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1952-02-22 第13回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十二日(金曜日)     午前十一時十分開議  出席分科員    主査 苫米地英俊君       江花  靜君    角田 幸吉君       中曽根康弘君    藤田 義光君       林  百郎君    兼務       横田甚太郎君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         国 務 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         総理府事務官         (大臣官房会計         課長)     斎藤 常勝君         警察予備隊本部         長官      増原 恵吉君         警察予備隊本部         経理局長    窪谷 直光君         国家地方警察本         部警視正         (総務部長)  加藤 陽三君         刑 政 長 官 草鹿浅之介君         検     事         (法務検務局         長)      岡原 昌男君     ————————————— 二月二十二日  第四分科所属員横田甚太郎君が本分科兼務とな  つた。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算内閣総理府、  法務府及び外務省所管  昭和二十七年度特別会計予算総理府及び法務  府所管     —————————————
  2. 苫米地英俊

    ○苫米地主査 これより予算委員会第二分科会を開きます。  昨日に引続きまして、予備隊関係予算と留保せられた質疑を行いますが、本日は午後より予算委員会がありますから、時間の関係上、質疑は各人三十分程度に限ることにいたしたいと存じますので、御了承願います。それでは質疑の通告がありますので、これを許します。横田甚太郎君。
  3. 横田甚太郎

    横田委員 予備隊ができたということについては、戰争反対し続けて来ました共産党といたしまして遺憾に思うのです。なぜかと申しますと、日本目標並びに世界目標というものは、予備隊のようなものを必要としないような政治的條件をつくる方向に向つて行かなくちやならぬことだと私は思うのです。それから、そうではなくて、逆な主張としてどこの国が膨張する場合においても軍備が必要だ、軍隊のない、備えのないような国はない、こういう意見もあるわけです。この二つ意見、いわゆる軍備を持たないという意見と、どうしても軍隊を持たねばならぬという意見、この後者の意見の場合から、さらにもし一歩を讓つて論議するとして、どうしても国の備えのために、守りのために兵隊がいるというのであるならば、われわれのわかり得ないのは、天皇制軍隊の時代に、昭和二十年には八百万の兵力を持つて、いろいろな飛行機から軍艦まで持つてつた。その軍隊を持つてつても、日本の国は世界に対しまして、武器をもつてしては、あるいは軍備をもつてしては日本を守り得ないというような立場に置かれておると私は思うのです。これはマツカーサー自身さえそれを表明した言明さへあつたと思う。ところが最近になりまして、全部許しましたところで三十一万、来年度の目標で十一万人の警察予備隊を持たし、この警察予備隊を持たすことにおいて、日本政治経済のまずさから来るところ混乱を切り抜けようとする吉田政府意図に対して、予備隊長官である増原氏はどういうような心構えをもつて臨んでおられるか、承りたいと思います。
  4. 増原恵吉

    増原政府委員 御質問趣旨大臣お答えすることが適当なことであると思いますが、特に私に御質問でありますから、お答えをいたします。御承知のように警察予備隊は、国内治安を維持する目的をもつて警察予備隊令に示された機構を持つて生れたわけであります。私ども予備隊の衝に当つております者は、国内治安維持のために編成を整え、訓練をいたしておるという段階でございます。
  5. 横田甚太郎

    横田委員 警察予備隊の方から見られますと、再軍備に対しまして、先頭に立つて最も反対しているのは共産党のように思われる。従いまして日本共産党は、日本を弱体にすることのみに非常に急先鋒である、こういうふうに誤解されている点があると思うのです。ところ占領下議会におきまして新憲法が採用されたときに、日本の国を守る自衛権の問題について、一番初めに疑問を提示したのは野坂參三氏でありました。共産党こそは、日本人民のために、日本世界に害をせずに、世界に好まれつつ発展する行き方を常に考えている党であつて、今長官が言われましたように、警察予備隊武器が、外というより、内の混乱に対して備えられておらないものであるならば、われわれの考慮する点がある。ところがこれは明らかに——議会論争から見て参りますれば、海外に派遣するかしないかということが中心問題になつておりますが、これは海外に派遣することはつけたりでありまして、海外に派遣をして外に敵を求めるということよりも、吉田政権の独占しておる利権を守るために、アメリカ日本でかせぐところの金を保護するための武力団をこしらえる、私はここに意図が向けられておると思うのです。そういうような意味において、やがて人民衝突するであろうところ軍隊は、必ずその軍隊敗北によつてのみその国の平和が来ておると私は思うのです。だからこういう意味合いにおきまして、今度の警察予備隊は、一切合財外に向つて訓練が課されておらずに、中の人民自国政治というものに対して、民族自決権からその政治の仕方をきめようとすることに対する彈圧方向に向つていると思うのですが、こういうようなことに対して、増原長官はどういうふうな考えをお持ちですか。
  6. 増原恵吉

    増原政府委員 警察予備隊は、申し上げた通り国内治安を維持する、国内の秩序を維持するわけであります。これが特に人民彈圧するとか何とかいうような趣旨目的は、予備隊令においてわれわれに示されておりません。私どもはさようなことは毛頭考えないで、国内治安を維持するという與えられた目的のために努力をいたしておるわけであります。
  7. 横田甚太郎

    横田委員 しかしその治安をそういうような軍隊をもつて治めねばならぬという歴史的な段階を見たときに、それは必ず敗北をして、治安が治まらなくなつている。私は歴史を見てこういうふうに思うのです。その点におけるお考えはどうでしようか。簡單に申しますと、政治経済のやり方が悪いから治安乱れが来るのであつて政治経済の悪さから来る治安乱れであるならば、政治経済それ自体を直して行かなければならぬと思う。だから、増原長官に伺いたいのは、現在の政治経済の中に治安を乱すような何か萌芽があるのではなかろうか、かつて天皇制軍隊さえが、日本の農村問題の解決のために、これではどうしてもいけない、何とかしなくてはならぬというあせりが、ちようど外に向いたと思うのです。だから治安乱れ治安乱れと一言に言われますけれども、今回言われますところ治安乱れなるものは、日本政治経済日本民族を満足させ得ない点から来ておるのではないかと思いますが、その点におけるお考えはどうですか。
  8. 増原恵吉

    増原政府委員 治安を維持する力というものの限度はもとより存するわけであります。警察を強化すればいかなる治安も守れるという建前のものとは、われわれも考えておりません。もとより政治経済運行が正常に行われるという基礎の上に、警察力というものの治安維持組織機構が生れるわけであります。政治経済が大いに乱れて、なおかつ警察力をもつて治安を完全に守るということは、非常に困難であると思います。われわれは政治経済運行の上にある治安維持力としての予備隊編成訓練をしておるわけであります。
  9. 横田甚太郎

    横田委員 そういたしますと、日本政治経済運行がうまく行つているかいないかということについて、予備隊の隊長並びに予備隊員は、いろいろ考える自由を持つているのですか、持つていないのですか。
  10. 増原恵吉

    増原政府委員 われわれの現在與えられておりますところ任務は、国内治安維持ということでありまして、政治経済についての直接の責任、あるいはこれについていろいろ意見を提出するというふうな任務は與えられておりません。
  11. 横田甚太郎

    横田委員 昔からの名将といわれ、あるいは大政治家といわれる人は、兵を使わずに国を治めるということに重点を置いておりますね。たとえばいかなる兵法書を見ましたところで、一つの城下を占領する場合に、その城をとり、その町をとる場合に、これを必ずしもつぶさずにとることにおいて、自分占領下にし、新しい戰力にするということすらいわれております。だから、戰わずしてとるのが最上だといわれております。ところ予備隊が武を練るとともにその練つた武を使わなくてもいいような方向に行くような政治を望んでおられるか、どうか。現在はどうもそれとは逆な方向に行つておるのではなかろうかと思うのですが、その点を伺いたい。
  12. 増原恵吉

    増原政府委員 政治を批判することはわれわれの任務ではありませんから、御答弁を控えます。私ども予備隊を預かりましてこれを運営する上に、予備隊の力が国内治安維持のために発動されないことを最も念願といたすことは、申し上げてよろしいと思います。
  13. 横田甚太郎

    横田委員 発動されないことを念願とされますが、発動されるような場合もあるということは、一応お考えになるのですか。それでもし発動されるような場合があるとすれば、もう一回明確に伺いたいのですが、どういう場合においてであり、その想定敵と申しますか、相手方になるのは一体どういうものであるかということを承りたい。
  14. 増原恵吉

    増原政府委員 予備隊編成運営をいたします以上、絶対これが出動しないものだという前提はもとよりとつておりません。出動する場合もあり得るわけであります。出動する場合、その状態の想定ということは困難であると、抽象的に申し上げるほかないと思いますが、相当大規模騒擾暴動擾乱等の行為がある場合というふうに申し上げるほかはないと思います。
  15. 横田甚太郎

    横田委員 その大規模騒擾が起り、その主体になるもの、その集まりになるものは、これは一体どういうふうな性格を持つて、どういうふうな要求を持つて現われて来るかということについてお考えになつたことがありますか。
  16. 増原恵吉

    増原政府委員 そういう問題についていろいろの考慮はいたしまするが、どういうものだと申し上げることは適当と考えませんから、差控えたいと思います。
  17. 横田甚太郎

    横田委員 その考慮しておられる中に、何か発表できるようなものがあるかないかということを承りたい。私の聞きたいのはそういうふうな点でございまして、これが全人民と対立しないものであるならば、われわれ人民の利益を代表するものは問題にしないんです。しかし人民と対立した場合に、いかに武裝しておる人たちでも、必ず敗北の運命をたどるのです。これは明らかなんです。過去のあらゆる戰争というものは、軍事的な侵略に対しまして大衆が立ち上つて、これをやめさしたものである。あらゆる戰争の終局というものは、侵略的な意図が、侵略的な設備が、侵略的な軍備が、侵略的な武裝が、人民大衆力によつて解除されたときにのみ、初めてこれが可能になるのだと私は思うんです。そういう意味から伺いたい。人民と対立するような場合におきまして、必ず予備隊というものが困るような場面ができて来るんじやなかろうかというような立場から、想定敵になるようなもので、お考えになつている種類のものをこの際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  18. 増原恵吉

    増原政府委員 われわれの主たる目的と一応考えられまするものは、相当規模騒擾暴動等であります。これはだれがどうということを特別に考える必要はない。そういう事態が起きた場合にはこれに対して適当な措置をとるということであります。
  19. 横田甚太郎

