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1952-02-13 第13回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十三日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 上林山榮吉君 理事 苫米地英俊君    理事 井出一太郎君 理事 川島 金次君       井手 光治君    江花  靜君       角田 幸吉君    甲木  保君       川端 佳夫君    北澤 直吉君       志田 義信君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    田中 角榮君       玉置  實君    中村 幸八君       今井  耕君    川崎 秀二君       早川  崇君    平川 篤雄君       藤田 義光君    西村 榮一君       水谷長三郎君    風早八十二君       山口 武秀君    横田甚太郎君       稻村 順三君    世耕 弘一君       石野 久男君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         建 設 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         特別調達庁長官 根道 廣吉君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         農林政務次官  野原 正勝君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十一日  委員田中角榮辞任につき、その補欠として天  野公義君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員天野公義君、島村一郎君及び稻村順三君辞  任につき、その補欠として田中角榮君、小淵光  平君及び猪俣浩三君が議長指名委員に選任  された。 同月十三日  委員田中角榮君及び猪俣浩三辞任につき、そ  の補欠として天野公義君及び稻村順三君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 これより会議を開きます。  本予算の各案を議題に供します。質疑を継続いたします。西村榮一君。
  3. 西村榮一

    西村(榮)委員 先般岡崎国務大臣は御出席なかつたので、保留してある部分についてお尋ねいたします。外交上の問題については大蔵大臣所管大臣に聞いてくれ、こういう話でありました。いまだ外務大臣に御就任のひろうには接しておりませんけれども、しかし大体常識渉外関係をおやりになつておると思いますので、岡崎さんにお伺いしたいのであります。過般来ダレス氏との間における会談について、いろいろ新聞報道されておるのでありますが、正確にこれはいまだ国会に御報告を受けておりません。従つてさしつかえない程度において、要点だけを御説明願いたいと思います。  私の承らんとする点は、まず第一に、保安隊海外派兵も可能であるというふうな報道があつたのでありますが、私はこれは常識上理解ができないのでありますけれども、それと関連いたしまして、過般来の会談の内容について、可能な限り御報告を願いたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 西村君はたいへん私にとつて都合のいい質問をしてくださいまして、喜んでおるのであります。新聞に一部予備隊海外派遣も可能だというふうに出ておりまして、私もただちにその際閣議で発言をしまして、そういう話合いは全然ないし、また考えられないことであるということを申したのであります。それも一部新聞に出ております。が、そう人目を引くように大きく出ておりませんので、この機会にもう一ぺんはつきり申し上げますが、行政協定に関するラスク氏との話合いの中では、予備隊海外派遣なんということは、公式にも非公式にもあるいは雑談にも、全然話題上つたことはありません。もちろん行政協定そのものは、安全保障條約第三條に基いて、日本国内に駐屯する米軍の配備に関するとりきめでありますから、予備隊等の問題がその中に入る理由もないのでありますが、行政協定話合いと別個に、それではそういう話でも雑談でもあつたかというと、そういうことも全然ありません。話合いとしては全然話題に上つておらない問題であります。また日本政府としてはたびたび言明してある通り予備隊国内治安維持のためにのみ置くものであつて海外派遣等は全然考慮しておらない、またやるべきものでないと考えております。
  5. 西村榮一

    西村(榮)委員 その他御報告願うこともありませんか。——今は一つの例を申し上げたので、あなたのたいへんに正確な弁明を承つて国民も安心したろうと思うのです。その他ラスク氏との会談において、ここに御報告願うことはありませんか。——なければ私は疑問とするところを、逐條的にお伺いして行きたい。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の方では、話合いを行います都度、先方協議をいたしまして、公表できる範囲のものは公表しております。そして私のただいまの考えでは、いずれ全部の話合いが済みますれば、これは公表されるものでありますが、できればその前、あるいはそれと同時かもしれませんが、国会にも報告をいたしたいと考えておるような次第でありますから、何も隠すべきものはないのであります。ただいろいろの問題にわたつておりますから、むしろ御質問を願つてお答えした方が、はつきりするのじやないかと思います。
  7. 西村榮一

    西村(榮)委員 一つお伺いしたいのですが、アメリカ軍隊がその基地内において集団的行動をとる場合は別といたしまして、基地における裁判権の問題です。私はアメリカ軍人同志事件並び軍律に関する事件は、これは基地内における裁判権は、当然アメリカが持つものであると思うのでありますが、基地内といえども、被害者日本国並び日本国民である場合、同時に基地外における日本の国法の違反者に対しては、裁判権が一体どこにあるか。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この問題は、ただいまいろいろの角度から専門家の間で話合いを進めている最中でありますので、ここではつきりお答えする段階になつておりませんけれども、一国の軍隊外国に駐屯するという例は、今回に限らないで、ずつと前からいろいろの場合において行われたものでありまして、その間には国際法としてほとんど確立している点もあるし、また国際慣習として大体認められているものもありますので、大体のことはそういう国際法なり国際慣習なりによるべきものと考えております。それは原則論でありまして、実際上それをどういうふうに国内に当てはめるか。いろいろ国際法的に見ますと、基地と言いますか、アメリカ軍がここで使う施設もしくは区域というものがある場合に、その中で行われた犯罪に対してはどうするかということと、それから外へ出た場合でも、公務の執行上行われた問題と、公務でなくて、単に休暇等で私人として出て来た場合に行つた行為、これにはおのずから区別があると考えます。またむろん被害者の国籍によつて区別がある。これも当然であります。それらの点は、ただいまいろいろの慣例、風習、あるいは日本法律等を参酌しまして、せつかく協議中でありますので、いましばらくお待ち願えれば、はつきりした御答弁ができる、こう考えるのであります。
  9. 西村榮一

    西村(榮)委員 まだ折衝過程だというお話でありますから、私は希望といたしましては、日本裁判権は対等の立場で確保していただきたい。私が希望を申し述べるのは、基地内における軍人同士並び軍律違反に対しては、当然アメリカ軍裁判権を持つべきであろうが、基地内といえども被害者日本国であり、日本人である場合には、日本裁判権を要求する。同時に基地外における集団的軍事行動以外の問題は、これは日本裁判権を確保していただきたい。これを私は希望申し上げておきます。  それから次にお伺いしておきたいことは、米軍に雇われた労務者の法的資格ということであります。これは一昨々日ですか、労働委員会において、労働大臣が、これは日本が雇い人になり、同時に日本の労働三法の適用を受けるものであるという言明をなすつたのでありますが、渉外関係に当られておるあなたから、もう一度ひとつ確約を求めておきたい。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは二種類の意見がありまして、一つは、今までは占領軍であるから、それに提供する労務等は、日本国政府機関があつせんし、これを提供するのは当然だけれども、独立した場合には、これはここの国内におる駐留軍であるから、必要な労務駐留軍が雇うべきが正当である、こういう議論と、それから今西村君のおつしやつたような議論と、二つあるわけであります。私は理論的には、その初めの方の議論が正しいと思いますけれども、実際の取扱いを考えると、言葉の関係もあるし、風俗習慣の違いもあるししますので、労働組合等が直接に団体交渉等駐留軍の当局とするということも、困難な場合が多くあるというので、実際上の便法としては、むしろ政府機関がこれを援助して、政府機関が間に入つてつた方が便利ではないかと、こういうふうにも考えております。大体そういう考えで、今研究中であります。多分そういうふうになるのじやないかと思いますが、これもよほど考えてみないと、政府機関がやるということは、筋からいえば別におかしいことはないのでありますが、とかく政府機関というものは労働組合に同情が少いとか、駐留軍等の便宜をはかるの余り、労債組合の方に過重の負担をかけるなどという非難もないこともないのでありますけれども、実際上一番都合のいい方法を考究する、あまり理論に拘泥しない方がいいであろう、こう考えております。
  11. 西村榮一

    西村(榮)委員 まだ折衝過程であるそうでありますから、三日ほど前の労働大臣労働委員会における言明もあるので、どうぞ政府答弁に食い違いのないように、よくお打合せを願つて折衝願いたい。  次にお伺いしたいことは、駐留軍日本軍事基地前進基地として、これを原爆基地にすることがないか。このことをなぜ私は確めておきたいかというと、これが原爆基地になりますと、当然日本国民報復手段としてそれの返報を受けなければならぬ。これをおもんぱかつて米英協定においても、イギリスからアメリカ爆撃機原子爆弾を積んで飛び出すときには、アメリカ軍単独行為とせずして、イギリス協議の上において、これをなすということになつておるのであります。この点はアメリカ軍単独でこれをなし得るのか、あるいは日本協議の上においてでなければ、なし得ないのであるかというところに、話合いが進んでおるかどうか。この点を伺いたい、
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはちよつとへりくつのようになるかもしれませんが、安全保障條約の趣旨は、ダレス特使が前に言いました通り、デターリング・パワーというか、外国からの侵略というか、そういうものをあらかじめ警告をして、これをなさしめないようにという意味で置くのであつてアメリカ軍がおるということは、よその国と戰争をする目的ではなく、よその国が攻めて来ない。おどかしと言つてはおかしいのですけれども、容易には攻めて来られないような態勢にしておくために、安全保障條約を結んでおる。もちろん万一の場合にはこれは出動しなければなりません。従つて安全保障條並び行政協定の大きな性格としては、アメリカ軍がおれば通常の状況、つまり戦争状態とか敵対行為考えさせるような状態が、起らないであろうというのを建前にしてつくつております。従つて原子爆弾を持つとか、持たぬとかいうことは一切話に出ておりませんし、これはまた行政協定の中の、何というか、協定事項ではないと私は考えておりますが、それは行政協定だけのことであつて政府政府との間の話合いとすれば、そういう問題も当然将来考えられることであろうと思います。ただいまのところはアメリカ側もそういうことに触れませんし、われわれの方でも触れませんが、ときたま新聞にそういうことが出ておるものでありますから、話のついでに、そういうことがありますと、そういうことを考えておるようなふうにも印象づけられるのでありますが、正確に話をしておりませんから、その点は何ともはつきり申し上げられません。しかしいずれにしてもそういう重要な問題であれば、こういうことは起らないことを希望しますが、何かそういう重要な安全保障條約の万一の場合として、想定しておるような場合でありますれば、政府政府の間の話合いが行われることは、これは常識的にあたりまえのことと考えております。
  13. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいまの岡崎さんの御答弁を承りまして、私のみならず日本国民は安心いたしました。どうぞこの問題については安全保障條約の本旨従つて日本対ソ戦争前進基地にならないように、日本防衛に限定されるように、條約の諸條項についてひとつ細心の御注意を願つておきたいのであります。  次に伺いしておきたいことは、アメリカ駐留軍が外地に出動の場合においては、日本政府のあらかじめ承認を必要とするか。この話合いができておるかどうか。私は與えられた時間が乏しいものですから、要点だけひとつ御答え願いたいと思います。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだそういう点まで話合いが進んでおりません、いずれ話合いは出ることと思いまするが、これもやはり常識的に見まして日本政府がこれに対する相談にあずからないということは、ないであろうと考えております。
  15. 西村榮一

