運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-02-14 第13回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十四日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 苫米地英俊君    理事 西村 久之君 理事 井出一太郎君    理事 川島 金次君       淺利 三朗君    井手 光治君       江崎 真澄君    江花  靜君       遠藤 三郎君    尾崎 末吉君       小淵 光平君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       北澤 直吉君    栗山長次郎君       小坂善太郎君    志田 義信君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       田口長治郎君    中村 幸八君       南  好雄君    今井  耕君       川崎 秀二君    中曽根康弘君       早川  崇君    平川 篤雄君       藤田 義光君    西村 榮一君       風早八十二君    山口 武秀君       横田甚太郎君    稻村 順三君       世耕 弘一君    石野 久男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         労 働 大 臣 吉武 惠市君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  保利  茂君         警察予備隊本部         次長      江口見登留君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         農林政務次官  野原 正勝君         海上保安庁長官 柳澤 米吉君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 会議を開きます。  昭和二十七年度本予算の各案を議題に供します。これより質疑を継続いたします。平川篤雄君。
  3. 平川篤雄

    平川委員 昨日腰を折りましたので、引続いて岡崎さんに御質問申し上げたいと思います。  一番最初にきのう第十二国会安全保障條約の審議にあたりまして、三木幹事長から吉田総理に詳細に聞きただしました問題について、お伺いしたのでありますが、その際岡崎国務大臣は、よく調べた上で答弁をするというお話でありましたので、その点について御答弁をお願いいたしたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今取寄せておるところであります。きのう会議でおそくなりましたものですから……。しかしきのう申した通り大筋において何ら違うところはないのであります。
  5. 平川篤雄

    平川委員 ここにあるのでありますが、ごらんになりますでしようか。取寄せられるに及ばないのでありますが……。私この問題については、ぜひはつきりさせていただきたいと思うのであります。というのは、大筋と言われますけれども、これは精神の問題ではないのであつて、ほんとうにこれは厳密にきめて行かなければならない問題だと思うのであります。われわれはこの質問におきまして、吉田さんに行政協定について白紙委任状を差上げておるのではない。この範囲においてやつていただくという希望のもとに、われわれはこれを承認いたしておるのでありますから、政的治責任において十分御考慮いただきたいと思うのであります。昨日も私の質問の中途で、岡崎さんはお出かけになつたのでありますが、おそらく行政協定の重大な問題で御奔走になつてつたのだろうと思うのであります。本日の毎日新聞を見ますと、またまたいろいろ詳しいことが出ておるのであります。今まで御質問いたしました問題についても、常にまだはつきりきまつてないというようお話であつたのでありますが、そのあとからからこういうふうに具体的な問題が出て来るということになると、われわれは非常に不安心である。そこで今日は多少重複のきらいはあるかもしれませんが、昨日までの行政協定に関する交渉の経過と、わかりましたことをひとつお話願いたいのであります。これは国民が非常に関心を持つておることでありますから、政府としても責任があると思う。どうか率直にお話を願いたいと思います。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今正確な資料は持つておりませんけれども、昨日までに話合いのできたのは、その都度新聞発表しております。たしかきよう新聞にも合同委員会、それから行政協定の改訂の問題、それから行政協定の終了の問題、この三点の話合いが原則的にきまりまして、起草委員会の方へ案文をまわすことにしております。その他会議があるごとに、その都度新聞に出ておりますから、ごらん願つたと思いますが、これはアメリカ側と、日本側と相談しまして、なるべく正確に両国民に知らせたいという考えから、発表文をつくりまして、これを新聞等に渡す。そしてそれについておのおの新聞の係官が説明をするのであります。その範囲においては、まつたく正確なものでありまして、それはその都度新聞に出ております。きよう毎日新聞記事を私も見ましたが、これはよく読んでみますと、いわゆる新聞観測記事であつて政府の当局なり責任あるだれかが言つたことではないことは、十分おわかりだと思います。今まで発表したことは、一々はここで申し上げませんが、新聞にその都度出ております。それが事実でありまして、今後もその通り進んで行くつもりであります。
  7. 平川篤雄

    平川委員 それでは、今毎日新聞記事観測記事だと言われたのでありますが、私はいろいろな方面からこれを総合してみますと、これは結末はこういうふうになるという予感が十分せられるのであります。だから私は防衛協定の問題は根も葉もない観測記事ではないと思うのでありますが、これは後に具体的に大橋さんなりほかの方を通じて、明らかにしていただきたいと思つております。  まずきのう意見の一致を見たという日米合同委員会の設置でありますが、これはこの発表文書によりますと、「行政協定運用実施にあたつて協議を必要とする事項を扱うため、日米各一名からなる合同委員会を設置する。同委員会代理委員で構成することもでき、また必要な下部機構を設けることもできる。」これだけのことでありますが、もう少し詳細な内容発表できればお話を願いたいのであります。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは協定ができたときにごらんになれば、よくおわかりと思いますが、それ以上のことはないはずであります。起草委員会でまだ起草をしつつありますから、文書は別としまして、内容としてはそれ以上のことは協定の中にはないはずであります。従つてそれ以上詳しいというものはないのですが、御質問の点はおそらく下部機構等の問題だろうと思います。これは要するに、施設とか区域とかいうもので、安全保障條約の精神を遂行するために必要なものが当然あるわけであります。これは東京とか横浜とかいうよう大都市にもあり得ますが、主として日本各地いなかの方にも散在するものと思われるのであります。従つてこれを一々管理したり、その他必要な事項を処理するためには、各地下部機構——と言うと大げさですが、それを処理する機関が必要になるであろうという考えから、下部機構をつくることもできるというふうに規定したいと考えております。しかしどこにどれだけ置くかということは、これはむろんその情勢によるのでありまして、まだ施設区域というものはどういうもので、どこに置くかということは、きまつておりませんから、わかりませんけれども、いずれにしても、そういう取扱いのところが必要であろうと考えておるわけであります。そこでそれはさらに入り用がなくなつたときは当然日本側にもどつて来るのでありますから、そういう点で入り用があるかないかということを見ることになります。従つて中央だけに合同委員会があつても、完全に職務が遂行できないであろうという考えから、そういう下部機構を必要な場合には置くという話合いになつておるのであります。
  9. 平川篤雄

    平川委員 日米各一名の委員ということは、これは相当精選をされた員数でありますが、一体どの程度の人、またどういう方面——たとえば外務系統の人であるとか、あるいはまつたくそうでない別の事務的な方面の人とか、いろいろこれはあると思いますが、大体お含みはどういうところなのですか。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実は合同委員会というのは、協定ができ上つてもすぐできないのでありまして、協定効力を発生するとき、つまり講和條約が効力を発生し、安全保障條約が効力を発生し、それで協定効力を発生するそのときに、任命されるものでありますから、まだ人選等については時間的な余裕がありますので、どういうふうになりますか、今きめておりません。それから一名というのは、これは法律的な言葉でないので、誤解を招くといけませんが、碎いて言えば、委員長みたいなものであります。その下に委員代理もおるし、それからアシスタントといいますか、何かたくさんおつて、それを代表して委員として出て来る人は一人だ、こういう意味であります。
  11. 平川篤雄

    平川委員 委員が二人しかいないのに、一人が委員長で、一人が副委員長で、だれもいない。そうすると、代理委員がやはり普通の委員としての権限を持つているわけですか。委員が二人きりではおかしいと思う。たくさんの委員を置くべきものを、名前だけ代理委員という名前になるのですか。それからなお委員は、総理大臣とかあるいは外務大臣というような人が充てられる予想であるか、ないしはそういう総理の意を受けた全然別個の立場の者がやるのであるか、ここらあたりをお聞きしたいのであります。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 要するに、委員の方は日米から一人ずつ出す。ですからこれは要するに日本側の方に関する限りは、委員長みたいな人が一人出ておるけれども、実際の委員会は大勢出て行くわけであります。それがつまり委員としてでなく、委員代理とかアシスタントとかいう名前で出るのであります。仕事はそういうところでしまして、決定は一人の委員でする、こういうことになると思うのです。別に不思議なことでもないと思います。それからその仕事は、いろいろなことがあると思いますが、おもなる点は施設区域等決定と思いますから、その方に詳しい人が出るようになるかもしれませんが、まだこれは今申した通り、何も決定しておりませんから、はつきりしたことは今言えないわけであります。
  13. 平川篤雄

    平川委員 吉田内閣と、それからもう一つ新しい独裁政権ができるというようなおそれはありませんでしようか。そういう点での心配があるのでありますが、内閣国会、そういうものに対する関係を、もう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そんな心配はごうもありません。十分総理なり主管閣僚なりの意を体して、働くような人が出て来るだろうと思います。
  15. 平川篤雄

    平川委員 先ほどの御答弁の中に、東京その他の大都市にも下部機構が置かれるということを言われたのでありますが、この前の行政協定についての第十二国会での論議の中で、われわれ一つの明らかにした問題として、市街地に米軍の駐屯はないというふうな解釈を持つているのですが、それとの関係はどうなるのでありますか、この一点をお聞きしたい。  それからもう一つは、昨日お伺いいたしまして、はつきりいたさなかつたのでありますが、いわゆる駐留軍保安隊との行動は、全然日米合同委員会は無関係なことに決着をしたかどうか、これをあらためてお聞きしておきたいと思います。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申したのは、下部機構東京その他の大都市にあるという意味ではなくて、駐留軍の使う施設大都市にもあるだろうけれども、主としていなかの方にあるのではないか。従つて大都市ならば県庁もあるし、東京なら政府もあるから心配ないのですが、いなかの方だと連絡機関が必要じやないか、こういう意味であります。それから行政協定は、あなた方の御承認によりまして、安全保障條約第三條に基いて行政協定をつくつてよろしいということになつておるのでありますから、その範囲において、つまりアメリカ軍隊がここに駐屯することについての配備等を定める、いわゆるデイスポジシヨンをきめるための行政協定であります。その範囲を逸脱することは、われわれは国会からしかられると思いますので、その範囲に限つておるわけであります。
  17. 平川篤雄

    平川委員 ただいま県庁があるからというお話であつたが、県庁合同委員会とはどういう関係があるのですか。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 合同委員会は別に関係がありませんけれども、県庁には渉外課とかなんとかいうのがありまして、たとえば水道が出なくなつたとか、ガスがとまるとか、あるいはどろぼうが入つたとかなんとかいうときに連絡する場合は、渉外課があればすぐわかるわけです。それではそれは東京連絡しなければならないとか、それはどこへ連絡しなければならぬとか、水道はどうする、ガスはどうするとかいうことができるわけです。ところがいなかの方へ行くと、なかなかそういう言葉のよくできる人もいないから、どこか一まとめにして、そう至るところに置くわけに行きませんけれども、外務省ではその必要上現在では連絡局下部組織を、日本国内に六箇所持つております。それが東北なら東北九州なら九州というふうに受持つて連絡機関にしておるわけであります。そういうような種類の少数の連絡の中心の場所のようなものが必要な場合には、置き得るようにしたい、こう思つておりますけれども、やつてみないとこれはわかりませんから、必ず置くというわけでもないし、置かないというわけでもない、実際の状況による、こういうわけであります。
  19. 平川篤雄

    平川委員 さつき軍事行動についての権限をお伺いしたけれども……。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ですからそれは行政協定の中では、アメリカ軍のディスポジシヨンをきめるのだ、こういうふうにわれわれは了解して、そういう意味国会から承認を受けている、こう思つておるのであります。だからその方法でやつて行きたい。従つてそのほかの問題は、これは行政協定には入つて来ないのである、こういうわけであります。
  21. 平川篤雄

    平川委員 行政協定の問題でもう一点お聞きしておきたいのは、米軍の将兵並びに米軍の駐兵に関する課税の問題はどういうふうに解決しつつあるのですか。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今まだ話合い中で、きまるというところまで行つておりませんが、大体こういう問題については、つまりある国の軍隊が他国の領域内に駐屯する場合、それはいろいろな理由で駐屯する場合があると思いますが、その場合に課税はどういうふうにするかということは、国際的の慣習で大体はきまつておるわけであります。つまりたとえば日本の場合によりますれば、アメリカ政府資金で支払われるもの、これに対しては課税しないというのが原則であります。たとえばアメリカ軍人でも、日本国内財産を持つてつて、その財産から收入がある場合には、これは日本の税を課す。しかしアメリカ政府からの支払いで給料をもらうとか、あるいはその他の施設の利用、あるいは施設の材料を積んで、日本で何か施設をつくるためにアメリカの船が入つて来る、こういうものについては、それがこの安全保障條約に基く駐留軍隊の用に供する限りは、課税をしないというのが通例であります。要するにこれは二重課税の問題にもなるのですが、つまりアメリカ軍人給料をもらう場合には、アメリカ国内所得税その他の税金がかかるわけです。それをまたこちらへ来て税金をかけられては困る、これは自然のことであります。そういう意味で、大体国際的の慣習ができております。できておりますが、いざこまかくなるとはつきりしない点もありますから、そういう点は今各個に研究して、お互いに話し合つておるわけであります。原則的に申し上げれば、国際慣習による、こういうことであります。
  23. 平川篤雄

    平川委員 一つの例でありますが、たとえば軍が鉄道を利用するような場合に、ただいまのアメリカの国の資金で支払われるものの中に入ると思いますが、そういう場合に通行税などは、具体的にどういうふうになるようなお見通しですか。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 つまりそういう点がはつきりしないので、協議しておるわけであります。これについても、アメリカ軍人であつても、公務でなくて旅行する場合には、これは当然普通の鉄道運賃を支払う。従つて通行税もその中に入るのが通例でありますが、公務でもつて旅行ずる場合、あるいは公務でも団体的に動く場合、そういう場合にどういうふうにするかというような点、やはり一つの研究の話題であります。話合いをしつつあるのであります。
  25. 平川篤雄

    平川委員 この点ははなはだむずかしい問題だと私も想像いたしますが、大体この安全保障條約の精神は、日本アメリカ保護国になつておるのではなくて、日米対等立場においてやることは明らかなのでありますし、また駐留米軍というものは、單に日本だけの治安の維持に任ずるのではないと思われます。こういうような点を考慮いたしまして、さよう税金等の問題につきましては、筋の通つた交渉をなさつて決定を見られるようにお願いをいたしまして、行政協定についてはこれだけにいたしますが、次に一体このアメリカ駐留軍は大体どのくらい当初においては駐留するのであるか、お見通しをお聞かせいただきたい。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはそのときどきの情勢にもよりましようし、それから構成にもよると思います。つまりたとえば陸兵をたくさん置いて、それで日本防衛に役に立つとか、陸兵は少くても航空隊等がたくさんいれば間に合うのであるとか、これはまた日本がどういう侵略の危險にさらされているかということによりましようから、時時刻々に違うと思います。またアメリカ駐留軍というのは、日本国内戰力だけで日本防衛するということではなくして、協定にも書いてあります通り、イン・アンド・アバウト・ジヤパン、日本国内日本の周辺における戰力によつて日本を安全に保障する、こういうことになりますから、たとえば沖繩とかグアムとか方々にいろいろのものがあると思います。それを総合した戰力になりますから、国内のものがどれだけということはそれとの比例によつてきまると思います。今のところ軍の機密と考えられるので、その程度の御説明でお許しを願いたいと思います。
  27. 平川篤雄

    平川委員 そこが非常に重大なところでありまして、大体この日本安全保障という問題だけ一つつて考えましても、これは相手のある問題なのです。要するに共産圏からの脅威というものに対して構想せられるものであろうかと思う。ですからこれは時々刻々に変化するということは私はわかるのでありますが、しかし同時にそれだからというのでほつておきましては、いつまでたつて日本のいわゆる協力をいたします行政協定の中にあります直接並びに間接の侵略に対する自衛責任漸増的に負うという問題、これがいつまでたつても答えが出て来ない。全体の構想というものがあつて、初めて一体どの部分をわれわれが分担をするかということが出て来なければならないわけです。今岡崎さんのおつしやるように、これは時々刻々違うのだということになれば、これはいつまでたつてもきまらぬということになる、そういうことは確かにこれは非常事態になればあると思います。しかし吉田さんも常々おつしやつておるように、第三次世界大戰は絶対に起らない、こういう観点において基本的な構想というものは、これはおありだろうと思う。現にサンフランシスコ会議おいでになつたときには、もうちやんと日本防衛計画というものは持つて行かれたのではないですか。そのときには何十万の軍隊が大体日本では必要である、あるいは教育施設としては元の江田島の海軍兵学校を使うとかなんとかいう、きわめて詳細な防衛計画が、もうすでにサンフランシスコおいでになるときには全権団が携えて行かれたはずだと私は思う。こういうような点で、今の岡崎さんのおつしやる点は、基本的にはうそではないと思いますが、日本国自体としては、はつきりきまつたものがあるはずだ、これは経済関係などがありまして、今非常に御苦心になつていることだと思うのでありますが、ひとつ日本政府が大体考えておる線をお明かし願えぬものでしようか、ひとつ聞かせていただきたいのであります。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはきのうも申しました通りアメリカ駐留軍というものがここにおりますのは、むろんこれは直接侵略等のときに日本防衛するということになりますけれども、それよりもむしろ平和維持といいますか、直接侵略をデイスカリツジするといいますか、そんなことはしてもどうにもならないのだという、ダレス氏の言われたデイターリング・パワーである。ということは、ここにおる軍隊のみならずアメリカ合衆国の全部の戰力というものが背後にあるのでありますから、日本侵略するということは、とりもなおさずアメリカ軍に対して攻撃することであります。それはアメリカに対して挑戰するにもひとしいということで、デイターリング・パワーになる、そういう考えでありますから、そういう点でわれわれはむしろ平和の維持という目的でここに置いておる、こう考えておるのが根本的な思想であります。  それからもう一つ日本自衛力漸増といいますか、そういう点で見当がつかないじやないか、こうおつしやいますが、これはほかの條件が許せば、独立国たる日本自分の国を自分で守るだけの力を持つべきであることは私は当然だと思います。ただ経済的にもどう、国民感情としてもどうといういろいろな理由があつて、それが今ただちに実現できない状況にあるということでありますから、われわれの自衛力漸増目的は、自分の力で自分の国を守るというところまでが目的であります。それはどれだけの人間がいるのか何とかいうことになりますと、これは経済の問題もある、装備の問題もある、その他の問題もあるし、今すぐには解決はできませんけれども、原則的には先のことかもしれませんけれども、いつかはそうなるべきであると考えております。とにかく自分の国を自分で守れないよう独立国というのは原則的にはあり得ないと思います。しかし今できないわけであります。
  29. 平川篤雄

