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1952-05-22 第13回国会 衆議院 予算委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十二日(木曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 北澤 直吉君 理事 苫米地英俊君    理事 井出一太郎君       立花  靜君    尾崎 末吉君      小野瀬忠兵衞君    小淵 光平君       甲木  保君    川端 佳夫君       島村 一郎君    庄司 一郎君       田口長治郎君    宮幡  靖君       稻葉  修君    川崎 秀二君       藤田 義光君    西村 榮一君       木村  榮君    横田甚太郎君       稻村 順三君    世耕 弘一君       小林  進君    小平  忠君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         通商産業大臣  高橋龍太郎君         国 務 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         警察予備隊         (本部次長)  江口見登留君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (理財局次長) 酒井 俊彦君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君         農林政務次官  野原 正勝君         農林事務官         (畜産局長)  長谷川 清君  委員外出席者         警察予備隊経理         局営繕課長   山田  誠君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 五月二十日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として松  岡駒吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員松岡駒吉辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員山手滿男辞任につき、その補欠として稻  葉修君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  予等の実施状況等に関する説明聽取     —————————————
  2. 塚田十一郎

    塚田委員長 これより予算委員会を開会いたします。  前会に引続きましてこれより質疑に入ります。有田二郎君。
  3. 有田二郎

    有田(二)委員 先般大蔵大臣予算委員長議員立法の問題について質問いたしたのでありますが、その当時予算委員長は御欠席でありましたので、この際あらためて予算委員長の御答弁を承りたいのであります。  国会におきまして独立予算を伴う議員立法が行われまして、これが問題になつていることは、委員長もよく御存じ通りであります。この問題につきましては、やはり根本的な改革を行わない限り、これからの問題として大きな問題になつて来る。すなわち政府行政権国会立法権との間の問題でもあり、かつまたすでに予算が本委員会で決定されているにもかかわらず、他の委員会において予算の伴う立法がどんどん行われるということは、委員会それ自体の権威にも関する問題であろうとも考えるのであります。委員長におかれてはぜひともすみやかに常任委員長会議を開かれて、その他折衝をされまして、あるいは本委員会決議としてこれを出すことも私は考えられるのであります。どうか独立後の一番重大なる問題として、この予算を伴う議員立法の根本的な改革に対しまして、委員長の善処を私は要望いたしたいと思うのでありますが、委員長の御答弁を承りたいのであります。
  4. 塚田十一郎

    塚田委員長 お答えいたします。有田委員のただいまの御発言に対しましては、委員長におきましてもまつたく同感であります。しかもこの問題は至急に解決を必要とすると考えられますので、それぞれ諮るべき機関に諮りまして善処いたしたい、こういうように考えております。
  5. 有田二郎

    有田(二)委員 この際二点外務大臣にお尋ねいたしたいと思うのであります。独立国家になりまして御存じ通りマツカーサー・ラインがなくなりました。それにかわりまして韓国から李承晩ライン、つまり李ラインというものが一方的に宣言されて、これが問題になつておる。また最近台湾におきまする近海漁業に対して、中国政権からやはり一応の抗議らしいものが出ておるやに承つております。またこれは風聞でありますが、インドネシアあるいはオーストラリアにおいても、日本漁業に対して抗議があるやに仄聞いたしておるのであります。すなわち国際公海漁業建前から行きまして、わが国漁業家公海において漁業することは、当然の権利であろうと思うのであります。これに対しまして、今までアメリカ、カナダ、日本の間においても協定が結ばれておりますし、これらに対する外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本としては公海における漁業の自由ということを原則として各国交渉しております。日米加三国の漁業協定はその適例でありまして、今後とも日米加三国の漁業協定ラインでほかの国とも交渉を進めたい。といいますのは、日本公海で何でもかんでも魚をとつていいのだという意味では決してないのであります。魚族保護と申しますか、そうして終局的には魚獲高がむやみに減らないように、長い目から見て利益になるように、お互い協定して、魚族保護のために制限をするというようなことは一向異存はないのであります。終局的にはいいのでありますが、しかしながら、一方的に、ここは自分の国だけでとつて、よその国はとらせないのだということが、公海の中で行われるような種類のことには反対でありまして、李承晩宣言というものもその趣旨いろいろ話をいたしております。台湾につきましては、先般の交渉の個におきましても、先方にも別段そういうような考えはないようでありまして、お互い協定して適当なところで治まるようにしたいというつもりのようであります。インドネシア等につきましては、まだ多少問題があるようでありますが、これも公海漁業の自由という原則に基いて、円満な妥結をしようと思つて種々研究中でございます。
  7. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに、わが国経済界の最近の不況が、主として輸出貿易の不振に基因していることは御承知通りであります。従つて輸出貿易促進が、経済不況打開の重要なかぎであることも自明のことでありますが、現在輸出貿貿のためにとざされている重要な地域——中共地区もその二つの地区でありますが、まずこの方面への輸出貿易促進することも、目下の急務の一つであろうとわれわれは考ええるのであります。もちろん中共貿易は、国際情勢の推移に重大な関連があることでありますから、軽々に断ずることはできないのでありますが、国連協力建前に違反しないような、また対価の獲得が危険でないような方法によつて、その促進方をはかるべきではないかと思うのであります。それには現在の中共地区禁輸品目バドル法範囲まで縮小して、染料、紡績機械など中共希望する物資輸出ができるようにすること、第二は香港中継基地として、その決済方法香港ドルによるオープン・アカウントとすることなどの措置を講じたらいいと私は考えるのであります。いずれにしても中共貿易促進は、重要な問題であると考えられるのでありますし、特に国際関係がありますので、非常にむずかしい問題であると思いますが、日本の現段階に置かれた経済状態考えますときに、私は、この措置について政府は適正な措置を講ずる必要がある、かように考えるのでありまして、これに対する外務大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中共貿易につきましては、朝鮮における国連への措置が行われつつある現在、日本としては、綿花借款その他の経済援助米国から受けておりますし、また稀少物資割当等も受けておりまして、事実上バトル法——をこれを守る守らないは日本の自由であるとしましても、守らなければこれらの経済的援助は望めないのでありますから、国連措置協力する趣旨からいいましても、バトル法趣旨からいいましても、今の制限を緩和することは私は賛成できないのであります。元来日本の行くべき道というものは、民主主義国家といいますか、自由主義国家といいますか、これらの国々と緊密な連絡をとつて足並を乱さないで進むということが第一でありましこれによつて日本の安全も保たれると確信しております。従いましことに領土が非常に接近している日本といたしましては、いやしくも自由主義国家群足並の乱れるようなことをやるべきでないと確信いたしております。また他方中共貿易については、政府は戰前から満州国等に多大の投資を行いまして、また上海、天津その他にも多大の投資がありましその上に領事裁判券、租界、その他いろいろの特権を享有しておりました。その上に立つて中国との貿易の量が非常に多かつた時代を夢みて、今でもやればそういうふうになれるのだということは、非常な考え違いであるということを申しておつたのであります。いわんや今度は相手国統制経済を行つておるのでありますから、ますます貿易は困難であり、また多額を望めない、こう思つて言つてつたのでありますが、実際上国民との間に大きな貿易をやらす自由を認めておりませんから、口で言つて国民の信頼を得ることはなかなかむずかしかつた思います。しかしモスクワ会議等——これは政治的な意味も非常にあつたと思いますが、中共イギリスとの間に一千万ポンド貿易協定ができたと非常に大きく宣伝されておりました。その直後に、英国商社であるジャーデインとかバターフイールドとか、その他大商社ことごとくが中共地区引揚げざるを得ないということは、事実上貿易もできないということにひとしいと考えておりまして、モスクワ経済会議の宣伝に比べますと、非常に皮肉な現象だと思つております。英国は直接に中共政府外交関係を開きまして、英国商社もたくさんあり、外交機関も、領事機関もあり、香港もあつて、あらゆる努力をもつて中共貿易を開拓しようとしておつたことは御承知通りでありますが、遂にこれができなくなつたということは、イギリスがあれだけ中共貿易をやろうとしてもできなかつた、むしろ損の方が多かつたという事実が雄弁に物語つていると思うのであります。御説のように、いろいろの支障を除いて、そのうちのさしつかえのない範囲貿易は、これはむろんさしつかえないわけでありますけれども、やつてみれば、イギリスの例を見てもわかるように、とても期待するようなものはできないであろうということは、これは確信を持つて申し上げられると考えております。
  9. 有田二郎

    有田(二)委員 御趣旨はよくわかつたのであります。ただその御趣旨に沿いまして——特に今度の問題にしましても、マル公ドル八十セントがやみ値では二ドル三十セントというような状態でありますし、日本アメリカ英国との間において、特に総理大臣がおつしやつておる東南ア地区での貿易、この問題が解決しなければ私は解決しない問題である、バトル法を重視し、また民主主義国家協力することは、われわれの当然の義務であり、またそうあるべきであめろうと思うのでありますが、日本の今日置置かれた経済状態考えまして、どうかひとつ外務大臣におかれても、特に米、英、日の間に特にポンドの問題をめぐつて善処していただくと同時に、日本輸出振興に一段の御協力を賜わりたいと思うのでありますが、これに対する御所見を承りたいと思います。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまは何と申しましても、世界的に不況傾向にありますので、貿易の困難は事実であります。また御指摘のようにポンドの実際価値が、二ドル八十セントより下つておるということも、これは争えない事実である思います。従つてわれわれの方からいえば、ポンド圏輸出超過になるけれども輸入ができないというようなことで、ポンドがたまるばかりであるという苦情に対し輸出制限をするような措置も講じておるということで、日本貿易は非常な困難な事態になつておりますのは私もよく承知しております。そこでいろいろの方法によりましこれは原則的に何か方針を定めても成功いたさないと思いますので、インドネシアインドネシアインドインドタイタイというように、各国別一つ一つ困難事態を緩和するような努力をただいまいたしておりまして、支払協定なり、貿易協定なり、その他いろいろの手段によりまして、できるだけ日本のこの唯一ともいうべき生命線である貿易の伸張をはかりたいと思いまして、努力しておりますが、お話の事態もありますので、今後ともできる限り努力もいたしますし、またことに輸出方面に特別の利害関係のある大阪なり神戸なり、あちらの方に外務省は今後直接出向いて業者意見を聞きまして、何とか打開策を講じたい、こう考えております。
  11. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに防衛関係の問題について二、三お伺いしたいのであります。まず不動産接収の問題でありますが、さきに予備作業班作業によりまして、米軍の引続き使用する不動産などは一応きまつたようであります。しかし今後米軍から相当大幅な要求はないのかどうか。その点に対するお見通しと、これら米軍使用土地建物状況などは、定期的に国会に報告すべきものであると思われますが、その点について二点、お伺いいたしたいと思います。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 米軍との間の予備的な調査はほとんど完了いたしまし今までのところでは二、三の飛行場拡張に要する措置が新しく必要になります。それ以外は旧施設のうちで必要のものだけを残しますが、飛行場拡張以外には新たなる土地接収といいますか、収用といいますか、そういうものはほとんど予想されておりません。但し農地でも何でもない山のようなところ、たとえば富士の山麓であるとかいうような所は、演習場として使うことはあり得ると思いますが、国民経済関係のある点で、二、三の飛行場滑走路拡張する意味土地の必要という以外には、新しいものは大体ないと申してもさしつかえないとと思います。それからこの施設等は、必要がなくなればむろん返還されるものでありまして、これにつきましても合同委員会は常に注意をいたしまして、多少でも必要が少くなつた場合には、一部でも接収を解除する方向に向うために、常に準備をいたしております。これらの施設なり区域なりについては、隠すことは何にもないのでありますから、国会等にも随時必要に応じまして、御報告いたします。
  13. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに新聞に報道されるところによりますと、アルゼンチンが近く日本協定を結ぶ段階にある。またフィリピンにおいても上院において一つ決議がなされておるように開いておるのでありますが、日本との間に条約を結ばれた以外の国において、最近どういうような状態各国が進んでおるか、この点を承りたいと思います。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはその段階が非常にたくさんありますから、もし御希望ならば資料ではつきり申し上げますが、ごく簡單に申しますと、条約に調印した国々の中で、批准することがまだ問題となつておる国はおそらくフィリピンインドネシアだけでありまして、四十八箇国のうちの四十六箇国は多少時日に相違はありましても、批准は間違いなくできるものと考えております。それから調印をしない国のうちで、たとえばインドのように招待されたけれどもサンフランシスコへ行かなかつた、こういう国もありますが、インドとかビルマにつきましては、すでに話合いが成立せんといたしておりまして近く平常関係がむろん開かれます。インドにつきましては、すでに外交関係を設定いたしておりまして、大使が先般信任状を捧呈いたしておる、ビルマも間もなくなるだろうと考えております。それからたとえばドイツであるとかユーゴスラビアであるとか、イタリアであるとか、こういう国々国交回復話合いがすでにできておりまして、イタリア大使信任状をすでに捧呈いたしております。それからその他には中立国があります。たとえばスエーデンであるとかスイスであるとか、こういうような国とは日本独立したと同時に、戰争をしておらなかつたのであるから、また通常関係が回復するのでありまして、これらの国々につきましては通商航海条約という、つまり戰争前にありましたものが自然復活することになると考えております。従いまして共産圏国家約八箇国を除きましては、ほとんど世界のあらゆる国と平常関係に入ることができるような状況になりつつあります。フィリピンインドネシア等も、多少遅延いたしますが、条約が批准されないにしましても、両国間にたとえば大使の交換とか、あるいは事務所の設置ができるとかいうようなところでは、さしあたり交通の開かれる道はむろんできることに相なると信じております。
  15. 塚田十一郎

  16. 西村榮一

    西村(榮)委員 委員長にお伺いしたい。私は通産大臣外務大臣両方にお伺いしたいのですが、通産大臣はいつ来ますか、おわかりにならなかつたら御請求願います。
  17. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 承知しました。
  18. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は外務大臣に対しまして台湾政府との間における修好条約につきましては、いずれ外務委員会において詳細伺いたいと思うのでありまして、きようとりあえずお伺いしておきたいと思うことは、かねて論議の中心になつておりますアメリカにおいてまぐろ関税引上げ、それからそれに引続きましてミシンあるいは陶器等雑貨引上げが計画されておるように、この両三日うわさが伝わつておるのでありますが、これらに対して日本政府は何らかアメリカとの間における折衝をされておるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  19. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはたしか数日前のこの委員会におきましても申し上げたと思いますが、このまぐろの問題は、昨年末から起つてつた問題でありまして、下院をまず通過して上院にまわされて、五月上旬に上院財政委員会を通過したわけであります。われわれとしては前々からそういう事情を知つておりましたから、日本の置かれておる実情等は、その都度詳細に先方に通じてあるわけでありますし、十分の説明をいたしたと思いますが、さらに業者代表というべきものですか、代表という名前はいけませんが、業者側でもわざわざ米国に参りまして各方面にこれを説明して来たわけであります。米国政府としてはよくその間の事情を了解してくれたと思いますことは、アチソン国務長官が、日本の外貨の獲得の非常に大きな財源であるまぐろに対して関税をかけるということは、反対であるというかなり強い声明を出しておることによつても明らかであろうと考えます。
  20. 西村榮一

    西村(榮)委員 私のお尋ねしたのは、まぐろの問題もありますが、それから続いて起きて来た陶器、あるいは日本における絹製品ミシンその他の雑貨品輸入に対して関税を値上げしようとする傾向が出て来ておるのでありますが、この傾向は單にこれらの品目限つてそういう傾向が現われておるのか、あるいはアメリカ経済の基本的な動向として、そういう傾向が現われて来たのであるかという点について、外務大臣はどういう御見解を持つておりますか。
  21. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは特に日本目当にしておるものではないと思つております。たとえばまぐろにしましても、ペルー等は非常に利害関係が大きいのであります。アチソン国務長官も、日本及びペルーという字を使つておるようであります。要するに国内産業保護という立場に立つておるのでありましようが、特に最近こういういろいろの動きがあるということは、おそらく大統領選挙等が近く予想されておりまので、選挙の勢いがなかなか強い。これに対して議員等もある程度これを迎えるような形をとらざるを得ないということも手伝つておるのじやないかと思いますが、これは私の想像でありますが、まぐろに限らずその他のものにつきましても、要するに国務劣等の、アメリカ政府見解は、日本ドル獲得するもとになるこれらのものに対しては、それを抑えるということは、結局米国政府つまり納税者日本経済を援助するために、別の負担をしなければならぬということで、意味がないのだという考えで来ておりまして、従つてできるだけこういうものは阻止しようということは、日本政府とほとんど同じような立場に立つております。ただ国会で行われることでありますから、なかなか政府意見ばかりでも行かないかもしれません。財政委員会通過状況を見ましても、決して全会一致とかなんとかいうのじやありませんで、八対五でありましたか、かなり反対もあつたのでありますから、本会議の模様もどうなるかわかりませんし、かりに本会議通りましても、アチソン国務長官の強い反対意見がありますから、あるいは大統領拒否権というような問題も考えられるかもしれません。われわれとしては、国務省等実情をできるだけよく理解させることには努力をいたしますが、あまりこちらで新聞等——新聞はまあ別でありますが、政府があまりにこちらで国会等にこういう問題を強く申しますと、かえつて刺激を与えまして、うまく行くものも行かないということもあり得る場合がありますので、米国国会では、すでに日本アメリカ国会審議権に何か文句をつけるというような言いがかりもあるようなことを聞いておりますので、できるだけ刺激をしないようにして実効をあげたい、こう考えております。
  22. 西村榮一

    西村(榮)委員 御苦心のほどはよく了解いたします。そこで私がお尋ねしておきたいことは、かすかに一つの望みのあることは、大統領拒否権の問題があるのですが、万一これが期待できぬとするならば、アチソン国務長官好意を示して、立法府の値上げ法案通過に対しては、ある程度までの反対の意思を表されておるのですが、その好意を具体的に表わす方法としてこれらのドル獲得手段がある程度まで制約された、その日本経済が負うべき損夫に対して、何らか他の方法について、万一のときは補いをつけてくれるというようなことの話合いがあるかどうか、あるいはそういうふうな希望があるかどうか、日本国会アメリカ国会審議権に容喙しようとも思いませんし、かつまたアメリカ国会が、アメリカ政府が、日本審議権に容喙することも、今後は断固として拒否しなければならぬのでありますけれども、しかしながら両方の自主権を保ちながら、現実において起きた日本経済界マイナス面は、どう補われるかというふうな方面について、何か具体的な御交渉をなさつたか、あるいは希望的な方法があるのか、あれば、言いにくければ速記をとめてでもいいから、率直な御意見をひとつ伺いたい。
  23. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはやはり日本独立国となつて活躍する上におきましては、外国で、これはアメリカに限らず、いろいろの制限措置等がある場合も予期しなければならないのであります。大局的に見てこちらで行かなければほかの方に進出するとか、これは日本のいろいろの独自のくふう、創意によりまして、貿易量の減るのを防ぐという方法は当然考えますけれども、関税がこれだけ上つて、これだけドル獲得が損したから、これを補つてくれというようなことは、少し情ない話であつて、そういう具体的な話をするつもりはありません。しかしながら今申したように、いろいろのくふう、創意よりまして、貿易量の足らざるを補うような努力はいろいろいたしまし、また日本品の、米国のみならず、ドル地域への進出については、もつとよく研究いたしまて、いろいろまだ方法もあろうと思いますので、できるだけ努力はいたすつもりであります。
  24. 西村榮一

    西村(榮)委員 私があなたに質問した要点というものは、ほかにあるのです。ということは、どこにあるかというと、アメリカは近来三、四年間、世界軍備拡張計画に先駆をいたしまして、その指導的立場をとつて来たのでありますが、このアメリカ軍備拡張計画の中には、絶えず軍需生産と民需生産と均衡においては、細心の注意を払つて来られたのであります。けれども、朝鮮事変以来アメリカのとつた生産計画というものは、何と申しましても軍需生産に重点を置かれて来た。従つてその面から来る民需品の不足というものは、これは日本品の相当多量の進出と相なつて来たのであります。けれども朝鮮事変を初めとして、あるいはその他の国際情勢が、若干緩和の兆候を見ますならば、その軍需生生産に重点を置いたアメリカの生産計画というものは、ある程度まで民需に比重が移つて来るのであります。このアメリカ経済の動向を考えてみますならば、そこに今回ミシン陶器、あるいは繊維品、続いていろいろなものが起きるでありましようが、その日本品並びにそれらの品目の、世界各国からのアメリカ輸入される方法については、ある程度までアメリカ産業界を保護するという傾向が、民需生産を保護するという傾向が現われて来るということは、これはおおい得ないのてあります。これはアメリカの財政家であれば、当然その措置を講ずるでありましよう。世界的観点から考えるならば別といたしまして、アメリカ一国の利害関係から見ますならば、その政策をとることはアメリカの財政家として私は当然だと思う。従つて私は、関税の値上げというものは偶然ではないと思う。軍需生産のときには、この補いの方法として、鉄鋼その他が若干コストを無視してアメリカ輸出された。同時に、民需品も輸出されたけれども、国際情勢の緩和から、軍需品の補いというものは日本経済から必要がなくなる。民需品が必要になるというような傾向が現われるならば、くどく言うようでありますが、今回現われた関税の値上げというものは、明らかに偶然ではなしに、アメリカ経済の基本的な世界感覚から来ておる。従つて日本の経済あるいは外交を担当する当局といたしましては、これらの見通しのもとに一応の対策を講じておく必要があるのではないか、私の聞こうとするのはそこなのです。
  25. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは年によりましむろん多少変動はありましようが、アメリカのただいまの基本計画、予算等を見ましても、軍需生産を、たとえば朝鮮の問題が静かになりそうだからといつて、減らすような考えでやつておるとは考えません。かなり長期の、しかもかなり徹底した計画のもとにやつておると考えます。現によく言われます日米経済協力といいますか、その方面話合いを通じて見ましても、かなり軍需生産について力を入れておると考えます。ただ何分にも、日本もそうでありましようが、選挙ということをまえ控え、いろいろ国内方画にも気を配らなければならぬということもありますから、多少ずつ重点が移動する場合もあると思いますが、根本の性格は今申した通り考えます。われわれも、アメリカは重要でありますから、その経済の動向等は始終注意して研究いたします。またそれに応じいろいろこちら施策を立てまけれども、今のところ根本的な違いを生ずるとは考えておりません。またこの二、三年はそういうことはないであろうと思つております。
  26. 西村榮一

