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1952-04-02 第13回国会 衆議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二日(水曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 苫米地英俊君 理事 井出一太郎君    理事 川島 金次君       淺利 三朗君    井手 光治君       江崎 真澄君    大泉 寛三君       小淵 光平君    甲木  保君       川端 佳夫君    小坂善太郎君       志田 義信君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    田口長治郎君       永井 要造君    中村 幸八君       南  好雄君    川崎 秀二君       中曽根康弘君    早川  崇君       藤田 義光君    山手 滿男君       岡  良一君    西村 榮一君       風早八十三君    横田甚太郎君       稻村 順三君    世耕 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         国 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         法務事務官         (法制意見第三         局長)     西村健次郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (管財局長)  内田 常雄君         食糧庁長官   東畑 四郎君         通商産業政務次         官       本間 俊一君         通商産業事務官         (通商繊維局         長)      記内 角一君         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         長)      松田 道夫君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月二十七日  委員黒澤富次郎君、佐藤親弘君及び田中角榮君  辞任につき、その補欠として北澤直吉君、小川  原政信君及び小坂善太郎君が議長指名委員  に選任された。 二月四日  委員有田二郎君、遠藤三郎君、尾崎末吉君、角  田幸吉君、志田義信君及び庄司一郎辞任につ  き、その補欠として西村直己君、寺本齋君、野  原正勝君、岡崎勝男君、益谷秀次君及び増田甲  子七君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員西村直己君及び風早八十二君辞任につき、  その補欠として佐々木秀世君及び米原昶君が議  長の指名委員に選任された。 同月六日  委員佐々木秀世辞任につき、その補欠として  西村直己君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員梨木作次郎辞任につき、その補欠として  木村榮君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員木村榮辞任につき、その補欠として梨木  作次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員成田知巳辞任につき、その補欠として鈴  木茂三郎君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員梨木作次郎辞任につき、その補欠として  木村榮君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員中曽根康弘辞任につき、その補欠として  中村寅太君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員中村寅太辞任につき、その補欠として中  曽根康弘君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員小野瀬忠兵衞辞任につき、その補欠とし  て清水逸平君が議長指名委員に選任された。同月二十日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として戸  叶里子君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員清水逸平君及び戸叶里子辞任につき、そ  の補欠として小野瀬忠兵衞君及び西村榮一君が  議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員淺利三朗辞任につき、その補欠として川  野芳滿君が議長指名委員に選任された。 四月一日  委員今井耕辞任につき、その補欠として山手  滿男君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員岡崎勝男君、川野芳滿君、寺本齋君西村  直己君、野原正勝君、益谷秀次君、増田甲子七  君、水谷長三郎君、木村榮君、米原昶君及び鈴  木茂三郎辞任につき、その補欠として角田幸  吉君、淺利三朗君、遠藤三郎君、有田二郎君、  尾崎末吉君、志田義信君、庄司一郎君、岡良一  君、横田甚太郎君、風早八十二君及び稻村順三  君が議長指名委員に選任された。 同日  有田二郎君及び北澤直吉君が理事補欠当選し  た。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  安全保障諸費に関する件  外資導入並びに貿易対策に関する件  行政協定に基く調達に関する件  追加予算国民所得に関する件  遺家族援護費に関する件     —————————————
  2. 塚田十一郎

    塚田委員長 これより予算委員会を開会いたします。  本日はポンド、ドルの預託問題、外資導入に関する問題、行政協定に関する調達問題、繊維対策に関する問題、安全保障諸費のうちの施設費に関する問題、食糧問題等につきまして、政府の所見を聴取するため委員会を開会いたしました次第でありますから、御了承願います。  これより質疑に入ることといたします。風早八十二君。
  3. 風早八十二

    風早委員 岡崎国務大臣にお伺いいたしたいのでありますが、行政協定は遂に国会の審議にもかげられず、ましてやこれが承認の必要があるという要求を野党側から出しましたが、これもまた葬り去られるというようなことでありまして、われわれとしても行政協定内容に対しては、まつたく責任の負えない問題が残つておるわけであります。すでに実施に移されつつある行政協定の中には、無数に日本国民経済また国民生活に重大な影響を及ぼす諸問題が伏在しておるのであります。今日はその中で特に第十二条の調達の問題について、いろいろ疑義をただしたいと思います。今までCPOすなわち在日米軍中央購買局に対して日本品がいろいろと納入されておる。これに対する課税問題をめぐつて、今日及び今後において、特に日本商品外国から入つて来る米軍関係商品とが非常に競合して、その間のバランスが税金関係で破れて、日本商品が非常な不利な条件に陥れられる、こういう問題が出て来ておると思うのでありますが、こういう点につきまして、二、三お尋ねしてみたいと思うのであります。  まず第十二条第三項にいつておりますところの、日本国公用のために調達する資材需品備品及び役務、こういうものの大体の見積額が一つ問題になると思うのでありますが、これはどのくらいな額になつておりますか。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どのくらいになりますか、まだ今話し中でありますから、はつきりしたことはわかりません。大蔵省なり通産省なりで、それぞれ研究をいたしております。
  5. 風早八十二

    風早委員 どうも予算委員会の一箇月の間、いつも今話合い中ということで、一向明確な御答弁を得られなかつたのでありますが、すでに行政協定が出て、まだその内容について一話し中で、いつになつたらこれがはつきりするのか、はなはだこれは問題であると考えます。今日はそうこまかい数字をお尋ねしておるつもりではないのでありまして、大体のわくでけつこうです。これはおそらく国防支出金の中から出ておる、あるいはまた安保費から出ておると考えられるのでありまして、その中で今申した費目が大体どれくらいに充てられておるか、これは質問あるいは意見の基準になるわけですから、大体の割合のようなものを示していただければけつこうであります。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように行政協定はまだ効力を発生しておらないのでありまして、特別に協定の中で予備作業班が、施設とか区域とかの解除についてだけは、特例として実施をいたそう、こういうことになつておりますので、正式な話はできないのであります。従つてただいまそれぞれの方面で研究をいたしておる。これも施設、たとえば電気ガス税というようなことになりますと、どの施設をどういうふうに使うかということにも関連して来るので、まだ予備作業班の仕事も半分も行つていないという状態でありますから、協定見込み等を申し上げるような時期に達しておらないのであります。
  7. 風早八十二

    風早委員 実際どれだけの影響日本国民経済に及ぼされて来るのかということについて、非常に重大な関係のある問題でありますが、その見通しがまだ立つておらぬということであれば、これはもうそれ自身非常な問題だと思う。この面が相当無制限に広げられて行くということになりますと、さしずめ日本業者としては、非常に大きな影響を受けるわけです。特にこの際伺つておきたいのは、今度は外国業者がどんどんと無制限に入つて来ることができるわけである。こういう者が日本国内日本業者と同じようなことをやつて、しかも日本から買う商品に対しては非常な重い税金がかけられるので、これは買わない。そして外国特に米国から仕入れて来るものは、関税もかからなければ税金もかからない。こういうことになりますと、競争条件の非常な不均等というものが生ずると思うのであります。そういう点については、この立案者は一体どういうお考えであるわけですか。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカから品物を持つて来れば、多額の運賃を要するのでありまして、普通の消費物資について、日本国内物資競争することは、とうていできないのであります。しかしながらアメリカ側からすれば、日本食糧等がまだゆたかでない現状でありますから、全面的に日本商品に依頼するという気持はないようでありますが、かりにそうなりましても、八千万の国民に対するアメリカ駐留軍は、いかほどありましても、これはごく軽いパーセンテージにしかすぎないのであります。それに要する物品等を、かりに全部購入したところで、それほど日本経済影響するとはとうてい考えられません。
  9. 風早八十二

    風早委員 岡崎国務大臣は、どうも経済のことをさつぱり御存じないようです。相当の暴論を平気でやつておられる。食料についてはいろいろ実際問題も起つておる。先般、たしか私の懲罰のあれを本会議へ出したとき、趣旨弁明をやつた自由党議員諸君も、これは他の委員会で出しておりましたが、たとえばチヨコレートのようなものでも比較にならないほど向うの方が安いのです。食料だけじやない、自動車のごときは明らかです。向うの方がはるかに安い。これは食料だけの問題ではないので、資材需品備品、その他一切のものが含まれておるのでありまして、こういうものの国際的な競争条件というものは、もしも税金をかけなければ——税金をかけて、これで国内産業を保護する。これは独立国としては当然のことなのです。保護関税をかけて、大体国内生産力国内コスト、これと見合せてやるというのでなければ、国内産業はつぶれてしまうことは、これは経済の常則なのです。ところが今回この行政協定のためにまつたく関税は免除される。さらに国内税金も免除されるという特権が与えられておるわけです。これは今の岡崎国務大臣の御答弁のような暴論で片づけられるわけには行かないと思う。どうも経済事情というものを一向に御存じなくて、乱暴にこういうものを、国民の意思を無視してとりきめられたというところに、すべて問題の根源があるのであります。それはとにかくとして、これによつてさしずめ被害を受ける国民の側にとつては捨てておかれない問題なのです。  続いて私はこの問題を追究したいと思います。この現地で供給される合衆国軍隊の維持のために必要な資材需品備品及び役務で、その調達日本国経済に不利な影響を及ぼすおそれがあるものは、日米当局調整をやる、あるいは望ましいときには日本国当局を通じてやる。その調達というものはそういう条件になつておるわけでありまして、日本国経済に不利な影響を及ぼすおそれがないと考えられる場合には、第一項によつてまつたく一方的に、日本当局の手を通ずることもなく、またそれとの調整をやる必要もなく、まつたく制限なしに調達をやる権利を有するということになつておるわけです。これは北大西洋条約の案文を見ましても、こういうひどいことはない。これらは必ず両国の当局調整を必要とするということになつておる。これはいかにも屈辱的な(「ノーノー」)そして実害のある規定であると考えられるのでありますが、こういう点についてノー考えられるのですか、これはひとつ岡崎国務大臣から責任のある御答弁を伺いたい。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私が経済知識がないと言つて大いにおしかりのようですが、私も風早程度にはあると思つております。私はこう見えても経済学士であります。(風早委員「どうも経済学を知らない経済学者だから困る。」と呼ぶ)学者ではない、学士です。そこであなたのおつしやるように、日本経済に不利な影響があるときには調整をやる。しかし不利な影響のないものは、いくら買つてもちつともさしつかえないわけです。ほんの小規模の、たとえばみかんを三箱買うとか、五箱買うとか、あるいは魚を一カン買うとか、そういう程度のものまでこちらで買つてやつたのでは、特別調達庁を大きくしなければできない。今度特別調達庁を小さくして、人も減らし、やろうとしているのですから、従つて日本経済に多少とも影響のあるものは、調整のもとに日本機関を通じて買うけれども、こまかいものを一々こちらで買つてやる必要はないのですから、何も屈辱的でも何でもないのであります。
  11. 風早八十二

    風早委員 岡崎国務大臣経済事情に対するまつたくの無知を、そういう言葉の上のごまかしで糊塗されようとしておるけれども、実際問題として日本国経済に不利な影響を及ぼすおそれがあるかどうかということの認定は、一体だれがするのですか。これについては少しも規定が書いてない。これは実際問題として米当局がこの認定をやる。また少くもその認定が支配するということは、これはもうだれが見ても明白にわかることだろうと思う。これが一つと、また日本国経済に不利な影響を及ぼすおそれがないといつても、先ほど私が第一にあげてありますところの税金の問題、これを十分に計算に入れなければならない。さらに第三には、外国業者がどんどん日本に進出して来る。この点については、たとえば特別調達庁の調査によりましても座間、小牧、板付、立川など、朝霞もそうでありますが、米軍基地建設にあたつては、米国業者が設計を請負つた土建、航空機、自動車修理外国業者の進出というものは非常に激化の見込みである、こういうことなのです。これらの三つの根本的な前提条件考えだ場合において、あなたはみかんを三箱入れるとか入れないとか、そういう問題とこれを対照するということは、あまりに無責任な、実に無謀きわまるものと考えるのであります。そういう点を少しは考えてこういう行政協定をやられたのか。われわれはその一片の良心を疑うのであります。  さらに私は少しこまかいことを続けてお聞きしたいと思うのでありますが、きようは時間もございませんから、第十二条だけに限つて質問します。第十二条の第三項にいろいろと公用のために調達する資材需品備品及び役務については、物品税通行税揮発油税電気ガス税、すべて免除せられることになつていますが、このあげてある税目以外にも、なお日本国現行または将来の租税でも、やはり免除もしくは救済を与えるための合意がなされ得るという規定もそこにあるわけであります。そこで本条に特に掲げない日本国現行または将来の租税、こういうものについてその内容を特に承りたい。それから次の四項五項に関連して、勤労所得税というものは役務の場合においてどういうことになるのか、これもついでにはつきりさしていただきたいと思います。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず日本経済に不利な影響を及ぼすというのはだれが判定するかというと、これは当然日本政府が判定するのであります。あなたは屈辱的とかなんとかいうことをおつしやいますが、アメリカ経済事情ならアメリカ政府が判定する、これはあたりまえのことです。日本国内経済事情なら日本政府が判定する、これは協定精神からいつて当然のことであります。ほかにだれも権威を持つて判定する機関はないのであります。(「その通り」)従つてわれわれが認めて不利だと思えば、それは日本政府の方でやるとか、あるいは政府が援助をしてやるとかあるいは政府調整して調達をする、こういうことになる。(「条文の上に書いておかなければだめだ」と呼ぶ者あり)こういうものは条文の上に書く必要のない明白なものであります。もちろんそれがこの協定精神なのです。     〔発言する者あり〕
  13. 塚田十一郎

    塚田委員長 私語をお慎み願います。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それから第二には、アメリカ政府アメリカ軍隊等は、日本警察予備隊その他日本政府機関と原則的には同等に取扱われるのであります。従つて日本で免除されるような税金は、アメリカ軍隊に対しても免除される。要するに政府とお考えになればよろしい。従つて将来そういうこともあり得るかもしれませんが、まだ今のところはどれといつて具体的に話はきまつておらないのであります。
  15. 風早八十二

    風早委員 この行政協定を結んだ岡崎国務大臣に、いまさらその非を鳴らしてみたところで始まらない。始まらないのでありますが、今あなたの言われた日本国民経済に悪影響を及ぼすということは、これは日本国民判断するのだ、まさにそれはその通りです。国民はいかに判断しておるか、この国民というのはだれです。少くともこの問題については業者、そして労働者……。(岡崎国務大臣日本政府だ」と呼ぶ)じようだんじやない。この問題に関しては、日本国民というのは日本業者だ。それが岡崎国務大臣の誤りのもとなのです。日本国民判断というのは日本政府判断ではない。明らかにそれが矛盾しているというところに問題がある。この日本国民判断、すなわち業者労働者判断は一体どうであるか。これはすでに私が予算委員会においても労働大臣にしばしば追究した点、指摘した点であるが、このPD工場その他特需工場、特に進駐軍自動車委員会を構成しておる大経営の業種自身が連盟を持つて、これは米軍の直接取引じや困るのだ。それは一方的に押しつけられておつて日本の習慣も全然無視し、またわれわれの生産するコストを無視して一方的な値段と条件で押しつける、こういうことに対して厳重な抗議的な陳情をやつていることは、これはすでに指摘した通りです。また労働者側においてはもちろんのこと、このためにしばしば流血のストまでやつておる。(「やらしておる」と呼び者あり)こういうことは一々今繰返しませんが、明らかにこれが不利であるからこそ闘つておる、抗議しておる。それを、政府がこれを判断するのだというところに問題がある。自由党吉田内閣の政策というものの大きな裏切りというものはすべてそこから来る。少くとも国際的に見ても、あの屈辱的といわれる北大西洋同盟条約においても、あの場合の協定は明らかに条文にもちやんと書いてある。これは原則的に相互の政府当局調整によるということになつておる。しかるに日本では経済に不利な影響を及ぼすおそれのない場合はこれは無制限、おそれのある場合においても両当局調整のもとにやる。それから日本国の権限のある当局を通じてというのは、望ましいときにはというふうにして限つている。これは北大西洋同盟条約条文から比べましても、非常に不利な、屈辱的なものになつていることは明らかである。こういう点はどういう弁明をされるつもりか、私は一言聞いておきたい。この北大西洋同盟条約方針に大体よるようなことを一方では言つている。われわれはもちろん北大西洋同盟条約条文によること自身反対である。しかしながらそれによると言つていて、それよりまだひどい協定を結んでいるということは一体どういうことか。これに対してはどういう釈明を持つているか。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれはいろいろな外国の間の条約等研究いたしました。しかし最も屈辱的なものはソ連とポーランド、ソ連とチェコスロヴアキア、ソ連とアルバニア、ソ連とルーマニア、ソ連ブルガリア等同盟条約であります。北大西洋条約なんかこれに比べれば、全然独立国間の条約で、何ら屈辱的なことはないと考えております。そこで北大西洋条約の原則はわれわれもけつこうだと思つておりまして、できるだけそれにフオローするように考えておりますけれども、日本には日本特殊事情があるから、命部北大西洋条約協定をまねるというのは、まだ実情に合わない点がたくさんあります。ことに調達の問題は特別調達庁等で過去にやつておりましたが、いろいろ汚職事件等もあり、また経費も非常にたくさんかさむ。そこで日本経済に特に不利を及ぼすようなものは、これは特別調達庁なりその他の機関を通じてやらなければなりませんから、特調も小規模ながら残して、その方の業務を続けさせるつもりであります。しかしながら行政整理人員整理あるいは政府の費用の縮減をできるだけはかるという見地から、日本国経済に不利を及ぼす影響のないものまで、一々こちらでやるというところまでする必要はないという結論に、われわれは達したのであります。従つて先ほども申したような説明になるのであります。こういう点で何も北大西洋条約を一から十までまねる必要はごうもないと思います。日本経済力からいいますと、不必要な世話までする必要はないから、そこでこういう協定をいたしたのであります。
  17. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早君に申し上げますが、割当時間が、お話合いの結果三十分ということにきまりまして、五十分までがあなたの持時間でございますから、そのつもりでひとつ……。
  18. 風早八十二

    風早委員 これは岡崎国務大臣と議論しておつても始まらないが、一体北大西洋同盟条約というものは、これは日本の今回の行政協定に比べて——われわれはその両方比較をして、それよりも軽いからそれでよいというふうなことを最初から言つているわけではない。われわれとしては両方とも絶対反対なのです。しかし政府北大西洋同盟条約に準拠するということを大きくうたつておりながら、しかもそれよりもさらに不利な協定をわざわざ結ぶということは、これは一体政府としてはどういう腹であるのかということを聞いておる。これはまつたくアメリカに全面的に屈服しておるということを意味する以外の何ものでもない。そのことを私は言つておるのです。そこで今後の問題として、外国業者日本にどんどん入つて来るというようなことについて、実際問題としてこれは日本業者との競争条件関係で、一体どういう具体的な手当を考えておられるか。これはまつたく自由放任で、自由党自由主義でもつて、どんどんと入つて来て、つぶれるものはつぶれてよろしい、こういうような無定見なお考えであるのか。これは今すぐ出て来る影響のある問題でありますから、こういう問題について政府方針をひとつはつきり示しておいてもらいたい。
  19. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは前から善隣友好ということを言つておりまして、これはアメリカに限らないのであつて外国業者日本に入つて来ることについては、それが競争に耐え得るような人たちであるならば、入つて来ても一向さしつかえない、そのかわり日本業者外国に進出して、お互いに有無相通じてやつて行くということで、これはあなたのおつしやるような尊皇攘夷的な思想は、全然持つておりません。
  20. 風早八十二

    風早委員 黙つて聞いておりますと、尊皇攘夷とかなんとかいう暴言を国務大臣が言われるのは、実に心外千万だと思う。大体あなたは大きなことを言いますが、この行政協定というものが、今日本労働者階級、また一般の知識人、こういう日本国民層の重要な構成分子から、全面的に非難され、攻撃され、抗議されておるというこの事実を、一体どういうふうに解釈するか。それはもう政府だけが正しいのであつて、こういう国民の声というものは全然無視してよろしい、結局国務大臣の今の答弁はそういうことを意味しております。この第十二条において特に私が問題にする基本的な問題は、なぜ北大西洋条約とこの点を比較したかといいますと、結局日本独立国であるかどうかというそのけじめが、やはりここに出ておるということなのです。つまり日本当局が金がかかるとか、かからないとか、そういう問題ではないのであつて独立国であれば、その国で調達する、その国で契約せられるその問題に対して、当然これを一切政府当局が直接責任を持つという建前でなければ、これは独立国とは言えない。そういう点で北大西洋同盟条約では、とにもかくにもこの調達の問題に関しては、当該当局を通じてやるということに原則的にきまつております。それをわざわざ無制限にし、さらにまた重大な不利な影響を及ぼすおそれのある場合においては、それでもまだ調整のもとにやる、こういうような非常にあいまいな譲歩をしておるということは、つまりみずから日本の独立というものを放棄したということに、これは当然なるわけであります。しかもその結果が今申しましたように、日本の主要な産業に対し重大な影響を与える、また特に流通関係日本の商人の側におきまして直接被害を与える、こういう結果になる。その根本は、すべてこの行政協定によつて、完全に日本の独立というものを放棄した。尊皇攘夷ということが、この独立を守るという意味においてであるならば、これは私は甘受します。われわれの言うておることは、あくまで日本の独立を守るということなのです。この第十二条が独立を放棄しておるということから出て来るということ、これを私は重ねて指摘しておきたいと思う。  さらに税金の問題に関しては、先ほど私が聞いておる問題は一向答えられていないのでありますが、これは岡崎国務大臣が衝に当られたのであるから、当然内容はよく御存じだと思いますから、本条に掲げない日本国現行または将来の租税というものは、一体どういうものを意味するのか、これをひとつ答えてもらいたい。
  21. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 非常に不思議な独立国の定義を承りましたが、私はそんな国内調達政府でやらなければ独立国でないという定義は、寡聞にして初めて承つたのであります。しかし日本経済にいやしくも不利がないというならば、何を好んでこちらが世話してやる必要があるか。多少でも不利があるならば、その程度に応じて調整をしてやるか、あるいは政府の援助でやるか、あるいは政府を通じてやるか、程度によつていろいろの段階はありましようけれども、多少でも不利があれば、そういう方法でやる。全然不利のないものまでこちらから手を出してやる必要はない。またそれをやらなければ独立国でないという定義は、私はどこの書類を見ても発見できないと思います。  それから税の問題は、先ほど申したように、日本政府機関と同じように取扱うという原則を立てておるのでありまして、その政府機関で、もし将来こういう税が免除されるということになれば、それに均霑するということはあり得るのでありますが、今のところはここに掲げてあるだけであつて、まだそれ以上のものは何も出て来ておりません。
  22. 風早八十二

    風早委員 もうこれでおしまいです。日本国に不利であるかどうかということは、これはだれが判断するかということについて、根本的にこれは考え方が違う。それを政府が不利でないと判断することが、結局日本国民が不利でないということだというのが、これが国務大臣考え方なのです。それでは問題はちつとも解決しないわけです。この不利でないか、不利であるかということは、国民がすでに判断している。重大な不利だということを言つて、これに対して闘つている。これをどう受入れるかということが問題なのです。そういう根本の問題について、まつたく岡崎国務大臣日本人の魂というものを喪失している。そこに問題の根本があるということを私は指摘しておきたいと思う。
  23. 塚田十一郎

