只今から休憩前に引続きまして質疑を継続いたします。質疑のおありのかたは順次質疑をお願いいたします。
  121. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 先ず第一にこの二つの法律案行政協定との関係についてお尋ねいたしたいと思う。行政協定によりますと、行政協定の対象になつておるこの外国軍隊等については、日本国の出入国管理に関する法令の適用を排除することを約束しておられるわけでありますから、この二つの法律案に、日本国内法にやはりそのことを明らかにしておく必要があるように思うのでございます。その点何ら触れてないのですが、どういうわけであるか。ほかの行政協定ついていろいろ立法措置を要するものは全部特例等についての法律をみんな作つておるというのに、これだけ全然触れてないというのはどういうことですか、先ずその点をお尋ねしておきます。
  122. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 行政協定に基くアメリカ軍の軍の構成員、軍属並びにそれらの者の家族につきましては、安保條約に基く行政協定を以ちまして国内出入国管理令或いは旅券法、そういう場合の規定を排除いたしまして入国を認めておるわけでございます。従いましてそれらのアメリカ軍の軍人、軍属、家族といつたようなものは、行政協定に基く身分証明書とかそういつた身分が明らかにされて入つて来る場合には、当然日本政府としても入国を認めなきやならないという建前になつておるわけであります。そでこの管理令上それに基くそういうものはこの管理令の適用を受けないんだという何か明文が必要ではないかというお尋ねでございますが、これは二つの点からそういう必要がないというふうに私どもは解釈いたしております。その一つは大体国際慣例と申しますか、そういう意味からは、例えば外交官とかそういうような者も国際慣例上各国でも出入国管理の法令の適用を受けないで認められておる。そういうような意味合いからも外国の軍隊というようなことで、そういつた国内法の規定も適用されないで入れるという一つの国際慣例的なこともあるということと、もう一つは、行政協定自体にこれが明らかにアメリカ軍の権利として入国を認めるというふうにはつきりと規定されておる。そういつたことからこれ以上国内法でそういう特例といいますか、管理令の適用を受けないということを書くことがすでに重複したことになるという意味から国内法化する必要はないと、かように考えておるわけでありまして、ただ行政協定に基く刑事裁判権とか、いろいろなほかの面で国内法化しておるものが若干あるようでありますが、これはむしろ国民の権利義務と申しますか、そういつた面に関係があるという規定建前から、特に国内法化する必要があるように思われます。出入国管理令につきましては、権利としても入れるということであつてあと行政事務と申しますか、私どもの港にありまする出入国審査官とかそういう者が、そういつた身分証明書を持つているかどうかという審査を或いは或る場合においてはするかも知れませんが、そういう行政上の取扱いとしてだけの問題しか残りませんので、特にそういう国内法に規定する必要はないと、かように解釈いたしております。
  123. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうするというと行政協定がその部面に関する限りは即法律というふうに見ておられるわけですね。
  124. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) さようでございます。
  125. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その点は先ほどこの理由の中の一つに、行政協定の中でも規定してあることを特に今度特例で国内法を作つたのは、国民の権利義務に関するからだというふうに言われたが、必ずしもそうでないものもある。すでに幾つかの国内法としてできておる、法の建前としてはやはりこれは別だということがここに謳つておくことが適当だと思うのです。それから元の管理令の中にも連合国軍隊等に適用せんということを明文を以て謳つて、当然これはやはり何じやないですか、そのことを国内法で一言謳つておくべきもののように私は思う。
  126. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 御意見は私どもも御尤もの点も十分了解されるのでありますが、何分事柄が極めて簡單なことでございますし、行政協定ではつきりと入国する権利を有すると書いでございます。従つてなおそのほかにいろいろな管理令上規定すべき問題があるのなら、又それも規定することがそういつた行政の実施上明らかにする意味でいろいろな規定を設ける必要があるかと思いますが、実はそれ以外にもう何もないわけなのでありまして仮に書くものとすれば、行政協定規定せられておるアメリカ駐留軍の軍人、軍属、家族は入国の権利を有するということに対応する規定を、それを受けて同じことを書く程度にしかならないのじやないか、そこで実はそういうことを書く必要があるのかどうかという点も政府部内で法制意見局とか外務省の担当の事務局とも御相談しました結果、その程度ならば必要がないのじやないかというくらいの見解でございます。目下そういつたアメリカの軍人、軍属、家族が日本に入国する場合の何と申しますか、身分証明書の記載の事項とか、そういつた点はこれは細目的に例えば予備作業班と申しますか、そういう方面でこれは極めて事務的な手続上の問題でございますが、双方で話合いが今進められておる。これはむしろ手続上の問題である。かような意味合いから特に管理令に法的にこういう特にそれを受けて書く必要はないと、かような解釈をいたしておるわけでございます。
  127. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 この管理令の第四條に在留資格というものを、括弧の中に在留資格なるものの定義を書いて、随分これは何遍読んでもよくわからないけれども、どういうわけですか。
  128. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 在留資格という意味は、第四條の場合はむしろ入国する場合の條件の意味でここに謳われておる。そこでこの在留資格という意味は、外国人が本邦に在留する場合に、こういつた該当の仕事といいますか、活動をする者としての資格と申しますか、という意味でこれが在留資格だ、かような意味でございます。非常に説明がわかりにくいかと存じますが……。
  129. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これはもう少しそれじや私の疑問とする点を具体的に指摘して言いますると、この括弧の中に在留資格なるものの定義を挙げて、その中に「該当する者としての活動を行うことができる」、この点、そのできるとかできんという法律の能否は、これは一体どこできまるのか。
  130. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) これは例えば具体的な例を挙げて申しますと……、