    横田委員 しかし空気銃一ちよう買うのにも、すずめを目標に買うのであり、おの一ちよう買う場合においても、まきを割りたいという目的のために買うのです。警察予備隊が使つておる兵器も、数ある兵器のうちにおいて選定されたものを使つているんです。そうすると想定敵というものははつきりわかつているはずなんです。だから、私はしつこく聞きますが、あなた方がやがて大規模騒擾が起り、その集まりになるだろうと言つておられるところ性格のものを聞きたいんです。それ以外のことは言葉の羅列であつて必要でないんです。これがはつきり出て来ますと、論争というものが本格的な段階に入つて来るんです。なぜと申しまして、今度現われて来るものは、日本の領土をとるために、あるいは日本の国を外国に売るためにやつているのてはないのでありまして、日本政治経済の形が世界情勢から見て、もつと平和的にやれるところをやらさないものに対しまして、公然と要求して立ち上つたものが、やがてあなたたちの言う騒擾の原因になると思うんです。これはいわゆる警察予備隊との衝突になるのではなく、吉田政権に対するところ衝突であり、アメリカ占領に名をかりて、それが化けた形におけるところ安全保障安全保障政権に対するところ人民反対が、私は政治運動になると思うんです。その場合に警察出動をする、警察予備隊が出て来る、そこで初めて問題になるんです。その安全保障政権人民が敵として闘う過程において、警察予備隊がいらないおせつかいをするから、この雇い兵どもめ、何さらすかという形において衝突になるんです。だからそういうような場合のことを私は限定して聞いているんです。そういうような場合があるかないかということについてあなたのお見通しというものが、一体どんなものかということを伺いたいのです。
  20. 増原恵吉

    増原政府委員 われわれの任務目的は先ほどから繰返しておる通りであります。われわれは騒擾暴動などが起きた場合に出動して適当な措置をする。但し政治行動労働運動、そういうものを弾圧するためにわれわれは置かれておるわけではありません。あくまでも国内治安を維持するために設置をされ、運営をされるものであります。
  21. 横田甚太郎

    横田委員 何も私は政治的な意見を吐けない軍事の技術者であるところ増原さんに質問する意思はなかつたのです。簡單に言えば、私は政治的な論争をしたかつたところが自由党の人たちが時間が余るというものだからやつている、こんなけちな質問をちつともしたくない。私は増原さんにこういうような質問をしておりますと、社会民主主義者になり下るのです。なぜかと申しますと、端的な例が上つております。たとえば日本におきまして、サンフランシスコの平和会議を、これは平和会議でよろしいということも自由です、あるいはこれに対していかぬということも自由です。なぜかと言えば、これは安全保障條約がついておつて、その中にきめられるところ行政協定、あるいは日米合同委員会、あるいは最高の防衛のための何やら会議、こういうものがいろいろ持たれると、こんな行き方のものだつたら、朝日新聞の天声人語さえが疑いを持つているように、これでは独立じやないぞ、占領を燒き直した押しつけだというような考慮も自由なんですね。そうしてこういう行き方で行きますと、どうやら警察予備隊も六万から十一万、十一万から三十一万、三十一万で足らなかつたらつつぱしつて八百万まで行くのではなかろうか。これではかなわぬからわれわれも考えなければならぬ。このごろの社会動き方を見ていると、天皇制というものが再び問題になつて来ておる。吉田内閣のもとにおいてただ一人の文化人であるといわれているところ哲人文相が、国民道徳的中心天皇であると言つておる。天皇が神である間に、われわれは学校で勉強しておつたにもかかわらず、死にに行く飛行機に乗せられて自爆させられた。これではいけないから、徴兵をやらないように、自爆機に乗せないように、徴兵反対運動をしようということも、これは自由であると私は思う。これも増原さんにあとで聞きたい。そういたしますと、徴兵に対しまして反対するところの自由もある。これに対して集まる自由もあります。片一方におきまして再軍備云々と言つております。再軍備運動が許されて、徴兵反対運動が許されない。こうなつて行きますと、国民自身は、憲法によつて保障されている人権尊重のおれの権利は一体何だという形になつて来るのですね。だから実力行使というような形において憲法を守るために一つ運動を起します。そうすると、私もゆうべ澁谷方面新宿方面をまわつて来たのですが、鉄かぶとをかぶつた兵隊さんにひとしい人たち、これはあなたの予備隊でなくて警察予備隊ですが、この人たちがぐるぐるまわつている。何しているかというと、かつて中国が支那といわれまして、外国から侵略を受けておつたとき、その軍隊外国軍隊になり下つて自国人民彈圧したと同じように、人民彈圧のために騒いでいるのですね。そこで私の言いたいのは、徴兵反対運動も自由であり、また再軍備運動するところの自由もある。これは二つつて二つ許されたときに治安乱れがなくなるのです。だから再軍備をやろう、徴兵制度をやろうということになると、人民はそれはいかぬということを言いますね。特に具体的に言いますと、東大の学生が、あるいは名古屋大学の学生がそういうことを言いますね。そうしたときに警察が押えに来ます。しかしこれは警察の大将であるところ大橋さんもまた法の一切の解釈をまかせられているところ木村という、月給取りということをみずから告白しておられるところ法務総裁も、これは月給取りの根性では相手は命がけだから押えることはできないと言つているが、押えることができないで負ける。負けたときに警察予備隊出動する。だからこの点をはつきりしておかないと、これは治安乱れだ、騒擾だといつているときにあなたの部下であるところ人たち——もはやあやつり人形ではない、はつきりつているのです。天皇のもとに動員されて、天皇のもとに殺された、天皇制のもとにおいては考える自由はなかつた。それが一番の欠点であつた。だからこれは考えなければならぬ。増原長官吉田さんのもとでいい月給をもらつているが、おれの給料はわずかだ、死んだところが、人生一巻を六万円で売るようなことでは困る。こういうような考えを持つようになつて来ると思う。だから私はあなたに聞きたい。その想定敵にされているものに対して、こういうような形において出動を要請されるような條件に置かれた場合に、あなたは喜んでこれに応じますか。応じませんかということを聞きたい。
  22. 増原恵吉

    増原政府委員 私ども予備隊令の命ずるところ従つて行動をいたします。出動を命ずる者は総理大臣であります。騒擾暴動等事態であつて、これが現在の国警自治警において措置ができないという場合には、予備隊出動をして措置をするということに相なつております。ただいま御質問趣旨の大部分は適当な関係大臣よりお答えをすべきものであります。私から答弁をいたす限りでないと存じます。
  23. 横田甚太郎

    横田委員 今の答弁は一番正直な告白だと思うんです。だから私は増原さんには質問しないと言うんです。大臣に聞くことであつて増原さんなんかは、前にも言つている通りに、法の命ずるところにおいて動かれるのですから、法律さえかえたら、これは共産党の言うことも聞くし、だれの言うことも聞かなければならぬ立場になるんです。  そこでもう一点事務的なことを聞いておきます。これは簡單でいいのですが、たとえば警察予備隊がそういう形で出ますね。勢い人が出て来たときにはなぐり合いになる。警察予備隊武器を持つておる。きようの毎日新聞を見ると、警察衝突している相手方も相当の武器を持つておるようにいわれておる。そうすると、そこにおいてなぐり合いが武器の使い合いになる。そういうような場合に、戰いに臨んでは戰闘に臨んでは、けんかに臨んでは、きめ手になるような武器を持つているものが一番いいのではなかろうかと私は思う。     〔主査退席江花主査代理着席〕 そういたしますと、日本警察予備隊で使うような武器は、日本警察予備隊が大体自給自足したいような念願を持つて来られるのではなかろうかと思うのです。なぜかと申しますと、日本経済の現状から見ると、日本警察予備隊が使つておるようなものは——アメリカから借りるということを言つておりますが、これは大臣が言つておるのであつて日本の工場はアメリカ人が管理しておるが、そこでりつぱに武器ができておる。だから要約いたしまして、警察予備隊で使つているような武器くらいは日本でできますか、できないか、どう思つておられるかということが一つと、もしこれが日本でできると思われるのであつたならば、アメリカから借りずに日本でつくつた方が、警察予備隊としても、治安維持のためであろうが、人民彈圧のためであろうが、この方が心強くやれると思つておられるのではなかろうかという点において、どんなお考えを持つておるか。
  24. 増原恵吉

    増原政府委員 現在のところ米軍の貸與を受けております。将来日本の国で製造をするかどうかということについては、まだ研究が進んでおりません。何とも申し上げかねる次第であります。  非常にこまかいつまらぬ問題ですが、さつきお話の中に多少ごくつまらぬ問題で誤解の点があるようですから申し上げておきますと、現在警察予備隊最下級の人の俸給は五千百円であります。それから六万円というのは特別退職金でありまして、不幸事故のために隊員がなくなりました場合には、そういう場合の退職金に関する法令は別にありまして、これは俸給によつて積算をされる、例の千日分というようなものが基礎になります。これは少くとも二十万円見当にはなるかと思いますが、六万円というのは特別退職金で、二年勤めれば六万円上げる。事故があつて死んだ場合は一箇月でも二箇月でも六万円は全部上げるというだけのことでありまして、六万円がそういう死亡退職金ではないわけであります。
  25. 横田甚太郎

    横田委員 それはいいことを聞いた。六万円ではなしに一番多い人が二十万円もらえるというのですね。そこで私はあなたに言いたいのですが、もらえる間は部下のためによけいにもらつてつてもらいたい、そうしないと前の太平洋戰争のときに大御心というわれわれの心とは別の化けもの心を持つた朕がみなを煽動して戰争をやつたんです。そのときには、靖国神社行つたならば死んだのではない、生きているのだ、いつでも会えるはずだつた。白衣の人があの楽器をひつさげて町で十円札をねらつて、人に迷惑がられておるが、あれは自分から戰争行つたんではない。あのときこそは日の丸を自分の家の前に張られて勇士として行つた。今は勇士でない。警察予備隊は初めは失業者の皮をむいたもの、失業者に服を着せたものというかうに見られていた。だから、今の間にとれるものはうんと部下のためにとつておいてやるという規定はつきりおつくりにならない限りにおきまして、靖国神社に入つても文句も言えませんから、お燈明代しかもらえないというような政治問題になるのです。そこでいろいろこまかい規定というものは事務官僚というものはよくわかるのですから、どのくらいもらつておられるのかということを聞かしていただきたい。
  26. 増原恵吉

    増原政府委員 大体今入りたての人が五千百円でありますが、その人が公務死亡をいたしましたとすると、現在のところでは、今早急に計算をしたのですけれども、これは最下級の人でありますが、二十七万五千円くらいのものが一応出て参ります。この二十七万五千円の中にはただいまの六万円の死亡賜金というのも入れてあります。
  27. 横田甚太郎

