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1952-06-19 第13回国会 衆議院 労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十九日(木曜日)     午後二時四十二分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 船越  弘君 理事 森山 欽司君    理事 前田 種男君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    三浦寅之助君       柳澤 義男君    山村新治郎君       熊本 虎三君    柄澤登志子君       中原 健次君  委員外出席者         参議院議員   中村 正雄君         参議院議員   一松 政二君         労働事務官         (労政局労政課         長)      阿部 泰治君         労働事務官         (職業安定局失         業対策課長)  澁谷 直藏君         参議院法制局参         事         (第一部長)  今枝 常男君         参議院法制局参         事         (第一部第一課         長)      中原 武男君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 濱口金一郎君         参議院労働委員         会専門員    磯部  巖君     ――――――――――――― 六月十九日  委員青野武一君辞任につき、その補欠として上  林與市郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  労働金庫法案参議院提出参法第六号)   請 願  一 失業対策事業労務者賃金引上げ等に関す    る請願(佐々木更三君紹介)(第三七二七    号)  二 失業対策事業労務者賃金引上げ等に関す    る請願本多市郎紹介)(第三八五一    号)  三 同(冨永格五郎紹介)(第三八九五号)  四 失業対策事業費国庫負担増額等に関する請    願(本多市郎紹介)(第三八五二号)  五 応能性賃金制度廃止に関する請願冨永格    五郎紹介)(第三八七五号)  六 失業対策事業費国庫補助増額等に関する請    願(堀川恭平紹介)(第三九一〇号)   陳情書  一 労働関係法改正案に関する陳情書    (第二三三    三号)  二 労働法規改正に関する陳情書    (第二三三四号)  三 同    (第二三三五号)  四 失業保険法改正に関する陳情書    (第二三三六    号)  五 失業対策事業運営に関する陳情書    (第二三三七号)  六 同(第二三三八    号)  七 労働法規改正に関する陳情書    (第二四六一号)  八 労働委員会委員定数減少反対に関する陳    情書    (第二四六二号)  九 労働関係法改正案に関する陳情書    (第二五六    四号) 一〇 労働法規改正に関する陳情書    (    第二五六五号) 一一 けい肺特別法制定に関する陳情書    (第二五六六号) 一二 失業対策事業に関する陳情書    (第二五六七号) 一三 同(第二五六八    号)     ―――――――――――――
  2. 島田末信

    島田委員長 ただいまより会議を開きます。  まず本委員会に付託されております請願審査を行います。日程第一、第二、第三、第四、第六は、いずれも失業対策事業労務者賃金引上げ並びに同事業費国庫負担増額請願で、同趣旨と認められますので、一括議題として審査を進めます。紹介議員がおられませんので、かわつて天野君より御説明を願います。
  3. 天野公義

    天野委員 ただいま議題となりました各請願要旨は、現在全国市町村が行われております失業対策事業労務者賃金は、非常に低額であり、就労日数ともにらみ合せて、労務者生活安定の見地より賃金増額せられたいというのであります。  なおまたその際、現在市町村には財政的余裕がなく、労務者賃金引上げるためには、国庫よりの支出をさらに増額してもらいたいというのであります。
  4. 島田末信

    島田委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  5. 澁谷直藏

    澁谷説明員 日雇い賃金引上げに関しましては、本年の五月に一般職種別賃金調査全国にわたつていたしたのでございます。現在労働省においてこれが結果を集計中でございまして、おそくとも来月の初めにはその集計が完了いたしますので、その結果をまちまして、職種別賃金が相当値上りをしておるという結果が出ましたならば、これに伴いまして、日雇い労務者賃金改訂をいたしたいというふうに考えて、現在準備を進めている次第でございます。  それから国庫補助額増額の問題は、現在のところ国庫財政等から考えまして、困難と考えております。     —————————————
  6. 島田末信

    島田委員長 別に御質疑もなければ、次に日程第五、応能性賃金制度廃止に関する請願冨永格五郎紹介、第三八七五号を議題といたします。紹介議員がおりませんので、かわつて天野君より御説明を願います。
  7. 天野公義

    天野委員 本請願要旨は、北海道函館失業対策事業においては、労務者応能性賃金制度をこの四月以来適用しておりますが、おおむね失業対策事業において老人、婦女子が稼働する場合、その収入が一家の生活をささえているのでありますから、その賃金制度生活給に切りかえていただきたい、それよつて失業対策事業本来の目的を達成してもらいたいというのであります。
  8. 島田末信

    島田委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  9. 澁谷直藏

    澁谷説明員 失業対策事業は、就労者最低生活保障ということを考えなければなりませんことはもちろんでございますが、それと同時に、一面におきまして事業効果を上げる、そうして労務者稼働態勢をよくするという、こういうねらいも欠くことのできない重要な点でございますので、労働省といたしましては、一面において最低生活保障ということを考慮に入れながら、やはり応能性賃金制度はこのまま継続して参りたいというふうに考えているわけであります。     —————————————
  10. 島田末信

