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1952-05-23 第13回国会 衆議院 労働委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十三日(金曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 福永 健司君    理事 船越  弘君 理事 森山 欽司君    理事 前田 種男君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    三浦寅之助君       柳澤 義男君    山村新治郎君       川崎 秀二君    熊本 虎三君       柄澤登志子君    青野 武一君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 東条 猛猪君         労働事務官         (労政局長)  賀來才二郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君  委員外出席者         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    大島  靖君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    堀  秀夫君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 五月二十三日  委員石田一松君辞任につき、その補欠として稻  葉修君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  労働関係調整法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二〇号)  労働基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第二二一号)  地方公営企業労働関係法案内閣提出第二二二  号)     —————————————
  2. 島田末信

    島田委員長 これより会議を開きます。  前日に引続き、労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法案一括議題として質疑に入ります。熊本虎三君。
  3. 熊本虎三

    熊本委員 私資料要求しまして、昨日もらつたわけですが、なおこの資料に基いて、二、三お尋ねしたいと存じます。  それは協約締結に関する問題でございます。この資料を見ますと、二十六年末の表によりますれば、まだ五〇%の締結しかできておらない。その後相当増加しつつあるという報告でございますが、その後の状況がわかつておれば承りたい。推定でもけつこうです。
  4. 賀來才二郎

    賀來政府委員 その後の状況につきましては、目下とりまとめ中でございまして、はつきりした数字を申し上げることができないのは申訳ない次第でありますが、われわれの推定では今日大体六〇%に近いところまで行つておるのでなかろうか、かような推定を持つておる次第であります。
  5. 熊本虎三

    熊本委員 次に、私の一番ねらいといたしておりました改訂交渉期間でございますが、それに対しては、資料がはなはだ少いので残念に存じますけれども、これもやむを得ないといたしまして、ここに示されております十七組合交渉状況によりますと、期間一箇月で締結ができたものは十七の中で三、二箇月かかつたものが一、三箇月かかつたものが二、四箇月かかつたものが三、六箇月かかつたものが一、九、十箇月というふうに、約一年かかつたものが二、こういう形になつております。私は、半年ないし一箇年にも及ぶという協約交渉期間のあることを非常に憂えておつたのでありますが、わずか十七の調査の中においてすら、こういう実績が上つておるわけでございます。はなはだもつて平和協定を目途とする協約締結にかような時間を要することは残念だと思いますが、起因するところがおおむねどこにあつたかということ、それからいま一つは、その交渉期間中に前協定はすでに期間が切れているはずだと思いますが、この統計による十七の組合の中で、もし期間が切れたものについては従前のものを引続き活用したのかしないのか、それらの状況はどうなつておるかという二つの問題をお尋ねしたいと思います。
  6. 賀來才二郎

    賀來政府委員 その締結期間相当長引いておるものが多いことに対しまして、熊本委員はこの状態を非常に憂えるというお言葉がございました。まことにごもつともでありますとともに、私どもといたしましても、熊本委員と同じようにこの状態を非常に憂えておりまして、いろいろ手を打つている次第でございます。原因につきましては、大別いたしますと、一つ使用者側原因があり、一つ労働者側原因がある。まず使用者側原因から申しますと、これは大体二つにわけられるのでありまして、一つは、まだ協約無用論を持つている業者相当あるのであります。またこの協約無用論の中でも、労働協約がどんなものかということをよくわからずに無用論を言つておりますのと、意識的に無協約状態にしておきたいというふうなものがあるのであります。もう一つは、使用者側無用論ではないのでありますが、この際に失地回復と申しますか、今まで相当労働組合側の方の強い、対等でないと思われるような協約が結ばれておつたので、それに対しましてこの際それをせめて対等に持つて行こうという意味からいたしまして、失地回復をしようとしてなかなか妥結に至らない、こういうものがあるわけであります。労働者側原因を申しますと、これもやはり同じように、協約というものについての理解が足らずして無用論を唱えておりますものと、もう一つは、既得権を維持しようという立場で、経営者側に対しましてむやみに強く出て、なかなか妥協しないとする態度であります。両者とも持つております第一の原因につきましては、われわれは労働教育という建前におきまして、無用論というものをなくするように努力をいたしておりますが、一例を申しますと、教育と同時に実際上の問題で自覚させることが非常に必要だと思いましたのは、最近のことでありますが、ある大工場におきまして、一部は無理解から来る無用論を持ちながら、一部は失地回復というような意味で、最近一年以上にわたつて協約状態でありましたのが、外国から注文を受けるようになりましたときに、その外国業者がまず要求をいたしましたのは、労働協約がどんな状態かということで、それを非常に注文者の方で気にしまして、その提示を求められた。その考え方は、熊本委員のお考えのように、労働協約というものは労使間の平和を維持するために非常に必要なもので、この平和状態が双方で維持されておるかどうかという証拠に、協約提示を求めたという状況であります。そこでその大工場におきましては、あわてて協約を結ばなければならぬというので、われわれの方によい例はないかということを求めて参つたような事例がありました。組合側におきましても、さようなことから急に無用論を捨てまして、協約を結ぼうという態度に出た例があるのであります。  第二の方の失地回復の問題あるいは既得権を維持しようとする状況につきましては、教育も必要でありますが、やはりある時期を経なければならないと思うのであります。と申しますのは、御承知のように今から四、五年前の状態におきましては、日本労働協約の行き方というものが、とかく法三章的な、一方的な人権宣言的な協約が多かつたのであります。これは協約趣旨に反するのでありまして、さような協約を持つておる組合は、あくまで一方的な人権宣言的な、法三章的な協約をもつてこれが既得権とつつぱねます。経営者側はさような協約に応ずるわけには行かないということから、もめているような状態がいまだに残つておるのであります。これは事実教育とともに、全般的な風潮といたしましても、あるいは実質的な要求に迫られて漸次解決がついて行くのではなかろうか、かように考えているわけであります。従いまして、とかくこういうふうに労働協約締結期間まだまだ非常に長いのでありまするが、一昨々年の状況と比較いたしますると、お手元に資料は差上げてなかつたかと思いまするが、一時日本国内全体の労働協約締結状況は六〇%台から漸次減少いたしまして、無協約状態が現出して参りまして三〇%前後まで落ちたのであります。     〔委員長退席船越委員長代理着席〕 それが、われわれは各労働組合使用者の協力を得まして、労働協約締結運動というものを実施いたしました結果、最近ようやく五〇%を越え、今では六〇%近いところまで上つて参つたような状態であるわけでございます。  さてお尋ねの第二点でございまするが、これはやはり二通りありまして、労働協約期間が切れましてから無協約状態で行つておりますのと、一つは無協約にはしない、以前のままで続いておるというふうなものと二通りになつておるようでありまするが、どちらが率が多いかと申しますると、やはり現在では、はなはだ遺憾でございまするが、協約の期限が切れました後は無協約状態の方がやや多い、かようにわれわれはみなしておるのであります。
  7. 熊本虎三

    熊本委員 政府の方でもはなはだ遺憾と言われますが、私も遺憾千万だと思つて、そのことを非常に苦にしておるわけでございます。その原因につきまして二通りあるとのお言葉で、それはその通りだろうと思います。組合側といたしましても、一時はこれを戦いの橋頭堡という形で、大いにその趣旨より逸脱したものもあつたわけでございますから、そういう観点に立つて既得権を守ろうとするようなところもあろうかと存じます。しかし問題は、常にその焦点となるべきものは経営権人事権ということに相なつておりますが、この経営権参加範囲及び人事権最終決定の問題というようなものに、あまりにもこだわり過ぎる。従つてこのこだわり過ぎるところを、いずれが幅を持つてこれを包容して、実際問題の処理について理解あるような処置をするかということについては、私は、進んで経営者側がその幅を持つてもらいたいと念願しておるわけでありますが、その点私ども関係するおおむねのものについては、経営者側はその幅がない。従つてあまりこれを字句的に狭義に解してやられることは、かえつて労組の方に不安を抱かせる。そうして専横を行わせる条約をとりかわすがごとき考え方になつてしまつて、そこから今言うような協約締結の非常な困難さが来ている。私がこの資料をとりましたのは、はなはだ不十分な資料でございますけれども、結局、今回の労調法改正等に関する基本的なものの考え方資料としたいと考えて、これの提出を求めたわけでありまして、こういう点から考えましても、残念ながら労調法改正については、われわれの不安はさらに増大する一方であるということをいわなければならない、かように考えておりまして、残念なことだと申し上げておきたいと存じます。  なお次に、基準局から資料を頂戴いたしたわけでございますが、この基準局の簡単な資料によりますると、監督実施した事業場数というのがございますが、この数に非常に上下があります。これは一体どういう関係でこういうような形になつておるか。これをひとつお尋ねしたいと思います。
  8. 堀秀夫

    堀説明員 お答えいたします。昭和二十三年が十九万という事業場数になつております。これは二十四年、二十五年、二十六年と比べまして非常に少い。と申しますのは、基準法実施されましたのが、二十三年の中ごろから大体完全実施なつたという関係で、二十三年が遅れているわけでございます。二十四年が四十万となつておりますのは、基準法実施直後におきましては、啓蒙宣伝を兼ねましてなるべく多くの事業場を広く監督するという方針をとつたので、ふえております。二十五年からは本則の監督にもどりまして、一定の監督計画を立てまして詳細に監督実施しておりますので、このような数字になつております。
  9. 熊本虎三

    熊本委員 次に、違反事業場数というのがございます。これによりますと、二十六年が十八万五千百九十六ということになつておりまするが、実質違反件数は五十二万八千三百八十五ということになつております。そういたしますると概算して約二倍半という数字になつておりますが、それは同じ事業場において二回ないしは三回の違反事実があつた、こういうことになりまするか。その通りでございますか。
  10. 堀秀夫

    堀説明員 実質違反件数は、基準法条文別違反件数でございます。従いまして一つ事業場で、たとえば安全装置が欠けておつた、それから通路に不備があつたというようなことならば、それで二つ違反になる。その点で実質違反の数がふえております。
  11. 熊本虎三

    熊本委員 この表によりますると、監督実施したものの約半数は違反を犯している。こういう統計が出ております。しかも前にも申し上げましたように、あまりに厳格にやつてみても、たとえば賃金支払い等について問題が起きておりますが、これを監督局に持つて行きましてもどうにもならない、手が出せないというようなことで、これは直接その衝に当る方々には気の毒でございますが、そういう形でありますから、実際の監督実施につきましても、なさなければならないものも、できなくなつておるものがたくさんあろうかと思います。従つてその摘発した事犯が結論としてどういうことになつたかということも承りたい。たとえば基準法に基く賃金支払い等の問題については、おおむね監督庁努力、警告によつてその目的を達成することのできたものは何十パーセントというふうな、ごく少数なものではなかろうかと思う。でありまするから、こういう事実から行きまして、基準法というものは非常に実施が困難であることが、この表をもつて想像できると思う。こういうような実際法があるがごとくして、なきがごとき状態の中で、今度さらに基準法改正によつて一段と緩和されようとしている。しかもそれが炭鉱労務に関して年令を引下げられようとしている。こういうような過去の事実から見まして、炭鉱労務技術修得というような形において、ああいうものが実施された場合に、今ですらできない監督が、さらに行届いて、養成以上の完全な労務措置にならないという保証がおつきでしようか。
  12. 堀秀夫

    堀説明員 ただいまの違反事業場の数が非常に多いじやないかという御質問でございますが、これにつきましては、毎年の違反事業場比率をとつてみますると、実は法律実施当座におきましては相当違反事業場比率が見受けられたわけであります。すなわち監督事業場に対する違反事業場比率が、約八〇%をオーバーしておつた、こういう状況でございましたが、その後基準法の内容が漸次事業場に浸透するにつれまして、この率は逐次減少を示しております。たとえば二十五年は六五%、二十六年は五六%というふうに、漸減の傾向にあります。もとよりわれわれはこれをもつて決して満足しておるわけではございませんが、このように違反事業場比率が漸次引下りつつあるという事実は、やはり監督の結果がだんだんと功を奏しているのではないかと考えるわけでございます。  なお次に、坑内労働の問題につきましては、技能者養成のために坑内労働を許可しておるのでございますから、結局、これによりますると、監督機関認可をしたものでなければ技能者養成のための入坑は認めないわけでございます。認可につきましては十分坑内の実情、それから労務管理状況等を見まして、それによりまして年少者の健康安全上有害でないものを選択したいと思つております。  なお入坑の際の条件につきましては、技能者養成審議会でも目下検討中でございまして、相当保護措置が講ぜられるのではないかと思います。
  13. 熊本虎三

    熊本委員 速記をとめで……。
  14. 船越弘

    船越委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止
  15. 船越弘

    船越委員長代理 速記を始めてください。
  16. 熊本虎三

    熊本委員 次にこの前の質問のときに残しておりました公営企業の問題につきまして、二、三この機会に承つておきたいと存じます。  第一は第五条の組合結成に関する問題でございますが、まことにもつて何回も話が出ておりますけれども、この条文から行きますと、あまりにも労働者の人格といいますか、そういうものに対する識見といいますか、そういうものを疑われるがごとき文章ではないか、こういう説明つき文章法文とする必要はないではないか、かように考えておるわけですが、その点について何か他に文章の書きかえをやられる御意思はないかどうかお伺いしておきたいと思います。
  17. 賀來才二郎

    賀來政府委員 地方公営企業労働関係法の第五条についての御質問と思いますが、この文章は大体現行の、公共企業体労働関係法に書いてありまする文章に準じておるのでございます。趣旨の点から御指摘だと考えるのでありますが、組合法書き方と比較いたしまして、かような書き方になつておりますのはすでに御承知通り組合法と違います点は、公営企業労働関係法におきましては、オープン・シヨツプ制をとつておる。なおその根本の理由は、公務員であるという身分を持つておりますから、かような書き方になつておるのであります。その事情を御了承願いたいと存じます。
  18. 熊本虎三

    熊本委員 次にお尋ねいたしたいのは第七条の、「管理及び運営に関する事項は、団体交渉対象とすることができない。」こう書いてある。しかし管理運営という言葉の中には、ただちに労務行政関係するものが多分に含まれておる。従つてその範囲決定するに、これでは一方的にその経営者決定することになつて、そこから幾多の紛争を生ずるわけでありまして、法令ができるときにもう少し具体的に、単に一方的判定に基くものでなくて、その範疇交渉等に基いて協定するということにしなければ、まずその初歩において紛争を起すおそれが多分にあるわけでございますが、その点についてのお考え方を承つておきたいと思います。
  19. 賀來才二郎

