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1952-02-28 第13回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十八日(木曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     有馬 英二君    理事      吉川末次郎君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            中山 福藏君            大隈 信幸君            兼岩 傳一君   政府委員    外務政務次官  石原幹市郎君    総理府事務官    (賠償庁次長心    得)      河崎 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       坂西 志保君    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   説明員    外務省国際協力    局第一課長   須山 達夫君    厚 生 技 官    (厚生省薬務局    麻薬課勤務)  齊藤  正君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○ポツダム宣言受諾に伴い発する命  令に関する件に基く賠償庁関係諸命  令の措置に関する法律案(内閣送  付) ○千九百十二年一月二十三日にへーグ  で、千九百二十五年二月十一日、千  九百二十五年二月十九日及び千九百  三十一年七月十三日にジユネーヴ  で、千九百三十一年十一月二十七日  にバンコツク並びに千九百三十六  年六月二十六日にジユネーヴ締結  された麻薬に関する協定条約及び  議定書を改正する議定書並び附属  書への加入について承認を求めるの  件(内閣送付) ○派遣議員の報告 ○神奈川県辻堂元海軍演習地を進駐軍  演習地指定反対陳情(第三〇八  号) ○アメリカ駐留軍国立文教地区内ホ  テル等利用に関する陳情(第三四五  号)   —————————————
  2. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 只今から外務委員会を開会いたします。  先ずポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係命令措置に関する法律案議題といたします。この法案に対する政府提案理由説明を求めます。
  3. 河崎一郎

    政府委員河崎一郎君) 只今議題になりました「ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係命令措置に関する法律案」について、その提案理由を御説明いたします。  本案を提出するに当り、政府が考慮いたしました点は次の通りであります。  平和条約締結に伴いまして、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係の諸命令中、朝鮮総督交通局共済組合本邦内にある財産整理に関する政令につきましては、当該整理がなお半年余を要し、当然条約発効後に亘ると思われますので、これを引続き法律としての効力を有するごとく措置いたしたいと存ずる次第であります。  又特定財産管理令につきましては、戦犯未決中の財産管理条約発効後は条約においてその必要も明記されておらず、総司令部の意向としましても、廃止して差支えない趣きでありますので、今般政府としましても、これを廃止したい所存であります。  何とぞ慎重御審議の上、速かに可決されますよう希望いたします。
  4. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 本法案に関し御質疑のおありのかたは、順次御質疑を願います。
  5. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 提案の御説明を承わつたのですが、当然私たちがよく知つていなければならないことであるのでしようが、十分によく知らないから承わりたいと思うのですが、この「朝鮮総督交通局共済組合本邦内にある財産」とか、或いはもう少し提案理由説明についてお述べになつた事柄について、具体的によくわからないものとしてお話を願えませんか。例えば「朝鮮総督交通局共済組合本邦内にある財産」というようなものは、どういうようなものがあるのであるか、或いはそれを邦貨にすればどれくらいになるとか、或いは国際的な法律関係であるとか、そういうようなことについてもう少し具体的に……。
  6. 河崎一郎

    政府委員河崎一郎君) 朝鮮総督交通局共済組合の持つております本邦内の財産の一番大きなものは、新橋の駅の近くにございまするパシフイツク・ビルと申しまして、元総督府の東京出張所の建物でございまするが、それ以外にも東京に家屋、それから銀行預金が多少あるのでございますが、全体といたしましてその資産は、四千五百万円程度のものでございます。この財産を数年前に総司令部命令によりまして、共済組合組合員清算して分配するようにという指令が出たのでございます。これはこの種の財産は、或いは韓国側から要求があり得た財産でございまするが、幸い司令部のほうでも、この種の財産日本人の共済組合関係財産であるというふうな決定をいたしてくれまして、幸い日本国内関係共済組合員分配するようにということで、清算整理を進めて参つたわけでございます。組合員は大体二万五千名ぐらいでございまして、全財産分配いたしましても、一人当り極く僅かなものでございまするが、それでもできるだけ公平に、これは一時金債務者年金債務者と二種類ございますが、この二万数千名のものにこの財産を公平に分けるように、現在清算を進めておるわけでございます。
  7. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それから法律関係ですが、ポツダム政令との関係や、そういうようなことですが、一応わかり切つたことかも知れませんが、私呑み込めないから、その点をよくお話を願いたい。
  8. 河崎一郎

    政府委員河崎一郎君) この財産整理につきましては、従来ポ勅におきまして、いわゆるポツダム政令によりまして、政令第四十号を公布して、整理をやつて参つたのでございますが、今度いわゆるポ勅なるものが、占領終了と同時になくなりまして、法律を以てこの整理を続けて行くことに相成つたわけであります。
  9. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ほかに……。
  10. 團伊能

    團伊能君 只今吉川君の御質問に関連して承わりますが、そうするとこれは分配事務がまだできないから、分配事務の完了するまでポツダム政令同一の方法によつてこれを続行するということでございますか。
  11. 河崎一郎

    政府委員河崎一郎君) そういうことでございます。全然従来やつておりましたことをそのまま継続するだけでございます。ただ清算期間がここ数カ月かかるから、その必要があるというのでございます。
  12. 杉原荒太

    杉原荒太君 この法律案だけじやなく、すべて今度のポ勅に基いて政令整理に関する法律案一般に関することなんですが、第二条、これは念のためにお聞きしておきたいのですが、前条に規定する命令は、これこれの法律としての効力を有するというように規定しておりますが、この勅令に限らずすべてこういうような書き方になつておるようでありますが、どうですか、僕はそこのところ、ちよつと疑問に思うのだが、命令法律としての効力……命令法律になる、或いは法律と同等の効力を持つというそこの観念の仕方がどういうことですか、ちよつと私が前から疑問にしておるのですが……。むしろ法律同一効力を有するというのならよくはつきりするのですが、これは政令法律となるのですか、法律としての効力を有するというのですか。いろいろこれは御研究の結果、なつたことだと思うのですが、どうも私はここが疑問に思われるのですが……。
  13. 河崎一郎

    政府委員河崎一郎君) これは法律そのものに……命令法律そのものになるわけでありませんで、法律としての効力を有するものとなるということに私は解釈しております。
  14. 杉原荒太

    杉原荒太君 言い表わし方がちよつと何だけで、つまり法律同一効力を有するということと同じなんですね。そうですね。
  15. 河崎一郎

    政府委員河崎一郎君) そうなんだと思います。
  16. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ほかに御質疑はございませんか……御質疑がなければ……。
  17. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 何についてですか。
  18. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係命令措置に関する法律案提案理由を今聞きまして、質疑をしておりますわけであります。   —————————————
  19. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは次に千九百十二年一月二十三日にへーグで、千九百二十五年二月十一日、千九百二十五年二月十九日及び千九百三十一年七月十三日にジユネーヴで、千九百三十一年十一月二十七日にバンコツク並びに千九百三十六年六月二十六日にジユネーヴ締結された麻薬に関する協定条約及び議定書を改正する議定書並び附属書への加入について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関する政府提案理由説明を求めます。
  20. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 只今議題となりました千九百十二年一月二十三日にへーグで、千九百二十五年二月十一日、千九百二十五年二月十九日及び千九百三十一年七月十三日にジユネーヴで、千九百三十一年十一月二十七日にバンコツク並びに千九百三十六年六月二十六日にジユネーヴ締結された麻薬に関する協定条約及び議定書を改正する議定書並び附属書につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定及び附属書は、一九四六年十二月十一日にニユーヨーク州レークサクセスで署名されたものでありまして、その加盟国は、一九五一年六月末日現在五十三国に上つております。  この議定書及び附属書目的は、国際連盟が解消した結果、前述の諸条約連盟に与えていた一定の任務を履行する機関がなくなつたことに鑑みまして、これらの任務国際連合及び世界保健機関に引継がしめることであります。  我が国は、前述の諸条約中一九三六年のジユネーヴ条約を除いたほかの五条約加盟国でありますから、これらの諸条約規定する国際協力を再び開始するためには、この議定書及び附属書加入することが必要であります。又我が国は、昨年九月八日サンフランシスコにおいて、この議定書及び附属書加入することを宣言しておりますから、これに一日も早く加入することは、我が国国際信用を高めるゆえんであると考えられます。  よつて、この議定書及び附属書への加入について御承認を求める次第であります。右の事情を了察せられ、慎重御審議の上本件につき速かに御承認あらんことを切に希望いたす次第であります。
  21. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 御質疑のおありのかたは順次御質疑を願います。
  22. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 これも先ほどと同じような、聞かなければならんことをばお尋ねするわけなんですが、大体この締約国間に結ばれた麻薬に関する協定条約議定書というようなものの内容は、麻薬について大体どういうことを中心として規定せられたものなんですか。それをもう少し具体的に話して頂きたいと思います。それは、或いは我々の手許に配付されております説明書にも書かれていると思いますが、その説明雷の中の、どこを読めばそれがわかるというようなことを御説明を願います。
  23. 須山達夫