    横田委員 そういたしますと二十七万五千円が最高であつて、これは一時にもらつてあとはどうなるのですか。
  28. 増原恵吉

    増原政府委員 現在の制度はこれだけでありまして、あとはない制度になつております。
  29. 横田甚太郎

    横田委員 もし死んだ場合は、これでは非常に気の毒であるから、何とか手を打たなければならないというお考えはありましようか、ありませんでしようか。
  30. 増原恵吉

    増原政府委員 現在の制度一般官吏の例によつておるわけでありまして、予備隊というものの職務柄に関して、こういう死亡賜金なり職退賜金なりについて研究してみたいというふうには考えております。
  31. 横田甚太郎

    横田委員 そういうふうな点をうんと聞きたいのですが、政治的な問題になりましようから聞きません。私が敵とするのは吉田総理でありまして、それからだんだん下つたところ大臣級とけんかしたい。あとの方に対して質問するのはいやです。時間が余つているからやつておるのですから、いやなことは逃げていただきたい。  私はこう思うのです。警察予備隊、これは普通の団体ではなく、特別な団体である。そうするとこの団体自体が、前にも申しましたように治安乱れた場合にすぐに出動できる、そのとき、法律とか憲法の施行されている状態を云々するようこなつては邪魔になる、働けぬ。だから、この警察予備隊なら警察予備隊だけを守つておかなければならないという性格を持つて来ると思う。ちようどこれは昭和十一年に陸軍に対しましておかしな文書をまいてはいけないというような不穏文書取締法というものができた。こういう形において警察予備隊の特殊性を守る意味二おいても、何か特別の命令なり法律なりが必要になつて来るような段階が来るのではなかろうかと私は思う。その点はどうでしよう。
  32. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいまその辺については付とも御答弁を申し上ぐべきではありません。
  33. 横田甚太郎

    横田委員 そうすると、警察予備隊がそういう形で行けと言われて行きます。行きましたところが、この間も予算委員会で総理に対する質問のときに問題になつたんですが、相手は騒擾をやつておる、国警を乱しておる、けしからぬやつだといつて予備隊が行く。行きましたところが、私が今申しましたように、相手側は増原さんとけんかしているのではない、隊長とけんかしているのではない、また隊員とけんかしているのではない、おれは吉田さん、大橋さん等日米安保政権とけんかしているのだ、この大橋さんは人に命令できるほど潔白な人ではない、国会においてさえ二重煙突で煙が出て臭い。吉田のごときは、パンパン政権といわれておるほど売国化しておる人じやないか。こういうような宣伝をいたしますね。こういう宣伝をいたしましたときに、警察予備隊が動揺する。こうなつて来るのです。そうなつて行きますと、どうしても軍隊というものは敵に対して戰意を持たなければなりません。昔でありましたら戰陣訓というものですね。生きて虜囚のはずかしめを受けることなかれとか、敵に走りたる者は死刑に処するとか、うしろを見せるのはいかぬ、前に行け、敵前に妬んだ者は名誉であつて、うしろに行つて死んだら不名誉になると強要されていた。その意味合いにおきまして、警察予備隊というものは、何か治安混乱する者に対したときに、特別の規定をこしらえるようになつて来る。こういう情勢に追い込まれて来るような危險性があるかないかということに対して、どういうお考えをお持ちですか。
  34. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいまのところ戰陣訓のようなものをつくつておりません。早急につくるという考えも現在のところは持つておりません。御質問趣旨が少しわかりかねたようにも思いましたが、何か予備隊について特別の法規をつくるということは、——現在は予備隊は御承知のように、予備隊令と言われておるもので、これはいわゆるポ勅で出ておりますので、これを法律に書きかえるという問題は研究中であります。その際に服務の問題等について法律を書くということも研究中であります。特に今お話のあつたようなことについて、現在研究しておるということはありません。
  35. 横田甚太郎

    横田委員 今改進党の先生も来られましたから、簡單に五、六問やつておきます。陸軍刑法に叛乱の罪というのがありましたね。この叛乱の罪というようなものに対しましては、長官としては一体どんなお考えをお持ちですか。
  36. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいまのところ、まだ御答弁を申し上げる段階になつておりません。
  37. 横田甚太郎

    横田委員 これはあなたの考えですよ。あなたの考えはどんなものでしようかということをお聞きしておるのです。わかりにくかつたら読みますが、わかつておりますね、條文は……。
  38. 増原恵吉

    増原政府委員 明確には記憶しておりません。
  39. 横田甚太郎

    横田委員 陸軍刑法の第一章、叛乱の罪、これは二十五條に「党ヲ結ヒ兵器ヲ執リ反乱ヲ為シタル者ハ左ノ区別ニ従テ処断ス 一 首魁ハ死刑ニ処ス 二 謀議二参與シ又ハ群衆ノ指揮ヲ為シタル者ハ死刑」第二章は擅権の罪、第三十五條に「司令官外国ニ対シ故ナク戰闘ヲ開始シタルトキハ死刑ニ処ス」第三章辱職の罪、第四十條、「司令官其ノ盡スヘキ所ヲ盡サスシテ敵ニ降リ又ハ要塞ヲ敵ニ委シタルトキハ死刑ニ処ス」第四十一條「司令官野戰ノ時ニ在リテ隊兵ヲ率ヰ敵ニ降リタルトキハ其ノ盡スヘキ所ヲ盡シタル場合ト離職六月以下ノ禁錮ニ処ス」第四十二條「司令官敵前ニ於テ其ノ盡スヘキ所ヲ盡サスシテ隊兵ヲ率ヰ逃避シタルトキハ死刑ニ処ス」第四十七條「哨兵故ナク任地ヲ離レタルトキハ左ノ区別ニ従テ処断ス 一 敵前ナルトキハ死刑ニ処ス」第四章抗命の罪、第五十七條上官ノ命令二反抗シ又ハ之ニ服従セサル者ハ左ノ区別ニ従テ処断ス 一 敵前ナルトキハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ禁錮ニ処ス」第七章、逃亡の罪、第七十五條「故ナク職役ヲ離レ又ハ職役ニ就カサル者ハ左ノ区別ニ従テ処断ス 一 敵前ナルトキハ死刑、無期若ハ五年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」第七十七條「敵ニ奔リタル者ハ死刑又ハ無期ノ懲役若ハ禁錮ニ処ス」第八章軍用物損壊の罪、第七十九條「陸軍ノ工場、船舶、航空機、戰車、戰闘ノ川用供スル建造物、汽車、電車、自動車若ハ橋梁又ハ陸軍ノ砥用ニ供スル物ヲ貯蔵スル倉庫ヲ燒燬シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ懲役ニ処ス」こういうふうなものに対してどういうお考えを持つておられますか。
  40. 増原恵吉

    増原政府委員 警察予備隊は、国内治安を維持するための警察力を補完するという目的でつくられております。ただいまお読み上げの陸軍刑法のように、敵と戰争をするという建前でありませんから、陸軍刑法のようなものはただいま考えておりません。
  41. 横田甚太郎

    横田委員 それじや警察予備隊員が退職いたしますときには、随時随所いつでもできるのですか。
  42. 増原恵吉

    増原政府委員 これは現在大部分の人が一応二年という期限で入つております。二年の期限内は正当な理由がなければみだりにはやめさせない。気が向かないからやめるというような、簡單な理由ではやめてもらつては困るというような建前をとつております。しかしこれは現在法律上の建前ではございません。しかしこれを法律上の建前にするためには、もとより国会の審議を受けてやるようになると思われます。
  43. 横田甚太郎

    横田委員 正当なる理由でない場合には、みだりにやめられないのですね。その正当なる理由というものは一体どういう場合に正当なる理由として成り立つのですか。
  44. 増原恵吉

    増原政府委員 入隊後の事情の変化等によつて、その人が家に帰つて生計を維持することに従事しなければ、家族の生活が困難であるというふうな場合、あるいは病気その他の理由によつて予備隊の勤務に服することが困難であるというふうな場合、その他ただちに予想されなくても、やむを得ない事情というものは、その際に審議をするということであります。     〔江花主査代理退席、主査着席〕
  45. 苫米地英俊

    ○苫米地主査 ちよつと主査から申し上げますが、今増原長官は所用があつて行かなければならぬところがあるので、あと質問をまわしていただけませんか。
  46. 横田甚太郎

    横田委員 それでは二問だけ簡單に……。その場合に私の聞きたいのは、みだりに退職することなくの、みだりを正当化するために何かありますね。第十一條に「一等警察士補等の警察官が、家族の保護又は扶養その他やむを得ない事情を具して退職を願い出たときは、任命権者は、その者の任用期間満了前においても、これを退職させることができる。」という規則があります。第二項には「前項の場合、警察官は、その家族の居住地を管轄する市区町村長から、その者が退職しなければ、家族の保護又は扶養ができない旨又はその他やむを得ない家庭の事情がある旨の証明書の交付を得て、これを任命権者に提出しなければならない。」これは正当の中に入るのですね。その場合に私が聞いておきたいことは、警察予備隊員が任地に着きまして考えまして、どうも自分のやつておることに煩悶を持つ場合がありますね。工場などにおきましてもそうでありますが、旋盤工をやつてつても仕上げ工がいい、そのときには経済的な條件さえほうつてしまつてもよければ、職業の自由は持つております。そうすると、任地に行つて二十六万余りもらつてもあかん、やめた方がいいということで退職を願い出た場合には、みだりにということをどういうふうに解釈して、どういうふうに適用されるかということだけを承つておきたいと思います。
  47. 増原恵吉

    増原政府委員 そういう場合、ただ来てみたらどうも気分が合わぬからという程度では、現在のところはおおむね正当なる理由とは認めておりません。しかしやめたいならば、やめられる道はあるわけでございます。論旨罷免、懲戒による免職というふうな形になることが普通であります。
  48. 横田甚太郎

    横田委員 そうすると、その場合にいろいろな形の違つたところの罰といいますか、懲戒を受ける気さえあれば、危険に際してやめようと思えばやめられるのですね。
  49. 増原恵吉

    増原政府委員 現在はそうであります。
  50. 藤田義光

    ○藤田委員 きわめて技術的な問題を二問だけお伺いしたいと思います。まず第一点は、現在の予備隊編成アメリカの歩兵師団を使節といたしております。アメリカの歩兵師団は戰車連隊を含めまして、一万八千八百名をもつてワン・デイビジヨンをつくつております。ところ日本予備隊は約一万五千名と記憶いたしております。国内治定維持の建前から見ましても、どうしても高度の戰力と申しますか、高度の防衛力を発揮するためには、現在最も進歩せるアメリカのいわゆるインフアントリーを模範としている以上、現在の一個師団の数をいま少しく増員する必要はないかというふうに考えますが、この点に関しまして増原長官のお考えを伺つておきたいのであります。
  51. 増原恵吉

