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1952-04-22 第13回国会 参議院 外務・法務連合委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十二日(火曜日)    午後二時十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。   外務委員    委員長     有馬 英二君    理事            徳川 頼貞君            野田 俊作君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            伊達源一郎君            中山 福藏君            加藤シヅエ君            大隈 信幸君            兼岩 傳一君   法務委員    委員長     小野 義夫君    理事      伊藤  修君    委員            加藤 武徳君            左藤 義詮君            内村 清次君            吉田 法晴君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    外務政務次官  石原幹市郎君    外務事務官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君    入国管理庁長官 鈴木  一君    入国管理庁審判    調査部長    鈴木 政勝君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君    常任委員会專門    員       長谷川 宏君    常任委員会專門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した事件ポツダム宣言受諾に伴い発する命  令に関する件に基く外務省関係諸命  令の措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○外国人登録法案内閣提出衆議院  送付)   —————————————
  2. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 只今から外務法務連合委員会を開会いたします。  前回に引続きまして、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案及び外国人登録法案を議題といたします。御質疑のおありのかたは順次御質疑を願います。
  3. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁に対する質問は保留いたしまして、意見長官お見えでございますから伺いたいと思います。ここにヌの規定に「売いん又はそのあつ旋、勧誘、その場所の提供その他売いんに直接に関係がある業務に従事する者」と、こうあるのですが、これは現在の勅令九号に根拠は置いていないと思うのです。勅令九号より幅が広いのです。いわゆる勅令九号においては場所を提供したるものまでも罰してはいないのですが、いわゆる違法行為でないものまでここに置いて、行政的措置をするところの根拠理由が、私にははつきりしないのです。国内法においてそれを科罰行為とした場合においてこそ、初めて好ましからざる人として国外に退去を願うと、こういうあり方根本趣旨のように拜見するのですが、然るに国内法においてそれを科罰行為として認めていない部分をも含めるという立法趣旨が、ちよつと解することができないのですが、その点一つ御説明願いたいと思います。
  4. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 伊藤委員十分御承知通り勅令九号とは立言も違つておりますし、全然このヌそれ自身は今の九号との関連はないと御承知願つてよろしうございます。これはこれをして御覧頂いてよろしいことと存じます。今の罰則云々関連につきましては、およそこの出入国管理令建前から申しますと、罰則云々処罰の価値があるかどうかという問題よりも、日本国内に入つて頂いて日本として迷惑する、非常に困ると、或いは又日本国内におられることが日本として非常に困るというような立場基準を求めて、例えば一種の、癩予防法による癩患者というふうなものを御覧になつてもおわかりでございますが、そういう点からの基準を以て拾つておるわけでございますので、まあ然らばこれが行き過ぎではないかとか、どうとかいう問題は、これは今の角度から照らして御判断願うほかないのでありますが、我々といたしましては国際慣行と申しますか、よその法制等をも勘案いたしまして、かたがた日本としてはどうしてもかような人は困るというような立場から、この條項を置いておる次第でございます。
  5. 伊藤修

    伊藤修君 只今引例されました癩の場合におきましては、癩予防取締法という法律手当がされておりまして、これによつてそれぞれ手当が十分国内法的には賄われておると思う。それからおよそ国内法において、それが適法行為として認められた場合において、それが国際人間においては不適法行為として認めるというあり方はどうかと思うのですが、いわゆる平等の原則に反するのではないか、日本国人においても認められておる、将来においてはこれは科罰したいという考え方は我々は持つておりますが、併し少くとも現行法規においては、それが科罰行為として日本法律においては取締られていないのです。にもかかわらず、かような範囲を広めて、ただ日本政府の、若しくは日本国の感情によつてこういう範囲を広めて行くということはどうかと思うのです。若しあなたのお説のごとくとするならば、国内人々でもよくないということになるのじやないのですか。然らば国内法規において取締らなきやいかぬじやないでしようか。ここに書いてあることは国内日本国人においてもよくないことだ、日本国人外国におれば勿論これは忌避されることだ。そういう平等な立場に立つてこそ初めて、ここに納得が行くのですが、こういう條項は私はあなたの御説明として、近くそういう法律が出るからそれを予想してすでに体制を整えたと、こういうお考え方なら又首肯もできるのですが、どうですか。
  6. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 早速伊藤委員から突つ込まれまして、一応その点について弁明を申上げますが、この癩予防法を引くよりは、今考えておりますところでは、ホの貧困者放浪者のほうを引いたほうが実際はよかつたのではないかと思いますから、そういうふうに一応御了承願つておきまして、この平等の原則というようなお話もございましたけれども、まあ書生論になるかも知れませんけれども、この憲法の十四條に保障されておる平等は、申すまでもなく「すべて国民は、」というので、これは国民の間における平等を保障しておるわけであります。これはひとり日本憲法建前ばかりでなくて、およそ、大きなことを申しますが、世界的に考えて、世界統一国家というようなものができればこれはまあ別でございますけれども、今日世界おのおのの国が皆繩張りを張つて、そうして主権とか何とかを持つて対立している、独自の生存をしているという今日の世界の現況に考えまして、一体この人間というものは、およそ国境を跨いで、自由に移転し得る本来の基本的権利を持つているかどうかという問題がそこにあるわけであります。これは今申しましたように、将来の理想が仮に世界統一国家ということになれば、もとより全世界、地球上いずこといえども移動する本来の権利というものは考えられましようけれども、今日までの世界の歴史の発展及び法観念の現実におきましては国境を跨いでの移動の自由というものは、基本的人権としてはないことは、御承知でもありましよう。世界人権宣言の十三條におきましてもそういう保障はしておらない。おのおのの国の境界内における移動保障だけをしているのであります。さような点から、国民との間の関連というものは、これはやはり切り離して見なければいけないのじやないか。そうしますと、やはり国として非常に困る人たちというものはお入りになることを拒むということは、一般の通念として認められていいのじやないかということを、まあ大前提として申上げ得るわけであります。従いまして、今そこに列挙してありますイからヨに至るもろもろの事項というものは、そういう観点から一線を画しているというふうに御了解願わなければならないと存じております。
  7. 伊藤修

    伊藤修君 それは高邁なる御意見を伺いまして、誠に敬服に価いしますが、併しそれは今世界連邦理想を実現することは人類の上に仕合せかどうかということは、我々として今後大きく課せられた大問題であるのです。併し当面の問題として、移動の自由を認めるということが拒否されるかどうかということも、これは問題だと思うのです。もう一歩、今度は深く入つて、現に居留してその国の憲法の下に生活を営んでいる者、そういうことを期待して日本に上陸して現にそこに生活を営んでいる者に対しまして、日本の定めている憲法の下に日本人と同様な保護を與えるということは、これは当然じやないかと思います。私はこの観念には御異議はないと思うのですが、それを差別する、これを保護しないというあり方は、今日の世界各国どこも取つていないと思います。ただそこの国の治安維持とか、そこのいろいろな政策の面において好ましからざる者を、これに退去を命するということはあり得るでしよう。その條項をここに列挙されたわけです。その條項として取上げるのには、国内法としても科罰行為としてこれを認めていないにもかかわらず、ここに特段に取上げて、科罰に匹敵するような退去命令措置を講ずるということは甚だ行き過ぎじやないか。私はそういう意味を申上げます。
  8. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやることはよくわかりますし、又誠に御尤もであろうと思います。併し純粋に法的の立場から申しますならば、国民国民でない者とは、これは憲法にも言葉を使い分けておりますように、峻別されてもやむを得ない、その基本はさようなことになると存じます。併しながら、国籍は違いましても人は人でございますから、それは国籍の如何によつて不当な差別をするということは、我が憲法も意図しているところではございますまいし、これはどこの国を通じてもさようなことであろうと存じますけれども、これはこの法律そのものの法的の要請というものよりも、その精神という方面から来る事柄であろうと思います。従いまして、そこの斟酌の問題ということは、結局今の精神則つて、止むを得ざる限度にこの限界線を引くというのが、立法のあるべき姿であるというように考えます。
  9. 伊藤修

    伊藤修君 勿論憲法精神、殊に基本人権保障に関する限りにおいては、世留人類に対して等しくこれは取扱を異にすべきものじやない。いわゆる憲法精神をそのままいずれの国の人に対しても、基本人権に関する限りにおいては、これは平等に適用すべきが今日の法律体制である、新らしい考え方である、民主主義国家としてのあり方であると思う。それからこの條項によりますれば、場所を提供したる者は勿論でありまするが、斡旋勧誘まで入つておるのです。勧誘などというのは俗に言う客引きです。これは横浜の本牧から南京街あたりへ行きますれば幾らも勧誘している。これは勧誘の事実があればすぐに逮捕されるということになるのです。ここまで幅を広くする必要がどこにあるかということを私聞くわけです。
  10. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これがよくないことであることは事実であろうと思います。従いまして勅令九号の関係につきましても、伊藤委員等は十分なる御関心を持つておることは私承知しておることであります。よくないことであることがはつきり確認されますならば、これは外国人として日本に来ておつて、そういうよくないことをしてもらうということは甚だ迷惑である、日本としては非常に困るということは、これ又言い得るのでありまして、非常に常識的な下手な答えであるわけでありますけれども、さように申上げざるを得ない。
  11. 伊藤修

    伊藤修君 よくないことの段階がある。科罰行為のよくないことと、道徳のよくないことと、住居の範囲内においてよくないこととある。ここにおいては別に科罰的な行為として日本立法において定めていないのですから、道徳範疇若しくは宗教の範疇に属することなんです。ですからそのことまでも、道徳規定違反までもここで法律で糺明しなければならん、退去という処決をしなければならんのかと、こういうお尋ねをしておるのです。そこまで含む趣旨立法されておるのか、どうか。
  12. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 処罰をする段になりますと、これは国内関係におきましても同じ考慮は必要になつて来るわけであります。この場合におきましては、処罰をするわけではございませんので、非常に迷惑であるから出て頂こうという、まあ段階でございます。而うしてこれはただ勧誘するというのではなくて、勧誘業務に従事するというように、相当濃厚なる、惡性と言つちや言い過ぎかも知れませんが、恐らく伊藤先生惡性言つてもお叱りにならないと思いますが、惡性を持つておるということも、これ又事実であるわけでありますから、これは人々の見方は違いはあると存じますけれども、政府としてはかようなものはよくないものとはつきり挙げておきたいというつもりであるわけであります。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 私は余り幅が広過ぎる、こう思うのです。勿論勅令九号に定めている範囲においてこれを処置することにおいては異存はありませんけれども、勅令九号においてもまだ賄つていない、いわゆる客引程度までも退去事由とすることは、ちよつと行き過ぎではないかと思います。今長官のおつしやることも、わからんことはありませんが、その点は私は強く指摘しておきたいと思います。次に刑事判決その他少年法或いは麻薬取締法、こういうような違反行為に対しまして、判決が確定いたしますれば、これは退去事由とされることは、これは当然でしよう。併し出入国管理令の六十三條によりますと、その事案はまだ審理中においてもできるように見えるのですが、そうですが。
  14. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ちよつと他の政府委員からお答えいたします。
  15. 林修三

    政府委員林修三君) この六十三條の「刑事訴訟に関する法令、刑の執行に関する法令又は少年院在院者の処遇に関する法令規定による手続が行われる場合には」云々、これは今おつしやつた意味とはちよつと違うと思います。これは二十四條一項に明らかに謳つておりますものがどの犯罪によるかによりまして、刑事訴訟に関する法令手続が行われている、或いはそこで刑の執行を受けている、或いは少年院に在院している、そういう場合のその者について退去の強制ができる、こういう意味で書いてあるものと存じます。
  16. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると六十三條の場合は、現にそういう審理中のものを他の理由によつてこの手続を履むことができる、こういう意味ですか。
  17. 林修三

