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1952-02-22 第13回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十二日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席分科員    主査 庄司 一郎君       甲木  保君    竹尾  弌君       中村  清君    風早八十二君       石野 久男君  出席国務大臣         労 働 大 臣         厚 生 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         文部政務次官  今村 忠助君         労働政務次官  溝口 三郎君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     飼手 眞吾君         労働事務官         (労政局長)  賀來才二郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      龜井  光君         労働事務官         (婦人少年局         長)      藤田 たき君         労働事務官         (職業安定局         長)      齊藤 邦吉君  分科員外出席者         労働事務官         (大臣官房秘書         課長)     江下  孝君         労働事務官         (大臣官房総務         課長)     富樫 總一君         労働事務官         (労働統計調査         部長)     金子 美雄君         労働事務官         (労政官房庶務         課長)     三治 重信君         労働事務官         (労政局庶務課         長)      近藤 凡夫君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    堀  秀夫君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償課長)  池邊 道隆君         労働事務官         (職業安定局失         業対策課長)  大島  靖君         労働事務官         (職業安定局失         業保險課長)  百田 正弘君         予算委員会專門         員       小林幾次郎君     ————————————— 二月二十二日  分科員若林義孝君辞任につき、その補欠として  中村清君が委員長の指名で分科員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算中文部省、厚生省  及び労働省所管  昭和二十七年度特別会計予算厚生省及び労働  省所管     —————————————
  2. 庄司一郎

    庄司主査 これより会議を開きまりす。  本日は労働省所管関係の審議を進めたいと思います。労働大臣が見えませんから、その間政府委員に対して御質問を願いたいと思います。石野委員
  3. 石野久男

    石野委員 労働大臣がお見えになりませんとちよつと問題に入りにくいのでありますけれども失業対策の問題についてお尋ねいたしたい思とうのです。今年度失業対策費は、全体といたしましては、昨年度あたりと比較しまして、物価の上昇その他の点を考えますと、総体的には減少しているように見受けられるのでありまするが、そういうことになつていましようか。
  4. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 私からお答え申しますが、失業対策事業予算は、明年度は七十六億でございまして、本年度の七十七億五千万円と比較いたしますと一億五千万円の減少に相なつておりますが、大体明年度失業雇用状況は、本年度下半期とほぼ同じ程度持合いの形で推移するという前提で計上いたしまして、明年度におきましては、日雇い労働者につきまして一月、二十日ないし二十一日の就労日数を確保するに足るという観点から、七十六億という予算を計上いたしたのでありまして、ほぼ本年度と同じというように御了承願いたいと思います。
  5. 石野久男

    石野委員 これは結局明年度失業者数がどういう状況になるかという、一つの基本的な立場によつて考え方はずいぶん違つて来ると思うのであります。従つてこの点については、大臣お尋ねしなければ基本的な問題に入り込むことはできないと思うのでありますが、私どもの見るところでは、いろいろな観点がありますけれども失業者減少するという事情はなかなか考え得られないように思うのでございます。で、そのときに吸収人員が本年度の予定よりも若干はふえるといたしましても、実質的には仕事の量が減るのじやないかと思われる面が他面にあると思うのであります。一日の失業者に対する手当と、それからそれらの人々が一日に要望される資材費とか物品費等関係は、非常に微妙な関係を持つていると思うのでございますが、来年度失業対策事業に計上される資材費あるいは物品費等は、今年度と比較しましてどういうふうになつておりましようか。
  6. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 明年度失業対策事業予算單価の問題でございますが、労力費は二百二十五円で計算いたしてございます。これは昨年の十月から二百二十五円にいたしましたので、二百二十五円の三分の二を国が補助する、資材費につきましては、失業対策事業性質からいたしまして、あまり多額の費用を要しないものを選ぶことといたしておりますので、本年度と同じ二十円の二分の一、指導監督その他事務費につきましては、本年度よりも明年度は多少費用もかかりますので、本年度は十五円でありましたが、明年度は十八円にいたしまして、その十八円の三分の二を補助する、こういうことにいたしておる次第でございます。
  7. 石野久男

    石野委員 私ども日常失業対策事業実態を見ておりまして、特に失業対策事業が行われておる中から感じられることは、非常に資材等が不足しておるということであります。おそらく実際に作業しておる労務者諸君の要望は、こうした一日当り資材費二十円というものを相当程度数倍上まわるものを要求されるという実態なつておるんじやなかろうかと思うのであります。で今の失業対策で使つておりまするスコップであるとか、あるいは十字鍬であるとかいうような、そういう機材器具等の非常に損耗されておる時期において、これを補強するのには、二十円ではとても足りないんじやないだろうか、こういうように考えるのでございますが、二十円で、はたして一日の予定される仕事量をこれらの人々が十分満たすことができるかどうかについて、ひとつ所見を承りたい。
  8. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 資材費につきましては、予算單価といたしましては、二十円程度で私といたしましては適当かと考えております。ただ失業対策事業の効率的な運営をはかるためには、相当経済効果のある事業を選ぶということが必要でありますので、その面におきましては、地方負担分につきまして、できるだけ起債わくを拡大することによりまして、地方負担分を軽減するというやり方を講じて行くということが適当である、かように存じておる次第でございます。
  9. 石野久男

    石野委員 起債によつてその不足分を補うということは、その着想は非常にけつこうだと思うのでありまして、そのようにしてもらいたい。私ども考えでは、一日の作業において一労務者の要求する資材費というものは、各地でいろいろ相違があると思いますけれども、大体において二十円の三倍方上まわつておる七十円ないし八十円近いものを要求されるんじやなかろうか、こういうように思つております。それでなければ、おそらくそれらの人人の仕事の効率が上らない。事実上私ども各所事情を見ますと、もう円匙はいびておりますし、それぞれ使つておる機材は実に損耗しておりまして、事実上日雇い労務者自分のからだを張つて仕事をしなければやれないというような事態なつておると思うのであります。でこの点について私の考え方がはたして間違つておるかどうか、監督の衝にあり、また指導の衝にあられるあなた方の意見を一応聞かしていただきたいと思う。
  10. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 先ほど申しましたように、経済効果を上げまするためには、できるだけ資材費をよけいかけるということが私は適当だと考えております。ただいまお話のような機材器具等になりますると、一部事務費の方から出ますが、事務費の方は、先任ども申しましたように、十五円を十八円に上げるということで、そうした面をある程度カバーすることとしております。資材費につきましては、今申しました夫業対策事業公共事業性質の差異から申しまして、二十円程度にいたしまして、あとは地方地元負担分については起債わくを広げるということが、むしろ私は適当じやないかというふうに考えておる次第であります。
  11. 石野久男

    石野委員 当局もやはり資材費等は相当補備しなければ足りないということをお認めなつておられる。私もやはりこれらの失業対策事業は、ただ單に救済事業じやなしに、一つの効果ある仕事にならなくてはならぬと思いますので、少くとも資材に関しましては、事務費等からの補備があつたとしても、本年度から比較してわずかに三円しかしがつていない。私が見るところでは、一日二十円のものが七十円ないし八十円、約五、六十円も違うので、三円ではとても補給できないと思うのであります。でこれはできる限りあなた方の御着想によりまして予算を効果的に使うようにしていただきたい。その方向指導が行われるように、ひとつはつきりした所見だけは聞いておきたいと思うのであります。  次に私お聞きしたいことは、本年度失業対策費労働対策費といたしまして、指導補導というような方面に対する予算的な措置が、労務者に対してどういうふうにとられておるか
  12. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 補導につきましては、御承知のように、最近の補導所におきましては、腕をつけて労働者を出すことが非常に必要なことでありますので、明年度におきましては約五千万円ほどの臨時補導を行うことといたしておる次第でございます。現在一般補導所といたしましては、二百七十箇所ほどの補導所を設置経営いたしまして、年間二万五千人を補導いたしておるのでありますが、さらに明年度におきましては臨時補導といたしまして百四十四種目、約一万人を補導いたしたい、かように考えまして約五千万円程度の増額をいたしておる次第でございます。
  13. 石野久男

