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1952-04-03 第13回国会 参議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月三日(木曜日)    午後三時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            徳川 頼貞君    委員            杉原 荒太君            平林 太一君            伊達源一郎君            中山 福藏君            加藤シヅエ君            大隈 信幸君            兼岩 傳一君   政府委員    外務政務次官  石原幹市郎君    外務大臣官房長 大江  晃君    外務事務官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君   事務局側    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○在外公館名称及び位置を定める法  律案内閣送付) ○議員派遣要求の件   —————————————
  2. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 只今から外務委員会開会いたします。  先ず在外公館名称及び位置を定める法律案を議題といたします。政府提案理由説明を求めます。
  3. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 在外公館名称及び位置を定める法律案提案理由及びその内容を御説明いたします。  すでに御承知通り日本国との平和條約は極めて最近の機会効力を発生いたす見込でありますので、日本政府といたしましては、速かに在外公館を諸外国設置する必要を痛感いたし、平和関係の回復いたします見込のある諸外国と種々折衝を重ねて参りました結果、昭和二十七年度において設置を予定し得る在外公館についてのおよその見通しをつけることができましたので、ここに、外務省設置法第二十四條第一項の規定によりまして、在外公館名称及び位置を定める法律案を提出することといたしたのであります。  この法律案は、在外公館名称及び位置を表にして規定しておりますほか、特別の條文規定はございません。ここに述べられました在外公館は、先ほど申し上げました通り昭和二十七年度におきまして大体において設置する見込があると考えられるものに限つておりますが、ここに掲げられないものでも、相手国との話合がついたものにつきましては、国会開会中であれば法律により、国会閉会中又は特に緊急を要する場合であれば政令により、いつでも増置することができるのであります。このことは外務省設置法第二十四條第二項に規定している通りであります。  そこで、この表に掲げられてあります在外公館についてでありますが、大使館が二十一、公使館が十八、総領事館が十一、領事館が六、掲げてありますが、いずれもその配列は、米洲アジア欧洲の順序によりそれぞれ北から南へその場所に従つて定めております。なお、ここに注意して頂かなければならないことは、これらの総計五十六に上る在外公館が、平和條約の発効と同時に直ちに設置されるものではなく、その設置される国とわが国との間に平和関係が回復いたし、在外公館を相互に設置することについて明瞭な話合がついたものについてのみ事実上設置されて行くという点であります。更に、もう一点は、これらの在外公館の長は、必ずしも各館に一人ずつ置かれるものではなく、隣接国在外公館長に兼任されるものもあり、更に事情によつては、全然館員すらも派遣せず、法制上のみ設置して館長以下館員隣接国館長館員に兼任させるものもあり得るということであります。  この法律案の附則におきましては、その第一項におきまして、この法律日本国との平和條約の最初効力発生の日から施行される旨を定めておりますが、但書に規定しておりますように、最初効力発生の日に同條約を批准していない国、あるいは同條約の署名国でない国につきましては、別に政令で定める日からその国に置かれる在外公館設置を具体化するようにしております。従いまして日本国との平和條約の最初効力発生の日においては、そのときに同條約を批准している国々に置かれる在外公館のみが取りあえず設置され、その他の国につきましては政令随時効力を生じさせて行く仕組となつております。  以上が、在外公館名称及び位置を定める法律案提案理由及びその内容説明であります。何とぞ愼重御審議上速かに御採択あらんことをお願いいたします。
  4. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 御質疑がございましたらお願いいたします。
  5. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと私は委員長、或いはこの委員会政府でなくて……委員長にお尋ねしましよう。これは先般問題になりました外務公務員法を初め、それから午前から午後にずつと本日問題になつておりました出入国管理令の問題、それから只今上程になつておるこの在外公館名称及び位置を定める法律案、まだこれから続いて出て参りましようが、一体どういうふうな外務関係の一連の法律は、今非常に重大な局面、即ち日本サンフランシスコ條約によつて、いわゆる独立を得て、そうしてこの切替えられようとしておる、こういう際に、我々外務委員に対してこういう法律が次々出て来る以上は、私は吉田外務大臣が出て少くも方針を述べられるのが私は正しいと考えておるのであります。例えば午前中の問題にいたしましても、日タイ條約及び日韓條約の問題、それから朝鮮の停戰協定等見通しアジアに対する政策等々そういう問題を明らかにしないと、ああいう法律案審議に入れないはずであります。そこで私はこの在外公館とこの外務公務員法とはこれは不可分の関連にありますので、この外務公務員法のときに、明日は吉田外務大臣、少くも岡崎国務大臣お出で願つて外交の本義を十分質したい、質した上でこれに対する我々の態度を明らかにしたいということを申上げましたところ、翌日大臣も来られないのに、外務公務員法がさつと上げられてしまつて、恐らく私は定足数も欠けておつたと思いますが、そういうようなことをされたということは、非常に私遺憾に感ずるのでありますが、これとの関連でどうしてああいうようなふうに大臣説明もなくてやつてしまわれたか、これは、委員長にもお尋ねしたいし、又政務次官にもお尋ねしたい点であります。両方にお尋ねいたします。委員会運営立場からは委員長からお答えが願いたいし、それから次官としてはあなたの補佐しておられる吉田外務大臣又はそれに代つて少くも岡崎大臣を先般出されるように大体了解されたものと思う。ところが、その翌日の午前に突如外務委員会を開いて外務公務員法をさつと上げてしまわれたということ、この点を明らかにして頂きたいと思うのです。