    賀來政府委員 この規定は実は公共企業体労働関係法にも入れてある規定でありますが、管理運営と申しますものは、地方公共団体の住民全体の意思によりまして、その信託を受けましたところの地方公共団体機関が行うのでありますから、直接この問題につきまして、組合との団体交渉によつてこれを左右し、あるいは決定すべきものではないというのが建前でございます。しかしながら御指摘のように、管理運営と申しましても非常に広い範囲でございますので、自然その運営やり方によりますと、労働条件に直接間接関係が出て参るわけであります。法文といたしましてはかように書いてあります。これは公労法も同じでありますが、現在公労法やり方におきましては、労働条件に関連いたしますものにつきまして管理運営事項に触れるということは、これはやむを得ないし、またさしつかえないという態度をとつておりまして、これで現在この団体交渉はこの法律趣旨に抵触することなくして、しかも労働条件維持向上に関しまする団体交渉はしごくスムーズに行われておるのであります。地方公営企業におきましても、同様の取扱いになるものと考えております。
  20. 熊本虎三

    熊本委員 このことは他の公共企業体の面でも非常に問題になつておることでございまして、前にそうなつておるからということで、新たに制定される法令に、そのままを踏襲しなくても私はよかろう思う。従つてわれわれといたしましては、この範囲その他については、逸脱されては困るわけでございますけれどもかくのごとく一方的に規制して、そしてこれから先は管理運営に関する問題だということでやられるということでは、せつかくかんじん労働行政に関する交渉に入る以前における問題が、非常に紛糾すると考えております。従つてこの点には十分一考を煩わす必要があると私は考えておるわけでありまして、賀来さんは他もうまく行つておると言われますが、必ずしもこの範囲決定はそう楽にはなつておらないと思います。従つてこれが運営面で処理できればいいのでございますが、私は何ものかをここに附帯して、そしてこれに関する範疇法文で規制することが必要ではないか、かように考えております。あらためて御答弁を願つておきたいと思います。
  21. 賀來才二郎

    賀來政府委員 御指摘の点、われわれといたしましてもごもつともと考えておりますし、先ほどお答え申し上げましたように、十分注意をいたしておりますし、現在この点に関します限りは、非常にうまく運営をされておるのであります。しかしなお実は過去の経験におきまして、さような点でいろいろ問題が起つたこともございましたので、今度の公労法改正におきましても、この条文につきまして、すなわち団体交渉範囲の問題につきましては、不明確な点を明確にし、整理をいたしたのが今度の公労法改正になつておるわけでありますとともに、地方公営企業法の第七条におきましても、その条文をそのままこちらに持つて来まして、誤解が起らないように努力をいたしたのであります。重ねて申し上げますが、第七条の第二項の団体交渉対象になつております事項でありますならば、管理運営に関する事項でありましても、一応団体交渉対象になり得るということをはつきり申し上げておきたいと思いますし、今後の運営については特に注意をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  22. 熊本虎三

    熊本委員 次に第九条に入りますが、第九条においては、協定が成り立つたものが規則その他に抵触する問題をうたつてあります。これは「すみやかに、その協定規則その他の規程にてい触しなくなるために必要な規則その他の規程改正又は廃止のための措置をとらなければならない。」と書いてあります。これははなはだよいのでありますが、第二項から行きますと、「てい触する限度において、効力を生じない。」こう書いてあります。そこで規則改正並びに廃止が必要な場合においては、その間これを実施するわけには参らぬかと思いますけれども、あくまでも前段が優先すると考えます。私どもといたしましては、抵触期間実施されざるものは協定成立のときに効力発生は遡及するという意味であろうと考えますが、はたしてそう解釈してよろしいのかどうか。
  23. 大島靖

    大島説明員 第九条二項の関係についての御質問でございますが、これはその規則または規定改正廃止がなければその効力を生じない、従つて遡及という形ではなくして、改正廃止がありましたら効力を生ずる、こういう意味合いでございます。
  24. 熊本虎三

    熊本委員 規定その他に抵触すれば、法理上効力を発生しないわけですけれども、それが改正と同時に協定のときに遡及して行われるのかどうか。これが遡及しないということになりますれば、規定改正期間中せつかく協定しても地方公労法の十六条と同じようなことで、いつまでたつて実施ができない、こういうことになつて、これは大体遡及するという解釈で私は行きたいと思うのですが、その点を聞いているわけです。
  25. 大島靖

    大島説明員 その点につきましては、この条例にしても、規則にしても、一方においてやはりその地方における法軌範たる性絡多分に持つておりますので、そういう関係からいたしまして、規則も生きる、協定も生きる、こういう重複の関係で非常に複雑な法関係を生ずるおそれもありますので、こういう規定にいたしたのであります。最もこの規則改正の際におきまして、そういうふうに若干改正規定が遡及するような規定をいたしますれば、それは可能でありますけれども、大体におきまして、そういう複雑な二重の法関係を生じないようにという意味において、改正または廃止のあつたときから効力を生ずる、こういう規定にいたしておるのであります。
  26. 熊本虎三

    熊本委員 こうなつて来ますと、第八条の締結後十日以内に、これを当該地方公共団体の議会に付議して、その承認を求めろという条文がだんだん死んで来るわけですね。ですから第八条を生かすために、第九条で補足されておると思うわけですが、従つてそれは大体において、理念においては遡及することが原則でなくてはならない、私はこう思う。そうしないと、これで阻まれてしまいましたら、第八条も死んでしまいますし、第九条の前段も用をなさなくなるわけです。この点を私はお尋ねしているのであつて、いろいろ法規解釈上むずかしいところがあろうかと思いますが、建前としてはそうあるべきだと私は考えております。その点はよろしゆうございますか。
  27. 大島靖

    大島説明員 この第八条、第九条を通じての問題でありますが、効力関係については、ただいま私から申し上げましたような法律解釈になるのであります。ただ今申しましたような、こういう複雑な法関係を生じないような場合におきましては、この条例の改正なり、規則規程改正というものをそういうふうに遡及して取扱うということも可能なわけであります。
  28. 熊本虎三

    熊本委員 もう一点このことについて大臣に聞いておきたいと思いますが、十一条に要するに扇動と目されるべき事項を並べて特に書いてありますが、これは前段においてすべてを尽しておると思うので、労組を見るに、何か前もつて人を見たら泥棒と思えというような字句の表現は、はなはだ不見識ではないかと考えまして、この点は削除してもらつてもいいかという考え方ですが、念のため御説明願つておきたいと思います。
  29. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これはもちろん、主眼はそういう禁止された同盟罷業、怠業その他の争議行為をしてはならないということでありますが、その禁止された行為を共謀するとか、あるいは示唆するような行為も当然禁止すべきものでございますので、掲げたわけでございます。この点は国家公務員の方の条文と同じでございます。
  30. 熊本虎三

    熊本委員 前のと同じだということでありますが、われわれの常識からしますと、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、またはあおつたりしてはならないということを書いて——そのようなことをやつた者はおのずから処罰規定がありますから、そこまで念を押さなくてもよいのではないかという考え方ですが、意見の相違でございますれば、やむを得ません。  まだあと公労法にも質問がございますが、委員長からも先ほどから言われておりますので、ここで一応質問を中止いたしまして、時間がございましたら、あとで二、三点お尋ねしたいと思います。
  31. 島田末信

    島田委員長 今後時間の余裕を見て考慮いたします。中原君。
  32. 中原健次

    ○中原委員 まず労調法の一部改正に関しまして逐条的な御質疑をいたしたいと思います。  最初にお尋ねいたしたいのは、十八条を拝見しますと、いろいろ問題がここで提起されて参つたと思います。最初に従来の調停申請というものが、いろいろいわゆる実績もあるわけでありますが、その調停申請の今日まで取扱われました大体の件数、それからその件数中の労働側並びに資本側の件数の内訳、それらがわかりますれば拝聴しておきたいと思います。
  33. 大島靖

    大島説明員 昭和二十一年の三月から二十六年三月までの労働委員会の争議調整の取扱い件数を調べました結果によりますと、昭和二十一年におきましては百八十八件、昭和二十二年におきましては八百九十四件、二十三年におきましては一千四百十四件、二十四年におきましては一千三百件、二十六年は三月まででありますが、九百七十九件、合計四千七百七十五件。但しこれは労働委員会において争議の調整の取扱いをいたしました総件数でありまして、今お尋ねの十八条各号によります細別につきましては、今ちよつと手元に資料を持ち合せておりませんので、御了解願いたいと思います。
  34. 中原健次

    ○中原委員 実は大切なことは、これらの申請が労働者側からか、経営者側からかということであります。これは内容によつて判断はかわると思いますが、私の常識でまず大ざつぱに述べますと、ほとんどと言つてよいほど大多数が労働者側の申請であつたであろうと思います。本来労使間の問題、ことに戦後今日までの段階では、労働側から問題を提起しなければならぬような事情が多うございましたので、おそらく実際も労働側の申請でほとんどが尽されておるということになつておると思います。     〔船越委員長代理退席、委員長着席〕  そこでこれが解決のための両者の努力についてでありますが、これが解決のための両者の努力というものは、今まで私どもの見た範囲では、決してこれは一方に偏するということでなく、公、正に判断いたしましても経営者側の方はいつも消極的な立場をとり、解決のために積極的な努力をするのはほとんど組合側であるということは否定できない実情であるわけであります。そういう判断から考えて参りますと、この十八条によつて規定しようとしておりますねらいというものは、結果的には非常に妙なことになるのではなかろうか。従つてそういう扱い方になつて参りますと、その辺から労働側のために非常に不利な条件が出て来るのではないかというふうに判断がつくのであります。そうなつて参りますと、両者に対等な諸条件を付与して行くという立場から参りますと、十八条の申請却下の項目というものは、その目的と違つた結果に陥るのではなかろうか、こういうふうに思うのでありますが、これらのことにつきまして、提案者の方ではどういうお見通しで、この申請却下の問題を規定せられたのか伺いたいと思います。
  35. 大島靖

    大島説明員 この十八条の却下制の問題に関連しての御質問でありますが、第一に当事者双方の解決の努力の問題があります。労働関係調整法第四条にも規定しております通り、当事者双方が直接の御協議または団体交渉によつて自主的に解決をする努力を妨げるものではないのはもちろん、当事者がそういうふうな団体交渉その他によつて自主的に解決するよう努力をする責務を免除するものではない。労調法第四条に言つております通り、たとい一労働委員会による調停の場合におきましても、やはりこの自主的解決というものはどうしても必要なわけであります。そういう関係でさらに当事者双方の自主的解決の努力をうながす、こういう意味におきましてここに却下の制度を設けたい、こう思つておるわけです。この点が必ずしも労働者側に不利な条件を与える、あるいは使用者側に不利な条件を与える、そういうふうなことは別にないのでありますので、やはり双方が対等の立場において、団体交渉によつてできるだけ解決して行く。それがどうしてもまとまらないという場合に、第三者の公正な機関である労働委員会が解決に乗り出して行く。こういうのがほんとうの建前なのであります。そういう意味合いにおいて、この調停の申請の却下の規定をここに置こうとしておるわけなので、さよう御了承を願いたいと思います。
  36. 中原健次

    ○中原委員 それは労調法その他法律一般の文字だけを見ますと、確かに説明の通りです。ところが実情は必ずしもそれと一致しない。つまり法文でそのようなことを要請し、意図しながらも、実情はまつたく逆であるという場合があり得るのです。たとえば労使間の問題を処理して参りますためには、これをどのように制限しようとも、あるいはそれが遂に却下になろうとも、ために打撃をこうむり、痛手を感ずるものはしばしばほとんどと言つてもよいほどに、これは労働者側ではないかと思うのです。その実情をつかんだ上でないと、法の立て方というものが、その志しと違つた方向に参るようになるのであります。これは本省で机の上だけで御判断になられたのではわからないかもしれませんが、実際職場、工場、街頭に乗り出されて、その間の消息をつぶさに把握されるならば、今私が申し上げておることはわかるわけです。そういう意味でこの十八条の却下の措置は、どのような弁解にもかかわらず、解釈にもかかわらず、これは公正な措置ではない。むしろここで終止符を打たしめることによつて労働者側が非常に不利になつて来るということがはつきり言えるわけなのです。今論争をしようとは思いませんが、そうなるわけです。そこでこのような却下措置を講ずるならば、その却下措置のために起るいろいろな障害に対しての救済措置というものがやはり必要だと思うのです。ところがそういうふうなものはうかがわれない。救済措置どころかむしろ逆に、もしそのために両者の交渉が複雑になり、いろいろ低迷して参りますと、今度の新しい措置によつて、いわゆる緊急調整というものをうながすような結果にさえ陥る。だから救済措置どころか、むしろ逆にそれ友一つの前提条件として、一層労働側に不利益な措置を容易ならしめるようなことにつながつて来ると思うのですが、その点について、これは事務局の御答弁は無理だと思いますので、大臣はどのようにお考えになるか伺いたいと思います。
  37. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これはこの前にも申し上げましたが、まず現在労調法に三十日の冷却期間を置いてあるのは、なぜ置いてあるかということであります。これは公益事業につきましては、ただちに争議に入るということでなしに、一応三十日の間に合理的な機関で治められるならば治めてみようという意図のもとに置かれているわけであります。ところが実際の運用は、先日公述人からもお聞きになつたでありましようが、まだ争議の態勢も整えないうちから、一応労働委員会へ要求をするのであります。そして三十日たつのを待ちまして、それから初めて本腰になるというのがこれほとんど常識になつておるわけであります。最初はそういう意図ではなかつたのでしようけれども、だんだんにそういう戦術を考えまして、そういうふうに運用されている。そこで労働委員会の実際に携わつておる者から見れば、もう意味がないのだ。だから、こういうものを置く以上は、日にちがかりに短かくつてもいいのだから、もつと自主的にやつてもらつて、自主的に解決がつかなければ、もちろん取上げなければならない。しかし初めからほんとうに腰を入れないで、一応事業主側に要求はした、事業主側はそれは困ると言つた、それでは切符をもらおうかといつて、労働委員会に申請書だけを出しているということでは、公益事業に対してこういう規定を置いた意義がありませんから、そういう場合には、一応却下の方法も考えるわけであります。そこで、中原さんの御心配になつているように、この却下ということがやつぎばやに行われて、そうして労働者の抑圧をしようという意図のもとにやろうとすると、それは確かに弊害がございます。しかし労働委員会でそういうへんぱな取扱いをしばしばやりましたのでは、労働者側は労働委員会を信用しなくなる。御承知でありましようが、労働委員会の構成は、使用者側労働者側はそれぞれ自分の団体から推薦した者が出て参りまして、公益委員も両方から推薦した者を両側で折れ合つてきめるのであります。でありまするから、今回のこの法律建前の基本的な考え方というものは、公益事業であるとか、あるいは公共の福祉に重大な関係のあるものは、まずこういう合理的な機関にお願いして解決してもらえないだろうかという意図のもとに行われておる。中央労働委員会はへんぱな取扱いをするのだということを前提となさいますと、問題は違つて来るわけでありまして、私はこの却下という制度を置きましても、労働委員会がそう非常識に却下するとは考えられない。また労働委員会には労働委員も出ておられますから、これは常識的にお考えいただけばけつこうじやないか、かように存ずるのであります。
  38. 中原健次

