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1952-03-18 第13回国会 衆議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十八日(火曜日)     午前十一時三十二分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 福永 健司君    理事 船越  弘君 理事 前田 種男君       麻生太賀吉君    金原 舜二君       佐々木秀世君    内藤  隆君       三浦寅之助君    石田 一松君       今野 武雄君    青野 武一君  出席国務大臣         労 働 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         労働政務次官  溝口 三郎君         労働事務官         (職業安定局         長)      齋藤 邦吉君  委員外出席者         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 三月十八日  委員早川崇君及び前田榮之助君辞任につき、そ  の補欠として石田一松君及び川島金次君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第六八号)     —————————————
  2. 島田末信

    島田委員長 これより会議を開きます。  日程に入ります前にお諮りいたしますが、委員川島金次君が去る十一日一旦委員を辞任されておりますので、ただいま珪肺病対策小委員が一名欠員となつております。この際小委員補欠選任を行わねばなりませんが、これは前例により委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島田末信

    島田委員長 御異議なしと認め、川島金次君を再び小委員に御指名いたします。     —————————————
  4. 島田末信

    島田委員長 失業保險法の一部を改正する法律案を議題といたし、前会に引続き質疑を許します。今野武雄君。
  5. 今野武雄

    今野委員 前日に引続き質疑を行いたいと思いますが、失業保険掛金が非常に余つてプールされておる。百五十億もプールされておるということなのでありますが、その内容をこのほど調べてみますと、たとえば昨年の一月から十二月までの場合には、保険料支拂いは百四十八億あります。にもかかわらずそれだけ保險料拂つて給付を受けておるのは一般において百二十一億である。そうするとそこだけですでに二十七億というものが余つておる。だからせつかく国会でもつて社会保障という観点から予算を出しておつても、それが使われないばかりか、会計自身から見ればそれだけ非常にもうかつておるということになる。こういうような仕事は普通の民間会社でやつて相当なもうけになるわけで、従つて政府の今までやつておる失業保険というものは、民間会社保險業よりももつと有利なものであるから、この社会保障としての実は少しも上げていないと言つても過言じやないと思います。それだから百五十何億もプール資金ができるわけなんで、そうしてみると保険金給付そのものについて根本的な問題があると思うのです。これを広げることが現在の急務であります。なぜならば失業しておる連中はほんとう生活に困つておる、路頭に迷つておる、これは犯罪その他の点においても現われておるのです。そういうような点から言えば、もつともつと給付をよくする、あるいは範囲を拡大するということこそが現在の急務である、こういうふうに思われますのに、今回の場合には、余つておるからそれを削つて少し掛金を安くする、そういうことで失業していない人の立場に立つて現在就業しておる人の立場に立つて政策をやろうとしておる、ここでもつてわれわれとしてはこの疑問なきを得ない。これは困つておる人の立場に立つてやるのがほんとうじやないか、失業しておる人の立場に立つて、それをもとにしてやるのがほんとうじやないか、それには範囲を拡大することこそが急務ではないか、こういうふうに思われるわけでありますが、その点について政府の見解を示していただきたいと思います。
  6. 溝口三郎

    溝口政府委員 失業保険範囲を拡大したらどうかという御質問でありますが、二十五年度末に百十二億余つたのであります。二十六年度におきましても相当余つ乗るから、今度は保険料を二割下げようということで提案をいたしたのであります。積立金が多くなつて来たという最大の原因は、失業保険法を立案した当時よりも順次失業者が減つて来た、従つて給付額も減つて来たということで、現在積立金相当に余つて来たわけであります。今度二割下げましても、約百十五億程度積立金が二十七年度においても出ることになつておりますが、これは大体一年間くらいの給付額相当する程度であります。その程度のものは一応積み立てておいて、緊急に失業が発生したときにそれを使つて行くというような建前でおるわけであります。なお積立金相当にあるのならば、非常に困つている人には給付金をできるだけよけいにしたらどうかという御質問でございますが、今まで受けていました賃金の六割くらいを六箇月出すというのは、各国のうちでも最高のレベルだと考えているのでございます。従つてただいましベルを引上げるということは、政府としては考えていないのでございます。さように御承知をお願いしたいと思います。
  7. 今野武雄

    今野委員 ただいまの御説明で、なるほど法案の建前としてそうであることはわかる。ところがこれが適用できない場合が、実際問題として非常に多くなつておる。たとえば失業者全体のうちで、日雇いまたは臨時工として雇われておりますのは、そのうちのごくわずかであります。ところがその臨時工として雇われますと、たとえば特需工場などにおいては一箇月契約、二箇月契約が多い、ことに二箇月契約相当多い、そういう場合にも一般保険掛金をとられるわけであります。にもかかわらず二箇月で首になる、あるいは五箇月で首になるという場合、これは文句の言えないような契約書ができております。そういう場合には掛けた掛金が少しも支拂われないということになるわけです。そういう人の数は一体どのくらいかと思つて労働省にいろいろお尋ねしたのでありますが、これは数がわからないということでありますので、推定するよりしかたがないのであります。たとえば富士モータース、あるいは相模工廠とかいうような軍需工場になりますと、ほとんどがそういうような臨時工である。それからして八割、九割というような場合だつてあるわけであります。少い例もむろんありますが、そういうのを全部平均してどのくらいになるか、おそらく五割そこらになるのではないかと思う。そういうたくさんの労働者失業して、余儀なくして臨時工になる、地位も非常に不安定である、生活も不安定である、そういうような人は保険金をかけておつて、しかもそれが支拂われない、こういう犠牲が多くあるわけであります。そういう犠牲の上に立つてさつきのような剰余金もできるのであります。そうして見れば社会正義の上から言つて社会連帯性ということから言えば、当然余裕のある者、富んだ者が、困つている者に対して相互扶助をするのが、社会連帯ということであります。ところが現在ではむしろあべこべになつている、このところが問題なのです。だからそういう点を改めなければ、法文建前はどうなつてつてもどうにもならない。私が範囲を拡大したらどうかというのは、やはりそういう点を改めて行くべきではないか。法文の六箇月という建前りつぱです。それならば今度はそんな苛酷な雇用条件をやめるようにしなければどうにもならぬ。そういう点を含めてひとつ答弁願いたいと思います。
  8. 溝口三郎