  6. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 私のほうから先にちよつとお答えしておきたいと思います。兼岩委員からそういう御要望がございましたので、岡崎国務大臣にもその旨を伝えまして、実はあなたの御要望のあつた翌日でありましたか、岡崎大臣は一日実は待機しておつたのであります。ところがその目たしか兼岩さんお見えにならなかつたのかどうか、その日はそれで済んでしまいまして、それから最後の目でございまするが、これは四月一日から施行ということになつておりまして、どうしてもそれまでに法文を法制化しておきたい、こういう気持からたしか最後の日にも兼岩さん休んでおられたのじやないかと思う。そういう関係でついちぐはぐになりまして御希望に副い得なかりたのでありますが、これは私としても遺憾に存じておりまするが、兼岩委員のほうでもまあ御要求になりました日にこちらへお出でにならなかつたというようなこともございまして、ちぐはぐになつてしまつて残念に思つております。それからこのいろいろの法案審議いたしまする際に、まあいろいろ問題をだんだん洗つて参りまして、いわゆるどうしても政府最高方針として聞かねばならん問題等につきましては、我々といたしましても大臣に是非出て来てもらいまして、岡崎大臣も是非出て来てもらいまして、いろいろ御説明なり答弁を願いたい、こういうふうなつもりで私は大臣を補佐しておる次第でございます。
  7. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 政務次官の連日のその御健闘は私は無視するものではありませんが、あなたの答弁は、町の占者答弁に非常に似ておるのであります。町の占者は、過去のことをなかなかよく当てますが、将来のことは当てないのが特徴なんであります。私がいないときは二回に亘つていなかつた。これは私は全議員のうち最も出席率のいい一人で、多分十人のうちの一人に入るだろうと思います。たまたま私がいないときに限つて岡崎大臣が非常に出席がよかつたというふうの御説明で、掌を指すごとく過去のことをよく当てられますので、私はこの機会に例えば現在こういうものを……、私はあえて定員の問題でいじめるというような小さな姑息なことをしようと思つて申上げるのでございませんが、少くもそれほどの御誠意岡崎大臣にあつたならば、出入国管理令のような重要な民族的な将来に大きくアジアにおける日本の地位に対して現在我々が考えているほどでなくてもつと大きな影響を及ぼす点で、今日或いは昨日、或いはこれをこういうような形で強行しようとするのなら、私はもう少し誠意ある態度を……。本来は私は吉田外務大臣が出るべきで、ああいう態度をとつておられることは非常に私は遺憾と考えるのでありますが、然らばお尋ねいたしますが、私が出る日は不思議と岡崎大臣の御都合が惡く、私が出ない日は不思議と岡崎大臣が一日中待機して下さるというようなふうで、非常に困りますから、今後将来の点について明快な態度をこの機会に明らかにして頂きたい。この法案のみならず、出入国管理令その他についても外務大臣岡崎国務大臣との出席について責任のあるあなたの方策をお述べ願つて頂きたいと思います。
  8. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 委員から御要求がありましたならば、これは委員長のほうから当然通ぜられるはずでありまするし、それから我々といたしましても御要求のありまする際は、これはもう十分伝えまして、万止むを得ざる支障がある場合は、いたし方ございませんが、法案審議に最も大切なことでありますから、できるだけこちらへ来て頂くように我々も取計らつておる次第であります。ただ外務大臣は総理を兼ねておられますので、これはなかなかいろいろ委員会に出まして一日中説明しておるということは、実際問題として容易ならざることであり、或いは実行しにくいことではないかと思います。岡崎大臣につきましては、御要求があります際は十分取次ぐ所存でございます。
  9. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私の記憶するところでは、これと今上程されているのと不可分の関係にあります外務公務員法についての問題にも岡崎大臣は一回も出ていない。然りとすればあのとき都合が惡かつたなら、この形で私ものに拘泥するわけではないが、どうせ多数で強行される以上は、我々が反対しても通る。併し問題を明らかにして議事録に載せて国民に明らかにしておきたいと我々は考える。少くも今日くらいはこういうようなやり方をされるなら出て来られる、私はそれくらいの誠意が少くも岡崎大臣にあつて然るべきであると考えますが、如何ですか。
  10. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 外務公務員法のときは、これは兼岩委員からも要求がございましたので、これは先ほど申上げましたように十分一日中待機をしてもらつたり、いろいろしたのでありますが、残念ながらちぐはぐになりまして、先ほど申上げましたようにこれは私がここで詭弁を弄して申上げているのでもなんでもなく全くの事実でございます。結果においては誠に残念なことになつたのであります。