    平川委員 ごもつともな御答弁ではありますが、日本立場としては非常に困るわけです。そこでもう少し掘り下げてお聞きしますが、さつき地上軍がどのくらいになるか、航空兵力がどのくらいになるか、あるいは海軍がどのくらいになるかということは、まだきまつていないというお話であるが、もし地上軍が少くなれば、そのときには日本警察予備隊ないしは将来の保安隊というようなもので、補うということになるのではないか、そこのところをひとつ聞かしていただきたい。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 予備隊とかなんとかいうものでわれわれのできるだけの範囲でもつて、国土の防衛に当るということは、これは当然でありますけれども、私の申したのはそうではなくて、アメリカ側考えとしては、地上部隊が少くてもそれを補う航空部隊が多ければ、合計の戰力は下らないとかあるいは増すとか、いろいろの関係があると思いますから、ただ何個師団とか、どのくらいの大きな部隊とかいうような勘定では行かないのであるということを申し上げたのであります。
  31. 平川篤雄

    平川委員 今見えておりますラスク氏は、あなたに対して日本は再軍備はしないとかいろいろ言つておるけれども、しかし事実上日本が再軍備をしたものというふうに考えて、今後の計画をすると言つておられはしませんか。その点はどうですか。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そのようなことは全然ありません。
  33. 平川篤雄

    平川委員 それでは岡崎さんの御見解として聞いておきたいのでありますが、将来保安隊に切りかえられるときに、現在の予備隊よりも人員の上において増加するというようなお見通しは全然ありませんか、これをお聞きした。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私の担当でございませんので、間違うといけませんが、今予備隊計画は十一万人にしたいということと了解しております。保安隊という名前が出ましたが、総理大橋国務大臣も、名前はまだきまつておらない、かりに何とかいう名前にということでありまして、今のところでは来年度に十一万人ということがかわるとは考えておりません。
  35. 平川篤雄

    平川委員 それでは現在のところその程度以上の御答弁は得られぬものと考えまして、その他の問題は今度は大橋さんの方からお聞きをしたいと思います。  それでは文部大臣に二、三お伺いをしておきたいと思います。これは大蔵大臣との関連の問題であるのでありますが、とりあえずお見えになるまで文部大臣だけの御見解を明らかにしておいていただきたいと思います。  政府は今回の予算を組みます上に教育を優先的に考えたということを申しておるのでありますが、文部大臣はその点は原則的に御確認でございますか。
  36. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 教育をすべてのことに優先させるというふうにはつきり言えるかどうか、それは非常にむずかしいと思います。優先しているとか、優先していないとかいうことを簡單に割切つてしまつて言うことは私はむずかしいと思います。しかし教育が尊重されていることは事実でございます。
  37. 平川篤雄

    平川委員 学校建築の問題についてひとつお聞きしたいのですが、二十七年度には〇・七坪の不足分の校舎を建築をするというので、文部省は五十七億御要求になつておると思うのであるが、しかも出ておりますのは三十四億、それから昨年のルース台風による被害が六十億と考えられておるのでありますが、これが四十一億の要求に対しましてわずかに十四億のみが査定をせられておると聞いておるのでありますが、これは事実でありますか。
  38. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 事実でございます。
  39. 平川篤雄

    平川委員 そういたしますと、六・三建築を本年で打切るということは、五十七億と三十四億との差額、少くとも二十三億というものは足りなくなるのでありますが、大蔵大臣は本年でこれは打切るというふうにおつしやつておる。なおこの前井出委員からお聞きしたのでありますが、当初のそまつなバラック建はもうすでに倒壊に瀕しておるというものもございます。あるいは小学校の建築はもう四十年、五十年という耐用年数を突破したものが、相かわらず起債のわくももらえず建て直らずにおるのでありますが、こういうものを総合いたして考えると、六・三予算というものを小学校建築も一緒に入れまして新たに年次計画をお立てになつて、来年度からもまた引続いておやりにならなければならないものと私は結論が出ると思うのですが、文部大臣の御見解どうでございますか。
  40. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 六・三建築は今年でもつて一応〇・七坪を完成しようと思つたのです。私は決してこの〇・七坪で満足するものではない。できるなら〇・九坪中学校は一・二坪というふうにしたいと思うのですが、それはさしあたつては〇・七坪に満足するとしても今年度の予算ではこれは完成するに至りません。おつしやいますように二十三億程度不足いたします。しかしこれは二十八年度においてあとを予算に組むということは、大蔵大臣も認めておつてくれるだろうと私は思つております。その他の老朽校舎とか、そういうような点については起債のわくも狭いし、非常に不十分なことで、これには私は新しい一つ構想をいたさなければ、このままではいけないと思つて心配いたしておることは、平川さんとまつたく同意見でございます。
  41. 平川篤雄

    平川委員 ルース台風の一般の公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法、この法律に基く災害の補助は中破以上のものに適用せられまして、しかも二分の一、三分の二というような大幅な補助を受けておる。しかるに今回のルース台風による学校建築は、補助率が小、中学校は二分の一、高等学校が三分の二、しかもこれが大破以上のものにしか適用せられない。これは非常に片手落なのである。一般の公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法というようなものにきめてありますものと、少くとも同じものをやらなければならないのに、なぜ学校だけをそういうようなきびしい率で縛つておるのでありますか。こういうことはちよつとあまり優遇されているとは言えないと思います。文部大臣の御見解を承りたい。
  42. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 それらの点につきましても、私どもは三分の二を要求したのですけれども、結局十四億ということにおちついたということは、私も残念に思つております。しかし教育全般として考えれば——そういう一、二点をあげれば他の方と比較して教育の方が不十分であるということはございますが、全般として考えれば、私は教育はやはり優遇されていると言つてもいいのではないかという考えを持つております。
  43. 平川篤雄

    平川委員 文部大臣御苦労なさつているのだから、その点は議論はいたしませんが、先ほど何か新しい構想を立てなければならぬとおつしやつてつた、この校舎の建築の問題につきましては、もう実に各町村が弱つております。ひとつ根本的な解決をしなければならぬと思うのでありますが、文部大臣はどんな構想をお持ちになつているのか、ひとつ明らかにしていただきたい。
  44. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 さしあたつていろいろ考えられるでしようが、私は義務教育費国庫負担制度というようなものを考えて、その中にはそういう年々必ず起つて来ることに必要な額を入れことを考えて行こうというのも一つ考えであります。そのほかいろいろ考えられるかもしれませんが、そういうことも考えて事務当局にいろいろ研究させております。
  45. 平川篤雄

    平川委員 文部大臣にそれではもう一つの問題を伺いますが、昨年の例の地方教員が国立教員よりたくさん給料をもらい過ぎておる。一般の地方公務員がそうなのでありますが、この問題でちよつと騒いだことがあります。その結末は、結局融資で一時糊塗するということになつたのでありますが、最後にはそれは国から出していただけるのか。あるいはやはり地方団体が支払つて行かなければならぬのか。小学校、中学校の教員のその問題について、どういうふうになつておりますか、経過をお知らせ願いたい。
  46. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 やはりこれは地方において考えなければならない問題だと思つております。
  47. 平川篤雄

    平川委員 この問題についてちよつと岡野国務大臣にお聞きしたいのです。あのときに地方公務員は幾ら幾ら、教育職員は幾ら幾らというふうに、高い給與をもらつているというので、一般にこれを切り下げろという御要求をなさつているようであります。ところがこれは大臣もよく御承知だと思いますが、現在一万円ベースであるとか、あるいは八千円ベースであるとか言つておりますのは、個人々々の給與の全体を合せましたものを頭割りにしまして、その出た商がすなわち何円ベースということになつている。一体一つの基準というものがあるものでも何でもないのであります。そこで三百五十何円というものの下つた給與ベースを考えるということになりますれば、政府の持つております給與ベースというものは、全部これを否定する。すなわち政府の国家公務員に対してあてがわれておりますところの給與表、こういうものを根本的に否定してかからなければだめな問題になつて来る。そういうような点で、私はとてもこのお話はでき上つたものでも何でもないというように思つてつたのでありますが、その点について岡野さんはどういうふうにお考えになつてあれは御指示になつたのですか。
  48. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。給與ベースの算定基準はなかなか、ものさしがむずかしいのです。ですから国家公務員の給與ベースが幾らになつているか、いろいろ考え方もありましよう。しかしあの当時地方と中央と比較をいたしましたのは、大体全員で全額の給與を割りますと幾ら幾らになる。そうして国の方が幾らの平均になつている。そうすると地方の方とすると、それと同じようなやり方でやつてみますと、やつぱり四百六十二円とか三百七十五円、五百何十円というような差があるという一応の形式が出たのでございます。しかしこれは御説の通りにまつたくとりとめのない——とりとめのないと言うとおかしいですが、一種のものさしを基準に考えまして、そして大量観察した上で、同じ尺度で地方と中央とを比べてみますと少し高いように見える。また事実聞いてみますと高いところもあります。また地方によりますと低いところもあります。しかし全体を総平均しますと高いような感じがする。ところがその高いことについていろいろ異論がありますものですから、ただいま大蔵省なり、自治庁、地方財政委員会、文部省等、おもなる事務当局が寄りまして、もう少し嚴格に、納得の行くような給與の姿を見ようじやないか、こういうことになつております。  それからそれにつきまして、この前内閣として指示いたしましたのはこういうことなのです。国家の公務員でも、十分というまでに給與を上げて差上げるわけに行きません。これほど苦労して国家財政をやつているのだ。でございますから、平衡交付金として国家財政から地方に流す金は、やはり国家公務員と同じような率で上げてもらつた方が公平だろう。こういうことでございますから、平衡交付金算出の基礎といたしましては、国家公務員とほぼレベルを同じようにしてもらいたい。しかし地方の財源がたくさんございまして、国家公務員はそうかもしらぬけれども、私の方は財源がうんとあるのだからよけいやるのだとおつしやれば、これは地方自治の建前上、それでもいたし方ありません。しかし今までいろいろ教職員の特別の法でございますね、あんなものとか、また地方自治法によりましても、やはり中央と地方の官吏は、大体同じくらいな程度にした力がいいのじやないかというのが法の精神でありますから、地方に対する平衡交付金の財源としては、そういうことをまた言い得ると思いますが、一般の方式から行きましても、中央と地方は、やはり同じようにしていただいた方がいいという観念をわれわれは持つておりますが、事実はそう行つておりません。結局高いところもありますし、また逆に低いところもある。まあ大体そういうような状態になつております。
  49. 平川篤雄

    平川委員 今御調査中だそうでありますから、その結果に私は非常に期待をいたしております。もし政府の言い分が理不盡であつたならば、地方の公共団体が借金をいたして払つておりますこの分は、ぜひ国から費用を出して解決をするようにお願いをしたいと思います。そういうふうになさらぬ場合には、またあらためてお伺いをしたいと思うのであります。そうして今岡野さんのおつしやいましたように、大体給與というものは、特別な地域の問題等を別にいたしました以外は、平均をしている方が私はいいと思うし、ただいまの岡野さんのおつしやることに私も全面的に賛成である。ところが地方財政平衡交付金制度がとられまして以来、この原則がだんだんと乱れて参りまして、かえつてでこぼこがひどくなつて来ている。この問題はどうでございましようか。岡野さんといたしましてはどういうふうに解決せられたらいいだろうとお考えになつているか、お聞きしたいのであります。つまりやはり教職員で考えますと、全国で大体同じ仕事をしているのであります。ところが最高は一万何千円というようなところになつているかと思えば、最低は七千円くらいの平均になつている。これは結局平衡交付金制度の中に教員給というものを組み込まれた結果から私は起つて来ていると思うのでありますが、そこのところの御見解はどうでございましようか。
  50. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は御説の通りに、中央と地方と官吏の給與水準が大体同じに行くことがいいということは、これは全般的に申していいと思います。しかしそれにつきましてもやはり地方に完全なる自治を與えて、地方のことは十分地方でやつて行けということにしておりますから、地方の実情をまた無視するわけに行かぬ。そうしますと、今度都会地たとえば東京とか大阪のような所、また漁村、農村というような所については生活費も違つてましようし、その点に差があることは当然であります。しかしながら平衡交付金を出しますところの算出の基礎は、これは低いところに行つてもやはり国家公務員とレベルが同じような割合で出しております。それからまた高い東京、大阪のよう——東京、大阪には実は平衡交付金をやつておりませんが、しかしそれに準ずるような、財政がいくらか農村、漁村よりもゆたかなところというような所におきましても、同じような平衡交付金をやつております。そうして地方におきましてゆたかなところでは少し高い給與をもらう。それからまた低い地方によりましては低いものをやる。しかし国家が地方に対する待遇方法としましては、平衡交付金に関する限りは均一に算出して出しております。そこで私は教員に限らず、地方の財政状況から見まして、十分なる給與とかまた十分なる仕事ができて行きます情勢になつておりませんので、平衡交付金というものは制度として私は非常にいいと思いますけれども、日本の非常に大きな都会地とそれから非常に貧弱な何らの財源のない、事業のないような地方に対して、それを平衡するための平衡交付金ではありますけれども、これがほんとうの実情にしつくり合つていないのじやないかというような疑念も起きますので、私は地方税法も平衡交付金も実施後わずか一年半ばかりにしかなりませんけれども、今まで集まりましたいろいろな要請、陳情などによりまして、今後両方ともあわせて相当の抜本塞源的な改正をしなければならぬものと考えて十分検討もしておりますし、材料も集めてやつております。この成案ができますまでには相当の時間がかかると思いますが、私は御説の通りどうにか考えなければならぬものであるというように平衡交付金制度を考えております。
  51. 平川篤雄

    平川委員 全般としてはそういうことでございましようが、たとえば産業の計画などは、それぞれの地方に即して繁閑の差があつていいものである。ところが学校の教育は都市であろうと山の奥であろうと、これは同一の基準のもとに行われなければならぬ原則は、岡野さんも十分御承知だろうと思う。ところが平衡交付金法実施前の二十四年度と、それから二十六年度のこの実際の平均給與を考えてみますと、一方はこういうゆるいカーブで行つておるのに、片一方はめちやくちやになつておる。こういう事実は、要するに今申されたように、全体としてはこれは平衡になつておるかもしれませんが、この教育費がひもつきになつておらぬために、これに食い込んで行つておる。貧弱なところほど学校教育費の方へ入つて来るということになる。ですからこの問題をむしろ切り離してお考えになる方が、学校教育のためにもいいし、それから地方財政の上にも非常にこれはいいことになるのではないかと私は思うのです。ことに問題になつております厚生省関係の兒童保護費とかあるいは義務教育費の問題、これはどうしても別わくになさる必要があると思うのですが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  52. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私はそれについてはちよう平川さんのお説と所見を異にしておるわけであります。平衡交付金によつてもう少し平均運動並びに公平にまた待遇がよくなるようにして行きたい。生活保護費は平衡交付金の中に入つておりません。
  53. 平川篤雄

    平川委員 児童福祉費です。
  54. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 児童福祉費は平衡交付金の中に入つております。そこで生活保護費は平衡交付金の中に入るべき性質のものではあるけれども、あれを当初入れなかつたのは、生活保護ということに対しては、日本で初めての試みであつて、相当な準備をしてかからなければならぬ、そうして地方に平衡交付金をやつて、それがはたしてうまく行くか行かぬかわからぬというようなこともあつて、それであれだけを平衡交付金から抜いて国庫補助でやつておるわけです。兒童福祉というものは、まあ生活保護に比べますと少しスケールが小そうございますし、平衡交付金でやつてさしつかえないものというような意見で、それで平衡交付金に入つたものと私は伺つております。平衡交付金というものの建前から行きますれば、行く行くは生活保護費もやはり平衡交付金の中に入れなければならぬものというような建前で、平衡交付金ができておるのであります。ところがお説のように、日本の現状に対して平衡交付金法がしつくりと合つていないというよう情勢があるものですから、平衡交付金法をもう少し考えなければならぬということは、先ほどお説の通りでございまして、十分それを検討して、できるならば平衡交付金を今後もう少し拡充充実して、地方へほんとうの財政の平均がとれるようになるような制度にやつて行きたい、こう思つております。しかしそれにはもう一つ考えなければならぬことは、一方に地方税法というものがあります。この地方税法の都道府県に対するものとか、市町村に対するものとか、それから平均のとれておらぬというようなことがございますから、これは全部地方の財政全体として考えるべきもの、こう私は思つております。
  55. 平川篤雄