    石野委員 話を元へもどしますが、先ほどの失業対策のところで、私はやはり資材とかあるいは物品費、あるいはその他の経費が非常に不足しているということを申し述べたのですが、このことは他面においては今度は失業保険法との関係にもからんで来るのでございます。で、私は大臣に一応はつきり聞いておかなければならぬ点なのでございますけれども失業者が多くなるかどうかということに関係いたしまして、来年度といいまするか、本予算に組まれております失業保険に対する考え方というものは非常に違つて来る。この予算に組まれておる失業保険に対する政府当局考え方というものは、本年度あまり相違ないようでございますけれども、私の考えでは、経済的な諸事情の変化から、労務者生活事情が非常に苦しくなつて来るという事態から見まして、もつと失業保険に対する着想が出なくてはならぬのじやないかと思います。それでまず第一番にお伺いしますが、労務者生活事情国民生活事態というものに対してどういうような考え方を持つておられるか。これについての労働省所見をひとつ承りたいと思います。
  14. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 先ほど来の御質問は、最近失業がむしろふえるのじやないか、こういつたふうな御趣旨であつたと思うのでありますが、私ども事務当局がいろいろな統計から見て参りますと、最近の失業状況は、そう目立つてと申し上げるわけには参りませんが、漸次緩和の兆を見せておる次第であります。  ただいまお尋ね失業保険の問題についてでありますが、一昨年の朝鮮動乱勃発当時、すなわち昭和二十五年七月におきましては、一月間失業保険金をもらつておりました者の数が約四十万人でありまして、月間約十三億四千五百万円を支給いたしておつたのでありますが、その後失業保険支給者並び支給金額は、月を追いまして漸次減少をいたして参つておるのでございます。すなわち一昨年の七月からその一年後の二十六年七月になりますと、二十二万三千人に減少いたしておりまして、金額も約十億円に減少いたしております。さらに八月は二十二万人、九月も二十二万人というふうな状況でありまして、昨年七月以降保険金支給金額はほぼ十億台に下つておるのであります。従つて明年度におきましても、大体このような傾向、将来の経済の推移を頭に入れまして、月間十一億五千万円ということを頭に入れながら、明年度失業保険金保険経済予算を計上いたしたのであります。実際に現在払つておりますのは十億でありますが、多少保険経済の危険を考えまして、一億五千万円ほど上まわりまして、十一億五千万円ということにいたしておるのでございます。私どもといたしましては、保険のそうした状況、さらにそのほか毎月勤労統計に現われております雇用指数、あるいはその他の雇用に関する状況からいたしまして、本年度下期とほぼ持合い状況で推移する、こういうように考えている次第であります。
  15. 石野久男

    石野委員 失業保険金の問題に入るのには、どうしても失業者の問題が中心になるのであります。ただいまのお話によりますと、昨年度失業保険金を支給している者がだんだんと減少して、二十二万くらいになつておるというようなお話ですが、実際私たちがいただいております経済安定本部から出ている日本経済指標、それから総理府統計局から出している資料を見ましても、昨年十一月の完全失業者が四十六万人となつている。この完全失業者が、二十二万人の失業保険金しかもらえていないというところにも非常に問題がある。失業保険金失業者との関係は、いろいろな事務的な手続等についてわれわれは問題にしなければならぬ点があるのでありますが、失業者がだんだん減少するという傾向よりは、この統計を見ますと、むしろ漸増している傾向なつております。やはりわれわれは、この失業者考え方については、完全失業者以外に、潜在する失業者、それからまた半失業者状態というものが、労働行政の上で非常に重要な問題になつて来ると思うのであります。それで当局立場においては、この失業の問題を手放しでそういうふうにお考えなつておるのかどうか。臨時工なり、あるいは半失業的な状態にある就労者というものを、どういうふうに考えておるかということについての所見を、この際はつきり聞かしておいていただきたい。
  16. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 私ども事務当局の者どいたしましては、手放し楽観的に申しておるのではございませんで、ただ朝鮮動乱後漸次緩和の兆があるということを申し上げただけでありまして、厖大な人口を擁するわが国といたしまして、失業問題は楽観を許さないということは、私はまつたく同意見であります。ただいまお尋ね潜在失業等の問題でございますが、この潜在失業等の問題になりますと、定義とかいろいろむずかしい問題がありまして、実際的に把握することも非常に困難でございます。ただ労働力調査等に現われて参つております一つ追加労働希望という統計がございますが、これなどはやはり減つたり多少ふえたりいたしておりますが、やはり七十万台の統計を示しております。もちろんこれらのものの全部が全部潜在失業であるかどうかわからないにいたしましても、常識的にいわれる潜在失業というものが相当多いということはいわれるのではないか。そういうものが経済状況に応じて労働市場失業者として現われて来る危険性多分にある。これは私は十分考えて行かなければならなぬ問題だと考えております。手放し楽観をいたしているようなわけではございません。
  17. 石野久男

    石野委員 失業者は漸次増大して行くという考え方は、この際はつきり明白にしておいた方がよろしいと思う。少くともこの失業者の形態というものは、完全失業者よりは半失業という形にだんだんなしくずし的に行われて行く。その結果として一般労務者生活が漸次的に低下して行くという状態に置かれていると思うのであります。特に私はこの際労務行政の上から重要視しなければならないものは、日雇い労務者あるいは臨時工の問題だろうと思うのであります。労働条件の向上ということを特に皆さんが強調されて仕事をされるにあたつては、この日雇い労務者臨時工状態がどういうふうになつているかということを正確に把握しなければならぬのではないかと思つております。そういう意味日雇い労務者はどういう実態なつているかということを申し上げると、技能工が解雇されて失業者になり、失業者が今度は臨時工になり、臨時工が若干続いているうちにまた解雇される。これが一箇月、二箇月、三箇月くらい更新して解雇して行く。それから失業者になり、失業者日雇い労務者なつて行く。そういうように完全失業者なつて行くこの状態を完全に把握しませんと、失業対策というものが出て来ないと私は考える。そこで問題になるのは、これらの日雇い労務者等に與えられる失業保険金がありますが、失業保険金については現在一日当り大体百四十円すえ置きのままになつておると思うのでありますが、これをもう少し引上げるということについてはお考えがありませんでしようか。
  18. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 日雇い失業保険の日額を引上げるという問題は、事務的にもいろいろ研究はしてみたのでありますけれども保険経済の現状からいたしまして、今ただちに引上げるということは困難なようでありますので、今しばらく見送りたいと考えておる次第でございます。
  19. 石野久男

    石野委員 日雇い労務者の問題については、私どもどうしても今の保険金百四十円をもつと引上げてやらないとよくないと思うのであります。それと同時に日雇い労務者に対する税金の問題がまた一つあると思うのであります。この税金の問題についても、日雇い諸君については真剣に考えてやらなければならぬと思うのでありまして、これについては昨年度所得税等のいろいろな税率改正案が出ましたけれども日雇い労務者に関する限りは、案外に税率改正の恩典は出て来ていないと思うのでありますが、この税金の問題に関して日雇い労務者をどういうふうに処置てようとお考えなつておりますか。
  20. 庄司一郎

    庄司主査 ちよつと特例でございますが、主査としても委員の一人としても、ただいまの石野さんの御質問に関連してお伺いをしておきたいと思います。この日雇い労務者という諸君は、自分労務賃金以外に多くの方は収益がないと思います。あるいは御家族の中において働いて収入のある方もおりましようけれども、大部分はその労務者だけの収入だと思います。従いまして現行所得税法によつて所得願が一箇年十万円以下の諸君にとりましては、所得税はとらないことになつておることは御承知通りであると思うのであります。しかも家族等のある方は、それぞれ扶養控除もございますので、大体現行所得税法は十万円以下の所得者からは、これは国税としては免税に相なつておると思う。そういう点は労働省においてもむろん御検討のことであろうと思います。これはちよつと石野さんに当るようなことでございますが、そうじやございません。むろん日雇い労務者より国家の所得税をとるなどということは、これは望ましからさることでありますので、そういう意味現行制度はさようなつております。但し県税であるとか町村民税であるとかいう問題は、別個の問題でありまして、私ども地方長官や、市町村当局に対しては、労務者に対してはできるだけ税を軽減し、あるいは免除することがあつてほしいと念願しておるのであります。御参考のために申し上げておきます。
  21. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 主査の申し上げた通りに相なつております。
  22. 石野久男