  131. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 例じやなく、これの法的根拠は何か、この行うことができる、これは法律的に可能だということだと思うが、その根拠はどの法規によつてきまるのか、或いはこの第四條の次にずつと掲げてあること自体によつてこれがきまつて来るのですか。又別個のどこかにこういうことができるとかできんとか規定があつて、それによつて初めてきまつて来るのかどうか。
  132. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) これは該当する者としての活動を行うことができる、それはここに掲げてある当然の解釈上規定されて来るのであります。かように考えております。
  133. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうすればつまりこの第四條自体によつてこれがきまるということですね。
  134. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) さようでございます。例えば観光客であれば、観光客としての当然の活動というものがおのずから制約される。
  135. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 平和條約の中に通商條約等ができるまでの間自然人及び法人について内国民待遇を広く保障している。そうしてその中には一切の活動、あの中に非常に広い範囲の活動を認めているのだが、それとの関係はどうなつて来ますか。
  136. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) これはこの第四條の各号に掲げる資格というのは、解釈によつては非常に広い解釈がなされるわけでございます。例えば「本邦で貿易に従事し、又は事業若しくは投資の活動を行おうとする者」、こういつたような極めて広い意味の活動が許されておる。そういう意味でこの範囲内においての活動は許される。併しながら貿易に従事する者が学校の先生のやつたり或いは映画、演劇のほうの興行をする、こういうようなことはできない。かような意味でかなり広い意味をこれは規定されておりますので、その範囲内における活動はできる。従つてお話のような点はそう無理がなくできるのじやないかと思います。
  137. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それはそうじやないのですよ。ここはみんな活動をなし得る事項を限定して掲げる趣旨なんですね、あとのほうのところは。そして一方においては、平和條約のほうでは全部内国民待遇を保障しているのですよ。そうすると非常にこれは食い違つて来る。内国民と同等の活動をなし得ることを保障しているのですよ。
  138. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) 私どもはこのように解釈するのでございます。例えば貿易に従事するという資格で入国を許されておる、その場合にその者がいたします貿易上の活動については、日本の内国民と同等に取扱われるという趣旨の内町民待遇であるということでございます。
  139. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その点は私疑問があるのですが、むしろ向うが非常に広く規定し過ぎておるくらいにしておりますから、その点は相当疑問があると思うのですが、まあそんなもので先のほうへ進みますが、先ほどの在留資格それから活動し得る範囲というものが、ここで規定される、そうするというと今後のところは、日本が通商條約を結ぶ際又現にアメリカとの間には通商航海條約の予備交渉が行われておるわけですが、日本側の方針として通商條約のいわゆるエタブリスマンに関する規定の方針として内国民待遇主義或いは最恵国待遇主義か、或いはその二つを組合せたもので行くか、どういう方針でおられるのか、その点一つ、それによつてこれに対する批判が違つて来る。
  140. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) その点につきましては、平和條約の規定しておりまする、通商條約ができますまでの過渡的措置におきましても相互主義と申しますか、相手国が日本に対しては内国民待遇を與えればこちらも與えるということになつております。その方針で進むということになつております。
  141. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いや、私の言うのはその過渡期間のことはさつき過ぎたから将来の、将来のというよりは今現にアメリカとの間でやつておる、それがどういうふうにきめられるかは、これは交渉してみなければわからんだろうが、日本側の方針としてはその点の待遇についてどういう主義を持つておられるかというのです。
  142. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) これは私通商條約の交渉に携つておりませんので、ここで御答弁できません。
  143. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それでは三宅政府委員は当つていないとして、外務省としてどういうふうな方針ですか。
  144. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この問題は只今いろいろ折衝の過程にありまするので、折衝しておる者とよく打合せまして、明日の機会にでも又お答えいたします。
  145. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 結構です。第四條の中にいろいろ在留資格等明示して、そうしてあとでそれ以外の者、特別に外務省令で特に定める者というのがありますが、これはそういう外務省令はすでにできておるかできていないか。
  146. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 現在までのところはまだできておりません。これは平和條約発効になりますると追々こういつたものが必要になつて来るということが予想されます。それは先ほど御説のことく第四條は列挙主義をとつておりまして、一応は第一号から十四号までの規定で、大体外国人として日本に入国し得る場合、又日本政府として入国を許してよいという、在留資格として大体入るのではないかと思われるのでありますが、又そういうときどきの各国との関係等から、加えなければならん事項もあり得る、こういう意味でこの規定が入つておるわけです。そういう意味から平和條約発効後余り数は勿論多くないと思いますが、外務省令で定める者が予想される、かようにお答えいたします。
  147. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは先ほどのように、これは日本側だけでなく、すぐ相互主義という問題が通商條約などで起つて来るから、だからすぐ日本の今後の移民問題とかその他に響いて来るから、今の待遇の関係を私は聞いたのですが、ここの今の外務省令で定めるというのは、そういつた今後の日本人の海外に出ることを広くするために必要な場合などをこれは大体予想してのことですか、制限的のものですか。どつちのほうなんです。
