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1952-05-15 第13回国会 衆議院 労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十五日(木曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 船越  弘君 理事 森山 欽司君    理事 前田 種男君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    塚原 俊郎君       三浦寅之助君    柳澤 義男君       山村新治郎君    熊本 虎三君       柄澤登志子君    青野 武一君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         労働政務次官  溝口 三郎君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      龜井  光君  委員外出席者         専  門  員 横大路俊一君     ――――――――――――― 五月十五日  委員上林與市郎君辞任につき、その補欠として  青野武一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公聴会開会承認要求に関する件  労働関係調整法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二〇号)  労働基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第二二一号)  地方公営企業労働関係法案内閣埠出第二二二  号)     ―――――――――――――
  2. 島田末信

    島田委員長 これより会議を開きます。労働関係調整法の一部を改正する法律案内閣提出第二二〇号、労働基準法の一部を改正する法律案内閣提出第二二一号、地方公営企業労働関係法案内閣提出第二二二号を一括議題といたします。  右三案につきましては、すでに昨日提案理由の説明を聴取しておりますので、本日より質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。船越弘君。
  3. 船越弘

    船越委員 このたび労調法あるいは労働基準法の一部改正等、こういう三法律案が上程されまして、なお破壊活動防止法案というようなものも、現在審議中でありますが、こういう一連の諸法律案が上程されましたために、内外に非常な反響を及ぼしておるのではないかと思うのであります。国内におきましては、御承知のように労闘が第三次ストを月末にやろうというような決議をやつている。また総評が、これはどういうお考えかわかりませんが、アメリカ大統領書簡を送つて、そうしてアメリカ大統領からどういう回答があつたか私はわかりませんけれども、何かアメリカの方でも反響があるのではないか。また労働基準法改正につきましては、イギリスがああやつて、前から相当これについて批判の目を下しておる。また国内におきましては、第三次ストに対して、本日の新聞を見ますと、経営者側が非常に強硬な態度を示しておる。また地方の―私は農村出身議員でございますが、地方の農民の側から申しますると、破防法なんかは、これはぜひとも立法すべきであるという強い要求があるように私は感じておる。そういうふうに内外のいろいろな批判がございますが、労働行政最高責任者としての吉武労働大臣は、こういう国内国外反響をいかに感じておられるか、その点についてお伺いしておきたい。
  4. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ごもつともなお尋ねでありまして、破防法初め労働三法につきましては、外国においても関心を持つているようであります。国内でもいろいろ批判のあるところおりますが、御承知のように破防法につきましては、すでに本委員会でも、また連合審査でもしばしば申し上げましたように、極端なる暴力破壊活動を防止しようという趣旨でありまして、これは当然どこの国でも考慮さるべきものである。国内でも私は何人とい、えどもこれに異議のあろうはずまないと思つております。ただ破壊活動をやろうという人にとつては非常な打撃かもしれませんが、およそそういう暴力を否定しようという民主的な方でありまするならば、労働組合にいたしましても、私は異議のないところであろうと思うのであります。ただこれを一部の労働組合の中にも、反対、撤回の要求があることは御承知通りでありまして、これは私どもから見れば誤解と心配からであろうと思います。心配の面は、かつて治安維持法の例もあつたことでありますから、無理からぬことだと思いますが、私どもがこの法律をもつて正常な組合活動を抑制する意思のないことは、しばしば申し上げているところでございますので、これが徹底いたしますならば、おそらく理解され得るものだと私は確信をしております。アメリカ大統領にも組合側から書簡を送つたようでありますが、その返事も、これらにつきましては国会において審議さるべきものであるという回答があつたようでございます。これを国会外実力行使によつて、いわんや憲法の保障したストライキというものは、労使間の争議について合法的に許されているものであつて、これをそういう政治的な見解の相違から行うということは、どこの国でも許されることではございませんので、この問題はかりに国際的に訴えても、おそらく支持を受けることはないであろと私は思つております。  それから労働三法の件でございますが、この件も組合側からすでに国際労働会議にも、あるいはその他の国際的な方面にも訴えているようでありますけれども内容を示さずして、ただ漠然と労働法改悪するのだ、そしてわれわれの基本権制限するのだという宣伝的な意味多分に含まれていると私は思います。しかしながら今回提案いたしました労働三法は、昨日も御説明申し上げましたように労調法関係改正にいたしましても、第一点は、国の現業官庁の職員に国鉄専売と同じような団体交渉権を復活させようということでありまして、これが労働法の改一悪などと言つてみたつて、世間がそんなことを言うはずはないのであります。これは外国は、どういう改正をするかという内容を知らないで、組合がただ改悪をするからといつて、それは困つたものだと言うだけのことで、内容ごらんになれば、第一点はそういうことです。第二の点は、地方公共団体現業企業について、やはり国鉄専売と同じような団体交渉を付与しよう。これとても従来制限されたものを一部復活することであつて、これが改悪であるなどとは、これまた国際的に言つたつて、おそらくどういう意味だろうかという疑問を持たれるだろうと思います。問題は第三のいわゆる緊急調整の問題でございますが、これとても日本の今日の実情におきましては、やはり経済自立が必要だ、そのためには労使間が何らか合理的な方法争議解決して行く努力を払うということは、国際的に訴えても了解を得る問題であると私は思います。しかもこれは日本だけやるのかというと、そうではありませんで、一昨日も本会議で申し上げましたが、アメリカではこういう事態のときには、六十日間の調整期間がありますばかりでなしに、実はそれ以外にさらに二十日間の期間がございませんと争議ができない。つまり合計八十日間の制限があるわけであります。このアメリカ緊急調整制度に比べましても、私どもが今回提案いたしました事項というものは、内輪目にしてあるわけであります。でありますから私は、これが日本労働法の非常な改悪であり、後退であるというふうには言えないのではないかと思うのであります。それから労働基準法につきましても、イギリス等において相当な関心を持つております。これも内容を知らないで、ただ組合側が非常に改悪になるのだというふうな宣伝をしておりますので、そうかなあという気持を持つておるでありましようが、今回示しましたこの基準法改正も、委員会では三者ともに完全に一致した事項であります。労働側もこの程度はよかろうということできめた事項でありまして、一々ごらんいただきましても、決して無理な点はございません。労働基準法の基本的な労働者に対する保護の原則というものは、ちつとも動かしておりません。一昨日も本会議で議論になりました十六歳から十八歳までの坑内労働を認めることについて、前田君からも異議がありましたが、これとても国際労働条約ではちやんと認めております。これはお示ししました資料をごらんいただけばわかりますが、国際労働条約ではもつと幅を広く認めております。この技能養成ばかりではなしに、その他の施設さえよければ、許可によつて認めているわけであります。しかし私どもが今回改正しようというのは、技能養成だけに限つておるのでありますから、国際労働条約が認めている範囲よりも、まだ狭い範囲にしか例外を認めていない。現にイギリスのような国でさえ、もう十六歳以上は無条件に入れておるわけでありまして、私どもが今回やろうというふうな制限はないわけであります。とかく今日までの労働組合動きというものは、私は全部がそうだとは思いませんが、一部には故意にこれを誇張して、政治的に利用しようという意図が多少見受けられる。でありますからそういう宣伝にかかわることなしに、実際の内容検討して、そうしてはたして無理であるか無理でないかということを十分国会で御批判を願いたい、かように存じておるわけでありまして、私どもといたしましては、破防法にいたしましても今回の労働三法にいたしましても、これを国際的に示しましても、十分納得を得るものであると私は感じております。
  5. 船越弘

    船越委員 第三次ストをやられる組合方々が、このたびの改正案、特に労調法緊急調整の問題なんかを取上げまして、労働組合員の基本的な人権であるところの争議権の抑圧をするのだ、こういうふうに言うておるのであります。ところが憲法第二十八条に「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」として、別に公共福融に反しない限りということは二十八条にはうたつておらないけれども、同じ憲法の十二条、十三条を見ますると、すべて公共福融ということが強くうたわれております。そうすると、勤労者基本的人権だと言われておるところの争議権が、公共福祉わく内で認められるということは、私は憲法の上から見てはつきりしておると思う。ただ問題は、公共福祉とはいかなるものか。この解釈問題で、結局公共福祉解釈が非常に広く解釈されるようになると、そのわくが狭められまして、争議権が次第に抑圧されざるを得ないようになつて来る。この解釈をどういうふうにやられるのか。つまり公共福祉ということが非常に大きく解釈されるようになりますと、戦前におけるいわゆる国家のためにはこれこれであるというふうに、いつも上から押えられて行きまして、結局個人の自由も束縛されるようになつて来る。そういう観点からいたしまして、このたびの労働組合方々心配しておられる点、すなわち公共福祉ということは、労働大臣としては労働行政の立場から、どういう程度までが公共福祉として考えらるべきであるかということについて、御所見を述べていただきたいと思います。
  6. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは緊急調整事項にも書いてございまするように、公益事業あるいは大規模争議、あるいは特殊の事件に対する争議、これはすでに調整法強制調停を行う場合にも規定された事項でございます。初めてここで使つた文句ではございませんで、そういう事業であつて、しかもその争議をほつておいたならば、国民生活に重大な障害を及ぼすときにこれを発動するわけであります。ですから、国民生活に重大な障害を与えるということでございまするから、単にただ争議が起つたからということで、これを発動するわけではございません。このことはアメリカにおけるタフト・ハートレー法においても同様な類似の言葉を使つておりまして、ほつておいたら国民生活にたいへんな障害になるぞというときに、ただ政府は、それでも基本的人権でやつていることだからしかたがないのだ、国民は非常な障害を受けてもしようがないのだというわけに参州りませんので、こういう際には緊急調整手段を講ずる。これはなるほど制限される面から見れば、一つ帯限になりますけれども政府がかつて制限だけしてほつておくわけでもないし、またそれによつて労働条件をほつておくわけではございませんで、御承知のように中央労働委員会というものは三者構成で、労、使、公益の三者でできておる。この委員会に、どうかひとつ調停あつせんをして解決をしてくくださいということを依頼するわけであります。ですから、争議をしさえすれば何でも通るというふうに考えると、争議を一時制限されるということは困るということにもなりますけれども争議というものは、やつたから何もかも通るわけではございません。むしろそういう公益事業その他のような問題につつきましては、なかなかできがたいものであります。だからそういう争議はいたずらにやらせないで、合理的な方法解決をして行くということは、これは決して労働者に不利になるとは私は思つていないのであります。むしろそういうつまらない摩擦をできるだけ避けて、合理的に解決するということでありまするから、私は長い労働運動経験をされた方あたりがごらんになれば、争議をやつて常に勝つているときまつたものでもございませんので、こういう方法をとることが、アメリカにおいても最近行われておるところでありまするし、特に日本自立経済の叫ばれておりまするときには必要であろう、かように存ずるわけであります。
  7. 船越弘

    船越委員 このたびの三法の改正案、その中には労働組合も歓迎するであろうと思われるような、非常に進歩的なといいましようか、あるいは非常にうまく改正された部面がありまするし、一方においては、労働者方々がああやつて反対せられるような部面も現われておるように思うのです。こういうふうに労働組合法とか、あるいは公共企業体労働関係法の一部改正であるとか、あるいは労働関係調整法改正であるとかいうようなものを、一本の法律で、一、二、三箇条と出して来ておられる。これを別個の改正案としてなぜ出されなかつたか、いろいろ解釈する人によりますると、政府は羊頭を掲げて狗肉を売るために、これを一本の法律案として出して来たのだ、こういうふうに解釈する人もあるのであります。なぜこういうふうに一本の法律として出されたのか、その政府のお気持が私たちにわからない。それをひとつお示しが願いたいと思います。
  8. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御承知のように今回改正いたしまする労働関係法律は、労調法にいたしましても、組合法にいたしましても、また公労法にいたしましても、労使関係の一貫した一つ情想に基いて改正をしているわけでありますから、労使関係をいかによく調整して行くか、その上で今まで非常に制限を受けたものは一部復活して行くし、また非常に行き過ぎる場合はそれを平和的に解決して行く手段をとる、こういう一連一つの構想に基いてできているものでありますから、その一つ一つを取離してやる一というわけには行かないのであります。労働基準法労使関係ではございませんで、個々の労働基準をきめるものでありますから、これは別個にいたします。公労法にいたしましても労使関係関係がございますけれども、これは全然新しく法律体系をつくるものでありますから、従来の法律の中に入れるわけにも参りませんので、別個に取出したわけであります。
  9. 船越弘