    政府委員林修三君) おつしやる通りでございます。
  18. 伊藤修

    伊藤修君 これは私の調べが足らんのかどうかわかりませんが、二十六年十月三十日の官報によりますと、施行規則の二十一條に、十八條第二項が引用してあるのです。この施行規則によりますと、二十一條で三條の三項が引用してあるのですが、この関係は一体どうなつているのですか。
  19. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 施行規則の二十一條は、すでに本邦に入つて来て在留を許されているものが、資格変更によつて永住許可申請しようとする場合の申請手続でございます。そこで今お尋ねの三條三項に掲げる書類をということを引用しておりますが、三條三項は、まだ本邦に入国していないものが管理令の四條の第六項によつて、入つて来ないうちにあらかじめ永住資格を得たい、こういう場合に、その許可申請手続を書いてあるのがこの三條の三項でございます。大体添付書類とかそういう手続は、二つの場合大した違いもありませんので、ここに三條三項に掲げる書類として扱つたわけでございます。
  20. 伊藤修

    伊藤修君 それはわかりますが……。
  21. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) それからちよつと申し落しましたが、これは官報に載つておりますのはミス・プリントがございまして、これはその後訂正されております。
  22. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると官報による十八條第二項のという、この表示は違つているわけですね。
  23. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) これは、十八條第二項とありますのは、第三條第三項と訂正されております。
  24. 伊藤修

    伊藤修君 佐藤長官にお伺いしたいのですが、ワの規定ですね、二十四條のワの規定国内法のどういう法律根拠からですか。
  25. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 勿論暴行或いは殺傷或いは損壞、破壞などというような條項について刑法の規定のあることは御承知通りでありますが、この団体そのものについてを対象とする現行法は私承知いたしておりません。
  26. 伊藤修

    伊藤修君 殊にワの中の三号に「又は妨げるような争議行為勧奨する政党」というのですが、「争議行為勧奨する」、こういう用語の使い方ですね、いわゆる争議すべきものであると言うことも勧奨でしよう、これに対していわゆる條件が備えられていないのですね。そうすると、勧奨という文字だけで以て私は一切の争議行為は全部……およそ争議をやれということを意思表示しますれば、いずれも勧奨の中に含まれると思いますが、そうすると、事実上そういうものはすべてこれによつて退去命令をする、そうすると外国人争議行為には関係させない。こういう御趣旨ですか、如何ですか。
  27. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ここにある争議行為は勿論労調法で禁止されてある争議行為でございますが、それを勧奨するということでございまして、結局その争議行為をしようという人々意思の助長に働きかける、助長する方向へ働きかける、それを抑えているわけであります。
  28. 伊藤修

    伊藤修君 これは全体にかかるのですか、「安全保持施設の正常な維持」、ここにかかつて来るのですか。
  29. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 維持運行の停廃、それからそれを妨げるという争議行為、これは争議行為について皆かぶせておるわけであります。そういう争議行為勧奨する、こういうふうに読みます。
  30. 伊藤修

    伊藤修君 そういうふうに読めるか。
  31. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは読めます。
  32. 林修三

    政府委員林修三君) 私から御説明いたしますが、これは、御承知のように、労働関係調整法の三十六條でございますが、「工場事業場における安全保持施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれをこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。」、これをこのままとつて参つたわけであります。正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げると言いますから、正常な維持を停廃する、又は運行を停廃し、又は妨げる、こういうふうにこれは読んでよいかと私は考えます。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、労調法規定より幅が広いわけですね。
  34. 林修三

    政府委員林修三君) この実体的なものは労調法と同じつもりでございます。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 妨げるというところは……。
  36. 林修三

    政府委員林修三君) これは、労調法に「妨げる」となつておる、ただそれを勧奨するということだけです。内容は同じでございます。同じ文章を使つておるのでございます。
  37. 伊藤修

    伊藤修君 勧奨というとどういうことです。
  38. 林修三

    政府委員林修三君) それは今、佐藤意見長官から申しましたような、そういう意思を助長するような行為ということであります。
  39. 伊藤修

    伊藤修君 助長する行為ということは、具体的に言えば、演説した場合においてはどうですか。
  40. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは政党その他の団体行為として、そういう団体の活動として、やれやれという演説をなされば、それは「勧奨する」の中に入るじやないかと思います。
  41. 伊藤修