  148. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 勿論そういう場合も考慮いたしておりますし、又早速実はこの法律に基いて直ぐに何か在留資格を與えなければならんという場合も起きて来るわけでございます。先ほど来いろいろ御審議願いました平和條約発効後外国人になる朝鮮人台湾人のかたがたこれは別個に法律在留資格がきめられる、かように相成つております。併しながら終戰後入つて来た朝鮮人台湾人のかたがたがおるわけです。こういつたかたがたはまだ何ら在留資格がきめられないでそのままの状態で現在おるというかたがたも若干数は非常に少いですけれどもあるわけです。そこでそういつたかたがたが果してこの第十五号までの在留資格に当てはまるかどうかという点も若干疑問のものもございます。例えば具体的な例を挙げますれば、仮にそういつた人たちが弁護士をやつておる、こういつたような場合にはこのいずれにも入らない。そこで何か現在とにかく入つておる人に在留資格を一応與えなければならん、これは極めて法的な形式論になりますけれども、そこで第十六号でそういつた具体的の場合にも対処してきめなければならない、こういう差当りのそういつた必要からも出て来ますし、又お説の通り将来ほかの国との通商航海條約で向うがそういう者の入国を認めておるという場合にこちらも又認めなければならんという場合にはこの規定で追加して在留資格をきめる、こういう場合もある。こういつたような事情から極めてこれは漠然とした規定でございますが、一応列挙主義をとつていながら、将来のいろいろな場合に対処し得るように一応の余裕を持つてこういつた規定を設けた、かような趣旨でございます。
  149. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 この列挙しておる中に、本邦において事業を行なおうとする者という、その事業というのは一体どういうものであるか、これは主として私聞く趣旨は、今後日本外国において日本人がどういう待遇を受ける、どういう事業をなし得るかというのに関係があるから聞くんですが、この事業というのは、ここではどういう意味ですか。
  150. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) この事業という意味は、まあいろいろな事業といいましても解釈の仕方によつては相当大きな事業という意味もありましようし、又極めて簡單な、例えば、床屋さんであるとか極めて小さな小商いというような意味の場合も或いは含まれるようなふうにも解釈によつてはなり得るのでありますが、この場合の事業はこの五号の精神と申しますか、立法の精神はそういうものを指すのではなくて、かなり規模の大きな生産事業、かような意味で解釈しておるわけでございます。
  151. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 規模の大きな生産というのは工業ですか。
  152. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 大体そういつたようなものを……。
  153. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは非常に大事ですよ、通商條約なりで言われておるようにこれは非常に重大な問題ですよ。それからこれは一体例えば英語で言つたら何々に該当するんですか。
  154. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) これは一応英訳としてはエンタプライズとしております。
  155. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に在留期間の問題ですが、この規定によりますと、三年を超えない範囲で外務省令できめる、こうなつておる、外務省令できめるのはそれぞれの在留資格に該当するものについてそれぞれきめるんで、併しどんなに長くても三年以上であつてはいかんというのがこの法律自体できまつておるんですね。
  156. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) さようでございます。
  157. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは併し更新はできますね、ほかの規定によつて。そうしてその更新するときはそれぞれの該当する期間、それを更新して行くわけですか。
  158. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) さようです。三年なら三年と更新する、その間を切つてやるという考え方であります。
  159. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それから改正案の第二條の第六項「日本国との平和條約の規定に基き同條約の最初の効力発生の日において日本国籍を離脱する者」と、こうありますが、この「国籍を離脱する」ということは国籍法にいう国籍の離脱とは違つた観念ですか、どうですか。
  160. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 国籍法によりますると、国籍の離脱という場合は或るいろいろな條件の下に離脱という言葉を使つてあるわけですが、この場合はむしろ或いは言葉の表現としては国籍の喪失といつたほうが或いは適当ではないかという意味の離脱でございます。必ずしも国籍法で規定しておりまする離脱という場合と場合が違うように心得ております。
  161. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いや、私はそう思つたんですが、これはむしろ国籍の喪失とすべきで、同じ国籍に関する法規をきめるときに、国籍の離脱制度というものはちやんときまつた制度があるので、これは本人の意思に基くものに限るんだ、ここではむしろ国籍の喪失とすべきだという疑問を持つ、それから国籍喪失としてそれの根拠はどこに求めるのですか。ここには「平和条約の規定に基き」とありますが、平和條約、これをもう少し説明して頂きたい、どこの規定に根拠しているか、これの法的根拠を示して頂きたい。
  162. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) これは日本国との平和條約の第二章の規定に基きこういつたことになる、かように考えておるわけでありまして、この日本国との平和條約が国会において審議されました当時、朝鮮並びに台湾の場合において、朝鮮に関しては日本国は平和條約第二條によりまして朝鮮の独立を承認する、こういう規定台湾の場合は、台湾、澎湖島の権原が放棄される、かような規定から当然そこに本籍と申しますか、その住民であり、日本国に居住しておつたこれらの人たち日本国籍から離れる、日本国籍を失う、こういう意味日本国との平和條約の規定に基き日本国の国籍を離脱する、かような解釈をいたした次第でございます。
