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1952-05-15 第13回国会 衆議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十五日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 北澤 直吉君 理事 苫米地英俊君    理事 井出一太郎君 理事 川島 金次君       淺利 三朗君    井手 光治君       江崎 真澄君    遠藤 三郎君       大泉 寛三君    尾崎 末吉君      小野瀬忠兵衞君    小淵 光平君       角田 幸吉君    栗山長次郎君       小坂善太郎君    庄司 一郎君       玉置  實君    中村  清君       中村 幸八君    増田甲子七君       益谷 秀次君    宮幡  靖君       川崎 秀二君    中曽根康弘君       平川 篤雄君    藤田 義光君       山手 滿男君    西村 榮一君       水谷長三郎君    木村  榮君       山口 武秀君    横田甚太郎君       成田 知巳君    世耕 弘一君       黒田 寿男君    小林  進君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         法 務 総 裁 木村篤太郎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         労 働 大 臣         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 周東 英雄君         国 務 大 臣 山崎  猛君  出席政府委員         内閣官房長官  保利  茂君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 四月三日  委員山手滿男君及び岡良一辞任につき、その  補欠として今井耕君及び水谷長三郎君が議長の  指名委員に選任された。 同月十一日  委員尾崎末吉君及び庄司一郎辞任につき、そ  の補欠として野原正勝君及び増田甲子七君が議  長の指名委員に選任された。 同月十六日  委員風早八十二君辞任につき、その補欠として  米原昶君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員野原正勝君及び増田甲子七君辞任につき、  その補欠として尾崎末吉君及び庄司一郎君が議  長の指名委員に選任された。 同月三十日  委員水谷長三郎君及び横田甚太郎辞任につき、  その補欠として石川金次郎君及び加藤充君が議  長の指名委員に選任された。 五月二日  委員有田二郎君、小川原政信君、角田幸吉君及  び甲木保辞任につき、その補欠として野原正  勝君、増田甲子七君、岡崎勝男君及び益谷秀次  君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員石川金次郎君及び加藤充辞任につき、そ  の補欠として水谷長三郎君及び田中堯平君が議  長の指名委員に選任された。 同月七日  委員西村榮一君及び田中堯平君辞任につき、そ  の補欠として戸叶里子君及び高田富之君が議長  の指名委員に選任された。 同月八日  委員高田富之辞任につき、その補欠として横  田甚太郎君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員戸叶里子辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員野原正勝君、今井耕君、米原昶君及び田中  織之進君辞任につき、その補欠として有田二郎  君、山手滿男君、木村榮君及び成田知巳君が議  長の指名委員に選任された。 同月十五日  委員岡崎勝男辞任につき、その補欠として角  田幸吉君が議長指名委員に選任された。 同日  有田二郎君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  予算の実施状況等に関する説明聴取の件     —————————————
  2. 塚田十一郎

    塚田委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたすことがございます。理事有田二郎君が先般委員辞任されまして、理事一名の欠員があるのでございますが、その補欠は、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 塚田十一郎

    塚田委員長 御異議がなければ有田二郎君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 塚田十一郎

    塚田委員長 本日は予寧の実施状況その他当面の諸問題について、政府説明を聴取するため委員会を開会した次第でありますから、御了承を願います。  これより質疑の形式で議事を進めることといたします。まず内閣総理大臣に対する質疑に入ります。川崎秀二君。
  5. 川崎秀二

    川崎委員 独立を迎えまして、占領時代とは違いまして、政治中心は国会でありますし、内閣総理大臣においては、占領時代とは違つて司令部の玉手箱はないわけでありますから、従つて率直にお答えを願い、日本の進路を示していただきたいと思います。  講和条約は発効いたしましたが、これに調印をした国はわずかでありまして、われわれとしては独立日本基調を今後どこに置いて——なるべく多数の世界諸国国交回復したいという念願でありますが、総理大臣独立日本外交基調をどこに置かれ、どういうふうにして将来世界各国国交を結ばれて行くものか、お伺いをいたしたいと思います。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 まず率直にお答えしますが、私は外務大臣はすでに免ぜられておるので、多分私がなお兼任外務大臣とお間違いになつていらつしやるのではないかと思います。この点は御注意をします。  次に日本外交政策でありますが、これはお話通り、なるべく外国との間にいい関係を、親善関係を結んで、円満に外交を遂行いたしたいと考えます。具体案については、それぞれ具体問題について内閣としては意見を述べ、また外務大臣から時々報告があるというふうに考えます。
  7. 川崎秀二

    川崎委員 世界各国国交回復して行きますにつきまして、現在はわれわれと国交を結ぼうとしておる国も自由主義国家に限定されておるようであります。でき得るならばこれが漸次中立国との関係も広まり、かつは特にアジア諸国との国交回復したいというのが国民念願であります。今回の日華条約等におきまする世論の反響を見ましても、私はこれを端的に申しまするならば、この条約ほど日本国民に何らの感激性を与えなかつた条約は古今未曽有ではないか、一国と一国との国交回復をするにあたりまして、当然大衆の間に、国民の間にあふれるような感激が沸いて来なければならないのが、社会的にも何らの反響がなかつたということは、つまり隣邦中国との国交回復するにおいて、対台湾政府とだけの回復ではむしろ障害になりこそすれ、これが円満なる回復への道ではないというふうに、国民は直感をもつて感じておるというふうに私は思うのであります。こういう点につきまして、将来中共を含め、アジアその他の諸国に対するところの国交はいかなる方針を持つて打開をされて行くものであるか。外務大臣をおやめになつたとはいいながら、やはり御方針総理の胸三寸にあるかとも思うのでありますから、この際明確なる御答弁をいただきたいと思うのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 この間の日華条約について、国民の熱意が沸かないということであります。これは見方でありまして、私どもはそうは考えておりません。台湾との関係も、その他との関係も円満に成立するということは、国民の希望するところであろうと思います。それからあえて自由国家のみをもつて目標といたしておらないことは先ほども申した通り、でき得ればなるべく広く円満なる関係に入りたいと思いますが、しかし共産主義国等においてはいまだ何らの交渉はないのであります。交渉があればそのときに考えますが、これもその国の政策もあるでしよう、国情もありましようから、そう簡単には参らないと思います。
  9. 川崎秀二

    川崎委員 日本は今日のところアジア諸国との国交回復しておりません。従つて世界自由主義国、ことにアメリカ並びヨーロッパ各地、非常に遠隔なる土地とのみの国交回復をされて、従つて思想上の紐帯というものは、強固にはなつておりましようけれども、その反面、日本が将来自立して行く上における欠格があらゆる方面に現われておると思うのであります。また思想的にかりに西欧諸国との紐帯が強くなつても、将来の世界の運命というものを見渡してみますときに、アジアから孤立したところの日本の将来というものは私はあり得ない、かように考えるのであります。過去二十数年にわたるところの不幸なる日本状態も、アジア諸国特に中国との関係が深い支障になつたようにも考えておるものでありまして、でき得る限り、これはあらゆる方面から打開して行かなければならぬ。まず取上げられるのは、やはり経済の問題でありまして、日本財界方面においても、中国との通商打開ということは、何ものよりも先決問題であるという空気もあります。国民の間にも経済自立に対して非常な不安があつた、それは国内にいかに力をたくわえて行きましても、またアメリカが多くの政治的な借款を日本にくれましても、これだけでは永続性のある経済自立の態勢というものが立たないという考え方が、国民の間に蔓延をしておるようにわれわれは受け取つておるのであります。従つてここに端的に申し上げるならば、政治政治商売商売という考え方からいたしまして、香港を中継とするところの中国貿易打開方針もありましようし、国民の究極の目的である、民衆の生活の向上というものについて、政府はこれらの点に深く留意をして、政策を進めて行かなければならぬと思うのであります。向うから話があつたならば、また打開方法もあるということでありますが、そういうことでなしに、こちらから自主的に通商関係を、主としてアジア諸国との関係打開して行く気持はありませんか。この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 積極的とか消極的とかいうような手段は別として、ただいま申した通り、広く日本国としては円満なる関係を打立てたい。またお話のように、今後は主として経済外交をいたさなければならぬということは、お説の通りでありまして、平素も私はそう考えており、またその方針でもつて進んでおります。中立国等との間に通商条約その他はだんだんできつつありますから、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  11. 川崎秀二