    船越委員 わが国は独立をいたしましたが、政令三百二十五号というものは、現在まだ有効であると思うのですが、やがてこれは効力を失うことになると思います。そうなつた場合に、将来二・一ゼネストのような大規模の、いわゆる公共福祉に重大なる影響を与えるような労働争議が起つた場合には、政府といたしましては現在破防法上程中ではありますが、破防法が通過したといたしまして、現行法でそういう事態に対処し得る自信があるのかどうか伺いたい。
  10. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ごもつともでございまして、実は占領下においては三百二十五号と申しますか、これに基くところのマッカーサ上元帥の指令というものがございまして、ゼネストが禁止されておつたのでありますが、今後二・一ゼネストのような事態は起らないかと言われますと、そうも言い切れない感じを持つております。そうかといつてそれでは起るかと言われましても、今後のいろいろな国内国外情勢に基くものでありますから、何とも言えない。しかし二・一ゼネストのような問題は、多分に政治的な意図が含まれて来る争議だと思うのであります。従つて労働問題として労使間の解決をはかるという問題でございますれば、一応この労働法では緊急調整によつて、普通の争議であればこれが大規模でありましても、まず解決するのではないかと思う。これが二・一ゼネストのように政治的意図のもとに行われて行くということになりますれば、これは労働法以上のものであり、治安立法的なものでございますから、その面で今検討を加えております。これはしかし一に今後の労働組合あり方によるものでございまして、労働組合が堅実に進もうということであれば、その心配は少くなります。労働組合あり方がどうも政治的に向つて行つて心配なきらいがあるということになりますと、お話のように何らかの処置を講じなければならぬということにもなるのであります。この点は今慎重に検討いたしている次第でございます。
  11. 船越弘

    船越委員 そういたしますと、いわゆる労働行政の面から労使関係の問題なれば、大体この緊急調整解決をつけ得る自信があるが、それ以上の問題はもう政治ストであつて労働行政わく外の問題である。これはもう治安立法による以外に方法はない、こういうお考えでございますか。あるいはまたもし治安立法として、巷間伝えられるようないわゆるゼネ禁法でございますか、そういうものを現政府として、つまり国務大臣としての吉武労働大臣は必要とするとお考えになつておるか。あるいは現段階では不必要だとお考えになつておるか。もし必要であるとすれば、本国会に上程されるのであるなその点をお伺いいたします。
  12. 吉武恵市

    吉武国務大臣 先ほど申しましたように、労働問題としてでありますれば、今回程度改正で大体解決がつくのではないかという感じを持つております。それ以上の政治的な問題が含まれて来ますと、これはもう労働問題以上の治安的な問題になりますので、治安立法として考慮したい。なおそれをどういう形でやり、またそれをいつ上程するかということは、今検討中であります。これは先ほど申しましたように、今後の組合の動向にも関係することでありまして、それを見きわめながら慎重に考慮いたしたいと存ずる次第であります。
  13. 船越弘

    船越委員 このたびの労調法の一部改正根本目的と言いましようか、従来終戦後の労働運動の姿を見ますと、スト権の濫用があまりにひどいのではないか、つまり何か問題があるとすぐストライキをやるぞ、こういう圧力を加えることが非常に多いようであります。何かあればすぐストライキだという情勢を、独立自立経済確立のためには何とか抑制して、平和的に労使関係を調整しよう、こういうお考えのもとにこの労調法の一部改正案が上程されたものと思いますが、その点についてお伺いいたします。
  14. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今回の労調法関係改正の方針は、先ほども申しましたように独立後になれば、労働者側から見て正すべきものは正して、そうして権利の確保をはかる。同時にまた一般の公共福祉の面から見て、補足すべき点はこの際補足して、そうして日本経済自立に役立つようにということでございまして、これは詳細に検討していただきますれば、そう無理な法律であるとは考えられないと存じます。組合側ではこれに対して常にストによつてやると言つておられますが、こういう問題でストをやることは政治ストでございまして、破防法の際にも申し上げました通り国家の政策あるいは法律というようなことは、国民が選挙いたしました国会で論議されるべきものであつて、それ以外の組合が、しかも労使間の争いだけに許されるその争議権をもつてこれに対抗しようということは、私は民主国家においては悲しむべきことである、かように存じておる次第であります。  なおはなはだ失礼でございますが、予算委員会の方に約束をして、一時間ほどそちらの方に出て参ります。一時間たちますればまたこちらに帰つて参りますから、その点ひとつ委員各位に御了承を得ておきたいと思います。
  15. 船越弘

    船越委員 この労調法の十八条の改正でございますが、この改正によりますと「申請をなした関係当事者による事件の自主的な解決のための努力が著しく不充分であると認めたときは、その申請を却下することができる。」こういうふうになつております。労働委員会労使双方の間で話合いが著しく不十分であつた、こういうふうに認めるのは、どういうところを基準にして認めるのであるか。その認定は私は非常に困難であると思う。どういうふうにこの不十分であるかどうかということを認定なさるのであるか、その点についてお伺いしたい。
  16. 賀来才二郎

    賀来政府委員 お答えいたします。御承知のように現行法律におきましては、冷却期間三十日という制度がございまして、公益臨業におきましては、一方または双方申請調停にかかりますと、三十日の冷却期間が進行いたしまして、その間は争議ができないことになつておるのであります。ところが過去五箇年間の経験によりますと、とかく労使双方交渉が具体的に進まないのであります。と申しますのは、やはり組合争議権を持つて、そうして使用者側に対しまして一つの力の圧迫を加えないとどうも進行しない。また使用者側におきましても、どうも争議権を相手が持つていない間は、十分熱心に交渉をやらないというふうなことからいたしまして、組合におきましては、労資双方の間の交渉が煮詰まらないうちに、とりあえずこの三十日を経過しておいて争議権を獲得したい、意識的ではないかもしれませんが、こういうふうな結果が現われて参りまして、このクーリング・タイム制度は、実は労使間の紛争を平和的に解決するために設けたものであつたにかかわりませず、かえつてこれがために紛争が長引くというふうな結果を生じて参つたのであります。そこで今度の改正におきましては、十八条におきまして、双方交渉が煮詰まつていないときにはこれを却下いたしまして、クーリング・タイムの進行がそれによつてとどめられるというふうなことにいたしたのがこの理由でございますが、御指摘のしからば著しく不十分である場合というものに、何か客観的な基準があるかという御質問でございます。か、さようなことをきめますことはこれまた非常に困難でございます。と申しますのは、労使間の交渉はいつも同じような形に出て来ないのが一つでありますが、また組合状況、あるいは使用者の実態、あるいは業種等によりまして、非常に複雑でありますとともに、常にその様態がかわつておるのであります。従いましてここで客観的な前か基準でも定めることができると非常に取扱いやすいのでありまするが、さようなことはかえつてこの法律趣旨を殺すことにもなるのであります。そこでこれについての客観的な一つ基準というものは定めてないのでありまするが、しかしながらこれまた御承知のように、労使間の交渉状況がどの程度行つて、どういう点について問題が集約され、あるいは煮詰まつておるかということは、労働委員会はすでに五、六年の経験を経ておりまするし、労、使、公益ともにこの方面のエキスパートが選任されておりまするし、労働側にいたしましても使用者側にいたしましても、それ相当の経験を持つて来ておることもございまするし、決して労働委員会だけの判定ということでなしに、労働委員会動きはきわめて民主的に、しかも輿論の批判下にあるわけでありまするから、われわれといたしましては労働委員会は、過去の経験とその持つておられまする能力に従いまして、必ずきわめて公正なる判断をせられるだろう、かように期待をいたしておるような次第でございます。
  17. 船越弘

    船越委員 ただいま賀来労政局喜長お話を聞きますと、労働委員会というものは、過去六箇年間非常に民主的に運営されており、労働委員会を信頼されておられるようなお話でございますが、従来のクーリング・タイムが三十日あるということを利用して、労働者側の者としては、先ほど言われたように機が熟さないのに調停に持ち出すという事実が現われておる、こういうふうな話もございます。それから労働委員会内部の労働者側の立場の方々が、そういう問題に対してどういうふうな態度を従来とつておられるか。私は実は労働組合自体の良識も疑つておるのでありまするけれども、そういう場合において、労働委員会内部の労働者を代表した立場の委員が、どういうふうな動きをなさつておられるか、その点をお伺いしておきたいと思います。  それからいま一つは、却下をするという認定をする場合に、労働委員会使用者側の代表の方々からこれを悪用せられるようなことがあるのではないか、つまりいつも却下々々というふうに濫用せられるような憂いが起つて来るのじやないか、こういうふうに心配しておるのですが、その点はどうか。その二点をお伺いしたいと思います。
  18. 賀来才二郎

    賀来政府委員 労働委員会の過去の運営の実績等に関連いたしましての一つの御質問でございましたが、なるほど労働委員会は、ここ五、六年の経験を経まして、先ほど申し上げましたようにわれわれといたしまして、今後おいては信頼するに足るものだというふうな考え方を持つておるのであります。しかし一面から考えますると、まだわずか五、六年の経験しかないのだということもまた言えるのでありまして、なるほど御指摘のように、数年前極左的な分子がこの労働委員会を支配しようというふうな態度に出ましたときには、われわれといたしましてもこの労働委員会制度自体が、どうも検討の余地があるのではないかというふうなことについて、疑惑を持つた経験もございました。しかしその後占領軍当局の協力も得、また労働組合の自覚も得まして、その民主的な労働組合の協力によりまして、逐次さようないわゆるこの特別な行政機関である労働委員会を、労働者側、特に一部の考え方によつて支配するというふうな状況が漸次なくなつて参りました。ここ二、三年の経験によりますと、労働者側委員は、労働者の利益を代表しては出ておりますけれども委員となりました以上は、やはり一応公正な立場をとつているというふうな状況になつておることは、御同慶にたえないと存じておる次第でございます。  次の問題でございますが、なるほど御指摘のように三者構成委員会でございますので、労使の意見はおおむね対立をいたしておるのであります。運営の状況を見ておりますと、使用者側使用者側一体となり、労働者側労働者側一体となつて、おのおのその主張をやるわけでありますから、やり方によりますと、御指摘のような懸念がないでもございませんが、労使がまつたく正反対の立場にありましても、中間におる公益の代表が良識をもつて判断をすることに、結果においてはなつているわけでございますので、ただいま御指摘のような懸念は、特別の事情がない限りないものとわれわれは期待をいたしておる次第でございます。
  19. 船越弘

    船越委員 第四章の二の緊急調整の点でございますが、この法文によりますと、いろいろ労働大臣の認定について規制が加えられてはおりますけれども、非常にこれは漠然とした条項でありまして、具体的にはどういう問題についてこの緊急調整が行われるようになるのか。また労働大臣の一方的な認定だけでありますので、その認定について非常に公正を欠くようなことがあるいはあるかもしれないということが心配されるのが一点であります。それからまたこういう緊急調整をやるためには、何か労働大臣の諮問に応ずるような機関の議を経てやつた方が、より民主的な方法ではないかと思われる。もちろん基本的な労働者争議権を調整することになりますので、やり方については、いろいろ民主的な方法で、どこかの調停機関の議を経てやるというふうにしてやつた方がよいのではないかと思いますが、その点についてはどうですか。
  20. 賀来才二郎