    西村(榮)委員 これ以上は議論になりますから、どうかアメリカ経済の動向に深甚なる注意を払いつつ、日本の産業が立つて行くように、通産省とともに外務当局もひとつ細心の注意を払つていただきたい。  次に私があなたにお尋ねしたいのは、先ほど有田さんの御質問もございました中共貿易の問題です。私はある一部の人々が言うように、中共貿易が再開されるならば日本経済が立ち直る、中共貿易こそは起死回生の妙薬なりとも考えておりません。また中共貿易を軽視するという傾向に対しましても、私は賛同しかねる。なぜならば、アジア大陸と日本との間の関係を切断しアジアと日本の経済は成り立ちません。けれども私は、さような過大な期待も過小評価もしない。しかも戰前において日本中共との貿易が殷盛をきわめたのは、日本輸出超過の約六一%は満州、北支の建設にそのまま資本投資をしたのでありまして、貿易外の収益のほとんどを、その資本の源泉として資本投下したのであります。この資本投下の推進力が基本になつて、対支貿易というものが殷盛をきわめたのでありますから、それを今日そのままの形で復活するというふうな考え方を持つことは誤りだと思います。けれども、同時に中共貿易というものはなくてもいいのだ、というふうな過小評価の仕方も私は誤りではないかと思う。それにかわる東南アジア開発の方針が国連並びにアメリカで提唱されており、特に予算も組んでおりますけれども、その組まれた予算はいまだ使われていない。東南アジア開発の問題は遅々として進んでおらない。進まない理由いろいろありましよう。そこで私今問題になつてつてあなたに御質問いたしたいと思うことは中共貿易を過大視もしない、過小視もしない。けれども長い口で見れば、中国日本との貿易の切断ということは、何としてもアジアの不幸です。同時に、日本の経済にとつて大きなマイナスを招来しているということは、これは一否定し得ません。そこであなたにお尋ねしたいと思うことは、先般軽くお尋ねしておきましたけれども、連合軍司令部においてとられた輸出禁止条項というものは、今日私は拘束を受けない、こう考えておる。それから同時に、アメリカが軍事、経済の援助に対して適用するバトル法の適用も、日本は受けておらない。法律的に受ける必要はない。ただ日本がこのバトル法的な制約を、自由民主三義の陣営に立つて国連協力するという立場から、サンフランシスコ条約国連協力という面からのみ日本は制約を受けるのであつて、具体的には受ける必要つがない。しかしながら、法律的には受ける必要はないけれども、政治的には受ける。また考慮を払わなければならぬという二つの面があると思う。そこでこの際はつきりさしておきたいことは、占領軍の輸出禁止条項の法律的な拘束を受けないということは明確です。同時に、バトル法の拘束を受けないということも明確にしておきたい。ただ残るものは、政府ははつきりおつしやらないが、あるいは今日言い控えているかもしれないが、国連協力というサンフランシスコ条約の条項の政治的拘束以外に、中共貿易に対して拘束を受けるものではないと思つておりますが、この法理的見解について明確にしておくことが将来の問題になる、私はそう思うのですが、ひとつあなたの法理的見解を承りたい。
  27. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは法律的と申しますと、国連協力という筋はありますけれども、これによつて何をしなければならないかという厳密な法律的な義務ははつきりしておらないのであります。ただ国連でもつて中共に対して経済的な措置をとつている。そこでわれわれも国連協力趣旨でこれに協力しているだけという自発的な協力であります。バトル法につきましても同様でありまして、これは私は多少あなたと見解の、違う点があります。というのは、たとえば綿花借款を受けている、あるいは稀少物資の配給等国際的な分配、わけ前にあずかつているというような点からいいまして、もしバトル法趣旨日本が守らない場合には——つても守らなくてもこれは日本のかつてといえましようけれども、先方で借款等について考慮しなくなる場合もあり得ると考えますから、そこで事実上の問題として、そういう点も考えなければならぬが、厳密にいいますれば、法律的な拘束は事実上ないわけです。われわれは自発的こういうものを守つて、そして自由諸国家群との足並をそろえて行く、こういうつもりでやつておるのであります。
  28. 西村榮一

    西村(榮)委員 わかりました。あなたの説明は了解いたしますが、その中で訂正を願つておきたいことは、綿花借款並びに稀少物資の割当は、これは世にいう軍事援助並びに経済援助とは違います。これは借款であります。金利がついて来ておる、担保も入つておる。援助の圏内には入りません。従つてこれを称してアメリカから援助を受けておると国民に錯覚せしめますならば、それは大きな誤りだと思いますから、借款と援助とは違うということは明確にしておいていただきたい。同時にただいまのあなたの御答弁で明確になつたことは、これはバトル法の法的拘束は受けないということになつておる。そうすると、私は先ほど申し上げましたように、今度は政治的な拘束だけが残つて来ている。あなたは今国連協力という問題を持ち出されたのでありますが、私はサンフランシスコ条約において日本が受諾いたしました国連協力というものは、こう解釈している。日本はいまだ国連世界政治決定に対しましては、何らの発言力を持つておらない。この発言力を持つておらない日本が、講和条約において義務条項だけを負つた。しかも義務条項をアメリカ初め連合国が日本に負わせるに際しましては、私は日本国憲法を認識の上にこれを負わしたのだと思う。従つて日本国憲法第九条における一切の国際紛争に武力を用いない、日本が永久に戰争を放棄する、その他のこれに類する日本国憲法の解釈から申しまして、国連協力の限界というものは、精神的、思想的な協力であつて、軍事的、経済的なものではない。私は日本国憲法とサンフランシスコ条約国連協力の条項を相対照してそう考える。従つて問題になるのは、そういうふうな解釈のもとに私はあなたにお尋ねしたいと思うことは、今日世界各国において自由民主主義陣営に参画はしておる。独裁政治ないし全体主義政治と闘つて、人類の自由と民主主義を守ろうという決意をしている諸国にして、いまだアメリカから軍事援助、経済援助を受けておらざる国がある。この国はこういうふうな自由民主主義の陣営を守るという政治的観点から考えて、共産国並びにその侵略国並びに侵略国の友邦に対して輸出を禁止する条項というのは、その国がかくのごとき政治的観点に立つて自主的に決定されるのであつて、法的な根拠がなければ、これは自主的に決定される。その自主的な決定の根拠は、思想的に自由民主主義を人類から守るという観点に立つて、それを妨害する物資輸出しないという、これは自主的な判断にまかされておる。私はこう解釈しておる。従つて日本におきましても、その観点に立つて私は連合国司令部の拘束も受けない、バトル法の法律的拘束も受けないとなれば、精神的なあるいは政治的な拘束というものは、以上の後者の国家がとつておる、自主的に侵略国を制裁するのに協力する、侵略国の軍事的能力を助長、増長せしむるの対策を差控えるという立場における自主的な判断だと思う。日本も当然その範疇に属する、私はそう考えるのですがどうでしよう。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りでもりまして、私の先ほど申したのもそういう趣旨であります。
  30. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はこの点が明確になりまして、まことに幸いだと思います。従つて日本政府並びに日本の産業界が、中共との貿易を再開するかいなかということの問題は、この観点に立つて、自主的に判断してやればいいのだ、こういうことに政府と朝野両党の見解が致したということは、喜ぶべき結果でありまして、私はこの観点から中共貿易の将来を考えてみなければならぬと思うのであります。  そこで私は岡崎さんにお尋ねして行きたいと思うことは、今日現実に中共貿易というものが禁止されております。私はこれは正確な資料はないのですが、ある最近における権威ある雑誌の統計によりますと、アメリカから鉄鉱石を輸入する場合においてはトン二十四ドルないし二十七ドル、これが中共から輸入されるときは十三ドル、粘結炭はアメリカから輸入されるときには二十五ドルないし二十九ドル、運賃によつて違いますが、中共から輸入されるときには十七ドル、約半額近く安い。大豆もまた半額近く安い。そこで私はあなたと今政治的論争を展開しようとは思わないのですが、この高いコストにおいて輸入される鉄鉱石並びに大豆を中心とする食糧資源その他において、どこに影響を受くるかというと、この鉄鉱石、粘結炭においてまず第一に造船に影響を受ける。第二にはやはり鉄鋼の輸出価格に影響して非常に国際競争力に影響して来るということになるのであります。私は従つて現実において日本が自由民主主義の陣営に立つて協力するということつは、かくのごとき大なる負担を日本経済が負わねばならぬ。しかも国際競争はますます激化して来るというふうなときにおいて、そのマイナス面の補い方について、何かアメリカとの間における折衝をされておるか。また将来これらの問題につきまして——私は一、二の例を言うただけだ。たくさんある。先ほど言うようなアメリカ関税の値上げも、さつき私が話したようなことではなしに、もつと深い経済の動向にからむ日米経済の出題に通ずる対立面が生じて来るのですりが、しかしそれらの日本経済マイナス面、自由民民主主義の陣営に立つて日本協力するというために負わなければならぬ経済的なマイナス面について、政府はこれをアメリカ折衝されておるか、あるいは将来折衝される意思があるか、これを伺つておきたい。
  31. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまずその中共地区から一体粘結炭や鉄鉱石や大豆が、そんな日本考えているように来るかどうかということは、私はいろいろの材料からはなはだ疑わしいと思いますが、その点は別としまして、日本のただいま当面しておるいろいろ困難につきましては、むろんこれはアメリカ政府とも——従来は占領軍当局でありますが、引続き米国政府と十分説明もいたし、話合いもいたしております。また今後も当然これはいたすのであります。その間において日本の経済の自立という冷については、われわれはもちろんでありますが、米国政府も非常に大きな関心を持つております。双方でできるだけ話を進めて行くつもりでおります。
  32. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は今通産大臣もお見えになりましたから、外務大臣通産大臣のお二人に質問いたします。どちらでもいいですから、権威あるお答えを願えればけつこうであります。  それはほかでもないのですが、冒頭申し上げましたように、アジア大陸との貿易は遮断されて、そのかわりというわけではありませんが、しかしその意味も含めて東南アジアの開発計画というものが今日話題になつておりますが、これはなかなか実現に時間がかかる。この時間がかかる間における日本経済のバランスとマイナス面をどこで取りもどすかということが、現下緊急の対策でなければならぬ。そこで私はそれらの点を一応頭に入れて、ごく端的にお伺いしたいことは、中東貿易との間においてどういう関連性を日本は持つておるか。先般イランから代表が見えて、イランの油を買つてもらいたい。イランは今日三千五百万トンの製油能力がある。しかしてイギリス初め外国の技術的援助がなくても、最低六百万トンの製油能力があるから、これをひとつ若干日本で買つてもらいたい。そのかわりとして繊維、薬品、雑貨品をバーターでしたいというような申出があつたと聞いております。が、しかしながら外務省初め通産省、政府当局は、どういう意味か、きわめてこれを冷淡に扱われたのであつて、イランの代表ははなはだ失望して帰られた、こういうことであります。政府は、それは公式の話ではないから答弁しにくいというようなことで、また答弁もしにくければ、私はあえて答弁は求めません。けれどもこれは現実として現われて来ておることは、たとえていえば、二月の十九日においては、イタリアは中東石油会社を通じまして、イラン国営会社との間において、年間二百万トンの原油を十年期間で輸入する契約を結んで、その決済方法はバーター制になつておる。これはイタリアの経済を建て直すのに著しく役に立つたという報道を新聞はいたしておるのであります。かりにモサデグ首相の側近が日本に来ての話は、政府当局は関知せざるところであると一応逃げても、しかし現実にその前後において、イタリアは年間二百万トンの原油をバーター制において契約した。これにおいて、イギリスやあるいはアメリカから買つておる油よりも非常に安く、同時にその見返りとしてイタリアの製品はイランへ出て行つておるのであります。こういう現実をお考えになつて外務大臣並びに通産大臣は、これらの地域との貿易の問題について、いかなる方針を持つておられるか、一応承つておきたい。
  33. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 お答えいたします。イランの問題は、昨年度のイランに対する輸出は四百二十六万ドル輸入は七百四十九万ドルになつております。今イランの石油問題で御質問がありましたが、これはイギリスとの間にいろいろな問題が解決しておりません。     〔有田(二)委員長代理退席、上林   山委員長代理着席イギリスの方では、イランから輸出をすればそれは差押えをするというようなことを言つております。この問題が解決しなければ、ちよつとむずかしいことだと思います。
  34. 西村榮一

    西村(榮)委員 イランから輸出をすれば、イギリスが差押えするという、その物品を差押えするということは、今日のイランとイギリスとの間における問題であつて、一体そういうことが法的に可能なのか。イランが日本に対して油を買つてもらいたいという値段は、一バーレル三十セントだという。今日この一バーレルの油をアメリカから買つておる値段は、あなた御承知通りドル八十セント、六倍です。しかも日本輸出が行き悩んでおる。滞貨が激増して不況を招来している。こういうふうなことに今の不況の原因がある。しからば一体イランと日本独立後において貿易を再開して、その物品をイギリスが押えるという法的根拠はどこにあるか。イギリスにそれだけの権利があるか。イギリスは東南アジアに対しまして、日本輸出を抑制するために、あらゆる政治的な対策を講じている。これはどこの国でも自分の商品が世界各国に出て行くということに努力することはあたりまえなのでありますが、それもやはり商業的な採算とルールにおいてなされるべきであつ、イギリスが軍艦を持つておるからといつて、イランから輸出されるものはこれを抑えるということの法的根拠は、一体どこにあるか。またそういう法律に日本が拘束を受けなければならぬ理由がどこにあるか。この点を承りたい。
  35. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 これは主権の問題で、イギリス政府がどういう態度に出るか知りませんが、石油会社がそういう権利があるという主張をしております。ところでそういう危険があつても、日本の石油業者がイランの石油を輸入したいという申出がありますれば、通産省としては研究をいたしてみます。今まではそういう何はないのです。
  36. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、それはイギリスの石油会社はそういう主張をしておるが、その危険を回して、イランの油を日本輸入することを計画する業者があれば、その業者に許可を与える、こういう意味ですか。
  37. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 そういう申出があつたら、さつそく検討してみます。
  38. 西村榮一

    西村(榮)委員 それなら私は百歩譲つてお尋ねするが、許可を与えないということになるならば、その根拠がありますか。
  39. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 第一に研究してみなければいかぬのは、輸入を承認するときには外貨を与えなくてはいけないのですが、その与える外貨が非常に危険であるということになれば、政府としては研究する必要がある。それを申し上げたのであります。
  40. 西村榮一

    西村(榮)委員 それならば、私はあなたにお尋ねするが、国際法に基かず、かつまた日本がそういう拘束を受けないのに、発生した危険に対して、これを外交的手段あるいはその他の政治的手段において取除いて、日本の国益を守るということが、日本政府に与えられた責任ではないのですか。しかるに何も法律的な根拠もないにもかかわらず、他の国が軍艦を持つているからという立場においてのみ、その恫において、この貿易に何らの対策を講じてない。業者が危険を冒してやるという場合においてのみ、初めて外貨保全の意味においてこれを検討するということであれば、政治というものはいらないじやないか。政治というものはそういうものではない。不法なる行為に対し、一つの国際法、国内法並びに商習慣に基いて、その不法なる行為を排除し、交渉して、その国の利益を保護して行くということが、政治の責任じやないですか。どうなんです。
  41. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 しかしどうでしよう、そういう御議論も成り立つかもしれぬが、外貨を与えても、はたして商品が入るか入らぬかわからぬ。その点を一応研究をするということは必要なのじやありませんか。そうして今イランの石油の問題については、国際裁判の問題になつておるそうですから、その結果を見るのが私は常識だと思います。
  42. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 できるだけ簡潔に願います。
  43. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は今大臣とそういう禅問答的なことをしておる時間がありませんから、これで打切ります。けれども当然これは政府当局として、イランの油が幾ら、同町にアメリカイギリスから買う場合においては幾らであるというような等差をよく比較研究して、それが安くていい品物であるならば、イランに対してどういう弊害が生じて来ておるか、この弊害をどう除去して行くかということは、今私の質問があつたから検討するのではなしに、平素から検討して行くのが当然である。特にこの危険を冒して、私が先ほど申しましたように、すでにイタリアとイランとの間においては、二百万トンの油がバーター制において契約が成立している。ただ日本だけがそれが成立しないということはあり得ない。当然その当時から、イタリアから出し抜かれぬように、日本も油の欠乏国なのでありますから、対策をとつて行くということは、通産省の責任ではないか。あるいはあなたはお年を召しておられるから、それまで勘がまわらないかもしれませんけれども、どうかそういう点をよく考えてやつていただきたいと思います。  時間がありませんから、最後に岡崎さんにお伺いしておきたいことは、けさの新聞を見ますと、外務委員会における答弁の中で、アメリカからの外資導入が伝えられているが、政治借款は行うべきでなく、米国考えていない、外資導入はコマーシャル・ベースによるべきであるという意味答弁をされておるのでありますが、この通りですか。
  44. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りであります。
  45. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、総理大臣が本年の予算、編成にあたつて、かつまた大蔵大臣予算編成にあたつて、外資導入において日本の経済が安定し、日本の経済の発展があるのであつて、これによつて国民所得が一二%ふえる、一二%国民所得がふえるから、防衛費千八百三十六億円は、これは負担できるのであるというような御説明をされたのでありまして、日本経済再建の原動力とし外資導入の問題は施政演説に取上げられておる。しかも今から週間前に経済団体において同様の趣旨を述べられておるのであります。そうすると、あなたの今の御見解と総理の南明とが違つて来ることになるのでありますが、それでさしつかえないのですか。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちつとも違つていないと考えております。
  47. 西村榮一

    西村(榮)委員 違つていない理由をお示し願いたい。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どういう問題で外資が入つて来るかわかりませんが、総理は政治借款、つまり西原借款というようなものを考えているのではないと、私は確信しております。
  49. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、あなたの言われるのは、民間借款という意味ですか。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 民間借款でも政府筋の金でありましても、要するにある事業を興す、ある仕事をやる。そのためにちやんと利息を払い、そうして元金の償還も商業的採算に合うような借款であれば、これは問題ありません。堂堂と借りてよろしいと思います。それが民間の金であろうと政府の金であろうと、問うところではないのであります。ただ西原借款という、言葉は悪いようでありますが、全然政治的の理由で借りるような金のことを考えているのではないと私は確信しております。
  51. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 一問に願います。
  52. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは総理大臣が外貨導入を声明されたのは——これは総理大臣にお伺いしたいと思いますが、あなたは政治借款は不可能である、こう言われておる。しからば民間の外資が入つて来るのかどうか、この見通しがあるのかどうか、これを承りたい。
  53. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は政治借款が不可能だとは決して言つておりません。政治借款が不可能だというのではなくて、政治借款というものは考えるべきものでない。そうかといつて政府筋の金は政治借款という意味ではないのでありまして、政府の金であろうと民間の金であろうと、たとえば日本の基礎経済の建設に充てるような種類のものは、これは政治借款ではないのです。たとえば時の政府を強くするために金を借りて来るとか、あるいは時の政府が金がなくなつてしまつて、財政ができないから金を借りて来る、こういうのが政治借款だと私は考えております。そういう意味ではなく、コマーシャル・ベースに乘つた借款を考えている。これは民間であろうと政府筋の金であろうと、いろいろ困難はあろうと思いますが、できないことはない。現に民間の方は入つて来ておるし、政府筋の方も入つて来るかもしれない。これは努力次第だと思います。
  54. 西村榮一

    西村(榮)委員 よろしゆうごございます。それでは結論に入りましよう。私は民間外資が入る場合においても、日本の企業で引合うものだけが入つて来て、しかも経営権を支配されるという最近の外資導入のやり方につきましては、十分検討を加えなければならぬと思う。しからば一面政治的借款が不可能であるか、あなたに言わせると、不可能であると言う。政府が借りても、それは政治的借款、これはその通りです。けれども、私どもの総理大臣の施政演説に期待し、過去五年か六年の間において、日本が外資の導入に期待したのは、二つあります。一つは、先ほどお話したように、中共貿易等が遮断されて、しかもアジアの後進地域の開発が具体化しておらない。当然日本が自由民主主義陣営に立つて協力する場合においては、多くの経済的な負担が伴つて来ている。そのマイナス面をどういう形で補うのであるか。一面日本の金利が今日割前後である。アメリカの金利は二分七厘である。それに危険料を若干加味して安い金利の外資が入るならば、その金利の差において、日本の経済の運転資金、設備資金が拡大されて行く。こういうふうな意味におけるつの外資を言う。もうつの外資を要望したのは何かというと、私は言いたくないことではあるが、B二九の襲撃によつて日本の国吉が焼失した。このときにおける損失は概算で七百億ドルだと言われている。日本は戰争の責任者をもはや処分いたしました。この七百億ドル日本の国土の焼失によつて生じたものは、経済的基盤の崩壊であります。ひいてそれは国民生活の低下であります。この経済的基盤を拡大し、国民生活をある程度までの水準に引上げて、同時に日本が民族自衛の原則に基く自衛力を持たなければならぬとするならば、その経済的な基盤を確立する意味においても、当然日本の経済態勢というものは再編成しなければいかぬ。こういうふうな点から考えてみると、当然これは西原借款その他の不健全な借金にあらずして、日本経済を再建して行く、同時にそれはつの損失の補償というと語弊つがありますが、そういう意味も含まれ、同時に日本の経済の拡大、その拡大の上に立つて日本がみずから経済的にも、あるいは軍事的にも、日本を守り得るという態勢を確立する経済的基盤を、この外資導入の安い金利によつて拡大して行こうというところに、日本国民並びに日本政府が待望した外資導入の要素がある。この二つがある。これに対しましてあなたはどうお考えになつておりますか。私は時間がありませんから、この外資導入の問題につきましては、やがてあらためて大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、この二つの問題を国民は熱望しておつたのが、外資の導入です。従つて私は繰返して言いますが、日本のもうかる産業だけにアメリカの金が入つて来て、しかもそれは経営権をとられてしまう、もうからない企業には入らぬというのが、いわゆるコマーシャル・ベースの名に隠れたアメリカ資本による日本産業支配権の確立、これをわれわれは要求しておらないわけです。少くともアメリカが正義、人道をたつとぶならば、B二九における非武装都市を爆撃した責任、同時に自由民主主義陣営に参画しておるという立場から日本経済が負うところの負担、この二つの問題をどう解決するかというところに、外資導入の問題があるのですが、あなたの御所見はどうですか。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 たいへん長く御高説を拝聽いたしましたが、私は要するに時の政府が政治上の必要として使うような借金を政治借款といつておるのであります。そういうものは考えるべきものでない。しかし長い目で、いかなる政府におきましても、つまり国民生活というものを、国民経済というものを対象にして行われるものは、これは政治借款でない。これは政府の金であろうと、民間の金であろうと、歓迎すべきものだと思つております。ただコマーシャル・ベースというものは、ただもうかるばかりのものでもないと私は思います。電源の開発等いろいろの問題があると思います。これらは大いに努力して、今後とも外資の導入に力を尽したいと考えております。要するに、国民経済の改善といいますか、それに役立つような各種の借款ができれば非常にけつこうだと思つて努力しておる次第であります。
  56. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、今承つておるところを私はけじめをつけておきたいと思うのだが、西原借款的な、その時の政権を強化するための不健全なる政治借款というものはあり得ないが、しかし政府を通じて日本の電源開発その他における日本の経済基盤の拡大のために行われる、しかもそれは償還の計画が立つて十分の金利の補いが立つて行く産業に対しては、政府を通じて外資が入る見込みがついておるのだということに解釈してよろしいか。前段のいわゆる不健全なる赤字に対して補いの意味ではないが、しかしそれ以外の健全なるものに対しては、今言うような直接日本の産業に入つて来る外資ではなしに、政府を通じて入つて来る道もあるのだ、また確信があるのだ、そう解釈してよろしゆうございますか。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 確信があるとか、見込みがあるとかいうことは申しません。われわれはそういう方面努力をするというだけであります。
  58. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではこれで終ります。
  59. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 井出一太郎君。
  60. 井出一太郎