    ○中原委員 いろいろ議論がありますが、時間もとられますからやめます。結局は、大臣の御答弁でもわかりますように、冷却制というのが実際は問題になつて来ると思うのです。大体冷却制度を設けたというところに初めから問題があつたのですが、それを運営してみると、それは一層無用なものであつた、あるいは障害をさえかもすものであつたということがわかつたわけです。それをなおかつあくまでこの制度を生かそうとするところにいろいろな必要でもないような措置が、判断されて案出されて来たように私は思うのです。でありますから、むしろこの場合、この冷却制度というような、冷却期間を設けて云々ということをやめた方が、紛争処理を早期に解決させるためにむしろ役立つというような解釈が出て来るようなわけです。だからこそ公述人の人たちの中でも、実際第一線でこれを取扱われた経験者の御希望は、むしろ冷却制度をやめて、予告制度に切りかえた方がよかろう、その方が目的に沿うような結果を招来するのにかえつて好都合であるということであつたのであります。われわれも実はそういうふうに考える一人であります。  なおこの労働委員会の問題につきましては、なるほど三者構成で非常に公正な機関として期待されておるわけであります。しかしその話になりますと、今度は労働組合法の中で、労働委員の推薦任命の手続の問題が議論になつて来ると思います。ほんとうに公正な三者構成による機関であるためには、今のような推薦形式あるいは任命形式ではほんとうはまずい。これははつきりしていると思います。ことにこれは労働組合側の方からしばしば意見が出ているところでありまして、現行制度のごとくに、なるほど労働組合側からも、労働代表を選考して回答を出すわけでありますけれども、その中から、中央は労働大臣、地方は知事が適当に指名するというような任命形式になつておるわけです。そういう点から、ほんとうに労働者意思をそのままに取上げ得ない場合もできる危険性が伴つておるわけです。従つて三者構成の労働委員会をほんとうに素直な形にするためには、こういう十九条のような委嘱推薦のような方法ではいけないというようなことも出て来るわけです。これは今度の地方公営企業労働関係法に関連しても問題になると思います。結局この労働委員会にすべてを託すという結果になります。この地方公営企業の諸君といたしましても、おそらく労働委員会は、あくまで信頼のできる三者構成としての本来の性格をりつぱに表わすことができるような、そういうようなものであつてもらいたいという期待を持つであろうことは申すまでもないと思います。そういう意味で、この労働組合法の十九条の改正ということは、当然これらのいろいろな問題に関連して起つて来る、こういうふうに考えるものであります。それについて一応話がついでにそこまで参りましたので、労働委員の選考方式等について、あるいは任命の手続をとる、要するに職権委嘱の問題が、あくまで妥当であるかどうかということについて、お尋ねしてもむだかとも思いますけれども、一応大臣の御意見を承りたいのであります。
  39. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 いろいろ御意見があるだろうと思いますが、私は現在の労働委員会の任命形式は公正だと思います。というのは労働者側の代表は、労働者側の方から推薦をされて任命するわけであります。それから使用者側の方は、使用者側から推薦されて任命するのであつて政府がかつてに独断で任命するわけではありません。それから中立の公益委員は、両側の同意を得て任命するのであります。これは私もしばしば携わりましたが、なかなかむずかしいのであります。お話のように、使用者側は、使用者側によいように注文をつけるでありましようし、労働者側は、労働者側によいような注文をつけるが、この公益委員はどちらにも偏してはいけないのであります。結局両側が話し合つて、まああの人ならよかろうということで常にきまるわけであります。最近は労働委員会に対する信用が高まつて来ている。確かに過去七年間の状況を見ておりますと、昨年暮あたりの状況では、労働委員会を信頼したところの解決というものが相当行われている。従つてこれは非常によい制度でもあるし、またそうあるべきものだと私は思つております。何か非常にへんぱのようなふうにお考えになつておりますけれども、労働委員会の委員の任命につきましては、相当苦心もいたしますけれども、どうもそう御批判をいただくようなことはないのではないだろうかと思います。
  40. 中原健次

    ○中原委員 私は大臣よりもつと実情をよく知つております。中央、地方を通じましてよく知つております。従つてたとえば地労委で推薦いたします場合も、労働組合側が何ぼか推薦するのでありますが、それが必ずしも労働組合側の期待するような結果に実情としてはなつておりません。なつておらないような結果の中から中立の公益委員を選ぶことになつて来れば、おのずからその線が出て来るわけでありまして、このことについて今議論する時間がありませんから避けますけれども、大臣のせつかくの御苦心にもかかわりませず、実情は、労働者を代表する労働者側委員自体の中にも、いろいろ複雑な問題が提起されておるということを申し上げておきます。いずれこれはまた時をあらためまして掘り下げた意味における論議もし、よき結論を出すために、みんなで努力しなければならぬところだと私は考えております。  そこで時間がないようでありますから、私大急ぎで、実はまだまだ各法律案に対する、それぞれの各条質問があるわけなんですけれども、それを差控えまして、一、二点だけ触れまして、私の質問を終らしていただきます。  十八条の問題につきましては、一応結論を得ませんけれども、ただ政府当局の御意向だけを拝聴したことにいたしまして、私の質問はおきます。  次に三十五条の緊急調整の問題でありますが、この緊急調整の問題は、おそらく今回の改正法律案のすべての中の一番大きな難点であることは言うまでもありません。しかもこの緊急調整の問題に対する反対論というものは、非常に熾烈であるということも、当局は十分御認識と思います。私どもといたしましては、これはあまりとやかく申し上げる必要はないと思うほど明らかな悪法であります。また考えようによつては違憲的内容を持つたものでありますが、ただここで御認識をひとつつておきたいと思いますことは、こういうふうな措置をやることによつて労使間の紛争が早期に解決せなくなる。だから問題は、早期に解決させるためのせつかくの名案であつたかもしれませんけれども、これでは早期に解決しないで、かえつて争議事情が複雑になつて来る、あるいは尖鋭化して来る。一つ間違うと、とんでもない、混乱させられるような方向へ争議を追い込んで行くというなうな結果をかもし出すおそれがないとは言えません。従いましてこの際政府にも、それから与党の各位にもお願いいたしたいのでありますが、ほんとうに言葉通り早期解決を願つていただけますならば、こういう緊急調整のような条項はひとつ御撤回を願いたい、私はかように思います。もうそれで言葉は尽きておると思います。従いましてまずそのことをこの際特に懇請いたしまして、私はこの緊急調整に関する論議は避けます。論議を必要としないほどにこれは悪法であるからであります。また必要としないほどに違憲的なものであるからであります。  私はその次に公企労法の問題に関しまして、この場合承つておきたいと思うのでありますが、公企労法の第三条の除外規定であります。第三条の中で、「第七条」を「第六条、第七条第一号但書」にという内容の変更なんですが、労働組合法第六条を新たに挿入せられました意味を伺つておきたい。この問題の御答弁のついでに、さつき申し上げた撤回する意思があるかどうか。おそらくないとおつしやるのでありましようが、撤回してもらいたいという私の要求に対して、どういうふうにお考えになりますか。その二項についてお尋ねをいたしたい。
  41. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 緊急調整につきましては、せつかくの御希望でございますが、私がしばしば申し上げましたように、放置をしておけば、国民生活に重大な損害を及ぼすという場合には、やはり必要だと思います。これをただ何でもかんでも争議が起きたら、みんなこれでやるというならば、お話のように争議が長引くかもしれません。しかしこれは法文にもはつきり出ておりますように、そういう趣旨ではないのであります。つまり争議行為性の強いもの、しかも公共の福祉に著しい障害がある争議であつて、しかもその争議だからといつて、ただちに発動するというのじやなくて、これをほつておけば、国民生活に重大な損害を及ぼすと思つたときにやるということでありますから、そういう事態のときに手がないのだということでは、済まないのじやないか、かように存ずるのであります。  なお公労法につきましては、係から申し上げます。
  42. 大島靖

    大島説明員 公労法の第三条は、労働組合法の適用を規定いたしておるのでありますが、その中で公共企業体の特有の問題につきましては、公労法の中で規定いたしておりますので、そういう関係につきまして適用の除外を規定しておるわけでございます。この労働組合法第六条の関係は、労働組合交渉権限について規定をいたしてあるのでありますが、御承知通り、現行の公労法によりますれば、第九条によりまして、公共企業体におきます団体交渉交渉委員をこしらえまして、この交渉委員によつて団体交渉を行う、こういうような団体交渉のルールを定めておるわけなんです。そういう関係から、この第六条は除いて適用いたす、こういう関係であります。
  43. 中原健次

    ○中原委員 最初の大臣の御答弁はまつたく独断がたいへん入りまじつているようでありまして、議論の余地がたくさんありますが、それは討論に譲ります。なおこういう問題について軽はずみにも撤回の意思なしと簡単にお答えになられることは、これは重大な責任が後に残つて来るということを私はつけ加えておきます。  公労法に第六条を挿入されるということについては、必要がない、こういうふうに言われたと思いますが、実は団体交渉交渉委員決定というようなことにいろいろ問題があるわけであります。大体公労法の全般に流れております精神というものは、公労法が提案されました当時も実は問題があつたわけであります。それで私が申し上げますのは、組合員の意思によつて団体交渉の委任をするわけなんですが、そういう委任というような考え方は、その組合々々の事情によりましては、非常に重要なことでありまして、取扱いを簡便にするために、法律をそのまま処理するという観点から、六条の挿入は不必要一とは言えないのでありまして、この精神に問題があると思うのであります。そういうような組合員の自由な意思による決定を、しかもそういう合理的な決定を否定しなければならないような法律内容であるがゆえに問題があると思うのです。従つて公労法それ自身がもう一度論議の爼上に上らなければならぬ間違つた法律であるわけなんです。ところが妙なもので法律というものは一度決定しますると、非常に悪い法律でもそれがあたりまえだという建前になつてしまう。つまり既得権をそこにつかんでしまう。その得た既得権によつてものをやつて行こうということになりますから、いつの間にか権力につながることの弱いものあるいは全然つながらないものの立場からいたしますると、予想外に不利な結果をためにかもし出すことになる。そこで労働組合運動が最近非常に熾烈さを加えなければならないようになつて参りましたし、大臣の言葉を借りれば、政治的性格のストライキにまで発展して来た根拠はこういうところにあると思う。私はよけいなことはあまり申し上げませんが、こういう意味で三条の除外規定が問題にされるのはそういうことにかかるのです。このことをつけ加えておきます。  それから次は八条の団体交渉範囲の問題なんですが、就業規則というものがどうも見つからないのですが、どうもこれだけに細別されたら、もう就業規則はなくてもいいということになりますか。この点をひとつお伺いしておきます。
  44. 大島靖

    大島説明員 この就業規則は当然経営者の方で定むべきものであります。ただその内容につきまして、こういうふうな給与でありますとか、その他の労働条件というものにつきまして団体交渉によつて企業体の方と職員の方との協定ができる、おとりきめを願うというふうになるわけなんであります。就業規則自体も団体交渉範囲というわけのものではないのでありまして、そういう意味で除いているのであります。
  45. 中原健次

    ○中原委員 そこにすでに考え方が大きく違つているのです。就業規則というものは、経営者の方でかつてにきめるのだから交渉対象にならない。つまり労働者意思は全然組み入れないでもさしつかえない、こういう観点に立たれるところにいよいよ問題を複雑にして来ることになるのです。今日の国のねらいが民主主義の確立ということであるなら、やはり民主的にものを扱うという観点に立つべきでありまして、仕事をするのは労働者がするのであります。だからこの就業規則等についても労働者との間に公正な関係において相談をして行く。そして両者の意思によつて決定して行くということが、おのずからよりよき内容の就業規則たり得ると私ども解釈するのです。それを就業規則というものは経営者の方でかつてにきめたらよろしいという考え方の上に立つた立法精神と申しますか、そういうふうなものに私はすでに問題があると思います。ことにこういうふうに細別にわたつて分類指摘した団体交渉の項目というものは、念が行つているようで実は非常にきゆうくつなものになつて行き、かつ団体交渉を必要とする労使関係の問題の処理のためには、むしろこういうようなこまかく規定した規定がない方がいいのではないか。あげて労使間の問題は労使間で相談してきめる。それが団体交渉対象になる、範囲になるというふうに私ども解釈いたすのであります。この点に対しましてどうでしようか、もう一ぺんお尋ねいたします。
  46. 大島靖

    大島説明員 ただいまも申し上げました通り、就業規則の内容の中には、なるほど給与その他の労働条件多分に入るでありましようが、そういうものについては団体交渉が許されるのでありまして、それに基いて経営者と職員との間にとりきめがなされるわけであります。でありますから今中原さんの御懸念のような問題は起らないのではないか思うのです。  なお第二の問題の、団体交渉範囲のきめ方でありますが、この点につきましてはこれよりさらに詳細にきめられましようし、あるいはさらに簡単にもなり得るでありましようが、この程度の規定が一番はつきりわかつて適当なところではないかと思つて、こういう規定にいたしたわけであります。一、二、三にさらに入らないものでありましても、労働条件に関する事項については第四号で団体交渉範囲になつて来る「前各号に掲げるものの外、労働条件に関する事項」こういうふうにいたしてありますので、これまた御懸念のような点はないだろうと考えているわけであります。
  47. 中原健次

    ○中原委員 やはり問題がそこにあるのです。大して問題は起らないであろうというのはあなたの独断で、事務当局ではこれはわからないでしよう。わからぬのがあたりまえです。大体こういうようにこまかく規定することが範囲を狭めることになると私は申し上げておる。狭める目的だからそれでいいのでしようが、私どもはそれでは困る。「前各号に掲げるものの外、労働条件に関する事項」と書いたのは、なるほど行き届いておるようですけれども、少くとも一応表示しましたものが中心になることだし、だからそれを越えるような問題は、その他という中には含まないことに解釈される場合が多いのです。つまりその他というところにまた一つ紛争が出て来るわけです。これ解釈の仕方ではいろいろ論議が起つて来るわけで、なるほど事務的には行き届いたように見えますけれども、実際的にはそういうことが、むしろ問題をますます混乱に追い込んで行くような要件を内包しておるということを私は指摘いたしておきます。  どうも逐条質問だけでも二、三時間いただきたいと思うのですが、しばしば御注意のようでありますから御注意に従うことにいたします。あとにいろいろありますけれども、もう一点だけ触れて質疑をやめることにいたします。  地方公営企業労働関係法なのでありますが、これは大体公共企業体労働関係法の線に沿うてできておるものだけに、前者の欠陥がそのままこれに入つておる。従つて公共企業体労働関係法の論議は、そのままこれに移つて来てもさしつかえないことになるだろうと思いますが、従つてこれに対するそういう基本的な議論はやめます。またお尋ねもやめまして、ただここで技術的な問題で一つだけ御質問してみたいと思います。これは先般も請願、陳情も出ておつたと思いますが、水道事業の問題に関しまして、政府の方の御答弁はきわめて簡単でありましたが、請願によつてよく調べてみますと、なるほどとうなづけるような点が多々あるわけです。水道事業の中に下水道というものはもちろん含まれておりましよう。そこで下水道というものを特に同一な取扱いをしなければならぬという事情が、特に東京、名古屋等ではあるようであります。その他三、四の所であるようであります。従つてこれは単なる下水に水を流して汚水を流すというような簡単な意味ではなくて、財政的な見地から考えましてもいろいろ論議があるようです。従いましてこれは単純にこれを入れることは困難であるというふうに言い切つてしまうのではなしに、何とかこれは判断をつけて、特別な地方における、東京、名古屋、横浜、大阪等が指摘されておるようでありますが、こういう各地区の特殊事情による下水道の関係につきましては、やはり考慮さるべきではないか、特にそれを考慮したからといつて、さしつかえも起らないように私ども考えますので、何とかそれを取入れるということの判断のために御配慮が願いたいと思うのです。これは与党の方でも御配慮を願えると思います。政府もぜひそういう考え方になつていただきたいと思います。下水道の問題につきましてもいろいろあるよそうです。特に東京都あたりでは、こういうふうな法律が出ましたことによりまして、下水道関係の人たちが非常に不安を感じまして、動揺さえしておるということも聞き及んでおりますので、そういうことに対しても親切な御配慮があるべきではないか。これを入れてはならないという固定的な論議もないようでありますし、根拠もないようでありますから、この点についてはせつかく積極的な御配慮がほしいと私は思います。  その他たくさん十数点にわたります質疑があるのでありますが、これは差控えます。それから労働基準法に関しましても実は二点だけありますけれども、これもいまさらお尋ねしてみても意味がなさそうであります。ただ私どもは、審議会の方の満場一致の決定に基いてこの労働基準法の一部改正法律案は出されたのだという説明がありましたけれども、実情は労働者の意図に反しておるという点がありますので、それだけを意思表示いたしまして、お尋ねは控えます。委員長の御注意従つて、ただ下水道に関する問題だけお尋ねして質問を終ります。
  48. 賀來才二郎