    増原政府委員 現在のところ、ただいまの編成をもつておおむね可なりというふうに考えております。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 きのうちよつとお尋ねして、途中で質問が入つたために抜いたのでありますが、増原長官に対する御質問大橋さんもひとつ聞いておいてもらいたい。私の質問警察予備隊制度というものは、ああいういきさつで誕生して、そうして今日までこういうふうになつて来た。いろいろの運営の過程において、日本側としては困ることがずいぶんあるだろう。特に実質的に、実力のある予備隊をつくるためには、対アメリカとの関係において相当困ることもあるだろうし、その点は長官も国務相もずいぶん御苦心なすつているだろう。そこでどこが一番困つているかという点を国会として知りたい。そういうことで御質問したわけです。そこで増原長官が最初に答えられた問題が顧問という問題です。顧問がどの程度発言権を持つているかということが、この間の質問であります。そこで独立いたしますと、この顧問というのは法律的には何ら関係はないはずです。武器を貸してもらつているくらいの問題であつて、契約しているわけでもなし何でもない。独立したあとは、ああいうアメリカの顧問と日本予備隊との関係はどういうふうになるのか。新しく契約でもするのか。その点はいかがでございますか。これはきのう増原さんにお尋ねしたが、増原さんの所管外の問題のように思いますから、これはまず大橋さんにお伺いいたします。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 予備隊が誕生いたしまして以来、アメリカとの関係で困つたことはないかという御質問でございますが、私は困つたことはないのでありまして、米軍の援助によりまして予想外に教育等もうまく参つておる。むしろアメリカとの関係においては非常に有益であつた考える面が多いのでございまして、困つたという経験はございません。  それから次に講和発効後における顧問との関係はどうなるかという点でございますが、これはわれわれとしてなお顧問の協力を要望する点が多々ございますので、引続き顧問をお願いするようにいたしたいと思います。ただその場合の法律関係はどうなるかという御質問でございますが、この法律関係につきましては、なお研究中であります。
  54. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 前半の御答弁については、あとでいろいろ御質問申し上げますが、その法律関係を研究中というのはどういう意味でございますか。契約を結ぶのか、われわれがアメリカとの間に軍事協定をやるとか、あるいはその他の関係があれば顧問団ということも出て来る。しかしそういうことも実際はないのだから、行政協定によつてきめるのか、行政協定の中にもおそらく予備隊に関するものはきめられないはずだ。そうすると顧問との関係をどう律するのか、これは国会としても重大な問題であるからお尋ねするのです。研究中では逃げられない問題だと思います。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 研究中でございます。
  56. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 あなたは研究中という御答弁をなすつたけれども、それではどういうふうにやるように研究中ですか。ただ研究中というのでは不誠意な答弁です。一体契約を結ぶのか、あるいはほかに別個の協定を結ぶのか、それ以外にはないわけです。昔大学や高等学校にあつた傭外人教師みたいにやるのか。そうでなくて別個の協定をして政府間できめるのか。そういう問題は一番予備隊の士気に関する問題でありますので、これを明確に御答弁を願いたいと思います。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 予備隊といたしましては、いかなる形としても顧問の協力が得られるようにいたしたい、こう考えておるわけでございます。いかなる法律関係において得られるか、たとえば個人に対して契約を結ぶか、あるいは政府間において何か話合いによつて日本側が顧問の援助を受けるか、その点のところを研究いたしておるわけでございます。
  58. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その答弁は非常に不誠意な答弁です。大橋さんがそれを今まで知らなかつたということ以外の何ものでもない。これは四月か五月に独立すればすぐ出る問題であつて、その内容を具体的にどうするかというくらいなことは、当然知つていなければならない問題である。個人的にやるか、あるいはどういうふうにやるか研究中だという、そんな不明確な、あいまいな答弁をしてもわれわれは納得できない。もう少し明快にやつていただきたい。傭外人教師みたいに個人的な契約でやるのがいいのか、あるいはそうでなくて、一般的な包括的な協定でやるのがいいのか、これは予備隊の士気の根本に関する問題でありますから、もう少し明確に親切に御答弁を願いたい。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 重大な問題でございますから、愼重に研究をいたしておるわけであります。研究中の事柄について研究中である、こう申すのは別に私が答弁として誠意がないとか、そういう問題ではないのでありまして、これは事実をありのまま申し上げておるわけでございます。
  60. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういう不誠意なことを言うのなら、私はこのまま永久に質問を続けます。飯を食わぬでも質問を続けます。研究中だから研究中というのなら、大臣が来なくても、属僚が来て研究中だと言えばいいのです。予備隊の士気がなぜこのように衰えているかといえば、外人の顧問団の問題が大きな原因である。あなたはアメリカとの関係で困つたことはないと言うけれども、あなたはイエス・マンだから困つたことがないのです。あなたは予備隊員の気持を知つていますか、予備隊の幹部の気持を知つていますか。増原さんは隣りにいるから遠慮して言わぬだろうけれども、第一に越中島の庁舎は何ですか。アメリカのものである。そのアメリカのものの中に、こそこそこちらが貸してもらつて居候をしておるじやないか。そんなことでなぜ困つたことがないと言うのですか。七万五千人の隊員を率いる本部が、日本国のものでない、アメリカに貸しておるものに居候というようなことで、困つたことがないと言うのは、あなた自体が植民地根性になつておる吉田内閣の典型的な象徴だ。奴隷根性になつておる。それでも困つたことがないのですか、いかがですか。
  61. 大橋武夫

    大橋国務大臣 越中島の庁舎は、これは米側の施設を借り受けていることは事実であります。しかしながら、これは米側の命令によつてつているわけではございません。日本側が自主的に判断いたしまして、米側の好意によつて貸してくれるものを利用することが、予備隊運営上最も適当である、こうわれわれは自主的に判断をいたしまして、あれを本部として使用いたしておるわけであります。
  62. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 実に驚き入つたる御答弁であります。予備隊の本部というのは、全国七万五千人の予備隊の心臓部として頼んでいるところであります。その心臓部として頼んでいるところが、しかも昔は日本のものであつた。それに居候しているという状態で、どうしてこれが予備隊の士気をそこなわないと言えます。かえつてこれはアメリカは居候さしておるのならいい。アメリカの指揮者やあるいは顧問団というものが、そこへ居候しているというのなら、話はわかるが、日本におつて日本のものが、しかもその心臓部であり、総司令部であり、中枢部であり、昔でいえば司令官の旗が翻つているところアメリカのものであつてアメリカから借りているというようなことで、どうして予備隊の士気が上りますか。そういう気持が私にはわからない。私に納得の行くように説明していただきたい。
  63. 苫米地英俊

    ○苫米地主査 中曽根君に申し上げますが、増原長官が所用のために急いでおりますから、増原長官に対する質疑がなければ、帰つてもらうことにいたしますが、いかがでありますか。
  64. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 増原さんはもう少しおいで願いたい。大橋さんにはあとでゆつくり質問いたします。大橋さん、今の答弁をしてください。
  65. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは、現在予備隊において越中島の建物に本部を持つておるがために、士気が上らぬということは考えておりません。ただいまの中曽根君のお話は、中曽根君の主観的なお考えとして承つておきます。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今私の考えが主観的なものだとおつしやつたけれども、そのことが主観的であるかどうかはあとでゆつくり申し上げる。  私がこの間善通寺の予備隊を見に行つたら、予備隊の入口に日本語で善通寺の予備隊と書いてない。何と書いてあるかというと、アーチみたいになつてつて予備隊という言葉が英語で書いてある。それが演習しているときの状況を幹部に聞いてみたら、英語で演習中という棒くいをおつ立てて、そこには人を入れない。そうしてアメリカの軍事顧問団と称するやつがそれを監督している。こういう状態で、どうして日本予備隊としての筋金が通るか。どうして国のために働けるかと思う。私はこの間中国の某要人に会つた。蒋介石の軍隊がなぜ負けたかという質問をしたら、彼はいろいろなことを私に答えた中で、こう言つた。それはアメリカの好意的勧告過剰だという。なせかというとアメリカが中国に渡つて来て、お前の部隊は古くさい、近代化してやるというので、金を出して機械化部隊をつくつてつたが、金を出してつくつてつたというので、はしの上げおろしまで顧問団が指揮したという。そのために国民政府軍の中では、あの機械化部隊はアメリカのとらの子だというので、何らの関心がなくなつた。中共軍をおつぱらいに行つて、機械化部隊が中共軍に包囲されると、あれはアメリカのとらの子だというので友軍が応援に行かないから、包囲されてそつくりとられて、それが逆に国民政府軍を攻めて来たために、蒋介石は台湾へ逃げたという。これが中国のなまなましい例だが、日本においてもここに同じことが行われている。予備隊の司令官旗の立つている庁舎がアメリカのものであつて、そこに頭を下げて居候しているという形が、これとどう違いますか。アメリカの顧問団がいるために、英語で予備隊という表札がかかつているのをどう見ますか。訓練中に、英語で標識が立つてつて、向うの連中が見ておつて、どうして士気が上りますか。そんな軍隊は蒋介石の軍隊の二の舞になる。大橋さんがそういう観念でいる限りは、予備隊なんというものは絶対に強いものにならぬ。六百十億円という金を予備隊や保安庁に使つているけれども、これはまるでどろ沼に金を捨てるようなものになつてしまう。こういうものについてはあとで申し上げますが、増原長官にお尋ねいたします。私らが現地の予備隊の視察に行つたときに、彼らの感情を率直に聞くために、上の人は入れないで二等警査ばかり集めて方々中で聞いて来ているが、彼らが訴える問題は何かというとこういう問題です。こういう点について増原長官は上官としていろいろ御考慮なさつていると思いますが、予備隊の士気の上に遺憾の点はありませんか。大橋さんがおつても遠慮する必要はない。国家のためにこれは国会で言うていただきたいと思います。
  67. 増原恵吉

