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1952-02-22 第13回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十二日(金曜日)    午前十一時二十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     有馬 英二君    理事            吉川末次郎君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            加藤シヅエ君            大隈 信幸君            兼岩 傳一君   出席国務大臣    国 務 大 臣 岡崎 勝男君   事務局側    常任委員会専門    員       坂西 志保君    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件国際情勢等に関する調査の件(行政  協定に関する件)   —————————————
  2. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 只今から外務委員会を開会いたします。  本日は国際情勢等に関する調査のうち行政協定を議題といたします。先ずその交渉経過について岡崎国務大臣から説明を求めます。
  3. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大分長くかかりましたがまだ各種の点について検討中のものがありましてまだ結論に達しておりません。併しながらどのくらいということはわかりませんがそう長くかからずにもうじきにできるであろうと考えております。で今まで話合いの付いたものも随分ありますが、これについては意見が大体主義上一致し、かなり具体的に話がまとまりますと、起草委員会というのがありまして起草委員のほうへその内容を廻します。そうすると起草委員のほうでこれを條文に書き換えて整理をいたすことにしております。今起草委員のほうにかかつておりますものは十五件ありますか、もう少しあるかも知れません。但しそれが幾條の條文になるかということは、これはやつてみないとわかりません。條文としては殖える場合もあり減る場合もあると思います。大体そういうような状況で来ております。
  4. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 議事進行について。何も殆んど説明されたというふうには僕ら感じないのだが、これで今明日でももうすでに十一時半ですが、問題が非常に重要でそれぞれの委員がお持ちと思いますが私も質さなければならない数点を飽くまで質したいと考えておりますが、議事進行について大体の御分針を承わつてから質疑その他お許し願いたいと思います。
  5. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 了承いたしました。それでは只今国務大臣から非常に簡單にお話がありましたが、もう少しく内容について詳しいお話を要求されてもいいのでありますから、別に條文について一々御説明を願わなくても、我々の納得の行くように一つできる限り詳細に御説明を願いたいと思います。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今交渉経過についてとおつしやつて内容ということをおつしやらなかつたの経過をただ述べただけなんです。内容のほうについて申上げると、これは無論條文等はできておりませんが、大きな問題もあり小さな問題もあるので大きな問題から先に申しますと、第一にアメリカ駐留軍が使用する施設及び区域をどういうふうにきめるかという点が一つあります。第二には、アメリカ駐留軍若しくはその所属員がどういうふうに課税取扱われるかという問題があると思います。それからよく新聞に出ておりまする裁判管轄権の問題もあると思います。それから合同委員会の問題もあると思います。それから緊急の事態が起つた場合にどうしたらよろしいであろうかという点もあるのでございまして、大きな問題は先ず洗つてみればそのくらいになるのじやないかと思います。小さな問題としては、これは小さいかどうかは私の考えですが、例えば気象観測についてどういうふうにお互いにやるか、或いはアメリカ人日本国内におる軍に所属しない者で在郷軍人会というような種類のものを組織することの可否。それからさつきの大きな問題としては問題にはならないのですが、趣旨としては大きい問題として、日本法律アメリカ軍隊所属員が尊重しこれを守る、こういう点もあると思います。それから費用の問題でありますが、これは主義は別として話合の点は非常に内容の細かい技術的の点で行なつております。費用の総額については国会に提出した予算に組んでありまして、その費用をどういうふうにして使用するか、あとで御説明してもいいですが、そういう技術的な問題が多くあります。それから協定を修正する場合にはどういう手続を経るか、或いはこれが終了するのはどういう場合であるか、その他この協定の中に使う各種名称の定義はどういうふうにするか、まあいろいろなそういう各種の問題が属しております。  