    島田委員長 これより陳情書審査に入ります。日程第一ないし第一三を一括議題として、濱口専門員から順次その趣旨説明いたさせます。
  11. 濱口金一郎

    濱口専門員 陳情書日程第一、労働関係法改正案に関する陳情四国地方労働委員会連絡協議会議長愛媛地方労働委員会会長篠原二郎提出要旨は、第十二回四国地方労働委員会連絡協議会において、一、労働委員会の各側委員数は、労働組合法改正法案で三名ないし七名となつているが、現行法通り五名ないし七名とすること、二、労働関係調整法改正法案にある特別調整委員制度は、四国地方においてはその必要を認めないと決議したので、これが実現について格段の配慮を希望しているものであります。  日程第二、労働法規改正に関する陳情書佐賀県東松浦郡入野大字入野納所小学校鶴田喜六君外三十七名提出要旨は、陳情書第七二九号に同じであります。  日程第三、労働法規改正に関する陳情書佐賀県神埼郡西郷村高原高手一次君外二十名提出要旨は、第七二九号に同じであります。  日程第四、失業保険法改正に関する陳情書秋田西根小屋上丁十三番地、秋田労働組合会議議長石山權作君提出要旨は、経済不況のため中小企業は崩壊に瀕し、失業者が続出あるいは慢性化している現状において、現行失業保険法は、はなはだ不十分で実情に沿わないものがあるから、一、現行給与額一日最高三百七十円のわくをはずすこと、二、受給有効期間を三年に延長すること、三、受給者死亡の場合は給付残額を遺族に支払うこと等の実現をすみやかにはかられたいと希望しているわけであります。  日程第五、失業対策事業運営に関する陳情書全国知事会会長安井誠一郎提出要旨は、失業対策事業運営について、一、失業対策事業就労者稼働日数が少くとも二十日間を下らないことが、その労働力維持保全生活の安定をはかる上に絶対に必要である、二、同事業賃金基本日額は、昨年十月に全国的改訂が行われたが、その後の経済情勢より、すみやかに地方実情に即した賃金引上げを行うこと、三、日雇い労働者福利厚生施設に対して国庫補助を交付すること、四、同事業起債対象額の範囲を、事業費地方負担の総額に拡張すること等の措置を希望しているわけであります。  日程第六、失業対策事業運営に関する陳情書九州地方知事会会長福岡県知事杉本勝次提出要旨は、第二三三七号に同じであります。  日程第七、労働法規改正に関する陳情書東京都中野区上高田一丁目二百八番地、日東紡績労働組合長佐藤晋六君提出要旨は、第七二九号に同じであります。  日程第八、労働委員会委員定数減少反対に関する陳情書、徳島県地方労働委員会会長上崎龍次郎提出要旨は、目下国会において審議せられている労働関係法規改正案によれば、労働委員会委員定数は「各七人、五人又は三人のうち政令の定める数のもの」とせられ、現行定員数「七人又は五人」よりも減少される府県をも予想せられるが、一、固定員減少は、三者構成による調整の妙味とその機会を制限することとなり、委員会の権能を弱化せしめること、二、特別調整委員制度では、地方における争議の弾力性ある取扱いを困難とすること、三、本来の委員負担を加重するのみであること、四、委員の選任を困難とすること、五、地方実情より「特別調整委員」選出の必要もその余地も少くないこと、六、不当労働行為取扱い制度上の公平を欠くものであること等の理由により、定数減少には反対であるからとりやめるよう措置せられたいと希望しているのであります。  日程第九、労働関係法改正案に関する陳情書、香川県地方労働委員会会長藤井良雄提出要旨は、陳情第二三三三号に同じであります。  日程第一〇、労働法規改正に関する陳情書全日本海員組合佐世保地区船員大会議長宇土薫提出要旨は、陳情第七二九号に同じであります。  日程第一一、けい肺特別法制定に関する陳情書、兵庫県朝来郡生野町議会議長山田頼三郎君外一名提出要旨は、陳情第三六四号に同じであります。  日程第一二、失業対策事業に関する陳情書横浜市長平沼亮三君外五名提出要旨は、陳情第二八六号と同じであります。  日程第一三、失業対策事業に関する陳情書全国市長会会長塚本三君提出要旨は、陳情第二八六号の要旨と同じであります。
  12. 島田末信

    島田委員長 政府側意見がありませんか。     —————————————
  13. 島田末信

    島田委員長 それではこれより労働金庫法案参議院提出参法第六号を議題とし、前日に引続き質疑を続行いたします。柳澤義男君。
  14. 柳澤義男

    柳澤委員 提案者お尋ねしたいのでありますが、昨日留保いたしましたもので、この原案の第一條のその他の労働者団体——すべて団体構成を建前として行く、そうして個人を入れない考え方であるというようなお話でありましたが、この団体というのは、きのうの御説によりますと、いろいろあつたようであります。労働者構成する団体というお話でありますが、この団体はどのような標準でつくられるか。たとえば二人でも三人でも、どういう名前でも、どんな名称でも、かつてに二人以上寄れば団体ということが言えるのですか。そういうように、もしこれが運用上このままで行くならば、都合の悪いときは、たとえば団体でその数がかりに足らぬという場合には、二人で一つ団体名称をつければつけられる。三人でもつくれる。いわば団体という名前だけであつて、実質的にはきわめて随意な個人の集まりというようなことになつて来ると思います。この点について立案者は、この団体ということをどのように御解釈なさるか。またこの條文のいずこに入れてございますか。労働者についての定義はあるようでありますが、これはないようであります。これはいかなる理由でございましようか。その点を明らかにしていただきたい。
  15. 今枝常男