    石野委員 ただいまの問題に関連しましてですが、日雇い労務者の点については——私は先ほど日雇い労務者と言いましたけれども、これは臨時工の場合を私は言うのでありますが日雇い労務者の場合は所得税税表丙欄適用が行われているわけです。臨時工の場合にはそうではなくして、これが甲の適用が行われているわけであります。先ほど言いましたのは、日雇い労務者というのではなくて、臨時工でございます。臨時工の問題が非常に重要でございますので、臨時工諸君に対して丙の適用をしてやると非常に違いが出て来ると思うのでありますが、丙の適用をするということについての考え方はございませんでしようか。
  23. 庄司一郎

    庄司主査 ちよつと石野委員に御照会申し上げますが。労働省としてはそれぞれの御希望があるのでしようが、これはもつぱら大蔵省主税関係でなければ正確な答弁は出ないと思います。
  24. 石野久男

    石野委員 わかつているのです。私は今その決定権がここにあるということは考えていないのです。むしろあなた方の労務行政の面から、そうしてやるというような着意があるかどうかということをはつきりしておきたい。そういたしませんと、大蔵省立場からすれば、できる限り税金をとろうとするのでありますから、よけいにとれるような形をとる。そうでなくして、やはりこちらとしてはできるだけ日雇い労務者諸君などの税は少くしてやるべきだ。生活事情が非常に苦しい事態にあるから、それを何とかしてやりたいというような考え方から言うのでありますが、それに対してどういうような考え方ですか。
  25. 龜井光

    龜井政府委員 御趣旨はよくわかるのでありまして、ただ税法全体の問題もございまして、私としましては事務的にそういう方向に向つて努力したいと思います。
  26. 石野久男

    石野委員 もつとも今事務当局者にそれを無理に伺うことは非常に困難かと思いますので、これは労働大臣が来ましてから、労務行政の点でひとつ聞きたいと思つております。
  27. 庄司一郎

    庄司主査 労働大臣は間もなく参ります。
  28. 石野久男

    石野委員 それから失業保険法の問題でございますが、私は失業保険金の百四十円は引上げてほしいということ、それから失業保険法適用される範囲が、ある部署によつては、特にPD工場とかあるいは特需工場等においては、非常に失業保険法適用がルーズなつておるというように見受けられる面がたくさんあるのですが、そういう点については当局立場からどういうふうに見ておられますかつ
  29. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 特需工場と申しましても、一般国内法適用を受けます工場であります以上、私は失業保険法適用がルーズだといつたふうなことをあまり聞いたことがございません。
  30. 石野久男

    石野委員 これは單に特需工場だけでなしに、公共事業等でもそうでございますけれども、実際職安が労務者をそれぞれの位置に紹介しまして、その任事が行われればおのずから保険法によるところの印紙の添付というものが行われるわけです。問題はここにあるのです。むしろ労務者諸君は決して印紙をとられることを拒否しておるのではなくして、今日の段階では日雇労務者自体はむしろこの印紙を張つてもらうことを要望している。ところが実際に経営者立場に立つている諸君は、この印紙をなかなか張らないのです。張らないために、失業保際金をもらえるような資格を持つているものでも、排除される面が多分に出ていると私は見るのです。そういう事実を皆さんはお認めになりませんか。
  31. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 日雇い労務者失業保険適用につきましては、私ども県なり安定所を十分督励して厳重にいたしておるのでございますが、もしそういう事実がございますならば、さらに一層厳重に励行させるようにいたしたいと思います。
  32. 石野久男

    石野委員 私はその点についてはひとつ厳重な監督をしていただきたいと思うのであります。予算の施行される最大の目的は、労務者自体を擁護することだと思うのでございますので、どんな予算を組みましても、これが実行されなければ何にも役に立たないと思いますから、その点をよく監督していただきたい。  それからこれは予算というよりも、むしろ行政の問題になると思うのでございますけれども臨時工等においては大体一箇月、一箇月で、約三箇月くらいは更新されるのが今の実態だと思います。そういう事態のときにこれらの諸君が三箇月たつと完全に解雇されるわけです。そういう場合に解雇予告手当というようなものの適用が非常に重要になつて参りますが、これに対してどういうようなお考えであられるか、その点をはつきり聞いておきたい。
  33. 龜井光

    龜井政府委員 臨時工につきましては、法律で御承知通りに一箇月を越えて引続いて同一事業主に雇用されます場合には、普通の労務者と同じように解雇予告または解雇手当の制度が適用になるわけであります。そこで通常その雇用期間といいますか、雇用契約を一箇月ごとに更新して行く例がままあるようでございます。そういう場合につきましても、使用者の方において継続する意思をもつて、ただ形式的に雇用契約を一箇月ごとに更新するという意思がそこにはつきりつかめた場合におきましては、われわれ行政運営の上におきましては、これは普通の労働者とみなすというような取扱いをいたしておる次第であります。ただ個々の具体的な問題として検討いたしませんければ、二回繰返した、あるいは三回繰返したから、これが普通の労務者になるのだということは、はつきりここには申し上げかねるのでありますが、大体の考え方としましては、そういう考え方でやつております。
  34. 石野久男

    石野委員 私はこれはできる限りやはり普通の労働者と同じように取扱つてもらわなければ困ると思うのです。それと同様に、先ほど問題にいたしました保険金額の問題について予算的措置をされる場合に、もちろんその百四十円の保険金というものを増額ずるということは法律の手続を必要とするわけなんですが、現在の実情からいたしますと、私はもう少し掛金を少しくらいよけいにしてもいいから、それらの人々保険金を多くしてやる措置をとられる方がいいのじやないかと思います。そういう建前からいたしますと、現在一級の人一日六円とつておるものは十円くらいにして、二級は五円を八円くらいにしてやつて、それに対して百四十円を二百五十円くらいにしてやるくらいの着想を、むしろ計画される方がよろしいのではないかと思いますが、これは早急に措置されるようなお考えはございませんでしようか。
  35. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 私どもの方といたしましては、これらの日雇い労務者につきましては、この失業保険金を支給するよりも、むしろ失業対策事業によつてできるがけ使用日数を延ばしてやるということの方が、より適当ではないだろうか、失業対策事業の賃金も大分上つて参りましたので、むしろあぶれたときの保除金をくれるよりも、失業対策事業に働かして、手取り賃金をふやしてやるということの方が適当ではないか、こういうふうに考えておるのであります。最近におきましては日雇い労働者就労日数も二十日なり二十一日就労ということになつて来ております。そういう状態でありますので、また今の日雇い失業保険保険経済からいいまして、さしあたりのところ、この保険日額を上げるという考えは持つておりません。
  36. 石野久男

    石野委員 ただいまの考え方はなるほど一面非常に労働者にとつてありがたいように見えるけれども、実質的にはそこには非常に恐るべき低賃金の伏線が引かれているように、私には見られるのでございます。われわれとしては労働者生活を保持するためには、当然やはり食えるだけのことはしてやらなければならぬ。最低賃金というものは真險に考えてやらなければいかぬと思つております。ある一定額をおしなべて全部に普遍化させるために、全体としてベースを低くして行くというような形はよくないと思う。失業対策事業にしましても、私はできる限りそれに吸収してやることによつて保険金の料率は上げない方がよいという考え方は、どうも私は労働者に対してありがたい考え方のように思われない。しかし皆さんがそれを真剣に考えおられると、これはわれわれとして容易ならぬ問題として注意を喚起しなければならぬと思うのでありますが、そういう私の心配しているような点について、あなた方は憂いはございませんか。
  37. 齊藤邦吉

    齊藤(邦)政府委員 私どもの方といたしましては、日雇い労働者生活安定のためにはまず手取り賃金を多くするということが先決だと考えております。そういう意味合いから、できるだけ失業対策事業わくを広げて、就労日数をできるだけ多くするということをまず第一義とすべきじやないか、こういう考え方でおる次第でございます。
  38. 石野久男