    川崎委員 外交上の問題につきまして、特にお尋ねしておきたいことは、日米安全保障条約は、将来太平洋同盟条約に発展をするのではないかということが、しきりにうわさされております。またそうすることの方が、将来日本の安全を確保する上において、適当なる政策であるという考え方もあつて安全保障条約を結んだときに、すでにして将来これは太平洋条約に発展する糸口があつたのだという考え方もあるようでありますが、この点につきまして、総理大臣の御見解を承つておきたいと思います。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところは、いまだ太平洋条約まで発展するという可能性があるかないかは、まつたく見直しの問題でありますが、現実の問題としては、いまだこの点については交渉いたしておりません。
  13. 川崎秀二

    川崎委員 発展する可能性があると言われましたので、この点は了承いたしておきます。  先般調印せられました行政協定の問題で、一つ大きな問題があるように思います。それは日本に駐留するところのアメリカ軍の物資の調達契約等におきまして、この問題について日米間に意見の対立が起りました際におきましては、どういう取扱いをするか。これは日米合同委員会で調停をするというふうに、原案には書かれておつたのでありますが、その後いろいろ折衝の結果、裁判権アメリカ側にあるということになりました。かようなことになりますならば、日本アメリカと両者の間に締結されたところの契約などは、紛争が起つたときはすべてアメリカ側裁判に服することになりまして、日本側の業者というものは、非常な大打撃を受けるように予測をされるのであります。こういう手抜かりのある行政協定の問題は、本質論は別といたしまして、ここに大きな新しい問題が提起をされたように思つております。これらの点に関して、総理大臣の御見解を承つておきたいと思うのであります。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは新聞等に出た問題を取上げられたのだと思いますが、多少違つておるのであります。第一に合同委員会でそれらの問題を調整することにはかわりはありません。ただその契約者等が、裁判に訴える権利を取上げることはできませんから、不満足なら裁判に訴えてよろしいということになつておるのであります。そこでその裁判はどこの裁判に訴えるか、これはその当時も決して問題を忘れておつたわけではなくて、いろいろ研究いたしたのであります。大体大陸法制では、外国政府裁判所に訴えることができるということになつておりますがが、英米法は、外国政府裁判所に訴えないということになつておるのであります。先方は、日本裁判所がそういうものを受付けるならば、日本裁判に応じてよろしいということになつております。ですからただいまのところは、関係者日本裁判所アメリカ政府を訴えた場合に、裁判所がそれを受付けるかどうかという問題であります。これは行政府の問題でなくて裁判所の問題であります。裁判所が受付けさえすれば、日本裁判所に訴えてさしつかえないのであります。受付けなければアメリカ裁判所に訴えるよりしかたがない、こういうことであります。
  15. 川崎秀二

    川崎委員 総理大臣質問を続げます。過ぐるメーデー騒擾事件における一部過激分子行動並びに十三日に起りました、広島裁判所の法廷において、一部の過激分子が、逮捕されておつた者をさらに奪還をしたというような、実力行動が現われまして、国民に多くの不安を与えております。最近のこの治安撹乱事件に関する総理大臣の御感想並びに所信というものを、この際明白にいたしていただきたいと思うのであります。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府は、治安維持には、あくまでも努力いたすつもりであります。もし法を乱す者があれば、その都度厳罰に処する。法の命ずるところによつて処断する。この方針かわりはないわけであります。
  17. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの御答弁でははなはだ不満足でおりまして、メーデー問題のごとく天下を騒がせ、ことに日本が再び反動の力によつて押しもどされるというような、非常な不安を世界に与えている折からでありますから、総理大臣にいま一度、メーデー騒擾事件並びに治安問題に関しまして、率直な御見解を承つておきたいと思うのであります。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 メーデー事件世界衝動を与えたと言われますが、しかしながらアメリカ、イギリスその他から参ります報道によつて考えてみましても、お話のような衝動は与えておりません。のみならず、日本政府治安維持力については、何ら疑いをさしはさむべきものはないと、昨日もダレス氏は言つております。
  19. 川崎秀二

    川崎委員 信賞必罰を明らかにしなければならないということを言われましたので、特に申し上げたいのでありますが、最近警官学生との種々な衝突事件がございます。多くの場合におきましては、学内においてある一部の過激な思想分子が活動いたしまして、そして警官手帳問題あるいは次官通牒問題を契機にして、学園の自主化ということに名をかりて、相当に学内を撹乱し、そのためにやむなく警官が実力的な行為をいたしたこともあると思うのであります。それと今回の早稲田大学に起きました事件とは、まつたく種類を異にしておりまして、これはむしろ警官側に相当な行き過ぎがあつたのではないかということが、輿論の定まりつつある傾向ではないかと私は思うのであります。従いまして、かかる事件に対しては、むしろ私は——この間総理大臣は、早大事件に対して、警官志気をくじいてはならぬというような、御感想を漏らされたようにも伺つておりますが、悪いことは悪い、いいことはいいこととして行かなければならぬのが、政府方針ではないか、また吉田総理大臣の御方針ではないかというふうに私は考えますので、こういうように、学生の方は非常に静かにしておつたにもかかわらず、警官隊がかえつてなぐり込みをかけたというように見られるような事件に対しましては、私は信賞必罰は、逆にまた明らかにしなければならないと思う。末端の警官の、非常な志気をくじくような方法はいかぬけれども、少くともああいう武装警官を数百名も特派して、状況判断を誤つて、おとなしい学生が黙つておるのにもかかわらず、数百名の負傷者を出したというような事件に対しましては、むしろ総理大臣みずから乗り出してかかる問題を解決をしていただきたい、かように考えるのでありますが、総理大臣早大事件等に対する御所感を承つておきます。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 早稲田の問題についてはいまなお問題の真相を探求中であるそうでありますが、私が常識的に考えてみて、いずれの場合においても、学生がかくのごとき暴動というか、警察官つるし上げをするということはよくないことである。学生のうちからして法を守る精神がなければ、この学生はやがて好ましからざる市民になるのであつて、法を守ることがまず第一に民主国国民として考えなければならぬことであるのにもかかわらず、学生であるがゆえに警察官つるし上げにしてもかまわないとは言えないのであります。これは双方にどの程度の非があるか知りませんが、学校当局としては、あくまでも学生は法を守らなければならぬ、警察官治安維持に任ずるものであるから、それに対して暴行を加えるということは決してほむべきことではないと思います。学生に対して反省を促すとともに、私は学校当局においても十分この問題について反省をし、もしくは事態の真相を一層研究せられることが必要であると思います。
  21. 塚田十一郎