    伊藤修君 そういう場合において、例えば、朝鮮のかたとか、中国の人が入つてやられると、それはいずれも退去事由になる、こういうのですね。
  42. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) そういう団体を編成し、若しくはこれに加入し、又は密接な関係をお持ちになつておるとすれば、これは該当するわけでございます。
  43. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 すでに前の連合委員会で私の政府に対する質疑は大体要点を挙げて置いたのですが、法務総裁の御意見を伺わねばならないと思いますが、それは保留して、それに先立つて佐藤意見長官の御意見を伺つておきたいと思うのですが、この出入国管理令、それから外国人登録法、これらの法律案や、それから現在行われておる外交交渉、それから又ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案、これらを通じて、第一に伺つておきたいのは、これはいずれも日本に出入される外国人、或いは日本に今まで住んでおられた外国人の何に関係することなんですが、我々がこの法律を見て感ずることは、日本外国人に対して或る特定の措置をとるとすれば、日本人外国行つて同じような取扱いを受けることを妨げることができない、勿論それについて争うことはできますけれども、併し、争いの根拠が甚だ薄弱ならざるを得ない。これは政府はどういうふうにお考えになつておるのか、外務次官からの御答弁はあつたのですが、大体精神的な御答弁であつて、法的にはその点についてはつきりしなかつたのですが、この点について意見長官はどういうふうにお考えになりますか。曾つて日本つまり帝国主義時代日本状況と、今日の日本状況とは全く反対になつています。言うまでもなく、或いは将来又、日本が帝国主義的な国家になろうという考えでもあれば別ですが、そうでないとするならば、曾つてとはまるで考えな違えないと、又占領下における場合と考え方を違えなければいけない。そういう意味出入国管理法案その他に対して法律的に御覧になつて、今申上げた点はどうお考えになりますか。
  44. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 事柄の性質が純粋の法律問題であるかどうか、甚だ疑いを持ちますけれども、おつしやることは誠に同感であります。おつしやる点につきまして、そういうことは他の国との関係において、日本が不利になるようなことがあり得るだろうという点は当然考えられることでございます。そういうことがありますからこそ、この案の立案につきましては、国際慣行と申しますか、先ほどもちよつと触れましたけれども、よその国ではどうやつておるのだろうかということも十分広く渉猟いたしまして、その結果こういうものが條件として挙げられたということでございますからして、実際問題としてはそういう心配はないじやないかと思います。
  45. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 よその国をお調べなつたというのも、どつちかと言うと、強い立場におる国の場合をお調べなつたのじやないかと思う。例えば、アメリカでやつておるというのは、アメリカじやそういうことをなさつても、アメリカ人がよその国へ行つてそういう目に会わない。あのアメリカで、アメリカに随分長く滯在していた外国人を最近改めて登録する、そういう問題で前にも一遍述べたのですが、我々見て非常に驚いたのは、有名な、国際的にも名声の高い音楽家が外国人である、ハンガリア人であつたという理由で、再登録する前に三カ月間も收容された。それば国際的に非常に大きな問題になつ事件で、そういうようにアメリカや何かでやつておることには随分国際的に見て甚だ感服しない、面白くない例が多いと思うのです。そういうのを御研究になつてアメリカじやそういうふうにやつておるから日本でもやつていいというのは、日本アメリカ並みにお考えになつておるのじやないか。併し日本として考えなければならないのは、そういう強い、乱暴な無茶苦茶なことをやる国の真似をするだけじやないので、むしろ弱い、そして乱暴なことをされがちなほうの立場に立つて行くべきではないかと思うのです。この出入国管理法案なり何なりを御覧になつて、そういう意味で弱い立場にある国の利益を守るようにできておるのか、それとも強い立場にある国の利益を守るようにできておるのか、どつちとお考えになるか。これはあとから個々の條項について伺いたいと思いますが、そういう点についての考慮が少し足りないのじやないかと思います。昔の、敗戰前日本考えや、それから占領期間中、占領軍というか、アメリカ人を背中に背負つてやつたような気持がそのまま続いているのじやないか、そうすればそれは将来、さつき申上げたような意味で、日本国民外国行つて非常に不利な、非常に不明朗な、或いは侮辱的な取扱を受ける虞れがあるのじやないかという点なんです。
  46. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の立場としては、政策的に考えるというよりも、法律的に考えておるわけでございますからして、例えばこの管理令を立案されたものを私のほうで審査いたしますのですが、そういう場合におきましてもその対象となつておる国が強い国であるとか、弱い国であるとかいうようなことは、実は理論的には全然考えておりません。ただどこの国のおかたであろうと、日本に来られては困る、或いは日本におられては困るという一点から、ただ純粋に線を引いただけというのが私の立場でございます。
  47. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでは、その今の点についてはなおお考えを願うこととして、それに関連をする問題として個々の問題について意見長官の御意見を伺つてみたいのです。外国へ盛んに移民するとか、移住するとかいうことは、私の言つた強いとか弱いいとかいうのは、昔の意味の強い国とか弱い国とかいう意味じやない、利益の上で強い立場にあるか、弱い立場にあるかということなんです。例えば二十七條、これはつまり刑罰というものが証拠主義に立たなければならないということは、これは言うまでもない。ところが、これは刑罰じやない。先ほどもあなたが御説明になつておるように、日本に入つて頂きたくない、お帰り願いたいというだけのことだというのです。ところがそれは、強い立場におる国から言えば、そういうことは大変よいのかも知れないのですが、併し日本人が仮に外国へ移民なり或いはその他の関係で行く場合において、その国へ入れてもらおうという意味においては弱い立場にあるという場合を考えて、この二十七條というのは誠に結構なものだというふうにお考えになるのかどうか。これは刑罰でないから証拠主義でなくてもよい。ここに使つてある言葉は、「入国警備官は、第二十四條第一項各号の一に該当すると思料する外国人があるときは、」、この「思料する」というだけでよいのでしようか。こういうことが、今もお話のように、日本人外国に行く場合に思料されただけでやられることを、あなたは願つておるのか、その点どうですか。
  48. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 申すまでもなく、そんなことは絶対に願つておりません。あるべきことではないと思います。それは理窟の上から申しますれば二十七條はいろいろ書きようがあります。入国警備官がこの二十四條第一項各号の一に該当すると思料するときには、退去せしめることができるというような文章も書けんことはない。併し、そんなことはとんでもないことで、それは絶対に考えられないことでありますから、ここで第二十七條を置きまして、十分審査をして、審査を盡した上でその最後の処置をとろうというのでありますから、ここのととろ條文が私は長ければ長いほどよいのではないかというふうに考えております。
  49. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 併し、ここに書いてあるのは「思料する……ときは」……、入国警備官がどういうかたか知らないが、これは法律はそのかたが天使だと予想するわけはない。どういうかたであるか知らないが、そのかたが思うのです。そうすると法律違反を調査するということができるわけですね。これは日本の場合、大体或いはあなたはこういう場合についての直接の知識をお持ちになつておらんかも知れませんが、今までどんなふうにやられておるか、又占領期間中MPの助けを得てどんなふうにやられておるか、想像なさることはおできになると思いますが、今後又こういうふうにやるとすれば、日本人外国行つて、そういうふうにやられるということでありますが、この「該当すると思料する」というような大雑把な考え方でいいのですか。
  50. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは、人間が或る種の行動を起す場合には、最初にやはり思料するという段階があるのだろうと思います。そういう自然の考え方から申しまして、この調べを始めるという最初のナチユラルな段階を、ここで素朴にとられたのじやないかと私は思うのであります。
  51. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法律家の御答弁とも思えないのですが、そうすることができるのですか。官吏が何か思つて調べを始めるということが……特殊の人に対して……。
  52. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 思つただけで退去強制をしてしまうということがいけないということは、先ほど申上げた通りであります。それで思つて、こういう調べをするというわけでありますから、これは慎重な調べの一番最初の段階考えますと、思料という段階が当然これはなければならんように思います。
  53. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の頭が間違つているか、あなたの頭が間違つておるか、或いは私のほうが間違つておるかも知れませんが、「思料する十分な理由があるときは」というようなことは必要ないですか、客観的に……、それでそうでなく思料するだけでよいのだ、思料する理由がなくてもよいのだ、根拠がなくてもよいのだというお考えですか。
  54. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) もとよりこれは根拠がなければならないことだと思いますが、結局それは入国警備官の良識というものに依存することになります。そういうことに盡きるのじやないか。
  55. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法律がそういう官吏の良識ということに非常に依存するということができるのでしようか。常識的に考えて「思料する」なんという大胆な言葉を使うよりも、殊にこれは外国人関係することなんだから、最初の調査を始めるときでも、又現に違反調査を開始すれば、大体その官吏が違反調査をやつてみたが、何でもないというふうに言つて放す場合が多いか、それともそこに何かを発見するという理由を作るか、一般にこの法律に限らないのですよ、法体系の上から、法のシステムの上から初めには刑罰じやない、單に違反の調査をやるのだ、それは十分な証拠があるということがなくてもいいんだという考え方の上にお立ちになるのか。あなたがいつそういう全体主義的な法理論の上にお立ちになつたのか、私は知らないのですが、大体あらゆる法というものは、僕の了解するところでは民主主義的には個人のほうを保護して、国のほうを保護することではないと思う。だから該当すると思料されて、該当せずと証拠を出す責任を個人のほうに負わせる立場じやないでしよう。現在の法律というものはそうではなくて、その人を違反調査する以上は国のほうが、即ち官吏のほうがそれをそう思料するという証拠を持つていなければならない。それをどうしてここへ書かないか。これが第一のプレリミナリな、端緒的な活動だからそこまで嚴格にしないでいいじやないかというお考えであるとすると、そのプレリミナリなものから、端緒的なものから後にいろいろな活動が起つて来るじやないか。そうすれば折角、法律原則として刑罰に対する証拠、刑罰の場合だけ証拠があればいい、刑罰かなんかわからない、調べる場合の証拠がなくていいのだということになれば、法体系というものは崩れてしまいますよ。そうじやないですか。
  56. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやることはわかりますけれども、要するにこの今のお言葉にもありましたように、この端緒はどうしたつてこれは思料ということから始まるに違いないのであります。例に引くのは連想が惡いから差控えましたけれども、犯罪の場合すらもやはり刑事訴訟法で、一番の端緒は、「司法警察職員が、犯罪があると思料するときは、」ということから始まつて、そして刑事訴訟法の鄭重な手続が始まつているわけでございます。この場合においても同様でございます。而して今の何も本人のかたのほうにこの証拠を挙げさせるということではないことは、この條文によつて明瞭であります。こつちのほうの、警備官の側のほうであらゆる資料を集めて、そうして適正な判断をしようというので、これらの條文がずつと並んでおるというふうに了解しております。
  57. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その程度のことだつたらば、思料するかしないかということは、どこで分けるのですか、その分ける基準をここに現わしておくことが、法体系上望ましいこととお考えにならないのですか。該当すると思料するという主観的なことでは、そうしたら入国警備官だつて随分困るでしよう。該当するというふうに俺は思つたほうがいいのか、思わないほうがいいのか、そうじやないですか。
  58. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) どうもおつしやることがますますわからなくなつて参りましたが、「該当すると思料する」というのは、これは客観的の表現、描寫方法だろうと思います。ここではそのアクシヨンを、どういう手続で誰が起すかということを言つておるのでありますから、その一番最初のアクシヨンを起す人の心理状態にかかるということは当然のことで、それをただ表わしただけではないかと思うのであります。
  59. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それは、あなたは取締るほうの側にばかり立つているからなのだろう。我々はしよつちう取締られるほうにばかり立つていたから、該当すると思料されるとすぐ引つ張られる。殊に外国へ出入する場合なんか、そういうことが非常に多いです。私がヨーロツパにいたときでもこういう経験を持つたことがあります。それは当時ドイならドイツで日本人が非常に物品を密輸出する、そうすると日本人は大体そういうことに該当するというふうに思料するのでしよう、我々でもイギリスの港なり、ステーシヨンなりで一々取調べを受ける。そうすると場合によつては弁解するのにかなり困難なような事実があります。だから私はこういうふうな点についてはつきりと、單に「該当すると思料する」のではなくて、「思料するに足る十分な根拠があるときは、」というふうになつていないと、その警備官の主観で以て非常に法の本旨を逸脱して、事実上適用される慮れがあるのではないか。少くともそういう点について議論の余地があることをお認めになるかどうか。これ以上議論してもしようがないから……。
  60. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の職責はもう取締には全然関係がございませんから、極めて法律一点張りで嚴正公平に申上げておるということを御了承願つておきたいと思いますが、今おつしやることはわかりました。これは言葉の表現方法でございまして、そういう表現方法なら、或いは文章の問題としては考えられると思いますが、私の申しましたのは、こういう書き方の例があるということを先ほど申上げたわけであります。
  61. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それから第五章全体に関係してなんですが、これも日本に入つて頂かない、入つて頂くというだけのことだというわけなんですが、併し日本に入るか入らないかということについて、入つてもよい、入らなくてもよいというような抽象的な場合ではないと思う。そうしてこの法律が主として適用される場合もそういう場合ではないと思うのです。それでなかんずく今まで、日本が無條件降伏をする以前にいろいろな関係日本に無理やり連れて来て、そうして日本に居住を強制して、そうして日本にこのかたかたが居住されるようになり、本国に帰ると言つてもその帰る場所がもうないというようなかたがたに対して、入国を拒絶する、或いは再登録を拒絶するというような場合は、刑罰に近い取扱であるというふうに実質的には考えられます。そうするとこの第五章で、そういう場合にそれが不当だということをその本人が考えられ、その不当を救済する手続としてこの第五章に規定してある程度の救済の手続で十分である、問題ないというふうにお考えになりますか、どうでしようか。
  62. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 不当とおつしやいます中には、これを分析しますというと、穏当でないということと、それから面白くないということも入りましようし、それから違法であるということも入つておると思います。この違法の段階に至らない前のものは、今御指摘の條文の対象になりますが、違法の段階に入りますものは、申すまでもなく行政事件として裁判所にずつと出訴の途があるわけでございます。そのほうで是正される保障がついておることでございます。
  63. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点ですが、この法律の中にも、一方で警備官で疑いをかけて、それで他方で審査官が審査をする。これを読んでおると破壞活動防止法でも同じことなんです。こういうことが頻々としていろいろな法律で行われる。これは一カ所くらいだと、まだ我々もそう神経を立てなくてもいいのですが、この出入国管理令の中にもそういうのが出て来る、破壞活動防止法案の中にも出て来る、至るところに出て来る。そうすると日本国民は、或いは日本に来られる外国の人は、先ず最初に行政権の下で捕まえられて、そうして行政権の下で審理されて、それから然る後に行政訴訟というものに行く。三権分立というような考え方が、こういうところからも危くなつて来るのではないか、そういう点は、行政権がなしたる行動を、行政権からは全く独立な裁判で以て解決して行くという考え方が、こういうところから少しずつ崩されて行くのではないかという疑いを持つのですが、これについても今議論をしておると時間がたちますから、法律家として、意見長官として、そういう点に議論の余地なしとお考えになるか、議論の余地はあるかも知れないというふうにお考えになるか、どうでしようか。
  64. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 抽象的にお答え申上げますほかはないと存じますが、三権分立の建前をリジツドに考えますならば、本来行政権の責任においてやるべきことを裁判所に煩わすということは、その趣旨からは外れることである。又行政権としては非常に卑怯な立場に立つというような考え方がそこに加わつて来るわけです。それらのものを勘案して参りますというと、一応この案そのものについて申しますれば、今の三権分立の原則に適合しているというふうに申上げざるを得ない。
  65. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の申上げているのは、形式論じやなくて実際的に不当な処置を受けたというふうに思う場合には、できるだけ直接に、中間にいろいろなものが入らないで、公平な独立した裁判所の裁判を受けるという考え方のほうがいいんじやないか。それが不当な処置を受けたというふうに思うような形で行政権の中で、つまり一方で警備官がそれを告発して、そうして他方で審査官がそれを審理する。つまり同じ手です。つまり一つの手が一方ではアキユーザーになり、そして又他方ではジヤツジというふうにもなるという考え方にも関係がありはしないか。今あなたがおつしやつたような点にも関係があるでしようが、併し私のいつているような点にも関係がありはしないか。それは二十四條について更に伺いますから、その点についてそういうような議論の余地があるかも知れないというふうにお考えになるか、又そんな議論の余地は絶対ない。大丈夫だ、心配するなというふうにお考えになるか、どつちですか。
  66. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) ちよつと言葉数を殖やして申しませんと御了解頂けないかと存じますが、一番單純な形にしますというと、入国警備官はこの二十四條に該当するものを退去せしめることを得という形が一番單純な形でございます。その退去を強制するという行為自身は、これは申すまでもなく行政権の最後の手続でありまして、そうしてその処分に違法があるということになれば、それがすぐ訴訟の問題になります。一番單純な形にしますればそういう段階に行く。その段階において羽仁先生のいわれる三権分立に問題があるかどうか。そう考えになるかといえば、それは考えにならないと思う。行政処分の最後の手続であると思われるに違いないと思う。そこでこの法案、入国管理令は行政処分で、入国警備官の一存で本来やり得る行政処分、それをそんな一存で一刀両断にやつてしまうということは非常に思わしくない、そんなことは許さるべきではない。許さるべきではないというのは、これは三権分立のほうから来るのではなくして、この立法政策の問題からそんなとんでもないことはできるはずはない。行政手続の部面においてできるだけの慎重さを以てここで保障しようということで、ここにたくさんの條文を並べた次第でありまして、その辺は先ほど述べました單純な形において退去の行政処分という最後の手続が列挙される。それが甘過ぎるということになりますれば、それは一刀両断で行くことにすればいいという理窟でございますが、それではいけないというのが大体の根本的なアイデアになつております。
  67. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 立場が違うと、そんなにも議論が違うかと思つて不思議なんですが、僕は話を單純にしますと、入国警備官という人と入国審査官という人は大抵隣りの部屋ぐらいにいるだろうと思う。そうでしよう。一方の人は疑わしいと思つて退去をさせたほうがいいと告発しますね、隣りの審査官がそれを審査するのです。隣りの部屋にいる警備官が退去すべしというふうに考えたことはわかつているのですから、それは大抵退去というふうに審査してしまうでしよう、事実上……。それから警備官のほうでもそう思うでしよう。少し証拠は不十分でも、審理する人は隣りの部屋にいるのだから、そう俺の顔を潰すこともないだろうということで、いい加減な証拠で告発するということは起り得るのではないか。だから私は、殊に日本が置かれております地位から言いましても、今後我々が外国に行く場合でも、入国しようとする、そうすると入国資格について疑いが生ずる。そういう場合に行政処分だけでやられるよりも、直ちにそれを裁判に持つて行つて、公平に解決をしてもらうという方法があつたほうが、疑いをかけられる場合にも、入国警備官がその人に対して、これは人国を拒否すべき事項に該当するのではないかという疑いをかける場合にも愼重になつて来るのではないか。事実上の問題として……。まあ私はそういう議論の余地があるというふうに考えるだけで、先に進んで行きますが、二十四條の例を挙げるのですが、ハに癩のことについて規定しておりますが、この問題については質疑を極く簡單にしますが、去る二月二十六日、本外務委員長のお名前を以て参議院議長に対し、その参議院議長は内閣総理大臣吉田茂君に対して意見書が出ております。この意見書に従えば、これは御承知になつていると思いますが、或いは御承知になつていないかも知れませんが、一応念のために読みます。  韓国人らい患者の強制退去に関する請願(第六〇〇号)   請願者 東京都北多摩郡東村山町南秋津一、六一〇全生園内金哲元外七十七名   右の請願は政令第三百十九号出山入国管理令によれば、その第二十四條に「らい予防法の適用を受けているらい患者」に対し本部からの退去を強制できると規定されているが、韓国人らい患者にとつてはこの強制退去は死を意味するものであるから、現在のまま永住し、療養できるよい取り計らわれたいとの趣旨であつて、参議院は、願意の大体は妥当なものなりと思う。よつて内閣は鋭意これが実現に努力せられたい。ここに国会法第八十一條により別冊を送付する。   昭和二十七年 月 日      参議院議長 佐藤 尚武  内閣総理大臣 吉田  茂殿  これは参議院がこの請願の趣旨は妥当とお考えになつて、これは外務委員会における審議の結果に基いてであると思うのです。これに対して出入国管理令の第二十四條は何らの顧慮することなくして、ハという條項を置いておられるのですか、それでいいでしようか。
  68. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 癩のことにつきましては、入国に際しましても、外国から人が入つて参ります際には健康な人であつて欲しいという意味から、伝染病にかかつている人はいけない、結核にかかつている人はいけない、精神病にかかつている人はいけない、癩にかかつている人はいけないというような規定がございまして、いよいよ中に入りました人たちがそういうような不健康な状態にあつた場合に、やはり帰つてもらうということが一応当然のことと考えておりますが、ここでは結核につきましては退去理由にはいたしておらない、入国を拒否する理由にはいたしておりますが、結核のほうはこれは除いておるのであります。癩は、やはり日本国内を健康に保つという意味でここに入れておるのでございます。只今の請願でございますが、それにございましたように、特に朝鮮の人たちの問題につきましては、その運用につきまして、どういうふうにしたらいいかということについては、政府としましては非常に考慮を払つておるのでございます。これも日韓会談におきまして、特に日本に永年在住しておつた、特に終戰前から日本に在住しておつたような人たちにつきましては、一般の外国人同様に扱うわけに行かない、そういう意味で日韓会談におきましても、癩患者條項に当てはめる場合には特に協議をして、両国間できめて行こうというような話合いになつておるのでございます。今われわれのほうで運用方法としまして特に考えておりますのは、朝鮮の、以前から日本におつた人たちで、この癩患者になつておる人たちのうちで、特に癩の療養所その他におきまして乱暴狼藉を働くというような、特別に秩序を紊すとか、癩であるという以外に害毒を特別に起しておられるという人に対しては、やはり帰つて頂くよりほかないという考え方でおります。こういう方法につきましても、日韓会談において話合いをいたしておるわけでございます。
  69. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうすると、この二十四條のハについては問題があるということを御答弁だというふうに伺いました。これもさつきから伺つておる点と関連があるのです。で、日本が、これは意見長官にもよく聞いておいて頂きたいのですが、日本が癩予防に非常に完全な、世界に誇れるようによくできておる、それですでに癩は国内において絶滅しておるという場合と、残念ながら癩予防の施設が不十分で、国内においてまだ癩患者が多々あるという場合とでは、外国人に対する扱いがおのずから違うと思う。それから又、朝鮮なり中国で癩予防の設備が非常によく、人道的に完全に、羨やむに足るほどに実行されておるという場合と、又そうでない場合とで違うのです。これは日本人としてもそういうことがあると思うのです。例えば日本でその病気の治療を受けるということは非常に困難だ。アメリカ行つてその病気の治療を受けるということは非常に結果がいいという場合に、アメリカ行つてその病気の治療を受けたいと思う場合もあり得るわけですね。ですからこの外国人の出入国なり或いは居住の問題について、それらの問題においても必ずしも顧慮する必要がないというふうにばかりは考えられないのじやないか、それで実際問題として日本で癩にかかつているかたを、今まあ乱暴狼藉という言葉を使われましたが、乱暴狼藉というのはどの程度のことをお指しになるのか、まあ入国管理庁長官のように、非常に温厚な君子から考えられると、多少吉田内閣打倒なんて言つても、もう乱暴になつちまうのじやないかというような虞れもありますが、そういうようなことで、又それが理由になつて、そうしてこの法律が濫用される慮れがある。で、濫用されない保証というものがはつきり立つていないというような問題がここに起つて来るのじやないか。それでこの今、お答え下すつたような趣旨は、政府において十分御努力下さるんだろうと思うのですが、それがいやしくもこの人道上の理念、観念というものを無視するようなことは行われないことをこれは期待するのです。又、今の御答弁も大体そういう御趣旨であつたと、人道に相反するような、人道に背くようなことはしない、そういう御答弁だと伺つていいですか。
  70. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) その通りでございます。
  71. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうすると、続いて伺いたいのですが、このワですけれども、それからさつき伊藤委員の御質問になつたヌなどもそうです。オもそうですが、その中で代表的なものとして、こういう点に法的に問題がないとお考えになるかどうか。意見長官意見を伺つておきたいのですが、さつきの御説明を伺つて実は私も甚だ驚きましたが、ワの三項、「工場事業場における安全保持施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為」、ここまでは労調法にあるのです。これは法的に見て、私は先ず今日の段階においてはそう大なる議論の余地があるというように、必ずしもあなたがお考えにならなくても、そう不思議じやないのですが、そのあとへ持つて行つて「を勧奨する」という言葉が出て来る。その次へ持つて行つて政党その他の団体」という言葉になつて来る。これは労調法原則とは全く別の原則です。労調法においては明瞭にその行為を問題にしているわけです、不当なる争議行為を……、だからそれは問題がないです。併し、果して今日の法の観念で、その不当なる行為勧奨するということが問題なく、議論の余地なく承認され得るかどうかということに、一つ問題があります。それから第二に「勧奨する政党その他の団体」に入つているか、入つていないかということがこの法律のほうで問題になるのだ。法律のほうで問題なく承認されるのかどうか。そうするとこの三項は、労調法とは全く関係がないでしよう。これは労調法とある関係は、このワの三項はあらゆる法律と持つておる関係以外には何の関係もない。それでここで問題になつて来るのは、日本の現在の法律で、或いは民主主義の法の原則で、有害なる行為そのものを取締の、或いは刑罰の対象にするということとは関係ないですね。有害なる行為を勧めているのではないか、それからその政党がそういうことを勧めているのではないか。そうするとこれは逆に今度申上げれば、逆に申上げる必要はないかと思うのですけれども、例えばここに日本共産党というものがある、日本共産党というものを迫害しようとする政治上の立場から、日本共産党は「工場事業場における安全保持施設の」云々だと、これは何でもいいんですよ、売淫でも何でも、泥棒でも殺人でも放火でも、何でもいいんですよ。何もこれは労調法関係はない、何でも刑法上刑罰乃至取締の対象となるようなことを勧奨している政党だというようにみなすことができるのかどうか。そうして、その他の団体の場合に、この団体がそういうことを勧奨しているんだというふうに判断することが法的に問題がないというふうに思えるかどうか、これは勧奨という言葉が非常に範囲が広いから、いわゆるホルムス判事の言つたような意味においてクリア・アンド・プレゼントではない、勧奨ということは。且つそれは又団体になつて来る、勧奨が個人ならまだ第一段だけですけれども、それに重ねて、そういう政党又は団体ということで、問題が第二段に紛糾して来る。そこで却つそれてに加入しておる個人に対して、今度は強制退去を求めることができるというふうになつて来る。問題がつまり三重に相成つて来る。こういうことが法律上差支えないんでしようか。あなたは、こういうような法観念の上にお立ちなんですか。明瞭にして有害なる行為というものしか、刑罰乃至取締の対象にはならないんだという立場にお立ちになるのか、それともその有害なる行為というものそのものではない、そのものズバリではない、それを勧める、或いはこれが勧める団体だ、或いはその勧める団体にこの人は入つておるというようなことで、それが取締なり何なりの、刑罰なり何なりの対象になるというお考えですか。どうでしようか。
  72. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今三段階とおつしやいましたが、誠に明晰なる分析であると存じますが、この第一段階で抑えまして、仮に争議行為を抑える、これは労調法と合うわけです。合うわけですけれども、法制の問題としてはそれでは行過ぎになりはしないか。というのは争議行為に加わつたことだけで退去理由になつてしまう。これは行過ぎである。それから争議行為勧奨するという第二段の段階で抑えた場合に、個人的にただ勧奨だけでも退去強制の理由になつてしまう、これも行過ぎであるということが言えるわけです。そこでこの案では、そういう勧奨団体行為としてやる、その団体というものを抑えて、ここで限界が絞られて来ている。団体をここに一つの標準にとつて来まして、その団体の結成、加入ということで言つているわけでありまして、この段階が三つあるだけに、それだけにこの該当理由というものはずつと狹く絞られておるというふうに私は考えております。
  73. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 甚だ納得できないのです。その妨げるようなことは労調法において不当だとか……、これは労調法でなくても放火なら放火というほうがもつと簡單になる、放火を勧奨する政党、もつとはつきり言えば殺人を勧奨する政党その他の団体という場合に、それは絞られたのですか、広くなつているのですか、どつちですか。殺人というのははつきりしていますけれども、これは絞るにも絞らないにも殺人を勧奨する政党、クリア・アンド・プレゼント……、ところが、殺人を勧奨する政党に加入しているかどうかということになると、これは絞つたということになるのですか、広くなつたということになるのですか、実際上の問題としてですよ。
  74. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 実際上の問題として、非常に私は素朴に考えておるのかも知れませんが、殺人をやつた人というものは相当多い、ところが殺人を勧奨する団体というものは今まで実は聞いたことがない。そういう点から言つて、どうも絞つたことになるのじやないかという気がしてしようがありません。
  75. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 あなたはギルト・バイ・アソシエイシヨンというものを認める理論上の立場におられるのですか、どうなんですか。
  76. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これはもう昔から問題になることで、私としては好ましくないということを申上げることは、もう当然のことであります。
  77. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その関係において今の問題はギルト・バイ・アソシエイシヨンのような理論ですね、そういうドクトリンというものは採用できない問題だ、今そういう御答弁であつたですね。そういう関係においてこういう條文が問題になりはしないかということです。それで殺人を勧奨するというスローガンを掲げる政党なんというものはあり得ないのですよ、言うまでもないが。けれども政党なり或いは労働組合なりが、その政党なり労働組合の活動と直接の関係において殺人が起ることは、これもあり得ないのです。けれどもその挑発者がおる場合なんかが勿論一番明瞭でしよう。例えば或る政党の幹部に挑発者が入つて日本の過去においてそういうことがあつたのです。そうでしよう。そういう挑発者が政党の幹部に入つてそうして暗殺か何かを計画するということを日本政府はやつたことがあるのです。或いはアメリカ政府でもそういうようなことをやつたことがあるようです。そうして例えば非常に不幸な痛ましい例ですけれども、下山さんが亡くなつた場合なんがもあります。そうしてそれを政府が、その団体乃至政党なりは、あの通りつまり殺人を勧奨しているのだと言うようになる、ギルト・バイ・アソシエイシヨンの場合と同じように……。それがそういうふうに実際に適用される虞れが多分にあるのじやないか、だからこれば破壞活動防止法案でもその点で非常に問題があるのじやないかと思うのです。これは絞つたことになるのではなくて、むしろ非常にあいまいになつて来る。で、なぜこういう條項を立てたのか、こういう條項をですね。ワの(3)という條項を立てるならば、これよりあと、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)……というふうに無限に立てなくちやならぬのですよ、本当は。そうでしよう。殺人を勧奨するような政党その他の団体、(4)としてですね。それから(5)としては、放火を勧奨するような政党その他の団体。それから(6)として鉄道乃至電車を顛覆するような団体、そういうふうに並べて行かなければならない。ところが、このワの(3)に争議関係する項目を挙げているのは、これは我々民衆の側のほうから見ますと、問うに落ちず、語るに落ちている。こういう條項をどういうふうに適用するつもりであるかということが非常にはつきりしている。で、そういうふうに濫用される虞れがあるだけではない。濫用を防ぐ保障がない條項です。そういう意味で私は、法律上こういうことを出入国管理令の中へ置くと、日本法律一般にこういうことはできて来るのじやないか。刑法なんかも、刑法の原則を覆して、犯罪というものは、そこに有害な行為が眼前に、そうして明白に現われているという場合にのみ認められる。或いは罪というものは、個人的なものである、パーソナルでインデイヴイジアルなものだという現在の法の観念を覆しちやうことになる。そういう問題についての議論の余地がある條項じやないかと考えますが、そういうような議論の余地は全然ないというふうにお考えになりますか。
  78. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど来申しましたように、これは罪の問題ではないわけであります。従いまして、狹い意味における今の連座犯の問題でないことは申すまでもありませんが、要するに、この日本にいることの危險性と申しますか、その危險性の判定の基準として、こういう基準をとつた。その基準として広過ぎるか、狹過ぎるかという問題から申しますれば、さつき申しましたように三段構えで絞つて行くということに、まあなるわけであります。
  79. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この(3)をもとへ戻します。ワへ持つて行きます。「団体を結成し、若しくはこれに加入し」、ここにも問題があるのですが、更にここにはさすがにあなたも問題があるのじやないかと思うでしようが、「密接な関係を有する者」というのはどういうのですか。結成もしていなければ、加入もしていない、それで密接な関係がある。これは佐藤さん、そんなに詳しく聞いたのじやないのです。良心的に伺つているのです。例えば僕は日本共産党を結成してはいない、加入してもいない。ところが密接な関係があるというので治安維持法で僕は捕まつたわけです。その密接な関係のあるというのは、僕の書いた歴史上の著述や何かを見まして、これは唯物史観を採用しているということことなんです。唯物史観を採用している限りは、これは共産主義を支持しているのだろう、共産主義を支持しているならば、その共産主義の実行を支持しているのだろう、実行を支持しているならば日本共産党を支持しているのだろう。結成もしていない、加入もしていないが、これと密接な関係があるだろうというので、たびたび捕まつて、それでひどい目に会うのです。(笑声)そういうことにこれはなるのじやないですか。密接な関係がある、これはまあ物理、化学か何かの上の言葉なら密接な関係ということもはつきりするかも知れませんが、法的に結成もしていなければ、加入もしていない。いや、結成していたつて、加入していたつて、僕はそこにもこういう法律を出せるか、どうか問題だと思いますが、併し、さつきの僕の三段説もあなたは運用なさるので甚だ困るのだが、結成のところで一段、加入のところで二段、それから密接な関係を有するということになれば三段になる。そこで、まさか、あなたは三段になつたので、一層絞つたのだというふうにはおつしやるまいと思うのですが、どうですか。
  80. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) このワの本文だけにおいて絞つたとはこれは申上げられません。結成と加入で済むところに、もう一つ密接な関係を結び付けたのじやないかとおつしやれば、その通りであります。密接な関係とは何ぞやということになりますが、今お挙げになりました例などは、これは少くともこの場合には、的確な例として挙げることはできないと思うので、これは今当座の考えでございますけれども、この政党その他の団体の殆んど大部分の資金をその人が提供している。その人の資金によつて団体が活動力を、生存力を持つている。併しその人は加入も何もしていないというような、非常に生臭いと言いますか、現実的な関連において密接さを持つておる、そういうものに違いないと私は思つております。
  81. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法は現実においてそういう関係では実際に運用されないのです、密接な関係というのは。これは最近頻々としてアメリカで起つています。アメリカ国際会議が開かれる。学者がそれに出席しようとする、イギリスなりフランスなり。それは共産党員でもなければ、共産党を結成もしていなければ、加入もしていない。だけれども、その人が何月何日かに、例えばスペインのフランコの反乱が起つたときに、そのフランコの反乱は非合法である、スペインの合法の共和国政府を守るべきであるという会合に出席したというような事実が何年前かにあつた。そういう関係においてその学者はアメリカに入国を拒否されています。こういう事実がニユーヨーク・タイムスあたりを御覧になつても、頻々として問題になつております。それから又アメリカの学者がどこかで開かれる国際会議に、学術上の……これは経済会議や何かのことを言つているのではありませんが、学術上の会議においてさえそういうことが問題になつておる。そういうような問題がここに起り得ることを妨げはしないですね、この法文だけでは。これで防げますか。
  82. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 具体的の事例を的確に捉えてどうということは申上げられませんけれども、今おつしやつたような程度の例において、この密接な関係という言葉にはまるかどうかということは、私は反対に考えます。仮にそういうことが運用によつて起るとすれば、これは違法の運用であつて、少くともアメリカのことは知りませんけれども、日本の裁判所においては公正に判断されるものと私は確信しております。
  83. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 あなたの確信に対しては敬意を表し、又それを尊重するのですが、過去においてさつきのような事実があり、そうして又現在においてアメリカにおいてもそういう事実があるという以上、日本がこういう法律を実行した場合に、入国警備官或いは入国審査官という人たちがこれをそういうふうに広く解釈するということも、それを妨げる何らかの保障はないということには間違いがないのじやないでしようか、どうでしようか。
  84. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 保障の問題ということになりますれば、およそ法律違反して濫用が行われた場合の保障の問題、これは大きな問題にもなつて参りましようが、もとより最終的には今の裁判の問題にもなりますし、行政府は国会の監視の下にあるわけで、行政監察委員会、それぞれその他の委員会において行政の監視をなさつておるわけでありますが、そのほうの大きな保障があるということも言い得るわけであります。又現実に、そういう違法な処置をとつた公務員に対しては、嚴重なる制裁の規定もあるわけであります。そういう一般論としてお答えするほかはございません。
  85. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の伺つているのは、ワの條項として、「これと密接な関係を有する者」というような規定が、法律としてつまり必要な規定であるのか、それとも必要にして十分な規定というものを乘越えておるのじやないか。つまり法が常に明確でなければならないという、その明確の原則から言つて「密接な関係を有する者」というのは、広きに失しないかということなんです。それはどうですか。広きに失しませんか。
  86. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは表現方法としては、技術の問題でありますからして、適切な言葉があればそれはそれに越したことはございません。但し何分人間わざでやつておることでございますから、意余つて筆が足らないというようなことは、これ又御了承願えることと思います。これはあらゆる法律案について起り得る問題でございます。従いまして、その程度のお答えしかできないわけでございます。
  87. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 一般に併し法律の上で、こういう「密接な関係を有する者」というふうな用語が、日本法律でほかにありますか。
  88. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 「密接な関係」というこの文字自体の同じ用語がどこにあるかということは、数千に亘る法令の中で私即座に引用することはできませんけれども、これに類似の表わし方は、まあ日本語の限界の問題にもなりましようけれども、表わし方はたくさんあると存じております。
  89. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 たくさんあるというのは、使えばどういう……、今長官は数千ある法律を全部記憶していないとおつしやつたけれども、そういうことは、僕は非常にあなたを尊敬する意味から、感服しないですよ。何千法律があろうとも、法の原則を乱したような、そういう規定を含んだものはない、僕はないと確信します。あるならば、それは我々の目を潜つてできたものである。
  90. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この「密接な関係」という文字自身は、今申しましたように、数千の中から今咄嗟に思い出すことはできませんけれども、他国の立法例等を参酌して、この文字自体はそこから出て来ておるわけであります。言葉の問題として広く申上げますれば、例えば所持と所有との違いだとか、もういろいろな日本語の法令用語の言葉の問題として、主として所持と所有と言葉自体からどこが違うのかというようなこと、これは漢和辞典をお引きになつても出て来ません。そういうような言葉使いの上の苦労というものを我々はたくさんしておるわけであります。そういう意味で、先ほど漠然と申上げた次第であります。その点は御了解願つておきたいと思います。
  91. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうじやなくて、私の伺つているのは、本当に具体的な問題として「密接な関係」なんということを法律の上で言えるのか、どうなのかということなんです。数千の法律をあなたが思い出されるようなことを要求してあるのじやない。あなたが、私は少くとも今まで尊敬していた良心的な法律家として、法律の上で「密接な関係を有する者」なんということは言うことはいいだろうか、どうか。これも日本が徹底的に民主化された国ででもあるのなら、よかろうけれども、日本のように官僚主義の強い国で、それでこういうあいまいな言葉を使つていいのだろうか。いいのですか。
  92. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これが試験の答案として満点のものであるというようなところまで私は大それた考えを持つておりません。併し合格点に達しておる、その程度……。(笑声)
  93. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 最初に伺つておいたように、日本は出入国外国人に対して満点の取扱をして行つて日本国民外国において先ず合格点くらいの取扱を受けるのだろうと思うのですよ、事実上。この法律案というものは実際至る所に法的の問題があるのじやないか、良心的に眺めて見れば。それで現にそれは戰争中の事実もそうですけれども、最近までの事実もそうですが、この前外務次官のお答えを伺つたりしておつたときに、これは惡質な外国人取締るための法律だというふうに、いつかおつしやつていた。私はそこで、有名な格言です、法律には天使のための法律と惡魔のための法律と二つあるものじやないという格言を引用したのですが、現に戰争中私の友人で、例えばクロイツアーのような国際的なピアニストですね、そういう方が警視庁なり何なりで実に不愉快な取扱をお受けになるのです。そのお世話をするので実際心を痛めた。それも十分のお世話をしようと思えば、今度禍は僕自身に及んで来るというので、十分のお世話をすることもできやしない。例えばこれは今度は外国人登録法案のほうですけれども、指紋をとるということを便宜上極く簡單に……この間の政府側の御答弁では指紋があつたほうが本人であるということがはつきりして、利益なんですよとおつしやつているのですけれども、併しまあ例えばクロイツアーのような人を連れて来て、そうしてその人に指紋をとらせるというようなことをやることになるのです。これは実際上……。そういうことが一体いいことなのかどうか。日本がまあ国際的に、文化的に最高のレベルにでもいて、クロイツアーなんか来て欲上くない。日本にはクロイツアーよりももつと上手なピアニストがいるという状況ならいいかも知れないけれども、惡い人を追いかけようとして法律をこのように一段、二段、三段というふうに追いかけて見ましても、惡い人は皆逃げてしまう。そうして引つかかるのはいい人です。だから惡い人を取締ろうという意味で作つた法律なんですが、これは法律上大分問題ががあるのじやないか。それで現実の問題としてどんなに法律を嚴格にやつても惡質の人はそんなものは平気で逃げるのですよ。それで善意の、日本を愛し、或いは日本に永く居住しているそういうような人で、惡意の更にない人が、こういうやかましい法律に一々引つかかつて非常に苦しめられるというような問題がありはしないかというようにお考えになりませんか。
  94. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 運用の問題としては、御指摘の点のごときは誠に十分に留意せられることと考えます。その点は羽仁委員と共に石原政務次官にここでお願いしておきたいと思います。
  95. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私は前回の質疑を途中で打切つたのですが、質疑を開いておりまして、私の質疑の大半は岡崎国務大臣にお尋ねをしなければ明らかにならんと考えますので、次の機会に岡崎国務大臣に出て頂いて明らかにしたいという希望を申述べてお取計らいを願いたいのであります。  それから一点、それに関連いたしまして、前回もそうでありますし、今日もお話が出ましたけれども、この出入国管理令関係につきまして、国籍の問題に関連して日韓会談の中でもこれらに関連して話がある。こういうお話がございましたので、その日韓会談の中の関連事項を次の機会までに資料として一つ頂きたいと思います。その点を先ずお願いいたしておきます。
  96. 伊藤修