    今枝説明員 ただいまお尋ね団体がどういう団体であるかにつきましては、一般的には第十一條で規定いたしております。十一條で規定いたしております中で、一号から三号までははつきり団体を規定いたしておりまして、これらの団体につきましては、ただいまお尋ねのような二人とか三人とかのきわめて少数でできる団体というものは、それ自体考えられないものであろうと存ずるのであります。  なお第四号におきまして、包括的にその他の労働者のつくります団体のことを規定いたしておりますが、ここに規定いたしております団体も、ここにありますように、「労働者のための福利共済活動その他労働者経済的地位の向上を図ることを目的とする団体」こういうふうに規定いたしておりまして、ただいまのお尋ねのように、何人以上の団体というようなことを法律上は限定いたしておりませんけれども、この団体の性質からいたしまして、ただいまお尋ねのような少数の者をもつて、こうした種類の団体ができるということは、予想いたされないと思うのであります。そういうような趣旨からいたしまして、お尋ねのようなものが問題になることは、現実の問題としてあり得ないじやないか、このように考える次第であります。
  16. 柳澤義男

    柳澤委員 ただいまのお答えで、第十一條の四に「前各号に掲げるものの外、これこれということで、今私の心配するような二人、三人で、つまり御都合団体を、そのときどきかつてにつくれるというようなものは想像されないというお話でありますし、現実にまたそんなことがないとおつしやられますが、現に国会図書館調査立法考査局が経第一号、調査速報という書物を出しておりますが、第四という内容の中に、労働金庫実態調査というものを報告しております。まず最初宮城勤労者信用組合のことについて報告がありますが、その組織を見ますと、二百組合加入しているという、二百組合総員数三月末で三百三十三人というのです。総員数三百三十三人で、二百の組合の数を算する、そうしたら一体組合は幾人で構成されておるか。この報告にして間違いないとすれば、あなたのお話の、考えられないということでなく、現実にずいぶんこまかい組合もある。これは思うに二百の組合加入しながら、組合員がわずかに三百三十三人だというのは、三百という法定数があるから、そこで御都合よく適当に分割して、こういうふうになつておるのだということはただちに推測される。現にわれわれがこれをつくろうとする場合でも、それじや君の方は一人組合とやつておけ、もう一つ足りないから二人でそれでは何とか組合にしておこうということは、何らの法律標準もなければ、制限もないのであるから、自由自在でありまして、ただいまの説明員お話のように全然想像されないとか、実際に行われないとかいうことは、これはまつたく考えられないことであります。実際問題がはつきりと証明しておる。またもつともえてなりやすいことであります。私は今のような説明ではまつたくこの点は納得できない。団体というのだから、一人はないかもしれないけれども、むしろこの二百組合加入して三百三十三人じや一人の団体も相当あることを暗示しております。そんな点から推測いたしましても、漫然ただ労働者団体あるいは法人格のことを規定しないまでも、何かここに一つ標準がなければ、団体構成ということは、団体構成でないのと、少しもかわりがないと私は考えられるのでありますが、この点はもう少し確信のあるお答えを願いたい。何だか知らぬけれども、この條文法律的に読んで適当ないわばでたらめな解釈を私に授けてくだすつたのでは困ります。もう少し責任を持つたお答えを願いたい。
  17. 中村正雄

    中村参議院議員  ただいまの御質問に例を引かれました立法考査局参考資料でありますが、私それを見ておりませんので、真偽のほどはわかりませんが、おそらくそれに書いてありまする二百というのは団体の数でありまして、別に三百三十三名ですか、これはいわゆる団体以外の個人加入が三百三十三名ある。こういうふうな資料ではないかと一応想像いたすわけであります。一応お手元に配つてありまする参考資料を見ていただいてもわかりますように、一番最初にできました岡山県の労働金庫を見ましても、労働組合が百十七加入しております。生活協同組合十二、別に個人加入が四百六十三名となりまして、会員数合計五百九十二名になつておりますが、このうち労働組合百十七、生活協同組合十二が持つておりまする間接構成員合計七万人になつておるわけであります。従つて手元立法考査局の案は今申し上げましたような意味を表示しておるのじやないか、かように考えますので、御検討願いたいと思うわけであります。またただいま御説明になりましたようなことがもしもありといたしまするならば、これは現行労働金庫法という法律がないためにそういう弊害が生ずるわけでありまして、そのために労働金庫法におきましては、第六條に大蔵大臣労働大臣免許を受ける、こういうふうに規定いたしまして、そういう御疑念の出ないようにはつきりと免許の際に監督する。こうなつておりまするし、またそれ以外にも第九十條におきましてこれに関する手続を規定する、こういう條文が出ておりますので、もし御懸念のようなことがありといたしまするならば、そのためにこういう法律が必要だという根拠になるものだと私たちは考えておるわけであります。
  18. 柳澤義男