    溝口政府委員 臨時工の問題は非常に大きな問題でありまして、明確には数字としては調べてはいないのでございますが、朝鮮動乱以後相当に上つて来ております。これらの方々は非常に不安な状態に置かれておりますので、ぜひともこういうものは常用の方に直してもらうようにいたしたいと私ども考えておるのでございます。ただ二箇月くらい保険料拂つて、それがもらえない、これは不合理じやないか、だからそれを拡大して、もつと少い期間保険料拂つた者にも出すというような御趣旨のように承つていたのでございますが、ただいま政府としては保険経済の上から、六箇月以上保険料拂つた者資格があるのだということで、百分の六十を限度としてやつておるのであります。これも生活の安定という上から見ますと、非常に無理な点であるのでございますが、失業保険目的は、一番詰まつたときにできるだけの保護をしようということでやつておるのでありまして、保険生活を立てて行くという趣旨ではないのでございます。政府としては失業者をできるだけ少くして行く。失業保険をもらつても一日も早く正常な就職状態に持つて行くことに努力をいたしておる次第でございます。
  9. 今野武雄

    今野委員 ただいま次官もおつしやつていたのでありますが、労働省労働行政として、現在多量に起つておる労働者失業の問題、臨時工の問題、こういうものがはつきりしないと政策が立たぬわけであります。その点は私ははつきりしなければならぬと思う。最近いろいろな軍需注文があるわけでございますが、請願が来ておる一例を申し上げますと、武蔵野市吉祥寺のジヤマ精工株式会社というのは、本工三十名で事務員が十名くらいの小さな工場でありますけれども、いわゆる親子爆弾といわれておりますが、それに羽をつける作業をやつております。この作業注文を受けて職工を七十名から百名くらいを、一箇月から三箇月の期間で雇い入れたわけであります。賃金はむろん安いのでありますが、その際に臨時雇用書というものを入れて、この期間満了後には解雇します、その途中においても法文が切れたらいつでも解雇します、その際手当は一切支給いたしません、こういう非常に封建的な臨時雇用書なるものに判をつかなければ雇わぬということであります。こういう雇入れについても、職安を通じて九月に申込みをして、ようやく十一月に雇われるという非常に困難な状態であります。そしてその人たちが一箇月後、二箇月後、三箇月後に首を切られるわけです。その場合には一般失業保険の恩典にちつとも浴さない、日雇い失業保険証書を渡される。そして十七日間百四十円ばかりを給付されて、それでオーライということになつてしまう。ところが失業保険の金の方はちやんととられておることになるわけですから、一般失業保険の方が余つて来るのは当然である。こういう例は最近は非常に多い。今後行政協定の線に沿つてどんどんとアメリカに協力するという政策が続くと、こういうのがますます多くなつて来るわけです。そういうことを放置しておくというのでは、失業保険というもの自体意味をなさなくなる。そういうことではとても承服できない。昨日も質問しましたが、紡績の女工も結局二万近くが首になるだろうといわれておる。それから最近のヨーロツパ不況インドの不景気、こういうようなことから東南アジアの貿易もなかなか伸びにくい。そういう点から見ると、さつき失業者をなくするのが政府の方針だと言われたけれども、現に通産省は操業短縮を勧告し、第二次の勧告もするかもしれないということが新聞にも出ておる。こういう際にそういうことを言うのは言いのがれにすぎないと思うのです。われわれとしては臨時工あるいは日雇い労働者といつたようなものの地位をもつとはつきりさせて、それに適応する失業保険制度をつくらなければならない、剰余金はそういう方面に使うべきだと考えるわけですが、その点政府としてもつと明確に返答していただきたい。
  10. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 臨時工の問題は、先ほど政務次官からも御答弁がありましたように、私どもといたしましては臨時工よりも常用工ということが、雇用形態としては一番望ましいということで、今日まで事業主方々にはできるだけやるということでお願いもして来ておりますけれども、やはり企業主それぞれの都合によつて、それ相当の理由もあることと思いますから、必ずしも臨時工がいけないということも労働省としては言いにくい、私は言えない問題だ、かように考えております。今野委員は二箇月だけで解雇された人のみを頭に入れられて、そのことのみで御議論なさつておられますけれども、二箇月で解雇されないでまた続いて行く人もありましよう。結局六箇月続けば一般失業探険の適用を受けるのであります。またかりに二箇月で解雇されましても、その者がまた再就職の機会を得まして、それが六箇月続けば、当然に被保険者資格はつくのであります。そういうようなことで、ただ二箇月で解雇された者のみをとらえて全般を言われることは、ちよつといかがかと考えております。すなわち先般もお答え申し上げましたように、世界各国の例から申しましても、大体六箇月の程度失業保険を受けるための資格は適当じやないかと考えております。しかしそういう点は十分研究はいたしますけれども、現在の制度からいいましてちよつとそれは無理じやないだろうか、こういうことを申し上げておつたわけでございます。  それから臨時工でとりつぱなしだから、保険料が非常に余つたのじやないかというお尋ねでありますが、御承知のように臨時工が多少なりともふえて参りましたのは、朝鮮動乱以後の問題であります。朝鮮動乱までに実は相当積立金というものができたのでありまして、臨時工が多くなつたから積立金が百二十億になつた、こういうふうには私ども考えていないのであります。  それから範囲を縮小するのではないかという話でありますが、私どもといたしましては現行法範囲を縮小するという考えではなくて、現行法のもとにおいて保険料を適正にしようということでありますので、範囲を縮少する、規模を縮小するということでこの保険料引下げようという考えは毛頭ないのであります。
  11. 今野武雄