  11. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それでは譲歩しましてそれでは明日は如何です、これもお聞きにならなければわからないのですね。明日の連合委員会あたりには少くとも私は岡崎大臣が出られて、あなたは請求しなければできない。そういうふうにおつしやいますが、大政務次官がおられますから非常に恐縮ですが、重要な外務公務員法、或いは出入国管理令、私はこの法律案で出られるようにというわけではありませんが、外務公務員法あたりには当然外務大臣代理としての大臣が出られて少くとも基本的な点を説明すべきである。それから今日、昨日問題になつたああいう重大な法律案につきましては、当然私  一委員がお願いするとかしないとかいうことでなく、当然進んで出られるのが少くも岡崎国務大臣として当然なことと考えますが、そういう考えがないのですか。
  12. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 御尤もなお話と思います。そこで御案内のように今日の問題ではございませんが、委員会なり、本会議なり、外務委員会なり、予算委員会なりいろいろの委員会衆議院参議院同時にいろいろ行われておるのでありまして、我々皆手分けをいたしまして衆議院に出たり参議院に出ておることもある。それから同時に一つ法案審議して行きます際に、問題をしぼると言えば、ちよつと語弊がありますが、だんだん論議しておりますうちに問題の最重点、ポイントが何カ所かこれはどの法案にも出て来ると思います。むしろそういうときは大臣に来て頂きまして、その問題を重点的にそこを十分御論議頂いてやるほうが、両院のあらゆる委員会をかけ持ち、それから渉外事務もございますので、そういうことから考えまして、そういうふうにして行くことが、すべての議事運営の上において一番いいのではないか。こういう気持大臣に連絡し、大臣を補佐して行きたい、こういうふうに思つております。明日出て来い、明後日出て来いという御要求がございますれば、当然委員長の権限で出席要求ができるのでありますから、当然やらねばならんことと思います。
  13. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それではこの審議に入ると思いますので私はこの発言を以て終ります。私は先ず根本的な態度外務大臣なり、代理国務大臣がされてから、細かな調査に入るという方法のほうがいいと思いますが、一歩讓つて次官の言われるようなやり方をするならば、今後重要な法案については、問題点次官その他の関係政府委員を通してずつと明らかになつた点を明確にすることなくして、その法律がたまたまちよつと欠席した理由の下にそれが上るということはないように理解いたしますので、只今次官説明もそういうふうに了承いたしますので、そういう点を破らないように次官に守つて頂きたいと何時に、一つこれはあとでよろしいですが、成規の手続によつて明日は岡崎大臣に是非出て来られるように一つ委員長からお諮り願いたいということをお願いいたしまして私の発言を一応終ります。
  14. 中山福藏

    中山福藏君 私これをお尋ねする前に、これは兼岩さんの尻馬に乘るという意味でなく、こちらから言われんでも、一つできるだけ重要な法案があるときには、大臣がお出ましになるほうがいいじやないか。そうしないと参議院のこの委員会を軽視するというような感じ委員各位が持たれたのでは非常に私は議事運営上よくない、こう考えまして特に私からもお願いいたしておきます。  そこで本論に入るのですが、ヴイエトナムカンボデイアラオスの同じ地域仏領印度支那地域三つ公使館を置かれるようですが、そういうことはどんなものでしよう。一つでいいじやないでしようか。
  15. 大江晃

    政府委員大江晃君) 三つのところに公使館を置くようになつておりますが、実際に公使を派遣いたしますところはヴイエトナム一国ということになるわけです。
  16. 中山福藏

    中山福藏君 これはヴイエトナム一カ所で、むしろほかのほうには総領事館領事館ぐらいでいいのではないでしようか。
  17. 大江晃

    政府委員大江晃君) このラオスカンボデイアも、フランス連合のうちで一応の独立の国家としての形をとつておりますので、やはり総領事館よりは公使館という形にしたほうが適当ではないか、こういうふうに考えます。
  18. 中山福藏

    中山福藏君 これは或る意味においては同一国だと見て差支えないと私は考えておりますから、若し将来別個に各独立した公使を派遣するということになりますと、経費その他の点について非常に私どもとして迷惑しなければならんと考えておるものですから、将来のことを慮かつて一応そのことをお尋ねしておくのであります。  第二点ですが、私は公使館設置大使館設置というものは、やはり国際関係動きを先ず見る必要があるのではないかと思うのです。今日アラビア民族を第三勢力としてリードしなければならんといつてスペインのフランコがこれに着目しておるという話でありますが、殊にチユニジアの独立とか、リビアの独立とかいう問題に対してダゲスタン系ソ連人独立工作というものは非常に大きく動いておるという話を聞くのです。而もこういう動き中心はどこかといいますと、エジプトなんです。エジプトが東西に分れて、アラビア系の第三勢力、いわゆるアラビア・ブロツクというものを形成してここに米ソの間にこれが楔として入り込もうとしておる、その一番の中心点というものは、やはりエジプトだと私は見ておる。だからこういう問題は将来を見越して、公使館を置くよりも大使館を置くのがいいのではないかと考えますが如何なものでしようか。
  19. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは先ほど私が提案のときに御説明申上げましたように、大体相手国話合いまして、相手国大使交換をしたい、而も又はかの諸国も大体そこは大使交換する形をとつておるというようなところを大使館にし、又公使で行きたい、ほかとの関係公使のところが多いというようなところは公使というふうにしておるのでございまして、相手方との話合いを大体の基準にしてやつておるのでありまして、一つ外交政策立場からいろいろお話があつたのでございまするが、その点は十分御意見として承わつておきたいと思います。
  20. 中山福藏