    伊藤修君 この前に資料を要求しておいたのですが、未だに頂けないのですが、これはどうなつているのですか。
  97. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 諸外国の立法令というのは、この前何か配つてあるそうですが……。手許に用意できたものだけは配つたそうです。  只今吉田委員から要求されました日韓会談の国籍に関する部分を資料としてという要求でございますが、これは御案内のごとくまだ会談の途中でございまして、いろいろ関連するところも多いので、これは次回に資料としてここに提出するということはちよつと不可能であろうと思います。
  98. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これは日韓、それから日台ですか、国民政府との間についても同じでありますが、その内容は実は若干ここでお洩らしになつたわけですが、そうすると、文書その他の問題としては提出ができないけれども、話の実際の内容ならばここで或る程度お話ができる、こういうことなんでありましようか。
  99. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この前私ここで申上げましたのは、つまり国籍の問題は只今日本が日韓会談で折衝いたしておりますのは大韓民国とでありますが、大韓民国の国籍法と言いますか、向うの国籍の決するところによるのだ、原則建前は。ただ日本の登録制度その他についてはいろいろの便宜的措置を講じなければならんのでありますが、そのことを申上げたのでありまして、国籍に関するいろいろな取極めその他につきましても、ただ簡單にそれだけのことではない、いろいろなことにも関連がありますので、ここで現段階にどういうところまで達しているかということを資料として出すということはちよつとどうかと考えます。
  100. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それではその点については言明を、或いは御構想を頂く以外にないかと思いますが、先ほど管理庁長官でありましたか、癩予防法の適用を受けている癩患者云々という二十四條一項の四号に関連して、韓国との間に、乱暴を働いた者以外については、国内なら国内に留め得る云々というお話があつたわけであります。これは話の内容になると思うのでありますが、そういう今の石原次官の答弁には、国籍問題、それから先ほどお話に出ましたのは癩関係でありますが、そういうものについての或る程度の構想と申しますか、そういうものを承わりたい、こう申上げたのでありますが、文書を出すことができなければ、口頭ででも構想その他を承わつて行く以外にないと思うのでありますが、そういうことならば願えるように今までの御答弁で伺うのですが、どうですか。
  101. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 先ほど管理庁長官からお答えいたしましたように、癩予防法の適用を受けている癩患者について、まあ一例でありまするが、どういう取扱をするかというようなことについては、まあ只今両国の間でいろいろ話合いをしているわけでございまして、先ほど入国管理庁長官が、この運用については癩患者を直ちに全部返す、そういうものではない、日本にいてもらつたならば困るという、最も困る者について或る場合には帰つてもらわなければならん場合がある、こういう趣旨のことを申上げたのでありまして、只今会談でいろいろ話合い中でありまするので、これ又、ここでこれ以上詳しいことを申上げる段階ではあるまいと思います。
  102. 内村清次