    説明員須山達夫君) 説明書の中には只今までの、ここに挙げました六組の条約につきましては、その概要を説明した部分は実は入つておりませんのであります。ちよつと御説明申上げます。これは六組を細かく説明いたしますと大変長くなりますので、極く簡單に申上げますと、一番初めの一九一二年の条約は、生阿片阿片煙膏及び薬用阿片並びモルヒネコカインヘロイン及びこれらの物質から製造し又は誘導した薬品で同様の害毒を惹起し又は惹起し得べきものの濫用を漸次禁止するために、第一に、締約国が、このような物質生産分配使用輸出及び輸入制限し又は禁止すべきこと、第二に、中国及び中国条約締結し又は中国に治外法権を有する国が、中国における前記制限若しくは禁止に協力し、又は制限若しくは禁止のための取締及び監督のための措置をとるべきことについて規定したものであります。  次に一九二五年には二つございまして、最初の協定のほうは、イギリス、中国フランス日本オランダポルトガル及びシヤム諸国が、阿片煙膏使用を一時的に許されているこれらの国の極東属地及び領域租借地又は保護領を含む)において一九一二年の国際阿片条約第二章の規定する阿片煙膏製造国内取引及び使用の漸進的且つ有効な禁止を実行するために前の条約補充的協定をしたものであります。このために第一に、原則として政府により特許された者が行う阿片の小売の場合を除いて、阿片輸入販売及び分配は、政府独占事業とすべきこと、又、販売のための阿片煙膏製造事情の許す限り政府独占事業とすべきこと、第二に未成年者の間に阿片吸食の習慣の伝播を阻止するためのすべての措置をとるべきこと、第三に前記属地及び領域からの阿片輸出禁止すべきことについて規定いたしております。これは我が国といたしましては現在のところ、阿片煙膏使用を一時的に許容されているような地域が支配の下になくなつておりますので、関係が殆んどなくなつておる条約であります。それからその次の同じ年の条約のほうは、やはり一九一二年の国際条約を一層有効に実施するために阿片その他の麻薬生産及び製造制限を強化し、且つ、国際取引の一層厳重な取締及び監視を行うことを目的といたしております。このためには第一に、締約国が生阿片及びコカ葉、これはコカの葉でありますが、それの生産分配輸出及び輸入取締るべきこと、又薬用阿片コカイン、エクゴニン、モルヒネヘロインインド大麻ガレヌス製剤(エキス及びチンキ)並びに同様の濫用の虞れがあり、且つ同様の害毒作用を惹起し得べき麻酔剤製造輸入販売分配輸出及び使用を専ら医薬用及び学術用制限するための措置をとるべきこと、第二に阿片常設中央委員会国際連盟理事会により任命せられ、締約国が、この委員会に、医薬用学術用その他の目的国内消費用として輸入すべき量の見積並び生産製造分配輸出及び輸入の量に関する諸種の統計を毎年提出すべきことについて規定いたしております。これはまさに日本として遵守しなければならない部分を含む条約であります。  その次が一九三一年の条約でありますが、これは麻薬製造製限及び分配取締に関する条約でありまして、麻薬製造医療用及び学術用世界の正当な需要に制限し、並び麻薬分配取締るために一九一二年の条約及び一九二五年の条約を補足するものであります。このために、第一に、締約国常設中央委員会に毎年提出する見積の様式を完備し、提出された見積は、国際連盟阿片及び他の危険薬品取引諮問委員会常設中央委員会国際連盟保健委員会並び公衆衛生国際事務局が任命する者からなる監督機関により検査されること、第二に、締約国医療用及び学術用として製造し得る危険薬品の数量を制限すべきこと、第三に、ヘロイン及びその製剤輸出禁止すべきこと、第四に、一九二五年の国際阿片条約規定しているその他の危険薬品製造輸入輸出及び分配取締るべきこと、第五に、この条約規定を適用し、薬品取引を規律し、監視し及び取締り、且つ、薬品中毒癖の蔓延を防止し及び不正取引禁止するための措置をとることにより中毒癖撲滅運動を行うために、締約国が、すでに設置していない場合には特別の行政機関を設置すべきことを規定しておるものであります。  その次は一九三一年の阿片吸食防止に関する協定であります。これは英国、フランスインド日本オランダポルトガル及びシヤム諸国が、その極東属地及び領域において一九一二年の国際阿片条約第二章、つまり阿片煙膏製造国内取引及び使用の漸進的且つ有効な禁止措置をとること、並びに一九二五年のジユネーヴ協定の適用に関する状況を審査し、且つ、吸食のためにする阿片使用防止を実現することを目的とするものであります。このためにいろいろな規定を設けておりまするが、これはやはり阿片吸食ということが行われておる地域を持つ国の条約でありまして、実質的には我が国はこの条約と現在関係がなくなつておるわけであります。  その次は一九三六年の危険薬品不正取引防止に関する条約でありますが、これは先ほどちよつと触れましたように、我が国はまだこの条約に批准いたしておりません。その内容は一九一二年の国際阿片条約、一九二五年の第二阿片条約並びに一九三一年の麻薬製造制限及び分配取締に関する条約規定違反行為禁止するための手段を強化し、且つ、これらの条約に掲げられた薬品及び物質不正取引を現下の事態において最も有効な手段により防止することを目的とするものであります。
  24. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 麻薬取締その他について厚生技官齊藤君に説明を求めます。
  25. 齊藤正