    今野委員 ただいまの御答弁は、ほんとう官僚独善言つていいか何と言つていいかわからない。というのは、私は気の毒な人を基準にして話しているのですが、大体失業保険というものはだれを対象としているか、そういう失業した人を救うためにできているのじやないですか。だからわれわれはこの問題を扱うときに、やはりそういう失業者立場に立つてこの問題を論ずるということは、当然の話たと思うのです。そういう人が一人でも二人でもこういうことから漏れて気の毒な思いをする、そしてどうにもならないで犯罪や何かを犯さなければならないようなことにならないためにやるので、それをそういう立場に立つてはいけないということであつては、一体何のために労働省があるのかわからなくなつてしまう。これははなはだ官僚独善だとぼくは言つていいと思う。しかもそういうことが例外的であれば別でありますが、例外的ではない、非常に多いということです。政府としては常用を奨励しているというのですけれども、実際の職安の窓口においては、それと反対の現象が非常に多い、その証拠にはあそこの求職申込書に、いろいろ技能や何かの書入れもあります。ところがそれを書き入れても、実際に手帳をくれるときには何の技能もない者として手帳をくれている。どこへでも行つて聞いてごらんなさい。それが普通の状態です。ちやんと労働者技能を生かして適正な場所にはめるということをしないで、どんな技能がある者でも、道路作業をやらせ、あるいはその他のことをやらせる。このように人間の経済としても実に不経済きわまることをやり、非人道きわまることをやつている。賃金の問題などについても、三鷹の職安労働課では、民間から労働者求人者が参りまして、賃金を幾らくらいにしたらいいでしようと言うと、一番最低の線で教える、こういうような苦情が労働者から出ているのでありますが、そのようなことも非常に形式的であり、官僚的であり、不親切であるということになるわけであります。こういう点から言えば、今言われたこととはまつたく正反対のことが実際には行われているということです。しかも私が問題にするのは、今後失業者がどんどんふえる、そしてそれが季節的に雇われる。六箇月雇われる例もあると言つたけれどもさつき申した通り特需といつても去年の親子爆弾などは、たいてい二、三箇月の契約です。初めから全部そういう契約になつているから、どうにもならない。そういうことが現実にたくさんあるわけです。しかもそういうことに対して、もうこれはしかたがないのだというのなら、役所はいらないわけだ。何のために国民が税金を拂つて労働省をやらしておるか、この点がさつぱりわからなくなるわけです。こういうような点から見ても、また社会正義の点から見ても、ほんとう労働省がその義務を果していないと考えざるを得ないわけです。今後インド不況ヨーロツパ不況、それから先日の東京新聞などによりますと、モーレーという有名な評論家が、アメリカにおいてもそういう不況のおそれがあるということさえいわれております。こういう際に、日本にすでに現われているあの操業短縮や、あるいは鉄鋼業における操業短縮のおそれもある。このようなどんどん襲つて来る不況の波に対して、一体どう対処するつもりか。この方策がさつぱりない。そしてこの間も申しました通り、電通とか建設とかいう役所の場合には、それを警察予備隊にまわすということで実際は勧誘している。こういう点から見ると、失業者を出して、戦争の準備をするというか、警察予備隊募集難を緩和する、そして再軍備をどんどんやつて行く、憲法蹂躪をやつて行く、このために失業者を不安定な状態に置いて行く、こういう政策としかわれわれは判断ができない。そういう点について政府としてはもつと国民に納得させる答弁ができそうなものだ。それをやつてもらいたいというのです。
  12. 溝口三郎

    溝口政府委員 ただいま御質問のありました今回の保険料率引下げにつきましては、これは一般保険の方の料率を引下げることにいたしたのであります。これは先ほど申しましたように、立案当時考えたよりもだんだんに給付を受ける者の数が少くなつて来た。二十六年の末には失業者が四十五、六万でありましたが、それ以前は三十万人台であります。それに対して保険給付を受ける方々は二十二、三万人くらいであつたのであります。今後において失業が非常にふえるという御意見で、それの例として、現在紡績操短を三月から三箇月やつている、人員も一割五、六分から二割くらい過剰になつている、それもみな整理人員に入るのではないかというようにもお話がありましたが、この前にも申しましたように、会社側といたしましてもできるだけ失業者を出したくない、新規採用の方は控え目にしても、有給帰休を勧めるなり、自発的にやめて行くという方はやめてもらうという方法をとつているので、全部の者が四割操短をやると、それに伴つて失業するとは私ども考えておりませんし、また今後できるだけ失業程度を少くするというように、経営者側と協力してやつて行く所存でございます。なお三箇月の操短をやつたあと、第二次をやるのじやないかというお話を承りましたが、第二次をやるかやらぬかということについては、私どもまだはつきりした話を聞いていないのであります。一応三箇月の操短をやるについて労働問題をどうするかということは、お互いに真剣に考えておるのであります。なお将来において貿易も少くなつて来るのじやないか、輸出の方が少くなつて来ると非常に失業がふえて来るのじやないかというお話でありますが、お説の通り外国においても景気が少し行き詰まつているということでございますが、今後これがだんだんに行き詰まつてしまつて失業者が二十五年の夏時分の五、六十万というようになるかどうかというようなことは将来のことでありまして、はつきりした見通しはだれもつかないと思いますが、私どもといたしましては大体失業状態というものは、二十六年の下半期よりもそうふえはしないと思つております。しかも二十六年度におきましては、平均しまして約十億くらいの給付を毎月やつていたのであります。今度保険料を下げましても、大体十一億五、六千万円くらいの保険金を持つておるのでありますから、失業状態に一進一退はありましても、これで十分にやつて行けると考えております。なお日用の労務者の失業したものは一番気の毒なのでありまして、お説の通りできるだけそういう方々失業に対しましては、生活の安定を考えて行くことは私ども当然と考えておりますが、現在の保険制度建前から、日用の方の保険一般保険とは経理が全然別になつております。一般の方は給付額がだんだん少くなつておりますが、日用保険の方は毎月四、五千万円くらいの徴収のところ、五、六千万円から八、九千万円くらい毎月拂つております。このままで参りますと二十六年度末にも赤字が二億万円程度出るような見通しでありまして、非常にきゆうくつになつておりますので、現在といたしましては、これの方を拡大するということも財政上非常に困難でございますが、ぜひ将来におきましてはこういう方々生活の安定をでき得るだけはかるように、政府としては努力をいたしたいと思います。現在の状態はさようなことになつておりますので、御了承を願います。
  13. 今野武雄