    ○井出委員 簡單に岡崎さんに二、三点伺います。ただいまの西村委員の質問の多くの部分を占めておつた、たとえば中共貿易という問題にしましても、これは吉田書簡による国府の選択、こういう意思決定に大きく端を発しておると思う。これについてはすでに論議が尽されておると思うのですが、一体この吉田書簡というものは、国際法的にいうならば、条約なのか、協定なのか——われわれはそうは思いませんが、一体この書簡がどういう性格を持つており、国内的には国民をどう拘束するか、あるいは日本の外交史上において、かような前例がすでに幾つがあつたか、この問題を専門家の岡崎さんに伺いたいと思います。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田書簡は、時の政府の首班である吉田総理大臣が、日本政府としてはこういう方針で行くつもりであるということを述べたばかりでおりまして、それが実際の条約になつて国会の承認を得れば、国民を拘束する、それでなければ拘束はいたしません。
  62. 井出一太郎

    ○井出委員 その前例がありますか。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ここで一々前例をあげることはできませんが、こういう種類のものは、日本のみならず、よそにもいろいろあると思います。決して前例に乏しくないと思います。
  64. 井出一太郎

    ○井出委員 これはアメリカ上院の外交委員会において相当に問題になつた点でありまして、これがアメリカの強制によるものかどうか。スミスあるいはスパークマン、これらの人々の証言によれば、これは強制ではなくて慫慂だ、こういうふうなことにもなつておると思うのであります。それでただいま外務大臣は、これは国会の承認を受けるなりすることによつて条約にならなければ国民を拘束しない、こう言われまた。われわれはこの吉田書簡なるものが、きわめて秘密独善のうちに発表されたあの経緯に対しましても、実はまことに不満を持つておるのでありますが、それが後継内閣を拘束する。われわれ次期政権を担当しよう、こういう考えのもとにおいて、こういう前内閣の跡始末をするのではまことに割が悪いのでありまして、これを伺つておきたいと思います。
  65. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは吉田総理大臣意見でありますから、別に後継内閣に対して拘束するような国際約定ではないのであります。
  66. 井出一太郎

    ○井出委員 これに対してダレス氏がやはりアメリカ上院における証言の際に、吉田内閣を信頼し、なおかつ日本国民の大多数はそういう方向をとるであろうという期待をしておる、こういう意味の証言をしておられると思いますが、これに対してどんな感想をお持ちになりますか。
  67. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田内閣は、国民大多数の支持によつて、衆議院の絶対的の多数をとつておる内閣でありますから、その首班の吉田内閣総理大臣の言つたことは、要するに国民の大多数の支持を受けておる、こう考えるのは当然だと思います。
  68. 井出一太郎

    ○井出委員 この問題に対しては、先ほどの御答弁の中で、必ずしも国民を拘束するものではない。同時に後継内閣に対しても同様である、こういうふうな確言がありましたので、これ以上は申し上げません。  それから条約の中における西南諸島その他の信託統治の問題でありますが、これについては、おそらく講和発効後に、その具体的な内容が明示されるであろう、こんなふうに期待をされておつたのでありますが、独立いたしました今日の段階において、これらの何か具体的な内容がぼつぼつおわかりになつておられるでありましようか、これを伺つておきたいと思います。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ聞いておりません。
  70. 井出一太郎

    ○井出委員 沖繩、小笠原の信託統治という問題は、これは私は対日平和条約一つの汚点であつた。こう考えております。現地住民の不満はもとより、これはアジアの諸民族に対しましても影響するところは決してよい方向へ出てはおらない。たとえばインド見解などもその端的な例であろうと思うのでございますが、こういうアジア諸国民の感覚というものから関連をしまして、アメリカ国内にもこれに対する反省がありはしないか。従つて現地民の要望にもこたえて、近い機会にこれが日本側に還付をされる、そういうふうなことが期待されませんかどうか。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田首席全権は平和条約に対しまして、サンフランシスコで欣然としてこれを受諾するということをはつきり明言されまして、また平和条約国会の圧倒的多数によつて可決されたのでありますから、その内容につい私はとかくの意見を述べる立場にないのであります。さよう御承知を願います。
  72. 井出一太郎

    ○井出委員 私はその内容というよりも、その後の経過、推移にかんがみて、アメリカ国内に具体的な線が出ておるのではなかろうか。外交の首班であるあなたが、そういう情報をどの程度にキヤツチされておるか、こういうふうな点をむしろ伺つたのであります。けれども、時間の関係からそれは端折りましもう一つ伺いたいことは、国連加入という問題がすでに国会においても決議になつて、それが国連当局へも申達されておると思うのでありますが、しかしこれは大国の拒否権その他によつて、あるいはペンディングにされるというおそれもあるかと思うのであります。そういう場合に、日本国連に加盟でき得ない。しかもなおかつ合衆国が国際連合に提案をする何らかの形による信託統治、これが国連に加盟を許されない日本に対して施行できるかどうか。国際法その他の関連もございましようが、この点を明らかにされたいと思います。
  73. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは国連に加盟するとしないとを問わずできることであります。
  74. 井出一太郎

    ○井出委員 もう一点、対日平和条約はヤルタ協定というものをはつきりと破棄したのだ、こういう見解を是認せられますか。
  75. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ヤルタ協定というものは、ソ連やアメリカイギリス等の間の秘密の協定であつた承知しております。これはそれら関係国の間の問題でありまして、われわれの方には全然関係がないことであります。破棄したかどうか、そういうことは私は聞いておりませんが、かりにそういう問題がありましても、三国間の問題であります。日本には全然関係がない、こう考えております。
  76. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 横田甚太郎君。
  77. 横田甚太郎

    ○横田委員 外務大臣に質問する前に、まず予算委員会運営の実権を握つている自由党にお尋ねしておきます。聞くところによりますと、外務大臣は本日参議院本会議があるので十二時半に帰るそうですね。そういたしますと、これから質問しても時間がないのです。これではむちやくちやなんです。まだ議会では破防法が通つておらないのに予算委員会の今度のやり方では、破防法より以上の反共対策の実施をやつているようです。これではわれわれが時間的に計算いたしましても、総理に対する質問さえも十分あつたのです。総理のあとをもらつた外務大臣に対する質問が十分ない、六分ほどしかない。私は今度の予算委員会ては共産党から一人質問しまして、二十八分しか使つておらない。二十八分です。こんなむちやくちやなことはないので、こういう解決を一体どうしてくれるのかということを自由党の人に聞いておきたい。たしかそれをごまかすために、何か運営係の人たちがおつたはずです。理事の人たちがおつたはずです。それが今おらない。その点を委員長に確かめておきたいのであります。それともまだこういうふうな破防法という法律がなくても、こんなことをやりたいのが自由党の正体と解釈していいのか、これが一つ。われわれはこういうようなことに対しましては、まだ破防法が通つておらないのだし、議会に私たちがおるのですから、当然質問権、審議権のためにあくまでも公平な時間の割当を要求いたします。五分か六分では質問するときめた原稿を整理するだけでもかかつてしまう。そんなべらぼうなことがありますか。どうしてくれます。
  78. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 議事進行の発言ですか。委員長に対する質問ですか。
  79. 横田甚太郎

    ○横田委員 質問できないじやないですか。だから外務大臣は十二時半以後もおるのか、おらないのか。あなたが私の質問要旨を整理して、六分間で一ぺん質問してみなさい。
  80. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 委員長考えを申し上げます。委員会としては、あるいは自由党という言葉が出たから申し上げますが、自由党としては、できるだけ野党の方々に多くの時間を、過去においても、現在においても、与えて参つたつもりであります。むしろ与党の議員の発言は押えて、ほとんど野党の諸君に発言の機会を多く与えておるというふうにわれわれは解釈いたしておりますので、ただいまの御質問は当らぬと思います。  なお外務大臣に対する質問は、大体外務大臣は十二時半まで、こういうことになつていて、その範囲内で割当てをしたのでありますが、あなた以前の発言者に、協定よりもやや時間のずれがあつたかのごとく解するのでありますが、その結果、あなたの発言の時間がそういうふうになつたのでありますから、五分や十分は外務大臣にいてもらつて発言を続けていただきたい、こういうように考えます。
  81. 横田甚太郎

    ○横田委員 一時までおつてもらいたい。そのことが一つ。それから……。
  82. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 何も発言をあなたに許しません。だからそういう議論はやめて、時間がないのであるから、さつさと本論に入つていただきます。横田甚太郎君。
  83. 横田甚太郎

    ○横田委員 それはいかぬですよ。あなたの方は言いぱなしで非常に都合がいいのだが、こつちは悪い。それなら私は伺いますが、共産党の今度の予算委員会の審議の実態の中において、あなたたちの議事の進行に妨害したですか。默つて見ておつたときには、こういうふうに質問時間を縮めたじやないか。だから私が今ここで聞くのは、審議のために必要な時間を正当に判断するために聞いておるのです。これは作戰上当然必要なことです。だから外務大臣が十分おることと、これからなお三十分おることと違うのですから、その点は体どうなんですか。それをはつきりしてください。いつものやり方のように、総理に対してこの手を食つた前例があるのです。
  84. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 横田君の希望に十分には沿えませんが、やや沿えるという外務大臣答弁を得ましたから、十二時四十五分まで一応発言を願います。その以後はまたその以後で処置をいたしましよう。
  85. 横田甚太郎

    ○横田委員 ややこしい条件ですが、まあやりましよう。第一に伺いたいのは、日本外交自主権の回復の内容です。これを承りたいのです。これは速記録からひつぱりだしていろいろ整理してみると非常におもしろいのですね。たとえば川崎氏に対する吉田首相の答弁として、なるべく外国との間に親善関係を結んで、円満に外交を遂行したい、それからまた自由国家のものをもつて目的としてはおらない、共産主義国から来た交渉がない、広く日本国としては円満な関係を打立てたい、今後は主として経済外交を打立てねばならない、こういうようなこを言つておるのですね。それは何かかわるものがあるように思うのです。しかし実体においては、逆の方向に行つておる。だから私が聞きたいのは、日本が外交自主権を回復したその内容をどういうふうに現わしておるかということを具体的に、言葉だけではなしに承りたいのです。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 言葉でなければ申し上げられませんが、外交自主権は完全に持つております。どこの国にも制肘を受けておりません。これからやることはすべて日本政府考えによつて行うのであります。
  87. 横田甚太郎

    ○横田委員 今まで日本にこの外交の自主権のなかつたということは、第二次大戰、日本の名前で呼びますと、大東亜戰争の結果であるということはお認めになるのかならないのかということが一点。もしそうであるなれば、この外交自主権を失いました大東亜戰争なるものは、一体どういう意味合いにおいて日本に外交のもつれを招来したと考えておられるかということが一点です。私たちが自由党に、また自由党を代表しておるところの外務大臣に承りたいことは、その解決をしたことがすなわち外交自主権の内容になるのだと思う。それをさせないでじやましておつたのアメリカの対日干渉、いわゆる占領武力専制ということになるのだと私は思う。それを経済的な面から見ると、バトル法日本に対する適用であり、その適用以上の戰略物資に対する不当な経済的な貿易の面での圧迫であり、また外交の面におきましては、サンフランシスコ講和条約においてはつきり示されておりますように、アメリカを本位にした世界的なものの考え方であつてアメリカにのみ特権を許して、それ以外の国が地球上に現存するにもかかわらず、これを見ないようにせよというのが、すなわちアメリカの行き方である。それをわれわれは押しつけられておつた。それを排除し、それをなくしたところのものを今度日本外交は現わさなくてはならぬと私は思います。だから独立の回復とは、米軍の都合のためにやつてはいけなかつたものを、今後はやつてもよくなる面を見出すことに努力するのが、日本外交の自主権回復の第歩であると思うのですが、この点に対する考え方。その四点をお伺いいたします。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外交権の喪失は大東亜戰争の結果とも言えるかもしれませんが、要するに連合国が日本を占領したという結果になるわけであります。あなたのおつしやるように、アメリカの都合のいいようになんということは、アメリカ考えておりませんし、日本考えておりません。しかしながら、私はアメリカとの間にできるだけ緊密な協力を打立てて行くべきものだと確信しておりますから、今後もできるだけ密接な関係を維持して進むつもりでおります。
  89. 横田甚太郎

    ○横田委員 連合国が日本を占領した——それでは占領したのは、一体なぜ占領したのですか、それを承りたい。大東亜戰争だけが原因でないように言われますが、大東亜戰争によつて現わされているように、日本が国内的な問題の解決のつかないのを不当なのがれ方をした。それをアメリカが押えるためにやつたものじやないですか。だから私があなたに伺いたいのは、連合国が占領したというようなことを言つて飛躍されますが、その占領した原因は何であつたかということをはつきり承りたい。
  90. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ポツダム宣言を日本が受諾したからであります。
  91. 横田甚太郎

    ○横田委員 ポツダム宣言を受諾した原因は何であるかということを聞いているのです。そういうようなつまらないことをごたごた言うても何にもならいじやないですか。だから国会論議は浮いているのじやないですか。だからあなたは日本は非常によく行つていると思い、またアメリカ日本を占領しているところの司令官どもがそういうようなことを言つている反面において、五月日にアメリカの自動車が燃えてしまう。それに対して道行く人々が拍手喝采する。こういうような反米的な気分が台頭して来るのじやないですか。ポツダム宣言を受諾した——そんなことは子供でも知つていますよ。そんなことは子供かなんかの百科辞典か年鑑にでも書いておいたらいい答弁です。なぜポツダム宣言を受諾しなければならなかつたか、なぜ連合国が占領したのか、そういうことについて深く反省する意思があるかないかということです。これを徹底的に追究したいのですが、おそらくこれに対しても満足な答弁は得られないでしようから、この点はあつさり聞いて、次の質問に入ります。それをまず答えてください。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ポツダム宣言を受諾したのは、日本が戰争はもうとてもいかぬというので受諾したのであります。なお今おつしやつた言葉のうちで、アメリカの自動車を焼いて国民が拍手喝采したなんということは、まつ赤な偽りでありまして、これはごく少数の最も野蛮な下等な連中がやつたことでありまして、国民全体は非常な蹙蹙をもつてこれを迎えておつたことは間違いありません。
  93. 横田甚太郎

    ○横田委員 枝葉末節的な点で御丁寧な御答弁をもらつているのですが、自動車を焼いて拍手喝采した、これは一部少数だと言いますが、こういうことは一部少数とも言えるし、多数とも言える問題なのです。政治家というものは寛容な心を持ちまして、こういうような現象があつたら、それに対しましては、たくさんがやつたのだろうか、少数がやつたのだろうか、というようないろいろな論議深く公平に半断してこそ、あの原因がなくなる政治がやれるのです。あなたがもしそれを一部少数ということを言つてつてごらんなさい。日本の各地で今に何回もこんなことが起りますよ。だから恐れて破防法をこしらえておるのじやないですか。こういうことはあなたに対してもつと憎たらしく言わなければならぬのですが、時間がないからどうにもならぬ。  とにかくまず私が伺いたいのは今度の大東亜戰争に入る前に、日本が懸案としておりました外交上の一番大きな問題は何であつたか。私はロンドン会議までさかのぼつて、軍縮問題を云云しようとは思いません。しかしながら、近衛三原則というものは善隣友好、共同防共であつて、日支の経済提携というものはアメリカに対して言つたことでしよう。この解決のためにこそ、天皇という━━━━━━が出て参りまして、日本国民考え考えとして判断させずに、おのれの考えにおいて一億一心だなどと強要し、日本の財閥、軍閥と一つの大きな勢力になつて強要してやつた。すなわちこういうような経済的な悩みの解決のためにこそ、今度の戰争で血が流されたのじやないですか。あなたたちがもし遺家族に対して謙虚な気持において金を出し、また霊をまつるという心があつたのつたら、政治の点にもこれを反映さすのであるならば、同時にこれは善隣友好の問題であり、それから日支経済提携の問題を具体的に解決するところの端緒をつくらなければならないが、その逆を行つているじやないですか。だから私は伺いたいのですが、この三原則なるものは、かつて日本が悩み抜いたところの外交上の重要問題であつたということがつ一つです。これがもし一つであるとするならば、今後独立を回復した日本としましては、どういうように解決して行くのか、その端緒はあるのかないのか、これを承りたい。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は横田君の今の質問中、天皇という━━━━━━という、言葉があつたように聞いております。こういう不穏な言葉をお取消しくださらなければ、ただいまの質問にはお答えするわけに行きません。
  95. 横田甚太郎

    ○横田委員 あなたの統領吉田さんは父子三代天皇の恩顧を受けたと言つているのです。しかし私は戰争に反対して天皇の名において刑務所にほうり込まれた。だから天皇に対してあなた方から考えて不当なことを言うのはあたりまえです。私がここでいかに過激なことを申しましようとも━━私ははつきり━━━は天皇であるということは言える。戰争に反対したわれわれのやり方にどこに悪さがあつたのか。悪さはなかつた。その間において刑務所で彼らは何と言つた。おれたちを刑務所に入れておいて、これは親の学校ではないのだ、天皇の学校だと言つた。だからあなたと違う十年余の教育を獄で受けた。あなたたちは大学におつて、出てもいい、出なくてもいいところの試験を受けて、月給をもらう官僚となるということしかない……。
  96. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 横田君に御注意を申し上げます。質問を願いたい。
  97. 横田甚太郎

    ○横田委員 憎たらしいことを言わなくてもいいじやないか。だから天皇の……。
  98. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 質問の方にお入り願いたい。また委員長として希望しますが、ただいまのあなたの発言中には不穏当な不適当な言葉があつたかに思いますが、お取消しになりませんか。
  99. 横田甚太郎

    ○横田委員 絶対に取消しません。至つて穏当な至当なる今までの判断から見た正しい合理的な言葉だと思つておりますから、取消しなどはもつてのほかです。  それから質問いたします。それでその一つの現われといたしまして、ますます混乱しているじやないですか。私の言葉にも現われているように、こういうような表現は自由である。これに対しまして、天皇は日本国の道徳の中心であるという天野さんの原則もまた自由である。これが民主主義の実体でなくてはならぬにもかかわらず、それが議会においてさえそうでないところの判断によつて、不穏当だ、取消要求と現わされているじやないですかこの点はもつと追究したいのですが、時間がないのでやめておきます。  そこでこういう考え方から、ソビエト、中国に対してゆがんだものの考え方を強要されている。これは今後の大問題であつて、これが世界的に解決されない限りにおきましては、日本におきましてとんでもないところの政治的な内証になつて来るのではなかろうかと私は思うのであります。だからソ連の問題としてまず伺いたいのは——中共も同じ問題ですが、これは私の党の木村君の質問に対してこういうふうに言われましたね、中共等にはまだ解決すべき幾多の問題がある云々ということは岡崎さんの答弁であつたと思うのです。だから中共並びにソ連と入れて解決すべき問題というのは、一体いかなるものかということを承つておきたい。
  100. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず三十数万の抑留者の問題で、この生死もわからないような状況であつては、われわれは日本に残つておる家族に顔向けもならないような気持がいたしております。第二は中ソ同盟条約でありまして、これは日本を仮想敵国といたしておる。こういう点は改めてもらわなければならぬ。第三は漁夫、漁船等が盛んに拿捕され抑留されておる。これの行方も生死のほどもわからないというような種種の問題のほかに、北京その他からの放送を聞きますと、日本の民主主義に基く憲法によつて政府を、暴力で転覆することを奨励するがごとき宣伝が盛んに行われておる。これらも改めてもらわなければならぬ一つであります。
  101. 横田甚太郎

    ○横田委員 今日はまだ領土問題を忘れておられますね。歯舞、色丹を忘れられたことは非常にお気の毒なのですが、これもおそらくあとでおつけになる方がいいだろうと思うのです。それでは領土の方はお忘れになつたのですから、覚えておられたうちのまず三点から伺います。捕虜の抑留問題はアメリカの恥さらしじやないですか。朝鮮でアメリカは一体どうしているのですか。巨済島拘置所と申しますか、ここにおいてはアメリカはよく待遇していると言つていながら、身に寸鉄を帯びないところの北鮮の人たちが、中共の人たちがアメリカ軍に堂々と反対いたしまして、アメリカのドツドとかいう大将をつかまえて捕虜にしているじやないか。これはアメリカ自身が、捕虜問題に対して非常に人道性を喪失している、この現われが日本とソビエトとの間に現われましたところの捕虜問題であります。それが国会に資料として出されましたのが、あなたに何回も提示している引揚数のインチキ問題なのです。恥さらしの外務省の数字なのです。一の引揚衣を大きな大衆討議に移したら、国民か納得するはずがない。漁夫、漁船の問題にしてもそうなのです。あるいは中ソ問題にしたところがそうなのです、現実に日本から朝鮮爆撃のための飛行機が飛んでいるのです。これも追究したいのですが、時間の点で言えないから、これはこのくらいにしておきます。そこで私は極端に譲歩しまして言いますと、それにはこういうような懸案があるといたします。百歩を譲つて捕虜がおるといたします。その捕虜を返してもらわなければならない。中国にも捕虜がおり、そのおる捕虜から日本に通信が来ておる、だから返してもらわなければならないとします。しかし、返してもらうためには、捕虜が向うにおるぞと言つて中国とソビエトの悪いことばかり言つているのが能ではないのであります。ほんとうに帰れるように実際的な手を打てるところの方法が外務省においては考えられておるか、考えられておらないか。もしおらないのであるならば、帰らない人があるのをちようどいい機会にいたしまして、向うに捕虜がおるのだ、返さないのがソビエトだといつて、わかりもしない正体のために——ちようど、われわれが今まで見たことのない幽霊のために長い間脅かされたような形においてこれを反ソ反共の材料に使うだけが目的なのか、このことを承りたいのです。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは事実を事実として述べているだけであります。別に何ら政治的な意図はないのであります。
  103. 横田甚太郎