    説明員齊藤正君) 麻薬取締機関としましては、麻薬だけの取締機関として厚生省麻薬取締官の制度がございます。これは麻薬取締法の第五十二条の二によりまして定員は二百五十名以内になつておりますが、現在は百八十名程度でございます。それでこの百八十名の麻薬取締官は各都道府県に麻薬取引不正取引程度に応じまして、東京の三十数名から、小さい県で二名、そういうふうに分けまして、麻薬の治安の惡い所には余計に配置してございます。それでこの取締官を直接に取締る官庁として地区麻薬取締官事務所を札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、高松、広島、福岡この八カ所に置きまして、ここに地区事務所長を置いて直接に監督させております。この八カ所の地区麻薬取締官事務所厚生省薬務局内麻薬課監督しております。この麻薬取締官特別司法警察員としての職務を行うことができます。小型武器もピストルも携帯しております。そのほかこれが麻薬取締専任職員でございまして、勿論一般の警察官も麻薬取締をいたしております。そのほかに海上保安庁、税関、まあこういつた役所のかたが麻薬取締に当つているわけでございます。それで現在の麻薬不正取引、これは不正取引に供せられているものは、過去二、三年間は相当終戦当時の軍の麻薬がございましたが、現在は殆んど密輸入によるものでございます。而もその品目は殆んどヘロインに限られております。果してそのヘロイン密輸入される経路は、密輸入そのもの経路を見出すということは相当困難でございますが、私のほうの得ました今までの情報によりますと大体二つ経路に分れます。それは先ず支那から大きな船で持つて来る、それが一つでございます。それからもう一つ朝鮮等から小型の船で九州の北部又は山陰に入つて来る、こういつた二つ経路があるようでございます。その二、三の事例を申上げますと、一つは去年香港から呉に入つた船で三キロ何がしかのヘロインを持つて来ております。それから北鮮から入つたものですと、元山から沖ノ島を経まして……よくその経路は判然とはいたしておりませんが、約一キロのヘロインを持つて来た例がございます。その他大阪、神戸その他で一般密売者によつて市販されておりますヘロインの出所と申すものは、大体品質その他から推しまして支那のものが多いようでございます。現在日本ではヘロイン使用並びに処理というものが一切禁止されておりますので、現在日本で見出されるものは国内における密造か又は密輸入に待つものと見て差支えないと思います。密輸入のルートというのは大体そのようでございますが、結局麻薬取締をいたしますのは、中毒者があるために麻薬不正取引というものが行われるからでございます。中毒者の数は的確なる数字を把握するということは相当困難なことでございますが、今までに得ました情報によりますと大体五千ぐらいでございます。併しこれは犯罪等上つた又はお医者さん等が診察の結果届出たものでございますので、潜在的な中毒者の数は相当数に上るものと思われます。これらの人たちの大部分は……戦前中毒者と申しますものは医療のためになつた人が非常に多くございました。従つてその年齢もいろいろ若い人もあり年寄りもある。そういう状態でございましたが、戦後は若い人が非常に多くございます。統計的には二十代の人が一番多い。而も戦前においては麻薬の種類も種々雑多でございましたが、現状では殆んどヘロインでございます。ヘロインは御承知のように一番害毒の多いものでございまして、世界各国ともこれの使用禁止なり何なりしまして害毒を防こうとしているわけでございますが、そのヘロインが殆んど大部分を占めております。それでこういつた人たちがまあ数字に現われたものでも五千名、その約十倍くらいあるのじやないかということが予想されますが、そういつた人たちが毎日これは欠かさず麻薬というものを……まあ麻薬は毎日使用しなければならんものでございますから、少くとも毎月十キロ、最低十キロ程度のものは入つているのじやないか、密輸入されているように考えられます。それから、それじやヘロインとか、麻薬というものは一体どのくらいするかと申しますと、結局密輸入するというのは相当闇価格が高いために、利潤が多いためでございますが、価格は品物が多いとか、少いとか、それによつて左右いたされますが、まあ普通の値段でございますと一グラムが大体五千円でございます。高いときで一万円くらいになります。これは五グラム瓶一本を売買するときの価格でございますが、その中毒者に普通の密売者が売るような場合は、これは一グラムを分けて百包ぐらいにいたしますので、大体一万円程度になるのが普通でございます。従つて一キロ密輸入すれば最低五百万円乃至一千万円になる、こういう密輸入すると非常に有利なものでございます。それで、じや今までに違反者として大体挙げられております者は、まあ年によつて多少の差はございますが、多い年で二千七百名、それから少い年で二千名程度でございます。過去においては一般医療関係者の間にもまあ法に慣れないために相当違反を犯した者がございましたが、最近の違反者として挙げられたものは殆んどそういつた医療関係に携わる、いわゆる登録者ではございませんで、殆んど密売者でございます。而もその中の三〇%というものは大体朝鮮人乃至支那人でございます。相当なパーセンテージで、絶対数はともかくとして、密売乃至密輸入というものは第三国人による数が非常に大きなものでございます。大体以上でございます。
  26. 中山福藏

    中山福藏君 ちよつと厚生技官にお尋ねいたしておきたい。この麻薬取締に関する刑事責任で、行政処分との牽連関係ちよつとお尋ねしておくわけなんですが、この麻薬取締法違反によりまして刑事上の責任があるという場合においては、検事並び検察事務官というような者が、これは誠に気の毒だから一応起訴猶予にするというような場合、行政処分行為、例えばその処置禁止するとかですね、まあ的確な例を申しますと医者の場合ですね、そういうような場合に処分行為だけ受けて、刑事上の責任は負わない。又、刑事上の責任を負つても、負うと同時に行政処分のいわゆる処置禁止を喰う、二重の刑罰がここに加わるわけですね、そのときに行政処分というものと刑事責任という取扱は、これは両々相独立して行われるというようなふうに私どもは考えておりますが、刑事責任を負うた場合においてのみ行政処分を受けるという附随的な立場をとるということが、最も理想的じやないかという気もするんですが、そういうところはどういうふうにお考えになつておるんでしようか。
  27. 齊藤正

    説明員齊藤正君) 今までは占領下という特殊事情で或る程度無理の場合もございました。併し将来はおつしやられたように、できるだけ刑事責任を負う場合にのみ主として行政処分をする、そういうふうに考えております。ただ従来はやや異なつた点がございました。
  28. 中山福藏

    中山福藏君 もう一つ重ねて念のために尋ねて置きますが、麻薬所持禁止しておりますね。勿論麻薬所持というものは無資格者は禁じられるわけですね。
  29. 齊藤正

    説明員齊藤正君) そうでございます。
  30. 中山福藏

    中山福藏君 併し医者はみんな、許可を受けておる場合には所持できるわけですね。そこで今一家のうちに甲乙という二人の医者がおつて、便宜上同居しておる関係から、一人の医者だけが麻薬使用する許可を受けておる、乙なる医者は面倒くさいからそういう許可を受けていない。そこへ患者が来て、甲なる医者がその麻薬使用するのが非常に多忙のために乙に委任して、乙がその麻薬使用代行行為をやつたというような場合に、この乙というものは従来は罰せられておりますね、而もそれは医者なんです。免許を受けていないから罰するということになつておる。これは医者の場合においてはそれは許すということは常識としては当然じやないか、例えば非常な危険な状態で盲腸炎を切開しなければならん、もう生命が時間を争うときになつて来ておる、そのときに若しその代行する医者麻薬を使うことができなかつたら切開はできないですね。そういう場合においてこの麻薬取締法というものはどういうふうな建前を厚生省としてはおとりになるつもりですか、一つつて置きたいと思います。そういう例は田舎なんかに行つて見ますとたくさんあるんです。
  31. 齊藤正

    説明員齊藤正君) 今おつしやられた例の場合は、これはたとえ非取扱者であつても盲腸炎の切開手術をする、そういつたような場合はこれは当然使用し得ると思います。
  32. 中山福藏

    中山福藏君 ところが、それが今法廷に引かれて明日いよいよ裁判になつておる事件が一つある。それは医者なんです、それを代行したためにやられておる、これは誠に不都合極まる。私は、周到なる注意が立法上払われていないという一つの証拠になるんじやないかと思います。こういう点も今日はそこまで突込んで聞くことはどうかと思いますが、あなたは厚生技官ですから……。
  33. 齊藤正

    説明員齊藤正君) そこで緊急手術や何かに当る場合だつたら当然使用し得ると思いますけれども、併し一方において麻薬取扱者でなければこれこれのことはしてはならないという三条の規定があるわけであります。
  34. 中山福藏