  22. 中曽根康弘

    中曽根委員 時間がありませんので、吉田総理大臣に二問質問をいたします。  その第一は、共産国家群日本との関係であります。四月二十八日に日本独立をいたしましたけれども、不幸にして共産国家群との間にはまだ戦争状態にあります。そこで二つのことが問題になります。  第一は、ソ連及び中国代表部をいかにわれわれは取り扱うかという問題であります。この点につきまして総理大臣はいかに考えるか。  もう一つの問題は、日華条約が締結されました。ところがこの第六条によれば、日本国及び中国国連憲章第二条の原則を指針とする、国連憲章原則従つて協力すると書いてあります。しからばかりに中共軍仏印に侵入するということがありますと、国連憲章によつて防衛行為国連側で行われますが、その場合には蒋介石軍隊本土上陸を行うかもしれない。もしそのようなことが起つた場合には、日本はこのような条約を結んだことによつて中華民国政府と結びついておる。しからば中共側では中ソ同盟を発動して、日本と結びついた外国中国を侵略する場合には、これに対して攻守同盟によつて措置をすると書いてありますが、かような場合に、日本中共側に口実を与えて宣戦布告の対象にならないか、この問題について総理大臣の御答弁をお願いいたします。
  23. 吉田茂

    吉田国務大臣 共産主義国代表部でありますか、これに対する措置はどうするかというお尋ねであります。これに対して目下交渉を開いておりますが、交渉の内容は別として、常識的に申せば、条約関係のない国が代表部を置くということは、理論に合わないところであり、ことに現在の代表部ソ連その他の代表部は、総司令部に対する代表部であつて日本国日本政府に対する代表部ではないのでありますから、理の当然として、われわれはこの存在を許すことはできないといわざるを得ないのであります。しかしながら交渉は現に進行いたしております。
  24. 中曽根康弘

    中曽根委員 日華条約は……。
  25. 吉田茂

    吉田国務大臣 日華条約についてのお尋ねは、多くは想像上の問題でありまして、具体的問題として今現に問題になつておりませんから、お答えはできません。
  26. 中曽根康弘

    中曽根委員 想像上の問題ではありません。日本国民が一番心配している中ソ同盟条約との関係であります。しかしこの問題は時間がありませんから次に譲ります。  第二は安保条約中心とする米国との関係であります。総理大臣太平洋条約に発展する可能性があると言われましたけれども、こういう方向へ発展することは日本にとつては好ましくない。なぜかといえば、現在そのような状態に入れば、日本には負担がかなり多くなるであろうということと、濠州やフイリピンとの関係において、日本地位が非常に低くなるというおそれがあるのである。従つてやるならば安保条約日米同盟に切りかえるべきであると思つているのでありますが、この考えに対して総理大臣はいかように思われるか。  その次は警察予備隊武器を所持し、あるいは装備を持つており、アメリカから軍事顧問が来ております。この関係独立後は法的根拠なくして行われておるのでありまして、フイリピンその他において行われているように軍事協定を締結して、向うのそのような介入を認めるとか、その他の関係が行われなければならない。しかるに現在そのような協定もなければ、法的根拠もありません。このことについて総理大臣はいかに御措置なさる御所存であるか、大橋国務大臣答弁ではなく、総理大臣答弁を求めている。この二点について総理大臣の御答弁をお願いいたします。
  27. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は先ほど太平洋同盟に発展する見通しがあるかないかという御質問に対して、私は何ともわからない、きまらない、交渉はいたしておらないということは言つたのであります。この点はお間違いないように願います。  それから第二の問題は大橋君から……。
  28. 中曽根康弘

    中曽根委員 大橋君じやありません。総理大臣答弁を求めます。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私から総理大臣答弁をかわつて申し上げます。(拍手、笑声)  ただいまの御質問警察予備隊武器の使用を米軍から認められている。米軍武器を使用いたしているこの点並びに米軍将校顧問として協力を求めている、この点についての法的根拠の御質問でございます。これは政府といたしましては、予備隊管理につきましては、一般的に行政府といたしまして管理権を持つているわけでございます。すなわち日本政府は、予備隊管理については、自主的に決定をなし得る法的地位にあるわけでございます。従いまして政府といたしましては、予備隊強化拡充という見地から申しまして、米国軍から受取りました兵器を使用するということが適当である、かように判断をいたしております。また米軍顧問につきましても、米軍将校協力を受けるということが、予備隊強化の上から申しまして適切な措置である、かように判断をいたしたのでございます。この判断に基きまして、政府としては予備隊管理するという政府の権限に基いて、かような措置をとつているわけでございます。すなわち十分な法的根拠に基いてかような措置をとつているわけであります。
  30. 塚田十一郎

    塚田委員長 西村榮一君。     〔中曽根委員委員長、今の答弁に満足しません。私は大橋国務大臣に前にこのことを質問した、あなたは独立後は協定を結ぶと私に明確に答弁したではないか、独立したにもかかわらず協定を結ばないでやつている。私の質問に対する食言であると思うのでありますが……。」と呼ぶ。〕
  31. 塚田十一郎

    塚田委員長 中曽根君、あなたに発言を許しておりません。西村榮一君に発言を許しております。     〔中曽根委員大橋国務大臣、私の質問に対して答弁になつていない。」と呼ぶ。〕
  32. 塚田十一郎