    今野委員 どうもいつまでたつても話が根本的に食い違うわけです。第一に、不況の影響はないだろうと思うというような、非常に楽観的な推測に立つて労働行政をやつておられるということが明らかになつたわけです。先ほど保険給付者が少くなつたということですが、私の周囲の失業者を見渡してみますと、いずれも六箇月の給付期間が切れて、路頭に迷つている。しかもそのうちのごく一部分だけが日雇いなり、あるいは臨時工になつているが、それに対しては保険給付というものはほとんどなされていないというのが現状です。今、日雇い労働者のことについて、保険給付掛金よりもはるかに超過しているというお話でしたが、これはけさ労働省で私が聞いて来たところでは、あべこべです。余つているというお話で、非常に食い違いがある。  もう一つは先ほどの臨時工でありますが、臨時工などは現に日雇い扱いをされている。だから一箇月かそこらでどんどん契約を更新して、雇い入れる場合にこれを日雇い扱つて、その保険金はどつちで来られるか明らかでない。いずれも六箇月未満で契約を解除される者、つまり首切られる者が、日雇い手帳を渡されているのです。そうすると日雇い手帳を渡されているところを見ると、はたしてそれまで日雇いの分を拂つておるかどうかというと、私の聞いておる例では、一般のものを拂つておる。しかも日雇いの中から給付を受けておる、こういうような例があるわけであります。こういうふうにすれば普通の日雇い労働者です。これはいろいろ聞いてみますと、例の待期期間というものがあるので、ほとんどもつていない。それで臨時工の方にそうやつて拂えば、日雇い会計がそんなによけい出るということも推測できる。それできよう調べに行つたのです。そういうような会計の上の紊乱というものも、われわれとしては突きとめてみなければなりません。ともかくそういう疑いが十分ある。そういう上でのことだろうと私ども考えざるを得ないわけであります。そういう点について、そういうような失業保険全体の問題、あるいは失業者全体の見込み、こういうような問題については、今までのお話では政府としては確たるものを何も持つていない。いいかげんにやつて、現在就労している労働者だけを目ざして、保険料金引下げということをやつて、これの目的である失業者に対してのあたたかい気持というものは一つもない、こういうふうに考えざるを得ないわけです。これはお答えいただいてもいただかないでも、私としてはもう問答は盡きたと思うのですけれども、その点についてなおあればお答え願いたいと思います。
  14. 溝口三郎

    溝口政府委員 ただいま今野さんからお話がありましたが、労働省としては、将来失業者がどのくらい出るか、非常に甘く考えておるんじやないか、こういうような御指摘でございます。私ども決して甘く考えておるわけではないのでございまして、失業問題について、将来どうすればいいかということでは、常に頭を悩ましておるのでございますが、一応二十七年度の全般の予算の上から申しましても、貿易の上から申しましても、現在程度以上そうたくさんに失業者がふえるとは考えていないのでございます。従つて先ほど申しましたように、三十五、六万から四十万程度という二十六年度の下半期の情勢を続けて行くのじやないかというふうに考えておるのであります。  なおこの際つけ加えて申し上げたいのでございますが、先ほども申し上げましたように、失業対策ということにつきまして、御承知失業対策事業も七十六億かあるのでございますが、これは公共事業等でどうしても吸収し切れない、そうして求人開拓等をやりましてもなおかつ就労ができないというようなものは、やむを得ず失業対策の方にこれを吸収させようということであつたのでございます。公共事業は、私役人をやつておりまして、終戰直後に非常にたくさんの失業者ができるので、復員の工員や軍人方をどうすればいいかということから、農林省においては緊急開拓を始めまして、約百万戸の移民をしようというような制度もとつたのでございます。そのときに初めて日本に公共事業というものを実は入れたのでございます。終戰直後に非常に多くの失業対策をしようというので、公共事業を全国的にやつた。これは土木、建設、開拓、土地改良、すべてのものを公共事業という名前にいたしまして、それは失業対策を根本にしようというので、ここ二、三年、公共事業には必ず失業者を優先して入れるというようなことで、私はその当時農林省の関係をやつていたのでございますが、農村としましては非常にむつかしい問題もあるが、とにかく失業者を優先的に入れなくてはいかぬという方針でやつて来たのでございます。その後失業対策事業というのができて、公共事業に対しましては、農業方面では所要の労務者の一割五分、都市計画等は四割、河川は一割から三割を優先して失業者を入れるということになつた。それでも足りないものは、失業対策事業で、簡易な土木建築事業をやるというような経過をとつてつたのでありますが、二十七年度におきましては、公共事業においては、本年度に比べて約三割増の事業費が計上されておるのでございまして、現在公共事業で七十五、六万人くらいの労務者、うち一割五、六分が失業者を吸収しておるのであります。来年度においては、これが労務者といたしましては八十八万程度に上ると思いますが、その一割五、六分は失業者を優先して入れるのだ。どうしても足りないものは失業対策がある。それでも背負い切れないのは、やむを得ず失業保險で最小限度の生活の安定をはかつて行きたいという、一貫した方針を持つておるのでございます。さよう御了承願います。
  15. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいま今野委員の御質問の中で、一つお答え申し上げておきますが、臨時工の二箇月の雇用期間の者が、一般の保險金を納めて、解雇されたあとには日雇い失業保險として給付を受けておる。非常に紊乱しておるじやないかというお尋ねであります。御承知のように現在の失業保險法建前は、日雇い失業保險は別建になつておりまして、一箇月未満のものは日雇い失業保險の適用を受けますけれども、それ以上のものは全部一般失業保險の適用を受けるのでありまして、その者が解雇されたからといつて、にわかに日雇い失業保險の給付を受けるということは、法制上できないのでありまして、おそらく事実上もそういうことはないとかたく考えております。
  16. 島田末信

    島田委員長 今野君の質疑中、非常に誤解を招きやすいと思うので、なお私から一言お尋ねしたいが、日雇い労務者が保險金を受取る場合、当然日雇い労務者としての保險料を支拂つておるものと私は信ずるのですが、その事実に対して何か御答弁をしておいていただきたいと思います。
  17. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 もしその者が解雇されましたあとに、日雇い失業保險としての保險給付を受けているならば、それは当然一般日雇い失業保險の印紙による保險料を納めているのじやないか、私はさように考えております。一般保險料を納めているものならば、私はそういうことはないと考えております。
  18. 今野武雄