    中山福藏君 これは御承知通りにイギリス或いはソ連或いはアメリカという国は、非常に重大な関心を今このエジプト動きに関して持つておるのであります。日本としても、エジプトというものは相当に私は重くこれを見る必要があろと思うのです。それで只今そのほかの国の云々というお言葉がありましたけれども、これは大使を置いておる国が相当にあります。日本としてもこういう点はお互様だというような感じを抜きにして、そうしてやはり重点的に日本の将来の動きというものに対しては、大きな外交上の楔を打込んでおく必要があるのじやないかというような考えから、殊に私はお尋ねしておるわけでありますが、これまでのあり来たりの在外公館設置というようなものなども、古い考え方をよほど一つクリーニングして頂いて、そうして一つ新らしく再生日本が出発するというところに着目して頂くということは非常に肝要ではないかと考えますが、そういう点について一つ
  21. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは先ほどいろいろお話がございましたが、誠に御尤もな御意見と思うのでありまして、大使交換しているところもあると思います。ただ日本との関係におきましては、従来からのいろいろの関係その他から、現段階においては公使交換というところで大体の話合いになつておるのでありますが、外務公務員法で御審議を願いましたように、大使公使も実質的にはもう殆んど何らの相違がなく、重要なる国にはたとえ公使館となつていても、立派な人を送らなければならんということには留意いたしておるのでありまして、又今後必要な場合には、政令で更に話合いがつきました際には、これを大使館に上げる、議会開会中ならば法律改正もできるのでありまして、十分御意見として拜聽しておきたいと思います。
  22. 杉原荒太

    杉原荒太君 この表を見ますと、台湾国民政府のほうのことは何も書いてありませんが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  23. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは御案内のように国府との関係につきましては、いろいろ従来からも問題があつたのでありまして、只今日華交渉がいろいろ行われておるわけでありますが、その日華條約等が締結されまして、事態が明確化してから設置をきめるのがよかろうということで、取りあえず御案内のごとく在外事務所設置されておりますが、そういう意味から今回のこの提案の中には入れていないのでございます。
  24. 杉原荒太

    杉原荒太君 その点もう少しお尋ねしたい気持もするのですけれども、ちよつとほかの問題に移りまして、フランス連合のこの三国、先ほどこれについてお尋ねもあつたと思いますが、それとは別個の角度から私お尋ねしたいと思うのです。これはこの三国それぞれその政府部内において一定の外交権を持つておるのですが、その外交権はどういうふうになつておるか、その制限等はどうなつておるか。それに対応してあそこの大公使館はほかのところとは少し違つた性格になつておると思いますが……。
  25. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) 只今の寿尋ねに対してお答えいたします。この三国の外交権は法的には独立したものを持つております。併し英連邦内の諸国と同様に、重要な基本問題につきましては、フランス連合内の諸国が事実上協議して策定し実行しておる、こういうようなやり方をやつております。
  26. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の点は一つあとで、それに関係する向うの国内法規、そういうものを資料として頂きたいと思います。  それからもう一つ、次にお尋ねしたい点は、ここにマカオが拔けておるのですが、あの方面はいろいろの今後の日本対外関係を見て行く場合、情勢を判断する場合に非常に大事なところだと思うのですが、マカオ領事館を持つていないのはどういうわけですか。
  27. 大江晃

    政府委員大江晃君) マカオにつきましては、お説の通り非常に重要なところなんでございますが、今回の領事館総領事館設置に関しましては、できる限り国費の節約という見地に立ちまして、緊急必要という面からできるだけ最小限度にとどめておくという方針で一応の設置箇所考えたのでございます。従いまして今後外交再開後のいろいろな諸情勢によりまして、只今御指摘になりましたような点から是非置かねばならんということが認められましたならば、政令により或いは国会開会中ならば法律改正によつて、こういうところにも置きたい、こう考えております。
  28. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう一点、第一の質問に実質的に関連するわけですが、在外事務所なるものは、この法律が施行された後においてもなお存続するというような考え方ですか。存置し得るという考え方でございますか。
  29. 大江晃

    政府委員大江晃君) この講和條発効後、法律ができた後でも在外事務所というものは存置上得るという考え方でございます。例えば、正式に国交回復の取極ができない場合、在外事務所をそのまま置いておく、一例を申しますと、先ほどの台湾が現在の話合いがまとまらないと仮定いたした場合、引続いて在外事務所というような形もとり得るということにいたしております。
  30. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 大韓民国に、大使館を置かれるというのですね。これは私非常に疑問に感ずるのですが、これに対してどういうような見解を持つておられますか。
  31. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 朝鮮につきましては、つまり平和條約の発効によりまして、日本朝鮮のあれを放棄して、新らしい朝鮮独立が行われることになるのでありますが、日本といたしましては、只今朝鮮にありまする大韓民国をいわゆる朝鮮との折衝相手方といたしまして日韓会談その他の基本的な折衝が行われているわけであります。そういう意味ですでに平和條発効と同時に朝鮮独立が行われるのであります。その国を代表する大韓民国大使館を置く、こういう考えであります。