    塚田委員長 発言を許しておりません。大橋国務大臣はすでに答弁になつております。
  33. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は日華条約の詳細は外務委員会外務大臣にお伺いしたいのでありますが、この際総理大臣にお伺いしておきたいことは、総理大臣が一年前に書かれた外国の雑誌の中に、あるいは日本の議会の中において声明されたものの中に、赤でも白でも中国日本の隣邦であり、経済上の原則は究極においてイデオロギーの相違を超越するであろう、こうお述べになつておるのであります。私は、これは吉田総理大臣の本心ではないかと思うのでありまして、同時に、この外交上の見解というものが、吉田外交としては一番正しい方向であつたと思う。しかるにその後吉田書簡が現われ、しかも吉田書簡が現われた直後において、議会の予算委員会において、この吉田書簡を中心といたしまして論議がかわされましたときに、結論として、台湾政府は局地的限定承認という意味を持つものであるというような答弁を実質的になされたのであります。予算委員会はこれを大体において了承いたしたのであります。しかるに今回締結せられました日華条約を見ますと、その内容は、中国の正統政府と認めるという実質的内容を盛られておるのであります。従つて、私が吉田総理大臣に問わんとするところは、この条約を締結されたことは、中国の主権者である中共政府を著しく刺激いたしております。けれども、この条約に伴つて中共政府の代表者が述べた日本に対する恫喝的な言辞に対しまして、日本国民はこれにふるえ上るものではありません。中共が考えるほど日本は貧弱なものではないのであります。けれども問題になるのは、この一年前に総理大臣が述べられた、赤でも白でも国交の調整と経済上の問題はイデオロギーを超越するという立場に立つて、将来中国本土との国交上の調整並びに外交、貿易の調整を一体どうして行われようとするのであるかという点を承つておきたい。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は、イデオロギーを超越してということは今もなお考えております。しかしながら、現在のの中共政府日本をどう取扱つておるか。たとえば中ソ友好条約でありますか、それで日本を仮想敵国にしておるとか、あるいは北京方面から共産党指導の指令を与えておるという現在の事実は、われわれは無視することがてきないわけであります。ゆえに、ただちに中共政府と、かりにイデオロギーを超越しても、ある条約関係に入り得るかどうかという点は、他の考慮から考えて即決ができないのであります。それから台湾政権と条約関係に至る。これは私は、現地承認とかいうようなものでは、使つた覚えはありません。あくまでもダレスあての書簡の線で交渉をさしておつたのであります。
  35. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、念のために当時の速記を調べてみたのですが、ただいまの吉田さんの御答弁とは違つております。けれども私はあなたの立場を了解いたしまして、あえて追究しようとは思いません。しかしながら、台湾政府の承認というものは、これは実質的に交戦団体としての特殊承認か、あるいは特定地域に対する限定承認以外にはありません。そこで、中共がまずこれに対して反撃し、同時に台湾政府が不満の意を持つておるこの条約を、何がゆえに日本は結ばねばならなかつたか。同時に、台湾の限定承認において、日本は一体何を得ようとしておるのでありましようか。あそことの貿易は何もありません。ただあるのは、陸海空軍の太平洋の戦略的な価値が台湾という島に存在するだけであります。しかしながら、日本は空軍もなければ海軍もありません。従つて日本にとりましてこの日華条約は、マイナスの面はあるけれども、プラスの面は私はないと思うのであります。それはしかし、ただいまのあなたの御答弁と予算委員会における速記とは違つておりますから、あなたは大磯でもう一度ひとつこれでもこらんくださつたらいいと思います。  そこで総理大臣にお伺いしておきたいと思うことは、中共の貿易についてであります。私は、吉田さんが一年前に述べられたこの見解は正しいと考える。かつ私も、外交と貿易に対しては、イデオロギーの過剰症は禁物であると思うのです。そこで私は、具体的に日本経済日本の将来の外交路線として総理大臣に承つておきたいことは、かつて占領軍の存在しておりましたときに輸出禁止条項がございました。今日これの拘束を受ける理由はない。まず第一にこう思つております。それから一点においては、バトル法の拘束も日本は受けない。占領軍の輸出禁止条項の拘束も受けない。しからば対中共貿易は、法理的には日本は自由になし得るということになりますが、一面サンフランシスコ条約によつて、われわれは国連強力という条約を結んでおります。この国連協力という条約は、これは日本の憲法と、現実に即して精神的協力である、私はそう解釈いたしております。しからば精神的協力にしても、この条約を結んだ上からは、何にも拘束を受けないで、朝鮮戦争の現実を見て自由に中共貿易がなし得るということは政治的に考えられません。しかしながら、占領軍の輸出禁止条項の拘束も受けない。バトル法の拘束も受げない。ただ受くるのは国連協力というサンフランシスコ条約の精神的拘束だげであるといたしますならば、ここに、わが国の経済で考えておかなければならぬことは、対中共貿易の戦略物瞥の輸出を禁止するという条項の、戦略物の認定権は一体どこにあるか。私は、これは日本国政府にある。どういうのが戦略物資になるのであるか、これを狭く解釈ずるか、広く解釈するかということは、これは日本政府の自主的な認定によるものだ、こう解釈しておるのでありますが、総理大臣の御見解はいかがでありますか。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 総理にかわつてお答えいたします。今おつしやつた通り、趣旨は原則として私もその通りだと思います。しかしながら、日本政府は、国連協力を十分にいたしたいと考えております。従いまして、バトル法の規約とか、あるいは各国が行つております中共に対する一種の経済措置といいますか、これらは十分に参考にいたしまして、日本もその必要と認める措置を自発的にとつておるのであります。とつておるのは自発的でありますが、実際はできるだけ各国と協調してやつている、こういう趣旨であります。
  37. 塚田十一郎

    塚田委員長 西村君、時間が経過しておりますから、簡潔にいま一問だけ……。
  38. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、今の答弁総理大臣に求めたのです。アメリカから軍事的、経済的な援助を受けている国は、このバトル法の拘束を受けます。しかしながら、アメリカから軍事的、経済的な援助を受けておらないで、国連協力という線を打出しておる諸国は、これは自主的に戦略物資の認定を行つております。従つて私は時間もございませんから、結論として、急所をお尋ねしておきたいのでありますが、今の岡崎さんの答弁は大体七十点です。あとの三十点は、やはりそう気がねをせずに、各国の例に従つてやる。各国の例は、アメリカから軍事援助並びに経済援助を受けておる国以外、国連に協力しておる国は、自主的に戦略物資の認定を行つておるのであるから、日本も自主的に戦略物資の認定をなし得るのだという法理的解釈を持つべきである。もしも私のこの法理的あるいは政治的解釈について、あなたが違うとおつしやるならば、私が納得するような詳細なことを承りたい。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまおつしやることも、その通りでありますが、同時にいろいろの意味で、われわれは米国からの援助を最初から受けております。たとえば安全保障条約による軍隊の駐留というような点も、これは一種の援助であります。しかしながらそういう点は別としまして、実際上、ただいま国連が中共に対して措置を行つている状態におきましては、国連協力という趣旨からやります制限は、結局のところ、実際上はバトル法なんかんかも含まれてしまう。朝鮮の休戦等が行われた場合にどうなるか、これは新たなる問題となります。
  40. 西村榮一

    西村(榮)委員 総理大臣の御答弁を承りたい。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の意見は、外務大臣意見と同意見であります。
  42. 塚田十一郎

    塚田委員長 川島金次君。
  43. 川島金次

    ○川島委員 時間がございませんから、一問だけ総理大臣にお伺いいたします。  吉田首相は、独立後における日本経済の自立達成の一つの促進剤として、外資導入の必要と、その可能性について、この国会はもちろん、また最近においては院外の財界有力者の会合の席上においても、これを言明されております。ところが昨日池田蔵相が、経済同友会の席上におきまして、この外資の導入については、まつたく見込みがないのだというような旨の言明をされたと新聞紙は伝えております。このことは、外資導入問題について熱心に考えられております吉田首相の言明と、はなはだしい食い違いがあります。そこでこの事柄は、日本経済自立達成のためにきわめて重大な関連のある事柄であると思いますので、この際吉田総理の重ねての所信と、できますればその次に、池田蔵相のこの問題に対するところの見解を、この際伺わしてもちいたいと思います。
  44. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はあくまでも外資導入を歓迎いたします。従つてまた大蔵大臣に私と違うような意見があるとは想像いたさないのみならず、大蔵大臣は絶えず外資導入の必要を考えておられますから、新聞はけだし誤報であろうと思います。詳細は大蔵大臣からお答えいたします。
  45. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外資導入はなかなかむずかしい、しかししたいということを言つたのであります。総理大臣と何もかわりは、ございません。
  46. 塚田十一郎

  47. 木村榮

    木村(榮)委員 吉田総理は共産党に対しては、答弁をしないという悪い癖がございますが、大分陽気もよくなつたようでございますから、きようはひとつ答弁を願いたいと存じ上げます。  そこで最初にお尋ねしたい点は、吉田内閣講和条約を締結いたしまして、また日米安全保障条約に基く行政協定、そういつた一連のとりきめを行つて、四月の二十八日、いよいよ日本独立国家になつたというので、盛んに海外に宣伝をいたしまして、いかにもりつぱな日本なつたように言つております。ところが日本国民は、これに対してどのような反応を示したかといいますと、たとえばその直後の五月一日のメーデーにおきましては、全国の三百万の労働者が結集いたしまして、そのメーデーにおきましても現われましたことは、民族の独立であり、また再軍備反対である。従つて吉田内閣打倒といつたスローガンを掲げまして闘つたのは、吉田さんも御承知の通りだと存じます。特に東京におきまするメーデーにおきましては、いわゆる五十万の大衆が集まつて、メーデー宣言を発し——ここにメーデー宣言を持つておりますから、読みたいのでございますが、時間がございませんから読みませんが、この中に明らかに、民族の独立と再軍備反対の要求をまつこうから掲げて闘つております。しかも聞くところによると、吉田さんが最も強硬に御主張なさつた宮城前広場の使用禁止に反対いたしまして、この宮城前広場を人民に開放しろという決議を、圧倒的多数によつて行い、堂々と労働者大衆がこの宮城前に結集したのも、また御承知の通りでございます。ところがこの国民的な運動に対して、吉田政府はピストルとこん樺をもつてこれを弾圧した。かつて吉田さんは日本の労働者大衆に向つて不逞のやからということを言われましたが、今後も吉田さんは依然として労働者大衆に対して不逞なやからという考えのもとで、独立後の日本を運営なさる御方針であるかどうか、こういう点をまず伺つておきたいと存じます。
  48. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はイデオロギーの相違によつて答弁をいたさないというようなことは、かつて申したことはありません。ただ答弁のできるような質問に対して答弁いたします。
  49. 木村榮