    石野委員 大臣がお見えになつておりますので、ただいまの問題と関連してお尋ねいたしますが、日雇い労働者になるべく仕事をさせる、なるべく就業させることは非常にいいことですけれども、他面から見ますると、失業対策等に使う経費の問題からいたしますると、作業者に対する一日の資材費とか物品費等が実質的には所要の経費に満たないような経費しか使つておりません。その結果としてこれらの労働者自分の肩を張つて仕事をしなければならならぬような実態に置かれておるということは、先ほど当局認め通りでございます。こういう形と今のお話とを両方総合いたしますると、だんだんと労働者生活というものが低賃金の線に押しつけられて行つて生活事情というものがだんだん苦しい状態に追い込まれて行くということが必然になつて来るのじやないか、こういうように私は考えます。そこで問題は労働者を非常に低賃金の線で縛りつけて、そうして失業者をなくするというような考え方、一方では非常に経営の利潤が上つているときに、労働者は非常に低い賃金で多く吸収するという考え方が、今日の労務行政の基本政策になつておるのでございましようか、吉武労政の基本的な問題をひとつ聞かしてもらいたい。
  39. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 石野さんのお話を聞きますと、だんだん賃金が低賃金にたりつつあるというふうにおつしやいますが、実は実際の統計によりますると、実質賃金はわずかずつではございますけれども、逐年上昇らつつございます。これはもちろん日本の産業の復興に伴うところであつて、当然のことではございまするけれども、決してだんだんと低賃金に押しつけられて行くというようには私存じておりません。しかも今お話になりましたように、ただ一部の者だけが労働貴族になつて、高い賃金をもらうということは、これまだ必ずしもよいことではございませんで、みんなが働き、そうしてみんなが食つて行くということ等は、これは当然考えるべきことではないかと存じます。
  40. 石野久男

    石野委員 低賃金になつて行かないという考え方については、私は非常に反対な考え方を持つております。官庁統計によりまして、賃金が実質的には上昇して行くんだと言われるにもかかわらず、実際には労働者生活はますます苦しくなつて行くのが事実だと思います。これは統計のとり方や何かでいろいろな相違がありますので、その実態をもう少し正確に把握しなければならないのではないかと思います。そこで問題は、失業者がこれからあとどういうふうな状態なつて行くだろうか、それから特に講和条約が成立して独立後の日本の雇用事情というものに対して、どういう見通しを持つておられるかということについて、ひとつ所見を伺いたい。
  41. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これはせんだつて予算委員会でも、私たしか石野さんかどなにかに申し上げましたが、実は日本の失業者状況は、一時非常に憂慮いたしておりましたが、昭和二十五年の七月を境といたして漸次好転を来し、現在ではだんだんと失業者は減つております。二十五年の七月がたしか四十八万くらいございましたのが、昨年の八、九月には三十一万くらいにまで実は下つて来たような状況で、その後また若干上つたこともございますが、今日では四十万前後のところを横ばいの状況にございます。しかも失業対策で登録しておりまする日雇い労務者状況を見ましても、だんだんと実は減つおるような状況でございます。ちようど二十五年の十一月に四十五万くらいのいわゆる登録がございましたが、それが昨年の暮には三十五、六万くらいまでになつておる状況で、失業保険を受ける被保険者といいますか、保険料をもらう人の数を見ましても、だんだん減つているような状況であります。従いまして現在のような状況におりますれば、独立後の日本の経済は、相当むずかしい点はございまするけれども、逐年生産規模は拡大されて行き、生産量も、御承知のように、今日では百四十あまりに達しておるわけでありまして、私どもの計画としては三年後には百九十くらいまでには上らせたいという感じを持つておるわけでありまするから、今の状態でおりますれば、私はここ当分の間そう心配なものではないのではないか、かように存じております。
  42. 石野久男

    石野委員 失業者事情については、先々が非常に明るい見通しだ。こういう実態があるにもかかわらず実質的には労働者は半就労事情のもとに就労人員の計算がなされておる、こういうことが非常に問題点だと思うのです。そこからやはり低賃金の要素が出て来るというように私は考えるのでございます。これはいろいろ見方がありましようから、論争になりますので、短かい時間で多くを述べませんが、私としては大体そう見ております。労働行政をとる上におきまして、特にその点について着意されたいということを私はお願いしておきます。  ここでいま一つ予算の面でお聞きしますが、労働基準局関係の経費は本年度相当に減つているわけなんでございますけれども、それについてはなぜ減つておるかということについて伺いたい。
  43. 龜井光

    龜井政府委員 この総額が減つておりますのは、人件費の減と庁舎の営繕費の減、この二つがおもでございまして、基準行政の実質的な面でありまする監督旅費あるいは物件費等は前年度よりも職員一人当りむしろふえておる状況でございます。
  44. 石野久男

    石野委員 一人当りの物件費としてはむしろふえておる、こういうお話でございます。この基準局関係で特に本年度労働省の方として重点を置いて行く方向というものはどういう方向にありますか、ひとつ承りたい。
  45. 龜井光

    龜井政府委員 予算の上に当然現われて参るのでございまするが、日本の講和後における自立経済の達成という問題からいたしまして、産業災害の防止、これはやはり第一にわれわれとしては重点を置いて行かなければなりませんし、またいろいろな国際的な関係で注目されておりまする女子、年少者の保護の問題、これもわれわれとしましては大きな重点を置いております。さらにまた積極的な面といたしまして技能養成、すなわち今後の日本の経済の上において、大きなプラスとなるような、産業におきまする技能者の養成につきましても、今後重点を置いてやつて行きたい。以上がおもなものであります。
  46. 石野久男

    石野委員 労働基準局関係の主たる目標は、災害の防止あるいは女子、年少者の保護あるいは技能養成こういうところに重点があるということをお聞きしましたが、最近の災害の事情というものはどういうような状態なつておりましようか。
  47. 龜井光

    龜井政府委員 災害につきましては、まだ減少の過程にはございません。但し一般工場事業場につきましては、漸次減少傾向にございます。これはわれわれが三年前から指導しておりまする安全特別指導政策と申しますか、災害率の高い事業場を選びまして、そこで労使並びに監督署の職員、この三者が一体になりまして、個別的な指導をやつてつております。こういう事業場につきましては、昨年の割合で申しますると、従来の度数率と申しますか、百万時間内における災害の発生率を見ておるわけでございますが、一五%ほどの減少を見ておりまするし、本年において八百三十五の事業場についてやつておりまする実績を見ましても大体二五%から三〇%の減少を見ておる次第であります。逐次このやり方は今後とも引続いてやつて行きたい。ただ全体の産業災害でふえておりますのは、貨物の積卸し、あるいは林業、あるいは土建関係というふうな、屋外作業の面におきまして、これはむしろ増加をいたしております。従いまして全体として増加の傾向にあるのでございますが、特に土建関係におきましては、電源開発の仕事が増加いたしますにつれまして、今後もふえる傾向にあるのじやないかということを、われわれとしまして心配をいたしております。
  48. 石野久男

    石野委員 ただいまの災害の増大する傾向は、おそらく統計に載らないで、特にここ一二箇月の間にまた新しい傾向が出て来ておるのじやなかろうかと私は思うのでございます。それはなぜかといいますと、特にわれわれから言えば軍需産業でありますが、特需関係仕事が非常にオーバー労働なつております。そのオーバー・ワークになつておる関係から、災害が各所に増大して来ているのではなかろうか。本年の見通しとしては、それが非常に増大するのじやなかろうかというふうに思うのでございます。これはそのときの施設等による災害というよりは、むしろ労働の強化から来る災害の方が多いのでなかろうかと思いますが、その点についてはどうでございましようか。
  49. 龜井光

    龜井政府委員 普通の工場におきましては、統計の上では減少傾向にございます。これは産業災害の統計並びに労災の面からいつても言えることでございますが、今後特需工場等で、労働強化から災害がふえるのではないかというお話でございますが、われわれとしましては、その問題について、ふえるというふうな見通しは持つてない、と申しますのは、安全の指導につきまして、アメリカ軍関係は今までも非常にセーフティーという問題に重点を置いて労働者指導に当つております。これはむしろ日本よりも進んだくらいの考え方指導しておるわけでございまして、従いましてわれわれの行政の上におきましても、それらの指導というものを取入れながらやつている面もございまして、あながち労働強化から、ただちに災害がふえるだろうというようなことは、私として今考えておりません。
  50. 石野久男