    塚田委員長 早川崇君。
  24. 早川崇

    ○早川委員 時間があり歯せんので、二、三点だけ岡崎国務大臣に伺いたいと思うのであります。  行政協定実施に伴い第一に問題になりますのは、駐留軍関係する防諜規定の問題であります。伝えられるところによりますと、政府は刑事特別法を準備されて、その中で、合衆国の機密を不当な方法で探知し、または収集した者は、十年以下の懲役に処する、さらにまたその第二項には、合衆国軍隊の機密で、不当な方法によらなければ探知または収集することができないものを、他人に漏らした者も、同様な罰則を受ける、こういうように伝えられておるのであります。従つてもしこれの条項通りの刑事特別法とすれば、故意にあらず、善意に機密事項を他人に漏らすというのも、十年以下の懲役に処せられるということは、かつての軍機保護法以上の非常な問題を生ずるかと思うのであります。この点について、岡崎さんに内容について御説明願いたいと思います。
  25. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今法案を整理いたしておりまして、国会に提出する予定にいたしておりますから、そのときに十分御審議願いたいと思うのであります。(「それは提出されておるよ」と呼ぶ者あり)提出されておれば、訂正いたします。そこで善意のものを処罰するというような意向は全然ありませんので、こういう点につきましては、また国会の御意見を伺つて、十分考慮できると思います。事は主として法務府の関係でありまして、非常に専門的事項になりますので、私からここではつきりいろいろなことを申し上げるのは、差控えたいと思います。しかし善意の人々に迷惑を及ぼすようなことは、いたしたくない、またいたすべきでない、こう考えております。
  26. 早川崇

    ○早川委員 次に行政協定経済影響として、われわれが憂慮しておる問題は、たとえば漁業権の制限、あるいは演習その他で損害を与えることに対する補償が、行政協定においてははつきり明文にうたわれてないのであります。これに対して政府はどういうお考えを持つておられるか、この点をひとつ……。
  27. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これもいろいろ考えてみましたが、補償等の措置は国内的の問題でありまして、行政協定の中に規定すべき性質のものでないという結論に達したので、書いてないのであります。そこでもうすでに新聞等にも出ております通り予備作業班が各地の演習場とかその他の点を調査しております。そのときに、たとえば漁業の問題ならば、水産庁から人を出して、それが専門委員になつてつておりますし、農業関係のものであれば、農林省の方からまた出るということで、十分——どうせ日本を防衛するためにいる軍隊でありますから、いざという場合を考えると、演習もしなければならぬ、射撃もしなければならぬ、それは当然だと思う。ただそれが日本経済にできるだけ支障を少くするという趣旨でやることについては、アメリカ側日本側もまつたく意見が一致しております。従つて漁業に非常に重要なところであるならば、なるべくそういうところを避けて、どうせ演習をするにしても、比較的漁業にさしさわりのないところを選ぶというのが原則であります。しかしそれにしても、日本の沿岸はほとんど全部が漁業に使われておりますから、どうしても支障は起るわけであります。ところが演習は毎日やるものでもないので、演習をやらない日はすみやかにそれをあらかじめ告示をしまして、いつからいつまでは漁業をしてもよろしいということにいたすようにいたしております。しかしそれにしても漁獲に対する影響は当然起りますので、これに対しては十分な補償をいたしたいと考えておりまして、農林省と大蔵省で補償の額等について今研究中であります。これはわれわれの考えからいいますと、そういう人たちに迷惑を及ぼすことは、将来の日米関係に不利な影響を自然につくり上げることでありますから、そういうことを避けるために、できるだけ関係の人々に満足の行くような措置を講じたいと思つて、予算の限度もありますけれども、できるだけの措置は講ずるつもりで、今相談いたしております。
  28. 早川崇

    ○早川委員 その補償はかなり莫大な補償になると思うのですが、これは当然防衛分担金のわく内から支出すべきものであつて、それ以外に予算のこれだけがまたふえるということは、私として納得できないのです。これは当然防衛分担金の中から補償すべきものであるかどうか、政府の見解を伺いたいと思います。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今実は防衛分担金につきましても、大体のわくはきまつておりますが、一々こまかに当つてみませんとわかりません。また安全保障費の方も大体のわくをきめて計上したものでありますが、実際にやつてみますと、一部が多かつたり、一部が少かつたりすることもあり得ると思います。私の考えでは、これはむしろ広義に言えば、安全保障費の方に入るのではないかと自分では思つておりますが、しかし正確なことはまだ研究中であります。予算の面から特にこれを支出しないで済むようにいたしたいという気持で、今研究中であります。それにまず第一に、補償費があまり大きくならぬことが必要であろうと思います。それでできるだけ陸上においても農地を避けて、補償費のほとんど少いところ、あるいは国有地等を使いたいと思つておりますし、漁業についても、できるだけ漁獲高の少い場所、補償費の少くて済むようなところを選びたい、こういうつもりで、今作業をいたしておるような次第でございます。
  30. 早川崇

    ○早川委員 どうも予算審議のときに、当然これは防衛分担金の中に入るべきものだと考えておりましたのに、今非常にあいまいな御答弁です。同時にこの問題は、先ほどちよつと触れられましたが、土地の収用の問題に関係する。従来は占領の時代は、これは使用権だけを持つておりましたが、今後その土地自体の権利の移譲という問題も含みますので、これを土地収用法の改正によつて行くのが、これは同時に憲法との問題にも関係する問題で、しかもその補償の金額が不当に低いというような、なるべく政府は予算を支出したくないという観点から、これを扱われますと、その収用される農民にとつてはたいへんな問題が起ると思う。そういう点について厖大な防衛分担金と安全保障費があるから、十分な納得し得る補償をするということでなければ、ほんとうの日米の友好関係は保たれないと思いますので、政府においてはこの点において十分ひとつ慎重に補償の問題は考慮されたいと思うのであります。  最後にもう一点、これは外交問題でありますが、国民政府との講和問題が数週間行き悩んでおります。聞くところによると、中国の国会に対しては、外務大臣その他政府当局は、この日本との講和問題に対して逐一了解を求め、相談する態度に出ておられるのでありますが、不幸にしてわが国会においては、この問題に対して十分な中間報告もない、いわんや相談にもあずからないという実情でございます。私はこの機会に、岡崎国務大臣がこの問題に対して何らかの見通し、中間的な御報告をされることを望みたいのでありますが、その点御答弁願いたいと思います。
  31. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず補償の方のお話でありますが、これは御意見まつたくごもつともでありますので、今しきりに研究をしたしております。できるだけ御説のような趣旨で解決したいと思つております。  それから中国との問題は、これは中国側では立法院の方にも話をいたしたということも、新聞に出ておりまして、私も見ましたのですが、これは政府の構造が非常に違いますので、日本政府と国会という関係とはまるで考え方が違うものであります。いわば政府の一部、つまりまだ選挙が行われておりません現状においては、ほとんど政府の一部であるように私は考えております。従つて取扱いも違う点があると思うのでありますが、しかしそれにいたしましても、いまだ中国側でも公に交渉の経過なり、案等について発表いたしたことはないと了解いたしております。われわれの方も、中国側の立場もありますので、交渉の途中においていろいろこれを発表することは差控えたいと考えておるのであります。ただ趣旨は吉田・ダレスさんの書簡によつて尽されておるのでありまして、この趣旨で、できるだけ多くサンフランシスコ条約の関連も取入れまして、中国国民政府との平和状態を回復する条約をつくり上げよう、こういう趣旨であります。行き悩んでおるという報道もありますけれども、私どもの考えでは、別に行き悩んでいるということではないと考えております。元来この種の条約というものは、相当デリケートな、むずかしいものでありまして、吉田・ダレス書簡でごらんになるような、ある種の現実の事態を考えなければならぬという点において、なかなかむずかしい問題でありますので、この程度の時日を要するのは、まず別にふしぎはないくらいにわれわれは考えておるのであります。しかしながら、できるだけ早く協定を結びたいと思つております。なおいずれ条約ができますれば、これは国会に提出しまして御審議を願うつもりでおります。
  32. 早川崇

    ○早川委員 国府すら立法院に相談しておる。さらに聞くところによれば、行き悩んだので、アメリカに仲介の労を頼むとかいう報道をわれわれは聞くのでありますけれども、行政協定においてしかり、講和条約においてしかり、すべて日本の国会をつんぼさじきに置いて、のつぴきならぬように、調印してから承認を願うということは、まつたく戦争以前の祕密官僚外交の域を一歩も出ていないと思う。その結果、野党の協力も得られない非常な不幸な結果を招いたことは、この行政協定の問題において、私は国民の一人として、残念に思つておるのであります。事は少し違いますが、この国府との講和問題におきましても、まことに岡崎さんの今の御答弁は従来の域を一歩も出ておらない。今後国民外交という新たな外交理念に立つて、よほど真剣に考えていただかなければ、たいへんな問題になるということを私は非常に憂える一人であります。ただいまここでいろいろな中間経過みたいなものを報告しろというようなことは、時間もありませんので望みませんけれども、適当な機会において、外務委員会なり予算委員会において——非常に行き悩んで遅れていることは事実なので、国民もそれを憂えているのですから、率直に言うべきことは相談するという態度をとられるよう猛省を促しまして、私の関連質問を終りたいと思います。
  33. 塚田十一郎

  34. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は簡単に、けさの新聞に出ているところによつて岡崎さんに質問しておきたいと思いますが、けさの新聞に、英連邦各地域が軍事基地の協定が成立するまで批准書の寄託を延期するのではないかという記事が出ているのであります。これは独立と講和を待望する日本といたしましては、かなりシヨツクを与えられたことになります。そこで英連邦に対する軍事基地を提供するということと、講和条約の発効についての関連性は何かありますか。これに対してもしもそういう要求があつたならば、政府はどういう対策をとられるのであるか、御所見を承つておきたい。
  35. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の今まで承知している範囲では、それは関連がないと思つております。またあるはずがないと考えております。その外電についてはまだ確かめておりませんけれども、おそらくそれが正確な報道でもないのじやないかと思つております。政府としては、あくまでもそれは関連のないことである。しかし国連軍に対する協力という原則は持つておりますから、これはいたしますけれども、批准とは関係がない、こういう建前でずつと来ております。
  36. 西村榮一

    西村(榮)委員 まことに私と同感です。従つてこの問題が将来英連邦各地から要求されても、日本のこれに対する外交的な処理の基準というものは、サンフランシスコ条約条文従つて処理されるものだ、こう解釈しておいてよろしいか。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りでありますが、詳しく申せば、平和条約条文と、そのとき交換された交換公文、その両方によつて処理される、こう考えております。
  38. 西村榮一

    西村(榮)委員 次にお伺いしておきたいと思うことは、二十六日の外電——日本の有力な新聞が全話そろつて書いております。それは、英連邦軍が駐留費を日本に一部負担してもらいたいという要請を日本にするということを書いてあります。これはごらんになつたと思いますが、その理由は、朝鮮動乱が継続中は、駐日英連邦軍の経費のうち、少くとも一部を日本側が負担するように要請するということになつておりますが、これも同様、私はその義務は、条約の上にも、その他交換公文の中にも、どこにもないと思つているのですが、もしもこのことが正式に英連邦から要請があつたときに、政府はどう処理されるか、承つておきたいと思います。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もそれはあなたと同じ考えでありまして、今でも占領軍としての英濠軍は、施設とか、区域とか、その他終戦処理費で処理されている部分がありますけれども、国連軍としての行動につきましては、これはアメリカ軍といわず、英濠軍といわず、全部ドルで今でも払つているわけです。従つて今度占領という性格がなくなりますと、英濠軍に対して経費を日本で一部分担するというような要求があることはないと私は考えております。ないものとしてすべて処理して行く方針で、そういうある場合はとおつしやられても、これはまたそういう要求がある場合にはこうやるんだと言つて力み返るとおもしろくないと思いますので、ないものとして進めて行く、こう御了解願いたいと思います。
  40. 西村榮一

    西村(榮)委員 質問を終ります。了承いたしました。
  41. 塚田十一郎

    塚田委員長 稻村順三君。
  42. 稻村順三

    ○稻村委員 たつた一点でありますけれども、関連質問いたしたいと思いますが、それは労務調達の問題であります。  最近の新聞によりますと、労務調達もやはりアメリカ側としては直接調達を強く要望しているというようなことが載つておつたのであります。ところが予算委員会で私が質問したときに、労働大臣は労務の調達はすべて日本があつせんするなり、または日本が援助する形式をとることに大体話がきまつている。従つてその形式をとる限りにおいて、日本の労働三法が適用される、こういうふうな答弁であつたと記憶しております。しかしもしこれが労務の直接調達が行われるものとするならば、この点やはり木村法務総裁に、直接に労務調達がなされる場合には、その労務者は日本の労働三法の保護を受けるかという質問に対して、木村法務総裁は、行政とりきめの中にその問題に関するところの明確なる記載のない限りは、日本の労働三法の保護を受けない、こういう答弁がございました。それですから、この二つの点からいたしまして労務調達が一体どうなつているか、この点明白にしていただきたいと思います。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私からもこの予算委員会で申し上げたと思いますが、元来筋道からいいますと、アメリカの防衛軍がアメリカ軍隊の費用といいますか、防衛費で雇い入れる人に対しては、りくつからいうと直接に労務を雇用するのが筋道でありまして、ほかの機関が雇い入れてそれを使用するというようなかつこうは、私は筋道からいうと間違つていると思います。思いますが、いろいろ言葉や風習の違いもありますので、交渉的にも困難であろうという点も考えまして、もし労働組合等労務者側で特に希望するならば、りくつは別として間接雇用といいますか、そういう形をとつてもさしつかえないのじやないか、こう考えまして行政協定の中では「日本国当局の援助を得て」という文章にしまして、直接にもできるけれども、間接にもできるというかつこうにいたしておきました。というのは将来駐屯軍の家族等もおる予定でありますので、この家庭の一人の女中とかいうようなものを雇う場合もあり得るのであります。今でもそういう種類の人は直接に雇用をいたしておる。普通の意味の労働組合等を結成しているものは間接雇用になつているわけであります。全部が全部間接雇用ということでなくてもいいのであろうと考えて、ここは融通をつけておるのであります。しかし木村法務総裁の今お話のような答弁があつたかどうかは記憶しておりませんし、また速記録も調べてみないとわかりませんが、私は原則的にはアメリカ軍隊アメリカの所属負も日本の法律を尊重するのであるし、それから行政協定の中にも、日本の労務関係については、日本の法律によつて規定されると書いてあるのでありますから、直接雇用であろうと間接雇用であろうと、労働三法が適用されるということは、これは当然のことだと思つております、もし特別に何か規定がありとすれば、これは別問題でありますが、今のところはそういう別の法律もありませんので、これは直接雇用であるとしても労働三法は適用される、こう考えております。実際の状況は今新聞のお話を伺いましたが、私どもの知つている範囲では、原則は間接雇用であります。そうして今申したように家庭の一、二の使用人等については、直接雇用でもいいじやないかという程度考えております。まだ実はこれは向うの首脳部と話し合つているだけでありまして、講和条約効力発生後こういうものが実際に処理されて具体的になつていないので、今のうちは原則的な話でありまして、具体的にこまかいところまでどうなるかということは、もう少し時日を待たないとできない。今申し上げたように労働三法が適用されるということは、私は疑いないところじやないかと、こう考えております。
  44. 風早八十二

    風早委員 ちよつと関連して。日本の法相は調達労務に適用せられる、こういうのでありますが、実際この行政協定によるとそうなつておらない。「別に相互に合意される場合を除く外、」これがくせものである。別に相互に合意がありさえすれば日本の法律を排除することは朝飯前だ。しかもこの日本と相互に合意される場合というのは、どういう場合であるかということは、ちつとも書いてないわけである。そういうところに非常な抜け道がこしらえてあつて、結局は日本法律を適用しないことになつているところに問題がある。そこのところをもつとはつきりした答弁を要求したい。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほど風早君の非常におすきであつた北大西洋条約の文章をこの点はそのまま取入れたのであります。北大西洋条約協定の中にも、「別に相互に合意される場合を除く外」こう書いて、これは今お答えいたしましたように、今のところ別に合意をする必要も考えておりませんし、また合意しようとも考えておりません。しかし軍隊いうものはいろいろな点で、いろいろな関係が出て来るものでありますから、念のためこういう条項を入れておくだけであります。風早君の御研究の深い北大西洋条約をごらんになれば、そういう点が出ているわけであります。
  46. 風早八十二

    風早委員 もう一点だけ伺いたい。北大西洋条約を、私はちつともこういうものはこのままで異議ないと言つた覚えはない。よく速記録を読んでください、とんでもない話だ。北大西洋条約はもちろんのこと、いわんやこの行政協定、いずれもわれわれは絶対反対であるということを再三繰返して言つているわけである。けさの速記録を見てください。そういうかつてなことを言つてもらつては困る。とにかく私「別に相互に合意される場合」ということは、疑同であるということを言つているのでありまして、それを今あなたは合意をしておらない、まだその必要を感じておらないと言つたつて、実際米軍が何どきでも合意を求めて来るということはあり得るのであつて、そういう危険に対して何らの保障はないわけである。そこに日本法律を適用するといつても、それはただ形の上だけであつて、実際にはこれが蹂躙されるという危険が、十分に行政協定自身に出ているということを私は指摘しておきたいと思う。
  47. 稻村順三

    ○稻村委員 そこで岡崎国務大臣答弁に対してまた新しく質問しておきたいと思うことは、やはり今風早委員からも申しました合意の点でございます。岡崎国務大臣も、大体相手は軍隊であるからといういろいろな心配もされておつたようでありますが、結局問題は、民主主義国の軍隊であつたとしても、軍の目標というもの、ことに軍事的な立場に立つものと、そうでないものとの間には、非常に大きな食い違いがしばしば来ることを、われわれは一応考えなければならぬと思います。その点実をいうと、私たちはよほどはつきりした立場において労務調達の問題をきめておかないと、日本労働者の有する労働三法により権限というものが、喪失される危険があると思うのでございます。  それで私は最後にお尋ねしたいと思つていることは、進駐軍関係の労務者の問題でございます。これは従来とよほど違つた形で雇用されるのではないかと考えるのでありますけれども、たとえば今岡崎国務大臣の話によると、従来の進駐軍労働組合といつたような労働組合を持つているもののように、大量的に雇用されるいわゆる公式の雇用というものは、主として間接雇用による、しかしながら駐留軍個人の私的な雇用は直接雇用による、こういうふうな原則が認められていると解釈してさしつかえないのかどうか。この点をはつきりと御答弁願いたいと思います。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の申したのは、今の状況がそういうふうな種類のわけ方になつておるということを申しておるのでありまして、今後それをどうするかということは、まだ具体的には話合いをしておらないのであります。ただ少くとも今言われたような沖仲仕であるとか、あるいはその他工場で働く人であるとか、こういう普通の労働組合を結成するような労働者に対しては、間接雇用の方がお互いに便利であろうということは、向う話合いをいたしました。しかしこまかい点につきましては、向うの連中の中には、いわゆるドメスティック・サーヴアントといいますか、家庭の使用人でも、めんどうだから供給してもらつた方がいいという人もあるやに聞いております。そうかと思うと、それでは困る、これは自分の費用で自分が私的に雇うのだから、自分のすきな者を雇いたい、日本側からさしまわして来た者を、いやおうなしにとるというのは困るという意見もあるようでありまして、こういう点は将来の問題になりますが、大きくわければ今おつしやつたように、まつたく私的に雇う者は私的に、それ以外の者は間接の雇用で行つた方がいいのではないかという、ごく漠然たるところに今来ておるのであります。
  49. 稻村順三

    ○稻村委員 そうしますと、今のところまだきまつてはいないけれども、ややそういう方向で話合いが進みつつあるということになるのですか。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体そういうことであります。
  51. 塚田十一郎

    塚田委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時半より委員会を再開して質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後二時八分開議
  52. 塚田十一郎

    塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。中曽根康弘君。
  53. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 きようは大蔵大臣と通産大臣に、日本の石油政策について質問しようと思つたのでありますが、不幸にして通産大臣は病気だそうですし、大蔵大臣は後刻おいでになる予定だそうでありますから、当面の責任者である通産政務次官の本間君にお尋ねをいたします。本間君に質問する以外に大蔵省方面に質問することや、その他ありますが、その質問はおいでになるまで留保して、とりあえず通産省の責任者にお尋ねいたします。  まず第一にお尋ねいたしたいと思いますことは、通産省は日本の石油政策というものをどういう基本方針をもつてつておるか、このことであります。過般私は帝石の問題で質問したのでありますが、これは国内産の問題です。それから外油の問題もあるし、あるいはさらに外国資本導入の問題もあるし、あるいは東南アジア開発の問題もある。しかもまた石油という問題はきわめて重要な問題であつて、太平洋戦争も石油に始まり、石油に終つておる。戦争が石油に始まり、石油によつてつておるという事実を見ても、日本が今後自衛力を漸増して行くということになると、当然この問題は鉱脈に触れて来る問題だ。従つて昭和二十七年の国策を推進する上には、この問題に関する確固たる基本方策がなければならぬ。こういう意味で今の四点について、通産省の責任ある政策を伺いたいと思います。
  54. 本間俊一

    ○本間政府委員 お答え申し上げます。御承知のように、石油は国内では大体需要の約一割以内ぐらいしか原油が出ませんので、どうしても外国の原油にたよらざるを得ないという基本的な性格を日本は持つておるわけであります。そこで終戦後、何と申しますか、外資と提携いたしまして、そうして原油を確保し、またわが国の精油設備を、進んでおります技術を導入いたしまして、精油能力を増すというような方法で、日本の終戦後の石油の問題が進んで来ておるわけでございます。そこで私どもといたしましては、ただいまも申し上げましたような基本的な問題につきましては、できるだけ日本の精油設備を整備いたしまして、需要をまかなつて参りたい、こういうふうに考えておるのであります。
  55. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 非常にあいまいな答弁でありまして、私がお尋ねいたした国内産油の確保の問題、それから外油の日本に対する供給の問題、外国資本に対する日本側の態度の問題、それから東南アジアその他における外国資源に対するところの今後の政策、こういう問題の調整をどうするか。こういう基本の政策をお尋ねしたのでありまして、そういう四点に触れてもう一度御答弁願いたい。
  56. 本間俊一

    ○本間政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、国内産の原油が不足しておりますから、そういう観点から日本の石油会社と外資と提携いたしまして、そうしてやつておりまして、その生産せられます石油が、日本の需要をまかないます意味において相当な部分を占めておる。こういう状況にあるわけであります。そこで東南アジア開発という問題でございますが、大体石油の原理ついてはいろいろ外国に依存しておりますので、この問題をどういうふうに調整するかというお尋ねでありますが、もう少し具体的に御質問していただきまして、それに対しましてお答えをする方がよいと、こう考えます。
  57. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 具体的に聞かしてくれというお話でありますが、これは国策を聞いておるのであつて、どこの会社をどうする、こうするということを聞いておるのではない。従つて現在の状況は御存じのように九割というものは外油のごやつかいを受けておる。外油のごやつかいを受けておる限りにおいては、どんどん向うから干渉もされるし、国内の石油に関する日本の管理権、自主経営権すらあぶないという状態である。こういう状態でこのまま行つてよいかどうか、それを今後どういうふうに切りかえるなり、改善して行くか、そういう点をお尋ねしておるのであります。
  58. 本間俊一