  163. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の朝鮮の場合と台湾の場合とは法的には違うのですが、朝鮮の場合は独立を承認する、それに対する日本の権利は放棄する、そこから当然に国籍問題がそれで解決されておると、こういうふうにどうして行くのですか、その法理的な説明をもう少し……。殊に日本に住所を持つておる者についてですね。
  164. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) この点は平和條約が国会においていろいろ御審議されましたときに、外務省の條約局長及び政務次官からかなり詳細な答弁があつたようでございます。その答弁に従いますと、そういつた平和條約の規定日本朝鮮の独立を認める、又台湾は領土権を放棄する、こういつたようなことから、どうして国籍が失われるかということは、普通今までの国際條約の慣例と申しますか、そういう先例から見ますると、国籍の選択権を有しておる場合には何らかはつきりと條約上選択することができるとか、その選択なしで別の国籍を取得した者は何年以内に退去するとか、こういうようなことに先例はなつておる。併しながら今回の平和條約においては何らの規定がない、その規定がないという意味は、そういつた選択権というものを認めなかつたのだ、こういう意味から平和條約のその規定の解釈上日本国籍を離脱する。それからもう一つは大体そういつた従来の平和條約の規定で領土の割讓とか独立を認めるという場合に、国籍の選択を許すとかいうような場合は、大体独立を許す地域或いは割讓されておる地域に住んでおる、つまり割讓するほう、独立を認めるほうの国民が住んでおる場合の規定が今までの先例である。併しながら今度の場合はむしろ逆であつて、独立を認めるほう、割讓するほうの国にその独立する国の人たちが住んでおる、こういつたようなことからそういつた先例も余りない、そこで独立を認めることとそれから領土権を放棄する、こういうことから当然にそこの独立する地域、領土権が放棄される地域の出身者である人たちはそれに伴つて日本国籍が失われる、かような解釈を従来いたしておるわけでございます。
  165. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外国国籍を取得するということと日本国籍を喪失するということは必ずしも直接に裏腹を成すものじやないですね、外国国籍を持つたつて日本国籍は依然失わんということはあることなんで、私どうも今の平和條約の解釈をもう少し法理的に明瞭にしてもらいたいという感を持つのですが、御承知のように最近の例としてもイタリアなどの講和條約の場合などは、ただ單にこの領土権を放棄するということの規定から直接に国籍問題がきまつておるというのじやなくて、別個に国籍に関する特別の規定を置いて、それによつて国籍問題を処理しておるわけなんですが、日本平和條約の場合はそいつが何もなかつた、これはやはり別に国籍についての條約の規定を必要とするのじやないかというように私思うのです。殊にそれが独立を認めたその地域乃至割讓された地域、そこに住所を持たない者については特にその点が問題になるように私思うのです。
  166. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは本来なら條約局長あたりから詳しく御説明を願うほうがいいと思うのでありまするが、一応平和條約を審議されましたときにも條約局長の見解は表明されておるのでありまして、つまり新鮮というものがここに新たに独立するというその事実を互いに承認するわけでありまするが、そこでその際に日本におりまする朝鮮人は合併当時自分で持つておりまし朝鮮国籍を、或いは又その子孫でありまする際にはその父祖が持つておりました朝鮮人国籍を当然回復するものであるという考えで、この平和條約の第二條の趣旨を解しておる、こういう解釈で来ておるのでありまして、これは更に日韓の條約、又台湾につきましては日華の條約によりまして、それらが互いに確認され合うということにはなるのでありまするが、その前におきましてもやはり独立という事実がありまする以上は、ここに国際法の原則と言いますか、趣旨によりまして当然こういうふうになる、そういう解釈で平和條約の審議のときも参つておるように私は了承しております。
  167. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 この日韓協定では、国籍問題は特に協定できめるわけなんですか。それから国民政府との間の條約では国籍問題を取扱つておるんですか。
  168. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 日華の條約におきましてもやはりそういうことを確認し合うようになつておるようであります。
  169. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 この、先ほどのことにちよつと戻るのですが、第二條の六項「日本国籍を離脱する者」、この日に離脱する者、これは国籍法に言う離脱とは違うのに、わざわざ国籍の喪失とせんで離脱とされたのはどういうわけなんですか。
  170. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 国籍法では、これは今ちよつと條文を……、私の記憶では、国籍の喪失という観念を二つに分けておるようになつておりますの一つの場合は、第八條でありますが、「自己の志望によつて外国国籍を取得したときは、日本国籍を失う。」失うという言葉を使つて第八條はございます。それから十條ですが、「外国国籍を有する日本国民は、日本国籍を離脱することができる。」この二つの場合を併せて国籍の喪失という言葉を使つておるようなんです。そうするとこの場合に一体この喪失という言葉を使つたほうがいいか、この離脱という言葉を使つたほうが適当かということで、法制意見局でも随分迷つたように記憶しております。実質的には広い意味は喪失だということには違いないわけでありますが、一応国籍法による離脱とは違うけれども、まあ離脱という言葉が適当ではないかというような意味で離脱という言葉を使つたように記憶いたしております。
  171. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは離脱を使つたほうが適当だと言われるが、私にはどうもわからんですが、むしろこれは非常に誤解を来すと思うのです。ちやんと国籍の離脱制度というものがあつてそれは必ず積極的乃至自己の意思表示、要するに本人の意思行為というものが基礎になつて国籍を喪失する場合の一つの制度として国籍を離脱するのだ、ここで国籍の離脱をやつておくとやはりそういう本人の意思希望というものが認められるというふうに、私はむしろそう解するのが普通じやないかと思うのです。そうでないという立法趣旨であるならば、むしろここはこういう誤解を起すような文字を使わんでも、国籍の喪失は本人の意思には関係ないという趣旨のもののほうがいいと思う。非常にこれはそういう点で却つて誤解を招く、私はこれを最初読んだときには、これは平和條約に基くということ、そこも私は多少疑問を持つておりますが、そのことは別といたしましても、本人の意思というものは認められるのじやないか。そういうふうに私は一応読んでおつたんです。その点併しなお重要なる点ですから、法制意見局などの意見を聞きたいのですが、今の御説明では少し私納得しにくいのです。