  32. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは日本政府がそういう希望的観測をお持ちになることは第二として、実際国際公法上、それから国際政治の、この法律政治の両面から見て、大韓民国大使まで派遣するということが将来日本の、むろんあなたの御答弁サンフランシスコ條約の埒内で結構ですよ、埓内にあるものとして策を得たものなのですか。法律上正当であり、且つこれは政治的に、ちよつと政治的のほうを附言すると、私はやはり南北の統一された朝鮮、これが我々の望ましき朝鮮隣人であつて隣人南北に分れて戰つているというような事態は、私は如何にサンフランシスコ條約の中においての御答弁としても望ましいというわけにいかないと思う。その点は中国における台湾中国本土の、月とすつぽんの関係違つて南北相伯仲した立場を以て争つておるのです。それは果して韓国政府というものはサンフランシスコの條約の埓内において真に合法的且つ実際的な政権と言えないのではないのですか。そういう点をあなたは明快に御説明できるのですか、両面から……。それに大使館設置することがいいと、そのことが隣邦朝鮮に対して今後日本が繁栄して行くところの外交方針だと、こういうことが説明できますか。
  33. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 大韓民国は国連といたしましても、朝鮮において民主的にできた一つの国であるということを認めておるものでありまして、而もすでに二十九カ国と思いますが、二十九の国々がこれを承認しておるという段階であります。で先ほど来いろいろ申上げましたように、日本只今大韓民国を相手として日韓会談等も行われておるのでありまして、善隣友好の諸国となるべく早くこの善隣友好の関係に立たなければならない、こういう意味から大韓民国大使館を予定しておるわけであります。
  34. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それではもう少し私は正確にお尋ねしますが、一九四五年の十二月にモスクワ会議で朝鮮は向う五カ年間四大国の信託統治にする、それに基いて臨時統一政府を作るということが、英中ソで意見が一致して、アメリカはこれに従わないで、信託統治に反対している李承晩を臨時中央政府に加えることを要求したところ、この要求ソ連が拒否したために、不幸にも南北政府になつたのであつて、一九四八年に国連の決定といつても、これは合法性のない小総会というような違法な形で決定され、その管理下で南北統一選挙が行われることを決定したけれども、これは国連憲章第百七條で朝鮮問題に国連が関係することができないという、この四大国方式の理由ソ連が又これに対して反対して、そしてアメリカが南だけの選挙を強行した、その後に北のほうが独自の選挙をやつたときには、南方の国民が圧倒的にこれに非合法に参加しておる、これが実情なんです。これが政治法律的両面から見た実情なんです。だから日本国政府が、私は深く討論しようとは思わんけれども、こういう事実がある。どうせあとの又法律関係して参りますのでそのときに讓つて、必ずしもここで黒白をつけようとは思いませんが、こういう事実で私は政治的にも法律的にも大韓民国を合法的な政府と認めるということは、私は非常に公平に見て幾多の無理がある。いわんや政治的に見るならば、隣国朝鮮の統一を妨げるということに私はなるように思うのでありますが、もう一遍御答弁を願います。
  35. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) お話のように一九四五年の十二月にモスクワで米英ソ等の会議で朝鮮独立統一政権の樹立が相談されたのは、その通りでありますが、併しそれがその後どうもいろいろな事情でうまく行かない。そこでその後いろいろの事態があつたのでありますが。一九四八年十二月の国連総会の本会議におきまして、この大韓民国政府朝鮮のこの部分におきまする選挙民の自由意思の有効な表現でできたものであり、朝鮮において民主的に設立された唯一の政権であるというふうな国連総会の本会議において決定が行われまして、先ほども申上げましたように、その後二十九の国々がこれを承認しておると、こういう関係からいたしまして、只今日韓会談大韓民国政府と今行なつており、又善隣友好の立場から早くここにも大使館を置くようにしたいということで予定したのであります。
  36. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたは大韓民国をそういう方式で国連に加盟させたことを合法的であるというふうに考えておられますか。
  37. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 大韓民国はまだ国連には加盟してないと思いまするが、国連の総会でこの大韓民国の成立を認めまして、そうして二十九の国々がこれを承認しておると、こういう事実を申上げておるのです。
  38. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これはまあ次の法案関係があるから、その先は次にもう少し明確にすることにして、保留することにいたしまして、それではもう一つついでにお尋ねいたしますが、台湾のほうには何も置かれないのですか。
  39. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは先ほど杉原委員からもお尋ねがありまして、一応お答えしておいたのでございまするが、台湾との、台湾といいますか、国府との関係につきましては、まあ御案内のごとく、いろいろ問題がございまして、只今日華会談が行われておるわけでありまするが、この日華條約の成立を待ちまして、その際在外公館設置を決定して行きたいと、こういうわけであります。
  40. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それはおかしいじやないですか、同じような條件じやないですか、月とスツポンであるという量的な関係はありますけれども、質的にもいろいろな違いはありますけれども、朝鮮南北関係と、中国大陸と台湾関係は非常に似ているのですね。一方には置れるが、一方には置かれない。あなたは会談を理由にされますけれども、両方とも会談をやつておりますぜ。両方とも会談をやつておる。これは怪談ですよ。ちよつと明確に説明して下さい。あなたの説明では説明になりませんよ。怪しき談になりますよ。