    ○横田委員 事実を事実として述べておられるのであるならば、それに対する解決する度合い、力というものが、自由党と共産党とどちらによけいあるかということを中心に私は承りたいのであります。あなたが捕虜をそんなに気にし、そうしてこの人たちを返してもらわなかつたならば、日本の同胞に対して顔向けができないと思われるならば、私と一緒にこの問題解決のために中国へ行きませんか。ソビエトへ行きませんか。一高良さんはか行つておるのですよ。あなたは日本の外交の責任者でありながら、高良さん以下に勇気のない方ですか。私はそこを承りたいのです。だから、もしあなたがほんとうに、捕虜があり、これに帰つてもらわなかつたならば日本の同胞に対して顔向けができないと言われるならば、あなた自身が中国へ行つたらよいじやありませんか。中国の人々は、日本の各労働組合の人たちに対して、十二分なる条件で招待をしているじやありませんか。またソ連の人たちも、吉田さんに対しましては、その国の祝祭日には必ず招いているじやありませんか。それなのにそこへ行つていないじやありませんか。そこへ行つて話合いをするのがなぜ悪いのですか。普仏戰争でフランスが負けたときに、チエールはどんな活躍をいたしましたか。私は、あのチエールという人が戰前においては売国奴と言われたことを知つております。しかしあなたは今度の戰争に対しては売国奴と言われて迫害された人ではないのでありまして、日本の官僚機構の中で軍閥とともに抱き合つた政治の中おいてぬくぬくと太つた方ではありませんか。だから、今後この問題が非常に困ると思われるならば、私と一緒に中国、ソ連へ行つて話合いをされてはいけませんか。話合いをされる熱意がありますか。捕虜の問題を單に議会の数字の問題にとどめたり、外務省の役人たちが、青年団や、あるいはそれ以外の日本の人たちを扇動し、これに宣伝し、ソ連、中国を悪く言う材料としてのみ持つておきたくないという意思があるならば、行かれる意思があるかということです。それともその意思がなくて満足しておられるのか、これを伺つておきましよう。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ソ連や中国へ行くのに別に勇気は要しないと思います。勇気を要するのは、正しいことをはつきり言うことであります。国際法からいつても何からいつても、当然返すべきものを先方が六年八箇月もの間返さないでいるということ、これは間違つている。これを堂々と述べ、国際輿論に訴え、国内の輿論に訴えて先方の反省を促すということがかんじんでありまして、ソビエトや中共へ行くのに何も勇気は要しない。勇気がいつてこわいから行かないというようなばかげたことはないと考えております。
  105. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 ただいまの横田君の発言中本穏当な言辞があつたやに見受けられますが、いずれ速記録を取調べました上適当な処置をすることといたします。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は二時より委員会を再開して質疑を継続することといたします。これにて休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  106. 塚田十一郎

    塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより質疑を継続いたします。有田二郎君。
  107. 有田二郎

    有田(二)委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。金利の問題につきましてお伺いいたしたいと思います。現在のような一般的不況の時期におきましては、産業界からの金利引下げの要望が出るのは当然のことであります。これに対して日本銀行並びに市中銀行その他では反対の意向のようでありますが、大蔵大臣のこの問題に対する御所見を承りたいと思います。
  108. 池田勇人

    ○池田国務大臣 金利は適正であるべきことは原則でございますが、今の金利が高いか安いかということを見ますのに、産業界でいわれているように一般の金利は外国に比べますとかなり高くなつております。そこで外国との競争上その他からいつて下げてくれという要望は、私はある程度わかるのでありますが、しからば日本の預金金利その他から申しまして、今ただちに全般的に下げられるかということになると、これまたかなりの支障があることと思つているのであります。まだ資金の需要が相当多いのでございますので、私は今ただちに全面的に金利を下げるということはなかなか困難ではないかと思います。私といたしましては、長期の金利はいま少しく下げてほしいという気持を持つておりますが、これは各銀行がきめることでございまして、大蔵大臣には下げろという命令権もありませんし、決定権もないので、ただ意向といたしまして、長期の金利はほかの金利よりもまず先に下げるべきだ、そうしてその時期がある程度来ているのではないか、こういう気持を持つているのであります。
  109. 有田二郎

    有田(二)委員 次に外債とか対日援助費とかの対外債務支払い方法についてお伺いいたしたいと思います。これらの債務の返済方法はもちろんまだきまつていないのでありますが、比較的外貨がたまつております現在、この支払いを促進し、しかもその財源を租税によらず、日本銀行からの一時借入れによる方法考えられるのでありますが、一時大蔵大臣もそのような方法を考慮されているなどと報道されたことがありますが、この点について大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  110. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日銀から借りて外債を支払うという気持は私は今まで持つたことはございません。そういうことも研究に値するものかとは思いますが、今までそういうことを考えたり言つたことはないのであります。また外貨がある程度たまつているから、これをもつてただちに払うべしという意見は今聞いたのでありますが、私は、外貨がたまつたものは老朽した日本の生産設備を直したり、あるいは物資が非常に不足している日本状況から申しまして、そういうものに使うべきじやないか。外債もいろいろな種類がありまして、期限が来ておるものもありますし、来ていないものもあります。これはそういうものと別個に考えて行きたいと思つておるのであります。
  111. 有田二郎

    有田(二)委員 次に外貨貸付の問題についてお伺いいたしたいと思います。この問題につきましては、第一に、現在のようなときに各企業は、はたしてどれだけ合理化のための機械を輸入する熱意があるか。その輸入額の見通しはどの程度であるか。第二に、このような機械輸入は国内の機械メーカーを圧迫する材料にならないか。これらの点について御答弁を願います。
  112. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外貨を設備の近代化その他のために貸すというのは、最近私が発表したのでありましてそれによつて民間においていろいろ研究なさつておると思います。従いまして今どれだけの申込があるか、はつきり資料を持つておりませんが、これは船を買うとか機械を買うとか、あるいは必要な原材料を買うとかいうような方法で使つて行きたいと思います。それから機械を輸入すると国内の機械メーカーに悪い影響がないかというお話でございますが、われわれもその点は考えておりまして、これはでき上つた製品を全部買い入れるというのではございません。いわゆる技術とかあるいはパテントとか、そういうものを主にして行きたい。しかし技術、パテントのみで足りないときには見本的の機械を入れる、こういう方法があると考えておるのであります。
  113. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに為替の問題についてお尋ねいたします。為替金融の分野において最も問題となることは、わが国の為替銀行が非常に弱体なことであります。すなわち資本金においてはアメリカ銀行の十分の一以下にすぎず、しかもオーバー・ローンに悩んでいるような銀行で、対外的な信用を受け得るかどうかさえ疑われるのであります。従つて銀行の資力を早急に強化することが必要でありますが、それには特殊の為替専門の銀行を設立するとか、一定の基準を設けて弱小の為替銀行ふるい落すとか、いろいろな方法考えられますが、大蔵大臣の基本的構想はどんなものであるか、伺いたいと思います。
  114. 池田勇人

    ○池田国務大臣 戰後はもちろん戰争中におきましても、為替銀行はその業務をほとんど停止しておりましたので、為替事務の習得並びに支店等が具体的にないために、しこうしてまた外貨を進駐軍が保管しておつた、いろいろな事情で、今発足いたしましても、急にそう機能を発揮するわけには行かないのであります。従いまして最近では特殊の外国為替の銀行が出張員をロンドンあるいはニューヨーク等に置きまして、徐々に本来の為替業務をやつて行く下地をつくろう、こういうふうに考えておるのであります。為替銀行と一口に申しましても、非常に為替事務を多くやつておるものと、あまりやつていないのとがございますから、こういうものは徐々に整理と申しますか、集中的になつて、時間とともに一つの為替銀行あるいは二、三あるいは四、五の有力な為替銀行ができて来ると思います。われわれとしてはそういうような方向で為替銀行を育成して行きたいというつもりで指導いたしておるのであります。
  115. 有田二郎

    有田(二)委員 なおこれと関連して、先般為替銀行の海外駐在員の派遣を五行、すなわち東京銀行、富士銀行、千代田銀行、帝国銀行、大阪銀行の五行に限つて許可されたようであります。これは今後の海外支店の設置あるいは為替銀行の整理と関係あるものかどうか。さらに海外支店を設置する場合には、銀行資産のアタツチメントの問題なども起つて来ると思われるのでありますが、これはあらかじめ何とか処理してやる方法はないものかどうか、これらの点についてお尋ねいたしたいと思うのであります。さらにこの五行の中の富士銀行は戰前海外に支店を持つていなかつたのにかかわらず、ロンドン派遣が許可されておるというようなことについても御所見を承りたいと思います。
  116. 池田勇人

    ○池田国務大臣 こまかい問題は事務当局からお答えさす方が適当かと思いますが、大体今お話になりました銀行は、従来海外に支店、出張所を持つてつたの原則といたしております。富士銀行が持つてつたかどうか……。昔も相当為替事務を行い、また最近でも為替事務をどんどん行つておりますので、海外駐在員の中に入れたと考えておるのであります。
  117. 有田二郎

    有田(二)委員 大蔵大臣の問題としては小さいので御記憶にないと思いますが、富士銀行は海外に支店を持つていなかつたのであります。従つてこの点はさらに御検討を願いたいと思います。  さらに、昨今のように外貨手持ちが好転しておる時期には、外銀ユーザンスを実施することが、為替取引の常道ではないかとの意見が一部にあるようであります。確かに外銀ユーザンスを実施すれば、外為会計の資金繰りとか、日銀の資金統制力とか、いろいろな点で問題が生ずるのでありますが、これらはいずれも国内的問題でありますから、これを別個の方法で解決できるのではないか。ことに最近は相手方のアメリカ系銀行などはこれに応ずる意向のようでありますから、この際為替取引の正常化という意味で、外銀ユーザンス実施の意向がないものかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  118. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは明治のときからそうでございますが、為替銀行には一定の為替資金を日本銀行から預託しておつたのであります。その当時は正金銀行でございましたが、正金銀行がなくなりまして、為替業務を主たる業務とは言いませんが、為替業務を相当の分量取扱つておる銀行に対しましては、為替資金として円資金かあるいはドル資金かを貸し付けることは適当な方法だと私は考えて、今実際為替業務をやつておる為替銀行には、ドルを貸し付けるような方法を講じよう、こういう方針のもとに検討を加えております。
  119. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに行政協定に関する金融の問題をお尋ねいたしたいと思います。行政協定に伴う日本側の分担金はもちろんでありますが、米国側の資金が円で支払われることになりましたが、この場合総額二千ないし三千億に達する資金が、いかなる金融機関を通じて支払われるかは、金融政策上重大な問題であると思うのでありまして、この際これに対する具体的なお話を承りたいと思います。
  120. 池田勇人

    ○池田国務大臣 行政協定に基く防衛支出金は二千億、三千億円にはなりません。千億円余りであろうかと考えておるのであります。しこうして日本の分担いたしております六百五十億円のものにつきましては、四半期ごとにアメリカとの合同資金勘定の方に繰入れまして、大体におきましては今までの終戰処理費の使用と同じような方法で払つて行くことにいたしております。やはり国内の金融情勢あるいはまた駐留軍の費用の払い方等につきましては、両者緊密な連絡をとつて相談しながらやつております。
  121. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに金の問題についてお伺いしたいのであります。現状ではマル公四百一円で買上げをしておりますが、生産者価格は御存じ通り平均一グラム六百四十円といわれておるのであります。独立国家になりました日本といたしまして、金の所有ということは非常に重大な問題だと考えるのでありますが、これらに対する金の生産並びに買上げというような問題について、どういうようなお考えを持つておられますか、このことについてお伺いいたしたいと思います。
  122. 池田勇人

    ○池田国務大臣 金の相場は一ドル三百六十円の為替レートにも影響いたしまし、またわれわれ今企画いたしております国際通貨基金加入につきましても、適正な国内金価格を設定しなければならぬということは、御承知通りであります。しかしてただいまの国内金の買上げ値段は、一オンス一二十五ドルという計算のもとにやつて参りますと、一グラムが四百五円程度になります。しかしてこれに現送費その他の関係を計算いたしますと、大体お話のように四百一円くらいになるのではないかと思います。しかしながら、お話のように、平均生産費が国内で六百円ということをあなたは言つておられますが、金というのは特殊の商品、と申しますと語弊がございますが、こういう特殊のものにつきましては、日本国内の平均生産価格できめるというわけには、先ほど申し上げましたように、為替レートの問題、国際通貨基金加入の問題に関連いたしますので、そういうわけには参つりません。従いまして、原則はやはり一オンス三十五ドルで計算するという方向で行かざるを得ない。ただ問題は、やはり産金の必要性等から考えまして、国際通貨基金加入国がやつております程度の特別価格ということは、産金奨励の上から設けざるを得ないのではないか、こういう考えのもとに特別の措置を講ずるよう、国会の審議を願つておると考えております。
  123. 有田二郎

    有田(二)委員 さらにお尋ねしたいのは、衆議院の大蔵委員会の要求資料としてお出しになりました、平和条約発効により連合国占領軍から政府に解除された貴金属等の数量調の中で、金は十万三千七百七十六キロに対しまして、連合国占領軍に接収された金銀の数量は、判明したものだけでも十万八千百四十キロ、従つて五千三百六十四キログラムというものが、連合国占領軍から返された場合に減つておるのでありますが、これはどうしてこうなつたのか、御所見を承りたいと思います。
  124. 池田勇人

    ○池田国務大臣 こまかい問題ですから、政府委員から答弁させますが、多分合金その他の関係でかわつて来るのじやないかと思います。
  125. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいまお尋ねがございました大蔵委員会の要求資料で、接収解除されました貴金属の数量と、接収された貴金属の数字、ことに金の数字が合わないじやないかということでありますが、これは接収を受けました金銀は、政府及び日銀とも、金の純分で帳簿に計算しておりますので、純分で載せてございます。しかしながら、金のうちには品位の低いもの等も若干まじつておるのであります。そういうものもございまし、これを接収後、連合国占領軍が整理をいたしたのでありますが、その場合に金銀あるいは白金の合金とか、あるいは品位の低いものとかいうものを、合金として整理されたものが相当あるのじやなかろうか、この合金が二十六トン——二万六千キロということになつておりますが、大体この中の八トン余りというのが、金の純分になつております。そこで金の純分といたしましては、一番初めの金と合金と合せますと、その他こまかいことを申しますと、接収中にダイヤモンドとか白金とかいうものが、日本で工業用に不足をいたしましたために、解除を区要請いたしまして、そのかわりに新産金をここへ入れて、ダイヤモンド、白金等を解除してもらつたというものもございまして、若干入り組みがございますけれども、金の純分で申し上げますと、約百十トン返つて来ております。従いまして、接収された金の純分が、政府日本銀行とを合せまして百八トンでございますので、その間大体計算が合うわけであります。もつとも接収解除されましてから、まだそれほど日がございませんので、個個の金塊につきまして、これの純分を分析し、秤量するという作業が、全部は終つておりませんので、それらの作業が終りましたならば、その点さらにはつきりするのではないかと思います。ただいま申し上げました関係はなかなかわかりにくいと思いますので、適当な機会に、その辺の説明をいたしました資料を、さらに追加して御提出申し上げたいと思います。
  126. 有田二郎

    有田(二)委員 私がさらに大蔵大臣にお尋ねしたいのは、通貨発行限度の決定についてであります。経済安定本部の廃止に伴い、通貨発行審議会が廃止されることになつておりますが、これによつて日本銀行法第三十条に規定されております通貨発行限度の決定は、通貨発行審議会の議決を経ないで、大蔵大臣が閣議を経て決定することになるわけであります。通貨発行限度の決定は、財政金融経済上きわめて重要なことでありますから、大蔵大臣が最後の決定をする前に、何らかの方法で十分検討しなければならないと思うのでありますが、大蔵大臣は何らかの形式で諮問機関でも設けるつもりであるか、その点をお伺いしたいと思います。
  127. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話の通りで、大蔵大臣の諮問機関を設けて、各界の意見を聞いてやりたいと思います。
  128. 有田二郎

    有田(二)委員 日本軽金属の外資導入の問題について御質問いたしたいと思います。日本軽金属は先般来カナダのアルミ会社との間で、五割の資本参加を中心とする提携による外資導入を行おうとしておりますが、池田大蔵大臣が、基幹産業に対する外資の導入は絶対に反対であると言つておられるとかで、目下この外資導入が停頓状態であるということを聞いておるのであります。これはだれが見ても、基幹産業である電源開発のために外資を導入しようとしておる吉田内閣の方針と矛盾しておるようにも考えられるのでありまして、基幹産業が外資導入によつて、外資の全面的支配を受けることになるについては、十分に警戒をしなければならないが、いずれにしても、外資導入によつて経営上、生産上プラスになるなら、いたずらに警戒ばかりしておる場合ではないと私は考えておるのでありますが、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  129. 池田勇人

    ○池田国務大臣 基幹産業に外資が入ることに反対はいたしておりません。何分にも日本軽金属は、日本のアル、生産能力の六、七割を占めておるのであります。従いまして、これに対しまする外資導入につきましては、よほど慎重に考慮いたさなければなりません。私は外資導入の根本は、まず原材料の獲得に便利があつて、そうして日本の基幹産業の育成に役立つものでなければならぬと思うのであります。この第一の、原材料の獲得、ことにアルミニウムにつきましては、マレーの特定の地域から相当高い値段で来ておるのであります。それが今度カナダのアルミ会社と提携することによつて、どういう条件で、どれだけ安いものが、何年間来るかということをきめるのが、先決問題だと思うのであります。しかるに私にはその問題は一日、二日前までそういう話はなくて、何ら聞いていないのであります。次にまた日本軽金属の今の資産の状況を見ますと、自家発電におきましても十一、三万キロの自家発電設備を持つております。しかして工場施設も東洋一でありまして、たいへんな工場施設でございます。資本金は六億二千万円で、再評価は三十億円くらいしかしておりません。借入金は割合に少いので、これを六億二千万円の払込み資本金を倍頻増資して、六億二千万円外資の導入をする。これをドルに換算いたしますと、百八十万ドル程度でございますが、百八十万ドルで東洋一の、しかも日本のアルミ生産の六、七割以上を占めておる会社に、五〇%、五〇%でいいかどうか。まず五十円払込みの株式に相当するものを六十円で売ることが、そういう含みの非常に多い会社が増資する場合に、六十円つまり十円のプレミアムでいいかどうか、こういう問題が検討すべき第二の問題であります。新聞にはいろいろ言われておりまが、フイフテイ・フイフテイということは、一の条件、二の条件が十分に検討されるならば、そうしいてとやかく言う問題ではないかもしれませんが、こういう三つの条件を検討した上でないと、ただちにこの問題に賛成できない、こういうことを言つておるのであります。基幹産業に外資が入ることをとめるという気持はないのでございます。
  130. 有田二郎

    有田(二)委員 今月末に八次船の発表があるそうでありますが、これに対する金融措置に対して、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  131. 池田勇人

    ○池田国務大臣 八次船の分は、八十九億円程度を見返り資金から出すことになつていると考えております。何隻つくるか、どこの会社がやるかということは所管でないので、私は見返り資金としての資金額を第一義的に考え、第二義的には、これと見合いになる市中銀行の融資等を考えればいいのでございます。いつきまるか、まだ具体的には聞いておりません。
  132. 有田二郎

    有田(二)委員 先般大蔵大臣からお話がありました二十六年度の税金の四百十一億増という問題に対しまして、先般来、ここにおる川崎委員からもお話がありましたが、オリンピックの派遣選手を、せつかく四百十一億も税金が増加いたしましたし、さらにポンドの手持ちも相当あるのでありますからして、選手の派遣について特にもう一人か二人、あるいは十人か十五人特別に出したいというような者がありましたら、何とか御勘考が願えないかどうか、御所見を承りたいと思います。
  133. 池田勇人

    ○池田国務大臣 オリンピック派遣選手の人員その他につきましては、十分考慮の上、今まで政府としての意見を申し上げておるのでございます。自然増収があつたからこれこれ、自増収があつたからこれこれと言われますと、自然増収が他の必要な財源に向けられないことになりますので、今ただちに、自然増収があつたからオリンピック派遣の選手その他の方を増加するというお約束はできない状況であることを御了承願います。
  134. 塚田十一郎

    塚田委員長 有田委員に申し上げますが、もう一問ほどで……。
  135. 有田二郎

    有田(二)委員 先般、白井氏がボクシングで世界選手権をとつたということが、国民に明るい感じを与えておることは、大蔵大臣もお認めの通りであります。オリンピックの選手を五人、十人と増すことによる費用というものは非常に軽微なものであります。従つてそうかたいことを言わないで、十分ひとつ御勘考あらんことをお願いをする次第であります。この点はそういう御希望を申し上げて終りまして、さらに弔慰金の問題でありますが、遺家族の弔慰金の記名国債が八百三十億出るのであります。先般の予算委員会においても、大蔵大臣にこの換金方についてお願いをいたしたのでありますが、せつかくの遺族の弔慰金であります。国民金融公庫その他のところから、政令をもつて、それを担保にしてある一定のものを貸出しができるようにするというような方法につい、さらに御勘考願えるものかどうか。この点の御所見を承りたいと思います。
  136. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知通り国民金融公庫に対します一般会計からの出資、また資金運用部からの借入金にも、おのずから限度があるのでありまして、多分出資は本年度三十億円程度ではなかつたかと思いますが、こういうことを考えますと、八百三十億になんなんとします国債を担保貸しするということになると、私はただちに交付公債の趣旨をなくしまして、日銀から借りて来るとかいうことで、通貨あるいは信用の増発になることを懸念するのであります。しかし遺家族の方の実情によりましては、私は国民金融公庫本来の生業資金の貸付ということにつきまして、できるだけの御考慮を申し上げたいとこういうことで、従来も答弁しておつたのでありますが、ただいまもそういう気持で進んでおります。
  137. 有田二郎

    有田(二)委員 参議院の方から法案として各党共同提案で、労働金庫法案が出て参つておりますが、私もまことにけつこうな法案と考えておるのであります。特に大蔵大臣にお願いいたしたいのは、厚生年金の積立金が、昨年八日一千一日現在で三百八十億円のものがあるのでありまして先般大蔵大臣から勤労者の住宅として十億円出すというお話がありましたが、これらの三百八十億の厚生年金の積立金の中から、労働金庫に対してそれぞれ貸付をやるというようなことをお考えになつておられるかどうか、この点を印さ承りたいと思います。
  138. 池田勇人