    平川委員 岡野さんに教育の問題を、これはひとつあなたの御信念として承りたいのでございますが、今も申し上げるように、くどいようでありますが、この平衡交付金法が行われてから、非常な差が現実に出て来ておるのです。それを今言つたような、今回これを義務教育費として認めて、年々莫大な予算をこれにあてがつておるのであります。しかも平衡交付金の中で国庫が負担をする率は、昭和二十四年度は大方六割六分負担をしておる。しかるに二十七年度の予算では、四割八分八厘しかしていないのであります。しかもそういうふうにだんだん国庫負担率が下つて来ておりますにかかわらず、知らない顔をしておられる。一つにはこういうアンバランスがそこらに出ておる。これはほかのものならまだりくつがつくと思いますが、義務教育というような問題ではあり得べからざる問題である、こういうふうにお考えになりませんか。もしもそういうふうにお考えになるならば、そういうふうな欠陷が出て来ることを、何かおとめになろうという努力が、もうすでになされておらなければならぬ。その努力がどういうことをなさつておいでになるか、ひとつ具体的に承りたいのであります。
  56. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 これはもうもともと、私といたしましては、先般問題になりました地方公務員の給與と、中央の公務員の給與がバランスがとれていないということから、教育方面のアンバランスが地方々々によつて出て来たということも発見されたわけであります。今事務当局が十分に検討いたしておりますことは、地方の公務員全体もそうでございますが、教員に対する給與に対しても相当実情を調査しまして、そうして何とか考えなければならぬと思つておりますが、しかしそれはまだ結論に至つておりません。しかし給與のことにつきましては、もう少し深く掘り下げて検討し、教員に限らず、ほかの方面のことも考えつつある次第であります。
  57. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 平川君にお諮りいたしますが、大蔵大臣、法務総裁も見えておりますので、なるべく午前中にあなたの御質疑が終りになるようにおはからい願います。
  58. 平川篤雄

    平川委員 文部大臣にお伺いする前に、今岡野さんにお伺いしておつたのでありますが、文部大臣として、今の岡野さんの御答弁をどういうふうにお考えになりますか。私は教育を愛する者の一人として、絶対に岡野さんの見解と異なるのでありますが、文部大臣はどのようなお考えを持つておやりになつておるかお聞きしたい。
  59. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はやはり文教の担当者でございますから、おのずからそこにいくらか違いが出て来るかしれませんが、岡野さんはまだ研究されておるということでございますから、私の考えように多分おなりになるだろうと思つております。それはやはりそういう義務教育というものは、国のやることでございますから、それがだんだんに、年々にアンバランスになる、俸給がアンバランスになるばかりではなく、教員の密度が非常なアンバランスになるというようなことは、これは義務教育としてはとうてい許すことのできないことでございます。私は文教の担当でございますから、岡野さんと立場の違うところもありますが、だんだん岡野さんが私の説にお近づきになることと確信いたしております。
  60. 平川篤雄

    平川委員 文部大臣にもう一、二点お伺いしておきたい。最近教職員の給與の問題につきまして、全般的な待遇改善がわれわれは必要であると考えているのでありますが、現状におきましての不均衡をたてにとつて、大学、高等学校、中小学校、それぞれ給與法、三本建の給與法をつくつてほしいという動きが相当にあるようであります。自由党の皆さんの中にも、相当これに対する支持者があるようでありますが、私は現在のところ、小中学校は申すに及ばず、全部大学の卒業程度の学力を持たなければならないという原則が立つている。大体小学校であるから、中学校であるから、高等学校であるからというので、給與の差をつけるべきではないので、むしろ高等学校の先生なら娘をやるけれども、小学校の先生ならやらないというような風潮をこの際打破しなければ、教育の振興にはならないと思う。そういうふうな考え方から、理論的に何らこれは意味のない考え方である、三本建をつくるということは意味ないことであると私は了解いたしておる。やるのならば全体を高めて行かなければならぬ。こういうことであろうと私は考えるのでありますが、文部大臣の御所見を伺いたい。それから給食の問題は、あれほどの大問題になつておりますが、どういうふうに実施せられるお考えであるか、この二点においてただしておきたい。
  61. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 前の点につきましては、やはり教員の給與というのは、資格とか勤続年数とか、そういうものを先にしてきめるべきものだと思つております。  それから次の点につきましては、所管は農林省の方へ移りましたけれども、文部省の方にも給與課もあり、また指導費用もとつてありますから、実構においてはかわることなく継続できることと考えております。
  62. 平川篤雄

    平川委員 今の三本建の問題について、一度反対か賛成かというはつきりした御意思の御表示をお願いしたいと思います。  大蔵大臣がお見えになつていないときに、学校建築の問題で文部大臣にだけお伺いをしたのでありますが、ひとつこれを裏づけるために明確な御答弁をお願いしたいと思います。文部省の要求によりますと、二十七年度分の六・三建築費は、〇・七坪であつて五十七億になつております。それに対して大蔵省は三十四億の査定をしておるようであります。それからルース台風に関する被害といたしましては、四十一億の要求をしておるのに十四億の査定がなされておる。しかもその災害については、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法、これの補助率よりもきわめてしわいものが学校建築については與えられておる。こういう事実が明らかになつたのでありますが、大蔵大臣としましては、いつまでも学校建築で頭を痛めておいでになるのはおいやであろうと思います。それで各府県の教育委員会などが中心になりまして、公立学校施設の整備、防災及び災害復旧に関する立法をやろうという動きがあることは御存じであろうと思いますが、この問題につきましては二点だけお伺いをいたしておきます。  一つは、私どもの考えでは明年度以後も六・三建築費の補助は継続せられるのが妥当だと考えるが、その点はどうか。もう一つは、現在いわれておりますところの公立学校施設の整備、防災及び災害復旧に関する立法という問題についてはどういうふうな御見解であるか。この二点をお伺いしたいと思います。
  63. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予算の要求というものは、平川さん御存じの通りに相当厖大なものが出て来るのであります。今年度内政費は六千四百億円にとめましたが、当初の要求は一兆数千億であります。文部省も六・三制の問題でお話通りに五十七億円をお出しになつた。その根拠は、昭和二十四年以後における児童数の増加を見込んで要求されておる。大蔵省の方は昭和二十四年に〇・七坪で出発いたしまして、計画的にその分だけをやつて、そして昭和二十四年以後の児童数の増加の分は、昭和二十八年度でやろう、こういうことで話合いをつけたのであります。従いまして昭和二十八年度におきましても、児童数の増加による六・三制の校舎の分は予算に組まれることと私は考えております。金額はわかりません。  第二段の公立学校の問題につきましては、私内容を聞いておりませんのでお答えできません。
  64. 平川篤雄

    平川委員 時間の制限がありますので、ただいまの公立学校の施設等の問題については、ここで申し上げないことにいたします。ただ、ただいま大蔵大臣が言われますように、全体のわくが非常に大きいからこれを削るという、これはわかるのでありますが、実際に足りないものは、どうしてもこれは義務教育であります以上やつて行かなければならぬのでありますから、新しく年次計画を立てられる必要があると存ずるのであります。御研究をお願いしたいと思います。次に法務総裁にお尋ねいたします。最近共産党の非合法化ということが伝えられておりますが、そのような御意図がございますか。お伺いいたします。
  65. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まだその段階に至つておりません。
  66. 平川篤雄

    平川委員 団体等規正法というものができるということを言われておる。これは官房長官の方にもお尋ねしたい問題と関連しておるのでありますが、法務総裁も御承知になつておるように、共産党の活動ということもございましようが、同時に私どもが非常に憂えなければならないのは、非常な軍国主義でありますとか、超国家主義というようなものを宣伝する人が、最近の軍備の問題等にからんで相当出て来たように思われる。しかもそれは急速に団体が結成されておるような風が見えるのであります。これは団体等規正令によりますと、暴力的な超国家的な団体の解散ということは考えられておるが、個人というものについて何ら責任が及んでいないように思われる。これは私どものはつきりした一つの資料でありますが、正月の一日に、例の吉田さんに拒否されました久原房之助氏が、これは談話でございますけれども、中国新聞というわれわれの郷士紙の中で、「私は相もかわらず一国一党主義だよ」という談話を出しておる。これは罪にはならぬと私は思いますけれども、追放解除者の人の中でかような言説を行つておりますことは、本人として非常に政治的な責任を感じて大いに慎まなければならぬことだと思うのでありますが、それに類したことはいろいろ耳に入つて来る。たとえば日本の人口問題の解決は、朝鮮、満州、台湾等を復活させなければだめであるというようなことを言いましたり、戰争中のいろいろな問題——もちろんこれは皆の興味をそそる意味ではありましようが、話をして復古主義に陷らしておる。こういうことは始終われわれの耳に入つて来ることなのです。そこで法務総裁にお伺いしたいのでありますが、一体こういうようなものの取締りは、将来といえどもお考えになつておるのかどうか、現に共産党は個人個人が追放になつておるのでありますが、右翼団体は解散団体の幹部のみが追放になつておる。私は影響力の上から申しますれば、ただいま申し上げた事例のごときは、非常に大きな影響を持つておるのではないかと思うのであります。ひとつこの点についての御見解をお聞きしたいと思います。
  67. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいま極右のことについてお話がございました。むろん極右もわれわれは警戒しなければならぬと考えております。そこで追放解除者の問題、御承知の通り、追放解除者は政治活動をすることが自由になつたわけであります。これは個人として大いに慎んでもらわなければならぬと考えております。そこで問題は、そういう追放解除者が超国家主義あるいは超軍国主義というようなことを主張して、ある種の行動に出た場合、これはもちろん団体等規正令によつて違反になるのであります。その点については、われわれ十分警戒しなければならぬと考えております。申すまでもなく、われわれは中正な態度で極左的、極右的といわず、要するに法律違反行為に対しては十分に取締つて行くつもりであります。
  68. 平川篤雄

    平川委員 現在吉田さんの御言明にもかかわらず、五月選挙、六月選挙というようなことが伝えられまして、地方では相当な選挙戰が行われているわけです。ただいまのごとき言動が一種の選挙運動のような形において、あるいは座談会であるとか、講演会であるとかいうことが行われておるといたしますれば、その行為はやはり団体等規正令の適用の問題になりますでしようか、御見解をお聞きしたい。
  69. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 それは十分個々の行為を検討した上でなければ、私はそれが具体的に罪になるとかならぬとかいうことは申し上げられません。
  70. 平川篤雄

    平川委員 昨日岡崎国務大臣にお聞きいたしましたところが、それは法務総裁の問題だというので、これをお聞きしておきたいと思うのです。新聞日本自衛軍の海外派遣ということがちよつと出ましたので、これは絶対にそうしたことはないという御言明を得た……。     〔発言する者あり〕
  71. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 御静粛に願います。
  72. 平川篤雄

    平川委員 かりにそういうことが起り得るといたしますと、それは憲法改正を先に行うべきものであるかどうか。なお、いわゆる直接侵略に対して、実際に火器を使用して日本防衛をいたしますことは、憲法の改正に先だつてつていいものであるかどうか、法務総裁にこの二点についてお聞かせを願いたいと思います。
  73. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 日本予備隊が海外に出動するということは、あり得ないのでございます。従つて、そういう万一あればどうかという仮定の上に立つては、議論をしたくない。それからもう一つは、直接侵略の場合に、日本予備隊自衛的に活動した場合に、憲法の問題はどうかと、こういうことでありますが、これは国家の自衛力の発動でありますから、そういう場合には、予備隊たるとを問わず、われわれもまつ先に防衛の任に当るつもりであります。それでありますから、そういうことは憲法の問題にならぬと思います。
  74. 平川篤雄

    平川委員 大橋さんにお伺いしたい。ただいま直接侵略の問題につきまして、法務総裁のお言葉の中に、直接侵略ということは、憲法改正をせらるるまでもなしにやつていいというふうにお考えになつておるように、裏から解釈できるのであります。ところで大橋さんは、今までしきりに治安機構であるとかいうことをおつしやつておるのでありますが、ほんとうにこれは治安機構なのでありますか。直接侵略に向うものとしてわれわれは了解をしておるのでありますが、直接侵略に当るものは、やはり国内治安の問題として言葉をお使いなつておるのか、この言葉の使い方を、ひとつはつきりさしていただきたい。
  75. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊は何のためにあるか。これは国内治安を確保するためにある。国内治安を害しようとするすべての原因に対しまして、実力をもつてこれを排除するということが、すなわち予備隊の使命であると、こう考えております。従いまして、直接、間接、いかなる侵略であるとを問わず、国内の治安に対して有害な侵略がありました場合には、当然それに対しては、警察予備隊としてその使命を果さなければならぬ、こういうふうに私は考えております。
  76. 平川篤雄

    平川委員 直接侵略をやはり警察予備隊がやるということをお認めになつたようであります。私はこのことをこう率直にお話を願えるとは思わなかつた。従来の言い方では、ずいぶん何と申しますか、国内治安一本やりで御答弁になつてつたようである。  さて御承知のように、左派社会党は、予備隊の募集を妨げる運動をやるということを言明しておる。それに対して大橋さんは、無関心ではあり得ない、そういうようなことが行われるようつたら、取締るとおつしやつておられますが、どういう根拠でこれをお取締りになるおつもりでありますか、お話を願いたい。
  77. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これはおそらくお言葉だけの間違いで、御真意をどうこうということではございませんが、重大なことでありますから、まずもつてお断りいたしておきたいと思いますのは、ただいまお言葉のうちで、予備隊が直接侵略をやるということが明らかになつた、こうおつしやいましたが、予備隊が海外に対して侵略的に行くというような、そういう意味ではございませんで、国内においては、侵略であろうとなかろうと、あくまでも治安維持のために働くべきである、こういう趣旨であります。これはおそらくそういう意味でおつしやつたことと存じますが、重大なことと思いますので、特に申し上げておきます。  次に予備隊の入隊を妨げようとする行動に対していかなる取締りを行うか、こういうお話がございました。取締りというよりは、それに対しまして政府といたしましても予備隊の必要な人員を集めまするために、適当な方法を対抗して講じなければならぬ、こういうことでございます。それはすなわち、拒否運動というものを合法的に行われまする場合におきましては、これは取締るべきものではないと存じます。政府としましては、それに対しまして、さらに政府として合法的な方法によりまして、予備隊の応募者を集めるように努力をいたす、こういう意味のことでございます。
  78. 平川篤雄

    平川委員 この問題で、政府が拒否運動を合法的に押えようとなさるならば、明らかになさつておかなければならぬ問題が私はあると思うのです。それは再軍備であるとかないとかいうような段階ではないので、ただいまの防衛隊ないし保安隊というものが、一体どういう性格のものであるかということが明らかになつていないから、それでかような問題も起るのであります。     〔発言する者あり〕
  79. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 御静粛に願います。
  80. 平川篤雄

    平川委員 そこで私はその点について、この際性格を明らかにしていただきたいと思うのであります。大体今の直接侵略に対応する力であるという問題でありますが、これは重大な問題なので、総理にこれは安全保障條約との関連において、お聞きしてみなければならぬ問題が残つておると思うのであります。一体直接侵略というものに対応する性格は、場合によつたらまた海外へ派兵をせられるという事態も起るのではないか、それは国連協力ということを約束しておるのでありますから、その国連協力という線に従つて出て来るというような場合があるのではないかということ、これが一つであります。
  81. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この問題につきましては、昨日も外務委員会におきまして、やはり改進党の小川君からも御質問がございました。繰り返してお答えを申し上げます。  まず憲法上わが国が軍備を持てない、これは国内法の問題でございます。しかしながら国際法上は、わが国もまた独立国でございますから、独立国に與えられたるあらゆる権能を持つておるわけでございます。従いまして国際法上認められました自衛権というものはわが国も持つておると思うのであります。その自衛権の発動としていかなることが許さるべきであるかということは、これはひとつ別途に自衛権に関する国際法上の問題として、もし御必要があれば外務省なりあるいは法務府なりからお聞き取り願いたいのであります。私のお答え申し上げ得る事柄は、さような国際法的の問題にあらずして、国内法上警察予備隊というものがいかなる性格のものであるかという点でございます。これによりますと、警察予備隊国内治安を国内において守るというのが使命でございます。これが海外に出動するということは国内法上許されないところである、こう考えております。従いまして政府といたしましては、絶対に海外に出動するというような事態は、予想もいたしておりませんし、たといまたそういうことが他国から頼まれるという場合がありましても、それはお断りをいたすべきである、こう考えております。
  82. 平川篤雄

    平川委員 その点ははつきりいたしました。直接侵略の点についてでありますが、この平和條約の第三章安全、第五條のところに「(a)日本国は、国際連合憲章第二條に掲げる義務、特に次の義務を受諾する。とありまして、「(i)その国際紛争を、平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決すること。(ii)その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも愼むこと。」等という規定がございます。これは今おつしやつた直接侵略に対応する武力の発動というものと抵触をいたさないものであるか、御見解を承つておきたいと思います。
  83. 大橋武夫

    大橋国務大臣 海外からの侵略に対しまして、その国内におきまして国家が一切の力をあげて、この侵入して参ります無謀なる力を排除するということは、国家として当然認められましたところの自衛権の発動でありまして、この自衛権というものは国家の基本的の権利でありますからして、かような場合におきましては、ただいま御指摘になつた條項といえども、この権利を制限するものではないのであります。
  84. 平川篤雄