    柳澤委員 まことにわかりにくい御説明で私には納得できないのですが、この法律があれば今のような疑念が一掃されるというのですが、免許ということによつて、その団体構成標準をどこに置くかということはここには少しも現われておりません。別に何か施行規則をつくるというなら話はわかるのですが、その免許のさじかげんによつてこれをきめるということになれば、なおさら弊害は大きくなる。私の憂えるのはむしろそういうような方法でいたずらに団体ボス地位を強化する、加入を強制するような結果になりはせぬかと思うのであります。いわんやその免許ということも行政上の問題でありまして、いやしくもこの法律をもつてその点がすつきりとするものになるということは絶対に言えない。ここの規定によるならば、どこをひつくり返しましてもその団体標準とかいうものは少しも現われておりません。そのような御答弁をいただいてはこの点納得いたしがたいのでありますが、さらに私の引用いたしました立法考査局資料が、読み方が違つておるか、ここに記載しておるのが違つておるかというような結局結論のようでありますが、現実に多数の資料の中から見ましても、団体だけで構成されておるのがただいまのお話では法定数があるのでやむを得ず個人をわずかに補つておるかのごときお話でありますが、それはとんでもない事実の間違いであります。ここに引用いたしますが、たとえば二月の末日現在金庫の概況として報告されておるところを見ましても、たとえば広島県の労働金庫におきましては全然二月の末日には団体は入つておらぬ、一つ団体がない。個人のみ千七百四十八を示されております。そのほかなお埼玉県の勤労信用組合におきましても、二月末現在の報告によれば、三百八十九の総員数のうちに個人が二百五十ある。これも個人の方が多い。その資料が古いのでもつと新しいのとおつしやるならば、もつと新しい最近の五月末日資料によりましても、三百という法定数を越えてもなおかつ個人が多数加わつておるものに東京のものがあります。それは団体だけですでに四百四十六に達しているのにもかかわらず、さらに個人加入させておる。大阪においても三百三十、すでに法定数を越えておるのにもかかわらず、やはり個人加入させております。広島におきましては先ほどのより少しかわつておりますが、五月末におきましては百九十一の組合に対して、四千八百七十六人の個人が入つておる。そのために宮城におきましても、福島におきましても、埼玉千葉いずれも——千葉の例を見ましても百四十三の組合で総数三百六十一になつておりますから、やはりこれも半数以上入つております。いずれも団体ばかりでなく個人が大体多数入つております。決して法定数がないからやむを得ず入れたということを言えないということは、すでに団体だけで法定数を越えたものについて相当数個人を入れておるという実例に見ても、団体構成だけでここへ押しつけようという考え方は実際と離れておる。実際の要求はやはり個人も取扱つておるということを証明して余りあるものだと私は思うのです。はたせるかな前に頂戴した協会からの資料によりましても、この協会の副理事長であるところの、千葉県の金庫理事長の問答の中にも、個人加入が好ましいことを明らかにしております。先般私どもがまた陳情を受けていろいろお話を聞きました際における私の意思表示に対しましてもこの点ははつきりと容認しておる。その点はそれがいいのだということを申しております。決してここに団体だけで行こうとすることが事実にぴつたり行くと限らず、また先ほど私が引きました例の調査報告書の中に組合のほかに個人員数を申し上げたのがあながち間違いであるということは、こういう点から行つても推定できない、これは私は明確に聞違いでない、少くともこういう事実が他にも存在しておるのだということをはつきり知れるのでありますが、こういうような事実がありましても、なおかつ団体とただ漫然とここに載せることによつてこの団体構成が正しく運用できるものと考えられるのでありましようか。この点が一点と、もう一つ団体構成に拘泥し過ぎておる、少くとも個人も入れるという方が実際の要求合つておおものだと信ずるのですが、その点は立案者の方ではどうしても個人を入れるということには大きな障害があるというお考えなのでありましようか。しからばいかような障害があるか、その点を具体的事実をあげて御説明願いたい。
  19. 中村正雄

    中村参議院議員 前の御質問と大体同じような点を中心に御質問なつたと思いますが、最初私が答弁いたしましたように、現在は団体制になつておるけれども、団体員数制限がないからこういう例があるじやないかといつて御引用になりました、国会図書館立法考査局調査報告書のうちの、おそらく宮城県の勤労者信用組合の例であると思いますが、これにはこう書いてあります。組織といたしまして現在県下約六百組合の中に二百組合加入いたしておる。三月末現在の組合員数三百三十三、これをおそらく御利用になつておるわけでありますが、この組合員数というのは、個人の数が三百三十三という意味でないことは、この本で明らかになつておると思うのです。三百三十三は信用組合組合員の数でありまして、従つてこの中には二百という組合が入つており、三百三十三から二百を引いたものが個人加入である、こういうことを言つておるということは御想像できると思うわけです。私の方でお手元に配つてあります参考資料にも宮城県の例はありますが、これには労働組合の数が二百五、生活協同組合が十、個人が百、合計三百十五、こうなつております。これはおそらくとりました日付によつて差はあると思いますが、これと大体似ていることは御承知の通りで、従つてこの労働組合の二百五並びに生活協同組合の十のこれに含まれております間接組合員は、注として約五万名、こう書いてありますので、団体の数について制限しなくても、先ほど説明員が申し上げましたように、第十一條に一、二、三とはつきりと法律がありますし、四以下におきましても、二人や三人で組合をこしらえるということは一応想像ができない、またそういう場合があり得るといたしますならば、これは現在の労働金庫が基礎といたしております法律個人加入ということになつておりまして、団体加入にはなつておりません。従つてそういう面がありまして、今後労働金庫法ができました場合におきまして、こういう団体がこれに入らんがために、二人三人の少人数によつて便宜的に団体をこしらえ、十一條の第四号等におきまする脱法的な組合組織するという懸念がないとは、お説の通り申されませんので、従つて大蔵大臣労働大臣認可制によりまして、設立のときにおきまして、構成員につきましても、十分審査し、これであれば間違いないというときに認可するということになつておりますので、私は柳澤議員の御質問されましたような点があればこそ本法が必要ではないか、こう考えておることを繰返してお答えせざるを得ないわけであります。また個人加入がどうか、こういうわけでありますが、これは第一條にも書いてありますし、提案理由にも申し上げましたように、もともとこの労働金庫というものは、健全な労働組合運動の一環として助長育成のためにやるという一つの方向であります関係上、どこまでも、昨日も申し上げましたように、やはり担保力とその他の関係で団体主義ということの方がいいのではないか、こう考えておりますので、ただそのうちに個人を排除するのはおかしいじやないか、必要が認められないか、こういう御質問もありますが、そういう個人的な要素をどうしても入れなければいかぬというようなことでありますれば、そういう個人の方々が第一條に規定いたしますような団体構成なさい、それが大蔵大臣が認可をするときにおいて、この団体なら大丈夫だというだけの団体であれば、団体として加入できるわけでありますので、さて個人自体の加入が認められなくても、その個人を含む団体というものの加入はできる、こういうふうにも私たちは考えておるわけであります。
  20. 柳澤義男