    ○池田国務大臣 各種の資金は資金運用部に集めまして、そうして先般予算審議の際に申し上げましたごとく、大体使途はきまつておるのであります。ただ最近の状況によりまして、資金運用部資金が、資金源がふえて参りましたので、御承知通り、金融債もある程度引受けようか、こういうことを考え、また労働者の住宅にも出そうか、こういうことを考えておるのであります。今お話の労働金庫というものの内容は私は十分存じておりませんので、今ここで資金運用部から出すか出さぬかということにつきましては、はつきりお答えがしかねるのであります。
  139. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに住宅金融公庫のことにつきまして、お尋ねいたしたいのでありますが、先般の予算で百五十億計上されまして、それによつて非常な効果をあげていることはお互い認める点でありますが、将来さらにこの住宅金融公庫の貸出しについて、さらにお出しになる御意向があるかどうか、この点もひとつ伺いたいと思うのであります。
  140. 池田勇人

    ○池田国務大臣 衣食住のうちで、私はやはり衣と食よりも、住が一番不足しているという認識を持つております。従いまして、本年度百五十億円を今年度内にふやすかどうかは、ここで申し上げられませんが、来年度におきましても、これに劣らざる程度のものは出したいという気持を持つております。
  141. 塚田十一郎

    塚田委員長 次の質疑者の都合がありますので、あと一問だけにお願いいたします。
  142. 有田二郎

    有田(二)委員 それではあと一問まとめて申し上げますが、税務署に支署を設ける、こういうお話がありましたが、大蔵省設置法の中に税務署の支署を設ける、こういう構想が出ておるのでありますが、これに対する大臣の御所見と、さらに昭和二十四年十二月三十一日撤廃せられました織物消費税に相当する既納税の織物、たとえば絹、人絹、四〇%綿スフ一〇%に対する戻税分に相当損失補堀金について、大蔵大臣は昨年白田党の有志代議士に対し、損失見積分三十二億一千七百万円の一割たる三億二千百七十万円を支出すると言明せられておりましたにかかわらず、事務当局はまつたく気乘薄で、今日に至るも全国零細綿布業者あるいは卸小売業者は、その補填を受けておらないのであります。酒、タバコ等は言うに及ばず、農業協同組合の報奨用配給の繊維製品に対しては、全額損失補填をいたしたにかかわらず、商工業協同組合や商工業者に対しては、まつたく放擲されておるような状態であります。目下関係議員の間において、織物消費税法の廃止に伴う損失の補填に関する法律案を検討中ということを聞いておりますが、これらに対する財源捻出方法について、具体的な御説明を承りたいと同時に、中小繊維業者の金融に対しても御所見を承りたいと思うのであります。
  143. 池田勇人

    ○池田国務大臣 税務署の支署設置につきましては、大蔵事務当局の間で、税務署の廃止に伴いまして、支署を設けたらどうかということを聞いております。御承知通り、一時納税者が地方にも非常にふえたのでありますが、三年にわたる減税によりまして、納税者が非常に減つて参りましたので、しいて税務署を置かなくても支障がないというようなところは、税務署をやめて支署にしたらどうか、こういう意見を持つておるのであります。  次に織物消費税の廃止に伴いまする、小売業者、卸売業者のところにおいて生じた損失につきましては、いろいろ議論がございましたが、私は三億何ぼかを予算措置を講じます、こういう返事はいたした記憶はございません。そういうような要望がありまして、いろいろ考慮はしておると言つておりますが、今財源も何もないので、今これをやる必要があるかどうかにつきましても、私は結論を出していないのであります。
  144. 塚田十一郎

    塚田委員長 この際一言申し上げますが、午前の会議における横田君の発言中、天皇に対して━━━と発言したる点、及び━━━━云々と発言したる点は、不穏当と認めますから取消しを命じます。  質疑を継続いたします。西村榮一君。
  145. 西村榮一

    西村(榮)委員 与党の進行係の有田君が、委員長の制止を四回無視して発言を継続なされたことにつきましては、まことに野党にとつてはよき前例をつくられたものと、ありがたく感謝感激にたえないのであります。従つて私は、心に余裕を持つて十分に御質問申し上げたいと思うのでありますが、しかし同僚議員との時間の割当もありますから、その制限内において、きようは野党から議事進行をいたしたいと思います。  先ほど有田君が、日本アルミの外資導入の問題について、大蔵大臣に質問されました。私はこの日本アルミの外資導入の方策について、池田大蔵大臣がとられた慎重さに対しましては、支持いたします。そして同時に敬意を表します。同時に私は、年初の予算委員会以来、外資導入の問題について、池田大蔵大臣がかなり慎重なる態度をとつて答弁せられて来たことにつきましても、また私も財政の一端をかじる者として、敬意を表するのでありまして、私は吉田総理大臣並びに池田大蔵大臣が、本会議で、本年度の予算計画の中に、外資導入を大きく取上げられたことにつきましては、不安を感じておつたのでありますが、逐次それが修正されて、現実と大体似通つた姿まで来られたのでありますから、私はその正直さに免じて、総理大臣大蔵大臣答弁の食い違いに向つてくさびを打ち込もう、かつあげ足をとろうとは思いませんけれども、冒頭に希望しておきたいことは、日本の産業の支配権をも握るがごとき外資の導入につきましては、大蔵当局におかれましては、慎重なる取扱いをやつていただきたいということを希望しておきたい。  そこで私は、外資の導入の問題について、あなたの率直なる御意見を伺いたいのですが、私の意見を申し上げれば、いかに外資の導入を多く扱われても、大体において、日本の現在の使える範囲内における外貨並びに財政余裕金を、まず日本の再建方策にこれを有効に充当する。しかる後に足らない部分だけは外資の導入を仰ぐという順序を経なければならぬのにかかわらず、頭から外資を掲げるということは間違つておる、こう思つておるのでありますが、その間違つたところが修正されつつある。そこで私はこの外資の問題については、まず第一に使途が明確で計画性がなければならない。同時に外国資本の安全性をどう保持して行くか、償還関係を一体どうするかという具体的な計画がなければ、外資というものの交渉の前提条件は具備しない、こう思うのでありますが、これは愚問の域に属するか、大蔵大臣の御所見を承りたい。
  146. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体ごもつともな御意見だと思います。     〔委員長退席、北澤委員長代理着席
  147. 西村榮一

    西村(榮)委員 そこで私は、具体的な問題をお尋ねしたいのですが、今日本の外貨の手持ちが十余億ドルあるのでありますが、これが貿易操作に要する基本的な手持ちを除いて、一体日本国内の産業において活用のできる限度はどの程度でしようか、腰だめでけつこうです。
  148. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今十億ドル余りございますが、このうちで当然これから落して行かなければならぬ部分がございます。たとえば綿花借款の四千万ドルのうちの二千何百万ドル、それから連合国人財産の補償の問題、今年度発生する外貨払いの問題、それから国際通貨基金への加入ができますれば、それに六千万ドル程度要します。それから二百十億円の外債支払いのうちから、ある程度まで今年度払わなければならないポンドドル、フランの問題もあります。こういうものを考えると、十億ドル以下になるのでありますが、はつきりした数字は、外債の支払いその他できまります。そういうものを除いたあと、日本貿易して行く上の決済その他どれくらいいるかと申しますと、ポンドを入れまして、多くて大体五、六億ドル、四、五億ドルという計算も立ちますが、約五、六億ドル程度は持つておかなければならぬのじやないか。こういうことを考えますと、私は外貨の貸付の問題のときにおきましても、大体二十六年度でたまつたサープラスの分が三億、七、八千万ドルございますので、このうちの相当部分を使い得るのではないか、こういうような気持を持つております。
  149. 西村榮一

    西村(榮)委員 大体そうすると、三億七、八千万ドルから四億五千万ドルくらいになるのですが、その外貨貸付の構想はどういうところですか。
  150. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外貨貸付の方法は、私は自分でとやこう言うよりも、やはり民間の創意くふうによりまして、適当な申請が出て、それによつて帰納的に考えるのが必要だと思います。買船と申しましても、あまり古い船では外貨を使うのも適当じやない。しかし十五年以内のものは、向うが売りません。いろいろな点がございます。そしてまた外貨を使うことによつて輸出入銀行の外貨獲得手段もあるのでございます。これはもう個々の問題でよほど違つて参ります。また外貨の貸付を設備のみに限るか、あるいは必要な原材料にも及ぼして行つたらどうか、こういうことも実は考えておるのであります。従いまして、一、二箇月前から銀行あるいは業者に機会あるごとに言つておりますが、まだそう大して外貨の、要求はないようでございます。
  151. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、大体民間金融機関を通じて、なおまた民間産業の自主的な施策に基いて外貨貸付を大蔵省で考慮するが、それはこういうように解釈してよろしいか。もちろん再生産を伴わない消費部門は避けられるでありましようが、造船とかその他の重化学工業の機械設備、私の言わんとするところは、国際競争に耐えられるだけの設備と技術の導入、並びに日本の再生産に伴う原材料を国際価格とにらみ合せて買いつけたりなんかするような運転資金を、主としてめんどうを見るというふうなことで大まかに解釈してよろしいかどうか。
  152. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体そうでございます。
  153. 西村榮一

    西村(榮)委員 私が次にお伺いしておきたいと思うことは、前段において外資の導入を当てにして日本の産業の再建方策を講ずるよりも、まず第一に手持ちの外貨並びに今の財政余裕金を日本の経済の再建のために充当して、しかるのちに外資というものを考えるべきであるとついうことを申し上げたのであります。私の今大蔵大臣にお伺いいたしておきたいと思うことは、たとえて申しますと、電源開発の問題、あるいは日本の造船計画の問題、これはかなり外資を当てにしておるようでありますが、これは外資が当てにならなくても、当てがはずれても、日本の財政余裕金でやつて行けるというふうな方策をお立てになつておるかどうか、この点伺つておきたい。
  154. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外資と一口に言われましても、ここでおおむね言つておられる外資の問題は国際開発銀行からの外資並びに政府借款の分が、西村さん以外の方々のお話では主になつてつたのであります。しかし先ほど触れましたように、輸出入銀行の民間借款その他民間外資の株式投資貸付金その他技術料というものも相当あるのでございます。私はこういう各般の問題につきまして考慮をめぐらし、民間の株式投資貸付金、工業権の問題等は外資法その他で民間借款で相当できると思います。残る開発銀行その他政府借款の大きな問題はいわゆる外貨債の支払い、国際通貨基金加入の問題が前提になることでございまして、こういうものは早く片づけて外資の導入をいたしたい。こういうことにはよほど前から準備いたさなければなりませんので、以前より外資導入の必要性を言つておるのであります。何と申しましても、多額の金を借りようという場合には、おいそれとすぐにできるものではないのでございます。相当前から準備しておく。しこうしてこれにはやはり国の信用力を高める必要がございますので、できるだけ国内の生産もふやすように、できるだけ国内的の努力も払つて行かなければならぬ。そこで外資導入は早くたくさんあれば、それに越したことはないのでありますが、国内でそれを使うだけの能力を持たなければいけませんしいろいろな施策を講じなければならぬのでございますが、もし外資がこちらの思うときに来ないからといつてこちらの生産計画が齟齬したりするようでもいけませんし、やはり一応外資がない場合についてはこれだけ、外資がこの時期にこれだけ来れば、それをサープラスして進んで行こう、こういう考えで進んでおるのであります。
  155. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は現在の不況対策と、日本の経済が拡大再生産方面に向う方策といたしましては、何といつても、やはり今枯渇としておる民間の資金欠乏に対して対策を講じなければいかぬと思う。民間の資金が——私は時間が乏しい中に一々例をあげるまでもなく、非常な資金難から縮小生産の方向に向つておる。これは何というても資金が今必要である。インフレーシヨンを避けながら、いわゆるドツジ処方箋によつて過去四年間とり来つたところのデフレ的要因を活用して、ここに産業育成政策をとるならば、決して恐れるようなインフレーンヨン的の状況にはならぬ。しかも過去四年間におけるデフレーシヨン的な要因というものは、すでに行き詰まりを来して来ておる。現下の不況と、日本の生産を再生権拡大方向に持つて行くためには、先ほど言うたように資金がどうしても不足しておる。これに対しまして、今の財政当局はどういうふうに民間の資金を流出されて行くか。私がこれを問おうとしておるところは、今日ほど国家財政の余裕金が豊富な時期はございません。私は国家財政の余裕をもつて日本の産業の再建にまず当るべきだと思うのですが、それについての方針を承りたいと思います。
  156. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは金の面ばかりで考えてもいけません。物資のあり方、物価問題等も考慮しなければならぬ問題であるのであります。お話の通りに今国庫の方は割に順調でございまして、政府の当座預金も三百億——当座預金三百億円というのは、昨年に比べて何も多いことはない、二百億円ばかり減つておりますが、これは外為資金の方に出したり、食糧証券の方に出したりしておりますので、詰まつておるというわけではございません。しかしそう余裕金があつてだぶついておるというわけでもない。そこで私はそのときを見ながら、先般も政府指定預金を百五十億やりまして、そうして中小企業に対しては、四、五、六引揚げを九、十、十一と延ばしまして、そうして運用の適正をはかつておるのでございます。このごろの状態を見ますと、荷動きも少しくらい活発になりつつあるようでございます。これはよほど診断を誤つてはいかぬのでございまして、毎日慎重いろいろ条件考えながら手を打たなければならぬと思いますが、今急速に財政金融の大転換をすべきときでない、もうしばらく様子を見たい。私は決して今あなたのおつしやるように不況のどん底とは思いません。非常に不況で、非常にデフレだというふうには私は考えていないのであります。これは業種によつて違いましようが、全体の日本の経済の動きというものは、やはり外国のそれと同じように、むずかしいことではございますが、痛いところではございますが、正常化への道を徐々にたどつてつておる、こう見ておるのでございます。
  157. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいまの大蔵大臣不況に対する御見解は私とは少し違うようです。現在の日本不況というものは、一九二九年日本の満州事変直前における経済恐慌のような状態はありません。かつまたそういう状態にも入り得ないほど、日本の信用経済というものは破壊されて来て、それは恐慌の段階まで入れないということなんだが、これは議論になりますから、私は省略します。財政資金の余裕の問題ということについては、これはいろいろ見方によつて違いますが、あなたは今三百億円の預金ということを言われた。私は單に政府の財政の余裕金というものは、現存の預金だけで見ておるのではないのでありまして、千三百十億円の外為会計によるインヴェントリー・ファイナンス、あるいは食管会計による七百七十五億円、あるいは見返り資金の三百九十六億円、公債保有の五百億円、こういうふうなものを財政余裕金として計算いたしますならば、財政余裕金は今日私の計算では三千九百十一億円ある。これは実に従来の財政史上かつてない財政の余裕であります。私があなたに問わんとするところは、この余裕金は一体どこから生れて来たかということを考えてみますと、ドツジ超均衡財政によつてこれが生れて来た。そうするならば、ドツジ財政の欠点というものはどこにあるかというと、これは税の形による強制的資本蓄積であつたのであります。私は場合によつてはこの方式もまたやむを得ないと思います。しかしこの税による資本本の強制的蓄積がされた金額が民間へ、急速に何らかの形で生産方面あるいは国家の発展方向にもどつて行かなければ、デフレ的な要因というものが発生して来ると考える。ドツジ財政の超均衡財政がいいとか悪いとかということを私は今論議しようとは思いません。これは論議し尽されたことです。しかしながら問題の重点は、この税による強制資本蓄積が、吸上げつぱなしにして民間にもどつてつていないというところに、今日の不況一つの原因がある。しかも日本の産業というものは、国際的な、偶然的な影響がない限り、発展方向に向わないというきわめて貧弱な現状にある。私があなたに問おうとするところは、この財政余力をもつて日本の経済をどう再建して行くか、こういうふうな積極的な方策を承りたい。吸上げつぱなしにしてもどつて行かないということでは困るので、これをどうもとして行くかということをひとつお尋ねしたい。
  158. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは、あなたのおつしやるようにもどしてしまいますと、均衡財政のために租税その他によりまして、通貨の適正化等をはかつたのが根本的になくなるのであります。今吸い上げたものをぱつともどしてしまうと、何のために吸い上げたかということになりますので、吸い上げる必要があつて吸い上げたのでありますから、今この部分は必要があつてつたのでありますから、これを使いますと、吸い上げた効果はなくなるのであります。西村さんは前から吸い上げるということについてはあまり賛成なさらなかつたようでありますが、この吸上げをいたしまして、いわゆる均衡財政で悪性インフレにならんとするところをとどめたのであります。出し方につきましても、そのもとを考えて適正にやらなければならぬ。そこで今急速にインフレの原因にならない——たまり過ぎたと申しては何でございますが、急激に特需その他でたまつたもの、あるいは飢餓輸出ともいうつべきほどの状態でたまつたサープラスの外貨はまだ使つていない、私はこう言つておるのであります。
  159. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は吸い上げた財政をそのまま民間に返せとは主張していないのですから、これは誤解ないように。それから先ほどお話したように、ときの国の事情においては、国民に無理をしてでも吸い上げておかなければならぬ時期も財政家として当然ある。私はそれを非難しておるのじやないので、従つて今吸い上げた財政余裕金をぽつとそのまま国民のふところに何の対策も講ぜずに返してしまえば、それは大きなインフレーンヨンの要因となります。だから私の言うのは、この余裕金をもつて電源、造船、重化学工業その他の日本の基幹産業を拡大強化する。その基幹産業に向つて財政投資を行つて、その財政投資が基幹産業を通じて民間に返るようにするならば、私は過去の民衆を苦しめた財政の吸上げというものは生きて生れて来るのではないか。従つてきようは議論しているわけじやないので——私はあなたの顔を見ると、何か議論のような形の興奮にかられる衝動を禁じ得ないのであるけれども、きようは議論をしないで、おちついて数字でひとつお話を願おうというのが主なのです。従つて私はくどいようだけれども、そのまま返せというのではない。基幹産業を通じて返す。それを通じて国民の購買力を培養して行くことにおいて、現下の不況対策と国家の生産拡大方向の発展的方向が生れて来るのじやないか。これについてあなたの所見を承りたい。
  160. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そのたまつたものを今基幹産業を通じて出せとおつしやいますが、これはやはり民間投資でございまして、たといそれが電気であろうが、造船でありましようが、これに急激に出すということは、インフレの要因になりますから、先ほど言つたように、これはそれを防止するためにためたのであります。今ただちに、おつしやるように民間に出すわけには行きません。徐々に情勢を見ながらやるべきものである、こう考えております。
  161. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 西村委員——申し上げますが、約束の時間が参りましたから簡單に……。
  162. 西村榮一

    西村(榮)委員 先ほどの有田君の例もありますから、その例を固執するわけではないが……。
  163. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 悪い前例には従わないように……。
  164. 西村榮一

    西村(榮)委員 悪い前例でも向うの方がおつくりになつたのです。議会審議の上によけい時間をとることはいいことだから、私は承認して来た。——よくわかりました。私は今あなたの答弁の中から、ただちに財政余裕金をどこどこ方面に出すというふうな言質をとろうとはしない。また一国の大蔵大臣がそういうようなことを言うならば、株価が変動してたいへんなことになる。しかしここに明らかになつたことは、財政余裕金は徐々に日本の其幹産業に、場合によつては放出されて行くということを承つた。  そこで私は時間がありませんから、最後にあなたにお聞きしておきたいことは、大蔵委員会に提出されております長期信用銀行の内容です。私がなぜこのことを言うかというと、ドツジさん初め外国の金融家は日本の金融組織をさして、きわめて不健全な経営である。著しいオーバー・ローンは、日本の経済の不健全性を意味するのである。従つてそういうようなところには外資を入れるわけには行かないし、金融的援助をするわけには行かない。金融組織をまず改めろと指摘されるのでありますが、私は誤つておると思う。なぜならば、二月末において日本銀行から借り受けておる金額は二千五億円、しかしその反面、財政吸上げが三千九百十一億円、これを相対照してみますならば、オーバーローンの原因は、結局財政の過当なる吸上げにあつたということにあるのでありまして、私は、だから外国の批評家の日本の金融界に対する批判は当らない、こう思つておる。そこで私があなたにお聞きしたいと思うことは、何とかして今日この不健全なるオーバー・ローンを解消して、日本の金融界を健全化して、同時にそれを通じて、金融機関の手持ちの豊富さを通じて、日本の産業界の金融灘を救つて行きたい。それについては、長期信用銀行の設立ということであるのでありますが、この中において五億円の資本金で二十倍の発券能力を付与するということになつておるのですが、この長期信用銀行だけでは現在オーバー・ローン、並びに日本の産業の再建のための長期資金をまかなう金融機関としては、きわめて薄弱だと思うので、これをもつと大きくするか、あるいは別に金融機関を、そういうふうな意味における復興計画に基く金融機関を御設置なさる御意思はないかどうか、その点承つておきたい。
  165. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政資金についての数字にはちよつと誤解があるようでございますから、御検討願つておきたいと思います。今の外為の方の千三百億余というのは、これは二十七年度の分を入れますと、そうなつて来ると思います。食管の七百億余というのはちよつと違つておるのではないかと思いますが、インヴエントリーで金が四百何十億円でありますが、ある程度赤字を見なければならぬ点もございます。  それから長期信用銀行の構想でございますが、債券の発行は大体二十倍というのが今までの原則です。五億円の二十倍で百億円。お話の通りこれは十分ではございません。しかしこれは徐徐に広げて行きたいという考えでおるのであります。  それからオーバー・ローンの問題でございますが、民間資金の蓄積が相当できて参りまして、オーバー・ローンもよほどその度合いを少くして参りました。御承知通り、昨年の今ごろは外貨貸付を合せまして三千七、八百億であつたのでございますが、今では外貨貸付を入れまして千億円くらい減つて二千六、七百億。こういうふうになつております。それから預金も相当ふえて参りましたので、徐々にオーバー・ローンの状態も解消しつつあります。しこうして長期信用銀行ができまして、また日本開発、輸出入銀行等の今後の活躍によりまして、私は相当早い機会に、いわゆるみんなの心配しているオーバー・ローンも解消して行くのではないかという気持がするのであります。
  166. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは最後に、簡單に大蔵大臣所見をお伺いしておきます。以上私がお伺いした結びとして、この際承つておきたいことは、世間で若干財政を見ている者は、こういうふうにドツジ財政の行方というものを見ておつたのです。あの国民経済を無視した、残忍きわまりなき財政方策というものは、他に政治的目的がなければああいう方策はとり得ないのだという見方を持つてつた。そこで今問題になつておるのは、この国家内外における財政の余裕金をもつて、その資金をもつて日本は再軍備の財源に充てるのではないかという懸念が飛んでおるのであります。従つて日本産業の基盤の拡大のために、この財政余裕金を活用せられるのか。あるいは再軍備の財源としてそれを活用するのであるか。その活用の仕方については、世人は多つくの懸念を持つておるのでありまして、前者であるか、後者であるか、私はひとつ率直な御意見を承つておきたい。そうして国民の向うべき方向の覚悟をきめさせる必要があるのじやないか。
  167. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政余裕金があるとおつしやいますけれども、国債も相当ありますし、外債も今のところ、ぱつと払いますにしても千数百億円ございます。また対日援助も、もし万が一みな払うということになりますと、七千億円になんなんとしております。こういうものを考えると、再軍備に持つて行く金はないのであります。私は再軍備にそういうものを使うよりも、もつと先に使わなければならぬものが、今後どしどし出て来るのじやないか。こういう気持でおります。
  168. 西村榮一