    賀来政府委員 御指摘の点につきましては、一応ごもつともな御意見である募れくも感ずる次第でありまして、実はさような立場で、われわれといたしましてもこの立案にあたつていろいろ研究をいたしたのであります。ところが確かにそういうことも必要であろうかとも思ますけれども、それらの機関をいかなる機関にするかということが、一つの問題になつて参るわけであります。もしさような機関をもつてするとなれば、やはり公正で、しかも労働問題、先ほど申しましたように非常に複雑な労働関係でございますので、これについて専門的な、あるいは公正な判断力のある機関ということが必要になつて参るわけであります。さよういたしますると、今すぐわれわれの目の前に描かれますのは、中央労働委員会ということになるわけであります。ところがこの中央労働委員会の性格というものは、御承知のように紛争議解決するというために設けられました特別な行政機関でありまして、これに対しまして労働大臣が自己の責任において行いまする行政処分にあたつての相談をいたしまして、その責任の一半を負つてもらうようなことは、労働委員会という一つの機関の使命に対しまして、少しその範囲を出るような扱いになるわけであります。従いましてこれも適当でありませず、ことにごの緊急調整に伴いまして、争議権の行使についての一時停止をやるという重大な行政処分を行うのでありますから、これはやはり行政大臣といたしまして責任を持つておりまする労働大臣の行政責任において判断するのが至当であろう、かような結論に達しまして、労働大臣の責任においてやるということにいたしたのであります。  なおもう一つ関連したことを申しますと、実はここに書いてありまする労働争議というものが公益に関するものであり、またあるいは非常に規模が大きく、もしくは特別の性質の事業に関するものであるときに、現行法の十八条第五号におきまして、労働大臣強制調停の請求ができるという規定がございます。これは労働委員会の同意を得てとかいう規定はないのであります。やはりこの措置は、労働大臣の責任において今日なされて参つたのであります。過去六箇年におきまして、この強制調停労働大臣の決定で請求をいたしました事例が三度あるのであります。それは昭和二十一年の十月におきまする電産の争議、二十三年の九月から十二月の間に行われました同じく電産の争議及び二十五年の三月に行われました石炭の争議、この三回強制調停の請求がなされておるのであります。この強制調停を請求いたしましたときは、労働大臣の責任において請求をいたしたのでありますが、この回数も非常に少いわけでありまするし、さらにごの請求をいたしますときの経過を見ますると、単に十八条五号の規定のみならず、その状態が、これを放置いたしますると、国民経済に大きな損害を与えるようなことになるという輿論を十分聞いた上で、処置をなされておるのであります。おそらく今後におきまして、この緊急調整の運用にあたりましては、これら過去におきまする真実というものは、当然われわれといたしまして参照せられるものと思いまするし、さような経験からいたしましても、労働大臣が自己の行政の責任において措置をいたしましても、公正を欠くとか、あるいは職権を濫用するとかいうことはあり得ませんし、またなし得ないものと考えておる次第でございます。
  21. 船越弘

    船越委員 この十八条五号の、ただいま仰せになりました強制調停によつてやられたのが過去に三回ほど実例がある、こういうふうなお話でございますが、このたびのように緊急調整をやらなければならないというふうに改正をせられるようになりましたのは、この過去の経験からして、そういうふうな改正を必要と認められたのでございましようか。第十八条五号だけで事足りるのではございませんか。その点をお伺いしたい。
  22. 賀来才二郎

    賀来政府委員 過去三回強制調停が請求されておりますが、二十一年十月の電産の場合は、強制調停の請求がありまして、調停案が出ましてから、一時五分間停電程度の停電が行われようとしたことがあります。しかしこれは最後的には占領軍当局の協力によりまして、解決がついておるのであります。二十三年九月の電産の場合は、やはり調停案が出ましてから解決までの間に争議が行われておりまして、これは一時間停電あるいは職場放棄等の形で行われておつたのでありますが、これも表面には出ておりませんが、やはり占領軍の指示によりまして最後的な解決がついておるのであります。次いで二十五年三月の石炭の争議におきましては、これは強制調停に付しますと同時に、占領軍当局の指示がありまして、争議はやまつたのであります。そのほか、強制調停の請求はいたさなかつたのでありまするけれども、相当大規模争議で、しかも紛議が非常に長引きまして、中央労働委員会あるいは労働省が非常に努力はいたしましたけれども、なかなか解決のつかなかつた事件がございます。これらの事件のうちおもなものは、表面に出ているのと出ていないのとございますけれども、やはり最後的には占領軍当局の示唆あるいは指示あるいは命令に基きまして、争議行為がとまつておるのであります。さようなことからいたしまして、当時は占領下にもございましたし、また国民経済も非常に不安定な時代でございましたので、かような協力を得なければ解決がつかないほど、紛争議は非常に深刻なものがあつたかもしれませんけれども、しかしながらたびたびの経験から見まして、やはり今後におきましていわゆる占領軍の協力ないしはそれによりまする指示等がないような状況下になりますると、どうしても従来の強制調停、すなわち争議行為を停止するという条件のついていない調停の方式のみをもつてしては、あるいは非常に解決困難な状況が出るのではなかろうか。ところが独立後におきまするここ数年のわが国の経済状態というものを考えてみますると、労働組合争議をやること自体が悪いとは言いませんけれどもストライキ権を行使するごとによつて解決することは、使用者に対しても損害でありまするし、同時に労働者にとつてもこれはやむを得ざる行為であり、それによつて賃金を失うという損害を受けるのでありまするし、この程度がさらに高度に長引いて参りますと、第百二着たる国民までが影響を受けるというふうなこともあり得ることを考えますると、どうしても緊急調整というような制度を設けなければ、今後数年間におきまする労使関係紛争の平和的な解決には対処できないのではないか、かように考えている次第であります。
  23. 船越弘

    船越委員 この三十八条の改正案によりますと、「緊急調整の決定をなした旨の公表があつたときは、関係当事者は、公表の日から五十日間は、争議行為をなすことができない。」こういうふうにきめてありますが、この三十日のクーリング・タイムを十五日に短縮せられた改正案でありますから、このクーリング・タイムを五十日に延長せられたというところには、何か趣旨の一貫しないものがあるのではないか。また五十日というような長期にわたつて争議行為を禁止するということは、ほとんど争議を弾圧するというようなにおいが非常に強く出て来ているというふうに私は感ずるのであります。なぜ五十日というふうに長期の期間をきめられたか、三十日程度でもいいのではないか。こういう争議行為の禁止の期間はできるだけ最小限にとどめるべきだというように考えますが、なぜ五十日になさつたかその点についてお伺いいたします。
  24. 賀来才二郎

    賀来政府委員 この緊急調整に基きまして争議行為を禁止いたします期間は、三十日が適当であるか、五十日が適当であるかということは、立案にあたりまして非常に議論をいたした点であります。御指摘のように一応クーリング・タイム三十日を十五日に縮めております。これは普通の争議状態でありまして、しかも両方が煮詰まつていない場合は、このクーリング・タイムが進行することをとめまして、一応自主的な交渉にまつという条件がつきましたので、さていよいよ煮詰まつて来まして調停に入りましたならば、従来のような三十日間も必要でないので、十五日程度で早急に片づくであろう。また早急に片づけなければならぬだろうということで縮めたのであります。ところがこれによりましてもなお解決がつかず、しかもその状況国民生活に重大な損害を与えるというふうな状態の争議になつて参りますと、その取扱いにつきましては、よほど問題が複雑化しているものと考えなければならない。過去におきまするクーリング・タイムを入れましての争議が、一体何日で片づいているか。あるいはその他全体といたしましても、争議調停に入りましてからおよそどのくらいで片づいているかというふうな経験、並びに労働関係法令審議会の公益側の意見等を見ますると、公益側は緊急調整の場合においては五十日程度が必要だろうというふうな御意見を述べられているようなこともございますし、それに対しましてわれわれは過去における経験からいたしまして、一応五十日程度あれば緊急調整の目的も達せられるものであると見まして、五十日ということを定めた次第でございます。
  25. 船越弘

    船越委員 この罰則規定が「第三十七条の規定に違反する行為があつたときは、その行為をした者は、三万円以下の罰金に処する。」こういうふうなことになつておりますが、こういう事態に対する違反行為を、個人を三万円以下の罰金に処するというふうな罰則規定は、非常に苛酷であるように私は一思うのです。この三万円の罰則規定がいいと言われたのは、やはり例の審議会の公益委員の側の御意見でございましたでしようか。どういう点からこういうふうなきつい罰則規定を設けられたか、この点についてお伺いいたします。
  26. 賀来才二郎

    賀来政府委員 現行労調法の三十九条は、御承知のようにクーリング・タイムの規定に違反があつた場合におきましては、「その違反行為について責任のある使用者若しくはその団体、労働者の団体又はその他の者若しくはその団体は、これを十万円以下の罰金に処する。」という規定になつておるのであります。言いかえますとこれは大体団体罰ということになつておるわけであります。ところが刑法の建前から申しますと、この規定は非常に運営がむずかしいのみならず、問題が非常にありまして、どうしてもやはり罰ということになりますれば、その行為をなしたものの責任を罰することが必要であるというような議論が、検察当局の方にございまして、事実われわれ過去におきまする経験から見ますと、組合といたしまして団体として違反行為をやつた例はないのでありますとともに、最近組合が健全化するにつれまして、なお一層その形は明確になつてつたのであります。ところが問題はいわゆる山ねこ争議によりまして、組合全体の責任者はさような指令は出さないにもかかわりませず、地域的闘争とか、あるいは山ねこ闘争という形におきまして、無責任な行動をする者があつた、こういう場合に現行法律では処罰の方法がないという状況がございまして、かれこれ検察当局の御意見もございまして、かような改正をいたすことにいたしたのであります。この点につきましては、法令審議会の方ではこの問題には触れておられないのであります。ただ三万円という金額につきましては、これは検察当局が、その他の各種の罰則とにらみ合せて適当な金額と定めた、かように承知いたしておるのであります。
  27. 島田末信

    島田委員長 天野公義君。
  28. 天野公義

    ○天野委員 船越委員からいろいろ御質疑がございましたが、それに引続いて労調法関係を二、三お伺いしたいと思います。  今度特別調整委員を置くことになつたのですが、この特別調整委員についての政令に讓られておる事項の輪郭をお示し願いたいと思うのであります。特に第八条の二項には「仲裁に参与させるため、特別調整委員を置く。」この参与ということは一体どういう意味であるか。従来二十一条但書で認められていた臨時調整委員制度に比して、具体的にすぐれていると考えられる。まあ改正したのですから、進歩しているでしようが、そういう点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  29. 賀来才二郎

    賀来政府委員 この特別調整委員制度は、すでに御承知のように現行法の二十一条但書におきまして、臨時の委員制度がきめられていたのでありますが、この運用の実績は効果が上つていないのであります。と申しますのは、いかに専門家でありましても、その都度と申しますか、いよいよ譲が起つたときに急にその問題に参加を求められましても、なかなか活動することがむずかしいというふうなこともございまして、この臨時の委員制度検討の対象になつたのであります。もう一つの原因は、労働委員会の過去における運用の状態から見ますと、なおまだ非常に複雑な専門的な知識を必要といたします業種におきましては、労働委員会に対して全幅の信頼をいたしていないという状況でございまして、これは労働委員会の中に、やはりそういうふうな業種につきましては、専門的な造詣の深い方を委嘱しておく必要がある。しかしあらゆる産業にわたつてそういうことをやることは、労働委員会の総会としての運営の立場から、これは適当ではありませんので、やはり臨時委員ではないけれども、専門的な知識を持たれた方に御協力を願うという意味におきまして、特別調整委員制度を設けることにいたしたのであります。従いましてこの特別調整委員制度は、非常に弾力性のあるものでなければならないのでありまして、詳細に法律でもつてこの委員に関しまする運営の程度方法等を定めますことは適切を欠く。かりに何人にするかという問題につきましても、条文では触れていないのでありますが、これでは中央労働委員会におきましては、おもなる業種は今年はこういう状況であるが、しかしまた来年においてはあるいは様子がかわるかもしれません。地方労働委員会になりますと、福岡県においてはどの種類の人が必要であり、神奈川県においてはどの種類の人が必要であるというふうに、県の実情で異なつて参るわけであります。従いましてその運営の弾力性を持たせますために、この法律の定めるもののほか、特別調整委員の権限でありますとか、機能でありますとか、あるいは最大限の人数であるとかいうふうな点については、政令でもつて定めて行きたいと考えている次第であります。  なお仲裁委員制度を改めまして、現行におきましては二十一人全員をもつて組織するというのを、今度法令審議会の御意見に基きまして三人で組織することにいたしたのでありますが、これまた問題が非常に専門的なものにわたつて参りますと、やはりエキスパートの参加を必要とするわけでございます。ことに公益委員をもつて組織をいたすのでございますから、選択の範囲が狭いと申しますか、七人の中から選ぶということになりますと、非常に選択の範囲が狭まつて参りますので、特別調整委員のうち公益委員の立場にあられる方で専門的知識のある方は、これに参加をしていただくというような制度考えた次第でございます。
  30. 天野公義