    西村(榮)委員 その点は私は協定にあたつて、かたくひとつだめを押していただきたい。ということは、これは安全保障條約であるのであつて、この條約が一歩間違えばアメリカ国防上の駐留権の要求という誤解を受けるのでありまして、真に安全保障であるならば、私はフィリピンのいやな前例は思い出したくないのでありますけれども、しかしながらアメリカ軍全体の軍事能力から考えまして、来るべきいろいろの国際的な不祥事件考えて見ると、場合によつて日本をあけつぱなして行かれる。平時においては日本に駐留するが、非常の場合にはあけつぱなしにして行かれるという危険もなきにしもあらず、こう思うのでありまして、その点はこれからの話合いでありますならば、あなたの御努力によつて、どうかアメリカ駐留軍日本国外に転出する場合は、日本政府との協議の上においてなし得るということに、條項上一本これは明確にしておいていただきたい。それはやはり安全保障條約の本旨に従うのであるから、それはひとつぜひともお願いしておきたい。  次に私が第二にお伺いしておきたいことは、これは確定議として出ておるのであります。緊急非常の事態においでは一人の司令官を選んで、その司令官のもとにアメリカ軍並び日本自衛能力はそこに編入されて、同一の行動を一人の司令官のもとにとる。こういうようなことが協定事項として発表されておるのであります。その場合における司令官というものは一体アメリカから選ぶのか、日本から選ぶのか、どつちから選ぶのか承りたい。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう緊急事態にどういうふうにするかという問題につきましては、何か西村君の誤解だと思いますが、確定したことは全然ありませんし、その点について新聞に報導したこともまだ全然ありません。実はそここれからだんだん行くところと思います。従つてまだそこのところはお答えする時期に達しておりませんが、そういう問題が起るかどうか。私は起らないのではないか——そういう問題というのは、たれか一人司令官を置くとかいう問題は、協定の中には出て来ないのではないかとも考えております。
  17. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは各新聞とも大体出ておるのでありますが、そうなるとまだその問題の話合いは出ていないのですが、あなたのお写真まで丁寧に出ておるのですけれども、まだ話は出ていない。そうするならば安全保障協定に基くこの非常事態認定というものは一体日本政府がなすのであるか、あるいはアメリカがなすのであるか。過日の新聞を見ると、日本政府要請に従いと、こういうふうなことになつていますが、これをひとつ確かめておきたいと思います。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように安全保障條約の中で、外国の使嗾による等の大規模な内乱に対しては、日本政府要請によつて出動するということになつております。その他のつまりダイレクト・アグレツシヨンといいますか、直接侵略等がかりに起つた場合にどうするかということは、條約の中には明確に書いてありません。これもいずれ常識的に見て協議するのはあたりまえだと思いますが、今申した通り写真入りで出ておりましても、よくごらんになればそれは政府公表でもないし、会議公表でもないので、観測の記事だろうと考えます。まだ正直なところ、そういう話に進んでいないのであります。
  19. 西村榮一

    西村(榮)委員 今あなたは交渉が進んでいないとおつしやるのですが、これはことごとく日本一流新聞でありますから、でたらめの報道ではないと思うのです。火のないところには煙はない、煙のないところは火が立たぬ—これはさかさまですが、写真入りで、あなたは名士ですから当然出される。しかし写真ダレスさんと二人並べて載つておる。これは国際的な名士になられたことと私は敬意を表しますが、しかし問題は、私がここでお尋ねしておきたいことは、行政協定の中には当然その問題が将来含まれて来る。非常緊急の事態に対しては、新聞によると、日本政府要請において出動する、こういうことになつている。しからば緊急事態に対しては、日本政府認定が優先、しかしながらその場合には指揮は一体だれがとるか、この問題が出て来る。今この指揮の問題は、総理大臣がとるのであるか、新聞に伝えられるごとく、一人の司令官といえば、日本には軍人がいないのですから、当然アメリカ駐留軍指揮官司令官になられる、こう思うのですが、日本総理大臣か、アメリカ駐留軍司令官か、そのどつちか司令官をあらかじめ予定しておかなければならぬと思うが、いかがでしようか。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうお考えもあるでありましようが、またそのときどきの状況によつて、適当な処置を講じた方がいいという意見も当然出て来ると思います。いずれにしても、こういう問題は両国政府十分協議をしなければならないことは当然と思います。指揮官がどつちかということについては、どつちがえらいのかということになるかもしれませんけれども、いろいろな場合があつて協定の中にはつきりそういうことを書くのが適当であるかどうか、これも私はまだ研究してみなければわからないと思いますが、先ほど申したように、そこまで行つておりませんので、先方意見もまだはつきりただしておるわけでもないのであります。
  21. 西村榮一

    西村(榮)委員 それは当然問題になるべき重要な事項ではないかと私は思いますが、しかしそれがまだ進んでおらぬと言われるならば、私は次の点の御見解を承りたいのであります。  非常事態ということは、これはかつて日本の旧憲法下における戒厳令にひとしいものでありますが、しからば一体そういう事態——国内並び国外の間接、直接の侵略に備えてこの安全保障條約というものを結ばれたのでありますから、国内における非常事態が宣言されるということであれば、当然その指揮者日本国権との問題の調整を、行政協定の中に明確にさせておかなければならぬと思うのでありますが、その問題についてまだ話合いは出ておりませんか。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その問題はまだ話合いに上つておりません。要するに、そういう場合を想定するのはよろしくないかもしれませんが、かりにそういう場合を想定したときは、根本の問題は、われわれ国でありますから、われわれが出て行つて防ぐのがあたりまえであります。そこでそれを援助して日本防衛するアメリカ軍と、いかに協力してうまく力を結集するかということになるでありましようが、必ずしも指揮者とかなんとかということでなくして、協力の態勢をおのおのの受持ちにおいてどういうふうにするかということになりますから、これは具体的に、こうだ、ああだというふうに、今からはつきりきめておくことは、むずかしいのじやないかとも思います。いずれまた話合いはだんだん進むだろうと思いますけれども……。
  23. 西村榮一

    西村(榮)委員 新聞がほとんど一致した意見としてこれを報道しております。非常事態においては、行政協定の一切から超越してその事態に対処するのだという記事というものは、まだ話が出ておらぬということになりますか。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今の御質問ちよつとはつきりしないのですが、北大西洋條約の中の行政とりきめにひとしいものがあります。まだこれは批准はされておりませんけれども、それなどには、非常事態には必ずしも協定に拘束されないという文句があるようであります。鑑識的に考えておりますと、たとえばある施設内にアメリカ軍がおる。よその方に侵略が起つて来た場合に、行政協定によつて、そのアメリカ軍がその施設の外に出て行かないのか。行けないのでは意味がないわけであります。ですから、常識的に考えれば、そういうことも非常事態のときにはあり得ると思いますけれども、協定に書くか書かないかという問題はまた別でございます。
  25. 西村榮一

    西村(榮)委員 新聞には、非常事態においては行政協定のわくにとらわれない、それから日米防衛委員会を設置する、それから非常事態においては駐留軍行動は自由だ、こういうふうに書いてあります。私は今岡崎君から何ら具体的な答弁を承れなかつたことは、はなはだ遺憾と思いますが、明確にされたことは、日本保安隊海外に派兵されないということ、原爆基地にならないということ、安全保障條約の本旨従つてすべての條約が結ばれて行くものであるということ等を承つたのでありますが、あなたは今交渉過程だとおつしやるから、私がここに希望を申し述べておきたいと思うことは、新聞に伝えられたごとく、この進駐軍の行動非常事態においては自由だ。それから一人の司令官を選んで、日本自衛力はその中に編入されるというふうなことであるのでありまして、これはかつて日本戒厳令にひとしいものでありまして、かつて日本戒厳令は、御承知通り軍権のもとに一切の行政、立法府、司法権も隷属してしまつた。この点はきわめて重要でありまして、日本国権に関する重要な問題でありますから、ひとつこれらの点を御考慮願つて、真の日本の独立と、日本国民一つの感情と申しますか、誇りを傷つけないような行政協定に御努力を願いたいと思つているのです。あなたは今、新聞報道は全部責任がないとおつしやつたが、新聞社編集長じやないのですから、責任を追究しようとは思いません。  そこで私も時間が乏しいものでありますから、お伺いしておきたいことは、この行政協定ラスクさんとの間において草案ができ上りましたならば、これは国会承認を受ける手続をとられますか。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは安全保障條約を国会承認されたときに、その安全保障條約に基いて、いわば細目の協定である行政協定をつくつてよろしいということにされておると、政府は了解しております。でありますから、法律的には国会に提出して承認を求める手続は、不必要だと考えております。しかしながら国会の開会中でもありますから、いよいよできて、両国政府の間でこれをいつ発表するということになりましたならば、その前できるだけ早く国会報告はいたしたいと考えております。
  27. 西村榮一

    西村(榮)委員 調印はいつごろの予定でありますか。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだはつきりわかりません。今申した通り、いろいろの問題がまだ話合いの途中であるのもあり、これから話合いを始めるのもありますので、ちよつとはつきりしたことはわかりませんが、今までの話合いの経過に顧みますと、双方の好意、善意というようなものが基調になつて話合いができて、かなり順調に進んでおりますから、今後の問題もそう長くかからずに行くのではないかと思います。元来これだけの問題があつて、これを話そうというのでありますけれども、だんだんやつてみると、まだあの問題がある、この問題があるというようなことになりますから、今はつきり、いつてあるということは、ちよつと申し上げられませんが、そうおそくならないのではないか、こう考えております。
  29. 西村榮一

    西村(榮)委員 新聞報道によりますと、来週中に大体調印の運びになる、こういうふうに報道しているのですが、その時期、それからこれは正式調印でありますか、仮調印になるのですか。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 来週中になるべく調印まで持つて行きたいというのは私の希望であります。しかしそうなるかどうか、これはまだ話合いがありますから、ちよつとわかりません。希望としてはそういうふうに努力しております。それからこれはおそらく正式の調印にはなると思いますが、その協定の効力の発生するのは、安全保障條約等の効力の発生の時期によるものでありますから、今できてもすぐにこれが実施に移されるものではないのであります。その意味では準備的のものとも言えるかもしれません。要するにそういう性質のものであります。
  31. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、これは仮調印じやなしに正式の調印、大体来週中にできるもの、そういうふうに承つてよろしゆうございますか。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 来週中ということは、はつきり申し上げられません。希望だけであります。それから調印は、正式の調印というと何かすぐ効力が発生するようでありますが、そうではないのでありまして、いずれ安全保障條約が効力を発生したときに確認されて、それで本物になる、それまでは準備的なものでありますが、将来かわらなければ、それが本物になるわけであります。調印としてはどういうかつこうになりますか、正式調印といわれてもいいのでありましようが、そういうふうにすぐ発効するものではなく、準備的のものであるということであります。
  33. 西村榮一

    西村(榮)委員 その点きわめて大切でありますから、法律用語として仮調印になるのか、正式調印になるのか、明確にしておいていただきたい。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 調印は正式のものだと思いますけれども、その正式のものは——要するに正式というとすぐ発効するようだけれども、そうではないという意味で、あります。
  35. 西村榮一

    西村(榮)委員 調印はするが、効力の発生は講和條約の発効後にするという條件を、そこにつけておくということになりますか。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいかに條件をつけなくても、安全保障條約の第三條に基いてつくる協定でありますから、安全保障條約の効力が発生するまでは、この協定は効力を発生しないのは当然のことであります。
  37. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは外交の専門家であるあなたでありますから、私申し上げる必要はないと思うのでありますが、批准條項の伴わざるところの調印は、その調印と同時に効力が発生する。従つてこの点で私が念を押しておきたいと思つたのはそこなんです。そこでこれはやはり批准條項が伴わなければ、調印とともに効力が発生するという一文章がそこに挿入されない限りは、仮調印として新しく国会承認を得てから、正式の効力が発生するのだということの順序が正しいのではないかと思うのですが、いかがでしようか。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 西村君のおつしやるのは、独立のとりきめの場合のことだと思いますが、これは先ほども申しましたように、一つの法律に基く細目の協定のようなものでありますから、国内でいえば、法律に対する省令とか政令とかいうものでありまして、法律によつて委任というのは語弊があるかもしれませんが、委任されて省令を出し得ると同じように、條約第三條で行政協定をつくつてよろしいということになつておりますから、第三條によつて細目を決定するものがこの協定であります。従つてこの協定単独では何も動かないものであります。親の條約が効力を発生しなければ、当然にこれは効力を発生しないものでありますから、この点で調印してもすぐ効力を発生するということがないことは、国際法的に見て当然のことと思います。従つてすでに安全保障條約を国会承認されておりますから、その範囲内では行政協定をとりきめることが政府としてはできる。そうしてその効力は安全保障條約の効力発生のときに、発生するというふうに解釈しております。
  39. 西村榮一