そこで大きい問題として施設及び区域につきましては、第一に考え方として、これはどういうふうに扱われるか別として、行政協定の中では両国政府合意によつて成立したものだけを新らしく施設区域に使う、こういう主義が明らかにされると考えております。ただこの実際の取扱としては成るべく早く施設区域を決定したいと思いますので、協定が成立するのは講和條約の発効後でありますが、その前にも予備的にどんどんきまるものはきめて行つたほうがよろしいのじやないか、こう思つております。施設区域については更に日本の経済に対してできるだけ支障のないようにいたして、施設区域を設定すべきであるという原則については、両国間に意見の一致をみております。又施設区域については要らなくなつた場合には速かに日本に返還するし、又始終使わないものは使わない期間は日本側でこれを使用してもいいじやないかというような趣旨原則的な話合は進んでおります。要するにこれは観念的なことになるかもしれませんが、占領が終了すると、今まで接收と申しますか、そういう形容占領軍が使つていた施設区域等は全部なくなつて、新らしく合意によつて施設区域を使用するということになります。但し新らしく合意によつて今まで使つたものを自然使うということが随分あると思いますが、観念的には二つに分れるわけであります。  それから税の問題は、これは非常に技術的の点があるのですが、原則的な考え方としては、二重課税をいたさないということが一つ。それからアメリカ予算において支出された金で買うものについては課税をしない、これは日本のほうから防衛分担金を出しますけれども、この防衛分担金を使用して買つたり建てたりするものについてもやはり課税はしないのでありますから、政府の金でありますから。そういう二つ主義原則から成り立つております。これを併し実際に適用した場合に、横流し等が行われないようにいろいろ技術的にはむずかしい問題がたくさんあると思います。  それから裁判管轄権につきましては、通例国際法若しくは国際慣習等によりますと、いわゆる属地主義というのと属人主義とでもいいますか、言葉は正確ではありますまいがこういう二つやり方が従来行われておりました。今度第三番目は北大西洋條約の行政協定というものが作られております。で、属地主義というのは一番のいい例はフイリピンの例だろうと思います。アメリカフイリピンの間の協定によりますと、アメリカは非常に広大な土地軍事基地として使用することになつている。その基地の中には多数のフイリピン人が住んでおります。そういう基地の中ではアメリカ裁判権が適用されて、フイリピン人でも第三国人でも、無論アメリカ人はそうでありますが、これは全部アメリカ裁判権に服する。その代り基地の外ではフイリピン裁判権が適用される、これはアメリカ軍人に対しても同じであります。公務によるものは別でありますが、公務以外のアメリカ人の行為についてはフイリピン裁判権が適用される、こういう、いわゆる属地主義というのがあります。その半面に今度は基地というような広いところを設定しないのが最近のやり方のように思いますが、それはいわゆる施設とか区域とか各地に必要なものを認める、その場合に施設区域内外を問わずしてアメリカの軍に所属するものについてはアメリカ裁判権が適用される、アメリカの軍に所属しないもの、つまり日本人とか、第三国人とかについては日本裁判権がすべて適用される、人によつてこれは区別される、こういう二つやり方があるようであります。それから北大西洋條約に基く行政協定は、これはまだできておりませんが案文はあるのであります。この案文ではやはりその施設区域等の中ではいわゆる属人主義みたいなものが適用される、外ではその国の法律、その国の裁判権が適用される、こういう属地主義属人主義を設けてその国に対して駐屯されるほうの国に裁判権を擴大しておるやり方があります。このいわゆる属地的な観念基地という観念にもくつついておるものであるし、又その中で全然その国の裁判権が適用されないという考え方は治外法権的な色彩が非常に強いので、最近ではこの属人主義的なやり方各国で行われておるようであります。まあそのほうがいいとされておるようであります。我々のほうで今考えておりますのは、やはり第二のやり方行つて北大西洋行政協定が成立したならば、その北大西洋條約の行政協定やり方を採用して今のやり方を変えよう、こう考えております。従つて暫定的と言えば暫定的でありますが、取りあえず国際的なやり方は、このいわゆる属人主義属地主義しかありませんと思いますので属人主義的な方向で行こうと考えております。  それからさつき言われた分担金の問題については何といいますか、いろいろのものを洗いざらいして日本政府では知らずに支出しているものがないように、つまり六百数十億の金を分担金として出すのですが、それ以外にアメリカ駐屯軍のために知らずに支出しておるものがないようにいろいろな点を洗つて、これも分担金で拂われるべきものだ、これも拂われるべきものだ、そういうものをみんな集めて技術的に研究しておるわけであります。  それから非常の事態といいますか、侵略が行われているとか、或いは行われる気配が非常に濃厚であるというような場合にどうするかという問題につきましても、北大西洋條約の場合には、初めは各国にそれぞれ皆軍隊を持つておりますから、これが緊密に連絡をしていざという場合には皆が助け合つて防衛をやるんだ、こういう観念で来ておつたのですが、元来これは侵略を防ぐ手段として條約が結ばれたのであつて、その侵略を防ぐためには相手方に、こちらのほうはこういうふうにきちんとやつていつでも対応できるような恰好ができておるんだということを示す意味にも関連して、各国軍隊がばらばらにいるんじやなくて、一緒になつて欧州の全部の軍隊と考えられ、そうしてその上に合同司令部があり、最高司令官がおる、御承知のアイゼンハワー元帥最高司令官各国軍隊がその下にこうずつとある、こういうきちんとした態勢を整えておるのであります。