    平川委員 今日の午後に突発的にさような問題が起つた場合には憲法の改正も何もないでありましよう。われわれは竹やりでも何でも持つてやらなければならないことは明らかであります。しかしながら直接侵略に対応するものであるとして、防衛隊、保安隊というものがあらかじめ計画せられておるということになれば、やはり私は憲法なり、その他この條約の問題について今おつしやつたのとは私は違うと思うのでありますが、その辺の御見解はどうですか。
  85. 大橋武夫

    大橋国務大臣 あるいは先ほど私の申し上げましたことが言葉が十分でなくて、誤解を生じた点があるかと存じますので、補足させていただきますが、警察予備隊はあくまでも国内治安を確保するということを目的としてつくつたものでございます。直接侵略に対抗する手段であるということを主たる目的としてつくられたものではありません。ただ直接侵略のときに警察予備隊はそれでは絶対に使わないか、こういう御質問ように伺いましたので、それは法務総裁からも申し上げましたごとく、何ら武器のない一個人といえども、石をとつてでも戰うという場合におきまして、武器を持つた警察予備隊というものが何ら戰わないということはあり得ない、こういう次第でございます。
  86. 平川篤雄

    平川委員 ただいま警察予備隊は張子の戰車を目標にしてバズーカ砲の訓練をしておるのでありますが、国内で戰車がごろごろひつぱられる戰争の起る事態をやはり予想しておるのでありますか。
  87. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまさような危險があるということは予想いたしておりません。
  88. 平川篤雄

    平川委員 ただいま問題になつております防衛隊ないし保安隊という問題で、これは大橋さんはある機会に、防衛隊ということを総理はおつしやつたが、保安隊の方が適当だと思うとおつしやつたのですが、ここは微妙な点があると思うのでありますが、なぜ保安隊の方が適当なのでありますか。
  89. 大橋武夫

    大橋国務大臣 保安隊が適当と思つたからでございます。
  90. 平川篤雄

    平川委員 それは適当だと思つたとおつしやつておりますが、おそらくこれはこういうことだろうと思います。防衛隊というと、いかにも相手を引受けるようである。しかし保安隊と申しますと治安維持に近い言葉のニユアンスがありますから、そこが大橋さんのねらいであつたろうと私は思います。向うから與えられておるこの言葉というものはセキュリティ・フオーセスという言葉以外にはない。それの訳語として防衛隊よりも保安隊の方がよい、こういうことでおつしやつておるのでしよう。その点はどうですか。
  91. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊の切りかえの際に、いろいろ従来の経験にかんがみまして、規定上不備であると認められます点を、この際できるだけ改善をして行きたい、その際に名前も適切なものにいたしたいと考えたわけでございます。従いましてそれが英語にすると何になるか、それは私存じません。また向うから與えられた名前とおつしやいますけれども、私は向うから何も與えられておりません。ただわれわれが自発的に自主的に考えたことでございます。
  92. 平川篤雄

    平川委員 今そんなうそをおつしやつてはだめです。大体セキュリティ・フオーセスという言葉日本政府とそれから向うとの間にとりかわされている言葉じやありませんか。それをどういう訳語で言われているか知らぬと言う、そんなことはないのです。なぜそれではフオーセスという言葉をお使いになつたのですか。前の警察予備隊という訳語とは大分違うと思います。
  93. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実は私は何らそういう文書がとりかわされておるという事実を存じません。私はただ自分考えをもちまして保安隊という名前に改めることが適当であろう、こう申しただけでございます。
  94. 平川篤雄

    平川委員 ただいまのよう大橋さんの御答弁はだれも納得するはずはない。自分はその訳語なんか知らないなんてばかなことです。  次に明らかにしておいていただかなければならぬことは、やはり保安隊の性格の一つでありますけれども、いろいろなことが伝えられておる。たとえば予備役を召集するとか、あるいは現任者の任意退職を禁止するとか、階級を大将、中将、大佐、少佐とかいうようなものにするとかいうようなことが伝えられておるのでありますが、このようなことを考えますときに、当然われわれ考えなければなりませんことは、現在警察予備隊の隊員が受けております給與、あるいは恩給とかそういうものも含まれておりますが、そういもの以上のものを與えなければこれは集まつて来ないと思います。左派社会党に運動させなくてもやつて来ないと私は思います。そういたしますと、保安隊になりましてもあとにこうした人件費の方の、何と申しますか、変更も現われて来ると思うのでありますが、これはもしさような必要が起つた場合には、別個に補正予算をお組みになるおつもりか。あるいは現在の安全保障諸費、これは人件費は含まれておらぬと思いますが、そういうようなものからお出しになるのか、これは仮定の問題であるとは思いますが、御計画がないはずはない。ひとつ……。
  95. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御質問の趣旨は、今後警察予備隊の各個人の給與を上げるようなことがあるかどうか、また必要があつて上げる場合においては、それを補正予算によつて措置するかどうか、こういう御質問ように思います。政府といたしましては、現在警察予備隊の隊員の給與を上げるという計画もありませんし、さような必要が起るであろうということも考えておりません。
  96. 平川篤雄

    平川委員 ただいま、そういう問題は起らないと言われておる。そうすると、ただ名称あるいはその他のごく事務的な変化だけでとどまる、こういうふうにお考えになりますか。
  97. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど御指摘になつたような項目について研究はいたしておりますが、結論には到達いたしておりません。この警察予備隊保安隊に編成がえするということは、たびたび申し上げました通り予備隊創設以来今日までの経験に徴しまして、警察予備隊本来の使命を達成するために必要と認められる制度上の改善を行いたい、こういうだけのことでございまして、これによりまして、警察予備隊の根本的な性格がかわるというふうなものとは心得ておりません。
  98. 平川篤雄

    平川委員 ただいまのような御答弁で行けば、予備隊の性格はどこまでも国内治安である、それから保安隊もそういう根本的な性格というものはかわらない。そういたしますと、予算が提出せられるまでにすみずみまでの計画が立つはずだと私は思うが、国内計画というものがない。その証拠には、あなたが将来お使いになるのだろうと思いますが、安全保障諸費の中に、相当現在の警察予備隊、あるいは将来の保安隊等と称するものに充てられると思われるものがあるわけであります。これは内容は全然明らかにされていない。しかし国内の治安というものを考える、またまつたくこれは独立したことだとおつしやるならば、なぜその計画が立たないのですか。もうこれははつきりと数字が出るはずだ。そこでお伺いいたしますが、一体今後の警察予備隊、あるいは将来の保安隊と称するものは、アメリカと共同の防衛計画の一環として、まだはつきりしていないのではないですか。それ以外に私は予算はつきりしない理由はないと思うのですが、どうでございますか。
  99. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この警察予備隊の拡充にあたりまして、どういう点に力を入れ、どういうふうにやつて行くか、これはただいまいろいろ構想を練つておるところでございまして、未定の部分が相当あるわけでございます。従いまして、この未定の部分につきましては、警察予備隊費とせずに、安全保障費といううちに含んであるわけでございます。
  100. 平川篤雄

    平川委員 それがおかしいのです。大体日本の治安ということを考えたのだつたら、突発事故は例外的に考えなければならぬとして、大体の構想というものは、独自な立場で立つはずなんです。それを今どういうふうにやろうかなどということを考えておられるということは、一体何であるか。それはアメリカが飛行部隊をどのくらい持つて来るか、艦船をどのくらい配置するか、陸兵はどのくらいにするかということがきまらないから、きまらないのでしよう。それ以外には考えることはできない。もし大橋さんがただいまおつしやつたようなことをそのままにとりますならば、いかにいつて政府の怠慢であります、そんなものはきめてから予算は出されるはずであると思う。これはわれわれが予算をああいうふうな白紙委員状のような形で、昔の臨軍費のような形で提出せられておるものを承認するか、しないかの根本の問題に触れておるのでありますから、その点をはつきりとお聞かせ願いたい。
  101. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊といたしましては、できるだけ強力なものにする。しかし国の財政から見まして、経済的にやつて行きたい、こういうふうに考えておるわけでございます。従いまして、増員につきましても、これに伴いまする隊員の宿舎であるとか、あるいは演習地であるとか、こういうようなものは、現在ある程度アメリカ軍が占領軍として接収をいたしておるものもあります。これらが講和後において、あるいは日本政府の手に返されるということも予想されるわけであります。そういう場合におきましては、できるだけそういうものを予備隊が使うようにいたしたいと思つております。そういたしますると、比較的僅少の金額をもちまして相当なものが手に入るということもあります。しかしそういうものがはたしてどの程度われわれの方に返つて来るかどうかはわからないわけであります。返つて来なければ、それでは増員はやらないかというと、そういうわけにも参りません。どうしても増員をやるということになれば、これは新しく建築をするとか、あるいは演習地につきましては、必要なものは警察予備隊として独自に新しい候補地を見つけて入手する、こういうふうになつて来るわけでございます。この辺の段取り、計画等につきまして、きわめて多くの部分が未定になつております。この辺が安全保障費という費目を設けざるを得なかつた理由一つでございます。
  102. 平川篤雄

    平川委員 一体それはいつごろはつきりいたすのでありますか。ただいままでの御答弁によれば、この予算が衆議院を上りますまでには、はつきりしなければならぬ性質のものであるし、政府はそのようなことを国民に対して義務を負つておられると思うのでありますが、いつごろはつきりするのですか。
  103. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これはまだいつごろということを申し上げる段階になつておりません。
  104. 平川篤雄

    平川委員 よく自衛力漸増といわれるのでありますが、これはアメリカの駐屯軍の兵力の漸減ということと相関関係になつておる問題だと思う。それはなぜかと申しますと、アメリカの駐屯軍というものは、ただ日本の治安を守るだけではなしに、極東の平和というものに任ずることになつておるから、そういたしますと、予備隊というものが、今申しましたように、直接侵略をも想定しておるというふうに考えますと、当然これは一つの規模のもとに考えられることだと思うのであります。その規模の中において漸増とか漸減とかいうものがあるはずである。そういたしますと、私は本年度の予算ではかくかくのものしかできないということはありましようけれども、最終的な計画、こういうものについては、当然責任ある政府として御計画をお持ちになつておらなければならない問題だと思うのです。現に、われわれは、サンフランシスコ会議おいでになるときに、相当微細な計画吉田さんは持つておいでになつたということを漏れ聞いておるのであります。そういうことになれば、この全容を大橋さんはお知らせ願うことが必要ではないか。国民が非常に恐れておりますことは、国内経済力を破りはしないかということが大きな心配なのでありますから、そういう意味からいいまして、どういう御構想か、あらましでけつこうですからお聞かせを願いたいのであります。
  105. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊といたしましては、現在では十分でない。従いまして、来年度においては十一万に増強する、こういう計画を立てておるわけでございます。それ以上の計画はただいまございません。
  106. 平川篤雄

    平川委員 今のようはつきりしない御答弁をせられるならば、切りがない。そんなことは無責任なことでありまして、そのような十一万に増員するという計画以外にないなどということは、これは責任のある方の言葉としては受取れない。  そこでお伺いいたしますが、本日までの行政協定の行き方で参りますと、合同委員会というものは、日本警察予備隊等とは全然関係なしに、そういう仕事は受持たない。あるいはその駐屯米軍行動すらも合同委員会は受持たないということが、先ほど岡崎さんからお話があつたのですが、ただいまのように、これが直接侵略に対処する兵力であるということになるならば、その場合によつては当然統帥権の問題が出て来ると思う。そこで十二国会行政協定の問題について論議の際の吉田さんの説明は、アメリカ防衛力と国内防衛力というようなものは、行政協定の中の合同委員会的なもので両国政府承認の上で行われるということになつてつたわけでありますが、独立後の警察予備隊ないしは保安隊と称せられるものは、もし同一の作戰計画を持つて動かなければならない場合は、一体どこにその統帥権があるのか、これを承りたい。
  107. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊内閣総理大臣が最高の司令官としての責任を持つておるわけでございまして、それ以外にはございません。
  108. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 平川君に申し上げます。あと一問で結論をおつけ願いたいと思います。もう今日だけで一時間二十分やつております。(発言する多し)御静粛に願います。官房長官が見えておりますから、官房長官にもし御質問がございましたら……。
  109. 平川篤雄

    平川委員 岡崎さんに聞きますと大橋さんの権限だと言われるし、大橋さんにもよくわからないということになりますと、これはほんとうに計画なしでやつておられるのでありましよう。千八百億の予算というものがそういう状態で組まれておるということは、どうも私は納得が行かないのであります。それでは大橋さんに対する質問はこの程度で終りますが、政府が今後保安隊というものをほんとうにうまく運営して行かれようといたしますれば、もつと誠意をもつて明らかにされなければならぬ問題があるのでありますが、それがほとんどはつきりしないのであります。それは何かと言つたら、今国民は外国戰線で戰いたくないのです。今おつしやつたように、この海岸線以内で守るということについては、これはそんなに問題ではないのであります。ところがただいまの保安隊とか防衛隊とか申しますものが、だんだんそういうふうになつて行くのではないかという危惧がある。再軍備とか再軍備でないとかいう言葉の問題ではないのです。中心はそこにある。ここをはつきりさしていただかなければならぬのであります。それからそれに関連して、憲法上許さるべき自衛的武力というものの具体的な限界というものを、政府責任を負うて明らかにせられる必要があると思う。それから保安隊の制度はほんとうに民主的に運営せらるべき保障というものを明らかにしていただきたい。現在の吉田さんのもとでこれが運営せられるということについては、非常な危惧を覚えておるのでありますが、自衛力漸増内容を明らかにせられていただきたい。それの遂行が国民経済を破壊しないという、はつきりした科学的な説明を伴いました自衛力漸増の御計画をお示しにならなければいけない。それから自衛軍の行動によつて生じた各種の犠牲に対する栄典の供與とその国家補償を確実にやるということ、ただいまの軍人遺家族援護の状態ではお話にならない。なかんずく繰返すようでありますが、日本の青年を、日本国民を外国の戰線につかせないということについては、はつきりした保障をせられるということが一番重大な問題だと私は思います。どうかその点について本国会を通じて明らかにせられるようにお願いをいたします。大橋さんに対する質問はこれで終いたいと思います。
  110. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を再開して質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後二時三十三分開議
  111. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際念のため申し上げますが、財政法第十九條の規定に基く昭和二十七年度一般会計予算の附記事項に関しましては、本日の公報に掲載されてありまする通り、今回最高裁判所当局において内閣の概算決定に同意した旨、内閣より議長あて通知がありましたから御了承願います。  これより質疑を継続いたします。稻村順三君。
  112. 稻村順三

    ○稻村委員 けさ岡崎国務大臣平川委員に対して答弁したところによりますと、駐留米軍の兵力がどれくらいになるかというようなことに対しては今のところほとんどわからない。それでそうである限りにおいて、大体の予算というか駐留軍費というか、そういうものがはつきり計上できないのではないかというふうに考えられるのでありますが、そうなりますと、ここにたとえば防衛支出金とか安全保障費というような、こういう費用が行政協定の結果増額することになるのじやないか、こういうふうに私たち考えられるのでございますが、こういうことを大蔵大臣は予想しておるかどうか、その点御答弁願います。
  113. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今朝岡崎国務大臣が、米国の駐留軍の員数、装備はわからないということを言つたということにつきましては、私は存じませんが、私には米国の駐留軍がどれくらいおるかということは大体想像ついております。しかしこれは軍の機密に属しますから申し上げるわけには行きません。そういうことを前提にいたしまし防衛支出金を組んでおるのであります。しこうしてその内容につきましては、従来しばしば申し上げましたよう状況でございます。安全保障諸費の内容につきましても、財政演説に申しております。ただ問題は安全保障諸費のうちから、警察予備隊あるいは防衛支出金の方へまわし得ることを総則に規定しておりまするが、私もただいまのところでは、安全保障諸費から防衛支出金にまわすことは、ほとんどないという確信を持つに至りました。従いまして予算総則にそういうようなことを書いておりますが、防衛支出金は六百五十億円よりふえないという見通しを持つているのでございます。
  114. 稻村順三

    ○稻村委員 それでこれは岡崎国務大臣と大蔵大臣との間に大きな食い違いがございます。大蔵大臣は、防衛支出金を計上するにあたつて、大体の見通しはついているのだけれども、しかしながら軍の機密に関するから、この点は発表はできない。従つて発表することができないにしても、これ以上の支出がふえるだろうというようなことはないであろう、こういうのが御返答であります。しかるに岡崎国務大臣は、空軍がどれだけ来るか、あるいは海軍がどれだけ来るか、陸軍がどれだけ来るか、その配置のいろいろな関係もあるしするからして、こういうことについては全然わからない。わかつてつても軍の機密上言えないということと、全然わからないという答弁、しかも行政協定のその衝に当つている大臣がわからない、こういうふうな答弁であるのに、大蔵大臣は防衛支出金というようなものの計上にあたつては、大体においてその軍の兵力というようなものはわかるということになりますと、これはもう非常な食い違いであると思うのであります。  そこで私はもう一度別な観点からその点についてお尋ねしたいと思うのは、行政協定の結果、ここにある一定の費用が要求される、あるいは裏づけされるというような問題が起つて参りまして、それを国会が修正することができるのかどうか、もし国会が修正すると防衛協定によつてできましたところのその協定を訂正しなければならぬ、あるいはその協定が実行できない、こういうような場合がありましても、その際におきましては、やはり議会がこれに対して修正権があるのかないのか、この点につきまして、はつきりした御返答を願いたい。そこで実は木村総裁の出席を要求しておるわけですが、国内法と国際法との関係が、ここに大きな問題となつて現われて来ると思うのであります。その点に関して答弁する大臣はおらぬわけですね。
  115. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 大橋国務大臣と木村法務総裁は今呼んでおりますから、間もなく見えると思います。     〔「修正できるよ」と呼ぶ者あり〕
  116. 稻村順三