    賀來政府委員 今の中原委員の御質問の下水道の問題でございますが、確かにこれは陳情も受けておりますし、実情も聞いております。また中原委員の御指摘のような実情があるということも十分われわれといたしましては承知をいたしておるのでございます。つきましては、これをいろいろ研究いたしたのでございますが、一面においては各都市の事情が非常に違い、複雑でありまして、これらの組合関係者等の御意見を聞きましても、最後的に組合自身も決定しかねる。これは組合組織面からの話でありますが、非常に困つておるという実情でございますし、また経営者側から申しましても、たとえば下水道と上水道とが一緒の局になつておるような所では非常に困つておられる面もありますが、同時にまたこれは企業的性格を持つていないという点におきまして、もしも一緒になりますと、これまた困るというような意見もいろいろあるのであります。さような意味合いにおきまして、今度は公共企業体労働関係法趣旨を適用するという面から見まして、公共企業体に近いもの、言いかえますと、労務の現状は現業的であり、かつその業務は企業的性格を持ち、企業体としての一体性を持つておるという建前で、一応労使双方の大体の総平均をとりまして、この法律をつくつたような次第であります。しかしながら先ほど申しましたように、中原委員の御指摘のような事情は十分了承いたしておりますので、今度の立法には実は時間切れで間に合いませんでしたが、早急に御趣旨に沿うように努力いたしたい、かように考えておることを申し上げたいと思います。
  49. 島田末信

    島田委員長 前田種男君。
  50. 前田種男

    ○前田(種)委員 大蔵省の政府委員が見えておりますから、大蔵省の当事者にお尋ねしますが、進駐軍関係の労務者が、講和発効とともに駐留軍関係の労務者に切りかえられまして、それに対して退職手当支払いの問題があります。実際に退職手当の支払いがどうなつておるのかという点について、大蔵省の方からお答え願いたいと思います。
  51. 東条猛猪

    ○東条政府委員 平和条約発効に伴いまして、進駐軍労務者の方々の身分関係がかわりましたことは御案内の通りであります。御審議をいただいておりますところの平和条約ないし安保条約の発効に伴います国家公務員法等の一部を改正する等の法律案で、平和条約発効後は国家公務員たる身分を離れるのでありますが、それまでの退職手当の支給につきましては、一つは従来の米軍関係一つは連合軍関係の労務者にわかれるわけであります。御承知通り進駐軍関係の労務者の給与につきましては、特別調達資金をもつて給与の方の支払いをやつておる。ところがその特別調達資金の現状の金繰りからいたしまして、退職金を一度に支払うということが資金の関係から許されませんので、今申し上げました法律案におきまして、米軍系統の退職手当につきましては、平和条約発効のときに一応退職金は打切り計算として、そのおのおのの労務者の受けるべき退職金につきまして法定の利率の利息をつけまして、将来これらの労務者の方々の退職せられる場合におきまして退職金を支払うという内容の法律案の御審議を願つておる次第であります。
  52. 前田種男

    ○前田(種)委員 身分を打切るか打切らないかということについても問題が残つておるらしいのです。継続して使用されておるものはむしろ継続の形だというような問題も残つているやに聞きますが、その点ははつきりしているかどうかという点が一点。全部に退職手当を支払いするといたしますと、総額どの程度になりますかという点が第二点、まずこの二つをお聞きします。
  53. 東条猛猪

    ○東条政府委員 平和条約発効の場合の労務者の身分をいかがいたすかということにつきましては、いろいろの考え方があるわけでありますが、私どもといたしましては、主として組合側の御意見をも参酌いたしまして、先ほど来申し上げておりますように、国家公務員たる身分を離れるということでもつて法律案の御審議を願つております。これが第一点であります。  第二点といたしまして、退職手当の金額がどれくらいになるかという御質問であります。御承知通り二十万を越える労務者の方々でありますので、正確な計算はいたしかねますが、かりに平和条約発効のときに打切つて一時退職金を支払うといたしますと、約七十五億円見当の金がいるのではなかろうかという推算をいたしております。
  54. 前田種男

    ○前田(種)委員 その中で、聞くところによりますと、アメリカ軍からドル払いで退職手当に充てるべき金をある程度日本政府はもらつているといわれておりますが、もらつている金額はどの程度に該当するか、あるいはその内容がどういうふうになつているか、お答え願いたいと思います。
  55. 東条猛猪

    ○東条政府委員 従来の進駐軍労務者の方々の給与等の支払いにつきましては、特別調達資金の受払いでこれを調達整理いたしておつたのでありますが、資金の金繰りの第一点でありますけれども、最近におきまして、この基金は現在高約十八億円になつておりますが、この基金は単に退職金を支払うだけでなく、給与あるいは各種の総係り的な経費あるいは退職手当等の広汎にわたりますところの一人当りの計算をいたしまして、その都度その都度清算の上で資金の受入れをいたす、そして毎月月の初めに労務者の方々に必要な給与の支払い、またその間に退職せられる方々の退職金を支払う、かように基金は一体的な運用をいたされておる。いろいろ資金の出入りはございますが、現状におきまして、一般会計ないし国庫の方から約七十五億円の金を入れまして、しかも残高は十八億円しかないという資金の金繰りの現状になつております。
  56. 前田種男

    ○前田(種)委員 どうも今の答弁では了解しかねますが、アメリカ軍から雇用関係その他の契約とかいろいろな協定に基いて、間接費の中に退職手当の支払いに充てるべき資金も含めまして、相当金額が日本政府にドル払いで支払いがなされておる。それにもかかわらず従業員に対しましては財政難のために、引続いて雇用される者は支払いがなされていないということが、どうも進駐軍関係の労務者の実情の面からいつても、ここにはつきりしない点が残つておるのです。といいますのは、アメリカ軍から金をもらいながらその金を他の方に大蔵省でまわしておいて、退職手当の支払いに充てていないという点が相当言われておるのです。だからこれは、今言われた程度が真相であるかどうかという点について、どうも一つはつきりしない点がございますので、もう少しその点を明確に——いわゆる政府相当不審を買うような点が言われておりますので、そういう点の真相をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  57. 東条猛猪

    ○東条政府委員 政府といたしまして、特別調達資金をほかの用途に使つておるというような事実はございません。それではなぜ金繰りが苦しいかという点でありますが、大ざつぱに申しまして原因二つあろうと思います。一つは、この調達資金をもちまして一応労務者の方々の給与その他の支払いをいたしますが、それも米軍側から実際のドル資金の受入れをいたしますのに、清算をいたしましたあかつきにおいて受入れをするという関係で、相当時期的なずれがあります。しかしながら一面におきまして労務者の方々に対する支払いは怠つてはなりませんので、アメリカ側からの資金の状況が清算その他の手続の関係で遅れましても、この調達資金からは、労務者の方方には滞りなく給与その他を支払うことになつておるという実情が第一点であります。  第二点は、これは申すまでもなくドル資金の償還を受けるようになりましたのは昨年の七月以降でありますので、退職金の計算の基礎はそれ以前のものが入つております。先ほど申しました七十数億の金は、昨年の六月末までの退職金も含んでおります。従いましてその分もこの際一ぺんに払えと言われましても、それは払うことができないというのがおもなる原因の第二点であります。重ねて申し上げますが、政府といたしましては、七十億を越える一般会計等の金をこの特別調達資金に繰入れまして、しかもなおかつ現状においては十八億円の残高しかない。大蔵省といたしましては、この金をよそへ使うどころか、七十五億入れましても十八億しか残つていない現状であります。
  58. 前田種男

    ○前田(種)委員 先ほどの答弁によりますと、米軍からとる金を円に直して十八億何がしという報告でございましたが、私の聞いております数字によりますと、大体二十五億余りになると言われております。これは私の数字が誤りであるか、大蔵省の今の答弁が正しいか、もう一度この点だめを押しておきたいと思います。
  59. 東条猛猪

    ○東条政府委員 私が十八億と申し上げましたのは、最近における資金の残高であります。一般会計なり国庫余裕金を繰入れ、あるいは米軍から償還がありますとそれを受入れ、片方においては、昨年の七月から今日までの支払いがございます。その残高が十八億ということを当初にも申し上げ、ただいまも申し上げたつもりであります。さよう御了承願います。
  60. 前田種男

    ○前田(種)委員 しからば、今度の身分の切りかえに伴いますところの退職手当に充てるべき金が、米軍からどの程度支払済みになつているか。要するに一括してもらいました中で、米軍からもらいましたドルは退職手当にどの程度充てられる金額になつておるかという、その内容をお示し願いたいと思います。
  61. 東条猛猪

    ○東条政府委員 実はただいま退職手当だけとしての資料を持ち合せておりませんが、各種の年末手当でありますとか、あるいは扶養手当でありますとか、諸手当といたしまして項目を整理いたしますれば、七十四億八千万円見当に相なつておると存じております。
  62. 前田種男

    ○前田(種)委員 米軍から相当な金額が日本政府に払われておりながら、しかもそのうちには退職手当に充てなければならぬという金額がありながら、政府は金がないからというのでたな上げにされている。そこに国内にいろいろな不安があると思うのです。日本政府として、財政難で困るから、支払いは後日に延ばしてもらいたいという点は一応わからぬわけではありませんが、アメリカ軍からすでに支払済みの金額は相当ありますから、それは当然充てて何ら日本の財政難の問題にはならないと思いますし、もらつた金をほかに融通しておるからそういう問題になつておるのではないかという不審があるわけです。この不審を二十何万の進駐軍関係の労務者に明確にされることが、政府としても当然だと思います。要するに日本政府の金であるならば、七十億以上の財源がいるから一時に支払いできぬということは一応わかるのでありますが、そのうちに、ともかく退職手当に充てなければならない金額もある程度ドルでもらつておりながら、それをほかの方に融通して、そうして退職手当の支払いは、結局やめた者には支払いをしますが、引続いて採用される人には猶予を願つておるというその処置がどうもふに落ちないということを言つておりますので、この点をはつきりしてもらわなければ困ると思うのです。
  63. 東条猛猪

    ○東条政府委員 前田委員のお尋ねに対しましては、先ほど来繰返してお答え申し上げておるつもりでありますが、要するに二つ現金がありまして、一つは清算その他経理上の手続から一ぺん資金で立てかえて支払いまして、現実に米軍側から米ドル資金の償還を受けます間までに、二箇月程度の時期的なずれがあるということが第一点であります。第二の問題といたしましては、昨年の六月までの退職金の分につきましては、米軍からドルの償還が当然これはないことになりますので、過去の退職金をこの際一ぺんに払うということは、実行上資金の金繰り上できないというのがおもな内容であります。仰せの通りに米軍側からは昨年の七月以降ドル資金の償還は受けておりますけれども、受けました金にさらに一般会計並びに国庫余裕金から七十五億円の金を継ぎ足しまして、そうして毎月々々の労務者の方々に対する支払いに充てまして、現在の資金の残高は十八億しかないというのが金繰り状況でありまして、大蔵省あるいは政府としましては、この労務者の方々の給与に引当てらるべき特別調達の資金をほかの用途に使つているということは、絶対にないことをこの際申し上げておきます。なお私どもといたしましては、お見えになります進駐軍労務者の組合の代表者の方々には、この間の事情をよく申し上げまして、その方々には十分御了解をいただいておる、かように存じております。
  64. 前田種男

    ○前田(種)委員 それでは最後に、この間新聞にも出ておりましたし、また委員会でも問題になりました呉、山口あるいは広島の英濠軍関係の賃金支払い問題で、調停が未定であるためにいざこざが起きておる、しかも金がないために一人当り三千円減額しなければならないという問題が起きておりますが、この問題に対して大蔵省は——直接は特調の関係であるかもわかりませんが、大蔵省としては、この問題の善後処置について処置されたかどうか伺つておきたいと思います。
  65. 東条猛猪

    ○東条政府委員 今お言葉にございました通りに、平和条約発効後は国家公務員たる身分を離れるという前提で、政府部内といたしましては各般の事務処理が行われております。従いまして大蔵省側といたしまして本件につきまして直接の関係はございませんので、それぞれ関係の向きにおかれまして善処せられることを希望いたしておるわけであります。ただ英濠軍関係の平和条約発効後における経費ないしこれに伴いまする資金の問題につきましては、外務省が中心になりまして目下いろいろと折衝中の点もございますので、それらの点が円満に解決いたしますれば、今御指摘の問題につきましても、側面的に解決されることに相なるであろうというふうに存じております。
  66. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は大蔵省政府委員にはこれ以上質問いたしませんから、私に関する限りありがとうございました。——このまま続行いたしますか。
  67. 島田末信

    島田委員長 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止
  68. 島田末信

    島田委員長 速記を始めてください。   この際午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十七分休憩                  午後二時二十七分開議
  69. 島田末信