日本の場合にもそういう態勢が望ましいことは望ましいのでありますが、こちらには今のところ軍隊もありませんし、現在そう緊急の事態が起つておるとも認められませんので、どういうふうにしますか、まあ原則的にはそういう大変な場合があつたと仮定すれば、これはないことが原則なんですが万一の場合には十分両国政府で相談して、適当の手段を講ずる以外には方法がないのじやないかと、こうも考えております。主なる問題についての内容はまあ大体そういうことであります。
  7. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 議事進行について。まだ合同委員会の問題が残つておりますし、日本法律を守る問題も残つておりますよ。あなたの大きい問題として挙げられた七つのうちあなたは五つ……。
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつとそれじや御説明いたします。合同委員会につきましては、これは主として施設及び区域を研究するものでありまして、一遍これをきめましても要らなくなつた施設区域があれば速かに日本側に返還しなければならないし、又新らしく要するものがあるとすればこれを認定して、新らしく合意で成立させなければならないという点が主なる問題だと思いますが、将来はいろいろほかの問題も入つて来ると思います。一つは技術的といえば技術的でありますが、例えば公務以外でアメリカ軍人が外で日本人にけがをさせたとか損害を與えたという場合の取扱方などということも一応は裁判所にもかかるわけでありますが、こういう合同委員会でもそれに関與する場合もあり得ると思います。その他協定の運営に関していろいろ問題が出てくればそれも合同委員会で相談すると思います。併し主として施設及び区域でありますが、これは合同委員会協定が成立してからできるのであつて、我々としてはその前にでも成るべく予備的にでも施設区域について打合せは早くいたしまして早くきめるものはきめてしまいたいと考えております。  それから日本法律を守るということは、これは一つの規定になつております。これはまあ当然のことといえば当然のことでありますが、アメリカの軍に所属する者といえども日本法律に違返した者は罰せられる、こういう趣旨であります。
  9. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 大体それで御説明終つたのでありましようが、もう少し……。
  10. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あります。小さな問題と言われた中に在郷軍人会とか、気象観測のようなものに……。
  11. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それはあるのですが、ちよつと国務大臣にお伺いするのですが、大臣はラスクにお会いになるので時間が限定されておるようなことでありますから、このたくさんの項目について各委員からいろいろ御質問があるに違いがないのでありまして、今日一日では到底そのことが完全に行われるとは考えられませんから、第一或いは第二というように順序を追いまして今の御説明に対して皆さんから質問をして頂くというように取計らいたいと思いますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは今の重要な大きな問題というものの第一として、軍の施設につきまして質問がおありでありましたら順次御質問を願います。
  13. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 非常にちよつと皮肉な質問ですが、軍事基地日本に作らないということをしきりに総理以下がんばつておられた魂胆が漸く私は今日岡崎大臣説明を聞いてわかつたような気がするのですが、つまり非常に皮肉に言えば、軍事基地、これは常識があれば立川が軍事基地であるかないか、そんなことは三才の童兒質問するさえ無駄なことですが、それをあえて施設区域というような、こういうふうにしておられるのは、結局属地主義をはつきりとれば、治外法権の区域ができる、属人主義にしておれば、アメリカ人が、軍人軍属が自由に全部日本国内において日本法律に罰せられることなく行ける。それであとでお尋ねしようと思つた六の日本法律を守るといつたつて空言空語であつて、実際属人主義をとる限り施設軍事基地外といえども到る所自由である、こういう結果を恐れて軍事基地を作らないというふうに詭弁を弄しておられたというふうに察せられたのですが、あなたの御説明について私のそういう疑問を解いて頂きたいと思います。第一問。
  14. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはとんでもない話でありまして、日本法律を守り、日本法律に違反すれば処罰されるということは、先ほど申上げた通りであります。日本国中どこへでも行つて勝手なことができるなんという、そういう間違つた観念は根本的に取り去つて頂きたいと思います。日本の警察は日本法律に違反した者に対しては逮捕をし先方に引渡すという権利を当然持つておるのであります。