    ○本間政府委員 御指摘にもありました通り、九割以上は外国の原油に依存しておるのでありますが、今ただちに日本がこの点について東南アジアの外油を確保する、あるいはこれに対して相当の手を打つというようなことも、具体的な問題になつて参りますと、非常に困難が伴います。従つて政府、通産省といたしましては、日本の内地におきます原油の生産をできるだけ保護助長して参りたい。それからただいまお尋ねのような外油の問題についても、これはなかなかむずかしい問題でございまして、今すぐ外油について、日本の需要を相当程度まかなうというような具体的な手はなかなか困難ではないか、こういうふうに考えております。
  59. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 政府の政策らしいものは何らうかがわれないで、当面の糊塗的な政策を言つておられるだけでありますが、これはまたもう少し時間がたつてからゆつくりお尋ねすることにいたします。  そこでまず国内産油の問題で、私はこの間帝国石油の問題で質問いたしましたが、あのとき通産大臣は自分の部下に不届きな、あるいはそういう疑いのあるような行為のあつた者は厳重に処罰する、こう言つておられる。ところが最近検察庁が帝国石油に再び手を入れて、確信あるもののごとき様子であります。現にその結果であるかどうかわかりませんが、始関資源庁長官は退官をしておる。あれは懲戒免官によつて退官したのですか、それとも自発的に退官したのでありますか、その辺いかがですか。
  60. 本間俊一

    ○本間政府委員 始関資源庁長官は、ちようど、山本次官が退職される、これに一緒に工業技術庁の長官、特許庁の長官等も勇退されることになつたのでありますから、本人の自発的意思によつて今回退職されたのであります。
  61. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 帝国石油の経営について上庄委員会が二回にわたつて勧告書を出しておることは、次官御承知の通りだと思います。ところがそれに対して帝国石油側が不届きな行為をやつたということは、通産次官は御存じでありますか、その辺はいかがですか。
  62. 本間俊一

    ○本間政府委員 帝石の問題に関連いたしまして第一番の問題は、機械に対しまして政府が補助金を出しておるのでありますが、この補助金を出しました機械を処分いたしますには期間があるわけであります。ところがその期間を待たずして処分したという事実があるのではないかということになりまして、この問題については、ただいま会社側の方と調査をいたしておるような次第でございます。  それからもう一つ起きておる問題は、コンサーヴェーシヨンに対する違反の問題でありますが、これは係官を現場に出しまして調査いたしました結果、資源庁の出しました勧告に対して、その通り実行しておらなかつたという事実が明らかになつて参りました。その他の問題につきましては、御指摘にもありました通り、ただいま検察庁の方で取調べをいたしておりますので、まだ資源庁といたしましても、通産省といたしましても、明確にその点はどうなつておるかというような点はつかみ得ない段階になつております。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 山勝工業を通じて補助金の対象になつておる機械を法に違反して処分したということは厳然たる事実で、今次官の明言された通りであります。しかもその他に私の申した不届きということに対しては、上庄委員会の勧告に対して、帝石側は一応それに従うような指令を出した。ところがその指令を撤回をして、無視して、いわゆる祕密指令どいうものが出ておる。こういう事実を通産次官は御存じでございますか。
  64. 本間俊一

    ○本間政府委員 ただいま御指摘になりました事実が明らかになつておることを承知しております。
  65. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで祕密指令を出して、上庄委員会の要求に従わないような放漫な政策をまたやつた。そこで通産省の内部では、資庁源では、非常に怒つて、始関資源庁長官を除く以外の役人は、すべて問責状を出そうということで、こういうわけで資源庁内でその起草案が出て来た。しかるにこれを始関氏は最後まで押えて、遂に出させなかつたということですが、この辺のいきさつはどうですか。
  66. 本間俊一

    ○本間政府委員 ただいま没収所の方でこの問題に対しまして、どういう処置をするかということを寄り寄り協議をいたしておる最中でございまして、役所の事務局の意見がただいま御指摘のようなふうに一致しておつたということは聞いておりません。
  67. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 われわれの調べた範囲では、もう一致しておつた、ただ始関氏だけが何らかの理由によつて押えておつたということは、これは厳然たる事実であります。そういう点から見ると、始関氏と帝石の関係というものはきわめて暗い。のみならず御存じのように、遂に検察庁によつて小切手帳が押えられた。私があのときに動力協会を通じてと言つたのは、あとの調べで間違いでありまして、電気協会を通じて出しておる。しかも五十万円の小切手帳をやられて、それが遂に検察庁の発見するところとなつて、ここに始関氏への政治献金というか、あるいはその他の収賄的なにおいのすることが出て来て、問題になつておるわけです。こういう事実を本間通産次官は御存じですか。
  68. 本間俊一

    ○本間政府委員 御指摘の電気協会の五十万円を帝石から借りたというのは、アメリカへ参ります際の一緒に参りました方の経費の捻出と申しますか、寄付金の集まりと申しますか、というような問題が出発するまでに間に合わなかつたので、その人の経費を支弁するために電気協会の方で一時借りた、こういうふうに私どもは承知をいたしておるのでありまして、それがただちに御指摘のような政治献金であるとか、あるいはその他のものであるというふうには、私どもは承知いたしておらないのであります。
  69. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この辺はいずれ検察庁で明らかになろうと思いますから、私はあえて追究いたしません。しかしともかく動力協会は当時なかつたので、電気協会からと称して、すなわち帝石を通じて電気協会をさらに経過して来ている、この事実は厳然たる事実である。それを糊塗するためにこれを借りたとか、あるいはほかの者に渡したとか、これはよくやることでありまして、常識で判断すればわかる。だから私はこれ以上こまかいことは申し上げません。そこでお伺いいたしたいのは、これだけのことをすでに始関氏は帝石との関係においてやつているし、それだけまた行政上の手落ちもある。また会社側はそれだけ国家に迷惑を及ぼしておるし、規律を乱しておる。そういうことに対して、一体会社側にいかなる処置をとるか。この辺は通産省としてのひとつ腹を示していただきたいと思います。
  70. 本間俊一

    ○本間政府委員 先ほどもちよつと申し上げたのでございますが、この帝石の処置につきましては、どういう処置をとることが一番いいか、ただいま慎重に研究をいたしておりますので、もうしばらく時間的な余裕を賜わりたいと思う次第でございます。
  71. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 落度ありということは、すでに本間通産次官もここで認められた。また検察庁で濃厚な疑惑がかかつておることも厳然たる事実です。すでにかつて国策的会社であつたものが、こういう疑惑を起すのですら恥じ入らねばならぬ。その監督者としても腹を切らねばならぬ。それが新しい道義の確立の根本であります。そういう点からして、当然現重役に対しては相当の処置をなさるべきだと思うのでありますが、そういう何らかの形における処置をやるつもりであるか、やらないのであるか。私はだれをやれとか、どの程度やれとかいう、そういうことは言いません。何らかの処置をやる、そういう抽象的な考えをひとつ承れば幸いだと思います。
  72. 本間俊一

    ○本間政府委員 お断りをしておきたいのでありますが、始関長官が行政上あやまちがあつたとか、あるいは御指摘のような事実があつたということと、帝石の問題とひとつ明確に区別をしていただきたいと思うのでございます。従つて私どもがただいま考えておりますのは、始関前資源庁長官にそういう落度があつた、あるいはそういう事実があつたとかいうことではないのでありまして、先ほど御指摘のありました補助金を出しました機械の処分の問題、それから資源庁が出しました勧告に対してどうこうの問題、それからただいま御指摘のありますように、ただいま検察庁で調べておること等について、どういう処置をとるべきかということをただいま研究いたしておるのでございまして、まだどういう処置をとるというところまでは行つておりませんので、やはり私どもといたしましては、できるだけ事実を明らかにいたしまして、解明すべき事情は全部解明をいたしまして、誤りない処置をとりたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  73. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 解明すべきことを解明するのはあたりまえですが、しかしそれだけ落度があつたことはわかつておる。ともかく補助金の対象になつている機械を法に違反して処分したということは厳然たる事実です。これだけをもつてしても、これは当然責任をとつてもらわなければならぬ事件です。こういうことをもうすでに次官であるあなた自体がおつしやつておるのですから、これは相手にしても、何らかの処置に出られるということは常識の命ずるところでありますが、その常識に対して従う行為をとられるのか、従わない行為をとられるのか。これについては研究するとかなんとかいうことでは答弁されない問題だろうと思いますが、いかがですか。
  74. 本間俊一

    ○本間政府委員 御承知でもあろうかと思うのでございますが、国の方で補助金を出しましたような機械と同じような機械は帝石にはたくさんあるのであります。そこでその詳細な報告を求めておるのでございますが、原簿が押収せられておるというような関係がありまして、それから一々機械につきまして照合をしておりますので、まだ正確な資料が整つておらないわけであります。従つて補助金を出しました機械について、どの機械が期間を経過しない以前において帝石が処分したというような事実は、まだ明確になつておらないのでございます。従いまして私の方といたしましては、その点も十分にひとつ慎重に調べまして、そうして処置をとつて行きたい、こういうつもりでございます。
  75. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もしそういう芽反した事実がありとすれば、どういう処置をしますか。
  76. 本間俊一

    ○本間政府委員 調査の結果、そういう事実がはつきりいたしますならば、その明確になりました事実に対しては、適当な処置をとることになるだろうと思います。
  77. 塚田十一郎

    塚田委員長 中曽根委員に申し上げますが、管財局長も見えておりますので、どうか本筋に従つて御質問願います。
  78. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これはもう少しで切り上げます。適当な処置とおつしやいましたけれども——適当な処置というのは、要するに責任を問うという処置に考えてさしつかえないですか。
  79. 本間俊一

    ○本間政府委員 ただいまいろいろと研究しておるのでありますが、どういう形の処置に相なりますか、ただいまはつきり申すところまでは進んでおらないことを御了承願います。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは了承できないのでございまして、要するに何らかの形において、監督官庁としての責任を全うするような、相手方に対して何らかの形において責任をとらせるような処置をとるというのが常識であります。そういう程度のことすらなぜ言えないのでありますか。それはやらぬということに反対に解釈されて、かえつて疑惑を生む原因になりますが、いかがでありますか。
  81. 本間俊一

    ○本間政府委員 それは先ほどもお答えを申し上げました通り、十分監督官庁としての責任を尊重いたしまして、適当な処置をするということに御了承願いたいと思います。     〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕
  82. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これで私はこの問題については質問をとどめますが、検察庁の捜査の原因は、その事実があつたということで捜査をしておる。小林検事がやつたのはそういう事実に基いてやつているとわれわれは聞いております。従つてこれはもう厳然たる事実でありますので、通産省は必ずこれをやるだろうと確信して、この問題は一応これで離れます。  次に伺いますが、賠償施設の処理について、いわゆる賠償五人委員会というものができておる。この賠償五人委員会の性格、権限及び現在の仕事の進行状況、この点について承りたいと思います。
  83. 本間俊一

    ○本間政府委員 御指摘の賠償施設に関しまする五人委員会は、公式の機関ではないのでございまして、通産大臣の私的な諮問機関である、こういうふうに御理解を賜わりたいと思います。そうして通産大臣が今五人委員会意見を伺つておりますのは、播磨の旧陸軍造兵廠と、それから四日市の旧海軍燃料廠、この二件でございます。播磨の旧陸軍造兵廠の問題は、御承知のように決定をいたしましたので、ただいまやつておりますのは四日市の旧海軍燃料廠の処理の問題について、五人委員会の方でいろいろな御審議を煩わしておるのでありますが、進行状況は、大体最初播磨の方を主としてやりましたので、播磨の方が終りましてから四日市の方に力を注いでおられるような状況でございます。委員の皆さんもぜひ一度現状を見たいということで、過般現地を視察されまして、その第一回の委員会を本日の二時から開くことになつております。
  84. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今問題になつておる四日布の問題はこれは、単に四日市の施設だけの問題ではなくて、現在日本は石油に関する国際的な独占資本の角逐の渦中にある。しかも先ほど申し上げましたように、太平洋戦争は石油から始まつて石油に終つた。従つてこの石油の経営その他について、日本が自主権を持つか持たぬかということは、今後の日本の防衛力の造成についてきわめて根幹的な問題であるわけです。そういう意味で私は外資導入の問題とからんでこの問題を質問いたしておるのでありますが、この四日市の問題につきまして五人委員会は通産大臣に答申をするけれども、それは私的な委員会であるから何ら権威はない。それをとるかとらぬかは、通産大臣の個人の自由意思で決定さるべきものであつて、別に拘束も何もされない、そういうものであると解釈してさしつかえありませんですか。
  85. 本間俊一

    ○本間政府委員 その通りでございます。ただ委員を御委嘱をいたしまして御審議を願つておるのでございますから、建前はただいま中曽根委員の御指摘の通りでありますが、答申いたしました意見については、十分尊重されることになるだろうと思つております。
  86. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 尊重するという言葉が今出ましたけれども、尊重するかしないかということは、これも通産大臣の個人の自由意思できまることで、これは客観的にそう判断されているだけですから、要するにこの五人委員会というものは何ら法規上の存在でもないし、拘束すべき理由もない。ただ道義的に通産大臣が拘束されるにすぎない、こういうふうに解釈してさしつかえないのですか。
  87. 本間俊一

    ○本間政府委員 その通りでございます。
  88. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば最終決定権は、一体通産省にあるものか、大蔵省にあるものか。たとえばこの四日市の旧二燃というものはおそらく百万キロリッター以上の消化能力がある。これは日本の石油工業、あるいは今後の防衛力の造成の基幹になるものであります。これについて私は外資または日本の防衛力の問題に一つの考えを持つておるが、これはあとでお尋ねいたします。しかしここでお尋ねいたしたいのは、一体通産省と大蔵省はどちらが決定権を持つておるか。最後的にだれがうんと言つた場合にきまるのか、この点はいかがでありますか。
  89. 本間俊一

    ○本間政府委員 御承知のように国有財産でありますので、この国有財産の処分権は大蔵大臣にあるわけでございます。今通産省で取扱つておりますのは、四日市の旧海軍燃料廠をどういうふうにどういうところでやらした方が、日本産業のために、日本経済のためにいいかという点で検討いたしておるわけでございます。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういたしますと、たとえば四日市の旧二燃の施設をどこにやらせる、あるいはどういう企業形態でやらせる、そういうことは通産省できめて、その持つて来たものに対しては、大蔵省は無条件で判こを押して払い下げるということになるのか、その点はいかがですか。
  91. 本間俊一

    ○本間政府委員 大蔵省が無条件ということになりますかどうか、これは大蔵大臣の権限でございますから、私から申し上げることはいかがかと思うのでございますが、播磨の場合の実例で申し上げますと、大体通産省の意見に大蔵省の方も同意をせられまして、司令部の方からもその通りに承認されたように思つております。
  92. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 内田管財局長がお見えですから、ここで大蔵省側の見解を承りたい。
  93. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 通産省の権限と大蔵省の権限の問題でありますが、ただいま本間通産次官から御説明があつた通りでありまして、財産の処分権といたしましては、大蔵省設置法あるいは国有財産法、あるいは旧軍用財権の処分の特例に関する法律、こういうものにのつとりまして大蔵省が財産処分をいたしますけれども、処分の際の方向づけにつきましては、御承知のように大蔵省、通産あるいは安本、農林といつたような関係機関との協議会がございまして、その協議会でまとまりましたところによりまして、大蔵省が処分をする。そこで大蔵省が処分をする際の大蔵省の判断でありますけれども、大蔵省は主として財務の点から判断いたしております。従いまして通産省なり運輸省からレコメンデーションが出まして、協議会が取上げられましたところの方針等につきまして、大蔵省がその買受人の資力、信用あるいは支払い方法等につきまして適当と思われる限りは、大蔵省は財政官庁でありまして、帝業経済官庁ではございませんから、できるだけ産業経済官庁の意見を尊重いたしまして決定するようにいたしております。今申しましたような支払いその他の見地等において適当でないと認められます場合には、関係官庁に意見を申し述べまして、そこで修正するなり検討するなりして最後の意見をきめます。しかして賠償指定になつておるものにつきましては、最終的には司令部の管理のものでありますから、大蔵省はまとまりました意見従つて賠償庁を通して司令部に申請をいたします。その際産業経済官庁のレコメンデーシヨンはこれを添付して司令部に提出いたします。司令部は大蔵省の見解とレコメンデーシヨンをつけた産業経済官庁の意見内容とを審査して承認を与える、かような仕組みになつております。
  94. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで承りますが、現在は司令部に権限がある。ところが平和条約の批准が成立いたしまして発効する日も近いといわれる。そうするとその権限は日本に返されると思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  95. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 中曽根さんのお尋ねの通りでありまして、平和条約の発効と同時に、賠償指定に関する司令部の管理権というものはとれると思います。従いまして最終処分権が政府の権限に復活いたします。
  96. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと四日市の二燃の場合は、日本が独立して管理権を回復したあとに処置されるものか、あるいはその以前に司令部の許可を得てやるものか、政府方針はいかがでございましようか。
  97. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 諸般の情勢から私どもが承知いたしておりますところによりますと、四月の中旬くらいに平和条約が発効する。従つてそれを契機に賠償管理というものはとれるものと了解しております。しかして四日市の旧海軍燃料廠の処分の方向につきましては、おそらく通産省から関係各省の委員会に通産省の意見として持ち出されますのは、条約発効後、従つて財産の完全な管理権が日本にもどつたあとになると思います。
  98. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その点に関して本間通産次官のお答えを承りたいと思いますが、現在御存じのように五人委員の中で石坂泰三氏はインドに行つておられる。石坂氏は御存じのように日本の財界の泰斗であり、また高邁な識見を持つておられる方でありますが、この方がおいでにならないうちに五人委員会が四人委員会になりますが、その答申といいますか、諮問に応ずる意見をおきめになるつもりか、あるいは帰りを待つておきめになるつもりか、この点は道義上の問題として政府はいかにお考えになりますか。
  99. 本間俊一

    ○本間政府委員 お答えいたします。御指摘のように石坂委員の帰られるのを待つて決定されますか、あるいはまたどういう処置をとられますか、これはもつぱら四人の委員の方々のお話合いで決定をなさることでありますので、私がただいまどうなるということを明確にお答えはできないのでございますが、委員会の進行状態から見まして、私の勘から申し上げますと、やはり相当期間かかるのではないかというような感じがいたしております。
  100. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の御発言の含みは、大体道義上は石坂氏が帰るのを待つてきめるので時間がかかる、こういうように私は解釈いたします。そういうふうに解釈して大体さしつかえないですか、いかがですか。
  101. 本間俊一

    ○本間政府委員 石坂委員が帰られるまで待たれますかどうなりますか、そこの点はただいまちよつと明確に申し上げることが困難でございますが、御承知のように四日市の関係は、なかなかめんどうになつておりますので、やはり相当時間がかかるのではないかというふうな感じがいたしております。
  102. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 通産省としては四人が答申して来た場合にそれをそのまま受けますか、それともそういうような答申をなさる前に、石坂さんの帰るのをなるたけ待つてほしいという意思表示をなさいますか、いかがですか。
  103. 本間俊一

    ○本間政府委員 石坂さんが帰られるまで待たれるように、役所の方から積極的に話合いをいたしますかどうか、まだ決定はいたしておりませんが、会議の進行状態に応じて考えたいと思います。しかしこの四人の委員の方々は、先ほども申し上げましたように、きわめてなごやかな空気で、遠慮なしにいろいろな話合いを、いたしておりますので、ただいま御指摘のような問題につきましても、十分考えた上で結論を出されるのではないか、こういうふうに思います。そこで五人委員会の決定いたしました結論を、そのままただちに通産大臣がのむかどうかという問題でございますが、これももう少し会議の進行状況を見ませんと、ただいま明確にお答えすることはちよつと困難であろうと思います。
  104. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この辺が一番デリケートなところでありまして、権限からいえば通産大臣は個人的な委員会に諮問したのですから、これに応ずる義務はない。しかしあれだけの財界の大物を五人もそろえて、しかもああいう大きな委員会をつくつてつておられるのでありますから、大物を呼び出した理由からすれば、当然意見は尊重されるだろうと考える。またその中でも一番大物といわれる石坂氏が不在なのでありますから、少くとも道義上は——そう一年も二年も帰つて来ないというのではない。十月には帰るといつておるのでありますから、その御意見も尊重すると思うのでありますが、この点についてもう一回重ねて政府の大体の腹をお示し願いたいと思います。
  105. 本間俊一

    ○本間政府委員 委員会委員の各位も世間の注目を浴びておる問題でありますので、非常に慎重な取扱いをいたしております。ただいま御指摘になりましたような点も、十分尊重せられることと私は想像いたすのでございます。従いまして五人委員会の方々が結論を出されるまでには、通産大臣の意見と申しますか、あるいはまた財務当局考えと申しますか、その他民間の意見などを十分に調査をいたしまして、そうして慎重な結論を下されると思います。どうも今から五人委員会の決定を予想することはできませんけれども、そう食い違つた意見は出されないだろうと思います。その辺は非常に老練な経験の富んだ方々でございますから、御心配のような事態はあるいは起らないのではないか、私はこういうふうに了承しておるわけであります。
  106. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは話を進めたいと思います。この四日市の旧第二梅圃燃料廠の払下げについては、大蔵省はすでに調査をしておられると思いますが、大蔵省ではすでに成立した方式によれば一体幾らくらいに評価して払い下げられるのか、払下げ価格の基準とともにここでお示しを願いたいと思います。
  107. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 はなはだ遺憾でありますけれども、私今それを申し上げる材料を持つておりません。また資料を探しましても、現在精密な評価はまだできておらないと思います。賠償指定の国有財産につきましては、今から二、三年前に、占領軍の命令によりまして一九三九年、つまり太平洋戦争突入前の時価で評価を命ぜられまして、非常に大規模な調査をいたしたものがおそらく最初のものであろうと思います。つまり三九年までに物価の状況を引きもとして評価をしたものがあります。戦後の状態において、たとえば空襲等によつて破壊されたものは、破壊された現状のままで価格のベースだけを三九年までさかのぼらしたものであります。従つて単純に評価いたレます場合には、指定されておる機械の種類あるいは土地、建物等、種目ごとにその後の物価倍率——三九年から今日までの物価倍率をそれにかけて集合すれば、単純には評価ができることになつております。さような単純な評価を基礎といたしまして今後精密な調査を、また場合によりましては大蔵省はかりではなく、民間の専門家を加えました評価委員をお願いして坪価せられるようなことになるだろうと考えております。
  108. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これはしかし非常に重要な問題でありまして、現在旧第二海軍燃料廠は利権の対象になつておる。あらゆる利権屋が砂糖にありが寄つているように寄つている。しかもその基準は何であるかといえば、払下げ価格はGHQが示した基準によつてやるから安いだろう、従つて十分ペイする、一億や一億の運動費を使つても安い、これが現在の常識なのであります。その証拠にはこの「経済往来」には白洲氏の内幕と称してでがでか書き立てておる。こういう記事が最近非常に出ております。これはGHQの算定基準から来ておる。そのGHQの算定基準を中心にしてみると、坪二百五十円に地価になつておる。この点は、管財局長責任者でありますが、どういうふうにお考えになりますか。この点に間違いはないはずですが、もし何ならば電話をかけて聞いてもらいたい。これはすでに大蔵省はやつておるはずです。
  109. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 坪二百五十円ということを私はつまびらかにいたしませんけれども、先ほど申し上げましたように、二、三年前に調査したその基礎に倍率をかけて一定基準を出す。しかし今あなたの仰せのように、GHQの評価基準であるから、非常に安いだろうということで、これが利権屋の対象になつておるということではなしに、私が今まで仕事を取扱つて来ておるところからの観測をもつてすれば、従来賠償指定の施設というものは、政府が売ることも貸すこともできない、もつばら一時使用しかできないことになつておりました。これは賠償指定であるからいつ取上げるかわからない、また改良費等を加えても、取上げる場合にはその補償もしないということを条件にいたしておりますので、一時使用料というものは、民間の貸付料、あるいはそれを買つた場合の資本負担等に比へれば、安いものが多かろうと考えます。そこで資本負担を要せずして、今までの賠償指定の状況においては企業の主体となり得るということで、当分の間利用が許されたので、経済復興の機運に相応じまして、相当賠償施設等に向つて来たわけであります。しかし先ほどあなたのお尋ねのように、賠償指定は平和条約の発効と同時に解除をされますから、今度は一時使用ということではありませんで、国が必ず売るか貸すかということになります。しかりしこうして、売るか貸すかと申しますと、私の考え、また大蔵大臣の考えもそうでありますが、国が旧軍用財産等の管理にたくさんの定員を持つて、管理予算を毎年細んでやるということは適当でない。なるべく売り払つて、国の官吏の数を減らし、また管理経費を軽減するということが適当かと考えますので、原則としては売り払い、やむを得ざる場合には一時貸すこともあるかもしれませんが、それはむしろ例外的に考えて行つた方がよかろうと私は考えております。従いまして、今までのような、賠償指定機械が非常に安い対価で一時使用ができる、それゆえに利権の対象になつたということは、今後趣がかわつて参ると存じます。
  110. 山手滿男