    ○天野委員 もう少し実際的に特別調整委員制度を政令にゆだねられる内容を聞きたいのでありますが、特にこの説明書によりますと、特別調整委員労働委員会委員と同じように使用者を代表する者、労働者を代表する者及び公益を代表する者であつて労働委員会委員と異なつて、必ずしも労、使、公益各同数でなくてもいいというような、非常に弾力性のある説明がここになされているのでありますが、あまり弾力があり過ぎて、片一方に偏するような調整委員会が編成されるような懸念はないか、こういうような防止をするには、一体どういうふうにして防止をするのか、ひとつ伺いたいと思います。
  31. 賀来才二郎

    賀来政府委員 実は現在の中央労働委員会あるいは地方労働委員会にいたしましても、法律で定めております範囲は非常に抽象的と申しますか、あまり詳細な規定をいたしていないのでありまして、中央労働委員会自体が自己の委員会運営のために規則を制定する権限を与えて、その規則に基いてみずからが公正な運営をはかつて行くという制度を大体とつておるのであります。従いましてこの調停に当ります特別調整委員の運営につきましては、中央労働委員会あるいは地方労働委員会が、これらの委員との問の協議にもよりましようが、われわれといたしましては労働委員会の意見を十分尊重して処置いたしたい、かように考えますので、非常に弾力のある部分を政令によつて定めることにいたしたのであります。しかし御指摘のような点につきましては、労働委員会が現在規則を定めております状況から申しまして、あるいは三者構成の相対等の立場でやつております状況から申しまして、一方に偏するというようなことは万々あるまいというふうにわれわれは期待いたしておるのであります。言いかえますならば弾力のある運営をいたしたい、ついては労働委員会の意見を十分聞きました上で、それを政令に定め、しかも労働委員会自身が公正な運営をやつて行くように期待をすることが可能であると考えておる次第でございます。
  32. 天野公義

    ○天野委員 先ほど船越委員も最後に触れられた点でございますが、争議行為者の処罰については、非常に苛酷ではないかと私は思うのであります。国家公務員法には相当強い罰則規定がありますが、公労法にはここにあるような罰則規定はないと記憶いたしております。争議行為が禁止されている期間中において争議行為をした者は、刑事責任を問われて罰金を科せられるということになるわけですが、そういう立法例が他国にもありましたならばお教え願いたいと思います。
  33. 賀来才二郎

    賀来政府委員 この罰則の点につきまして、どういう意図で、どういう経過でかような定めをしたかということにつきましては、先ほど船越委員にお答えしたのでありますが、ただいま天野委員の御質問に対しては、やはり相当専門的なお答えを申し上げませんと不十分とも思いますし、またわれわれがさような点について申し上げましてかえつて間違つても困りますので、いずれ検察当局の方に連絡いたしまして、検察当局の方からお答えを申し上げるようにさせていただきたいと思う次第でございます。
  34. 天野公義

    ○天野委員 この法律を立案し、そして国会に提出されたのは労働省でございます。従つて労働省としても、これは今度の改正案で一番大きい問題となる可能性があるものだと私は思いますので、おわかりになつておる範囲でもけつこうでありますから、もう一度御説明願いたいと思います。
  35. 賀来才二郎

    賀来政府委員 この罰則を従来の団体罰の十万円から、個人罰の三万円に改め、緊急調整の場合におきましては、これを五万円以下に改めたことにつきましては、検察当局といろいろ和倉をやりまして、われわれとしてもこの違反行為の性質から見て、この程度で適当であろうという判断をいたしたような次第であります。
  36. 天野公義

    ○天野委員 それならばどうして公労法の方は直さないのですか。
  37. 賀来才二郎

    賀来政府委員 公労法の場合は立て方が違つておりまして、すでに争議行為は禁止されております。もしこれに違反をいたしますならば、そのまま餓首されるということができるようにたつておるのでありまして、労働者にとりまして何が一番苦しいかと申しますならば、やはり職を失うことであるという建前を公労法はとつておりますとともに、公労法ではかようにいたしておりますが、その行為に伴つて起ります刑事罰に対するこの罰の適用を、決してこれで阻害しておるものではないのであります。
  38. 天野公義

    ○天野委員 公労法の方では馘首ということを建前としておる。片一方今時の改正案では罰金刑を科して刑事犯としようとする。どう考えても公労法の方が甘いように考えられる。甘いというよりは、今度の方が苛酷であると考えられる。非常に不均衡だと思いますが、その点もう一度お伺いしたい、特に罰金刑を科せられ、刑事犯となつた場合には、おそらく馘首ということも伴うであろうことは当然考えられる。片方はただ馘首されて、あといろいろな問題が残るでありましようが、しかしながらここに現われたところをよく考えてみますと、公労法よりも、今度の改正案の方が非常に苛酷であるという印象を受け、そう考えざるを得ないと思いますが、その点をお尋ねします。
  39. 賀来才二郎

    賀来政府委員 御指摘の点、われわれとしても一応ごもつともと考える点もございますけれども、過去におけるいろいろな経験なり、あるいは他の法令とのいろいろなつり合いか申しまして、われわれとしてはこの程度で適当であるとともに、この程度のものは品必要であると考えまして提案した次第であります。
  40. 天野公義

    ○天野委員 どうお伺いしても不均衡であるという印象を払拭できないのです。国家公務員法にはこれと同様な規定がある。公労法にはない。今度の改正案にはこれが出て来た。国家公務員法に基くところの国家公務員は、国民に対する奉仕者である。従つて罰金刑を科せられてもしかたがないかもしれないが、これに準ずるような公共企業体の方は馘首だけであります。今度の一般の労働者諸君には罰金刑を科するということはどうも納得行きませんが、その三者の均衡の点についてお伺いしたい。
  41. 賀来才二郎

    賀来政府委員 いろいろ御意見の点につきまして、われわれも先ほどお話し申しましたように、ごもつともな点もあると存ずるのでありますが、これを立案いたしますにつきまして重点的に考えました点は、やはり他の法令の罰との均衡という点を十分に考慮をいたしたつもりでございまして、われわれといたしましてはこの性格から見まして、これで均衡はとれておる、かように考える次第でございます。
  42. 天野公義

    ○天野委員 均衡がとれていないからお伺いしておるのであつて、三つの条文を並べてごらんになれば、不均衡であるということははつきりわかるはずです。どうも今度の改正案をずつと見ますと、いろいろ措置講じられておりますが、この最後の一点にしわがみんな来るような感じがするのです。それならば先ほどお伺いした外国の例では、こういうような関係では均衡がとれておるかいないか、それもあとで、次の委員会でもけつこうですから、明快にお知らせ願いたい。
  43. 賀来才二郎

    賀来政府委員 御要求の点につきましては、さらに御指摘の点に関連いたしましても研究をいたしまして、次の機会にお答えを申し上げたいと思います。
  44. 天野公義

    ○天野委員 次に公労法関係についてお伺いします。今回公労法を大分いじられたようでございますが、一番問題となつておりました十六条の第二項の問題についてなぜ触れられなかつたか、これが現行のままであるならば、公労法はいわゆる骨抜きの法律であるわれわれは考えおります。この骨抜きの法律の中に特別会計に類するようなものをぶち込んでみたところで、大した効果はないのではないかというふうな印象もあるのですが、なぜ十六条第二項に全然触れなかつたか、その点をお伺いしたいと思います。
  45. 賀来才二郎

    賀来政府委員 今度の公労法改正に関連をいたしまして、われわれが最も重点を注いで研究をいたしました点の一つは、この十六条の規定でありまして、御指摘のような問題は非常に多くあるわけでございますとともに、過去三年間におきまする公労法の運用の結果から見ましても、この点が最も大きな問題になつたのであります。しかしながらこの十六条に欠点がありといたしましても、この問題は単に十六条だけの問題ではないのでありまして、御承知のように国有鉄道あるいは専売公社法等の関係もございますし、さらに予算総則の定め方にも関係いたしますし、財政法、会計法とも関連が出て参るのであります。従いましてこの十六条の点を、これらの諸法律あるいは規定とあわせて改正をして行かなければならないという点は、われわれといたしましてはつきりいたして参つたのであります。従いましてこれらの諸法律をあわせてやるにつきましては、なお関係省との慎重な検討を必要といたすのでありますが、一方考えてみますのに、過去における公労法の十六条の運用の結果は、初めは非常に問題を起したのでありますが、漸次慣行が確立して参りまして、最近の事例では、専売公社の仲裁裁定につきましても一応解決がつきましたし、また国鉄の仲裁裁定につきましても、十分とはいえなかつたのでありますが、大体裁定の趣旨に従いまして解決がついておりますので、ここ当分これが改正については、関係省と慎重な協議研究を続けますとともに、現在確立して参りました慣行の尊重によりまして、十六条の運営を全うして行きたい、かように考えましたので、今次の改正につきましては、それに当らずに提出をいたしたような次第でございます。
  46. 天野公義

    ○天野委員 現在のところは、今までやつて来た慣行に従つてつて行かれるというようなお話でございますが、今までやつて来た慣行というものは、公労法の精神が没却されておつて、いたずらに翼がいろいろな問題をひつかぶる。そうして政府の方は、予算総則その他でわくをきめて、知らぬ顔であるというような実情にあると私は考えております。従つて公労法をほんとうに生かす精神があつたならば、財政法なり、会計法なり、予算総則なりのいろいろな問題を法律的に改正して、そうして公労法の精神を生かして行かなければならない。それがまたこの行政担当者としてのなすべき筋である、かように考えますが、労働省としては、各関係方面と連絡されまして、今後この公労法の精神を生かして、ほかの法律をも改正しようとする意思があるかないか、それをお伺いします。
  47. 賀来才二郎

    賀来政府委員 御指摘の点、すなわち今後さらに改正をやつて行くつもりであるかどうかということにつきましては、いずれ大臣から基本的な政策の問題としてお答えを申し上げるのが至当と考えまするが、われわれ事務当局といたしましては、先ほど申し上げた通り、かつまたただいま天野委員から御指摘の通りに、この十六条につきましては、運営の結果から見ましても、またこの十六条に伴いまする問題につきましての国会の論議、あるいは国会外におきまする論議におきましても、非常に批判の的になつておりまするし、同時にいろいろ意見の対立あるいは違つた点もあるということは十分存じおるのでありましてわれわれといたしましては、いつこれをさらに全体としての改正をやるということが起りましても、そのときにはその研究の結果を十分参照できるように、なお努カを傾倒して行きたい、かように考えておる次第でございます。
  48. 天野公義

    ○天野委員 次に地方公労法関係について一、二点お伺いします。まず第一点は、今回の地方公労法の適用を受けない単純労務者に対しては、どういう処置をいたすつもりであるか。あわせて政令二百一号に対する措置について、方針をお示し願いたいのであります。
  49. 賀来才二郎

    賀来政府委員 この地方公労法におきまして対象にいたしましたものは、いわゆる一般行政事務を担当せず、かつ肉体的労働を主体といたしておるという者でありますとともに、さらにその業務が経済性を持つた事業であり、企業が一つのまとまつた体制を持つておる、この四つの条件を持つておるものに対しまして、公共企業体労働関係法と同じようなものを適用して行くという立場をとつたのであります。と同時に、公共企業体労働関係法と同じような性格、すなわち地方公労法に書かれておりまするような取扱いをして行こうといたしますと、この四つの条件を持つたものでありませんと、実際の運用が困るのではないか。ことに単純労務ということになりますと、先ほど申しました純粋の意味の行政事務ではなく、しかも業務が内体的、技能的な労働であるという点におきましては、今次の地方公労法の対象になつたものと同じでありますが、その業務が経済性を持つておるかどうかという点、企業が一体制を持つておるかどうかという点になりますと、きわめて複雑多岐にわたつておりますとともに、さような特徴においては欠けている点があるのであります。従いましてこの地方公労法が、一気にこれらの単純な労務に従事する人を対象として適用して行くことにつきましては、なお研究の余地がございます。従いまして今次の地方公労法の対象からは、一応除外して取扱つたのであります。しかしながらただいま申しましたように、これらの労働者は一般の行政運営の任に当る地方公務員の状況とは違うのであります。従つて地方公務員法の附則二十一項に定められてありますように、地方公務員法自体を適用することが適当でないかということは、すでは法律に書かれておる通りでありまして、今後早急にこの問題は取扱つて行かなければならないのであります。しかしながら労働省といたしましては、地方自治庁との間の研究が結実するに至つていない状況でありますので、政令二百一号の措置とあわせまして至急にその点については研究をいたしたい、かように考えている次第であります。
  50. 天野公義