    増原政府委員 警察予備隊は発生のとき以来、非常に急速に七万五千の予備隊をそろえ、そういう事態にふなれの幹部を急速に集めて編成し、訓練をやつたのであります。当時の米日の関係からしても、米軍の顧問の援助を受けるということは適当であると認めて、これに従つたわけであります。しかしながら顧問は命令、指揮をするものではない建前を向うの方でもとつておるわけであります。これは助言、勧告をするものであります。もとよりお互い人間同士がやつておりますことで、建前通りに行かない場合があるいは起るかもしれないし、そういうことを耳にしたこともないではありませんが、建前としては、そのことを顧問団も嚴正に守つてくれて来ておるわけであります。従つてわれわれとしては、予備隊編成及びその訓練については、予備隊の自主的な建前をとり、その指揮官その他の系統において訓練に邁進をするということに努力をいたしておるわけであります。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大分遠慮したような答弁をなさつておるようでありますが、私が現地で予備隊の末端の連中と話したときの印象では、こういうものが非常に精神上の障害になつておるということを知つた。ああいう形で今後とも保安隊がつくられ、あるいは防衛隊がつくられるというならば、これはまつたくどろ沼の中に金を捨てるようなものだ。そこで増原さんにお尋ねします。この保安隊あるいは防衛隊という予備隊と少しばかりニユアンスの違つたものができるについて、今の予備隊員の中にどういうような影響を與えておるか。やめようという人が多くなつておるか、現実の訓練はどういうふうになつておるかという点をお伺いいたしたい。
  69. 増原恵吉

    増原政府委員 予備隊が、保安隊もしくは防衛隊というふうに形を切りかえることについては、私どもは担当大臣からは特別に性格の変更するものではないというふうに承つております。現在その切りかえについて、部隊内の意向を調査をしたことがまだありません。部隊内に保安隊というものの内容をまだ示してないわけでありますので、どういう動揺その他があるかということは、もちろんわからぬのがほんとうではないかと思います。ただいろいろ新聞紙その他において予備隊のことが論議をされる場合に、あるいは海外に派遣されるであろう、あるいは予備役制度を設けるであろう、と、いろいろのことが論議をされておりまするので、そういうことについていろいろ心配をしておる向きがあることは了承をしておるのでありますが、保安隊になるからということについての動揺、あるいはそれについての意見というものは、まだわれわれの方にもわからない状態であります。
  70. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 予備隊長官にお尋ねいたしますが、昨日藤田君の御質問に対しまして、高級幕僚学校をおつくりになるということを言われました。この高級幕僚学校というものは予備隊だけのものでありますか。それとも海上保安隊も含めた幕僚学校になるのでありましようか。この点はいかがでありましようか。
  71. 増原恵吉

    増原政府委員 昨日申し上げたのは、そういうものについて研究をしているということを申し上げたのでありまして、現在われわれが研究いたしておりますのは、予備隊についてのものであります。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 高級幕僚学校で幕僚を養成なさるということでありますが、そうするとどういう専門技術をお授けになる学校をつくるのですか。われわれの想像ではおそらく実際に効果のあるものをおつくりになると思うのでありますが、その科目ですね。昔の軍隊でいえば兵科というものがありましたが、どういう科目について專門的な幕僚をおつくりになるのか、大体の御構想がありましたならばお知らせ願いたい。
  73. 増原恵吉

    増原政府委員 内容、構想について申し上げる段階にまだ至つておりません。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この予備隊あるいは保安隊というものは、国内治安を維持するというのが非常に重要な項目になつておりますが、国内治安を維持するという限りには、情報をとるということがやはり相当重大なことであります。ここに横田君がおるけれども、特に共産党関係の情報をとるということは相当重要なことであります、きのうあたりもああいう暴動を起しておるのでありますから……。とにかく情報をとらずに実力の発動ということはできない。今特審がやつているような情報網があるし、国警がやつているような情報網もあるが、しかしそういう他人の情報をあてにしては有力な活動はできないわけであります。そうすると、予備隊自体が相当深い情報網を持つて活動し、それに実力を加えるということにならざるを得ぬと思うのであります。予備隊にはS2というものがあつて、そういう関係を担当しているそうでありますが、それはどの程度に機能を発揮させるべくお考えになつておりますか。国警や特審との関係はどういうふうな関係になるか、お尋ねいたします。
  75. 増原恵吉

    増原政府委員 現在部隊にありまする調査部というものが、訳せばS2というような系統のものでありますが、これは部隊の出動に関連をするいろいろの調査をやるということであります。もとより必要な情報は、特審なり国警なり自治警等からもこれを收集して参るということであります。しかしまだ十分に人も訓練されておらない段階であり、組織も十分にできていない段階でありまして、予備隊自体における情報の收集ということはまだ行われていない状況であります。
  76. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この予備隊の情報網というものは、考えようによつては相当重要な問題をはらんでおるのであります。昔日本の陸軍は、憲兵を持ちあるいは特務機関を持つてつた。これがあのように警察を圧迫したり、あるいは不祥事件を起したのであります。そういうことはもちろん将来は起らないとは思いますけれども、しかしそういう情報なくして予備隊を発動するということはできない。軍に国警や、あるいは法務府の特審の方の情報に基いて出るというのでは、実際問題として機宜な処置はとれないわけでありますが、そこで、この予備隊の持つている情報活動というものをどの程度に今後拡充して、有効にしながら、しかも一定の限界の中に收めるかということが大きな問題であります。今のような状態ではS2というものはあつても実際はなきに等しい。それでは予備隊としての活動はできないと思われるが、その辺の調整をどういうふうに今後おとりになるか、予備隊長官のただいまの希望なり構想なりをひとつ承りたいと存じます。
  77. 増原恵吉

    増原政府委員 情報の問題は、中曽根議員は特によく御存じだと思いますが、各分科にわかれてそれぞれ自分の都合のよいように情報網を拡充して参ると、彼此扞格を生ずるわけでありまして、現在ある国家機関的なところから得られた情報で済む分はこれを活用して行くということが、われわれとしては第一の段階であると思います。それの足らざるところをわれわれとしての独自の情報をもつて活動をやるということは、これもまた当然必要なことであると思います。現在警察予備隊の持つておりまする国内治安維持任務段階においては、国警あるいは特番等の情報を十分に迅速に得て咀嚼整理するということでも、相当の効果があるわけでありますが、予備隊自体としても、出動に関連する情報を集めるように将来は拡充をして参りたいというふうに考えております。
  78. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 予備隊長官に対する質問は、予備隊長官がお忙しいようでありますからこれで打切ります。あと大橋さんにいろいろ承りたいと思いますが、その前に、法務総裁がおいでになつておりますから、法務総裁にお尋ねいたします。きのうあなたはお留守であつたために聞けなかつたが、二点だけあなたから御答弁をいただきたい。それは戦犯の問題であります。  御承知のように、平和條約第十一條に基きまして行刑ということが日本に委託される形になります。そうなりますと、行刑ということと情状酌量ということは切り離せないわけであります。ところが情状酌量していろいろな減刑措置をやろうということになると、その都度連合国に勧告し、向うの了承を求めなければできないというような形になり、それでは非常に不便であるのみならず、そのうちの一国ですらもが反対すればできないということになります。たとえば三分の一以上務めたら釈放の恩典がありますが、日本政府がそれをやろうとしても、向うがノーと言つたらだめである。そこで行刑ということと、そういう情状酌量、減刑ということは切り離せないわけでありますから、でき得べくんば事前に連合国と話をいたしまして、一般的な包括的な協定をやつてもらつて、そうして減刑や酌量というものに対するある程度の包括的な委任をもらつておくことが、日本政府としてとるべき道だと思うのでありますが、そういうような交渉を連合国の筋とやつたか、あるいはやる意思があるか、やつたとすれば今どういうような状況にあるか、これをお伺いいたしたいと思うのであります。
  79. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ごもつともな御質問考えます。実情を申しますると、大体全刑期の三分の一以上過ぎた者についてはどんどん釈放しております。数日前にも相当数の者が釈放をされました。私としてはなるたけ向うと交渉をして釈放することに努力しております。今の御質問のうちで、今後こちらに刑の執行をまかされて、そうしてその情状によつて向う側に勧告するということについてですが、申すまでもなくこれが一国であればいいのでありますが、相当数の国がありますから、それらにつきましてはできる限り統一した機関でも設けて、そうしてそれと互いに話合いをする。すなわち法律的にいえば、こちらから勧告してその機関で決定をしてもらうというような方式に持つて行きたいと思つて、今交渉中でありますが、まだ決定の段階には行つておりません。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういう御努力をわれわれは非常に多といたしますから、ぜひそれを実現さしていただきたいと思います。そこでそれは独立後の処置でございますね。
  81. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そうです。
  82. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 独立前に何かそういう包括的協定をやつて日本政府に委任してもらう——交渉の相手を一括するという機関をつくるというのではなく、日本政府自体に委任してもらうようにやつたらいいのではないかと思います。これはGHQそのほかの国々にリーダー・シツプをとつてまとめてもらえば、できないことはないと思う。虐殺したとか、刑事犯で悪質な者にはそれはできないと思うのでありますが、それ以外の一般の戰犯については——中にはずいぶん気の毒な者があります。無実の罪で泣いている者が相当あるのであります。従つてそういう者については、包括的委任を日本にしてもらうように事前に協定をするということが大事だと思うが、この点、そういうことをおやりになる意思があるかどうか伺います。
  83. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。もちろん意思はあります。努力いたします。
  84. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それができなかつた場合には、いよいよ包括的な機関を設けて、そうして独立後日本政府が勧告し交渉するということになるのでありますが、それは今お話中のように承つております。向うは大体応ずる気配がありますか。その見通しを伺いたい。
  85. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは何とも断言できませんが、大体この問題に限らず、すべての渉外事項について大幅にまかせるという傾向になりつつあるということだけは申し上げておきます。
  86. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう一つお伺いいたします。独立と同時に国内犯について大赦、恩赦等の減刑が行われるわけでありますが、戰犯についてもきのう御質問いたしましてはつきりしたのでありますけれども、あれは国内犯ではない。系統の違う犯罪であつて、従つて前科にならぬ。しかも待遇は今まで巣鴨でやつておるような待遇をそのまま継続してくれる。またいろいろな減刑や何かの措置も、大体今やつておるようなアメリカ流の減刑の措置をやつてくれる、こういう法律を出してくれるというわけで、われわれも非常に同感でありますが、ただ問題は、国内犯が独立に伴うて大赦、恩赦の減刑が行われるというときに、それらの戰犯についてもそういうことが行われることが実際は望ましいのです。先ほど申し上げましたような悪質な刑事犯については、これは問題があるかもしれませんけれども、それ以外のものについては、何とか連合国に話して、そういうような恩命に浴することが、日本と連合国との国交回復の上に非常に役立つ。この心理は外国にはなかなかわからないと思う。国によつてはそういう大赦制度のある国もあるそうですし、ない国もあるそうです。われわれが知つているところでは、クリスマスにひつかけてやろうということはあるそうですが、独立の大赦については、ないというような空気も聞いております。非常にむずかしい問題だとは思いますけれども、そういうことをやつてもらうことが、実際は日本人にいい影響を與える問題であります。それをぜひ努力をしていただきたい。そういう努力をしていらつしやるか、またその見通しはどうであるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  87. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ごもつともな御質問で、今度独立国家になりまするこの喜びを、もちろんともにわかちたいという考えを持つております。しかし御承知の通り日本の恩赦法は適用にならぬもので、もちろん向うとの了解事項になつておりまするので、その点についても努力しておるつもりであります。しかしその見通しのことについては、今率直に、私がどうなるものかということを申し上げかねることを御了承願いたいと思います。
  88. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この問題について、私は日本政府はそう卑屈になる必要はないと思う。御存じのように平和條約は、ダレスも和解と信頼の條約だと言つておるのです。和解と信頼の條約ならば、あの戰犯の條項など入つたこと自体が変な話です。和解と信頼なら、お互いの言い分を認め合つて、お互いが仲直りするというのだから、お互いは責め合わないという意味ですね。和解と信頼というのは、けんか仲直りをやるというのですから、そうであるならば、戰争犯罪などということについて條約上に明記されるということはあり得ないはずなんです。りくつをいえば……。あるいは在外財産の没收もそうでしよう。そういう意味で、名目と実質は非常に違つておるわけです。しかし向うは大義名分を振りかざしておるのですから、日本政府としても当然そういうふうにやつていいし、客観情勢もそういうふうに流れておるのですから、従つて私は財産や何かの問題は別として、戰犯の問題は、戰後の跡始末の問題として最大の問題なんです。人間の生命に関する問題です。そういう意味木村法務総裁がぜひひとつ連合国と交渉して、断固としてこれを貫徹していただくように、これは御努力をお願いいたします。私はあなたの誠意を信じますから、とやかく、いろいろ御質問申し上げません。しかしこの問題だけは国会議員として正式に発言もし、またやらにやならぬ事柄でありますから、あなたに特にお願い申し上げる次第であります。
  89. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は国会議員たるあなたからそのお言葉が出ることを非常に喜びに感じます。必ずその御趣旨に沿つて努力して参りたいと考えております。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 法務総裁に対する質問は終ります。
  91. 苫米地英俊