    島田委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。前田種男君。
  70. 前田種男

    ○前田(種)委員 基準法関係につきまして二、三質問を申し上げたいと思います。今までいろいろ審議されきたが、大事なところでありますから、重ねてお尋ね申し上げたいのは、結局七十条、七十一条の改正に伴いますところの労働強化の問題ですが、特に現状におきましても炭鉱の災害は非常に多いのです。そうした災害率が非常に多い現状のもとにおいて、なおかつ十八歳を十六歳に切下げて若い男子の人を坑内に入れるということは、安全確保の面からいつて相当危険が伴うと思います。私たちは技能養成の方法等については積極的に賛成をしておりますが、そうした若い十六、七歳の子供を坑内に入れるというような点から申し上げますと、今のような炭鉱の設備の現状あるいはその他の施設の内容等から見ましても、欧米各国の実情とは相当違うものがございます。そうでなくても先ほど申し上げますような災害率が非常に多い炭鉱事業に、こういうものを許すということは、相当危険が伴うと思いますので、この点に対してもう一度大臣の確たる御答弁をいただいておきたいと思います。
  71. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 前田さんも技能養成の必要はお認めになつているようでございますが、御承知のように国際労働条約におきましても十六歳から十八歳までの者につきましての技能養成はいいという条約があるわけであります。それから各国の例をとりましても、この前ちよつと申し上げましたが、イギリスのようなああいう労働問題については非常に古い経験を持つておる国でも十五歳以上は入れているという状況であります。またフランスでも、濠州でも、その他のいろいろな国におきましても、大体十六歳から十八歳までの者は一定の条件はございますが、許している状況であります。でありますから、日本の実情から申しましても、十八歳になつて初めて炭坑の中のいろいろな技能を覚えしめるというのでは、実情に合わない。十六歳から十八歳までの間はやはりその間に坑外、坑内のいろいろな技能というものは修得したがつておるのでありますから、やはり国際的な一般の例にならつて、十六歳から十八歳までの技能養成を認めることは、私はそう無理をしておると思わない。ただ御指摘になりましたように、日本の炭鉱事情というものが必ずしもよくないことは御説の通りであります。従いまして、これを許す場合に無条件で許すということになりますと、前田さんの御心配になつておるようなこともあろうかと思いますので、この点につきましては厳重なる監督条件を付する必要がある、かように存じております。従いまして、これらの条件につきましては、もちろん労働基準審議会等もございますので、それらの意見をも尊重いたしまして、そうして弊害のない方法をもちまして許して行きたい、かように存ずる次第でございます。
  72. 前田種男

    ○前田(種)委員 今ILOやイギリスの例をとられて御答弁になりましたが、私は国際労働会議の審議過程その他の決議等から見ましても、健康診断、夜間労働、休憩時間、社会保障制度、監督制度あるいは福祉その他もろもろの条件が整つた上で初めてそういうことが許されるものであつて、そういう条件が整つていない場合は、もちろん許されないという原則の上に立つております。日本の現状は、あまりにもそういうもろくの条件が整つていないということが前提でありますから、そこに無理があるということを私たちは心配をするわけです。それからイギリス、フランス等においても十六歳、十五歳から許されておると言つておられますが、現にアメリカ、南濠州、フランス、ポーランド、カナダ、トルコ、アルゼンチン、チリー、フインランド、ルーマニア、ユーゴ等はやはり十八歳未満を禁止しております。ブラジルのごときは二十一歳以下を禁止するというふうに、各国ともこういう問題はいろいろ弊害があるから、ある程度禁止をする、もし許されるにいたしましても、先ほど申し上げましたいろいろな設備、健康診断あるいは社会保障その他の点等が完備しておる場合にのみ例外的に許すというのが大体の国際的な行き方ではないかと私は考えます。こういう点からいつても、日本の現状はあまりにもひど過ぎるというのが第一点、それから他の事業に比較いたしまして、炭鉱、鉱山の関係は災害率が非常に高い。この現実の面から見まして、私はこの点に無理があるということを指摘しておるわけです。それから今大臣は、十分の監督をし、許可をすることによつてその弊がためられるというような御答弁でございますが、日本の実情は、残念ながら今日法規が完全に守られていないという実情が多分にあります。基準法が完全に守られておりますならば、私たちはここでそういう心配を申し上げる必要はございませんが、全国の労働事情を調査に参りましても、どこへ参りましても、監督官庁の手不足と予算の不足のために十分の監督ができないというので、もう半ば公然として基準法違反が今日顕著に現われておるというような実情である。かような労働条件の、要するに強化になるような、しかも年少者あるいは女子等の切下げの問題等はこの際は十分再考を促してしかるべきだというように私は考えますので、もう一度、この点は労働基準法全体の問題に対する一番大事な点でございますから、くどいようですが、大臣の御答弁を承つておきたいと思います。
  73. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 御指摘のように、ILOの条約におきましてもいろいろの条件がございます。御指摘の健康診断の状況あるいは社会保障の問題、監督制度等ございます。従いまして、私どもはこれらの事項については十分考慮しての許可でなければならぬ、かように存じております。健康診断も今日では相当の企業におきましてはやつております。それから社会保障制度にいたしましても、日本の社会保障制度はまだ十分とは言えませんけれども、国際条約等におい示されたものを批准し得る状態には、日本の現在の社会保障というものはなつておるわけであります。十分ではございません。でありまするが、批准し得るような程度までには達しておるわけでありますから、私はそう劣つておるとは思いません。それから監督制度にいたしましても、なるほど人の数も十分に行きませんから不十分な点はあるでありましよう。しかしながらこれは基準法の制定とともに——私もかつて監督官をやつたこともございますが、あのころから比べますれば格段の相違がありますのと、もう一つは、今日では日本労働組合というものは非常に発達をしております。でありまするから、労働組合があつて、なおかつその前で違反状態が放置されるということはないわけでありまして、それはしやくし定規の法律の適用の遺憾面はあるかもしれませんが、実質的に違反状態労働組合の目前で行われるということはまずないものだと考えております。
  74. 前田種男

    ○前田(種)委員 どうも大臣の言訳を聞くようなことでも大事な時間でありますからどうかと思いますが、私はこういう大事な問題は、率直な意思表示を願いたいと思います。というのは、ここで率直な意思表示があつたとしても、私は大臣の言質をとろうとは考えておりません。日本の実情から見て、こういういろいろな点が、法規を守らなければならぬ点が守られていないという実情、特に災害率の高い炭鉱、鉱山の事業等は危険であるという点は、おそらく率直に認められると思います。これをどうして防止するか、どうしてその弊害を除去するかということが大事な問題だと考えます。私はここで半年、一年早く基準法をこの程度改正することによつて日本経済にどの程度及ぼすものがあるか、その点を考えてみましても、むしろ失う面が多いと考えます。もつとこういう内容は十分検討してからでもおそくはないと考えますが、それは意見になりますから、申し上げません。  もう一つ基準法関係では、貯蓄関係の問題で改正要点が出ておりますが、私はこの点について、現在この条項に沿うような貯蓄の実績がどうなつておるかというのが第一点。それから第二点は、この貯蓄された金が使用者側に悪用されておる点があるかないかという点。それからこれとは直接関係はございませんが、今の点は局長からお答え願えればけつこうですが、大臣にこれと関連してお尋ね申し上げますことは、労働者階級の社会保障制度の掛金というものは、相当莫大な金額になつております。これは失業保険の場合も労災あるいは厚生年金あるいはその他のいろいろな積立てがあると聞いておりますが、総合されました金額が何とか労働階級の福祉のために使われるようにありたいものだということは、数年前から議会のたびに論議された問題であります。これが大蔵省の一般会計に在来入つておる関係上、融資その他の面が非常に拘束されておりますが、少くとも労働者が給料から引かれて掛けられますところの社会保障制度のもろもろの掛金というものは、それの金額あるいは半額以上の金額を融資するということは、そういう制度本来の金の運用の面からいつても不都合が生ずると思います。政府が補償いたしまして、三分の一あるいは半分以下という限られた金額で労務者住宅、あるいは労働者の福祉のために、あるいはその他の特殊な社会保障制度のために特別の施設を拡充して行くということがある程度できますならば、全国的にそういう施設に相当見るべきものがあると私は考えます。この点について前にも大臣から、その立場に立つて善処しなければならぬというお話があつたかとも記憶いたしますが、この点は全国の労働階級の要望しておる問題でありますから、この点に関連いたしまして今後の御努力を願いたいと思いますが、大臣の御所見も承つておきたのであります。
  75. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 貯蓄の実績は係りから申し上げますが、最後に御指摘になりました各種の社会保障に関する積立金の運用の点は前田さんのおつしやる通りでございまして、私もこれは労働者階級と申しますか、庶民の厚生その他の施設に充てる金融に考うべきであろう、かように存じます。もちろん従来もこの資金は厚生施設や衛生施設、あるいは地方の公共施設等に使われておるわけでありまして、地方債等の引受けにももちろん充てているわけでありますが、何といつても健康保険の積立てにしても、あるいは失業保険の積立てにしても、一部は労働者諸君から醵金された金でありますので、御指摘になりました労務者住宅とか、労働者の福利施設に対しての金融にこれを使わなければならないという点は、私も十分考えておることで、今までこれにあまり十分向けられていなかつた点は確かでございますから、私は責任を持ちまして、でき得る限りこれをそういう方面に持つて行くことに努力いたしたいと存じます。
  76. 亀井光

    ○亀井政府委員 ただいま御質問のありました貯蓄金の管理の問題でありますが、現在は認可制でございまして、今までの実績を申し上げますと、昭和二十三年におきましては三千二百件、昭和二十四年一千九百件、昭和二十五年が二千百件、昭和二十六年で千七百件という大体の認可になつております。これに対しましては現行法におきましても、認可する際に一定の認可基準をつくりまして認可をいたしております。今度の改正におきましては、その点を法律上明確にいたしまして、労働者の権利を保護しようという趣旨から改正がなされておるのでありまして、第一点はこの管理の方法を定めまして、労働者に周知徹底させなければいけないという点、第二点は利子の問題でございまして、現在におきましても認可する際には、その管理規定の中で定めます利率が、一般の金融機関の利率を上まわる場合において認可をいたしておるのでありますが、この点今回の改正によりますと、一般の金融機関で定めます利率以下の利息をつけましたときには、当然一般の金融機関で定めております利率の利子を付さなければならないという義務を、法律上明確に定めておる点、第三点は労働者の返還の要求がありました場合には、ただちにこれを返還しなければならないという義務を明確にいたしまするとともに、この返還に使用者が応じない場合におきましては、中止命令を出すことができるというもう一つの制限を加えます。さらにその中止に応じない場合におきましては罰則を加えるというふうに、現行法よりもさらに労働者の保護の面につきましては、注意をして規定いたしておる次第であります。
  77. 前田種男

    ○前田(種)委員 時間がありませんので、私は公労法並びに地方公営企業労働関係法に関連して一、二簡単にお尋ねいたします。  第一は団体交渉範囲の問題、それから第三条の適用範囲の問題等と相関連いたしますが、私は労働組合を認める限りにおいては、団体交渉範囲等は相当範囲に許すべきだ、許すことがかえつて組合の健全化をはかるゆえんだと考えます。あまりにその範囲を狭めたりいろいろなことをすることは、かえつて結果は非合法化するという危険があるのです。現に公務員や公共企業関係の人々が団体行動をやる場合にスト権はありません。あるいは団交権がない。それならば黙つて組合活動をやらないかというと、活溌に組合活動をやつております。やつておる姿を見ますると、相当非合法的なやり方をやりかねないという実情に今日置かれておるのです。年末の場合にいたしましても、大臣室の前にへたり込みをやつたり、あるいは役所の玄関先にそのままへたつて動かないというような行為等は、団体交渉権が十分許されていない、スト権が許されていない、あるいは団体交渉範囲が非常に狭められておる、そういう結果からでありまして、非合法化ならざるを得ないという方向に追い詰めておるきらいも多分にあるわけです。私はむしろ労働組合を許す限りにおいては、相当範囲労働組合の本来の基本権を与えて、そうしてそうしたものが正常な組合運動になつて行けるような状態政府みずからも指導する、あるいはそういう点をよくリードするというような心組みがあつていいと考えます。それに関連した条項について、現行法の公労法をそのまま地方公労法等にも持つて来た関係上、そうなつておるというきらいもございますが、私はこういう点は、もつと幅を拡張することが必要と思います。それと関連いたしまして問題になつておりますところの単純労務者の問題でございますが、地方公務員法附則の二十一項にうたわれまして、政府としてはどうしてもこれの対策を法律化せねばならぬことを約束されておるわけです。それが今度の立案にあたりましても漏れておりますが、私は地方公労法の第三条の七項に一条を設けてもらいまして、その他地方公共団体の条例で認める事業ということを入れていただきますならば、大阪と京都と、あるいは広島と東京と、いろいろ事情は違いますが、それぞれの地方公共団体の特殊性を生かしまして、事業の実態をつかんで、それぞれの議会において条例をつくつてこの地方公労法の適用を受ける恩典に浴す道が簡単に開かれるわけです。そういたしますと、政府の約束させられております現業関係あるいは単純労務者の問題も解決がつくことになります。せつかくここにこの法案を提案されたのでございますから、何とかしてこの問題もあわせて解決づけるという熱意があるかどうかという点も、あわせてお尋ねしておきたいと思います。
  78. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ごもつともでございまして、現在の地方公務員法の附則の二十一項には、単純労務者についても別の方法を講ずるようになつております。ただこの問題は今回提案いたしましたのと多少体系が違うわけであります。今回提案いたしましたのは、国鉄、専売のごとき企業体、これに似た企業、また国においても現業官庁に従事しておるものはそれになろう。それから地方の公共団体においても、企業体をなしておるものは大体同じであるから、同じ取扱いをしてよかろうということで掲げております。御指摘になりました、以外のいわゆる単純労務というのは事業が企業体になつておりませんから、公労法と同じにしていいか、別の体系において何らかの労働者の権利及び待遇を考慮する道を考える必要がありはしないか、こういう点から実は検討中でございます。私どもはいつまでもほつておくつもりはございませんが、ただこの適用範囲の中に一項目入れて、単純に適用ができるかどうかについては非常に疑問を持つておりますので、もうしばらくひとつ研究させていただけないか、かように存じております。
  79. 賀來才二郎