    石野委員 ただいまも答弁もあつたのですが、アメリカの労務行政というものは非常にセーフティーというものを重んじているから、日本においてアメリカに関連するところの特需作業等では、そういう問題は起きないだろうというにもかかわらず、事実はそれと相反する事態が生ずる危険性がある。私は少くとも最近それに関連する作業場における災害の発生が非常に重なつて来ておるという事実を知つておりますので、そういうふうに申し上げるわけであります。そこで私は吉武労働大臣お尋ねするのでございますが、二十七年度予算に組まれておりまする防衛関係費用は、おのずから産業の面に、相当程度軍需産業的性格を持つたものを養成することになつて参ります。従つてこの面におけるところの労働者労働条件というものは、非常に強度化されて来ると私は思うのであります。これを施設あるいは安全装置その他等によつて予防するということ以上に、労働強化から来る災害、過失というものが出て来るおそれがあると思うのでございますので、これに対して特に強い労務管理が行われなければならないと思うのでございます。この際私は少くとも再軍備的性格を持つ産業構造がはつきりして来ている段階における労務行政、労務管理の基本的な考え方を、ひとつ大臣からはつきり聞いておきたい、こういうように思います。御所見を承ります。
  51. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 もちろんそういう工場につきましても、先般来申し上げましたように、国内法としての労働法を適用するつもりでございまするし、目下その線に沿うて折衝中でございます。従つて十分気をつけて行きますが、実は先ほど基準局長が話しましたように、何だか非常に労働強化が行われる、行われるというふうに言われますけれども、そういう工場においては、かえつて労働時間というものは正確に守られがちであります。能率を上げるという面はあるかもしれませんけれども、そう労働時間がやたらに延長されるというわけでもございませんし、また災害の面で見ましても、先ほど答えましたように、製造工場の災害というものはそうふえていないので、むしろ土木建築というか、大きい土建関係の方の災害がたしかふえていたように私記憶しておるわけであります。もちろん御指摘の点につきましては、私どもといたしましても十分気をつけて行くつもりであります。
  52. 石野久男

    石野委員 今大臣から、災害の傾向が非常に屋外作業に多い、屋内作業では減少する傾向があるというのは、それは統計によることでありまして、統計でまだ捕捉できない面において、新しい傾向が出て来るということを私は心配するわけなのでございます。これはおそらく着実に出て来ると私は思います。従つて私はそういう面でも対策がはつきり立てられなくてはならぬということが一つ、それから先ほどから労働基準局がすでに予定しておりますように、災害あるいは女子労務者あるいは技能養成という面は、これはおのずから二十七年度予算の性格に合致するものであろうと思うのでございます。従つて私はこの二十七年度予算においては、労務管理の上において、かつての戦争中の労務管理と同じような線が多分に出て来るのじやないかという心配を持つのでございますが、そういうような点について、いま一度労働大臣に、勧労管理というような面で、太平洋戦中に行われたような労務動員の態勢を予定されるかどうかということを、ひとつはつきり聞いておきたい思います。
  53. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私どもはさようにはならない思つております。従いまして昔やつたような労務動員などという構想は持つておりません。
  54. 庄司一郎

    庄司主査 風早君。
  55. 風早八十二

    ○風早委員 今吉武労働大臣は、実質賃金は少しずつだけれどもつている、こういうお話ですが、これはたびたび言われるので、私どもははなはだ耳にさわつておるのでありますが、これは大多数の労働者の実際の生活経験から申しまして、まつたく反対なんです。われわれが接触した限りにおいて、実質賃金が上つているという例証は一つも得られないのです。そこで念のために、実質賃金が上つているいう政府の統計を、簡単でいいですから、月別に出してもらいたいと思います。それからその根拠々説明してもらいたい。     〔主査退席、甲木主査代理着席〕
  56. 金子美雄

    ○金子説明員 実質賃金の計算は、官庁統計いたしましては、毎月勤労統計からいわゆる賃金指数を、総理府統計局の消費者物価指数で除して出ているわけであります。最近の各年度の平均の値を申し上げてみますと、昭和二十二年の平均を一〇〇としました製造工業の実質賃金で申しますと、二十三年が一五一・五、二十四年が一九七・一、二十五年が二五七・〇、二十六年が二七九・六、こういう数字になつておりまして、ただいま申しましたような予算の基礎で出しました実質賃金指数は、各年順調に上昇しておる、かように申し上げられると思います。
  57. 風早八十二

    ○風早委員 今のは、物価の値上りを考えた実質賃金のことですか。
  58. 金子美雄

    ○金子説明員 実質賃金指数と申します、名目賃金指数を生計費指数で割つたもの、こういうことになつておりますので、そういう計算をするわけであります。
  59. 風早八十二

    ○風早委員 そうすると、実際の生計費指数が上つたにかかわらず、二十二年から比べると、ほとんど二倍七、八分くらいに上つている、こういうことを言われるわけですね。
  60. 金子美雄

    ○金子説明員 その通りであります。
  61. 風早八十二

    ○風早委員 ところで、実際にわれわれが労働者生活を見てみますと、この官庁統計がいかにインチキであるかということがわかるのです。問題は生活が楽になつたかどうかということが何よりの証拠なんです。でありますから、われわれが大多数の、会う限りの労働者について見て、実際に二十二年よりも今日が年々とにかく苦しくなつておるという実情を、一体どうつじつまを合せたらよろしいか。われわれはこのつじつまを合せるのにははなはだ苦しむ。官庁統計では実質賃金は上つて、物価はそれほどには上らない、こういうような統計を出して参りますが、実際にわれわれの感覚がそれを許さない。そのからくりというのはもちろん一部の労働貴族といわれる人たちはあります。これは非常に賃金が上つているというものもあるわけです。それから産業別に見て、また特需産業の一部の大工場で、そのうちの労働者でも、特に高級層において相当よい賃金をもらつているというところはあるわけです。これをみな平均した場合、これは私どもは百歩を讓つても、そういうようなからくりがあるわけでありますから、これはおそらくそういうところに一つ原因があるのだろうと考える。それからもう一つは、実際に労働者として、同じような仕事をやり、同じような時間で、ほとんどその技能もかわらないというような人たちも、今日臨時工というものがいよいよふえて来ておるという問題がある。さらにもつとひどいのは、賃金不払いということもあるわけです。こういうことを考えますと、実際にそれでは労働者がこれだけもらつているはずだ、賃金の基準がきまつておることで、実際にその異質賃金が上つているということは言えない。これは実際にもらつている人について、しかもそれが上中下とありますから、これを平均したそういう数字であると思うのです。われわれは実際に官庁統計自分でつくつたわけではありませんから、その操作というものは十分にこれを追跡して行くことができないために、いろいろまだあると想像せざるを得ませんが、しかし今私は手元にその資料を持つて来ておりませんから、ここで一々それを追跡するわけには行きませんが、少くともこういうように実際と違うということは、その統計がはたして正しいかどうかということを疑わせるわけです。労働大臣は、ただ一片の官庁統計だけによつて、実質を見ないで、労働者生活を見ないで判断されると、これはたいへんに政策の上に、善意であつても誤りを来すのではないかと思うのであります。そういう点で私は、一つ臨時工の問題、一つは賃金不払いの問題について労働強化の問題もありますが、これは一応預かつても、こういう問題についてお尋ねしてみたいと思います。一体今賃金の不払い、これは幾ら賃金がきめられておつても、不払いであればゼロでありますから、問題にならない。そういうものが、たとえば東京の労働基準局管内において一体毎月々々平均どれくらいの件数と、どれくらいの金額に達しておるか、これを出してもらいたい。
  62. 龜井光

    龜井政府委員 賃金不払いの状況でありまするが、実は手元に全国的な数字しかございませんので、東京都のがございませんが、全国的な趨勢を申し上げますと、この賃金不払いの措置につきましては、二十四年から始めておるのでありまして、その累計で申しますと、件数が五万九千四百九十七件ございます。その中で基準局で解決いたしました件数が五万五千二百十一件、すなわち。パーセンテージで申しますと九三%に当ります。これを金額で申し上げますと総累計が二百七十七億五千三百万円でございまするが、解決しました金額は二百六十八億二千七百万円、パーセンテージで九七%という状況であります。
  63. 風早八十二

    ○風早委員 二百七十七億という実に厖大なものがあるようでありますが、これは東京について資料を持合わせないと言われますが、昨日の新聞にも東京の労働基準局の数字は出ておるはずです。月平均五千万円程度の不払いが毎月々々あるということをいわれておりますが、こういつたようなものは、結局主として違反として摘発されて解決されて来ておる件数並びに金額なのであつて、実際これを届け出ない、うやむやのうちになつているというものを加えると、実に莫大なものになる。こういつたような実情に対して、労働基準局立場から申しても、今の人数ではとても違反の摘発ができない、あるいはまたこれについていろいろな所見がおありになると思いますが、どうしたならばこういう違反をなくして行くことができるか、これについての見解をまず承りたい。これはまず第一に労働基準局の方から出してもらいたい。
  64. 龜井光

