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平林太一君
ちよつと申上げて置きたいと思いますが、今伊關
局長から詳しく承わ
つたのでありますが、講和になると、
先方は、
日本側が願いを聞いてくれないだろうというようなことで、なかなか嚴しく出ておられるというお話でありました。講和後になるとあれだから、この際や
つて置かなければならんということで、そういう意識的に
米国側が出ておるということは、これは非常に私からいたしますれば、日米
協定によります今後の講和後の措置というようなものに非常に何か暗い気持を持たざるを得ないことになると思います。御承知の
通り、
行政協定による一切の取極、日米合同
委員会において規定される事柄というものは、実に将来の我が国の運命はここにかか
つておると申して過言でないのであります。内容を静かに、而も深夜ひそかに考えれば、慄然として膚に粟を生ずるような事態である。何者も発言を許さないのであります。そうきめられたことは、そのまま無
條件でこれは取極められるのでありまして、誰も発言をよそから挿むことはできないのであります。でありますから、それに対して
先方が、すでに講和後においては聞き入れられないであろうというようなことで進められておるということでは、それに対して根本におきまして、その心をほぐさなければ私はいかんと思います。これをお進めになるに当りまして。
日本経済を破壊しないということを前提として、金科玉條としてこの
行政協定の方向が進められておるはずである。そうしてこの日米合同
委員会はこの線だけは嚴守して、そうして取結ばれて行くべきものであり、又そういうことに対して我々は国会において了承いたしたのであります。それでありますから、このことは、我がほうが
米国に対しましても満腔の敬意を払い、又それに
協力して行くことを、日米両国彼我の将来の世界平和のために
処置せられるということを考えなければなりません。どうか諸君も、いやしくも疑心暗鬼を持たずに、いわゆる穏かな態度で、無私な態度で、そうしてこれに臨まれるように御配慮を願いたい。
只今伊關君からお話を承わ
つておりますと、予備作業班は主として私がや
つておるということであります。私もそういうことを承知いたしておりますから、伊關君に対する期待は誠に甚大であります。従いまして、世間の專ら奪いたしておりますところによりますと、合同
委員会の唯一の
日本側の代表は伊關君であるというような風評をいたしております。そうでありますから、私はそういうふうに特に考えるのであります。而も條約によりましてそれはどうであつたかと……私といたしますれば甚だ遺憾でありましたが、合同
委員会は日米各一人ずつというのであります。代理者を二、三名お作りになるということだが、併し数は米一、
日本一であります。それで日米合同
委員会というのでありますから、私のような田舎に育つた凡庸な人間にはこの
委員会というものの
性格が納得できない。一人々々というものであるとするならばそれはどうも会議じやない。こういうふうに大勢出ておればこれは会議です。一名々々というので合同
委員会というのでありますから……、私は十人なり、二十人なり、初めのうちは
日本側が十人、
米国側が十人、こういうふうに常識的に
日本国民の大多数が考えてお
つたのであります。ところが條約によ
つて、これが一人々々ということに
なつた。そうして今度はそれが日米お互いに一対一ということに組んでありますから、そうするとそれは会議ではない。対決であります。要するに対決ということになるから、先刻私が申上げたようなエチケツトでは困る。これはどこまでも
日本再建のために明治時代の蹇々録、ああいう
一つ書物を勉強してもらいたい。
外務省の諸君、殊に伊關君がこの衝に当られるのでありますから、いろいろそういうふうに日米合同
委員会の
日本側の
委員になりますれば……それだからその点は非常に私といたしましてはただ至誠国を憂うる以外にない。それですから、そういうことは過ぎたる考えかも知れませんが、そういうふうにして、いやしくもこれが昔の言葉で申しますれば、いわゆる「朝に一城を失い、夕に一壘を奪わる」というようなことでは合同
委員会は困るのであります。これも
先方が困るということを言
つておるらしいから、これは言うんであります。対決となりますれば、これはどうしてもただ議論ではいけない。至誠で以てこのことの何がきまるのでありますから、どうか