    柳澤委員 ただいまのお話を聞いておりますと、何となくしいて労働団体の育成というところにこの法律を裏づけて行こうというように強く響くのです。ところが実際に運用せられておりまする実情から見ますと、たとえば東京労働金庫概要という東京労働金庫の刷りものの中を見ましても、事業のところに、個人生活安定あるいは闘争資金のための月掛貯金は、労働者として絶対必要な貯金ですから、労働金庫としても大いに期待いたしますというぐあいに、ちやんと事業の内容の一つとして、やはり個人の預金を非常に期待しておる文言が刷られておる、現にその預金も相当額に上つておる。それからまた労働金庫活動図解という印刷物によりましても、そこに個人加入者をやはり団体と並べて入れてある。またそれはどのようにして資金を集めるかの点についてまずあげて、さらにどのようにして貸し出すかという貸付額等についても、労働金庫として個人加入者、括弧して生活資金、医療資金、高利肩がわり、住宅修理資金等というまでに注釈を加えてりつぱに図解されております。これをもつて見ましても、東京労働金庫の現在の事業運営の実態から見て、これは個人加入が相当必要を感じており、これが運営上に相当な役割を持つておるということがはつきりと読みとれるのでありますが、こういうような実態にかかわらず、これらの必要をしりぞけて、どこまでも団体構成でなければならないという理由が、私はこの実態を立法化しようとするところの建前から行けば、はなはだ無理があるのではないか。この法律によつて労働団体を何でもかんでもつくらせるといつたような、これに加入しなければ貸さないんだ、そのためにどんな形にでも労働団体組織させようというようなねらいに考えられて事業目的からはなはだ離れて行くように思われるのですが、この点についてのお考えはどうでしようか。
  21. 中村正雄

    中村参議院議員 御質問のありましたようなことがあるから、やはり団体主義でなければいけない、こういうふうに私たちは考えているわけでありまして、従つて質問になりました預金の預け入れ並びに貸出しということを中心に考えて参りましても、なぜこの金庫運営団体制がいいかということにつきましては、今全団で十六できております労働金庫の設立の経過の実態を見なければはつきりと御了解できないかもわかりませんが、先ほど申し上げましたように、労働金庫労働組合運動を中心に、それを機軸として発展したわけでありまして、そうすることによりまして預金の預け入れも円満に行くというような状態になつておるわけであります。と申しますのは、御承知のように預金の奨励もこれは現在の政府の政策の一つでありまして、これが労働組合というものを中心にいたしまして、これで労働金庫をこしらえることによりまして、組合員の零細な資金ではありますけれども、これを預け入れすることができる。ところが現在は個人主義をとつております関係上、預け入れするにいたしましても、会員は労働組合、こうなつております。現在の法律によりますと、組合一つの会員として入れておりまして、従つて預金する場合にはどうするかと申しますと、会員であります労働組合が預金いたしまして、そうして預金通帳は組合員の数に応じて符号を付して預金通帳をこしらえまして、労働組合がそれを組合員に渡しておる、こういう状態になつておるわけなんであります。従つてこういう点からも、どうしても今度の労働金庫法によつて、こういう方向をとらずして、煩瑣な手続を省略して大体預金できるということにしなければいけないということも一つの方法であるわけであります。またこの預金の預け入れあるいは零細な民間に保留されておりますこの預金を集めるということにつきましても、これはやはり一つ労働組合が中心になりましたる労働運動の一環として集めなければ、これだけの労働者の預金は集まらないということを申し上げることができると私は考えておるわけであります。
  22. 柳澤義男