    中山福藏君 こういう関係は、国際議定書とかいろいろなものを研究すれば、その中に日本自身の独得の立場からこういうふうなことを基礎として相当の主張が持ち込まれるものと考える。そういう加入問題につきましても、将来一つそういうこともよく御研究願いたい。これ以上は申上げませんが、参考のために聞いて置きますが、併し内外にこの法律規定の及ぼす影響というものは非常に大きいと思う。而も各個人の生命に関する場合にタツチすることがあるわけです。單に法律上の説明だけでは私はいかんと思います。この条約に加盟するかどうかということも、これは非常にいいことだと私も思つておりますけれども、そういうふうな些細な点まで麻薬というものを手術とかいろいろな、例えば戦争のときに手術するとかいろいろのときに影響して来る問題でありますから、十分御検討願つて……、私の質問を終ります。
  35. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 私としましては、政府の御提案の趣旨に別に反対申上げることはないのでありますが、この点ちよつと承わつて置きたいと思いますが、こういうような国際条約或いは協定等を列国が結びました後において、こういう条約協定が国際間に十分に励行されたかどうかということを多少知りたいと思いますが、それは世界の強国が従来は随分と苛酷なる植民政策のために計画的、意識的に植民地の住民に対して麻薬をむしろ飲用することをば蔭で奨励するような残酷な政策を随分とつて来たと思います。その現われは古いところでは支那で言えば阿片戦争のような原因になつたようなこと、或いは満州事変直後、満州に旅行しましたとき等の経験から行きましても、日本の植民地政府が満州居住民にどういう政策をとつてつたか。今のようなことをやつてつたかどうかは申上げることはできませんけれども、至る所に阿片の吸飲所のようなものが随分あつたことを記憶いたしております。それから三十年ほど前でありますが、仏印等におきましてもフランスの植民地政府がやはり安南人等に奨励して、或いはこれを取締りしておるかは私はつきりわかりませんけれども、盛んに飲用しており、又飲む所が随分あつたことを見たのでありますが、こういう条約及び協定締結した後において、その協定事項及び条約規定されたことが果してどれだけまでよく実行されていたかどうか、これはお答えを願うのは非常にむずかしいお答えになると思いまするが、例えば国際連盟なら国際連盟、或いは国際連合等において、締結国間においてその取締の励行について具体的に何か問題になつたようなことがあつたかどうかというようなことを中心にして、一つ何か材料があれば外務省としてお話を願いたいと思います。
  36. 須山達夫

    説明員須山達夫君) 只今の御質問は一般にいろいろな問題についての国際条約ということではなくて、麻薬阿片に関する国際条約について十分守られたかどうかという御質問だと了解いたしまして、私の存じておることを申上げたいと思います。阿片麻薬に関します条約規定自身を守るということと、精神を守るということとは大分違うので、これまでに六組の条約ができましたのも、簡單に申してしまえば、麻薬というものは人間の生命を救う大事な役をすると同時に、これが人間の体を蝕む危険な薬として使われるという二つの面があるために、最初から理想的な条約を作ることができなかつたために、ここに見られるように六組の条約が非常にむずかしい規定をしながらできて来たわけであります。従つて世界の各国がこれらの条約規定自身に背いたかどうかという問題は、この麻薬条約の場合におきましては、各国が今年はこれほどいる。輸出入の関係におきまして、見積書を国際連盟に出しまして、それに従つてどういうふうに使うということで、細かい統制と申しますか、報告の方式をとつておりますために、各国は属国の薬用としての需要量を超えて使用いたしますと、自然にその点がばれる仕掛けになつておるわけであります。そこで我が国といたしましても、国際連盟におきまして、説明に苦しんだんじやないかと思うような、私は印象を持つておるわけでありまして、この問題は結局、或る国の中に密輸入が行われるということが条約違反じやないのでありまして、密輸入、密輸出或いは不法な製造、不法な輸出入でありますが、そういうものをよく禁圧する行為がとられておるかどうかという点が、問題に一番なるわけであります。その点につきましては、これはまあ私のようなものの印象を申上げても誠に済まないわけでありますが、世界の全体を大体において国際連盟なり国際連合というものが、報告と見積りによつて捉えますときには、大体においてどこが一番危険な地域であるかということはわかるわけでありまして、そういう意味で世界の各国が協調することによつて、初めて全世界が危険な遂に落ち込んで行くことが救われるというわけでありまして、一九一二年にこの条約ができまして以来、国際連盟及び国際連合が現在までにやつて来ました努力というものは、私は非常に貴重なものであつて、将来もこれが続けられて行くことによつて、人類が麻薬によつて蝕まれる害は非常に少いほうに、少くとも放つておかれるよりはずつと少いように向うものと確信いたしております。
  37. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 ちよつと速記をとめて頂きたいと思うのですが……。
  38. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 速記をとめて……。    〔速記中止〕
  39. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 速記を始めて。
  40. 中山福藏

    中山福藏君 大体この議定書加入しております国は世界中どれくらいございますか。
  41. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 五十三国でございます。
  42. 中山福藏

    中山福藏君 五十三国以外のものがこういうことをやることは自由なんですか、こういうことはどういうふうになつていますか。これは一遍念のため参考に聞いておきますが……。十カ国ばかり抜けておるわけになりますね、これは。
  43. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 五十三国でありまして、これはもう阿片と言いますか、こういうものの生産国は殆んど入つておりますので、只今中山委員の御質問の法律的と言いますか、法理的に言いますると、これは或いは問題がいろいろあるかも知れませんが、実際上の問題として五十三国、もう殆んどの国が全部入つておりまするので……。
  44. 中山福藏

    中山福藏君 入つていない国から日本取引したり何かしたり……。ちよつと一つお尋ねしてみるのですが、これは日本人が海外へ旅行して入つておらん国の間の取り持ちをして、そうして非常な金儲けをするということができるわけですね。こういうことになると……。そうすると、いわゆる一種の治外法権的な立場に立つていろいろなことをやり得るという可能性があり得るのですが、そういうようなことについては外務省としてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  45. 須山達夫

    説明員須山達夫君) 先ほどの五十三国と申上げましたのは、この改正する議定書加盟国の数でありまして、日本はこれから入ろうというので、実際問題として日本は入らない前から国際連合に実は協力しておるわけでありますけれども、つまり今までの六組の条約が実体条約でありまして、今度の条約国際連盟が潰れたから国際連合のほうに仕事を移すというだけの意味でありまして、実際はもう移つてそれに従つてつておるのを法律的にちやんとした形にしておくという議定書でありますからして、もつと多くの国が実際は縛られておるわけでございます。それで御質問のこういう条約に仮に入つていない国において罪を犯した場合に、罪になるべき行為をやつた場合に、日本に帰つて来ればどうなるかということだと思いますが、それは日本国内法によつて縛られる、帰つて来てから縛られるということになるわけでございます。
  46. 中山福藏

    中山福藏君 併しそれは時効にかかつてつたら何にもなりませんから……。そういう利巧な男は大概時効が完成したときに日本に帰つて来る。だからそれは大体属地主義的な取扱を受けるものだと私考えております、法律上そういう場合には……。若し加入していない国に日本人が滞在しておつて、そういうことをやつて時効完成後に日本に帰るということになれば、これは全くフリーな立場で無風帯を歩いておるようなものだと私考えるのでございますが、そういう点についてはまだ法律的に完備していないというふうに考えておる。まあこれはそれだけなんですけれども、一応、委員としてはそういうこともお聞きしておかなければならんと、こう思うのです。国際連盟の規約を国際連合が受権したということになつておりますが、この点についても法律的に考えると非常に議論が私は持たれると思うのです。例えば国際連盟が解体して、そうして譲渡者がない場合に、国際連合が受権者として、それを受権する団体として何人からそれを承継したかというようなことについても、これはいろいろな問題があるでしよう。私はただそういう申合せをして、受権とか何とかじやなくして、国際連盟の保有しておつた機関或いは諸規定をそのまま国際連合というものが活かして行くという申合せをしたのじやないかと、私は非常にこの点については知識が浅薄で十分まだ研究しておりませんから、大きなことは言えぬのですが、これはいろいろその点についても常識的な議論を実は私持つているわけなんであります。精神的に国際連合に協力をするということから、今日は議論をしておられるように思いまするから、そういうような観点に立つて加入していない国におけるところの日本人の行動というものを一応参考のために開いただけでありますから、別に外務省のかたを責めようとか何とかいう気持は少しもございません。ただ参考のために聞いただけですから……。
  47. 杉原荒太