    山手委員 関連して。今の問題ですが、今の御答弁は、通産委員会で通権大臣以下が答弁をしておることと、まつたく食い違つた逆の方向を管財局長は御説明になつておる。私はその問題について、貸しくだされという事態が将来起きる場合が考えられるのだが、貸すのか、売るのかということを質問いたしました。本間次官も同席されておつたと思いますが、これは原則として払い下げない、これは貸与だということをはつきり通産大臣は言つておる。そうすると五人委員会の結論を出して、先般播磨の工廠の問題を決定されておるのでありますが、その払下げ価格なんかも、ここで大いに議論をしなければいかぬ事態になつて来る。ところがあの当時通産委員会で私自身が言つたときに、これは貸与でやつて、将来経済状態がおちついたときに云々というふうな御答弁であつたのでありますが、大蔵省と通産省は全然考えが逆になつておりますが、両者の意見を述べていただきたいと思います。
  111. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 私は、処分する、払い下げるということが、今の管理要員あるいは経費の点から申しても適当であるから、それを原則にしたい、しかし例外の場合もあるということをただいま申しております。現在通産省から大蔵省に対してリコメンデーシヨンがありました先般の播磨製造所につきましては、これは払い下げるという前提のもとに一時使用をさせる、従つて平和条約が発効して賠償管理がとれましたならば、ただちに払い下げるということで相手方も了承いたしております。ただ払い下げるといいましても、これはいかなる計算をいたしましても、旧軍施設等は大きな金額になるものが多いと思います。そこで国会にもこのたび提案をしておるのでありますが、国有財産特別措置法というものをつくりまして、政府が政令をもつて指定する重要産業につきましては、最長十年までの年賦分納を認めるということを規定いたしております。従つて、もちろんこれは担保を提供し、その間の利息を政府に払わなければならぬのでありますが、最長十年年賦分納の方式をとる、しかし所有権は相手に移つて政府の管理経費が減るということになつております。また同じ国有財産特別措置法では、特殊の場合——これは直接これに関連はありませんが、貸すのでもない、一時使用でもない、むしろ政府がこれを利用することが考えられるものにつきましては、管理委託という形で民間の経費で管理を委託する、委託費用は民間持ちである、しかしその間その一部を使用する場合には別に使用料をとらないという方式も考えられております。従つて売ることを原則としながら、その売り払う代金は年賦分納する。また事情によつては一時貸付も法律は禁止しておりませんので、貸し付ける場合もあろうかと考えております。
  112. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の考えは大蔵省らしい役人の考えでありまして、会計官吏的な考え方であります。それは大蔵省としては当然の考え方であるだろうと私は思います。しかし通産大臣が通産委員会答弁したのは、これは産業政策を持つている通産省の考え方でありますから、私はそれを両方ミツクスした総合的な考え方を採用しなければならぬと思うが、この点について先ほど山手君が指摘したように、通産大臣の考えと大分違つているようです。内田さんは違つていないというふうにあとでつけ加えた方を誇張して言われたけれども、これは売り払えというのが大蔵省の原則になつている。それは財政負担を軽くする云々ということから見ても大蔵省としては当然でしよう。しかしそれをまとめるのは閣議であり、政府方針であるから、通産省としては国策的見地から、自由売却というようなことは、当然適当な考慮をもつて修正するだろうと思いますが、この点は明確に通産次官から承りたい。
  113. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 この際、山手君の質問にも触れて答弁を願います。
  114. 本間俊一

    ○本間政府委員 大臣が通産委員会で申し上げましたのは、処分権につきましては大蔵大臣が持つておる。そこで通産大臣がやりますのは、どういう形でどういう人にやらせた方が、日本産業に一番いいかという判断をするのであるという建前で、たしかお話をいたしたと思つております。従いまして、播磨の問題につきましても、五人委員会の審議の状況を見ておりますと、これは御承知でもございましようが、ただいまはまだ総司令部の管理下にありますので、使用を許してもらいたいという実は願書になつておるのでありますが、委員会では、いずれ講和が発効いたしまして独立をするということになれば、当然大蔵省の方としては払下げをするかもしれぬ、そうした場合には相当な価格になるであろう。それらの価格を計上いたします場合に、どの程度に取込んで来るか、またどの程度に計算をしておるかという質問も始終出ておるわけでございますから、通産大臣は、ただいまの状況のもとにおきましては、使用を許可してほしいという建前でやつておるという趣旨でお答えをしておつたと思います。あるいはその間の事情につきまして、多少誤解があつたかもしれませんが、私どもはさように承知しております。(「速記を見たらわかります。全然そうじやない」と呼ぶ者あり)ただ場所によりましては、ただいま大蔵省の方からお話もありましたように、国の所有として保存をしておきたいというような場合もあろうかと思いますが、そういう場合はまた別であろうかと思うのでございます。従いまして施設によりましては、通産省の方でこうしてほしいとか、ああしてほしいというような意見を、大蔵省の方に相談される場合はあろうかと思いますけれども、原則としては、処分権につきましては大蔵大臣の権限でございますから、繰返して申し上げますが、処分の最終決定権と申しますか、そういうようなものは大蔵大臣が持つておる、こういうふうに御了承を願います。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その問題はあとで承りますが、先ほど私がお聞きしている評価の問題です。播磨工廠についてはすでに一時使用ということになつているが、独立して解除になつたら売却するというその場合の評価の基準は、もうすでにできているのか、あるいは今までやつたものに新しい修正を加えて時価にふさわしいものにするのか、それと並んでこの四日市の問題もどういう基準でやるのか、その点を承りたいと思います。
  116. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 播磨製造所につきましては、ただいまの処分方法は、賠償管理でありますため一時使用ということでありますが、先ほども申しましたように、賠償管理がとれると同時に払下げということを前提として認可することになりますので、先般来評価の方も一応済ましました。そのやり方は、先ほども申しましたように、二、三年前にやりました評価にいろいろな修正を加えまして、同じ管理の手で評価し得る最終の方法で一応の評価価格をすでに出しまして、相手方に通報いたしております。もつともこれはいわば仮価格でありまして、今後さらに要すれば民間のベテランを評価委員というような形で依嘱もいたしまして、現地につきましてさらにこの価格を再修正することはある、こういう含みを持たしたものではありますけれども、さようでございます。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこに重大な問題がある。そこに利権屋が集合している理由がある。第一、私が最初申し上げたこと、すなわち大蔵省が従来やつている基準、これで播磨工廠をやつたわけで、同じ基準で第二燃料廠をやつた場合が幾らになるかというと、一時使用及び未使用地を含めて大体二十三億円となる、これは大蔵省の基準です。その中で今東海硫安その他に使われている残りの未使用地を計算すると十六億円になる。ところがこれを現在の時価に修正すると幾らになるかというと、大体七百六十億円になる。それを未使用地だけにしただけで五百三十二億円になる。片方では五百三十二億円という時価に達するものを大蔵省の従来の算定方式でやるというと十六億円で済む。こういうような基準でかりに払い下げられれば、現在の石油会社からすれば莫大な利潤が生れるわけです。だから外国石油資本がこれに目をつけて、あれをとるならば外資を出してやろうといういざないを持つて来る。それにあおられて、やれ三菱石油だ、あるいは日本鉱業だ、あるいは昭和石油だ、あるいはいろいろな会社が出ているわけなのです。ここにまた政治家や政党が暗躍して、ここにあるような騒騒しい記事になつているわけです。問題はこの評価基準からも来ておる。従つてこの評価基準というものを現在の大蔵省の考えや基準でやつたならば、重大な事態がここに起ると私は思う。私が先ほどあなたに坪幾らであるかということを聞いたのは、そういうことを調べているからです。坪二百五十円です。ところがあのときどのくらいの値段であれをつくつたかというと——私も昔海軍に関係しておつたので、実際を調べてみたら実は一坪三円五十銭、宅地は五円、立ちのき料は坪六十五円から七十円。そうして小学校を一つ移転させ、七十戸の二部落を移転させ、墓地を二箇所引越しをさせておる。これを時価に直すと、完成するまでには大体一万円くらいにはなつておる。たとえばあそこは岸壁をつくつたり、基礎工事をやつたり、あらゆるものを含めて坪五十円にはなつておる。それを時価——あのときから比べて二百倍としてやると坪一万円にはなつておる。坪一万円の時価に換算さるべきものが、政府の計算では坪二百五十円になつている。ここにすでにそれだけの差額が出て来ているわけである。岸壁地帯のみで計算するならば、あのときだけですらすでに坪二千円かかつている。一万トンのタンカーがあそこに横づけできる。ところが岸壁地帯やあるいは護岸、あるいは浚渫、水道、こういう基礎工事はその経費の中へ算入していない。それはまるもうけになつて、売り払われた会社がとることになる、従つて、五百何十億に対して十六億という基準になつている。これをこのまま放任するならば、あれだけの血税を払つて、戦前昭和十五年から十九年にかかつて国民税金をしぼつてやつたものが、民間の一営利会社に渡るとか変な形に処理されてしまつて国民全体の公平の観念からもゆゆしい事態になる。その根本は一つは評価基準でありますが、この点について大蔵省はいかに取扱うか。今までの考えをどう改めるか、ひとつ明確に承りたいと思う。
  118. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 評価の点につきましては先ほど来申し上げておる通りでありますが、一応今までやつて来た評価を、これを処分の時期がきまりましたならば、現状に照して再評価するということになると思います。それが十六億円でもないかもわからないし、五百億でもないかもわからないと思いますが、要するに、きわめて公正にして適正な評価をいたすつもりであります。従つて、これらの施設を活用したいという業者が、国のものであるために容易に安い価格で手に入ると、もし考えておられるならば、非常な見込み違いを生ずるだろうと思います。播磨製造所の、通産大臣から大蔵省へのあれによりましても、また同じ案件の五人委員会の決定におきましても、その決定の最後に、価格の点については最も適正なる評価をなすべし、という文面がついて大蔵省にまわつております。これは通産省から申されるまでもなく、大蔵省固有の仕事として、評価については十分適正厳正な評価をいたして参るつもりで、今中曽根さんがおつしやつたような、何か固定的な動かすべからざる安い評価方法があつて、今後すべてそれで行くということではございません。その点は御信頼を願いたいと思います。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば承りますが、播磨工廠を処置したときの基準よりかわつた基準でおやりになるという意味でありますか。あの基準を準用しておやりになるという意味でありますか。そのまま転用はできない、しかし大体のスタンダードはあの基準においておやりになるというのか、その点はいかがですか。
  120. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 非常にこまかい評価の方法なり、坪当りの価格、しかもそれを播磨と四日市を比較した資料は持つておりませんが、播磨の評価は最近いたしましたから、もしあまり期間の開きなくして四日市の処分の問題が起りましたならば、今回播磨の評価をいたしたときと同じ方法で四日市に対しても評価をいたすと思います。その評価の基準というものは、あなたがおつしやるように、役人式の、民間経済からかけ離れたようなばかばかしい評価の基準ではないと確信いたしております。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこが問題である。そしの播磨工廠を評価した基準を大体準用して、そうして四日市の特別事情を加えて、鉄道とか、立地条件とか、水道とか、あるいは電力とか、そういうあらゆる条件を加えて大蔵省が大体やると認められる評価でやつたのがこの十六億円の評価になつている。従つてこれが相当動いたとしても、倍としても三十二億円です。さらに動いたとしても、三倍としても五十億円です。ところが実際は、ただいま申し上げたように小学校を移転させ、三円五十銭でたんぼを売つ飛ばし、宅地を売つ飛ばし、七十戸を移転さした。しかもあれは当時の時価で三億八千万円でありましたか、国民の膏血をしぼつた財産で、あれは国家のもの国民のものであるわけなのです。それを今言つたような基準でやられたら、国民はどういうつらをすればいいかということです。その昔の播磨にやるような基準をそのままやられたのでは、国民は泣いても泣き切れぬじやないか。当然これはかえるべきである。十六億と五百何十億と比べればわかる。これは小学校の一年生に聞いたつてわかる話です。管財局長は多分おわかりになると思います。が、こういう開きを一体どうなさるつもりでありますか。
  122. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 御質問なさるのに、非常にひとりぎめをされているのじやないかという気がいたします。     〔「何を言うか」「なまいきなやつだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  123. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 静粛に願います。
  124. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 四日市の評価につきましては、土地の現状に即して——工場敷地、臨港施設等、そういう現状に応じて評価をいたす、たとえば土地については類地比準という方法が現在の評価方法であります。従つて、元これは幾らでできた、それを何倍して幾らということではないのでありまして、近隣の実例をも参考として、この辺の工場敷地は売買実例は幾ら、賃貸価格は幾らということで、現状に即した評価をいたしますので、あなたはどういう御想像をしているのか、私ははつきりわからないのですが、非常に役人的な、世間に通じないような、とんでもない安い評価、つまり言いかえると五百億と十六億の開きができるような、そういう評価の方法はいたさない所存でおります。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今のお言葉は非常な貴重な言葉でありますから、私はつつしんで承つておきます。そこであなたにお4ねいたしますが、今のお言葉には間違いないと確信しております。大蔵省が播磨工廠をやるについてやつた基準とは違う、四日市の場合は、四日市に即したまわりの時価や工事の築造費や、あるいは立地条件、こういうものを勘案して、私がただいま申し上げた基準から離れるはずはない。田は当時三円五十銭、土地が五円、立退料は坪六十五円から七十円、そうして今言つたものを動かした。少くとも坪五十円はかかつておる。しかし坪五十円というのは、岸壁とかあるいは護岸とか、浚渫とか、水道工事は入れない、できたものについての経費なんです。従つてこういう基礎工事費を入れれば——基礎工事費は一〇%はかかつているものなのだ、これを入れるとさらに莫大なものになる。それを入れない基準でやつても、二百倍として——二百倍というのは今の常識だ。そうすると坪五十円の二百倍、一万円、少くとも坪一万円にはなるわけだ。坪一万円として、あそこは何万坪あるかといえば、未使用地が約五十万坪である。東海硫安その他を入れたものになると七十万坪である。そうすると少くとも五百億円を突破するというのが常識にならなければならぬ。しかし五百億を突破するようなもので石油会社に売り渡した場合に、はたしてこれが経営の採算がとれるかどうかという問題が出て来る。ところがあなたの政府の永山官房長とか、あるいは吉田側近の白洲何がしという連中が、砂糖にくつつくありのように、ぐるぐるこれを取巻いて動いている。それは何であるかといえば安いからだ。すべてがそこから動いておる。それがなくてどうして動くはずがありますか。採算がとれてもうかるからやつているのです。しかも国際独占資本であるカルテックスとかシェルとか、それらに動かされてやつている。あれをとりさえすれば外資を入れられるということからやつている。その事実からいつても、単価が安くなるということは常識で判断できる。さもなければ新聞も雑誌も騒ぎはしない。従つて、あなたは私に答えたことを必ず守るということを確信して——しかしこの点は私は大蔵大臣にも聞きますが、確信して単価の問題は一応やめます、あなたは食言なさらぬということを私は確信しますから。一応のあなたの釈明があるなら聞きましよう。
  126. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 四日市の転用先がどこにきまりましても、私はあれを特定の安い価格、特定価格というものをきめるつもりはありません。先ほどから申しておりますように、類地比準その他、今日の経済事情から見まして、最も適当であるという価格だけを発見するために努力いたしたいと思います。しかもこれをやるにつきましては、私ども役人だけの手でやらないで、民間のベテラン、専門家の応援も得まして、世間で納得の行くようにいたして行きたいと考えております。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 当然こういう評価委員会は、法律上の基準を持つた成規のものでなければならぬと思う。そういうようなものでおやりになるのか、あるいは先ほどの五人委員会みたいな、いいかげんな委員会でやるのか、その点はいかがです。公明を期するならば、必ず法律の基準を持つた成規の手続を経てやらなければならぬ、しかも役人だけではなくて、成規の任命した者によつて公人監視のもとにやらなければならぬ、いかがです。
  128. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 公人監視のうちで評価はいたしますけれども、今までの仕組みですと、そのために官制を持つた評価委員会というものはございません。行政の運用として民間の専門家の応援を願つて、衆人監視の中で適正価格を発見する、こういうことをいたそうと考えております。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 応援を願つてという言葉が非常に不可解です。応援を願つてというなら呼ぶ必要はない、決定権は主体者にある。そこで委員会が決定した通りに大蔵省はきめる。ですから離れたものであればまだいい。しかも応援を願う入れる人間が問題だ。白洲何がしというものを入れたらとんでもない。そこでその人間をどういうふうにして入れるかということは、公人監視の中で公明な方法によつてやらなければいけない、こういう点はいかがですか。
  130. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 私の申した応援を願うというのは、ただいまあなたの御質問のような趣旨ではないのです。工場地帯でありますから、工場財団としてたとえば興業銀行、不動産評価等につきまして勧銀に専門家がいるといたしますと、勧銀のその専門家の応援を得る、こういう趣旨でありまして、決して特定の専門知識を持たない利害関係者の応援を得るという趣旨ではありません。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは時間がありませんから進めます。本間通産次官に承りますが、四日市の旧海軍第二燃料廠を石油の業者に渡した場合——今十一ないし十二の業者が申請を出しておるようでありますが、これを渡した場合は、日本の石油の需給関係に相当な影響が出て来る、特に化学工業を興すといつておるけれども、今一挙にそういうところまで行つたら生産過剰が起る、化学工業については必ず起る、その辺の見通しはいかがですか。それから業界に対する影響はどういうふうになるか、その見通しをひとつ承りたい。
  132. 本間俊一

    ○本間政府委員 お答えいたします。ただいま四日市の旧海軍燃料廠をどういう計画で使いたいかというような計画書を一々検討いたしておるのでございますが、相当いたんでおりますので、すぐには製品が出ない、二年目、三年目あるいは四年目ぐらいに大体製品が出るように考えております。     〔「半年で業者は出すといつておる」、「それはほんまかい」と呼ぶ者あり、笑声〕
  133. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 私語を禁じます。
  134. 本間俊一

    ○本間政府委員 そこで大体の石油の需給の関係を申しますと、三十七年度で申しますと、これは安本の推計でございますが、総体で五百九十万トンぐらいの需要があるだろう、それに対して生産は四百三十三万トンぐらいだろう、こういう大体安本の方で計算をいたしております。そこで今既設の製油会社でいろいろな設備を拡張いたしておりますが、この設備が完成いたしますと、大体五百三十万トンぐらいは生産が行くであろう、こういう大体の推定でありますが、ただいまのところはそういうふうに見ておるわけでございます。従つて将来の需要の増加をどういうふうに押えるか、それからまた予備隊関係の油の需要量をどういうふうに押えるかというような点では未確定な問題がございますけれども、油の総体から申しますと、やはり二割内外は生産が足りないのじやないか、こういうような大体私どもは見通しを持つております。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 われわれが調べた範囲では、四日市をある石油会社に渡した場合、たとえば日鉱であるとか三石であるとか、あるいは日石であるとか、とにかく申請しているものに渡した場合、大体四日市の能力というものは、太平洋沿岸にある石油精製工場の現在の能力の二二%ないし四四%といわれておる。従つてそれを手に入れたものが日本の石油業界に君臨するという現状にある。従つて石油業者は君臨せんがために、あらゆる手段を使つて今政治家を買収せんとしておる。またそれにおどつているブローカーがいるわけであります。そこでそういうような事態が起きた場合に、日本の石油業界に非常な摩擦と波瀾が起きて来るわけです。こういう問題を通産省はいかにお考えになるか、特定の業者にそういうふうに渡して君臨させてよろしいのか、あるいは何らか調整をやるのか、これは今後の石油行政にとつても看大な問題でありますが、通産次官の所見いかん。
  136. 本間俊一

    ○本間政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、油の需給関係から申しますと、ただいまの原油精製、それからただいま拡張いたしております設備では、総量から申しますと足りない、こういう見解を私どもはとつておるのであります。その中で問題のガソリンの関係でございますが、中曽根委員はこの点を主として重点を置かれて御質疑になつておるのじやないかと思うのであります。ガソリンだけから見ますと、大体ただいまの設備拡張が完了いたしますれば、ほぼ国内の需要を満たす、多少は少いかもしれませんが、ほぼ満たすのじやないか。そこで御指摘のように四日市の旧海軍燃料廠は相当な設備をいたしますれば、相当な精油能力が出るわけでございますから、これをフルに活動させるということになれば、ただいま御指摘のような問題も当然考慮に入れまして、その処置を決定をいたさなければならぬのじやないか。こういうふうなことに私どもは考えております。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 現在石油は国際独占資本の掌中にある。これは共産党ならずとも、われわれも認めておる。そしてその競争は何になつておるかというと、生産地で精製するということではない。消費地に工場をつくつて、そのマーケットを獲得するということになつておる。だからこそ、日本における太平洋沿岸の精製工場を、外国のカルテックスにしても、シェルにしても、スタンダードにしても、みんな手に入れようとして、日本の石油会社を手先として使つておるわけであります。そういう意味で、この四日市の能力というものは、非常に評価されているわけです。少くとも旧海軍あるいは陸軍の持つておつた燃料廠の中では大船と四日市、あるいは陸軍の泊でありましたか、それ以外にない。その中で最大なものは四日市であります。しかも能力からいつても、日本で最大といつていいくらいの能力がある。従つてこれを手に入れるということになれば、外国の石油資本はあらゆる力を振つて応援するでしよう。あるいはそれが能力を発揮するということになれば、マーケットを獲得するという計画は必ず成る。なぜなれば、精製品を返す条件でなければ向うは受付けないのですから、そうなると相当フルに稼働するというように考えられるので、現に業者は半年から一年くらいで、今蒸溜のかまが三つぐらいでしたかあるはずですが、そいつを動かしてみせると言つておる。従つて政府が楽観して考えておるような、そんな甘い考えを、外国の石油資本は持つておるはずがない。従つてもし政府がある一社に渡すということになれば、当然日本の石油業者に撹乱が起るし、それによつて日本に相当な影響が起ると思うのですが、この点は現実的にいかがであるか。
  138. 本間俊一