    ○稻村委員 おそらく私どもはできないと思つております。法律上の解釈と実際上の解釈とこの二つがある。従つて実際上の問題としてどうなるか、その政府の見解をお尋ねしたい、こう思つてつたのであります。  大蔵大臣に、予算のことについてちよつとお尋ねする前に、政府委員からでもよろしいのですが、予算編成上の技術に関することで伺いたいと思います。この前河野主計局長が、今度の昭和二十七年度予算の基礎となるべきところの物価につきましては、これは二十六年の十月が大体基準になつている、こういうようお話でございましたが、この物価という中に、政府の資料をいろいろ見ますと、政府の資料の中にも、東京卸売物価指数を見ましても、食用農産物とか、あるいは繊維品とか、化学製品とかあつて、そこへ持つて来て総平均、生産財あるいは消費財というようなことになつております。これは大体どこの指数をもつて基準として、この物価を定めたのであるかどうかということにつきまして、ごく大略でいいから御説明願いたいと思います。
  117. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 お答え申し上げます。予算編成の基礎になる單価といたしましては、政府の利用するものは非常に多数の物資にわたつておりまして、ここで一々申し上げることはできませんが、それまで調弁しております実績を基礎としております。つまり九月、十月における実績を基礎にしてやつておるわけであります。たとえば石炭で申しますれば、鉄道であればそのころの契約單価、そういつたもの。それから十一月から運賃料金が上りましたから、それはそういうことで組んでいるわけであります。
  118. 稻村順三

    ○稻村委員 それならば、これは予算編成上非常に重要なことですから、はつきり御返答願いたいのですが、生産財と消費財、私たちから見ると、政府事業は物件費の中の大部分は生産財じやないか、こう思うのです。消費財があつても、それは少いだろうと思うのでありますが、そうすると、生産財と消費財との割合は、大体どれくらいになつておりますか。
  119. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 どういう物を生産財と見ますか、どういう物を消費財と見ますか、いろいろ見方があると思いますが、そういつたようなとらわれ方でなしに、業態によつて個々の物資を見ているわけであります。鉄道とか通信とかいうことになりますと、建設勘定では生産財が多いと思います。普通の損益勘定では、大部分が消費財だと思います。たとえば石炭にしても、一律にはちよつと申し上げかねると思います。
  120. 稻村順三

    ○稻村委員 今の話を聞いていると、経済学的にいうところの消費財と生産財との区別を、河野局長はほとんど無視した返答のように思いますが、たとえば石炭が消費財だなんて言われるが、大体石炭が生産財だということは、これは明らかで、石炭が消費財になるときには、家庭におけるところの燃料くらいは、もちろん消費財という観念はできましようが、しかしこれが鉄道に使われる場合には、むしろこれは生産財として考えられるようなことになるのじやないかと思うのであります。それがもしはつきり区別がつかないものだとするならば、ここに出されているところの卸売物価指数その他の白銀の調査の指数などは、これは予算編成上においては何の役にも立たないという、こういう結論を持つてよろしゆうございますか。
  121. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 予算審議の御参考として出したのでありまして、消費財、生産財とかいうようないろいろな分け方があると思いますが、今鉄道の例がございましたけれども、終戰処理費で調達している約百万トン程度の暖房用炭というものは、これはおつしやる通り消費財になると思います。そういうような学問的な区別は別といたしまして、その調達しております最近の実績で組んでおるのでありまして、たとえば国鉄で申しますれば、六千四百カロリーをトン当り五千八十一円で組んでおります。それからレールは一トン当り四万九千円、枕木は一本当り六百四十四円で組んでおります。これが当時の調達実績であります。大体すべてそういうような調達実績を基礎にして組んでおります。もちろん物価指数も考慮に入れておりますが、その物価指数は、予算審議の参考資料というふうに御了承願いたいと思います。
  122. 稻村順三

    ○稻村委員 そうしますと、昭和二十六年度の当初予算を組んだのは、たしかこれは昭和二十五年度の六月、七月の物価を基礎として組んだというふうなことになつてつたと思うのであります。それをまた、大蔵大臣の説明によりますと、朝鮮動乱が起つたので、朝鮮動乱に対するところの事情も勘案して、多少の修正をした、こういうのが大蔵大臣の当時の説明であつたと思います。そこで私お尋ねしたいのでありますが、そうしますと、二十六年度の予算を編成したその時期の物価と、それから二十七年度の予算を編成した時期の物価との間に、どれくらいの差があるか。たとえば物価指数でもよろしゆうでございますし、また騰貴率でもよろしゆうございますが、その率をお示し願いたい。
  123. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 大蔵大臣は二十六年度の予算を組むときに、二十五年度の六、七月ということを申し上げられたことはないと思います。おそらくお間違いだと思います。九月、十月と申し上げたいと思います。その点は別といたしまして、二十六年度の当初予算に比較いたしまして、今度の二十七年度の予算がどの程度物価上りを見込んであるか、御質問はそうだと思いますが、これは物によつて非常に違うのでありまして、石炭で申しますれば、二十六年度の当初予算におきましては、六千二百カロリーでありますが、三千八百七十円ということになつておりますので、四割四分騰貴いたしております。レールは二万七千円、これが四万九千円で八割一分ばかりであります。それから修繕費、これは鉄道でありますが、修繕費は約六割五分上つております。郵政でも同様な資料がございますが、大体その程度で、三割ないし四割、一番上つているのは鉄関係で、今申し上げましたように、八割というようなものもあります。御了承願います。
  124. 稻村順三

    ○稻村委員 それでは大蔵大臣に質問いたしたいと思いますけれども、今度の予算が組まれるのに対しまして、非常にインフレーシヨンの進行というようなものを押えるということに、神経を使つておるように見られるのでありますが、国内においてインフレーシヨンの進行を押えようといたしましても、国際的に見てインフレーシヨンが進行する要因がだんだん顕著になつているというようなことが、日刊紙などにも見られるのでありますけれども、この点国際的なインフレーシヨンの影響というものが、日本に来るかどうかということについての大体の御見解を伺いたいと思います。
  125. 池田勇人

    ○池田国務大臣 まず御質問の第一の国際的のインフレーシヨンが来るかという問題、これはアメリカの軍事予算、あるいは英仏等におきまして相当軍備拡張によつて予算を増加いたしておりまするが、しかしその反面極力インフレーシヨンの防遏に各国とも努めておりますので、私はある程度の物価高は起るかとも思いまするが、大したインフレーシヨンは起らない、こう思つております。しこうして国際的にそういうような場合に、日本にそれがどれだけの影響があるかという問題につきましては、日本経済力が今後伸びて行けば、受ける影響も少いのであります。従いまして日本経済力を伸ばすように極力やつて行く。結局といたしまして、大した国際的のインフレーシヨンはないだろう。また日本にも大した影響はない。こう考えておるのでございます。
  126. 稻村順三

    ○稻村委員 日本のインフレーシヨンを押えるという意味において、大体聞くところによりますと、ことに新聞などに報ずるところを見ますと、日本予算に対して一応大きなわくをはめなければならないというような意向が、ドツジ氏あたりに非常に強く勧告されているというようなことが言われておつたのでありますが、そういうふうに一応日本予算に一定の限度の大わくをかけるというドツジさんの意見があつたかどうか。その点お伺いいたします。
  127. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昭和二十四、五年におきましては、関係方面の意向が相当強うございましたが、昭和二十七年度予算におきましては、八千五百二十七億円というのは私が独自にきめた歳出総額でありまして、指令を受けておりません。ただありとすれば、私が防衛関係その他の平和関係費は二千億円にとどめるということに対しまして、関係方面ではもつとふやしたらどうかという意見はありましたが、極力二千億円にとどめたのであります。
  128. 稻村順三

    ○稻村委員 そうしますと、大蔵大臣は物価高その他によつて、もし必要であるならば、大体大わくがきまつていないとして、財源さえあるならば補正予算を組むという、こういう建前を持つていると見てさしつかえありませんか。
  129. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ここで先ほどのお話から申し上げまするが、昭和二十六年度の予算を当初組みますときには、朝鮮事変の影響を入れずに、御承知の通り八月の初めに各省から出て来たのであります。しかるところいよいよ予算をつくり上げるとき、これは八月に内定いたしました閣議決定が十一月に相当ふえて来た。その理由としては、この前の国会で申し上げたのでありますが、今後の問題といたしましては、物価が高くなる、そして物価高に伴う自然増収があつたときに補正予算を組むか、こういう御質問でございますが、私は先ほど来申し上げておりますように、そう二十七年度においては物価は高くならないだろう、従つて補正予算は組まないつもりである。こうたびたび申しておる次第であります。
  130. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 稻村君にちよつとお諮りいたしますが、法務総裁は向うをはずして見えていただいたそうでありまして、もし先にやつていただければ、たいへん好都合に存じます。
  131. 稻村順三

    ○稻村委員 それでは法務総裁が来たそうでありますので、法務総裁に一応見解をお尋ねします。  今度の行政協定などというものによつてきめられたものが、それによつて予算の裏づけなどを必要とする場合には、日本国会という建前からするならば、その際にはこういうものをわれわれの立場から修正し、そして行政協定そのものも修正されるということが可能だというふうに解釈できるのであります。ところが実際上の問題といたしまして、大国と小国との関係において、こういう行政協定が結ばれたとき、その協定は国が一箇の履行の義務を負わされて来る。こういうことになりますると、簡單に国会国内法に基いて修正するといつても、なかなか修正できないような問題ができて参るのではないかと思うのであります。そうすると、その際には、われわれとしてはその問題を処理する上において、行政協定の結果が日本の政治の上において先行するのか、それとも国会予算審議というようなものがそれに対して先行するのか。この点われわれにとつて非常に大きな悩みになると思うのでありますが、この点に関しての法律的な解釈を、木村法務総裁にお尋ねしたいのであります。
  132. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御承知の通り政府は占領終了後の事態にかんがみましてこの予算の編成をしておるのであります。それで防衛支出金とか、あるいは安全保障費とかいうことは、すでにそれを予定して繰込んでおるわけでありますから、その範囲内において全部まかない得られることと考えます。但し行政協定の結果、将来また日本の国費が増加するというような場合においては、これはむろん国会で御審議を願わなければならぬ、こう考えております。
  133. 稻村順三

    ○稻村委員 きのう岡崎国務大臣の御答弁によりますと、行政協定は安保條約にきめられたことによつて、あれを批准することによつて国会政府に委託したのである、委嘱したのである、だからして行政協定の結果というものは国会に諮る必要はないのである、こういうふうにはつきり申しております。ただこれは国会に報告すればよろしいのだ。こういう議論でありました。そうしますと、ここできめられたところの協定というものは、これは国会に報告するだけで、国会はそれを委託事項だからのまなければならぬといえば、これに対するところの予算の裏づけというものも、これまた日本の国の義務履行の一つとして数えられるのかどうか。この点についての御見解を伺いたいと思います。
  134. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今申し上げました通り政府行政協定を結ばれて、それに要する費用というものを、あらかじめ考慮して予算に組んでおるのでありますから、その予算範囲内においてまかない得るということは、これは岡崎国務相もそう言われたことと考えるのであります。
  135. 稻村順三

    ○稻村委員 予算範囲内ということは、これは結局未決定なものであつて、これは仮定かもしらぬが、事実今後も起り得ることだと思うので、お尋ねするのですが、それに対して行政協定がまだ固まつていないので、想像の予算だというのが池田蔵相の答弁であります。そうしますというと、ここに想像の予算というものがあるとするならば、行政協定の結果というものはどうかというと、必ずしも私たちは予算的措置は今日はつきりできているというふうに言えないのであります。その際に一たび行政協定を結ぶというと、それが国の義務として予算的な裏づけなどということを別途として、これはどうしても修正しなければならぬのだというのなら、形はどうあつても、われわれにはどうも修正権が——修正の権利があると言うが、実際上は修正ができないことになるのでありますし、またこの行政協定というのは一応の取結びではあるけれども、しかし日本の国の予算というようなものが、この履行を不可能にするのであるならば、これは修正なりあるいは行政協定予算の面から否認すること、否認というか、修正ないしは拒否することができるということになるが、その点の法的な解釈は非常に重要な問題だと思うので、そういうことについての御意見を伺つておるわけなんです。
  136. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 行政協定に基いて将来支出すべき必要なる経費というものは、予算に組んでおるのでありますから、その予算範囲内において、すべて行政協定に基く義務を履行できるようにしておるのであります。
  137. 稻村順三

    ○稻村委員 そうすればこの予算外に、もしも予算外の何か協定に関する費用が出たときには、これは拒否するということができるという解釈なんですか。
  138. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 拒否できるということは申しません。もしもそういう場合において経費がはみ出すようなことが将来生ずれば、別に考慮するということであります。
  139. 稻村順三

    ○稻村委員 別に考慮するというのは、これはその部分だけ保留しておいて、そうしてあらためて行政協定、あるいは日米合同委員会なりにかけるべきだ、こういう解釈なんですか。
  140. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 そうではありません。その経費については、別に予算で審議されることになるわけです。
  141. 稻村順三

    ○稻村委員 そういうことは実は……。ここは大蔵大臣がいないからよくわかりません。どうも困りましたが、周東安本長官でもよろしいのですが、そういう場合にはどうかというと、補正予算を組むというのは当然だ、こういう結論に、木村法務総裁の御意見ですと、なるのでありますが、その通りに解釈してよろしゆうございますか。
  142. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点でありますが、いろいろ稻村さん御心配ようでありますが、私どもの方ではお示しのような場合は起らぬよう考えておりますので、今補正予算のことを考えておらぬのであります。
  143. 稻村順三

    ○稻村委員 どうもこういう法律の解釈は、ことに国際的ないろいろなとりきめの場合においては、非常に嚴密にしておかぬと、相当嚴密にやつたつもりでも、実をいうと解釈のいかんによつて、国と国との間に非常に大きな意見の齟齬を来すものなんです。それなのに、こんなに簡單にわかりやすいはずの議論がお互いにわかつていないということになると、行政とりきめをやる態度というものについて、私は実に政府の態度というものは了解できないものがたくさんあるのでありますが、幾ら押し問答しても、これはどうもこんにやく問答になるようでありますから、次に進みます。  もう一つ私木村法務総裁に聞きたいのでありますけれども、これまで賠償指定工場の中の一部分が、占領軍の直轄工場のように事実上管理されておつたということを聞くのでありますが、これが新聞によりますと、そのまま、むしろそれよりも規模が拡大して、直轄の工場が日本にできるというようなふうに書いてあります。そうしますと、その工場の労働者、あるいは進駐軍関係の労務者の労働條件の問題でありますが、この労働條件日本の労働者である限りにおきましては、労働三法の適用を受け、そして日本の労働関係法規の制約を完全に受けるのでありますか。進駐軍関係の労務者及び——これまで進駐軍関係の労務者というと、これは主として日本政府が雇つているという意味で、日本の労働法の制約を受けておつたのでありますけれども、しかし今度は進駐軍が直接直轄するということになりますと、この労働者というものが完全に日本の労働法の適用を受けるものかどうか。この点につきまして木村法務総裁、それからもしも労働大臣がおられましたら、労働大臣の御答弁を願いたい。
  144. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 将来進駐軍関係の設備の中に働く労働者については、これは当然に日本の労働法規は適用ないものと考えまするが、しかしながら、行政協定で、その点についてはおそらく十分に日本の労働者が保護されるような建前をとつて交渉を進められることと考えております。
  145. 稻村順三

    ○稻村委員 そうしますと、行政協定においてこの点に関するところのとりきめがありますというと、日本の法律の制約を受けない、受けないけれども、おそらく日本の労働者の労働條件に対しては相当の保護を與えるだろう、こういうふうな説明だと解釈してさしつかえありませんか。
  146. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まさしく御説の通りであります。
  147. 稻村順三

    ○稻村委員 法律上これは日本の独立という立場から言いまして、聞き捨てならぬ問題でございます。なぜかというと、私はたとい進駐軍が日本におりまして、日本の労働者を使いましても、これは日本国内において使う限りにおいては、日本の労働法の制約を受けるということでなければ、ほんとうの意味日本が独立したということは言えないのでありますが、そうしますと、そういうことは行政協定に関する限りにおいては、駐留軍関係はすべて治外法権だという解釈をしてよろしゆうございますか。
  148. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 駐留軍施設関係においては、まさにその通りであります。施設内においては治外法権という意味で、日本の裁判権もございません。
  149. 稻村順三

    ○稻村委員 そうしますと、日本の労働者の労働條件をこの際においてある程度つてやる、日本国民の労働條件を守つてやるというこの方法は、行政協定のとりきめというところに置かないというと、日本の法律によるところの限度における労働條件も確保するという保障はついていない、こういうふうに考えてさしつかえありませんか。
  150. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はさよう考えておりますので、行政協定については、十分日本の労働法規の適用になるように考慮されることと考えております。保護されるような道はとるべきものと考えております。
  151. 稻村順三