    西村(榮)委員 本行政協定によつては、アメリカ人の生命財産の保護の問題、並び基地に対する裁判権の問題、あるいは非常事態の際の非常処置における指揮官の問題その場合における日本行政とその指揮官との間における調整というふうなものを考えてみますると、ここにいろいろな立法処置が伴う。法律の制定なくしてはこれらの行政協定が実行されないのではないか、こう思うのですが、この辺行政協定には何ら立法処置が伴わないのですか。それとも何か行政協定によつて、法律的処置をとらなければならぬ協定が生れて参りますか。その点を伺います。
  40. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだ話合いが全部済んでおりませんから、正確には言えませんが、一つの問題として考えれば、法律を要する事項があり得ることは当然考えられます。実際上はないかもしれませんが、理論から言えばそうなります。そこで行政協定があり、安全保障條約が効力を発生しても、その特定の問題に関する限りは、日本の法律ができなければ効力は発生しないのは、これまた当然であります。従つて政府としては、法律を要する事項がありとすれば、それは必ず法律案をつくつて国会に提出して、その法律案が成立したときに、その特定の問題に対しては行政協定の中で効力を発生する、こういうように考えます。
  41. 西村榮一

    西村(榮)委員 念のためにお伺いしておきたいのですが、行政上のとりきめと国と国との約束、契約との相違というものは、われわれしろうとはどこに見出したらいいのですか。外交上の権威者であるあなたに、簡単でいいから一ぺんお伺いしておきたい。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつと御質問の範囲がよくわからぬので、もう一ぺんもう少し詳しくおつしやつてください。
  43. 西村榮一

    西村(榮)委員 単なる行政上のとりきめと国と国との国際條約とのけじめというか、相違点というものは、われわれしろうと、あるいは法律の知識に乏しい国民全体は、一体どういうところで、これは行政のとりきめだ、これは国と国との契約であるというふうに区別して考えたらいいのですか。
  44. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいろいろの国によりまして、その国の国内法等によつて違うと思います。たとえばアメリカの大統領は、かなり広い範囲に行政上のとりきめとして外国との協定を結ぶことができるような権限も、委譲されておるようでありますが、原則的にいえば国と国との約束に基いて国内の法律なり国内の適法なる手段によりまして、この範囲はさらに政府間の行政的な協定でやつてよろしいということになつたときに、それができる、こう思います。
  45. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたは先ほど、行政協定国会承認を受ける必要はない、なぜならば安全保障條約を結ぶときに、もはや国会から白紙委任状を受けておるのであるから、あらためて行政協定全般について国会承認を受ける必要はない、こう言明されたのですが、今でもそうですか。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りであります。但し説明を加えれば、安全保障條約の第三條には、安全保障條約に基いて国内に駐留するアメリカ軍のデイスポジシヨンを定めるために、行政協定を結ぶことができると書いてありますから、アメリカ駐留軍のデイスポジシヨンを定める範囲内においては、行政協定を結べるものと考えます。従つて先ほど西村君のおつしやつたいろいろの政治的の意味を含む問題まで、行政協定でできるかできないか、それは疑問と思いますが、少くともアメリカ軍のデイスポジシヨンを定める範囲内においては、行政協定を結ぶことができる考えます。
  47. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はだんだんこういう傾向が現われて来るのではないかと思う。まず第一に講和條約が結ばれた。その講和條約から日米安全保障條約に向つて日本の国防上の重要なる問題は、白紙委任状を渡すようになる。この日米安全保障條約の中から、行政協定に白紙委任状を渡すようになる、といつた順序を踏んで、まことに都合のいいように、だんだん重要な部分は国会の審議権外に押し出されて行くという危険を、私は議員として感ずるのであります。  あなたはアメリカの大統領の権限を今指摘されたのでありますが、アメリカ大統領の権限は別といたしまして、本行政協定は、アメリカ国会承認を必要といたしません。なぜならば、アメリカは本行政協定を取結ぶことにおいて、新たなる立法的な処置は必要といたさないからであります。けれども日本は新しき法律を必要といたします。同時に治外法権的な存在のみならず、裁判権その他において、日本国民の権利義務に対する重要なる影響が、本行政協定の中に含まれて来る。  第三番目においては、何人も否定することのできない常識上の判断は、緊急非常事態が生じたときには、一体どういうえうに処理するのであるか。あなたは明確にそれを答弁なさらなかつたのでありますが、非常緊急事態においては、かつての旧憲法における戒厳令であります。従つてその戒嚴令下において、国民の権利義務あるいは国家の権力というものは、著しく制限されて来るのであります。この点は日本の現行憲法に抵触するところが多大であるのであります。アメリカではこの行政協定国会承認を必要としないが、日本国民にとつては、国民自身の権利義務のみならず、国家の大権に大なる制限を受ける。私はこれらを考えてみると、この行政協定国会承認を得ずに済ませるということは、常識考えられないのです。これは草案ができ上れば、当然その草案を調印する前に国会に示して、国会のあらゆる方面から検討を加えた上で、その可否を決すべきだ。単に日米安全保障條約ができておるから、それで白紙委任状をとつておるからということだけでは済まされない。その白紙委任状を渡した後において、国民の権利義務と国権の制約に重大なる影響があるようなことが、この行政協定の中に盛られるとするならば、私は当然国会の審議を求めるべきではないかと思うのですが、岡崎さんいかがでしよう。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 堂々たる御議論は拝承しましたが、アメリカは何にも制約は受けない、日本だけ制限を受けるというのは間違いであると思います。アメリカ側ではむしろこの協定を、アメリカ側の片務的協定であるといつて議論が行われておるようなことも聞いております。要するにアメリカの子弟、アメリカの国家の財源を外国のために使用する、子弟を殺さなければならぬ、こういうような重大なる影響がある問題だといつて議論があるくらいであります。なお先ほど申し上げましたように、行政協定の範囲は、アメリカ軍国内におけるデイスポジシヨンをきめるということになつておるのでありまして、そのデイスポジシヨンをきめるために行政協定を結ぶことは、安全保障條約で承認されておるのでありますから、その範囲のことは当然できる。またそれに基いて立法措置等を必要とする場合には、むろん国会に法案を提出して、その承認を求めなければならないし、承認を求めることができなければ、その特定の問題については、効力が発生しないのは当然のことと考えます。
  49. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたはアメリカにも義務が生ずるとおつしやつたのですが、アメリカには義務は生じません。なぜアメリカには義務を生じないかというと、アメリカには軍隊がおります。同時に本行政協定によつて支出される予算は、これはアメリカの軍事予算です。防衛分担金の半額の負担というふれ込みですが、これはアメリカの軍事予算です。しかし、日本はそれによつて新しき予算を編成せねばならない。ここに国会承認を得なければならない予算上の大きな処置がある。あるいは立法処置がある。国家の大権を制約される協定が生れて来る。これでもあなたはやはり国会の審議を経なくても、政府は條約締結権があるとお考えですか。アメリカには何の義務も生じて来ない。従来の兵力をどこに配置するかということを、アメリカの用兵作戦の上において考ればいい。アメリカにはこの行政協定によつて何らの義務も生じて来ない。予算処置もない。日本にはそれに反して多くの制約と予算処置が伴う。私は当然日本国会の審議を受くべきであると考えますが、いかがでしよう。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカの義務、義務でないは、ちよつとこの国会の問題としては別にしまして、必要な予算予算案として提出する、また将来必要とする法律があれば、法律案として提出すると申しておるのであります。
  51. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 西村君、大体申合せの時間が来ましたから……。
  52. 西村榮一

    西村(榮)委員 承知しました。あなたのあげ足をとるわけではないが、将来この行政協定から必要が生じたならば、その予算を組むというのでありますが、私の言つておるのは将来のことではありません。本行政協定の締結によつてアメリカ予算処置を必要としない。あるいは法律処置を必要としない。アメリカ国民の権利義務に影響しない。なぜならば、アメリカはこの行政協定によつて新しく徴兵その他の志願兵の形においても、アメリカ人の権利義務に影響を與えるものはどこにもありません。しかるに日本はその反対に、多くの国民の権利、義務に影響し、立法処置と予算処置が必要だ。これらの三点を考えてみると、政府にはこの国民の権利義務に重大な影響を持つ行政協定の締結権はない。従つて草案ができ上れば、これは国会の審議を受けるべきだと考える。それだけの手続とそれだけの慎重さと、そして広く国民から本行政協定における締結が、誤りなく、侮いを百年の後に残さないような慎重な処置を政府がとられることは、政治的にいつても法律的にいつても当然であると思うのですが、重ねてあなたの御答弁を伺います。
  53. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の答弁は、先ほど申し上げた通りであります。
  54. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は委員長から御注意がありましたから、これで終りますけれども、最後に申し上げておきたいことは、かような重大な国民の権利義務に関する條約の締結権は政府にはない。それはかつての旧憲法にもなかつた。旧憲法においても政府の條約草案に対して、枢密顧問官の承認を得て初めてそれが発生しておつた。こういうふうなことを考えますと、個々の問題について立法処置が必要となつたときに、こま切れに法律を出すということでなしに、行政協定全般にわたつて国会承認を受くるように、慎重なる度態をとつていただきたい。このことを今日は議論ではなしに、切にお願いしたい。国民の権利義務に関する大きな問題、旧憲法においても、これほど広汎な権限は、外交上の條約のとりきめ権は政府に渡してなかつた。旧憲法においても枢密院が審議して、初めてそのことの可否が決せられていたということから考えてみましても、しかも日本アメリカ日本との協定を結ぶ上においては、表面は平等にして対等にして和解なりと何ぼうたわれても、これは力関係においては不可能であります。こういうときにおいて、私は国民の意思を代表して、国民の意思において、初めてその力関係において、不平等を余儀なくされるところの條約を、少しでも日本の平等権の確保、国権の確保という立つにおいて、慎重なる取扱いをされることが必要ではないか。私は議論ではちりません。このことを岡崎さんに希望を申し上げて、委員長の御忠告通り私は質問を終ります。
  55. 川島金次

    ○川島委員 この際岡崎国務相に、一言だけ関連的なお尋ねを申し上げておきたいと思います。  それは先ほど岡崎国務相は、行政協定はでき上つても、安全保障條約の成立を見るまでは効力を発生しないことは当然だ、こういう御説明のようでありますが、そういたしますと、安全保障條約と相並んでおりまする講和條約が発効いたさなくても、安全保障條約だけが効力を生ずる場合もあり得ようかと思いますが、そういう場合においては、講和條約が発効にならぬでも、安全保障條約が成立すれば、行政協定は効力を生ずるという関連になるのであります。あくまでも講和條約が発効しなければ、安全保障條約も効力を発生ぜず、従つて行政協定も効力を発生しない。この関連性はどういう形になるものであるか。この際見解を示してもらいたいと思います。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 講和條約が発効しませんと、日本は依然として占領下にあることになります。従つて安全保障條約を取結ぶ立場にないと考えます。従つて講和條約が効力を発生し、それに基いて安全保障條約の効力が発生し、それに基いて行政協定の効力が発生する、こうなると思います。
  57. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 田中角榮君。
  58. 田中角榮