    木村(榮)委員 イデオロギーの問題でないということでありましたが、吉田さんは今まではわが党がどのような具体的問題をお尋ねいたしましても、答弁はしないというふうに私たちは聞いております。そこでこうした国内の諸情勢を見ますときに、最近の世界情勢を見ますと、たとえば最近におけるモスクワの経済会議におきましても、もはやあなたが最も信頼なさつておられるアメリカの方からさえも参加して、世界四十八箇国の代表五百名が集まつて、ここで東西貿易の問題、あるいは平和産業の問題、平和的なお互いの国民の生活水準の引上げの問題、こういつた問題が討論されまして、しかも相当な成果を上げておる。こういつた中におきまして、御承知のように西ドイツにおきましては、東ヨーロッパ諸国とすでに一千万ポンドに上る貿易協定をやつておる。また西ドイツの下院においても、ソビエト圏との貿易を決議しておる。こういつた状態の中で、独立いたしましたはずの日本が、さつきの各党の御答弁に対しては、政府としてはやりたいが、先方の出方一つだといつたような御答弁でございますが、これはまことに独立国の総理大臣としての答弁ではなくて、あのポツダム宣言を受諾いたしました日本国総理大臣であるならば、過去の罪滅ぼしの意味におきましても、中共、ソビエト同盟、東ヨーロッパその他の諸国に対しては、もつと積極的に日本の平和政策を示して、外交方針を立てなければならぬ、かように考えますが、その点についてはそういつたふうな積極的な意図はない、このように考えてさしつかえございませんか、その点を承つておきたいと存じます。
  50. 吉田茂

    吉田国務大臣 中共その他の問題は、その関係については先ほど答弁をいたしました。先ほど申した通り、なるべく広く日本は円満なる外交関係を打立てたい、これが私の考えであります。
  51. 木村榮

    木村(榮)委員 言葉の上では非常にうまく答弁をなさいますが、実際問題といたしましては、日華条約の問題をめぐり、またその他のいろいろな政策を総合しましても、まつたく反対の方向をたどつておると私たちは考えておる。ところでそういつた状況の中にあつて、たとえばアメリカにおきましては、石油労働者のストライキによつてさえも、ヨーロツパの航空輸送は麻痺状態なつたといつたようなことが、きのうきようの新聞紙にも報道されております。このような事態の中にあつて日本政府の最も信頼いたします親分の国のアメリカでは、ストライキが毎日のようにどんどん起る。また子分の国の日本でも、同じようにどんどんと労働者階級が奮起いたしまして、ゼネストその他の方法により、政府政策の変更を求めて立ち上つておるのも、またこれ御承知の通りと考えます。こういつた状態の中にあつて吉田内閣は、この労働者階級の要求いたします民族独立平和産業の発展、再軍備反対といつた面を積極的に御支持なさる方針か、それともまた、この間のメーデーに現われましたような弾圧政策に終始いたしまして——労働法改悪も日程に上つております、きようはまた破壊活動防止法案を可決されるそうでこぎいますが、かつて日本の軍閥や財閥によつて行われましたような、あの弾圧政治を、依然として強行される御方針であるか、この点を承つておきたいと考えます。
  52. 吉田茂

    吉田国務大臣 いわゆる基本的人権は尊重いたします。弾圧の方針はとつておりません。
  53. 木村榮

    木村(榮)委員 弾圧の方針はとらないと言われますが、ここに写真新聞である「サン」がございます。これは早大事件の一場面である。何十人の警察官が、おとなしくすわつています教室にまで、こん棒とピストルを持つて飛び込んで、そうしてそれをなぐる、けるという暴行を、公々然とやつている。これは明らかにもう何人が見ても、弾圧政治の最も集中的な現われだと私たちは考えております。こういつた問題に対しては、現政府はいかなる責任をとられようとしておるか、言葉の上ではいろいろ言われますが、具体的にどのような責任をおとりになる考えであるか、この点を承つておきたいと考えます。
  54. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私よりお答えいたします。早大事件については、私はまつたく遺憾だと思います。これはいろいろ行き違いな点があつたのであります。情勢判断その他の点については、私はただいま検察庁において十分の取調べをさせております。
  55. 木村榮

    木村(榮)委員 中共やその他共産主義国家とも、ある程度交渉したいようなお話でございましたが、それでは私は一つの具体的な問題といたしまして、たとえば最近、ことに関西の財界を中心といたします相当な日本の大資本家どもが、中共、ソビエト同盟との貿易促進のために、積極的な運動を開始しております。こういつた運動に対しては、政府は好ましいこととお考えか、あるいはまた好ましからざることとお考えか、その点を承つておきたいと思います。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろ個人々々によつて意見が違いますから、それを一々政府が好ましいとか、好ましくないとか言うべきものでないと思つております。しかしながら先ほど総理大臣が言われましたように、中共なりその他の国については、まず解決すべき問題がたくさんある。単に多小の利益につられて、大事な根本を忘れるようなことでは、国民に対して相済まぬと考えております。
  57. 塚田十一郎

    塚田委員長 あと一問を限り簡潔に御質問を願います。
  58. 木村榮

    木村(榮)委員 それでは最後にお尋ねいたしますが、重ねてもう一ぺん総理大臣並びに労働大臣に御答弁を願いたい点は、今度総評を中心といたします日本の労働者階級が、第三次のゼネストを計画して、すでにこの問題を日程に上せております。この問題をめぐつて、日経連その他は弾圧の政策に出ておりますが、この第三次ゼネストというのは、ただ単に第三次とか第四次ではなくて、おそらく現在の政府がやりますような弾圧政策、また完全にアメリカの軍事基地となり、またアメリカの要請に従つて日本国民を傭兵にかり立てようというふうな政策のもとにおきましては、今や労働者階級を先頭といたしまして第三次、第四次、第五次、全国民を巻き込む一大革命運動と申しましようか、民族独立の運動へ発展するのは、もはや現実の問題となつております。こういつた問題に対して、政府は現在のような政策のみを強行することによつて突破しようとするのか、それともほんとうに労働者階級の意見をいれて、その要求に従うような政策に改めるか、この点を最後に承つておきたいと考えます。
  59. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私からお答えをいたします。総評においては第三次ストを計画しておるようでございますが、これは先般も申し上げましたごとく、破防法にいたしましても、また今回提案いたしました労働三法にいたしましても、趣旨はおそらく国民の多数の人は了解していただけると思います。破防法は、いまさら説明するまでもなく、極端なる暴力破壊活動を防止することが趣旨であり、また今回提案いたしました労働三法にいたしましても、その第一の主眼は、国家の現業官庁の職員に団交権を付与し、また第二には、地方の現業職員に団交権を付与し、第三には、自立経済速成の上において国民生活に重大な障害を及ぼすような争議は、これを中労委の機関にかけて合理的に解決しよう、こういうことでございまして、私はいずれも国民多数の方は御了解をいただけるものと思つています。それに対してストをやる、これは明らかに政治ストでございまして、今日の法治国家においては許されるべきものではございません。
  60. 塚田十一郎