    今野委員 その点は、現場では非常に争いの種なんです。つまりこの訴えによりますと、解雇の五日前ごろに、あなたの失業保險は日雇い失業保險でよいですね。こういうことを雇い主から言われるわけです。それで解雇されたときに初めて失業保險手帳を與えられて、そこでべたべた印紙を一ぺんに張られるわけです。それも張つてくれないことが非常に多い。二、三のものの具体的な名前をあげてみますと、新郊建設、これは鉄道の工事です。それから小佐見組、これは都営住宅の建築など、公共事業であります。それから斎田組とか、こういうようなところでは印紙を張つてくれません。そうして一月に小佐見組では、延べ二十名の印紙を張つてくれません。そうして労働者があとになつてそういうことを聞いて現場に尋ねて行つて、交渉した末やつと張つてもらう、こういうような始末なんです。これはたまたま、そういうことがあるということを聞いて尋ねて行つてつてもらつたからあるのですけれども、そうでないことさえあるのです。こういうような非常に紊乱した状態であつて、それに対して職安労働課その他が少しも監督してくれないから、監督をしてくれということを言つて来ているのです。かような実情があるくらいなのですから、その紊乱状態は、本省の方でつかまえてないとすれば、一体どの程度であるか、私らにも全体の姿がちよつと想像つかないのです。こういうことが実際に実情としてあるということ、これはもうはつきりしていただかなければならぬ。それからさつき次官が言われた点ですが、やはりこういう政府の、今の何とかなるというところは私どももわかるのです。それは行政協定にも、駐留軍の労務要求は優先的に扱わなければならないということがありますから、そうすると今後日本の再軍備あるいは朝鮮戦争の拡大とか、そういう問題がどんどん出て来れば、ますますもつてそういう要求がたくさんある。そうするとそれはいやでもおうでも先にどんどんやらなければならないから、そういうものを勘定に入れれば、なるほど失業者は減るということになるかもしれませんけれども、実際にはそれでは人問としての生活の安定というものは得られない。非常に世の中に漂うような、きよう行つて二、三箇月働いて、そのあとはわからない、何の保障もない、こういう状態を繰返し繰返しやつているという、そういう非常に浮浪的な状態でもつて、その生活が保障されない。そういう形で失業者がないと言われるのでは、これはもう何をか言わんやというところなんですけれども、そういう点から見ると、今までのお言葉でに、どうしたつて労働者としては納得できないと思う。
  19. 溝口三郎

    溝口政府委員 ただいま今野さんからの御質問、誤解があると困りますから、一言申し上げておきたいと思います。将来駐留軍の労務者につきましては、行政協定に優先権があるのだというりふうにお話がありましたが、これはさようなことは行政協定にないのでございます。それは電気、ガスという公益事業とか、公共の役務については、駐留軍やその家族等が優先して使用する権利があるということになつておりますが、労務関係におきましては、第十二條において駐留軍の労務は日本政府が援助するのだということになつておるのでございまして、優先的にこれをぜひ出さなくちやいかぬということはないのでありますから、その点を申し上げておきたいと思います。
  20. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 日雇い失業保險の点についてお答え申し上げます。先ほどのお尋ねと多少違いまして、解雇まぎわになつてべたべた印紙を張つて日雇い失業保険給付をもらうということでございますが、そのときになつてべたべた保險料の印紙を張るということは、望ましいことではありません。もしそういうことがありますならば、私どもといたしましては嚴重に監督をいたしたい、かように考えております。
  21. 島田末信

    島田委員長 青野武一君。
  22. 青野武一

    ○青野委員 私は直接保險料に関係したことを少し持つておりましたが、時間の関係で一点だけお尋ねしたいと思います。それは別の労働委員会で資料に基いて御質問する予定にしてございますので、ただ例に引くだけです。大体繊維産業あたりでも、将来相当の整理が行われる。大体四割程度操短が指令せられておることを新聞紙を通じて知つておりますが、それとあわせて一部の化学工業とか、あるいは造船産業あたりについても、次々に給料の不拂い、遅拂いという傾向が出て参りまして、おそらく五月ごろになると、もう少しそういう傾向が大きくなつて来るのではないか。いろいろ資料に基いて今研究はしておるのですが、それによつて会社工場が破産だ、閉鎖だということになると、今のように楽観的な考え方いろいろな方策を労働省が立てて行きますと、何箇月か後にはまた相当失業者の群がふえて来るのではないか、こういうことを考えるのですが、基本的な失業対策に対して、もう少ししつかりした労働省としての見通しを持つておられるかということを最初にお尋ねしたいと思います。
  23. 溝口三郎

    溝口政府委員 青野さんから、将来の失業に対してはつきしりした見通しを立ててやつておるのかという御質問でございますが、これは私が先ほど今野さんにも申し上げましたように、雇用状況としては現在よりもそう下まわつて行くことはない。そうして失業問題についても、将来そうよけいな失業というものは出て来ない。楽観は許しませんけれども、大体二十六年度下半期の見通し保険経済を立ててやればまず大丈夫だということで、今の私らの案を出した次第であります。さように御承知を願いたいと思います。
  24. 青野武一

    ○青野委員 十五日に失業保險法の改正について労働委員会がございましたそうですが、ちようど私は衆議院の代表の一人に入りまして、十一日から昨日までの日程で北海道の地震災害の視察に参つておりましたので、その内容の点はよく知りません。しかし行くところで私どもが陳情を受けましたのは、被害が想像より非常に大きいということであります。これはまた特別な方法によつて何らか急速に援護対策が決定すると思いますが、地方自治体の関係者が一番困つているのは、たとえば漁民の諸君が三百も五百も、その村だけで漁船が全部津波にさらわれた。命の綱にしているたこつぼがなくなつた。それから網が全部だめになつた。その統計は、私は全部名刺の裏に陳情の内容を書いて持つて来ておるのですが、至るところで困つておるのです。というて被害が大きいのですから、小さな町や村でも五十万円とか百万円とか、無理な金を一応出して応急的な救済はやつておりますが、家はこわれてしまつた、漁船はなくなつた、漁具はとられてしまう。そうしてそつくり津波に、この浜中村の——これは非常に歯舞、色丹に近いところでありますが、霧多布の方は全壊流出が七百六十五で、ニメートルくらいのがやつて来て、家も家財道具も、漁船も全部持つて行かれてしまつた。見渡す限り一尺五寸くらいの厚さで疊五疊敷、八疊敷、大きいのは二十八疊敷というような氷が、海岸から津波と一緒に押し寄せて参りましたものですから、もう一たまりもない。そういうことで一番困つておるのは、裸になつた諸君をいつまでもお寺に収容して遊ばせておくという資力もありませんし、国家としてもそれだけのことはしていただけない、急場の間に合わないので、さしあたり跡片づけをするとか、ひつくり返つた家の整理をするとか、亀裂の生じた道路を修理するとかいうような失業救済事業を急速にしたいのであるけれども、財政的に逼迫しておる小さい市町村では実際やつてくれない。このままで行けばどうにもこうにもならないところに追い込まれてしまうのです。ですから被害を受けた罹災民はもとより、そこの村会議員とか町会議員とか理事者にいたしましても手のつけようがない、もうさじを投げておるのです。わずかばかりの義捐金を少しずつ割当てても焼石に水です。こういう天災による十勝沖地震の災害によつて丸裸になつておる諸君を、緊急に失業対策事業を起して救済して行く方針について、政府側としては具体的にどういうことをやつて行くのか。地方自治体に対する具体的指導方針というものは相当範囲にまたがつております。釧路、十勝、目高、この三地方の広範囲にわたつておりますので、やはり失業救済事業と言つても金額的には限りがございませんが、今困つておるところの、につちもさつちもつかない、自治体もどうすることもできないというところには、やはり国家が何らかの方針を立てて失業救済事業をやらせなければ、解決の方法はないと思います。これはどこへ参りましても関係者がほんとうに涙を浮かべて、何とかしてくれ、どうにもならない、道にはやはり道の方針があるのだが、急場の間に合わない、われわれもどうすることもできないと言つておるのですが、これらについてひとつ失業対策の具体的な考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  25. 溝口三郎