    ○内村清次君 ちよつと関連しまして……。只今の会談が進行中であるからというまあ御答弁ですが、すでにこの問題は、本国会の予算委員会で総理大臣兼外務大臣の吉田茂氏がはつきりと、これは私の質問に対して、いわゆる今後国府が統治するところの限定統治権の問題というものは明確にお話があつているのです。それから会談の内容というものがズレて来た、変つて来た、こういう新情勢があればですよ、あれば勿論あなたのおつしやるようなことになつて、まだ会談進行中であるからというようなことが言い得られると私は思いますけれども、それが変つて来ておらない、こういう、あなたがたの情報をキヤツチせられた内容であるとすれば、この外務大臣の責任ある答弁によつて国籍の問題というものの判定を資料として出して頂きたい。これが又、今回の登録の問題にいたしましても、或いは又、出入国管理令の問題にいたしましても、重要な関係のある人たちがやはり日本に永住しておられるのですから、この問題の論議もやはり明確にしておかなければならない、こういう関係でありまするが、この点についてはどうですか。
  103. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 委員長、議事進行について……。
  104. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これはこの前から申上げておりますように、平和発効と同時に日本におりまする朝鮮人は日本国籍を失うということは、これは申上げておる通りであります。それから大韓民国においては、先方においては先方の国籍法のきめるところによつてその国籍はきめると、これは朝鮮というものがこの機会に一つの完全な独立国になるのでありまするから、国際の慣例といいますか、手続においてそういうことを行わなければならんことは当然であります。それを日韓の條約にどういう形の條文で現わすかどうか、こういうことについて、まだ原則はきまつておるのでありまするが、その成文化といいまするか、そういうことについて、まだ国籍以外に幾多の問題がやはりあるわけでありまして、全体をまとめた成文化がまだでき上つていないわけでありまして、若干そういう未決の問題もあり、会談も継続中でありまするので、そこでこれを資料として差出すということはどうかと思う、こういうふうに申上げたのであります。原則的なことにおいては只今申上げた方法で行なつておるわけであります。
  105. 一松定吉