    杉原荒太君 改正議定書に対する加入のことは、宣言の第二項によるわけなんだが、五組の、実体関係をきめた条約のほうは宣言の第一項によつてその効力を回復するという、こういう建前になつているわけですか、そうでございますか。
  48. 須山達夫

    説明員須山達夫君) さようでございます。
  49. 杉原荒太

    杉原荒太君 それで宣言の第一項のほうは、日本が当事国になつているが多数国間条約が戦争中効力を停止しておつたが、今度回復すると、こういうふうなことですが、これを具体的にどの条約かということの認定は非常に私はむずかしい問題だと思うのだが、外務省はこれを具体的にずつと当つておられると思うのだが、国際協定以外のもので、そういうふうに認定しているものはありますか。
  50. 須山達夫

    説明員須山達夫君) 国際協定以外という意味は、例えば不戦条約というふうに了解してよろしうございますか。
  51. 杉原荒太

    杉原荒太君 政治的な色彩を持つた、例えば九国条約とか、ああいうものは今まで殺されたという措置はとられていないようですが、そうして政治的性質を持つているようですね。
  52. 須山達夫

    説明員須山達夫君) 平和条約の宣言に掲げました「現に有効なすべての多数国間の国際文書で千九百三十九年九月一日に日本国が当事国であつたもの」というのは、国際協定のものに限らないものと事務当局は了解していると私は思います。
  53. 杉原荒太

    杉原荒太君 いや、それはこれからすれば私は当然だと思う。具体的にそれを、どういうふうな政治的性質のものでも今含まれ得るものになつておるから、それだから問題が起る。これは今少し無理かと思いますが、あとで具体的に外務省でこの効力回復を認める条約を、これは日本が権利の関係に立つから、非常に大切な問題だから、具体的にどれどれということの一覧表でも欲しいと思います。
  54. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) いずれ検討いたしまして提出し得る範囲におきまして資料を差上げたいと思います。
  55. 團伊能

    團伊能君 この条約は従来の国際連盟のものが国際連合に移るのでございますから、これは直接関係がございませんから、丁度条約が出ました際に、厚生技官ちよつとお伺いいたしたいのですが、極めて概括的なことでございますけれども、戦前、戦争中及び戦後において日本ではこの麻薬使用許可のない使用が行われておるということは、これは状態をちよつと伺いたいと存じます。それでこれに加盟いたしますにつきましては、国内における麻薬取締に関しまして取締法のごときものがあり、又薬務局その他厚生省麻薬課というようなものをお置きになるという先ほど御説明のような、これを取締るようないろいろな手段の形は伺いましたが、実際これが如何に行われておるか。又取締上どういう困難があるか。又これの中毒者の処理等について厚生省のお考えを一応伺つておきたいと思います。
  56. 齊藤正

    説明員齊藤正君) 戦前におきましては麻薬取締がまあ阿片とそれから阿片以外の麻薬とに分れておりまして、つまり阿片というものは御承知のように阿片法によつて取締つておりました。この阿片法によりますと、これを作るものは全部地方長官の許可を受ける。こういうことになつておりまして、全部許可を受けて作つていたわけでございます。それで作つたものは政府が買上げ、そうして政府の専売としてこれから医薬阿片を作りまして、これが各都道府県にありました一、二のそういつた医薬阿片販売人のみに販売許可しておりました。それでそのもの以外の医薬阿片販売禁止していたわけでございます。それで阿片につきましてはまあ医薬品に携わる人、そのほかの人をも取締つておりました。併し阿片以外のモルヒネその他を薬事法等で……前には麻薬取締規則、あとで薬事法の施行規則に入りましたですが、これは製薬とか医薬販買を業とする者だけを縛つた法律でございまして、一般の人については規定はございませんでした。従つて戦前においては一般の人はお医者さんなり、薬剤師なりからもらつた場合、そういう場合には正当な所持となりまして、不法所持となりませんでした。従つて戦前においてはこういつた状態でございましたので、麻薬の不正使用というようなことは考えられませんでした。事実、日本人自身では麻薬は使わなかつたようでございます。それを飲んで中毒者なつたという例は余りないように聞いておりますが、主として例えば胆石症とか胃潰瘍とかになつて、それを治すために麻薬を運用してなつたという例が多かつたようであります。或る有名なお医者さんは、殆んど大部分が、戦前はお医者さんの責任つたと、そういうふうに極言されておるのでございます。それで幾ら使つた、どういうふうに使われたかということは、ちよつとそういつた関係で従来の数字というものは全然ございません。この点はわかりません。ただ阿片については阿片法の違反が若干あつたようであります。ところが阿片煙膏につきましては、これは刑法の第十四章の「阿片煙ニ関スル罪」で最高は十年以下の懲役と、こういうような厳罰に処しておりまして、阿片及び阿片煙膏の犯罪というものは殆んどなかつたように聞いております。阿片のほうは多少ございましたが、阿片煙膏のほうは殆んどなかつたように聞いております。終戦直後は、一般のかたが取締制度が変つたということを全然知らない人が相当多うございました。従来の観念で麻薬等を密売した人が相当多かつたのであります。そうして終戦直後にはモルヒネヘロインは余りございませんでした。ハビナール、そういつたもが多かつたように思います。それからナルコポン、大体こういつたものが終戦直後は使われおりました。併しだんだんと世の中が敗戦後の頽廃気分と申しましようか、そういつた気分から、先ほど申上げましたように若い人がヘロインを吸い始め、吸つて間に合わなくなつて注射する、そういつた状態になつて参りまして、一年々々とこの状態は惡化する傾向にあります。それで先ほど申上げました非常な高価なものでございまするので、この麻薬を買わんがために相当無理をして惡いことをして金を得る。麻薬の害惡と同時に、麻薬を買うための金を得んがために相当惡いことをする、そういう害毒が非常に大きくなりつつあります。これは将来はもつと惡くなるのじやないかと思います。それで違反の内容その他も相当惡質になつて参りました。従来は取締の拙劣や幼稚さもあつたと思いますが、相当大量のヘロインが、従来と申しますか、今の法律の前のポツダム政令である麻薬取締規則でございまするが、これを施行されました当時は、そう惡質と思われるものはございませんでした。最近は惡質な犯罪が非常に多くなつて参りました。これを法律なしで放つて置きましたならば、御承知のヒロポンの何十倍の害毒が出たのじやないかと思います。ヘロインの大部分が現在ヒロポンでありますが、ヒロポンの的確な使用量はわかりませんけれども、ヘロインは多い場合に日に二十本ぐらい使うのじやないか、数字の上から見ますと……、ヘロインの注射を日に五十本ぐらい打つのじやないかと思われる中毒者もあります。そういつた関係から相当数量のヘロインが消費されておると思います。的確な、どのくらい消費されておるか、そういう不正使用のものはわかりませんですが、それで今の取締を一番困難にする理由と申しますと、一般のかたが麻薬害毒の恐しさを認識されていないということに尽きると思います。従つてまあ取締捜査官等でも麻薬というものの認識がない。従つて私のほうの小人数ではどうしても一般の警察職員の援助を仰がないとできない状態でございますが、そういつた場合でも一般の警察職員のかたに認識が足りないために、相当取締その他で困難な場合がございます。それと一般のかたの認識の足りないことも困難を来たしておる理由でございます。それと税関が、現在直接私のほうの職員のように司法警察権を持つていない、そういつた点も一つ大きな困難な理由でございます。これは一番いいのは、税関で抑えて頂ければ一番いいわけでございます。併し税関のかたがまだ馴れていないということと、それから司法警察権を持つていられない。そういつた点で大もとで抑えて頂ければ、散らばる前に大もとで抑えて頂ければ、相当防げるのじやないかと思われる場合が相当ございます。それと併し運ばれますものが、密輸入されますものが、かさが非常に小さい、そういう点から必ずしも税関を通らない。小さな船でもどこの海岸にも揚げられる。そういつた点が一つの大きな取締の困難な理由になつております。それから消費数量と申しますと、合法的な消費数量でございますか。
  57. 團伊能