    田中(角)委員 日米安全保障條約に基いて、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊すなわち駐屯軍のための調達、及び昭和二十七年度予算に計上せられました防衛関係費と治安関係費中、おもに調達に関する事項につきまして、若干の意見を申し述べるとともに、政府関係大臣の所信をここに明らかにせられたいと存ずるのであります。  終戰以来六箇年にわたる終戰処理費の経理は、昭和二十年九月二日調印の降伏文書に基きまして、同月三日指令第二号及び十月二日連合国最高司令部よりの覚書によりまして、調達物資、役務の要求等連合軍の日本政府に対する調達要求の基礎が明示されたのであります。その調達における状態も、占領軍占領軍治下の国民という関係においてなされましたので、ややともすると相互に意思の疎通を欠きまして、理想的な結果を生むことがむずかしかつたのであります。しかるにこの日米安全保障條約に基いて、先般米国政府を代表しましてラスク特使が派遣せられ、日本政府との間に目下安全保障條約細目條件を規定する行政協定折衝が進められておるのであつて、かくのごとき従来のマイナス点は十分是正せらるべきと存ずるのであまりす。協定にはおそらく多種多様の問題が含まれることになるでありましようが、われわれはこれに対する根本方針といたしまして、日米両国の親善関係を将来にわたつて維持し、米国その他自由諸国家群との紐帶を、講和発効後において一段と緊密ならしめ、独立という一大事実を機会に、日本国民の対米感情を一層良好ならしめるよう、処置せねばならないと考えておるわけであります。すなわち日米行政協定により、従来の占領軍と今後あるべき駐留軍とは明確に相違することを、一般に感得せしめるごとき処置を講ずる必要を感ずるわけであります。その意味で大綱の決定にあたつても、ある程度具体的方針に立脚して策定せらるべきであることは、論をまたないと存じます。いずれにしましても、平和條約の効力発生によりまして、日本国は主権の独立を回復するのであるから、安全保障條約の履行にあたつても、日米それぞれ対等の立場でその義務を負い、かつ責任をとらなければならないのであつて、従来ややもすれば、占領軍管理下にあつたがために、正当な日本側の主張し抑制せられるような場合のあつたことは、協定成立後は絶対に排除せられなければならない、こう感ずるわけであります。  次に行政協定は、日本国の合衆国駐屯軍に対する駐屯地の提供、及びこれに付随した各種権利義務につきましてのとりきめ、並び防衛費の日米両條約国による分担が、その主たる部分として構成されるであろうと存じます。なかんずく双方より分担せられる防衛費は、それぞれの国の予算として支出せらるることになるのでありますが、注意すべき点といたしましては、それぞれの国が自国の予算を適正に支出すれば足りるのではなく、それぞれ相手国の予算も適正に支出せられておること、従つて合理的なる調達が行われていることが明らかでなければ、條約ないしは協定が公正に履行されているか、いないかを確認することができないと思うのであります。ここにおきまして、調達事務をいかなる方式において行うかが、重要な問題となるのであります。また調達手続につきまして言えば、それぞれ相手国が法令上必要とする手続も、また十分尊重せられなければならないと思います。特に供給の市場が駐屯軍の需要国たる日本にある場合におきましては、日本の供給者が不当な損失をこうむる、あるいは不当な利得を収得し、その他日本の経済が不利な影響をこうむることのないように、十分な考慮が佛わるべきであります。以上の観点に立ちまして、二、三具体的に御質問を申し上げたいと思います。  その第一は、目下進行中の日米行政協定交渉においては、外交専門家ときわめて一部のその他の関係者だけしか、参画しておらないように思われるのでありますが、莫大なる防衛関係費が主として調達のために使用せられるとすれば、日本経済に重大なる影響を持つことにかんがみまして、政府は格別慎重を期し、過去の経験を生かし、かつ経済専門家意見も十分しんしやくをし、万全の態勢を整えて将来に悔いを残さざるように留意すべきでありますが、政府はいかなる態度をもつて行政協定交渉に当られておるのか、岡崎国務大臣の所信を承りたいと思います。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お話の筋はまことにごもつともでありまして、われわれもそうふうに考えております。なお協定にはそういうこまかいことは出来ませんでしようが、ここにも安本長官がおられますが、いよいよ物資を調達せねばならぬようになれば、安本、通産その他の方で、十分国内のメーカーその他と連絡して、需要等に誤りのないようにしてもらえるものと信じております。
  60. 田中角榮

    田中(角)委員 次に従来の終戰処理費による占領軍の調達のために要しました経費は、昭和二十年度におきましては、一般会計歳出三百三十七億円の約三六%、百二十二億余万円であります。昭和二十一年から二十六年までのものを摘出いたしますと、二十一年度は千二十九億円中約二四%、二百四十六億余万円、昭和二十二年度は二千五十八億円中約三一%、六百三十七億余万円、昭和二十三年度は四千六百十九億円中二三%、千六十一億円、昭和二十四年度は六千九百九十四億円中約一四%、九百九十六億円、昭和二十五年度は六千三百三十二億円のうち約一六%、九百八十四億余万円、二十六年度は六千五百七十四億円中約一三%、八百二十七億余万円の巨額に達しておる状態であります。しかも来年度におきましては、防衛支出金としまして六百五十億円、米軍側の分担額約五百五十八億ないし七百二十億円が予想せられる現在におきまして、これら日米両国政府の支出が、日米財政並び国民経済に及ぼす影響は、まことに甚大なるものがあると思料せらるるのであります。占領軍及び駐留軍のための調達はいかなる内容を有するものか、またその調達はいかなる方式によるものであるか、政府の所信を明らかにせられたい。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この問題につきましては、いろいろ各種の施設、区域等に基くものでありますので、これから漸次話をして行かなければならぬと思います。大体の性格からいえば、今までとそう非常に違うことはないかもしれませんが、範囲、区域、その他具体的には困つたものがたくさんあると思います。これにつきまして、国内としてはどういう機構を必要とするかということもありますか、これにつきましては別途に行政機構の上から見て検討中であります。いずれにしても相当多額のものでありまするから、日本経済全般に対して圧迫等のないように、需給の困難のないように、十分注意をするつもりでおります。
  62. 田中角榮

    田中(角)委員 調達の内容等に対してどなたか御答弁がありませんか。
  63. 根道廣吉

    根道政府委員 従来占領軍のためにいたしておりまする調達の内容といたしましては、建設工事、各種役務、需品の調達、不動産並び労務の提供、その他運輸通信のサービス等でありまして、工事につきましては、兵舎、住宅、事務所、倉庫等、軍施設の建設及びその修理、役務といたしましては光熱、動力、水道、ガス、電気等の供給、船舶、車両、機械設備、家具等の修理、それから港湾荷役、ホテルの運営、各種品目の包装、変電所の運営というようなものでありまして、需品といたしましては石炭、車両の部品、機械設備、各種備品、工事用の資材、繊維製品及び各種消耗品、各種原材料の納入であります。不動産につきましては演習場、飛行場、兵舎、宿舎、事務所、倉庫、港湾等、各種施設の提供であります。労務につきましては、占領軍の各種用役に従事しまする労務者、たとえば法律顧問、通訳等の事務系統の者のほか、技師、運転手、旋盤工、ミーリング工、大工、左官等のあらゆる種類の技能者及び船員、その他一般の日傭者等の要員の提供であります。
  64. 田中角榮

    田中(角)委員 昭和二十六年度において、占領軍のための調達に要する経費のうち、米国政府負担金につきましては、米軍が面接調達を行つておるとのことでありますが、その金額、内容等はいかなるものであるか、御説明を願いたい。
  65. 根道廣吉

    根道政府委員 これらの調達の方式といたしましては、昨年の六月までは、日本政府においては、特別調達庁をして一括これを行わしめて参りました。それから昨年の七月以降におきましては、米軍側の負担としましては、労務の三百七十二億円を除きまして、米軍が直接これが調達に当つて参りました。日本側の負担分につきましては、従来と同様特別調達庁をしてこれが調達に当らしめて参つたのでありますが、米側負担のただいま申しました労務の三百七十二億円、これは昨年のベース・アツプに伴いまして、この金額は今年さらに増大するのでありますが、その分を合せて、特別調達庁が日本政府側としてこれに当つて来たわけであります。しかしながら今後の調達につきましては、これからはつきりいたしますところの行政協定の進行に伴いまして、決定せらるるのでありまして、これを今後いかにするかということについては、過去の経験に徴しまして、特調といたしましては、事務的にいろいろなことを目下研究中であります。
  66. 田中角榮

    田中(角)委員 今年度までは、米軍負担分に対しては直接調灘を行つておられるという政府の御説明でありましたが、将来日米分担の内容と金額を決定する上におきまして、施設を新設附加し、または不動産の形質を変更する等の処置につきましては、駐留軍撤退後において所有権の帰属が問題となることが、予想せられるわけであります。その意味で、日本側の負担する総額が不変のものであるとするならば、これらの処置のための費用は、日本側の負担とすることが望ましいと考えられるのでありますが、その点に対して岡崎さんはどういうふうにお考えになつておられるか、所信を承りたい。
  67. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御質問の趣旨はまことにごもつともだと思います。できるだけ御趣旨を実現するように努力をいたしたいと考えます。
  68. 田中角榮

    田中(角)委員 次に、日本の産業界が駐留軍に対して、日米経済協力の立場から、従来にもましてよりよく協力するために、産業、労働界及び経済団体より次に述べるような各種の要望が提出せられ、彼らはその帰趨につきまして、深甚なる関心を有しておる現在でおります。まずその一つは、各種商業契約におきましては、日本の法令、日本の商習慣が尊重せらるべきでありますが、米軍の直接調達におきましては、この面の配慮が著しく不十分の面があります。自由対等にして純然たる商業的基礎、すなわちコマーシヤル・ベースに立つべき契約が、直接調達の場合には、往々にして米軍側の一方的、高圧的態度のためにゆがめられ、業者が十分納得できない価格または條件で、契約を余儀なくせられる場合が相当に多いのであります。さらに日本人業者としましては、納得できない価格または條件で契約を余儀なくされる関係で、業者は労働者に対し賃金の切下げを行う結果となつて、労働政策上好ましからざる事態を招来し、ひいては対米感情の悪化を来さしめ、極左分子の策動するゆえんともなつておるのであります。  その二は、米軍直接調達における紛議の解決は、米軍機関の一方的な裁決によることとされておりますので、特に一定金額以上は、米国本国の裁定によらなければならないということがあるそうであります。これは事実かどうかということを承つておきたい。かかる紛議については、日本人業者はその煩雑な手続、経費、時間等の関係と、占領軍に対する占領治下の国民という卑屈感から、勢い不満を持ちながらも、救済手段に訴えることを躊躇するのが普通であります。しかしながら、これは單に業界の損失を言うものではなく、日本人の対米感情にマイナスを累積して、日米親善関係の将来に暗影を投ずることをおそれるものであります。  その三は、日本経済基盤の根本的相違に原因する諸制度及び商慣習の相違にもかかわらず、米国調達方式が特需に採用されておることと、米国側調達担当官が日本経済の実情にうとく、日本における調達技術に不熟練であるために、日本人業者と米国調達賞との間に種々の紛議と誤解を惹起し、この誤解は言語の相違による意思の疏通を欠くことによりましてさらに深められ、その結果は日本人業者及び米軍相互間に、相手方に不信の念を醸成するのみならず、米国及び日本両国の間に好ましくない傾向の発生を見ておるのであります。その例を申し上げますと、米軍との契約はアメリカ政府の標準契約方式によつて行われ、その契約内容は日本政府が従来採用して来た契約方法、並びに従来日本の民間で行われて来た商慣習とも、異なる点が非常に多いのであります。しかも内容が複雑であり、かつ英文で書かれておりますために、通常の日本人業者にとつては理解することが困難な現状であります。従つて日本人業者はしばしば契約内容を誤解して契約を締結するものであります。その結果、種々の紛議を惹起することは当然であります。日本における堅実にして優秀なる会社は、このような事情のために、危険率の多いドル契約から遠ざかろうとする傾向が、漸次強くなつているのが現状であります。また渉外能力を有しない業者は、当然入札に参加することを躊躇するわけであります。それらの結果、ドル契約の入札には、それが一般競争入札であつても、事実多数の参加者を集めて、公正なる競争を期待できない場合が多くあるのであります。日本人業者がかくのごとく消極的である一面、外国の商社は積極的に直接契約に進出しようとするけはいが強いのであります。問題は非常に大きくここにあると存じます。現状のままに推移する場合におきましては、近い将来直接調達の契約は外国商社にその大勢を制せられて、日本人業者は、まつたくその下請業者としての地位に甘んじなければならない状態に立ち至るのではないかとの危惧さえ一部に生じておる現状であります。以上のごとく各種問題につきまして、日米経済協力の趣旨実現の見地から、これを是正する方策を早急に樹立して、真に日米経済協力の実をあげなければならないと考えるのであります。  以上申し述べましたことに関しまして、政府の所信を述べられると同時に、具体的なしかも強力なる方策を樹立せられたい、こう考えるわけであります。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまの御質問の趣旨は、特需契約は元来コマーシャル・ペースによるものであるが、アメリカ側の一方的な態度でこれがゆがめられておる、あるいは紛争についてアメリカ側の一方的裁決によつて決定される、あるいは米国の調達方式と日本の法令及び商習慣との間の摩擦などがあつて、善良な健全な業者がだんだん遠ざかつて来る傾向がある、こういうような御趣旨と思いますが、アメリカ側も、決して一方的な態度とか高圧的な態度というつもりでおることでないことを、私は深く信じておりますが、言語の不通な点があつたり、あるいは習慣の違つた点があつたりして、そういうふうに見られる場合もあるのだと思います。しかしながらアメリカともえども、今おつしやつたような事態を決して好ましいと思つておるわけではないのでありまして、できるだけそれを是正したいと考えておることは当然であります。政府としては御質問の趣旨に沿いますように、アメリカ側と十分話合いをいたし、また産業の保護の施設等につましても、日米間に円満なる経済協力ということが必要でありまするし、また労務者の方につきましても、これまた当然必要でありますから、できるだけ御趣旨に沿うように、今後はとりはからいたいと考えております。
  70. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 田中君に申し上げますが、岡崎国務大臣は参議院本会議から出席を求められておりますので、しばらく席をはずしたいということでありますが、質疑は御継続になりますか。
  71. 田中角榮