    ○苫米地主査 この際法務総裁に対して藤田義光君。
  92. 藤田義光

    ○藤田委員 法務総裁にまず行政機構の問題をお伺いしたいと思います。法務府所管の特別審査局に関しまして、いろいろと新聞にも報道されておりますが、現在の特審局のほかに特別審議委員会というようなものをつくられまして、情報收集と行政処分権をわけるというようなことがいわれておりますが、大体そういう方向に向いつつありますかどうか、お伺いしたいと思います。
  93. 木村篤太郎

    木村国務大臣 特審局と別の機関を併立的に設けるという考えは持つておりません。いずれ近いうちに御審議を願いましようが、暴力的、破壊的行動を主たる目的とする団体に対する行政処分はこれをやらなくちやならぬ、その一つの調査機関を設けるという構想は持つております。しかしそれを特審局と並行して設けるという考えはないのです。特審局がその形にかわつて行くこととなるような構想で参りたいと考えております。
  94. 藤田義光

    ○藤田委員 重大な点でありますので、もう一回お聞きしておきますが、そうしますると法務総裁の下に特別審査委員会のようなものを置きまして、その事務機構として特審局ができるわけでございますか、そういう関係になりますかどうか。
  95. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今の構想では外局と申しますか、内局じやないのです。外局にそれを持つて行きたい、こう考えております。
  96. 藤田義光

    ○藤田委員 どのくらいの増員の御予定でございますか。
  97. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私の構想といたしましては、別に増員は計画しておりません。御承知の通りこういう国家財政のもとでありますから、できる限り人員をふやさずに精鋭主義で行きたい、こう考えております。
  98. 藤田義光

    ○藤田委員 現在の地方の支局はそのままの構成でやつて行きますか。
  99. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これも再検討してみたいと考えております。いろいろ人員配置のことも考えなくちやなりませんから、そのままにしておくかどうかということは、今のところはまだきまつておりません。
  100. 藤田義光

    ○藤田委員 巷間に特審局の機密費の使途に関しまして、いろいろうわさを聞いております。木村さん総裁でございまして、われわれは全面的に信頼いたしておりますが、特審局の機密費というものは、御存じの通り相当厖大な額でございます。どういう方法、またどういう相手に使つておられますか、この際お聞きしておきたい。
  101. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まだ十分な精査は、私は率直に申し上げて、しておりませんが、御承知の通りいろいろ機密を調査するについては、いわゆる報賞費というものがいりますので、大部分はその報賞費の方にまわされておると考えております。また将来も実際第一線に働くそれらの人に使つてもらわなくちやならぬと考えております。
  102. 藤田義光

    ○藤田委員 これは個人的な問題になりましてたいへん恐縮でございますが、私は臨時国会の委員会におきまして、当時の大橋法務総裁にもお伺いしたのでございます。当時の総裁の御答弁によりまして私は了解しておりますが、いまだに国民の中の一部にはこういう誤解があります。現在の特番局長は帝大在学中に新人会のメンバーであつた共産党に入つてつたが、それを脱党したという証拠はいまだに何もない。こういう局長に特審局の事務をまかせることはできぬという人がございますが、法務総裁はどうお考えになつておりますか、この点は、独立国となると同時に、こういうデマが民間にあるということは非常に重大なことでありますので、この際お伺いしたいと思います。
  103. 木村篤太郎

    木村国務大臣 巷間いろいろデマが飛ばされておるようでありまするが、私はこのデマについては相当注意を要するのじやないか、反対的のデマを飛ばす者が相当あると思うのです。私就任以来吉河君といろいろ話合いもし、また彼の行動をよく知つておるのでありますけれども、決してさような心配はないということを私は藤田君にお答えいたしたいと思います。
  104. 藤田義光

    ○藤田委員 木村総裁は、在野時代にその人となりから吉田総理あたりも特にお願いして、政令諮問委員等に就任されたやに記憶いたしております。従いまして法務総裁は吉河局長の人柄を信じておられましても、世間でとやかくの批判がございます。人材雲のごとき法務府内にはたくさん適任者があるじやないか。あるいは今度所管されました国家警察には有能なるその道の体験者がたくさんございます。そういう人の間から、この際機構改革をやりますので、新たに責任者を選びまして、一部にでもこういう批判のある方に遠のいていただきまして、すつきりした形で特審事務を遂行されることが必要じやないかというふうに私は考えますが、もう一度お伺いしたいと思います。
  105. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御意見として承つておきたい、こう考えております。
  106. 藤田義光

    ○藤田委員 いずれこの問題に関しましては、詳細な資料を具しまして、法務総裁に私は公開の席上であらためて御意見を伺う機会をつくりたいと思いますから、御記憶を願いたいと思います。  法務総裁は政令諮問委員時代には、防衛機構治安機構を一緒にしなくてはならぬということを強く提唱されておつたように記憶いたしております。最近の総裁の気持はかわつて来たようでございまするが、このいわゆる予備隊的なものと国家警察法務府、こういうものが一緒になれば、当然非常に強大な権限を持つて来ます。これはそういう事態がなくなりましたので、御意見を聞くことをやめますが、現実に、機構的には分立いたしておりましても、国家警察法務府というものが、同じ人によつて所轄されるとなりますると、非常に権力の濫用の危險があるのじやないかと思います。少くとも木村さんが法務総裁の間はそういうことは想像されませんが、将来この権力がすべて総理に集中されて参りますと、時の政権によつて権力の濫用をされる危險がございまするが、この点に関しまして、木村さんのごとき人物が国警法務府の両方の所轄をやられておる機会に、どういうふうにしたらこういう権力の濫用を阻止できるかということに関します御所信を伺つておきたいと思います。
  107. 木村篤太郎

    木村国務大臣 権力の集中は、あまりに過ぎますると非常に弊害を起すことはごもつともと考えます。そこで法務総裁が御承知の通り検察庁を所轄しておるのでありますが、これは検察庁に関する映りにおいて、申すまでもなく法務総裁の権限というものは多くないのであります。御承知の通り新たな検察庁法前におきまする関係におきましては、司法大臣がすべての検事に対して指揮監督権を持つてつたのであります。これは私はあなたと同意見でありまして、権力集中の過度に過ぎちやいかぬという建前から、検察庁法において、個々の検事に対しては法務総裁は指揮監督しない、検事総長を通じてのみやることになつておる、それで押えております。それで私は今度国警の方面の担当大臣になつたのでありまするが、国警と申しましても、御承知の通りほとんど行政管理だけでありまして、すべての運用管理は国家公安委員の手において行われております。そこで権力の集中はどうも心配ないと考えます、これは将来公安委員というものを廃止して、そうして一本にすると、あるいはあなたの仰せのように権力集中ということになるかもわかりませんが、現在の段階におきましては、ごうもその心配はないということを申し上げておきます。
  108. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいまの御答弁からお伺いしたいのでございますが、公安委員会を廃止するという意見が與党内で相当あるようでございます。あるいは公安委員三人のうちから一人を国務大臣にしなくてはならぬという意見もあるようでございます。この公安委員制度というものは、警察民主化の基盤でございまして、この制度をもし廃止するということになりますると、何のためにこのドラステイツクな改革をやつたかわらぬという結果になるのでありますが、木村総裁の公安委員制度に対する忌憚ない御意見をこの際お伺いしておきたいと思います。
  109. 木村篤太郎

    木村国務大臣 公安委員その人を得ますれば、まことにこれは運用が円満に行くことになります。私の聞く範囲においては、ただいまの国家公安委員は相当協力的で、またりつぱな人たち考えております。何らの磨擦はなくやつておるようでありまするが、露骨に申しますると、各地の市の公安委員のうちには、相当な、何といいますか、いわゆるボスと申しまするか、そういう人たちが間々あつて、うまく運用が行つていないということを聞いております。しかし建前といたしましては、お説のようにこれは民主的な一つの現われでありますから、今ただちにこれを廃止するというようなことは少し行き過ぎではないかと考えております。しかし全般の構想といたしましてどう打つて行くかということは、実は踏切りがつかないのであります。
  110. 藤田義光