    ○本間政府委員 ただいま四日市の旧燃料廠を使用したいという、御指摘のような外国の会社と提携をいたしております計画でも、提携をいたします外国の会社の考え方は、実は非常にまちまちになつておりまして、必ずしもこれは一致いたしておりません。率直に申し上げますと、一方の方は、大体今の日本の精油設備で、日本のガソリンはまかなえるのじやないか。従つてあまり精油設備を拡張したくないという考えから、御指摘のような四日市の海軍燃料廠をとりたいというふうに考えておるようなところもあるようでありますし、それからただいまの日本の設備だけでは、将来の日本の需要増に対して、どうしても不足をする、そこであの設備を動かしても十分行ける、こういう観点からぜひとも使用したいという希望を申し出ているところもあります。というようなぐあいで、会社会社によりまして、実は動機と申しますか、計画というようなものも、非常に違つております。その点だけは、ひとつ御了承を賜わりたいと思うのでございますが、御指摘のありましたように、あそこが設備が完了いたしまして、そうして動き出すということになれば、石油の販売量と申しますか、競争は相当激烈になる、こういうふうに私どもも見ております。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで通産次官にお伺いいたしますが、私は外国の石油資本に対してきわめて敏感な男である。そこで現在日本の石油会社が外資をどれくらい入れているかというと、払込み資本に対する比率を見ると、日石がカルナツクスとの関係で五〇%、興亜が五〇%、東亜がスタンダードと五五%、三菱がタイドウオーターと五〇%、昭和がシ工ルと一五%、平均して二七三%の外資を入れておる。そこで問題になるのは、この四日市という非常に貴重な、しかも莫大な量を生産し得る能力のある、しかも国民の血税をもつて戦争前つくつたこの貴重な国家の財産を、もし商業的見地からのみこれを特定業者に払い下げるということになると、ことによると外資の過剰導入という関係になつて、経営の自主権が失われるということがある。これはきわめて重大な問題であります。先ほども申し上げましたように、太平洋戦争は石油から始まつて石油に終つておる。しかも客観情勢は、去年から今年にかけてぐつとかわつてつて日本の防衛力漸増計画なるものすら吉田内閣は持つておる。そうすると石油に対する自主性や、石油に対する管理権なき政府は、防衛計画ありとは言えない、防衛力ありとは言えない、これを押えられ、国際独占資本の商業的見地から操作されたら、日本はぐうの音も出ないということになる、従つてわれわれが真剣に日本の国防を考え、防衛力漸増を考えるならば、基礎資源たる石油に対する手を、政府は今から打つておかなければならぬ。そういう観点からしても、あるいは戦争前に国民の血税をしぼつて、あれだけの労苦をかけてやつた国民の財産を、特定の業者に払い下げるというがごときことは、これは慎重に慎まなければならぬところであります。公平の原則からしてそうです。そういう二つの観点から、この四日市の問題は処理しなければならないと思うのでありますが、この点について通産省はいかに考えておりますか。
  140. 本間俊一

    ○本間政府委員 中曽根委員が御指摘になりましたような点も、委員の間ではやはりお話が出ております。従つてただいま御指摘になりましたような点も十分に考慮いたしまして、どういうところでどういう人にどういうふうにやらせる方が一番いいかということを、決定をするわけでありますが、御質問のような点も十分尊重いたしまして、十分考慮を払いまして、そうして最後的に決定をする、こういうことになるだろうと思います。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 通産省は私が今言つたことを尊重してやると言われました。これに間違いありませんですな。
  142. 本間俊一

    ○本間政府委員 ただいま中曽根委員が指摘せられたことも、私も非常に考慮いたしております。また委員の間でもそういう話が出ておるのでありますが、中曽根委員の御指摘になりましたような点も十分考慮いたしまして、そうして最もいいところへ決定をしたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで具体的な問題を申し上げますが、伝えられるところによると、現在は白洲氏と永山官房長の猛運動によつて、三菱石油に大体傾いているといううわさがある。しかも三菱石油はどういう構想でやつておるかというと、現在三菱石油の精油能力が非常に少い。そこでシエルでありましたかと提携いたしまして、あの四日市をとりさえすれば無限に供給して資本も貸してやる。それを当てにして四日市をとつたらシエルとさらに提携して新しい会社をつくつて、それであれを運営する構想であると巷間伝えられておる。そういう向きの申請書も出ておると伝えられておる。そうなると、三菱自体に五〇%の外資が入つておる。それからできる新設会社は三菱が半分投資するのですから、結局半分々々ずつ投資をしても七五%の外資が入つて来る。そうすると、七五%の外資によつて動かされる四日市の今度の会社というものは、日本政府の自由にはならぬ。これは戦争前日本の石油会社が苦しめられたところであり、また国防を考える者の今まで一番苦慮したところであります。こういうことが言われておるのでありますが、この外資の過剰導入という点については、絶対そのような、つくとも五〇%を越えるようなことがないようにやるかどうか、これをまず第一に承りたい。
  144. 本間俊一

    ○本間政府委員 外資の過剰導入の問題でありますが、これは御指摘のように五〇%を越えるというようなことのないように十分善処いたしたいと思います。ただ多少誤解があるかと思うのでありますが、四日市を三菱の方へ払下げをするように話合いが、何と申しますか大分進行しているようなお話でございました。しかし、四人委員の方方も、私はできるだけ委員会に出席をいたしておるのでございますが、やつと現地を見たばかりでございまして、まだ実際決定的な方向は出ておりません。従つて御指摘のような点も十分に考慮いたしまして、そして最後の案を出すということになりましようが、ただいまのところは、まだどつちの方になりますか、これはまつたく何もわからない、こう申し上げた方が実際に一番符合いたしておると考えます。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この問題は日本の独立に関する基本的な問題であり、かつまた日本の防衛力漸増計画の根幹に触れる問題であります。しかもここではつきり申し上げますが、石油の国際的な独占資本というものが虚視たんたんとしてねらつている問題でもあるので、私は日本人の一人として、これを真剣にここで申し上げる。参考のためにちよつと読んでみますと、「経済往来」にこういう記事がある。「そもそも米国の占領により各国への賠償施設配分に当り最も鋭い批判を与え、不満を表明したのは英国であるといわれ、米国はこの不満を抑えるために四日市を英国に使用させることを確約したと伝えられている。しかしその後朝鮮動乱の勃発という異常な国際情勢の変化で米国は当初の計画を変更し、四日市を米軍の直轄製油工場たらしめんとして、一時賠償指定の解除を棚上げしようとしたようである。ところがその後ダレス氏やラスク氏らのワシントン・東京往復とその後米軍による活用意思なきことが判明するに及んで、再び問題は表面に押出されて来た。このことはこうした歴史的経過が示すように、明らかにその背後に米、英石油資本の角逐があつたと見るべきたろう。従つて、一頃四日市問題の解決は既に東京の舞台でなく、ワシントン、ロンドン当局の話合による解決以外何の打解策もないと関係者がうそぶいたという一事をもつてしても、如何にその解決が深刻、困難であるかを雄弁に物語つている。」こういう言葉すらある。これはある程度真相であります。これがすでに米英の当局だけの話でなくて、今度は国際独占資本たるスタンダードとか、あるいはシエルとかいう会社同士の周題になつて来ておる。この両会社の取引によつて四日市の運命がきまるかもしれない。それに日本業者が乗つて、もうげるためには商売がたきを犠牲にして何でもやるという空気が、自由党内閣のもとでは業者にあるわけです。従つてこれをわれわれは真剣におそれておる。政府においてもその点については慎重な考慮をしておると思いますが、ただいま申し上げましたような過剰導入の例はすでにここにあります。さつき申し上げましたように、東亜においては五五%すでに過剰導入の例もないとは言えない。しかしこれは個人会社だから、まだいいので、あの厖大な施設を、しかも国民の膏血をしぼつた国民財産をそういう関係に置くということは、断じてわれわれは今日の日本国民として座視するに忍びない。われわれは野党で数が足りないからといつて、それを国会で黙視するわけに行かぬ。こういう問題についてはわれわれは国民の一人々々に訴えてでも、日本の歴史の名誉のためにも闘わなければならぬ問題である。そういう観点からこれを申し上げておるということを通産次官はよく頭に置いていただきたい。そうしてそのような過誤を日本人の将来のために犯すことのないように願いたいと思う。そこで特定のある業者外国資本の影響を受けるような形ではやらないということをここに言明していただきたい。いかがですか。
  146. 本間俊一

    ○本間政府委員 雑誌の記事をお読みになつての引例でございますが、なるほど米英の資本を背景にいたしました会社が、世界の石油市場においていろいろな競争をいたしております事実はございましよう。それはそうであろうと思いますが、今読み上げられましたように、この問題がワシントンできまるとかいうようなことは、私は全然想像いたさないのでございます。従いましてあなたが今読み上げられました雑誌記事は、私には全然見当がつきません。従つてどうか雑誌の記事につきましても十分慎重に事実を調査せられまして、それから引用をしていただくように願いたいと思うのであります。  さて本論に入りますが、先ほど申しましたように、あそこの施設をどういうふうに使うことが一番いいかということにつきましては、ただいま白紙で、いろいろ出て参りました申請者の計画その他を検討いたしておるのでございまして、ただいまのところ、文字通り白紙でございます。従つて、あそこの施設国民税金によつて建設されたものであるという点も十分に考慮し、その他石油の需給関係その他も十分考慮をいたしまして、そうして適当に決定をいたしたい、こういうふうに考えておるのであります。
  147. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 できるだけ結論にお願いたします。
  148. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは通産次官にもう二、三問承りまして、最後に池田大蔵大臣から承りたい。  最近自衛力漸増ということが具体化して来た。そこで日本の将来長期にわたる自衛力漸増のためには、石油資源あるいは石油の経営というものに関して相当な考慮が払われなければならぬ。従つて政府が昨年そういうことを考えないときに考えた標準と、最近これを許可する標準とは当然かわつて来なければならぬ。そこに自衛力漸増計画の具体化と最近の情勢変化によつて、従来の標準を変更する必要はないか。政府はそういう意思があるかどうか。従来の標準というのは、先ほど管財局長が申したように、なるたけ売り飛ばして現金収入を多くして役人を減らす、そういう主義である。それに対して通産省はある程度チエツクして来た。しかし防衛力漸増という見地からも新しい考慮がそこに加えられなければならぬ。この点をいかに通産省はお取上げになりますか。
  149. 本間俊一

    ○本間政府委員 お答え申し上げます。御指摘のような問題も当然考慮いたさなければならぬと思うのでございますが、ただいま現内閣は、私から申し上げては恐縮でありますが、再軍備をいたさないという考え方の上に立つておりますので、私どもがいろいろな作業をいたしております場合に、予備隊関係その他の機関で使用いたします油の量がどの程度になりますか、実はいろいろ連絡はいたしておりますが、まだはつきりいたしません。従つて御指摘のような線で今ただちに日本の石油問題を考えるというところまでは、具体的に進んでおりません。     〔上林山委員長代理退席、委員長着席〕
  150. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 具体的には進んでおらぬだろうけれども、しかし今の基準の中にそれが入つて来なくちやならぬ。それは一吉田内閣の問題だけではない。日本民族の将来の運命のために、われわれはそういうことを考えなければならぬというのです。そういう考え方を基準に入れるか、入れないか、いかがですか。
  151. 本間俊一

    ○本間政府委員 四日市の問題につきましては、御指摘のような点も考慮の中に入れまして、最後の決定が下されるものと考えております。
  152. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで具体的な方法としては、われわれとしては、少くともあれは国有財産である、国民の膏血をしぼつた国民の財産であるから、あれを特定人の所有権にゆだねることは避くべきである。それは今後の防衛力漸増ともにらみ合せて、国家の手中にこれを確保しておかなければならぬ。それが第一。しかし具体的な運営というものは、民間人の創意を活用して能率的にやらなくちやならぬ。その点については公平の見地に立つて、しかも能率の見地に立つて、納得の行く方法でやるべきである。具体的にいえば、国有民営というか、そういう形でやるのが、あの財産に対するふさわしい処置と思うが、この点について通産省はいかに考えるか。
  153. 本間俊一

    ○本間政府委員 御指摘の点も確かに一方法であろうと考えます。従つて委員会が最後の決定をいたします場合には、ただいま御指摘のような点も考慮の中に入れまして決定を下すものと考えております。
  154. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 委員会はそういうふうになるだろうとおつしやいますが、通産省の御意見はいかがでございますか。
  155. 本間俊一

    ○本間政府委員 通産省といたしましても、御指摘のような点も考慮の中に入れまして決定をすることと考えております。
  156. 山手滿男

    山手委員 関連して。本間次官の今の御答弁でありますが、それは事実と相当に相違をいたしております。私は事実をもつて申し上げなければいかぬ。というのは、三菱石油とシエルとの合作によつて、株式を半々にして新会社をつくつて、それに渡してもらおう、こういう提案を向うから申請をして来た。ところがこれに対しましては掘り下げて考えてみると、出資をする三菱石油自体がすでにシエルの資本が半分入つておる。ですから三菱が半分、シエルが半分出して行くというと三菱側の構想というもので行くと、七五%はシエルの資本が入る。従つてあの国有財産を向うに払い下げた場合には、いわば向うの旗が上るという万態になるであろう。こういうことでは、やはり今中曽根君がるる言つたようなぐあいで困るという主張を私どもはいたして参りました。ところが先般の五人委員会はシエルだけを呼んで、このシエルの構想を聞こうとする。ところがシエルだけを呼ぶと、カルテツクスの方が納まらぬだろうということでおざなりにカルテツクスもちよつとつけて簡単に聞いたという事実を私は知つておるのみならず、やはり三菱の資本の息のかかつた人を、特に地元代表などというものに入れて、これを聞いている。これはもつと具体的に私は言いましよう。というのは、さつきから中曽根君が言つているように、非常に重大なる利害関係を地元は持つているから、地元の意見を聞かずしてあの処分を決定するということは、たいへんなことだという発言を先般私はした。私が発言するだけでなく、地元の新聞は筆をそろえて書いておる。そのために、先般通産省は五人委員会と諮つて、四日市の市長と市会議長、商工会議所の会頭を五人委員会にお呼びになつた。ところが与党側の、何でもない人を一人そこに入れてある。その人は、やはり三菱系の資本の背後にある会社の重役である。そういうことで、どんどんシエルの関係だけを推し進めて検討をしておいでになる。でありますから、新聞その他は全部筆をそろえて、もうはつきりした、勝負はきまつたというふうに断定を下している。今の通産次官の御説明とは全然反対である。それに対しましては、この間の五人委員会席上においても、明らかに市長、市会議長、商工会議所会頭、地元全員が、三菱系ものは、あの倉庫会社の地域まで、四日市港の半分を占めている海軍燃料廠の機能の半分を占めている埠頭地帯まで全部一括して渡せと言つているが、そういうふうな資本関係の構成で行かれる場合には非常に困るし、しかも港の完全な発展のためには一万トン級の船が何ばいも横づけになるあの埠頭施設を全部三菱系の資本で独占しなければならぬという理由はない、あれは海軍がかつて刀で取上げたものであるから、その半分でも返せという主張をしている。そういうことについてもあなたはどういう考えで臨もうとしておられるのか、それをはつきりしておいてもらいたい。
  157. 本間俊一

    ○本間政府委員 三菱石油はアメリカの資本と提携しておりまして、そうして旧四日市の海軍燃料廠についてはシエルと提携をしたい、こういうことで進んでおるのであります。  それから今山手委員から関連して御質問があつたのでございますが、地元の意見もぜひ聞きたいということで、実はお呼びをいたしたのでありますが、そのときにちよつと手違いがございまして、ただいま御指摘のようなことになつたのでございますが、実際に聴取をいたしますときには、委員会に一人々々出ていただきまして、そうして意見を聞いたのであります。しかしただいま御非難のありましたような点は、実はちよつと私どもの方に手落ちがございまして、その点はおわび申し上げておきたいと思います。そういう事実からほとんど三菱の方に大勢がきまつているというふうな御質問でございますが、これは先ほど私が申し上げました通り、そのような事実はございません。やつと現地も委員の各位が視察を終えられまして、最初の会合をきようもやつておるような次第でございますから、その方向が大体もうきまつたというふうにお考えくだされば、私は事実とは相違いたしておる、こういうふうに申し上げたいのでございます。  それから先ほど御指摘の埠頭の問題でございますが、これにつきましても、御指摘のありましたように、地元側の要望も伺つておりますので、この要望に対しましても相当な考慮を払つて決定をいたしたい、こういうふに考えております。
  158. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、先日来私は、日本の石油政策と、四日市の問題とからんで、管財局長に御質問をいたしました。大臣はお見えになりませんでしたので、重ねて質問の概要を示しまして、大臣から御所見を承りたい。  われわれが一番心配する問題は、何といつても国際的独占資本の外国の会社が、市場獲得ということから、日本国内石油会社と組んで四日市というものをわれわれの経営の自主性を認めないようなところに追い込むのではないか、またそれを無意識にやつておる会社が国内にあるのではないか、それではたいへんなことである。のみならず、あの施設は、戦争前に国民の膏血をしぼつてつくつた国民の財産であつて、それを特定の商社の利益に供するようなことはないでしようけれども、そういうふうに見られるような形でこれは処理したくない。まず第一にそこで大蔵大臣の御見解を示していただきたいのは評価の問題である。これがいろいろ騒がれておるのは、巷間播磨工廠を処理したような形で、あれになぞらえてやるとかなり安過ぎる、未使用の分等を入れると時価は少くとも五百億を突破する。しかるに大蔵省が今まで考えておつたような評価方法であれば十六億円くらいにしかならぬ。そこで十分ペイするので石油会社の争奪戦の的になり、これがまた政治家のいろいろな介入を呼んで、いろいろな醜聞が伝わつておる、そういう点は明らかにしなければならないので、評価の基準はそういう巷間伝えられるようなものではなくて、必ず時価に即した、しかも今まで考えられているような基準によらない、隣接の場所であるとか、あるいは現在の物価であるとか、あるいは単に上部構造の経費だけでなく、基礎工事の経費まで入れて、たとえば浚渫の費用があつたり、埠頭の築造費もあつたり、あるいは水道関係施設費もあつた、そういうあらゆるものを入れた公正なる価格によつて客観的にこれはきめられなければならない。第三者の判定によつてきめられなければならない、この評価の点についていかに大蔵省は御処置をなさいますか、これが第一点であります。  第二点にはこの最後の決裁権といいますか、処置する権利は大蔵省の国有財産を担当していらつしやる方でおやりになる。そこで石油政策という観点でなくて、ややもすれば大蔵省は会計管理的な感覚からやつて、なるたけこういうものは処分して財政負担をなくする、そういうような考えのみにとらわれがちであるが、それでは国策はないのである。そこで少くともこういう問題については、外資の過剰導入を呼ばないように、日本の経営自主権が確立する形でこれは確保されなければならぬ。それからでき得れば防衛力漸増計画とにらみ合せて、将来の国防上いささかも危惧のないような方法で長い目で見てこれは処置されなければならぬ、そういう観点からすると、われわれの考えでは国有民営というのが適当だと思うが、こういう点について大蔵省はいかなる考えでこの処分をなされるか、この二点について大蔵大臣のお答えを得たいと思います。
  159. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国有財産の売払いの場合の評価につきましては、お話のように公正でなければならないので、各方面から検討を加えて売却をいたしております。  それから今の四日市の燃料廠の問題でございますが、これは国有財産の売払いでございますから、われわれの所管でございますが、これをどこへ売り払つたらよいか、どういうふうにしたら一番有効かということは実はしろうとでございます、その道の通産省の方に委員会ができて、そこで一応の意見をお出し願う、それにのつとりまして大蔵大臣の立場から適当な価格を算定する、こういうのであります。われわれの方で何も会計事務の点ばかりを見て出してはおりません。
  160. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいま私はそういういろいろな問題について通産政務次官から政府側の答弁を得たのでありますが、大体そういう構想に沿つて大蔵省側としては、当面の政策の責任者は通産省であるから、そういう構想を尊重してきめる、そういうふうに解釈してさしつかえありませんか。
  161. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体そういう方向で行つております。
  162. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それではこれで終ります。
  163. 塚田十一郎

    塚田委員長 それでは川崎秀二君。
  164. 川崎秀二

    ○川崎委員 すでに二、三回衆議院本会議並びに参議院の予算委員会で論議もされた問題でありますが、その後情勢もかわつておるようでありますので、お聞きしたい問題があります。リッジウエイ総司令官が安全保障費三百七億の使用——安全保障費は五百六十億だが、建築費についてびた一文も日本側に要求したことはない、こういうことを各新聞社代表との会談において言われたのですが、これに関してはリッジウエイ総司令官の言明を信用してよいのか、それともあなたが今まで予算委員会、本会議で言われたこととかわりはないのか、その点を伺いたいと思います。
  165. 池田勇人

    ○池田国務大臣 参議院の予算委員会でもあの新聞記事につきまして一、二回質問を受けましてお答えした通りで、今までの考えとかわつておりません。あの新聞の発表を見ますと、各新聞によつて詳しいのも簡単なのもございます。私はリッジウエイ総司令官のパーソナル・デイザイア、個人的お考え、しかもこの問題はアメリカの国会できめるのだというふうなことを思つておるのでございます。要求したというわけではございませんが、私といたしましては大都市内に駐留しております米軍に都市外に移つてもらうという場合におきまして、こういう金がいるというので予算を組みまして、司令部のオーケーをもらつたわけであります。
  166. 川崎秀二

    ○川崎委員 その総司令官は少くとも条約発効までは、日本における最高権威者とみなされてさしつかえないと思うのですが、これが新聞記者団代表との会談において言つたことは、われわれは条約発効までは尊重したいという気持は少しもかわりはないのであります。しかるにかかわらずこれがパーソナル・デイザイア——たいへん英語が上達されたようでありますが、(笑声)個人的な欲求、そういうもので片づけられるものでなくして、実際にはあなたが今まで折衝されたことと事態がかわりつつあるのではなかろうか。たとえばあなたと初めのうち折衝されておつたときには、出してくれという話もあつたでしよう、あるいはそのときはこちらから進んで媚態を呈されたかもしれない。しかもその後日本国民の各地における言論、ことにアメリカ軍が常駐的に駐屯するその建築費三百七億、ああいう厖大なものを日本側が負担する手はないだろう、これは子供でもわかるので、従つてそういうぜいたくとも見られる新築費を出すのは、ごめんこうむりたいという国民感情を見てとつて、かわつて来ておるのではなかろうか、こういうふうにわれわれは想像をいたしておるのでありますが、そういうことはありませんか。
  167. 池田勇人

    ○池田国務大臣 その後関係方面の方と会いましても、あの予算の変更とかいうものは聞いておりません。私は直接リツジウエイとお会いしたわけではありません。この問題につきましてはその後聞いておりません。われわれは予定通りにしたいと思います。しかしお話のように向うで出してやろうということなら何も断る理由はないと思います。しかし出してやろうといつたことは私の方はまだ聞いておりません。
  168. 川崎秀二

    ○川崎委員 これからの問題として、あなたとの折衝の過程を特に聞いておきたいのですが、安全保障費の負担について六大都市から移転するところの進駐軍の建築費は、当然米国側に持つてもらいたいという希望は、こちらからしなかつたのですか。
  169. 池田勇人