  172. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) なおこの点法制局ともいま一応問合せまして又お答えいたすようにいたしたいと思います。
  173. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 先ほどの曾祢委員岡崎国務大臣との間の質疑応答で、岡崎大臣はこれの実施運用については間違いのないように訓令或いは内示等を作るということにするという趣旨のお話がありました。これは是非私も必要なことであろうと思うのですが、ただ曾祢君質問に対してただ一般にそれを周知せしめるために、例えば政府の声明等をなすというような点についてはお答えがなかつたのですが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか、全体の運用について、それから又殊に皆今までここで一般に表明されておりますいろいろ心配しております点などについて……。
  174. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これはこの法律ができ上りまして、いよいよ運用されるということになります際には、先ほど大臣からお話がありましたように全体につきまして実施の任に当りまする者に対しましては、詳細なる運用方針等が示されることになると思うのでありまするが、殊に第二十四條の運用につきましては当委員会においても非常に論議されましたので、この第二十四條の運用方針につきましては特に詳細なる通牒を発するように準備しつつあるところでありまして、それで先ほどもいろいろ論議が交わされたのでありまするが、この二十四條の第四号のハ、ニ、ホ、ヌ、ル、オ、ワ、カ、こういう行政上の判断のみで措置するような場合には特に公正且つ愼重を期しまして、入国審査官はこういう問題の扱いにつきましては、当分の間は個別的又は包括的指示に基いて決する。更に打ち碎いて言えば、入国内示をしましてその処置をさす、或いは運用について詳細なる方針を事前に指示しておく、こういうやり方で行きたいと思つているのであります。それから又声明ということにつきましては、これは日韓会談はそれまでに妥決されますればこれは詳細な声明を出すこともできると思うのでありまするが、会談の過程でありまする際には相手もありますることでありますから、例えば在留資格在留期間とか、こういう問題について一方的な声明を出すということもどうかと思うのでありまするが、併しこれは更に明日の小委員会等でも審議されるということであります。そこらともよく打合せまして、声明と言いまするか、又声明と行かんまでも何らかの方法によりまして、不安動揺を與えないような方策を講じたい、こういう考えでおります。
  175. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 今の御質疑に関連しましてこの際一言申上げておきたいと思いますのは、先刻岡崎国務大臣に対しまして御質疑がございました中に、政府として、この管理令が相当大きな問題を起しているにかかわらず、一向それは政府の真意を徹底させる方法を講じなかつたのではないかというような御質疑があつたわけでございますが、その点につきましては実は政府といたしましても手は打つているのでございます。その実効が挙つておらないということはございますが、例えば管理令が昨年の十一月一日から施行になりました。これが出ます前、十月の末でございますが、管理令を出すということで、そのときもすでに朝鮮人たちの中には強制退去反対或いは永住許可を求めるというような趣旨で何らかの動きがございましたので、それはこの管理令で以てそういうことを考えているわけではないのだ。平穏に生活をしておられる在留朝鮮台湾の人には決して心配は要らないのであるというような、言葉は違いますが、そういう趣旨のことをもう少し詳しく書きまして、実は外務省としまして発表いたしたのであります。ところが発表いたしましたけれども新聞のほうでそれを取上げてくれない。東京の新聞におきましては五大新聞は全部載せません。地方新聞で一部出たところがあつたのですが、NHKで七時の放送で一回その趣旨を述べました。それ以来我々といたしましては、我々のほうの出張所を通じまして、この管理令の趣旨はかくかくである、平穏に在来から居住している人には何ら不安を惹き起すべき法令ではない、人道的な扱い政府としては十分考えているのだという趣旨で、各出張所を通じまして我々の及ぶ限りはその趣旨を徹底しているわけであります。なお役所のほうにいろいろ陳情もございますが、陳情者に対しましては懇切丁寧に代表者に会いまして、その都度丁寧に答弁をしているのであります。最近におきましては大体永住許可を與えているということをこれは一般了解されたものと見えまして、最近においては永住許可を與えよという声はないのであります。最近のいろいろ陳情に来られますのは強制退去に対して反対、そのほかにやはりいろいろ破防法の反対とかその他の政治問題に関するスローガンもありますけれども、管理令に対しましては強制退去反対というのが主なわけであります。そういうような点等につきまして、陳情の面から見ましても、だんだん状態が変つて来ているので、我々はその都度趣旨を説明し、各府県に、我々のほうの各地にございます出張所、それを通じまして、この法案の趣旨は話してあるのでありまして、そのほうの陳情がある際にも懇切丁寧に話をするようにということでございますが、一番遺憾なのは新聞紙が取上げてくれないということであります。
  176. 團伊能

    ○團伊能君 只今長官からの御説明もございましたが、この問題は中国及び朝鮮に関するわけでありまして、これは今日だけの問題でなく、従来からいろいろ日本在留されている中国朝鮮諸君日本国内における生活問題はいろいろ歴史がございますので、この管理令自身が十分納得されれば決して非常に特別なものでない、大体において現在の形が保たれることがわかるでありましようけれども、従来から日本在留されていた朝鮮人等の日本政府の取扱等が相当いろいろな適当でなかつた点もありますので、この管理令というものが実際以上に神経的な問題になつて不安焦慮をいたしているのではないかと思います。只今実は非常な末梢の生活において、日本人との交渉におきましてももうすでにいろいろ困難を感じておられるかたもある。勿論特別な法律違反その他のことは別といたしまして、従来から日本におられて又平和に生業を営んでおるかたでも、この法律が出たことによつていろいろ周囲の日本人との間の取引関係その他のようなことにまで影響を及ぼしまして、例えば今日日本国内で平和的に生業を営むということは、当然いろいろな債権債務の関係がございますので、その際に若しもこういうものが出て永住権が得られないということになれば、その辺が又故障が起つて来ることもあり、そのために営業上資金その他の融通に非常に困る。或いは銀行などの態度が非常に変つて来る。或いは中国に関しましては亜東銀行などもございますけれども、それらも今日余り有力でございませんので、中岡華僑の諸君もその点非常な悩みを持つておる。要するに実際以上に非常な神経過敏になられているところがありますので、私は一日も早くこれを実際に徹底させられるということが、一つこの問題に対して政府のとられる方策として重大なことと思います。