    溝口政府委員 ただいま青野さんから北海道の震災の詳細な御報告をお伺いいたしましたが、北海道の震災が非常に激甚であつたことは、世間からも関心を持たれておるところであります。政府におきましてもできるだけ救済の措置は講じたいということで、本会議等におきましても所管大臣から報告をいたした通りでございます。それに従つて将来万全の措置をとつて行きたいと考えておるのであります。なおただいま漁船や漁網が流れてしまつた生活の道具が全然ないというようなお話でございましたが、二十六年の秋ルース台風のときに私九州地方に出張いたしたのでございますが、そのときにも各所でそういう問題が起つていたのであります。今までは水産に対する救済の措置はそうたくさんはなかつたのでありますが、ルース台風のときに漁船、漁網等に対して低利資金の融通をする方策をとつたように承知いたしておるのであります。漁艦、漁網等についてはさような措置があるのでございますが、それに従つて救済の方法をとつて行くべきだと考えております。  なおただいま差迫つて失業状態になつておるような者をどうするかという御質問でございますが、いつも震災直後は非常に混乱はしているのでございますが、現地の知事が先に立つて、北海道庁としてもできるだけ措置は講じていると考えているのでございます。なお失業対策事業については、労働省といたしましても知事と御協力してやつて行きたいと考えているのでございます。それらにつきましては北海道知事から具体的に打合せがあれば、できるだけ労働省としても救済の手を震災地に延ばしたいと考えております。さように御了承願いたいと思います。
  26. 青野武一

    ○青野委員 大体の輪郭はわかりましたが、事は重大でございますから、政府関係当局もやはりそれぞれの案をお立てになると思いますが、釧路に参りましても、岸壁がこの地震によつて亀裂して総くずれで、修理はできません。三尺か一間くらいの厚みで新しい岸壁をつくらなければだめだ。また優秀な機械がみな横を向いてしまつている。まるいシャフトなど弓なりに曲がつている。魚市場など、一尺くらいの亀裂でもつて、川の方に曲がつてしまつている。これは解かなければならない。半壊という形式で報告は来ておりますが、そういうものはばらばらに解いて、もう一ぺんやり直さなければならない。農地なども二十里くらい三尺くらいの幅で割れているところがあります。全部水を吸い込んでしまつていて農地になりません。はなはだしいのは牧場あたりで相当馬の被害がある。たくさんの馬が集まつているところに地震があつて、亀裂が生じたその中へ足をつつ込んだ、亀裂が元通りになつて、それで非常に高価な馬が、どちらの足か知りませんが、足のつめを二、三寸の厚みにもいでとられてしまつた。  失業対策事業として道路の修理、学校などの半壊したものを解いて、新しく建てるといつたように仕事を與える、そういう復旧作業には相当範囲に仕事があるのであります。そういうふうに仕事を與えないと、限りある地方の財政であり、道庁といたしましてもあまり数が多いのでどうすることもできない。義捐金にしてもどうせ一時しのぎである。今政府に協議する用意があつても、労働省としては天災地における緊急失業対策はまだ具体的にははつきりしていない、従つて救済事業に対して各地方町村あたりは具体的に案をつくつておけといつたように、やはり人心を安定させるためには早く手を打たないと、何をしてくれるのか見当がつかない。歯舞、色丹方面、南樺太から艦砲射撃を受けるのではないかという危惧もある。今度は火災という観念が強かつたので、防火訓練が非常に役立つてたいへん被害が少かつた、この点私ども非常に感心して帰つたのであります。新聞紙上には現われておりませんが、現地に行つて調べて来ると、被害を受けない人もやはり不安な気持になつておる。その不安な気持を解消するには、何としても早く救済の手を延ばさねばならぬ。こうするのだ、ああするのだというよりも、早く具体的に手を打たないと、町村の代表者諸君は進退がきわまつている。それで道あたりでは真剣になつておりますが、何といつても当最高幹部は東京に出て関係各省まわりをし、いろいろな陳情もしておりますので、留守がちになつておる。それから地方の町にいたしましても、村にいたしましても、やはり札幌に出て行く、あるいは支庁に出て行く。そこで結局救済事業というものは一応お留守の形になつて来ておる傾向も私は見て来ておるのです。今からそういう具体的な対策を立てて協議するということは、われわれ了解できますが、現地の諸君は了解できないと思います。だからやはり一つの方針をはつきりきめて、政府の方針の決定次第に道庁を通じ、各支庁を通じて、政府はこういう援護策を持つておるのだ、特に失業対策事業についてはこういう考え方を持つておる、しかししばらくがまんしてくれといつたふうなはつきりした線を一応打出して、不安な人心をやはり安定させなければならぬと思う。  具体的にいろいろ御質問したいこともありますが、時間の関係もございまするし、また適当な労働委員会のときにまとめて御質問をしたいと思いますので、きようはその程度ですが、そういうことで急速にやつていただきたい。私もキジア台風、ジェーン台風、宮城県あるいは福島県の水害にいたしましても、約二百六十一年応りの今市を中心とする地震災害にしても、当時災害対策委員をしておりましたので、たいがい全国に行つて見ました。しかし今度は時期が悪いのです。災害の金額は百億程度ですけれども。この悲惨な状態は、今までの災害とは比較にならない状態です。そういう点について急速にそういつた協議を進めて、具体的な対策を早く決定してもらつて、現地側と連絡を十分とつて進めていただきたいと私は考えております。
  27. 溝口三郎