    團伊能君 いえ、一般の最近非常に若い連中にこの注射が拡まつておるという寒心すべき情報がいろいろ来ますので、その点でちよつと伺つたのです。なお取締規則が現在非常な欠陥があることは只今伺いましてよくわかりました。有難うございました。
  58. 有馬英二

    委員長有馬英二君) よろしうございますか。ほかに御質疑がなければ次に移ります。   —————————————
  59. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 次に派遣議員の報告を議題といたします。團委員簡單に……。
  60. 團伊能

    團伊能君 只今委員長から御指名を受けましたので、去る一月十一日から一週間ほど私岩国、徳山の元陸軍及び海軍燃料廠あとの賠償地域を視察いたしました。続いて鹿児島に参りまして、新らしく日本に帰属いたしました七島の状態を調査員の報告を聞いて帰りました。簡單なる御報告を申上げます。  岩国の陸軍燃料廠は二十七万坪ある非常に厖大な地域でございますが、その中で只今返還を受けておりますのが十万坪、転用済みのものが五万坪ばかりございますが、なお非常に大きな地域が残つております。ここを概括的に申しますと、従来の陸軍燃料廠で非常な大きな施設がございますばかりでなく、岸壁があり鉄道の引込線、或いは二里ばかり遠くから引いて参りました水道の設備もございまして、工場の立地条件としては極めて良好なものでございまして、その転用方針として大蔵省の管財局が大体これをお世話しておられますが、いろいろ設備を生かしてこれを転用させるような方法もとつておられます。これは非常に疑問がありますが、今日多少これを転用も許可されておる、使用許可されておる会社もございますし、只今まだいろいろな会社がこれに転用の願いを出して競願いたしておるものもございますが、国家施設として考えますると、非常なひどい爆撃は受けておりますけれども、その中に発電所のごとき厖大な施設があります。併しこの発電所を使うと……これは粉炭の燃料の火力発電でありますが、使うとすると、経済的には非常に成立たないようなものでございますので、部分的にこの燃料廠の一部を或いは肥料生産とか、周東化学なんというのが使つておりますが、割合にこれを転用することが、非常に機械設備が困難でありまして、大きな連関した工場の一部分一つの独立会社が使おうとしても、その動力とかその他の電気とかいう関係で、できないような状態でありますが、なお、大蔵省はできるだけこれを立地のまま利用しようという考えでありますために、今日引受けた会社がとても成算が立たないというような状態で、比較的、極めて意味のないような使い方をしておられる所が多いかと思います。要するに燃料廠でございますから、これを一つ大きな燃料関係に転用すれば、一番新らしい設計と古い設計が合致するのであります。但しその中でもこの燃料工業としては相当旧式なものに属しますので、今日とは違うものがありますが、この転用はむしろ今日壊れた工場をできるならばスクラツプで払下げて、整地して新らしいものに使う。立地条件は非常にいいところでございますから、そのほうがよいのじやないかという感想を得ました。これに関連しまして、徳山はすでに二十一万坪の地域がございますが、終戦後全部施設をスクラツプで払下げてしまいまして、平地になつています。  それで払下げたところが、それは相当出光興産とか或いは徳山市とか、農業協同組合とか、或いは専売公社などに土地を払下げたところが、そこを今度は進駐軍が急にドラム罐置場にしてしまつて、引受けたけれども現在は使えないというような状態になつております。これらのところは将来何か行政協定その他で、すでに払下げた地域をただ進駐軍が使用しておる形でございますが、何とか合理化して頂かなければならないような問題がまあ所々に起つておりました。なお徳山は、その山の中に十一基ほど、一基は爆破いたしておりますが、十一基ほど五万トンの燃料を入れる地下のタンクの厖大なものが残つております。これは全部今日空になつております。半製のものも一つありました。こういうようなものはそのまま遊休施設として遊んでおりますのは非常に残念なことだと思いますが、これらの両燃料廠の跡を見ますと、やはりこれらの施設を活かすには国家的な総合計画を早く立てて、活き得るものは活かし、そうして不要なものは払下げるというような、もう少し大蔵省の管財局が單なる収支計算の上からのみこれを払下げておるのではなく、積極的な国家計画の上からお考えになつて、活かされるというようなほうがいいということを考えました。具体的なことは報告に書きまして又御説明いたします。  なお七島の問題は、先日ちよつと質問いたしましたので大体盡きておりますが、結論だけ申しますと、この七島の生活困窮者の救済は、米国の管轄時代におきましても非常に不満足でありまして、飢餓に瀕する程度のものが非常に多かつたのであります。日本治下になりまして、月収三千円以下の者が多く、生活保護法の適用を受ける者が大部分でありますが、これらの生活状態の向上を速急に講じて頂きたい。それからルース台風によりまして、この地方、琉球は昨年非常な台風がありまして、学校は殆んど潰れておりまして、僅かに屋根を葺いて、而も吹きさらしの所に生徒が集つておる状態である。これらの学校建設も至急に必要である。なおガリオア資金百五十万円ばかりで道路を作つたのでありますが、司令部のことで余り申上げられないかも知れませんが、ガリオア資金の返済を要求しておるような特殊な事情があります。なお公務員の給与を補填する必要がございますし、又アメリカ側の補助打切りによりましていろんな補填しなければならない費用も諸方に見られます。又この七島の一番重大な問題は、交通が杜絶しているような状態でありますので、何とかして早く交通機関をやつて頂きたい。実は私企業で鹿児島汽船会社がこれを計画しているということもありましたけれども、到底私企業としては成立ち得ません。殊に台風が多い所でありますので、相当船が堅牢でなければならない。僅か二百トンぐらいの船で通つては非常に危険がありますので、交通の復活を第一にして頂きたいと思います。これには先日申上げましたが、鹿児島湾に終戦直後ございました金十丸、八百トン余りのものが取られてしまつて、今奄美大島へ行つておりまして、奄美大島、琉球間を通つておりますが、これが従来はこの七島と奄美大島を繋いでおつたのでありますが、これをもう一遍こちらに接収を解除して頂きまして、金十丸を運航さして頂く、できれば協約を結びまして、七島を過ぎて奄美大島に行く、そうすれば経済的にも成立つことができるかと思いますが、取りあえずここの交通を早く開いて、一つ我々のために生活物資の補給その他の改善をして頂きたい。これを單に地方行政の部門に属し、鹿児島県の一部といたしまして、鹿児島県の管轄下にあつて、鹿児島県費によつて助けるというだけでは到底不十分でございますから、特殊な状態として国家的に援助する方法を考えて頂けたらよかろうというのが私の視察の結論でございます。甚だ簡単でございますが、御報告申上げます。
  61. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは第二班といたしまして私と金子委員と二人、随行として久保田貫一郎專門員、委員部主事杉山君、この四名で新潟、福島両県下の視察を行いましたことを簡單に御報告申上げます。  私ども委員らは新潟、福島両県下の賠償指定工場及び不法入国監視状況視察のため、一月十七日に東京を出発いたしまして、長岡市、新潟市、佐渡ヶ島、福島市を経て一月十九日帰京いたしました。  賠償指定工場といたしましては長岡市で、津上製作所及び倉敷機械長岡工場を、新潟市では新潟鉄工所を、それから福島市では日中産業福島工場、福島製作所、富士産業福島工場、サクラ計機及び旧第一海軍技術研究所疎開倉庫の五ヶ所を見学したほか、両県庁で主任官から説明を聴取し、又業者と賠償関係の懇談をいたす機会を持ちました。  新潟県下の三工場中、津上製作所では賠償指定機械が二百三十台、これは目下全部稼動中で、休止しているものは一台もありませんが、倉敷機械長岡工場では賠償指定機械三百四十六台中、稼動中のものが二百九台で、残り百三十七台は休止中の状態であります。又新潟鉄工所では賠償指定の四百四十一台中、稼動中のものが三百四台で、残り百三十七台は遊んでおるような状態であります。県下全体といたしましては七千五台の賠償指定機械中、目下稼動中のものは三千六百四十三台でありまして、残りの三千三百六十二台は全然利用されないで遊んでいる状況であります。  福島県下では、工場別の数字は省略いたしまして、全体としてみますと、賠償指定機械三千八百五十四台中、稼動即ち利用されているものは一千百二十三台で、残りの二千七百三十一台は休止中の状態であります。その他に旧海軍技術研究所の疎開機械が東北財務局所管として倉庫に二百九十四台眠つております。  これらの賠償指定の機械は、当該工場で利用できるものは利用し、他工場へ貸与できるものは貸与されて、でき得る限り利用する方針の下にあるのでありますが、機械そのものが武器製造用のものであつたり、又工場の立地条件が惡く、利用しても引合わない等の理由で、以上のように多数の遊休施設が残存している次第であります。  このように新潟、福島両県だけでも六千台の機械が遊んでおるわけでありまして、全国としてみますると、恐らく数万台の機械が休止中のことでありましよう。これは国家経済の上から遺憾なことで一日も早くこれらの遊休機械が日本経済のプラスとなつて動き出すよう、政府としては総合的な対策を考えるべきであると思われます。最近伝えられるところによりますと、米国では工作機械が不足しておるので、工作機械買入れのためのミツシヨンが目下来朝中の由でありますが、これらの遊休施設には工作機械が多いから、これらを余すところなく見てもらつて、日米合作の上これらの利用を考案することがよいと思われます。  賠償指定工場側では、税金の問題、監理維持費の問題、賠償指定解除後の措置等について政府に対する要望が相当ある模様で、連絡協議会を作つて全国的に協議中でありますから、政府側としても明確な対策を持つて措置することが必要と考えられます。なお佐渡ヶ島では大平鉱業を見ました。  それから不法入国につきましては、両県の警察隊並びに新潟の第九管区海上保安本部で説明を聴取しました。又佐渡ヶ島の二見村で監視哨の事情を聴取いたしました。新潟県では不法入国は昭和二十四年百二十三名を最後といたしましてその後はなく、ただ登録令違反等の犯罪が多少あつた程度である由であります。尤も沿岸に機雷の漂着が相当あり、これが対策に腐心している模様で、佐渡ヶ島には九カ所に監視哨が設けられてあります。これらの監視哨には各四名の職員がいて、交替制で常時監視に当つているのでありますが、臨時的の制度である関係上、設備が惡く、且つ手当も一人やつと三千円くらいで十分ではない、併しこの人件費は部落の負担とされているようで、部落としては相当の負担となつている由であります。  以上甚だ簡単でありまするが、御報告申上げます。
  62. 中山福藏