  15. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたが三の御説明で、あとでもう一遍三のときに又その点明快にしてもよろしいが、関連するから便宜上三の問題に触れます。あなたは公務による軍人軍属の行動に対しては何ら日本法律で抑えられないとはつきり説明しておられるのです。つまり属人主義アメリカ法律によつてアメリカ裁判にかける、日本国内において。ところがあなたは一方に日本法律を守るということを第六の項目で言つておられる。これはどういうことですか。
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 少し国際法なり国際慣例なりを御研究になれば、一国の軍隊が外国において駐屯し若しくは行動する場合において、公務に基く各種違反事項についてはその国の裁判権を及ぼした例はないのであります。
  17. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると日本法律を守るということはどういう場合ですか。軍人について説明して下さい。
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 軍人でも何でも日本法律は守るのであります。ただその処罰裁判やり方が、アメリカ裁判によるか日本裁判によるかという差があるというだけのことであります。
  19. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 その差を説明して下さい。どちらにありますか。あなたの今日の御説明によれば、基地内では、施設区域、あなたの言葉では施設区域の中では公務以外の問題についてきまつていたら明快にし下てさい、その点。
  20. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まだ協定内容はきまつておりませんから説明しませんが、先ほど申したのは、一般の国際慣例によると、軍事基地を設定してその基地の中では何といいますか、排他的にアメリカ裁判権が及ぶし、基地外ではその国の裁判権が及ぶというやり方がいわゆる属地主義であつて、これがフイリピンアメリカの間の協定にあるところである。その場合には基地というのは非常に広大な地域で、中にフイリピン人の多数が住んでおるような地域を設定しておる。もう一つやり方は、施設区域といつて基地というものを設定しないで、個々の建物なり個々土地なりを使用する場合、その場合にはその国の国民が住んでおるということは想像できないのでありますが、そういう場合もある、そのときは、その区域なり施設なりの内外を問わず、アメリカ人犯罪に対してはアメリカ裁判が、日本人い或は第三国人犯罪に対しては日本裁判管轄権が行われる。こういうやり方がある。それでそれを俗に称して前のを属地主義あとのを属人主義と言つておる。それで原則的には我々は属人主義のほうで行こうとしておるが、北大西洋條約の行政協定ができれば、それを何といいますか、選択する自由はとつておる、こういうことであります。
  21. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうしますとこの施設区域の中で、公務以外でアメリカ軍人軍属が犯した場合に、日本法律としましてはこれを処罰できるのですか、できないのですか。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 処罰は当然できます。ただその裁判アメリカ人である場合には裁判アメリカの法廷がする、こういうことであります。
  23. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 外は如何ですか、施設区域外
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 外も今申した通り。それが属人主義と俗に言われることであります。
  25. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 だけれども、日本法律に基いて、犯したことが日本法律によつて日本裁判によつて処罰できんとすると、アメリカ裁判日本法律に背くということを代つて処罰してくれるという意味ですか。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは我々もアメリカの刑法なり刑事訴訟法なりをかなり專門家に研究してもらいました。日本の刑法なり、刑事訴訟法なりとごく些細な点は無論違うのでありますが、大きな点では一向違わないのであります。併し違うにしても、違わないにしても、日本法律によつて罪にされるべきものは、その法律に基いてアメリカのほうで裁判してその判決を下す、さういうことであります。
  27. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 逮捕は如何ですか。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これも只今協定内容お話しておるのじやなくして一般的の観念お話しておるのですが、施設及び区域の中における逮捕アメリカ側がやる、外側における逮捕日本側がやる、これが普通の国際慣習観念であります。