    龜井政府委員 賃金の不払いにつきましては、二十四年ごろが件数としても非常に多く上つて参りまして、これも先ほどの失業情勢と同じように、朝鮮動乱以後多少緩和して参つております。しかしまだ減少というふうな状況には至つていないのでございますが、基準局の努力によつて、先ほど申し上げましたように、件数におきましては九三%金額におきまして九七%というふうな解決を来しておるのでございまして、これは基準局職員の数の問題と申しますよりも、基準局の職員の熱意の問題もございまするし、いろいろな面でこういういい成績を上げて来たと思います。しかし拔本的な解決としましては、單に監督行政だけで完全な措置が講ぜられるものではございませんし、これは全体の金融の問題にもからみましようし、あるいは生産資材の問題にもからみましようし、いろいろな降路を解決しなければ、この問題は処理しがたいと考えておるのであります従いましてわれわれとしましては、そういう面についても事務的な折衝を進め、この解決ができるだけ早く、しかも円滑に参りますよう努力いたしております。
  65. 風早八十二

    ○風早委員 労働大臣お尋ねしたいのでありますが、この解決という問題は、当然これはやはり労働基準局の整備、労働基準法の厳格な適用、こういうことが一つあるわけです。私はその点についても労働大臣の御見解を聞きたいのだけれども、もう一つ労働大臣として、今日の経済界の不況状態、一方ではごく一部の会社は相当巨額の高利潤を生んでおりますけれども、大多数の会社において非常な困窮状態、破産、倒産というような、状態が出て来ておるのでありまして、これとの関連でひとつ御所見を承りたい。どうやつたならば解決がつくか、あなたの政治的な所見を承りたいと思います。
  66. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 何だか、お話を聞いていると、全般の経済が非常に不況だとおつしやつておりますが、私どもはさようには存じておりません。経済は逐年だんだんと復興しつつあると思うのであります。ただ一部に不況がありますのは、御承知でもありましようが、昨年の春に見越し輸入を不相応にやつた。たとえばゴムでありますとか、あるいは皮でありますとか、油であるとか、いろいろな輸入物資を不相応に入れましたために、その資金繰りに困つておつたのが原因であります。もう一つは、いわゆる繊維業におきまして、これまた不相応な契約をしたために金繰りに困つた。それだけが原因でありまして、全般としてはそう心配したものではございません。この面につきましても政府としてはできるだけの金融の措置も講じつつあり、昨年九月に危機だといわれましたが、これも乗り越したし、昨年また暮れにも危機だといわれましたが、これまた乗り越したのであります。さらにまた三月危機を伝えられておりますが、私どもとしては、別にそう大きな変動があるものとは思つておりますん。ただ、ごく一部の資本をもつて多額な金融をつけて思惑をやるという企業が、整理の運命に陷りますことは当然であります。そうい企業は決して健全な企業でうはないのでありまして、それらの一部のものに不況の状態が来たということは、あるいはやむを得ないことであろうかと思いますが、これらも極力危機を脱すべく努力しておりますので、私どもとしてはそう大きな問題にはならない、かように存じております。
  67. 風早八十二

    ○風早委員 経済の不況の問題については、私はここで論議をする時間がありませんから省きますが、あなたの御見解とは私はまつたく反対でありまして、これはそんな浅い問題じやないのです。ことに日本の経済界が今不況でないというような結論は、実情がこれを裏切つていると考えるのでありまして、この点は結論においても、またそのお考えにおいても、まつたく反対であるとうことだけは申しておきます。しかしながら、そういう前提をもしもとられるとすれば、不況でないにかかわらず、こういうふうな賃金の不払いが多額に上るということであれば、これは他に何か原因がなければならないと思うのです。そういつたような原因については、労働大臣はどう考えておられますか。
  68. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 賃金の不払いの問題は、先ほど基準局長からも話しましたように、朝鮮動乱前においては相当ございましたが、その後だんだん減りつつあり、またわれわれの監督によつて、その大部分は解決しつつある状況でございます。決して賃金不払いはいいことではございませんから、われわれとしては極力これをなくして行きたいと思います。賃金の不払いの状況というものは、やはり経済関係でございまして、全般的によいと申しましても個々の企業につきましては、やり方がまずいという問題もあるでありましようし、またいろいろな点から出て来るでありましよう。やむを得ないところでありますが、われわれとしては、資金は、少くとも企業を経営して人を使う以上は、これに払うことは当然でありますし、また監督は十分いたすつもりでおります。
  69. 風早八十二

    ○風早委員 これは直接は官庁労働者の問題でありますが、労働大臣としての御見解を聞いておきたい。それは今度の予算でも、賃金ペースはやはりすえ置きであります。しかもこれは人事院裁定以下の線でのすえ置きです。今年は政府の見解によれば、国民所得は昨年度よりも五千億円以上もふえるというような見通しなのです。そうなりますと、言いかえればこれは物価が上るということなのです。しかるに賃金がすえ置きになつているということでは、それを考えただけでも実質賃金が下るという方向をたどつていると思うのでありますが、その点はどうお考えになりますか。
  70. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 今の官庁の給與ベースは昨年の秋決定をいたしましたがその後物価は横ばい状況でございます。ちよつと十二月ころに上りましたけれども、これは毎年十二月は上つておるのでありまして、また下るということで、物価はお話のようにそう上りつつあるとは思つておりません。それから今までに物価の上つた傾向を見ましても、生産資材の物価は相当上りましたけれども、消費物資の物価というものは、そう上つていない。むしろ下つておるというものもだんだんと出ておる状況でありまして、われわれの今の見通しとしては、賃金は大体横ばいで行けるものだと存じております。
  71. 風早八十二

    ○風早委員 ところが電気料金一つをとりましても、今度また三割内外の値上げをやるというのです。そうするとまたガスが上り交通費が上る。またそれを原動力としてできる全般の生産物の値段も上るということになるわけです。必ずこれは上るのです。決して横ばいというようなことは考えられない。それをかつてに横ばいというふうな予想をされておりますが、事実今こういう独占価格あるいは国家独占価格というものが、まず手始めに上つておるわけでありますから、何といつても今後物価は上るという方向をたどつて行くことは間違いないと思うのです。そういうことを考えると、とにもかくにも今物価は上らないというかつてな前提をきめて、それで賃金すえ置きを弁護しておられるとしか考えられない。人事院の勧告というようなことに対して、労働大臣としてはやはり労働者に対して一応責任を持つておられる立場から、少くもそこまでは上げるというようなお考えはないのですか。
  72. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 人事院の勧告はでき得る限り尊重して参りまするが、文字通りそのままを採用するという今日財政状態ではないと思います。
  73. 風早八十二

    ○風早委員 大体そういうふうなお考えであればまた労働者の側でもそのつもりにいたします。但し実際物価が上る、そして賃金はすえ置きだ、こうなれば必然的に労働者は賃上げの要求を持つて立ち上ることは言うまでもありません。その責任は当然政府にあるわけです。  次に私はPD工場労働者の現在並びに行政協定以後の身分の問題、あるいはその労働条件の問題についてお尋ねしておきたいのです。これは先般も予算委員会で出した問題でありますが、全然満足の行く答えが得られなかつたのです。しかしながら労働大臣としては、たとい米軍の施設内でもそこで働いておる日本人労働者については、日本の労働法規を適用するという線で当るというお話はあつたと思います。これは私ども一応承つておいたわけであります。この点は現在の具体的な状況でどういうふうな見通しにかわつて参りましたか、その点をお尋ねしたいと思います。
  74. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 目下先般申し上げました線に沿うて折衝中でございます。
  75. 風早八十二