    中山福藏君 私は政務次官にちよつとお尋ねしておきたいのですが、先だつて工作機械の調査団が参りまして、団長のクラークという人が来たようですが、あの滞在中売込み運動というものが相当に激しく行われまして、特定の組合が人間、工場を制限していろいろ策動したというようなことで随分困つた業者が多かつたように思つておるのですが、ああいうふうなときにはどういうふうに指導しておられるのですか。又特別に外務省のほうから、こういうふうにしたらいいだろうというような勧告でも行なつておられるんですか、どういうふうに取扱つておられるんですか。
  63. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この問題は、実は私も個人的に昨日も聞かれまして、いろいろ調べておきたかつたんでありまするが、丁度外務省としては経済局長が今いろいろの会合に出ておりまするので、その機会を得なかつたのでありまするが、通産省が主としてこの問題の折衝といいまするか、指導、案内等に当つておりまして、外務省の経済局はいろいろ貿易、対外経済政策の基本政策の立案等をやつておりまするので、直接の折衝をいたしておりません。これ又承知し得ました範囲において次の機会にでもお答えしたいと思います。
  64. 團伊能

    團伊能君 只今委員長から御報告のありました賠償機械の問題、賠償工場、その他旧来の工廠関係のことは相当重大なものと思いますが、一度委員長におかれまして、この賠償関係の当局と、我々質問をし又意見を聞き、我我も意見を述べる機会を与えて頂きたいと思います。
  65. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 了承いたしました。   —————————————
  66. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは次に、本委員会に付託されておりまする陳情書二件を議題といたします。先ず專門員をしてその趣旨の説明をいたさせます。
  67. 久保田貫一郎

    ○專門員(久保田貫一郎君) 陳情第三百八号は、神奈川県辻堂元海軍演習地を進駐軍演習地指定反対陳情でございまして、陳情者は神奈川県藤沢市の辻堂の藤田純氏ほか一名でございます。神奈川県の辻堂にありまする元海軍演習地において終戦直後から行われました進駐軍の火薬爆破作業並びに演習によりまして地元の辻堂及び鵠沼海岸の一帯は家屋の損傷、ガラスの破損等の被害を受け、修理のできない者が多い状態である上、病人とか小児に与えた精神的影響が甚だ大きいものがあります。講和後も同地が演習地に指定されますと地元の発展を著しく阻害しますので、行政協定を契機といたしまして駐留軍の演習地として指定されないように善処願いたいという陳情でございます。
  68. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 政府説明を求めます。
  69. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) こういう問題につきましては講和発効に際しまして、日米両国間で一応全部の問題を再検討いたしまして、それぞれの地域その他を決定することになると思うのでありまして、その際にこういう陳情の趣旨、現地の要望等は折衝に当りまする者において十分考慮に入れまして、検討をして行きたい、こういうことになつております。
  70. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ほかに御質問ございませんか……。御質問がなければ、本案は採択に決定いたしまして、内閣に送付すべきものと決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 有馬英二

