○兼
岩傳一君 僕は先ほどの質疑を続けて行きたいと思いますが、
大臣が誠意のある答弁をされれば極めて簡單だと思いますが、私が簡單にやると、よく読めばわかるという……、そうすると私が細かにやらなければならんことに
なつてしまうのでありますが、できるだけ簡單にやることにいたしましよう。私は西ドイツとそれから朝鮮へ
大使を派遣するということは、これはヨーロツパにおいてはまさにドイツ統一の問題が政治の中心で、戰争か平和かの問題の大きな鍵に
なつておるし、又アジアにおいては朝鮮の南北の統一の問題が今進行中の停戰協定と並んでアジアにおいて戰争の発火点になるかならんかという状態にあるので、私はこの点を質すことなしにはこういつた一連の
法律を
審議することはできないというような重要な問題だと思うので、私はその点をできるだけ問い質すのであります。即ち西ドイツの問題とこんがらかると徒らに長くなりますので、朝鮮だけを取上げますが、朝鮮のこの二つの
政府の相対立するというこの不幸な過程はこの世界の外交的な歴史について見れば、この一九四五年十二月のモスクワ会議の前提といたしましては、ポツダム協定、このポツダム協定によつて
日本の戰後の処理、植民地としての朝鮮を含むこの戰後処理の原則がこのポツダム協定できまり、そうしてその協定は今後四大国が拒否権を以て四大国が満場一致の形で進めて行くということがきまり、これに基いて一九四五年十二月のモスクワ会議が行われ、ここでモスクワ協定ができ、英、米、中、ソの四大国によつてモスクワ協定ができましたが、その決定は朝鮮は
向う五カ
年間四大国の信託統治にする、それに基いて臨時統一
政府を作るという決定をしておる。ところが
アメリカはこの決定に違反して信託統治に反対しておるところの李承晩を臨時中央
政府に加えることを要求したために、ソ連がこれを四大国方式によつて拒否した。そこで南北分裂の不幸な事態がこれに端を発して今日に至り、且つ干才を交える状態に
なつて来ておる。ところが
アメリカは自己の提唱によつて一九四八年に国連における小総会という、小さな総会、これは私どもの理解するところによれば明らかに合法性において欠けるところのあるこの小総会で、国連の監視下に南北統一選挙が行われることを多数決で押切つた。ところがこの国連憲章は百七條によれば、私が当初申上げましたように、この国連憲章は第二次大戰中にこの憲章の署名国の敵であつた日、独、伊、スペインというような国に関する行動であつて、それについて責任を有する
政府即ち加盟国の
政府、その加盟国において最も中心的な地位を占めておりますところのこの英、米、中、ソこの四大国が戰争の結果としてとり又はそれに
関連して許可したるもの、例えば今私が申上げておるポツダム協定、モスクワ協定というようなものを無効とし又は排除するものではないと明確にきめております。この百七條は單にこの條文に私は拘泥するわけじやなくして、この百七條というものは、国連憲章全体の中心的な重要
條項でありますので、特に私が百七條をここで挙げておるのでありますが、この国連憲章百七條で朝鮮問題に国連が
関連するということはできないということを、先にはポツダム協定、後にはモスクワ協定によつてきめておる。それは国連小総会などという合法性の極めて疑問な小さな総会というものを開いて、そうしてこれを数で以て押し切つて、四大国方式の原則を破つておる。従つてソヴイエトが拓否権を発動してこれは承認できない。そうして
アメリカはその後この基礎決定に力を入れて南だけで選挙を強行したというような不幸な歴史が今日に至つて解決していない。従つて先ほど
大臣が国連憲章を論ずるということは、今後の外交の根本方式だといわれるならば、明らかに朝鮮及び同様の
理由によつて西ドイツへ
大使を派遣し、これに
俸給を支払うというような
法律は出せる筋ではないのじやないか、こういうふうの私は質問をし、このために百七條の嚴密なる解釈を当方から申上げて且つこれに対する解釈を聞いてこの質疑の論点を明らかにしよう思つたら、読めば字のごとくだ、こういうふうな答弁がありましたので、私はそのような下誠意な答弁に対しては断乎として屈服できないというような意味で、私は
公務員論争にまで進んで
行つたのでありますが、そういうことを私は好むものではないので、私はそれよりも今縷々申しましたこの外交の歴史において国連憲章百七條に明らかに偉反しておるのではないか、
日本の外交的態度は明らかに百七條の精神に違反する、精神どころじやない、百七條そのものに真向から違反するのじやないかということは事実だ、歴史的事実と、この章の
法律的
内容を
説明したのでありますから、岡崎
大臣は
一つ僕らのような駈け出しの人とは違つて、古くからの外交の專門家であるかたでありますから、十分我々が納得できるだけの條理を尽した私は
一つ御回答が得たいのであります。