  61. 成田知巳

    成田委員 先日行われました日本商工会議所第十一回総会で、吉田総理は、電源開発のための外資導入に自信がある、こうあいさつされまして、その次にこう言つておられます。今後の日本経済は、今までのような世界の軍拡景気、朝鮮特需等によることは許されない、特需景気がなくても経済が繁栄して行けるように、世界情勢を見きわめて、偏見や誤解に基く圧力をも乗り越えて、円満に貿易が伸びて行くような格段の努力が必要である、こう言つておられますが、問題は、世界情勢を見きわめて、偏見や誤解に基く圧力を排除するという言葉の具体的な内容であります。私たちの解釈するところでは、政府は従来アメリカ外資導入に多大の期待をかけておりました。今でも多額の外資が入つて来るようなことを考え、国民にも宣伝して来られたのでありますが、三月末現在民間の外資が入つておるのは、わずか百三十億にすぎないとか言われております。まつたく絵に描いたもちであるということがはつきりいたしたのであります。ただいま池田蔵相は、外資導入は困難であるが、入るようにしたいと言われたのでありますが、問題は、したいだけでは解決しないのであります。具体的にいかなる構想を持つておられるか、これをまず第一点としてお伺いしたい。  次に、このアメリカの資本一辺倒の政策は、第一に中共貿易をはなはだしく軽視する結果となり、さらにアメリカ一辺倒の政策のゆえに、総理の言う偏見や誤解に基く圧力が日本の貿易に加えられて、中共貿易がとざされておるのであります。政府は従来、中共貿易をやらなくとも、東南アジア貿易をやれば、失うところを補つて余りあり、こう言つておられましたが、東南アジア貿易はポンド過剰の形で行き詰まつてしまつておる。政府の見通しが誤りであるということは、事実で証明されておる。現在東南アジア貿易打開のためにどんな構想を持つておられるか、これが第二点。  第三点としまして、今西村委員も指摘されましたが、日本は英国と違つて、軍事援助、経済援助をアメリカから受けていない。従つてバドル法の適用を受けるゆえんはない。にもかかわらずバドル法以上の制限を日本は今やつておる。現に英国のごとくバドル法の適用を受ける国でさえも、最近モスクワ経済会議のあとに、英国外務次官の正式声明で、イギリス政府は禁輸品以外の品物の貿易を大いに歓迎すると北京政府あて正式通知を発しておるのです。今度講和条約で、非常に高価な犠牲を払つて日本はいわゆる独立国家になつたのですが、その第一歩としても、バドル法の制限をここに完全に撤廃する、このことが総理の言ういわゆる誤解と偏見に基く圧力を排除して、日本の貿易を伸長さすゆえんだと考えるのですが、この三点について御答弁願いたい。
  62. 吉田茂

    吉田国務大臣 外資は入つて参ります。中共貿易がなくとも、東南アジア貿易その他で日本の存立は確保いたされます。その他のバドル法については、先ほど答弁があつた通り
  63. 成田知巳

    成田委員 外資は入つて来ると期待されるというのですが、その具体的な内容、いつ、いかなる形で、どれだけの外資が入つて来るかということをお伺いいたします。
  64. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外資にもいろいろな種類があるのであります。そこで政府が導入しようとする外資の形、また民間が導入しようとする外資の形といろいろな手がありますので、一々申し上げられません。民間は民間で考えておりましよう。政府政府で考えておりますが、どういうかつこう、どういうふうな交渉を始めるかという問題については、ここで申し上げられません。
  65. 成田知巳

    成田委員 外資にもいろいろあると言われましたが、マーカツト声明によつても、政治的な借款はだめだということははつきりしておる。それから国際開発銀行からの借入れも、国際通貨基金に入つていない今日、だめだ。民間外資の導入は、先ほど申し上げましたように、株式取得とか現金取得を入れても百三十億にすぎない。はたしてそういう期待が持てるかどうか、明確に御答弁願いたい。
  66. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今までの民間資金の入つて来た数字は、あなたのは違つております。それからマーカツト少将が前にとやこう言われたとおつしやいますが、そのマーカツト少将の言われたこととあなたの言われることも、また違つております。しこうして今は独立国家ですから、ああいう言葉を信用せずに、総理大臣、大蔵大臣の言葉を信用していただきたい。
  67. 塚田十一郎

    塚田委員長 あと一問に限つて、簡潔に御質問を願います。
  68. 成田知巳

    成田委員 総理は今、中共貿易をやらなくとも、東南アジア貿易をやれば、十分日本経済的に自立できる、こう言われたのですが、現在東南アジア貿易というものが完全に行き詰まりの状態になつておるということは御承知の通りです。では東南アジア貿易をいかにして打開するかということを承りたい。
  69. 池田勇人

    ○池田国務大臣 貿易状態は、そのときによつて伸縮があるのであります。そのときどきによつて伸びたり縮んだりするのであります。日本は東南アジア貿易、ことにポンド地域につきましては、ポンドの蓄積を考えて、ある程度制限いたしまして、またこれと表裏一体に、イギリスいわゆるポンド地域も輸入の制限をいたしたのであります。従いまして今のところ輸出入とも落ちておりますが、これがこういう状態を続けて行くことは、東南アジア民族の生活水準向上を来さない、世界の平和に好ましくないというので、われわれは東南アジア開発計画を今立てておるのであります。しこうしてこの問題は日本だけではできませんので、できればアメリカから直接、あるいは日本とタイ・アツプして、東南アジア開発をするように進めておるのであります。
  70. 塚田十一郎

    塚田委員長 世耕弘一君。
  71. 世耕弘一

    世耕委員 時間がありませんから、私は四点ばかり読み上げますから、これに総理初め関係閣僚からお答えが願いたいと思います。  第一点は、政府の努力にもかかわらず、治安は次第に破壊され、国民は不安にかられておる。考えようによつては、革命の前夜のような感もある。この際内外の信用を確保するために、積極かつ徹底した施策を必要と思うが、総理のお考えはいかん。  第二は、税務行政上、下級官吏の行き過ぎが非常に国民の感情を刺激し、反感を助長せしめ、議会否認まで論及する者すら現われておる。ことに赤化分子がこれに競合して、破壊活動を容易ならしめ、税務署の放火、火炎びん投入等の状況を呈しておるが、これについて治安の対策をどう考えておるか。  第三は、行政機構の不整備から、中央への陳情運動、予算、補助金等の獲得のため、毎月数億円の地方自治の公金が消費されておるということが、もつぱらのうわさであります。この間において綱紀の紊乱があるということが指摘されておるが、改正の要がないか。なお行政が十分調整すれば、少くとも一千億円の節約が可能と思う。国民の血と汗の税金の使用は、厳粛な気持で取扱うべきであると思うがいかん。  第四は、独立後あらためて遺家族の援護費対策について考えを新たにする必要がないかどうか。以上であります。
  72. 木村篤太郎

    木村国務大臣 第一点について私からお答えいたします。一部破壊分子の活動により、日本の現在の治安が著しく乱れかかつておるということは、まことに遺憾な点があります。これに対してわれわれは、まずもつて破壊活動防止法案を提出しておるのであります。これによつて相当な破壊活動団体は規制して行かれるものと確信して疑いません。その他につきましては、警察法の改正その他によつて、まず一通り治安の面についての対策をとりたいと考えております。その他の点の施策については、今後十分検討して行きたいと考えております。
  73. 池田勇人