    田中(角)委員 やりましよう。  次に労働問題について伺いたいと思うのでありますが、先ほど西村榮一君からも同じ問題がありましたが、この問題は相当重要な問題であります。その意味において私はこまかく申し上げますが、岡崎国務大臣がおいでにならなくても、国務大臣がおいででありますから、政府の所信を承りたい。しかも先ほどのお話では、去る日の労働委員会においてこの種の問題が討議せられたようでありますが、どうも政府は純理論的に考えておられるのではないか。しかし理論的には非常にうまく行つておるようでありますが、必ずしもその結果はうまく行かないのでありまして、現実問題に対していろいろな紛議を生じたり、日米間におもしろくない事情が起りつつありますので、特にダブるようでありますが、しばらく質問をいたしたい、こう考えるわけであります。  駐留軍に勤務する日本人勤務者の雇用並びにその管理方式についてであるが、従来占領軍に対しまして、日本政府の義務として、日本政府機関が雇用いたしまして連合軍が使用するという形式をとつて来たのであります。平和條約発効後の日本に駐留する米軍に勤務する日本人勤務者の雇用、並びにこれが管理方式につきましては、先ほど岡崎国務大臣も申された通り、一応二つの方式が考えられるわけであります。その一つ駐留軍による直接雇用方式であり、他は従来占領軍のためのそれと同様、日本政府機関が雇用いたしまして、駐留軍が使用するという間接雇用方式であります。直接雇用方式によれば、雇用契約に基く一切の権利義務関係は、駐留軍と雇用する労務者との間にありまして、日本政府は労使関係当事者としては、何らの権利義務を有しないこととなつておるのであります。この場合雇用される日本労務者が、国内労働法規により律せられるべきことは当然であります。所管省においても十分遺憾なきを期せられるであろうと思いますが、それは理論上可能なことでありまして、実質上これら労務者が完全に保護せられるかいなかについては、多分に疑問の余地があります。すなわち駐留軍の性質によりまして、病欠等の場合の長期有給休暇、健康保険組合による附加給付等、社会保険法令を上まわる労務者保護制度の廃止と、労働者の保護に万全を期し得ないおそれが十分あります。労働條件が対等の立場で決定されず、労働者の権利が圧迫されるおそれもあります。言語風俗を異にいたしますので、不必要なる労働紛議を生ずる機会が多くなるわけであります。以上のごとき支障が発生することを、考慮しなければならないのでありまして、ただいま実質上これら労務者が完全に保護せられるかいなか疑問の余地ありと申し上げましたが、そのなまなましい実例といたしましては、昨年某基地におきまして日本労務者の警備員が、職務に忠実の余り脱走兵を追跡いたしましたところ、その脱走兵から射撃をされるといつた事件が、発生いたしたようであります。かりに労務者は駐留軍に直用せられ、駐留軍日本の労働三法を尊重すると約束をいたしましても、駐留軍基地なるもので、その約束が問題なく実行される性質を有するものかいなかは、この実例が如実に示しておるわけであります。日本政府が雇用主となつて雇い入れ、使用する間接雇用方式によりますれば、日本政府機関が雇用主といたしまして、法律上の一切の権利義務を有することとなるのであります。労務者を直接指揮監督し使用するものが駐留軍であるから、駐留軍労務者の使用について行使する権限の範囲内において、日本国法上の義務と責任を持つことになるわけであります。この方式におきましては労使関係が二元化されることにより、雇用と使用の関係が複雑化する欠点はありますが、実際上切実な労働者保護の見地より考えるならば、次の利点、すなわち雇用主に対する国内法的の責任の追究が容易であり、労働者の保護に有利である。次には給與その他の労働條件の決定が公正に行われ、労働者の権利の尊重、確保が容易に実現できる。労働者は給與その他労働條件の決定に関し、言語風俗を異にする駐留軍と直接交渉を行わないで、労働紛議を未然に防止する機会を與えられるわけであります。日本政府の給與その他の労働政策並びに財政政策上、日本政府の意思を加味することができるわけであります。以上の理由によりまして、間接雇用方式を採用することが適当であると考えます。理論上の問題は別としまして、雇用関係においていたずらな紛議、摩擦を避け、未然に防ぐために、労働行政以外に種々細部のめんどうを見る政府機関が必要となつて来ます。この労働の問題につきましては、私がただいままで二、三労働省をただしました結果は、直接雇用方式も一部においてとられてもいいんじやないかというような気持があるようでおりますが、私は日本労務者の権利義務を完全に遂行せしむるという立場から、しかも面接米軍雇用者であつても、日本の労働三法を適用し、しかも完全に彼らを保護するという立場から考えましても、当然この間接雇用方式をとるべきである、こう考えるのでありますが、今までの事情を御説明になられると同時に、国務大臣としての意見をただしたい、こう考えるのでおります。
  72. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいま国務大臣にお尋ねのようでありますが、かわつて私から御説明申し上げます。今までの経験によりますと、現在とつておりますところの日本政府が雇用主となり、米軍が使用主となつておる形におきまして、いろいろな問題が起こつております。問題の起りますことは、日本政府が雇用主であるというところに発生するのではありませんで、ありのままに申しますならば、米軍が使用者であるために生ずるところの食い違いであります。かりにこれを米軍の直接の雇用として、日本政府が一切手を引いてしまうということにいたしますれば、それでは問題はなくなるかと申しますと、やはり同じく存在するのじやなかろうかという懸念を持つておるわけであります。その場合労務者に対しまして労働関係法規の実行がどうかという問題になります。相手は何にいたしましても軍隊であります。国家の権力をもつて特に駐留する軍隊であります。一種の治外法権的性格も持つておるわけであります。その軍隊に対して労務者が不平不満を直接に述べるということ、事実上非常に困難であるとともに、また日本側といたしまして労働法規を強行適用するということは、事の性質上非常にむずかしい。米軍側においてこれを尊重すると申しましても、結果といたしましては、たとえば労働基準局の裁定に従わない場合、あるいは労働委員会の裁定に服せぬ場合はどうか。あるいは事と次第によりましては、日本の法廷に出なければならぬという場合も生ずることがある。そういたしますとそういうことを米軍に直接強制するということは、またいかがなものであろうか。やはり実情に沿わないのではないかという気がいたします。従つて現実問題といたしましては、労務者の保護にやや欠くる問題が出て来るのではないかというふうに考えます。また一面労働組合運動といたしまして、米軍と図体交渉するというようなかつこうも、事実問題としては非常にむずかしいのではないか。それで労働者と米軍との間にいろいろな紛議を生ずるということになりましては、せつかくの日米提携協力ということに、非常な支障を来すのではなかろうか、そういう点を考え合せまして、この問題につきましては、今後米国側との話合いによりまして善処いたすようにしたい、こう考えます。
  73. 田中角榮

    田中(角)委員 この労働問題に対しましては、また労働委員会等でもつていろいろただすことにいたしまして、次に移りたいと思います。  次は不動産の接收等についてでありますが、占領軍の使用する土地、建物、工作物等の不動産接收、借上げは、事の性質上国民の利害に直接深刻な影響を與えるものでありまして、これが取扱いに適切な方策がとられない場合、日本国民の対米感情にマイナスを来すおそれがあるということは、御承知通りであります。軍に占領軍の一方的な意思によつて日本政府に対してその調達を要求しておるというのでありますが、接収対象の実体というものは、提供者であるところの日本政府においてのみ、完全に把握し得るものであるのみならず、貧弱狭小なる国土を最高度に活用し、また経済復興を妨げざるためには、わが国土計画の一環として考究することを必要とすると考えます。平和條約発効により独立を回復した後における駐留軍の必要とする不動産の調達提供は、日本政府意見駐留軍の調達要望に反映するようにしなければならない、こう考えるわけでありますが、不動産の接収に関する問題につき、政府の方針並びに所信を承りたいと思うわけであります、
  74. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お尋ねの不動産等に関する接収の問題でありますが、これら軍事施設等に関しましては、従来の占領下にあつた時代と講和発効後における行き方とは、多少異なるとは思いますけれども、行政協定の内容をなす軍事施設の問題と、それからしからざる建物等の利用等については、接収とか借受けとかいうことがおのずから違つて参ると、私は考えております。
  75. 田中角榮

    田中(角)委員 不動産接収の問題に対しましては、周東国務大臣から、行政協定に当つておられる岡崎さんにひとつ十分申し上げていただいて、これに関する国民の利害関係は非常に大きいし、利害関係を度外視した感情的な問題もありますので、この問題に対しては、政府は万全なる処置を講じられたいと希望を申し上げておきます。  次は調達の方法につきまして伺いたいと思うのでありますが、従来終戰処理費による占領軍のための調達につきましても、あくまでも米軍のための調達という趣旨に限定せられて、日本政府といたしましては、財政のわく内にこれを組み入れるだけにとどまつて、特に自主的な動きを示すことが、比較的少かつたように見受けられるわけであります。軍の行つて来ました直接調達につきましては、日本政府の自主的なる発言が、軍の実行面に反映することがまつたくなかつたのは現実であります。終戰以来わが国の予算占領軍のための経費、すなわち終戰処理費の占める割合は、すでに先ほど申し上げました通りきわめて高率となつており、軍の直接調達に要する経費も、また朝鮮事件勃発以来千九百七十九億余万円の巨額に達し、それらが両々相まつてわが国財政並びに経済上、過重の負担となつて来たことは否定できないのであります。  かくのごとき日本国民経済全般に対しまして、重大なる影響力を持つ駐留軍のための調達につきましては、日本政府として特に自主的な各般の施策を実施することが、必要であると考えるわけであります。調達要求の発出は、もとより米軍の権限に属することとは言いながら、現状においては、発注の時期方法または規格等につき、改善を要すべき点も少くないと思います。すなわちわが国の産業界全体の生産量を顧慮することなく、一時に厖大なる数量を要求し、あるいは使用目的の許す限り最大の納期ないし生産期間を設定することなく、緊急な非常識な納期を設定いたしまして、国内需要とのせり合いする時期を回避することなく、時を選ばず発注を行い、または使用目的に相当する程度の規格を越えて、不要に高度の規格のものを要求したり、わが国の技術、材料等の実情を無視して、調達上不合理な規格のものを要求する結果、要求物資の価格の高騰を来し、または納期遅延ないし調達不能の事態を惹起し、ひいては日米経済の健全な復興も阻害することとなることが往々にあるのであつて、かかる面を考慮する日本政府側の発言を取入れて、日米経済の実力、実情の十分なる配慮の上に立つた総合的な調達計画の樹立と、この周到周密なる実行が望ましいのであります。  この点の実例としましては、石炭の発注は年間九十五億円、二百万トンの巨額に達するといわれるのであるが、これが国内需要にせり合いすることを回避することなく発注が行われるために、わが国の石炭生産計画を破壊されるばかりでなく、購入価格の高騰を招来し、ひいては調達上混乱を来す結果となつたこともしばしばであります。  木材についても年間三百万石の巨額に上り、石炭の場合と同様の結果を来しているのであります。占領軍のための軍需品の調達の実際におきましては、契約当事者者たる日本政府側の検収が行われていないために、米軍受領官の意思いかんによりましては、合格品でも受領を拒否されたり、また私の聞いたところによりますると、昨年十一月末より木材の納入について、米軍の調達受領書を発出しながらも、さらに再検査実施の上合格したものでなければ、支拂い請求書を受領しないことといたしましたために、木材業者全体として約二億円の金額が請求不可能となり、年末金融難の悩みに加えて、年頭よりはなはだしい困惑に逢着しているという事例を、申し上げることができるわけであります。占領軍側の調達機関が契約の相手方、契約金額等を決定いたしまして、事後において日本政府に対し調達要求を発して、当業者と日本政府との間に随意契約の方式により、契約を締結すべきことを要望する事例が間々あると聞くのであります。私の知るところでは本年一月末、きわめて巨額の工事計異に関する設計業務を担当する業者を選定すべき調達要求が、米軍より日本政府に対し発せられたが、これには特定外国会社を契約の相手方として選定すべきことを示唆してあり、遂に該会社を契約の相手方とし、該会社の要求する見積額三千数百万円を契約価格とする随意契約を、締結せしめられんとしつつある事例がありまして、当該外国商社は請負能力が不足し、日本商社をしてその下請として駆使せざるを得ない状況にあると聞いております。  以上申し上げましたように、駐留軍のための調達に関し、その発注方法等の具体的な実行前に、日本政府としての自主的な施策を樹立することが緊要であると考えます。この点に関する政府の所信を承りたい。
  76. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話のごとく従来占領軍の必要とする物品の調達にあたつては、お話のような遺憾な点が全然ないとは言えないのであります。お示しの石炭等につきましても、その発注が時期的にあるいは受注する相手方の場所的な選択によつて国内における石炭の需要供給の関係を調節し得ただろうと思われるときに、ある片寄つた部分にあれを発注したがために、混乱を生じたことがあることは承知いたしております。これらに関しましても政府が中に入りまして調整をして、事なきを得たのでありますが、講和発効後における事態というものは、今までの占領下にあつた形とは違うのであります。独立したる日本の国として、もとより行政協定の範囲内においての責務を課せられる部分もありましようけれども、おおむね対等にいろいろ話合いをすることでありましようし、私どもといたしましても、その旨は関係国の方にもお話をしておりますし、現に今後起ることのあるべき経済協力の内容につきましても、日本の生産設備能力がどのくらいあるか、しかしてそれにどういうふうな形に原材料を與えることによつて、どのくらいの協力ができるかということを土台として、話を進めて参るつもりでおります。お話のようにあくまでも経済協力、あるいはそれに基いて駐留軍に対する必要品を出すこと、それがただちに国内関係の需要を圧迫することのないように、すべての点について話合いを進めて参る考えであります。
  77. 田中角榮