    ○風早委員 目下と言われますが、これは岡崎国務大臣も大体あなたと同じような御答弁であつたと思います。その後いわゆる属地主義か属人主義かという問題が非常に大きな問題として具体的になつて参りまして、そうして結局アメリカは日本に対してどこまでも属人主義といいますか、これは米軍がその施設内外において米人としての一つの特権を行使するというような線が、日本に要求されておるというふうに伝えられておるわけであります。これを裏返しますと、今度はそこで働く日本人については、やはりその特権のもとに従属しなければならないというようなことになる危険があると思うのでありますが、そういう点で、このアメリカの主張というものに対して、日本政府はこれを今日本の国民の要望しておるところに従つてその主張を通される見通しがあるのかどうか、これをもう少し明確にお答えを願いたいと思います。     〔甲木主査代理退席、主査着席〕
  76. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほど申しましたように、米駐留軍あるいはその施設に使われる日本の労務者に対しては、日本の国内法、日本の労働法を適用したいという線で折衝をいたしております。ただいま御指摘になりました点は、裁判の管轄権がどちらかという問題ですが、国内法適用については私が言つた通りでございます。向うの国内法適用されるはずはないのであります。裁判の管轄権は私方ではございません。もし御必要ならば法務総裁なんかにお尋ねなつていただきたい。
  77. 風早八十二

    ○風早委員 では労働大臣の御所管の範囲で問題を出しますが、その場合向うがかりに実際の管理権を持つ、またそれに応じた裁判管轄権も持つ、こういうふうになるとして、しかし日本の労働者である限りにおいては日本の労働法規を適用する、こういう場合に、その経営内に場おいて米軍の保安員というものが直接——しかも現在は保安員だけではございません。東日本重工の下丸子工場あたりの例をとりますと、七重の監督を受けておるそうであります。これは証人を出してもいい、証人がたくさんおるのです。この七重の監督を受けている中で最も手ごわいのが、これこそ武装した向うの保安員である、こういうことを聞いておるのであります。こういつたような状態は、日本の労働法規を適用するという場合に、どういう関係になるのですか、これについて大体のお考え並びに見通しをお尋ねしておきたいと思う。
  78. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 自分のところに労務者を使う場合においては、その使う人がその労務者に対して労務管理するのは当然であります。ですから米駐留軍が日本の労務者を使う場合には、その使う者が労務管理をやる、日本人が使つている場合に日本人が労務管理をやる、その点については同じことだと思います。
  79. 風早八十二

    ○風早委員 そこのところはちよつとくどいようでありますが、もう一ぺんお聞きしますが、その監督者は米軍であるという場合において、米軍が日本の労働法規を適用する、こういうことになるわけでありますか、その点をはつきりしておいてもらいたい。
  80. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 労務管理というのは上労働法規を適用するためのものではないのであります。労務者を使う者がどういうふうに仕事をさせる、どういうふうに仕事をしてくれ、これはどこの工場つて使用者がやつているのはあたりまえのことであります。米駐留軍が日本労務者を雇つている場合には、その米国駐留軍がどういうふうにやれ、こういうふうにやれという労務管理をやります。その労務管理は国内法たる労働法規を適用する労務管理ではないわけです。それはどこまでも国内法規の適用については国内法労働法規に基く監督をやる。労務管理と労働監督というものをちやんぽんにしてお考えなつておるようでありますが、それは違うのであります。
  81. 風早八十二

    ○風早委員 ちやんぽんにしておるわけではないのです。そうするとこういう問題が起る。つまり日本の労働法規に従うとなれば、労働組合を持つ権利、その賃金の値上げ、その他の条件の改善のためにストライキをやる権利、こういうふうものは当然に出て来なければならない権利であります。そういう権利は米軍のもとにおいて使われる場合においても、日本の労働者に確保されるということは明瞭なのですか。
  82. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 国内労働法規を適用したいということは、国内労働法規に規定されたものはみんな含むわけであります。どれを適用し、どれを除くということはできない……。
  83. 風早八十二

    ○風早委員 ですから私は具体的にストライキというはつきりした形で聞いておるわけです。そういうものは事実において許されない。また事実においてではないこれは法規上、つまり工場の規則になつて、その規則が押しつけられている。私がこの前予算委員会の総会で、あなたに具体的な資料を読んでお聞かせしたこともあるわけです。そういうふうに実際に日本の労働法規は完全に踏みにじられておるわけです。こういう状態をこの行政協定の締結において実際払拭できるのかということを私は聞いておるわけです。
  84. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 現存は占領下でありますから、かつてなことはできないのであります。しかし独立後においては日本の労働法規を適用すべく努力をし、折衝を続けているということであれば、おわかりになるじやありませんか。
  85. 風早八十二

    ○風早委員 その見通しはどうですか。
  86. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 見通しは今のところ別に支障のあるようには進んでおりません。
  87. 庄司一郎

  88. 甲木保

    甲木委員 私は簡單に二、三質問申し上げたいと思います。労働基準法の内容はきわめて多岐にわたると思いますが、その根幹をなすものは、労働条件の最低基準の設定と、職場災害に対する補償制度であると思います。この基準設定と並んで、この基準を維持し実現するための国家介入の方式、すなわち行政的の監督について、大臣はいかような御意見を持つておられまするか、お伺いしたいと思います。
  89. 龜井光

    龜井政府委員 監督の方法につきましては、われわれとしましては具体的な問題ごとに処理をいたしておるわけでありまして、いたずらな形式的の法の解釈により労使間に無用の摩擦を生ずることを防ぐ、すなわち具体的問題の処理にあたりましては、妥当性を考慮しながらこの法律を適用して行く建前をとつておる次第であります。
  90. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 この工場監督労働基準の監督の件でありますが、これは昔から同様でありまして、ただ処罰するだけではほんとうに労働者の福祉にならないのであります。私といたしましては工場監督はむろんやりまするが、摘発ということに主眼を置くよりも、指導をして、そういう事態をできるだけなくして行くというふうな行き方に重点を置きたい、かように存じております。それから法規というものは一率に規定されておりまして、しやくし定規にものをやりましてもいけません。要はその個々における労働者に無理がかからぬようにということが主眼でありますから、やはり妥当な指導を行つて行くべきである、かように存じております。
  91. 甲木保

    甲木委員 公共の安寧秩序を維持するという角度から、労働条件の自由意思による決定という原理、つまり職工の酷使を排除すること、または最低限の賃金を確保する思想、これらの原理を保障する裁判制度が、労働関係の実質をこの原理に適合するためには不十分なような気がいたしますが、この点については大臣いかような御意見を持つておられましようか。
  92. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 職工の酷使の問題でありますが、これはかつては年少者とかあるいは女子だとかいうものを無理に使うという時代もあつたようでありますけれども、もう今日の状態においては大体そういうことは私ないと思います。ただしかし、とかく生産能率を上げるという面から、無理がかかりがちなことがあることはあるのでありまして、そこに工場監督の実際の具体的な面においての指導の必要があるのでありまして、昔のようにそう酷使的な状態というものは私はまず心配はない。全然ないことはございませんで、最近年齢を下まわつたものを使つておるようなことも時折はございますから、もちろんが監督はいたしますが、現在の労働基準法は相当の線まで上つておりますので、この面の監督及び運用によつてそう欠くるところはないというように私は考えております。賃金の面は何と申しましても経済との関係から出て来るのでありまして、ただやたらに賃金と申しましても、その企業の経営が成り立たないということになれば、結局労働者失業してしまうという状況になります。そうかといつてどんな状態にでもあまんじていいわけじやありません。これは日本の全体の企業のレベルがだんだん上りませんと賃金のベースも上つて来ない、すなわち国情に伴うものであります。しかしこの面も終戦後七年の間に、日本の企業もだんだん復興いたしまして、先般来質疑のありましたように、賃金は名目的にもどんどん上つており、実質的にも、物価との関連を見ましても、漸次改善されつつあるわけであります。私どもは今後日本の産業は逐年回復するものと信じますし、また賃金もそれに伴つて改善されて行くものだ、かように存じております。
  93. 甲木保

    甲木委員 これは私ども事業をする上において参考までに事務当局お尋ねしておきますが、職場災害の補償について、行政解釈上、たとえば会社の主催する運動会での事故や、記念行事中の会社支給の弁当の中毒などについては、業務上の災害とみなすかどうか。これは事務当局から御意見を伺いたい。
  94. 龜井光