    ○稻村委員 これは日本の労働運動にとつて重要なことでありますので、私木村法務総裁が率直に意見を発表されたことは、日本の労働者の将来の対策にとつて、非常に重要な條件を與えてくれたものと思つております。  次に土地、建物を従来進駐軍として接収しておつたのでございますけれども、今度は駐留軍としてもやはり行政協定の結果、いろいろ接収することにもなろうと思うのであります。たとえば飛行場とか練兵場というようなものを接収することになろうと思いますが、飛行場とか練兵場はすでに開拓民などがほとんど大半開墾しております。もしもその開墾しておるところの農民が、その接収の場合に自由契約の売買によつては売らないという立場をとつたときに、これに対してやはり土地収用令のようなものを設けて収用するのか、あるいは行政協定のとりきめによりまして、やはり土地収用令に近いような形でもつて、これを接収するという形になるのですか、この法的な措置をどうするかについて、木村法務総裁の見解を聞きたいと思います。
  152. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 将来駐留軍が使用すべき家屋あるいは土地について自由売買が成立しない限りにおいては、これは強制できないのでありますから、行政協定が結ばれるとすれば、それに基いて立法処置は必要だと考えております。
  153. 稻村順三

    ○稻村委員 そうするとそういう場合を予想して新しく立法措置をしなければならないとお考えになつておるかどうか、その点を伺いたい。
  154. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御承知の通り現在は土地収用法というものがあります。収用法を適用してやるか、もしくはさらに他の立法処置を考えるか、こういうことです。
  155. 稻村順三

    ○稻村委員 そうしますと、廣川農林大臣が土地の坂上げはやらないという意見を発表しております。この土地の取上げはやらないというのは、自由売買ならばやらない、こういう意味に木村法務総裁の見解からいうとなると思うのであります。これは廣川農林大臣がいないので、そういうことを聞いてもおかしいのでありますけれども、農林省では廣川農林大臣のこの見解をどうお考えになつておるか。
  156. 野原正勝

    ○野原政府委員 農林省としましては、開拓地その他の農耕地をできるだけ避けるようにしてほしいということを申しております。また万一どうしても避けることのできない場合におきましては、その農民に対して十分なる補償をしてもらわなければならぬということをお願いしておるわけであります。今のところその点につきましては、まだはつきりした御返事をいただいておりませんが、あくまでも農民の立場におきまして、その犠牲を最小限度にとどめたいと考えております。
  157. 稻村順三

    ○稻村委員 それからもう一つ問題になると思いますのは、演習するということになると必ず大砲を撃つたりあるいはいろいろなことをして大きな騒音が出たりしまして、前の埼玉県の実例におきましても、飛行場の付近あるいは演習場の付近の鳥が卵を生まなくなつたとか、あるいは牛が乳が出なくなつたのでありますが、そればかりじやなくて、演習は練兵場ばかりでなく、よそへ出て練兵場よりも広いところで機動演習もしなければならぬ。そういうふうなことより受けるところの損害がありますが、これは日本の法律の上から行けば、当然補償しなければならぬということになるのでありますけれども、この補償に関しても木村法務総裁は、現在の状態のもとにおいて、もし行政協定が結ばれてそういうふうになつたとすれば、これは治外法権のような形になるので、とてもそういう補償はできないという見解をお持ちでありますかどうですか、その点の御意見を伺いたいと思います。
  158. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 そういう場合につきましては、あらかじめ考慮いたしまして行政協定のとりきめをいたすのであります。
  159. 稻村順三

    ○稻村委員 それでは木村法務総裁の御答弁によりまして、行政協定の中に演習あるいはその他によるところの民間の損害というようなものに対しては、賠償の義務が規定してあるかどうか、少くとも規定するように努力しておる、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  160. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 その通りであります。
  161. 稻村順三

    ○稻村委員 それでは海上保安庁の長官とそれから警察予備隊の長官に対して、これもごく技術的なことでありますので簡單にお尋ねしたいのでありますが、現在の警察予備隊並びに海上保安隊の装備、ごく大略でよろしゆうございますからどういう種類のものが主として一般的な装備として使われておるかということについての御答弁を願いたいと思います。
  162. 江口見登留

    ○江口政府委員 お答えいたします。警察予備隊におきまするただいままでの装備は、しばしばこの席でも大臣から御答弁したと思いますが、カービン銃という機銃でございます。それからライフル銃、迫撃砲、バズーカ砲、機関銃、これらが武器としての装備でございます。それ以外に車両ですが、ただいま三千両くらいございます。あらゆる種類の車両を含んでおります。通信機械も相当ございます。その程度でありまして、それ以外のものはただいまのところ使用しておりません。
  163. 稻村順三

    ○稻村委員 私この前ニュース映画を見たのでありますが、このニュース映画の中には迫撃砲ばかりではなくて、どうも歩兵砲とか野砲とかに近いようなかつこうのものを操縦しておる訓練の写真が出ておりました。これは警察予備隊は持つておらないのですか。
  164. 江口見登留

    ○江口政府委員 どういうニュース映画でありましたか、私存じませんが、おそらくそれは迫撃砲ではなかつたかと思います。
  165. 稻村順三

    ○稻村委員 警察予備隊で使つているところの装備のうちのバズーカ砲に対しては、大臣はここではつきりしたその使用目的を明らかにしておりませんが、このバズーカ砲は主としてどういうことを目標にして訓練しておるのか、その点もお尋ねします。
  166. 江口見登留

    ○江口政府委員 バズーカ砲は対戰車砲というふうに解釈される場合もあります。しかしわれわれのただいま持つておりますバズーカ砲程度では、なかなかそういう機能は十分ではないのであります。われわれの考えておりますのは、かたい建物によつた相手を射撃するとか、あるいはバリケードをこわすとかいう程度の作用をいたすものだと考えております。
  167. 稻村順三

    ○稻村委員 江口次長にもう一つお尋ねしたいことは、警察予備隊の演習地の問題でありますが、警察予備隊はすでに演習をやつておりまして、演習をやるために多少の損害があります。この損害に対しまして、たしか江口さんは、参議院でやはり同じよう質問が出たのに対して、今年は三百万円、来年は三千万円くらいを補償に計上しているというお話であつたのですが、それくらいなことで足りるかどうか。おそらく警察予備隊行動範囲内においての補償ということになれば、相当の額に達するのじやないかと思うのですが、それではあまり少な過ぎるように感じますが、どうですか。
  168. 江口見登留

    ○江口政府委員 二十七年度の予算に計上しております予備隊関係のいろいろな補償費には、いろいろな種類がございます。あるいは演習場獲得のための移転費だとか、そのための補償費とが、あるいは交通事故その他によりまして民間人に與えました損害の補償費とか、あるいは土地を購入する場合の購入費とかいろいろありまして、一応われわれは今計上しておる数字で十分ではないかと考えております。万一具体的な問題が多数生じて参りまして、特別の処置をしなければならぬ場合は、またそれぞれの方法をとりたいと考えております。
  169. 稻村順三

    ○稻村委員 警察予備隊が演習などをしまして、ある程度損害を與えるということは、昔なら軍隊というものがありまして、そういうふうな被害を與えるということも、また国としてやむを得ないというようなこともあつたと思うのでありますが、今日の警察予備隊はそういうふうな性格のものではないことは明らかでありますので、演習その他によつたところの損害というものがもしあつたとするならば、これは法律によらざるところの行動による損害と解釈される危險があるのでありますが、これに対するところの解釈を江口次長はどう考えておりますか。
  170. 江口見登留

    ○江口政府委員 警察予備隊行動によりまして損害が生じました場合は、それぞれ十分な補償をすべきものだと考えております。現にいろいろと補償問題が起つてつておりますが、農地の問題につきましては農林当局と相談し、その他の問題につきましてはそれぞれの当局と相談の上、十分な補償をいたしたいと考えております。
  171. 稻村順三

    ○稻村委員 この損害を與えたということ自身が、單なる損害ではなくして、これは警察予備隊の不法行為だ——演習地などに対するところの法律も何も、警察予備隊令にはおそらくないと思いますが、こういうようなものによつて演習したということになると、法律をつくらぬ先に演習したということで、いわゆる不法行為であると非難されて、もしかたがないと思うのでありますが、その点に関する次長の見解をお尋ねいたします。
  172. 江口見登留

    ○江口政府委員 警察予備隊の機能を発揮いたしますために、いろいろと訓練を行う場合があります。その訓練を行いましていろいろと損害が生じました際には、それぞれ十分な話合いで補償をいたしておりますので、それは不法行為ではないと考えております。
  173. 稻村順三

    ○稻村委員 それならば、そういう訓練によるところの損害というのは、一体どういうような法律によつてその損害をあえて起す行動に出たということが言えますか。その点をお伺いいたします。
  174. 江口見登留

    ○江口政府委員 目的を達しますために訓練を行うというのは当然でございますから、その訓練は決して間違つた訓練ではないと考えております。
  175. 稻村順三

    ○稻村委員 これは聞捨てならぬことである。目的さえ間違つておらなければ何をしてもよろしい、相手に損害を與えてもよろしいという観察がもしなされるものとするならば、私これは重大な問題だと思う。そうでなくて、警察予備隊がこれこれの訓練をするということになれば、どれだけの装備をもつてどういうふうな行動をするという建前によつて、そこから損害が出るとすればその補償に関する法律があるとか、そういうものが一応つくられてから、初めてその行動がなさるべきであると思うのでありますが、全然そういう法律の裏づけなしで行動から始まるというのはどういう意味か、私にはわからぬのであります。
  176. 江口見登留

    ○江口政府委員 警察予備隊令の三條におきまして、警察予備隊の出動する場合の目的を規定してあります。この目的を達するためには、やはり訓練ということがぜひ必要になつて参りますが、もちろん損害を與えるがために訓練をするわけでは決してございませんで、訓練を行つております最中にそういうことが起きますれば、それは十分に補償して行きたいと考えております。
  177. 稻村順三

    ○稻村委員 警察予備隊の訓練がだんだんはげしくなるようであります。ことに軍備と間違えられるような状態でありますから、この訓練がはげしくなつて来ていると思うのでありますが、それらに関しまして、これらの損害を補償したり、あるいはそういう訓練の損害を予想した何らかの立法的措置を講ずるという意思を今お持ちであるかどうか、それをお尋ねします。
  178. 江口見登留

    ○江口政府委員 予備隊行動によりまして損害を生じました場合には、適当な方法で補償いたして行きたいと考えておりますが、それをどういう程度にするかという金額の決定をするということは、立法上ははなはだ困難ではなかろうかと考えております。
  179. 稻村順三

    ○稻村委員 それでは海上保安庁の長官にお尋ねしますが、先ほど申しました海上保安庁の装備というようなものを、大体種類だけでもよろしゆうございますから、御発表願いたいと思います。
  180. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 海上保安庁の装備というお話でございますが、海上保安庁におきましては、現在船舶、巡視船その他の船を持つております。装備という意味はどういう意味かよくわかりませんが、現在におきましては各保安官個人がピストルを持つておるという程度であります。
  181. 稻村順三

    ○稻村委員 そうすると警察予備隊ように、機関銃あるいはライフル銃、カービン銃というようなものは持つておらぬということになるのですか。
  182. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 お説の通り何にも持つておりません。
  183. 稻村順三

    ○稻村委員 それでは大橋国務大臣が参りましたので、大橋国務大臣にお尋ねしますが、駐留軍保安隊——とでも言つていいし、まあ現在の警察予備隊でありますが、この警察予備隊とが協同動作を、しばしば行うことが将来考えられるのであります。この協同動作をやる場合において、どういう機構で協同動作をやるか。たとえばかつての弱小国と強国との間の協同動作ということになりますと、大てい弱小国に駐留している軍隊の指揮官の指揮下に置かれるというのが、普通になつておるのでありますが、今度の場合にはどういうふうなことが予定されているのか、その点をお伺いします。
  184. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊と駐留部隊との協同動作ということは、まだ全然問題になつておりません。
  185. 稻村順三

    ○稻村委員 これは今度の行政協定の結果きまるものと予想されるものでありますかどうか、その点お伺いします。
  186. 大橋武夫

    大橋国務大臣 行政協定につきましては、岡崎国務大臣からお聞きを願いたいと思います。私はこの点につきまして、何ら聞き及んだことはございません。
  187. 稻村順三

    ○稻村委員 警察予備隊漸増ということが、しばしば言われておりますし、また最近の毎日新聞の中に、駐留軍地上部隊は二年ないし三年後に撤退する、これが撤退後は保安隊漸増してこれを補強して行くのだ、その代行をするようにして行くんだというよう意味のことを書いておりましたが、これは事実でない、こう解釈してよろしいのですか。また事実そうなると解釈してよろしいのですか。
  188. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本が自己防衛によつて漸増的にみずから責任を負うようになるということを、アメリカが期待するということは、すでに安全保障條約のうちにうたわれておるわけでございまして、おそらくアメリカといたしましては、日米安全保障條約を締結するにつきましては、そういう期待を持つておられたわけでありましよう。またそういう期待をアメリカが持つておるということは、日本といたしましてもこれを認識いたしておると存ずるのでございます。しかしながらこれは日本の條約上の義務というべきものではないのでございますが、しかしこの條約を取結びました以上は、日本としては自主的に自己の判断により、自己の能力の範囲において、漸次自衛力漸増ということに進んで行く態勢を整えるべきであるということは、これは当然のことではないかと存ずるのでございます。従いまして政府といたしましても、二十七年度におきましては、海上保安庁において六千名の増、また警察予備隊において三万五千の増をいたしておるわけでございます。しかしこれは、将来アメリカ日本駐留軍を漸次的に減少させるということと、特に因果関係のある事柄ではないのでございまして、日本としましては、自主的にこういう増加をいたしたい、こういう計画をいたしたわけでございます。
  189. 稻村順三

    ○稻村委員 そうしますと、アメリカ軍が、漸次地上軍が撤退することと警察予備隊漸増というものとの間には、有機的の関係はないんだ、自衛力の上からいつて、われわれは警察予備隊漸増といつたんだけれども、駐留軍地上軍の撤退とは関係がないんだ。こういうふうに言いますと、その漸増というようなものが、駐留軍の撤退によつて生じたところの、いわゆる真空を埋める、こういう意味漸増しているんじやないと、こう大橋国務大臣は言うわけなんでございますか。
  190. 大橋武夫

    大橋国務大臣 駐留軍がどれだけ駐留するかということは、現在まだ行政協定においてもきまつておらないことでありまして、また私も、講和條約発効後にどれだけの人数が駐留するということは聞いてはおりません。しかしながら警察予備隊並びに海上保安庁の現在の勢力というものは、それにかかわりなく増強することが国内的に必要である、こういう考え方をもちまして増員の計画をいたしました次第でございます。
  191. 稻村順三

    ○稻村委員 これは言葉じりをとらえるようでおかしいのですが、岡崎国務大臣も、実を言うと大橋国務大臣と同じことを言つたのであります。ところが池田大蔵大臣は違うことを言つている。池田大蔵大臣は大体どれだけの軍隊日本に駐屯するか、どれだけの装備を持つた軍隊日本に駐屯するかはわかつている。わかつているけれども、これは軍機の秘密だから言えないと言うのです。これと全然わからないというのとは、国の政治の方針において、非常に違つて来る。こういう食い違いは、おそらく私の考えでは二人の——多数決でありますから、二人の人間がわからないというのだから、わからないことにしておきましよう。それはともかくといたしまして、なぜこんなことを私が問うかといえば、これがもしも駐留軍が撤退した場合に、その装備を全部警察予備隊が引受ける、あるいは警察予備隊の後身のものが引受けるというような方針で進んでいるということが、毎日新聞に書かれておつたのでありますが、そういう考え方でおるかどうか。そしてまた毎日新聞には御丁寧にも、それはもらうことになるのか、あるいはまたそれが債務となるのか、その後になつてみなければわからぬ、その後になつてからあらためて協議する。こういうことになると、これは進駐軍が撤退すると、その駐留軍が持つていた武器が全部警察予備隊、海上保安庁なりの武器として、装備としてそのものが残される、こういうことが考えられているのかどうか、その点もお尋ねします。
  192. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在警察予備隊が持つております武器は、すべて米軍から貸興せられておるものでございます。これらは米軍が撤退したときに置いて行つたものを貸してくれたのか、それとも米軍が特に貸すためにわざわざ日本に運んで来たものか、その辺の事情は私はよく承知いたしません。しかしアメリカから借りておるものであることだけは確かであります。将来の問題につきまして、今後駐留軍が撤退をする際に、武器を持つて帰るか、あるいは置いて行くか、そのことは私はまだ開いておりません。また置いて行く場合において、それを警察予備隊に貸してくれるかどうかということについても何ら聞いておりません。しかし今後といえども、増員をただいま計画いたしておりまするが、この分に対する武器につきましては、米軍が何らかの方法で使わせてくれるものと心得えております。
  193. 稻村順三

    ○稻村委員 まだはつきりしたことがわからない、これまでの事情から言えば、大体貸してくれるかもしれない、こういうふうな意見でございますが、ところがこれはカービン銃一丁ずつとか、あるいは軽機関銃、バズーカ砲——バズーカ砲となると、よほど違いますが、この程度の装備であればそんな答弁はできるかもしれませんが、しかし地上部隊と申しましても、大口径の火器もあるでしようし、高射砲も戰車もあるでしよう。こういうようなものがアメリカ地上軍の装備としてはおもなるものだと思う。これを借りるということになりますと、今はあなたの言う通り——私はそう思つておらぬのでありますけれども、あれは国内治安を維持する部隊であつて、決して軍隊じやないと言つてほおかむりできるかもしれない。しかし二年、三年の後には、少くとも軍隊になるよう自衛隊の基礎をつくることになるのでありまして、この点非常に重要なのであります。従つて警察予備隊がこういう近代的な装備を讓り受ける計画がないというだけでなくて、こういうようなものは治安だけならば必要でない、とお考えになつているのかどうか、これははつきりしておかないと、非常に国外の、ことにアジア諸国が疑惑を大きく持つことでもありますので、その点明確な御返答をお願いしたい。
  194. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊国内治安を確保するためのものでありまするので、警察予備隊において使用いたしまする武器は、その目的のために必要な範囲内のものに限るのは当然であろうと存じます。しからばいかなるものが必要であるかというのは、国内治安を擾乱する原因についてどういう擾乱の力ができて来るか、それに対する想定によつておのずからきまるものと存ずるのでございますが、ただいまのところは、御心配ような大砲というようなものは、まだ使つておりません。
  195. 稻村順三