    賀來政府委員 団体交渉範囲の問題につきましては、前田委員の御指摘の御趣旨はわれわれも十分認めおるのでありまして、労働条件に関しますことは、できるだけ団体交渉で対等の立場で、しかもルールにはまつた団体交渉をやらせることが非常によいことであつて、それがないためにかえつていろいろ陰惨というかわれわれから見てどうも賛意を表しかねるような交渉の形式になるおそれがあることは十分に認めるのであります。しかしながら公務員としての性格を持つて来るということになりますと、事情が違つて参るのでございまして、一般公務員におきましては、全体の奉仕者としての立場もありまして、対等の団体交渉を認めるわけには行かない。ただこの公営企業関係につきましては、さような性格は持つておりますけれども、しかしながら現在の一般の民間企業に近い状態にあるわけでありますので、この際団体交渉権を与えて行きたい、かような立場に立つたのであります。しかしそれにいたしましても公務員たる性格を持ち、公共性が非常に強いのでありますから、地方公営企業にありましては、やはり地方の住民全体の意思によつて信託を受けたところの地方公共団体機関が行うはずでありますこの管理運営につきましてはこれを団体交渉対象にしてやるということは適当でないと考えるのであります。従いましてここに管理運営については団体交渉対象にならないという規定を置いたのであります。しかし次の第二項におきましては、団体交渉についてはかような制限をつけるけれども労働条件に関しては、団体交渉対象になり得るということを明確にいたしておるのでありまして、一応制限の形はとつておりますが、御承知のようにこの内容に入つておりますものは、現に一般の労働組合におきまして行われております団体交渉範囲とほとんど同じでありまして、この事項だけを取上げてみましても、さして制限を加えておるというふうな実情は出て来ないと考えるのであります。ただ問題になりますのは、午前中熊本委員からの御質問にもありましたように、かように法規で明確に規定いたしますと、いかにも管理運営に関しては絶対にできないのだというようにとられる。従つて労働条件管理運営と間接あるいは直接にいろいろ関係ある事項についてはどうなるのか、これはごもつともな御心配でありますが、今朝ほど私は熊本委員の御質問に対して、管理運営自体については団体交渉対象にならないけれども労働条件に関連いたしまして、管理運営についてそれが団体交渉の議に上るということについてはさしつかえない、かようなはつきりした解釈を持つておりますことを申すとともに、公共企業体労働関係法におきまして現在国鉄、専売等におきましては、その管理運営については触れない、しかしながら団体交渉範囲はかよう範囲である、しかもこの両者の関連性についてはかように扱つて行くという慣行もできて参つておりますので、さような点について、今後地方におきましても誤解のないように、十分注意をいたしたいと考えているということを申し上げたようなわけであります。なお今度の公労法改正におきまして、団体交渉範囲を書きかえておりますが、これは管理運営等と関連いたしまして従来明確を欠いたがために、この団体交渉範囲の点につきまして問題が起りました経験がございましたので、今度はそれを整備いたした次第でありまして、御指摘になりましたような点がないように、十分注意をいたしますための改正もいたしておりまするし、その線に従つて地方公労法も定めた次第でございますので、御了解を願いたいと存ずる次第であります。
  80. 前田種男

    ○前田(種)委員 どうも現業関係の者は、公務員という名前のもとで非常に迷惑な立場に置かれていると私は思います。純然たる労働者という立場に立ちますところの現業以下のすべての労働関係の者は、できますならば一本にして、そして役所関係では労働省が一本にして世話をするというような関係に置くべきだと私は考えます。そうでないと、公務員だという名前のもとに、ほんとうの公務員らしい待遇も与えられずに、そして労働関係法規の適用も制限されるという点で、先ほど私が申し上げましたところの組合活動の面においても、いろいろ思わしからぬ問題が起きて来ているわけであります。こういう慣例をもつとはつきりすることによつて、非合法的な組合活動というものが是正されることになるわけであります。私はここが大事なところだろうと思います。そういう点についてさらに政府側の再考を促したいと思います。それから先ほど大臣から附則第二十一項の単純労務者の問題について御答弁がございましたが、私は法規をもつて全国の公共団体のそれぞれの立場にあるものを統一しようということは、かえつていろいろ弊害があるのであつて、ある程度のものは地方の公共団体の議会の権限にゆだねる、そして条例によつてそういうことが許せる公共団体は、その適用を受けさすべく方法を講ずる道を開いてやることによつてこの問題は解決がつくわけです。従つて第三条の七項にその他地方公共団体の条例で認める事業ということになりますと、それぞれ公共団体の事業の内容というものは違いますが、それぞれ知事なり市長なり、そういう立場にある者が、それぞれの議会の審議を経てこの法律の適用を受けさすべく方法を講ずるということは、決して不都合はございませんし、また政府が押しつけて全国一律にやるというその弊害も是正されることになりますから、むしろこの法案の審議にあたつてこの点を解決することが親切であろうと思います。その点についてもう一度大臣の御答弁をいただいておきたいと思います。
  81. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 単純労務について考えなければならないという点につきましては、私も決して異議を持つておるわけではございませんが、先ほど申しましたように、やはり基本権に関係することでありますから、地方の条例でまちまちにというわけにはいかないと思います。もう一つは、公営企業に従事する者に関係したこの法律を、給仕さんとか小使さんであるとか、そういうようなばらばらの単純労務に適用するわけに行かない点があるのであります。でありますから、これらにつきましてはなおできるだけ早く検討を加えまして、考え方としては、これらに従事する者の労働権を確保すると同時に、待遇の改善になるような方法を考えなければならぬ、かように存じております。
  82. 前田種男

    ○前田(種)委員 大臣の聞き違いかとも思いますが、私は小使さんや給仕に至るまで適用せいとは言つていない。その他地方公共団体の条例で定める事業と言つておりますから、公共事業としてここに列挙されていないところのその他の土木事業とか、あるいは下水事業とか、あるいは清掃事業とか、相当まとまつたものがあるわけです。一一小学校の小使さんに至るまでというように欲張つてつていないつもりでありまして、そういうまとまつた事業の対象になるものは、地方の議会において幅を持たして審議の余地を与え、しかもこの法律の適用を受けさす道を開いてやることがいいのじやないかという意味で言つておりますから、そのの点誤解のないようにお聞取り願いたいと思います。  それから地方公労法の八条、九条の、条例もしくは規程規則等に抵触するという点、もちろんこれは協約、裁定等が議会の議を経まするならば、規則規程等は改正される道は開かれておりますが、こういう条文書き方から見ますと、常にこの条文が先行いたしまして、仲裁、裁定の場合におきましても、あるいは労働協約の場合におきましても、常に規則が優先するという感じから、ある程度の制約を受けるということは事実であろうと思います。この点に対して、この字句の取扱い等について、もつと考慮する余地があると私は考えますが、これに対する労政局長の御見解を承つておきたいと思います。
  83. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私からお答えを申し上げます。午前中も労政局長から答えたと思うのですが、団体交渉をいたしまして協約ができます。そしてそれについての最終決定は、地方であれば県会が決定するのであります。従いまして、従来ありまする条例は、地方の公共団体においては、自治体における最高の規律であります。ちようど国における法律と同じであります。でありますから、もしそれと違つた内容の団体交渉でお互いが妥結すれば、それに従つて条例をかえなければならない。しかし協定自身は両方の一つ協約、契約でありまするから、そのお互い同士の契約は、即その自治体の最高の規律である条例をかえるというわけには行かないのでありますけれども、その場合には、違つたものは条例を変更しなさい、そして変更するまでは効力はあることは当然じやないか、こう思うわけであります。おそらく妥結をして約束をし、それが自治体としての最高の県会で承認をされれば、同時に条例の改正というものに異議があるはずはないと思いまするから、そう心配をする必要はないのじやないか、私はかように存じております。
  84. 前田種男

    ○前田(種)委員 第八条はもちろん条例でございますが、第九条が規程規則ということになつておりまして、地方公共団体には相当こまかい規則規程があるわけです。ある意味では、これで身動きもならぬほどの規則規程があつて、常にこの九条が労使間の交渉を制約することは事実だと思います。しかしこれもこれ以上は議論になりますから申し上げません。  最後に労働関係調整法の三十九条ですが、個人罰を与えた問題は一つの大きな改正案のミスだと考えます。あるいは政府には、ほかに意図があつてこういう改正案を出されたのかもしれませんが、あくまでも労働団体の団体行動でございますから、もし団体行動が法規の違反を犯す場合にその団体が罰せられる、また団体を構成している個人の法規に違反する行為は、その他の刑罰規定において処分をされるということであつて、この労働関係法規で個人を罰することは理論的にも当を得ないと思いますから、この点については、どうしてもこの条項は削除していただきたいと考えますので、もう一度大臣の見解を承つておきたいと思います。  それから次の問題は、一番中心でありますところの緊急調整の条項であります。これは総括的に質問いたしましたときにも触れましたが、この条項によつて労働争議が未然に防止されるとはどうしても考えられぬのです。もしこれが不幸にしてこのまま通過いたしたといたしましても、結局この条項が悪用されるということになります。それからこの条項は、資本家陣営に対しては相当大きなウエートを持つということは周知のところでございますから、かえつてこの条項があるがために、今後の日本組合運動が曲げられ、あるいは非合法化するという心配等も出て参りますので、どうしてもこの条項は削除してもらわなければならぬという点でございます。この内容については、もう各委員からもそれぞれ質問がされたことでございますので、また議論をここでしようとは思いませんが、この二点について大臣の最後の見解を承つて、今後のわれわれの態度決定あるいはこの内容をどう結末づけるかという点についての参考にしたいと思いますので、この点についての見解を重ねて承つておきたいと思います。
  85. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 第一点の個人罰にした点でございますが、これは先般も申し上げましたごとく、組合が団体としてやる場合は、なるほど団体の責任者が処罰されることが至当であろうと思います。しかしながら過去におけるこの争議の中には、組合組合の行動としてやることでなくて、組合は争議はしないが、その末端で、その組合の中央執行委員会の決定にそむいて争議をする場合が相当つたのであります。この前の国鉄の争議なんかはその例でありまして、俗に山ねこ争議と言つておりますが、そういうものについては、今のお話のようではこれを処罰する方法はない。元来処罰というものは行為者を処罰するというのが処罰の建前でなければならぬのでありますから、やはり建前としては個人行為者を処罰するということにせざるを得ない。ただ実際の運用の面において、団体が団体として行動する場合には、その行動の決定に基いてやつた多数の者がこれにかかるということよりも、その指令を出した幹部が責任を負うということでありまして、実際の場合には、情状酌量によつて十分その弊は救われるのではないか、かように存じております。  それから緊急調整の点は、いろいろ御意見がございましたし、しばしば論議された点でございますが、普通の場合にはこれは必要はないでありましよう。しかしながら争議については両方とも引けないということで、それが大きくなつて、これをほつておいたならば、公共の福祉に重大な関係を持つて来るその際に、政府としては手が出ないのだ、ほつておくのだというのでは、やはり国民の負託に沿うゆえんではない。でありますから、公益事業であるとか、大規模の争議で公共の福祉に重大なる障害を及ぼすおそれがあつて、しかもそれをほつておいたならたいへんなことになるというときに、初めてこの緊急調整を発動する、しかもそれは公正なる中央労働委員会というような三者構成の委員会のあつせんや調停にまかせて解決してもらう、もちろん悪用してはいかぬことは論を持たないところでありますが、そういうことでありますから、こういう制度が必要か必要でないかということになりますと、私はやはり必要ではないか、かように存じております。
  86. 島田末信

  87. 熊本虎三

    熊本委員 私は一、二点御質問申し上げます。その前に、先ほど前田委員質問に対して、基準法違反の問題については、労働大臣から相当遵法されておるというお話がございましたが、資料を見ると五〇%以上は違反事実があり、件数にすればその倍くらいの件数があるということになつております。これは大臣ひとつお含みおきを願いたいと存じます。  次に公企労法に関する問題でございますが、これは十六条、三十五条が重要問題でございます。すでにこの問題については何回か質疑がかわされておりますが、私この機会にお伺いしておきたいことは、四十条の国家公務員法との抵触関係の問題でございます。現在の公務員法あるいは人事院規則との抵触によりまして、せつかく与えられた団交権が相当狭められるきらいがあるという大きな不安があるようでございます。この問題に関してどうお考えになりますか、お伺いしておきたいと思います。
  88. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話の点ごもつともでありますが、御承知のように公務員は公務員たる性質を持つておるわけでありまして、一般公務員としましても、あるいは現業公務員としましても、公務員である以上は公務員たる性質を存置しなければならない。従つて、その面についての条項は除くわけには行かない。しかしながら、給与その他の労働条件に関する部分は団体交渉にまかして決定して行くことでありますから、全然公務員たる資格がないということになれば、お話のようにしなければなりませんが、公務員である以上は、公務員たる性質に基くものだけは残さざるを得ないというわけであります。
  89. 熊本虎三

    熊本委員 もちろん公務員を全面的にはずしてくれということではございませんが、第八条に列記されました、労働条件に関する与えられた団体交渉権の中に、四十条の除外だけではまだ抵触するものがあつて交渉に支障があるということでございますが、いずれあとから修正のときに具体的にしたいと思いますので、御了承願つておきたいと思います。  次に本法の実施期でございますが、七月一日より実施確約されるものは電通の職員に限られておつて、その他郵政、あるいは林野、印刷、造幣等の諸君の実施期が明示されておらない。この点はなはだ不安であるという関係者の意見があるようでございますが、この点に関するお考え方を伺つておきたいと存じます。
  90. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これは受入れの準備の次第がございましてさようにしているわけであります。従いまして、準備の整い次第、できるだけ早く実施したいと思つております。
  91. 熊本虎三

    熊本委員 いろいろの手続処理の関係があろうかと存じます。しかしその実施がまつたく暗やみでは、はなはだ関係者は不安でございます。従つてこれについてはいろいろの関係等はあろうかと存じますが、すみやかにこれをやるように努力されたいと思います。検討の結果具体的な修正案を出すかもしれませんが、その点を十分お含みおき願いたいと思います。
  92. 島田末信

    島田委員長 柄澤君。
  93. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 先日お伺い申し上げました、基準法の中の年少労働者、つまり十八歳未満の、日本では、児童憲章の中に含まれて保護しなければならないという年齢に該当する者を、坑内に働かせることになつたという今度の改悪につきまして二、三点伺つておきたいと思います。昨年制定せられました産業教育法というものがございますが、もし技術教育のためであつたとするならば、その産業教育法とはどういう関連を持つものであるか、まず第一に伺つておきたいと思います。
  94. 亀井光

    ○亀井政府委員 坑内労働の技能者の養成は、ただいま御質問のございました法律とは直接の関係はございません。基準法の上において認められました制度でございます。
  95. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それでは今度の基準法改正に基きまして、資本家との関係において、炭鉱あるいは鉱山というものは資本家が所有しておるのでございまして、それとの契約において産業教育が行われるということに相なると思うのでございます。その観点から見ますと、未成年者であるところの、児童憲章で保護しなければならないということで、特にその対象になつておりますところの、日本の未来を背負つて行く少年が、ただいまでは親権者の承認、あるいは同意がなければ働くことができないという形になつておるのでございますが、そういう場合に、労働協約をどういう基準において結ばれるのか。またどういうふうにしてそれを保護して行くのか。労働時間とか、賃金とか、あるいは厚生施設その他を十分に保障された形でない限り、われわれとしてはそういうところで少年を働かせることはできないというような大臣の御答弁があつたのでございますが、私どもとしてはそういう答弁だけでは、既成の事実として日本の資本家がやつております、坑内作業の状態を見ますと、承認するわけには参らないのでございます。法律改正から見ましても、日本の憲法の上からも、そういう点でこの条項はまつたく抵触しておると思うのでございますが、この点どういうふうにお考えでございましようか。
  96. 亀井光