    ○天野委員 第八条及び第九条において、条例に抵触する協定のことを規定しておりますが、団体交渉権を非常に尊重するというよりも、むしろかかる条例の改正の方を地方自治法に定める成規の手続によつて実現した方がよいのではないかと思う。もしこの法案の規定の趣旨が非常によいとするならば、なぜ公労法改正集中に、これに相応するような規定を設けなかつたか。公労法とごこに食い違いがあると思うが、その点をお示し願います。
  51. 賀来才二郎

    賀来政府委員 公労法の場合におきましては、ここに書いておりますような性質のものはいずれも法律になつておりますとともに、これらのものにつきましては、これは団体交渉の対象になつていないのであります。ただ公務員一般職の中から起つて参りました郵政省その他の従業員につきましては、団体交渉の対象になつている部分で、国家公務員法の規定でこれを縛ることが不適当なものは、これを適用除外にいたしますとともに、その団体交渉の対象になつておるもので法律で縛られておるようなものは、できる限りこれをはずして行くというような方法で措置をいたしたのであります。ところが地方公共団体になりますと、自治制度関係で、やや国家制度と異なつた点がありまして、法律に近い条例というものに、地方公共団体において議会の議決を経ますならばいろいろと出し得るのであります。原則として団体交渉の対象になつておりますものを条例で縛るということに、さほどあり得ないとわれわれ解釈をいたすのでありますけれども、いろいろ研究いたしますと、さようであるとも限らないという状態も出て参るのであります。従いましてさような条例がつくられましたときに、その条例によつて団体交渉の対象になつておる事項制限するというようなことがあつてはならない、かように考えましたので、特に地方公労法におきましては、条例との関係あるいは規則との関係を明確化いたしまして、各地方によつて実情の違います点から出て参ります紛争をあらかじめ防止いたしたいと考えまして、この条文を置いた次第でございます。
  52. 天野公義

    ○天野委員 そうしますと「条例にてい触する内容を有する協定が締結されたときは、その締結後十日以内に、これを当該地方公共団体の議会に付議して、その承認を求めなければならない。」こういうふうになつておりますから、条例よりも協定の方が優先する場合があるわけですね。協定に抵触しておつても、その力が強い場合には、条例を議会側としては改正しなければならない、そういう事態も当然是認されるわけですね。現在の条例に違反した協定がなされておつても、事後に承認されれば、条例は直す、そこに問題があるように思いますが、その点をひとつお伺いしたい。
  53. 賀来才二郎

    賀来政府委員 この八条の規定におきましては、やはり条例は協定よりも強いという趣旨でありまして、それがために条例が協定に対して影響を与えるような場合がありましたときには、困る場合が出ますので、もし条例に抵触する協定ができましたならば、これは議会の承認を経てかえてもらうべきでありまするが、しかしながらもしその承認がなければ、やはり条例が協定に対して優先と申しますか、強いのであります。
  54. 天野公義

    ○天野委員 基準法関係を一、二点お伺いしてみたいと思います。今回の改正はそう問題点はないようですが、特に中小企業関係というか、そういう方面においてやつてもらえれば非常にいいと考えられるような問題があるわけです。中小企業について基準法の適用を除外するとか、また特例を設けるようにするとか、こういうような問題について政府はどういうようにお考えですか。
  55. 龜井光

    龜井政府委員 中小企業に対しまして、労働基準法の適用を除外する、あるいは労働基準法の中の特定の事項につきまして例外規定を設けるというふうな問題につきましては、中央労働基準審議会の審議の経過におきまして、相当論議されたところでございます。しかしながら現在の国際労働条約あるいは各国の法令を見ましても、人数によりまして基準法の適用範囲をきめて行くというやり方はないのでございます。これは労働者という労働の実態をとらまえますると、中小企業であろうと大企業であろうと、そこに保護すべき対象としましては、同一の条件に置一かれているのではないか、かように思われます趣旨からいたしまして、公益、労、使三者の意見の一致を見ずしまして、答申にもその件は触れられていないのであります。しかしながら中小企業の問題は、労働者保護の問題というよりも、使用者の側の基準法の施行に対しまする協力、あるいはその適用の問題につつきましては、いろいろ問題あろうかと思います。たとえば手続等の問題につきましては、大企業では事務のスタッフを十分持つておりますので、法令に定めます通りの義務の履行はできると思いますが、中小企業ではそれだけの経済的余裕がないということからいたしまして、とかく手続の違反というものが起りがちなことは、仕来の実績から見まして了解できるのでございます。従いましてこの問題につきましては、目下中央労働基準審議会におきまして、手続の簡素化という面からしまして、一般的な手続の簡素化のほかに、大企業あるいは中小企業との間における事務処理の能力から見まする簡素化というものの検討が加えられておるような次第であります。また現行法におきましても、中小企業につきまする例外というものが、企業の実態から見まして、きめられておるのであります。たとえば労働時聞等につきましても、中小企業、物の販売、配給等の事業につきましては、十人以上の労働者を雇用するもととそれ以下のものとに、例外措置が講ぜられているのであります。そのほか事業の実態山伴いまして、そこに多少の例外措置が講ぜらるべきであると思いまする事項につきましては、基準法の基本的な精神を害しない限度におきまして、施行規則においてそれらの事項は処理されて参ると思います。それらの問題も一括いたしまして、目下中央労働基準審議会において審議されておりまするので、その答申を待ちまして、政府としてさらに検討を加えたいと思います。
  56. 天野公義

    ○天野委員 もう一点、家内労働に関する法規を制定する必要がないかどうかということと、それから家内工業その他家族従業者のみでやつている事業については、一体どういう措置をとり、どういうお考えであるかそれを伺います。
  57. 龜井光

    龜井政府委員 家内労働の問題あるいは家族従事者の問題につきましても、同じく中央労働基準審議会におきまして審議の対象になりまして、論議されたところでございます。結論から申しますると、家内労働に従事いたしまするものと中小企業との公正な競争という見地からいたしまして、そこに何らかの措置が講ぜらるべきであるという結論からいたしまして、中央労働基準審議会におきましても、すみやかに家内労働法の制定を要望する建議がなされたのでございます。しかしながら家内労働と申しましても、その範囲は非常にあいまいでございまして、いかなる限度にまでこの問題を収上げるか、いかなる範囲でこの問題を処理して行くかということになりますると、相当実態を調査いたしませんければ、われわれとして自信のある処置を構ずることはできないのでございまして、答申もございましたので、目下これら家内労働の実態に対しまする調査をいたしている次第であります。その調査の完了を待ちまして、基本的な方針をきめて参りたい、かように考えておるのであります。
  58. 島田末信

    島田委員長 それでは午後一時半まで休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時十五分開議
  59. 島田末信

    島田委員長 休憩前に引続ぎ会議を再開いたします。  この際お諮りいたします。労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案及び地方公営企業労働関係法案の審議のため、昨日議長に対して公聴会開会承認要求書を提出いたしたのでありますが、先ほど議長より承認を得ました。つきましては本日正式に公聴会を開くことを議決いたすことに相なつておりますが、これにつきまして公聴会開会の日時を決定いたさねばなりません。この日時の決定に関しましては、公聴会に対する申出、公述人の選定、公述人への通知、公述人出頭の時間的余裕を考慮いたしますとともに、三案の審査の進行状況ともにらみ合せて決定することが妥当と思われます。諸般の情勢をも勘案いたしまして、公聴会は来る五月十九日、五月二十日の両日、いずれも午前十時より開会いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 島田末信

    島田委員長 御異議なしと認めます。  それでは衆議院規則第七十九条によりまして、公聴会開会報告書を議長に提出いたさねばなりませんが、公聴会を開く議案は、労働関係調整法等の一部を改正する法律案内閣提出第一三 ○号、労働基準法の一部を改正する法律案内閣提出第三二一号及び地方公営企業労働関係法案内閣提出第二二二号とし、意見を聞く問題は、労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案及び地方公営企業労働関係法案についてといたし、また公聴会の日時は昭和二十七年五月十九日及び五月二十日、いずれも午前十時といたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 島田末信

    島田委員長 御異議なしと認めてさよう決定いたします。  それでは公聴会開会報告書を議長に提出するとともに、それを公示するように諸般の手続をとることといたします。     ―――――――――――――
  62. 島田末信

    島田委員長 これより三法案について質疑を続行いたします。天野公義君。
  63. 天野公義

    ○天野委員 先ほどおもに労政局長にお伺いしたのですが、納得の行かない三点ばかりについて労働大臣にお伺いしたいと思います。  まず第一に伺いたいことは、労調法の第十八条のところでございますが、調停申請をした場合、いつから効力が発生するか、次の十五日のクーリング・タイムと関連して、その発生時点をひとつお伺いしたいと思います。
  64. 吉武恵市

    吉武国務大臣 おそらく御質問の御趣旨は、クーリング・タイムの起算点に関連があつて申請した効力がいつから発生するかということであろうと思います。この申請をしたのはやはり到達主義で、これはおそらく中労委に申請をするのだつたと思いますが、中労委に申請したのが到着いたしましてから起算をいたすわけであります。
  65. 天野公義

    ○天野委員 そうしますと申請書が到着して、それからクーリング・タイムが一日、二日と行きます。そうするとその間にこの機が熟しておるか、煮詰まつたかという判定をしなければならないのと、それからいろいろ調停の準備をするということと、二段構えの仕事を委員会ではしなくちやならないというふうに了解されるのですが、その点はいかがですか。
  66. 吉武恵市

    吉武国務大臣 さようでございます。しかしながら受理するならば受理するか、それから却下するならば却下するかは、おそらく委員会にかかると思います。そこでこの事項は十分目主的な交渉をしておるのだから、それでは受理しようということになれば、申請した日から起算いたしまして、十五日の間に調停をするでしようし、それからどうもまだ不十分である、もう一度審議して自主的な解決をしてもらおうじやないかということになれば、却下いたしまして、もう一度交渉をする。これは労働委員会の方で、大体労使双方から出ていますから、その間の事情というものは委員会が一番よく知つて、いると思うのです。委員会がそういうことを決定することが、政府みずからが決定するよりも公正ではないか、かように存じまして、却下も労働委員会にまかせてあるというわけであります。
  67. 天野公義

    ○天野委員 そうすると極端に言えば、十四日目に却下するということもあるいは実際問題として起るかもしれないし、そういうことも予想される。それで却下は幾日の間にしなければならないというような、ある程度の規範というものを必要とするのじやないかと思うのですが、そういう点についてどういう御見解か承ります。
  68. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私はこの労働委員会というものがそういう取扱いをするようではもうすでに中労委員会の信頼というものがなくなると思うのです。ですからおそらく受理したならば、速急にどちらかの態度にきめるということは、九九%じやなく、もう一〇〇%はそうなると私はかたく信じております。しかしながら天野さんの御意見のように、法律的には、形式論から言えばあり得ることですから、中労委の規則の中で、取扱いについてはいつ幾日内にきめるということはおそらく自主的にきめるかと思いますけれども、これは法律で何日以内でやれるというほど拘束をしなくても、私は御心配いたたかぬでけつこうだと思う。これは労使双方で出ていますから、そう極端に偏する行動というものはまずございません。
  69. 天野公義