    ○池田国務大臣 最近の税務行政につきましては、私は二、三年前に比べまして、よほどよくなつて来ておると思います。まだ十分ではございませんので、なお今後とも改善いたしたいと思います。税務署襲撃の問題は、課税が強いというのでなしに、主として酒の密造関係でございます。朝鮮人並びにこれに呼応する一部分子の策動等によるもので、われわれといたしましては、できるだけ防衛の措置を講じておるのであります。  なお陳情その他によりまして非常な金が使われておることも存じておりますが、これは自粛していただきたいと思います。なお行政機構はできるだけ簡素にいたしまして、逐次経費の節約をはかつておることは御承知の通りであります。今後ともそういう方針で進んで行きたいと思います。
  74. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 遺家族の援護の問題でございますが、これはしばしば申上げましたように、現在の財政下におきましては、あの程度でやむを得なかつたのでありますが、将来財政の許す範囲におきましては、漸次充実をして行くつもりでおります。
  75. 吉田茂

    吉田国務大臣 下級官吏の行き過ぎ、綱紀の紊乱についての問題でありますが、もし行き過ぎがあり、また綱紀紊乱というような事実があれば、むろん政府は取締りをいたさなければなりませんし、またこれに対して必要な施策を講じます。
  76. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田寿男君。
  77. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は、講和条約が発効したと政府が言つておられますこの時期に、政府の今後の外交方針につきましてお尋ねしたいと思いますが、時間がございませんので、一つだけ日華条約に関連してお尋ねをしてみたいと思います。日華条約におきまして、最後の瞬間まで問題点として論争せられましたのは、この条約の適用範囲に関する両国の主張の相違点にあつたと報ぜられております。言うまでもなく、国民政府がこの条約におきまして、中国の全体を支配する正統政府たる地位を確立させようとしたのに対しまして、わが国はこれをしりぞけて、国民政府が現実に支配しております地域だけに限られる限定的条約として交渉を続けて来た、結局この条約は調印せられたのでありますが、そこで私は質問してみたいと思いますことは、政府はこの条約において、あくまで限定条約たる立場を貫かれるのであるか。なぜ私がこれを質問するかと申しますと、この条約には議事録というものがついておりますが、これを読んでみると、何か書いてある。何か書いてありますけれども、私どもにはきわめてあいまいであつて、何が書いてあるかわからない。そこで念のために、あくまで限定的という立場を貫かれるのかどうか。ダレスにあてられて吉田総理のお出しになりました書簡の趣旨を、あくまで維持せられるものであるかどうか、この点を念のために、最初にお尋ねしておきたいと思います。——委員長、これは総理質問しているのです。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 総理かわりましてお答えいたします。ただいまの御質問に対しましては、吉田書簡の趣旨によつて条約はつくられておるのであります。なお中華民国政府は、国際連合にも代表を出しておりまして、また日本にも従来代表部はあつたのでありまして、一般に認められたる政府としておりますから、その意味で条約文をつくつておりますが、同時にその支配する地域が一定の領土にとどまつておるという現実の事態を注視しなければなりませんので、その意味を含めた吉田書簡の趣旨によつてつくられておるのであります。
  79. 黒田寿男

    ○黒田委員 政府の態度ははつきりわかりました。そこで私は限定的という意味を少し考えてみたいと思うのでありますが、このことは、わが国が米英の間にはさまれまして、中国に対する態度にいろいろと矛盾した立場をとらなければならぬという事情があるというところから、こういう問題が起つておるというようにも解釈できますが、なおそれだけでなくて、国民政府が支配しておりますその現実を重視するというところに大きな意味があると思います。そうしてまたこの現実を重視するということは、近い将来にもこの現実が変化する見込みはないという見通しの上に立つておるものであるというように考えなければなりません。そうでなければ、国民政府の主張を認めてよいという議論が成り立つからだと私は考えます。このことからもう一つ指摘し得られる非常に大きな問題は、中国本土すなわち国民政府の支配していないところの中国本土を、他の政権が支配しておるというこの別個の現実を認める、こういう立場に、この条約は立つものであると私は考えます。この点について念のためにお聞きしてみたいと思います。
  80. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほども総理お答えしましたように、この条約には限定承認というような言葉はないのでありますし、またそういう種類のものは国際法上に例がないと私は考えております。ただ事実支配しておるところの現実を見て、条約に調整が行われておる、こういう意味であります。また大陸に対して別の政権が支配しておる、こういう事実を認めておるかということでありますが、これは現実の事実を認めざるを得ないのであります。別にこれを口で言つて、かえるわけには行かないのであります。
  81. 塚田十一郎

    塚田委員長 あと一問だけ、簡潔に願います。
  82. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、日本政府といたしましては、国際法上の問題はとにかくといたしまして、事実の問題として中国本土を支配しております政権が現実に存在しておるという事実は、これをお認めにならなければならないと思います。そこでそういう現実の認定に立つて、今回のごとき地理的な限定をした条約ができたのでありますから、私どもはこういう限定的な条約を結んだということは、中国本土を現実に支配する政権との交渉を開くという——抽象的にではありますけれども、予想ないし余地を残した条約になつておるのではないか、こう思うのであります。この点はいかがでございますか。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも先ほど総理大臣が述べられましたように、日本としては、できるだけ多くの国と早く友好関係に立ちたいという意味は、かわりはないのであります。ただ事実上の問題としては、ある政府なりある国なりが、たとえば日本を仮想敵国視しておる、あるいは日本国民が返されずにまだ残つておるとか、船が拿捕されておるとか、いろいろの現実の事実がありますので、これをまず調整しない限りは、なかなか国交調整というところまでは行かないという、この現実の事態は、これまたわれわれの認めるところであります。
  84. 塚田十一郎