    田中(角)委員 終戰直後、日本経済の混乱期におきまして、連合国よりの厖大なる調達要求は、当時沈滞のきわみにあつた日本の土建界その他の産業界に、一大需要を喚起いたし、大いなる活気を與えたる反面、インフレの進行に拍車を加え、物価騰貴の一大原因をなすに至つたことは、吾人の記憶になまなましいところであります。政府はこれが対策といたしまして、法律六十号及び法律百七十一号というようなものを公布いたしまして、調達面から生ずるインフレの進行その他の弊害除去の対策としたのでありますが、昭和二十七年度予算案を見ますときに、駐留費、予備隊等いわゆる広義の防衛に関する調達に支出される費用は、千六百余億円の巨額に達し、これにさらにアメリカ政府負担の五百九十億を加えるときは、実に二千数百億の巨額に達するのであります。この厖大なる需要に対する調達は、これが財政、商業、経済に與える影響を十分考慮して、適切なる対策のもとに実施しないときは、いまだ完全な立直りを見せていない日本経済の回復に、一大支障を與える結果となると思われます。この問題に対しましては、前問題に関連し、周東国務大臣から御答弁があつたようでありますが、この問題はただに日米行政協定というような面からではなく、日米経済協力という問題に非常に大きな問題があり、特に戦後の日本経済のほとんどの基盤は、これによつてつくられたというような問題でありますので、特段の御留意を携われたい、こう考えるわけであります。  次に行政協定の内容についてちよつと伺いたいのでありますが、米軍のための調達が、わが経済、財政に與える影響の大なることは、ただいま申し上げた通りであります。しかし米軍直接の調達の弊害につきましても、先ほど来るる申し上げましたが、これはもとより日米防衛の線に沿いまして、われわれは協力をして参りたい。と同時に、日米経済協力の一環ともなるべきドル調達を、いかにうまくやつてもらうかということを考えておるわけで彫ります。その意味におきまして、これが尨大なる調達にあたりましては、日本の生産計画及び金融操作等のために、日本政府は需要供給の全貌を早く把握して、その計画をこわさないようにやつていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。その意味におきまして、政府の一部においては、占領軍が支出するものは占領軍が調達し、日本が負担するものは日本がというような案もあるようでありますが、この大きな問題をうまく解決するためには、やはり統一した日本政府機関においてこれを行うということが、最も合理的であると考えます。しかしこの問題に対していろいろな議論もあるようでありますが、私は問題はここにあると思う。北大西洋條約加盟国間における駐留の地位に関する協定、第九條第二項を見ますと、非常にはつきりしたことが書いてあります。駐留軍またはその非戰闘部隊維持のために必要とする現地調達物資は、通例受容国の軍隊のためにかかる物資の購入に当る当局を通じて購入するものとす。すなわちはつきり申し上げますと、米国の駐屯軍に対しては日本の官庁をして行わしめる、こういうようなはつきりした線が出ておるのであります。これに対しましては、いまだ批准が完了せられておらないようではありまするが、私は少くともこういうような状態において、このような線で行政協定が進めらるべきものである。しかもまた進めていただきたいと思う。それによつて初めて日本経済に対する圧迫も除去できるのでありますし、特にこれが尨大なる支出を行うことによつて日本の経済界が活況を呈するということでありますので、この問題に対しては、ただ不当なる利益を上げたいとか、損失を除きたいというような観点からではなく、真に日米経済協力という立場から、この問題を強力にお進め願いたいと考えるのでありますが、これに対して政府の所信を承りたい。
  78. 周東英雄

    ○周東国務大臣 御意見の点につきましてはまつたく同感であります。駐留軍の必要とする物資の調達について、政府機関がまとめてやるか、あるいは直接民間に行くかということは別といたしましても、日本の生産能力というものを勘案し、今のままの設備において、どれだけ協力の線を出して、発注に応じ得るか、またさらにその設備をある程度整備することによつて、どれだけの余力を生じ、どれだけの発注に応じ得るかということの限界を示して、これに対して話合いをつけるつもりでおります。あくまでもそのことは、アメリカ等に対する経済協力の線を強く進めることに沿つて、国防生産を助け、同時に日本の経済復興ということの大きな種をまくつもりで、考えておるのでございます。
  79. 田中角榮

    田中(角)委員 時間がありませんので、最後に結論だけを申し上げますが、日米行政協定の問題につきましては、率直に申し上げまして、どうも主権の問題だけが非常に大きく取扱われておるようでありますが、私は端的に申し上げまして、現在の日本状態から日米行政協定を見守る場合に、やはり主権の問題はもちろん、裁判管轄権の問題があるのでありますが、これと調達方式をいかにするかという問題の二点に集約せられるといつても、過言ではないと考えておるわけであります。それで一番初めに申し上げました通り、少いときでもその年度における歳出総額の一三%を占め、多いときには三十六、七パーセントまでも占めておりましたところの、かかる種の支出に対しては、占領軍の治下にあり、降伏文書によつて発効した覚書によつてなされたものであるので、批判は加えられないのだ、こういう卑屈な感情から、日本人はほとんどこの問題を論議しなかつたようであります。しかしこれが経済界に及ぼした影響は非常に大きい。私はその面におきましては、これは岡崎国務大臣がおられれば私は強く要望したいと思うのでありますが、日米行政協定は先ほど言うように、国際法上の問題だけでなく、ただに法律家や外交専門家の手にだけゆだねらるべき問題ではないと考えるのであります。この帰趨いかんによつて日本の経済界に及ぼす影響は非常に大きいのでありまして、われわれ百年の計を立てる現在にあたつて、まず現実に二十七年度においても、先ほど申し述べましたように大きな費用を使われるのであつて、しかも日本の業界はこれが支出を待つておる状況でありますので、これが適正なる支出が行われ、しかも日本の産業経済界にプラスを與えるような状態において、日米行政協定を進められたい。私はこの問題に対しましてはすでに十四、五日前から考えておつたのでありまして、できるだけ早く政府の所信を明らかにしていただきたい。しかも同時に日米行政協定は、独立後における口承と米国の対等の立場において結ばれるのでありますので、できるならば経済関係のエキスパートも入れられて、これが協定成立に万遺憾なきを期せられたい。ただ私がおそれるのは、先ほども岡崎国務大臣が申されたように、日本のために非常に莫大なる経費の支出に応じておるところのアメリカに対して、日本がただ北大西洋條約と同じようなことを申して、対等な権利を主張するというような感覚的なマイナスを與えたくない。ただ厖大に支出せられるその金額の使用のいかんにおいては、戰後の敢行的な日本の経済に非常に大きなプラス、マイナスがはつきり出るのであつて、これをなるべくプラスの面に使用できるような処置を講じていただきたい、こういうことを希望しておるわけでありますので、この問題に対しては、ひとつ十分政府をあげて、私が申し上げましたような趣旨に対して御努力を願いたい。特に岡崎さんは非常にお忙しい方でありますし、今行政協定ではいわゆる法規上の問題と取組んでおられるようでありますから、経済閣僚は特にひとつこの面だけでも、岡崎さんのお手伝いをされていただいて、吉田内閣の全責任において、この経済問題だけは強力にお進め願いたい、そして万遺憾なきを期していただきたい、こう考えるわけであります。  なお私の最後の希望としては、これに類する警察予備隊の経費その他を全部入れますと、非常に大きなものでありますが、今同じような状態において支出されるこの種の支出に対しては、日本政府部内においても各個ばらばらであります。これが統一を欠くために、国費の執行上にあたつてはいろいろな問題が起きております。同じ二十六年度の費用を支出しながら、官庁の間で発注する同じものに対して価格の一大変動がある。こういう問題は当然改めなければならぬ。しかも乏しい財政の中からこの大事業をやらなければならないのでありますから、私は特にこの種のものに対しては別途政府一つの統一機関を設けて、経済的な面からも十分に検討を要する、こういうふうに考えるわけであります。  最後に岡崎さんにお願い申し上げたいのは、日米間には、先ほども申された通り、言語の違いとか習慣の違いとかによつて、なかなか意思の疏通を欠く場合が多いのでありまして、特にこれが意思の疏通をはかるために、日米合同委員会等も今後設けられるようでありますから、これに対しても、ただいままで申し上げましたように、日本人の意思も向うにさらりと通つて、しかもお互いが協力し、お互いが信頼して行かれるような方向に、お進めくださらんことを切に希望いたしまして、私の質問を終ります。
  80. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を再開して、質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  81. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。質疑を継続いたします。平川篤雄君。
  82. 平川篤雄

    ○平川委員 岡崎さんに時間の許す限りお伺いをいたしまして、その後またお帰りになるのを待つて、聞かなければいけないようになるだろうと思います。  私が今日お伺いいたしたいと思いますことは、問題になつております例の日本の自衛計画の問題であります。けさの西村君の質問に対しまして、例の新聞に伝えられました保安隊海外派遣の問題を、明確に否定をせられたようでありまして、私ははなはだこれを欣快に存ずるわけであります。大体日本国民海外に再び戦わしめないということは、われわれが絶対に堅持しなければならない線だと考えるのでありますが、なおそのことについての所信を、この際明らかにしていただきたいのであります。海外派遣をかりに行わなければならないような場合には、私は当然これは憲法の改正を必要とすると考えますが、その点について岡崎さんの御答弁をお願いしたいと思います。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは法律問題でありますから、憲法を改正しなければならぬかどうかという点は、法務総裁なり適当な人にお答えを願いたいと思いますが、ただいまのところ予備隊等海外に派遣するという考えは毛頭持つておりませんから、従つてそういう問題を考慮したことはないのであります。
  84. 平川篤雄