只今御説明によりますと、新聞が書かないというのは、少しそれだけではちよつと理由にならないと思いますが、無論政府としての発表というものは形式的になされておられると思う。又政府に向つて問合わせる者には懇切なる御説明もあるかと思うのでございますが、新聞のごとき報道機関は、ただ消極的に新聞記者が書いてくれるというのではなく、進んで相当費用を投じてもこれに発表して頂いて、そしてこれらの新聞を利用してこれで一つ早急に徒なる波乱を起しているところには徒な焦慮を来さないように手を打つて頂きたいと思います。これは実際問題といたしまして、所を変えまして中国人或いは朝鮮人の立場になつて、而も営業しておられるというかたには非常な痛切な問題がございますし、又これを利用していろいろなそういう営業には競争者もありますもので、いろいろ商売敵のようなものもありますから、その点からも非常に困難されていやしないかと思います。又送還などの問題につきまして、すでに私ちよつといない間にいろいろ御質問があつたかと思いますけれども、送還するという日本法律だけではこれは非常に不完全でありまして、勿論これは法律に書くべきものではないかと思いますが、その送還方法或いは送還先というようなものによつては、現下の事情といたしまして、これは朝鮮及び台湾に渡りまして、いろいろ行き先によつて非常な不当なる困難をされる場合が多いと思います。これらも一つ或いはよく事情がわかるように研究して頂き、或る場合には在留のそういう機関がありまして、主だつた人と相談されて、どういう方法でどういう地に送り返すかということについてはよく御説明頂きたいと思います。従来密入国その他は佐世保から霊山に送り返すということでは、なかなかいろいろ却つて非常な不安が多いことであります。殊に中国に関しましては、これはどこへ送り返すかということは非常な大きな問題だと思います。この点におきまして、今日もう少しでき得べくんば徹底さしてもらうというようになお御努力願いたいと思いますが、これは質問でありますが、同時に又要望いたしておきます。
  177. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 十分留意いたしまして、極力善処いたします。
  178. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は今の杉原委員質問は非常に重要で、私も実はその点で長くはありません、ほんの十分くらいの問題ですがね、大分時間もあれですから、御迷惑なら明日に廻しますが、関連質問さして頂いてよろしうございますか。それとも明日でもいいのです。まだほかにもありますから……。ただ連関しておるから今日特にその部分だけお許し願えれば……。
  179. 有馬英二

    委員長有馬英二君) よろしうございます。
  180. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 杉原委員が問題にされましたこの第四條は、これは非常に重要だと思うのですが、ただ杉原委員の問題にされるところとちよつと違つた点を問題にしてお尋ねしたいと思います。これは第四條は在留資格でずつと一から十六号まで書いてありますが、この中を観光客であるとか、本邦で貿易に従事するバイヤーだとか、いろいろ挙げてありますが、この中で、日本に長く住んで華僑で中国の中華料理をやるとか旅館をやられるとか、いわゆる中小企業ですが、長く日本に住んで、もう日本の生活で我々が、中華料理というものは殆んど日本人の市民の生活と切り離せないようになつておる。こういうような中小企業、中には大企業もございますが、そういうようなものが一号から十五号までにないように思いますが、如何でしようか。
  181. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) お尋ねのような点は、先ほど御説明申上げました通り、かなり第五号の事業という種類に入るものは入るけれども、規模も非常に小さいし、小さな料理店というような意味のものは恐らくこの中には入らないと存じます。併しながらその場合に、長年日本に住んでおる中国のかたとかそういう者はどうするかという問題でございますが、これは只今提出いたしております法律の第二條の第一項の第二号「昭和二十年九月二日以前から引き続き外国人として本邦に在留する者」、こういつた規定に基きまして、三月以内に管理令による申請をして、在留資格在留期間が與えられるわけであります。その場合にこういつた人たちはどういう申請をするかということでございますが、終戰前から長らくおられるかたは、恐らくは永住許可の申請をされるものと存じます。仮に永住許可の申請をされまして、永住許可された場合には、この十四号で資格がきまる。そこで十四号というのは、これは如何なる職業、如何なる何と申しますか、仕事、活動をしようと、それは自由である、かような意味でこの十四号による永住資格が得られれば、如何なる職業に従事しても差支えないわけであります。さように了承願いたいと思います。
  182. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 十六号でありませんか。なぜ細かくほかのものをあれして、日本国民生活にこれだけ深い根をおろしておる華僑の飲食業、旅館というような、日本人の生活と殆んど切り離せないようなものになつておるものを規定を拔いておられるのでしようか。十六ですか。
  183. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) お尋ねの十六号で参りますと、この者の在留期間は三年を超えることはできないということになります。そこでお尋ねのような長年日本に住んでおつて、生活も安定しておるとか、ほかに別に悪いこともしていない。こういつたような者で、永住資格を得たいということで申請される場合には、恐らく十四号で永住資格が與えられる場合が多いのじやないか、その場合にはお尋ねのような疑問は起きない。併しながらそういう申請をされましても、仮に素行が曾つてよくなかつたとか、生活の安定が得られてないとかいう人で、仮に十四号の永住資格が與えられない場合には十六号で、これは外務省令で新らしくそういつた者が在留できるような資格が十六号で與えられるべきものと、かように考えております。従つてお尋ねの点は十四号で大体賄えると思いますが、それから外れるものは十六号で資格がきめられなければいけない、かように考えております。
  184. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう解釈ならば、当然こういうものは一項入れられて然るべきものであるが、それはコンマ以下というふうに考えられたわけですね。挙げるに値いしないものと……。
  185. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) これはお考えが根本から違うわけでありまして、この管理令の根本的な建前は、先ず外国人日本に入つて来る場合、この場合にどういう活動をする者、どういう事業をする者を日本に入れて然るべきかどうかという判断をこの四條でいたしておるわけであります。そこで今後日本に入つて参ります外国人としては、只今お尋ねのような小さい商売をするとか、日本の労働力を圧迫するような人が入つて来るとか、そういう者はできるだけ日本国内事情として認めないようにするのが適当じやないか、そういう意味でこの一号から十五号までの、永住資格は別問題でございますが、そういつた者は特に在留資格として認めない。併しながらお尋ねのような長年すでに日本に入つて来ておつて長年日本在留しておる、こういつたような者は先ほど御説明しましたように十四号の永住資格で行くか、或いはここに書いてない、別個な十六号で新らしく在留の資格をきめて措置すべきものだと、かような方針でこの規定を置いておるわけでございます。