  41. 大江晃

    政府委員大江晃君) 実は台湾だけ落したということは、何も特に意図があるわけではないのでありまして、御承知のように、朝鮮につきましては、朝鮮独立するということは平和條約の中にもございまするし、はつきりいたしておるのであります。台湾につきましては、いろいろな将来の交渉その他もございまして、例えば総領事館で暫く置いておくほうがよいか、或いは大使館にするか、公使館にするかというような不確定な要素が非常にございまするので、それを落した。そうして必要のある場合には、国会の開会中は国会にお諮りし、又閉会中は政令でやろうと、そういうつもりでやつたわけでございまして、時間的に見ましても、この法律の準備をいたしましたときに、そういう要素が極めて不確定であつたものですから、落したというだけでございます。
  42. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると変ですね。あのサンフランシスコでは、南半分の朝鮮大韓民国を認めておるのですか。
  43. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) いやそれは朝鮮全体の独立です。平和條約によつては、日本朝鮮に対するあらゆる主権を放棄して、朝鮮が全体として独立すると、こういう形になつております。
  44. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうでしよう。だとすれば、仮に片方は島で目下戰争中でもないし、台湾国民政府という恰好と強いて解釈できないでもない、どうやらその体裁を整えておるし、ところが片方は戰火の中で幾百万の人民が生死の境を放浪をしておつて、ここで一歩誤れば、第三次世界大戰が発生するかも知れんというような発火点におる。そうして統一の前夜におる。或る暴力によつてその統一が妨げられておるという実情です。その可否は別です。評価は別ですけれども、そういうときに当つてわざと対立を激化するような形で大使館を置くという理由はどこにあるかと、こういうことなんです。非常におかしいじやありませんか。
  45. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは先ほどから申上げまするように、平和條発効と同時に朝鮮のいわゆる新らしい独立ということがここに生じて来るのでありまして、そこでこれはまあ先ほどの答弁を繰返すことになりまするが、我が国といたしましても、日本としても、朝鮮にある独立政府といいまするか、政権として大韓民国を認めて行こうと、現在も大韓民国折衝の相手として日韓会談等も行われておるのでありますから、そういう意味大韓民国在外公館を置くように予定しておるわけであります。
  46. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 台湾はどうですか、その論旨を今度は台湾に拡充してみて下さい。
  47. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 先ほど官房長からお答え申上げましたように、これはもうただ若干の時期の問題なのでありまするが、台湾については、只今日華会談いろいろ行われておるのでありまして、これはあらゆる機会にいろいろ論議されておりまするように、台湾国民政府との関係その他についてはまあいろいろの問題があるわけであります。そこでこれらの問題が日華会談によつていろいろきめられて参るわけでありまするが、そこでこの法案を作成するまでには、まだそこまでの明確な見通しが立たないということで、一応この案から落してあるわけでありまして、日華條約によりましていろいろなことが明確化しました際には、これこそ善隣友好の関係からいたしまして、而も在外事務所もすでにあるのでありますから、直ちに何らかの措置を講じて行かなければならんということは、申上げるまでもないところであろうと思います。
  48. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると、朝鮮については問題はないという御見解なんですね。南北統一の前途はもう極めて楽観しておられるわけですね。そうしてこの大使館を置くことがそれを促進し、且つアジアの平和を招くゆえんだと、こういうふうに考えておられるわけですね。台湾は問題があると、これはありますよ。非常にありますよ。討論は一切避けますけれども、朝鮮はそれ以上に問題があるのじやありませんか。現実に世界の強国が、アメリカが全力を傾けてここに幾十万の兵隊を以て戰つているのですよ。物凄い、一歩過ればこれは第三次大戰の発火点になるのですよ。そういう渦中にあるのですよ。そうして南鮮には幾百万の戰火による流浪の民が苦んでいるのですよ。そうして統一への前夜にいるわけなんです。統一への悩みを続けているのですよ。そういうときに、台湾には問題があるけれども、朝鮮には問題ないなんということを、一体常識のある者がそういう説明を聞かれますか。
  49. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これはどうも先ほどからたびたびお答えしていることを大体繰返す以外にないと思うのでありまするが、朝鮮という一つの新らしい独立が行われるわけでありまして、而もこれは国連においても民主的に出来上つた政府としては、国連もこれを一応認めて、そうして二十九の国々もこれを認めているのであります。そういうわけからいたしまして、ここに大韓民国大使館設置する、こういうことでありまして、朝鮮台湾との関係につきましては、先ほどから繰返し御説明申上げているところで、一つ御了解願いたいと思います。
  50. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 別に御質疑ございませんか。別に御発言もないようでございますから、質疑は終つたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより討論に入りたいと存じます。御意見のおありのかたは、どうかお述べを願います。