    ○天野委員 これが不当に利用されて、そうして労働者を圧迫するようなことのないように、労働省でも今後御配慮を願いたいと思います。  それから次にお伺いしたいことは、先ほど労政局長にお伺いしたのですけれども、罰則規定の問題です。今までは団体を罰しておつて、個人を罰しておらない。これを今度は個人も罰するようになつた。そうするとこの罰則規定が、国家公務員法、公労法、今度の改正案、これを見て参りますと、非常に不均衡でございます。この不均衡な点について、労働大臣はどうしてこういうようなことをお考えになられたか、ひとつお伺いしておきたい。
  70. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御承知のように公務員は、公務員たる本質にかんがみて、争議をすべきものでなく、国家全体に奉仕する立場にありますから、これは厳重に規制をしなければならない。ところが今の三十八条に申しまする緊急調整は、従前の三十八条のクーリング・タイムと同じように、元来争議権を持つておる。それが公益上一時それを中止して、その間に公正なる機関にかけて調停を行うという努力は払うということでありますから、体刑まで科してこれを制限するのはひどいじやないか、かように存じまして、罰金刑にしておるのであります。従前は団体罰であつたものを個人罰に直しましたのは、従来の実績によりまして、個人罰にしないと、団体罰ではうまく行かなかつたというところから、かえたわけでございます。
  71. 天野公義

    ○天野委員 どうもそれだけでは納得が行かない。国家公務員は国民に対する奉仕者であるから、罰金刑でもいいかもしれません。しかし公労法の方では解雇ということがあるだけで、一般の労働者の方には、今度は個人的に罰金刑が科せられる。どうも納得行かないのですが、その不均衡を調整される御意思はないのですか。ひとつ承りたい。
  72. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これはそれを施行いたしました実績にかんがみて、これで悪いということであれば、将来調整をすることには決して異存はございません。しかし現在のところではまず三十八条は罰金刑でございましたので、今回の緊急調整につきましても、一応その程度をもとにした方がよかろう、こういうことでやつております。
  73. 天野公義

    ○天野委員 この問題は私の方でもよく研究させていただくことにいたします。  次の点でございますが、それは公労法の第十大条第二項の問題でございます。今まで裁定を取扱う上におきましているくわくがあつて、結局、そのしりが国会に来るというような情勢になつてつて公労法の精神というものが没却されているように考えられます。今回公労法を相当改正しておられまするが、どうして公労法の十六条を改正して、公労法の精神を生かすような措置をとられなかつたか、その点をお伺いします。
  74. 吉武恵市

    吉武国務大臣 公労法の十六条の規定は、これまで国会でしばしば論議されたところでありまして、すでに私も本会議で一ぺんこの問題についての見解を述べたことがございますが、私は公労法の建前としては私ども解釈し、政府解釈していることが正しいと思つて、現在もそういうふうに行われております。しかしそういうことが正しいならば、そういうふうにはつきり明文化したらどうかという御意見がございますけれども、実は一方においてそうではないんだという反対の意見もあるわけであります。この問題につきましては両方の意見があるのでありまするから、これを下手にいじくつて行きまするよりも、すでに公労法施行以来何年間か解釈によつて貫行が行われていることでありまするから、それをこわしたくないという意味において、手をつけなかつたというわけであります。
  75. 天野公義

    ○天野委員 そうしますと、公労法の実際また精神というものは、現在政府がとつておられる解釈でいい。そうして今後ともこの方針で進んで行くんだという御意見と承るわけですが、どうも一番最初公労法の制定されたときの精神というものが、その後の予算総則とか、財政法、会計法の改正とか、そういうふうな問題で、だんだんと骨抜きになつて来ているように私には考えられるのでありますが、将来財政法なり会計法なり、そういうような方面法律改正して、もつともつと公労法のほんとうの精神というものを生かすような御意思はないかどうか、それをお伺いします。
  76. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は公労法に規定いたしておりまする公企業、それから今後追加しようと思つておりまするいわゆる現業企業にいたしましても、最終決定は私は国会がやるべきだと思います。ですから仲裁自体の法律論だけから言うならば、仲裁は最終決定であるから、何人もこれを拘束するという議論も立つでありましよう。しかしながらこれらの国の予算でやつておりまするものにつきましては、私は最終決定は国会がやるべきである。従つてその仲裁を承認するかどうかということは、国会にかかつている。国会がこれを承認するということになれば、すべてこれを予算化しなければなりませんし、政府も拘束を受けることは当然であるが、仲裁がただちに国会をも拘束するという建前は、国会がございます以上は私はいかがかと思います。でありますから現在政府がと、つております解釈は、私は正しいと考えます。
  77. 前田種男

    前田(種)委員 関連して……。今の公労法の十六条の解釈を大臣がそう言われましたが、私が今の大臣の考え方をもう少しはつきりしておきたいと思いますことは、仲裁裁定が下つた場合に、国会なり、地方議会の場合には地方議会が最終的に決定するということは同意いたします。そしてその裁定に従つて地方の場合は理事者、国の場合は政府当事者がその裁定を尊重して、その裁定に基いてそれぞれの措置を国会なり、地方議会に提出して、地方議会なり国会がそれにイエスかノーかという結論を下すという解釈が正しいと私は思います。少くとも労使双方の当事者に対して拘束する当事者の一方であるところのものは、やはり地方の場合は地方理事者という解釈をして、その最終決定は国会なり、地方議会がするように解釈するのが正しいと思いますが、もう一度関連して大臣の見解を承つておきたいと思います。
  78. 吉武恵市

    吉武国務大臣 もちろん仲裁裁定が出ます以上は、公労法に基いて国家はそれだけの義務を負います。でありますから仲裁裁定が出たならば、何日以内に国会に提出して承認をしていただけるかどうかということを求めることは、仲裁裁定の結果から生ずる義務であると私は思います。ただ私が申し上げますのは、その際にただちに仲裁がが国家を拘束するのだということの議論は、最終決定を国会にゆだねる以上は、まず国会にかけて、こういう仲裁が出たのだが、これをのんでいいかどうかということを一応求める。そしてこれはのむべきであるということになれば、それによつて初めて拘束を受けて予算措置をする、こういう行き方をとるべきであると思います。
  79. 前田種男

    前田(種)委員 私は何も仲裁裁定に対して、国家が拘束を受けるとは言つていないのです。要するに一方の当事者が拘束を受ける。その当事者とは公企法の場合は国鉄専売公社ということになりますが、予算的な措置は公社でなくてやはり大蔵省が所管している関係から、公社と大蔵省は政府機関の間で一本になつているわけです。民間の会社と違いますから……。その点で一方の当事者とは政府機関、政府機関の一つとして公社があり、大蔵省があるという解釈であつて地方の場合はそれぞれの公共団体、しかしそれも最終決定はやはり国会なり地方の議会がやるという私の見解でありますので、その点に対してはさらにまた明日以後私の質問のときに、大事なところですから重ねてお尋ねしたいと思います。
  80. 島田末信

  81. 青野武一

    青野委員 私も今、前田委員と天野委員が質問されておりましたのに関連することであります。御承知のごとく公労法の十六条ないしは三十五条がいつも議会で問題になる。たしか一昨年の十二月の二日ごろと記憶しておりますが、大体この仲裁裁定によれば、当時国鉄の第一次裁定は六十億円くらいで解決つくのが、結果からみますと四十九億五千百八十一万三千円という数一字が出、それで議会の方は解決づきましたが、いまだにそれが裁判上の問題になつて、第一次、第二次裁定も残つておる。これは占領下にあつて書簡によりまして、国家公務員は公共福祉のために多少、その間民間労働者とは違つた性格を持つというところから、多分に占領政策の精神が入つて参りまして、そして争議権というものが全面的に剥奪せられ、そのかわり調停委員会とか仲裁委員会は、最後の裁定が仲裁委員会で下された場合には、大体その公社あるいは国が拘束をせられて、最後の裁定に服従すべきものである。こういうように大体企業体に関係する労働組合、たとえば国鉄、全専売あたりが考えおる。われわれもそう考えておる。ところが金額の少がつた専売の裁定は一応けりがついたやに記憶しますが、国鉄に至つては十分に解決がついておりません。そういうところを見ると、御承知のように先月二十八日午後十時半に、平和条約が発効いたしました以上は、何も私は公労法にたてついて、結果から見ると大蔵大臣は資金上予算上支出不可能です。政治上も法律上も道徳上も責任は持てません。いくら自由党の諸君が好意をもつてこの問題を解決しようといたしましても、この公労法をたてにとつて、大蔵大臣が首を縦に振らないために、問題がいつも紛糾しておつた。総司令部と完全に手が切れて、形式的でございましても独立国家となり、占領政策から解放された今日は、やはり民間の労働組合と同じように、公共福祉という概念的な字句にこだわりなく、一応ここでこういつたものをひとつとりのけるように改めて、団体交渉権なり争議権を認める、労働組合運動の一切の活動を自由に認めるというところに行くか、憲法第二十八条によつて行くか、それともまた社会秩序の維持をするためには、国家再建の必要上どうしてもこういうものが必要であるということになりますれば、この機会にむしろ労働省は進んで、仲裁裁定には国及び公社が絶対にこれに服従する、但し予算関係であるから、それは国会できめることは当然でございますが、今まで過去のような複雑な紛糾状態を将来も繰返して行くということは、私どもは納得行かない。この機会に勇断をもつて憲法二十八条に基いて、労働組合に対する絶対的な自由を与えるか。そうでなければ公労法の拘束の条文を挿入するか。こういうことが今最もいい時期ではないかと私ども考えている。全国の公務員関係労働組合も、民間の労働組合も、すべて先月の十二日、十八日に労闘ストをやりましたが、やがて月来を中心にして、もう一ぺんやろうという空気も新聞紙を見ますと出ております。これもやはりこういうところに重点があるのじやないかと思う。ILOあたりでもこういう点についてはかなり問題にしたし、事務局長は日本政府に警告を発したというようなことも新聞で見たことがございますが、やはり国際的にいろいろな例がありましようが、いいことはどんどん率先して日本が取入れて行くというようなお考えを持たれておるかどうか。これは全国の労働組合専売公社とか国鉄以外の民間の団体にいたしましても、ここに労働三法改悪反対の根拠が主としてあるのじやないかと思う。労働大臣はどういうお考えを持つておられますか、お伺いしたい。
  82. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は青野さんの御趣旨は、原則的にはごもつともだと思います。しかしながら先ほども申しましたように、この公務員でありますとか、あるいは国家予算によつてまかなわれる公社の職員、これはみんな国家予算によるわけであります。従いましてただ単純に仲裁というだけの考えでは、拘束を受けるべきでありません。しかしながら国家予算でまかなわれております限りにおいては、国会の最終決定によつて初めて政府が拘束を受けるべきだ、私はかように思います。この法律もそういうふうに―実は私はこれの立案のときはたまたまおりませんで、どういう事情であつたか詳しくは存じませんけれども、この法律を率直に見ましても、三十五条に仲裁裁定というものは両当事者を拘束する、但し今言つたような国家予算に資金上、予算上関係のあるものについては、それに従うのだという条件付なんです。ですから、原則的には私は青野さんのおつしやることはごもつともだと思うのですけれども、いわゆる国家予算でまかなわれるには、その最後の決定を国会に求めて、その上でもしのむべきものだということであれば、政府もこれに従つて行くというのが、私は国会尊重の上からいつても当然だ、こう思うのです。それからまた実際の運用についても、当初御指摘になつた十二月五日の国鉄のときには、多少、ごたごたがございましたが、その後の実際の運用を見ましても、われわれ自由党も、この公社従業員の給与のためには、そういつてはいかがかと思いますが、実はずい。ぶん骨折つたつもりでございまして、予算上、資金上あとう限りの努力を尽して、そうして承認するように努力もしておるわけであります。でありまするから、私は現在のこの法律及びその解釈の上においても、運用の上においても支障はないものと存じます。青野さんが言われましたような趣旨は、われわれ告会を尊重しながら運用しているわけでございますので、御了承願います。
  83. 青野武一