    柳澤委員 今の御説明はどうも実態の御研究をなさつておらないのじやないかと考えられる。実際現実東京労働金庫がやつておる仕事、しかも刷りものにして一般に出しておるものの中にも、労働金庫として労働組合、労災組合、健康保険組合生活協同組合等の組合を並べて、なおかつ個人加入者を同じ立場に置いて書いておるのです。ですから、今のように法律がないから個人でやつているというのではなく、現在でも個人で通帳を出しても団体として扱つておりますが、その団体のほかに、なお個人というものを非常に重要視しておることははつきりしておる事実なんです。貸付においてもその通りであります。必ずしも法律的な意味でなく、この実際の運用が、組合を通じて行つておるものと、そのほかに個人として加入を認めておるものが相当部分あるのでありまして、ただいまの御説は私は、何と申しますか、実際の場合の御研究のない。いわば受売りの議論であるように思いますので、これは実際に行われておる多数の資料もあり、現実に行われておる仕事がわれわれとしてたくさん手元にもあります。これは多く議論する余地のないものであります。むしろそうなればそうなるほど私どもとしては、これらの実態を調査した上でなければ、本件などはとうてい進められないということになります。現実にこうして配られておる金庫の宣伝ビラにそうある。そこで今の御説は繰返してお聞きしたところでしかたがありませんからこの程度にとどめて、ただその点につきましては、私は実態をお調べ願うように重大なる御注意を申し上げておきます。  それから次に、この前の私の質問について、第一條目的につきまして、どなたかの御答弁が委員長お答えと違うところがある。特にこれは中村委員長お尋ねしたい。それは金庫目的がもつぱら生活資金、いわゆる消費資金に限定するか、さらに産業資金も含むかということについて、きのうの御説明では、あなたの御説明と他の方とはまつたく相反する説明を聞いたのですが、そこでこれはどちらがほんとうであるか。もう一ぺん確かめたいと思います。
  23. 中村正雄

    中村参議院議員 これは本法の第一條に書いてありますように、「労働組合その他の労働者団体が協同して組織する労働金庫の制度を確立」からその次に書いたように「これらの団体の行う福利共済活動のために金融の円滑を図り、もつて」云々こうなつておりますので、これは大体会員の資格にも十一條で書いておりますように、労働者の半数ということが、一、二、三以外の四号には書いてあります。従つて労働者を中心といたしまして、これは厳格な意味労働組合労働者という意味ではありません。労働者を中心にいたしましての金融でありまして、いわゆる一般にいわれておりまする事業資金等の産業資金ということは含まれておらないものと御解釈願いたいと思つておるわけであります。
  24. 柳澤義男

    柳澤委員 そうすると、いわゆる消費金融、生活資金、かように限定するお考えでありますか。そう聞いてよろしいですか。
  25. 中村正雄

    中村参議院議員 会員のうちに書いてありますように、労働組合だけでなくして、消費生活協同組合等も入つておるわけでありまして、厳格な意味の消費という意味じやなくして、一応一般に申しまする消費的なものだ、こういうふうに御解釈を願いたいと思うわけであります。
  26. 柳澤義男

    柳澤委員 そうすると、ますますわからないのですが、生活協同組合なんかが組合として使うのであれば、生活協同組合そのものが一つの販売購買等の仕事をするのでありましようからこれに流す資金はやはり一つ事業資金じやないか、こういうふうに考えられますが、もしそうでないとおつしやるならば、生活協同組合に属する組合員にのみということにでも御解釈になるのでありましようか。この点がきわめて重大なことであり、不明確なんであります。
  27. 中村正雄

    中村参議院議員 一言で申し上げますならば、福利共済活動のための金融、こういうふうにお考え願つたらけつこうだと考えております。
  28. 柳澤義男

    柳澤委員 ところがこれが最初からの立案の経緯を見ますると労働金庫協会等の希望はもつぱら消費金融だということを主張して陳情して来ておる資料がたくさんございます。それと何となしに中小企業の金融に対立した意味で、労働者に対する金融を強化するというような考え方を当初からわれわれは聞かされておるのですが、そういうようなねらいがこの法案としてはないのですか、あるのですか。
  29. 中村正雄

    中村参議院議員 たびたび申し上げますように、労働者の消費金融を中心といたしまして、それに関連いたしまする福利共済活動のための金融もやる、こういうふうに申し上げた方が御理解願えるのではないかと思います。
  30. 柳澤義男

    柳澤委員 それでは問題に答えるに問題をもつてするというので、おそらくこの速記をだれが読んでも質問以上に答えられておらぬ。質問と同じ答弁をされておるので、私自身もそのようなあいまいな答弁を聞こうとは思つておりませんが、その辺にいたします。これは他の資料によつて推定するほかありませんが、もしそれに関連して、そういうことだとすると、こうした労働金庫の実際に行つておる点から、いわゆるその実態から推定した一つの主張がここにあります。たとえばここにありますのは、労働金庫というパンフレツトでありますが、この十二、十三合併号ですが、この中に三ページに兵庫県の労働部長の西村寅雄氏が「注目される中小企業融資」ということで写真入りでここに特にトツプ記事があります。これを見ると、こういうことがあります。「従来の運営実績を見て特に痛感していることは、労金が単に個人に対する生活救済のほか越年手当や遅払い賃金への融資を通して、中小企業それ自身の危機を未然に防止していることだ。これは労働政策の面からだけでなく、生産増強という産業政策の立場からいつても、その成果は十分注目に値しよう。労働者の向上は常に孤立してあるものではなくして、経済界の向上安定とともに並行して行くものだということを考え、労働金庫が今後ともより一層高い広い視野に立つてその運営を行われるよう望んでやまない。」という記事があります。この記事が私どもの考え方にぴつたり一致するのでありまして、運営がまさにこういうように行かなければならないということを考えまするときに、ただいままでお説明を聞きましたまつたく対立的な立場の、単に労働者——先ほどここに文字をそのまま読まれますけれども、団体の「福利共済活動のために金融の円滑を図り、」ということによつて説明されておりますけれども、このように中小企業の融資の結果すらも期待されているのを見ますると、私どもはこの構成組織の中にさらに使用者を加えたならば、使用者もはいれるようにして協力させたならば、労使の協力というような形をとつたならば、一層この運営は円滑により以上の効果を上げられるのではないか。ただいま読みましたこの運営の実態に期待せられる言葉とあわせ考えて、そういうように持つて行つたら最もいいのではないかと思われるのですが、その点立案者はどういうようにお考えになられるか。労使の協力、使用者にある程度の協力をさせるというような行き方は全然とられようとしないかどうか。この点を明らかにしていただきたい。
  31. 中村正雄