  52. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私はこの法律案に反対いたします。それは多少先ほど朝鮮台湾その他について二、三質しましたけれども、そういう理由では、それだけの理由ではなくして、もつと根本的にこの法律案サンフランシスコ條約に基礎を置き、つまり平和、安保、従つて行政協定等一連の関連においてこれが出て来ているという根本的な性格に対して、日本共産党はどうしても賛成できないのであります。こういうことをされては、こういう法律一つずつ出してやられましても、又事実これの中で働かれる大使以下の職員、私も長い官吏の生活をやつて来てよくわかるのでありますが、こういう恰好だけ法律上の体裁を整えて、大使公使等と名前だけは戰前と同じような名称を授けて、全国に配置いたしましても、日本の国力そのものが日一日と疲弊している現実において、それから又世界に二つの相対立するところの資本主義陣営、社会主義陣営の激化の渦中において、一方、資本主義陣営一辺倒の形で配置される外務職員自身の前途には、決して楽しい幸福な公生活というのはあり得ないと思う。現に私は両條約のときに申上げましたように、アジアの大陸との提携を捨て、東南アジアなどで日本の復興ができると考えることは、児戯に類する夢物語であるということを指摘いたしましたが、果してそれに対して各大臣が強弁して答弁されましたが、昨今の状態はどうであろうか。日本の資本主義の王座とも言うべき軽工業が猛烈な危機に見舞われております。中小企業の破綻等々、救いがたい混乱に来ている。それどころでない、世界を半分に割つたという理由の下に、アメリカ資本主義そのものが大きな恐慌の真つ只中に立つて、トルーマンの政治動きその他も、非常に複雑なものがある。いわんやイギリス、フランスその他の諸国が非常に疲弊して来ている。これはどうしても資本主義と社会主義の陣営は、そのイデオロギー的、或いは政治構造的、経済構造的の差異の如何にかかわらず。戰争を避けて、相提携してやつて行くという以外に、私は世界の繁栄の途はない。そして相提携する過程において、資本主義がいいか、社会主義がいいか、どちらの社会体制がすぐれているかは、それぞれその国家、それぞれの民族が自主的にきめるべきものである、私どもはそういうふうに考えているのであります。従いましてアジアについて言えば、私は、日本のごときこの資源貧弱なる国が、アジアの大陸と離れて東南アジア、或いは日米経済提携の形で、日本の繁栄を取戻すことは絶対不可能である。これは形勢いよいよ非になつて、農民も、労働者も、官吏も、国会議員そのものもだんだん疲弊して行く道を歩かざるを得ないと考えておるのであります。従つてこれ以上言葉を省略いたしますが、そういう意味におきまして、サンフランシスコの両條約並びにそれに伴う行政協定に絶対反対をいたしておるその根拠を述べ、従つて我々が絶対反対をしておる條約その他から来るところの一連の吉田政府のこの外交政策から出て来るところのこれらの法律案は、以上申上げたような根本的な態度日本国民の平和と繁栄という点、アジアの平和という点、隣邦提携という点、及び世界の両陣営の平和的な、経済的な提携という観点から、やはり私は反対せざるを得ない、こういうふうに考える次第であります。
  53. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 他に御意見ございませんか。
  54. 中山福藏

    中山福藏君 私はこの法律案に賛成いたします。只今岩委員の共産党を代表しての御討論がありましたが、私どもは人間として衷心より平和を希つておるものであります。今日不幸にしてイデオロギーの差異から、米ソ両陣営の対立ということになつておりまするが、これは主観的に自己の主義というものが、絶対不可侵と申しますか、絶対的なものであるという宗教的な考え方から出発しておるものだと考えるのであります。  私は先ず手取り早く、若し米ソ両陣営のかたがたが真に平和を希うならば、先ず自分なんかの持つておる大きな軍備というものをお捨てにならんか、これは私の常に持つておる疑問であります。日本の憲法というものは御承知通りに、理想的に言えば、世界最高のものであると私は考えております。武器を捨て、平和を希つておる、これくらい立派な憲法はない。併しながら一方に高度の熱を持つた誠に怖るべき武器というものを擁されておつて、一方には全然武器のない平和を希つておる憲法を持つた日本のような国があるとすれば、高度の熱を持つたところから、全然冷え切つたところの熱のない、いわゆる武器のないところに、高いところから低いところに、自然の道理によりものが流れて来る、流れて来る姿が戰争になるという腐れがある。両方とも同じバランスのとれた同じ高さでありますれば、どこにも武器は流れようがないのであります。ですから武器を持たない平和な社会を希うならば、世界全体が武器を持たないように、先ず世界の政治家というものは努力すべきだと私は考える。然るに不幸にして、そういう理想に到達するということは、現在においては望み得ない立場に私どもは追い込まれておるのであります。  私は、たくさんの子供を失い、夫を失い、父を失つた人々が、如何に精神的に苦んでおるかということは、最も惨害を受けた日本人としてこれを痛感して仰るものであります。従つて本当に平和を希う気持があるのかどうか、イデオロギーのために相手方の主張をことごとく否定して、それで世界の平和というものを招来することができるかどうかということは、非常なる疑問がそこに現われて来ないわけには行かないのであります。従つて私どもは、文化というものがいろいろと学者の人人によつて叫ばれておりまするが、併しながら一個人としての考えとしては、いつも不思議に考えることがある。先だつて南原東大学長がおやめになるときに、どういう訓辞をしたかと思つて見ておりまするというと、平和條約、安保條約ができたけれども、諸君は真理を追うということに決して卑怯であつてはならないという訓辞を与えておる。私は実に大学総長の言葉としては不徹底なことに驚いた。大体その真理というものを、どういうふうにして現在のいろいろな主義を持つておられるかたが考えておられるか。