    青野委員長 重ねてお尋ねをいたしますが、十九日、二十日は公聴会が予定されておりまして、二十一日、二十二日に各法律案の条文についての質問がございます。その公聴会に引続いて二十二日までの労働委員会で、多少私は条文的な御質問を由し上げようと思つて用意しておるのでございますが、実はその点について、大体大別いたしまして、団結権について、その中で組合員の範囲とか、職制、それから不当労働行為、次に組合の資格要件と規約記載の事項組合事務専従職員について、団体交渉について、こういつたものに加えまして、あつせんとか、調停または仲裁に関すること、そういうことからいろいろ委について逐次御質問申し上げたいと思いましたが、不幸にして公務の関係で、明日労働委員会に出られませんので、一、二点委員長に特にお願いをいたしまして、実は発言のお許しを受けたわけであります。きようは本会議関係もございまするので、あまりたくさん質問をしようとは考えておりませんが、なお一点お尋ね申し上げたいと思いますることは、御承知のように労働関係調整法は、労働組合法と並行して争議を予防したり、あるいは円満にこれを調整したり、日本労働運動の発展のために大体こしらえられておる。労調法は、そういう目的を持つておる。御承知のように第八条におきまして「この法律において公益事業とは、左の事業であつて、公衆の日常生活に欠くことのできないものをいう。一、運輸事業、二、郵便、電信又は電話の事業、三、水道、電気又は瓦斯供給の専業、四、医療又は公衆衛生の事業」、こういうことが明示せられまして、そうして「内閣総理大臣は、前項の事業の外、国会の承認を経て、業務の停廃が国民経済を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、一年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる。」とあり、「指定をしたときは、遅滞なくその旨を、官報に告示するの外、新聞、ラジオ等適宜の方法により、公表しなければならない。」こういうことが労調法第八条に書いてございます。こういう点から申しましても、今度出て参ります公労法関係におきましても、専売事業というものが公労法で今申しましたように縛りつけられております以上は、この労調法第八条の中に挿入するのがほんとうではないか。これは問題が非常に大きいことと、内部事情がたいへん複雑でございますので、これは逐条審議のときに大体詳しく具体的に御質問を申し上げる予定になつておりますが、一応この点について、大局から見て労働大臣はどういうお考えを持つておられるかということを、お尋ねしておきたいと思います。
  84. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ごもつともな点でございますが、これは将来専売事業というものを公社として経営して行くか、あるいは民営として経営して行くかという問題に関係して来ることだと思います。民営ということになれば、今おつしやつたような状況になるでございましようし、公社として行きます以上は、やはり公社の性格から現在のような状況によらざるを得ないのではないかと存じます。
  85. 青野武一

    青野委員 もう一つ伺いますが、私は何も新聞に出ていることを中心にして言うのではございませんが、先月十二日分労闘第一波スト、それから十八日の百五万人を中心にし、地方公務員、国家公務員、その他鉄鋼産業等に従事する人の一時間ないし二時間の職場大会を入れますと、相当数が十八品のストには参加をいたしました。その目的は御承知のように労働三法改悪反対、破防法の撤回を要求する、こういうことで吉武労働大臣初め政府側の人は、これは労使の対立による争議ではない。労働組合法の適用、保護を受ける争議ではない。従つて日経連あたりは犠牲者の出ることはやむを得ないあるいは馘首する、減俸する、懲戒するといつたような方法考えられるということを、日経連の幹部が新聞を通じて発表しておりますが、やはり労働組合といたしましては、自分たちの最低生活権をみずからの力で守り抜こうといたします際に、国会にそれぞれ自分自身が出ているわけではございません。そうしてやはり破壊活動防止法が出れば、放火、殺人、列車転覆、騒擾事件、その他いろいろな問題が起りましても、それが一定の組合に所属してれば、それが拡張解釈されて、その組合が解散させられるのではないか、東条内閣時代にも苦い経験を特つております。松本治一郎氏が中心で特定な民間人の差別をすること、同じ日本国民でありながら、根拠のない差別をすることは不都合だというので、二十数年前から生れました全国水平社、これは国民に徹底すれば自然に解消するという特殊な団体である。それでも軍閥当時の政府は、平沼騏一郎氏を中心にする財団法人のいわゆる官選の一つの融和団体と統合するために、いや応なしに大和報国会というものをつくつて、完全に日本の団体を全部つぶした。これはみな治安維持法から来ている、そういう苦い経験は幾らもある。戦争が長引くから、いいかげんでやめたらどうだろうか、ほんとうに困るとか、あるいはB29が来て困つたとかいうような陰口を聞いた者をちよつと密告されると、三年、五年とひつばられた。ことに終戦まぎわにでもなれば、ちよつとしたことでもみんなひつぱられた。そういうことを考えると、治安維持法の結局形のかわつたものが破防法であるという考え方を、日本の各団体は持つておる。たとえば日本の大新聞、地方の中新聞、小新聞に至るまで、ひよいと筆の先で時の政府を弾劾する、あるいは占領軍と日本国家のいろいろ重要問題が出たときに、正しくこれを社説を通じて書いた場合にも、向う六箇月の発刊停止、六箇月が来るとまた向う六箇月発刊停止ということで、これは戦時中よくたらいまわしをやられたものです。行政執行法第一条第二項による日没までの検束が、一週間も二週間もたらいまわしにされる。警察の表から出て来ると、いきなり別の警官が出て来てつかまえて、別の署にぶち込む。何十人もの警官がよつてたかつて、柔道のけいこ台のように、服を破り、おもちやのようにひどい目にあわせる。拷問にかける。こういうふうに治安警察法、治安維持法解釈を拡大して、当時の権力に反抗した者は非常な圧迫、弾圧を受けたわけです。従つて今でもアメリカ軍が日本に何ぼ来るか知りませんが、駐留する。全国各所に軍事基地ができる。朝鮮問題は解決しそうにない。まごまごすると戦争にひつぱり込まれるのではないか、徴兵令が出るのではないか、こういうことを日本国民が不安に思うておるときに、破壊活動防止法というものがつくられる。労働三法を、発言を禁止するために、とにかく改悪して行く。われわれはそういうことをされては困るが、これを阻止する力がないのだから、最後の手段として政治的性格を持つてつても、ストライキをする以外に道はないではないか。われわれの団結力で破防法の撤回を求め、労働三法改悪を阻止する以外に道はないというところから、あの十二日と十八日、また今月の末ごろに第三次の労闘によるストライキが行われようとしておる。こういう種は政府がまいたのではないか。あるいは第三国の強い指示があつて行われておるのではないか。日本国民は戦争はいやだ、憲法改正もいやだ、傭兵、再軍備もいやだと言つておるが、いやおうたしにその線に追い込まれて来るときに、祖国の危機を守るのはすなわち労働組合、農民組合、われわれの政治団体だという考え方の上に立つてつておるとぎに、ただ労使間の争議ではない。これは政治的性格を持つておる政治ストであるから、そういうことをやつてもらつては困ると、労働大臣労闘の幹部、総評の幹部あたりと会見のときに、しばしばそういうことを漏らされたことを、新聞、ラジオを通じて私ども承知しておるのでございますが、そういう争議行為がまたまた第一次として行われようとしておるのは、多分政府の行き方に無理があるのではないか。われわれのすることをとやかく言えば、労働組合を解散するぞ、われわれの言うことを聞かせるためには、労働組合に不利になつても、こういうぐあいに条文を改正するのだというふうに考えさせる、その責任は政府にあるのではないか。この次に行われる政治ストについても、こういう法案が次から次に出て参りまするし、日米安全保障条約第三条に基く行政協定に基いて、民事特別法が出る、刑事特別法が出る、向うさんが演習のために日本人に迷惑をかけた、家を焼いた、家財道具を焼いた、ジープでひき殺した、飛行機が落ちてけが人をこしらえた、死亡者を出した。今までは終戦処理費でまかなつておりましたが、きようの読売新聞を見ましても、日本政府がある条件のついた場合は負担しなければならない。そうしてこれは多少金額を上げて行きましたが、裁判権は向うさんに持たれた。軍事基地は日本で五、六十箇所もできる。そういうきゆうくつな中に追い込められて、次から次に自分たちの生活に大きな不安を来すような法律案国会に出て来る。これを国会へ出て来た法律は、国会議員が審議するのだ、国会がきめるのだから、お前たちはストライキをもつてこれに干渉することは下都合ではないかということは、当らないのではないか。私は何も全面的に政府を否定し、政府のやり方に反対し、労働組合のやり方に全面的に賛成をするという意味でなしに、この日本の社会不安の上に立ち、また国際的動きを頭に置いて考えるときに、やはり政府のやり方に大きな矛盾があり、無理があるのではないか、こういうぐあいに私は考えておるのですが、来るべきこういつた法案を中心にする労働法改悪反対闘争委員会、すなわち労闘、主催の第三波のストライキが目前に迫つております。こういうときに政府を代表して労働行政最高責任者である古武労働大臣の御意見を、新聞紙を通じていろいろ聞いてはおりますが、この機会にひとつ腹臓ないお考えを御発表願つておきたいと思います。
  86. 吉武恵市

    吉武国務大臣 青野さんのせつかくのお言葉ではございますが、青野さんともえども破防法趣旨にございますような極端なる暴力破壊活動というものには、おそらく私は御賛成でないと信ずるわけであります。おそらくあなた御自身は御賛成になつていないと私は思う。それでこれが単に暴力だからといつて制限するということになりますと、一応私ここで申しましたように、労働運動その他の上において支障があるということも考えられるのですけれども、今度のこの破防法というのは、ほんとうに極端な暴力なのです。内乱とか、騒擾だとか、あるいは殺人とか、放火というような極端な暴力行為、これは青野さんもおそらく御賛成になつていない、これはおそらく多数の日本国民は賛成していないと私は思うのです。ただ一部にこういう暴力をもつてでも、あえて自分の主張を通そうという者がおりますれば、そういう者にとつては御賛成願えないかもしれないけれども、私はそういう一部の人を除いては、おそらくそういう暴力を肯定される人はない。この破防法がもし運用をあやまつて、かつて治安維持法のような苦い経験をなめては困るぞという御心配は、これは私もごもつともだと思います。決して否定をいたしません。しかし今日はもう民主政治にかわつておるのでありまして、かつての政治とは違つておる。今日かつて行われたように法律を非常に曲げて運用するとかいうことになりますれば、これは世間を通るはずはございません。昔運用をあやまつた点があるからといつて、今日目前に行われ、また行われんとしておるところの極端な暴力を防止することをも否定をする、それを黙認をする、手が出せない、ほつておくということについては、私はおそらく青野さんも御賛成ではないと思うのであります。でありますから、運用について十分注意しろということは、私は大いに敬意を持つて拝聴いたしますが、そうかといつてこの極端なる暴力行為の予防防止をもやるなということにつきましては、私はいささか了解がしにくいのであります。労働三法についても同様でございまして、詳しくくどくど言う必要もございませんが、中にはただ法の内容が出ない間は、組合の方では、何か非常なものが出るのではないかという不安を持つて労働三法改悪反対というようなことで宣伝をしておつたようでありますけれども、私どもはいわゆる独立してから後といえども労働者をそんなに非常に弾圧する、そんなことで政治が行われるということは考えていない。でありますから、この法律にも規定している一つの目標というものは、国家現業官庁あるいは地方公営企業の現業職員の団交権を復活するということです。これは中を見たところが、そういうものが出ておつた。それでは今まで労働三法改悪反対と言つたけれども、いまさち引込めようかということはなかなかむずかしいという議論があるかもしれませんが、私は是正すべきものは正すべきだという信念のものに、この法律を出しているのであります。それでも時期が尚早だという意見もありますけれども、私は少くとも国鉄専売のような企業に似たような現業職員については、給与その他の労働条件については団体交渉によつてきめ、それがきまらないときには合理的な機関にかけてきめる。そうしてどうするかということは最後に国会がきめるということが、一番穏当ではないかということで、私は非常に努力を払つておるつもりであります。  それから強制調停の点でも、なるほど基本権があります。基本権があるから、争議をやるということも、これはもちろん私は否定をするわけではございませんが、御承知のように争議というものは、給与、労働条件の改善の最後の手段として、労働者に与えられておる権利であります。でありますから要はその目的を達することである。争議をすることが目的ではない。労働者労働条件が改善されることが目的である。それならば何も争議をやつて一般大衆に迷惑をかけるということよりも、これはしかし迷惑のかからないものは、私はその基本権は尊重すべきだと思いますが、著しく国民生活障害を及ぼすようなことがあつたときには、ただ政府は手が出せないということでなしに、合理的な機関にかけて、合理的に解決する、これは考え方によつては決して私は労働者に不利益ではないと信じております。あなたもずいぶん長い間労働運動をされた方でありますから、私の見解が誤つておるかもしれませんが、私は決してこれが労働者に不利だとは考えない。争議に至らずして合理的に解決する道というものは必要じやないか。これは日本だけの特殊事情としてやるのではない、現在アメリカでさえやつておるのであります。アメリカでさえ国民生活に重大な支障があるときは、せんだつて会議で私は六十日と言つておきましたが、実際は詳細に申しますと六十日以外になお二十日間は手続を要する、八十日間争議をさしとめて、そうして調停、あつせんで解決をしようという努力、これは特に今の日本のような自立経済の叫ばれるときには必要じやないかと思つております。決してこれで労働者を弾圧する意図はないわけであります。と申しましても組合の方では、それは労働大臣がかつて解釈するのだと言われるかもしれません。言われるかもしれませんが、静かに考えごらんになれば、今回の破防法にいたしましても、労働三法改正にいたしましても、労働者を弾圧するものではないということはおわかりになるのじやないかと思います。こういう問題について政治ストを行うということは、今日の民主政治下においては決して許さるべきではない。もし自分の政治的意見を主張するためには、汽車をとめてもよい、電気を消してもよいということになつたならば、議会政治というものをどうされるか。やはり民主政治というものは、国民の代表を議会に送つて議会で論議をし、そうして輿論の反映をまつてきめて行くということにおいて、初めて平和的な政治というものが行われるのであります。であります。から私は青野さんに大体は御了承いただけるものだと信じておるわけでありまして、今回三法の修正を行うというわけでございますが、これは自分たちの政治的意見が通らないからそれはやむを得ないのだというふうにお考えをいただくことは、御再考を願えないものであるか、かように存ずる次第であります。
  87. 青野武一