    ○亀井政府委員 現在の基準法で申し上げますと、第五十七条において、使用者は満十八歳に満たない者については、その年齢を証明する戸籍証明書を備えなければならないということがございます。しかしながら、現実に労働契約を結ぶ場合におきましては、未成年者と使用者との間に締結しなければならないのでございます。この間に親権者、もしくは後見人が介在することは認められていないのでございます。すなわち、第五十八条におきまして、「親権者又は後見人は、未成年者に代つて、労働契約を締結してはならない。」という規定がございます。また「親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向つてこれを解除することができる。」というふうな保護規定がなされておるのでございます。すなわち、これは未成年者の独自の意思に基きまして、使用者との間に労働契約が結ばれて行くという性質のものであります。
  97. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 第五十八条は、そのように親権の濫用から年少労働者を保護するために設けられた規定だと思うのでございますが、そうなりますと、経営者と年少労働者との関係は、賃金労働、いわゆる賃金をもらつて労働を提供するという形でございまして、これはやはり賃金労働を提供するという売買労働契約になるのでありまして、産業教育の必要上という趣旨とは離れたものになつて来る。今の資本家が営利を目的として事業をやつておる限り、国営でもございませんし、当然これは低賃金労働者としてのいい対象になるということは明らかなことで、それを今のような石炭一かけら自由にできない政府の力で、どう規制して年少労働者を保護して行くかという点は、私どもは信用はできない。これはまだ十八歳未満で未成年者ですから、選挙権もない、われわれのの選挙に関係がないなどということで済ましていられない問題だと思います。子供たちはものが言えませんから、取上げないでもいい、そういうことでは済まない問題だと思います。そういう労働関係、労働を提供する者と、それを雇う者との関係の中で、どうしてこの年少労働者を保護して行くか。その具体的な見通しがない限りへ労働大臣としてこのような改正をなさることはまことにけしからぬと思うのでございますが、その点についてどういうふうにして規制されて行かれるつもりであるか、伺いたいと思います。
  98. 亀井光

    ○亀井政府委員 多少誤解があるように見受けられるのでありますが、この技能養成は、生産に従事させるために十八歳未満の未成年者を坑内に入れるという性質のものではないのであります。その者の技能を養成修得させるために、やむを得ざる場合において、坑内における一定時間の作業に従事させるという趣旨のものでございます。しかしながらこれらの者が肉体的に、精神的にまだ十分熟していないということから来まするいろいろな制約につきましては、これはあらゆる条件をつけまして、われわれとしまして、その完璧を期したいと思うのであります。現にわが国におきまして唯一の労働医学の研究機関でございまする労働医学心理学研究所におきまして、われわれこの問題を調査していただきました。その結果に、よりますると、十六歳以上十八歳未満の未成年者で、ございましても、いろいろな条件をそこに当てはめますると、肉体的にも精神的にも決して悪い影響はないのだという結論を得ているのでございます。それを申し上げますと、たとえば遊離粉塵を多量に含んでいる作業場の作業を避けるとか、あるいは坑内温度は摂氏三十五度以上でない所に限定するとか、作業のエネルギーの代謝率が七以上にわたる筋力を必要とする作業はやめさせるとか、また作業中の脈拍数が一分間に十七歳百五十、十六歳百四十以上にならないような作業に従事させる、また坑内で作業中の発汗量が十六歳で六リツトル、十五歳で五リツトル以下の作業場で働かせるというような、いろいろな条件をつければ、これら肉体的にも精神的にも何らさしつかえないという医学的な調査の結果が出ております。われわれはこれを基礎としましてその専門審議会におきましてこれらの条件について検討をいたし、その保護の万全を期したいと思います。
  99. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 現在の鉱山保安法ですら実際に守つておる資本家というものはほとんどない。ほとんど坑内の保安は規則違反をしているところが多いわけでございます。さらに坑内外の労働者比率というものが、アメリカの指示できまりまして、一定の比率というものがおとなの労働者の中でもあるわけなんです。その中へ、産業教育だからと申しますけれども坑内労働者として年少者が入つて行く場合に、現在の法律ですら無視している資本家が、産業教育というそろばんをはじかない純粋な建前でなく、資本の利潤を対象にしてやるのが当然だと思うのです。そういう際に、現在ですら監督のできないあなた方が、成年労働者の足をひつぱる形の圧力として、この年少の労働者が、学校の生徒ではございませんで、お話によりますると、やはり労働協約を結ぶことになるのでございましようから、労働者として入つて行くということになりますると、これは低賃金であり、さらに労働組合員として扱われるかどうかという問題もある。おそらく労働組合員としてお取扱いにならないという形でおやりになるのではないかと思いますが、これは労働組合員として取扱うのか。もしそうでないならば、産業教育法一本でやれるはずなのに、特に坑内労働に限りましては、もちろんこの基準法があるから改悪されたと思うのでございますけれども、どういうふうにしてやつて行くのか。というのは、今の日本の新しい出発というものが、低賃金を基礎にして切抜けて行こうということで、世界の注視の的となつているわけでございます。その際にこの幼年労働の問題が、特に坑内作業としてここでぶち破られて行くということについては、私どもは黙視しているわけに行かないので、政府としてはこれをどういう根拠があつて、どいう条件をつけてやられるかということを責任をもつて御答弁がない限り、この条文は削除していただく以外にはないと思うのでございます。この点につきまして御答弁願いたいと思います。生徒として入坑するわけではないのでございますね。やはり労働者として入坑することになるわけでございますね。
  100. 亀井光

    ○亀井政府委員 産業教育法との関係は、先ほど申し上げましたように、直接接関係はございません。技能養成基準法に基きまして施行いたしているのでございます。この点につきまして、年少者でありますために、肉体的にも精神的にもいろいろの条件をつけなければならないということは先ほど申し上げた通りでございまして、それらの条件を合致する上におきましてさらに使用者の方からこういう技能養成をやりたいという場合におきましては、その条件に合致するかどうか、あるいは坑内の状況その他につきまして十分調査した上に、これを認可をいたすわけでございます。すべてやりたいと希望する使用者がこの技能者養成を行い得るものではございません。そういうふうに条件認可制の両方で、われわれとしましては最初の出発をするとともに、さらにその後におきましては、監督の際にそれらの条件が現実に行われているかどうかということを見て行きたい、かように思つている次第であります。
  101. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 産業教育法ですら、これは世間ではかつての学徒動員と同じ形のものを準備しているというので、非難の的の大きな一つの理由になつていると思うのでございます。それでやることを私どもは要望しているわけではございませんが、それと別個にこういう形で特に坑内労働年少者の問題が出て来たのは、ただいまの御答弁でもわかつたんでございますが、これは政府として自主的におやりになつたというよりも、むしろそういう要望が資本家側から出されていて、その要望にこたえて労働法規関係の審議会の中でこういう形でまとめて参つたものでございましようか。その経過につきまして御答弁願いたいと思います。
  102. 亀井光

    ○亀井政府委員 これは中央労働審議会の審議の経過において検討されまして、結論としまして、労使公益三者全員の一致を見まして答申なされたものであります。政府としましては、その答申を尊重いたしまして、法律に直したわけでございます。
  103. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 三者同意ということでございましたが、三者同意ということは御訂正になつたらいかがかと思います。これは一昨々日以来、総評はこれに反対だということが確認されましたし、さらに下部からの猛烈な批判によつて、そういう決定をした審議に参加した代表は不信任に問われまして、役員をおりているという状況があることを御確認になつた上で、審議を進めていただきたい。今の御答弁では、大臣が何もおつしやいませんが、労働組合員として、労働協約でも何らまだ保障されるという一見通しもないし、それから産業教育として、生徒として特に伸ばさなければならないという条件についての見通しも具体的にはございませんし、まことに不十分な御答弁で、満足できないのでございますが、これをお取消しになるというお考えは、大臣としては全然ないのでございますか。
  104. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 いろいろ柄澤さん御心配のようでありますが、実は、これは技能養成のためであつて、そういう年少者を働かせようという趣旨ではないのであります。ですから鉱山で、十六歳から十八歳までの者は、将来坑内に入つて働こうと思つても、その技能の養成についての実際の見学もできないということでは、非常に困る場合がある。そこで技能養成については、十六から十八歳の者も中に入れるようにしてくれということでやつておるのであります。だから、そういう年少者を技能養成の名目のために使つて石炭を掘るんだということになれば、あなた方のおつしやるような御心配はあるでありましよう。ですからこれはどこまでも技能養成ということで、先ほど聞いておりますと、産業教育でやつたらいいじやないかとおつしやいますが、学校や何かに入れてやる人もあるでありましようが、実情はなかなかそういうふうに行きません。でありますから、鉱山あたりにおきましては、若いとまらいろいろ教え込んで、大前にするという技能養成というものをやつている。これは炭鉱ばかりではありません。いい工場になれば、普通の旋盤その他につきましても、学校に行くと同じような、あるいはそれ以上の技能養成をやつている所もあるわけでありますから、濫用してはいかぬということは私は十分わかりますが、技能養成もしてはいかぬということについては、取消すつもりはございません。
  105. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 技能養成は、おつしやる通り大きな三井とか北炭とかに参りますと、単独の工業学校を持ちまして、そこで特に子弟の養成をいたしているのであります。ですからそれを私どもは否認しているわけではないのでありますが、そういうものすら坑内労働を禁止したというのは、非常に有害で危険だという建前になつているので、これは実にはつきりしたことだと思うのです。特に災害がふえて、非常に危険が多くなつている現在、政府がそれを何の保障なしになさるということについて、お取消しになる意思がないかということを申し上げただけでございます。災害は減つておりません。近年ますます災害がふえて、死亡者が多くなつている状態です。そういう有害度がふえている状態の中で、現実に工業学校なりがあつて技能の養成もやられているのに、なぜ保護しなければならない年少労働者を産業教育法の適用もなしに坑内に働かせるのだということでございます。学校ではなく労働者として、労働協約によつて入れるというような御答弁でありますと、そこに非常一に行き違いがありまして、私の質問に対するお答えになつていない。
  106. 亀井光

    ○亀井政府委員 炭鉱の災害はむしろ減つておるのでありまして、労災の経済から見まして、昨年度非常に災害が減りましたために、従来五銭八厘でありました労災保険の保険料率を五銭に下げたのであります。むしろ、これはわれわれといたしまして、非常に喜んでおるところであります。
  107. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それは、上に現れた面のことだと思いますが、会社側はこういう態度です。つまり保険料の関係があるから、適用しないようにはねてしまうのです。実際に災害を受けましてもはねてしまう。だから保険に入つていながら、保険の適用を受けないで、自費で治療しなければならないというような、非常に悲惨な状態に行つているのが、今の坑内で働く労働者状態です。会社側の病院がはつきり言つている。保険の料率の問題、料金の問題、会社側で支払わなければならない問題があるから、保険法の適用はできないといつて、同じ公傷でありながら公傷からはねて、労働者が自分の費用をもつて治療しなければならないというような状態、そういう実質的な災害が非常にふえているわけであります。非常に不誠意な御答弁だと思います。資本家の報告だけを受けて、労働者側の報告を信用しないという基準局態度につきましては、私ども納得できないのです。あなた方のような方はやめていただきたい。
  108. 島田末信

    島田委員長 柄澤君に申し上げますが、大体しんしやくした時間も、大分超過しておるようですが、この辺で打切られたらどうでしようか。
  109. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それでは、もう一点だけ公労法関係でお尋ねしたいのでありますが、第四十条で、石炭手当、寒冷地手当等を適用しない、団体交渉にゆだねることにするということになるようであります。これは今までの既得権が侵害される結果に終ると思われますが、この点はいかがでありましようか。
  110. 大島靖

    大島説明員 公労法の第四十条で、国家公務員法等の適用除外を規定しておりますが、これは給与その他の勤務条件につきまして、団体交渉対象といたしてあります関係上、国家公務員法等におきましても、給与の詳細な規定については、適用を排除いたしました。従つてそれに関連して国家公務員に対する寒冷地手当、石炭手当の支給に関する法律からも適用を排除する、こういう形で四十条を規定しているのであります。さよう御了承願います。
  111. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そういたしますと、具体的には、今までもらつておりましたのが、保障されるわけでありますか。
  112. 大島靖

    大島説明員 大体そういうことにはなろうかと思いますが、団体交渉の結果によつて、きまつて参るわけであります。
  113. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今度この法律が出ますことによつて団体交渉権とか団結権というものが現在よりもより弱められることになります。こういう形で団体交渉にまつて、今までの既得権が削られるということになりますと、団結権や団体交渉権が弱められるという法律を承認した上で、もし団体交渉だけによつてそれを保障するということになりますと、既得権が剥奪される危険をこの条文では証明していることになると思いますが、その点はどうですか。
  114. 大島靖

    大島説明員 さような形にはならないと思うのでありまして、給与その他の勤務条件につきましては、団体交渉によつて、適切な結果が得られるのではないかと考えております。
  115. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 既得権がとられないというのであるならば今まで通りにして置いたらいかがですか。なぜこれを特に置いたかということが、私どもは納得できない。これは同じことだという前提に立つのであるならば、何もことさらに不安を与え、動揺を与える必要はないと思います。非常にその点、おかしいと思います。
  116. 大島靖

    大島説明員 こういう関係につきましては、やはり団体交渉で定める事項規定いたしておるのでございます。そういうものについて、一々法律規定するのはかえつておかしいのではないか、かような形で適用を排除しておく方が妥当だと思います。
  117. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もう一点それに関連して……。
  118. 島田末信

    島田委員長 まだあとにも質疑者がありますから、御迷惑だからこの辺でいかがです。
  119. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 大分、他党の改進党なども、四時間もやつておりますから、ぜひ発言をお許し願いたいと思います。
  120. 島田末信

    島田委員長 共産党に対しては、特別のしんしやくをしたつもりであります。
  121. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もう一点お願いします。これは重要な点でございますから、大臣にぜひ御答弁を願います。
  122. 島田末信