    ○一松定吉君 朝鮮の人は講和條約発効と同時に日本国籍を離脱することにきめるということは、そういう方針にあるけれども、まだそういうところまで行つておらんと、こういうのですね。
  106. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) いや、その原則でありまするが、この日韓会談の国籍に関する部分のきまつておることを資料として次回に出してくれと、こういうお話でありまするので、それは国籍ばかりでなくいろいろな情報がまだたくさんございまするし、若干まだ問題が残つておるところもあり、又日韓会談も御承知のごとく、妥結に至つておりませんから、その部分だけを次の委員会に資料として出せということは直ちに今お答えすることはできないと、かように申上げたわけであります。
  107. 一松定吉

    ○一松定吉君 本法案の三十二條の二の2の條項に「前項に規定する外国人で同項の期間をこえて本邦に在留しようとするものは、日本国籍を離脱した日又は出生その他当該事由が生じた日から三十日以内に、外務省令で定めるところにより、長官に対し在留資格の取得を申請しなければならない。」と、こうあるのです。そうすると今政務次官のおつしやるように條約発効後国籍に関する問題の協定ができてから、日本国籍を離脱するということにするのですか。この2の「日本国籍を離脱した日、その離脱した日というのはいつにするか、離脱した日は……。
  108. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 只今お尋ねの点は、只今提出いたしておりますポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案、この二十二條の二の規定で、日本国籍を離脱した者は、この規定でお話のようになると思いますけれども、朝鮮人、台湾人はこの二十二條の二の特例といたしまして、第二條を御覧下さいますとよくおわかりになるかと思いますが、第二條の第六項であります、6と書いてございますその六項によりまして、「日本国との平和條約の規定に基き」……。
  109. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつと待つて、どこです。
  110. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 七頁でございます。つまりこの第六項によりまして、お尋ねの朝鮮人、台湾人につきましては平和條約発効と同時に日本国籍を離脱する。併しながら、只今お尋ねの二十二條の二の国籍を離脱するものという規定は、これは非常に場合が違いますし、特に二條の第六項によりまして、別に法律で定めるまでは何ら手続を要しないで、今日ある状態のまま引続き居住することができる、こういう規定を置いておるわけであります。従いまして、朝鮮人、台湾人につきましては、二十二條の二の規定で行かないで、第二條の六項の規定で在留が許される。併しながら、それじや、どういう在留資格、在留期間で許されるかということは、これは日韓会談の妥結を待つて、別途法律で以て、そういつた者に対する在留資格、在留期間が定められる。従つて、その法律ができるまでは何ら手続を要しないで居住することができる、こういうことになつておるわけであります。
  111. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうしますと、6の規定によつて、その取極めのできるまでは、日本人ではないけれども引続いて在留資格を持つことができる、こういう意味ですね。
  112. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) つまり普通の管理令によりますれば、日本に在留する外国人というものは、すべて在留資格、在留期間を持たなければいけないと、こういうふうになつておるわけであります、建前として。そこで台湾人、朝鮮人につきましては、平和條約が発効になりますと外国人になる、そこで管理令上必ず在留資格と在留期間を持たなければいかんと、こういうことになりますと、昨常にそこに無理が生じますので、そこで二條の第六項で、特別な扱いをして、別に日韓会談で在留資格、在留期間の取極めができたあと、別に国内法で定められるまで、何ら在留資格と在留期間というものを要しないで、これは在留ができると、こういうふうな特例を設けておるわけであります。
  113. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると、この出入国管理令の第二十四條の「外国人については、第五章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる」というので、一から六まで規定してあつて、この規定の中で、本邦から退去を強制することができる。この條件に当てはまる者は、朝鮮人といえども退去を強制することができると、この規定には変りがないのですかね。
  114. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) この第二十四條の退去強制の條文は、朝鮮人、台湾人のかたがたは、平和條約発効と同時に、在留人であれば適用になる。
  115. 一松定吉

    ○一松定吉君 その退去命令があつた時分に異議の申立ができるということが規定になつておるが、その異議の申立が理由がないと認める場合でも、五十條の第一項の二号によつて、この日本国民として本邦国籍を有することができる、こういうような取扱は、これはお願いすればできることになるのですか。
  116. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) この五十條の規定は、極めて例外的な成る種の救済的な手段と申しますか、というものでありまして、例えば具体的な例を申上げますと、或る地域から不法入国で入つて来た、こういつた者は、これは当然に不法入国であるということによつて退去強制されるべきものでございますけれども、そういつた者でもこの五十條によつて、こういつた條件を具備している場合には、長官が特別に在留を許すことができると、こういう規定でございます。従いまして、異議の申立をすれば、或いは五十條によつて在留が許可される場合がある、かように御了解下さつて結構と存じます。
  117. 一松定吉

    ○一松定吉君 だんだんわかりました。二十四條の、本邦から退去を強制することができるという規定は、この條項に当てはまるような事柄があれば、日本人であつた者でも外国人なつた朝鮮人に向つて退去を強制することができる。情状によつては強制しなくてもそのまま在留せしむることは当然できると思うが、それはいいだろうね。
  118. 鈴木政勝