  29. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 ちよつとお伺いしますが、今の日本法律を守るということが原則になつておるのですが、この法律が行使されるということは、司法権を通じて裁判ならば裁判で行われるわけなんですが、そのときにアメリカ人裁判官はその日本法律に基いてやるのですか、アメリカ法律に基いてやるのですか。若し日本法律によつてその裁判が行われるのでなければ、日本法律は行われないということになるのじやないですか。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは実際上の問題としては、仮にアメリカ法律日本法律が全然或る事件について同じであつたならばどつちといつうことはないと思います。併しアメリカ法律では罪にならなくて日本法律では罪になるという場合があつたとすれば、やはりこれは日本法律に基いて裁判をするのであります。
  31. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それからもう一つお尋ねしておきますが、それはひとりアメリカ兵隊ばかりでなしに兵隊以外のシビリアン或いは兵隊及びシビリアン家族というものについても同様な法律関係が行われるのですか。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは協定の仕方によると思います。併し例えば一九四一年に締結され、その後修正されたアメリカイギリスとの間の駐屯に関する協定がありますが、アメリカ軍隊イギリス駐屯しておる、これによりますと、やはり軍に所属する者及びその家族、まあ日本言葉で平つたく言えば軍人軍属及びその家族、こういうことになつております。
  33. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 今朝の朝日新聞に東大の国際法教授横田喜三郎さんがその問題について何か書いておられたようで、私も明確に今はつきり記憶はいたしておりませんが、何か日本のこのたびのそういう裁判管轄権の問題についての事例というものが、欧州における米兵の駐屯に関して行われる裁判管轄権の行使と非常に違つた関係になるようなことが書いてあつたと思われるのですが、それはどうなんでしよう。今多少そういうお話イギリス米軍軍事基地の例についてお話がありましたが、もう少し詳しく御説明を願います。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も横田君の書いたものは見ましたが、あれは必ずしも私から言えば正確でない点があると思います。つまり家族を入れるということはその例を見ないというふうに書いてあつたかと思いますが、これも正確じやありませんが。ところが今申したように米英間の現在行われているやり方はいわゆる属人主義をとつておりまして、家旅も入れておるのです。併しいずれにしましてもこれは我々のほうから言いましても暫定的なやり方であつてイギリスアメリカとの間でもこれは暫定的なやり方であつて、いずれは北大西洋條約に基く行政協定が成立すると思います。そうするとこれは欧州各国アメリカとの間の行政協定であつて、今一番この新らしいやり方と思われておりまするから、これが効力を発生すれば無論英米間の協定もこれに切換えられるわけですが、日本アメリカ協定もこれに切換えてこの方式を採用しようと考えております。併しその間は日本アメリカとの間も、イギリスアメリカとの間のも似通つたいわゆる属人主義といいますか、これをとつております。
  35. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 軍事基地及び施設区域という名称について、兼岩君からも御質問がありましたが、私の挾い範囲の経験から見ますると、例えば所沢その他の米軍が今日駐屯いたしておりまする地域は向うでもミリタリーベースという言葉を使つております。まあ言葉通り訳すれば軍事基地だと思うのでございますが、そうすると今度は施設区域というような言葉を今お使いになつたのですが、施設区域というのは何かパシリテイといいますか、区域というのはエーリアといいますか、そういう英語の名称一つお話願いたいのと、現在のミリタリーベースという言葉によつて観念されているところの内容と、どういう相違がありますか。
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 現在は、今初めの御質問はその通りです。パシリテイです。それからエーリア、今のミリタリーベースと書いてありますのは、これは軍の書いておることで、非常に法律的に正確かどうか知りませんが、併し今は占領中でありますので、日本法律の尊重というようなことは、この区域内には及ばないのです。軍事基地というような言葉を使いますと、とかく施設内にはその国の法律の効果は及ばないというのは、いわゆる治外法権的な観念が伴いますので、我我はこれを避けて施設区域と、こう言つております。その施設区域の中でも、そしてアメリカ軍人でも、日本法律は尊重し、これを守らなければならん、これに違反すれば処罰される。こういう観念になつておりまして、いわゆる治外法権的な色彩を拂拭したい、こう思つております。