    島田委員長 それでは簡単に。
  123. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今度の改正によりまして、保護法が弾圧法規にかわつてつた。つまり労働行政というものが商売がえをしたというのが、世論の非難の的になつていると思います。大臣の御判断によつて強制調停ができるというふうな、まつたくフアツシヨ的な独善的な、まことに何と申しますか、今までの法律の精神をまつたく無視したことが、公益のためにといつて保障されておるのでありますが、その根拠になりますいろいろな情勢の判断とかいうものにつきまして、仄聞くするところによりますと、労政局が非常に強力な通達をお出しになりまして情報の収集をしておる。しかも警察を使いまして、そうして情報活動は一種の闘争でもあるから、周到なる用意と精密なる計画が必要であるということをつけ加えまして、そして警察機関と結びついて、一種のスパイ活動を行つておるということが発表され、それが日労関係機関紙に対して、銚子の労政事務所長あたりから、自分たちはサービス・センターとして今日まで生きて来た。労政事務所の仕事の面にも、組合との関係においても非常に困難を来す。こういうことを言つて、まつたく何の権力機関でもなかつたところの労政事務所が、今まで困難な仕事をして来たのに、そういうことになると非常にやりにくいというふうなことを訴えて来ておるという事実を、私どもは伝え聞いております。もちろんこの責任者は労働大臣であり、また賀来労政局長が、どこにおいでになつたか見えなくなりましたが、よくこのことは御存じだと思うのでございます。私どもが聞いておりますこのような情報の収集によつて大臣は情勢を判断なすつて、いろいろな緊急調整というようなことをなさるのかどうか。御自分の判断だけでは、重大な判断を下して、憲法に保障されておる当然なストライキの権利というものを弾圧することはできないと私ども思うのですが、これは事実でございますか。ひとつ御答弁願いたいと思います。
  124. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 もちろん労働行政を扱う上におきましては、情報というものは必要であります。ですから必要なる情報はもちろんとつております。しかしながらスパイ活動をするとか、何とかいうことは全然考えておりません。警察とも連絡したと言われるが、私どもの方は警察との連絡はあまりやつておらないつもりであります。ただ御指摘なつた緊急調整を決定する場合には、そういう情報に基いてやるかということでありますが、もちろん情報もありましようし、あるいはいろいろな方の御意見も聞くでありましようし、あるいは新聞に現われた輿論も見るでありましよう。一にあの条文に現われておりまするように、そういう公益事業とか、公共の福祉に重大な障害を与える大規模な争議で、しかもほつておくならば、国民生活に著しい損害を及ぼすと認められるもの、こういう判断をする上においては、ただ自分の頭に浮んだというだけで判断すべきではございませんで、いろいろな資料に基いてやることは当然であろうかと私は思います。
  125. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そういたしますと、非常に具体的に直接行動の防止は警備警察、祕密団体、解散団体は捜査警察、暴力行為取締りは警備警察等の公安警察に、これらの問題が惹起、またはそのおそれがあるときは緊密なる連絡と情報の提供を求めてもさしつかえない。院内でもせんだつて特審関係の人たちが、委員会に入り込んで、われわれの当然許されておる発言なども、一一メモしたりしておる事実も発見されたのでございますが、そういうふうに、一非常に暗い半面を持つたスパイ政治、警察政治というものが、労働行政の上にも大きく浮び出して来て、そして暗い印象を与えておることに対して、われわれとしては困るということをやはり労政事務所も訴えて来ておる。この事実はいたずらにないことをつくり上げておるのじやないかと思うのでございますが、警察機関と連絡をとつて、万全を期せというような御方針で臨んでおられるのでございますか。
  126. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほど申し上げましたように、労働行政を扱う上におきましては、情報の収集ということも必要なんであります。ですから必要な情報は集めております。暗い情報という、そういう覚えは全然ございません。御指摘なつた労政事務所はどこですか。具体的に、もしあればお示しを願いたい。
  127. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 このことはじようだんを言つておるわけではございません。先日もお呼びしました公述人の中の、鉄道関係の職員局長が、公務員というものは権力に絶対に服従しなければならない。だからストライキはいけないのだという、まことに旧憲法時代の、かつての封建的な考え方で、現在の公務員のスト権を奪われておるこの状態についてのお考えをお述べになりました。権力というものは、あのピストルとこん棒でもつて裁判所の保障した、あれが権力です。こう思うのです。その警察と結び付いた捜査方針が根拠になりまして、そうして労働組合の中の組織の罰則ではなく、個人罰になる。あれと、あれとあれが争議を扇動したから、あれをやるのだというふうな、個人罰に切りかえたいという労働法規の改悪の根拠になつておりますものは、労政事務所の今までの(発言するもの多し)。まじめに聞いてください。あたりですよ。労働者が三万円以上の罰金になるし……。
  128. 島田末信

    島田委員長 不規則発言は許しておりません。それから柄澤君に御注意申し上げます。あなたはもう一点といつて、だんだん議題がかわつて来たが、そういうことは許しません。
  129. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 やります。続けます。
  130. 島田末信

    島田委員長 許しません。     〔「委員長、々々々」と呼ぶ者あり〕
  131. 島田末信

    島田委員長 柄澤君に発言は許して、おりません。不規則発言は許しません。青野君に発言を許しております。青野武一君。
  132. 青野武一

    ○青野委員 私は労働大臣に、この機会に簡単に二点ほどお尋ねしてみたいと思います。一つは、基準法改正案の中で、ほかの委員からも御質問がありましたように、私どもは、年少者の坑内における技能養成規定、十八歳未満の諸君に労働させるということについては、多少意見がございます。女子の深夜業禁止に対しましても、私どもは今度の改正案に対しては、多少意見を異にしております。それに関連して、他の委員から質問もあつたかとも思いますが、第八十一条に規定されておりますことについて、ひとつお尋ねしておきたいと思いますのは、基準法の八十一条の「第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がな、おらない場合においてはへ使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律規定による補償を行わなくともよい。」に関連してでございますが、労働基準法は、国際的に見ましても、終戦後与えられたものでございますが、日本人の手では改正が非常にむずかしかつたということを聞いております。今回初めて労働基準法改正に手をつけられますならば、女子の深夜業とか、年少者技能者養成による入坑制度といつたようなことを御規定になります前に、特に具体的に申しますと、珪肺病などは、労働委員会で、今度の国会において、船越委員長を中心にして、けい肺病対策小委員会を設けた。こういう不治の病気、死ななきやなおらないという珪肺病は、坑内特有の職業病でありまして、特に金属鉱山にはその発生が多いと聞いております。種類にわけます  と、三井あたりを中心にいたしまして、石炭産業にもそういう病気の出た例が次々に起きておる。製鉄産業、土石採取業、鋳物、それから自動車工業、造船工業にもまれに珪肺病が出る。全国で相当の数に上つておりまするこの問題について、通産省側は、鉱山保安法によつて完全に予防処置を講ぜられますから、単独立法をつくることは、私どもの立場では賛成することはできませんという御意見がありました。労働省といたしましては、単独立法ができるようになればけつこうでありますという御意見も聞いておりますが、こういう珪肺病という特殊な病気の対策については、この入院患者が品をそろえて申しておりますのは、三年では無理です、療養期間の三年は無理ですから、せめて五年間くらいにはしていただきたい。こういうほんとうに血の出るような陳情を、私ども国立労災病院に参りましたときに聞いております。こういうふうに基準法改正をする御意思がありますならば、こういう点にも考慮が払われてもよかつたのではないか。私は、特に鉱山特有の珪肺病という職業病に対して、気の毒な人たちは、私どもの一生だけでこの珪肺病を撲滅していただきたい。治療にしても、補償にしても、予防にしても、国家の力で完璧を期してもらいたいと言う。ほんとうにこの気持を尊重いたしますならば、この機会に八十一条の中に、三年の休業補償期間を二年増して、五年くらいにする御意思がどうしてなかつたのか。いろいろ基準法を御検討になつて、これだけを取残されたということについては、私ども、疑問であると同時に不満である。この点をひとつお聞きしておきたい。
  133. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ごもつともでありまして、珪肺患者は、確かにお気の毒ですから、私もこれについては何とかしなければならぬという気持は持つております。ただ一般的に申しますと、日本労働基準法内における労災補償の制度は、私、立法のとき関係いたしましたが、相当よくしてあるつもりであります。これは従前のとお比べになつたらおわかりだと思いますが、従前のに比べると、相当思い切つて労災補償の規定は高くしたつもりでおります。しかし、珪肺患者なんかについて見ますと、三年で打切られていいかということになりますれば、私は決していいとは申しかねる。そこでそういう職業病について、それでは珪肺だけは三年を五年にして、あとはそのままでいいかとなりますと、先般森山さんにもお答えしたのですが、職業病となりますと、珪肺もお気の毒でありますが、ほかの鉛の中毒にしましても、一酸化炭素の中毒にいたしましても、相当お気の毒であります。そういたしますと、ほかもやはり一緒に考えなければならぬだろう。もう一つは、それでは職業病だけでいいのか、たとえば相当の重傷を負つた人、そういう機能障害の方についても、三年でいいのかというと、それも必ずしもそう言えない。そういう問題がございますので、これは私は一緒にしてもつと研究をしたいと思います。研究の結果、やはり珪肺病だけは特に取上げねばならぬということになれば、珪肺だけを別に取上げることに、私決して異議はございませんが、ただ珪肺だけをごらんになつて、ああ気の毒だから、それだけだというふうには、私ども全体を持つておりますので行きかねます。ただ一般的に言えば、先ほど申しましたように、日本労働基準法内における災害補償の点は、相当よくなつておるということは、ひとつ御記憶を願いたいと思います。
  134. 青野武一

    ○青野委員 労働大臣のこれに対する御意見の一部は大体わかりましたが、重ねてこの点について申し上げておきたいのは、やがて十三通常国会の末期には、労働委員会内に設けられたけい肺病対策小委員会というものも、一応結論を出さなければならぬというところに到達しております。これにはやはり予算というものが伴つて参ります。労働省と通産省に何らかの対立関係もあるのではないか、非常に結論を出すのに困つておる。しかしながら、やろうと思えば、私はできないことはないと思う。すでにアメリカにしても、南阿連邦にいたしましても、政府の力にたよらずに、資本家が、労働者と話し合つて、珪肺病といつたものは解決済みになつておるということを、政府資料の一部を見まして承知しております。政府が、日本のこういつた鉱山経営者の諸君とよく話し合つて、やはり三種類にわかれております湿式穿岩機をなるべくりつぱなものを購入して、坑内で一ミリの一万分の一という珪酸粉塵の中で働いております諸君の、珪肺病にかからない予防のためには、万全の処置を国家が先頭に立つて講ずべきである。外国ですらもこれが解決になつておる。しかも国家の権力によらずにやつておる。日本はまだこれが放任されておる。そこで金属鉱山の労働者諸君の間に、昨年の末からこの問題が大きく取上げられて、労働委員会の中にも小委員が設けられ、実地調査もし、関係者とも何回か会合を重ねて今日まで参りました。いろいろ各産業には職業病もございますが、特に悲惨な状態になるのは珪肺病であつて、四十歳前後で妻子を残して死んで行くと、残された子供はたいてい八歳から十歳程度で、その家族の補償もできない。死んで行く身になつてみると、文字通りうしろ髪を引かれるような状態で職一業病で倒れて行く。これをまず手初めに、基準法の中で三年の休業補償期間一を二年延ばす。そうしてできる限り労働省と通産省と歩調を合わせて、単独立法をつくるか、そうでなければ、予防の面からも、治療の面からも、補償の面からも、相当高度のものを打出してもらいたいと私は考えておる。それで珪肺病に対する小委員会も、やがてこの国会の末期には何らかの形で結論を出さなければなりませんが、予算はすでに決定しております。予算関係が伴つておりますので、私ども非常に苦慮いたしておりますが、この点について政府もできる限りの努力をしてもらいたい。念のためにひとつ御意見を承つておきたいと思います。
  135. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 御趣旨の点は十分尊重いたしまして、努力をいたすつもりでございます。
  136. 青野武一

    ○青野委員 もう一点、公企労法と地方公労法とに関連して簡単にお伺いいたします。地方公労法の中に質問の例を一つとりますと、団体交渉範囲が第七条できめられておりまして、その第二項に一、二、三、四、五と項目をわけまして一は「賃金その他の給与、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項」、それから二、三、四とあつて、五は「苦情処理機関に関する事項」、問題になるのは四の「前各号に掲げるものの外、労働条件に関する事項」、この「労働条件に関する事項」とは、ここに一、二、三、四、五と掲げてある以外の問題を含んでいると思いますが、一体具体的に申してどういうものが含まれているか、それをひとつお尋ねしたいと思います。
  137. 大島靖

    大島説明員 地方公営企業労働関係法案で申しますならば、第七条で団体交渉範囲規定いたしておりまして、その第二項第四号で一、二、三の各号に掲げているもののほか労働条件に関する事項とは何とかというお話でございますが、たとえば福利施設等を考えましても、福利施設の中にも労働条件のないものもありましようし、また労働条件に該当するものもあろうと思います。かようなものを一応考えたのであります。
  138. 青野武一

    ○青野委員 私はこの四号の労働条件に関する事項というものについてお尋ねをいたしましたのは、私どもの考えでは、第七条の第一項に「地方公営企業管理及び運営に関する事項は、団体交渉対象とすることができない。」と書いてございます。しかしこれは今までの例から見まして、かなり制約をせられているのではないかと考えられます。団体交渉範囲として企業の経営並びに業務の改善に関する事項というのが当然その範囲に入るべきものである。今の御答弁によりますと、第四号の労働条件に関する事項の中には福利施設が入つているということでありますが、これは当然である。福利厚生施設はすでにこういう交渉対象には全国的になつている。私がお尋ねしたいと思いますのは、企業の経営並びに業務の改善に関する事項、それから就業規則、福利厚生に関する事項、シヨツプ約款に関する事項、専従職員及び組合活動に関する事項、この五つのうち一つはただいまの御答弁で了解いたしましたので、あとの四つのものはこの中に含まるべきであると思いますが、これもやはりこの四号の労働条件に関する事項の中に含まれていずとお考えになつておりますか、そうでなければ当然こういうものは入れるべきであると思いますが、どういうお考えか一応承りたい。
  139. 大島靖

    大島説明員 この第七条の第一項に「地方公営企業管理及び運営に関する事項は、団体交渉対象とすることができない。」こうありますが、二項で掲げておりますような各号の給与その他の労働条件については、団体交渉範囲になるわけであります。従つてお尋ねの企業の経営改善その他につきましては具体的にどういうふうな事項かわかりませんが、今申しますような純粋の管理運営に関することは交渉範囲外であります。ただ一号から五号まで掲げられましたこういうものに関連しましては、団体交渉範囲に入つて来るわけであります。それから就業規則につきましては、就業規則そのものは経営者が定めるわけでありますが、この就業規則の内容をなしますものは給与の問題もありましようし、またその他の勤務条件についての問題もありましよう。そういうものにつきましては、もちろん交渉範囲内に入つて来るわけであります。それから専従職員につきましては、この法律の第六条で定めておりますように、専従職員には一定数を限りまして許可することができる、かようになつておりますので、団体交渉範囲外になります。シヨツプ約款につきましては、やはり第五条の関係がありますので、この関係におきましては対象外ということに相なると思います。総じて先ほどから申し上げておりますように、給与その他の労働条件、それから苦情処理、こういうものが団体交渉範囲に相なるわけであります。
  140. 青野武一

    ○青野委員 その他交渉単位の問題とか、あるいは争議行為の禁止条項の問題とかいろいろございます。それから仲裁、調停委員会等を廃止して、労働委員会の管轄として労働委員会の数をふやしたらどうかという質問も持つておりますが、時間の関係がございますし、理事会の決議もある程度はやはり尊重しなければなりませんので、あとほかの方にお譲りいたしまして、私の意見は討論のときに表明することといたします。
  141. 島田末信

    島田委員長 これにてただいま議題となつておりまする労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案及び地方公営企業労働関係法案、以上三法案について通告のありました質疑は全部終了いたしましたので、三法案に対する質疑は終局いたしました。  暫時休憩いたします。     午後四時八分休憩     〔休憩後は開会に至らなかつた