    溝口政府委員 ただいま青野委員からお話通り、すみやかに災害復旧の具体策を立つて、人心の安定を期さなければいかぬ、しかも現在北海道では内地と違つて雪の中で罹災者の方々が非常に困つておられるというお話もありました。私どもできるだけ震災の復旧につきましては、政府は一丸となつて救済の手を延ばすべきだというふうに、将来努力いたしたいと考えております。  なお災害復旧につきましては、先ほど御指摘の通り、岸壁等も半くずれになつておるものがある。それをこわされたのをそのまま復旧したのでは、また将来災害を起すのではないかという点でございますが、これは建設省、農林省等におきましても、従来災害復旧は原形復旧を本旨といたしたのでありますが、それではさいの河原になつてだめだということで、一昨年からでございますか、改良工事をやつてもいいのだということに法律の改正をいたしたのでございます、現在におきましては復旧だけでなく、将来恒久的にこわれないようなものをこしらえようという方針でやつておるのでございます。  なお国費の負担のものは、これは当然全額国費でやりますが、地方費の負担のものにおきましては、建設省、農林省関係におきましても、できるだけ高率の補助金に直すということで、目下農林省関係でも八割程度まで補助金を出すというような法案を、国会に提出しておるような次第であるのでございます。学校の復旧等につきましても、これは当然復旧をやることになります。  とにかく復旧の計画を立てることは、震災があつたら、すぐその翌日計画が立つというわけには行かないようでございまして、従来の例でも、書類ができまして、そうして復旧の補助金なり交付金の出るのは、三箇月くらいはかかるのではないかと考えるのでございます。従来の例から言いましても、その間にはさしあたり必要な経費は起債等で、特別に融資するのだというような方法をとつておるのでございます。従来と同様もしくはそれ以上にも、政府としてはできるだけの救済の手を延ばして行きたいと考えておるのでございます。なお災害等におきましては、災害のあつたものは、復旧について政府は国費を出すなり、補助金を出すという法律に慕いて行つておるのでありますから、災害のあつたものは、復旧は当然できることになつておるのでございます。  なおそれに関連いたしまして、失業対策事業等が現地で必要だということになりますれば、先ほど申しましたように、北海道知事とお打合せいたしましてできるだけの失業対策事業をそちらへまわして、少くとも政府はできるだけ最善の努力を盡す用意があるんだということで、復興に立ち上つていただくように、地方の方々を指導していただくように、私からもお願いをいたしたいと思います。
  28. 島田末信

    島田委員長 ただいま議題になつております失業保険法の一部を改正する法律案につきましては、この程度にて質疑を打切りたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 島田末信

    島田委員長 御異議なしと認め、質疑を打切ることといたします。  それではこの際午後一時二十分まで休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後二時十三分開議
  30. 島田末信

    島田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより失業保險法の一部を改正する法律案を議題として討論に入ります。討論は通告順によりこれを許します。船越弘君。
  31. 船越弘

    ○船越委員 私は自由党を代表いたしまして、失業保険法の一部を改正する法律案について、簡単に賛成の意を表したいと思います。  この改正案は、第一の目的は、失業保險の積立金が二十五年度末において百十二億円の多きに達しておるし、二十六年度におきましても相当額の積立金ができる予想が立つておるのであります。こういうときに、この法律案におきましては約二割の減額をしよう。すなわち二十七億円の労使双方の利益になるように法律を改正しよう、こういうのが目的の第一点であり、第二の目的は、国税徴収法の規定に準じまして、従来の遅滞金の免除事由を拡大しよう、こういう意味合いで出ておるのでございます。こういう意味合いにおきまして、私はこの改正案は、労使双方に非常に大きな利益をもたらすものである、こういう見地から賛成をいたしておるわけでございます。簡単にこの法律案につきまして賛成の意を表した次第であります。
  32. 島田末信

  33. 前田種男

    前田(種)委員 私は日本社会党を代表いたしましてただいま審議しております案件に対して二、三の希望を付して賛意を表したいと思います。もちろん今も御意見がありましたように、失業保險料金の二割値下げという点でございますから、この面につきましては労使双方とも負担の軽減でございますから、だれしも異存はないと考えます。ただ問題は、一昨年の朝鮮動乱以来今日まで、ああいう不測な事変のために思わない経済的な——ある面では恵まれた状態にあつたわけです。しかしもう朝鮮事変も終息に近に状態になりましたし、二十七年度、二十八年度の日本経済の将来を見通した場合に、必ずしも過去一年間の実績そのままを将来に当てはめるわけには参らぬという点が予測できます。特に最近のマーカツト声明によりますと、結局アメリカの援助の問題あるいは見返り資金等につきましても、政府がいろいろ見込んでおりました見解とアメリカ本国の方針との間には、相当開きがあるように見受けられます。その結果はおそらく日本経済相当大きな影響を及ぼすものなりと私は見ておるのです。そういたしますと、おそらく二十七年上半期あるいは下半期から二十八年にかけまして、失業状態がさらに心配せなければならないような状態になりはしないかという点に懸念いたしますので、こういう点に対するところの政府の責任が十分確保されまして善処していただきたいという意が第一点でございます。  それから第二点は、労働省の下部の全国の組織を見て参りますと、いろいろな点で、予算等に制約されておる点もございますが、どうも不十分の組織の上に立つた行政事務が行われております。私たちは今日の職安等の内容あるいは建物あるいは人員等から行きましても、もつと労働大衆に対して親切なサービスのできるような状態にならなくてはならぬと思います。これは労働省が発足いたしまして日も浅い関係上、そういう末端の組織が十分でないという点も考えられますが、私はこういう面に対して一段と政府努力いたしまして、直接労働大衆に接する面において、もつと十分なるサービスのできるような配慮をこの際お願い申し上げたいと思います。  その次には、失業の対象がいろいろな点でかわつて参りましてある意味ではしわ寄せになつて来ておる面が——従来の失業保險が対象になつて参りました対象と、今日失業問題を対象にする場合の対象とが、いろいろな点でかわつて来ている面も考えられるのです。新しい意味におけるところの失業対策というものは、もつと広汎に政府当局の新しい対策を希望しておきたいと考えます。  その次には、本案にありますところの滞納の緩和の問題でございますが、これは国税徴收法その他の関係もございますが、こういう緩和した法律に改正いたしますことによつて、悪質な面におきましては、あるいは料金の納付が非常に成績が悪いという結果になるおそれもありますので、こういう点等につきましては、さらに一段と努力をしていただきたいという点等を申し上げまして、今一時的に失業対策の全体の問題が下火になつておるような感でありますが、これは決して長い将来こういういい状態が続くはずはないと思いますので、そういう面に対して失業対策全体に対する政府の方針を十分確立してやつてもらいたいということを強く要望いたしまして、本案に賛成する次第であります。
  34. 島田末信