    西村(榮)委員 わかりました。
  169. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 小平忠君。
  170. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大蔵大臣にまず最初にお伺いいたしたいのは、二十七年度予算補正についての大臣の構想並びにその編成着手の時期等について、まずお伺いいたしたいのであります。
  171. 池田勇人

    ○池田国務大臣 構想も着手の時期も申し上げられません。構想はございません。
  172. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大臣のただいまの言明を私はあくまでも信じて行きたいと思います。  そういたしますと、最近問題になつておりまする、実は参議院修正にかかる地域給の問題であります。すでにこれは参議院で修正されまして衆議院に回付となつております。本件についてはいろいろ新聞なりあるいはラジオ、あるいは国会内におきましても、最後は両院協議会に付するのではなかろうかというような問題さえもあるのでありますが、その際もしこの修正を国会においてのむとなれば、大体年間さらに六億八千万円近い支出義務を政府が負うということになるのであります。こういう問題が起きて来た場合においても、大蔵大臣予算補正を行わないで、どういう方法をもつてこの地域給等の問題を処理して行くかについての大臣の所見を承りたいと思います。
  173. 池田勇人

    ○池田国務大臣 地域給の問題につきまして参議院で修正されたということは聞いております。しかしこれは議会でどういうように取扱われるか、政府としては見ているのであります。しかし政府としてこれに対しての処置はまだ閣議決定をいたしておりませんから、ここで申し上げられません。
  174. 小平忠

    ○小平(忠)委員 もちろん閣議決定されておりませんから、大臣としてはそのような御答弁だと思いますが、私は少くとも国会において修正議決をされたという場合において、大臣はどういう御処置をおとりになるか、大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
  175. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予算はそういう修正なしとして御審議願い、議院で決議つているわけであります。そうして衆議院でも修正せられないことを前提として議決になつたのでありますが、参議院がたまたま今の議決した予算ではできないような修正を出して来られることは、これは重大問題でございます。こういう問題について国務大臣たる大蔵大臣たるものは、閣議決定をしなければ政府意見を発表いたしません。
  176. 小平忠

    ○小平(忠)委員 繰返して申し上げるのも差控えます。ただ大蔵大臣は現段階において予算の補正を行わないということを、私もこの機会に明確に承つておきたいと思います。  次に先般の閣議で、実は最近これも問題になつております乳製品たるバターの輸入について、五百トンないし七百トンに近い大量のバターを濠州地域から輸入することについて、閣議決定を見たという情報を耳にしたのでありますが、この件について閣議決定の際における大蔵大臣考え方、それに対する構想を承つておきたいと思います。
  177. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大蔵大臣といたしましては、外貨をバター輸入につけるということで所管の一人の大臣として意見を申し上げました。安いバターが入るのならば、国民生活の改善向上の上からいつてもいいじやないか、こういうので輸入には賛成いたしたのであります。少くとも国内産のバターの価格操作について、どうするかという問題については農林大臣が適当の措置をとるという、責任大臣のお話によりましてこういう処置をとつております。
  178. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大蔵大臣にもう一点お伺いしておきたいのでありますが、その閣議の際に、主務大臣たる廣川農林大臣は、昨年来いわゆる政府の方針として畜産奨励、畜産振興の見地から、まことに画期的な政策をとりつつあつたというような段階において、外国バターを輸入することによつて、国内産バターの圧迫をするような見地から、閣議の席上、廣川農林大臣は反対しておるに対して、大蔵大臣は、それに発言をせられて事情説明し、そこで廣川農林大臣もその反対をやめて賛成されたというようなことを実は仄聞しておるのでありますが、そういつたようなことは事実でありましようか。
  179. 池田勇人

    ○池田国務大臣 閣議で、廣川君の意見に私反対して自分の意見を通したとかなんとかいうお話でございますが、閣議での各大臣の言明につきましては報告しないことにしております。私は、ただ先ほど申し上げましたように、国民生活の維持改善の上からいつて、安いバターを国民大衆に出すということは適当な方策だ、しかし片一方で国産乳製品が採算がつかなくなつて、せつかく振興しようとするのに支障を来してはいかぬということも考えなければなりません。従いまして両者を勘案して農林大臣が適当な措置をとる、こういうので私は賛成したのであります。しこうして、せつかく畜産を振興しながら、バターを安くしちやいかぬじやないか、こう言われますが、畜産振興ということはバターを安くする意味もあるのであります。これは農家の採算ばかりじやございません。国民生活維持向上というところからも考え、バターを安くするために畜産振興に予算も私は画期的なものを認めたのであります。両者相携えて国民生活の向上、こういうことを考えてから結論を出したのであります。
  180. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの大蔵大臣の御説明の、バターを輸入することは安くするためにということは、国内産のバターが高いということになると思うのです。これは私は非常に大きな認識の誤りでなかろうかと思うのであります。バターが高い、バターが高いと言われますけれども、しからば昭和八年、九年、十年の戰前における三箇年平均の食糧、その他バターときわめて関連のある品目について、この物価の上昇の率を見ますと、決してバターは高くない。私が具体的にこれを調査いたしましたり数字を申し上げますと、白米について見ますと、昭和八年九年、十年の三箇年平均の価格が、当時一升二十六銭であります。それが現在、やみ価格というのか、国民価格というのか、これが百五十円見当で、大体五百七十七倍の上昇率であります。これを公定である一升九十円にしてみた場合でも、三百四十六倍の倍率を示しております。さらに酒の場合に、一級酒はどうかというと、当時一升一円四十六銭であります。これが今日八百八十円、これは六百三倍になります。砂糖の場合はどうかというと、百匁で十二銭でありましたが、今日六十五円であります。これは五百四十二倍。石炭の場合はどうかというと、一トン十五円八十七銭のものが、今日七千八百円、これは四百九十一倍になつております。その他木炭、大豆あるいはばれいしよ、あるいは乳牛の場合を見ますと、乳牛は一頭当時百五十円、これは雑種牛でありますが、これが今日十二万円もしておる。これは実に八百倍であります。これに対してバターはどうかというと、当時バター一ポンドは一円三十銭であります。これが今日四百六十円であります。この倍率は三百五十三倍であります。私がただいま申し上げたこれらの物価上昇の率から見ますと、決してバターハ高くないのです。それを政府は、バターが高いから、あるいはバターを安くするために濠州産のバターを入れるのだ、こうおつしやつておる。反面に牛乳の問題を見ると、現在市乳はどうかというと、市乳は一合十五円であります。バター一ポンドをつくるための市乳は大体七升を必要としますが、七升の市乳というのは、市販の一合、十五円で見ますと大体一千五十円であります。このうちから脱脂乳六升三合をとりまして、脱脂乳は一合十円でありますから、これを差引きますと、市乳のいわゆるバターというものは四百二十円、こういう計算になるのでありまし決してバターそのものは他の物価に比較して高くない。ただバターは、戰前のように国民の大多数の食糧として供されていなかつた当時から見ると、バターの供給の率とか、あるいはそれを実際に食べる国民の数が非常に多くなつたという点から見つ高いくという論法はあろうと思うのであります。  もう一点は、この際バターを安くするために、国民の生活の向上、そういつたような見地からおつしやるのでありますが、実際に、しからば濠州におけるバターに対する考え方はどういう考え方をとつておるかというと、濠州というところは世界一牛乳の安い国であります。そうして乳牛は年がら年中放牧をしておる。さらに一番牛乳の安い国でありながら輸出の助長政策を政府がとつておるということであります。すなわち過剰牛乳に対するダンピングを行つておる。こういう輸出政策をとつておりますから、値段が安くなる。日本の酪農は、まだまだ西欧の先進国に比べて幼稚であります。こういう幼稚な国に、そういう極端に安いバターを持つて来て、日本の国内産バターを撹乱するとか、あるいは酪農振興を阻害するような政策は断じてとつてはいけない。大体大蔵大臣がバターが高いから安くするために入れるのだなんと言うことは大きな間違いであろうと思うのであります。これに対して大蔵大臣の納得の行く御答弁をいただきたいと思います。
  181. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国内における各品目のある一定基準年度からの比較について、税金のかかつているもの、かからないもの等を各種お並べになりましたが、私の言つたのは、国内における各種商品の騰貴率を言つておるのじやない。後段であなたがお述べになりましたように、ニュージーランドまたは濠州からバターを入れますと、一ポンド三百円内外で入ります。国内産は一ポンドの四百六十円。あの当時は四、五十円だつたと記憶しておりますが、こういう状態にあるのであります。しこうして食糧事情改善、その他各般の事情から申しまして、日本の供給量のある一定部分、三千五百トンとか言つておられましたが、そのときに千トン入れるか、五百トン入れるかという問題があるときへそういうふうに値段の開きがあるならば、輸入税を加えても二割以上も安いのでありますから、食糧生活改善呈の意味からいつても、また国民大衆のことを考えると、ある部分のものを輸入にまつことは、私は決して悪い政策じやないと思います。畜産振興ということはもちろん必要でございます。そのためにはあらゆる措置を講じております。しかし今急激にこういう安いものを入れて、四百五、六十円もする国際的に非常に高いものを、プールとかいろいろな手で国民大衆に徐々に安いものを持つて行くようにするという政策は、私はいい政策だと思います。この点はあなたと意見が違いますが、自分はそういう信念を持つてつておるのであります。
  182. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、私はとうてい了解し納得することはできません。もし大蔵大臣がそのような見解のもとに、今後一方では畜産の振興の助成政策をとり、一方ではそういつたような根本的に混乱と振興政策を破壊に導くような考え方をとるようなことは、この機会に改めていただかなくてはならぬと思うのであります。そこで大蔵大臣見解見解とし実はこの問題について廣川農林大臣の出席を願つてつたのでありますが、本日病気であるということで出席願つておりませんが、幸い野原農林政務次官が見えておりますから、野原農林政務次官の本件に対する御所見と、あわせて農林省の主管局長である長谷川畜産局長の、畜産振興という観点から、濠州、ニュージーランドから、大体日本の一箇年の生産の約三割に近い大量のバターを輸入して、今後起きて来るところの混乱と支障について、かに対処して行くか、これについて御所見を承りたいと思います。
  183. 野原正勝

    ○野原政府委員 小平委員の御質問にお答えいたします。農林省といたしましては、国内における酪農を振興いたしまして、酪農製品を潤沢に供給することにいたしたいということで、畜産振興の計画を立てまして、着々その振興をはかつておるわけであります。まだ日本の酪農は、小平委員のおつしやるように発展の初期にあるのでありまして、従つて酪農方式も、農村におきましてはまだ十分徹底されておりません。従つて集乳費が非常にかかつたり、また酪農工場における処理費もかかるというような点、あるいはまた飼料等の対策も従来十分でなかつたというような点から、どうしても生産されるものが高いのであります。国際市場と比べますと、非常に高くなつております。他の諸物価に比べてバターは高くないというおり話でございましたが、ある時期を画して、物価の上昇率という点から見ますれば、お説の通り他の物価との均衡上さほど高いとも思えないのであります。しかしながら現実の問題といたしまして、バターはかつては非常に高級な、上流階級だけがこれを少量に愛好しておつたというようなことから、最近はほとんど大衆の中に入つておる。もつとなかなか高いバターで、国民大衆が十分食べるわけに行きませんが、しかし最近は、著しく国民の各層にもバターが愛好されるようになつた。従つてバターに対する国民の要求というものは非常にふえておるわけであります。そういう点から見まして、あえてこれは非常に特殊な、高級な食料ではなくて、むしろ結核患者であるとか、栄養の問題から見ましても、非常に普及されなければならぬ食料の重要なものであると了解しておりますので、そういう観点から見ますと、この価格がどうも高過ぎるということになつて来る。従つて他の物価との均衡において、外国から安いものを入れるということが問題になるわけであります。しかし農林省としましては、いたずらにこれを国際市場との競争、そのままするということは、せつかく発展の段階にありますわが国の酪農業をして、その伸びようとする芽をつむようなことになつては困るという点を実はおもんばかりまして、輸入にあたりましては十分国内の酪農の将来の問題を考慮し、その影響を最小限度にとどめるように、また価格操作等の問題につきましても、これは当然安いバターと国内の製品の価格プールの問題もあわせ考えて行きませんと、日本の酪農界は非常な混乱に陥るのではないかという点を心配しておるのであります。根本対策といたしましては、いまさら申すまでもないのでありますが、要するに酪農の製品をもう少し豊富に、低廉にするという政策を強力に進める以外に、解決の道がないのであります。その点からいたしまして有畜農家創設十箇年計画というものを立てまして、畜産の振興に当つておるわけであります。二十七年度には二十四億円の融資をいたしまして、畜産、主として酪農の振興に当るつもりであります。あるいはまた、乳製品、酪農製品の価格を引下げる問題に最も緊密な関係のありますのはえさの問題であります。えさの問題につきましては、もつぱら自給飼料の生産に努めるという政策をとつておりますが、ある程度濃厚飼料を購入するという問題もございますので、その点は近く飼料の需給調整法を国会に提出をして、御審議を願うということにして、この価格につきましても、できるだけ安い飼料が生産者の手に届くような措置を講ずるということを考えております。あるいはまたこれに関連いたしまして、従来畜産振興上、非常に重大な問題となつておりました酪農家のサイロの問題であるとか、あるいはまた畜舎の改善、あるいはまた尿だめの施設というようなことにつきましても、近く具体的な方途を講ずるつもりで着々研究を進めております。あるいはまた、非常に広大な地積を持つておる牧野改善につきましては、二十七年度の予算におきまして、これまたわずかでありますけれども、五千万円ほどの予算を置きまして炭カル等を購入いたしまして、実験的に改善をはかるわけであります。これは非常に自給飼料の造成に役立つものでありまして、今後この方面には特に相当大幅な予算を投入いたしまして牧野改善をはかるならば飼料の問題はおそらく根本的に解決するというふうに考えております その他水田裏作奬励、寒冷單作地帯における復興法案と関連いたしまして、自給飼料の造成に対しまして、大いに積極的な施策をやろうということで進めておりますので、おそらくわが国の酪農も近い将来においては必ず国際の水準に達して、安いまたりつぱな酪農製品が潤沢に国民に愛好される日日がそう遠くない。またそうあらねばならぬというようなことで、われわれは国内における食糧自給態勢の確立、強化という問題とあわせまして、総合食糧対策の一環としてこの問題を取上げ、着々進めて行こう、こういう方針であります。今回バターを究如として輸入したという点につきましては、全国酪農家の諸君が非常に将来を心配されておりますが、これは一つの衝撃でありましよう。おそらくその点については、政府の施策について非常に心配されておる方もあると思いますが、政府におきましても、輸入についてはある程度のコントロールは当然しなければならぬと考えております。生産農民に対する保護指導の上からいつて、安いからとつてむやみにどんどん輸入せられるようなことは、農林当局としてはあくまでもやめたい。ある程度の刺激、あるいはどうしても絶対量の足りないものについての補給という点については、輸入によつて補う以外にありませんが価格操作におきましては、安いバターと高いものとの。プール等の問題もあわせまして、この問題の影響をできるだけ少くするような方途を講ずることに努力したいと思うのであります。
  184. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 大分時間も過ぎておりますし、まだあとに質問者も控えておりますから、一点だけに限つて許します。
  185. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまきわめて懇切な説明を聞いたのでありますが、ただいまの政務次官の御答自弁によりますと、輸入バターの本論をほかの方面にそらして、飼料関係なり、あるいは畜産振興の方へ持つてつて、きわめてりつぱな御高見を聞いた。だからかんじんの輸入バターの線をそらしてしまつておるが、政務次官の御意見だというと、バターの輸入は絶対してはいかぬということになる。さらに御説明を伺つておると、絶対量の不足の面を補給するとか、あるいはその際、最小限度の輸入にとどめておきたいとかいうような発言があつたのですが、一体絶対量不足というようなことがあるのですか。バターについては、その点に私は非常な疑問を持つておるのであります。同時に価格も安くする、非常に高いという問題については、私は納得でき得ません。しからばどういうわけで高いのか。高い理由はどこにあるか。会社のマージンが高く取過ぎるのか、中間搾取があり過ぎるのか、あるいはその実際の加工過程において何かロスがあるのかといつた点について、私はその具体的な理由をただしたいのである。こういう点を是正するために輸入しなければならぬという、その輸入の根拠が非常に明確を欠いておる。そういうきわめて抽象論で、もし今このバターを輸入した場合に——もう今日において問題が起きているのでありますが、今後私は畜産振興上ゆゆしき問題が起ると思うのです。従つて政務次官からあらためてこの際承つておきたいのは、いかなる反対、反撃にあつても、政府はこれを強行するのかどうか、輸入するのであれば一体どれだけの数量を輸入しようと考えているのか、その点について最後にもう一応お伺いし、さらに先ほど申し上げたように、引続き主管局長である長谷川局長の、畜産振興対策の面から見て本件をどう考えておるか、お伺いしたいのであります。
  186. 野原正勝

    ○野原政府委員 先ほども詳しく申し上げました通り、農林省としましては、目下発展の段階と申しますか、伸びつつある日本の酪農という問題を考えますときに、国内における生産者が生産の意欲を失うようなことであつてはならないのでありますが、国内における乳製品等の価格は、先ほど申しましたように、集乳費の関係であるとか、あるいは工場の処理費の多くかかる、まあ端的に言うならば、牛の数が非常に少い、非常に散らばつてあるというようなことと、また飼料の対策等も十分でないというようなことをあわせ考えまして、非常に生産コストが高くなる。あえてこれは酪農会社が不当な利潤近求をしておるとも思われませんけれども、とにかく遺憾ながら太刀打ちができないほど向うが安いことは事実のようであります。従いまして一日も早く諸外国と太刀打ちのできるような水準まで、日本の生殖を改善して参りたいというところに、畜産振興、酪農に対する根本的な考え方があるわけであります。ただ当正面の問題としましては、できるだけ輸入はしたくないという考え方で、実は農林省としましては、乳製品の輸入、特にパターのごとき高級なものに対しましては、これはできるだけ輸入はやりたくないという考え方であつたのでありますが、いろいろな事情から輸入することになりましたれども、いろいろ影響するところが重大である点をおもんばかりますと、これは輸入の方針は決定いたしましても、輸入の数量あるいは時期というようなもの、あるいはまた全体としての需給調整あるいは価格の問題というものは、今後まだ政府としてとり得る対策がある程度残されているのではないか、かように農林省としては考えております。従いまして輸入することにきまつたものに対しまして、いまさら私がとやかく申すことはどうかと思いますけれども、農林省の方針といたしましては、今後といえども、でき得るだけ輸入は最小限度にとどめることにいたしたいと考えております。
  187. 長谷川清

    ○長谷川政府委員 ただいま政務次官からお話がありました通りでありまし私からあえてお答えを申し上げるのもどうかと思いますが、特に御指定でありますので、申し上げておきたいと思います。  現在、畜産を特に大きく取上げて振興せしめて参りたいと考えております際に、こういう問題が起きましたことは、私どもといたしましては非常に遺憾に考えております。しかし問題の要点は、先ほど政務次官もお話になりましたように、乳牛の絶対数が非常に少いというところに問題があるように考えるのでありまして、この点は農家の生産方画から考えてみましても、あるいは製造業者の製造工程の面から見ましても、乳牛の数が少いことが大きな原因になるものでありますので、私たちといたしましては、できるだけ早い機会に乳牛の頭数をふやすことに努力をいたしたい。現に本年度におきましても、できますれば濠州あるいはニュージーランド等から、バターでなしに、乳牛そのものを入れることについて、目下具体的にその計画を進めておるというような実情でございます。しかしいたずらに乳牛の数をふやすと申しましても、これが農家経済にぴつたりはまり込んだ形においてふえることがどうしても必要であります。そうなりますと、先ほど政務次官からもお話がありましたように、まず農家の飼料の自給率を高めるという点におきまして牧野の改良あるいは飼料作物の栽培、そういう方面国家といたしましても特別の考慮を払いまして、農家が安定した状態において乳牛が飼えるような方策をこの際にとつて行くように、この問題を契機といたしまして、特に一段とその問題を推進をいたしたいというふうに考えておる次第であります。  なお今具体的に問題になつております輸入バターをいかに処理するかという点につきましては、もしできますならば、あるいは学校給食、あるいは結核患者用とか、特定のものに特配をするというふうな方途によりまして、この問題による酪農生産者の影響をなるべく軽減するような処置を考えたい、こういふうにいろいろ研究を進めておるような次第であります。
  188. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 藤田義光君——五分間でお願いします。
  189. 藤田義光

    ○藤田委員 時間がまつたくありませんので、私見を全然入れませんで、質問の要点だけを申し上げます。  まず第一に大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、講和条約の効力発生後すでに一箇月を経過いたしております。この際におきましすでに二十八年度の予算編成方針も決定しつつあると想像されますが、従来のドツジ・ラインあるいはシヤウプ税制の改革、こういうことが国民の輿論として強く起きて参つております。ドツジ・ラインの緩和に関しましては、先ほど同僚西村君からも簡單に質問がありましたが、先日の新聞におきましては、独立後の新しい経済政策として、ドツジ・ラインの緩和とシヤウプ勧告の徹底的な修正を断行するというような報道も行われておりましたが、その真相をこの際ひとつ大蔵大臣からお伺いしておきたいと思います。
  190. 池田勇人

    ○池田国務大臣 税制につきまして、シヤウプ勧告の訂正は、もう一昨年からやつておるのであります。たとえば勤労所得についてシヤウプ博士は一割控除だけしか聞きませんでしたが、一割五分の控除するか、いろいろな改正はしております。また退職金の問題にいたしましても、各般にわたりましてやつておるのであります。今後も税制というものは、だれが何と言おうとも、国民生活の実情国家経済の状況から考えなければならぬものでございますから、国の財政、経済の状況を見ながら、適当な改正を時々やつて行くべきだと考えております。
  191. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、シヤウプ博士の勧告の線を修正するというふうに了解してよろしゆうございますか、どうですか。  それから先ほど質問中に私語がありまし聞えなかつたようでございますが、ドツジ・ラインの緩和ということを、はつりきりとこの際新しい池田の財政の方針として言明できますか、どうですか、この点もお伺いいたしたいと思います。
  192. 池田勇人