    塚田委員長 小林進君。
  85. 小林進

    小林(進)委員 総理大臣にお伺いいたします。問題を三つにわけて、簡単にお伺いしたいのであります。  第一の問題は、日本独立経済の自立というものは、私は不可分だと思うのであります。自立のない独立というものは考えられない。今日のわが日本状態では、独立回復いたしましたが、中小企業者、労働者並びに農民諸君の、この経済自立から見た貧困と窮乏というものは、まさに悲惨なものがあるのであります。国民大衆の経済の基盤がこんな不安定な状態であつて、いかに政府の施策が進められて行つても、とうてい国民は満足することはできない、この問題を総理は一体どうお考えになつているか。今の中小企業者の窮乏、農民の窮乏を率直に認められるかどうか、この問題が第一。認められるならば、この中小企業者その他の自由市民の救済のために、いかなる構想をお持ちになつているか。あるいは農民のこの窮乏に対し、あるいは輸入総額の三分の一以上を輸入食糧が占めている、この面からも貿易が圧迫せられておる、この食糧問題に対して、一体どういう構想をお持ちになつているか。たとえていえば、依然としてやはり米などを自由販売とせられる意向であるかどうか、税金を軽減されるかどうか、国民生活水準の向上についてどうお考えになつているか、独立を契機とした総理大臣の総合的な経済自立の構想を承りたいと私は思うのであります。これが第一問であります。  第二間は、何といつても現在の政治情勢は非常に不安定な状況にあります。それは先ほどから言われましたメーデーあるいはいろいろの関係もございましようが、それに加えて、この吉田内閣のいわば任期が間近に控えているということと、あわせて次期選挙を目ざして、院の内外を通じて、事前運動を中心にする選挙運動が行われておるということが根本でありまして、独立回復いたしました今日でも、真剣に、新しい日本のために構想を練り、政治を論ずるという形が、国の内外に一つもでき上つていないのであります。これは実に悲しむべき現状であると私は思うのでありまして、これがためには、やはりあくまでも独立を契機に解散をいたしまして、まつたく人心を新たにして、新しい日本の建設に向うという態勢をつくることが、最も重大だと私は思うのでありますが、この解散をおそまきながら即時におやりになる意向があるかどうか、あるいはおやりにならないで、任期一ぱいおやりになる意向であるか、これをひとつ明確にしていただきたい。総理のお考えであります。これが第二番目であります。  第三番目といたしましては、きようのこの予算委員会でもしかり。われわれは十三日に予算委員会を開く予定でありましたが、総理の御都合で十三日分委員会を延期せられ、十五日の十一時から十二時までという総理の御指命で、その総理の御指命に基いてわが予算委員会がそれに歩調を合せたという形ででき上つたのであります。これは私は実に立法府に対する行政府の干犯である、こう思うのであります。いやしくもわれわれ国会はいわゆる国の行政に対する最高の指導、最高の監督の機関といたしまして、この行政府の長たる総理大臣を招致して、その政治のやり方あるいはよしあしに対して、われわれはこれを十分指導監督する権限を持つている。しかもその立法府における予算委員会というものは、国政の総合的な問題を収上げてこれを論議する最も重要なる委員会である。その委員会は当然総理を招致して、国政全般を開く権利を持ち、責任を所有しているのであります。総理は当然この予算委員会に出席して、国民の代表たるわれわれの前にこれを説明せられる責任と義務があるのであります。(「その通り」)これが正確に行われてこそ三権分立もりつぱに行われて、立法府の権威も保たれるのであります。(拍手)しかるにもかかわらず、総理はこのたびのみならず、いつも行政府の都合で立法府がそれに歩調を合せる、こういうようなことは、先ほど総理大臣学生に法を遵守せよということを説かれて答弁せられたが、その説かれている総理大臣みずからが三権分立の原則を破壊している。実に国会軽視、国会を冒涜する行為を行つている。この問題に対して、将来とも依然としてこういう不穏なる行為を一体続けられる意向であるか、われわれの招致に今度は敢然と出席せられる意向があるかどうか、私は国会の権威のために、この点明らかにひとつ総理答弁を承つておきたいと思うのであります。以上三点明確に総理の御答弁をお伺いいたします。
  86. 吉田茂

    吉田国務大臣 中小企業の方については政府はいろいろな方策を講じて、立法その他をいたしております。また国民生活の水準の向上についても努力いたします。また解散はいたしません。私は時間の許す限り出席いたします。しかしながら立法府も行政府の仕事を妨害しないように、立法、行政相互いに協力して国政の伸長に努力せられんことを希望いたします。
  87. 塚田十一郎

    塚田委員長 なおこの際小林君の御質問に対しまして、委員長から一言お答え申し上げておきたいと思うのでありますが、本日の総理の出席の一時間というのは、内閣の都合も聞きまして、理事会において御相談の上決定したことでありますから、その点御了承願います。——小平忠君。
  88. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理大臣にお伺いいたします。わが国が独立の第一歩を踏み出しましたことはまことに喜びにたえません。しかしながら国際的に解決を要する問題がたくさんあります。特にその中でも領土問題といたしまして、千島列島の中で特に歯舞諸島並びに色丹の領土返還につきましては、御承知のように昨年九月米国サンフランシスコにおける平和会議で、総理が首席全権として熱情を打込んでこの領土問題の解決のために万丈の気を吐かれたのであります。しかるにこの問題は独立と同時に——口では独立ということを言いますけれども、いかなる方法をもつてこの返還問題を具体的に処理して行くか、これは国民としてきわめて大きな問題であります。この機会に総理大臣からこの千島列島、特に歯舞、色丹の領土返還について、今後いかなる所信と、いかなる方法、いかなるお考えをもつて善処せられるのか、国民の納得の行く御答弁をお願いいたしたいと思います。  なおこれに関連いたしまして、最近北海道周辺におきまする漁船の拿捕がきわめて頻繁に起つておるのでありますが、この問題もすでに独立と同時に対日理事会あるいは極東委員会、こういつたものが解消せられております今日において、今後いかなる方法をもつてこれらの処置——ソ連あるいは中共等に対する折衝をなされるお考えでありますか。  もう一点といたしまして、われわれ不審に思いますのは、政府は例のソ連、モスクワにおきまする例の経済会議に対しまして、渡航許可の申請を拒否して参つたのでありますが、その後御承知のように、現に参議院議員の高良女史並びに現衆議院議員である宮腰君やあるいは前参議院議員の帆足君がソ連地域に不法入国し、さらに中共にまで入るという報道がなされております。この事実に対して総理はいかなる処置をされるのか。これは今後きわめて重要な問題だろうと思うのでありまして、以上三点につきまして総理大臣から納得の行く御答弁をいただきたいと思うのであります。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 歯舞、色丹島の問題につきましては、たびたび申しておりますように、これは当然日本の領土になるべきものと考えております。ただ力をもつてこれを占拠されておる間はいかんともしがたい場合もあるのでありますが、人盛んなれば天に勝つといいますけれども、またそのうち運命が定まつて来れば天が勝つのでありまして、当然日本の正当な要求が貫かれると思います。いろいろ外交関係につきましても、利益保護国というようなものがありまして、たとえば日本の利益を代表して交渉してくれる国が従来もありましたし、今後もあるわけでありますので、それぞれ適当な方法でこの問題の解決に努力するつもりでおります。  また只今申しましたようないろいろの事情から、政府としてはモスクワ経済会議に対する旅券を出さないということに決定をいたしました。これは政府の立場であります。法を適当にくぐつてソ連に入国する人があつた場合には、帰つて来てからその事情を十分調査いたしまして、罰すべきものがあれば罰します、これは今後の問題になります。しかし政府の態度としては、かかるいろいろの懸案があるこの際、モスクワ経済会議に人を派するということは、おもしろくないという立場を維持しておるわけであります。
  90. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はただいまの問題について、岡崎外務大臣答弁を願つたのじやなくして、吉田総理大臣答弁を願つたのであります。千島列島の中で特に歯舞、色丹の問題は、これは総理大臣が首席全権としてあのサンフランシスコにおきまして熱情を打込まれた問題でありますから、実は総理大臣御自身の御答弁を願つたのであります。ぜひこの機会に独立して再出発した日本のこの国会を通じてこの問題について御答弁ありたい。さらにただいまの外務大臣答弁の中で、例の漁船の拿捕問題については何ら触れなかつたのでありますが、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  91. 吉田茂

    吉田国務大臣 外務大臣答弁は、すなわち私の答弁と御承知を願つておきます。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 漁船の拿捕問題についても同様でありまして、将来利益保護国等を依頼しまして、これによつて十分の交渉をいたすつもりであります。
  93. 塚田十一郎

    塚田委員長 これにて総理大臣に対する質疑を終ります。  なお、先刻の中曽根君の質疑に対する答弁のため、大橋国務大臣より発言の申出があります。これを許します。  大橋国務大臣
  94. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほどの中曽根君の御質問は、私が先ほど総理にかわつて申し上げました内容と予算分科会において私が答弁をいたしましたる内容の間に食い違いがある、こういう御趣旨でございます。食い違いがあるといたしますと、これはきわめて重大な問題と存じますので、十分に速記録を調査いたしました上に、慎重にお答えをいたしたいと存じます。
  95. 塚田十一郎

    塚田委員長 本日の会議はこの程度にとどめまして、明十六日は、午前十時より引続き委員会を開会することといたします。  これにて散会いたします。     午後零時三十一分散会