私はこの点について、すべての世の中の識者が、いやしくも社会の木鐸というような自惚れを持つておる人々が、もう少し考えて欲しいと思う。それはなぜかと申しまするというと、大体真理というものはどういうものかということについての真理の本体というものをつかんでいないと私は考える。今日アメリカにおいてもソ連においても真理、或いは正義という言葉が非常に流行しております。併しながら本当の真理というものは、これは人間の智慧では真理という断定というものは、現在の最高の知識を以ての真理としての断定なんです。不動の真理というものは人間の智慧で、これが真理だ、これが真理でないということは断定できないのであります。例えばアリストテレスの物体落下の法則というものについて、二千年というものは真理として世界中の学者から重んぜられておりましたときに、ガリレオが一分間にしてピサの高塔から二つの大小のものを落してアリストテレスの物体落下の法則を打破してガリレオの現実に基いた証拠の提供によつて二千年の真理が覆えされておるのであります。人間の頭によるところの、知識によるところの真理はかくのごとく脆いものである。それを南原総長ともあろうものが声を高らかに学生に訓示をしておられるのだということは、これに滑稽至極、沙汰の限りだと私は考えるのであります。  そういうふうなことからお互いに自分の主張というものは絶対的なものであるということは今日言い得ないのであります。かるが故に私はこういう前提の下に今日どういうふうにすれば人類が幸福になるかということは、これは階段的にこれをやつて行かなければ仕方がないのであります。だから今日の日本立場において平和を希つておりまする日本民族が国家として構成する、それにはできるだけ卑近なところから私は物事を運んで行く必要があるとこう考えるのであります。かるが故にサンフランシスコにおいて日本の対日平和條約に調印をし、好意を持てるものとはお互いに公使大使を派遣して、そうして仲良くやつて行く。只今岩委員も仰せられましたように、ソ連或いは北鮮或いは中国、こういうものと別に喧嘩する必要はない。私どもはできるだけ最大の努力を払つて順次こういう国々と国交を回復するということは、私どもは国民として世界人類の一員として常に希う次第であります。従つて私は階段的な世界平和に貢献するという意味におきまして、この大使公使設置に関する本法律案に衷心から賛成の意を表するものであります。
  55. 平林太一

    ○平林太一君 私は只今議題となつておりまする在外公館名称及び位置を定める本法律案に対しまして、賛成の意を表するものであります。  平和條約の発効を目睫に控えまして在外に対します措置といたしまして当然の措置でありまして、むしろ今日を以て遅しとするの感さえあるくらいであります。速やかにこれが実施を完成いたしまして、海外の諸国と平等なる交友、国際的関係をいよいよ緊密にいたしまして、独立国家としての名実ともに形態を整うることにいたさなければなりませんことは当然のことであります。  若しそれ先刻兼岩君が、我が国の現状はこれをいたすに甚だ国力疲弊せるというお話がありましたが、私はそうとは思いません。我が国民は終戰以来ここに六年有余孜々として祖国の再建に努めて参りました。我が国は逐次国力を回復いたしまして、今日は独立国家としてのその形態、内容を整えて十分なる我が民力、我が国力を完成し得た次第でありまして、全国民と共に私はこの点を深く喜ぶ者の一人であります。従いまして本法律のここに制定せられ、平和発効と即時即応いたしまして海外に対して我が国が国際国家のその一員としての形態を整えることに対しましては、全国民も心より今日までの終戰以来の苦難の効を報いられたことを心より喜ぶものと信ずるのであります。  願わくば政府におきましてはこれらのことを深く考慮せられまして、この法律発効後におきまするそれぞれ関係在外公館の当事者が十分この意思を体しましていわゆる我が国家の面目、名誉のために大いに力をいたされたいということをこの際深く希望いたしまして、ここに本案に対しまして全面的に賛成の意を表するものであります。
  56. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより採決に入ります。在外公館名称及び位置を定める法律案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  58. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 多数と存じます。よつて法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によりまして、あらかじめ多数意見の承認を経なければならないことになつておりまするが、これは委員長におきまして、本法案内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして、御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 御異議ないものと認めます。  それから本院規則第七十二條によりまして、本委員長が議院に提出する報告書には、多数意見者の署名を付することになつております。本案を可とせられたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     杉原 荒太  平林 太一     中山 福藏  伊達源一郎     大隈 信幸  加藤シヅエ
  60. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 御署名漏れはございませんか……、御署名漏れはないと認めます。
  61. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 次にお諮りいたしますが、安全保障條約締結に伴う駐留地の視察のため、佐世保、舞鶴等にそれぞれ議員を派遣するよう議長に要求書を提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 徳川頼貞

    理事徳川頼貞君) 御異議なければ、そのように取計らいます。  明日は外務委員会を午前十時より開催いたします。本日はこれで散会いたします。    午後五時一分散会