一つ私は、今日伊關君が合同
委員会の
委員になるんだということを仮定して申上げるので、そうなれば伊關君という人が
日本国民の安危興亡を双肩に担
つて、この
委員会に臨まれるわけであります。実は私自身は今日初めて伊關君の風貌に接したわけであります。それで今日までの私の感覚からいたしますと、伊關君という人は実に鬼武者のような人である、これはどえらい弁慶のような何十人力というようなものを持
つておると多大の期待を持
つておつた。ところが、やはり外交官であるから会
つてみますれば、この速記録にとどめてもよろしいのでありまするが、これは非常に紅顔の美青年である。(笑声)鬼ではない。紅顔の美青年にこの重大なことをや
つてもらうのでありますから、これは十分に、明治維新において我が多数の志士先覚が本当に心から国を俺が救うのだという気持でおやりに
なつた、その気持を
一つ範いたしてこれに臨まれたい。外交のことなどはそんなものじやないとおつしやるかも知れんが我々から見ればそれを憂れざるを得ない。きま
つてしまえばあとは何ともいたすことができない。而も非常に複雑微妙な何がこれに潜んでおるのでありますから、どうかその点を深く……これは今日咄嗟にあなたに申上げるのではないんで、岡崎君にも先日私は、これは速記をお調べになればわかりますが、日米合同
委員会の
委員というのは
日本が一人、これは余ほどその人物を、間違いのない、後で悔を残さないような人物を選ぶべし、これは岡崎君はお誓い申上げますと、こう言つたんですが、その間違いのない、その当該の人物があなただ、こういう経緯なんです。私はどうか
一つその点に対しまして、私非常に、これは何かこうもつときつい風貌で話せばいいのでありましようが、私も伊關君と同じようにきつい風貌で話せないんです。その点を
一つ御推察願いたい。そういうわけで、こういうことに対しまするあなたの決意というものを一応これは速記録に留めべきだ。
一つ御
答弁を願いたい。これは
委員長に申上げますが、この講和
発効前に、
吉田外務大臣がこの席に来ていないということは私は甚だ当を得ざるものだ。これは
外務省には、どういうわけでありますか、外務大臣と国務大臣と二人いるのであります。ところが国務大臣では、先ず岡崎君はやはり私もその人物だと思
つてみたが、やはり国務大臣は国務大臣だけしかない。この国家の重大な際に、外務大臣としての
吉田茂君がここに出て、我々の、いわゆる国民を代表する、主権の最高の機関であるこの
場所に出て、そうして今日までの経過というものを、
吉田茂自身が切々として訴えべきである。それを代理の人物をよこして、そうしてこれに出ないということはこれは怪しからん。それは
日本のこの歴史を画すべきこの際におきまして、
吉田という人がどういう人物でありますか、それは
相当高く評価してありますが、
日本の八千万の国民に比較いたしますれば八千万分の一にしか過ぎない。何を思
つてそのような大きな態度を以て、この
委員会、国会に対して出ることを成るべく拒否しているということは、これは
吉田君自体のために取らざるものである。若しこういうことがつのればこの態度は僧道鏡であると言わざるを得ない。和気の何のときの蘇我入鹿、そうなることを私は非常に憂える。これは
吉田君は自由党でありますからこういう公開の席で
吉田君のために言うのであります。これはを以て万事を考えなければならんのでありますから、これはどうしても講和
発効前に、二十八日前に、
委員長は職権を以て
吉田外務大臣のここに御出席を要求するように、若しそういう要求が仮に私一人でありましてもこれを通達願いたい。来たるべき
委員会には、講和
発効前において一切のこの重要な事柄に対して総理の説明を求めたいことがありますので、本日はそれを私は要求しておきます。併しその場合、
委員長の権限で、そういう要求によ
つて何か品位が下るようであ
つてはいけませんから、その場合は
委員長御自身の立場で然るべく
一つ御自由にそういう要求をされまして、そうして講和
発効前において十分なる検討を加えたいということをこの際
要望いたすのでありますが、そこで例えば伊關国際
協力局長の、先ほど申上げました御所懐をこの際
一つ十分に承わ
つておきたい。この御所懐は会議録に載りますから、我が国の外交を画すべき万古不滅のものになりますから、十分に
一つ真劍な御態度で御披瀝になられんことをお願い申上げます。