    ○池田国務大臣 いたしておりません。
  170. 川崎秀二

    ○川崎委員 そうすると、向うからは何も意思表示はなかつたわけですか。
  171. 池田勇人

    ○池田国務大臣 向うの意思表示も聞いておりません。
  172. 川崎秀二

    ○川崎委員 そうすると、こちらから当然持つべきだということで、向うはそれはけつこうな話であるというので交渉が進んでおつたのですか。
  173. 池田勇人

    ○池田国務大臣 けつこうな話であるということも聞きませんが、私の考え通り予算を組んで出したのであります。
  174. 川崎秀二

    ○川崎委員 そうすると、もし将来これが変化をして、米国の議会で進駐軍の建築費、駐屯の新居の費用は、当然われわれが持つべきであるという結論になつた場合において、大蔵大臣はどういう政治責任をとろうとするのであるか。少くとも三百七億に上るところのこの厖大なる経費、これは大蔵大臣や総理大臣の選挙運動費か何か知らぬが、向うに対する了解費としては非常に高過ぎると私は思う。従つて日本では最初にこちらで負担するのだという御機嫌伺いのことを決定をしておいて、そうして衆議院並びに参議院の本会議予算委員会を通じて、かかるものは当方で持つべきものであるということの見解を披瀝して予算案を通しておいて、後に米国議会においてそれはこちらが持つべきだということになつて免除をしてもらう、たとえば今予備作業班等において進捗している事態は、三百七億は米国側の防衛分担金の中から支出すべきであるという意見になつて来て、その火元はリツジウエイ総司令官の言明に基くものと言われる。従つて将来そういう可能性がふえて来たときに、少くともあなたとしては相当の政治責任を感じなければならぬと私は思うのであるが、大蔵大臣はどういう態度に出られますか。
  175. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は政治責任の問題ではないと思います。この問題はこういう事情のもとにいることを予定いたしまして国会の御承認を得たのであります。その後の事情の変化によつて向うが負担すると言つた場合に、どういう条件——所有権は将来永久にアメリカにあるとかなんとかいう問題になりますと、ちよつと考えなければなりませんが、日本に行く行くはくれる、しこうしてこういうことのためにわれわれが負担するという事情の変化になつて来れば、それを拒む気持は私にはございません。
  176. 川崎秀二

    ○川崎委員 よろしゆうございます。それだけ聞いておけばよろしい。  外資導入に関して本会議での総理大臣の説明というか所信と、その後マーカット声明などがあつていろいろ混雑をいたしました。大体事情も今日ではわかつては参りましたけれども、特にこの際お伺いをいたしておきたいのは、私は這般の事情に通じませんから、政府の得ている事情で聞きたいのでありますが、ワシントンの渡辺財務官等が日本に知らして来ているところの情報によると、必ずしも情勢は甘くないというふうであります。しかるに政府では相当に確信を持たれて、ことに総理大臣は大幅の外資が入るということを再三にわたつて言つておられる。総理大臣からこれはお聞きした方がいいかとも思う、ことに総理大臣の考えられているのは政治借款的な問題であろうかと思うのでありますから、あるいは池田大蔵大臣の知らないことまで、総理大臣自身は非常にタッチされているのかもわからぬ。しかしこの際ぜひお伺いしておきたいのは、この政治借款、あるいはいろいろの意味もありましようが、いわゆる商業ベースに乗つた外資ではなくして大きな外資が入るという見込みがあるのでしようか。その点をお伺いいたしておきます。
  177. 池田勇人

    ○池田国務大臣 将来の問題として、外資が入るということは、日本経済の急速なる発展、自然確立のために必要でございますから、それがどういうかつこうで来ましようとも——条件ではございませんが、われわれの納得のし得るような条件で参りますならば、私は多々ますます弁ずると思います。
  178. 川崎秀二

    ○川崎委員 そういう見込みがあるのかと聞いているのです。
  179. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは相手があることでございまして、ことに政治借款という言葉の意味がよくわかりませんが、普通考えている外国政府日本政府との借款という問題になりますと、なかなか楽でないと思います。常則といたしましては、まずマーシャル・ベースによつて来るのが常則でございまして、政府借款でもコマーシャル・ベースに乗らない借款もあるかもわかりませんが、おおむねやつぱりコマーシャル・ベースと申しますか、元利の支払いが確実な見通しがつくということから起るものであるのであります。従いまして国内でも金を借りようというときに、要求はいたしますが、銀行が貸してくれるか貸してくれぬかなかなかわからない。そこでことに国際的にはそう楽々とは私は来ぬと思います。ことに政治借款につきましては、よほど受入れ態勢を十分整えておかぬと、むずかしい問題ではないかと思う。私が常に申し上げておりますように、受入れ態勢をつくることが第一で、それに没頭している、こういうことでございます。
  180. 川崎秀二

    ○川崎委員 質問ではなしに一つだけ議論を申し上げます。それは受入れ態勢には私は二つあると思う。すなわち商業ベースが成り立ち得るような日本経済的な基盤と政策をとるということが一つ。もう一つは日本の決意いかんによつて、たとえば再軍備問題等に対する政府の態度が明らかになることによつて、政治借款が入り得る見込みがあるのではないかということであります。私は別に政治借款の定義をあなたに申し上げないけれども、少くとも七十九億ドルといわれるアメリカのヨーロツパならびに世界経済に対する対外軍事経済援助といいますか、これが先ごろからアメリカの上院でいろいろな議論になつた際において、しばしば議員の側から、なぜこの数字のうちに日本に対する援助が含まれていないのかというような質問がこれで二十数件出ているようであります。またハリマン安全保障本部長官の言明によると、この数字のうちに対日援助費が含まれていないのは、これから日本ではどれだけのことをするかの見通しがついていないし、今のところは援助の必要がないからだという意味の説明をしている。援助の必要がないからだということは、つまりアメリカ政府の資本が導入をされる必要がないということを言つているのであつて、これは昨年日本の安全保障条約に対するアメリカ日本との了解事項というか、そういうものがあつたのが実施に移されておらない。端的に言えば、再軍備に対するところの吉田総理大臣の国会を通じての声明が非常に不安定である。こういうことに対するアメリカの疑惑から私は来ていると思うのであります。これは議論になりますから、さらには申し上げませんが、その政治借款が成り立たない一つの理由として、日本の政治態勢が確立されておらない、こういうふうに感ぜられるのでありますが、大蔵大臣はこういう問題に対してはどういうふうにお考えになつているか、所信を承りたいと思います。
  181. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は上院における議論その他につきまして十分読んでおりませんので、今お話だけですぐ批評がましいことは差控えたいと思います。
  182. 川崎秀二

    ○川崎委員 それからもう一つ伺いたいのは、ワシントンの輸出入銀行を通しての外資の導入問題が、かなり進んでいるようにも新聞にちらちら出るのですが、そういうことはありませんか。
  183. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは御承知の通りに、綿花借款十五箇月で四千万ドルと出ております。私は最近日本の設備の近代化等によりまして、でき得れば優秀な機械を輸入しよう、ドルを使つてでも輸入しよう、こういう場合におきましては、輸出入銀行の建前として、その輸入資金のある程度を輸出入銀行が負担するということはよくあることでありますので、そういう場面での外資の導入も期待しております。
  184. 川崎秀二

    ○川崎委員 外資の導入に関して外債の処理ということは、先般来ことにポンドに対する対策とからんで非常に大きく取上げられており、また政府もすでに実施をしている点もあると思います。イングランド銀行に対する二千万ドルの預託、それからきようの発表などを見ましても、一連の政策とは思うのですが、外債処理に対する基本的な方針を立てて行かなければいけないと思うのであります。そういうことに対して大蔵大臣はどうお考えか。時間の節約になりますからもう一つついでに聞いておきたいのでありますが、フランの預託はやらないかという問題であります。
  185. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外債処理の問題も、これは外資導入の問題と密接な関係があるのであります。私が受入れ態勢を確立すると言う意味も、借りた金もできるだけ払います、こういう態勢をとることが、将来の外資導入を促進する一つの手段でもありますので、日本政府の外貨債に対する誠意を披瀝する意味におきまして、まずイギリスと話をつけ、それがまとまりましたのでアメリカに、まだ正確な金額はきまつておりませんが、二千万ドル程度を預入したい。この預入するかあるいは向うの国債を買つて寄託するか、今ニューヨークのフェデラル・レザーヴ・バンクが無利子で預つてくれるのでは困りますから、他へ運用して寄託するかということを考え研究しております。  それから御承知のように仏貨債もございますが、仏貨債は今のところ百二、三十万程度でございまして、向うの話もございません。アメリカ、イギリスに比べますと何十分の一とか、あるいは百分の一近くでございますので、私は今のところは考えておりません。
  186. 川崎秀二

    ○川崎委員 それからついでに伺つておきたいのは、外国為替管理委員会を廃止するかどうかという点。なお問題が違いますが、時間の節約ですからもう一つ伺つておきたいのは、自由党では長期経済計画というものを樹立して、自由党の水田政調会長が中心になつてドツジ方式というものを訂正するというのです。たいへん勇ましい経済計画で、けつこうだと思つておるのですが、こういう問題と関連して、政府においては長期計画に対してどういうお考えを持つておられるか。さらに進んでは、現在通過した予算案と関係をして、補正予算を提出する意思があるかどうか。特に戦争犠牲者の補償、社会保障費の充実ということは、国民が非常に要望しておることでありますので、特に伺つておきます。
  187. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外国為券管理委員会につきましては、行政機構の整理でただいま検討いたしておりますが、多分なくなるのではないかと思つております。私見といたしましては、外国為替管理委員会は廃止した方がいいのじやないかという意見は持つておりますが、まだ確定的のところまで行つておりません。  それからその次の、自由党政調会で長期経済計画ということを考えておるかどうか、こういう問題でございますが、私は自由党の政調会では考えておると思いますが、直接そういう問題に  ついて話し合つたことはありません。実はきよう政調会長と会う約束だつたのですが、まだ会いませんので、政調会のことは聞いておりません。政府としてはどうかという問題になりますと、これは長期産業計画については私の所管でやつているわけではございませんが、発電にいたしましても、水力発電につきましての金融措置を考えろということで、個々別々に相談があつたときには大蔵大臣として考えておりますが、総合的に今長期産業計画を立案するとか、具体的な措置には出ておりません。  それから補正予算の問題につきましては、先ごろ来国会で申し上げておりました、補正予算はただいまのところ組まないという答弁を変更する何ものもまだ持つておりません。
  188. 川崎秀二

    ○川崎委員 もう一つで終ります。これは軽いようで非常に思想的な問題を含んだ社会問題ですが、来年ルーマニアのブカレストというところで、御承知のようにピンポンの世界選手権がある。この間日本は御承知のようにボンベイで勝つて来た。そうすると来年もう一ぺん行きたいのは当然だし、非常に進出したわけだから国民からも喜ばれておるわけですが、鉄のカーテンの内側でやられるといつた理由をもつて、先般の旅券下付と同じように、外貨の割当をよこさないというような情報があるように聞いております。これは来年のことだから、今から決定しておらないだろうと思つておるのですけれでも、大蔵大臣は聞いておられるかどうか。社会問題としても相当大きな問題になると私は思うので、特に伺つておきたいと思います。
  189. 池田勇人

    ○池田国務大臣 卓球選手権を四種目ですか、日本でとつて帰つたということは非常に喜ばしいことであります。そういう会合にはできるだけ参加いたしたい。卓球はインドのボンベイでございましたが、インドのアジア・オリンピック大会等における空気が日本の国際関係に非常に好影響を及ぼしておりますので、できるだけこういう場合につきましては外貨を割当てたいと考えております。今のルーマニアのピンポン大会の分は新聞ではちよつと見ましたが、まだどこからも私に対して申出も何もありません。
  190. 塚田十一郎

    塚田委員長 川島金次君。
  191. 川島金次

    ○川島委員 若干この機会に大蔵大臣にお伺いし、あとで安本長官にもお伺いをしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、二十六年度もすでに終了いたしまして、いよいよ七年度に入つたわけでありますが、昨年の秋に千三百億の自然増収を基本として補正が行われた、この自然増収の見込みについては、大蔵大臣もかなり当時から確信のある言明をされておつたのでありますが、この二十六年度の税収全体の成績は今日どういうふうになつているか、それをまず伺いたい。
  192. 池田勇人

    ○池田国務大臣 補正予算の際に一千数百億の自然増収を見込みましたが、その後の租税収入状況も全体として非常に順調でございまして、私はいわゆる自然増収といたしましては、大体三百億近い増収があるのではないかと思つております。
  193. 川島金次

    ○川島委員 今の三百億というのは前に組まれた自然増収のさらにその上をオーバーする自然増収の意味を言うのですか。
  194. 池田勇人

    ○池田国務大臣 もちろんそうでございます。補正予算でさきに組みましたときに千五百七十億か組みましたが、それを越えまして三百億近いものがある、こういう見込みであるのであります。中途でございますし、申告納税につきましてはまだはつきりしたことは申し上げられないが、三百億近い差額がある、こう考えております。
  195. 川島金次

    ○川島委員 そうすると二十六年度から二十七年度へ繰越される額は相当な額になつておるのだと思いますが、大体見込額は全体でどのくらいになりますか。
  196. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは御承知の通り自然増収以外に歳出不用額が入つて参りますので、今申し上げました三百億近い金に対しまして、例年なら百億くらいあるのではないかと思います。ただ問題は終戦処理費の関係がございまして、これが講和条約が発効する間において大きく違う面がございます。しかし平年にいたしまして大体百億程度の不用額が出るのが普通の例でございます。
  197. 川島金次

    ○川島委員 今のお話によりましても、二十七年度へ繰越されて来る金額が、相当な額に上つて来るのだと思うのですが、その金額を基にし、さらにそれを二十七年度の来るべき補正予算等の場合があるとすれば、そういつた自然増収の財源を、政府はどの方面に重点的に支出して行きたいというようなことについても、若干の心構えがあるのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  198. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは年度締切りでどれだけ出るかということがはつきりしてから、しこうしてまた出た場合の情勢等から考える問題で、先ほど申し上げましたように、補正予算を組むか組まぬかという問題につきましても、ただいまのところは補正予算を組む考えは持つておりません、こういう前の答弁を継続しておる状態でございまして、今これから出て来ようかという見込みのものをつかまえて、さあどこに使おうかということは私は考えておりません。
  199. 川島金次

    ○川島委員 かりに大幅の二十七年度への繰越しを見たといたしますれば私どもの観点から行きますれば、目下重大な問題となつております社会保障の問題、端的に言えば遺家族援護補償等の問題、そういつた問題に対して再検討を加えて、もう少し完全なものにするというようなことに政府考えを置くべきではないか、かように私どもは考えておりますが、そういうことについての政府の基本的な考え方はどういうところにあるか、それをひとつ承りたい。
  200. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほどお答えしたように、まだはつきり出ていないので、今すぐどこへ使おうというふうなことは申し上げかねます。また二十七年度の予算につきましても、これがどういうふうな動き方をするかを見込まなければなりません。私は国会の審議の跡を見ましても、たとえば産業資金が非常に足りない、こういう議論がありました。予算面ではそうでございますが、たとえば産業資金にいたしましても、輸出銀行とか、開発銀行あるいは国民金融公庫へ出しました金も、二十七年度の状況を見合いながら、相当繰越しをさせておる。これは補正予算を組みますときに期間が非常に短こうございますから、通過したあと三箇月、四箇月でぱつと使うと、あとでまたしり切れとんぼになるといけませんので、これは余談でありますが、産業資金は予算上は二十六年度より二十七年度において枯渇しないように、常に金の使い方に対して検討をいたしております。従いまして今自然増収が出る見込みだというので、すぐそれをもつてどこへ使うということははつきり申し上げられません。しかしたびたびお話申し上げておりますように、遺家族の方々あるいはその他の戦争犠牲者の方には、非常にお気の毒な点がありますので、こういう問題は、今まで答弁しておりますように、私としてできるだけ早い機会に、財政の許す限りにおいて何とかしたい。しかしこの問題は、今自然増収があつたからといつて出しても、将来の見通しもまたつけておかなければならぬという点がありますので、この自然増収の使い方につきましては、よほど慎重に考えなければならぬ。しかしその点はやはり国会に御相談申し上げて、みんなの納得の行くような使い方にいたしたいと考えております。
  201. 川島金次

    ○川島委員 その点はそれで、次に移ります。先ほど同僚の川崎君からもちよつとお尋ねしたのですが、その答えについてわれわれちよつとあいまいな点があるのでわかりませんでしたが、私は具体的にお尋ねをいたします。それはやはり外資の導入の問題でございます。政府はこの外資導入の問題について、政府の名においてワシントン政府に何らかの形で問合せもしくは要請をしたような事実があるかないか、この点は大蔵大臣も何か御承知になつている点があるか。
  202. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外交問題で、私からはつきり申し上げられません。
  203. 川島金次

    ○川島委員 それではお尋ねしますが、これは三月二十五日の毎日新聞であります。この新聞の掲載する記事によりますと、政府米国の忠実なる友邦となるために大陸市場を断念したが、この見返りとしての米国経済援助を大幅に期待したい旨を総司令部を通じて米国政府に要請したようである。本年二月十日ごろ吉田首相は電源開発に要する外資として十五億ドルを要請する正式なトルーマン大統領あて書簡を送つたと断定的に書いてありますが、こういつたことについて大蔵大臣は承知されておるかどうか。
  204. 池田勇人

    ○池田国務大臣 知りません。十五億ドルですか、私はそういうことは存じておりません。
  205. 川島金次

    ○川島委員 先ほど大蔵大臣は外交のことだから言えないという、そういう意味において知らないという答えなのですか。それとも、これに似通つた事柄が政府の部内において行われたということはないのかどうか。
  206. 池田勇人

    ○池田国務大臣 知らないです。知らないし、外交の問題で外務大臣がどういうお手紙をお出しになつたか知らない、こういうことであります。
  207. 川島金次

    ○川島委員 そうすると、こうした経済的な問題については、総理大臣が独自でやつてしまうことであつて、従来行われたりあるいは今後行われる場合に、大蔵大臣とは何らの連絡なしに、こういうことは総理大臣がやつてしまうようになるのですか。
  208. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政経済の問題につきましては、相談はよく受けております。しかし今お話の毎日新聞の記事につきましては知りません。
  209. 川島金次

    ○川島委員 財政経済の問題については、池田大蔵大臣は第一人者をもつて目下のところ任じておるようですけれども、こういう問題も火のないところから煙が出ないので、しかも日取りも額も断定的に書いてある。これはおそらく池田大蔵大臣に相談なしにやられたことなので、大臣が総理大臣からはさつぱり無視された形になつているのではないかと思いまして、まことにこれは奇怪なことだと思う。こういうことについてまつたく知らないということでありますれば、これは今後このお話を申し上げましても水かけ論になりますから、これでやめます。  そこで、この点も川崎君が先ほどちよつと触れられたようでありますが、自由党の政務調査会が、いろいろの意味合い、ことに総選挙近しという段階にも入りまして、政党としてはさもありなんと思うのでありますが、その自由党の政務調査会が立てつつあるといわれております当面の経済政策の要綱がある新聞に伝えられて来た。その伝えられておりますところによりますと、従来の、財政経済政策に関してはドツジ、税制についてはシヤウプ、このドツジ・シヤウプ・ラインを大幅に修正することなくしては、独立後における日本経済政策の積極的な安定と発展を求めることはできない、こういうのが自由党政調会の基本的な態度であるようであります。この事柄について池田大蔵大臣は、きのうかおととい記者団会見で何か感想を述べられておるように記憶いたしておりますが、このあなたの所属する自由党の政調会で立てました、ことに独立後における日本経済政策としての基本方針としてまずドツジ・シヤウプ・ラインを修正すべし、こういう事柄に対しまして、自由党の幹部であり同時に政府の閣僚である池田さんは、どういうふうにこの問題については考えられておるか、この点ひとつあなたの所感を聞かしてもらいたい。
  210. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ドツジ・シヤウプ・ライン、そう言われますが、これはマジノ・ラインとかなんとかいう具体的にきまつたものではございません。ドツジ氏のお考え方はとにかく健全財政、健全金融という線でございます。この分につきましては、私はやはり健全財政は保つて行かなければならぬという考え方を持つておるのであります。ドツジ氏が日本へ来られると減税はいかぬとか、あるいは統制経済は持続するとか、米麦の問題はこうだとか言つておられますが、昨年来られたときも減税はいかぬと言いながら減税したのであります。おととし来たときも減税はいかぬと言いましたが減税さした。しかし健全財政、健全金融という理想につきましては堅持して行く、この意味でドツジ・ラインの変更とかなんとかいうことはないと思います。しかしドツジ氏がときどき言つておられましたような問題につきましては、その都度かわつて来ております。  それからシヤウプの税制案にいたしましても、もう本国会で御審議願つた譲渡所得の問題とか予算の問題とかかわつて来ておりますし、シヤウプは勤労所得税の一割控除以上認めない、こういつてあの税制を立てたが、御承知の通り一割五分の控除にいたしたのであります。シヤウプ勧告も相当かわつて来ている。財政金融政策、税制政策というものはそのときの状態によつてきめるべきものであつて経済財政は生きものでございますから、何も具体的にびしやつと線を引いてどうこう言うのではない。やはり経済の見通しがつき、これが健全な発達になるという場合におきましては、私はいわゆる絶対均衡主義というのを破つてもいいと思います。そこでこれは余談になりますが、日本が公債発行主義——赤字財政でもできるような経済にしてみたいというのが私の一つの理想であります。それにはよほど経済力を強くしておかなければならぬ、こういうことなのであります。まだ赤字財政でやつて行こうというところまで回復しておりませんが、早くそういうことができる健全な経済財政にしてみたいというので努力しておるのであります。ドツジ・ラインとかシヤウプ・ラインとかいいますが、私は初めからそう考えております。
  211. 川島金次

    ○川島委員 最近におけるわが国内産業界の実情は、大蔵大臣すでに御承知の通り、非常な不況の雲におおわれておる。ことに繊維界のごときは倒産破産続出というような事情にあるのであります。これに対して政府は何らか積極的な打開の策を立つべきではないかとの輿論がかなり高く出ておりますが、この問題に対して、大蔵大臣はいかなる具体的な積極政策を持たれるか、その点について……。
  212. 池田勇人

    ○池田国務大臣 その問題につきまして今日紡績連合会の連中と会つておつたので、ここへ来るのが遅れたのですが、まず昨年からの痛手を直して行こう、商社の問題でありますが、これは大体片づきました。それから商社の影響を受けました紡績会社の金融難、これは十大紡績とその他の弱小——弱小というと語弊がありますが、新興の、しかも一万錘前後、以下のものとは違いますが、十大紡績の連中も今滞貨金融をしてもらいたいということでしたので、私は滞貨金融ではなく生産金融であろうと話したわけです。あす日銀総裁とも会うと言つておりましたが、とにかく日本経済の脆弱性は、設備の陳腐化とストックの少いことがおもなる原因でございます。そこで最近たまつておる外貨を有効に使つて、設備の近代化、合理化をする、またできるだけ物を輸入しておいて、国内的には生産を伸ばしてコストを下げて行くことが、日本経済の脆弱性を強くする意味だと思いまして、滞貨金融でなしに生産金融だというので、日銀その他の、金融機関に話したらどうだということを今言つて来たところでございます。いたずらに生産制限をする——自由主義から申しますと、生産制限も一つの手でございましよう。イギリスの紡績工場なども一割ばかり休んでおるようでありますが、四割操短がいいか悪いかという問題も検討し、考え方としては滞貨金融より生産金融という面で銀行と交渉するように話しておいたのであります。私は適当な措置を日銀あるいは金融機関がとることを期待いたしておるのであります。紡績会社に対する金融は今綿糸の手形に限つておりますが、私は広巾物の手形も綿糸同様取扱い、また倉庫証券の活用をはかるというような点についても協議して来たのですが、具体的に市中銀行なり日銀と相談してもらえば、何とか金融はつけ得る、こういう考えであります。
  213. 川島金次