    青野委員 いろいろ労働大臣の御説明を聞いてよくわかつた点もございますが、アメリカの例も引かれて、アメリカは八十日間、日本は少し遠慮して五十日くらいにしたとおつしやつたようでありますが、私はちようどそのとき通産委員会に出ておりまして聞くことができませんでしたが、アメリカの例をとられて、それはこういうぐあいだ、ああいうぐあいだとおつしやられることもごもつともであります。けれども日本の国情とアメリカとは非常な隔たりがある。財政力にしてもその通り、言論の自由にしてもそうであります。だから戦時中でも思い切つたストライキを公然とやつておるアメリカであります。マッカーサー元帥がトルーマン大統領のヨーロツパ第一外交方針に対して敢然と反対をし、満州に進んで爆撃をするという方針を断固として主張して、そうしてやろうとしたときに、イギリス労働党内閣のときのモリソン外務大臣が、フランスと協力してトルーマンを通じてこれを解任をした。アメリカの統合参謀本部の意見をアメリカの新聞紙を通じて見ますと、あの際トルーマンが満州の爆撃をやつたら、少くともソ連か中共の戦爆連合戦隊の飛行機をもつて、その翌日日本の爆撃をしておるだろう、あれが実行に移されれば、アメリカの駐留軍も日本国民も非常な災害を受けたであろう、こういうことをかつて日本で申しますと軍令部総長か参謀総長あたりに匹敵する人たちが言つております。そういう危機を日本は一応脱しまして、終戦後六年八箇月の間、事実上手足を縛られた占領治下にあつたのでございますが、そういうことをやろうとしたマッカーサー元帥がアメリカ本国に帰つて、上下両院で軍事に関する機密を堂々とトルーマンを向うにまわしてやつたアメリカの四十八州を次から次へと遊説して、トルーマンの外交政策の誤りをつき、アジア政策の誤りをつき、そうして大きな犠牲を払つて日本と戦争したが、アメリカの国務省は何物もとり得なかつたではないか、これはトルーマンの外交方針の大失敗であると、敢然とアメリカ政権に向つて闘いをいどんでおる。ところがマッカーサー元帥は刑務所に入れられたという話も聞きません。検束を受けたという話も聞きません。それくらいアメリカは言論の自由の国である。日本ではそういうことを言つたらたいへんだ、戦時中であれば、おそらく十年戦争が続けば、刑務所から十年は帰つて来られないでしよう。しかもわれわれは国際的の戦争は厳正中立である。第三国の軍隊が日本に駐留することは、日本に戦争の起る危険性があるから反対だ、平和条約は屈辱的であり、これはアメリカの植民地化するものだ。われわれは絶対兵制度を認めるわけに行かない、一方的な行政協定には反対だ、そうふうものをどうして取締るかということを、日本政府よりもつと外国の方が考えているのではないかと私は思います。そして次から次と問題を引き起して来る。十八日にストライキをやれば、五月一日にはああいう事件を起す。私ども暴力を否定しております。共産党の諸君とははつきり思想的にも革命的戦術の上でも練を引いている。この点はしばしば言明した通りでありまして、私どもを容共、準共産党員と言うならば、ソ連め軍隊が入つて来ましたら私たちは一番に捕縛になります。南樺太をもどせ、千島をもどせ、北海道の歯舞、色丹をもどせ、十万六千人の抑留者を即刻にもどせ、どうしてもどさないか。また小笠原、沖繩、奄美大島を日本の軍国主義を監督するという建前のもとに信託統治にしておるが、一握りの土地でもほしい日本から、アメリカが無期限でとることには私は反対しておる。ところが私は千島の軍事占領にも反対しておる。なぜ日本にあれを返さないのだと言つている。そういう意味からいつても私は容共派ではございません。この一事だけでも私どもは何事かあつたときには、いきなりやられる運命にあります。従つてどもは、どちらにしても日本人の立場で日本を守りたい。国民生活を防衛したい。無意味な戦争のために若い者に銃を持たせて、国外に出兵させることには反対だと、日本を守り、日本のためを思うからこそ言つておる。それなのにこれは危険だ、たとえば社会党の左派は危険だ、これは共産党と紙一重で、五月一日のメーデーにあれも関係してやつたのではないかと言つている。それと密接な関係を持つている早大事件があつた、武装している警官が行つて、こん棒か何かで無抵抗の学生をうちのめす、そういう行き方が終戦後あつたかどうか。こういうことが次から次へ起つて来るのではないか。私は御承知通り九州です。飛行場三つに囲まれている八幡製鉄の所在地におるものでありますが、ほとんど毎月二十四時間中、飛行機の飛ばない日はありません。まさに戦争の前夜のような不安をみな持つておる。そういうとぎに国民の口をふさぎ、何事もできないように破防法をつくり、労働三法改悪することは、やがて東条軍閥のときのように戦争になるのではなかろうか。またかわいい子供をとられるのではなかろうかという考え方を持つておるときに、そういう不安を一層大きくあおつて行くような法律には反対です。労働組合が反対し、農民組合が反対し、そして日本の文化団体の諸君が反対するものを、ことさらに平和条約の締結後に国会に提出しなければならない理由はないと私は思います。日本の刑法に明らかに騒擾、内乱、殺人、強盗、列車転覆の処罰規定がございます。このねらいどころは、そういうことをした者の所属する団体を最初のうちは手かげんをするが、半歳か一年先には次から次にそういう団体が解散されて行くのではないか、こういうことを私ども考えて、将来のことを考えて、治安維持法のときのことを考え心配する。そういうことはしないと政府が言明しても、また内閣がかわればどういうことになるか。権力を握つておる者の顔ぶれがかわればどんなことになるか。陸海軍の将星は、次から次に追放解除を受けており、警察予備隊にどんどん指指導者として入つておる。教育界、言論界、政界、官界にどんどん昔の人が、戦争協力者が復帰をしている。今度衆議院を解散して選挙をしたら、そういう人たちが相当数議会の中に入つて来る。吉武労働大臣が、昔の治安維持法のように解釈を拡大して断圧する意思は毛頭ないと言つても、どうなるやらわからない。そういう法律が出ておると、国民はどういう解釈のもとにひどい目にあうかわからない。  もう一つ例を申しますが、吉武労働大臣は厚生大臣を兼職なさつておりますから、ついでにこれは例としてお聞き取りを願いたい。アメリカの軍隊が自分たちの作戦のためか、対日占領政策のためか、福岡県の彦山のふもとのトンネルの中に爆弾、火薬を入れておつて、それが向うさんのあやまちで爆発して、その村の人が百五十人吹つ飛んでしまつた。それで一松厚生大臣のときに、厚生委員会を通じて私どもの同僚が質問したときに、今はアメリカに占領されておつて、手も足も出ぬ、向うさんのあやまちでも事故でも、どうすることもできぬから、平和条約が発効したら、日本国家の責任で何とかこの跡始末をつけるから、とにかくしばらく待つてくれないか、こういうことであつた。そういうものが入つておるということも知らない人々が、向うさんのあやまちで爆発したために、付近の家屋が吹つ飛んで、百四、五十名くらいの人が即死したのです。そういうことで、一松さんが厚生大臣をしているときに、当時の政府を代表して、よろしい、国家の責任で何とかします、こう言つておるが、今吉武さんが厚生大臣になつておるけれども、そういう内容を御存じになつておるかどうか。そういうことについてどういう手を打たれるか。いまだ具体的なことを聞いておらない。あなたは今度の法律について、そうじやない、そういうことはしないとおつしやつても、やはりそれぞれの立場、内閣の性格がかわつて参りますると、やはりそういうことをして弾圧をしなければならないような外部的な勢力の圧迫があろうし、国際情勢の変化もあります。そういうことが将来起らないように、みずからの生活権を守り、日本労働組合みずからの健全な発達を自分たちの努力でなし遂げようとするときに、ただ政治ストだからだめだ、政治的意図を持つている、労働組合法の保護のもとにやつておるのではない、だから首切られても知らないぞ、こういう一方的な見解を表明されると、組合は武装解除されたものみたいになつて労使の対立のときも非常に不利になるのではないか。私自身は、労闘を中心にして争議をどんどんやれと言つておるのではなく、これと直接密接な関係を持つているものでもありませんが、先ほども申しましたように正しいものは正しい、この条文は悪ければ悪いということは申します。しかし私は暴力は否定しております。私どもはフアッシヨに対して反対すると同時に、暴力革命にも反対しておる。無血革命、議会主義です。選挙を通じて日本の民主化の徹底をはかるということは、将来も今までと一つもかわりません。こういう点について、この労働委員会だけでなく、関係労働組合国民の不安に対して、政府を代表して、はつきりとあなたたちの御見解をひとつこの機会に記録として残しておいてもらいたい。憲法制定のときに、ああだこうだと言つて答弁したが、今吉田さんはそれと反対のことをやつている。そういうことで最高裁判所に提訴するような問題も起つて来るから、そういうようなあとくされのないように、問題が将来起きないように、はつきりした線を打出してもらいたい。総括質問といたしましては多少長かつたかもしれませんが、これでやめます。やがて逐条審議のときや公聴会の折を通じまして、具体的な各条文に直接関係のあることは、時間を割振つてもらつて質問したいと思います。
  88. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私はこの民主主義の上に立ちます以上、それについて政治的ないろいろな見解を持たれることは自由でよいと思います。しかしながら自分の政治的な意見を通すために、法律の認めない実力行使を行うということでは、民主政治の確立はできない、かように存ずるわけであります。しかも先ほど申しましたからくどくは申しませんが、破防法にいたしましても、労働三法にいたしましても、日本の国、日本の勤労大衆にとつても、民主的政治の上に立脚する以上は、決して間違つておらない。これは大きい目で見るならば、決して不利にならないという信念を私は持つて出しております。この点はひとつ青野さんももう一度御反省を願いたいのであります。ただこれの運用を誤つてはいかぬという点につきましては、私も同感であります。この点につきましては、われわれといえども今後十分の努力を払うつもりでおります。
  89. 島田末信

    島田委員長 本日はこの程度にて散会し、次会は明十六日午前十時より開会することといたします。     午後三時十六分散会