  186. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今の問題は朝鮮台湾関係について関連するのですが、それはあなたの説明にもかかる、ここに挙げてないのは、台湾の問題は、大陸系の問題は今すぐお尋ねしますが、朝鮮台湾の問題とすれば、これはどう考えても十六の程度で一括して扱つたものと考えなければ解釈が付かんじやありませんか。永住しようとすれば十六じやなくて十四だという解釈ですか、つまりそういう人ですよ。繰返しませんけれども、今言つた朝鮮台湾のかたで長く日本で飲食業その他を営んで来た人は保護されていないでしよう。この規定にないから……、強いて求めれば十六号しかないじやありませんか、きちんと一々規定しているんですもの……、その他ないものとすればどうしても十六になるわけでしよう。
  187. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) これは何かお考えを少し混同されておるのじやないかと思いますが、朝鮮人台湾人の場合は別個に、先ほど来いろいろ問題になつておりまする別個な法律永住資格とかそういうものはきめられる。そこで永住資格が與えられた場合には十四号による資格でどういう仕事をしようとこれは自由になる、在留期間もこれは無期限であると、かようになるわけであります。そうして先ほど来朝鮮人台湾人のかたには大体において永住資格認めるような気持でやつて行こう、こういうわけでありますから、大体原則的には十四号で朝鮮人台湾人のかたがたは賄える。そこで次のお尋ねと存じますが、中国人の場合は、これは朝鮮人台湾人のかたがたと違いまして、先ほど申上げましたようにこの法律案の第十九條の第一項、第二項で別な申請をして、そこで恐らく長年日本におられる中国のかたは、これはわかりませんが、個々の場合ですからわかりませんが、大体永住許可申請をされるのではないか、そうすると永住許可申請をされて、この管理令の規定によつて永住許可が許されれば十四号で、如何なる職業に従事しようとも自由になる、こういうことが一つと、仮にそういう申請をされましても、十四号による永住許可が得られなかつた場合、この場合に初めて十六号で入国管理庁としてはそういう人たちに対して、現在やつておる仕事に適合するような在留資格を十六号の省令できめてやる。かように考えておる次第でございぎいます。
  188. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 在留手続が実に煩瑣でこれは容易にできんということについては、今日は省略します。これは明日私はもつと時間をかけて機会を得て、如何にこの規定が煩瑣な手続で、不可能な手続を要求しておるかということは、私は明日の質問で明らかにしたいと思いますが、取りあえず今日は杉原委員質問に関連することだけに限定する意味で、十四條というものの極めて好意的な解釈といたしまして、そうして第二條第二項の大陸系のかたで、もうすでに日本人を妻としておる人も相当にあつて、長く従来住んでおられますが、この二條の二項によつて永住の既得権が剥奪されたと考えなければならんでしよう。新たにむずかしい……、これは明日に讓りますが、非常にむずかしい、殆んど不可能に近いような煩瑣な困難な手続をして永住認められるということになりますから、永住の既得権の剥奪になる。この四條及びそれと関連する二條の二項において永住権は剥奪されておるのだ、こういうふうに解釈せざるを得ないと思うが、それでいいわけですね。
  189. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 私といたしましては、終戰前から長らく日本に在住する大陸系の、まあ中国のかたがたでございますが、これは終戰前それでは如何なる法規の下に、如何なる條件で在留が許されておつたか、こういうことを御説明申上げざるを得ないのでありますが、これは御承知の通り終戰前は内務省令で以て何ら永住資格とか、そういう状態で今日まで許されて在留しておるのではなくて、御承知のように内務省令のいわゆる何と申しますか、滯邦許可日本に滯在することの許可ということで一年々々恐らく何らかの手続きをして来たかたがたであろうと思われるのであります。そこで今度管理令は新らしくいわゆる永住許可というような、新らしい、今まで日本にないような在留資格というものを作つたわけです。そこで初めてそういう過去において実績のある人は恐らくこの永住資格というものが実質上は適当になると、又御本人もこういつた永住許可というような制度ができれば、長らくおつたかたがたは当然そういう資格を要求されるだろう、そこでこの規定におきましては、そういうかたがたに対してこれはまあお話によれば手続が非常に煩瑣だとか言われますけれども、どういう点が煩瑣なのか、これは又別個の問題になりますが、そういう道をこの管理令で開いておるわけでございます。併しながら重ねて申上げますが、曾つて終戰前永住資格とかそういうものは何らなかつたということを一つお心におとめ願つて頂きたいと思います。
  190. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 お情深い吉田政府のお蔭で非常に救われるらしいのですが、あなたの言われる門は針の溝のように細いのです。これは明日に讓つて、もう一つやはり杉原委員が疑問にされた非常に重要な点ですから、関連しておりますから今日お尋ねして置きます。  それは平和條約第二條に関連して朝鮮の独立の問題と台湾、澎湖諸島に対する権利を失うという関係から、この第二條の第六項ですか、六項で、朝鮮国籍の離脱喪失の問題なんですが、私の手許のイタリアの平和條約、これに比べますと、正に杉原委員質問極めて重要な問題を含んでおるのです。申すまでもなくイタリアの平和條約は、幸福にも全面講和であるために、日本の不幸な單独講和とは根本的に違つておるとは言え、併しながら国連憲章を口にしたり、世界人権憲章を口にする以上は、このイタリアの平和條約の、この国籍の問題が、如何に愼重に取扱われておるかということを指摘して、私はこの杉原委員質疑との関連において問題を明らかにしておく必要があるのですか、このイタリアの平和條約二十條によりますと、十九條と二十條という形になつておりまして、十九條のほうは、従来イタリアに属していた地域の讓渡を受けた、例えば朝鮮とか台湾の中に住んでおる人たちに対して周到な、実にその人たちの権利を保障するところの條項を、読上げませんけれども、実に周到な條項があり、そうしてその右地域内にある一切の人種、性、言語又は宗教等の差別なく、政治的意見、宗教的見解の差を全然この差別をつけないというようなことが極めて明確に規定してありますが、この二十條に参りますと、丁度今問題になつておるようなのに当ります。