    ○藤田委員 非常に微妙な御発言でございまして、木村さんの真意は、将来は廃止の方向というふうに私には聞き取れましたが、そういうふうに了解してよろしゆうございますか。私は市の公安委員等にボスがおるということは、これは制度の本質の問題ではない。要するに人事の問題でございまして、これは枝葉末節の問題でございます。こういう問題によつて、公安委員制度の長所を無視してしまうという制度の改革には反対でございますが、この点はどうでございましようか。
  111. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は今の段階においては公安委員を廃止するというような考えは持つておりません。
  112. 藤田義光

    ○藤田委員 繰返し申し上げますが、私は木村さんの人格を信用しますから、この際忌憚ない御意見をお伺いしたいのでございます。今の段階ということになりますると、将来段階がかわつて来れば廃止するかもしれぬというふうにとれますが、自分の所信としては廃止する気持はないという意味に翻訳してよろしゆうございますか。
  113. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さよう御了承願います。
  114. 藤田義光

    ○藤田委員 この国家警察に関しまして、いろいろと機構の問題等がございます。私は、これは法曹界の権威の前で釈迦に説法でございますが、日本のいわゆる一般治安問題を解決する根本は、どうしても警視庁の機構改革の問題、性格の改変であろうと思います。政治経済、あらゆる方面の中心である東京の治安をいかにするかということによつて日本治安問題の大半は自然に解決する。現在警視庁のごときは、御存じの通り会議員あるいは都の幹部の思うままになつております。予算権も完全に都の方に握られております。従いまして人事権も、ほとんど警視庁の幹部の人事は、都の幹部あるいは都会議員の制肘を受けております。こういう状態では、古都の警察は常に不安定でございます。御存じかもしれませんが、いわゆる在来の警察出身の幹部と、東京市役所あるいは都庁出身の幹部とが多少意見の対立を来しておることも常識でございます。こういう現状を打開するためには、どうしてもこの際首都警察法という單行法をつくりまして、予算的にも国家から直接結びついた方法をとるということでないと、日本治安問題の中心である徴税庁の問題、首都警察の問題は永久に解決されないと思います。幸い在野法曹の非常に信頼の厚い木村さんが法務総裁になられ、国家警察を所管されましたので、この際長年の懸案——これはおそらく與党諸君も反対しないと思います。特に現在大蔵政務次官をやつております西村直己氏のごときは、熱心にわれわれと同じ主張を長年続けておられると思いますが、この首都警察法の制定に関しまして、何か研究されておりますかどうか。研究されておらなければ、ただちに研究を開始していただきたいと思いますが、御意見を伺つておきたい。
  115. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まことに適切なる御意見を承りまして、私は喜びにたえません。実はただいまその点につきましては研究中でありまして、早急に解決いたしたいと考えております。
  116. 藤田義光

    ○藤田委員 政府の方針といたしまして、人口十五万以上の市は自治警を維持いたしまして、それ以下の市は国警一本にするというような説、その他諸説紛々といたしておりまして、警察制度の将来に関しましては、盛んに各方面で研究されております。私は先ほども申し上げましたように、敗戰によりまして民主警察という新しい看板が掲げられました今日におきまして、何とかこの看板のもとに、新しい警察の統合強化ということを考えねばいかぬ、そのためには現在の自治警察を国警に一本化するとか、あるいは国警を完全に自治警化するということでなくして、別個の観点から、この際大きな統一せる警察を再編成する必要があるのじやないかと思います。ここに共産党の横田君もおられますが、共産党行き方は御存じの通り合力をもつて分力を破砕するにあります。合せた力でわかれた力を突撃するのにあることは、レーニンの革命理論でありまして、私が申し上げる必要もございません。共産党は横田君のごとき人物が中心になりまして、しつかり団結して、治安機構その他に対する突撃を開始いたしております。しかるに警察の方は、御存じの通り二つにわかれまして、非常に弱い分散せる現状になつております。卑近な例をとりまして申し上げましたが、こういう現状を打破するためにも、何とか民主警察のイデオロギーを捨てないで、一本化せる新しい強力な警察をつくる必要があると思いますが、この点に対する総裁のお考えを承りたいと思います。
  117. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御意見はまことに適切だと考えております。そこで私の就任以来、いろいろその点について考えておるのでありまするが、いろいろな考え方がありまして、あるいは権力の集中に過ぎるところの弊害もそこに生ずることがありましようし、あるいはあまりに分散すると弱体にもなる。これを強い線を持ち出し、しかる上に民主的な形で維持するということについては、なかなかむずかしい問題があります。目下その点については衆知を集めて研究中であります。しばらく時日をかしていただきたいと思います。
  118. 藤田義光

    ○藤田委員 すでに研究を開始されておるという力強い発言がありまして、私も喜びにたえません。この点に関しましては、おそらく現在の公安委員その他自警連等からいろいろな制肘があると思いまするが、あくまで国家本位に、しかも関係国の制肘もなくなりますので、総裁のいわゆる国家本位の考えをこの際百パーセントに発揮していただきまして、すつきりした形のものをつくつていただきたいということを私は要望いたしておきます。  それから人事の問題で一言お聞きいたしたいと思いますが、現在警察予備隊には局長がたしか二つ空席になつております。創立早々には国家警察との交流が相当行われておりました。ところが今回予備隊令が法律になりますと、こういう弥縫策は今後絶対行われぬと思います。ただ現在の予備隊の状況からいたしまして、人物を他に求めることが困難で、今後もあるいは国警等に対する入れかえ、交流の問題が起きて来ると思います。畑違いではございまするが、この際この予備隊の人事と国警関係におきまして、人事の問題に関しまして、法務総裁の御意見を伺つておきたいと思います。非常に漠然とした質問でございますが、今後の参考にいたしたいと存じますので、お伺いしておきたいと思います。
  119. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私の管轄内におきましては、人事の交渉はこれから頻繁に行つて、人材を求めて行きたいと思いまするが、警察予備隊の方との関係におきましては人事の交流はないのであります。
  120. 横田甚太郎

    横田委員 木村氏、大橋氏の二人おそろいですから、二人の方でよく選択して御答弁願いたいと思います。これは日本人の困つておることであつて、それからアメリカ人占領が長期にわたりますと、占領軍の士気が弛緩して、占領は失敗に終るであろう、そのことはマツクが告白した事実でありまして、それが今現われて来た、これを中心に伺います。まず事務的に尋ねて行きます。占領下で総司令部当局の言明というようなことは、どのくらい信用していいものか、どのくらい権威があるものかということを第一に承りたいのです。
  121. 大橋武夫

    大橋国務大臣 便宜私からお答え申し上げます。占領下における総司令部の言明とか、発表というものは、これは内容によりましていろいろだろうと思います。單に一定の事実があつたということを、一段日本人に知らせるという意味の発表もありましよう。また言明もありましよう。それからその内容によりましては、日本政府あるいは日本人に対する占領軍としての命令、こういうものもあるわけでございまして、それはその発表の内容によつて一概には言えないと思います。十分に内容を検討して判断する以外にないと思います。
  122. 横田甚太郎

    横田委員 それでは具体的な例を申しますと、二十七年の二月二十一日の読売新聞が、総司令部当局の言明として脱走兵の問題を発表しております。こういうものは総司令部発表のどういう種類に属し、こういうようなものをどのくらい信用していいかということが一つ、こういつたような発表より見て困つたものに対しては、日本側として何か対策を立てる自主性があるか、承りたい。
  123. 草鹿浅之介

    草鹿政府委員 ただいま仰せの読売新聞の発表でございますが、これは総司令部の発表として出たものかどうか、この点まずわれわれは不明でございます。これにつきましてわれわれの方から調査をいたしましたところ、警視庁からの報告によりますと、昨年中に司令部側から手配の要求のありました米兵が二十五名だそうです。このうちでまだ年末までに未済として残つておるのが四名、あとは向う側から手配を解除して来たそうです。そこでこの間の新聞の三百名という根拠はどこから出たのであるかということを関係方面に聞いてみましたけれども、向うでもよくわからないそうです。なおその出所について、今調査いたしております。
  124. 横田甚太郎

    横田委員 脱走兵については、政府としては対策を立てる必要があるかないかということです。それから各国兵が馳走した場合に、法の保護を受ける資格があるように思つておるかおらないかということです。法務総裁は今総理に呼ばれておるというが、改進党の先生の言によると、あなたは民間法曹界の権威なんです。大橋さんが官界の反共ナンバー・ワンであれば、あなたは民間の反共ナンバー・ワンであるといわれている。その反共の対象になる共産党を代表して聞いておるのですから、はつきり答えてもらいたい。問題は富士銀行の金をぬすんだギヤング事件です。これは法務総裁からお答え願います。脱走兵については政府としての対策を立てる必要があるかないかということが一つ、脱走した場合、法の保護というものは一体どういう形において受けるか伺いたい。
  125. 木村篤太郎

    木村国務大臣 脱走兵については、進駐軍側と日本警察と連絡して、その捜査、逮捕の任に当つておるのであります。今後のこういう問題については、御承知の裁判権に関する問題であつて、目下司令部との間に交渉中であります。
  126. 横田甚太郎

    横田委員 裁判権というものは、犯人をつかまえて裁判所に連れて行く、それで初めて裁判が成立するのです。つかまえるのが先決問題ですが、そのつかまえるということに伴つて、非常に障害になるものがあるかないかということを聞いておる。ただ抽象的に裁判権云々ということを言いますのは、六法全書という活字の陳列されておるものを読んでおるひまな人の言うことです。要は銀行の金をとつた犯人をつかまえなければならぬ。それがつかまらぬのです。巷間聞くところによりますと、こういう犯罪は大体一日あつたらつかまえておつた。それをことさらにつかまえない。つかまえられない。裁判権というようなややこしいことを言わずに、脱走兵が法の保護を背景にしてのさばつておるのかということを伺いたい。
  127. 木村篤太郎

    木村国務大臣 保護、背景というものはないと考えておりますが、ただいまの段階においては日本警察において進駐軍側と協力して捜査をしておる。ただ従来のように敏活に行かなかつたという点については、はなはだ遺憾であります。これは今後警察力を整備して、そういう場合には迅速に逮捕できるように処置いたしたいと考えております。
  128. 横田甚太郎

    横田委員 迅速に行かなかつた。これがけしからぬ。なぜと申しまして、迅速に行かない場合米人であり、迅速に行く場合日本人である。これは一つの特徴的な占領下のあなた方のやり方なんです。犯罪というものは、一体何によつて起るかということが一つと、脱走兵というものは犯罪を犯すような條件備えておるかというようなことについて、どういうようにお考えですか。
  129. 木村篤太郎