裁判管轄権の問題につきますと、今のところはいわゆるそのさつき申した属地主義と申しますか、その他属人主義か、その二つ国際的の慣習にできておりますから、新らしい北大西洋條約の行政協定ができ上りますまでは、そのどちらかをとらなければならん。併しどちらをとつたらよかろうかということになりますと、治外法権的な色彩の強い、日本法律が滲透しない一種の所があるよりは、全部に滲透するという原則がよろしいであろうとこう考えて、属人的な方式をとろうといたしておるのであります。  尤も家族についてお断わりしておきますが、北大西洋條約の行政協定はいろいろの意味軍隊駐屯されるほうの権力を成るべく擴大しようとしております。併しながらそれでも何と申しますか、駐屯する軍隊に與えられる特権は、その軍隊所属員家族にも及ぶことになつております。尤もこれはまだ成立はいたしておりませんのですが、そういうような事情もあります。
  37. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 そうすると北大西洋條約が新らしく成立すれば、大体において裁判管轄権の交渉の問題等については、その北大西洋條約の例に全くよるものとなるというように解釈してよろしうございますか。
  38. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは自然にそうなるのではなくて、日本政府で現行を欲するか、北大西洋條約のようなものを欲するか、その撰択権を日本政府が留保する、こういう形にするつもりであります。
  39. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今度この施設及び区域内外において先般のような爆彈が上から落ちて来たり、飛行機が落ちた場合、こういうことに対してはどういうような内容になるのですか。その損害補償の問題ですね。いわゆるあなたの言う公務による損害。
  40. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今までの国際的な慣習及び北大西洋條約に基く協定、これはまだ成立しておりませんが、これはいずれも両国政府が分担してその損害を補償するということになります。ただ分担の率といいますか、率が、五〇%と五〇%というやり方もありますし、二五%と七五%というようなやり方もある。この率においては違いがありますが、いずれにしても補償額については両国政府が分担するというのが今までのやり方であります。そこでこれも先ほど申したような吉川さんの御質問分担金の問題に関連しておるのですが、若しも仮に日本の六百四十億ですか、これを分担金として出す、アメリカ側もこれと同じものを出す、これはアメリカ駐屯する現在の費用として両方から出したものがこの金であるわけです。この金のうち日本側の分から何%出す、アメリカのほうの分から何%出すということになれば、この全体はアメリカ軍隊日本駐屯するための費用として出してあるものであるから、率をどう取ろうともとにかくアメリカ軍隊が使用しようとしておる費用から出すということである。若しそういう不時の場合には別に金を出し合うというのならここに率の問題が出て来る。こういう点についてはまだ話合いで決定はいたしておりませんが、原則両国政府で分担する、こういう原則になつております。
  41. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 その場合に、つまり損害を受けました国民は責任を駐留軍に……、費用の分担の内容日本人の租税とアメリカ人の租税と、どういうふうになろうともそれは一定の比率があるとして、その責任を背負うべき義務を負うものは駐留軍ですか、日本政府ですか。
  42. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 義務というのはどういうことかよくわかりませんが、その内容を御説明願います。
  43. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それはつまり公務によつて爆彈が落ちたり飛行機が落ちた場合に、家を燒かれたり家族が死んだりした場合の損害に対する補償、それを訴えるべき対象ですね。だから訴えられるほうから言えば、それに対して責任を負うべきもの、それは日本政府ですが、駐留軍ですか。及びそれは基地の内と基地の外の区域内外で変るのですか。
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 公務というのは日本の国の防衛というのが公務になるのです、公務の目的は、そのためにふだん演習もしなければならんでしよう。いろいろのことをしなければならんでしよう。その公務に基いて不測の損害が起つた場合には日本政府に訴えてくればいいわけです。日本政府が今度はアメリカ政府話合いをして損害を補償する、こういうことになります。
  45. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると責任は日本政府日本国民に対して背負うのですね。
  46. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはそうであります。