    龜井政府委員 抽象的な御質問でございますので、その個々の具体的な問題としてのお答えはむずかしいと思いますが、われわれの基本的な考え方としましては、その災害の原因が業務に基因する——これは法律上明らかでありますが、業務に基因する範囲につきましては、個々のそのときの労働者状態、あるいは使用者がその労働者に対する支配力の及ぶ限界、こういうふうなことを考えまして、個々の具体的な問題として処理をいたしておる次第であります。
  95. 甲木保

    甲木委員 これは労働者の保護の上からいえば、補償するというのがほんとうでしような。どうですか。
  96. 龜井光

    龜井政府委員 過去の例でいつてそういう事例がございまして、われわれといたしまして業務上の災害だと認定しました例がございます。
  97. 甲木保

    甲木委員 労働問題解決のための特別機関として労働委員会があります。この権限はきわめて多岐にわたつておるのでございますが、その性質もまたさように思われるのでございます。労使間の既存の法的関係の解釈または実施についての対立、たとえば労働協約の解釈が争われ、またはその実施が怠られていることが攻撃される等の場合は、この委員会で解決されるべきであるか、または裁判所での決定を見るべきであるか、御意見を伺いたいと思います。
  98. 賀來才二郎

    ○賀來政府委員 労使間の紛争につきまして、労働関係法のとつておりまする考え方としては、自主的な相互の協議による解決ということを原則とし、かつ尊重をするという態度をとつておるのであります。従いまして、それが解決がつきません場合には、裁判所等によらずして労働委員会という民主的な機関による解決をはかりたい、かような立場をとつておるのが、御承知のように労働関係法のとつておりまする精神でございます。しかしながら御指摘の労働協約の問題になりますると、労働関係法自身の規定におきまして、労働協約の効力というふうな規定につきましてはあまり詳細な規定が入つておりませんので、たまたま法律問題というふうな問題になる場合があります。さような場合には裁判所の判定を願つて、そうして判例の確定によつて慣行の確立に資して行きたい、こういうふうな問題もございますので、そういうふうな場合には裁判所に行くのもやむを得ない、かように考える次第であります。
  99. 甲木保

    甲木委員 もしその場合、裁判所による終局的解決が、時間的にも、またその與えられる救済手段が不満足な場合は、引続いて事議が行われると思うのであります。こういう場合はおそらく解決が不可能になりはしないかと思うのでありますが、いかがでございますしようか。
  100. 賀來才二郎

    ○賀來政府委員 考え方としてはそういうふうな考え方もあると思うのでありますけれども、実際問題といたしましては、多くの場合、賃金に関連いたしました、直接に大衆の利害と非常に大きい関係を持つておりまする争議でも、今までの例で一番長いので五十数日というのがございます。しかし事が労働協約の問題であり、かつ法律問題を含んで参りまして、裁判所に行つているというふうな場合の爭議につきましては、今までの実例から申しましても、さように長期にわたるものもないようでありますし、一応は労使間で、休戰と申しますか、爭議関係をやめておきまして、裁判所に入つておるということでございます。なお今後におきましても、労働協約の法律問題でそういう状態が継続するというふうなことはあるまいと考えておりますが、もしさような状態にありますると、御指摘のように賃金問題でございますならば一と一を足して二で割るという手もありますが、法律問題はさようにも参りません。さようなことから非常に長期の爭議になるおそれがございますれば、やはり労働委員会なり、あるいは労災当局といたしましても、実際的にその解決をはかるというふうなことに行きたいと考えておる次第であります。
  101. 庄司一郎

    庄司主査 最後に、本員もごく簡単に一、二お伺いしておきたいと思います。そうしてジャスト半に一応打切りたいと思いますから、約五分ほどお許しをいただきたいと思います。それは先ほど石野委員との応答で大分明らかにはなつておりまするが、失対事業というものは、もとより基本的な心構えは失業者を全滅することが目的であることは言うまでもないのでありまして、現在失対事業に従事しておる労働者の中から適材適所に、職安と失対事業関係当局者間に協調調和されよく能力を検査——というと語弊がございまするが、有能の材を発見していただいて、たとえばガリ版、謄写版の原稿を書ける青年であるならばそういう方面にあるいはその他適当な方面にぜひ積極的にあたたかい愛の手を伸ばされて、職業をあつせんされる。何年たつても現在の失業者のグループの中にとじ込めて置くということはいけないことであります。まことの正しい自由主義は人を愛することであると思いまするので、大臣におかれては、また直接関係の部局長さん等におかれましては、全国のそういう方面の御会議等において、失業者を逐年減らして行く、そうして適材を適所にピックアップしてお世話してその才能を発揮させてやるというような面に全力をあげていただきたいと思います。本員は十七、八歳の少年のころは、砲兵工廠の人夫であります。東京都の水道のメートルの掃除人夫もやつております。そこで特にお年の若い青年の労働者諸君には前途に希望と光明を把握させていただく、さような指導精神でお世話をお願いしたい、こういうことが第一点。  それから三、四日前の新聞で、長野県でございましたか、これは藤田さんの御管轄と思いますが、婦人少年の深夜業の問題で、労働法規に抵触して摘発されたというようなことが、相当頭数の多い人員であつたかのように、私は新聞で読みました。そこで青少年の時代はまだからだの発育も十二分でありませんので、軽工業等の場合にはむろんある程度の深夜業、時間超過もけつこうでございますが、重労働等の場合においては、青少年、特に生理的な問題もある婦人等の労務については、苛酷にわたらぬよう、指導監督を強化していただきたい。実は私自身が砲兵工廠のトロリー工をやつておつた時代に、自分の不注意もありましたけれども労働者としてのふなれのために、左の腕を圧縮されて手が上らぬのでありまして、身体の一部の障害者となつたのであります。私は特に青少年の労働問題については深い関心を、自分の身体障害の過去の長い悩みを通して、痛切に感じている一人でありますので、特に藤田女史の関係ですが、少年婦人等の監督について一層手をまわしていただきたい。予算措置について、もし、足りないならば、必ず予算委員として、予算委員会で輿論を喚起して、大蔵大臣の反省を願うということもやつてみたいと私は考えておる。そこで適材適所に、あくまでも補導教育を普及徹底させてこの労働者を明るみに出してやる、そういう面においてこれは大臣の御考慮をお願いしたい、その点の御答弁をいただきたいと思います。
  102. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま主査より御指摘になりました二点は、きわめてもつともなことでございまするので、私どもも十分気をつけて努力をいたすつもりでございます。
  103. 庄司一郎

    庄司主査 藤田政府委員の御答弁はございませんか。
  104. 藤田たき

    ○藤田政府委員 ただいまの主査のお言葉は、私たいへんにうれしく存じております。お若いときの御経験を通して、年少者のために非常にお考えくださいますことは、私たちの婦人少年局、また出先の婦人少年局職員室が日夜心を悩ましていることでございますので、ただいまの大臣の御答弁にもありましたように、私たちも一生懸命努力いたしたいと存じております。
  105. 庄司一郎

    庄司主査 それでは、これをもつて休憩いたします。午後は正一時より再開いたしまして、厚生関係に関する御質問があれば継続したいと思います。なお厚生大臣労働大臣が兼務されておりますので、あまりたくさんの説明員や付属の方々は必要ないと思いますが、約一時間半ぐらい、最後の総括質問を行いまして、本第三分科会は終了を告げたいと思いますので、これで暫時休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  106. 庄司一郎

    庄司主査 これより午前に引続きまして会議を開きます。  昭和二十七年度一般会計予算を議題とし文部省所管の残余の質疑を許したいと思います。御質疑ありませんか。——御質疑がないようでありますから、次に昭和二十七年度一般会計予算並びに同特別会計予算を議題とし、厚生省労働省所管等に対する残余の質疑をお許しいたします。質問通告の風早委員及びその他の委員諸公は欠席であります。よつて御通告の質疑を行うわけには参りませんので、これをもつて質疑を終了いたしたいと存じます。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 庄司一郎

    庄司主査 御異議なしと認めます。よつて本第三分科会はこれをもつて終了したいと思いますが、お諮りいたします。昭和二十七年度一般会計予算中文部省、厚生省及び労働省所管昭和二十七年度特別会計予算厚生省及び労働省所管の各案についての討論採決は、予算総会にこれを譲るべきものと決するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 庄司一郎

    庄司主査 御異議なしと認めます。よつてさように決しました。  本分科会はこれにて散会いたします。     午後二時五分散会