    ○平川委員 先日、二月の十一日の自由党の総務会におきまして、米駐留軍は緊急非常の場合において、その行動については日本側の意見を徴せずして、自由に動くことを主張をしておるというお話があつたように伺つておりますが、これはただいまどういうふうな状態になつておりますか、お聞きをしたいのであります。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 総務会で話したことが新聞に出たときに、たいへん違つております。これはこういうことが誤り伝えられたのだろうと思います。北大西洋條約の協定の中にもあるのでありますが、非常事態のときには、この行政協定なら行政協定のみに縛られないのだ、それ以外の行動が必要の場合もあるのだから、それには縛られないのだということが、北大西洋條約にもあるのであります。日本の場合についてもそういう非常の事態のときに、たとえば米軍はある一定の施設の中におるべきものだから、それ以外に出てはいけないのだということは、常識的に考えられないと思うのでありますけれども、そういう問題は行政協定話合いのうちには、けさほど申したようにまだ出て来ておりませんから、どういうふうになるかわかりませんが、要するに北大西洋條約にすでにある協定文は、そういう趣旨だと私どもは解釈しております。
  86. 平川篤雄

    ○平川委員 もう少し具体的にお答えをいただきたいと思いますので、さらにお尋ねいたします。  この日米行政協定はほんの事務的な事項だけに限られておるということは、いろいろの方面から聞く情報によつて明らかなのであります。米軍の独自の出動あるいはこの警察予備隊——将来の保安隊というようなものの協力に関しまして、別に両国政府間のとりきめにおいてなされるということが伝えられておるわけでありますが、これは事実なのでありましようか。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほども申した通り行政協定と申すのは、安全保障條約に基く米軍日本におけるデイスポジシヨンをきめることになつております。従つて事務的のものが多いことになるのも、これは自然であります。またそれでなければ、行政協定安全保障條約三保のインプルメンテーシヨンとして、締結してよろしいという国会承認もなかつたかと思います。従つて、このようなことは大体において細目とか実施要領とかいろいろな形になるから、機械的のものが多いのは自然であります。その他において両国政府話合いをするとかしないとかいうことについては、今のところ全然まだそういう話は出ておりませんけれども、必要があれば両国政府話合いをするのは、これは自然のことだと思います。
  88. 平川篤雄

    ○平川委員 第十二回国会の平和條約及び日米安全保障條約特別委員会におきまして、これは十月の二十五日でありますが、わが党の三木幹事長が、大体吉田さんを初め政府の首脳部の人たちと話し合いまして、行政協定の内容をある程度、それでは誠意をもつて答えようという前提のもとに行つた質疑があるのであります。その中を見ますと、日本防衛の問題に関しまして、相当きゆうくつな権限と申しますか、政治的な責任しか吉田さんはお持ちになつていないと、私どもは了解をするのであります。たとえばこういうことを申しておられます。安全保障條約が国外に発動する場合には、日本政府の同意を必要とする。直接の侵略を受けた場合には——これはちよつと含みがあるのでありますが、吉田さんのそのままの言葉を読みますと、「今日の考えとしては、日本における治安は日本の国警その他をもつて維持する。その力の及ばざるような事態が発生した場合においてのみ、米軍が出動をするといいますか、日本と協力する。」こう答えております。国内の治安のために発動する場合につきましては、治安維持については直接に日本政府責任を負う、とこういうことを申しておられるのであります。これは法律的に申せば、安保條約をわれわれは承認をしたのでありますから文句はないようなものの、実はこの線を逸脱するということは、当時の吉田さんの答弁から考えますと、相当な政治的な問題が起つて来ると私は思うのでありますが、ただいま私が問題にしておりますような点は、十月二十五日の線からどこまでも逸脱したものでないかどうか。これをあらためてお聞きしたいのであります。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そのお話は私も初めて聞くのですが、今伺つただけでは正確に判断もできないと思います。しかし伺つた印象では、大体そういうところに行くのじやないかと思いますけれども、これは行政とりきめでなされる部分もあり、あるいは政府との話合いというようなものがあるのかもしれません。正確にどうということは、もう少しはつきりしたものを見て研究しないと、正確にはお答えできません。
  90. 平川篤雄

    ○平川委員 どうも官房長官の時代に起つた問題でありますし、はつきりこれは速記録に載つておる問題なんでありまして、私はこのことがあつたとかなかつたとかいうことを、お伺いしておるのではないのでして、ただいま岡崎さんがずいぶん御苦労になつておりますが、ただいまの国外に発動する場合、直接の侵略を受けた場合、この三つの場合について吉田さんが答弁をいたしました線をもつて、どこまでもお話合いになつておるか。あるいは将来その線を逸脱しないように、決意をお持ちになつておるかということをお聞きしておるわけなんです。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 でありますから、私も今その速記録をはつきり見ないと、正確な御答弁はできない、こう申しておるのであります。ただ今読み上げられたのを拝聴していますと、その線で従来も行き、今後も行くように思われる。正確なことはそれを一々読んで、間違いないかどうかということをはつきりしなければなりませんが、感じはその通りだと思います。
  92. 平川篤雄

    ○平川委員 これは吉田さんにもお伺いしなければならないと思つております。また速記録をごらんになりまして、そういうふうに認められましたならば、その線ははずしてくださつては困ると思います。  さてそれに関連して、これは大橋さんその他からもお伺いしなければならぬのでありますが、現在の予備隊というものは、これは直接の侵略を受けた場合にも、動くような構想を持たれておるように思うのですが、このことをひとつ岡崎さんにお聞きしたいのであります。と申しますのは、今国会が始まりましてからも、政府の各担当の大臣からしばしば言われておりますことは、いつまでも国内治安以外には出ていないのです。ところが事実見ておりますと、御承知のようにバズーカ砲を持つたり、あるいは高射砲を持ちましたり、今度の予算案の中にもございますように、海上保安庁なんかには航空機の訓練までする費用がとつてある。こういう戦車の問題なんかでは、例の詭弁を弄せられて、大体密集した集団部隊を撃つのには、バズーカ砲が便利がいいのだというようなことをおつしやつておりますが、実際の訓練にあたつては張り子の戰車を使つてつているのであります。これは現にたくさんの人がそれを見ております。張り子の戰車なんかは博物館へ行つてもありはしません。戦車というものは今のところ日本にはないのであります。そういたしますと、この訓練というのは、すでに直接の侵略を予想して行われているのでありますが、われわれが行政協定の問題について第十二国会で審議をいたしました場合にも、その後の政府御自身が言明しておられるところを見ましても、そういう点から手出しはしないということ、私はこの点がどうもはつきりいたさないのであります。国民も疑惑を持つていると思う。将来の岡崎さんとのお話合いにおそらくそんな問題が——直接侵略を受けた場合には、当然日本防衛機構というものが発動するのだというようなことになるのではないかと思いますので、その辺のお見通しをお聞かせ願いたい。
  93. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申しますように、行政協定アメリカ軍のデイスポジンヨンをきめるということになつておりますから、予備隊等の問題については、これはその中には入つて来ない性質のものと考えあおります。ただ今いろいろおつしやつた点については、予備隊担当の主管大臣からお答えするのが正確だと思いますが、私の考えでは、外国から侵略を受けたような場合には、予備隊だろうが、普通のわれわれ個人だろうが、タバコを吸つて、腕をこまねいて何もしないでいるというわけはないので、これは日本の自分の国を守るわけですから、国民はだれでも分相応の国の独立を守るために努力するのは、あたりまえだと考えております。
  94. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいまの岡崎さんの御意見は、私はかなり正確であると思います。このことはしかし大橋さんや木村法務総裁がお話になつておりますように、いわゆる単なる治安のためのものではない。そういうことを意味しているものと私は了解をいたしまして、これは後ほど他の方から確かめることといたします。  さて昨年の九月十日に吉田、アチソン両氏から……。
  95. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 平川君にちよつと申し上げますが、岡崎国務大臣は渉外要務で時間だそうですから……。
  96. 平川篤雄

    ○平川委員 それではこの一点だけ……。アチソン氏との交換文書の中で、国連軍との援助の確約を吉田さんはしておるのであります。これは私の想像でありますが、この点も明らかにしていただきたいのであるが、ただいまのリツジウエイ司令官は、おそらく独立直後には日本の駐留米軍司令官としての建前と、もう一つは国連軍の総司令官としての立場をお持ちになるものだと想像いたします。それは間違いであるにいたしましても、日本の駐留米軍というものが、同時に極東における国連軍の一環になるのではないかというふうに思うのでありますが、朝鮮出動等を予想いたしました際に、その場合わが日本政府はどういう立場をとることができるか。あるいはその点についてのお見通しを一点お聞きしたいのであります。
  97. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはむろん行政協定の問題ではありません。しかしながら日本が国連に対して協力をするということは、今でもそうでありまするし、條約発効後もむろん條約の規定によつてやるのであります。これはわれわれの見るところでは、国連軍は戦争をしておるのではなくて、国際警察軍として国際の平和の維持に当つておると解釈しておりますから、これに対しては全面的に可能な範囲で協力するという方針を政府はとつております。将来リツジウエイ将軍なりその他の人がどういう役割をするかということは、これはアメリカ側のことでありますから、われわれが関係することではございませんけれども、要するに国連軍の行動に対しては、日本政府は十分なる協力をする立場に立つておるということだけは、はつきり申し上げられると思います。
  98. 平川篤雄

    ○平川委員 まだ他の大臣から聞かなければならないことが数点あるので、これは保留いたします。大蔵大臣にこの問題に関しまして関連のあることを少し確かめたいのであります。  私が大蔵大臣にお聞きしたいと思いますことは、現在及び将来の日本の自衛計画と米軍との関係についてでありますが、その中の一部分としてほんの二、三点お聞きしておきたいと思います。それは安全保障諸費五百六十億の問題なのでありますが、これは大蔵大臣の御説明によりますと、「治安の確保を期するため、警察予備隊及び海上保安庁に計止いたしました経費のほか、さらに特段の措置を講ずるために設けたものであります。その使途として予想されますものは、たとえば」とこう言われまして、一、二、三、四とございます、その一、二は駐留米軍の必要経費と思われるものと書いてありまして、あとの三、四は「巡視船等の装備の強化、監視施設の充実に必要な経費、治安に関する機構の整備、学校その他教育訓練機関の設置に必要な経費等があげられるのであります。これらの経費の内訳につきましては、今後における諸情勢の推移により、内容がさらに具体化するのをまつて配分を適切に行いたい所存であります。」こういう御説明であります。そこでこの平和回復に伴う措置としてあげられました経費の中には、防衛支出金がございます。さらに警察予備隊、海上保安庁については別項になつておるのであります。ところがただいまの三、四の項目は、明らかにこれは海上保安庁及び警察予備隊関係がある、ないしは将来の防衛隊とか保安隊とか呼はれておりますものと関係がある経費のように思われるのでありますが、これはそう理解してよろしゆうございますか。
  99. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政演説において申し上げました通りでございまして、安全保障諸費のうちには、海上保安庁の方に今後行くかもわからない費用も組んでおるのであります。行くかもわからないと申しますのは、誤解があつてはいけませんが、今後の情勢によりまして、たとえば沿岸の監視船をふやすとか、あるいは警備隊をふやすような場合におきまして、海上保安庁の予算に盛つている以外は、ただいまでははつきりは見通しをつけておりません。しかし情勢によりまして、ヘリコプターを置いて巡視するとか、いろいろな点がありますので、そういう場合には、この安全保障諸費の中から出しておこう、こういう考えであります。
  100. 平川篤雄