    政府委員鈴木政勝君) 二十四條は退去強制することができる、こう書いてございますので、必ずしも退去強制しないでもいい場合がある。
  119. 一松定吉

    ○一松定吉君 これは法文の書き方からそうなつておりますが、ところがこの間、我々は命を受けて大阪並びに神戸に出張して、向うに起つた朝鮮人の騒擾事件調べたときに、我々は生活には困つておるけれども、いわゆる生活保護法の規定を受ければ……この法文は、彼らに強制はしないのだが、二十四條の四のホ、即ち貧困者、「生活上国又は地方公共団体の負担になつているもの」と、こういう意味において我々は生活保護法の規定で保護を受けると退去を命ぜられる。だからして生活は困るけれども、保護は受けない。保護は受けない代りに生活に困る。そこで「どぶろく」を造るとか、闇の売買ということをするのだ、こういうようなことで、頻りにそれが行われているのだね。そういうようなことに対して決して困窮者であつても、或いは生活保護法の規定を受けておつても、必ずしも退去を強制するものでないというような事情を、これらの人によく了解せしむるならば、日本の秩序を乱し、若しくは不正でないというような者は退去を命ぜんでも済むのだというようなことを彼らの頭に入れておけば、こういうつまらない騒擾を起すことはないと思うのだが、そういうような手続を十分にする必要があろうと私は思うのです。そういう点について、今政府はどういう手を打つことになつておりますか。
  120. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは先般のこの委員会でもこのお話が出まして、いろいろ質疑応答されたのでありまするが我々考えておりまするのは、貧困者であるからとか、ただ生活扶助を受けておるとかいうことだけで直ちにこれを退去さそうとか、どうとかということは毛頭考えていないのでありまして、貧困であり而も本人が勤労意欲もない、勤労意思もない、長期に亘つて生活扶助を受けておる、これ以上日本に滯在されるということは日本も非常に迷惑であるというような人に退去を願おう、こういう考えをとつておるのでございまして、現に只今いろいろ日韓で話合つておる中にも、生活保護法直接適用という言葉が当るかどうかわかりませんが、生活保護法の運用というようなことも考えまして若干の予算措置も講ぜられておるというようなことであります。この法全体の精神が長く日本におりました朝鮮人、台湾の人々にとりましては、日本に害のない人は、それらの人に帰つてもらおうという考えは毛頭持つておるものではないということを重ねて明言いたして置きます。
  121. 一松定吉

    ○一松定吉君 私ども日本人としても、やはり今政務次官のお答えになつたような、外国であつても、元日本人として我々同国人という誼みにあつた関係上、これらの人を生活が困つておるからとか、或いは長く日本にお世話になるからというようなことで、直ちにこれを退去を命ずるとかということは、本当は国際情誼の上からもそういうことはよくない。殊に日韓併合で日本国籍を持つて、今まで日本人であつたものが、直ちにこれが外国人なつたからというて日本人として安らかに生活をして来ておつたものが、こういう痛ましい戰争の結果、我らも日本人でなくなるのだという頭を持つておるものを、もうお前は今まで日本人だつたからよかつたものを外国人なつたからすぐ出て行けというようなことはこれはよくないことである。それで二十四條の「本邦からの退去を強制することができる。」、強制することができるが、強制せんでもいいというこの二十四條の精神を活かして解釈して、そういうような哀れな朝鮮の人なんかに対しては、決してお前らは退去せんでもよろしいから日本に永住することができるという安心感を與えるということによつて、こういうつまらない騒擾というようなものは起さんで済むと思う。ただこの二十四條のいわゆる惡質なことによつて……無期又は一年以上の懲役若しくは禁錮に処せられたものだとか、或いは日本国憲法の下に成立した政府を暴力を以て破壞することを企てたとか、主張したとか、こういうような日本の秩序を乱すことをその日その日の仕事としておるような惡質な者に対して、嚴たる処置を以て退去を命ずることはいいですけれども、それ以外の生活に困つておる或いは病気で療養しておるところの者、一例を挙げれば癩の患者ですけれども、癩患者にお前おるなというようなことを……、日本には癩の患者の療養所がちやんとあつて、貞明皇后の何でそういう者の救済の実を挙げておる、非常な仁を以てそういう仕事を行なつておる我が国が、癩患者だから朝鮮に帰つて癩病をふり撒けというような態度をとることはよくない。そういうような人々に対しては、やはり同情を以て日本に永住することができるというようなことを彼らに知らしめれば、或いは過いは過まつて罪を犯した者でも非常に前非を悔いて善良になる、日本に永住する希望のあるというような者を強いて送り返すというような意味ではない、日本におつてもよろしいのだということを彼らに徹底的に知らしめれば、朝鮮人同士もお互いに自粛自戒して、そういう暴動を起したりしないようになると私は思う。この間私は行つて、大阪、神戸における朝鮮人諸君の暴動を親しく視察してその感を深くしましたから、これらの点につきましては、この法の運用について政府としては十分に御考慮を払われて、そうして適当にこういう人々に向つての安心感を與えることのできるような方法をおとりになるということを私は特にお願いしておきます。別にこういう法文についてかれこれいたしませんが、かの高良とみさんの旅券を持たんでモスクワに入つたとかいうような問題がいろいろ新聞に論ぜられておるようですが、ああいうことに対して政府のお考えはどういうようになつておりましようか、新聞等では、いやそれは制裁規定があるとかないとか、帰つたらどうするとかいういろいろな流言飛語が飛んでおりますから、やはりこの際政府の所見を明らかにし、そうして我々もそれらのことについて大いに検討をしておく必要があろうと思いますから、所感の一端を述べて頂きたいと思います。
  122. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この問題につきまして、外務省といたしまして只今最終的にどうこうというところまでは至つていないのでありますが、まあ大体の考え方といたしまして、モスクワの経済会議というものは日本として余り好ましくは思つていない。それから又モスクワヘ、ソ連へ行くということにつきましては、これはたびたびここで論議されましたように、いろいろな理由からいたしまして、旅券も発給しない、こういうことは大体良識ある国民としては全部承知しておつたことと思うのであります。それを国会議員の職にある人が、日本政府がこういう考えを持つておつたということを承知しつつ行かれましたということについては、これはまあその人その人の考え方もあることでありましようが、世間の良識によつて、この行為はそれぞれ批判されることと私は思つております。それから旅券法の関係につきましては、只今の旅券法から申しますると、本人が最初からソ連に行くという計画の下に、併しながらその点は全く秘して、旅券を得て向うへ行つた、こういうことが立証されましたならば現在の旅券法においても成る程度処罰の途はあるかと思うのでありまするが、それの立証のない限りは、現在の旅券法によつてこれをどうするということはちよつと困難ではないかと、かように一応考えておる次第であります。
  123. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると、高良氏が日本を出るときからモスコーに行く意思を持つてつて、そうしてそのことを秘して旅券の交付を受けて、そして外国行つて外国から向うに入り込んだ、そういう意思があればこれは旅券法によつて罰しよう、こういう御意見ですか。
  124. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) その通りであります。
  125. 一松定吉

    ○一松定吉君 旅券法の何條にそういう規定があるのですか、ちよつと法文を読んで見てくれませんか。
  126. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) 旅券法第二十三條「左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。一、前條に規定する書類に虚僞の記載をすることその地不正の行為によつて旅券の交付、渡航先の追加、書換交付又は再交付を受けた者」、こういうふうになつております。
  127. 一松定吉

    ○一松定吉君 これは、二十三條には「前條に規定する書類に虚僞の記載をすることその他不正の行為によつて旅券の交付」と……旅行した先、例えばスイスならスイス、或いはドイツならドイツ、フランスならフランス、イギリスならイギリスに行つてそこに行つておる先から、一つモスコーに入ろうという気持が起つて、向うにおつて向うの正当の手続を経て入つたということになれば、これは当てはまらないわけですね。
  128. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 嚴格にはそうなると思います。
  129. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると高良氏が帰つて来たならば、これに当るか当らないかということを調べるつもりか、調べないつもりですか。調べるならどういうふうして調べるか、その調べる方法、又不問に付するなら付する、そういう点を明らかにしてもらいたい。
  130. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 調べるとか、調べないとか言えば角が立ちますが、一応事情をお聞きいたしまして極めて明白に最初から虚僞の行動であつたとか、いろいろなことが極めて露骨に明白であり、こういうことが立証できるということになりましたならば、これらは何らかの措置をとらざるを得ないことになるかと思います。これを外務省において直ちに取上げて、調べて、どうこうしようという考えをここで以ていろいろ対策を講じて行くというようなわけではございません。
  131. 一松定吉

    ○一松定吉君 大勢の実業家や若しくは国会議員らがモスコーから招聘を受けて政府に要求したが、政府はいわゆる好ましくない旅行だからと言つて許さなかつた事実は、これは顯著である。そういうことを知つてつて参議院議員の資格のある高良氏が政府の好まん旅行をして、そうしてモスコーに入つたという事実もこれ又顯著なんです。そうして見ると帰つて来た後に、これは二十三條の一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処するに当るか当らないかということは、これは一応調べなければならんね。調べて当らないということであれば、それは当らないからあなたのおいでになつたことは結構ですと、そう言わなければならんね。(笑声)調べて見て若しこれに当る、即ち出るときからモスコーに行くつもりであつたというようなことを高良氏の主人が新聞その他に洩らした。もう家を出るときから行くつもりで出たということが新聞に出ておつたが、果してそういうことであつたとすればこれに当てはまるということになると思う。そういうことは一つ明らかにして、将来そういう惡例の残らないように、聞くところによると、近頃も又、どこかのほかのところに行く旅券を求めて、数人の人が途中から又高良氏の轍を踏んでモスコーに入るという話があるようなことがうすうす私の耳にも入つておる。そういうことがだんだん行われるということになると、折角のこの旅券法においてそういう取締規定があるのに、それが水泡に帰することになる。私どもは高良氏とは特別に懇意だから、そのかたがこういう目に会うというようなことは勿論好むものではないが、ただ国会議員として法の権威を保つ上において、そういうことは一つ嚴格に処理してやられるということが非常にいいことである。将来再びかようなことのないようにすることがいいことである。又旅券法に欠くるところがあれば、これは我々の手によつて補正して、そういうことを許さないかというようなことは明らかにしておく必要があろうと思いますから、これらの点については本当に今、政務次官の言われたように愼重に考慮して、高良氏の名誉を毀損してみたり、或いは法の権威をそのまま放棄して乱ることのないように、世間が納得するような処置を講ぜられるよう。特に私は希望しておきます。
  132. 内村清次

    ○内村清次君 先ほどの政務次官の答弁では高良議員の行動に対して旅券法違反だ、勿して又罰するというようなことをここで明言せられたようであつて、これは重大な発言だと思う。(「そんなこと言わない」と呼ぶ者あり)そうですが。ただあとの発言といたしまして、一応話を聞く、経緯を聞くというような言葉がそのまま適用されるとすれば、これは政府のやられること、又関係当局がやられることでありますから、大して問題にいたさないつもりですが、ただ問題は先ほどのモスコーの経済会議というものに対して、政府のほうで認定せられておる認定というものに対しては我々としてまだその点に対しては意見がある。意見があるが、ただここで私が質問したいことは、最近におきまして北京政府から民主的労働団体に対してメーデー参加勧誘が来ておるわけであります。その団体の代表者たちは是非一つ行きたいということで、日本人として旅券の交付を願つておる。これに対しまして、聞くところによると、これは外務省当局においてはなかなかこの旅券の交付の許可を與えておらないような事態であるのですが、これは政務次官自体から、その経緯がどうであるかということを責任を以て答弁ができますれば、一つ答弁をして頂きたい。
  133. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 議事進行ですが、まだ出入国管理令の審議が済まないのに、問題がほかに逸れておるようでありますから、こちらのほうを先にして頂きたいと思います。
  134. 内村清次