    木村国務大臣 犯罪を犯すに至る原因は種々ありましよう。これは一概に申すことはできないと考えております。
  130. 横田甚太郎

    横田委員 私の言うのは兵隊です。給與をもらつておるのでしよう。これは犯罪を犯さなくてもやつて行ける。戰死したら名誉にもなるといつておる。こういうような形において犯罪を犯すのが兵隊であると言うと、そうでないと言われるかもしれないが、兵隊であつた者が、しかも脱走しておれば、兵隊としての給與を受けられない。しかもものを食わねばならぬ。胃を持つている。それが武器を持つておる場合には、これが犯罪を犯すような條件備えておるとあなたはお認めになるか、ならないかということを聞いておる。
  131. 木村篤太郎

    木村国務大臣 犯罪を犯す可能性が十分あることは私も認めたい。しかしそれだからといつて、必ず犯罪を犯すとは限らないと思います。
  132. 横田甚太郎

    横田委員 そういうようなものが現在集団としてあると思われるか、思われないか。私たちの聞くところによりますと、何か朝鮮からたくさんな兵隊が逃げて来て、それをその人たちの手で本国へまた送り返しておるような集団があるように聞いております。これはデマかもしれませんが……。読売新聞によると、こういうような事実もあります。先ほどのあなたの部下の言われるところによりますと、二十数名の脱走兵の大量令状が出ておる。こういうような現状から見て、三百名、あなたの方の言明によりますと二十数名、数こそ違え、この種のものがあり、しかも一人でないという点においては一致しておる。この集団がのさばつてつたら非常に危險であると思われるか、思われないか、このことはどうなんです。
  133. 木村篤太郎

    木村国務大臣 危險であることはもつともであります。それゆえにそれの十分な対策を立てて、今現に行われておる犯罪に対しては、日米協力して逮捕せんとしておるのであります。
  134. 横田甚太郎

    横田委員 ここにギャング事件とちようど同じようなものがあるのです。ギャング事件の場合は、所有権を犯し、ピストルを突きつけて、日本人の行動の自由を奪いつつ、金をぬすんだという点においては、基本的人権を云々するアメリカが、基本的人権を一番侵害しておる。さらに恐ろしいことは、朝日新聞の報道でありますが、これは朝日新聞が二十七年の二月二十一日にこういうことを報じております。東京都下の南武線矢川駅に、北島きよ子という十九才の娘さんが、散歩中にからすと間違えられてピストルで撃たれて運び込まれた。この娘さんは立川の野沢病院に連れ込まれたが、あわてたアメリカ兵隊さんは、基地内の病院に連れ込んで行つてあとはわからない、こう言つております。それから御存じのように爆弾を積んだB二九がしよつちゆう落ちます。この間のごときは破裂しなかつたからいいが、二十九箇の爆弾を東京都下と埼玉県にぶち投げております。米軍は、あなたにも申しましたように、日本人抜きで防空演習をやつておる。このことははつきり言うと、基本的人権あるいは所有権を侵害しておると思う。現に軍隊においても、こういう爆彈を落すような不始末をやり、娘さんをからすと間違えて撃つほど目の狂つた集団は軍隊でしようか。それとも軍律の弛緩した手合いが多くなつたのでしようか。占領した当時は、自由党の理論から言いますと、占領軍はことにいい兵隊つたそうだが、最近非常に悪くなつた、困つた集団になつたということは、軍律の弛緩を意味するのでしようか、あるいは何か日本に犯罪を犯してもらいたいように、アメリカ人を丁寧に遇し過ぎるような売国根性があるのでしようか、その点に関するお考えはどうですか。
  135. 木村篤太郎

    木村国務大臣 たくさんの人間がおることでありますから、そのうちにはふらちなやつも出て来るかと考えておりますが、必ずしも全部の軍律がゆるんだとは考えておらないのであります。
  136. 横田甚太郎

    横田委員 そこで今度は米軍の遵法精神が問題になつて来る。自由党の理論によりますと、共産党系統は法律を守らぬ、アメリカはよく法律を守る、これが西欧民主主義の特徴だといわれる。ところが法律を守らないことにおいては、おそらくアメリカの方が、何と言いますか、一枚も二枚も上手じやなかろうかと思う。アメリカの代表的人物、ワシントンやアブラハム・リンコルンがおつたときにはアメリカ人は偉かつたところが最近のアメリカ人に、アメリカの独立戰争当時の輿論調査をしたところが、答える者がごく少かつた。独立戰争とはソビエトのことであろう、こういうことを言うたという新聞記事が出ておる。あきれはてたアメリカ人になり下つたアメリカ人を、日本において遵法精神に富んでおると、日本政府と自由党は言つておる。清廉潔白の司令官であつたアメリカのマツカーサーが帰るときには、四十三トンの荷物を積んでおつたということは、当時の新聞記事が明らかに書いておる事実である。こういうような点から、私はここで英国の例を見ますと、これは同じアングロ・サクソンであるという共通点から言うのですが、英国人はインドを征服して、インドへ英人のインド総督を送つた。総督になつた者はその間にたくさんの金を持ち込んで、本国の政党の領袖になるために株を買う。そうして株を買うやいなや、必ず非常にあわれな末路に陥つておるということは、歴史の教える事実である。だがらマツカーサーの四十三トンの荷物は、ただ新聞記事を見ただけで、私は見ませんから何か知りませんが——あまり長くなつてもいけませんから、ここではたた遵法精神の点に触れますと、アメリカ人は、たしか憲法において一夫一婦、一人の夫に一人の妻ということがいわれております。ところ日本に来ております進駐軍は、みんな日本の娘さんの手を引いておる。これはアメリカにおいてもひとりものが兵隊になつておる場合においては、日本の娘さんと結婚したのだから、あなた方自由党としては誉れでしよう。しかし白髪の老兵がアメリカの服を着て、日本の娘さんを連れておる。そうして文芸春秋の二月号によると、アメリカの国務省に儀典課というものがありまして、外国から来ました大官にパンパンを紹介するための費用が組まれておつてアメリカの大官たち海外に参るということは、このお返しをしてもらうために参るのだという記事が出ておる。しかも御丁寧なことには、これはほんとうと思えないようなことだとだれもが疑うが、事実だという註釈づきで外国の新聞記者が書いておる。だから私は聞きたい。アメリカ人の遵法精神を云々する点において一番はつきり対比できることが一夫一婦である。一夫一婦であるならば、日本へ来ておる人たちは、みんな独身者ばかり兵隊になつて来ておるのじやないかと思う。だからアメリカ人の遵法性についての法務総裁の御見解を承つておきたい。
  137. 木村篤太郎

    木村国務大臣 日本へ来ておる進駐軍の兵隊の中で、いわゆるパンパンと手をつないで街頭を歩いている事実は私も見ます。これがはたして本国に妻君を持つておるかどうかは存じません。従つてほんとうに一夫一婦の制度が完全に行われておるかということを、私もここで断言はできないのですが、アメリカ内地においては、少くとも一夫一婦の制度は行われておると私は考えております。遵法精神の点については、私がアメリカ人につき合つておる限りにおいては、相当尊敬すべき人間もおります。また巷間伝うるところによりますと、さようでもない人間もおるように見受けられます。遵法精神を日本と比較して、どちらがまさつておるかということは、ここで申し上げることはできないのであります。
  138. 苫米地英俊

    ○苫米地主査 横田君、木村法務総裁はお急ぎのようですから、簡單に……。
  139. 横田甚太郎

    横田委員 では要点を一ぺんに言います。いけなかつたら文書で返事してください。あなたのところには、いいかげんにごまかす答弁の係がいるから……。大体戰争と犯罪についてどうお考えになつておるかということが一つ。それから占領というものは、負けた者にむちやをしない形において、勝者がかつて気ままなことをするのが占領である。私はそう思うのです。この点における総裁のお考えは一体どうかということ、これが二つ目であります。次は日本においては非常に法の運用が間違つておるじやないか。そこで先ほどちよつと聞いたんですが、アメリカ人の遵法精神にいたしましたところが、アメリカ人の中には法律を守る人もあれば、守らぬ人もある。アメリカ人であつて、守らぬやつもある、これは犯罪人である。これは日本において相当手を打たなければならないということが一つ、そういうようなことを認定するのは国民の自由な判断力の養成なんです。そういたしますと、あらゆる政治に対しまして、とやかくの批判をするために人民は集まらなければならないのに、最近の傾向は、事を好んで共産党に挑戰的に出て、国民の集会を許さない。再軍備賛成のための演説はやらせるが、徴兵反対のための集会はやらせない。これは一体どういうわけかということです。これは警察予備隊に大体金ができた。兵員も整つた。装備もできた。演習用地もできた。ただ足りないのは、実戰的な訓練を展開するための相手がないから、この装備のできた人殺しの集団の相手として共産党に挑戰的なけんかを吹つかけて演習相手にしようとしておるじやなかろうか、こういうことです。それから次は飛ばしまして、このようなアメリカ人日本においてやつているやり方に対して総裁の考えはどうかということと、次には富士銀行のギヤング事件のような、あるいはからすと間違えて娘さんを撃つような、こういうひどいことを取締まるためには一体どういう手を打たれるか。これは警察当局で取締まられるか。日本政府の方で十分か。あるいは安全を民間銀行にゆだねられるか。ゆだれられるようになるとすれば、どの法によつて、どういうふうな武器を銀行に持たせるか。あるいは襲われる対象に持たせるか。もつと極端に言いますと、日本の民間人に対し、アメリカ人も武装している限り、アメリカ人がピストルを持つてつて日本人に突きつけたときに、またこれを撃ち返すくらいの法的処置を打たれるか。かつての政府は、飛行機に対して竹やりでやるのだと言われるのですから、相手がピストルを突きつけたら、から手でやれというような形において、また挙法を教えなければならぬのであるかどうか。こういうような点において、富士銀行のような場合、現行法でやれるのか。そしてまた武器を持たすなら、どの法で、どんな武器をもたすかということです。それからこういうふうなやり方は結局困つたものである。こういう困つたものを政治的に解決するためにはどういうふうな手を打たれるか、これだけ伺つておきます。非常に残念ですが、一時までという話ですから、このことを詳細、克明にお書きくださいまして、私が納得できる程度に御答弁を願いたい。そうでございませんと、国会の会期は六月まであるのですから、あなたが出られる委員会へいつも参りまして返事を伺います。
  140. 苫米地英俊

    ○苫米地主査 他に御質疑はございませんか。——質疑がなければ、本分科会はこれをもつて終了し、討論、採決は予算委員会に讓るべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 苫米地英俊

    ○苫米地主査 御異議なしと認めまして、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。     午後一時六分散会