    ○川島委員 大きな紡績産業もさることでありますが、石川県、冨山県その他の府県のいわゆる中小企業方面でも、繊維を中心としての業界がきわめて不振に追い込まれております。そのために往々労働賃金の支払いさえも不可能なものや、著しく遅延してそれに携わる多くの労働者が、その生活に窮しておる実情があちらこちらにあるようであります。こういう問題に対しましては、われわれは単にその企業の再建をはかるという意味合いのみならず、その企業に携わつておる労働者の生計の確保という建前からも、何らか政府は特段の金融措置を積極的に講ずべきであるという考えを持ち、政府にも何度か要請をいたしておりますが、この問題について大蔵大臣は最近どのような積極的な金融政策をとられたか、その点についてひとつ実績を報告してもらいたいと思います。
  214. 池田勇人

    ○池田国務大臣 中小企業金融につきましては、御承知の通り百五十億円、二月に指定預金引揚げの延期を商工中金その他についていたしました。さらに先月の末中小金融というので五十億、これは相互銀行、信用金庫を主として出しております。それから一般市中銀行に百億出しております。お話のように最も痛手を受けられた繊維関係の方に、地方的の特殊問題としては商工中金にひとつやつてもらう。こういうことでやつて、相互銀行あるいは信用銀行というものは全国的に出しましたが、特にこの信用組合にはたくさん出すというふうなことをいたしております。商工中金で重点的にやつております。三月末そういたしましたが、また様子によりましては、閉鎖機関の整理が済みまして、閉会機関の全体として保管しております九十七億円を、これをごく最近の機会に銀行並びに商工中金に出そう、こういう考えで今案を練つております。また先ほど来申し上げましたように、相当の引揚げ超過になつております関係と、それから輸出銀行、開発銀行と繰越しました関係で、いま少し金融をつけてもよいのではないか。政府の指定預金ということはいいことではないのでございますが、この状態を緩和して行く上におきましては、引揚げ超過になり過ぎるという問題を、政府の方で指定預金その他で緩和して行く。また日銀や市中銀行の方につきましても、できるだけ金融の円滑を期するように指導して行きたい、こう考えております。
  215. 川島金次

    ○川島委員 金融のついでに大蔵大臣の見解を聞いておきたいのです。大蔵大臣もすでに御承知かもしれませんが、国内の若干の府県では、府県内において労働組合が協同組合をつくつて、一種の労働銀行的なものを構成して、それで今日労働組合のいろいろな福祉的な方面に活動を開始しておりますが、この組合銀行は正式に労働銀行としての性格と任務を帯びたい、そうして積極的に労働組合員の家族に及ぶまでの福利活動にも進んで行きたいという考え方から、労働銀行という一つのテーマをもちまして、銀行法について労働組合みずからが立法などを研究いたして、すでにこれについて労働省におきましては、何か全面的に協力を惜しまないという態度を明らかにしておるやに聞いておりますが、大蔵大臣といたしましては、この種の労働銀行の発足の問題について、どのような見解を持たれておるか。大蔵大臣としても、いずれはこの問題は大蔵大臣の方の手にかかつて行くのではないかと予想いたしますので、大臣のこの機会における見解をひとつ示していただきたい。
  216. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話のような点は私まだ聞いておりませんが、銀行設立というのはなかなかやつかいな問題でございまして、御承知の通り、一昨年の暮れに一県一行主義を打破して、一県数行主義にして、自由競争の立場で行かしたいという意見を述べたのでありますが、それでもなかなか銀行ができない。今六、七くらいかと思います。労働銀行につきまして、これは外国にもそういうギルド的のものがあるのでございますが、案を見ましてからひとつ意見を申し上げたい。それまで御猶予願いたい。
  217. 川島金次

    ○川島委員 それではさらにお伺いしておきますが、先ほど大蔵大臣は二十六年度の自然増収千数百億の補正を加えました租税収入が、さらに三百億くらいも上まわつて増収になるのではないかという言明であります。財政収入としてはまことにけつこうな話のようでありますが、一面におきましては、この最終的な徴税期を控えまして、かなり各税務署においては確定申告の際に納税者に対する無理が行われておりまして、そのために税務署と申告納税者との側の間に、至るところに紛糾対立が起きておるということも、大蔵大臣の耳にさだめし入つておるであろうと思います。われわれの見聞いたしましたところによりますと、二十五年度の実績に対して、まるでろくな調査もしないで、その納税者に対して突如倍額近い課税を仰せつける。少くとも六割、七割増の課税を決定して来る、こういうようなことでかなり各方面に対立や紛争が起きております。中にはそれは税務署のにらん通りの増収をあげておる申告納税者もあろうと思いますけれども、われわれの見聞した方面におきますというと、その増額決定がきわめて無理だ。そういうきわめて一方的で、しかも納税をさせるためにも非常にこれは不可能に近い決定があるというような問題が各所に起つておるのであります。この場合にちよつとお尋ねしておきたいのですが、一昨昨年でしたか、最後の確定納税をいたします場合に、分割納税あるいは納税期の若干の延期、あるいは延滞等に対するところの特段の措置を講じながら、税収の円滑をはかると同町に、納税者のためにもはかるという事柄を政府はやつたことがあるのですが、今度の場合におきましても、御承知の通りに各産業の不況からいたしまして、いろいろ無理をされている方面がたくさんありますので、そういうことに対して大蔵大臣は国税庁長官を通じまして、それらの問題についての適正課税、あくまでも徹底した適正課税に対する指導的な通達を出しまするはもちろん、最後の納税について特段の何か処置を講じてやる必要があるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、大蔵大臣はそれらのことについてどんな考えを持つておられるか、それをひとつ承つておきたい。
  218. 池田勇人

    ○池田国務大臣 税務行政に無理があつてはいかないので、厳にそういうことは慎しましております。従いまして私は一昨年より昨年、昨年より今年がよほど怨嗟の声が少くなつて来たということを確信しております。今確定申告の時期は少し過ぎましたが、まだ確定申告をやつているところもあります。私は更生決定というものは、調査しなければ絶対にやつちやいかぬとしうことを昨年も強く指示しておりますから、私の指令を守つてくれていると思います。もし税務署に無理があるようなことがありますれば、これは協議団もありますし、法的の手続をとつて行かなければいかぬと思います。決して無理はしないように、こう言つてつているのでございます。ほかの税では相当増収がございますが、申告納税では、予算に対してかなりの減収になつているのであります。これは企業形態がかわつて来ること等が主たる原因でありますが、決して無理をして徴税をしちやいかぬということは常に言つているのであります。  それから確定いたしました税の納入につきましては、私はこの二月の初めだつたか一月の終りだつたか、とにかく分割納付を認めるように指令いたしまして、多分半分だけは延期する、こういうことにいたしておると思います。
  219. 川島金次

    ○川島委員 大蔵大臣は、そういう指令を出したから、さだめしそれを実行されているだろうというお言葉でありましたが、実際は違うのであります。昨今に至りまして、至るところに納税者と税務官吏との間にそのために紛争が起きたり、ひどい対立などがあつて、争つておるところがかなりありますので、どうぞひとつ課税の適正を期する意味合いにおきましても、さらに大蔵大臣の繰返してのひとつ——国税庁長官を通じて各税務署の末端にまでそれが行き届くように、繰返してひとつ適正課税の問題についての通達をされんことを、私はこの機会に強く望んでおく次第であります。  さらにもう一つこの機会にお伺いしておきたいのはうこれはみんな金融の問題ですが、いよいよ本年度から、不満足ではあるようでありますが、遺家族の方々に若干の補償がなされることになりました。ことにこの遺家族に対して交付されます公債の問題につきましては、この公債の換金という事柄について、さきのこの予算委員会におきましても問題に取上げられまして、大蔵大臣のこれに対する方針などを強く要望された点もあつたと記憶いたしておりますが、この問題について大蔵大臣は最近かなり具体的な言明をされたようであります。たとえば国民金融公庫から、それに対する同割かの換金について具体的な措置を講じようというようなことも、参議院の委員会などでも言明されたように私は聞いておるのでありますが、この問題は非常に重要なことでありますので、その後大蔵大臣において、そういう今日まで言明された通りに、今後その公債の換金について具体的に実施する意向であるのかどうか。また具体的に実施するとすれば、どの程度にどういう形でこの問題の解決に当られようとするか、その点をひとつ最後にお聞かせ願いたいと思います。
  220. 池田勇人

    ○池田国務大臣 交付公債を換金するという問題につきましては、多分あれは譲渡禁止をしたと思います。従いまして全額を換金するということは困難かと思いますが、一年すえ置き九箇年賦というものを短縮して渡す場合もございます。それから国民金融公庫としての生業資金の融資につきましては、軍人遺家族の方につきましてある程度優先的に考えたい。そのわくをどれくらいにするかという問題につきましては、今検討さしております。
  221. 川島金次

    ○川島委員 その遺家族の生業資金の場合に、別な面で生業資金を中心としての国民金融公庫の貸出しは、これはまあ最近やつておることでありますし、当然なことだと思います。ただ私のお尋ねいたしましたことは、最近大蔵大臣は、この遺家族に交付します債券を、担保といいますか、そういう形にできればして、国民金融公庫などから何らかの形で幾分か現金にかえてやられる道を講じてあげたい、こういうふうにあなたは言明されたのではないかと思いますが、その点はどうなつておるのですか。     〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕
  222. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそうは答えなかつたと思います。譲渡の問題を禁止するかしないかは研究しております。研究の結果譲渡は認めない。そうすると担保という問題も消えて参ります。たたそれが、今までの恩給証券のようなことになると困るがというので、研究の材料にはいたしております。しこうしてそうなつて参りますと、遺家族の人については、今まで以上に国民金融公庫の方で考えなければならぬ、こういうのでございます。これは国民金融公庫は、御承知の通り、額がきまつているものであります。そうして借入金といつたものも将来できますが、そのときの情勢によつて、軍人遺家族の方に対しまして特別に国民金融公庫を使つたらどうか、ちようど引揚者に対しまして国民金融公庫がやつておつたのと同じような方法で行くべきじやないか、こういうので検討いたしておるのであります。
  223. 川島金次

    ○川島委員 その場合にどうですか、国民金融公庫の全資金量のどのくらいを遺家族の方面の生業資金に充てるかというような、一つ明確なものがないと、なかなか実行が伴わないのじやないかと思いますが、その点はどうですか。
  224. 池田勇人

    ○池田国務大臣 その点を今研究いたしておるのであります。
  225. 川島金次

    ○川島委員 聞くところによれば、その問題について大蔵大臣はすでにどこかの委員会で、やや明確な線を出したというふうに、私は聞いておるのですが、そういう大蔵大臣の言明が今までなかつたのですか。
  226. 池田勇人

    ○池田国務大臣 幾ら幾ら出すというようなことは言つた記憶はございません。それで、私がそういうことを言つたというので、国民金融公庫とかあるいは銀行事務当局は、なかなかこれはやつかいな問題だというようなことを言つておるようですが、それはいかぬ、ぜひこれを考えろ、こういつた程度でございます。どれだけどうこうするということまでまだきめておりません。
  227. 川島金次

    ○川島委員 この問題は非常に重要な問題ですからくどく聞くのですが、今研究中だと言われるのですが、この問題について最後的に決定的なひとつ政府の態度を明らかにしてもらいたいと私は思うのです。一体いつごろになつたら、この問題について、伏蔵大臣としての具体的な処置が明確になるのですか、その点をひとつ伺いたい。
  228. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは御承知の通り、三十億の一般会計からの繰入れと、資金運用郡から二十億、それで今までの分もやつて行かなければなりません。片一方でこの問題が引揚者の方にどんどん行くということになれば、これは交付公債と結びつくわけでありませんが、御承知のように八百八十億行くのでございますから、今のこの予定の五十億の繰入れの分をどの程度出すかということは、初めから私ははつきりきめられぬ問題ではないか。やはりある程度の段階から出発して、それで借入れの状況等、また他の中小企業者の問題もありますので、初めからこれだけだということをきめるのがいいか悪いかということについても問題があると思います。たといきまつてもそれを発表することがいいか悪いかという問題、やはり情勢を見ながらやつて行くということ、中小企業とかあるいは一般生業資金の申込みが減つて来たというときに、片一方をふやす、こういうふうにして行くのが実態に沿うのではないかと思います。
  229. 川島金次

    ○川島委員 周東国務大臣にお伺いしますが、日にちは忘れましたが、たしか数日前だと思います。安定本部で独立後における日本経済という問題をテーマにされて、従来の経済自立三箇年計画を大幅に改訂して、そうして経済自立五箇年計画というものを立てたというようなことが、具体的に新聞に出ておつたと私は記憶いたします。安本でそういつた作業が行われまして、しかもそれが大体もう終つたのではないかともいわれておるのでありますが、その問題についてこの機会にひとつ長官知つておりましたならばわれわれに発表してもらいたい、こういうふうに思うのです。それだけです。
  230. 周東英雄

    ○周東国務大臣 新聞にどういうふうに出ましたか、私も承知しませんが、安定本部におきましては、絶えず世界情勢の動きなり、経済の実態等を探索しつつ研究しておることは事実であります。またお示しのように、五箇年計画であるとか、内容がどうであるとかいうところまで行つておらぬわけであります。私は聞いておりません。
  231. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 山手委員
  232. 山手滿男

    山手委員 今、日本産業界が、いろいろな意味で大きな転換をしておりますし、終戦後初めて立つた真の意味でのピンチであると思いますし、大蔵大臣がさつき川島君の質問に対しての御答弁で、生産資金の融資だというふうにお話がありまして、私ども敬意を表する次第でありますが、非常にいろいろな問題が輻湊しておりますので、重複を避けて、私は二、三お伺いをしてみたいと思うのであります。先般政府がおとりになりましたところのポンド措置というものは、英国側の方でああいうふうに綿糸布の禁止措置までやつた現在におきましては、ほとんど意味がないじやないか、こういうことを考えるのであります。まず第一に、私は先般大臣から委員会でも御説明を伺  つたのでありますが、ポンド措置を大蔵省の方で非常に推進をしておやりになつたのですが、今後もなお維持して行くお考えであるかどうか、その点に  ついてお伺いをいたしたいと思います。
  233. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ポンド措置につきまして、閣議決定でああいう措置をいたしましたが、今までの措置をかえるというまで考えをまだ持つておりません。それどころではない、やはりポンドがたまつて参りますので、ポンドはできるだけ有効に使つて行こう、こういう気持でいろいろな策を練つておるのであります。
  234. 山手滿男

    山手委員 まだこれを廃止する意思は全然ないというお話でございますが、英国の方でああいう措置をとつておりますし、ニュージーランドそのほかもこれにならつて行くようなかつこうになつております。私はむしろ向うがもうすでに締め出しを食わそうという手を打つて来ているときだから、こちらの方からその間を抜けて出て行つて、輸出を促進をして行くという時代は、もう舞台がまわつて行つたのだというふうな考えを持つております。また業界の方もそういうことを非常に強く要望をしておるのじやないかと思う。向うが締め出しをして、そのために業界は今四割操短した、さらに五割か六割まで、通産省の方では、操短をしなければ国内価格は維持できないというふうなことを言つております。そこへ持つて来て、金融的な考え方で大蔵大臣がさらに向うの措置以上にわくをはめるということはどうであろうか、こういうことを私は考えるのでありますが、いかがでありましよう。
  235. 池田勇人

    ○池田国務大臣 イギリス政府が先般とりました策の効果はまだ出ておりません。ただ予算面で輸入を三十九億ポンドに減らすという措置ですが、まだその効果は出ておりません。しかしえてしてポンド地域は出たがるものでございますが、ただいまのところは変更する気持はないのであります。こういうものは世界情勢等を見て考えなければなりませんので、イギリスがこういう措置をとるための予算をつくつたからというので、すぐこちらの立場をかえようということは少し早過ぎると考えております。
  236. 山手滿男

    山手委員 この問題が日本産業界に与える影響は非常に大きいと思うのです。ここに繊維局長も来ておられますが、あのポンド措置によつてとられた実際を一つ一つ検討してみますと、非常に無理が出て来ておることがすでにわかります。具体的に例を申しますと、化繊の織物のごときは実績主義で割当てる、こういうことになつておりまして、実際に出したいという引合いがあつても、実績がないということになると困るので、プレミアムをつけてその実績を買つておるという事態が起きておる。     〔上林山委員長代理退席、委員長着席〕 しかも片一方においては向うの方で締め出しを食わされて非常に困難な状態になつて、全般的には非常に大きな打撃を与えられようということで、こういう例が非常に多いのでありますが、それでも大蔵大臣は、金融的な観点で全然考える意図はないというお考えなのですか。私はこだわつていらつしやるのじやないかというふうな気がするのですが、いかがですか。
  237. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう観点から言つたのじやございません。これは通産省とよく相談いたしましてやつておるのであります。そして通産省からこの問題につきまして変更を要するというふうにはまだ私は聞いておりませんし、まだやはり情勢を今のまま見て行くべきだと考えておるのであります。
  238. 山手滿男

    山手委員 この問題については先般時事速報などにも一部出ておりましたが、通商監がロバート氏に会つたときも、ポンド措置の問題についていろいろ語つて、できれば撤回を期待するというふうなことを述べておるということが、業界にも非常に心理的な影響を与えておるのでありまして、大臣もひとつ御検討願いたいと思うのであります。それについてもポンドがふえて行くというのは、やはり支払協定のドル・クローズの問題にかかつておると思つておりますが、ポンドについて今度ああいう措置をされた場合に、あらかじめ英国と御相談になつたのかどうか、私はその点を伺つておきたいと思います。武臣は先般通産省側の意見は、自分がこうせよと言つたのに聞かないから、半ば独断でやつたというふうなお話を承つたのでありますが、向う側とはどういうお話合いでおやりになつたかお伺いをいたします。
  239. 池田勇人

    ○池田国務大臣 このポンド措置につきまして、イギリス側と交渉はいたしません。ただ私がああいう措置をとりまして後のイギリスの新聞界では、日本としてはやむを得ないであろうという論評を加えておることは聞いたことがございます。
  240. 山手滿男

    山手委員 向う側と全然交渉なしにああいう措置をされたことは、非常に重大なことであると思います。例の十万九千トンの鉄鋼の輸出の問題で物言いをつけられた大蔵大臣でありますし、私はさもありなんと考えます。しかし考えてみますと、支払協定でドル・クローズをはずしたということは、ポンドを累積さす原因になつておるのであります。ドル・クローズを廃止してしまつた以上は、日本と英国との間の善意を信じてその運営を適切にやらなければ、とうていこの問題は解決するものではないと思いますが、この八月三十一日には支払協定が満期になります。どうしてもこの問題をあらかじめ英国と善意で事前によく打合せられないと、鉄鋼の問題のときもそうでありましたが、向うの手ごたえは存外きびしい批判があると思うのであります。大臣はドル・クローズの条項をこの次つけるように交渉されるのかどうか、あるいはそういう間のいきさつについて、どういうふうな考えで臨んでおられるかを御説明いただきたいと思います。
  241. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ドル・クローズの問題を交渉してからああいう措置をとるのがいいか、あるいはドル・クローズの問題を交渉する前に措置をとるのがいいかということは、議論のあるところでございますが、私はあの際向うと交渉せずに、こちらでこういう策をとることが適当であると考えたのであります。そうしてドル・クローズの問題につきましては、ただいま関係当局で、ドル・クローズの問題というのではございませんが、その前提条件で、たまるポンドをどうしようかということについては話合いをしておると思います。
  242. 山手滿男

    山手委員 この問題は非常に大切な問題だから、どうしても大臣にうんと押していただきたいと私は思うのでありますが、アルゼンチンのごときは非常にきゆうくつな対英関係において、ドル・クローズをうまく獲得をしております。新規にアルゼンチンにおいてすでにそういう状態ができておるので、日本はどうしてもドル・クローズをうまくものにしなければ、私はだめたと思うのであります。聞くところによると、向う側の方には日本側の腹がすでに読みすかされておつて、通産省の方の考え方と、それから大蔵省の方の考え方、日本政府の中の意見が必ずしも一致しておらないというふうなことも読んで、ドル・クローズをはずさなければ支払協定をしない、無協定状態に入るのだ、というようなことを言つておるのじやないかということも、消息通は言つております。香港、シンガポール、ああいうところは別といたしまして、その他の地域も全面的に実績主義で押えている。今のポンド措置の問題、そのほかドル・クローズの問題について、私はどうしても格段の決意をもつて処理をしていただかなければ、とうていいかぬと思うのでありますが、その間どういういきさつがあつたのか、大臣からお答え願いたい。
  243. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ドル・クローズの問題はなかなかやつかいな問題でございまして、ウォルター・リップマンという人だつたかと思いますが、世界的な評論家でありますが、一九五一年の課題は自由国家群の結成の問題、一九五二年は自由国家群内における為替問題であると言つているほど、大きい問題でございます。そこで今、日英だけでドル・クローズをやると申しましても、バトラーのあの政策等から申しまして、簡単には行かない。去年の八月の交渉の際におきましても、これは各省から出まして、通産省あるいは外務省、外為、大蔵省、いろいろな意見があつたのであります。しかしこの問題は、当時におきましては輸出の問題というものを非常に考えて、いわゆる輸出第一主義を強く考えておりました。一般の通貨の問題、いわゆる輸出産業の問題、いろいろな点でやつたのでありますが、結局ああいう結果になつたのであります。そこで先般の措置をとります場合におきましても、輸出制限で行くか、金融で行くかということにつきましては、いろいろ議論があつた。初め通産省の事務当局では金融で行くべし、大蔵省の事務当局は輸出制限で行くべし、こういうことをやつておる間に、十二月の初めころから信用状を三箇月にするというので、大阪でそれが漏れまして、急に出て来た。こういう問題があつて、これが伝えられて、各省も実は手をやいたのであります。しかし私はこの問題は捨ておけませんので、各通産省事務当局あるいは大蔵省の事務当局には、ほとんど相談せずに閣議へかけまして、了解を得て、それから交渉したのであります。その基本方針をきめてから後におきまして、通産省とも実際に合うような方法に持つてつております。そうしてまだ私はあれより強い手も考えておるのでありますが、情勢を見てでないと打てません。こういうことをやるということは、八月満期になりまする日英支払協定の前提にもなる、こういうので進んでおるのであります。
  244. 塚田十一郎