    ○池田国務大臣 シヤウプ博士の税制勧告案は、もうずつと前からあの通りつておるのでなく、だんかえて来ております。先ほど申し上げましたように、今後経済財政事情を見ながら適当な措置をとつて行きたいと思います。  それからドツジ・ラインの訂正とかおつしやいますが、ドツジ・ラインというものが均衡財政、健全金融というものならば、私はかえるる気持はございません。
  193. 藤田義光

    ○藤田委員 オーバー・ローンの問題につきましては、先ほど質問がありましたが、私は現在の自由主義国家難の再軍備経済下におきましては、財政政策の転換だけではオーバー・ローンという変態現象を是正することは困難である、どうしても国民貯蓄の増強をいま少しく強化しなくてはいかぬ。この点に関しましては順次緩和しておるということを言われましたが、それは自然現象として緩和して来ておるのか、あるいは池田財政の一環として何か具体的な政策を推進されているのかどうか、この際お伺いしておきたい。
  194. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話の通りに、国民貯蓄の増強、資本蓄積をまずはかりまして、そうして資金をふやし、支出の方につきましても不要不急のものはできるだけ避ける、しかもまた政府は、財政規模をできるだけ小さくして、そうして国民資金の蓄積と国民消費の増大を防止する、こういう私の財政経済政策のたまものだと思います。
  195. 藤田義光

    ○藤田委員 次にお伺いしたいのは、政府の資金運用部資金というものは、どうしても統一的な運営をしないとその効果が完璧でない。しかるに先般の閣議におきましては、一部簡易保険等を分離するというような方針に確定したやに了解いたしておりますが、これはかねての大蔵大臣の政策に多少背反するのじやないか。私たちは絶対反対すべきではないかと思いますが、この点に関する大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  196. 池田勇人

    ○池田国務大臣 理論的に申しますと、私は保険事業自体からいつて、郵政大臣がやられるのが理論的には正しいと思います。しかし合同運用という一元的に運用するということは、今の日本の資金の状況から申しまして、やむを得ない処置であるというので今日までやつて来たのであります。しかるところ、私は今理論的に行くべきか、実際的に行くべきかということにつきまして、相当考慮いたしましたが、両院を通じてほとんど全会一致の分離運用という決議がありましたので、その決議を尊重して、分離運用ということにつきまして承諾を与えたのでありますが、片一方には、現状にかんがみまして、できるだけ連絡を緊密にし、今あります資金運用部資金の審議会、総理を会長とし郵政、大蔵大臣を副会長とする審議会におきまして、十分合同運用の実をあげ、そうして予算編成の際におきましても、これと見合いながらやつて行きたい、こういう考えであります。
  197. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいまの御答弁で、理論的には分離することが正しいという御答弁でございましたが、そうしますと、現在厚生省で所管いたしております各種の保険金等に関しましても、将来分離の方針に進んで行かれるかどうか、この際重ねてお伺いしておきます。
  198. 池田勇人

    ○池田国務大臣 厚生年金と簡易保険は、私は性質がちよつと違うと思います。むしろ実体的に申しますとかなり違う、名目は似ておるようでございますが。厚生年金につきましては、そういう気持はただいまのところ持つておりません。
  199. 藤田義光

    ○藤田委員 時間がありませんので、最後にお伺いしたいと思うのでございますが、外国為替委員会というものは将来廃止される御方針でありますか、どうでありますか。
  200. 池田勇人

    ○池田国務大臣 七月の一日から廃止する予定でおります。
  201. 藤田義光

    ○藤田委員 外国為替委員会を廃止するという大蔵大臣の方針によりまして、外資導入がまつたく蹉跌を来しておるという情報がありますが、そういう事実がありますかどうですか。
  202. 池田勇人

    ○池田国務大臣 とんでもない情報だと思います。私は世界各国を見ましても、国内並びに国外のいわゆる円資金についての責任を持ちます、円価値についての責任を持ちます大蔵大臣が、外貨資金も管理運営するのが、世界各国の常道であります。ただ進駐單が日本に来て、そうして日本の外貨を進駐軍が管理しておる、こういう異例の場合におきまして、大蔵省以外に委員会をこしらえてやることは、当時やむを得なかつたかと考えるのでありますが、この問題につきましては、昨年の今ごろも、進駐軍はもう外貨を日本へ渡したのだから、あの外貨の委員会については日本政府の方針通りにしろ、こういうのでありました。私は外貨の管理を大蔵大臣のもとに為替局を置き、そうして専門的事務もありますので、各国と大体同じように、日本銀行で実務を取扱わす考えであるのであります。私は責任政治、民主主義の本来の姿から大蔵大臣のもとにあるべきものと考えるのであります。
  203. 藤田義光

    ○藤田委員 大蔵大臣の御答弁でありますが、なるほどこの委員会は占領軍の落し子でありまして、大蔵大臣独立後の大蔵大臣として主体性を回復されるという方針はけつこうでございます。ところがこの外国為替委員会に対するアメリカ資本家あるいは政府機関の信頼が絶大である、このアメリカの外資を人れようとする人々がたよりにしておりました委員会を、池田大蔵大臣が廃止するということによつて、外資導入が阻止されたというようなことを聞いておりますので、この点に関しまして、いま一度特にこの外国為替委員会の幹部の間におきましては、やや大蔵大臣の御答弁と違つたような情報が流布されておりますから、重ねてお伺いしておきます。
  204. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそうは信じません。とにかくこれは自慢話のようでありますが、よく日本大蔵大臣はあのインフレをとめた、吉田内閣はよくとめたといつて私は相当信用を得ておると考えるのであります。しかもこういう責任を負わない機構において、大事な外貨を管理するということは、これは異例なことでございます。日本が常道に帰りましたならば、やはり各国並にやる、イギリスにしてもフランスにしても、ベルギーにいたしましても、アメリカは為替管理をしておりませんから別ですが、今為替管理委員本会を持つているのは、私の知つたところでは、占領下の西ドイツだけであります。こういうのはやめて常態に復すべきがあたりまえでございます。これは私は私情をまじえてやるべきことでないと考えております。
  205. 藤田義光

    ○藤田委員 もし大蔵大臣のいわゆる独立国大蔵大臣としての建前を堅持されることによつて、巷間流布されておるように、外資導入に蹉趺を来したというようなことが将来あるとすれば、現有の大蔵大臣の方針を曲げられまして、外国為替委員会を存置するという方向になるかどうですか、絶対現在の御答弁の方向通りに推進されるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  206. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は確信を持つて国会の審議をお願いいたしておるのであります。日本大蔵大臣が信用がなくて、外資が入らぬというのならばこれは内閣自体の問題でございます。私個人の問題じやございません。
  207. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 稻葉修君。
  208. 稻葉修

    ○稻葉委員 最近大学と警察との敵対関係が非常に激化されておりますが、これは文部大臣としてもきわめて重大にお考えになるべきことであり、わが国の治安維持に当る警察及び警察予備隊が、将来をになう大学生に非常に敵対視されるということについて、文部大臣はいかにお考えになつておられますか。
  209. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 そういう点につきましては、警察の方にもよく大学というものの性格を理解してもらい、また大学にも、治安の責任は警察にありますから、そういう点を両方がよく理解してもらい、学生にもよく徹底させるということによつて、こういう紛争を解決して行けると私は思つております。
  210. 稻葉修

    ○稻葉委員 今まで起つたような東大事件、早大事件、愛知大学事件等の不祥事が、将来再び繰返されない自信がおありですか。
  211. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私どもはただいま申したような線で、次官通達などももつと詳しく限定したものをつくつて行くというような仕方で、これを防止しようと思つておりますけれども、現在のような時代において、こういうことが必ず起らないと言うことは私はむずかしいと思つております。
  212. 稻葉修

    ○稻葉委員 早稲田大学の事件については、学友たる国会議員がうまく調停をしたようであります。国家の租税をもつて設立されておるところの国立大学、なかんずくその代表と目さるべき東大事件については、いまだ解決の曙光を見ないようでありますが、事態の推移はどうなつておるか、文部省においてお知りになつている範囲をお漏らしを願いたいと思います。
  213. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 早大事件が、議員諸君のお力によつて穏便に解決されたことについては、私は深く感謝をしております。東大事件については第一次の分は解決されてそれぞれ処分をいたし、その次の分は調べ中であります。
  214. 稻葉修

    ○稻葉委員 事態がこういう際に、これは新潟県の一地方大学の問題ではあるけれども、ここに大学の分校を移転して、そのあとへ警察予備隊を新設するという問題にからんで、今日の警察対大学の対立関係からして、この問題が再び東大、早大事件等のごとき推移にならなければいいがということを深く憂慮する見地から、現地の状況等をもあんばいしつつ、この際文部省の御方針を明確に承つておき、さらに警察予備隊としての御方針も大橋国務大臣かから承つておきたいと存じます。  まず第一に文部大臣に伺います。文部省は新潟大学教育学部の新発田分——分校が三つございます。高田、長岡、新発田で、そのうち新発田分校を新潟大学本部に統合するという方針をおきめになりましたか、その点を伺いたい。
  215. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 その方針は以前から文部省におります大学設置審議会においてきまつておる方針であります。
  216. 稻葉修

    ○稻葉委員 それはいつごろでしよう、
  217. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 昨年の一月でございます。
  218. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 稲葉君に申し上げますが、大橋国務大臣は五時からよんどころない用があるそうでありますから……。
  219. 稻葉修

    ○稻葉委員 わかりました。新発田分校を大学本部に統合するという大学設置審議会の答申に基く方針を、昨年の一月きめられたということでございますが、その理由はどういうところにあるのでしようか。
  220. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 全国の大学を整備して行くというためには、方々に散在しておつてはとうていこれを整備して、大学の名に値するような大学にすることはできないということでございまして——今の場合は青年師範でございます。これを分離しておくことは、不適当だという大学設置審議会の見地によつて、これを新潟に併合することによつて新潟大学を強化しよう、大学らしい大学にしよう、そういう方針でございます。
  221. 稻葉修

    ○稻葉委員 大学らしい大学にするために、分散された分校を統合するという御方針と承りましたが、これは大学行政に関するきわめて根本的な意見の対立になるかもしれませんけれども、私は、昭和二十五年の六月、現在の国立学校の設置法に基いて全国に国立大学が七十余できた当時、その国立学校設置法の立法趣旨を当時の高瀬文部大臣から伺つたのであります。それによりますれば、この国立学校設置法に基く大学は、多少程度は落ちるけれども、憲法の精神に基き、また教育基本法の精神に基いて、山村僻地にある有為の青年に対しても、教育を受ける機会を均等に与える施設を全国に普遍化して、そうして大学施設の、都市と山村と農村との不均衡な状態を打破するというところに、この国立学校設置法の立法の根本精神があるのだ、こう承つておりました。私どもその方法を是といたしたものであります。今日、分散しておつては都合が悪いからというので、新発田分校を新潟大学に統合いたしますと、現在授業を受けておる四百人の大学生のうち、交通不便等の状態で、あるいは学資が続かない等の状態で、その半数は退学しなければならぬ。そうすると大学教育を受ける機会を奪われるのであります。こういう方向に持つて行くことは国立学校設置法、その根本法であるところの教育基本法並びに憲法の精神にももとる逆コースであるように考えますが、この点について大臣はいかにお考えになりますか。
  222. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 教育を地方々々に及ぼすといつても、これは程度問題でございます。地方に及ぼすのだから、どんな不完全な大学でもかまわないというわけではない。ことに新潟大学などはその地理的条件からいつても、従来の成立ちからいつても、りつぱな大学でございまして、こういう大学は、ことに教育学部とか文理学部というものをりつぱなものにするということが、日本の教育の推進に役立つことだと私は信じております。地方にまで行くといつても、そういう極端なことをいつては私はとうてい教育はできないと思います。ただそのために今の学生に不便を与えるようなことが起ることは、まことに申訳ないことでございますが、しかしまつたく遠い土地というのではございませんし、通学も全然できぬというわけではございませんので、それほどのことがそこに起るとも思いません。どうかそういう点はよく調整して、新潟大学の発展ということを考えて行きたいと考えております。
  223. 稻葉修

    ○稻葉委員 文部大臣はこの問題を一地方の小事と考えており、実情をお知りにならないからそういう御答弁をなさるのかもしれませんけれども、そうではないのであります。事こまかになりますと時間がありませんから、いずれ文部委員会において現地の実情をこの点については詳しく申し上げて、文部大臣の御再考をお願いいたすことにいたします。それでは、文部省の大学を大学らしい大学にするために分校等を統合するということは、私の教育行政に関する根本理念とは対立をいたしておりますけれども、かりにそれを認めるといたしまして、文部省は、いつごろ新潟大学学長に対して、その方針を通達されましたか。
  224. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 昨年の六月通達してございます。
  225. 稻葉修

    ○稻葉委員 その文書の内容は大要どういうことでありますか。
  226. 稲田清助

    ○稲田政府委員 個々の大学につきまして内容は違うのでございますが、当該の新潟大学におきましては、長岡及び高田には二年課程を存置する、それから新発田の分校は新潟に統合するという趣旨の通達でございます。
  227. 小林進

    小林(進)委員 関連して今の統合の問題について一言お伺いいたしたいのであります。その文部省の通達が昨年の六月というお答えでございましたが、最近それをまた何らかの形で通達されたことがないかどうか。それからいま一つ、文部省の大学設置審議会というもののその通達が、どれほどの拘束力をお持ちになつておるのかという問題についてお尋ねいたしたいと思います。
  228. 稲田清助

    ○稲田政府委員 お答えいたします。最初の御質問につきましては、最近の機会におきまして学長の方からの照会によりまして、文部省の方針はかわつていないのだということをお示ししたことがございます。それから大学設置審議会の答申に基きます文部省からの通牒でございますが、もちろんこうした施設の問題は、設置者である文部大臣が決定するのでございますけれども、各大学当局がそうした方針を体されて、いろいろ地元とも御協議願うという必要がある意味において、そういう方針を大学長に通知いたしたわけでございます。別に拘束力があるといつたような性質のものではないのでございます。
  229. 小林進

    小林(進)委員 私は関連でございますので、なるべく冗漫な言葉は避けてお尋ねしたいと思うのでありますが、ともかく地元においては、最近文部省から確固たる通達が発せられたということで、それが金科玉条のような強い力をもつて輿論を圧迫しておる、こういう形勢がありますということが一つ従つて何か最近新しい通牒をお出しになつているのじやないかということが私ども強く感じられる、いま一回この点をお伺いしたい。それから今の拘束力の問題であります。通達のいわゆる力の問題でありますが、これも何かオールマイテイのような絶対の力を持つておるかのごとく反映いたしておるのでありますが、いやしくも新しく大学を設置される場合にはそういう適当な敷地で適当な学校を設けるということはよろしいが、現在でき上つて開校しておる学校を廃止して、あるいは移転するというようなことは、文部省だけの一存では行かないのではないか。地方自治体のあらゆる部面から網の目のような利害関係や得失が現われて来るのでありますから、この点文部省としても相当慎重に構えてもらわなくちやならない。その慎重さをあるいは欠いておるのじやないかという懸念があるわけでありますが、この点をいま一度お伺いして、私の関連質問を終りたいと思うのであります。
  230. 稲田清助

    ○稲田政府委員 最近出しました通知は、先ほど申し上げましたように、文部省の方針がかわらないという回答をいたしただけでございます。昨年六月の通牒は、こういう方針をもつて将来考えるが、学校当局は地元その他と十分連絡して善処せられたい、こういう意味合いでございます。最近において新発田の市の理事者から文部省にも学校にも御意向をもたらされ警察予備隊関係もそういう御意向がありますので、文部省といたしましては、学校当局、それから市の御当局、警察予備隊当局とよくお話合いを願いたいという気持でおるわけでございます。
  231. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただいまの小林君の関連質問で重大な矛盾を見出したわけであります。文部大臣の先ほどの御答弁では、分校は新潟大学本部を大学らしい大学にするために統合するという方針である。ただいまの稲田局長の御答合弁によれば、新発田は統合するけれども、長岡と高田は存置する方針であるということになりますと、文部大臣の大方針であるところの分校を全部統合するというのと、稲田局長の一つは統合する、二つは残すという方針とがばらばらになつて来ますが、その点はいかにお考えになりますか。
  232. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は分校は全部統合するということは決して申したことはございません。今問題になつておる分校は、大学設置審議会の決定によつてそういう方針にきめた、こう申し上げたのであります。
  233. 稻葉修

    ○稻葉委員 それでは前にもどつて、その文部省の方針を橋本新潟大学長に通達をいたしたのが昨年の六月であつた。そのときの橋本学長の返事はイエスでありましたか、ノーでありましたか。
  234. 稲田清助

    ○稲田政府委員 別に返事を求める性質のものでなく、設置者たる文部省の方針がこうであるということで学長にお示しいたしました。
  235. 稻葉修

    ○稻葉委員 文部当局はそういう通牒を発した後、大学長が分校の当事者とどういう交渉をしたかについて御関心をお持ちでしたか、全然無関心でしたか。
  236. 稲田清助

    ○稲田政府委員 それは大学の内部のことでございますので、学長が適当な大学管理機関と御相談になつておることわれわれは想像いたしおります。     〔北澤委4代理退席、委員長着席〕
  237. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただ想像をいたしておられるのであつて、内情については御存じないとおつしやるのですか。
  238. 稲田清助

    ○稲田政府委員 この件についての当該分校主事の御意向は直接に伺つております。
  239. 稻葉修

    ○稻葉委員 学長の御意見は伺つておるわけですか。
  240. 稲田清助

    ○稲田政府委員 さつきお答え申し上げましたように、格別御意見を徴した意味ではないのでございますけれども、おそらく学長としてはその方針を了承せられたものとわれわれは信じております。
  241. 稻葉修

    ○稻葉委員 日は忘れましたけれども、この問題について日高文部次官とお会いしたときに、大学長の文部省通達に基く処置がきわめて政治的にまずかつたという意味の言葉をしばしば聞きました。きようは日高文部次官が来ておられませんが、この点について橋本新大学長の措置がきわめて高圧的であり、大学分校当局者の意思を無視しておつたきらいがあつて遺憾であるということは、文部大臣も次官と同じようにお考えですか、あるいはそうでないとお考えですか。
  242. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はそういう点は次官にまかせておつて事情をつまびらかにいたしませんから、はつきりここで申し上げることはできません。
  243. 稻葉修

    ○稻葉委員 私が去る五月十八日、全国大学教授連合関東支部総会が新潟市に開かれました際、学長にも親しくお目にかかつたのですが、そのときの御発言の中で、実は自分としては強行する意思はないのだけれども、文部省の通達もあることでもあり、かつは新発田には最近警察予備隊が誘致されるので、その校舎がなくなるから当然統合せざるを得ないではありませんですか、ということを承りましたが、文部省としては、統合はそう急ぐ問題ではないけれども、警察予備隊の方で押しかけて来るから、これがため明けてやらなければならぬというようなお考えがあるのですか、全然ないのですか、これについて文部大臣並びに大橋国務大臣の御意見を承りたい。
  244. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊の増強につきまして、全国にこの宿舎の適地を探して起ります。これにつきまつしては、経費を節約し、またさつきゆうに準備をいたす関係上、既存の建物がありますものはできるだけこれを利用いたしたい、こういう方針でやつておるわけでございます。どうしても既存の建物で適当なものがなければ、予算も頂戴いたしてあることでございますから、新設をいたすのはこれは当然のことであります。  新発田の問題でありますが、新発田の問題は、新発田市並びに新潟県の多数の輿論としここに予備隊を持つて来てもらいたい、こういうような御希望がありましたので、適当な建物があれば優先的に新発田に持つて行くということを考えたい、こう申しましたところ、これには適当な建物があるといつてつて来られたのがただいまの建物であります。私どもはその建物が支障なくわれわれの手に移管されるということを前提とし新発田に部隊を置きたいと考えておるわけでございます。従つて新発田の当該の建物を取得するにつきまして、種々地方に問題があるということになりますと、予備隊が何らその必要のないにもかかわらず、さような地方問題に介入をいたしますことによりまして、地方民との感情的な対立を招くということは、予備隊の管理の上から申しましわれわれの本旨に沿わざる点でございますので、無理にどうでも押し込むというようなつもりは毛頭ございません。これは学校を取上げて宿舎にするというのではなくして、学校が他へ移転することによつて、何ら適当な用途のないむだな建物が残る、これを予備隊が使うことは経済的でもあるし、また国家的に利益であろう、こういう見解に立つてつておるわけでございます。従いまして文部省において、どうしても学校を存置する必要あり、こういうことでありますならば、私どもは他へ予備隊の敷地を探すことは当然のことでございます。これはその地方の輿論に沿いかねるかもしれませんけれども、稲葉代議士の御議論のような実情があるとすれば、これはやむを得ないことと考えております。他に適当な敷地を見つけざるを得ない。そうなると、自然新発田に誘致をされるという方は非常に失望されるかもしれませんけれども、これはやむを得ません。
  245. 稻葉修