    ○稻村委員 時間が参りましたので、いろいろ軍票問題その他についても質問したいことがたくさんありましたが、最後に一問だけ大橋国務相にお尋ねしておきたいと思います。  たとえば近い将来におきましても、現在の駐留軍が全部引揚げるときには、地上軍の装備の主要なるものは、治安を維持するならばいらない、かよう考えておるものでございますが、その点大橋国務大臣はどうお考えになつておりますか。
  196. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今後の武器につきましては、現在の考えといたしまして、できるだけ米軍の援助を得たい、こう思つておるわけでございます。従いまして、米軍において貸してくれる可能性がある武器につきまして、個々の品物について、その当時の状況から見まして、必要であるか不必要であるかを十分に判断いたしまして、必要なものだけを借りるようにいたそうと思つております。
  197. 稻村順三

    ○稻村委員 そうすると少くとも戰車、高射砲、対戰車砲などというものはいらないということがはつきり言えると思う。そういうものまで持つことを予想しておれば、いかにあなたがこれを否認しようとしても、二、三年後には、今のやみの軍隊から公然たる軍隊になるということを、明白に声明したことになると思うのであります。従つてそういう点につきましては、われわれとしてもあくまでこの政府の行き方について、そういうふうにならないように注意して行きたいと考えております。なお、たくさん質問したいことはありますが、時間が来ましたのでこの程度にしておきます。
  198. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 世耕弘一君。
  199. 世耕弘一

    世耕委員 最初に二、三点、安本長官に簡單にお尋ねいたします。この間参考人から聞いたのでありますが、いわゆる不要不急の建造物がかなり多数ある。しかも日本の製鉄産額の十倍くらいがそれに充てられておつたということを参考人が言つてつたのですが、そういう事実があつたかどうか、あるいはそれに対してその後の処置をどういうふうにつけられておるか、それを産業面にまわす場合は、どういう方面に配置されるか、これらについて御説明を承つておきます。
  200. 周東英雄

    ○周東国務大臣 鉄材が建築の方に非常によけいまわつておるではないかという質問でありますが、数量ははたして全体の三分の一かどうかよく承知しませんが、ともあれ鉄の生産されたものが、あまり大建築に使われる結果、価格等に影響を及ぼすこともありますので、これに対しましてはお示しのよう政府では不要不急の建築については、勧告によつて建築をとめるような方向をとつております。但し、これは大きな建築でありますので、ただいまのところ六大都市に限つて、そういう勧告による制限をいたしております。おかげで條件に合わない建築につきましては、申出の約八割程度のものは全部勧告に従つて建築を見合せることにしております。二割程度に当るものが何とかやらしてもらいたいと言つておりますが、これにつきましてもさらに進んで懇談をして、時期的に待つてもらいたいと思つております。鉄材につきましてはある程度あるのですけれども、しかし、これを使うことから、大建築におきましてはセメントとか銅とかいろんな面について、非常にきゆうくつな面が出て参りますので、そういうことからも考えて、これを勧告によりて制限をいたしております。将来の問題として、資金なり資材については、電気とか銅線は今後優先的に確保して行きたい、鉄等についても造船あたりには確保して行きたいと考えております。
  201. 世耕弘一

    世耕委員 ドイツの例が最近報道されておりますが、ドイツの識者並びに政治家は、むしろ建築を二の次にして、機械工業の方面に全力を注いでおる。そしてドイツの復興をはかり、最近においては、アメリカ市場における製品の新しいものは、むしろドイツ製品が多く販売されておるという情報を得ております。こういうことと比較いたしますると、日本はどうも建築が先になつている。しかもその建築が不要不急と思われるような建築、あるいは外資導入にすらさしさわりがあるような建築まで、認可したということで問題になつておる。これは大いに愼まなければならぬことじやないかと私は思います。なお今後の点についても注意願いたいが、ただ勧告だけではなかなかいけませんから、その処置についても十分考慮を払つていただきたい、こういうふうにお願いしておきます。  次にお尋ねいたしたいのは、航空計画であります。民間航空は今緒についておるようでありますが、ただいまの航空計画を見ますると、長距離的に多くの用途があるようであるが、むしろ国土に適したヘリコプター等の航空計画が、どうしても産業面、交通面の両方画から計画されてしかるべきである。こういう点について安本はどういう計画を持つておるかということが一点。  もう一点、ついでにお尋ねいたしたいのは、電力開発問題、これはかなり社会的にも大きな問題を投げかけておりますと同時に、今後日本の産業のあり方についての根本的な問題だと思います。長官が就任されてからいろいろな御計画があることを聞いて、ひそかに喜んでおるものでございますが、最近は何か公益委との間に意見の食い違いがあるともいうふうにも聞いているのですが、食い違いがどうあろうとも、政府の方針はどういうふうになるか、明確なことをこの際聞ければ、はなはだけつこうだと思います。
  202. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お尋ねの第一点でありますが、航空機生産についての計画をしておるかということであります。ただいまのところ、日本国内においてすぐに航空機の計画ということについて、まだ進めておりません。しかし講和條約等におきましては、産業について制限しておりませんし、何も兵器としての航空機の問題でなくて、お示しのように民間航空が盛んになり、今はアメリカの国の航空機を供與されておるような形ですが、だんだんおちつきまして、日本に民間航空でももつと発達して来るときには、おのずから日本の航空機の製造ということが起つて参るかと思いますが、ただいまのところは考えられておりません。  第二点の電力の問題でありますが、これはお話通り、今後の日本の産業の行き方を律する大きな問題であります。昨年の非常な電力危機のこともありまするし、私どもといたしましても、早急に電力の開発に力を向けるつもりでありまして、ただいま計画いたしておりますのは、さしあたり第一期計画、四年計画として三十年度までに電力を約七百六十四万キロワットを出し得る水力発電の計画を進めております。これに対して四箇年総額約四千五、六百億になつたかと思いまするが、そのくらいの資金計画をいたして、初年度二十七年度におきましては、約千二百億円というものを使つて電力の開発に当る。行き方といたしましては、開発の担当者としては、従来の九つの電力会社はもちろんのこと、自治体あるいは企業による自家発電というものについて、できる限り計画をその場所ごとに具体的に担当させるつもりでありまして、それに対してそれぞれ政府資金等の供給も考えております。しかしその中で只見川等で大きな箇所、または公共事業等によりまする多目的ダム、洪水調節とか潅漑用水とかいうことのためにつくられるダムというものを、電力発電に使うようにするというような場合におきましては、箇所を限つて、特殊な国策的な会社をつくりまして、これに担当せしむる、こういう考えのもとに今案を進めております。いずれ法案等が出ますれば、御審議をいただくことになると思います。従つてこれらに要する金として大体千二百億円の中で、約六百十億円に当るものが政府資金になるかと存じます。それから見返り資金約三百億、それから一般会計からの支出が五十億円、貯蓄債券による支出が六十億円、残りの二百億円というものが大体金融債ないし地方債でまかなう、こういうふうな行き方で資金運用部の金を借りる。そのうち百十億円は特殊な会社への政府出資というような形になるかと考えております。何にいたしましても早急にこれが開発を進めて参るために、政府は法案並びに資金計画を目下着々進めておるわけであります。公益事業委員会との間におきましても、別に根本的の相違はないのであります。ただその会社、特別機関の設置、方法について多少意見の食い違いがあるようでありますが、この点は何とか話はつくと思います。
  203. 世耕弘一

    世耕委員 電力開発については、ほかの事業よりも一番安全で、かつ収益的で、外資導入等には、かえつて電力開発が最も便宜であると思いますが、この点に関して外資導入に対する何か対策、並びに見込み等はお考えがございますか。
  204. 周東英雄

    ○周東国務大臣 具体的に申し上げる段階でございませんが、外資導入に関しては、ことに電力開発についていろいろと政府が努力いたしておることだけを申し上げておきます。何がしかの効果はあるのじやなかろうかと想像いたしております。
  205. 世耕弘一

    世耕委員 端折つて行きますが、これは労働大臣からもお答えを願わなくちやならぬが、当然経済安定に対する基本的な考えだから、安本長官からもお答えを願わなくちやならぬ。従来の日本の労働界の行き方は、多くは賃金鬪争が主になつて行われて来たようであります。しかしながら外資導入とか、あるいは生産上昇とかという場面、並びに経済の復興等の関係から見て、賃金鬪争と併行して生産鬪争が行われなくちやならぬと思いますが、その見通し並びに指導方針については、どういうふうなお見通しをお持ちになつておりますか、これは労働大臣からも御返答が願いたいと思います。
  206. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の生産鬪争ということは、どういうことを意味するか、ちよつと受取りかねますが、おそらくは世耕さんの御意思としては、日本の今日の現状から見て、少しでもよけい生産を上げようじやないかということで、のろのろしている使用者を鞭撻しても生産をあげようということの、いい意味における鬪争はなされなければならぬ、こういう御意思だと思いますが、これはまつたく私ども同感であります。いずれ労働大臣よりお答えがあるかと思いますが、私どもあくまでも講和條約発効後における日本の産業界の行き方に対しましては、労働者の保護ということに対しては、もちろん十分な考えを持つと同時に、労使というものがほんとうに手をつないで、少しでもよりよき日本経済界の発展のために盡してもらうように努力して行きたいと思います。幸いにして未稼動の設備をたくさん持ち、豊富な労働力があります。これに対して原材料の獲得と、必要な動力を確保するならば、おそらく戰前の倍近くの生産能力を持ち得るのであります。これを捨てておく手はないのであります。これに労資のしつかりした提携と、一方において保護を考えつつ、生産を上げて行きたい、かよう考えております。
  207. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私遅れて参りまして、はなはだ失礼でございますが、おそらくただいまの御質問は、いたずらに賃金鬪争というよりも、生産鬪争の面に力をいたすべきであるという御質問だと思います。今日の労働組合も、終戰直後のような状態から著しくかわつて参りまして、今日の労働組合の大部分は非常に健全なる運動を続けておりまして、御指摘のような生産鬪争と申しますか、生産能率の向上に努力をしております。賃金鬪争の面もございますけれども、一方において生産を上げるということには努力しておりまして、御承知のように生産指数も終戰後著しく上昇しておるというよう状況でございます。
  208. 世耕弘一

    世耕委員 これは安本、労働両大臣にお聞きしたいと思いますが、日本の輸出関係において労働力を海外に輸出するというのではなしに、むしろ技術あるいは科学方面の進歩による商品を送り出すということが、最も理想的じやないかと思います。そういう点について何か御計画なり施策を進めておられますか。
  209. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ごもつともなお尋ねであります。私どもは絶えず申し上げておりますが、アメリカその他の自由諸国と経済協力をする、またこれらの経済協力を通じて東南アジア開発を進めることが、日本の将来の産業に対する原材料の獲得、あるいは商品市場の獲得ということの上からもよいと思いますが、この地方における開発に対しましては、御指摘のように進んだ日本の技術を出す、技術的な協力ということに対する大きな余地が存しておりまして、最近来られましたインドネシアの賠償使節団等におきましても、賠償の問題と別に切り離して日本と大きく経済協力をして、いろいろな開発、いろいろな工場設備等について要求があります。その際一つの問題は技術の提供を歓迎しておる、こういうことであります。これは一例であります。私どもはその他の東南アジア地区に対しましても、日本の技術、日本の労働力が同時に出されて開発をする。こういうことが一つの行き方である。その点について施策をいたしておる最中であります。
  210. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 技術について出かけるということを計画的にまだやつておりませんが、個々の面といたしましては、要求があればどんどん出して行くということで、若干は出ておるようでございますが、独立後におきましては、もつと力をいたさなければならぬと思つております。
  211. 世耕弘一

    世耕委員 私が申し上げたのを労働大臣は少しはき違えている。安本長官も少しはき違えている。私の技術というのは、優秀な技術による精巧な製品を海外に輸出することこそ、本来の輸出の目標にしなければならない。ただ原始的な労働力によつてやるような行き方では、日本の輸出は振興いたしませんぞ。それについて何かお考えなり御施策がありませんか。こう私はお尋ねしたのです。今の両大臣の御返答から見ますと、ただ既存の技術というのでなしに、民族的創意くふう並びに科学的あるいは文化的の輸出をする方法を考える。それが商品になつて現われて来る、それが技術になつて海外に発展して行く、それについての御用意がありますか、それについての保護政策をお立てになつておるかどうかということを実は聞いたのだが、どうもその点御用意がないということは、はなはだ遺憾に思います。御返答があれば承つておきます。
  212. 周東英雄

    ○周東国務大臣 多少答弁が食い違つたようでありますが、今の御指摘の問題につきましてはもちろん考えております。日本の科学技術振興に関する予算を、多少でありますが、今度もふやしておる点はそれでございます。お話ように、日本の商品を外に輸出するにつきましても、従来のような非能率的、非科学的な遅れた形では、コストの面からはもちろんのこと、品質の粗悪を免れないのであります。これは現在及び将来に向つて日本が南方地方に対して進出するためにも、世界的な競争場裡に立つためにも、御指摘のような技術を改善しつつ、よい商品を出すということについては、まつたく同感であります。今日製鉄等に一例をあげましても、現在製鉄三社に対して設備の合理化といいますか、経営改善というか、施設内容について、技術的にも最近内容の診断をアメリカから来てやるようになつております。その結果はコストの点から見ましても、技術の点についても相当改良されるかと思います。こういう点をさらに日本のプラント輸出の面に及ぼして行くという御意見は、私どもまつたく同感であります。
  213. 世耕弘一

    世耕委員 労働大臣はお答えがないようでありますから、また文部大臣に御意見を承ります。それは科学技術、文化、あるいは日本人の創意くふうが商品となつて、世界の市場を風靡しなければ日本の将来の民族発展はないということは、今両大臣がはつきり御説明になり、御認識になつたようでございます。ところで文化あるいは研究といつたような学術面にぜひ必要である予算がどれくらい今度の予算の中にとれましたか。私の聞くところによると、はなはだ貧弱であつて、あなたの要求がほとんど十分の一にも満たない削られ方だと聞いておりますが、それで御満足ですか。
  214. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は日本人がそういう点において非常に天分を持つておると思うのでありまして、これをぜひ開発したい。これをやりさえすれば、非常なレベルまで行き得ることは、すでに湯河博士などが示しておるところでございます。その予算の面は十分の一ではございません。しかし前年度五億でありましたが、今度は六億、一億増しましたから、私は決して満足するものではございませんけれども、現在の事情やむを得ないと思います。
  215. 世耕弘一

    世耕委員 日本の重大な科学研究費が一億増して六億、文部大臣はおそらく満足されるはずはないのだが、なぜもつととらなかつたか。五億など一つの会社にもこれくらいの研究費を持つておりますよ。それが国家の研究費に五億だ。私は案は大蔵大臣を要求したのは、大蔵大臣の頭へこれを入れようと思つて聞こうとしたんだが、残念ながら大蔵大臣がいませんから機会を失しましたが、五億くらいのことで今後の大きな民族的な創意くふうを世界的に飛躍させることはできつこありません。幾ら手品師だつてこれはできません。それについてひとつ本格的な腹のあるところを見せてください。
  216. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今申したことに少し足らぬところがありますから、補足さしていただきます。それは科学研究費といつている部門のことでありまして、大学の講座研究費は二十七年度には従来の倍、十億くらい増していると思つております。全部の研究費をここに申し上げますれば、もつとずつと多い額でございますが、ただ科学研究費という名目のものは、一億増したということを申したのでありまして、決してそれがすべてだというわけじやございません。
  217. 世耕弘一