    塚田委員長 山手君にお諮りいたしますが、あと岡君がまだ残つておられますので……。
  245. 山手滿男

    山手委員 私はまだ今始めたばかりで……。
  246. 塚田十一郎

    塚田委員長 改進党の割当時間はもう十分に過ぎております。
  247. 山手滿男

    山手委員 簡単にやります。木内外為委員長あたりも、やれ輸出第一主義の反省だとか、是正、訂正というようなことを言つておる。こんなばかげたことはないと私は思うのです。やつぱり終戦後今日まで見返り物資をつくるとか、いろいろなことをやつて参りましたし、このことが日本の過剰人口の生活源になつておるとも言えるのでありますが、これが報復的に向うからほとんど全面的な綿布の輸入禁止措置を食つてしまうというようなことで、全産業が不景気になつて来る大きな原因をつくつておる。ところが輸出産業をやつぱり興して行かなければ、とうてい日本のこれからの国民生活の改善もできないし、いろいろな人口の問題の解決はとうていできないと私は思つておる。ところが今大臣のおつしやるように、向う側からはほとんど全面的に禁止されている。その上に輪をかけて、こつち側からも出させない。わくを厳重にして手続をむずかしくして、縛り上げて行く。こんな手をやつているということは、縮小均衡を大臣はお考えになつている。私は拡大均衡的に、輸出第一主義というものを推し進めて行くということ以外に、日本国民生活をゆたかにするという手はないと思うのでありまして、外為の委員長あたりがとどき新聞に書くところの輸出第一主義の反省などということは、これはばかげた愚の骨頂の政策であると私は思うのであります。ところでさつき川島君もちよつと触れたのでありますが、日本経済界、全産業界がすぐ操短だとかなんとかいつて騒がなければいかぬ、不景気になるというのは、やつばり戦争中に、これは大臣も同様にお考えと思うのでありますが、中間利潤の排撃だとかなんとかいうことで、問屋制度、卸制度というふうなものを公団などに置きかえて、片つぱしからやつつけてしまつた。そうして今日はメーカ1だけがどかつと大きくなつた。しかし問屋だとか卸量とかいうものは、もうほとんど壊滅状態になつて、資本金も小さいし、信用も薄弱だ。それですからスムーズに手形の書きかえができ、輸出がどんどんできる間は、それで国の経済機構はうまく動いておつたが、ちよつとしたこういう措置にぶつかると、すぐ大きな動揺を受ける。どうしても私はメーカーから問屋、卸屋、それから小売商、消費者という一つの系列を、大蔵省が金融をもつてこの際めんどうを見ていただくということを、真剣に取上げていただかなければ、いくらでも日本経済界は動揺し続けるであろうと私は思うのです。さつき大臣は、商社の再建の問題は大半片づいたようにお話をしておられましたが、私は、大半ではない、五大商社のうち、まあ一社は大体目鼻がついたが、あとの一社くらいはまず六分通り、そのあとはほとんど見通しがつかないというのが、現状だと思つております。次に来る八大商社のごときに至つては、こういうふうに商況が悪くては、商社自体も、銀行自体もなかなか踏み切れないのじやないか、こういうのが私は実態ではないかとにらんでおるのであります。ことに市中銀行あたりでは、非常に商社あたりに無理を言つている。それは重役以下全部退陣せよとか、合理化をせよと言つているが、なるほどそれは合理化をやらせなければいけません。いけませんが、これまで追い込んでおいて、大銀行から業務管理というか、経理管理というふうなことに名をかりて、専務を入れるとかなんとかいう非常にむずかしいことを言つている……。
  248. 塚田十一郎

    塚田委員長 山手君にお願いいたします。質疑の要点を簡潔にお述べを願います。
  249. 山手滿男

    山手委員 大臣にその辺のことは非常に努力していただいておると思うのでありますが、これは不景気対策とも関連があるのでありますが、さらにどういうふうに押して行かれるつもりか、この際非常に重要なことでありますから、御説明を伺いたいと思います。
  250. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国内の販売あるいは金融機構といたしまして、問屋の育成はけつこうでございます。私は日本の国情はそうあるべきだと思います。その点につきまして考えを進めております。国際的貿易の問題は、商社はお話の通りに一億か一億五千万円の資本金で、月に七、八十億、百億の取引をするというような実情であつたのであります。これは戦後の集中排除やいろいろな財閥解体でやむを得なかつたのでありますが、今後はそれを合併その他で力強いものにして行きたいというので指導をし、また現にそういつたふうな方向へ業界の方も進んでおられますし、それから貿易商社の問題につきましては、私はここでどれがどうということは申し上げませんが、おもなるものの中の二つは片づきまして、もう一つは今検討を続けております。しかしその他のものにつきましては、右へならえということで行くのでありまして、見通しといたしましては、数日中に見通しはつくと考えております。またぜひともつかせなければならない、こういうので進んでおります。
  251. 山手滿男

    山手委員 大蔵大臣にこの点も私はただしておきたいのであります。さつきのポンド措置と関係がありますが、貿易業界で今外商の地位というものが非常に重大になつて来ております。第三国人を含めての外人の立場が非常に重大になつて来ております。なぜかと申しますと、今日日本の五大商社あるいはそれに続く八大商社あたりは、ほとんど金融でやられてしまつている。だから紡績でも現金でなければ取引をしないというようなかつこうで行くし、新三品でほとんどやられてしまつているわけですから、どうにももう手がつかないその間隙をぬつて、しかも商品取引所は立会を停止するというような段階にまで行つている。紡績でも、ある大紡績あたりは、面子があるものですから裏口で投げ売りするということになつている。そこで外人商社が非常に前面に活動をするチャンスを得ているわけであります。ところが今日残念ながら日本に来ている外人商社で、ほんとうに実力あるまじめな商社はありますが、数えるほどしかない。割合に変なかつこうで、住所を転々とする、しよつちゆう名義をかえるというふうな連中ががんばつております。これはリッジウエイさんの方からも、課税の問題でメモランダムが出ておると思つておりますが、最近私はいろいろ調べてみました。調べてみたところが、外人商社でポンド措置で厖大な実績を持つている連中で、課税をされていない者が片つぱしからある。厖大な利益を得て、その実績・主義で割当てられたその実績でプレミアムまでかせいでいる連中で、プレミアムのほかに商売の利潤を莫大にせしめている者で課税もされておらないというふうな連中が相当にがんばつてつて日本人商社の間では非常に反感を買つております。この外人商社の課税という問題をどの程度にまで追究されておるか、私は大蔵大臣から所見を承り、かつ繊維局長からそういう声が業界から起つておるということについて、どういうふうにお考えか、あとからお伺いしたいと思います。
  252. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外国商社に対しまする課税の問題も、見つかりにくい点はあるかもしれませんが、いろいろな資料によりまして、法律の命ずるところによつてつておるはずでございます。
  253. 記内角一

    ○記内政府委員 外人商社が最近盛んに繊維業界に進出して来ておるということは、うわさとしても聞いておりますし、認証統計あたりでもその傾向を認められているのです。ただ貿易の自由の建前に立つておりますので、内地人、外人商社というふうな関係に区別をつけるわけには参りません。結局日本人の商社に力をつけて行くことがまず第一の眼目と考えておるわけであります。  税の問題につきましては、これはまた国税庁あたりとも連絡をとりまして、適当な方法で課税してもらうようにしてもらいたいと考えておる次第であります。
  254. 塚田十一郎

  255. 岡良一

    ○岡(良)委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法案の審議も最終の段階になつており、その間大蔵大臣の責任ある言明を得たいという問題が相当出ておるのでございまして、与党、野党を問わず大蔵省当局の御出席を求めておりますが、その機会も失われまして、審議がその点で非常に不完全になつております。その中でも二、三重要な点について簡潔に、デイスカッシヨン抜きに、ポイントだけをお尋ねいたしまして、大臣もまた御信念のほどだけを簡潔にお答え願いたいと思います。  第一の問題は、援護法案に盛られておる遺族一時金でありますが、この遺族一時金の性格についてであります。これは弔慰金として供与されるものであるか、あるいは恩給法特別制度審議会等の上申があつた場合、現在の大臣構想といたしましては、やはり恩給法あるいは国家公務員災害補償法等にうたわれておるような、いわゆる公務に基く一時金の性格を持つものであるか、あるいはまた弔慰金の意味を持つて供与するが、しかし一時金の意味をもあわせ含めるという取扱いをなさろうとするお考えであるか、まずこの主点の性格について大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  256. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御質問の点がはつきりいたしませんが、この点は法案に書いてある通りでございまして、弔慰金としてわれわれは出したい。しかしこの性質につきましては、厚生省所管でどうするということがはつきり法案に載つておるわけであります。将来の問題として軍人恩給法その他とどういうふうな関連性を持たすかということについては、審議会その他において検討される問題だと思います。
  257. 岡良一

    ○岡(良)委員 重ねてお伺いいたしますが、そういたしますと、恩給法特例制度審議会において、現在制限されあるいは停止されておるところの旧軍人の恩給あるいは増加恩給その他の扶助料等が復活されますときにおいて、その審議会の意向にかかわらず、現在一時金として計上されましたものは、大蔵大臣としては弔慰金として支出されるというお気持でございますか。
  258. 池田勇人

    ○池田国務大臣 軍人遺族の援護法でしたか、これは弔慰金と載つておつたと考えております。性質につ弐ましてはまだ法律的に検討いたしておりませんが、いろいろな一時金とか弔慰金とかあるいは変な言葉の燈明料とかいうものがありましたが、そういう性質については法文に書いておつたと思います。
  259. 岡良一

    ○岡(良)委員 遺族一時金については、援護法においては弔慰という文字は一つも書いてありません。従いましてこれが弔慰であるか、あるいは恩給法等にうたわれておる一時金であるかという、この一時金の性格が委員会の論議の種になつておつたのであります。そこでこの条文には何ら弔慰ということがうたつてありませんが、この八百八十余億の交付公債について査定を与えられた大蔵大臣としては、やはりこれは弔慰金であるという気持を込めて査定をいたされたものであるか、重ねてこの点を承りたいと思います。
  260. 池田勇人

    ○池田国務大臣 弔慰金を込めて出しておるのであります。しこうしてその法律的構成につきましては、所管大臣からお答えをいたしたいと思います。
  261. 岡良一

    ○岡(良)委員 その次にお伺いいたしたいのでありますが、実は一時金の支給範囲、また遺族年金の支給範囲等の拡大については、与野党ともにこれは非常なる論議の種となつておつたのでありますが、二百三十余億の予算のわくに制限をされまして、結果としてこの予算のわくを越えることは許されないというふうな建前からいたしまして、支給対象の範囲拡大が今難航をたどつておるわけであります。それでお伺いをいたしたいのでありますが、たとえば徴用工また船員、あるいは動員学徒等であります。国家総動員法に盛られておる学徒動員令であるとか、あるいは国民徴用令であるとか、あるいは船舶管理令によつて、船舶運営会等を通じて軍の輸送業務に従事したところのいわゆる公務に準じて、しかもその公務に基く事故によつて一命を失つた諸君、これは決して数は多くはないのであります。わずかに六万ほどしかありません。また昭和十二年七月七日以降昭和十六年十二月八日以前の戦没者でありますが、これも十九万でございます。しかし御存じのように、恩給法の場合において、年々の失権者が約三%というふうな数字が出ておりますので、そういたしますと、一時年金の受給者は全体の二〇%といたしましても、相当減るものではないかと思います。ところで、今われわれに提出されております要求の予算額では、交付公債は約百八十万柱ということになつておりまして、八百八十余億が計上され、利子も五十三億ということになつておるようであります。ところが、今度その支給範囲がぐつと狭まりまして、百六十六万柱ということになつております。これもなおわれわれの考えによれば、年に三%の失権者が出るということを考えますと、百五十万柱以下になりはしないかということも考えられるのでありますが、そういうような関係からいたしまして、実際に支給を始められた結果といたしまして、遺族一時年金について、予算に剰余金が起つて来る。この場合には大蔵大臣といたしましては、われわれが要求するような法律改正等を通じましてでも、この剰余金というものはこの給付対象の範囲を拡大して、昭和十二年七月七日以降太平洋戦争以前の軍人あるいは準軍人の遺族に対する一時金、あるいはまた国家総動員法によつて、公務に基く事故によつて死亡した者に対する遺族への一時金として、これを流用するというふうな措置をおとりになつていただけるかどうか、この点について大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  262. 池田勇人

    ○池田国務大臣 徴用工、学徒動員あるいは船員につきましては、将来研究するというので、将来の問題にしております。予算が余るとか余らぬとかいう問題ではございません。それから太平洋戦争以前のものにつきましては、多分厚生省の方では出さないということにきめたと私は聞いております。公付しない。そこで二つ同じような御質問になりましたが、片方は研究する、片方は一応出さない、こういうことにきめたと私は聞いております。
  263. 岡良一

    ○岡(良)委員 軍人、準軍人については、昭和十二年七月七日以降、要するに日華事変中の軍人、準軍人については遺族一時金は出さないことに法律はなつております。それから昭和十六年十二月八日以降のものについては、船員についてみますと、出すものもあり、出さないものもあるというかつこうになつております。これは徴用工についても同じであります。これを平均化してもらいたいという希望が、これも与党においても野党においてもあつたのであります。そこでわれわれいろいろ計数を整理いたしますと、どうも一時金の予算というものには、相当剰余が出るという見通しが立つたのであります。そういう剰余が出た場合において、これが剰余金としてまた再び国庫に収納されることになるよりも、われわれといたしましては、支給範囲の拡大をするという法律的措置を講じていただきたいという希望を持つておるのでありますが、そういうことについて、大蔵大臣といたしましては、この予算のわく内において活用し得るものならば、法律的措置を講じてでも、支給範囲の拡大をはかるという御意思があるかどうかという点を承りたいと思います。
  264. 池田勇人

    ○池田国務大臣 こういう問題は厚生大臣にお聞きになるのが本筋だと思います。そこで私が予算を組みます場合におきまして、厚生省の申出によりまして、これだけの柱になつて、こうなるのだ。しこうして徴用工、学徒動員あるいは船員につきまして、お話の通りあの従属関係で、出す船員もあるし、陸海軍でわかれておつたのでありますが、一応方針としては出さぬことになつて、法律案ができておるのであります。金が余つたから、法律案をどうするかということは、今までの予算の建前からいつて、法律できまり、予算できまつたものは、また再び国会の承認を経なければできぬと私は考えております。  将来の方針はどうかということになりますと、どれだけ余るか余らぬかわからぬのでありますから、私は今お答えすることは早世ぎると思います。
  265. 岡良一

    ○岡(良)委員 それではこの法案を厚生常任委員会が審議をする場合、また提案理由の説明にもしばしばうたわれておるのでありますが、一応二百三十余億というわくの中で——これは非常に乏しいので、国家補償の名に値しない、従つて援護という形でやるが、将来においては恩給法特例制度審議会等の意見の具申を待つて、さらに完全なものとして国の犠牲者に対する処遇の改善をしたいということを言明しておられます。ところでまた一方では、このままでこれらの犠牲者の遺族なり、あるいはそのために肢体不自由になつた君たちの処遇が、この法案の内容のままにして捨ておかれるのではなかろうかという杞憂も聞いておるのでありますが、ここでお尋ねいたしたいことは、この法案はきわめて暫定的なものである。将来恩給特例制度審議会等の意見具申を待つて、さらに国家補償あるいは社会保障の観点から、処遇については十二分の改善を加えたいというお気持を持つて、一応暫定的に二百三十億のわくを設定せられたものであるかどうか、その点承りたいと思います。
  266. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは考え方の問題でございますが、私がたびたび申し上げておりますように、遺家族の方あるいは傷痍軍人の方にまことにお気の毒でありますが、ただいまの財政といたしましては、この程度でやむを得ない。将来の問題としては、また軍人恩給等の問題もありまして、できるだけの考慮をいたそう、こう言つておるのであります。そうすると、これは暫定的ですぐかわるのか、長く続くかどうかということは、私ははつきり申し上げられないので、今申し上げたように、できるだけ今後考えて行きたいと思います。
  267. 岡良一

    ○岡(良)委員 この間恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案というのが出ておりまして、あの中では恩給法の勅令第六十八号によつて停止され、または制限されておる軍人、準軍人等の恩給、増加恩給、扶助料等は、そのまま停止ないし制限を来年の三月三十一日まで持続するということ、その間に恩給法特例制度審議会を設けて、それらの適正な規模における復元については、この審議会が意見をまとめるということが書いてありますが、この審議会が年度内にその意見をまとめた場合に、大蔵大臣といたしましては、その意見に沿うて、さらに適正な規模において、停止され、あるいは制限されておる旧軍人の恩給や増加恩給やあるいは扶助料等についての復元をする意思があるかどうか、この点を重ねてお伺いしたいと思います。
  268. 池田勇人

    ○池田国務大臣 恩給審議会の意見が出ました場合に、大蔵大臣はその通りやらなければならぬかということにつきましては、これははつきり申し上げられません。答申書を見なければなりません。しかして今回の処置との均衡その他につきましては、第二段の問題になりますので、審議会の答申がございましたら、先ほど申し上げましたように、できるだけ遺族のことは考えたいという気持でございます。答申を見まして考える。その考える根拠というものは、いろいろな財政経済の事情その他を見てやらなければならぬと思います。
  269. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは大蔵大臣のお考え、御意思のほどは、結局この審議会等の意見の具申があつたならば、国の財政力と見合う範囲内においては、遺族等に対する処遇に対しては、より改善を加えたいという御意思であると、そのように理解してよろしゆうございますか。
  270. 池田勇人

    ○池田国務大臣 より改善を加えたいということになるとかなり強うございますが、そういう場合につきまして、今よりもよくするように努力したい、こう申し上げておきます。
  271. 岡良一

    ○岡(良)委員 関連して、西村さんに御出席をいただきましたのでお尋ねいたしたいのでありますが、講和が発効いたしましたときに、信託統治となる北緯二十九度以南の南西諸島、あるいは小笠原諸島等の住民は、日本の国籍を持つておりますか。
  272. 西村健次郎

    西村(健)政府委員 日本の国籍を持つております。
  273. 岡良一

    ○岡(良)委員 日本の国籍を持つておるといたしますならば、この遺族等援護法案のごとき、いわゆる属人法は、当然適用を受くべきものだと思いますが、いかがでございましようか。
  274. 西村健次郎

    西村(健)政府委員 この海抜等援護法案の附則の二項をごらん願いますと、この法律は戸籍法の適用を受ける者について適用するということになつております。従いまして国籍はもちろんでございますけれども、戸籍法の適用ありやいなや、場合を限定しまして、かりに沖縄の人について考えますと、戸籍法の適用につきましては、結論を申し上げますと、適用はあるものというふうに考えております。従いまして遺族等援護法も一応観念的には適用あるというふうに相なるだろうと思います。但しここに少くも二つの条件があろうかと思います。一つは、適用があると申しましても、かりに沖縄に在住する限りにおいては、アメリカ合衆国を施政権者とする司法権、位法権、行政権に服することになりますので、かりにその立法権によりまして、日本の遺族等援護法の適用を排除するような立法的措置というものがとられました場合においては、適用があるといつても、現実にそれは観念的なものにとどまるということが言えようかと思います。もう一つの問題としましては、その問題も解決されたとしましても、もう一つ現実にしからば請求したり、あるいは支給したりする道が開かれるかどうかという問題もあると思つております。
  275. 岡良一

    ○岡(良)委員 それについて大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、恩給法にいたしましても、あるいはまたこの援護法にいたしましても、日本に国籍ある者、また戸籍法の適用を受ける者については支給するという原則が立てられておるのであります。現にたとえば遺族につきましても、奄美大島と沖繩で厚生省の統計では二万ほどあります。この間現地の住民の陳情を聞けば、三十万と申しておりますが、数字は別といたしまして、相当の人たちが遺族となり、また肢体不自由者となつて困窮しておるようであります。こういう場合に、今の法制局の御意見にもあつたように、政府として法律上属人法の性格を持つた法律を制定し、金品の供与をするということをうたつておりながら、しかも実際問題としては、それについていかなる形において金品を供与するかという手続、あるいはその相手方との交渉とか、そういういろいろの点に隘路があるようであります。しかしこれは将来の関係考えましても、十二分に政府としても考えなければならぬことと思いますが、大蔵大臣としましては、そういう場合、属人法として当然その適用を受け、従つて政府責任において、金品を供与しなければならないというような場合においては、それらを供与するための手続とか方法とかいうようなことについて、講和条約発効後においては、具体的にいかなる構想をお持ちになるかという点を伺いたいと思います。
  276. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは法律の命ずるところで、出さなければならぬものなら出します。その出し方につきましては、私はただいまのところ検討いたしております。
  277. 岡良一

    ○岡(良)委員 この点はやがて講和も発効することでありますし、現地の住民も非常に要求しておりますので、特にこの手続等については政府の方においても十分慎重にすみやかなる御研究を願いたいと思います。  なおあわせて承りたいのでありますが、川島君に対する御答弁では、年金特に交付公債は担保として取扱わない、こういうような大蔵省のお考えのようでありますが、昨日金融公庫の理事の方に御出席を求めましたときには、この方の御見解では担保としてこれを取扱う。それでは一体額面でどれだけの程度のものは貸付ができるのかというところまで話合いを進めておつたのでありますが、御見解が迷うように感ぜられますので、さらに大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  278. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は譲渡を禁止したと思います。私の記憶に間違いがなければ私は事務当局からそう聞いておるのであります。それから国民金融公庫は原則として担保貸しはしないのであります。いわゆる信用で貸しておるのが原則でございます。それは二百万円というような大きな金額につきましては担保貸しという制度を新たに設けることにいたしました。そこでどういうことを金融公庫の人がお答えしたかは私は知りませんが、そういう観点から金融公庫法の、改正をしたのではないと私は思います。融通証券にしないということを事務当局から聞いておりますから、私はお答えしたような結論になるのではないかと思つております。
  279. 岡良一

    ○岡(良)委員 実はその点でこの法律では一時金を受ける権利は担保に供することができないと書いてある。従いまして国民金融公庫の理事者の御答弁では、実質的にやはり信用の裏付としてこの公債を取扱うというお気持を述べられたと私は理解しておるわけです。問題はそういたしますと、そこで貸し付けたその金が十分に支払わないといういわゆる期限が切れたという場合に、金融公庫としては交付公債の取扱いについてはこれを所有し、あるいはこれを日銀をして買い上げしめるというようなことはできないという点に問題が残つて来ると思いますが、そういう点は何か法律的な措置を講ぜられて、そうしてこういう零細な生業資金を要求する遺族に対しても、生業資金と申しますか、生活資金かもしれませんが、冠婚葬祭等の場合の不時なものについては、こういう零細な援護措置を与えられておる場合においては、特別の援護措置が講ぜられてしかるべきだと思うのでありますが、大蔵大臣の御見解を承りたい。
  280. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほども申し上げましたように、国民金融公庫は担保貸しをしないのが原則でございます。私はそういうお答えをされた人は、国民金融公庫の精神について十分御理解がないのじやないかと思います。国民金融公庫というのは、担保があるから貸すとか貸さぬとかいう問題ではないのであります。ことに遺族の方なんかにつきましては、私はできるだけのめんどうを見なければならぬ。担保があるからどうこうという問題ではないと思います。従いまして、できるだけこういう気持で国民金融公庫は行くべきではないかと思います。それから特別に金がいるという場合に、規定の担保貸しはできませんから、そういう方々につきましては今の一年すえ置き、九年というのを短かくするという方法もあるのでございます。御承知の通り、これはやり方がなかなかむずかしいので、八百八十億のものを急激にやつて行きますと、いろいろな問題が起つて来ますから、よほど慎重に考えなければならぬと思います。     —————————————
  281. 塚田十一郎

    塚田委員長 この際お諮りいたすことがございます。先般委員異動の結果、本委員会理事は目下二名の欠員がありますので、その補欠の選任をいたしたいと存じますが、これは先例により委員長に御一任を願うことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 塚田十一郎

    塚田委員長 御異議がなければ、有田二郎君及び北澤直吉君を理事指名いたします。  本日予定いたしました議事を終了いたしましたから、これにて散会いたします。     午後五時四十九分散会