    ○平川委員 その点ははつきりいたしました。ただ問題は、ただいま申された限りにおきましては、現在においては、警察予備隊あるいは海上保安庁の経費として、これは計上せられるのがほんとうであるというふうに思うのでありますが、特にこの安全保障諸費の中に入つた理由を聞きたいのであります。この警察予備隊とか海上保安庁は、大橋さんや木村さんなどの御答弁によりますと、国内治安の警察的な任務だと言う。これは言葉の使い方が安全保障とは私は違うと思うのであります。それがここに盛つて来られておるのはむしろおかしいのであつて、海上保安庁、警察予備隊の予備費として考えられておる方がむしろ正しいのではないか。もしここへどうしても置かなければならぬとすれば、それはどういう意味があるのか、お聞きしたいのであります。
  101. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私の気持は、警察予備隊あるいは海上保安庁ははつきりさせておいた方がいい。それは将来行政協定その他でいるようなことがあつた場合において、警察予備隊の予備費とか、海上保安庁の予備費とかいうことをあげるよりも、安全保障によつて相当の費用を見ておかなければなりませんので、そのうちへ入れて、そして説明をして御審議願つた方がいいのではないか。こういうふうにいたしますと、たとえば海上保安庁の予備費ということになると、これだけ予備費があるから、海上保安庁の方でこれだけ使つていいのだということになるので、そういうふうなきめ方をいたしておるのであります。
  102. 石野久男

    ○石野委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。ただいま安全保障諸費の中から、情勢の推移によつて海上保安庁関係に経費が出て行くであろうというお話でございますが、昨年の十二月二十七日の日本タイムスに、吉田さんとリツジウエイ大将との会談でそれに関運するようなこととして、駆逐艇の十隻、哨海艇の借入れ交渉が行われておるというようなことがうかがわれたのですが、その記事によりますと、大体本年五月から十月くらいまでの間に、それらのものが具体的にこちらに引渡されるのではないかというようなことも言われておりました。これはどういうふうにその後進捗しておるか。先日運輸委員会の席上で村上運輸大臣が、その交渉はしておるけれどもおそらくそれは予備費の中から支出されるだろうという御答弁をなさつておりますが、どちらがほんとうなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  103. 池田勇人

    ○池田国務大臣 海上保安庁の予算の中に、六千人足らずの人員の増加は、将来アメリカより哨海艇その他を借りた場合に、それに乗り込みます海上保安隊並び予算その艦艇の維持費を、七十数億円の中に組んでおるわけであります。予備費ではございません。
  104. 石野久男

    ○石野委員 それでは、今の駆逐艇とか哨戒艇を買い入れるとかなんとかいう費用は、安全保障諸費の中から出るということですか。
  105. 池田勇人

    ○池田国務大臣 海上保安隊の借ります船の借賃は今見ておりません。これはバズーカ砲にいたしましても、銃にいたしましても、全部向うからただで借りておるのであります。従いまして海上保安庁の経費に組んでおるのは、借料ではなしに乗り組む人員の給料並びに油代等であります。
  106. 平川篤雄

    ○平川委員 大蔵大臣予算を御編成になつたのであるから、それに関する限りにおいて御答弁をお願いしたいのでありますが、少し他の大臣の管轄のことにも触れるかもしれません。大体今まで大橋さんや木村さんのお話になつておるように、国内治安に限つて保安隊と称するもの、将来保安隊となるものが運営をせられるということになつておるのでありますが、そうなれば国内の治安計画というものは、日本国内で立つはずです。政府自体がお立てになつてもいいはずです。ところが安全保障諸費の中に、将来明らかになつて来るというので、この三、四の両項目にわたるものが置いてあるということは、これは行政協定やその他アメリカ日本との間の何らかのとりきめによつて、明らかになることが予想せられるというふうに考えるのですが、この点大蔵大臣は何か御承知になつておりますか。
  107. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、安全保障諸費の中にはいろいろなものが含まれております。たとえば今の米軍が都会を離れて行く場合の営舎、あるいは道路、あるいは通信施設というものも含めております。しこうして安全保障條約によりまして、日本の治安をより以上に確保する必要がある場合において要すべき経費も入れておることは、私が先ほど申し上げた通りであります。そこでそのうちで将来予備隊の方に使い得るものが、どれだけあるということを見込んで、予備隊の予備費として組むことがいいかどうかという問題になりますと、それは適当でない。特にそこに触れておりますように、予備隊の方でこういうものが将来いる場合に、安全保障諸費から出すという説明はいたしておりません。ただ問題は、将来の日本の治安その他を考えてみまして、警察予備隊の方を強化する必要があるという場合におきましては、予算総則に、このうちから流用ができるという前もつての準備はいたしておきますが、そういう意味において、予備隊と海上保安庁を一応きめてしまつて、あとは予備費として組まずに、全体の安全保障諸費の中に入れた方が、予算の処理が楽だと考えましていたしております。
  108. 平川篤雄

    ○平川委員 私が申し上げたのはそこなんでありまして、安全保障という言葉と国内治安という言葉の間には、政府は相当使いわけをしておられると思う。私が聞きたいのは、将来の保安隊ないしは防衛隊称するものが、いわゆる安全保障の一環であるか、あるいは純粋に国内治安であるかという点について、大蔵大臣予算をお組みになる場合に、どういう御了解でおやりになつたかということをお聞きしたい。
  109. 池田勇人

    ○池田国務大臣 安全保障諸費のうちから、将来警察予備隊あるいは海上保安庁の方にまわることがあり得ると考えておるのであります。しかし警察予備隊、海上保安庁の予備費として組むということは、財政法上適当でございません。従いまして、御審議願つております一般の予備費三十億円に入れるか、入れないかという問題があるのでありますが、私はこういうものは、予備費がいたずらに大きくなるということよりも、一応想定して安全保障諸費に組み込んだ方が、適当であると考えておるのであります。
  110. 平川篤雄

    ○平川委員 どうも私の言うことが徹底しないのか、はつきりしたところを答弁していただけないのでありますが、私が申し上げますのは、これは当然大橋さんの問題であろうと思うのです。しかし大蔵大臣にお聞きしておきたいことは、将来の保安隊というものの経費になるものがあると考えられますが、それは安全保障一つの機構であるか、ないしは国内治安の一つの機構であるかということ、その含みはどういうふうにお考えになつているか。あるいは今大蔵大臣のおつしやつたように、ただ何ということなしに、将来海上保安庁や警察予備隊に出す予備費を、全体の予備費に入れるよりか、ここに入れた方が都合がいいから入れたのだ、安全保障という言葉にあまりとらわれていないのだとおつしやればそれまでです。しかし現在の警察予備隊、それが将来の保安隊になるのでありますが、それが国内治安に任ずる警察ではなしに、別個の性格を持つ安全保障機関であるという含みのもとに置かれたかどうか、ここをお伺いしておるのであります。
  111. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほどお答えした通りでございます。警察予備隊並びに海上保安庁の経費といたしましては、六百億円が予算はつきりきまつております。しこうして安全保障に基きましていろいろな費用がいる場合があるので、一応そこで組んでおります。今の海上保安に対しまする経費は、一応安全保障諸費のうちに入れておりますが、その分は予算総則に言つておりますように、もし海上保安庁のものであれば、総則でそちらの方に出し得るという規定を設けて、一応は区別いたしておるのであります。
  112. 平川篤雄

    ○平川委員 これは、それでは大橋さんその他からお聞きすることにいたします。  新聞に伝えるところによると、大蔵大臣が予想されております一、二の項目は、アメリカが負担をするというようなことが出ておりますが、さような事実があるのでありましようか。
  113. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそういう正式のお話を聞いたことはございません。
  114. 平川篤雄

    ○平川委員 それでは、もう一点これに関連をいたしました他の問題でお伺いしたいのですが、防衛支出金というものは六百五十億組んであるのであります。先ほど岡崎さんにも少しお尋ねをしたのでありますが、仮定の問題にこれはなると思うのですが、あり得る仮定の問題であると思います。すなわち米軍は、ただ日本防衛だけに当つておるものではなさそうに見えるのであります。日本に駐留をしております米軍は、朝鮮戰線の変化によりましては、国連軍として出動する場合があり得るのではないかと思うのであります。そういたしますと、これは国連軍になるのか米軍であるかということについては、重大な問題が発生して来ると思いますが、これは大蔵大臣には聞きません。しかし、そういう両面の性格を持つておりますことを予想して、この防衛支出金は組まれておるかどうか、それをお聞きしたい。
  115. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは米軍安全保障條約によりまして日本に駐留した場合におきまして、日本で支拂う金額の大体半分程度を負担するのであります。アメリカ日本駐留軍に対しまする支出は、私の計算では十七、八億ドル、すなわち五、六千億円の金をアメリカ軍は自分で負担いたします。アメリカ軍日本に駐留をしております場合におきまして、日本の国鉄を使い、あるいは電信電話を使い、あるいは二十数万の労務者を使い、そうして備品費、電気、ガス代、こういうものを合せまして大体三億ドル余り、すなわち一千億円余りのものであります。そこで、その分の半分を日本が負担するというのであります。  ただ問題は、アメリカの相互援助法によりまして、アメリカが他の国に駐留した場合におきまして、不動産すなわち土地建物の賃貸料あるいは税金は拂わないということを、向うが法律できめておるのであります。従いましてわれわれといたしましては、イギリスの例等にならいまして、アメリカ軍日本に駐留した場合の土地建物の代は日本が負担する、その他の日本で支拂われる労務者の代とか、電気代、鉄道運賃は半々にしよう、こういうのであります。従つて私の見るところ、六百五十億円というものは、アメリカ軍日本に駐留する経費の、大体一割五分程度の負担になると考えております。
  116. 平川篤雄

    ○平川委員 もうちよつと具体的にお答えを願つておきたいと思います。かりに朝鮮の戦線に米軍が出かけるといたします。そうすると向うの方へ送つて行きますいろんな将兵並びに器材、それの運賃とか労務費とかは防衛支出金の中から出されない。明らかに日本防衛以外の目的に使われる場合は、全部純粋に米側の負担になつて、こちらは関知しないということでございますか。
  117. 池田勇人

    ○池田国務大臣 はつきりいたしておきますが、アメリカ軍の被服から食糧、給料、装備並び日本アメリカの間を行つたり来たりする運送費、それから日本から朝鮮へ行くいろんな船賃は、一切負担いたしません。これは全部アメリカ持ちであります。ただここでわれわれの負担するのは、先ほど申しましたような国鉄に拂う鉄道運賃、電気通信省に拂う電話料あるいは消費いたします石炭、ガス、水道代、それから備品費、二十数万の労働者の費用、これらの大体半分ということがあるのであります。従いまして朝鮮に行きまするいろんな器材などの費用は、米軍日本に駐留する費用ではないのでありますから、われわれの負担すべきものではないのであります。
  118. 平川篤雄

    ○平川委員 私が言いましたのは、その器材の問題ではなくして、そういうものを輸送いたします運賃とか、あるいはそういう仕事に従事いたします労働者の労賃とかいつたものです。それは当然向うの負担になるかということをお聞きしておるのです。
  119. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今まで米軍が朝鮮で行動するために必要な労務費その他につきましては、終戰処理費から出しておりません。アメリカがいわゆる特需として特別のドルを拂つてくれる、こういうことになつておることは、ずつと以前からかわりはない。今後独立いたしましても、そういうものは拂う考えは私は持つておりません。
  120. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいまのお言葉でありますが、今までは日本占領軍としておりまして、それが同時に国連軍としての性格を持つておりまして、日本政府がとやかく言おうにもどうにもならなかつた問題であります。ところが日米安全保障條約によつて、駐留いたしました米軍がそういう行動をとる場合は、これはやはり別個に考えなければならない。ただいままでそうであつたから、今後もそうであるというふうに、はつきりきまつておればよろしいのですが、そこのところが怪しいものですからお伺いしておるわけなんです。大蔵大臣、もしその点がはつきりしておいでになればお答え願いたい。
  121. 池田勇人

    ○池田国務大臣 六百五十億円にはそういうものは入つておりません。私が予算を組むときには、そういうものは入れずに組んでおります。
  122. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  123. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 では速記を始めて。  本日の会議はこの程度にとどめまして、明十四日は午前十時より委員会を開会いたし、質疑を継続することといたします。     午後二時四十分散会