    ○内村清次君 この点は、大体これは委員長のほうにも緊急質問としてこの問題は事前にお話申してあるし、或いは又、各委員に対しましてもその問題を話してあります。勿論私たちも今回の連合委員会趣旨はよくわかつております。併し私も質問者の一人です。一人でありますけれども、今日は主管大臣が見えない。この重要な時間的な制限もあるような委員会に対して政府の責任者が出ない、而もこの前も出ない。こういう状態で私たちは議員といたしまして誠に残念です。総理大臣も出ないが、総理大臣の真似を主管大臣がやつておる。こういうようなことでございますから、そこで私は委員長、その他委員のかたがたとも了解の上に質問をしておるのですからして、これは一つ僅かの時間だろうと思いますが、どうか一つこの点は議事進行の上には支障がないというところで一つお許しをお願いしたい。
  135. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これはこの前、ソ連行の旅券の発給を認めなかつたと大体同じ建前からでありまするが、旅券法の十三條と、それから主として十九條になるかと思うのでありますが、この精神からいたしまして、現在中共にまだ多数のやはり抑留者があり、それらに対して正確なる情報ももらえない。又東支那海その他において漁船の拿捕等も頻々とある。こういうような一方の状況であります。旅券法の精神から申しましても、族行者の十分なる保護ということが確保されなければならんと思うのであります。殊に中共は、日本はまだこの国を正式に認めておりません。正式なる交渉の相手になり得ないのであります。そういう意味から考えましても、この際中共行の旅券を出すことはどうか、こういう考えで進んでおる状態であります。
  136. 内村清次

    ○内村清次君 そうしますと、十九條は政府としていわゆる渡航者が身の危險を感ずるようなことに対する保護が、保障ができないということですね。これは先般の経済会議への出席の問題に対しましても、政府が言つた言葉である。ところがそのために、渡航の許可というものがなされなかつた。先ほどの発言の中にもありましたように、高良女史は何ら身の危險はない。而も又国賓待遇で行つておられる、ソ連自体でそれである。もう一つ私がお聞きしたいことは、日本政府は中共政府を認めておらないというようなことを申しておられるようでありまするが、この点は、二つの政権がある事態、事実というものをはつきりお認めの上でおつしやつておられることであるか。勿論これは日華條約とも将来関係のある問題でありまして、重要な発言だろうと私は思うのですが、そういうようなお考えから出た言葉であるか、この点も一つ私は確認しておきたいと思います。
  137. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 中国につきまして、日本が正式に承認といいまするか、認めておりますのはいわゆる国民政府でありまして、中共政権につきましては日本はこれを承認しておる形になつていないのでございます。従いまして、族行者の保護を求めるにつきましても中共を相手として保護を求める、旅券の発給をいたします際に、そういう考え方をとることは只今のところできない。かように思うことを附加えて申上げておきます。
  138. 内村清次

    ○内村清次君 これは、そうすると外務大臣が許可権の責任者ですが、政務次官としても外務大臣の代行ししてそういう御発言、的確の答弁として承わつていいですか、どうですか。あなただけのそれはお考えですか、外務大臣としての御方針ですか。
  139. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 只今まで答えましたところは、大体外務省の考え方と御了承願つておきたいと思います。
  140. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今のに関連して……。今の問題は、我々が討議している法律案とも関連があるので、一言伺つておきたいのですが、御承知のように例えばイギリスの例をとつて見ると、イギリスにはいわゆる旅券法というものはない。ところが最近アメリカとの関係において、英国人がソ連に行つたりすることが妨げられるような事実が起つて来ておる。それは英国の輿論で非常に問題になつて、英国は国民の海外旅行というものを制限しないという原則を捨てようとしておるのであります。それは或る意味において、検閲制度が復活する虞れがあるという問題になつております。日本でも旅券法の精神、それから又、出入国管理法案のようなもの、そういう至るところに今お答えになつているような意味の方針が現われて来るものだとするならば、これは或いは検閲制度の復活、事実上における検閲の復活であるということで問題にならざるを得ない。ですから私は、さつきの「思料する」というような問題にしても、政府が主観的にそういう問題を思料するということはできない。又それについては疑義がある。現に今、一松議員のおつしやつた問題にしても、この旅券法が、ソ連において開かれる国際経済会議に出席するために、日本が旅券を発行しないということについて、それが議論の余地がない問題じやない、議論の余地があつて、これは輿論も、外務次官がよく御承知のように輿論もこれを支持する、行つたほうがいいのだという立場の公平な意見もありました。ですから輿論に対してもこれは全然疑義のない問題じやない。ただ現在の政府が、現在の政府政策からそれを許可しないということをとられたのですが、それについては今言うように議論の余地がないわけじやない。議論の余地がないわけじやない状態の下において、その政府の方針が守られなかつたという事実がここにあるわけであります。それに対してさつき一松議員が、その法の権威を守るためにと言われましたが、併し法の権威が或いは政府の方針によつて失われていたのかも知れない。例えば旅券法を以て検閲の代用としたようなことがあるならば、そのほうが法の権威が落ちている。そういう点について問題がないならば、旅券法の精神が正面から破られたならば、それはその法の権威を守るために、それに対する処罰なり取調べなりということが行われるのは当然ですけれども、或いは旅券法の根本精神が曲げて適用されたのじやないかという問題があるならば、その曲げて適用したために起つて来た問題に対して、これを追及するということは決して法の権威を高からしむる所以ではない。そのことについては、政府は十分反省しておられればこそ、さつきからの御答弁の場合にもそんなにはつきりしたことをお答えにならない理由もそこにあるだろうと思うのですが、如何ですか。    〔委員長退席、法務委員長小野義夫君委員長席に着く〕
  141. 小野義夫

    委員長代理(小野義夫君) ちよつと御発言中ですが、只今法規問題とかいろいろありますが、今簡單に御答弁があるならそれを済ませて、それから懇談会に入りたいと思います。
  142. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは、私先ほどの一松委員の御盾間に答えたところで十分お酌み取りを願いたいと思うのでありますが、ただ一松委員から更に法の権威のために適正な運用というようなお話もございましたので、それもやはり一面の真理かとも思います。いずれ帰られましたならば、十分事情を一応承わりまして、これを直ちに旅券法違反者であるとかいう観念でなく、事情をよく承わりまして、その間に又いろいろの事情が判明して来ると思います。それによつて今後の措置を考究して行きたいと、かように考えております。    〔委員長代理小野義夫君退席、委員長着席〕
  143. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は、数回前の外務委員会におきまして、モスクワの経済会議の旅券問題について、私と岡田委員とで政府の態度を十分検討いたしまして、政府の言い分には何ら根拠がないということを明らかにいたしましたところ、その後政府は旅券法を非常に曲げて、憲法違反し、屁理窟をつけて妨害された。ところが実際モスクワで、経済会議が開かれました結果を見ますると、実に驚くなかれ、四十八カ国の人たちが五百名……国連五十三カ国に対しまして四十八カ国の、世界の各国から五百名の代表者が選ばれて、二億米ドルの取引が成立しておる。すでにこの問題につきまして、私は直ちに政府に正式に日本国憲法違反し、旅券法を蹂躙して、正当な旅券の要請を拒否された政府の当面の代表者として、岡崎国務大臣の出席を願つて、我我は嚴重に追及する予定でおりましたが、引続いて在外公館或いは出入国管理令法案が出て参りましたので、我我はその政府法律違反憲法違反の態度の追及はただ留保しておるだけで、これは外務委員長はすでに了承しておられる点であると思います。従つて、先ほど来の一松委員、又ほかの関連について、私は若し時間が許されるならば、ここで徹底的に石原次官に、その点についてその非がいずれにあるのであるかということを明らかにしたいのでありますが、実はもつと緊急な、もつと重要な問題が起きておるのであります。それは隣邦中国からも日にちが非常に迫つております五月一日のメーデーに総評、中立系及び産別の各労働組合に二十四名の招待が来ておつて、この数日の後に出発しなければならんような極めて緊急な事態が差迫つておる。そのために本日も外務委員会との連合委員会があるしというので、わざわざその代表者三十四名が先ほどまでこの参議院の委員各位各党各派にお願いに来ておられたのでありますが、緊急な大会がありまして、そちらへ行つて、今三人残つておられますが、その実情は、実は先ほどからの皆さんのお話は無理もないことでありますが、徹底を欠いておりますが、現在すでに外務省へそれらの代表者から出しておりますパスポートのお願いは五十六名であります。労働組合のみならず各界各層の代表者五十六名が旅券法による成規の手続をしておられ、昨日その代表新約三十名が外務事務次官、欧米局長その他に会つております。ところがその会見の結果を聞きますと、これは旅券法がどうだこうだという、例の全く憲法を無視した詭弁を弄しておる。ところが詭弁を弄し切れないと、事務次官のごときは、これは政治的な意味でパスポートが出せないのだと、そういうようなことを言い、そうかと思うと、もう一つ追及すると、それは参議院の外務委員会、法務委員会に行つて聞いてくれということを言つておる。今日その代表者が来ておる。その五十六名の代表者はもつと続々殖える予定でございまして、而もこの五十六名というものはモスクワ経済会議のときと非常に事情が違いまして、主として労働組合を中心といたしました関係上、一つ一つの組合におきまして組合員の投票によりまして非常な決意を以て、その真の代表者を選び出すというような、民主的な手続をやつておられ、渡航を希望するかたがたも非常な決意を以てこの事柄に当つておられます。又我々外務及び法務連合委員会、その他各会派におきましても、これは一パスポートの問題ではなくて、日本が今後日本の国を復興して行くのに、約五億の世界最大の人口を持ちます隣邦中国と、どういうふうに外交を調整して行くかという根本問題がここに横たわつておると私は思います。のみならず、そういう経済的、文化的、政治的な提携という意味におきましてメーデーといいますと、資本家的なかちかちの頭を持つた人は、何か赤い旗でも振つて歌でも歌うというように思つておりますが、人民民主政権においては、労働者が政権をとつた国においては、全人民を挙げてのお祝でございまして、そのお祝には各界各層のあらゆる人たちが喜び、将来の決意を新たにする。そのメーデーの国賓として招待を受けるということは、これは労働者を中心にした人民民主主義国家中国におきましては、並々ならんことでございまして、これに礼を厚うして招待を受けておる。この礼を厚うして招待を受けておるのに対して、又ここで政府が、吉田流或いは岡崎流、或いは石原流のですね、(笑声)詭弁を弄して、これを妨害するということは……今笑つておられるけれども、私は今笑うものは数年後に悲劇である。喜劇と見えることが悲劇である。私はそういう意味で、どうか一つ、できればこの委員会で両委員長のお取りなしで、長い時間はとらせませんが、今ここに三人のかたが来ておられます。一人は、総合病院を経営しておる医者としての立場から中国のその招聘に応じようとしておられる倉田氏、それから全日本木材の労働組合を代表して中国へ行こうとしておられる伊藤君、それから土建労働組合の神奈川支部を代表する佐々木君というような人もおられますので、これは一つ超党派的に、日本のために現在の外務省のこの旅券法が、憲法を蹂躪して隣邦友愛の道を遮ぎろうとしておるのが果して日本のためであるかどうか、而も昨日は外務次官ですか、こういうことを言つたそうです。無理に行けば旅券法においては処罰ができんから、出入国管理令処罰すると言つたそうでありますから、(笑声)これはやはり出入国管理令とも関係が深いのであります。この点一つ三君の言い分も聞かれまして、一つこの際日本のために、果してどれがとるべき外交政策であり、正しい法の運用であるかというような点の一つの材料にされます意味で、一つ短かい時間で結構でございますから、そういう機会をお與え下さることをお願いいたします。
  144. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それではこれを以ちまして外務法務連合委員会を散会いたします。    午後四時四十九分散会