    委員長有馬英二君) さよう取計らいます。  次に陳情第三百四十五号。
  72. 久保田貫一郎

    ○專門員(久保田貫一郎君) 第三百四十五号の陳情は、アメリカ駐留軍国立文教地区内ホテル等利用に関する陳情でございます。陳情者は国立の一橋大学内の国立文教地区協会の中山伊知郎氏ほか二名でございます。元来国立町は、学園都市として建設されまして、一橋大学とか国立音楽大学等の学校がありまする文教地区でありまするが、最近売春を業とするホテルなどの開業が殖えましたので、学園都市としての環境が著しく破壊されております。こういうホテルが学校から見える視野の中にありまするので、教育上も遺憾の点が多いから理想的学園都市建設のために、日米行政協定の中にアメリカの進駐軍がこの文教地区内のホテルを使用しないというふうな条項を加えてもらいたい。そうして意見といたしましては、元来駐留軍は特別の場合であるのだからして、駐留地附近に特別の地区を限つた施設を設けて、学校地域、住宅地域の風紀の保持を図つてもらうようにしてもらいたい、こういう陳情であります。
  73. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 政府説明を求めます。
  74. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは別に行政協定の中にどうこうという問題にはならんかと思うのでありますが、御案内のごとく今回の協定に当りましても、日本法律は十分尊重するということにもなつておりますし、又建前としても日本の風俗、習慣その他を十分理解、考慮に入れて行動するということでありまするので、先方においても適当に善処されることと思うのでありますが、なお総司令部等を通じまして、部隊幹部のほうにもこういう問題があるということは十分伝えまして、適当なる対処策を講じてもらつておるのであります。併し問題はむしろ日本の内部にあるのでありまして、今後日本といたしましても、十分そういうものの風紀保持といいますか、風紀上の取締をやつて行かねばならんと思うのであります。昨日の衆議院の外務委員会におきましてもいろいろ意見、質問等がありました。勿論、当局においてもこういう問題について十分考究し、今後の対策を考えて行かねばならんということを政府のほうでも答えておりました。両々相待ちまして適当なる施策を講じて行かねばならんかと思つております。
  75. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 只今の政務次官の御意見の中に、この問題を行政協定に入れる範囲外だとおつしやつておるのは甚だ当を得ないと思うのであります。安保条約第三条にアメリカ軍隊の日本国及びその附近における配備を規律する条件、これこそが行政協定の中心で、只今のように国立でそういうふうにアメリカの軍人が風紀に関して学園都市に重大な障害を及ぼしておるというようなこと、そういうことが解決できないようなことで何の行政協定であるか、あなたはたくさんの言葉をお使いになりましたが、たくさんの言葉は要らないので、やはりこれに対しては外務次官としては善処するということを明言さるべきもので、その点あなたの見解は間違つておるのじやないかと思いますので、明快にして頂きたいと思います。
  76. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは、私はいろいろのまあ売春の場所のことでありますから……今行われておるものが日本関係のものでありまして、一般日本の風紀の取締の問題として研究して行かねばならん問題であり、それから同時に、駐留軍は日本の法令は十分尊重するという建前になつておりますので、私はそのことを只今申上げたのでありまして、放つて置くということではないので、善処するということを申上げたのであります。
  77. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたの、善処するかしないかというその言葉尻を言つておるのではなくて、善処されるものについて、これは当然行政協定が解決すべき問題でないとあなたが言われる、そうでないけれども、まあ折角陳情が出ているからお慈悲的にやろうというふうにとれるので、私が非常に遺憾だと言うのはその点であります。当然行政協定はアメリカの軍人、軍属、その家族の風紀をも規律するものでありますから、政府としてそういう逃げ口上は許されないと思います。
  78. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) こういうホテルその他のものは駐留軍自身の施設ではないのでありまして、そういう意味で行政協定自体の中に織込むべき筋合いのものでないのじやないかということを私は申上げたのでありまして、この問題を全然政府として取上げていないということは一つも言わないのであります。これは兼岩委員が何か誤解をされているのじやないかと思います。
  79. 團伊能

    團伊能君 この国立の問題は私自身が陳情を受けております。それでこれは日本人が甚だ変なホテルの開業をして、進駐軍はそこにいるわけじやありませんが、よそからやつて来る者を誘うような所を作つている。それで外務次官も地方行政に非常に御精通のかたでありますから、その方法は十分にお考えになると思いますが、併し是非これはホテルを立退かせるとか、文教地区として特殊な施設について政府としてよく考えて頂いて、この地区からこういう如何わしきものを、而も学校の隣りにあるのでありますから、それをどこかに退けてもらうよう一つお骨折りを願いたいと思います。
  80. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 承知いたしました。
  81. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ほかに御質疑がなければ、本件は採択することに決定いたしますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それではさよう取計らいます。
  83. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 議事進行について……、私今日十時に正確に来たのです。そうしたら皆さんが来ておられないので、拡声器で呼んで頂きたいということで……、それでずつと自分の所用を果しておりましたために、連絡がありまして参りましたら、すでに始まつておりました。今日は十時から岡崎国務大臣が来られて行政協定について、かねて議事の方針としてきまつていた重要問題についてやるものと考えて私は十時より前に来たら、全く違つた議事進行がとられたのですが、それはどういう事情ですか。
  84. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 実は岡崎国務大臣が本日特別にラスク特使と何か話合いがありまして、本日はどうしても都合がつかないというお断わりが昨日の午後になつてありました。再三交渉をいたしたのでありますけれども、どうしても都合がつかんということで、然らば他の付託された事項を審議しようと、こういうようなことにいたしたようなわけであります。一つ御了承願いたいと思います。
  85. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は、この会派の如何にかかわらず行政協定が安保条約の仕上げとして、如何に今後重大なる役割を日本国民に及ぼすかということは、思い半ばに過ぐるものがあると思うのです。従つて、きまつたことはこの外務委員会としてやつて行かないと、結局開店休業のような形で愚弄された、侮辱された形において、この委員会が、政府当局から国民の代表でありながら、聾棧敷にされるというふうにこの委員会が運営されている事情を甚だ情けないと思います。従つて理事会で十分検討されまして、これからは政府委員、大臣といえども公僕であり、第一級の公僕である。率先して、我々に求められるまでもなく詳細に説明する義務があると私は思うのですが、この委員会の運営につきまして、会派の如何を問わず問題を明確にするという点について、一段の委員長及び理事諸君の御努力をお願いします。
  86. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それじや一言委員長としてお答えいたします。決して会派によつてどうこう運営を違えるというようなことを考えておりません。常に公平にやつておるつもりでありますが、本日の岡崎国務大臣の出席のできなかつたことは、昨日は内容がはつきりいたしておりませんでしたが、今朝になりまして、漸くなぜ国務大臣が出席できないかということが大体明らかになりました。それは決してこの会を無視しているとか、或いは軽視しているとかいうような意味ではないように私は解釈いたしたものですから、了承したようなわけであります
  87. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どういう点でしようか。
  88. 有馬英二

    委員長有馬英二君) その点は一つ御了承願いたいと思います。なお行政協定のことは政府は本日発表するというようなことでありますから、その後におきまして今後十分御検討を願いたい。本日は誠に遺憾でありましたけれども、本日だけは一つ他日に譲ることに御了承願いたい。
  89. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は会派によつてどうと言つたのではなくて、どういう会派に所属しようとも、行政協定が調印される前に問題を明らかにされることは、国民の代表としての義務であり、政府は公僕として事前にこれを明らかにする義務があるのじやないか。従つてこの外務委員会が十分にそのために働くというふうにならなければいけないのに、どうも我々は時間を守つても大臣のほうが約束を守らないという形で、そのまま調印に辷り込んでしまうということは、委員会として非常に遺憾だと思います。勿論調印後といえども我々はその正当性を検討して、その会派々々の立場から、それを明確にして行かなければならんことは無論ですが、私は以前においてこの委員会で十分それを検討しなければならんのじやないかということを言つているので、会派の問題はそういう意味ですから、一つ委員長理事におかれまして、今後の運営について毅然として約束を守つて、問題を明快にして行くということに、一段と御努力をお願いしたい、こういうふうにお願いしておきます。
  90. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それではお答えいたします。私は兼岩委員の御意見に全く賛成しているのであります。兼岩委員が言われるように、行政協定を調印前にこの外務委員会で十分審議をするという必要がある、それが当り前であると私は思つてつたのでありますが、政府はそういう見解をとつておらないことは衆議院のいろいろの委員会においても政府が言つている通りでありまして、甚だ我が意を得ないと私は思つておるので、この点は今後の行政協定審議といいましようか、におきまして、十分一つ政府責任を問うべき必要があるのではないかと私は考えておるのであります。どうぞその点は御了承を願いたい、かように思うのです。  それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後零時三十八分散会