  47. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そのときにその国民の受けた損害について、合意の結果得られた額に対して非常な不満が日本人にあつた場合に、その国民はどういう手続によつてそれを満足させる手段が開かれますか。これはもうちよつと先で細かくなりますが。
  48. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日本の国民は普通法律の規定に基いて、不満であれば適当の手段が講ぜられると思います。これは日本政府がやつた場合と同じことであります。
  49. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それから今度は区域外の場合はどういうことになりますか、全く同じですか。
  50. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 区域内外を問いません。同じことであります。
  51. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その属人主義というのがなかなかどうも私ども納得ができないのでございますが、行政協定ができましていよいよ駐留軍ということになりましてから、問題はやはり我々庶民階級の日常生活にそれがどういうふうな影響があるかということから、大変な小さなことも重大な問題に転換する虞れが多分にあると思いますから、この点はもう少しお時間を頂いて十分に御説明頂きたいと思いますけれども、今ちよつと簡單に伺いたいことは、日本法律を守るということになりますと、例えば日本の交通規則などは自動車の番号は日本の鑑札で番号は與えるとか、或いはスピードの問題、運転の方法、すべて日本の今までの慣習に従つた法律駐留軍軍人及びその家族もこれを守るということになるのでしようか。
  52. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日本法律のみならず、法制といいますか規則等も全部守ることになります。
  53. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、運転手の免許はやはり日本のほうの法令によつて免許は與えるということになりますか。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは区別がありまして例えばアメリカ軍隊所属員が、その公務において運転をする自動車はアメリカの免許証があればいいわけです。自分の私有物である自動車については日本の免許証が要るわけです。
  55. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、そのどこか日本の或る場所で交通事故が起りました場合に、それがアメリカ人である場合には向うで裁判をするという場合に被害者が日本人であつた場合に、その被害者のほうの言分というものはどういうふうにして裁判に及ぼすことができるのでございましようか。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私の申上げたことは正確でなかつたか、或いは十分でなかつたかも知れませんが民事と刑事で違うのであります。民事裁判は全部日本裁判所で行われる。損害賠償とか何とか刑事々件の場合、例えば人を殺したとか何とかいう場合に、刑事々件だけがアメリカ裁判所へ行くわけであります。尤も国際的の慣例も全部ではありませんが一部にあるのには、重要な犯罪については先方に裁判権があつても引渡を要求してこちらの裁判でやるというような例も一、二ないことはありません。そういう点もいろいろ考慮研究中でございます。
  57. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ちよつとお諮りいたしますが、岡崎国務大臣は十二時半からラスクと会見するということで十五分に渡して頂きたいという申込があるのですが、もはや十五分過ぎておるのですがこの問題はまだまだ盡きないだろうと思いますので、そこで次回に延期いたしまして……。
  58. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 次回でございますけれども、我々の予定もありますので理事会で御検討の材料として、大体例えば今日の午後からとか、或いは明日の午前十時とかいうようにおきめ願いたいと思います。明日の午前十時から如何でしようか、理事会でなお御検討を願うとして。その場合に岡崎国務大臣の御都合は如何でしようか。そうすれば早く進んでいいのですが、こういう問題に荏苒日を置いておくということは私は適当でないと思いますが。
  59. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 大臣の御都合は。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今日行つてみなければわかりません。多分普通はないのですが、午前は……。明日は土曜日ですから或いは午前にやるかも知れませんのではつきりしたことは午後にならないとわかりません。
  61. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは理事会はこのあとで開きますので……、今日はこれで散会いたします。    午後零時十八分散会