例えばユーゴースラヴイアの人たち、つまり言葉がユーゴースラヴイアのセルヴ語であるとかスロヴエーヌ語であるというような、人として従来イタリアの市民であつた者がどうなるかということに対して、ここは読上げますが、「イタリア国領域に居住している者は、イタリア国に在る、ユーゴースラヴイア国の外交代表又は領事代表に申請し、ユーゴースラヴイア官憲がその申請を受理するときは、ユーゴースラヴイア国の国籍を取得することができる。」それから「右の場合においては、」と、ずつとそれらの手続その他が詳細に規定してありますように、明らかに従来イタリアの従属国或いは植民地であつた、敵の立場にあつた人たちの、ユーゴースラヴイアの人たち、半植民地的な形に置かれた人たちが、自分国籍を如何に選ぶべきかということにつきましては、完全な自主的な立場を與えて、自分の祖国のユーゴースラヴイアに立帰りたい人たちだけがその申請をするというように、明確な規定になつておるし、日本のこの單独講和によるこの規定は、実に法理的にいつても、又條理を盡した意味の、民族的な、他民族の取扱いという点においても私は非常に乱暴なものを含んでおると思うのですが、どなたでもいいのですが、一体このイタリアの平和條約、全面講和によるイタリアの平和條約の周到な民族的な、従属国、植民地関係の清算という点を含んでおるのに対してあなたがたが提案しておられるこの法律案は余りにもそういう点を無視しておると考えなければならんのですが、私は法理的のみでなくて、そういう吉田内閣の外交政策として、こういう乱暴な法律をしておられることは、非常に私は遺憾だと考えるのですが、これに対して一つ明快な御回答を頂きたいと思います。
  191. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) どうも明快に行くかどうかわかりませんけれども朝鮮は御承知のことく今回の戦争の後におきまして独立を非常に希望されたところであります。又台湾、澎湖島につきましては、中国へその返還といいまするか、帰属をこれ又要求というか、要望されたところであります。そこで今回の平和條約におきましては、先ほど私が申上げましたように、この朝鮮に対する日本の権原をここに放棄いたしまして、朝鮮の独立ということが行われるようになつた。その事実に基きまして、もとありました朝鮮という国がここに再現と言いますか、再びでき上るわけでありまして、そこで合併以前からこの朝鮮国籍を持つていた人、又それらの人を父祖としておりました人々国籍につきましては、これは当然朝鮮人国籍を回復するものであるという解釈の下に、この平和條約を解して来ているのでありまして、そこであとのいろいろな問題につきましては、日韓のいろいろな取極によりましてそれらが確認され、又諸般の問題がそこで解決されて行く。日華の台湾、澎湖島との関係につきましてもこれと同じような考え方を以ちまして処理される、こういう考えで進んで来ているのでありまして、我々といたしましては別に今回のこの平和條約の取扱いにおきまして非常に不親切であるとか不都合であるとか、そういう点は考えていないのであります。ただ字句の問題につきまして、杉原委員から先ほど離脱いう字についていろいろの御指摘があつたのでありますが、これはなお法制意見局の意見も承わりまして明日ここで政府委員のほうから答えたいと思うのでありまするが、併し私はこの第二條第六項を一息に読めばです、「日本国との平和條約の規定に基き同條約の最初の効力発生の日において日本国籍を離脱する者で、」と、一息に読みますと、先ほどから平和條約の解釈をそういうふうにとつて来ておりますので、必ずしもこの字句の表現でどうこうということもないと思うのでありますが、併しこれはまあ法制上の字句のことでありまするので、更に專門家のほうから明日又意見を申上げると、こういうことにいたしておきたいと思います。
  192. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 杉原委員と私とは所属する政党も異つているし、考え方も一切異つておりますが、併し指摘されたポイントそのものは明らかに平和條約の第二條から突如としてこのあなた方の提供しておられますこの法案の第二條第六項へ飛躍して、一方において朝鮮には独立を許し、台湾、澎湖島に対する権利を放棄するという問題から直ちに突如としてその中間のものがなくて、何らの国際的な取極なく、何ら国際法の根拠もなく、国内的な憲法関係も十分でなくて、突如として「日本国籍を離脱する」、而も「離脱する」というウイルという意思を含んだかのごとき文句を使つているに対しては、これに対する十分な説明が要ると、こういうふうに杉原委員の関連において私が新たに問題を提起するとすれば、そういうふうに問題を提起したくなる、しておるわけなんです。而も私はイタリアの場合は、イタリア国家の従来支配を受けておつた独立した国々においてのあらゆる市民の親、子供、許婚者、既婚者、一切の問題を含んで約一頁、細かな活字において一頁が十九條になつている。二十條で然らばイタリア本国に、従来隷属国と考えられる国々にいた人たちで、その国に残りたい人と、本国の国籍で本国に帰還したい人たちに対する、本人は無論、妻、子供、財産あらゆる問題について詳細な規定をしているのです。これは一つ研究つて、又明日にでもよくあなたがたが礼讃される平和條約と如何にこのイタリアの全面講和による條約が一つの異民族、他の民族、善隣友好などと口の先だけであなたがたは言われるが、そういう人たちに対する取扱いが如何に違つているかという点、これと関連さして、私は今余りにもあなたがたの出しておられる法律は独断的であつて、善隣友好の精神に違反しておるじやないか、こういうことを質しておるわけです。
  193. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) イタリアの條約をいろいろ引用されましたですが、これはまあ非常に広範囲な條約になつておるようでありまして、一つ今回の平和條約は基本的なところを簡素にまとめよう、こういう考え方で、こうなつておるのでありまして、詳細なる点はそれぞれ独立する国或いは領土を離脱する相手の国との間で取極めたらばいいじやないか、こういう考え方から出発しておるようでありまして決して今までおりました曾つての同胞でありました、新らたに外国人となる人々取扱いを不親切にやろう、不都合にやろうと、そういう考え方でできておるものではないということをもう一度ここで申上げて置きたいと思います。
  194. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もうこれでやめます。抽象的に不親切じやないなどと言わずに、もう一遍ことごとく、あなたはたくさん部下を持つておられるのですから、このイタリアの講和條約における十九條、二十條、国籍、主権及び政治的権利にも、これらにつきましてよく御調査になつて、明日でいいから如何に日本が今我々が受取つておる平和條約並びにそれを基礎とするあなたがたの提案しておる條約と如何に大きな差があり、その差がどういう根拠に基いてこういうことが法律的に及び外交的方針として許されるか、一つ明日の適当な機会にもう一遍御研究つて答弁願いたいと思います。これで関連の質問は終りたいと思います。
  195. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ほかに御質問ございませんか。御質疑がないようでありまするから、本日はこれを以て散会いたします。    午後五時五十二分散会