    ○稻葉委員 私は現地の住民が失望するとか、あるいは誘致してもらいたくないとかいろいろな反対、賛成両派にわかれて争つている問題に、いずれに味方をしてどうとかいうことではない。これはわが国の大学行政がどうなるかという大方針にも関する事柄であり、また警察予備隊としてはそういう無理をして行つた場合に、治安維持の任に当る警察予備隊が、かえつて地方動乱の源泉になるというようなおそれもあるから言うのであつて、個人的な問題にからんでそういうふうにおつしやらないようにしていただきたい。同時にまた、決して無理に地方民の反対を押し切つて行くのではないという御言明はきわめて妥当なるものとして了承いたしたいと思うのであります。  そこで、警察予備隊が新設されるについての要件は、あいた建物があることが大事なのか、そのほかにも要件があるのですか。たとえば三百メートルの射撃場とかあるいは二十五万坪の演習場とかいわれておりますが、それはそうですか。
  246. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 実は警察予備隊を一昨年夏つくりましたときは、何分一、二箇月のうちに七万五千名の収容力ある建物を手に入れるということがさつきゆうを要しましたために、他の条件に関係なく、もつぱらそれでやつてつたわけであります。ところが当初のうちは、予備隊の訓練の程度も各個教練あるいは小部隊の訓練でございましたから、大した演習場も必要つながつたのでございますが、予備隊の訓練がだんだんに進んで参りますと、次第に大きな部隊を單位としての教練をしなければならぬ。そうなりますと、この演習場というものがきわめて重大なことに相なります。従つて現在におきましては、まず第一に最小限度二十五万坪程度の演習場が手近にある、理想からいえば、宿舎に接近してあることが望ましいのであります。そしてできるだけ既設の建物はあいたものがありといたしますならば、これを活用することを心がけております。こういうふうにしてやつております。なお射撃場につきましては、既設のもので利用できるものが手近にあればよろしいのでありますが、しかしそれはそう広いものではございませんので、やむを得なければ新設するということも考えております。宿舎につきましても、やむを得なければ新設する。演習地だけはなかなか新設が困難でありますので、できるだけ手近にあるということをまず第一の条件にして探す、こういう方針でおります。
  247. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただいまの大橋国務大臣の御答弁によりますと、新発田が警察予備隊を誘致することは、私の知つている資料ではますます無理なようでございますが、警察予備隊を新発田に新設することはいつごろおきめになつたのか、またどういう資料に基いておきめになつたのですか。もつと端的にいえば、警察予備隊の自主的な決定によつたのか、あるいは現地の陳情、要請に基いたのであるか、承りたい。
  248. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 新発田に部隊を新設するということは、これはまだ正式に決定したという段階ではないのであります。私どもの決定いたしております段階は、今大体この程度の部隊の新設が必要である、ついてはこれをどこへ置くべきか、漠然と候補地を探すわけにも行きませんし、今までいろいろお申出があります候補地を比較検討いたしまして、また全国的な配置等の関係から見この辺がよかろう、こういうことを一応内定しておるわけであります。従つて現在はその内定に基きまして、現実に現地の宿舎なりあるいは敷地なりを検討いたしましそうしてこれを急速に獲得できるかどうか、できるようならばこれを獲得して、そうして必要なる施設をつくる。施設ができ上つた上で正式にそこに部隊を開設する、こういう段取りに相なるわけでございます。
  249. 稻葉修

    ○稻葉委員 しからば文部当局にお伺いしますが、ごく最近に文部省監理局長並びに大学学術局長の名義をもつて、橋本大学長に対して新発田分校を早期に新潟へ移転するようにという通牒を発せられたかどうか。
  250. 稲田清助

    ○稲田政府委員 その事実はございません。
  251. 稻葉修

    ○稻葉委員 もう一度お伺いしますが、ほんとうにありませんか。
  252. 稲田清助

    ○稲田政府委員 早期に移転するように指示したかと言われるから、その事実はないとお答え申し上げたのでありますが、最近両局長名をもつて大学長に出しました書面は、文部省の既定方針はかわらないのだということをお伝えいたしたのであります。
  253. 稻葉修

    ○稻葉委員 そういたしますと、その翌日か翌々日に新発田分校当局者を呼んで、橋本学長が文部省から早期に移転せよという通牒が来ておるやに伝えたのは虚偽でありますね。
  254. 稲田清助

    ○稲田政府委員 その事実は承知いたしません。
  255. 稻葉修

    ○稻葉委員 それでは稲田局長のおつしやるように、新発田分校を大学に統合する従来の文部省の方針には、かわりはないということを特にその時期に言わねばならなかつた理由はどこにあるのですか。
  256. 稲田清助

    ○稲田政府委員 最近学校当局からこれらの問題を聞きまして、その点明らかにしておいた方がいいと考えた次第でございます。
  257. 稻葉修

    ○稻葉委員 聞くところによれば、新発田市長、新潟県副知事、新発田市会議長等が文部省にやつて来て警察予備隊誘致のことも急がれるから、文部省からひとつこの際早急に分校を移転するような意味の通牒を発してくれと頼まれた事実はないか。
  258. 近藤直人

    ○近藤(直)政府委員 そういう事実はございません。
  259. 稻葉修

    ○稻葉委員 五月十九日付、大学長橋本教授から監理局長並びに大学学術局長あてに、来る六月十五日を期して大学分校移転態勢が整つたという意味の返答が来た、こういうことが言われておりますが、これは事実でありますか。
  260. 近藤直人

    ○近藤(直)政府委員 お話の通り、六月十六日を目途としまして、学校を新潟の方へ統合するように努力するという返事が来ました。
  261. 稻葉修

    ○稻葉委員 従来橋本学長が私にもお話になつたように、無理をすることはないのだと言い、また新発田分校当局者並びに市民等に対しましても、一部にはそう無理をする意思はないのだということを言つて来られた大学長から、特に突然五月十九日付の書面で、監理局長並びに大学学術局長あてに、来る六月十六日を目途として移転する態勢を整えましたという文書が来るのは、何か文部当局の前の両局長からの通牒が、従来の方針にかわりないのだと、特にあの時期にやらなければならなかつた事情等をも関連させ少し事態が明朗を欠くように思われますが、その辺の事情をもう少しお話願いたい。
  262. 近藤直人

    ○近藤(直)政府委員 先ほど稻葉委員からお話がございましたように、私と稲田言何長の両名の名義をもちまして、従来通り大学設置審議会の方針にかわりはないという趣旨の文書を出しました。別にその文書が今お話のように特に時期を早めたというようにとられたとは私どもは存じておりませんが、大学といたしましては、地元の方とおそらく相談の上いろいろ配慮されまて、ただいま申し上げましたような返事を出されたのではないか、かように考えております。
  263. 稻葉修

    ○稻葉委員 こういつた一連の大学当局と文部省との交換文書が、單に大学当局と文部省との間だけに行われた文書の交換であるか、あるいはその間に警察予備隊本部が関与せられたかどうか、御答弁を願いたい。
  264. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊といたしましては、大体新発田に予定を一応立てました。従いましてこれは期限のある仕事でございます。そこでそれまでに建物をただ受取ればいいというのではなくて、受取つた上で必要な設備を施さねばなりませんから、準備の都合上いつごろまでにあいてこちらに引渡していただけるか、それを確かめる措置をとつたことはございます。
  265. 稻葉修

    ○稻葉委員 それを確かめる措置をとるために、文部省に対していつごろ一体明くのかということをお聞きになつたわけですか。
  266. 江口見登留

    ○江口政府委員 それらの点は、文部省とも連絡をとりつつ地元の市上長さんその他、こちらに出て来られた方々と御相談申し上げました。
  267. 稻葉修

    ○稻葉委員 大学長からの、六月十六日を目途として、大学分校を新潟に移転する、あそこは明く用意ができたという返答が、監理局長及び大学学術局長あてにあつたということをさつき御答弁なさいましたが、その大学長の回答を、文部省は警察予備隊本部に送達をされた事実があるか、ないか伺いたい。
  268. 近藤直人

    ○近藤(直)政府委員 私の承知しております範囲におきましては、文書をもつて予備隊の方へ報告をした記憶はございません。
  269. 稻葉修

    ○稻葉委員 その他の方法ではいかがですか。
  270. 近藤直人

    ○近藤(直)政府委員 あるいは事務的に連絡があつたかとも思いますが、ただいまはつきり覚えておりません。
  271. 稻葉修

    ○稻葉委員 田中教育施設部長が予備隊本部を訪問されて、山田営繕課長に対して返答を通達された事実はないか。
  272. 近藤直人

    ○近藤(直)政府委員 そういう事実は聽取しておりません。
  273. 稻葉修

    ○稻葉委員 あなたは聽取されなかつたかもしれませんが、それでは川中教育施設部長はどうですか。これを受取られた山田営繕課長はどうですか。
  274. 山田誠

    ○山田説明員 そういう書類が来ているということは聞きましたけれども書類は受取つておりません。
  275. 稻葉修

    ○稻葉委員 私は決してこの問題を妨害しようとかそういうことでなくて、事態を円満に納めたいと思うし、また円満に納める案もあるので、そういう意味で伺つているのですから、やつぱり事実は事実としてなるべく認めていただきたいと思います。それはそれといたしまして、七月一日に百名、七月十日に八百三十八名、七月十六日に千六十二名、都合二千名を、こういう日付をもつて新発田に置くということを、警察予備隊本部から発表されたことはございますか。
  276. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 各部隊ごとに各宿舎にどれだけの人員を収容するかということ、またどういう予定であるかということは、今まで予備隊としては部外に発表いたしたことはございません。
  277. 稻葉修

    ○稻葉委員 結論の方をだんだん申し上げて質問を終りたいと思いますので、いましばらくごしんぼうを願います。  これは文教上のゆゆしい問題でもあり、冒頭に述べましたように、やはり大学と警察の対立という問題にも発展するおそれがあるから、何とかしたいという意味で文部当局も訪れたし、警察予備隊の本部も訪れましたし、地方から出て来られるいろいろな人にも会つたのであります。そうして会つて、常に予備隊とは無関係であります、これは文部省の方針で統合するのであつて、予備隊が来るからそれに譲るのではないかということを承つて意を強うした。それからまた予備隊の本部といたされましては、予備隊が地方民に楽しく受入れられることをも望む次第であるから、なるべく摩擦のないようにしたいと思う、こういうことをしばしば承つて、これはわが意を得たりと思つております。そうしてあそこの分校を明ける問題は文部省の問題であつて警察予備隊はあそこを明けて進軍して来るようなことは断じてない、こういう言明をしばしば受けておつたのであります。今承りますと、予備隊設置にはいろいろな条件があつて、なるべくならば既存の建物を利用したい。ところが新発田には既存の建物はないのであります。既存といえばかつて軍隊の兵舎であつたかもしれないけれども、今は厳とした大学の教育学部の一部門。それでどうも困つてしよつちゆう文部当局と警察予備隊とが行き来をいたしまして、大学長に相当圧力を加えて、遂に無理をしないで円満にやりたいと言つた大学長を苦境に陥れて、とうとう最後の段階には、六月十六日をもつて分校を移転する態勢が整つたという回答を発せざるを得ない立場に追い込んだ、こういうように見られてもしかたのないような推移状態なのであります。現地は今非常に紛糾をいたしておりまして、このまま強行をいたすと多少——多少どころか非常な摩擦があつて、予備隊本来の目的をあそこでは達せられないではないかという杞憂を持つのでありますが、そういうような地方の実情について、大橋国務大臣も文部大臣も御存じでしようか。あるいは全然お知りにならないのですか。
  278. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 予備隊といたしましては、この宿舎の獲得ということは非常に急いでおります。従いまして、一応候補地としてあげてある各地のそれぞれのものにつきまして、現在これを獲得するように急いでいるわけでございまして、この新発田の件につきましては、御指摘のような問題があるので、なかなか簡單に行かないということで、実は心配をいたしております。しかしわれわれの方の態度といたしましては、われわれの方の都合よつて、無理にある期日に強制的に明け渡させる、またそういうようなために、みずからあるいは文部当局にお願いをいたしまして圧力をかけるというようなことは毛頭考えておりません。そういうことは将来の予備隊の管理の上からいつて望ましくないと考えております。あくまでも円満に入れるようにいたさなければならない。従いまして、一方において期日が限られているわれわれの仕事でございますから、ある期日までにどうしても解決の見込みが立たないということが明らかになりましたならば、一応今回の拡張の計画からは落しまして、また将来関係問題が解決して、ほんとうにこの建物が遊休施設なつた場合にあらためて考えて行く。それまでは他の方面を一応物色するという態度にならなければならないわけでございますが、今のところはそうした最後の段階までまだ行つておらぬと考えておりまして、実情の推移を慎重に注意をいたしておる次第でございます。地方の皆様方の御尽力によりまして、ことに稻葉代議士を初め関係の方々のごあつせんによりましてこの問題が円満に解決せられ、新発田市における予備隊の受入れ態勢が円満に、急速に実現できるようになりますならば、たいへん仕合せに存じます。
  279. 塚田十一郎

    塚田委員長 稻葉委員に申し上げますが、なお発言の通告が一人残つておりますので、なるべく結論をお急ぎくださらんことをお願いいたします。
  280. 稻葉修

    ○稻葉委員 大橋国務大臣の御答弁は満足であります。この点について文部省はそういう地方の実情を知つておられるはずでありますが、それでも六月十六日までに分校の明渡しを強行なさる意思を今でもお持ちですか、どうですか。
  281. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はこういう点についてまず稻葉さんに御了解を得たい。それは、私は大橋国務大臣に対して、学校の施設警察予備隊に使うというようなことは絶対してもらつちや困る、大橋国務大臣はそれは当然な話だ、しかし地方が警察予備隊を誘致したいという場合がある、そういう場合にも、学校を使うという場合には、まず文部省に連絡してもらわにやならぬ、大橋国務大臣は、それも当然すべきことである、こういう点において、大橋国務大臣と私はまつたく一致しておりますが、今度の場合は少し例外的であつて、以前からもう移ることになつておる、そこに前提がありますから、それで地方の方が警察予備隊を誘致したいというなら、大学当局と警察予備隊の事務当局といいましようか、警察予備隊の方と市の方の方々と、どうか御円満に御相談くださいというのが文部省の態度であつて強圧などということは少しも私どもの考え及ばないところであります。
  282. 稻葉修

    ○稻葉委員 文部大臣の御答弁も満足でありますが、今までの経過を見ますと、あなたの部下の一員に、この際予備隊が来るというのだから、従来の方針をこれに便乘して強行するという遺憾な態度が見受けられます。そうでなければ、六月十六日といえば学期半ばでありますよ。その学期半ばに学生を移転させるなんということは、これはどう考えても無理です。ちようど六月十六日は七月十五日の一月前で、この一ときまでに明けないと、予備隊の修繕等の工事が進まないという関係で、六月十六日という日にちが切つてある。そういうことになりますと、今の文部大臣の御答弁はまことに意を得ておりますけれども、いかにも事実と符合しない、この点はなはだ遺憾であります。  その点はそれとして、結論を申し上げますと、私は文教行政の立場から、分校の統合というような中央集権的なやり方について根本的に対立しておりますけれども、それはしばらくおくとして、この新発田分校の統合問題が警察予備隊誘致問題と——きわめて不幸な状態でありましたけれども、からんでおりますので、いかにも現時頻発する大学と警察並びに警察予備隊との敵対的な空気、国民の間にあるそういう忌まわしい不祥事的な空気が、この問題でまた激化される一つのチャンスをつくるのではないかということをきわめて憂慮いたしておるわけであります。従つてこの問題について、両大臣並びにその部下におられる当局は、もう少し、一方的な陳情等だけでなく、地方の実情を訴える者に対して胸襟を開いて相談されるという意思、それによつて事態を円満に解決されるという意思はないですか。
  283. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は文部省の事務当局のために一言弁明いたしたいと思いますが、六月十六日ということを決して文部省で切つたことも何もない。ただ、ただいま申したような事情であるから、大学と新発田の地方の人たちと  警察予備隊の方と御相談くださいと言つただけであつて、文部省はこの日を切つてどうのということは決していたしておりませんから、その点はどうか御了承いただきたい。稻葉さんのおつしやるような御心配は、私もこれは非常に考えなければならない。今の時勢と申しましようか、今の社会の現状においては、非常に御心配のようなことがある。だから私もこれはよく地方民の意思も聞き、慎重にいたさなければならぬということを感じております。
  284. 稻葉修

    ○稻葉委員 地方の実情をよくお調べ願うために、文部大臣としては、これからこの調査のために部下を派遣されるような意思はありませんか。
  285. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 これは大学というものが独立しておりまして、大学が自治 できめて行くことでございますから、一々文部省がさしずするわけでも何でもないわけであります。従つてそういうことが必要だということであれば、私は派遣いたしてよろしいのですけれども、私は今すぐそれが必要だということまで考えておりません。
  286. 稻葉修

    ○稻葉委員 学問の自由、大学の自治が重要であつて、大学にまかすべきことは申すまでもありませんが、今までやつて来たことは、大学長に対して、監理局長の名をもつて、あるいは大学学術局長の名をもつて、統合問題に関してたびたび通牒などを発している点は、今の文部大臣の御答弁とはまつたく矛盾する点があると思います。
  287. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 これは、大学の新設にあたりましては、大学設置審議会というものがございますから、そこの趣意を大学の方に伝えるということは、文部省の当然やることであつて、決して大学の自由とか大学の自治を文部省が拘束しようというものではございません。私は矛盾するものとは思つておりません。
  288. 稻葉修

    ○稻葉委員 大体この事態が明らかになり、両大臣の御答弁は了承するに足るものでありますが、最後に私は、先ほど申し上げました通り、これからもこの事態はこのまま、今までの方針通り、何らの手を打たずに強行したのでは紛争が起きる実情にあると私は判断する。だからそういうことが起らないように、みんなで話し合つて——話せばわかるという言葉があるが、話し合つて事態を円満に解決されるという御意思はおありになるか、そういうお骨折りをなさる御意思はおありなさるか。
  289. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私どもの計画は、もともと円満に解決できるという前提に立つてのものでございます。従いまして御趣旨のごとく、もし私どもが入りまして、そうした円満なる解決が可能であるという見通しが立ちますならば、その労をいとうものでもございません。
  290. 稻葉修

    ○稻葉委員 そういう労をおいといにならなければ、きようも陳情団が見えておりまて、この事態について話したと言つておりますから、お会いくださいますかどうですか。
  291. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 時間の許す限りお会いするつもりでございます。
  292. 塚田十一郎

    塚田委員長 小林進君。
  293. 小林進

    小林(進)委員 大橋国務大臣お急ぎのようでございますので、ごく簡單にお伺いいたしたいと思うのであります。それは日米安全保障費五百六十億円を今年度予算に計上いたしたのでありますが、この予算の使用区分が、どうも大蔵大臣の御説明でははつきりしないままに今日に至つており、この予算の管轄は今大橋国務大臣の手に握られているのではなかろうかと思うのでありますが、これの使用区分の具体的な計画がおできになつたかどうか、あるいはこの実施が現在までどんなぐあいに進行しているかどうか、これを一つお伺いいたしたいのと、それから、現在の予備隊の三万五千名の募集状況でございますが、これは一体どんなぐあいなのか、将来この問題にからんで、現在の志願制度なんかでは間に合わないまでに立ち至るのではないかというような懸念がありますので、この募集状況とあわせて、将来の増強に対する、何かまた別個の方策があるならば、その点をお伺いしておきたいと思うのであります。以上、二点をまずお伺いいたします。
  294. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 第一の予算面におきまする安全保障費の問題についてお答えをいたします。これは大蔵大臣の所管の予算に相なつておりますので、大蔵省においてその細目を決定さるべきものと存じます。予備隊といたしましては現在のところ、これについてまだ考えておりません。  それから第二の点でございますが、三万五千の増員につきまして、ただいま募集をいたしております。これを二つのグループにわかちまして、第は幹部要員でございます。幹部要員といたしまして、約二千名を募集いたしておりますが、これに対しましては、万数千人の応募者を見ております。それから般隊員といたしましては、約三万二、三千名の募集をいたしておりますが、これに対しましては、九万以上の応募者を見ておる状況でございます。従いまして、現在の段階におきましては、今回の増員は、支障なく自由募集、任意応募者をもつて充足し得るものと、見通しを立てておるのであります。ただ今年度においては、秋に退職いたします者の補充として、約二万人を募集しなければなるまいという見込みを立てておるのでございますが、これにつきましては、先般警察予備隊令の改正法律案によりまして、市町村長に募集事務に協力していただくという制度が新たに開かれましたので、これによりまして、相当募集成績を上げ得るものと存じますので、この秋の募集も、支障なく行き得るものと確信をいたしておるわけでございます。従いまして、現在の十万の定員につきましては、自由募集をもつて十分達成し得るという確信が、大体得られた状況でございます。今後この十万を増強いたした場合において、はたして現在と同様に支障なく募集ができるかどうかという点も、御質問の一項目かと存じますが、これは現在の考え方といたしましては、現憲法のもとにおきまして、現在の警察予備隊を拡充して行くという場合においては、あくまでも自由募集が建前となるべきものであると、こういうふうに考えております。従つて増強の計画を立てるという場合においても、自由募集ということを前提として、可能なる範囲においてのみ考え得るのであつて、それ以上の増強をやるということになれば、当然募集について何らか強制的な措置を検討しなければならぬ。それは今日の予備隊の建前からいつて、なすべきことではなかろうという基本的な考え方を持つておるのでございます。こういう考え方のもとに、増強問題については研究をいたしておるわけでございます。
  295. 小林進

    小林(進)委員 大橋国務大臣に次にお伺いしたいのは、政治経済研究会で発行している「政治経済」という雑誌の五月号の「独立記念特集」の中の「自立態勢は完全か」という記事を、お読みになつたことがあるかどうかをお伺いしておきたいのであります。
  296. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 申訳ない次第でございますが、まだ読んでおりません。
  297. 小林進

    小林(進)委員 この中の市川恒三とおつしやる読売新聞の政治部次長の名前の入つた記事でございますが、この中に独立後の防衛組織ということで、長くなりますので、ほんの必要な分だけをお読みいたしますと、「そこで吉田首相は急遽元海軍大将野村吉三郎氏に依頼して、「再軍備五箇年計画案」(野村私案)を立て、応ダレス氏に提示したものである。その後九月の講和会議に臨み、その調印が終りやれやれと思つている最中、ダレス氏は十月再び来日して、日本の防衛は日米共同で当ることが建前であるとして、特に日本側の防衛力、すなわち再軍備計画の推進方を強く要望した。そこで政府は本格的に防衛問題を取上げ、当時の官房長官岡崎勝男氏を中心に、旧陸海軍将官の協力を得て、「防衛力漸増計画案」の決定案を作製、これを翌十二月ダレス氏に提示した。」こういうことで、「この案が独立後の日本の防衛力のオーソドックス案となるもので、現在の警察予備隊、海上保安隊の増強計画も、この案に基いて、漸増的に行われているものである。この決定案の骨子は次の如くである」ということで、その次に陸軍と海軍と空軍、三軍の四年ないし五箇年計画の非常に具体的な数字がここへ現われているわけであります。こういう防衛力漸増計画案などというものが、実際あるのかどうか、あるいはこの通りにお進めになつているかどうか。署名入りで、何か自信のある記事つじやないかと思いますので、この際大橋国務大臣によくこの点を承つておきたいと思います。
  298. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 防衛力の問題につきまして、政府として持つております増強計画は、まず警察予備隊につきましては、本年度において、さしあたり十一万に増強する。その後の増強につきましては、将来の日本の治安状況、並びに日本の財政事情、それから国民感情等を十分慎重に研究した上でなければ、決定できない事柄である、こういう考え方でございます。それから海上警備隊につきましては、さしあたり米国から貸与されますところの船舶約六十隻、これを借り受けまして、そうして必要なる乘組員約六千数百名であつたかと存じますが、これは予算で警備隊として頂戴してあります。その人員をこれに乘り組ませ、そして訓練をする、こういう計画が現在きまつておるだけでございます。これ以外には、政府といたしましては、何ら計画を持つておりません。また総理におかれまして、あるいは外務大臣におかれまして、そうした計画を持つておられるということも、私は全然聞いておりません。
  299. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいままで予定いたしました議事は、全都終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十八分散会