  35. 今野武雄

    今野委員 日本共産党は、この法案に対して反対でございます。掛金を安くするのは、労使双方の利益であるというふうに申されますが、こういうような討論を聞いて、現在路頭に迷つて苦しんでおる失業者は、はたしてどういう気持を持つかということを考えますならば、私どもとしては反対をせざるを得ない。また臨時工などにいたしましても失業保險の恩典にも浴しないで、掛金ばかりとられておるというような状況からして、非常な不満を持つております。そういうような状況から百五十二億というような金が余つておるというのははたしてどういう状態で余つておるのか、この点について質疑をいたしましたが、非常に明瞭を欠くのであります。私どもとして調べたところでは、昨年一月から十二月までの実績を見ましても、一般の保險掛金は百四十八億円に達しておる。それに対して支拂いはわずかに百二十一億円であります。かようなありさまですと、これは一般民間会社としても十分もうかつて行くわけであります。これでは政府の補助、つまり国民が税金を出して、そうして社会保障としてこれをやるというような意味はまつたくない状態である。なぜそうなつておるか、それは保険金給付者の数が減つておる、つまり失業者が減つておるからだと申しますが、決してそうではありません。失業保險は六箇月で切れてしまう。その切れた人たち路頭に迷つて至るところにいる。その人たち臨時工になる。たとえば特需を受けた会社などの臨時工に入りますと、その特需を受けた一月とか三月という期間だけ区切つて雇われる。解雇されるときには手当も何もやらないということに判こを押して臨時工になる。その臨時工はやはりちやんと保険掛金をとられておる。そしてやめるときには、六箇月に達しないから資格がないといつて保険金を支拂われない、あるいはまた途中でもつてにわかに日雇いの方にまわつて日雇い失業保険手帳をもらつて、やめるまぎわになつて印紙をべたべた張られて、そうしてわずか十七日間、わずかな金をもらう、こういうようなことで済まされてしまつておる場合にが非常に多いのでございます。そういうことに対する血の出るような訴えが私どものところにも参つております。そういうことが非常にたくさんある。われわれは百五十二億の金が余つたのは何ゆえかという、その原因を確かめないで——本来この失業保險というのは、失業した気の毒な人のためにやつておるのに、そういう人のために拡大しようとせず、あるいは社外工、請負師の労務のもとに働いておつて失業保險の適用を受けていない者がたくさんある。そういう人たちのことを考えないで、現に雇用されて保險料をとられておる労働者の負担と、会社の負担とをわずかに削るということでもつて事を済ませようというのは、これははなはだ冷酷なやり方である、元来この問題としては、当然この保險金支拂の範囲をぐつと拡大する、適用の範囲をぐつと拡大する、そうしてそれの基金としてこれは使うべきだ、われわれはそう思う。それからさらに政府に対して、今後の失業見通し、たとえば今度政府紡績操業短縮を勧告しておりますが、これによつて二万人の失業者が生ずるおそれがある。それに対して政府では、三箇月の期間有給帰休というものをやるのだから、それでもつてあとはまた雇うのだからいいと言いますけれども、しかし現在のヨーロッパの不況状態、あるいはインドの大不景気、それからアメリカなんかにおいても現われておるそういろ徴候、そういうことを照し合せてみますると、また東南アジアなんかの状態を見てみましても、こういう状態はずつと永続される危険がある。それに対する政府当局、労働省当局の対策を聞いてもはつきりしない。そうならないように一生懸命やるつもりですと言つておるが、これでは何にもならない。のみならず、軍需工場やあるいは軍事基地などに雇われて行く者がありますが、これが大部分臨時工である。しかるに現在の臨時工については、労働省ではまだお調べがないそうであります。まだはつきり数字が出ておらないということでありますが、われわれの当つたところでは、大部分臨時工である大企業がたくさんある。そうしてみると、ごく大体の勘では今の日本の労働者の半分近くが、臨時工になつておるのではないかと思われる。そういうたくさんの者が保險の問題についてあいまいにされて、これが余つておるからといつてこうやる。こういうことが今後もだんだん多くなつて行くわけです。そうして結局この費用を削るということは、失業保険全体のわくも将来縮めて行こうという第一歩になるわけです。こうやつて考えてみると、これはまさに最近はやつておる吉田内閣の逆コースの一つとして、自由党内閣の逆コースの一つとして、最も冷酷なものの一つである。そういう意味においてわれわれとして断固反対せざるを得ない。
  36. 島田末信

    島田委員長 青野武一君。
  37. 青野武一

    ○青野委員 私はただいま上程せられております失業保險法の一部を改正する法律案に対しまして、社会党第二十三控室を代表いたしまして、本日の政策審議会における最終的な決定に従いまして、三つの希望條項を付して本案に賛成するものであります。  第三十條の第一項中の百分の二を千分の十六に改める、もとよりこれは異議はございません。滞納処分に関する條項をつけ加えたことにつきましても、私たちといたしましては反対の意思はないのであります。ただ具体的に申し上げますと長くなりますから、簡単に、希望條項を三つ付して私どもは賛成するのでございます。失業保險の給付期間、支給期間が今六箇月になつておりますのを、八箇月ぐらいに延長してはどうかということと、第二は給付金額を六〇%を八〇%に上げてはどうか、それと失業保險の適用資格者を拡大する方針を労働属に将来とつてもらいたい。この三つの希望條項を付しまして、簡単ではございますが、失業保險法の一部を改正する法律案に賛成をするものであります。
  38. 島田末信

    島田委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決をいたします。本法律案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  39. 島田末信

    島田委員長 起立多数。よつて法律案は原案の通り可決すべきものと決しました。(拍手)  なお本法律案に関する委員会の報告書につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 島田末信

    島田委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  本日はこれにて散会し、次会は追つて公報をもつてお知らせいたします。     午後二時二十九分散会