    中村参議院議員 労働金庫事業主らの出資金または預金を導入した方がいいじやないか、こういう御質問趣旨だと考えるわけでありますが、労働金庫労働者団体に限つてその会員とするものでありますから、事業主が直接労働金庫に出資したり、あるいは預金することはでき得ないようになつております。しかしながら第一條にもありますように、労働者の福利厚生を目的とする団体でありますならば、たといそれが事業主をも含めました組織でありましようとも、これは本金庫の会員となることができるのでありますから、これらの団体を通じて事業主が間接的に出資または預金することによりまして、労働金庫に協力するという道は開かれておりますので、こういう面における協力はわれわれとしても期待いたしているところであります。
  32. 柳澤義男

    柳澤委員 そういうようなお考えがあるといたしますれば、私どもはなお一層本案についてそういうような協力態勢を表わす、そういう協力を求め得られる余地のあるように何らかの措置をとるべきじやないかということを考えております。これはもちろん修正意見になりまするが、なおこまかい点について質問いたしたいのでありますが、次の質問者もありますので私はこの程度で、なおこまかい点についての質問は一応留保いたしまして、打切ることにいたします。
  33. 熊本虎三

    ○熊本委員 先ほど柳澤委員組織構成に関する質問についての関連質問でありますから、私の持てる他の質問は次期に譲らしていただきたいと思います。  この質問に入る前に、議事運営について委員長に念のためお尋ねをいたしておきます。関連質問とは要するに質問者の質問内容についての関連について質問をするのであつて、その質問内容が他にかわつて参りまするその以前において関連質問は許さるべきが当然だと考えておりますが、先ほど委員長からの内々の友誼上の問題もございましたからこれは多くは言いませんけれども、念のため島田委員長から御答弁を願いたいと存じます。  それから先ほど構成内容についての質疑が行われましたが、この精神はあくまでも団体すなわち第一條にありますように労働組合を中心とし、さらに労働者の福祉に関連するその他の事業を網羅するという建前になつておりますことは、あくまでもこの法のねらいが名称通り労働金庫という建前において自主的な建前を堅持することによつてその特異性があり、その意義がある。こういうような意味での組織構成だと考えておりまするが、はたしてその通りであろうかどうかということをお伺いいたしたい。  それからいま一つ。貸出し等について個人への融資等がございまするが、これはあくまでも個人を対象とするのでなくて、その基本とすべきは団体であり、その団体の借受けの内容についてかようなものがあるならば、その団体を通じて融資をし得る、こういう貸出しの方法でなければならない。こういうところから考えまして、あくまでもその建前が労働運動の健全化、そうして相互扶助に立脚するところの健全な財政経済面に関する独立法だと考えておりますので、その建前からいたしまするならば、私は原案が最も苦労された妥当なものであろうと考えておりまするが、先ほど来の質疑の中でいろいろかわされておりましたが、その点が明確に答弁がございません。私はこの機会にぜひその一点を伺つておきたいと存じます。
  34. 中村正雄

    中村参議院議員 第一点につきましては御説の通りであります。第二点につきましては個人に対しても直接貸し付けることができるわけでありますが、その場合は個人の預金があるかどうか、あるいは所属する団体の保証があるか、そういう面によつてつているわけであります。
  35. 熊本虎三

    ○熊本委員 委員長の答弁がありませんが……。
  36. 島田末信

    島田委員長 あとからにしましよう。
  37. 熊本虎三

    ○熊本委員 ただいまの御答弁で大体わかりましたが、従いましてそういう観点に立ちますならば、やはりこれが構成機構につきましては、何といたしましても労働者の相互扶助の精神に立脚したものから逸脱するおそれある組織構成並びに金融運用というものはこの精神に抵触する、かように考えますが、その通りでございますか。
  38. 一松政二

    ○一松(政)参議院議員 その通りでございます。
  39. 島田末信

    島田委員長 熊本君のお尋ねお答えいたします。関連質問質問者が同一内容の質疑を終つた後にお許しするのが一応の建前だと存じます。但し議事進行上ついあとまわしにする場合もあり得ますと考えます。
  40. 熊本虎三

    ○熊本委員 よろしゆうございます。
  41. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 お伺いしたいと思います。参議院の中村委員長は退席なさいましたのでお伺いすることができなかつたので、一、二点、重複する点があるかもしれませんが、お伺いしておきたいと思います。  この単行法案は、労働者の経済的な地位の向上に資するというのが目的だということになつておりまして、それに益することが単行法に切りかえて行く主たる柱だと思うのでございます。それできのうは労働金庫の利用の内容につきましていろいろお伺いいたしまして、それに関連しての御質問を申し上げたのでございますが、長いこと労働組合運動の経験をお持ちになつておられる委員長に御見解を承つておきたいのでございます。
  42. 島田末信