    世耕委員 文部大臣のけたが小さい。もつと大きい構想に立つていただきたい。今後の日本の文化の中心は文部省から出発して来なくちやならぬ。しかもあなたは哲学者として権威あり、あらゆるものに通じておられる方が、私が考えてもけた違いのことで満足されて引下つたということは、はなはだ残念です。むろん御苦心なすつておられるだろうが、もう一押し、ことに自由党という絶対多数を持つている政党に閣僚の一人としてお立ちになつているのだから、これはお話になれば、自由党の諸君でもこの文化方面にはよく了解を得ているのだから、ただちに協議ができると私は思います。これははなはだ遺憾であります。場合によれば、私がついてまわつてもよろしゆうございますから、ぜひこれを実現さしてもらいたい。これはじようだんではございません。ぜひとも御協力していただきたいということをお願いいたします。  それからついでですから、労働大臣にお尋ねいたしたい。私は先ほど生産鬪争ということを申し上げました。生産鬪争ということは、結局賃金鬪争と並行してという意味で申し上げたので、鬪争という言葉は平和の今日の時代では、はなはだ適当じやないけれども、一応用語上そう申し上げたのだが、それは労働者が一生懸命に生産に熱意を持つてもらうについては、むろん賃金も上げることが必要、待遇を改善することも必要であるが、医療設備ということも非常に重大なんです。ところが最近の国立病院、国立療養所あるいはその他の国の経費においてまかなわれるところの医療設備がきわめて貧弱なんです。ことに医師の手当というものはなつておらぬ。そのために、国立療養所に行くのは死にに行くようなものだという、はなはだ嘆かわしい現状でありますが、こういう点は、働くだけ働かせておいて、病気になつたら知らぬわというような態度では、私は親心ある労働大臣じやないということが言えると思う。この点はどうお考えですか。  それと、過般私はここで質問いたしましたが、労働者の食糧対策についてカロリーばかりでなく、科学的な総合的な食糧対策というものは、当然労働省で考えなければならぬはずなんです。この点に対してはどういうお考えを持つておられるか。あなたは労働省に長くおいでになつて、いわば普通の人と違うのだから、ここまで言えば、あとこまかいことを言わなくてもわかるはずなんです。
  218. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お答え申し上げます。生産鬪争という言葉でございますが、言葉として私もあまり感心はいたしませんが、そういう言葉を使つてつた時代もございまして、とにかく生産能率を上げるということは、今日の労働組合も大体は心得てやつております。  それから医療設備のお話でございましたが、私どもも、国立の病院における医療設備が十分だとは思いませんが、そうおろそかなことをしているわけではございません。ただ非常に数が多うございまして、御承知のように九十九箇所もございますから、この大きい数を全部すみずみまで徹底的にということはどうだろうかというので、過般一部は地方団体等にも委讓して、そうして万遺漏なきを期したい、こう存じておるわけでありますが、御指摘になりました労働者の医療の関係は、今日では健康保險の制度がございまして、私はこの健康保險の制度によつて大体行われていると思つております。不十分な点があるかも存じませんが、この保險制度があるためにそう一時に多額の金を出さないで、平素の掛金だけで大体やれておるものと私は信じておる次第であります。  なお御指摘の食糧の改善の点につきましては、先般も世耕さんから御指摘がございまして、私もさように心得ております。従来ただ米麦一辺倒でやつておりましたが、やはり食糧はただ米麦だけではなしに、あらゆる食糧の点を考慮してカロリーを上げるということの点は、これは非常に必要なことでございまして、従来もいろいろ検討もいたしておりまするが、今後も農林省あたりと協力をいたしまして、気をつけるつもりでございます。
  219. 世耕弘一

    世耕委員 今の国立療養所の問題に触れてもう一点ついておきますが、実は設備より人件費が大切なんです。いいお医者さんがないというのです。薬は買える。買だめもできる。しかしながらいいお医者さんに見てもらうということが大切なんです。ほかのことと違うのですから、いいお医者さんをいかに配置するかということに考慮を払つていただかないと、ほんとうの医療ということにならない。この点を考慮していただきたい。それから健康保險について御高説を拝聴いたしましたが、御高説のようではないということだけ申し上げておきます。  それから文部大臣にお尋ねいたしますが、思想的対策をあなたお持ちになつておられるか。今日のバズーカ砲とか、戰車とか、警察予備隊、防備隊ということが問題になつておるときに、武器ばかりでは祖国を守ることはできない。いかに総理の言うた愛国至誠の精神を喚起するかということに対して、何かお考えがあるかどうか。  それからいわゆる赤という言葉は私は使いたくないが、赤の酔つぱらいが——赤が過ぎると酔つぱらう、赤の酔つぱらいも大学の学生の中にはあるから、これをどう取締るか。赤、それが悪いのではない、赤の酔つぱらいが悪い、これをどう取締るか、これは非常に大事なことだと思う。思想の取締りなんていうことは申しません。酔つぱらいをどう取締るか、おそらくこれについてお考えがおありになるはずです。
  220. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 大学で今までよりももつと指導網を強化いたしまして、教授が直接にそういう指導に当るというように、それから運動部とか、文化部とかいろいろございますが、そういうものを健全なものに育成するように、また学生の指導というのはどういうふうにやつたらいいかというので、今アメリカから人を呼んで講習を開いております。そういうようなことをして学生を指導して健全な思想を持たせようと心掛けております。
  221. 世耕弘一

    世耕委員 御苦心のほどはよくわかるが、アメリカから人を呼んで来ることも一つの策だと思いますが、それよりも日本的愛国至誠の精神、舶来では愛国至誠の精神はぴんと来ない。この点は重ねて議論は申しませんが、特に御心配くだすつておると思いますが、念のためにこの公の席からお願いしておきます。  それから次に、もう時間がないから省略いたしますが、あなたは私立大学の教育に対してどうお考えになつておりますか。私立大学が国家にどれだけの貢献をしておるかという、その功績をどの程度までお認めになるか。これは私決して伏線があつてお尋ねするのではないから、率直にお話を願いたい。
  222. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私立学校というものがそれぞれ特殊な一つの個性、特色を持つたもので、こういう学校を発達させることが非常によいと思つております。実は私は東京の私立中学の出身者で、私が私立中学におりましたときは、東京の私立中学というものは非常に盛んで、なかなかりつぱな学校として立つてつたのが、今日は私立中学が非常に衰えておることを非常に残念に思つておる。私立中学ばかりでなく、私立大学が国家に貢献したことも大きいし、文部省としてはできるだけの御助力はいたしたいという考えであります。
  223. 世耕弘一

    世耕委員 こういうことを文部大臣にお尋ねすることは、あるいは適当でないかもしれぬが、私立大学に対して御理解があるならば、私立大学の今日の経営面というものは必ずしもいいとは言えません。いいと言えない理由はどこにあるかというと、私の関係した学校でもそうですが、兵舎に使う。そうして爆撃を食つた、機銃掃射を食つた、そのまま国家は何の補償も與えずうつちやらかしておつた。こういうような現状である。国家の犠牲になつた私立大学あるいは私立学校に対して、それぞれ考慮を払われておりますけれども、微弱なものであります。官立あるいは国立大学と比較いたしますと、その差があまりに大き過ぎる。もし私立大学が不要だからつぶしてしまつたらいいという考えならば別でありますけれども、国家に貢献するという建前からすれば、育成することが非常に大切ではないか。こう考えておりますが、これもお含みおきを願いたい。実は機会があつたならば、大蔵大臣に少し急所を教えてあげたいと思つておる。大蔵大臣は文教に対する考えがあまりはつきりしていないのであります。主税局長ここにおいでになるから説明を聞いてもかまわぬのだが、なるべくならば大蔵大臣から私は聞く機会を得たいと思います。どうも文教に対する関心が薄いようであります。せつかく文部大臣に御努力願うことをお願いしてやみません。  次に最後の一点として申し上げますが、実業教育の普及対策について、これは国家政策上非常に重大な問題であります。これはおそらく労働大臣も頭に含んでおいてもらわなければならぬ問題だと思いますが、早急に対策をお立てになることが、今後日本経済の発展の上に、重大な問題だと思いますが、その点について御所感があれば、この機会に承つておきたいと思います。
  224. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 実業教育の重要なことは私もよくわかりますが、しかし従来のような職業教育というのは、ただ職業を持つた一つの使いやすい機械をつくるというようなことではなくして、今後の人間としてりつぱな、そうしてしかも職業を持つた、そういう者をつくりたいと思つて、心掛けておる次第でございます。
  225. 世耕弘一

    世耕委員 最後に一点だけ承らせていただきますが、これはあなたに面接関係がないかもしらぬが、岡崎国務大臣が来たら、御一緒に聞いてもらおうと思つたのですけれども、岡崎国務大臣おいでにならぬから、あなたからおことずけを願いたいと思います。  今度のフィリピンその他での外交交渉にあたりまして、その交渉委員の中に宗教家は交えたか、交えなかつたかということを、ちよつと承つておきたいと思います。
  226. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はそれを承知いたしておりませんですから、また岡崎さんから直接お尋ねいただきたいと思います。
  227. 世耕弘一

    世耕委員 機会があればまた私お尋ねいたしますが、これはあなたの所管にもなることだから、おことずけを願いたい。実は先ほど、黒田前中将でありますか、その他の死刑囚であつたりあるいは無期懲役であつた者が、宗教家に救われて、そうして無事生還したという実情を私聞いておりますが、そういう戰犯とかあるいはそういう関係の容疑者を、直接政治的に解放してもらうということは、いろいろな手続があり、困難であります。そういう場合に、宗教家の手によつて、宗教家の世界的連絡によつてしていただくということは、すでにいろいろ大きな問題をひつさげておる地位にあつた人も、今日生還しておるのでありますから、宗教的運動によつて、外交手続以上の効果を上げてもらいたいということを、ひとつ閣議で御発言が願いたい。これは非常に重大なことである。現にキリノ前大統領の好意によつて、もう一つは宗教の大僧正の発言によつて、死刑が今日無罪になつて、先ほど法務委員会で、われわれは参考人から直接意見を聞いて来たようなわけであります。賠償代表を送るその機会に、宗教家代表としてそういう面に連絡のある方を送つていただいて、向うの宗教家と連絡をとつて、もしそのまま日本に無事解放していただけなかつたら、死刑だけでも何とかしていただきたいというふうに御努力くださることを、これはあなたの立場から言うていただく方が非常に便利だと思うので、お願いする次第であります。  その他きようは重要な発言があつたようでありますが、ぜひこの点は御考慮を願いたい。この間アリメカからいろいろな使節団が参りましたが、その使節団の中には必ず教育者と宗教家がついて来ておるのです。ところが、日本からアメリカへ行くような場合に、宗教家あるいは教育家は往々にしるて顧みられない。ここに私は、いわゆ外交の欠陷があるのではないかということを指摘したいのです。特にフィリピン、濠州その他に対してする場合は、宗教家の活動が今後大きな効果があるのではないか、そこにいろいろな問題があると思いますから、ぜひこの点は閣議において御発言をして、もし今までなかつたら、そういう活動をしていただくようにお願いしてやまないのであります。  以上をもちまして、私の質問を終らせていただきます。
  228. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 ただいまの質疑に関連して、稻村委員より質疑をいたしたいとの申出があります。これを許します。稻村順三君。
  229. 稻村順三

    ○稻村委員 文部大臣にお尋ねいたしますけれども、今度の予算をずつと見ますと、先ほど河野主計局長説明から見ましても、昭和二十六年度予算に比して、二十七年度予算は大体四割の物価高だと見る、こういうように言つております。ところが今度の予算を見ますと、ほかはとにかくといたしまして、文教、厚生の方面は、その施設費が大体九%ぐらいしか増額しておりません。ことに文教施設が非常に多く創られておると私たち思うのであります。特に最近国立大学が全国に一県一つぐらいずつできております。あれほど大学ができておるのにもかかわらず、これではおそらく大学の充実はできないと思います。新設の、去年あるいはおととしあたりに建つた大学などは、これから講座も相当ふやさなければならぬだろうし、職員、教授あたりの優遇というものも考えなければ、国立大学として発展するわけには行かぬだろうと思つておるにかかわらず、国立学校運営費はわずかに二〇%ぐらいしか増額しておりません。これだと逆に二割の予算削減と同じことなんです。名目はふえておりますけれども、実際上の事業分量は減つておることになります。こういう点を私たちは非常に心配しております。ことに育英事業などにおいては、確かに対象とする学生は一〇%もふやしている。それなのに、これも二一%しかふえておらない。こういうようなことで、一体文部省として、先ほど世耕さんとの間にいろいろ押問答されておつたその抱負などというものが実現されるものかどうか。その点をまず文部大臣に所信をお伺いしたいと思います。
  230. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今の物価高というのは、鉄道とか、そういう非常に金のかかるところの指数であつて、一般にはそれほど上つておらないということでございます。社会党の元の有力者であつた森戸さんが、この間私に、今年の文部予算の総額は、ちようど物価高をおおうておるということを言われておりましたから、ほぼおおうておるのではないかと、私もああいう練達の士が言われるから、そう思つております。たとえば今おあげになりました育英資金でございますが、育英資金は九億のものを十五億にし、二十六年度においては二十四億にし、今年は二十九億というようにだんだん上つて来ております。育英資金というものについて非常に重要な点は、これを深く少数の人にするか、浅く広くするかというところに非常に問題があります。もし深く少数の者にすれば、もつとたくさん一人当りにやれますけれども、これを広くするとなると、現在くらいより今のところしかたがない。東大とか京都大学などなら、ほとんど半数が育英資金をもらつておる。一般的に言つても、二〇%以上がこれをもらつておるというのですから、決して私はこれに満足するものではございませんけれども、しかしこれではだめだと言つてしまうのもどうか。もともと金が十分にあつてやるわけではなく、国民の金でやることですから、この程度でも今の事情においては、いたし方ないのではないかと思つたわけでございます。
  231. 稻村順三

    ○稻村委員 どうも私はそこにおる河野主計局長の入れ知恵でやつたと思うのでありますけれども、文部大臣の考え方というのは、国鉄や何かだけで言うと実は四割になるということだと、たいへんな違いです。これは河野主計局長少し思い違いではないか。私は平均という意味で先ほど言つたのであつて、実は国鉄などのように、ほとんど生産財をおもに使つておるところは、日銀の物価指数によりましても、安本の統計を見ましても、実にあの当時の六割以上の騰貴になつております。それを国鉄の方面だけでもつて述べたのだということになりますと、私は先ほど予算全体に対しての質問をしたのでありますから、河野主計局長は前の答弁を取消さなければならぬ、こういうことになると思うのであります。それはとにかくといたしまして、私国立学校に行つてみますと、国立学校の費用不足のために、たとえば講座はあるけれども講師が雇えない、こういうような国立学校が事実あるのであります。それが今度の予算範囲内だというと、講座はあるけれども、とても教授どころじやない、講師も置けない、こういうような大学が至るところの県單位の国立学校にはあるという事実を、文部大臣は御存じなのかどうかということが一つ。  それから育英資金の点でありますけれども、先ほど漸増しておるということを言われたが、それは私も認めます。漸増はしておりますけれども、物価が漸次高くなつております。従つてどうかというと、もしも対象学生を一〇%ふやすものだとするならば、それでは一人当りの育英資金の給付額をどれくらいに見積つておるのか。去年はどれくらい見積つてつたか。その点を聞かないと納得できない、ことに学生一人の生活費というか学資というようなものは、去年とおととしではこの予算の上に現われた額に、非常な相違が来ております。その点も考慮してどういうふうになつておるかということをお尋すると同時に、ついでですから、私は最後に申し上げますが、こんなふうな状態のもとに、今度学校の給食を廃しております。しかもこの学校給食は、私たちが知つておる限りにおきましては、文部省の方で強制に近いよう立場で、これは奨励したはずであります。そのために、地方の都市に行きますと、学校給食問題については、相当の異論が父兄の中にあつたのにもかかわらず、はなはだしいのになりますと、この学校給食に入らないというと、いろいろな恩恵があつても、その恩恵から除外するなどというようなことまで言つて、通牒でいろいろここに書いたものがあるという話であります。そういうようなものまで出しておいて、そしてこの学校給食に判をつかしておる。私はこの学校給食を強制的にやるということが、決して悪いというのではありません。この学校給食によつて兒童の栄養が非常によくなつたということを、私も自分の子供が学校に行つておりますから、よく知つております。従つて学校給食を奨励したことは私は非常にいいことだと思つている。しかし、そのためにどうかというと、今まで学校には全然設備がなかつたものを、父兄がPTAでもつて大部分を負担いたしまして、そうして多額の金をかけて炊事場をつくり、栄養士を雇い、そして強制的にそれまでさしておいたものを、今度は予算がないからといつて、これをやめたのはどういう理由であるか。文部省ではそんなことをした覚えがないというかもしれません。しかし私は新潟県のその担当者の話を聞いておりますが、京都でこの給食の係官の協議会をやつたときに、担当の文部省の課長がこういうものを強制したというようなことの覚えはないと言つたときに、前の会議には確かに言つたことを食言するとは何事だといつて糾彈されたときに、一言もなかつた、こういうことを報告を受けております。私たちはそういうふうな無理をやつてまで父兄に負担をさせて、税金が高いといつて苦しんでおるこのときに、あれだけの負担を父兄にさせて、炊事の設備から何からしておいて、そうして給食の予算は今度ない。今度お前たちかつてにやれ、これでは学校給食を文部省が奨励した責任をどうするか、この辺はつきりした御返答をお願いします。
  232. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 第一の点は地方の大学でございますが、地方の大学が非常に不備だということは私も承認いたします。けれども、地方の大学はお話ような講座制ではございません。その点があなたの御質問は間違つております。  それから第二番目に、どれだけの費用がいるかといつても、学生にはいろいろな條件がありますから、たとえば家から通学するという大学生ならば、千九百円ならばほぼ行けるのではないか、今実際に日本の全体を考えてみれば、私は大学生が非常に悪い扱いを受けておるとは決して思えないのであります。その点、例はたくさんあげることができます。  第三番目に給食をやめたと言われておりますが、やめてはおりません。給食は現にやつておりまして、ただその材料を農林省を経てもらうだけであつて、学校給食のために予算もとつてあります。給食課もあります。給食は決してやめておりませんということを申し上げておきます。
  233. 稻村順三

    ○稻村委員 給食をやつておるというのは、今の予算関係で、大体今年の六月ごろまでで、去年計上して今残つておる財源がなくなるのであつて、それが盡きた後はどうするか。
  234. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 それは文部省の予算としては二十七年度ですけれども、来年、次の二十八年度は食管を通じて材料を得て、それでやることになつております。
  235. 稻村順三

    ○稻村委員 私の質疑はこれで終ります。
  236. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 本日の会議はこの程度にとどめまして、明十五日は午前十時より委員会を開会して質疑を継続することといたします。  これにて散会いたします。     午後四時三十七分散会