    島田委員長 参議院の労働委員長は、今委員会を開いておりますので、特にやむを得ぬ立場から委員会の方へ参りました。
  43. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それでは各條項にわたつて伺いたいと思うのでございます。きのう私が伺いました中で、まだ不十分にしか御答弁を得ておりません点は、労働金庫の性格から言えば、これはもちろん営利ではなくて、福利厚生のための労働者の利益が目的でございますから、当然金利も安く、たくさん借りられて、そうして十分利用できることが必要になると思うのでございます。そういたしますと、今度は金庫の経営の面が両立しなくなるのではないか。そうすれば労働金庫にせつかく金を預けましても、零細な、非常に少い収入の中から積み立てましたものが、アメリカの例のように、恐慌のような状態で全然その目的を達しないだけではなしに、預けた金までが元も子もなくなるというような心配もあるではないかということが、これは自由党の諸君からも御質問があつたと思うのでございます。この経営の点と、それからこの金庫目的でありますところの福利厚生の趣旨と矛盾しないことが必要だと思うのでございますが、その点につきまして、少し掘り下げた御説明がいただきたいと思うのでございます。なぜかならば、それだけではなしに、岡山県などでも、これは虚構の事実であればたいへん仕合せでございますが、労働金庫の不正の問題も一つの対象に私ども承つておることもございまして、その事実などについても調査したいと思つておつたのでございますが、従いまして金庫に集まつたうちの金をどれくらい貸し出すのか、あるいは支払い準備金としてどのくらい置くのか、あるいは有価証券としてどういうようにするのかということにつきまして、具体的なものかございましたならば、利子等につきましても少し掘り下げた御説明をいただきたいと思います。
  44. 一松政二

    ○一松(政)参議院議員 今の御質問の中で、経営の面についていろいろ御心配されたことは、私は非常にそれを多といたします。零細な勤労者あるいは労働者の預金が、もし恐慌その他の経営者のまずさによつて、それをさらに失うようなことがあつてはならぬのであります。そこで設立の際におきましても、あるいは経営の面におきましても、厳に大蔵大臣の監督のもとにおいてそういうことを避けるように努めるわけであります。  利率その他のこまかい、経営上の一つの基準になるものは、私もこまかいことは存じませんが、いずれそれは、おそらく国民金庫その他類似の金融機関もあることでございますから、大体そういうことが標準になつて運営されるものと考えております。
  45. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今の御答弁ではさつぱり要領を得ないと思うのですが、もう少し責任ある御答弁を、ほかの方でよろしゆうございますから、していただきたいと思います。  それから、つまり地方長官の手から労働大臣大蔵大臣の手に認可の権限が移つたということだけで、経営の面でどうして保障されるのかという点でございます。政府があるいはその損害の全部を全額補償して、必ず弁償するとかいうようなことでもあるならばともかくとして、ただ認可するという権限だけを大臣に移すだけで、どこに経営の安全性というものがあるかという点がちつともさつぱりしないのでございます。
  46. 磯部巖

    ○磯部参議院労働専門員 それでは私からお答え申し上げます。いろいろ御質問もございましたが、結局、昨日のお話と大体同趣旨だと思うのでございますが、労働金庫が福利共済事業などをもつぱら対象として貸出しをする、従つてその利益が少かろうから経営には非常に困難を感ずる、従つて恐慌その他の場合にはまつ先につぶれやしないか、こういうような御趣旨の御質問じやなかつたかと思うのであります。それにつきまして、きのうも申し上げたかと思うのでありますが、むしろそういう堅実な、まじめな仕事にちやんと担保をとつて貸す、あるいは労働組合の保証のもとに貸すということによつて、危険はきわめて少く、今日まで貸倒れ等の例はほとんどないと聞いております。しかし一旦恐慌になつた場合はどうするかということを、今私がここで申し上げることはできませんが、少くとも今日労働金庫全国にたくさんできておりまして、現在の不完全な法規によりまして、不完全な監督のもとに置かれておりますものを、現在より合理的な監督に移して、なるべく危険の少いようにしようというのが本法案の目的でございますので、地方庁から大蔵、労働両大臣に権限を移してどういうふうに保障されるかとおつしやいますが、これは現状のままでほうつておきましても保障はされないのでございますが、大臣の監督に移してももちろん保障はされない。しかしながら現在の地方庁としては、信用協同組合等の監督の機構はございますが、いずれかといえば、経験も浅く、実力も少い人たちが、しかも定員も少うございます関係上、あまり行き届いた監督もできておらないのでございますが、今後はそういう点についての最も専門的な機能と知識を有する大蔵省関係の係官が十分監督をする。また労働省の出先機関等もいろいろと世話をするというような意味で、現状よりは一歩進むのではないかと考えるのであります。
  47. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そういたしますと、お話の中ではつきりしたことは、大蔵省の監督を強化するということと、労働省が世話をするというだけでございまして、大蔵省の監督というのは、今もうどこからもきらいにきらわれている。大蔵省官僚の横暴というものは、世論の恨みの的となつているわけで、その怨嗟の的になつている大蔵省官僚の監督を、労働者労働金庫の中に入れて来ようとか、それから労働省が世話をするというのは、事務的な世話だと思うのでありますが、そういうことでどうしてこの労働者の経済的な地位の向上がはかれるのか。まず損害は大蔵省が予算でもつて必ず補償するとか、金利を安くするために金利の差額を補償するとか、何とかそういうようなことでもあればですが、ただ大蔵省官僚の監督を強化するということだけしか、今のところないのでございますか。
  48. 磯部巖

    ○磯部参議院労働専門員 仰せの通りでございます。
  49. 島田末信

    島田委員長 次会は公報をもつてお知らせいたすこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十二分散会